WO2023204264A1 - 液状医薬組成物 - Google Patents

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Abstract

本開示の課題は、少なくとも、下記の提供である。すなわち、注入対象において生理活性を発揮する核酸を含有する液状医薬組成物を注入対象に注入した際に高い生理活性が得られる技術の提供であり、上記課題を、液状医薬組成物であって、核酸と2価の陽イオンとを含み、前記2価の陽イオンの濃度が総量で0.0406 mM以上81.1 mMより小さく、注射針を介することなく液状医薬組成物を注入対象に注入する注入器によって注入対象に注入される、液状医薬組成物で解決する。

Description

液状医薬組成物
 本開示は、液状医薬組成物に関する。
 近年、薬液投与の医療機器に関して、針への恐怖症対策や、ユーザビリティの追求、感染性廃棄物量の低減等の観点から、無針注射器に対する関心が高まっている。一般的に、無針注射器は、圧縮ガスやバネの力を駆動力にして、ノズル先端から薬液を押し出し、生体内に薬液を投与するものとして知られている(非特許文献1)。また、点火薬の燃焼エネルギーを射出エネルギーとして利用した無針注射器が開発されている(特許文献1)。
 点火薬の燃焼エネルギーを射出エネルギーとして利用した前記無針注射器は、瞬時に薬液を押し出して投与を行う事から、細胞の核やサイトゾルにまで薬液を送達させることを可能としたものである。前記無針注射器の有用性は、ドラッグデリバリーシステム(DDS)の観点からも注目されており、抗ガン作用のある、低分子、ペプチド、タンパク質、抗体などを用いた、種々の薬剤において応用の検討がなされている。特に、ワクチンや免疫の領域においては、前記無針注射器は、抗体価の上昇や細胞性免疫の誘導を可能とすることが報告されている(非特許文献2)。
 ワクチンの領域においては、新型コロナウイルスSARS-CoV-2に対するワクチンの開発などの大きなブレイクスルーが発生している。該ワクチンの中でもmRNAを有効成分としたワクチンは、臨床試験における高い有効性が示された後(非特許文献3)、全世界にて使用され、大きなインパクトを与えた。前記mRNAワクチンは新規のモダリティであり、技術的な特異点であるとして期待されている。
 一方で、核酸ワクチンは、十分な抗体価を得るにあたり、核酸に含まれる遺伝子の非常に高い発現を必要とする。実際に幅広く使用されているSARS-CoV-2に対する核酸ワクチンでは、いずれも、遺伝子発現の向上のために脂質ナノ粒子(Lipid NanoParticle, LNP)が使用されている。しかし、LNPの新規開発は多大な労力を必要とするのみならず、製造コストも大きい。また、LNPに用いられるポリエチレングリコール(PEG)に起因するアナフィラキシーショックなどの安全性に関する懸念も存在する。そのため、LNPを使用せずに遺伝子の発現を高める技術が切望されている。また、無針注射器を用いて遺伝子を含む核酸を注射対象に投与する場合も、LNPに匹敵する程の遺伝子の発現を達成すべく改良が進められている。
特開2012-61269号公報
Clin. Cosmet. Investig. Dermatol., 2018 May 1;11:231-238 AAPS PharmSciTech., 2019 Dec 9;21(1):19 厚生労働省、ファイザー社の新型コロナワクチンについて、[online]、 [令和4年3月11日検索]、インターネット<https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/vaccine_pfizer.html>
 本開示の課題は、少なくとも、下記の提供である。すなわち、注入対象において生理活性を発揮する核酸を含有する液状医薬組成物を注入対象に注入した際に高い生理活性が得られる技術の提供である。
 本発明者は、注射針を介することなく液状医薬組成物を注入対象に注入する注入器を用いて前記液状医薬組成物を注入対象に注入する際に、前記液状医薬組成物が2価の陽イオンを含み、該2価の陽イオンの濃度を総量で所定の範囲に設定することにより上記課題を解決できることを見出した。
 本開示の一実施形態は、
 液状医薬組成物であって、
 核酸と2価の陽イオンとを含み、
 前記2価の陽イオンの濃度が総量で0.0406 mM以上81.1 mMより小さく、
 注射針を介することなく液状医薬組成物を注入対象に注入する注入器によって注入対象に注入される、
 液状医薬組成物である。
 前記液状医薬組成物は、前記2価の陽イオンが、Mg2+、Ca2+、Mn2+、及びZn2+からなる群から選択される一又は複数であることを好ましい態様としている。
 また、前記液状医薬組成物は、前記注射針を介することなく液状医薬組成物を注入対象に注入する注入器によって注入対象に注入されることが、注入対象にジェット注射によって注入されることであることを好ましい態様としている。
 また、前記液状医薬組成物は、細胞性免疫誘導用であることを好ましい態様としている。
 本開示の他の一実施態様は、
 注射針を介することなく液状医薬組成物を注入対象に注入する注入器であって、
 液状医薬組成物を収容した収容部と、
 前記収容部と連通するノズル部であって、前記液状医薬組成物を注入対象に向けて射出するための射出口を有するノズル部と、
 作動時に前記収容部に収容されている前記液状医薬組成物を加圧することで前記射出口から前記液状医薬組成物を前記注入対象に向けて射出する加圧部と、
 を備え、
 前記液状医薬組成物が、核酸と2価の陽イオンとを含み、前記2価の陽イオンの濃度が総量で0.0406 mM以上81.1 mMより小さい、
 注入器である。
 前記注入器は、前記2価の陽イオンが、Mg2+、Ca2+、Mn2+、及びZn2+からなる群から選択される一又は複数であることを好ましい態様としている。
 また、本開示の他の一実施態様は、
 核酸と2価の陽イオンとを含み、前記2価の陽イオンの濃度が総量で0.0406 mM以上81. 1 mMより小さい、液状医薬組成物を、注射針を介することなく液状医薬組成物を注入対象に注入する注入器によって、注入対象に注入する方法である。
 前記方法は、前記2価の陽イオンが、Mg2+、Ca2+、Mn2+、及びZn2+からなる群から選択される一又は複数であることを好ましい態様としている。
 本開示は、少なくとも、下記効果を奏しうる。すなわち、注入対象において生理活性を発揮する核酸を含有する液状医薬組成物を注入対象に注入した際に高い生理活性が得られる技術を提供できるという効果を奏しうる。
本開示の一実施態様に係る注射器の概略構成を示す図である。 本開示の一実施態様に係る、試験例1と比較試験例1-1の結果を示すグラフである。 本開示の一実施態様に係る、比較試験例1-2と比較試験例1-3の結果を示すグラフである。 本開示の一実施態様に係る、試験例2と比較試験例2の結果を示す画像である(図面代用写真)。 本開示の一実施態様に係る、試験例4と比較試験例4-1と比較試験例4-2と比較試験例4-3の結果を示す画像である(図面代用写真)。 本開示の一実施態様に係る、試験例5と比較試験例5の結果を示す画像である(図面代用写真)。 本開示の一実施態様に係る、試験例6と比較試験例6の結果を示す画像である(図面代用写真)。 本開示の一実施態様に係る、試験例7と比較試験例7の結果を示す画像である(図面代用写真)。 本開示の一実施態様に係る、試験例8と比較試験例8の結果を示す画像である(図面代用写真)。 本開示の一実施態様に係る、試験例9と比較試験例9の結果を示す画像である(図面代用写真)。 本開示の一実施態様に係る、試験例10と比較試験例10-1と比較試験例10-2と比較試験例10-3の結果を示す画像である(図面代用写真)。 (A):本開示の一実施態様に係る、比較試験例11-1と比較試験例11-2と比較試験例11-3と比較試験例11-4の結果を示す画像である(図面代用写真)。(B):本開示の一実施態様に係る、試験例11と比較試験例11-1の結果を示す画像である(図面代用写真)。(C):本開示の一実施態様に係る、比較試験例11-2と比較試験例11-5の結果を示す画像である(図面代用写真)。
 各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は、一例であって、本開示の主旨から逸脱しない範囲内で、適宜、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。本開示は、実施形態によって限定されることはなく、クレームの範囲によってのみ限定される。また、本明細書に開示された各々の態様は、本明細書に開示された他のいかなる特徴とも組み合わせることができる。
 本開示の一実施態様は、
 液状医薬組成物であって、
 核酸と2価の陽イオンとを含み、
 前記2価の陽イオンの濃度が、総量で、0.0406 mM以上81.1 mMより小さく、
 注射針を介することなく液状医薬組成物を注入対象に注入する注入器によって注入対象に注入される、
 液状医薬組成物である。
(核酸)
 本実施態様に係る液状医薬組成物が含む核酸は、注入対象において生理活性を発揮する核酸であれば特に制限されない。
 前記核酸は、DNAでもRNAでもよい。また、前記核酸は、タンパク質をコードする部分を含む核酸であってもよいし、タンパク質をコードする部分を含まない核酸(非コード核酸)であってもよい。また、前記液状医薬組成物に含まれる前記核酸は、一種でもよいし複数種でもよい。
 前記核酸が、タンパク質をコードする部分を含む核酸である場合としては、下記が挙げられる。
 例えば、前記核酸が遺伝子を含むDNAであれば、タンパク質の産生のためのmRNAの合成(転写)の際の鋳型となるという生理活性を発揮するものであり、その生理活性は、定量的には、産生するmRNAやタンパク質の量で評価することができる。
 また、前記核酸がmRNAであれば、タンパク質の合成(翻訳)の際の鋳型となるという生理活性を発揮するものであり、その生理活性は、定量的には、産生するタンパク質の量で評価することができる。
 また、前記生理活性は、産生したmRNAやタンパク質が増加又は減少したことに起因する、注入対象における変化に基づいて評価してもよい。例えば、注入対象が細胞性免疫の誘導され得る注入対象(例えば、個体(生体)等)であって、前記核酸が、細胞性免疫を誘導するタンパク質をコードする核酸であり、該細胞性免疫を誘導するタンパク質が増加することで、注入対象において細胞性免疫が誘導されるという変化が生じる場合には、前記核酸は細胞性免疫を誘導するという生理活性を発揮するものであり、その生理活性は、定量的には、該注入対象における細胞性免疫の誘導量で評価することができる。また、前記細胞性免疫を誘導するタンパク質による再刺激(再感作)後の、該注入対象における細胞性免疫の誘導量で評価してもよい。
 前記核酸が、タンパク質をコードする部分を含まない核酸である場合としては、下記が挙げられる。
 例えば、注入対象がワクチンの投与され得る個体(生体)である場合であって、前記核酸がCpGモチーフを含むDNA (CpG DNA)やpolyinosine-polycytidylic acid (PolyI:C)であれば、ワクチンの効果を高めるためのアジュバントとしての生理活性を発揮するものであり、その生理活性は、定量的には、抗腫瘍効果(該効果は、例えば、腫瘍サイズの減少等で評価できる。)や免疫細胞の成熟度等で評価することができる。
 また、前記核酸がsmall interfering RNA (siRNA)であれば、mRNAを分解して配列特異的に標的遺伝子の発現を抑制するという生理活性を発揮するものであり、その生理活性は、定量的には、該標的遺伝子に基づいて産生するmRNAやタンパク質の量で評価することができる。
 また、前記核酸がアンチセンスDNAやアンチセンスRNAであれば、標的遺伝子のRNAにハイブリダイズして、スプライシングの阻害や翻訳の阻害をするといった生理活性を発揮するものであり、その生理活性は、定量的には、該標的遺伝子に基づいて産生するmRNAやタンパク質の量で評価することができる。
 本実施態様における核酸は、注入対象に注入された際に該注入対象において生理活性を発揮し、安定して存在し、また、該注入対象を破壊するなどの悪影響がなければ、遊離の形態でもナノ粒子等の担体に固定されている形態でもよく、修飾されていてもよく、溶媒を含め、その態様は特に限定されない。
 前記核酸は、天然物であってもよいし、人工的に合成されたものであってもよい。
 後述の実施例では、前記核酸として、GFP(Green Fluorescence Protein)遺伝子を含む遊離のプラスミドDNAを用い、該GFP遺伝子をレポーター遺伝子として用いた実施例や、レポータータンパク質としてのGFPをコードしたmRNAを用いた実施例、オボアルブミン(Ovalbumin, OVA)をコードしたmRNAを用いた実施例を挙げている。
 前記DNAが遺伝子を含む場合には、発現カセットや発現ベクターに該遺伝子が含まれた形態で設計されてよい。さらに、例えば、前記DNAが注入される注入対象および注入部位に適したプロモーターの制御下に遺伝子が配置されていてもよい。すなわち、いずれの態様においても公知の遺伝子工学的手法を用いることができる。例えば、後述の実施例では、発現ベクターとして、GFP遺伝子を含むベクターであるCMV-DASHER-GFP(ATUM社製)を用いた実施例を挙げている。当該プラスミドベクターは公知であり、当業者であれば入手可能である。発現ベクター及び組換えベクターのサブクローニングは公知の方法に従って行うことができる。
 本実施態様において、「注入対象において生理活性を発揮する核酸を含有する液状医薬組成物を注入対象に注入した際に高い生理活性が得られる」とは、核酸が発揮する生理活性を定量的な指標で評価した場合に、
 核酸を含み、2価の陽イオンの濃度が総量で後述する所定の範囲内にない液状医薬組成物を、注射針を介することなく液状医薬組成物を注入対象に注入する注入器によって注入対象に注入したときの、該核酸が発揮する生理活性(該生理活性は、例えば、該生理活性を示す量であってよい。)よりも、
 核酸を含み、2価の陽イオンの濃度が総量で後述する所定の範囲内にある液状医薬組成物を、前記と同様に注入したときの、該核酸が発揮する生理活性(該生理活性は、例えば、該生理活性を示す量であってよい。)の方が大きいことをいう。
 すなわち、例えば、
 核酸を含み、2価の陽イオンの濃度が総量で0.0406 mM未満81.1 mM以上の液状医薬組成物を、注射針を介することなく液状医薬組成物を注入対象に注入する注入器によって注入対象に注入したとき(これを態様Bとする。)の、該核酸が発揮する生理活性を「活性B」とし、
 核酸を含み、2価の陽イオンの濃度が総量で0.0406 mM以上81.1 mMより小さくしたこと以外は態様Bと同一条件とし、前記と同様に液状医薬組成物を注入対象に注入したとき(これを態様Aとする。)の、該核酸が発揮する生理活性を「活性A」とした場合に、
 活性B < 活性A
の場合である。
 また、本実施態様において、「注入対象において生理活性を発揮する核酸を含有する液状医薬組成物を注入対象に注入した際に高い生理活性が得られる」とは、核酸が発揮する生理活性を定量的な指標で評価した場合に、
 核酸を含み、2価の陽イオンの濃度が総量で後述する所定の範囲内にある液状医薬組成物を、有針注射器によって注射対象に注射したときの、該核酸が発揮する生理活性(該生理活性は、例えば、該生理活性を示す量であってよい。)よりも、
 核酸を含み、2価の陽イオンの濃度が総量で後述する所定の範囲内にある液状医薬組成物を、注射針を介することなく液状医薬組成物を注入対象に注入する注入器によって注入対象に注入したこと以外は前記と同様に注入したときの、該核酸が発揮する生理活性(該生理活性は、例えば、該生理活性を示す量であってよい。)の方が大きいことでもよい。
 すなわち、例えば、
 核酸を含み、2価の陽イオンの濃度が総量で0.0406 mM以上81.1 mMより小さい液状医薬組成物を、有針注射器によって注射対象に注射したとき(これを態様Cとする。)の、該核酸が発揮する生理活性を「活性C」とし、
 核酸を含み、2価の陽イオンの濃度が総量で0.0406 mM以上81.1 mMより小さい液状医薬組成物を、注射針を介することなく液状医薬組成物を注入対象に注入する注入器によって注入対象に注入したこと以外は態様Cと同一条件としたとき(これを態様Aとする。)の、該核酸が発揮する生理活性を「活性A」とした場合に、
 活性C < 活性A
であってもよい。
 前記核酸が発揮する生理活性を定量的な指標(例えば、発現の量、細胞性免疫の誘導量、抗腫瘍効果、免疫細胞の成熟度等)で評価する場合、該定量的な指標は、前記核酸が発揮する生理活性によって適宜設定すればよい。
 前記定量的な指標は、例えば、前記核酸がDNAであって遺伝子を含む場合であれば、例えば、それを鋳型として産生するmRNAやそのmRNAを鋳型として産生するタンパク質の量(通常は該遺伝子の発現量として評価される。)等が挙げられる。
 また、例えば、前記核酸がmRNAであれば、例えば、それを鋳型として産生するタンパク質の量等が挙げられる。
 すなわち、例えば、前記核酸がDNAであって遺伝子を含む場合であり、前記定量的な指標が、該遺伝子の発現量である場合には、
 2価の陽イオンの濃度が総量で0.0406 mM未満81.1 mM以上の液状医薬組成物を、注射針を介することなく液状医薬組成物を注入対象に注入する注入器によって注入対象に注入したとき(これを態様B1とする。)の、該遺伝子の発現量を「発現量B1」とし、
 2価の陽イオンの濃度が総量で0.0406 mM以上81.1 mMより小さくしたこと以外は態様B1と同一条件とし、前記と同様に液状医薬組成物を注入対象に注入したとき(これを態様A1とする。)の、該遺伝子の発現量を「発現量A1」とした場合に、
 発現量B1 < 発現量A1
である。
 また、2価の陽イオンの濃度が総量で0.0406 mM以上81.1 mMより小さい液状医薬組成物を、有針注射器によって注射対象に注射したとき(これを態様C1とする。)の、該遺伝子の発現量を「発現量C1」とし、
 2価の陽イオンの濃度が総量で0.0406 mM以上81.1 mMより小さい液状医薬組成物を、注射針を介することなく液状医薬組成物を注入対象に注入する注入器によって注入対象に注入したこと以外は態様C1と同一条件としたとき(これを態様A1とする。)の、該遺伝子の発現量を「発現量A1」とした場合に、
 発現量C1 < 発現量A1
であってよい。
 また前記定量的な指標は、例えば、前記核酸が細胞性免疫を誘導するタンパク質をコードする核酸であり、前記定量的な指標が、細胞性免疫の誘導量である場合には、
 2価の陽イオンの濃度が総量で0.0406 mM未満81.1 mM以上の液状医薬組成物を、注射針を介することなく液状医薬組成物を注入対象に注入する注入器によって注入対象に注入したとき(これを態様B2とする。)の、該細胞性免疫の誘導量を「誘導量B1」とし、
 2価の陽イオンの濃度が総量で0.0406 mM以上81.1 mMより小さくしたこと以外は態様B1と同一条件とし、前記と同様に液状医薬組成物を注入対象に注入したとき(これを態様A1とする。)の、該細胞性免疫の誘導量を「誘導量A1」とした場合に、
 誘導量B1 < 誘導量A1
である。
 このことは、前記該細胞性免疫を誘導するタンパク質の再刺激(再感作)後の、該注入対象における細胞性免疫の誘導量でも同様である。
 前記細胞性免疫の誘導量とは、細胞性免疫の誘導の程度を示すものであればよく、例えば、後述する実施例のようにELISpotキットを用いたときのspot数等であってよい。
 また、2価の陽イオンの濃度が総量で0.0406 mM以上81.1 mMより小さい液状医薬組成物を、有針注射器によって注射対象に注射したとき(これを態様C1とする。)の、該細胞性免疫の誘導量を「誘導量C1」とし、
 2価の陽イオンの濃度が総量で0.0406 mM以上81.1 mMより小さい液状医薬組成物を、注射針を介することなく液状医薬組成物を注入対象に注入する注入器によって注入対象に注入したこと以外は態様C1と同一条件としたとき(これを態様A1とする。)の、該細胞性免疫の誘導量を「誘導量A1」とした場合に、
 誘導量C1 < 誘導量A1
であってよい。
 このことは、前記該細胞性免疫を誘導するタンパク質の再刺激(再感作)後の、該注入対象における細胞性免疫の誘導量でも同様である。
 前記定量的な指標の評価方法としては、例えば、前記液状医薬組成物を注入対象に注入した後、該注入対象の全部又は一部を用いて、前記核酸が発揮する生理活性に従って適宜選択することができる。
 例えば、後述の実施例のように、注入対象が個体(生体)であって、前記核酸が遺伝子を含むDNAであり、注入部位周辺(すなわち、注入対象の一部)における該遺伝子の発現量を評価するような場合には、前記液状医薬組成物を注入対象に注入した後、該注入部位の周辺を取得し、前記核酸が発揮する生理活性に従って適宜選択することができる。
 また、後述の実施例のように、公知の方法により、サンプルを調製しタンパク質の産生量をもって前記核酸が発揮する生理活性を評価することができる。後述の実施例では、産生するタンパク質がGFPタンパク質であるため、蛍光輝度を指標にして生理活性を評価している。
 また、例えば、後述の実施例のように、注入対象が個体(生体)であり、前記核酸が細胞性免疫を誘導するタンパク質をコードする核酸であって、細胞性免疫の誘導量を評価するような場合には、前記液状医薬組成物を注入対象に注入した後、該個体(生体)そのもの(すなわち、注入対象の全部)を用い、細胞性免疫の誘導量を評価する公知の方法等を用いて、細胞性免疫の誘導量を評価することができる。
 また、本実施態様において、注入対象において生理活性を発揮する核酸を含有する液状医薬組成物を注入対象に注入した際に得られる生理活性は、長時間にわたって発揮されるものである。
 前記核酸の種類や、注入対象、前記核酸が注入された注入対象において前記核酸が発揮する生理活性等によって前記生理活性が発揮される時期は異なり、通常、前記液状医薬組成物が注入対象に注入された時刻から所定の時間が経過した後に発揮される。
 前記生理活性の発揮が開始される時刻(始期)は、前記液状医薬組成物が注入対象に注入された時刻からできるだけ早い方が好ましいが、前記液状医薬組成物が注入対象に注入された時刻から、例えば6時間後である。一方で、前記生理活性の発揮が終了する時刻(終期)は、前記液状医薬組成物が注入対象に注入された時刻からできるだけ遅い方が好ましいが、前記液状医薬組成物が注入対象に注入された時刻から、例えば、1日後、2日後、3日後、5日後、7日後、14日後である。
(2価の陽イオン)
 本実施態様に係る液状医薬組成物における2価の陽イオンの濃度の総量が所定の範囲内であると、該液状医薬組成物を、注射針を介することなく液状医薬組成物を注入対象に注入する注入器によって注入対象に注入した際に、従来の液状医薬組成物を注入した場合に比べて高い生理活性が得られる。
 前記所定の範囲の下限としては、例えば、0.0406 mM以上、0.203 mM以上、0.406 mM以上、0.492 mM以上、2.03 mM以上、3.47 mM以上、3.9 mM以上、4.06 mM以上、4.15 mM以上、4.92 mM以上、6.8 mM以上、40.6 mM以上、49.2 mM以上である。
 前記液状医薬組成物を注入対象に注入した際に高い生理活性を得られるメカニズムは明らかではないが、下記のように推測される。なお、本開示は、下記推測によって限定されるものではない。
 原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope, AFM)を用いた核酸研究や細胞分裂期の染色体凝縮の研究において、核酸は、マグネシウムイオンのような2価の陽イオンが共存することにより電荷的な架橋を誘起し、凝集する作用を有している事が良く知られている。
 一方、注射針を介することなく液状医薬組成物を注入対象に注入する注入器による細胞内への核酸の送達は、注入を瞬時に行い高エネルギーを掛ける事により、核酸が細胞膜を物理的に通過することにより達成されるものである。細胞膜の構造はリン脂質の二重層膜であり、核酸が細胞膜を物理的に通過する場合には、レセプターや細胞膜への吸着を介したものとは異なり、粒子径などの立体障害が、通過の効率に大きく影響する事が明らかとなっている。事実として、ナノ粒子の細胞膜の直接的な通過は、小さな粒子径である事が望ましいと報告されている。
 以上から、核酸と2価の陽イオンが共存する事で、核酸の粒子化と流体力学的径の減少が誘起され、核酸の細胞内への送達が効率化するものと推測される。そして、注射針を介することなく液状医薬組成物を注入対象に注入する注入器を用いた場合の細胞内への核酸の送達が効率化され、高い生理活性が得られると推測される。
 以上に基づき、注入対象が細胞である場合又は細胞を含むものである場合には、前記2価の陽イオンの濃度の総量がより大きい方が、核酸の粒子化がされやすく、流体力学的径が減少しやすくなる結果、細胞内への核酸の注入量が増加しやすく、高い生理活性が得られやすくなると推測される。逆に言うと、前記2価の陽イオンの濃度の総量がより小さい方が、核酸の粒子化がされにくく、流体力学的径が減少しにくい結果、細胞内への核酸の注入量も増加しにくく、高い生理活性が得られにくいと推測される。
 また、前記所定の範囲の上限としては、例えば、81.1 mMより小さいこと、49.2 mM以下、40.6 mM以下、6.8 mM以下、4.92 mM以下、4.15 mM以下、4.06 mM以下、3.9 mM以下、3.47 mM以下、2.03 mM以下、0.492 mM以下、0.406 mM以下、0.203 mM以下である。
 前記2価の陽イオンの濃度の総量がより小さい方が、前記液状医薬組成物が注入されることによる注入対象の負荷をできるだけ抑制することができる。例えば、注入対象が細胞である場合又は細胞を含むものである場合に、細胞が損傷したり死滅したりすることをできるだけ抑制することができる。
 前記所定の範囲の上限と下限は、上限を採用する理由と下限を採用する理由とに鑑み、上記した上限の例と下限の例から選択した矛盾しない組み合わせであってよい。具体的には下記であってよい。
 例えば、0.0406 mM以上81.1 mMより小さい、0.0406 mM以上49.2 mM以下、0.0406 mM以上40.6 mM以下、0.0406 mM以上6.8 mM以下、0.0406 mM以上4.92 mM以下、0.0406 mM以上4.15 mM以下、0.0406 mM以上4.06 mM以下、0.0406 mM以上3.9 mM以下、0.0406 mM以上3.47 mM以下、0.0406 mM以上2.03 mM以下、0.0406 mM以上0.492 mM以下、0.0406 mM以上0.406 mM以下、または0.0406 mM以上0.203 mM以下であってよい。
 また、例えば、0.203 mM以上81.1 mMより小さい、0.203 mM以上49.2 mM以下、0.203 mM以上40.6 mM以下、0.203 mM以上6.8 mM以下、0.203 mM以上4.92 mM以下、0.203 mM以上4.15 mM以下、0.203 mM以上4.06 mM以下、0.203 mM以上3.9 mM以下、0.203 mM以上3.47 mM以下、0.203 mM以上2.03 mM以下、0.203 mM以上0.492 mM以下、または0.203 mM以上0.406 mM以下であってよい。
 また、例えば、0.406 mM以上81.1 mMより小さい、0.406 mM以上49.2 mM以下、0.406 mM以上40.6 mM以下、0.406 mM以上6.8 mM以下、0.406 mM以上4.92 mM以下、0.406 mM以上4.15 mM以下、0.406 mM以上4.06 mM以下、0.406 mM以上3.9 mM以下、0.406 mM以上3.47 mM以下、0.406 mM以上2.03 mM以下、または0.406 mM以上0.492 mM以下であってよい。
 また、例えば、0.492 mM以上81.1 mMより小さい、0.492 mM以上49.2 mM以下、0.492 mM以上40.6 mM以下、0.492 mM以上6.8 mM以下、0.492 mM以上4.92 mM以下、0.492 mM以上4.15 mM以下、0.492 mM以上4.06 mM以下、0.492 mM以上3.9 mM以下、0.492 mM以上3.47 mM以下、または0.492 mM以上2.03 mM以下であってよい。
 また、例えば、2.03 mM以上81.1 mMより小さい、2.03 mM以上49.2 mM以下、2.03 mM以上40.6 mM以下、2.03 mM以上6.8 mM以下、2.03 mM以上4.92 mM以下、2.03 mM以上4.15 mM以下、2.03 mM以上4.06 mM以下、2.03 mM以上3.9 mM以下、または2.03 mM以上3.47 mM以下であってよい。
 また、例えば、3.47 mM以上81.1 mMより小さい、3.47 mM以上49.2 mM以下、3.47 mM以上40.6 mM以下、3.47 mM以上6.8 mM以下、3.47 mM以上4.92 mM以下、3.47 mM以上4.15 mM以下、3.47 mM以上4.06 mM以下、または3.47 mM以上3.9 mM以下であってよい。
 また、例えば、3.9 mM以上81.1 mMより小さい、3.9 mM以上49.2 mM以下、3.9 mM以上40.6 mM以下、3.9 mM以上6.8 mM以下、3.9 mM以上4.92 mM以下、3.9 mM以上4.15 mM以下、または3.9 mM以上4.06 mM以下であってよい。
 また、例えば、4.06 mM以上81.1 mMより小さい、4.06 mM以上49.2 mM以下、4.06 mM以上40.6 mM以下、4.06 mM以上6.8 mM以下、4.06 mM以上4.92 mM以下、または4.06 mM以上4.15 mM以下であってよい。
 また、例えば、4.15 mM以上81.1 mMより小さい、4.15 mM以上49.2 mM以下、4.15 mM以上40.6 mM以下、4.15 mM以上6.8 mM以下、または4.15 mM以上4.92 mM以下であってよい。
 また、例えば、4.92 mM以上81.1 mMより小さい、4.92 mM以上49.2 mM以下、4.92 mM以上40.6 mM以下、または4.92 mM以上6.8 mM以下であってよい。
 また、例えば、6.8 mM以上81.1 mMより小さい、6.8 mM以上49.2 mM以下、または6.8 mM以上40.6 mM以下であってよい。
 また、例えば、40.6 mM以上81.1 mMより小さい、または40.6 mM以上49.2 mM以下であってよい。
 また、例えば、49.2 mM以上81.1 mMより小さい、であってよい。
 前記2価の陽イオンとしては、例えば、Mg2+、Ca2+、Ba2+、Cu2+、Fe2+、Mn2+、Zn2+等が挙げられ、好ましくは、Mg2+、Ca2+、Mn2+、Zn2+である。また、前記液状医薬組成物に含まれる前記2価の陽イオンは、一種でもよいし複数種でもよい。
 前記2価の陽イオンの供給源は、溶媒に溶解した際に前記2価の陽イオンを生じる「塩」であってよい。塩としては、例えば、塩化物塩、硫酸塩、硝酸塩、アスパラギン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、グルコン酸塩等が挙げられる。また、前記2価の陽イオンの供給源は、水和物の形態であってよい。
 Mg2+源としては、例えば、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、アスパラギン酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、乳酸マグネシウム、グルコン酸マグネシウム等が挙げられる。汎用性の観点から、好ましくは、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、アスパラギン酸マグネシウムである。
 Ca2+源としては、例えば、塩化カルシウム、硫酸カルシウム、硝酸カルシウム、アスパラギン酸カルシウム、酢酸カルシウム、乳酸カルシウム、グルコン酸カルシウム等が挙げられる。汎用性の観点から、好ましくは、塩化カルシウムである。
 Ba2+源としては、例えば、塩化バリウム、硫酸バリウム、硝酸バリウム、アスパラギン酸バリウム、酢酸バリウム、乳酸バリウム、グルコン酸バリウム等が挙げられる。
 Cu2+源としては、例えば、塩化銅(II)、硫酸銅(II)、硝酸銅(II)、アスパラギン酸銅(II)、酢酸銅(II)、乳酸銅(II)、グルコン酸銅(II)等が挙げられる。
 Fe2+源としては、例えば、塩化鉄(II)、硫酸鉄(II)、硝酸鉄(II)、アスパラギン酸鉄(II)、酢酸鉄(II)、乳酸鉄(II)、グルコン酸鉄(II)等が挙げられる。
 Mn2+源としては、例えば、塩化マンガン(II)、硫酸マンガン(II)、硝酸マンガン(II)、アスパラギン酸マンガン(II)、酢酸マンガン(II)、乳酸マンガン(II)、グルコン酸マンガン(II)等が挙げられる。汎用性の観点から、好ましくは、硫酸マンガン(II)である。
 Zn2+源としては、例えば、塩化亜鉛、硫酸亜鉛、硝酸亜鉛、アスパラギン酸亜鉛、酢酸亜鉛、乳酸亜鉛、グルコン酸亜鉛等が挙げられる。
(注入対象)
 本実施態様における注入対象は、例えば、細胞、細胞シート、細胞塊、組織、器官(皮膚や臓器等)、器官系、個体(生体)等からなる群から選択される一以上であってよく制限はない。in vitro系、in vivo系、ex vivo系をはじめ、いずれであってよい。前記細胞塊は3次元培養で得られた細胞塊であってよく、前記器官(皮膚や臓器等)はオルガノイドであってよい。
 また、前記注入対象に対して注入がされる場合、それに含まれる下の階層に注入がされてもよい。すなわち、例えば、個体(生体)を注入対象とする場合、該個体(生体)に含まれる組織に注入がされてもよく、該個体(生体)に含まれる細胞に注入がされてもよく、両者に注入がされてもよい。また、組織を注入対象とする場合、該組織に含まれる細胞に注入がされてもよく、該組織に含まれる細胞間マトリックスに注入がされてもよく、両者に注入がされてもよい。
 また、本実施態様における注入対象が、細胞、細胞シート、細胞塊、組織、器官(皮膚や臓器等)、器官系からなる群から選択される一以上である場合、個体(生体)に存在する状態での、細胞、細胞シート、細胞塊、組織、器官(皮膚や臓器等)、器官系からなる群から選択される一以上であってよく、個体(生体)に存在しない状態(例えば、個体(生体)から摘出や分離がされた状態や、個体(生体)外で作製された状態)での、細胞、細胞シート、細胞塊、組織、器官(皮膚や臓器等)、器官系からなる群から選択される一以上であってもよい。
 また、本実施態様における注入対象は、iPS細胞(人工多能性幹細胞)などの幹細胞由来の、細胞、細胞シート、細胞塊、組織、器官(皮膚や臓器等)、器官系からなる群から選択される一以上であってもよく、これらは、個体(生体)に存在する状態であってもよく、個体(生体)に存在しない状態(例えば、個体(生体)から摘出や分離がされた状態や、個体(生体)外で作製された状態)であってもよい。前記細胞塊は3次元培養で得られた細胞塊であってよく、前記器官(皮膚や臓器等)はオルガノイドであってよい。
 前記個体(生体)は、好ましくは哺乳動物の個体(生体)である。前記哺乳動物としては特に制限されないが、ヒトが挙げられ、また、ヒトを除く哺乳動物が挙げられる。ヒトを除く哺乳動物としては、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、サル、イヌ、ネコ等が挙げられる。
 また、本実施態様における注入対象が上記のいずれであっても、細胞に注入がされる場合には、該細胞の細胞質に注入がされてもよく、該細胞の細胞核に注入がされてもよく、該細胞の細胞質及び細胞核の両者に注入がされてもよい。
 また、本実施態様における注入対象は特に制限されないが、好ましくは、哺乳動物の個体(生体)の皮膚内の皮内、皮下及びその下部にある筋層からなる群から選択される一以上である。この場合、注入器から皮膚表面に向けて前記液状医薬組成物を射出して皮膚に注入し、該皮膚内の皮内、皮下及びその下部にある筋層からなる群から選択される一以上に注入する方法を採用できる。
(液状医薬組成物)
 本実施態様に係る液状医薬組成物において、前記核酸と前記2価の陽イオンは薬理学的に許容される液体(溶剤)に溶解された形態であってよい。前記薬理学的に許容される液体としては、例えば、水(例えば、注射用水など)やリン酸を用いた緩衝液(例えば、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)(PBS (+)であってもよく、PBS (-)であってもよい。)等が挙げられる。
 尚、本開示において、「溶解」は「懸濁」や「乳化」であってよく、「溶液」は「懸濁液」や「乳化液」であってよく、「溶剤」は「懸濁剤」や「乳化剤」であってよい。
 本実施態様に係る液状医薬組成物は、前記核酸と前記2価の陽イオンとを含むほか、医薬組成物用無毒性担体と混合することができる。該担体としては、例えば、グルコース、乳糖、ショ糖、澱粉、マンニトール、デキストリン、脂肪酸グリセリド、ポリエチレングルコール、ヒドロキシエチルデンプン、エチレングリコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アミノ酸、ゼラチン、アルブミン、水、生理食塩水などが挙げられる。また、必要に応じて、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、結合剤、等張化剤などの慣用の添加剤を適宜添加することもできる。
 本実施態様に係る液状医薬組成物全量に対する前記核酸の含有量は、前記核酸の種類や、注入対象、前記核酸が注入された注入対象において前記核酸が発揮する生理活性等に基づいて適宜設定することができる。また、前記2価の陽イオンの含有量も考慮して適宜設定することができる。
 また、注入対象への前記液状医薬組成物の注入量は、前記核酸の含有量や種類、注入対象、前記核酸が注入された注入対象において前記核酸が発揮する生理活性等に基づいて適宜設定することができる。また、前記2価の陽イオンの注入量も考慮して適宜設定することができる。
 本実施態様に係る液状医薬組成物のpHは、前記液状医薬組成物が注射針を介することなく液状医薬組成物を注入対象に注入する注入器によって注入対象に注入された際に、該注入対象において前記核酸が生理活性を発揮し、安定して存在し、また、該注入対象を破壊するなどの悪影響がなければ、特に制限されない。
 本実施態様に係る液状医薬組成物は、ワクチンの形態であってよい。
 本実施態様に係る液状医薬組成物は、細胞性免疫を誘導する用途に用いられることが好ましい。この場合、前記注入対象は、細胞性免疫の誘導され得る注入対象(例えば、個体(生体)等)であってよい。前記核酸は、細胞性免疫を誘導するタンパク質をコードする核酸であってよい。後述する実施例では、前記細胞性免疫を誘導するタンパク質としてオボアルブミン(Ovalbumin, OVA)を用いているが、細胞性免疫は異物に対する免疫反応であり、前記細胞性免疫を誘導するタンパク質はOVAのみに限定されるものではない。
 前記細胞性免疫を誘導することは、細胞性免疫が誘導されることに起因する二次的な現象であってよい。例えば、インターフェロンγ(IFN-γ)の産生の誘導であってよい。
(注入器)
 本実施態様における注入器としては、注射針を介することなく前記液状医薬組成物を前記注入対象に注入できる注入器を用いることができる。すなわち、前記液状医薬組成物は、前記注射針を介することなく液状医薬組成物を注入対象に注入する注入器によって注入対象に注入されうる。
 本実施態様における注入器において、「先端側」とは、注入器から前記液状医薬組成物が射出される射出口が配置されている側を意味し、「基端側」とは、注入器において先端側とは反対の側を意味するものであり、これらの文言は、特定の箇所や位置を限定的に指すものではない。
 本実施態様における注入器では、前記液状医薬組成物を前記注入対象に対して射出するために、駆動部が射出エネルギーの付与を行う。本実施態様における注入器による「射出」は、前記駆動部による射出エネルギーを利用して、前記加圧部により、前記収容部に収容されている前記液状医薬組成物が加圧されることで、前記液状医薬組成物が収容部の流路を流れることで実現される。射出エネルギーとしては、従来の注入器に用いられる射出エネルギーであってよく、例えば、火薬等の燃焼エネルギー、ガス発生剤等の発生エネルギー、圧電素子等の電気的エネルギー、ばね等の機械的エネルギー等を利用することができ、また、これらの形態のエネルギーを適宜組み合わせたエネルギーを利用することができる。
 火薬の燃焼エネルギーを射出エネルギーとして利用する場合、火薬としては、例えば、ジルコニウムと過塩素酸カリウムを含む火薬(ZPP)、水素化チタンと過塩素酸カリウムを含む火薬(THPP)、チタンと過塩素酸カリウムを含む火薬(TiPP)、アルミニウムと過塩素酸カリウムを含む火薬(APP)、アルミニウムと酸化ビスマスを含む火薬(ABO)、アルミニウムと酸化モリブデンを含む火薬(AMO)、アルミニウムと酸化銅を含む火薬(ACO)、アルミニウムと酸化鉄を含む火薬(AFO)のうち何れか一つの火薬、又はこれらのうち複数の組み合わせを含む火薬が挙げられる。これらの火薬の特徴としては、その燃焼生成物が高温状態では気体であっても常温では気体成分を含まないため、点火後燃焼生成物が直ちに凝縮を行う。それにより、前記液状医薬組成物の射出のための加圧過程において、該加圧時の燃焼生成物の温度を、点火薬の燃焼により、前記液状医薬組成物に掛かる圧力が最初のピーク射出力を迎えてから短時間に常温近傍まで推移させることができる。
 また、ガス発生剤の発生エネルギーを射出エネルギーとして利用する場合、ガス発生剤としては、シングルベース無煙火薬(例えば、ニトロセルロース98質量%、ジフェニルアミン0.8質量%、硫酸カリウム1.2質量%を含むシングルベース無煙火薬が挙げられる。)や、エアバッグ用ガス発生器やシートベルトプリテンショナ用ガス発生器に使用されている各種ガス発生剤を用いることも可能である。
 本実施態様における注入器では、加圧部により、作動時に前記収容部に収容されている前記液状医薬組成物を加圧することで前記射出口から前記液状医薬組成物を前記注入対象に向けて射出する。
 前記加圧部による加圧は、例えば、前記収容部を破壊するなど、系を破壊することがない限り特に制限されず、通常の注入器における加圧条件を採用することができる。
 ここで、前記圧力とは収容部内の圧力のことである。その測定方法は特に制限されないが、例えば、下記のようにして測定することができる。すなわち、特開2005-21640号公報に記載の測定方法のように、射出の力を、ノズルの下流に配置されたロードセルのダイアフラムに分散して与えるようにし、ロードセルからの出力は、検出増幅器を介してデータ採取装置にて採取されて、時間ごとの射出力(N)として記憶されるという方法によって測定する。このように測定された射出圧を、注入器の射出口31aの面積によって除することで、射出圧を算出する。収容部の内圧測定による測定値は射出圧と同等であり、射出圧をもって収容部内の圧力とすることができる。
 上記駆動部による射出エネルギーはピストンを介してプランジャに伝えられ、プランジャが収容部内を摺動することで、収容部に収容されている前記液状医薬組成物がノズル部に形成された流路に沿って押し出され、最終的に射出口から注入対象に向けて射出される。
 収容部には当初から前記液状医薬組成物が収容されていてもいなくてもよく、収容されていない場合には、射出口を有するノズルを介して前記液状医薬組成物を収容部内に吸引することにより収容することがきる。このように、収容部への収容操作を必要とする構成を採用することで、必要とする任意の前記液状医薬組成物を注入対象へ注入することが可能となる。そのため、本実施態様における注入器では、シリンジ部と注入器本体とは着脱可能に構成されていてよい。
 本実施態様における、前記注射針を介することなく液状医薬組成物を注入対象に注入する注入器によって注入対象に注入されることは、注入対象にジェット注射によって注入されることであってよい。
 ここで、本開示において「ジェット注射」とは、注射針を介することのない注射であって、核酸と2価の陽イオンとを含み、かつ、前記2価の陽イオンの濃度が総量で0.0406 mM以上81.1 mMより小さい液状医薬組成物が射出口から注入対象に向けて射出され、それにより注入対象の内と外との境界を貫通する貫通孔が形成され、該貫通孔を通じて液状医薬組成物を注入対象内に注入することができる高圧の超極微液流が生まれることを特徴とする、注射を指す。例えば、該注入対象が哺乳動物の個体(生体)である場合、該哺乳動物の個体(生体)の、例えば、皮膚を貫通することができる高圧の超極微液流が生まれることを特徴とする注射を指す。
 本実施態様における注入器は、注射針を介することなく注射液(液状医薬組成物等)を注入対象に注入することに用いることができる従来の注入器において、前記収容部に前記液状医薬組成物を収容させて得ることができる。そのような従来の注入器としては、例えば、国際公開第2019/156238号に記載の注入器、国際公開第2019/156239号に記載の注入器、国際公開第2019/156237号に記載の注入器、特許5989039号明細書に記載の注入器などが挙げられる。これらは前記ジェット注射が可能な注入器であるが、これらの他にも、前記ジェット注射が可能な市販の注入器(無針注射器)は多数存在する。例えば、Straits(Pharmajet社)、Tropis(Pharmajet社)、Vitajet (Bioject Medical Technologies Inc.)、Biojector 2000 (Bioject Medical Technologies Inc.)、Bioject Zetajet (Bioject Medical Technologies Inc.)、Glide(Glide Pharma社)、MediJector Vision(Antares社)、Sumaval DosePro(Zogenix社)、SQ Pen(Bespak社)、Injex(Equidyne社)、ヒアルロン酸シリンジ(BEAUTTO社、Amazon Standard Identification Number (ASIN): B08NCHTRHZ)等が挙げられる。
 以下に、図面を参照して本実施形態の注入器の例として、注射器1(無針注射器)について説明する。なお、以下の実施形態の構成は例示であり、本実施形態の構成に限定されるものではない。なお、注射器1の長手方向における相対的な位置関係を表す用語として、「先端側」及び「基端側」を用いる。当該「先端側」は、後述する注射器1の先端寄り、すなわち射出口31a寄りの位置を表し、当該「基端側」は、注射器1の長手方向において「先端側」とは反対側の方向、すなわち駆動部7側の方向を表している。また、本例示は、点火装置によって点火される火薬の燃焼エネルギーを射出エネルギーとして加圧に用いる例示であるが、本実施態様はこれに限定されるものではない。
(注射器1の構成)
 図1は、注射器1の概略構成を示す図であり、注射器1のその長手方向に沿った断面図でもある。注射器1は、シリンジ部3とプランジャ4とで構成されるサブ組立体と、注射器本体6とピストン5と駆動部7とで構成されるサブ組立体とが一体に組み立てられた注射器組立体10が、ハウジング(注射器ハウジング)2に取り付けられることで構成される。
 上記の通り、注射器組立体10は、ハウジング2に対して脱着自在となるように構成されている。注射器組立体10に含まれるシリンジ部3とプランジャ4との間に形成される収容部32には前記液状医薬組成物が充填され、そして、当該注射器組立体10は、前記液状医薬組成物の射出を行う度に使い捨てられるユニットである。一方で、ハウジング2側には、注射器組立体10の駆動部7に含まれる点火器71に電力供給するバッテリ9が含まれている。バッテリ9からの電力供給は、ユーザがハウジング2に設けられたボタン8を押下する操作を行うことで、配線を介してハウジング2側の電極と、注射器組立体10の駆動部7側の電極との間で行われることになる。なお、ハウジング2側の電極と注射器組立体10の駆動部7側の電極とは、注射器組立体10がハウジング2に取り付けられると、自動的に接触するように両電極の形状および位置が設計されている。またハウジング2は、バッテリ9に駆動部7に供給し得る電力が残っている限りにおいて、繰り返し使用することができるユニットである。なお、ハウジング2においては、バッテリ9の電力が無くなった場合には、バッテリ9のみを交換しハウジング2は引き続き使用してもよい。
 次に、注射器組立体10の詳細について説明する。まず、シリンジ部3及びプランジャ4を含むサブ組立体について説明すると、シリンジ部3は、その内部に前記液状医薬組成物を収容可能な空間である収容部32が形成されている。より詳しくは、図1に示すように、シリンジ部3の軸方向に延びる内壁面に沿ってプランジャ4が摺動自在に配置されており、シリンジ部3の内壁面とプランジャ4によって収容部32が画定されている。また、シリンジ部3は、収容部32と連通するノズル部31を有し、ノズル部31の先端側に射出口31aが形成されている。ノズル部31は、その流路断面積が収容部32側から射出口31a側に向かって徐々に減少しており、収容部32に充填されている前記液状医薬組成物を射出口31aに導くための流路である。図1に示す例では、プランジャ4の先端側の形状は、ノズル部31の形状と概ね一致している。
 次に、注射器本体6、ピストン5、及び駆動部7を含むサブ組立体について説明する。ピストン5は、例えば金属製であり、駆動部7の点火器71で生成される燃焼生成物(燃焼ガス)により加圧されて、注射器本体6の内部に形成されている貫通孔を摺動するように構成されている。注射器本体6は、概略円筒状の部材であり、その軸方向に延在する内壁面に沿ってピストン5が摺動自在に収容されている。なお、ピストン5は樹脂製でもよく、その場合、耐熱性や耐圧性が要求される部分には金属を併用してもよい。また、図1に示すように、ピストン5は、プランジャ4と一体に連結されている。
 次に、駆動部7について説明する。図1に示すように、駆動部7は、注射器本体6における貫通孔を基準として基端側に固定されている。駆動部7は、電気式点火器である点火器71を有している。点火器71は、注射器本体6における貫通孔の内部を臨むように配置されており、その内部には点火薬が収容されている。点火薬としては、上掲の通り種々の火薬を採用することができる。また、点火薬は、例えば、適宜の薄肉金属によって形成された火薬カップに収容することができる。
 次に、上記構成の注射器1の動作内容について説明する。図1に示すように、ハウジング2に対して注射器組立体10を装着した状態で、ノズル部31の射出口31aから前記液状医薬組成物を吸引する。これにより、前記液状医薬組成物を収容部32内に充填することができる。この状態から、例えば、注射器1における射出口31aを注入対象に当接させた状態で、ユーザがハウジング2に設けられたボタン8を押下する操作を行うと、これをトリガとして、バッテリ9から駆動部7の点火器71に作動電力が供給され、点火器71が作動する。点火器71が作動すると、点火薬が点火されることで燃焼し、燃焼生成物(火炎や燃焼ガスなど)が生成される。その結果、例えば点火器71の火薬カップが開裂し、点火薬の燃焼ガスが注射器本体6における貫通孔内に放出される。これにより、注射器本体6の貫通孔内の圧力が急激に高まり、注射器本体6の先端側に向けてピストン5が押圧される結果、注射器本体6における貫通孔の内壁面に沿って先端側に向かってピストン5が摺動する。上記の通り、ピストン5と一体にプランジャ4が連結されているため、ピストン5に連動してプランジャ4もシリンジ部3の内壁面に沿って摺動することとなる。すなわち、プランジャ4がシリンジ部3の先端側に位置するノズル部31に向かって押し込まれることで、前記液状医薬組成物が収容されている収容部32の容積が減少し、急激に加圧されることとなる。その結果、収容部32に充填されている前記液状医薬組成物がノズル部31に押し込まれ、射出口31aから高圧で射出される。これにより、前記液状医薬組成物を、注入対象に注入することができる。
 また、図1に示す注射器本体6内には、特に追加的な火薬成分は配置されていないが、ピストン5を介して前記液状医薬組成物にかける圧力推移を調整するために、点火器71での火薬燃焼によって生じる燃焼生成物によって燃焼しガスを発生させるガス発生剤等を、点火器71内や注射器本体6の貫通孔内に配置することもできる。点火器71内にガス発生剤を配置する構成は、国際公開公報01-031282号や特開2003-25950号公報等に開示されているように既に公知の技術である。また、ガス発生剤の一例としては、ニトロセルロース98質量%、ジフェニルアミン0.8質量%、硫酸カリウム1.2質量%を含むシングルベース無煙火薬が挙げられる。また、エアバッグ用ガス発生器やシートベルトプリテンショナ用ガス発生器に使用されている各種ガス発生剤を用いることも可能である。貫通孔内に配置されるときのガス発生剤の寸法や大きさ、形状、特に表面形状を調整することで、該ガス発生剤の燃焼完了時間を変化させることが可能であり、これにより、前記液状医薬組成物にかける圧力推移を所望の推移、すなわち注入対象に前記液状医薬組成物が適切に到達し得る推移とすることができる。本実施態様では、必要に応じて使用されるガス発生剤なども駆動部7に含まれるものとする。本実施形態においては、プランジャ4およびピストン5を含んで「加圧部」が構成される。
 本開示の他の実施態様は、
 注射針を介することなく液状医薬組成物を注入対象に注入する注入器であって、
 液状医薬組成物を収容した収容部と、
 前記収容部と連通するノズル部であって、前記液状医薬組成物を注入対象に向けて射出するための射出口を有するノズル部と、
 作動時に前記収容部に収容されている前記液状医薬組成物を加圧することで前記射出口から前記液状医薬組成物を前記注入対象に向けて射出する加圧部と、
 を備え、
 前記液状医薬組成物が、核酸と2価の陽イオンとを含み、前記2価の陽イオンの濃度が総量で0.0406 mM以上81.1 mMより小さい、
 注入器である。
 本実施態様における注入器は、前記態様に記載した、注射針を介することなく液状医薬組成物を注入対象に注入する注入器において、前記収容部に前記態様に係る液状医薬組成物が収容された、注入器である。本実施態様の説明は、前記態様の説明を援用する。
 本開示の他の実施態様は、
 核酸と2価の陽イオンとを含み、前記2価の陽イオンの濃度が総量で0.0406 mM以上81. 1 mMより小さい、液状医薬組成物を、注射針を介することなく液状医薬組成物を注入対象に注入する注入器によって、注入対象に注入する方法である。
 本実施態様に係る方法は、前記態様に記載した、注射針を介することなく液状医薬組成物を注入対象に注入する注入器によって、前記態様に係る液状医薬組成物を注入対象に注入する方法である。本実施態様の説明は、前記態様の説明を援用する。
 本実施態様に係る方法によって注入対象に液状医薬組成物が注入されると、前記態様に記載した通り、該注入対象において、該液状医薬組成物に含まれる前記核酸の生理活性が発揮される。
 そのため、本実施態様に係る方法は、
 核酸と2価の陽イオンとを含み、前記2価の陽イオンの濃度が総量で0.0406 mM以上81. 1 mMより小さい、液状医薬組成物を、注射針を介することなく液状医薬組成物を注入対象に注入する注入器によって、注入対象に注入する工程を含む、
 注入対象において核酸の生理活性を発揮させる方法であってよい。
 以下に実施例を記載するが、いずれの実施例も、限定的な意味として解釈される実施例ではない。
 以下の動物実験は、大阪大学医学部付属動物実験施設において行われ、大阪大学動物実験委員会により規定された大阪大学動物実験規定に従い実施した。
〔試験例1〕
 PBS-tablet(タカラバイオ社製)(PBS(-)である。)を注射用水(大塚製薬株式会社製)に溶解して2倍のPBSを調製し、フィルター滅菌をした。調製した2倍のPBSに、図2に示す最終濃度となるように硫酸マグネシウム(MgSO4・7H2O)(ナカライテスク社)を溶解し、フィルター滅菌をした。その後、GFP遺伝子を含むプラスミドDNAであるCMV-DASHER-GFP(ATUM社製)(溶媒:TE)(1.0 mg/mL)と1:1となるように混合して液状医薬組成物とした。すなわち、GFP遺伝子を含むプラスミドDNAの最終濃度は0.5 mg/mLとなるようにし、Mg2+の最終濃度(括弧内はMgSO4・7H2Oの最終濃度を示す。)が、0.00406 mM (0.001 mg/ml)、0.0406 mM (0.01 mg/ml)、0.406 mM (0.1 mg/ml)、4.06 mM (1 mg/ml)、40.6 mM (10 mg/ml)、又は203 mM (50 mg/ml)となるように液状医薬組成物を調製した。
 調製した液状医薬組成物を用いて、動的光散乱法(Dynamic Light Scattering, DLS)(マルバーン社、NANO-ZS)にて流体力学的径を測定した。平均力学径の測定は、1.0 mLの容量にて測定サンプルを調製し、プラスチック製のキュベットにて行った。測定結果は、散乱強度から算出したものを使用し、少なくとも5回の異なる測定を基に平均と標準偏差を求めた。
〔比較試験例1-1〕
 PBS-tablet(タカラバイオ社製)(PBS(-)である。)を注射用水(大塚製薬株式会社製)に溶解して2倍のPBSを調製し、フィルター滅菌をした。その後、GFP遺伝子を含むプラスミドDNAであるCMV-DASHER-GFP(ATUM社製)(溶媒:TE)(1.0 mg/mL)と1:1となるように混合して液状医薬組成物とした。すなわち、GFP遺伝子を含むプラスミドDNAの最終濃度は0.5 mg/mLとなるようにし、Mg2+の最終濃度が0である液状医薬組成物を調製した。それ以外は試験例1と同様にした。
 結果を図2に示す。比較試験例1-1では流体力学径が177 nmであったのに対し、試験例1ではMg2+濃度の増加とともに小さな流体力学径を示した。また、Mg2+濃度が1 mg/mL(Mg2+濃度が4.06 mM)以上においては、流体力学径は約100 nmとなった。これは、Mg2+濃度の増加とともに核酸の内部で電気的な架橋が進行し、分子内にて凝集が進行した結果であると考えられる。また、Mg2+濃度が1 mg/mL(Mg2+濃度が4.06 mM)以上の場合においては、核酸の電気的な架橋は十分に発生しており、流体力学径のさらなる低下に繋がらなかったものと考えられる。
〔比較試験例1-2〕
 硫酸マグネシウム(MgSO4・7H2O)の代わりに、図3に示す最終濃度となるように塩化リチウム(LiCl)(ナカライテスク社)を用いたこと以外は、試験例1と同様にした。すなわち、Li+の最終濃度(括弧内はLiClの最終濃度を示す。)が、23.59 mM (1 mg/ml)、又は235.9 mM (10 mg/ml)となるように液状医薬組成物を調製した。
〔比較試験例1-3〕
 PBS-tablet(タカラバイオ社製)(PBS(-)である。)を注射用水(大塚製薬株式会社製)に溶解して2倍のPBSを調製し、フィルター滅菌をした。その後、GFP遺伝子を含むプラスミドDNAであるCMV-DASHER-GFP(ATUM社製)(溶媒:TE)(1.0 mg/mL)と1:1となるように混合して液状医薬組成物とした。すなわち、GFP遺伝子を含むプラスミドDNAの最終濃度は0.5 mg/mLとなるようにし、Li+の最終濃度が0である液状医薬組成物を調製した。それ以外は試験例1と同様にした。当該比較試験例1-3は、実質的には比較試験例1-1と同一である。
 結果を図3に示す。比較試験例1-3では流体力学径が162 nmであったのに対し、比較試験例1-2では、Li+濃度が増加しても153 nmまでにしか変化しなかった。これは、2価の陽イオンであるMg2+とは異なり、1価の陽イオンであるLi+では核酸の電気的な架橋が発生せず、核酸が粒子化しなかったためと考えられる。
 以上の結果から、核酸溶液中にMg2+が存在する場合には、核酸に電気的な架橋が発生し、核酸が粒子化することが明らかとなった。
〔試験例2〕
(液状医薬組成物の調製)
 PBS-tablet(タカラバイオ社製)(PBS(-)である。)を注射用水(大塚製薬株式会社製)に溶解して2倍のPBSを調製し、フィルター滅菌をした。調製した2倍のPBSに、被験動物である11週齢雄balb/cマウス(日本クレア)に注入する際の濃度の2倍となるように塩化マグネシウム(MgCl2・6H2O、ナカライテスク社)を溶解し、フィルター滅菌をした。その後、GFP遺伝子を含むプラスミドDNAであるCMV-DASHER-GFP(ATUM社製)(溶媒:TE)(1.0 mg/mL)と1:1となるように混合して液状医薬組成物とした。すなわち、GFP遺伝子を含むプラスミドDNAの最終濃度は0.5 mg/mLとなるようにし、Mg2+の最終濃度(括弧内はMgCl2・6H2Oの最終濃度を示す。)が、0.492 mM (0.1 mg/ml)、4.92 mM (1 mg/ml)、又は49.2 mM (10 mg/ml)となるように液状医薬組成物を調製した。
(マウスへの注入)
 マウスに対してイソフルランによる吸引麻酔をした後、動物用バリカンを用いて背部の毛刈りをした。その後、該背部をアルコールにて消毒し、該背部の複数箇所に、下記注入器を用いて前記液状医薬組成物の注入を行った。一箇所あたり20 μLの前記液状医薬組成物を注入した。用いた注入器は、図1に記載された注入器(無針注射器)であり、直径0. 1 mmのノズル径の注入器である。該注入器の点火薬として25 mgのZPPを、ガス発生剤として40 mgのシングルベース無煙火薬(ニトロセルロース98質量%、ジフェニルアミン0.8質量%、硫酸カリウム1.2質量%を含む。)を使用した。
(遺伝子発現の評価)
 注入して1日後に、同マウスを安楽死させた。その後、顕微鏡観察ができる厚さの皮膚片を該背部から採取し、松浪ガラスボトムディッシュに貼付した後、蛍光顕微鏡BZ-X710(キーエンス社製)にて観察を行った。明視野像(露光時間:1/350 s)とGFPチャンネルの蛍光像(露光時間:1/20 s)を取得し、必要に応じて重ね合わせの画像(明視野像+蛍光像)を取得した。
〔比較試験例2〕
 PBS-tablet(タカラバイオ社製)(PBS(-)である。)を注射用水(大塚製薬株式会社製)に溶解して2倍のPBSを調製し、フィルター滅菌をした。その後、GFP遺伝子を含むプラスミドDNAであるCMV-DASHER-GFP(ATUM社製)(溶媒:TE)(1.0 mg/mL)と1:1となるように混合して液状医薬組成物とした。すなわち、GFP遺伝子を含むプラスミドDNAの最終濃度は0.5 mg/mLとなるようにし、Mg2+濃度が0である液状医薬組成物とした。それ以外は試験例2と同様にした。
 結果を図4に示す。比較試験例2と比較して、試験例2ではいずれのMg2+濃度においても、GFP由来の明らかに強い蛍光が観察された。
 本結果から、核酸溶液中にMg2+が存在する場合には、図1に記載された注入器(無針注射器)による遺伝子導入の効率を向上させ、高い遺伝子発現をもたらす事が確認された。
〔試験例3〕
 PBS-tablet(タカラバイオ社製)(PBS(-)である。)を注射用水(大塚製薬株式会社製)に溶解して2倍のPBSを調製し、フィルター滅菌をした。調製した2倍のPBSに、被験動物である11~13週齢雄balb/cマウス(日本クレア)に注入する際の濃度の2倍となるように硫酸マグネシウム(MgSO4・7H2O、ナカライテスク社)を溶解し、フィルター滅菌をした。その後、GFP遺伝子を含むプラスミドDNAであるCMV-DASHER-GFP(ATUM社製)(溶媒:TE)(1.0 mg/mL)と1:1となるように混合して液状医薬組成物とした。すなわち、GFP遺伝子を含むプラスミドDNAの最終濃度は0.5 mg/mLとなるようにし、Mg2+の最終濃度(括弧内はMgSO4・7H2Oの最終濃度を示す。)が、0.00406 mM (0.001 mg/ml)、0.0406 mM (0.01 mg/ml)、0.203 mM (0.05 mg/ml)、0.406 mM (0.1 mg/ml)、4.06 mM (1 mg/ml)、40.6 mM (10 mg/ml)、81.1 mM (20 mg/ml)、又は203 mM (50 mg/ml)となるように液状医薬組成物を調製した。
 マウスへの注入は、試験例2と同様にした。また、明視野像(露光時間:1/350 s)とGFPチャンネルの蛍光像(露光時間:1/20 s)を取得し、必要に応じて重ね合わせの画像を取得した後、遺伝子発現の解析として、前記蛍光像を、解析アプリケーション(ハイブリッドセルカウント)(キーエンス社製)を用いて解析した。解析は、輝度設定10、領域指定offの条件にて実施した。
〔比較試験例3〕
 注入器として30G針の有針注射器(ミサワ医科工業株式会社製デンドロニクス針30G)を用いたこと以外は、試験例3と同様に行った。
 尚、無処理の場合(前記液状医薬組成物の注入をしなかった場合)、注入器として図1に記載された注入器(無針注射器)を用い、かつ、前記液状医薬組成物として比較試験例2で調製したものと同一のもの(Mg2+濃度が0)を用いた場合、注入器として30G針の有針注射器(ミサワ医科工業株式会社製デンドロニクス針30G)を用い、かつ、前記液状医薬組成物として比較試験例2で調製したものと同一のもの(Mg2+濃度が0)を用いた場合についても行った。
 結果を表1に示す。尚、表中の「相対光度」は、試験例3と比較試験例3のそれぞれにおいて、前記液状医薬組成物として比較試験例2で調製したものと同一のもの(Mg2+濃度が0)を用いた場合の光度を1.00として換算した値である。
 試験例3の条件間を比較すると、例えば、Mg2+濃度が0.0406 mM以上81.1 mMより小さい場合の光度は、Mg2+濃度が0である場合の光度よりも大きいことが示唆された。
 また、Mg2+濃度が0.0406 mM~40.6 mMの範囲(MgSO4・7H2Oが0.01 mg/ml~10 mg/mlの範囲)において遺伝子発現は増大した。相対光度(遺伝子発現増大率ということがある。)の結果をみると、比較試験例3では最大で約1.6倍に留まった一方、試験例3では最大で約7.4倍であった。本結果から、核酸溶液中にMg2+が存在する場合の遺伝子発現増強効果は、図1に記載された注入器(無針注射器)を用いた場合においてより顕著な現象であることが明らかとなった。
 また、相対光度の結果をみると、試験例3では、Mg2+濃度が0.0406 mM~40.6 mMの範囲(MgSO4・7H2Oが0.01 mg/ml~10 mg/mlの範囲)において遺伝子発現増大率は1を超える数値であった。さらには、これらに対応する比較試験例3の遺伝子発現増大率との比較においても、試験例3ではより大きな値を示した。したがって、核酸溶液中にMg2+が存在する場合の遺伝子発現増強効果は、Mg2+濃度が0.0406 mM~40.6 mMの範囲(MgSO4・7H2Oが0.01 mg/ml~10 mg/mlの範囲)において特に得られる事が明らかとなった。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000001
〔試験例4〕
 被験動物として11-13週齢雄balb/cマウス(日本クレア)を用い、試験例3の液状医薬組成物のMg2+の最終濃度を0.406 mM (MgSO4・7H2O が0.1 mg/ml)とし、注入してから6時間後、1日後、2日後、3日後、5日後、7日後、又は14日後に同マウスを安楽死させて実験を進めたこと以外は、試験例3と同様にした。
〔比較試験例4-1〕
 前記液状医薬組成物として比較試験例2で調製したものと同一のもの(Mg2+濃度が0)を用いたこと以外は、試験例4と同様にした。
〔比較試験例4-2〕
 注入器として30G針の有針注射器(ミサワ医科工業株式会社製デンドロニクス針30G)を用いたこと以外は、試験例4と同様に行った。
〔比較試験例4-3〕
 注入器として30G針の有針注射器(ミサワ医科工業株式会社製デンドロニクス針30G)を用い、かつ、前記液状医薬組成物として比較試験例2で調製したものと同一のもの(Mg2+濃度が0)を用いたこと以外は、試験例4と同様にした。
 結果を表2と図5に示す。尚、表中の「相対光度(1)」は、比較試験例4-1の光度を基準として試験例4の光度を換算した値であり、「相対光度(2)」は、比較試験例4-3の光度を基準として比較試験例4-2の光度を換算した値である。
 試験例4の結果から、前記液状医薬組成物を注入した6時間後から14日後においては、いずれの場合の光度も、Mg2+濃度が0である場合(比較試験例4-1)の光度より大きかった。
 また、比較試験例4-2、比較試験例4-3では、前記液状医薬組成物を注入した6時間後から14日後のいずれにおいても非常に僅かなGFPの蛍光しか観察できず、弱い遺伝子発現であった。比較試験例4-1では、1日後において強い蛍光が観察され、3日後において僅かな蛍光となった。一方、試験例4では、1~5日後に強い蛍光が観察され、14日後に蛍光の観察が困難になった。これらの結果から、図1に記載された注入器(無針注射器)を用いた場合の遺伝子発現の期間は、核酸溶液中にMg2+が存在することにより大きく延長される事が明らかとなった。
 また、相対光度(1)及び相対光度(2)(遺伝子発現増大率ということがある。)の結果をみると、いずれの場合も、前記液状医薬組成物を注入した6時間後から14日後のいずれにおいても1を超える値となった。さらには、前記液状医薬組成物を注入した6時間後から14日後のいずれにおいても、相対光度(1)は相対光度(2)よりも大きな値を示した。このことから、前記液状医薬組成物を注入した6時間後から14日後のいずれにおいても、核酸溶液中にMg2+が存在する場合の遺伝子発現増強効果が確認された。特に、図1に記載された注入器(無針注射器)を用いた場合であって、核酸溶液中にMg2+が存在する場合には、前記液状医薬組成物を注入した2日後、3日後の遺伝子発現増大率は60を超える値となり、遺伝子発現が大きく向上する事が示された。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000002
〔試験例5〕
 PBS-tablet(タカラバイオ社製)(PBS(-)である。)を注射用水(大塚製薬株式会社製)に溶解して2倍のPBSを調製し、フィルター滅菌をした。調製した2倍のPBSに、被験動物である11週齢雄balb/cマウス(日本クレア)に注入する際の濃度の2倍となるように塩化マグネシウム(MgCl2・6H2O、ナカライテスク社)、硝酸マグネシウム(Mg(NO3)2・6H2O、ナカライテスク社)、又はアスパラギン酸マグネシウム(Angene International Limited社)を溶解し、フィルター滅菌をした。その後、GFP遺伝子を含むプラスミドDNAであるCMV-DASHER-GFP(ATUM社製)(溶媒:TE)(1.0 mg/mL)と1:1となるように混合して液状医薬組成物とした。すなわち、GFP遺伝子を含むプラスミドDNAの最終濃度は0.5 mg/mLとなるようにし、塩化マグネシウム(MgCl2・6H2O)についてはMg2+の最終濃度が4.92 mM(MgCl2・6H2Oの最終濃度が1 mg/ml)、硝酸マグネシウム(Mg(NO3)2・6H2O)についてはMg2+の最終濃度が3.90 mM(Mg(NO3)2・6H2Oの最終濃度が1 mg/ml)、アスパラギン酸マグネシウムについてはMg2+の最終濃度が3.47 mM(アスパラギン酸マグネシウムの最終濃度が1 mg/ml)となるように液状医薬組成物を調製した。
 マウスへの注入のほか、明視野像、蛍光像の取得、重ね合わせの画像の取得、遺伝子発現の解析は、試験例2と同様にした。
〔比較試験例5〕
 注入器として30G針の有針注射器(ミサワ医科工業株式会社製デンドロニクス針30G)を用いたこと以外は、試験例5と同様に行った。
 尚、注入器として図1に記載された注入器(無針注射器)を用い、かつ、前記液状医薬組成物として比較試験例2で調製したものと同一のもの(Mg2+濃度が0)を用いた場合、注入器として30G針の有針注射器(ミサワ医科工業株式会社製デンドロニクス針30G)を用い、かつ、前記液状医薬組成物として比較試験例2で調製したものと同一のもの(Mg2+濃度が0)を用いた場合についても行った。
 結果を表3と図6に示す。表中の「相対光度」は、試験例5と比較試験例5のそれぞれにおいて、前記液状医薬組成物として比較試験例2で調製したものと同一のもの(Mg2+濃度が0)を用いた場合の光度を1.00として換算した値である。
 試験例5の結果から、いずれのマグネシウム塩を用いた場合の光度も、Mg2+濃度が0である場合の光度より大きかった。
 また、いずれのマグネシウム塩を用いた場合も、Mg2+濃度が0である場合に比べて、遺伝子発現が増大した。相対光度(遺伝子発現増大率ということがある。)の結果をみると、試験例5では、いずれのマグネシウム塩を用いた場合も1を超える値となった。さらには、これらに対応する比較試験例5の遺伝子発現増大率との比較においても、試験例5では大きな値を示した。したがって、核酸溶液中にMg2+が存在する場合の遺伝子発現増強効果は、マグネシウム塩の種類によらず得られる事が明らかとなった。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000003
〔試験例6〕
 PBS-tablet(タカラバイオ社製)(PBS(-)である。)を注射用水(大塚製薬株式会社製)に溶解して2倍のPBSを調製し、フィルター滅菌をした。調製した2倍のPBSに、被験動物である11週齢雄balb/cマウス(日本クレア)に注入する際の濃度の2倍となるように塩化カルシウム(CaCl2・2H2O、ナカライテスク社)、硫酸マンガン(II)(MnSO4・5H2O、ナカライテスク社)、又は塩化リチウム(LiCl、ナカライテスク社)を溶解し、フィルター滅菌をした。その後、GFP遺伝子を含むプラスミドDNAであるCMV-DASHER-GFP(ATUM社製)(溶媒:TE)(1.0 mg/mL)と1:1となるように混合して液状医薬組成物とした。すなわち、GFP遺伝子を含むプラスミドDNAの最終濃度は0.5 mg/mLとなるようにし、塩化カルシウム(CaCl2・2H2O)についてはCa2+の最終濃度が6.8 mM(CaCl2・2H2Oの最終濃度が1 mg/ml)、硫酸マンガン(II)(MnSO4・5H2O)についてはMn2+の最終濃度が4.15 mM(MnSO4・5H2Oの最終濃度が1 mg/ml)、塩化リチウム(LiCl)についてはLi+の最終濃度が23.5 mM(LiClの最終濃度が1 mg/ml)となるように液状医薬組成物を調製した。
 マウスへの注入のほか、明視野像、蛍光像の取得、重ね合わせの画像の取得、遺伝子発現の解析は、試験例2と同様にした。
〔比較試験例6〕
 注入器として30G針の有針注射器(ミサワ医科工業株式会社製デンドロニクス針30G)を用いたこと以外は、試験例6と同様に行った。
 尚、注入器として図1に記載された注入器(無針注射器)を用い、かつ、前記液状医薬組成物として比較試験例2で調製したものと同一のもの(Ca2+濃度、Mn2+濃度、Li+濃度のいずれもが0)を用いた場合、注入器として30G針の有針注射器(ミサワ医科工業株式会社製デンドロニクス針30G)を用い、かつ、前記液状医薬組成物として比較試験例2で調製したものと同一のもの(Ca2+濃度、Mn2+濃度、Li+濃度のいずれもが0)を用いた場合についても行った。
 結果を表4と図7に示す。表中の「相対光度」は、試験例6と比較試験例6のそれぞれにおいて、前記液状医薬組成物として比較試験例2で調製したものと同一のもの(Ca2+濃度、Mn2+濃度、Li+濃度のいずれもが0)を用いた場合の光度を1.00として換算した値である。
 試験例6の条件間を比較すると、塩化カルシウム、硫酸マンガン(II)を用いた場合の光度は、いずれの濃度も0である場合の光度より大きかった。
 また、相対光度(遺伝子発現増大率ということがある。)の結果をみると、試験例6では、塩化カルシウム、硫酸マンガン(II)を用いた場合は1を超える値となった。さらには、これらに対応する比較試験例6の遺伝子発現増大率との比較においても、試験例6では大きな値を示した。したがって、核酸溶液中に2価の陽イオンが存在する場合には、遺伝子発現増強効果が得られた一方で、核酸溶液中に1価のLi+が存在する場合には、遺伝子発現増大率は1を下回る結果となり、遺伝子発現増強効果が得られなかった。これらの結果はDLSの結果(試験例1、比較試験例1-1、比較試験例1-2、比較試験例1-3)とよく一致するものであった。この事から、図1に記載された注入器(無針注射器)を用いた場合における遺伝子発現増強効果は、核酸溶液中に2価の陽イオンが存在する場合に特有の現象であり、核酸の粒子化によるものであることが支持された。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000004
〔試験例7〕
 核酸溶液中にMg2+が存在する場合の核酸の粒子化をAFMにより直接的に観察した。AFMによる測定は、日立ハイテク社製のAFM5000/AFM5300Eを用いて実施した。また、カンチレバーには、生体試料用のSI-DF20S(オリンパス社製)を使用した。
 PBS-tablet(タカラバイオ社製)(PBS(-)である。)を注射用水(大塚製薬株式会社製)に溶解して2倍のPBSを調製し、フィルター滅菌をした。調製した2倍のPBSに、図8に示す最終濃度となるように硫酸マグネシウム(MgSO4・7H2O)(ナカライテスク社)を溶解し、フィルター滅菌をした。その後、GFP遺伝子を含むプラスミドDNAであるCMV-DASHER-GFP(ATUM社製)(溶媒:TE)(1.0 mg/mL)と1:1となるように混合して液状医薬組成物とした。すなわち、GFP遺伝子を含むプラスミドDNAの最終濃度は0.5 mg/mLとなるようにし、Mg2+の最終濃度(括弧内はMgSO4・7H2Oの最終濃度を示す。)が、2.03 mM (0.5 mg/ml)、又は40.6 mM (10 mg/ml)となるように液状医薬組成物を調製した。これを新鮮なマイカ表面に滴下し、所定の時間、吸着させた後、エアブローにて乾燥させたものを使用した。
〔比較試験例7〕
 PBS-tablet(タカラバイオ社製)(PBS(-)である。)を注射用水(大塚製薬株式会社製)に溶解して2倍のPBSを調製し、フィルター滅菌をした。その後、GFP遺伝子を含むプラスミドDNAであるCMV-DASHER-GFP(ATUM社製)(溶媒:TE)(1.0 mg/mL)と1:1となるように混合して液状医薬組成物とした。すなわち、GFP遺伝子を含むプラスミドDNAの最終濃度は0.5 mg/mLとなるようにし、Mg2+の最終濃度が0である液状医薬組成物を調製した。それ以外は試験例7と同様にした。
 結果を図8に示す。
 比較試験例7では200 nm前後の円状の構造が確認された。一方、試験例7では100 nm前後の粒子が観察された。これらの結果はDLSの結果(試験例1、比較試験例1-1、比較試験例1-2、比較試験例1-3)とよく一致するものであり、核酸溶液中にMg2+が存在する場合には、核酸は確かに粒子化する事が確認された。本結果から、核酸溶液中にMg2+が存在する場合であって、図1に記載された注入器(無針注射器)を用いた場合における遺伝子発現増強効果は、核酸の粒子化によるものである事が支持された。
〔試験例8〕
 試験例2において、図1に記載された注入器(無針注射器)の代わりにバネ式の無針注射器(BEAUTTO社、ヒアルロン酸シリンジ、Amazon Standard Identification Number (ASIN): B08NCHTRHZ)を用い、塩化マグネシウム(MgCl2・6H2O)の代わりに硫酸マグネシウム(MgSO4・7H2O、ナカライテスク社)を用いて、GFP遺伝子を含むプラスミドDNAの最終濃度は0.5 mg/mLとなるようにし、Mg2+の最終濃度(括弧内はMgSO4・7H2Oの最終濃度を示す。)が、2.03 mM (0.5 mg/ml)、又は40.6 mM (10 mg/ml)となるように液状医薬組成物を調製した。
 マウスへの注入のほか、明視野像、蛍光像の取得、重ね合わせの画像の取得、遺伝子発現の解析は、試験例2と同様にした。
〔比較試験例8〕
 注入器として30G針の有針注射器(ミサワ医科工業株式会社製デンドロニクス針30G)を用いたこと以外は、試験例8と同様に行った。
 尚、注入器として前記バネ式の無針注射器を用い、かつ、前記液状医薬組成物として比較試験例2で調製したものと同一のもの(Mg2+濃度が0)を用いた場合、注入器として30G針の有針注射器(ミサワ医科工業株式会社製デンドロニクス針30G)を用い、かつ、前記液状医薬組成物として比較試験例2で調製したものと同一のもの(Mg2+濃度が0)を用いた場合についても行った。
 結果を表5と図9に示す。表中の「相対光度」は、試験例8と比較試験例8のそれぞれにおいて、前記液状医薬組成物として比較試験例2で調製したものと同一のもの(Mg2+濃度が0)を用いた場合の光度を1.00として換算した値である。
 試験例8の結果から、核酸溶液中にMg2+が存在する場合の光度はいずれも、Mg2+濃度が0である場合の光度より大きかった。
 また、試験例8では、バネ式の無針注射器の射出条件として最適な条件を検討したわけではないことからいずれも低い遺伝子発現に留まったが、相対光度(遺伝子発現増大率ということがある。)の結果をみると、核酸溶液中にMg2+が存在する場合はいずれも1を超える値となった。さらには、これらに対応する比較試験例8の遺伝子発現増大率との比較においても、試験例8では大きな値を示した。したがって、核酸溶液中にMg2+が存在する場合の遺伝子発現増強効果は、点火薬の燃焼エネルギーを射出エネルギーとして利用した注入器に限定されず、バネ式の無針注射器でも得られることが示された。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000005
〔試験例9〕
 PBS-tablet(タカラバイオ社製)(PBS(-)である。)を注射用水(大塚製薬株式会社製)に溶解して2倍のPBSを調製し、フィルター滅菌をした。調製した2倍のPBSに、被験動物である11週齢雄balb/cマウス(日本クレア)に注入する際の濃度の2倍となるように硫酸マグネシウム(MgSO4・7H2O、ナカライテスク社)を溶解し、フィルター滅菌をした。その後、レポータータンパク質としてのGFPをコードしたmRNA(unmodified)(OZ社製、フナコシCat#. MRNA15-100)(溶媒:TE)(0.2 mg/mL)と1:1となるように混合して液状医薬組成物とした。すなわち、GFPをコードしたmRNAの最終濃度は0.1 mg/mL(1回の注入あたり2.0 μg)となるようにし、Mg2+の最終濃度(括弧内はMgSO4・7H2Oの最終濃度を示す。)が、2.03 mM (0.5 mg/ml)、4.06 mM (1 mg/ml)、又は40.6 mM (10 mg/ml)となるように液状医薬組成物を調製した。
 マウスへの注入のほか、明視野像、蛍光像の取得、重ね合わせの画像の取得、遺伝子発現の解析は、試験例2と同様にした。
〔比較試験例9〕
 注入器として30G針の有針注射器(ミサワ医科工業株式会社製デンドロニクス針30G)を用いたこと以外は、試験例9と同様に行った。
 尚、注入器として図1に記載された注入器(無針注射器)を用い、かつ、前記液状医薬組成物として比較試験例2で調製したものと同一のもの(Mg2+濃度が0)を用いた場合、注入器として30G針の有針注射器(ミサワ医科工業株式会社製デンドロニクス針30G)を用い、かつ、前記液状医薬組成物として比較試験例2で調製したものと同一のもの(Mg2+濃度が0)を用いた場合についても行った。
 結果を表6と図10に示す。尚、表中の「相対光度」は、試験例9と比較試験例9のそれぞれにおいて、前記液状医薬組成物として比較試験例2で調製したものと同一のもの(Mg2+濃度が0)を用いた場合の光度を1.00として換算した値である。
 試験例9の条件間を比較すると、核酸溶液中にMg2+が存在する場合の光度はいずれも、Mg2+濃度が0である場合の光度より大きかった。
 また、試験例9では、核酸溶液中にMg2+が存在する場合のいずれにおいても、強いGFPの蛍光が観察された。また、相対光度(遺伝子発現増大率ということがある。)の結果をみると、試験例9では、核酸溶液中にMg2+が存在する場合はいずれも1を超える値となった。さらには、これらに対応する比較試験例9の遺伝子発現増大率との比較においても、試験例9では大きな値を示した。本結果から、核酸溶液中にMg2+が存在する場合であって、図1に記載された注入器(無針注射器)を用いた場合における遺伝子発現増強効果は、mRNAを含めた広義の核酸において得られることが示された。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000006
〔試験例10〕
 被験動物として11-13週齢雄balb/cマウス(日本クレア)を用い、試験例9の液状医薬組成物のMg2+の最終濃度を2.03 mM (MgSO4・7H2O が0.5 mg/ml)とし、注入してから6時間後、1日後、2日後、3日後、5日後、7日後、又は14日後に同マウスを安楽死させて実験を進めたこと以外は、試験例9と同様にした。
〔比較試験例10-1〕
 前記液状医薬組成物として比較試験例2で調製したものと同一のもの(Mg2+濃度が0)を用いたこと以外は、試験例10と同様にした。
〔比較試験例10-2〕
 注入器として30G針の有針注射器(ミサワ医科工業株式会社製デンドロニクス針30G)を用いたこと以外は、試験例10と同様に行った。
〔比較試験例10-3〕
 注入器として30G針の有針注射器(ミサワ医科工業株式会社製デンドロニクス針30G)を用い、かつ、前記液状医薬組成物として比較試験例2で調製したものと同一のもの(Mg2+濃度が0)を用いたこと以外は、試験例10と同様にした。
 結果を表7と図11に示す。尚、表中の「相対光度(1)」は、比較試験例10-1の光度を基準として試験例10の光度を換算した値であり、「相対光度(2)」は、比較試験例10-3の光度を基準として比較試験例10-2の光度を換算した値である。
 試験例10の結果から、前記液状医薬組成物を注入した6時間後から14日後のいずれの場合の光度も、Mg2+濃度が0である場合(比較試験例10-1)の光度よりも大きかった。
 また、比較試験例10-1では6時間後から強い蛍光が観察され、7日後において僅かな蛍光となった。一方で、試験例10では6時間後から7日後に強い蛍光が観察され、14日後に弱い蛍光となった。
 また、相対光度(1)(遺伝子発現増大率ということがある。)の結果をみると、いずれの場合も、前記液状医薬組成物を注入した6時間後から14日後のいずれにおいても1を超える値となった。さらには、前記液状医薬組成物を注入した6時間後から14日後のいずれにおいても、相対光度(1)は相対光度(2)よりも大きな値を示した。このことから、図1に記載された注入器(無針注射器)を用いて前記液状医薬組成物を注入した6時間後から14日において、核酸としてmRNAを用いた場合であっても、核酸溶液中にMg2+が存在する場合の遺伝子発現増強効果が確認された。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000007
〔試験例11〕
(液状医薬組成物の調製)
 PBS-tablet(タカラバイオ社製)(PBS(-)である。)を注射用水(大塚製薬株式会社製)に溶解して2倍のPBSを調製し、フィルター滅菌をした。調製した2倍のPBSに、被験動物である11週齢雄C57BL6マウス(日本クレア)に注入する際の濃度の2倍となるように硫酸マグネシウム(MgSO4・7H2O、ナカライテスク社)を溶解し、フィルター滅菌をした。その後、オボアルブミン(Ovalbumin, OVA)をコードしたmRNA(OZ社製、フナコシCat#. MRNA42-100)(溶媒:TE)(0.2 mg/mL)と1:1となるように混合して液状医薬組成物とした。すなわち、OVAをコードしたmRNAの最終濃度は0.1 mg/mL(1回の注入あたり2.0 μg)となるようにし、Mg2+の最終濃度(括弧内はMgSO4・7H2Oの最終濃度を示す。)が、2.03 mM (0.5 mg/ml)となるように液状医薬組成物を調製した。
(マウスへの注入)
 11週齢雄C57BL6マウスに対してイソフルランによる吸引麻酔をした後、動物用バリカンを用いて背部の毛刈りをした。その後、該背部をアルコールにて消毒し、該背部の2箇所に、下記注入器を用いて前記液状医薬組成物の注入を行った。一箇所あたり20 μLの前記液状医薬組成物を注入した。用いた注入器は、図1に記載された注入器(無針注射器)であり、直径0.1 mmのノズル径の注入器である。該注入器の点火薬として25 mgのZPPを、ガス発生剤として40 mgのシングルベース無煙火薬(ニトロセルロース98質量%、ジフェニルアミン0.8質量%、硫酸カリウム1.2質量%を含む。)を使用した。
(ELISpotアッセイ)
 前記液状医薬組成物の注入から9日目にマウスを安楽死させ、脾臓を摘出した。摘出した脾臓に、ELISpot kit(Mouse IFN-γ Single-Color ELISPOT(CTL社製))に付属のメディウムを添加した後、セルストレーナーを用いて細胞懸濁液とした。その後、VersaLyse溶血試薬(ベックマン・コールター社)を用いて溶血と洗浄を行い、脾臓の細胞分散液を得た。細胞のカウントは、ディスポ細胞計算盤(C-Chip、Digital Bio社)を用いて実施した。
 OVAのMHCクラスI分子のエピトープペプチド(アミノ酸配列:SIINFEKL(配列番号1)、ピーエイチジャパン社に合成を委託)に反応してINF-γを産生する細胞をELISpotアッセイ(Mouse IFN-γ Single-Color ELISPOT(CTL社製))にて検出した。具体的には、検出抗体がプレコートされたプレートに、100 μLの細胞分散液を所定の細胞数(5×105個)となるように播種し、続いてキットに付属のメディウムを用いて1穴あたりの全量を200 μLにした。抗原による刺激をする場合は、抗原として40 μg/mLの前記ペプチド(アミノ酸配列:SIINFEKL(配列番号1))を含むメディウムを用いて1穴あたりの全量を200 μLにした。その後、細胞を1晩培養し、プレートの呈色を行った。プレートの呈色は、キットに記載のプロトコールに従って実施した。
〔比較試験例11-1〕
 PBS-tablet(タカラバイオ社製)(PBS(-)である。)を注射用水(大塚製薬株式会社製)に溶解して2倍のPBSを調製し、フィルター滅菌をした。調製した2倍のPBSに、被験動物である11週齢雄C57BL6マウス(日本クレア)に注入する際の濃度の2倍となるように硫酸マグネシウム(MgSO4・7H2O、ナカライテスク社)を溶解し、フィルター滅菌をした。その後、オボアルブミン(Ovalbumin, OVA)をコードしたmRNA(OZ社製、フナコシCat#. MRNA42-100)(溶媒:TE)(0.2 mg/mL)と1:1となるように混合して液状医薬組成物とした。すなわち、OVAをコードしたmRNAの最終濃度は0.1 mg/mL(1回の注入あたり2.0 μg)となるようにし、Mg2+濃度が0である液状医薬組成物とした。それ以外は試験例11と同様にした。換言すれば、OVAをコードしたmRNAを含み、Mg2+濃度が0である液状医薬組成物を図1に記載された注入器(無針注射器)で注入した比較試験例である。
〔比較試験例11-2〕
 注入器として30G針の有針注射器(ミサワ医科工業株式会社製デンドロニクス針30G)を用いたこと以外は、比較試験例11-1と同様に行った。換言すれば、OVAをコードしたmRNAを含み、Mg2+濃度が0である液状医薬組成物を有針注射器で注入した比較試験例である。
〔比較試験例11-3〕
 液状医薬組成物として1倍のPBSを用いた。それ以外は試験例11と同様にした。換言すれば、1倍のPBSである液状医薬組成物を図1に記載された注入器(無針注射器)で注入した比較試験例である。
〔比較試験例11-4〕
 無処理の場合(前記液状医薬組成物の注入をしなかった場合)についても準備した。
〔比較試験例11-5〕
 注入器として30G針の有針注射器(ミサワ医科工業株式会社製デンドロニクス針30G)を用いたこと以外は、試験例11と同様に行った。換言すれば、OVAをコードしたmRNAを含み、Mg2+の最終濃度(括弧内はMgSO4・7H2Oの最終濃度を示す。)が2.03 mM (0.5 mg/ml)である液状医薬組成物を有針注射器で注入した比較試験例である。
 結果を図12に示す。
 まず、図12中の(A)から分かるように、比較試験例11-2、比較試験例11-3、比較試験例11-4ではspotを形成せず、細胞性免疫の誘導に至らなかった。一方、比較試験例11-1では多くのspotを形成し、細胞性免疫が誘導された。
 次に、図12中の(B)から分かるように、比較試験例11-1に比べて試験例11では明らかに多くのSpotを形成し、細胞性免疫の誘導が向上した。すなわち、図1に記載された注入器(無針注射器)を用いて同じように注入した場合であっても、核酸溶液中にMg2+が存在することで、マウス個体(生体)内でのタンパク質の発現量が増大し、細胞性免疫が増強したものと推測される。一方で、図12中の(C)から分かるように、有針注射の場合には、核酸溶液中にMg2+が存在してもspot数の増加は確認されなかった。
 本結果から、図1に記載された注入器(無針注射器)を用いた場合に核酸ワクチンの効果が得られる事が明らかとなった。また、核酸溶液中にMg2+が存在することで細胞性免疫の誘導が向上し、核酸ワクチンの効果が向上する事が明らかとなった。
 1・・・・注射器、2・・・・ハウジング、3・・・・シリンジ部、4・・・・プランジャ、5・・・・ピストン、6・・・・注射器本体、7・・・・駆動部、8・・・・ボタン、9・・・・バッテリ、10・・・・注射器組立体、31・・・・ノズル部、31a・・・射出口、32・・・・収容部、71・・・・点火器
 

Claims (8)

  1.  液状医薬組成物であって、
     核酸と2価の陽イオンとを含み、
     前記2価の陽イオンの濃度が総量で0.0406 mM以上81.1 mMより小さく、
     注射針を介することなく液状医薬組成物を注入対象に注入する注入器によって注入対象に注入される、
     液状医薬組成物。
  2.  前記2価の陽イオンが、Mg2+、Ca2+、Mn2+、及びZn2+からなる群から選択される一又は複数である、請求項1に記載の液状医薬組成物。
  3.  前記注射針を介することなく液状医薬組成物を注入対象に注入する注入器によって注入対象に注入されることが、注入対象にジェット注射によって注入されることである、請求項1又は2に記載の液状医薬組成物。
  4.  細胞性免疫誘導用である、請求項1又は2に記載の液状医薬組成物。
  5.  注射針を介することなく液状医薬組成物を注入対象に注入する注入器であって、
     液状医薬組成物を収容した収容部と、
     前記収容部と連通するノズル部であって、前記液状医薬組成物を注入対象に向けて射出するための射出口を有するノズル部と、
     作動時に前記収容部に収容されている前記液状医薬組成物を加圧することで前記射出口から前記液状医薬組成物を前記注入対象に向けて射出する加圧部と、
     を備え、
     前記液状医薬組成物が、核酸と2価の陽イオンとを含み、前記2価の陽イオンの濃度が総量で0.0406 mM以上81.1 mMより小さい、
     注入器。
  6.  前記2価の陽イオンが、Mg2+、Ca2+、Mn2+、及びZn2+からなる群から選択される一又は複数である、請求項5に記載の注入器。
  7.  核酸と2価の陽イオンとを含み、前記2価の陽イオンの濃度が総量で0.0406 mM以上81. 1 mMより小さい、液状医薬組成物を、注射針を介することなく液状医薬組成物を注入対象に注入する注入器によって、注入対象に注入する方法。
  8.  前記2価の陽イオンが、Mg2+、Ca2+、Mn2+、及びZn2+からなる群から選択される一又は複数である、請求項7に記載の方法。
     
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