JP2000117915A - 光触媒機能を有する合成樹脂成形品及び物品 - Google Patents

光触媒機能を有する合成樹脂成形品及び物品

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JP2000117915A
JP2000117915A JP10297355A JP29735598A JP2000117915A JP 2000117915 A JP2000117915 A JP 2000117915A JP 10297355 A JP10297355 A JP 10297355A JP 29735598 A JP29735598 A JP 29735598A JP 2000117915 A JP2000117915 A JP 2000117915A
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Eiichiro Yokochi
英一郎 横地
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Abstract

(57)【要約】 【課題】外部有機物に対して長時間にわたり優れた選択
的な光触媒作用を有し、かつ、基材樹脂の劣化を完全に
防止できる光触媒機能を有する合成樹脂成形品及び物品
を提供する。 【解決手段】無機質透明多孔質体に光触媒を担持した光
触媒担持体を基材樹脂に含有してなる合成樹脂成形品で
あって、該基材樹脂がフッ化炭素系樹脂を10重量%以
上含有する樹脂からなる光触媒機能を有する合成樹脂成
形品、及び、無機質透明多孔質体に光触媒を担持した光
触媒担持体が含有された表面樹脂層を有する物品であっ
て、該表面樹脂層が、フッ化炭素系樹脂を10重量%以
上含有する樹脂からなる光触媒機能を有する物品。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光触媒機能を有す
る合成樹脂成形品及び物品に関し、特に、所定量のフッ
化炭素系樹脂を含有せしめた基材樹脂に、無機質透明多
孔質体に光触媒を担持した光触媒担持体を含有せしめた
光触媒機能を有する合成樹脂成形品、及び該樹脂からな
る表面樹脂層を有する物品に関する。
【0002】
【従来の技術】アナターゼ型の結晶構造を有する二酸化
チタン(TiO2 )等に代表される光触媒は、これに紫
外線等の光を照射すると光化学反応を起こし、各種の有
機物等を分解する触媒として作用したり、抗菌又は防黴
作用などの働きがあることが知られている。
【0003】このようなアナターゼ型二酸化チタン等の
光触媒が奏する上記の如き光触媒機能のメカニズムは、
電子構造に基づいて次のように説明されている。
【0004】即ち、光触媒にそのバンドギャップ以上の
エネルギーを持つ光(光量子)が照射されると、価電子
帯の電子が伝導帯に励起するとともに、電子が励起した
後の価電子帯には正孔が生じ(所謂、「対発生」)、伝
導帯の励起電子は空気中の酸素と反応して、O2 - 、O
- 等の活性酸素種を生成し、価電子帯の正孔は光触媒の
表面に付着した微量の水分と反応してOHラジカルを生
成する。そして、このようにして生成された活性酸素種
やOHラジカルにより各種の有機物が分解され、抗菌又
は防黴作用などの働きが得られる。
【0005】そして、かかる光触媒の働きを利用して、
近年、アナターゼ型二酸化チタン等のような光触媒を水
処理、空気清浄、土壌処理等に応用する技術が実用化さ
れつつある。その代表的なものとして、例えば、大気中
の窒素酸化物(NOx )等の汚染物質や、日常的な生活
空間における悪臭等の分解除去等が検討されている。
【0006】このような応用技術の開発例としては、外
壁材、タイル、煉瓦、板ガラス、瓦等の建築材料や、そ
の他の無機物からなる構造物の表面に、真空蒸着、スパ
ッタリング、CVD(Chemical Vapour
Deposition)法や超微粒子の焼結等の手法
により、前記光触媒単体の膜を形成したものが知られて
いる。しかしながら、これらの方法では製造に時間、労
力を要し、また、コスト面でも問題があった。
【0007】また、上記のような各種物品の表面に合成
樹脂バインダーを用いて、光触媒粉末を固定化等するこ
とによって、これらのものに光触媒機能を付与すること
も考えられた。しかしながら、このとき光触媒を固定化
するバインダーに合成樹脂等の有機物を用いると、光触
媒は分解対象物のみならずバインダーをも分解してしま
い、光触媒が脱落等することによって、光触媒機能が経
時的に失われてしまうという問題があった。
【0008】これを解決するために、光触媒機能を付与
使用とする物品の表面に、無機系のバインダーを用いて
光触媒を固定化することも試みられたが、無機系のバイ
ンダーを乾燥させるのに長時間を要することや、100
〜200℃での焼き付け工程も必要となるため、生産効
率上問題があった。また、光触媒機能を付与することが
できる物品も耐熱性があるものに限られる等、その適用
範囲も限られていた。
【0009】その他、成形原料の樹脂中に光触媒粉末を
含有せしめてこれを成形することにより、光触媒機能を
付与することも可能であるが、この場合も上記と同様の
理由により、使用可能な成形原料が無機系のものに限ら
れていた。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】これを改良するものと
して、本出願人により開示された特開平10−1569
88号公報には、無機透明多孔質体に光触媒を担持した
光触媒担持体を基材樹脂に添加して、これを成形してな
る光触媒を有する合成樹脂成形品及び物品がある。これ
は、光触媒を無機質多孔質体中に担持せしめることによ
り、光触媒による基材樹脂の分解を防止して、分解対象
物である有機物のみを選択的に光分解せしめるようにし
たものである。
【0011】しかし、上記特開平10−156988号
公報に記載の光触媒機能を有する合成樹脂成形品は、外
部有機物に対して優れた選択的光触媒作用を有するもの
の、長時間にわたる基材樹脂の劣化を完全に防止すると
いう点では不十分であった。
【0012】そこで、本発明は、上記特開平10−15
6988号公報に記載の光触媒機能を有する合成樹脂成
形品及び物品に改良を施し、外部有機物に対して長時間
にわたり優れた選択的な光触媒作用を有し、かつ、基材
樹脂の劣化を完全に防止することができる光触媒機能を
有する合成樹脂成形品及び物品を提供することを目的と
する。
【0013】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決すべく、
本発明者は、鋭意検討した結果、上記特開平10−15
6988号公報に記載の光触媒機能を有する合成樹脂成
形品及び物品に用いられる樹脂中に、少なくとも10重
量%以上にフッ化炭素系樹脂を含有せしめることによ
り、長時間にわたり基材又は表面樹脂層の劣化を完全に
防止することができることを見いだし、本発明を完成す
るに至った。
【0014】即ち、本発明は、無機透明多孔質体に光触
媒を担持した光触媒担持体を基材樹脂に含有してなる合
成樹脂成形品であって、該基材樹脂が、フッ化炭素系樹
脂を10重量%以上含有する樹脂からなることを特徴と
する光触媒機能を有する合成樹脂成形品、及び、
【0015】無機透明多孔質体に光触媒を担持した光触
媒担持体が含有された表面樹脂層を有する物品であっ
て、該表面樹脂層が、フッ化炭素系樹脂を10重量%以
上含有する樹脂からなることを特徴とする物品である。
【0016】本発明の光触媒機能を有する合成樹脂成形
品及び物品は、樹脂バインダーとして10重量%以上の
フッ化炭素系樹脂を含有せしめた樹脂バインダー中に、
無機透明多孔質体に光触媒を担持した光触媒担持体を含
有してなる樹脂からなるため、外部有機物に対して長時
間にわたり優れた選択的な光触媒作用を有し、かつ、基
材樹脂の劣化を長時間にわたり完全に防止することがで
きるものである。
【0017】
【発明の実施の形態】以下、本発明の光触媒機能を有す
る合成樹脂成形品及び物品について詳細に説明する。図
1は、本発明の光触媒機能を有する合成樹脂成形品の一
例を示す要部断面図であり、図中2は光触媒担持体を示
す。
【0018】本発明の光触媒機能を有する合成樹脂成形
品1は、図2に示す無機透明多孔質体3に光触媒5を担
持した光触媒担持体2を、フッ化炭素系樹脂を10重量
%以上含有する基材樹脂中に含有せしめ、これを従来公
知の方法で所定の形状に成形してなるものである。
【0019】本発明にいう光触媒とは、一般に「光触
媒」と呼ばれる全てのものをいうが、具体的には、特定
の波長の光が照射されると光化学反応を起こし、これに
よって、各種の有機物等を分解する触媒として作用した
り、抗菌又は防黴作用等の働きがあるものをいう。
【0020】また、光触媒は、具体的には、アセトアル
デヒド、ホルムアルデヒド等のアルデヒド類、メチルメ
ルカプタン等のメルカプタン、硫化水素等の硫化物、ア
ンモニア、トリメチルアミン等のアミン類、ピリジン、
トルエン、酢酸等の悪臭の原因となるものや、窒素酸化
物(NOX )等の大気中の汚染物質、油の汚れやミス
ト、煙草の脂(ヤニ)等の分解作用、殺菌作用、防黴作
用等が知られている。本発明では、上記光触媒の作用に
より分解、殺菌、防黴し得る全てのものが対象となり得
る。本発明の合成樹脂成形品は、これらの内、気体、低
分子有機物に対して特に大きな効果を発揮する。
【0021】本発明において、光触媒5としては、例え
ば、アナターゼ型の結晶構造を有する二酸化チタン(T
iO2 )、酸化亜鉛(ZnO)、酸化セリウム(Ce
O)等が挙げられる。通常、これらの光触媒は、平均結
晶径5〜200nm、比表面積10〜300m2 /gと
なるように、無機透明多孔質体に担持せしめるのが好ま
しい。
【0022】上記したうち、本発明では、1)日常生活
に必要とされる照明光でも高い触媒活性が得られ、特殊
な光源を必要としない、2)化学的に安定であり、長時
間にわたって高い光触媒活性が保持される、3)毒性が
ない、及び、4)安価でありコスト的にも有利である、
等の理由から、アナターゼ型二酸化チタンが特に好まし
く用いられる。なお、二酸化チタンの結晶系には、光触
媒活性に優れるアナターゼ型とルチル型が知られている
が、本発明において用いられる二酸化チタンは、全てが
アナターゼ型結晶構造であることが光触媒機能を発揮す
る上で好ましいが、一部にルチル型結晶構造を有してい
てもよい。
【0023】また、本発明においては、更に必要に応
じ、アナターゼ型二酸化チタンの光触媒活性発現のため
の感光波長の上限を長波長側に移動させるために、分光
増感剤を添加してもよい。このような増感剤としては、
例えば、Ru(4,4’−ジカルボキシル−2,2’−
ピリジン)2 (NCS)2 等のルテニウム錯体が挙げら
れる。
【0024】また、本発明において、光触媒5を担持す
る無機透明多孔質体3は、担持する光触媒との組み合わ
せに応じて、該光触媒5の触媒活性が得られる波長の光
に対して透明性を有し、このような光を透過し得るもの
を適宜選択することができる。例えば、光触媒5にアナ
ターゼ型二酸化チタン粒子を用いる場合、アナターゼ型
二酸化チタン粒子は380nm以下の波長の近紫外線光
で光触媒活性が得られるから、無機透明多孔質体3は3
80nm以下の波長の近い紫外光を透過するものが好ま
しい。但し、前記分光増感剤を添加した場合には、シフ
トした感光波長の上限(吸収幅)以下の波長に対して透
明なものを選ぶのが好ましい。
【0025】かかる無機透明多孔質体3としては、具体
的には、ゼオライト、シリカゲル、シリカアルミナ、セ
メント、ドライカルシウムシリケート、珪酸カルシウ
ム、多孔質ガラス、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシ
ウム等を例示することができる。これらの中でも、光触
媒の担持特性、光触媒によって分解された生成物の吸着
性等の点で、シリカゲル又はゼオライトを用いるのが好
ましい。
【0026】本発明では、これらの無機透明多孔質体3
に光触媒5を担持させる方法や、光触媒5を担持させた
光触媒担持体2の具体的な形態には特に制限はないが、
十分な光触媒活性を得られるようにするためには、無機
透明多孔質体100重量部に対して、10〜900重量
部の光触媒を担持させるのが特に好ましい、また、この
光触媒担持体2に、更に抗菌効果を付与するために、該
担持体2にAgイオン等を吸着乃至担持させることもで
きる。
【0027】図2に本発明における光触媒担持体2を概
念的に例示する。例えば、該担持体2には、a)塊状の
無機透明多孔質体3の孔4内の任意の場所に光触媒5を
担持させたもの(図2(a))、b)無機透明多孔質体
3を中空状に形成し、その中空壁面6に光触媒を担持さ
せたもの(図2(b))、c)内部が中空状に形成され
た無機透明多孔質体3の孔4内の任意の場所に光触媒5
を担持させ、該多孔質体3と同種又は異種の多孔質体7
が上記中空部に充填されたもの(図2(c))等を挙げ
ることができる。
【0028】本発明は、光触媒機能を有する合成樹脂成
形品の基材及び物品の表面樹脂層に用いられる樹脂とし
て、10重量%以上のフッ化炭素系樹脂を含有せしめた
ものを用いることに特徴を有する。
【0029】本発明に用いられるフッ化炭素系樹脂は分
子中にフッ素原子を有するモノマーから得られる高分子
である。本発明は、フッ化炭素系樹脂を少なくとも10
重量%、樹脂組成物中に含有せしめることにより、光触
媒による樹脂劣化を抑制するものである。一般的に、色
差計によるバインダー樹脂の劣化測定の結果から、フッ
素原子の含有率の高いもの程、樹脂劣化防止の効果が高
い。
【0030】かかるフッ化炭素系樹脂としては、例え
ば、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ四
フッ化エチレン、エチレン−四フッ化エチレン共重合
体、ポリフッ化エチレンプロピレン、四フッ化エチレン
−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、四フッ化エチレ
ン−パ−フロロアルコキシエチレン共重合体(PFA)
等のフッ化炭素重合体、フッ化炭素共重合体や、これら
フッ化炭素の単量体とアクリル酸エステル又はメタクリ
ル酸エステルとの共重合体、水酸基又はカルボキシル基
等の極性官能基を有するフッ化炭素をイソシアネート架
橋したフッ素樹脂等も用いることができる。
【0031】本発明に用いられる他の樹脂バインダーと
しては、例えば、アクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリ
エステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリスチレン、
ABS樹脂、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、ポリオ
レフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル等が挙げられる。
【0032】本発明の合成樹脂成形品の基材樹脂及び物
品の表面樹脂層を形成するための樹脂組成物は、前記フ
ッ化炭素系樹脂100%の樹脂でもよいが、好ましく
は、製膜適性、他の基材と接着する場合の易接着性、価
格等の点で、アクリル樹脂、ポリウレタン、ポリエステ
ル等の樹脂と混合して調製される。
【0033】この場合、基材樹脂あるいは表面樹脂(表
面樹脂層を構成する樹脂)中のフッ化炭素系樹脂の重量
比は、10重量%以上であることが好ましい。フッ化炭
素系樹脂を10重量%以上含有させることにより、基材
樹脂或いは表面樹脂の劣化を効果的に抑制して光触媒効
果(臭気、汚染有機物の分解、抗菌、防黴等の作用)を
保持することができる。また、重量比の上限は30重量
%とするのがより好ましい。30重量%程度で、フッ化
炭素系樹脂添加による基材樹脂或いは表面樹脂の劣化防
止効果は飽和する為である。
【0034】本発明の合成樹脂成形品1は、光触媒担持
体2を液状又はゲル上のフッ化炭素系樹脂を添加した基
材樹脂に含有させて、任意の形状に成形して得ることが
できる。このとき、樹脂分子間に働く凝集力により、樹
脂は集合体として振る舞い、また、有機物である樹脂と
無機透明多孔質体とは馴染みが悪く、光触媒担持体2の
孔4の内部、或いは光触媒担持2体と樹脂との間には空
気が入り込む場合もあるため、基材樹脂は無機透明多孔
質体2の孔4の内部には侵入し難く、光触媒5との接触
により基材樹脂が分解されるのがより抑制されている。
【0035】一方、前述したような分解対象物の多く
は、通常低分子であり、分子状で空気中に拡散している
ので、拡散現象により容易に多孔質体3の孔4内に入り
込み、光触媒と接触して分解されることになる。
【0036】なお、無機質多孔質体3の孔4内への基材
樹脂の侵入を防ぎ、分解対象物の侵入を許してこれを選
択的に分解させるためには、多孔質体3の表面に現れる
孔4の径rが10nm〜10μmであるのが好ましく、
多孔質体の比表面積は、10〜100m2 /gであるの
が好ましい。また、無機質多孔質体3には、平均粒径1
〜100μmのものを用いるのが好ましい。
【0037】また、分解対象物の一部には基材樹脂に浸
透して多孔質体3の孔4内に達するものもあるが、光触
媒機能が効率よく発揮されるためには、光触媒担持体2
が樹脂中に完全に埋没されることなく、図1に示すよう
に、その一部が表面に露出しているのが好ましい。
【0038】光触媒担持体2を表面に露出させるには、
基材樹脂中に含有させる光触媒担持体2の含有させる量
や、基材樹脂の厚み(表面樹脂層(図3参照)として用
いる場合)を適宜調節すればよい。光触媒担持体2の含
有量は成形品1の厚みや光触媒担持体2の平均粒径等に
よっても異なるが、通常、基材樹脂100重量部に対
し、5〜900重量部であるのが好ましい。図3の如
く、光触媒担持体2を表面樹脂層9に含有させる場合に
おいては、表面樹脂層9の厚さを担持体2の平均粒径と
同等乃至はそれ以下にすることも効果的である。又、光
触媒担持体を含有させた基材樹脂がシート状又は板状の
成形品となる場合は、該成形品を1軸又は2軸延伸する
ことによって、成形品表面近傍の光触媒担持体2の粒子
を成形品表面に露出させることができる。
【0039】一方、基材樹脂中に完全に埋没した担持体
でも、空気、水蒸気及び分解対象物が拡散等によって、
光触媒担持体まで浸透到達するならば、ある程度の効果
が期待される。
【0040】本発明の合成樹脂成形品1は、フィルム
状、シート状又は板状に成形されたものでも、これらを
他の基材と積層したものであってもよい。或いは、各種
立体形状、例えば、窓枠(サッシ)、手摺、扉、扉枠、
天井板、床板、壁材、窓ガラス、間仕切り等の建築要内
外装材、食卓、箪笥、引き出しの外板等の家具類、流し
台、換気扇、換気ダクト、洗面台、浴槽等の住宅設備機
器類、電灯の反射板、光拡板、グローブ、CRT(ブラ
ウン管)表面、テレビジョン受信機等の弱電・OA機器
のキャビネット、キーボード等、車両内装材等のような
特定の製品形態に成形されたものであっても良く、その
具体的な形状は問わない。
【0041】次に、本発明の光触媒機能を有する物品に
ついて説明する。図3は、本発明の光触媒機能を有する
物品の一例を示す要部断面図であり、図中10は、本発
明を構成する基材を示す。
【0042】本発明の光触媒機能を有する物品8は、そ
の表面に無機透明多孔質体3に光触媒5が担持された光
触媒担持体2を含有せしめた表面樹脂層9を有してい
る。本発明の光触媒機能を有する物品8においても、光
触媒5、無機質多孔質体3、光触媒担持体2は、前述し
たものと同様なものを用いることができる。
【0043】本発明の物品8の表面樹脂層9は、シート
状、フィルム状又は板状に成形された、前述の光触媒機
能を有する合成樹脂成形品1を直接又は接着剤や任意の
貼着部材を介して光触媒を付与しようとする物品の表面
に貼着することにより設けることができる。
【0044】或いは、該表面樹脂層9は、前述したよう
な、フッ化炭素系樹脂を10重量%含有する基材樹脂を
バインダーに用い、これに光触媒担持体2を含有せしめ
ることにより得られる塗工用組成物を、グラビアコー
ト、ロールコート、スプレーコート、フローコート、コ
ンマコート等の公知の塗工法により光触媒機能を付与使
用とする物品の表面に塗工することによっても形成する
ことができる。このようにして形成され表面樹脂層9の
厚みは、通常1〜100μm程度であるのが好ましい。
【0045】このとき、該表面樹脂層9の表面に光触媒
担持体2の一部を露出させて光触媒機能を効率よく発揮
させるためには、塗工組成物中の担持体2の含有量を適
宜調整したり、表面樹脂層9の厚みを光触媒担持体の粒
径よりも薄く形成するのが好ましい。
【0046】表面樹脂層9を光触媒担持体2を含有せし
めた塗工組成物により塗工形成する場合も、表面樹脂層
9は光触媒により分解されることはない。これは、前述
した合成樹脂成形品1において、基材樹脂が光触媒によ
って分解されにくくなっているのに加えて、バインダー
中には、前述したように、光触媒の分解に対して抵抗す
るフッ化炭素系樹脂を10重量%以上含まれているから
である。本発明の光触媒機能を有する物品も、表面樹脂
層9中の樹脂バインダーは、光触媒の有機物を分解する
働きによって樹脂自身が分解されることはない。従っ
て、樹脂の分解により、樹脂層9から光触媒担持体が脱
落等がなく、長時間にわたり、安定した光触媒機能を発
揮する物品を得ることができる。
【0047】本発明の物品8を構成する基材10の材料
としては、例えば、(1)ポリ塩化ビニル、ポリエステ
ル、ポリオレフィン、フェノール樹脂、ポリカーボネー
ト、、アクリル樹脂、ABS樹脂、ポリスチレン等の合
成樹脂の他、鉄、アルミニウム、銅等の金属、ガラス、
陶磁器等のセラミックス、石膏、珪酸カルシウム、セメ
ント等の非陶磁器系窯業材料、木材等。また、以上の基
材は、その形状は、シート、板、立体形状等任意であ
る。
【0048】(2)和紙、上質紙、壁紙用裏打紙等の紙
類、ガラス繊維、炭素繊維、ポリエステル繊維、ビニロ
ン繊維、ナイロン繊維等の繊維からなる織布又は不織
布。以上の基材は、専ら、その形状はシート状で用いら
れる。
【0049】本発明において、無機透明多孔質体3に光
触媒5が担持された光触媒担持体2を含有せしめた表面
樹脂層9を形成し、これによって光触媒機能を付与する
ことができる物品は、例えば、前記合成樹脂成形品1の
場合と同様のものが挙げられる。尚、本発明の合成樹脂
成形品1及び物品8においては、光触媒機能を阻害しな
い範囲内で、絵柄印刷や凹凸模様のエンボス加工を施す
こともできる。
【0050】また、本発明の合成樹脂成形品1又は本発
明の物品の表面樹脂層9には、光触媒機能を損なわない
範囲内で、各種添加剤を含有させることができる。この
ような添加剤の例としては、ITO(Inzium T
in Oxide)粉末乃至鱗片等の帯電防止剤、ポリ
オキシエチレンアミン系、ポリオキシエチレンアルキル
燐酸エステル系、ソルビタン脂肪酸エステル系、アルキ
ルアルカノールアミン系等の界面活性剤等がある。特に
帯電防止剤を添加すると、油汚れ等の汚染物質の付着防
止効果を付与することができるので好ましい。前記添加
剤の添加量は、通常、0.5〜5重量%程度である。
【0051】或いは、耐候(光)性を更に向上させる為
に、ビス−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペ
リジニル)セバケート等のヒンダードアミン系ラジカル
捕捉剤等の光安定剤を、0.1〜5重量%程度添加して
もよい。
【0052】
【実施例】以下、本発明を実施例により具体的に説明す
る。実施例1 先ず、シリカゲル100重量部に対して、アナターゼ型
二酸化チタン40重量部を担持せしめることにより、平
均粒径5μmの光触媒担持体を得た。次に、フッ化炭素
系樹脂バインダー(アクリル−四フッ化エチレン共重合
体(F)と、アクリポリオール100重量部とヘキサメ
チレンジイソシアネート8重量部とからなる2液硬化型
ウレタン樹脂(U)とを重量比、F/(F+U)×10
0=10%,15%,20%,25%及び30%の4段
階で添加したもの)固形樹脂分100重量部に対して、
この光触媒担持体を30重量部含有せしめた塗工組成物
を調製した。
【0053】次いで、該塗工組成物をグラビアコート法
により、厚さ100μmの2軸延伸ポリエチレンテレフ
タレート(PET)基材表面に塗工して、厚さ12μm
の表面樹脂層を形成することにより、実施例の光触媒機
能を有するシートを作製した。得られたシートを、面積
15cm2 の大きさに切り取り、下記に示す光触媒機能
評価用サンプル片とした。
【0054】比較例 有機系バインダーとして、フッ化炭素系樹脂(F)の含
有量(F/(F+U)×100)が、0%、5%の2種
類のものを用いた以外は、実施例と同様にして、比較例
のシートを作製した。得られたシートを、面積15cm
2 の大きさに切り取り、下記に示す光触媒機能評価用サ
ンプル片とした。
【0055】評価試験 (1)塗膜劣化評価試験(その1) 上記実施例及び比較例で得たシートの各サンプル片の塗
膜表面に、低圧水銀灯からなる光源を用いて、380n
m以下の波長を含む紫外線を30時間照射し、10時間
単位の色差(ΔE値)の経時変化を測定した。色差(Δ
E値)は、分光光度計で測定し、ハンターのLabの式
にて評価した。測定結果を下記表1に示す。
【0056】
【表1】
【0057】表1から、実施例の各シートは比較例のシ
ートに比して、優れた耐光性を有するシートであること
がわかる。
【0058】(2)塗膜劣化評価試験(その2) 上記実施例及び比較例で得たシートの各サンプル片の塗
膜表面に、380nm以下の波長の紫外線を含む光を発
光する蛍光燈であるブラックライトを10時間照射した
後の色差(ΔE値)を測定した。結果を図4に示す。図
4に示すグラフから、フッ化炭素系樹脂を10重量%以
上配合した樹脂組成物からなるシートは、塗膜劣化抑制
能に優れていることがわかる。
【0059】(3)光触媒活性評価試験 上記実施例及び比較例で作製した各サンプル片の表面上
に、煙草の脂を付着させ、低圧水銀灯からなる光源を用
いて、380nm以下の波長を含む紫外線を30時間照
射し、10時間単位の色差(ΔE値)を測定した。煙草
の脂が分解されれば、ΔE値は0に漸近する。測定結果
を図5に示す。図5に示すグラフから明らかなように、
実施例のシートは、比較例のシートに比して、長時間に
わたり優れた光触媒活性を有するシートである。
【0060】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の光触媒機
能を有する合成樹脂成形品及び物品は、長時間にわたり
光触媒による樹脂の劣化がなく、長時間にわたり優れた
光触媒機能を保持するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光触媒機能を有する合成樹脂成形品の
一例の断面図である。
【図2】光触媒担持体の一例を概念的に示した図であ
る。
【図3】本発明の光触媒機能を有する物品一例の断面図
である。
【図4】実施例及び比較例のシートの塗膜劣化試験の結
果を示す図である。図中、縦軸は色差を、横軸はフッ化
炭素系樹脂の配合量を示す。
【図5】実施例及び比較例のシートの塗膜劣化試験の結
果を示す図である。図中、縦軸は色差を、横軸は経過時
間を示す。
【符号の説明】
1…光触媒機能を有する合成樹脂成形品、2…光触媒担
持体、3…無機透明多孔質体、4…孔、5…光触媒、6
…分解対象物、7…多孔質体、8…光触媒機能を有する
物品、9…表面樹脂層、10…基材
フロントページの続き Fターム(参考) 4F100 AA00A AA00H AA20A AA20H AA21A AA21H AK01B AK17A AK42B AK51A BA01 BA02 BA10A BA10B CA30A CA30H DJ01A DJ01H EJ38B JC00 JL08A JL08H JN01A JN01H YY00A

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】無機質透明多孔質体に光触媒を担持した光
    触媒担持体を基材樹脂に含有してなる合成樹脂成形品で
    あって、 該基材樹脂が、フッ化炭素系樹脂を10重量%以上含有
    する樹脂からなることを特徴とする、光触媒機能を有す
    る合成樹脂成形品。
  2. 【請求項2】無機質透明多孔質体に光触媒を担持した光
    触媒担持体が含有された表面樹脂層を有する物品であっ
    て、 該表面樹脂層が、フッ化炭素系樹脂を10重量%以上含
    有する樹脂からなることを特徴とする、光触媒機能を有
    する物品。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007307884A (ja) * 2005-07-08 2007-11-29 Kagawa Industry Support Foundation 鮮度保持フィルム、その製造方法および使用方法
KR102220488B1 (ko) * 2020-11-27 2021-02-24 이보람 음식 포장을 위한 친환경 일회용 용기

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