JP4030547B2 - 撮影装置および個人識別システム - Google Patents
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Description
【技術分野】
この発明は、個人の特徴が現れた画像を取得するための撮影装置および当該撮影装置を用いた個人識別システムに関する。
【0002】
【背景技術】
従来より、人間の身体的特徴に基づいて個人を識別し本人であるか否かを判別する技術が提案されている。
【0003】
しかし、照明と撮影とを組み合わせた個人識別の場合、個人ごとに皮膚の厚さや色が異なるなどの特徴の差異があるので、撮影によって得られた画像に明度の高すぎる個所(いわゆる白飛び)が生じてしまう場合がある。そうすると、個人の識別が上手くできないことがある。
【0004】
本発明は、このような問題点に鑑み、個人ごとの特徴に合わせて撮影を行い、より正確に個人の識別を行うことができるようにすることを目的とする。
【0008】
【発明の開示】
本発明に係る個人識別システムは、個人の識別を行う個人識別システムであって、個人ごとに、予め当該個人の身体の撮影を行うことによって取得しておいた第一の身体画像と当該撮影の際の撮影距離を含む撮影条件とを当該個人に発行されたIDと対応付けて記憶する記憶手段に対して、前記第一の身体画像と前記撮影条件とを出力する出力手段と、前記識別の対象となる個人の前記IDを入力する入力手段と、前記識別を行う際に、当該識別の対象となる個人の第二の身体画像を取得するために、前記入力手段によって入力された当該個人の前記IDに対応する前記撮影条件に基づいて当該個人の身体の撮影を行う撮影手段と、前記識別の対象となる個人の前記IDに対応する前記第一の身体画像および前記撮影条件に含まれる撮影距離と前記撮影手段による撮影によって取得された当該個人の前記第二の身体画像および当該第二の身体画像を取得するための撮影の際の撮影距離とを照合することによって、当該個人が本人であるか否かを識別する識別手段と、を有してなる。
【0009】
好ましくは、前記撮影手段によって取得された画像の全部または一部分の領域のうち、所定の値よりも明度が大きい部分である白飛び部分の面積が所定の面積よりも大きいか否かを判別する判別手段と、前記判別手段によって前記白飛び部分の面積が前記所定の面積よりも大きいと判別された場合に、露出時間を前記白飛び部分の面積が大きいほど短くなるように補正することによって前記白飛び部分の面積が前記所定の面積よりも小さくなるような露出時間である補正露出時間を算出する補正露出時間算出手段と、前記補正露出時間算出手段によって算出された前記補正露出時間を、前記撮影手段による撮影の被写体である個人の前記IDと対応付けて記憶する補正露出時間記憶手段と、前記入力手段によって入力された前記IDに対応する前記補正露出時間で前記撮影をやり直すように前記撮影手段を制御する撮影制御手段と、を有し、前記識別手段は、前記撮影制御手段が前記撮影手段を制御することによって取得された個人の前記第二の身体画像を用いて、当該個人が本人であるか否かを識別する。
【0010】
【発明を実施するための最良の形態】
添付の図面に従って、本発明をより詳細に説明する。
【0011】
図1は撮影装置1の全体の構成を示す斜視図、図2は撮影装置1の中央付近の断面側面図、図3は左頬の撮影の状況の例を示す図、図4はユーザ識別システム100の例を示す図、図5は撮影装置の機能的構成の例を示すブロック図、図6は測距センサ27の出力値と実際の距離との関係を示す図である。
【0012】
本発明に係る撮影装置1は、図1および図2に示すように、撮影装置本体2および本体カバー3によって構成される。この撮影装置1は、人間の身体の一部分の血管のパターンを撮影するための装置である。撮影を行う際には、予め本体カバー3を撮影装置本体2の正面20aに取り付けておく。そして、例えば、人間の顔の左頬を撮影する場合は、図3に示すように、左頬を撮影装置1の正面に向け、左頬と撮影装置1の正面とが平行になる(つまり、撮影面である左頬が撮影方向の軸に対して垂直に交わる)ようにし、かつ、両者の距離が2cm〜9cmくらいになるようにした状態で、シャッタを切る。以下、人間の頬の血管のパターンを撮影する場合を例に説明する。
【0013】
撮影装置本体2は、ケーシング(筐体)20、撮像部21、回路基板22、照射部23、インタフェース24、シャッタボタン25、測距センサ(距離センサ)27、およびランプ28などによって構成される。撮影装置本体2は、インタフェース24を介して、図4に示すようにパーソナルコンピュータ6に接続することができる。
【0014】
ケーシング20は、箱のような形状をしており、正面20aは開放されている。
【0015】
撮像部21は、レンズ211およびイメージセンサ212などによって構成される。イメージセンサ212として、例えば、CCDタイプのイメージセンサやCMOSタイプのイメージセンサが用いられる。
【0016】
回路基板22には、後に説明する撮影装置1の各部の制御およびD/A変換などを行うための制御回路、コンピュータプログラム(ファームウェア)およびデータなどが格納されたROM、RAM、およびCPUなどが設けられている。CPUは、パーソナルコンピュータ6またはシャッタボタン25からの指令、コンピュータプログラム、またはデータなどに基づいて演算処理を行う。このような構成によって、撮影装置1には、図5に示すような撮影制御部201、画像処理部202、撮影条件記憶部203、距離露出記憶部204、距離算出部205、白飛び判別部206、およびLED駆動部261、262などの機能が実現される。
【0017】
照射部23は、光源としてLEDを有する。これらのLEDとして、赤外線を発光するものが用いられる。
【0018】
これらのLEDに供給する電流は、インタフェース24を介してパーソナルコンピュータ6より得られる。インタフェースとしてUSBを用いるとパーソナルコンピュータ6と通信をした上で電流を得ることができる。
【0019】
図1および図2に戻って、本体カバー3は、合成樹脂板またはガラス板などからなるフィルタ板31および合成樹脂板などからなるレンズカバー32によって構成される。本体カバー3は、図示しないねじなどによってケーシング20の正面20aに取り付けられる。フィルタ板31として、例えば、可視光線およびそれよりも波長の短い光(すなわち、およそ800nm以下の光)をカットし、かつ、赤外線を透過させる、という性質の材料が用いられる。
【0020】
測距センサ27は、撮影方向に向けて取り付けられており、測距センサ27自身と撮影の対象つまり被写体との距離を計測し、後に説明するユーザの識別処理のために用いられる。測距センサ27として、光学式または超音波式などの測距センサ(距離センサ)が用いられる。
【0021】
測距センサ27と撮影装置1の各部との位置関係は予め分かっているので、測距センサ27によって求められた距離に基づいて、撮影装置1の各部から被写体までの距離も求められる。本実施形態では、被写体までの距離の基準を本体カバー3の正面3cと定めている。つまり、撮影装置1から被写体までの距離とは、本体カバー3の正面3cから被写体までの距離であると定義している。
【0022】
測距センサ27は、被写体である頬が撮影装置1から数cm離れた位置にある場合において(図3参照)、例えば耳の付け根付近、頬骨の先端付近(目尻の下の付近)、および口尻付近の3点についての距離が計測可能なように設定されている。
【0023】
撮影装置1から被写体の1点までの距離は、具体的には、次のような方法によって最終的に求められる。測距センサ27は、被写体の表面(撮影面)の1点との距離の計測結果として、8ビットつまり256階調の計測値を出力する。
【0024】
計測値(出力値)と実際の距離との対応関係は被写体の種類によってそれぞれ若干異なるが、計測値が大きいほど被写体までの実際の距離は短くなる傾向がある。例えば、人間の身体の表面を計測した場合の計測値と実際の距離との関係は、図6に示す関数「D=F(x)」のようになる。係る関数は、撮影装置1と頬との距離を少しずつ変えながら実際に計測を行って得られたものである。そして、計測値を被写体の種類に応じた関数に代入することによって、撮影装置1から被写体の1点までの距離が求められる。
【0025】
図5の距離算出部205は、上に述べた方法により、つまり、図6に示す関数および頬の3点についての計測値(出力値)に基づいて、撮影装置1から頬の3点までの距離を算出する。そして、これらの距離の平均を、撮影装置1から被写体までの距離とする。このようにして得られた距離の値は、距離情報70として撮影制御部201および白飛び判別部206に与えられる。
【0026】
撮影制御部201は、シャッタボタン25が押されシャッタが切られた瞬間に、LED51a〜51d、52a〜52dへの電流の供給を開始するようにLED駆動部261、262に対して指令する。そして、露出時間に併せて電流の供給を止めるように指令する。これにより、各LEDは、シャッタおよびシャッタ速度(露出時間)と同期して発光する。なお、シャッタを切る指令は、シャッタボタン25の代わりにパーソナルコンピュータ6によって行われるようにしてもよい。
【0027】
シャッタが切られて各LEDが発光すると、その光は、被写体である頬に照射される。ただし、可視光線などはフィルタ板31(図1、図2参照)によってカットされるので、赤外線のみが被写体に照射される。一般に、人間または動物の血管は、赤外線を吸収する性質がある。よって、頬の表面のうち、皮下に血管のある部分は照射された赤外線をあまり反射しないが、血管のない部分はよく反射する。
【0028】
被写体からの反射光は、フィルタ板31を透過してケーシング20の中に入り、レンズ211によってイメージセンサ212上に結像する。イメージセンサ212は、これを信号化することによって撮像データを生成する。画像処理部202は、この撮像データに画像処理を施すことによって、頬の血管のパターンの画像を生成する。なお、画像処理は、パーソナルコンピュータ6で行うように構成してもよい。
【0029】
シャッタは、レンズシャッタまたはスクリーンシャッタのようなメカ的なシャッタ、液晶シャッタのような光学的なシャッタなどを用いることが可能である。また、例えば、撮影の指令に同期してイメージセンサ212による電荷の蓄積を開始し、露出時間経過後に蓄積を終了し、蓄積した電荷を読み出すように構成してもよい。つまり、このように構成した場合の露出時間とは、電荷の蓄積時間を意味する。または、これらのメカ的、光学的、または電気的なシャッタを組み合わせてもよい。
【0030】
〔露出自動制御機能〕
図7は露出自動制御機能を用いた場合の撮影の処理の流れの例を説明するフローチャート、図8は距離露出テーブルTL1の例を示す図、図9は頬画像FA1の例を示す図、図10は露出補正用テーブルTL2の例を示す図である。
【0031】
撮影装置1には、白飛びの発生を抑えるために、被写体となる個人(以下、「ユーザ」と記載することがある。)ごとに露出(露光)の時間を自動制御する機能(以下、「露出自動制御機能」と記載する。)が設けられている。次に、係る機能の内容および処理手順を、図7に示すフローチャートを参照して説明する。
【0032】
図5に示す距離露出記憶部204には、距離露出テーブルTL1および露出補正用テーブルTL2(図10参照)が記憶されている。距離露出テーブルTL1には、図8に示すように撮影装置1と被写体との距離に応じた標準の露出時間が定められている。図8を見て分かるように、撮影装置1から被写体(頬)までの距離が長いほど、露出時間が長くなるように設定される。例えば、撮影装置1までの距離が2.5cmである場合は露出時間は80ms(ミリ秒)に設定され、8.5cmである場合は95msに設定される。
【0033】
なお、距離露出テーブルTL1の「ゲイン」とは、イメージセンサ212から画像処理部202に出力される出力信号S10の出力ゲインのことである。図5において、出力ゲインを調整するための調整信号S11は、距離露出テーブルTL1に基づいて撮影制御部201などから送られてくる。また、出力ゲインは手動により調整することも可能である。増幅器208は、出力信号S10を増幅する。増幅器208を省略することも可能である。増幅器208の増幅率を可変とし、調整信号S11によって増幅率を調整し、出力信号S10の出力ゲインを調整してもよい。その場合に、増幅器208をイメージセンサ212の内部に一体的に構成してもよい。なお、出力信号S10がディジタルデータである場合には、増幅器208に代えてデータ変換器などを用いてもよい。ここでは、出力ゲインは、距離に関わらず同じに設定されている。
【0034】
図5の測距センサ(距離センサ)27および距離算出部205は、撮影を行う前に、撮影装置1と被写体であるユーザの頬との距離を計測し、距離情報70を取得する(図7の#10、#11)。計測後は、測距センサ27の発する光がLEDの発する光と干渉しないようにするために、測距センサ27を停止する(#12)。
【0035】
撮影制御部201は、距離情報70と距離露出テーブルTL1とに基づいて露出時間を算出する(#13)。そして、その露出時間でユーザの頬の撮影を行う(#15)。これにより、図9に示すような頬画像FA1が得られる。なお、図9では、説明の簡単のため、頬画像FA1に現れる皮膚下の血管のパターンの描写を省略し、その代わりに左頬の外観を描写している。実際の頬画像FA1には、血管のパターンが現れる。後に説明する図15の頬画像FA2についても同じである。
【0036】
白飛び判別部206は、得られた頬画像FA1に、どれくらいの白飛びが生じているかを判別する(#17、#18)。係る判別は、次のようにして行う。まず、頬画像FA1の所定の領域の画素の明度を求める。所定の領域とは、予め設定された頬画像FA1の全部または一部分の領域を意味する。図9の例では、7×5個の点線の丸で示す領域が、所定の領域である。各丸は、それぞれ、互いに離れた位置にある1つの画素を指している。つまり、図9の例では、7×5個の点在する画素が所定の領域である。
【0037】
所定の領域に含まれるそれぞれの画素(つまり7×5個の丸が示す画素)について、その明度が所定の値よりも高いか否かを調べる。例えば、明度を0〜255の256階調で表した場合は、所定の値を「255」とする。イメージセンサ212の特性に応じて、「250」前後の値を所定の値としてもよい。
【0038】
所定の領域の中の、所定の値よりも高い領域の面積を求める。各画素はそれぞれ同じ広さの面積を有しているので、領域の面積は、画素の数を数えることによって求められる。このようにして求められた面積または画素数が、白飛びの発生の度合いを表している。
【0039】
図7に戻って、所定の値よりも高い画素の数が所定の数よりも少ない(例えば2未満である)場合は(#18でNo)、頬画像FA1には、露出時間の補正が必要となる程度の白飛びは生じていないと判別する。よって、今、撮影した頬画像FA1をそのまま撮影結果としてパーソナルコンピュータ6などに出力する。
【0040】
所定の数以上である場合は、(#18でYes)、頬画像FA1には、露出時間の補正が必要となる程度の白飛びが生じていると判別する。この場合は、白飛びを抑えるために露出時間を短くするための補正を行い(#19)、その露出時間でユーザの頬の撮影をやり直す(#15)。
【0041】
露出時間の補正は、白飛びの画素の数(白飛びの面積)、距離情報70、および露出補正用テーブルTL2に基づいて次のようにして行う。露出補正用テーブルTL2には、図10に示すように、撮影時の撮影装置1と被写体との距離Dおよび白飛びの画素の数Nに応じた、露出時間を補正するために加える調整値Gが定められている。
【0042】
例えば、距離情報70に示される距離D=4、白飛びの画素の数N=3、である場合は、露出補正用テーブルTL2より、調整値G=−5、が得られる。この調整値Gを、直前に行った撮影時の露出時間に加算する。つまり、直前の露出時間=85であった場合は、5を減算し、露出時間=80に補正する。
【0043】
なお、このようにして得られた調整値Gが、露出補正用テーブルTL2の太線で示す枠の中に該当するものである場合は、露出時間を補正しても最適な撮影ができないことがある。よって、この場合は、撮影エラーとして撮影の処理を中止するようにしてもよい。そして、撮影装置1と被写体との距離を変更して、最初から撮影をやり直せばよい。
【0044】
そして、図7に戻って、新たに得られた頬画像FA1について白飛びの判別を行い(#17、#18)、白飛びの画素が所定の数よりも少なくなっていれば(#18でNo)、その頬画像FA1を撮影結果としてパーソナルコンピュータ6などに出力する。所定の数以上である場合は、(#18でYes)、白飛びが少なくなるまで(ここでは2未満になるまで)撮影を繰り返す。ただし、撮影の回数をカウントしておき(#16)、撮影の回数が所定の数(例えば3回)を超えた場合は(#15でYes)、撮影不能であるとして撮影の処理を中止する。
【0045】
〔ユーザの識別処理〕
図11は磁気記憶装置6dに記憶されているプログラムおよびデータの例を示す図、図12は特徴情報データベース6DBの例を示す図、図13は特徴情報71および撮影条件情報72を登録するための処理の流れの例を説明する図、図14はユーザの識別処理の流れの例を説明するフローチャート、図15は頬画像FA2の例を示す図である。
【0046】
個人(ユーザ)の識別を行うためのユーザ識別システム100を、撮影装置1およびパーソナルコンピュータ6によって構成することができる。以下、ユーザの識別処理について、図4のパーソナルコンピュータ6へのログオンを行う場合を例に説明する。
【0047】
パーソナルコンピュータ6の磁気記憶装置6dには、図11に示すように、特徴情報データベース6DBが記憶されている。この特徴情報データベース6DBには、図12に示すように、ユーザごとの特徴情報71(71a、71b、…)がそのユーザを識別するユーザIDと対応付けられて格納されている。パーソナルコンピュータ6の使用を希望するユーザは、特徴情報71および撮影条件情報72を自分のユーザIDと対応付けて予め特徴情報データベース6DBに登録(記憶)させておく必要がある。
【0048】
特徴情報71は、ユーザの身体や癖などの特徴に関する情報である。本実施形態では、特徴情報71として、左頬の血管のパターンに関する情報が用いられる。撮影条件情報72は、ユーザにとっての、左頬の血管のパターンの画像を撮影する際の最適な撮影条件を示すものである。
【0049】
特徴情報71および撮影条件情報72の登録は、図13に示すような手順で行う。まず、ユーザは、自分の左頬の血管のパターンを撮影装置1によって撮影する(#21)。撮影の手順は、前に図7などを参照して説明した通りである。撮影の前または後に、ユーザ自身のユーザIDをパーソナルコンピュータ6のキーボードに入力する(#22)。ユーザIDを持っていない場合は、ユーザIDをシステム管理者などに予め発行してもらっておく。または、撮影後に発行してもらう。
【0050】
撮影が成功した場合は、パーソナルコンピュータ6は、撮影によって得られた頬画像FA1を撮影装置1より受信する(#23)。そして、この頬画像FA1の画像データを特徴情報71として、入力または発行されたユーザIDと対応付けて特徴情報データベース6DBに格納する(#24)。または、頬画像FA1を解析することによって得られる血管の太さ、長さ、本数、または配置などの特徴を示す情報を特徴情報71として格納してもよい。
【0051】
頬画像FA1を取得する際の撮影条件、つまり、そのユーザに適するように補正された露出時間および撮影装置1と左頬との距離を示す情報を、撮影装置1より受信する(#25)。そして、これらの情報を撮影条件情報72としてユーザIDと対応付けて特徴情報データベース6DBに格納する(#26)。
【0052】
図11に示すように、磁気記憶装置6dには、ユーザ識別プログラム6PGがインストールされている。このプログラムを実行することによって、パーソナルコンピュータ6にログオンしようとしているユーザが、正しいユーザであるか否かを判別(識別)するための処理が、図14に示すフローチャートのような手順で実現される。
【0053】
パーソナルコンピュータ6のスイッチをオンにすると、パーソナルコンピュータ6には、ログオン画面が表示される。ここで、ユーザは、自分のユーザIDを入力し(#31)、撮影装置1によって自分の左頬の撮影を行って図15に示すような頬画像FA2を取得する(#32)。取得された頬画像FA2は、パーソナルコンピュータ6に送信される。
【0054】
なお、頬画像FA2を取得するための撮影は、図12の特徴情報データベース6DBを参照し、入力されたユーザIDに対応する撮影条件情報72に基づいて行われる。つまり、入力されたユーザIDに対応するユーザにとって最適な露出時間で撮影が行われる。また、係る撮影の際に、撮影装置1とユーザの左頬との距離が撮影条件情報72に示される最適な距離になるように、ユーザの左頬の位置を次のようにして案内する。
【0055】
撮影を行う前に、測距センサ27(図1、図2参照)によって、撮影装置1とユーザの左頬との距離を定期的に(例えば、1秒ごとに)計測する。計測した距離と撮影条件情報72に示される距離との差が所定の値(例えば0.1〜0.3cm程度)以上である場合は、ランプ28を点滅させておく。そして、撮影装置1とユーザの左頬との距離が最適な距離に近づき、所定の値未満になった場合は、ランプ28の点滅を止め、点灯したままにする。併せて、撮影装置1と左頬の3点との距離に基づいて左頬の姿勢を判別し、撮影装置1の正面と左頬とが平行になるように案内するようにしてもよい。
【0056】
ランプ28の代わりに撮影装置1にスピーカを設け、「あと1cm近づいてください」または「もう少し離れてください」というような音声を出力し、被写体の位置を案内するようにしてもよい。液晶パネルを設け、メッセージ、図形、写真、または映像を表示して案内するようにしてもよい。パーソナルコンピュータ6のスピーカまたはディスプレイ装置によって案内するようにしてもよい。
【0057】
図14に戻って、パーソナルコンピュータ6は、特徴情報データベース6DBの中から、入力されたユーザIDに対応する特徴情報71を検索する(#33)。そして、その特徴情報71が示す血管のパターンの特徴と頬画像FA2の血管のパターンの特徴とを照合し、両者が一致するか否かを判別することによって、そのユーザが正しいユーザであるか否かを判別する(#34)。
【0058】
正しいユーザであると判別された場合は(#35でYes)、ユーザはパーソナルコンピュータ6にログオンすることができ、パーソナルコンピュータ6の使用が可能となる(#36)。正しいユーザであると判別されなかった場合は(#35でNo)、ログオンすることができない旨および操作をやり直す旨のメッセージをパーソナルコンピュータ6に表示する(#37)。
【0059】
なお、個人の識別は、上記のようなログオンを行う場合に限らず、例えば、電子決済システムにおける決済または出退勤の際の本人確認(タイムカード)などのために行うことができる。
【0060】
本実施形態によると、個人ごとの特徴に合わせて撮影を行い、白飛びの少ない画像を得ることができる。これにより、より正確に個人の識別を行うことができる。
【0061】
なお、頬画像FA1を得るための撮影(図13の#21)を行った際の撮影条件情報72をユーザIDと対応付けて、撮影装置1の撮影条件記憶部203(図5参照)に格納するようにしてもよい。そうすれば、撮影装置1にパーソナルコンピュータ6が接続されていなくても、撮影装置1に設けられた操作ボタンより入力されるユーザIDに基づいて撮影条件情報72を検索し、すぐにユーザにとって最適な撮影条件で撮影を行うことができる。したがって、例えば定期的に身体の検診を行うために血管のパターンを撮影する場合などに便利である。様々な場所に持ち運んで撮影を行うことも容易である。
【0062】
本実施形態では、図8に示すように、被写体との距離が長いほど露出時間を長くし、距離に関わらずイメージセンサ212の出力のゲイン(増幅)を一定としたが、距離が長いほどゲインを大きくし、露出時間を一定としてもよい。つまり、出力のゲインを撮影条件としてもよい。または、両方を撮影条件としてもよい。
【0063】
本実施形態では、撮影装置1によって人間の頬の血管のパターンを撮影しユーザの識別に用いたが、もちろん、身体の他の部位の血管のパターンによる識別も可能である。例えば、額、頭部、腹、背中、尻、首、手足、腕、および脚などのあらゆる面を撮影することができる。この場合は、撮影対象となる部位に応じてLEDの配置、LEDの光度、自動露出の調整の条件(図8、図10参照)などを変更し、撮影装置1を構成すればよい。動物の撮影のためにも用いられる。
【0064】
図16は露出補正用テーブルTL3の例を示す図である。本実施形態では、ユーザごとの露出時間(図12参照)を、そのユーザを撮影した際の白飛びの面積(白飛びした画素の数)に基づいて標準の露出時間を補正することによって求めたが、そのユーザの年齢または性別などに基づいて求めることも可能である。
【0065】
この場合は、例えば、ユーザごとに、そのユーザの年齢および性別を示す情報をユーザIDと対応付けてデータベースに記憶させておく。一般に、白飛びは、男性よりも女性のほうに現れやすい傾向がある。また、白飛びの現れ方は、年齢または世代によって、それぞれ特徴的な傾向が見られる。そこで、図16に示すような露出補正用テーブルTL3を距離露出記憶部204(図5参照)に用意しておく。なお、露光時間を調整(補正)するための調整値G(g11、g12、…、g63、…)は、実際に多数の老若男女の撮影を行い、性別および世代(または年齢)の組合せごとの露光時間の統計を取って解析することによって得られたものである。
【0066】
そして、頬画像FA1、FA2(図9、図15参照)などの画像を取得するための最適な露光時間は、露出補正用テーブルTL3を参照し、そのユーザの年齢および性別に対応する調整値Gに基づいて求めればよい。また、求められた露光時間は撮影条件情報72として、特徴情報データベース6DB(図12参照)または撮影条件記憶部203にそのユーザのユーザIDと対応付けて記憶させておく。
【0067】
なお、年齢および性別以外にも、職業または日頃行っているスポーツなどの要素も組み合わせて露光時間を補正できるようにしてもよい。
【0068】
本実施形態では、ユーザの白飛びの具合に応じて露光時間を変更したが、これ以外の撮影条件を変更するようにしてもよい。例えば、光源(LED)の光度または周囲の明るさなどを変更するようにしてもよい。この場合は、距離露出テーブルTL1および露出補正用テーブルTL2(図8、図10参照)に相当する、最適なLEDの高度などを求めるためのテーブルを用意しておけばよい。
【0069】
本実施形態では、撮影装置1と被写体(ユーザの頬)との距離を、被写体の位置の案内のために用いたが、頬画像とともに、ユーザの識別処理を行う際の特徴情報71として用いることも可能である。
【0070】
つまり、頬画像FA1のための撮影を行ったときの撮影装置1と左頬との距離の取り方をそのユーザの癖(特徴)として捉え、その距離をユーザIDと対応付けて記憶しておく。そして、頬画像FA2のための撮影(図14の#32)を行ったときの距離と特徴情報71に示される距離との差が所定の値(例えば数ミリメートル)以下である場合は、図14に示すステップ#34、#35の処理において、正しいユーザであると判別する。そうでない場合は、正しいユーザでないと判別する。
【0071】
本実施形態では、ユーザ(個人)の識別処理において、頬画像FA1、FA2の照合をパーソナルコンピュータ6によって行ったが、照合の処理を撮影装置1で行うようにしてもよい。つまり、パーソナルコンピュータ6の一部または全部の機能を撮影装置1に設けるようにしてもよい。
【0072】
頬画像FA1、FA2を取得するための撮影を、別々の撮影装置1によって行ってもよい。ただし、この場合は、同じ構成の撮影装置1を用いることが望ましい。
【0073】
その他、撮影装置1、パーソナルコンピュータ6の全体または各部の構成、撮影の対象、LEDの配置および光度、レンズなどの光学系の配置、処理内容、処理順序、データベースまたはテーブルの内容などは、本発明の趣旨に沿って適宜変更することができる。
【0074】
【産業上の利用可能性】
以上のように、本発明によると、個人ごとの特徴に合わせて撮影を行い、より正確に個人の識別を行うことができる、という点で有用なものである。
【図面の簡単な説明】
図1は、撮影装置の全体の構成を示す斜視図である。
図2は、撮影装置の中央付近の断面側面図である。
図3は、左頬の撮影の状況の例を示す図である。
図4は、ユーザ識別システムの例を示す図である。
図5は、撮影装置の機能的構成の例を示すブロック図である。
図6は、測距センサの出力値と実際の距離との関係を示す図である。
図7は、露出自動制御機能を用いた場合の撮影の処理の流れの例を説明するフローチャートである。
図8は、距離露出テーブルの例を示す図である。
図9は、頬画像の例を示す図である。
図10は、露出補正用テーブルの例を示す図である。
図11は、磁気記憶装置に記憶されているプログラムおよびデータの例を示す図である。
図12は、特徴情報データベースの例を示す図である。
図13は、特徴情報および撮影条件情報を登録するための処理の流れの例を説明する図である。
図14は、ユーザの識別処理の流れの例を説明するフローチャートである。
図15は、頬画像の例を示す図である。
図16は、露出補正用テーブルの例を示す図である。
Claims (2)
- 個人の識別を行う個人識別システムであって、
個人ごとに、予め当該個人の身体の撮影を行うことによって取得しておいた第一の身体画像と当該撮影の際の撮影距離を含む撮影条件とを当該個人に発行されたIDと対応付けて記憶する記憶手段に対して、前記第一の身体画像と前記撮影条件とを出力する出力手段と、
前記識別の対象となる個人の前記IDを入力する入力手段と、
前記識別を行う際に、当該識別の対象となる個人の第二の身体画像を取得するために、前記入力手段によって入力された当該個人の前記IDに対応する前記撮影条件に基づいて当該個人の身体の撮影を行う撮影手段と、
前記識別の対象となる個人の前記IDに対応する前記第一の身体画像および前記撮影条件に含まれる撮影距離と前記撮影手段による撮影によって取得された当該個人の前記第二の身体画像および当該第二の身体画像を取得するための撮影の際の撮影距離とを照合することによって、当該個人が本人であるか否かを識別する識別手段と、
を有してなることを特徴とする個人識別システム。 - 前記撮影手段によって取得された画像の全部または一部分の領域のうち、所定の値よりも明度が大きい部分である白飛び部分の面積が所定の面積よりも大きいか否かを判別する判別手段と、
前記判別手段によって前記白飛び部分の面積が前記所定の面積よりも大きいと判別された場合に、露出時間を前記白飛び部分の面積が大きいほど短くなるように補正することによって前記白飛び部分の面積が前記所定の面積よりも小さくなるような露出時間である補正露出時間を算出する補正露出時間算出手段と、
前記補正露出時間算出手段によって算出された前記補正露出時間を、前記撮影手段による撮影の被写体である個人の前記IDと対応付けて記憶する補正露出時間記憶手段と、
前記入力手段によって入力された前記IDに対応する前記補正露出時間で前記撮影をやり直すように前記撮影手段を制御する撮影制御手段と、を有し、
前記識別手段は、前記撮影制御手段が前記撮影手段を制御することによって取得された個人の前記第二の身体画像を用いて、当該個人が本人であるか否かを識別する、
請求項1記載の個人識別システム。
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