WO2023026385A1 - 活性物質及びその利用 - Google Patents

Abstract

水素と酸素からなり、陽イオンクラスターであるn(H2O)H+と、陰イオンクラスターであるm(H2O)OH-を含み（n、mは、独立して1～100の整数である。）、中性である、活性物質は、(1)腎臓結石若しくは尿路結石の治療剤、又は腎臓結石若しくは尿路結石の排出促進剤；(2)身体の洗浄剤、若しくは消毒剤；(3)胃酸過多症の治療剤、酸性血液の中和剤、又は血液中の老廃物の排出促進剤；(4)ウィルス感染症、細菌感染症、若しくは真菌感染症の治療剤；(5)虫歯、歯周病、若しくは口内炎の治療剤；(6)爬虫類若しくは昆虫の毒の中和剤、又は爬虫類若しくは昆虫に侵襲された後の腫れもしくは痛みの治療剤；(7)炎症性疾患若しくはアレルギー性疾患の治療剤；(8)疲労の回復剤、若しくは老化抑制剤；(9)急性アルコール中毒の治療剤；(10)物品の洗浄剤若しくは消毒剤；又は(11)医薬、化粧品、若しくは食品の保存剤若しくは防腐剤、の成分として好適に使用できる。

Description

活性物質及びその利用

　本発明は、新規な活性物質、及びその有用な特性の利用に関する。

　近年、通常の水に比べてエネルギーが高い水である活性水に注目が集まっている。
　水は、H₂O分子であるが、複数の水分子が結合してクラスターを形成していることが良く知られている（非特許文献1）。しかし、水クラスターに水素イオンや、水酸化イオンが結合した状態で、中性であるにも関わらず、安定したイオン状態が続く物質は知られていない。
　また、水分子が水素結合して正六角形を構成したものが氷であることも良く知られており、氷と水の中間体として、温度の違いや圧力の違いにより水のネットワークが秩序のあるもの又は無秩序なものになり得ることも知られている（非特許文献2）。

　水中に水素分子を溶解させた水素水が、活性酸素の除去による健康効果があるとして市販されている。水素水の製造方法として、水に水素ガスを注入して水素水をつくる方法が知られている（非特許文献3）。しかし、水素水は、開封により水素が徐々に減少するし、体内に取り込まれても水素分子が身体から直ぐに脱離してしまう。

　水を電気分解すれば、酸性イオン水とアルカリイオン水を生成できることも良く知られている（非特許文献4）。半透膜を用いて、酸性イオン水とアルカリイオン水を分離して、アルカリイオン水を消毒に使うことや、健康効果のある水として使用することも知られている。しかし、酸性イオン水とアルカリイオン水を混合すると元の水に戻る。このように、電気分解せずに、安定なイオン水を生成できることは知られていない。換言すれば、静的な状態で、中性であるにも関わらず水素イオンとアルカリイオンが結合せずに、長期間その状態を保持できる水は知られていない。

Maheshwary, S.; Patel, N.; Sathyamurthy, N.; Kulkarni, A. D.; Gadre S. R. (2001)"Structure and Stability of Water Clusters (H2O)n, n = 8-20: An Ab Initio Investigation"J. Phys. Chem. A: 10525. doi:10.1021/jp013141b Molecular dynamics study of grain boundaries and triple junctions in ice, J. Chem. Phys. 153, 124502 (2020); https://doi.org/10.1063/5.0021635 太田成男「水素医学の創始、展開、今後の可能性 : 広範な疾患に対する分子状水素の予防ならびに治療の臨床応用へ向かって」『生化学』第87巻第1号、日本生化学会、2015年、82-90頁、NAID 40020383640 官報第3378号厚生労働省令第75号

　本発明の第1の課題は、安定に存在し得る新規な活性物質を提供することである。また、本発明の第2の課題は、この活性物質の有用な用途を提供することである。

　本発明者は、上記課題を解決するために研究を重ね、水素と酸素で構成されており、陽イオンクラスターであるn(H₂O)H+と、陰イオンクラスターであるm(H₂O)OH-を含み、中性である物質（n、mは、独立して1～100の整数である。）を製造することに成功し、クラスターの質量を測定することに成功した。

　この物質のpHを測定して中性であるため、陽イオンと陰イオンがほぼ同数混在したものであることを確定した。即ち、この物質は、例えばH₅O₂、H₇O₃、H₈O₃、H₉O₄の様に、クラスターを形成した複数のH₂OにH⁺イオンが1個以上結合した分子と、H₃O₂、H₅O₃、H₇O₄のようにクラスターを形成した複数のH₂Oから1個以上のH⁺イオンが排除された分子がほぼ同数混在した物質である。
　新規物質は、水素と酸素だけを成分とするので毒性がなく、かつ中性であるため非常に美味しい。従って、飲料、医薬、サプリメントなど経口摂取する用途や、あるいは点滴液などの注射液として使用したり、耳鼻咽喉腔に噴霧したり、点眼や洗眼したり、皮膚や粘膜に塗布したりする医薬用途などに好適に使用できる。

　本発明者は、この新規物質が、反応性の高い物質であることを酸化還元電位の測定で明らかにした。また、陰イオンクラスターと陽イオンクラスターが移動して結合することなく、イオン化した状態で3ヶ月以上にわたり安定に存在できることを見出した。従って、この新規物質は、種々の性能を利用した製品として実用できるものとなる。
　この新規物質は、陽イオンである部分と、陰イオンである部分が安定に混在しているため、アプローチする物質により、酸化反応又は還元反応が選択され、或いは酸又はアルカリとして機能する、特異な物質である。

　本発明は、上記知見に基づき完成されたものであり、下記〔１〕～〔７〕を提供する。
〔１〕　水素と酸素からなり、陽イオンクラスターであるn(H₂O)H+と、陰イオンクラスターであるm(H₂O)OH-を含み（n、mは、独立して1～100の整数である。）、中性である、活性物質。
〔２〕　陽イオンクラスターとして、H₅O₂、H₇O₂、H₉O₂、H₇O₃、H₉O₃、H₁₁O₃、H₉O₄、H₁₁O₄、H₁₃O₆、H₁₅O₆、H₁₅O₇、H₁₈O₇、H₁₇O₈、H₁₉O₈、H₁₉O₉、H₂₈O₉、H₃₀O₉、H₂₁O₁₀、H₂₃O₁₁からなる群より選ばれる少なくとも1種を含み、陰イオンクラスターとして、H₁O₅、H₃O₅、H₁₁O₅、H₁₁O₆、H₁₁O₇、H₁₁O₈、H₁₂O₅、H₁₂O₇、H₁₃O₅、H₁₃O₈、H₁₄O₈、H₁₅O₈からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、〔１〕に記載の活性物質。
〔３〕　活性物質のH₃O+分子とH₃O₂-分子のモル濃度が、それぞれ0.05～0.7mMである、〔１〕又は〔２〕に記載の活性物質。
〔４〕　pKaが6～7である、〔１〕～〔３〕の何れかに記載の活性物質。
〔５〕　酸化還元電位が-300mV～300mVである、〔１〕～〔４〕の何れかに記載の活性物質。
〔６〕　以下の(1)陽イオンクラスター、および(2)陰イオンクラスター
(1)　H₅O₂、H₇O₂、H₉O₂、H₇O₃、H₉O₃、H₁₁O₃、H₉O₄、H₁₁O₄、H₁₃O₆、H₁₅O₆、H₁₅O₇、H₁₈O₇、H₁₇O₈、H₁₉O₈、H₁₉O₉、H₂₈O₉、H₃₀O₉、H₂₁O₁₀、若しくはH₂₃O₁₁
(2)　H₁O₅、H₃O₅、H₁₁O₅、H₁₁O₆、H₁₁O₇、H₁₁O₈、H₁₂O₅、H₁₂O₇、H₁₃O₅、H₁₃O₈、H₁₄O₈、若しくはH₁₅O₈
〔７〕　〔１〕～〔５〕の何れかに記載の活性物質を含む、
(1)腎臓結石若しくは尿路結石の治療剤、又は腎臓結石若しくは尿路結石の排出促進剤；
(2)身体やペットや家畜や鳥の洗浄剤、若しくは消毒剤；
(3)酸性血液の中和剤、もしくは清浄剤；
(4)胃酸過多症の治療剤；
(5)ウィルス感染症、細菌感染症、若しくは真菌感染症の治療剤；
(6)虫歯、歯周病、若しくは口内炎の治療剤；
(7)爬虫類若しくは昆虫の毒の中和剤、又は爬虫類若しくは昆虫に侵襲された後の腫れ若しくは痛みの治療剤；
(8)炎症性疾患若しくはアレルギー性疾患の治療剤；
(9)疲労の回復剤、若しくは老化抑制剤；
(10)急性アルコール中毒の治療剤；
(11)ウイルスや細菌や真菌を含む物品の洗浄剤若しくは消毒剤；又は
(12)医薬、化粧品、若しくは食品の保存剤若しくは防腐剤。

　本発明の活性物質は、陰イオンクラスターと陽イオンクラスターを有し、これらが結合することなく長期にわたり安定に維持される。また、反応性が高い一方、水同様に水素と酸素からなるため毒性がない。さらに、全体として中性であり刺激がない。従って、生体に適用する用途に広く使用できる。具体的には、下記用途に使用できる。

(1)　本発明の活性物質は飲用して腎臓結石又は尿路結石の排出を促進する作用を有する。腎臓や尿路にできる結石はカルシウム（Ca）が主成分であり、新規物質の水酸化作用により、水酸化Caが形成されて水溶性になる。従って、結石は、活性物質の作用で表面が滑らかになり、体外に出やすくなる。従って、本物質は、腎臓又は尿路結石の排出促進剤として用いることができる。
(2)　本発明の活性物質を用いて水酸化作用をさせることは、洗浄作用をさせることでもある。その洗浄作用は、石鹸を用いて洗浄することと等価又はそれ以上である。従って、新規物質は洗浄剤として使うことができる。本物質は、水素と酸素が主成分であり、中性であることと毒性を持たないところから、身体の外用洗浄剤として好適である。また、飲用により体内を洗浄する内服洗浄剤や、点滴などの注射により体内に入れて洗浄する注射用洗浄剤として有用である。
(3)　活性物質には大量の水酸化物イオンが含まれているため、酸を中和する効果がある。従って、飲用により、胃酸過多の症状を緩和したり、酸性血液を中和したりする効果がある。さらに、酸性血液を中和する結果、血液中の老廃物の排出を促進する効果がある。
(4)　活性物質は抗ウィルス作用を有し、中でもコロナウィルスを不活性化する作用がある。従って、鼻腔や咽喉に噴霧して呼吸することにより、喉や肺の奥に侵入したウィルス、中でもCOVID-19、風邪ウィルス、ブタインフルエンザウィルスや鳥インフルエンザウイルスを含むコロナウィルスの増殖や生育を抑制し、さらには不活性化（死滅）させる。また、活性物質は、無毒で中性であるから、内服、注射投与（点滴や静脈注射など）して用いるウィルス感染症の治療剤としても有効である。また、活性物質は、風呂水や洗髪用水に添加することで、身体に付着したウィルスの増殖や生育を抑制し、さらには死滅させる。
　活性物質は、ヒトだけでなく動物に感染したウィルスに対しても抗ウィルス作用を発揮する。従って、鳥インフルエンザウィルスや、豚コロナウィルス等を対象として、家畜の飼育施設を洗浄するのに好適に用いることができる。
(5)　活性物質が強い水酸化作用を示すことは、本物質が殺菌作用を有することを示している。それは次亜塩素酸ナトリウムが殺菌剤として働くのと同じ機序をもつからである（福崎智司、調理食品と技術、Vol 16 NO.1(2010)）。
　従って、活性物質は、強力な消毒剤である過酸化水素水（オキシドール）と同等又はそれ以上の消毒効果を示す。
　このため、活性物質は、虫歯、歯周病を改善する効果がある。本物質を口に含み、うがいをし、又は歯を磨くと、虫歯、歯周病の原因となる細菌の増殖や生育が抑制され、さらには死滅させる。歯科においては、穿孔した歯の内部を洗浄するのに好適である。また、活性物質は、後述するように、活性酸素と結合してこれを消去する抗炎症作用を有するため、抗炎症作用によっても、虫歯、歯周病を改善することができる。さらに、活性物質が有する洗浄作用に基づき、原因となる細菌や、炎症により生じた膿、歯周病の原因となる歯垢などを洗い流すことによっても、虫歯、歯周病を改善することができる。
　また、口内炎は、真菌が原因となるタイプのものがあるが、活性物質は、このような口内炎も、抗真菌作用、抗炎症作用、洗浄作用により、同様に改善することができる。また、口内炎は、ウィルスが原因となるタイプのものがあるが、活性物質は、このような口内炎も、抗ウィルス作用、抗炎症作用、洗浄作用により、同様に改善することができる。
　また、活性物質は、水虫（カンジダ属真菌が原因である）に有効であり、患部に塗布することでこれを改善することができる。
　また、活性物質は、食中毒に有効であり、飲用することで原因菌や原因ウィルスを死滅させることができる。
(6)　活性物質には大量の水酸化物イオンが含まれている。このため、活性物質には、毒蛇や毒虫に刺されたときに酸性の毒を中和する作用がある。活性物質は皮膚からの吸収が早いことも特徴であり、皮膚に塗って毒蛇のような爬虫類毒や、蜂、蚊等の昆虫の毒を中和して、痛みや腫れを緩和することに有効である。また、本物質を、静脈注射することにより、血液中に入った酸性の毒を中和することができる。
(7)　活性物質は、大量の水素イオンを含むため、活性酸素を消去して炎症を抑える抗炎症作用を有する。
　従って、活性物質は、皮膚に塗布することにより皮膚炎を改善することができる。また、目、鼻腔、咽喉にスプレーして、花粉症、喘息、気管支炎、肺炎などの炎症性疾患又はアレルギー性疾患の炎症を抑える効果がある。しかも刺激性が全くない物質であることから大変使いやすい物質である。
(8)　活性物質には大量の水素イオンが含まれているため、水素イオンが体内の活性酸素と容易に結合する。従って、本物質は、飲用し、塗布し、入浴剤として使用し、又は注射により体内に注入することで、活性酸素を消滅させて疲労を回復する疲労回復剤の有効成分として有効である。
　活性物質中の大量の水素イオンが活性酸素と結合するため、本物質を目に点滴するならば眼精疲労を抑制することができる。従って、本物質は目薬の成分として有効である。
(9)　活性物質中の大量の水素イオンが活性酸素と結合するため、本物質は、医薬、化粧品、食品に添加物として配合することで、活性酸素の発生によるこれらの劣化を抑制することができる。また、前記抗菌作用によってこれらの腐敗を抑制することができる。従って、活性物質は、医薬、化粧品、食品の保存剤又は防腐剤として有効である。
　また、活性物質は、活性酸素を消去する作用に基づき、アンチエイジング用化粧品の有効成分として用いることもできる。
(10)　活性物質には大量の水酸化イオンが含まれているため、アルコールを中和する作用がある。従って、活性物質は、急性アルコール中毒を治療する薬剤として有効である。もちろん飲用して酔いを覚ますことができるし、強いアルコールを薄めるのに適している。

実施例で得られた新規物質及び水道水に含まれるクラスターに水素イオンを結合させて加速して得られた質量分布図である。新規物質の分布図から水道水の分布図を差し引くと、新規物質にのみ存在する陽イオンが分かる。ここでは、新規物質を「活性水」と表示している。 実施例で得られた新規物質及び水道水に含まれるクラスターから水素イオンをはがして陰イオンをつくり加速して得られた質量分布図である。新規物質の分布図から水道水の分布図を差し引くと、新規物質にのみ存在する陰イオンが分かる。ここでは、新規物質を「活性水」と表示している。 実施例で得た新規物質を0.1Vで電気分解することにより流れる電流値の経時変化を示す図である。この電気分解は永遠に続くわけではなく暫くして止まった。H₂Oが電気分解しているのであれば水がなくなるまで続く。従って、本物質に含まれるOH^-イオンおよびH⁺イオンが移動して電気が流れたものであることが分かる。 実施例で得た新規物質の濃度の経時変化を示す図である。 実施例で得られた新規物質の濃度を示す水酸化物イオン濃度と酸化還元電位との関係を示す図である。 新規物質の飲用により排出された腎臓結石の写真である。 皮膚炎症を有する足の写真である。左は新規物質を塗布する前、右は新規物質を2週間塗布した後である。 足長バチに刺された後、本物質を塗布した後の経過観察を示す図である。上段は刺された直後、中段は本物質を塗布して30分後、下段は本物質を塗布して1時間後である。 マムシにかまれた指を、3日間、本物質で洗浄すると共に、本物質を飲用した後の指の写真である。

　以下、本発明を詳細に説明する。
（１）活性物質
　本発明の活性物質は、水素と酸素からなり、陽イオンクラスターであるn(H₂O)H+と、陰イオンクラスターであるm(H₂O)OH-を含む、中性の物質である。ここで、n、mは、独立して1～100の整数である。
　本発明において、「中性」は、pH6.5～8をいう。好ましくは、pH6.8～7.2、特にpH7とすることができる。
　また、本発明の活性物質は、全体として中性であるから、クラスターであるn(H₂O)H+イオンとm(H₂O)OH-が全体としてほぼ同数存在する物質である。「ほぼ同数」は、一方のイオンの総数を1として、他方のイオンの総数が0.9～1.1であることをいい、好ましくは、一方のイオンの総数を1として、他方のイオンの総数が1とすることができる。

　陽イオンクラスターとしては、H₅O₂、H₇O₂、H₉O₂、H₇O₃、H₉O₃、H₁₁O₃、H₉O₄、H₁₁O₄、H₁₃O₆、H₁₅O₆、H₁₅O₇、H₁₈O₇、H₁₇O₈、H₁₉O₈、H₁₉O₉、H₂₈O₉、H₃₀O₉、H₂₁O₁₀、H₂₃O₁₁等が挙げられ、陰イオンクラスターとしては、H₁O₅、H₃O₅、H₁₁O₅、H₁₁O₆、H₁₁O₇、H₁₁O₈、H₁₂O₅、H₁₂O₇、H₁₃O₅、H₁₃O₈、H₁₄O₈、H₁₅O₈等が挙げられる。
　活性物質は、陽イオンクラスター及び陰イオンクラスターを、それぞれ１種又は2種以上含むことができる。

　陽イオンクラスター部分及び陰イオンクラスター部分の濃度は、それぞれ0.05～0.7mM、中でも0.1～0.4mM、中でも0.3～0.4mMとすることができる。この範囲であれば、十分に活性物質の作用が得られる。また、イオンの量が極端に多すぎるとイオン同士が結合して、イオン状態を維持できず、常温常圧では製造できないが、この範囲であれば、常温常圧で製造できる。

　活性物質のpKaは、6～８、中でも6.7～7.3、中でも7とすることができる。この範囲であれば、十分に活性物質の作用が得られる。また、この範囲であれば、イオン状態を維持した活性物質を製造することができる。

　活性物質の酸化還元電位は、-300mV～300mV、中でも0mV～200mV、中でも50mV～150mV、特に100mVとすることができる。この範囲であれば、中性範囲となり、また十分に活性物質の作用が得られる。

（２）活性物質の製造方法
　本発明の活性物質は、水を陽イオン交換樹脂に通して軟水化した後、この軟水中に電極を入れ、100V程度の交流電圧を印加する方法で製造することができる。

（３）活性物質の使用方法
（用途）
　本発明の活性物質を含む組成物は、結石中のカルシウムの溶解性を高めることにより、結石表面を滑らかにし、結石を排出し易くする。従って、腎臓結石又は尿路結石の排出促進剤、腎臓結石又は尿路結石の治療剤として好適に使用できる。

　本発明の活性物質を含む組成物は洗浄剤として使うことができる。本物質は、中性であることと毒性を持たないところから、身体の外用洗浄剤として好適である。また、飲用により体内を洗浄する内服洗浄剤や、点滴などの注射により体内に入れて洗浄する注射用洗浄剤として有用である。また、物品、例えば、家畜の飼育施設、浴槽などの洗浄剤としても有用である。

　本発明の活性物質を含む組成物は、酸の中和剤として使うことができる。例えば、飲用により、胃酸過多の治療剤、具体的には胃酸過多による胃痛、胃もたれ、胸やけ、又は胃酸逆流の治療剤として使用できる。また、酸性血液の中和剤や、酸性血液を中和することに基づき血液中の老廃物の排出促進剤として使用できる。

　本発明の活性物質を含む組成物は、抗ウィルス剤、抗生剤（抗細菌剤）、又は抗真菌剤として使用することができ、これらの作用に基づき消毒剤として使用することもできる。即ち、本発明の消毒剤は、ウィルス剤、細菌、又は真菌の消毒剤を包含する。
　ウィルスとしては、それには限定されないが、コロナウィルス（HCoV-229E、HCoV-OC43、HCoV-NL63、HCoV-HKU1のような風邪の原因コロナウィルス；SARS-CoV、例えばCovid-19のような重症急性呼吸器症候群コロナウィルス；中東呼吸器症候群コロナウィルス（MERS-CoV）のような重症肺炎コロナウィルス；豚コロナウィルス；豚インフルエンザウィルス等）、インフルエンザウィルス（季節性インフルエンザウィルス、鳥インフルエンザウィルス、新型インフルエンザウィルス等）、ノロウィルス、ヘルペスウィルスなどが挙げられる。
　細菌としては、グラム陽性、グラム陰性の病原性を有する細菌を広く対象にすることができる。食中毒の原因細菌を対象とするとき、本発明の活性物質を含む組成物は、食中毒の治療剤として使用できる。
　真菌としては、アスペルギルス属、カンジダ属、クリプトコッカス属、ムーコル属などの代表的な病原性真菌が挙げられる。本発明の活性物質を含む組成物は、抗真菌作用を有することから、水虫のようなカンジダ症の治療剤として使用することができる。

　本発明の活性物質を含む組成物は、抗菌作用、抗ウィルス作用、又は抗真菌作用を有することから、虫歯、歯周病、又は口内炎の治療剤として使用することができる。原因物質や膿を洗い流すことができる洗浄作用や、抗炎症作用もこれらの疾患の治療効果に寄与する。

　本発明の活性物質を含む組成物は、酸を中和する作用を有するため、爬虫類の毒の中和剤、昆虫の毒の中和剤（一般には、虫刺されの治療剤と称される）、爬虫類に噛まれたり昆虫に刺されたりした際の腫れや痛みの治療剤として使用できる。

　本発明の活性物質を含む組成物は、活性酸素を消去して炎症を抑える作用を有するため、抗炎症剤として使用することができる。さらに、抗炎症作用に基づき、花粉症、喘息、気管支炎、肺炎などの炎症性疾患又はアレルギー性疾患の治療剤として使用できる。

　本発明の活性物質を含む組成物は、活性酸素を効果的に消去できることから、疲労回復剤（身体疲労回復剤、眼精疲労回復剤）として使用できる。また、活性酸素の消去作用に基づき、アンチエイジング用化粧品とすることもできる。
　また、活性酸素消去作用と抗菌作用に基づき、医薬品、化粧品、食品の保存剤又は防腐剤として使用できる。

　本発明の活性物質を含む組成物は、アルコールを中和する作用があるため、急性アルコール中毒の治療剤、酔い覚まし剤として好適に使用できる。

　本発明において、「治療」は、完全に回復させることだけでなく、寛解させること、症状を改善又は緩和すること、進行を抑制することを含む。

（剤形）
　上記各剤がヒトや動物に適用する組成物である場合、医薬組成物、食品組成物、又は化粧品組成物とすることができる。
　上記各剤が医薬又は化粧品の外用組成物である場合は、皮膚、粘膜、耳鼻咽喉、口腔、眼等に適用する外用組成物であり得る。皮膚には頭皮も含まれる。この場合、ローション剤、クリーム剤、乳剤、ゲル剤、液剤、溶液剤、懸濁液剤、スプレー剤又は噴霧剤、フォーム剤、これらを基材に含浸させた又は塗布した貼付剤などの剤型に製剤化することができる。
　また、上記各剤は、注射剤や経口投与剤とすることもできる。経口投与製剤としては、液剤、エリキシル剤、懸濁剤、乳剤、リモナーデ剤、シロップ剤などが挙げられる。

　また、本発明の活性物質を含む組成物が食品組成物である場合、いわゆるサプリメントと称される経口投与製剤とすることができ、或いは、一般食品（ドリンク剤、茶飲料、コーヒー飲料、乳飲料、果物や野菜などのジュース、清涼飲料のような液体食品等）に本発明の活性物質を配合したものとすることもできる。

　本発明の活性物質を含む組成物が、生体以外に適用されるものである場合、例えば、医薬、化粧品、食品の保存剤、物品の消毒剤、物品の洗浄剤等として用いる場合は、液状、流動状などの任意の性状にすればよい。

（活性物質の含有量）
　上記各剤（組成物）は、本発明の活性物質を100質量%含むものであってもよく、或いは本発明の活性物質の他に、基剤や添加剤などを含むものであってもよい。基剤や添加剤などを配合する場合は、陽イオンクラスター及び陰イオンクラスターの濃度がそれぞれ0.05mM以上となる範囲で配合すればよい。

（用法・用量）
　上記各剤（組成物）をヒト又は動物に適用する場合、上記各剤は、本発明の活性物質の1日使用量が、1μL以上、10μL以上、100μL以上、1mL以上、5mL以上、10mL以上、15mL以上、20mL以上、25mL以上、30mL以上、35mL以上、40mL以上、45mL以上、又は50mL以上となるように使用することができる。この範囲であれば、活性物質の作用が十分に得られる。また、本発明の活性物質は無毒であるため、多くても副作用はないが、本発明の活性物質の1日使用量が、1000mL以下、300mL以下、200mL以下、又は100mL以下となるように使用することができる。

　各剤の具体的な1日使用量は、本発明の活性物質の濃度が0.3mM以上である各剤の使用量が下記のようになる量とすることができる。好ましい投与経路も併記する。
(1)腎臓結石若しくは尿路結石の治療方法、又は腎臓結石若しくは尿路結石の排出促進方法：1日1000～2000mL、中でも500～1000mL、中でも500～800mLを、経口投与。
(2)身体外部（皮膚、粘膜）の洗浄方法、若しくは消毒方法：1日0.1～10mL/cm²、中でも0.5～5mL/cm²、中でも1～5mL/cm²を、流下、塗布、又は噴霧（cm²は皮膚や粘膜の面積を表す）。
　身体内部の洗浄方法：1日500～2000mL、中でも500～1000mL、中でも500～800mLを、経口投与。
(3)胃酸過多症（胃酸過多による胃痛、胃もたれ、胸やけ、胃酸逆流を含む）の治療方法、酸性血液の中和方法、血液中の老廃物の排出促進方法：1日50～1000mL、中でも100～1000mL、中でも100～500mLを、経口投与。
(4)インフルエンザやCOVID-19の様な目鼻口から侵入するウィルス感染症、細菌感染症の治療法： 1日5～30mL、中でも5～20mL、中でも5～10mLを、目鼻口に向けて噴霧して、好ましくは深く呼吸させる。
　ウイルスや細菌による食中毒の治療法：1日500～2000mL、中でも1000～2000mL、中でも1000～1500mLを経口投与。
　ウイルス性皮膚炎や真菌感染症（水虫を含む）の治療法：1日0.1～10mL/cm²、中でも0.5～5mL/cm²、中でも1～5mL/cm²を流下もしくは塗布（cm²は皮膚の面積を表す）。
　鳥インフルエンザや、豚コレラなど家畜の感染予防法：畜舎を定期的に、月一回あるいは、半年に一回あるいは1年に一回、1000mL/m²の活性物質で洗浄する（m²は洗浄対象面積を表す）。
(5)虫歯、歯周病、若しくは口内炎の治療方法；1日10～100mL、中でも20～50mL、中でも30～50mLを、口腔内に投与してうがいあるいは歯ブラシを使う。歯周個所や虫歯治療個所をスポットで洗浄する場合は、1～2mL程度で効果がある。
(6)爬虫類若しくは昆虫の毒の中和方法、又は爬虫類若しくは昆虫に侵襲された後の腫れもしくは痛みの治療方法：1日5～30mL/cm²、中でも5～20mL/cm²、中でも5～10mL/cm²を、塗布又は噴霧（cm²は患部面積を表す）。
(7)炎症性疾患（花粉症、喘息、気管支炎、肺炎を含む）の治療法：1日10～100mL、中でも10～50mL、中でも10～30mLを、鼻や口に噴霧して深く呼吸して吸入。
　アレルギー性疾患、皮膚炎の治療方法：1日1～10mL/cm²、中でも1～5mL/cm²、中でも1～3mL/cm²を、塗布又は噴霧（cm²は皮膚の面積を表す）、
(8)身体疲労の回復方法、若しくは全身老化抑制方法：1日100～2000mL、中でも100～1000mL、中でも100～500mLを、経口投与又は吸入。或いは、浴槽に本発明の活性物質を入れて可能な限り長時間（例えば、1日1～5時間）全身を浸す。
　眼精疲労の回復方法：各眼に、1日1～5mL、中でも1～3mL、中でも1～2mLを点眼。
　皮膚老化抑制方法：1日1～10mL/cm²、中でも1～5mL/cm²、中でも1～3mL/cm²を、顔に塗布又は噴霧（cm²は皮膚の面積を表す）。或いは、浴槽に本発明の活性物質を入れて可能な限り長時間（例えば、1日1～5時間）全身を浸す。
(9)急性アルコール中毒の治療方法：1日100～1000mL、中でも100～500mL、中でも100～300mLを、経口投与。
　1日の適用回数は、1～5回、1～3回、又は1回とすることができ、1日合計使用量が上記量になるように分けて使用すればよい。
　適用期間は、症状により異なるが、例えば、1～100日間、1～50日間、1～20日間、又は1～10日間とすることができる。

　また、上記各剤を物品に適用する場合、例えば物品や家畜の消毒又は洗浄に使用する場合、上記各剤は、本発明の活性物質の物品や家畜1m²当たりの使用量が、100mL以上となるように使用することができる。この範囲であれば、活性物質の作用が十分に得られる。また、上限は、例えば、本発明の活性物質の1m²当たりの使用量が1000mLとなる量とすることができる。消毒及び洗浄の対象は、それには限定されないが、ウィルス、細菌、真菌が好適である。

　また、上記各剤を医薬、化粧品、食品の保存剤として使用する場合、上記各剤は、医薬、化粧品、食品中の陽イオンクラスター部分及び陰イオンクラスター部分の濃度がそれぞれ0.05mM以上になるよう配合すればよい。この範囲であれば、防腐効果が十分に得られる。

　本発明は、上記説明した本発明の活性物質の有効量をヒト又は動物に適用する工程を含む、
(1)腎臓結石若しくは尿路結石の治療方法、又は腎臓結石若しくは尿路結石の排出促進方法；
(2)身体の洗浄方法、若しくは消毒方法；
(3)胃酸過多症（胃酸過多による胃痛、胃もたれ、胸やけ、胃酸逆流を含む）の治療方法、酸性血液の中和方法、血液中の老廃物の排出促進方法；
(4)ウィルス感染症、細菌感染症（食中毒を含む）、若しくは真菌感染症（水虫を含む）の治療方法；
(5)虫歯、歯周病、若しくは口内炎の治療方法；
(6)爬虫類若しくは昆虫の毒の中和方法、又は爬虫類若しくは昆虫に侵襲された後の腫れもしくは痛みの治療方法；
(7)炎症性疾患（皮膚炎、花粉症、喘息、気管支炎、肺炎を含む）若しくはアレルギー性疾患の治療方法；
(8)疲労（身体疲労、眼精疲労）の回復方法、若しくは老化抑制方法；又は
(9)急性アルコール中毒の治療方法を提供する。

　上記(1)～(9)の方法の適用対象となるヒト又は動物は、それぞれ、(1)腎臓結石又は尿路結石を有する患者又は動物、(2)身体の表面又は内部が汚染されているヒト又は動物、身体の表面にウィルス、細菌、又は真菌が付着しているヒト又は動物、(3)胃酸過多症（胃酸過多による胃痛、胃もたれ、胸やけ、胃酸逆流）の患者又は動物、又は酸性血液又は血液中の老廃物を有する患者又は動物(4)ウィルス感染症、細菌感染症、真菌感染症、又は食中毒の患者又は動物、(5)虫歯、歯周病、又は口内炎の患者又は動物、(6)爬虫類又は昆虫に侵襲された患者又は動物、(7)炎症性疾患（皮膚炎、花粉症、喘息、気管支炎、肺炎を含む）又はアレルギー性疾患の患者又は動物、(8)疲労（身体疲労、眼精疲労）しているヒト又は動物、或いは健常又は老化したヒト又は動物、(9)急性アルコール中毒の患者とすることができる。
　適用方法は、剤型により、塗布、噴霧、貼付、経口投与、又は静脈内注入等とすればよい。

　また、本発明は、上記説明した本発明の活性物質の有効量を、物品に塗布又は噴霧する工程を含む、物品の洗浄又は消毒方法を提供する。また、本発明は、上記説明した本発明の活性物質の有効量を医薬、化粧品、又は食品に添加する工程を含む、医薬、化粧品、又は食品の保存又は防腐方法を提供する。

　本発明の各方法において、活性物質を含む組成物の組成や性状、活性物質の用量用法などは、本発明の各剤について説明した通りである。

　本発明は、上記説明した本発明の活性物質を下記(1)～(11)の各剤の製造のために使用することを提供する。
(1)腎臓結石若しくは尿路結石の治療剤、又は腎臓結石若しくは尿路結石の排出促進剤；
(2)身体の洗浄剤若しくは消毒剤；
(3)胃酸過多症（胃酸過多による胃痛、胃もたれ、胸やけ、胃酸逆流を含む）の治療剤、酸性血液の中和剤、又は血液中の老廃物の排出促進剤；
(4)ウィルス感染症、細菌感染症（食中毒を含む）、若しくは真菌感染症（水虫を含む）の治療剤；
(5)虫歯、歯周病、若しくは口内炎の治療剤；
(6)爬虫類若しくは昆虫の毒の中和剤、又は爬虫類若しくは昆虫に侵襲された後の腫れ若しくは痛みの治療剤；
(7)炎症性疾患（皮膚炎、花粉症、喘息、気管支炎、肺炎を含む）若しくはアレルギー性疾患の治療剤；
(8)疲労（身体疲労、眼精疲労）の回復剤、若しくは老化抑制剤；
(9)急性アルコール中毒の治療剤；
(10)物品の洗浄剤若しくは消毒剤；又は
(11)医薬、化粧品、若しくは食品の保存若しくは防腐剤

　本発明は、下記(1)～(9)の方法における使用のための上記説明した本発明の活性物質を提供する。
(1)腎臓結石若しくは尿路結石の治療方法、又は腎臓結石若しくは尿路結石の排出促進方法；
(2)身体の洗浄方法、若しくは消毒方法；
(3)胃酸過多症（胃酸過多による胃痛、胃もたれ、胸やけ、胃酸逆流を含む）の治療方法、酸性血液の中和方法、血液中の老廃物の排出促進方法；
(4)ウィルス感染症、細菌感染症（食中毒を含む）、若しくは真菌感染症（水虫を含む）の治療方法；
(5)虫歯、歯周病、若しくは口内炎の治療方法；
(6)爬虫類若しくは昆虫の毒の中和方法、又は爬虫類若しくは昆虫に侵襲された後の腫れ若しくは痛みの治療方法；
(7)炎症性疾患（皮膚炎、花粉症、喘息、気管支炎、肺炎を含む）若しくはアレルギー性疾患の治療方法；
(8)疲労（身体疲労、眼精疲労）の回復方法、若しくは老化抑制方法；又は
(9)急性アルコール中毒の治療方法
　また、本発明は、上記説明した本発明の活性物質を含む組成物の、物品の洗浄剤、物品の消毒剤、又は医薬、化粧品、若しくは食品の保存若しくは防腐剤としての使用を提供する。
　また、本発明は、上記説明した本発明の活性物質を含む組成物の、身体の洗浄若しくは消毒のための非治療的使用を提供する。

　以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
（１）活性物質の製造
　水道水を軟水用イオン交換樹脂（サイエンス化学C-NA）に通して軟水化して、ミネラルを含まないものとした。流体を連続的に通すことができる容器に、長さ10cm、太さ5mmの電極20本を9mm間隔で配置して、AC100Vを印加して、４Aの電流を流しながら、電極の間隙に上記軟水を2L/分の流速で流して採取した。

（２）活性物質の物性の評価
　先ず、前記方法で作られた新規物質の質量を求めた。分析にはLC-MSを使用した。新規物質に水素イオンを添加してマイナス3000Vを印加して、4重極レンズでm/zを測定した。レファレンスとして新規物質の原料とした水道水についても測定した。イオン化していない新規物質や水道水に含まれるクラスターは、水素イオンを添加して測定するために測定結果から1を引いたものが実際のm/zである。しかし、新規物質には水素イオンが結合しているクラスターが存在しているために、これらのm/zは測定値がそのまま新規物質のm/zである。測定レンジは、m/z=10～200であった。本実験では、z=1と考えてよい。
　得られた新規物質のスペクトルから水道水のスペクトルを差し引くと、新規物質のみに含まれる、イオン化していた新規物質のクラスターのm/zが求まる。水素イオン化したクラスターのスペクトルを図1に示す。
　同様にして、水素イオンが欠落して、OH-状態になったクラスターにプラス3000Vを印加して求めたm/zを新規物質と水道水について求めた。イオン化していなかったクラスターの質量は測定値に１を加算したものになる。新規物質のスペクトルから水道水のスペクトルを引き算したスペクトルを図2に示す。ここでは、もともとOH-状態であったクラスターが観測されている。なお、装置の測定可能領域はz/m=10～200であった。従って、今後装置が改良されればm/Z=200以上のイオンクラスターが観測されてしかるべきである。
　このようにして求まった水クラスター及び、イオン化しているクラスターの質量とその構造を表1～3に示す。「陰イオン加速で検出されたクラスター」の欄は、新規物質にも水道水にも含まれていたクラスターである。「陰イオン状態のクラスター」は、新規物質にのみ含まれていたクラスターである。陽イオン加速の場合も同様で、「陽イオン加速で得られたクラスター」は、新規物質にも水道水にも含まれている。「陽イオン状態のクラスター」は新規物質だけに含まれていたものである。

　質量分析で見つかった陽イオンクラスターは、H₅O₂、 H₇O₂、 H₉O₂、 H₇O₃、 H₉O₃、 H₁₁O₃、 H₉O₄、 H₁₁O₄、 H₁₃O₆、 H₁₅O₆、 H₁₅O₇、 H₁₈O₇、 H₁₇O₈、 H₁₉O₈、 H₁₉O₉、 H₂₈O₉、 H₃₀O₉、 H₂₁O₁₀、 H₂₃O₁₁であり、陰イオンクラスターはH₁O₅、 H₃O₅、 H₁₁O₅、 H₁₂O₅、 H₁₃O₅、 H₁₁O₆、 H₁₁O₇、 H₁₂O₇、 H₁₁O₈、 H₁₃O₈、 H₁₄O₈、 H₁₅O₈であった。両イオンの数に差があることを考えると、z/m=200以上の陰イオンクラスターが多数存在すると考えて良い。

　新規物質を、陽電極に銅板を用い、陰電極にアルミ板を用いた電気分解セルに入れ、この電極に直流電源をつなぎ、電圧固定モードで1ボルトでの電圧を印可すると電気分解が起こり、電流が流れた。
　一般に、純水を電気分解するには、10ボルト以上を印可しなければ電気分解は起こらない。水道水などのように不純物が含まれていれば、3ボルト程度で電気分解が起こるが１ボルト以下では起こらない。ところが新規物質の場合は1ボルト以下の0.1ボルトでも電気分解が起こった。電気分解が起こった結果、溶液はわずかであるが水色に変化した。水色の物質が水酸化銅 Cu(OH)₂であることは明らかであり、激しい水酸化反応が起きたことが分かる。陰極からは電極物質にかかわらずガスが発生するが、ここで発生したのは水素ガスである。
　この電気分解は永く続かず2時間程度で止まった。電圧をかけ続けてもそれ以上水酸化銅は生成されないし水素イオンも発生しなかった。従って、水中のOH^-イオンが消費されて電気分解が止まったことが分かる。従って新規物質にはOH^-イオンおよびH⁺イオンが含まれており、それらイオンが移動して電気が流れた。
　電流値の経時変化を図3に示す。電流値は指数的に減衰するが、やがて定常になった。定常になった状態では、これ以上水酸化銅の析出は起こらなかった。定常状態で電流が流れるのは、電気分解によるものではなく、水道水に含まれる塩素やカルシウムなどの不純物によるものと考えてよい。電流値の挙動は場合により複雑であるが、析出した Cu(OH)₂の量を計測すると、電気分解開始の2時間後でも6時間後でも変わらないことが分かった。
　本物質に OH^- イオンがどの程度含まれていたかを明らかにできる。電流値を積分すれば電荷量がわかりイオンの量がわかる。しかし、本物質に不純物が含まれる場合には、不純物がイオン化して流れる電流があるために、OH^- イオンの電荷量だけを計測しているとは言い難い。そこで、銅電極が反応して Cu(OH)₂ が生成した結果、銅電極の質量が減衰しているので、この減衰量を測定することにより、OH^- イオン量を計測できる。簡単な計算から 本物質のOH^-イオン量が0.3～0.4mMあることが明らかになった。

　本物質のpHを測定した結果、7であった。即ち新規物質は中性である。OH^-イオンだけが新規物質に存在しているとしたら、pHはアルカリ性にならねばならない。中性であるとしたら、本物質には陽イオンが同時に存在しているはずである。本物質はその生成過程で陽イオン交換樹脂を通しているので、ミネラルの存在がわずかであり、塩素イオンやフッソイオン等の陰イオンの存在も確認されていない。従って、本物質は酸素及び水素だけで出来ている。即ち、陽イオンが存在するとしたら、それは水素イオン以外に考えることができない。実際に陰極からは水素が発生した。従って本物質には水酸化物イオンと水素イオンがほぼ同数共存していると結論された。

　次に、本物質に含まれるイオンの安定性について検討した。常識的には、H⁺イオンとOH^-イオンが共存すれば、短時間に結合して水になることが予想される。そこで、我々は、本物質を20リットル製造した後、時間をおいて50mLずつ採取して「（１）活性物質の製造」の項目で示した電気分解法を用いてOH^-イオン濃度を測定した。その結果を図4に示す。本物質のイオン濃度は数時間で変化することはなく、約6ヶ月で半分になった。これは極めて長時間であり、イオンが安定に存在していると言って良い。

　H⁺とOH^-イオンが結合せずに安定に存在する理由は、イオンがクラスターに結合しているためである以外に考えることができない。もちろん、水がクラスターとして存在していることは良く知られている。水素結合したクラスターの先端にH⁺もしくはOH^-イオンが結合した状態であるならば、イオンは移動することなく長期間安定的に存在する。事実、質量分析の結果、新規物質がイオン化したクラスターであることが証明された。本物質は攪拌することによりクラスターが切断される。クラスターが切断されると、新たにクラスターの先端にOH^-イオン及び、H⁺イオンが生成される。従って、本物質を攪拌するとイオンの濃度が上昇して0.4mM から 0.6mM まで上がることが明らかになった。但し、その状態は長く続くことはなく、1時間ほどで0.3mM まで減少した。

　前述した通り、本物質は水道水や天然水には存在しなかった物質であり、中性の水であるにも関わらず、H⁺イオンと OH^-イオンが安定に共存している。従って、本物質は部分的に酸性水であり、部分的にアルカリ水である。言い換えれば、アプローチする物質により酸化反応も起こせば還元反応も起こす。本物質は反応性の高い物質であることが特徴である。
　反応性について本物質の酸化還元電位をORPモニター（マザーツール デジタル酸化還元電位計(ORP)メータ YK-23RP）で測定した。観測した結果を図5に示す。観測結果は水の温度や電極表面の酸化状態により大きく影響を受けるので注意を要する。図5の測定は水温約10℃の条件下で行った結果である。本物質のモル濃度を0から0.31mMまで変化させて測定した。酸化還元電位は、220mVから300mVまで変化した。0.31mMのときに200mVに下がったが、電気分解の実験では100mVで電気分解が起こることを考えるならば、200mVは相対的な値として理解しておきたい。室温では100mV以下であったと考えられる。約50℃で測定した結果では、モル濃度が0.6mMになると、酸化還元電位はゼロになった。文献によれば、純水の酸化還元電位は室温で1230mV であるとされているので、本物質が相対的に中性であるにもかかわらず反応性の高い物質であることが示された。

　本物質が部分的に酸性であり、部分的にアルカリであるという特性を定量的に示したのが表4である。OH^-のモル濃度の測定に基づき、OH^-部分のpHとH⁺の部分のpHを計算した。

　前述した通り、H⁺イオンもOH^-イオンもH₂Oクラスターに結合した状態で存在していると考えられるので、3(H₂O）分子が、H₃O₂ ^-イオンとH₃O⁺イオンに解離したとして、その解離定数を求めることによりpHを計算した。
　計算は、解離定数の定義により、Ka=[H₃O₂ ^-][H₃O⁺]であり、H₃O⁺ のモル濃度も H₃O₂ ^-のモル濃度も等しく0.36mMであるとして計算した。規格化された解離定数は pKa=-logKa であるから、それぞれのpHは、計算式 pH(H₃O₂ ^-)=pKa+log[H₃O₂ ^-]/[H₂O]、及びpH(H₃O⁺)=14-pH(H₃O₂ ^-) を用いて求めることができ、H₃O⁺ のpHは2.59、 H₃O₂ ^- のpHは11.40と求まった。
　次亜塩素酸及び陰イオン界面活性剤のpHも表4に示した。次亜塩素酸水は、コロナウィルスの殺菌に使われているが、本物質は、次亜塩素酸水よりも酸性度が高いことから、本物質は、コロナウィルスの不活性化に大きな効果があると想定された。そして、次の「（３）新規物質の活性評価」の項目で述べる様に、実際に、本物質によるコロナウィルス不活性化実験を試験研究機関に依頼して行ったところ、不活性化が検証された。コロナウィルスは石鹸で洗い流すことも推奨されているが、石鹸はアルカリ性を示すのでやはりコロナウィルスを不活性化する効果を持つ。そして本物質のアルカリ度は、石鹸水よりも強いところから、本物質は石鹸に代わるコロナウィルスの不活性剤として効果のあることが期待される。

（３）新規物質の活性評価
腎臓結石の排出促進作用
　上記実証した通り、本物質には多量のOH^-イオンが含まれている。即ち、本物質は強い水酸化作用を示すことを特徴としている。従って、本物質を用いて水酸化物を生成できる。例えばカルシウムと反応して水酸化カルシウムを生成するが、水酸化カルシウムは水溶性である。腎臓結石はカルシウムが主成分であるから、本物質を飲用すると、本物質が腎臓結石の表面を溶かして滑らかにするために結石が出易くなることが期待された。
　腎臓結石を有する男性患者が、1日1Lの本物質を1カ月飲用した結果、結石が尿に混じって排出された。排出された直径1mm程度の腎臓結石の写真を図6に示す。
　通常、腎臓結石が排出される際は、結石が動くことに伴い痛みが生じるが、本物質を飲用した場合は、結石が排出される際に何の痛みも無かった。本物質が結石の表面を滑らかにしたことが分かる。他の複数の腎臓結石患者も本物質を引用したが、腎臓結石が大きい患者では、激しい痛みに襲われた例もある。その場合には、泌尿器科の受診が必要となる。本物質は腎臓結石排出促進剤の有効成分として用いることができる。

洗浄作用
　OH^-イオンは、油脂、多糖類、蛋白質を溶解することが良く知られている（福崎智司、調理食品と技術、Vol 16 NO.1(2010)）。本物質は、強い水酸化作用を示すことから、洗浄剤として機能することが期待された。
　実際、衣類の洗濯に使用すれば洗剤を使わなくても洗浄効果があり、洗剤と共に使えば洗剤の洗浄効果を高めた。手洗いに本物質を使えば、約１Lの本物質で油を洗い流すことができた。食器の洗浄に使えば、油分を除去することができた。
　本物質は化学物質を含まないことから、肌にやさしく、肌荒れをもたらさない。石鹸と併用することもでき、石鹸の効果を著しく高めた。浴槽の200Lの湯に本物質を20L添加した場合、得られた湯に浸かるだけで身体の汚れが落ちた。また、本物質だけで洗髪した結果、汚れが落ちた。また、既存のシャンプーで洗髪した後は、リンス剤を使用しなければ髪が痛むが、本物質で洗髪した後は、リンス剤を使用しなくても髪が痛まなかった。追い炊き式の風呂の場合には、浴槽の200Lの湯に本物質を20Lほど入れると、風呂釜から大量の垢が排出したことから、本物質の強い洗浄作用が明らかになった。

酸の中和作用
　本物質には、大量のOH^-イオンが含まれていることから、酸を中和する効果がある。従って、胃酸過多に適用すれば胃酸を中和する効果がある。塩酸を中和する実験を行った結果、pHが2.0である塩酸50mLに本物質を100mL入れたところ、pHが2.4になった。一方、pHが2.0である塩酸50mLに水道水を100mL入れたところ、pHは2.2となった。これにより、本物質には胃酸を著しく中和する働きがあることが明らかである。

　本物質は中性であり大変飲みやすい物質であることから飲用に適している。飲用すれば、酸性血液を中和する効果があり、体液も中和される。酸性血液が免疫力を落とすことはよく知られているから、血液を中和する働きは免疫力を上げる働きである。血液を中和することは腎臓の働きを助けることでもある。従って、血液中の老廃物を代謝して、排出することが促進され、血液を、さらさらにする効果、即ち流れやすい血液にする効果が有る。従って、本物質は健康食品や飲料水の成分として使用することができる。実際、70歳の男性患者が本物質1000mLを1ヶ月ほど毎日飲用した結果、濁っていた尿が透明になり、悪臭も放たなくなった。それは、血液中の老廃物が少なくなったことを意味している。
　さらに本物質は、点滴液として使用することができ、点滴により直接的に血液を中和する効果がある。本物質は中性であり、他のいかなる化学物質も含まないので、点滴に薬剤を投入する際の溶液としてすぐれた効果が期待される。勿論、本物質の点滴液に他の薬剤を添加する場合には、薬剤が変質しないことを確認する必要がある。

抗ウィルス作用
（ａ）コロナウィルスCOVID-19の不活化作用
　本物質をコロナウィルスCOVID-19に適用する試験を、一般財団法人日本繊維製品品質技術センターに依頼して行った。
（試験概要）
・試験ウィルス:Severe acute respiratory syndrome coronavirus 2(SARS-CoV-2) NIID 分離株;JPN/TYWK-521(国立感染症研究所より分与)
・宿主細胞: VeroE6/TMPRSS2 JCRB1819
・細胞培養液:Dulbecco's modified Eagle's medium (low-glucose) ; DMEM (SIGMA, Cat#D6046)、及びMinimum Essential Medium Eagle ; EMEM (SIGMA, Cat#M4655)
・ウシ胎児血清: Fetal Bovine Serum (FBS) (SIGMA, Cat#173012)
・対照サンプル(ネガティブコントロール) : Phosphate buffered saline (PBS)
・試験サンプル: 活性水（「(1)活性物質の製造」の項目で製造）、及び水道水(出願人提供) 
・試験条件: ウィルス懸濁液:試験サンプル＝1:9
　　　　　　作用温度 25°C
　　　　　　作用時間 1分、15分、30分 
　　　　　　(対照サンプルであるネガティブコントロールのみ混合直後も測定)
・薬剤不活化剤:SCDLPを 2% FBS含有DMEMで10倍希釈した溶液
・感染価測定法:プラーク測定法 
 
（試験方法）
1) ウィルス懸濁液の調製: 
宿主細胞にウィルスを感染させ、EMEMを加え、37℃で所定時間培養後、4℃、1,000xgで15分間遠心分離した上清を試験ウィルス懸濁液とした。 
2) 宿主細胞検証試験: 
2)-1 細胞毒性確認試験 
1.試験サンプル 0.9 mL に EMEM 0.1 mL を加え、十分に撹拌した。これを試験液とした。
2.薬剤不活化剤 0.9ml に試験液 0.1 ml を添加し、十分に撹拌した。
3.2%FBS含DMEM を用いて、10倍希釈系列を作製した。
4. プラーク測定法にて各希釈系列の細胞毒性の有無を確認した。 
2)-2 ウィルスへの細胞の感受性確認試験
1. 試験サンプル 0.9 mL に EMEM 0.1 mL を加え、十分に撹拌した。これを試験液とした。
2. 薬剤不活化剤 4.5ml に試験液 0.5ml を添加し、十分に撹拌した。
3.2%FBS 含 DMEM を用いて、10倍希釈系列を作製した。
4. EMEM を用いて4～6×10⁴ PFU/mLに調製したウィルス懸濁液を3.の各希釈系列の 1/100 量添加した。
5. 室温で 10 分間静置した。
6. プラーク測定法にて各希釈系列 1mL当たりのウィルス感染価を測定し、ウィルスへの細胞の感受性を確認した。
 
　宿主細胞検証試験は、以下の基準を満たすことを判定基準とした。
2)-1 細胞毒性:無し 
2)-2 ウィルスへの細胞の感受性確認: 
1g(PBS のウィルス感染価(PFU/mL))- 1g(Sampleのウィルス感染価(PFU/mL))≦0.5 
 
3) 本試験:
1.試験サンプル 0.9 mLに試験ウィルス懸濁液 0.1 mL を加え、十分に撹拌した。
2.25℃で1分、15分、30分間静置した。これを試験液とした。
3. 宿主細胞検証試験で不活化が確認された条件で試験液を不活化した。これを反応停止液とした。
4.上記3.の反応停止液を 10⁰、即ち１として、2%FBS含DMEM で 10 倍希釈系列を作製し、反応停止液 0.1ml 当たりのウィルス感染価をプラーク測定法にて測定し、試験液 1ml当たりのウィルス感染価を算出した。 
 
（試験結果）
2) 宿主細胞検証試験
・試験ウィルス:SARS-COV.2 NIID 分離株; JPN/TY/WK-521 (国立感染症研究所より分与)
・試験ウィルス懸濁液濃度: 4.6×10⁴ PFU/ml

　試験液を薬剤不活化剤で10倍希釈することにより、検体の影響を受けずにウィルス感染価測定ができることが確認できた。 
 
3)本試験
・試験ウィルス:SARS-CoV-2 NIID 分離株;JPN/TY/WK-521 (国立感染症研究所より分与)
・試験ウィルス懸濁液濃度 : 1.1 × 10⁸ PFU/ml

　本物質は、コロナウィルスCOVID-19を死滅させた。

（ｂ）ブタインフルエンザウィルスの不活化作用
　本物質のブタインフルエンザウィルスの不活性化作用を、株式会社食環境衛生研究所に依頼して評価した。
 
1. 試験資材 
  活性水（「(1)活性物質の製造」の項目で製造）をそのままの濃度で使用した。対照資材としてリン酸緩衝液を使用した。 
2. 供試微生物 
  インフルエンザウィルス:swine influenza virus H1N1 IOWA株
　培養細胞:MDCK 細胞(イヌ腎臓由来株化細胞) 
3.区の設定 
区　　　処置　　　　　　　　　　　　　　　　　　 感作時間
試験区　試験資材1mLにウィルス液 0.1mL 添加　  　試験開始後
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 15分、30分
処置　　リン酸緩衝液 1mLにウィルス液 0.1mL添加　試験開始時、
                                                 試験開始後30分
4. 試驗方法 
  「ウィルス実験学総論 改訂二版 丸善株式会社ウィルス中和試験法」を参考として実施した。 
5. 試験手順 
1)予備試験:
  試験に先立って、試験資材が培養細胞に与える影響(細胞毒性)を調査した。試験資材をリン酸緩衝液で 10 倍段階希釈した後、培養細胞に接種し、培養後の細胞の正常な状態を示す最高濃度を確認し、試験に使用するウィルス濃度を決定した。その結果、細胞毒性について、MDCK細胞において細胞毒性は確認されなかった。この為、ウィルス添加濃度は 10⁵ TCID₅₀/mL以上とした。 
2)本試験・試験液混合:
  試験区分に従い、試験資材及び対照資材の各 1mL をそれぞれ分取し、予備試験で 決定した濃度にウィルス液を添加した。ウィルス液添加後、混合液として室温(25℃)にて所定の時間静置した。 
3)本試験・細胞接種及び菌数測定:
　試験区分ごとに感作が終了した混合液をそれぞれ10倍段階希釈し、96wellプレー トに培養した細胞に 100μLずつ接種した。 
　判定は、37℃、炭酸ガス培養(5%)で5日間培養した後、各ウェル内の培養上清を回収し、赤血球凝集反応によりウィルスの増殖の有無を確認し、その濃度を算出した。
6. 結果 
　インフルエンザウィルスに対する試験結果を表7に示した。対照区では試験開始後から、試験開始30分後までの間にウィルス量の変化は見られなかった(10^5.9TCID₅₀/mL)。 試験区では開始後15分で10^5.1TCID₅₀/mL (83.75%減少)、開始後30分で10^4.9 TCID₅₀/mL(90.00%減少)となった。

　試験資材である活性水は、インフルエンザウィルスに対して、15分間反応させることで83.75%、30分間反応させることで90.00%の不活化効果があることが判明した。 

　次亜塩素酸や石鹸水を飲むことや顔に噴霧することは避けるべきであるが、本物質は飲水が可能であり、顔、手、肌に噴霧しても皮膚に損傷は与えない。従って、本物質は、顔、手、目、鼻等に噴霧することができ、さらには口鼻に噴霧して呼吸するならば、気管支や肺の奥に本物質を投入することができ、ウィルスを極めて効果的に不活性化できる。
　また、本物質はウィルスにたいして著しい不活性効果があるのみならず、洗浄効果があるため、本物質は、鳥インフルエンザウィルスや豚コレラウィルス等を駆除することができる。従って、常時、本物質で鳥小屋や豚小屋を洗浄すれば、これらウィルスの蔓延を阻止するのに著しい効果がある。

　また、本物質がエンベロープを有するブタインフルエンザウィルスを不活化させたことは、本物質が細菌や真菌も死滅させ得ることを示唆する。

口腔内疾患の改善作用
　口内炎は、単なる炎症であるタイプと、ウィルスや真菌が原因で炎症を生じているタイプとがあり、何れも口内に膿胞を発生させる。口内炎患者が、1日10回本物質で口をゆすぐことにより3時間で膿胞が消えた。口内炎改善効果には即効性があった。
　また、歯周菌患者が、本物質を10mL歯茎に振りかけて歯ブラシで１日3回歯磨きをした結果、7日後に歯周ポケットに歯垢がなくなり、出血が治まった。
　また、ある歯科医が、虫歯の治療で、穿孔した虫歯を本物質1mLで洗浄して後虫歯を埋めた結果、虫歯が完治した。
　本物質は、洗浄効果が高いので、歯ブラシの際に日常的に使えば、歯の隙間に良く浸透してごみを剥離することができる。洗浄効果と、抗菌作用、抗ウィルス作用、又は抗真菌作用と、抗炎症作用とが協働して、歯周病、虫歯、口内炎を改善できる。

水虫の改善作用
　足指に水虫を有する患者が、本物質1mLを1日3回患部に塗布した結果、3日後に水虫の症状が完全に消失した。
　水虫は真菌の一種であるカンジダ属真菌が原因となるため、本物質が抗真菌作用を有することが実証された。

皮膚炎の改善作用
　足に皮膚炎を有する80歳の女性は、皮膚科医師からステロイドを処方され、3年間にわたってステロイドを塗布したが、皮膚炎は全く改善しなかった。しかし本物質を浸み込ませた綿花を患部に貼り、テープで止め、乾燥すると本物質を振りかけることを繰り返した結果、3日後に、皮膚炎は大きく改善した。本物質の使用前後の足の写真を図7に示す。潰瘍が出来ていたが、本物質使用により、潰瘍がなくなり皮膚が乾燥した状態になった。発赤も顕著に減った。3年間患ったものが本物質の3日間使用で治るという即効性を示した。
　本物質は、単体で極めて強力な皮膚炎の治療薬であり、抗炎症作用を有することが明らかになった。

アレルギー性疾患の改善作用
　本物質は、強い洗浄作用を有するため、本物質で鼻の中や目を洗浄すれば、花粉などのアレルギー物質を取り除く効果が顕著であり、花粉症を始めとするアレルギー性疾患を改善することができる。また、本物質は抗炎症作用を有するため、抗炎症作用もアレルギー性疾患の改善に寄与する。本物質を、スプレー容器に入れて鼻や口腔内に噴霧して吸い込むだけで十分な効果が得られる。
　また、本物質は、抗炎症作用を有するため、気管支炎、肺炎、気管支喘息といった呼吸器の炎症疾患に対しても著しい改善効果がある。年寄りの場合、誤嚥性肺炎により命が絶たれることが頻繁にあるが、誤嚥性肺炎を改善するのに、本物質を吸入することは大きな助けになる。実際、誤嚥性肺炎の患者が、1回1mLを口腔内に噴霧して吸い込むことを1日10回行ったところ、3日後には、呼吸困難などの肺炎症状が治まった。

昆虫毒・蛇毒による症状の改善作用
（ハチ刺されによる症状の改善）
　さらに本物質は、虫刺さされや毒蛇にかまれたときの対処に使用することができる。
　肩を足長バチに刺された男性が、直後に本物質2mLを振りかけて経過を観察した。図8の上段は、振りかけた直後の写真であり、中段は30分後の写真であり、下段は１時間後の写真である。足長バチに刺されると、通常は、ひどい腫れと発赤が続くが、本物質を塗布することで30分後には赤みがなくなり、発赤部分の中央の刺された部位が見えるようになった。毒針を抜くという処置はしなかった。さらに、１時間後には腫れと赤みは非常に小さくなった。

（マムシに噛まれたことによる症状の改善）
　手指をマムシに噛まれた男性が20分後に病院で処置を受け、抗毒剤の注射をうけ、1日病院で過ごした後に帰宅して、包帯を替えるたびに本物質を入れた洗面器に手を漬けて、傷口に本物質を接触させることを繰り返すとともに（合計接触時間は1日1時間）、1日1L本物質を飲んだ。3日後の指の写真を図9に示す。このとき、指を動かせるまでに回復した。毒蛇に噛まれたら一般的には恢復するのに1か月ほどかかる。本物質の使用により、通常よりかなり早くに腫れが引いた。
　本物質は、水酸化イオンを大量に含むため、蛇や虫の毒を中和する顕著な働きがあるのは確かである。

疲労回復作用
　本物質には大量の水素イオンが含まれているため、本物質中の水素イオンが活性酸素と容易に結合する。活性酸素は疲労の原因であるため、本物質は疲労を取り除く効果があることが期待される。従って、本物質は飲水もしくは点滴や静脈注射により血液に注入して活性酸素を消滅させ、疲労を回復する疲労回復剤の成分として使用することができる。実際、本物質で入浴することにより著しく疲労が回復した。

　さらに、本物質を目に点滴するならば眼精疲労を抑制することができることが期待された。近視と老眼の症状を有する男性が、1日3回、本物質を両目に点眼した結果、老眼の程度が軽減し、近くの物が見え易くなった。老眼については、本物質の1カ月の点眼で、拡大鏡なしで近距離の小さい文字が明確に見えるようになった。近眼については、裸眼視力は0.3であり、眼鏡を装着して視力が1だったが、本物質の1カ月の点眼で、眼鏡を装着せずに視力が1になった。このように、遠近双方が見え易くなった。眼精疲労が軽減され、また、硬直していた眼の筋肉が柔らかくなったと考えられる。
　このことは、本物質が活性酸素を減少させて疲労を回復させたことを意味し、眼精疲労以外の疲労や、アンチエイジングにも有効であることを示唆する。

　本発明の活性物質は様々な活性を有し、無毒、中性で、安定性に優れるため、非常に有用なものである。

Claims (7)

1. 　水素と酸素からなり、陽イオンクラスターであるn(H₂O)H+と、陰イオンクラスターであるm(H₂O)OH-を含み（n、mは、独立して1～100の整数である。）、中性である、活性物質。
2. 　陽イオンクラスターとして、H₅O₂、H₇O₂、H₉O₂、H₇O₃、H₉O₃、H₁₁O₃、H₉O₄、H₁₁O₄、H₁₃O₆、H₁₅O₆、H₁₅O₇、H₁₈O₇、H₁₇O₈、H₁₉O₈、H₁₉O₉、H₂₈O₉、H₃₀O₉、H₂₁O₁₀、H₂₃O₁₁からなる群より選ばれる少なくとも1種を含み、陰イオンクラスターとして、H₁O₅、H₃O₅、H₁₁O₅、H₁₁O₆、H₁₁O₇、H₁₁O₈、H₁₂O₅、H₁₂O₇、H₁₃O₅、H₁₃O₈、H₁₄O₈、H₁₅O₈からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1に記載の活性物質。
3. 　活性物質のH₃O+分子とH₃O₂-分子のモル濃度が、それぞれ0.05～0.7mMである、請求項1又は２に記載の活性物質。
4. 　pKaが6～7である、請求項1～3の何れかに記載の活性物質。
5. 　酸化還元電位が-300mV～300mVである、請求項1～4の何れかに記載の活性物質。
6. 　以下の(1)陽イオンクラスター、又は(2)陰イオンクラスター
   (1)　H₅O₂、H₇O₂、H₉O₂、H₇O₃、H₉O₃、H₁₁O₃、H₉O₄、H₁₁O₄、H₁₃O₆、H₁₅O₆、H₁₅O₇、H₁₈O₇、H₁₇O₈、H₁₉O₈、H₁₉O₉、H₂₈O₉、H₃₀O₉、H₂₁O₁₀、若しくはH₂₃O₁₁
   (2)　H₁O₅、H₃O₅、H₁₁O₅、H₁₁O₆、H₁₁O₇、H₁₁O₈、H₁₂O₅、H₁₂O₇、H₁₃O₅、H₁₃O₈、H₁₄O₈、若しくはH₁₅O₈
7. 　請求項1～5の何れかに記載の活性物質を含む、
   (1)腎臓結石若しくは尿路結石の治療剤、又は腎臓結石若しくは尿路結石の排出促進剤；
   (2)身体の洗浄剤、若しくは消毒剤；
   (3)胃酸過多症の治療剤、酸性血液の中和剤、又は血液中の老廃物の排出促進剤；
   (4)ウィルス感染症、細菌感染症、若しくは真菌感染症の治療剤；
   (5)虫歯、歯周病、若しくは口内炎の治療剤；
   (6)爬虫類若しくは昆虫の毒の中和剤、又は爬虫類若しくは昆虫に侵襲された後の腫れ若しくは痛みの治療剤；
   (7)炎症性疾患若しくはアレルギー性疾患の治療剤；
   (8)疲労の回復剤、若しくは老化抑制剤；
   (9)急性アルコール中毒の治療剤；
   (10)物品の洗浄剤又は消毒剤；又は
   (11)医薬、化粧品、若しくは食品の保存剤若しくは防腐剤。

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