WO2024106078A1 - バルーンカテーテル用バルーン、バルーンカテーテル、およびバルーンカテーテルの製造方法 - Google Patents

バルーンカテーテル用バルーン、バルーンカテーテル、およびバルーンカテーテルの製造方法 Download PDF

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Abstract

バルーンカテーテル用バルーン(10)であって、バルーン(10)は、直管部(13)と、直管部(13)よりも近位側に位置する近位側テーパー部と、直管部(13)よりも遠位側に位置する遠位側テーパー部とを有し、直管部(13)は、筒形状のバルーン本体部(16)と、バルーン本体部(16)の外面に径方向の外方に突出した凸条(17)とを有し、直管部(13)の外面に凸条存在領域(21)と凸条非存在領域(22)が形成されており、直管部(13)の外面には薬剤層(31)が設けられ、直管部(13)の長手方向の垂直断面において、凸条(17)の基部における薬剤層(31)の厚みは、凸条非存在領域(22)における凸条(17)からの最遠点(22F)での薬剤層(31)の厚みよりも厚い。

Description

バルーンカテーテル用バルーン、バルーンカテーテル、およびバルーンカテーテルの製造方法
 本発明は、表面に薬剤が保持されたバルーンカテーテル用バルーンと、当該バルーンを備えたバルーンカテーテルと、当該バルーンを備えたバルーンカテーテルの製造方法に関するものである。
 体内で血液が循環するための流路である血管に狭窄が生じ、血液の循環が滞ることにより、様々な疾患が発生することが知られている。特に心臓に血液を供給する冠状動脈に狭窄が生じると、狭心症、心筋梗塞等の重篤な疾病をもたらすおそれがある。このような血管の狭窄部を治療する方法の一つとして、バルーンカテーテルを用いて狭窄部を拡張させる血管形成術(PTA、PTCA等)がある。
 バルーンカテーテルには、バルーンの表面に凸条が設けられたものが知られている(例えば、特許文献1~5)。このようなバルーンカテーテルを用いれば、バルーンを拡張させた際に、バルーンの凸条を狭窄部に食い込ませて、狭窄部を効果的に拡張させることができる。一方、血管形成術の場合、拡張した狭窄部に再狭窄が生じることがあるが、そのような再狭窄が発生する頻度(再狭窄率)を低減するために、バルーン表面に薬剤を保持させたバルーンカテーテルも知られている(例えば、特許文献4~7)。このように薬剤が保持されたバルーンカテーテルを用いれば、血管等の体腔の狭窄部や病変部でバルーンを拡張することにより薬剤を血管壁等の体腔内壁へ移行させることができ、再狭窄等の発生抑制が期待できる。
特開2009-112361号公報 特開2017-12678号公報 国際公開第2020/250611号 特表2008-539959号公報 特開2013-176507号公報 特表2008-529740号公報 特開2015-217260号公報
 バルーン表面に薬剤が保持されたバルーンカテーテルは、血管等の体腔の狭窄部や病変部でバルーンを拡張することにより薬剤を効率的に血管壁等の体腔内壁へ移行できることが望まれ、この際、体腔内壁の内面だけでなく内部へも薬剤を届けることができることが望ましい。本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、血管等の体腔内壁の内面だけでなく内部へも薬剤を効率的に届けることができるバルーンカテーテル用バルーンと当該バルーンを備えたバルーンカテーテルを提供することにある。本発明はまた、本発明のバルーンを備えたバルーンカテーテルの製造方法も提供する。
 前記課題を解決することができた本発明のバルーンカテーテル用バルーンおよび当該バルーンを備えたバルーンカテーテルは、下記の通りである。
[1] 近位側から遠位側に延びる長手方向と前記長手方向に垂直な径方向とを有するバルーンカテーテル用バルーンであって、
 前記バルーンは、直管部と、前記直管部よりも近位側に位置する近位側テーパー部と、前記直管部よりも遠位側に位置する遠位側テーパー部とを有し、
 前記直管部は、筒形状のバルーン本体部と、前記バルーン本体部の外面に径方向の外方に突出した凸条とを有し、前記直管部の外面に凸条存在領域と凸条非存在領域が形成されており、
 前記直管部の外面には薬剤層が設けられ、
 前記直管部の長手方向の垂直断面において、前記凸条の基部における前記薬剤層の厚みは、前記凸条非存在領域における前記凸条からの最遠点での前記薬剤層の厚みよりも厚いバルーンカテーテル用バルーン。
[2] 前記直管部の長手方向の垂直断面において、前記凸条の頂部における前記薬剤層の厚みは、前記凸条の基部における薬剤層の厚みよりも薄い[1]に記載のバルーン。
[3] 前記直管部の長手方向の垂直断面において、前記凸条の頂部における前記薬剤層の厚みは、前記凸条非存在領域における前記凸条からの最遠点での前記薬剤層の厚みよりも薄い[1]または[2]に記載のバルーン。
[4] 前記直管部の長手方向の垂直断面において、前記凸条の側面は、前記凸条の頂部を通り径方向に延びる仮想直線に対して、前記凸条の頂部に向かって前記仮想直線から遠ざかる部分と、当該部分よりも頂部側に、前記凸条の頂部に向かって前記仮想直線に近付く部分を有する[1]~[3]のいずれかに記載のバルーン。
[5] 前記直管部の長手方向の垂直断面において、前記凸条は、頂部に向かって段状に幅が狭まる部分を有する[1]~[4]のいずれかに記載のバルーン。
[6] 前記凸条は、前記頂部に向かって段状に幅が狭まる部分として、前記バルーン本体部の外面に隣接した第1段部分と、それよりも頂部側の第2段部分を有し、前記第1段部分の基部における前記薬剤層の厚みは、前記第2段部分の基部における前記薬剤層の厚みよりも厚い[5]に記載のバルーン。
[7] 前記凸条は、樹脂製、金属製、またはその組み合わせである[1]~[6]のいずれかに記載のバルーン。
[8] 前記直管部の長手方向の垂直断面において、前記凸条の頂部を通り径方向に延びる仮想直線に対して一方側にある前記凸条の基部における前記薬剤層の厚みは、前記仮想直線に対して他方側にある前記凸条の基部における前記薬剤層の厚みよりも厚い[1]~[7]のいずれかに記載のバルーン。
[9] 前記直管部の長手方向の垂直断面において、前記凸条の側面は、前記凸条の頂部を通り径方向に延びる仮想直線に対して一方側にある第1側面と他方側にある第2側面とを含み、前記第1側面における前記薬剤層の平均厚みは、前記第2側面における前記薬剤層の平均厚みよりも厚い[1]~[8]のいずれかに記載のバルーン。
[10] 前記バルーンの収縮状態で、前記直管部は、前記バルーン本体部の内面を内側にして前記凸条非存在領域で折り返されて、前記凸条非存在領域が重ね合わされた折り畳み羽根部を形成し、前記折り畳み羽根部は、前記直管部の外面に重ねられて配置され、前記凸条の頂部を覆っている[1]~[9]のいずれかに記載のバルーン。
[11] 前記バルーンの収縮状態で、前記直管部は、前記バルーン本体部の内面を内側にして前記凸条非存在領域で折り返されて、前記凸条非存在領域が重ね合わされた折り畳み羽根部を形成し、前記折り畳み羽根部は、前記凸条の頂部を覆わないように、前記直管部の外面に重ねられて配置されている[1]~[9]のいずれかに記載のバルーン。
[12] [1]~[11]のいずれかに記載のバルーンを備えるバルーンカテーテル。
 本発明のバルーンカテーテルの製造方法は、下記の通りである。
[13] [12]に記載のバルーンカテーテルを製造する方法であって、
 近位側から遠位側に延びる長手方向と前記長手方向に垂直な径方向とを有するバルーンであって、直管部と、前記直管部よりも近位側に位置する近位側テーパー部と、前記直管部よりも遠位側に位置する遠位側テーパー部とを有し、前記直管部が、筒形状のバルーン本体部と、前記バルーン本体部の外面に径方向の外方に突出し長手方向に延在している凸条とを有するバルーンを準備する工程と、
 前記直管部の外面に薬液を塗布し、前記バルーンを前記長手方向に延びる中心軸を中心に回転させる塗布工程と
 を有するバルーンカテーテルの製造方法。
[14] 前記塗布工程において、前記バルーンを拡張させた状態で、前記直管部の外面に薬液を塗布する[13]に記載のバルーンカテーテルの製造方法。
[15] 前記塗布工程において、前記バルーンを前記長手方向に延びる中心軸を中心に回転させながら、前記直管部の外面に薬液を塗布する[13]または[14]に記載のバルーンカテーテルの製造方法。
[16] 前記塗布工程において、前記直管部の外面に薬液を塗布した後、前記バルーンを前記長手方向に延びる中心軸を中心に回転させる[13]または[14]に記載のバルーンカテーテルの製造方法。
[17] 前記塗布工程において、前記バルーンを回転させながら、前記薬液に含まれる溶媒の少なくとも一部を蒸発させる[13]~[16]のいずれかに記載のバルーンカテーテルの製造方法。
 本発明のバルーンカテーテル用バルーンは、バルーンの直管部の外面に凸条が設けられ、凸条の基部に比較的厚く薬剤層が設けられている。そのため、本発明のバルーンを備えたバルーンカテーテルを用いて血管等の体腔の狭窄部や病変部においてバルーンを拡張させると、凸条が狭窄部や病変部に食い込んで効果的に拡張させることができるとともに、拡張させた狭窄部や病変部においてバルーン表面に保持された薬剤を血管壁等の体腔内壁へ移行させることができる。特に、凸条の基部に薬剤層が比較的厚く存在するため、拡張させた狭窄部や病変部において血管壁等の体腔内壁の内面から内部にかけて薬剤を効率的に移行させることができる。また、本発明のバルーンカテーテルの製造方法によれば、本発明のバルーンカテーテルを容易に製造することができる。
本発明の実施の形態に係るバルーンカテーテルの構成例を表し、バルーン表面の薬剤層を除いたバルーンカテーテルの側面図を表す。 図1に示したバルーンカテーテルに備えられたバルーンの斜視図を表す。 図1に示したバルーンカテーテルのIII-III断面図を表す。 図1に示したバルーンカテーテルのIV-IV断面図を表す。 薬剤層を備えたバルーンの直管部の長手方向の垂直断面図の一例を表す。 薬剤層を備えたバルーンの直管部の長手方向の垂直断面図の他の一例を表す。 図5および図6に示したバルーンの凸条周りの拡大断面図を表す。 薬剤層を備えたバルーンの凸条周りの拡大断面図の他の一例を表す。 薬剤層を備えたバルーンの凸条周りの拡大断面図の他の一例を表す。 薬剤層を備えたバルーンの凸条周りの拡大断面図の他の一例を表す。 図5に示したバルーンを収縮させて折り畳んだ状態の長手方向の垂直断面図の一例を表す。 図5に示したバルーンを収縮させて折り畳んだ状態の長手方向の垂直断面図の他の一例を表す。 バルーン表面に薬剤層を形成する方法の模式図を表す。
 以下、下記実施の形態に基づき本発明を具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施の形態によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、各図面において、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、明細書や他の図面を参照するものとする。また、図面における種々部材の寸法は、本発明の特徴の理解に資することを優先しているため、実際の寸法とは異なる場合がある。
 本発明の実施の形態に係るバルーンカテーテル用バルーンと、当該バルーンを備えたバルーンカテーテルの構成例について、図面を参照して説明する。図1~図4には、バルーンの薬剤層を除いたバルーンカテーテルの構成例を示した。図1は、バルーンカテーテルの側面図を表し、図2は、図1に示したバルーンカテーテルに備えられたバルーンの斜視図を表し、図3は、図1に示したバルーンカテーテルのIII-III断面図を表し、図4は、図1に示したバルーンカテーテルのIV-IV断面図を表す。図1にはラピッドエクスチェンジ型のバルーンカテーテルの構成例が示されている。
 バルーンカテーテル1は、シャフト2と、シャフト2の外側に設けられたバルーン10とを有する。バルーンカテーテル1は近位側と遠位側を有し、シャフト2の遠位部にバルーン10が設けられる。バルーンカテーテル1の近位側とは、バルーンカテーテル1の延在方向に対して使用者(術者)の手元側の方向を指し、遠位側とは近位側の反対方向、すなわち処置対象側の方向を指す。また、バルーンカテーテル1の近位側から遠位側への方向を長手方向と称する。
 バルーンカテーテル1は、シャフト2を通じてバルーン10の内部に流体が供給されるように構成され、インデフレーター(バルーン用加減圧器)を用いてバルーン10の拡張および収縮を制御することができる。流体は、ポンプ等により加圧された加圧流体であってもよい。以下、バルーン10の内部に供給される流体を「バルーン拡張流体」と称する。
 シャフト2は、例えば、インナーシャフト3とアウターシャフト4とから構成される。インナーシャフト3はアウターシャフト4の内腔に配置される。インナーシャフト3はシャフト2の進行をガイドするガイドワイヤの挿通路として機能させることができ、バルーンカテーテル1の使用の際、インナーシャフト3の内腔にガイドワイヤが挿通される。インナーシャフト3とアウターシャフト4の間の空間は、バルーン拡張流体の流路として機能させることができる。
 ラピッドエクスチェンジ型のバルーンカテーテル1では、シャフト2の遠位側から近位側に至る途中にガイドワイヤポート7が設けられ、インナーシャフト3の近位端がガイドワイヤポート7に接続し、インナーシャフト3の遠位端がシャフト2の遠位部まで延在することにより、ガイドワイヤポート7からシャフト2の遠位部まで延在するガイドワイヤ挿通路が形成される。
 アウターシャフト4は近位側アウターシャフト4Aと遠位側アウターシャフト4Bを有していてもよく、この場合、遠位側アウターシャフト4Bの内腔にインナーシャフト3が配置されることが好ましい。近位側アウターシャフト4Aと遠位側アウターシャフト4Bは同じ材料から構成されていてもよく、互いに異なる材料から構成されていてもよい。例えば、近位側アウターシャフト4Aは樹脂または金属から構成され、遠位側アウターシャフト4Bは樹脂から構成されることが好ましい。なお、アウターシャフト4は近位側アウターシャフト4Aと遠位側アウターシャフト4Bに区分されず、1つの部材から構成されていてもよく、近位側アウターシャフト4Aと遠位側アウターシャフト4Bがさらに複数のチューブ部材から構成されていてもよい。
 シャフト2の近位側にはハブ5が設けられることが好ましい。ハブ5は、シャフト2のバルーン拡張流体の流路と連通した流体注入部6を有することが好ましい。バルーン10、シャフト2(インナーシャフト3、アウターシャフト4)、ハブ5の接合は、接着剤や熱溶着など従来公知の接合手段を用いて行うことができる。
 なお、図面に示されていないが、バルーンカテーテルは、インナーシャフトがシャフトの遠位部から近位部まで延び、シャフトの遠位側から近位側にわたってガイドワイヤの挿通路が形成されたオーバーザワイヤ型のバルーンカテーテルであってもよい。この場合、シャフトに設けられたバルーン拡張流体の流路とガイドワイヤの挿通路がハブまで延在し、ハブは、バルーン拡張流体の流路と連通した流体注入部と、ガイドワイヤの挿通路と連通した処置部とを有するように構成されることが好ましい。ハブは二又に分岐した構造を有し、二又に分岐した一方に流体注入部が設けられ、他方に処置部が設けられることが好ましい。
 シャフト2の外面はコーティングが施されていることが好ましい。ラピッドエクスチェンジ型のバルーンカテーテル1では、近位側アウターシャフト4Aと遠位側アウターシャフト4Bの一方または両方の外面にコーティングが施されていることが好ましく、近位側アウターシャフト4Aと遠位側アウターシャフト4Bの両方の外面にコーティングが施されていることがより好ましい。オーバーザワイヤ型のバルーンカテーテルでは、アウターシャフトの外面に適宜コーティングが施されていることが好ましい。
 コーティングは、目的に応じて親水性コーティングまたは疎水性コーティングとすることができる。シャフト2を親水性コーティング剤または疎水性コーティング剤に浸漬したり、シャフト2の外面に親水性コーティング剤または疎水性コーティング剤を塗布したり、シャフト2の外面を親水性コーティング剤または疎水性コーティング剤で被覆したりすることにより、シャフト2の外面にコーティングを施すことができる。コーティング剤は、薬剤や添加剤を含んでいてもよい。
 親水性コーティング剤としては、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、メチルビニルエーテル無水マレイン酸共重合体などの親水性ポリマーや、これらの任意の組み合わせで作られた親水性コーティング剤等が挙げられる。
 疎水性コーティング剤としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ化エチレンプロピレン(FEP)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、シリコーンオイル、疎水性ウレタン樹脂、カーボンコート、ダイヤモンドコート、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)コート、セラミックコート、アルキル基やパーフルオロアルキル基で終端された表面自由エネルギーが小さい物質等が挙げられる。
 バルーンカテーテル1の遠位端部には先端チップ8が設けられていることが好ましい。先端チップ8は、インナーシャフト3の遠位端よりも遠位側にインナーシャフト3とは別部材として設けられてもよく、インナーシャフト3がバルーン10の遠位端よりも遠位側まで延在することにより、インナーシャフト3の遠位端部が先端チップ8として機能してもよい。
 シャフト2には、バルーン10の位置をX線透視下で確認することを可能にするために、長手方向に対してバルーン10が位置する部分にX線不透過マーカー9が配置されていてもよい。X線不透過マーカー9は、例えば、バルーン10の内部に配置されたインナーシャフト3上に配置することができ、バルーン10の直管部の両端に相当する位置に配されることが好ましく、バルーン10の直管部の中央に相当する位置に配されてもよい。
 バルーン10は、長手方向と径方向を有し、近位側と遠位側に開口を有する筒状に形成されている(図2を参照)。バルーン10の径方向とは、長手方向に垂直な方向であって、バルーン10の中心から放射方向に向かって延びる方向を意味する。バルーン10はまた、バルーン10の長手方向の垂直断面において、拡張状態のバルーン10の外周に沿った方向として、周方向を有する。
 バルーン10は、長手方向に対して、直管部13と、直管部13よりも近位側に位置する近位側テーパー部12と、直管部13よりも遠位側に位置する遠位側テーパー部14とを有する。直管部13は長手方向に延びる略円筒形に形成され、バルーン10において径方向の長さ(外径)が最も大きく形成される。近位側テーパー部12は直管部13の近位側に位置し、直管部13の近位端に接続する。近位側テーパー部12は、直管部13から離れるに従って外径が小さくなるように形成されている。遠位側テーパー部14は直管部13の遠位側に位置し、直管部13の遠位端に接続する。遠位側テーパー部14は、直管部13から離れるに従って外径が小さくなるように形成されている。バルーン10はさらに、近位側テーパー部12よりも近位側に位置する近位側スリーブ部11と、遠位側テーパー部14よりも遠位側に位置する遠位側スリーブ部15を有することが好ましい。近位側スリーブ部11は近位側テーパー部12の近位側に位置し、近位側スリーブ部11の近位端に接続する。近位側スリーブ部11は略円筒形に形成されている。遠位側スリーブ部15は遠位側テーパー部14の遠位側に位置し、遠位側スリーブ部15の遠位端に接続する。遠位側スリーブ部15は略円筒形に形成されている。
 上記のようにバルーン10が構成されることにより、バルーン10を狭窄部において拡張させた際に直管部13が狭窄部に十分に接触して、狭窄部の拡張等の治療を行いやすくなる。また、バルーン10が近位側テーパー部12と遠位側テーパー部14を有することにより、バルーン10を収縮させた際にバルーン10の近位端部と遠位端部の外径を小さくしてシャフト2とバルーン10との段差を小さくすることができ、バルーン10を体腔内や内視鏡の鉗子チャネル内を挿通しやすくすることができる。
 シャフト2の遠位部において、インナーシャフト3がアウターシャフト4の遠位端から遠位側に延出し、インナーシャフト3がバルーン10の内部空間を近位側スリーブ部11から遠位側スリーブ部15にかけて延在することが好ましい。そして、インナーシャフト3の外面がバルーン10の遠位側スリーブ部15の内面に接合し、アウターシャフト4の外面がバルーン10の近位側スリーブ部11の内面に接合することが好ましい。このようにシャフト2の遠位部が構成されることにより、バルーン拡張流体を、インナーシャフト3とアウターシャフト4の間の空間を通ってバルーン10の内部空間に供給することができる。
 バルーン10は樹脂から構成されることが好ましく、より好ましくは熱可塑性樹脂から構成される。これにより、成型によりバルーン10を製造することが容易になる。バルーン10を構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステルエラストマー等のポリエステル樹脂、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマー等のポリウレタン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリアミド、ポリアミドエラストマー等のポリアミド樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン樹脂、ラテックスゴム等の天然ゴム等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂が好適に用いられる。特に、バルーン10の薄膜化や柔軟性の点から、エラストマー樹脂を用いることが好ましい。例えばポリアミド樹脂の中でバルーン10に好適な材料として、ナイロン12、ナイロン11等が挙げられ、ブロー成形する際に比較的容易に成形可能である点から、ナイロン12が好適に用いられる。また、バルーン10の薄膜化や柔軟性の点から、ポリエーテルエステルアミドエラストマー、ポリアミドエーテルエラストマー等のポリアミドエラストマーが好ましく用いられる。なかでも、降伏強度が高く、バルーン10の寸法安定性が良好な点から、ポリエーテルエステルアミドエラストマーが好ましく用いられる。
 バルーン10は、直管部13の外面に凸条17を有する。直管部13の外面に凸条17が設けられることにより、バルーン10はスコアリング機能を有するものとなり、バルーン10を血管の狭窄部において拡張させた際に、石灰化した狭窄部に食い込んで、狭窄部に亀裂を入れたりすることが可能となる。そのため、血管内膜の解離を抑えながら狭窄部を拡張させることができる。また、バルーン10の高強度化や加圧時の過拡張の抑制も可能となる。なお、バルーン10は、血管以外の体腔の狭窄部や病変部の治療に用いることもできるが、以下では血管の狭窄部においてバルーン10を適用する場合を例にとって説明する。
 バルーン10の凸条17について、図5~図10を参照して詳しく説明する。図5および図6には、バルーン10の直管部13の長手方向の垂直断面図が示され、図7~図10には、バルーン10の凸条17周りの拡大断面図が示されている。図5~図10では、直管部13の外面に薬剤層31が設けられたバルーン10が示されている。図5には、図2および図4に示したバルーン10の外面に薬剤層31が設けられた構成例が示されており、凸条17が直管部13の周方向の3箇所に設けられている。図6には、凸条17が直管部13の周方向の1箇所に設けられたバルーン10であって、外面に薬剤層31が設けられた構成例が示されている。
 バルーン10の直管部13は、筒形状のバルーン本体部16を有し、バルーン本体部16の外面に凸条17が設けられる。凸条17は、バルーン本体部16の外面から径方向の外方に突出するように設けられる。バルーン10は、凸条17が設けられることにより、直管部13の外面に凸条存在領域21と凸条非存在領域22が形成される。
 凸条17は、頂部17Aと基部17Bを有する(図7~図10を参照)。凸条17において、頂部17Aは凸条17の先端、すなわち凸条17の径方向の最も外方に位置する部分を意味し、基部17Bは、凸条17の側面18において、バルーン本体部16との境界、すなわち凸条17の径方向の最も内方に位置する部分を意味する。
 凸条17は、例えば樹脂から構成することができる。凸条17が樹脂から構成されていれば、凸条17を有するバルーン10を樹脂成型により製造することができ、製造が容易になる。この場合、凸条17とバルーン本体部16は同じ樹脂から構成されることが好ましく、凸条17とバルーン本体部16とが一体形成されていることが好ましい。バルーン本体部16は内層と外層を有していてもよく、この場合、凸条17はバルーン本体部16の外層と同じ樹脂から構成されていることが好ましい。これにより、凸条17が意図せずバルーン本体部16から脱落することが起こりにくくなる。あるいは、凸条17を構成する樹脂とバルーン本体部16を構成する樹脂とがある程度の相溶性があれば、凸条17とバルーン本体部16は互いに異なる樹脂から構成されていてもよい。
 凸条17は金属から構成されてもよく、あるいは金属と樹脂の組み合わせから構成されてもよい。この場合、凸条17の頂部17Aを含む部分が金属から構成されることが好ましい。これにより、バルーン10を拡張させた際に、凸条17によって狭窄部に亀裂を入れたり、狭窄部を切開することが容易になる。例えば、凸条17の全体が金属から構成されてもよく、凸条17の基部17Bを含む部分が樹脂から構成され、凸条17の頂部17Aを含む部分が金属から構成されてもよい。従って、凸条17は、樹脂製、金属製、またはその組み合わせであることが好ましい。
 直管部13において、バルーン本体部16は筒形状を有する部分として規定される。直管部13において径方向の外方に突出した凸条17を除いた部分がバルーン本体部16となる。バルーン本体部16は外面が円筒形に形成されていると見なすことができる。従って、直管部13の長手方向の垂直断面において、バルーン本体部16の外形は実質的に円形に形成され、これによりバルーン本体部16と凸条17とを区分することができる。図7~図10では、バルーン本体部16と凸条17とが点線で区分されて示されている。凸条存在領域21はバルーン本体部16と凸条17とから構成され、凸条非存在領域22はバルーン本体部16から構成される。
 凸条17は、直管部13の外面において、畝状に延びるように設けられる。凸条17は、長手方向に延びるように設けられることが好ましく、この場合、凸条17は、バルーン10の長手方向に略平行に延びるものであってもよく、長手方向にらせん状に延びるものであってもよい。なお、バルーン10のスコアリング機能を高め、また凸条17を有するバルーン10の製造が容易な点から、凸条17はバルーン10の長手方向に略平行に延びていることが好ましい。
 凸条17は、直管部13の長手方向の垂直断面において、1つのみ設けられてもよく、複数設けられてもよい。直管部13に凸条17が1つのみ設けられる場合は、直管部13に凸条非存在領域22が1つのみ形成され、直管部13に凸条17が複数設けられる場合は、直管部13に凸条非存在領域22が複数形成される。凸条非存在領域22は、凸条17と等しい数だけ形成される。図5では、凸条17は、バルーン10の直管部13の周方向の3箇所に設けられており、図6では、凸条17は、バルーン10の直管部13の周方向の1箇所のみに設けられている。
 凸条17は、バルーン10の直管部13において、周方向の異なる位置に複数設けられることが好ましい。すなわち凸条17は、バルーン10の周方向の複数箇所に設けられることが好ましい。この場合、凸条17は、バルーン10の直管部13の周方向に略等間隔に配置されることが好ましい。これにより、バルーン10を拡張させた際に、狭窄部の複数の箇所に亀裂を入れることが可能となる。凸条17は、バルーン10の周方向に対して2箇所以上の位置に設けられることが好ましく、3箇所以上がより好ましく、また8箇所以下が好ましく、6箇所以下がより好ましい。また、この場合の凸条17の周方向の間隔は、1つの凸条17の周方向の長さよりも長いことが好ましい。
 凸条17の断面形状は特に限定されない。例えば、直管部13の長手方向の垂直断面における凸条17の形状としては、三角形、四角形等の多角形、半円形、扇形等の円形の部分形状、略円形、楔型、凸形、紡錘形、不定形等が挙げられる。多角形には、角部の頂点が明確であって辺が直線であるものの他に、角部が丸みを帯びている角丸多角形や、辺の少なくとも一部が曲線となっているものも含まれる。なお、凸条17は、頂部17Aに向かって幅狭になるように形成されていることが好ましい。
 図7~図9には、凸条17の様々な断面形状の例が示されている。図7では、凸条17は頂部17Aに向かって無段状に幅が狭まるように形成されている。図8では、凸条17は頂部17Aに向かって段状に幅が狭まるように形成されている。図9では、凸条17は、頂部17Aに向かって幅が広がる部分と幅が狭まる部分を有するように形成される。図7~図9に示した凸条17の各形態の詳細については、後述する。
 直管部13の長手方向の垂直断面において、凸条17の高さは凸条17の幅(最大幅)の0.2倍以上であることが好ましい。このように凸条17が形成されていれば、狭窄部においてバルーン10を拡張させた際に、凸条17が狭窄部に食い込みやすくなり、凸条17によるスコアリング機能を高めることができる。また、後述するように、凸条17の側面18に薬剤層を形成することが容易になる。なお、ここで説明した凸条17の幅は、凸条17の周方向の長さを意味する。凸条17は、基部17Bにおいて最大幅となるように形成されていてもよく、これにより凸条17がバルーン本体部16の外面に安定して設置される。凸条17の高さは凸条17の幅の0.4倍以上がより好ましく、0.7倍以上がさらに好ましく、また2.0倍以下が好ましく、1.8倍以下がより好ましく、1.5倍以下がさらに好ましい。
 直管部13において、凸条17が設けられた部分の肉厚、すなわち凸条存在領域21の肉厚は、凸条17が設けられない部分の肉厚、すなわち凸条非存在領域22の肉厚よりも厚く形成されていることが好ましい。これにより、凸条17によるスコアリング機能を高めることができる。凸条存在領域21の肉厚(最大肉厚)は、凸条非存在領域22の肉厚(最大肉厚)の1.5倍以上であることが好ましく、2.0倍以上がより好ましく、2.5倍以上がさらに好ましい。凸条存在領域21の肉厚の上限は特に限定されず、例えば、凸条非存在領域22の肉厚の30倍以下、20倍以下または10倍以下であってもよい。
 バルーン10において、凸条17は、直管部13の長手方向の1/2以上の範囲に設けられることが好ましく、2/3以上の範囲に設けられることがより好ましく、3/4以上の範囲に設けられることがさらに好ましい。これにより、バルーン10を拡張させた際に、狭窄部の広い範囲に亀裂を入れることが可能となる。凸条17は、近位側テーパー部12および/または遠位側テーパー部14の外面にも設けられてもよい。図1および図2では、凸条17は、近位側テーパー部12から直管部13を経由して遠位側テーパー部14まで延びるように設けられている。
 バルーン10は、バルーン10の内面において径方向の内方に向かって突出している内側凸条を有していてもよい(図示せず)。凸条17と内側凸条はバルーン10の長手方向や周方向に対して同じ位置に配置されていてもよく、これらは一体成形されていることが好ましく、これによりバルーン10の一部が肉厚に形成されていてもよい。
 バルーン10の直管部13の外面には薬剤層31が設けられている。薬剤層31に含まれる薬剤は、薬理活性物質であれば特に限定されず、例えば、遺伝子治療薬、非遺伝子治療薬、小分子、細胞等の医薬として許容される薬剤が挙げられる。特に、バルーンカテーテル1を血管形成術における治療後の血管の再狭窄を抑制する目的で使用する場合は、薬剤として抗増殖剤や免疫抑制剤などの抗再狭窄剤を好ましく用いることができ、具体的には、パクリタキセル、シロリムス(ラパマイシン)、エベロリムス、ゾタロリムス等の薬剤を用いることができる。これらの薬剤は、1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
 薬剤層31には、薬理活性物質とともに、薬剤の分散性、溶解性、血管壁への移行性、保存安定性を向上させるための助剤が含まれていてもよい。助剤としては、安定化剤、結合剤、崩壊剤、防湿剤、防腐剤、溶解助剤などが用いられ、具体的には、乳糖、白糖、麦芽糖、デキストリン、キシリトール、エリスリトール、マンニトール、エチレンジアミン、ヨウ化カリウム、尿素、ポリソルベート、ジブチルヒドロキシトルエン、ポリエチレングリコール、脂質、ピロ亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸、トコフェロール、安息香酸、パラオキシ安息香酸エステル、ポリアクリル酸、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ヒアルロン酸、キトサン、ゼラチン等が挙げられる。
 薬剤層31は、狭窄部への送達中(デリバリー中)に薬剤が血液中に溶出したり脱落することを抑制するために、保護層を有していてもよい。保護層は薬剤層31の一部に含まれ、薬剤層31の最外層を構成することが好ましい。保護層は、例えば水溶性高分子から構成され、例えば、カルボキシルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルアルコール、アルギン酸、ペクチン、アラビアガム、ジェランガム、グアガム、キサンタンガム、カラギーナン、ゼラチンなどから形成することができる。
 薬剤層31は少なくとも直管部13の凸条存在領域21に設けられ、少なくとも凸条17の基部17Bに設けられる。薬剤層31は凸条非存在領域22にも設けられてもよいが、凸条17の基部17Bに薬剤層31がより厚く存在する。具体的には、バルーン10は、直管部13の長手方向の垂直断面において、凸条17の基部17Bにおける薬剤層31の厚みが、凸条非存在領域22における凸条17からの最遠点22Fでの薬剤層31の厚みよりも厚くなっている。このように薬剤層31が設けられることにより、狭窄部においてバルーン10を拡張させた際に、血管壁の内面から血管壁の内部にかけて効率的に薬剤を移行させることができる。すなわち、狭窄部においてバルーン10を拡張させた際に、凸条17が狭窄部に食い込んで狭窄部を効果的に拡張させることができるとともに、凸条17の基部17Bに薬剤層31が厚く存在するために、拡張させた狭窄部において血管壁の内面から血管壁の内部にかけて薬剤を効率的に移行させることができる。
 凸条17の基部17Bにおける薬剤層31の厚みは、直管部13の長手方向の垂直断面において、凸条17の基部17Bから薬剤層31の表面までの最短長さ(図7~図9における矢印32の長さ)を意味する。なお、薬剤層31は乾燥状態によって表面に亀裂が生じることも想定されるが、そのような場合は、亀裂が生じた箇所を除いた薬剤層31の表面までの最短長さを、凸条17の基部17Bにおける薬剤層31の厚みとする。
 凸条非存在領域22における凸条17からの最遠点22Fでの薬剤層31の厚みは、最遠点22Fでのバルーン本体部16の外面から薬剤層31の表面までの径方向の長さを意味する。なお、凸条非存在領域22における凸条17からの最遠点22Fに薬剤層31が存在しない場合は、当該最遠点22Fでの薬剤層31の厚みは0となる。
 凸条非存在領域22における凸条17からの最遠点22Fは、次のように定められる。図6に示すように、直管部13の長手方向の垂直断面において凸条17が1つのみ設けられる場合は、直管部13の周方向における凸条17の対称点(筒形状のバルーン本体部16の中心に対する対称点)が、凸条非存在領域22における凸条17からの最遠点22Fとなる。図5に示すように、直管部13の長手方向の垂直断面において凸条17が複数設けられる場合は、直管部13の周方向において隣り合う凸条17の周方向における中点が、凸条非存在領域22における凸条17からの最遠点22Fとなる。
 これについてさらに詳しく説明する。図7に示すように、直管部13の長手方向の垂直断面において、凸条17の側面18は、凸条17の頂部17Aを通り径方向に延びる仮想直線17Lに対して一方側にある第1側面18Aと他方側にある第2側面18Bとを含む。例えばバルーン10を遠位側から見て、凸条17の左側の側面18を第1側面18Aとし、右側の側面18を第2側面18Bとすることができる。凸条17には、第1側面18Aと第2側面18Bにそれぞれ凸条17の基部17Bが存在する。図6に示すように直管部13の長手方向の垂直断面において凸条17が1つのみ設けられる場合は、凸条非存在領域22における凸条17の第1側面18Aの基部17Bと第2側面18Bの基部17Bとの中点が、凸条非存在領域22における凸条17からの最遠点22Fとなる。図5に示すように直管部13の長手方向の垂直断面において凸条17が複数設けられる場合は、一の凸条17の第1側面18Aの基部17Bと、当該凸条17の第1側面18Aと凸条非存在領域22を挟んで隣り合う凸条17の第2側面18Bの基部17Bとの中点が、凸条非存在領域22における凸条17からの最遠点22Fとなる。
 直管部13の長手方向の垂直断面における凸条17の基部17Bの数は、凸条17の数の倍、すなわち各凸条17の第1側面18Aの基部17Bと第2側面18Bの基部17Bに対応する分だけ存在するが、バルーンの直管部13では、複数存在する凸条17の基部17Bのうち少なくとも1つの基部17Bにおける薬剤層31の厚みが、凸条非存在領域22における凸条17からの最遠点22Fでの薬剤層31の厚みよりも厚く形成されていればよい。直管部13の長手方向の垂直断面において凸条17が複数設けられる場合は、複数設けられた凸条17によって直管部13の外面に複数の凸条非存在領域22が形成されるが、複数存在する凸条17の基部17Bのうち少なくとも1つの基部17Bにおける薬剤層31の厚みが、複数の凸条非存在領域22における凸条17からの最遠点22Fでの薬剤層31の厚みの平均値よりも厚く形成されていればよく、好ましくは、複数の凸条非存在領域22における凸条17からの最遠点22Fでの薬剤層31の各厚みよりも厚く形成される。また、各凸条17の第1側面18Aと第2側面18Bの少なくとも一方の基部17Bにおける薬剤層31の厚みが、複数の凸条非存在領域22における凸条17からの最遠点22Fでの薬剤層31の厚みの平均値よりも厚く形成されることが好ましく、複数の凸条非存在領域22における凸条17からの最遠点22Fでの薬剤層31の各厚みよりも厚く形成されることがより好ましい。
 凸条17の基部17Bにおける薬剤層31の厚みと、凸条非存在領域22における凸条17からの最遠点22Fでの薬剤層31の厚みは、例えば次のように求めることができる。バルーン10を直管部13で長手方向の垂直方向に切断し、バルーン本体部16が略円形となる状態に保持し、凸条17の基部17Bにおける薬剤層31の厚みと、凸条非存在領域22における凸条17からの最遠点22Fでの薬剤層31の厚みを計測する。あるいは、折り畳まれたバルーン10を直管部13で長手方向の垂直方向に切断し、折り畳まれたバルーン10の凸条17間の凸条非存在領域22の外周長を計測し、凸条17間の外周長の中点を最遠点22Fと定め、凸条17の基部17Bにおける薬剤層31の厚みと、凸条非存在領域22における凸条17からの最遠点22Fでの薬剤層31の厚みを計測してもよい。
 凸条17の基部17Bにおける薬剤層31の厚みは、例えば、凸条非存在領域22における凸条17からの最遠点22Fでの薬剤層31の厚みの1.5倍以上であることが好ましく、2.0倍以上がより好ましく、2.5倍以上がさらに好ましい。凸条非存在領域22における凸条17からの最遠点22Fでの薬剤層31の厚みに対する凸条17の基部17Bにおける薬剤層31の厚みの比の上限値は特に限定されず、凸条非存在領域22における凸条17からの最遠点22Fで薬剤層31は存在しなくてもよく、あるいは非常に薄い厚みで存在してもよい。例えば、凸条17の基部17Bにおける薬剤層31の厚みは、凸条非存在領域22における凸条17からの最遠点22Fでの薬剤層31の厚みの100倍以下であってもよく、50倍以下、30倍以下、20倍以下または10倍以下であってもよい。
 バルーン10は、直管部13の長手方向の少なくとも一部において、凸条17の基部17Bにおける薬剤層31の厚みが、凸条非存在領域22における凸条17からの最遠点22Fでの薬剤層31の厚みよりも厚く形成されていればよい。好ましくは、直管部13の長手方向の中央1/2の領域の少なくとも一部において薬剤層31がそのように形成されており、より好ましくは、直管部13の長手方向の中央1/2の領域の半分以上において薬剤層31がそのように形成されており、さらに好ましくは、直管部13の長手方向の中央1/2の領域の2/3以上において薬剤層31がそのように形成されている。例えば、直管部13の長手方向の相対位置として直管部13の近位端を0%とし遠位端を100%としたときに、直管部13の25%~75%の範囲を10%刻みで6箇所で径方向に切断し、各切断断面における薬剤層31の厚みを計測して、3箇所以上においてそのように形成されていることが好ましい。これにより、直管部13の長手方向の中央1/2の領域の半分以上において、凸条17の基部17Bにおける薬剤層31の厚みが、凸条非存在領域22における凸条17からの最遠点22Fでの薬剤層31の厚みよりも厚く形成されていると判定することができる。薬剤層31は、直管部13の長手方向の中央1/2の領域の全体において、凸条17の基部17Bにおける薬剤層31の厚みが、凸条非存在領域22における凸条17からの最遠点22Fでの薬剤層31の厚みよりも厚く形成されていてもよく、直管部13の長手方向の全体において、薬剤層31がそのように形成されていてもよい。
 下記の直管部13の長手方向の垂直断面における薬剤層31の形成に関する様々な説明においても、直管部13の長手方向における薬剤層31の形成について、上記の説明が参照される。
 直管部13の長手方向の垂直断面において、凸条17の基部17Bにおける薬剤層31の厚みは、凸条非存在領域22の周方向の中央1/2の領域22Mにおける薬剤層31の平均厚みよりも厚いことが好ましい。凸条非存在領域22の周方向の中央1/2の領域22Mとは、1つの凸条非存在領域22において、当該凸条非存在領域22を周方向に4等分したときの中央2区間の領域を意味する。直管部13の長手方向の垂直断面において凸条17が複数設けられる場合は、少なくとも1つの凸条17の基部17B(第1側面18Aと第2側面18Bの少なくとも一方の基部17B)における薬剤層31の厚みが、複数の凸条非存在領域22における周方向の中央1/2の領域22Mにおける薬剤層31の平均厚みの平均値より厚く形成されることが好ましく、複数の凸条非存在領域22の周方向の中央1/2の領域22Mにおける薬剤層31の各平均厚みよりも厚く形成されることがより好ましい。また、各凸条17の第1側面18Aと第2側面18Bの少なくとも一方の基部17Bにおける薬剤層31の厚みが、複数の凸条非存在領域22における周方向の中央1/2の領域22Mにおける薬剤層31の平均厚みの平均値よりも厚く形成されることが好ましく、複数の凸条非存在領域22における周方向の中央1/2の領域22Mにおける薬剤層31の各平均厚みよりも厚く形成されることがより好ましい。
 凸条非存在領域22の周方向の中央1/2の領域22Mにおける薬剤層31の平均厚みは、直管部13を長手方向の垂直断面で見たときの、凸条非存在領域22の周方向の中央1/2の領域22Mにおける薬剤層31の面積を、凸条非存在領域22の周方向の中央1/2の領域22Mの周方向の長さで除することにより求められる。凸条非存在領域22の周方向の中央1/2の領域22Mにおける薬剤層31の平均厚みは、バルーンを直管部13で長手方向に垂直方向に切断し、その切断断面の写真を撮影し画像処理することにより求めることが簡便である。
 凸条17の基部17Bにおける薬剤層31の厚みは、凸条非存在領域22の周方向の中央1/2の領域22Mにおける薬剤層31の平均厚みの1.3倍以上であることが好ましく、1.5倍以上がより好ましく、2.0倍以上がさらに好ましい。凸条非存在領域22の周方向の中央1/2の領域22Mにおける薬剤層31の平均厚みに対する凸条17の基部17Bにおける薬剤層31の厚みの比の上限値は特に限定されない。例えば、凸条17の基部17Bにおける薬剤層31の厚みは、凸条非存在領域22の周方向の中央1/2の領域22Mにおける薬剤層31の平均厚みの100倍以下であってもよく、50倍以下、30倍以下、20倍以下または10倍以下であってもよい。
 直管部13の外面には、凸条存在領域21とともに凸条非存在領域22にも薬剤層31が設けられることが好ましい。例えば、凸条非存在領域22の周方向の中央1/2の領域22Mの少なくとも一部に薬剤層31が設けられることが好ましく、凸条非存在領域22における凸条17からの最遠点22Fに薬剤層31が設けられることが好ましい。凸条非存在領域22にも薬剤層31が設けられていれば、狭窄部においてバルーン10を拡張させた際に、狭窄部の血管内面の広い範囲に薬剤を送達することができる。
 直管部13の長手方向の垂直断面において、凸条17の頂部17Aにおける薬剤層31の厚みは、凸条17の基部17Bにおける薬剤層31の厚みよりも薄いことが好ましい。このように凸条17の表面に薬剤層31が形成されていれば、狭窄部においてバルーン10を拡張させた際に、凸条17が狭窄部に食い込みやすくなる。そのため、バルーン10により狭窄部を効果的に拡張させることができる。また、凸条17の頂部17Aよりも基部17Bに薬剤層31がより厚く存在していれば、凸条17が血管の狭窄部に食い込んだ際、薬剤は主に血管壁の内面と内部の比較的浅い箇所に移行することとなる。これにより、血管壁の中膜に存在する平滑筋細胞の血管内面への遊走を抑止することができる。なお、凸条17の頂部17Aにおける薬剤層31の厚みとは、凸条17の頂部17Aに薬剤層31が存在しない場合は厚みが0となり、凸条17の頂部17Aに薬剤層31が存在する場合は、凸条17の頂部17Aでの薬剤層31の最短厚み、すなわち凸部の頂部17Aから薬剤層31の表面までの最短長さを意味する。
 直管部13の長手方向の垂直断面において、凸条17の頂部17Aにおける薬剤層31の厚みは、凸条非存在領域22における凸条17からの最遠点22Fでの薬剤層31の厚みよりも薄いことが好ましい。このように直管部13の外面に薬剤層31が設けられていれば、狭窄部においてバルーン10を拡張させた際に、凸条17が狭窄部に食い込みやすくなる。そのため、バルーン10により狭窄部を効果的に拡張させることができる。また、凸条非存在領域22に薬剤層31が存在することにより、狭窄部においてバルーン10を拡張させた際に、狭窄部の血管内面の広い範囲に薬剤を塗布することができる。
 凸条17の頂部17Aは、薬剤層31に覆われず、露出していてもよい。これにより、狭窄部においてバルーン10を拡張させた際に凸条17が狭窄部に食い込みやすくなり、バルーン10によって狭窄部を効果的に拡張させることができる。
 一実施形態として、図7および図8に示すように、凸条17は、頂部17Aに向かって幅が狭まる部分を有し、かつ頂部17Aに向かって幅が広がる部分を有しないように形成されてもよい。すなわち、凸条17の側面18は、凸条17の頂部17Aを通り径方向に延びる仮想直線17Lに対して、頂部17Aに向かって仮想直線17Lに近付く部分を有し、頂部17Aに向かって仮想直線17Lから遠ざかる部分を有しないように形成されてもよい。このように凸条17が形成されていれば、狭窄部においてバルーン10を拡張させた際、凸条17が血管内面に強く押し当てられても、凸条17が折れ曲がったりせずに、狭窄部に食い込みやすくなる。凸条17は、基部17Bから頂部17Aの全体にわたって、頂部17Aに向かって幅が狭まるように形成されてもよい。すなわち、凸条17の側面18は、凸条17の基部17Bから頂部17Aの全体にわたって、頂部17Aに向かって仮想直線17Lに近付くように形成されてもよい。
 凸条17は、図7に示すように、頂部17Aに向かって無段状に幅が狭まるように形成されていてもよく、図8に示すように、頂部17Aに向かって段状に幅が狭まるように形成されていてもよい。前者の場合、凸条17の側面18は、直管部13の長手方向の垂直断面において、仮想直線17Lに対して斜めに延びる直線状に形成されたり、径方向の外方に膨らんだ曲線状(一部に直線状の部分が含まれていてもよい)に形成されたり、径方向の内方に膨らんだ曲線状(一部に直線状の部分が含まれていてもよい)に形成されればよい。後者の場合、凸条17は、基部17Bから頂部17Aに至る少なくとも一部に、頂部17Aに向かって段状に幅が狭まる部分を有していればよい。
 凸条17が頂部17Aに向かって段状に幅が狭まる部分を有するように形成される場合、凸条17は次のように薬剤層31が形成されることが好ましい。すなわち、凸条17は、頂部17Aに向かって段状に幅が狭まる部分として、バルーン本体部16の外面に隣接した第1段部分19と、それよりも頂部17A側の第2段部分20を有し、第1段部分19の基部19Bにおける薬剤層31の厚みが、第2段部分20の基部20Bにおける薬剤層31の厚みよりも厚く形成されることが好ましい。このように薬剤層31が形成されることにより、凸条17の第2段部分20が狭窄部に食い込みやすくなり、バルーン10によって狭窄部を効果的に拡張させることができる。また、凸条17の第1段部分19の基部19Bに薬剤層31がより厚く存在することにより、血管壁の中膜に存在する平滑筋細胞の血管内面への遊走を抑止することができる。第2段部分20の基部20Bには薬剤層31が存在しなくてもよく、また、第2段部分20の側面18に薬剤層31が全く存在しなくてもよい。なお、第2段部分20の基部20Bに薬剤層31が存在する場合の第2段部分20の基部20Bにおける薬剤層31の厚みは、直管部13の長手方向の垂直断面において、凸条17の第2段部分20の基部20Bから薬剤層31の表面までの最短長さを意味する。また、凸条17の第1段部分19の基部19Bは凸条17の基部17Bと一致し、凸条17の第1段部分19の基部19Bにおける薬剤層31の厚みは、凸条17の基部17Bにおける薬剤層31の厚みに相当する。
 他の実施形態として、図9に示すように、凸条17は、頂部17Aに向かって幅が広がる部分を有し、当該部分よりも頂部17A側に、頂部17Aに向かって幅が狭まる部分を有するように形成されてもよい。例えば、直管部13の長手方向の垂直断面において、凸条17の側面18は、凸条17の頂部17Aを通り径方向に延びる仮想直線17Lに対して、頂部17Aに向かって仮想直線17Lから遠ざかる部分18Rと、当該部分よりも頂部17A側に、頂部17Aに向かって仮想直線17Lに近付く部分18Sを有するように形成されていてもよい。この場合、凸条17の側面18の一部が窪んで形成される。そのため、凸条17の側面18の窪んだ部分により多くの薬剤を保持させることが可能となる。凸条17において、頂部17Aに向かって幅が広がる部分、または、凸条17の側面18が頂部17Aに向かって仮想直線17Lから遠ざかる部分18Rは、凸条17の少なくとも0%~30%の高さの範囲の少なくとも一部に形成されることが好ましく、凸条17の50%~100%の高さには形成されないことが好ましい。これにより、凸条17の基部17Bにより多くの薬剤を保持させることができる。
 図10に示すように、直管部13の長手方向の垂直断面において、凸条17の第1側面18Aの基部17Bにおける薬剤層31の厚みが、凸条17の第2側面18Bの基部17Bにおける薬剤層31の厚みよりも厚く形成されていてもよい。このように凸条17の側面18に薬剤層31が形成されていれば、凸条17の第2側面18Bにおいて狭窄部での食い込み性能が確保され、凸条17の第1側面18Aにおいてより多くの薬剤が保持される。そのため、狭窄部においてバルーン10を拡張させた際に、狭窄部に効率的に薬剤を届けることができる。
 凸条17は、直管部13の長手方向の垂直断面において、凸条17の第1側面18Aにおける薬剤層31の平均厚みが、凸条17の第2側面18Bにおける薬剤層31の平均厚みよりも厚く形成されていてもよい。この場合も同様に、凸条17の第2側面18Bにおいて狭窄部での食い込み性能が確保され、凸条17の第1側面18Aにおいてより多くの薬剤が保持され、血管の狭窄部に効率的に薬剤を届けることができる。
 凸条17の第1側面18Aにおける薬剤層31の平均厚みは、次のように求める。直管部13の長手方向の垂直断面において、凸条17の第1側面18Aの基部17Bから薬剤層31の表面までの最短長さを与える薬剤層31の表面の地点と第1側面18Aの基部17Bとを繋ぐ直線(図7~図9において矢印32で表される直線)よりも径方向の外方側にある薬剤層31の面積を、当該直線よりも頂部17A側にある第1側面18Aの長さで除することにより、凸条17の第1側面18Aにおける薬剤層31の平均厚みが求められる。凸条17の第2側面18Bにおける薬剤層31の平均厚みも同様にして求められる。
 薬剤層31は、直管部13の外面に加えて、近位側テーパー部12の外面および/または遠位側テーパー部14の外面にも設けられていてもよい。これにより、狭窄部の広い範囲に薬剤を届けることができる。
 バルーン10は、血管の狭窄部などの処置対象部に送達される際、収縮状態でガイディングカテーテルやシース内に挿通されることが好ましい。この際、バルーン10は、径方向の大きさが小さくなるように適切に折り畳まれることが好ましい。
 図11および図12には、図5に示したバルーン10を収縮させて折り畳んだ例を示した。図11および図12に示すように、バルーン10の収縮状態で、直管部13は、バルーン本体部16の内面を内側にして凸条非存在領域22で折り返されて、凸条非存在領域22が重ね合わされた折り畳み羽根部23を形成し、折り畳み羽根部23が直管部13の外面に重ねられて配置されることが好ましい。折り畳み羽根部23は、バルーン本体部16の凸条非存在領域22が折り曲げ線24で折り返されることにより形成され、凸条非存在領域22どうしが重ね合わされている。折り曲げ線24において、凸条非存在領域22はバルーン本体部16の内面を内側にして折り返されている。従って、バルーン10の外側から見て、折り曲げ線24は山折りとして形成される。折り畳み羽根部23は、バルーン本体部16の凸条非存在領域22のみから形成され、凸条存在領域21を含んで形成されないことが好ましい。
 折り曲げ線24は、凸条17の延在方向に対して略平行に延びるように形成されることが好ましい。凸条非存在領域22は、折り曲げ線24において明確な折り目が形成されるように折り返されてもよく、先端が丸まって折り返されていてもよい。なお、バルーン本体部16の凸条非存在領域22は通常ある程度の厚みと弾性を有するため、凸条非存在領域22は折り曲げ線24において先端が丸まって折り返される。この場合、直管部13の長手方向の垂直断面で見て、凸条非存在領域22が折り返された先端部が折り曲げ線24となる。
 直管部13には、折り曲げ線24に対して周方向の一方側および/または他方側に、バルーン本体部16の外面を内側にして折り返された折り曲げ線(バルーン10の外側から見て谷折り線)が形成されていてもよい。この場合、谷折り線となる折り曲げ線は、折り畳み羽根部23の基部を形成することが好ましい。
 折り曲げ線24は、1つの凸条非存在領域22に1つのみ形成されてもよく、2つ以上形成されてもよい。好ましくは、折り曲げ線24は、1つの凸条非存在領域22に1つまたは2つ形成される。図11では、折り曲げ線24は1つの凸条非存在領域22に1つ形成されており、図12では、折り曲げ線24は1つの凸条非存在領域22に2つ形成されている。折り曲げ線24が1つの凸条非存在領域22に1つのみ形成される場合は、直管部13の長手方向の垂直断面で見て、折り畳み羽根部23は周方向の一方側に傾倒していることが好ましい。折り曲げ線24が1つの凸条非存在領域22に2つ形成される場合は、直管部13の長手方向の垂直断面で見て、2つの折り畳み羽根部23が周方向に互いに反対方向に傾倒し、凸条17側に傾倒していることが好ましい。これにより、バルーン10の収縮状態で、凸条17が折り畳み羽根部23によって保護されやすくなる。
 一実施形態として、バルーン10の収縮状態で、折り畳み羽根部23は凸条17の頂部17Aを覆うように配置されてもよい。この場合、凸条17に設けられた薬剤層31が折り畳み羽根部23によって保護されて、例えば凸条17の頂部17A付近に設けられた薬剤層31が保護されやすくなる。そのため、バルーン10が処置対象部に送達されるまでに、薬剤層31がバルーン10から脱落しにくくなる。
 他の実施形態として、バルーン10の収縮状態で、折り畳み羽根部23は、凸条17の頂部17Aを覆わないように、直管部13の外面に重ねられて配置されていてもよい。この場合、狭窄部でバルーン10を拡張させた際に、凸条17が速やかに狭窄部に食い込み、バルーン10により狭窄部を効果的に拡張させやすくなる。
 図11では、1つの凸条非存在領域22に1つの折り畳み羽根部23が形成され、折り畳み羽根部23が凸条17の頂部17Aを覆うように配置されているが、図11において、折り畳み羽根部23が凸条17の頂部17Aを覆わないように、直管部13の外面に重ねられて配置されていてもよい。図12では、1つの凸条非存在領域22に2つの折り畳み羽根部23が形成され、折り畳み羽根部23が凸条17の頂部17Aを覆わないように、直管部13の外面に重ねられて配置され配置されているが、折り畳み羽根部23が凸条17の頂部17Aを覆うように配置されていてもよい。
 次に、本発明のバルーンカテーテルの製造方法について説明する。本発明の実施の形態に係るバルーンカテーテルの製造方法は、外面に凸条を有するバルーンを準備する工程(以下、「バルーン準備工程」と称する)と、バルーンの外面に薬液を塗布する工程(以下、「塗布工程」と称する)を有する。
 バルーン準備工程では、上記に説明したバルーン10を準備する。すなわち、近位側から遠位側に延びる長手方向と長手方向に垂直な径方向とを有するバルーン10であって、直管部13と、直管部13よりも近位側に位置する近位側テーパー部12と、直管部13よりも遠位側に位置する遠位側テーパー部14とを有し、直管部13が、筒形状のバルーン本体部16と、バルーン本体部16の外面に径方向の外方に突出し長手方向に延在している凸条17とを有するバルーン10を準備する。バルーン10の構成や好適態様の詳細は上記の説明が参照される。
 塗布工程では、図13に示すように、バルーン10の直管部13の外面に薬液33を塗布し、バルーン10を長手方向に延びる中心軸を中心に回転させる。図13には、図2に示したバルーン10の長手方向の垂直断面図が示されており、バルーン10の直管部13の外面に薬液33を塗布している状態が示されている。直管部13の外面に薬液33を塗布し、バルーン10を長手方向に延びる中心軸を中心に回転させることにより、直管部13の外面、特に凸条非存在領域22に塗布された薬液33が直管部13の表面を周方向に移動して凸条17の基部17Bに溜まり、凸条17の基部17Bにより厚く薬剤層31を形成することができる。
 薬液33に含まれる薬剤は、上記の説明が参照される。薬液33は、薬剤を溶解または分散する溶媒が含まれることが好ましい。薬液33の薬剤濃度は特に限定されず、直管部13の外面に塗布可能であり、直管部13の表面で流動性が確保されるように、適宜濃度を調整すればよい。
 薬液33の塗布方法は特に限定されず、例えば、刷毛、スプレー、コーター等により直管部13の外面に薬液33を塗布してもよく、バルーン10を薬液33に浸漬することにより直管部13の外面に薬液33を塗布してもよい。なかでも、図13に示すようにスプレーにより直管部13の外面に薬液33を塗布することが好ましく、これにより直管部13の外面に任意の量の薬液33を広く塗布することが容易になる。また、直管部13の外面に薬剤層31を形成することが容易になる。
 塗布工程では、バルーン10を拡張させた状態で、直管部13の外面に薬液33を塗布することが好ましい。また、バルーン10を拡張させた状態で、バルーン10を長手方向に延びる中心軸を中心に回転させることが好ましい。これにより、直管部13の凸条非存在領域22に塗布された薬液33が直管部13の表面を周方向に移動して凸条17の基部17Bに溜まりやすくなる。
 塗布工程では、バルーン10を長手方向に延びる中心軸を中心に回転させながら、直管部13の外面に薬液33を塗布してもよく、直管部13の外面に薬液33を塗布した後、バルーン10を長手方向に延びる中心軸を中心に回転させてもよい。いずれの場合も、直管部13の外面に塗布された薬液33が、直管部13の表面を周方向に移動して凸条17の基部17Bに溜まるようにすることができる。
 塗布工程では、バルーン10は、長手方向に延びる中心軸を中心に一方向のみに回転させてもよく、一方向とその反対方向の両方向に順番に回転させてもよい。バルーン10の回転方向を適宜設定することにより、凸条17の第1側面18Aの基部17Bと第2側面18Bの基部17Bに形成する薬剤層31の厚みを任意に調整することができる。
 塗布工程では、バルーン10を回転させながら、薬液33に含まれる溶媒の少なくとも一部を蒸発させることが好ましい。これにより、直管部13の外面に薬剤層31を形成することが容易になる。溶媒の蒸発は、薬液33を塗布したバルーン10を加熱することにより行ってもよく、薬液33を塗布したバルーン10を減圧状態に置くことにより行ってもよく、薬液33を塗布したバルーン10に風を当てることにより行ってもよい。また、溶媒として適度な蒸気圧を有する溶媒を選択することにより、バルーン10を回転させながら溶媒が自然に蒸発するようにしてもよい。
 本願は、2022年11月16日に出願された日本国特許出願第2022-183691号に基づく優先権の利益を主張するものである。2022年11月16日に出願された日本国特許出願第2022-183691号の明細書の全内容が、本願に参考のため援用される。
 1:バルーンカテーテル
 2:シャフト
 5:ハブ
 10:バルーン
 11:近位側スリーブ部
 12:近位側テーパー部
 13:直管部
 14:遠位側テーパー部
 15:遠位側スリーブ部
 16:バルーン本体部
 17:凸条、17A:頂部、17B:基部
 18:側面、18A:第1側面、18B:第2側面
 19:第1段部分
 20:第2段部分
 21:凸条存在領域
 22:凸条非存在領域、22F:凸条からの最遠点
 23:折り畳み羽根部
 24:折り曲げ線
 31:薬剤層
 32:凸条の基部における薬剤層の厚み
 33:薬液

Claims (17)

  1.  近位側から遠位側に延びる長手方向と前記長手方向に垂直な径方向とを有するバルーンカテーテル用バルーンであって、
     前記バルーンは、直管部と、前記直管部よりも近位側に位置する近位側テーパー部と、前記直管部よりも遠位側に位置する遠位側テーパー部とを有し、
     前記直管部は、筒形状のバルーン本体部と、前記バルーン本体部の外面に径方向の外方に突出した凸条とを有し、前記直管部の外面に凸条存在領域と凸条非存在領域が形成されており、
     前記直管部の外面には薬剤層が設けられ、
     前記直管部の長手方向の垂直断面において、前記凸条の基部における前記薬剤層の厚みは、前記凸条非存在領域における前記凸条からの最遠点での前記薬剤層の厚みよりも厚いバルーンカテーテル用バルーン。
  2.  前記直管部の長手方向の垂直断面において、前記凸条の頂部における前記薬剤層の厚みは、前記凸条の基部における薬剤層の厚みよりも薄い請求項1に記載のバルーン。
  3.  前記直管部の長手方向の垂直断面において、前記凸条の頂部における前記薬剤層の厚みは、前記凸条非存在領域における前記凸条からの最遠点での前記薬剤層の厚みよりも薄い請求項1に記載のバルーン。
  4.  前記直管部の長手方向の垂直断面において、前記凸条の側面は、前記凸条の頂部を通り径方向に延びる仮想直線に対して、前記凸条の頂部に向かって前記仮想直線から遠ざかる部分と、当該部分よりも頂部側に、前記凸条の頂部に向かって前記仮想直線に近付く部分を有する請求項1に記載のバルーン。
  5.  前記直管部の長手方向の垂直断面において、前記凸条は、頂部に向かって段状に幅が狭まる部分を有する請求項1に記載のバルーン。
  6.  前記凸条は、前記頂部に向かって段状に幅が狭まる部分として、前記バルーン本体部の外面に隣接した第1段部分と、それよりも頂部側の第2段部分を有し、
     前記第1段部分の基部における前記薬剤層の厚みは、前記第2段部分の基部における前記薬剤層の厚みよりも厚い請求項5に記載のバルーン。
  7.  前記凸条は、樹脂製、金属製、またはその組み合わせである請求項1に記載のバルーン。
  8.  前記直管部の長手方向の垂直断面において、前記凸条の頂部を通り径方向に延びる仮想直線に対して一方側にある前記凸条の基部における前記薬剤層の厚みは、前記仮想直線に対して他方側にある前記凸条の基部における前記薬剤層の厚みよりも厚い請求項1に記載のバルーン。
  9.  前記直管部の長手方向の垂直断面において、前記凸条の側面は、前記凸条の頂部を通り径方向に延びる仮想直線に対して一方側にある第1側面と他方側にある第2側面とを含み、前記第1側面における前記薬剤層の平均厚みは、前記第2側面における前記薬剤層の平均厚みよりも厚い請求項1に記載のバルーン。
  10.  前記バルーンの収縮状態で、前記直管部は、前記バルーン本体部の内面を内側にして前記凸条非存在領域で折り返されて、前記凸条非存在領域が重ね合わされた折り畳み羽根部を形成し、
     前記折り畳み羽根部は、前記直管部の外面に重ねられて配置され、前記凸条の頂部を覆っている請求項1に記載のバルーン。
  11.  前記バルーンの収縮状態で、前記直管部は、前記バルーン本体部の内面を内側にして前記凸条非存在領域で折り返されて、前記凸条非存在領域が重ね合わされた折り畳み羽根部を形成し、
     前記折り畳み羽根部は、前記凸条の頂部を覆わないように、前記直管部の外面に重ねられて配置されている請求項1に記載のバルーン。
  12.  請求項1~11のいずれか一項に記載のバルーンを備えるバルーンカテーテル。
  13.  請求項12に記載のバルーンカテーテルを製造する方法であって、
     近位側から遠位側に延びる長手方向と前記長手方向に垂直な径方向とを有するバルーンであって、直管部と、前記直管部よりも近位側に位置する近位側テーパー部と、前記直管部よりも遠位側に位置する遠位側テーパー部とを有し、前記直管部が、筒形状のバルーン本体部と、前記バルーン本体部の外面に径方向の外方に突出し長手方向に延在している凸条とを有するバルーンを準備する工程と、
     前記直管部の外面に薬液を塗布し、前記バルーンを前記長手方向に延びる中心軸を中心に回転させる塗布工程と
     を有するバルーンカテーテルの製造方法。
  14.  前記塗布工程において、前記バルーンを拡張させた状態で、前記直管部の外面に薬液を塗布する請求項13に記載のバルーンカテーテルの製造方法。
  15.  前記塗布工程において、前記バルーンを前記長手方向に延びる中心軸を中心に回転させながら、前記直管部の外面に薬液を塗布する請求項13に記載のバルーンカテーテルの製造方法。
  16.  前記塗布工程において、前記直管部の外面に薬液を塗布した後、前記バルーンを前記長手方向に延びる中心軸を中心に回転させる請求項13に記載のバルーンカテーテルの製造方法。
  17.  前記塗布工程において、前記バルーンを回転させながら、前記薬液に含まれる溶媒の少なくとも一部を蒸発させる請求項13に記載のバルーンカテーテルの製造方法。
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