JP2000001763A - 炭化物サーメット溶射材料, その被覆部材およびその部材の製造方法 - Google Patents

炭化物サーメット溶射材料, その被覆部材およびその部材の製造方法

Info

Publication number
JP2000001763A
JP2000001763A JP10183253A JP18325398A JP2000001763A JP 2000001763 A JP2000001763 A JP 2000001763A JP 10183253 A JP10183253 A JP 10183253A JP 18325398 A JP18325398 A JP 18325398A JP 2000001763 A JP2000001763 A JP 2000001763A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
carbide
particles
thermal spray
carbide cermet
sprayed
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP10183253A
Other languages
English (en)
Other versions
JP3410025B2 (ja
Inventor
Yoshio Harada
良夫 原田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Tocalo Co Ltd
Original Assignee
Tocalo Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Tocalo Co Ltd filed Critical Tocalo Co Ltd
Priority to JP18325398A priority Critical patent/JP3410025B2/ja
Publication of JP2000001763A publication Critical patent/JP2000001763A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3410025B2 publication Critical patent/JP3410025B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Coating By Spraying Or Casting (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 刃物や精密金型などの鋼鉄製基材のエッジ部
補強のために炭化物系サーメット溶射皮膜を利用する技
術を確立すること。 【解決手段】 一次粒子径 0.1〜3μmの炭化物サーメ
ット粉末を、造粒法によって粒径5〜60μmの溶射用粉
末を調整する。この溶射用粉末を可燃性ガスの燃焼炎を
熱源とする溶射法によって、粉末粒子の飛行速度を秒速
180 m/sec以上の条件で成膜し、皮膜を構成する炭化物
系粒子の相互間隔が2.12〜5.05μmの範囲を示す、緻密
で粒子間結合力の強い皮膜を形成させる。この皮膜を機
械加工によって切断し、その端面が鋭角を示し、かつエ
ッジ部のRが50μm以下になるように仕上げる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】本発明は、炭化物サーメット溶射材料、お
よび鋭利な仕上げ角に機械研削することが可能な炭化物
サーメット溶射皮膜を被覆した部材とそのような部材の
製造方法に関するものであり、とくに各種プラスチッ
ク, 紙類, 皮革などの製品や軟質金属シート, 箔などを
切断するために用いられる刃物, 精密金型, 押出し成型
用スクリューシャフト, ダイスあるいは口金類などの機
械要素への, とりわけ角部の表面被覆技術について提案
する。
【0002】
【従来の技術】一般に溶射法は、金属 (合金を含む) ,
セラミック, サーメットなどの粉末材料を、プラズマや
可燃性ガスの燃焼エネルギーにより溶融し、これを基材
表面に吹き付けて溶射皮膜を形成することにより、その
基材表面を改質するための技術として、産業界で広く利
用されている。たとえば、金属, 合金類の溶射皮膜は、
鋼構造物の防錆, 防食用として、また、ボイラ, ガスタ
ービン, 熱処理炉などに用いられる高温被曝部材に対す
る耐熱性の付与, 耐高温酸化性の付与のために用いられ
ている。一方、酸化物系セラミックについては、電気絶
縁用 (Al2O3 ) ,耐熱性 (ZrO2) 用として、また炭化物
系セラミックについては、Ni, Co, Crなどの金属質を含
むサーメットの形態で、主として耐摩耗性皮膜として用
いられている。
【0003】しかし、従来の溶射皮膜は主として、部材
の平面における機能を改善する目的で施工されたもので
あって、たとえば部材の角部やエッジ部を補強すべく該
溶射皮膜を鋭角的に機械加工して使用するような工業的
施工例はない。例えば、代表的な硬質炭化物サーメット
材料のWC−Co溶射皮膜は、特公平7−26188 号公報や特
開平1−87006 号公報に開示されるように、部材平面部
分の耐摩耗性および軟質非鉄金属の凝着防止用として、
また、特開平1−225761号公報記載のものは部材平面部
分の耐溶融金属侵食性を改善するものとして利用されて
いるにすぎない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】以上説明したように、
今までのところ溶射皮膜というのは、各種部材の表面と
くに平面部分, 即ち“面”の耐熱性, 耐食性あるいは耐
摩耗性などを改善すべく利用しているが、部材の角部
(以下、エッジ部という) における機能を改善するもの
としては考慮していないのが実情である。
【0005】本発明の主たる目的は、刃物や精密金型な
どの鋼鉄製基材のエツジ部補強のために炭化物系サーメ
ット溶射皮膜を利用する技術を確立することにある。本
発明の他の目的は、機械加工して得られる溶射皮膜の角
部をより鋭利に仕上げて、たとえば刃物の刃先としても
利用できるようにするための溶射材料とその被覆部材な
らびにその製造方法を提案することにある。すなわち、
本発明は、硬質の炭化物サーメット溶射皮膜を形成した
後、この皮膜を機械加工によって切断, 研磨してエッジ
部を形成し、そしてこのエッジ部の丸みR(JIS B0701,
機械部分の丸み規定に準拠) が50μm以下となるように
仕上げ、このことにより切れ味がよく耐摩耗性に優れる
刃物として、また、高い精度が要求される精密金型やダ
イスあるいはプラスチック類の射出成形用口金材のエッ
ジ部仕上げ用部材として好適に用いられる溶射被覆部材
とその有利な製造方法とを提案しようとするものであ
る。
【0006】
【課題を解決するための手段】上掲の目的を実現すべく
鋭意研究した結果、発明者らは、次に示すような要旨構
成にかかる課題解決手段に想到した。即ち、本発明は第
1に、粒子径が0.1 〜3μmの、WC, Cr3C2, B4C, TiC,
ZrCおよびNbC から選ばれる1種以上の炭化物と、Ni,
Cr, CoおよびMoのうちから選ばれる1種以上の金属また
はこれらの合金とからなる炭化物サーメットの一次粒子
を、バインダー介在の下に造粒して、粒子径5〜60μm
の大きさに凝集させた凝集粒子によって構成される炭化
物サーメット溶射材料を提案する。
【0007】本発明はまた、鋼鉄製基材の表面が、[0
006]に記載の炭化物サーメット溶射材料を溶射して
得られる溶射皮膜にて被覆され、かつその溶射皮膜の部
分を機械加工して形成される角部は、その丸みRが50μ
m以下に仕上げられていることを特徴とする炭化物サー
メット溶射被覆部材を提案する。
【0008】なお、本発明において、上記炭化物サーメ
ット溶射皮膜は、炭化物系分散粒子および金属マトリッ
クスにて構成され、かつ金属マトリックス中の前記炭化
物系分散粒子は相互の間隔 (λ) が2.12〜5.05μmの範
囲内で分散していることが好ましい構成である。
【0009】さらに本発明は、鋼鉄製基材の表面に、温
度:2000℃〜3000℃の可燃性ガス燃焼炎を熱源とする溶
射法によって、炭化物サーメット溶射材料を秒速180m以
上の飛行速度で衝突させることにより、金属マトリック
ス中に炭化物系分散粒子を相互間隔 (λ) が2.12〜5.05
μmとなる範囲内で分散させてなる炭化物サーメット溶
射皮膜を形成し、この溶射皮膜の部分を角部の丸みRが
50μm以下となるように機械加工を施すことを特徴とす
る炭化物サーメット溶射被覆部材の製造方法である。
【0010】なお、上記の製造方法において、炭化物サ
ーメット溶射材料は、粒子径が0.1〜3μmの、WC, Cr3
C2, B4C, TiC, ZrCおよびNbC から選ばれる1種以上の
炭化物と、Ni, Cr, CoおよびMoのうちから選ばれる1種
以上の金属またはこれらの合金とからなる炭化物サーメ
ットの一次粒子を、バインダー介在の下に造粒して、粒
子径5〜60μmの大きさに凝集させた凝集粒子によって
構成されたものを用いることが好ましい構成である。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、まず本発明を開発するに至
った経緯から説明する。一般に、鋼製刃物や金型の如き
鋼鉄製基材の表面を改質するには、硬質の炭化物あるい
は炭化物サーメットの溶射皮膜を形成する方法がよく知
られている。その炭化物サーメットの代表的なものは、
TiC, ZrC, HfC, VC, TaC, NbC, WC, B4C, SiC あるいは
Cr3C2 などの少なくとも1種以上からなる炭化物と、N
i, Co, Cr, あるいはMoなどの少なくとも1種以上から
なる金属, 合金 (以下、合金も含めて金属という) を添
加したものが用いられている。しかし、これらの炭化物
サーメットを用いて成膜した溶射皮膜は、耐摩耗性には
優れるものの、単にこの溶射皮膜を機械加工, 例えば切
断や研磨をしただけでは、セラミックスであるゆえに角
部の形状を丸みR表示で50μm以下を示すように鋭利に
仕上げることはできない。
【0012】発明者らは、この原因について研究した結
果、次のような事実を知見した。即ち、もともと溶射皮
膜は微粒子が積層堆積した集合体が層を形造っているた
め、これを機械加工によって切断したり、切断部を平滑
に研磨すると、該皮膜に大きな負荷を強いる結果とな
り、溶射粒子が局部的に脱落する現象が頻発する。特
に、セラミック溶射皮膜を機械研削して角部を成形しよ
うとすると、その角部の丸みRが必然的に100 μm超と
いうブロードな仕上がりにしかならず、まして刃先にも
なるような鋭利なエッジを成形することはできなかった
のである。
【0013】そこで改めて、本発明の目的とする刃物や
精密金型等のエッジ部部材用としての炭化物サーメット
溶射皮膜について、次のような項目について検討した。 (1) 溶射熱源:プラズマや可燃性ガス (含液体燃料) 燃
焼炎の優劣を検討すること、(2) 溶射粒子の飛行速度:
上記熱源中を飛行している溶射材料粒子の飛行速度 (10
0 〜350 m/sec)をレーザ速度計により測定し、好適速度
を見つけること、(3) 溶射材料の種類と粒子径:WC, Cr
3C2, B4C, TiC, ZrC, NbC に、Ni, Co, Cr, Moの1種以
上を添加した炭化物サーメット材料の好適粒子径(5〜60
μm) を見つけること、(4) 溶射皮膜の機械加工性と角
部の仕上り性:機械研削やダイヤモンド研磨により仕上
げたエッジ部特性を検討すること、
【0014】以上の項目について実験を重ねた結果、本
発明の溶射皮膜が目指す所定の効果を得るには、次のよ
うな条件を採用することが必要であることが判明した。 (1) 溶射熱源としては、プラズマジェットは高温が得ら
れるため炭化物の溶融には適しているが、溶射環境にお
いては炭化物の分解, 酸化反応が激しく、緻密な溶射皮
膜は形成できない。むしろ、熱源温度は2000℃〜3000℃
程度であっても、可燃性ガスの燃焼炎やその爆発エネル
ギーを利用する方が炭化物の変質が少なく、本発明の目
的とする皮膜が得やすいことがわかった。 (2) 溶射粒子の飛行速度としては、180 m/sec 以上の高
速が必要であり、それより低い速度では溶射皮膜中に気
孔が多くなるうえ、粒子間結合力も不十分で、機械加工
を行うと脱落する粒子が目立ち、鋭角仕上げはできない
ことがわかった。 (3) 溶射材料としては、供試した炭化物, 金属成分のす
べてについて満足する結果が得られたが、金属成分含有
量を5〜35wt%の範囲に調整する必要があることがわか
った。というのは、金属成分が5wt%より少なければ皮
膜が脆弱となる結果、溶射した二次の凝集粒子の一部が
機械加工時に局部的に脱落する現象があり、また35wt%
より多い金属成分を含む溶射皮膜は硬度が低下して耐摩
耗性の点で問題となるほか、後述するように、該皮膜を
構成する炭化物系分散粒子の相互間隔が大きくなりすぎ
るため、本発明の目的を達成することができないことが
わかった。 (4) 溶射材料は、上記炭化物 (複合炭化物, 炭化物系金
属間化合物を含む) サーメットが好適であり、このサー
メットの二次の凝集粒子を用いることが必要であり、そ
の凝集した粒子径が5〜60μmの範囲の大きさのものが
よい。この凝集粒子というのは、炭化物系サーメットを
粉砕して得た0.1 〜3μmの大きさの一次微粒子を、液
状の有機質高分子材料の如きバインダーを介して造粒し
て得た二次粒子, 即ち凝集粒子にて構成したものが最適
であることがわかった。この理由は、二次の凝集粒子が
60μmより大きい粒子では、溶射熱源中で十分に加熱さ
れないため密度が低く、そのうえ粒子間結合力の弱い溶
射皮膜しか形成できない。一方、二次の凝集粒子が5μ
mよりも小さい粒子径では、溶射ガンへの供給が困難に
なるほか、成膜速度が遅く、生産性の点で問題がある。
【0015】以上説明したように、5〜60μmの凝集粒
子を、0.1 〜3μm程度の微粒子を用いて造粒法によつ
て形成すれば、溶射ガンへの供給が円滑となるうえ、熱
源中における昇温も十分得られ、さらに形成された溶射
皮膜も緻密で良好な密着性と粒子間結合力を有し、機械
加工による鋭角仕上げにも十分耐える性状の溶射皮膜が
得られるようになる。
【0016】図1は、本発明の目的に適う溶射 (粉末)
材料の電子顕微鏡写真を示したものである。この材料
は、微細な88wt%WC−12wt%Coの一次粒子を用い、これ
をバインダーを介した造粒法によって粒径10〜60μmの
範囲に調整した凝集粒子の例である。
【0017】また、図2は、プラズマなどを用いた溶融
法によつて製造した、88wt%WC−12wt%Co溶射 (粉末)
材料の外観写真を示したもので、一次粒子が凝集したも
のではなく、溶融結合した単一の中実状粒子であって、
これは出発材料 (一次粒子)と、たとえ化学組成, 粒径
が同一であっても、一次粒子の凝集体ではない故に、本
発明の目的とする溶射皮膜を形成することはできないも
のである。
【0018】図3は、本発明の溶射材料、溶射条件で形
成された溶射皮膜の表面を観察し、これを模式的に示し
たものである。すなわち、微細な一次粒子1の周囲に金
属成分2がバインダーとして存在するが、本発明にかか
る溶射皮膜については、一次粒子が非常に小さく、その
うえ、高速の飛行速度で衝突して成膜されているため、
粒子の相互間隔が非常に小さいという特徴がある。
【0019】なお、本発明において、上記凝集粒子を溶
射することによって成膜された際の溶射皮膜の性状は、
金属マトリックス中に分散して存在している炭化物粒子
が次のような条件、とくに炭化物の分散した粒子の分散
状態、即ち粒子間隔を好適範囲にすることが必要であ
る。その粒子の相互間隔λは、次のようにして求めた。
電子顕微鏡視野下で任意の直線Lx によって切り取られ
る単位長さ当たりの炭化物粒子数をNL , 任意の単位面
積内に含まれる炭化物粒子の数をNS とすると、 λ= (1−f)/NL ……(1) 但し、fは炭化物粒子の体積分率、また炭化物の平均粒
径dm とすると、dm, fはそれぞれ次のようにして求
められる。 dm =(4/π) (NL /NS ) ……(2) f =(8/3π) (N2 L /NS ) ……(3)
【0020】本発明にかかる部材の表面に被覆する炭化
物サーメット溶射皮膜は、実施例3として後で詳述する
ように、上記式(1) を用いて算出した数字λが、2.12〜
5.05μmの範囲にあるものが好適であり、このような溶
射皮膜であれば、機械加工によって該皮膜を鋭角に切断
研磨することができることがわかった。上記間隔λが2.
12μmより小さい溶射皮膜は、溶射プロセスのみでは製
造が困難であり、一方、λが5.05μmより大きい溶射皮
膜では、硬度が低く耐摩耗性に乏しいうえ、皮膜を機械
加工した際の角部丸みRが50μm以下になるように仕上
げることは難しくなる。また、たとえ丸みRを50μm以
下に仕上げることができたとしても、耐摩耗性に乏しい
ため、使用中に短時間でエッジ部が丸みを帯びる欠点が
あるので好ましくない。
【0021】
【実施例】実施例1 本実施例では、溶射材料としてWC−Ni・Crサーメットを
選定し、溶射熱源としてガスプラズマ (Ar) と可燃性ガ
スの燃焼炎 (エチレン・アセチレン混合ガスを酸素で50
MPa の加圧燃焼) を用い、炭素鋼 (SS400)上へ 200μm
厚に成膜した後、それぞれの溶射皮膜の気孔率, 密着力
および皮膜のX線回折を行って、溶射材料成分の高温被
曝に伴う酸化, 分解の様子を調べた。この実施例で使用
したWC−Ni・Crサーメットは、図1に示したように、0.
5 〜3μmの微粒子を有機質バインダーを添加してペレ
タイザーにて造粒し、粒径10〜35μmの範囲に調整した
凝集粒子と、プラズマ熱源によって10〜40μmに溶融球
状化した溶融中実状粒子の2種類である。
【0022】表1は、以上の結果を要約したものであ
る。この表1に示す結果から明らかなように、プラズマ
を熱源とした溶射法によつて形成された溶融中実状粒子
を用いて形成した溶射皮膜は、燃焼炎を熱源とするもの
に比較し、多孔質 (3〜8%)で密着力が小さく (50〜6
0MPa)、そのうえ高温のプラズマガスによってWCの酸化
・分解 (例えば、W2C, W3Co3C など) の生成が顕著であ
った。なお、このような傾向は本発明に適合する造粒法
によって製造された凝集粒子からなる溶射皮膜より、プ
ラズマによって溶融造粒された中実状粒子からなる溶射
皮膜の方が強く認められた。この点、本発明に適合する
方法で成膜された溶射皮膜は、緻密で粒子間結合力が強
く、機械加工によって角部を鋭角に仕上げることが可能
であることがわかった。
【0023】
【表1】
【0024】実施例2 この実施例では、溶射材料として溶融法 (中実状粒子)
と造粒法 (凝集粒子)の2種類の方法で製造した炭化物
サーメット粒子:WC−12wt%Coを用い、可燃性ガスの燃
焼炎を熱源とする溶射法によって、溶射粒子の飛行速度
を燃料の供給圧力を調整しつつ 100〜350 m/sec の範囲
で、鋼ブロック (50mm×50mm×100 mm)のコーナー部に
溶射した例である。図4(a) は、鋼ブロックに対する溶
射皮膜の形成順序を示したものである。先ずこの鋼ブロ
ックのコーナ−部を含め、aの位置に50μm厚、次にb
の位置に50μm厚、最後にcの位置に30μm厚の溶射皮
膜を形成するプロセスを1回として、3回繰返した。次
に、上記溶射皮膜 (a,b,c)を成膜した鋼ブロック
を機械加工用試験片として、ダイヤモンド工具を用い
て、図4(b) のように、膜厚100 μmの研削皮膜(d) に
仕上げた後、加工した皮膜のエッジ部eを拡大鏡で観察
するとともに、仕上げたエッジ部eの丸みRを光学的に
測定した。
【0025】表2は、以上の結果をまとめたものであ
る。この表に示す結果から明らかなように、溶融法によ
って製造された中実状粒子を溶射した皮膜 (No.1〜6 )
は、すべて加工したエッジ部eに微小な粒子の欠落部が
観察された。これに対し造粒法でつくられた凝集粒子を
溶射した皮膜では、溶射粒子の飛行速度が遅い場合 (N
o. 7 〜10) には、エッジ部に粒子の欠落が認められた
が、180 m/sec 以上の高速の飛行粒子によつて形成され
た溶射皮膜のエッジ部eでは、全く粒子の欠落は見られ
ず、また加工されたエッジ部eの丸みRは50μm以下に
仕上げられていることが確認された。この表2に記載し
たNo.13 試験片は、高速度工具鋼(SKH2)を用いて、機械
加工したエッジ部の観察結果を参考のため付記したもの
である。
【0026】
【表2】
【0027】実施例3 この実施例は、実施例2の実験で得られた溶射試験片
(表2記載のNo. 7〜12) の機械加工後の表面を電子顕
微鏡によって観察し、さきに図3に示した手法によって
炭化物サーメット溶射皮膜中の炭化物分散粒子の相互間
隔λを測定した。図5はこの結果をまとめたものであ
る。この図に示す結果から明らかなように、溶射粒子の
飛行速度が小さい条件で得られる溶射皮膜の炭化物粒子
の相互間隔λは一般に大きく、その密度が粗であること
がわかる。これに対し、同質で同じ粒径の溶射材料でも
高速の飛行速度で成膜すると、炭化物粒子の密度が高く
なり、特に180 〜300 m/sec の条件で得られた溶射皮膜
は、本発明の目的を達成可能な皮膜であることが判明
し、炭化物粒子の相互間隔2.12〜5.05μmの範囲が有効
であることが判明した。
【0028】実施例4 この実施例では、WC−Co系炭化物以外の炭化物サーメッ
トおよび複数の炭化物を含むサーメット溶射皮膜につい
て、実施例2と同じ要領で機械加工によるコーナー部の
研削仕上げと、そのコーナー部eの丸みRについて試験
した。なお、この実施例における溶射材料は、すべて造
粒法によつてつくられた凝集粒子からなるものであり、
溶射熱源中の粒子の飛行速度は 210〜240 m/sec とし
た。 供試溶射材料: (1) TiC −18wt%Ni−5wt%Cr−1wt%Mo (2) NbC −13wt%Ni−8wt%Cr (3) WC−2.5 wt%Cr3C2 −12wt%Co−1wt%Fe (4) WC−1.8 wt%Cr3C2 −8wt%Co−5wt%Cr 機械加工によってそれぞれの皮膜を研削、研磨仕上げを
行った結果、すべての炭化物サーメット皮膜は、エッジ
部の粒子欠落はなく、また、Rも20μm以下であること
が確認された。
【0029】実施例5 この実施例では、本発明に適合する溶射被覆部材とし
て、刃物に適用したケースにおいて、この刃物の切れ味
等を調べた。溶射皮膜はWC−12wt%Coサーメット溶射材
料を用い、図6に示すような先端角度60°を有する炭素
鋼製刃物の刃先部分の表面に、溶射皮膜を形成した。そ
の後、前記刃先部分を機械加工によって鋭利なエッジに
仕上げた。その結果、溶射皮膜製エッジ部eは刃先部分
での粒子の欠落はなく、また、この刃先は丸みRが50μ
m以下と鋭利に仕上げられていることが確認された。な
お、溶射皮膜の形成に当たっては、溶射粒子の飛行速度
は、250〜280 m/sec の範囲とし、熱源は白灯油と酸素
の燃焼炎を用いた。そこで、この鋭利な角度をもつ溶射
皮膜製刃先を用いて、古新聞紙を1万回切断したが、切
れ味は全く劣化せず、また、その使用後も金属製刃物の
ように再研磨する必要はなく、刃先としてそのままの使
用によく耐え、刃物として十分な特性を示した。
【0030】
【発明の効果】以上説明したように、造粒法で製造され
た炭化物サーメット溶射粒子を用いて、可燃性ガスの燃
焼炎を熱源とする溶射法によつて該粒子の飛行速度を 1
80 m/sec以上の条件で成膜したものでは、強い衝突エネ
ルギーによって緻密で粒子間結合力に優れた溶射皮膜が
得られる。このような溶射皮膜であれば、機械加工によ
って鋭角 (R≦50μm) に仕上げることが可能である。
そのため、従来の炭化物サーメット溶射皮膜が、もっぱ
ら高硬度, 耐摩耗性皮膜としてその表面の改質のみに利
用されているのに対し、本発明は、精密, かつ正確な機
械加工角度が要求されている金型、ダイス、刃物などに
おいて、硬質, 耐摩耗性, さらには炭化物が保有する非
濡れ性, 剥離性などの性能を活かすエッジ部補強用皮膜
として有用であり、また、有機質, 無機質シート、フィ
ルム類の刃物の刃先として利用できる。その結果、炭化
物サーメット溶射皮膜の利用分野は一段と拡大されると
ともに、それぞれの産業分野において生産性および品質
の向上に大きく貢献できるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】造粒法でつくられた、本発明にかかる凝集粒子
である炭化物サーメット溶射材料の電子顕微鏡写真であ
る。
【図2】プラズマ溶融法でつくられた従来の中実状粒子
からなる炭化物サーメット溶射材料の電子顕微鏡写真で
ある。
【図3】炭化物サーメット溶射皮膜の表面をミクロ的に
観察した様子の模式図である。
【図4】溶射粒子の飛行速度と得られた皮膜表面の炭化
物系粒子の相互間隔の関係を示す説明図である。
【図5】(a) は、工具鋼製ブロックのコーナー部に形成
される炭化物サーメット溶射の形状状況とその順位、
(b) は、(a) の溶射皮膜を機械加工によって鋭角に仕上
げた状態を示す略線図である。
【図6】60°の鋭角を有する基材 (刃物) の表面に形成
した炭化物サーメット溶射皮膜の略線図である。

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 粒子径が0.1 〜3μmの、WC, Cr3C2, B
    4C, TiC, ZrCおよびNbC から選ばれる1種以上の炭化物
    と、Ni, Cr, CoおよびMoのうちから選ばれる1種以上の
    金属またはこれらの合金とからなる炭化物サーメットの
    一次粒子を、バインダー介在の下に造粒して、粒子径5
    〜60μmの大きさに凝集させた凝集粒子によって構成さ
    れる炭化物サーメット溶射材料。
  2. 【請求項2】 鋼鉄製基材の表面が、請求項1に記載の
    炭化物サーメット溶射材料を溶射して得られる溶射皮膜
    にて被覆され、かつその溶射皮膜の部分を機械加工して
    形成される角部は、その丸みRが50μm以下に仕上げら
    れていることを特徴とする炭化物サーメット溶射被覆部
    材。
  3. 【請求項3】 上記炭化物サーメット溶射皮膜は、炭化
    物系分散粒子および金属マトリックスにて構成され、か
    つ金属マトリックス中の前記炭化物系分散粒子は相互の
    間隔 (λ) が2.12〜5.05μmの範囲内で分散しているこ
    とを特徴とする請求項2に記載の炭化物サーメット溶射
    被覆部材。
  4. 【請求項4】 鋼鉄製基材の表面に、温度:2000℃〜30
    00℃の可燃性ガス燃焼炎を熱源とする溶射法によって、
    炭化物サーメット溶射材料を秒速180m以上の飛行速度で
    衝突させることにより、金属マトリックス中に炭化物系
    分散粒子を相互間隔 (λ) が2.12〜5.05μmとなる範囲
    内で分散させてなる炭化物サーメット溶射皮膜を形成
    し、この溶射皮膜の部分を角部の丸みRが50μm以下と
    なるように機械加工を施すことを特徴とする炭化物サー
    メット溶射被覆部材の製造方法。
  5. 【請求項5】 上記炭化物サーメット溶射材料は、粒子
    径が0.1 〜3μmの、WC, Cr3C2, B4C, TiC, ZrCおよび
    NbC から選ばれる1種以上の炭化物と、Ni,Cr, Coおよ
    びMoのうちから選ばれる1種以上の金属またはこれらの
    合金とからなる炭化物サーメットの一次粒子を、バイン
    ダー介在の下に造粒して、粒子径5〜60μmの大きさに
    凝集させた凝集粒子によって構成されたものであること
    を特徴とする請求項4に記載の製造方法。
JP18325398A 1998-06-16 1998-06-16 炭化物サーメット溶射被覆部材およびその部材の製造方法 Expired - Fee Related JP3410025B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP18325398A JP3410025B2 (ja) 1998-06-16 1998-06-16 炭化物サーメット溶射被覆部材およびその部材の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP18325398A JP3410025B2 (ja) 1998-06-16 1998-06-16 炭化物サーメット溶射被覆部材およびその部材の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2000001763A true JP2000001763A (ja) 2000-01-07
JP3410025B2 JP3410025B2 (ja) 2003-05-26

Family

ID=16132447

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP18325398A Expired - Fee Related JP3410025B2 (ja) 1998-06-16 1998-06-16 炭化物サーメット溶射被覆部材およびその部材の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3410025B2 (ja)

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2004001090A1 (ja) * 2002-06-25 2003-12-31 Ebara Corporation セラミックス粒子含有自溶性合金溶射材料
JP2004239283A (ja) * 2003-02-03 2004-08-26 Nippon Steel Corp 水撃現象防止機能に優れたシリンダバルブ
JP2006328496A (ja) * 2005-05-27 2006-12-07 Tocalo Co Ltd 耐食性に優れる炭化物サーメット溶射皮膜被覆部材およびその製造方法
JP2010100882A (ja) * 2008-10-22 2010-05-06 Nippon Steel Corp 耐摩耗スクリーン及びその製造方法

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP2937338B1 (en) 2012-12-19 2019-07-10 Nippoh Chemicals Co., Ltd Production method and production device for halo-hydantoin compound, reuse system, and halo-hydantoin compound

Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2004001090A1 (ja) * 2002-06-25 2003-12-31 Ebara Corporation セラミックス粒子含有自溶性合金溶射材料
JP2004239283A (ja) * 2003-02-03 2004-08-26 Nippon Steel Corp 水撃現象防止機能に優れたシリンダバルブ
JP2006328496A (ja) * 2005-05-27 2006-12-07 Tocalo Co Ltd 耐食性に優れる炭化物サーメット溶射皮膜被覆部材およびその製造方法
JP4532343B2 (ja) * 2005-05-27 2010-08-25 トーカロ株式会社 耐食性に優れる炭化物サーメット溶射皮膜被覆部材およびその製造方法
JP2010100882A (ja) * 2008-10-22 2010-05-06 Nippon Steel Corp 耐摩耗スクリーン及びその製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP3410025B2 (ja) 2003-05-26

Similar Documents

Publication Publication Date Title
EP1801248B1 (en) Wear resistant low friction coating composition and method for coating
JP6093324B2 (ja) 溶射被覆ワークロール
EP3084026B1 (en) Powder for surface coating
Gassmann Laser cladding with (WC+ W2C)/Co–Cr–C and (WC+ W2C)/Ni–B–Si composites for enhanced abrasive wear resistance
JP5013364B2 (ja) サーメット皮膜形成方法とそれにより得られたサーメット被覆部材
CA3108090C (en) Process and composition for formation of hybrid aluminum composite coating
JP2004510050A (ja) 機械的合金化した粉末のピストンリング用熱塗布コーティング
JP7490058B2 (ja) コーティング体
JP2011099164A (ja) 超硬合金および切削工具
KR20010082717A (ko) 용사 분말재, 그것을 사용한 용사 방법, 및 용사 피막
CN112512727A (zh) 铁系合金粉末以及利用它的成型品
JP2002220652A (ja) 溶射用粉末およびその製造方法
JP5769255B2 (ja) サーメット皮膜とそれを形成する噴射用粒子、サーメット皮膜形成方法、皮膜形成品
Lei et al. Microstructure and wear resistance of laser clad TiC particle reinforced coating
US20080113105A1 (en) Coating Formed By Thermal Spraying And Methods For The Formation Thereof
Ochonogor et al. Microstructure characterization of laser-deposited titanium carbide and zirconium-based titanium metal matrix composites
CN106591829A (zh) 耐磨涂层及其制造方法、用途、齿轮铣刀
JP2000001763A (ja) 炭化物サーメット溶射材料, その被覆部材およびその部材の製造方法
US4678511A (en) Spray micropellets
KR20220031447A (ko) 코팅체 및 코팅체 제조방법
Jose et al. Cermet Systems: Synthesis, Properties, and Applications. Ceramics 2022, 5, 210–236
Lei et al. Microstructure and sliding wear properties of laser clad TiN reinforced composite coating
Carou et al. An approach to the machining of hard coatings prepared by laser cladding and thermal spraying
KR102165405B1 (ko) 텅스텐 카바이드를 포함하는 초경 분말 및 이의 제조방법
Mohanty Plasma spray processing of TiC-based coatings for sliding wear resistance

Legal Events

Date Code Title Description
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20030212

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090320

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090320

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100320

Year of fee payment: 7

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100320

Year of fee payment: 7

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110320

Year of fee payment: 8

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120320

Year of fee payment: 9

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130320

Year of fee payment: 10

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140320

Year of fee payment: 11

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees