WO2024117242A1 - 平版印刷版原版、平版印刷版の作製方法、及び、平版印刷方法 - Google Patents

平版印刷版原版、平版印刷版の作製方法、及び、平版印刷方法 Download PDF

Info

Publication number
WO2024117242A1
WO2024117242A1 PCT/JP2023/043021 JP2023043021W WO2024117242A1 WO 2024117242 A1 WO2024117242 A1 WO 2024117242A1 JP 2023043021 W JP2023043021 W JP 2023043021W WO 2024117242 A1 WO2024117242 A1 WO 2024117242A1
Authority
WO
WIPO (PCT)
Prior art keywords
group
lithographic printing
printing plate
compound
mass
Prior art date
Application number
PCT/JP2023/043021
Other languages
English (en)
French (fr)
Inventor
康平 會津
智則 三村
Original Assignee
富士フイルム株式会社
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by 富士フイルム株式会社 filed Critical 富士フイルム株式会社
Publication of WO2024117242A1 publication Critical patent/WO2024117242A1/ja

Links

Abstract

支持体、及び、上記支持体上に画像記録層を有し、上記画像記録層が、ケイ素原子を2個以上含む置換基を側鎖に有する(メタ)アクリル重合体Aを含む、平版印刷版原版。

Description

平版印刷版原版、平版印刷版の作製方法、及び、平版印刷方法
 本開示は、平版印刷版原版、平版印刷版の作製方法、及び、平版印刷方法に関する。
 一般に、平版印刷版は、印刷過程でインクを受容する親油性の画像部と、湿し水を受容する親水性の非画像部とからなる。平版印刷は、水と油性インクが互いに反発する性質を利用して、平版印刷版の親油性の画像部をインク受容部、親水性の非画像部を湿し水受容部(インク非受容部)として、平版印刷版の表面にインクの付着性の差異を生じさせ、画像部のみにインクを着肉させた後、紙などの被印刷体にインクを転写して印刷する方法である。
 この平版印刷版を作製するため、従来、親水性の支持体上に親油性の画像記録層を設けてなる平版印刷版原版(PS版ともいう)が広く用いられている。通常は、平版印刷版原版を、リスフィルムなどの原画を通した露光を行った後、画像記録層の画像部となる部分を残存させ、それ以外の不要な画像記録層をアルカリ性現像液又は有機溶剤によって溶解除去し、親水性の支持体表面を露出させて非画像部を形成する方法により製版を行って、平版印刷版を得ている。
 従来の平版印刷版原版として、画像記録層にケイ素原子を含む置換基を有する化合物を含む平版印刷版原版が知られている(例えば、特開2009-237381号公報、特開2004-029680号公報、特開2006-235390号公報、特開平09-054432号公報参照)。
 本開示の一実施形態が解決しようとする課題は、塗膜面状に優れた画像記録層を有する平版印刷版原版を提供することである。
 本開示の他の実施形態が解決しようとする課題は、上記平版印刷版原版を用いた平版印刷版の作製方法又は平版印刷方法を提供することである。
 本開示には、以下の態様が含まれる。
<1> 支持体、及び、上記支持体上に画像記録層を有し、
 前記画像記録層が、ケイ素原子を2個以上含む置換基を側鎖に有する(メタ)アクリル重合体Aを含む、平版印刷版原版。
<2> 支持体、及び、上記支持体上に画像記録層を有し、
 前記画像記録層が、下記式(I)で表される構成単位を有する重合体Bを含む、平版印刷版原版。
 式(I)中、R11及びR12はそれぞれ独立に水素原子又はアルキル基を表し、R13は水素原子又は一価の置換基を表し、L11及びL12はそれぞれ独立に単結合又は二価の連結基を表し、Rhはケイ素原子を2個以上含む置換基を表す。
<3> 機上現像型平版印刷版原版である、<1>又は<2>に記載の平版印刷版原版。
<4> 上記画像記録層が、樹脂粒子を更に含む<1>~<3>のいずれか1つに記載の平版印刷版原版。
<5> 上記画像記録層が、発色剤を更に含む<1>~<3>のいずれか1つに記載の平版印刷版原版。
<6> 上記(メタ)アクリル重合体Aが、ケイ素原子を2個以上含む置換基を側鎖に有する構成単位と、親水性基を側鎖に有する構成単位と、を含む共重合体である、<1>、<3>~<5>のいずれか1つに記載の平版印刷版原版。
<7> 上記(メタ)アクリル重合体Aが、ケイ素原子を2個以上含む置換基を側鎖に有する構成単位と、ポリアルキレンオキシ基を側鎖に有する構成単位と、を含む共重合体である、<1>、<3>~<6>のいずれか1つに記載の平版印刷版原版。
<8> 上記式(I)におけるRhが、下記式(Ia)で表される構造を2個以上含む基である、<2>~<5>に記載の平版印刷版原版。
 式(Ia)中、*は、結合位置を表し、R11、R12、及びR13はそれぞれ独立にアルキル基、アルケニル基、アリール基、又はアルキレンアリール基を表す。
<9> 上記重合体Bが、親水性基を側鎖に有する構成単位を更に有する、<2>~<5>のいずれか1つに記載の共重合体である平版印刷版原版。
<10> 上記親水性基を側鎖に有する構成単位が、下記式(a4)で表される構成単位である、<9>に記載の平版印刷版原版。
 式(a4)中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又はアルキル基を表し、Rは水素原子又は一価の置換基を表し、Lは-C(=O)-O-又は-C(=O)-NH-を表し、Lは単結合又は二価の連結基を表し、Xは親水性基を表す。
<11> 上記式(a4)中、Lが-C(=O)-NH-を表す、<10>に記載の平版印刷版原版。
<12> 上記式(a4)中、Xで表される親水性基は、水酸基、ポリアルキレンオキシ基、又はこれらを2つ以上組み合わせた基である、<10>又は<11>に記載の平版印刷版原版。
<13> 上記重合体Bが、ポリアルキレンオキシ基を側鎖に有する構成単位を更に有する共重合体である<2>、<3>、<8>~<12>のいずれか1つに記載の平版印刷版原版。
<14> 上記式(I)におけるL11がエステル結合である、<2>、<8>~<13>のいずれか1つに記載の平版印刷版原版。
<15> <3>~<14>のいずれか1つに記載の平版印刷版原版を、画像様に露光する工程と、
 印刷機上で印刷インク及び湿し水よりなる群から選ばれた少なくとも一方を供給して非画像部の画像記録層を除去する工程と、を含む
 平版印刷版の作製方法。
<16> <3>~<14>のいずれか1つに記載の平版印刷版原版を、画像様に露光する工程と、
 印刷機上で印刷インク及び湿し水よりなる群から選ばれた少なくとも一方を供給して非画像部の画像記録層を除去し平版印刷版を作製する工程と、
 得られた平版印刷版により印刷する工程と、を含む
 平版印刷方法。
 本開示の一実施形態によれば、塗膜面状に優れた画像記録層を有する平版印刷版原版を提供することができる。
 また、本開示の他の実施形態によれば、上記平版印刷版原版を用いた平版印刷版の作製方法又は平版印刷方法を提供することができる。
本開示に好適に用いられるアルミニウム支持体の一実施形態の模式的断面図である。 陽極酸化皮膜を有するアルミニウム支持体の一実施形態の模式的断面図である。 陽極酸化皮膜を有するアルミニウム支持体の製造方法における電気化学的粗面化処理に用いられる交番波形電流波形図の一例を示すグラフである。 陽極酸化皮膜を有するアルミニウム支持体の製造方法における交流を用いた電気化学的粗面化処理における電解槽(ラジアル型セル)の一例を示す側面図である。 陽極酸化皮膜を有するアルミニウム支持体の製造方法における機械的粗面化処理に用いられるブラシグレイニングの工程の概念を示す側面図である。 陽極酸化皮膜を有するアルミニウム支持体の製造方法における陽極酸化処理に用いられる陽極酸化処理装置の概略図である。
 以下において、本開示の内容について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本開示の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本開示はそのような実施態様に限定されるものではない。
 なお、本明細書において、数値範囲を示す「~」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
 また、本明細書における基(原子団)の表記において、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
 本明細書において、「(メタ)アクリル」は、アクリル及びメタクリルの両方を包含する概念で用いられる語であり、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイル及びメタクリロイルの両方を包含する概念として用いられる語である。
 また、本明細書中の「工程」の用語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても、その工程の所期の目的が達成されれば本用語に含まれる。
 また、本開示において、「質量%」と「重量%」とは同義であり、「質量部」と「重量部」とは同義である。
 特に限定しない限りにおいて、本開示において組成物中の各成分は、1種単独で含まれていてもよいし、2種以上を併用してもよいものとする。また、特に限定しない限りにおいて、本開示においてポリマー又は重合体中の各構成単位は、1種単独で含まれていてもよいし、2種以上を併用してもよいものとする。
 更に、本開示において組成物中の各成分、又は、ポリマー中の各構成単位の量は、組成物中に各成分、又は、ポリマー中の各構成単位に該当する物質又は構成単位が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する該当する複数の物質、又は、ポリマー中に存在する該当する複数の各構成単位の合計量を意味する。
 更に、本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
 また、本開示における重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、特に断りのない限り、TSKgel GMHxL、TSKgel G4000HxL、TSKgel G2000HxL(何れも東ソー(株)製の商品名)のカラムを使用したゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析装置により、溶媒THF(テトラヒドロフラン)、示差屈折計により検出し、標準物質としてポリスチレンを用いて換算した分子量である。
 本開示において、「平版印刷版原版」の用語は、平版印刷版原版だけでなく、捨て版原版を包含する。また、「平版印刷版」の用語は、平版印刷版原版を、必要により、露光、現像などの操作を経て作製された平版印刷版だけでなく、捨て版を包含する。捨て版原版の場合には、必ずしも、露光、現像の操作は必要ない。なお、捨て版とは、例えばカラーの新聞印刷において一部の紙面を単色又は2色で印刷を行う場合に、使用しない版胴に取り付けるための平版印刷版原版である。
 本開示において、「耐刷性に優れる」とは、平版印刷版の印刷可能な枚数が多いことをいい、印刷の際のインクとして紫外線硬化型インク(UVインク)を用いた場合の耐刷性を、以下、「UV耐刷性」ともいう。
 以下、本開示を詳細に説明する。
(平版印刷版原版)
 本開示に係る平版印刷版原版(単に「平版印刷版原版」ともいう。)の第一の実施態様は、支持体、及び、上記支持体上に画像記録層を有し、上記画像記録層が、ケイ素原子を2個以上含む置換基を側鎖に有する(メタ)アクリル重合体Aを含む。
 本開示に係る平版印刷版原版の第二の実施態様は、支持体、及び、上記支持体上に画像記録層を有し、上記画像記録層が、下記式(I)で表される構成単位(b1)を有する重合体Bを含む。
 式(I)中、R11及びR12はそれぞれ独立に水素原子又はアルキル基を表し、R13は水素原子又は一価の置換基を表し、L11及びL12はそれぞれ独立に単結合又は二価の連結基を表し、Rhはケイ素原子を2個以上含む置換基を表す。
 なお、本明細書において、特に断りなく、単に「本開示に係る平版印刷版原版」という場合は、上記第一の実施態様及び上記第二の実施態様の両方について述べるものとする。また、特に断りなく、単に「画像記録層」等という場合は、上記第一の実施態様及び上記第二の実施態様の両方の画像記録層等について述べるものとする。
 本発明者らが鋭意検討した結果、上記構成をとることにより、塗膜面状に優れる画像記録層を有する平版印刷版原版を提供できることを見出した。
 上記効果が得られる詳細なメカニズムは不明であるが、以下のように推測される。
 上記第一の実施態様においては、上記画像記録層に含まれるケイ素原子を2個以上含む置換基を側鎖に有する(メタ)アクリル重合体Aは、側鎖の構造に起因して、画像記録層を形成する際に表面に偏在化しやすく、画像記録層の表面平滑性に寄与するものと考えられる。
 上記第二の実施態様においては、上記画像記録層に含まれる上記式(I)で表される構成単位(b1)を有する重合体Bも、側鎖の構造に起因して、画像記録層を形成する際に表面に偏在化しやすく、画像記録層の表面平滑性に寄与するものと考えられる。
 これらの結果、表面を目視した際にムラが視認されにくくなり、塗膜面状に優れた画像記録層が得られるものと推定している。
 なお、以下、「塗膜面状」を、単に「面状」と称する場合もある。
 更に、本開示に係る平版印刷版原版が機上現像型平版印刷版原版である場合、画像記録層の表面に偏在化した(メタ)アクリル重合体A又は重合体Bは、側鎖のケイ素原子の存在により、平版印刷版原版の表面(すなわち、画像記録層の表面)への湿し水の濡れ性、及び、画像記録層への湿し水浸透性を高められるものと考えられる。これにより、本開示に係る平版印刷版原版である機上現像型平版印刷版原版は、特異的に優れた機上現像性を示すものと推定される。
 ここで、「機上現像型平版印刷版原版」とは、平版印刷版原版を露光後、従来の現像は行わず、そのまま印刷機に装着して、画像記録層の不要部分の除去を通常の印刷工程の初期段階で行う「機上現像」に適用される平版印刷版原版を意味する。
〔ケイ素原子を2個以上含む置換基を側鎖に有する(メタ)アクリル重合体A〕
 本開示に係る平版印刷版原版の第一実施形態では、画像記録層に、ケイ素原子を2個以上含む置換基を側鎖に有する(メタ)アクリル重合体Aを含む。
 (メタ)アクリル重合体Aは、(メタ)アクリル樹脂鎖から構成された主鎖に、ケイ素原子を2個以上含む置換基を有する側鎖が結合した構造を有する。
 ケイ素原子を2個以上含む置換基としては、置換基を構成する原子団中に、ケイ素原子が2個以上含まれていれば、特に制限はない。ケイ素原子を2個以上含む置換基は、機上現像性の観点から、ケイ素原子を、ケイ素-酸素結合(Si-O結合)として含むことが好ましい。ケイ素原子を2個以上含む置換基は、ケイ素-酸素結合を2個以上有することが好ましく、3個以上有することが好ましく、3個~12個有することが好ましい。ケイ素原子を2個以上含む置換基は、ケイ素-酸素結合をポリシロキサン構造として含むことが好ましい。
 また、ケイ素原子を2個以上含む置換基は、機上現像性の観点から、分岐構造を有することが好ましく、ケイ素原子を中心に分岐する分岐構造を有することがより好ましい。
 ケイ素原子を2個以上含む置換基としては、下記式(a1)で表される構造を2個以上有する基であることが好ましい。
 上記式(a1)中、*は結合位置を表し、R、R、及びRはそれぞれ独立にアルキル基、アルケニル基、アリール基、又はアルキレンアリール基を表す。
 R、R、及びRで表されるアルキル基としては、例えば、炭素数1~18の直鎖状、炭素数3~18の分岐鎖状又は環状のアルキル基が挙げられる。上記アルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、tert-ブチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
 R、R、及びRで表されるアルケニル基としては、例えば、炭素数2~12のアルケニル基が挙げられる。上記アルケニル基としては、具体的には、ビニル基、1-プロペニル基、1-ブテニル基、1-メチル-1-プロペニル基、1-シクロペンテニル基、1-シクロヘキセニル基等が挙げられる。
 R、R、及びRで表されるアリール基としては、例えば、炭素数6~12のアリール基が挙げられる。上記アリール基としては、具体的には、フェニル基、α-メチルフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
 R、R、及びRで表されるアルキレンアリール基としては、例えば、炭素数7~30のアルキレンアリール基が挙げられる。
 式(a1)中、R、R、及びRはそれぞれ独立にアルキル基であることが好ましく、全て同じアルキル基であることがより好ましく、全て炭素数1~4のアルキル基であることが更に好ましく、全てメチル基であることが特に好ましい。
 ケイ素原子を2個以上含む置換基は、上記式(a1)で表される構造を3個以上含む基であることが好ましく、3個~6個含む基であることがより好ましい。
 ケイ素原子を2個以上含む置換基は、下記式(a2)で表される基であることが好ましい。
 上記式(a2)中、*は、結合位置を表し、R、R、及びRはそれぞれ独立にアルキル基、アルケニル基、アリール基、又はアルキレンアリール基を表す。
 式(a2)におけるR、R、及びRは、上記式(a1)におけるR、R、及びRと同義であり、好ましい態様も同様である。
 (メタ)アクリル重合体Aは、より優れた機上現像性を得る観点から、ケイ素原子を2個以上含む置換基を側鎖に有する構成単位と、親水性基を側鎖に有する構成単位と、を含む共重合体であることが好ましい。
 親水性基を側鎖に有する構成単位としては、ポリアルキレンオキシ基を側鎖に有する構成単位であることが好ましい。つまり、(メタ)アクリル重合体Aは、ケイ素原子を2個以上含む置換基を側鎖に有する構成単位と、ポリアルキレンオキシ基を側鎖に有する構成単位と、を含む共重合体であることが好ましい。
 ケイ素原子を2個以上含む置換基を側鎖に有する構成単位としては、例えば、式(a1)で表される構造を2個以上有する基、好ましくは、上記式(a2)で表される基を側鎖に有する構成単位が挙げられる。
 具体的には、ケイ素原子を2個以上含む置換基を側鎖に有する構成単位は、下記式(a3)で表される構成単位であることが好ましい。
 式(a3)中、R、R、及びRはそれぞれ独立にアルキル基、アルケニル基、アリール基、又はアルキレンアリール基を表し、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又はアルキル基を表し、Rは水素原子又は一価の置換基を表し、Lはp+1価の連結基を表し、pは2~12の整数を表す。
 式(a3)におけるR、R、及びRは、上記式(a1)におけるR、R、及びRと同義であり、好ましい態様も同様である。
 R及びRで表されるアルキル基としては、例えば、炭素数1~18の直鎖状、炭素数3~18の分岐鎖状又は環状のアルキル基が挙げられる。上記アルキル基として、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、tert-ブチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
 R及びRとしては、いずれも、水素原子であることが好ましい。
 Rで表される一価の置換基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、又はアリール基が挙げられる。上記アルキル基、アルケニル基、及びアリール基は、R、R、及びRで表されるアルキル基、アルケニル基、及びアリール基とそれぞれ同様であり、好ましい態様も同様である。
 Rとしては、水素原子又はメチル基であることが好ましい。
 Lで表されるp+1価の連結基は、例えば、炭素数1~10のp+1価の炭化水素基が挙げられる。p+1価の連結基としては、炭化水素基を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換されている炭化水素基も好適に用いられる。炭化水素基としては、飽和炭化水素基が好ましい。ここで、炭素原子の一部を置換するヘテロ原子としては、例えば、ケイ素原子、酸素原子、及び窒素原子が挙げられ、中でも、ケイ素原子又は酸素原子が好ましい。
 Lで表されるp+1価の連結基は、分岐状の飽和炭化水素基であることが好ましく、分岐状の飽和炭化水素基を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子(好ましくはケイ素原子及び酸素原子)で置換されている分岐状の飽和炭化水素基も好ましい。
 pは、2~12の整数であり、3~12の整数が好ましい。
 ケイ素原子を2個以上含む置換基を側鎖に有する構成単位を形成するためのモノマー単位の具体例としては、K-1~K-12で表される単量体(モノマー)が挙げられる。ケイ素原子を2個以上含む置換基を側鎖に有する構成単位を形成するモノマー単位の具体例は、これに限定されるものではない。
 以下の構造中、nは2~1000の整数である。
 (メタ)アクリル重合体Aに含まれる親水性基を側鎖に有する構成単位は、下記式(a4)で表される構成単位であることが好ましい。
 式(a4)中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又はアルキル基を表し、Rは水素原子又は一価の置換基を表し、Lは-C(=O)-O-又は-C(=O)-NH-を表し、Lは単結合又は二価の連結基を表し、Xは親水性基を表す。
 R及びRで表されるアルキル基は、上記式(a3)におけるR及びRで表されるアルキル基と同様であり、好ましい態様も同様である。
 Rで表される一価の置換基は、上記式(a3)におけるRで表される一価の置換基と同様であり、好ましい態様も同様である。
 Lで表される二価の連結基は、LとXとを連結しうる基であれば、特に制限はない。Lで表される二価の連結基としては、アルキレン基が挙げられる。アルキレン基としては、炭素数2~10のアルキレン基であることが好ましく、炭素数4~8のアルキレン基であることがより好ましい。
 Xで表される親水性基は、水酸基、リン酸基、ポリアルキレンオキシ基、又はこれらを2つ以上組み合わせた基等が挙げられる。ここで、ポリアルキレンオキシ基としては、ポリエチレンオキシ基、ポリプロピレンオキシ基、ポリブチレンオキシ基、又は、これらを組み合わせた基が挙げられる。
 親水性基を側鎖に有する構成単位を形成するためのモノマー単位の具体例としては、H-1~H-25で表される単量体(モノマー)が挙げられる。親水性基を側鎖に有する構成単位を形成するモノマー単位の具体例は、これに限定されるものではない。
 以下の構造中、n及びmはそれぞれ独立に2~100の整数である。
 以下の構造中、「random」との記載は、複数種のポリアルキレンオキシ基がランダムで並んでいることを意味する。
 (メタ)アクリル重合体Aは、ケイ素原子を2個以上含む置換基を側鎖に有する構成単位を、1種単独で含んでいてもよいし、2種以上を含んでいてもよい。
 (メタ)アクリル重合体Aにおいて、ケイ素原子を2個以上含む置換基を側鎖に有する構成単位の含有量は、(メタ)アクリル重合体Aの質量に対して、100質量%であってもよく、15質量%~70質量%であることが好ましく、20質量%~60質量%であることがより好ましく、25質量%~50質量%であることが更に好ましい。
 また、(メタ)アクリル重合体Aは、親水性基を側鎖に有する構成単位を、1種単独で含んでいてもよいし、2種以上を含んでいてもよい。
 (メタ)アクリル重合体Aにおいて、親水性基を側鎖に有する構成単位の含有量は、(メタ)アクリル重合体Aの質量に対して、30質量%~85質量%であることが好ましく、40質量%~80質量%であることがより好ましく、50質量%~75質量%であることが更に好ましい。
 なお、(メタ)アクリル重合体Aは、更に他の構成単位を含んでいてもよい。
 他の構成単位としては、例えば、カルボン酸基を側鎖に有する構成単位が挙げられる。カルボン酸基を側鎖に有する構成単位としては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、イタコン酸誘導体等が挙げられる。カルボン酸基を側鎖に有する構成単位は、既述の親水性基を側鎖に有する構成単位とは別の構成単位として含まれることが好ましい。
 他の構成単位としては、(メタ)アクリル酸アルキル(アルキル基の炭素数は1~24)、スチレン誘導体、無水マレイン酸、無水マレイミド、(メタ)アクリロニトリル、ビニルエーテル誘導体、アルキル(メタ)アクリルアミド誘導体等が挙げられる。
 (メタ)アクリル重合体Aにおいて、他の構成単位の含有量は、(メタ)アクリル重合体Aの質量に対して、0質量%~20質量%であることが好ましい。
 (メタ)アクリル重合体Aの重量平均分子量としては、面状に優れた画像記録層を得る観点から、5000~100000が好ましく、8000~60000がより好ましい。
 (メタ)アクリル重合体Aの具体例としては、後述する実施例に示すP-1~P-10が挙げられる。(メタ)アクリル重合体Aの具体例としては、これらの限定されるものではない。
 (メタ)アクリル重合体Aの含有量は、画像記録層用塗布液の全質量に対し、0.001質量%~0.1質量%とすることが好ましく、0.002質量%~0.01質量%とすることがより好ましい。
〔重合体B〕
 重合体Bは、下記式(I)で表される構成単位(b1)を有する。
 式(I)中、R11及びR12はそれぞれ独立に水素原子又はアルキル基を表し、R13は水素原子又は一価の置換基を表し、L11及びL12はそれぞれ独立に単結合又は二価の連結基を表し、Rhはケイ素原子を2個以上含む置換基を表す。
 R11及びR12で表されるアルキル基は、上記式(a3)におけるR及びRで表されるアルキル基と同様であり、好ましい態様も同様である。
 R13で表される一価の置換基は、上記式(a3)におけるRで表される一価の置換基と同様であり、好ましい態様も同様である。
 L11で表される二価の連結基は、-C(=O)-O-(所謂、エステル結合)又は-C(=O)-NH-が挙げられる。
 なお、L11で表される二価の連結基は、エステル結合である-C(=O)-O-であることが好ましい。
 L12で表される二価の連結基は、L11とRhとを連結しうる基であれば、特に制限はない。L12で表される二価の連結基としては、アルキレン基が挙げられる。アルキレン基は、式(a4)のLにおけるアルキレン基と同様であり、好ましい態様も同様である。
 Rhで表されるケイ素原子を2個以上含む置換基は、(メタ)アクリル重合体Aにおけるケイ素原子を2個以上含む置換基と同様であり、好ましい態様も同様である。
 具体的には、式(I)におけるRhは、下記式(Ia)で表される構造を2個以上含む基であることが好ましい。
 式(Ia)中、*は、結合位置を表し、R11、R12、及びR13はそれぞれ独立にアルキル基、アルケニル基、アリール基、又はアルキレンアリール基を表す。
 ここで、式(Ia)は、(メタ)アクリル重合体Aにおける式(a1)と同義であり、好ましい態様も同様である。
 式(I)で表される構成単位(b1)の具体例としては、(メタ)アクリル重合体Aにおけるケイ素原子を2個以上含む置換基を側鎖に有する構成単位の具体例であるK-1~K-12で表される単量体(モノマー)に由来する構成単位が挙げられる。式(I)で表される構成単位(b1)の具体例は、これに限定されるものではない。
 重合体Bは、親水性基を側鎖に有する構成単位を更に有することが好ましい。
 親水性基を側鎖に有する構成単位としては、一態様において、ポリアルキレンオキシ基を側鎖に有する構成単位であることが好ましい。つまり、重合体Bは、一態様において、ポリアルキレンオキシ基を側鎖に有する構成単位(b2)を更に有する共重合体であることが好ましい。
 重合体Bにおける親水性基を側鎖に有する構成単位は、(メタ)アクリル重合体Aにおける親水性基を側鎖に有する構成単位と同様であり、好ましい態様も同様である。
 即ち、重合体Bにおける親水性基を側鎖に有する構成単位の他の一態様として、上記式(a4)で表される構成単位が挙げられる。
 式(a4)中、R、R、R、L、L及びXの好ましい態様は、上記にて説明したとおりである。
 重合体Bにおける親水性基を側鎖に有する構成単位が、式(a4)で表される構成単位である場合、Lは-C(=O)-O-又は-C(=O)-NH-を表し、なかでも、-C(=O)-NH-であることが好ましい。
 また、重合体Bにおける親水性基を側鎖に有する構成単位が、式(a4)で表される構成単位である場合、式(a4)におけるXで表される親水性基としては、水酸基、ポリアルキレンオキシ基、又はこれらを2つ以上組み合わせた基等が好ましく挙げられる。
 重合体Bにおける親水性基を側鎖に有する構成単位の具体例としては、(メタ)アクリル重合体Aにおける親水性基を側鎖に有する構成単位の具体例であるH-1~H-40で表される単量体(モノマー)に由来する構成単位が挙げられる。重合体Bにおける親水性基を側鎖に有する構成単位の具体例は、これに限定されるものではない。
 重合体Bは、上記式(I)で表される構成単位(b1)を、1種単独で含んでいてもよいし、2種以上を含んでいてもよい。
 重合体Bにおいて、式(I)で表される構成単位(b1)の含有量は、重合体Bの質量に対して、100質量%であってもよく、15質量%~70質量%であることが好ましく、20質量%~60質量%であることがより好ましく、25質量%~50質量%であることが更に好ましい。
 また、重合体Bは、親水性基を側鎖に有する構成単位を含む場合、親水性基を側鎖に有する構成単位(b2)及び親水性基を側鎖に有する構成単位(a4)から選ばれる、親水性基を側鎖に有する構成単位を、1種単独で含んでいてもよいし、2種以上を含んでいてもよい。
 重合体Bにおいて、親水性基を側鎖に有する構成単位の含有量は、重合体Bの質量に対して、30質量%~85質量%であることが好ましく、40質量%~80質量%であることがより好ましく、50質量%~75質量%であることが更に好ましい。
 なお、重合体Bは、更に他の構成単位を含んでいてもよい。
 他の構成単位としては、例えば、カルボン酸基を側鎖に有する構成単位が挙げられる。カルボン酸基を側鎖に有する構成単位としては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、イタコン酸誘導体等が挙げられる。カルボン酸基を側鎖に有する構成単位は、既述の親水性基を側鎖に有する構成単位とは別の構成単位として含まれることが好ましい。
 他の構成単位としては、(メタ)アクリル酸アルキル(アルキル基の炭素数は1~24)、スチレン誘導体、無水マレイン酸、無水マレイミド、(メタ)アクリロニトリル、ビニルエーテル誘導体、アルキル(メタ)アクリルアミド誘導体等が挙げられる。
 重合体Bにおいて、他の構成単位の含有量は、重合体Bの質量に対して、0質量%~20質量%であることが好ましい。
 重合体Bの重量平均分子量としては、面状に優れた画像記録層を得る観点から、5000~100000が好ましく、8000~60000がより好ましい。
 重合体Bの具体例としては、後述する実施例に示すP-1~P-10が挙げられる。重合体Bの具体例としては、これらの限定されるものではない。
 重合体Bの含有量は、画像記録層用塗布液の全質量に対し、0.001質量%~0.1質量%とすることが好ましく、0.002質量%~0.01質量%とすることがより好ましい。
 本開示に係る平版印刷版原版は、上述した(メタ)アクリル重合体A又は重合体Bを含む画像記録層を有すること以外、特に制限はない。
 本開示に係る平版印刷版原版は、ポジ型の平版印刷版原版であってもよく、ネガ型の平版印刷版原版であってもよい。中でも、本開示における効果をより発揮する観点から、本開示に係る平版印刷版原版は、ネガ型の平版印刷版原版であることが好ましい。
 また、本開示に係る平版印刷版原版は、上述したような、優れた機上現像性が示されることから、機上現像型平版印刷版原版であることが好ましい。
 以下、本開示に係る平版印刷版原版における各構成要件の詳細について説明する。
<画像記録層>
 本開示に用いられる画像記録層としては、上述した(メタ)アクリル重合体A又は重合体Bを含んでいれば、ポジ型の画像記録層であってもよく、ネガ型の画像記録層であってもよい。中でも、本開示における効果をより発揮する観点から、画像記録層は、ネガ型の画像記録層であることが好ましい。
 また、本開示に用いられる画像記録層としては、例えば、特開平7-285275号公報、特開2003-345014号公報等に記載されたサーマルポジタイプであってもよいし、特開平7-20625号公報、特開平11-218903号公報等に記載されたサーマルネガタイプであってもよいし、特開2001-100412号、特開2002-169282号公報、特開2008-15504号公報等に記載されたフォトポリネガタイプであってもよい。
 更に、本開示に用いられる画像記録層は、水溶性又は水分散性のネガ型の画像記録層であることが好ましい。また、本開示に係る平版印刷版原版は、機上現像性の観点から、画像記録層の未露光部が湿し水及び印刷インクの少なくともいずれかにより除去可能であることが好ましい。
 以下、機上現像型平版印刷版原版に好適なネガ型の画像記録層を例にとって、詳しく説明する。
 機上現像型平版印刷版原版に好適なネガ型の画像記録層は、上述の上述した(メタ)アクリル重合体A又は重合体Bの他、例えば、赤外線吸収剤、重合開始剤、重合性化合物、発色剤、粒子、その他の成分等を含むことが好ましい。
〔赤外線吸収剤〕
 赤外線吸収剤としては、特に制限はなく、例えば、顔料及び染料が挙げられる。
 赤外線吸収剤として用いられる染料としては、市販の染料及び例えば、「染料便覧」(有機合成化学協会編集、昭和45年刊)等の文献に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクアリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体等の染料が挙げられる。
 これらの染料のうち好ましいものとしては、シアニン色素、スクアリリウム色素、ピリリウム塩、ニッケルチオレート錯体、インドレニンシアニン色素が挙げられる。より好ましくは、シアニン色素やインドレニンシアニン色素が挙げられる。中でも、シアニン色素が特に好ましい。
 赤外線吸収剤としては、メソ位に酸素原子、窒素原子、又はハロゲン原子を有するカチオン性のポリメチン色素であることが好ましい。カチオン性のポリメチン色素としては、シアニン色素、ピリリウム色素、チオピリリウム色素、アズレニウム色素等が好ましく挙げられ、入手の容易性、導入反応時の溶剤溶解性等の観点から、シアニン色素であることが好ましい。
 シアニン色素の具体例としては、特開2001-133969号公報の段落0017~0019に記載の化合物、特開2002-023360号公報の段落0016~0021、特開2002-040638号公報の段落0012~0037に記載の化合物、好ましくは特開2002-278057号公報の段落0034~0041、特開2008-195018号公報の段落0080~0086に記載の化合物、特に好ましくは特開2007-90850号公報の段落0035~0043に記載の化合物、特開2012-206495号公報の段落0105~0113に記載の化合物が挙げられる。
 また、特開平5-5005号公報の段落0008~0009、特開2001-222101号公報の段落0022~0025に記載の化合物も好ましく使用することができる。
 顔料としては、特開2008-195018号公報の段落0072~0076に記載の化合物が好ましい。
 また、赤外線吸収剤としては、最外層の変色性化合物として後述する赤外線露光に起因して分解する分解性化合物も好適に用いられる。
 赤外線吸収剤の最高被占軌道(HOMO)は、耐刷性の観点から、-5.250eV以下であることが好ましく、-5.30eV以下であることがより好ましく、-5.80eV以上-5.35eV以下であることが更に好ましく、-5.65eV以上-5.40eV以下であることが特に好ましい。
 赤外線吸収剤の最低空軌道(LUMO)は、経時安定性、感度の向上及びUV耐刷性の観点から、-3.70eVより小さいことが好ましく、-3.80eVより小さいことがより好ましく、-4.20eV以上-3.80eV未満であることが更に好ましく、-4.00eV以上-3.80eV未満であることが特に好ましい。
 赤外線吸収剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
 また、赤外線吸収剤として顔料と染料とを併用してもよい。
 赤外線吸収剤の含有量は、画像記録層の全質量に対し、0.1質量%~10.0質量%が好ましく、0.5質量%~5.0質量%がより好ましい。
〔重合開始剤〕
 重合開始剤としては、特に制限はなく、公知の重合開始剤を用いることができる。
 重合開始剤としては、電子供与型重合開始剤を含むことが好ましく、電子受容型重合開始剤及び電子供与型重合開始剤を含むことがより好ましい。
[電子供与型重合開始剤(重合助剤)]
 電子供与型重合開始剤は、赤外線露光により赤外線吸収剤の電子が励起又は分子内移動した際に、赤外線吸収剤の一電子抜けた軌道に分子間電子移動で一電子を供与することにより、ラジカル等の重合開始種を発生する化合物である。
 電子供与型重合開始剤としては、電子供与型ラジカル重合開始剤であることが好ましい。
 電子供与型重合開始剤は、ホウ素化合物を含むこが好ましく、ボレート塩化合物を含むことがより好ましく、テトラアリールボレート塩化合物を含むことが更に好ましく、テトラフェニルボレート塩化合物を含むことが特に好ましい。
 ボレート塩化合物としては、耐刷性の観点から、テトラアリールボレート塩化合物、又は、モノアルキルトリアリールボレート塩化合物であることが好ましく、テトラアリールボレート塩化合物であることがより好ましい。
 また、ボレート塩化合物としては、耐刷性の観点から、1つ以上の電子供与性基又は電子求引性基を有するテトラアリールボレート塩化合物であることが好ましく、1つの電子供与性基又は電子求引性基を各アリール基に有するテトラアリールボレート塩化合物であることがより好ましい。
 電子供与性基としては、耐刷性の観点から、アルキル基、又は、アルコキシ基であることが好ましく、アルコキシ基であることがより好ましい。
 電子求引性基としては、分解性の観点から、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、アシル基、カルボキシ基等が挙げられる。
 ボレート塩化合物が有する対カチオンとしては、特に制限はないが、アルカリ金属イオン、又は、テトラアルキルアンモニウムイオンであることが好ましく、ナトリウムイオン、カリウムイオン、又は、テトラブチルアンモニウムイオンであることがより好ましい。
 また、ボレート塩化合物が有する対カチオンとしては、本明細書に記載している赤外吸収剤において、カチオン性のポリメチン色素であってもよい。例えば、シアニン色素の対カチオンとして上記ボレート塩化合物を用いてもよい。
 ボレート塩化合物として具体的には、ナトリウムテトラフェニルボレートが好ましく挙
げられる。
 以下に、電子供与型重合開始剤の好ましい具体例として、B-1~B-9を示すが、これらに限定されないことは、言うまでもない。また、下記化学式において、Phはフェニル基を表し、Buはn-ブチル基を表す。
 また、電子供与型重合開始剤の最高被占軌道(HOMO)は、感度の向上の観点から、-6.00eV以上であることが好ましく、-5.95eV以上であることがより好ましく、-5.93eV以上であることが更に好ましく、-5.90eVより大きいことが特に好ましい。
 また、上限としては、-5.00eV以下であることが好ましく、-5.40eV以下であることがより好ましい。
 電子供与型重合開始剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
 電子供与型重合開始剤の含有量としては、感度及び耐刷性の観点から、画像記録層の全質量に対し、0.01質量%~30質量%であることが好ましく、0.05質量%~25質量%であることがより好ましく、0.1質量%~20質量%であることが更に好ましい。
 また、画像記録層における電子供与型重合開始剤の含有量は、UV耐刷性の観点から、赤外線吸収剤の含有量よりも多いことが好ましく、赤外線吸収剤の含有量の1.1倍~5倍であることがより好ましく、赤外線吸収剤の含有量の1.5倍~3倍であることが特に好ましい。
 本開示において、重合開始剤は、電子供与型重合開始剤と電子受容型重合開始剤とが対塩を形成している化合物であってもよい。
 例えば、本開示において、電子供与型重合開始剤におけるアニオンと電子受容型重合開始剤におけるカチオンとが対塩を形成してなる化合物であることが好ましく、オニウムカチオンとボレートアニオンとが対塩を形成してなる化合物であることがより好ましく、ヨードニウムカチオン又はスルホニウムカチオンとボレートアニオンとが対塩を形成してなる化合物であることが更に好ましく、ジアリールヨードニウムカチオン又はトリアリールスルホニウムカチオンとテトラアリールボレートアニオンとが対塩を形成してなる化合物であることが特に好ましい。
 電子供与型重合開始剤におけるアニオン、及び、電子受容型重合開始剤におけるカチオンの好ましい態様としては、既述の電子供与型重合開始剤におけるアニオン及び既述の電子受容型重合開始剤におけるカチオンの好ましい態様と同様である。
 画像記録層が、電子供与型重合開始剤であるアニオンと、電子受容型重合開始剤であるカチオンと、を含む場合(つまり、上記対塩を形成している化合物を含む場合)、画像記録層は電子受容型重合開始剤及び上記電子供与型重合開始剤を含むものとする。
 また、電子供与型重合開始剤と電子受容型重合開始剤とが対塩を形成している化合物は、電子供与型重合開始剤として用いてもよいし、電子受容型重合開始剤として用いてもよい。
 また、電子供与型重合開始剤と電子受容型重合開始剤とが対塩を形成してなる化合物は、既述の電子供与型重合開始剤と併用してもよいし、既述の電子受容型重合開始剤と併用してもよい。
 機上現像型平版印刷版原版における画像記録層は、赤外線吸収剤及び電子供与型重合開始剤を更に含み、上記赤外線吸収剤のHOMO-上記電子供与型重合開始剤のHOMOの値は、感度の向上及び耐刷性の観点から、0.70eV以下であることが好ましく、0.60eV以下であることがより好ましく、0.50eV以下であることが更に好ましく、0.50eV~-0.10eVであることが特に好ましい。
 なお、マイナスの値は、上記電子供与型重合開始剤のHOMOが、上記赤外線吸収剤のHOMOよりも高くなることを意味する。
 本開示において、最高被占軌道(HOMO)及び最低空軌道(LUMO)のMO(分子軌道)エネルギー計算は、以下の方法により行う。
 まず、計算対象となる化合物における遊離の対イオンは計算対象から除外する。例えば、カチオン性の一電子受容型重合剤、カチオン性の赤外線吸収剤では対アニオンを、アニオン性の一電子供与型重合剤では対カチオンをそれぞれ計算対象から除外する。ここでいう遊離とは、対象とする化合物とその対イオンが共有結合で連結されていないことを意味する。
 量子化学計算ソフトウェアGaussian16を用い、構造最適化はDFT(B3LYP/6-31G(d))で行う。
 MOエネルギー計算は、上記構造最適化で得た最適構造で量子化学計算ソフトウェアGaussian16を用い、DFT(B3LYP/6-31+G(d,p)/PCM(solvent=methanol))で行う。なお、ヨウ素を含有する化合物は、DFT(B3LYP/DGDZVP/PCM(solvent=methanol))条件にて計算する。
 ここでいう最適構造とは、DFT計算で得られる全エネルギーが最も安定な構造を意味する。必要に応じて構造最適化を繰り返すことで、最安定構造を見出す。
 上記MOエネルギー計算で得られたMOエネルギーEbare(単位:hartree)を以下の公式により、本開示においてHOMO及びLUMOの値として用いるEscaled(単位:eV)へ変換する。
 〔HOMOの算出式〕 Escaled=0.823168×27.2114×Ebare-1.07634
 〔LUMOの算出式〕 Escaled=0.820139×27.2114×Ebare-1.086039
 なお、27.2114は単にhartreeをeVに変換するための係数であり、HOMOを算出する際に用いる0.823168と-1.07634、及び、UMOを算出する際に用いる0.820139と-1.086039とは調節係数であり、計算対象となる化合物のHOMOとLUMOの計算が実測の値に合うように定める。
[電子受容型重合開始剤]
 電子受容型重合開始剤は、赤外線露光により赤外線吸収剤の電子が励起した際に、分子間電子移動で一電子を受容することにより、ラジカル等の重合開始種を発生する化合物である。
 電子受容型重合開始剤は、光、熱あるいはその両方のエネルギーによりラジカル、カチオン等の重合開始種を発生する化合物であって、公知の熱重合開始剤、結合解離エネルギーの小さな結合を有する化合物、光重合開始剤などを適宜選択して用いることができる。
 電子受容型重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤が好ましく、オニウム塩化合物がより好ましい。
 また、電子受容型重合開始剤としては、赤外線感光性重合開始剤であることが好ましい。
 更に、電子受容型重合開始剤としては、感度の向上及びUV耐刷性の観点から、ヨードニウム塩化合物、又は、ハロゲン化アルキル基を有する化合物であることが好ましく、ハロゲン化アルキル基を有する化合物であることがより好ましい。
 また、ハロゲン化アルキル基を有する化合物としては、感度の向上及びUV耐刷性の観点から、パーハロゲノアルキルスルホニル基を有する化合物が好ましく、トリハロゲノメチルスルホニル基を有する化合物がより好ましく、トリブロモメチルスルホニル基を有する化合物であることが特に好ましい。
 上記電子受容型重合開始剤の中でも好ましいものとして、硬化性の観点から、オキシムエステル化合物及びオニウム塩化合物が挙げられる。中でも、耐刷性の観点から、ヨードニウム塩化合物、スルホニウム塩化合物又はアジニウム塩化合物が好ましく、ヨードニウム塩化合物又はスルホニウム塩化合物がより好ましく、ヨードニウム塩化合物が特に好ましい。
 これら化合物の具体例を以下に示すが、本開示はこれに限定されるものではない。
 ヨードニウム塩化合物の例としては、ジアリールヨードニウム塩化合物が好ましく、特に電子供与性基、例えば、アルキル基又はアルコキシル基で置換されたジフェニルヨードニウム塩化合物がより好ましく、また、非対称のジフェニルヨードニウム塩化合物が好ましい。具体例としては、ジフェニルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、4-メトキシフェニル-4-(2-メチルプロピル)フェニルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、4-(2-メチルプロピル)フェニル-p-トリルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、4-ヘキシルオキシフェニル-2,4,6-トリメトキシフェニルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、4-ヘキシルオキシフェニル-2,4-ジエトキシフェニルヨードニウム=テトラフルオロボラート、4-オクチルオキシフェニル-2,4,6-トリメトキシフェニルヨードニウム=1-ペルフルオロブタンスルホナート、4-オクチルオキシフェニル-2,4,6-トリメトキシフェニルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファー飛びス(4-t-ブチルフェニル)ヨードニウム=ヘキサフルオロホスファートが挙げられる。
 また、ヨードニウム塩化合物及びスルホニウム塩化合物の対アニオンの例としては、スルホネートアニオン、カルボキシレートアニオン、テトラフルオロボレートアニオン、ヘキサフルオロホスフェートアニオン、p-トルエンスルホネートアニオン、トシレートアニオン、スルホンアミドアニオン又はスルホンイミドアニオンが挙げられる。
中でも、スルホンアミドアニオン又はスルホンイミドアニオンが好ましく、スルホンイミドアニオンがより好ましい。
 スルホンアミドアニオンとしては、アリールスルホンアミドアニオンが好ましい。
 また、スルホンイミドアニオンとしては、ビスアリールスルホンイミドアニオンが好ましい。
 スルホンアミドアニオン又はスルホンイミドアニオンの具体例としては、国際公開第2019/013268号に記載されているものが挙げられる。
 また、上記電子受容型重合開始剤としては、現像性、及び、得られる平版印刷版におけるUV耐刷性の観点から、下記式(II)又は式(III)で表される化合物を含むことが好ましく、式(II)で表される化合物を含むことが特に好ましい。
 式(II)及び式(III)中、Xはハロゲン原子を表し、R、RA1及びRA2はそれぞれ独立に、炭素数1~20の一価の炭化水素基を表す。
 式(II)におけるRは、アリール基であることが好ましい。
 式(II)及び式(III)におけるXとしては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及び
ヨウ素原子が挙げられる。これらのうち、塩素原子又は臭素原子は、感度に優れるため好ましく、臭素原子が特に好ましい。
 また、式(II)及び式(III)において、R、RA1及びRA2はそれぞれ独立に、アリール基であることが好ましく、中でも、感度と保存安定性とのバランスに優れる観点から、アミド基で置換されているアリール基がより好ましい。
 また、上記電子受容型重合開始剤としては、式(IV)で表される化合物を含むことが特に好ましい。
 式(IV)中、Xはハロゲン原子を表し、RA3及びRA4はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1~20までの1価の炭化水素基を表し、pA及びqAはそれぞれ独立に、1~5の整数を表す。ただし、pA+qA=2~6である。
 電子受容型重合開始剤の具体例としては、下記に示す化合物などが挙げられるが、本開示はこれらに限定されるものではない。
 以下の構造中、「Et」はエチル基、「nPr」はn-プロピル基、「nBu」はn-ブチル基を、「Ph」はフェニル基を、「cHex」はシクロヘキシル基を表す。
 電子受容型重合開始剤の最低空軌道(LUMO)は、感度の向上の観点から、-3.00eV以下であることが好ましく、-3.02eV以下であることがより好ましい。
 また、下限としては、-3.80eV以上であることが好ましく、-3.50eV以上であることがより好ましい。
 電子受容型重合開始剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
 電子受容型重合開始剤の含有量は、画像記録層の全質量に対し、0.1質量%~50質量%であることが好ましく、0.5質量%~30質量%であることがより好ましく、0.8質量%~20質量%であることが特に好ましい。
 機上現像型平版印刷版原版における画像記録層は、赤外線吸収剤及び電子受容型重合開始剤を更に含み、上記電子受容型重合開始剤のLUMO-上記赤外線吸収剤のLUMOの値が、感度の向上及び耐刷性の観点から、1.00eV以下であることが好ましく、0.80eV以下であることがより好ましく、0.70eV以下であることが更に好ましく、0.70eV~-0.10eV以下であることが特に好ましく、0.70eV~0.30eVであることが最も好ましい。
 なお、マイナスの値は、上記赤外線吸収剤のLUMOが、上記電子受容型重合開始剤のLUMOよりも高くなることを意味する。
〔重合性化合物〕
 本開示において、重合性化合物とは、重合性基を有する化合物をいう。
 重合性基としては、特に限定されず公知の重合性基であればよいが、エチレン性不飽和基であることが好ましい。また、重合性基としては、ラジカル重合性基であってもカチオン重合性基であってもよいが、ラジカル重合性基であることが好ましい。
 ラジカル重合性基としては、(メタ)アクリロイル基、アリル基、ビニルフェニル基、ビニル基等が挙げられ、反応性の観点から(メタ)アクリロイル基が好ましい。
 重合性化合物の分子量(分子量分布を有する場合には、重量平均分子量)は、50以上2,500未満であることが好ましい。
 本開示に用いられる重合性化合物は、例えば、ラジカル重合性化合物であっても、カチオン重合性化合物であってもよいが、少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有する付加重合性化合物、即ち、エチレン性不飽和化合物であることが好ましい。
 エチレン性不飽和化合物としては、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個有する化合物であることが好ましく、末端エチレン性不飽和結合を2個以上有する化合物であることがより好ましい。重合性化合物は、例えばモノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体若しくはオリゴマー、又は、それらの混合物などの化学的形態をもつ。
 中でも、重合性化合物としては、UV耐刷性の観点から、3官能以上の重合性化合物を含むことが好ましく、7官能以上の重合性化合物を含むことがより好ましく、10官能以上の重合性化合物を含むことが更に好ましい。また、上記重合性化合物は、得られる平版印刷版におけるUV耐刷性の観点から、3官能以上(好ましくは7官能以上、より好ましくは10官能以上)のエチレン性不飽和化合物を含むことが好ましく、3官能以上(好ましくは7官能以上、より好ましくは10官能以上)の(メタ)アクリレート化合物を含むことが更に好ましい。
 また、重合性化合物としては、機上現像性、及び、汚れ抑制性の観点から、2官能以下の重合性化合物を含むことが好ましく、2官能重合性化合物を含むことがより好ましく、2官能(メタ)アクリレート化合物を含むことが特に好ましい。
 2官能以下の重合性化合物(好ましくは2官能重合性化合物)の含有量は、耐刷性、機上現像性、及び、汚れ抑制性の観点から、上記画像記録層における重合性化合物の全質量に対し、5質量%~100質量%であることが好ましく、10質量%~100質量%であることがより好ましく、50%~100質量%であることが特に好ましい。
<<オリゴマー>>
 画像記録層に含まれる重合性化合物としては、オリゴマーである重合性化合物(以下、単に「オリゴマー」ともいう。)を含有することが好ましい。
 本開示においてオリゴマーとは、分子量が600以上10,000以下であり、かつ、重合性基を少なくとも1つ含む重合性化合物を表す。ここで、オリゴマーの分子量は、分子量分布を有する場合には、重量平均分子量を指す。
 耐薬品性、UV耐刷性に優れる観点から、オリゴマーの分子量としては、1,000以上5,000以下であることが好ましい。
 また、UV耐刷性を向上させる観点から、1分子のオリゴマーにおける重合性基数は、2以上であることが好ましく、3以上であることがより好ましく、6以上であることが更に好ましく、10以上であることが特に好ましい。
 また、オリゴマーにおける重合性基の上限値は、特に制限はないが、重合性基の数は20以下であることが好ましい。
 UV耐刷性、及び、機上現像性の観点から、オリゴマーとしては、重合性基の数が7以上であり、かつ、分子量が1,000以上10,000以下であることが好ましく、重合性基の数が7以上20以下であり、かつ、分子量が1,000以上5,000以下であることがより好ましい。
 なお、オリゴマーは、オリゴマーを製造する過程で生じる可能性のある、ポリマー成分を含有していてもよい。
 UV耐刷性、及び、機上現像性の観点から、オリゴマーは、ウレタン結合を有する化合物、エステル結合を有する化合物及びエポキシ残基を有する化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を有することが好ましく、ウレタン結合を有する化合物を有することが好ましい。
 本開示においてエポキシ残基とは、エポキシ基により形成される構造を指し、例えば酸基(カルボン酸基等)とエポキシ基との反応により得られる構造と同様の構造を意味する。
 オリゴマーの例であるウレタン結合を有する化合物としては、例えば、下記式(Ac-1)又は式(Ac-2)で表される基を少なくとも有する化合物であることが好ましく、下記式(Ac-1)で表される基を少なくとも有する化合物であることがより好ましい。
 式(Ac-1)及び式(Ac-2)中、L~Lはそれぞれ独立に、炭素数2~20の二価の炭化水素基を表し、波線部分は他の構造との結合位置を表す。
 L~Lとしては、それぞれ独立に、炭素数2~20のアルキレン基であることが好ましく、炭素数2~10のアルキレン基であることがより好ましく、炭素数4~8のアルキレン基であることが更に好ましい。また、上記アルキレン基は、分岐又は環構造を有していてもよいが、直鎖アルキレン基であることが好ましい。
 式(Ac-1)又は式(Ac-2)における波線部はそれぞれ独立に、下記式(Ae-1)又は式(Ae-2)で表される基における波線部と直接結合することが好ましい。
 式(Ae-1)及び式(Ae-2)中、Rはそれぞれ独立に、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基を表し、波線部分は式(Ac-1)及び式(Ac-2)における波線部との結合位置を表す。
 また、ウレタン結合を有する化合物として、ポリイソシアネート化合物と、ポリオール化合物と、の反応により得られるポリウレタンに、高分子反応により重合性基を導入した化合物を用いてもよい。
 例えば、酸基を有するポリオール化合物と、ポリイソシアネート化合物を反応させて得られたポリウレタンオリゴマーに、エポキシ基及び重合性基を有する化合物を反応させることにより、ウレタン結合を有する化合物を得てもよい。
 オリゴマーの例であるエステル結合を有する化合物における重合性基の数は、3以上であることが好ましく、6以上であることが更に好ましい。
 オリゴマーの例であるエポキシ残基を有する化合物としては、化合物内にヒドロキシ基を含む化合物が好ましい。
 また、エポキシ残基を有する化合物における重合性基の数は、2~6であることが好ましく、2~3であることがより好ましい。
 上記エポキシ残基を有する化合物としては、例えば、エポキシ基を有する化合物にアクリル酸を反応することにより得ることができる。
 オリゴマーの具体例を下記表に示すが、本開示において用いられるオリゴマーはこれに限定されるものではない。
 オリゴマーとしては、市販品を用いてもよく、UA510H、UA-306H、UA-306I、UA-306T(いずれも共栄社化学(株)製)、UV-1700B、UV-6300B、UV7620EA(いずれも日本合成化学工業(株)製)、U-15HA(新中村化学工業(株)製)、EBECRYL450、EBECRYL657、EBECRYL885、EBECRYL800、EBECRYL3416、EBECRYL860(いずれもダイセルオルネクス(株)製)等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
 オリゴマーの含有量は、耐薬品性、UV耐刷性、及び機上現像カスの抑制性を向上させる観点から、画像記録層における重合性化合物の全質量に対し、30質量%~100質量%であることが好ましく、50質量%~100質量%であることがより好ましく、80質量%~100質量%であることが更に好ましい。
<<低分子重合性化合物>>
 重合性化合物は、上記オリゴマー以外の重合性化合物を更に含んでいてもよい。
 オリゴマー以外の重合性化合物としては、耐薬品性の観点から、低分子重合性化合物であることが好ましい。低分子重合性化合物としては、単量体、2量体、3量体又は、それらの混合物などの化学的形態であってもよい。
 また、低分子重合性化合物としては、耐薬品性の観点から、エチレン性不飽和基を3つ以上有する重合性化合物、及びイソシアヌル環構造を有する重合性化合物からなる群より選ばれる少なくとも一方の重合性化合物であることが好ましい。
 本開示において低分子重合性化合物とは、分子量50以上600未満の重合性化合物を表す。ここで、低分子重合性化合物の分子量が分子量分布を有する場合には、重量平均分子量を指す。
 低分子重合性化合物の分子量としては、耐薬品性、UV耐刷性及び機上現像カスの抑制性に優れる観点から、100以上600未満であることが好ましく、300以上600未満であることがより好ましく、400以上600未満であることが更に好ましい。
 重合性化合物が、オリゴマー以外の重合性化合物として低分子重合性化合物を含む場合(2種以上の低分子重合性化合物を含む場合はその合計量)、耐薬品性、UV耐刷性及び機上現像カスの抑制性の観点から、上記オリゴマーと低分子重合性化合物との比(オリゴマー/低分子重合性化合物)は、質量基準で、10/1~1/10であることが好ましく、10/1~3/7であることがより好ましく、10/1~7/3であることが更に好ましい。
 また、低分子重合性化合物としては、国際公開第2019/013268号の段落0082~0086に記載の重合性化合物も好適に用いることができる。
 重合性化合物の構造、単独使用か併用か、添加量等の使用方法の詳細は、任意に設定できる。
 中でも、画像記録層は、UV耐刷性の観点から、2種以上の重合性化合物を含むことが好ましい。
 重合性化合物の含有量(重合性化合物を2種以上含む場合は、重合性化合物の総含有量)は、画像記録層の全質量に対して、5質量%~75質量%であることが好ましく、10質量%~70質量%であることがより好ましく、15質量%~60質量%であることが更に好ましい。
〔発色剤〕
 機上現像型平版印刷版原版における画像記録層は、発色剤を更に含むことが好ましく、酸発色剤を更に含むことがより好ましい。また、発色剤としては、ロイコ化合物を含むことが好ましい。
 本開示で用いられる「発色剤」とは、光や酸等の刺激により発色又は消色し画像記録層の色を変化させる性質を有する化合物を意味し、また、「酸発色剤」とは、電子受容性化合物(例えば酸等のプロトン)を受容した状態で加熱することにより、発色又は消色し画像記録層の色を変化させる性質を有する化合物を意味する。酸発色剤としては、特に、ラクトン、ラクタム、サルトン、スピロピラン、エステル、アミド等の部分骨格を有し、電子受容性化合物と接触した時に、速やかにこれらの部分骨格が開環若しくは開裂する無色の化合物が好ましい。
 このような酸発色剤の例としては、特開2019-18412号公報の0184~0191段落に記載された化合物が挙げられる。
 中でも、本開示に用いられる発色剤は、視認性の観点から、スピロピラン化合物、スピロオキサジン化合物、スピロラクトン化合物、及び、スピロラクタム化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物であることが好ましい。
 発色後の色素の色相としては、可視性の観点から、450~650nmの範囲に極大吸収を有することが好ましい。色味としては、赤、紫、青又は黒緑であることが好ましい。
 また、上記酸発色剤は、視認性、及び、露光部の視認性の観点から、ロイコ色素であることが好ましい。
 上記ロイコ色素としては、ロイコ構造を有する色素であれば、特に制限はないが、スピロ構造を有することが好ましく、スピロラクトン環構造を有することがより好ましい。
 また、上記ロイコ色素としては、視認性、及び、露光部の視認性の観点から、フタリド構造又はフルオラン構造を有するロイコ色素であることが好ましい。
 更に、上記フタリド構造又はフルオラン構造を有するロイコ色素は、視認性、及び、露光部の視認性の観点から、下記式(Le-1)~式(Le-3)のいずれかで表される化合物であることが好ましく、下記式(Le-2)で表される化合物であることがより好ましい。
 式(Le-1)~式(Le-3)中、ERGはそれぞれ独立に、電子供与性基を表し、X~Xはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又はジアルキルアニリノ基を表し、X~X10はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は一価の有機基を表し、Y及びYはそれぞれ独立に、C又はNを表し、YがNである場合は、Xは存在せず、YがNである場合は、Xは存在せず、Raは、水素原子、アルキル基又はアルコキシ基を表し、Rb~Rbはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。
 式(Le-1)~式(Le-3)のERGにおける電子供与性基としては、発色性、及び、露光部の視認性の観点から、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロアリールアミノ基、ジアルキルアミノ基、モノアルキルモノアリールアミノ基、モノアルキルモノヘテロアリールアミノ基、ジアリールアミノ基、ジヘテロアリールアミノ基、モノアリールモノヘテロアリールアミノ基、アルコキシ基、アリーロキシ基、ヘテロアリーロキシ基、又は、アルキル基であることが好ましく、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロアリールアミノ基、ジアルキルアミノ基、モノアルキルモノアリールアミノ基、モノアルキルモノヘテロアリールアミノ基、ジアリールアミノ基、ジヘテロアリールアミノ基、モノアリールモノヘテロアリールアミノ基、アルコキシ基、又は、アリーロキシ基であることがより好ましく、モノアルキルモノアリールアミノ基、ジアリールアミノ基、ジヘテロアリールアミノ基又はモノアリールモノヘテロアリールアミノ基であることが更に好ましく、モノアルキルモノアリールアミノ基であることが特に好ましい。
 また、上記ERGにおける電子供与性基としては、発色性、及び、露光部の視認性の観点から、少なくとも1つのオルト位に置換基を有するアリール基又は少なくとも1つのオルト位に置換基を有するヘテロアリール基を有する二置換アミノ基であることが好ましく、少なくとも1つのオルト位に置換基を有し、かつパラ位に電子供与性基を有するフェニル基を有する二置換アミノ基であることがより好ましく、少なくとも1つのオルト位に置換基を有し、かつパラ位に電子供与性基を有するフェニル基とアリール基又はヘテロアリール基とを有するアミノ基であることが更に好ましく、少なくとも1つのオルト位に置換基を有し、かつパラ位に電子供与性基を有するフェニル基と電子供与性基を有するアリール基又は電子供与性基を有するヘテロアリール基とを有するアミノ基であることが特に好ましい。
 なお、本開示において、フェニル基以外のアリール基又はヘテロアリール基におけるオルト位は、アリール基又はヘテロアリール基の他の構造との結合位置を1位とした場合の上記1位の隣の結合位置(例えば、2位等)を言うものとする。
 更に、上記アリール基又はヘテロアリール基が有する電子供与性基としては、発色性、及び、露光部の視認性の観点から、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロアリールアミノ基、ジアルキルアミノ基、モノアルキルモノアリールアミノ基、モノアルキルモノヘテロアリールアミノ基、ジアリールアミノ基、ジヘテロアリールアミノ基、モノアリールモノヘテロアリールアミノ基、アルコキシ基、アリーロキシ基、ヘテロアリーロキシ基、又は、アルキル基であることが好ましく、アルコキシ基、アリーロキシ基、ヘテロアリーロキシ基、又は、アルキル基であることがより好ましく、アルコキシ基であることが特に好ましい。
 式(Le-1)~式(Le-3)におけるX~Xはそれぞれ独立に、発色性、及び、露光部の視認性の観点から、水素原子、又は、塩素原子であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
 式(Le-2)又は式(Le-3)におけるX~X10はそれぞれ独立に、発色性、及び、露光部の視認性の観点から、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロアリールアミノ基、ジアルキルアミノ基、モノアルキルモノアリールアミノ基、モノアルキルモノヘテロアリールアミノ基、ジアリールアミノ基、ジヘテロアリールアミノ基、モノアリールモノヘテロアリールアミノ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリーロキシ基、ヘテロアリーロキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、ヘテロアリーロキシカルボニル基又はシアノ基であることが好ましく、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、又は、アリーロキシ基であることがより好ましく、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、又は、アリール基であることが更に好ましく、水素原子であることが特に好ましい。
 式(Le-1)~式(Le-3)におけるY及びYは、発色性、及び、露光部の視認性の観点から、少なくとも1方がCであることが好ましく、Y及びYの両方がCであることがより好ましい。
 式(Le-1)~式(Le-3)におけるRaは、発色性、及び、露光部の視認性の観点から、アルキル基又はアルコキシ基であることが好ましく、アルコキシ基であることがより好ましく、メトキシ基であることが特に好ましい。
 式(Le-1)~式(Le-3)におけるRb~Rbはそれぞれ独立に、発色性、及び、露光部の視認性の観点から、水素原子又はアルキル基であることが好ましく、アルキル基であることがより好ましく、メチル基であることが特に好ましい。
 また、上記フタリド構造又はフルオラン構造を有するロイコ色素は、発色性、及び、露光部の視認性の観点から、下記式(Le-4)~式(Le-6)のいずれかで表される化合物であることがより好ましく、下記式(Le-5)で表される化合物であることが更に好ましい。
 式(Le-4)~式(Le-6)中、ERGはそれぞれ独立に、電子供与性基を表し、X~Xはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又はジアルキルアニリノ基を表し、Y及びYはそれぞれ独立に、C又はNを表し、YがNである場合は、Xは存在せず、YがNである場合は、Xは存在せず、Raは、水素原子、アルキル基又はアルコキシ基を表し、Rb~Rbはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。
 式(Le-4)~式(Le-6)におけるERG、X~X、Y、Y、Ra、及び、Rb~Rbはそれぞれ、式(Le-1)~式(Le-3)におけるERG、X~X、Y、Y、Ra、及び、Rb~Rbと同義であり、好ましい態様も同様である。
 更に、上記フタリド構造又はフルオラン構造を有するロイコ色素は、発色性、及び、露光部の視認性の観点から、下記式(Le-7)~式(Le-9)のいずれかで表される化合物であることが更に好ましく、下記式(Le-8)で表される化合物であることが特に好ましい。
 式(Le-7)~式(Le-9)中、X~Xはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又はジアルキルアニリノ基を表し、Y及びYはそれぞれ独立に、C又はNを表し、YがNである場合は、Xは存在せず、YがNである場合は、Xは存在せず、Ra~Raはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアルコキシ基を表し、Rb~Rbはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表し、Rc及びRcはそれぞれ独立に、アリール基又はヘテロアリール基を表す。
 式(Le-7)~式(Le-9)におけるX~X、Y及びYは、式(Le-1)~式(Le-3)におけるX~X、Y及びYと同義であり、好ましい態様も同様である。
 式(Le-7)又は式(Le-9)におけるRa~Raはそれぞれ独立に、発色性、及び、露光部の視認性の観点から、アルキル基又はアルコキシ基であることが好ましく、アルコキシ基であることがより好ましく、メトキシ基であることが特に好ましい。
 式(Le-7)~式(Le-9)におけるRb~Rbはそれぞれ独立に、発色性、及び、露光部の視認性の観点から、水素原子、アルキル基又はアルコキシ基が置換したアリール基であることが好ましく、アルキル基であることがより好ましく、メチル基であることが特に好ましい。
 式(Le-8)におけるRc及びRcはそれぞれ独立に、発色性、及び、露光部の視認性の観点から、フェニル基、又は、アルキルフェニル基であることが好ましく、フェニル基であることがより好ましい。
 また、式(Le-8)におけるRc及びRcはそれぞれ独立に、発色性、及び、露光部の視認性の観点から、少なくとも1つのオルト位に置換基を有するアリール基、又は、少なくとも1つのオルト位に置換基を有するヘテロアリール基であることが好ましく、少なくとも1つのオルト位に置換基を有するアリール基であることがより好ましく、少なくとも1つのオルト位に置換基を有するフェニル基であることが更に好ましく、少なくとも1つのオルト位に置換基を有し、かつパラ位に電子供与性基を有するフェニル基であることが特に好ましい。Rc及びRcにおける上記置換基としては、後述する置換基が挙げられる。
 また、式(Le-8)において、発色性、及び、露光部の視認性の観点から、X~Xが水素原子であり、Y及びYがCであることが好ましい。
 更に、式(Le-8)において、発色性、及び、露光部の視認性の観点から、Rb及びRbがそれぞれ独立に、アルキル基又はアルコキシ基が置換したアリール基であることが好ましい。
 更にまた、式(Le-8)において、発色性、及び、露光部の視認性の観点から、Rb及びRbがそれぞれ独立に、アリール基又はヘテロアリール基であることが好ましく、アリール基であることがより好ましく、電子供与性基を有するアリール基であることが更に好ましく、パラ位に電子供与性基を有するフェニル基であることが特に好ましい。
 また、Rb、Rb、Rc及びRcにおける上記電子供与性基としては、発色性、及び、露光部の視認性の観点から、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロアリールアミノ基、ジアルキルアミノ基、モノアルキルモノアリールアミノ基、モノアルキルモノヘテロアリールアミノ基、ジアリールアミノ基、ジヘテロアリールアミノ基、モノアリールモノヘテロアリールアミノ基、アルコキシ基、アリーロキシ基、ヘテロアリーロキシ基、又は、アルキル基であることが好ましく、アルコキシ基、アリーロキシ基、ヘテロアリーロキシ基、又は、アルキル基であることがより好ましく、アルコキシ基であることが特に好ましい。
 また、酸発色剤としては、発色性、及び、露光部の視認性の観点から、下記式(Le-10)で表される化合物を含むことが好ましい。
 式(Le-10)中、Arはそれぞれ独立に、アリール基又はヘテロアリール基を表し、Arはそれぞれ独立に、少なくとも1つのオルト位に置換基を有するアリール基、又は、少なくとも1つのオルト位に置換基を有するヘテロアリール基を表す。
 式(Le-10)におけるArは、式(Le-7)~式(Le-9)におけるRb及びRbと同義であり、好ましい態様も同様である。
 式(Le-10)におけるArは、式(Le-7)~式(Le-9)におけるRc及びRcと同義であり、好ましい態様も同様である。
 式(Le-1)~式(Le-9)におけるアルキル基は、直鎖であっても、分岐を有していても、環構造を有していてもよい。
 また、式(Le-1)~式(Le-9)におけるアルキル基の炭素数は、1~20であることが好ましく、1~8であることがより好ましく、1~4であることが更に好ましく、1又は2であることが特に好ましい。
 式(Le-1)~式(Le-10)におけるアリール基の炭素数は、6~20であることが好ましく、6~10であることがより好ましく、6~8であることが特に好ましい。
 式(Le-1)~式(Le-10)におけるアリール基として具体的には、置換基を有していてもよい、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、及び、フェナントレニル基等が挙げられる。
 式(Le-1)~式(Le-10)におけるヘテロアリール基として具体的には、置換基を有していてもよい、フリル基、ピリジル基、ピリミジル基、ピラゾイル基、及び、チオフェニル基等が挙げられる。
 また、式(Le-1)~式(Le-10)における一価の有機基、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、ジアルキルアニリノ基、アルキルアミノ基、アルコキシ基等の各基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン原子、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロアリールアミノ基、ジアルキルアミノ基、モノアルキルモノアリールアミノ基、モノアルキルモノヘテロアリールアミノ基、ジアリールアミノ基、ジヘテロアリールアミノ基、モノアリールモノヘテロアリールアミノ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリーロキシ基、ヘテロアリーロキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、ヘテロアリーロキシカルボニル基、シアノ基等が挙げられる。また、これら置換基は、更にこれら置換基により置換されていてもよい。
 好適に用いられる上記フタリド構造又はフルオラン構造を有するロイコ色素としては、以下の化合物が挙げられる。

 
 
 酸発色剤としては上市されている製品を使用することも可能であり、ETAC、RED500、RED520、CVL、S-205、BLACK305、BLACK400、BLACK100、BLACK500、H-7001、GREEN300、NIRBLACK78、BLUE220、H-3035、BLUE203、ATP、H-1046、H-2114(以上、福井山田化学工業(株)製)、ORANGE-DCF、Vermilion-DCF、PINK-DCF、RED-DCF、BLMB、CVL、GREEN-DCF、TH-107(以上、保土ヶ谷化学(株)製)、ODB、ODB-2、ODB-4、ODB-250、ODB-BlackXV、Blue-63、Blue-502、GN-169、GN-2、Green-118、Red-40、Red-8(以上、山本化成(株)製)、クリスタルバイオレットラクトン(東京化成工業(株)製)等が挙げられる。これらの市販品の中でも、ETAC、S-205、BLACK305、BLACK400、BLACK100、BLACK500、H-7001、GREEN300、NIRBLACK78、H-3035、ATP、H-1046、H-2114、GREEN-DCF、Blue-63、GN-169、クリスタルバイオレットラクトンが、形成される膜の可視光吸収率が良好のため好ましい。
 好適に用いられるロイコ色素としては、視認性、及び、露光部の視認性の観点から、以下の化合物が挙げられる。
 これらの発色剤は、1種単独で用いてもよいし、2種類以上の成分を組み合わせて使用することもできる。
 発色剤の含有量は、画像記録層の全質量に対し、0.5質量%~10質量%であることが好ましく、1質量%~5質量%であることがより好ましい。
〔粒子〕
 機上現像型平版印刷版原版における画像記録層は、機上現像性、及び、UV耐刷性の観点から、粒子を含むことが好ましい。粒子としては、無機粒子であってもよいし、有機粒子であってもよい。
 画像記録層は、機上現像性の観点から、有機粒子を含むことが好ましく、樹脂粒子を含むことがより好ましい。
 無機粒子としては、公知の無機粒子を用いることができ、シリカ粒子、チタニア粒子等の金属酸化物粒子を好適に用いることができる。
<<樹脂粒子>>
 樹脂粒子としては、例えば、付加重合型樹脂を含む粒子(即ち、付加重合型樹脂粒子)、重付加型樹脂を含む粒子(即ち、重付加型樹脂粒子)、重縮合型樹脂を含む粒子(即ち、重縮合型樹脂粒子)等が挙げられるが、中でも、付加重合型樹脂粒子、又は重付加型樹脂粒子が好ましい。
 また、樹脂粒子としては、熱融着が可能となる観点から、熱可塑性樹脂を含む粒子(即ち、熱可塑性樹脂粒子)であってもよい。
 また、樹脂粒子は、マイクロカプセル、ミクロゲル(即ち、架橋樹脂粒子)等の形態であってもよい。
 樹脂粒子としては、熱可塑性樹脂粒子、熱反応性樹脂粒子、重合性基を有する樹脂粒子、疎水性化合物を内包しているマイクロカプセル、及び、ミクロゲル(架橋樹脂粒子)よりなる群から選ばれることが好ましい。中でも、重合性基を有する樹脂粒子が好ましい。
 特に好ましい実施形態では、樹脂粒子は少なくとも1つのエチレン性不飽和基を含む。このような樹脂粒子の存在により、露光部の耐刷性及び未露光部の機上現像性を高める効果が得られる。
 熱可塑性樹脂粒子としては、1992年1月のResearch Disclosure No.33303、特開平9-123387号公報、同9-131850号公報、同9-171249号公報、同9-171250号公報及び欧州特許第931647号明細書などに記載の熱可塑性樹脂粒子が好ましい。
 熱可塑性樹脂粒子を構成する樹脂の具体例としては、エチレン、スチレン、塩化ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、ビニルカルバゾール、ポリアルキレン構造を有するアクリレート又はメタクリレートなどのモノマーのホモポリマー若しくはコポリマー又はそれらの混合物を挙げることができる。
 熱可塑性樹脂粒子としては、インク着肉性及びUV耐刷性の観点から、芳香族ビニル化合物により形成される構成単位、及び、ニトリル基を有する構成単位を有する樹脂を含むことが好ましい。
 上記芳香族ビニル化合物としては、芳香環にビニル基が結合した構造を有する化合物であればよいが、スチレン化合物、ビニルナフタレン化合物等が挙げられ、スチレン化合物が好ましく、スチレンがより好ましい。
 スチレン化合物としては、スチレン、p-メチルスチレン、p-メトキシスチレン、β-メチルスチレン、p-メチル-β-メチルスチレン、α-メチルスチレン、及びp-メトキシ-β-メチルスチレン等が挙げられ、スチレンが好ましく挙げられる。
 芳香族ビニル化合物により形成される構成単位の含有量は、インク着肉性の観点から、後述するニトリル基を有する構成単位の含有量よりも多いことが好ましく、樹脂の全質量に対し、15質量%~85質量%であることがより好ましく、30質量%~70質量%であることが更に好ましい。
 ニトリル基を有する構成単位は、ニトリル基を有するモノマーを用いて導入されることが好ましい。
 ニトリル基を有するモノマーとしては、アクリロニトリル化合物が挙げられ、(メタ)アクリロニトリルが好適に挙げられる。
 ニトリル基を有する構成単位としては、(メタ)アクリロニトリルにより形成される構成単位が好ましい。
 ニトリル基を有する構成単位の含有量は、インク着肉性の観点から、上記芳香族ビニル化合物により形成される構成単位の含有量よりも少ないことが好ましく、樹脂の全質量に対し、55質量%~90質量%であることがより好ましく、60質量%~85質量%であることがより好ましい。
 また、熱可塑性樹脂粒子に含まれる樹脂が芳香族ビニル化合物により形成される構成単位及びニトリル基を有する構成単位を含む場合、芳香族ビニル化合物により形成される構成単位及びニトリル基を有する構成単位の含有量比(芳香族ビニル化合物により形成される構成単位:ニトリル基を有する構成単位)としては、質量基準で5:5~9:1であることが好ましく、より好ましくは、6:4~8:2である。
 熱可塑性樹脂粒子に含まれる樹脂は、UV耐刷性及び耐薬品性の観点から、N-ビニル複素環化合物により形成される構成単位を更に有することが好ましい。
 N-ビニル複素環化合物としては、例えば、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカルバゾール、N-ビニルピロール、N-ビニルフェノチアジン、N-ビニルコハク酸イミド、N-ビニルフタルイミド、N-ビニルカプロラクタム、及びN-ビニルイミダゾールが挙げられ、N-ビニルピロリドンが好ましい。
 N-ビニル複素環化合物により形成される構成単位の含有量は、熱可塑性樹脂の全質量に対し、5質量%~50質量%であることが好ましく、10質量%~40質量%であることがより好ましい。
 熱可塑性樹脂粒子に含まれる樹脂は、酸性基を有する構成単位を含有してもよいが、機上現像性及びインク着肉性の観点からは、酸性基を有する構成単位を含有しないことが好ましい。
 具体的には、熱可塑性樹脂における酸性基を有する構成単位の含有量は、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることが更に好ましい。上記含有量の下限は特に限定されず、0質量%であってもよい。
 また、熱可塑性樹脂の酸価は、160mgKOH/g以下であることが好ましく、80mgKOH/g以下であることがより好ましく、40mgKOH/g以下であることが更に好ましい。上記酸価の下限は特に限定されず、0mgKOH/gであってもよい。
 本開示において、酸価はJIS K0070:1992に準拠した測定法により求められる。
 熱可塑性樹脂粒子に含まれる樹脂は、インク着肉性の観点から、疎水性基を含む構成単位を含有してもよい。
 上記疎水性基としては、アルキル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられる。
 疎水性基を含む構成単位としては、アルキル(メタ)アクリレート化合物、アリール(メタ)アクリレート化合物、又は、アラルキル(メタ)アクリレート化合物により形成される構成単位が好ましく、アルキル(メタ)アクリレート化合物により形成される構成単位がより好ましい。
 熱可塑性樹脂粒子に含まれる樹脂における、疎水性基を有する構成単位の含有量は、樹脂の全質量に対し、5質量%~50質量%であることが好ましく、10質量%~30質量%であることがより好ましい。
 熱可塑性樹脂粒子に含まれる熱可塑性樹脂は、UV耐刷性及び機上現像性の観点から、親水性基を有することが好ましい。
 親水性基としては、親水性を有する構造であれば、特に制限はないが、カルボキシ基等の酸基、ヒドロキシ基、アミノ基、ニトリル基、ポリアルキレンオキシド構造等が挙げられる。
 上記親水性基としては、UV耐刷性及び機上現像性の観点から、ポリアルキレンオキシド構造を有する基、ポリエステル構造を有する基、又は、スルホン酸基であることが好ましく、ポリアルキレンオキシド構造を有する基、又は、スルホン酸基であることがより好ましく、ポリアルキレンオキシド構造を有する基であることが更に好ましい。
 上記ポリアルキレンオキシド構造としては、機上現像性の観点から、ポリエチレンオキシド構造、ポリプロピレンオキシド構造、又は、ポリ(エチレンオキシド/プロピレンオキシド)構造であることが好ましい。
 また、機上現像性の観点からは、上記親水性基の中でもポリアルキレンオキシド構造として、ポリプロピレンオキシド構造を有することが好ましく、ポリエチレンオキシド構造及びポリプロピレンオキシド構造を有することがより好ましい。
 上記ポリアルキレンオキシド構造におけるアルキレンオキシド構造の数は、機上現像性の観点から、2以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましく、5~200であることが更に好ましく、8~150であることが特に好ましい。
 また、機上現像性の観点から、上記親水性基として、後述する式Zで表される基が好ましい。
 熱可塑性樹脂が有する親水性基の中でも、下記式POにより表される基が好ましい。
 式PO中、Lはそれぞれ独立に、アルキレン基を表し、Rは水素原子又はアルキル基を表し、nは1~100の整数を表す。
 式PO中、Lはそれぞれ独立に、エチレン基、1-メチルエチレン基又は2-メチルエチレン基であることが好ましく、エチレン基であることがより好ましい。
 式PO中、Rは水素原子又は炭素数1~18のアルキル基であることが好ましく、水素原子又は炭素数1~10のアルキル基であることがより好ましく、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基であることが更に好ましく、水素原子又はメチル基であることが特に好ましい。
 式PO中、nは1~10の整数が好ましく、1~4の整数がより好ましい。
 親水性基を有する構成単位の含有量は、樹脂の全質量に対し、5質量%~60質量%であることが好ましく、10質量%~30質量%であることがより好ましい。
 熱可塑性樹脂粒子に含まれる樹脂は、その他の構成単位を更に含有してもよい。その他の構成単位としては、上述の各構成単位以外の構成単位を特に限定なく含有することができ、例えば、アクリルアミド化合物、ビニルエーテル化合物等により形成される構成単位が挙げられる。
 熱可塑性樹脂粒子に含まれる樹脂における、その他の構成単位の含有量は、樹脂の全質量に対し、5質量%~50質量%であることが好ましく、10質量%~30質量%であることがより好ましい。
 熱反応性樹脂粒子としては、熱反応性基を有する樹脂粒子が挙げられる。熱反応性樹脂粒子は熱反応による架橋及びその際の官能基変化により疎水化領域を形成する。
 熱反応性基を有する樹脂粒子における熱反応性基としては、化学結合が形成されるならば、どのような反応を行う官能基でもよいが、重合性基であることが好ましく、その例として、ラジカル重合反応を行うエチレン性不飽和基(例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基など)、カチオン重合性基(例えば、ビニル基、ビニルオキシ基、エポキシ基、オキセタニル基など)、付加反応を行うイソシアナト基又はそのブロック体、エポキシ基、ビニルオキシ基及びこれらの反応相手である活性水素原子を有する官能基(例えば、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基など)、縮合反応を行うカルボキシ基及び反応相手であるヒドロキシ基又はアミノ基、開環付加反応を行う酸無水物及び反応相手であるアミノ基又はヒドロキシ基などが好ましく挙げられる。
 上記熱反応性基を有する樹脂としては、付加重合型樹脂、重付加型樹脂、又は重縮合型樹脂であってもよいし、熱可塑性樹脂であってもよい。
 マイクロカプセルとしては、例えば、特開2001-277740号公報、特開2001-277742号公報に記載のごとく、画像記録層の構成成分の少なくとも一部(好ましくは疎水性化合物)を内包したものが好ましい。樹脂粒子としてマイクロカプセルを含有する画像記録層は、画像記録層の構成成分のうち疎水性成分(即ち、疎水性化合物)をマイクロカプセルに内包し、親水性成分(即ち、親水性化合物)をマイクロカプセル外に含有する構成が好ましい態様である。
 ミクロゲル(架橋樹脂粒子)は、その表面又は内部の少なくとも一方に、画像記録層の構成成分の一部を含有することができる。特に、重合性基をその表面に有する反応性ミクロゲルは、平版印刷版原版の感度、及び、得られる平版印刷版の耐刷性の観点から好ましい。
 画像記録層の構成成分を含むマイクロカプセルを得るためには、公知の合成法が適用できる。
 ミクロゲル(架橋樹脂粒子)は、その表面又は内部の少なくとも一方に、画像記録層の構成成分の一部を含有することができる。特に、重合性基をその表面に有する反応性ミクロゲルは、平版印刷版原版の感度、及び、得られる平版印刷版の耐刷性の観点から好ましい。
 画像記録層の構成成分を含むミクロゲルを得るためには、公知の合成法が適用できる。
 樹脂粒子としては、得られる平版印刷版の耐刷性、耐汚れ性及び保存安定性の観点から、分子中に2個以上のヒドロキシ基を有する多価フェノール化合物とイソホロンジイソシアネートとの付加物である多価イソシアネート化合物、及び、活性水素を有する化合物の反応により得られる重付加型樹脂粒子が好ましい。
 上記多価フェノール化合物としては、フェノール性ヒドロキシ基を有するベンゼン環を複数有している化合物が好ましい。
 上記活性水素を有する化合物としては、ポリオール化合物、又は、ポリアミン化合物が好ましく、ポリオール化合物がより好ましく、プロピレングリコール、グリセリン及びトリメチロールプロパンよりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物が更に好ましい。また上記活性水素化合物としては、水を用いることができる。水を用いた場合、イソシアナト基と水との反応によって生じたアミンがウレア結合を形成し、粒子を形成することができる。
 分子中に2個以上のヒドロキシ基を有する多価フェノール化合物とイソホロンジイソシアネートとの付加物である多価イソシアネート化合物、及び、活性水素を有する化合物の反応により得られる樹脂の粒子としては、国際公開第2018043259号の段落0230~0234に記載の樹脂粒子が好ましく挙げられる。
 更に、樹脂粒子としては、得られる平版印刷版の耐刷性及び耐溶剤性の観点から、疎水性主鎖を有し、i)上記疎水性主鎖に直接的に結合されたニトリル基を有する構成ユニット、及び、ii)親水性ポリアルキレンオキシドセグメントを含むペンダント基を有する構成ユニットの両方を含む付加重合型樹脂粒子が好ましい。具体的には、特開2019-64269号公報の段落0156に記載の粒子が好ましい。
<<式Zで表される基>>
 本開示における樹脂粒子は、親水性基として、下記式Zで表される基を有することが好ましい。
 *-Q-W-Y 式Z
 式Z中、Qは二価の連結基を表し、Wは親水性構造を有する二価の基又は疎水性構造を有する二価の基を表し、Yは親水性構造を有する一価の基又は疎水性構造を有する一価の基を表し、W及びYのいずれかは親水性構造を有し、*は他の構造との結合部位を表す。
 また、式Z中に含まれる親水性構造のいずれかが、ポリアルキレンオキシド構造を含むことが好ましい。
 上記式ZにおけるQは、炭素数1~20の二価の連結基であることが好ましく、炭素数1~10の二価の連結基であることがより好ましい。
 また、上記式ZにおけるQは、アルキレン基、アリーレン基、エステル結合、アミド結合、又は、これらを2以上組み合わせた基であることが好ましく、フェニレン基、エステル結合、又は、アミド結合であることがより好ましい。
 上記式ZのWにおける親水性構造を有する二価の基は、ポリアルキレンオキシド構造を含む基であることが好ましく、ポリアルキレンオキシ基、又は、ポリアルキレンオキシ基の一方の末端に-CHCHNR-が結合した基であることが好ましい。なお、Rは、水素原子又はアルキル基を表す。
 上記式ZのWにおける疎水性構造を有する二価の基は、-RWA-、-O-RWA-O-、-RN-RWA-NR-、-OC(=O)-RWA-O-、又は、-OC(=O)-RWA-O-であることが好ましい。なお、RWAはそれぞれ独立に、炭素数6~120の直鎖、分岐若しくは環状アルキレン基、炭素数6~120のハロアルキレン基、炭素数6~120のアリーレン基、炭素数6~120のアルカーリレン基(アルキルアリール基から水素原子を1つ除いた二価の基)、又は、炭素数6~120のアラルキレン基を表す。
 上記式ZのYにおける親水性構造を有する一価の基は、-OH、-C(=O)OH、末端が水素原子又はアルキル基であるポリアルキレンオキシ基、又は、末端が水素原子又はアルキル基であるポリアルキレンオキシ基の他方の末端に-CHCHN(R)-が結合した基であることが好ましい。中でも、親水性構造を有する一価の基としては、ポリアルキレンオキシド構造を含む基であることが好ましく、末端が水素原子又はアルキル基であるポリアルキレンオキシ基、又は、末端が水素原子又はアルキル基であるポリアルキレンオキシ基の他方の末端に-CHCHN(R)-が結合した基が好ましい。
 上記式ZのYにおける疎水性構造を有する一価の基は、炭素数6~120の直鎖、分岐若しくは環状アルキル基、炭素数6~120のハロアルキル基、炭素数6~120のアリール基、炭素数6~120のアルカーリル基(アルキルアリール基)、炭素数6~120のアラルキル基、-ORWB、-C(=O)ORWB、又は、-OC(=O)RWBであることが好ましい。RWBは、炭素数6~20を有するアルキル基を表す。
 上記式Zで表される基を有する樹脂粒子は、耐刷性、着肉性、及び、機上現像性の観点から、Wが親水性構造を有する二価の基であることがより好ましく、Qがフェニレン基、エステル結合、又は、アミド結合であり、Wは、ポリアルキレンオキシ基であり、Yが、末端が水素原子又はアルキル基であるポリアルキレンオキシ基であることがより好ましい。
 なお、式Zで表される基は、樹脂粒子の分散性を高める分散性基として機能してもよい。
 本開示における樹脂粒子は、耐刷性、及び、機上現像性の観点から、重合性基(好ましくはエチレン性不飽和基)を有することが好ましく、特に、表面に重合性基を有する樹脂粒子を含むことがより好ましい。重合性基を有する樹脂粒子を用いることで、耐刷性(好ましくはUV耐刷性)が高められる。
 本開示における樹脂粒子は、耐刷性の観点から、親水性基及び重合性基を有する樹脂粒子であることが好ましい。
 上記重合性基は、カチオン重合性基であっても、ラジカル重合性基であってもよいが、反応性の観点からは、ラジカル重合性基であることが好ましい。
 上記重合性基としては、重合可能な基であれば特に制限はないが、反応性の観点から、エチレン性不飽和基が好ましく、ビニルフェニル基(スチリル基)、(メタ)アクリロキシ基、又は、(メタ)アクリルアミド基がより好ましく、(メタ)アクリロキシ基が特に好ましい。
 また、重合性基を有する樹脂粒子を構成する樹脂は、重合性基を有する構成単位を有することが好ましい。
 なお、高分子反応により樹脂粒子の表面に重合性基を導入してもよい。
 また、樹脂粒子は、耐刷性、着肉性、機上現像性、及び、機上現像時の現像カス抑制性の観点から、ウレア結合を有する重付加型樹脂を含むことが好ましく、下記式(Iso)で表されるイソシアネート化合物と水とを少なくとも反応させて得られる構造を有する重付加型樹脂を含むことがより好ましく、下記式(Iso)で表されるイソシアネート化合物と水とを少なくとも反応させて得られる構造を有し、かつ、ポリオキシアルキレン構造として、ポリエチレンオキシド構造及びポリプロピレンオキシド構造を有する重付加型樹脂を含むことが特に好ましい。また、上記ウレア結合を有する重付加型樹脂を含む粒子は、ミクロゲルであることが好ましい。
 式(Iso)中、nは0~10の整数を表す。
 上記式(Iso)で表されるイソシアネート化合物と水との反応の一例としては、下記に示す反応が挙げられる。なお、下記の例は、n=0、4,4-異性体を使用した例である。
 下記に示すように、上記式(Iso)で表されるイソシアネート化合物と水とを反応させると、水によりイソシアネート基の一部が加水分解し、アミノ基が生じ、生じたアミノ基とイソシアネート基とが反応し、ウレア結合が生成し、二量体が形成される。また、下記反応が繰り返され、ウレア結合を有する重付加型樹脂が形成される。
 また、下記反応において、アルコール化合物、アミン化合物等のイソシアネート基と反応性を有する化合物(活性水素を有する化合物)を添加することにより、アルコール化合物、アミン化合物等の構造を、ウレア結合を有する重付加型樹脂に導入することもできる。
 上記活性水素を有する化合物としては、既述の活性水素を有する化合物が好ましく挙げられる。
 また、上記ウレア結合を有する重付加型樹脂は、エチレン性不飽和基を有することが好ましく、下記式(PETA)で表される基を有することがより好ましい。
 式(PETA)中、波線部分は、他の構造との結合位置を表す。
<<樹脂粒子の合成>>
 樹脂粒子の合成法としては、特に制限はなく、既述した各種の樹脂にて粒子を合成しうる方法であればよい。樹脂粒子の合成法としては、例えば、乳化重合法、懸濁重合法、分散重合法、ソープフリー重合法、マイクロエマルション重合法等の、公知の樹脂粒子の合成法が挙げられる。
 その他、樹脂粒子の合成には、公知のマイクロカプセルの合成法、ミクロゲル(架橋樹脂粒子)の合成法等を用いてもよい。
<<粒子の平均粒径>>
 粒子の平均粒径は、0.01μm~3.0μmが好ましく、0.03μm~2.0μmがより好ましく、0.10μm~1.0μmが更に好ましい。この範囲で良好な解像度と経時安定性が得られる。
 粒子の平均粒径は、光散乱法により測定するか、又は、粒子の電子顕微鏡写真を撮影し、写真上で粒子の粒径を総計で5,000個測定し、平均値を算出するものとする。なお、非球形粒子については写真上の粒子の円相当径とする。
 なお、本開示における粒子の平均粒径は、特に断りのない限り、体積平均粒径であるものとする。
 粒子(好ましくは樹脂粒子)は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
 粒子(好ましくは樹脂粒子)の含有量は、現像性、及び、耐刷性の観点から、画像記録層の全質量に対し、5質量%~90質量%が好ましく、10質量%~90質量%であることがより好ましく、20質量%~90質量%であることが更に好ましく、50質量%~90質量%であることが特に好ましい。
〔その他の成分〕
 機上現像型平版印刷版原版における画像記録層は、既述の成分以外のその他の成分を含んでいてもよい。
 その他の成分としては、バインダーポリマー、発色剤、連鎖移動剤、低分子親水性化合物、感脂化剤、その他の添加剤等が挙げられる。
 その他の成分としては、特開2009-255434号公報の段落0181~0190に開示される着色剤、焼き出し剤、重合禁止剤、高級脂肪酸誘導体、可塑剤、無機粒子、及び、低分子親水性化合物等が挙げられる。
 また、他の化合物としては、特開2012-187907号公報の段落0191~0217に開示される、疎水化前駆体(熱が加えられたときに画像記録層を疎水性に変換できる微粒子)、低分子親水性化合物、感脂化剤(例えば、ホスホニウム化合物、含窒素低分子化合物、アンモニウム基含有ポリマー)、及び、連鎖移動剤も挙げられる。
-バインダーポリマー-
 画像記録層は、必要に応じて、バインダーポリマーを含んでいてもよい。
 ここで、バインダーポリマーは、樹脂粒子以外のポリマー、すなわち、粒子形状でないポリマーを指す。
 また、バインダーポリマーは、感脂化剤におけるアンモニウム塩含有ポリマー及び界面活性剤として用いるポリマーを除く。
 バインダーポリマーは平版印刷版原版の画像記録層に用いられる公知のバインダーポリマー(例えば、(メタ)アクリル樹脂、ポリビニルアセタール、ポリウレタン樹脂等)を好適に使用することができる。
 一例として、機上現像型平版印刷版原版に用いられるバインダーポリマー(以下、機上現像用バインダーポリマーともいう)について、詳細に記載する。
 機上現像用バインダーポリマーとしては、アルキレンオキシド鎖を有するバインダーポリマーが好ましい。アルキレンオキシド鎖を有するバインダーポリマーは、ポリ(アルキレンオキシド)部位を主鎖に有していても側鎖に有していてもよい。また、ポリ(アルキレンオキシド)を側鎖に有するグラフトポリマーでも、ポリ(アルキレンオキシド)含有繰返し単位で構成されるブロックと(アルキレンオキシド)非含有繰返し単位で構成されるブロックとのブロックコポリマーでもよい。
 ポリ(アルキレンオキシド)部位を主鎖に有する場合は、ポリウレタン樹脂が好ましい。
 ポリ(アルキレンオキシド)部位を側鎖に有する場合の主鎖のポリマーとしては、(メタ)アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、ノボラック型フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、合成ゴム、天然ゴムが挙げられ、特に(メタ)アクリル樹脂が好ましい。
 また、バインダーポリマーの他の好ましい例として、6官能以上10官能以下の多官能チオールを核として、この核に対しスルフィド結合により結合したポリマー鎖を有し、上記ポリマー鎖が重合性基を有する高分子化合物(以下、星型高分子化合物ともいう。)が挙げられる。
 星型高分子化合物としては、例えば、特開2012-148555号公報に記載の化合物を好ましく用いることができる。
 星型高分子化合物は、特開2008-195018号公報に記載のような画像部の皮膜強度を向上するためのエチレン性不飽和結合等の重合性基を、主鎖又は側鎖、好ましくは側鎖に有しているものが挙げられる。星型高分子化合物が有する重合性基によって星型高分子化合物の分子間に架橋が形成され、硬化が促進する。
 重合性基としては、(メタ)アクリル基、ビニル基、アリル基、ビニルフェニル基(スチリル基)などのエチレン性不飽和基、エポキシ基等が好ましく、(メタ)アクリル基、ビニル基、ビニルフェニル基(スチリル基)が重合反応性の観点でより好ましく、(メタ)アクリル基が特に好ましい。これらの基は、高分子反応、又は、共重合によってポリマーに導入することができる。具体的には、例えば、カルボキシ基を側鎖に有するポリマーとグリシジルメタクリレートとの反応、あるいはエポキシ基を有するポリマーとメタクリル酸などのエチレン性不飽和基含有カルボン酸との反応を利用できる。
 バインダーポリマーの分子量は、GPC法によるポリスチレン換算値として重量平均分子量(Mw)が、2,000以上であることが好ましく、5,000以上であることがより好ましく、10,000~300,000であることが更に好ましい。
 バインダーポリマーとしては、必要に応じて、特開2008-195018号公報に記載のポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタールなどの親水性ポリマーを併用することができる。また、親油的なポリマーと親水的なポリマーとを併用することもできる。
 中でも、画像記録層は、機上現像性の観点から、ポリビニルアセタールを含むことが好ましい。ポリビニルアセタールとしては、例えば、ポリビニルブチラール等が好適に挙げられる。
 バインダーポリマーは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
 バインダーポリマーは、画像記録層中に任意な量で含有させることができるが、バインダーポリマーの含有量は、画像記録層の全質量に対して、1質量%~90質量%であることが好ましく、5質量%~80質量%であることがより好ましい。
〔画像記録層の形成〕
 本開示に係る平版印刷版原版における画像記録層は、例えば、特開2008-195018号公報の段落0142~段落0143に記載のように、必要な上記各成分を公知の溶剤に分散又は溶解して塗布液を調製し、塗布液を支持体上にバーコーター塗布など公知の方法で塗布し、乾燥することにより形成することができる。塗布、乾燥後における画像記録層の塗布量(固形分)は、用途によって異なるが、0.3g/m~3.0g/mが好ましい。この範囲で、良好な感度と画像記録層の良好な皮膜特性が得られる。
 溶剤としては、公知の溶剤を用いることができる。具体的には、例えば、水、アセトン、メチルエチルケトン(2-ブタノン)、シクロヘキサン、酢酸エチル、エチレンジクロライド、テトラヒドロフラン、トルエン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、アセチルアセトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、エチレングリコールモノメーチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、1-メトキシ-2-プロパノール、3-メトキシ-1-プロパノール、メトキシメトキシエタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3-メトキシプロピルアセテート、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、乳酸メチル、乳酸エチル等が挙げられる。溶剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。塗布液中の固形分濃度は1質量%~50質量%であることが好ましい。
 塗布、乾燥後における画像記録層の塗布量(固形分)は、用途によって異なるが、良好な感度と画像記録層の良好な皮膜特性を得る観点から、0.3g/m~3.0g/mが好ましい。
 また、本開示に係る平版印刷版原版における画像記録層の膜厚は、0.1μm~3.0μmであることが好ましく、0.3μm~2.0μmであることがより好ましい。
 本開示において、平版印刷版原版における各層の膜厚は、平版印刷版原版の表面に対して垂直な方向に切断した切片を作製し、上記切片の断面を走査型顕微鏡(SEM)により観察することにより確認される。
<最外層>
 本開示に係る平版印刷版原版は、画像記録層上に、最外層を有することが好ましい。
 また、最外層は、平版印刷版原版における支持体における画像記録層側の最外層である。
 最外層は、酸素遮断により画像形成阻害反応を抑制する機能の他、画像記録層における傷の発生防止、高照度レーザー露光時のアブレーション防止等の機能を有していてもよい。
 最外層は、保護層とも呼ばれる。
-水溶性ポリマー-
 最外層は、現像除去性(より好ましくは、機上現像性)の観点から、水溶性ポリマーを含むことが好ましい。
 本開示において、水溶性ポリマーとは、70℃、100gの純水に対して1g以上溶解し、かつ、70℃、100gの純水に対して1gのポリマーが溶解した溶液を25℃に冷却しても析出しないポリマーをいう。
 最外層に用いられる水溶性ポリマーとしては、例えば、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、水溶性セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、ポリ(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。
 変性ポリビニルアルコールとしてはカルボキシ基又はスルホ基を有する酸変性ポリビニルアルコールが好ましく用いられる。具体的には、特開2005-250216号公報及び特開2006-259137号公報に記載の変性ポリビニルアルコールが挙げられる。
 上記水溶性ポリマーとしては、ポリビニルアルコールが好ましいものとして挙げられる。中でも、水溶性ポリマーとしては、けん化度が50%以上であるポリビニルアルコールを用いることが更に好ましい。
 上記けん化度は、60%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、85%以上が更に好ましい。けん化度の上限は特に限定されず、100%以下であればよい。
 上記けん化度は、JIS K 6726:1994に記載の方法に従い測定される。
 上記水溶性ポリマーとしては、ポリビニルピロリドンも好ましいものとして挙げられる。
 親水性ポリマーとしては、ポリビニルアルコールとポリビニルピロリドンとを組み合わせて使用することも好ましい。
 水溶性ポリマーは、1種単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
 最外層が水溶性ポリマーを含む場合、水溶性ポリマーの含有量は、最外層の全質量に対して、1質量%~99質量%であることが好ましく、3質量%~97質量%であることがより好ましく、5質量%~95質量%であることが更に好ましい。
 最外層は、酸素遮断性を高めるために無機層状化合物を含有してもよい。
 無機層状化合物は、薄い平板状の形状を有する粒子であり、例えば、天然雲母、合成雲母等の雲母群、式:3MgO・4SiO・HOで表されるタルク、テニオライト、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、リン酸ジルコニウム等が挙げられる。
 好ましく用いられる無機層状化合物は雲母化合物である。雲母化合物としては、例えば、式:A(B,C)2-510(OH,F,O)〔ただし、Aは、K、Na、Caのいずれか、B及びCは、Fe(II)、Fe(III)、Mn、Al、Mg、Vのいずれかであり、Dは、Si又はAlである。〕で表される天然雲母、合成雲母等の雲母群が挙げられる。
 雲母群においては、天然雲母としては白雲母、ソーダ雲母、金雲母、黒雲母及び鱗雲母が挙げられる。合成雲母としてはフッ素金雲母KMg(AlSi10)F、カリ四ケイ素雲母KMg2.5Si10)F等の非膨潤性雲母、及び、NaテトラシリリックマイカNaMg2.5(Si10)F、Na又はLiテニオライト(Na,Li)MgLi(Si10)F、モンモリロナイト系のNa又はLiヘクトライト(Na,Li)1/8Mg2/5Li1/8(Si10)F等の膨潤性雲母等が挙げられる。更に合成スメクタイトも有用である。
 上記の雲母化合物の中でも、フッ素系の膨潤性雲母が特に有用である。すなわち、膨潤性合成雲母は、10Å~15Å(1Å=0.1nm)程度の厚さの単位結晶格子層からなる積層構造を有し、格子内金属原子置換が他の粘土鉱物より著しく大きい。その結果、格子層は正電荷不足を生じ、正電荷不足を補償するために層間にLi、Na、Ca2+、Mg2+等の陽イオンを吸着している。これらの層間に介在している陽イオンは交換性陽イオンと呼ばれ、いろいろな陽イオンと交換し得る。特に、層間の陽イオンがLi、Naの場合、イオン半径が小さいため層状結晶格子間の結合が弱く、水により大きく膨潤する。膨潤した状態でシェアーをかけると容易に劈開し、水中で安定したゾルを形成する。膨潤性合成雲母はこの傾向が強く、特に好ましく用いられる。
 雲母化合物の形状としては、拡散制御の観点からは、厚さは薄ければ薄いほどよく、平面サイズは塗布面の平滑性や活性光線の透過性を阻害しない限りにおいて大きい程よい。従って、アスペクト比は、好ましくは20以上であり、より好ましくは100以上、特に好ましくは200以上である。アスペクト比は粒子の厚さに対する長径の比であり、例えば、粒子の顕微鏡写真による投影図から測定することができる。
 雲母化合物のアスペクト比が大きい程、得られる酸素遮断効果が大きい。
 雲母化合物の粒子径は、その平均長径が、好ましくは0.3μm~20μm、より好ましくは0.5μm~10μm、特に好ましくは1μm~5μmである。粒子の平均の厚さは、好ましくは0.1μm以下、より好ましくは0.05μm以下、特に好ましくは0.01μm以下である。具体的には、例えば、代表的化合物である膨潤性合成雲母の場合、好ましい態様としては、厚さが1nm~50nm程度、面サイズ(長径)が1μm~20μm程度である。
 無機層状化合物の含有量は、オーバーコート層の全固形分に対して、1質量%~60質量%が好ましく、3質量%~50質量%がより好ましい。複数種の無機層状化合物を併用する場合でも、無機層状化合物の合計量が上記の含有量であることが好ましい。
 上記範囲で酸素遮断性が向上し、良好な感度が得られる。また、着肉性の低下を防止できる。
-その他の成分-
 上記最外層は、疎水性ポリマー、変色性化合物、酸発生剤、添加剤等の他の成分を含んでいてもよい。
 以下、その他の成分について説明する。
・疎水性ポリマー
 上記最外層は、疎水性ポリマーを含むことが好ましい。
 疎水性ポリマーとは、70℃、100gの純水に対する1g未満で溶解するか、又は、溶解しないポリマーをいう。
 疎水性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステル(例えば、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル等)、これらのポリマーの原料モノマーを組み合わせた共重合体等が挙げられる。
 また、疎水性ポリマーとしては、ポリビニリデンクロライド樹脂を含むことが好ましい。
 更に、疎水性ポリマーとしては、スチレン-アクリル共重合体を含むことが好ましい。
 更にまた、疎水性ポリマーは、機上現像性の観点から、疎水性ポリマー粒子であることが好ましい。
 疎水性ポリマーは、1種単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
 最外層が疎水性ポリマーを含む場合、疎水性ポリマーの含有量は、最外層の全質量に対して、1質量%~80質量%であることが好ましく、5質量%~50質量%であることがより好ましい。
・変色性化合物
 最外層は、変色性化合物を含んでいてもよい。
 本開示において「変色性化合物」とは、赤外線露光に起因して、可視光領域(波長:400nm以上750nm未満)の吸収が変化する化合物をいう。つまり、本開示において「変色」とは、赤外線露光に起因して、可視光領域(波長:400nm以上750nm未満)の吸収が変化することをいう。
 具体的には、本開示における変色性化合物は、(1)赤外線露光に起因して赤外線露光前より可視光領域の吸収が増加する化合物、(2)赤外線露光に起因して可視光領域の吸収を有するようになる化合物、(3)赤外線露光に起因して可視光領域に吸収を有しないようになる化合物が挙げられる。
 なお、本開示における赤外線は、750nm~1mmの波長の光線であり、750nm~1,400nmの波長の光線であることが好ましい。
 変色性化合物としては、赤外線露光に起因して発色する化合物を含むことが好ましい。
 また、変色性化合物としては、赤外線露光に起因して分解する分解性化合物を含むことが好ましく、中でも、赤外線露光に起因する、熱、電子移動、又はその両方により分解する分解性化合物を含むことが好ましい。
 より具体的に言えば、本開示における変色性化合物は、赤外線露光に起因して分解し(より好ましくは、赤外線露光に起因する、熱、電子移動、又はその両方により分解し)、赤外線露光前に比べて、可視光領域における吸収が増加するか、又は、吸収が短波長化し可視光領域に吸収を有するようになる化合物であることが好ましい。
 ここで、「電子移動により分解する」とは、赤外線露光によって変色性化合物のHOMO(最高被占軌道)からLUMO(最低空軌道)に励起した電子が、分子内の電子受容基(LUMOと電位が近い基)に分子内電子移動し、それに伴って分解が生じることを意味する。
 以下、変色性化合物の一例である分解性化合物について説明する。
 分解性化合物は、赤外線波長域(750nm~1mmの波長域、好ましくは750nm~1,400nmの波長域)の少なくとも1部の光を吸収し、分解するものであればよいが、750nm~1,400nmの波長域に極大吸収を有する化合物であることが好ましい。
 より具体的には、分解性化合物は、赤外線露光に起因して分解し、500nm~600nmの波長域に極大吸収波長を有する化合物を生成する化合物であることが好ましい。
 分解性化合物は、露光部の視認性を高める観点から、赤外線露光により分解する基を有する、シアニン色素であることが好ましい。
 分解性化合物であるシアニン色素としては、国際公開第2019/219560号に記載の赤外線吸収性化合物を好適に用いることができる。
 また、上記変色性化合物は、酸発色剤を含んでいてもよい。
 酸発色剤としては、画像記録層において酸発色剤として記載したものを用いることができ、好ましい態様も同様である。
 変色性化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種類以上の成分を組み合わせて使用してもよい。
 変色性化合物としては、既述の分解性化合物と後述の酸発生剤とを組み合わせて使用してもよい。
 最外層中の変色性化合物の含有量は、視認性の観点から、最外層の全質量に対し、0.10質量%~50質量%が好ましく、0.50質量%~30質量%がより好ましく、1.0 質量%~20質量%が更に好ましい。
 上記最外層の上記変色性化合物の含有量Mと上記画像記録層の上記赤外線吸収剤の含有量Mとの比M/Mが、視認性の観点から、0.1以上であることが好ましく、0.2以上がより好ましく、0.3以上3.0以下が特に好ましい。
・酸発生剤
 上記最外層は、変色性化合物として酸発色剤を用いる場合に、酸発生剤を含むことが好ましい。
 本開示における「酸発生剤」とは、光又は熱により酸を発生する化合物であり、具体的には、赤外線露光によって分解し酸を発生する化合物をいう。
 発生する酸としては、スルホン酸、塩酸等のpKaが2以下の強酸であることが好ましい。酸発生剤から発生した酸によって、既述の酸発色剤が変色することができる。
 酸発生剤として具体的には、感度と安定性の観点から、オニウム塩化合物が好ましい。
 酸発生剤として好適なオニウム塩の具体例は、国際公開第2016/047392号の段落0121~段落0124に記載された化合物が挙げられる。
 中でも、トリアリールスルホニウム、又は、ジアリールヨードニウムの、スルホン酸塩、カルボン酸塩、BPh 、BF 、PF 、ClO などが好ましい。ここで、Phはフェニル基を表す。
 酸発生剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
 最外層が酸発生剤を含む場合、酸発生剤の含有量は、最外層の全質量に対して、0.5質量%~30質量%であることが好ましく、1質量%~20質量%であることがより好ましい。
・添加剤
 上記最外層は、既述の成分以外にも、感脂化剤(例えば、画像記録層において記載した感脂化剤)、可塑剤、界面活性剤等の公知の添加物を含有してもよい。
 最外層は、公知の方法で塗布され、乾燥することで形成される。
 最外層の塗布量(固形分)は、0.01g/m~10g/mが好ましく、0.02g/m~3g/mがより好ましく、0.1g/m~2.0g/mが特に好ましい。
 最外層の膜厚は、0.1μm~5.0μmであることが好ましく、0.3μm~4.0μmであることがより好ましい。
 最外層の膜厚は、後述する画像記録層の膜厚に対し、0.1倍~5.0倍であることが好ましく、0.2倍~3.0倍であることがより好ましい。
<支持体>
 本開示に係る平版印刷版原版は、支持体を有する。
 支持体としては、公知の平版印刷版原版用支持体から適宜選択して用いることができる。
 支持体としては、親水性表面を有する支持体(以下、「親水性支持体」ともいう。)が好ましい。
 本開示における支持体としては、公知の方法で粗面化処理され、陽極酸化処理されたアルミニウム板が好ましい。即ち、本開示における支持体は、アルミニウム板とアルミニウム板上に配置されたアルミニウムの陽極酸化皮膜とを有することが好ましい。
 また、上記支持体は、アルミニウム板と、上記アルミニウム板上に配置されたアルミニウムの陽極酸化皮膜とを有し、上記陽極酸化皮膜が、上記アルミニウム板よりも上記画像記録層側に位置し、上記陽極酸化皮膜が、上記画像記録層側の表面から深さ方向にのびるマイクロポアを有し、上記マイクロポアの上記陽極酸化皮膜表面における平均径が、10nmを超え100nm以下であることが好ましい。
 更に、上記マイクロポアが、上記陽極酸化皮膜表面から深さ10nm~1,000nmの位置までのびる大径孔部と、上記大径孔部の底部と連通し、連通位置から深さ20nm~2,000nmの位置までのびる小径孔部とから構成され、上記大径孔部の上記陽極酸化皮膜表面における平均径が、15nm~100nmであり、上記小径孔部の上記連通位置における平均径が、13nm以下であることが好ましい。
 図1は、アルミニウム支持体12aの一実施形態の模式的断面図である。
 アルミニウム支持体12aは、アルミニウム板18とアルミニウムの陽極酸化皮膜20a(以後、単に「陽極酸化皮膜20a」とも称する)とをこの順で積層した積層構造を有する。なお、アルミニウム支持体12a中の陽極酸化皮膜20aが、アルミニウム板18よりも画像記録層側に位置する。つまり、本開示に係る平版印刷版原版は、アルミニウム板上に、陽極酸化皮膜、画像記録層、及び水溶性樹脂層をこの順で少なくとも有することが好ましい。
-陽極酸化皮膜-
 以下、陽極酸化皮膜20aの好ましい態様について説明する。
 陽極酸化皮膜20aは、陽極酸化処理によってアルミニウム板18の表面に作製される皮膜であって、この皮膜は、皮膜表面に略垂直であり、かつ、個々が均一に分布した極微細なマイクロポア22aを有する。マイクロポア22aは、画像記録層側の陽極酸化皮膜20a表面(アルミニウム板18側とは反対側の陽極酸化皮膜20a表面)から厚み方向(アルミニウム板18側)に沿ってのびる。
 陽極酸化皮膜20a中のマイクロポア22aの陽極酸化皮膜表面における平均径(平均開口径)は、10nmを超え100nm以下であることが好ましい。中でも、耐刷性、耐汚れ性、及び、画像視認性のバランスの点から、15nm~60nmがより好ましく、20nm~50nmが更に好ましく、25nm~40nmが特に好ましい。ポア内部の径は、表層よりも広がっても狭まってもよい。
 平均径が10nmを超える場合、耐刷性及び画像視認性に優れる。また、平均径が100nm以下である場合、耐刷性に優れる。
 マイクロポア22aの平均径は、陽極酸化皮膜20a表面を倍率15万倍の電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM)でN=4枚観察し、得られた4枚の画像において、400nm×600nmの範囲に存在するマイクロポアの径(直径)を50箇所測定し、平均した値である。
 なお、マイクロポア22aの形状が円状でない場合は、円相当径を用いる。「円相当径」とは、開口部の形状を、開口部の投影面積と同じ投影面積をもつ円と想定したときの円の直径である。
 マイクロポア22aの形状は特に制限されず、図1では、略直管状(略円柱状)であるが、深さ方向(厚み方向)に向かって径が小さくなる円錐状であってもよい。また、マイクロポア22aの底部の形状は特に制限されず、曲面状(凸状)であっても、平面状であってもよい。
 支持体において、上記マイクロポアが、上記陽極酸化皮膜表面からある深さの位置までのびる大径孔部と、上記大径孔部の底部と連通し、連通位置からある深さの位置までのびる小径孔部とから構成されていてもよい。
 例えば、図2に示すように、アルミニウム支持体12bが、アルミニウム板18と、大径孔部24と小径孔部26とから構成されるマイクロポア22bを有する陽極酸化皮膜20bとを含む形態であってもよい。
 例えば、陽極酸化皮膜20b中のマイクロポア22bは、陽極酸化皮膜表面から深さ10nm~1000nm(深さD:図2参照)の位置までのびる大径孔部24と、大径孔部24の底部と連通し、連通位置から更に深さ20nm~2,000nmの位置までのびる小径孔部26とから構成される。具体的には、例えば、特開2019-162855号公報の段落0107~0114に記載の態様を使用することができる。
-支持体の製造方法-
 本開示に用いられる支持体の製造方法としては、例えば、以下の工程を順番に実施する製造方法が好ましい。
・粗面化処理工程:アルミニウム板に粗面化処理を施す工程
・陽極酸化処理工程:粗面化処理されたアルミニウム板を陽極酸化する工程
・ポアワイド処理工程:陽極酸化処理工程で得られた陽極酸化皮膜を有するアルミニウム
板を、酸水溶液又はアルカリ水溶液に接触させ、陽極酸化皮膜中のマイクロポアの径を拡大させる工程
 以下、各工程の手順について詳述する。
<<粗面化処理工程>>
 粗面化処理工程は、アルミニウム板の表面に、電気化学的粗面化処理を含む粗面化処理を施す工程である。本工程は、後述する陽極酸化処理工程の前に実施されることが好ましいが、アルミニウム板の表面がすでに好ましい表面形状を有していれば、特に実施しなくてもよい。特開2019-162855号公報の段落0086~0101に記載された方法で行うことができる。
<<陽極酸化処理工程>>
 陽極酸化処理工程の手順は、上述したマイクロポアが得られれば特に制限されず、公知の方法が挙げられる。
 陽極酸化処理工程においては、硫酸、リン酸、及び、シュウ酸等の水溶液を電解浴として用いることができる。例えば、硫酸の濃度は、100g/L~300g/Lが挙げられる。
 陽極酸化処理の条件は使用される電解液によって適宜設定されるが、例えば、液温5℃~70℃(好ましくは10℃~60℃)、電流密度0.5A/dm~60A/dm(好ましくは1A/dm~60A/dm)、電圧1V~100V(好ましくは5V~50V)、電解時間1秒~100秒(好ましくは5秒~60秒)、及び、皮膜量0.1g/m~5g/m(好ましくは0.2g/m~3g/m)が挙げられる。
<<ポアワイド処理>>
 ポアワイド処理は、上述した陽極酸化処理工程により形成された陽極酸化皮膜に存在するマイクロポアの径(ポア径)を拡大させる処理(孔径拡大処理)である。
 ポアワイド処理は、上述した陽極酸化処理工程により得られたアルミニウム板を、酸水溶液又はアルカリ水溶液に接触させることにより行うことができる。接触させる方法は特に制限されず、例えば、浸せき法及びスプレー法が挙げられる。
 支持体は、必要に応じて、画像記録層とは反対側の面に、特開平5-45885号公報に記載の有機高分子化合物又は特開平6-35174号公報に記載のケイ素のアルコキシ化合物等を含むバックコート層を有していてもよい。
<下塗り層>
 本開示に係る平版印刷版原版は、画像記録層と支持体との間に下塗り層を有することが好ましい。なお、下塗り層は中間層と呼ばれることもある。下塗り層は、露光部においては支持体と画像記録層との密着を強化し、未露光部においては画像記録層の支持体からのはく離を生じやすくさせるため、耐刷性を損なわずに現像性を向上させることに寄与する。また、赤外線レーザー露光の場合に、下塗り層が断熱層として機能することにより、露光により発生した熱が支持体に拡散して感度が低下するのを防ぐ効果も有する。
 下塗り層に用いられる化合物としては、支持体表面に吸着可能な吸着性基及び親水性基を有するポリマーが挙げられる。画像記録層との密着性を向上させるために吸着性基及び親水性基を有し、更に架橋性基を有するポリマーが好ましい。下塗り層に用いられる化合物は、低分子化合物でもポリマーであってもよい。下塗り層に用いられる化合物は、必要に応じて、2種以上を混合して使用してもよい。
 下塗り層に用いられる化合物がポリマーである場合、吸着性基を有するモノマー、親水性基を有するモノマー及び架橋性基を有するモノマーの共重合体が好ましい。
 支持体表面に吸着可能な吸着性基としては、フェノール性ヒドロキシ基、カルボキシ基、-PO、-OPO、-CONHSO-、-SONHSO-、-COCHCOCHが好ましい。親水性基としては、スルホ基又はその塩、カルボキシ基の塩が好ましい。架橋性基としては、アクリル基、メタクリル基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、アリル基などが好ましい。
 ポリマーは、ポリマーの極性置換基と、上記極性置換基と対荷電を有する置換基及びエチレン性不飽和結合を有する化合物との塩形成で導入された架橋性基を有してもよいし、上記以外のモノマー、好ましくは親水性モノマーが更に共重合されていてもよい。
 具体的には、特開平10-282679号公報に記載されている付加重合可能なエチレン性二重結合反応基を有しているシランカップリング剤、特開平2-304441号公報記載のエチレン性二重結合反応基を有しているリン化合物が好適に挙げられる。特開2005-238816号、特開2005-125749号、特開2006-239867号、特開2006-215263号の各公報に記載の架橋性基(好ましくは、エチレン性不飽和結合基)、支持体表面と相互作用する官能基及び親水性基を有する低分子又は高分子化合物も好ましく用いられる。
 より好ましいものとして、特開2005-125749号及び特開2006-188038号公報に記載の支持体表面に吸着可能な吸着性基、親水性基及び架橋性基を有する高分子ポリマーが挙げられる。
 下塗り層に用いられるポリマー中のエチレン性不飽和結合基の含有量は、ポリマー1g当たり、好ましくは0.1mmol~10.0mmol、より好ましくは0.2mmol~5.5mmolである。
 下塗り層に用いられるポリマーの重量平均分子量(Mw)は、5,000以上が好ましく、1万~30万がより好ましい。
-親水性化合物-
 下塗り層は、現像性の観点から、親水性化合物を含むことが好ましい。
 親水性化合物としては、特に制限はなく、下塗り層に用いられる公知の親水性化合物を用いることができる。
 親水性化合物としては、カルボキシメチルセルロース、デキストリン等のアミノ基を有するホスホン酸類、有機ホスホン酸、有機リン酸、有機ホスフィン酸、アミノ酸類、並びに、ヒドロキシ基を有するアミンの塩酸塩等が好ましく挙げられる。
 また、親水性化合物としては、アミノ基又は重合禁止能を有する官能基と支持体表面と相互作用する基とを有する化合物(例えば、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、2,3,5,6-テトラヒドロキシ-p-キノン、クロラニル、スルホフタル酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)又はその塩、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸又はその塩、ジヒドロキシエチルエチレンジアミン二酢酸又はその塩、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸又はその塩など)が好ましく挙げられる。
 親水性化合物としては、傷汚れ抑制性の観点から、ヒドロキシカルボン酸又はその塩を含むことが好ましい。
 また、親水性化合物、好ましくはヒドロキシカルボン酸又はその塩は、傷汚れ抑制性の観点から、上記アルミニウム支持体上の層に含まれることが好ましい。また、上記アルミニウム支持体上の層は、画像記録層が形成されている側の層であることが好ましく、また、上記アルミニウム支持体と接する層であることが好ましい。
 上記アルミニウム支持体上の層としては、上記アルミニウム支持体と接する層として、下塗り層又は画像記録層が好ましく挙げられる。また、上記アルミニウム支持体と接する層以外の層、例えば、最外層又は画像記録層に、親水性化合物、好ましくはヒドロキシカルボン酸又はその塩が含まれていてもよい。
 本開示に係る平版印刷版原版において、画像記録層が、傷汚れ抑制性の観点から、ヒドロキシカルボン酸又はその塩を含むことが好ましい。
 また、本開示に係る平版印刷版原版において、アルミニウム支持体の画像記録層側の表面が、少なくともヒドロキシカルボン酸又はその塩を含む組成物(例えば、水溶液等)により表面処理される態様も好ましく挙げられる。上記態様である場合、処理されたヒドロキシカルボン酸又はその塩は、アルミニウム支持体と接する画像記録層側の層(例えば、画像記録層又は下塗り層)に含まれた状態で少なくとも一部を検出することができる。
 下塗り層等のアルミニウム支持体と接する画像記録層側の層にヒドロキシカルボン酸又はその塩を含むことにより、アルミニウム支持体の画像記録層側の表面を親水化することができ、また、アルミニウム支持体の画像記録層側の表面における空中水滴法による水との接触角を110°以下と容易にすることができ、傷汚れ抑制性に優れる。
 ヒドロキシカルボン酸とは、1分子中に1個以上のカルボキシ基と1個以上のヒドロキシ基とを有する有機化合物の総称のことであり、ヒドロキシ酸、オキシ酸、オキシカルボン酸、アルコール酸とも呼ばれる(岩波理化学辞典第5版、(株)岩波書店発行(1998)参照)。
 上記ヒドロキシカルボン酸又はその塩は、下記式(HC)で表されるものが好ましい。
  RHC(OH)mhc(COOMHCnhc       式(HC)
 式(HC)中、RHCはmhc+nhc価の有機基を表し、MHCはそれぞれ独立に、水素原子、アルカリ金属又はオニウムを表し、mhc及びnhcはそれぞれ独立に、1以上の整数を表し、nが2以上の場合、MHCは同じでも異なってもよい。
 式(HC)において、RHCで表されるmhc+nhc価の有機基としては、mhc+nhc価の炭化水素基等が挙げられる。炭化水素基は置換基及び/又は連結基を有してもよい。
 炭化水素基としては、脂肪族炭化水素から誘導されるmhc+nhc価の基、例えば、アルキレン基、アルカントリイル基、アルカンテトライル基、アルカンペンタイル基、アルケニレン基、アルケントリイル基、アルケンテトライル基、アルケンペンタイル基、アルキニレン基、アルキントリイル基、アルキンテトライル基、アルキンペンタイル基等、芳香族炭化水素から誘導されるmhc+nhc価の基、例えば、アリーレン基、アレーントリイル基、アレーンテトライル基、アレーンペンタイル基等が挙げられる。置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アリール基等が挙げられる。置換基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、イソプロピル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1-メチルブチル基、イソヘキシル基、2-エチルヘキシル基、2-メチルヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、2-ノルボルニル基、メトキシメチル基、メトキシエトキシエチル基、アリルオキシメチル基、フェノキシメチル基、アセチルオキシメチル基、ベンゾイルオキシメチル基、ベンジル基、フェネチル基、α-メチルベンジル基、1-メチル-1-フェニルエチル基、p-メチルベンジル基、シンナミル基、アリル基、1-プロペニルメチル基、2-ブテニル基、2-メチルアリル基、2-メチルプロペニルメチル基、2-プロピニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、フェノキシフェニル基、アセトキシフェニル基、ベンゾイロキシフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、エトキシカルボニルフェニル基、フェノキシカルボニルフェニル基等が挙げられる。また、連結基は、水素原子、炭素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子及びハロゲン原子よりなる群から選ばれる少なくとも1種の原子により構成されるもので、その原子数は好ましくは1~50である。具体的には、アルキレン基、置換アルキレン基、アリーレン基、置換アリーレン基などが挙げられ、これらの2価の基がアミド結合、エーテル結合、ウレタン結合、ウレア結合及びエステル結合のいずれかで複数連結された構造を有していてもよい。
 MHCで表されるアルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられ、ナトリウムが特に好ましい。オニウムとしてはアンモニウム、ホスホニウム、スルホニウム等が挙げられ、アンモニウムが特に好ましい。
 また、MHCは、傷汚れ抑制性の観点から、アルカリ金属又はオニウムであることが好ましく、アルカリ金属であることがより好ましい。
 mhcとnhcとの総数は、3以上が好ましく、3~8がより好ましく、4~6が更に好ましい。
 上記ヒドロキシカルボン酸又はその塩は、分子量が600以下であることが好ましく、500以下であることがより好ましく、300以下であることが特に好ましい。また、上記分子量は、76以上であることが好ましい。
 上記ヒドロキシカルボン酸、又は、上記ヒドロキシカルボン酸の塩を構成するヒドロキシカルボン酸は、具体的には、グルコン酸、グリコール酸、乳酸、タルトロン酸、ヒドロキシ酪酸(2-ヒドロキシ酪酸、3-ヒドロキシ酪酸、γ-ヒドロキシ酪酸等)、リンゴ酸、酒石酸、シトラマル酸、クエン酸、イソクエン酸、ロイシン酸、メバロン酸、パントイン酸、リシノール酸、リシネライジン酸、セレブロン酸、キナ酸、シキミ酸、モノヒドロキシ安息香酸誘導体(サリチル酸、クレオソート酸(ホモサリチル酸、ヒドロキシ(メチル)安息香酸)、バニリン酸、シリング酸等)、ジヒドロキシ安息香酸誘導体(ピロカテク酸、レソルシル酸、プロトカテク酸、ゲンチジン酸、オルセリン酸等)、トリヒドロキシ安息香酸誘導体(没食子酸等)、フェニル酢酸誘導体(マンデル酸、ベンジル酸、アトロラクチン酸等)、ヒドロケイヒ酸誘導体(メリロト酸、フロレト酸、クマル酸、ウンベル酸、コーヒー酸、フェルラ酸、シナピン酸、セレブロン酸、カルミン酸等)等が挙げられる。
 これらの中でも、上記ヒドロキシカルボン酸、又は、上記ヒドロキシカルボン酸の塩を構成するヒドロキシカルボン酸としては、傷汚れ抑制性の観点から、ヒドロキシ基を2個以上有している化合物が好ましく、ヒドロキシ基を3個以上有している化合物がより好ましく、ヒドロキシ基を5個以上有している化合物が更に好ましく、ヒドロキシ基を5個~8個有している化合物が特に好ましい。
 また、カルボキシ基を1個、ヒドロキシ基を2個以上有しているものとしては、グルコン酸、又は、シキミ酸が好ましい。
 カルボキシ基を2個以上、ヒドロキシ基を1個有しているものとしては、クエン酸、又は、リンゴ酸が好ましい。
 カルボキシ基及びヒドロキシ基をそれぞれ2個以上有しているものとしては、酒石酸が好ましい。
 中でも、上記ヒドロキシカルボン酸としては、グルコン酸が特に好ましい。
 親水性化合物は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
 下塗り層に親水性化合物、好ましくはヒドロキシカルボン酸又はその塩を含む場合、親水性化合物、好ましくはヒドロキシカルボン酸及びその塩の含有量は、下塗り層の全質量に対し、0.01質量%~50質量%であることが好ましく、0.1質量%~40質量%であることがより好ましく、1.0質量%~30質量%であることが特に好ましい。
 下塗り層は、上記下塗り層用化合物の他に、経時による汚れ防止のため、キレート剤、第二級又は第三級アミン、重合禁止剤等を含有してもよい。
 下塗り層は、公知の方法で塗布される。
 下塗り層の塗布量(固形分)は、0.1mg/m~300mg/mが好ましく、5mg/m~200mg/mがより好ましい。
 本開示に係る平版印刷版原版は、上述した以外のその他の層を有していてもよい。
 その他の層としては、特に制限はなく、公知の層を有することができる。例えば、支持体の画像記録層側とは反対側には、必要に応じてバックコート層が設けられていてもよい。
(平版印刷版の作製方法、及び、平版印刷方法)
 本開示に係る平版印刷版の作製方法は、本開示に係る平版印刷版原版を画像様に露光する工程(露光工程)、及び、露光後の平版印刷版原版を印刷機上で印刷インク及び湿し水よりなる群から選ばれた少なくとも一方を供給して非画像部の画像記録層を除去する工程(機上現像工程)を含むことが好ましい。
 本開示に係る平版印刷方法は、本開示に係る平版印刷版原版を画像様に露光する工程(露光工程)と、印刷機上で印刷インク及び湿し水よりなる群から選ばれた少なくとも一方を供給して非画像部の画像記録層を除去し平版印刷版を作製する工程(機上現像工程)と、得られた平版印刷版により印刷する工程(以下、「印刷工程」ともいう)と、を含むことが好ましい。
<露光工程>
 本開示に係る平版印刷版の作製方法は、本開示に係る平版印刷版原版を画像様に露光し、露光部と未露光部とを形成する露光工程を含むことが好ましい。本開示に係る平版印刷版原版は、線画像、網点画像等を有する透明原画を通してレーザー露光するかデジタルデータによるレーザー光走査等で画像様に露光されることが好ましい。
 光源の波長は750nm~1,400nmが好ましく用いられる。波長750nm~1,400nmの光源としては、赤外線を放射する固体レーザー及び半導体レーザーが好適である。赤外線レーザーに関しては、出力は100mW以上であることが好ましく、1画素当たりの露光時間は20マイクロ秒以内であるのが好ましく、また照射エネルギー量は10mJ/cm~300mJ/cmであるのが好ましい。また、露光時間を短縮するためマルチビームレーザーデバイスを用いることが好ましい。露光機構は、内面ドラム方式、外面ドラム方式、及びフラットベッド方式等のいずれでもよい。
 画像露光は、プレートセッターなどを用いて常法により行うことができる。機上現像の場合には、平版印刷版原版を印刷機に装着した後、印刷機上で画像露光を行ってもよい。
 また、露光時のSD(焦点深度)、Slope(レーザーの直線的な傾き)、Curve(レーザーの並び湾曲度)等の各パラメータ設定を別途行ってもよい。
 上記パラメータ設定においては、後述するインク及び湿し水を用いた現像を行ってもよいし、パラメータ設定用の画像状の露光を行ってもよいし、現像をインク及び湿し水以外の液で行ってもよい。上記インク及び湿し水以外の液としては、機上現像可能な液であればよく、例えば、現像液、フィニッシャー液、フィニッシャガム液等が挙げられる。
 また、現像をインク及び湿し水以外の液で行う場合、現像後に、版面を水等により洗浄してもよいし、画像部の視認性をより向上させるため、酸性溶液を版面に接触させてもよい。酸性溶液に含まれる酸としては、特に制限はないが、酢酸等のカルボン酸、クエン酸等のヒドロキシカルボン酸、及び、これらの塩等が好適に挙げられ、クエン酸が特に好ましい。また、酸性溶液の調製には、水、及び酸を溶解させる溶媒から選ばれる少なくとも1種を用いてもよい。
 酸性溶液の調製に用いられる溶媒としては、特に制限はないが、酸溶解性と機上現像性の観点から、水とエタノールからなる混合溶媒が好適に挙げられる。溶媒として、キッチン用アルコール除菌液を用いてもよい。上記現像、洗浄、及び、酸性溶液を接触させる方法には、特に制限はなく、公知の方法で行うことができる。例えば、スポンジ又はウエス等により版面に塗布する方法等が好適に挙げられる。
<機上現像工程>
 本開示に係る平版印刷版の作製方法は、印刷機上で印刷インク及び湿し水よりなる群から選ばれた少なくとも一方を供給して非画像部の画像記録層を除去する機上現像工程を含むことが好ましい。
 以下に、機上現像方式について説明する。
〔機上現像方式〕
 機上現像方式においては、画像露光された平版印刷版原版は、印刷機上で油性インクと水性成分とを供給し、非画像部の画像記録層が除去されて平版印刷版が作製されることが好ましい。
 すなわち、平版印刷版原版を画像露光後、何らの現像処理を施すことなくそのまま印刷機に装着するか、あるいは、平版印刷版原版を印刷機に装着した後、印刷機上で画像露光し、ついで、油性インクと水性成分とを供給して印刷すると、印刷途上の初期の段階で、非画像部においては、供給された油性インク及び水性成分のいずれか又は両方によって、未硬化の画像記録層が溶解又は分散して除去され、その部分に親水性の表面が露出する。一方、露光部においては、露光により硬化した画像記録層が、親油性表面を有する油性インク受容部を形成する。最初に版面に供給されるのは、油性インクでもよく、水性成分でもよいが、水性成分が除去された画像記録層の成分によって汚染されることを防止する点で、最初に油性インクを供給することが好ましい。このようにして、平版印刷版原版は印刷機上で機上現像され、そのまま多数枚の印刷に用いられる。油性インク及び水性成分としては、通常の平版印刷用の印刷インク及び湿し水が好適に用いられる。
 本開示に係る平版印刷版原版を画像露光するレーザーとしては、光源の波長は750nm~1,400nmが好ましく用いられる。波長750nm~1,400nmの光源は上述したものが好ましく用いられる。
<印刷工程>
 本開示に係る平版印刷方法は、平版印刷版に印刷インクを供給して記録媒体を印刷する印刷工程を含む。
 印刷インクとしては、特に制限はなく、所望に応じ、種々の公知のインクを用いることができる。また、印刷インクとしては、油性インク又は紫外線硬化型インク(UVインク)が好ましく挙げられる。
 また、上記印刷工程においては、必要に応じ、湿し水を供給してもよい。
 また、上記印刷工程は、印刷機を停止することなく、上記機上現像工程又は上記現像液現像工程に連続して行われてもよい。
 記録媒体としては、特に制限はなく、所望に応じ、公知の記録媒体を用いることができる。
 本開示に係る平版印刷版原版からの平版印刷版の作製方法、及び、本開示に係る平版印刷方法においては、必要に応じて、露光前、露光中、露光から現像までの間に、平版印刷版原版の全面を加熱してもよい。このような加熱により、画像記録層中の画像形成反応が促進され、感度や耐刷性の向上や感度の安定化等の利点が生じ得る。現像前の加熱は150℃以下の穏和な条件で行うことが好ましい。上記態様であると、非画像部が硬化してしまう等の問題を防ぐことができる。現像後の加熱には非常に強い条件を利用することが好ましく、100℃~500℃の範囲であることが好ましい。上記範囲であると、十分な画像強化作用が得られまた、支持体の劣化、画像部の熱分解といった問題を抑制することができる。
<他の態様>
 本開示に係る平版印刷版の製版方法の別の態様は、本開示に係る平版印刷版原版を画像露光する工程(「画像露光工程」ともいう。)、及び、現像液を供給して上記未露光部を除去する現像工程(「現像液現像工程」ともいう。)を含む態様が挙げられる。
 上記製版方法を、以下「現像液処理方式」ともいう。
 本開示に係る平版印刷方法の別の態様は、本開示に係る平版印刷版原版を用いて平版印刷版を製版し、印刷する方法であり、本開示に係る平版印刷版原版を画像露光する工程(「画像露光工程」ともいう。)、現像液を供給して上記未露光部を除去する現像工程(「現像液現像工程」ともいう。)、及び、得られた平版印刷版により印刷する工程(「印刷工程」ともいう。)を含むことが好ましい。
 「画像露光工程」、「現像液現像工程」、及び「印刷工程」は、いずれも、適用される平版印刷版原版に合わせ、公知の方法を適用すればよい。
 以下、実施例により本開示を詳細に説明するが、本開示はこれらに限定されるものではない。なお、本実施例において、「%」、「部」とは、特に断りのない限り、それぞれ「質量%」、「質量部」を意味する。
<重合体P-1の合成例>
 攪拌機、冷却管、窒素導入管、温度計を取り付けた200mL三角フラスコに、モノメチルプロピレングリコール(富士フイルム和光純薬株式会社製)を10.0g入れて、内温を80℃にして、窒素で置換した。モノマーK-1(商品名:サイラプレーンTM-0701T JNC社製)を7.2g、モノマーH-23(2-ヒドロキシエチルメタクリレート 富士フイルム和光純薬株式会社製)を10.8g、2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチル(富士フイルム和光純薬株式会社製)を0.72g、モノメチルプロピレングリコールを28.8g混合した溶液を2時間かけて滴下した。2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチル0.07g、モノメチルプロピレングリコール3.3gの混合溶液を添加し、内温80℃で1時間撹拌後、内温を100℃にしてさらに2時間加熱し、重合体P-1を得た。
 得られた重合体P-1の重量平均分子量は21600、分子量分布は6.1(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(EcoSEC HLC-8320GPC(東ソー社製))により溶離液THF、流速0.35ml/min、温度40℃の測定条件にてポリスチレン換算で算出、使用カラムはTSKgel SuperHZM-H、TSKgel SuperHZ4000、TSKgel SuperHZ200(東ソー社製))であった。
<重合体P-2の合成例>
 モノマーH-23を、モノマーH-24(2-ヒドロキシエチルアクリルアミド 東京化成工業株式会社製)に代えた以外は、重合体P-1の合成例と同様にして、重合体P-2を合成した。
<重合体P-3の合成例>
 モノマーH-23を、モノマーH-7(n=9)(商品名:ブレンマーPP-500 日油株式会社製)に代えた以外は、重合体P-1の合成例と同様にして、重合体P-3を合成した。
<重合体P-4の合成例>
 モノマーK-1の量を9.0gに変え、モノマーH-23をモノマーH-7(n=9)(商品名:ブレンマーPP-500 日油株式会社製)に代え、モノマーH-7の量を9.0gにした以外は、重合体P-1の合成例と同様にして、重合体P-4を合成した。
<重合体P-5の合成例>
 モノマーK-1の量を10.8gに変え、モノマーH-23をモノマーH-7(n=9)(商品名:ブレンマーPP-500 日油株式会社製)に代え、モノマーH-7の量を7.2gにした以外は、重合体P-1の合成例と同様にして、重合体P-5を合成した。
<重合体P-6の合成例>
 モノマーK-1の量を5.4gに変え、モノマーH-23をモノマーH-7(n=9)(商品名:ブレンマーPP-500 日油株式会社製)に代え、モノマーH-7の量を12.6gにした以外は、重合体P-1の合成例と同様にして、重合体P-6を合成した。
<重合体P-7の合成例>
 モノマーH-23を、モノマーH-3(n=8) (商品名:ブレンマーPE-350
 日油株式会社製)に代え、モノマーH-3の量を10.8gに変えた以外は、重合体P-1の合成例と同様にして、重合体P-7を合成した。
<重合体P-8の合成例>
 モノマーH-23を、モノマーH-3(n=8) (商品名:ブレンマーPE-350 日油株式会社製)に代え、モノマーH-3の量を0.8gに変えた以外は、重合体P-1の合成例と同様にして、重合体P-8を合成した。
<重合体P-9の合成例>
 モノマーH-23を、モノマーH-25(n=6) (商品名:ブレンマー10PPB-500B 日油株式会社製)に代え、モノマーH-25の量を10.8gに変えた以外は、重合体P-1の合成例と同様にして、重合体P-9を合成した。
<重合体P-10の合成例>
 モノマーH-23を、モノマーH-14(m=3.5、n=2.5) (商品名:ブレンマー50PEP-300 日油株式会社製)に代え、モノマーH-14の量を10.8gに変えた以外は、重合体P-1の合成例と同様にして、重合体P-10を合成した。
<重合体P-14の合成例>
 モノマーH-23を、モノマーH-4(n=4)(商品名:ブレンマーPME-200 日油株式会社製)に代え、且つ、モノマーH-4の量を10.8gに変えた以外は、重合体P-1の合成例と同様にして、重合体P-14を合成した。
<重合体P-16の合成例>
 モノマーH-23を、モノマーH-4(n=4)(商品名:ブレンマーPME-200 日油株式会社製)に代え、且つ、モノマーK-1の量を5.4gに、モノマーH-4の量を12.6gに変えた以外は、重合体P-1の合成例と同様にして、重合体P-16を合成した。
 上述のようにして合成された重合体P-1~P-10、P-14及びP-16の構造を以下に示す。また、以下に示す構造の重合体P-11を用意した。
 なお、重合体P-1~P-11、P-14及びP-16の重量平均分子量は、表3に示す。
 また、比較用重合体として、重合体P-12(DIC(株)製、メガファック(登録商標:F-176PF)と、下記構造の重合体P-13と、重合体P-15と、を用意した。
 なお、重合体P-12、P-13、及びP-15の重量平均分子量は、表3に示す。
(実施例1~16、19、25、29、30、比較例1~3、9:機上現像型平版印刷版原版)
<支持体Aの作製>
(機械的粗面化処理(ブラシグレイン法))
 図5に示したような装置を使って、パミスの懸濁液(比重1.1g/cm)を研磨スラリー液としてアルミニウム板の表面に供給しながら、回転する束植ブラシにより機械的粗面化処理を行った。図5において、1はアルミニウム板、2及び4はローラ状ブラシ(本実施例において、束植ブラシ)、3は研磨スラリー液、5、6、7及び8は支持ローラである。
 機械的粗面化処理は、研磨材のメジアン径(μm)を30μm、ブラシ本数を4本、1分間当たりのブラシの回転数(rpm:以下、同様)を250rpmとした。束植ブラシの材質は6・10ナイロンで、ブラシ毛の直径0.3mm、毛長50mmであった。ブラシは、φ300mmのステンレス製の筒に穴をあけて密になるように植毛した。束植ブラシ下部の2本の支持ローラ(φ200mm)の距離は300mmであった。束植ブラシはブラシを回転させる駆動モータの負荷が、束植ブラシをアルミニウム板に押さえつける前の負荷に対して10kWプラスになるまで押さえつけた。ブラシの回転方向はアルミニウム板の移動方向と同じであった。
(アルカリエッチング処理)
 上記で得られたアルミニウム板に、カセイソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%のカセイソーダ水溶液を、温度70℃でスプレー管により吹き付けてエッチング処理を行った。その後、スプレーによる水洗を行った。アルミニウム溶解量は、10g/mであった。
(酸性水溶液中でのデスマット処理)
 次に、硝酸水溶液中でデスマット処理を行った。デスマット処理に用いる硝酸水溶液は、次工程の電気化学的な粗面化に用いた硝酸の廃液を用いた。その液温は35℃であった。デスマット液はスプレーにて吹き付けて3秒間デスマット処理を行った。
(電気化学的粗面化処理)
 硝酸電解60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、温度35℃、硝酸10.4g/Lの水溶液に硝酸アルミニウムを添加してアルミニウムイオン濃度を4.5g/Lに調整した電解液を用いた。交流電源波形は図3に示した波形であり、電流値がゼロからピークに達するまでの時間tpが0.8msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電解槽は図4に示すものを使用した。電流密度は電流のピーク値で30A/dm、補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。電気量(C/dm)はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で185C/dmであった。その後、スプレーによる水洗を行った。
(アルカリエッチング処理)
 上記で得られたアルミニウム板に、カセイソーダ濃度5質量%、アルミニウムイオン濃度0.5質量%のカセイソーダ水溶液を、温度50℃でスプレー管により吹き付けてエッチング処理を行った。その後、スプレーによる水洗を行った。アルミニウム溶解量は、0.5g/mであった。
(酸性水溶液中でのデスマット処理)
 次に、硫酸水溶液中でデスマット処理を行った。デスマット処理に用いる硫酸水溶液は、硫酸濃度170g/L、アルミニウムイオン濃度5g/Lの液を用いた。その液温は、30℃であった。デスマット液はスプレーにて吹き付けて3秒間デスマット処理を行った。
(電気化学的粗面化処理)
 塩酸電解60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。電解液は、液温35℃、塩酸6.2g/Lの水溶液に塩化アルミニウムを添加してアルミニウムイオン濃度を4.5g/Lに調整した電解液を用いた。交流電源波形は図3に示した波形であり、電流値がゼロからピークに達するまでの時間tpが0.8msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電解槽は図4に示すものを使用した。
 電流密度は電流のピーク値で25A/dmであり、塩酸電解における電気量(C/dm)はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で63C/dmであった。その後、スプレーによる水洗を行った。
(アルカリエッチング処理)
 上記で得られたアルミニウム板に、カセイソーダ濃度5質量%、アルミニウムイオン濃度0.5質量%のカセイソーダ水溶液を、温度50℃でスプレー管により吹き付けてエッチング処理を行った。その後、スプレーによる水洗を行った。アルミニウム溶解量は、0.1g/mであった。
(酸性水溶液中でのデスマット処理)
 次に、硫酸水溶液中でデスマット処理を行った。具体的には、陽極酸化処理工程で発生した廃液(硫酸170g/L水溶液中にアルミニウムイオン5g/Lを溶解)を用い、液温35℃で4秒間デスマット処理を行った。デスマット液はスプレーにて吹き付けて3秒間デスマット処理を行った。
(第1段階の陽極酸化処理)
 図6に示す構造の直流電解による陽極酸化装置を用いて第1段階の陽極酸化処理を行った。表1に示す条件にて陽極酸化処理を行い、所定の皮膜厚の陽極酸化皮膜を形成した。
 なお、陽極酸化処理装置610において、アルミニウム板616は、図6中矢印で示すように搬送される。電解液618が貯溜された給電槽612にてアルミニウム板616は給電電極620によって(+)に荷電される。そして、アルミニウム板616は、給電槽612においてローラ622によって上方に搬送され、ニップローラ624によって下方に方向変換された後、電解液626が貯溜された電解処理槽614に向けて搬送され、ローラ628によって水平方向に方向転換される。ついで、アルミニウム板616は、電解電極630によって(-)に荷電されることにより、その表面に陽極酸化皮膜が形成され、電解処理槽614を出たアルミニウム板616は後工程に搬送される。陽極酸化処理装置610において、ローラ622、ニップローラ624、及びローラ628によって方向転換手段が構成され、アルミニウム板616は、給電槽612と電解処理槽614との槽間部において、上記ローラ622、624及び628により、山型及び逆U字型に搬送される。給電電極620と電解電極630とは、直流電源634に接続されている。給電槽612と電解処理槽614との間には、槽壁632が配置されている。
(ポアワイド処理)
 上記陽極酸化処理したアルミニウム板を、温度35℃、カセイソーダ濃度5質量%、アルミニウムイオン濃度0.5質量%のカセイソーダ水溶液に表1に示す条件にて浸漬し、ポアワイド処理を行った。その後、スプレーによる水洗を行った。
(第2段階の陽極酸化処理)
 図6に示す構造の直流電解による陽極酸化装置を用いて第2段階の陽極酸化処理を行った。表1に示す条件にて陽極酸化処理を行い、所定の皮膜厚の陽極酸化皮膜を形成した。
(第3段階の陽極酸化処理)
 図6に示す構造の直流電解による陽極酸化装置を用いて第3段階の陽極酸化処理を行った。表1に示す条件にて陽極酸化処理を行い、所定の皮膜厚の陽極酸化皮膜を形成した。
 以上の表面処理を経て、表1及び表2に記載の支持体Aを得た。
 上記で得られた第2陽極酸化処理工程後のマイクロポアを有する陽極酸化皮膜中の大径孔部の陽極酸化皮膜表面における平均径(nm)、小径孔部の連通位置における平均径(nm)、大径孔部及び小径孔部の深さ(nm)、ピット密度(マイクロポアの密度、単位;個/μm)、並びに、小径孔部の底部からアルミニウム板表面までの陽極酸化皮膜の厚み(nm)を、表2にまとめて示す。
 なお、マイクロポアの平均径(大径孔部及び小径孔部の平均径)は、大径孔部表面及び小径孔部表面を倍率15万倍のFE-SEMでN=4枚観察し、得られた4枚の画像において、400nm×600nmの範囲に存在するマイクロポア(大径孔部及び小径孔部)の径を測定し、平均した値である。なお、大径孔部の深さが深く、小径孔部の径が測定しづらい場合、及び、小径孔部中の拡径孔部の測定を行う場合は、陽極酸化皮膜上部を切削し、その後各種径を求めた。
 マイクロポアの深さ(大径孔部及び小径孔部の深さ)は、支持体(陽極酸化皮膜)の断面をFE-SEMで観察し(大径孔部深さ観察:15万倍、小径孔部深さ観察:5万倍)、得られた画像において、任意のマイクロポア25個の深さを測定し、平均した値である。
 なお、表1中、第1陽極酸化処理欄の皮膜量(AD)量と第2陽極酸化処理欄の皮膜量(AD)とは、各処理で得られた皮膜量を表す。なお、使用される電解液は、表1中の成分を含む水溶液である。
<下塗り層Aの形成>
 支持体A上に、下記組成の下塗り層用塗布液を乾燥塗布量が0.1g/mになるよう塗布して、下塗り層Aを形成した。
-下塗り層用塗布液-
・下塗り層用化合物(上記U-1、11%水溶液):0.10502部
・グルコン酸ナトリウム:0.0700部
・界面活性剤(エマレックス(登録商標) 710、日本エマルジョン(株)製):0.00159部
・防腐剤(バイオホープL、ケイ・アイ化成(株)):0.00149部
・水:2.8719部
<画像記録層Aの形成>
 下塗り層A上に、下記画像記録層A用塗布液をバー塗布し、120℃で40秒間オーブン乾燥して、乾燥塗布量1.0g/mの画像記録層Aを形成した。
-画像記録層A用塗布液-
 赤外線吸収剤(下記IR-1):0.0270部
 赤外線吸収剤(下記IR-2):0.0080部
 発色剤(下記S-1):0.0300部
 発色剤(下記S-2):0.0120部
 オニウム系重合開始剤(下記I-1):0.1000部
 ボレート化合物(テトラフェニルホウ酸ナトリウム(TPB)):0.0200部
 重合性化合物(下記M-4):0.2726部
 アニオン界面活性剤(下記A-1):0.0200部
 下記表3に記載の重合体:表3に記載の量(添加量)
 2-ブタノン:4.9839部
 1-メトキシ-2-プロパノール:3.1009部
 メタノール:3.1239部
 下記ミクロゲル液1:2.3256部
〔重合性化合物M-4の合成方法〕
 タケネートD-160N(ポリイソシアネート トリメチロールプロパンアダクト体、三井化学(株)製、4.7部)、アロニックスM-403(東亞合成(株)製、タケネートD-160NのNCO価とアロニックスM-403の水酸基価が1:1となる量)、t-ブチルベンゾキノン(0.02部)、及びメチルエチルケトン(11.5部)の混合溶液を65℃に加熱した。反応溶液に、ネオスタンU-600(ビスマス系重縮合触媒、日東化成(株)製、0.11部)を加え、65℃で4時間加熱した。反応溶液を室温(25℃)まで冷却し、メチルエチルケトンを加えることで、固形分が50質量%のウレタンアクリレート(重合性M-4)溶液を合成した。リサイクル型GPC(機器:LC908-C60、カラム:JAIGEL-1H-40及び2H-40(日本分析工業(株)製))を用いて、テトラヒドロフラン(THF)の溶離液にて、ウレタンアクリレート溶液の分子量分画を実施した。重量平均分子量は20,000であった。
〔ミクロゲル液1の合成方法〕
-油相成分の調製-
 多官能イソシアネート化合物(PM-200:万華化学社製):6.66gと、三井化学(株)製の「タケネート(登録商標)D-116N(トリメチロールプロパン(TMP)とm-キシリレンジイソシアネート(XDI)とポリエチレングリコールモノメチルエーテル(EO90)との付加物(下記構造)」の50質量%酢酸エチル溶液:5.46gと、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(SR-399、サートマー社製)の65質量%酢酸エチル溶液:11.24gと、酢酸エチル:14.47gと、竹本油脂(株)製のパイオニン(登録商標)A-41-C:0.45gを混合し、室温(25℃)で15分撹拌して油相成分を得た。
-水相成分の準備-
 水相成分として、蒸留水47.2gを準備した。
-マイクロカプセル形成工程-
 油相成分に水相成分を添加して混合し、得られた混合物を、ホモジナイザーを用いて12,000rpmで16分間乳化させて乳化物を得た。
 得られた乳化物に蒸留水16.8gを添加し、得られた液体を室温で10分撹拌した。
 次いで、撹拌後の液体を45℃に加熱し、液温を45℃に保持した状態で4時間撹拌することにより、上記液体から酢酸エチルを留去した。次いで、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン-オクチル酸塩(U-CAT SA102、サンアプロ(株)製)の10質量%水溶液5.12gを加え、室温で30分撹拌し、45℃で24時間静置した。蒸留水で、固形分濃度を20質量%になるように調整し、ミクロゲル1の水分散液が得られた。ミクロゲル1の体積平均粒径はレーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置LA-920((株)堀場製作所製)により測定したところ、165nmであった。
<最外層(保護層)Aの形成>
 画像記録層上に、下記保護層用塗布液をバー塗布し、120℃で60秒間オーブン乾燥して、乾燥塗布量が0.1g/mの最外層(保護層)Aを形成し、平版印刷版原版を作製した。
-保護層用塗布液-
 無機層状化合物分散液(1):0.5625部
 親水性ポリマー(1)(下記化合物の20%水溶液):0.0825部
 メトローズSM04(メチルセルロース、信越化学工業(株)製、メトキシ置換度=1.8):0.0250部
 ラピゾールA-80(アニオン界面活性剤、日油(株)製、80%水溶液):0.0007部
 イオン交換水:4.3300部
(実施例17~18、26、31、32)
<支持体Bの作製>
 厚さ0.3mmの材質1Sのアルミニウム板(アルミニウム合金板)に対し、下記処理を施し、アルミニウム支持体を製造した。なお、全ての処理工程の間には水洗処理を施し、水洗処理の後にはニップローラで液切りを行った。
(アルカリエッチング処理)
 アルミニウム板に、カセイソーダ濃度26質量%、及び、アルミニウムイオン濃度6.5質量%のカセイソーダ水溶液を、温度70℃でスプレーにより吹き付けてエッチング処理を行った。その後、スプレーによる水洗を行った。後に電気化学的粗面化処理を施す面のアルミニウム溶解量は、5g/mであった。
(酸性水溶液を用いたデスマット処理)
 次に、酸性水溶液を用いてデスマット処理を行った。具体的には、酸性水溶液をアルミニウム板にスプレーにて吹き付けて、3秒間デスマット処理を行った。デスマット処理に用いる酸性水溶液は、硫酸150g/Lの水溶液を用いた。その液温は30℃であった。
(電気化学的粗面化処理)
 次に、塩酸濃度13g/L、アルミニウムイオン濃度15g/L、及び、硫酸濃度1.0g/Lの電解液を用い、交流電流を用いて電気化学的粗面化処理を行った。電解液の液温は22℃で行った。アルミニウムイオン濃度は塩化アルミニウムを添加して調整した。
 交流電流の波形は正と負の波形が対称な正弦波であり、周波数は50Hz、交流電流1周期におけるアノード反応時間とカソード反応時間は1:1、電流密度は交流電流波形のピーク電流値で35A/dmであった。また、電気量はアルミニウム板がアノード反応に預かる電気量の総和で300C/dmであり、電解処理は75C/dmずつ2.5秒間の通電間隔を開けて4回に分けて行った。アルミニウム板の対極にはカーボン電極を用いた。その後、水洗処理を行った。
(アルカリエッチング処理)
 電気化学的粗面化処理後のアルミニウム板を、カセイソーダ濃度5質量%、及び、アルミニウムイオン濃度0.5質量%のカセイソーダ水溶液を、温度45℃でスプレーにより吹き付けてエッチング処理を行った。電気化学的粗面化処理が施された面のアルミニウムの溶解量は0.2g/mであった。その後、水洗処理を行った。
(酸性水溶液を用いたデスマット処理)
 次に、酸性水溶液を用いてデスマット処理を行った。具体的には、酸性水溶液をアルミニウム板にスプレーにて吹き付けて、3秒間デスマット処理を行った。デスマット処理に用いる酸性水溶液としては、硫酸濃度170g/L及びアルミニウムイオン濃度5g/Lの水溶液を用いた。その液温は、35℃であった。
(第1段階の陽極酸化処理)
 図6に示す構造の直流電解による陽極酸化装置を用いて第1段階の陽極酸化処理を行った。電解液濃度150g/L、温度50℃、電流密度15A/dm2の条件にて陽極酸化処理を行い、所定の皮膜厚の陽極酸化皮膜を形成した。
(ポアワイド処理)
 上記陽極酸化処理したアルミニウム板を、温度40℃、カセイソーダ濃度5質量%、及び、アルミニウムイオン濃度0.5質量%のカセイソーダ水溶液に浸漬し、ポアワイド処理を行った。その後、スプレーによる水洗を行った。
(第2段階の陽極酸化処理)
 図6に示す構造の直流電解による陽極酸化装置を用いて第2段階の陽極酸化処理を行った。電解液濃度150g/L、温度50℃、電流密度30A/dmの条件にて陽極酸化処理を行い、所定の皮膜厚の陽極酸化皮膜を形成し、アルミニウム支持体を作製した。
<下塗り層Bの形成>
 支持体B上に、下記組成の下塗り層用塗布液を乾燥塗布量が0.1g/mになるよう塗布して、下塗り層Bを形成した。
-下塗り層用塗布液-
・下塗り層用化合物(下記U-1、11%水溶液):0.0788部
・キレスト400(キレート剤;キレスト(株)製):0.0280部
・キレスト3EAF(キレート剤;キレスト(株)製):0.0499部
・界面活性剤(エマレックス(登録商標) 710、日本エマルジョン(株)製):0.00159部
・防腐剤(バイオホープL、ケイ・アイ化成(株)):0.00149部
・水:2.8219部
<画像記録層Bの形成>
 下塗り層B上に、下記画像記録層B用塗布液をバー塗布し、120℃で40秒間オーブン乾燥して、乾燥塗布量1.0g/mの画像記録層Bを形成した。
-画像記録層B用塗布液-
 赤外線吸収剤(上記IR-1):0.0200部
 赤外線吸収剤(上記IR-2):0.0050部
 発色剤(上記S-1):0.0300部
 発色剤(上記S-2):0.0120部
 オニウム系重合開始剤(上記I-1):0.0981部
 ボレート化合物(テトラフェニルホウ酸ナトリウム(TPB)):0.0270部
 重合性化合物(上記M-4、70%):0.3536部
 下記表3に記載の重合体:表3に記載の量(添加量)
 アニオン界面活性剤(上記A-1、30%):0.1620部
 2-ブタノン:5.3155部
 1-メトキシ-2-プロパノール:2.8825部
 メタノール:2.3391部
 上記ミクロゲル液1:2.8779部
<最外層B(保護層)の形成>
 画像記録層B上に、下記保護層用塗布液をバー塗布し、120℃で60秒間オーブン乾燥して、乾燥塗布量が0.41g/mの最外層(保護層)Bを形成し、平版印刷版原版を作製した。
-保護層用塗布液-
 下記成分を混合し、保護層用塗布液を調製した。
 水:1.0161部
 メトローズSM04(メチルセルロース、信越化学工業(株)製、メトキシ置換度=1.8):0.0600部
 FS-102(スチレン-アクリル樹脂、日本ペイント・インダストリアルコーティングス(株)製、Tg=103℃、17%水分散液):0.1177部
 ラピゾールA-80(アニオン界面活性剤、日油(株)製、80%水溶液):0.0063部
(評価)
1.面状の評価
<ムラの評価>
 作製した平版印刷版原版を、40cm×62cmに加工した。得られたサンプルの最外層側の表面を、750~1500Luxの白灯照射下で目視観察し、以下基準に沿って面状を評価した。結果を表3に示す。
-基準-
 A:全面的にムラが視認されない。
 B:部分的に弱いムラが視認される。
 C:Bよりも広い領域にて部分的に弱いムラが視認される。
 D:全面に弱いムラが視認される。
 E:全面に強いムラが視認される。
<ハジキの評価>
 作製した平版印刷版原版のうち、上記画像記録層Bを有する実施例17、18、26、31、及び32の平版印刷版原版については、面状の評価として、ムラの評価に加え、さらにハジキの評価を行った。
 実施例17、18、26、31、及び32の平版印刷版原版を、15cm×62cmに加工した。得られたサンプルの最外層側の表面を、750~1500Luxの白灯照射下で10枚分目視観察し、塗布面に発生するハジキの合計個数を評価した。
 ハジキ個数が少ないほど、塗布面状が優れている。
2.機上現像性の評価
 作製した平版印刷版原版を、赤外線半導体レーザー搭載のKodak社製Magnus800 Quantumにて、出力27W、外面ドラム回転数450rpm、解像度2,400dpi(dot per inch、1inchは2.54cm)の条件で露光(照射エネルギー110mJ/cm相当)した。露光画像にはベタ画像、及び、AMスクリーン(Amplitude Modulation Screen)50%網点のチャートを含むようにした。得られた露光済み原版を現像処理することなく、菊判サイズのハイデルベルグ社製印刷機SX-74のシリンダーに取り付けた。本印刷機には、不織布フィルターと温度制御装置を内蔵する容量100Lの湿し水循環タンクを接続した。湿し水S-Z1(富士フイルム(株)製)2.0%の湿し水80Lを循環装置内に仕込み、印刷インクとしてT&K UV OFS K-HS墨GE-M((株)T&K TOKA製)を用い、標準の自動印刷スタート方法で湿し水とインクを供給した後、毎時10,000枚の印刷速度で特菱アート紙(連量:76.5kg、三菱製紙(株)製)に200枚印刷を行った。上記機上現像において、非画像部にインクが転写しない状態になるまでに要した印刷用紙の枚数(以降、機上現像枚数ともいう)を求めた。機上現像枚数が少ないほど、機上現像性が良好であるといえる。上記機上現像において、非画像部にインクが転写しない状態になるまでに要した印刷用紙の枚数を機上現像性として求めた。上記枚数が少ないほど、機上現像性が良好であるといえる。結果を表3~表4に示す。

(実施例20~21、比較例4~5)
<支持体C>
 Si:0.06質量%、Fe:0.30質量%、Cu:0.014質量%、Mn:0.001質量%、Mg:0.001質量%、Zn:0.001質量%、Ti:0.03質量%を含有し、残部はAlと不可避不純物のアルミニウム合金を用いて溶湯を調製し、溶湯処理及びろ過を行った上で、厚さ500mm、幅1200mmの鋳塊をDC鋳造法で作成した。表面を平均10mmの厚さで面削機により削り取った後、550℃で、約5時間均熱保持し、温度400℃に下がったところで、熱間圧延機を用いて厚さ2.7mmの圧延板とした。更に、連続焼鈍機を用いて熱処理を500℃で行った後、冷間圧延で、厚さ0.24mmのアルミニウム板に仕上げた。このアルミニウム板を幅1030mmにした後、以下に示す表面処理に供した。
-表面処理-
 表面処理は、以下の(a)~(j)の各種処理を連続的に行うことにより実施した。なお、各処理及び水洗の後にはニップローラで液切りを行った。
(a)機械的粗面化処理
 比重1.12の研磨剤(ケイ砂)と水との懸濁液を研磨スラリー液としてアルミニウム板の表面に供給しながら、回転するローラ状ナイロンブラシにより機械的な粗面化を行った。研磨剤の平均粒径は8μm、最大粒径は50μmであった。ナイロンブラシの材質は6・10ナイロン、毛長は50mm、毛の直径は0.3mmであった。ナイロンブラシはφ300mmのステンレス製の筒に穴をあけて密になるように植毛した。回転ブラシは3本使用した。ブラシ下部の2本の支持ローラ(φ200mm)の距離は300mmであった。ブラシローラはブラシを回転させる駆動モータの負荷が、ブラシローラをアルミニウム板に押さえつける前の負荷に対して7kWプラスになるまで押さえつけた。ブラシの回転方向はアルミニウム板の移動方向と同じであった。ブラシの回転数は200rpmであった。
(b)アルカリ剤によるエッチング処理
 上記で得られたアルミニウム板をカセイソーダ濃度2.6質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%、温度70℃の水溶液を用いてスプレーによるエッチング処理を行い、アルミニウム板を10g/m溶解した。その後、スプレーによる水洗を行った。
(c)デスマット処理
 温度30℃の硝酸濃度1質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、スプレーで水洗した。デスマットに用いた硝酸水溶液は、硝酸水溶液中で交流を用いて電気化学的な粗面化を行う工程の廃液を用いた。
(d)電気化学的粗面化処理
 60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、硝酸10.5g/L水溶液(アルミニウムイオンを5g/L、アンモニウムイオンを0.007質量%含む。)、液温80℃であった。交流電源波形は図3に示した波形であり、電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電解槽は図4に示すものを使用した。電流密度は電流のピーク値で30A/dm、電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で220C/dm2であった。補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。その後、スプレーによる水洗を行った。
(e)アルカリエッチング処理
 アルミニウム板に、カセイソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%の水溶液を用いてスプレーによるエッチング処理を32℃で行い、アルミニウム板を0.20g/m溶解し、前段の交流を用いて電気化学的粗面化処理を行ったときに生成した水酸化アルミニウムを主体とするスマット成分を除去し、また、生成したピットのエッジ部分を溶解してエッジ部分を滑らかにした。その後、スプレーによる水洗を行った。
(f)デスマット処理
 温度30℃の硝酸濃度25質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)
 で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、スプレーによる水洗を行った。
(g)陽極酸化処理
 二段給電電解処理法の陽極酸化装置(第一及び第二電解部長各6m、第一及び第二給電部長各3m、第一及び第二給電電極長各2.4m)を用いて陽極酸化処理を行った。第一及び第二電解部に供給した電解液としては、硫酸を用いた。電解液は、いずれも、硫酸濃度170g/L(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)、温度43℃であった。その後、スプレーによる水洗を行った。最終的な酸化皮膜量は2.7g/mであった。
(h)アルカリ金属ケイ酸塩処理陽極酸化処理により得られたアルミニウム支持体を温度30℃の3号ケイ酸ソーダの1質量%水溶液の処理層中へ、10秒間、浸せきすることでアルカリ金属ケイ酸塩処理(シリケート処理)を行った。その後、スプレーによる水洗を行った。
<下塗り層Cの形成>
 支持体C上に、下記組成の下塗り層用塗布液を塗布し、80℃で15秒間乾燥し、下塗り層Cを形成した。乾燥後の下塗り層の被覆量は15mg/mであった。
-下塗り層用塗布液-
・下記高分子化合物1:0.3部
・メタノール:100部
・水:1部
<画像記録層C1の形成>
 下塗り層C上に、以下の下部画像記録層用塗布液を塗布量が0.85g/mになるよう塗布した後、TABAI社製、PERFECT OVEN PH200にてWind Controlを7に設定して140℃で50秒間乾燥し、その後、上部画像記録層用塗布液を塗布量が0.15g/mになるよう塗布した後、120℃で1分間乾燥し、画像記録層C1を形成した。これにより、実施例20及び比較例4の平版印刷版原版を得た。
-下部記録層用塗布液-
・N-(4-アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド/アクリロニトリル/メタクリル酸メチル共重合体(共重合比:35/30/35:重量平均分子量50000):2.37部
・m,p-クレゾールノボラック:0.47部
・シアニン染料A(下記構造):0.13部
・4,4’-ビスヒドロキシフェニルスルホン:0.11部
・無水テトラヒドロフタル酸:0.15部
・p-トルエンスルホン酸:0.01部
・3-メトキシ-4-ジアゾジフェニルアミンヘキサフルオロホスフェート:0.03部・クリスタルバイオレットの対アニオンをナフタレンスルホン酸に変えたもの:0.10部
・下記表4に記載の重合体:0.035部
・メチルエチルケトン:24部
・2-メトキシ-1-プロパノール:13部
・γ-ブチロラクトン:14部
-上部画像記録層用塗布液-
・m,p-クレゾールノボラック:0.285部
・メタクリル酸エチル/メタクリル酸イソブチル/メタクリル酸共重合体(共重合比:50/20/30:重量平均分子量42000):0.06部
・シアニン染料A(下記構造):0.075部
・スルホン酸塩A(下記構造):0.060部
・下記表4に記載の重合体:0.035部
・メチルエチルケトン:15.1部
・1-メトキシ-2-プロパノール:7.7部
<画像記録層C2>
 下塗り層C上に、以下の画像記録層C2用塗布液を塗布量が1.3g/mになるよう塗布したのち、TABAI社製、PERFECT OVEN PH200にてWind Controlを7に設定して150℃で40秒間乾燥し、画像形成層C2を形成した。これにより、実施例21及び比較例5の平版印刷版原版を得た。
-画像記録層C2用塗布液-
・ノボラック樹脂(m-クレゾール/p-クレゾール/フェノール=3/2/5、Mw8,000):3.5部
・下記構造のノボラック樹脂:0.68部
・赤外線吸収剤(上記シアニン染料A):0.045部
・エチルバイオレットの対アニオンを6-ヒドロキシ-β-ナフタレンスルホン酸にした染料:0.15部
・ビスフェノールスルホン:0.3部
・テトラヒドロフタル酸:0.4部
・下記表4に記載の重合体:0.02部
・メチルエチルケトン:30部
・プロピレングリコールモノメチルエーテル:15部
・γ-ブチロラクトン:15部
(実施例22、比較例6)
<支持体Dの作製>
 厚み0.3mmのアルミニウム板(材質1050)を用いて以下の(a)~(e)の各種処理を連続的に行った。なお、各処理及び水洗の後にはニップローラで液切りを行った。
(処理(a))
 厚み0.3mmのアルミニウム板(材質1050)の表面の圧延油を除去するため、10質量%アルミン酸ソーダ水溶液を用いて50℃で30秒間、脱脂処理を施した後、毛径0.3mmの束植ナイロンブラシ3本とメジアン径30μmのパミス-水懸濁液(比重1.1g/cm)を用いブラシ回転数250rpmでアルミ表面を砂目立てして、水でよく洗浄した。
(処理(b))
 この板を45℃の25%水酸化ナトリウム水溶液に9秒間浸漬してエッチングを行い、水洗後、さらに60℃で20%硝酸に20秒間浸漬し、水洗した。この時の砂目立て表面のエッチング量は約3g/mであった。
(処理(c))
 次に、60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、硝酸1質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)、液温50℃であった。交流電源波形は、電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電流密度は電流のピーク値で30A/dm、補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。硝酸電解における電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量175C/dmであった。その後、スプレーによる水洗を行った。
(処理(d))
 次に、塩酸0.5質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)、液温50℃の電解液にて、アルミニウム板が陽極時の電気量50C/dmの条件で、硝酸電解と同様の方法で、電気化学的な粗面化処理を行い、その後、スプレーによる水洗を行った。
(処理(e))
 この板を、15%硫酸(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)を電解液として電流密度15A/dmで2.5g/m2の直流陽極酸化皮膜を設けた後、水洗、乾燥し支持体Aとした。この基板の中心線平均粗さ(Ra)を直径2μmの針を用いて測定したところ、0.51μmであった。
 以上のようにして支持体Dを作製した。
<下塗り層Dの形成>
 支持体D上に、下記下塗り層用塗布液を、乾燥後の塗布量は5mg/mとなるように塗布し、100℃10秒間乾燥して、下塗り層Dを形成した。
-下塗り層用塗布液-
・下記構造の高分子化合物a-1(Mw:35,000):0.05g
・メタノール:27g
・イオン交換水:3g
<画像記録層D>
 下塗り層D上に、下記組成の画像記録層D用塗布液を調製し、乾燥後の塗布量が1.0g/mとなるように塗布し、温風式乾燥装置にて115℃で34秒間乾燥して画像記録層Dを形成した。
-画像記録層D用塗布液-
・赤外線吸収剤(下記IR-1):0.040部
・重合開始剤A(下記S-1):0.104部
・重合開始剤B(下記I-1):0.153部
・メルカプト化合物(下記SH-1):0.038部
・増感助剤(下記T-1):0.121部
・重合性化合物(下記M-1):0.535部
・ウレタン系バインダーポリマーA(下記ポリウレタン樹脂(P-1)、Mw:100000):0.107部
・アクリル系バインダーポリマーB(下記アクリル樹脂B-1、Mw:100000):0.267部 
・アクリル系バインダーポリマーC(下記アクリル樹脂C-1、Mw:100000):0.160部
・銅フタロシアニン顔料分散物:0.775部
(C.I.Pigment Blue 15:6、分散溶媒:MEK/MF部/MA= 2/2/1、顔料固形分15wt%)
・重合禁止剤(下記Q-1):0.0015部
・下記表5に記載の重合体:0.02部
・メチルエチルケトン:6.481部
・メタノール:2.738部
・1-メトキシ-2-プロパノール:5.119部
<最外層(保護層)Dの形成>
 画像記録層D上に、合成雲母(ソマシフMEB-3L、3.2%水分散液、コープケミカル(株)製)、ポリビニルアルコール(ゴーセランCKS-50:ケン化度99モル%、重合度300、スルホン酸変性ポリビニルアルコール日本合成化学工業株式会社製)界面活性剤A(日本エマルジョン社製、エマレックス710)及び界面活性剤B(アデカプルロニック(登録商標)P-84:旭電化工業株式会社製)の混合水溶液(下部保護層用塗布液)を塗布し、温風式乾燥装置にて125℃で30秒間乾燥させた。この混合水溶液(下部保護層用塗布液)中の合成雲母(固形分)/ポリビニルアルコール/界面活性剤A/界面活性剤Bの含有量割合は、7.5/89/2/1.5(質量部)であり、塗布量は(乾燥後の被覆量)は0.5g/mであった。
 得られた下部保護層上に、有機フィラー(アートパールJ-7P、根上工業(株)製)、合成雲母(ソマシフMEB-3L、3.2%水分散液、コープケミカル(株)製)、ポリビニルアルコール(L-3266:ケン化度87モル%、重合度300、スルホン酸変性ポリビニルアルコール日本合成化学工業株式会社製)、増粘剤(セロゲンFS-B、第一工業製薬(株)製)、高分子化合物A(下記構造)、及び界面活性剤(日本エマルジョン社製、エマレックス710)の混合水溶液(上部保護層用塗布液)を塗布し、温風式乾燥装置にて125℃で30秒間乾燥させた。この混合水溶液(上部保護層用塗布液)中の有機フィラー/合成雲母(固形分)/ポリビニルアルコール/増粘剤/高分子化合物A/界面活性剤の含有量割合は、4.7/2.8/67.4/18.6/2.3/4.2(質量部)であり、塗布量は(乾燥後の被覆量)は1.8g/mであった。
(実施例23、比較例7)
<支持体Eの作製>
 厚さ0.30mmの材質1Sのアルミニウム板を8号ナイロンブラシと800メッシュのパミストンの水懸濁液を用い、その表面を砂目立てした後、よく水で洗浄した。10%水酸化ナトリウムに70℃で60秒間浸漬してエッチングした後、流水で、水洗後、20%HNOで中和洗浄、水洗した。これをVA=12.7Vの条件下で正弦波の交番波形電流を用いて1%硝酸水溶液中で300クーロン/dmの陽極時電気量で電解粗面化処理を行った。その表面粗さを測定したところ0.45μm(Ra表示)であった。ひきつづいて30%のH2SO4水溶液中に浸漬し、55℃で2分間デスマットした後、33℃、20%H2SO4水溶液中で、砂目立てした面に陰極を配置して、電流密度5A/dm2において50秒間陽極酸化したところ、厚さが2.6g/mであった。これを支持体Eとした。
<下塗り層Eの形成>
 支持体E上に、下記の下塗り層用塗布液を、バーコーターを用いて乾燥後の塗布量2mg/mとなるよう塗布し、80℃で20秒間乾燥して、下塗り層Eを形成した。
-下塗り層用塗布液-
・ポリマー(下記構造):0.3部
・純水:60.0部   
・メタノール:939.7部
<画像記録層E>
 下塗り層E上に、バーコーターを用いて下記組成の画像記録層E用塗布液を、乾燥後の塗布量が1.35g/mとなるよう塗布し、90℃で1分間乾燥し、画像記録層Eを形成した。
-画像記録層E用塗布液-
・デグサ社製PLEX6661-O:1.69部 
・バインダーポリマーPP-3(下記構造):1.87部
・増感色素D40(下記構造):0.13部
・BIMD(黒金化成社製ヘキサアリールビスイミダゾール):0.46部
・ε-フタロシアニン(下記F-1)分散物(25%MEK分散液):1.70部
・メルカプト基含有ヘテロ環化合物SH-8(下記構造):0.34部
・下記表5に記載の重合体:0.03部
・クペロンAL(和光(株)社製)トリクレジルホスフェート10%溶液:0.12部
・メチルエチルケトン:27.0部
・プロピレングリコールモノメチルエーテル:26.7部
・S-2358 Yellow(大日精化工業(株)社製):0.50部
<最外層(保護層)Eの形成>
 画像記録層E上に、以下の保護層用水溶液を、乾燥後の塗布量が2.5g/mとなるようにバーコーターで塗布し、120℃で1分間乾燥させ、最外層(保護層)Eを形成した。
-保護層用水溶液-
・PVA105(ケン化度98モル%、クラレ(株)製):1.80部
・ポリビニルピロリドン:0.40部 
・EMALEX710(日本乳化剤(株)製ノニオン界面活性剤):0.04部
・パイオニンD230(竹本油脂(株)製界面活性剤):0.05部
・ルビスコールV64W(BASF社製):0.06部
・下記構造のスルホン酸基含有ポリマー13%水溶液:0.36部
・純水:36.0部
(実施例24、比較例8)
<支持体Fの作製>
 厚さ0.03mmのアルミニウム板(JIS A1050)を用いて以下の表面処理を行なった。
(電気化学的粗面化処理)
 60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的粗面化処理を行った。このときの電解液は、硝酸10.5g/L水溶液(アルミニウムイオンを5g/L、アンモニウムイオンを0.007質量%含む。)、液温50℃であった。電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電解槽はラジアルセルタイプのものを使用した。電流密度は電流のピーク値で30A/dm、電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で220C/dmであった。補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。その後、スプレーによる水洗を行った。
(アルカリエッチング処理)
 アルミニウム板をカセイソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%の水溶液を用いてスプレーによるエッチング処理を32℃で行い、アルミニウム板を0.50g/m溶解し、前段の交流を用いて電気化学的粗面化処理を行ったときに生成した水酸化アルミニウムを主体とするスマット成分を除去し、また、生成したピットのエッジ部分を溶解してエッジ部分を滑らかにした。その後、スプレーによる水洗を行った。
(デスマット処理)
 温度30℃の硫酸濃度15質量%水溶液(アルミニウムイオンを4.5質量%含む。)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、スプレーで水洗した。
(電気化学的粗面化処理)
 60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、塩酸5.0g/L水溶液(アルミニウムイオンを5g/L含む。)、温度35℃であった。電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電解槽はラジアルセルタイプのものを使用した。電流密度は電流のピーク値で25A/dm、電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で50C/dmであった。その後、スプレーによる水洗を行った。
(陽極酸化処理)
 二段給電電解処理法の陽極酸化装置(第一及び第二電解部長各6m、第一及び第二給電部長各3m、第一及び第二給電極部長各2.4m)を用いて陽極酸化処理を行った。第一及び第二電解部に供給した電解液は、いずれも、硫酸濃度50g/L(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)、温度20℃であった。その後、スプレーによる水洗を行った。最終的な酸化皮膜量は2.7g/mであった。
(親水化処理)
 純水にポリビニルホスホン酸(PCAS社製)を0.4質量%溶解させた53℃の処理液に10秒浸漬し、ニップローラにて余剰の処理液を除去した。この後に、カルシウムイオン濃度を20~400ppm含む60℃の井水にて4秒間水洗し、更に25℃の純水で4秒間洗浄し、ニップロールにて余剰の純水を除去した。その後の乾燥工程にてアルミニウム板上の水分を完全に除去した
 得られた支持体Fの中心線平均粗さ(JIS B0601によるRa表示)を直径2μmの針を用いて測定したところ0.28μmであった。
<画像記録層Fの形成>
 支持体F上に、下記組成の画像記録層F用塗布液を乾燥塗布質量が1.4g/mとなるように塗布し、100℃で1分間乾燥させて画像記録層Fを形成した。
-画像記録層F用塗布液-
・重合性化合物(化合物A):4.0部
・バインダーポリマー(バインダーA)(Mw=50000):2.0部
・増感色素(C-1):0.32部
・重合開始剤(D-1):0.61部
・連鎖移動剤(E-1):0.57部
・N-ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩:0.020部
・ε―フタロシアニン顔料(F1)分散物:0.71部
(顔料:15部、分散剤 下記ポリマー(1):10部、
・溶剤:シクロヘキサノン/メトキシプロピルアセテート/1-メトキシ-2-プロパノール=15部/20部/40部
・下記表5に記載の重合体:0.016部
・メチルエチルケトン:47部
・プロピレングリコールモノメチルエーテル:45部
<最外層(保護層)Fの形成>
 画像記録層F上に、下記組成の保護層用塗布液を、乾燥後の塗布量が25g/mとなるようにバー塗布した後、125℃で70秒間オーブン乾燥し、最外層(保護層)Fを形成した。
-保護層用塗布液-
・下記雲母分散液:0.6g
・スルホン酸変性ポリビニルアルコール(ゴーセランCKS-50、日本合成化学(株)製(ケン化度:99モル%、平均重合度:300、変性度:約0.4モル%)):0.8g
・ポリ(ビニルピロリドン/酢酸ビニル(1/1))(分子量:7万):0.001g
・界面活性剤(エマレックス(登録商標)710、日本エマルジョン(株)製):0.002g
・水:13g
(雲母分散液)
 水368gに合成雲母(ソマシフME-100、コープケミカル社製、アスペクト比:1000以上)32gを添加し、ホモジナイザーを用いて平均粒径(レーザー散乱法)0.5μmになる迄分散し、雲母分散液を得た。
(評価)
1.面状の評価
 作製した平版印刷版原版を、40cm×62cmに加工した。得られたサンプルの最外層側の表面を、750~1500Luxの白灯照射下で目視観察し、以下基準に沿って面状を評価した。結果を表5に示す。
-基準-
 A:全面的にムラが視認されない
 B:部分的に弱いムラが視認される
 C:全面に弱いムラが視認される
 D:全面に強いムラが視認される
(実施例27、28)
<支持体G>
 厚さ0.3mmの材質1Sのアルミニウム板(アルミニウム合金板)に対し、下記(J-a)~(J-m)の処理を施し、支持体Gを製造した。なお、全ての処理工程の間には水洗処理を施し、水洗処理の後にはニップローラで液切りを行った。
(J-a)機械的粗面化処理(ブラシグレイン法)
 図5に示したような装置を使って、パミスの懸濁液(比重1.1g/cm)を研磨スラリー液としてアルミニウム板の表面に供給しながら、回転する束植ブラシにより機械的粗面化処理を行った。図5において、31はアルミニウム板、32及び34はローラ状ブラシ(本実施例においては、束植ブラシ)、33は研磨スラリー液、35、36、37及び38は支持ローラである。
 機械的粗面化処理では、研磨材のメジアン径(μm)を30μm、ブラシ本数を4本、ブラシの回転数(rpm)を250rpmとした。束植ブラシの材質は6・10ナイロンで、ブラシ毛の直径0.3mm、毛長50mmであった。ブラシは、φ300mmのステンレス製の筒に穴をあけて密になるように植毛した。束植ブラシ下部の2本の支持ローラ(φ200mm)の距離は、300mmであった。束植ブラシはブラシを回転させる駆動モータの負荷が、束植ブラシをアルミニウム板に押さえつける前の負荷に対して10kWプラスになるまで押さえつけた。ブラシの回転方向はアルミニウム板の移動方向と同じであった。
(J-b)アルカリエッチング処理
 アルミニウム板に、カセイソーダ濃度26質量%及びアルミニウムイオン濃度6.5質量%のカセイソーダ水溶液を、温度70℃でスプレーにより吹き付けてエッチング処理を行った。後に電気化学的粗面化処理を施す面のアルミニウム溶解量は、10g/mであった。
(J-c)酸性水溶液を用いたデスマット処理
 酸性水溶液として、液温35℃の次工程の電気化学的粗面化処理に用いた硝酸の廃液をアルミニウム板にスプレーにて3秒間吹き付けて、デスマット処理を行った。
(J-d)硝酸水溶液を用いた電気化学的粗面化処理
 60Hzの交流電圧を用いて、連続的に電気化学的粗面化処理を行った。電解液は、硝酸10.4g/Lの水溶液に硝酸アルミニウムを添加してアルミニウムイオン濃度を4.5g/Lに調整した、液温35℃の電解液を用いた。交流電源波形は図3に示した波形であり、電流値がゼロからピークに達するまでの時間tpが0.8msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電解槽は図4に示すものを使用した。電流密度は電流のピーク値で30A/dm、補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。電気量(C/dm)はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で185C/dmであった。
(J-e)アルカリエッチング処理
 アルミニウム板に、カセイソーダ濃度27質量%及びアルミニウムイオン濃度2.5質量%のカセイソーダ水溶液を、温度50℃でスプレーにより吹き付けてエッチング処理を行った。アルミニウム溶解量は、3.5g/mであった。
(J-f)酸性水溶液を用いたデスマット処理
 酸性水溶液として、液温30℃の硫酸濃度170g/L及びアルミニウムイオン濃度5g/Lの水溶液をアルミニウム板にスプレーにて3秒間吹き付けて、デスマット処理を行った。
(J-g)塩酸水溶液を用いた電気化学的粗面化処理
 60Hzの交流電圧を用いて、連続的に電気化学的粗面化処理を行った。電解液は、塩酸6.2g/Lの水溶液に塩化アルミニウムを添加してアルミニウムイオン濃度を4.5g/Lに調整した、液温35℃の電解液を用いた。交流電源波形は図3に示した波形であり、電流値がゼロからピークに達するまでの時間tpが0.8msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電解槽は図4に示すものを使用した。電流密度は電流のピーク値で25A/dmであり、塩酸電解における電気量(C/dm)はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で63C/dmであった。
(J-h)アルカリエッチング処理
 アルミニウム板に、カセイソーダ濃度5質量%及びアルミニウムイオン濃度0.5質量%のカセイソーダ水溶液を、温度60℃でスプレーにより吹き付けてエッチング処理を行った。アルミニウム溶解量は、0.2g/mであった。
(J-i)酸性水溶液を用いたデスマット処理
 酸性水溶液として、液温35℃の陽極酸化処理工程で発生した廃液(硫酸濃度170g/L及びアルミニウムイオン濃度5g/L)の水溶液をアルミニウム板にスプレーにて4秒間吹き付けて、デスマット処理を行った。
(J-j)第1段階の陽極酸化処理
 図6に示す構造の直流電解による陽極酸化装置を用いて第1段階の陽極酸化処理を行った。電解液として170g/L硫酸水溶液を用い、液温50℃、電流密度30A/dmの条件にて陽極酸化処理を行い、皮膜量0.3g/mの陽極酸化皮膜を形成した。
(J-k)ポアワイド処理
 陽極酸化処理したアルミニウム板を、カセイソーダ濃度5質量%及びアルミニウムイオン濃度0.5質量%のカセイソーダ水溶液に、40℃で3秒間浸漬し、ポアワイド処理を行った。
(J-l)第2段階の陽極酸化処理
 図6に示す構造の直流電解による陽極酸化装置を用いて第2段階の陽極酸化処理を行った。電解液として170g/L硫酸水溶液を用い、液温50℃、電流密度13A/dmの条件にて陽極酸化処理を行い、皮膜量2.6g/mの陽極酸化皮膜を形成した。
(J-m)親水化処理
 非画像部の親水性を確保するため、アルミニウム板を、2.5質量%3号ケイ酸ソーダ水溶液に50℃で7秒間浸漬してシリケート処理を施した。Siの付着量は8.5mg/mであった。マイクロポアの平均径は30nmであった。
 支持体Gの陽極酸化皮膜表面のL*a*b*表色系における明度L*の値は72.3であった。
 支持体Gの陽極酸化皮膜量は2.6g/mであった。
<下塗り層Gの形成> 
 上記で得た支持体G上に、下記組成の下塗り層塗布液Gを乾燥塗布量が26mg/mになるよう塗布して、下塗り層Gを形成した。
(下塗り層塗布液G)
・下塗り層用化合物(2)(下記構造):0.13部
・ヒドロキシエチルイミノ二酢酸:0.05部
・エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム:0.05部
・ポリオキシエチレンラウリルエーテル:0.03部
・水:61.39部
<画像記録層Gの形成>
 下塗り層G上に、下記組成の画像記録層G用塗布液をバー塗布し、100℃で60秒間オーブン乾燥し、厚さ1.2μmの画像記録層Gを形成した。
 画像記録層G用塗布液は、下記感光液G及びミクロゲル液(1)を塗布直前に混合し、撹拌することにより得た。
(感光液G)
・バインダーポリマー(1)(下記構造)の23質量%1-メトキシ-2-プロパノール溶液:0.3750部
・バインダーポリマー(2)(下記構造)の23質量%1-メトキシ-2-プロパノール溶液:0.3834部
・赤外線吸収剤(1)(下記構造):0.0185部
・ボレート化合物(1)(テトラフェニルホウ酸ナトリウム):0.0040部
・重合開始剤(1)(下記構造):0.1250部
・重合性化合物(1)(トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、NKエステルA-9300 40% 2-ブタノン溶液、新中村化学工業(株)製):0.2050部
・低分子親水性化合物(1)(トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート):0.0287部
・低分子親水性化合物(2)(トリメチルグリシン):0.0147部
・アニオン性界面活性剤1(下記構造)の30質量%水溶液:0.240部
・紫外線吸収剤(1)(TINUVIN405、BASF(株)社製)(下記構造):0.040部
・重合体P-14(上記構造):0.004部
・ホスホニウム化合物(1)(下記構造):0.025部
・アンモニウム基含有ポリマー(1)(下記構造、還元比粘度44ml/g):0.030部
・ベンジルジメチルオクチルアンモニウム・PF塩:0.023部
・2-ブタノン:5.391部
・1-メトキシ-2-プロパノール:3.154部
・メタノール:1.117部
(ミクロゲル液(1))
・ミクロゲル(1)(固形分濃度21.8質量%):2.243部
・1-メトキシ-2-プロパノール:0.600部
(ミクロゲル(1)の作製)
 上記ミクロゲル液(1)に用いたミクロゲル(1)の調製法を以下に示す。
<多価イソシアネート化合物(1)の調製>
 イソホロンジイソシアネート17.78部(80モル当量)と下記多価フェノール化合物(1)7.35部(20モル当量)との酢酸エチル(25.31部)懸濁溶液に、ビスマストリス(2-エチルヘキサノエート)(ネオスタン U-600、日東化成(株)製)0.043部を加えて撹拌した。発熱が収まった時点で反応温度を50℃に設定し、3時間撹拌して多価イソシアネート化合物(1)の酢酸エチル溶液(50質量%)を得た。
<ミクロゲル(1)の調製>
 下記油相成分及び水相成分を混合し、ホモジナイザーを用いて12,000rpmで10分間乳化した。得られた乳化物を45℃で4時間撹拌後、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン-オクチル酸塩(U-CAT SA102、サンアプロ(株)製)の10質量%水溶液5.20部を加え、室温で30分撹拌し、45℃で24時間静置した。蒸留水で、固形分濃度を21.8質量%になるように調整し、ミクロゲル(1)の水分散液を得た。動的光散乱式粒径分布測定装置LB-500((株)堀場製作所製)を用いて、光散乱法により体積平均粒径を測定したところ、0.28μmであった。
(油相成分)
 (成分1)酢酸エチル:12.0部
 (成分2)トリメチロールプロパン(6モル)とキシレンジイソシアネート(18モル)を付加させ、これにメチル片末端ポリオキシエチレン(1モル、オキシエチレン単位の繰返し数:90)を付加させた付加体(50質量%酢酸エチル溶液、三井化学(株)製):3.76部
 (成分3)多価イソシアネート化合物(1)(50質量%酢酸エチル溶液として):15.0部
 (成分4)ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(SR-399、サートマー社製)の65質量%酢酸エチル溶液:11.54部
 (成分5)スルホン酸塩型界面活性剤(パイオニンA-41-C、竹本油脂(株)製)の10%酢酸エチル溶液:4.42部
(水相成分)
 蒸留水:46.87部
<バインダーポリマー(1)の合成>
 三口フラスコに、1-メトキシ-2-プロパノール:78.0gを秤取り、窒素気流下、70℃に加熱した。この反応容器に、ブレンマーPME-100(メトキシジエチレングリコールモノメタクリレート、日油(株)製):52.1g、メチルメタクリレート:21.8g、メタクリル酸:14.2g、ヘキサキス(3-メルカプトプロピオン酸)ジペンタエリスリトール:2.15g、V-601(2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチル、富士フイルム和光純薬(株)製):0.38g、1-メトキシ-2-プロパノール:54gからなる混合溶液を2時間30分かけて滴下した。滴下終了後、80℃に昇温し、更に2時間反応を続けた。V-601:0.04g、1-メトキシ-2-プロパノール:4gから成る混合溶液を加え、90℃に昇温して2.5時間反応を続けた。反応終了後、室温まで反応液を冷却した。
 上記の反応溶液に1-メトキシ-2-プロパノール:137.2g、4-ヒドロキシテトラメチルピペリジン-N-オキシド:0.24g、グリシジルメタクリレート:26.0g、テトラエチルアンモニウムブロミド:3.0gを加えてよく撹拌した後、90℃にて加熱した。
 18時間後、室温(25℃)まで反応溶液を冷却した後、1-メトキシ-2-プロパノール:99.4gを加えて希釈した。
 こうして得られたバインダーポリマー(1)は、固形分濃度:23質量%、GPCで測定したポリスチレン換算重量平均分子量は3.5万であった。
<バインダーポリマー(2)の合成>
 三口フラスコに、1-メトキシ-2-プロパノール:78.00gを秤取り、窒素気流下、70℃に加熱した。この反応容器に、ブレンマーPME-100(メトキシジエチレングリコールモノメタクリレート、日油(株)製):65.8g、メチルメタクリレート:28.4g、メタクリル酸:2.8g、ヘキサキス(3-メルカプトプロピオン酸)ジペンタエリスリトール:6.4g、V-601(2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチル、富士フイルム和光純薬(株)製):1.1g、1-メトキシ-2-プロパノール:55gからなる混合溶液を2時間30分かけて滴下した。滴下終了後、80℃に昇温し、更に2時間反応を続けた。2時間後、V-601:0.11g、1-メトキシ-2-プロパノール:1gから成る混合溶液を加え、90℃に昇温して2.5時間反応を続けた。反応終了後、室温まで反応液を冷却した。
 上記の反応溶液に1-メトキシ-2-プロパノール:177.2g、4-ヒドロキシテトラメチルピペリジン-N-オキシド:0.28g、グリシジルメタクリレート:46.0g、テトラブチルアンモニウムブロミド:3.4gを加えてよく撹拌した後、90℃にて加熱した。
 18時間後、室温(25℃)まで反応溶液を冷却した後、4-メトキシフェノール:0.06g、1-メトキシ-2-プロパノール:114.5gを加えて希釈した。
 こうして得られたバインダーポリマー(2)は、固形分濃度:23質量%、GPCで測定したポリスチレン換算重量平均分子量は5.0万であった。
<画像記録層Hの形成>
 下塗り層G上に、下記組成の画像記録層H用塗布液をバー塗布し、100℃で60秒間オーブン乾燥し、厚さ1.2μmの画像記録層Hを形成した。
 画像記録層H用塗布液は下記感光液H及びミクロゲル液(1)を塗布直前に混合し、撹拌することにより得た。
(感光液H)
・バインダーポリマー(1)(上記構造)の23質量%1-メトキシ-2-プロパノール溶液:0.2891部
・バインダーポリマー(3)(下記構造)の23質量%1-メトキシ-2-プロパノール溶液:0.4574部
・赤外線吸収剤(1)(下記構造):0.0278部
・ボレート化合物(1)(テトラフェニルホウ酸ナトリウム):0.015部
・重合開始剤(1)(下記構造):0.2348部
・重合性化合物(1)(トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、NKエステルA-9300 40% 2-ブタノン溶液、新中村化学工業(株)製)0.2875部
・低分子親水性化合物(1)(トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート):0.0287部
・低分子親水性化合物(2)(トリメチルグリシン):0.0147部
・アニオン性界面活性剤1 30質量%水溶液(下記構造):0.25部
・紫外線吸収剤(1)(TINUVIN405、BASF(株)社製)(下記構造):0.04部
・重合体P-14(上記構造):0.004部
・ホスホニウム化合物(1)(下記構造):0.020部
・2-ブタノン:5.346部
・1-メトキシ-2-プロパノール:3.128部
・メタノール:0.964部
・純水:0.036部
(ミクロゲル液(1))
・ミクロゲル(1)(固形分濃度21.8質量%):2.345部
・1-メトキシ-2-プロパノール:0.655部
(ミクロゲル(1)の作製)
 上記ミクロゲル(1)は、画像記録層G用塗布液に用いたミクロゲル(1)と同様にして作製した。
<バインダーポリマー(3)の合成>
 三口フラスコに、1-メトキシ-2-プロパノール:78.00gを秤取り、窒素気流下、70℃に加熱した。この反応容器に、ブレンマーPME-100(メトキシジエチレングリコールモノメタクリレート、日本油脂(株)製):52.8g、メチルメタクリレート:2.8g、メタクリル酸:25.0g、ヘキサキス(3-メルカプトプロピオン酸)ジペンタエリスリトール:6.4g、V-601(2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチル、和光純薬工業(株)製):1.1g、1-メトキシ-2-プロパノール:55gからなる混合溶液を2時間30分かけて滴下した。滴下終了後、80℃に昇温し、更に2時間反応を続けた。2時間後、V-601:0.11g、1-メトキシ-2-プロパノール:1gから成る混合溶液を加え、90℃に昇温して2.5時間反応を続けた。反応終了後、室温まで反応液を冷却した。
 上記の反応溶液に1-メトキシ-2-プロパノール:177.2g、4-ヒドロキシテトラメチルピペリジン-N-オキシド:0.28g、グリシジルメタクリレート:46.0g、テトラブチルアンモニウムブロミド:3.4gを加えてよく撹拌した後、90℃にて加熱した。
 18時間後、室温(25℃)まで反応溶液を冷却した後、4-メトキシフェノールを0.06g、1-メトキシ-2-プロパノール:114.5gを加えて希釈した。
 こうして得られたバインダーポリマー(3)は、固形分濃度:23質量%、GPCで測定したポリスチレン換算重量平均分子量は1.5万であった。
<保護層Gの形成>
 画像記録層G上に、下記組成の保護層塗布液Gをバー塗布し、120℃で60秒間オーブン乾燥して厚さ0.15μmの保護層Gを形成した。
(保護層用塗布液G)
 無機層状化合物分散液(1):1.799部
 親水性ポリマー(1)(下記化合物の20%水溶液):0.264部
 ポリビニルアルコール(日本合成化学工業(株)製CKS50、スルホン酸変性、けん化度99モル%以上、重合度300)6質量%水溶液:0.012部
 ポリビニルアルコール((株)クラレ製PVA-405、けん化度81.5モル%、重合度500)6質量%水溶液:0.001部
 ラピゾールA-80(アニオン界面活性剤、日油(株)製、80%水溶液):0.145部
 イオン交換水:5.3379部
(無機層状化合物分散液(1)の調製)
 イオン交換水193.6部に合成雲母ソマシフME-100(コープケミカル(株)製)6.4部を添加し、ホモジナイザーを用いて体積平均粒子径(レーザー散乱法)が3μmになるまで分散して無機層状化合物分散液(1)を調製した。分散粒子のアスペクト比は100以上であった。
<保護層Hの形成>
 画像記録層H上に、下記組成の保護層塗布液Hをバー塗布し、120℃で60秒間オーブン乾燥して厚さ0.18μmの保護層Hを形成した。
(保護層塗布液H)
・無機層状化合物分散液(1):2.212部
・ポリビニルアルコール(ゴーセランL-3266、日本合成化学工業(株)製、スルホン酸変性、けん化度85モル%)6質量%水溶液:1.440部
・リン酸:0.020部
・リン酸第二アンモニウム:0.032部
・界面活性剤(パイオニンA-32-B(下記)、竹本油脂(株)製)40質量%水溶液:0.014部
・界面活性剤(サーフィノール465(下記)、日信化学(株)製):0.006部
・純水:3.955部
(無機層状化合物分散液(1)の調製)
 イオン交換水193.6部に合成雲母ソマシフME-100(コープケミカル(株)製)6.4部を添加し、ホモジナイザーを用いて体積平均粒子径(レーザー散乱法)が3μmになるまで分散して無機層状化合物分散液(1)を調製した。分散粒子のアスペクト比は100以上であった。
(評価)
1.面状の評価
 作製した平版印刷版原版を、40cm×62cmに加工した。得られたサンプルの最外層側の表面を、750~1500Luxの白灯照射下で目視観察し、以下基準に沿って面状を評価した。結果を表3~表4に示す。
-基準-
 A:全面的にムラが視認されない。
 B:部分的に弱いムラが視認される。
 C:Bよりも広い領域にて部分的に弱いムラが視認される。
 D:全面に弱いムラが視認される。
 E:全面に強いムラが視認される。
2.機上現像性の評価
 作製した平版印刷版原版を、赤外線半導体レーザー搭載のKodak社製Magnus800 Quantumにて、出力27W、外面ドラム回転数450rpm、解像度2,400dpi(dot per inch、1inchは2.54cm)の条件で露光(照射エネルギー110mJ/cm相当)した。露光画像にはベタ画像、及び、AMスクリーン(Am
plitude Modulation Screen)50%網点のチャートを含むようにした。得られた露光済み原版を現像処理することなく、菊判サイズのハイデルベルグ社製印刷機SX-74のシリンダーに取り付けた。本印刷機には、不織布フィルターと温度制御装置を内蔵する容量100Lの湿し水循環タンクを接続した。湿し水S-Z1(富士フイルム(株)製)2.0%の湿し水80Lを循環装置内に仕込み、印刷インクとしてT&K UV OFS K-HS墨GE-M((株)T&K TOKA製)を用い、標準の自動印刷スタート方法で湿し水とインクを供給した後、毎時10,000枚の印刷速度で特菱アート紙(連量:76.5kg、三菱製紙(株)製)に200枚印刷を行った。上記機上現像において、非画像部にインクが転写しない状態になるまでに要した印刷用紙の枚数(以降、機上現像枚数ともいう)を求めた。機上現像枚数が少ないほど、機上現像性が良好であるといえる。上記機上現像において、非画像部にインクが転写しない状態になるまでに要した印刷用紙の枚数を機上現像性として求めた。上記枚数が少ないほど、機上現像性が良好であるといえる。結果を表6に示す。
 表3~表6に記載した結果から、実施例に係る平版印刷版原版は、比較例に係る平版印刷版原版と比べて、面状に優れることが分かる。
 また、表3~表4に記載の結果から、実施例1~19、25~26に係る平版印刷版原版は、比較例1~3、9に係る平版印刷版原版に比べ、機上現像性に優れることも分かる。
(酸発色させた画像記録層の評価)
 上記実施例1~19、25~26に係る平版印刷版原版の機上現像性の評価において、SD値、Slope値、Curve値等の各パラメータ設定時の露光現像を、以下の条件で行った以外は、実施例1~19、25~26と同様にして、平版印刷版原版の作製、及び、評価を行った。
 具体的には、平版印刷版原版を、予め定められた画像様に露光し、PSフィニッシングガムFN-6(富士フイルム(株)製)を染み込ませたスポンジ(3M社製)で軽く擦り現像を行い、次に、水を含ませたウエスにて版表面を洗浄し、その後、クエン酸(富士フイルム和光純薬(株)製)10gとキッチン用アルコール除菌液(フマキラー(株)製)90ccを混合した酸性溶液をスポンジ(3M社製)に染み込ませ版面に均一に広げ、画像部を発色させた。
 実施例1~19、25~26における機上現像性の評価結果は、対応する実施例1~19、25~26における機上現像性の評価結果と同様であった。即ち、視認性向上の目的で、画像部を発色させた場合も、実施例の平版印刷版原版は、良好な機上現像性を有することが確認された。
〔符号の説明〕
 12a,12b:アルミニウム支持体、18:アルミニウム板、20a,20b:陽極酸化皮膜、22a,22b:マイクロポア、24:大径孔部、26:小径孔部、D:大径孔部の深さ、1:アルミニウム板、2及び4:ローラ状ブラシ、3:研磨スラリー液、5、6、7及び8:支持ローラ、50:主電解槽、51:交流電源、52:ラジアルドラムローラ、53a,53b:主極、54:電解液供給口、55:電解液、56:補助陽極、57:電解液通路、58:補助陽極、60:補助陽
極槽、610:陽極酸化処理装置、612:給電槽、614:電解処理槽、616:アルミニウム板、618,26:電解液、620:給電電極、622,628:ローラ、624:ニップローラ、630:電解電極,632:槽壁、634:直流電源、W:アルミニウム板、S:給液方向、Ex:電解液排出方向、ta:アノード反応時間、tc:カソード反応時間、tp:電流が0からピークに達するまでの時間、Ia:アノードサイクル側のピーク時の電流、Ic:カソードサイクル側のピーク時の電流、AA:アルミニウム板のアノード反応の電流、CA:アルミニウム板のカソード反応の電流
 2022年11月30日に出願された日本国特許出願2022-192211及び2023年7月10日に出願された日本国特許出願2023-113277の開示は参照により本開示に取り込まれる。
 本開示に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本開示中に参照により取り込まれる。

Claims (16)

  1.  支持体、及び、前記支持体上に画像記録層を有し、
     前記画像記録層が、ケイ素原子を2個以上含む置換基を側鎖に有する(メタ)アクリル重合体Aを含む、平版印刷版原版。
  2.  支持体、及び、前記支持体上に画像記録層を有し、
     前記画像記録層が、下記式(I)で表される構成単位を有する重合体Bを含む、平版印刷版原版。

     
     式(I)中、R11及びR12はそれぞれ独立に水素原子又はアルキル基を表し、R13は水素原子又は一価の置換基を表し、L11及びL12はそれぞれ独立に単結合又は二価の連結基を表し、Rhはケイ素原子を2個以上含む置換基を表す。
  3.  機上現像型平版印刷版原版である、請求項1又は請求項2に記載の平版印刷版原版。
  4.  前記画像記録層が、樹脂粒子を更に含む請求項3に記載の平版印刷版原版。
  5.  前記画像記録層が、発色剤を更に含む請求項3に記載の平版印刷版原版。
  6.  (メタ)アクリル重合体Aが、ケイ素原子を2個以上含む置換基を側鎖に有する構成単位と、親水性基を側鎖に有する構成単位と、を含む共重合体である、請求項1に記載の平版印刷版原版。
  7.  前記(メタ)アクリル重合体Aが、ケイ素原子を2個以上含む置換基を側鎖に有する構成単位と、ポリアルキレンオキシ基を側鎖に有する構成単位と、を含む共重合体である、請求項1に記載の平版印刷版原版。
  8.  前記式(I)におけるRhが、下記式(Ia)で表される構造を2個以上含む基である、請求項2に記載の平版印刷版原版。

     
     式(Ia)中、*は、結合位置を表し、R11、R12、及びR13はそれぞれ独立にアルキル基、アルケニル基、アリール基、又はアルキレンアリール基を表す。
  9.  前記重合体Bが、親水性基を側鎖に有する構成単位を更に有する、請求項2に記載の共重合体である平版印刷版原版。
  10.  前記親水性基を側鎖に有する構成単位が、下記式(a4)で表される構成単位である、請求項9に記載の平版印刷版原版。

     式(a4)中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又はアルキル基を表し、Rは水素原子又は一価の置換基を表し、Lは-C(=O)-O-又は-C(=O)-NH-を表し、Lは単結合又は二価の連結基を表し、Xは親水性基を表す。
  11.  前記式(a4)中、Lが-C(=O)-NH-を表す、請求項10に記載の平版印刷版原版。
  12.  前記式(a4)中、Xで表される親水性基は、水酸基、ポリアルキレンオキシ基、又はこれらを2つ以上組み合わせた基である、請求項10に記載の平版印刷版原版。
  13.  前記重合体Bが、ポリアルキレンオキシ基を側鎖に有する構成単位を更に有する共重合体である、請求項2に記載の平版印刷版原版。
  14.  前記式(I)におけるL11がエステル結合である、請求項2又は請求項7に記載の平版印刷版原版。
  15.  請求項3に記載の平版印刷版原版を、画像様に露光する工程と、
     印刷機上で印刷インク及び湿し水よりなる群から選ばれた少なくとも一方を供給して非画像部の画像記録層を除去する工程と、を含む
     平版印刷版の作製方法。
  16.  請求項3に記載の平版印刷版原版を、画像様に露光する工程と、
     印刷機上で印刷インク及び湿し水よりなる群から選ばれた少なくとも一方を供給して非画像部の画像記録層を除去し平版印刷版を作製する工程と、
     得られた平版印刷版により印刷する工程と、を含む
     平版印刷方法。
PCT/JP2023/043021 2022-11-30 2023-11-30 平版印刷版原版、平版印刷版の作製方法、及び、平版印刷方法 WO2024117242A1 (ja)

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2022-192211 2022-11-30
JP2023-113277 2023-07-10

Publications (1)

Publication Number Publication Date
WO2024117242A1 true WO2024117242A1 (ja) 2024-06-06

Family

ID=

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP7096435B2 (ja) 機上現像型平版印刷版原版、平版印刷版の作製方法、及び、平版印刷方法
JP7430788B2 (ja) 機上現像型平版印刷版原版、平版印刷版の作製方法、及び、平版印刷方法
JP7413526B2 (ja) 機上現像型平版印刷版原版、平版印刷版の作製方法、及び、平版印刷方法
JP7372324B2 (ja) 機上現像型平版印刷版原版、平版印刷版の作製方法、及び、平版印刷方法
JP7282885B2 (ja) 平版印刷版原版、平版印刷版の作製方法、及び、平版印刷方法
JP7282886B2 (ja) 機上現像型平版印刷版原版、平版印刷版の作製方法、及び、平版印刷方法
JPWO2014050435A1 (ja) 平版印刷版原版及び製版方法
JP7293356B2 (ja) 機上現像型平版印刷版原版、平版印刷版の作製方法、及び、平版印刷方法
JP2024045243A (ja) 機上現像型平版印刷版原版、平版印刷版の作製方法、及び平版印刷方法
EP4159441A1 (en) Original plate for on-machine development type lithographic printing plate, lithographic printing plate manufacturing method, and lithographic printing method
WO2020262694A1 (ja) 平版印刷版原版、平版印刷版の作製方法、及び平版印刷方法
CN113382870B (zh) 平版印刷版原版、平版印刷版的制作方法及平版印刷方法
JP7467629B2 (ja) 機上現像型平版印刷版原版、平版印刷版の作製方法、及び、平版印刷方法
JP7378613B2 (ja) 機上現像型平版印刷版原版、平版印刷版の作製方法、及び平版印刷方法
WO2024117242A1 (ja) 平版印刷版原版、平版印刷版の作製方法、及び、平版印刷方法
JP7451702B2 (ja) 積層体
JP7321261B2 (ja) 平版印刷版原版、平版印刷版の作製方法、及び、平版印刷方法
CN113474178B (zh) 平版印刷版原版、平版印刷版的制作方法及平版印刷方法
WO2023145972A1 (ja) 機上現像型平版印刷版原版、平版印刷版の作製方法、平版印刷方法、及び、積層体
WO2024071344A1 (ja) 機上現像型平版印刷版原版、平版印刷版の作製方法、及び、平版印刷方法
CN113382869A (zh) 平版印刷版原版、平版印刷版的制作方法及平版印刷方法
WO2022163777A1 (ja) 機上現像型平版印刷版原版、平版印刷版の作製方法、及び、平版印刷方法
WO2023032681A1 (ja) 積層体
JP7321115B2 (ja) 機上現像型平版印刷版原版、平版印刷版の作製方法、及び、平版印刷方法
JP7184931B2 (ja) 平版印刷版原版、平版印刷版の作製方法、及び、平版印刷方法