WO2022185977A1 - 油水混合組成物 - Google Patents

Abstract

油中水型組成物が、（ａ）シリコーン骨格を有する紫外線吸収剤、（ｂ）揮発性非環状シリコーン油、（ｃ）環状シリコーンを５質量％以下、（ｄ）疎水性シリカ粉末、及び（ｅ）親水性粉末を含有する。

Description

油水混合組成物

　本発明は、油水混合組成物に関する。

　油中水型組成物は、閉塞作用、保湿作用に優れているため、皮膚塗布用組成物、特に化粧料、パーソナルケア製品として広く用いられている。油中水型組成物は、均質化（乳化）された状態で製品として提供される形態であってもよいし、或いは粉末などの成分の一部が沈降した状態で提供され、使用の際に使用者が組成物入り容器を振とうさせること等により均質化される形態であってもよい。

　油中水型組成物の特性としては、均質化特性（均質化状態が良好であること）及び使用感が特に重要であるため、これらの特性を向上させるべく処方設計が様々に検討され、多くの試行錯誤が重ねられてきた。例えば、良好な乳化状態、良好な使用触感が得られる油中水型組成物として、所定のシリコーン油、オルガノポリシロキサンエラストマー球状粉体を含有するものが知られている（例えば特許文献１）。

特開平１０－１２０５２５号公報

　しかしながら、近年、自然環境に対する問題意識が高まってきたことから、所定成分の配合量を低減した組成、特に所定のシリコーン油の配合量を低減した組成が求められることがある。そのため、使用可能な成分に制限が課せられた状況で処方設計を行う必要が生じている。

　上記の点に鑑みて、本発明の一態様は、均質化特性及び使用感に優れ、且つ自然環境にも配慮がなされた油中水型組成物を提供することを課題とする。

　上記課題を解決するための本発明の一態様は、（ａ）シリコーン骨格を有する紫外線吸収剤、（ｂ）揮発性非環状シリコーン油、（ｃ）環状シリコーンを５質量％以下、（ｄ）疎水性シリカ粉末、及び（ｅ）親水性粉末を含有する油中水型組成物である。

　本発明の一態様では、均質化特性及び使用感に優れ、且つ自然環境にも配慮がなされた油中水型組成物を提供できる。

　以下、本発明の実施形態を詳細に説明するが、本発明は、下記の具体的な実施形態に限定されることはない。

　＜油中水型組成物＞
　本発明の一形態は、（ａ）シリコーン骨格を有する紫外線吸収剤、（ｂ）揮発性非環状シリコーン油、（ｃ）環状シリコーンを５質量％以下、（ｄ）疎水性シリカ粉末、及び（ｅ）親水性粉末を含有する、油中水型組成物である。油中水型組成物は、乳化可能な油系成分と水系成分とを含有してなる組成物である。本明細書において、油中水型組成物は、均質化された状態が維持されている形態（非分離型ともいう）であってもよいし、静置状態では成分の一部が分離若しくは沈降しているが、使用時に使用者が組成物を撹拌することで均質化された状態にできる形態（分離型ともいう）であってもよい。本形態による油中水型組成物は、使用時に、油中水型エマルションの状態の組成物を皮膚に塗布できるものあればよい。油中水型の組成物は、閉塞作用、保湿作用が高いため、皮膚塗布用組成物として好適に用いられる。

　なお、分離型の組成物は、所定時間以上静置させると組成物が不均質な状態になり得るものである。分離型の組成物は、静置によって、例えば、粉末等の重量の大きい成分の少なくとも一部が沈降する形態であってもよい。また、主として油系成分を含む上層と、主として水系成分を含む下層とに分離する形態（層分離型）であってもよい。上記層分離型の場合、分離された層の少なくとも１つが、油中水型エマルションになっていてもよい。また、分離型には、成分の沈降や層分離が肉眼で判断できないものも含み得る。

　本形態による油中水型組成物は、良好な均質化特性を有するものである。本明細書において、均質化特性とは、油中水型組成物が良好に均質化（乳化若しくは分散）されたエマルションになっていること、或いは使用者の撹拌動作によって良好に均質化（乳化若しくは分散）された油中水型エマルションになり得ることを指す。よって、良好な均質化特性とは、非分離型においては、製品を提供する段階で組成物が均質化されており、その均質化された状態が安定的に維持されていることを指す。また、分離型において、良好な均質化特性とは、使用時に使用者による撹拌によって組成物が良好に均質化可能である（再分散性が高い）ことを指す。なお、分離型の場合、使用時の使用者の撹拌動作は、乳化可能な油系成分と水系成分との混合物を流動させ、乳化若しくは分散を促進できる動作であれば特に限定されない。その動作は、例えば油中水型組成物が入った容器を蓋をした状態で、手で持って振とうさせること等であってよい。この場合、容器の中には、スチールボールなどの攪拌球が入っていてもよい。

　油系成分と水系成分との乳化の機構は複雑であり、油中水型組成物において良好な均質化特性を得るための処方設計には工夫が必要である。さらに近年、紫外線防御機能を向上させた油中水型組成物が求められており、油中水型組成物に紫外線吸収剤を比較的多く配合した処方が求められている。紫外線吸収剤は多くが極性油であるため、紫外線吸収剤の配合によって油系成分と水系成分とのバランスが崩れやすくなるため、油中水型組成物の処方設計はさらに難しくなり得る。しかしながら、本形態によれば、紫外線吸収剤を配合した場合であっても、油系成分と水系成分との良好な乳化が得られる、すなわち均質化特性に優れた組成物が得られる。

　また、本形態による油中水型組成物は、良好な使用感を付与できるものである。本明細書では、使用感には、塗布時触感（組成物を皮膚へ塗布している時に感じられる触感）、及び塗布後触感（組成物を皮膚へ塗布した後に感じられる触感）が含まれる。塗布時触感は、組成物を皮膚へ塗布している時に皮膚が感じる感覚であってよいし、組成物を指等によって塗布する場合には指が感じる感覚であってよいし、或いはその両方であってよい。塗布後触感は、組成物を皮膚へ塗布した後に皮膚が感じる感覚であってよいし、組成物を皮膚へ塗布した後に再度指等で触れたり擦ったりした時に皮膚及び／又は指等が感じる感覚であってよい。

　本形態による油中水型組成物の粘度は、好ましくは３００～１０，０００ｍＰａ・ｓ、より好ましくは５００～８０００ｍＰａ・ｓであってよい。

　＜（ａ）シリコーン骨格を有する紫外線吸収剤＞
　（ａ）シリコーン骨格を有する紫外線吸収剤は、その構造中にシリコーン骨格を有するものであって、皮膚塗布用の組成物に利用可能な紫外線吸収剤であれば特に限定されない。シリコーン骨格とは、シロキサン結合を有する構造を指す。（ａ）シリコーン骨格を有する紫外線吸収剤は、高分子化合物であっても低分子化合物であってもよい。高分子化合物の場合、その数平均分子量は、好ましくは２，０００以上１０，０００以下、より好ましくは３，０００以上８，０００以下であってよい。また、（ａ）シリコーン骨格を有する紫外線吸収剤は、常温で固体であっても液体であってもよい。

　（ａ）シリコーン骨格を有する紫外線吸収剤は、例えば、シリコーン骨格が導入されたケイヒ酸誘導体、シリコーン骨格が導入されたフェニルベンゾトリアゾール誘導体、及びベンザルマロネート官能基を有するシリコーン化合物の１種以上であってよい。（ａ）シリコーン骨格を有する紫外線吸収剤の具体例としては、ポリシリコーン－１５（ジメチコジエチルベンザルマロネート）、トリメトキシケイヒ酸メチルビス(トリメチルシロキシ)シリルイソペンチル、ドロメトリゾールトリシロキサン等が挙げられ、これらのうち、高分子化合物であるポリシリコーン－１５が好ましい。これらの具体例による紫外線吸収剤は、１種を単独で又は２種以上を組み合わせて使用することができる。

　本形態による油中混合組成物が（ａ）シリコーン骨格を有する紫外線吸収剤を含有することで、紫外線吸収作用が向上するとともに、塗布時及び塗布後の使用感も向上し、特に塗布後のきしみ感を低減できる。

　本形態の組成物における（ａ）シリコーン骨格を有する紫外線吸収剤の含有量は、水中混合組成物の全量に対して、好ましくは０．０５質量％以上１０質量％以下、より好ましくは０．１質量％以上５質量％以下であってよい。（ａ）シリコーン骨格を有する紫外線吸収剤の含有量を上記範囲とすることで、塗布時及び塗布後の使用感が向上し得る。

　なお、本形態による油水混合組成物は、シリコーン骨格を有さない紫外線吸収剤をさらに含有していてもよい。シリコーン骨格を有さない紫外線吸収剤の種類は特に限定されず、例えば、安息香酸誘導体、サリチル酸誘導体、ケイ皮酸誘導体、ジベンゾイルメタン誘導体、β，β－ジフェニルアクリラート誘導体、ベンゾフェノン誘導体、ベンジリデンショウノウ誘導体、フェニルベンゾイミダゾール誘導体、トリアジン誘導体、フェニルベンゾトリアゾール誘導体、アントラニル誘導体、イミダゾリン誘導体、ベンザルマロネート誘導体、及び４，４－ジアリールブタジエン誘導体の１種以上を用いることができる。

　紫外線吸収剤は、その構造に応じて吸収可能な光の波長が異なっている。よって、構造の異なる複数の紫外線吸収剤、特に誘導体の基本的な構造が異なる複数の紫外線吸収剤を用いることで、吸収可能な波長範囲が広くなるので、紫外線防御機能を高めることができる。シリコーン骨格を有さない紫外線吸収剤として、例えば、ケイ皮酸誘導体、β，β－ジフェニルアクリレート誘導体、トリアジン誘導体、安息香酸誘導体、及びサリチル酸誘導体を組み合わせて使用することができる。上記組合せの具体例は、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、オクトクリレン、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン（アニソトリアジン）、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、及びサリチル酸エチルヘキシルであってよい。

　シリコーン骨格の有無に関わらず油中水型組成物に配合される紫外線吸収剤の全量は、油中水型組成物の全量に対して、好ましくは５質量％以上４０質量％以下、より好ましくは８質量％以上３０質量％以下であってよい。紫外線吸収剤の全量を５質量％以上とすることで、高い紫外線防御作用が得られ、３０質量％以下とすることで、極性油の量を抑えることができるので、良好な油中水型の状態を得ることができ、また組成物のべたつき等を押さえて使用感を向上させることができる。

　また、紫外線吸収剤の含有量の合計に対する、（ａ）シリコーン骨格を有する紫外線吸収剤の含有量の割合は、好ましくは１質量％以上２０質量％以下、より好ましくは３質量％以上１５質量％以下とすることができる。紫外線吸収剤に対する（ａ）シリコーン骨格を有する紫外線吸収剤の割合を１質量％以上とすることで、油中水型組成物の使用感、特に使用後のきしみ感を低減でき、また２０質量％以下とすることで、吸収される光の波長範囲が異なる紫外線吸収剤とのバランスの良い組合せが可能となるので、広い波長範囲での紫外線防御作用を向上させることができる。

　＜（ｂ）揮発性非環状シリコーン油＞
　（ｂ）揮発性非環状シリコーン油は、１気圧２５℃において揮発性を有する油であり、より具体的には、１気圧において沸点２５０℃以下の油であってよい。油中水型組成物が揮発性非環状シリコーン油を含有することで、塗布中及び／又は塗布後の使用感が向上し、特にべたつき、きしみ等を抑え、さらさら感や肌へのなじみ易さを向上させることができる。

　揮発性非環状シリコーン油としては、鎖状ポリシロキサンが好ましい。具体例としては、ジメチルポリシロキサン（ジメチコン）、例えばデカメチルテトラシロキサン、ドデカメチルペンタシロキサン、テトラデカメチルヘキサシロキサン、ヘキサデカメチルヘプタシロキサン等であってもよい。これらのうち、ジメチルポリシロキサン（ジメチコン）が好ましい。

　（ｂ）揮発性非環状シリコーン油の２５℃での動粘度は、好ましくは５ｃＳｔ以下、より好ましくは２ｃＳｔ以下であってよい。上記の動粘度を有するシリコーン油を使用することで、使用感をさらに高めることができる。

　（ｂ）揮発性非環状シリコーンは、１種単独で、又は異なる２種以上を組み合わせて用いることができる。その場合、同様のモノマー単位を有するシリコーンであるが、少なくとも１つの特性（重量平均分子量、動粘度、その他のレオロジー特性）が異なる２種以上のシリコーンを組み合わせて用いてもよい。

　（ｂ）揮発性非環状シリコーン油の含有量は、油中水型組成物の全量に対して、好ましくは５質量％以上３０質量％以下、より好ましくは１０質量％以上２５質量％以下であってよい。（ｂ）揮発性非環状シリコーン油の含有量が５質量％以上であることで、油っぽいべたつきを抑え、さらさら感を向上させることができる。また、３０質量％以下であることで、良好な均質化特性が得られる。特に層分離型の油中水型組成物の場合には、使用者の通常の撹拌動作による良好な均質化可が可能となる、すなわち高い再分散性が得られる。

　＜（ｃ）環状シリコーン＞
　本形態による油中水型組成物においては、環状シリコーンの含有量が少ないことが好ましい。環状シリコーンの含有量は、油中水型組成物の全量に対して、５質量％以下であり、好ましくは３質量％以下、より好ましくは１質量％以下、さらに好ましくは０．１質量％未満、さらに好ましくは０．０５質量％未満、さらに好ましくは０．０１質量％未満であってよい。また、本形態による油中水型組成物が環状シリコーンを実質的に含有しないか、又は全く含有しないことが好ましい。なお、本明細書で、所定成分を「実質的に含有しない」とは、製造工程において非意図的又は不可避的に所定成分が生成又は混入することが許容されることを意味する。

　本形態では、上記のように（ｃ）環状シリコーンの含有量を５質量％以下とすることで、自然環境に配慮した製品を提供することができる。また、本形態によれば、環状シリコーンの含有量を低減しても、均質化特性及び使用性に優れた油中水型組成物を得ることができる。

　環状シリコーンは、環状ポリシロキサンであってよく、好ましくは、アルキル基若しくはアルコキシ基で置換された、又は無置換の、４～７個のケイ素原子を有する環状ポリシロキサンであってよい。環状シリコーンの具体例としては、オクタメチルシクロテトラシロキサン（シクロテトラシロキサン）、デカメチルシクロペンタシロキサン（シクロペンタシロキサン）、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン（シクロヘキサシロキサン）等が挙げられる。

　また、油中水型組成物が、オクタメチルシクロテトラシロキサン（シクロテトラシロキサン）、デカメチルシクロペンタシロキサン（シクロペンタシロキサン）、及びドデカメチルシクロヘキサシロキサン（シクロヘキサシロキサン）から選択される１種以上を実質的に含有しないか、又は全く含有しないことが好ましい。さらに、油中水型組成物が、アルキル基若しくはアルコキシ基で置換された、又は無置換の、４～７個のケイ素原子を有する環状ポリシロキサンの含有量を実質的に含有しないか、又は全く含有しないことが好ましい。

　＜（ｄ）疎水性シリカ粉末＞
　（ｄ）疎水性シリカ粉末は、その表面に疎水化処理が施されたシリカ粉末であってよい。油中水型組成物が（ｄ）疎水性シリカ粉末を含有することで、塗布時及び塗布後の使用感を向上でき、特にきしみ感を低減できる。塗布時の滑らかな使用感も向上する。さらに、自然環境への配慮の下で配合成分に制限があっても使用感及び均質化特性に優れた製品を提供できる。特に（ｄ）疎水性シリカ粉末によって、塗布中及び／又は塗布後において使用感の向上、特に油っぽいべたつき感の低減が可能になる。また、均質化特性（層分離型の場合には再分散性）も向上させることができる。

　シリカの疎水化処理の方法としては、特に限定されず、シリコーン処理、脂肪酸処理、脂肪酸石鹸処理、脂肪酸エステル処理、高級アルコール処理等が挙げられる。

　シリコーン処理としては、メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等のシリコーンオイル；メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン等のアルキルシラン；トリフルオロメチルエチルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン等のフルオロアルキルシラン等による処理等が挙げられる。脂肪酸処理としては、パルミチン酸、イソステアリン酸、ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ベヘニン酸、オレイン酸、ロジン酸、１２－ヒドロキシステアリン酸等による処理等が挙げられる。脂肪酸石鹸処理としては、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、１２－ヒドロキシステアリン酸等による処理等が挙げられる。脂肪酸エステル処理としては、デキストリン脂肪酸エステル、コレステロール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、デンプン脂肪酸エステル等による処理等が挙げられる。上記の処理のうち、ジメチルポリシロキサン（ジメチコン）による処理が好ましい。

　なお、より具体的な処理方法としては、湿式法シリカゾルを疎水化処理・乾燥する方法、親水性シリカ粒子分散液に、シラザン化合物あるいは１官能シラン化合物を加えてシリカ粒子表面をトリオルガノシリル化する方法、４官能シラン化合物を加水分解、縮合して親水性シリカ粒子分散液を得た後、親水性有機溶媒を水に置換して、次いで３官能シラン化合物で疎水化した後、さらに分散媒をケトン系溶媒に置換し、シラザン化合物又は１官能シラン化合物でシリカ粒子表面に残存する反応性基をトリオルガノシリル化する方法、親水性シリカ粒子分散液に３官能シラン化合物を加えて疎水化した後、１官能シラン化合物を加える方法等が挙げられる。

　（ｄ）疎水性シリカ粉末の平均粒径は、好ましくは１μｍ以上、また１μｍ以上１０μｍ以下であってよい。疎水性シリカ粉末の粒径を上記範囲とすることで、組成物の使用感を向上させ、製造時の取り扱いも容易になる。なお、本明細書において粉末若しくは粒子集合体の平均粒径は、レーザー回折/散乱法による粒度分布測定機によって測定した値である。

　また、（ｄ）疎水性シリカ粉末は、吸油量が１０ｍｌ／１００ｇ以上４００ｍｌ／１００ｇ以下のものを用いるのが好ましい。これにより、油中水型組成物の塗布中及び／又は塗布後の油っぽいべたつきを防止できる。

　（ｄ）疎水性シリカ粉末の含有量は、油中水型組成物の全量に対して、好ましくは０．１質量％以上１０質量％以下、より好ましくは０．５質量％以上５質量％以下、さらに好ましくは１質量％以上２質量％以下であってよい。（ｄ）疎水性シリカ粉末の含有量を上記範囲とすることで、塗布中及び／又は塗布後のさらさら感を向上させ、また均質化特性も良好になる。

　＜（ｅ）親水性粉末＞
　（ｅ）親水性粉末は、元来表面が親水性である粉末であってもよいし、表面に親水化処理が施された粉末であってもよい。油中水型組成物が（ｅ）親水性粉末を含有することで、油中水型乳化系の均質化特性、特に層分離型の組成物の場合には再分散性が良好になる。

　（ｅ）親水性粉末の具体例としては、シリカ（未処理シリカ）、スターチ、セルロース等の粉末が挙げられ、このうち、シリカ粉末を用いることが好ましい。また、（ｅ）親水性粉末は多孔性であるものが好ましい。

　また、（ｅ）親水性粉末の平均粒径は、好ましくは１μｍ以上２０μｍ以下、より好ましくは３μｍ以上１５μｍ以下であってよい。（ｅ）親水性粉末の平均粒径を上記範囲とすることで、得られる油中水型組成物の均質化特性が向上するとともに、塗布中及び／又は塗布後の使用感も向上する。なお、（ｅ）親水性粉末の平均粒径は、（ｄ）疎水性シリカ粉末の平均粒径より大きいことが好ましい。

　（ｅ）親水性粉末の含有量は、油中水型組成物の全量に対して、好ましくは１質量％以上１５質量％以下、より好ましくは３質量％以上１０質量％以下であってよい。（ｅ）親水性粉末の含有量を上記範囲とすることで、油中水型乳化系の均質化特性（層分離型の場合には再分散性）が向上し、使用感も良好になる。

　また、（ｄ）疎水性シリカ粉末の含有量と（ｅ）親水性粉末の含有量との質量比は、好ましくは１：０．５～１：１５、より好ましくは１：１～１：１０であってよい。両粉末の質量比を上記範囲とすることで、特に自然環境への配慮の下で配合成分に制限があっても、使用感及び均質化特性ともに優れた油中水型組成物を得ることができる。

　＜その他の成分＞
　油中水型組成物は、本形態による効果を妨げない限りで、上記以外の成分を任意に含有していてよい。その他の成分としては、上述の紫外線吸収剤及びシリコーン油以外の油系成分、水系成分、界面活性剤等が挙げられる。また、有機変性粘土鉱物、紫外線散乱剤（無機粉体）、顔料、ポリヒドロキシ酪酸、ポリ(３－ヒドロキシ酪酸－コ－３－ヒドロキシ吉草酸)といったポリヒドロキシアルカノエート等の生分解性樹脂の粉末（平均粒径１μｍ以上２０μｍ以下程）等を含有していてもよい。

　その他の油系成分は、皮膚塗布用の組成物において通常用いられる油系成分であってよく、炭化水素油、エステル油、高級脂肪酸、高級アルコール、上述のシリコーン油以外のシリコーン油、液体油脂、固体油脂、ロウ、香料、油相増粘剤等が挙げられる。

　炭化水素油の具体例としては、イソドデカン、イソヘキサデカン、イソパラフィン、流動パラフィン、オゾケライト、スクワラン、プリスタン、パラフィン、セレシン、スクワレン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等が挙げられ、このうちイソドデカンが好ましい。

　エステル油の具体例としては、イソノナン酸イソノニル、ミリスチン酸イソプロピル、２－エチルヘキサン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、１２－ヒドロキシステアリル酸コレステリル、ジ２－エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸Ｎ－アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ２－ヘプチルウンデカン酸グリセリル、トリ２－エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ２－エチルヘキサン酸ペンタエリスリット、トリ２－エチルヘキサン酸グリセリル（トリエチルヘキサノイン）、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、セチル２－エチルヘキサノエート、２－エチルヘキシルパルミテート、ナフタリンジカルボン酸ジエチルヘキシル、安息香酸（炭素数１２～１５）アルキル、セテアリルイソノナノエート、トリ（カプリル酸・カプリン酸）グリセリン、（ジカプリル酸／カプリン酸）ブチレングリコール、トリミリスチン酸グリセリル、トリ２－ヘプチルウンデカン酸グリセライド、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オレイル、セトステアリルアルコールアセトグリセライド、パルミチン酸２－ヘプチルウンデシル、アジピン酸ジイソブチル、Ｎ－ラウロイル－Ｌ－グルタミン酸２－オクチルドデシルエステル、アジピン酸ジ２－ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セバシン酸ジ２－エチルヘキシル、ミリスチン酸２－ヘキシルデシル、パルミチン酸２－ヘキシルデシル、アジピン酸２－ヘキシルデシル、セバシン酸ジイソプロピル、コハク酸ジ２－エチルヘキシル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、クエン酸トリエチル、ｐ－メトキシケイ皮酸２－エチルヘキシル、ジピバリン酸トリプロピレングリコール等が挙げられる。

　高級脂肪酸の具体例としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、ウンデシレン酸、トール酸、イソステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸、エイコサペンタエン酸（ＥＰＡ）、ドコサヘキサエン酸（ＤＨＡ）等が挙げられる。

　また、油系成分として、油系増粘剤若しくはオイルゲル化剤を使用してもよい。油系増粘剤としては、デキストリン脂肪酸エステル、例えばパルミチン酸デキストリンが挙げられる。

　水系成分は、化粧料、医薬部外品等の外用組成物において通常用いられる水系成分であれば、特に限定されない。水系成分には、水、水溶性アルコール、水系増粘剤、保湿剤、キレート剤、防腐剤、色素、塩等が含まれる。

　水としては、精製水、イオン交換水、水道水等を用いることができる。本形態における水の含有量は、油中水型組成物の全量に対し、好ましくは５質量％以上３０質量％以下、より好ましくは７質量％以上２０質量％以下であってよい。

　水溶性アルコールとしては、例えば、低級アルコール、多価アルコール、多価アルコール重合体、アルコールアルキルエーテル、アルコールエーテルエステル、グリセリンモノアルキルエーテル、糖アルコール、単糖、オリゴ糖、多糖及びそれらの誘導体等が挙げられる。

　低級アルコールとしては、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、イソブチルアルコール、ｔ－ブチルアルコール等が挙げられる。

　多価アルコールとしては、２価アルコール（例えば、ジプロピレングリコール、１，３－ブチレングリコール、エチレングリコール、トリメチレングリコール、１，２－ブチレングリコール、テトラメチレングリコール、２，３－ブチレングリコール、ペンタメチレングリコール、２－ブテン－１，４－ジオール、ヘキシレングリコール、オクチレングリコール等）、３価アルコール（例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン等）、４価アルコール（ジグリセリン、１，２，６－ヘキサントリオール等のペンタエリスリトール等）、５価アルコール（キシリトール、トリグリセリン等）、及び６価アルコール（例えば、ソルビトール、マンニトール等）等が挙げられる。

　増粘剤としては、植物系高分子（例えば、アラビアガム、トラガントガム、ガラクタン、グアガム、カラギーナン等）、微生物系高分子（例えば、キサンタンガム、デキストラン、スクシノグリカン、プルラン等）、動物系高分子（例えば、コラーゲン、カゼイン、アルブミン、ゼラチン等）、デンプン系高分子（例えば、カルボキシメチルデンプン、メチルヒドロキシプロピルデンプン等）、アルギン酸系高分子（例えば、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル等）等が挙げられる。また、ジメチルアクリルアミド／アクリロイルジメチルタウリンナトリウムクロスポリマーのような合成クロスポリマーであってもよい。

　界面活性剤は、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤等であってよい。このうち、ノニオン性界面活性剤を用いることが好ましい。界面活性剤成分は、乳化剤として働き、油中水型の乳化剤形の安定性を向上させることができる。

　ノニオン性界面活性剤は、皮膚塗布用組成物に通常用いられるノニオン性界面活性剤であれば特に限定されない。ノニオン性界面活性剤の具体例としては、より具体的な例としては、ＰＥＧ－４０水添ヒマシ油、ＰＥＧ－６０水添ヒマシ油、ＰＥＧ－１００水添ヒマシ油等のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油；ＰＥＧ－３ジメチコン、ＰＥＧ－９ジメチコン、ＰＥＧ－１０ジメチコン等のポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体；ＰＥＧ－９ポリジメチルシロキシエチルジメチコン等の分枝型のポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体；ジイソステアリン酸ポリグリセリル－２、トリイソステアリン酸ポリグリセリル－２等のポリグリセリン脂肪酸エステル；ステアリン酸グリセリル、オレイン酸グリセリル等のモノグリセリン脂肪酸エステル；モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル；セスキオレイン酸ソルビタン、セスキイソステアリン酸ソルビタン、イソステアリン酸ソルビタン、パルミチン酸ソルビタン等のソルビタン脂肪酸エステル；自己乳化型ステアリン酸プロピレングリコール等が挙げられる。

　有機変性粘土鉱物としては、ベントナイト、ラポナイト、ヘクトライト、モンモリロナイト、ケイ酸アルミニウムマグネシウム等の層状粘土鉱物を、第四級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤で処理して得られるカチオン変性粘土鉱物を用いることができる。有機変性粘土鉱物の具体例としては、ジメチルジステアルアンモニウムヘクトライト（ジステアルジモニウムヘクトライト）、ジメチルアルキルアンモニウムヘクトライト、ベンジルジメチルステアリルアンモニウムヘクトライト、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム処理ケイ酸アルミニウムマグネシウム等が挙げられる。市販品としては、ベントン２７（ベンジルジメチルステアリルアンモニウムクロライド処理ヘクトライト：ナショナルレッド社製、レオックス社製）、ベントン３４（化学名：クオタニウム－１８ベントナイト：レオックス社製）、ベントン３８（ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド処理ヘクトライト：ナショナルレッド社製）、ベントン３８Ｖ（クオタニウム－１８ヘクトライト：レオックス社製）、クレイトーン４０（サザン・クレイ社製）、クレイトーンＳＯ（サザン・クレイ社製）等が挙げられる。上記のうち、ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライトを用いることがより好ましい。有機変性粘土鉱物の含有量は、油中水型組成物の全量に対して、好ましくは０．１質量％以上２質量％以下であってよい。

　紫外線散乱剤は無機粉末であって、具体例としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、タルク、シリカ、マイカ、セリサイト、カオリン、雲母チタン、黒酸化鉄、黄酸化鉄、ベンガラ、群青、紺青、酸化クロム、水酸化クロム等が挙げられる。また、酸化チタン以外の粒子を酸化チタンで被覆した複合粉体であってもよい。紫外線散乱剤の平均粒径は、１０ｎｍ以上１００ｎｍ以下であってよい。また、紫外線散乱剤の含有量は、油中水型組成物の全量に対して、好ましくは５質量％以上３０質量％以下、より好ましくは１０質量％以上２５質量％以下であってよい。

　＜用途＞
　本形態による油中水型組成物の用途は特に限定されないが、当該組成物は、皮膚塗布用組成物、特に化粧料組成物として好適に用いられる。また、本形態による油中水型組成物は、紫外線吸収機能を有する化粧料組成物として好適に用いられる。例えば、日焼け止め組成物（サンスクリーン組成物）であってもよいし、紫外線吸収機能を高めた化粧料、例えばファンデーション、ベースメイク等の基礎化粧料、又はメークアップ化粧料であってもよい。

　本形態によれば、紫外線吸収剤をより高い含有量で含有させることができるので、高い紫外線防御作用を奏する日焼け止め組成物を提供することができる。

　表１に示す成分からを常法によって混合し、実施例１～６及び比較例１～５の組成物を製造した。より具体的には、まず油系の成分をホモミキサーを用いて混合した後、粉末を添加して分散させた。さらに、予め混合しておいた水系成分を添加し、混合して組成物を得た。得られた組成物について、使用感、及び再分散性（均質化特性）を評価した。表１に、実施例１～６及び比較例１～５の評価結果を示す。

　＜使用感の評価＞
　１０人の被験者に、各例の組成物を腕に塗布した際の油っぽさ、塗布後のさらさら感、きしみ感を下記基準にて５段階（１点～５点）で評価してもらい、さらにその平均点から判定した。
（１）塗布中の油っぽさ
Ａ：平均点４．０以上
Ｂ：平均点３．０以上４．０未満
Ｃ：平均点３．０未満

（２）塗布後のさらさら感
Ａ：平均点４．０以上
Ｂ：平均点３．０以上４．０未満
Ｃ：平均点３．０未満

（３）塗布後のきしみ感
Ａ：平均点４．０以上
Ｂ：平均点３．０以上４．０未満
Ｃ：平均点３．０未満

　＜再分散性の評価＞
　容量４０ｍＬの容器に、調製した組成物３０ｇを入れ、蓋をして、容器を手で持って主に上下に、観察しながら振とうさせた（再分散させた）。再分散して均一になったと目視で認識できるまでの振とう回数により再分散しやすさを評価した。
Ａ：振とう回数３回以下
Ｂ：振とう回数４回～１０回
Ｃ：振とう回数１１回以上

　表１中のパーセントは、質量％である。なお、コーンスターチ（親水性粉末）の粒径は３～２０μｍ、ジメチコン処理シリカ（疎水性シリカ粉末）の粒径は２～８μｍであった。

　表１に示すように、（ａ）シリコーン骨格を有する紫外線吸収剤、（ｂ）揮発性非環状シリコーン油、（ｃ）環状シリコーンを５質量％以下、（ｄ）疎水性シリカ粉末、及び（ｅ）親水性粉末を含有する油中水型組成物（実施例１～６）は、使用感及び均質化特性に優れることが分かった。

　また、表２に、本形態による油中水型組成物の処方例１（サンスクリーン剤）を示す。当該処方例１も、実施例１等と同様にして調製できる。

　本出願は、２０２１年３月３日に日本国特許庁に出願された特願２０２１－０３３８２４号に基づく優先権を主張するものであり、その全内容を参照によりここに援用する。

Claims (7)

1. 　（ａ）シリコーン骨格を有する紫外線吸収剤、
   　（ｂ）揮発性非環状シリコーン油、
   　（ｃ）環状シリコーンを５質量％以下、
   　（ｄ）疎水性シリカ粉末、及び
   　（ｅ）親水性粉末を含有する、油中水型組成物。
2. 　前記（ａ）紫外線吸収剤の分子量が２０００以上である、請求項１に記載の油中水型組成物。
3. 　前記（ｄ）疎水性シリカ粉末の平均粒径が１μｍ以上である、請求項１又は２に記載の油中水型組成物。
4. 　前記（ｄ）疎水性シリカ粉末の含有量が、前記油中水型組成物の全量に対して０．１質量％以上１０質量％以下である、請求項１から３のいずれか一項に記載の油中水型組成物。
5. 　前記（ｅ）親水性粉末が、シリカ、スターチ、及びセルロースからなる群から選択される少なくとも１種の粉末を含む、請求項１から４のいずれか一項に記載の油中水型組成物。
6. 　前記（ｄ）疎水性シリカ粉末の含有量と、前記（ｅ）親水性粉末の含有量との質量比が、１：０．５～１：１５である、請求項１から５のいずれか一項に記載の油中水型組成物。
7. 　粘度が３００～１０，０００ｍＰａ・ｓである、請求項１から６のいずれか一項に記載の油中水型組成物。