JP2000121780A - 原子炉構造材の腐食電位のシミュレーション方法、原子力プラントの管理方法、原子力プラント監視システムおよびこれを用いた原子力プラント - Google Patents

原子炉構造材の腐食電位のシミュレーション方法、原子力プラントの管理方法、原子力プラント監視システムおよびこれを用いた原子力プラント

Info

Publication number
JP2000121780A
JP2000121780A JP10296526A JP29652698A JP2000121780A JP 2000121780 A JP2000121780 A JP 2000121780A JP 10296526 A JP10296526 A JP 10296526A JP 29652698 A JP29652698 A JP 29652698A JP 2000121780 A JP2000121780 A JP 2000121780A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
noble metal
potential
structural material
power plant
nuclear power
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP10296526A
Other languages
English (en)
Inventor
Masanori Sakai
政則 酒井
Yoshiyuki Takamori
良幸 高森
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Hitachi Ltd
Original Assignee
Hitachi Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Hitachi Ltd filed Critical Hitachi Ltd
Priority to JP10296526A priority Critical patent/JP2000121780A/ja
Publication of JP2000121780A publication Critical patent/JP2000121780A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Classifications

    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02EREDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
    • Y02E30/00Energy generation of nuclear origin
    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02EREDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
    • Y02E30/00Energy generation of nuclear origin
    • Y02E30/30Nuclear fission reactors

Landscapes

  • Monitoring And Testing Of Nuclear Reactors (AREA)
  • Preventing Corrosion Or Incrustation Of Metals (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】炉水に貴金属化合物を注入した原子力プラント
の腐食電位を高精度に求めることのできるシミュレーシ
ョン方法を提供する。 【解決手段】表面に貴金属粒子が析出した原子炉構造材
の腐食電位のシミュレーション方法であって、貴金属粒
子に接触している冷却水を構成する化学種が電子を供給
または受けとる速度として、貴金属がミクロ電極として
働くことを考慮して予め求めておいた係数を前記化学種
の化学反応速度にかけたものを用いる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、原子力プラント等
における腐食環境を示すパラメ−タの一つである腐食電
位を求めるシミュレーション方法、ならびに、シミュレ
ーション結果を用いて、プラントの水質改善効果を検討
することのできる、プラント運転監視システムに関する
ものである。
【0002】
【従来の技術】BWR(沸騰水型原子炉)等の原子力プ
ラントにおいては、冷却水中に、該冷却水の放射線分解
生成物である、酸素、過酸化水素等が存在する。この酸
素、過酸化水素等が構成する酸化剤は、酸化還元電位が
高い。一方、ステンレス等の炉内構造材や、水の放射線
分解生成物である水素は、電位が低い。そのため、ステ
ンレス等の炉内金属構造材が、酸素や過酸化水素に電子
を奪われることにより、腐食されるという問題がある。
そこで現在では原子炉冷却水に水素を注入することによ
り、該水素と原子炉冷却水中の酸化剤(酸素、過酸化水
素、中間体ラジカル等)とを反応させ、酸化剤の濃度を
低下させることが行われている。この水素注入により、
炉内腐食環境が緩和され、炉内構造材の腐食を抑制する
ことが可能である。
【0003】ところで、このような腐食の進み具合は、
腐食電位(Electrochemical Corrosion Potential:E
CP)と密接な関係がある。腐食電位とは、酸素や過酸
化水素等が電を奪う速度と、水素や構造材が電子を与え
る速度とが一致する電位である。一般に、腐食電位が高
くなるほど、構造材は強い酸化環境に置かれていること
になる。例えば、構造材に応力腐食割れが生じる敷居値
は、腐食電位が約−200mV(標準水素電極基準)前
後にあることが知られている。従って、応力腐食割れを
水素注入によって防止するためには、腐食電位を測定
し、前記敷居値よりも低い腐食電位に下がるまで水素を
注入する必要がある。そのためには、腐食電位の測定が
不可欠である。
【0004】しかし、現在の原子力プラントでは、腐食
電位を実測しようとしても、腐食電位センサを装着可能
な個所は限られている。したがって、原子力プラントの
構造材のうち、腐食を監視すべき部位、すなわち監視対
象部位のすべてについて腐食電位を実測することは現実
に不可能である。そこで、炉内の所望の監視対象部位に
ついての腐食電位を理論的にシミュレーションすること
が必要となってくる。
【0005】また、水素注入等による水質改善の効果を
予測・評価するためには、腐食電位を冷却水の実際の化
学成分等と対応づけて解析することも必要である。その
ためにも、腐食電位を理論的にシミュレ−ションする技
術が必要になる。
【0006】腐食電位をシミュレーションすることがで
きる技術は、例えば、特開平07−174883号公報
に開示されている。本公報には、電気化学的な混成電位
論、電子移動反応速度理論を基に、理論的に腐食電位を
求める方法が開示されている。この方法は、腐食反応の
素反応解析を、多段の電子移動反応レベルで行うことに
よって、高精度に腐食電位を求めることができる。
【0007】ところで、特開平08−327786号公
報には、BWRの炉水中に貴金属を含有する化合物と還
元剤とを注入することにより、BWR構造材の表面に貴
金属を付着させる技術が開示されている。この方法によ
り、貴金属を付着させた場合、腐食電位は大幅に低減
し、構造材の亀裂発生および亀裂成長を防止することが
できることが開示されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】上述の特開平08−3
27786号公報記載の技術によって、腐食電位が大幅
に低減することが示されているが、腐食電位の低下に貴
金属がどのように作用しているか、そのメカニズムは開
示されていない。一般的には、析出した貴金属が触媒と
して働き、炉水中に注入した水素と、炉水中の酸化剤で
ある酸素および過酸化水素、あるいは,ラジオリシス中
間体であるラジカル種との反応が大きく進行し、腐食電
位の低下が加速されると考えられる。しかしながら、上
述の特開平08−327786号公報記載の技術で添加
される貴金属は、ppbレベルのごくわずかな量である
にもかかわらず、大幅に腐食電位が低下する。これは、
貴金属が触媒として働いているというだけでは、説明が
つかない。
【0009】そのため、貴金属を添加した場合の腐食電
位は、上述の特開平07−174883号公報に記載さ
れているような一般的な腐食電位のシミュレーション方
法では求めることができない。腐食電位がシミュレーシ
ョンできない場合、監視対象部位についての腐食電位を
知ることができないため、水素注入条件の決定ができな
くなる。
【0010】本発明は、炉水に貴金属化合物を注入した
原子力プラントの腐食電位を高精度に求めることのでき
るシミュレーション方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明によれば、以下のようなシミュレーション方
法が提供される。
【0012】すなわち、表面に貴金属粒子が析出した原
子炉構造材の腐食電位のシミュレーション方法であっ
て、前記貴金属粒子に接触している冷却水を構成する化
学種が電子を供給または受けとる速度として、前記貴金
属がミクロ電極として働くことを考慮して予め求めてお
いた係数を前記化学種の化学反応速度にかけたものを用
いることを特徴とする腐食電位のシミュレーション方法
である。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明の一実施の形態として、腐
食電位のシミュレーション機能を備えた原子力プラント
監視システムを図面を用いて説明する。
【0014】本実施の形態のプラント監視システム、お
よび、本実施の形態の適用の対象となる原子炉プラント
自体について図18を用いて簡単に説明する。
【0015】原子炉プラントは、燃料を反応させるため
の原子炉圧力容器8と、給水系9と、冷却水再循環系1
0と、冷却水を浄化する炉水浄化系11とを含んで構成
される。なお、本実施の形態が適用対象とする原子炉圧
力容器8は、ステンレス鋼(SUS304系)でできて
いる。
【0016】給水系9は、冷却水が、原子炉圧力容器8
内で加熱された結果発生する蒸気を、冷却し、再び、原
子炉圧力容器8内に戻すものである。該給水系9の途中
には、発電用のタービン系12、復水器92、水素注入
装置50、ポンプ90が設けられている。蒸気で該ター
ビン系12を作動させることによって、発電が行なわれ
る。タービンを回した後の蒸気は、該復水器92によっ
て液体に戻される。
【0017】冷却水再循環系10は、原子炉圧力容器8
内の冷却水を循環させるためのものである。
【0018】給水系9には、冷却水中に水素を注入する
ことによって、腐食環境を緩和するための水素注入装置
5が配置されている。また、冷却水再循環系10には、
再循環系10を循環する冷却水中に貴金属化合物を含む
溶液を注入するための貴金属化合物注入装置160が取
り付けられている。水素注入装置5から注入された水素
は、冷却水中の酸素や過酸化水素等の酸化剤に電子を供
給し、腐食環境を改善する。また、この水素は、貴金属
化合物注入装置160から注入された貴金属化合物の貴
金属にも電子を供給し、貴金属を構造材表面に析出させ
る。
【0019】なお、水素注入装置5、ならびに、貴金属
化合物注入装置160は、後述する制御室4からの指示
に従って、水素ならびに貴金属化合物を給水に注入す
る。水素の注入量、貴金属化合物の注入量は、後述する
コンピュータシステム3によるシミュレーション結果等
を用いて、原子炉容器8内の監視対象部位の腐食電位
を、応力腐食割れなどを防ぐために十分な腐食電位まで
低下させることのできる量が決定される。なお、給水系
9における実際の水素濃度と、注入水素量との関係は予
め測定されており、該水素注入装置5への指示は、水素
濃度を、例えば、15ppbにせよといった形で行われ
る。
【0020】炉水浄化系11は、原子炉冷却水を浄化す
るためのものである。該炉水浄化系11は、冷却水再循
環系10の途中から水を取り込んで、浄化した後、給水
系9を通じて、原子炉圧力容器8内に該冷却水を戻す。
該炉水浄化系11には、ボトムドレインライン12を通
じて、圧力容器8の底部にある冷却水も流入している。
【0021】なお給水系9、冷却水再循環系10、炉水
浄化系11は、それぞれ専用のポンプ90,100,1
10を備えている。
【0022】原子炉圧力容器8、給水系9、冷却水再循
環系10、炉水浄化系11には、これらを構成する構造
材および冷却水の状況を検出するための各種センサ、測
定装置が取り付けられている。
【0023】原子炉圧力容器8および内部の構造部材の
うちの腐食電位を実測可能な部位には、腐食電位を測定
するための電位測定装置2が取り付けられている。電位
測定装置2は、基準電極1からの電位信号ケ−ブル20
と、原子炉の構造材と電気的に短絡している原子炉圧力
容器8につながった電位信号ケ−ブル21とが入力され
る。電位測定装置2は、基準電極1の電位を基準とし
て、測定対象部分の電位を求める。
【0024】基準電極1は、電位測定の基準となる電位
を発生させるためのものである。本実施の形態において
は、白金電極を用いているが、銀/塩化銀電極を用いて
も良い。本実施の形態においては、該基準電極1を、中
性子計装管7に取り付けている。なお、本実施の形態に
おいては、電位を、標準水素電極電位基準(vs.SH
E)で求めるようにしている。また、電位測定装置2と
しては、入力インピーダンスが十分に高いものを使用す
る。
【0025】この他、原子炉圧力容器8、炉水浄化系1
1には、溶存酸素検出装置150、過酸化水素検出装置
151、PH検出装置152、導電率検出装置153、
主蒸気中放射性窒素検出装置154、亀裂進展センサ1
55、主蒸気系放射線線量率検出装置156、等が設け
られている。これらセンサとしては、様々なタイプのも
のが実用化、あるいは、提案されているが、本実施の形
態においては、どのようなタイプのセンサであっても構
わない。また、これら検出装置の取付け位置も、この図
に示した位置に限定されるものではない。
【0026】コンピュ−タシステム3は、電位測定装置
2をはじめとする各種検出センサの検出結果を処理する
ためのものである。該コンピュータシステム3自体は、
図9に示すとおり、CPU30、ROM31、RAM3
2、外部記憶装置33、表示制御回路34、表示装置3
5、入出力インタフェース36、プリンタ37、およ
び、これら各部をつなぐバス38等のハードウエア資源
と、これらの外部記憶装置33、RAM32、ROM3
1等に記憶され、CPU30が実行するプログラムとに
よって、主に構成されている。なお、CPU30による
処理結果は、文字あるいはグラフィックとして、表示回
路34を通じて表示装置35に、あるいは、プリンタ3
7に出力される。さらには、制御室4内のホストコンピ
ュータ、表示装置等にも出力されている。
【0027】本実施の形態のコンピュータシステム3の
外部記憶装置33、RAM32,ROM31には、監視
対象部の予想水質デ−タ、水素注入量、貴金属注入量、
サンプリング水の水分析デ−タ等に基づいて、その監視
対象部の腐食電位をシミュレートするプログラムが予め
格納されている。該コンピュータシステム3のCPU3
0は、このプログラムを実行することによって、腐食電
位を求める。この他、以下において詳述する各種機能を
実現する上で必要となるデータなどは、予め外部記憶装
置33などに格納されている。また、その処理結果を、
表示回路34を通じて、表示装置35に表示させる。こ
の他、該コンピュータシステム3は、溶存酸素濃度およ
び溶存過酸化水素濃度に基づいて、原子炉内における酸
化剤濃度(O2*=(溶存酸素濃度)+1/2・(溶存
過酸化水素濃度))を求めるプログラムも有している。
【0028】制御室4は、運転者が、実際に運転の監視
を行う部屋である。該制御室4には、コンピュ−タシス
テム3からデ−タをとりこむホストコンピュ−タ40、
表示装置42、プリンタ44、および各種水素注入装置
5および貴金属化合物注入装置160等を操作するため
に操作装置等が設けられている。表示装置42等には、
各種測定データ(例えば、in-situデ−タ、水質分析デ
−タ、腐食電位実測デ−タ)、予め設定されたデ−タ基
準値等ととともに、コンピュータシステム3が求めた腐
食電位計算結果が表示される構成となっている。運転者
は、これらを見ることによって、原子炉の運転状態を監
視することができる。また、その結果によっては、操作
装置を用いて原子炉の運転状況を変更などさせる。
【0029】次に、本実施の形態のコンピュータシステ
ム3による腐食電位のシミュレーションの詳細を説明す
る。
【0030】腐食電位は、その定義より、下記数1の方
程式を満たす電位Eで表される。
【0031】
【数1】
【0032】ここで、io(E),ih(E),ic(E)は、いず
れもEの関数であり、io(E)は、冷却水中の酸素、過酸
化水素系が、ある電位Eにおいて電子を奪う速度を電流
で示したものである。この電流io(E)は、外部から測定
される全電流に相当するものである。ih(E)は、冷却水
中の水素がある電位Eで電子を供与する速度を、電流で
示したものである。ic(E)は、ある電位Eにおける、構
造材(ステンレス鋼)の電子供与速度を、電流で示した
ものである。
【0033】従来、腐食電位のシミュレーションを行う
場合には、数1に含まれる3つの項(io(E),ih(E),
ic(E))のうち、io(E),ih(E)には、反応モデルにつ
いての反応速度式から導き出される反応速度式を用い、
ic(E)には、実験により実測した電流電位曲線を定式化
したものを用い、これらをそれぞれ数1に代入すること
によって、数1を、電位E、酸素濃度、過酸化水素濃
度、水素濃度、流速等を変数として含む方程式としてい
た。そして、この方程式に、入力データとして、酸素濃
度、過酸化水素濃度、水素濃度、流速を与えることによ
って、電位Eのみを変数とする方程式とし、最終的に
は、この電位Eのみを変数とする方程式を解くことによ
って、腐食電位を得ていた。
【0034】しかしながら、本実施の形態で腐食電位を
求めようとしている構造部材は、単なるステンレス鋼で
はなく、ステンレス鋼の上に微量の貴金属を析出させて
おり、しかも、析出した貴金属が、腐食電位に対してど
のような挙動をしているか不明である。そのため、数1
をそのまま用いて腐食電位を求めても、本実施の形態の
原子力プラントの実測腐食電位とは全く一致しない。そ
こで、本願発明者らは、研究の結果、析出した貴金属の
働きを解明することに成功し、その結果、貴金属が析出
した構造材の腐食電位は、下記数2の方程式を電位Eに
ついて解くことによって求めることができることを見い
だした。
【0035】
【数2】
【0036】ここで、ion(E)、ioc(E)、ihn(E)、ih
c(E)、ic(E)は、いずれも電位Eの関数である。io
n(E)は、貴金属上の冷却水中の酸素、過酸化水素系が、
ある電位Eにおいて電子を奪う速度を電流で示したもの
である。ioc(E)は、構造材上の冷却水中の酸素、過酸
化水素系が、ある電位Eにおいて電子を奪う速度を電流
で示したものである。ihn(E)は、貴金属上の冷却水中
の水素がある電位Eで電子を供与する速度を、電流で示
したものである。ihc(E)は、構造材上の冷却水中の水
素がある電位Eで電子を供与する速度を、電流で示した
ものである。ic(E)は、上述した数1のic(E)と同じで
あり、ある電位Eにおける、構造材(ステンレス鋼)の
電子供与速度を、電流で示したものである。
【0037】なお、ion(E)およびihn(E)の添え字のn
は、貴金属(noble metal)を示す。また、
ioc(E)およびihc(E)の添え字のcは、構造材(con
stitution)を示す。
【0038】また、Aは、A=(4δ)/(πr)で表
され、本実施の形態ではAを反応速度倍率と呼ぶ。δ
は、監視対象部位の拡散層の厚さ、πは円周率、rは、
析出している貴金属粒子の平均半径である。θは、構造
材表面の単位面積あたりで、析出した貴金属粒子で被覆
されている面積、すなわち被覆率である。
【0039】発明者らは、係数として反応速度倍率Aを
用いた数2を導き出したことにより、貴金属が析出した
構造材の腐食電位を求めることを可能にした。数2をど
のように導き出したかについては、後ほど詳しく述べ
る。
【0040】数2を用いて、腐食電位のシミュレーショ
ンを行う場合には、数2に含まれるion(E)、ioc(E)、
ihn(E)、ihc(E)、ic(E)のうち、ion(E)、ioc(E)、
ihn(E)、ihc(E)には、反応モデルについての反応速度
式から導き出される計算式を用いる。一方、ic(E)は、
後述する方法で求めた電流電位曲線を定式化したものを
用いる。
【0041】そして、これらion(E)、ioc(E)、ih
n(E)、ihc(E)、ic(E)をそれぞれ数2に代入すること
によって、数2を、電位E、酸素濃度、過酸化水素濃
度、水素濃度、流速、水力等価直径、r、θ等を変数と
して含む方程式とする。この方程式に、入力データとし
て、酸素濃度、過酸化水素濃度、水素濃度、流速、水力
等価直径、r、θ等を与えることによって、電位Eのみ
を変数とする方程式とする。最終的には、この方程式を
解き、この方程式を満たす電位Eを求めることにより、
腐食電位を得る。
【0042】本実施の形態のコンピュ−タシステム3の
外部記憶装置33等には、プログラムとして、予め、数
2を上述の変数(腐食電位、酸素濃度、過酸化水素濃
度、水素濃度、流速、水力等価直径、r、θ等)を含ん
だ数式に変形した方程式が格納されている。
【0043】また、コンピュータシステム3の外部記憶
装置33等には、この方程式に与えるための酸素濃度、
過酸化水素濃度、水素濃度を求めるためのプログラムも
格納されている。このプログラムは、溶存酸素濃度検出
装置150、溶存過酸化水素濃度検出装置151、水素
濃度検出装置152の検出結果と、水素注入装置5の注
入水素量と、腐食電位をシミュレーションすべき監視対
象部位の放射線強度とに基づいて、放射線分解計算によ
り、その監視対象部位における冷却水の酸素濃度、過酸
化水素濃度、水素濃度を求める計算プログラムである。
この計算方法は、一般にラジオリシス計算コードと呼ば
れ、よく知られた計算方法であるので、ここでは、詳し
い説明は省略する。
【0044】さらに、コンピュータシステム3の外部記
憶装置33等には、上記方程式に与えるための析出して
いる貴金属の半径r、貴金属の被覆率θの値を求めるた
めのプログラムも格納されている。このプログラムは、
予め実験により求めておいた、水素および貴金属化合物
注入条件等とrおよびθとの関係に、本実施の形態の原
子力プラントの水素および貴金属化合物注入条件等を、
照らし合わせることによりr、θの値を求める。この方
法については、後ほど詳しく説明する。また、Aの値に
含まれるδの値は、後述する数式により、流速、水力等
価直径等により求める。
【0045】コンピュータシステム3のCPU30は、
外部記憶装置33等の格納されている上述の各プログラ
ムを読み込んでそれぞれ実行することにより、酸素濃
度、過酸化水素濃度、水素濃度、r、θ等を求め、これ
を、上記方程式に代入して方程式を解き、腐食電位を求
める。なお、数2の方程式の解法は数値計算しかない。
本実施の形態では、ニュ−トン法によって該方程式を解
いた。
【0046】ここで、数2の方程式のion(E)、io
c(E)、ihn(E)、ihc(E)、ic(E)、A、θについてこれ
らの内容、および、これを導出してきた手順等を詳細に
説明する。
【0047】まず、ihn(E)、ihc(E)について述べる。
上述したように、ihn(E)は、貴金属上の冷却水中の水
素がある腐食電位で電子を供与する速度を、電流で示し
たものである。ihc(E)は、構造材上の冷却水中の水素
がある電位Eで電子を供与する速度を、電流で示したも
のである。
【0048】本実施の形態では、ihc(E)として、Volme
r-Heyrovsky機構によって与えられる下記数3を用い
る。
【0049】
【数3】
【0050】ここで、 a=kh1 δH2 / 4 DH2 b=−kh1CH2 */2−kh2[H+]/2−kh3/2−kh4 [H+] /
2 − kh1 kh3 δH2/2DH2 c= F kh1 kh3 CH2 * − F kh2 kh4 [H+2 kh1 = kh1 0 exp{ ah1 F ( E - Eh1 0 ) / R T } kh2 = kh2 0 exp{ -(1- ah1 ) F ( E - Eh1 0 ) / R T } kh3 = kh3 0 exp{ ah2 F ( E - Eh2 0 ) / R T } kh4 = kh4 0 exp{ -(1- ah2 ) F ( E - Eh2 0 ) / R T
} kh1 0, kh2 0, kh3 0, kh4 0: 水素電子移動反応系各反応ス
テップの速度定数項 CH2 * : 水素濃度(mol/ cm3) δH2 : 水素の拡散層厚(cm) DH2 : 水素の拡散係数(cm2/s) ah1, ah2 : 水素電子移動反応系各反応ステップの遷移
係数 Eh1 0 , Eh2 0 : 水素電子移動反応系各反応ステップの標
準電極電位 (Vvs. SHE) E :電位(腐食電位) F :ファラデー定数 R :気体定数(8.32) T :絶対温度 [H+]:絶対温度TにおいてH2Oからかい離するH+の濃
度 である。
【0051】Volmer-Heyrovsky機構は吸着水素原子を中
間体とする、連続した電子移動反応機構で進行する。こ
の機構に関しては,Vetterらにより詳細な取り扱いが試
みられている。 反応モデルは以下化1〜化3である。
【0052】
【化1】
【0053】
【化2】
【0054】
【化3】
【0055】ihc(E)の速度式は、特開平07−174
883号公報中で示されたihと基本的に同じである
が、ihc(E)の方がより条件を限定している速度式であ
る。
【0056】上記化1〜化3の反応プロセスは次の3つ
の過程を示している。
【0057】1) 分子状水素H2の一つの水素原子がプロ
トンH+に酸化され、もう一方の水素原子Hが材料に吸着
する過程, 2) 材料に吸着した水素原子HがプロトンH+に酸化される
過程, 3) 水の解離反応である。
【0058】一方、ihn(E)は、上述したように貴金属
上の冷却水中の水素がある電位Eで電子を供与する速度
を、電流で示したものであるから、貴金属が水素電極反
応において触媒として働くことを考慮する必要がある。
貴金属の水素電極反応の触媒性は、貴金属上での水素の
電子移動反応速度が大きいためである。電子移動反応の
最大系では、速度式中に含まれる反応種の濃度項がネル
ンストの式と一致するため、ここでは、ネルンストの式
を用いて導き出した下記数4をihn(E)として用いる。
このihn(E)は、いわゆる完全可逆な電子移動反応系で
ある。これは、この電気化学系が有する,最も単純な速
度式の一つである。
【0059】
【数4】
【0060】ここで、 Eh 0 : 下記化4の水素電子移動反応系の標準電極電位で
ある。これはSHEそのものである(0Vvs. SHE)。
【0061】また、数4のF、DH2、δH2、CH2 *
[H+]、E、R、Tは、数3と同じである。
【0062】
【化4】
【0063】つぎに、ion(E)およびioc(E)について説
明する。ion(E)は、貴金属上の冷却水中の酸素、過酸
化水素系が、ある電位Eにおいて電子を奪う速度を電流
で示したものである。ioc(E)は、構造材上の冷却水中
の酸素、過酸化水素系が、ある電位Eにおいて電子を奪
う速度を電流で示したものである。上述した水素につい
てのihn(E)、ihc(E)は、貴金属上と構造材上とで、反
応速度が大きく異なるため、数3、数4で示したように
異なる扱いをする必要があるが、酸素、過酸化水素につ
いては、水素ほど大きな反応速度の変化はないと考えら
れる。そこで、本実施の形態では、ion(E)=ioc(E)=
i(E)と近似することにした。
【0064】以下、このion(E)=ioc(E)=i(E)のi
(E)について詳細に説明する。
【0065】ここでは、i(E)を定める酸素および過酸
化水素の、電子移動反応および化学反応は、以下の化
5,化6,化7,化8,化9に示す過程を含んでいるも
のと仮定した。シミュレ−ションにおいては、化5〜化
9に示した個々の過程を素反応として扱った。
【0066】
【化5】
【0067】
【化6】
【0068】
【化7】
【0069】
【化8】
【0070】
【化9】
【0071】化5〜化9の相互関係を示したのが図3で
ある。図20においては、化学式の一部を省略し、簡略
化して示している。
【0072】なお、化5は、酸素の連続電子授受による
還元反応、および、酸素の電気化学的還元反応中間体と
しての過酸化水素の生成を示すものである。化6は、酸
素の電気化学的還元反応中間体としての過酸化水素の消
費過程、および、電気化学的な過酸化水素の分解反応過
程を示すものである。化7は、酸素の電気化学的還元反
応中間体としての過酸化水素の消費過程、および、酸素
の連続電子授受による還元反応、を示すものである。化
8は、酸素還元反応中間体過酸化水素の拡散過程での分
解反応である。化9は、構造材表面での過酸化水素の接
触分解反応過程を示すものである。
【0073】電位Eにおける全反応の速度は、全電流密
度i(A/cm2)で表される。ここで示した5つの過程(化
5〜化9)は、同時に進行するため、全電流密度iは、
下記数5で示される。
【0074】
【数5】
【0075】数5における、i1(E)、i2(E)、i3(E)、
4(E)は、図20中に示したi1(E)、i2(E)、i3(E)、
4(E)と対応したものである。数5においては、カソ−
ド反応(電子を受け取る反応)を正とした。
【0076】従って、全電流密度i(E)を全反応速度式
を用いて表すと、下記数6のようになる。
【0077】
【数6】
【0078】数6中の、Fはファラデー定数である。k
1、k2、k3、k2’は、後述する数11、数12、数1
3、数14で示されるものである。
【0079】数6には、酸素の界面濃度CAs、過酸化水
素の界面濃度CBs、および、電位Eが含まれている。酸
素、過酸化水素の界面濃度CAs、CBsは、実測すること
ができない。しかし、これらは、拡散についての微分方
程式を解くことで、酸素のバルクにおける濃度CA、過
酸化水素のバルクにおける濃度CB、の式として表現す
ることができる。
【0080】以下において、酸素、過酸化水素の界面濃
度CAs、CBsを、バルクにおける濃度CA、CBで表すた
めの方法を述べる。
【0081】構造材界面近傍における拡散は、線形拡散
である仮定すると、酸素、過酸化水素の拡散プロセス
は、数7、数8で表される。なお、xは、構造材界面か
らの距離であり、x=0は構造材界面の位置に相当す
る。
【0082】
【数7】
【0083】
【数8】
【0084】ここに、Aは酸素(O2)、Bは過酸化水
素(H22)、Cjはj化学種の濃度(mol/c
3)、Djはj化学種の拡散係数(cm2/s)、k5は拡
散過程における過酸化水素の分解速度定数(1/s)であ
る。
【0085】また、構造材界面での物質収支(境界条
件)は、下記数9、数10で表される。数9、数10中
に含まれる文字式の詳細を、数11、数12、数13、
数14に示した。
【0086】
【数9】
【0087】
【数10】
【0088】
【数11】
【0089】
【数12】
【0090】
【数13】
【0091】
【数14】
【0092】k4は、材料表面での過酸化水素の分解速
度定数(cm/s)であり、ここでは、実際の材料表面に似せ
て作成した試料により実験により求めた数値6×10-3
(cm/s)を用いる。α1,α2,α3は、各反応ステップ還
元方向の遷移係数である。プロトン濃度は、水の解離平
衡で決まる定数として取扱上問題はない。k1゜[H+
4 (cm/s),k2゜[H+2 (cm/s),k2゜’(cm/s),k3
゜[H+2 (cm/s)は、各反応ステップの速度に関する
定数項である。Eは、基準電極に対する構造材の電位
(V)である。E゜,E1゜,E2゜は、各反応ステップ
の標準電極電位(V)である。F,R,Tは、それぞれフ
ァラデ−定数、気体定数(8.32)、絶対温度である。
【0093】腐食電位が時間的に定常状態レベルの情報
であることを勘案すれば、全反応速度式の導出は、定常
状態での取扱で充分であると考えられる。そのため、境
界条件として、以下の数15〜数19を採用することが
できる。
【0094】
【数15】
【0095】
【数16】
【0096】
【数17】
【0097】
【数18】
【0098】
【数19】
【0099】ここで、δjはj化学種の拡散層厚(cm)。
Cjsはj化学種の材料界面(表面)濃度(mol/cm
3)。Cj*はj化学種の冷却水沖合平衡濃度(mol/c
3)である。
【0100】以上の数7〜数19から得られる連立方程
式を解くこととで、酸素、過酸化水素の界面濃度CAs、
CBsを、酸素、過酸化水素のバルク濃度CA、CBで書き
表すことができる。
【0101】数7〜数19を用いて求めたCAs、CBs
を、上記数6に代入した結果を、簡略化して表現したの
が、数20である。
【0102】
【数20】
【0103】該数20中に含まれる文字、式の詳細は、
下記数21〜数25に示すとおりである。なお、Ξ1
Ξ2は、濃度の次元を持つ項である(数24,25参
照)。
【0104】
【数21】
【0105】
【数22】
【0106】
【数23】
【0107】
【数24】
【0108】
【数25】
【0109】下記数26〜数31は、数21〜数25に
含まれる文字、式の詳細を示したものである。
【0110】
【数26】
【0111】
【数27】
【0112】
【数28】
【0113】
【数29】
【0114】
【数30】
【0115】
【数31】
【0116】また、上記式中に含まれるk1は、数11
で定義されたものである。k2は数12で定義されたも
のである。k2'は、数13で定義されたものである。k
3は、数14で定義されたものである。
【0117】以上により、本実施の形態の数2で用いる
ion(E)=ioc(E)=i(E)のi(E)を示すことができた。
【0118】つぎに、数2のic(E)について説明する。
ここでは、ic(E)として、予め実験により実測した電流
電位曲線を定式化したものを用いる。電流電位曲線の実
測方法としては、貴金属化合物を注入していない状態の
原子力プラントを用い、その腐食電位Eを図18の電位
測定装置を用いて実測する。また、その腐食電位Eを測
定したときの酸素濃度、過酸化水素濃度、水素濃度、流
速等を測定もしくはラジオリシス計算コードにより推測
し、これをio(E)、ih(E)の計算式に代入することによ
り、io、ihを計算により求める。このio、ihを数1
に代入することにより、icを求める。これにより、腐
食電位Eと、そのときのicを求めることができる。こ
れを注入する水素濃度を変化させることにより、腐食電
位Eを変化させながら、複数の腐食電位Eについて行う
ことにより、icとEとの関係を示す電流電位曲線を得
ることができる。この電流電位曲線を定式化したものを
ここではic(E)として用いる。例えば、下記数33のよ
うな数式を用いることができる。
【0119】
【数33】
【0120】なお、ic(E)を求める際のio(E)の計算式
としては、数20のi(E)を用いることができる。ま
た、ih(E)の計算式としては、数3のihc(E)を用いる
ことができる。
【0121】つぎに、数2の反応速度倍率A,θを説明
するために、発明者らが、数2をどのようにして導き出
してきたかをここで説明する。
【0122】まず、図2に構造材としてステンレス鋼を
用い、貴金属を注入していない原子力プラントの電流電
位曲線とそのときのECPを示す。また、図3に構造材
が白金板であるとした場合の電流電位曲線とそのときの
ECPを示し、図2と図3のECPを比較する。
【0123】図2において、ステンレス鋼上の水素の酸
化反応の理論電流電位曲線は、数3によって与えられる
ihc(E)とした。また、酸素/過酸化水素混合系の電流
電位曲線は、数20によって与えられるi(E)(=io
c(E))とした。ステンレス鋼の陽分極曲線(電流電位曲
線)は、上述の実測された腐食電位から逆算することに
よって求めたic(E)とした。ただし、炉内水素濃度は、
37ppb(給水系の注入水素濃度約3ppm相当)で
ある。この水素注入した冷却水環境(HWC)条件で酸
素/過酸化水素濃度は、それぞれ0.04/8.7pp
b水質に対応する。ECP(腐食電位)は、その定義よ
り、構造材の電流値と水素の電流値との和が、酸素/過
酸化水素の電流値に一致する点の電位であるから、図2
中丸印で示した交点の交点の電位座標である。図2から
わかるように、水素の電流値ihcはステンレス鋼の電流
値icに比べかなり小さいことがわかる。なお、水素,
ステンレス鋼に関しては,電子を出す反応を正反応とし
ているため、電流符号のプラスが水素の酸化反応に対応
する。酸素/過酸化水素に関しては、電子を受け取る反
応を正としている。
【0124】一方、図3は、構造材が白金板(貴金属を
析出させた構造材ではなく,一枚の白金板)である場合
の水素および酸素/過酸化水素の理論電流電位曲線であ
る。水素の電流電位曲線ihn(E)は、可逆系水素反応に
関する数4によるものである。酸素/過酸化水素の電流
電位曲線ion(E)は、上述のステンレス鋼の場合と同じ
く数20によるi(E)とした。白金板上の酸素/過酸化
水素の電流電位曲線ion(E)は、厳密には、ステンレス
鋼上の電流電位曲線ioc(E)とは異なるが、白金板上の
水素の電流電位曲線ihn(E)が、ステンレス鋼の水素の
電流電位曲線ihcとは大きく異なることに比べれば、酸
素/過酸化水素のion(E)の変化のオーダーは極めて小
さいため、ここでは、酸素/過酸化水素の電流電位曲線
ion(E)をステンレス鋼上と白金板上とで同じ数20に
よって与えることにした。
【0125】図3からわかるように、白金板上の水素の
電流電位曲線ihn(E)は、電位Eの変化に対して最大限
の反応速度(電流密度)を示し,電流値ihnの立ち上が
りは急である。最終的には,可逆系の水素酸化反応速度
(電流密度)ihnは微小な電位変化で,水素の濃度に比
例した限界電流値となって限界値に到達する。これは、
図2に示される水素の電流電位曲線ihc(E)とは全く異
なる電位に対する応答である。これは、水素の電子移動
反応が、白金という触媒の存在により電気化学的な可逆
系になるためである。また、構造材である白金の電流電
位曲線ic(E)の電流値icは、水素の電流電位曲線ih
n(E)の電流値ihnよりも2桁小さい数値となり無視でき
るため、図3では図示していない。よって、ECPは、
水素の電流電位曲線に大きく支配される挙動になる。す
なわち,図3の各電流電位曲線の交点がそれぞれの水質
に対応する白金のECPであり、ECPは水素濃度の増
大に伴い,急激に低下してゆくことがわかる。図3中矢
印で示したECPは水素濃度16ppb,酸素/過酸化
水素濃度がそれぞれ104/117ppbに対応するE
CPである。水素濃度16ppb前後の微妙な濃度変化
に対する電流電位曲線の交点の電位座標変化は急激であ
り,水素反応の可逆化がいかにECPを低下させる力に
なっているかがわかる。図2の水素濃度,酸素/過酸化
水素濃度と図3のそれぞれの濃度を比較しても水素反応
の可逆化がECPに与える影響が大きいことがわかる。
【0126】この図3の方法で、すなわち、水素の電流
電位曲線ihn(E)として電気化学的な可逆系から導いて
きた数4を用いる方法で、ECPを模擬的にシミュレー
ションした結果を図4に純白金板のグラフとして示す。
条件としては、酸素濃度を50ppbで一定にし、水素
濃度を1から100ppbまで変化させた。そして、計
算したECPを縦軸に、[H2]/[O2]モル比を横軸
にとり、図4に示した。これまで[H2]/[O2]モル
比が2レベルになると白金のECPが理論水素電極電位
を示すことが実験的に確かめられている。図4の純白金
のシミュレーションの結果のグラフは、[H2]/
[O2]モル比が2レベルから理論水素電極電位に近い
値をとっている。このことから、上記数4を水素の電流
電位曲線として用いることにより、白金板上のECPが
シミュレーションできているが確認できた。
【0127】つぎに、発明者らは、原子力プラントの冷
却水に貴金属化合物を注入して貴金属を析出させた構造
材(NMCA処理材)について、水素反応の可逆性の変
化を考慮したECPシミュレーションフロー(図5)に
より、シミュレーションすることを試みた。すなわち、
貴金属上の水素の電流電位曲線として上述の数4を用
い、かつ、貴金属の被覆率θを考慮するものである。具
体的には、貴金属が析出していないステンレス鋼上での
水素の電流電位曲線を数3のihc(E)で与え、貴金属上
の水素の電流電位曲線を数4のihn(E)で与え、それぞ
れ被覆率θと(1−θ)を係数とする。これを数式に表
すと数32のようになる。数32の方程式をEについて
解くことにより、腐食電位Eをシミュレーションした。
ただし、数32において酸素/過酸化水素の電流電位曲
線は、貴金属上もステンレス鋼上を数20で与え、構造
材の電流電位曲線は、貴金属の腐食はほとんどないとし
て、ステンレス鋼部分のみを(1−θ)・ic(E)で与え
た。
【0128】
【数32】
【0129】この数32を用いるシミュレーション方法
で、被覆率θを0.001、0.01、0.1の3種類
でそれぞれECPを求めた結果を図4のグラフに示す。
図4からわかるように、このシミュレーション結果は、
最も被覆率の高いθ=0.1のNMCA処理材でも、
[H2]/[O2]モル比が15以上にならないとECP
が水素電極電位まで近づかない。被覆率θ=0.01,
0.001の条件では、ECPの低下加速効果は現れな
い。したがって、このシミュレーション結果は、極わず
かな貴金属の析出で急激にECPが低下するという実測
結果とは一致しないことがわかった。これは、このよう
な被覆率θと、貴金属上での水素反応の可逆化(数4)
とを考慮するのみでは、貴金属を析出させた構造材(N
MCA処理材)のECP低下の加速効果は説明できない
ことを示している。よって、水素反応の可逆性以外の因
子が見落されていると発明者らは考えた。
【0130】NMCA処理材は、白金等貴金属でメッキ
されるというようなレベルのものではなく,1cm2
たり,マイクログラム前後の貴金属付着にすぎない。こ
れまでの評価実験では、析出している貴金属粒子は、観
測することすら困難なレベルの大きさの粒子であった。
したがって、メッキのような析出形態とは明らかに異な
る。このことと、全体が白金板の構造材についてのシミ
ュレーションが上述の数4を用いた方法で成功したこと
と考え合わせると、貴金属の被覆率θが極小であること
を考慮していないためにNMCA処理材でのシミュレー
ションがうまくいかないと考えられる。
【0131】そこで、発明者らは、NMCA処理により
構造材表面に付着した貴金属がミクロ電極挙動を示すと
仮定して,NMCA処理材のECPシミュレーションを
行うことにした。析出している貴金属がミクロ電極挙動
を示すと考えた根拠は,NMCA処理材上の貴金属が観
察困難なレベルであること,付着量がマイクログラムレ
ベルであること,分散して付着していることなどから,
付着貴金属は小さく,拡散層厚よりも充分小さいと考え
られるためである。電極反応では、定常拡散層厚より
も、電極サイズが小さくなると,電極への酸素,水素等
の供給プロセスに変化が生じる。ミクロ電極表面の物質
移動に関する取り扱いは今日,Aoki, Osteryoungらによ
り定量化,体型化されている((K.Aoki and J.Osteryoun
g, J.Electroanal.Chem.,122, pp19-35(1981)), (L.Si
nru , J.Osteryoung, J.J.O'Dea, and R.Osteryoung, A
nal.Chem.,60,pp1135-1141(1988)))。
【0132】ミクロ電極は、拡散層厚よりも電極径が小
さくなるに従い,表面への物質移動は一方向からの拡散
ではなく,3次元拡散の形態になってゆく挙動を示す。
すなわち、図6に示したようにミクロ電極が電子のやり
とりをする機能,すなわち電極として働くときの電極表
面への物質拡散は、3次元拡散になっていく。
【0133】Aokiらミクロ電極に関する解析結果に
よると、図8のように、電極径rが小さくなり,3次元
拡散の形態に変化してゆくと、拡散限界電流(反応速
度)i3は、図8の81式のように表される。81式に
おいて、定常状態(時間t=∞)場合、i3は、i3=4
nFDC°rとなる。ただし、このモデルでは、ミクロ
電極を厚みのない半径rの円形と仮定している。このよ
うな厚みのない形状であっても、電極反応は3次元拡散
反応である。
【0134】一方、線形拡散の場合、一般的に知られて
いるように、定常状態の拡散限界電流iLは、 iL=nFDC°(πr2)/δ である。
【0135】したがって、ミクロ電極(3次元拡散)の
場合の拡散限界電流は、通常の線形拡散の場合の反応速
度のi3/iL=4δ/(πr)倍となる。よって、ミク
ロ電極上では、線形拡散の拡散形態と比べ,物質供給速
度が非常に大きくなる。例えば、δ=0.001cm,
r=0.1μmとすれば4δ/(πr)=1270にな
る。これは,NMCA処理材上の析出貴金属粒子がミク
ロ電極として機能した場合、析出貴金属粒子の半径をr
とすると、反応速度はこれまで取り扱った速度式の4δ
/(πr)倍,すなわち1270倍になることを意味す
る。本実施の形態では、この4δ/(πr)を反応速度
倍率Aと定義する。
【0136】なお、析出した貴金属粒子(Noble
Metal)の表面積をθ1とすると、構造材が、貴金
属粒子によって被覆される面積θは、図7のように、 θ=θ1×(単位面積当たりの貴金属粒子の個数) となる。本モデルではこの面積θを被覆率(θ=θ/単
位面積)と定義するつぎに、本発明者らは、析出した貴
金属粒子がミクロ電極として機能すると仮定し、ECP
のシミュレーションを試みた。
【0137】貴金属粒子が析出した構造材(NMCA処
理材)において、貴金属粒子がミクロ電極として機能す
ると仮定した場合に、貴金属粒子が析出した構造材上の
電子ドナーとアクセプタを整理すると、図9のようにな
る。冷却水中の電子ドナーの水素は、析出した貴金属粒
子の上では可逆反応であるため、反応速度(電流値)は
数4のihnで表される。一方、構造材(ステンレス鋼)
上では非可逆であるため、反応速度は、数3のihcで表
される。また、もう一つの電子ドナーである構造材の反
応速度は、上述のicで表すことができる。電子アクセ
プタである酸素/過酸化水素の反応速度は、貴金属粒子
上では、ionで表され、構造材上では、iocで表され
る。このとき、ミクロ電極として機能する貴金属粒子上
の反応速度は、上述のように反応速度倍率A=4δ/
(πr)であるため、係数として、Aをかける必要があ
る。また、貴金属粒子の面積は、被覆率θで表され、貴
金属粒子で被覆されていない構造材の面積は(1−θ)
であるから、これらも係数とする必要がある。
【0138】したがって、係数をかけた電子ドナーとア
クセプタの反応速度の関係は、図9に示したように、貴
金属粒子上では、電子を出す側の水素の反応速度ih
nも、電子を奪う酸素/過酸化水素の反応速度ionもA
θ倍になる。一方、構造材上では、電子を出す側の水素
の反応速度ihcおよび構造材の反応速度ic、ならび
に、電子を奪う酸素/過酸化水素の反応速度iocに、
(1−θ)倍の係数がかかることになる。これを、数式
に表したものが、上述の数2である。ここで、ihnとi
hcの差が非常に大きいため、ioc=ionとしてもECP
のシミュレーション結果に大きな影響を与えないため、
本実施の形態では上述の数2の説明で述べたようにioc
=ion=i(E)とする。i(E)は数20で与える。また、
ihcは、上述したように数3で、ihnは数4で与える。
icは、数33のような実測した腐食電位から逆算で求
めた電流電位曲線を定式化したものを用いる。
【0139】数2を用いて、模擬的にECPをシミュレ
ーションした結果を図11に示す。シミュレーション条
件としては、酸素濃度を50ppbで一定にし、水素濃
度を1から100ppbまで変化させた。貴金属粒子の
半径rは、0.1μmで一定にした。被覆率θは、0.
1、0.01、0.001、0.0001とした。図1
1からわかるように、被覆率0.1から0.001まで
のECPはほとんど図4に示した白金板の構造材のEC
P挙動に一致する。また、被覆率0.0001のECP
においてはモル比が15以降で理論水素電極電位に一致
する。また、図11のECPの変化は、ミクロ電極機能
を考慮していない数32を用いた図4のECPの変化と
は明らかに異なる。この図11のECPの変化は、極わ
ずかな貴金属の析出で急激にECPが低下するという実
測結果と一致しており、ミクロ電極機能を考慮した数2
を用いることにより、MNCA処理材に生じるECP低
下加速現象がシミュレーションできることが確かめられ
た。
【0140】実際の原子力プラントについて、数2を用
いてECPシミュレーションを行う場合には、ECPを
シミュレーションする部位の被覆率θおよび析出した貴
金属粒子の半径rが必要である。しかしながら、析出し
た貴金属粒子は、観察が困難であるほど量がわずか粒径
も小さいため、本実施の形態では、つぎのようにしてθ
とrを見積もることにした。
【0141】まず、原子力プラントのECPをシミュレ
ーションすべき部位(監視対象部位)の水質と、温度を
求める。水質としては、酸素濃度、過酸化水素濃度、水
素濃度、貴金属化合物の濃度をパラメータとする。酸素
濃度、過酸化水素濃度、水素濃度は、溶存酸素検出装置
150および過酸化水素検出装置151等の出力、水素
注入装置5の注入水素等の出力に基づき、ラジオリシス
計算コードから求める。貴金属化合物濃度は、貴金属化
合物注入装置160の注入量から求める。これら水質と
温度を実験室で再現して模擬環境を形成し、これに構造
材の試験片を接触させ、腐食電位を実測する。ただし、
流速は、予め定めた模擬環境として実施可能な一定値
(ここでは1cm/s)に設定にする。
【0142】一方、上述模擬環境の酸素濃度、過酸化水
素濃度、水素濃度、温度、流速、ならびに、予め定めて
おいた数値の被覆率θ、半径rを数2に代入し、数2を
電位Eについて解くことにより、腐食電位Eを計算によ
り求める。これにより、上記被覆率θ、半径rと腐食電
位Eとの関係を求めることができる。この計算を、予め
定めておいた範囲の被覆率θ(θ1<θ<θn)、およ
び、半径r(r1<r<rn)の各組み合わせについて行
うことにより、被覆率θの半径rのn個×n個の組み合
わせについての腐食電位を求める。
【0143】そして、上述の模擬環境の実験により実測
した腐食電位を、被覆率θの半径rのn個×n個の組み
合わせについての計算により求めた腐食電位と比較し、
最も実測値の腐食電位に近い腐食電位を与える被覆率θ
の値と半径rの値との組み合わせを見つける。これによ
り、この被覆率θの値と半径rの値とが、実際の原子力
プラントの監視対象部位の被覆率θの値と半径rの値で
あると見積もることができる。
【0144】なお、上述の模擬環境におけるECP挙動
が、実際のECP挙動を再現していることを確認するた
めに模擬環境のECPの測定を行った。
【0145】測定は,外部銀塩化銀電極,及び白金線を
用いて行い、水素電極電位の指示値を基に,通例に従い
処理材のECPを標準水素電極電位(SHE)に換算し
た表示とした。図15に、処理時間(貴金属化合物を含
む再現冷却水に構造材を接触させた時間)50時間の構
造材試料の電位の経時変化を貴金属化合物(硝酸パラジ
ウム)の濃度ごとに示す。析出する貴金属は、パラジウ
ムである。また、構造材試料としては、SUS304鋼
を用いた。図15のように、本模擬環境条件下において
は硝酸パラジウム濃度1ppmの場合、構造材が純白金
板の時のECPとほぼ同様の挙動が現れた。なお、図1
5において、横軸は計測時間とそれぞれの時間領域にお
けるDO/DHすなわち溶存酸素濃度/溶存水素濃度条
件を示す(ただし、図15において過酸化水素濃度は0
としている)。また、図16に、処理時間100の構造
材試料の電位の経時変化を貴金属化合物(硝酸パラジウ
ム)濃度ごとに示す。図16においても、図15に示さ
れる結果と同様に,硝酸パラジウム濃度1ppmにおい
て,構造材が純白金板の時のECPとほぼ同様の挙動が
現れた。横軸は同様に計測時間とそれぞれの時間領域に
おけるDO/DHすなわち溶存酸素濃度/溶存水素濃度
条件を示す(ただし、図16において過酸化水素濃度は
0としている)。これにより、模擬環境におけるECP
挙動が、実際のECP挙動を再現していることを確認す
ることができた。
【0146】また、上述の方法で求めた貴金属粒子の半
径rおよび被覆率θから、析出している貴金属粒子の厚
さを求めることにより、貴金属粒子がミクロ電極として
機能するオーダーのサイズになっているかどうかを以下
のように確認した。
【0147】まず、上述の電位測定に用いた構造材試料
を5〜10分間王水に浸漬すことにより、表面に付着し
ているパラジウムを表面の酸化皮膜ごと溶解する。次に
原子吸光光度法によりこの溶解液中のパラジウム量、つ
まり構造材試料表面に付着した全パラジウム量を測定
し、単位面積あたりの付着量を算出した。
【0148】この方法により、図15,16の測定に使
用した1ppmの硝酸パラジウム処理の構造材試料に析
出しているパラジウム量を測定したところ、それぞれ
0.8μg/cm2,1.0μg/cm2であった。これ
はパラジウムの密度を12g/cm3とすれば,それぞ
れが1cm2をまんべんなく層として被覆しているとし
た仮定した場合、析出しているパラジウムの層厚はそれ
ぞれ6.67×10-8cm,8.33×10-8cmにな
る。実際のパラジウム析出層は、顕微鏡観察でも確認困
難なレベルに細かく分散していること,ミクロ電極機構
によるNMCAによるECP低下効果が、被覆率0.0
001レベルで明確に現れることを考慮すれば、実際の
平均析出層厚は、上記まんべんなく被覆しているとした
場合の層厚を被覆率θで割ることにより求められる。
【0149】1ppm硝酸パラジウム処理されたこれら
構造材試料について、上述の計算方法で求めた被覆率θ
およびrは、θ=0.001程度、r=0.5μm程度
である。よって、被覆率θ=0.001から求められる
析出パラジウムの平均層厚は、それぞれ6.67×10
-8cm,8.33×10-8cmを0.001で割った
6.67×10-5cm,8.33×10-5cmとなる。
これは上述の平均半径r=0.5μm(5×10-5
m)と同じオーダーの値であり、ミクロ電極として機能
する大きさになっていることが確認できた。
【0150】なお、上述の模擬環境により構造材試料に
貴金属(パラジウム)を付着させる前後に、構造材重量
を測定することにより、付着した貴金属の重さを測定し
た結果を図13に示す。図3において、100ppbお
よび1ppmの高濃度硝酸パラジウムの条件で、付着後
の重量が付着前よりも減少しているのは、貴金属化合物
として硝酸パラジウムを用いているために、硝酸イオン
の影響で水のPHが約3近くまで(室温付近での評価)
低下し、構造材のステンレス鋼を溶かし、これによる重
量減少が、付着による重量増加よりも大きいためである
と考えられる。図13のデータは2つづつのサンプル値
を示している。また、図14は、上述の王水を用いるて
付着したパラジウムを溶解して測定したパラジウムの付
着量を示したものである。これより,本試験条件下にお
いて硝酸パラジウムの濃度,処理時間が長いほど貴金属
付着量が高いことが示された。以上の各評価項目および
処理条件をまとめると図12のようになる。
【0151】上述してきたように、本実施の形態のシミ
ュレーションに用いる数2では、貴金属がミクロ電極と
して機能することを考慮して、A=(4δ)/(πr)
およびθを係数として用いることにより、貴金属化合物
の注入により貴金属を析出させた構造材の腐食電位(E
CP)がシミュレーションできる理由を明らかにでき
た。また、Aを求めるために必要なパラメータである
r、およびθを求める方法も明らかにできた。
【0152】したがって、実際の原子力プラントの監視
対象部位の腐食電位をシミュレーションする場合には、
数2に、上述の方法で求めたr、θを代入し、ion(E)
=ioc(E)としてi(E)(数20)を代入し、また、ihn
(E)(数4)、ihc(E)(数3)を代入し、icとして数
33のような実測から逆算した数式を代入する。i(E)
(数20)、ihn(E)(数4)、ihc(E)(数3)には、
必要な監視対象部位の水素濃度、酸素濃度、過酸化水素
濃度、温度、流速、拡散層厚等の必要なパラメータを代
入する。水素濃度、酸素濃度、過酸化水素濃度は、すで
に説明したラジオリシス計算プログラムにより、溶存酸
素濃度検出装置150、溶存過酸化水素濃度検出装置1
51、水素濃度検出装置152の検出結果と、水素注入
装置5の注入水素量と、監視対象部位の放射線強度とに
基づいて求めた値を用いる。温度、流速は、監視対象部
位についての実測値または設計値を用いる。なお、拡散
層厚δは、下記数34により求めた値を用いる。
【0153】
【数34】
【0154】数34において、vは流速(cm/s),Dは拡
散係数(cm2/s),νは動粘性係数(cm2/s),dは水力
等価直径(cm),jは各化学種である。
【0155】これらを代入した数2の方程式を電位Eに
ついて解くプログラムをCPU30に実行させることに
より、腐食電位Eを求めることができる。なお、i(E)
(数20)、ihn(E)(数4)、ihc(E)(数3)にふく
まれるに遷移係数、速度定数、拡散係数、標準電極電位
等の電気化学パラメ−タは、予めプログラム中に定数と
して書き込んでおく。なお、本実施の形態においては、
ニュートン法を用いて、数2の方程式を解いている。
【0156】本実施の形態の運転監視システムによっ
て、腐食電位のシミュレ−ションを実際に行った。
【0157】原子力プラントのタイプは、BWR−3タ
イプであり、腐食電位をシミュレーションする監視対象
部位は、炉底部である。貴金属化合物としては、硝酸白
金が50ppbレベルになるように注入されている。注
入は、プラント定格運転前に貴金属化合物注入装置16
0により再循環系10から実施する。これにより、原子
炉内の構造物に白金粒子を析出させた。
【0158】監視対象部位の構造物の白金の被覆率θ
は、上述の方法により0.001から0.0001、析
出している白金粒子の平均代表半径rは1μmと求めら
れた。監視対象部位の温度は280℃,線流速2m/
s,水力等価直径20cmである。また、酸素,過酸化
水素,水素濃度はそれぞれラジオリシス計算コードより
もとめた値を用いた。
【0159】この条件で貴金属粒子のミクロ電極機能を
考慮した数2を用いて、腐食電位のシミュレ−ションプ
ログラムにより、腐食電位をシミュレーションした。そ
の結果を、図1に示す。図1の横軸には、水素注入装置
5から注入する水素濃度をとった。また、比較例とし
て、貴金属を注入しない単一水素注入の場合のECPシ
ミュレーション結果を合わせて示した。
【0160】図1より明らかなように,単一の水素注入
の場合には、ECPは、給水水素濃度0.5ppm以上
においても緩やかな低下しか現われない。これに対し
て、貴金属注入した場合は、給水水素濃度が0.5pp
mにおいてすでに理論水素電極電位まで構造材料のEC
Pが低下していることが示された。この結果から、この
条件で貴金属を注入した場合、給水水素濃度は0.5p
pmで充分であることがわかった。これに基づき、水素
注入装置5から水素を注入した。
【0161】つぎに、貴金属化合物として硝酸パラジウ
ムを注入した場合の腐食電位についてシミュレーション
を行った。
【0162】原子力プラントのタイプは、BWR−3タ
イプであり、ECPをシミュレーションする監視対象部
位は、炉底部である。硝酸パラジウム等は、貴金属化合
物注入装置160により再循環系10から注入する。注
入時は、燃料棒を抜き,炉水の電気伝導度をモニタリン
グしながら実施する。貴金属注入しない場合の炉底部の
腐食電位は、給水水素濃度0.5ppm付近まで、ほと
んど低下しない。貴金属注入した腐食電位のシミュレー
ション結果は、給水水素濃度0.5ppmで約−500
mV(vs.SHE)であった。これは中性子計装管7
(図18)内でボトムヘッド領域に設置されたECPセ
ンサの実測結果−450mV(vs.SHE)とも対応
していることから,炉底部の腐食環境緩和は給水水素濃
度0.5ppmで、応力腐食割れを防止できる完全な腐
食環境緩和領域に到達していることが示された。
【0163】しかしながら、構造材には酸化被膜生成の
ためにある程度の酸化剤が必要である。炉底部に着目し
た場合−500mVのECPは、酸化被膜生成を考慮す
ると必ずしも最適な条件とは言えない面がある。極低E
CP領域においては,炉水がよどんだすき間部等にクラ
ッドが蓄積し,詰まり等の可能性等が発生するためであ
る。そのため、腐食電位は、構造材に応力腐食割れを生
じないようにするための敷居値である−200mVより
も低く、しかも、構造材表面に酸化被膜を生成するため
に必要な−450mVよりも高くすることが望ましい。
なお、このときの構造材の温度は、原子炉内構造物およ
び原子炉周辺の配管の通常の温度(270〜288℃程
度)である。
【0164】この原子力プラントの場合、給水水素濃度
を0.3ppmにすることにより、炉底部ECPは−3
00mV(vs.SHE)レベルにすることができる。
この電位ではステンレス鋼,インコネル鋼の粒界型応力
腐食割れが充分抑制される条件にある。これらのシミュ
レーション結果から、定常運転条件として給水水素濃度
0.3ppmを決定することができた。これに基づき水
素注入装置5から水素を注入した。
【0165】上述してきたように、本実施の形態では、
貴金属化合物の注入によりECPが低下する機構を明ら
かにし、これに基づいてECPシミュレーションのため
の新たな方程式を提供することができた。具体的には、
貴金属粒子が微量析出した構造材料においては、貴金属
がミクロ電極挙動を示し、貴金属上での酸素,水素,過
酸化水素の反応が、通常の線形拡散と異なる3次元拡散
を基本にした拡散挙動で支配されることを明らかにし
た。これに基づき、ミクロ電極挙動によるECP解析の
ために,単位面積当たりの被覆率θおよび析出貴金属粒
子の代表半径rとを考慮し、ECPシミュレーションの
方程式に、A=(4δ)/(πr)およびθという係数
を導入した数2を提供することができた。
【0166】また、この数2により、貴金属化合物を注
入した原子力プラントの腐食電位をシミュレーションす
ることを可能にした。
【0167】これにより,本実施の形態の原子力プラン
ト監視システムは、監視対象部の貴金属粒子が析出した
構造材料のECPを計算で求めることができるため,貴
金属化合物を注入した水素注入環境における原子力プラ
ント材料のECP低減効果を計算でもとめられるように
なった。この計算結果に基づき、適切な水素注入条件を
得ることができ,信頼性の高い原子力プラント一次冷却
系への金属化合物注入および原子力プラント一次冷却系
運用管理を行うことができる。なお、計算結果に基づき
ECP低下のために冷却水に注入する物質としては、水
素のみに限られるものではない。たとえば、貴金属化合
物を注入することや、水素と貴金属化合物の両方を注入
することが可能である。
【0168】なお、上述の実施の形態において、被覆率
θおよび貴金属粒子の半径rを見積もる際に、流速を予
め定めた一定値(ここでは1cm/s)に固定した模擬
環境を用いているが、析出する貴金属粒子の半径rは、
流速に依存する可能性がある。すなわち、析出する貴金
属粒子の半径rは、流速が大きくなるほど小さくなる可
能性がある。したがって、被覆率θおよび貴金属粒子の
半径rを見積もる際には、実際の流速に近い模擬環境を
形成して、上述の方法で被覆率θおよび半径rを見積も
りを行うことが望ましい。また、予め、複数段階に流速
をかえた模擬環境で、上述の腐食電位の測定と、腐食電
位のシミュレーションを行い、流速と半径rと被覆率θ
との関係を求めておくようにすることもできる。
【0169】また、上述の実施の形態では、ミクロ電極
の反応速度倍率Aを求める際に、厚さのない半径rのデ
ィスク型のミクロ電極の3次元拡散限界電流を用いた
(図8)。しかしながら、実際の貴金属粒子rは、厚さ
があるため、ディスク型のミクロ電極の3次元拡散限界
電流よりもさらに大きな電流となっている可能性があ
る。したがって、実際のECPは、図1のようにシュミ
レーションで求めたECPよりもさらに少し低くなって
いると思われる。水素の注入量または貴金属の注入量を
定める際には、それを考慮して少なめの水素流入量また
は貴金属の注入量を決定するようにすることもできる。
【0170】また、上述の実施の形態では、ion(E)=
ioc(E)=i(E)として数20のi(E)を用いたが、本実
施の形態で用いることのできるi(E)は、数20で与え
られる反応速度式に限定されるものではない。例えば、
実験により模擬環境で実測した酸素/過酸化水素の電流
電位曲線を定式化したものや、上述の本実施の形態でi
c(E)を求める際に用いたような実測とシミュレーション
とを組み合わせた方法により電流電位曲線を定式化した
ものを用いることができる。また、ion(E)およびio
c(E)は、本実施の形態ではシミュレーションへの影響が
少ないとしてion(E)=ioc(E)としたが、ion(E)およ
びioc(E)にそれぞれ構造材の材質を考慮した異なる反
応速度式を用いることが可能である。
【0171】また、ihn(E)、ihc(E)についても数4、
数3に限られるものではなく、構造材の材質を考慮した
反応速度式であればそれを用いることができる。
【0172】なお、上述の実施の形態では、貴金属化合
物注入装置160から白金化合物またはパラジウム化合
物を注入する構成であったが、これら以外の貴金属化合
物、例えば、ロジウム化合物、イリジウム化合物、ルテ
ニウム化合物等を注入する構成にすることももちろん可
能である。
【0173】上述してきたように本実施の形態によれ
ば、炉水に貴金属化合物を注入した原子力プラントの腐
食電位を高精度に求めることのできるシミュレーション
方法を提供することができる。従って、水素注入等によ
る、腐食環境緩和効果、応力腐食割れの進展速度の変化
等を、腐食電位に基づいて理論的に検討することが可能
になる。つまり、プラントの運転条件を、腐食環境緩和
という観点から、理論的に検討した上で決定することが
できる。そのため、高精度、高信頼性のプラント運転が
可能となる。
【0174】
【発明の効果】本発明によれば、炉水に貴金属化合物を
注入した原子力プラントの腐食電位を高精度に求めるこ
とのできるシミュレーション方法を提供することができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態の原子炉プラント監視シ
ステムによりシミュレーションした、貴金属注入した原
子炉構造材の腐食電位(ECP)と注入水素濃度との関
係を示すグラフ。
【図2】貴金属注入していない原子炉の構造材(ステン
レス鋼)の電流電位曲線、酸素/過酸化水素の電流電位
曲線、水素の電流電位曲線を示すグラフ。
【図3】原子炉構造材が白金板である場合の構造材の電
流電位曲線、水素の電流電位曲線を示すグラフ。
【図4】貴金属注入した原子炉の構造材の腐食電位(E
CP)を、ミクロ電極機能を考慮せずにシミュレーショ
ンした場合のECPと[H2]/[O2]との関係を示す
グラフ。
【図5】貴金属注入した原子炉の構造材の腐食電位(E
CP)をシミュレーションする場合に水素反応の可逆系
を考慮する考え方を示す説明図。
【図6】本発明の一実施の形態の原子炉プラント監視シ
ステムの腐食電位のシミュレーション方法において用い
る、析出貴金属のミクロ電極機能を説明する説明図。
【図7】本発明の一実施の形態の原子炉プラント監視シ
ステムの腐食電位のシミュレーション方法において用い
る、析出貴金属のミクロ電極のモデル形状を示す説明
図。
【図8】図7の形状のミクロ電極の3次元拡散限界電流
と、反応速度倍率とを示す説明図。
【図9】本発明の一実施の形態の原子炉プラント監視シ
ステムの腐食電位のシミュレーション方法において、電
子の供受の関係およびその係数を示す説明図。
【図10】本発明の一実施の形態の原子炉プラント監視
システムの腐食電位のシミュレーション方法がミクロ電
極機能を考慮していることを示す説明図。
【図11】本発明の一実施の形態の原子炉プラント監視
システムの腐食電位のシミュレーション方法により、貴
金属の析出した構造材の腐食電位を模擬的に計算した結
果を示すグラフ。
【図12】本発明の一実施の形態において模擬環境の構
造材試料について行った評価およびそのときの処理条件
を示す説明図。
【図13】本発明の一実施の形態において模擬環境の構
造材試料について行った重量変化の測定結果を示すグラ
フ。
【図14】本発明の一実施の形態において模擬環境の構
造材試料について行った貴金属付着量の測定結果を示す
グラフ。
【図15】本発明の一実施の形態において模擬環境の構
造材試料について行った電位測定の結果を示すグラフ。
【図16】本発明の一実施の形態において模擬環境の構
造材試料について行った電位測定の結果を示すグラフ。
【図17】本発明の一実施の形態の原子炉プラント監視
システムの腐食電位のシミュレーション方法によりシミ
ュレーションした、パラジウムを注入した原子炉の炉底
部の腐食電位を示す説明図。
【図18】本発明の一実施の形態の原子炉プラント監視
システムおよびこれを取り付けた原子炉プラントの構成
を示すブロック図。
【図19】本発明の一実施の形態の原子炉プラント監視
システムのコンピュータシステムのハードウエア構成を
示すブロック図。
【図20】本発明の一実施の形態の原子炉プラント監視
システムで用いる酸素、過酸化水素の反応速度式の化学
反応モデルを示す説明図。
【符号の説明】
1…腐食電位センサあるいは白金電極、2…電位測定装
置、3…コンピュ−タシステム、4…制御室、5…水素
注入装置、7…中性子計装管、8…原子炉圧力容器、9
…給水系、10…再循環系、11…炉水浄化系、12…
タ−ビン系、13…炉底部、20…信号ケーブル、21
…信号ケーブル、30…CPU、31…ROM、32…
RAM、33…外部記憶装置、34…表示回路、35…
表示装置、36…入力インタフェース、37…プリン
タ、38…バス、40…ホストコンピュータ、42…表
示装置、90…ポンプ、92…復水器、100…ポン
プ、110…ポンプ、150…溶存酸素検出装置、15
1…過酸化水素検出装置、152…PH検出装置、15
3…導電率検出装置、154…主蒸気中放射性窒素検出
装置、155…亀裂進展センサ、156…主蒸気系放射
線線量率検出装置、160…貴金属化合物注入装置。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) G21D 1/00 G21C 17/02 F 3/08 G21D 1/00 X Fターム(参考) 2G075 AA03 BA03 BA16 CA04 CA07 CA13 CA14 CA15 CA40 DA02 DA14 EA02 EA08 FA01 FA20 FB07 FB09 FB15 FC03 GA21 4K062 AA03 BA01 BA05 CA10 DA05 EA04 EA14 FA02 FA05 FA06 FA16 FA20 GA10

Claims (15)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】表面に貴金属粒子が析出した原子炉構造材
    の腐食電位のシミュレーション方法であって、 前記貴金属粒子に接触している冷却水を構成する化学種
    が電子を供給または受けとる速度として、前記貴金属が
    ミクロ電極として働くことを考慮して予め求めておいた
    係数Aを前記化学種の化学反応速度にかけたものを用い
    ることを特徴とする腐食電位のシミュレーション方法。
  2. 【請求項2】請求項1に記載のシミュレーション方法に
    おいて、前記予め定めておいた係数Aとして、 A=4δ/(πr) ただし、δ:前記原子炉構造材に接する前記冷却水の拡
    散層厚さ r:前記貴金属粒子の平均半径 を用いることを特徴とする腐食電位のシミュレーション
    方法。
  3. 【請求項3】表面に貴金属粒子が析出した原子炉構造材
    の腐食電位のシミュレーション方法であって、 【数2】 ただし、 ion(E):前記貴金属粒子上の冷却水中の酸素および過
    酸化水素系が、ある電位Eにおいて電子を奪う速度を表
    した電位Eについての関数 ioc(E):前記貴金属粒子が析出していない部分の前記
    構造材上の冷却水中の酸素および過酸化水素系が、ある
    電位Eにおいて電子を奪う速度を表した電位Eについて
    の関数 ihn(E):前記貴金属粒子上の冷却水中の水素が、ある
    電位Eで電子を供与する速度を表した電位Eについての
    関数 ihc(E):前記貴金属粒子が析出していない部分の前記
    構造材上の冷却水中の水素が、ある電位Eで電子を供与
    する速度を表した電位Eについての関数 ic(E):前記貴金属粒子が析出していない部分の前記構
    造材が、ある電位Eで電子を供与する速度を表した電位
    Eについての関数 δ:前記構造材に接する冷却水の拡散層厚さ r:前記貴金属粒子の平均半径 θ:前記貴金属粒子が、前記構造材表面を被覆している
    割合 で表される方程式をEについて解き、そのEを腐食電位
    とする腐食電位のシミュレーション方法。
  4. 【請求項4】請求項3に記載の腐食電位のシミュレーシ
    ョン方法であって、前記ihn(E)として、前記水素の電
    子移動反応が完全可逆であるとして求めた反応速度関数
    を用いることを特徴とする腐食電位のシミュレーション
    方法。
  5. 【請求項5】請求項3に記載の腐食電位のシミュレーシ
    ョン方法であって、前記数2において、前記ion(E)=
    ioc(E)とすることを特徴とする腐食電位のシミュレー
    ション方法。
  6. 【請求項6】原子力プラントの管理方法であって、 前記原子力プラントの冷却水に貴金属化合物を注入し、
    構造材表面に貴金属を析出させる貴金属処理工程と、 前記原子力プラントの構造材の予め定めた部位の腐食電
    位をシミュレーションにより求めるシミュレーション工
    程と、 前記シミュレーション結果にもとづき、前記腐食電位を
    予め定めた腐食電位まで低下させるために必要な注入物
    の量を求め、当該求めた量の注入物を前記冷却水に注入
    する注入工程とを有し、 前記シミュレーション工程は、前記貴金属粒子に接触し
    ている前記冷却水を構成する化学種が電子を供給または
    受けとる速度として、前記貴金属がミクロ電極として働
    くことを考慮して予め求めておいた係数を前記化学種の
    化学反応速度にかけたものを用い、 前記注入工程は、前記注入物として水素を用いることを
    特徴とする原子力プラントの管理方法。
  7. 【請求項7】原子力プラントの管理方法であって、 前記原子力プラントの冷却水に貴金属化合物を注入し、
    構造材表面に貴金属を析出させる貴金属処理工程と、 前記原子力プラントの構造材の予め定めた部位の腐食電
    位をシミュレーションにより求めるシミュレーション工
    程と、 前記シミュレーション結果にもとづき、前記腐食電位を
    予め定めた腐食電位まで低下させるために必要な注入物
    の量を求め、当該求めた量の注入物を前記冷却水に注入
    する注入工程とを有し、 前記シミュレーション工程は、前記貴金属粒子に接触し
    ている前記冷却水を構成する化学種が電子を供給または
    受けとる速度として、前記貴金属がミクロ電極として働
    くことを考慮して予め求めておいた係数を前記化学種の
    化学反応速度にかけたものを用い、 前記注入工程は、前記注入物として前記貴金属化合物を
    用いることを特徴とする原子力プラントの管理方法。
  8. 【請求項8】請求項7または8に記載の原子力プラント
    の管理方法であって、 前記注入工程では、前記腐食電位が、標準水素電極電位
    基準で−200mV以下であって、−450mV以上に
    なるように、前記注入物の量を求めることを特徴とする
    原子力プラントの管理方法。
  9. 【請求項9】請求項7または8に記載の原子力プラント
    の管理方法であって、前記貴金属処理工程は、前記原子
    力プラントの炉心の燃料棒を前記冷却水から引き上げた
    状態で行うことを特徴とする原子力プラントの管理方
    法。
  10. 【請求項10】原子力プラントの管理方法であって、 前記原子力プラントの構造物の腐食電位を予め定めた腐
    食電位まで低下させるために、予め定めた注入物を前記
    原子力プラントの冷却水に注入する注入工程を有し、 前記注入工程は、前記腐食電位が、標準水素電極電位基
    準で−200mV以下であって、−450mV以上にな
    るように、注入する前記注入物の量を定めることを特徴
    とする原子力プラントの管理方法。
  11. 【請求項11】原子力プラントの管理方法であって、 前記原子力プラントの冷却水に貴金属化合物を注入し、
    構造材表面に貴金属を析出させる貴金属処理工程を有
    し、 前記貴金属処理工程は、前記原子力プラントの炉心の燃
    料棒を前記冷却水から引き上げた状態で行うことを特徴
    とする原子力プラントの管理方法。
  12. 【請求項12】構造材上に貴金属粒子が析出した原子力
    プラントを監視するシステムであって、 前記原子力プラントの予め定めた部位の腐食電位をシミ
    ュレーションするシミュレーション装置を有し、当該シ
    ミュレーション装置は、 【数2】 ただし、 ion(E):前記貴金属粒子上の冷却水中の酸素および過
    酸化水素系が、ある電位Eにおいて電子を奪う速度を表
    した電位Eについての関数 ioc(E):前記貴金属粒子が析出していない部分の前記
    構造材上の冷却水中の酸素および過酸化水素系が、ある
    電位Eにおいて電子を奪う速度を表した電位Eについて
    の関数 ihn(E):前記貴金属粒子上の冷却水中の水素が、ある
    電位Eで電子を供与する速度を表した電位Eについての
    関数 ihc(E):前記貴金属粒子が析出していない部分の前記
    構造材上の冷却水中の水素が、ある電位Eで電子を供与
    する速度を表した電位Eについての関数 ic(E):前記貴金属粒子が析出していない部分の前記構
    造材が、ある電位Eで電子を供与する速度を表した電位
    Eについての関数 δ:前記構造材に接する冷却水の拡散層厚さ r:前記貴金属粒子の平均半径 θ:前記貴金属粒子が、前記構造材表面を被覆している
    割合 で表される方程式をEについて解くことにより、そのE
    を腐食電位として求めることを特徴とする原子力プラン
    ト監視システム。
  13. 【請求項13】請求項12に記載の原子力プラント監視
    システムにおいて、前記構造材上に前記貴金属粒子を析
    出させるために、前記冷却水中に前記貴金属の化合物を
    注入する装置を有することを特徴とする原子力プラント
    監視システム。
  14. 【請求項14】請求項12に記載の原子力プラント監視
    システムにおいて、前記貴金属の化合物を注入する装置
    は、前記貴金属化合物として、白金化合物、パラジウム
    化合物、ロジウム化合物、イリジウム化合物、ルテニウ
    ム化合物のうちの少なくとも一つを注入することを特徴
    とする原子力プラント監視システム。
  15. 【請求項15】原子炉と、前記原子炉の冷却水に貴金属
    化合物を注入するための注入装置と、前記原子炉を監視
    する監視システムとを有する原子力プラントであって、 前記監視システムは、前記原子炉の予め定めた部位の腐
    食電位をシミュレーションするシミュレーション装置を
    有し、当該シミュレーション装置は、 【数2】 ただし、 ion(E):前記貴金属粒子上の冷却水中の酸素および過
    酸化水素系が、ある電位Eにおいて電子を奪う速度を表
    した電位Eについての関数 ioc(E):前記貴金属粒子が析出していない部分の前記
    構造材上の冷却水中の酸素および過酸化水素系が、ある
    電位Eにおいて電子を奪う速度を表した電位Eについて
    の関数 ihn(E):前記貴金属粒子上の冷却水中の水素が、ある
    電位Eで電子を供与する速度を表した電位Eについての
    関数 ihc(E):前記貴金属粒子が析出していない部分の前記
    構造材上の冷却水中の水素が、ある電位Eで電子を供与
    する速度を表した電位Eについての関数 ic(E):前記貴金属粒子が析出していない部分の前記構
    造材が、ある電位Eで電子を供与する速度を表した電位
    Eについての関数 δ:前記構造材に接する冷却水の拡散層厚さ r:前記貴金属粒子の平均半径 θ:前記貴金属粒子が、前記構造材表面を被覆している
    割合 で表される方程式をEについて解くことにより、そのE
    を腐食電位として求めることを特徴とする原子力プラン
    ト。
JP10296526A 1998-10-19 1998-10-19 原子炉構造材の腐食電位のシミュレーション方法、原子力プラントの管理方法、原子力プラント監視システムおよびこれを用いた原子力プラント Pending JP2000121780A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP10296526A JP2000121780A (ja) 1998-10-19 1998-10-19 原子炉構造材の腐食電位のシミュレーション方法、原子力プラントの管理方法、原子力プラント監視システムおよびこれを用いた原子力プラント

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP10296526A JP2000121780A (ja) 1998-10-19 1998-10-19 原子炉構造材の腐食電位のシミュレーション方法、原子力プラントの管理方法、原子力プラント監視システムおよびこれを用いた原子力プラント

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2000121780A true JP2000121780A (ja) 2000-04-28

Family

ID=17834680

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP10296526A Pending JP2000121780A (ja) 1998-10-19 1998-10-19 原子炉構造材の腐食電位のシミュレーション方法、原子力プラントの管理方法、原子力プラント監視システムおよびこれを用いた原子力プラント

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2000121780A (ja)

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2002296268A (ja) * 2001-03-29 2002-10-09 Mitsubishi Heavy Ind Ltd 水質評価方法および水質管理システム
JP2008008750A (ja) * 2006-06-29 2008-01-17 Tohoku Univ 原子炉冷却水の腐食環境定量方法およびその装置
JP2009281826A (ja) * 2008-05-21 2009-12-03 Toshiba Corp 放射線照射場における腐食環境評価方法及び放射線照射場における腐食緩和方法
JP2010038789A (ja) * 2008-08-06 2010-02-18 Toshiba Corp 原子炉構造材の腐食抑制方法

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2002296268A (ja) * 2001-03-29 2002-10-09 Mitsubishi Heavy Ind Ltd 水質評価方法および水質管理システム
JP2008008750A (ja) * 2006-06-29 2008-01-17 Tohoku Univ 原子炉冷却水の腐食環境定量方法およびその装置
JP2009281826A (ja) * 2008-05-21 2009-12-03 Toshiba Corp 放射線照射場における腐食環境評価方法及び放射線照射場における腐食緩和方法
JP2010038789A (ja) * 2008-08-06 2010-02-18 Toshiba Corp 原子炉構造材の腐食抑制方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Frankel et al. Understanding localized corrosion
JP3053325B2 (ja) 腐食電位のシミュレーション方法および原子炉プラントの運転監視装置
Sunder et al. Corrosion of uranium dioxide in hydrogen peroxide solutions
JP5595037B2 (ja) リチウムイオン選択性電極
US4937038A (en) Solution quantitative analysis apparatus, quantitative analysis methods, and nuclear reactor water quality control system
Kim et al. Data quality, issues, and guidelines for electrochemical corrosion potential measurement in high-temperature water
US6606368B2 (en) Method of operating nuclear power plant, nuclear power plant, and method of controlling water chemistry of nuclear power plant
Fuller et al. A comparison of square-wave voltammetry models to determine the number of electrons exchanged in metal deposition
Shi et al. Customization of the coupled environment fracture model for predicting stress corrosion cracking in Alloy 600 in PWR environment
Katona et al. Insights from electrochemical crack tip modeling of atmospheric stress corrosion cracking
JP2000121780A (ja) 原子炉構造材の腐食電位のシミュレーション方法、原子力プラントの管理方法、原子力プラント監視システムおよびこれを用いた原子力プラント
JP4777835B2 (ja) 隙間水質測定方法及び隙間水質測定装置
JP2008008750A (ja) 原子炉冷却水の腐食環境定量方法およびその装置
US6440297B1 (en) System and method for determining noble metal concentrations in reactor coolant streams
Frankel Localized corrosion of metals: a review of the rate-controlling factors in initiation and growth
JPH10111286A (ja) 原子炉炉水の水質評価方法
Bertuch et al. The argument for low hydrogen and lithium operation in PWR primary circuits
Gattu et al. Electrochemical Corrosion Behaviors of Nuclear Waste Package Materials
Nguyen Reaction-Transport Model of Pitting Corrosion Relevant to Nuclear Steam Generators
Hata et al. Optimization of dissolved hydrogen concentration for mitigating corrosive conditions of pressurised water reactor primary coolant under irradiation (2) evaluation of electrochemical corrosion potential
Demarest et al. Pitting Propagation Behavior on Low Alloy AISI 4130 (UNS G41300) Steel Exposed to Various Alkali and Alkaline Earth Metal Chlorides
Pokhmurskii et al. Distribution of potentials in narrow slits simulating the electrochemical situation in the voids of corrosion cracks
Rance et al. Features of electrolysis of nitric acid solutions of silver: I. Behavior of Ag (II) in HNO 3 solutions
Irisawa et al. Estimating the corrosion rate of stainless steel R-SUS304ULC in nitric acid media under concentrating operation
Stellwag et al. Influence of O {sub 2} and N {sub 2} H {sub 4} on the ECP in high temperature water

Legal Events

Date Code Title Description
A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20040426

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20040506

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20040921