WO2023248467A1

WO2023248467A1 - アッパー及び靴

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Publication number: WO2023248467A1
Application number: PCT/JP2022/025327
Authority: WO
Inventors: 千早鈴木
Original assignee: 株式会社アシックス
Priority date: 2022-06-24
Filing date: 2022-06-24
Publication date: 2023-12-28

Abstract

アッパー（２）は、表面（２０ｅ）と表面（２０ｅ）と反対を向く裏面（２０ｆ）とを含む１つの層（２０ｄ）を有する布状の基材（２０）と、基材（２０）に並んで配置されて互いに独立して形成された複数の線状材（２２）と、を備えている。複数の線状材（２２）のそれぞれは、層（２０ｄ）に固定されて、互いに離れて配置された複数の固定部（２２ａ）と、隣り合う固定部（２２ａ）の間に位置して、層（２０ｄ）に固定されない複数の非固定部（２２ｂ）と、を有している。複数の線状材（２２）のそれぞれは、層（２０ｄ）の面内方向に交互に折り返されている。固定部（２２ａ）を介して連続する複数の非固定部（２２ｂ）は、層（２０ｄ）の表面（２０ｅ）と裏面（２０ｆ）の少なくともいずれか一方に露出して配置されるか、又は、層（２０ｄ）の内部に配置されている。

Description

アッパー及び靴

　本発明は、アッパー及びこのアッパーを備える靴に関する。

　従来、アッパーに装飾を施してアッパーの意匠性を高めたり、アッパーの引張剛性、摩耗強度等の物性をコントロールしたりするために、アッパーに刺繍を形成することが行われている（例えば、特許文献１参照）。

　アッパーは、布状の基材を含んでいる。基材は、一般に、表面と裏面とを含む層を１層又は２層以上備えている。特許文献１に開示されているように、従来の刺繍は、基材を製造した後に、基材に糸を縫い付けることにより形成される。以下、基材に固定される「糸」を「線状材」と称する。

　アッパーの意匠の表現の幅を広げたり、アッパーの物性を部分的に変更したりするためには、基材における線状材の位置を任意に選択できることが望ましい。

特表２０２０－５２５０８８号公報

　しかしながら、従来の刺繍では、基材が１層である場合に基材の層の表面と裏面と内部とに亘って線状材が必ず配置され、基材が２層以上である場合に基材の各層に亘って線状材が必ず配置される。そのため、従来の刺繍では、基材における線状材の位置の選択の自由度が低いという問題がある。

　本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、基材における線状材の位置の選択の自由度を高めることができるアッパーを得ることを目的とする。

　上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るアッパーは、表面と表面と反対を向く裏面とを含む１つの層を有する布状の基材と、基材に並んで配置されて互いに独立して形成された複数の線状材と、を備えている。複数の線状材のそれぞれは、層に固定されて、互いに離れて配置された複数の固定部と、隣り合う固定部の間に位置して、層に固定されない複数の非固定部と、を有している。複数の線状材のそれぞれは、基材の面内方向に交互に折り返されている。固定部を介して連続する複数の非固定部は、層の表面と裏面の少なくともいずれか一方に露出して配置されるか、又は、層の内部に配置されている。

　本発明に係るアッパーは、基材における線状材の位置の選択の自由度を高めることができるという効果を奏する。

図１は、本発明の実施の形態１に係る靴のアッパーを示した展開図である。図２は、本発明の実施の形態１に係る靴を示した斜視図である。図３は、図２に示されるＩＩＩ－ＩＩＩ線に沿った断面図である。図４は、図３に示される矢印Ｘからアッパーを見たときの図である。図５は、比較例に係る靴のアッパーを示した断面図であって、基材の層が１層であるアッパーに刺繍を形成した状態を示した図である。図６は、本発明の実施の形態１の変形例１に係る靴のアッパーを示した断面図であって、図２に示されるＩＩＩ－ＩＩＩ線断面図に相当する図である。図７は、本発明の実施の形態１の変形例２に係る靴のアッパーを示した断面図であって、図２に示されるＩＩＩ－ＩＩＩ線断面図に相当する図である。図８は、本発明の実施の形態１の変形例３に係る靴のアッパーを示した図であって、図３に示される矢印Ｘからアッパーを見たときの図に相当する図である。図９は、本発明の実施の形態２に係る靴のアッパーを示した断面図であって、図２に示されるＩＩＩ－ＩＩＩ線断面図に相当する図である。図１０は、本発明の実施の形態２に係る靴のアッパーを示した図であって、図９に示される矢印Ｘからアッパーを見たときの図に相当する図である。図１１は、比較例に係る靴のアッパーを示した断面図であって、基材の層が３層であるアッパーに刺繍を形成した状態を示した図である。図１２は、本発明の実施の形態２の変形例１に係る靴のアッパーを示した断面図であって、図２に示されるＩＩＩ－ＩＩＩ線断面図に相当する図である。図１３は、本発明の実施の形態２の変形例２に係る靴のアッパーを示した断面図であって、図２に示されるＩＩＩ－ＩＩＩ線断面図に相当する図である。図１４は、本発明の実施の形態２の変形例３に係る靴のアッパーを示した断面図であって、図２に示されるＩＩＩ－ＩＩＩ線断面図に相当する図である。図１５は、本発明の実施の形態２の変形例４に係る靴のアッパーを示した断面図であって、図２に示されるＩＩＩ－ＩＩＩ線断面図に相当する図である。図１６は、本発明の実施の形態２の変形例５に係る靴のアッパーを示した断面図であって、図２に示されるＩＩＩ－ＩＩＩ線断面図に相当する図である。図１７は、本発明の実施の形態２の変形例６に係る靴のアッパーを示した断面図であって、図２に示されるＩＩＩ－ＩＩＩ線断面図に相当する図である。図１８は、本発明の実施の形態２の変形例７に係る靴のアッパーを示した断面図であって、図２に示されるＩＩＩ－ＩＩＩ線断面図に相当する図である。図１９は、本発明の実施の形態２の変形例８に係る靴のアッパーを示した断面図であって、図２に示されるＩＩＩ－ＩＩＩ線断面図に相当する図である。図２０は、本発明の実施の形態２の変形例９に係る靴のアッパーを示した断面図であって、図２に示されるＩＩＩ－ＩＩＩ線断面図に相当する図である。図２１は、本発明の実施の形態２の変形例１０に係る靴のアッパーを示した断面図であって、図２に示されるＩＩＩ－ＩＩＩ線断面図に相当する図である。図２２は、本発明の実施の形態２の変形例１１に係る靴のアッパーを示した断面図であって、図２に示されるＩＩＩ－ＩＩＩ線断面図に相当する図である。図２３は、本発明の実施の形態２の変形例１２に係る靴のアッパーを示した断面図であって、図２に示されるＩＩＩ－ＩＩＩ線断面図に相当する図である。図２４は、本発明の実施の形態２の変形例１３に係る靴のアッパーを示した断面図であって、図２に示されるＩＩＩ－ＩＩＩ線断面図に相当する図である。図２５は、本発明の実施の形態２の変形例１４に係る靴のアッパーを示した断面図であって、図２に示されるＩＩＩ－ＩＩＩ線断面図に相当する図である。図２６は、本発明の実施の形態２の変形例１５に係る靴のアッパーを示した断面図であって、図２に示されるＩＩＩ－ＩＩＩ線断面図に相当する図である。

　以下に、本発明に係るアッパー及び靴の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。以下の説明において、同一の部分には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。

（実施の形態１）
　図１は、本発明の実施の形態１に係る靴１のアッパー２を示した展開図である。図１を含む各図には、左足用の靴１のみを図示している。靴１は、左足用と右足用とで左右対称構造であるため、本実施の形態では左足用の靴１のみを説明し、右足用の靴１の説明を省略する。以下の説明においては、靴１を平面視した状態において靴１の中心を通る垂線であるシューズセンター軸Ｃが延在する方向を前後方向と称し、靴１を平面視した状態において前後方向と直交する方向を足幅方向と称する。

　以下の説明においては、前後方向のうち、靴１において踵から爪先に向かう方向を前方と称し、前後方向のうち、靴１において爪先から踵に向かう方向を後方と称する。

　以下の説明においては、足のうちの解剖学的正位における正中側を内足側と称し、足のうちの解剖学的正位における正中側とは反対側を外足側と称する。すなわち、解剖学的正位における正中に近い側を内足側と称し、解剖学的正位における正中に遠い側を外足側と称する。

　以下の説明においては、上下方向とは、他に特段の記載がない限り、前後方向及び足幅方向の両方向に直交する方向を意味する。

　アッパー２は、標準的な体型の着用者の足の前足部を覆うアッパー前足部Ｒ１と、標準的な体型の着用者の足の中足部を覆うアッパー中足部Ｒ２と、標準的な体型の着用者の足の後足部を覆うアッパー後足部Ｒ３とを含んでいる。アッパー２の前方から後方に向かって順に、アッパー前足部Ｒ１とアッパー中足部Ｒ２とアッパー後足部Ｒ３とが連なっている。

　アッパー２の前端からアッパー２の前後方向の寸法の概ね３０％から４０％に相当する位置を通る足幅方向に沿った線を第１境界線Ｓ１とし、アッパー２の前端からアッパー２の前後方向の寸法の概ね７３％から８３％に相当する位置を通る足幅方向に沿った線を第２境界線Ｓ２とする。第１境界線Ｓ１は、標準的な体型の着用者のＭＰ関節に概ね沿った線である。第２境界線Ｓ２は、標準的な体型の着用者のショパール関節に概ね沿った線である。アッパー前足部Ｒ１は、第１境界線Ｓ１よりも前方に位置する部分である。アッパー中足部Ｒ２は、第１境界線Ｓ１と第２境界線Ｓ２との間に位置する部分である。アッパー後足部Ｒ３は、第２境界線Ｓ２よりも後方に位置する部分である。

　図２は、本発明の実施の形態１に係る靴１を示した斜視図である。靴１は、ランニング用の靴であることが好ましいが、他のスポーツ用の靴、ウォーキング用の靴、登山用の靴などでもよい。靴１は、アッパー２と、ソール３とを備えている。

　アッパー２は、ソール３の上方に位置する。アッパー２は、基材２０と、線状材配置領域２１と、シュータン２３と、シューレース２４とを備えている。

　基材２０は、着用者の足の甲側の部分を覆う。基材２０の上部には、履き口２０ａと、スロート部２０ｂとが形成されている。履き口２０ａは、着用者の足を基材２０の内部に入れるための開口である。スロート部２０ｂは、履き口２０ａに連通して履き口２０ａから前方に延びる開口である。スロート部２０ｂの足幅方向の両側の側縁には、前後方向に互いに離隔する複数の紐通し部２０ｃが設けられている。図２では、スロート部２０ｂの外足側の側縁に設けられた紐通し部２０ｃのみを図示している。紐通し部２０ｃは、シューレース２４を通すことが可能であればよい。紐通し部２０ｃは、例えば、基材２０の厚さ方向に基材２０を貫通する貫通孔である。

　図１及び図２では、線状材配置領域２１の範囲を明確にするために、線状材配置領域２１にドットハッチングを付している。線状材配置領域２１は、アッパー２を装飾する役割とアッパー２の物性を部分的に変更する役割とを果たしている。基材２０及び線状材配置領域２１の詳細については後記する。

　シュータン２３は、着用者の足の甲を保護するための部材である。シュータン２３は、基材２０の内部においてスロート部２０ｂを覆う。シュータン２３は、縫合、溶着、接着又はこれらの組み合わせによって基材２０に固定されている。基材２０及びシュータン２３は、例えば、糸を鎖形状に丸め、鎖形状の部分同士を引っ掛けて布状とする編物、縦糸と横糸とを一定の角度で交差させて布状とする織物、３本以上の組糸を互いに交差させるとともに斜めに走らせて布状とする組み物である。特に通気性及び軽量性が求められる靴１においては、基材２０及びシュータン２３は、ポリエステル糸を編み込んだダブルラッセル経編地であることが好ましい。なお、基材２０及びシュータン２３の素材は、例示した素材に限定されない。

　シューレース２４は、スロート部２０ｂの足幅方向の一方の側縁に設けられた紐通し部２０ｃと足幅方向の他方の側縁に設けられた紐通し部２０ｃとに交互に通される紐状の部材である。シューレース２４は、基材２０に着脱可能に取り付けられている。

　なお、本実施の形態ではシュータン２３及びシューレース２４を含むアッパー２を例に説明するが、アッパー２は、シュータン２３に相当する部分が基材２０の足首部分と一体となったモノソック構造であってもよい。また、基材２０を足に密着させる手段は、シューレース２４ではなく、例えば、面ファスナーであってもよい。基材２０を足に密着させる手段が面ファスナーである場合には、紐通し部２０ｃが基材２０に形成されない。

　ソール３は、アッパー２の下方に位置する。ソール３は、着用者の足裏を覆う。ソール３は、縫合、溶着、接着又はこれらの組み合わせによって基材２０に固定される。ソール３は、アウトソール３０と、ミッドソール３１とを備えている。アウトソール３０の下面は、地面に設置する接地面３０ａとなる。ミッドソール３１は、アウトソール３０の上面に位置しており、クッション性を有している。なお、アウトソール３０は、ミッドソール３１と一体であってもよい。ミッドソール３１と一体化されたアウトソール３０は、「ユニソール」とも称される。

　図示は省略するが、ソール３は、基材２０の下側開口を覆う中底を備えている。中底は、接着又は溶着によってミッドソール３１の上面に固定される。中底は、縫合によって基材２０の下縁に固定される。図示は省略するが、靴１は、中敷きを備えてもよい。靴１が中敷きを備える場合、中敷きは、アッパー２の内部でソール３の上に設置される。なお、ソール３は、中底を省略した構造であってもよい。

　次に、図１から図４を参照して、基材２０及び線状材配置領域２１についてさらに詳しく説明する。図３は、図２に示されるＩＩＩ－ＩＩＩ線に沿った断面図である。図４は、図３に示される矢印Ｘからアッパー２を見たときの図である。

　図１に示すように、基材２０は、アッパー前足部Ｒ１と、アッパー中足部Ｒ２と、アッパー後足部Ｒ３とを含んでいる。図２に示すように、基材２０は、アッパー２のうちシュータン２３及びシューレース２４以外の領域の全体に亘って配置されている。図３に示すように、基材２０は、１つの層２０ｄを有する布状の部材である。層２０ｄは、表面２０ｅと、表面２０ｅと反対を向く裏面２０ｆとを含んでいる。

　表面２０ｅは、アッパー２の外部の方を向く面である。換言すると、表面２０ｅは、着用者の足と反対側に位置する面である。裏面２０ｆは、アッパー２の内部の方を向く面である。換言すると、裏面２０ｆは、着用者の足側に位置する面である。図４に示すように、基材２０は、本実施の形態では、複数の糸２０ｇを編み込んだ編物である。基材２０は、第１方向に延びる複数のウェール２０ｈと、第１方向と直交する第２方向に延びる複数のコース２０ｉとを含んでいる。第１方向及び第２方向のいずれか一方は、前後方向と一致し、第１方向及び第２方向のいずれか他方は、足幅方向と一致する。

　図１に示すように、線状材配置領域２１は、基材２０のうちアッパー前足部Ｒ１とアッパー中足部Ｒ２とに設けられている。線状材配置領域２１は、本実施の形態では、図１のドットハッチングで示した箇所に設けられる。線状材配置領域２１の位置は、図示した例に限定されない。図４に示すように、線状材配置領域２１は、複数の線状材２２が配置される領域である。複数の線状材２２は、基材２０に並んで配置されて互いに独立して形成されている。複数の線状材２２は、基材２０の面内方向に並んでいる。複数の線状材２２のそれぞれは、基材２０の面内方向に交互に折り返されている。線状材２２は、前後方向又は足幅方向に３ｍｍ以上の変動幅を持っている。

　線状材２２及び基材２０の糸２０ｇは、例えば、複数本の繊維を束ねた糸、樹脂を線状にした物、撚り糸等である。線状材２２及び基材２０の糸２０ｇの材料は、例えば、ポリエステル、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン、ナイロン、スパンデックス、ケブラー（登録商標）、超高分子量ポリエチレン、ポリウレタンをカバーリングしたＳＣＹ（Single　Covered　Yarn）やＤＣＹ（Double　Covered　Yarn）等である。

　複数の線状材２２のうちの一部又は全部の材料と基材２０の糸２０ｇの材料とは、互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。例えば、複数の線状材２２のうちの少なくとも１つの材料と基材２０の糸２０ｇの材料とは、互いに異なっていてもよい。複数の線状材２２のうちの一部又は全部の太さと基材２０の糸２０ｇの太さとは、互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。例えば、複数の線状材２２のうちの少なくとも１つの太さと基材２０の糸２０ｇの太さとは、互いに異なっていてもよい。

　複数の線状材２２のうちの少なくとも１つの材料の融点は、基材２０の材料の融点よりも低いことが好ましい。例えば、複数の線状材２２のうちの一部又は全部は、基材２０の糸２０ｇよりも低融点を有する糸であってもよい。また、複数の線状材２２のうちの一部又は全部は、融点の異なる繊維を含有する複合糸であってもよい。特に、複数の線状材２２のうちの一部又は全部に、高融点の芯材（繊維）を低融点の材料で覆った芯鞘構造を使用することが望ましい。このようにすると、低融点の材料の融点以上の温度で線状材２２を熱処理することで、低融点の材料が局所的に溶融して固化するため、アッパー２の引張剛性をさらに高めることが可能である。

　複数の線状材２２のそれぞれは、層２０ｄに固定される複数の固定部２２ａと、層２０ｄに固定されない複数の非固定部２２ｂとを有している。複数の固定部２２ａは、互いに離れて配置されている。固定部２２ａは、基材２０に形成された通し部２０ｊに通されて糸２０ｇに絡む部分である。通し部２０ｊは、円形状の孔である。通し部２０ｊは、基材２０のうち隣り合うループの一部が絡むことにより形成されている。複数の非固定部２２ｂは、互いに離れて配置されている。非固定部２２ｂは、隣り合う固定部２２ａの間に位置している。

　非固定部２２ｂの第１方向に沿う長さＬは、適宜設定すればよいが、３ｍｍを超えることが好ましい。複数の非固定部２２ｂのそれぞれは、基材２０の１ウェールに跨って配置されるとともに、基材２０の２コースに跨って配置されている。非固定部２２ｂが跨ぐ基材２０のコース数は、非固定部２２ｂが跨ぐ基材２０のウェール数よりも多い。

　図３に示すように、複数の線状材２２は、層２０ｄの表面２０ｅに露出して配置されるか、又は、層２０ｄの裏面２０ｆに露出して配置されている。図３では、別体で形成された２本の線状材２２が線状材２２の長さ方向に並んでいる状態を図示している。以下の説明において、２本の線状材２２を区別する場合には、鎖線で示された一方の線状材２２を第１線状材２２Ａと称し、破線で示された他方の線状材２２を第２線状材２２Ｂと称する。

　第１線状材２２Ａにおいて固定部２２ａを介して連続する複数の非固定部２２ｂは、層２０ｄの表面２０ｅに露出して配置されている。第１線状材２２Ａの非固定部２２ｂは、基材２０のうち着用者の足と反対側に位置する表面２０ｅに露出している。第２線状材２２Ｂにおいて固定部２２ａを介して連続する複数の非固定部２２ｂは、層２０ｄの裏面２０ｆに露出して配置されている。第２線状材２２Ｂの非固定部２２ｂは、基材２０のうち着用者の足側に位置する裏面２０ｆに露出している。第１線状材２２Ａの材料と第２線状材２２Ｂの材料とは、互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。第１線状材２２Ａの太さと第２線状材２２Ｂの太さとは、互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。

　アッパー２の製造は、経編機等の専用の機械を用いて基材２０の形成と線状材配置領域２１の形成とを一度の工程で行うことが可能である。

　次に、本実施の形態に係るアッパー２及び靴１の効果について説明する。

　図５は、比較例に係る靴１００のアッパー１１０を示した断面図であって、基材２０の層２０ｄが１層であるアッパー１１０に刺繍を形成した状態を示した図である。図５に示すように、従来の刺繍では、線状材２２の非固定部２２ｂが層２０ｄの表面２０ｅと裏面２０ｆとに交互に露出する。すなわち、従来の刺繍では、線状材２２の非固定部２２ｂを層２０ｄの表面２０ｅに露出させると、線状材２２が層２０ｄの内部を通って線状材２２の非固定部２２ｂが層２０ｄの裏面２０ｆにも必ず露出して、線状材２２が基材２０の層２０ｄの表面２０ｅと裏面２０ｆと内部とに亘って必ず配置される。

　本実施の形態では、図３に示すように、複数の線状材２２のそれぞれは、層２０ｄに固定されて互いに離れて配置された複数の固定部２２ａと、隣り合う固定部２２ａの間に位置して層２０ｄに固定されない複数の非固定部２２ｂとを有している。本実施の形態では、固定部２２ａを介して連続する複数の非固定部２２ｂは、層２０ｄの表面２０ｅに露出して配置されるか、又は、層２０ｄの裏面２０ｆに露出して配置されている。これらの構成により、１本の線状材２２の複数の非固定部２２ｂを層２０ｄの表面２０ｅに連続して露出させたり、１本の線状材２２の複数の非固定部２２ｂを層２０ｄの裏面２０ｆに連続して露出させたりできるため、従来の刺繍に比べて、基材２０における線状材２２の位置の選択の自由度を高めることができる。

　固定部２２ａを介して連続する複数の非固定部２２ｂが層２０ｄの表面２０ｅに露出して配置される場合には、任意の意匠をアッパー２の外観に自由に付与することができる。また、固定部２２ａを介して連続する複数の非固定部２２ｂが層２０ｄの表面２０ｅに露出して配置される場合であって、かつ、摩耗強度が高い線状材２２を使用する場合には、着用者の足が基材２０に触れた際のタッチ感をアッパー２のタッチ感として維持しつつ、アッパー２の外面の摩耗強度及び引張剛性を向上させることができる。固定部２２ａを介して連続する複数の非固定部２２ｂが層２０ｄの裏面２０ｆに露出して配置される場合には、非固定部２２ｂがアッパー２の意匠に影響を与えないか、又は、アッパー２の意匠に影響を与えにくくなるため、基材２０の意匠をアッパー２の外観の意匠として維持しやすくなる。また、固定部２２ａを介して連続する複数の非固定部２２ｂが層２０ｄの裏面２０ｆに露出して配置される場合であって、かつ、摩耗強度が高い線状材２２を使用する場合には、アッパー２の内面の摩耗強度及び引張剛性を向上させることができる。また、固定部２２ａを介して連続する複数の非固定部２２ｂが層２０ｄの裏面２０ｆに露出して配置される場合であって、かつ、肌触りのよい材質の線状材２２を使用する場合には、着用者の足が線状材２２に触れた際のタッチ感を向上させることができる。つまり、本実施の形態では、基材２０における線状材２２の位置を任意に選択できることにより、アッパー２の意匠の表現の幅を広げつつ、アッパー２の物性を部分的に自由に変更することができる。

　図５に示すように、従来の刺繍では、層２０ｄの表面２０ｅから非固定部２２ｂを見せる場合に、非固定部２２ｂが層２０ｄの表面２０ｅと裏面２０ｆとに交互に露出するため、層２０ｄの裏面２０ｆに凹凸が現れる。この凹凸が足当たりに悪影響を及ぼすため、層２０ｄの裏面２０ｆに裏材を貼り合わせる必要があるが、そうすると靴１の重量が増加してしまう。この点、本実施の形態では、図３に示すように、層２０ｄの表面２０ｅから非固定部２２ｂを見せる場合に、第１線状材２２Ａのように複数の非固定部２２ｂが層２０ｄの表面２０ｅに連続して露出する。そのため、層２０ｄの裏面２０ｆに凹凸が現れず、裏材を使用することなく足当たりが良好なアッパー２を提供可能である。

　本実施の形態では、図３に示される基材２０の形成と線状材配置領域２１の形成とを一度の工程で行うことが可能であるため、アッパー２の製造工程数や廃材量等を減らして、コストの削減及び環境負荷の軽減を図ることができる。

　図４に示される線状材２２によりアッパー２の引張剛性を向上させるためには、基材２０を構成するコース及びウェールのそれぞれを２つ以上跨いで線状材２２が配置される必要がある。編物の場合、コース及びウェールの最大サイズは３ｍｍ程度であることから、本実施の形態のように線状材２２の変動幅は３ｍｍ以上であることが望ましい。

　アッパーに刺繍を形成したり、アッパーに糸を溶着したりする従来技術を用いて、本実施の形態のようなアッパー２の意匠性の多様性及び物性の多様性を実現するためには、裏材及び接着剤が必要になる。本実施の形態では、線状材２２のみでアッパー２の意匠性の多様性及び物性の多様性を実現でき、裏材及び接着剤が不要になるため、従来技術に比べて、アッパー２の軽量化を図れる。

　本実施の形態では、図３に示すように、層２０ｄの表面２０ｅに露出して配置される第１線状材２２Ａと層２０ｄの裏面２０ｆに露出して配置される第２線状材２２Ｂとが別体に形成されている。これにより、第１線状材２２Ａと第２線状材２２Ｂとの材料、太さ等を変えて、アッパー２の物性を部分的に変更することができる。

　編物の場合には、編み目のサイズは最大で３ｍｍである。本実施の形態では、図４に示される非固定部２２ｂの長さＬが３ｍｍを超えるため、編物では表現できない意匠をアッパー２の外観に付与することができる。

　図４に示される複数の線状材２２のうちの少なくとも１つの太さと基材２０の糸２０ｇの太さとを互いに異ならせると、線状材２２と糸２０ｇとで摩耗強度、引張剛性等の物性を変えることができる。そのため、アッパー２のうち線状材２２が配置される部分の物性とアッパー２のうち線状材２２が配置されない部分の物性とを互いに異ならせることができる。

　図４に示される複数の線状材２２のうちの少なくとも１つの材料と基材２０の糸２０ｇの材料とを互いに異ならせると、線状材２２と糸２０ｇとで摩耗強度、引張剛性等の物性を変えることができる。そのため、アッパー２のうち線状材２２が配置される部分の物性とアッパー２のうち線状材２２が配置されない部分の物性とを互いに異ならせることができる。

　本実施の形態では、図４に示すように、複数の非固定部２２ｂのうちの少なくとも１つは、基材２０の２コース以上に跨って配置されている。これにより、編物では表現できない意匠をアッパー２の外観に付与することができるとともに、コース方向におけるアッパー２の引張剛性を向上させることができる。

　本実施の形態では、図４に示すように、非固定部２２ｂが跨ぐ基材２０のコース数は、非固定部２２ｂが跨ぐ基材２０のウェール数よりも多い。これにより、例えば、基材２０を伸びやすい材料、線状材２２を伸びにくい材料にした場合、ウェール方向（第１方向）には伸びやすいがコース方向（第２方向）には伸びにくいアッパー２を作製することができる。

　次に、実施の形態１の変形例について説明する。

　図３に示される２本に分かれていた線状材２２を、図６に示されるように１本の線状材２２にしてもよい。図６は、本発明の実施の形態１の変形例１に係る靴１のアッパー２を示した断面図であって、図２に示されるＩＩＩ－ＩＩＩ線断面図に相当する図である。

　線状材２２は、第１領域２２ｃと、第２領域２２ｄとを有する単一の部材である。第１領域２２ｃは、固定部２２ａを介して連続する複数の非固定部２２ｂが層２０ｄの表面２０ｅのみに露出して配置される領域である。第２領域２２ｄは、固定部２２ａを介して連続する複数の非固定部２２ｂが層２０ｄの裏面２０ｆのみに露出して配置される領域である。

　本変形例では、線状材２２が第１領域２２ｃと第２領域２２ｄとを有する単一の部材であることにより、第１領域２２ｃに相当する部分と第２領域２２ｄに相当する部分とを別体に形成する場合に比べて、加工費及び環境負荷を軽減することができる。本変形例では、線状材２２が第１領域２２ｃと第２領域２２ｄとを有する単一の部材であることにより、第１領域２２ｃを引っ張ったときに、第２領域２２ｄに張力を与えることが可能になり、足とアッパー２とのフィット性を高めることができる。なお、複数の線状材２２のうちの少なくとも１つが、第１領域２２ｃと第２領域２２ｄとを有する単一の部材であればよい。

　本実施の形態では、図３に示すように、固定部２２ａを介して連続する複数の非固定部２２ｂは、層２０ｄの表面２０ｅに露出して配置されるか、又は、層２０ｄの裏面２０ｆに露出して配置されているが、図７に示されるように層２０ｄの内部に配置されてもよい。すなわち、固定部２２ａを介して連続する複数の非固定部２２ｂは、層２０ｄの表面２０ｅと裏面２０ｆの少なくともいずれか一方に露出して配置されるか、又は、層２０ｄの内部に配置されていればよい。図７は、本発明の実施の形態１の変形例２に係る靴１のアッパー２を示した断面図であって、図２に示されるＩＩＩ－ＩＩＩ線断面図に相当する図である。

　図７に示すように、第１線状材２２Ａの構成は、前記した実施の形態１と同一である。本変形例では、第２線状材２２Ｂの全体が層２０ｄの内部に配置されている。第２線状材２２Ｂの全体が層２０ｄの内部に配置される場合でも、第２線状材２２Ｂは、複数の固定部２２ａと、複数の非固定部２２ｂとを有している。固定部２２ａは、層２０ｄの内部で糸２０ｇに編み込まれている部分である。非固定部２２ｂは、層２０ｄの内部で糸２０ｇに編み込まれていない部分である。第２線状材２２Ｂにおいて、固定部２２ａを介して連続する複数の非固定部２２ｂは、層２０ｄの内部に配置されている。第２線状材２２Ｂの非固定部２２ｂは、基材２０の表面２０ｅ及び裏面２０ｆに露出していない。本変形例では、基材２０の形成と線状材配置領域２１の形成とを一度の工程で行えるため、線状材２２を基材２０の層２０ｄの内部に配置することが可能である。

　固定部２２ａを介して連続する複数の非固定部２２ｂが層２０ｄの内部に配置されている場合には、アッパー２の外観を見たときに非固定部２２ｂが多少見えるものの、基材２０に近似する意匠をアッパー２の外観の意匠として維持しやすくなる。また、固定部２２ａを介して連続する複数の非固定部２２ｂが層２０ｄの内部に配置されている場合には、着用者の足が基材２０に触れた際のタッチ感をアッパー２のタッチ感として維持しつつ、アッパー２の引張剛性を向上させることができる。固定部２２ａを介して連続する複数の非固定部２２ｂの位置が、層２０ｄの表面２０ｅ、層２０ｄの裏面２０ｆ、又は、層２０ｄの内部であるかによって、基材２０の意匠をそのまま生かせるか又は基材２０に別の意匠を付加でき、かつ、基材２０の物性をそのまま生かせるか又は基材２０に別の物性を付加できる。

　なお、層２０ｄの表面２０ｅに露出して配置される線状材２２と層２０ｄの内部に配置される線状材２２とが一体に形成される構成でもよい。このような構成の場合には、線状材２２が第１領域と第２領域とを有する単一の部材となる。第１領域は、固定部２２ａを介して連続する複数の非固定部２２ｂが層２０ｄの表面２０ｅのみに露出して配置される領域である。第２領域は、固定部２２ａを介して連続する複数の非固定部２２ｂが層２０ｄの内部のみに配置される領域である。

　図７に示される層２０ｄの表面２０ｅと、層２０ｄの内部と、層２０ｄの裏面２０ｆとに線状材２２を配置することもできる。このようにすると、非固定部２２ｂがはっきりと見える領域と、非固定部２２ｂが多少見える領域と、非固定部２２ｂが見えない領域とに分けられる。そのため、アッパー２の面内方向だけでなく、アッパー２の厚さ方向に高低差のある意匠を表現できる。つまり、アッパー２の厚さ方向及びアッパー２の面内方向を含めた３次元的な意匠を創出できる。

　例えば、層２０ｄがメッシュ等の多孔質体である場合、層２０ｄの厚さが薄い場合、層２０ｄが透明な場合には、層２０ｄの内部及び層２０ｄの裏面２０ｆに配置された非固定部２２ｂが見えることもある。このような場合に、層２０ｄの表面２０ｅと、層２０ｄの内部と、層２０ｄの裏面２０ｆとに線状材２２を配置してもよい。このようにすると、基材２０における非固定部２２ｂの位置によって非固定部２２ｂの見えやすさが変わる。そのため、線状材２２をぼやかして見せることができ、アッパー２の厚さ方向に高低差のある意匠を表現できる。

　非固定部２２ｂの配置は、図４に図示した例に限定されず、適宜変更してもよい。例えば、複数の非固定部２２ｂのうちの少なくとも１つが、基材２０の２ウェール以上、又は、基材２０の２コース以上に跨って配置されていてもよい。

　例えば、非固定部２２ｂの配置は、図８に示されるような配置でもよい。図８は、本発明の実施の形態１の変形例３に係る靴１のアッパー２を示した図であって、図３に示される矢印Ｘからアッパー２を見たときの図に相当する図である。複数の非固定部２２ｂのそれぞれは、基材２０の５ウェールに跨って配置されるとともに、基材２０の１コースに跨って配置されている。非固定部２２ｂが跨ぐ基材２０のウェール数は、非固定部２２ｂが跨ぐ基材２０のコース数よりも多い。本変形例では、編物では表現できない意匠をアッパー２の外観に付与することができる。本変形例では、例えば、基材２０を伸びやすい材料、線状材２２を伸びにくい材料にした場合、コース方向（第２方向）には伸びやすいがウェール方向（第１方向）には伸びにくいアッパー２を作製することができる。なお、非固定部２２ｂが跨ぐ基材２０のコース数と非固定部２２ｂが跨ぐ基材２０のウェール数とが同じであってもよい。

　本実施の形態では、基材２０が複数の糸２０ｇを編み込んだ編物であったが、例えば、複数の糸２０ｇを織り込んだ織物、複数の糸２０ｇを組み合わせた組物であってもよい。

（実施の形態２）
　実施の形態２に係る靴１Ａについて図９及び図１０を参照して説明する。図９は、本発明の実施の形態２に係る靴１Ａのアッパー２Ａを示した断面図であって、図２に示されるＩＩＩ－ＩＩＩ線断面図に相当する図である。図１０は、本発明の実施の形態２に係る靴１Ａのアッパー２Ａを示した図であって、図９に示される矢印Ｘからアッパー２Ａを見たときの図に相当する図である。実施の形態２に係る靴１Ａは、基材２０の層２０ｄが２層以上である点が、実施の形態１に係る靴１と相違する。

　図９に示すように、基材２０は、層２０ｄを２層以上有する布状の部材である。基材２０の層２０ｄの数は、本実施の形態では３層であるが、適宜変更してもよい。基材２０は、第１層２０ｋと、第１層２０ｋと隙間を空けて配置される第２層２０ｍと、第１層２０ｋと第２層２０ｍとの間に位置する第３層２０ｎとを含んでいる。

　第１層２０ｋは、基材２０のうち最も外部の方に位置する。換言すると、第１層２０ｋは、基材２０のうち着用者の足から最も離れた層２０ｄである。第２層２０ｍは、基材２０のうち最も内部の方に位置する。換言すると、第２層２０ｍは、基材２０のうち最も着用者の足側に位置する層２０ｄである。第３層２０ｎは、第１層２０ｋと第２層２０ｍとの間に位置する。第３層２０ｎは、第１層２０ｋと第２層２０ｍとを繋ぎつつ、第１層２０ｋと第２層２０ｍとが接触しないようにする層２０ｄである。図示は省略するが、第３層２０ｎは、第１層２０ｋと第２層２０ｍとを繋ぐ部分を含んでいる。第３層２０ｎは、本実施の形態では、第１層２０ｋと第２層２０ｍとの間に形成された空間を含んでいる。第１層２０ｋと第２層２０ｍとのそれぞれは、表面２０ｅと、表面２０ｅと反対を向く裏面２０ｆとを含んでいる。

　第１層２０ｋの表面２０ｅは、第１層２０ｋにおいてアッパー２Ａの外部の方を向く面である。換言すると、第１層２０ｋの表面２０ｅは、第１層２０ｋにおいて着用者の足と反対側に位置する面である。第１層２０ｋの裏面２０ｆは、第１層２０ｋにおいてアッパー２Ａの内部の方を向く面である。換言すると、第１層２０ｋにおいて第１層２０ｋの裏面２０ｆは、着用者の足側に位置する面である。

　第２層２０ｍの表面２０ｅは、第２層２０ｍにおいてアッパー２Ａの内部の方を向く面である。換言すると、第２層２０ｍの表面２０ｅは、第２層２０ｍにおいて着用者の足側に位置する面である。第２層２０ｍの裏面２０ｆは、第２層２０ｍにおいてアッパー２Ａの外部の方を向く面である。換言すると、第２層２０ｍの裏面２０ｆは、第２層２０ｍにおいて着用者の足と反対側に位置する面である。

　本実施の形態では、層２０ｄのうちアッパー２Ａの内部又は外部に露出する面が表面２０ｅであり、層２０ｄのうちアッパー２Ａの内部及び外部の両方に露出しない面が裏面２０ｆである。図１０に示すように、基材２０は、本実施の形態では、複数の糸２０ｇを編み込んだ編物である。基材２０は、第１方向に延びる複数のウェール２０ｈと、第１方向と直交する第２方向に延びる複数のコース２０ｉとを含んでいる。第１方向及び第２方向のいずれか一方は、前後方向と一致し、第１方向及び第２方向のいずれか他方は、足幅方向と一致する。

　前記した実施の形態１と同様に、線状材配置領域２１は、基材２０のうちアッパー前足部Ｒ１とアッパー中足部Ｒ２とに設けられている。線状材配置領域２１は、図１のドットハッチングで示した箇所に設けられる。線状材配置領域２１の位置は、図示した例に限定されない。図１０に示すように、線状材配置領域２１は、複数の線状材２２が配置される領域である。複数の線状材２２は、基材２０に並んで配置されて互いに独立して形成されている。複数の線状材２２は、基材２０の面内方向に並んでいる。複数の線状材２２のそれぞれは、基材２０の面内方向に交互に折り返されている。線状材２２は、前後方向又は足幅方向に３ｍｍ以上の変動幅を持っている。

　複数の線状材２２のそれぞれは、少なくとも１つの層２０ｄに固定される複数の固定部２２ａと、層２０ｄに固定されない複数の非固定部２２ｂとを有している。複数の固定部２２ａは、互いに離れて配置されている。固定部２２ａは、基材２０に形成された通し部２０ｊに通されて糸２０ｇに絡む部分である。通し部２０ｊは、円形状の孔である。通し部２０ｊは、基材２０のうち隣り合うループの一部が絡むことにより形成されている。複数の非固定部２２ｂは、互いに離れて配置されている。非固定部２２ｂは、隣り合う固定部２２ａの間に位置している。

　図９に示すように、複数の線状材２２は、少なくとも１つの層２０ｄの表面２０ｅに露出して配置されている。固定部２２ａを介して連続する複数の非固定部２２ｂは、第１層２０ｋの表面２０ｅに露出して配置されている。非固定部２２ｂは、基材２０のうち着用者の足から最も離れた第１層２０ｋの表面２０ｅに露出している。

　アッパー２Ａの製造は、経編機等の専用の機械を用いて基材２０の形成と線状材配置領域２１の形成とを一度の工程で行うことが可能である。

　次に、本実施の形態に係るアッパー２Ａ及び靴１Ａの効果について説明する。

　図１１は、比較例に係る靴２００のアッパー２１０を示した断面図であって、基材２０の層２０ｄが３層であるアッパー２１０に刺繍を形成した状態を示した図である。図１１に示すように、従来の刺繍では、線状材２２の非固定部２２ｂが第１層２０ｋの表面２０ｅと第２層２０ｍの表面２０ｅとに交互に露出する。すなわち、従来の刺繍では、線状材２２の非固定部２２ｂを第１層２０ｋの表面２０ｅに露出させると、線状材２２が第３層２０ｎを通って線状材２２の非固定部２２ｂが第２層２０ｍの表面２０ｅにも必ず露出して、線状材２２が基材２０の各層２０ｄに亘って必ず配置される。

　本実施の形態では、図９に示すように、複数の線状材２２のそれぞれは、少なくとも１つの層２０ｄに固定されて互いに離れて配置された複数の固定部２２ａと、隣り合う固定部２２ａの間に位置して層２０ｄに固定されない複数の非固定部２２ｂとを有している。本実施の形態では、固定部２２ａを介して連続する複数の非固定部２２ｂは、少なくとも１つの層２０ｄの表面２０ｅに露出して配置されている。これらの構成により、図９に示すように１本の線状材２２の複数の非固定部２２ｂを層２０ｄの表面２０ｅに連続して露出させることができるため、従来の刺繍に比べて、基材２０における線状材２２の位置の選択の自由度を高めることができる。

　固定部２２ａを介して連続する複数の非固定部２２ｂが基材２０のうち着用者の足から最も離れた第１層２０ｋの表面２０ｅに露出して配置される場合には、任意の意匠をアッパー２Ａの外観に自由に付与することができる。また、固定部２２ａを介して連続する複数の非固定部２２ｂが第１層２０ｋの表面２０ｅに露出して配置される場合であって、かつ、摩耗強度が高い線状材２２を使用する場合には、着用者の足が基材２０に触れた際のタッチ感をアッパー２Ａのタッチ感として維持しつつ、アッパー２Ａの外面の摩耗強度及び引張剛性を向上させることができる。

　図１１に示すように、従来の刺繍では、第１層２０ｋの表面２０ｅから非固定部２２ｂを見せる場合に、非固定部２２ｂが第１層２０ｋの表面２０ｅと第２層２０ｍの表面２０ｅとに交互に露出するため、第２層２０ｍの表面２０ｅに凹凸が現れる。この凹凸が足当たりに悪影響を及ぼすため、第２層２０ｍの表面２０ｅに裏材を貼り合わせる必要があるが、そうすると靴１Ａの重量が増加してしまう。この点、本実施の形態では、図９に示すように、第１層２０ｋの表面２０ｅから非固定部２２ｂを見せる場合に、複数の非固定部２２ｂが第１層２０ｋの表面２０ｅに連続して露出する。そのため、第２層２０ｍの表面２０ｅに凹凸が現れず、裏材を使用することなく足当たりが良好なアッパー２Ａを提供可能である。

　本実施の形態では、図９に示される基材２０の形成と線状材配置領域２１の形成とを一度の工程で行うことが可能であるため、アッパー２Ａの製造工程数や廃材量等を減らして、コストの削減及び環境負荷の軽減を図ることができる。

　図１０に示される線状材２２によりアッパー２Ａの引張剛性を向上させるためには、基材２０を構成するコース及びウェールのそれぞれを２つ以上跨いで線状材２２が配置される必要がある。編物の場合、コース及びウェールの最大サイズは３ｍｍ程度であることから、本実施の形態のように線状材２２の変動幅は３ｍｍ以上であることが望ましい。

　アッパーに刺繍を形成したり、アッパーに糸を溶着したりする従来技術を用いて、本実施の形態のようなアッパー２Ａの意匠性の多様性及び物性の多様性を実現するためには、裏材及び接着剤が必要になる。本実施の形態では、線状材２２のみでアッパー２Ａの意匠性の多様性及び物性の多様性を実現でき、裏材及び接着剤が不要になるため、従来技術に比べて、アッパー２Ａの軽量化を図れる。

　編物の場合には、編み目のサイズは最大で３ｍｍである。本実施の形態では、図１０に示される非固定部２２ｂの長さＬが３ｍｍを超えるため、編物では表現できない意匠をアッパー２Ａの外観に付与することができる。

　図１０に示される複数の線状材２２のうちの少なくとも１つの太さと基材２０の糸２０ｇの太さとを互いに異ならせると、線状材２２と糸２０ｇとで摩耗強度、引張剛性等の物性を変えることができる。そのため、アッパー２Ａのうち線状材２２が配置される部分の物性とアッパー２Ａのうち線状材２２が配置されない部分の物性とを互いに異ならせることができる。

　図１０に示される複数の線状材２２のうちの少なくとも１つの材料と基材２０の糸２０ｇの材料とを互いに異ならせると、線状材２２と糸２０ｇとで摩耗強度、引張剛性等の物性を変えることができる。そのため、アッパー２Ａのうち線状材２２が配置される部分の物性とアッパー２Ａのうち線状材２２が配置されない部分の物性とを互いに異ならせることができる。

　本実施の形態では、図１０に示すように、複数の非固定部２２ｂのうちの少なくとも１つは、基材２０の２コース以上に跨って配置されている。これにより、編物では表現できない意匠をアッパー２Ａの外観に付与することができるとともに、コース方向におけるアッパー２の引張剛性を向上させることができる。

　本実施の形態では、図１０に示すように、非固定部２２ｂが跨ぐ基材２０のコース数は、非固定部２２ｂが跨ぐ基材２０のウェール数よりも多い。これにより、例えば、基材２０を伸びやすい材料、線状材２２を伸びにくい材料にした場合、ウェール方向（第１方向）には伸びやすいがコース方向（第２方向）には伸びにくいアッパー２Ａを作製することができる。

　次に、実施の形態２の変形例について説明する。

　図１２に示されるように基材２０の層２０ｄの数は２層であってもよい。図１２は、本発明の実施の形態２の変形例１に係る靴１Ａのアッパー２Ａを示した断面図であって、図２に示されるＩＩＩ－ＩＩＩ線断面図に相当する図である。基材２０は、第１層２０ｋと、第１層２０ｋに接触して配置される第２層２０ｍとを含んでいる。第１層２０ｋと第２層２０ｍとは、アッパー２Ａの厚さ方向に互いに重なり合っている。第１層２０ｋの裏面２０ｆと第２層２０ｍの裏面２０ｆとは、互いに接触している。固定部２２ａを介して連続する複数の非固定部２２ｂは、第１層２０ｋの表面２０ｅに露出して配置されている。本変形例でも、前記した実施の形態と同一の効果を奏することができる。

　非固定部２２ｂの位置は、図９に図示した例に限定されず、適宜変更してもよい。例えば、非固定部２２ｂの位置は、図１３に示されるような位置でもよい。図１３は、本発明の実施の形態２の変形例２に係る靴１Ａのアッパー２Ａを示した断面図であって、図２に示されるＩＩＩ－ＩＩＩ線断面図に相当する図である。図１３に示される固定部２２ａを介して連続する複数の非固定部２２ｂは、層２０ｄの内部に配置されている。

　本変形例では、線状材２２の全体が層２０ｄの内部に配置されている。線状材２２の全体が層２０ｄの内部に配置される場合でも、線状材２２は、複数の固定部２２ａと、複数の非固定部２２ｂとを有している。固定部２２ａは、層２０ｄの内部で糸２０ｇに編み込まれている部分である。非固定部２２ｂは、層２０ｄの内部で糸２０ｇに編み込まれていない部分である。固定部２２ａを介して連続する複数の非固定部２２ｂは、第１層２０ｋの内部に配置されている。非固定部２２ｂは、各層２０ｄの表面２０ｅ及び裏面２０ｆに露出していない。本変形例では、基材２０の形成と線状材配置領域２１の形成とを一度の工程で行えるため、線状材２２を基材２０の層２０ｄの内部に配置することが可能である。

　本変形例のように、固定部２２ａを介して連続する複数の非固定部２２ｂが第１層２０ｋの内部に配置されている場合には、アッパー２Ａの外観を見たときに非固定部２２ｂが多少見えるものの、基材２０に近似する意匠をアッパー２Ａの外観の意匠として維持しやすくなる。また、固定部２２ａを介して連続する複数の非固定部２２ｂが第１層２０ｋの内部に配置されている場合には、アッパー２Ａの第１層２０ｋの引張剛性を向上させることができる。

　非固定部２２ｂの位置は、図１４に示されるような位置でもよい。図１４は、本発明の実施の形態２の変形例３に係る靴１Ａのアッパー２Ａを示した断面図であって、図２に示されるＩＩＩ－ＩＩＩ線断面図に相当する図である。図１４に示される固定部２２ａを介して連続する複数の非固定部２２ｂは、第１層２０ｋの表面２０ｅに露出して配置されるか、又は、第１層２０ｋの内部に配置されている。図１４では、別体で形成された２本の線状材２２が線状材２２の長さ方向に並んでいる状態を図示している。以下の説明において、２本の線状材２２を区別する場合には、鎖線で示された一方の線状材２２を第１線状材２２Ａと称し、破線で示された他方の線状材２２を第２線状材２２Ｂと称する。

　第１線状材２２Ａにおいて固定部２２ａを介して連続する複数の非固定部２２ｂは、第１層２０ｋの表面２０ｅに露出して配置されている。第２線状材２２Ｂにおいて固定部２２ａを介して連続する複数の非固定部２２ｂは、第１層２０ｋの内部に配置されている。第１線状材２２Ａの材料と第２線状材２２Ｂの材料とは、互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。第１線状材２２Ａの太さと第２線状材２２Ｂの太さとは、互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。

　本変形例では、前記した実施の形態及び変形例のいずれかと同一の効果を奏することができる。また、第１層２０ｋの表面２０ｅに露出して配置される第１線状材２２Ａと第１層２０ｋの内部に配置される第２線状材２２Ｂとが別体に形成されていることにより、第１線状材２２Ａと第２線状材２２Ｂとの材料、太さ等を変えて、アッパー２Ａの物性を部分的に変更することができる。

　なお、２本に分かれていた線状材２２を１本の線状材２２にしてもよい。すなわち、複数の線状材２２のうちの少なくとも１つは、固定部２２ａを介して連続する複数の非固定部２２ｂが第１層２０ｋの表面２０ｅのみに露出して配置される領域と、固定部２２ａを介して連続する複数の非固定部２２ｂが第１層２０ｋの内部のみに配置される領域とを有する単一の部材であってもよい。このようにすると、加工費及び環境負荷を軽減することができる。

　非固定部２２ｂの位置は、図１５に示されるような位置でもよい。図１５は、本発明の実施の形態２の変形例４に係る靴１Ａのアッパー２Ａを示した断面図であって、図２に示されるＩＩＩ－ＩＩＩ線断面図に相当する図である。図１５に示される固定部２２ａを介して連続する複数の非固定部２２ｂは、第２層２０ｍの表面２０ｅに露出して配置されている。

　本変形例のように、固定部２２ａを介して連続する複数の非固定部２２ｂが第２層２０ｍの表面２０ｅに露出して配置される場合には、非固定部２２ｂがアッパー２Ａの意匠に影響を与えないか、又は、アッパー２Ａの意匠に影響を与えにくくなる。そのため、基材２０の第１層２０ｋの意匠をアッパー２Ａの外観の意匠として維持しやすくなる。また、固定部２２ａを介して連続する複数の非固定部２２ｂが第２層２０ｍの表面２０ｅに露出して配置される場合であって、かつ、摩耗強度が高い線状材２２を使用する場合には、アッパー２Ａの内面の摩耗強度及び引張剛性を向上させることができる。また、固定部２２ａを介して連続する複数の非固定部２２ｂが第２層２０ｍの表面２０ｅに露出して配置される場合であって、かつ、肌触りのよい材質の線状材２２を使用する場合には、着用者の足が線状材２２に触れた際のタッチ感を向上させることができる。

　非固定部２２ｂの位置は、図１６に示されるような位置でもよい。図１６は、本発明の実施の形態２の変形例５に係る靴１Ａのアッパー２Ａを示した断面図であって、図２に示されるＩＩＩ－ＩＩＩ線断面図に相当する図である。図１６に示される固定部２２ａを介して連続する複数の非固定部２２ｂは、第２層２０ｍの内部に配置されている。

　本変形例のように、固定部２２ａを介して連続する複数の非固定部２２ｂが第２層２０ｍの内部に配置される場合には、非固定部２２ｂがアッパー２Ａの意匠に影響を与えないか、又は、アッパー２Ａの意匠に影響を与えにくくなる。そのため、基材２０の第１層２０ｋの意匠をアッパー２Ａの外観の意匠として維持しやすくなる。また、固定部２２ａを介して連続する複数の非固定部２２ｂが第２層２０ｍの内部に配置される場合であって、かつ、線状材２２を使用する場合には、着用者の足が基材２０に触れた際のタッチ感をアッパー２Ａのタッチ感として維持しつつ、アッパー２Ａの第２層２０ｍの引張剛性を向上させることができる。

　非固定部２２ｂの位置は、図１７に示されるような位置でもよい。図１７は、本発明の実施の形態２の変形例６に係る靴１Ａのアッパー２Ａを示した断面図であって、図２に示されるＩＩＩ－ＩＩＩ線断面図に相当する図である。図１７に示される固定部２２ａを介して連続する複数の非固定部２２ｂは、第２層２０ｍの表面２０ｅに露出して配置されるか、又は、第２層２０ｍの内部に配置されている。図１７では、別体で形成された２本の線状材２２が線状材２２の長さ方向に並んでいる状態を図示している。以下の説明において、２本の線状材２２を区別する場合には、鎖線で示された一方の線状材２２を第１線状材２２Ａと称し、破線で示された他方の線状材２２を第２線状材２２Ｂと称する。

　第１線状材２２Ａにおいて固定部２２ａを介して連続する複数の非固定部２２ｂは、第２層２０ｍの表面２０ｅに露出して配置されている。第２線状材２２Ｂにおいて固定部２２ａを介して連続する複数の非固定部２２ｂは、第２層２０ｍの内部に配置されている。第１線状材２２Ａの材料と第２線状材２２Ｂの材料とは、互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。第１線状材２２Ａの太さと第２線状材２２Ｂの太さとは、互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。本変形例では、前記した実施の形態及び変形例のいずれかと同一の効果を奏することができる。

　なお、２本に分かれていた線状材２２を１本の線状材２２にしてもよい。すなわち、複数の線状材２２のうちの少なくとも１つは、固定部２２ａを介して連続する複数の非固定部２２ｂが第２層２０ｍの表面２０ｅのみに露出して配置される領域と、固定部２２ａを介して連続する複数の非固定部２２ｂが第２層２０ｍの内部のみに配置される領域とを有する単一の部材であってもよい。このようにすると、加工費及び環境負荷を軽減することができる。

　非固定部２２ｂの位置は、図１８に示されるような位置でもよい。図１８は、本発明の実施の形態２の変形例７に係る靴１Ａのアッパー２Ａを示した断面図であって、図２に示されるＩＩＩ－ＩＩＩ線断面図に相当する図である。図１８に示される固定部２２ａを介して連続する複数の非固定部２２ｂは、第１層２０ｋの表面２０ｅに露出して配置されるか、又は、第３層２０ｎの内部に配置されている。図１８では、別体で形成された２本の線状材２２が線状材２２の長さ方向に並んでいる状態を図示している。以下の説明において、２本の線状材２２を区別する場合には、鎖線で示された一方の線状材２２を第１線状材２２Ａと称し、実線で示された他方の線状材２２を第２線状材２２Ｂと称する。

　第１線状材２２Ａにおいて固定部２２ａを介して連続する複数の非固定部２２ｂは、第１層２０ｋの表面２０ｅに露出して配置されている。第２線状材２２Ｂの全体が第３層２０ｎの内部に配置されている。第２線状材２２Ｂの全体が第３層２０ｎの内部に配置される場合でも、図示は省略するが、第２線状材２２Ｂは、複数の固定部２２ａと、複数の非固定部２２ｂとを有している。図示は省略するが、第２線状材２２Ｂの固定部２２ａは、第３層２０ｎのうち第１層２０ｋと第２層２０ｍとを繋ぐ部分に編み込まれている部分である。非固定部２２ｂは、第３層２０ｎの内部で糸２０ｇに編み込まれていない部分である。第２線状材２２Ｂにおいて固定部２２ａを介して連続する複数の非固定部２２ｂは、第３層２０ｎの内部に配置されている。第１線状材２２Ａの材料と第２線状材２２Ｂの材料とは、互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。第１線状材２２Ａの太さと第２線状材２２Ｂの太さとは、互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。

　本変形例のように、固定部２２ａを介して連続する複数の非固定部２２ｂが第３層２０ｎの内部に配置される場合には、非固定部２２ｂがアッパー２Ａの意匠に影響を与えないか、又は、アッパー２Ａの意匠に影響を与えにくくなる。そのため、基材２０のうち第２線状材２２Ｂが配置される部分では基材２０の第１層２０ｋの意匠をアッパー２Ａの外観の意匠として維持しやすくなる。これにより、基材２０の見た目を変えないまま、アッパー２Ａの曲げ剛性等を部分的に向上させることができる。また、固定部２２ａを介して連続する複数の非固定部２２ｂが第３層２０ｎの内部に配置されている場合には、着用者の足が基材２０に触れた際のタッチ感をアッパー２Ａのタッチ感として維持しつつ、アッパー２Ａの第３層２０ｎの引張剛性を向上させることができる。

　なお、２本に分かれていた線状材２２を１本の線状材２２にしてもよい。すなわち、複数の線状材２２のうちの少なくとも１つは、固定部２２ａを介して連続する複数の非固定部２２ｂが第１層２０ｋの表面２０ｅのみに露出して配置される領域と、固定部２２ａを介して連続する複数の非固定部２２ｂが第３層２０ｎの内部のみに配置される領域とを有する単一の部材であってもよい。このようにすると、加工費及び環境負荷を軽減することができる。

　非固定部２２ｂの位置は、図１９に示されるような位置でもよい。図１９は、本発明の実施の形態２の変形例８に係る靴１Ａのアッパー２Ａを示した断面図であって、図２に示されるＩＩＩ－ＩＩＩ線断面図に相当する図である。図１９に示される固定部２２ａを介して連続する複数の非固定部２２ｂは、第１層２０ｋの内部に配置されるか、又は、第３層２０ｎの内部に配置されている。図１９では、別体で形成された２本の線状材２２が線状材２２の長さ方向に並んでいる状態を図示している。以下の説明において、２本の線状材２２を区別する場合には、破線で示された一方の線状材２２を第１線状材２２Ａと称し、実線で示された他方の線状材２２を第２線状材２２Ｂと称する。

　第１線状材２２Ａにおいて固定部２２ａを介して連続する複数の非固定部２２ｂは、第１層２０ｋの内部に配置されている。第２線状材２２Ｂの全体が第３層２０ｎの内部に配置されている。第２線状材２２Ｂの全体が第３層２０ｎの内部に配置される場合でも、図示は省略するが、第２線状材２２Ｂは、複数の固定部２２ａと、複数の非固定部２２ｂとを有している。図示は省略するが、第２線状材２２Ｂの固定部２２ａは、第３層２０ｎのうち第１層２０ｋと第２層２０ｍとを繋ぐ部分に編み込まれている部分である。非固定部２２ｂは、第３層２０ｎの内部で糸２０ｇに編み込まれていない部分である。第２線状材２２Ｂにおいて固定部２２ａを介して連続する複数の非固定部２２ｂは、第３層２０ｎの内部に配置されている。第１線状材２２Ａの材料と第２線状材２２Ｂの材料とは、互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。第１線状材２２Ａの太さと第２線状材２２Ｂの太さとは、互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。本変形例では、前記した実施の形態及び変形例のいずれかと同一の効果を奏することができる。

　なお、２本に分かれていた線状材２２を１本の線状材２２にしてもよい。すなわち、複数の線状材２２のうちの少なくとも１つは、固定部２２ａを介して連続する複数の非固定部２２ｂが第１層２０ｋの内部のみに配置される領域と、固定部２２ａを介して連続する複数の非固定部２２ｂが第３層２０ｎの内部のみに配置される領域とを有する単一の部材であってもよい。このようにすると、加工費及び環境負荷を軽減することができる。

　非固定部２２ｂの位置は、図２０に示されるような位置でもよい。図２０は、本発明の実施の形態２の変形例９に係る靴１Ａのアッパー２Ａを示した断面図であって、図２に示されるＩＩＩ－ＩＩＩ線断面図に相当する図である。図２０に示される固定部２２ａを介して連続する複数の非固定部２２ｂは、第１層２０ｋの表面２０ｅに露出して配置されるか、第１層２０ｋの内部に配置されるか、又は、第３層２０ｎの内部に配置されている。図２０では、別体で形成された３本の線状材２２が線状材２２の長さ方向に並んでいる状態を図示している。以下の説明において、３本の線状材２２を区別する場合には、鎖線で示された線状材２２を第１線状材２２Ａと称し、破線で示された線状材２２を第２線状材２２Ｂと称し、実線で示された線状材２２を第３線状材２２Ｃとする。

　第１線状材２２Ａにおいて固定部２２ａを介して連続する複数の非固定部２２ｂは、第１層２０ｋの表面２０ｅに露出して配置されている。第２線状材２２Ｂにおいて固定部２２ａを介して連続する複数の非固定部２２ｂは、第１層２０ｋの内部に配置されている。第３線状材２２Ｃの全体が第３層２０ｎの内部に配置されている。第３線状材２２Ｃの全体が第３層２０ｎの内部に配置される場合でも、図示は省略するが、第３線状材２２Ｃは、複数の固定部２２ａと、複数の非固定部２２ｂとを有している。図示は省略するが、第３線状材２２Ｃの固定部２２ａは、第３層２０ｎのうち第１層２０ｋと第２層２０ｍとを繋ぐ部分に編み込まれている部分である。非固定部２２ｂは、第３層２０ｎの内部で糸２０ｇに編み込まれていない部分である。第３線状材２２Ｃにおいて固定部２２ａを介して連続する複数の非固定部２２ｂは、第３層２０ｎの内部に配置されている。第３線状材２２Ｃは、第１線状材２２Ａと第２線状材２２Ｂとの間に配置されている。第３線状材２２Ｃは、第１線状材２２Ａと第２線状材２２Ｂとを繋いでいる。第１線状材２２Ａの材料と第２線状材２２Ｂの材料と第３線状材２２Ｃの材料とは、互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。第１線状材２２Ａの太さと第２線状材２２Ｂの太さと第３線状材２２Ｃの太さとは、互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。本変形例では、前記した実施の形態及び変形例のいずれかと同一の効果を奏することができる。

　なお、３本に分かれていた線状材２２を１本の線状材２２にしてもよい。すなわち、複数の線状材２２のうちの少なくとも１つは、固定部２２ａを介して連続する複数の非固定部２２ｂが第１層２０ｋの表面２０ｅのみに露出して配置される領域と、固定部２２ａを介して連続する複数の非固定部２２ｂが第１層２０ｋの内部のみに配置される領域と、固定部２２ａを介して連続する複数の非固定部２２ｂが第３層２０ｎの内部のみに配置される領域とを有する単一の部材であってもよい。このようにすると、加工費及び環境負荷を軽減することができる。

　非固定部２２ｂの位置は、図２１に示されるような位置でもよい。図２１は、本発明の実施の形態２の変形例１０に係る靴１Ａのアッパー２Ａを示した断面図であって、図２に示されるＩＩＩ－ＩＩＩ線断面図に相当する図である。図２１に示される固定部２２ａを介して連続する複数の非固定部２２ｂは、第２層２０ｍの表面２０ｅに露出して配置されるか、又は、第３層２０ｎの内部に配置されている。図２１では、別体で形成された２本の線状材２２が線状材２２の長さ方向に並んでいる状態を図示している。以下の説明において、２本の線状材２２を区別する場合には、鎖線で示された線状材２２を第１線状材２２Ａと称し、実線で示された線状材２２を第２線状材２２Ｂとする。

　第１線状材２２Ａにおいて固定部２２ａを介して連続する複数の非固定部２２ｂは、第２層２０ｍの表面２０ｅに露出して配置されている。第２線状材２２Ｂの全体が第３層２０ｎの内部に配置されている。第２線状材２２Ｂの全体が第３層２０ｎの内部に配置される場合でも、図示は省略するが、第２線状材２２Ｂは、複数の固定部２２ａと、複数の非固定部２２ｂとを有している。図示は省略するが、第２線状材２２Ｂの固定部２２ａは、第３層２０ｎのうち第１層２０ｋと第２層２０ｍとを繋ぐ部分に編み込まれている部分である。非固定部２２ｂは、第３層２０ｎの内部で糸２０ｇに編み込まれていない部分である。第２線状材２２Ｂにおいて固定部２２ａを介して連続する複数の非固定部２２ｂは、第３層２０ｎの内部に配置されている。第１線状材２２Ａの材料と第２線状材２２Ｂの材料とは、互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。第１線状材２２Ａの太さと第２線状材２２Ｂの太さとは、互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。本変形例では、前記した実施の形態及び変形例のいずれかと同一の効果を奏することができる。

　なお、２本に分かれていた線状材２２を１本の線状材２２にしてもよい。すなわち、複数の線状材２２のうちの少なくとも１つは、固定部２２ａを介して連続する複数の非固定部２２ｂが第２層２０ｍの表面２０ｅのみに露出して配置される領域と、固定部２２ａを介して連続する複数の非固定部２２ｂが第３層２０ｎの内部のみに配置される領域とを有する単一の部材であってもよい。このようにすると、加工費及び環境負荷を軽減することができる。

　非固定部２２ｂの位置は、図２２に示されるような位置でもよい。図２２は、本発明の実施の形態２の変形例１１に係る靴１Ａのアッパー２Ａを示した断面図であって、図２に示されるＩＩＩ－ＩＩＩ線断面図に相当する図である。図２２に示される固定部２２ａを介して連続する複数の非固定部２２ｂは、第２層２０ｍの内部に配置されるか、又は、第３層２０ｎの内部に配置されている。図２２では、別体で形成された２本の線状材２２が線状材２２の長さ方向に並んでいる状態を図示している。以下の説明において、２本の線状材２２を区別する場合には、破線で示された線状材２２を第１線状材２２Ａと称し、実線で示された線状材２２を第２線状材２２Ｂとする。

　第１線状材２２Ａにおいて固定部２２ａを介して連続する複数の非固定部２２ｂは、第２層２０ｍの内部に配置されている。第２線状材２２Ｂの全体が第３層２０ｎの内部に配置されている。第２線状材２２Ｂの全体が第３層２０ｎの内部に配置される場合でも、図示は省略するが、第２線状材２２Ｂは、複数の固定部２２ａと、複数の非固定部２２ｂとを有している。図示は省略するが、第２線状材２２Ｂの固定部２２ａは、第３層２０ｎのうち第１層２０ｋと第２層２０ｍとを繋ぐ部分に編み込まれている部分である。非固定部２２ｂは、第３層２０ｎの内部で糸２０ｇに編み込まれていない部分である。第２線状材２２Ｂにおいて固定部２２ａを介して連続する複数の非固定部２２ｂは、第３層２０ｎの内部に配置されている。第１線状材２２Ａの材料と第２線状材２２Ｂの材料とは、互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。第１線状材２２Ａの太さと第２線状材２２Ｂの太さとは、互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。本変形例では、前記した実施の形態及び変形例のいずれかと同一の効果を奏することができる。

　なお、２本に分かれていた線状材２２を１本の線状材２２にしてもよい。すなわち、複数の線状材２２のうちの少なくとも１つは、固定部２２ａを介して連続する複数の非固定部２２ｂが第２層２０ｍの内部のみに配置される領域と、固定部２２ａを介して連続する複数の非固定部２２ｂが第３層２０ｎの内部のみに配置される領域とを有する単一の部材であってもよい。このようにすると、加工費及び環境負荷を軽減することができる。

　非固定部２２ｂの位置は、図２３に示されるような位置でもよい。図２３は、本発明の実施の形態２の変形例１２に係る靴１Ａのアッパー２Ａを示した断面図であって、図２に示されるＩＩＩ－ＩＩＩ線断面図に相当する図である。図２３に示される固定部２２ａを介して連続する複数の非固定部２２ｂは、第２層２０ｍの表面２０ｅに露出して配置されるか、第２層２０ｍの内部に配置されるか、又は、第３層２０ｎの内部に配置されている。図２３では、別体で形成された３本の線状材２２が線状材２２の長さ方向に並んでいる状態を図示している。以下の説明において、３本の線状材２２を区別する場合には、鎖線で示された線状材２２を第１線状材２２Ａとし、破線で示された線状材２２を第２線状材２２Ｂとし、実線で示された線状材２２を第３線状材２２Ｃとする。

　第１線状材２２Ａにおいて固定部２２ａを介して連続する複数の非固定部２２ｂは、第２層２０ｍの表面２０ｅに露出して配置されている。第２線状材２２Ｂにおいて固定部２２ａを介して連続する複数の非固定部２２ｂは、第２層２０ｍの内部に配置されている。第３線状材２２Ｃの全体が第３層２０ｎの内部に配置されている。第３線状材２２Ｃの全体が第３層２０ｎの内部に配置される場合でも、図示は省略するが、第３線状材２２Ｃは、複数の固定部２２ａと、複数の非固定部２２ｂとを有している。図示は省略するが、第３線状材２２Ｃの固定部２２ａは、第３層２０ｎのうち第１層２０ｋと第２層２０ｍとを繋ぐ部分に編み込まれている部分である。非固定部２２ｂは、第３層２０ｎの内部で糸２０ｇに編み込まれていない部分である。第３線状材２２Ｃにおいて固定部２２ａを介して連続する複数の非固定部２２ｂは、第３層２０ｎの内部に配置されている。第３線状材２２Ｃは、第１線状材２２Ａと第２線状材２２Ｂとの間に配置されている。第３線状材２２Ｃは、第１線状材２２Ａと第２線状材２２Ｂとを繋いでいる。第１線状材２２Ａの材料と第２線状材２２Ｂの材料と第３線状材２２Ｃの材料とは、互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。第１線状材２２Ａの太さと第２線状材２２Ｂの太さと第３線状材２２Ｃの太さとは、互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。本変形例では、前記した実施の形態及び変形例のいずれかと同一の効果を奏することができる。

　なお、３本に分かれていた線状材２２を１本の線状材２２にしてもよい。すなわち、複数の線状材２２のうちの少なくとも１つは、固定部２２ａを介して連続する複数の非固定部２２ｂが第２層２０ｍの表面２０ｅのみに露出して配置される領域と、固定部２２ａを介して連続する複数の非固定部２２ｂが第２層２０ｍの内部のみに配置される領域と、固定部２２ａを介して連続する複数の非固定部２２ｂが第３層２０ｎの内部のみに配置される領域とを有する単一の部材であってもよい。このようにすると、加工費及び環境負荷を軽減することができる。

　非固定部２２ｂの位置は、図２４に示されるような位置でもよい。図２４は、本発明の実施の形態２の変形例１３に係る靴１Ａのアッパー２Ａを示した断面図であって、図２に示されるＩＩＩ－ＩＩＩ線断面図に相当する図である。図２４に示される固定部２２ａを介して連続する複数の非固定部２２ｂは、第１層２０ｋの表面２０ｅに露出して配置されるか、第２層２０ｍの表面２０ｅに露出して配置されるか、又は、第３層２０ｎの内部に配置されている。図２４では、別体で形成された３本の線状材２２が線状材２２の長さ方向に並んでいる状態を図示している。以下の説明において、３本の線状材２２を区別する場合には、鎖線で示された一方の線状材２２を第１線状材２２Ａと称し、鎖線で示された他方の線状材２２を第２線状材２２Ｂと称し、実線で示された線状材２２を第３線状材２２Ｃとする。

　第１線状材２２Ａにおいて固定部２２ａを介して連続する複数の非固定部２２ｂは、第１層２０ｋの表面２０ｅに露出して配置されている。第２線状材２２Ｂにおいて固定部２２ａを介して連続する複数の非固定部２２ｂは、第２層２０ｍの表面２０ｅに露出して配置されている。第３線状材２２Ｃの全体が第３層２０ｎの内部に配置されている。第３線状材２２Ｃの全体が第３層２０ｎの内部に配置される場合でも、図示は省略するが、第３線状材２２Ｃは、複数の固定部２２ａと、複数の非固定部２２ｂとを有している。図示は省略するが、第３線状材２２Ｃの固定部２２ａは、第３層２０ｎのうち第１層２０ｋと第２層２０ｍとを繋ぐ部分に編み込まれている部分である。非固定部２２ｂは、第３層２０ｎの内部で糸２０ｇに編み込まれていない部分である。第３線状材２２Ｃにおいて固定部２２ａを介して連続する複数の非固定部２２ｂは、第３層２０ｎの内部に配置されている。第３線状材２２Ｃは、第１線状材２２Ａと第２線状材２２Ｂとの間に配置されている。第３線状材２２Ｃは、第１線状材２２Ａと第２線状材２２Ｂとを繋いでいる。第１線状材２２Ａの材料と第２線状材２２Ｂの材料と第３線状材２２Ｃの材料とは、互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。第１線状材２２Ａの太さと第２線状材２２Ｂの太さと第３線状材２２Ｃの太さとは、互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。本変形例では、前記した実施の形態及び変形例のいずれかと同一の効果を奏することができる。

　なお、３本に分かれていた線状材２２を１本の線状材２２にしてもよい。すなわち、複数の線状材２２のうちの少なくとも１つは、固定部２２ａを介して連続する複数の非固定部２２ｂが第１層２０ｋの表面２０ｅのみに露出して配置される領域と、固定部２２ａを介して連続する複数の非固定部２２ｂが第２層２０ｍの表面２０ｅのみに露出して配置される領域と、固定部２２ａを介して連続する複数の非固定部２２ｂが第３層２０ｎの内部のみに配置される領域とを有する単一の部材であってもよい。このようにすると、加工費及び環境負荷を軽減することができる。

　非固定部２２ｂの位置は、図２５に示されるような位置でもよい。図２５は、本発明の実施の形態２の変形例１４に係る靴１Ａのアッパー２Ａを示した断面図であって、図２に示されるＩＩＩ－ＩＩＩ線断面図に相当する図である。図２５に示される固定部２２ａを介して連続する複数の非固定部２２ｂは、第１層２０ｋの表面２０ｅに露出して配置されるか、第２層２０ｍの内部に配置されるか、又は、第３層２０ｎの内部に配置されている。図２５では、別体で形成された３本の線状材２２が線状材２２の長さ方向に並んでいる状態を図示している。以下の説明において、３本の線状材２２を区別する場合には、鎖線で示された線状材２２を第１線状材２２Ａとし、破線で示された線状材２２を第２線状材２２Ｂとし、実線で示された線状材２２を第３線状材２２Ｃとする。

　第１線状材２２Ａにおいて固定部２２ａを介して連続する複数の非固定部２２ｂは、第１層２０ｋの表面２０ｅに露出して配置されている。第２線状材２２Ｂにおいて固定部２２ａを介して連続する複数の非固定部２２ｂは、第２層２０ｍの内部に配置されている。第３線状材２２Ｃの全体が第３層２０ｎの内部に配置されている。第３線状材２２Ｃの全体が第３層２０ｎの内部に配置される場合でも、図示は省略するが、第３線状材２２Ｃは、複数の固定部２２ａと、複数の非固定部２２ｂとを有している。図示は省略するが、第３線状材２２Ｃの固定部２２ａは、第３層２０ｎのうち第１層２０ｋと第２層２０ｍとを繋ぐ部分に編み込まれている部分である。非固定部２２ｂは、第３層２０ｎの内部で糸２０ｇに編み込まれていない部分である。第３線状材２２Ｃにおいて固定部２２ａを介して連続する複数の非固定部２２ｂは、第３層２０ｎの内部に配置されている。第３線状材２２Ｃは、第１線状材２２Ａと第２線状材２２Ｂとの間に配置されている。第３線状材２２Ｃは、第１線状材２２Ａと第２線状材２２Ｂとを繋いでいる。第１線状材２２Ａの材料と第２線状材２２Ｂの材料と第３線状材２２Ｃの材料とは、互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。第１線状材２２Ａの太さと第２線状材２２Ｂの太さと第３線状材２２Ｃの太さとは、互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。本変形例では、前記した実施の形態及び変形例のいずれかと同一の効果を奏することができる。

　なお、３本に分かれていた線状材２２を１本の線状材２２にしてもよい。すなわち、複数の線状材２２のうちの少なくとも１つは、固定部２２ａを介して連続する複数の非固定部２２ｂが第１層２０ｋの表面２０ｅのみに露出して配置される領域と、固定部２２ａを介して連続する複数の非固定部２２ｂが第２層２０ｍの内部のみに配置される領域と、固定部２２ａを介して連続する複数の非固定部２２ｂが第３層２０ｎの内部のみに配置される領域とを有する単一の部材であってもよい。このようにすると、加工費及び環境負荷を軽減することができる。

　非固定部２２ｂの位置は、図２６に示されるような位置でもよい。図２６は、本発明の実施の形態２の変形例１５に係る靴１Ａのアッパー２Ａを示した断面図であって、図２に示されるＩＩＩ－ＩＩＩ線断面図に相当する図である。図２６に示される固定部２２ａを介して連続する複数の非固定部２２ｂは、第２層２０ｍの表面２０ｅに露出して配置されるか、第１層２０ｋの内部に配置されるか、又は、第３層２０ｎの内部に配置されている。図２６では、別体で形成された３本の線状材２２が線状材２２の長さ方向に並んでいる状態を図示している。以下の説明において、３本の線状材２２を区別する場合には、鎖線で示された線状材２２を第１線状材２２Ａとし、破線で示された線状材２２を第２線状材２２Ｂとし、実線で示された線状材２２を第３線状材２２Ｃとする。

　第１線状材２２Ａにおいて固定部２２ａを介して連続する複数の非固定部２２ｂは、第２層２０ｍの表面２０ｅに露出して配置されている。第２線状材２２Ｂにおいて固定部２２ａを介して連続する複数の非固定部２２ｂは、第１層２０ｋの内部に配置されている。第３線状材２２Ｃの全体が第３層２０ｎの内部に配置されている。第３線状材２２Ｃの全体が第３層２０ｎの内部に配置される場合でも、図示は省略するが、第３線状材２２Ｃは、複数の固定部２２ａと、複数の非固定部２２ｂとを有している。図示は省略するが、第３線状材２２Ｃの固定部２２ａは、第３層２０ｎのうち第１層２０ｋと第２層２０ｍとを繋ぐ部分に編み込まれている部分である。非固定部２２ｂは、第３層２０ｎの内部で糸２０ｇに編み込まれていない部分である。第３線状材２２Ｃにおいて固定部２２ａを介して連続する複数の非固定部２２ｂは、第３層２０ｎの内部に配置されている。第３線状材２２Ｃは、第１線状材２２Ａと第２線状材２２Ｂとの間に配置されている。第３線状材２２Ｃは、第１線状材２２Ａと第２線状材２２Ｂとを繋いでいる。第１線状材２２Ａの材料と第２線状材２２Ｂの材料と第３線状材２２Ｃの材料とは、互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。第１線状材２２Ａの太さと第２線状材２２Ｂの太さと第３線状材２２Ｃの太さとは、互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。本変形例では、前記した実施の形態及び変形例のいずれかと同一の効果を奏することができる。

　なお、３本に分かれていた線状材２２を１本の線状材２２にしてもよい。すなわち、複数の線状材２２のうちの少なくとも１つは、固定部２２ａを介して連続する複数の非固定部２２ｂが第２層２０ｍの表面２０ｅのみに露出して配置される領域と、固定部２２ａを介して連続する複数の非固定部２２ｂが第１層２０ｋの内部のみに配置される領域と、固定部２２ａを介して連続する複数の非固定部２２ｂが第３層２０ｎの内部のみに配置される領域とを有する単一の部材であってもよい。このようにすると、加工費及び環境負荷を軽減することができる。

　以上のように、本実施の形態では、固定部２２ａを介して連続する複数の非固定部２２ｂは、少なくとも１つの層２０ｄの表面２０ｅに露出して配置されるか、又は、少なくとも１つの層２０ｄの内部に配置されていればよい。固定部２２ａを介して連続する複数の非固定部２２ｂの位置が、少なくとも１つの層２０ｄの表面２０ｅ、又は、少なくとも１つの層２０ｄの内部であるかによって、基材２０の意匠をそのまま生かせるか又は基材２０に別の意匠を付加でき、かつ、基材２０の物性をそのまま生かせるか又は基材２０に別の物性を付加できる。つまり、本実施の形態では、基材２０における線状材２２の位置を任意に選択できることにより、アッパー２Ａの意匠の表現の幅を広げつつ、アッパー２Ａの物性を部分的に自由に変更することができる。

　図２５に示される第１層２０ｋの表面２０ｅと、第１層２０ｋの内部と、第３層２０ｎの内部、第２層２０ｍの内部及び第２層２０ｍの表面２０ｅのうち少なくとも１つとに線状材２２を配置することもできる。このようにすると、非固定部２２ｂがはっきりと見える領域と、非固定部２２ｂが多少見える領域と、非固定部２２ｂが見えない領域とに分けられる。そのため、アッパー２Ａの面内方向だけでなく、アッパー２Ａの厚さ方向に高低差のある意匠を表現できる。つまり、アッパー２Ａの厚さ方向及びアッパー２Ａの面内方向を含めた３次元的な意匠を創出できる。

　例えば、層２０ｄがメッシュ等の多孔質体である場合、層２０ｄの厚さが薄い場合、層２０ｄが透明な場合には、第３層２０ｎの内部、第２層２０ｍの内部及び第２層２０ｍの表面２０ｅに配置された非固定部２２ｂが見えることもある。このような場合に、第１層２０ｋの表面２０ｅと、第１層２０ｋの内部と、第３層２０ｎの内部、第２層２０ｍの内部及び第２層２０ｍの表面２０ｅのうち少なくとも１つとに線状材２２を配置してもよい。このようにすると、基材２０における非固定部２２ｂの位置によって非固定部２２ｂの見えやすさが変わる。そのため、線状材２２をぼやかして見せることができ、アッパー２Ａの厚さ方向に高低差のある意匠を表現できる。

　非固定部２２ｂの配置は、図１０に図示した例に限定されず、適宜変更してもよい。例えば、複数の非固定部２２ｂのうちの少なくとも１つが、基材２０の２ウェール以上、又は、基材２０の２コース以上に跨って配置されていてもよい。

　例えば、非固定部２２ｂが跨ぐ基材２０のウェール数は、非固定部２２ｂが跨ぐ基材２０のコース数よりも多くてもよい。このようにすると、編物では表現できない意匠をアッパー２Ａの外観に付与することができる。例えば、基材２０を伸びやすい材料、線状材２２を伸びにくい材料にした場合、コース方向（第２方向）には伸びやすいがウェール方向（第１方向）には伸びにくいアッパー２Ａを作製することができる。なお、非固定部２２ｂが跨ぐ基材２０のコース数と非固定部２２ｂが跨ぐ基材２０のウェール数とが同じであってもよい。

　以上の実施の形態に示した構成は、本発明の内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、実施の形態同士を組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。

　第１の観点に係るアッパーは、表面と前記表面と反対を向く裏面とを含む１つの層を有する布状の基材と、前記基材に並んで配置されて互いに独立して形成された複数の線状材と、を備え、
　複数の前記線状材のそれぞれは、前記層に固定されて、互いに離れて配置された複数の固定部と、隣り合う固定部の間に位置して、前記層に固定されない複数の非固定部と、を有し、
　複数の前記線状材のそれぞれは、前記層の面内方向に交互に折り返されており、
　前記固定部を介して連続する複数の前記非固定部は、前記層の前記表面と前記裏面の少なくともいずれか一方に露出して配置されるか、又は、前記層の内部に配置されている。

　第２の観点に係るアッパーは、前記第１の観点に係るアッパーにおいて、複数の前記線状材のうちの少なくとも１つは、前記固定部を介して連続する複数の前記非固定部が前記層の前記表面のみに露出して配置される第１領域と、前記固定部を介して連続する複数の前記非固定部が前記層の前記裏面のみに露出して配置されるか、又は、前記層の内部のみに配置される第２領域と、を有する単一の部材である。

　第３の観点に係るアッパーは、前記第１又は第２の観点に係るアッパーにおいて、前記基材は、複数の糸を編み込んだ編物、複数の糸を織り込んだ織物、又は、複数の糸を組み合わせた組物であり、
　前記非固定部の長さは、３ｍｍ以上である。

　第４の観点に係るアッパーは、前記第３の観点に係るアッパーにおいて、複数の前記線状材のうちの少なくとも１つの太さと前記基材の前記糸の太さとは、互いに異なっている。

　第５の観点に係るアッパーは、前記第３の観点に係るアッパーにおいて、複数の前記線状材のうちの少なくとも１つの材料と前記基材の前記糸の材料とは、互いに異なっている。

　第６の観点に係るアッパーは、前記第３の観点に係るアッパーにおいて、複数の線状材のうちの少なくとも１つの材料の融点は、基材の材料の融点よりも低い。

　第７の観点に係るアッパーは、前記第１又は第２の観点に係るアッパーにおいて、前記基材は、複数の糸を編み込んだ編物であり、複数の前記非固定部のうちの少なくとも１つは、前記基材の２ウェール以上、又は、前記基材の２コース以上に跨って配置されている。

　第８の観点に係るアッパーは、前記第７の観点に係るアッパーにおいて、前記非固定部が跨ぐ前記基材のコース数は、前記非固定部が跨ぐ前記基材のウェール数よりも多い。

　第９の観点に係るアッパーは、前記第７の観点に係るアッパーにおいて、前記非固定部が跨ぐ前記基材のウェール数は、前記非固定部が跨ぐ前記基材のコース数よりも多い。

　第１０の観点に係るアッパーは、前記第１から第９のいずれかの観点に係るアッパーにおいて、前記非固定部は、前記基材のうち着用者の足と反対側に位置する前記表面に露出する。

　第１１の観点に係るアッパーは、前記第１から第９のいずれかの観点に係るアッパーにおいて、前記非固定部は、前記基材のうち着用者の足側に位置する前記裏面に露出する。

　第１２の観点に係るアッパーは、表面と前記表面と反対を向く裏面とを含む層を２層以上有する布状の基材と、前記基材に並んで配置されて互いに独立して形成された複数の線状材と、を備え、
　複数の前記線状材のそれぞれは、少なくとも１つの前記層に固定されて、互いに離れて配置された複数の固定部と、隣り合う固定部の間に位置して、前記層に固定されない複数の非固定部と、を有し、
　複数の前記線状材のそれぞれは、前記層の面内方向に交互に折り返されており、
　前記固定部を介して連続する複数の前記非固定部は、少なくとも１つの前記層の前記表面に露出して配置されるか、又は、少なくとも１つの前記層の内部に配置されている。

　第１３の観点に係るアッパーは、前記第１２の観点に係るアッパーにおいて、複数の前記線状材のうちの少なくとも１つは、単一の部材である。

　第１４の観点に係るアッパーは、前記第１２又は第１３の観点に係るアッパーにおいて、前記基材は、複数の糸を編み込んだ編物、複数の糸を織り込んだ織物、又は、複数の糸を組み合わせた組物であり、
　前記非固定部の長さは、３ｍｍ以上である。

　第１５の観点に係るアッパーは、前記第１４の観点に係るアッパーにおいて、複数の前記線状材のうちの少なくとも１つの太さと前記基材の前記糸の太さとは、互いに異なっている。

　第１６の観点に係るアッパーは、前記第１４の観点に係るアッパーにおいて、複数の前記線状材のうちの少なくとも１つの材料と前記基材の前記糸の材料とは、互いに異なっている。

　第１７の観点に係るアッパーは、前記第１４の観点に係るアッパーにおいて、複数の線状材のうちの少なくとも１つの材料の融点は、基材の材料の融点よりも低い。

　第１８の観点に係るアッパーは、前記第１２又は第１３の観点に係るアッパーにおいて、前記基材は、複数の糸を編み込んだ編物であり、
　複数の前記非固定部のうちの少なくとも１つは、前記基材の２ウェール以上、又は、前記基材の２コース以上に跨って配置されている。

　第１９の観点に係るアッパーは、前記第１８の観点に係るアッパーにおいて、前記非固定部が跨ぐ前記基材のコース数は、前記非固定部が跨ぐ前記基材のウェール数よりも多い。

　第２０の観点に係るアッパーは、前記第１８の観点に係るアッパーにおいて、前記非固定部が跨ぐ前記基材のウェール数は、前記非固定部が跨ぐ前記基材のコース数よりも多い。

　第２１の観点に係るアッパーは、前記第１２から第２０のいずれかの観点に係るアッパーにおいて、前記非固定部は、前記基材のうち着用者の足から最も離れた前記層の前記表面に露出する。

　第２２の観点に係るアッパーは、前記第１２から第２０のいずれかの観点に係るアッパーにおいて、前記非固定部は、前記基材のうち最も着用者の足側に位置する前記層の前記表面に露出する。

　第２３の観点に係るアッパーは、前記第１２から第２０のいずれかの観点に係るアッパーにおいて、前記基材は、第１層と、前記第１層と隙間を空けて配置される第２層と、前記第１層と前記第２層との間に位置する第３層と、を含み、
　前記非固定部は、前記第３層に配置されている。

　第２４の観点に係る靴は、前記第１から第２３のいずれかの観点に係るアッパーと、前記アッパーの下方に位置する靴のソールと、を備える。

　１，１Ａ，１００，２００　靴、２，２Ａ，１１０，２１０　アッパー、３　ソール、２０　基材、２０ａ　履き口、２０ｂ　スロート部、２０ｃ　紐通し部、２０ｄ　層、２０ｅ　表面、２０ｆ　裏面、２０ｇ　糸、２０ｈ　ウェール、２０ｉ　コース、２０ｊ　通し部、２０ｋ　第１層、２０ｍ　第２層、２０ｎ　第３層、２１　線状材配置領域、２２　線状材、２２Ａ　第１線状材、２２Ｂ　第２線状材、２２Ｃ　第３線状材、２２ａ　固定部、２２ｂ　非固定部、２２ｃ　第１領域、２２ｄ　第２領域、２３　シュータン、２４　シューレース、３０　アウトソール、３０ａ　接地面、３１　ミッドソール、Ｃ　シューズセンター軸、Ｒ１　アッパー前足部、Ｒ２　アッパー中足部、Ｒ３　アッパー後足部、Ｓ１　第１境界線、Ｓ２　第２境界線。

Claims

　表面と前記表面と反対を向く裏面とを含む１つの層を有する布状の基材と、
　前記基材に並んで配置されて互いに独立して形成された複数の線状材と、を備え、
　複数の前記線状材のそれぞれは、
　前記層に固定されて、互いに離れて配置された複数の固定部と、
　隣り合う固定部の間に位置して、前記層に固定されない複数の非固定部と、を有し、
　複数の前記線状材のそれぞれは、前記層の面内方向に交互に折り返されており、
　前記固定部を介して連続する複数の前記非固定部は、前記層の前記表面と前記裏面の少なくともいずれか一方に露出して配置されるか、又は、前記層の内部に配置されている、アッパー。
　複数の前記線状材のうちの少なくとも１つは、
　前記固定部を介して連続する複数の前記非固定部が前記層の前記表面のみに露出して配置される第１領域と、
　前記固定部を介して連続する複数の前記非固定部が前記層の前記裏面のみに露出して配置されるか、又は、前記層の内部のみに配置される第２領域と、を有する単一の部材である、請求項１に記載のアッパー。
　前記基材は、複数の糸を編み込んだ編物、複数の糸を織り込んだ織物、又は、複数の糸を組み合わせた組物であり、
　前記非固定部の長さは、３ｍｍ以上である、請求項１に記載のアッパー。
　複数の前記線状材のうちの少なくとも１つの太さと前記基材の前記糸の太さとは、互いに異なっている、請求項３に記載のアッパー。
　複数の前記線状材のうちの少なくとも１つの材料と前記基材の前記糸の材料とは、互いに異なっている、請求項３に記載のアッパー。
　複数の前記線状材のうちの少なくとも１つの材料の融点は、前記基材の材料の融点よりも低い、請求項３に記載のアッパー。
　前記基材は、複数の糸を編み込んだ編物であり、
　複数の前記非固定部のうちの少なくとも１つは、前記基材の２ウェール以上、又は、前記基材の２コース以上に跨って配置されている、請求項１に記載のアッパー。
　前記非固定部が跨ぐ前記基材のコース数は、前記非固定部が跨ぐ前記基材のウェール数よりも多い、請求項７に記載のアッパー。
　前記非固定部が跨ぐ前記基材のウェール数は、前記非固定部が跨ぐ前記基材のコース数よりも多い、請求項７に記載のアッパー。
　前記非固定部は、前記基材のうち着用者の足と反対側に位置する前記表面に露出する、請求項１に記載のアッパー。
　前記非固定部は、前記基材のうち着用者の足側に位置する前記裏面に露出する、請求項１に記載のアッパー。
　表面と前記表面と反対を向く裏面とを含む層を２層以上有する布状の基材と、
　前記基材に並んで配置されて互いに独立して形成された複数の線状材と、を備え、
　複数の前記線状材のそれぞれは、
　少なくとも１つの前記層に固定されて、互いに離れて配置された複数の固定部と、
　隣り合う固定部の間に位置して、前記層に固定されない複数の非固定部と、を有し、
　複数の前記線状材のそれぞれは、前記層の面内方向に交互に折り返されており、
　前記固定部を介して連続する複数の前記非固定部は、少なくとも１つの前記層の前記表面に露出して配置されるか、又は、少なくとも１つの前記層の内部に配置されている、アッパー。
　複数の前記線状材のうちの少なくとも１つは、単一の部材である、請求項１２に記載のアッパー。
　前記基材は、複数の糸を編み込んだ編物、複数の糸を織り込んだ織物、又は、複数の糸を組み合わせた組物であり、
　前記非固定部の長さは、３ｍｍ以上である、請求項１２に記載のアッパー。
　複数の前記線状材のうちの少なくとも１つの太さと前記基材の前記糸の太さとは、互いに異なっている、請求項１４に記載のアッパー。
　複数の前記線状材のうちの少なくとも１つの材料と前記基材の前記糸の材料とは、互いに異なっている、請求項１４に記載のアッパー。
　複数の前記線状材のうちの少なくとも１つの材料の融点は、前記基材の材料の融点よりも低い、請求項１４に記載のアッパー。
　前記基材は、複数の糸を編み込んだ編物であり、
　複数の前記非固定部のうちの少なくとも１つは、前記基材の２ウェール以上、又は、前記基材の２コース以上に跨って配置されている、請求項１３に記載のアッパー。
　前記非固定部が跨ぐ前記基材のコース数は、前記非固定部が跨ぐ前記基材のウェール数よりも多い、請求項１８に記載のアッパー。
　前記非固定部が跨ぐ前記基材のウェール数は、前記非固定部が跨ぐ前記基材のコース数よりも多い、請求項１８に記載のアッパー。
　前記非固定部は、前記基材のうち着用者の足から最も離れた前記層の前記表面に露出する、請求項１３に記載のアッパー。
　前記非固定部は、前記基材のうち最も着用者の足側に位置する前記層の前記表面に露出する、請求項１３に記載のアッパー。
　前記基材は、第１層と、前記第１層と隙間を空けて配置される第２層と、前記第１層と前記第２層との間に位置する第３層と、を含み、
　前記非固定部は、前記第３層に配置されている、請求項１３に記載のアッパー。
　請求項１から２３のいずれか１項に記載のアッパーと、
　前記アッパーの下方に位置する靴のソールと、を備える、靴。