JP2000045023A - 方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents

方向性電磁鋼板の製造方法

Info

Publication number
JP2000045023A
JP2000045023A JP10212654A JP21265498A JP2000045023A JP 2000045023 A JP2000045023 A JP 2000045023A JP 10212654 A JP10212654 A JP 10212654A JP 21265498 A JP21265498 A JP 21265498A JP 2000045023 A JP2000045023 A JP 2000045023A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
annealing
cooling
steel sheet
time
grain
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Withdrawn
Application number
JP10212654A
Other languages
English (en)
Inventor
Kenichi Sadahiro
健一 定広
Yasuyuki Hayakawa
康之 早川
Mitsumasa Kurosawa
光正 黒沢
Michiro Komatsubara
道郎 小松原
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
JFE Steel Corp
Original Assignee
Kawasaki Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kawasaki Steel Corp filed Critical Kawasaki Steel Corp
Priority to JP10212654A priority Critical patent/JP2000045023A/ja
Publication of JP2000045023A publication Critical patent/JP2000045023A/ja
Withdrawn legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Manufacturing Of Steel Electrode Plates (AREA)
  • Soft Magnetic Materials (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 短時間最終仕上焼鈍において生じる鉄損劣
化の問題を解決した方向性電磁鋼板の製造方法を提供す
ることにある。 【解決手段】 Si:1.5 〜7.0 wt%を含有するけい素鋼
素材を熱間圧延して熱延板とし、その後、必要に応じて
熱延板焼鈍を施したのち、1回又は中間焼鈍を挟む2回
以上の冷間圧延を行って最終板厚に仕上げ、次いで、必
要に応じて脱炭焼鈍を施したのち、950 〜1200℃の温度
範囲で均熱保持した後に冷却する工程を含む短時間最終
仕上焼鈍を行う方向性電磁鋼板の製造方法において、短
時間最終仕上焼鈍時の前記冷却を、前記保持温度から少
なくとも900 ℃までの温度範囲までは25℃/s以下の平
均冷却速度で行うこと特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、大型トランス、
大型発電機の鉄心やEIコア用材料として用いられる方
向性電磁鋼板の大幅に合理化された製造方法に関するも
のである。
【0002】
【従来の技術】方向性電磁鋼板の製造方法は、所望のけ
い素鋼スラブを熱間圧延したのち、−回もしくは中間焼
鈍を挟む二回の冷間圧延により製品板厚に仕上げた後、
脱炭焼鈍を兼ねる一次再結晶焼鈍にひきつづきコイル状
のままバッチ式に長時間の箱焼鈍による2次再結晶およ
び純化処理を行ったのち、平坦化およびコーティング焼
き付けを施し製品を得る方法がー般的である。
【0003】また、比較的長い工程を経る上記製造方法
を合理化するため、長時間の箱焼鈍を連続焼鈍法などに
よる短時間の最終仕上焼鈍に変更することで処理時間を
短縮する試みは比較的古くから実施されている。
【0004】例えば、特開昭49−98721 号公報(一方向
性電磁鋼板の製造方法)には、短時間最終仕上焼鈍の昇
温速度が500 〜10000 ℃/min.の急速加熱に加え、冷却
過程の900 ℃〜400 ℃の範囲を30秒以上かけて徐冷し、
鋼中の析出物のサイズを制御して磁性を改善する技術が
開示されている。
【0005】しかしながら、この公報に記載された電磁
鋼板は、いずれも0.30mm厚材で鉄損値W17/50 (最大磁
束密度1.7 T、周波数50Hzにおける鉄損値)が1.5W/kg
を超えており、現在の汎用方向性電磁鋼板のレベルにま
では達していない。
【0006】また、特公昭62−31050 号公報(磁束密度
の極めて高い含Al一方向性珪素鋼板の製造方法)には、
短時間最終仕上焼鈍のN2 +H2 混合雰囲気中のN2
圧を2段階で制御する手法が開示されている。この技術
では、短時間最終仕上焼鈍後でB8 =1.945 Tの製品が
得られることが報告されている。このように、短時間最
終仕上焼鈍においてもゴス方位粒の方位分散を抑制する
手法はすでに開示されていると言える。
【0007】しかしながら、この技術の場合にも、短時
間最終仕上焼鈍後の鉄損値は極めて劣悪なものである。
そのため、この公報には、短時間最終仕上焼鈍後に箱焼
鈍を行うことにより、鉄損値を通常の方向性電磁鋼板の
レベルにまで低減する方法がさらに提案されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】つまり、大幅な製造方
法の合理化によるコストダウンの観点で短時間最終仕上
焼鈍を実用に足る技術とするためには、短時間最終仕上
焼鈍のみで少なくとも現行の汎用方向性電磁鋼板の鉄損
値のレベル(具体的には、板厚0.35mmでW17/50≦1.50W/
kg)にまで改善しなければならない。
【0009】長時間の箱焼鈍を行わずに短時間最終仕上
焼鈍のみで行う従来法においても、素材や熱処理条件を
選べば確かに磁束密度B8 は1.85T以上の製品が得られ
るものの、鉄損W17/50が0.35mm厚みの材料で2.0W/kg 程
度と高く、前述のEIコアや発電機の鉄心材料として使
用できないという課題があった。
【0010】このため、発明者らが磁束密度が高いのに
対して鉄損の劣化が顕著である原因について鋭意調査し
た結果、コイル状態での長時間箱焼鈍する従来法の場合
には、冷却が不可避的に極めて徐冷で行われていたた
め、上記冷却歪による鉄損への影響については問題とな
ることがなかったが、コイル状態での長時間箱焼鈍を行
わずに短時間最終仕上焼鈍のみで行う場合には、この焼
鈍の均熱保持後に行う冷却の際に発生する冷却歪が鉄損
W17/50に大きく影響することが判明した。
【0011】そこで、この発明の目的は、このような短
時間最終仕上焼鈍において生じる鉄損劣化の問題を解決
した方向性電磁鋼板の製造方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】この発明は、上記問題点
を解決するために、最終仕上焼鈍条件、特にその冷却条
件を改善したものであり、具体的には、Si:1.5 〜7.0
wt%を含有するけい素鋼素材を熱間圧延して熱延板と
し、その後、必要に応じて熱延板焼鈍を施したのち、1
回又は中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を行って最終
板厚に仕上げ、次いで、必要に応じて脱炭焼鈍を施した
のち、950 〜1200℃の温度範囲で均熱保持した後に冷却
する工程を含む短時間最終仕上焼鈍を行う方向性電磁鋼
板の製造方法において、短時間最終仕上焼鈍時の前記冷
却を、前記保持温度から少なくとも900 ℃までの温度範
囲までは25℃/s以下の平均冷却速度で行うこと特徴と
する方向性電磁鋼板の製造方法である。また、950 〜12
00℃の温度範囲で均熱保持する時間を10分間以下とする
こと、及び、前記冷却を行う際の鋼板に負荷する張力を
0.1 〜1.0kgf/mm2の範囲にすることが好ましい。
【0013】
【発明の実施の形態】次に、短時間最終仕上焼鈍のみで
行っても、箱焼鈍で行った場合と同様な低鉄損値が得ら
れる技術を見出すとともに、この発明を開発するに至っ
た実験について、以下に詳述する。
【0014】(実験1)短時間最終仕上焼鈍の均熱保持
後に行う冷却の際の平均冷却速度が磁気特性に及ぼす影
響を調べるための実験 C:0.035 wt%、Si:3.25wt%、Mn:0.067 wt%、Se:
0.017 wt%、Sb:0.022 wt%を含有する珪素鋼スラブを
1400℃の温度で15分間加熱後、熱間圧延を行なって板厚
2.5mm の熱延板とした。次に、この熱延板を1000℃で1
分間焼鈍した後、1.0mm まで冷間圧延し、この圧延板に
1000℃で1分間の中間焼鈍を施したのち、ミスト冷却
し、さらに冷間圧延にて最終板厚0.34mm厚に仕上げた。
その後、800 ℃の温度で2分間の脱炭焼鈍を行なってか
ら最終仕上焼鈍を行った。
【0015】最終仕上焼鈍は、1050℃で1分間均熱保持
後、3種類の異なる冷却条件:A)ガス冷却により、10
50℃から900 ℃までの冷却時の平均冷却速度を40℃/
s、900 ℃から400 ℃までの前記冷却速度を15℃/sと
する冷却条件、B)ガス冷却により、1050℃から900 ℃
までの冷却時の冷却速度を10℃/s、900 ℃から400 ℃
までの前記冷却速度を15℃/sとする冷却条件、C)ミ
スト冷却により、1050℃から900 ℃までの冷却時の冷却
速度を70℃/s、900 ℃から400 ℃までの前記冷却速度
を40℃/sとする冷却条件で冷却する焼鈍パターンで実
施した。尚、400℃から常温までの冷却は、いずれの場
合も40℃/sの冷却速度で行った。
【0016】最終仕上焼鈍時の前記冷却を上記冷却条件
で行ったときの電磁鋼板の磁気特性を測定したところ、
以下のような結果になった。
【0017】
【表1】
【0018】表1の結果から、短時間最終仕上焼鈍処理
材の磁気特性が前記冷却条件により大きく変化し、前記
冷却条件B)の場合に低鉄損値のものが得られた。
【0019】このため、発明者らがこの原因を調査した
ところ、鋼板中に存在する歪量が前記冷却条件により異
なってくること、特に、900 ℃以上の高温域での冷却に
おいて導入される冷却歪が最も鉄損を劣化させることが
判明するとともに、900 ℃以上の温度での冷却を徐冷で
行うことが必要であることを見出し、これをもとに、こ
の発明を完成させる至ったのである。
【0020】尚、これらの冷却条件でそれぞれ製造した
鋼板をマクロエッチして、2次再結晶組織を観察した
が、冷却条件A),B),C)の3種とも十分に2次再
結晶しており、組織に差異はなかった。これは、冷却条
件A),B),C)は2次再結晶終了後に適用している
ので当然の結果と言える。
【0021】(実験2)短時間最終仕上焼鈍時の均熱保
持後に行う冷却の際の鋼板に負荷する張力の磁気特性に
及ぼす影響を調べるための実験 同一条件で脱炭焼鈍を施した後の鋼板を用い、前記鋼板
に、1050℃で1分間均熱保持した後に冷却する短時間最
終仕上焼鈍を施した。このときの冷却の際に鋼板に負荷
する張力を0.05から1.50kgf/mm2 の範囲で変化させると
ともに、1050℃から900 ℃までの温度範囲で行う冷却の
平均冷却速度を10〜40℃/sの範囲で変化させ、このと
きの鉄損W17/50 の値を測定する実験を行なった。図1
に実験結果を示す。
【0022】図 1の実験結果から、1050℃から900 ℃ま
での温度範囲での冷却を25℃/s以下の平均冷却速度で
行ったときの電磁鋼板は、いずれも鉄損W17/50 の値が
実用レベルとほぼ等しい1.50W/kg程度又はそれよりも小
さいことが分かる。
【0023】また、前記冷却時の鋼板に負荷する張力
は、0.1 〜1.0kgf/mm2の範囲のときに1.50W/kgよりも小
さな鉄損値が得られていることが分かる。
【0024】以上の実験から、低鉄損を有する電磁鋼板
を得るには、高温域での冷却速度を制御することが極め
て重要であることがわかった。
【0025】尚、高温域での冷却速度を制御することに
よって低鉄損を実現できる理由としては、高温域では鋼
板の変形抵抗が低いために鋼板内部に冷却歪が導入され
やすく、これが、鋼板の180 ℃磁区構造を変えて鉄損を
劣化させるものと推測されるため、前記冷却速度を適正
に制御すれば鋼板内部に冷却歪が導入されにくくなるか
らと考えられる。
【0026】また、高温域における鋼板内部に冷却歪が
導入される場合としては、例えば、冷却時に、鋼板表面
の部位間で冷却速度の差異が生じる場合が考えられ、こ
の場合には、鋼板内部に部分的な引張もしくは圧縮応力
が作用することになり、高温域では鋼板の変形抵抗が低
いため、この変形力によって内部に加工歪が残留・蓄積
しやすくなり、結果として、鋼板内部に冷却歪が導入さ
れることになる。
【0027】さらに、鋼板に張力を付与して冷却するこ
とによって、より一層小さな鉄損値が得られる理由とし
ては、前記張力が鋼板内部に存在する応力分布を均一化
する方向に作用して、鋼板内部に冷却歪が導入されるの
を抑制する効果があるためと考えられる。
【0028】次に、この発明の鋼組成及び製造条件を上
記構成に限定した理由について以下に説明する。 (1) 上記鋼組成に限定した理由 Siは、製品の電気抵抗を高め渦電流損を低減させるため
に必要な成分であるため、この発明では、鋼中のSi含有
量を1.5 〜7.0 wt%にすることを必須の構成とする。即
ち、Si含有量が1.5 wt%未満では短時間最終仕上焼鈍中
にα−γ変態によって結晶方位が損なわれ、また、7.0
wt%を超えると冷延性に問題が生じるからである。
【0029】また、Cは、2次再結晶粒が蚕喰しにくい
とされている{100}面組織を、部分的な変態を利用
して低減することができる成分であり、鋼中に含有させ
ることが有利であるが、スラブ加熱を1300℃以下の温度
で行えば、結晶粒の粗大化が大幅に抑制されて{10
0}面組織が発達しなくなることから、鋼中にCを含有
させることは必ずしも必要ではない。
【0030】よって、1300℃以上の温度で高温スラブ加
熱を行う場合には、鋼中にCを含有させることが好まし
く、その場合のC含有量は、例えば0.02〜0.08wt%の範
囲にすることが{100}面組織の低減に有効である。
【0031】Niは、良好な一次再結晶組織を得るのに有
利な成分であり、鋼中に含有させてもよい。但し、Ni含
有量は、0.01wt%未満では、一次再結晶組織の改善効果
が認められなくなり、一方、0.50wt%超えでは、その改
善効果が飽和し、工業的にはコストの面から不利とな
る。従って、Ni含有量は0.01〜0.50wt%の範囲にするこ
とが好ましい。
【0032】さらに、方向性電磁鋼板の製造にはインヒ
ビターを用いることが望ましいが、例えば、100 μm 厚
等の板厚の薄い鋼板の場合には、結晶粒毎の表面エネル
ギーの差を駆動力として2次再結晶させることができる
ため、鋼中にインヒビターを含有させることは必ずしも
必要ではない。
【0033】また、この発明は、その性質上、上述した
実験や後述する実施例に示すように、特にインヒビター
の種類や有無を限定するものではないが、ここでは、一
例として、一般的なMnおよびS,Seの量、Al及びNの量
並びに粒界偏析型インヒビターについて述べる。
【0034】Mn並びにS及びSeの1種又は2種は、イン
ヒビターとして機能するものであるが、Mn含有量が0.03
wt%未満又はS及びSeの含有量を単独又は合計で0.005
wt%未満の場合にはインヒビター機能が不十分であり、
また、Mn含有量が0.20wt%を超え、又はS及びSeの含有
量が単独又は合計で0.050 wt%を超えると、スラブ加熱
のために必要とされる温度が高くなりすぎたり、短時間
焼鈍での純化不良による磁性劣化が顕著となり、実用的
ではない。従って、Mn含有量は0.03〜0.20wt%の範囲、
S及びSeの1種又は2種の含有量は単独又は合計で0.00
5 〜0.050 wt%の範囲にするのが好ましい。
【0035】AlおよびNは、AlNをインヒビターとする
場合に重要であり、Alの含有量は0.005 〜0.050wt %の
範囲とすることが好ましい。即ち、Al含有量が前記範囲
よりも少ないと磁束密度は低くなり、一方、前記範囲よ
りも多いと2次再結晶が不安定になる傾向があるからで
ある。
【0036】また、N含有量は0.002 wt%未満ではイン
ヒビターとしてのAlN量が不足しがちであり、一方、0.
012 wt%を超えると製品にブリスターが発生したり、短
時間焼鈍での純化不良により磁性が劣化する傾向があ
り、実用的ではなくなる。従って、N含有量は0.002 〜
0.012 wt%の範囲にすることが好ましい。
【0037】さらに、粒界偏析型インヒビターとして粒
界偏析元素(例えば、SbやSn)を鋼中に含有させること
もできる。
【0038】Sbは、磁束密度を向上させるために有効な
成分である。Sb含有量は、0.20wt%を超えると脱炭性が
悪くなり、一方、0.01wt%未満では磁束密度を向上させ
る効果が認められなくなるので0.01〜0.20wt%の範囲に
することが好ましい。
【0039】また、Snは、2次再結晶粒の細粒化による
鉄損の改善のために有効な成分である。Sn含有量は、0.
20wt%を超えると脱炭性が悪くなり、0.02wt%未満では
鉄損特性を向上させる効果が認められなくなるので0.02
〜0.20wt%が好ましい。尚、上述したところは、この発
明の鋼組成の一例を示したにすぎず、一般的な方向性電
磁鋼板用の素材成分であり、Si含有量が1.5 〜7.0 wt%
の範囲であれば、他のいかなる成分を含有する鋼素材で
あってもこの発明に適用することが可能である。
【0040】(2) 上記製造条件に限定した理由 次に、この発明が上記製造条件に限定した理由について
以下で説明する。この発明の方向性電磁鋼板の製造方法
においては、通常行われている製鋼法によって上述した
成分を含有する溶鋼に調製し、かかる溶鋼を連続鋳造法
あるいは造塊法で鋳造し、必要に応じて分塊圧延工程を
挟んでスラブを得、このスラブをガス燃焼炉や誘導加熱
炉などにより1300℃を超える高温スラブ加熱または1300
℃以下の低温スラブ加熱を施したのち、熱間圧延を施
す。
【0041】この後、必要に応じて熱延板焼鈍を施し、
一回もしくは中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延により
最終板厚の冷延板とする。最終冷延の後は、必要に応じ
て脱炭焼鈍を行ない、950 〜1200℃の温度範囲内に保持
した後に冷却する工程を含む短時間最終仕上焼鈍を施
す。
【0042】尚、ここでいう短時間最終仕上焼鈍とは、
具体的には、熱処理中に異常粒成長を惹起させ、結晶組
織を(110)〔001〕や(100)〔001〕など
の結晶方位に集積させるための焼鈍をいい、特に短時間
最終仕上焼鈍とは、具体的には、昇温、均熱、冷却を含
めた焼鈍を30分以内の熱処理時間で行うことを意味す
る。
【0043】また、この発明では、短時間最終仕上焼鈍
における均熱保持温度は950 〜1200℃の範囲に設定する
必要がある。即ち、前記保持温度が950 ℃未満では、2
次再結晶の完了率が極めて低くなり十分な磁気特性が得
られなくなるからであり、一方、1200℃超えでは工業的
に困難だからである。
【0044】さらに、前記保持時間としては、下限は特
に無く、充分な徐熱昇温により950〜1200℃の温度域に
到達させて2次再結晶を完了させることも可能である
が、前記保持時間が10分を超える場合には、短時間最終
仕上焼鈍として工業的に成立しにくくなるため、950 〜
1200℃の温度範囲での保持時間を10分以下とすることが
好ましい。
【0045】尚、ここでいう保持時間とは、短時間最終
仕上焼鈍において、材料に応じて決定された900 〜1200
℃の間のある温度での保持時間をいうこととする。
【0046】この発明では、短時間最終仕上焼鈍の冷却
速度を制御すること、具体的には950 〜1200℃の温度範
囲に保持した後に行う冷却を、均熱保持温度から少なく
とも900 ℃までの温度範囲で25℃/s以下の平均冷却速
度で行うことが必要である。
【0047】尚、ここでいう平均冷却速度とは、均熱保
持温度と900 ℃の温度差を、均熱保持終了から900 ℃ま
で冷却するのに要した時間で除した冷却速度を意味す
る。
【0048】前記冷却時の平均冷却速度の制御範囲を、
均熱保持温度から少なくとも900 ℃までの温度範囲に限
定したのは、特に900 ℃以上のような高温赤熱状態にお
いては、鋼板の変形抵抗が低下しているため、冷却状態
の不均一による局所的な引張や圧縮による変形が鋼板内
部に蓄積しやすく、かかる場合に、前記保持温度から少
なくとも900 ℃までの冷却を25℃/sよりも大きな平均
冷却速度で行うと、格子欠陥などの結晶格子の乱れが保
持されたまま冷却されることになり、これによって鉄損
が著しく劣化するからである。
【0049】また、この発明では、900 ℃未満の温度域
での平均冷却速度については特に限定はしないが、上述
したことからも明らかなように、前記保持温度から少な
くとも900 ℃までの温度範囲の場合と同様に、平均冷却
速度を25℃/s以下にすることが好ましい。
【0050】さらに、この発明では、短時間最終仕上焼
鈍の前記冷却の際に鋼板に負荷する張力を、0.1 〜1.0k
gf/mm2の範囲に制御すれば、鋼板内部に引張応力が作用
し、冷却時の応力分布を均一化する方向に作用し、この
結果としてより一層の鉄損の改善効果が得られる。
【0051】加えて、前記冷却の際の鋼板に温度のばら
つきがあると、鋼板内に熱膨張差による残留歪の発生が
増加することになり、この結果、鉄損が劣化するおそれ
がある。
【0052】このため、前記冷却の際の鋼板温度は、そ
の板幅方向の温度のばらつきを最大でも50℃以内に制御
することが良好な鉄損を得る上で好ましい。
【0053】また、前記冷却の際の雰囲気露点が20℃を
超えると、短時間最終仕上げ焼鈍後に、鋼板の表面近傍
の凹凸が増大したり、析出物が生成したりして、鉄損の
劣化を招く可能性があるため、前記冷却の際の雰囲気露
点は20℃以下の範囲にすることが望ましい。尚、前記雰
囲気露点を20℃以下の範囲に制御することは、次工程の
コーティング処理の密着性を確保する上でも有利であ
る。
【0054】そして、短時間最終仕上焼鈍を行ったあ
と、製品の用途に応じて無機系の張力コーティングや、
無機系、有機系および半有機系のコーティングを施して
製品とする。
【0055】以上のことから、この発明の製造方法は、
上記鋼組成及び上記製造条件を採用することによって、
短時間最終仕上焼鈍のみで行っても、箱焼鈍で行った従
来法の場合と同様に、低鉄損を有する方向性電磁鋼板を
製造することができる。
【0056】尚、この発明における前記冷却制御技術
は、上述したことからも明らかなように、特開昭49−98
721 号公報に記載の、900 〜400 ℃の温度域の冷却速度
制御によって微細析出物のサイズを制御して無害化する
技術とは全く異なるものである。
【0057】
【実施例】次に、この発明の製造方法によって方向性電
磁鋼板を製造し、磁気特性について評価したので以下に
説明する。
【0058】〔実施例1〕表2に示す方向性けい素鋼ス
ラブ素材Aを1380℃で加熱後、熱間圧延を行なって板厚
2.6mm の熱延板とした。この熱延板を1000℃で1分間焼
鈍した後、中間厚を0.90mmとする2回冷延法によって最
終板厚0.34mmに仕上げた。このときに行う中間焼鈍温度
は950 ℃とした。次いで820 ℃で3分間の脱炭焼鈍を行
なった後、1050℃で3分間の短時間最終仕上焼鈍を行っ
た。
【0059】最終仕上焼鈍における冷却は、表3に示す
ように1050℃から900 ℃の温度範囲での平均冷却速度、
冷却時に鋼板に負荷する張力、板温の幅方向のばらつき
及び雰囲気露点を変化させた9種の条件1〜9で行っ
た。また、900 ℃未満の温度域については、N2 ガス冷
却により室温まで25〜23℃/sの平均冷却速度で冷却し
た。但し、条件9については、900 〜400 ℃の平均冷却
速度を10℃/s、400 ℃未満の平均冷却速度を40℃/s
とし、これを従来例とした。
【0060】かくして得られた製品の磁気特性(500gエ
プスタイン試片による評価)を測定した結果を表3に示
す。
【0061】
【表2】
【0062】
【表3】
【0063】表3の結果から、発明例では、いずれも磁
束密度及び鉄損の良好な製品が得られている。
【0064】〔実施例2〕表4に示す鋼組成を有する方
向性けい素鋼スラブB〜Iを表4に記載したスラブ加熱
温度で加熱した後、熱間圧延を行なって板厚2.6mm の熱
延板とした。この熱延板を1000℃で1分間焼鈍した後、
一回冷延法又は二回冷延法によって最終板厚0.34mm(鋼
Fについては最終板厚0.15mm)に仕上げた。尚、2回冷
延法の場合の中間厚は表4に示し、また、中間焼鈍温度
は1000℃とした。次いで、鋼B〜Hについては、820 ℃
で3分間の脱炭焼鈍を行ない、鋼Iについては、脱炭焼
鈍を省略した。そして、その後に1150℃で1分間の短時
間最終仕上焼鈍した。このときの冷却条件は、コイルを
前半部(枝番1)と後半部(枝番2)とに分けた前半部
では、この発明に従い1150℃から900 ℃までの温度範囲
を15℃/sにて冷却し、後半部では、前記温度範囲を35
℃/sにて急冷した。
【0065】尚、冷却時に鋼板に負荷する張力は0.4kgf
/mm2(一定)とした。また、板の幅方向の温度分布は、
冷却用のガススプレーノズルの取り付け間隔を密に改造
することによって、25℃以内に制御した。さらに、今回
の冷却の雰囲気は、窒素100%雰囲気とし、雰囲気露点
を−20℃とした。
【0066】かくして得られた製品の磁気特性(500gエ
プスタイン試片による評価)を測定した結果を表5に示
す。
【0067】
【表4】
【0068】
【表5】
【0069】表5の結果から、本発明例では、いずれも
磁束密度及び鉄損の良好な製品が得られている。
【0070】
【発明の効果】この発明によれば、短時間最終仕上焼鈍
時の前記冷却を、前記保持温度から少なくとも900 ℃ま
での温度範囲までは25℃/s以下の平均冷却速度で行う
ことにより、長時間の箱焼鈍を経て製造される方向性け
い素鋼板とほぼ同等な鉄損特性を有する方向性けい素鋼
板を短時間最終仕上焼鈍処理で得ることができ、このよ
うな工程の合理化により格段の低コスト化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】最終仕上焼鈍の冷却の際に鋼板に負荷する張力
と、1050℃から900 ℃までの冷却速度とを変化させたと
きの鉄損W17/50 の値をプロットした図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 黒沢 光正 岡山県倉敷市水島川崎通1丁目(番地な し) 川崎製鉄株式会社水島製鉄所内 (72)発明者 小松原 道郎 岡山県倉敷市水島川崎通1丁目(番地な し) 川崎製鉄株式会社水島製鉄所内 Fターム(参考) 4K033 AA02 BA01 BA02 CA02 CA03 FA01 FA12 HA03 JA04 MA00 PA09 5E041 AA02 AA11 CA02 HB05 HB07 HB11 NN01 NN17 NN18

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Si:1.5 〜7.0 wt%を含有するけい素鋼
    素材を熱間圧延して熱延板とし、その後、必要に応じて
    熱延板焼鈍を施したのち、1回又は中間焼鈍を挟む2回
    以上の冷間圧延を行って最終板厚に仕上げ、次いで、必
    要に応じて脱炭焼鈍を施したのち、950 〜1200℃の温度
    範囲で均熱保持した後に冷却する工程を含む短時間最終
    仕上焼鈍を行う方向性電磁鋼板の製造方法において、 短時間最終仕上焼鈍時の前記冷却を、前記保持温度から
    少なくとも900 ℃までの温度範囲までは25℃/s以下の
    平均冷却速度で行うこと特徴とする方向性電磁鋼板の製
    造方法。
  2. 【請求項2】 950 〜1200℃の温度範囲で均熱保持する
    時間を10分間以下とすることを特徴とする請求項1記載
    の方向性電磁鋼板の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記冷却を行う際の鋼板に負荷する張力
    を0.1 〜1.0kgf/mm2の範囲にすることを特徴とする請求
    項1又は2記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
JP10212654A 1998-07-28 1998-07-28 方向性電磁鋼板の製造方法 Withdrawn JP2000045023A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP10212654A JP2000045023A (ja) 1998-07-28 1998-07-28 方向性電磁鋼板の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP10212654A JP2000045023A (ja) 1998-07-28 1998-07-28 方向性電磁鋼板の製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2000045023A true JP2000045023A (ja) 2000-02-15

Family

ID=16626212

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP10212654A Withdrawn JP2000045023A (ja) 1998-07-28 1998-07-28 方向性電磁鋼板の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2000045023A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US9761360B2 (en) Method of manufacturing grain oriented electrical steel sheet
KR101498404B1 (ko) 방향성 전기 강판의 제조 방법
JP5779303B2 (ja) 高透磁率方向性電磁鋼材
JP5564571B2 (ja) 低鉄損高磁束密度方向性電磁鋼板及びその製造方法
WO2012001952A1 (ja) 方向性電磁鋼板およびその製造方法
JP6813143B1 (ja) 方向性電磁鋼板の製造方法
JP6856179B1 (ja) 方向性電磁鋼板の製造方法
KR100779579B1 (ko) 철손이 낮고 자속밀도가 높은 무방향성 전기강판의제조방법
JP2012177162A (ja) 方向性電磁鋼板の製造方法
JP5434524B2 (ja) 方向性電磁鋼板の製造方法
JPH04173923A (ja) 磁気特性、皮膜特性ともに優れた一方向性電磁鋼板の製造方法
JP6003321B2 (ja) 方向性電磁鋼板の製造方法
JPH08100216A (ja) 磁気特性に優れる一方向性珪素鋼板の製造方法
JPH08134551A (ja) 鉄損及び磁歪特性の優れた一方向性電磁鋼板の製造方法
JP6137490B2 (ja) 一次再結晶集合組織の予測方法および方向性電磁鋼板の製造方法
JP5846390B2 (ja) 方向性電磁鋼板の製造方法
KR101263795B1 (ko) 저철손 고자속밀도 방향성 전기강판과 그 제조방법 및 여기에 사용되는 방향성 전기강판 슬라브
JP2000045023A (ja) 方向性電磁鋼板の製造方法
JP2013234342A (ja) 磁区細分化処理方法および方向性電磁鋼板
JP2000038616A (ja) 側歪の少ない方向性けい素鋼板の製造方法
JPH10273727A (ja) 高磁束密度一方向性電磁鋼板の製造方法
KR100890812B1 (ko) 철손이 낮고 자속밀도가 높은 무방향성 전기강판의제조방법
JP2000045024A (ja) 方向性電磁鋼板の製造方法
KR101459730B1 (ko) 방향성 전기강판 및 그 제조방법
JP3061515B2 (ja) 極めて低い鉄損をもつ一方向性電磁鋼板の製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A300 Withdrawal of application because of no request for examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300

Effective date: 20051004