WO2023106320A1 - 5-クロロ-4-(3-クロロ-4-メチルフェニル)-1h-イミダゾール-2-カルボニトリルの水和物結晶 - Google Patents

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Abstract

本発明は、5-クロロ-4-(3-クロロ-4-メチルフェニル)-1H-イミダゾール-2-カルボニトリルの水和物結晶に関する。

Description

5-クロロ-4-(3-クロロ-4-メチルフェニル)-1H-イミダゾール-2-カルボニトリルの水和物結晶 関連出願の参照
 本特許出願は、2021年12月8日に出願された日本国特許出願2021-199461号に基づく優先権の主張を伴うものであり、かかる先の特許出願における全開示内容は、引用することにより本明細書の一部とされる。
 本発明は、5-クロロ-4-(3-クロロ-4-メチルフェニル)-1H-イミダゾール-2-カルボニトリルの水和物結晶に関する。
 5-クロロ-4-(3-クロロ-4-メチルフェニル)-1H-イミダゾール-2-カルボニトリルは、特許文献1に開示されている。当該文献は、イミダゾール系化合物およびそれらを含有する有害生物防除剤に関する技術である。目的とするイミダゾール系化合物合成のための中間体の例として、5-クロロ-4-(3-クロロ-4-メチルフェニル)-1H-イミダゾール-2-カルボニトリルが第1表の中間体No.89に記載されている。
 ところで、マラセチア属菌はヒトや動物の皮膚に常在する担子菌系の酵母である。マラセチア属菌は脂質を栄養源として増殖することから、皮脂の多い部分に定着し、癜風、脂漏性皮膚炎、毛包炎、アトピー性皮膚炎や尋常性乾癬等の皮膚疾患の原因となることが知られている。
 従来のマラセチア属菌由来の皮膚疾患に対する治療剤としては、二硫化セレン、2-メルカプトピリジンN-オキシド亜鉛、ピロクトンオラミン、ミコナゾール硝酸塩やケトコナゾール等のイミダゾール系化合物、イトラコナゾールやフルコナゾール等のトリアゾール系化合物が挙げられる。
 通常、皮膚常在菌は、皮膚の雑菌の繁殖に伴う頭皮臭を防止する効果や、皮脂の適度な分解により弱酸性状態を保つ効果など、いわゆるバリア効果を持っている。従来の治療剤は、病原菌だけでなく、皮膚常在菌まで殺菌するため、皮膚のバリア効果が破壊される懸念がある。また、二硫化セレンは、経口毒性や脱毛、肌のかぶれ、衰弱、倦怠感、毛髪の変色等の副作用が指摘されており、2-メルカプトピリジンN-オキシド亜鉛は、硫黄臭や環境ホルモンの懸念が指摘されている。さらに、ミコナゾール硝酸塩等のイミダゾール系化合物やイトラコナゾール等のトリアゾール系化合物は、菌類の脂質合成を阻害する作用を有する。しかしながら、これらの化合物は、菌の細胞膜の生合成を阻害することによって抗菌活性が発現するという性質上、十分な効果が発現するまで時間を要し、長期間投与する必要がある。長期にわたって同じ薬剤を連続して投与すれば、耐性菌の発生リスクが格段に上がることが知られている。
 上記のように、脂質合成阻害剤は、薬剤を投与しても、即効的に抗菌活性が発現するわけではない。したがって、抗菌活性発現に即効性が求められるような投与方法、例えば、医療用シャンプーによる皮膚疾患の予防または治療には適していない。そこで、安全性が高く、従来の治療剤とは異なる作用機構を有し、かつ抗菌活性が即効的に発揮される化合物、治療剤の開発が求められていた。
特開平1-131163号公報
 本開示者らは、5-クロロ-4-(3-クロロ-4-メチルフェニル)-1H-イミダゾール-2-カルボニトリルを新規な非ヒト動物用抗菌剤やヒト用抗真菌剤として使用しうることを見出した。
 しかしながら、本開示者らのさらなる検討の結果、5-クロロ-4-(3-クロロ-4-メチルフェニル)-1H-イミダゾール-2-カルボニトリルは常温で容易に吸湿してしまう場合があることも判明した。通常、吸湿性物質は、吸湿しないよう取り扱いに細心の注意が払われる。吸湿性物質が医薬品原薬であれば、例えば保存容器、保存場所、有効期限、試験用標準品の小分包装など、取り扱いに制約を受ける。従って、温度や湿度変化に対しての安定性が高いことが求められる。
 さらに、本開示者らの検討の結果、5-クロロ-4-(3-クロロ-4-メチルフェニル)-1H-イミダゾール-2-カルボニトリルは、帯電性が強く、配管などの生産設備や実験装置、包装資材などへの付着が激しい場合があることも判明した。従って、配管などの生産設備や包装資材への付着などによる収率の低下、混合均一性の悪化、秤量誤差の原因となるなど、プロセスや品質等の面に懸念がある。
 本開示者らは、今般、さらなる検討の結果、5-クロロ-4-(3-クロロ-4-メチルフェニル)-1H-イミダゾール-2-カルボニトリルを水和物結晶とすることにより、マラセチア属菌をはじめとする真菌に対して優れた抗菌活性を即効的に発揮する上で有利に利用できることを見出した。また、本開示者らは、上記水和物結晶は、スタフィロコッカス属菌をはじめとする細菌に対しても優れた抗菌活性を即効的に発揮する上で有利に利用できることを見出した。また、本開示者らは、上記水和物結晶は、環境中の温度や湿度の影響を受けづらく、安定性に優れることを見出した。さらに、本開示者らは、5-クロロ-4-(3-クロロ-4-メチルフェニル)-1H-イミダゾール-2-カルボニトリルを水和物結晶とすることにより、摩擦帯電性を下げることができ、設備等への付着などの帯電に起因する、プロセスや品質等の面の懸念を緩和できることも見出した。本開示はかかる知見に基づくものである。
 したがって、本開示の一つの実施態様によれば、5-クロロ-4-(3-クロロ-4-メチルフェニル)-1H-イミダゾール-2-カルボニトリルの水和物結晶を提供する。
 本開示の5-クロロ-4-(3-クロロ-4-メチルフェニル)-1H-イミダゾール-2-カルボニトリルの水和物結晶(以下、単に「水和物結晶」ともいう)は、無水物結晶と同様にマラセチア属菌等の真菌やスタフィロコッカス属菌等の細菌に対して殺菌または増殖を抑制する効果を奏することが可能である。すなわち、本開示の水和物結晶は、真菌や細菌に由来する皮膚疾患、例えば、癜風、毛包炎、脂漏性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、尋常性乾癬等の予防、改善または治療への使用を期待できる。また、本開示の水和物結晶は、高湿度環境でも乾燥環境でも水分量がほとんど変化せずに安定していることから、安定的に製剤を製造する上で有利である。さらに、本開示の水和物結晶は、摩擦帯電性が低く、帯電量の減衰速度も速いため、設備等への付着などの帯電に起因する、プロセスや品質等の面の懸念を緩和できることから、効率的に製剤を製造する上で有利に利用することができる。
製造例1で得られた5-クロロ-4-(3-クロロ-4-メチルフェニル)-1H-イミダゾール-2-カルボニトリルの水和物結晶の粉末X線回折(XRD)パターンを示す。 製造例2で得られた5-クロロ-4-(3-クロロ-4-メチルフェニル)-1H-イミダゾール-2-カルボニトリルの水和物結晶の粉末X線回折パターンを示す。 原料として用いた5-クロロ-4-(3-クロロ-4-メチルフェニル)-1H-イミダゾール-2-カルボニトリルの無水物結晶の粉末X線回折パターンを示す。 水添加した無水和物結晶と、無水和物結晶、水和物結晶(製造例1、製造例2)に関するXRDチャートの比較図である。 無水和物結晶の熱重量示差熱分析(TG-DTA)チャートである。 水添加した無水和物結晶の熱重量示差熱分析(TG-DTA)チャートである。 水和物結晶(製造例1)のTG-DTAチャートである。 水和物結晶(製造例2)のTG-DTAチャートである。 走査型電子顕微鏡による無水和物結晶、水和物結晶(製造例1)および水和物結晶(製造例2)の倍率500倍の写真である。 走査型電子顕微鏡による無水和物結晶、水和物結晶(製造例1)および水和物結晶(製造例2)の倍率100倍の写真である。 無水和物結晶の赤外吸収スペクトルである。 水和物結晶(製造例2)の赤外吸収スペクトルである。 無水和物結晶-1、無水和物結晶-2、水和物結晶(製造例1)、水和物結晶(製造例2)のラマン分光スペクトルの比較図である。
発明の具体的説明
 以下、本発明を実施する好ましい形態の例について説明する。ただし、下記の実施形態は本発明を説明するための例示であり、本発明は下記の実施形態に何ら限定されるものではない。
 本開示の水和物結晶は、実質的に5-クロロ-4-(3-クロロ-4-メチルフェニル)-1H-イミダゾール-2-カルボニトリルの水和物結晶からなる。本開示の水和物結晶は、一水和物結晶であることが好ましい。5-クロロ-4-(3-クロロ-4-メチルフェニル)-1H-イミダゾール-2-カルボニトリルは、特許文献1の第1表の中間体No.89に記載されている化合物である。
 本開示において、「水和物結晶」とは、水和物結晶の結晶多形も包含するものとする。また、「実質的に水和物結晶からなる」とは、水和物結晶中の水和物結晶以外の残留物の含量が20%(質量基準)未満であることを意味する。水和物結晶中の上記残留物の含量は、好ましくは10%(質量基準)以下、より好ましくは5%(質量基準)以下、さらに好ましくは1%(質量基準)以下、さらにより好ましくは0.5%(質量基準)以下である。
 残留物としては、製造原料、水和物結晶以外の結晶多形、付着水またはそれらの混合物等が挙げられる。残留物の具体例の一つとしては、5-クロロ-4-(3-クロロ-4-メチルフェニル)-1H-イミダゾール-2-カルボニトリルの無水物結晶が挙げられる。
(粉末X線回折パターン)
 本開示の好ましい態様によれば、水和物結晶は、粉末X線回折パターンにより特徴付けることができる。一つの態様によれば、水和物結晶の粉末X線回折パターンでは、少なくとも一つのピークが、回折角度(2θ±0.2°)=9.8、12.8、14.6、16.0、19.5、24.2、25.3、25.7、26.7、27.7、28.5、28.8、29.5、30.3、32.3、33.1、34.1、35.7、36.4、37.4、39.5、40.1、43.3、44.3のいずれかの回折角度に存在する。また、好ましい態様によれば、水和物結晶の粉末X線回折パターンでは、少なくとも一つのピークが、回折角度(2θ±0.2°)=9.8、12.8、14.6、16.0、19.5、25.3、25.7、26.7、29.5のいずれかの回折角度に存在する。また、上記少なくとも一つのピークは、好ましくは5つ以上、より好ましくは7つ以上、より一層好ましくは9つ以上とされる。また、本開示の一実施態様によれば、上記のいずれかの回折角度に存在するピークは、強度の高い上位ピーク、すなわち、ピーク強度の高い順から選択されるものとされる。
 本開示の他の態様によれば、水和物結晶の粉末X線回折パターンは、強度の高い上位5つのピークが、それぞれ、回折角度(2θ±0.2°)=9.8、12.8、14.6、16.0、19.5、24.2、25.3、25.7、26.7、27.7、28.5、28.8、29.5、30.3、32.3、33.1、34.1、35.7、36.4、37.4、39.5、40.1、43.3、44.3のいずれかの回折角度に存在する。また、本開示の他の好ましい態様によれば、水和物結晶の粉末X線回折パターンは、強度の高い上位5つのピークが、それぞれ、回折角度(2θ±0.2°)=9.8、12.8、14.6、16.0、19.5、25.3、25.7、26.7、29.5のいずれかの回折角度に存在する。好ましくは、強度の高い上位7つのピークが、それぞれ、上記のいずれかの回折角度に存在する。
 本開示のさらに他の態様によれば、水和物結晶は、図1と実質的に同一な粉末X線回折パターンによって特徴付けることができる。ここで、「実質的に同一」とは、測定誤差の範囲を除きピーク位置が同一であることを意味する。
   本開示のさらに他の態様によれば、水和物結晶は、図2と実質的に同一な粉末X線回折パターンによって特徴付けることができる。ここで、「実質的に同一」とは、測定誤差の範囲を除きピーク位置が同一であることを意味する。
 ここで、無水物結晶の粉末X線回折パターンは、回折角度(2θ±0.2°)=10.0、10.7、11.3、15.6、16.1、20.1、21.2、22.3、23.8、26.8、27.3、28.6、29.1、30.6の位置に主要なピークが存在する。無水物結晶の粉末X線回折パターンは、強度の高い上位5つのピークが、それぞれ、回折角度(2θ±0.2°)=10.7、11.3、16.1、22.3、23.8、26.8のいずれかの回折角度に存在することが多い。従って、強度の高い上位5つのピークを比較することで、無水物結晶と水和物結晶とは明確に区別することができる。
 粉末X線回折パターンは、Cu-Kα線源を用いて測定することができ、より具体的には管電圧40kV、管電流40mAにてCu-Kαを線源として測定することにより得ることができる。なお、粉末X線回折パターンは、公知の装置を用いて測定することができる。ただし、装置により測定値が異なる場合は、高速X線回折装置(例えば、D8 DISCOVER、ブルカー・エイエックスエス株式会社製)を用いて測定した値とすることができる。粉末X線回折パターンの測定のさらなる詳細は、後述する試験例に準じるものとする。
(赤外吸収スペクトル)
 本開示の一態様によれば、水和物結晶は、臭化カリウム錠剤法(第十八改正日本薬局方 2.25「赤外吸収スペクトル測定法」参照)により測定される赤外線吸収スペクトルにおいて、835±2、860±2、1014±2、1053±2、1157±2、1315±2、1427±2、1454±2、1500±2、1581±2、1654±2および2245±2から選択される位置(cm-1)に少なくとも一つのピークを有する。上記少なくとも一つのピークは、好ましくは5つ以上、より好ましくは7つ以上、より一層好ましくは9つ以上とされる。また、本開示の一実施態様によれば、上記のいずれかの回折角度に存在するピークは、ピーク強度の高い順から選択されるものとされる。赤外線吸収スペクトルの測定手法の詳細は、後述する試験例に準じるものとする。
(ラマン分光スペクトル)
 本開示の一態様によれば、水和物結晶は、ラマン分光スペクトル(第十八改正日本薬局方 2.26「ラマンスペクトル測定法」参照)において、1021±2、1152±2、1240±2、1281±2、1379±2、1409±2、1424±2、1451±2、1507±2、1573±2、1607±2および2241±2から選択される位置(cm-1)に少なくとも一つのピークを有する。上記少なくとも一つのピークは、好ましくは5つ以上、より好ましくは7つ以上、より一層好ましくは9つ以上とされる。また、本開示の一実施態様によれば、上記のいずれかの回折角度に存在するピークは、ピーク強度の高い順から選択されるものとされる。ラマン分光スペクトルの測定手法の詳細は、後述する試験例に準じるものとする。
(カールフィッシャー水分量)
 本開示の好ましい態様によれば、水和物結晶は、カールフィッシャー水分量により特徴付けることができる。一つの態様によれば、水和物結晶のカールフィッシャー法(容量滴定法)で測定した水分量は、6.5~6.8質量%であり、好ましくは6.6~6.7質量%である。ここで、5-クロロ-4-(3-クロロ-4-メチルフェニル)-1H-イミダゾール-2-カルボニトリルの分子量は252.10であり、水の分子量は18.00である。したがって、水分量(例.6.6質量%)≒100×(18.00×n)/(252.10+18.00×n)の計算式からn≒1と算出できる。よって、後述する試験例の結果を勘案すれば、本開示の水和物結晶は、水分量の値から一水和物であると考えられる。
 本開示におけるカールフィッシャー水分量は、第十八改正日本薬局方の「2.48 水分測定法(カールフィッシャー法)」の容量滴定法に記載の方法に準じて、25℃の雰囲気下で測定することができる。カールフィッシャー水分量の測定のさらなる詳細は、後述する試験例に準じるものとする。
(第一形態の水和物結晶およびその製造方法)
 本開示の水和物結晶の調製方法は、特に限定されるものではない。調製方法の一例として、無水物結晶を温度および湿度を調整した安定性試験器に入れ、重量変化が無くなって飽和状態に達するまで静置する方法が挙げられる。以下、本方法により製造される水和物結晶は第一形態の水和物結晶とも称され、後述する実施例中の製造例1にも対応する。当該方法において、安定性試験器の温度および相対湿度の条件は、例えば、40~80℃、60~100%の条件、好ましくは50~70℃、70~90%の条件が挙げられる。静置時間は、例えば、10~30日間、好ましくは15~25日間が挙げられる。
(第二形態の水和物結晶およびその製造方法)
 調製方法の他の例として、無水物結晶をアルコールに溶解し、当該溶液に水を加え、撹拌、減圧濾過した後、乾燥する方法が挙げられる。以下、本方法により製造される水和物結晶は第二形態の水和物結晶とも称され、後述する実施例中の製造例2にも対応する。減圧濾過後、濾別した結晶にアルコール水溶液で掛洗浄してもよい。当該方法において、アルコールは、限定されるものではないが、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコールが挙げられる。水は、全量を一度に添加してもよく、1時間程度の時間をかけた滴下により添加してもよい。撹拌時間は、例えば、6~24時間、好ましくは10~20時間が挙げられる。乾燥方法としては、例えば、10~60℃、相対湿度1~60%、6~48時間、好ましくは20~40℃、相対湿度20~60%、10~20時間の通気乾燥方法が挙げられる。
 なお、無水物結晶は、特開平1-131163号公報、特開平8-283243号公報および特開平8-225539号公報に記載の方法、あるいはこれらに準じて調製することができる。
(熱分析)
 一態様によれば、本開示の水和物結晶は、熱重量示差熱分析(TG-DTA)または示差走査熱量分析(DSC)において、93~100℃および135~145℃から選択される範囲に少なくとも一つ、好ましくは2つの吸熱ピークを示す。後述する実施例の結果から、上記吸熱ピークは、水和物結晶から水和水が脱離することに起因するものと考えられる。熱重量示差熱分析(TG-DTA)または示差走査熱量分析(DSC)の測定手法は、第十八改正日本薬局方の記載に準じて実施することができ、さらなる詳細は、後述する試験例に準じるものとする。
 また、後述の試験例に示される通り、上記熱分析における吸熱ピークのパターンは、水和物結晶が第一形態または第二形態のいずれかであるかによって相違することが本開示者らの検討により明らかとなった。理論に拘束されるものではないが、両者の製造方法の相違により、結晶面の成長度や配向性の違い等が生じ、吸熱ピークのパターンに影響を与えているものと考えられる。
 上記水和物結晶が第一形態の水和物結晶である場合、熱重量示差熱分析(TG-DTA)または示差走査熱量分析(DSC)において、第一形態の水和物結晶は上記温度範囲において一つの吸熱ピークを示す。第一形態の水和物結晶における上記一つの吸熱ピークは、好ましくは93~100℃、より好ましくは94~97℃の範囲に示されるものとされる。
 上記水和物結晶が第二形態の水和物結晶である場合、熱重量示差熱分析(TG-DTA)または示差走査熱量分析(DSC)において、第二形態の水和物結晶は上記温度範囲において二つの吸熱ピークを示す。第二形態の水和物結晶における上記二つの吸熱ピークはそれぞれ、好ましくは95~99℃と137~142℃、より好ましくは96~98℃と138~141℃の範囲に示されるものとされる。
 なお、一態様によれば、水和物結晶は、第一形態および第二形態のいずれの場合であっても熱重量示差熱分析(TG-DTA)または示差走査熱量分析(DSC)において、165~170℃の範囲において一つの吸熱ピークを示す。本ピークは、無水和物結晶でも生じることから、5-クロロ-4-(3-クロロ-4-メチルフェニル)-1H-イミダゾール-2-カルボニトリル結晶の溶解に起因するものと考えられる。
 本開示の水和物結晶は、後述する実施例に示される通り、無水和物結晶と比較して帯電性が著しく低く、帯電量を低減し、低レベルに保持することができる。かかる水和物結晶は、無水和物結晶と比較して付着性が低くハンドリングが容易であり、製剤の工業生産上特に有利に利用することができる。
 25℃、50%RHの環境下で水和物結晶を20分保持する場合、水和物結晶の帯電圧は、例えば-4.5~-1V、好ましくは-4.5~-1V、より好ましくは-4~-1.5V、より一層好ましくは-3.5~-1.5Vである。
 また、25℃、50%RHの環境下で水和物結晶を20分保持する場合、水和物結晶の帯電量の低下率は、例えば5~40%、好ましくは5~30%、より好ましくは5~20%、より一層好ましくは5~15%である。
 なお、上記水和物結晶の帯電圧および帯電量の低下率の測定方法は、後述する試験例5:摩擦帯電性試験の記載に準じて実施することができる。
 また、水和物結晶の形態は、柱状、塊状または略直方体状等であってもよいが、好ましくは柱状である。本開示の一実施態様によれば、水和物結晶が第二形態の水和物結晶である場合、水和物結晶の形態は柱状とされる。理論に拘束されるものでないが、第二形態の製造工程では、系が比較的均一な状態であることから、結晶が安定的に生成し、規則的な柱状構造となるものと考えられる。
 本開示の水和物結晶は、そのまま薬剤または製剤として使用してもよい。また、本開示の水和物結晶は、必要に応じて担体、有効成分、薬理成分、化粧成分等の他の薬理学上許容可能な追加成分を組み合わせて組成物とし、常法により製剤化して使用してもよい。従って、本開示の一つの態様によれば、水和物結晶と、所望による薬理学上許容可能な追加成分とを含んでなる組成物または製剤(以下、単に「製剤」ともいう)が提供される。
 一つの態様によれば、本開示の製剤は、抗菌剤として使用することができる。本開示の抗菌剤は、上述の通り、水和物結晶を含んでいればよく、必要に応じて担体、有効成分、薬理成分、化粧成分等の他の追加成分をさらに含んでいてもよい。
 一つの態様によれば、本開示の製剤において、水和物結晶の含有量は、0.00001~30質量%であり、好ましくは0.0001~10質量%であり、より好ましくは0.001~0.05質量%である。
 一つの態様によれば、製剤に使用される担体は、好ましくは薬学的または化粧的に許容される担体であり、例えば、賦形剤、皮膜剤、結合剤、増量剤、崩壊剤、滑沢剤、希釈剤、浸透圧調整剤、pH調整剤、分散剤、乳化剤、防腐剤、安定化剤、酸化防止剤、着色剤、紫外線吸収剤、保湿剤、増粘剤、活性増強剤、香料、矯味剤、矯臭剤等の薬学的または化粧的に通常使用できる担体が挙げられる。
 また、他の追加成分としては、例えば、保湿剤、抗炎症剤、殺菌剤、抗菌剤、紫外線保護剤、細胞賦活剤、メークアップ成分等が挙げられる。
 本開示の水和物結晶を含有する製剤は、医薬品、医薬部外品、動物薬または化粧料として提供することができる。中でも、医薬品、動物薬として使用することが好ましい。
 製剤は、経口投与してもよく、非経口投与してもよい。経口投与のための剤形としては、例えば、粉剤、粒剤、顆粒水和剤、水和剤、錠剤、被覆錠剤、顆粒剤、散剤、丸剤、カプセル剤(水溶性フィルムで包装する形態を含む)のような固形投与形態、およびエリキシル剤、シロップ剤、水性懸濁剤、油性懸濁剤、マイクロエマルジョン製剤、サスポエマルジョン製剤、水溶剤、乳剤、液剤、ペースト剤のような液投与形態が挙げられる。非経口投与のための剤形としては、注射、輸液、局所、外用剤、経皮、経粘膜、経鼻、経腸、吸入、坐剤、ボーラス、貼付剤等が挙げられる。本開示の水和物結晶は固体であるため、必ず固体を経由することとなるが、本開示の水和物結晶は、摩擦帯電性が低く、帯電量の減衰速度も速いため、あらゆる製剤の剤形に対しても、混合均一性の悪化や設備等への付着などの帯電に起因するプロセスや品質等の面の懸念を緩和できる。これらの中でも、製剤の剤形は、そのプロセス中において固体で扱われることの多い粉剤、錠剤であると顕著な効果が得られ好ましい。
 一つの態様によれば、本開示の製剤の形態としては、例えば、クリーム、乳液、ローション、懸濁液、ジェル、パウダー、パック、シート、パッチ、スティック、ケーキ等、化粧料に使用できる任意の形態が挙げられる。製剤のより具体的な形態としては、皮膚炎等の治療の観点から、ローション、シャンプー、クリーム、乳液、軟膏、パッチ等の外用薬のほか、シャンプー、ボディシャンプー等の頭部または身体用の洗浄剤、リンス、コンディショナー、トリートメント、ヘアパック、ヘアトニック、ヘアクリーム、および頭部または身体用のローション、クリーム、乳液等の頭部または身体用の化粧料等が挙げられる。
 一つの態様によれば、本開示の製剤は、外用散剤、リニメント剤、ローション剤、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、エアゾールスプレー剤、ポンプスプレー剤、テープ剤、パップ剤のような皮膚外用剤であることが好ましい。
 本開示の水和物結晶は、真菌に対する優れた抗菌活性を即時に発揮することができる。したがって、一つの態様によれば、製剤は真菌に起因する症状または疾患の改善のために用いられる。ここで、本開示における「改善」とは、確立された病態の治療だけでなく、将来確立される可能性のある病態を防止または遅延させる予防をも含む。また、本開示における改善には、皮膚疾患の症状または状態の好転、皮膚疾患の症状または状態の悪化防止または遅延、皮膚疾患の症状または状態の進行の逆転、防止または遅延させることも含むものとする。
 本開示における真菌としては、例えば、カンジダ属菌、マラセチア属菌、トリコフィトン属菌、ミクロスポルム属菌、アルスロデルマ属菌、アスペルギルス属菌、またはクリプトコッカス属菌等が挙げられる。
 本開示において、カンジダ属菌(Candida)とは、サッカロミケス科(Saccharomycetaceae)に属する真菌であり、例えば、Candida albicansCandida glabrata等が挙げられる。
 本開示において、マラセチア属菌(Malassezia)とは、マラセチア科(Malasseziaceae)に属する真菌であり、例えば、Malassezia furfurMalassezia pachydermatisMalassezia globosaMalassezia obtusaMalassezia restrictaMalassezia sympodialisMalassezia slooffiaeMalassezia dermatisMalassezia yamatoensisMalassezia japonicaMalassezia nana等が挙げられる。
 本開示において、トリコフィトン属菌(Trichophyton)としては、アルスロデルマ科(Arthrodermataceae)に属する真菌であり、例えば、Trichophyton rubrumTrichophyton interdigitale等が挙げられる。
 本開示において、ミクロスポルム属菌(Microsporum)とは、アルスロデルマ科(Arthrodermataceae)に属する真菌であり、例えば、Microsporum canis等が挙げられる。
 本開示において、アルスロデルマ属菌(Arthroderma)としては、アルスロデルマ科(Arthrodermataceae)に属する真菌であり、例えば、Arthroderma vanbreuseghemii等が挙げられる。
 本開示において、アスペルギルス属菌(Aspergillus)としては、マユハキタケ科(Trichocomaceae)に属する真菌であり、例えば、Aspergillus fumigatusAspergillus niger等が挙げられる。
 本開示において、クリプトコッカス属菌(Cryptococcus)としては、シロキクラゲ科(Tremellaceae)に属する真菌であり、例えば、Cryptococcus neoformans等が挙げられる。
 一つの好ましい態様によれば、真菌に起因する症状または疾患は、皮膚疾患である。皮膚疾患としては、例えば、癜風、毛包炎、脂漏性皮膚炎、尋常性乾癬、アレルギー性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、皮膚糸状菌症、カンジダ症、皮膚マラセチア症、アスペルギルス症、クリプトコックス症、または外耳炎等が挙げられ、より具体的には、癜風、毛包炎、脂漏性皮膚炎、尋常性乾癬、アレルギー性皮膚炎、イヌのマラセチア皮膚炎、アトピー性皮膚炎、マラセチア性外耳炎、ネコのマラセチア皮膚炎、マラセチア性外耳炎、ウマのマラセチア皮膚炎、皮膚糸状菌症、カンジダ症、アスペルギルス症、またはクリプトコックス症等が挙げられる。
 本開示の水和物結晶は、細菌に対しても優れた抗菌活性を即時に発揮することができる。したがって、一つの態様によれば、製剤は細菌に起因する症状または疾患の改善のために用いられる。
 本開示における細菌としては、例えば、スタフィロコッカス属菌、ストレプトコッカス属菌、パスツレラ属菌、エスケリキア属菌、シュードモナス属菌、プロテウス属菌、クレブシエラ属菌等が挙げられる。
 本開示において、スタフィロコッカス属菌(Staphylococcus)とは、ブドウ球菌科(Staphylococcaceae)に属する細菌であり、例えば、Staphylococcus pseudintermediusStaphylococcus intermediusStaphylococcus schleiferiStaphylococcus delfiniStaphylococcus epidermidisStaphylococcus xylosusStaphylococcus aureus等が挙げられる。
 本開示において、ストレプトコッカス属菌(Streptococcus)とは、レンサ球菌科(Streptococcaceae)に属する細菌であり、例えば、Streptococcus canisStreptococcus pyrogenesStreptococcus suisStreptococcus disgalactiae等が挙げられる。
 本開示において、パスツレラ属菌(Pasteurella)とは、パスツレラ科(Pasteurellaceae)に属する細菌であり、例えば、Pasteurella multocida等が挙げられる。
 本開示において、エスケリキア属菌(Escherichia)とは、エンテロバクター科(Enterobacteriaceae)に属する細菌であり、例えば、Escherichia coli等が挙げられる。
 本開示において、シュードモナス属菌(Pseudomonadaceae)とは、シュードモナス科(Pseudomonas)に属する細菌であり、例えば、Pseudomonas aeruginosa等が挙げられる。
 本開示において、プロテウス属菌(Proteus)とは、エンテロバクター科(Enterobacteriaceae)に属する細菌であり、例えば、Proteus mirabilis等が挙げられる。
 本開示において、クレブシエラ属菌(Klebsiella)とは、エンテロバクター科(Enterobacteriaceae)に属する細菌であり、例えば、Klebsiella pneumoniae等が挙げられる。
 一つの好ましい態様によれば、細菌に起因する症状または疾患は、皮膚疾患である。皮膚疾患としては、例えば、膿皮症、または外耳炎が挙げられる。
 本開示の水和物結晶の投与対象は、真菌や細菌の殺菌の必要性等を勘案すれば、動物であることが好ましい。より具体的な投与対象としては、真菌や細菌の増殖抑制や、真菌や細菌に由来する皮膚疾患の改善を必要とする動物が挙げられる。より具体的には、ヒト、およびイヌ、ネコやウマ等の非ヒト動物が挙げられる。本開示の水和物結晶の投与部位は、特に限定されず、対象とする真菌や細菌の存在する皮膚等の組織や、器官、細胞であってもよい。
 本開示の水和物結晶は、上述の通り、真菌または細菌に起因する症状または疾患の改善に効果的に適用することができる。従って、他の態様によれば、水和物結晶の有効量を、それを必要とする対象に投与することを含んでなる、真菌または細菌に起因する症状または疾患の改善方法が提供される。
 また、本開示のより具体的な他の態様によれば、水和物結晶は、抗真菌活性を生じるための有効量にて、それを必要とする対象に投与することにより、真菌の増殖抑制または殺菌を実施することができる。したがって、本開示の他の態様によれば、水和物結晶の有効量を、それを必要とする対象に投与することを含んでなる、対象における真菌の増殖抑制または殺菌方法が提供される。
 また、本開示のより具体的な他の態様によれば、水和物結晶は、抗細菌活性を生じるための有効量にて、それを必要とする対象に投与することにより、細菌の増殖抑制または殺菌を実施することができる。したがって、本開示の他の態様によれば、水和物結晶の有効量を、それを必要とする対象に投与することを含んでなる、対象における細菌の増殖抑制または殺菌方法が提供される。
 本開示の方法は、治療的な方法であってもよく、非治療的方法であってもよい。非治療的方法として、具体的には、美容目的での使用や、健康増進目的での非治療的使用が挙げられる。したがって、一つの好ましい態様によれば、本開示の方法は、医療行為、すなわち治療による個体への処置行為は含まない。
 本開示の水和物結晶の有効量は、投与対象の動物種、性別、年齢、体重、状態やその他の要因によって変動するが、対象となる菌の増殖を、対照の50%以下、好ましくは40%以下、より好ましくは30%以下、さらに好ましくは20%以下、さらにより好ましくは10%以下にさせる量である。
 上記投与における、本開示の水和物結晶の用量、投与経路、投与間隔は、投与対象の動物種、性別、年齢、体重、状態やその他の要因によって変動するので、一概に規定できない。例えば、ヒトの患部に局所投与する場合、本開示の水和物結晶の投与量は、体重60kgの成人1人当たり、1日あたりの用量としては通常0.005~350mg/日であり、1週あたりの好ましい用量としては0.01~175mg/週である。また、イヌの患部に局所投与する場合、本開示の水和物結晶の投与量は、体重10kgの成犬1頭あたり、1日あたりの用量としては通常0.005~350mg/日であり、1週あたりの好ましい用量としては0.01~175mg/週である。さらに、ネコの患部に局所投与する場合、本開示の水和物結晶の投与量は、体重4kgの成猫1頭あたり、1日あたりの用量としては通常0.002~140mg/日であり、1週あたりの好ましい用量としては0.004~70mg/週である。
 また、本開示の他の態様によれば、医薬品、医薬部外品、動物薬または化粧料の製造における、水和物結晶の使用が提供される。また、本開示の他の態様によれば、抗菌剤の製造における、水和物結晶の使用が提供される。
 また、本開示の他の態様によれば、抗真菌剤の製造における、水和物結晶の使用が提供される。また、本開示の他の好ましい態様によれば、真菌に起因する症状または疾患の改善のための製剤の製造における、水和物結晶の使用が提供される。また、本開示の他の好ましい態様によれば、上記症状または疾患は、皮膚疾患である。また、本開示の他の好ましい態様によれば、上記症状または疾患は、癜風、毛包炎、脂漏性皮膚炎、尋常性乾癬、アレルギー性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、皮膚糸状菌症、カンジダ症、皮膚マラセチア症、アスペルギルス症、クリプトコックス症、または外耳炎である。また、本開示の他の好ましい態様によれば、上記使用は、化粧的または非治療的使用である。
 また、本開示の他の態様によれば、抗細菌剤の製造における、水和物結晶の使用が提供される。また、本開示の他の好ましい態様によれば、細菌に起因する症状または疾患の改善のための製剤の製造における水和物結晶の使用が提供される。また、本開示の他の好ましい態様によれば、上記症状または疾患は、皮膚疾患である。また、本開示の他の好ましい態様によれば、上記症状または疾患は、膿皮症または外耳炎である。また、本開示の他の好ましい態様によれば、上記使用は、化粧的または非治療的使用である。
 また、本開示の他の態様によれば、抗真菌剤として使用するための、水和物結晶が提供される。また、本開示の他の好ましい態様によれば、真菌に起因する症状または疾患の改善のための、水和物結晶が提供される。また、本開示の他の好ましい態様によれば、上記症状または疾患は、皮膚疾患である。また、本開示の他の好ましい態様によれば、上記症状または疾患は、癜風、毛包炎、脂漏性皮膚炎、尋常性乾癬、アレルギー性皮膚炎、アレルギー性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、皮膚糸状菌症、カンジダ症、皮膚マラセチア症、アスペルギルス症、クリプトコックス症、または外耳炎である。また、本開示の他の好ましい態様によれば、上記抗真菌剤は、医薬品または動物薬である。
 また、本開示の他の態様によれば、抗細菌剤として使用するための、水和物結晶が提供される。また、本開示の他の好ましい態様によれば、細菌に起因する症状または疾患の改善のための、水和物結晶が提供される。また、本開示の他の好ましい態様によれば、上記症状または疾患は、皮膚疾患である。また、本開示の他の好ましい態様によれば、上記症状または疾患は、膿皮症または外耳炎である。また、本開示の他の好ましい態様によれば、上記抗細菌剤は、医薬品または動物薬である。
 また、本開示の一つの態様によれば、以下が提供される。
[1]5-クロロ-4-(3-クロロ-4-メチルフェニル)-1H-イミダゾール-2-カルボニトリルの水和物結晶。
[2]一水和物である、[1]に記載の水和物結晶。
[3]管電圧40kV、管電流40mAにてCu-Kαを線源として用いた粉末X線回折パターンにおいて、回折角度(2θ±0.2°)が、9.8、12.8、14.6、16.0、19.5、24.2、25.3、25.7、26.7、27.7、28.5、28.8、29.5、30.3、32.3、33.1、34.1、35.7、36.4、37.4、39.5、40.1、43.3、または44.3の位置に、少なくとも強度の高い上位5つのピークを有する、[1]または[2]に記載の水和物結晶。
[4]管電圧40kV、管電流40mAにてCu-Kαを線源として用いた粉末X線回折パターンにおいて、回折角度(2θ±0.2°)が、9.8、12.8、14.6、16.0、19.5、24.2、25.3、25.7、26.7、27.7、28.5、28.8、29.5、30.3、32.3、33.1、34.1、35.7、36.4、37.4、39.5、40.1、43.3、または44.3の位置に、少なくとも強度の高い上位7つのピークを有する、[3]に記載の水和物結晶。
[5]管電圧40kV、管電流40mAにてCu-Kαを線源として用いた粉末X線回折パターンにおいて、回折角度(2θ±0.2°)が、9.8、12.8、14.6、16.0、19.5、24.2、25.3、25.7、26.7、27.7、28.5、28.8、29.5、30.3、32.3、33.1、34.1、35.7、36.4、37.4、39.5、40.1、43.3、または44.3の位置に、少なくとも強度の高い上位9つのピークを有する、[4]に記載の水和物結晶。
[6]管電圧40kV、管電流40mAにてCu-Kαを線源として用いた粉末X線回折パターンにおいて、回折角度(2θ±0.2°)が、9.8、12.8、14.6、16.0、19.5、25.3、25.7、26.7、または29.5の位置に、少なくとも強度の高い上位5つのピークを有する、[1]または[2]に記載の水和物結晶。
[7]管電圧40kV、管電流40mAにてCu-Kαを線源として用いた粉末X線回折パターンにおいて、回折角度(2θ±0.2°)が、9.8、12.8、14.6、16.0、19.5、25.3、25.7、26.7、または29.5の位置に、少なくとも強度の高い上位7つのピークを有する、[6]に記載の水和物結晶。
[8]カールフィッシャー法(容量滴定法)で測定した水分量が6.5~6.8質量%である、[1]~[7]のいずれかに記載の水和物結晶。
[9][1]~[8]のいずれかに記載の水和物結晶を含んでなる、抗菌剤。
[10]上記菌が、真菌である、[9]に記載の抗菌剤。
[11]上記真菌が、カンジダ属菌、マラセチア属菌、トリコフィトン属菌、ミクロスポルム属菌、アルスロデルマ属菌、アスペルギルス属菌、およびクリプトコッカス属菌から選ばれる少なくとも一つである、[10]に記載の抗菌剤。
[12]上記真菌が、カンジダ属菌、トリコフィトン属菌、ミクロスポルム属菌、アルスロデルマ属菌、アスペルギルス属菌、およびクリプトコッカス属菌から選択される少なくとも1つのものである、[11]に記載の抗菌剤。
[13]上記真菌が、マラセチア属菌、ミクロスポルム属菌、およびアルスロデルマ属菌から選ばれる少なくとも一つである、[11]に記載の抗菌剤。
[14]上記真菌に起因する症状または疾患の改善のための、[10]~[13]のいずれかに記載の抗菌剤。
[15]上記症状または疾患が、皮膚疾患である、[14]に記載の抗菌剤。
[16]上記症状または疾患が、癜風、毛包炎、脂漏性皮膚炎、尋常性乾癬、アレルギー性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、皮膚糸状菌症、カンジダ症、皮膚マラセチア症、アスペルギルス症、クリプトコックス症、または外耳炎である、[14]または[15]に記載の抗菌剤。
[17]上記症状または疾患が、皮膚マラセチア症、皮膚糸状菌症、カンジダ症、アスペルギルス症、またはクリプトコックス症である、[14]~[16]のいずれかに記載の抗菌剤。
[18]上記菌が、細菌である、[9]に記載の抗菌剤。
[19]上記細菌が、スタフィロコッカス属菌、ストレプトコッカス属菌、パスツレラ属菌、エスケリキア属菌、シュードモナス属菌、プロテウス属菌、およびクレブシエラ属菌から選ばれる少なくとも一つである、[18]に記載の抗菌剤。
[20]上記細菌に起因する症状または疾患の改善のための、[18]または[19]に記載の抗菌剤。
[21]上記症状または疾患が、皮膚疾患である、[20]に記載の抗菌剤。
[22]上記症状または疾患が、膿皮症または外耳炎である、[20]または[21]に記載の抗菌剤。
 また、本開示の他の態様によれば、以下が提供される。
[23]5-クロロ-4-(3-クロロ-4-メチルフェニル)-1H-イミダゾール-2-カルボニトリルの水和物結晶。
[24]一水和物結晶である、請求項1に記載の水和物結晶。
[25]Cu-Kα線源を用いて測定される粉末X線回折パターンにおいて、回折角度(2θ±0.2°)が、9.8、12.8、14.6、16.0、19.5、24.2、25.3、25.7、26.7、27.7、28.5、28.8、29.5、30.3、32.3、33.1、34.1、35.7、36.4、37.4、39.5、40.1、43.3、または44.3の位置に少なくとも一つのピークを有する、[23]に記載の水和物結晶。
[26]Cu-Kα線源を用いて測定される粉末X線回折パターンにおいて、回折角度(2θ±0.2°)が、9.8、12.8、14.6、16.0、19.5、25.3、25.7、26.7、または29.5の位置に少なくとも一つのピークを有する、[23]に記載の水和物結晶。
[27]上記少なくとも一つのピークが、少なくとも強度の高い上位5つのピークである、[25]または[26]に記載の水和物結晶。
[28]熱重量示差熱分析(TG-DTA)または示差走査熱量分析(DSC)において、93~100℃および135~145℃から選択される範囲に少なくとも一つの吸熱ピークを示す、[23]に記載の水和物結晶。
[29]臭化カリウム錠剤法により測定される赤外線吸収スペクトルにおいて、835±2、860±2、1014±2、1053±2、1157±2、1315±2、1427±2、1454±2、1500±2、1581±2、1654±2および2245±2から選択される位置(cm-1)に少なくとも一つのピークを有する、[23]に記載の水和物結晶。
[30]ラマン分光スペクトルにおいて、1021±2、1152±2、1240±2、1281±2、1379±2、1409±2、1424±2、1451±2、1507±2、1573±2、1607±2および2241±2から選択される位置(cm-1)に少なくとも一つのピークを有する、[23]に記載の水和物結晶。
[31]カールフィッシャー法(容量滴定法)で測定される水分量が6.5~6.8質量%である、[23]に記載の水和物結晶。
[32][23]に記載の水和物結晶と、薬理学上許容可能な追加成分とを含んでなる、製剤。
[33]医薬品、医薬部外品、動物薬または化粧料である、[32]に記載の製剤。
[34]抗菌剤である、[32]に記載の製剤。
[35]抗真菌剤または抗細菌剤である、[32]に記載の製剤。
[36]真菌または細菌に起因する症状または疾患の改善のための、[32]に記載の製剤。
[37]上記症状または疾患が、皮膚疾患である、[36]に記載の製剤。
[38]カンジダ属菌、マラセチア属菌、トリコフィトン属菌、ミクロスポルム属菌、アルスロデルマ属菌、アスペルギルス属菌およびクリプトコッカス属菌から選択される少なくとも一つの真菌に対して使用するための、[34]または[35]に記載の製剤。
[39]スタフィロコッカス属菌、ストレプトコッカス属菌、パスツレラ属菌、エスケリキア属菌、シュードモナス属菌、プロテウス属菌およびクレブシエラ属菌から選択される少なくとも一つの細菌に対して使用するための、[34]または[35]に記載の製剤。
[40]医薬品、医薬部外品、動物薬または化粧料の製造における、5-クロロ-4-(3-クロロ-4-メチルフェニル)-1H-イミダゾール-2-カルボニトリルの水和物結晶の使用。
[41]抗菌剤の製造における、5-クロロ-4-(3-クロロ-4-メチルフェニル)-1H-イミダゾール-2-カルボニトリルの水和物結晶の使用。
[42]真菌または細菌に起因する症状または疾患の改善方法であって、
 5-クロロ-4-(3-クロロ-4-メチルフェニル)-1H-イミダゾール-2-カルボニトリルの水和物結晶の有効量をそれを必要とする対象に投与することを含んでなる、方法。
 次に本開示に係わる試験例を記載するが、これらは本開示を限定するものではない。
製造例1:5-クロロ-4-(3-クロロ-4-メチルフェニル)-1H-イミダゾール-2-カルボニトリルの水和物結晶の合成
 製造目的物に対応する原料化合物を用いること以外、特開平8-225539号の記載と同様の手法に準じて無水物結晶(CAS番号:120118-82-3、MS:252.1[M+H])を製造した。
 得られた無水物結晶250gを紙製バッグに入れ、60℃、相対湿度80%に設定した安定性試験器内に、重量変化が無くなって飽和状態に達するまで静置した。静置20日後に重量変化が無くなったので結晶を回収し、267gの水和物結晶を得た。
製造例2:5-クロロ-4-(3-クロロ-4-メチルフェニル)-1H-イミダゾール-2-カルボニトリルの水和物結晶の合成
 製造例1と同様にして無水物結晶を製造した。得られた無水物結晶100gを500mL四つ口フラスコに入れ、メタノール238gに溶解させた。300gのHOを1時間かけて滴下した後、15時間撹拌した。20~25℃で減圧ろ過し、反応器の洗浄液(メタノール:HO=40g:50g)で掛洗浄して結晶を回収した。回収した結晶を25℃、相対湿度40%で15時間通気乾燥し、98gの水和物結晶を得た。
試験例1
1-1:粉末X線回折(XRD)
 製造例1および2で得られた水和物結晶と、製造例1で原料として使用した無水物結晶の粉末X線回折パターンを以下の条件で測定した。測定には、高速X線回折装置(D8 DISCOVER、ブルカー・エイエックスエス株式会社製)を用いた。
X線源:Cu-Κα
管電圧:40kV
管電流:40mA
測定温度:室温
2θ:5°~60°
ステップ幅:0.02°
スキャンスピード:0.2s/point
 製造例1および2で得られた水和物結晶の粉末X線回折パターンを、それぞれ図1および図2に示す。
 図1の粉末X線回折パターンには、2θ=9.8、12.8、14.6、16.0、19.5、24.2、25.3、25.7、26.7、27.7、28.5、28.8、29.5、30.3、32.3、33.1、34.1、35.7、36.4、37.4、39.5、40.1、43.3、44.3の位置に主要なピークが観察された。高強度の5つのピークは、強い順に2θ=25.7、9.8、12.8、26.7、25.3であった。また、高強度の7つのピークは、強い順に2θ=25.7、9.8、12.8、26.7、25.3、19.5、16.0であった。さらに、高強度の9つのピークは、強い順に2θ=25.7、9.8、12.8、26.7、25.3、19.5、16.0、14.6、27.7であった。
 図2の粉末X線回折パターンにも製造例1と同じく、2θ=9.8、12.8、14.6、16.0、19.5、24.2、25.3、25.7、26.7、27.7、28.5、28.8、29.5、30.3、32.3、33.1、34.1、35.7、36.4、37.4、39.5、40.1、43.3、44.3の位置に主要なピークが観察された。ただし、高強度の5つのピークは、強い順に2θ=9.8、12.8、16.0、19.5、25.7であった。また、高強度の7つのピークは、強い順に2θ=9.8、12.8、16.0、19.5、25.7、26.7、14.6であった。さらに、高強度の9つのピークは、強い順に2θ=9.8、12.8、16.0、19.5、25.7、26.7、14.6、29.5、25.3であった。
 製造例1で原料として使用した無水物結晶の粉末X線回折図を図3に示す。図3の粉末X線回折パターンには、2θ=10.0、10.7、11.3、15.6、16.1、20.1、21.2、22.3、23.8、26.8、27.3、28.6、29.1、30.6の位置に主要なピークが観察され、図1および図2の水和物結晶とは明らかに異なる結晶構造を有することが確認された。高強度の5つのピークは、強い順に2θ=11.3、10.7、26.8、23.8、22.3であった。また、高強度の7つのピークは、強い順に2θ=11.3、10.7、26.8、23.8、22.3、27.3、16.1であった。さらに、高強度の9つのピークは、強い順に2θ=11.3、10.7、26.8、23.8、22.3、27.3、16.1、15.6、30.6であった。
1-2:水添加した無水和物結晶、無水和物結晶および水和物結晶の粉末X線回折パターンの比較
 水添加した無水和物結晶(付着水存在下の無水和物結晶)のXRDチャートを取得し、水添加試料の粉末X線回折パターンと、無水和物結晶および水和物結晶の粉末X線回折パターンとを比較した。
 具体的には、無水和物結晶試料に重量比6.7%(一水和物相当の水分)になるように測定直前に水を添加して均一になるように混ぜ合わせ、試験例1-1と同様の手法により粉末X線回折法による測定を実施した。
 図4は、水添加した無水和物結晶、無水和物結晶、水和物結晶(製造例1、製造例2)のXRDチャートの比較図である。
 水添加した無水和物結晶の粉末X線回折角度2θ±0.2は、10.0、10.7、11.3、15.6、16.1、20.1、21.2、22.3、23.8、26.8、27.3、28.6、29.1、30.6からなるパターンを示し、無水和物結晶のパターンに一致した。すなわち、一水和物相当の水分を添加した無水和物結晶は乾燥した無水和物結晶と同等のパターンであった。このことから、水添加した無水和物結晶中の水は付着水であり、水和物結晶が含有している水分は付着水ではなく結晶水であることが明らかとなった。
1-3:熱重量示差熱分析
 粉末の被験物質を熱重量示差熱分析(TG-DTA)または示差走査熱量分析(DSC)といった熱分析に供することにより、水和水由来の吸熱ピークの有無を指標として、無水和物と水和物の区分が可能である。また、熱重量示差熱分析は同時に重量変化を測定できるため、結晶水の含有量を調べることができる。このような上記熱分析の特徴を活かして5-クロロ-4-(3-クロロ-4-メチルフェニル)-1H-イミダゾール-2-カルボニトリルの結晶を評価するため、以下の測定を実施した。
 測定用のアルミパンに被験物質を約10mg程度入れ、装置にセットし、熱重量示差熱分析を実施した。昇温速度等測定条件は以下の通りとし、データの取り込みは測定開始時の温度から300℃までとした。
 測定容器:アルミ製パン
 測定雰囲気:大気
 通気速度:100mL/min
 昇温速度:20℃/min
 試料観察示差熱-熱重量同時測定装置:Thermo plus EVO2 TG-DTA8122/C(リガク)
 図5Aは無水和物結晶のTG-DTAチャートである。
 図5Bは、水添加した無水和物結晶のTG-DTAチャートである。
 図5Cは、水和物結晶(製造例1)のTG-DTAチャートである。
 図5Dは、水和物結晶(製造例2)のTG-DTAチャートである。
 TG-DTAチャートにおいて、無水和物結晶と水和物結晶はいずれも168℃付近に化合物自体の分解を示す吸熱ピークを有していた。また、水和物結晶では結晶水の脱離に伴う吸熱ピークがあり、製造例1では95℃付近、製造例2では98℃付近と140℃付近の2つの吸熱ピークが存在していた。これらの水和水脱離に伴う吸熱ピークは、TG-DTAにおける重量減少に連動しており、合計して約6.7%の重量減少を伴っていた。製造例1および製造例2の約6.7%の重量減少は一水和物の水分量の理論値に一致していることから、製造例1および製造例2は一水和物結晶であることが判った。
 製造例1と製造例2は一水和物結晶であるにもかかわらずTG-DTAチャートのパターンが相違していた。製造例1は無水和物結晶に水分を吸湿させて結晶を得ているのに対し、製造例2は水和物として結晶化させて結晶を得ていることから、結晶面の成長度や配向性の違い等が生じ、TG-DTAチャートのパターンの違いが生じているものと考えられる。
 なお、水添加した無水和物結晶の吸熱ピークは80℃付近であり、製造例1と製造例2の吸熱ピークより低かった。付着水の脱離は結晶水の脱離よりも低い温度で発生することが一般的に知られており、この知見は、水添加した無水和物結晶(付着水存在下の無水和物結晶)の吸熱ピークが、製造例1と製造例2(結晶水を有する一水和物結晶)の吸熱ピークより低いことに合致する。
1-4:走査型電子顕微鏡法による無水和物結晶および水和物結晶の観察
 結晶取得後1ヶ月以内の5-クロロ-4-(3-クロロ-4-メチルフェニル)-1H-イミダゾール-2-カルボニトリルの無水和物結晶および水和物結晶(製造例1、製造例2)を走査型電子顕微鏡(S-3200N、日立製)で観察し、結晶構造を比較した。
結果は、図6Aおよび図6Bに示される通りであった。
 図6Aは、走査型電子顕微鏡による無水和物結晶、水和物結晶(製造例1)および水和物結晶(製造例2)の倍率500倍の写真である。
 図6Bは、走査型電子顕微鏡による無水和物結晶、水和物結晶(製造例1)および水和物結晶(製造例2)の倍率100倍の写真である。
 無水和物結晶は均一ではなく、柱状結晶を含む凝集体のようなものが観察された。一方、水和物結晶(製造例2)は一つ一つの柱状結晶が大きく成長しており、無水和物結晶で見られた凝集体は観察されなかった。水和物結晶(製造例1)では、不均一なサイズの塊状(略直方体状を含む)結晶粒子が観察された。水和物結晶(製造例1)では水和化の工程で、もともとの無水和物の構造が崩壊したことが影響して、均一な結晶構造を観察することができなかったものと考えられる。
1-5:赤外吸収スペクトルによる無水和物結晶および水和物結晶の比較
 5-クロロ-4-(3-クロロ-4-メチルフェニル)-1H-イミダゾール-2-カルボニトリルの無水和物結晶および水和物結晶(製造例2)を赤外分光光度計で以下の手法により測定し、赤外吸収スペクトルを比較した。
 被験物質 約1mgをめのう製乳鉢で粉末とし、臭化カリウム0.20gを加えて得られた混合物を約10mg量り取り、錠剤成型器にて直径3mmで加圧製錠した。作製した試料の赤外吸収スペクトルを以下条件で波長4000~400cm-1の範囲で測定した。
 測定法:臭化カリウム錠剤法
 積算回数:32回
 分解能:4cm-1
 フーリエ変換赤外分光光度計:IRAffinity-1S(島津製作所)
 結果は、図7A、図7Bおよび表1に示される通りであった。
 図7Aは、無水和物結晶の赤外吸収スペクトルである。
 図7Bは、水和物結晶(製造例2)の赤外吸収スペクトルである。
 表1は、無水和物結晶および水和物結晶(製造例2))の赤外吸収スペクトルにおけるピーク強度の高い順から上位12ピーク(2400~600cm-1の範囲)表す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000001
 以上の結果から、赤外吸収スペクトルでも無水和物結晶と水和物結晶の区分が可能であり、水和化により結晶形が変化していることが示唆された。
1-6:ラマン分光スペクトルによる無水和物結晶および水和物結晶の比較
 5-クロロ-4-(3-クロロ-4-メチルフェニル)-1H-イミダゾール-2-カルボニトリルの無水和物結晶および水和物結晶をラマン分光システムで以下の手法により測定し、ラマン分光スペクトルを比較した。
 ガラス製のサンプルホルダーに被験物質(無水和物結晶1、無水和物結晶2、水和物結晶(製造例1)、水和物結晶(製造例2)を薄く塗布し、ラマン分光システムにセットし、顕微鏡で任意の地点を指定後、レーザーを照射しラマン分光スペクトルを取得した。なお、無水和物結晶1および無水和物結晶2は、別の時点で製造した無水和物結晶である。
 レーザー波長:532nm
 回折格子:600gr/mm
 空間分解能:350nm
 波数分解能:0.5cm-1
 ラマン分光システム:RAMANtouch VIS-ICS-S(ナノフォトン)
 結果は、図8および表2に示される通りであった。
 図8は、無水和物結晶1、無水和物結晶2、水和物結晶(製造例1)および水和物結晶(製造例2)のラマン分光スペクトルの比較図である。
 表2は、無水和物結晶1、無水和物結晶2、水和物結晶(製造例1)および水和物結晶(製造例2)のラマン分光スペクトルにおけるピーク強度の高い順から上位12ピーク(2400~600cm-1の範囲)を表す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000002
 同じ官能基由来のピークでも無水和物結晶と水和物結晶の間でラマンシフトが観察された。以上の結果、ラマン分光スペクトルでも無水和物結晶と水和物結晶の区分が可能であり、水和化により結晶形が変化していることが示唆された。
試験例2:カールフィッシャー水分測定(容量滴定法)
 製造例1および2で得られた水和物結晶と、製造例1で原料として使用した無水物結晶について、カールフィッシャー水分測定装置(CA-310、日東精工アナリテック製)により、水分含有率を測定した。試験は、第十八改正日本薬局方「2.48 水分測定法(カールフィッシャー法)」の容量滴定法に準じて実施した。測定は25℃の雰囲気下で実施し、サンプル投与後の強制遅延時間を2分、最小滴定量を2μL、終点電圧を140mVに設定して実施した。より具体的には、以下の通りである。
 はじめに、測定フラスコ内に水分測定メタノール(アクアミクロン脱水溶剤GEX、三菱ケミカル製)を充填し、水30mgを測定フラスコ内に投入して、カールフィッシャー試薬(アクアミクロンSS-Z、三菱ケミカル製)で滴定した。滴定後、滴定量から本試薬の力価(mg/mL)を求めた。次に、測定試料約0.1gを正確に秤量し、測定フラスコ内に投入して、カールフィッシャー試薬で滴定した。滴定量と先に求めた力価からサンプル中の水分含有量(w/w%)を算出した。
 製造例1の水和物結晶製造例2の水和物結晶、無水物結晶のカールフィッシャー水分量はそれぞれ、6.6wt%、6.7wt%、0.1wt%であった。5-クロロ-4-(3-クロロ-4-メチルフェニル)-1H-イミダゾール-2-カルボニトリルの分子量は252.10であり、水の分子量は18.00であることから製造例1および2の水和物結晶は一水和物であると考えられる。
試験例3:吸湿試験
 無水物結晶試料を、湿気が直接触れるような状態で容器(ガラス製秤量瓶もしくは紙袋)内に入れた。表1に示す各温度および湿度条件の下(25℃/80%RH、40℃/80%RH)で保管し、重量変化もしくはカールフィッシャー水分測定により水分の変化を観察した。また、水和物結晶(製造例1)についても、60℃/80%RHで保管し、重量変化もしくはカールフィッシャー水分測定により水分の変化を観察した。結果を表3に併せて示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000003
 表1から、25℃/80%RHの条件で吸湿と考えられる重量増加が認められた。その加速条件である40℃/75%RHおよび60℃/80%RHではより急速に吸湿と考えられる重量増加が認められた。このことから、5-クロロ-4-(3-クロロ-4-メチルフェニル)-1H-イミダゾール-2-カルボニトリルの無水物結晶は、比較的高い吸湿性を有することがわかる。
 60℃/80%RHの20日保存後の試料は、前述の製造例1の水和物に相当する。当該試料は、61日後(水和物生成後41日経過)まで保管を続けても、以降の重量変化は認められず、水分値も6.6~6.7%で上昇が認められなかった。このことから、5-クロロ-4-(3-クロロ-4-メチルフェニル)-1H-イミダゾール-2-カルボニトリルは、一水和物以上には吸湿せず、一水和物とすることで高温高湿環境でも安定に存在できることが確認された。一方、上述の通り、無水物結晶について、25℃/80%RHの条件では、49日保存後で4.7%の重量増加であり、40℃/75%RHでは、28日保存後の重量増加は6.7%、カールフィッシャー水分量は6.1%であった。これらは保存を継続するとさらに重量増加することが予測され、安定しているとは言えない。
試験例4:乾燥試験
 製造例1の水和物結晶を、25℃、乾燥条件下(シリカゲルの存在下)で、表2に示す期間保管した。保管後のカールフィッシャー水分量を測定して、水分の変化を観察した。結果を表4に併せて示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000004
 表4より、製造例1の水和物結晶は、乾燥環境下で長期間保存しても水分量の変化は認められず、安定に存在できることが確認された。
 5-クロロ-4-(3-クロロ-4-メチルフェニル)-1H-イミダゾール-2-カルボニトリルの無水物結晶は吸湿性を有するため、保存容器、保存場所、有効期限、試験用標準品の小分包装などの使用に制約を受ける。試験例3および4の結果から、5-クロロ-4-(3-クロロ-4-メチルフェニル)-1H-イミダゾール-2-カルボニトリルの水和物結晶とすることにより、高湿環境下、乾燥環境下いずれの場合でも安定に存在させることが可能となるため、医薬品原薬としての取扱いが容易となることがわかる。
試験例5:摩擦帯電性試験
 製造例1および製造例2で得られた水和物結晶と製造例1で原料として使用した無水物結晶について、摩擦帯電性を評価した。
 まず、φ50mm×高さ15mmのステンレスシャーレに試料を擦切り一杯に充填した後、除電機(STABLO AP、島津製作所製)により除電した。前もってゼロ点合わせをした表面電位計(SV-77A、日本スタテック製)にて試料の表面電位を測定し、除電されている(-1~+1kV以内になっている)ことを確認した。
 次に、試料を充填したシャーレの試料表面をステンレス製金属板にて10秒間20往復こすることで、試料表面を帯電させた。その後、帯電させた試料を充填したシャーレを、アース線をつなげた金属板(30cm×30cm)上に置いた。
 試料の表面電位を上記表面電位計で経時的に20分間測定した。初期の表面電位により摩擦帯電性を評価した。また20分後の表面電位と初期の表面電位から保持率を算出し、帯電減衰性を評価した。なお、試験は、25℃、50%RHに設定した静電気測定室(タバイエスペック)で実施し、表面電位測定は、試料の表面から1cmの間隔をおいて行った。結果を表5に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000005
 表5より、無水物結晶を水和物結晶とすることにより、帯電圧が大きく低下することがわかる。また、電位保持率についても、20分後の時点で、無水物結晶はほとんど変化していないのに対し、製造例1の水和物結晶では7%低下し、製造例2の水和物結晶では14%低下している。したがって、水和物結晶は、帯電した場合であっても、帯電量が低減しやすいことがわかる。
 5-クロロ-4-(3-クロロ-4-メチルフェニル)-1H-イミダゾール-2-カルボニトリルの無水物結晶は、強い帯電性を有するため、原薬の製造や、製剤化などのプロセスにおいて、紛体の輸送や移し替え、製剤化、秤量時の摩擦により、強く帯電する場合がある。
 帯電が起こると、配管や包装資材への付着による収率の低下、混合均一性の悪化、秤量誤差の原因となるなど、プロセス上の懸念が生じる。
 試験例5の結果から、5-クロロ-4-(3-クロロ-4-メチルフェニル)-1H-イミダゾール-2-カルボニトリルを水和物結晶とすることにより、絶対的な帯電量を低減でき、また、帯電した場合であっても減衰速度が大きいため、帯電量がすぐに下がることがわかる。従って、帯電性に伴うプロセスや品質等の面の懸念を緩和することができる。
試験例6:抗菌活性試験
 供試化合物:無水物結晶、水和物結晶(製造例1)
 供試菌株:Staphylococcus pseudintermedius(JCM 17571)
 Luria Broth (LB)寒天培地プレート(ペプトン、酵母抽出物、塩化ナトリウム、寒天、Invitrogen)で24時間培養したブドウ球菌(Staphylococcus pseudintermedius)を生理食塩水に懸濁させ、吸光度600nmで0.025になるように調製した。そこへDMSOに溶解した供試化合物を最終濃度200、100、50、25ppmとなるように加え、1分後、シリンジに懸濁液10μLと生理食塩水10mLとを入れて撹拌した。その後、37mmクオリティモニター(Pall社製)につないで、ろ過し、生理食塩水10mLで2回洗浄した。そのまま、メンブレンフィルターにLB培地を浸透させ、30℃で72時間培養し、コロニーの発育の有無を調査し、最小殺菌濃度(MBC100)を求めた。その結果を表6に示した。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000006
試験例7:抗真菌活性試験
 供試化合物:無水物結晶、水和物結晶(製造例1)
 供試菌株:Microsporum canis(IFM63627)
 1/10サブロー培地でMicrosporum canisを32℃で168時間培養し、胞子を形成させた。その後、生理食塩液(大塚生食注;1000mL中に塩化ナトリウム9g相当含有)10mLを直接培地上に加え、ディスポループ(1型(1μL))を用いて表面を擦り、菌糸を含む胞子懸濁液を回収した。菌糸を含む胞子懸濁液をセルストレーナー(φ40μm)でろ過した。ろ液から胞子を遠心分離(3500rpm、5分)にて回収し、生理食塩水で2回洗浄後、胞子懸濁液を調製した(1×10個/mL)。DMSOに溶解した供試化合物を所定の濃度となるように加えたサブロー培地に、上記胞子懸濁液を10μL接種した。Microsporum canisは32℃で72時間培養後、コロニーの発育の有無を調査し、最小発育阻止濃度(MIC100)を求めた。その結果を表7に示した。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000007
試験例8:抗真菌活性試験
 供試化合物:無水物結晶、水和物結晶(製造例1)
 供試菌株:Microsporum canis(IFM63627)
 1/10サブロー培地でMicrosporum canisを32℃で168時間培養し、胞子を形成させた。その後、生理食塩液(大塚生食注;1000mL中に塩化ナトリウム9g相当含有)10mLを直接培地上に加え、ディスポループ(1型(1μL))を用いて表面を擦り、菌糸を含む胞子懸濁液を回収した。菌糸を含む胞子懸濁液をセルストレーナー(φ40μm)でろ過した。ろ液から胞子を遠心分離(3500rpm、5分)にて回収し、生理食塩水で2回洗浄後、胞子懸濁液を調製した(1×10個/mL)。DMSOに溶解した供試化合物を所定の濃度となるように加えた90μL生理食塩液に、上記胞子懸濁液を10μL接種した。所定の時間が経過する毎に胞子を含む被検液を10μL採取した。採取した被検液を遠心分離(3500rpm、5分)して胞子を回収し、生理食塩水で2回洗浄後、10μL胞子懸濁液を調製した。10μL胞子懸濁液をサブロー培地にスポットし、32℃で72時間培養後、コロニーの発育の有無を調査し、最小殺真菌濃度(MFC100)を求めた。その結果を表8に示した。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000008
試験例9:抗真菌活性試験
 供試化合物:無水物結晶、水和物結晶(製造例1)
 供試菌株:Malassezia pachydermatis(IFM56528) 
 サブロー培地(ペプトン1%、デキストリン4%、寒天1.5%)で5~7日間培養したマラセチア菌(Malassezia pachydermatis)を生理食塩水に懸濁させ、吸光度600nmで0.025になるように調整した。そこへDMSOに溶解した供試化合物を最終濃度200、100、50、25ppmとなるように加えた。1分後、シリンジに懸濁液10μLと生理食塩水10mLとを入れて撹拌し、37mmクオリティモニター(Pall社製)につないで、ろ過洗浄した。そのまま、メンブレンフィルターにサブロー培地を浸透させ、32℃で72時間培養し、コロニーの発育の有無を調査し、最小殺真菌濃度(MFC100)を求めた。その結果を表9に示した。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000009
試験例10:抗真菌活性試験
 供試化合物:無水物結晶、水和物結晶(製造例1)
 供試菌株:Malassezia furfur(IFM 55951)、Malassezia sympodialis(IFM 48588)、Malassezia globosa(IFM 51946)
 クロモアガーTM マラセチア/カンジダ 生培地(ペプトン、特殊酵素基質混合物、クロラムフェニコール、オリーブ油、寒天、関東化学株式会社製)で5~7日間培養したマラセチア菌(Malassezia furfurMalassezia sympodialisMalassezia globosa)を生理食塩水に懸濁させ、吸光度600nmで0.025になるように調整した。そこへDMSOに溶解した供試化合物を最終濃度200、100、50、25ppmとなるように加えた。1分後、シリンジに懸濁液10μL、生理食塩水10mLを入れて撹拌し、37mmクオリティモニター(Pall社製)につないで、ろ過し、生理食塩水10mLで2回洗浄した。クオリティモニターからメンブレンフィルターを外し、クロモアガーTM マラセチア/カンジダ 生培地の上にフィルター置いて、32℃で72時間培養し、コロニーの発育の有無を調査し、最小殺真菌濃度(MFC100)を求めた。その結果を表10に示した。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000010
試験例11:抗真菌活性試験
 供試化合物:無水物結晶、水和物結晶(製造例1)
 供試菌株:Malassezia restricta(IFM55992)
 クロモアガーTM マラセチア/カンジダ 生培地(ペプトン、特殊酵素基質混合物、クロラムフェニコール、オリーブ油、寒天、関東化学株式会社製)で5~7日間培養したマラセチア菌(Malassezia restricta)を生理食塩水に懸濁させ、吸光度600nmで0.025になるように調整した。そこへDMSOに溶解した供試化合物を最終濃度200、100、50、25ppmとなるように加えた。1分後、シリンジに懸濁液10μLと生理食塩水10mLとを入れて撹拌し、37mmクオリティモニター(Pall社製)につないで、ろ過し、生理食塩水10mLで2回洗浄した。クオリティモニターからメンブレンフィルターを外し、Leeming & Notman agar Modified培地 (MLNA培地)(ペプトン、グルコース、酵母抽出物、乾燥ウシ胆汁、グリセロール、グリセリンステアリン酸エステル、Tween60、オリーブ油、寒天)の上にフィルター置いて、32℃で72時間培養し、コロニーの発育の有無を調査し、最小殺真菌濃度MFC100)を求めた。その結果を表11に示した。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000011
試験例12:抗真菌活性試験
 供試化合物:無水物結晶、水和物結晶(製造例1)
 供試菌株:Trichophyton rubrum(ATCCMYA4607)
 Trichophyton rubrumはサブロー培地を用いて32℃で168時間培養し胞子を形成させた。菌糸を培地表面から剥がしてチューブに回収し、生理食塩液(大塚生食注;1000mL中に塩化ナトリウム9g相当含有)を加えて、ディスポループ(1型(1μL))を用いて全体を混和して分散し、菌糸を含む胞子懸濁液を回収した。菌糸を含む胞子懸濁液をセルストレーナー(φ40μm)でろ過した。ろ液から胞子を遠心分離(3500rpm、5分)にて回収し、生理食塩水で2回洗浄後、胞子懸濁液を調製した(1×10個/mL)。DMSOに溶解した試験化合物を所定の濃度となるように加えたサブロー培地に、上記胞子懸濁液を10μL接種した。Trichophyton rubrumは32℃で72時間培養後、コロニーの発育の有無を調査し、最小発育阻止濃度(MIC100)を求めた。その結果を表12に示した。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000012
試験例13:抗真菌活性試験
 供試化合物:無水物結晶、水和物結晶(製造例1)
 供試菌株:Trichophyton rubrum(ATCCMYA4607)
 Trichophyton rubrumは、サブロー培地を用いて32℃で168時間培養し胞子を形成させた。菌糸を培地表面から剥がしてチューブに回収し、生理食塩液(大塚生食注;1000mL中に塩化ナトリウム9g相当含有)を加えて、ディスポループ(1型(1μL))を用いて全体を混和して分散し、菌糸を含む胞子懸濁液を回収した。菌糸を含む胞子懸濁液をセルストレーナー(φ40μm)でろ過した。ろ液から胞子を遠心分離(3500rpm、5分)にて回収し、生理食塩水で2回洗浄後、胞子懸濁液を調製した(1×10個/mL)。DMSOに溶解した試験化合物を所定の濃度となるように加えた90μL生理食塩液に、上記胞子懸濁液を10μL接種した。所定の時間が経過する毎に胞子を含む被検液を10μL採取した。採取した被検液から遠心分離(3500rpm、5分)にて胞子を回収し、生理食塩水で2回洗浄後、10μL胞子懸濁液を調製した。10μL胞子懸濁液をサブロー培地にスポットし、32℃で72時間培養後、コロニーの発育の有無を調査し、最小殺真菌濃度(MFC100)を求めた。その結果を表13に示した。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000013
試験例14:抗菌活性試験
 供試化合物として水和物結晶(製造例2)を用いる以外は上記試験例6と同様の方法で、Staphylococcus pseudintermedius(JCM 17571)に対する最小殺菌濃度(MBC100)を求めた。その結果を表14に示した。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000014
試験例15:抗真菌活性試験
 供試化合物として水和物結晶(製造例2)を用いる以外は上記試験例7と同様の方法で、Microsporum canis(IFM63627)に対する最小発育阻止濃度(MIC100)を求めた。その結果を表15に示した。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000015
試験例16:抗真菌活性試験
 供試化合物として水和物結晶(製造例2)を用いる以外は上記試験例8と同様の方法で、Microsporum canis(IMF63627)に対する最小殺真菌濃度(MFC100)を求めた。その結果を表16に示した。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000016
試験例17:抗真菌活性試験
 供試化合物として水和物結晶(製造例2)を用いる以外は上記試験例9と同様の方法で、Malassezia pachydermatis(IFM56528)に対する最小殺真菌濃度(MFC100)を求めた。その結果を表17に示した。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000017
試験例18:抗真菌活性試験
 供試化合物として水和物結晶(製造例2)を用いる以外は上記試験例10と同様の方法で、Malassezia furfur(IFM 55951)、Malassezia sympodialis(IFM 48588)およびMalassezia globosa(IFM 51946)に対する最小殺真菌濃度(MFC100)を求めた。その結果を表18に示した。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000018
試験例19:抗真菌活性試験
 供試化合物として水和物結晶(製造例2)を用いる以外は上記試験例11と同様の方法で、Malassezia restricta(IFM55992)に対する最小殺真菌濃度MFC100)を求めた。その結果を表19に示した。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000019
試験例20:抗真菌活性試験
 供試化合物として水和物結晶(製造例2)を用いる以外は上記試験例13と同様の方法で、Trichophyton rubrum(ATCCMYA4607)に対する最小発育阻止濃度(MIC100)を求めた。その結果を表20に示した。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000020
試験例21:抗真菌活性試験
 供試化合物として水和物結晶(製造例2)を用いる以外は上記試験例12と同様の方法で、Trichophyton rubrum(ATCCMYA4607)に対する最小発育阻止濃度(MIC100)を求めた。その結果を表21に示した。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000021

Claims (20)

  1.  5-クロロ-4-(3-クロロ-4-メチルフェニル)-1H-イミダゾール-2-カルボニトリルの水和物結晶。
  2.  一水和物結晶である、請求項1に記載の水和物結晶。
  3.  Cu-Kα線源を用いて測定される粉末X線回折パターンにおいて、回折角度(2θ±0.2°)が、9.8、12.8、14.6、16.0、19.5、24.2、25.3、25.7、26.7、27.7、28.5、28.8、29.5、30.3、32.3、33.1、34.1、35.7、36.4、37.4、39.5、40.1、43.3、または44.3の位置に少なくとも一つのピークを有する、請求項1に記載の水和物結晶。
  4.  Cu-Kα線源を用いて測定される粉末X線回折パターンにおいて、回折角度(2θ±0.2°)が、9.8、12.8、14.6、16.0、19.5、25.3、25.7、26.7、または29.5の位置に少なくとも一つのピークを有する、請求項1に記載の水和物結晶。
  5.  前記少なくとも一つのピークが、少なくとも強度の高い上位5つのピークである、請求項3または4に記載の水和物結晶。
  6.  熱重量示差熱分析(TG-DTA)または示差走査熱量分析(DSC)において、93~100℃および135~145℃から選択される範囲に少なくとも一つの吸熱ピークを示す、請求項1に記載の水和物結晶。
  7.  臭化カリウム錠剤法により測定される赤外線吸収スペクトルにおいて、835±2、860±2、1014±2、1053±2、1157±2、1315±2、1427±2、1454±2、1500±2、1581±2、1654±2および2245±2から選択される位置(cm-1)に少なくとも一つのピークを有する、請求項1に記載の水和物結晶。
  8.  ラマン分光スペクトルにおいて、1021±2、1152±2、1240±2、1281±2、1379±2、1409±2、1424±2、1451±2、1507±2、1573±2、1607±2および2241±2から選択される位置(cm-1)に少なくとも一つのピークを有する、請求項1に記載の水和物結晶。
  9.  カールフィッシャー法(容量滴定法)で測定される水分量が6.5~6.8質量%である、請求項1に記載の水和物結晶。
  10.  請求項1または2に記載の水和物結晶と、薬理学上許容可能な追加成分とを含んでなる、製剤。
  11.  医薬品、医薬部外品、動物薬または化粧料である、請求項10に記載の製剤。
  12.  抗菌剤である、請求項10に記載の製剤。
  13.  抗真菌剤または抗細菌剤である、請求項10に記載の製剤。
  14.  前記真菌または細菌に起因する症状または疾患の改善のための、請求項10に記載の製剤。
  15.  前記症状または疾患が、皮膚疾患である、請求項14に記載の製剤。
  16.  カンジダ属菌、マラセチア属菌、トリコフィトン属菌、ミクロスポルム属菌、アルスロデルマ属菌、アスペルギルス属菌およびクリプトコッカス属菌から選択される少なくとも一つの真菌に対して使用するための、請求項12または13に記載の製剤。
  17.  スタフィロコッカス属菌、ストレプトコッカス属菌、パスツレラ属菌、エスケリキア属菌、シュードモナス属菌、プロテウス属菌およびクレブシエラ属菌から選択される少なくとも一つの細菌に対して使用するための、請求項12または13に記載の製剤。
  18.  医薬品、医薬部外品、動物薬または化粧料の製造における、5-クロロ-4-(3-クロロ-4-メチルフェニル)-1H-イミダゾール-2-カルボニトリルの水和物結晶の使用。
  19.  抗菌剤の製造における、5-クロロ-4-(3-クロロ-4-メチルフェニル)-1H-イミダゾール-2-カルボニトリルの水和物結晶の使用。
  20.  真菌または細菌に起因する症状または疾患の改善方法であって、
     5-クロロ-4-(3-クロロ-4-メチルフェニル)-1H-イミダゾール-2-カルボニトリルの水和物結晶の有効量を、それを必要とする対象に投与することを含んでなる、方法。
PCT/JP2022/045047 2021-12-08 2022-12-07 5-クロロ-4-(3-クロロ-4-メチルフェニル)-1h-イミダゾール-2-カルボニトリルの水和物結晶 WO2023106320A1 (ja)

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