WO2022102722A1 - 医薬組成物、細胞の製造方法、細胞、サーファクタントプロテインの製造方法、およびスクリーニング方法 - Google Patents

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Abstract

本開示は、肺線維症を治療するためのヒドロキシプロピルシクロデキストリンを含む医薬組成物などを含む。

Description

医薬組成物、細胞の製造方法、細胞、サーファクタントプロテインの製造方法、およびスクリーニング方法
 本出願は、日本国特許出願第2020-188809号について優先権を主張するものであり、ここに参照することによって、その全体が本明細書中へ組み込まれるものとする。
 本開示は、医薬組成物、細胞の製造方法、細胞、サーファクタントプロテインの製造方法、およびスクリーニング方法に関する。
 II型肺胞上皮(AT2)細胞は、肺胞構造を維持するための肺サーファクタントの合成および分泌や、肺の重要な役割であるガス交換に寄与するI型肺胞上皮(AT1)細胞への分化能を有する組織幹細胞の機能など、多彩な役割を有している。マウスでは、サーファクタントプロテインC(SFTPC)の変異によって誘導されるAT2細胞機能不全が肺線維症に関与することが報告されている。
 肺サーファクタントは、リン脂質(主にジパルミトイルホスファチジルコリン)および4種類のサーファクタントプロテインから構成される。サーファクタントプロテインA(SFTPA)およびサーファクタントプロテインD(SFTPD)は、ウイルス、細菌、真菌などの呼吸器系病原体に結合し、肺胞マクロファージを介してこれらを傷害することで宿主防御に寄与する親水性タンパク質である。サーファクタントプロテインB(SFTPB)およびSFTPCは、疎水性タンパク質であり、リン脂質とともに表面活性作用に寄与する。肺サーファクタントは、酸性分泌オルガネラであるラメラ体と呼ばれる膜構造に貯蔵され、肺胞構造を維持するために分泌される。AT2細胞の病理学的および生理学的役割の解明や肺線維症治療薬の開発のため、肺サーファクタントを分泌しうるラメラ体を有する細胞が求められているが、ハイスループット解析への応用が可能な細胞はこれまで報告されていない。
 本開示は、AT2モデル細胞または肺線維症モデル細胞として使用しうる細胞、および前記細胞の製造方法を提供することを目的とする。本開示はまた、肺線維症を治療するための医薬組成物を提供することを目的とする。本開示はまた、サーファクタントプロテインの製造方法および肺線維症治療薬のスクリーニング方法を提供することを目的とする。
 ある態様において、本開示は、肺線維症を治療するための、ヒドロキシプロピルシクロデキストリンを含む医薬組成物に関する。
 さらなる態様において、本開示は、
 ABCA3、SFTPB、SFTPC、およびSFTPDから選択されるタンパク質をそれぞれコードする1以上の遺伝子を細胞に導入すること、および
 ABCA3、SFTPB、SFTPC、およびSFTPDの4種類のタンパク質を発現し、ラメラ体を有する細胞を得ることを含む細胞の製造方法;および前記方法により製造される細胞に関する。
 さらなる態様において、本開示は、ABCA3、SFTPB、SFTPC、およびSFTPDから選択されるタンパク質をそれぞれコードする1以上の外来遺伝子を有し、ABCA3、SFTPB、SFTPC、およびSFTPDの4種類のタンパク質を発現し、ラメラ体を有する細胞に関する。
 さらなる態様において、本開示は、本開示のAT2モデル細胞から分泌されるサーファクタントプロテイン;本開示のAT2モデル細胞を培養し、サーファクタントプロテインを含む培養上清を調製することを含む、サーファクタントプロテインの製造方法、および前記方法により製造されるサーファクタントプロテインに関する。
 さらなる態様において、本開示は、本開示のAT2モデル細胞においてラメラ体異常(LB異常)を誘導することを含む細胞の製造方法;および前記方法により製造される細胞に関する。
 さらなる態様において、本開示は、ABCA3、SFTPB、SFTPC、およびSFTPDから選択されるタンパク質をそれぞれコードする1以上の外来遺伝子を有し、ABCA3、SFTPB、SFTPC、およびSFTPDの4種類のタンパク質を発現し、LB異常を有する細胞に関する。
 さらなる態様において、本開示は、本開示の肺線維症モデル細胞を候補物質で処理することを含む、肺線維症治療薬のスクリーニング方法に関する。
 本開示は、ハイスループット解析への応用が可能なAT2モデル細胞および肺線維症モデル細胞を提供し、AT2細胞の病理学的および生理学的役割の解明および肺線維症治療薬の開発に貢献する。本開示はまた、有効な治療選択肢の少ない肺線維症について、新たな治療薬および治療方法を提供する。
LB細胞の製造の模式図。 3D培養における、ABCA3、SFTPB、SFTPC、およびSFTPDの免疫蛍光染色。核はHoechst 33342で染色した。スケールバー、10μm。 LB細胞におけるTMR-PC集積のFACS解析。A549細胞およびLB細胞をTMR-PCで染色した。 図1CのFACS解析のTMR-PCの蛍光強度の中央値。データは、4つの独立した実験からの平均±S.E.M.、n = 4で示した。* P < 0.05 vs A549(対応のない両側Studentのt検定)。 A549細胞、LB細胞、HEK293細胞、およびLB-HEK293細胞の3D培養におけるラメラ体(LB)様オルガネラの透過型電子顕微鏡像。矢印はラメラ体を示す。スケールバー、10μm。 分泌SFTPBの定量。A549細胞とLB細胞を3Dで7日間培養し、上清中のSFTPBを酵素免疫測定法で検出した(3つの独立した実験からの平均± S.E.M.、n = 3)。* P <0.05 vs A549(対応のない両側Studentのt検定)。 A549細胞とLB細胞の間で差次的に発現する遺伝子(DEG)を示すVolcano Plot(DEseq2によるadjusted P < 0.05)。以前に報告されたAT2マーカーを示す(3つの独立した実験から、n = 3)。
LB細胞におけるAMDによるLB異常の誘導の模式図。 LB細胞におけるTMR-PCの生細胞イメージング。AMD処理細胞中のラメラ体をTMR-PCで可視化した。細胞は24時間インキュベートした。細胞数あたりのTMR-PCの強度を定量化した(3つの独立した実験からの平均±S.E.M.、n = 3)。 ABCA3の免疫蛍光染色。細胞を10μMのAMDで24時間処理し、免疫蛍光分析に供した。細胞数あたりのABCA3の強度を定量化した(3つの独立した実験からの平均±S.E.M.、n = 3)。* DMSO処理対照LB細胞に対して、P < 0.05(対応のない両側Studentのt検定)。 3D培養におけるLB様オルガネラの透過型電子顕微鏡像。細胞を25μMのAMDで12日間、DMSOで3日間処理し、透過型電子顕微鏡下で観察した。矢印はラメラ体を示す。スケールバー、10μm。 LB細胞におけるAMD誘導LB異常を逆転させる化学物質を同定するためのハイコンテントスクリーニングの模式図。スケールバー、50μm。 ハイコンテントスクリーニングのバリデーション。LB細胞を、10μMのAMDおよび10μMのTMR-PCで24時間処理し、続いて生細胞イメージングを行った(3つの独立した実験から、n = 18)。
優先度の高い化合物の同定の概要。各ステップの判定基準を図中に示す。 スクリーニングデータの要約(1)。ラン1およびラン2で阻害率が80%未満の化合物(左下)をヒットとした。 スクリーニングデータの要約(2)。図3Bのヒットのうち、HPβCDは両ランで細胞数の減少が80%より少なかった。 LB細胞におけるTMR-PCの生細胞イメージング(1)。10 mg/mlのHPβCDとともに細胞を播種した。24時間後、10μMのAMDと10μMのTMR‐PCで24時間処理した。スケールバー、50μm。 LB細胞におけるTMR-PCの生細胞イメージング(2)。示された濃度のHPβCDを細胞に播種した。24時間後、10μMのAMDと10μMのTMR-PCとで24時間処理した。細胞数および細胞面積あたりのTMR-PCドット数を定量化した(3つの独立した実験からの平均±S.E.M.、n = 3、視野8つからなるn = 1)。 3D培養におけるLB様オルガネラの透過型電子顕微鏡像。細胞を25μMのAMDで12日間、10 mg/mlのHPβCDで3日間処理し、透過型電子顕微鏡下で観察した。矢印はLB様オルガネラを示す。スケールバー、5μm。
有意にダウンレギュレート(DEseq2によるfold-change < -1.2およびadjusted P < 0.05)またはアップレギュレート(DEseq2によるfold-change > 1.2およびadjusted P < 0.05)された遺伝子のM‐Aプロット(3つの独立した実験から、n = 3)。 Metascapeを用いた、DMSO溶媒対照のレベルと比較してAMDによりアップレギュレートされる遺伝子の有意に濃縮された経路(DEseq2によるfold-change > 1.2およびadjusted P < 0.05)。脂質機能に関連する経路をアスタリスクで示す。 DMSO、AMD、またはAMD+HPβCD投与LB細胞におけるRNAシークエンス(RNA-seq)データの不偏主成分分析(PCA)。 Metascapeを用いて得られた2つの遺伝子シグネチャーに関連する有意に濃縮された経路(1)。 Metascapeを用いて得られた2つの遺伝子シグネチャーに関連する有意に濃縮された経路(2)。脂質機能に関連する経路をアスタリスクで示す。
HPβCDがヒトiPSC由来肺胞オルガノイドに及ぼす影響の解析の模式図。 LysoTrackerで染色したヒトiPSC由来肺胞オルガノイドのフローサイトメトリー解析。P2-P5 iPSC由来肺胞オルガノイドは、5日目から11日目までは25μMのAMDで、11日目から14日目までは10 mg/mlのHPβCDで処理した。LysoTrackerの蛍光強度は、各画分で測定した(8つの独立した実験からの平均±S.E.M.、n = 8)。DMSO処理対照およびAMD処理細胞に対して、それぞれ、*および† P <0.05(Dunnettの事後検定による一元配置分散分析)。 iPSC由来EpCAM+細胞におけるホスファチジルコリン(PC)の定量。P2-P5 iPSC由来EpCAM+細胞を、図中に示す各条件で処理した。細胞を回収し、PCを定量した(3つの独立した実験からの平均値±S.E.M.、n = 3)。DMSO処理対照またはAMD処理iPSC由来EpCAM+細胞に対して、それぞれ、*および† P <0.05(Dunnettの事後検定による一元配置分散分析)。 LB様細胞オルガネラの透過型電子顕微鏡像。iPSC由来AT2細胞を図中に示す各条件で処理した。スケールバー、5μm。
A549細胞、LB細胞、HEK293細胞、およびLB-HEK293細胞における、ABCA3、SFTPB、SFTPC、およびSFTPDの免疫蛍光染色。核はHoechst 33342で染色した。スケールバー、10μm。 A549細胞とLB細胞の間のDEGを示すVolcano Plot(DEseq2によるadjusted P < 0.05)。ABCA3、SFTPB、SFTPC、およびSFTPDを同定した(3つの独立した実験から、n = 3)。 A549、LB、初代AT2細胞におけるABCA3、SFTPB、SFTPC、およびSFTPDの遺伝子発現量。* A549に対してadjusted P < 0.05 (DEseq2による、3つの独立した実験から、n = 3)。 Metascapeを用いたA549細胞との比較において、LB細胞でダウンレギュレート (DEseq2によるfold-change < -1.2およびadjusted P < 0.05)された遺伝子が関与する有意に濃縮された経路。 Metascapeを用いたA549細胞との比較において、LB細胞でアップレギュレート (DEseq2によるfold-change > 1.2およびadjusted P < 0.05)された遺伝子が関与する有意に濃縮された経路。
各化合物を処理したLB細胞におけるTMR-PCの生細胞イメージング。24時間後、細胞を10μMのAMDと10μMのTMR-PCで24時間処理した。スケールバー、10μm。 GW9662処理細胞の細胞面積あたりのTMR-PCドット数の定量化(3つの独立した実験からの平均±S.E.M.、n = 3、視野8つからなるn = 1)。 HPαCD処理細胞の細胞面積あたりのTMR-PCドット数の定量化(3つの独立した実験からの平均±S.E.M.、n = 3、視野8つからなるn = 1)。 HPγCD処理細胞の細胞面積あたりのTMR-PCドット数の定量化(3つの独立した実験からの平均±S.E.M.、n = 3、視野8つからなるn = 1)。
LB細胞においてAMD添加によりダウンレギュレートされた遺伝子(DEseq2によるfold-change < -1.2およびadjusted P < 0.05)のGO分析。 AMD+HPβCD投与LB細胞においてアップレギュレートされた遺伝子(DEseq2によるfold-change > 1.2およびadjusted P < 0.05)のGO分析。 AMD+HPβCD投与LB細胞においてダウンレギュレートされた遺伝子(DEseq2によるfold-change < -1.2およびadjusted P < 0.05)のGO分析。
ヒトiPSC由来肺胞オルガノイドに対する化合物の影響評価の模式図。 LysoTrackerで染色したiPSC由来肺胞オルガノイドのフローサイトメトリー解析。P2-P5 iPSC由来肺胞オルガノイドを、5日目から11日目までは25μMのAMDで、11日目から14日目まで10 mg/mlのHPαCDまたはHPγCD、または10μMのGW9662で処理し、各画分におけるLysoTrackerの蛍光強度を測定した(独立した実験からの平均± S.E.M.、n = 3)。DMSO処理対照およびAMD処理iPSC由来細胞に対して、それぞれ、*および† P < 0.05(Dunnettの事後検定による一元配置分散分析)。
 特に具体的な定めのない限り、本明細書で使用される用語は、有機化学、医学、薬学、分子生物学、微生物学等の分野における当業者に一般に理解されるとおりの意味を有する。以下にいくつかの本明細書で使用される用語についての定義を記載するが、これらの定義は、本明細書において、一般的な理解に優先する。
1.肺線維症治療
 ある態様において、本開示は、肺線維症を治療するためのヒドロキシプロピルシクロデキストリンを含む医薬組成物に関する。
 肺線維症は、炎症や損傷により肺胞壁が線維化した病態である。本明細書における「肺線維症」には、いずれの原因による肺線維症も、原因不明の肺線維症も含まれる。
 ある実施形態において、肺線維症は、薬剤により誘発される肺線維症である。肺線維症の原因薬剤としては、アミオダロン、ブレオマイシン、メトトレキサート、シクロホスファミド、ゲフィチニブ、エルロチニブ、セツキシマブ、パニツムマブ、サラゾスルファピリジン、ペニシラミン(D-ペニシラミンともいう)、金製剤、抗生物質、抗菌薬、ニトロフラントイン、インターフェロン、パラコート、小紫胡湯、ヒドララジンなどが挙げられる。ある実施形態において、原因薬剤は、アミオダロンである。
 別の実施形態において、肺線維症は、例えば、薬剤性間質性肺炎、特発性肺線維症、家族性間質性肺炎、職業性肺疾患、じん肺、放射線肺炎、過敏性肺炎、サルコイドーシス、膠原病性間質性肺炎、全身性エリテマトーデス、全身性強皮症、関節リウマチ、多発性筋炎、皮膚筋炎、シェーグレン症候群、ヘルマンスキー・パドラック症候群、先天性角化不全症、COVID-19関連肺炎、細菌性肺炎、ニューモシスチス肺炎、クラミジア肺炎、マイコプラズマ肺炎、レジオネラ肺炎、急性呼吸切迫症候群などの疾患に伴う肺線維症である。ある実施形態において、疾患は、薬剤性間質性肺炎または特発性肺線維症、好ましくは薬剤性間質性肺炎である。薬剤性間質性肺炎の原因薬剤としては、前記の肺線維症の原因薬剤が挙げられる。ある実施形態において、薬剤性間質性肺炎の原因薬剤は、アミオダロンである。
 ヒドロキシプロピルシクロデキストリンは、環状オリゴ糖であるシクロデキストリンのヒドロキシプロピルエーテルである。シクロデキストリンとしては、グルコース残基数6個のα-シクロデキストリン、グルコース残基数7個のβ-シクロデキストリン、グルコース残基数8個のγ-シクロデキストリンが挙げられる。ヒドロキシプロピルシクロデキストリンとしては、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、およびγ-シクロデキストリンを2-ヒドロキシプロピル化した、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HPβCD)、2-ヒドロキシプロピル-α-シクロデキストリン(HPαCD)、および2-ヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリン(HPγCD)が挙げられる。ある実施形態において、ヒドロキシプロピルシクロデキストリンは、HPβCDまたはHPγCDである。さらなる実施形態において、ヒドロキシプロピルシクロデキストリンは、HPβCDある。ヒドロキシプロピルシクロデキストリンは、食品、医薬品、および化粧品に広く使用されており、公知の方法により製造することができる。
 ヒドロキシプロピルシクロデキストリンは、シクロデキストリンのグルコース残基の2位、3位、および6位の水酸基がランダムにヒドロキシプロピル基に置換されている。ヒドロキシプロピル基による置換の程度は、1グルコース残基あたりの置換されたヒドロキシル基の平均数によってあらわすことができ、本明細書においてこれを「平均置換度」と称する。本開示において、ヒドロキシプロピルシクロデキストリンは、特定の平均置換度のものに限定されないが、例えば、平均置換度が0.4~1、0.5~0.9、または0.5~0.7のヒドロキシプロピルシクロデキストリンを用いることができる。ある実施形態において、ヒドロキシプロピルシクロデキストリンは、平均置換度が0.5~0.7のHPαCD、HPβCD、またはHPγCDである。さらなる実施形態において、ヒドロキシプロピルシクロデキストリンは、平均置換度が0.5~0.7のHPβCDまたはHPγCDである。さらなる実施形態において、ヒドロキシプロピルシクロデキストリンは、平均置換度が0.5~0.7のHPβCDである。
 ヒドロキシプロピルシクロデキストリンを含む医薬組成物は、いかなる剤形に製剤化されてもよい。剤形としては、例えば、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、液剤、懸濁剤、乳濁液、吸入剤、注射剤等などが挙げられる。注射剤は、溶液性注射剤、懸濁性注射剤、乳濁性注射剤、または用時調製型注射剤でありうる。製剤は常法により調製することができる。
 ヒドロキシプロピルシクロデキストリンを含む医薬組成物は、有効成分であるヒドロキシプロピルシクロデキストリンに加え、医薬上許容される担体および/または添加剤を含んでもよい。医薬上許容される担体としては、ラクトース、マンニトール、トウモロコシデンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、滅菌水、生理食塩水、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油などが挙げられる。添加剤としては、崩壊剤、安定剤、酸化防止剤、緩衝剤、防腐剤、界面活性剤、キレート剤、結合剤、滑沢剤などが挙げられる。
 ヒドロキシプロピルシクロデキストリンは、いかなる方法で対象に投与してもよい。投与は、全身投与または局所投与であってよく、また、経口投与または非経口投与(例えば、気管支内、鼻腔内、髄腔内、静脈内、筋肉内など)であってよい。ある実施形態において、ヒドロキシプロピルシクロデキストリンは、気管支内投与により投与される。
 ヒドロキシプロピルシクロデキストリンは、所望の効果を発揮しうる量(本明細書中、「有効量」という)で対象に投与される。投与量は、対象の年齢、体重、健康状態等に応じて適宜決定される。例えば、ヒトに投与する場合、ヒドロキシプロピルシクロデキストリンの量として、1日あたり、0.1 g/kg~100 g/kgまたは1 g/kg~50 g/kg、または1 g/kg~10 g/kgで投与されうる。ヒドロキシプロピルシクロデキストリンは、1日1回で、または複数回(例えば2、3または4回)にわけて投与してもよく、点滴等により連続的に投与してもよい。また、ヒドロキシプロピルシクロデキストリンは、連日投与しても、1日または数日(例えば2、3、4、5または6日)、1週間または数週間(例えば2、3、4、5または6週間)、1ヶ月または数ヶ月(例えば2、3、4、5または6ヶ月)の間隔をあけて投与してもよい。投与期間も特に限定されず、1日または数日(例えば2、3、4、5または6日)、1週間または数週間(例えば2、3、4、5または6週間)、1ヶ月または数ヶ月(例えば2、3、4、5または6ヶ月)、またはそれ以上でありうる。
 ヒドロキシプロピルシクロデキストリンは、少なくとも1つのさらなる有効成分、特に肺線維症治療のための少なくとも1つのさらなる有効成分と併用してもよい。少なくとも1つのさらなる有効成分としては、例えば、ニンテダニブ、ピルフェニドンなどの抗線維化薬、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロンなどのステロイド、シクロホスファミド、アザチオプリン、シクロスポリンなどの免疫抑制薬などが挙げあられる。ヒドロキシプロピルシクロデキストリンと少なくとも1つのさらなる有効成分とは、同じ組成物に含まれていても別の組成物に含まれていてもよく、これらの投与スケジュールは同じであっても異なっていてもよい。
 ヒドロキシプロピルシクロデキストリンは、肺線維症の治療に、またそれゆえ肺線維症を伴う疾患の治療に、用いることができる。肺線維症を伴う疾患としては、薬剤性間質性肺炎、特発性肺線維症、家族性間質性肺炎、職業性肺疾患、じん肺、放射線肺炎、過敏性肺炎、サルコイドーシス、膠原病性間質性肺炎、全身性エリテマトーデス、全身性強皮症、関節リウマチ、多発性筋炎、皮膚筋炎、シェーグレン症候群、ヘルマンスキー・パドラック症候群、先天性角化不全症、COVID-19関連肺炎、細菌性肺炎、ニューモシスチス肺炎、クラミジア肺炎、マイコプラズマ肺炎、レジオネラ肺炎、急性呼吸切迫症候群などが挙げられる。すなわち、本開示は、薬剤性間質性肺炎、特発性肺線維症、家族性間質性肺炎、職業性肺疾患、じん肺、放射線肺炎、過敏性肺炎、サルコイドーシス、膠原病性間質性肺炎、全身性エリテマトーデス、全身性強皮症、関節リウマチ、多発性筋炎、皮膚筋炎、シェーグレン症候群、ヘルマンスキー・パドラック症候群、先天性角化不全症、COVID-19関連肺炎、細菌性肺炎、ニューモシスチス肺炎、クラミジア肺炎、マイコプラズマ肺炎、レジオネラ肺炎、および急性呼吸切迫症候群から選択される疾患、特に薬剤性間質性肺炎または特発性肺線維症を処置するための、ヒドロキシプロピルシクロデキストリンを含む医薬組成物を含む。ある実施形態において、疾患は、薬剤性間質性肺炎または特発性肺線維症、好ましくは薬剤性間質性肺炎である。
 本開示における肺線維症またはこれを伴う疾患の治療には、肺線維症の進行を抑制(遅延および停止を含む)すること、症状を軽減、緩和、改善または除去することが含まれる。
 本開示における「対象」は、哺乳動物(例えば、ヒト、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、ネコ、イヌ、ウシ、ヒツジ、サル等)であり、好ましくはヒトである。
 さらなる態様において、本開示は、
 肺線維症を治療する方法であって、有効量のヒドロキシプロピルシクロデキストリンを、前記治療を必要とする対象に投与することを含む方法;
 肺線維症を治療するための、ヒドロキシプロピルシクロデキストリンの使用;および
 肺線維症を治療するための医薬の製造のための、ヒドロキシプロピルシクロデキストリンの使用
に関する。
2.II型肺胞上皮モデル細胞の製造
 ある態様において、本開示は、
 ABCA3、SFTPB、SFTPC、およびSFTPDから選択されるタンパク質をそれぞれコードする1以上の遺伝子を細胞に導入すること、および
 ABCA3、SFTPB、SFTPC、およびSFTPDの4種類のタンパク質を発現し、ラメラ体を有する細胞を得ることを含む、細胞の製造方法に関する。
 ABCA3(ATP-binding cassette sub-family A member 3)は、ラメラ体の境界膜上に局在するリン脂質トランスポーターであり、SFTPB(Surfactant protein B)、SFTPC(Surfactant protein C)、およびSFTPD(Surfactant protein D)は、肺サーファクタントの構成成分であるタンパク質である。ABCA3、SFTPB、SFTPC、およびSFTPDの代表的アミノ酸配列およびこれをコードする核酸配列(ヒトABCA3、SFTPB、SFTPC、およびSFTPDのアミノ酸配列およびこれをコードする核酸配列)を、それぞれ、配列番号1および2、配列番号3および4、配列番号5および6、並びに配列番号7および8に示す(表1-1~1-7)。
 ABCA3は、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも70%、80%、90%、または95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも70%、80%、90%、または95%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなっていてもよい。ある実施形態において、ABCA3は、配列番号1のアミノ酸配列を含むか、配列番号1のアミノ酸配列からなる。ある実施形態において、ABCA3をコードする遺伝子は、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも70%、80%、90%、または95%の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードする核酸配列を含むか、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも70%、80%、90%、または95%の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードする核酸配列からなる。さらなる実施形態において、ABCA3をコードする遺伝子は、配列番号1のアミノ酸配列をコードする核酸配列を含むか、配列番号1のアミノ酸配列をコードする核酸配列からなる。さらなる実施形態において、ABCA3をコードする遺伝子は、配列番号2の核酸配列と少なくとも70%、80%、90%、または95%の配列同一性を有する核酸配列を含むか、配列番号2の核酸配列と少なくとも70%、80%、90%、または95%の配列同一性を有する核酸配列からなる。さらなる実施形態において、ABCA3をコードする遺伝子は、配列番号2の核酸配列を含むか、配列番号2の核酸配列からなる。
 SFTPBは、配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも70%、80%、90%、または95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも70%、80%、90%、または95%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなっていてもよい。ある実施形態において、SFTPBは、配列番号3のアミノ酸配列を含むか、配列番号3のアミノ酸配列からなる。ある実施形態において、SFTPBをコードする遺伝子は、配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも70%、80%、90%、または95%の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードする核酸配列を含むか、配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも70%、80%、90%、または95%の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードする核酸配列からなる。さらなる実施形態において、SFTPBをコードする遺伝子は、配列番号3のアミノ酸配列をコードする核酸配列を含むか、配列番号3のアミノ酸配列をコードする核酸配列からなる。さらなる実施形態において、SFTPBをコードする遺伝子は、配列番号4の核酸配列と少なくとも70%、80%、90%、または95%の配列同一性を有する核酸配列を含むか、配列番号4の核酸配列と少なくとも70%、80%、90%、または95%の配列同一性を有する核酸配列からなる。さらなる実施形態において、SFTPBをコードする遺伝子は、配列番号4の核酸配列を含むか、配列番号4の核酸配列からなる。
 SFTPCは、配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも70%、80%、90%、または95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも70%、80%、90%、または95%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなっていてもよい。ある実施形態において、SFTPCは、配列番号5のアミノ酸配列を含むか、配列番号5のアミノ酸配列からなる。ある実施形態において、SFTPCをコードする遺伝子は、配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも70%、80%、90%、または95%の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードする核酸配列を含むか、配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも70%、80%、90%、または95%の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードする核酸配列からなる。さらなる実施形態において、SFTPCをコードする遺伝子は、配列番号5のアミノ酸配列をコードする核酸配列を含むか、配列番号5のアミノ酸配列をコードする核酸配列からなる。さらなる実施形態において、SFTPCをコードする遺伝子は、配列番号6の核酸配列と少なくとも70%、80%、90%、または95%の配列同一性を有する核酸配列を含むか、配列番号6の核酸配列と少なくとも70%、80%、90%、または95%の配列同一性を有する核酸配列からなる。さらなる実施形態において、SFTPCをコードする遺伝子は、配列番号6の核酸配列を含むか、配列番号6の核酸配列からなる。
 SFTPDは、配列番号7のアミノ酸配列と少なくとも70%、80%、90%、または95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、配列番号7のアミノ酸配列と少なくとも70%、80%、90%、または95%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなっていてもよい。ある実施形態において、SFTPDは、配列番号7のアミノ酸配列を含むか、配列番号7のアミノ酸配列からなる。ある実施形態において、SFTPDをコードする遺伝子は、配列番号7のアミノ酸配列と少なくとも70%、80%、90%、または95%の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードする核酸配列を含むか、配列番号7のアミノ酸配列と少なくとも70%、80%、90%、または95%の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードする核酸配列からなる。さらなる実施形態において、SFTPDをコードする遺伝子は、配列番号7のアミノ酸配列をコードする核酸配列を含むか、配列番号7のアミノ酸配列をコードする核酸配列からなる。さらなる実施形態において、SFTPDをコードする遺伝子は、配列番号8の核酸配列と少なくとも70%、80%、90%、または95%の配列同一性を有する核酸配列を含むか、配列番号8の核酸配列と少なくとも70%、80%、90%、または95%の配列同一性を有する核酸配列からなる。さらなる実施形態において、SFTPDをコードする遺伝子は、配列番号8の核酸配列を含むか、配列番号8の核酸配列からなる。
 本明細書における、核酸配列またはアミノ酸配列に関する「配列同一性」とは、比較対象の配列の全領域にわたって最適な状態に(一致が最大となる状態に)アラインメントされた2つの配列間で一致する塩基またはアミノ酸残基の割合を意味する。ここで、比較対象の配列は、2つの配列の最適なアラインメントにおいて、付加または欠失(例えばギャップ等)を有していてもよい。配列同一性は、公共のデータベース(例えば、DDBJ(http://www.ddbj.nig.ac.jp))で提供されるFASTA、BLAST、CLUSTAL W等のプログラムを用いて算出することができる。あるいは、市販の配列解析ソフトウェア(例えば、Vector NTI(登録商標)ソフトウェア、GENETYX(登録商標) ver. 12)を用いて求めることもできる。
 遺伝子導入後の細胞がABCA3、SFTPB、SFTPC、およびSFTPDの4種類のタンパク質を発現するように、ABCA3、SFTPB、SFTPC、およびSFTPDから選択されるタンパク質をそれぞれコードする1以上の遺伝子を細胞に導入する。遺伝子導入前の細胞が、ABCA3、SFTPB、SFTPC、およびSFTPDから選択される1または複数のタンパク質を発現している場合、前記4種類のタンパク質のうち当該細胞が発現していないタンパク質をコードする遺伝子のみを導入してもよい。好ましい実施形態では、ABCA3、SFTPB、SFTPC、およびSFTPDをそれぞれコードする遺伝子を細胞に導入する。ABCA3、SFTPB、SFTPC、およびSFTPDから選択されるタンパク質をそれぞれコードする2以上の遺伝子を細胞に導入する場合、それら遺伝子は、それぞれ別の核酸分子上に存在していても、その一部または全てが同じ核酸分子上に存在していてもよい。
 細胞としては、A549細胞、H441細胞、NCI-H23細胞、HCC827細胞、H292細胞、H595細胞、H1975細胞、H552細胞、H2228細胞、SK-LU-1細胞、H1838細胞、H2172細胞、A-427細胞、H1793細胞、H1563細胞、H2374細胞、SW1573細胞、H1734細胞、H2452細胞、H1435細胞、H2073細胞、H2342細胞、H1395細胞、HEK293細胞などが挙げられる。ある実施形態において、細胞は、肺胞上皮由来細胞(例えば、A549細胞)である。
 ABCA3、SFTPB、SFTPC、およびSFTPDから選択されるタンパク質をコードする1以上の遺伝子は、常套的な方法により細胞に導入することができる(例えば、Molecular Cloning: A Laboratory Manual (Fourth Edition), Cold Spring Harbor Laboratory Pressを参照)。遺伝子は、例えば、CRISPRシステム(例えば、CRISPR/Cas9、CRISPR/Cpf1)、TALEN、ZFNなどのゲノム編集により、あるいは、プラスミドベクターまたはウイルスベクター(例えば、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター)などのベクターを用いて、細胞に導入することができる。導入遺伝子は、細胞のゲノムに組み込まれても、組み込まれなくてもよい。
 遺伝子は、プロモーターなどの調節配列とともに導入してもよい。プロモーターとしては、CMVプロモーター、CAGプロモーター、SRαプロモーター、EF1αプロモーター、PGKプロモーター、U6プロモーターなどが挙げられる。遺伝子はまた、細胞の選択や細胞増殖のモニターなどの目的のため、マーカー遺伝子とともに細胞に導入してもよい。マーカー遺伝子としては、ネオマイシン耐性遺伝子、ピューロマイシン耐性遺伝子などの薬剤耐性遺伝子、ルシフェラーゼ、GFP(green fluorescent protein)、EGFP(enhanced green fluorescent protein)、Venus、mCherry、DsRed2などの蛍光または発光タンパク質の遺伝子が挙げられる。
 遺伝子導入後、所望の細胞が得られるまで培養を継続する。培養期間は、例えば、1日間~数週間(例えば2週間~3週間)または1日間~1週間、または1日間~数日間(例えば2日間または3日間)である。培養期間中、1日または数日(例えば2または3日)おきに培地を新鮮な培地と交換することが好ましい。培養培地としては、使用する細胞に応じた通常の細胞培養用培地を用いることができる。培地としては、RPMI、IMDM、DMEM、EMEM、αMEMなどが挙げられる。培地は、必要に応じて、血清、アミノ酸、抗生物質、ビタミン、抗酸化剤、ピルビン酸、緩衝剤、無機塩類などを含有してもよい。
 このようにして得られる遺伝子組換細胞は、ABCA3、SFTPB、SFTPC、およびSFTPDの4種類のタンパク質を発現し、ラメラ体(LB)を有する。それゆえ、さらなる態様において、本開示は、ABCA3、SFTPB、SFTPC、およびSFTPDから選択されるタンパク質をそれぞれコードする1以上の外来遺伝子を有し、ABCA3、SFTPB、SFTPC、およびSFTPDの4種類のタンパク質を発現し、ラメラ体を有する細胞に関する。かかる細胞は、AT2細胞のモデル細胞として使用することができ、本明細書において「AT2モデル細胞」と称することもある。
 ABCA3、SFTPB、SFTPC、およびSFTPDの4種類のタンパク質を発現することは、免疫染色、RT-PCR、マーカー遺伝子の検出などの公知の方法により確認することができる。LBの存在は、実施例に記載のように確認することができる。例えば、LBの存在は、電子顕微鏡による観察により、確認することができる。また、LBにはホスファチジルコリン(PC)が蓄積されることから、細胞内PCを測定することにより、LBの存在を確認することができる。細胞内PCは、例えば、ホスファチジルコリンアッセイキット (MAK049; Sigma-Aldrich) などにより測定することができる。あるいは、細胞内PCは、標識されたPCを用いて測定することができる。この場合、標識PCの存在下で細胞を一定期間培養した後、細胞内の当該標識からのシグナルを測定する。標識PCとしては、TopFluor(登録商標) TMR PC、β-BODIPY FL C12-HPCなどの蛍光標識PCが挙げられる。また、LBは、リソソーム関連オルガネラである酸性オルガネラであることから、酸性オルガネラを標識しうるLysoTracker(登録商標)などの細胞膜透過性色素を用いて、LBの存在を確認することができる。
 得られた細胞について、さらに、AT2マーカーの発現を調べてもよい。AT2マーカーとしては、PCDH9、SCD、MAOA、NPC2、AQP3、BEX2、CMTM8、DHCR7、ETV5、およびFASN、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。AT2マーカーの発現は、免疫染色、RT-PCR、マーカー遺伝子の検出などの公知の方法により確認することができる。
 得られた細胞について、さらに、サーファクタントプロテインを分泌するか否かを調べてもよい。サーファクタントプロテインの分泌は、細胞培養上清中のサーファクタントプロテイン(例えば、SFTPB、SFTPC、またはSFTPD)をELISAなどのタンパク質測定法で測定することにより、確認することができる。
 得られた細胞は、当該細胞と、当該細胞の維持に適する媒体とを含む組成物として提供されてもよい。媒体としては、水、培地、生理食塩水、ブドウ糖、D-ソルビトール、D-マンノース、またはD-マンニトールなどを含む等張液、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)などが挙げられる。組成物は凍結されていてもよく、その場合、組成物は、DMSO、グリセロール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、アルブミン、デキストラン、スクロースなどの凍結保護剤を含んでもよい。組成物に含まれる細胞の数は、限定されないが、例えば、1細胞~1 × 107細胞、1 × 10細胞~1 × 107細胞、1 × 102細胞~1 × 107細胞、1 × 103細胞~1 × 107細胞、1 × 104細胞~1 × 107細胞、1 × 105細胞~1 × 107細胞である。
 本開示のAT2モデル細胞は、サーファクタントプロテインを分泌しうる。それゆえ、さらなる態様において、本開示は、本開示のAT2モデル細胞から分泌されるサーファクタントプロテイン;本開示のAT2モデル細胞を培養し、サーファクタントプロテインを含む培養上清を調製することを含む、サーファクタントプロテインの製造方法、および前記方法により製造されるサーファクタントプロテインに関する。サーファクタントプロテインは、SFTPB、SFTPC、SFTPD、またはこれらの混合物でありうる。細胞を培養する培地としては、前記のAT2モデル細胞の製造に用い得る培地を用いることができる。培養期間は、限定はされないが、例えば、1日間~数週間(例えば2週間~3週間)、1日間~1週間、または1日間~数日間(例えば2日間または3日間)である。サーファクタントプロテインは、細胞から培養上清中に分泌される。サーファクタントプロテインを含む培養上清は、使用目的に応じて適宜処理されうる。ある実施形態において、本開示の方法は、細胞の培養上清からサーファクタントプロテインを単離することをさらに含む。サーファクタントプロテインは、ゲルろ過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィーなどのクロマトグラフィー、硫酸アンモニウムなどを用いるタンパク質沈殿法、限外ろ過などの方法により、単離することができる。
3.肺線維症モデル細胞
 ある態様において、本開示は、本開示のAT2モデル細胞においてラメラ体異常(本明細書中、LB異常ともいう)を誘導することを含む細胞の製造方法に関する。
 ある実施形態において、LB異常の誘導は、本開示のAT2モデル細胞を肺線維症の原因薬剤で処理することにより行われる。原因薬剤としては、アミオダロン、ブレオマイシン、、メトトレキサート、シクロホスファミド、ゲフィチニブ、エルロチニブ、セツキシマブ、パニツムマブ、サラゾスルファピリジン、ペニシラミン(D-ペニシラミンともいう)、金製剤、抗生物質、抗菌薬、ニトロフラントイン、インターフェロン、パラコート、小紫胡湯、ヒドララジンなどが挙げられる。ある実施形態において、原因薬剤は、アミオダロンである。
 AT2モデル細胞の原因薬剤による処理は、AT2モデル細胞を原因薬剤を添加した培地で培養することにより行うことができる。添加濃度は、使用する細胞および薬剤などの条件に応じて適宜決定される。アミオダロンの場合、例えば、最終濃度0.1 μM-100 μM、1 μM-50 μM、または10 μM-30 μMで培地に添加されうる。
 別の実施形態において、LB異常の誘導は、本開示のAT2モデル細胞に肺線維症の原因遺伝子の変異を導入することにより行われる。原因遺伝子は、ABCA3、SFTPB、SFTPC、SFTPD、HPS1、HPS3、およびHPS4から選択することができる。変異は、1または複数の遺伝子に導入してよく、各遺伝子に1または複数の変異を導入してよい。変異としては、ABCA3のW308R、G231V、G964D、W1148X、T1114A、A307V、Y1515X、R194G、V1615fsX15、D253H、R280C、E690G、D696N、K914R、L1238_E1239insGG、H778R、L1252P、L798P、R1612P、R20L、E292V、S1116F、M1227R、R288K、P766S、S693L、Q215K、SFTPBの121ins2;SFTPCのI73T、I38F、V39L、A116D、G97S、E66K、V102M、A155P、G182R、C189W、L81V、L188Q、Δexon4、C121G、G100S;HPS1のIVS5+5 G>A、L668P、H497PfsTer24、M325WfsTer6、Q397SfsTer2、M325HfsTer128;HPS3のIVS5+1G>A;HPS4のQ620Xなどが挙げられる。
 変異の導入は、常套的な遺伝子工学的手法により行うことできる。例えば、変異の導入は、CRISPRシステム(例えば、CRISPR/Cas9、CRISPR/Cpf1)、TALEN、ZFNなどのゲノム編集により、あるいは、プラスミドベクターまたはウイルスベクター(例えば、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター)などのベクターを用いて、行うことができる。細胞の原因遺伝子の一部を目的の変異を含む配列に置き換えることにより、または変異を含む原因遺伝子を細胞に導入することにより、細胞に原因遺伝子の変異を導入することができる。
 このようにして、LB異常の誘導された細胞が得られる。それゆえ、さらなる態様において、本開示は、ABCA3、SFTPB、SFTPC、およびSFTPDから選択されるタンパク質をそれぞれコードする1以上の外来遺伝子を有し、ABCA3、SFTPB、SFTPC、およびSFTPDの4種類のタンパク質を発現し、LB異常を有する細胞に関する。かかる細胞は、肺線維症モデル細胞として使用することができ、本明細書において「肺線維症モデル細胞」と称することもある。さらに、本開示は、ABCA3、SFTPB、SFTPC、およびSFTPDから選択されるタンパク質をそれぞれコードする1以上の外来遺伝子を有し、ABCA3、SFTPB、SFTPC、およびSFTPDの4種類のタンパク質を発現し、肺線維症の原因遺伝子の変異を有する細胞に関する。
 LB異常を有する細胞は、LB異常誘導前のAT2モデル細胞と比較して細胞におけるLBの数および/またはサイズの増加を示す。それゆえ、LB異常が誘導されたことは、細胞におけるLBの数および/またはサイズを調べることにより、確認することができる。LBの数および/またはサイズは、細胞内PCを測定することにより、調べることができ、細胞内PCの測定は、前記2に記載のように行うことができる。また、ABCA3はAT2細胞のLBの境界膜に主に発現しており、LBのマーカーとして用いることができることから、ABCA3の発現を調べることにより、LBの数および/またはサイズの増加を確認することができる。ABCA3の発現は、免疫染色、RT-PCR、マーカー遺伝子の検出などの公知の方法により確認することができる。
 LBの数および/またはサイズの変化は、基準値との比較により評価することができる。本明細書において、LBの数とは1細胞あたりのLBの数を意味し、LBのサイズとは1細胞におけるLBの平均サイズを意味する。基準値は、LB異常誘導前のAT2モデル細胞から得られる値(コントロールの値)、またはコントロールの値に一定の数値を乗じて得た値でありうる(以下、「第1の基準値」という場合がある)。例えば、LB異常誘導後の細胞から得られる値がコントロールの値より統計学的に有意に高い場合に、LB異常が誘導されたと判断してもよい。統計学的解析方法としては、一元配置分散分析(one-way ANOVA)、2元配置分散分析(two-way ANOVA)、Dunnettの検定(Dunnett's test)、Tukeyの検定(Tukey's test)、Studentのt検定(Student's t-test)などが挙げられる。あるいは、LB異常誘導後の細胞から得られる値がコントロールの値の110%~500%以上(例えば、110%、120%、130%、140%、150%、160%、170%、180%、190%、200%、300%、400%、または500%以上)である場合に、LB異常が誘導されたと判断してもよい。
 すなわち、ある実施形態において、LB異常の誘導は、細胞におけるラメラ体の数またはサイズを基準値と比較して統計学的に有意に増加させることを含み、前記基準値は、LB異常誘導前の細胞におけるラメラ体の数またはサイズである。別の実施形態において、LB異常の誘導は、細胞におけるラメラ体の数またはサイズを基準値以上に増加させることを含み、前記基準値は、LB異常誘導前の細胞におけるラメラ体の数またはサイズの110%~500%の値である。ラメラ体の数およびサイズの両方について基準値との比較を行ってもよい。
4.スクリーニング方法
 ある態様において、本開示は、本開示の肺線維症モデル細胞を候補物質で処理することを含む、肺線維症治療薬のスクリーニング方法に関する。
 候補物質としては、限定はされないが、低分子化合物、タンパク質、抗体、ペプチド、核酸、細胞抽出物、細胞培養上清、発酵微生物産生物、海洋生物抽出物、植物抽出物などが挙げられる。候補物質は、低分子化合物、タンパク質、抗体、ペプチド、核酸などのライブラリーから提供されてもよい。
 細胞の候補物質による処理は、細胞を候補物質を添加した培地で培養することにより行うことができる。添加濃度は、使用する細胞および薬剤などの条件に応じて適宜決定される。候補物質は、例えば、最終濃度0.1 μM-100 μMまたは1 μM-10 μMで培地に添加されうる。細胞の培養方法は特に限定されず、二次元(2D)培養であっても、三次元(3D)培養であってもよい。ある実施形態では、細胞は、Matrigel(登録商標)、Cultrex(登録商標) Basement Membrane Extractなどの基底膜マトリックスを用いて、3D培養される。例えば、細胞を約1×104~1×107個/mlで基底膜マトリックスと混合し、得られた細胞懸濁液を培養容器(培養プレート、培養ディッシュなど)に播種し、基底膜マトリックスを固化させた後、培地を重層して培養する。培地は、前記2に記載のような一般的な培養培地を用いることができる。
 候補物質による処理から一定期間後、例えば、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、または10日後に、候補物質に対する応答を調べる。
 候補物質に対する応答は、LB異常を評価することにより調べることができる。候補物質が細胞のLB異常を改善した場合、その候補物質を肺線維症の治療薬として選択することができる。すなわち、ある実施形態において、本開示のスクリーニング方法は、候補物質で処理した細胞のLB異常を評価することをさらに含む。さらなる実施形態において、本開示のスクリーニング方法は、細胞のLB異常を改善する候補物質を選択することをさらに含む。
 LB異常は、細胞におけるLBの数および/またはサイズを調べることにより、評価することができる。LBの数および/またはサイズは、細胞内PCを測定することにより測定することができ、細胞内PCの測定は、前記2に記載のように行うことができる。候補物質で処理していない細胞と比較して、候補物質で処理した細胞のLBの数および/またはサイズが減少した場合、その候補物質を肺線維症の治療薬として選択することができる。
 LBの数および/またはサイズの変化は、基準値との比較により評価することができる。基準値は、候補物質で処理していない細胞から得られる値(コントロールの値)、またはコントロールの値に一定の数値を乗じて得た値でありうる(以下、「第2の基準値」という場合がある)。例えば、候補物質で処理した細胞から得られる値がコントロールの値より統計学的に有意に低い場合に、LB異常が改善されたと判断してもよい。統計学的解析方法としては、一元配置分散分析(one-way ANOVA)、2元配置分散分析(two-way ANOVA)、Dunnettの検定(Dunnett's test)、Tukeyの検定(Tukey's test)、Studentのt検定(Student's t-test)などが挙げられる。あるいは、候補物質で処理した細胞から得られる値がコントロールの値の90%~10%以下(例えば、90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、または10%以下)である場合に、LB異常が改善されたと判断してもよい。
 ある実施形態において、本発明のスクリーニング方法は、候補物質で処理した細胞におけるラメラ体の数またはサイズを基準値と比較することを含む。さらなる実施形態において、前記基準値は、候補物質で処理していない細胞におけるラメラ体の数またはサイズであり、候補物質で処理した細胞におけるラメラ体の数またはサイズが基準値より統計学的に有意に低い場合に、LB異常が改善されたと判断する。さらなる実施形態において、前記基準値は、候補物質で処理していない細胞におけるラメラ体の数またはサイズの90%~10%の値であり、候補物質で処理した細胞におけるラメラ体の数またはサイズが基準値以下の場合に、LB異常が改善されたと判断する。
 基準値として、AT2モデル細胞から得られる「第1の基準値」と、LB異常を誘導する処理後、候補物質で処理していない細胞から得られる「第2の基準値」とを用いることもできる。ある実施形態において、本発明のスクリーニング方法は、前記第1の基準値、前記第2の基準値、およびLB異常を誘導する処理後、候補物質で処理した細胞におけるラメラ体の数またはサイズに基づき、候補物質を選択することを含む。例えば、LB異常を誘導する処理後、候補物質で処理していない細胞のラメラ体の数またはサイズと前記第1の基準値との比較により、当該細胞のLB異常が確認され、かつLB異常を誘導する処理後、候補物質で処理した細胞におけるラメラ体の数またはサイズと第2の基準値との比較により、当該細胞のLB異常が改善されたと判断される場合に、その候補物質を選択する。
 本開示の例示的な実施形態を以下に記載する。
[1]
 肺線維症を治療するための、ヒドロキシプロピルシクロデキストリンを含む医薬組成物。
[2]
 ヒドロキシプロピルシクロデキストリンが、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、2-ヒドロキシプロピル-α-シクロデキストリン、または2-ヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリンである、前記1に記載の医薬組成物。
[3]
 ヒドロキシプロピルシクロデキストリンが、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンである、前記1または2に記載の医薬組成物。
[4]
 肺線維症が、薬剤性間質性肺炎、特発性肺線維症、家族性間質性肺炎、職業性肺疾患、じん肺、放射線肺炎、過敏性肺炎、サルコイドーシス、膠原病性間質性肺炎、全身性エリテマトーデス、全身性強皮症、関節リウマチ、多発性筋炎、皮膚筋炎、シェーグレン症候群、ヘルマンスキー・パドラック症候群、先天性角化不全症、COVID-19関連肺炎、細菌性肺炎、ニューモシスチス肺炎、クラミジア肺炎、マイコプラズマ肺炎、レジオネラ肺炎、および急性呼吸切迫症候群から選択される疾患に伴う肺線維症である、前記1~3のいずれかに記載の医薬組成物。
[5]
 肺線維症が、薬剤により誘発される肺線維症である、前記1~4のいずれかに記載の医薬組成物。
[6]
 薬剤が、アミオダロン、ブレオマイシン、メトトレキサート、シクロホスファミド、ゲフィチニブ,エルロチニブ、セツキシマブ、パニツムマブ、サラゾスルファピリジン、ペニシラミン、金製剤、抗生物質、抗菌薬、ニトロフラントイン、インターフェロン、パラコート、小紫胡湯、およびヒドララジンから選択される、前記5に記載の医薬組成物。
[7]
 薬剤が、アミオダロンである、前記5または6に記載の医薬組成物。
[8]
 薬剤性間質性肺炎、特発性肺線維症、家族性間質性肺炎、職業性肺疾患、じん肺、放射線肺炎、過敏性肺炎、サルコイドーシス、膠原病性間質性肺炎、全身性エリテマトーデス、全身性強皮症、関節リウマチ、多発性筋炎、皮膚筋炎、シェーグレン症候群、ヘルマンスキー・パドラック症候群、先天性角化不全症、COVID-19関連肺炎、細菌性肺炎、ニューモシスチス肺炎、クラミジア肺炎、マイコプラズマ肺炎、レジオネラ肺炎、および急性呼吸切迫症候群から選択される疾患を処置するための、前記1~7のいずれかに記載の医薬組成物。
[9]
 疾患が、薬剤性間質性肺炎または特発性肺線維症である、前記4~8のいずれかに記載の医薬組成物。
[10]
 ABCA3、SFTPB、SFTPC、およびSFTPDから選択されるタンパク質をそれぞれコードする1以上の遺伝子を細胞に導入すること、および
 ABCA3、SFTPB、SFTPC、およびSFTPDの4種類のタンパク質を発現し、ラメラ体を有する細胞を得ることを含む、細胞の製造方法。
[11]
 ABCA3、SFTPB、SFTPC、およびSFTPDをそれぞれコードする4種類の遺伝子を細胞に導入することを含む、前記10に記載の方法。
[12]
 細胞が、肺胞上皮由来細胞である、前記10または11に記載の方法。
[13]
 細胞が、A546細胞またはHEK293細胞である、前記10または11に記載の方法。
[14]
 前記10~13のいずれかに記載の方法により製造される細胞。
[15]
 ABCA3、SFTPB、SFTPC、およびSFTPDから選択されるタンパク質をそれぞれコードする1以上の外来遺伝子を有し、ABCA3、SFTPB、SFTPC、およびSFTPDの4種類のタンパク質を発現し、ラメラ体を有する、細胞。
[16]
 前記14または15に記載の細胞から分泌される、サーファクタントプロテイン。
[17]
 前記14または15に記載の細胞を培養し、サーファクタントプロテインを含む培養上清を調製することを含む、サーファクタントプロテインの製造方法。
[18]
 培養上清からサーファクタントプロテインを単離することをさらに含む、前記[17]に記載の方法。
[19]
 前記[17]または[18]に記載の方法により製造される、サーファクタントプロテイン。
[20]
 前記14または15に記載の細胞においてラメラ体異常(LB異常)を誘導することを含む、細胞の製造方法。
[21]
 LB異常の誘導が、前記14または15に記載の細胞を肺線維症の原因薬剤で処理することにより行われる、前記20に記載の方法。
[22]
 原因薬剤が、アミオダロン、ブレオマイシン、メトトレキサート、シクロホスファミド、ゲフィチニブ、エルロチニブ、セツキシマブ、パニツムマブ、サラゾスルファピリジン、ペニシラミン、金製剤、抗生物質、抗菌薬、ニトロフラントイン、インターフェロン、パラコート、小紫胡湯、およびヒドララジンから選択される、前記21に記載の方法。
[23]
 原因薬剤が、アミオダロンである、前記22に記載の方法。
[24]
 LB異常の誘導が、前記14または15に記載の細胞に肺線維症の原因遺伝子の変異を導入することにより行われる、前記20に記載の方法。
[25]
 原因遺伝子が、ABCA3、SFTPB、SFTPC、SFTPD、HPS1、HPS3、およびHPS4から選択される、前記24に記載の方法。
[26]
 LB異常の誘導が、細胞におけるラメラ体の数またはサイズを基準値と比較して統計学的に有意に増加させることを含み、前記基準値が、LB異常誘導前の細胞におけるラメラ体の数またはサイズである、前記20~25のいずれかに記載の方法。
[27]
 LB異常の誘導が、細胞におけるラメラ体の数またはサイズを基準値以上に増加させることを含み、前記基準値が、LB異常誘導前の細胞におけるラメラ体の数またはサイズの110%~500%の値である、前記20~25のいずれかに記載の方法。
[28]
 前記20~27のいずれかに記載の方法により製造される細胞。
[29]
 ABCA3、SFTPB、SFTPC、およびSFTPDから選択されるタンパク質をそれぞれコードする1以上の外来遺伝子を有し、ABCA3、SFTPB、SFTPC、およびSFTPDの4種類のタンパク質を発現し、ラメラ体異常を有する、細胞。
[30]
 前記28または29に記載の細胞を候補物質で処理することを含む、肺線維症治療薬のスクリーニング方法。
[31]
 細胞のラメラ体異常(LB異常)を改善する候補物質を選択することをさらに含む、前記30に記載の方法。
[32]
 候補物質で処理した細胞におけるラメラ体の数またはサイズを基準値と比較することを含み、前記基準値が、候補物質で処理していない前記28または29に記載の細胞におけるラメラ体の数またはサイズであり、候補物質で処理した細胞におけるラメラ体の数またはサイズが基準値より統計学的に有意に低い場合に、LB異常が改善されたと判断する、前記31に記載の方法。
[33]
 候補物質で処理した細胞におけるラメラ体の数またはサイズを基準値と比較することを含み、前記基準値が、候補物質で処理していない前記28または29に記載の細胞におけるラメラ体の数またはサイズの90%~10%の値であり、候補物質で処理した細胞におけるラメラ体の数またはサイズが基準値以下の場合に、LB異常が改善されたと判断する、前記31に記載の方法。
[34]
 前記20~27のいずれかに記載の方法により前記28または29に記載の細胞を製造することをさらに含む、前記30~33のいずれかに記載の方法。
[35]
 前記14または15に記載の細胞から得られる第1の基準値、候補物質で処理していない前記28または29に記載の細胞から得られる第2の基準値、および候補物質で処理した細胞におけるラメラ体の数またはサイズに基づき、候補物質を選択することを含む、前記30~34のいずれかに記載の方法。
[36]
 前記14または15に記載の細胞を肺線維症の原因薬剤で処理すること、
 原因薬剤で処理した細胞を候補物質で処理すること、
 前記14または15に記載の細胞から得られる第1の基準値、原因薬剤で処理し、候補物質で処理していない前記14または15に記載の細胞から得られる第2の基準値、および原因薬剤で処理し、候補物質で処理した細胞におけるラメラ体の数またはサイズに基づき、候補物質を選択することを含む、前記30~35のいずれかに記載の方法。
[37]
 原因薬剤が、アミオダロン、ブレオマイシン、メトトレキサート、シクロホスファミド、ゲフィチニブ、エルロチニブ、セツキシマブ、パニツムマブ、サラゾスルファピリジン、ペニシラミン、金製剤、抗生物質、抗菌薬、ニトロフラントイン、インターフェロン、パラコート、小紫胡湯、およびヒドララジンから選択される、前記36に記載の方法。
[38]
 肺線維症を治療する方法であって、有効量のヒドロキシプロピルシクロデキストリンを、前記治療を必要とする対象に投与することを含む方法。
[39]
 肺線維症を治療するための、ヒドロキシプロピルシクロデキストリンの使用。
[40]
 肺線維症を治療するための医薬の製造のための、ヒドロキシプロピルシクロデキストリンの使用。
 本明細書で引用するすべての文献は、出典明示により本明細書の一部とする。
 上記の説明は、すべて非限定的なものであり、添付の特許請求の範囲において定義される本発明の範囲から逸脱せずに、変更することができる。さらに、下記の実施例は、すべて非限定的な実施例であり、本発明を説明するためだけに供されるものである。
1.材料および方法
プラスミドクローニング
 ABCA3-P2A-EGFP、SFTPD-P2A、SFTPB、およびP2A-SFTPCをGenScript (Piscataway、NJ、米国)により合成し、pcDNA3.1(+)にクローニングして、それぞれpcDNA3.1-ABCA3-P2A-EGFP、pcDNA3.1-SFTPD-P2A、pcDNA3.1-SFTPB、およびpcDNA3.1-P2A-SPFTCを得た。pcDNA3.1-SFTPBをEcoRI (ECO-111; TOYOBO, Osaka, Japan)/EcoRV (ER5-101W; TOYOBO)で切断し、pcDNA3.1-SFTPD-P2Aベクターに挿入し、得られたベクターをpcDNA3.1-SFTPD-P2A-SFTPBと命名した。pcDNA3.1-SFTPD-P2A-SFTPBベクターをEcoRV/XhoI (XHO-101; TOYOBO)で切断した。P2A-SFTPCをPCRによりpcDNA3.1-SFTPC-P2Aから増幅し、EcoRV/XhoI (TOYOBO)で切断したpcDNA3.1-SFTPD-P2A-SFTPBとInFusion (Z9648N; TaKaRa, Kusatsu, Japan)を用いて結合させた。これにより、ベクターpcDNA3.1-SFTPD-P2A-SFTPB-P2A-SFTPCを得た。
細胞培養およびトランスフェクション
 A549細胞を、American Type Culture Collection (Manassas, VA, USA)から入手し、培養培地 (10% FBS (Sigma-Aldrich, St. Louis, MO, USA )、HEPES (H0887; Sigma)、ピルビン酸ナトリウム (06977-34; Nacalai Tesque) 、および100 U/mlペニシリン-ストレプトマイシン(15140122; Thermo Fisher Scientific, Waltham, MA, USA)を補充したRPMI (30264-56; Nacalai Tesque, Kyoto, Japan))にて、5%CO2、37℃で培養した。ABCA3およびGFPを発現するA549細胞の安定なクローンは、製造業者の指示に従い、34μgのpcDNA3.1-ABCA3-P2A-EGFPと102μlのFuGENE HD (E2311; Promega, Madison, WI, USA)とを10cmディッシュ上でA549細胞にトランスフェクションすることによって作製した。24時間のインキュベーションの後、GFP+細胞をAria III (BD Biosciences, Franklin Lakes, NJ, USA)を用いて単離し、播種し、750μg/ml ジェネティシン(10131027; Thermo Fisher Scientific)下で選択した。続いて、細胞を34μgのpcDNA3.1-SFTPD-P2A-SFTPB-P2A-SFTPCおよび102μlのFuGENE HDにより遺伝子導入し、続いて750μg/mlのジェネティシンおよび500μg/mlのゼオシン(ant-zn-05; InvivoGen, San Diego, CA, USA )下で選択した。ABCA3、SFTPB、SFTPC、SFTPD、およびGFPを発現するA549の安定クローンをLB細胞と称した。
 HEK293細胞を、American Type Culture Collection (Manassas, VA, USA)から入手し、培養培地 (10% FBS (Sigma-Aldrich, St. Louis, MO, USA)、HEPES (H0887; Sigma)、ピルビン酸ナトリウム(06977-34; Nacalai Tesque)、および100 U/mlペニシリン-ストレプトマイシン(15140122; Thermo Fisher Scientific, Waltham, MA, USA)を補充したDMEM ((08459-64; Nacalai Tesque)にて、5%CO2、37℃で培養した。ABCA3およびGFPを発現するHEK293細胞の安定なクローンは、製造業者の指示に従い、12.5μgのpcDNA3.1-ABCA3-P2A-EGFPと18.75μlのlipofectamine 3000 reagentと37.5μlのP3000 reagent (L3000008; Thermo Fisher Scientific)とを10cmディッシュ上でHEK293細胞にトランスフェクションすることによって作製した。24時間のインキュベーションの後、GFP+細胞をAria III (BD Biosciences, Franklin Lakes, NJ, USA)を用いて単離し、播種し、500μg/ml ジェネティシン(10131027; Thermo Fisher Scientific)下で選択した。続いて、細胞を12.5μgのpcDNA3.1-SFTPD-P2A-SFTPB-P2A-SFTPCおよび18.75μlのlipofectamine 3000 reagentと37.5μlのP3000 reagentにより遺伝子導入し、続いて500μg/mlのジェネティシンおよび100μg/mlのゼオシン (ant-zn-05; InvivoGen, San Diego, CA, USA)下で選択した。ABCA3、SFTPB、SFTPC、SFTPD、およびGFPを発現するHEK293の安定クローン(本明細書中、LB-HEK293細胞と称する)を取得した。
 3D培養では、2.5×105のLB細胞もしくはA549細胞、またはLB-HEK293細胞もしくはHEK293細胞を、DCIK培地 (50 nMのデキサメタゾン(D4902; Sigma-Aldrich)、100μMの8-Br-cAMP (B007; Biolog, Hayward, CA, USA)、100μMの3-イソブチル-1-メチルキサンチン(095-03413;Wako, Osaka, Japan)、10 ng/mlのKGF (100-19;PeproTech, Rocky Hill, NJ, USA)、1%のB-27サプリメント(17504001; Thermo Fisher Scientific)、0.25%のBSA (15260-037; Thermo Fisher Scientific)、15 mMのHEPES、CaCl2(036-19731; Wako)、0.1% ITSプレミックス(354350; Corning)、およびHam's F12(087-08335; 和光))に懸濁し、等量の還元マトリゲル(354230; Corning)と混ぜ、12ウェル細胞培養インサートに播種した。12ウェル細胞培養インサートの下部チャンバー内のDCIK培地は、15日目まで3日に1回交換した。ヒト胎児肺線維芽細胞(妊娠17.5週; DV Biologics, Costa Mesa, CA, USA; PP002-F-1349, lot 121109VA)は、10% FBSおよび1%ペニシリン-ストレプトマイシンを添加したDMEM (08459-64; Nacalai Tesque)中で5%CO2、 37℃下に維持し、継代数9または10で使用した。
免疫蛍光染色
 2D培養の細胞は、氷冷MeOH (21915-93; Nacalai Tesque)または4%パラホルムアルデヒド(09154‐56; Nacalai Tesque)で室温または-20℃で15分間固定した。PBS (14249-24; Nacalai Tesque)で3回洗浄した後、細胞を0.2% Triton X-100(12969-25; Nacalai Tesque)中で15分間透過させた。PBSで3回洗浄後、細胞を5%の正常ロバ血清(S30-100ML; EMD-Millipore, Burlington, MA, USA)と1% BSA (01859-47; Nacalai Tesque)とからなるブロッキング溶液に室温で30分以上浸した。次に、細胞をCan Get Signal Immunoreaction Enhancer Solution B (NKB-601; TOYOBO)に混合した一次抗体で1時間染色した。ブロッキング溶液で3回洗浄した後、細胞をHoechst-33342(346-07951;Dojindo, Kumamoto, Japan)および二次抗体を混合したSignal Immunoreaction Enhancer Solution B中で1時間染色した。3D培養の細胞は、4%パラホルムアルデヒドにて室温で30分間固定した後、30%スクロース(30404-45; Nacalai Tesque)中で4℃で一晩インキュベートした。次いで、サンプルをOCT化合物(45833; Sakura Finetek, Torrance, CA, USA)に包埋し、液体窒素中で凍結した。凍結サンプルを10μmスライスに凍結切片化し、透過処理し、上記のように染色した。免疫蛍光画像は、共焦点顕微鏡(TCS SP8; Leica Microsystems, Wetzlar, Germany)またはBZ‐X710(Keyence, Osaka, Japan)を用いて得た。蛍光シグナル強度と細胞数は、Hybrid Cell Count/BZ‐H3(Keyence)を用いて定量した。以下の一次抗体を使用した: ABCA3(1:1000、WMAB-ABCA3-17; Seven Hills Bioreagents, Cincinnati, OH, USA)、SFTPB (1:100、ab40876; Abcam, Cambridge, UK)、SFTPC (1:500, WRAB-9337; Seven Hills Bioreagents)、およびSFTPD (1:100, 7608;Y, Chosi, Japan)。また、以下の二次抗体を使用した:抗マウスIgG-Alexa Fluor 647(1:500, A-31573; Thermo Fisher Scientific)、抗ウサギIgG-Alexa Fluor 546(1:500, A-10040; Thermo Fisher Scientific)、および抗ウサギIgG-Alexa Fluor 647(1:500, A-31573; Thermo Fisher Scientific)。
FACS分析
 1ウェルあたり約5×104のLB細胞を24ウェルプレート上に播種した。24時間のインキュベーション後、細胞を10μM TMR-PC (810180C; Avanti Polar Lipids, Alabaster, AL, USA)で処理した。24時間のインキュベーション後、細胞を懸濁し、PBSで2回洗浄した後、FACS Aria IIIを用いて分析した。TMR-PCの蛍光強度の中央値はFACSDivaを用いて算出した。
電子顕微鏡
 透過型電子顕微鏡像は既報のようにして得た[9, 10]。A549細胞、LB細胞、HEK293細胞、LB-HEK293細胞またはiPSC由来AT2細胞のオルガノイドの小片を固定液中でインキュベートした。その後、1%酢酸ウラニルで一括染色を行い、続いて脱水し、Epon 812に包埋した。超薄切片試料を酢酸ウラニルとクエン酸鉛で染色し、H-7650(Hitachi, Tokyo, Japan)で観察した。
培養上清中のSFTPBの測定
 1ウェルあたり約1×104のLB細胞を、2% FP001(383-10111;Fujifilm Wako)を含むDCIK培地に懸濁し、96ウェル超低付着プレート(Corning)に播種した。1週間のインキュベーション期間の後、培養上清を採取し、SFTPBを測定した。定量にはELISA Kit for Surfactant Protein B (SEB622HU; Cloud-Clone Corp., Katy, TX, USA)を用いた。
3D培養および2D培養における薬物処理
 2D培養では、化合物の有無にかかわらず、A549細胞またはLB細胞を12ウェルプレート上に播種した。24時間のインキュベーション後、細胞を10μMのAMD (15213; Cayman Chemical, Ann Arbor, MI, USA)または0.1%のDMSO (276855; Sigma-Aldrich)で処理した。3D培養では、2.5×105のLB細胞またはA549細胞をDCIK培地100μlに懸濁し、等容量のマトリゲルと混合し、12ウェル細胞培養インサート(Corning)上に播種した。12ウェル細胞培養インサートの下部チャンバー内のDCIK培地は、15日目まで3日に1回交換した。細胞は、6日目から12日目まで0.1% DMSOまたは25μMのAMDで処理し、次いで12日目から15日目まで0.1% DMSOまたは10mg/mlのHPβCDで処理した。
TMR-PCを用いたリン脂質の測定
 1×104のLB細胞を96ウェルプレート(Perkin Elmer, Waltham, MA, USA)に播種した。24時間のインキュベーション後、細胞をAMDまたは溶媒対照として0.1% DMSOで処理し、同時に10μMのTMR-PCを添加した。細胞は、共焦点顕微鏡(TCS SP8; Leica Microsystems)またはBX-900を用いて、AMDで24時間処理後に分析した。蛍光シグナル強度および細胞数は、Hybrid Cell Count/BZ-H3を用いて定量した。
ハイコンテントスクリーニング
 Opera Phenix High-Content Imaging System (Perkin Elmer)を用いてハイコンテントスクリーニングを実施した。1ウェルあたり1×104のLB細胞を、10μMの化合物または1 mg/mlのHPβCD (C0926; Sigma‐Aldrich)とともに、96ウェルプレート(Perkin Elmer)上に播種した。24時間のインキュベーション後、細胞を10μM AMDまたは0.1% DMSOで処理した。同時に、各ウェルに10μMのTMR-PCを添加した。各プレートはDMSO対照の6ウェルとAMD対照の6ウェルを含んだ。24時間のインキュベーション後、10% FBS、HEPES、ピルビン酸ナトリウム、および1%ペニシリン-ストレプトマイシンを添加した、フェノールレッド(06261-65; Nacalai Tesque)を含まないRPMI培地で細胞を3回洗浄した。Opera Phenix High-Content Imaging System上で20×水浸対物レンズを用いて観察する前に、Hoechst-33342(核染色用)添加培地を添加した。Harmony (Perkin Elmer)を用いて、核数、細胞面積、TMR-PCドット数を求めた。
ハイコンテントスクリーニングによる画像定量化
 アッセイのロバスト性は、細胞面積あたりのTMR-PCドット数に対するZ'-因子を以下のように計算することによって評価した: Z'-因子=1-[3(SDA + SDD)/ (MA-MD)]。ここで、MAおよびMDはそれぞれAMD対照試料およびDMSO対照試料の平均値に対応し、SDAおよびSDDは標準偏差(SD)に対応する。細胞面積あたりのTMR-PCドット数の生データは、AMD対照およびDMSO対照の平均値に正規化し、それぞれ100%および0%と定義した。照射野あたりの細胞数の生データは、AMD対照の平均値に正規化した。細胞面積あたりのTMR-PCドット数をAMD対照と比較して>80%減少させた化合物をヒットとした。
用量反応解析
 1ウェルあたり計1×104のLB細胞を、96ウェルプレート上に、GW9662(075-05611;Wako)、HPαCD (390690; Sigma-Aldrich)、HPβCD、またはHPγCD (H125; Sigma-Aldrich)の各化合物とともに播種し、上述のように評価した(ハイコンテントスクリーニングを参照)。Harmony (Perkin Elmer)を用いて、核カウント、細胞面積、およびTMR-PCドットの数を分析した。
ケミカルライブラリー
 スクリーニング用化合物は京都大学大学院医学系研究科医学研究支援センターより入手した。ライブラリーは、Prestwick Chemical Library、Calbiochemインヒビター、およびSelleckchemインヒビターライブラリーから収集された、ヒト臨床試験での使用歴のある2345の既知の薬物および低分子化合物から構成された。化合物をDMSO中で可溶化して最終濃度10 mMにし、96ウェルマイクロタイタープレートでフォーマットし、-80℃で保存した。HPβCDは、蒸留水に溶解して、最終濃度を100 mg/mlにした。
RNAシークエンス(RNA-seq)
 2D培養において10μM AMDおよび/または10 mg/ml HPβCDにより処理したA549細胞またはLB細胞のRNAを、RNeasy Mini Kit (74104; Qiagen, Hilden, Germany)を用いて抽出した。ライブラリーを、Illumina TruSeq Stranded mRNA Kit (20020595; Illumina, San Diego, CA, USA)を使用して、RNAから調製した。RNA-seqは、Illumina Novaseqプラットフォーム(100bpのペア末端リード)を用いて行った。
バイオインフォマティクス解析
 Trimmomatic [33]を用いて生の配列決定リードをトリミングし、トリミングされたデータを、STARマニュアルのENCODE標準オプションに従ったアライナーであるSTAR 2.7.3a[34]を用いて、ヒト参照ゲノム(GRCh38.95)にアラインメントした。各遺伝子にアラインメントされたリードは、featureCount機能を用いてカウントした[35]。DESeq2[36]を用いて差次的な遺伝子発現を検出した。TPM値はRSEM[37]を用いて算出した。Volcano PlotはR package EnhancedVolcanoを用いて可視化した(図1G)。階層的クラスタリング解析を行い、上位300のDEGをR package heatmap.2を用いて調整p値(adjusted P value)によりランク付けし、log2(TPM+1)のZスコアを得た。A549細胞とLB細胞との比較において、DEGを用いるMetascapeを用いてGOおよびKEGG経路分析を行った(adjusted P <0.05およびfold-change > 1.2)(図6Dおよび6E)。R package ggplot2を用いてM-Aプロットを作成した(図4A)。DMSO投与LB細胞とAMD投与LB細胞間のDEGについて、Metascapeを用いたGO分析を行った(adjusted P< 0.05およびfold-change > 1.2)(図4Bおよび8A)。R package prcompを用いて不偏PCA (正規化log2(TPM+1))を行い、R package plot 3Dを用いて可視化した(図4C)。PC2またはPC1に関連する遺伝子(各PCにおいて固有値が-0.01未満または0.01以上)に基づく階層的クラスタリング解析を行い、結果をlog2(TPM+1)のZスコアとして提示した(図4Dおよび4E)。Pathview (adjusted P < 0.05)[38] を用いてDEGの経路分析を行った。
ヒトiPSC培養
 B2-3 FTPC-GFPレポーターヒトiPSC[9]を、既報のとおり[10]、5%CO2、37℃下で、Essential 8培地(A1517001; Thermo Fisher Scientific)にてフィーダー細胞なしで培養した。
ヒトiPSCの分化
 SFTPC-GFPレポーターiPSC(B2-3)は、既報のようにNKX2-1+肺前駆細胞に分化させた[10]。簡単に説明すると、1.5×106細胞を、10μMのY-27632(Y5301; LC Laboratories, Woburn, MA, USA)を添加したS1培地 (100 ng/mlのアクチビンA(100-14; PeproTech)、1μMのCHIR99021(Axon1386; Axon Medchem, Reston, VA, USA)、2%のB27サプリメント、および50 U/mlのペニシリン-ストレプトマイシンを含むRPMI)に懸濁し、Geltrex(A1413202; Thermo Fisher Scientific)コーティング6ウェルプレートに0日目に播種した。培地は2日毎に交換した。酪酸ナトリウム(193-01522; Wako)を1、2、および4日目に添加した。6日目から10日目までは、細胞を、S2培地 (Glutamax (35050061; Thermo Fisher Scientific)、2%のB27サプリメント、0.05 mg/mlのl-アスコルビン酸(A4403; Sigma)、0.4 mMのモノチオグリセロール(195-15791; Stem Sure, Bucuresti, Romania)、100 ng/mlのNoggin (HZ-1118; Proteintech)、10μMのSB431542(198~16543; Wako)、および50 U/mlペニシリン-ストレプトマイシンを含むDMEM/F12(10565042; Thermo Fisher Scientific))中で培養した。10日目から14日目までは、20 ng/mlのBMP4(HZ‐1045; Proteintech)、0.05μMのオールトランスレチノイン酸(R2625; Sigma‐Aldrich)、および3 mMのCHIR99021を添加したS2培地で細胞を培養した。14日目から21日目までは、細胞を、3μMのCHIR99021、10ng/mlのFGF10(100~26; PeproTech)、10 ng/mlのKGF、および20μMのDAPT (043~33581; Wako) を添加したS2培地中で培養した。21日目に、マウス抗ヒトCPM (014-27501; Wako)を用いて、既報のようにNKX2-1+細胞を単離した[10]。
iPSC由来AT2細胞における薬物治療
 計1×104のCPMhigh細胞および5×105のヒト胎児肺線維芽細胞を、100μlのDCIK培地に、等容量の成長因子を低減したマトリゲルおよび10μMのY-7632とともに混合し、12ウェル細胞培養インサート上に播種した。12ウェルプレートの下部チャンバーのDCIK培地は、14日目まで隔日に交換した。14±1日目に、既報のように細胞を継代した[10]。iPSC由来AT2細胞(継代数2-5(P2-P5))は、5日目から11日目まで0.1% DMSOまたは25μM AMDで処理した後、11日目から14日目まで0.1% DMSOまたは化合物で処理した。
LysoTracker-LROの測定
 化合物で処理したヒトiPSC由来AT2細胞を解離し、APC結合抗ヒトEpCAM (130-113-260; Miltenyi Biotec, Bergisch Gladbach, Germany)および100 nM LysoTracker Red DND-99(L7528; Thermo Fisher Scientific)で染色した。LysoTrackerの信号強度はFACS Aria IIIを用いて測定した。LysoTrackerの蛍光強度の中央値は、FlowJoまたはFACSDivaを用いて算出した。
ホスファチジルコリンの測定
 化合物で処理したヒトiPSC由来EpCAM+細胞を解離し、100μlの1% BSA/PBS中のマウス抗ヒトEpCAM (sc-66020; Santa Cruz Biotechnology, Dallas, TX, USA)を一次抗体として免疫染色した。次いで、細胞を1% BSA/PBS中で洗浄し、続いて、既報のとおり[12]、LSカラム(130-042-401; Miltenyi Biotec)を使用して、二次抗体として抗マウスIgG-マイクロビーズ(130-048-401; Miltenyi Biotec)を用いて、EpCAM+細胞を単離した。EpCAM+ 細胞中のPCの量は、ホスファチジルコリンアッセイキットを用いて、製造業者の説明書(MAK049; Sigma-Aldrich)に従って定量した。
統計解析
 グラフを作成し、GraphPad Prism 8(GraphPad, La Jolla, CA, USA)を用いて統計解析した。データは対応のない両側Studentのt検定またはANOVA (一元配置)を用いて解析し、結果は平均±S.E.Mで表した。P < 0.05を有意とした。
2.結果
外因性サーファクタントプロテインを発現するA549細胞はLB様オルガネラを有し、3D培養でSFTPBを分泌する。
 発明者らは、サーファクタントプロテインがAT2細胞のLBを効果的に再現するという仮説を立てた。ABCA3、SFTPB、SFTPC、SFTPD、およびGFPの過剰発現のための2つのベクターを、ヒト肺胞上皮由来細胞株であるA549細胞にトランスフェクトした(図1A)。ジェネティシンおよびゼオシンによる選択後、ABCA3、SFTPB、SFTPC、SFTPD、およびGFPを過剰発現する安定なA549細胞系(LB細胞と命名)を得た。免疫蛍光染色により、3D培養においてSFTPBとSFTPDとは細胞内に共局在し、ABCA3とSFTPCとは散在性の小さな斑状の分布を示し、LB様構造に局在していることが示唆された(図1B)。同様に、ABCA3、SFTPB、SFTPC、SFTPDは2D培養の細胞でも検出された(図6A、上)。さらに、ヒト胎児腎由来細胞株であるHEK293細胞から作製されたLB-HEK293細胞でも、ABCA3、SFTPB、SFTPC、SFTPDの発現が2D培養で検出された (図6A、下)。LBの主成分はホスファチジルコリン(PC)の一種であるジパルミトイルホスファチジルコリンであるため、TopFluor TMR PC (TMR-PC)を用いて、2D培養においてLB細胞がPCを増加させるか検討した。FACS分析により、細胞内TMR-PC強度がA549細胞よりもLB細胞で高いことが示された(図1Cおよび1D)。さらに、ABCA3を過剰発現するA549細胞がLB様オルガネラを示す以前の報告と一致して[13]、透過型電子顕微鏡測定により、LB細胞およびLB-HEK293細胞内にLB様構造が観察された(図1E)。驚くべきことに、培養上清中のSFTPB濃度は、A549細胞よりもLB細胞の3D培養において有意に高かった(P <0.001)(図1F)。LB細胞のトランスクリプトームを評価するために、RNAシークエンス(RNA-seq)を実施した。LB細胞では、AT2マーカー(PCDH9、SCD、MAOA、NPC2、AQP3、BEX2、CMTM8、DHCR7、ETV5、FASN)が上昇していた(図1G)[10, 15-19]。ABCA3、SFTPB、およびSFTPDの発現は、LB細胞と初代AT2細胞(GSE66627)が類似していたが、SFTPCの発現は、初代AT2細胞よりもLB細胞において低かった (図6Bおよび6C)[20]。Metascape [21]を用いたGOおよびKEGG経路分析では、LB細胞でアップレギュレートされた遺伝子は、我々の以前の結果と対応し、「リソソーム」および「脂質の代謝」に有意に濃縮されていた(それぞれP = 7.53×10-22 とP = 9.23×10-11)(図6Dおよび6E) [10]。上位300の差次的に発現する遺伝子(DEG)の階層的クラスタリング解析は、LB細胞における発現パターンがA549細胞よりもAT2細胞における発現パターンと類似していることを示した(データ非提示)。以上のとおり、LB細胞は表現型とトランスクリプトームレベルでAT2細胞に類似することが示された。
LB細胞におけるAMD誘発性LB異常。
 LB細胞が疾患モデルとして使用できるかどうかを判定するために、ヒトAT2細胞にLB異常を誘導することが知られるAMDでLB細胞を処理した(図2A)[22]。蛍光顕微鏡観察では、AMDで処理したLB細胞におけるTMR-PCの細胞内強度は濃度依存的に増加し、中央実効濃度(EC50)は2.7μMであった(図2B)。ABCA3はAT2細胞のLBの境界膜に主に発現しており[23]、LBのマーカーとして用いることができる。ABCA3+ LBの数およびサイズは、溶媒対照よりもAMDで処理したLB細胞で高いことがわかった(図2C)。さらに、透過型電子顕微鏡で観察したところ、3D培養でAMD処理したLB細胞では、LB様オルガネラの増加および肥大化が明らかとなり(図2D)、LB細胞がAMD誘発性LB異常の検出に有用であることが示された。
 AMD誘発LB異常を改善しうる薬剤を同定するために、in vitroドラッグスクリーニング系として、LB細胞を用いたハイコンテントスクリーニングアッセイを開発した。Perkin Elmer Opera PhenixハイコンテントスクリーニングシステムとHarmonyとを用いて、細胞面積あたりのTMR-PCドット数を評価した(図2E)。AMDは細胞面積あたりのTMR-PCドット数を有意に増加させ、アッセイのロバスト性はZ'-因子に基づいて証明された(3つの独立したプレートで0.61、各プレートで0.1% DMSOと10μM AMDの6反復)(図2F)。以上のとおり、LB異常のin vitroスクリーニング法の開発に成功した。
ハイコンテントスクリーニングによるHPβCDの同定。
 さらに、AMD誘発リン脂質蓄積を低下させるGW9662[24]の影響をLB細胞にて評価した。しかしながら、10μMまでのGW9662は、TMR-PCドットのAMD誘発細胞内蓄積を減少させなかった(図7Aおよび7B)。TMR-PCに対するGW9662の有意な効果の欠如は、実験条件に起因する可能性がある。TMR-PCのAMD誘発細胞内蓄積を改善する他の化合物を同定するために、京都大学保有の化合物ライブラリー2,345化合物をスクリーニングした。AMDが誘導するTMR-PCドットの細胞内蓄積を減弱させる化合物32個(AMD対照と比較して80%の阻害閾値を有する)を、ヒットと考えた(図3Aおよび3B)。32個のヒットのうち、細胞数がAMD処置と比べて80%を超えるHPβCDを選択した(図3C)。HPβCDは、LB細胞においてAMDによるTMR-PCドットの細胞内蓄積を濃度依存的に抑制し、IC50は0.8 mMであった(図3Dおよび3E)。透過型電子顕微鏡観察では、3D培養のLB細胞におけるAMDによるLB様オルガネラの肥大化は、HPβCDによって改善されることが示された(図3F)。2-ヒドロキシプロピル-シクロデキストリンの一種であるHPγCDはNieman-Pick病患者特異的iPSC由来の肝細胞様細胞においてコレステロールの蓄積を減少させることから[25]、HPαCDおよびHPγCDも検討した。HPαCDおよびHPγCDはともに、TMR-PCドットのAMD誘発細胞内蓄積を濃度依存的に減少させ、IC50値はそれぞれ1.8 mMおよび2 mMであった(図7A、7C、および7D)。これらの結果は、ヒドロキシプロピルシクロデキストリンが、LB細胞数を減少させることなく、LB様オルガネラのAMD誘導肥大を改善することを示唆する。
HPβCDはAMD投与LB細胞における脂質ホメオスタシスを補正する。
 HPβCDがAMD誘発LB肥大を改善するメカニズムを決定するために、HPβCDとAMDとを添加したLB細胞のRNA-seqを行った。LBはリン脂質を含むリソソーム関連オルガネラであるため、AMDはLB細胞のリソソームにおけるリン脂質の異常蓄積を誘導すると仮定した。AMD添加LB細胞においてアップレギュレートされた遺伝子のGO分析により、「脂質の代謝」、「リソソーム」、「リン脂質代謝過程」という用語の濃縮が認められた(それぞれP = 3.08×10-26、3.23×10-22、1.32×10-10)(図4A、4B、8A)。注目すべきことに、主成分分析(PCA)は、HPβCDとAMDとを添加したLB細胞のトランスクリプトームが、DMSOを添加したLB細胞のトランスクリプトームと類似していることを示した。PC2に関連する遺伝子の発現に基づく階層的クラスタリングおよびGO分析は、HPβCDがAMD投与LB細胞における脂質生合成および脂肪酸代謝を改善することを示したが(それぞれP = 4.65×10-11, 2.70×10-10)、HPβCDはPC1に関連する遺伝子のAMD誘導変化を改善しなかった(図4Dおよび4E、8Bおよび8C)。実際、PC分解に関与する遺伝子は、HPβCDとAMDとを添加したLB細胞でアップレギュレートされた(データ非提示)。これらのデータは、HPβCDが脂質ホメオスタシスの変化を介してAMD誘導LB異常を改善することを示唆する。
HPβCDはLB細胞およびヒトiPSC由来AT2細胞におけるAMD誘発LB異常を逆転させる。
 発明者らは以前、AT2細胞およびヒト胎児肺線維芽細胞を含むiPSC由来肺胞オルガノイドにおいて、LysoTrackerの蛍光シグナル強度を指標として、AMDがリソソーム関連オルガネラ(LRO)を増加させることを見出した[10]。そこで、ヒトiPSC由来AT2細胞を用いてHPβCDの有効性を評価し、LB細胞を用いた新たなスクリーニングシステムの有用性を検討した。iPSC由来肺胞オルガノイドをAMDで9日間投与した後、HPβCDを3日間処置した(図5A)。SFTPC+EpCAM+、SFTPC-DEpCAM+、およびEpCAM-細胞において、HPαCD、HPβCDおよびHPγCDはLysoTrackerのAMD誘導蛍光強度を低下させたのに対し、GW9662は影響を及ぼさなかった(図5B、9Aおよび9B)。AMDはヒトおよびマウスの肺でPCを増加させることから[26, 27]、PC量の評価を行ったところ、HPβCDはヒトiPSC由来EpCAM+細胞でPCを低下させることが示された(図5C)。透過型電子顕微鏡観察により、ヒトiPSC由来AT2細胞におけるAMD誘導性のLB様オルガネラの肥大化はHPβCDにより減弱されることが明らかになった(図5D)。以上のとおり、LB細胞を用いた我々のスクリーニングシステムは、LB異常を改善する化合物の同定に有用であることが示された。
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Claims (24)

  1.  肺線維症を治療するための、ヒドロキシプロピルシクロデキストリンを含む医薬組成物。
  2.  ヒドロキシプロピルシクロデキストリンが、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、2-ヒドロキシプロピル-α-シクロデキストリン、または2-ヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリンである、請求項1に記載の医薬組成物。
  3.  ヒドロキシプロピルシクロデキストリンが、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンである、請求項1または2に記載の医薬組成物。
  4.  肺線維症が、薬剤性間質性肺炎、特発性肺線維症、家族性間質性肺炎、職業性肺疾患、じん肺、放射線肺炎、過敏性肺炎、サルコイドーシス、膠原病性間質性肺炎、全身性エリテマトーデス、全身性強皮症、関節リウマチ、多発性筋炎、皮膚筋炎、シェーグレン症候群、ヘルマンスキー・パドラック症候群、先天性角化不全症、COVID-19関連肺炎、細菌性肺炎、ニューモシスチス肺炎、クラミジア肺炎、マイコプラズマ肺炎、レジオネラ肺炎、および急性呼吸切迫症候群から選択される疾患に伴う肺線維症である、請求項1~3のいずれかに記載の医薬組成物。
  5.  肺線維症が、薬剤により誘発される肺線維症である、請求項1~4のいずれかに記載の医薬組成物。
  6.  薬剤が、アミオダロン、ブレオマイシン、メトトレキサート、シクロホスファミド、ゲフィチニブ,エルロチニブ、セツキシマブ、パニツムマブ、サラゾスルファピリジン、ペニシラミン、金製剤、抗生物質、抗菌薬、ニトロフラントイン、インターフェロン、パラコート、小紫胡湯、およびヒドララジンから選択される、請求項5に記載の医薬組成物。
  7.  薬剤が、アミオダロンである、請求項5または6に記載の医薬組成物。
  8.  ABCA3、SFTPB、SFTPC、およびSFTPDから選択されるタンパク質をそれぞれコードする1以上の遺伝子を細胞に導入すること、および
     ABCA3、SFTPB、SFTPC、およびSFTPDの4種類のタンパク質を発現し、ラメラ体を有する細胞を得ることを含む、細胞の製造方法。
  9.  ABCA3、SFTPB、SFTPC、およびSFTPDをそれぞれコードする4種類の遺伝子を細胞に導入することを含む、請求項8に記載の方法。
  10.  請求項8または9に記載の方法により製造される細胞。
  11.  ABCA3、SFTPB、SFTPC、およびSFTPDから選択されるタンパク質をそれぞれコードする1以上の外来遺伝子を有し、ABCA3、SFTPB、SFTPC、およびSFTPDの4種類のタンパク質を発現し、ラメラ体を有する、細胞。
  12.  前記10または11に記載の細胞を培養し、サーファクタントプロテインを含む培養上清を調製することを含む、サーファクタントプロテインの製造方法。
  13.  請求項10または11に記載の細胞においてラメラ体異常(LB異常)を誘導することを含む、細胞の製造方法。
  14.  LB異常の誘導が、請求項10または11に記載の細胞を肺線維症の原因薬剤で処理することにより行われる、請求項13に記載の方法。
  15.  LB異常の誘導が、請求項10または11に記載の細胞に肺線維症の原因遺伝子の変異を導入することにより行われる、請求項13に記載の方法。
  16.  LB異常の誘導が、細胞におけるラメラ体の数またはサイズを基準値と比較して統計学的に有意に増加させることを含み、前記基準値が、LB異常誘導前の細胞におけるラメラ体の数またはサイズである、請求項13~15のいずれかに記載の方法。
  17.  LB異常の誘導が、細胞におけるラメラ体の数またはサイズを基準値以上に増加させることを含み、前記基準値が、LB異常誘導前の細胞におけるラメラ体の数またはサイズの110%~500%の値である、請求項13~15のいずれかに記載の方法。
  18.  請求項13~17のいずれかに記載の方法により製造される細胞。
  19.  ABCA3、SFTPB、SFTPC、およびSFTPDから選択されるタンパク質をそれぞれコードする1以上の外来遺伝子を有し、ABCA3、SFTPB、SFTPC、およびSFTPDの4種類のタンパク質を発現し、ラメラ体異常を有する、細胞。
  20.  請求項18または19に記載の細胞を候補物質で処理することを含む、肺線維症治療薬のスクリーニング方法。
  21.  細胞のラメラ体異常(LB異常)を改善する候補物質を選択することをさらに含む、請求項20に記載の方法。
  22.  候補物質で処理した細胞におけるラメラ体の数またはサイズを基準値と比較することを含み、前記基準値が、候補物質で処理していない請求項18または19に記載の細胞におけるラメラ体の数またはサイズであり、候補物質で処理した細胞におけるラメラ体の数またはサイズが基準値より統計学的に有意に低い場合に、LB異常が改善されたと判断する、請求項21に記載の方法。
  23.  候補物質で処理した細胞におけるラメラ体の数またはサイズを基準値と比較することを含み、前記基準値が、候補物質で処理していない請求項18または19に記載の細胞におけるラメラ体の数またはサイズの90%~10%の値であり、候補物質で処理した細胞におけるラメラ体の数またはサイズが基準値以下の場合に、LB異常が改善されたと判断する、請求項21に記載の方法。
  24.  請求項10または11に記載の細胞から得られる第1の基準値、候補物質で処理していない請求項18または19に記載の細胞から得られる第2の基準値、および候補物質で処理した細胞におけるラメラ体の数またはサイズに基づき、候補物質を選択することを含む、請求項20~23のいずれかに記載の方法。
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