JP3863052B2 - 高炉原料装入方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高炉原料装入方法に関し、特には微粉炭多量吹込み操業時における操業の安定性を維持する上で好適な高炉原料装入方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
高炉操業においては、焼結鉱、ペレット(焼成ペレット)、塊鉱石等の高炉原料(塊状酸化鉄原料)とコークス(塊状炭材)とが層状に交互に装入されるが、その装入の際、炉内半径方向の鉱石とコークスの質量比(以下この比をO/Cと略記する)を高精度に制御して、炉内のガス流分布、融着帯形状等を目標範囲内に維持管理すること、すなわち、中心流を適正に確保することが、高炉の安定操業を図る上で重要とされている。
【0003】
そして従来より、炉内半径方向のO/C分布を制御するために、ベル式装入装置を備えた高炉においてはムーバブルアーマの設定位置を適正に制御することが、またベルレス式装入装置を備えた高炉においては分配シュートの傾動角度を調節することが行われてきた。最近では別ルートの装入シュートを併設し、その装入シュートにより高炉中心部に高炉原料又は/及びコークスを直接装入する方法が提案されている。これらの方法を適正に利用し、炉内半径方向のO/C分布を高精度に制御することにより、ガス流れを制御しながらガス利用率〔ηCO= CO2/(CO+CO2)×100 〕を改善し、高炉の燃料比(銑鉄 1トンを製造するために必要な燃料質量)を低下させることができるとされている。
【0004】
高炉原料は炉内装入後、炉内を降下する過程で、炉内を上昇する還元ガスにより加熱昇温され還元される。代表的な高炉内高さ方向における温度変化、ガス成分変化を図1に示す。また、各原料層は層厚が30〜150cmあるため、図2に示すように、各原料層中の層厚方向においても成分変化が存在し、ガスのCOポテンシャル(=CO/(CO+CO2))は、原料層の上部は下部に比べ必然的に低くなる。そのため、各原料層の上部に存在する鉱石の還元が遅れて還元率が低下し、生下り等の高炉不調の原因となりやすい。
【0005】
ここで、コークス層厚は融着帯での通気性を確保するため、層厚に下限が存在する。一方、近年精力的に実施されている微粉炭(補助燃料)多量吹き込み操業を行う場合には、燃料比(=コークス比+微粉炭(補助燃料)比)を維持するためには炉頂から装入するコークス量を減少させる必要がある。したがって、微粉炭(補助燃料)多量吹き込み操業を行うためにはO/Cを高くせざるを得ず、必然的に原料層厚は厚くなる。そのため、原料層上部の還元遅れはさらに顕著となり、高炉操業が不安定となることから、操業トラブルを回避するため燃料比を高くせざるを得ないのが現状である。
【0006】
また、微粉炭(補助燃料)多量吹き込み時には、炉頂からの固体の装入量が減少することから、熱流比〔固体の熱容量/気体の熱容量〕が低下することにより炉頂温度が高くなるため、炉壁及び炉頂からの熱損失の更なる増加や、これまで飛散しなかったサイズのダストが飛散することによるダスト比の増加等の問題により、燃料比が上昇すると言った問題も出てきている(従来技術1)。
【0007】
一方、高炉原料の被還元性を改善して、これを従来の焼結鉱やペレットなどの高炉原料に混合して用いることにより、各原料層の層厚方向全体の還元を促進し、高炉操業の安定化や燃料比の低減等を図る提案が種々なされている。
【0008】
例えば、固体炭材(例えば石炭粉、コークス粉等)と粉鉱石又はダスト(炭素、酸化鉄等の混合物)にバインダを加えて冷間成形された炭材内装コールドボンドペレットあるいはコンポジットと称されるものが提案されている(特公平1−28085、特許2600803、特開昭60-262907等参照)。そして、炭材内装コールドボンドペレットを使用するとガス利用率が向上することが報告〔井上ら:鉄と鋼(1986),S885〕されている。しかし、炭材内装コールドボンドペレットあるいはコンポジットの製造にバインダとしてセメント類を用いた場合には、高炉内での還元時において、セメント類中の結晶水の分解や脱炭酸、酸化鉄の還元による変態等により強度が低下して粉化し、通気性を悪化させる。さらに、高炉内のスラグ比が上昇するため通液性が悪化する問題も懸念される。また、成形後、コールドボンドペレットの強度を発現するため、ペレットを養生するための広大な用地や長時間を要する問題もある。一方、これを改善してセメント類以外のバインダを用いた場合には費用が高くコストメリットがなくなる(従来技術2)。
【0009】
そこで、本発明者らは、粉鉱石と石炭粉の混合物を350〜550℃の温度に加熱した状態で成形した炭材内装塊成鉱を、焼結鉱、ペレット、塊鉱石等の高炉原料に混合して高炉へ装入する方法を開発した(特開2000−290709参照)。この方法によれば、石炭粉の軟化溶融時に圧縮成形し、その後固化させているため十分な強度を確保しつつセメント類等のバインダを不要とするので、スラグ比が上昇せず通液性が悪化する問題は生じない。また、炭材内装塊成鉱中の溶融後固化した炭素と鉱石との接触が緊密なため、還元反応が高炉内の低温域から開始し、またその反応により発生するガスはCOガスが主体であるため、混合した焼結鉱、ペレット、塊鉱石等の原料の還元に利用されるので、ガス利用率を向上でき、それに伴い燃料比を低下させることができる。また、燃料として装入したコークスとCO2 ガスとの反応が抑制されることから、コークスの粉発生量が低下できるとともに、高炉内の通気性が向上することを見出した(従来技術3)。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来技術3の方法による場合、高炉に装入される燃料は、炉頂から装入されるコークス、羽口から吹き込まれる補助燃料、および炭材内装塊成鉱中の炭材である。ここで、コークスは、高炉内で通気性および通液性を確保する役割を果たすものである。したがって、高炉全体の燃料比を維持ないし低減しつつ、高炉内での通気性、通液性が確保できるコークス量を装入し、かつ低廉な補助燃料(微粉炭、廃プラスチック、タイヤ屑など)を多量に吹き込むためには、炭材内装塊成鉱により高炉内に持ち込まれる炭材量が制限される。つまり、炭材内装塊成鉱の装入量が制限されることになる。そのため、このような限られた炭材内装塊成鉱の装入量によっても、最大限に燃料比の低減や操業の安定化の効果が得られる装入方法の開発が要請されていた。
【0011】
そこで、本発明の目的は、上記炭材内装塊成鉱を用いて、特に補助燃料を多量に吹き込む高炉操業において炭材内装塊成鉱の装入量が制限された条件下においても、通気、通液性を悪化させることなく最大限にガス利用率の向上を図ることができ、燃料比を低下し得る高炉原料装入方法を提供するものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明に係る高炉原料装入方法の要旨は以下の通りである。
【0013】
請求項1に記載の発明は、高炉内へ塊状酸化鉄原料と塊状炭材とを交互に層状に装入する原料装入方法において、前記塊状酸化鉄原料からなる各原料層の上面から下方へ至る当該原料層厚の1/2以下の厚みの部分に、酸化鉄と炭素とを主成分とする炭材内装塊成鉱であって、この炭材内装塊成鉱中の炭素量が、当該炭材内装塊成鉱中の酸化鉄を還元するのに必要な理論炭素量の 0.5 倍以上であるものを、含ませたことを特徴とする高炉原料装入方法である。
請求項2に記載の発明は、高炉内へ塊状酸化鉄原料と塊状炭材とを交互に層状に装入する原料装入方法において、前記塊状酸化鉄原料からなる各原料層の上面から下方へ至る当該原料層厚の 1/2 以下の厚みの部分に、酸化鉄と炭素とを主成分とする炭材内装塊成鉱を、前記塊状酸化鉄原料と前記炭材内装塊成鉱との合計量と、前記塊状炭材との質量比が 4 以上となるように含ませたことを特徴とする高炉原料装入方法である。
【0014】
請求項3に記載の発明は、前記炭材内装塊成鉱が、粉状酸化鉄含有物質と粉状炭材とを含む混合物を300〜550℃の温度範囲で熱間成形して得られたものである請求項1または2に記載の高炉原料装入方法である。
【0015】
請求項4に記載の発明は、前記粉状石炭のギーセラ最高流動度(MF)が log MF≧1.0 である請求項3に記載の高炉原料装入方法である。
【0016】
【0017】
請求項5に記載の発明は、前記熱間成形の後であって高炉装入前に、前記炭材内装塊成鉱を前記熱間成形温度以上の温度で5分間以上保持して脱タール処理を行う請求項3または4に記載の高炉原料装入方法である。
【0018】
【0019】
請求項6に記載の発明は、前記高炉が、補助燃料吹き込み量が銑鉄1トン当たり100kg以上の高炉である請求項1〜5のいずれか1項に記載の高炉原料装入方法である。
【0020】
〔作用〕
本発明は、酸化鉄と炭素とを主成分とする炭材内装塊成鉱を、各原料層の上面から下方へ至る当該原料層厚の1/2以下の厚みの部分に含ませたことを特徴とするものである(請求項1〜6)。これにより、原料層が所定温度に加熱されれば、ガスのCOポテンシャルが高い原料層下部では、従来の焼結鉱、ペレット、塊鉱石等の塊状酸化鉄のみであっても還元が十分進行する一方、ガスのCOポテンシャルが低い原料層上部においても炭材内装塊成鉱の還元が進行し、この還元反応により発生するガスはCOガスが主体なため、原料層上部の塊状酸化鉄原料の還元をも促進する。その結果、ガス利用率が向上し、燃料比が低下する。また、炭材内装塊成鉱中に内装された炭素分が優先して利用されるため、燃料として装入した塊状炭材とCO2 ガスとの反応が抑制され、塊状炭材の粉発生量が低下することにより高炉内の通気性が向上する。炭材内装塊成鉱を含ませる範囲を原料層厚の1/2以下としたのは、この範囲を大きくしすぎると原料層内に炭材内装塊成鉱が含まれる割合が低下することにより、炭材内装塊成鉱から発生するCOガス主体のガスによる高炉原料の還元促進効果が過小となるためである。
【0021】
なお、従来技術3によれば、本発明と同様の炭材内装塊成鉱を焼結鉱、ペレット、塊鉱石等の塊状酸化鉄に混合してから高炉に装入していることから、炭材内装塊成鉱は原料層厚み方向全体に万遍なく含まれる。そのため、本発明に比べ、COポテンシャルの低い原料層上部に存在する炭材内装塊成鉱の割合が少なく、発生するCO主体のガス量も少ないので、本発明ほどには塊状酸化鉄の還元が十分に促進されない。
【0022】
また、炭材内装塊成鉱として、粉状酸化鉄と粉状炭材の混合物を 300〜 550℃の温度に加熱した状態で熱間成形したものを用いることが望ましい(請求項3)。熱間成形することによりバインダを用いることなく粉状炭材を加熱した時に発現する粘結性を利用して、十分密度が高く、かつ圧潰強度の高い(400N/個以上;後述)炭材内装塊成鉱とすることができるためである。なお、加熱温度を300〜 550℃が好適範囲であるとしたのは、以下の理由による。すなわち、粉状炭材は一般的には300℃以上で軟化が開始し、温度の上昇とともに流動度が上昇する。しかし、同時に固化も開始されるため所定の温度で最高流動度に達し、さらに温度が上昇すると固化の方が優勢となるため流動度が低下し、550℃を超えると急速に固化が進行して流動性がなくなるからである。なお、最高流動度を示す温度(炭材の種類により異なる)近傍の温度で加圧成形すると炭材内装塊成鉱がより緻密になり圧潰強度が高くなるので好ましい。また、炭材内装塊成鉱はバインダを用いることなく塊成化されているので、バインダを用いて製造される炭材内装コールドボンドペレットあるいはコンポジットとは異なり、バインダ使用によるコスト高の心配がない上に、バインダとしてセメント類を用いた場合に問題となる、スラグ比上昇による通液性の悪化の問題もない。また、圧潰強度の高い炭材内装塊成鉱を用いることで、高炉の通気性の観点から問題となる粉発生が抑制できる。なお、粉状炭材中に含まれている揮発分やタール分は、熱間成形時に大部分が脱揮及び脱タールしており、更に、炭材内装塊成鉱中の炭材割合は多くとも約30重量%程度で、高炉への炭材内装塊成鉱の装入量は少量のため、炭材内装塊成鉱を高炉に装入してもタール分の設備への付着は問題とはならない。
【0023】
また、粉状炭材として、ギーセラ最高流動度(MF)が logMF≧1.0の粉状炭材を用いることが好ましく(請求項4)、logMF≧2.0の粉状炭材を用いることが特に好ましい。このような流動度の高い粉状炭材を用いた炭材内装塊成鉱であると、粉状炭材を加熱した時に発現する粘結性を利用して、より密度及び圧潰強度の高い炭材内装塊成鉱とすることができ、またこれにより他の原料と混合して高炉に装入して上記の作用効果を得ることができるためである。図3に示すように、粉状炭材のMFをlogMF≧1.0とすることにより炭材内装塊成鉱の圧潰強度は、高炉装入等のハンドリングに耐える400N/個以上が得られ、さらにlogMF≧2.0とすることにより炭材内装塊成鉱の圧潰強度は700N/個以上が得られ、高炉内での粉化をさらに抑制できる。なお、このような作用効果をより効果的に得るためには、炭材内装塊成鉱の粉状炭材として、ギーセラ最高流動度(MF)が log MF≧1.0であることに加えて、さらに熱間成形する際の石炭の加熱速度を 10℃/秒以上で昇温することが好ましい。
【0024】
また、炭材内装塊成鉱中の炭素量は、当該炭材内装塊成鉱中の酸化鉄を還元するのに必要な理論炭素量の0.5倍以上とすることが好ましく(請求項1)、これにより炭材内装塊成鉱内部からの還元と、原料層を上昇する還元ガスによる炭材内装塊成鉱外表面からの還元とが並存して進行するため、十分な還元速度が得られる。ここに、「炭材内装塊成鉱中の酸化鉄を還元するのに必要な理論炭素量」とは、炭材内装塊成鉱中の酸化鉄に含まれる酸素1モル分を還元するのに、炭素1モル分必要と仮定して(例えば、Fe2O3+3C→2Fe+3CO)、化学成分から算出される値である。なお、炭材内装塊成鉱中の炭素量は多いほど還元促進の効果は大きくなるが、炭素量が過剰になると炭材内装塊成鉱の強度は逆に低下する。したがって、炭材内装塊成鉱中の炭素量は理論炭素量の1.5倍以下とすることが好ましく、0.7〜1.2倍の範囲とすることが推奨される。
【0025】
また、熱間成形の後であって高炉装入前に、炭材内装塊成鉱を熱間成形温度以上の温度で5分間以上保持して脱タール処理を行うことが好ましい(請求項5)。前述したように、粉状炭材中に含まれている揮発分やタール分は、熱間成形時に大部分が脱揮及び脱タールされているため、このような脱タール処理を行なわずに熱間成形のまま炭材内装塊成鉱を高炉に装入してもタール分の設備への付着は問題とはなるものではないが、脱タール処理を施すことにより炭材内装塊成鉱がより緻密化して圧潰強度がさらに上昇し、高炉内での粉化がより確実に防止される効果がある。
【0026】
また、本発明において、塊状酸化鉄原料と炭材内装塊成鉱との合計量と、前記塊状炭材との質量比(すなわちO/C)を4以上とすることが好ましく(請求項2)、これにより十分高い補助燃料吹き込み量を確保しつつ、原料層上部に炭材内装塊成鉱が配されている(含まれている)ため、原料層層厚全体が十分に還元され、生下り等の問題も生じない。なお、O/Cは過剰に高くしすぎると通気性、通液性が阻害されるため、7以下とすることが望ましい。
【0027】
また、本発明において、補助燃料吹き込み量を銑鉄1トン当たり100kg以上とすることが好ましく(請求項6)、これによりコストの高い塊状炭材に代替してコストの低い微粉炭などの補助燃料が多量に使用できるため燃料コストが低減される。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を説明する。
粉状酸化鉄原料として例えばT.Fe:約68質量%の粉鉱石と、粉状炭材として例えばC:80質量%の石炭粉を約78:22(粉鉱石:石炭粉)の質量割合で混合し、その混合物を約 440℃の温度に加熱し、線圧約2.5t/cmの成形圧で体積約6cm3の卵形の炭材内装塊成鉱に熱間成形する。必要により、この炭材内装塊成鉱を成形温度より高い、例えば約500℃の温度で5分間以上保持し、脱タールを行ってもよい。
【0029】
ここで、例えばベル・アーマ方式の高炉の場合、高炉炉内半径方向のO/C分布を調整する目的で、通常、コークスを層状に装入した後、複数回(例えばN回)に分けて高炉原料を装入する方法が採用される。したがって、高炉原料のN回の装入分のうち、最初の(N−M)回分は、従来どおり焼結鉱、ペレット、塊鉱石等のみからなる高炉原料Aを装入し、残りのM回分は、炭材内装塊成鉱の所定量を焼結鉱、ペレット、塊鉱石等の高炉原料(塊状酸化鉄原料)に混合した高炉原料Bを装入する。このように炭材内装塊成鉱を混合した高炉原料Bの装入回数Mを変更することにより、炭材内装塊成鉱を含ませる原料層の厚みを容易に調整できる。この方法によれば従来の装入設備をそのまま用いることができ、しかも装入方法を大幅に変更する必要がないため、低コストで本発明を実施することができる。
【0030】
なお、本例では粉鉱石と石炭粉の混合割合(質量比)を粉鉱石/石炭粉=78/22としたが、石炭量は石炭中の炭素量と鉱石中のFe量に応じて理論炭素量の0.5倍以上(特に好ましくは0.7〜1.2倍の範囲)で、高炉炉頂部への装入時のハンドリング等に耐え得る、圧潰強度が約400N/個以上が得られるように調整するとよい。
【0031】
また、本例では粉状酸化鉄原料として粉鉱石を例示したが、これに限られるものではなく、酸化鉄を含有する、高炉ダスト、転炉ダスト、電気炉ダスト、ミルスケール、ミルスラッジ、シュレッダダストなどを用いることもできる。また、粉状炭材として、本例では石炭を例示したが、これに限られるものではなく、炭素を含有し、かつ加熱により軟化・溶融性を示す、ピッチ、アスファルト、SRCなどを用いることもできる。
【0032】
また、炭材内装塊成鉱の形状は特に限定されるものでなく、本例の卵形の他、枕形、球状、俵状、ブロック状、立方体状、直方体状でもよい。また、炭材内装塊成鉱のサイズは、下限は原料層の通気性を維持できるよう、5mm以上とすることが望ましいが、上限は特に限定されない。内装炭材により内部からも還元されるため、還元ガスにより外表面からのみ還元される焼結鉱、ペレット、塊鉱石などのように粒径が制限されることがないためである。ただし、焼結鉱、ペレット、塊鉱石などの従来の高炉原料中に偏析させずにできるだけ均一に混合できるよう、100mm以下程度とすることが推奨される。
【0033】
また、本例ではベル・アーマ方式による装入方法について説明したが、ベルレス方式の場合にも同様の方法で実施できる。すなわち、ベルレス方式の高炉においても、通常、高炉原料を装入するとき旋回シュートを複数回旋回して行う方法が用いられるので、上記ベル・アーマ方式と同様、複数の旋回回数のうち後半の所定回数にのみ炭材内装塊成鉱を混合すればよい。
【0034】
上記のように炭材内装塊成鉱を混合した高炉原料Bを原料層の上部所定部分に装入することにより、原料層が高炉内を降下するとともに昇温され、炭材内装塊成鉱中の石炭と鉱石が見かけ上直接還元反応(吸熱反応)を開始する。この還元反応により発生するガスはCOガスが主体であるため、炭材内装塊成鉱に混合して装入した、原料層上部の焼結鉱、ペレット、塊鉱石等の高炉原料の還元を促進するため、原料層層厚全体の還元効率が向上し、燃料比が低下する。また、内装炭材が優先的にCO2ガスと反応するため、燃料として装入したコークスとCO2 ガスとの反応が抑制され、コークスの粉発生量が低下するため高炉内の通気性が向上する。
【0035】
【実施例】
〔実施例1〕
高炉内を模擬した還元条件で、本発明に用いる炭材内装塊成鉱と、従来の焼結鉱およびペレット(焼成ペレット)の還元実験を行い、還元の状況を比較した。
【0036】
炭材内装塊成鉱は、表1に示す粉鉱石と表2に示す石炭粉を78:22(粉鉱石:石炭粉)の質量割合で混合し、その混合物を440℃の温度に加熱し、双ロール型成形機で、線圧2.5t/cmの成形圧で30mm×25mm×17mm(体積約6cm3)の大きさの卵形のブリケット(炭材内装塊成鉱)に熱間成形した。
【0037】
焼結鉱は、粒径11.2〜12.7mmのものを使用し、焼成ペレットは、粒径約12mmのものを使用した。
【0038】
還元実験は、各サンプルごとに、一定荷重(98kPa)を掛けた状態で、図4に示す昇温・ガス成分の条件で実施した。なお、ブリケット(炭材内装塊成鉱)については、4分割して還元実験に供した。
【0039】
【表1】
【0040】
【表2】
【0041】
図5に、各サンプルについて行った還元実験の結果を示す。図5は、到達温度とその時の還元率との関係を示したものである。図5から明らかなように、炭材内装塊成鉱は、特に1000℃までのCOポテンシャルの低い条件下において、ペレットおよび焼結鉱に比べて格段に還元性が優れていることがわかる。このことから、炭材内装塊成鉱を原料層の上部側に配する(含ませる)ことにより、COポテンシャルの低い原料層上部における原料の還元率の低下を抑制できることが確認された。
【0042】
〔実施例2〕
次に、炭材内装塊成鉱と、炭材内装コールドボンドペレットと、焼成ペレットとを実施例1とは異なる方法および条件でそれぞれ還元実験を行い、還元中の強度の変化を比較した。炭材内装塊成鉱と焼成ペレットは、上記実施例1で用いたものと同じものを使用した。なお、ブリケット(炭材内装塊成鉱)は分割せずにそのまま用いた。炭材内装コールドボンドペレットは、炭材内装塊成鉱と同じく、粉鉱石と石炭粉を78:22(粉鉱石:石炭粉)の質量割合で混合し、これに、ポルトランドセメントを外数で11.1質量%添加し、適量の水分を添加して約12mm径のペレットに造粒した後、密封して約5日間養生して作製した。還元実験は、サンプルに荷重を掛けずに、1000〜1200℃の範囲で一定温度に維持した加熱炉中にサンプルを挿入し、炭材内装塊成鉱および炭材内装コールドボンドペレットでは0〜20分、焼成ペレットでは0〜60分の範囲内で還元時間を種々変更して行った。なお、加熱炉中の雰囲気は、炭材内装塊成鉱および炭材内装コールドボンドペレットではN2:100%とし、焼成ペレットでは、N2/CO=50/50(容積%)とした。図6に、還元後の各サンプルの還元率と圧潰強度との関係を示す。図6から明らかなように、焼成ペレットでは、還元前に比べ還元率20%で圧潰強度が1/10程度に急激に低下しており、炭材内装コールドボンドペレットでは還元率の上昇とともに圧潰強度が徐々に低下し、還元率40%で圧潰強度が1/2程度まで低下する。これに対し、炭材内装塊成鉱では、還元中ほとんど圧潰強度が変化せず(低下せず)、高い強度を維持することが確認された。このことから、炭材内装塊成鉱を用いることにより、高炉内での原料の粉化が抑制され、炉内通気性が向上ないし維持される。
【0043】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る高炉原料装入方法によれば、原料層上部の還元遅れを効果的に防止できるため、燃料比が低下できる。また、高炉原料やコークスの粉化を抑制できるため高炉内の通気性が向上するので、高炉への補助燃料多量吹込み操業が安定して行える。
【図面の簡単な説明】
【図1】代表的な高炉内高さ方向における温度変化およびガス成分変化を示す模式図である。
【図2】各原料層中の層厚方向における、温度変化、ガス成分変化、および還元率変化を示す模式図である。
【図3】粉状炭材のlogMFと炭材内装塊成鉱の圧潰強度との関係を示すグラフ図である。
【図4】実施例1の還元実験の昇温・ガス成分の条件を示す図である。
【図5】実施例1の還元実験による、到達温度と還元率との関係を示すグラフ図である。
【図6】実施例2の還元実験による、還元率と圧潰強度との関係を示すグラフ図である。
Claims (6)
- 高炉内へ塊状酸化鉄原料と塊状炭材とを交互に層状に装入する原料装入方法において、
前記塊状酸化鉄原料からなる各原料層の上面から下方へ至る当該原料層厚の1/2以下の厚みの部分に、酸化鉄と炭素とを主成分とする炭材内装塊成鉱であって、この炭材内装塊成鉱中の炭素量が、当該炭材内装塊成鉱中の酸化鉄を還元するのに必要な理論炭素量の 0.5 倍以上であるものを、含ませたことを特徴とする高炉原料装入方法。 - 高炉内へ塊状酸化鉄原料と塊状炭材とを交互に層状に装入する原料装入方法において、
前記塊状酸化鉄原料からなる各原料層の上面から下方へ至る当該原料層厚の 1/2 以下の厚みの部分に、酸化鉄と炭素とを主成分とする炭材内装塊成鉱を、前記塊状酸化鉄原料と前記炭材内装塊成鉱との合計量と、前記塊状炭材との質量比が 4 以上となるように含ませたことを特徴とする高炉原料装入方法。 - 前記炭材内装塊成鉱が、粉状酸化鉄含有物質と粉状炭材とを含む混合物を300〜550℃の温度範囲で熱間成形して得られたものである請求項1または2に記載の高炉原料装入方法。
- 前記粉状炭材のギーセラ最高流動度(MF)が log MF≧1.0 である請求項3に記載の高炉原料装入方法。
- 前記熱間成形の後であって高炉装入前に、前記炭材内装塊成鉱を前記熱間成形温度以上の温度で5分間以上保持して脱タール処理を行う請求項3または4に記載の高炉原料装入方法。
- 前記高炉が、補助燃料吹き込み量が銑鉄1トン当たり100kg以上の高炉である請求項1〜5のいずれか1項に記載の高炉原料装入方法。
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