WO2024135647A1 - 共重合体及びそれを用いた眼用組成物 - Google Patents

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Abstract

本発明は、角膜またはコンタクトレンズ表面に長く滞留して、保水性及び潤滑性を長時間持続できる共重合体を提供する。 本発明は、下記式(1a)のモノマー(a)またはその塩と、下記式(1b)又は(2b)のモノマー(b)とに由来する構成単位を含み、モル比率n:nが10:90~70:309、Mwが10,000~2,000,000である共重合体である。 【化1】 (RはH又はCH、XはO又はNR、RはH又はC1~4アルキル基、n=1~4。) 【化2】(RはH又はCH、YはO又はNR、RはH又はC1~4アルキル基、mは1~6、炭素鎖中に水酸基を有してもよく、Aはホスホリルコリン基又は水酸基、m=1の場合または炭素鎖中に水酸基を有する場合はHでもよい。) 【化3】 (RはH又はCH、RはC1~4アルキル基又はRと環状構造を形成しているアルキレン基。)

Description

共重合体及びそれを用いた眼用組成物
 本発明は、共重合体及びそれを用いた眼用組成物に関する。
 近年、長時間のデジタル機器の使用による瞬目回数の減少やコンタクトレンズ装用者の増加により、国内の潜在的なドライアイ患者数は800万人にも上ると言われている。ドライアイは涙腺における涙液分泌量の減少、涙液中の脂質やムチンの異常による水分量の蒸発などによって誘起され、角膜や結膜の機能低下、炎症及び感染症等を引き起こすことが知られている。
 これらの眼疾患の原因となるドライアイを予防・治療するために、潤い不足を防止する保水性を備えた点眼剤が知られている。例えば、特許文献1では、ヒアルロン酸またはその塩とセルロース系高分子またはビニル系高分子とを有する点眼剤が、ドライアイの症状を改善できるとしている。
 一方、コンタクトレンズの使用者数は国内で1500万人に上るとも言われており、その便利さゆえに装用時間が長時間化している。若年層のコンタクトレンズ装用者における一日の平均装用時間は約14時間になるとの報告もあるが、長時間の装用は乾燥感、ゴロゴロ感といった不快感を招きやすい。よって、良好な装用感が持続するコンタクトレンズは、依然として市場から求められている。
 コンタクトレンズ装用時の不快感はコンタクトレンズ表面の乾燥や摩擦が原因であるとされている。これらを解決する方法として、例えば、特許文献2及び3に記載のコンタクトレンズに保水力及び潤滑性を付与する方法が知られている。特許文献2には、ヒアルロン酸などの親水性高分子をコンタクトレンズパッキング液に配合する方法が開示されている。また、特許文献3には、ポリビニル系高分子化合物やセルロース系高分子化合物などを使用したコンタクトレンズ装着液が開示されている。
特開2014-167034号公報 国際公開2013/031020号 特開2005-187345号公報
 しかしながら、特許文献1に記載の上記セルロース系高分子やビニル系高分子は、保水性を向上させることでドライアイ症状を緩和できるものの、いずれも角膜上での滞留性は十分でなく、効果の持続性に問題がある。また、特許文献2及び3に記載の方法では、コンタクトレンズへの滞留性が十分でなく、時間とともに流れ落ちてしまうのが現状である。そこで、角膜表面及びコンタクトレンズ表面に長く滞留し、保水性及び潤滑性を保持できる化合物が求められている。ここで、本発明者らの知見によれば、角膜表皮細胞の表面に存在するムチンや、涙液中に分泌されているムチンと相互作用する化合物は、角膜表面及びコンタクトレンズ表面に長く滞留できると考えられる。
 本発明は、上記課題に鑑み、ムチンと相互作用し、かつ保水性及び潤滑性を長時間持続できる共重合体及びこれを用いた眼用組成物を提供することを目的とする。
 本発明者らは鋭意検討した結果、グアニジノ基を有するモノマーと、特定の親水性モノマーとからなる新規の共重合体が上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
 すなわち、本発明は以下の[1]~[7]よりなる。
 [1]下記式(1a)で表されるモノマー(a)またはその塩に由来する構成単位と、下記式(1b)および(2b)のうちいずれかで表されるモノマー(b)に由来する構成単位とを含み、各構成単位のモル比率n:nが10:90~70:30(nは共重合体中のモノマー(a)またはその塩に由来する構成単位のモル割合であり、nは共重合体中のモノマー(b)に由来する構成単位のモル割合である。)であり、
 重量平均分子量が10,000~2,000,000である、共重合体。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000006
(式(1a)中、Rは水素原子またはメチル基であり、XはOまたはNR、ここで、RはHまたは炭素数1~4のアルキル基であり、n=1~4である。)
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000007
(式(1b)中、Rは水素原子またはメチル基であり、YはOまたはNR、ここで、RはHまたは炭素数1~4のアルキル基であり、mは1~6であり、炭素鎖中に一つ以上の水酸基を有していてもよく、Aはホスホリルコリン基または水酸基であり、m=1の場合及び炭素鎖中に水酸基を有する場合のいずれかに限り水素原子でもよい。)
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000008
(式(2b)中、Rは水素原子またはメチル基であり、Rは炭素数1~4のアルキル基または末端がRに結合し環状構造を形成している炭素数1~4のアルキレン基である。)
 [2]前記モノマー(b)が下記式(3b)で表されるモノマー、N-ビニルピロリドン、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-ビニルアセトアミド及びN-ビニル-N-メチルアセトアミドからなる群から選択される少なくとも1つのモノマーを含む、[1]に記載の共重合体。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000009
(式(3b)中、Rは水素原子またはメチル基であり、ZはOまたはNR、ここで、RはHまたは炭素数1~4のアルキル基である。)
 [3]前記モノマー(b)が式(3b)で表されるモノマー及びN-ビニルピロリドンの少なくとも1つを含む、[1]または[2]に記載の共重合体。
 [4]前記モノマー(b)が2-(メタクリロイルオキシ)エチル2-(トリメチルアンモニオ)エチルホスファートを含む、[1]から[3]のいずれかに記載の共重合体。
 [5]前記モノマー(a)またはその塩が下記式(2a)で表されるモノマーまたはその塩を含む、[1]から[4]のいずれかに記載の共重合体。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000010
(式(2a)中、Rは水素原子またはメチル基である。)
 [6][1]から[5]のいずれかに記載の共重合体(P)を0.001w/v%以上、5.0w/v%以下含む、眼用組成物。
 [7]さらに多糖または糖タンパク質を0.001w/v%以上、10.0w/v%以下含む、[6]に記載の眼用組成物。
 本発明の共重合体は、保水性及び潤滑性を角膜表面またはコンタクトレンズ表面に付与し、かつ角膜表面またはコンタクトレンズ表面に長く滞留してこれらの効果を持続的に奏することができる。このため、本発明の共重合体は、眼用組成物として有用であり、点眼剤やコンタクトレンズ用処理液として好適である。
実施例共重合体(P1)のH NMR測定結果を示す図である。
 以下、本発明をさらに詳しく説明する。
 本明細書において、好ましい数値範囲(例えば、濃度や重量平均分子量の範囲など)を段階的に記載した場合、各下限値及び上限値は、それぞれ独立して組合せることができる。例えば、「好ましくは10~100、より好ましくは20~90」という記載において、「好ましい下限値:10」と「より好ましい上限値:90」とを組合せて、「10以上90以下」とする事ができる。つまり、「10~90」とすることができる。
 本発明において、「(メタ)アクリル」は、アクリルまたはメタアクリル(メタクリル)を意味し、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイルまたはメタアクリロイル(メタクリロイル)を意味し、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートまたはメタアクリレート(メタクリレート)を意味し、「(メタ)アクリルアミド」は、アクリルアミドまたはメタアクリルアミド(メタクリルアミド)を意味する。
 本発明の眼用組成物の製品形態としては、眼に直接付与する組成物、およびコンタクトレンズ等の眼に装着する機器を処理するために用いる組成物が含まれ、次のようなものを明示することができる。具体的には、点眼剤、洗眼剤、コンタクトレンズ用処理液などが挙げられる。さらに本発明のコンタクトレンズ用処理液の具体的な製品形態としては、コンタクトレンズ用パッキング液(コンタクトレンズ出荷液)、コンタクトレンズ用保存液、コンタクトレンズ用洗浄液、コンタクトレンズ用洗浄保存液、コンタクトレンズ消毒剤、コンタクトレンズ装着薬等が挙げられる。
 本明細書において、コンタクトレンズ用パッキング液とは、コンタクトレンズを流通する際にコンタクトレンズと共にブリスターパッケージ等の包装容器に封入される水溶液のことである。一般にコンタクトレンズは水溶液で膨潤した状態で使用するため、レンズは出荷時に水溶液(コンタクトレンズ用パッキング液)で膨潤した状態で、すぐに使用できるように包装容器へ封入されている。
[共重合体(P)]
 本発明の共重合体(P)は、下記式(1a)で表されるモノマー(a)またはその塩と、下記式(1b)および(2b)のうちいずれかで表されるモノマー(b)とを重合して得られる。そのため、共重合体(P)は、モノマー(a)またはその塩に由来する構成単位と、モノマー(b)に由来する構成単位と、を含む。共重合体(P)は、各構成モノマーに由来する構成単位のモル比率n:nが10:90~70:30であり、重量平均分子量は10,000~2,000,000である。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000011
 前記式(1a)中、Rは水素原子またはメチル基であり、XはOまたはNR、ここで、RはHまたは炭素数1~4のアルキル基であり、n=1~4である。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000012
 前記式(1b)中、Rは水素原子またはメチル基であり、YはOまたはNR、ここで、RはHまたは炭素数1~4のアルキル基であり、mは1~6であり、炭素鎖中に一つ以上の水酸基を有していてもよく、Aはホスホリルコリン基または水酸基であり、m=1の場合及び炭素鎖中に水酸基を有する場合のいずれかに限り水素原子でもよい。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000013
 前記式(2b)中、Rは水素原子またはメチル基であり、Rは炭素数1~4のアルキル基または末端がRに結合し環状構造を形成している炭素数1~4のアルキレン基である。
[モノマー(a)]
 本発明の共重合体(P)は、式(1a)で表されるグアニジノ基を有するモノマー(a)(以下、「GEモノマー(a)」ともいう)またはその塩を重合に用いることで得られる。塩の種類としては、塩酸塩、炭酸塩、重炭酸塩、リン酸塩、硫酸塩などが挙げられる。塩酸塩、炭酸塩または重炭酸塩であることが好ましく、塩酸塩であることがより好ましい。共重合体(P)がGEモノマー(a)またはその塩を構成モノマーとして有することにより、共重合体(P)をムチンと相互作用させやすくして、角膜表面及びコンタクトレンズ表面への滞留性を高めることができる。なお、GEモノマー(a)は1種に限定されず、1種又は2種以上用いることができる。
 GEモノマー(a)は、式(1)のn=2であるモノマーであることが好ましい。
 n=2であるGEモノマー(a)の好ましい例としては、XがOである式(2a)で表されるモノマーが挙げられる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000014
 前記式(2a)中、Rは水素原子またはメチル基である。
 式(2a)で表されるモノマーのより好ましい例としては、Rがメチル基である2-グアニジノエチルメタクリレートが挙げられる。
 また、n=2であるGEモノマー(a)の他の好ましい例としては、Rがメチル基でありXがNR、RがHである2-グアニジノエチルメタクリルアミドなどが挙げられる。
 式(1a)で表されるモノマーは公知の方法で製造することができ、例えば、Barner-Kowollik, Christopher; et al Polymer Chemistry (2020), 11(26), 4213-4220(以下、参考文献1)及びZhao, Qingqing; et al Chemical Communications (2020), 56(36), 4954-4957(以下、参考文献2)等に記載のアミノ基含有重合性単量体と1-アミジノピラゾール塩酸塩とを塩基存在下で反応させる方法により製造できる。
[モノマー(b)] 
 本発明の共重合体(P)は、式(1b)および(2b)のうちいずれかで表されるモノマー(b)を重合に用いることで得られる。これらの親水性のモノマー(b)を共重合させることで、共重合体(P)を含む眼用組成物の角膜又はコンタクトレンズ表面での耐乾燥性を高めることができる。
 モノマー(b)の好ましい例としては、式(1b)のYがO、Aが水酸基のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、YがNH、Aが水酸基のヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド、YがN、R4がメチル基、m=1、Aが水素原子のN,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、YがO、m=3で2位に水酸基を有し、Aが水酸基のグリセロールモノ(メタ)アクリレート、m=2、Aがホスホリルコリン基である式(3b)で表されるモノマーが挙げられる。モノマー(b)の別の好ましい例としては、式(2b)のR6がメチル基のN-ビニルアセトアミドまたはN-メチルN-ビニルアセトアミド、R6がエチレン基で環状構造を有するN-ビニルピロリドン等が挙げられる。より好ましくは下記式(3b)で表されるモノマー、N-ビニルピロリドン、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-ビニルアセトアミド、N-ビニル-N-メチルアセトアミド、N-ビニルピロリドンが挙げられる。さらに好ましくは式(3b)で表されるモノマーまたはN-ビニルピロリドンであり、さらにより好ましくは(3b)で表されるモノマーが挙げられる。式(3b)で表されるモノマーまたはN-ビニルピロリドン、特には式(3b)で表されるモノマーを用いると、共重合体(P)を含む眼用組成物の角膜又はコンタクトレンズ表面での耐乾燥性をさらに高めることができる。なお、これらモノマー(b)は1種に限定されず、1種又は2種以上用いることができる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000015
 前記式(3b)中、Rは水素原子またはメチル基であり、ZはOまたはNR、ここで、RはHまたは炭素数1~4のアルキル基である。)
 式(3b)で表されるモノマーの例としては、2-((メタ)アクリロイルオキシ)エチル-2-(トリメチルアンモニオ)エチルホスファート、2-((メタ)アクリルアミド)エチル-2-(トリメチルアンモニオ)エチルホスファートが挙げられ、より好ましくは、2-(メタクリロイルオキシ)エチル2-(トリメチルアンモニオ)エチルホスファート(別名:2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン)である。
 式(3b)で表されるモノマーは公知の方法で製造することができ、例えば、水酸基含有重合性単量体と2-ブロムエチルホスホリルジクロリドとを3級塩基存在下で反応させ、これにより得られた化合物と3級アミンとを反応させる方法が挙げられる。また、水酸基含有重合性単量体と環状リン化合物との反応で環状化合物を得た後、3級アミンで開環反応させる方法を用いてもよい。
[GEモノマー(a)とモノマー(b)との比率]
 共重合体(P)中の、GEモノマー(a)またはその塩に由来する構成単位とモノマー(b)に由来する構成単位のモル比率n:nは10:90~70:30であり、好ましくは20:80~60:40であり、さらに好ましくは30:70~50:50である。ここで、nは共重合体(P)におけるGEモノマー(a)またはその塩に由来する構成単位のモル割合であり、nは共重合体(P)におけるモノマー(b)に由来する構成単位のモル割合である。また、複数種のGEモノマー(a)を任意の比率で組み合わせて用いることもできる。その場合は、nはすべてのGEモノマーを合わせたモル数を指す。同様に、複数種のモノマー(b)を任意の比率で組み合わせて用いることもできる。その場合は、nはすべてのモノマー(b)を合わせたモル数を指す。
 nを大きくすること又はnを小さくすることによって、共重合体(P)の眼表面又はコンタクトレンズ表面への相互作用を強め、角膜表面またはコンタクトレンズ表面により長く滞留させることができ、また、共重合体(P)を含む眼用組成物により角膜またはコンタクトレンズに付与される潤滑性を高めることもできる。また、nを大きくすることによって、共重合体(P)の水への溶解性を高め、眼用組成物を調製することを容易にすることができる。 
[その他のモノマー]
 本発明の共重合体(P)は、本発明の効果を損なわない範囲で、GEモノマー(a)及びモノマー(b)以外のモノマー(c)を含んでいてもよい。
 モノマー(c)は、GEモノマー(a)、モノマー(b)と共重合可能なモノマー(c)から任意に選択できる。
 そのようなモノマー(c)としては例えばスチレンスルホン酸、(メタ)アクリロイルオキシホスホン酸、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、アミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N-アクリロイルモルホリン、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、インデン、ビニルナフタレン、ビニルアニリン、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソブチレン、オクテン等のアルケン類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。本発明の共重合体を調製する際に使用する全てのモノマーのうちに占めるモノマー(c)の比率は30mol%以下とすることが好ましく、15mol%以下とすることがより好ましい。モノマー(c)の比率の下限値は特に限定されないが、0mol%以上とすることができる。本発明の効果が好ましく発現するからである。
[共重合体(P)の重量平均分子量]
 本発明に用いる共重合体(P)の重量平均分子量は、10,000~2,000,000であり、好ましくは100,000~1,000,000であり、より好ましくは150,000~600,000であり、さらに好ましくは200,000~400,000である。共重合体(P)の重量平均分子量を10,000より大きくすることで、角膜表面またはコンタクトレンズ表面により長く滞留させることができ、また、共重合体(P)を含む眼用組成物により角膜またはコンタクトレンズに付与される潤滑性及び保水性の効果を高めることができる。その結果として、共重合体(P)を含む眼用組成物の角膜又はコンタクトレンズ表面での耐乾燥性を高めることができる。共重合体(P)の重量平均分子量を2,000,000より小さくすることでその取り扱いを容易にすることができる。
 なお、共重合体(P)の重量平均分子量は、GPC(ゲルろ過クロマトグラフィー)測定により、プルラン換算で求められる。
[共重合体(P)の重合形態]
 共重合体(P)は、通常はランダム共重合体であるが、各モノマーが規則的に配列された交互共重合体やブロック共重合体でもあってもよく、一部にグラフト構造を有していてもよい。
[共重合体(P)の製造方法]
 共重合体(P) は、下記式(1a)で表されるグアニジノ基を有するGEモノマー(a)と、下記式(1b)および(2b)のうちいずれかで表されるモノマー(b)とを共重合することにより製造することができる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000016
 前記式(1a)中、Rは水素原子またはメチル基であり、XはOまたはNR、ここで、RはHまたは炭素数1~4のアルキル基であり、n=1~4である。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000017
 前記式(1b)中、Rは水素原子またはメチル基であり、YはOまたはNR、ここで、RはHまたは炭素数1~4のアルキル基であり、mは1~6であり、炭素鎖中に一つ以上の水酸基を有していてもよく、Aはホスホリルコリン基または水酸基であり、m=1の場合及び炭素鎖中に水酸基を有する場合のいずれかに限り水素原子でもよい。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000018
 前記式(2b)中、Rは水素原子またはメチル基であり、Rは炭素数1~4のアルキル基または末端がRに結合し環状構造を形成している炭素数1~4のアルキレン基である。
 上記重合反応は、ラジカル重合開始剤の存在下、窒素、二酸化炭素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスで置換または雰囲気においてラジカル重合、例えば、塊状重合、懸濁重合、乳化重合、溶液重合等の公知の方法により行うことができる。精製等の観点から好ましくは溶液重合が挙げられる。共重合体の精製は、再沈殿法、透析法、限外濾過法など一般的な精製方法により行うことができる。
 ラジカル重合開始剤としては、アゾ系ラジカル重合開始剤、有機過酸化物、過硫酸化物等を挙げることができる。
 アゾ系ラジカル重合開始剤としては、例えば、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩(V-50)、2,2-アゾビス(2-ジアミノプロピル)二塩酸塩、2,2-アゾビス(2-(5-メチル-2-イミダゾリン-2-イル)プロパン)二塩酸塩、4,4-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、2,2-アゾビスイソブチルアミド二水和物、2,2-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)等が挙げられる。
 有機過酸化物としては、例えば、t-ブチルペルオキシネオデカノエート(パーブチル(登録商標)ND)、過酸化ベンゾイル、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルペルオキシピバレート、t-ブチルペルオキシジイソブチレート、過酸化ラウロイル、コハク酸ペルオキシド(サクシニルペルオキシド)等が挙げられる。
 過硫酸化物としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等が挙げられる。
 ラジカル重合開始剤としては、アゾ系ラジカル重合開始剤を用いることが好ましく、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩(V-50)を用いることがより好ましい。
 これらのラジカル重合開始剤は、単独で用いることができ、また、2種以上を混合して用いることもできる。重合開始剤の使用量は、共重合体(P)のモノマー組成物100質量部に対して通常0.001~10質量部、好ましくは0.01~5.0質量部である。
 重合反応は、溶媒の存在下行うことができ、該溶媒としては、モノマー組成物を溶解し、反応しないものが使用できる。該溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール等のアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸エチル等のエステル系溶媒;エチルセルソルブ、テトラヒドロフラン、N-メチルピロリドン等の直鎖または環状のエーテル系溶媒;アセトニトリル、ニトロメタン等の含窒素系溶媒が挙げられる。好ましくは、水、またはアルコールまたはそれらの混合溶媒が挙げられ、より好ましくは、水である。
[本発明の眼用組成物]
 本発明の眼用組成物は、共重合体(P)の濃度は0.001w/v%以上であり、好ましくは0.01w/v%以上、より好ましくは0.1w/v%以上である。また、共重合体(P)の濃度は、5.0w/v%以下であり、好ましくは2.0w/v%以下、より好ましくは0.7w/v%以下である。共重合体(P)の濃度を0.001w/v%以上とすることにより、十分な潤滑性及び保水性が得られ、また、眼用組成物の製造性の観点から共重合体(P)の濃度を5.0w/v%以下とすることが望ましい。
 なお、本発明において、「w/v%」は、100mLの溶液中のある成分の質量をグラム(g)で表したものである。例えば、「本発明の組成物が1.0w/v%の共重合体(P)を含有する」とは、100mLの溶液が1.0gの共重合体(P)を含有していることを意味する。
 本発明の眼用組成物に使用する溶媒としては、水、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、グリセロール、プロピレングリコール等のアルコール又はこれらの混合溶媒を用いることができる。好ましくは、水または水とアルコールの混合溶媒であり、より好ましくは、水である。
 本発明の眼用組成物に用いる水は、通常、医薬品や医療機器の製造に用いられる水を用いることができる。具体的には、イオン交換水、精製水、滅菌精製水、蒸留水、及び注射用水を用いることができる。
 本発明の眼用組成物は、緩衝剤を含めることができる。本発明の眼用組成物が緩衝剤を含むことにより、pH及び浸透圧を調整することができ、使用感をさらに向上させることもできる。
 本発明において、前記効果をより十分に得る観点から、リン酸緩衝液及びホウ酸緩衝液から選ばれる1種以上を緩衝剤として用いることが望ましい。本明細書においてリン酸緩衝液とは、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、無水リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、塩酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等からなる緩衝液であり、ホウ酸緩衝液とは、ホウ酸、ホウ砂、塩酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等からなる緩衝液である。
 本発明の眼用組成物中の緩衝剤の濃度は、好ましくは0.0001w/v%以上15w/v%以下、より好ましくは0.001w/v%以上10w/v%以下、さらに好ましくは0.01w/v%以上5.0w/v%以下である。
 特に緩衝剤としてリン酸緩衝液及びホウ酸緩衝液から選ばれる1種以上を用いる場合、その濃度は、リン酸緩衝液及びホウ酸緩衝液の成分の合計として、好ましくは0.001w/v%以上10w/v%以下、より好ましくは0.01w/v%以上5.0w/v%以下、さらに好ましくは0.1w/v%以上5.0w/v%以下である。
 本発明の眼用組成物は、さらに必要に応じて一般に眼用製剤に使用できる充血除去成分、消炎・収斂成分、ビタミン類、清涼化剤、等張化剤、pH調整剤、酸化防止剤、安定化剤、防腐剤、ムチン分泌促進剤、増粘剤等を配合することができる。
 充血除去成分としては、例えば、エピネフリンまたはその塩、塩酸エフェドリン、塩酸テトラヒドロゾリン、ナファゾリンまたはその塩、フェニレフリン、塩酸メチルエフェドリンが挙げられる。
 消炎・収斂成分としては、例えば、イプシロン-アミノカプロン酸、アラントイン、ベルベリンまたはその塩、アズレンスルホン酸ナトリウム、グリチルリチン酸またはその塩、乳酸亜鉛、硫酸亜鉛、塩化リゾチームが挙げられる。
 ビタミン類としては、例えば、フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム、シアノコバラミン、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール、塩酸ピリドキシン、パンテノール、パントテン酸ナトリウム、パントテン酸カルシウムが挙げられる。
 清涼化剤としては、例えば、メントール、カンフルが挙げられる。
 等張化剤としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、アスパラギン酸またはその塩、アミノエチルスルホン酸が挙げられる。
 pH調整剤としては、例えば、クエン酸、硫酸、酢酸、トリスヒドロキシメチルアミノメタン、モノエタノールアミン、炭酸水素ナトリウム、クエン酸ナトリウムが挙げられる。
 酸化防止剤としては、例えば、酢酸トコフェロール、ジブチルヒドロキシトルエン、亜硫酸水素ナトリウムが挙げられる。
 安定化剤としては、例えば、エデト酸ナトリウム、グリシン、タウリンが挙げられる。
 防腐剤としては、例えば、塩化ベンザルコニウム、クロルヘキシジングルコン酸塩、ソルビン酸カリウム、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、イソプロピルパラベン、ブチルパラベン、イソブチルパラベン、塩酸ポリヘキサニド、スルファメキサゾールまたはその塩、スルフイソキサゾール、スルフイソミジンナトリウムが挙げられる。
 ムチン分泌促進剤としては、例えば、ジクアホソルナトリウム、レバミピドが挙げられ
 増粘剤としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸-アクリル(メタ)アクリレート共重合体、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールが挙げられる。
 本発明の眼用組成物は、0.001w/v%以上、10.0w/v%以下の多糖または糖タンパク質を配合することができる。当該化合物としては、多糖としては、例えば、ヒアルロン酸またはその塩、コンドロイチン硫酸またはその塩、アルギン酸またはその塩、キトサン、プルラン、寒天、澱粉、キサンタンガム、ジェランガムが挙げられる。糖タンパク質としては、例えば、プロテオグリカン等が挙げられる。好ましくは、ヒアルロン酸またはその塩、コンドロイチン硫酸またはその塩、プロテオグリカンであり、より好ましくは、ヒアルロン酸またはプロテオグリカンである。
 本発明の眼用組成物のpHは、眼への刺激性の観点から、好ましくはpH3.0以上8.0以下、より好ましくは3.8以上7.8以下、さらに好ましくは4.0以上7.6以下である。
 本発明の眼用組成物の浸透圧は、眼への刺激性の観点から、200mOsm以上400mOsm以下、より好ましくは225mOsm以上375mOsm以下、さらに好ましくは230mOsm以上340mOsm以下である。浸透圧比は好ましくは0.7以上1.4以下、より好ましくは0.7以上1.3以下、さらに好ましくは0.8以上1.2以下である。
 なお、本明細書におけるコンタクトレンズ用処理液の浸透圧は、第18改正日本薬局方 一般試験法 2.47 浸透圧測定法(オスモル濃度測定法)に従って測定した値をいい、浸透圧比は得られた浸透圧の値を0.9質量%生理食塩液の浸透圧の値(286mOsm)で除した値を指す。
 以下、実施例に基づき本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例(及び比較例)中の各種測定は以下に示す方法に従って実施した。
共重合体の合成
<重量平均分子量の測定>
 得られた共重合体を、イオン交換水に0.1wt%になるように溶解し、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により重量平均分子量を測定した。
 カラム:         Shodex(GSM-700)
 移動相:         0.1mol/L硫酸ナトリウム水溶液
 標準物質:        プルラン(PSS-pulkitr1h)(Polymer Standards社製)
 計測機器:        示差屈折率RI-8020(東ソー株式会社製)
 重量平均分子量の算出法: 分子量計算プログラム(SC-8020用GPCプログラム)
 流量:          毎分1.0mL
 注入量:         100μL
 カラムオーブン:     40℃
 測定時間:        30分間
<実施例1-1>
 GEモノマー(a)として2-グアニジノエチルメタクリレート塩酸塩3.3g、モノマー(b)として2-(メタクリロイルオキシ)エチル2-(トリメチルアンモニオ)エチルホスファート(以下、MPCともいう)4.7gを四つ口フラスコに量り取り、イオン交換水31.0gを加え70℃に加温し溶解した。その後、イオン交換水1gに希釈した2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩0.06gを加え、70℃で2時間重合反応させた。反応終了後、透析精製し、2-グアニジノエチルメタクリレート塩酸塩・2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン共重合体(P1)を得た。重合条件及び重量平均分子量を表1に示す。2-グアニジノエチルメタクリレート塩酸塩の合成は上記参考文献1に記載の方法により行った。
 共重合体(P1)のH NMR測定結果を図1及び以下に示す。
 H NMR測定結果
 C(=O)―O―CH ―CH ―O―、P―O―CH ―CH―、C(=O)―O―CH ―CH―NH―:4.2~3.8ppm、CH ―N(CH、C(=O)―O―CHCH ―NH―:3.6~3.3ppm、N(CH:3.1ppm、C(CH)―CH ―:2.0~1.6ppm、C(CH )―CH―:1.2~0.6ppm
<実施例1-2~1-6>
 モノマーの仕込み組成及び濃度を表1に示すように設定し、実施例1-1と同様の手順で合成し、共重合体P2~P6を得た。重量平均分子量の測定結果を表1に示す。2-グアニジノエチルメタクリルアミドの合成は上記参考文献2に記載の方法により行った。
 共重合体(P2~P6)のH NMR測定結果を以下に示す。
 H NMR測定結果
 (P2)C(=O)―O―CH ―CH ―O―、P―O―CH ―CH―、C(=O)―O―CH ―CH―NH―:4.2~3.8ppm、CH ―N(CH、C(=O)―O―CHCH ―NH―:3.6~3.3ppm、N(CH:3.1ppm、C(CH)―CH ―:2.0~1.6ppm、C(CH )―CH―:1.2~0.6ppm
 (P3)C(=O)―O―CH ―CH―NH―:4.2~3.8ppm、CHCH―N―:3.7ppm、C(=O)―O―CHCH ―NH―:3.6~3.3ppm、(C=O)N―CH―:3.2ppm、N(C=O)―CH―:2.3ppm、CH ―CH―N―:2.0ppm、C(CH)-CH -:2.0~1.6ppm、CHCH ―CH―:1.7ppm、C(CH )―CH―:1.2~0.6ppm
 (P4)C(=O)―O―CH ―CH ―O―、P―O―CH ―CH―:4.2~3.8ppm、CH ―N(CH:3.6~3.3ppm、C(=O)―NH―CH ―CH ―NH-:3.4~3.2ppm、N(CH:3.1ppm、C(CH)-CH -:2.0~1.6ppm、C(CH )―CH―:1.2~0.6ppm
 (P5)C(=O)―O―CH ―CH ―O―、P―O―CH ―CH―:4.2~3.8ppm、CHCH-N-:3.7ppm、CH ―N(CH、C(=O)―O―CHCH ―NH―:3.6~3.3ppm、(C=O)N―CH―:3.2ppm、N(CH:3.1ppm、N(C=O)―CH―:2.3ppm、CH ―CH―N―:2.0ppm、C(CH)―CH ―:2.0~1.6ppm、CHCH ―CH―:1.7ppm、C(CH )―CH―:1.2~0.6ppm
 (P6)C(=O)―O―CH ―CH ―O―、P―O―CH ―CH―、C(=O)―O―CH ―CH―NH―:4.2~3.8ppm、CH ―N(CH、C(=O)―O―CHCH ―NH―:3.6~3.3ppm、N(CH:3.1ppm、C(CH)―CH ―:2.0~1.6ppm、C(CH )―CH―:1.2~0.6ppm
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000019
<比較例1-1>
 2-グアニジノエチルメタクリレート塩酸塩4.0gを四つ口フラスコに量り取り、イオン交換水31.0gを加え70℃に加温し溶解した。その後、イオン交換水1.0gに希釈した2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩0.06gを加え、70℃で2時間重合反応させた。反応終了後、透析精製し、2-グアニジノエチルメタクリレート塩酸塩単独重合体Q1(重量平均分子量:570,000)を得た。
<比較例1-2>
 MPC12.8gをイオン交換水26.2gに溶解し、四つ口フラスコに入れて30分間窒素を吹き込んだ。その後、イオン交換水1.0gに希釈した2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩0.1gを加え、70℃で6時間重合反応させた。反応終了後、透析精製し、MPC単独重合体Q2(重量平均分子量:330,000)を得た。
<比較例1-3>
 N-ビニルピロリドン単独重合体(PVP K30)(重量平均分子量:50,000)(富士フイルム和光純薬株式会社製)を比較用重合体Q3として用いた。
2.共重合体の評価
 上記の本発明の共重合体及び本発明以外の共重合体について、次の方法にて評価を行った。試験コンタクトレンズは以下を用いた。溶液組成及び評価結果は表2~4に示す。
 レンズA: 市販のetafilconA
 レンズB: 市販のhioxyfilconA
<生理食塩液の調製>
 文献(ISO 18369-3:2006,Ophthalmic Optics-Contact Lenses Part3:Measurement Methods.)を参考に、生理食塩液を調製した。
 塩化ナトリウム8.3g、リン酸水素ナトリウム十二水和物5.993g、リン酸二水素ナトリウム二水和物0.528gを量り、水に溶かして1000mLとして、ろ過して生理食塩液とした。
<コンタクトレンズ処理液の調製>
 上記で調製したISO生理食塩水及び共重合体を用い、表2および表3の通りに配合することによって実施例2-1~2-10及び比較例2-1~2-4のコンタクトレンズ用処理液を調製した。
<親水性評価>
 実施例及び比較例において、コンタクトレンズの親水性評価は以下の手順に従って行った。
○コンタクトレンズ装用開始時を想定した評価
 (1)ブリスターパックから取り出した試験コンタクトレンズ1枚を生理食塩液に浸漬させ、6時間振盪した。
 (2)試験コンタクトレンズを取り出し、上記コンタクトレンズ用処理液5mLを加えたガラスバイアルに封入した。
 (3)121℃、20分の条件で滅菌処理した。
 (4)試験コンタクトレンズを取り出し、レンズ表面の水膜が切れるまでの時間(BUT)をストップウォッチで計測し、ISO生理食塩液で同様に処理した試験コンタクトレンズの測定値との差を下記の基準で評価した。
○コンタクトレンズ装用終了時を想定した評価
 (1)ブリスターパックから取り出した試験コンタクトレンズ1枚を生理食塩液に浸漬させ、6時間振盪した。
 (2)試験コンタクトレンズを取り出し、上記コンタクトレンズ用処理液5mLを加えたガラスバイアルに封入した。
 (3)121℃、20分の条件で滅菌処理した。
 (4)ガラスバイアルから取り出した試験コンタクトレンズ1枚を生理食塩液に浸漬させ、6時間振盪した。
 (5)試験コンタクトレンズを取り出し、レンズ表面の水膜が切れるまでの時間(BUT)をストップウォッチで計測し、ISO生理食塩液で同様に処理した試験コンタクトレンズの測定値との差を下記の基準で評価した。
 なお、ISO生理食塩液で同様に処理したレンズAのBUTは8.4秒、レンズBのBUTは8.6秒であった。
スコア基準
 10秒以上延長        :スコア「3」
 5秒以上、10秒未満延長   :スコア「2」
 1秒以上、5秒未満延長    :スコア「1」
 1秒未満延長         :スコア「0」
<潤滑性評価>
 実施例及び比較例において、コンタクトレンズの潤滑性評価は以下の手順に従って行った。
○コンタクトレンズ装用開始時を想定した評価
 (1)ブリスターパックから取り出した試験コンタクトレンズ1枚を生理食塩液に浸漬させ、6時間振盪した。
 (2)試験コンタクトレンズを取り出し、上記コンタクトレンズ用処理液5mLを加えたガラスバイアルに封入した。
 (3)121℃、20分の条件で滅菌処理した。
 (4)試験コンタクトレンズを取り出し、人差し指と親指でさするときの潤滑性の程度を下記の基準で評価した。
○コンタクトレンズ装用終了時を想定した評価
 (1)ブリスターパックから取り出した試験コンタクトレンズ1枚を生理食塩液に浸漬させ、6時間振盪した。
 (2)試験コンタクトレンズを取り出し、上記コンタクトレンズ用処理液5mLを加えたガラスバイアルに封入した。
 (3)121℃、20分の条件で滅菌処理した。
 (4)ガラスバイアルから取り出した試験コンタクトレンズ1枚を生理食塩液に浸漬させ、6時間振盪した。
 (5)試験コンタクトレンズを取り出し、人差し指と親指でさするときの潤滑性の程度を下記の基準で評価した。
スコア基準
 Polymaconの評価点数を2点、omafilconAの評価点数を8点とし、1~10点の範囲内で点数化した。ISO生理食塩液で処理した試験コンタクトレンズの点数と比較して、以下の基準で評価した。なお、ISO生理食塩液で処理したレンズAの評価点数は3点、レンズBの評価点数は5点であった。
 5点以上上昇  :スコア「3」
 3~4点上昇  :スコア「2」
 1~2点上昇  :スコア「1」
 同じかそれ以下 :スコア「0」
<持続性評価>
 実施例及び比較例において、親水性及び潤滑性の装用開始時のスコアがいずれも1以上の場合に持続性評価を行った。持続性評価は親水性及び潤滑性の評価をもとに、下記の基準で評価した。
 両評価とも装用開始時想定と装用終了時想定のスコアが同一     :スコア「3」
 いずれかの評価で装用終了時想定のスコアが1減少         :スコア「2」
 両評価とも装用終了時想定のスコアが1減少            :スコア「1」
 少なくともいずれかの評価で装用終了時想定のスコアが2以上減少  :スコア「0」
<ムチンとの相互作用評価>
 実施例3-1~3-6及び比較例3-1~3-3において、ムチンとの相互作用評価は以下の手順に従って行った。試験溶液の成分組成及び結果を表4に示した。
 (1)ムチン及びポリマーをそれぞれISO生理食塩液で10ppmに希釈し、ゼータサイザーを用いてDLS測定を行った。
 (2)ポリマーとムチンとを混合した溶液について同様の測定を行った。
 (3)混合前と比較して混合溶液の散乱強度別粒度分布が高分子量側にシフトしていた時、ムチンとの相互作用ありとし、顕著な変化が見られない場合をなしとした。
<耐乾燥性>
 実施例4-1~4-6及び比較例4-1~4-4において、耐乾燥性評価は以下の手順に従って行った。試験コンタクトレンズはBを用いた。試験溶液の成分組成及び結果を表5に示した。
 (1)ブリスターパックから取り出した試験コンタクトレンズ1枚をISO生理食塩液に浸漬させ、6時間振盪した。
 (2)表4に示すように調製した溶液4mLを加えたガラスバイアルに試験コンタクトレンズを1枚ずつ浸漬させ、3時間静置した。
 (3)試験コンタクトレンズをガラスバイアルから取り出し、温度20~25℃、湿度30~35%、無風条件下に静置した。乾燥して変形するまでの時間を測定し、以下の基準で評価した。
スコア基準
 7分以上       :スコア「3」
 6分以上~7分未満  :スコア「2」
 5分以上~6分未満  :スコア「1」
 5分未満       :スコア「0」
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000020
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000021
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000022
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000023
<評価>
 表2、3の結果から、共重合体P1~P6を用いたコンタクトレンズ処理液はコンタクトレンズの親水性及び潤滑性を向上させ、効果が長時間持続することが分かった。表4の結果から、共重合体P1~P6はムチンと相互作用することが分かった。表5の結果から、共重合体P1~P6は耐乾燥性が高いことが分かった。
 本出願は、2022年12月21日出願の日本国出願第2022-204230号に基づく優先権を主張する出願であり、当該出願の明細書および特許請求の範囲に記載された内容は本出願に援用される。
 本発明の共重合体及び眼用組成物はコンタクトレンズ処理液として利用することでコンタクトレンズの装用感を向上させ、その効果を長時間持続することができる。さらに、点眼剤として利用すると、ムチンとの相互作用により角膜表面に長く滞留し、保湿効果を高持続化させることができる。
 

Claims (7)

  1.  下記式(1a)で表されるモノマー(a)またはその塩に由来する構成単位と、下記式(1b)および(2b)のうちいずれかで表されるモノマー(b)に由来する構成単位とを含み、各構成単位のモル比率n:nが10:90~70:30(nは共重合体中のモノマー(a)またはその塩に由来する構成単位のモル割合であり、nは共重合体中のモノマー(b)に由来する構成単位のモル割合である。)であり、
     重量平均分子量が10,000~2,000,000である、共重合体。
    Figure JPOXMLDOC01-appb-C000001
    (式(1a)中、Rは水素原子またはメチル基であり、XはOまたはNR、ここで、RはHまたは炭素数1~4のアルキル基であり、n=1~4である。)
    Figure JPOXMLDOC01-appb-C000002
    (式(1b)中、Rは水素原子またはメチル基であり、YはOまたはNR、ここで、RはHまたは炭素数1~4のアルキル基であり、mは1~6であり、炭素鎖中に一つ以上の水酸基を有していてもよく、Aはホスホリルコリン基または水酸基であり、m=1の場合及び炭素鎖中に水酸基を有する場合のいずれかに限り水素原子でもよい。)
    Figure JPOXMLDOC01-appb-C000003
    (式(2b)中、Rは水素原子またはメチル基であり、Rは炭素数1~4のアルキル基または末端がRに結合し環状構造を形成している炭素数1~4のアルキレン基である。)
  2.  前記モノマー(b)が下記式(3b)で表されるモノマー、N-ビニルピロリドン、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-ビニルアセトアミド及びN-ビニル-N-メチルアセトアミドからなる群から選択される少なくとも1つのモノマーを含む、請求項1に記載の共重合体。
    Figure JPOXMLDOC01-appb-C000004
    (式(3b)中、Rは水素原子またはメチル基であり、ZはOまたはNR、ここで、RはHまたは炭素数1~4のアルキル基である。)
  3.  前記モノマー(b)が式(3b)で表されるモノマー及びN-ビニルピロリドンの少なくとも1つを含む、請求項1または2に記載の共重合体。
  4.  前記モノマー(b)が2-(メタクリロイルオキシ)エチル2-(トリメチルアンモニオ)エチルホスファートを含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の共重合体。
  5.  前記モノマー(a)またはその塩が下記式(2a)で表されるモノマーまたはその塩を含む、請求項1から4のいずれか1項に記載の共重合体。
    Figure JPOXMLDOC01-appb-C000005
    (式(2a)中、Rは水素原子またはメチル基である。)
  6.  請求項1から5のいずれか一項に記載の共重合体(P)を0.001w/v%以上、5.0w/v%以下含む、眼用組成物。
  7.  さらに多糖または糖タンパク質を0.001w/v%以上、10.0w/v%以下含む、請求項6に記載の眼用組成物。
     
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