JP2000096084A - 硫酸化中和物の製法 - Google Patents

硫酸化中和物の製法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】単純な生産設備で実施可能な、生産効率の高い
硫酸化中和物の製法を提供すること、並びに中和時にお
ける硫酸化物に残存する副生物の影響を極小化し得る硫
酸化中和物の製法を提供すること。 【解決手段】工程A):硫酸化物と塩基性物質とを接触
させて混合物を得る工程、 工程B):工程A)で得られた混合物のフラッシングを
行って、混合物を気相成分と液相成分とに分離する工
程、及び 工程C):工程B)で得られた液相成分を回収する工
程、を含んでなる硫酸化中和物の製法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、陰イオン界面活性
剤等として有用な硫酸化中和物の製法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、硫酸エステル化又はスルホン
化された化合物を中和する場合、特開平2−21865
6号公報記載の方法、即ち、アルカリ剤として水酸化ナ
トリウム水溶液を用いて、ほぼ常圧にて、ループ状の中
和設備内に硫酸化物、アルカリ剤とそれらの中和物の混
合物等を循環させながら中和を行う方法や、二つの強攪
拌ミキサーを用いて、ループ状の中和設備内に上記の混
合物等を循環させながら連続的に中和を行う方法が用い
られてきた。これらの方法では、中和の際に発生する中
和熱が中和物に与える悪影響を回避するために、熱交換
器等を用いて除熱を行ったり、中和設備をループ状にし
て中和物の顕熱として中和熱を吸収するといった設備面
での工夫が行われている。
【0003】これらの方法を採用した中和設備では、伝
熱面積の大きい熱交換器が必要であったり、中和設備を
ループ状にするため、中和設備内の滞留量が多くなると
いうことや、設備が複雑になるという問題があった。
【0004】また、ループ状の中和設備の場合、設備の
稼働前にループ内に中和物を充填しなければならないと
いった煩雑な操作が必要である。さらに、生産品の品種
を変更する場合、ループ状の中和設備内に残った前生産
品を抜き出し、洗浄した後に、次生産品の中和物を充填
する操作が必要である。このように、上記の方法は生産
効率を低下させる要因があった。また、前生産品を抜き
出さずに、前生産品が残ったまま次生産品の中和を始め
た場合には、次生産品で中和設備内が置き換わるまで両
生産品が混合した中和物が産出され、これは品質上、非
常に悪いものであった。
【0005】一方、硫酸化物の製造時には副生物が生成
する。かかる副生物は、中和物の品質に悪影響を及ぼす
ことがある。しかしながら、従来の中和物の製法では、
副生物の除去は後の工程で行うことが当然視され、中和
に際して副生物の影響を極小化する思想はなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の目的
は、単純な生産設備で実施可能な、生産効率の高い硫酸
化中和物の製法を提供することにある。さらに本発明の
目的は、中和時における硫酸化物に残存する副生物の影
響を極小化し得る硫酸化中和物の製法を提供することに
ある。
【0007】
【課題を解決するための手段】即ち、本発明の要旨は、 工程A):硫酸化物と塩基性物質とを接触させて混合物
を得る工程、 工程B):工程A)で得られた混合物のフラッシングを
行って、混合物を気相成分と液相成分とに分離する工
程、及び 工程C):工程B)で得られた液相成分を回収する工
程、を含んでなる硫酸化中和物の製法、に関するもので
ある。
【0008】
【発明の実施の形態】工程A)について 工程A)は、硫酸化物と塩基性物質とを接触させて混合
物を得る工程である。本発明で用いられる硫酸化物は、
硫酸エステル化物とスルホン化物とを含む。従って、本
発明における硫酸化物の具体例としては、脂肪族アルコ
ール硫酸エステル化物、ポリオキシアルキレンアルキル
エーテル硫酸エステル化物、アルキルベンゼンスルホン
酸、α−オレフィンスルホン酸、α−スルホ脂肪酸アル
キルエステルスルホン酸等が挙げられる。好ましくはポ
リオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル化物
である。硫酸化物は二種以上併用しても良い。
【0009】塩基性物質としては、下記物質が好適例と
して挙げられる。即ち、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム
等のアルカリ金属炭酸塩;炭酸水素ナトリウム、炭酸水
素カリウム等のアルカリ金属炭酸水素塩;水酸化ナトリ
ウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金
属水酸化物;酸化カルシウム、水酸化カルシウム、酸化
マグネシウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金
属の酸化物及び水酸化物;アンモニア;アルキル鎖の炭
素原子数が2〜4の、モノ、ジ及びトリアルカノールア
ミン;アルキル鎖の炭素原子数が1〜4の、1級、2級
及び3級アルキルアミン等である。得られる中和物の色
が大幅に改善される観点から、アルカリ金属炭酸塩及び
アルカリ金属炭酸水素塩が好ましく、その中でも炭酸ナ
トリウムがより好ましい。塩基性物質は二種以上併用し
ても良い。
【0010】硫酸化物と塩基性物質との当量(化学当
量)比は、これらを完全に中和する観点から、硫酸化物
1当量に対して塩基性物質1.0当量以上が好ましく、
1.01当量以上がより好ましい。また、得られる中和
物の安定性維持の観点から、硫酸化物1当量に対して塩
基性物質2.0当量以下が好ましく、1.5当量以下が
より好ましい。
【0011】硫酸化物と塩基性物質との接触を良好に行
う観点から、塩基性物質は水溶液の形態で使用すること
が好ましい。
【0012】硫酸化物と塩基性物質との接触は均一に行
うことが好ましく、例えば、各成分を混合装置内で強攪
拌すれば良い。かかる接触によって中和反応が進行し、
そして本工程で得られる混合物に、硫酸化物と塩基性物
質との中和による中和物が含有される。なお、本明細書
において、硫酸エステル化物の中和物及びスルホン化物
の中和物のいずれについても「硫酸化中和物」という。
【0013】工程B)のフラッシング操作を効果的に行
うために、工程A)において、混合物を加圧することが
好ましい。加圧された混合物は、工程B)において、工
程A)より低い圧力状態にされた空間にフラッシングさ
れる。以下に、混合物を加圧する方法を例示する。
【0014】1)工程A)において、さらにガスを供給
して混合物を加圧する方法。ガスとしては、塩基性物質
及び硫酸化中和物に対して不活性であるガスが好まし
く、例えば、二酸化炭素、空気、酸素、窒素等が挙げら
れ、好ましくは二酸化炭素である。 2)塩基性物質として、中和時に気体を発生し得る物質
を用いて混合物を加圧する方法。かかる塩基性物質とし
ては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリ
ウム、炭酸水素カリウム等が挙げられ、好ましくは炭酸
ナトリウムである。 なお、両者の方法を併用しても何ら差し支えはない。
【0015】工程B)について 工程B)は、工程A)で得られた混合物のフラッシング
を行って、混合物を気相成分と液相成分とに分離する工
程である。分離された気相成分は、系内の圧力を所定の
範囲内に維持するために、適宜排出される。フラッシン
グとは、圧力差のある二位置において、高値の位置から
低値の位置へ混合物を噴出させることをいう。
【0016】混合物のフラッシングを行うことにより、
1)系内の気相成分が急激に体積膨張し、それにより系
の温度が低下することに伴い、液相成分の熱を奪うこ
と、2)塩基性物質由来の水や中和水の一部が蒸発し、
その潜熱のために中和熱が混合物から瞬間的に除去でき
ること、3)水の蒸発に伴い、硫酸エステル化/スルホ
ン化反応時や中和時に生成した副生物、例えば1,4−
ジオキサンや臭い成分等を低減できること、という効果
が奏される。かかる効果は中和物の製造には極めて好都
合であり、しかも、本発明においては比較的単純な設備
で工程A)、工程B)を実施することができる。そのた
め、本発明により設備の単純化、それによる生産効率の
向上を図ることができる。フラッシングを行うための装
置は通常用いられる公知の構成の装置を採用することが
できる。
【0017】工程A)で得られた混合物に含まれる中和
物は、長期間放置しておくと分解するおそれがあるた
め、フラッシングは、得られた中和物が分解し始める前
に行うことが好ましく、工程A)の直後に行うことがよ
り好ましい。従って、生産効率の観点から設備上、工程
A)で得られる混合物を工程B)へ供給する手段(以
下、混合物供給ラインという。)を設けることが好まし
く、その際、混合物供給ラインは、フラッシング操作を
効果的に行うために、上述の工程A)と同様に加圧され
た状態が好ましい。
【0018】フラッシング操作を良好に行うために、工
程A)、工程B)における圧力を、以下のように設定す
ることが好ましい。 1)工程A)を0.5MPaより高い圧力にて行う場
合、工程A)の圧力と工程B)の圧力の差が0.5MP
a以上となるように、工程B)の圧力を設定する。 2)工程A)を0.1(常圧)〜0.5MPa以下の圧
力にて行う場合、工程B)は0.01MPa以下の圧力
に設定する。また、上述の圧力差が大きい程フラッシン
グの効果はより顕著になる。なお、設備簡略化の観点か
ら上記1)の態様が好ましい。また、工程A)を常圧、
工程B)を減圧状態にすることでもフラッシング操作は
可能であり、本発明の方法を達成できることは言うまで
もない。この場合、工程B)の圧力を0.01MPa以
下にすることが好ましい。
【0019】工程C)について 工程C)は、工程B)で得られた液相成分を回収する工
程である。回収された液相成分は必要に応じて脱泡を行
っても良い。また、回収された液相成分を、必要に応じ
て、さらに精製してもよい。
【0020】図1にて本発明を説明する。図1は、本発
明の製法の実施に好適な装置を示す概略構成図である。 工程A):硫酸化物は、硫酸化物供給ライン1を通し
て、塩基性物質は塩基性物質供給ライン2を通して、モ
ーターMが具備された混合装置3に供給される。混合装
置3内で、各成分が攪拌されて接触が行われる。 工程B):得られた混合物は、混合物供給ライン4を通
してフラッシュ槽5に供給される。フラッシュ槽5の内
圧を混合物の存在する混合装置3および混合物供給ライ
ン4の圧力よりも低く設定することにより、混合物のフ
ラッシングが行われ、気相成分と液相成分7とに分離す
る。気相成分は気相成分排出ライン6から排出される。 工程C):フラッシュ槽5内に溜まった液相成分7は液
相成分排出ライン8から排出され、回収される。
【0021】
【実施例】実施例1 ラウリルアルコール(カルコール2098:花王(株)
製)にエチレンオキサイドを付加させた。付加モル数は
アルコール1モル当たり2.5モルとした。得られたエ
チレンオキサイド付加物を、三酸化硫黄ガスを用いる常
法により硫酸化し、硫酸化物を得た。
【0022】硫酸化物を3.85kg/hrの割合で、
中和剤としての炭酸ナトリウム水溶液(塩基性物質の含
有量は15.7重量%:硫酸化物1当量に対して1当
量)を3.47kg/hrの割合で混合装置(エバラマ
イルダーVシリーズ:型式名MDN303V−C:荏原
製作所製)に供給した。この混合装置により両成分を強
攪拌し、これらを均一にした。中和系内(混合装置内)
の温度を混合装置出口部で測定したところ、該温度は1
20℃であり、中和系内の圧力は0.79MPaであっ
た。
【0023】得られた混合物を混合装置からフラッシュ
槽に供給し、混合物のフラッシングを行った。フラッシ
ュ槽内の圧力は0.1MPa(常圧)とした。このフラ
ッシングによって生じた液相成分を回収した。液相成分
の温度は80℃であった。
【0024】この液相成分を分析すると、硫酸化中和物
57.5重量%、色相(Klett No.)24、未反応物
1.2重量%、硫酸化中和物の単位重量当たり1,4−
ジオキサン 80mg/kgであった。
【0025】比較例1 ラウリルアルコール(カルコール2098:花王(株)
製)75重量%とミリスチルアルコール(カルコール4
098:花王(株)製)25重量%とからなる混合アル
コールに、常法によりエチレンオキサイドを付加させ
た。付加モル数はアルコール1モル当たり2.0モルと
した。得られたエチレンオキサイド付加物を、三酸化硫
黄ガスを用いる常法により硫酸化し、硫酸化物を得た。
【0026】得られた硫酸化物を6.00kg/hrの
割合で、塩基性物質としての23.6重量%水酸化ナト
リウム水溶液を3.15kg/hrの割合で、特開平2
−218656号公報記載のループ中和設備に供給し、
熱交換器で冷却しつつ中和を行った。中和設備の熱交換
器の出口温度は60℃、圧力はほぼ常圧であった。得ら
れた生成物を分析したところ、硫酸化中和物が67.1
重量%、色相(Klett No. )70、未反応物3.31重
量%、硫酸化中和物の単位重量当たり1,4−ジオキサ
ン 150mg/kgであった。実施例1と比較して、
硫酸化中和物の含量は高いものの、不純物含量が高く、
色相も悪い生成物が得られた。さらに、熱交換器の冷却
水を停止すると、中和設備のループ部分の温度が上昇
し、硫酸化中和物を得ることができなかった。
【0027】上記の各例において得られた最終生成物
(液相成分、生成物)の分析は、次のようにして行っ
た。最終生成物中の硫酸化中和物はISO 2271に
準じた方法で定量した。未反応物の定量は次のようにし
て行った。最終生成物にイオン交換水を加え、さらにリ
ン酸又は水酸化ナトリウムを用いて、pHが7、硫酸化
中和物が10重量%の試料を調製した。この試料に石油
エーテルを加えて抽出操作を行い、石油エーテル相を回
収した。ガスクロマトグラフィーにより石油エーテルを
分析し、内部標準法により未反応物を定量した。色相の
評価は次のようにして行った。未反応物の定量のために
調製した試料について、10mm幅のセルを用いて、波
長420nmの条件下でその Klett No.を測定した。
1,4−ジオキサンの定量は次のようにして行った。未
反応物の定量のために調製した試料について、ガスクロ
マトグラフィーにより当該試料を分析し、絶対検量線法
により1,4−ジオキサンを定量した。
【0028】
【発明の効果】本発明の製法によれば、コンパクトでか
つ比較的単純な設備で硫酸化中和物を製造できるため、
設備内の滞留量を低減させることができ、生産性を大幅
に高めることができる。さらに、本発明の製法を多品種
生産に適用した場合、品種の変更を効率良く行うことが
できるため、品種同士の混合がない良好な品質の硫酸化
中和物を得ることができる。さらに本発明の製法によ
り、副生物の量が低減され、硫酸化中和物の分解が抑え
られた良好な硫酸化中和物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の製法の実施に好適な装置を示
す概略構成図である。
【符号の説明】
1 硫酸化物供給ライン 2 塩基性物質供給ライン 3 混合装置 4 混合物供給ライン 5 フラッシュ槽 6 気相成分排出ライン 7 液相成分 8 液相成分排出ライン M モーター
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 田端 修 和歌山市湊1334番地 花王株式会社研究所 内 Fターム(参考) 4H003 AB27 CA02 4H006 AA02 AC90 AD18 BC11 BC31 BE12

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 工程A):硫酸化物と塩基性物質とを接
    触させて混合物を得る工程、 工程B):工程A)で得られた混合物のフラッシングを
    行って、混合物を気相成分と液相成分とに分離する工
    程、及び 工程C):工程B)で得られた液相成分を回収する工
    程、を含んでなる硫酸化中和物の製法。
  2. 【請求項2】 硫酸化物と塩基性物質との当量比が、硫
    酸化物1当量に対して塩基性物質1.0〜2.0当量で
    ある請求項1記載の製法。
  3. 【請求項3】 工程A)において、さらにガスを供給し
    て加圧する請求項1又は2記載の製法。
  4. 【請求項4】 塩基性物質として、炭酸ナトリウム、炭
    酸カリウム、炭酸水素ナトリウム及び炭酸水素カリウム
    からなる群より選ばれた一種以上の物質を用いる請求項
    1〜3いずれか記載の製法。
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