WO2023068313A1 - 生体信号計測装置、方法及びシステム - Google Patents

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Abstract

少ない計算量でモーションアーチファクトを抑制し、生体信号計測の時間精度、振幅精度を高める。光送受信部(4201から4203)に混入するDCアーチファクトをDC信号抽出部(4204)の微分器と比較器とDC減算器で補正する。ACアーチファクトを動き計測部(4207)信号と脈波信号処理部(4206)の時間差補正部と補正係数生成部で補正する。生体に含まれるDC成分とAC成分の生体信号をΔtHb処理部(4205)と脈波振幅処理部(3502)で処理して利用可能にする。アーチファクトの生成を血管への圧迫を抑えた応力伝達部で抑制する。

Description

生体信号計測装置、方法及びシステム
 本発明は、モーションアーチファクト(MA)いわゆる生体の動きによって生じる計測信号の変動に対してロバストな生体信号計測に関するもので、特に光を用いた生体信号計測装置、方法及びシステムに関するものである。
 従来から指や耳垂にクリップで装着して使用するオキシメータや心拍計は広く使われているが、安静時にしか使用できない問題があった。腕時計型の心拍計も普及しているが、運動時には実際と異なる心拍を示したり、欠損値となり表示されない問題があった。
 非特許文献1にこのようなMA(Motion Artifact)を抑制するいくつかの方法の報告がある。PPG(Photoplethysmography)センサのMAを抑制する方法として、加速度センサを用いない方法と用いる方法がある。加速度センサを用いない方法ではMAの抑制の精度が加速度センサを用いるタイプほど向上しない傾向がある。加速度センサを用いるタイプでは、SSA(特異スペクトル分析)を用いてPPG信号からMAを抽出して適応フィルタの所望波として使用し、入力した加速度センサ信号に対してタップ係数を最適化する例がある。精度は比較的高いがタップ係数の探索に長時間の繰り返し学習が必要となる問題と計算量が多い問題がある。
 特許文献1に適応フィルタとしてNLMSアルゴリズムを使用し、さらに体動波形をモデル化する例がある。ステップサイズを調整して繰り返し学習の問題を対策しているが、繰り返し学習を必要とする問題は変わらず存在する。
 特許文献2に適応フィルタを用いない例がある。2つのPPGと加速度センサを使ってMAを減算する方法が第1にあり、この減算に際して位相の差をヒルベルト変換を使って直交成分を生成して任意の位相の波形を生成した後減算する第2の方法と、SSAを使って分解を行う第3の方法が示されている。SSAを多用するため計算量が多くなる問題がある。
 特許文献3に血液循環システムの圧力センサにおける、ポンプ動作との干渉問題を対策する例がある。ポンプ動作による高調波成分を除去するために、高調波成分を分離して圧力信号との相関を取ったのち減算する構成が示されている。
再表2018/055969号公報 特表2017-519548号公報 特表2015-523150号公報
D. Pollreisz and N. TaheriNejad "Detection and Removal of Motion Artifacts in PPG Signals" Mobile Networks and Applications., August. 2019
 解決しようとする問題点は従来の技術ではモーションアーチファクト(MA)を対策していないか、或いは対策していても以下の問題がある点である。第1に長時間の学習時間を必要とする問題がある。適応フィルタのステップサイズ等を最適化して学習時間を短くする試みもあるが、短くする限界があり、学習している間は使用できないか精度が劣化する。第2に計算量が多い問題がある。利用者がセンサと端末を所持して使用する環境において、センサや端末の計算能力を超える演算はリアルタイムでは行えない。第3に光を用いて各種生体情報が取得できるがそれぞれの取得においてMAの問題が存在し、各種生体情報を統合した利用が難しい問題がある。
 生体表面に配置され少なくとも3波長の光の授受によって生体情報を計測する光送受信部を備え、相対的に波長が短い第1の波長の光の授受によって得られる第1の光受信信号と、第1の光より波長が長い第2及び第3の波長の光の授受によってそれぞれ得られる第2及び第3の光受信信号と、前記第1から第3の光受信信号からそれぞれのDC成分を抽出して第1から第3のDC信号を生成するDC信号抽出部と、前記第1から第3の光受信信号からそれぞれのAC成分を抽出して第1から第3のAC信号を生成するAC信号抽出部と、モディファイド・ランベルト・ベールの法則を用いて前記第1のDC信号から第1の総ヘモグロビン変化信号を生成し、前記第2及び第3のDC信号から第2の総ヘモグロビン変化信号を生成するΔDC処理部と、前記第1から第3のAC信号それぞれに含まれる脈波振幅を抽出して第1から第3の脈波振幅信号を生成する脈波振幅処理部を備える生体信号計測装置。
 前記第1から第3のDC信号或いは前記第1及び第2の総ヘモグロビン変化信号の微分を行う微分器と、前記微分信号を所定の閾値と比較して閾値超過点を出力する比較器と、前記閾値超過点の前後の時間で前の所定の範囲と後ろの所定の範囲の平均化をそれぞれ行い、それらの差分を前記閾値超過点より後ろの前記第1から第3のDC信号或いは前記第1及び第2の総ヘモグロビン変化信号から減算するDC減算器をさらに備える生体信号計測装置。
 前記光送受信部と機械的に結合し空間内の少なくとも一次元以上の動き情報を計測して動き信号を生成する動き計側部と、前記動き信号と前記第1から第3のAC信号それぞれとの時間差に応じて、その動き信号を時間方向にシフトさせた第1から第3のシフトされた動き信号を生成する時間差補正部と、前記第1のAC信号と前記第1のシフトされた動き信号、前記第2のAC信号と前記第2のシフトされた動き信号、前記第3のAC信号と前記第3のシフトされた動き信号それぞれの相関情報からそれぞれの補正係数である第1から第3の補正係数を生成する補正係数生成部と、前記第1から第3の動き信号に前記第1から第3の補正係数をそれぞれ乗算したものを前記第1から第3のAC信号からそれぞれ減算するアーチファクト補正部をさらに備える生体信号計測装置。
 前記時間差補正部は、前記第1から第3のAC信号の時系列データ対して前記第1から第3の動き信号を所定の時間刻みでそれぞれシフトさせながら相関値を求め、その相関値がピークとなる第1から第3のシフト時間をそれぞれ探索する相関探索部と、前記第1から第3の動き信号を前記第1から第3のシフト時間それぞれシフトさせて、前記第1から第3のシフトされた動き信号を生成する時間シフト部を備える生体信号計測装置。
 前記補正係数生成部は、前記第1から第3のAC信号と前記第1から第3のシフトされた動き信号の所定の時間区間における相関係数を第1から第3の相関係数としてそれぞれ生成する相関係数生成部と、その所定の時間区間における前記第1から第3の相関係数の時間変化を第1から第3のエンベロープとしてそれぞれ抽出し、前記第1から第3の相関係数と前記第1から第3のエンベロープをそれぞれ乗算した結果を前記第1から第3の補正係数として生成する相関変動補正部を備える生体信号計測装置。
 前記光送受信部の周りに配置され皮膚に接触する接触面を備え、その接触面を介して皮膚に応力を伝達する第1の応力伝達部であって、その第1の応力伝達部は前記光送受信部表面から皮膚側に向かって飛び出る凸形状を有し、光送受信部の周りの4方向の一組の対向する2方向に凸形状を有して皮膚に接触し、別の対向する2方向には隙間を設ける構造を備える生体信号計測装置。
 前記生体信号計測装置を装着した生体の動脈血圧を血圧源として模擬し、さらに前記光送受信部が配置された生体表面下の血管の血流に対する抵抗を複数の抵抗で模擬する血管モデルと、前記血圧源に当該生体の血圧の時系列情報を供給する血圧情報部と、前記血圧源の変化に応じて生じる前記複数の抵抗端の圧変化を前記第1及び第2の総ヘモグロビン変化信号と比較してそれぞれの誤差信号を出力するモデル対実測照合部と、前記複数の抵抗の抵抗値を変化させ、前記誤差信号が所定の誤差範囲に収まる前記抵抗値を探索して血管運動抵抗値として出力する最適処理部をさらに備える生体信号計測装置。
 前記血圧情報部は、前記第1から第3のAC信号の少なくとも何れか一つから取得した心拍数を入力として、当該生体の血圧変化を推定する血圧推定部を備える生体信号計測装置。
 前記複数の抵抗端の圧変化を、前記第1及び第2の総ヘモグロビン変化信号と比較する係数として第1及び第2の係数γが定義され、前記モデル対実測照合部はそれら第1及び第2の係数γを保持するγ情報部を備える生体信号計測装置。
 前記生体信号計測装置を装着した生体の起立運動を検出する起立ストレス判定部であって、前記光送受信部と機械的に結合し空間内の少なくとも一次元以上の動き情報を計測して動き信号を生成する動き計側部と、その動き信号を入力として前記光送受信部を当該生体の起立運動を検出する起立検出部と、その起立運動によって生じる前記第1或いは第2の総ヘモグロビン変化信号の変化の大きさと幅を計測して出力する前記起立ストレス判定部をさらに備える生体信号計測装置。
 前記生体信号計測装置を装着した生体外部に熱を移動させる、或いは当該生体の内部に熱を移動させるアクチュエータと、前記第1或いは第2の総ヘモグロビン変化信号が所定の閾値内に収まるように前記アクチュエータを制御する制御部をさらに備える生体信号計測装置。
 前記生体信号計測装置の温度を測定する温度計測部と、前記温度計測部で計測された温度信号を所定の時間遅延させた温度信号を出力する温度遅延部と、前記遅延させた温度信号の初期値を保持する初期値保持部と、前記遅延させた温度信号と前記初期値からDCドリフト量を推定するDCドリフト推定部と、前記推定されたDCドリフト量を前記第1から第3のDC信号から減算するDCドリフト減算器を備える生体信号計測装置。
 前記生体信号計測装置の前記第1の応力伝達部に代えて使用可能な校正ヘッドであって、前記校正ヘッドは前記光送受信部からの光を反射させる光反射板と、その光反射板を保持すると共に皮膚に応力を伝達する第2の応力伝達部を備える生体信号計測装置。
 光を照射し生体を通過した光信号の時系列データを計測するステップと、前記光信号の時系列データから所定のDC信号を抽出するステップと、前記DC信号の微分を行うステップと、前記微分信号を所定の閾値と比較して閾値超過点を抽出するステップと、前記閾値超過点の前の所定の第1の範囲と後ろの所定の第2の範囲の平均値をそれぞれ求め、第2の範囲の平均値から第1の範囲の平均値を減算した値を、前記閾値超過点より後ろの前記DC信号から減算するステップを備える生体信号計測方法。
 空間内の少なくとも一次元以上の動き情報を計測する動き計側ステップと、前記光信号の時系列データからなる第1の信号と前記動き情報を含む時系列データからなる第2の信号との時間差に応じて、その第2の信号を時間方向にシフトさせた第3の信号を生成するステップと、前記第1の信号と前記第3の信号との相関情報から補正係数を生成するステップと、前記第3の信号に前記補正係数を乗算した値を前記第1の信号から減算するステップをさらに備える生体信号計測方法。
発明の一般的開示
 前記相関変動補正部は、前記第1から第3のAC信号の瞬時振幅の時系列を前記第1から第3のエンベロープとして抽出するエンベロープ抽出部と、 前記第1から第3のエンベロープから生体情報成分を抑圧した第1から第3の抑圧エンベロープをそれぞれ生成する生体情報成分抑圧部と、前記第1から第3の抑圧エンベロープと前記相関係数生成部で生成された相関係数を乗算する乗算器を備える生体信号計測装置。
 前記動き信号の振幅情報と遅延情報からなる一組以上の波形情報を保持する波形情報部と、前記動き信号と前記波形情報から時系列データである合成波形をそれぞれ生成する波形生成部をさらに備える生体信号計測装置。
 前記波形生成部で生成される一つ以上の波形からなる時系列データを前記動き信号として用いることを特徴とする生体信号計測装置。
 前記波形生成部で生成される一つ以上の波形からなる時系列データを前記第1から第3のシフトされた動き信号として用いて、前記補正係数生成部および前記アーチファクト補正部の処理を実行する事前処理部を備える生体信号計測装置。
 前記波形情報部に波形情報を提供する生体信号計測装置であって、前記動き信号の振幅が所定の閾値以上となる時間を含む第1の時間範囲を検出し、その第1の時間範囲の前後の所定の時間範囲内に所定の閾値以上の前記動き信号が存在しない場合に、その第1の時間範囲の前記動き信号を含む信号を孤立動き信号として出力する孤立動き抽出部と、前記第1から第3の光受信信号から生体の脈波成分を除去した第1から第3の脈波除去光受信信号を生成し、前記孤立動き信号を入力として前記波形生成部により合成波を生成し、前記第1から第3の脈波除去光受信信号とその合成波の差分が最小となる振幅と遅延時間をそれぞれ探索する波形パラメータ探索部を備える生体信号計測装置。
 前記生体情報成分抑圧部は、前記第1から第3のエンベロープを入力として低域濾波された信号をそれぞれ前記第1から第3の抑圧エンベロープとして出力する低域濾波器を備える生体信号計測装置。
 前記生体情報成分抑圧部は、前記第1から第3のエンベロープの所定の次数の回帰信号をそれぞれ前記第1から第3の抑圧エンベロープとして出力する回帰処理器を備える生体信号計測装置。
 前記生体情報成分抑圧部は、前記シフトされた動き信号と前記光受信信号との差周波の位相を抽出する差周波位相抽出器と、その差周波の位相から特定の位相位置を抽出する位相比較器と、その特定の位相位置で前記エンベロープのサンプリングを行いそのサンプリング点をつなぎ合わせた複数のデータ列を生成するサンプリング部と、その複数のデータ列を合成して前記抑圧エンベロープを生成するデータ列合成部を備える生体信号計測装置。
 前記光受信信号から生体信号計測装置を装着する生体の脈波の周波数情報と前記動き信号から動きの周波数情報をそれぞれ抽出し、それら脈波と動きの周波数の差周波を求める差周波検出部と、その差周波に応じて前記生体情報成分抑圧部の構成を切り替える抑圧構成切替部を備える生体信号計測装置。
 本発明の生体信号計測装置、方法及びシステムは、長時間の学習や多量の計算量を使わずにモーションアーチファクト(MA)が低減できる利点がある。
本発明の生体信号計測装置の実施例1のブロック図である。 本発明の時間差補正部の一実施例のブロック図である。 本発明の補正係数生成部の一実施例のブロック図である。 本発明の相関変動補正部の一実施例のブロック図である。 本発明の生体情報成分抑圧部の一実施例のブロック図である。 本発明の同期抽出器の一実施例のブロック図である。 本発明のアーチファクト除去部とその周辺の一実施例のブロック図である。 本発明の時間差補正部の一実施例のブロック図と動作の一例を示す図である。 本発明のエンベロープ抽出部と生体情報成分抑圧部の動作の一例を示す図である。 MAの混入率変動のシミュレーション結果である。 本発明の同期抽出器の一実施例のブロック図と動作の一例を示す図である。 本発明の同期抽出器の動作の一例を示す図である。 本発明の差周波検出部の動作の一例を示す図である。 本発明における直接波と遅延波と合成ベクトルを説明する図である。 本発明の波形情報部と波形生成部の一実施例のブロック図である。 本発明の生体信号計測装置の実施例2のブロック図である。 本発明の生体信号計測装置の実施例2の別のブロック図である。 本発明の孤立動き抽出部と波形パラメータ抽出部のブロック図である。 本発明の孤立動き抽出部と波形パラメータ抽出部の一実施例のブロック図である。 本発明の脈波除去部の一実施例のブロック図である。 本発明の脈波除去部の動作を説明する図である。 本発明の脈波除去部の動作の一例を示す図である。 本発明の波形パラメータ探索部の動作の一例を示す図である。 本発明の波形パラメータ探索部の動作を説明する図である。 本発明の波形パラメータ探索部で取得した波形情報の一例である。 本発明の生体信号計測装置の実施例3の底面図と断面図である。 本発明の生体信号計測装置の実施例3の別の底面図と断面図である。 本発明の光送受信部とその周辺の斜視図である。 本発明の実施例3の利用形態を説明する図である。 本発明の生体信号計測装置に働く応力の一例を説明する断面図である。 本発明の実施例3の利用形態を説明する図である。 本発明の実施例3の利用形態を説明する図である。 本発明の実施例3の利用形態を説明する図である。 本発明の生体信号計測装置の実施例3の別の一例の背面図である。 本発明の実施例4の生体信号計測装置のブロック図である。 本発明のΔDC処理部の動作の一例を示すグラフである。 本発明の脈波振幅処理部の動作の一例を示すグラフである。 本発明の動き処理部の動作の一例を示すグラフである。 本発明によって得られた心拍数とSpO2のグラフである。 本発明の実施例5の生体信号計測システムのブロック図である。 本発明の生体信号計測方法のブロック図である。 本発明の実施例6のブロック図である。 本発明のΔtHb処理部の構成例のブロック図である。 本発明のDC-MA除去部の構成例のブロック図である。 本発明のDC-MA除去部の動作を説明する図である。 本発明の脈波振幅処理部の構成例のブロック図である。 本発明の実施例6の構成を示すブロック図である。 本発明の実施例6の構成を示すブロック図である。 本発明の血管運動処理部の構成を示すブロック図である。 本発明の血管運動計算部の構成を示すブロック図である。 本発明の血管モデルの構成の一例を示すブロック図と血管属性部一例を示す表である。 本発明のモデル対実測照合部の詳細なブロック図とγを設定する操作のフローである。 本発明の生体情報を判定するための構成のブロック図である。 発明者が行ったエルゴメータによるテストのタイムテーブルである。 本発明を体温制御に利用した例のブロック図である。 本発明における血圧情報部への入力信号として取得した血圧値の一例である。 本発明による起立時の総ヘモグロビン変化、脈波振幅、脈拍数の測定例である。 本発明によるテストで取得された無風時と有風時の総ヘモグロビン変化である。 本発明の血管運動処理部を用いてモデルを測定値に合わせこんだ結果である。 本発明における血管運動係数の最適化収束後の値の一例である。 本発明における緑色光、赤色光、IR光の脈波振幅のモデル値と実測値の一例である。 本発明における総ヘモグロビン変化の積分前後の波形の一例である。 本発明における総ヘモグロビン変化の周波数解析の一例である。 本発明の実施例7における校正用のセンサヘッドの一例である。 本発明の校正用のセンサヘッドで取得した校正データの一例である。 本発明におけるDC信号抽出部の構成例である。 本発明におけるDCドリフト補正部とその校正方法の一例である 本発明のDCドリフト補正部により取得した校正波形の一例である。
 図1は本発明の生体信号計測装置の実施例1のブロック図である。時間差補正部101、補正係数生成部102、アーチファクト除去部103を備えており、これらは生体信号計測装置100を構成している。
 時間差補正部101は、生体表面に配置され光の授受によって生体情報を計測する少なくとも一組の光送信器と光受信器からなる光送受信部からの信号PPG(例えばPPG1からPPG3の3つの信号)を入力としている。さらにこの光送受信部と機械的に結合し空間内の少なくとも一次元以上の動き情報を計測する動き計側部からの信号ACCも入力としてる。時間差補正部101はこれらの入力から、動き計測部信号ACCを時間方向にシフトさせた信号を生成する。具体的には時間差補正部101は、時系列データからなる光受信器信号PPG1からPPG3と、時系列データからなる動き計測部信号ACCとの時間差に応じて、動き計測部信号ACCを時間方向にシフトさせた信号ACC1からACC3を生成する。
 補正係数生成部102は、例えば光受信器信号PPG1からPPG3と時間シフトさせた動き信号ACC1からACC3との相関情報から補正係数C1からC3を生成する。アーチファクト除去部103は、例えば時間シフトさせた動き信号ACC1からACC3に補正係数C1からC3を乗算し、その乗算結果を光受信器信号PPG1からPPG3それぞれから減算して、MA除去後の光受信器信号PPG1aからPPG3aを出力する。
 一般にセンサを装着している利用者の動きによって光受信器信号にはMAが生じる。このMAと動き計測部信号ACCとの関係を繰り返し学習の中から係数を求めるのが従来のアプローチとなる。発明者は実験により、MAを動き計測部信号ACCの主要波で表現可能な条件が存在することを見出した。上記時間差補正部101において前提にする時間差はこの主要波の遅れ時間であり、少ない計算量でリアルタイムに計算できる。
 図2は時間差補正部101の詳細なブロック図の一例である。時間差補正部101は相関探索部201と時間シフト部202を持つことができる。相関探索部201は、光受信器信号PPG1からPPG3と動き計測部信号ACCとの相関を調べ、相関最大となる時間位置を決定する。例えば光受信器信号PPG1はPPGによる緑色の光受信信号とすることができる。緑色の光受信信号は、例えば緑色のLEDを用いた光送信器から発せられた光が、皮膚を通って体内で散乱され、光ダイオードを用いた光受信器で受信された信号である。動き計測部信号ACCは、例えば加速度センサによって得られた信号とすることができる。
 上記相関探索部201の処理として、例えば畳み込み演算を行うことができる。畳み込み演算として数式1の演算を行うことができる。この式では光受信器信号PPGと動き計測部信号ACCをずらしながら乗算積分を行っている。例えばこの計算を行うセグメントは20秒の区間であり、サンプリング周波数は100Hzであり、上記ずらす範囲を1秒とする。この場合mとして2000、nとして100となり畳み込み結果Y[n]は100個の時系列データとなる。この100個のデータの中のピークの時間位置を求めることで、相関最大となる時間ずらし量Td1を求めることができる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000001
 同様にして光受信器信号PPG2をPPGの赤色の光受信信号、光受信器信号PPG3をPPGの近赤外線(IR)の光受信信号とすることができる。相関探索部201は、それら赤色やIR信号に対しても緑色信号と同様の処理を行い、赤色やIR信号それぞれの時間ずらし量Td2、Td3を求める。
 時間シフト部202は、相関探索部201で求めた各光受信器信号PPG1からPPG3に対するずらし量Td1からTd3と、動き計測部信号ACCを入力として時間をずらす処理を行う。これによって時間シフト部202は、時間補正後の動き信号ACC1からACC3を生成する。時間補正後の動き信号ACC1からACC3は、それぞれの信号(緑色、赤色、IR)に含まれるMAとの時間のずれがなくなるように補正された動き計測部信号となる。光受信器信号PPGと動き計測部信号ACCとの時間のずれ量は相対的なものであり、時間シフト部202は動き計測部信号ACCを入力としているが、光受信器信号PPG1からPPG3を入力として光受信器信号PPG1からPPG3が動き計測部信号ACCに合わせに行く構成を取ることもできる。
 緑色、赤色、IR信号ごとに時間のずれ量を定義する必要があるのは、第1には光の波長によって生体の皮下に侵入する深さが異なるためと考えられる。例えば緑色光として530nm付近の光、赤色光として660nm付近の光、IR光として880nm付近の光を使うことができる。波長が短い緑色光では皮下への侵入深さが浅く、主として細動脈や毛細血管からの散乱光を検知している。波長が長い赤色光やIR光では皮下への侵入深さが深く、血液量が多いより太い血管からの散乱光を検知している(MAの要因として)。
 第2には、実験による現象論として、直接波的な遅延の小さいMA成分と遅延波的な遅延の大きなMA成分が存在することに起因する。直接波と遅延波の合成による合成波のベクトルは、直接波や遅延波の遅延量が動かなくても、それらの振幅が変化することで合成波のベクトルが変化し、合成波のベクトル角度つまりは遅延量が変化する。現象論として、特に直接波の振幅が変動しやすい現象がある。主として直接波の振幅の不安定性に起因して緑色、赤色、IR信号ごとに時間のずれ量が異なる可能性がある。
 本実施例1では上記合成波を、動き計測部信号ACCから生じた単一波として扱って補正を行っている。比較的簡単な構成で補正が行えるメリットがある。
 動き計測部信号ACCとして例えば3軸や6軸の加速度センサを使うことができる。3軸や6軸の各軸ごとに処理を行うことも可能であるが、処理量低減のために一つの時系列データに合成することができる。この合成方法として、例えば3軸のベクトル合成から合成ベクトルの振幅を求めて一つの時系列データにすることができる。別の方法として、MAの大きさと各軸振幅との相関関係をあらかじめ算出し、その比率に応じて合成する方法等も利用することができる。
 図3は補正係数生成部102の詳細なブロック図の一例である。補正係数生成部102は、相関係数生成部301と相関変動補正部302を持つことができる。相関係数生成部301は、光受信器信号PPG1からPPG3を入力として、さらには時間シフトさせた動き信号ACC1からACC3を入力として、各光信号ごとに相関係数CORR1からCORR3を生成する。この生成処理として、数式2の処理を用いることができる。この式はピアソンの相関係数にPPGの実効値/ACCの実効値を乗算した式になる。PPGの実効値/ACCの実効値の乗算は、ACCの尺度からPPGの尺度に変換する意味を持つ。各光信号ごとに数式2の処理を行う。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000002
 相関変動補正部302は、相関係数生成部301で求めた相関係数CORR1からCORR3の時間変化を補正する。発明者による実験で、相関係数CORR1からCORR3が、計算時間区間であるセグメントの範囲内で定数と置ける場合と、定数にするとMA補正の誤差が大きくなる場合が存在することを見出した。光送受信部や動き計側部は利用者に装着されて利用される。その利用者がランニング等のエクササイズを行うことで大きなMAが生じる。装着の状態やエクササイズの状態が安定していれば、相関係数CORR1からCORR3は定数と置いても大きな誤差を生じない。一方で、例えばエクササイズが安定な繰り返しから乱れて、装着の状態も不安定になった場合、相関係数CORR1からCORR3を定数と置くと大きな誤差を生じる場合がある。
 MAは動き計測部信号が光受信器信号に混入する現象と見なせる。この混入する割合を長時間一定と考えるのが従来の適応フィルタの考え方で、セグメント内で一定(セグメント内で相関係数を定数)と置く場合が相関係数生成部301の考え方、さらにはセグメント内で変化するものとして処理するのが相関変動補正部302の考え方となる。これは発明者による実験により明らかとなった。相関変動補正部302は、相関係数CORR1からCORR3のセグメント内での変化を検出し、その変化に対して補正を行う。
 相関変動補正部302の処理は上記を目的に、時間領域や周波数領域やそれらの組み合わせ等によって行える。図4は相関変動補正部302の具体的な構成の一例である。相関変動補正部302は、エンベロープ抽出部401と生体情報成分抑圧部402と、乗算部403を持つことができる。エンベロープ抽出部401は光受信器信号PPG1からPPG3のエンベロープ(包絡線)を抽出する。生体情報成分抑圧部402はその抽出されたエンベロープの中の生体情報成分を抑圧する。乗算部403はその生体情報成分が抑圧されたエンベロープと、相関係数CORR1からCORR3を乗算し、補正係数C1からC3を出力する。
 エンベロープは周期的なエクササイズ等によって生じる。エンベロープは主として2種類の成分を含んでいる。一つは上で述べた装着の不安定性に起因するもので、もう一つは生体信号とMAとの干渉に起因する。前者は例えば20秒程度のセグメントの中でゆっくりと変化し、そのままにするとMAの除去に誤差を生じる。後者の干渉起因は、生体信号を含んでおり、これを除去すると生体信号が減衰してしまう。これらの現象も発明者による実験で明らかとなった。
 エンベロープ抽出部401や生体情報成分抑圧部402、乗算部403の処理として、時間域や周波数域、ソフトウェアやハードウェア、それらの組み合わせも含めいくつかの方法が実施できる。例えばエンベロープ抽出部401としてヒルベルト変換を用いることができる。ヒルベルト変換は入力信号の瞬時振幅を求める処理になる。入力信号から位相が90度ずれた直交信号を生成し、入力信号と直交信号の合成ベクトルを求めることで瞬時振幅を得る。
 このような処理は、例えばフーリエ変換により時系列データを周波数領域に変換し、周波数領域で直交信号を生成し、逆フーリエ変換により時系列データに戻す処理で行える。このような処理は、ポリフェイズフィルタで入力信号から直交信号を生成することでも行える。全波整流回路や半波整流回路と低域濾波器を用いた包絡線検波によっても、直交信号を含んだ成分を生成することができ、適宜等価な処理が行える。エンベロープ抽出部401は光受信器信号PPG1からPPG3のエンベロープEnv1からEnv3を抽出して出力する。エンベロープEnv1からEnv3は緑色や赤色、IR等の光波長ごとのエンベロープとなる。
 生体情報成分抑圧部402は、例えば図5のような構成を取ることができる。この構成例では、低域濾波器501と回帰処理器502と同期抽出器503を生体情報成分の抑圧に用いている。差周波検出部504は、光検出器信号PPGと動き計測部信号ACCとの周波数の差である差周波を検出し、生体情報成分の抑圧構成を切り替える。抑圧構成切替部(SEL)505は切り替えに用いるセレクタである。
 生体情報成分抑圧部402は、エンベロープEnv1からEnv3を入力として、生体情報成分が抑圧されたエンベロープEnv1aからEnv3aを出力する。ここで行う抑圧は、生体信号成分のみ減衰させることが好ましい。前述したように、エンベロープには装着等の変動成分と、信号とMAの干渉成分が含まれる。装着等の変動成分は、相関係数CORRのセグメント内の変動であり、動き計測部信号ACCが一定でも変動する。つまりMAの元となるACCが一定でもMAに変動が生じる。この変動の要因としては、動き計測部と生体との機械的結合状態の変化や生体の反応系の変化が考えられる。動き計測部信号ACCとMAとの結合が、相関係数CORRを中心に変化している状態になる。
 このACCとMAの結合をMA混入率と定義すると、MA混入率は係数1を中心とするセグメント内の時間の関数となる。このMA混入率と生体信号成分の周波数成分が離れている場合と近い場合で生体信号成分の除去の難しさが変わってくる。
 例えば生体情報として心拍数(HR)を考える。心拍数が2Hz(120bpm、一分当たりのビート数)、ランニングのピッチが2.5Hzの場合、エンベロープの主たる周波数はこれらの差周波である0.5Hzとなる。MA混入率の変動として例えば0.05Hz、つまりセグメント20秒の中に1周期の変化がある場合を考えると、上記差周波0.5Hzとは10倍の開きがあり、比較的容易に生体情報成分を除去できる。この場合生体情報成分抑圧部402として低域濾波器501を使うことができる。例えば遮断周波数0.2Hz程度の低域濾波器501を使うことで、MA混入率変動を通過させHR成分を除去することができる。生体情報成分抑圧部402はこのようにして、生体情報抑圧後のエンベロープEnv1aからEnv3aを生成する。
 ここで心拍数が2Hzであるのに、差周波0.5Hzに生体情報が含まれる理由について説明する。ランニングピッチ2.5Hzの成分をα、心拍数2Hzの成分をβとすると、光受信器信号には両者の合成信号が存在し、数式3で表現される。この右辺は両者の平均周波数2.25Hzの振幅変調成分として差周波α―βが存在することを意味する。この差周波成分がゼロになると、右辺はゼロになってしまう。エンベロープにこの差周波成分が残っていると、アーチファクト除去部103においてMA成分と一緒に差周波成分が除去され、信号成分がその分消失してしまう。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000003
 次にランニングピッチが2.5HzのままHRが2.2Hz(132bpm)になった場合を考える。差周波は約0.3Hzとなり上記低域濾波器501の遮断周波数0.2Hzに近づき、HR成分がわずかに通過してしまう。低域濾波器501として3次のバターワースを使用すると、上記の場合差周波の振幅は10%程度減衰せずに残ってしまい、信号が10%程度減衰してしまう。この場合生体情報成分抑圧部402として回帰処理器502を使うことができる。回帰処理器502は、エンベロープを回帰近似することで、エンベロープ内の信号成分を抑圧することができる。エンベロープの中心線付近を近似式が通過して信号成分が入らない。回帰近似の次数として例えば3次程度を使うことができる。回帰処理器502はこのようにして、生体情報抑圧後のエンベロープEnv1aからEnv3aを生成する。
 次にランニングピッチが2.5HzのままHRが2.4Hz(144bpm)から2.6Hz(156Hz)になった場合を考える。差周波は約0.1Hz以下となり3次の回帰近似でも、差周波によっては近似式が差周波成分を含むようになる。近似式の次数を2次や1次に下げることでエンベロープの中心付近を近似式が通過するよう持っていける場合があるが、今度は除去したいMA混入率変動の成分が減衰してしまう。近似式がMA混入率変動に追従できなくなる。この場合生体情報成分抑圧部402として同期抽出器503を用いることができる。
 同期抽出器503は、エンベロープに差周波成分が含まれないよう、一例として図6の構成を持つことができる。同期抽出器503は、差周波の位相を抽出する差周波位相抽出器601と、その差周波の位相から特定の位相位置を抽出する位相比較器602と、その特定の位相位置でエンベロープのサンプリングを行いそのサンプリング点をつなぎ合わせたデータ列を複数生成するサンプリング部603と、その複数のデータ列を合成して生体情報抑圧後のエンベロープEnv1aからEnv3aを生成するデータ列合成部604を持つことができる。同期抽出器503は、差周波に追従しないようにしながら、MA混入率変動に追従する。
 同期抽出器503は、差周波位相抽出器601においてそのセグメント内の差周波の位相情報を必要とする。差周波の位相情報を得るために、心拍波形HRのピーク位置の情報と、時間シフトさせた動き計測部信号ACCのピーク位置の情報を使うことができる。時間シフトさせる前の動き計測部信号ACCを用いても良い。心拍波形HRのピーク位置情報を得るにはMAをある程度除去した光受信器信号PPGが必要となる。そのため1次の近似関数による回帰処理器502を使うなどして1回MAを除去してから同期抽出器503を使うことができる。
 光受信器信号PPGは、波長によってMAの大きさが異なる。一般に緑色信号PPG1のMAレベルは小さく、その変動も小さい。これは緑色信号PPG1が皮下の浅い部分からの散乱を拾っていることに起因する。皮下の浅い部分には細動脈や毛細血管が存在し、一部の細動脈に血流変化が生じても、他の大多数の細動脈や毛細血管の血流がそのままであること、いわゆる多様性に起因していると考えられる。
 例えばこのMAレベルが比較的小さい緑色信号PPG1のMA除去を、1次の近似関数による回帰処理器502を使った処理で先行させ、MA除去後の緑色信号PPG1aから心拍波形HRのピーク抽出を行うことができる。赤色信号PPG2やIR信号PPG3はMAレベルが大きく、その変動も大きい。赤色信号PPG2やIR信号PPG3の処理は、緑色信号PPG1で求めた心拍波形HRのピーク抽出を使った同期抽出器503の処理を行うことができる。緑色信号PPG1の処理を、この暫定的に求めた心拍波形HRを使って、再度同期抽出器503で行うこともできる。
 差周波検出部504は、生体情報成分抑圧部402としてどの方式を使うか決定する。どの方式を使うかは、差周波の周波数が分かればよく、正確な位相情報は必要としない。例えば処理を行うセグメントの前のセグメントにおいて、MA補正後のPPG1からPPG3と、動き計測部信号ACCを使って、生体情報である脈波の周波数(心拍数)と動き計測部信号ACCの周波数を求めることができる。求めたHR周波数とACC周波数から差周波の周波数を求めることができる。例えば図13に示すように、直前のセグメントの末尾付近の差周波の周波数を求め、当該セグメントの差周波の周波数として使うことができる。尚心拍数HRが動き計測部信号ACCの周波数より上回っても本発明の各回路は動作する。
 各セグメントは図13に示すように、少しずつオーバーラップさせることが好ましい。例えば20秒のセグメントの中央10秒を当該セグメントの担当エリアとして、残り前後5秒をオーバーラップエリアにする。これによってHRのピーク抽出が担当エリアの境界で不安定になる現象を回避できる。MAの除去は大きな動きが入った時のみ実行することもできる。MAの生成を対策したセンサ(光送受信部とその周辺)では、小さな動きでは生体情報が壊れない場合が多い。計算量を減らす意味でも、MAの除去を行う動きの大きさや長さを制限することができる。
 例えば20秒のセグメントを持つ場合、心拍の周期として1秒から1/3秒程度を仮定すると、20から60の脈波が存在する。目的によっても異なるが例えば脈波振幅の実効値を求める場合、セグメント内に1割程度の欠落があっても、それを除外して当該セグメントの実効値をある程度の精度で求めることができる。その場合大きな動きが2秒以上続いた場合にMA補正を起動させる制御を行うことができる。
 図7はアーチファクト除去部103とその周辺の接続を示す図である。各信号の添え字の数字は省略しているが、例えば光受信器信号PPG(t)としては、緑色信号PPG1、赤色信号PPG2、IR信号PPG3を順次使用して、或いは並列に処理するなどして処理していく。その時、時間シフトさせた動き信号ACC(t+Δt)や、エンベロープEnv、相関係数CORR、補正係数Cも、緑色なら緑色用の信号、赤色なら赤色用の信号、IRならIR用の信号を使用する。アーチファクト除去部103は、時間シフトさせた動き信号ACC(t+Δt)に補正係数Cを乗算し、その乗算結果を光受信器信号PPG(t)から減算する。波長は、緑色、赤色、IRに限らず任意の波長を選択できる。使用する波長の数も任意に選択できる。
 図8は時間差補正部101の構成と動作の一例を示す図である。図8(a)に示すように、相関探索部201は、数式1の畳み込み演算を行う畳み込み演算部(Conv)601と、畳み込み演算結果の中のピークの時間位置を求めるピーク位置探索部602を持つことができる。
 図8(c)は光受信器信号PPG(IRによる取得)と動き計測部信号ACCのセグメントの一部を抜き出したものである。セグメントとして20秒程度の時間を持たせることができる。装着者はランニングを行っている。光受信器信号PPGには生体情報とMAが含まれている。動き計測部信号ACCは3軸加速度センサの各軸をベクトル合成した合成値を表示している。光受信器信号PPGも動き計測部信号ACCも、DC成分を除去している。光受信器信号PPGの縦軸は、A/D変換後の階調数(LSB)を表す。動き計測部信号ACCの縦軸は重力加速度(g)を表す。
 光受信器信号PPGと動き計測部信号ACCとの間には遅延Δtが存在する。発明者による解析で、光受信器信号PPGには比較的遅れが小さい直接波的な成分と、比較的遅れが大きい遅延波的な成分が含まれる条件が存在することが分かっている。必ずしも2波に特定されないが、主要な成分波として2波として取り扱うことが可能な条件が存在する。この2波の取り扱いを、数を増やしたN波で行うことは可能である。求めるMA残差の水準と計算量のトレードオフが存在する。この直接波と遅延波の振幅と位相差(角度)に応じて合成ベクトルの位相差が決定され、遅延量Δtが決まってくる。
 この遅延量Δtが存在する状態ではMAの除去は難しい。畳み込み演算部(Conv)801は、図8(b)に示すように光受信器信号PPGと動き計測部信号ACCの畳み込み演算を行う。例えば前後500msの範囲の畳み込み演算を行う。ピーク位置探索部802は、畳み込み演算波形のピークを探索して、ピークの時間位置を決定する。ここでは500msをずれがゼロの時間と置いており、Δtが遅延量となる。光受信器信号PPGと動き計測部信号ACCは時間のオフセットを持つ場合があり、前後の時間の探索が好ましい場合があるが、状況によっては前方のみ或いは後方のみの時間探索でもよい。Δtが探索できたら例えば動き計測部信号ACC(t)に対して時間シフト部202による補正を行い、時間シフトさせた動き信号ACC(t+Δt)を得る。
 図8(b)において、3つの相関ピークが生じるのは、連続的なランニングステップの中で隣のステップに相関を生じているためである。光受信器信号PPGには脈波成分が含まれているため、3つの中の最大の相関ピーク箇所がMA残差を最小にする時間位置ではない。この場合、複数あるピークの中の最も遅延量が小さいピーク位置を採用することができる。或いは時間位置の初期値を決めておき、そこからの時間距離が小さいピーク位置を採用することもできる。相関探索部201でテスト的に求めた時間ずらし量Td1からTd3に応じて、システムとして初期値を設定することもできる。正のピークを取るか負のピークを取るか、或いは正負両方のピークを取るかは、光受信器信号PPGや動き計測部信号ACCの装着方法、直接波や遅延波の状況によって適宜決めることができる。
 図9(a)は相関変動補正部302のエンベロープ抽出部401と生体情報成分抑圧部402の動作の一例を示す。図8(c)と同じ実験の同じ時間範囲のIR信号PPG3の波形である。エンベロープ抽出部401によってエンベロープ波形Env3が得られる。生体信号成分とMA成分との干渉によってエンベロープEnv3は差周波の振動を持つ。差周波の周波数はPPG信号内の脈波周波数とACC周波数との差になる。エンベロープEnv3は数式3に示すように生体信号成分を含んでおり、これをそのまま使うとアーチファクト除去部103において信号が減衰してしまう。
 生体情報成分抑圧部402は、エンベロープEnv3から生体情報成分が抑圧されたエンベロープEnv3aを生成する。この例では生体情報成分抑圧部402として遮断周波数が0.2Hzの低域濾波器501を使用している。差周波の周波数は0.6Hzあたりにあり、この0.6Hzに生体情報成分が含まれている。低域濾波器501を通過したEnv3a波形においてこの0.6Hz成分は抑圧されている。この例は比較的MA混入率変動が少ない例であり、Env3a波形はゆっくりとわずかに変化している。Env3a波形はそのセグメント内の平均値で除算して正規化する。正規化後のEnv3aに対してCORR3係数を乗算し補正係数C3を得る。
 アーチファクト除去部103は、上記によって得られた補正係数C3を、時間方向にシフトさせた信号ACC3に乗算し、その乗算結果を光受信器信号PPG3から減算して、MA除去後の光受信器信号PPG3aを出力する。図9(b)はその時の波形であり、除去前のMAを含んだPPG3からMAを除去したPPG3aを得ている。除去前のMAの振幅は20dB程度減衰し、MAを除去したPPG3aにMAはほとんど見えない。従来の適応フィルタでは10dB程度の減衰であり、本発明では減衰率も改善している。これはセグメントごとに補正係数を求め、さらにセグメント内の変動にも対応している効果と考えられる。このテストでは実際に光送受信部や動き計測部を装着し、無線でデータをRpasbery Pi4に伝送し、Rpasbery Pi4で図8や図9の処理をリアルタイムで実行できている。
 図10は混入率変動が大きい場合の影響に関してシミュレーションした結果である。図10(a)に示すように、生体信号SIGの周波数として2Hz(120bps)、動き計測部信号ACCの周波数、つまりはランニングピッチとして2.5Hzの条件を与えている。MAとして生体信号SIGの10倍の振幅を設定し、さらに混入率変動として先頭からセグメント末尾にかけて1.5倍の混入率変動があることを仮定している。図10(b)に示すように、生体信号SIGとACCの差周波周波数0.5HZがエンベロープEnv波形に現れている。このEnvを考慮せずに、補正係数Cとして相関係数CORRをそのまま使うと、図10(c)のPPGa no Env波形のように大きなMA残差を生じる。本発明によるMA補正後の波形PPGaは、SIG波形を再現している。
 図11は同期抽出器503の構成例と動作例である。図11(a)は、図6の差周波位相抽出器601の構成例を示している。ピーク抽出部1101は、光受信器信号PPGと動き計測部信号ACCから脈波ピークBeatと動きピークPitchを生成する。回帰処理部1102は、脈波ピークBeatと動きピークPitchそれぞれの回帰式を求める。減算器1103は脈波ピークBeatと動きピークPitchそれぞれの回帰式の差分を取り、差周波信号Pitch-Beatを求める。
 図11(a)の動作を図11(b)に示す。例えば緑信号PPG1を用いてピーク抽出部1101は、脈波ピークBeatを抽出する。脈波ピークBeatは、例えばセグメント内の脈波ピーク位置の時刻データである。脈波ピークBeatの抽出では外れ値を含む場合があり、回帰処理部1102の処理は外れ値の影響を受けにくいロバスト回帰を行うことが好ましい。例えば脈波ピーク位置の時刻データBeatの微分である脈波間隔ΔBeatのロバスト回帰を行い、外れ値Beatを除外する。
 外れ値除外後のBeatは、位相と時刻の関係に変換すると良い。例えば20秒のセグメントにおいて0.5秒周期のBeatが存在する場合、20秒の中に40周期のBeatが存在する。20秒の間に40*2π位相変化するBeatの回帰式を生成できる。同様にして時間シフトさせた動き計測部信号ACC1(緑色信号)も同様の処理を行い、動きピークPitchの回帰式を得ることができる。差周波信号Pitch-Beatも位相φに関する時間の関数であり、例えば図9(b)のようになる。位相比較器602は例えばnを整数として2nπの時刻の集合と、(2n+1)πの時刻の集合を抽出する。尚位相は正確に2nπや(2n+1)πである必要はなく、誤差の範囲内で幅を持たせることができる。
 サンプリング部603は、これら2nπと(2n+1)πの時刻における光受信器信号PPGをサンプリングする。図12は実際に同期抽出器502の処理をかけた実験結果である。ここではIR信号PPG3に対して処理をかけている。図12の黒いドットはサンプリングした点である。データ列合成部604は、例えばこれら2nπや(2n+1)πの各サンプリング集合に対して回帰式を求める。データ列合成部604は、これら複数の回帰式を合成することで生体情報成分が抑圧されたエンベロープEnv3aを生成することができる。合成処理としては、複数の回帰式の中心を通る波形を生成する等の処理が行える。
 サンプリングする位相は2nπや(2n+1)πである必要はなく、任意の位相を選択することができる。但し複数の回帰式を合成した後の合成波形がエンベロープEnvの中心付近を通るように位相を組み合わせる必要がある。位相の位置を増やすことで、MA混入率変動への追従性を改善することができる。図12では心拍数の周波数とランニングピッチの周波数が接近し、差周波の周波数が低下している。この状況でも同期抽出器503は、生体情報成分を抑圧したエンベロープを抽出できる。図12ではやや大きなMA混入率変動が起きており、エンベロープによる補正を行うことでMA残差を下げる効果がある。エンベロープを考慮せずに、セグメント内で定数の補正係数を使って補正を行うと、セグメント内の混入率変動によって補正量が足りない部分、過度の部分が生じてMA残差を生じる。
 本実施例では、直接波と間接波の合成ベクトルに着目し、時間差補正部101でMAの位相と動き計測部信号ACCとのずれを補正して、適切な補正を可能にしている。図14に直接波vAと遅延波vBとその合成ベクトルvCを示す。直接波vAと遅延波vBとの角度δが一定でも、例えば直接波vAの振幅が変化すれば合成波vCの角度φ(ここでは直接波vAに対する角度)が変化する。この直接波、遅延波の起源は、装着している光送受信部を備えたセンサのバウンド現象と考えられる。つまりある加速度が加わった瞬間、その瞬間の時間近傍に直接波MAが生成され、さらに上記センサのロールやピッチやヨー(Roll,Pitch,Yaw)による変位により遅れた時間に遅延波MAが生成される。
 センサを装着する部位によって直接波や遅延波の各振幅や角度δは異なると考えられる。例えば直接波の起源となる応力が作用する生体部位の近傍に太い動脈がある場合、動脈の圧迫によりMAが生じる。前述したように細動脈の多様性に比べ、太い動脈の多様性は少ない。緑色光に比べ赤色光やIR光は深部の太い動脈からの散乱の影響を主として受ける。太い動脈に作用する応力が加速度変化のたびに毎回同じ作用をするとは限らない。結果的に赤色光やIR光の直接波に振幅変化が生じる。発明者による実験で、直接波の振幅変動が遅延波より起きやすい現象を確認しており、このようなメカニズムに起因している可能性がある。
 時間差補正部101は上記現象がある中でも、合成波vCの角度φの変化に追従してMAの補正が行える。発明者による実験では数十msのずれでもMA残差が大きくなる現象を確認している。補正係数生成部102はセグメント単位でこの時間のずれを考慮した補正係数生成を行う。さらに相関変動補正部302は、セグメント内のMA混入率変動に追従して補正係数を調整する。これらは繰り返しの学習の中で係数を決定する従来の適応フィルタにみられない効果である。そもそもこれらの課題も従来明確でなかった。
 本実施例では、図15に示すように波形情報部1501と波形生成部1502をさらに持つ。波形情報部1501は、動き計測部信号ACCを元にした一つ以上の波形の波形情報を保持する。波形生成部1502はこの波形情報から一つ以上の波形からなる時系列データを生成する。
 図16は図1の生体信号計測装置100を含めた生体信号計測装置1600のブロック図である。波形情報部1601は例えば図14で説明した直接波vA、遅延波vBの振幅情報や遅延情報を保持している。直接波や遅延波の状況は皮下への侵入深さの波長依存性に起因して、波長ごとに異なるため、波形情報Info1からInfo3(Info1は緑色光用、Info2は赤色光用、Infoo3はIR光用)として別々に保持する。波形生成部1602は、これらの波形情報Info1からInfo3と動き計測部信号ACCを元にして、合成波形Wave1からWave3を生成する。時間差補正部101はこの合成波形を入力として、時間方向にシフトさせた信号ACC1からACC3を生成する。
 実施例1では動き計測部信号ACCを直接時間差補正部101の入力としていたのに対し、本実施例では上記のように蓄積している波形情報を元にして生成した合成波形Wave1からWave3を入力としている。例えば波形情報部1601が保持する直接波vAの振幅情報をCoefA、遅延情報をDelayA、遅延波vBの振幅情報をCoefB、遅延情報をDelayBとする。これら波形情報と動き計測部信号ACCを使って数式4により合成波形Waveを生成する。例えば緑色光の波形情報Info1は、これら波形情報CoefA1、DelayA1、CoefB1、DelayB1を持つ。波形生成部1602は、これら波形情報と動き計測部信号ACCを使って数式4により緑色光の合成波形Wave1を生成する。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000004
 このようにして生成された合成波形Wave1からWsve3は、波形情報Info1からInfo3が適切に設定されていれば、図14における合成波vCとなる。但し実際には波形情報Info1からInfo3の振幅や遅延などの各要素の正確な値をリアルタイムで少ない計算量で求めることは難しい。発明者による実験では、特に直接波の振幅CoefAが少なくとも装着のたびに比較的大きく変化し、遅延波の振幅CoefBが比較的小さいが変化し、遅延DelayAやDelayBがどちらも数十ms程度変化する。この変化の要因として、センサの装着状態の変化や、前述したロール、ピッチ、ヨーの一様でない動きや、生体の皮下の状態変化等が考えられる。
 波形情報Info1からInfo3は、光送受信部とその周辺からなるセンサの構造や装着位置等によって決まる要素、個人差等によって決まる要素、各回の装着時のフィッティング等で決まる要素、装着中の変動要素に大別される。各要素の占める割合によって、波形情報Info1からInfo3は、センサの設計時にデフォルト値を設定する方法、個人が初めて利用する際に取得する方法、装着のたびに取得する方法、装着中も変動を仮定して追従する方法等が行える。求める精度や前提にする加速度レベルによっても変わってくるが、前述の発明者による実験を総合すると、設計段階で初期値として波形情報Info1からInfo3を設定し、各回の装着状況の変化や個人差があることを考慮して更新のタイミングがあれば波形情報Info1からInfo3を更新して記録し、更新のタイミングがなければ過去の最新の更新値を利用し、装着中は変動を仮定して変動に追従することが好ましい。
 MAに含まれる動き計測部信号ACC波形成分を直接波と遅延波の2波に限定する必要はなく、3波以上の波形を仮定して同様の処理をすることは可能である。計算量と求める精度によって決定することができる。時間的に接近した2波は1波として扱ってもある誤差の範囲で有効であり、相対的に小さな波形もある誤差の範囲で無視することは可能である。直接波と遅延波の2波として処理した場合、その他の波形成分はこの直接波と遅延波の2波の中にベクトル合成として入ってくる。逆に直接波或いは遅延波のどちらかが相対的に小さく、1波として扱っても問題がない場合も存在しうる。
 装着中の変動に追従する方法として、実施例1で開示した構成を用いることができる。直接波と遅延波の波形情報CoefA、DelayA、CoefB、DelayBが波形情報部1601に保存され、その設定値の周りでMAが変動している状況を仮定する。前述のように発明者による実験では、CoefAが比較的変動が大きい。つまり図14の直接波ベクトルvAの振幅の変動が大きく、その結果合成波ベクトルvCの振幅と角度φを変化させる度合いが大きい。時間差補正部101の入力として合成波形Wave1からWave3を入力することで、角度変化、つまりは遅延時間変化が起きているMA波形に対して時間的なずれを探索して合わせに行く。
 補正係数生成部102は、MAの振幅方向に対する補正係数をセグメント単位、さらにはセグメント内変動に対しても探索して補正係数を生成する。この補正係数は、補正元の合成波に含まれる直接波と遅延波の両方に一律にかかることになる。MAの中の合成波の変動が、設定値CoefA、DelayA、CoefB、DelayBの周りの変動で、許容される誤差の範囲で補正が行えていれば有効となる。発明者による実験では、直接時間差補正部101の入力として動き計測部信号ACCをそのまま使うより合成波形Waveを使った方がMA残差が10から20%程度低下する。
 図17は図1の生体信号計測装置100を含めた生体信号計測装置1700のブロック図である。図17では直接波と遅延波の補正を順次行う。図16の構成に加え、事前処理部1701を持つ。事前処理部1701で直接波或いは遅延波のどちらか一方を補正信号としてMAを補正した後、その補正結果をさらに図1の生体信号計測装置100に入力して処理する。生体信号計測装置100内の時間差補正部101の入力は、動き計測部信号ACCをそのまま使用する。生体信号計測装置100は、事前処理部1701の残った遅延波或いは直接波を含めたMA補正残差全体を扱う。
 例えば直接波の除去を事前処理部1701にて事前に行う場合、波形情報部1601は直接波の遅延情報DelayAを波形情報Infoとして出力する(各光波長それぞれにおいて)。波形生成部1602は波形情報Infoに基づいて直接波の合成波形Waveを生成する。事前処理部1701内の補正係数生成部102とアーチファクト除去部103は、そのままこの直接波による合成波形Waveを使用して、それぞれ補正係数生成とアーチファクト除去を行う。生体信号計測装置100は、事前処理部1701のMA補正後の光受信器信号PPGaを入力として、遅延波成分を含め残ったMA全体を補正する。
 上記処理において、事前処理部1701は直接波の時間位置を、波形情報部1601の遅延情報DelayAを使用して決め打ちで処理するため、事前処理部1701には時間差補正部を必要としない。事前処理部1701の補正係数生成部102が直接波の振幅成分を求めて補正するため、波形情報部1601の直接波の振幅情報CoefAを必要としない。事前処理部1701の事前処理として遅延波を使うこともできる。発明者による実験で、事前処理として直接波を使った場合も遅延波を使った場合も概略同程度のMA除去性能が得られる。そのMA除去性能は、図16の構成の合成波を使った場合より10から20%改善する。事前処理部1701の補正係数生成部102やアーチファクト除去部103は、生体信号計測装置100内の当該ブロックと適宜共用可能である。図16の構成に対して事前処理部1701の処理が増えるため、求めるMA残差のレベルに応じて使い分けることができる。
 波形情報部1601の波形情報Info1からInfo3を取得する方法として、さらに図18の孤立動き抽出部1801と、波形パラメータ抽出部1802を持つことができる。孤立動き抽出部1801は、動き計測部信号ACCを入力として、周囲から時間的に孤立した閾値以上の動きACCaを抽出する。波形パラメータ抽出部1802は、孤立動き抽出部1801で抽出した孤立した動きを使用して、光受信器信号PPG1からPPG3に含まれるその孤立した動き成分のパラメータを抽出する。
 図19は孤立動き抽出部1801と波形パラメータ抽出部1802の構成例である。孤立動き抽出部1801は、動き計測部信号ACCの振幅を所定の閾値と比較する振幅比較器1801と、その所定の閾値を超えた時間範囲やその前後の時間範囲をチェックして、チェック結果に応じて孤立動き信号ACCaを出力する時間比較器1802を持つことができる。波形パラメータ抽出部1802は、光受信器信号PPGから脈波成分を除去して出力する脈波除去部1903と、脈波が除去されMAが残った光受信器信号PPGbと孤立動き信号ACCaから波形情報Infoを取得する最小誤差探索部1904を持つことができる。波形パラメータ抽出部1802として特異スペクトル分析(SSA)等のスペクトル分解方法を用いることも適宜行える。
 波形情報部1601の波形情報Infoとして、直接波と遅延波の2波のパラメータを取得する場合を例にして説明する。動きに対するMAの反応を少ないアクションで取得するために、インパルスに近い動きを利用ことが好ましい。インパルスに近い加速度が生成される状況として、起立時や着座時、ジャンプ等がある。センサを装着した普段の生活の中で、例えば座位や臥位から立位に起立する動作やその逆の動作を検出してパラメータ検出に利用する方法が一つある。さらにエクササイズの中で同様の状況を検出する方法もある。さらにセンサの利用マニュアルとして、センサの初めての利用開始時や精度を必要とするデータ取得時の前にジャンプ等の動作を入れることを推奨する手順を明示することができる。センサを含めたシステムとしてパラメータの更新が必要とされるときに利用者に通知してジャンプ等の動作を指示する形態も行える。
 図21(a)は1回のジャンプ動作を行った場合の動き計測部信号ACC波形の変化を説明する図である。ジャンプ動作は1回のジャンプであっても上方向に2ピーク、下方向に1ピークの主要なピークを生じる。ここでは重力加速度を正にとり、動き計測部信号ACC波形のDC成分は除去している。ジャンプの跳躍時に一つ目の上向きのピークが生じ、空中での自由落下時に下向きのピークが生じ、着地時に2つ目の上向きのピークが生じる。座位から立位への起立では上方向に1ピーク、続いて下方向に1ピーク、つまり図19の2つ目の上向きのピークがない波形が生じる。立位から座位への着座では下方向に1ピーク、続いて上方向に1ピーク、つまり図19の一つ目の上向きのピークがない波形が生じる。以後ジャンプ動作を前提にして説明を行うが、起立動作や着座動作でも同様の処理を行うことができる。
 振幅比較器1901は、例えば閾値として振幅方向にv1の閾値を設ける。v1としては重力加速度(g)やA/D変換後の階調数(LSB)等を単位として用いることができる。閾値v1はジャンプ等の動作からパラメータを精度よく取得できるようにある程度大きな値にすることが好ましい。一方であまり大きな値を用いると利用者によっては検出できない場合も生じる。閾値v1として例えば0.5g程度の値を用いることができる。利用者の身体能力や運動時の振舞いを学習してシステムが閾値v1の値を更新することもできる。
 図21(a)に示すように、振幅比較器1901の判定結果は、時間taからtbの期間と時間tcからtdの期間に真(True)となり、そのほかの期間は偽(False)となる。時間比較器1902は、このTrueの時間を含む第1の時間範囲t1を生成する。具体的には、時間tbからtcの間に隙間があるが、この期間も含めて時間taからtdの時間を第1の時間t1と判定する。利用者が行える大きな加速度を伴う動作は限られており、ジャンプや起立や着座はそれ以上分解することが難しい一つの動作である。限られた動きの中で、2つのピークが生じる場合も利用することが好ましい。この時間tbからtcにかけての時間tc-tbは、あまり長くなるとその後に続く処理に影響を与えるため、長さを制限することが好ましい。時間tc-tbを埋める方法として、直前のTrueの時間tb-taとのデューティー比を用いる方法や、何ms以下という絶対的な値を用いる方法、フィルタ等を用いる方法など任意に行える。
 時間比較器1902は、さらに第1の時間範囲t1の前後に所定の時間範囲を設定する。例えば図19(a)に示すように、第2の時間範囲t2と第3の時間範囲t3を設定する。第2の時間範囲t2と第3の時間範囲t3は、脈波除去部1903において動きが少ない期間として用いる。さらにこの動きの少ない期間は、最小誤差探索部1904においてインパルス的な処理を容易にする意味がある。第2の時間範囲t2と第3の時間範囲t3は同じ値を用いても良い。
 時間比較器1902は、第2の時間範囲t2と第3の時間範囲t3に閾値以上の動き計測部信号ACC波形が存在しない場合に第1の時間範囲t1とその周辺の信号を孤立動き信号ACCaとして出力する。この時間範囲t1とその周辺の時間範囲としては、波形パラメータ探索部1802での探索に必要な時間範囲が設定できる。図21では第2の時間範囲t2と第3の時間範囲t3も、第1の時間範囲t1と同じ閾値v1を用いているが、脈波除去部1903や最小誤差探索部1904の性能等に応じて適宜値を変えることができる。
 図20は脈波除去部1903の構成例である。脈波除去部1903は、例えばピーク抽出部2001と、テンプレート生成部2002、脈波合成部2003、脈波演算部2004を持つことができる。ジャンプ動作等によって光受信器信号PPGには大きなMAが生じる。光受信器信号PPGに含まれる生体情報である脈波はMAに重畳しているため、パラメータの抽出の前に脈波成分を除去することが好ましい。ジャンプ等の大きな動きが生じている第1の時間範囲t1では脈波波形を直接推定することが難しい。
 ピーク抽出部2001は第1の時間範囲t1の前後である第2の時間範囲t2と第3の時間範囲t3において脈波のピークを検出する。テンプレート生成部2002は、抽出された脈波ピークを使って、脈波ピーク間のテンプレート波形Tempを生成する。例えば図21(b)に示すように、テンプレート生成部2002は、第2の時間範囲t2、第3の時間範囲t3に存在する有効な脈波波形のピーク位置から次のピーク位置までの波形を抽出し、抽出した複数の波形のピーク位置を合わせて同期加算して、図21(c)に示すようなテンプレート波形Tempを生成する。
 脈波合成部2003は、第1の時間範囲t1とその周辺の脈波波形をテンプレート波形Tempから生成する。第1の時間範囲t1は閾値以上の変化が生じている部分であるが、その前後にも閾値以下であるが利用者の動きが生じている。さらにテンプレート波形のつなぎ目として、ピーク位置を用いているため、第1の時間範囲t1から余裕を取った第4の時間範囲t4を、テンプレート波形Tempへの置き換え範囲として使用することが好ましい。図21(b)の破線部は、テンプレート波形Tempから生成した脈波波形に置き換えた様子を示す。
 この置き換えに際して、置き換える部分の脈波ピーク位置の情報が必要となる。この第1の時間範囲t1とその周辺の脈波ピーク位置は、第2の時間範囲t2と第3の時間範囲t3の中の有効なピーク位置から推測することができる。例えば脈波合成部2003は、第2の時間範囲t2と第3の時間範囲t3の中のピーク位置の時間間隔(脈波間隔)を時間の関数として回帰分析を行い、回帰式を求める。回帰式から第4の時間範囲に存在するピーク数として最も誤差が小さくなるピーク数を推定し、そのピーク数に基づいて第4の時間範囲の脈波波形をテンプレート波形Tempから生成して脈波合成波形PWとして出力する。尚テンプレート波形Tempは脈波間隔に応じて時間方向の長さを調整する。
 脈波減算部2004は、脈波合成波形PWを光受信器信号PPGから減算して、脈波除去後の光受信器信号PPGbを出力する。図22に脈波除去前の光受信器信号PPGと脈波除去後の光受信器信号PPGbを示す。図22の上のグラフは緑色信号、下のグラフがIR信号の場合である。図22は発明者による実験結果であり、1回ジャンプの動作を行っている。PPGに存在する脈波成分は、PPGbではほぼ除去されている。
 最小誤差探索部1904は、脈波が除去された光受信器信号PPGbと孤立動き信号ACCaから波形情報Infoを探索するにあたって、まず孤立動き信号ACCaと初期波形情報Infoiを使用して2つ以上の波形の合成波初期値Waveiを生成する。次にこの合成波初期値Waveiを初期値として、孤立動き合成波Waveの各振幅と各遅延時間を探索する。探索においては、脈波が除去された光受信器信号PPGbと合成波の差分を求める評価式Errを用いて、その差分が最小となる計算を実行する。
 孤立動き合成波Waveとして直接波と遅延波の2波の場合を例にとると、孤立動き合成波Waveは数式4が使用できる。直接波にさらに複数の波が含まれたり、遅延波にさらに複数の波が含まれるなど、2波以上の波の合成を行うこともできる。評価式Errとして実効値を使用する場合、脈波が除去されMAが残った光受信器信号PPGbに対して数式5が使用できる。ここでT5は探索を行う時間区間で例えば図23の横軸の長さになる。実効値の代わりに分散等を求めてもよい。評価式Errは誤差を最小化する式を使用すればよく、これ以外にも2つの信号の類似度を評価する式が使用できる。誤差を最小化する探索として、準ニュートン法などの最適化手法が使用できる。
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 図24は数式4の各波形を説明する図である。最小誤差探索部1904における合成波形生成の動作を表している。最小誤差探索部1904は、孤立動き信号ACCaを用いて直接波WaveAと遅延波WaveBを生成し、さらにそれらを合成した合成波Waveを生成する。数式4に従って、孤立動き信号ACCaを遅延時間DelayAだけ遅延させ、振幅方向に係数CoefAを乗算して直接波WaveAを生成する。同様にして遅延時間DelayBと係数CoefBを使用して遅延波WaveBを生成する。さらに直接波WaveAと遅延波WaveBを加算して合成波Waveを生成する。合成波Waveの遅延時間は直接波WaveAと遅延波WaveBの合成ベクトルによって決まる遅延時間となる。
 緑色光、赤色光、IR光の初期波形情報Info1iからInfo3iを決める方法として、前述したセンサの設計時にデータを取得してデフォルト値を作成する方法、個人が初めて利用する際に取得する方法、装着のたびに取得する方法等が行える。例えばデフォルトの初期波形情報Infoiをもとにして、ジャンプ等から新たな波形情報Infoの取得を行い、取得した波形情報Infoを次の初期波形情報Infoiと使用することができる。取得した波形情報Infoを蓄積し、それらを平均化して初期波形情報Infoiとして使用することもできる。精度が必要な計測を行う場合、計測前に複数回のジャンプを行い、得られた複数の波形情報Infoを平均化して使用しても良い。
 初期波形情報Infoiのデフォルト値として、例えばDelayBとDelayAの差を100ms程度、係数CoefA、CoefBをゼロに設定できる。係数CoefA、CoefBは正負の極性が変化する場合があるのと、遅延時間を概略妥当な値に設定すると係数CoefA、CoefBは探索で求められる場合が多いことが背景にある。図23は、孤立動き抽出部1801と波形パラメータ探索部1802を実際に動作させて取得した緑色信号とIR信号の例である。1回ジャンプを行っている。初期波形情報Infoiとして上記デフォルト値を使用している。脈波除去後の光受信器信号PPGbと、PPGbから合成波Waveを差し引いたPPGb―Waveをプロットしている。MA成分は概ね除去されており、直接波と遅延波の2波による探索が有効であることを示している。
 図25は、発明者による実験で波形情報Infoを取得した例である。1回ジャンプを行い、緑色光(Green)、赤色光(Red)、IR光(IR)における波形情報Infoを取得した。遅延時間Delayは、センサのオフセットを含んでおり、この実験では約―160msのオフセットを持つと考えられる(500msが遅延ゼロの基準点)。直接波の遅延時間DelayAは、波長によってやや異なるが0から60ms。遅延波の遅延時間DelayBは120から200msあたりにある。装着位置を変えると多少変化するが遅延時間は概ね上記の傾向を持つ。直接波の振幅CoefAは、この実験では緑色光において負、赤色光とIR光では正の極性になっている。遅延波の振幅CoefBは全て正の極性になっている。装着位置を変えると、赤色光とIR光の極性が負の極性になる場合がある。
 図22は、脈波除去後の光受信器信号PPGbと動き計測部信号ACCを同時にプロットしている。脈波除去後の光受信器信号PPGbは、緑色信号とIR信号でピークの位置がやや異なっている。波形の形状もIR信号においてピークが鋭いのに対し、緑色信号ではやや鈍っており、歪の状態に違いがある。ACCからPPGbへの遅延時間をピークから読み取ると、直接波DelayAの成分と遅延波DelayBの成分が見て取れる。ピーク位置は波形の歪みによって位置が変化しているため、ピーク位置から遅延時間を正確に読み取るのは難しいが、傾向として図25の探索結果と一致する。
 このような現象が生じる一般的要因として、装着している光送受信部をとその周辺からなるセンサのロール、ピッチ、ヨーの現象が考えられる。利用者の動きの瞬間に直接波的成分のMAが生じ、センサのロール、ピッチ、ヨーによってセンサが変位し、少し遅れて遅延波的成分のMAが生じる。生体の動脈中の血液に対しては、ジャンプの跳躍時に頭部から足方向に向かう応力が働く。これはACC信号が増大する方向とは逆方向のMA、つまり負の極性のMAとなる。一方でセンサの荷重が皮膚を押す場合のMAは、観測している動脈と光送受信部の位置関係によって変化する。センサの荷重が動脈を圧迫し、動脈血流の上流側を遮断する位置に働くと負の極性のMAとなると考えられる。逆に動脈血流の下流側を遮断する位置に働くと正の極性のMAとなると考えられる。赤色光やIR光の直接波の正負の極性が変化するのは装着場所によって圧迫している動脈の位置が変化、或いは観測している動脈の位置が変化することに起因していると考えられる。
 太い動脈からの散乱は、前述したように赤色光やIR光において支配的となる。赤色光やIR光では、上記生体の動脈中の血液に対して起きる真性の負の極性のMAと、センサの荷重によって起きる正または負の極性のMAが混在していると考えられる。これら真性の負の極性のMAと、センサの荷重によって起きる正または負の極性のMAの時間は、必ずしも一致するとは限らない。センサを装着している生体の部位によって、加速度に対する真性のMAの遅延時間は異なる可能性がある。またセンサの荷重起因のMAもセンサの装着状態によって直接波であっても、生体やセンサの機械的結合によっては、時間位置にぶれが生じる場合もある。直接波は概略は近いタイミングで生じるが、真性と荷重でわずかにずれて直接波の中の複数波の合成が起きる場合があると考えられる。つまり直接波であっても、緑色光と赤色光或いはIR光との間で時間差が生じると考えられる。これらの現象は今まで明確でなかった。
 本実施例では、直接波と遅延波を別々の波ととらえ、波形情報部1601がそれらの波形情報を保持し、波形生成部1602がそれに基づく波形合成を行うことで、MA除去の精度を向上させる。孤立動き抽出部1601と波形パラメータ探索部1602により波形情報の抽出を利用者がその場で行うことができ、装着ごとのパラメータの変化に追従できる。
 図26は本発明の生体信号計測装置の実施例3の底面図と断面図である。本実施例は、例えば耳裏表面2606と耳の付け根表面2607と側頭表面2608に囲まれた領域に装着して使用することができる。本発明の生体信号計測装置2600は、光送受信部2601と動き計測部2602と応力伝達部2603を持つことができる。図26(a)は生体信号計測装置2600を底部から見た底面図である。光送受信部2601の両側に、耳の付け根耳側応力伝達部2603aと耳の付け根側頭側応力伝達部2603bを配置し、それらを耳の付け根表面に接触させて使用することができる。
 図26(c)に左耳での耳裏表面2606と耳の付け根表面2607、側頭表面2608の位置関係を表す図を示す。耳の付け根表面2607は、耳の裏側と側頭で囲まれた領域の底部表面である。通常幅5から10mmくらいの幅を持ち、耳の裏上部から耳の裏側と側頭で囲まれた領域の底部を通り、耳の裏下部にかけて存在する。耳の付け根表面2607は、耳孔に音を集める耳甲介軟骨と三角窩軟骨の裏側にあたる部分とその周辺になり、各軟骨の曲率によってやや隆起しており、耳甲介軟骨と三角窩軟骨の境界ではややへこみが生じている。右耳にも同様の構造が存在する。
 光送受信部2601と耳の付け根耳側応力伝達部2603aと耳の付け根側頭側応力伝達部2603bは、耳の付け根表面で前後に伸びる保持応力伝達部2603eによって保持させることができる。ここで前後とは利用者の正面方向2605と背面方向2604である。保持応力伝達部2603eは、耳裏表面に接触する耳裏応力伝達部2603c、側頭表面に接触する側頭応力伝達部2603dと機械的に結合させることができる。つまり耳の付け根耳側応力伝達部2603aから保持応力伝達部2603eは全て機械的に結合させることができる。動き計測部2602は、応力伝達部2603上の任意の場所に配置可能であるが、図26では耳裏応力伝達部2603c上に配置している。
 図26(a)のb-b断面を図26(b)に示す。耳裏応力伝達部2603cは、保持応力伝達部2603eに対して鈍角の角度を持つことができる。これは耳の弾性を適度に利用して生体信号計測装置2600の装着を安定にするためである。鈍角の角度は95度から135度、好ましくは105度から125度が良い。さらに側頭表面に接触する側頭応力伝達部2603dは、保持応力伝達部2603eに対してほぼ直角の角度を持たせることができる。これは耳の付け根表面と側頭表面の角度がほぼ直角であることに基づく。耳の付け根表面の側頭に近い部分に光検出器信号PPGが大きい領域があり、この部分を計測する意味がある。
 図26(b)に示すように、耳の付け根耳側応力伝達部2603a及び耳の付け根側頭側応力伝達部2603bは、光送受信部2601表面から皮膚側に向かって飛び出させることが好ましい。つまり凸形状とすることが好ましい。光送受信部2601表面が耳の付け根表面に接触すると皮下の動脈に応力を伝達して大きなMAを生じる。耳の付け根表面は、耳甲介や三角窩の曲率に起因してカーブを描いている。このため2603a及び2603bは、光送受信部2601に近づけて配置するとよい。好ましくは光送受信部2601にほぼ接触して配置する。これによって2603a及び2603bが光送受信部2601表面から飛び出す量を低くできる。
 耳の付け根耳側応力伝達部2603a及び耳の付け根側頭側応力伝達部2603bは、光送受信部2601の両側に凸形状を有した構造として配置され、利用者の背面方向2604と利用者の正面方向2605は空いている。つまり光送受信部2601の周りの4方向の一組の対向する2方向に凸部、別の対向する2方向に隙間があることになる。利用者の背面方向2604と利用者の正面方向2605に凸部を設けるとMAが増大するためである。この現象は血管の走行と関連すると考えられる。
 さらに図26(a)において耳の付け根側耳側応力伝達部2603aと耳の付け根側頭側応力伝達部2603bの前後方向の長さは非対称にすることができる。これは耳の付け根表面の側頭に近い部分に大きなMAを引き起こす部位があり、その部位への応力の伝達を低減させるためである。耳の付け根耳側応力伝達部2603aに対して、耳の付け根側頭側応力伝達部2603bを短くする。耳の付け根側頭側応力伝達部2603bは、耳の付け根耳側応力伝達部2603aの半分程度の長さにすることができる。さらに耳の付け根側頭側応力伝達部2603bの位置を耳の付け根耳側応力伝達部2603aに対して利用者の背面方向にオフセットさせることができる。これは耳の付け根表面の側頭に近い部分において、利用者の正面方向に大きなMAを引き起こす部位があるためである。
 生体信号計測装置2600は、眼鏡やマスク等を使ってさらに安定に耳裏表面と耳の付け根表面と側頭表面に囲まれた領域に装着できる。マスクとして口を覆うマスクやアイマスク等が使用できる。左右の耳にひっかけて利用するひも状のものは全て等価的に利用できる。耳の付け根の上部(頭頂方向)と下部(足方向)に接触して固定されるリング状或いはリングの一部切れた構造物も等価的に利用できる。頭部の周りを一周するヘッドバンド等のベルト状の構造物も等価的に利用できる。頭部を覆い耳の付け根表面に応力的に作用するヘルメットや帽子、それと等価な構造物も全て等価的に利用できる。これらの構造物は応力伝達部2603の何れかの部分に応力的に作用する。
 図27は、さらに耳裏境界応力伝達部2603f、上下応力伝達部2603g、横応力伝達部2603h、電池2701、動き計測部を含む通信部2702を持たせた例である。図27(a)のb-b断面が図27(b)になっている。これらは生体信号計測装置2700を構成している。電池2701は、生体信号計測装置2700の動作に必要な電力を供給することができる。動き計測部を含む通信部2702は、動き計測の機能を持ち、さらに光送受信部2601や動き計測部を含む通信部2702が生成或いは受け取る信号のやり取りにかかわる通信を行うことができる。この信号は、光送受信部2601や動き計測部を含む通信部2702で計測された信号や、その信号の制御に必要なコマンド信号、生体信号計測装置2700全体の制御にかかわる制御信号等を含むことができる。
 耳裏境界応力伝達部2603fは、耳裏表面2606と耳の付け根表面2607の境界付近の皮膚に接触する。上下応力伝達部2603gは、上下方向の応力を伝達することができる。前述した眼鏡等の外部構造体からの応力を図27(b)の下方向に伝達することができる。利用者の装着状態によって実際の応力ベクトルの方向は変化する。横応力伝達部2603hは、横方向の応力を伝達することができる。前述した眼鏡等の外部構造体からの応力を図27(b)の横方向に伝達する。この場合も利用者の装着状態によって実際の応力ベクトルの方向は変化する。
 図27(b)では、耳裏応力伝達部2603c上に動き計測部を含む通信部2702を配置し、さらにその上に電池2701を配置している。電池2701は耳裏表面上或いは近傍に位置させることができる。電池2701が直接耳裏表面に接触する必要はなく、何らかのカバーや保護層、外殻構造を介して接触することができる。
 耳裏境界応力伝達部2603fは、例えば電池2701や動き計測部を含む通信部2702を介して耳裏応力伝達部2603cに機械的に接続させることができる。皮膚に接触する部分に曲率を持たせることができる。生体信号計測装置2700の装着を安定化させる意味がある。耳裏境界応力伝達部2603fは、耳の付け根側頭側応力伝達部2603bと同様、耳の付け根耳側応力伝達部2603aより長さを短くし、利用者の背面方向にオフセットさせることが好ましい。これは耳の付け根側頭側応力伝達部2603bほどではないが、耳裏境界応力伝達部2603fが接触する耳裏境界付近の利用者の正面方向に、MAが大きくなるポイントがあるためである。
 上下応力伝達部2603gは、耳裏応力伝達部2603c、保持応力伝達部2603e、側頭応力伝達部2603dに囲まれた領域に配置し、少なくともこれら3つの中のどれかに接触させることができる。好ましくは保持応力伝達部2603eに接触する。横応力伝達部2603hは、側頭応力伝達部2603dの上に配置することができる。眼鏡等の外部構造体からの応力を効率よく側頭に伝える働きがある。図27のように眼鏡等の外部構造体の側に配置することが好ましいが、側頭応力伝達部2603dを挟んで反対側の側頭側に配置することも可能である。応力伝達部2603aから2603hは機械的に結合して応力を及ぼし合うことができる。
 応力伝達部2603aから2603hは適度な剛性を持たせることで、生体信号計測装置2700にロールやピッチやヨーが生じたときの複数波の生成を抑えることができる。耳裏応力伝達部2603cや側頭応力伝達部2603dの材料として、例えばステンレスやアルミ等の金属やプラスチック等の樹脂等を用いることができる。金属を使うことで個人差があった場合に形状を保ちつつ角度の変更ができるので好ましい。生体信号計測装置2700の質量を減らすことで、加速度による応力の大きさが減少しMAを減らせる。耳裏応力伝達部2603cや側頭応力伝達部2603dの幅として5から10mm程度にするのが好ましい。上下応力伝達部2603gや横応力伝達部2603hの材料として、樹脂やゴム系の材料を用いることができる。眼鏡等の外部構造体に傷をつけない意味と、適度な弾性を持つことで加速度による振動を抑えられる意味がある。
 図28は光送受信部2601とその周辺の構造の一例である。保持応力伝達部2603eは、比較的硬い部分2603e-1と柔らかい部分2603e-2を持つことができる。硬い部分2603e-1は、例えばステンレスやアルミ等の金属やプラスチック等の樹脂等を用いることができる。上下応力伝達部2603g等からの応力を均等に耳の付け根耳側応力伝達部2603aや耳の付け根側頭側応力伝達部2603bに伝える効果がある。柔らかい部分2603e-2は例えばシリコンゴムやポリウレタン等の弾性体を用いることができる。耳の付け根表面の凸凹がある中でも、特定の箇所に圧力が集中しないよう圧力を分散させる効果がある。
 耳の付け根耳側応力伝達部2603aは、中間部分2603a-1と皮膚接触部分2603a-2を持つことができる。中間部分2603a-1は、保持応力伝達部の柔らかい部分2603e-2からの応力を皮膚接触部分2603a-2に伝達できる。中間部分2603a-1は、耳の付け根表面の凸凹をさらに吸収するため、橋桁構造やスプリング構造を持つことができる。皮膚接触部分2603a-2は、皮膚に接触すると共に皮膚の凸凹の曲率に追従することができる。皮膚への親和性と曲率への追従性をもつシリコンゴム等の弾性体が使用できる。前述したように複数波の生成を抑えるために、シリコンゴムによる弾性の程度やスプリング構造を用いる場合のスプリングの時定数を適切に抑えることが好ましい。
 中間部分2603a-1と皮膚接触部分2603a-2は、皮膚接触部分2603a-2を梁として中間部分2603a-1で支える梁構造を構成することができる。図28のように中間部分2603a-1は、橋桁状に分割された複数のブロックで構成できる。各ブロックは、立方体を含む直方体構造を持つことができる。皮膚接触部分2603a-2は、これらブロックで支えられる。片持ち梁や両持ち梁構造を構成することで、凸凹への追従性と応力緩和が両立できる。ブロックの一部や全てをスプリングに変えることもできる。この梁構造と等価な構造として、バネ性を用いた構造やバネ性を有した材料による構造など、等価な構造が使用できる。耳の付け根側頭側応力伝達部2603bも、同様にして中間部分2603b-1と皮膚接触部分2603b-2で構成できる。
 図28(b)は図28(a)の構造を分解した図である。光送受信部2601は、例えば保持応力伝達部の硬い部分2603e-1の上に配置できる。光送受信部2601の周辺に保持応力伝達部の柔らかい部分2603e-2が形成できる。中間部分2603a-1や皮膚接触部分2603a-2は、この柔らかい部分2603e-2の上に形成できる。耳の付け根耳側応力伝達部2603aや耳の付け根側頭側応力伝達部2603bは、前述したように光送受信部2601が皮膚に接触しないよう光送受信部2601の表面から飛び出すように配置する。
 光送受信部2601は皮膚を介して皮下を計測する中で、皮膚への光の入射及び皮膚からの光の出射の過程で、光が極力減衰或いは散乱されないようにする必要がある。皮膚上の構造物による散乱は、光検出器信号PPGのDCレベルを増大させ、信号処理のダイナミックレンジを抑圧する。限られたダイナミックレンジの中で、光送信器の光出力を大きくするのを妨げる。光検出器信号PPGの中の生体情報成分の振幅を上げることが制限される。さらに大きなMAの要因になる場合がある。
 耳の付け根耳側応力伝達部2603a及び耳の付け根側頭側応力伝達部2603bは、前述したように光送受信部2601に接近して配置することが好ましいため、2603a及び2603bは使用する光波長に対して減衰が少なくなるようにすることが好ましい。このため2603aや2603bは、材料としてシリコンゴムのような可視光やIR光で透過率が高めの材料を使うことが好ましい。構造として橋桁構造やスプリング構造のような空間的に隙間がある構造が好ましい。スプリング構造を使う場合、線径の細いスプリングを使うことが好ましい。
 図26(c)の耳の付け根表面の曲率に応じて、耳の付け根耳側応力伝達部2603a及び耳の付け根側頭側応力伝達部2603bの間隔や、光送受信部2601表面から飛び出る高さを決めることができる。例えば2603aと2603bの間隔を3mm程度に設定すると、2603aと2603bの皮膚接触面から耳甲介裏側の曲率によって決まる山のピークまでの高さは1mm程度になる。つまり光送受信部2601表面から飛び出る高さを2mm程度にしておけば1mm程度の余裕を持ちながら接触させないようにできる。
 図29は外部構造体として眼鏡2901を使用した場合の構成例である。わかりやすくするために各要素を離して描いた分解図である。生体信号計測装置2700は、耳裏表面2606と耳の付け根表面2607、側頭表面2608に囲まれた領域にセットできる。眼鏡2901は、生体信号計測装置2700の上下応力伝達部2603gと横応力伝達部2603hに接触するようにセットできる。眼鏡2901は、先セル2902と呼ばれる部分を持つ。先セル2902は、通常耳の付け根表面2607付近を通過或いは耳の付け根表面2607に接触する。先セル2902の先端付近は、通常乳様突起付近に接触する。生体信号計測装置2700は、この先セル2902と耳の付け根表面2607の間にセットできる。先セル2902からの応力を耳裏表面2606や耳の付け根表面2607や側頭表面2608に伝達できる。
 図30は生体信号計測装置2700に働く応力の一例である。外部構造体として眼鏡2901を使用した場合を例にとって説明する。眼鏡の先セル2902は、横応力伝達部2603hに対して眼鏡のバネ性の応力3001aを加えることができる。この応力3001aは主として眼鏡が頭部を挟み込む力に起因している。眼鏡の左右の先セルを拡げると、戻そうとする反発力があり、主としてその力に起因している。さらに。眼鏡の先セル2902は、上下応力伝達部2603gに対しても応力3001bを加えることができる。この応力3001bは主として眼鏡の荷重に起因している。眼鏡の荷重は主として、この上下応力伝達部2603gとノーズパッドと乳様突起付近で支えられる。眼鏡2901以外の外部構造体においても同様の応力を生成することは可能である。
 眼鏡のバネ性の応力3001aは、横応力伝達部2603hに伝達され、さらに側頭応力伝達部2603dに伝達され、側頭表面への応力3001cの中に存在する。眼鏡からの応力3001bは、上下応力伝達部2603gに伝達され、さらに耳の付け根耳側応力伝達部2603aと耳の付け根側頭側応力伝達部2603bに主として伝達され、耳の付け根表面の側頭側への応力3001dと耳の付け根表面の耳側への応力3001eの中に存在する。眼鏡からの応力3001bの一部は、耳裏応力伝達部2603cに伝達され、耳裏表面への応力3001fの中に存在する。
 さらに生体信号計測装置2700の荷重Wsも、眼鏡の荷重と同様に伝達され、耳の付け根側頭側応力3001dや耳の付け根耳側応力3001eの中に存在する。耳の弾性による応力が、耳裏と側頭間に挟まれた生体信号計測装置2700に作用し、側頭表面への応力3001cや耳裏表面への応力3001fの中に存在する。以上は主として座位や起立の姿勢での静的な応力の伝達である。利用者の動きによって、上記応力や応力の伝達が変化する。特に大きな加速度変化が伴うエクササイズ等では、前述したロールやピッチやヨー、さらには前後左右等への変位が生じうる。図27や図28において静止時に接触している各部分は、接触が離れる可能性もある。
 図22の加速度からMAへの応答波形や図25の直接波と遅延波の内訳は、生体信号計測装置2700と眼鏡2901を装着して、1回ジャンプの動作を行って取得した。直接波と遅延波は100から200ms程度の時間差があるが、例えば次のような現象が考えられる。例えばジャンプエクササイズの跳躍の瞬間、加速度の増大によって先セル2902からの眼鏡からの応力3001bが増大し、この応力3001bは図30のように生体信号計測装置2700全体を時計回り方向に微小回転させる。この応力3001bは耳の付け根側頭側応力3001dを増大させ、このあたりの動脈等を圧迫してMAを生じる。この加速度変化の瞬間近傍の時間に存在するMAが直接波と考えられる。
 生体信号計測装置2700や皮膚や皮下を含む機械的系は弾性を持ち、変位を元に戻す力が働く。この戻す力は、直接波から遅れて生体信号計測装置2700全体を反時計回り方向に微小回転させる。この戻す力は、耳の付け根耳側応力3001eを増大させ、このあたりの主として細動脈等を圧迫してMAを生じる。この圧迫の近傍の時間に存在するMAが遅延波と考えられる。遅延波には耳の付け根側頭側応力3001dの減少変化によるMAも含まれている可能性がある。
 図31に左耳を例にとり、生体信号計測装置2700の装着位置を説明する。図31(a)は左耳の側面図である。耳甲介3101や三角窩3102はおわん形状の軟骨で、生体の正面から見ると窪んで見える。図31(b)は耳甲介と三角窩の裏面が見えるよう、耳甲介3101と三角窩3102とそれ以外の耳介部分3103を分解した図である。左背面から見た斜視図になる(3103に関しては側面図)。耳甲介3101と三角窩3102の裏面を見ているため、おわん形状の凸部が現れている。
 生体信号計測装置2700は、これら三角窩3102から耳甲介3101にかけての領域に配置することができる。三角窩3102での装着は、咀嚼筋や表情筋にかかわるMAを伴う可能性があり、そのMAの影響が少ない場合やそれらの筋肉の動きを検出する目的においは装着できる。耳甲介3101での装着は、咀嚼筋や表情筋にかかわるMAが少なく、例えば心拍数(HR)や経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)や血液量(BV)等をロバストに計測する目的においは好ましい装着場所となる。
 生体信号計測装置2700の装着では、光送受信部近傍で応力を伝達する耳の付け根耳側応力伝達部2603a及び耳の付け根側頭側応力伝達部2603bの位置が重要となる。例えば図32に示すように、耳の付け根耳側応力伝達部2603a及び耳の付け根側頭側応力伝達部2603bが、耳甲介3101上で三角窩3102に近い部分にあると、比較的大きな生体情報振幅を得ながらMAを下げることができる。これは後耳介動脈3201の走行と関連があると考えられる。後耳介動脈3201は、耳甲介3101と三角窩3102との境界付近の窪みがあるあたりにおいて、耳に向かう動脈3202への分岐がある。この窪みに接近しすぎるとMAが大きくなるが、耳甲介3101上で三角窩3102との境界手前の場所での装着は、比較的大きな生体信号を得ながらMAを下げられる。
 この場所での装着位置は、図33に示すように利用者自身で確認できる。図33は左耳のこの場所に生体信号計測装置2700を装着して光送受信部2601を動作させた場合の左耳正面図である。耳甲介3101の三角窩3102に近い部分に光送受信部2601からの発光3301が観測できる。利用者が鏡等で観測することで装着位置を確認できる。利用マニュアルとして、生体信号計測装置2700の装着場所の確認手順を明示することができる。生体信号計測装置2700を含めたシステムとしてカメラ等を備え、このカメラ等から発光3301位置を検出して装着位置を確認することもできる。
 前述した耳の付け根側頭側応力伝達部2603bを、耳の付け根耳側応力伝達部2603aより短くし、さらに後方にオフセットさせるとMAが低下するのは、上記分岐する耳に向かう動脈3202と関連していると考えられる。この耳に向かう動脈3202に対して圧迫を与えない配置になると考えられる。発明者による実験で、耳の付け根表面の側頭に近い部分は、MAに敏感な場所が多いことが分かっている。後耳介動脈3201に対して応力的な影響を与える場所が、MAを増大させていると考えられる。図27において耳裏境界応力伝達部2603fは、耳の付け根側頭側応力伝達部2603bの面積を小さくしながらも、生体信号計測装置2700を安定に装着させる効果がある。
 前述したように直接波の振幅は、装着位置を変えると正負の極性が変化する場合がある。遅延波に比べて変動も大きい。前述したように動脈血流に働く真性のMAは加速度に対して負の極性を持つのに対し、荷重変化等によって生じる荷重MAは正または負の極性を持ちうる。直接波の変動要因は、これら真性MAや荷重MAの重畳やキャンセルが影響していると考えられる。本発明の実施例1や実施例2では、このような変化がある中でも少ない計算量で、装着ごとの変化や、装着中の変化に追従したMA補正が行える。動脈が集まる所に大きな生体信号があるため、大きな生体信号と小さなMAを得る場所にはトレードオフがあるが、本実施例3はMAの生成を最小化させる効果がある。
 図34(a)は、図28の光送受信部2601及びその周辺の構造を持たせながら、耳裏の上から下を覆うように構成した例である。この場合も光送受信部2601は、図32と同様の位置に配置することができる。図34(b)は、同様に耳裏の上から下を覆っているが、光送受信部2601とその周辺が耳の付け根表面2607に収まる程度に細長くしている。用途に応じてこのような形状も選択可能である。就寝時等、横向きに寝た場合でも耳が痛くなりにくい。図34(a)や図34(b)では、耳を上下から挟んで位置を固定し、さらに耳の表側に回り込み、前後方向の位置を固定する形状にすることができる。このような立体構造は、PPGの位置決めを再現性良く容易に行えるメリットがある。眼鏡等の外部構造体を用いずにある程度の装着安定性が得られる。
 図35は本発明の実施例4の生体信号計測装置3500のブロック図である。生体信号計測装置3500は、光検出器信号PPG1からPPG3を入力として光検出器信号のDC成分を処理するΔDC処理部3501と、MAが除去された光検出器信号PPG1aからPPG3aを入力として脈波振幅を処理する脈波振幅処理部3502と、動き計測部信号ACCを入力として利用者の動きを処理する動き処理部3503を持つことができる。
 光検出器信号PPG1からPPG3は、例えば実施例3の光送受信部2601で取得した光検出器信号PPG1からPPG3を用いることができる。MAが除去された光検出器信号PPG1aからPPG3aは、それら光検出器信号PPG1からPPG3を、実施例1や実施例2の構成で処理して得ることができる。動き計測部信号ACCは実施例3の動き計測部2602の出力を使うことができる。
 ΔDC処理部3501は、例えば光検出器信号PPG1からPPG3を短時間積分したものからオフセット値DC0を減算する処理を行う。得られたΔDCは、光検出器信号のDC変化であり時間の関数となる。例えば数式6を用いた処理を行うことができる。ここでT6は光検出器信号PPG(添え字は省略)がDCと見なせる時間長さに設定する。光検出器信号PPGには脈波信号やMAが存在するが、それらの変動が影響しない時間長さを選ぶことができる。数式6では積分を行っているが、積分の代わりに移動平均やローパスフィルタを使うなど、適宜同等の処理を行うことは可能である。オフセット値DC0として例えば光検出器信号PPGの全区間の平均を使うことができる。或いは測定の先頭において一定期間光検出器信号PPGを平均化した値を使うことができる。各波長のDC変化を並べて比較可能な状態にできればよく、同等の方法で適宜DC0を求めることは可能である。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000006
 脈波振幅処理部3502は、例えばMAが除去された光検出器信号PPG1aからPPG3aの実効値を求める処理を行う。数式7を用いた処理を行うことができる。動き処理部3503は、例えば動き計測部信号ACCの実効値を求める処理を行う。数式8を用いた処理を行うことができる。数式7と数式8の時間T7とT8は実効値の計算区間であり、時間T7とT8を大きくすることで変動を平均化する効果が上がる。時間分解能が減少するため目的に応じて決定することができる。得られた実効値RMSppgaとRMSaccは、それぞれMAが除去された光受信器信号PPGaと動き信号ACCの振幅情報である。他の振幅計算方法を使うこと、例えばノイズを十分除去した上でピークを取得するなどは適宜行える。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000007
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000008
 図35の生体信号計測装置3500の構成を用いて実験によりデータを取得した例を図36から図39に示す。実験では、歩行と走行の運動を行い、それ以外の期間は安静にしている。実施例3の図27や図28の生体信号計測装置2700の構成を用いている。光検出器信号PPG1からPPG3をそれぞれ、緑色光、赤色光、IR光として計測している。これら光検出器信号PPG1からPPG3を、実施例2の図17の直接波と遅延波の補正を順次行う構成に入力してMA除去後の光検出器信号PPG1aからPPG3aを得ている。走行エクササイズの直前に1回ジャンプを行い、直接波と遅延波の波形情報Info1からInfo3を取得してMAを除去している。
 図36はΔDC処理部3501を用いて取得した光検出器信号PPGのDCレベル変化ΔDCである。光検出器信号は通常数万LSBのDCレベルを持つが、各信号において実験区間全体の平均を各信号から減算してΔDCを得ている。ここでは時定数が約10秒となる移動平均をかけている。光の吸収が起きると光は減衰するためグラフのマイナス方向に変化する。
 図37は脈波振幅処理部3502を用いて取得したMA補正後の光検出器信号PPGaの振幅波形である。図38は動き処理部3503を用いて取得した動き計測部信号ACCの振幅波形である。図39は、MA除去後の光検出器信号PPG1a(緑色光)を使って求めた心拍数HRと、MA除去後の光受信器信号PPG2a(赤色光)とPPG3a(IR光)を使って求めた経皮的動脈血酸素飽和度SpO2である。
 図38の動き信号の実効値は、歩行前の座位から立位への起立において0.2g rms程度のピーク加速度を生じている。その時図37の光受信器信号の実効値は、緑色、赤色、IRの3つの信号において30%から40%の実効値の低下を生じている。また図36の光検出器信号のDCレベルの変化ΔDCは、起立時においてプラス方向の鋭いピーク、つまり吸光度の低下を3波長全てにおいて観測している。
 血液中の酸素化ヘモグロビンHbO2と脱酸素化ヘモグロビンHHBの吸光度は波長によって異なり、IR光ではHbO2がHHbの約2倍、赤色光ではHHbがHbO2の約10倍、緑色光ではHbO2とHHbがほぼ等倍の比率になる。生体中のHbO2やHHbの変化であるΔHbO2やΔHHbやそれらを足し合わせた総ヘモグロビンの変化ΔtHbを精度良く求めるために、モディファイド・ランベルト・ベールの法則を使用して、連立方程式から未定係数を算出することは適宜可能である。
 図37の脈波の実効値は動脈中の情報を示す。これは毛細血管以降の血流に脈動がほぼ含まれないためである。これに対し、図36の光検出器信号のDCレベルの変化ΔDCは、細動脈と毛細血管と細静脈の情報を含んでいる(但し細動脈は3から5%程度しか影響しない、大多数は毛細血管と静脈という報告がある)。DCレベルには毛細血管以降の情報が含まれるが、太い動脈や静脈では大きな吸光が生じ、太い動静脈からの情報はほぼ含まれない。このようなDCレベルを用いる測定として近赤外分光分析法(NIRS)が存在する。NIRSは通常その名の通り近赤外線での測定で赤色光から900nm前後のIR光を用いる。装置は通常大型で持ち運びができない。通常緑色光を用いることはない。
 ここでは簡単のため、ΔHbO2の概略としてIR信号の実効値変動、ΔHHbの概略として赤色信号、ΔHbO2とΔHHb両者の概略として緑色信号の実効値変動を見ていくと、起立時に全ての信号の低下を検出している。これは安静状態からの起立における後耳介動脈の血液量、さらには観測箇所である耳の付け根表面の細動脈の血液量の低下を検出していると考えられる。後耳介動脈は耳介と耳介後方の頭皮に酸素を供給する。脳に向かう一部の動脈の挙動であるが、起立時の動脈流の挙動の個人差などを検出できる。同じ現象を出現しうる他の動脈の挙動を推定できる。図39の起立時の心拍数HRの増加や図38の起立時の加速度の大きさと合わせて個人の身体状態を評価できる。
 図36の光検出器信号のDCレベル変化ΔDCの全ての波長での正のピーク状の大きな変化は、細動脈と毛細血管と細静脈における血液量の低下を意味する。後耳介動脈の血液量の低下によって末梢の血管での血液量の低下も起きていると考えられる。このピークは安静時のΔDC変化よりピークの時間幅が短く鋭い。図36の0から300秒あたりまでの安静時の変化は、その変化のスピードから、身じろぎ等による交感神経の刺激によって起きていると考えられる。図39の心拍数HRは、身じろぎによって一瞬上昇して低下する。
 この身じろぎ時の現象は、副腎髄質からのカテコールアミン(アドレナリンやノルアドレナリン)の分泌が関連し、時定数を持っていると考えられる。アドレナリンは主に心臓に作用して心収縮力や心拍数を増大させる。ノルアドレナリンは細動脈に作用して交感神経性血管収縮を引き起こす。交感神経性血管収縮はこの反応系の時定数を持つのに対し、起立時のピークはこの時定数を持たないことが図36において観測される。図36の300秒までに見られるノコギリ刃状の波形は交感神経性血管収縮の時定数を反映していると考えられる。自律神経の状態は一般に心拍揺らぎ(HRV)によっても観測されるがこのような時定数の観測は難しい。本発明の構成は交感神経性血管収縮の時定数を観測できる今までにない特徴を持っている。MAを低下させる構成によって可能になっている。
 歩行時には、心拍数HRは安静時の約60bpmから90bpmあたりへ上昇し、図37の緑色信号は10%程度低下する。走行時には、心拍数HRはさらに130bpmあたりへ上昇し、緑色実効値は安静時から約40%低下する。走行後の安静により、緑色実効値の上昇が観測されている。これら歩行や走行における緑色実効値の低下は、細動脈の交感神経性血管収縮と考えられる。緑色光は皮下の浅い所を観測しており、細動脈の収縮がこの緑色実効値を大きく低下させたと考えられる。
 (この段落の記載後追加実験を行い実施例6に新たな見解を示す)図36のΔDCを見ると走行中、赤色信号のΔDCとIR信号のΔDCが大きく上昇している。これは交感神経性血管収縮により細静脈あたりの血液量が減少したためと考えられる。赤色ΔDCやIRのΔDCでは細静脈からの光散乱を主として見ていると考えられる。緑色信号のΔDCは図36のA点において下向き、B点において上向きの変化を生じている。これは緑色信号が毛細血管を主として観測しており、細動脈あたりの交感神経性血管収縮により一時的に血液量の上昇をA点で観測し、収縮からの開放による一時的な血液量の減少をB点で観測しているためと考えられる。
 赤色ΔDCやIRのΔDCの大きな変化の直前に緑色ΔDCが逆方向に変化してすぐ元に戻る現象は、安静中にも起きている。しかし起立時には起きていない。交感神経性血管収縮と起立のメカニズムが異なるためと考えられる。これらの現象を利用して両者を切り分けることができる。
 図37の走行開始直後のIR実効値は安静時から約40%程度上昇している。走行後の安静により、IR実効値が再度上昇する現象も観測されている。走行後赤色実効値も10%程度上昇している。
 IR実効値は、細動脈におけるHbO2の変化を観測していると考えられる。走行後IR実効値が大きく上昇し、赤色実効値も10%程度上昇していることから、走行後活動筋が休止して、末梢の血液量が回復して総ヘモグロビン量tHBが増大していると考えられる。
 図39の経皮的動脈血酸素飽和度SpO2は、数式9と数式10から求めたものである。ここでAC3はMA補正後の光検出器信号PPG3a(IR光)の振幅、DC3は光検出器信号PPG3(IR光)のDC値、AC2はMA補正後の光検出器信号PPG2a(赤色光)の振幅、DC2は光検出器信号PPG2(赤色光)のDC値である。振幅は脈波の1区間の積分値を用いている。数式10のa、b、cは定数で、複数の被験者での校正から求める必要があるが、ここでは光送受信部素子のメーカデフォルト値を用いている。そのためSpO2の数値は100%以上を含んでいる。実験では大きな乱れは無く計測できている。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000009
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000010
 本実施例の生体信号計測装置3500は、交感神経性血管収縮に起因する光受信器信号の変化を定量化できる。実験では定量化の指標として簡易的に緑色信号の実効値や各波長のΔDC値を用いているが、各波長の組み合わせや校正から適宜計算式を変えることは可能である。交感神経性血管収縮は交感神経の亢進による内分泌の生成と末梢での反応であり、この定量化により末梢血管交感神経活動の変化量が把握できる。また交感神経や動きによる脳血液変化量も、緑色信号の実効値や各波長のΔDC値を用いて定量化できる。酸素化ヘモグロビン変化量、脱酸素化ヘモグロビン変化量も、赤色信号やIR信号の実効値から定量化でき、利用者の運動能力を評価できる。図38の走行時の加速度の大きさや図39の走行時の心拍数HRやSpO2の変化と合わせて個人の身体能力を評価できる。
 ΔDC処理部3501は、装着状態によっては大きなMAが混入して急激な変化を生じる場合がある。これは装着のずれ等によって発生していると考えられる。多くの場合1秒以内の大きな変化であり、この変化を検出して差し引くことで除去できる。脈波振幅処理部3502も、大きなMAにより振幅情報に大きな変動が生じる場合がある。図37の光検出器信号実効値においては、数秒から数十秒の変動の生体反応を扱っている。大きなMAにより信号対ノイズ比SNRの低下した脈波は、全体の中に占める割合が少なければ脈波振幅の処理から外しても影響は小さい。
 このSNRの計算は、図20のテンプレート生成部2002を利用して行える。テンプレート生成部2002は脈波を同期加算したテンプレート波形を生成する。SNR計算のノイズNの計算において、このテンプレート波形からのずれ量を各脈波に対して評価してノイズ量を算定することができる。ずれ量として例えば、テンプレート波形減算後の残差に対して実効値を求める処理が行える。信号としては脈波のピークからピークまでの積分値が利用できる。SNRに閾値を設けて閾値以下のSNRの脈波を脈波振幅の処理から除外することができる。
 動き処理部3503は、動きによっては実効値の上昇はわずかであるため、適宜動きのベクトルや時間方向の特徴を代わりに用いたり併用することができる。例えば歩行による加速度実効値を求める以外に、加速度の繰り返し周期や3軸のベクトル量の特徴を併用して、利用者の歩行のスピードや歩行による運動量を求めることができる。利用者の姿勢や置かれている環境、何らかの作業等のコンテキストを取得することもできる。
 通常NIRSは安静時の脳活動や生体部位の活動を測定する。装着して運動できる大きさではなかったことも起因している。通常PPGは心拍数やSpO2や脈波揺らぎ(PRV)を測定するのみである。従来のNIRSやPPGはMAの補正機能がなかったり、少なくとも装着して走行できる程度にMA補正能力が十分でなかった。実施例1から実施例4に示した本発明の構成は、装着して運動を含め普段の生活を行うことができる。実験に用いたテスト機は4.8gと軽量で、装着していても違和感が少なく、電極等も用いないため侵襲性も少ない。計算量も少なく実験ではRaspberry Pi4でリアルタイム処理が行えている。本発明の生体信号計測装置は実施例3等の小型な装置を装着し、スマホ等の端末にデータを送ってスマホ内のプロセッサで実施例1や実施例2、実施例4等の処理を実行できる。
 実施例4で示した特徴を利用して、利用者の運動能力や身体能力を定量化したり、作業者のストレスを検知したり、知的労働の生産効率を改善したり、起立性調節障害(OD)のテストに用いる等利用できる。起立性調節障害では末梢血管交感神経活動が低下する場合が多いが、その理由はわかっておらず臨床的な意味が高い。また交感神経の亢進はカテコールアミンの分泌を促し、血糖値の上昇を引き起こす。運動を伴う血糖値上昇と運動を伴わない血糖値上昇を切り分けることができる。
 図40は本発明の実施例5の生体信号計測システム4000のブロック図である。生体信号計測システム4000は、例えば複数のセンサ4001と複数の端末4002と複数のサーバ4003を持つことができる。それぞれ一つでも構わない。端末4002と複数のサーバ4003はどちらかのみでも構わない。センサ4001を複数装着することでMA補正のダイバーシチ効果が得られるのと、異なる生体部位での生体情報が得られるのと、複数の部位間の信号から生体反応の遅延時間が得られる。また組織内で複数の利用者に利用してもらい1台或いは複数のサーバにデータを集めることもできる。さらに複数の組織に利用してもらい、匿名化処理等を行ったうえで組織をまたがってデータを共有することもできる。
 図41は本発明の生体信号計測方法4100のブロック図である。光計測ステップ4101と動き計測ステップ4102と時間差補正ステップ4103と補正係数生成ステップ4104とアーチファクト除去ステップ4105を備える。光計測ステップ4101は、可視光や赤外光及びそれら以外の波長も含む電磁波の送信と受信を行うステップであり、受信信号の時系列データを出力する。動き計測ステップ4102は、光計測ステップ4101が計測する部位にかかる応力を求めるために、加速度を含む動きに関する物理量を計測するステップであり、計測した動き物理量の時系列データを出力する。
 時間差補正ステップ4103は、光計測ステップ4101の出力信号に存在するMAを補正するために、動き計測ステップ4102の出力信号と光計測ステップ4101の出力信号との時間差を測定し、時間差がなくなるように補正を行うステップである。その補正は、動き計測ステップ4102の出力信号と光計測ステップ4101の出力信号のどちらに対して行っても良い。動き計測ステップ4102は、出力信号として動き波形を合成した合成波を出力することもできる。その合成では、動き波形を時間方向にずらし、振幅方向に係数を乗算した波形を元の動き波形に加算することができる。
 補正係数生成ステップ4104は、時間差補正ステップ4103で時間差補正された光計測信号と動き計測信号の相関係数を補正係数として生成する。相関係数の生成では、相関係数を求める時間区間を設定し相関係数を求めることができる。さらにその時間区間における相関係数の時間変化を求めて、時間の関数にした相関係数を補正係数として生成しても良い。相関係数の時間変化は、時間差補正された光計測信号のエンベロープから求めることができる。その時エンベロープに含まれる生体情報成分を除去することができる。
 アーチファクト除去ステップ4105は、時間差補正された動き計測信号に対して補正係数生成ステップ4104で生成された補正係数を乗算し、その乗算結果を時間差補正された光計測信号から減算する。
 本発明の実施例1や実施例2や実施例4の処理は、端末4002やセンサ4001内で行うこともできるが、処理に応じて処理を行う装置を変えることができる。例えば実施例4の処理をサーバ4003や端末4002に近いPC等のエッジ端末で行って、端末4002の電池やプロセッサ等のリソースの消費を減らすことができる。利用者の環境のネットワークの有無やセキュリティの必要性等に応じて適宜処理の場所やデータの及ぶ範囲を変更できる。
 複数のセンサ4001として本発明の実施例3の構成を左耳と右耳に同時に装着できる。これまでに使用した図は左耳の図であるが、右耳に装着するように変更することは当然可能である。左耳と側頭の関係を、右耳と側頭の関係に従って適宜左右対称にできる。複数のセンサ4001を装着することで、MA補正のダイバーシチ効果が生じる。MAの直接波成分が比較的変動しやすいのは、装着場所に敏感であるためであることはすでに説明した。後耳介動脈等に応力的影響を及ぼす箇所に近いなど、装着のたびに変化する場合がある。左右の耳による同時装着は装着ごとの変化に多様性を生じさせ得る。
 すなわち複数のセンサからの信号のMAの量や、補正後の残差を評価し、その評価に応じてMAが小さくなる方を選択するか、MA残差に応じて重みづけして合成することが行える。この選択や合成は、突発的なMAに対しても、装着場所による違いがあれば効果がある。左耳と右耳の装着では、後耳介動脈が及ぶ左脳領域や右脳領域の違いも計測しうる。実施例4で述べたΔDC計測や脈波振幅によるΔHbO2やΔHHb計測を左右の装着で確認することができる。
 複数のセンサ4001の装着は、耳と足首の装着など離れた生体部位でも行える。ダイバーシチ効果があるほかに、例えばMAに対してロバストな緑色信号を利用して脈波伝播速度(PWV:Pulse Wave Velocity)計測が行える。本発明により質量を軽減し、SNRの高い箇所に装着すると共に、足部においても左右に装着したり、足の内側・外側に装着するなど、複数の箇所に装着してダイバーシチ効果によるSNR改善を行うことができる。PWVの測定から動脈硬化や血圧の状態が把握できる。前述のΔDC測定や各光検出器信号の振幅測定から推定した総ヘモグロビン量変化から血圧変化を推定し、PWVと併用して血圧変化を推定することもできる。
 動き計測部を含む通信部2702は、端末だけでなくサーバ等とも通信を行うことができる。通信には2.4GHz帯等を利用したパーソナルエリア無線通信WPANが利用できるほか、ローカルエリア無線通信WLAN、ワイドエリア無線通信WWAN等が利用できる。耳の表等から発せられるIR光を用いた光通信を行っても良い。その場合生体計測用の光送受信部以外に通信用の光送受信部を設けてもよい。対面する相手と光送受信を行い、生体情報及びその他の情報を交換することもできる。
 交感神経性血管収縮の説明ではΔDCに関して主として説明してきたが、脈波揺らぎ(PRV)を併用することは当然可能である。本発明の優れたMA除去性能により特に緑色信号のロバスト性は高い。例えば緑色信号の脈波ピークの時間間隔から、その時間間隔の揺らぎであるPRVを求めることができる。併用することで情報の精度が向上する。
 ヘモグロビンの吸光度の波長依存性について説明してきたが、1100nm台や1600nm台の近赤外線波長にはグルコースの吸収帯があり、これらの波長の光を用いて、生体の血中の血糖値を求めることができる。そのほか血中のアルコール等様々な物質の計測を同様の手法で行うことができる。これらの測定においても本発明のMA補正や信号処理の優れた効果、即ち実施例3にある装着からのアプローチ、実施例1や実施例2にある信号処理からのアプローチ、実施例4にある後処理からのアプローチを単独或いは併用して利用できる。
 左右の耳に装着するNIRSについて説明してきたが、機能的近赤外分光分析法(fNIRS)を行うこともできる。側頭葉には言語や聴覚にかかわる脳機能が局在しており、頭部の複数個所に光送受信部を配置してリアルタイムでベクトル化してそれらの脳機能に関する情報を得ることができる。HHbやHBO2やtHbに関する情報はもとよりそれ以外の情報も得ることができる。
 本発明の各処理は、アナログやデジタル、ハードウェアやソフトウェアレイヤのどのレイヤでも実行できる。それらレイヤを組み合わせて処理を行うこともできる。それを行う物理的な場所も適宜選択可能であり、動的に物理的な場所を変更することもできる。
 図42は本発明の実施例6のブロック図であり、実施例4の生体信号計測装置3500の詳細な構成の一例である。生体信号計測装置3500は、光受信器信号PPG1からPPG3を出力する光送受信部4201から4203と、光検出器信号PPG1からPPG3のDC成分を処理するΔDC処理部3501と、光受信器信号PPG1に含まれる脈波成分を処理する脈波信号処理部4206と、動き計測部信号ACCを出力する動き計測部4207と、動き計測部信号ACCを入力として利用者の動きを処理する動き処理部3503と、これら光送受信部4201から4203や動き計測部4207を装着している利用者の生体状態を判定する生体状態判定部4210を持つことができる。
 光送受信部4201から4203は、それぞれ光送信器と光受信器を持つ構成をとることができるほか、一つの光受信器と3種類の光送信器を持つ構成をとることもできる。一つの光受信器を時分割で切り替えて順次3種類の光信号を受信することができる。ΔDC処理部3501は、光受信器信号(PPG1からPPG3)に含まれるDC信号(DC1からDC3)を抽出するDC信号抽出部4204と、DC信号DC1からDC3を用いて総ヘモグロビン変化信号ΔtHb1とΔtHb2を出力するΔtHb処理部4205を持つことができる。
 DC信号抽出部4204として、例えば遮断周波数が0.01から0.2Hzあたりのロウパスフィルタを用いることができる。光受信器信号PPG1からPPG3にはAC成分である脈波が含まれており、この脈波成分を概略除去できる上記遮断周波数にすることが好ましい。DCに脈波成分が重畳すると、後述する生体の熱的応答や起立時の応答を評価する上で誤差を生じうる。さらに計算量を減らすためにサンプリング周波数を落とす場合、ナイキスト周波数以上の周波数成分は誤差となる。生体の熱的応答は比較的低速であり、上記遮断周波数は0.01Hz程度でも生体の本来の応答に影響することが少ない。一方起立時の総ヘモグロビン変化信号ΔtHbを観測する場合、比較的速い変化が生じるため0.2Hz程度にすることが好ましい。
 図43はΔtHb処理部4205の構成例である。ΔtHb処理部4205は、総ヘモグロビン変化信号ΔtHbの計算を行うΔtHb計算部4301と、ΔtHbの計算を行う上で必要となるDCオフセット値を保持するDC0保持部4302と、DC信号に混入したMAを除去するDC-MA除去部4303を持つことができる。実施例4と同様に光受信器信号PPG1からPPG3をそれぞれ、緑色光、赤色光、IR光で計測する場合について説明するが、以下に述べる本発明の特徴を利用してこれらの周辺の波長に置き換えたり追加することは適宜可能である。
 ΔtHb計算部4301は、数式11から数式16の計算を行うことができる。数式11はモディファイド・ランベルト・ベールの法則から導出される吸光度変化ΔAλを表す式である。DCはDC信号であり、DC0はDCのオフセット値、εaとεbはそれぞれ媒質aとbのモル吸光係数、ΔcaとΔcbは媒質のモル濃度である。ここで媒質aやbとして酸素化ヘモグロビンHbO2と脱酸素化ヘモグロビンHHbを仮定して、赤色光とIR光に関してそれぞれ数式11を立てることができる。赤色光とIR光に関する2つの数式11を連立させて解くことで、酸素化ヘモグロビン変化量ΔHbO2と脱酸素化ヘモグロビン変化量ΔHHbはそれぞれ数式12と数式13で表される。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000011
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000012
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000013
 ここでΔA2とΔA3はそれぞれ赤色光とIR光の吸光度変化、ε2HbO2とε3HbO2はそれぞれ赤色光とIR光の酸素化ヘモグロビンに対するモル吸光係数、ε2HHbとε3HHbはそれぞれ赤色光とIR光の脱酸素化ヘモグロビンに対するモル吸光係数である。モル吸光係数は物性値として文献等から入手できる。ΔHbO2やΔHHbは、ΔA2とΔA3の測定値に数式12、数式13で決まる係数を乗算してから減算することで求められる。
 吸光度ΔAλは数式11のようにDCオフセット値の対数ln(DC0)からDC信号の対数ln(DC)を減算することで得られる。数式11のΔAλと数式6のDCレベル変化ΔDCとの相違点は対数を取るか否かの違いと、正負の極性が逆になる点である(ΔDCはヘモグロビン量が上昇すると低下)。ΔDCの単位はA/D変換の量子化数のLSBである。ΔHbO2やΔHHbの単位は例えばmmM・cm(ミリモーラー・センチメートル)となる。ΔHbO2やΔHHbにcmの単位が含まれる理由は、波長当たり一組の光送受信器の構成では、モディファイド・ランベルト・ベールの法則における生体皮下の光散乱長が明確にできないためである。
 数式14のように、酸素化ヘモグロビンHbO2と脱酸素化ヘモグロビンHHbを加算することで赤色光とIR光による総ヘモグロビン変化信号ΔtHb2を求めることができる。数式15に示すように、IR光の吸光度変化ΔA3から赤色光の吸光度変化ΔA2を減算することでNIRSの組織酸素化指標TOIと相関のある指標である酸素化指標AOxを求めることができる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000014
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000015
 緑色光の酸素化ヘモグロビンと脱酸素化ヘモグロビンに対するモル吸光係数ε1HbO2とε1HHbはそれぞれ9.989と9.759 (1/mmM/cm)であり、モル吸光係数の差Δε/εは2.3%である。数式11から酸素化ヘモグロビンと脱酸素化ヘモグロビンのモル吸光係数の差が小さい場合、緑色光の総ヘモグロビン変化信号ΔtHb1の近似式として数式16が成り立つ。ΔA1は緑色光による吸光度変化、ε1は上記ε1HbO2とε1HHbの平均である。例えば波長500nm±3nm、530nm±4nm、545nm±3nmに酸素化ヘモグロビンと脱酸素化ヘモグロビンのモル吸光係数の差が10%以下の波長帯域が存在する。これらの帯域では10%以下の精度で単色光、つまりは一組の光送受信器で総ヘモグロビン変化信号が求めることができ装置を小型・簡略化できる。青色光側にもΔε/εが小さい帯域があるが、青色に行くほど皮下への侵入深さが浅くなり、信号が減少する問題がある。赤色光側にもあるが、今度は皮下への侵入深さが深くなり後述する表面付近と深部の血管の識別が難しくなる問題がある。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000016
 ΔtHb計算部4301は、DC信号DC1からDC3と、DCオフセット値DC10からDC30を入力として、緑色光による総ヘモグロビン変化信号ΔtHb1と赤色光とIR光による総ヘモグロビン変化信号ΔtHb2を出力する。DC0保持部4302が出力するDCオフセット値DC10からDC30は、それぞれ緑色光、赤色光、IR光のDC信号DC1からDC3の測定の先頭において一定期間光受信器信号PPGを平均化した値を使うことができる。或いは全区間の平均を使うことができる。DCオフセット値DC10からDC30はΔtHb計算部4301のDC0の処理(数式11)に入力され、各波長の吸光度変化ΔA1からΔA3が算出される。
 図44(a)、図44(b)はDC-MA除去部4303の構成例を示したものである。DC信号に混入したMA(DC-MA)を除去する場所として、例えば緑色光による総ヘモグロビン変化信号ΔtHb1と赤色光とIR光による総ヘモグロビン変化信号ΔtHb2に対して処理する図44(a)の方法と、DC信号DC1からDC3に対して処理する図44(b)の方法がある。図44(a)ではΔtHb1とΔtHb2の2つの信号、図44(b)ではDC1からDC3の3つの信号となり、図44(a)の方が対象とする信号が少なくて済むメリットがある。対象とする信号の本数と上流と下流の違いがあるのみで、同様の処理を適用することができる。図44(a)ではDC-MAを除去した総ヘモグロビン変化信号ΔtHb1とΔtHb2を出力する。図44(b)ではDC-MAを除去したDC信号DC1aからDC3aを出力して、それら出力はΔtHb計算部4301の入力として使用することができる。
 図44(a)を例にとって説明すると、DC-MA除去部4303は、総ヘモグロビン変化信号ΔtHbの微分を行う微分器4401と、微分信号dfを所定の閾値と比較する比較器4402と、閾値超過点cpをグループごとにまとめる合成器4403と、グループ化した閾値超過点cbの前後の段差量を測定して段差以降のΔtHbから段差量を減算するDC減算器4404を持つことができる。
 図45(a)から図45(f)はDC-MA除去部4303の動作を説明する図である。実際に頭部の表情筋を動かしてDC-MAを発生させて取得した信号を使用している。図45(a)は赤色光とIR光による総ヘモグロビン変化信号ΔtHb2を微分器4401で微分した微分出力df2の波形である。時刻t1から始まる数秒と時刻t2から始まる数秒の2か所においてDC-MAが発生しており、微分波形は正負に変動している。比較器4402は微分出力df2の絶対値波形に対して閾値Thを設定して、閾値Thを超過する点を抽出して閾値超過点信号cp2を出力する。閾値超過点信号はしきい値を超過する点の時間情報である。正と負で別々の閾値を設けても良い。その場合負側の閾値―Thをマイナス方向に向かって超過する閾値超過点を抽出すればよい。この操作は、DC-MAによって起きる正負の大きなDCシフトを抽出する意味がある。赤色光とIR光のDC信号は、緑色光のDC信号よりDC-MAが生じやすい。緑色光のDC信号はAC信号のMAの場合と同様に、細い血管の集合を観測していることによる多様性があり、DC-MAも生じにくい傾向がある。急激な血圧変動による真正のDC変動とDC-MAによる変動を区別する上で、赤色光とIR光による総ヘモグロビン変化信号ΔtHb2を利用することは、DC-MA抽出の未検出や真性変化の誤検出の割合を減らす意味がある。
 図45(b)は緑色光による総ヘモグロビン変化信号ΔtHb1に対して、赤色光とIR光によるΔtHb2で抽出した閾値超過点cp2をプロットした波形である。図45(b)のように少なからずΔtHb1にもDC-MAによるDCシフトが生じており、このシフト部分にΔtHb2で抽出した閾値超過点が複数プロットされている。合成器4403は時間的に接近した複数の閾値超過点を一つのグループとしてまとめる。さらに合成器4403はグループごとに一つの閾値超過点を設定する。図45(b)ではお互いに5秒以内の範囲にある閾値超過点は一つのグループにまとめられ、Grp1とGrp2にグループ分けされている。さらに図45(c)では各グループの時間幅の中心の時間をそのグループの閾値超過点として設定している。
 DC減算器4404は、グループの閾値超過点の手前の5秒から10秒の範囲である図45(c)のAve1とAve3、およびグループの閾値超過点の後ろの5秒から10秒の範囲である図45(c)のAve2とAve4それぞれの平均を求める。求めた前後の平均の差分Ave2-Ave1、Ave4-Ave3は各グループの段差信号となる。さらにDC減算器4404は、各グループの閾値超過点の±5秒の範囲の総ヘモグロビン変化信号を削除する。図45(c)のDel部分の信号が図45(d)のように削除されている。さらにDC減算器4404は、グループの閾値超過点の後ろ5秒以降の総ヘモグロビン変化信号に対して、上記で求めた段差信号を減算する処理を行う。図45(d)のSub1以降がまずGrp1の段差信号で減算され、さらにSub2以降がGrp2の段差信号で減算される。用いた定数の値は適宜変えることができる。
 以上は赤色光とIR光による総ヘモグロビン変化信号ΔtHb2を用いて抽出したDC-MAから緑色光による総ヘモグロビン変化信号ΔtHb1に生じているDC-MAを除去する説明を行ったが、ΔtHb2を用いてDC-MAの抽出を行いΔtHb2に生じているDC-MAを除去する等、組み合わせは適宜変えられる。さらにΔtHb1とΔtHb2の両方において抽出したDC-MAを用いて生体の真正の変化とDC-MAを区別することもできる。例えば比較器4402で用いる閾値として複数の閾値を設定し、抽出したDC-MAの強度を測定する。ΔtHb1とΔtHb2の両方でそれを行い、DC-MA強度1とDC-MA強度2を得る。それぞれの強度に適切な重みづけ係数W1、W2を乗算する。重みづけ係数乗算結果を加算した値、W1*(DC-MA強度1)+W2*(DC-MA強度2)をさらに比較器4402で判定する。
 生体の真正の変化とDC-MAを区別するために脈波信号処理部4206で得られる脈波信号を用いることもできる。真正の総ヘモグロビン変化信号はヘマトクリット値一定の元では血流変化であるため、血圧変化に付随して変化が生じる。血圧は心拍数と一回拍出量と末梢抵抗の積であり、交感神経によって連動して変化する場合が多いため脈拍信号や脈波振幅信号の変化速度、例えば脈拍信号や脈波振幅信号をSとしてSの時間微分dS/dtと総ヘモグロビン変化信号の時間微分を比較して真正の総ヘモグロビン変化信号を判定できる。例えばdS/dtが一定以上の大きさの場合、その区間やその区間の前後の総ヘモグロビン変化信号のDCシフトを真正と判定する。
 図42の脈波信号処理部4206は、実施例1で説明したAC成分のMA(AC-MA)を除去する生体信号計測装置100と、脈波振幅を処理する脈波振幅処理部3502を持つことができる。生体信号計測装置100を、実施例2で説明した生体信号計測装置1600や1700に適宜置き換えても良い。実施例2で示した心拍数HRを抽出する構成や、実施例4に示したSpO2を抽出する構成等も適宜含めることができる。利用者が静止している応用などAC-MAが問題にならない用途ではAC-MA除去部分の機能を取り除くことも適宜行える。さらに図42の生体信号計測装置3500に実施例3で示した装着からのアプローチを適用することで、DC-MAやAC-MAの混入がそもそも少なく、混入した場合でも効果的に除去できる生体信号計測装置が構成できる。
 図46は脈波振幅処理部3502の構成例を示したものである。脈波振幅処理部3502は、光検出器信号からAC信号を抽出するAC信号抽出部4601と、脈波振幅を計算する脈波振幅計算部4602を持つことができる。AC信号抽出部4601として例えばハイパスフィルタを用いることができる。このハイパスフィルタの遮断周波数として、例えば50bpm程度以上の心拍数成分を通過させると共に呼吸や起立や運動などに伴うベースラインの変動を除去する0.8Hzあたりに設定することができる。さらにAC信号抽出部4601として周波数f1から周波数f2の通過域を持つバンドパスフィルタを用いることもできる。周波数f1は上記ハイパスフィルタの遮断周波数が使用できる。周波数f2として用途にも依存するが、光検出器信号に混入する電気ノイズや脈波の歪みを取り除く程度に設定することができる。
 脈波振幅計算部4602は、例えばAC信号抽出部4601で抽出した光受信器信号のAC成分PPG1acからPPG3acを入力として数式7の処理を行うことができる(PPGaに適宜PPG1acからPPG3acを代入)。積分を行う時間T7として心拍数が低下した場合でも1周期以上をカバーできる2秒程度に設定することができる。脈波振幅は後述するように血管の拡張縮小運動によって変化する。脈波振幅の絶対値は光の波長や光の強度、光受信器の感度、光送受信部の装着状態等によって変化するため、正規化して利用することが好ましい場合がある。正規化して利用するために、脈波振幅信号の初期値を保持するAC0保持部4603を持たせることができる。数式7によって得られる脈波振幅の時系列データRMSppga(t)の例えば測定開始から所定の時間Tx経過後に、区間Tyの時間RMSppga(t)を平均化した値を初期値として使うことができる。このようにして得られた緑色光、赤色光、IR光の脈波振幅初期値をそれぞれAC10、AC20、AC30として、AC0保持部4603が保持することができる。各波長のRMSppga(t)をこれら初期値で除算することで正規化した脈波振幅を得ることができる。
 図42に示すように、動き処理部3503は合成加速度を抽出する合成加速度抽出部4208と、加速度振幅を抽出する加速度振幅処理部4209を持つことができる。合成加速度抽出部4208は、例えば前述した3軸のベクトル合成から合成ベクトルの振幅を求めて一つの時系列データにする処理を行うことができる。加速度振幅処理部4209は数式8に基づいた処理を行うことができる。数式8の積分時間T8は用途によって異なるが、例えば座位から立位への起立のような急激な動作は1秒程度の動作であり、このような動作を検出する目的ではT8を1秒程度に設定することができる。数式8のような実効値計算を用いることで、起立の動作の個人差やばらつきに影響されにくい起立のタイミング抽出が行える。利用者のおかれている状態、例えば安静や起立、歩行や走行等の運動など状態を検出することができる。
 図47(a)から図47(c)は実施例6のさらに詳細な構成を示すブロック図である。図42で説明した生体信号計測装置3500と、血管運動VMを定量化する血管運動処理部4701と、総ヘモグロビン変化信号ΔtHbや血管運動VMから生体に生じている変化を判定するΔtHb・VM判定部4702と、起立によるストレスOSを定量化する起立ストレス処理部4703を持つ。これらの判定部や処理部は生体信号計測装置3500で抽出された信号を入力として使うことができる。これらの判定部や処理部で得られた結果を適宜利用者等に通知することができる。
 図48は実施例6のさらに詳細な構成を示すブロック図である。生体信号計測装置3500と、生体信号計測装置3500を含めた装置を装着している利用者に働きかけるアクチュエータ4802と、生体信号計測装置3500で抽出された信号からアクチュエータ4802の制御に必要な信号を生成する制御部4801を持つことができる。
 図49(a)は血管運動処理部4701の詳細な構成を示すブロック図である。血管運動処理部4701は、血圧の時系列情報を保持する血圧情報部4901と、血管運動を計算する血管運動計算部4902と、生体信号計測装置3500を含めた装置の装着場所の血管属性を持つ血管属性部4903を持つことができる。図49(b)は血圧情報部4901の詳細な構成を示すブロック図である。血圧情報部4901は、利用者属性を保持する利用者属性部4906と、心拍数HRや利用者属性に基づいて血圧を推定する血圧推定部4904と、推定血圧eBPと測定血圧Binを切り替える選択部4905を持つことができる。
 図50は血管運動計算部4902の詳細な構成を示すブロック図である。血管運動計算部4902は、血管をモデル化した血管モデル5001と、血管モデルと実測を照合するモデル対実測照合部5002と、前記照合により得られた残差Errが所定の残差に収まるように血管モデルを変化させる最適化処理部5003を持つことができる。最適化処理部5003は、残差Errが所定の残差に収まった時の血管運動VMを出力することができる。
 図51(a)は血管モデル5001の詳細な構成の一例を示すブロック図である。血管モデル5001は、例えば血圧源BP1と、血圧源の上流から細動脈1(Ra1)、細動脈2(Ra2)、細動脈2(Ra2)に入る前に分岐する動静脈吻合Rava、毛細血管Rc、細静脈2(Rv2)、細静脈1(Rv1)の血管ブロックを持つことができる。動静脈吻合Ravaは細静脈2(Rv2)と細静脈1(Rv1)との接点に合流する。さらに毛細血管容量Cc、細静脈2容量(Cv2)、細静脈1容量(Cv1)を上記血管ブロックに持たせることができる。各血管ブロックの上流側の圧をそれぞれ、PRa1、PRa2、PRc、PRv2、PRv1としている。
 図51(b)は血管属性部4903の詳細な属性の一例を示す表である。血管や血流のモデル化として、血管抵抗や血流や血圧を電気回路の抵抗や電流や電圧に置き換えるウィンドケッセルモデルがある。血管は血圧によってその体積を変化させる弾性特性を持つため、血圧Pと体積Vの間には例えば数式17に示す関係がある。ここで血圧Pにかかる係数cPVは血圧Pと体積Vの関係の係数である。βは血圧Pと体積Vの非線形特性の係数で、数十秒スケールの事象を観測する時β=1となる。これは血管には遅延コンプライアンスと呼ばれる現象があり、数十秒スケールの変化に対して血管が柔らかく変化する特性があるためである。さらに血管体積と血管抵抗との間には、ラミナーフローと呼ばれる数式18に示す関係がある。ここでV0は体積の初期値、Rは血管抵抗、R0は血管抵抗初期値である。cVMは血管運動に関する係数で、初期値からの血管運動によって変化する。ラミナーフロー条件では通常αは2となる。
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 図51(b)において血圧源BP1の値として、例えば平均血圧BPdcと脈圧BPacを加算した値を与えることができる。与え方は用途によって異なるが、例えば血管運動の時間変化を求める用途では、平均血圧BPdcと脈圧BPacの時系列データを使うことができる。細動脈1ブロックRa1と細動脈1ブロックRa2では、血管運動係数cVMとして細動脈(Ra1、Ra2)共通の血管運動係数cRaの値を入力している。cRaは細動脈の血管運動(血管の拡張縮小)の時間変化を表現している。
 血管Ra1の体積変化を求める場合、数式17に与える血圧Pとして、Pa1からPv1を減算した値を与えることができる。細静脈1の圧であるPv1を減算する意味は、このあたりの血管外の圧が細静脈1の圧になっているという仮定に基づいている。Ra1抵抗の初期抵抗値Ra10は一般的な細動脈抵抗値比率に従って65kΩと置いている。他の血管ブロックに関しても同様にして値を決定することができる。一般的な血管抵抗比率として細動脈:毛細血管:細静脈=0.65:0.25:0.1という比率がある。Ra10の絶対値を65kΩにしている理由は、SPICE等の回路シミュレータで血管モデルを解く場合、シミュレータのデフォルトの解析条件での収束性をよくするためである。
 これら血管属性の使い方も用途によって異なるが、SPICE等の回路シミュレータを使ったり、キルヒホッフ則から行列式を作成して解くこともできる。血管抵抗Rと血管運動係数cRと血流Fと血圧Pによる行列式、[R][1/cR][F]=[P]を解くことで血管運動係数cRを求めることができるが、RにP依存性が入っていると ニュートン法等による反復計算が必要になる。その他回帰解析や差分進化法なども使用できる。或いは未知数が2個でターゲットが2個となるルックアップテーブルを作っておく方法も考えられる。SPICEによる解析を例にとると、過渡解析やAC解析、DC解析が行える。時間方向の分解能が粗くて良い場合、DC解析によって各接点のDC圧Pdcが求まり、数式17から体積Vが求まり、総ヘモグロビン変化を求めることができる。AC解析によって各接点のAC圧Pacが求まり、数式17から体積変化Vacが求まり、脈波振幅変化を求めることができる。時間方向に粗い解析を行う場合容量(Cc、Cv2、Cv1等)はなくても良い。
 時間分解能を上げて時間応答を見たい場合や、総ヘモグロビン変化と脈波振幅変化を同時に求めたい場合、過渡解析を用いることができる。この場合血圧BPdcと脈圧BPacとして、求める時間分解能や圧方向の分解能に応じた時系列データが必要になる。平均血圧BPdcと脈圧BPacの時系列データを得る方法として、上腕や手首や指等に装着した血圧計を併用する方法がある。Finapres等の連続測定が可能な血圧計も存在するが、数分ごとに血圧を測定する血圧計を用いることもできる。その場合途中の血圧変化を補うため、心拍数HRから途中の血圧変化を図49の血圧情報部4901で推測することができる(血圧推定部4904)。
 例えば運動時の血圧は、一般的には運動開始後心拍数が100bpmを超えるあたりから血圧が上昇する。これは運動開始直後は心拍数の増加と末梢抵抗の低下が同時に起こるためである。その後末梢抵抗の低下は飽和して心拍数の増加が概略の血圧上昇となる。血圧情報部4901は数分おきの血圧測定から測定の間を埋める時系列データを生成することができる。収縮期動脈圧SAP、拡張期動脈圧DAPから例えば、平均血圧MAPと脈圧Pacを求めることができる。平均血圧MAPをDC血圧の時系列データPdcとして使うことができる。
 血圧BPdcと脈圧BPacの時系列データを使って血管モデル5001の過渡解析を行うことができる。血圧BPdcと脈圧BPacの時系列データの先頭付近の値を使って各初期値を求めることができる。例えば初期の血圧BPdcが78mmHgの場合、この値と各血管ブロックの初期抵抗値R0(Ra10やRa20等)を使って各ノード圧の初期値P0を求めることができる。各ノード圧から各血管ブロックの総ヘモグロビン変化量ΔtHbを得るために本発明では数式19に示す係数γを導入している。係数γはノード圧Pをノードの初期圧P0で正規化した値P/P0から総ヘモグロビン変化量ΔtHbを導き出す変換係数になる。係数γは血管モデル5001と総ヘモグロビン変化量ΔtHb測定値を比較する上で必要な係数である。数式19の大括弧内の式は数式17から導出される。
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 この係数γを求めるために本発明では起立時の血圧変化を利用している。起立動作によって一般的に健常者において安静時血圧の0.6倍程度に血圧が低下する。例えば座位から立位への起立では、起立の瞬間胸腔内から多量の動脈血が下半身に移動すると共に、下肢の筋肉の収縮により多量の静脈血が胸腔内に戻る。この時に静脈血圧をモニタしている低圧系圧受容体が交感神経活動を抑制して末梢抵抗が減少する。さらに下肢の筋肉の収縮による下肢の血管抵抗の低下も末梢抵抗の減少を加速させる。心拍数はこの末梢抵抗の減少を補う形で上昇するが末梢抵抗の低下割合が大きいため上記0.6倍程度の血圧低下が起きると考えられている。
 図52(a)はモデル対実測照合部5002の詳細なブロック図である。モデル対実測照合部5002は、数式19等を用いて血管モデルの圧から総ヘモグロビン変化ΔtHbを求めるP-ΔtHb変換器5201と、モデルからのΔtHbと測定からのΔtHbを比較するΔtHb比較器5202と、血管モデルからΔtHbへ変換する係数γを保持するγ情報部5203を持つことができる。起立動作から数式19の係数γを求めるには、実測の条件で血管モデルを動かし、出てきた結果を実測と比較する必要がある。例えばγ情報部5203は仮に決めたγを出力し、P-ΔtHb変換器5201はそのγから数式19に基づいてモデルからのΔtHであるΔtHbsimを出力し、ΔtHb比較器5202はΔtHbsimと実測のΔtHbを比較してその差をErrとして出力する。γ情報部5203は誤差Errが最小になるようにγを設定する。
 この操作の流れとして例えば図52(b)のように、起立を検出するステップ5204と、γを抽出するステップ5205と、抽出されたγを使って血管運動VMを抽出するVM抽出ステップ5206を持つことができる。VM抽出ステップ5413によって各血管ブロックの血管運動係数cVMを求めることができる。ここでは起立動作を例に挙げたが、総ヘモグロビン変化ΔtHbが大きく変化する事象(バルサルバ法などの動作や薬剤や外部からの刺激や特定の運動等を含む)を利用することができる。
 VM抽出ステップ5206では、例えば血圧情報部4901が離散的な血圧測定データと脈拍信号HRを入力として血圧信号BPを生成する処理を行える。脈波伝播速度PWVから血圧信号BPの時系列データを生成しても良い。脈拍信号HRから離散的な血圧測定データを補間するとき、血圧の上昇速度などを利用者属性部4906からの信号を元に決定できる。利用者属性部4906は利用者の性別や年齢や日常のバイタルデータ等の情報を保持できる。血管運動計算部4902は血圧信号BPと血管属性部4903からの信号を入力として血管モデル5001から総ヘモグロビン変化ΔtHbや脈波振幅ACCを計算して実測値との合わせこみを行う。合わせこみができた血管モデル5001から血管運動VMとして血管運動係数cVP等の時系列データを出力する。
 発明者は実施例3で説明した耳甲介に装着した生体信号計測装置2700を使用して起立動作時の総ヘモグロビン変化ΔtHbを取得した。この時生体信号計測装置2700は、生体信号計測装置3500を含んでいる。図57(a)にこの時の緑色光による総ヘモグロビン変化信号ΔtHb1、赤色光とIR光による総ヘモグロビン変化信号ΔtHb2を示す。起立後ΔtHb1とΔtHb2は低下し始め、約10秒後に低下の最小点に達している。図57(b)の緑色光、赤色光、IR光それぞれの脈波振幅AC1、AC2、AC3も同様の低下を生じている。この現象を血管モデルで再現させるために、図51(b)の血管属性を変えながら実測と血管モデルが適合する条件を探索した。
 その結果測定箇所では起立動作の際血管運動が起きていないと仮定する場合に、実測と血管モデルとの誤差Errが10%程度の誤差内となる条件が得られることを見出した。具体的には、血管モデル5001において起立動作を模擬するために血圧BPdcと脈圧BPacを安静時の0.6倍に変化させる。SPICEの過渡解析を行い、各血管ブロックの圧Pの変化を求める。数式19を使用して圧Pから総ヘモグロビン変化ΔtHbを求める。血管モデルから求めた総ヘモグロビン変化ΔtHbと測定から求めた総ヘモグロビン変化ΔtHbが一致する係数γを決定する。この時各抵抗ブロックの圧Pは、血管外の圧として仮定している細静脈1の圧Pv1を減算してから数式19に代入する。
 さらに脈波振幅は数式20を使用して計算する。ここでAC/AC0は求める脈波振幅で、初期値AC0に対して正規化している。右式の第1項は圧PのAC成分でこれも初期値に対して正規化している。圧PのAC成分は抵抗ブロックの中央の振幅を用いている。右式の第2項は数式17の圧力―体積関数の微分係数の変化を表す。動作点であるDC圧の変化によって微分係数が変化する。右式の第3項は血管運動係数cVMの変化による体積変化を表す。数式18からcVMの変化が体積に与える影響が求められる。
 ここで数式20のαは2でよいが、βの値が明確でない(脈波は遅延コンプライアンスより速い変化をしている)。指尖での実験では低圧に向けてはほぼリニア、つまりβ=1となり、高圧へ向けてはβ=3程度に非線形が強くなることが知られている。圧力―体積関数としてシグモイド関数が測定結果をうまく説明できる場合もあり、シグモイド関数は低圧側でほぼリニアになることからもこの現象を支持する。発明者による実験でも起立動作においてはβ=1が測定結果をうまく説明できるため、安静時から低圧方向へのシフトに関してはβ=1を用いている。
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 緑色光、赤色光、IR光のDC信号やAC信号が皮下のどの血管ブロックを観測しているか一般に知られていない。さらに皮下の血管構造に関しても生体部位による差が大きいことが知られており、今回テストした耳甲介での測定は未知な部分が多い。一方で装着者が座位から立位へ起立したりエルゴメータ運動を行う場合、DC信号やAC信号を安定して測定できる部位は限られている。起立や運動によって四肢等は大きく動くためである。発明者は、エルゴメータ運動を行って血管運動を大きく変化させる実験を行った。上述した起立動作から数式19の係数γを求め、エルゴメータ運動における血管モデル対実測の照合テストを繰り返した。
 その結果、1)測定箇所に動静脈吻合AVAがあること、2)緑色光のDC信号は毛細血管ブロックRcから細静脈2ブロックRv2あたりを観測していること、3)赤色光とIR光のDC信号は細静脈1ブロックRv1を観測していることを仮定する必要があることが分かった。
 図54は発明者が行ったサイクルエルゴメータによるテスト5400のタイムテーブルである。利用者5401は、図29にあるように本発明による生体信号計測装置3500と生体信号計測装置2700を含んだ生体信号計測装置5402を、耳の付け根の耳甲介付近に装着している。生体信号計測装置2700は、眼鏡2901によって生体に固定されている。測定開始から概略15分以上は椅子に座った座位の状態で安静にしている(5405)。これは生体信号計測装置5402の装着時に測定箇所の皮下を刺激して、DC信号が数分の間ドリフトする場合があるためである。DC信号のドリフトが生じていなければ安静時間を短くすることは可能である。
 DC信号のドリフトがないことを確認した後、座位から立位に起立してそのまま4分間起立している(5406)。動き計測部4207による測定から起立は概ね1秒以内に完了する動作になっている。4分間の起立は起立後の血圧変化の影響を記録する目的で設定しており、適宜変更することは可能である。4分間の最後のあたりでエルゴメータに移動する。その後2分間のウォーミングアップとして負荷電力70Wでエルゴメータ運動を2分間行う(5407)。その後負荷を130Wに上げたエルゴメータ運動を8分間行う(5408)。その後エルゴメータのサドルに着席したまま5分間安静にする(5409)。その後椅子に移動して安静にする(5410)。
 エルゴメータのペダルの回転数は50rpmで行った。エルゴメータ上にいる間、頭部付近に風を当てた場合(有風)と風を当てない場合(無風)のテストを実行した。有風の場合、無負荷でエルゴメータに着席している間も頭部付近に風を当てている。有風は送風ファン5404を用いて、頭部付近での風速が1.0から1.2m/sとなる設定で行った。実験は冬季の1月、室内の温度は27から28℃を維持するように設定した。室内の気温は特に無風の場合の特性に影響を与える。低温順化や高温順化も実験に作用する可能性がある。ちなみに図36から図39の実験は7月に室内で同様の温度で行ったものである(その場での歩行や走行)。
 図56(a)と図56(b)は起立前100秒からテスト終了までの血圧変化と脈拍数変化の測定結果である。血圧はこのテストでは上腕でオシロメトリック法により収縮期動脈圧SAPと拡張期動脈圧DAPを測定。それらから平均血圧MAP=SAP/3+2*DAP/3と脈圧Pac=SAP-DAPを算出した。測定は起立前安静時(5405)と、起立後4分間(5406)の間と、130Wエルゴメータ中(5408)と、椅子に移動して安静(5410)している間に行った。起立前安静時(5405)の血圧は、起立の数分前に測定しているが、図56(a)の時刻0秒の所にプロットしている。
 血管モデル5001の血圧源BP1に与える血圧DCモデルBPdcは、平均血圧MAPの測定値を通るように設定し、血圧ACモデルBPacは脈圧Pac(SAP-DAP)を通るように設定した。測定点の間の特性は図56(b)の脈拍数変化から推定した。図56(b)の脈拍数変化は無風時のデータであるが、有風時の変化特性も概ね図56(b)に一致する。
 図57(d)は起立時の総ヘモグロビン変化ΔtHbの血管モデル5001からの計算値、図57(e)は脈波振幅ACの血管モデル5001からの計算値である。数式19の係数γは、図57(a)の測定値と図57(d)の計算値が一致するように算出している。この時血管モデル5001の細動脈1(Ra1)、細動脈2(Ra2)、動静脈吻合Ravaブロックの血管運動係数cVMは変化しない仮定をしている。数式20を使用して同時に求めた図57(e)の脈波振幅ACの計算値は、図57(b)の測定値にほぼ一致している。総ヘモグロビン変化ΔtHbと脈波振幅ACの双方でモデル対実測の照合を行うことでモデルの妥当性を検証できる。
 図57(f)は起立時の合成加速度と合成加速度の実効値の測定値である。合成加速度はXYZの3軸の加速度のベクトル合成である。5回のテストの結果を重ねている。上向きの加速度と下向きの加速度の大きさを比較するとテストによって比率が異なることが分かる。これは起立の開始から終了にかけて、開始時の動きが速いか終了前の動きが速いかに依存する。同一の被験者においてもばらつきが生じる。一方合成加速度の実効値を見ると実効値を取らない場合に比べてばらつきが少ない。これは実効値が実効値計算の積分時間内の波形の二乗平均を計算しているためで、上記起立のばらつきを減らしている。加速度振幅処理部4209が加速度の実効値計算を行い、加速度実効値に対して閾値を設けた判定を行うことで、起立のタイミング検出の時間精度を上げられる。
 図57(c)は脈拍数HRの測定値である。図57(a)から図57(c)では時刻100秒において起立を行っている。図57(a)から図57(c)のピークの時間方向の位置を観測すると、起立から10秒前後でピークを迎えているが、脈波振幅AC、ヘモグロビン変化ΔtHb、脈拍数HRの順番になっている。これらピークの時間間隔から生理学的意味を抽出する上で、上記時間精度は重要になってくる。例えば自律神経は一般にホルモンなど化学物質による液性制御、交感神経や副交感神経による神経性の制御等を行っている(酸化窒素NOを介した機序)。また血管には筋原性の制御(Ca2+と物理的な細胞の伸長分極による収縮反応)があることが知られている。そのほかCO2や乳酸等の代謝性運動や酸素分圧による血管運動があることが知られている。起立時の反応だけでなく血管の自動調節能(autoregulation)や後述する脳中枢の制御を定量化する上でも時間精度は重要となる。
 図58(a)、図58(b)は、それぞれテスト5400で取得された無風時と有風時の総ヘモグロビン変化ΔtHbである。図58(c)、図58(d)は、数式15の酸素化指標AOxをそれぞれ無風時と有風時で求めたものである。酸素化ヘモグロビン変化ΔHbO2と脱酸素化ヘモグロビン変化ΔHHbも同時にプロットしている。波形は5回の測定の平均を取っているである。無風時では赤色光とIR光による総ヘモグロビン変化ΔtHb2が安静時から上昇するのに対し、有風時では逆に低下している。緑色光による総ヘモグロビン変化ΔtHb1は、無風時では上昇しているのに対し、有風時ではあまり変化しない。
 このように有風時に緑色光によるΔtHb1と赤色光とIR光によるΔtHb2が乖離する現象があること、無風時には乖離が無くなり熱的な機序が関連していると考えられること、前述した緑色光は皮下の浅い部分を見ていること、AC-MAやDC-MAが緑色光においてロバストで血管の多様性を仮定する必要があること、赤色光やIR光は皮下の深い部分を見ていること、一般に耳には動静脈吻合AVAが多く存在することから、前述の1)測定箇所に動静脈吻合AVAがあることを仮定した。腸間膜では前毛細血管括約筋が存在し、強力な血流制御を行っているが、前毛細血管括約筋は腸間膜以外では観察されないことが報告されている。
 一般に赤色光やIR光を使っているNIRSでは、DC信号に占める細動脈の割合は少ないことが知られている。つまり血流として毛細血管ルートとAVAルートがあり、緑色光は皮膚直下の毛細血管ルートのみをみており、赤色光とIR光は毛細血管ルートとAVAルートが合流したあとの血流を見ていると考えられ、2)緑色光のDC信号は毛細血管ブロックRcを観測していること、3)赤色光とIR光のDC信号は細静脈1ブロックRv1を観測していることを仮定した(後耳介静脈や後耳介動脈のような太い血管が観測範囲内にあるのかは現状不明。これら太い血管に応力が加わった場合血流変化が生じてMAとして入ってくる可能性はあるが、体積変化を起こさなければ変化として観測されない)。
 図59(a)は無風時の緑色光によるΔtHb1と赤色光とIR光によるΔtHb2に関して、血管運動処理部4701を用いてモデルを測定値に合わせこんだ結果である。図59(a)の点とエラーバーは測定値であり、曲線は最適化処理部5003を動かして残差Errが最小となるようにΔtHb1とΔtHb2を算出した結果である。最適化処理を高速化するために、最適化計算は粗くサンプリングした点に関して行った。図59(b)は有風時データに関して同様の処理を行った結果である。図60は上記最適化処理における未知数である、細動脈(Ra1、Ra2)共通の血管運動係数cRaとAVA(Rava)の血管運動係数cRavaの最適化収束後の値である。実線は無風時、破線は有風時の血管運動係数である。
 一般に脈波は毛細血管以降は消失することが知られている。今回テストでは、4)緑色光のAC信号は細動脈2ブロックRa2を観測していること、5)赤色光とIR光のAC信号は細動脈1ブロックRa1を観測していることを仮定している。図61(a)から(c)は無風時の緑色光、赤色光、IR光それぞれの脈波振幅、図61(d)から(f)は有風時の緑色光、赤色光、IR光それぞれの脈波振幅である。各脈波振幅の初期値AC0で正規化してある。点とエラーバーは測定値、実線は細動脈1ブロックRa1における計算値、破線は細動脈2ブロックRa2における計算値である。計算値は上記総ヘモグロビン変化ΔtHbの最適化収束時に得られた脈波振幅の計算値である。最適化のターゲットは総ヘモグロビン変化ΔtHb1とΔtHb2であり、脈波振幅をターゲットに設定していない。図61(a)(b)では計算値[AC]simと実測値との乖離が大きかったため、酸素化指標AOxを用いた補正([AC]simに1―0.35 AOxを乗算)を行うことで概ね一致が得られた。図61(a)(b)の観測に用いている緑色光から赤色光にかけての光は毛細血管直前あたりの細動脈を観測している可能性があり、このあたりの血管がAOxの影響を受けている可能性がある。補正後の(a)(b)を含め図61の計算値と実測値は概ね一致している。DC測定から仮説に基づいて血管運動係数を算出し、その結果を用いて計算した脈波振幅の計算値がAC測定による脈波振幅に概略一致しており、仮説の妥当性が検証された。
 最適化のターゲット信号と未知数は用途によって適宜決定できる。例えば上記のように総ヘモグロビン変化ΔtHb1とΔtHb2の2つの信号をターゲットとして、2つの未知数である血管運動係数cRaとcRavaを求め、その収束結果における各光波長の脈波振幅を求めることができる。各光波長の脈波振幅はモデルの検証に使用できる。別の方法として、各光波長の脈波振幅もターゲット含めることも適宜行える。脈波振幅のモデル精度が高い場合に有効な方法となる。
 ここでエルゴメータテスト5400のテスト結果について考察する。AVAに関して腕や指における評価はあるが、耳における評価は進んでいない。腕や指を含めAVAの動作を非侵襲で観測する例は見当たらない。一般にAVAは運動時の体温上昇を緩和するように動作する。皮下の深部を流れる動脈血を表皮の静脈に短絡させ、表皮付近の血流量を増大させて放熱を促す。耳におけるAVAはウサギなどにおける観測はあるが、運動中の人体における機序は分かっていない。
 一般に脳は20Wの熱産生を持ち、頭蓋への流入血は流出時に+0.5℃上昇する。高温下での運動時直腸等の深部体温は上昇しても脳の深部体温は上昇しないという報告もあり、その機序は明確でない。体温維持では、視索前野や前視床下部にある体温調節中枢が、延髄にある血管運動中枢に働きかけて血管運動を制御しているが、そのリアルタイムの動作は明確でない。
 無風時の総ヘモグロビンは起立時の低下量に相当する量以上に増加している。無風時の血管運動係数は運動時にやや低下しているが、血圧上昇があるため血流としては増大している。運動後は毛細血管ルートとAVAルートの両方が拡張に転じており、運動中から運動後にかけて血流を増大させていることが分かる。AVAルートは酸素を消費しないまま静脈に血流を流すため酸素の収支から見ると無駄な機序になる。組織の酸素化指標であるAOxは無風時に増大しており消費されない酸素が静脈血に充満している。無風での27から28℃の高負荷運動は生体に高温ストレスを与えていると考えられる。今回のテストは比較的短時間の運動ではあるが、体温調節中枢や血管運動中枢は緊急的にAVAや細動脈を拡張させて頭部の冷却に対応していると考えられる。ちなみにAOxと緑色光による総ヘモグロビン変化ΔtHb2を細かく観察すると一部動きが相関している部分がある。細動脈は酸素分圧に影響を受けることが知られており、細動脈と同様の構造を持つAVAが酸素分圧によって拡張収縮の反応を一部示している可能性もある。
 被験者は無風の場合汗をかいたが有風の場合目視できる汗は観測できなかった。有風時の総ヘモグロビンは毛細血管ルートでは大きな低下はないが、AVAが合流した細静脈1ブロックでは起立時以上の低下が生じている。有風時の血管運動係数cVMは細動脈cRaにおいて1/10に低下している。これは血管抵抗が1桁低下していることになる。一般に皮膚への血流は熱的制御の意味合いが大きいとされている。高運動負荷時の活動筋に必要とされる血流を優先させるため、頭部への送風により冷却が行われている場合熱的制御の目的を低下させる制御を中枢系が行っている可能性がある。図36から図39の室内での走行時の実験ではファンによる送風は行っていないが、その場での走行であるが頭部には大きな加速度が生じており、頭部に風による冷却が働いている可能性もある。
 一般に細動脈は抵抗血管と呼ばれ、主たる血管抵抗の制御は細動脈において行われる。今回細動脈1ブロックと細動脈2ブロックで同一の血管運動係数cRaを使用した。細動脈1ブロックと細動脈2ブロックはAVAへの分岐があるだけで基本的には連続した細動脈である。但しAVAの分岐後細動脈が細くなるという報告もある。細動脈1ブロックと細動脈2ブロックで血管運動係数を分けることもできる。
 図60の血管運動係数を見ると無風時のcRaとcRavaの動きは近接している。安静時のレベルの1/2から2倍程度の範囲では細動脈とAVAは連動した制御がかかっている可能性がある。通常毛細血管は直径10um程度であり、毛細血管につながる部分の細動脈は数十um、AVAは100um程度の直径になる。AVAには非常に厚い平滑筋があることが知られており、血管収縮の信号の増大がAVAでは顕著に働いている可能性がある。通常上腕のAVAは寒冷刺激で拡張し、暑熱刺激で縮小する。また摂食量に比例して拡張する。食事後にΔtHbが増加する現象は耳でも観測されるが、寒冷暑熱については耳は上腕と挙動が異なる可能性もある。何れにしてもこれらAVAの含めた細動脈周辺の挙動はDC-MAやAC-MAを除去し、耳甲介を測定できる、緑色光を併用した本発明の構成で初めて明らかになった。
 今回テストでは脈波振幅は検証のために使用した。前述したように図61の有風時を見ると、緑色光では合っているが赤色光やIR光ではやや誤差がある。誤差の要因として前述したように細動脈の血管運動(拡張や縮小)が細動脈全体に均等に起こっているのではなく局在化している可能性がある。また図には示していないが総ヘモグロビン変化ΔtHbのフィルタ時定数を小さくすると呼吸性の振動が見えてくる。これを用いて呼吸数を測定できる。さらに呼吸性の振動の振幅が細動脈やAVAの拡張収縮によって変化していることから、脈波振幅と類似した現象が起きていることが示唆される。
 局在化の問題は各波長の光が観測している血管の場所にも依存する。一般に細動脈の下流に行くほど血管運動を担う平滑筋の層数が増えてくる。例えば無風時の緑色光の誤差は平滑筋が大きく収縮してる部分を観測しているために起きている可能性がある。これらの誤差は第1に、数式17や数式20の圧力―体積変換にかかわるモデルは一例であり、シグモイド関数に入れ替えるなどモデルを修正することで改善できる可能性がある。第2に平滑筋の局在動作をモデルに組み込むことで改善できる可能性がある。
 図51(b)の血管属性の表では、細動脈1ブロックの初期抵抗を細動脈2ブロックの初期抵抗と同じ値に設定している。またAVAブロックの初期抵抗値を、細動脈2と毛細血管と細静脈2ブロックの初期抵抗値の和の1/4に設定している(具体的には100kΩの1/4の25kΩ)。これらは最適化処理において収束するように決定した。一般に前腕ではAVAに流れる血流は安静時に80%程度になることが知られており、耳においてもこのあたりにある可能性がある。細静脈1ブロックと細静脈2ブロックに関しても同じ初期抵抗にしているが、これらの抵抗値は大きな影響をもたらさない。
 図53は以上のようにして求めた生体情報を判定するための生体状態判定部4210の構成の一例である。生体情報5301と、生体情報のレベルを判定するレベル判定部5302と、生体情報の積分を行う積分部5303と、生体情報の周波数解析を行う周波数解析部5304と、生体情報や動きを検出する動き検出部5305を持つことができる。
 例えば図47(b)のΔtHb・VM判定部4702は、血管運動処理部4701から出力される血管運動係数cVMや総ヘモグロビン変化ΔtHbをレベル判定部5302にかけて、所定の閾値から生体に生じている変化やストレスを判定することができる。例えば閾値として数段階の閾値を持ち。変化の強度に応じて判定結果を出すことができる。さらにその結果を動き検出など別の処理に使うことができる。cVMやΔtHbを積分部5303に入力して積分を行い、積分結果をレベル判定部5302で判定することもできる。
 熱的応答は生体の熱容量に起因して比較的長い時定数から判断した方がノイズによる誤判定を避ける意味でよい場合がある。図62は無風時の総ヘモグロビン変化ΔtHbの積分しない場合と積分した場合(Int.ΔtHb)の波形である。積分しない場合の波形は5回のテストの平均を用いている。平均を用いた場合でも運動の終了と共にΔtHbが低下するため、判定が難しくなる場合がある。運動後であっても無風において高温環境に継続して留まる場合、総ヘモグロビン変化の蓄積を評価した方が良い場合がある。積分した場合の波形は5回のテストを別々にプロットしている。高温環境での蓄積に応じて積分波形は低下しないで留まる。平均化しなくても個々の波形は比較的変動が少なく判定において誤動作が少なくなる。複数の閾値を設定して、閾値に応じて利用者等に警告を出すことができる。
 総ヘモグロビン変化ΔtHbを周波数解析部5304に入力して周波数特性から判定することもできる。図63はΔtHbのFFTを行い、ULF(0近傍から0.015Hz)、VLF(0.0033から0.04Hz)、LF(0.04から0.15Hz)、HF(0.15から0.4Hz)の各領域の信号強度を求めた例である。単位はms^2である。LF/HFもプロットしている。無風の場合の赤色光とIR光による総ヘモグロビン変化ΔtHb2をプロットしている。5回のテストをプロットしている。今回のテストは熱的ストレスを与えたため、低周波特にULFにおいて顕著に熱的ストレスの影響が生じている(運動終了後にピークが生じている)。熱ストレス以外にも低温ストレスや心的ストレス、薬剤のテスト、環境や衣服の快適性、食品の身体への影響等に、中枢系の挙動を抽出できる本発明の構成を利用することができる。自転車や登山等やジム等のスポーツやフィールドでのアシスタントなどへの応用も考えられる。深部体温を計測できる装置と併用しても良い。
 図47(c)の起立ストレス処理部4703は、例えば動き検出部5305とレベル判定部5302を併用して起立を検出することができる。起立の検出は図57で説明したように加速度のみではばらつきの影響を受ける場合がある。特に日常の自由な動きが伴う場合、誤検出が生じる場合がある。加速度に加え、脈拍数HRの変化を起立の判断に使うことができる。例えば動き信号ACCと脈拍数HRをそれぞれレベル判定部5302にかけて所定の閾値の超過を検出して両者の論理積を取ったり重みづけをしたうえで判定することもできる。一般に起立試験ではシェロングテストやヘッドアップティルト試験(HUT)が行われているが、本発明の生体信号計測装置をそれら試験の中で利用することもできる。
 図55は本発明を体温制御に利用した例である。例えば図48の生体信号計測装置5501は生体信号計測装置3500とその信号を処理する制御部4801を持つことができる。制御部4801が制御するアクチュエータ4802として、室内の温度を制御する環境維持装置5502や、生体の特定の部位に温度制御された送風を行う送風装置5503、生体の頭部の温度を維持する頭部調温装置5404、上半身の温度を維持する上半身調温装置5405、下半身の温度を維持する下半身調温装置5406を持つことができる。これらの構成を同時に持つことも同時に持たないこともできる。
 制御部4801は図40で説明したように、センサや端末やクラウド等任意の位置に置くことができる。アクチュエータ4802に搭載することもできる。制御部4801は図53で示した生体情報とそれを処理する構成を適宜利用して制御を行うことができる。例えば総ヘモグロビン変化ΔtHbや血管運動係数cVMとレベル判定部5302を利用して、PID制御やそれに類似した制御を行うことができる。各アクチュエータ4802は有線や無線で信号を受け取ることができる。上半身調温装置5405は頭部を覆うヘルメット状の物や、顔を覆うマスクやフェイスマスクや、額を覆うヘッドバンドや、目を覆うアイマスクや眼鏡状のものも利用できる。
 上半身調温装置5405や、下半身調温装置5406は上着やスラックス、シャツや下着等の形状を持つこともできる。温度調節を行う要素としてファンやペルチェ素子、スターリングサイクル、圧縮機や冷媒、ヒートポンプ等のメカニズムを使うことができる。上半身調温装置5405や上半身調温装置5405や、下半身調温装置5406を一体化させた服や箱状のものを構成することもできる。宇宙服や潜水服等に応用することもできる。本発明により生体の中枢が行う温度制御や血管運動制御を生体外に信号として取り出すことができ、生体外の制御に供することができる。生体が行うこれらの処理を血管モデル5001等で模擬して、生体がこれから進む将来の制御の方向を予測し、プリエンファシス等の事前制御をかけることもできる。学習装置を有して利用者にフィードバックできるトレーニング装置等にも応用できる。
 本実施例では環境温度変化や生体の温度変化等に起因して起きるDC値の変動減少、いわゆるDCドリフトを対策している。生体が運動等を行うことで体温上昇が起こり、生体が動くことで空気の移動や風を生成する場合がある。室内と屋外の間を移動したり、空調やファンの風を受けることでも生体や本発明の生体信号計測装置は温度変動を受ける。生体の活動に伴って起きるDC値の変動であるため環境温度変化を含め広義のアーチファクトと見なすことができる。このようなDC値の変動はAC信号を主として扱ってきた従来のPPGセンサでは大きな問題とはならなかった。
 図64(a)は図26や図27で説明した生体信号計測装置2600及び2700に取り付けて使用してする校正用のセンサヘッドの一例を示したものである。生体信号計測装置2600及び2700は、センサヘッドを利用者等が着脱できる構成を持ち、DCドリフト等を取得する校正工程において取り付けて使用する校正ヘッド6400を持つことができる。校正ヘッド6400は、光送受信部2601からの光を反射させる光反射板6401と、その光反射板6401を保持すると共に皮膚に応力を伝達する耳の付け根耳側応力伝達部2603aと耳の付け根側頭側応力伝達部6402と、それら耳の付け根応力伝達部を保持する保持応力伝達部2603e-2を持つことができる。光反射板6401は皮膚に接触する構成と接触しない構成は適宜実施できる。
 光反射板6401が反射する光は、光送受信部2601の光送信器から送信され光受信器で受信される。光反射板6401が持つ反射率は、光受信器のダイナミックレンジに応じて調整される必要がある。校正ヘッド6400を用いない通常の測定における、光出力パワーや光受信器設定を変えることなく光が受信されることが好ましい。これら設定によって光送受信部2601の発熱等が変化する可能性があるためである。通常測定時の熱的条件と校正時の熱的条件を一致させることが好ましい。光反射板6401が持つ反射率は、生体が反射する光電力相当の反射電力となるよう調整されることが好ましい。例えば緑色光からIR光までの光波長を生体と同等に反射する材料として、色素を付着させた紙やプラスチックを用いることができる。可視光を含むため灰色の色調の色素が当該目的に適合する場合が多い。
 耳の付け根側頭側応力伝達部6402は、耳の付け根耳側応力伝達部2603aと同様の構造や材料を持たせることができる。光反射板6401の変形を防ぐために、図28の耳の付け根側頭側応力伝達部2603bのような耳側より短い構造を持たずに、光反射板6401の一辺を保持することが好ましい。耳の付け根耳側応力伝達部2603aと同様に、梁構造6402-1、6402-2を持たせることができる。保持応力伝達部2603e-2は、前述のように皮膚への応力集中を緩和するために主として柔らかい材料で構成されることが好ましいが、生体信号計測装置2600及び2700への取り付け面に一部硬い材料を用いることで着脱を繰り返した際の劣化を抑制することができる。図28の2603e-2、2603a、2603bで構成される通常ヘッドの接触面(2603e-1と2603e-2との間)においても、2603e-2側の面を硬いシート状の面とすることができる。その面に両面テープ等の粘着剤を付けることで、交換が容易で繰り返し使用できる通常ヘッド及び校正ヘッドを構成できる。
 図64(b)は実施例7における生体信号計測方法の一例である。生体信号計測方法6403は、校正ヘッドを生体信号計測装置に取り付ける校正ヘッド取り付けステップ6404と、校正ヘッドでテストプロトコルを実行する校正テストプロトコルステップ6405と、生体信号計測装置に取得した校正データを適用する校正データ適用ステップ6406と、通常ヘッドを生体信号計測装置に取り付ける通常ヘッド取り付けステップ6406と、通常ヘッドでテストプロトコルを実行する通常テストプロトコルステップ6407を持つ。
 これらのステップはマニュアル等に記載したり、コンピュータプログラムからの指示として動作させることができる。校正テストプロトコルステップ6405と通常テストプロトコルステップ6407は熱的に同じ条件で行うことが好ましい。例えば図54で説明したエルゴメータテスト5400を、同じ時間、負荷、風速、室温、服装条件で行う。校正工程である6404、6405を、通常工程である6407、6408の後に行うことは適宜行える。校正工程を繰り返し行うこと、或いは通常工程を繰り返し行うことも適宜行える。校正データ適用ステップ6406は、通常データから校正データを減算したり除算することでDCドリフトを取り除く。DC-MA補正と同様にDC領域で行う方法と、ΔHb領域で行う方法がある。リアルタイムにおいて校正済みのデータを表示する方法や、データ取得後に校正データを反映させる方法があり、校正データ適用ステップ6406の位置も適宜変えることができる。
 図65は校正ヘッド取り付けステップ6404として校正ヘッド6499をセットした生体信号計測装置2700を準備し、エルゴメータテスト5400を校正テストプロトコルステップ6405として実際に行って取得した校正データの一例である。図65(a)は無風、図65(b)は有風の条件でテストを行った。ΔTは後述するDie温度の安静時からの時間変化である。緑色光の総ヘモグロビン変化信号ΔtHb1と赤色光とIR光による総ヘモグロビン変化信号ΔtHb2の時間変化は、特に後者においてやや変化が大きく、通常テストプロトコルステップ6408で取得したデータに対して無風時で約20%程度有風時で約30%の変化となった。図58の各ΔHbのプロットは校正前のデータを表示しており、図59のΔtHb1、ΔtHb2、図60の血管運動係数、図61の脈波振幅は校正データ適用ステップ6406においては校正データを反映させた後のデータを表示している。
 図66(a)は校正ヘッドを用いなくてもDCドリフトの補正を可能にするための構成例である。生体信号計測装置のΔDC処理部3601(図36)の、DC信号抽出部4204(図42)に適宜使用することができる。DC信号抽出部4204は、光送受信部4201から4203の信号に含まれるAC成分を除去するロウパスフィルタ6601と、生体信号計測装置の温度を測定する温度計測部6602と、測定された温度に基づいて光送受信部信号に含まれるDCドリフトを補正するDCドリフト補正部6603を持つことができる。図66(a)ではロウパスフィルタ6601の出力をDCドリフト補正部6603の入力に接続しているが、光送受信部信号をDCドリフト補正部6603に入力してDCドリフト補正部6603の出力をロウパスフィルタ6601に入力することも適宜行える。この場合脈波等のAC成分がドリフト補正に誤差を与えないようにする必要がある。図66(a)では図42のPPG1からPPG3やDC1からDC3をPPGやDCとして省略しているが、ロウパスフィルタ6601やDCドリフト補正部6603の処理はそれぞれの信号に対して行う。また校正データ取得や精度向上、検証を目的に校正ヘッドを併用することは適宜行える。
 温度計測部6602は一例として図66(b)に示すように、光送受信部パッケージ6604内に配置されたLED(6605)にDCバイアス電流を供給するバイアス回路6608と、LED(6605)の順方向バイアス電圧Vfを高インピーダンスで読み取るバッファアンプ6610と、その順方向バイアス電圧Vfに含まれる固定成分を除去するバイアス電圧Vbと、光送受信部パッケージ6604に熱的に接触して配置された温度計測素子6607とそれにバイアス電流を供給するバイアス回路6609を持つことができる。
 通常PPGセンサでは光送信器であるLEDに対してパルス駆動を行っている。これは消費電力を抑える目的と一つの光受信器(光ダイオード)を複数の波長の光を順次切り替えて使用する目的がある。LEDの外部量子効率は通常負の温度係数を持つため、温度上昇と共に光出力は低下する。光出力の変化を推定するためにパルス駆動の順方向バイアスVfからLEDの温度を直接測定することが好ましいが、高速にパルス駆動されているため難しい。パルスがオフの時の順方向バイアスVfは駆動系やLEDのリーク電流で決まり安定しない。バイアス回路6608が供給するDCバイアス電流はこれらリーク電流の影響が無視できる程度に大きい値を設定することができる。一方であまり大きな値に設定すると消費電流や微弱発光する問題が生じる。微弱発光は背景光をキャンセルする回路のダイナミックレンジに影響を与える。これらが問題にならない数十μA前後の電流値に設定することができる。バイアス回路6608として電流源を使うほかに数100kΩ前後の抵抗を使っても良い。各波長のLEDは近接して配置されているため、どれか一つ例えば外部量子効率の温度係数が大きくDCドリフトの変化が大きい緑色LEDに対して上記Vf読出しを行ってもよい。
 バッファアンプ6610はパルス駆動に影響を与えない程度に高い入力インピーダンスを持つことが好ましい。順方向バイアスVfの温度係数は通常―1からー2mV/℃で微弱である。順方向バイアスVfの値は通常1から3V程度であり、大きなバイアス成分の中に微小な温度変化が存在している。バッファアンプ6610はバイアス電圧Vbと順方向バイアスVfとの差分を増幅することで、ダイナミックレンジを抑えながら微弱な信号を増幅することができる。増幅された温度情報を持つ信号は、マイコン搭載のA/D変換器で読み取れる程度に低い周波数であることが好ましい。パルス駆動の瞬間Vfは上昇するが、残りの期間Vfは低いDCバイアスで維持される。バッファアンプ6610はロウパスフィルタ特性を持たせてパルス駆動による上昇を平滑化させることが好ましい。光送受信部とマイコンが非同期で動作してもA/D変換に変動が生じない程度にロウパスフィルタのカットオフ周波数を設定することができる。カットオフ周波数を下げることはノイズ低減の目的からも好ましい。
 この方法でLED発熱のピーク温度は読み取れないが、DCドリフトに影響があるLEDの平均温度の変化は読むことができる。LED温度変化によってLEDの光出力のピーク波長もシフトする。光受信器の波長特性との関係でDCドリフトに影響がある場合もあり、LED温度変化からこの影響を補正することもできる。ピーク波長のシフトはヘモグロビンの吸収特性にも影響するため、LED温度変化からこの影響を補正してもよい。
 温度計測素子6607として負の抵抗温度係数を持ち温度に対する抵抗変化量が大きいNTCサーミスタを使用することができる。マイコン搭載の10b程度のA/D変換器でも、ディザ等の手法を使って平均化回数を増やすことで量子化ノイズ以下の分解能を得ることができる。光送受信部パッケージ6604は、通常はんだ付け点SPからの熱抵抗が定義され、100℃程度の熱抵抗を持つ。生体信号計測装置の各部に流入する熱流は、SPあたりを通過して光送受信部パッケージ6604内に流入する。この熱流と各部の熱抵抗によって温度差が決まるため、複数の場所の温度を測定することで熱流の大きさとその方向が分かり、空間的な温度分布の予測精度を高められる。少ない温度計で効果的な推定を行うために、DCドリフト上重要な位置に温度計を配置することが好ましい。例えば発熱が大きく、温度による特性の変化が大きいLEDに近い部分、光送受信部パッケージ6604のLEDに近い側面に温度計測素子6607を配置することができる。バイアス回路6609として電流源を使うほかに数100kΩ前後の抵抗を使っても良い。
 光送受信部パッケージ6604内に配置された処理回路6606の温度(Die温度)は、光送受信部に搭載されている温度計の出力を使うほかに、光送受信部のクロック信号の周期の変化から予測することもできる。光送受信部搭載の発振器の発振周波数は、その温度係数に応じて変化する。シリアル通信等で送られてくる光受信信号の間隔を測定することで処理回路6606の温度を推定することができる。光送受信部のクロック信号は光受信信号の積分時間を決めており、積分時間の変化によるDCドリフトの変化の成分もクロック信号の変化から推定することができる。
 各部の温度情報を持った物理量はそのまま温度指標として利用することができるが適宜温度に変換してもよい。物理量として前述した順方向バイアス電圧Vf、温度計測素子6607の電圧信号Vthermがあるほかに、電流、抵抗、周期等の形で読み出される場合もある。これらは基本的には温度に対して単調変化し、温度指標として使用できる。任意の地点aとbの温度から温度が不明なc点の温度を推定するために、ab間の温度差を利用できる場合がある。ab間の熱抵抗とbc間の熱抵抗が既知であれば熱抵抗の比とab間温度差からbc間温度差が推定できる。この場合温度に変換してab間温度差を校正することが好ましい。温度校正として、温度のオフセットやゲインの非線形を多項式から近似する手法が行える。温度校正では、恒温槽等を用いて各部の温度が定常状態となる時間まで温度を保持し、温度をステップ状に変えていく。この時、生体信号計測装置を動作させないと読めない信号があり、それらの回路を動作させる必要がある。それらの回路は通常発熱を伴い、自己発熱として校正結果の中に入ってくる。自己発熱の取り扱いは適宜行えるが、例えば2点間の温度差を利用する場合定常状態で温度差がゼロとなるように校正することができる。
 DCドリフトの成分は大きく静的な温度係数と過渡的な温度係数に分けられる。例えば生体信号計測装置内でDCドリフトに感度を持つabcの3つの地点において、ab間に遅延要素があり、さらにbc間により大きな遅延要素がある場合を考える。これら遅延要素より十分長い時間をかければabc全ての地点の温度は変化し、abcに存在するDCドリフト感度の総和である静的な温度係数が見えてくる。一方地点aとbが主として変化する温度変化dT/dtを加えた場合、過渡応答として主としてaとbの温度係数の和が見えてくる。さらにaのみが主として変化する高速な温度変化dT/dtを加えると、主としてaの温度係数が見えてくる。
 このような過渡現象を生じる要因として、生体や環境、デバイス自身からの動的な熱発生がある。特に生体信号計測装置装着直後の体温による温度上昇や測定開始直後のLEDの温度上昇、装着前の生体信号計測装置の保存温度、風による生体信号計測装置各部の温度変化、運動によって測定箇所である耳介の血流が増減することによる生体信号計測装置の温度変化等がDCドリフトを過渡的に顕著に変化させる。生体信号計測装置各部の温度に対する感度として、LEDの外部量子効率、LED駆動回路の駆動電流、A/D変換器のフルスケールあたりが大きな感度要素として存在する。これらの値はLED素子の場所や、駆動電流やフルスケールを決定する基準電圧や基準抵抗の場所ごとの温度によって変化し、低速の温度変化時と急激な温度変化時で総合の温度係数が異なる現象が生じる。各地点に存在する時定数は熱時定数だけでなく電気的な時定数も存在する。基準電圧やそれを利用する回路では変動を抑制するために時定数を持たせている場合が多い。1000秒程度の時定数を持つ場合もあり、温度変化の影響が1000秒オーダに及ぶ場合がある。
 図67(a)はDCドリフト補正部の一例である。DCドリフト補正部6602は、温度計測部6602で計測された温度信号を所定の時間遅延させた温度信号を出力する温度遅延部6702と、その初期値を保持する初期値保持部6703と、前記遅延させた温度信号とその初期値からDCドリフト量を推定するDCドリフト推定部6701と、前記推定されたDCドリフト量を光受信器信号から減算するDCドリフト減算器6704を持つことができる。前記DCドリフト推定部6701は、数式21で示される装置やコンピュータプログラムを持つことができる。
 前記DCドリフト推定部6701は、前記光受信器信号の初期値DC0に対して、前記遅延させた温度信号Tに関する1次以上の第1の関数を乗算し、前記遅延させた温度信号の初期値T0に関する前記第1の関数を除算し、第2の関数以降も前記遅延させた温度信号とその初期値に関して前記乗算と前記除算を行うことができる。前記DCドリフト推定部6701は、前記遅延させた温度信号とその初期値に代えて、前記温度計測部6602で計測された遅延する前の温度信号とその初期値もDCドリフト量推定に使用することができる。DCドリフト推定部6701やDCドリフト減算器6704の処理はPPG1からPPG3それぞれのDC成分に対して行うことができる。初期値DC0はPPG1からPPG3それぞれのDC成分の初期値である。初期値DC0や初期値T0は同じ時刻での値であり、測定開始後の任意の位置を初期値として選ぶことができる。前述した熱発生の種類やその熱発生からの経過時間に応じて初期値の時刻を変えることができる。DC信号の代わりに総ヘモグロビン変化信号ΔtHb1やΔtHb2、初期値DC0の代わりにΔtHb1やΔtHb2の初期値を使ってDCドリフトを補正することもできる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000021
 前記第1の関数f()は、数式22で示される関数を持つことができる。前記第1の関数は、前記遅延させた或いは遅延させる前の温度信号Tと、生体信号計測装置の温度を変化させて光送受信部のDC信号への感度を測定して得た1次以上の温度係数kn(nは整数)と、その温度係数の基準になる温度Tcを用いて、(T-Tc)に関する多項式で表すことができる。f(T0)の計算では前記Tの代わりに、前記遅延させた或いは遅延させる前の温度信号の初期値T0を用いることができる。第2の関数以降は、別のT(例えばT1)を用いて前記DC信号への第2の関数の温度係数kn(nは整数)を求めることができる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000022
 図67(b)はDCドリフト補正部6602の校正方法の一例である。前記各関数f()、f1()、f2()・・・の温度係数kn(nは整数)を求めることができる。DCドリフト補正部6602の校正方法6705は、所定の定常校正時間間隔で生体信号計測装置の温度を変えながら光送受信部の定常校正DC信号を取得する定常校正ステップ6706と、前記定常校正時間より短い過渡校正時間間隔で生体信号計測装置の温度を変えながら光送受信部の過渡校正DC信号を取得する過渡校正ステップ6707と、前記定常校正DC信号と前記過渡校正DC信号の温度変化から温度係数を抽出する温度係数抽出ステップ6708を持つことができる。適宜過渡校正ステップ6707ステップの中に定常校正ステップ6706の周波数成分を盛り込んで定常校正ステップ6706を省略できる。
 図68は実際に赤色信号のDCドリフト補正部6602の校正を行った場合の波形である。図68(a)の波形6801は、光送受信部パッケージ6604内に配置された処理回路6606の温度(Die温度)信号Tの実測値。図68(b)の波形6802は、Die温度信号Tから求めたf(T)/f(T0)波形。波形6803は、Die温度を1000秒遅延させた温度信号T1から求めたf1(T1)/f1(T10)波形である。関数f()、f1()は1次の関数としてそれぞれの温度係数k1を手動で求めた。図68(c)に手動で数式21を最適化した結果と実際に測定したDCドリフト量を示す。両者の波形は良く合っている。Die温度Tの変化は、処理回路6606上のLED駆動回路やA/D変換器のDC信号に対する温度係数と掛け合わされDCドリフトを生じる。LEDの外部量子効率もほぼDie温度Tの変化と相関して変化していると考えられ、処理回路6606上の温度係数に加算される。これは光送受信部パッケージ6604内でLEDと処理回路6606が小さな熱抵抗で結合しているためと考えられる。通常LEDの外部量子効率の温度係数は波長によって変わる場合が多く、緑色LEDの温度係数は赤色光やIR光に比べて数倍大きい。LEDの外部量子効率の温度係数がDie温度信号TによるDCドリフト量の主要な成分となる場合が多く、各部の温度係数の総和である定常校正においても大きな割合を占める。
 図68のデータ取得の前に長時間の定常校正を行い、温度係数knの初期値として与えたり、求める精度によっては関数f()の温度係数knの値として使用することもできる。数式21のDC0は、各波長の信号であるPPG1からPPG3のDC成分の初期値であり、数式21は各波長のDC0を変動させる成分を補正する意味を持つ。一方でA/D変換器のアナログ信号あたりではオフセットDCofsを持つ場合があり、その場合数式21のDC0に代えてこのDCofsをドリフト補正に用いることができる。
 遅延成分であるf1()関数の遅延の起源として、前述した基準回路等に存在する回路的な時定数のほかに、例えば光送受信部パッケージ6604内の樹脂やパッケージ内の空間の空気層、ガラスプレート等の熱時定数が含まれる可能性もある。設計段階でこれらの物性値を計算し、f1()関数の温度係数knの値として使ったり、初期値として与えることができる。精度が要求されるDCドリフト補正では、デバイス等の個体差に起因するばらつきが問題となり、初期値からさらに最適値を探索する必要がある。特に基準電圧や基準抵抗などの半導体素子が関連する感度要素においてばらつきがの影響が顕在化する。今回Die温度の直接成分である波形6802と遅延成分である波形6803の乗算結果(図68(c)の数式21波形)がDCドリフト実測値と合うようにf()、f1()それぞれの係数knを手動で求めたが、数式21の結果とDCドリフトの差が最小になるように最適化計算を行うことができる。最適化計算として準ニュートン法などの最小二乗法技法が使用できる。
 今回Die温度信号Tとその遅延温度信号T1を使用したが、例えばLEDと処理回路6606が熱的に分離された構成などDie温度からLED温度を予測することが難しい場合、Vf等から求められるLED温度とDie温度を使用することが好ましい。またはんだ付け点SP温度とDie温度からその先にぶら下がるLED温度を、前述した熱流計算から推定できる場合もある。処理回路6606の発振器を処理回路6606の外に配置する場合もあり、そのような外部素子の温度を温度計測素子6607で計測する必要性も存在する。それぞれの温度はそのまま利用できる場合と、電気的な熱時定数や温度計から感度要素までの熱時定数に応じて遅延させる必要がある場合がある。
 図68で示した温度波形6801には、周波数成分として例えばab地点間のa地点に存在する温度波形と、b地点に存在する温度波形が含まれている。定常校正ではab両地点の温度係数の総和が観測され、過渡校正ではab地点それぞれの温度係数が取得できるため、それぞれの特徴を活かした初期値としての利用や検証、求める精度によっては定常校正のみの実行等適宜行える。未知の回路インピーダンスを求める手法としてTDR(Time Domain Reflectometry)法があり、熱回路においてもパルス的な発熱とその応答の観測から各部の熱インピーダンスを求めることができる。パルス的な発熱には外部から熱を加える方法以外に、LEDや処理回路6606を発熱させる方法等存在する。図68ではDie温度を約33℃から約40℃まで変化させたが、温度計の非線形を校正の中に取り込むために実際に使用する温度をカバーする意味がある。過渡校正6707として前述した校正ヘッド6400をつけて各部の温度を測りながら実使用上ありうる温度変化をさせることで温度係数knを取得することは可能である。また安静時など生体が安定しているとみなせる期間、生体信号計測装置の起動からの温度変化とDCドリフト変化を取得し、温度係数knを取得することは求める精度に応じて可能である。過渡校正6707で使用する温度変化の波形は上記観点から様々な形態が考えられ、適宜利用できる。
 本発明は、生体から反射・散乱される光を利用する以外に、生体を透過してきた光を利用するも適宜行える。本発明により光受信信号のAC成分やDC成分に含まれる生体情報を統合的に利用できる。例えば自律神経等が作用する血管運動係数の計算では、血圧推定部4904の時間分解能を高めるためAC成分である心拍数HRを利用する。モデル対実測照合部は、起立動作から係数γを取得して振幅方向の校正を行っている。これら統合的利用では、DC-MAやAC-MA、温度ドリフトが時間軸、振幅軸方向の精度を悪化させたり、四肢等では計算を困難にしたりする。生体のホメオスタシスの制御では、生体の圧受容体や温度受容器、AVA等の情報を利用して、自律神経や拍出量などが制御される。本発明によりこれらの制御が定量化でき、競技者など限界のパフォーマンスを目指す利用者への情報的なサポートや、極限環境で働く作業者等への熱的制御や薬剤による制御等を介した物理的・化学的サポート、一般の生活者や労働者の健康管理、熱中症・自律神経失調症等の病気の診断や予防等に役立てることができる。
 100、1600、1700、2600、2700、3500  生体信号計測装置
 101  時間差補正部
 102  補正係数生成部
 103  アーチファクト除去部
 2601  光送受信部
 2603  応力伝達部
 3501  ΔDC処理部
 3502  脈波振幅処理部
 4204  DC信号抽出部
 4207  動き計測部
 4401  微分器
 4402  比較器
 4404  DC減算器
 4601  AC信号抽出部

Claims (15)

  1.  生体表面に配置され少なくとも3波長の光の授受によって生体情報を計測する光送受信部を備え、相対的に波長が短い第1の波長の光の授受によって得られる第1の光受信信号と、第1の光より波長が長い第2及び第3の波長の光の授受によってそれぞれ得られる第2及び第3の光受信信号と、前記第1から第3の光受信信号からそれぞれのDC成分を抽出して第1から第3のDC信号を生成するDC信号抽出部と、前記第1から第3の光受信信号からそれぞれのAC成分を抽出して第1から第3のAC信号を生成するAC信号抽出部と、モディファイド・ランベルト・ベールの法則を用いて前記第1のDC信号から第1の総ヘモグロビン変化信号を生成し、前記第2及び第3のDC信号から第2の総ヘモグロビン変化信号を生成するΔDC処理部と、前記第1から第3のAC信号それぞれに含まれる脈波振幅を抽出して第1から第3の脈波振幅信号を生成する脈波振幅処理部を備える生体信号計測装置。
  2.  前記第1から第3のDC信号或いは前記第1及び第2の総ヘモグロビン変化信号の微分を行う微分器と、前記微分信号を所定の閾値と比較して閾値超過点を出力する比較器と、前記閾値超過点の前後の時間で前の所定の範囲と後ろの所定の範囲の平均化をそれぞれ行い、それらの差分を前記閾値超過点より後ろの前記第1から第3のDC信号或いは前記第1及び第2の総ヘモグロビン変化信号から減算するDC減算器をさらに備える請求項1に記載の生体信号計測装置。
  3.  前記光送受信部と機械的に結合し空間内の少なくとも一次元以上の動き情報を計測して動き信号を生成する動き計側部と、前記動き信号と前記第1から第3のAC信号それぞれとの時間差に応じて、その動き信号を時間方向にシフトさせた第1から第3のシフトされた動き信号を生成する時間差補正部と、前記第1のAC信号と前記第1のシフトされた動き信号、前記第2のAC信号と前記第2のシフトされた動き信号、前記第3のAC信号と前記第3のシフトされた動き信号それぞれの相関情報からそれぞれの補正係数である第1から第3の補正係数を生成する補正係数生成部と、前記第1から第3の動き信号に前記第1から第3の補正係数をそれぞれ乗算したものを前記第1から第3のAC信号からそれぞれ減算するアーチファクト補正部をさらに備える請求項2に記載の生体信号計測装置。
  4.  前記時間差補正部は、前記第1から第3のAC信号の時系列データ対して前記第1から第3の動き信号を所定の時間刻みでそれぞれシフトさせながら相関値を求め、その相関値がピークとなる第1から第3のシフト時間をそれぞれ探索する相関探索部と、前記第1から第3の動き信号を前記第1から第3のシフト時間それぞれシフトさせて、前記第1から第3のシフトされた動き信号を生成する時間シフト部を備える請求項3に記載の生体信号計測装置。
  5.  前記補正係数生成部は、前記第1から第3のAC信号と前記第1から第3のシフトされた動き信号の所定の時間区間における相関係数を第1から第3の相関係数としてそれぞれ生成する相関係数生成部と、その所定の時間区間における前記第1から第3の相関係数の時間変化を第1から第3のエンベロープとしてそれぞれ抽出し、前記第1から第3の相関係数と前記第1から第3のエンベロープをそれぞれ乗算した結果を前記第1から第3の補正係数として生成する相関変動補正部を備える請求項4に記載の生体信号計測装置。
  6.  前記光送受信部の周りに配置され皮膚に接触する接触面を備え、その接触面を介して皮膚に応力を伝達する第1の応力伝達部であって、その第1の応力伝達部は前記光送受信部表面から皮膚側に向かって飛び出る凸形状を有し、光送受信部の周りの4方向の一組の対向する2方向に凸形状を有して皮膚に接触し、別の対向する2方向には隙間を設ける構造を備える請求項2に記載の生体信号計測装置。
  7.  請求項6に記載されている生体信号計測装置を装着した生体の動脈血圧を血圧源として模擬し、さらに前記光送受信部が配置された生体表面下の血管の血流に対する抵抗を複数の抵抗で模擬する血管モデルと、前記血圧源に当該生体の血圧の時系列情報を供給する血圧情報部と、前記血圧源の変化に応じて生じる前記複数の抵抗端の圧変化を前記第1及び第2の総ヘモグロビン変化信号と比較してそれぞれの誤差信号を出力するモデル対実測照合部と、前記複数の抵抗の抵抗値を変化させ、前記誤差信号が所定の誤差範囲に収まる前記抵抗値を探索して血管運動抵抗値として出力する最適処理部をさらに備える生体信号計測装置。
  8.  前記血圧情報部は、前記第1から第3のAC信号の少なくとも何れか一つから取得した心拍数を入力として、当該生体の血圧変化を推定する血圧推定部を備える請求項7に記載の生体信号計測装置。
  9.  前記複数の抵抗端の圧変化を、前記第1及び第2の総ヘモグロビン変化信号と比較する係数として第1及び第2の係数γが定義され、前記モデル対実測照合部はそれら第1及び第2の係数γを保持するγ情報部を備える請求項7に記載の生体信号計測装置。
  10.  請求項6に記載されている生体信号計測装置を装着した生体の起立運動を検出する起立ストレス判定部であって、前記光送受信部と機械的に結合し空間内の少なくとも一次元以上の動き情報を計測して動き信号を生成する動き計側部と、その動き信号を入力として前記光送受信部を当該生体の起立運動を検出する起立検出部と、その起立運動によって生じる前記第1或いは第2の総ヘモグロビン変化信号の変化の大きさと幅を計測して出力する前記起立ストレス判定部をさらに備える生体信号計測装置。
  11.  請求項6に記載されている生体信号計測装置を装着した生体外部に熱を移動させる、或いは当該生体の内部に熱を移動させるアクチュエータと、前記第1或いは第2の総ヘモグロビン変化信号が所定の閾値内に収まるように前記アクチュエータを制御する制御部をさらに備える生体信号計測装置。
  12.  請求項6に記載されている生体信号計測装置の温度を測定する温度計測部と、前記温度計測部で計測された温度信号を所定の時間遅延させた温度信号を出力する温度遅延部と、前記遅延させた温度信号の初期値を保持する初期値保持部と、前記遅延させた温度信号と前記初期値からDCドリフト量を推定するDCドリフト推定部と、前記推定されたDCドリフト量を前記第1から第3のDC信号から減算するDCドリフト減算器を備える生体信号計測装置。
  13.  請求項6に記載されている生体信号計測装置の前記第1の応力伝達部に代えて使用可能な校正ヘッドであって、前記校正ヘッドは前記光送受信部からの光を反射させる光反射板と、その光反射板を保持すると共に皮膚に応力を伝達する第2の応力伝達部を備える生体信号計測装置。
  14.  光を照射し生体を通過した光信号の時系列データを計測するステップと、前記光信号の時系列データから所定のDC信号を抽出するステップと、前記DC信号の微分を行うステップと、前記微分信号を所定の閾値と比較して閾値超過点を抽出するステップと、前記閾値超過点の前の所定の第1の範囲と後ろの所定の第2の範囲の平均値をそれぞれ求め、第2の範囲の平均値から第1の範囲の平均値を減算した値を、前記閾値超過点より後ろの前記DC信号から減算するステップを備える生体信号計測方法。
  15.  空間内の少なくとも一次元以上の動き情報を計測する動き計側ステップと、前記光信号の時系列データからなる第1の信号と前記動き情報を含む時系列データからなる第2の信号との時間差に応じて、その第2の信号を時間方向にシフトさせた第3の信号を生成するステップと、前記第1の信号と前記第3の信号との相関情報から補正係数を生成するステップと、前記第3の信号に前記補正係数を乗算した値を前記第1の信号から減算するステップをさらに備える請求項14に記載の生体信号計測方法。
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