WO2021250826A1 - 発光素子 - Google Patents

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Abstract

発光素子(10)は、陽極(1)と、陰極(5)と、EML(3)と、HTL(2)と、を備えている。HTL(2)は、正孔輸送性材料(2a)と、主鎖にポリシロキサン結合を含み、その側鎖にπ共役電子対を有する官能基を有する第1高分子(2b)と、を含んでいる。

Description

発光素子
 本開示は、キャリア輸送性を有する層を備えた発光素子に関する。
 発光デバイスにおいて、電子の移動度と正孔の移動度とが大きく異なると、発光効率が低下することが知られている(例えば、特許文献1参照)。
日本国公開特許公報「特開2008-146956号」
 このため、キャリアバランスの向上が望まれている。
 本開示の一態様は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、キャリアバランスを従来よりも向上させることができる発光素子を提供することを目的とする。
 上記の課題を解決するために、本開示の一態様に係る発光素子は、第1電極と、第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に設けられた発光層と、前記第1電極と前記発光層との間に設けられた、キャリア輸送性を有する第1の層と、を備えており、前記第1の層は、第1キャリア輸送性材料と、主鎖にポリシロキサン結合を含み、その側鎖にπ共役電子対を有する官能基を有する第1高分子と、を含む。
 本開示の一態様によれば、キャリアバランスを従来よりも向上させることができる発光素子を提供することができる。
実施形態1に係る発光素子の概略構成の一例を、その要部を拡大して模式的に示す図と併せて示す断面図である。 トリアルコキシシランの加水分解を示す反応スキームを示す図である。 トリシラノールの脱水縮合を示す反応スキームを示す図である。 トリシラノールが、金属酸化物ナノ粒子の表面の水酸基と反応して金属酸化物ナノ粒子の表面に固定される反応スキームを模式的に示す図である。 トリシラノールが、金属酸化物ナノ粒子の表面に固定される一方、自己縮合によりポリシルセスキオキサンを形成する反応スキームを模式的に示す図である。 ETLを構成する混合膜の体積に対する半導体ナノ粒子の体積の比率と、隣り合う半導体ナノ粒子間の距離との関係を示すグラフである。 実施形態2に係る発光素子の概略構成の一例を、その要部を拡大して模式的に示す図と併せて示す断面図である。 実施形態3に係る発光素子の概略構成の一例を、その要部を拡大して模式的に示す図と併せて示す断面図である。 実施形態4に係る発光素子の概略構成の一例を、その要部を拡大して模式的に示す図と併せて示す断面図である。 実施形態5に係る発光素子の概略構成の一例を、その要部を拡大して模式的に示す図と併せて示す断面図である。 実施形態6に係る発光素子の概略構成の一例を、その要部を拡大して模式的に示す図と併せて示す断面図である。
 〔実施形態1〕
 以下に、本開示の実施の一形態について説明する。なお、以下では、比較対象の層よりも先のプロセスで形成されている層を「下層」とし、比較対象の層よりも後のプロセスで形成されている層を「上層」とする。また、本開示では、2つの数AおよびBについての「A~B」という記載は、特に明示されない限り、「A以上かつB以下」を意味するものとする。
 (発光素子の概略構成)
 本実施形態に係る発光素子は、第1電極と、第2電極と、第1電極と第2電極との間に設けられた発光層と、第1電極と発光層との間に設けられた、第1キャリア輸送性材料と第1高分子とを含む層(キャリア輸送性を有する第1の層)と、を備えている。また、本実施形態に係る発光素子は、第2電極と発光層との間に、第2キャリア輸送性材料と第2高分子とを含む層(キャリア輸送性を有する第2の層)をさらに備えている。第1高分子は、主鎖にポリシロキサン結合を含み、その側鎖にπ共役電子対を有する官能基を有する高分子である。第2高分子は、主鎖にポリシロキサン結合を含み、その側鎖に炭素数1~10の、無置換または一部の水素原子が置換されたアルキル基を有する高分子である。
 以下では、第1電極が陽極(アノード)であり、第2電極が陰極(カソード)であり、キャリア輸送性を有する第1の層(以下、「第1層」と記す)が正孔輸送層であり、キャリア輸送性を有する第2の層(以下、「第2層」と記す)が電子輸送層である場合を例に挙げて説明する。以下、発光層を「EML」と記すとともに、正孔輸送層を「HTL」と記し、電子輸送層を「ETL」と記す。
 図1は、本実施形態に係る発光素子10の概略構成の一例を、その要部を拡大して模式的に示す図と併せて示す断面図である。
 図1に示す発光素子10は、陽極1(第1電極)、HTL2(第1層)、EML3、ETL4(第2層)、陰極5(第2電極)が、下層側からこの順に積層された構成を有している。
 図1に示す例では、陽極1が、下層側に設けられた下部電極であり、陰極5が、上層側に設けられた上部電極である。以下、本実施形態では、陽極1から陰極5に向かう方向を上方向と称する。また、上方向とは反対の方向を下方向と称する。
 また、一般的に、下部電極は、発光素子を形成するための支持体としての基板上に形成される。したがって、発光素子10は、支持体としての図示しない基板を備えていてもよい。この場合、発光素子10が備える基板としては、例えば、ガラス基板、あるいは、樹脂基板等のフレキシブル基板であってもよい。なお、発光素子10が例えば表示装置等の発光装置の一部である場合、上記基板には、該発光装置の基板が用いられる。したがって、上記基板は、例えば、複数の薄膜トランジスタが形成されたアレイ基板であってもよい。この場合、下部電極は、アレイ基板の薄膜トランジスタと電気的に接続される。
 なお、上記基板は、光透過性材料によって構成されてもよいし、光反射性材料によって構成されてもよい。但し、発光素子10が、ボトムエミッション構造もしくは両面発光構造を有する場合、上記基板には、光透過性材料からなる透光性基板が用いられる。
 陽極1は、HTL2を介してEML3に正孔を注入する。一方、陰極5は、ETL4を介してEML3に電子を注入する。
 陽極1および陰極5は、それぞれ導電性材料からなる。陽極1は、HTL2に正孔を注入する正孔注入層(以下、「HIL」と記す)としての機能を有していてもよい。陰極5は、ETL4に電子を注入する電子注入層(以下、「EIL」と記す)としての機能を有していてもよい。
 また、陽極1および陰極5のうち、光の取出し面側の電極は、光透過性を有する電極である必要がある。一方、光の取出し面とは反対側の電極は、光透過性を有する電極であってもよく、光反射性を有する電極であってもよい。
 したがって、陽極1および陰極5の少なくとも一方は、光透過性材料からなる。また、陽極1および陰極5の何れか一方は、光反射性材料で形成してもよい。
 光透過性材料としては、例えば、透明導電膜材料を用いることができる。透明導電膜材料としては、例えば、ITO(インジウムスズ酸化物)、IZO(インジウム亜鉛酸化物)等を用いることができる。
 光反射性材料としては、可視光の反射率の高い材料が好ましい。光反射性材料としては、例えば、Al(アルミニウム)、Cu(銅)、Au(金)、Ag(銀)、等の金属、上記金属の合金等を用いることができる。
 また、陽極1および陰極5の何れか一方を、光透過性材料と光反射性材料との積層体とすることで、光反射性を有する電極としてもよい。
 EML3は、発光材料を含み、陽極1から輸送された正孔と、陰極5から輸送された電子との再結合により光を発する層である。
 EML3は、発光材料として、例えば、ナノサイズの量子ドット(半導体ナノ粒子)を含んでいてもよい。上記量子ドットには、公知の量子ドットを用いることができる。上記量子ドットは、例えば、Cd(カドミウム)、S(硫黄)、Te(テルル)、Se(セレン)、Zn(亜鉛)、In(インジウム)、N(窒素)、P(リン)、As(ヒ素)、Sb(アンチモン)、アルミニウム(Al)、Ga(ガリウム)、Pb(鉛)、Si(ケイ素)、Ge(ゲルマニウム)、Mg(マグネシウム)、からなる群より選択される少なくとも一種の元素で構成されている少なくとも一種の半導体材料を含んでいてもよい。また、上記量子ドットは、二成分コア型、三成分コア型、四成分コア型、コアシェル型またはコアマルチシェル型であってもよい。また、上記量子ドットは、上記元素の少なくとも一種がドープされたナノ粒子を含んでいてもよく、組成傾斜した構造を備えていてもよい。
 HTL2は、EML3に正孔を輸送する層である。HTL2は、EML3と接触して設けられている。なお、HTL2は、正孔の輸送を阻害する機能を有していてもよい。
 HTL2は、図1に示すように、キャリア輸送性材料(第1キャリア輸送性材料)として正孔輸送性材料2aを含むとともに、バインダとして第1高分子2bを含んでいる。
 上記正孔輸送性材料としては、p型半導体等の無機化合物が挙げられる。上記p型半導体としては、例えば、金属酸化物、IV族半導体、II-VI族化合物半導体、III-V族化合物半導体、非晶質半導体等が挙げられる。上記金属酸化物としては、例えば、酸化ニッケル(NiO)、酸化チタン(TiO)、酸化モリブデン(MoO、MoO)、酸化マグネシウム(MgO)、ランタン酸ニッケル(LaNiO)等が挙げられる。上記IV族半導体としては、例えば、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)等が挙げられる。上記II-VI族化合物半導体としては、例えば、硫化亜鉛(ZnS)、セレン化亜鉛(ZnSe)等が挙げられる。上記III-V族化合物半導体としては、例えば、砒化アルミニウム(AlAs)、砒化ガリウム(GaAs)、砒化インジウム(InAs)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ガリウム(GaN)、窒化インジウム(InN)、燐化ガリウム(GaP)等が挙げられる。上記非晶質半導体としては、例えば、p型水素化アモルファスシリコン、p型水素化アモルファス炭化シリコン等が挙げられる。これら正孔輸送性材料は、一種類のみを用いてもよい。また、これら正孔輸送性材料は、適宜、二種類以上を混合して用いてもよく、これら正孔輸送性材料の混晶であってもよい。
 これら正孔輸送性材料2aは、耐久性に優れ、信頼性が高いとともに、塗布法で成膜が可能であり、成膜が容易であることから、無機粒子であることが望ましく、上記例示の無機化合物からなる微粒子(ナノ粒子)であることがより望ましい。そのなかでも、上記正孔輸送性材料2aは、金属酸化物または該金属酸化物の混晶系の微粒子(ナノ粒子)であることが、特に望ましい。なお、説明の便宜上、以下、金属酸化物または該金属酸化物の混晶系の微粒子を総称して、単に「金属酸化物ナノ粒子」と記す)。上記金属酸化物ナノ粒子が特に好ましい理由としては、上記金属酸化物ナノ粒子が、特に耐久性が高く、また、第1高分子2bが金属酸化物ナノ粒子の表面の水酸基と脱水縮合することで第1高分子2bと化学的に結合が可能であることが挙げられる。また、正孔輸送性材料2aは、正孔輸送性を有するワイドギャップの金属酸化物ナノ粒子であることが好ましい。したがって、上記正孔輸送性材料2aは、例えば、酸化ニッケル、酸化チタン、酸化モリブデン、酸化マグネシウム、ランタン酸ニッケルからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属酸化物ナノ粒子を含むことが望ましい。
 また、上記正孔輸送性材料2aに用いられるナノ粒子は、ナノ粒子であれば、その形状並びにサイズは特に限定されるものではないが、個数平均粒径(直径)が0.5~20nmの範囲内の球状のナノ粒子であることが好ましい。上記個数平均粒径が小さすぎると、キャリア輸送性が低下するとともに、上記ナノ粒子の凝集が生じ易くなる。このため、上記個数平均粒径は、0.5nm以上であることが望ましい。一方、上記ナノ粒子の個数平均粒径(直径)が大きすぎると、得られるナノ粒子膜の表面粗さが大きくなり、電界集中が起こり易くなる。このため、上記個数平均粒径は、成膜後のナノ粒子膜の平滑性の観点から、20nm以下であることが望ましい。
 なお、本開示において、ナノ粒子の個数平均粒径は、その種類に拘らず、溶液中では、動的光散乱、薄膜中では、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて測定できる。本開示において、ナノ粒子の平均粒径とは、粒度分布における積算値50%におけるナノ粒子の直径を示す。
 第1高分子2bは、主鎖に、ケイ素原子(Si原子)と酸素原子(O原子)とが結合したシロキサン結合(Si-O結合)の繰り返しであるポリシロキサン結合を含み、その側鎖にπ共役電子対を有する官能基を有する高分子である。また、上記第1高分子2bの重量平均分子量は、特に限定されるものではないが、溶液中では、溶媒への溶解度の観点から、1000以上、10000以下の範囲内であることが好ましく、成膜後に加熱した後の状態では、10000以上であることが望ましい。
 上記第1高分子2bは、導電性の高分子である。上記第1高分子2bは、上述したように、主鎖にポリシロキサン結合を含み、その側鎖にπ共役電子対を有する官能基を有する高分子であればよい。したがって、上記第1高分子2bは、例えば、上記ポリシロキサン結合を構成するSi原子が三つの酸素原子および一つの有機基と結合したT体(T単位)のSi原子であり、上記有機基が、π共役電子対を有する官能基である高分子であってもよい。また、上記第1高分子2bは、上記ポリシロキサン結合を構成するSi原子が二つの酸素原子および二つの有機基と結合したD体(D単位)のSi素原子であり、二つの有機基のうち少なくとも一方がπ共役電子対を有する官能基である高分子であってもよい。なお、上記ポリシロキサン結合を構成するSi原子がD体のSi素原子である場合、一方の有機基がπ共役電子対を有する官能基であれば、他方の有機基は、特に限定されない。上記他方の官能基は、例えば、炭素数1~10の、無置換または一部の水素原子が置換されたアルキル基であってもよい。勿論、上記Si原子に結合する二つの有機基がそれぞれπ共役電子対を有する官能基であることが、より望ましい。また、上記第1高分子2bは、上記ポリシロキサン結合を構成するSi原子が、D体のSi原子およびT体のSi原子を含み、側鎖にπ共役電子対を有する官能基を有する高分子であってもよい。
 つまり、上記第1高分子2bは、例えば、下記構造式(1)で示される繰り返し構造を有する、T体(T単位:-RSiO-)のSi原子を有するポリシロキサンであってもよい。また、上記第1高分子2bは、T体のSi原子と、下記構造式(2)で示される繰り返し単位を有する、D体(D単位:-RSiO-)のSi原子と、を有するポリシロキサンであってもよい。このようにT体のSi原子とD体のSi原子との両方を含むポリシロキサンにおいて、下記構造式(2)で示されるD体の繰り返し単位の含有率は、モル比で20%以下であることが好ましい。上記D体の繰り返し単位の含有率がモル比で20%を超えると、ポリシロキサンがオイル状になるおそれがある。また、上記第1高分子2bは、例えば、下記構造式(3)で示される構造単位と、下記構造式(4)で示される構造単位とをそれぞれ有する、ブロック共重合体、あるいはランダム共重合体、あるいは交互共重合体等であってもよい。つまり、下記構造式(3)で示される構造単位と、下記構造式(4)で示される構造単位とは、互いに結合されていてもよい。
 固体に含まれるT体およびD体のSi原子の比率は、固体29Si-NMR測定により定量することができる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000001
 なお、上記構造式(1)・(3)中、Rは、π共役電子対を有する官能基を示す。また、上記構造式(2)・(4)中、Rは、π共役電子対を有する官能基を示し、Rは、π共役電子対を有する官能基または炭素数1~10の、無置換または一部の水素原子が置換されたアルキル基を示す。また、上記構造式(1)中、nは、10~10000の整数を示す。上記構造式(2)中、mは、10~10000の整数を示す。
 本実施形態によれば、上記R、R、Rで示される官能基の種類を変更することで、正孔移動度を変更することが可能であり、これにより、正孔移動度を制御することができる。
 これらポリシロキサンのなかでも、上記第1高分子2bとしては、上記構造式(1)で示される、T単位のSi原子を有するポリシロキサンであるポリシルセスキオキサン(以下、「PSQ」と記す)が特に望ましい。PSQは、耐久性および塗布性が高く、熱硬化性を有している。このため、上記第1高分子2bは、上記PSQを主成分として含むことが望ましい。PSQは、シロキサン結合を構成するSi原子が3つの酸素原子と結合し、該Si原子1つにつき有機基を1つ有する、T体のSi原子を有するポリシロキサンの総称である。
 上記構造式(1)で示されるPSQとしては、例えば、下記構造式(5)で示されるPSQが挙げられる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000002
 なお、上記構造式(5)中、Rは側鎖であり、それぞれ独立して、π共役電子対を有する官能基を示す。
 但し、構造式(1)で示されるPSQは、上記構造式(5)で示される、ランダム構造のシルセスキオキサン骨格を有するPSQに限定されるものではない。構造式(1)で示されるPSQは、規則的な分子構造および高次構造を有する可溶性のラダー状構造を持つシルセスキオキサン骨格を有するPSQであってもよく、籠状構造を持つシルセスキオキサン骨格を有するPSQをランダム構造の中に含んでいてもよい。
 R、R、Rで示される、π共役電子対を有する官能基としては、五員環、六員環、七員環、の何れかからなるアリール基;上記アリール基の融合環(縮合環);上記アリール基の誘導体;上記アリール基の融合環の誘導体;五員環、六員環、七員環、の何れかからなり、かつ、窒素、硫黄、酸素、ホウ素からなる群より選ばれる少なくとも一種のヘテロ原子を1~3個含むヘテロアリール基;上記ヘテロアリール基の融合環;上記ヘテロアリール基の誘導体;上記ヘテロアリール基の融合環の誘導体;からなる群より選ばれる少なくとも一種の官能基が挙げられる。なお、ここで、上記アリール基とは、五員環、六員環、七員環、の何れかからなるアリール基を示す。また、上記ヘテロアリール基とは、五員環、六員環、七員環、の何れかからなり、かつ、窒素、硫黄、酸素、ホウ素からなる群より選ばれる少なくとも一種のヘテロ原子を1~3個含むヘテロアリール基を示す。上記ヘテロアリール基としては、例えば、含窒素ヘテロアリール基、含硫黄ヘテロアリール基、含酸素ヘテロアリール基、含ホウ素ヘテロアリール基等が挙げられる。これら含窒素ヘテロアリール基、含硫黄ヘテロアリール基、含酸素ヘテロアリール基、含ホウ素ヘテロアリール基は、上記アリール基に含まれるメチン(-CH=)基およびビニレン(-CH=CH-)基のうち少なくとも一方が、1~3個、窒素原子、硫黄原子、酸素原子、またはホウ素原子に置換されていればよい。
 正孔輸送性材料2aと第1高分子2bとは、前述したように化学的に結合され、それにより複合化されていてもよく、化学的に結合することなく、単に混合されていてもよい。
 例えば、第1高分子2bは、図1に一点鎖線で枠囲みして示すように、シロキサン結合により、正孔輸送性材料2aの表面に結合していてもよい。図1は、一例として、第1高分子2bにおけるπ共役電子対を有する官能基がフェニル基である場合を例に挙げて図示している。
 なお、第1高分子2bは、正孔輸送性材料2aが例えば金属酸化物ナノ粒子である場合、複数の金属酸化物ナノ粒子と複合化されていてもよい。具体的には、例えば、1つの第1高分子2bが、複数の金属酸化物ナノ粒子とそれぞれ化学的に結合していてもよい。
 詳しくは後述するが、第1高分子2bは、その出発物質を加水分解することでシラノール(-SiOH)基を生成する。正孔輸送性材料2aが例えば前述したように金属酸化物のナノ粒子である場合、上記シラノール基が金属酸化物のナノ粒子の表面の水酸基と脱水縮合し、さらに自己縮合することで、金属酸化物のナノ粒子と第1高分子2bとが複合化する。なお、このとき、ポリシロキサン結合を構成するSi原子がD体であるかT体であるかに拘らず、正孔輸送性材料2aと第1高分子2bとの複合体を得ることはできる。しかしながら、上記第1高分子2bがPSQであれば、上記第1高分子2bとして、正孔輸送性材料2aを被覆する被膜を形成することができる。したがって、上記第1高分子2bがPSQであれば、上記複合体として、第1高分子2bが例えば金属酸化物のナノ粒子を被覆した複合体を得ることができる。
 このように、第1高分子2bが正孔輸送性材料2aを被覆していることで、キャリア(この場合は正孔)のホッピング伝導の頻度を高めることができる。
 また、金属酸化物のナノ粒子の表面には、一般的に、水酸基が存在する。前述したようにEML3が発光材料として量子ドットを含む場合、金属酸化物のナノ粒子が量子ドットと接触すると、発光素子10の発光効率が低下する。これは、水酸基が有する双極子モーメントが発生する電場に量子ドットが晒されると、量子ドットの励起子が、電子と正孔とに分離してしまう可能性があるためである。このように、水酸基が有する双極子モーメントは、量子ドットの励起子を、電子と正孔とに分離し、消光(励起子消光)してしまう可能性がある。
 しかしながら、上述したように金属酸化物のナノ粒子と第1高分子2bとが化学的に結合しているとともに、第1高分子2bが金属酸化物のナノ粒子を覆っていることで、金属酸化物のナノ粒子の表面の水酸基をほぼ完全に消失させることができる。このため、上述したようにEML3に隣接するHTL2が金属酸化物のナノ粒子を含むことで、量子ドットと、金属酸化物のナノ粒子との間の距離が近くても、励起子消光が発生せず、発光効率を増大させることができる。したがって、この場合、EML3に隣接するHTL2が金属酸化物のナノ粒子を含んでいたとしても、駆動電圧の上昇を招くことなく、発光効率、耐久性、並びにキャリアバランスを従来よりも向上させることができる。
 また、前述したようにPSQは熱硬化性樹脂である。このように第1高分子2bとして熱硬化性樹脂を使用することで、例えばEML3の塗布プロセスで、溶媒によって溶解されることを、抑制もしくは防止することができる。
 以上のように、HTL2は、正孔輸送性材料2aと第1高分子2bとを含む混合膜で形成される。HTL2は、正孔輸送性材料2aと第1高分子2bとの堆積層で形成されていることが望ましく、正孔輸送性材料2aと第1高分子2bとの複合体の堆積層で形成されていることがより望ましい。しかしながら、これに限定されるものではなく、HTL2は、正孔輸送性材料2aおよび第1高分子2b以外の、他の材料を含んでいてもよい。
 上記他の材料としては、特に限定されるものではないが、例えば、PVK(ポリビニルカルバゾール)、TFB(ポリ[(9,9-ジオクチルフルオレニル-2,7-ジイル)-co-(4,4’-(N-4-sec-ブチルフェニル))ジフェニルアミン])等の正孔輸送性の高分子が挙げられる。
 また、HTL2における、正孔輸送性材料2aと第1高分子2bとの混合割合(正孔輸送性材料2a:第1高分子2b)は、後述する、ETL4における、電子輸送性材料4aと第2高分子4bとの混合割合と同じ理由から、体積比で、15:85~90:10であることが望ましく、30:70~80:30であることがより望ましい。上記理由については、後で、図を参照して説明する。
 なお、HTL2が、上記他の材料を含む場合、HTL2における、上記他の材料の含有量は、高分子の縮合を妨げないために、体積比で20%以下であることが望ましく、10%以下であることがより望ましい。
 ETL4は、EML3に電子を輸送する層である。ETL4は、EML3と接触して設けられている。なお、ETL4は、正孔の輸送を阻害する機能を有していてもよい。
 ETL4は、キャリア輸送性材料(第2キャリア輸送性材料)として、電子輸送性材料4aを含むとともに、バインダとして第2高分子4bを含んでいる。
 上記電子輸送性材料としては、n型半導体等の無機化合物が挙げられる。上記n型半導体としては、例えば、金属酸化物、II-VI族化合物半導体、III-V族化合物半導体、IV-IV族化合物半導体、非晶質半導体等が挙げられる。上記金属酸化物としては、例えば、酸化亜鉛(ZnO)、酸化チタン(TiO)、酸化インジウム(In)、酸化スズ(SnO、SnO)、酸化セリウム(CeO)等が挙げられる。上記II-VI族化合物半導体としては、例えば、硫化亜鉛(ZnS)、セレン化亜鉛(ZnSe)等が挙げられる。上記III-V族化合物半導体としては、例えば、砒化アルミニウム(AlAs)、砒化ガリウム(GaAs)、砒化インジウム(InAs)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ガリウム(GaN)、窒化インジウム(InN)、燐化ガリウム(GaP)等が挙げられる。上記IV-IV族化合物半導体としては、例えば、シリコンゲルマニウム(SiGe)、シリコンカーバイド(SiC)等が挙げられる。上記非晶質半導体としては、例えば、水素化アモルファスシリコン等が挙げられる。これら電子輸送性材料は、一種類のみを用いてもよく、適宜、二種類以上を混合して用いてもよく、これら電子輸送性材料の混晶系であってもよい。
 これら電子輸送性材料4aは、耐久性に優れ、信頼性が高いとともに、塗布法で成膜が可能であり、成膜が容易であることから、無機粒子であることが望ましく、上記例示の無機化合物からなる微粒子(ナノ粒子)であることがより望ましい。そのなかでも、上記電子輸送性材料4aは、正孔輸送性材料2a同様、金属酸化物ナノ粒子(つまり、金属酸化物または該金属酸化物の混晶系の微粒子)であることが、特に望ましい。この理由としては、金属酸化物ナノ粒子が、特に耐久性が高く、また、第2高分子4bが金属酸化物ナノ粒子の表面の水酸基と脱水縮合することで第2高分子4bと化学的に結合が可能であることが挙げられる。また、電子輸送性材料4aは、電子輸送性を有するワイドギャップの金属酸化物ナノ粒子であることが好ましい。したがって、上記電子輸送性材料4aは、例えば、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化インジウム、酸化スズ、酸化セリウムからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属酸化物ナノ粒子を含むことが望ましい。
 また、上記電子輸送性材料4aに用いられるナノ粒子は、正孔輸送性材料2a同様、ナノ粒子であれば、その形状並びにサイズは特に限定されるものではないが、個数平均粒径(直径)が0.5nm~20nmの範囲内の球状のナノ粒子であることが好ましい。上記個数平均粒径が小さすぎると、キャリア輸送性が低下するとともに、上記ナノ粒子の凝集が生じ易くなる。このため、上記個数平均粒径は、0.5nm以上であることが望ましい。一方、上記ナノ粒子の個数平均粒径(直径)が大きすぎると、成膜されるナノ粒子膜の表面粗さが大きくなり、電界集中が生じ易くなる。このため、上記個数平均粒径は、成膜後のナノ粒子膜の平滑性の観点から、20nm以下であることが望ましい。なお、ナノ粒子の平均粒径の定義並びにその測定方法は、前述した通りである。
 第2高分子4bは、主鎖に、ケイ素原子(Si原子)と酸素原子(O原子)とが結合したシロキサン結合(Si-O結合)の繰り返しであるポリシロキサン結合を含み、その側鎖に、炭素数1~10の、無置換または一部の水素原子が置換されたアルキル基を有する高分子である。また、上記第2高分子4bの重量平均分子量は、特に限定されるものではないが、溶液中では、溶媒への溶解度の観点から、1000以上、10000以下の範囲内であることが好ましく、成膜後に加熱した後の状態では、10000以上であることが望ましい。
 上記第2高分子4bは、絶縁性、あるいは、第1高分子2bよりもキャリア移動度の低い導電性の高分子である。上記第2高分子4bは、上述したように、主鎖にポリシロキサン結合を含み、その側鎖に、炭素数1~10の、無置換または一部の水素原子が置換されたアルキル基を有する高分子であればよい。したがって、上記第2高分子4bは、例えば、上記ポリシロキサン結合を構成するSi原子がT体(T単位)のSi原子であり、該Si原子に結合する有機基が、炭素数1~10の、無置換または一部の水素原子が置換されたアルキル基である高分子であってもよい。また、上記第2高分子4bは、上記ポリシロキサン結合を構成するSi原子がD体(D単位)のSi素原子であり、該Si原子に結合する二つの有機基が、それぞれ炭素数1~10の、無置換または一部の水素原子が置換されたアルキル基である高分子であってもよい。また、上記第2高分子4bは、上記ポリシロキサン結合を構成するSi原子が、D体のSi原子およびT体のSi原子を含み、側鎖に、炭素数1~10の、無置換または一部の水素原子が置換されたアルキル基を有する高分子であってもよい。
 つまり、上記第2高分子4bは、例えば、下記構造式(6)で示される繰り返し構造を有する、T体(T単位:-RSiO-)のSi原子を有するポリシロキサンであってもよい。また、上記第2高分子4bは、T体のSi原子と、下記構造式(7)で示される繰り返し単位を有する、D体(D単位:-RSiO-)のSi原子と、を有するポリシロキサンであってもよい。このようにT体のSi原子とD体のSi原子との両方を含むポリシロキサンにおいて、下記構造式(7)で示されるD体の繰り返し単位の含有率は、モル比で20%以下であることが好ましい。上記D体の繰り返し単位の含有率がモル比で20%を超えると、ポリシロキサンがオイル状になるおそれがある。また、上記第2高分子4bは、例えば、下記構造式(8)で示される構造単位と、下記構造式(9)で示される構造単位とをそれぞれ有する、ブロック共重合体、あるいはランダム共重合体、あるいは交互共重合体等であってもよい。つまり、下記構造式(8)で示される構造単位と、下記構造式(9)で示される構造単位とは、互いに結合されていてもよい。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000003
 なお、上記構造式(6)・(8)中、Rは、炭素数1~10の、無置換または一部の水素原子が置換されたアルキル基を示す。また、上記構造式(7)・(9)中、R、Rは、それぞれ独立して、炭素数1~10の、無置換または一部の水素原子が置換されたアルキル基を示す。また、上記構造式(6)中、jは、10~10000の整数を示す。上記構造式(7)中、kは、10~10000の整数を示す。
 なお、上記R、R、Rは、それぞれ、炭素数1~5の、無置換または一部の水素原子が置換されたアルキル基であることがより望ましく、炭素数1~5の無置換のアルキル基であることがより一層望ましい。上記R、R、Rの炭素数が大きくなればなるだけ、ETL4における、隣り合う電子輸送性材料4a間の距離d2が長くなる。この結果、電子輸送性材料4a同士のキャリア輸送性が悪化される。そのため、上記R、R、Rは、なるべく、炭素数が小さい官能基であることが望ましい。
 本実施形態によれば、上記R、R、Rで示される官能基の種類を変更することで、電子移動度を変更することが可能であり、これにより、電子移動度を制御することができる。
 これらポリシロキサンのなかでも、上記第2高分子4bとしては、上記構造式(6)で示される、T単位のSi原子を有するポリシロキサンであるPSQが特に望ましい。PSQは、耐久性および塗布性が高く、熱硬化性を有している。このため、上記第2高分子4bは、上記PSQを主成分として含むことが望ましい。
 上記構造式(6)で示されるPSQとしては、例えば、下記構造式(10)で示されるPSQが挙げられる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000004
 なお、上記構造式(10)中、Rは側鎖であり、それぞれ独立して、炭素数1~10の、無置換または一部の水素原子が置換されたアルキル基を示す。
 但し、構造式(6)で示されるPSQは、上記構造式(10)で示される、ランダム構造のシルセスキオキサン骨格を有するPSQに限定されるものではない。構造式(6)で示されるPSQは、規則的な分子構造および高次構造を有する可溶性のラダー状構造を持つシルセスキオキサン骨格を有するPSQであってもよく、籠状構造を持つシルセスキオキサン骨格を有するPSQをランダム構造の中に含んでいてもよい。
 なお、R、R、Rにおいて、アルキル基が有し得る置換基(言い替えれば、一部の水素原子が置換されていてもよい置換基)としては、例えば、アミノ(-NH)基、メルカプト(-SH)基、ビニル(CH=CH-)基、フルオロ(-F)基等が挙げられる。
 電子輸送性材料4aと第2高分子4bとは、前述したように化学的に結合され、それにより複合化されていてもよく、化学的に結合することなく、単に混合されていてもよい。
 例えば、第2高分子4bは、図1に一点鎖線で枠囲みして示すように、シロキサン結合により、電子輸送性材料4aの表面に結合していてもよい。図1は、一例として、第2高分子4bにおける側鎖(炭素数1~10の、無置換または一部の水素原子が置換されたアルキル基)が、メチル基である場合を例に挙げて図示している。
 なお、第2高分子4bは、電子輸送性材料4aが例えば金属酸化物ナノ粒子である場合、複数の金属酸化物ナノ粒子と複合化されていてもよい。具体的には、例えば、1つの第2高分子4bが、複数の金属酸化物ナノ粒子とそれぞれ化学的に結合していてもよい。
 第2高分子4bは、第1高分子2bと同じく、その出発物質を加水分解することでシラノール(-SiOH)基を生成する。電子輸送性材料4aが例えば前述したように金属酸化物のナノ粒子である場合、上記シラノール基が金属酸化物のナノ粒子の表面の水酸基と脱水縮合し、さらに自己縮合することで、金属酸化物のナノ粒子と第2高分子4bとが複合化する。なお、このとき、ポリシロキサン結合を構成するSi原子がD体であるかT体であるかに拘らず、電子輸送性材料4aと第2高分子4bとの複合体を得ることはできる。しかしながら、上記第2高分子4bがPSQであれば、上記第2高分子4bとして、電子輸送性材料4aを被覆する被膜を形成することができる。したがって、上記第2高分子4bがPSQであれば、上記複合体として、第2高分子4bが例えば金属酸化物のナノ粒子を被覆した複合体を得ることができる。
 このように、電子輸送性材料4aが金属酸化物ナノ粒子である場合、上述したように金属酸化物ナノ粒子と第2高分子4bとが化学的に結合しているとともに、第2高分子4bが金属酸化物ナノ粒子を覆っていることで、金属酸化物ナノ粒子の表面の水酸基をほぼ完全に消失させることができる。このため、上述したようにEML3に隣接するETL4が金属酸化物ナノ粒子を含むことで、量子ドットと、金属酸化物ナノ粒子との間の距離が近くても、励起子消光が発生せず、発光効率を増大させることができる。したがって、この場合、EML3に隣接するETL4が金属酸化物ナノ粒子を含んでいたとしても、駆動電圧の上昇を招くことなく、発光効率、耐久性、並びにキャリアバランスを従来よりも向上させることができる。
 以上のように、ETL4は、電子輸送性材料4aと第2高分子4bとを含む混合膜で形成される。ETL4は、電子輸送性材料4aと第2高分子4bとの堆積層で形成されていることが望ましく、電子輸送性材料4aと第2高分子4bとの複合体の堆積層で形成されていることがより望ましい。しかしながら、これに限定されるものではなく、ETL4は、電子輸送性材料4aおよび第2高分子4b以外の、他の材料を含んでいてもよい。
 上記他の材料としては、特に限定されるものではないが、例えば、PMMA(ポリメタクリル酸)、PEI(ポリエチレンイミン)、PEIE(ポリエチレンイミンエトキシド)等の絶縁性高分子;PCBM([6,6]-フェニル-C61-酪酸メチルエステル)等の電子輸送性高分子;等が挙げられる。
 なお、ETL4における、電子輸送性材料4aの含有量、例えば、上記混合膜の体積に対する電子輸送性材料4aの体積比(より具体的には、電子輸送性材料4aと第2高分子4bとの合計の体積に対する電子輸送性材料4aの体積の比率)については、後で説明する。また、ETL4における、第2高分子4bの含有量等についても、後で併せて説明する。
 なお、上記発光素子10における各層の層厚は、従来と同様に設定することができ、特に限定されない。例えば、キャリア輸送層(HTL2、ETL4)の層厚は、2nm以上、500nm以下の範囲内に設定される。各層の層厚は、薄いとピンホールによる短絡が生じやすくなり、厚いと駆動電圧が上昇する。このため、各層の層厚は、2nm~500nmの範囲内であることが望ましく、20nm~50nmの範囲内であることがより望ましい。
 (発光素子10の製造方法)
 次に、発光素子10の製造方法の一例について、図1を参照して以下に説明する。
 図1に示すように、本実施形態に係る発光素子10の製造工程では、まず、図示しない基板上に、陽極1を形成する(ステップS1、第1電極形成工程)。陽極1の形成には、例えば、スパッタ法、真空蒸着法、CVD(化学蒸着)法、プラズマCVD法、印刷法等、陰極の形成方法として従来公知の各種方法を用いることができる。
 次いで、陽極1上に、HTL2を形成(積層)する(ステップS2、第1層形成工程)。HTL2の形成には、例えば、ゾルゲル法、スパッタ法、CVD法、スピンコート法、ディップコート法等の塗布法が用いられる。
 例えば、陽極1上における、HTL2を形成すべき位置に、正孔輸送性材料2aと、第1高分子2bもしくはその前駆体のシラノール(モノマー、オリゴマー等)と、を含む混合液を塗布し、乾燥させることにより、HTL2を形成(積層)することができる。
 上記混合液には、正孔輸送性材料2aと、第1高分子2bの原料となるモノマーおよび該モノマーを縮合した分子の少なくとも一方を含む化合物と、をゾルゲル反応させてなる混合液を使用してもよい。第1高分子2bの原料となるモノマーとしては、例えば、トリアルコキシシラン、ジアルコキシシラン等が挙げられる。これにより、正孔輸送性材料2aと第1高分子2bとの複合体を含むHTL2を形成することができる。
 但し、反応性の官能基を持たないジアルコキシシランを主とする前駆体は、重合して高分子化しても固化せず、最終的に得られる膜(具体的には、正孔輸送性材料2aとして用いられる金属酸化物ナノ粒子と、第1高分子2bとして上記前躯体からなる高分子とを含む混合膜)が固体とならない。アクリル基やエポキシ基等、反応性の官能基を持つジアルコキシシランは、重合開始剤を高分子と共に混合することにより固化することができるが、重合開始剤はデバイス中に残存すると、耐久性の劣化を招くという課題があるため好ましくない。このため、前駆体がジアルコキシシランを含む場合は、反応性の官能基を持たないジアルコキシシランがトリアルコキシランに対してモル比で20%以下となるようにジアルコキシシランを含むことが好ましい。
 なお、ゾルゲル反応では、溶液中で、加水分解を行い、その後、脱水縮合を行うことで、溶液をゾルに変える。その後、さらに反応を進めることで、ゾルをゲルに変える。この場合の反応については、後で例を挙げて具体的に説明する。
 次いで、HTL2上に、該HTL2に接して、EML3を形成(積層)する(ステップS3、発光層形成工程)。EML3の形成には、EMLの形成方法として従来公知の各種方法を用いることができる。EMLの形成方法としては、例えば、蒸着法、印刷法、インクジェット法、スピンコート法、キャスティング法、ディッピング法、バーコート法、ブレードコート法、ロールコート法、グラビアコート法、フレキソ印刷法、スプレーコート法、フォトリソグラフィー法、自己組織化法(交互吸着法、自己組織化単分子膜法)等が挙げられる。
 その後、EML3上に、ETL4を形成(積層)する(ステップS4、第2層形成工程)。ETL4の形成には、HTL2と同じく、例えば、ゾルゲル法、スパッタ法、CVD法、スピンコート法、ディップコート法等の塗布法が用いられる。
 この場合、EML3上における、ETL4を形成すべき位置に、電子輸送性材料4aと、第2高分子4bもしくはその前駆体のシラノール(モノマー、オリゴマー等)と、を含む混合液を塗布し、乾燥させることにより、ETL4を形成(積層)することができる。
 上記混合液には、電子輸送性材料4aと、第2高分子4bの原料となるモノマーおよび該モノマーを縮合した分子の少なくとも一方を含む化合物と、をゾルゲル反応させてなる混合液を使用してもよい。第2高分子4bの原料となるモノマーとしては、例えば、トリアルコキシシラン、ジアルコキシシラン等が挙げられる。これにより、電子輸送性材料4aと第2高分子4bとの複合体を含むETL4を形成することができる。この場合にも、上記ゾルゲル反応では、ステップS2と同じく、溶液中で、加水分解を行い、その後、脱水縮合を行うことで、溶液をゾルに変える。その後、さらに反応を進めることで、ゾルをゲルに変える。
 次いで、陰極5を形成(積層)する(ステップS5、第2電極形成工程)。陰極5の形成には、陽極の形成方法として従来公知の各種方法を用いることができる。具体的には、陰極5の形成には、前述した、陽極1の形成方法と同様の方法を用いることができる。以上の方法により、発光素子10を製造することができる。
 (ゾルゲル法を用いたHTL2およびETL4の形成)
 以下では、第1高分子2bの原料となるモノマー並びに第2高分子4bの原料となるモノマーがトリアルコキシシランである場合を例に挙げて、上記原料の加水分解並びに脱水縮合によるHTL2およびETL4の形成方法について説明する。
 図2は、トリアルコキシシランの加水分解を示す反応スキームを示す図である。なお、図2中、Rは、前記RまたはRを示す。また、Yは、互いに独立して、炭素数1~4のアルキル基を示す。
 上記トリアルコキシシランとしては、例えば、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、3―アミノプロピルトリエトキシシラン、3-カルバゾリルプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3,3,3-トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、3-カルバゾリルプロピルエトキシシラン、N-(3-トリメトキシシリルプロピル)ピロール等が挙げられる。
 図2に示すように、トリアルコキシシランを、酸または塩基触媒下で加水分解すると、アルコキシ(-OY)基の一部または全部が水酸基化(シラノール基化)したシランが得られる。トリアルコキシ基を水酸基化すると、脱水縮合が生じ易くなる。なお、前記RおよびRは、加水分解を受けない。
 なお、図示はしないが、ジアルコキシシランを、酸または塩基触媒下で加水分解した場合にも、アルコキシ(-OY)基の一部または全部が水酸基化したシランが得られる。ジアルコキシ基を水酸基化した場合にも、脱水縮合が生じ易くなる。なお、前記R、R、RおよびRは、加水分解を受けない。
 図3は、水酸基を有するシランの一例として、トリアルコキシシランのトリアルコキシ基が全て水酸基化したトリシラノールの脱水縮合を示す反応スキームを示す図である。
 図2に示すトリアルコキシシランの加水分解後、引き続き脱水縮合を行うことで、図3に示すように、例えば前記構造式(5)または前記構造式(10)で示されるPSQが得られる。
 図4は、正孔輸送性材料2aが金属酸化物ナノ粒子である場合に、トリアルコキシシランの加水分解により得られたトリシラノールが、金属酸化物ナノ粒子の表面の水酸基と反応して金属酸化物ナノ粒子の表面に固定される反応スキームを模式的に示す図である。
 図4に示すようにトリアルコキシシランの加水分解によりシラノール(-SiOH)基が生成されると、図5に示すように、このシラノール基が金属酸化物ナノ粒子の表面の水酸基に吸着される。その後、例えば加熱処理を行うことで、金属酸化物ナノ粒子の表面の水酸基に吸着したシラノール基が、脱水縮合によってシロキサン結合を形成し、金属酸化物ナノ粒子の表面に固定される。これにより、金属酸化物ナノ粒子の表面の水酸基を消失させることができる。
 一方、図3に示したように、トリアルコキシシランの加水分解により得られたトリシラノールは、自己縮合により、PSQを形成する。
 図5は、正孔輸送性材料2aが金属酸化物ナノ粒子である場合に、トリアルコキシシランの加水分解により得られたトリシラノールが、金属酸化物ナノ粒子の表面に固定される一方、自己縮合によりPSQを形成する反応スキームを模式的に示す図である。
 図5に示すように、トリアルコキシシランの加水分解により得られたトリシラノールは、例えば加熱することによって、金属酸化物ナノ粒子の表面の水酸基と脱水縮合する一方、トリシラノール同士(つまり、水酸基を有するシラン同士)で脱水縮合する。これにより、金属酸化物ナノ粒子の表面に、PSQまたはその前駆体のシラノール(モノマー、オリゴマー等)が固定される。トリアルコキシシランおよびトリアルコキシシランを縮合した分子(PSQの前駆体のシラノール)は、重合がある程度進んだ状態でも溶解性があり、かつ、金属酸化物ナノ粒子のような酸化物の表面と結合を生じる。
 なお、図5では、正孔輸送性材料2aが金属酸化物ナノ粒子である場合を例に挙げて図示しているが、電子輸送性材料4aが金属酸化物ナノ粒子である場合も、図5と同じである。
 前述したように、上記加水分解は、溶液中で行われる。このため、上記加水分解を行う場合、反応容器内に、例えば金属酸化物ナノ粒子を溶媒に分散させた分散液と、第1高分子2bあるいは第2高分子4bの出発原料となるモノマーと、加水分解用の水および触媒とを加えて、上記反応容器を密閉する。そして、撹拌しながら上記モノマーの加水分解を行う。撹拌には、公知の各種撹拌装置を用いることができる。
 前述したように上記触媒は塩基触媒であってもよいが、上記触媒には、ギ酸、塩酸、硝酸等の酸触媒が好適に用いられる。
 また、上記溶媒には、エタノール等のアルコール溶媒;トルエン;等の有機溶媒が用いられる。
 上記モノマーに対する触媒の添加量は、上記溶媒に対し、0.1~10体積%の範囲内であることが好ましい。
 上記溶媒中の金属酸化物ナノ粒子の濃度は、高濃度では金属酸化物ナノ粒子同士の凝集が生じることから、上記溶媒に対し1~100mg/mlの範囲内であることが好ましい。
 上記金属酸化物ナノ粒子に対する上記モノマーの混合割合は、例えば、最終的に得られる混合膜における金属酸化物ナノ粒子の体積と第1高分子2bあるいは第2高分子4bの体積との比率と同じである。上記混合膜が、金属酸化物ナノ粒子と第1高分子2bあるいは第2高分子4bとの複合体からなる場合、金属酸化物ナノ粒子の体積に対する第1高分子2bあるいは第2高分子4bの体積は、上記混合膜の体積に対する金属酸化物ナノ粒子の体積比で規定される。
 なお、加水分解用の水は、上記モノマーにおけるアルコキシ基と等モルの水を使用すればよい。
 また、加水分解における反応温度並びに反応時間は、該反応(つまり、加水分解)が完結するように適宜設定すればよい。このため、加水分解における反応温度は、特に限定されるものではないが、トリアルコキシシランの加水分解の速度および重合反応の速度を調節する上で、0~100℃の範囲内とすることが好ましい。加水分解における反応時間は、金属酸化物ナノ粒子表面の水酸基を十分に反応させるため、1~48時間の範囲内とすることが好ましい。
 脱水縮合は室温でも生じるが、熱を加えると速やかに進む。このため、縮合後のPSQの熱分解温度未満の温度で加熱することにより、上記脱水縮合を行ってもよい。前記R(つまり、RまたはR)が例えばメチル基またはフェニル基であるPSQは、450℃の熱分解温度を有する。したがって、前記ステップS2およびステップS4では、前記混合液を、450℃未満の温度で加熱してもよい。これにより、メチル基またはフェニル基が熱分解してシリカが生成されないように、前記RまたはRで示される官能基を保護することができるとともに、脱水縮合を速やかに進行させることができる。
 脱水縮合は、溶媒の酸性度に関わらず進行する。したがって、上記加水分解後、そのまま脱水縮合を行うことができる。この際、ギ酸、アンモニア等の低分子量の触媒を用いると、揮発、洗浄等によって触媒が高分子中に残存しにくくなるため、より望ましい。
 なお、脱水縮合は、溶媒中の金属酸化物ナノ粒子の濃度、並びに、PSQおよびその前駆体となる化合物の濃度を保ちながら行われる。このため、加水分解後、反応容器を開放し、溶媒を滴下して、金属酸化物ナノ粒子の濃度、並びに、PSQおよびその前駆体となる化合物の濃度を保ちながら、触媒および水を揮発させる。
 脱水縮合における反応時間は、該反応(つまり、脱水縮合)が完結するように適宜設定すればよく、特に限定されないが、加水分解および脱水縮合を十分に行うためには、1~48時間の範囲内とすることが好ましい。
 このように、ゾルゲル法を用いて例えばHTL2を形成する場合、まず、金属酸化物ナノ粒子と第1高分子2bとの複合体を含む混合液(ゾル)を、陽極1上における、HTL2を形成すべき位置に塗布する。そして、上記混合液(ゾル)を焼成する等して、脱水縮合反応を完結させてゾルをゲル化(高分子量化)させ、さらに、溶媒を完全に除去して乾燥させることで、上記複合体を固形化させる。これにより、HTL2として、金属酸化物ナノ粒子と第1高分子2bとの複合体からなる膜が形成される。
 同様に、上述したようにゾルゲル法を用いてETL4を形成する場合、まず、金属酸化物ナノ粒子と第2高分子4bとの複合体を含む混合液(ゾル)を、EML3上における、ETL4を形成すべき位置に塗布する。そして、上記混合液(ゾル)を、焼成する等して、脱水縮合反応を完結させてゾルをゲル化(高分子量化)させ、さらに、溶媒を完全に除去して乾燥させることで、上記複合体を固形化させる。これにより、ETL4として、金属酸化物ナノ粒子と第2高分子4bとの複合体からなる膜が形成される。
 (効果)
 上述したように、本実施形態に係る発光素子10は、HTL2が、正孔輸送性材料2aと、主鎖にポリシロキサン結合を含み、その側鎖にπ共役電子対を有する官能基を有する第1高分子2bと、を含んでいる。このため、図1に示すように、HTL2では、正孔が、正孔輸送性材料2aから他の正孔輸送性材料2aに、直接ホッピング伝導するだけでなく、間に、第1高分子2bの側鎖のπ共役電子対を有する官能基を介して段階的にホッピング伝導する。つまり、本実施形態によれば、正孔が、正孔輸送性材料2aから他の正孔輸送性材料2aにホッピング伝導する際に、正孔輸送性材料2aから一旦上記官能基にホッピング伝導した後、該官能基から上記他の正孔輸送性材料2aにホッピング伝導することが可能となる。このため、HTL2の正孔移動度が改善される。
 一方、本実施形態に係る発光素子10は、ETL4が、電子輸送性材料4aと、主鎖にポリシロキサン結合を含み、その側鎖に、炭素数1~10の、無置換または一部の水素原子が置換されたアルキル基を有する第2高分子4bと、を含んでいる。このため、図1に示すように、ETL4において、電子は、電子輸送性材料4aから他の電子輸送性材料4aに直接ホッピング伝導することで移動する。
 このように、本実施形態によれば、上記第1高分子2bと上記第2高分子4bとに異なる高分子を使用する(具体的には、上述したように官能基を変える)ことで、キャリアのホッピング伝導の頻度を調整し、HTL2とETL4とのキャリア移動度を制御することができる。
 特に、電界発光素子は、一般的に、ETLと比較して、HTLのキャリア移動度が低い傾向にある。このため、EMLにおいて、正孔の注入量よりも電子の注入量の方が多く、従来、電子供給過多、正孔不足が問題となっている。
 本実施形態によれば、上述したようにHTL2における正孔のホッピング伝導の頻度をETL4における電子のホッピング伝導の頻度よりも高くすることで、正孔注入を促進し、電子注入を抑制することができる。このように、本実施形態によれば、キャリア移動度が異なるキャリア輸送性材料からなるHTL2とETL4との導電性を揃え、キャリア移動度を揃えることができるので、正孔と電子とのキャリアバランスを改善することができる。この結果、本実施形態によれば、正孔と電子との再結合確率を従来よりも向上させることができ、従来よりも発光効率を向上させることができる。
 また、本実施形態によれば、上記第1高分子2bおよび第2高分子4bが、主成分としてPSQを含むことで、耐久性が向上するとともに、成膜性が向上し、ピンホールを抑制することができる。さらに、上記第1高分子2bおよび第2高分子4bが、主成分としてPSQを含むことで、上記正孔輸送性材料2aおよび上記電子輸送性材料4aに金属酸化物ナノ粒子を用いた場合の該金属酸化物ナノ粒子表面の水酸基に由来する消光を抑制することができる。この結果、外部量子効率が高い発光素子10を提供することができる。
 また、上記第1高分子2bおよび第2高分子4bは、例えば金属酸化物ナノ粒子と化学的に結合することで、薄い高分子被膜を形成する。このため、駆動電圧が上昇せず、駆動電圧の低いデバイスが作製できる。
 しかも、本実施形態によれば、上述したように塗布プロセスで容易に上記HTL2およびETL4を形成することができる。したがって、製造コストを抑えることができる。
 (ETL4における電子輸送性材料4aおよび第2高分子4bの含有量)
 次に、ETL4における電子輸送性材料4aの含有量として、前記混合膜の体積に対する電子輸送性材料4aの体積比について、図6を参照して以下に説明する。以下では、電子輸送性材料4aが、半導体ナノ粒子(具体的には、金属酸化物ナノ粒子)であり、第2高分子4bが、前記構造式(10)で示されるPSQである場合を例に挙げて説明する。
 電子輸送性材料4a(半導体ナノ粒子)の体積および第2高分子4bの体積は、これら電子輸送性材料4aと第2高分子4bとを含む混合液中のそれぞれの重量をそれぞれの密度(単位体積当たりの重量)で割ることで求めることができる。例えば、π共役電子対を有する官能基がフェニル基であるPSQの密度は1.56g/cmであり、ZnOの密度は5.61g/cmである。
 ここで、半導体ナノ粒子の体積と高分子の体積との和を、これら半導体ナノ粒子と高分子とからなる混合膜の体積とし、半導体ナノ粒子が混合膜中に均一に分散すると仮定する。この場合、上記混合膜中における個数平均半導体ナノ粒子間距離(以下、「ナノ粒子間距離」と記す)は、図6に示すように近似的に表せる。
 上記ナノ粒子間距離は、半導体ナノ粒子の平均粒子中心間距離から該半導体ナノ粒子の個数平均粒径を引いた値を示す。半導体ナノ粒子の平均粒子中心間距離は、半導体ナノ粒子を含む膜の小角X線散乱あるいはTEMを用いて測定できる。半導体ナノ粒子の個数平均粒径は、前述したように、動的光散乱あるいはTEMを用いて測定できる。半導体ナノ粒子の個数平均粒径とは、前述したように、粒度分布における積算値50%における半導体ナノ粒子の直径を示す。
 また、図6中、「ナノ粒子体積/混合膜体積」とは、上記混合膜の体積に対する、半導体ナノ粒子の体積の比率を示す。図6中、「半導体ナノ粒子径」とは、上記「半導体ナノ粒子の個数平均粒径」を示す。
 なお、半導体ナノ粒子が球状と仮定すると、六方最密充填構造でも空隙が生じ、上記混合膜の体積に対する半導体ナノ粒子の体積は、上記混合膜の体積に上記空隙分の体積を含めれば、74%程度が限界(半導体ナノ粒子同士が接触)となる。図6は、上記混合膜の体積から上記空隙分の体積を差し引いた図を示している。
 金属酸化物ナノ粒子等の半導体ナノ粒子の集積膜中では、トンネル効果によるキャリアのホッピング伝導により、キャリア移動が生じる。ETL4のように絶縁体で覆われた半導体ナノ粒子間のトンネル電流は、ナノ粒子間距離が短いほど生じ易い。より具体的には、上記トンネル電流は、一般的には、ナノ粒子間距離が3nm以下の場合に生じる。また、上記トンネル電流は、ナノ粒子間距離が1.5nm以下の場合に特に生じ易い。
 第2高分子4bは、バンドギャップが大きい絶縁体であり、第2高分子4bはキャリア輸送性材料として用いることはできないが、半導体ナノ粒子と第2高分子4bとの複合体は、キャリア輸送性材料として用いることができる。
 図6では、半導体ナノ粒子にZnOナノ粒子を使用している。したがって、図6は、ETL4を構成する、電子輸送性材料4a(半導体ナノ粒子)と第2高分子4bとを含む混合膜の体積に対する電子輸送性材料4aの体積の比率と、上記混合膜における個数平均半導体ナノ粒子間距離との関係を示している。また、図6に示す「ナノ粒子間距離」(つまり、個数平均半導体ナノ粒子間距離)は、図1に示す、ETL4における、隣り合う電子輸送性材料4a間の距離d2に相当する。なお、前記「個数平均半導体ナノ粒子間距離」あるいは「ナノ粒子間距離」は、「個数平均金属酸化物ナノ粒子間距離」(言い換えれば、隣り合う金属酸化物の微粒子間の個数平均粒子間距離)と読み替えることができる。
 図6は、半導体ナノ粒子と第2高分子4bとの混合膜の体積に対する半導体ナノ粒子の体積比がどの程度であれば、半導体ナノ粒子と第2高分子4bとの混合膜における、隣り合う半導体ナノ粒子間の平均の距離がどの程度になるかを概算した結果である。したがって、図6から、半導体ナノ粒子を被覆する第2高分子4bの量がどの程度であれば、隣り合う半導体ナノ粒子間の平均の距離がどの程度になるかが判る。
 前述したように、トンネル電流は、半導体ナノ粒子間距離が3nm以下の場合に生じる。したがって、上記混合膜がキャリア移動度を有するためには、ナノ粒子間距離を3nm以下とする必要がある。図6に示すように、ナノ粒子間距離を3nm以下とするためには、上記混合膜(言い替えれば、上記混合膜からなるETL4)の体積に対する半導体ナノ粒子の体積比が15%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましい。
 一方で、上記混合膜の体積に対する半導体ナノ粒子の体積比が多いと、半導体ナノ粒子の表面の水酸基が反応せずに残存する。このため、上記混合膜の体積に対する半導体ナノ粒子の体積比は、90%以下であることが好ましく、80%以下であることがより好ましい。
 したがって、上記混合膜の体積(言い替えれば、ETL4の体積)に対する電子輸送性材料4aの体積の比率は、15%以上、90%以下であることが好ましい。また、上記混合膜の体積に対する電子輸送性材料4aの体積の比率の下限値としては、30%がより好ましく、上限値としては、80%がより好ましい。
 上記比率が90%以下であることで、水酸基の残存量を少なくしつつ、上記比率が15%以上であることにより、良好なキャリア移動度(本実施形態では電子移動度)を実現することができる。
 以上のように、ETL4における、電子輸送性材料4aと第2高分子4bとの混合割合(電子輸送性材料4a:第2高分子4b)は、体積比で、15:85~90:10であることが望ましく、30:70~80:30であることがより望ましい。
 なお、図6では、半導体ナノ粒子に、電子輸送性材料であるZnOナノ粒子を使用したが、半導体ナノ粒子に、正孔輸送性材料を用いた場合にも、図6で示す結果と同様の結果が得られる。このため、前述したように、HTL2における、正孔輸送性材料2aと第1高分子2bとの混合割合(正孔輸送性材料2a:第1高分子2b)もまた、体積比で、15:85~90:10であることが望ましく、30:70~80:30であることがより望ましい。
 なお、ETL4が、上記他の材料を含む場合、ETL4における、上記他の材料の含有量は、高分子の縮合を妨げないために、体積比で20%以下であることが望ましく、10%以下であることがより望ましい。
 また、ETL4における、隣り合う電子輸送性材料4a間の距離d2(ナノ粒子間距離)は、前述した理由から、3nm以下であることが好ましく、1.5nm以下であることがより好ましい。
 また、前述したように、HTL2では、第1高分子2bにおけるπ共役電子対を有する官能基を介して正孔のホッピング伝導が可能である。このため、HTL2では、例えば、ETL4よりもナノ粒子間距離を大きくすることも可能である。つまり、図1に示す、HTL2における、隣り合う正孔輸送性材料2a間の距離d1(ナノ粒子間距離)は、ETL4における、隣り合う電子輸送性材料4a間の距離d2よりも大きくてもよい。
 具体的には、HTL2における、隣り合う正孔輸送性材料2a間の距離d1は、5nm以下であることが好ましく、3nm以下であることがより好ましい。HTL2における、隣り合う正孔輸送性材料2a間の距離d1が5nm以下であれば、第1高分子2bにおけるπ共役電子対を有する官能基を介して正孔のホッピング伝導が可能であり、ETL4よりもキャリアのホッピング伝導の頻度を高くすることができる。
 (変形例1)
 なお、本実施形態では、EML3が、発光材料として量子ドットを含む量子ドット発光層である場合を例に挙げて説明した。
 従来、量子ドット発光層を備えている発光素子では、キャリア輸送層に金属酸化物ナノ粒子を用いた場合、該金属酸化物ナノ粒子の表面の水酸基による量子ドットの失活が顕著であった。しかしながら、本実施形態によれば、この量子ドットの失活を防ぐことができる。
 しかしながら、EML3は、量子ドット発光層に限定されるものではない。EML3は、発光材料として、量子ドットに代えて、例えば、各色に発光する有機発光材料を備えていてもよい。
 発光素子10が、上述したように量子ドットを発光材料とするQLEDである場合、陽極1と陰極5との間の駆動電流によって電子と正孔とがEML3内で再結合する。そして、この再結合によって生じたエキシトンが、量子ドットの伝導帯準位から価電子帯準位に遷移する過程で光(蛍光)が放出される。
 一方、発光素子10が、発光材料として有機発光材料を用いたOLEDである場合、陽極1と陰極5との間の駆動電流によって電子と正孔とがEML3内で再結合し、これによって生じたエキシトンが基底状態に遷移する過程で光が放出される。
 また、発光素子10は、OLED、QLED以外の発光素子(例えば無機発光ダイオード等)であってもよい。
 (変形例2)
 また、図1では、発光素子10が、陽極1、HTL2(第1層)、EML3、ETL4(第2層)、陰極5が、下層側からこの順に積層された構成を有している場合を例に挙げて説明した。しかしながら、本実施形態は、これに限定されるものではない。発光素子10は、陰極5、ETL4(第2層)、EML3、HTL2(第1層)、陽極1が、下層側からこの順に積層された構成を有していてもよい。また、陰極5とEML3との間には、陰極5とEML3との間の中間層として、HILおよびETL4が、陰極5側からこの順に設けられていてもよい。また、陽極1とHTL2との間には、陽極1とHTL2との間の中間層として、例えば、EILが別途設けられていてもよい。何れの場合にも、上述した効果と同じ効果を得ることができる。
 〔実施形態2〕
 本実施形態では、実施形態1との相異点について説明する。なお、説明の便宜上、実施形態1で説明した構成要素と同じ機能を有する構成要素については、同じ符号を付記し、その詳細な説明を省略する。
 図7は、本実施形態に係る発光素子20の概略構成の一例を、その要部を拡大して模式的に示す図と併せて示す断面図である。
 図7に示す発光素子20は、陽極1、HTL2(第1層)、EML3、ETL41、陰極5が、下層側からこの順に積層された構成を有している。
 本実施形態に係る発光素子20は、図7に示すように、ETL4に代えてETL41が設けられている点でのみ、実施形態1に係る発光素子10と異なっている。
 ETL41は、ETL4同様、EML3に電子を輸送する層であり、EML3と接触して設けられている。なお、ETL41は、ETL4同様、正孔の輸送を阻害する機能を有していてもよい。
 ETL41は、前記第2高分子4bを含んでいない点が、ETL4と異なる。つまり、ETL41は、キャリア輸送性材料(第2キャリア輸送性材料)として、電子輸送性材料41aを含んでいる。電子輸送性材料41aとしては、公知の各種電子輸送性材料を用いることができる。したがって、電子輸送性材料41aは、電子輸送性材料4aと同じであってもよい。なお、電子輸送性材料41aとしては、オキサジアゾール類、トリアゾール類、フェナントロリン類、シロール誘導体、シクロペンタジエン誘導体等の有機電子輸送性材料を用いてもよい。上記オキサジアゾール誘導体としては、(2-(4-ビフェニリル)-5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール)(PBD)等が挙げられる。これら電子輸送性材料は、一種類のみを用いてもよく、適宜、二種類以上を混合して用いてもよい。
 前述したように、電界発光素子は、一般的に、ETLと比較して、HTLのキャリア移動度が低い傾向にある。このため、EMLにおいて、正孔の注入量よりも電子の注入量の方が多く、従来、電子供給過多、正孔不足が問題となっている。
 実施形態1で説明したように、HTL2が正孔輸送性材料2aと前記第1高分子2bとを含むことで、従来よりも正孔のホッピング伝導の頻度を高めることが可能であり、HTL2の正孔移動度を改善することができる。
 したがって、本実施形態によれば、ETL41において電子注入を抑制することはできないものの、HTL2において、正孔注入を促進することはできる。つまり、本実施形態によれば、第1高分子2bによって、キャリアのホッピング伝導の頻度を調整し、HTL2のキャリア移動度を制御することができる。したがって、本実施形態でも、正孔と電子とのキャリアバランスを従来よりも改善することができる。この結果、本実施形態でも、正孔と電子との再結合確率を従来よりも向上させることができ、従来よりも発光効率を向上させることができる。
 (変形例)
 なお、図7では、発光素子20がETL41を含む場合を例に挙げて図示した。しかしながら、本実施形態に係る発光素子20は、図7に示す構成に限定されるものではない。上記発光素子20は、ETLを有さない構成であっても構わない。また、陰極5とEML3との間には、陰極5とEML3との間の中間層として、EILおよびETL41が、陰極5側からこの順に設けられていてもよい。また、陽極1とHTL2との間には、陽極1とHTL2との間の中間層として、例えば、HILが別途設けられていてもよい。
 〔実施形態3〕
 本実施形態では、実施形態1、2との相異点について説明する。なお、説明の便宜上、実施形態1、2で説明した構成要素と同じ機能を有する構成要素については、同じ符号を付記し、その詳細な説明を省略する。
 図8は、本実施形態に係る発光素子30の概略構成の一例を、その要部を拡大して模式的に示す図と併せて示す断面図である。
 図8に示す発光素子30は、陽極1、HIL21(第1層)、HTL22、EML3、ETL4(第2層)、陰極5が、下層側からこの順に積層された構成を有している。
 実施形態1、2では、第1層が正孔輸送層である場合を例に挙げて説明した。しかしながら、キャリアバランスを調整するためには、第1層は、第1電極とEMLとの間に設けられていればよい。したがって、第1電極が陽極であり、第1層が正孔輸送性を有する層である場合、第1層は、必ずしもHTLである必要はなく、HILであってもよい。
 図8に示す発光素子30は、HTL2に代えてHIL21およびHTL22が設けられている点でのみ、実施形態1に係る発光素子10と異なっている。
 HIL21は、HTL22に正孔を輸送する層であり、HTL22は、HTL2同様、EML3に電子を輸送する層である。なお、HIL21またはHTL22は、電子の輸送を阻害する機能を有していてもよい。
 HIL21は、図8に示すように、キャリア輸送性材料(第1キャリア輸送性材料)として正孔輸送性材料21aを含むとともに、バインダとして第1高分子21bを含んでいる。正孔輸送性材料21aとしては、正孔輸送性材料2aと同じ材料を用いることができる。第1高分子21bとしては、第1高分子2bと同じ材料を用いることができる。したがって、HIL21における、隣り合う正孔輸送性材料21a間の距離d3(ナノ粒子間距離)は、HTL2における、隣り合う正孔輸送性材料2a間の距離d1と同様に設定することができる。
 HTL22は、前記第1高分子2bを含んでいない点が、HTL2と異なる。つまり、HTL22は、キャリア輸送性材料(第3キャリア輸送性材料)として、正孔輸送性材料22aを含んでいる。正孔輸送性材料22aとしては、公知の各種正孔輸送性材料を用いることができる。したがって、正孔輸送性材料22aは、正孔輸送性材料2aと同じであってもよい。なお、正孔輸送性材料22aとしては、PEDOT:PSS(ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)-ポリ(4-スチレンスルホネート))、PVK(ポリビニルカルバゾール)、TFB(ポリ[(9,9-ジオクチルフルオレニル-2,7-ジイル)-co-(4,4’-(N-4-sec-ブチルフェニル))ジフェニルアミン)])等の有機正孔輸送性材料を用いてもよい。これら正孔輸送性材料は、一種類のみを用いてもよく、適宜、二種類以上を混合して用いてもよい。
 本実施形態に係る発光素子30は、HIL21が、正孔輸送性材料21aと、主鎖にポリシロキサン結合を含み、その側鎖にπ共役電子対を有する官能基を有する第1高分子21bと、を含んでいる。このため、図8に示すように、HIL21では、正孔が、正孔輸送性材料21aから他の正孔輸送性材料21aに、直接ホッピング伝導するだけでなく、間に、第1高分子21bの側鎖のπ共役電子対を有する官能基を介して段階的にホッピング伝導する。つまり、正孔が、正孔輸送性材料21aから他の正孔輸送性材料21aにホッピング伝導する際に、正孔輸送性材料21aから一旦上記官能基にホッピング伝導した後、該官能基から上記他の正孔輸送性材料21aにホッピング伝導することが可能となる。このため、HIL21の正孔移動度が改善される。
 一方、本実施形態に係る発光素子30は、ETL4が、電子輸送性材料4aと、主鎖にポリシロキサン結合を含み、その側鎖に、炭素数1~10の、無置換または一部の水素原子が置換されたアルキル基を有する第2高分子4bと、を含んでいる。このため、図8に示すように、ETL4において、電子は、電子輸送性材料4aから他の電子輸送性材料4aに直接ホッピング伝導することで移動する。
 したがって、本実施形態によれば、第1高分子21bと第2高分子4bとに異なる高分子を使用する(具体的には、上述したように官能基を変える)ことで、キャリアのホッピング伝導の頻度を調整し、HIL21とETL4とのキャリア移動度を制御することができる。
 本実施形態によれば、上述したようにHIL21における正孔のホッピング伝導の頻度をETL4における電子のホッピング伝導の頻度よりも高くすることで、正孔注入を促進し、電子注入を抑制することができる。したがって、実施形態1と同じく、本実施形態でも、EML3に注入される正孔および電子の注入量を揃えることができるので、正孔と電子とのキャリアバランスを改善することができる。この結果、本実施形態によれば、正孔と電子との再結合確率を従来よりも向上させることができ、従来よりも発光効率を向上させることができる。
 なお、本実施形態でも、上記第1高分子21bおよび第2高分子4bが、主成分としてPSQを含むことで、耐久性が向上するとともに、成膜性が向上し、ピンホールを抑制することができる。また、本実施形態でも、第2高分子4bが、主成分としてPSQを含むことで、上記電子輸送性材料4aに金属酸化物ナノ粒子を用いた場合の該金属酸化物ナノ粒子表面の水酸基に由来する消光を抑制することができる。この結果、外部量子効率が高い発光素子30を提供することができる。
 また、上記第1高分子21bおよび第2高分子4bは、例えば金属酸化物ナノ粒子と化学的に結合することで、薄い高分子被膜を形成する。このため、駆動電圧が上昇せず、駆動電圧の低いデバイスが作製できる。
 また、本実施形態でも、塗布プロセスで容易に上記HIL21およびETL4を形成することができる。したがって、製造コストを抑えることができる。
 (変形例1)
 なお、図8では、図1に示す発光素子10において、HTL2に代えてHIL21およびHTL22が設けられている場合を例に挙げて図示した。しかしながら、本実施形態は、これに限定されるものではない。本実施形態に係る発光素子30は、例えば、図7に示す発光素子20において、HTL2に代えてHIL21およびHTL22が設けられている構成を有していてもよい。この場合、本実施形態に係る効果と、実施形態2に係る効果とを併せ持つ発光素子を提供することができる。なお、本実施形態でも、実施形態1、2と同様の変形が可能であることは言うまでもない。
 (変形例2)
 前述したように、キャリアバランスを調整するためには、第1層は、第1電極とEMLとの間に設けられていればよい。したがって、第1電極が陽極であり、第1層が正孔輸送性を有する層である場合、HILおよびHTLが、それぞれ、正孔輸送性材料と、主鎖にポリシロキサン結合を含み、その側鎖にπ共役電子対を有する官能基を有する第1高分子と、を含んでいてもよい。つまり、第1層は、第1電極とEMLとの間に少なくとも一層設けられていればよく、複数層設けられていてもよい。
 同様に、第2電極が陰極であり、第2層が電子輸送性を有する層である場合、EILおよびETLが、それぞれ、電子輸送性材料と、主鎖にポリシロキサン結合を含み、その側鎖に、炭素数1~10の、無置換または一部の水素原子が置換されたアルキル基を有する第2高分子と、を含んでいてもよい。つまり、第2層は、第2電極とEMLとの間に少なくとも一層設けられていればよく、複数層設けられていてもよい。
 また、図1あるいは図8に示すETLに代えて、EILが第2層であっても構わない。つまり、図1あるいは図8において、ETL4に代えて、電子輸送性材料と第2高分子とを含むEILと、第2高分子を含まないETLとが、陰極5側からこの順に設けられていても構わない。
 〔実施形態4〕
 本実施形態では、実施形態1~3との相異点について説明する。なお、説明の便宜上、実施形態1~3で説明した構成要素と同じ機能を有する構成要素については、同じ符号を付記し、その詳細な説明を省略する。
 実施形態1~3では、第1電極が陽極1であり、第2電極が陰極5である場合を例に挙げて説明した。しかしながら、第1電極が陰極5であり、第2電極が陽極1であってもよい。
 キャリアバランスは、陽極1と陰極5との間の各層(機能層)の材料並びに層厚、エネルギー準位等の組み合わせによって変わる。したがって、EML3において電子の注入量よりも正孔の注入量の方が多い場合(例えば、HTLと比較してETLのキャリア移動度が低い組み合わせの場合)、陰極5とEML3との間に、第1層が設けられていてもよい。前述したように、第1層は、主鎖にポリシロキサン結合を含み、その側鎖にπ共役電子対を有する官能基を有する第1高分子と、第1キャリア輸送性材料と、を含む。この場合、第1キャリア輸送性材料には、電子輸送性材料が用いられる。
 また、このとき、陽極1とEML3との間に、第2層が設けられていてもよい。前述したように、第2層は、主鎖にポリシロキサン結合を含み、その側鎖に炭素数1~10の、無置換または一部の水素原子が置換されたアルキル基を有する第2高分子と、第2キャリア輸送性材料と、を含む。この場合、第2キャリア輸送性材料には、正孔輸送性材料が用いられる。
 図9は、本実施形態に係る発光素子40の概略構成の一例を、その要部を拡大して模式的に示す図と併せて示す断面図である。
 図9に示す発光素子40は、以下の点を除けば、実施形態1に係る発光素子10と同じである。
 図9に示す発光素子40は、陰極5(第1電極)、ETL42(第1層)、EML3、HTL23(第2層)、陽極1が、下層側からこの順に積層された構成を有している。
 なお、図9に示す例では、陰極5が、下層側に設けられた下部電極であり、陽極1が、上層側に設けられた上部電極である。したがって、本実施形態では、陰極5から陽極1に向かう方向を上方向と称し、その反対の方向を下方向と称する。
 ETL42は、ETL4同様、EML3に電子を輸送する層であり、EML3と接触して設けられている。なお、ETL42は、ETL4同様、正孔の輸送を阻害する機能を有していてもよい。
 ETL42は、図9に示すように、キャリア輸送性材料(第1キャリア輸送性材料)として電子輸送性材料42aを含むとともに、バインダとして第1高分子42bを含んでいる。電子輸送性材料42aとしては、電子輸送性材料4aと同じ材料を用いることができる。第1高分子42bとしては、第1高分子2bと同じ材料を用いることができる。
 また、HTL23はHTL2同様、EML3に正孔を輸送する層であり、EML3と接触して設けられている。なお、HTL23は、HTL2同様、電子の輸送を阻害する機能を有していてもよい。
 HTL23は、図9に示すように、キャリア輸送性材料(第2キャリア輸送性材料)として正孔輸送性材料23aを含むとともに、バインダとして第2高分子23bを含んでいる。正孔輸送性材料23aとしては、正孔輸送性材料2aと同じ材料を用いることができる。第2高分子23bとしては、第2高分子4bと同じ材料を用いることができる。
 したがって、HTL23における、隣り合う正孔輸送性材料23a間の距離d5(ナノ粒子間距離)は、ETL4における、隣り合う電子輸送性材料4a間の距離d2と同様に設定することができる。
 また、ETL42における、隣り合う電子輸送性材料42a間の距離d4(ナノ粒子間距離)は、HTL2における、隣り合う正孔輸送性材料2a間の距離d1と同様に設定することができる。
 つまり、実施形態1で説明したように、トンネル電流は、半導体ナノ粒子間距離が3nm以下の場合に生じる。また、上記トンネル電流は、ナノ粒子間距離が1.5nm以下の場合に特に生じ易い。図9に示すように、HTL23において、正孔は、正孔輸送性材料23aから他の正孔輸送性材料23aに直接ホッピング伝導することで移動する。したがって、HTL23における、隣り合う正孔輸送性材料23a間の距離d5は、3nm以下であることが好ましく、1.5nm以下であることがより好ましい。
 また、本実施形態では、上述したように、ETL42が、主鎖にポリシロキサン結合を含み、その側鎖にπ共役電子対を有する官能基を有する第1高分子42bを含む。このため、ETL42では、電子が、電子輸送性材料42aから他の電子輸送性材料42aに、直接ホッピング伝導するだけでなく、間に、第1高分子42bの側鎖のπ共役電子対を有する官能基を介して段階的にホッピング伝導する。つまり、電子が、電子輸送性材料42aから他の電子輸送性材料42aにホッピング伝導する際に、電子輸送性材料42aから一旦上記官能基にホッピング伝導した後、該官能基から上記他の電子輸送性材料42aにホッピング伝導することが可能となる。
 したがって、図9に示す、ETL42における、隣り合う電子輸送性材料42a間の距離d4は、HTL23における、隣り合う正孔輸送性材料23a間の距離d5よりも大きくてもよい。
 具体的には、上記距離d4は、上記距離d1と同じく、5nm以下であることが好ましく、3nm以下であることがより好ましい。上記距離d4が5nm以下であれば、第1高分子42bにおけるπ共役電子対を有する官能基を介して電子のホッピング伝導が可能であり、HTL23よりもキャリアのホッピング伝導の頻度を高くすることができる。
 また、実施形態1で図6を参照して説明したように、キャリア輸送性材料として半導体ナノ粒子を含むとともにバインダとして高分子を含む混合膜の体積に対する半導体ナノ粒子の体積比は、15%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましい。また、実施形態1で説明したように、半導体ナノ粒子の表面の水酸基の残存を考えれば、上記混合膜の体積に対する半導体ナノ粒子の体積比は、90%以下であることが好ましく、80%以下であることがより好ましい。したがって、実施形態1~3とはキャリア輸送性材料と高分子との組みあわせが異なるものの、本実施形態でも、キャリア輸送性材料と高分子とを含む層における、キャリア輸送性材料と高分子との混合割合は、実施形態1~3と同じ範囲内に設定される。
 なお、本実施形態に係る発光素子40の製造方法は、実施形態1に係る発光素子10の製造方法において、「陽極1」、「HTL2」、「ETL4」、「陰極5」、「正孔輸送性材料2a」、「第1高分子2b」、「電子輸送性材料4a」、「第2高分子4b」を、順に、「陰極5」、「ETL42」、「HTL23」、「陽極1」、「電子輸送性材料42a」、「第1高分子42b」、「正孔輸送性材料23a」、「第2高分子23b」と読み替えればよい。
 本実施形態によれば、第1高分子42bと第2高分子23bとに異なる高分子を使用することで、ホッピング伝導の頻度を調整し、ETL42とHTL23とのキャリア移動度を制御することができる。
 本実施形態によれば、上述したようにETL42におけるホッピング伝導の頻度をHTL23におけるホッピング伝導の頻度よりも高くすることで、電子注入を促進し、正孔注入を抑制することができる。このように、本実施形態によれば、EML3において電子の注入量よりも正孔の注入量の方が多い場合(例えば、HTL23と比較してETL42のキャリア移動度が低い組み合わせの場合)、電子のホッピング伝導の頻度を高め、電子注入を促進することができる。したがって、本実施形態でも、EML3に注入される正孔および電子の注入量を揃えることができるので、正孔と電子とのキャリアバランスを改善することができる。この結果、本実施形態によれば、正孔と電子との再結合確率を従来よりも向上させることができ、従来よりも発光効率を向上させることができる。
 また、本実施形態でも、上記第1高分子42bおよび第2高分子23bが、主成分としてPSQを含むことで、耐久性が向上するとともに、成膜性が向上し、ピンホールを抑制することができる。また、本実施形態でも、上記第1高分子42bおよび第2高分子23bが、主成分としてPSQを含むことで、上記電子輸送性材料42aおよび上記正孔輸送性材料23aに金属酸化物ナノ粒子を用いた場合の該金属酸化物ナノ粒子表面の水酸基に由来する消光を抑制することができる。この結果、外部量子効率が高い発光素子40を提供することができる。
 また、上記第1高分子42bおよび第2高分子23bは、例えば金属酸化物ナノ粒子と化学的に結合することで、薄い高分子被膜を形成する。このため、駆動電圧が上昇せず、駆動電圧の低いデバイスが作製できる。
 また、本実施形態でも、塗布プロセスで容易に上記ETL42およびHTL23を形成することができる。したがって、製造コストを抑えることができる。
 〔実施形態5〕
 本実施形態では、主に、実施形態4との相異点について説明する。なお、説明の便宜上、実施形態4で説明した構成要素と同じ機能を有する構成要素については、同じ符号を付記し、その詳細な説明を省略する。
 図10は、本実施形態に係る発光素子50の概略構成の一例を、その要部を拡大して模式的に示す図と併せて示す断面図である。
 図10に示す発光素子50は、陰極5、ETL42(第1層)、EML3、HTL24、陽極1が、下層側からこの順に積層された構成を有している。
 本実施形態に係る発光素子50は、図10に示すように、HTL23に代えてHTL24が設けられている点でのみ、実施形態4に係る発光素子40と異なっている。
 HTL24は、HTL23同様、EML3に正孔を輸送する層であり、EML3と接触して設けられている。なお、HTL24は、HTL23同様、正孔の輸送を阻害する機能を有していてもよい。
 HTL24は、前記第2高分子23bを含んでいない点が、HTL23と異なる。つまり、HTL24は、キャリア輸送性材料(第2キャリア輸送性材料)として、正孔輸送性材料24aを含んでいる。正孔輸送性材料24aとしては、実施形態3に係る正孔輸送性材料22aと同様の材料を用いることができる。
 本実施形態によれば、実施形態4で説明したように、ETL42が電子輸送性材料42aと前記第1高分子42bとを含むことで、従来よりも電子のホッピング伝導の頻度を高めることが可能であり、ETL42の電子移動度を改善することができる。
 したがって、本実施形態によれば、HTL24において正孔注入を抑制することはできないものの、ETL42において、電子注入を促進することはできる。つまり、本実施形態によれば、第1高分子42bによって、キャリアのホッピング伝導の頻度を調整し、ETL42のキャリア移動度を制御することができる。したがって、本実施形態でも、正孔と電子とのキャリアバランスを従来よりも改善することができる。この結果、本実施形態でも、正孔と電子との再結合確率を従来よりも向上させることができ、従来よりも発光効率を向上させることができる。
 (変形例)
 なお、図10では、発光素子50がHTL24を含む場合を例に挙げて図示した。しかしながら、本実施形態に係る発光素子50は、図10に示す構成に限定されるものではない。上記発光素子50は、HTLを有さない構成であっても構わない。また、陽極1とEML3との間には、陽極1とEML3との間の中間層として、HILおよびHTL24が、陽極1側からこの順に設けられていてもよい。また、陰極5とETL42との間には、陰極5とETL42との間の中間層として、例えば、EILが別途設けられていてもよい。
 〔実施形態6〕
 本実施形態では、主に、実施形態4、5との相異点について説明する。なお、説明の便宜上、実施形態4、5で説明した構成要素と同じ機能を有する構成要素については、同じ符号を付記し、その詳細な説明を省略する。
 図11は、本実施形態に係る発光素子60の概略構成の一例を、その要部を拡大して模式的に示す図と併せて示す断面図である。
 図11に示す発光素子60は、陰極5、EIL43(第1層)、ETL44、EML3、HTL23(第2層)、陽極1が、下層側からこの順に積層された構成を有している。
 実施形態4、5では、第1層が電子輸送層である場合を例に挙げて説明した。しかしながら、キャリアバランスを調整するためには、第1層は、第1電極とEMLとの間に設けられていればよい。したがって、第1電極が陰極であり、第1層が電子輸送性を有する層である場合、第1層は、必ずしもETLである必要はなく、EILであってもよい。
 図11に示す発光素子60は、ETL42に代えてEIL43およびETL44が設けられている点でのみ、実施形態5に係る発光素子50と異なっている。
 EIL43は、ETL44に電子を輸送する層であり、ETL44は、ETL42同様、EML3に電子を輸送する層である。なお、EIL43またはETL44は、正孔の輸送を阻害する機能を有していてもよい。
 EIL43は、図11に示すように、キャリア輸送性材料(第1キャリア輸送性材料)として電子輸送性材料43aを含むとともに、バインダとして第1高分子43bを含んでいる。電子輸送性材料43aとしては、電子輸送性材料42aと同じ材料を用いることができる。第1高分子43bとしては、第1高分子42bと同じ材料を用いることができる。したがって、EIL43における、隣り合う電子輸送性材料43a間の距離d6(ナノ粒子間距離)は、ETL42における、隣り合う電子輸送性材料42a間の距離d4と同様に設定することができる。
 ETL44は、前記第1高分子42bを含んでいない点が、ETL42と異なる。つまり、ETL44は、キャリア輸送性材料(第3のキャリア輸送性材料)として、電子輸送性材料44aを含んでいる。電子輸送性材料44aとしては、実施形態2に係る電子輸送性材料41aと同様の材料を用いることができる。
 本実施形態に係る発光素子60は、EIL43が、電子輸送性材料43aと、主鎖にポリシロキサン結合を含み、その側鎖にπ共役電子対を有する官能基を有する第1高分子43bと、を含んでいる。このため、図11に示すように、EIL43では、電子が、電子輸送性材料43aから他の電子輸送性材料43aに、直接ホッピング伝導するだけでなく、間に、第1高分子43bの側鎖のπ共役電子対を有する官能基を介して段階的にホッピング伝導する。つまり、電子が、電子輸送性材料43aから他の電子輸送性材料43aにホッピング伝導する際に、電子輸送性材料43aから一旦上記官能基にホッピング伝導した後、該官能基から上記他の電子輸送性材料43aにホッピング伝導することが可能となる。このため、EIL43の電子移動度が改善される。
 一方、本実施形態に係る発光素子60は、HTL23が、正孔輸送性材料23aと、主鎖にポリシロキサン結合を含み、その側鎖に、炭素数1~10の、無置換または一部の水素原子が置換されたアルキル基を有する第2高分子23bと、を含んでいる。このため、図11に示すように、HTL23において、正孔は、正孔輸送性材料23aから他の正孔輸送性材料23aに直接ホッピング伝導することで移動する。
 したがって、本実施形態によれば、第1高分子43bと第2高分子23bとに異なる高分子を使用することで、キャリアのホッピング伝導の頻度を調整し、EIL43とHTL23とのキャリア移動度を制御することができる。
 本実施形態によれば、上述したようにEIL43における電子のホッピング伝導の頻度をHTL23における正孔のホッピング伝導の頻度よりも高くすることで、電子注入を促進し、正孔注入を抑制することができる。したがって、実施形態4と同じく、本実施形態でも、EML3に注入される正孔および電子の注入量を揃えることができるので、正孔と電子とのキャリアバランスを改善することができる。この結果、本実施形態によれば、正孔と電子との再結合確率を従来よりも向上させることができ、従来よりも発光効率を向上させることができる。
 なお、本実施形態でも、上記第1高分子43bおよび第2高分子23bが、主成分としてPSQを含むことで、耐久性が向上するとともに、成膜性が向上し、ピンホールを抑制することができる。また、本実施形態でも、第2高分子23bが、主成分としてPSQを含むことで、上記正孔輸送性材料23aに金属酸化物ナノ粒子を用いた場合の該金属酸化物ナノ粒子表面の水酸基に由来する消光を抑制することができる。この結果、外部量子効率が高い発光素子60を提供することができる。
 また、上記第1高分子43bおよび第2高分子23bは、例えば金属酸化物ナノ粒子と化学的に結合することで、薄い高分子被膜を形成する。このため、駆動電圧が上昇せず、駆動電圧の低いデバイスが作製できる。
 また、本実施形態でも、塗布プロセスで容易に上記EIL43およびHTL23を形成することができる。したがって、製造コストを抑えることができる。
 (変形例1)
 なお、図11では、図9に示す発光素子40において、ETL42に代えてEIL43およびETL44が設けられている場合を例に挙げて図示した。しかしながら、本実施形態は、これに限定されるものではない。本実施形態に係る発光素子60は、例えば、図10に示す発光素子50において、ETL42に代えてEIL43およびETL44が設けられている構成を有していてもよい。この場合、本実施形態に係る効果と、実施形態5に係る効果とを併せ持つ発光素子を提供することができる。なお、本実施形態でも、実施形態4、5と同様の変形が可能であることは言うまでもない。
 (変形例2)
 前述したように、第1層は、第1電極とEMLとの間に少なくとも一層設けられていればよく、複数層設けられていてもよい。したがって、第1電極が陰極であり、第1層が電子輸送性を有する層である場合、EILおよびETLが、それぞれ、電子輸送性材料と、主鎖にポリシロキサン結合を含み、その側鎖にπ共役電子対を有する官能基を有する第1高分子と、を含んでいてもよい。
 また、前述したように、第2層は、第2電極とEMLとの間に少なくとも一層設けられていればよく、複数層設けられていてもよい。したがって、第2電極が陽極であり、第2層が正孔輸送性を有する層である場合、HILおよびHTLが、それぞれ、正孔輸送性材料と、主鎖にポリシロキサン結合を含み、その側鎖に、炭素数1~10の、無置換または一部の水素原子が置換されたアルキル基を有する第2高分子と、を含んでいてもよい。つまり、図9あるいは図11に示すHTLに代えて、EILが第2層であっても構わない。つまり、図9あるいは図11において、HTL23に代えて、正孔輸送性材料と第2高分子とを含むEILと、第2高分子を含まないHTLとが、陽極1側からこの順に設けられていても構わない。
 本開示は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本開示の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
  1  陽極(第1電極)
  2  HTL(第1の層)
  2a、21a  正孔輸送性材料(第1キャリア輸送性材料、金属酸化物の微粒子)
  2b、21b、42b  第1高分子
  3  EML(発光層)
  4  ETL(第2の層)
  4a、24a  電子輸送性材料(第2キャリア輸送性材料、金属酸化物の微粒子)
  4b、23b  第2高分子
  5  陰極(第2電極)
 10、20、30、40、50、60  発光素子
 21  HIL(第1の層)
 22、24  HTL
 23  HTL(第2の層)
 23a、24a  正孔輸送性材料(第2キャリア輸送性材料、金属酸化物の微粒子)
 41、44  ETL
 42  ETL(第1の層)
 42a、43a  電子輸送性材料(第1キャリア輸送性材料、金属酸化物の微粒子)
 43  EIL(第1の層)

Claims (10)

  1.  第1電極と、第2電極と、
     前記第1電極と前記第2電極との間に設けられた発光層と、
     前記第1電極と前記発光層との間に設けられた、キャリア輸送性を有する第1の層と、を備えており、
     前記第1の層は、第1キャリア輸送性材料と、主鎖にポリシロキサン結合を含み、その側鎖にπ共役電子対を有する官能基を有する第1高分子と、を含むことを特徴とする発光素子。
  2.  前記第1高分子は、前記π共役電子対を有する官能基として、五員環、六員環、七員環、の何れかからなるアリール基;上記アリール基の融合環;上記アリール基の誘導体;上記アリール基の融合環の誘導体;五員環、六員環、七員環、の何れかからなり、かつ、窒素、硫黄、酸素、ホウ素からなる群より選ばれる少なくとも一種のヘテロ原子を1~3個含むヘテロアリール基;上記ヘテロアリール基の融合環;上記ヘテロアリール基の誘導体;上記ヘテロアリール基の融合環の誘導体;からなる群より選ばれる少なくとも一種の官能基を有していることを特徴とする請求項1に記載の発光素子。
  3.  前記第2電極と前記発光層との間に設けられた、キャリア輸送性を有する第2の層をさらに備え、
     前記第2の層は、第2キャリア輸送性材料と、主鎖にポリシロキサン結合を含み、その側鎖に、炭素数1~10の、無置換または一部の水素原子が置換されたアルキル基を有する第2高分子と、を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の発光素子。
  4.  前記アルキル基は、炭素数1~3の無置換のアルキル基であることを特徴とする請求項3に記載の発光素子。
  5.  前記第1電極がアノードであり、
     前記第2電極がカソードであり、
     前記第1の層が正孔輸送層であり、
     前記第2の層が電子輸送層であることを特徴とする請求項3または4に記載の発光素子。
  6.  前記第1キャリア輸送性材料は、酸化ニッケル、酸化チタン、酸化モリブデン、酸化マグネシウム、ランタン酸ニッケルからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属酸化物またはその混晶系の微粒子を含むことを特徴とする請求項5に記載の発光素子。
  7.  前記第2キャリア輸送性材料は、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化インジウム、酸化スズ、酸化セリウムからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属酸化物またはその混晶系の微粒子を含むことを特徴とする請求項5または6に記載の発光素子。
  8.  前記第1電極がカソードであり、
     前記第2電極がアノードであり、
     前記第1の層が電子輸送層であり、
     前記第2の層が正孔輸送層であることを特徴とする請求項3または4に記載の発光素子。
  9.  前記第2キャリア輸送性材料と、前記第2高分子と、が化学的に結合していることを特徴とする請求項3~8の何れか1項に記載の発光素子。
  10.  前記第1キャリア輸送性材料と、前記第1高分子と、が化学的に結合していることを特徴とする請求項1~9の何れか1項に記載の発光素子。
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