JP2000061607A - 成形品の金型離型機構とその制御方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 ダイカスト鋳造等においては、押し出し板に
具備されたエジェクターピンによって成型品を離型する
ことが一般的であるが、押し出し板をダイカストマシン
の押し出しシリンダーが押す場合に、成形品の投影面積
が大きい場合や、彫りの深い形状の成形品では、成形品
と金型とのカジリにより、また鋳造中の金型の焼き付き
等により多数にわたり配置された押し出しピンに不均等
に負荷が発生し、押し出し板が平行に押し出されない場
合がある。その結果、成型品の変形あるいは破損、ある
いは金型及びエジェクターピンの破損の原因となってい
た。 【解決手段】 金型の成形品キヤビティ面を貫通した複
数のエジェクタピンを一体的に押し出して成形品を型か
ら離型するための成形品の金型離型機構において、各エ
ジェクタピンに負荷される荷重を設定範囲に調整する機
構を有する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、ダイカスト用金
型、樹脂用金型などに適用されるエジェクタピンの構造
に関するものであり、特に成形品離型時の押し出し力を
制御する事で成形品の変形を抑制するための機構であ
る。

【０００２】

【従来の技術】アルミニウム合金ダイカスト鋳造、ある
いは樹脂、スラリー等の射出成形のように金型に未凝固
あるいは未固化の材料を充填し成形品を成形する製造方
法において、成形品を金型より取り出すには、まず組み
合わされた金型を分離し、型の隙間に成形品を把持する
ための把持具を挿入し、成形品を把持したのち金型より
エジェクタピンにより突き出しながら成形品の把持部を
移動することにより成形品を離型しなければならない。
このエジェクタピンの一般的な構造としては、金型の成
形品キヤビティ面を貫通したエジェクタピンが押し出し
板と押し出し保持板により保持され、押し出し保持板を
ダイカストマシンの押し出しシリンダーが押すことによ
ってエジェクタピンを摺動させる機構を有している。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】図４に従来の金型の離
型構造を示す。押し出し保持板７を押し出しシリンダー
５が押す場合に、成形品１の投影面積が大きい場合や、
彫りの深い形状の成形品では、成形品１と金型９とのカ
ジリにより、また鋳造中の金型の焼き付き等により多数
にわたり配置されたエジェクタピンに不均等に負荷が発
生し、押し出し板６が平行に押し出されない場合があ
る。その結果、成形品の変形あるいは破損、あるいは金
型及びエジェクタピンの破損の原因となっていた。

【０００４】この対策として従来は図５に示すように、
押し出し保持板７を補助的に押し出すために、ダイカス
トマシンの押し出しシリンダー５と並列に押し出し補助
シリンダー２３を金型に取り付ける方法がとられてい
る。この対策では成形品の破損、金型及びエジェクタピ
ンの破損等大きなトラブルは解消できるが、成形品の変
形に対しては大きな効果は望めなかった。

【０００５】

【課題を解決するための手段】本発明は、成形品の変形
あるいは破損、あるいは金型及びエジェクタピンの破損
を防止するため、時事刻々変化する鋳造中のエジェクタ
ピン４に負荷される力を設定範囲にして金型から離型す
る点にある。

【０００６】本発明に係わる金型の成形品キヤビティ面
を貫通した複数のエジェクタピンを一体的に押し出して
成形品を型から離型するための成形品の金型離型機構に
おいて、各エジェクタピンに負荷される荷重を設定範囲
に調整する機構を有する。本発明において、各エジェク
タピンに負荷される荷重を設定範囲に調整することによ
り、成形品にかかる荷重が平均されるので、成形品の変
形、破損、エジェクタピンの破損等を防ぐことができ
る。

【０００７】更に詳細には、本発明に係わる成形品の金
型離型機構において、各エジェクタピンに負荷される荷
重を設定範囲に調整する機構が、各エジェクタピンの圧
力検知手段と突き出し量調整手段からなると良い。エジ
ェクタピンの構造は、特に図２に示す様にエジェクター
ピン４とそれに負荷される力を測定する圧力検出器１２
と突き出し量を調整するパルスモータ１５とパルスモー
ターの回転数を検出するエンコーダ１６を備えていると
好適である。

【０００８】エジェクタピンに負荷される荷重を設定範
囲に調整する機構としては、他に液圧を利用することも
できる。これは例えばエジェクタピンをピストンとし
て、シリンダに挿入して、一定圧の液圧をかけることに
より、荷重を一定にするようにエジェクタピンの突き出
し量を調整することできる。本発明において、押し出し
とはエジェクタピンを金型の成形品キヤビティ面を貫通
して一体に押し出す場合をいい、突き出し量とは各エジ
ェクタピン毎の突き出し量をいう。

【０００９】また本発明に係わる金型の成形品キヤビテ
ィ面を貫通した複数のエジェクタピンを一体的に押し出
して成形品を型から離型するための金型離型機構の制御
方法において、成形品を離型する際に各エジェクタピン
に負荷される加重を一定範囲に制御する。さらに詳細に
は、本発明に係わる金型離型機構の制御方法において、
成形品を離型する際に各エジェクタピンに負荷される加
重を測定し、それぞれの荷重値が一定範囲になるように
エジェクタピンの突き出し量を制御する。

【００１０】

【発明の実施の形態】以下、本発明に係わる成形品の金
型離型機構とその制御方法について、これを実施するた
めの装置の一例を図１、図２、図３を参照しながら詳細
に説明する。まず最初に全体の動作について説明する。
図１は本発明に係わるアルミダイカスト鋳造における成
形品の離型搬送システムを示す。当該システムはダイカ
ストマシン１０及び押し出しシリンダー５と可動型９、
固定型８、成形品１、および搬送用ロボット２から構成
される。可動型９には成形品１を押し出すためのエジェ
クタ機構を具備している。このエジェクタ機構は図２に
示す様に、エジェクタピン４、押し出し板６、押し出し
保持板７、ストロークＡシャフト１３、ストロークＢシ
ャフト１４、及びそれらを保持するための軸受け１８、
軸受け１９、及び突き出し量を決定するためのパルスモ
ーター１５とその回転数を検出するエンコーダー１６、
及びストロークＢシャフト１４をジョイントするための
カップリング２０から構成される。

【００１１】前記固定型８と可動型９は組み合わされて
その対向面に製品形状に適合するキャビティが形成され
る。このキャビティにアルミニウム溶湯を充填し凝固す
ることにより成形品１を形成する。成形品１を金型キャ
ビティより取り出すには、まず組み合わされた固定型８
と可動型９を分離するため、可動型９が分離する方向に
移動する。このとき成形品１は射出シリンダ５によって
可動型９に押しつけられながら分離されるため、成形品
１は可動型９に保持されて移動する。この後搬送用ロボ
ット３が分離された金型の隙間に把持部２を挿入し成形
品１のランナー部１１を把持する。

【００１２】ランナー部１１がロボットの搬送用ロボッ
ト３の把持部２によって把持された後ダイカストマシン
１０は押し出しシリンダ５を前進させることにより、押
し出し保持板７と押し出し板６に固定されたエジェクタ
ピン４を前進させる。エジェクタピン４の先端は可動型
９のキャビティ表面に達しており、エジェクタピン４を
前進させることにより成形品１は可動型９より分離され
る。また押し出しシリンダ５が前進すると同時に搬送用
ロボット３は把持部２をエジェクタピン４の移動方向と
同一方向に移動させることにより成形品１の可動型９か
らの分離を補助する。エジェクタピン４が前進限度位置
まで移動すると成形品１は搬送用ロボット３によりエジ
ェクタピン４から分離されて搬送され、パレット等へ納
められる。

【００１３】前記成形品１を金型より取り出す工程にお
いて、特にエジェクタピンが前進を開始してから、成形
品１が前進限度位置に着くまでの工程を以後離型工程と
称する。前記離型工程においてエジェクタピン４はその
背面に設置された圧力検出器１２の値ｃ、ｅを時々刻々
制御装置１７に送信する。

【００１４】さらに前記離型工程においてイジェクタピ
ン４を駆動するパルスモーター１５の回転数はエンコー
ダー１６によって時々刻々監視され、その回転数信号
ｂ、ｄは時々刻々制御装置１７に送信される。

【００１５】離型工程における押し出しシリンダ５のシ
リンダ速度信号ａは時系列のデータとして制御装置１７
に導入される。押し出しシリンダー５が始動する信号が
ダイカストマシン１０より送信された時点で、制御装置
１７に送られた複数配置された圧力検出器１２の信号を
得て、この段階で制御装置１７は各圧力検出器１２の値
を比較し、パルスモーター１５を回転させ、各エジェク
タピン４を一定量突き出させる事により、各エジェクタ
ピンは成形品１より力を受け、それらの力の差があらか
じめ設定された範囲内におさまるように、エジェクタピ
ン４の突き出し量を調整する。この段階で押し出しシリ
ンダ５はこの力を維持しながら押し出しを設定スピード
で開始する。

【００１６】各成形サイクルのエジェクタピン４の初期
の突き出し量は、前成形サイクルまたはそれを含む以前
の成形サイクルについて、あらかじめエジェクタピン４
の移動量をパルスモータ１５の回転数から記憶してお
き、これをもとに１回の成形サイクルのうちエジェクタ
ピン４の突き出し量及び、押し出し開始からの終了まで
の時間と移動速度のテーブル、すなわち速度曲線図を作
成し、この速度曲線にもっとも近くなるように近似され
た直線あるいは曲線をもちいてダイカストマシンの押し
出しシリンダー５の押し出しスピードの加減速度、およ
びそれらの切り替え時刻、位置を計算して動作を決定す
ることにより効率的かつ精密な押し出し力が得られる。

【００１７】次にエジェクタピン４の押し出し機構の動
作について図２にて説明する。エジェクタピン４の背面
に設置された圧力検出器１２の信号ｃ、ｅが、制御装置
１７に送られ、演算された分だけパルスモーター１５が
回転する。すると、押し出し板６と押し出し保持板７に
具備された軸受け１８に保持されたストロークＢシャフ
ト１４が、パルスモーター１５にカップリング２０で連
結されているため回転する。ストロークＢシャフト１４
の内部にはネジが切られており、このネジにかみ合うよ
うにストロークＡシャフト１３が配置されており、ネジ
により前後にストロークする。ストロークＡシャフト１
３には、圧力検出器１２が内蔵され、またエジェクター
ピン４が連結されている。ストロークＡシャフト１３は
ストローク中にがたが生じないように軸受け１９を具備
している。

【００１８】以上、本発明について実施例を挙げて説明
したが、本発明はこの実施態様に限定されるものではな
く、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の改良
ならびに設計の変更が可能なことは勿論である。例え
ば、エジェクタピン４は出来るだけ多く具備すれば、押
し出し精度は向上できる。また全てのエジェクタピン４
に押し出し量制御手段を設ける必要はなく、必要の応じ
て設ければよい。

【００１９】例えばエジェクタピン４の突き出し量を調
整するのはパルスモーターに限らずシリンダーでも良
い。

【００２０】例えば本発明に図５に示すような補助シリ
ンダー２３を具備すれば更に精度良い押し出しが可能で
ある。

【００２１】

【発明の効果】本発明によれば、金型から成形品を離型
する際に、成形品の変形あるいは破損、あるいは金型及
びエジェクターピンの破損を防止する事が可能である。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の成形品押し出し機構を示す図である。

【図２】本発明のエジェクター機構の詳細図である。

【図３】本発明の金型離型機構の制御方法のフロー図で
ある。

【図４】従来のダイカスト鋳造の成形品押し出し機構を
示す図である。

【図５】従来のダイカスト鋳造の成形品押し出し機構を
示す図である。

【符号の説明】

１ 成形品、２ ロボット把持部、３ 搬送用ロボッ
ト、４ エジェクタピン、５ ダイカストマシン押し出
しシリンダー、６ 押し出し板、７ 押し出し保持板、
８ 固定型、９ 可動型、１０ ダイカストマシン、１
１ 成形品ランナー部、１２ 圧力検出器、 １３ ス
トロークＡシャフト、１４ ストロークＢシャフト、１
５ パルスモーター、１６ エンコーダー、１７ 制御
装置、１８ 軸受け、１９ 軸受け、２０ カップリン
グ

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 金型の成形品キヤビティ面を貫通した複
   数のエジェクタピンを一体的に押し出して成形品を型か
   ら離型するための成形品の金型離型機構において、各エ
   ジェクタピンに負荷される荷重を設定範囲に調整する機
   構を有することを特徴とする成形品の金型離型機構。
2. 【請求項２】 請求項１に記載の成形品の金型離型機構
   において、各エジェクタピンに負荷される荷重を設定範
   囲に調整する機構が、各エジェクタピンの圧力検知手段
   と突き出し量調整手段からなることを特徴とする成形品
   の金型離型機構。
3. 【請求項３】 金型の成形品キヤビティ面を貫通した複
   数のエジェクタピンを一体的に押し出して成形品を型か
   ら離型するための金型離型機構の制御方法において、成
   形品を離型する際に各エジェクタピンに負荷される加重
   を設定範囲に制御することを特徴とする金型離型機構の
   制御方法。
4. 【請求項４】 請求項３に記載の金型離型機構の制御方
   法において、成形品を離型する際に各エジェクタピンに
   負荷される加重を測定し、それぞれの荷重値が設定範囲
   になるようにエジェクタピンの突き出し量を制御するこ
   とを特徴とする金型離型機構の制御方法。