WO2024147279A1 - 電荷輸送性インク組成物 - Google Patents

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光平 寺谷
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日産化学株式会社
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Abstract

電荷輸送性を有しつつ、平坦性に優れる膜を与える電荷輸送性インク組成物として、金属酸化物ナノ粒子と、pH10におけるcLogDが-1.35~-0.1であるアルコールアミン化合物と、有機溶媒とを含む電荷輸送性インク組成物を提供する。

Description

電荷輸送性インク組成物
 本発明は、電荷輸送性インク組成物に関する。
 有機エレクトロルミネッセンス(以下、有機ELという)素子は、高コントラスト、省エネルギー、フレキシブル化が可能などの様々な利点から注目を集めており、ディスプレイや照明などの分野で実用化が進んでいる。有機EL素子では、複数の機能性薄膜が用いられるが、その中の1つである電子輸送層は、陰極と発光層との電荷の授受を担い、有機EL素子の低電圧駆動および高輝度を達成するために重要な役割を有する。
 有機EL素子の製造方法は、蒸着法に代表されるドライプロセスと、スピンコート法やインクジェット法に代表されるウェットプロセスに大別される。素子の大面積化の観点で両者のプロセスを比較すると、ウェットプロセスはドライプロセスと比較して、効率的に、大面積に平坦性の高い膜を製造できる。したがって、有機EL素子の大面積製造が求められている現在、ウェットプロセスで形成可能な優れた機能を有する電子輸送層等を提供することは重要である。
 また、近年ではディスプレイ技術の発展に伴い、量子ドット材料を発光層とする量子ドットEL素子が登場し、広い応用の見通しを示している。この量子ドットEL素子は、ウェットプロセスで低コストに製造できる一方で、発光波長の制御、色純度の高さ、発光効率の高さ、フレキシブル用途に用いられるなどの特性により、ディスプレイ技術、照明などの分野で多くの注目を集めている。
 このようなEL素子では、発光層と陰極との間に金属酸化物ナノ粒子を含有する電子輸送層を積層させることで発光層に効率よく電子を注入することを必要とし、これまでにも、その効率を高めるために金属酸化物ナノ粒子の種類や一次粒子径等について検討がなされてきた(特許文献1~3)。
 また、有機EL素子や量子ドットEL素子で一般的に使用されるZnO等の金属酸化物ナノ粒子は、粒子径が小さいため(一次粒子径:数nm~数10nm程度)、比表面積が大きくなる。結果として生じる大きな表面エネルギーにより、金属酸化物ナノ粒子は非常に不安定で凝集しやすくなる。金属酸化物ナノ粒子が凝集した場合は、成膜性や得られる薄膜の導電性に影響を与える(特許文献4)。金属酸化物ナノ粒子が凝集した状態のインクを塗布して、電子輸送層等の機能層を形成すると、安定した成膜を行うことができず、不均一で平坦性が悪くなる。
 金属酸化物ナノ粒子の凝集を抑制する手段として、金属酸化物ナノ粒子の表面処理(特許文献5)、バインダーの添加(特許文献6)等が行われているが、得られるEL素子の性能を向上させるために、さらなる改善が望まれている。
国際公開第2006/098540号 特開2010-055900号公報 国際公開第2009/084273号 国際公開第2019/128992号 国際公開第2020/121398号 国際公開第2021/044634号
 本発明は、上記背景に鑑みてなされたものであり、電荷輸送性を有しつつ、平坦性に優れる膜を与える電荷輸送性インク組成物を提供することを目的とする。
 本発明者は、鋭意検討を行った結果、金属酸化物ナノ粒子、アルコールアミン化合物および有機溶媒を含む電荷輸送性インク組成物において、特定のアルコールアミン化合物を用いることで、金属酸化物ナノ粒子の分散性が改善され、電荷輸送性薄膜の平坦性が向上することを見出し、本発明を完成した。
 すなわち、本発明は、以下の電荷輸送性インク組成物を提供する。
1. 金属酸化物ナノ粒子と、pH10におけるcLogDが-1.35~-0.1であるアルコールアミン化合物と、有機溶媒とを含む電荷輸送性インク組成物。
2. 上記金属酸化物ナノ粒子が、酸化亜鉛ナノ粒子、アルミニウムドープ酸化亜鉛ナノ粒子、マグネシウムドープ酸化亜鉛ナノ粒子およびリチウムドープ酸化亜鉛ナノ粒子からなる群より選択される少なくとも1種である1の電荷輸送性インク組成物。
3. 上記アルコールアミン化合物が、下記式(1)で表される1または2の電荷輸送性インク組成物。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000002
(式中、R1~R3は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1~3のアルキル基である。ただし、R1、R2およびR3が同時に水素原子になることはない。)
4. 上記アルコールアミン化合物が、モノイソプロパノールアミン、N-エチルエタノールアミン、1-アミノ-2-メチル-2-プロパノールおよび1-アミノ-2-ブタノールからなる群より選択される少なくとも1種である3の電荷輸送性インク組成物。
5. 上記アルコールアミン化合物および上記金属酸化物ナノ粒子のモル比(アルコールアミン化合物/金属酸化物ナノ粒子)が0.1以上である1~4のいずれかの電荷輸送性インク組成物。
6. 上記有機溶媒が、沸点が200℃以上の有機溶媒を少なくとも1種含む1~5のいずれかの電荷輸送性インク組成物。
7. 1~6のいずれかの電荷輸送性インク組成物から得られる電荷輸送性薄膜。
8. 7の電荷輸送性薄膜を備える電子素子。
9. 上記電荷輸送性薄膜が、電子輸送層である8の電子素子。
10. 上記電子素子が、有機EL素子または量子ドットEL素子である9の電子素子。
11. 1~6のいずれかの電荷輸送性インク組成物を基材上に塗布し、溶媒を蒸発させることを特徴とする電荷輸送性薄膜の製造方法。
12. 金属酸化物ナノ粒子と、アルコールアミン化合物と、有機溶媒とを含む電荷輸送性インク組成物から得られる電荷輸送性薄膜の平坦性の向上方法であって、pH10におけるcLogDが-1.35~-0.1であるアルコールアミン化合物を用いることを特徴とする電荷輸送性薄膜の平坦性の向上方法。
 本発明の電荷輸送性インク組成物を用いることで、平坦性に優れた電荷輸送性薄膜を得ることができる。この電荷輸送性薄膜は、有機EL素子や量子ドットEL素子をはじめとした電子素子用薄膜として好適に用いることができる。
実施例1-1の電荷輸送性インク組成物を用いて隔壁(バンク)付基板のバンク内に形成された膜の表面形状を示す図である。 実施例1-2の電荷輸送性インク組成物を用いて隔壁(バンク)付基板のバンク内に形成された膜の表面形状を示す図である。 実施例1-3の電荷輸送性インク組成物を用いて隔壁(バンク)付基板のバンク内に形成された膜の表面形状を示す図である。 実施例1-4の電荷輸送性インク組成物を用いて隔壁(バンク)付基板のバンク内に形成された膜の表面形状を示す図である。 比較例1-1の電荷輸送性インク組成物を用いて隔壁(バンク)付基板のバンク内に形成された膜の表面形状を示す図である。 比較例1-2の電荷輸送性インク組成物を用いて隔壁(バンク)付基板のバンク内に形成された膜の表面形状を示す図である。 比較例1-3の電荷輸送性インク組成物を用いて隔壁(バンク)付基板のバンク内に形成された膜の表面形状を示す図である。
 以下、本発明についてさらに詳しく説明する。
 本発明の電荷輸送性インク組成物は、金属酸化物ナノ粒子と、pH10におけるcLogDが-1.35~-0.1であるアルコールアミン化合物と、有機溶媒とを含むものである。なお、本発明においては、本発明の電荷輸送性インク組成物に関する「固形分」とは、当該組成物に含まれる溶媒以外の成分を意味する。また、本発明の電荷輸送性とは、導電性と同義であり、電子輸送性とも同義である。本発明の電荷輸送性インク組成物は、それ自体に電荷輸送性があるものでもよく、組成物を使用して得られる固体膜に電荷輸送性があるものでもよい。
 本発明の電荷輸送性インク組成物は、金属酸化物ナノ粒子を含む。ナノ粒子とは、一次粒子についての平均粒子径がナノメートルのオーダー(典型的には500nm以下)である微粒子を意味する。金属酸化物ナノ粒子とは、ナノ粒子に成形された金属酸化物を意味する。
 本発明で用いる金属酸化物ナノ粒子の一次粒子径は、ナノサイズであれば特に限定されるものではないが、再現性よく平坦性に優れた薄膜を得ることを考慮すると、数nm~数10nmが好ましく、具体的には2~30nmがより好ましい。また、金属酸化物ナノ粒子は凝集し、凝集体である二次粒子を形成することもある。なお、粒子径は、透過電子顕微鏡法やBET測定法等の方法により測定することができる。
 本発明で用いる金属酸化物ナノ粒子を構成する金属は、通常の意味での金属に加え、半金属も包含する。
 通常の意味での金属としては、特に限定されるものではないが、スズ(Sn)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、ジルコニウム(Zr)、亜鉛(Zn)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、セリウム(Ce)、イットリウム(Y)およびガリウム(Ga)からなる群より選択される1種または2種以上を用いることが好ましい。
 一方、半金属とは、化学的および/または物理的性質が金属と非金属の中間である元素を意味する。半金属の普遍的な定義は確立されていないが、本発明では、ホウ素(B)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)およびテルル(Te)の計6元素を半金属とする。これらの半金属は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよく、また通常の意味での金属と組み合わせて用いてもよい。
 本発明で用いる金属酸化物ナノ粒子は、ホウ素(B)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)、テルル(Te)、スズ(Sn)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、ジルコニウム(Zr)、亜鉛(Zn)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、セリウム(Ce)、イットリウム(Y)およびガリウム(Ga)から選ばれる1種または2種以上の金属の酸化物を含むことが好ましい。なお、金属が2種以上の組み合わせである場合、金属酸化物は、個々の単独の金属の酸化物の混合物であってもよく、複数の金属を含む複合酸化物であってもよい。
 金属酸化物の具体例としては、B23、B2O、SiO2、SiO、GeO2、GeO、As24、As23、As25、Sb23、Sb25、TeO2、SnO2、TiO2、BaTiO3、Al23、ZrO2、ZnO、Nb25、TaO2、Ta25、WO2、WO3、CeO2、Y23、Ga23等が挙げられる。本発明では、これらの中でも、ZnOが好ましい。さらには、金属がドープされた酸化亜鉛ナノ粒子を用いてもよく、アルミニウムドープ酸化亜鉛ナノ粒子、マグネシウムドープ酸化亜鉛ナノ粒子、リチウムドープ酸化亜鉛ナノ粒子が好ましい。
 金属酸化物ナノ粒子が導電性を有し、かつ電荷注入できる理由については、以下のような理由が考えられる。
(理由1)
 金属酸化物は、それ自体が誘電体であるが、ナノ粒子を合成するプロセスにおいて金属欠損や酸素欠損などの欠陥準位が生じることで、不完全な酸化物状態となることがある。不完全な酸化状態を有する金属酸化物は、電子材料的に見ると、過剰な正孔や過剰な電子を生じることとなり、p型半導体やn型半導体の要因と考えられている。このような金属酸化物ナノ粒子を膜状にした場合、内部電荷を多く含んだ層が構成されることになる。そして、この層に電界を印加することで、内部電荷が対向電極に移動し、電流となる。
(理由2)
 金属酸化物ナノ粒子が、電極または量子ドットと接する場合、その界面で電荷移動錯体を形成する。より詳細に述べると、金属酸化物ナノ粒子上の酸化物と電極との間、または、金属酸化物ナノ粒子上の金属と量子ドットとの間で電荷移動錯体(金属錯体)が形成される。そのため、電荷はこの電荷移動錯体を通じて発光層に注入され、電極と金属酸化物ナノ粒子との間、または、金属酸化物ナノ粒子と量子ドットとの間にバンドギャップがあっても電荷注入が起こると考えられる。
 本発明の電荷輸送性インク組成物が含む金属酸化物ナノ粒子は、1種単独であっても、2種以上であってもよい。
 本発明の電荷輸送性インク組成物が含む金属酸化物ナノ粒子は、組成物中に均一に分散していることが好ましい。
 なお、上記金属酸化物ナノ粒子は、1種以上の有機キャッピング基を含んでもよい。この有機キャッピング基は、反応性であっても非反応性であってもよい。反応性有機キャッピング基の例としては、紫外線またはラジカル開始剤により架橋できる有機キャッピング基が挙げられる。
 本発明の電荷輸送性インク組成物において、金属酸化物ナノ粒子の含有量は、特に限定されるものではないが、電荷輸送性インク組成物中での粒子の凝集を抑制する観点、再現性よく平坦性に優れた薄膜を得る観点、薄膜時の導電性を発現させる観点等から、固形分中10~99質量%が好ましく、20~95質量%がより好ましく、30~90質量%が最も好ましい。
 特に、本発明においては、金属酸化物ナノ粒子が分散した金属酸化物ナノ粒子ゾルを用いることで、金属酸化物ナノ粒子が均一に分散した組成物を再現性よく調製できる。
 すなわち、金属酸化物ナノ粒子自体を、アルコールアミン化合物とともに溶媒に混ぜて分散させるよりも、予め金属酸化物ナノ粒子ゾルを調製し、そのゾルを、アルコールアミン化合物や溶媒と混ぜることで、金属酸化物ナノ粒子が均一に分散した電荷輸送性インク組成物を再現性よく製造できる。
 このような金属酸化物ナノ粒子ゾルは、市販品を用いてもよく、本発明の電荷輸送性インク組成物が含み得る溶媒および金属酸化物ナノ粒子を用いて公知の方法で調製することもできる。
 特に、本発明の電荷輸送性インク組成物を調製する際には、酸化亜鉛ナノ粒子が分散媒に分散した酸化亜鉛ナノ粒子インクを用いることが好適である。酸化亜鉛ナノ粒子インクとしては、特に限定されるものではなく、公知の酸化亜鉛ナノ粒子インクから適宜選択して用いることができる。
 市販の酸化亜鉛ナノ粒子インクは通常、分散液の形態にある。市販の酸化亜鉛ナノ粒子インクとしては、酸化亜鉛ナノ粒子が種々の溶媒、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、1-ブタノール、テルピネオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、N,N-ジメチルアセトアミド、エチレングリコールモノプロピルエーテル、シクロヘキサノン、酢酸エチル、トルエン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート等に分散したものが挙げられる。
 特に、本発明においては、分散媒がアルコール系溶媒またはグリコール系溶媒である酸化亜鉛ナノ粒子が好ましい。アルコール系溶媒またはグリコール系溶媒としては、水溶性のアルコールまたはグリコール系溶媒が好ましく、エタノール、イソプロパノール、1-ブタノール、テルピネオール、エチレングリコール、プロピレングリコールがより好ましい。
 上記酸化亜鉛ナノ粒子インクとしては、市販品を用いることもでき、具体例としては、GenesInk社製のHelios ETL Spray(H-SZ11034)、Helios ETL Jet(H-SZ010134)、Helios ETL Slot Die(H-SZ41029)、Helios ETL Slot Die+(H-SZ41044);Avantama社製のN-10、N-10-Jet、N-10-Screen、N-11、N-11-jet、N-11-Screen等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、アルミニウムドープ酸化亜鉛ナノ粒子インクとしては、市販品を用いることもでき、具体例としては、GenesInk社製のHelios ETL D Spray(H-DZ11015)、Helios ETL D Jet(H-DZ01015)、Helios ETL D Slot Die(H-D41006)、Helios ETL D Slot Die+(H-DZ41021);Avantama社製のN-20X、N-20X-Jet、N-20X-Screen、N-21X、N-21X-Jet、N-21X-Screen等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
 酸化亜鉛ナノ粒子インク中の酸化亜鉛ナノ粒子濃度は、インク組成物の粘度および表面張力等や、作製する薄膜の厚み等を勘案して適宜設定されるものではあるが、通常0.1~30質量%程度である。酸化亜鉛ナノ粒子の濃度が高い場合、当該混合物が含む溶媒の種類によっては酸化亜鉛ナノ粒子が凝集してしまうことがあるため、組成物調製の際はその点は留意する。
 本発明の電荷輸送性インク組成物は、pH10におけるcLogDが-1.35~-0.1であるアルコールアミン化合物を含む。
 ここで、cLogDは、水および親油相(通常、オクタノール)間での化合物の分配係数を表す。本発明において、上記cLogDは、SciFindernに記載されている、SciFindern Calculated using Advanced Chemistry Development (ACD/Labs) Software V11.02 (1994-2022 ACD/Labs)で計算された数値を使用している。また、他の公知のプログラムを使用して計算された数値を使用することもできる。
 本発明において、上記アルコールアミン化合物としては、下記式(1)で表されるアルコールアミン化合物が好ましい。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000003
(式中、R1~R3は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1~3のアルキル基である。ただし、R1、R2およびR3が同時に水素原子になることはない。)
 炭素数1~3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基が挙げられ、メチル基およびエチル基が好ましい。
 上記アルコールアミン化合物の具体例としては、モノイソプロパノールアミン、N-エチルエタノールアミン、1-アミノ-2-メチル-2-プロパノール、1-アミノ-2-ブタノール、2-メチル-1-(メチルアミノ)-2-プロパノール、1-(メチルアミノ)-2-プロパノール等が挙げられ、モノイソプロパノールアミン、N-エチルエタノールアミン、1-アミノ-2-メチル-2-プロパノールおよび1-アミノ-2-ブタノール等が好ましい。
 上記アルコールアミン化合物は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
 上記アルコールアミン化合物の含有量は、金属酸化物ナノ粒子の分散性の点から、固形分中1~90質量%が好ましく、5~80質量%がより好ましく、10~70質量%が最も好ましい。
 また、金属酸化物ナノ粒子の分散性を考慮すると、上記アルコールアミン化合物および上記金属酸化物ナノ粒子のモル比(アルコールアミン化合物/金属酸化物ナノ粒子)が、0.1以上であることが好ましく、1以上であることがより好ましく、2以上であることが更に好ましい。なお、上記モル比の上限は、特に限定されるものではないが、得られる薄膜の平坦性を考慮すると、20以下であることが好ましい。
 本発明の電荷輸送性インク組成物は、有機溶媒を含む。このような有機溶媒としては、固形分を分散または溶解するものであれば特に限定されるものではない。その具体例としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クロロベンゼン等の芳香族またはハロゲン化芳香族炭化水素溶媒;n-ヘプタン、n-ヘキサン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ノルマルヘキシル、乳酸エチル、γ-ブチロラクトン、プロピレンカーボネート、マロン酸ジイソプロピル等のエステル系溶媒;塩化メチレン、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素溶媒;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等のアミド系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-プロパノール、1-ブタノール、シクロヘキサノール、ジアセトンアルコール、2-ベンゾオキシエタノール、テルピネオール等のアルコール系溶媒;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコールエーテル系溶媒;エチレングリコール、プロピレングリコール、へキシレングリコール、1,3-オクチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール等のグリコール系溶媒などの中から適宜選択して用いればよい。
 本発明では、これらの中でも、アルコール系溶媒、アミド系溶媒、およびグリコール系溶媒が好ましく、エタノール、イソプロパノール、1-ブタノール、テルピネオール、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、エチレングリコール、プロピレングリコール、へキシレングルコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールおよびトリエチレングリコールがより好ましい。
 なお、これらの有機溶媒は、それぞれ単独で、または2種以上混合して用いることができる。
 また、電荷輸送性インク組成物を用いて薄膜を形成する際、その膜厚が均一となるような組成物が求められる。特にインクジェット法を用いて成膜する際、低沸点溶媒のみを含む組成物では、使用条件によっては平坦な層を得ることが難しいことがある。このような場合、高沸点溶媒を用いることにより、溶媒の蒸発を抑制し、インクの対流や粘度上昇の速度を抑えることができるため、平坦な層が得られると考えられる。このことを考慮すると、上述した有機溶媒の中でも、特に沸点が200℃以上の有機溶媒を少なくとも1種含むことが好ましく、沸点が230℃以上の有機溶媒を少なくとも1種含むことがより好ましい。沸点の上限については、特に限定されるものではないが、通常、330℃以下である。
 本発明の電荷輸送性インク組成物は、溶媒として有機溶媒のみを用いることが最適である。なお、この場合における「有機溶媒のみ」とは、溶媒として用いるものが有機溶媒だけであることを意味し、使用する有機溶媒や固形分等に微量に含まれる「水」の存在までをも否定するものではない。
 本発明の電荷輸送性インク組成物は、金属酸化物ナノ粒子と、pH10におけるcLogDが-1.35~-0.1であるアルコールアミン化合物と、有機溶媒とを含むものであるが、得られる薄膜の電荷輸送性をさらに向上させるために、必要に応じて後述のバインダー樹脂、有機シラン化合物を含んでいてもよい。
 バインダー樹脂としては、電荷輸送性インク組成物に使用する少なくとも1種の溶媒に分散または溶解するものであれば特に限定されず、高分子材料をバインダーとして用いることができる。バインダー樹脂に金属酸化物ナノ粒子をブレンドすることで、成膜性に優れるとともに、安定な膜を容易に形成することができる。なお、バインダー樹脂は、少なくとも一種あればよく、その種類の数は特に限定されない。
 その具体例としては、ポリスチレン、ポリイミド、ポリカーボネート、アクリル樹脂、不活性な樹脂等を用いることができるが、特に限定されるものではない。
 また、バインダー樹脂は、電荷輸送性を有してもよいし、バインダー樹脂中には、電荷輸送性材料を混入してもよい。これらの場合、バインダー樹脂が絶縁性である場合よりも電子輸送層の導電性を向上させることができる。金属酸化物ナノ粒子自身でも充分な電荷輸送性を有するが、微少なナノ粒子がバインダー内に均一、かつ低濃度で分散された場合、ナノ粒子が持つ電荷を効果的に輸送できないことがある。そこで、金属酸化物ナノ粒子以外の電子輸送層を構成する材料として、電荷輸送性を持たせた材料を用いることによって、金属酸化物ナノ粒子のもつ高い電荷輸送性を更に効果的に引き出すことができる。
 本発明の電荷輸送性インク組成物が、バインダー樹脂を含む場合、その含有量は、固形分中、通常5~95質量%程度であるが、得られる薄膜の平坦性の向上や電荷輸送性の低下の抑制等のバランスを考慮すると、好ましくは10~90質量%程度、より好ましくは20~80質量%程度、より一層好ましくは30~70質量%程度である。
 本発明の電荷輸送性インク組成物は、公知の有機シラン化合物を含んでいてもよい。このような有機シラン化合物を電荷輸送性インク組成物に含めることで、当該インク組成物から得られる電荷輸送性薄膜を有機EL素子や量子ドットEL素子の電子輸送層として用いる場合に、得られる薄膜の平坦性を向上させたり、それに接するように設けられる発光層への電子輸送性を向上させたりすることができる。
 有機シラン化合物としては、アルコキシシランが好ましく、トリアルコキシシランおよびテトラアルコキシシランがより好ましい。上記アルコキシシランとしては、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、等を挙げることができる。本発明では、これらの中でも、テトラエトキシシラン(TEOS)、テトラメトキシシラン、テトライソプロポキシシランを好適に使用し得る。これらの有機シラン化合物は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
 本発明の電荷輸送性インク組成物が、有機シラン化合物を含む場合、その含有量は、固形分中、通常0.1~50質量%程度であるが、得られる薄膜の平坦性の向上や電荷輸送性の低下の抑制等のバランスを考慮すると、好ましくは0.5~40質量%程度、より好ましくは0.8~30質量%程度、より一層好ましくは1~20質量%程度である。
 本発明の電荷輸送性インク組成物の粘度は、通常、25℃で1~50mPa・sであり、表面張力は、通常、25℃で20~50mN/mである。本発明の電荷輸送性インク組成物の粘度と表面張力は、用いる塗布方法、所望の膜厚等の各種要素を考慮して、用いる有機溶媒の種類やそれらの比率、固形分濃度等を変更することで調整可能である。
 また、本発明の電荷輸送性インク組成物の固形分濃度は、電荷輸送性インク組成物の粘度および表面張力等や、作製する薄膜の厚み等を勘案して適宜設定されるものではあるが、通常0.1~30質量%程度であり、インク組成物中の電荷輸送性物質や金属酸化物ナノ粒子の凝集を抑制する等の観点から、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、より一層好ましくは10質量%以下である。
 本発明の電荷輸送性インク組成物を調製する際、固形分が溶媒に均一に溶解または分散する限り、金属酸化物ナノ粒子、アルコールアミン化合物および有機溶媒、さらに必要に応じて、バインダー樹脂や有機シラン化合物等を任意の順序で混合することができる。すなわち、例えば、金属酸化物ナノ粒子の有機溶媒分散液に上述したアルコールアミン化合物を加える方法;有機溶媒に上記アルコールアミン化合物を溶解させた溶液を得た後、金属酸化物ナノ粒子の有機溶媒分散液を加える方法;金属酸化物ナノ粒子の有機溶媒分散液に、予め準備した上記アルコールアミン化合物を含む溶液と他の成分またはその溶液とを加える方法が挙げられる。これらの方法は、固形分が溶媒に均一に溶解または分散する限り、採用することができる。
 バインダー樹脂や有機シラン化合物を使用する場合は、上記方法において任意のタイミングでこれらを溶解させればよい。
 なお、金属酸化物ナノ粒子は、共に混ぜられる成分の種類や量によっては、混ぜられた際に凝集または沈殿する可能性がある点を留意する。
 電荷輸送性インク組成物の調製では、成分が分解したり変質したりしない範囲で、適宜加熱してもよい。
 本発明においては、電荷輸送性インク組成物は、より平坦性の高い薄膜を再現性よく得る目的で、電荷輸送性インク組成物を製造する途中段階でまたは全ての成分を混合した後に、サブマイクロメートルオーダーのフィルター等を用いてろ過してもよい。
 以上で説明した電荷輸送性インク組成物を基材上に塗布して焼成することで、基材上に電荷輸送性薄膜を形成することができる。
 インク組成物の塗布方法としては、特に限定されるものではなく、ディップ法、スピンコート法、転写印刷法、ロールコート法、刷毛塗り、インクジェット法、スプレー法、スリットコート法等が挙げられ、塗布方法に応じてインク組成物の粘度および表面張力を調節することが好ましい。
 また、本発明の電荷輸送性インク組成物を用いる場合、焼成雰囲気も特に限定されるものではなく、大気雰囲気だけでなく、窒素等の不活性ガスや真空中でも均一な成膜面および高い電荷輸送性を有する薄膜を得ることができる。焼成温度は、得られる薄膜の用途、得られる薄膜に付与する電荷輸送性の程度、溶媒の種類や沸点等を勘案して、100~260℃程度の範囲内で適宜設定されるものではあるが、得られる薄膜を有機EL素子や量子ドットEL素子の電子輸送層として用いる場合、120~250℃程度が好ましい。なお、焼成の際、より高い均一成膜性を発現させたり、基材上で反応を進行させたりする目的で、2段階以上の温度変化をつけてもよく、加熱は、例えば、ホットプレートやオーブン等、適当な機器を用いて行えばよい。
 電荷輸送性薄膜の膜厚は、特に限定されないが、有機EL素子や量子ドットEL素子の電子注入層、電子輸送層等の陰極と発光層との間に設けられる機能層として用いる場合、5~300nmが好ましく、20~250nmがより好ましい。膜厚を変化させる方法としては、電荷輸送性インク組成物中の固形分濃度を変化させたり、塗布時の基板上の溶液量を変化させたりする等の方法がある。
 本発明の有機EL素子や量子ドットEL素子は、一対の電極を有し、これら電極の間に、上述の本発明の電荷輸送性薄膜からなる電荷輸送層を有するものである。
 有機EL素子や量子ドットEL素子の代表的な構成としては、以下(a)~(f)が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。本発明の電荷輸送性インク組成物は、これらの中でも、特に(a)~(d)の構成を有する素子において好適に採用し得る。なお、下記構成において、必要に応じて、発光層と陽極の間に電子ブロック層等を、発光層と陰極の間にホール(正孔)ブロック層等を設けることもできる。また、正孔注入層、正孔輸送層あるいは正孔注入輸送層が電子ブロック層等としての機能を兼ね備えていてもよく、電子注入層あるいは電子輸送層がホール(正孔)ブロック層等としての機能を兼ね備えていてもよい。さらに、必要に応じて各層の間に任意の機能層を設けることも可能である。
(a)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(b)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(c)陽極/正孔注入輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(d)陽極/正孔注入輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(e)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/陰極
(f)陽極/正孔注入輸送層/発光層/陰極
 「正孔注入層」、「正孔輸送層」および「正孔注入輸送層」とは、発光層と陽極との間に形成される層であって、正孔を陽極から発光層へ輸送する機能を有するものであり、発光層と陽極の間に、正孔輸送性材料の層が1層のみ設けられる場合、それが「正孔注入輸送層」であり、発光層と陽極の間に、正孔輸送性材料の層が2層以上設けられる場合、陽極に近い層が「正孔注入層」であり、それ以外の層が「正孔輸送層」である。特に、正孔注入(輸送)層は、陽極からの正孔受容性だけでなく、正孔輸送(発光)層への正孔注入性にも優れる薄膜が用いられる。
 「電子注入層」および「電子輸送層」とは、発光層と陰極との間に形成される層であって、電子を陰極から発光層へ輸送する機能を有するものであり、発光層と陰極の間に、電子輸送性材料の層が1層のみ設けられる場合、それが「電子輸送層」であり、発光層と陰極の間に、電子輸送性材料の層が2層以上設けられる場合、陰極に近い層が「電子注入層」であり、それ以外の層が「電子輸送層」である。
 「発光層」とは、発光機能を有する層であって、有機発光層または量子ドット発光層であってもよい。対応して、前記発光層が有機発光層のEL素子である場合、有機EL素子であり、前記発光層が量子ドット発光層のEL素子である場合、量子ドットEL素子である。
 本発明の電荷輸送性インク組成物から作製された電荷輸送性薄膜は、有機EL素子や量子ドットEL素子において、陰極と発光層との間に形成される機能層として用い得るが、電子注入層、電子輸送層として好適であり、電子輸送層としてより好適である。
 本発明の電荷輸送性インク組成物を用いてEL素子を作製する場合の使用材料や、作製方法としては、下記のようなものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
 本発明の電荷輸送性インク組成物から得られる薄膜からなる電子輸送層を有する有機EL素子や量子ドットEL素子の作製方法の一例は、以下のとおりである。なお、電極は、電極に悪影響を与えない範囲で、アルコール、純水等による洗浄や、UVオゾン処理、酸素-プラズマ処理等による表面処理を予め行うことが好ましい。
 陽極基板に、正孔輸送性高分子を含む正孔注入層形成用組成物や正孔輸送層形成用組成物を用いてウェットプロセスによって正孔注入層、正孔輸送層を順次積層する。続いて、発光性高分子もしくは量子ドット材料を含む発光層形成用組成物を用いてウェットプロセスによって発光層を積層する。さらに、本発明の電荷輸送性インク組成物を用いてウェットプロセスによって電子輸送層を形成し、その上に陰極金属を蒸着する。あるいは、当該方法においてウェットプロセスで正孔注入層と正孔輸送層と発光層を形成する代わりに、蒸着によってこれらの層を形成することもできる。なお、必要に応じて、発光層と正孔輸送層との間に電子ブロック層を設けてもよい。以上では、陽極、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、陰極の順に積層する例(順構造)を説明したが、これに限定されず、陰極、電子輸送層、発光層、正孔輸送層、正孔注入層、陽極の順に積層(逆構造)してもよい。
 陽極材料としては、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)に代表される透明電極や、アルミニウムに代表される金属陽極、またはこれらの合金等から構成される金属陽極が挙げられ、平坦化処理を行ったものが好ましい。高電荷輸送性を有するポリチオフェン誘導体やポリアニリン誘導体を用いることもできる。
 なお、金属陽極を構成するその他の金属としては、金、銀、銅、インジウムやこれらの合金等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
 正孔輸送性高分子としては、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)-ポリ(スチレンスルホン酸)、ポリ[(9,9-ジヘキシルフルオレニル-2,7-ジイル)-co-(N,N’-ビス{p-ブチルフェニル}-1,4-ジアミノフェニレン)]、ポリ[(9,9-ジオクチルフルオレニル-2,7-ジイル)-co-(N,N’-ビス{p-ブチルフェニル}-1,1’-ビフェニレン-4,4-ジアミン)]、ポリ[(9,9-ビス{1’-ペンテン-5’-イル}フルオレニル-2,7-ジイル)-co-(N,N’-ビス{p-ブチルフェニル}-1,4-ジアミノフェニレン)]、ポリ[N,N’-ビス(4-ブチルフェニル)-N,N’-ビス(フェニル)-ベンジジン]-エンドキャップド ウィズ ポリシルシスキノキサン、ポリ[(9,9-ジジオクチルフルオレニル-2,7-ジイル)-co-(4,4’-(N-(p-ブチルフェニル))ジフェニルアミン)]等が挙げられるが、これらに限定されない。
 発光性高分子としては、ポリ(9,9-ジアルキルフルオレン)(PDAF)等のポリフルオレン誘導体、ポリ(p-フェニレンビニレン)、ポリ[2-メトキシ-5-(2-エチルヘキシルオキシ)-1,4-フェニレンビニレン](MEH-PPV)等のポリフェニレンビニレン誘導体、ポリ(3-アルキルチオフェン)(PAT)等のポリチオフェン誘導体、ポリビニルカルバゾール(PVCz)等が挙げられるが、これらに限定されない。
 量子ドット材料としては、半導体材料として、II-VI族半導体、III-V族半導体、I-III-VI族半導体、IV族半導体およびI-II-IV-VI族半導体からなる群より選択される少なくとも1種の半導体材料を含むことができる。上記半導体材料の具体例としては、例えば、CdS、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、ZnO、HgS、HgSe、HgTe、CdSeS、CdSeTe、CdSTe、ZnSeS、ZnSeTe、ZnSTe、HgSeS、HgSeTe、HgSTe、CdZnS、CdZnSe、CdZnTe、CdHgS、CdHgSe、CdHgTe、HgZnS、HgZnSe、CdHgZnTe、CdZnSeS、CdZnSeTe、CdZnSTe、CdHgSeS、CdHgSeTe、CdHgSTe、HgZnSeS、HgZnSeTe、HgZnSTe;GaN、GaP、GaAs、GaSb、AlN、AlP、AlAs、AlSb、InN、InP、InAs、InSb、GaNP、GaNAs、GaNSb、GaPAs、GaPSb、AlNP、AlNAs、AlNSb、AlPAs、AlPSb、InNP、InNAs、InNSb、InPAs、InPSb、GaAlNP、GaAlNAs、GaAlNSb、GaAlPAs、GaAlPSb、GaInNP、GaInNAs、GaInNSb、GaInPAs、GaInPSb、InAlNP、InAlNAs、InAlNSb、InAlPAs、InAlPSb;SnS、SnSe、SnTe、PbS、PbSe、PbTe、SnSeS、SnSeTe、SnSTe、PbSeS、PbSeTe、PbSTe、SnPbS、SnPbSe、SnPbTe、SnPbSSe、SnPbSeTe、SnPbSTe;Si、Ge、SiC、SiGe、AgInSe2、CuGaSe2、CuInS2、CuGaS2、CuInSe2、AgInS2、AgGaSe2、AgGaS2、C、SiおよびGe等が挙げられるが、これらに限定されない。
 正孔注入層を形成する材料としては、銅フタロシアニン、酸化チタンフタロシアニン、白金フタロシアニン、ピラジノ[2,3-f][1,10]フェナントロリン-2,3-ジカルボニトリル、N,N,N',N'-テトラキス(4-メトキシフェニル)ベンジジン、2,7-ビス[N,N-ビス(4-メトキシ-フェニル)アミノ]-9,9-スピロビフルオレン、2,2'-ビス[N,N-ビス(4-メトキシ-フェニル)アミノ]-9,9-スピロビフルオレン、N,N'-ジフェニル-N,N'-ジ[4-(N,N-ジトリルアミノ)フェニル]ベンジジン、N,N'-ジフェニル-N,N'-ジ[4-(N,N-ジフェニルアミノ)フェニル]ベンジジン、N4,N4'-(ビフェニル-4,4'-ジイル)ビス(N4,N4',N4'-トリフェニルビフェニル-4,4'-ジアミン)N1,N1'-(ビフェニル-4,4'-ジイル)ビス(N1-フェニル-N4,N4'-ジ-m-トリルベンゼン-1,4-ジアミン)、国際公開第2004/043117号、国際公開第2004/105446号、国際公開第2005/000832号、国際公開第2005/043962号、国際公開第2005/042621号、国際公開第2005/107335号、国際公開第2006/006459号、国際公開第2006/025342号、国際公開第2006/137473号、国際公開第2007/049631号、国際公開第2007/099808号、国際公開第2008/010474号、国際公開第2008/032617号、国際公開第2008/032616号、国際公開第2008/129947号、国際公開第2009/096352号、国際公開第2010/041701号、国際公開第2010/058777号、国際公開第2010/058776号、国際公開第2013/042623号、国際公開第2013/129249号、国際公開第2014/115865号、国際公開第2014/132917号、国際公開第2014/141998号および国際公開第2014/132834号に記載の電荷輸送材料等が挙げられるが、これらに限定されない。
 正孔輸送層を形成する材料としては、(トリフェニルアミン)ダイマー誘導体、[(トリフェニルアミン)ダイマー]スピロダイマー、N,N’-ビス(ナフタレン-1-イル)-N,N’-ビス(フェニル)-ベンジジン(α-NPD)、4,4’,4”-トリス[3-メチルフェニル(フェニル)アミノ]トリフェニルアミン(m-MTDATA)、4,4’,4”-トリス[1-ナフチル(フェニル)アミノ]トリフェニルアミン(1-TNATA)等のトリアリールアミン類、5,5”-ビス-{4-[ビス(4-メチルフェニル)アミノ]フェニル}-2,2’:5’,2”-ターチオフェン(BMA-3T)等のオリゴチオフェン類などが挙げられるが、これらに限定されない。
 発光層を形成する材料としては、8-ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体等の金属錯体、10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリンの金属錯体、ビススチリルベンゼン誘導体、ビススチリルアリーレン誘導体、(2-ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾールの金属錯体、シロール誘導体等の低分子発光材料;ポリ(p-フェニレンビニレン)、ポリ[2-メトキシ-5-(2-エチルヘキシルオキシ)-1,4-フェニレンビニレン]、ポリ(3-アルキルチオフェン)、ポリビニルカルバゾール等の高分子化合物に発光材料と電子移動材料を混合した系等が挙げられるが、これらに限定されない。
 また、蒸着で発光層を形成する場合、発光性ドーパントと共蒸着してもよく、発光性ドーパントとしては、トリス(2-フェニルピリジン)イリジウム(III)(Ir(ppy)3)等の金属錯体や、ルブレン等のナフタセン誘導体、キナクリドン誘導体、ペリレン等の縮合多環芳香族環等が挙げられるが、これらに限定されない。
 陰極材料としては、アルミニウム、マグネシウム-銀合金、アルミニウム-リチウム合金等が挙げられるが、これらに限定されない。
 電子ブロック層を形成する材料としては、トリス(フェニルピラゾール)イリジウム等が挙げられるが、これに限定されない。
 陽極と陰極およびこれらの間に形成される層を構成する材料は、ボトムエミッション構造、トップエミッション構造のいずれを備える素子を製造するかで異なるため、その点を考慮して、適宜材料選択する。
 通常、ボトムエミッション構造の素子では、基板側に透明陽極が用いられ、基板側から光が取り出されるのに対し、トップエミッション構造の素子では、金属からなる反射陽極が用いられ、基板と反対方向にある透明電極(陰極)側から光が取り出されることから、例えば陽極材料について言えば、ボトムエミッション構造の素子を製造する際はITO等の透明陽極を、トップエミッション構造の素子を製造する際はAg合金やAl合金等の反射陽極を、それぞれ用いる。
 本発明の有機EL素子は、特性悪化を防ぐため、定法に従い、必要に応じて捕水剤などとともに封止してもよい。
 本発明の電荷輸送性インク組成物は、上述したとおり有機EL素子や量子ドットEL素子の陰極と発光層との間に形成される機能層の形成に好適に用いられるが、その他にも有機光電変換素子、有機薄膜太陽電池、有機ペロブスカイト光電変換素子、有機集積回路、有機電界効果トランジスタ、有機薄膜トランジスタ、有機発光トランジスタ、有機光学検査器、有機光受容器、有機電場消光素子、発光電子化学電池、量子レーザー、有機レーザーダイオードおよび有機プラスモン発光素子等の電子素子における電荷輸送性薄膜の形成にも利用することができる。特に、有機EL素子や量子ドットEL素子において好適に利用することができる。
 本発明の電荷輸送性薄膜の平坦性の向上方法は、金属酸化物ナノ粒子と、アルコールアミン化合物と、電荷輸送性物質と、有機溶媒とを含む電荷輸送性インク組成物から得られる電荷輸送性薄膜の平坦性の向上方法であり、金属酸化物ナノ粒子、アルコールアミン化合物等の固形分や有機溶媒に関する種類、量や電荷輸送性薄膜の形成条件等の好適な条件は上記と同じである。
 電荷輸送性薄膜の平坦性の向上は、平均表面粗さRaで評価することができる。具体的には、基板上に形成した電荷輸送性薄膜について、公知の微細形状測定機、例えば、(株)小坂研究所製のサーフコーダET-4000を用いて測定することができる。本発明において、上記平均表面粗さRa(nm)は、通常5.0nm以下、好ましい態様においては3.0nm以下、より好ましい態様においては2.0nm以下、より一層好ましい態様においては1.0nm以下である。
 以下、合成例、製造例、実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、これによって本発明が限定されるものではない。なお、実施例で使用した装置は以下のとおりである。
(1)基板洗浄
装置:長州産業(株)製、基板洗浄装置(減圧プラズマ方式)
(2)スピンコーティング
装置:ミカサ(株)製、スピンコーターMS-A100
(3)インクジェットシステム
インクジェットヘッド:クラスターテクノロジー(株)製、PulseInjector
ドライバー:クラスターテクノロジー(株)製、WaveBuilder
自動ステージ:クラスターテクノロジー(株)製、Inkjet Designer
(4)電荷輸送性薄膜の平坦性の評価
装置:(株)小坂研究所製、微細形状測定機 サーフコーダET-4000
〔試薬〕
 以下で用いる略号の意味は、次のとおりである。
MMA:メチルメタクリレート
HEMA:2-ヒドロキシエチルメタクリレート
CHMI:N-シクロヘキシルマレイミド
HPMA:4-ヒドロキシフェニルメタクリレート
MAA:メタクリル酸
AIBN:α、α’-アゾビスイソブチロニトリル
PGME:プロピレングリコールモノメチルエーテル
HPMA-QD:4-ヒドロキシフェニルメタクリレート1molと、1,2-ナフトキノン-2-ジアジド-5-スルホニルクロリド1.1molの縮合反応によって合成される化合物
PFHMA:2-(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレート
CHN:シクロヘキサノン
QD1:α、α、α’-トリス(4-ヒドロキシフェニル)-1-エチル-4-イソプロピルベンゼン1molと、1,2-ナフトキノン-2-ジアジド-5-スルホニルクロリド1.5molの縮合反応によって合成される化合物
GT-401:ブタンテトラカルボン酸テトラ(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)修飾ε-カプロラクトン(商品名:エポリードGT-401((株)ダイセル製))
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
TMAH:テトラメチルアンモニウムヒドロキシド
[1]隔壁(バンク)付基板の作製
(1)アクリル重合体の合成
[合成例1]
 MMA10.0g、HEMA12.5g、CHMI20.0g、HPMA2.50g、MAA5.00g、およびAIBN3.20gをPGME79.8gに溶解し、60~100℃にて20時間反応させることにより、アクリル重合体溶液(固形分濃度40質量%)を得た(P1)。得られたアクリル重合体P1のMnは3,700、Mwは6,100であった。
[合成例2]
 HPMA-QD2.50g、PFHMA7.84g、MAA0.70g、CHMI1.46g、およびAIBN0.33gをCHN51.3gに溶解し、110℃にて20時間撹拌して反応させることにより、アクリル重合体溶液(固形分濃度20質量%)を得た(P2)。得られたアクリル重合体P2のMnは4,300、Mwは6,300であった。
(2)ポジ型感光性樹脂組成物の製造
[製造例1]
 合成例1で得られたP1 5.04g、合成例2で得られたP2 0.05g、QD1 0.40g、GT-401 0.09gおよびPGMEA6.42gを混合し、室温で3時間撹拌して均一な溶液とし、ポジ型感光性樹脂組成物を得た。
(3)隔壁(バンク)付基板の作製
[製造例2]
 (株)テクノビジョン製UV-312を用いて10分間オゾン洗浄したITOプラズマ洗浄上に、スピンコーターを用いて、製造例1で得られたポジ型感光性樹脂組成物を塗布した後、基板をホットプレート上でのプリベーク(温度100℃で120秒間加熱)に付して、膜厚1.2μmの薄膜を形成した。この薄膜に、長辺200μm、短辺100μmの長方形が多数描かれたパターンのマスクを介して、キヤノン(株)製紫外線照射装置PLA-600FAにより、紫外線(365nmにおける光強度:5.5mW/cm2)を一定時間照射した。その後、薄膜を1.0質量%TMAH水溶液に120秒間浸漬して現像を行った後、超純水を用いて薄膜の流水洗浄を20秒間行った。次いで、この長方形パターンが形成された薄膜をポストベーク(温度230℃で30分間加熱)に付して硬化させ、隔壁付基板を作製した。
[2]電荷輸送性インク組成物および電荷輸送性薄膜の作製
[実施例1-1]
 酸化亜鉛ナノ粒子インク(GenesInk社製 Helios ETL Jet H-SZ010134)100質量部(ZnOとして0.4mmol、0.033g)に対して、モノイソプロパノールアミン2.0質量部(0.8mmol、0.060g)を添加して撹拌し、孔径0.2μmのPPシリンジフィルターでろ過し、電荷輸送性インク組成物を作製した。
 得られた電荷輸送性インク組成物を、スピンコーターを用いてITO-ガラス基板上に塗布した後、10Pa以下の減圧度(真空度)で15分減圧乾燥し、さらに基板をグローブボックス内に移動し、窒素下140℃で30分間焼成し、基板上に膜厚40nmの電荷輸送性薄膜(スピンコート膜)を形成した。なお、ITO-ガラス基板は、プラズマ洗浄装置(150W、30秒間)を用いて表面上の不純物を除却してから使用した。
 また、得られた電荷輸送性インク組成物を、製造例2で作製した隔壁(バンク)付基板にインクジェットシステムを用いて吐出し、10Pa以下の減圧度(真空度)で15分減圧乾燥し、さらに基板をグローブボックス内に移動し、窒素下140℃で30分間焼成し、基板上に電荷輸送性薄膜(インクジェット膜)を形成した。
[実施例1-2~1-4]
 モノイソプロパノールアミン2.0質量部(0.8mmol、0.060g)の代わりに、N-エチルエタノールアミン2.4質量部(0.8mmol、0.071g)、1-アミノ-2-メチル-2-プロパノール2.4質量部(0.8mmol、0.071g)、1-アミノ-2-ブタノール2.4質量部(0.8mmol、0.071g)をそれぞれ使用した以外は、実施例1-1と同様の方法で電荷輸送性インク組成物および電荷輸送性薄膜(スピンコート膜、インクジェット膜)を作製した。
[比較例1-1]
 モノイソプロパノールアミンを含まないこと以外は、実施例1-1と同様の方法で電荷輸送性インク組成物および電荷輸送性薄膜を作製した。
[比較例1-2、1-3]
 モノイソプロパノールアミン2.0質量部(0.8mmol、0.060g)の代わりに、モノエタノールアミン1.6質量部(0.8mmol、0.049g)、1-ジメチルアミノ-2-プロパノール2.8質量部(0.8mmol、0.083g)をそれぞれ加えた以外は、実施例1-1と同様の方法で電荷輸送性インク組成物および電荷輸送性薄膜(スピンコート膜、インクジェット膜)を作製した。
[実施例2-1]
 酸化亜鉛ナノ粒子インク(Avantama社製 N-10-Screen)100質量部(ZnOとして0.6mmol、0.049g)に対して、モノイソプロパノールアミン6.0質量部(1.6mmol、0.120g)を添加して撹拌し、孔径0.2μmのPPシリンジフィルターでろ過し、電荷輸送性インク組成物を作製した。
 得られた電荷輸送性インク組成物を、スピンコーターを用いてITO-ガラス基板上に塗布した後、10Pa以下の減圧度(真空度)で15分減圧乾燥し、さらに基板をグローブボックス内に移動し、窒素下140℃で30分間焼成し、基板上に膜厚40nmの電荷輸送性薄膜(スピンコート膜)を形成した。なお、ITO-ガラス基板は、プラズマ洗浄装置(150W、30秒間)を用いて表面上の不純物を除却してから使用した。
[実施例2-2~2-4]
 モノイソプロパノールアミン6.0質量部(1.6mmol、0.120g)の代わりに、N-エチルエタノールアミン6.0質量部(1.4mmol、0.125g)、1-アミノ-2-メチル-2-プロパノール6.0質量部(1.4mmol、0.125g)、1-アミノ-2-ブタノール6.0質量部(1.4mmol、0.125g)をそれぞれ使用した以外は、実施例2-1と同様の方法で電荷輸送性インク組成物および電荷輸送性薄膜(スピンコート膜)を作製した。
[比較例2-1]
 モノイソプロパノールアミンを含まないこと以外は、実施例2-1と同様の方法で電荷輸送性インク組成物および電荷輸送性薄膜(スピンコート膜)を作製した。
[比較例2-2]
 モノイソプロパノールアミン6.0質量部(1.6mmol、0.120g)の代わりに、モノエタノールアミン4.3質量部(1.4mmol、0.086g)を使用した以外は、実施例2-1と同様の方法で電荷輸送性インク組成物および電荷輸送性薄膜(スピンコート膜)を作製した。
[実施例3-1]
 酸化亜鉛マグネシウムナノ粒子インク(Chem.Commun.,2019,55,13299-13302.に記載された方法で合成)100質量部(ZnMgOとして0.6mmol、0.120g)に対して、N-エチルエタノールアミン6.0質量部(1.6mmol、0.120g)を添加して撹拌し、孔径0.2μmのPPシリンジフィルターでろ過し、電荷輸送性インク組成物を作製した。
 得られた電荷輸送性インク組成物を、スピンコーターを用いてITO-ガラス基板上に塗布した後、10Pa以下の減圧度(真空度)で15分減圧乾燥し、さらに基板をグローブボックス内に移動し、窒素下140℃で30分間焼成し、基板上に膜厚40nmの電荷輸送性薄膜(スピンコート膜)を形成した。なお、ITO-ガラス基板は、プラズマ洗浄装置(150W、30秒間)を用いて表面上の不純物を除却してから使用した。
[実施例3-2~3-3]
 N-エチルエタノールアミン6.0質量部(1.6mmol、0.120g)の代わりに、1-アミノ-2-メチル-2-プロパノール6.0質量部(1.4mmol、0.125g)、1-アミノ-2-ブタノール6.0質量部(1.4mmol、0.125g)をそれぞれ使用した以外は、実施例3-1と同様の方法で電荷輸送性インク組成物および電荷輸送性薄膜(スピンコート膜)を作製した。
[比較例3-1]
 モノイソプロパノールアミン6.0質量部(1.6mmol、0.120g)の代わりに、モノエタノールアミン4.3質量部(1.4mmol、0.086g)を使用した以外は、実施例3-1と同様の方法で電荷輸送性インク組成物および電荷輸送性薄膜(スピンコート膜)を作製した。
 電荷輸送性薄膜の平坦性の評価を以下の方法で行った。
 実施例1-1~1-4、実施例2-1~2-4、実施例3-1~3-3、比較例1-1~1-3、比較例2-1~2-2および比較例3-1で得られたスピンコート膜について、微細形状測定機を用いて、電荷輸送性薄膜の算術平均表面粗さRaを評価した。なお、微細形状測定機の測定範囲は、0.2mmとした。また、実施例1-1~1-4、比較例1-1~1-3で得られたインクジェット膜について、微細形状測定機を用いて、電荷輸送性薄膜の表面形状を評価した。結果を表1、表2、表3および図1~7に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000004
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000005
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000006
 表1~3に示されるように、pH10におけるcLogDが-1.35~-0.1であるアルコールアミン化合物を含む、電荷輸送性インク組成物から形成されたスピンコート膜の算術平均表面粗さRaは、比較例の電荷輸送性インク組成物から形成されたスピンコート膜の算術平均表面粗さRaよりも低かった。また、上記アルコールアミン化合物を含む電荷輸送性インク組成物から形成されたインクジェット膜の表面形状は、比較例の電荷輸送性インク組成物から形成されたインクジェット膜の表面形状よりも良好であった。以上より、平坦性の高い電荷輸送性薄膜が、本発明から得られた。
 これは、上記アルコールアミン化合物を用いることで、当該アルコールアミン化合物と金属酸化物ナノ粒子との安定な相互作用により、組成物を塗布した後の真空乾燥工程における金属酸化物ナノ粒子の凝集が、緩和または抑制されたためと推測される。
[3]エレクトロンオンリー素子(EOD)の作製
[実施例4-1]
 実施例1-2で使用した電荷輸送性インク組成物を、スピンコーターを用いてITO基板に塗布した後、大気雰囲気下、100℃で30秒間仮焼成をした。次いで、140℃で15分間本焼成をし、ITO基板上に40nmの薄膜を形成した。なお、ITO基板としては、パターニングされた厚さ50nmのITO膜が表面に形成された、25mm×25mm×0.7tのガラス基板を用い、使用前にO2プラズマ洗浄装置(150W、30秒間)によって表面上の不純物を除去した。
 この上に、蒸着装置(真空度1.0×10-5Pa)を用いて0.2nm/秒にて膜厚80nmのアルミニウム薄膜を形成した。その後、空気中の酸素、水等の影響による特性劣化を防止するため、封止基板により封止した。封止は、以下の手順で行った。酸素濃度2ppm以下、露点-76℃以下の窒素雰囲気中で、ITO基板を封止基板の間に収め、封止基板を接着剤((株)MORESCO製、モレスコモイスチャーカットWB90US(P))により貼り合わせた。この際、捕水剤(ダイニック(株)製HD-071010W-40)をITO基板とともに封止基板内に収めた。貼り合わせた封止基板に対し、UV光を照射(波長:365nm、照射量:6,000mJ/cm2)した後、80℃で1時間、アニーリング処理して接着剤を硬化させた。これをエレクトロンオンリー素子(EOD)とした。
[実施例4-2~4-3]
 実施例1-2で使用した電荷輸送性インク組成物の代わりに、実施例1-3~1-4で使用した電荷輸送性インク組成物をそれぞれ用いた以外は、実施例4-1と同様の方法で、EODを得た。
[実施例5-1~5-3]
 実施例1-2で使用した電荷輸送性インク組成物の代わりに、実施例3-1~3-3で使用した電荷輸送性インク組成物をそれぞれ用いた以外は、実施例4-1と同様の方法で、EODを得た。
 実施例4-1~4-3および実施例5-1~5-3で作製したEODについて、駆動電圧5Vでの電流密度を測定した。結果を表4および表5に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000007
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000008
 表4および表5に示されるとおり、本発明の電荷輸送性インク組成物から得られた電荷輸送性薄膜は、良好な電子輸送性を示した。

Claims (12)

  1.  金属酸化物ナノ粒子と、pH10におけるcLogDが-1.35~-0.1であるアルコールアミン化合物と、有機溶媒とを含む電荷輸送性インク組成物。
  2.  上記金属酸化物ナノ粒子が、酸化亜鉛ナノ粒子、アルミニウムドープ酸化亜鉛ナノ粒子、マグネシウムドープ酸化亜鉛ナノ粒子およびリチウムドープ酸化亜鉛ナノ粒子からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1記載の電荷輸送性インク組成物。
  3.  上記アルコールアミン化合物が、下記式(1)で表される請求項1記載の電荷輸送性インク組成物。
    Figure JPOXMLDOC01-appb-C000001
    (式中、R1~R3は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1~3のアルキル基である。ただし、R1、R2およびR3が同時に水素原子になることはない。)
  4.  上記アルコールアミン化合物が、モノイソプロパノールアミン、N-エチルエタノールアミン、1-アミノ-2-メチル-2-プロパノールおよび1-アミノ-2-ブタノールからなる群より選択される少なくとも1種である請求項3記載の電荷輸送性インク組成物。
  5.  上記アルコールアミン化合物および上記金属酸化物ナノ粒子のモル比(アルコールアミン化合物/金属酸化物ナノ粒子)が0.1以上である請求項1記載の電荷輸送性インク組成物。
  6.  上記有機溶媒が、沸点が200℃以上の有機溶媒を少なくとも1種含む請求項1記載の電荷輸送性インク組成物。
  7.  請求項1~6のいずれか1項記載の電荷輸送性インク組成物から得られる電荷輸送性薄膜。
  8.  請求項7記載の電荷輸送性薄膜を備える電子素子。
  9.  上記電荷輸送性薄膜が、電子輸送層である請求項8記載の電子素子。
  10.  上記電子素子が、有機EL素子または量子ドットEL素子である請求項9記載の電子素子。
  11.  請求項1~6のいずれか1項記載の電荷輸送性インク組成物を基材上に塗布し、溶媒を蒸発させることを特徴とする電荷輸送性薄膜の製造方法。
  12.  金属酸化物ナノ粒子と、アルコールアミン化合物と、有機溶媒とを含む電荷輸送性インク組成物から得られる電荷輸送性薄膜の平坦性の向上方法であって、pH10におけるcLogDが-1.35~-0.1であるアルコールアミン化合物を用いることを特徴とする電荷輸送性薄膜の平坦性の向上方法。
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