WO2024071055A1 - SiO2を含有する原料を直接接合したSiO2含有物の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 製造過程で多くの二酸化炭素を排出するセメントを用いることのない、コンクリート代替物を提供することを課題とする。また、かかるコンクリート代替物を提供することに加えて、SiOを含有する原料から適切にテトラアルコキシシランを分離・硬化させることで、任意の性状の砂代替材を提供することも課題とする。 【解決手段】 砂や砂利、石炭灰、バイオマス燃焼灰などに代表されるSiO原料を、エタノール等のアルコール化合物中で混合処理することにより、SiO同士が互いに直接接合した硬化体又はゲルの形態のSiO含有材料を効率的に得ることができる。本発明の製造方法によれば、SiOを含有する原料から適切な濃度でテトラアルコキシシランを分離・濃縮・硬化させ、粉砕により粒度を調整することで、任意の性状の砂代替材を提供することもできる。

Description

SiO2を含有する原料を直接接合したSiO2含有物の製造方法
 本発明は、砂や石炭灰などの原料から効率的に建設資材等に好適なSiO含有物を製造する方法に関する。
 コンクリートは世界で最も広く使用されている建設材料である。コンクリートの主材料としてセメントが用いられているが、その製造時に多くの二酸化炭素を排出するという問題があった。また、セメントの主原料である石灰石の可採年数が、わが国では短ければ数十年、長くても百数十年程度と見積もられている。中国やインド、米国などの大量にコンクリートを製造する他国においても同様の可採年数であることから、輸入による対応には限界がある。
 そのため、コンクリートに代わる、セメントを使用しない建設材料の開発が喫緊の課題となっている(例えば、特許文献1など)。代替材料に求められる条件としては、原料がほぼ無限に入手可能であることや、繰り返し使用可能であることが挙げられる。この点、地球上でもっとも多い材料は、ケイ素を主成分とする砂や砂利であり、これらから直接建設材料を製造することができれば、有力なコンクリート代替材料となると考えられる。その一方、天然の珪砂は年々減少傾向にあり、環境破壊のリスクの高まりから、純度の高い珪砂材料の調達は、年々困難になってきている。そのため、実用に耐え得るコンクリート代替物は十分に実現していないのが現状である。
 また南米や中央アフリカ諸国などでは建設工事が進み,コンクリート等に使用する骨材不足が深刻である。地球上至る所に偏在する砂や砂利であっても,骨材などとして建設工事に使用できるものは限られるためである。例えば砂漠に代表されるように、ほぼ無限に存在すると思われる砂であっても、95%以上の砂は建設材料としては使用することができない。
 これらに対する実用的な打開策については十分に確立されていないというのが実情である。
特開2019-6610号公報 特開2019-119736号公報 特開2021-127264号公報
 そこで、本発明は、製造過程で多くの二酸化炭素を排出するセメントを用いることのない、コンクリート代替物を提供することを課題とするものであり、特に、建設資材等に好適な所望の空隙率や圧縮強度を有するSiO含有物を得ることを課題とする。また、かかるコンクリート代替物を提供することに加えて、SiOを含有する原料から適切にテトラアルコキシシランを分離・硬化させることで、任意の性状の砂代替材を提供することも課題とする。
 本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意検討を行った結果、砂や砂利、石炭灰、バイオマス燃焼灰などに代表されるSiO原料を、エタノール等のアルコール化合物中で混合処理することにより、SiO同士が互いに直接接合した硬化体又はゲルの形態のSiO含有材料を効率的に得ることができることを新規に見出した。また、適度にゲル状のSiO含有物を残存させることで,SiO含有硬化体の靭性を向上させることができることも併せて見出した。これらの知見に基づき、本発明を完成するに至ったものである。
 すなわち、本発明は、一態様において
<1>a)SiOを含有する原料と、アルコール化合物と、アルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物を含む触媒とを混合した混合物を調製する工程であって、前記アルコール化合物が濃度1重量%以上のアルコール溶液として添加され、前記アルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物が、前記混合物の総量に対して0.1重量%以上である、該工程;b)前記工程a)で得られる混合物を加熱処理し、前記SiOを含有する原料中のSiOの一部又は全てをテトラアルコキシシラン成分に変換する工程;及びc)生成した前記テトラアルコキシシラン成分を再びSiOに変換することで、前記原料が直接接合したSiO含有物を得る工程を含み、前記SiO含有物が、硬化体又はゲルの状態である、SiO2含有物の製造方法;
<2>d)前記工程c)で得られたSiO含有物を分離し、乾燥及び/又は加熱処理を行う工程をさらに含む、上記<1>に記載の製造方法;
<3>前記工程b)において生成したテトラアルコキシシラン成分を前記混合物から分離及び濃縮する工程をさらに含み、当該分離及び濃縮されたテトラアルコキシシラン成分を前記工程c)の処理に供することを含む、上記<1>に記載の製造方法;
<4>前記SiOを含有する原料が、ケイ石、ケイ砂、ケイ藻土、石英、又はシリカを含む、上記<1>に記載の製造方法;
<5>前記SiOを含有する原料が、砂、砂利、石炭灰、バイオマス燃焼灰、及びそれらの組み合わせから選択される無機材料である、上記<1>に記載の製造方法;
<6>前記SiOを含有する原料が、10重量%以上のSiOを含む、上記<1>に記載の製造方法;
<7>前記SiOを含有する原料が、1nm~10cmの範囲の粒径を有する粒子形状を有する、上記<1>に記載の製造方法;
<8>前記アルコール化合物が、エタノールである、上記<1>に記載の製造方法;
<9>前記アルコール溶液が、20重量%以上のアルコール化合物を含む、上記<1>に記載の製造方法;
<10>前記工程a)で得られる混合物が、原料としての非プロトン性有機溶媒を含まない、上記<1>に記載の製造方法;
<11>前記アルカリ金属化合物が、アルカリ金属の水酸化物、ハロゲン化物、硫酸塩、炭酸塩、及び炭酸水素塩よりなる群から選択される少なくとも1種である、上記<1>に記載の製造方法;
<12>前記アルカリ金属化合物が、水酸化カリウム(KOH)である、上記<1>に記載の製造方法;
<13>前記工程b)の加熱処理が、40~300℃の範囲で行われる、上記<1>に記載の製造方法;
<14>前記工程d)を減圧条件下において行う、上記<2>に記載の製造方法;
<15>前記SiO含有物が、95%以下の空隙率を有する、上記<1>に記載の製造方法;及び
<16>前記SiO含有物が、1MPa以上の圧縮強度を有する、上記<1>に記載の製造方法;
を提供するものである。
 本発明によれば、製造過程で多くの二酸化炭素を排出するセメントを用いることなく、SiOが互いに直接接合したSiO含有物を得ることができ、新規なコンクリート代替物等を低コストかつ効率的に提供することができる。本発明の方法により得られるSiO含有物は、砂や砂利だけでなく、石炭灰やバイオマス燃焼灰などの無機材料を含む幅広いSiO原料を用いることができる点で有益である。加えて、上述のように、純度の高い天然の珪砂材料や建設材料等としての砂の調達が困難となってきているところ、本発明の製造方法によれば、SiOを含有する原料から適切な濃度でテトラアルコキシシランを分離・濃縮・硬化させ、粉砕により粒度を調整することで、任意の性状の砂代替材を提供することもできる。
 また、本発明の製造方法により得られるSiO含有物は、所望の空隙率や圧縮強度を有するため、建設資材等の用途において好適である。特に、構造材等のコンクリート向けには強度の向上が望ましく、断熱材や防音材向けとしては空隙率の向上が望ましいが、本発明の製造方法ではこれらの用途に応じて好適なSiO含有物を提供することが可能となる。さらに、砂や砂利は月面や火星でも容易に入手可能であることから、宇宙開発でも活用が期待できる。
図1は、実施例で用いた圧力反応容器を示す画像である。 図2は、種々のエタノール量を用いて製造したSiO含有物硬化体についての空隙率及び硬化度を示すグラフである。 図3は、60~99.5%の範囲のエタノール濃度を用いて製造したSiO含有物硬化体についての圧縮強度及び空隙率を示すグラフである。 図4は、20~50%の範囲のエタノール濃度を用いて製造したSiO含有物硬化体についての圧縮強度及び空隙率を示すグラフである。 図5は、原料としてフライアッシュを用いて得られたSiO含有物硬化体の画像である(左からN1、N2、N1である)。 図6は、原料としてフライアッシュを用いて製造したSiO含有物硬化体についての空隙率及び硬化度を示すグラフである。 図7は、SiO原料として珪砂とフライアッシュの混合物を用いて製造したSiO含有物硬化体についての圧縮強度及び空隙率を示すグラフである。 図8は、種々の処理温度において製造したSiO含有物硬化体(4号珪素)についての空隙率及び硬化度を示すグラフである。 図9は、種々の処理温度において製造したSiO含有物硬化体(8号珪素)についての空隙率及び硬化度を示すグラフである。 図10は、種々の処理温度で製造したSiO含有物硬化体についての圧縮強度を示すグラフである。 図11は、種々の粒形の原料を用いて製造したSiO含有物硬化体についての空隙率を示すグラフである。 図12は、種々の粒形の原料を用いて製造したSiO含有物硬化体についての硬化度を示すグラフである。 図14は、種々の脱水剤添加量において製造したSiO含有物硬化体についての空隙率及び硬化度を示すグラフである。 図14は、実施例で得られたSiO含有物硬化体の圧縮強度と空隙率を示すグラフである。 図15は、SiO原料としてフライアッシュを用い、60~99.5%の範囲のエタノール濃度において製造したSiO含有物硬化体の圧縮強度を示すグラフである。 図16は、SiO原料としてフライアッシュを用いて、1~2gの範囲のKOH添加量において製造したSiO含有物硬化体の圧縮強度を示すグラフである。 図17は、SiO原料としてフライアッシュを用いて、10分~48時間の加熱時間で製造したSiO含有物硬化体の圧縮強度を示すグラフである。 図18は、原料フライアッシュの圧縮前処理の有り(Compact)及び無し(Loose)における、SiO含有物硬化体の圧縮強度の比較を示すグラフである(エタノール濃度:95%及び99.5%)。
 以下、本発明の実施形態について説明する。本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更し実施することができる。
1.本発明のSiO含有物の製造方法
 本発明の製造方法は、硬化体又はゲルの状態であるSiO含有物を製造するものであって、以下のa)~c)の工程を含むことを特徴とする。
 a)SiOを含有する原料(SiO原料)と、アルコール化合物と、アルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物を含む触媒とを混合した混合物を調製する工程であって、前記混合物が1重量%以上のアルコール化合物を含み、前記アルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物が、前記混合物の総量に対して0.1重量%以上である、工程;
 b)前記工程a)で得られる混合物を加熱処理し、前記SiOを含有する原料中のSiOの一部又は全てをテトラアルコキシシラン成分(Si(OR))に変換する工程;及び
 c)生成した前記テトラアルコキシシラン成分を再びSiOに変換することで、前記原料が直接接合したSiO含有物を得る工程。
 必ずしも理論に拘束されるものではないが、本発明の製造方法においてSiO含有物硬化体が得られる機構としては以下のものであると推測される。深谷らは、砂(SiO原料)をアルコールで分解して脱水することで、有機ケイ素化合物であるテトラアルコキシシランが得られることを報告している(Chemistry Letters 2016 45:7, 828-830)。この反応は、以下の反応式(1)で表される。
(式1)
Figure JPOXMLDOC01-appb-I000001
 深谷らの論文では、反応生成物の水(HO)を除去することで、反応式の平衡を右側に移動させ、テトラアルコキシシラン(Si(OR))の効率的な生成を行っている。ここで、式(1)は可逆的な平衡反応であるため、当該反応では、SiOの化学結合の切断と再生が繰り返し生じているものと解釈することができる。
 この反応を応用し,効率的なテトラアルコキシシランの製造方法を考案したのが、特許文献2(特開2019-119736号公報)である。これによれば、式(1)の右辺のHOを、モレキュラーシーブを用いることで効果的に除去し、テトラアルコキシシランを高効率で製造することができるとされているが、これらはあくまでもテトラアルコキシシランを高効率で製造する技術であり、SiO2含有物を製造するものではない。
 また、特許文献3(特開2021-127264号公報)では、かかる平衡反応に着目し、SiO原料に上記反応式(1)を適用し、いったんテトラアルコキシシランが生成した後に、左辺のSiOを再度生成させることにより、SiO原料の表面等に存在するSiO成分が互いに結合し、SiO原料同士が直接接合した集合体(硬化体)を得たことが開示されている。しかしながら、特許文献3の開示の方法では、硬化体の生成工程においてジメトキシプロパン(DMP)等を添加して脱水操作を行うことが必須であり、また、得られる硬化体の硬化度や強度等も十分なものではなかった。
 これに対し、本発明は、脱水操作を行わずに、特定比率の水を含むアルコール溶液を用いて、あえて加水し反応系における水分量を調整することで、SiO原料同士が直接接合した集合体(硬化体)の硬化度や強度等を著しく向上させることができることを新たに見出したものである。逆に、水分量を調整することで、SiO2原料同士が直接接合した集合体の硬度を低下させることも可能であり、この典型例がゲル状の集合体である。ゲル状の集合体は、後処理などにより硬度を向上させることが可能であるなど、完全に硬化したSiO2集合体とは異なる用途に適用することができる。
 また別の観点では、SiOは、ゾル-ゲル反応によってシリカ多孔体を生ずることが知られているところ、本発明は、SiO原料の表面のみがゾル化することにより、SiO原料同士が接合した硬化体が生成すると考えることも可能である。この場合、SiO2表面がゾル化する度合いにより、多孔体の空隙率を調整することができる。
 また、後述のように、上記反応式(1)の右辺のSi(OR)を単独で分離(場合によって、濃縮)することで、よりSiO濃度が高く優れた高度を有するSiO含有物硬化体を得ることができることも併せて見出したものである。
 このように、本発明の製造方法は、SiO原料中のSiO成分が上記反応式によりSiOの化学結合の切断と再生を繰り返していることを利用し、SiO原料同士が直接接合した硬化体又はゲルの状態のSiO含有物が得られることを見出し、さらに、反応系における水分量を調整することで、当該硬化体又はゲルの高度や空隙率を所望の範囲とすることができることを見出した点に特徴を有するものである。
 本発明において、「SiOを含有する原料(SiO原料)」とは、SiOを一定程度含有する物質であれば特に限定されるものではないが、ケイ石、ケイ砂、ケイ藻土、石英等の天然鉱物、ケイ素含有植物の焼成灰、火山灰、ケイ酸塩類、シリカゾル由来のシリカゲル、ヒュームドシリカ、シリカアルミナ、ゼオライト、ガラス等の人工物を含む物質であることができる。好ましくは、ケイ石、ケイ砂、ケイ藻土、石英、シリカ、又はそれらの1種以上の組み合わせを含むものを挙げることができる。例えば、花崗岩や流紋岩などを含むこともできる。その入手容易性等の観点からは、典型的には、SiO原料は、砂、砂利、石炭灰、バイオマス燃焼灰、及びそれらの組み合わせから選択される無機材料を用いることができる。かかる砂利や砂は、コンクリートやモルタルを製造する際の骨材として用いられているものであることができる。
 また、石炭灰としては、例えば、火力発電等において石炭を燃焼した後に、ばいじんとして得られるフライアッシュを用いることができる。ここで、フライアッシュは、日本国内において約1,000万トン/年程度発生しており、国内においては一部コンクリート混和材として有価物利用されているものの、その多くはセメント製造における粘土代替材や埋め立てなど、産業廃棄物として処理されている材料である。
 本発明において用いられるSiOを含有する原料(SiO原料)は、10重量%以上のSiOを含有することができ、好ましくは45重量以上、特に好ましくは60重量%以上のSiOを含有する原料を用いることができる。
 また、本発明において用いられるSiO原料は、硬化反応の際の効率等の観点から、粒子形状或いは略粒子形状を有するものであることが好ましい。その際の粒径(平均粒径)は、1nm~10cmの範囲であることができ、典型的には、1μ~10cm、好ましくは、10μ~5cmの範囲、より好ましくは、100μm~3cmの範囲であることができる。ただし、上述のようにSiO原料は、完全な粒子形状である必要はないため、いわゆる砂や砂利のように不均一な形状であってもよいため、ここでいう「粒径」とは、おおよそのサイズを表すものと理解されるべきである。
 上述のように、本発明の製造方法における工程a)は、少なくとも以下の3成分:
1)SiOを含有する原料と、
2)アルコール化合物と、
3)アルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物を含む触媒と
を混合した混合物を調製する工程である。これにより、上記反応式(1)で示したような化学平衡状態を得ることができる。
 当該工程a)で用いられるアルコール化合物は、直鎖又は分岐鎖のアルキルを有するアルコールであることができ、アルキル部分は任意の置換基によって置換されていてもよい。アルコール化合物は、好ましくは、炭素数1~10のアルコールであることができ、より好ましくは、炭素数1~5のアルコールであることができる。典型的には、アルコール化合物は、メタノール又はエタノールであり、好ましくはエタノールである。当該アルコール化合物は、上記反応式(1)において右辺のテトラアルコキシシランを得るための原料となり得るが、平衡反応全体においては、再度左辺のアルコールに戻り得る。
 ここで、前記アルコール化合物は、濃度1重量%以上のアルコール溶液の形態で混合物中に添加される。アルコール溶液の濃度は、好ましくは20重量%以上、より好ましくは60重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上である。特に好ましい態様では、アルコール溶液の濃度は、80~90重量%の範囲である。
 当該工程a)で用いられるアルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物は、SiOおけるケイ素-酸素結合の開裂を促進し、上記反応式(1)の右辺のテトラアルコキシシランの生成の触媒として機能する成分である。
 かかるアルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属化合物におけるアルカリ金属及びアルカリ土類金属としては、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、マグネシウム(Mg)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、セシウム(Cs)等を挙げることができる。また、対アニオンについては、水酸化物、ハロゲン化物、酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩、アルコキシド、ケイ酸塩、アルミン酸塩、リン酸塩、有機酸塩、硫酸塩、硝酸塩等が挙げられる。中でも水酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩、炭酸水素塩が好ましく、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属ハロゲン化物、アルカリ金属炭酸塩、及びアルカリ金属炭酸水素塩がより好ましい。
 具体的なアルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属化合物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化セシウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化セシウム等が挙げられる。なお、アルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属化合物は、1種類のみならず、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
 アルカリ金属化合物は、好ましくは、アルカリ金属の水酸化物、ハロゲン化物、硫酸塩、炭酸塩、及び炭酸水素塩よりなる群から選択される少なくとも1種であることができる。典型的には、水酸化カリウム(KOH)である。
 工程a)におけるアルコール化合物を含むアルコール溶液の添加量は、適宜設定することが可能であるが、好ましくは、アルコールの100重量部に対して1~50重量部、より好ましくは、1~15重量部である。
 また、工程a)におけるSiO原料の存在量は、好ましくは、上記アルコール溶液の100重量部に対して1~50重量部であり、より好ましくは、1~30重量部である。
 好ましい態様では、工程a)で得られる混合物は、原料としての非プロトン性有機溶媒を含まない。そのような非プロトン性有機溶媒としては、ジメトキシプロパン等のアセタールを例示することができる。
 次に、本発明の製造方法における工程b)は、工程a)で得られる混合物を加熱処理することで、上記反応式(1)の右辺への反応を進行させ、SiO原料中のSiOの一部又は全てをテトラアルコキシシラン成分(Si(OR))に変換する工程である。
 当該工程b)における加熱処理は、好ましくは、40~300℃の範囲、より好ましくは、100~250℃の範囲であることができる。また、加熱時間は、反応物の量などに応じて適宜設定し得るものであるが、典型的には、10~120時間、好ましくは、12~96時間、より好ましくは、24~72時間の範囲とすることができる。なお、SiO原料の種類によっては、10~60分、又は10~30分で行うこともできる。
 好ましい態様では、次の工程c)の前に、工程b)において生成したテトラアルコキシシラン成分(上記反応式(1)の右辺におけるSi(OR))を前記混合物から分離及び濃縮する工程をさらに行い、当該分離及び濃縮されたテトラアルコキシシラン成分を前記工程c)の処理に供すこともできる。これにより工程c)において、よりSiO濃度の高いSiO含有物を得ることができる。かかる分離・濃縮は、当該技術分野において公知の手法を用いて行うことができる。
 次いで、本発明の製造方法における工程c)は、工程b)で生成したテトラアルコキシシラン成分を再びSiOに変換する工程である。すなわち、テトラアルコキシシラン成分を含む混合物或いは上述のように混合物から分離・濃縮したテトラアルコキシシラン成分を上記反応式(1)の左辺に異動させることで、SiO成分の再生が生じ、これにより、SiO原料同士が直接接合したSiO含有物を得ることができる。これは、典型的には、混合物から分離・濃縮したテトラアルコキシシラン成分を室温等にまで冷却することにより得ることができる。
 ここで得られるSiO含有物は、硬化体又はゲルの状態であることができる。硬化体の場合には、SiO原料が互いに直接し、固体の塊或いは集合体となったSiO含有物が得られる。また、ゲルの状態の場合には、同様にSiO原料が互いに直接しているものの、完全には固化していない状態という。
 ゲル状態のSiO含有物は、工程c)における材料の配合等によって、完全に硬化させない条件とすることで得ることができる。なお、硬化体の少なくとも一部分がゲル状態となったSiO含有物とすることもできる。適度にゲル状のSiO含有物を残存させることで、硬化体の靭性を向上させることができる点で有利な場合がある。
 工程c)において冷却を行う場合、当該冷却は、好ましくは、室温付近まで放冷することにより行われる。
 工程a)~c)を行うための反応器、操作手順等は特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。反応器としては、オートクレーブ等の耐圧・耐熱性の反応器であることが好ましい。
 工程a)及びb)における反応は、特に限定されないが、通常0.1MPa以上、好ましくは0.5MPa以上、より好ましくは1.0MPa以上であり、通常60MPa以下、好ましくは30MPa以下、より好ましくは20MPa以下の圧力条件で行うことができる。
 本発明の製造方法における好ましい態様では、工程c)の後に、以下の工程d)を行うこともできる。
 d)前記工程c)で得られたSiO含有物を分離し、乾燥及び/又は加熱処理を行う工程。
 生成したSiO含有物を溶媒等から分離し、目的物であるSiO含有物を単離する操作は、例えば、ろ過等の当該技術分野において公知の手法を用いることができる。なお、SiO含有物が分離された後に残存するアルコール化合物やアルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物は、次の反応処理に再利用することができる。
 また、分離したSiO含有物に対して乾燥及び/又は加熱処理を更に行うことにより、SiO含有物表面における水素結合を、脱水(縮合)反応により共有結合とすることができ、SiO含有物の強度を更に増加させる目的において好適である。なお、SiO含有物がゲル状の場合には、屋外においてモルタルペーストと同様に使用し、自然乾燥させることで、コンクリート度同様に現場施工に使用できる。
 工程d)における乾燥及び/又は加熱処理は,減圧環境下で実施することでより効率よく脱水反応を促進することができる。ここで、「減圧」には、真空状態を含む。さらに,この加熱乾燥処理の進行を適度に調節し,ゲル状SiO含有物を適度に残存させることで,SiO含有物硬化体の持つ靭性を適切に調整することが可能となる。
 工程d)における乾燥及び/又は加熱処理の具体例としては、以下の態様を用いることができる。
 <1>乾燥処理(自然乾燥を含む)
 <2>加熱処理
 <3>加熱・乾燥処理
 <4>減圧乾燥処理
 <5>減圧加熱処理
 <6>減圧下での乾燥・加熱処理
2.本発明の製造方法により得られるSiO含有物の物性等
 本発明の製造方法により得られるSiO含有物は、SiO原料どうしが直接結合したSiO含有物であることに加えて、その空隙率や圧縮強度の点も特徴を有する。
 すなわち、本発明の製造方法により得られるSiO含有物は、その95%以下の空隙率において特徴的な性能を示す。例えば、コンクリート代替材として強度を高めることを志向する場合においては、好ましくは、60%以下、より好ましくは50%以下の範囲の空隙率を有することにより、従来のSiO硬化体に比して高い強度を有することができる。一方、断熱性や遮音性の向上を志向する場合には、70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上の空隙率を有することにより、従来のSiO硬化体に比して、強度低下は避けられないものの、高い断熱性、遮音性を有するコンクリートを得ることができる。
 かかる範囲内の値とすることで、本発明の製造方法により得られるSiO含有物は、<1>コンクリート代替材としての物性、<2>純度の高いシリカ代替材としての物性、<3>空隙率を意図的に大きくし,断熱ボードの代替材とする場合において、それぞれに好適な材料となることができる。
 ここで、SiO含有物の空隙率は、アルキメデス法により測定することができる。すなわち、得られたSiO含有物の重量をアルコール化合物等を含む状態で計測した後、当該SiO含有物を絶乾状態まで乾燥させ、その重量を測定し、これら計測した重量から以下の式を用いて空隙率(%)を算出することができる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000002
 また、本発明の製造方法により得られるSiO含有物は、好ましくは1MPa以上、より好ましくは2MPaの圧縮強度を有することができる。かかる範囲の空隙率を有することにより、従来のSiO硬化体に比して高い強度を有することができる。
 圧縮強度は、当該技術分野における公知の手法を用いて測定することができるが、例えば、得られたSiO含有物を乾燥させた後、低速カッター等により表面を切断し、万能試験機を用いて試験を行い、ロードセルにより測定した荷重を以下の式に適用することで、圧縮強度fc(MPa)を算出することができる。式中、Pは最大荷重(N)であり、dは直径(mm)である。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000003
 以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、以下の実施例は、元芝浦大学工学部土木工学科の田村勇樹氏の協力のもとに行ったものである。
1.SiO 含有物硬化体の製造手順
 SiO原料としてSiO含む珪砂、アルコールとしてエタノール(特級試薬富士フィルム和光純薬)、触媒として水酸化カリウム(粉末)(合成用、メルク株式会社)を用いた。珪砂としては、以下表に示す化学組成を有する8号珪砂、4号珪砂、トレンガヌ砂(T6)、日瓢珪砂(N60)、鹿島6号(K6)を用いた。用いた珪砂のSiO含量は、それぞれ、8号珪砂が84.1~85.3重量%、4号珪砂が89.3~89.4重量%、T6は92.1~92.5%、N60が85.4~86.2重量%、K6は62.2~62.6重量
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000004
 また、これら珪砂の粒度分布を以下の表2に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000005
 SiO含有物硬化体を以下の手順で製造した。珪砂、KOH、及びエタノールの所定量を、銅薄膜又はステンレス薄膜製の小さな箱型容器に収納し、これを圧力反応容器に投入した。反応器を密封した後、(別途条件を記載しない限り)所定温度で24時間加熱した。加熱終了後、反応容器を室温まで冷却し、得られた硬化体をろ過により単離した。反応器内の圧力は、5MPaに維持して行った。用いた反応容器を図1に示す。
2.エタノール量の検討
 上記の製造手順に従い、種々のエタノール量を変化させた以下の条件を用いて、SiO含有物硬化体を製造した。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000006
 得られたSiO含有物硬化体について空隙率及び硬化度を測定した。
 空隙率は、以下の方法により測定した。作製したSiO含有物硬化体を取り出した後、即座に秤を用いて、液中重量を計測した。そして、硬化体を液中から取り出し、素早く表面の水分ふき取り飽水重量を計測した。その後、硬化体を40℃乾燥機で1日程度乾燥させた後、105℃乾燥機で絶乾状態になるまで乾燥させ、絶乾重量を計測した。絶乾状態の基準として、105℃乾燥機に入れ、4時間の重量変化が0.15%以下となった状態を絶乾状態とした。得られた各重量を上述の空隙率の式に代入し、空隙率を算出した。
 作製した硬化体を105℃での乾燥後、破壊試験を実施し、硬化度を1~4の4段階で評価した。評価の指標として、硬化体が作製されなかったものは「0」、指で軽く押して破壊されたものを「1」、指で強く押して破壊されたものを「2」、強く押しても破壊しないが表面や角の一部が欠けたものを「3」強く押しても全く破壊しなかったものを「4」とした。
 算出された空隙率及び硬化度の結果を図2に示す。その結果、主原料の珪砂に対して一定量以上の程度のエタノールが存在すれば、エタノール量にかかわらず同様の空隙率と硬化度を持った硬化体が作製できることが確認された。
3.エタノール濃度の検討
 次いで、添加するエタノール溶液の濃度の影響を検討した。上記の製造手順に従い、3種の珪砂材料(T6、N60、K6)、3種のフライアッシュ(N1、N2、H1)、及び木質灰について種々のエタノール濃度を変化させた以下の条件を用いて、SiO含有物硬化体を製造した。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000007
 得られた各SiO含有物硬化体について、空隙率及び硬化度を測定した結果を、各製造条件とともに以下の表に示す(表中の硬化度は、硬化度の高いものから順にA>B>Bの指標で表している)。
 その結果、K6及びN60についてはエタノール濃度が高くなることにより空隙率が顕著に低下する傾向にあることが分かった、また、硬化度については、80%エタノールを使用したT6のみ硬化度3であったが、それ以外はすべて「4」という高い硬化度が得られた。また、N60については、エタノール濃度が60%及び70%の場合に、得られた硬化体はゲル状であった。
 さらに、硬化度と空隙率に与えるエタノール濃度の影響を検討するため、エタノール濃度を20~99.5%の範囲でSiO含有物硬化体の作製を行った。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000009
 各エタノール濃度において得られた硬化体について、上記と同様に空隙率を測定し、また、硬化度の指標として、圧縮強度(MPa)を算出した。得られた結果を以下の表に示す。また、これらの結果をグラフにしたものを図3(エタノール濃度60~99.5%)及び図4(エタノール濃度20~50%)に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000010
 この結果、エタノール80%の条件において、圧縮強度が最大となり、空隙率は最も低くなった。
 次いで、上記表5中に示したように、SiO原料として、珪砂に変えてフライアッシュを用いて同様の検証を行った。フライアッシュとして、N1、N2、H1の3種を用いた。これの化学組成及び粒径はそれぞれ以下に示すとおりである。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000011
 用いた製造条件は以下のとおりである。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000012
 原料としてフライアッシュを用いて得られたSiO含有物硬化体の画像を図5に示す(左からN1、N2、N1である)。得られた各SiO含有物硬化体について測定した空隙率及び硬化度を図6に示す。その結果、いずれのフライアッシュを用いた場合でも、エタノール濃度を低下させると空隙率が増加し、硬化度も低下する傾向が見られた。一方、エタノール濃度の低下に伴う形状の変化は見られなかった.以上の結果より、フライアッシュを用いる場合には99.5%のエタノール濃度が好ましいと考えられる。
 さらに、異なるSiO原料を種々の割合で混合した混合物を用いてSiO含有物硬化体を作製した。具体的には、8号珪砂とフライアッシュ(N2)を3:1、2:2、1:3の比率とした混合物について、以下の条件で硬化させた。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000013
 得られた混合物について測定した圧縮強度(MPa)及び空隙率(%)を以下に示す。また、これらの結果をグラフにしたものを図7に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000014
4.その他の条件の検討
4-1.処理温度
 以下の表 に示す条件でSiO含有物硬化体を作製し、処理温度の変化が空隙率に与える影響を検討した。容器の設計最高温度が260℃であることから、最高処理温度は240℃として実験を行った。KOHは、珪砂に混合する手法で行った。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000015
 得られた空隙率及び硬化度を図8及び9に示す。4号珪砂及び8号珪砂のいずれの場合も、高い処理温度(240℃)の場合に空隙率が低くなった。また、硬化度は240℃のほうが高い値となった。したがって、より高い強度の硬化体を作製するためには、240程度の高い処理温度が好ましいことが分かった。
 また、処理温度を120~240℃の範囲で変化させて、圧縮強度への影響を検証した(処理時間は、1日及び3日を用いた)。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000016
 得られた結果を図10に示す。その結果、処理温度を高くすることで、より大きな圧縮強度が得られることが分かった。なお、処理時間1日の場合には、160℃以下では硬化体は生成せず、また、処理時間3日の場合には、120℃では硬化体が生成しなかった。
 一方、処理温度として110℃を用いた場合でも、処理時間を長くし、168時間(7日間)とすることで、硬化体が得られることを確認した。
4-2.原料の粒子径
 以下の表 に示す条件でSiO含有物硬化体を作製し、SiO含有原料の粒子径が空隙率及び硬化度に与える影響を検討した。上記と同様にKOHは、珪砂に混合する手法で行った。4号珪砂の平均粒径は750μmであり、8号形成の平均粒径は120μmである。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000017
 得られた空隙率及び硬化度を図11及び12に示す。図9に示すように、粒形の大きい4号珪砂において最も低い空隙率が得られた。これは、粒径の大きい買には粒子同士の隙間にエタノールや触媒が入り込みやすく、反応により空隙が埋まりやすいことが考えられる。
4-3.脱水剤
 次いで、以下の表 に示す条件でSiO含有物硬化体を作製し、脱水剤である2,2-ジメトキシプロパン(DMP)が硬化に与える影響について検討を行った。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000018
 得られた空隙率及び硬化度を図13に示す。その結果、DMPの有無や添加量により、空隙率及び硬化度に大きな変化は見られなかった。そのため、DMP等の脱水剤は本発明の製造方法において必須の成分ではなく、パラメータとして考慮する必要がないことが分かった。
5.圧縮強度試験
 以下の表に示す実験条件でSiO含有物硬化体を作製し、表面を切断することで直径:高さ=1:1の円柱形状に加工した。切断後は水分を蒸発させるために、105℃の乾燥機で3日程度乾燥させた。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000019
 万能試験機を用いて試験を行い、ロードセルにより測定した荷重を上述の式に適用することで、圧縮強度fc(MPa)を算出した。圧縮強度算出の際に用いた直径は、サンプル試料の中央部で互いに直交する2方向と斜め方向の合わせて3方向を計測し、2断面の6つの直径のデータの平均を直径として用いた。得られた結果を図14に示す。
 その結果、圧縮強度の最大値は、KOH 濃度14.3%において10.95MPaであった。また、KOH濃度の増加によって、空隙率の低下が見られた。したがって、触媒であるKOH濃度を増加させることによって、空隙率の低下と圧縮強度の増加が得られることが分かった。
 また、エタノール濃度を変化させて同様の圧縮強度試験を行ったところ、99.5%エタノールを用いて作製した硬化体よりも80%エタノールを用いた場合に、圧縮強度が高くなる傾向が見られた。
6.フライアッシュ硬化体の高強度化の検討
 SiO含有原料としてフライアッシュを用いて、より高い圧縮強度を有する硬化体の作製条件の検討を行った。
 図1と同様の反応容器を用いて、効果処理を行った。フライアッシュ、KOH、及びエタノールの所定量を、銅薄膜又はステンレス薄膜製の小さな箱型容器に収納し、これを圧力反応容器に投入した。反応器を密封した後、240℃で所定時間加熱した。加熱終了後、反応容器を室温まで冷却して硬化体を得た。得られた硬化体について、上記5.と同様に圧縮強度試験を行った。
 用いたフライアッシュの組成を以下の表に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000020
6-1.エタノール濃度の検討
 圧縮濃度に対する、添加したエタノール溶液の濃度の影響を検討した。エタノール濃度60%~99.5%において得られた圧縮強度の結果を以下の表及び図15に示す。その結果、エタノール濃度が高いほど、高圧縮強度の硬化体が得られることが分かった。圧縮高度が低い理由は、硬化体の空隙率が高く、高いAl含有量であることによるものと考えられる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000021
6-2.KOH濃度の検討
 次に、圧縮濃度に対するKOH添加量の影響を検討した。1g~2gのKOH添加量において得られた圧縮強度の結果を以下の表及び図16に示す。その結果、KOH添加量を2gとした場合に最も高い圧縮強度が得られ、KOH添加量が増えると圧縮強度が増加することが分かった。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000022
6-3.加熱時間の検討
 また、原料を混合後の加熱時間が圧縮強度に与える影響を検討した。加熱時間として10分~48時間を用いた場合に得られた圧縮強度の結果を図17に示す。その結果、加熱時間を24時間とした場合に、最も高い圧縮強度が得られた。
6-4.原料フライアッシュの圧縮
 さらに圧縮強度を高める目的で、前処理として原料フライアッシュを圧縮した後に、硬化処理を行った。エタノール濃度として95%及び99.5%の2条件を用いて、24時間の加熱時間で硬化処理を行った。フライアッシュの圧縮処理の有無による圧縮強度の差異を図18に示す。図中、「Compact」は、圧縮前処理有り、「Loose」は圧縮前処理なしの場合である。
 その結果、フライアッシュを予め圧縮処理した場合には、圧縮強度が低下することが分かった。これは、原料フライアッシュの圧縮した場合には、原料の中心部分においてエタノールとの反応が十分に進行しないためと考えられる。
 なお、フライアッシュを用いて作製した硬化体の圧縮強度測定は、東京大学大学院社会基盤学専攻のSHOHANA Shanjida Ahmed氏の協力のもとに行ったものである。

Claims (16)

  1.  a)SiOを含有する原料と、アルコール化合物と、アルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物を含む触媒とを混合した混合物を調製する工程であって、前記アルコール化合物が濃度1重量%以上のアルコール溶液として添加され、前記アルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物が、前記混合物の総量に対して0.1重量%以上である、該工程;
     b)前記工程a)で得られる混合物を加熱処理し、前記SiOを含有する原料中のSiOの一部又は全てをテトラアルコキシシラン成分に変換する工程;及び
     c)生成した前記テトラアルコキシシラン成分を再びSiOに変換することで、前記原料が直接接合したSiO含有物を得る工程
    を含み、
     前記SiO含有物が、硬化体又はゲルの状態である、
    SiO2含有物の製造方法。
  2.  d)前記工程c)で得られたSiO含有物を分離し、乾燥及び/又は加熱処理を行う工程をさらに含む、請求項1に記載の製造方法。
  3.  前記工程b)において生成したテトラアルコキシシラン成分を前記混合物から分離及び濃縮する工程をさらに含み、当該分離及び濃縮されたテトラアルコキシシラン成分を前記工程c)の処理に供することを含む、請求項1に記載の製造方法。
  4.  前記SiOを含有する原料が、ケイ石、ケイ砂、ケイ藻土、石英、又はシリカを含む、請求項1に記載の製造方法。
  5.  前記SiOを含有する原料が、砂、砂利、石炭灰、バイオマス燃焼灰、及びそれらの組み合わせから選択される無機材料である、請求項1に記載の製造方法。
  6.  前記SiOを含有する原料が、10重量%以上のSiOを含む、請求項1に記載の製造方法。
  7.  前記SiOを含有する原料が、1nm~10cmの範囲の粒径を有する粒子形状を有する、請求項1に記載の製造方法。
  8.  前記アルコール化合物が、エタノールである、請求項1に記載の製造方法。
  9.  前記アルコール溶液が、20重量%以上のアルコール化合物を含む、請求項1に記載の製造方法。
  10.  前記工程a)で得られる混合物が、原料としての非プロトン性有機溶媒を含まない、請求項1に記載の製造方法。
  11.  前記アルカリ金属化合物が、アルカリ金属の水酸化物、ハロゲン化物、硫酸塩、炭酸塩、及び炭酸水素塩よりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の製造方法。
  12.  前記アルカリ金属化合物が、水酸化カリウム(KOH)である、請求項1に記載の製造方法。
  13.  前記工程b)の加熱処理が、40~300℃の範囲で行われる、請求項1に記載の製造方法。
  14.  前記工程d)を減圧条件下において行う、請求項2に記載の製造方法。
  15.  前記SiO含有物が、95%以下の空隙率を有する、請求項1に記載の製造方法。
  16.  前記SiO含有物が、1MPa以上の圧縮強度を有する、請求項1に記載の製造方法。
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