WO2021065570A1

WO2021065570A1 - ライナー、ティートカップ及び搾乳装置

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Publication number: WO2021065570A1
Application number: PCT/JP2020/035475
Authority: WO
Inventors: 仁志近藤; 乾　洋治
Original assignee: 株式会社トクヤマ
Priority date: 2019-10-02
Filing date: 2020-09-18
Publication date: 2021-04-08
Also published as: EP3834608A1; AU2020357266A1; CA3113266A1; MX2021003873A; EP3834608A4; CL2021001092A1; BR112021005862A2; US20220346343A1; EP3834608B1; JPWO2021065570A1

Abstract

より確実且つ効果的に、乳汁の逆流を抑制し、乳房炎への感染リスクを低減できるライナー、ティートカップ及び搾乳装置を提供する。本発明は、筒状のシェル２内に、前記シェル２の内面との間に所定の空間が形成されるように配置され、開状態と閉状態との間で弾性変形可能なボア部３ｂと、前記ボア部３ｂの一端側に配置されて前記シェル２の一端部を塞ぎ、乳頭５０が挿入されるとともにベント３ａａが設けられたマウスピース部３ａと、前記ボア部３ｂの他端側に配置されて前記シェル２の他端部を塞ぎ、前記ボア部３ｂにおいて乳頭５０から吸引された乳汁が流通するショートミルクチューブ部３ｄと、を備える筒状のライナー３であって、前記ライナー３の内面における、前記ベント３ａａから前記ボア部３ｂに延びる溝状のベントライン３ｆが設けられている、搾乳装置１０のティートカップ１用のライナー３を提供する。

Description

ライナー、ティートカップ及び搾乳装置

　本発明は、ライナー、ティートカップ及び搾乳装置に関する。

　搾乳時に、牛の乳頭に装着されるティートカップは、内部を乳汁が通過する筒状のライナーと、ライナーの上部の外周を覆い、ライナーとの間に空間を形成するシェルとを備える。そして、ライナー上部の内部に乳頭を挿入させた状態で、シェルとライナーとの間の空間の圧力を変動させる。これにより、ライナー上部を開状態と閉状態との間で弾性変形させることで乳頭をマッサージしつつ、搾乳が行われる。

　ここで、搾乳が行われる乳牛が乳房炎に罹患する場合がある。乳房炎に罹患すると、生産乳量及び乳質が低下し、乳房炎治療費がかかり、出荷制限期間の生乳廃棄が必要となり、さらに罹患牛の淘汰や代替牛の購入費がかかる場合がある。
　このような乳房炎の罹患率は、乳頭口が開いた状態にある乾乳初期の１週間と分娩前後の各１週間が高いと言われている。
　それは、搾乳前の清拭時に拭き取れなかった細菌が乳頭表面に存在し、搾乳時に乳汁中にそれらの細菌が混入し、ライナー内で乳汁の逆流（ｄｒｏｐｌｅｔ現象）が生じた場合に、それらの細菌を含む乳汁が乳頭口から侵入するためである。

　乳房炎を防止するためには、乳汁の逆流を防止することが重要である。乳汁の逆流を防止する技術として、例えば、ライナーの乳頭下端部にクリップを取り付けて、ライナーの開き方を緩やかにしたティートカップ（特許文献１参照）、ライナーの上部に設けられたマウスピース部やシェル内に配置される３の厚みや形状を調整することでライナーの潰れ方を調整したティートカップ（特許文献２参照）、マウスピース部にベントを開けたティートカップ（特許文献３参照）、ライナーの下部のショートミルクチューブ部にベントを開けたティートカップ（特許文献４、５参照）、ショートミルクチューブが接続される部分の容積を大きくしてライナー内で乳汁を滞留させないようにしたミルククロー（特許文献６参照）、ミルククローからの乳汁を排出する管の内径を太くした搾乳システム（特許文献７参照）が開示されている。
　また、非特許文献１には、ショートミルクチューブ部、マウスピース部における好ましい平均真空圧が記載されている。

特許第４３５９７０８号公報米国特許第６７７６１２０号明細書米国特許第８６２７７８５号明細書特表２０１６－０７３８６１号公報米国特許第３４７６０８５号明細書米国特許出願公開第２０１４－０２０９３０号明細書米国特許第５８９６８２７号明細書

M.D.Rasmussen, N.P.Madsen,Effects of Milkline Vacuum, Pulsator Airline Vacuum, and Cluster Weight on Milk Yield, Teat Condition, and Udder Health,Journal of Dairy Science,U.S.A、American Dairy Science Association,January 2000、Vol. 83, Issue 1, p77-84

　しかし、特許文献１のティートカップは構造が複雑で製造が容易ではなく、特許文献２のティートカップは逆流防止効果が十分でなく、特許文献３，４，５のティートカップはマウスピース部やショートミルクチューブ部のベントが汚れによって塞がれ、機能を果たさなくなる可能性が高く、特許文献６，７はミルククローが大きくなるため持ち運びが不便になり、牛の乳頭に装着しにくくなる。
　本発明の課題は、より確実且つ効果的に、乳汁の逆流を抑制し、乳房炎への感染リスクを低減できるライナー、ティートカップ及び搾乳装置を提供することである。

　上記課題を解決するために、本発明は、筒状のシェル内に、前記シェルの内面との間に所定の空間が形成されるように配置され、開状態と閉状態との間で弾性変形可能なボア部と、前記ボア部の一端側に配置されて前記シェルの一端部を塞ぎ、乳頭が挿入されるとともにベントが設けられたマウスピース部と、前記ボア部の他端側に配置されて前記シェルの他端部を塞ぎ、前記ボア部において乳頭から吸引された乳汁が流通するショートミルクチューブ部と、を備える筒状のライナーであって、前記ライナーの内面における、前記ベントから前記ボア部に延びる溝状のベントラインが設けられている、搾乳装置のティートカップ用のライナーを提供する。

　前記ベントラインは、前記ボア部と前記ショートミルクチューブ部との連結部まで延びていてもよい。

　前記ライナーにおける、前記ベントラインが設けられている部分の外面に突条部が設けられていてもよい。

　前記ベントラインの幅よりも、前記突条部の幅が広くてもよい。

　前記ベントラインの、前記ライナーの長手方向と直交する方向の断面積は、前記マウスピース部に設けられた前記ベントの、開口面積よりも大きくてもよい。

　また、上記課題を解決するために、本発明は、前記ライナーと、前記シェルと、を備えるティートカップを提供する。

　さらに、上記課題を解決するために、本発明は、前記ティートカップと、前記ショートミルクチューブ部が連結されるミルククローと、を具備する搾乳装置を提供する。

　本発明によれば、より確実且つ効果的に、乳汁の逆流を抑制し、乳房炎への感染リスクを低減できるライナー、ティートカップ及び搾乳装置を提供することができる。

実施形態に係るライナー３を有する搾乳装置１０の部分縦断面図である。実施形態に係るライナー３を有する搾乳装置１０を備える搾乳システム１００を説明する図である。乳頭５０が挿入されていない状態のライナー３のマウスピース部３ａとボア部３ｂとの部分拡大断面図である。図３のＡ－Ａ断面図である。突条部３ｇの他の形態を示した図である。疑似乳頭をライナー３内に挿入し、疑似乳頭がボア部３ｂの内面に押し付けられてベントライン３ｆ内に入り込む深さｄ´を測定した結果を示す表である。ライナー３にベントライン３ｆを設けた場合の効果を検証する第１の実験を行った結果を示す表である。クローベント３６を設けた場合の効果を検証する第２の実験を行った結果を示す表である。ショートミルクチューブベント３ｄａを設けた場合の効果を検証する第３の実験を行った結果を示す表である。実施形態の変形形態を説明する図である。実施形態の変形形態を説明する図である。実施形態の変形形態を説明する図である。実施形態の変形形態を説明する図である。実施形態の変形形態を説明する図である。実施形態の変形形態を説明する図である。実施形態の変形形態を説明する図である。実施形態の変形形態を説明する図である。実施形態の変形形態を説明する図である。実施形態の変形形態を説明する図である。変形形態の効果を検証する実験を行った結果を示す表である。

　以下、本発明の実施形態について説明する。図１は、実施形態に係るライナー３を有する搾乳装置１０の部分縦断面図である。搾乳装置１０は、複数のティートカップ１と、ミルククロー３０とを備える。図１には、ティートカップ１に挿入された牛の乳頭５０も示す。図２は実施形態に係るライナー３を有する搾乳装置１０を備える搾乳システム１００を説明する図である。

（ティートカップ１）
　図１においては２つティートカップ１を図示するが、搾乳装置１０はこれに限らず、例えば４個や６個のティートカップ１を備えていてもよい。
　ティートカップ１は、筒状のライナー３と、ライナー３の上部の外周を覆うシェル２と、を備える。

（シェル２）
　シェル２は内部圧力の変化により変形しない硬質部材（ステンレスや硬質樹脂）により製造された筒状部材である。シェル２の側面には、後述するミルククロー３０の調圧室３２に配管４を介して接続される連結口２ａが設けられている。

（ライナー３）
　ライナー３は可撓性を有する材料により一体成形された筒状部材である。ライナー３は、上側から、マウスピース部３ａと、ボア部３ｂと、ショートミルクチューブ部３ｄとを備える。

（マウスピース部３ａ）
　マウスピース部３ａは、ライナー３の上端に設けられ、シェル２の上端部を塞ぐとともに、牛の乳頭５０の挿入口となる。

（ボア部３ｂ）
　ボア部３ｂは、マウスピース部３ａから挿入された乳頭５０が入り込む部分で、マウスピース部３ａから連続して下方に延び、外周がシェル２に覆われている。ボア部３ｂの外面とシェル２の内面との間には空間Ｓが形成される。ボア部３ｂは、空間Ｓ内の圧力変動により、開状態と閉状態との間で弾性変形可能である。

（ショートミルクチューブ部３ｄ）
　ショートミルクチューブ部３ｄは、乳頭５０から吸引された乳汁ｍが流通する部分である。ショートミルクチューブ部３ｄにおける上端のボア部３ｂから連続する部分には、ショートミルクチューブ部３ｄとボア部３ｂとの連結部であって、且つシェル２の下端部を保持する肉厚部３ｃが設けられている。ショートミルクチューブ部３ｄは肉厚部３ｃよりさらに下方に延び、下端は後述のミルククロー３０に接続されるインレット部３ｅとなっている（図１参照）。
　図１に示すように、インレット部３ｅの内径Ｒ２は、ショートミルクチューブ部３ｄの中で最小である。ただし、ショートミルクチューブ部３ｄにおける肉厚部３ｃより下部の部分の内径は、全体がインレット部３ｅの内径Ｒ２と等しい一定径であってもよい。

（ミルククロー３０）
　ミルククロー３０は、乳汁室３１と、調圧室３２とを備える。
　乳汁室３１にはショートミルクチューブ部３ｄのインレット部３ｅが挿入されるインレット挿入口３３が設けられ、複数のライナー３から流れてきた乳汁ｍが合流する。ミルククロー３０の乳汁室３１で合流した乳汁ｍは、排出口３４に取り付けられたミルクライン１２を通って図２に示す乳受け容器１３へと流れる。
　調圧室３２は、乳汁室３１の上部に配置される。この調圧室３２には、上述の連結口２ａからの延びる配管４が接続されるとともに、後述のパルセータ１１（図２参照）へ延びるパルセータライン１５が接続されている。パルセータ１１が作動すると、パルセータライン１５及び配管４を通して、ボア部３ｂの外面とシェル２の内面との間に空間Ｓに搾乳用の脈動圧が供給される。

（搾乳システム１００）
　図２に示すように、搾乳システム１００は、上述のティートカップ１と、ミルククロー３０と、パルセータライン１５と、ミルクライン１２との他に、乳受け容器１３と、バルククーラ１４と、トラップ１６と、真空タンク１７と、真空ポンプ１８と、パルセータ１１と、その他、真空調圧器１９及び真空計２０等とを備える。
　なお、以下の実施例、比較例では「ローレベル」の搾乳システム、つまり搾乳システム１００から乳受け容器１３に向かうミルクライン１２が、ミルククロー３０の位置よりも下側に設けられている搾乳システムを用いた。

（パルセータ１１）
　パルセータ１１は、パルセータライン１５を介してミルククロー３０の調圧室３２に接続されている。パルセータ１１は、調圧室３２と配管４を介して接続されたボア部３ｂの外面とシェル２の内面との間の空間Ｓへの空気の導入及び排気を一定の時間間隔で制御する。この空間Ｓの圧力調整により、ボア部３ｂの開閉が行われる。

　すなわち、空間Ｓの内部の空気が排気されると、空間Ｓの圧力はボア部３ｂの内部と同じ圧力となり、ボア部３ｂは開状態となる。一方、空間Ｓの内部に空気が流入されると、空間Ｓの圧力が高まり、ボア部３ｂがへこんだ閉状態となる。このボア部３ｂが開状態と閉状態とを繰り返す伸縮運動によって、乳頭へのマッサージ効果が得られる。これにより、子牛が乳頭を吸って母牛の乳汁を飲むときに行われるマッサージと同様の効果が得られ、射乳が促進される。

（乳受け容器１３）
　乳受け容器１３は、ミルククロー３０からミルクライン１２を介して運ばれた乳汁ｍが一旦、貯留される容器である。

（バルククーラ１４）
　バルククーラ１４は、乳受け容器１３に溜められた乳汁ｍが、乳受け容器１３の底部から配管２１を通って送られて貯蔵される部分である。

（真空ポンプ１８）
　真空ポンプ１８は、真空パイプ２２等を通じてミルククロー３０に接続される。

　本実施形態の搾乳システム１００では、真空ポンプ１８は、真空パイプ２２を介して真空タンク１７に接続される。真空タンク１７は、真空調圧器１９が取り付けられた真空パイプ２３を介してトラップ１６に接続される。トラップ１６は真空パイプ２４を介して乳受け容器１３に接続されるとともにパルセータ１１を介してミルククロー３０に接続される。

　そして、ショートミルクチューブ部３ｄのインレット部３ｅをミルククロー３０のインレット挿入口３３に挿入し、ミルククロー３０の排出口３４にミルクライン１２を取り付ける。そして、シェル２の側部の連結口２ａとミルククロー３０の調圧室３２との間を配管４で接続するとともに、ミルククロー３０の調圧室３２とパルセータ１１との間をパルセータライン１５で接続する。
　次いで、マウスピース部３ａより乳頭５０をボア部３ｂ内に挿入する。

　この状態で、真空ポンプ１８より搾乳用真空圧をライナー３内に連続的に供給するとともに、パルセータ１１からの脈動真空圧を空間Ｓに供給する。
　この脈動真空圧によってボア部３ｂが伸縮し、泌乳が促されて、乳頭５０からボア部３ｂの内部空間内に乳汁ｍが吐出される。吐出された乳汁ｍは、ミルククロー３０を介してミルクライン１２に送られる。

（マウスピースベント３ａａ）
　実施形態のライナー３では、マウスピース部３ａにマウスピースベント３ａａが設けられている。ベントは、マウスピースベント３ａａ以外に、ショートミルクチューブ部３ｄ及びミルククロー３０にも設けてもよい。図１においては、ショートミルクチューブ部３ｄの肉厚部３ｃの側面のショートミルクチューブベント３ｄａ、ミルククロー３０の側面のクローベント３６を図示し、符号を括弧書きで示す。

（ベントライン３ｆ）
　図３は、乳頭５０が挿入されていない状態のライナー３のマウスピース部３ａとボア部３ｂとの部分拡大断面図である。図４は、図３のＡ－Ａ断面図である。

（ベントライン３ｆの延びる範囲）
　ベントライン３ｆは、マウスピースベント３ａａからボア部３ｂの下端のショートミルクチューブ部３ｄとの連結部である肉厚部３ｃまでの内面に設けられている。ベントライン３ｆは、ボア部３ｂの長手方向と直交する方向の断面が半円形の溝状であり、ボア部３ｂの内面に沿って肉厚部３ｃまで直線的に延びている。なお、ベントライン３ｆは、実施形態では直線的に延びるがこれに限定されず、例えば、らせん状に延びていてもよい。

（ベントライン３ｆの数）
　ベントライン３ｆは、実施形態ではマウスピースベント３ａａの数と同じで１本であるが、マウスピースベント３ａａが複数設けられている場合には、ベントライン３ｆもその数に対応して複数であってもよい。その場合、マウスピースベント３ａａ及びベントライン３ｆは、円周に沿って互いに均等な位置に設けられていることが好ましい。

（突条部３ｇ）
　実施形態において、ボア部３ｂにおける、内面にベントライン３ｆが設けられている部分の外面には突条部３ｇが設けられている。
　図４に示す突条部３ｇは、図４の断面において、ベントライン３ｆと同一径上に位置し、ベントライン３ｆの凹みと略同じ形状でボア部３ｂの外面から突出している。

　突条部３ｇは、ベントライン３ｆと同様に、ボア部３ｂの外周に沿って、マウスピースベント３ａａと連結部である肉厚部３ｃまで直線的に延びている。
　ボア部３ｂの内面にベントライン３ｆを設けることにより、その部分においてボア部３ｂが薄くなり、ボア部３ｂの強度が低下する可能性があるが、このようにベントライン３ｆが設けられている部分の外面に突条部３ｇを設けることにより、ボア部３ｂの強度低下を防止することができ、耐久性を向上させることができる。

　図５は、他の形態の突条部３ｇ´を示した図である。突条部３ｇ´は、図４の突条部３ｇと同様にベントライン３ｆと同一径上に位置している。そして、突条部３ｇ´のボア部３ｂの外面からの突出量は、図４の突条部３ｇの場合と等しい。
　しかし、図５の突条部３ｇ´は、ベントライン３ｆの窪みと略同じ形状ではない。突条部３ｇ´の幅Ｗ１は、ベントライン３ｆの幅Ｗよりも広く、突条部３ｇの外面のカーブは、ベントライン３ｆの凹みの内面のカーブよりも緩やかである。突条部３ｇ´の幅Ｗ１とは、図５の断面における、ボア部３ｂの外面から突条部３ｇの外面に変わる２つの角部（変曲点Ｑ１）の間の距離である。

　図４の突条部３ｇの場合、ボア部３ｂの外面から突条部３ｇの外面に変わる角部（変曲点Ｑ）で、ベントライン３ｆの内面と突条部３ｇの外面との距離Ｘが薄くなり、すなわちボア部３ｂの厚みが薄くなる。実施形態でボア部３ｂの厚さｔは３．０ｍｍ程度で、距離Ｘすなわちボア部３ｂの最小厚みは２．１ｍｍである。
　これに対して、図５の突条部３ｇ´は、ボア部３ｂの外面から突条部３ｇの外面に変わる角部（変曲点Ｑ１）で、ベントライン３ｆの内面と突条部３ｇ´の外面との距離Ｘ´は図４の突条部３ｇと比べて長くなり、すなわち、ボア部３ｂの厚みの変動が少ない。実施形態でボア部３ｂの厚さｔは３．０ｍｍ程度で、ボア部３ｂの最小厚みＸ´は２．８ｍｍである。

　ボア部３ｂの厚みが薄くなると、その部分に応力が集中しやすくなり亀裂が入りやすくなる。しかし、図５の突条部３ｇ´の場合、図４の突条部３ｇと比べて、変曲点Ｑ１においてもボア部３ｂの厚みの減少率が少ないので、応力が集中しにくく、図４の突条部３ｇが設けられた場合よりもさらに耐久性を向上することができる。

（ベントライン３ｆの深さ）
　ボア部３ｂの長手方向と直交する方向の断面において半円形のベントライン３ｆの半径（すなわち溝の深さｄ）は、図４及び図５のいずれの突条部３ｇにおいても突条部３ｇによって強度的に補強されてはいるが、ボア部３ｂの厚さｔ以下が好ましく、ボア部３ｂの厚さｔの１／２以下がより好ましい。
　実施形態でボア部３ｂの厚さｔは３．０ｍｍ程度であるので、ベントライン３ｆの深さｄは１．５ｍｍ以下（幅Ｗは３．０ｍｍ以下）がより好ましい。
　なお、ベントライン３ｆの幅Ｗとは、図４においてボア部３ｂの内面に沿った所定半径の円周の軌道上から、ベントライン３ｆの内面に沿った半径ｄの円周の軌道に変わる２つの変曲点を結んだ直線の長さである。ベントライン３ｆの深さｄとは、ベントライン３ｆの内面上の最も深い位置から当該直線に下した垂線の長さである。

（ベントライン３ｆの断面積）
　実施形態においてマウスピースベント３ａａの直径Ｒ４は０．５ｍｍ～１．０ｍｍである。そうすると、マウスピースベント３ａａの開口面積は、約０．２ｍｍ^２～０．８ｍｍ^２となる。
　ベントライン断面積Ｓ３は、マウスピースベント３ａａベントから入った空気がすべて流れる面積であることが好ましい。すなわち、ベントライン断面積Ｓ３はマウスピースベントの開口面積以上、実施形態では０．２ｍｍ^２～０．８ｍｍ^２以上であることが好ましい。
　なお、ベントライン断面積Ｓ３とは、ベントライン３ｆが設けられているボア部３ｂの長手方向と直交する方向の断面における空洞部の面積から、ベントライン３ｆが設けられていない場合のボア部３ｂの断面円形の空洞部の面積を引いた、ベントライン３ｆの部分のみの空洞部の断面積である。

（ベントライン３ｆの形状）
　なお、ベントライン断面積Ｓ３は、マウスピースベント３ａａの開口面積以上であってもマウスピースベント３ａａから流入する空気以上の空気が通過することはない。したがって、ベントライン断面積Ｓ３において上限は特にない。
　しかし、ベントライン３ｆの幅Ｗや形状は、以下に説明するように乳頭５０が柔軟性を有するために内部に入り込んでしまうという観点から制約を受ける。

　図１に示すように、実際に使用される際は、ボア部３ｂ内に乳頭５０が挿入される。そのとき、乳頭５０のサイズが大きいと、ボア部３ｂの側面に押し付けられてベントライン３ｆ内に入り込み、ベントライン断面積Ｓ３における空気が流れることが可能な面積は小さくなる。
　図６は疑似乳頭をライナー３内に挿入し、疑似乳頭がボア部３ｂの内面に押し付けられてベントライン３ｆ内に入り込む深さｄ´を測定した結果を示す表である。疑似乳頭はシリコーン製又はポリウレタン製（人肌ゲル）の２種類を用いた。いずれの疑似乳頭も硬さはアスカーＣ硬度０（実際の乳頭と同じ程度の硬さ）である。
　図６の表に示すように、疑似乳頭がボア部３ｂの側面に押し付けられてベントライン３ｆ内に入り込む深さｄ´の、ベントライン３ｆの幅Ｗに対する割合ｄ´／Ｗは、ベントライン３ｆの幅Ｗが大きくなるにしたがって大きくなる。
　すなわち、ベントライン３ｆの幅Ｗが大きすぎると、ベントライン３ｆのかなりの領域が乳頭によって塞がれる可能性がある。このため、ベントライン３ｆの深さにもよるが、ｄ´／Ｗは０．４０より小さいことが好ましく、すなわち、ベントライン３ｆの幅Ｗは４．０ｍｍ以下が好ましい。

　また、ベントライン３ｆの形状は、実施形態では半円形であるが、これに限定されず、後述するような種々の形が可能である。しかし、乳頭５０の入り込みを防止するという観点から、ベントライン３ｆは、図４に示すように、ボア部３ｂの内面に沿った所定半径の円周の軌道上から、ベントライン３ｆの内面に沿った半径ｄの円周の軌道に変わるところに変曲点Ｐを有することが好ましい。変曲点Ｐはベントライン３ｆの両側の２か所に設けられる。
　すなわち、ボア部３ｂの内面に沿った所定半径の円周の輪郭と、ベントライン３ｆの内面に沿った輪郭とは、連続的に滑らかに変化するのではなく、間に角部（変曲点Ｐ）を設けて急激に変化することが好ましい。
　また、ベントライン幅Ｗに対するベントライン深さｄの比であるｄ／Ｗは、空気の通り道を確保するという観点からすると、深い方がよく、ベントライン３ｆの形状が半円形の場合における１／２以上であることが好ましい。

　なお、ベントライン断面積Ｓ３は、ボア部３ｂがつぶれたときでも、つぶれる方向と直交する方向に延びるので面積は同じで変化しない。

（効果）
　実施形態によると、マウスピースベント３ａａが設けられているので、マウスピースベント３ａａから、乳頭５０側又はミルククロー３０側に流れる空気の流れができ、乳汁の逆流の抑制ができる。マウスピースベント３ａａを設けることで、乳汁を乳頭に近い場所から気液混合状態にできるので、他のベントより逆流防止効果が高い。また、常に空気がライナー内に導入されることにより、ボア部（膨張収縮部）の気圧の変動を少なくできる。
　しかし、マウスピースベント３ａａのみでベントライン３ｆが設けられていないと、乳頭５０が太い場合、乳頭５０によってボア部３ｂが塞がり、真空ポンプ１８によるマウスピース部３ａの吸引が十分にできなくなる。そして、真空ポンプ１８の脈動によって急激にボア部３ｂが開いたときに、マウスピース部３ａの圧力が適正な真空圧（例えば２０ｋＰａ）を下回る可能性がある。
　そうすると、ライナーの内部において、マウスピース部３ａの真空圧が相対的に小さくなり（陰圧の値が小さくなり）、これにより乳汁が好適に吸引されず逆流が発生する可能性がある。
　実施形態では、マウスピースベント３ａａからベントライン３ｆが延びているので、乳頭５０によってボア部３ｂが塞がることがない。したがって、真空ポンプ１８によるマウスピース部３ａの吸引を十分に行うことができ、ボア部３ｂが開いたときに、マウスピース部３ａの圧力を適正圧の２０ｋＰａより高い値に維持することができる。
　ゆえに、マウスピースベント３ａａを設けた効果を十分に発揮することができる。すなわち、マウスピースベント３ａａから、乳頭５０側又はミルククロー３０側への空気の流れを生じさせて、乳汁の逆流の抑制ができる。

（第１の実験）
　次に、ライナー３にベントライン３ｆを設けた場合の効果を検証する第１の実験を行った結果を図７の表に示す。
　第１の実験は、マウスピース部３ａに設けられたマウスピースベント３ａａの開口面積が０．８ｍｍ^２で一定であり、ベントライン３ｆの断面積Ｓ３が異なるライナー３を５種類（実施例１，２，３，４，５）用意し、これらのライナー３を用いたティートカップ１を実際に搾乳装置１０に取り付けて、それぞれ１０回ずつ搾乳を行い、乳汁の逆流が発生した回数を調べた。
　なお、比較例として開口面積が０．８ｍｍ^２で等しいマウスピースベントがマウスピース部に設けられているが、ベントラインは設けられていないライナーを備えるティートカップを用いて同様に１０回搾乳を行い、乳汁の逆流が発生した回数を調べた。

　第１の実験の実施例及び比較例において、ベントはマウスピースベント３ａａのみで他のベントは設けられていない。マウスピースベント３ａａは１つで、ライナー３の上端から１０ｍｍの所に設けられ、円形で開口面積は０．８ｍｍ^２（直径：１．０ｍｍ）である。
　ベントライン３ｆは、マウスピースベント３ａａと等しく１つで、マウスピースベント３ａａから連続してボア部３ｂ下端の肉厚部まで直線状に延び、断面半円形である。半円の直径は実施例１が０．４ｍｍ、実施例２が０．８ｍｍ、実施例３が１．６ｍｍ、実施例４が２．４ｍｍ、実施例５が３．０ｍｍである。
　それぞれの実施例について、１０回ずつ測定して乳汁が逆流した本数を数えた。
　また、マウスピース部３ａの真空圧を測定し、１０回測定した際の平均値をとった。真空圧とは、大気圧を０ｋｐａとした場合のマウスピース部３ａの圧力の絶対値であり、真空ポンプ１８によりライナー３内は吸気されているので、陰圧である。

　図７の表に示すように、ベントライン３ｆが設けられていない比較例においては、真空圧は１２．７ｋＰａであり、逆流本数は１０本中８本であった。
　すなわち、比較例においては、ボア部３ｂが乳頭５０によって塞がれるので、マウスピースベント３ａａより導入された空気がボア部３ｂに流入せずに、マウスピースベント３ａａの効果が発揮されなかったものと考えられる。また、ボア部３ｂが開いたときに逆流が生じた可能性もある。

　これに対して、実施例１，２，３，４，５では、いずれも真空圧が適正圧の２０ｋＰａ以上であり、逆流本数は４本以下であった。
　すなわち、実施例１，２，３，４，５では、ベントライン３ｆが設けられているので、ボア部３ｂに乳頭５０が挿入されたときも、空気の通り道が確保されていると考えられる。また、ボア部３ｂが開いたときのマウスピース部３ａの気圧変動が小さいため、逆流が発生しにくかったと考えられる。
　以上、ベントライン３ｆを設けることで、逆流が防止されることが検証された。

（好ましい範囲）
　また、ベントライン断面積Ｓ３が０．１ｍｍ^２であり、マウスピースベント開口面積の０．８ｍｍ^２よりかなり小さい実施例１においては、真空圧が２０．３ｋＰａで逆流本数が４本である。ベントライン断面積Ｓ３が０．３ｍｍ^２であり、マウスピースベント開口面積の０．８ｍｍ^２より小さい実施例２においては真空圧が２２．７ｋＰａで逆流本数が１本である。
　これに対して、ベントライン断面積Ｓ３がマウスピースベント開口面積以上の実施例３，４，５ではベントライン断面積Ｓ３が大きくなるほど、マウスピース部３ａの真空圧が高くなる。そして、実施例３，４，５はいずれも逆流本数が０である。
　したがって、上述のようにベントライン断面積Ｓ３がマウスピースベント開口面積以上であることが好ましいことが検証された。

（第２の実験）
　次に、マウスピースベント３ａａとベントライン３ｆとに加えて、他のベントとして、図１において符号を括弧で示したクローベント３６を設けた場合の効果を検証する第２の実験を行った結果を図８に示す。
　第２の実験が、第１の実験で用いた実施例と異なる点は、ミルククロー３０の側面にクローベント３６が設けられている点であり、他は同様である。クローベント３６は１つで、断面円形で直径は１．０ｍｍである。

　実験方法は第１の実験と同様で、ベントライン３ｆの断面積が異なるライナー３を２種類（実施例６，７）用意し、クローベント３６が設けられたミルククロー３０を用いたティートカップ１を実際に搾乳装置１０に取り付けて、それぞれ１０回ずつ搾乳を行い、乳汁の逆流が発生した回数を調べた。
　なお、比較として、実施例６とベントライン３ｆの断面積が等しい実施例２、及び、実施例７とベントライン３ｆの断面積が等しい実施例５も図８に示す。

　図８に示すように、クローベント３６が設けられているミルククロー３０を用いた実施例６，７の場合、クローベント３６が設けられていないミルククロー３０を用いた実施例２，５と比べてマウスピース部３ａの真空圧は若干低下する。しかし、実施例２の逆流本数は１であったが実施例６の逆流本数は０であり、クローベント３６をさらに設けることで、逆流効果が向上することが検証された。

（第３の実験）
　次に、マウスピースベント３ａａとベントライン３ｆとに加えて、他のベントとして、図１において符号を括弧で示したショートミルクチューブベント３ｄａを設けた場合の効果を検証する第３の実験を行った結果を図９に示す。
　第３の実験が、第１の実験で用いた実施例と異なる点は、ショートミルクチューブ部３ｄの上部にショートミルクチューブベント３ｄａが設けられている点であり、他は同様である。ショートミルクチューブベント３ｄａは１つで、断面円形で直径は０．５ｍｍである。

　実験方法は第１の実験と同様で、ショートミルクチューブ部３ｄの上部にショートミルクチューブベント３ｄａが設けられた、ベントライン３ｆの断面積が異なるライナー３を２種類（実施例８，９）用意し、このライナー３を備えるティートカップ１を実際に搾乳装置１０に取り付けて、それぞれ１０回ずつ搾乳を行い、乳汁の逆流が発生した回数を調べた。
　なお、比較として、実施例８とベントライン３ｆの断面積が等しい実施例２、及び、実施例９とベントライン３ｆの断面積が等しい実施例５も図９に示す。

　図９に示すように、ショートミルクチューブベント３ｄａが設けられている実施例８，９の場合、ショートミルクチューブベント３ｄａが設けられていない実施例２，５と比べてマウスピース部３ａの真空圧は若干低下する。しかし、実施例２の逆流本数は１であったが実施例８の逆流本数は０であり、ショートミルクチューブベント３ｄａをさらに設けることで、逆流効果が向上することが検証された。

（変形形態）
　上述の実施形態では、ベントライン３ｆの断面は半円形であり、さらにボア部３ｂにおけるベントライン３ｆが設けられている部分の外径側には図４及び図５に示すように突条部３ｇ又は突条部３ｇ´が設けられている。
　しかし、本発明はこれに限定されない。突条部３ｇ又は突条部３ｇ´を設けることでボア部３ｂの強度は向上するが、ベントライン３ｆを設けてもボア部３ｂの残りの厚さが十分に確保される場合は、突条部３ｇ又は突条部３ｇ´を設けなくてもよい。
　また、ベントライン３ｆの形状は半円形に限定されず、他の形であってもよい。図１０Ａから図１０Ｊは実施形態の変形形態を説明する図である。

　（Ａ）は変形形態１で、ベントライン３ｆの断面は半円形であるが、ボア部３ｂにおけるベントライン３ｆが設けられている部分の外径側に突条部３ｇが設けられていない形態である。

　（Ｂ）は変形形態２で、ベントライン３ｆの断面が矩形であり、且つボア部３ｂにおけるベントライン３ｆが設けられている部分の外径側に突条部３ｇが設けられていない形態である。

　（Ｃ）は変形形態３で、ベントライン３ｆの断面が三角形であり、且つボア部３ｂにおけるベントライン３ｆが設けられている部分の外径側に突条部３ｇが設けられていない形態である。

　（Ｄ）は変形形態４で、ベントライン３ｆが、ボア部３ｂを切り欠くことで設けるのではなく、内面側に２条の凸条部を設けることで、その間にベントライン３ｆを形成した形態である。この場合、外径側の突条部３ｇは不要である。
　このように、ボア部３ｂの内面側に２条の凸条部を設けてベントライン３ｆを形成した場合、ベントライン３ｆの幅は、２条の凸条部の先端部間の距離により表される。また、ベントライン３ｆの深さは、ベントライン３ｆを構成するボア部３ｂの内面のうちの最深部から２条の凸条部の先端部を結ぶ直線に引いた垂線の長さにより表される。

　（Ｅ）は変形形態５で、図４で示した実施例と同様のベントライン３ｆ及び突条部３ｇが、ボア部３ｂの軸線を対称位置に２つ設けられている形態である。

　（Ｆ）は変形形態６で、変形形態１と同様の形のベントライン３ｆが、ボア部３ｂの軸線を対称位置に２つ設けられている形態である。

　（Ｇ）は変形形態７で、変形形態２と同様の形のベントライン３ｆが、ボア部３ｂの軸線を対称位置に２つ設けられている形態である。

　（Ｈ）は変形形態８で、変形形態３と同様の形のベントライン３ｆが、ボア部３ｂの軸線を対称位置に２つ設けられている形態である。

　（Ｉ）は変形形態９で、変形形態４と同様の形のベントライン３ｆが、ボア部３ｂの軸線を対称位置に２つ設けられている形態である。

　（Ｊ）は変形形態１０で、図５で示した実施例と同様のベントライン３ｆ及び突条部３ｇ´が、ボア部３ｂの軸線を対称位置に２つ設けられている形態である。

　それぞれの変形形態の効果を検証する実験を行った結果を図１１に示す。実験条件は、上述した第１の実験と同様で、マウスピース部３ａに設けられたマウスピースベント３ａａの開口面積が０．８ｍｍ^２で一定であり、それぞれの変形形態のベントライン３ｆが設けられたライナー３を用意した。

　なお、（Ａ）、（Ｂ）、（Ｃ）、（Ｅ）、（Ｆ）、（Ｇ）、（Ｈ）、（Ｊ）でのベントライン３ｆの幅Ｗとは、図示するように、ボア部３ｂの内面に沿った所定半径の円周の軌道上から、ベントライン３ｆの内面に沿った半径ｄの円周の軌道に変わる２つの変曲点を結んだ直線の長さである。また、（Ｄ）、（Ｉ）でのベントライン３ｆの幅Ｗとは、ボア部３ｂの内面側に設けられた２条の凸条部の頂部を結んだ直線の長さである。

（真空圧）
　図１１に示す「マウスピース部真空圧」とは、変形形態のライナー３を用いたティートカップ１を実際に搾乳装置１０に取り付けて搾乳を行った際のマウスピース部３ａの真空圧を測定した結果で、１０回測定した際の平均値をとった。真空圧とは、大気圧を０ｋｐａとした場合のマウスピース部３ａの圧力の絶対値であり、真空ポンプ１８によりライナー３内は吸気されているので、陰圧である。
　図示するように、いずれも真空圧が適正圧の２０ｋＰａ以上であった。

（逆流本数）
　変形形態のライナー３を用いたティートカップ１を実際に搾乳装置１０に取り付けて、それぞれ１０回ずつ搾乳を行い、乳汁の逆流が発生した回数を調べた。図１１の「逆流本数」の欄に示すように、いずれの変形形態も逆流本数は１本以下であり、良好な結果が得られた。ゆえにこれらの変形形態においても、ベントライン３ｆが設けられているので逆流防止効果を得ることができる。

（洗浄性）
　搾乳作業後、ライナー内部に流速５Ｌ／ｍｉｎにて、水道水を４０℃で３分通液させた。その後、０．０２％の次亜塩素酸ナトリウム水溶液を常温で３分通液させた。アルカリにより脂肪分を落とし、殺菌をするためである。さらに、主に、次亜塩素酸ナトリウム水溶液を除去するために水道水を４０℃で３分通液させ、すすぎを行うことにより、洗浄を行った。そして、この洗浄後においても除去できなかったベントライン部の有機物残留分について、溝部分約１ｃｍ^２を綿棒で拭きとり、「食品衛生検査指針微生物編２００４」（社団法人食品衛生協会発行）に記載のＡＴＰ測定法に準拠してＡＴＰ（アデノシン三リン酸）値を測定して洗浄性を評価した。
　ＡＴＰ値は小さい方が、洗浄性が良好であるが、３５０以下であれば許容範囲である。
図１１に示すように、いずれの変形形態もＡＴＰ値は３５０以下で許容範囲内であった。

（１）さらに検討すると、ボア部３ｂの内面側に２条の凸条部を設けてその間にベントライン３ｆを形成した形態の（Ｄ）、（Ｉ）のＡＴＰ値は、それぞれ３００、３５０であった。ＡＴＰ値が３５０以下であるので許容範囲である。

（２）ベントライン３ｆの断面が三角形である（Ｃ）、（Ｈ）のＡＴＰ値は、それぞれ２２０、２１０であり、（１）の場合よりも、良好な洗浄性を得ることができた。

（３）ベントライン３ｆの断面が矩形である（Ｂ）、（Ｇ）のＡＴＰ値は、それぞれ１８０、２００であり、（１）、（２）の場合よりも、さらに良好な洗浄性を得ることができた。

（４）ベントライン３ｆの断面が半円形である（Ａ）、（Ｅ）、（Ｆ）、（Ｊ）のＡＴＰ値は、いずれも１桁であり、最も高い洗浄性が得られた。

　ボア部３ｂの内面側に２条の凸条部を設けてその間にベントライン３ｆを形成した形態の（１）の場合、ベントライン３ｆの底部には角部が形成される。ベントライン３ｆの断面が三角形の（２）の場合、ベントライン３ｆの断面が矩形の（３）の場合も、ベントライン３ｆの底部には角部が形成される。この角部の汚れが比較的落ちにくいと考えられる。
　これに対して、ベントライン３ｆの断面が半円形の（４）の場合は、ベントライン３ｆの底部には角部が存在しない。ゆえに高い洗浄性が得られたと考えられる。ゆえに、洗浄性の観点からは、ベントライン３ｆの底部に角部が形成されない形態のほうが好ましい。

（耐久性）
　耐久性の判定のため、ライナーを模擬搾乳装置で連続運転を行い、亀裂が入るまでの時間を測定して、耐久性とした。
（１）ボア部３ｂの厚み３．０ｍｍに対して、ベントライン３ｆが設けられている部分でのボア部３ｂの最小厚みが１．２ｍｍの（Ｃ）、（Ｈ）は、耐久性が２０時間であった。
（２）ボア部３ｂの厚み３．０ｍｍに対して、ベントライン３ｆが設けられている部分でのボア部３ｂの最小厚みが１．８ｍｍの（Ａ）、（Ｂ）、（Ｆ）、（Ｇ）は、耐久性が４０又は５０時間であった。
（３）ボア部３ｂの厚み３．０ｍｍに対して、ベントライン３ｆが設けられている部分でのボア部３ｂの最小厚みが２．１ｍｍの（Ｅ）は、耐久性が６０時間であった。
（４）ボア部３ｂの厚み３．０ｍｍに対して、ベントライン３ｆが設けられている部分でのボア部３ｂの最小厚みが３．０ｍｍの（Ｄ）及び（Ｉ）の耐久性はともに２２０時間であった。
（５）ボア部３ｂの厚み３．０ｍｍに対して、ベントライン３ｆが設けられている部分でのボア部３ｂの最小厚みが２．８ｍｍの（Ｊ）の耐久性は２７０時間であった。

　このように、最小厚みは耐久性に影響することがわかった。しかし、ボア部３ｂの最小厚みが２．８ｍｍである（Ｊ）が、最小厚みが３．０ｍｍの（Ｄ）及び（Ｉ）よりも良好な耐久性を示した。これは、（Ｄ）及び（Ｉ）は、最小厚みは厚いが、ボア部３ｂの厚みが大きく変わる部分（角部）がベントライン３ｆの内面に存在するので、その部分に応力が集中し、（Ｊ）に比べて耐久性が低くなったものと考えられる。

　以上の耐久性の結果より、ベントライン３ｆが設けられている部分でのボア部３ｂの最小厚みは、ベントライン３ｆが設けられていない部分でのボア部３ｂの厚みの７０％以上であることが好ましく、９０％以上であることがより好ましい。さらに、ボア部３ｂの厚みｔが３．０ｍｍの場合、ベントライン３ｆが設けられている部分でのボア部３ｂの最小厚みを２．２ｍｍ以上とすることで、耐久性を特に向上させられる。なお、ボア部３ｂの厚さｔによらず、最も薄い部分の厚みは１．８ｍｍ以上であることが好ましい。

　なお、現状における一般牧場での１つのライナーの標準的な交換目安は約２０００頭分の搾乳作業であり、１日２時間としたときの約３カ月間の使用である１８０時間に相当する。したがって、耐久性は１８０時間以上であることがより好ましい。

　Ｓ３　　ベントライン断面積
　ｄ　　深さ（半径）
　１　　ティートカップ
　２　　シェル
　３　　ライナー
　３ａ　　マウスピース部
　３ａａ　　マウスピースベント
　３ｂ　　ボア部
　３ｃ　　肉厚部
　３ｄ　　ショートミルクチューブ部
　３ｄａ　　ショートミルクチューブベント
　３ｇ　　突条部
　１０　　搾乳装置
　３０　　ミルククロー
　３６　　クローベント
　５０　　乳頭
　１００　　搾乳システム

Claims

　筒状のシェル内に、前記シェルの内面との間に所定の空間が形成されるように配置され、開状態と閉状態との間で弾性変形可能なボア部と、
　前記ボア部の一端側に配置されて前記シェルの一端部を塞ぎ、乳頭が挿入されるとともにベントが設けられたマウスピース部と、
　前記ボア部の他端側に配置されて前記シェルの他端部を塞ぎ、前記ボア部において乳頭から吸引された乳汁が流通するショートミルクチューブ部と、を備える筒状のライナーであって、
　前記ライナーの内面における、前記ベントから前記ボア部に延びる溝状のベントラインが設けられている、搾乳装置のティートカップ用のライナー。
　前記ベントラインは、前記ボア部と前記ショートミルクチューブ部との連結部まで延びている、
請求項１に記載のティートカップ用のライナー。
　前記ライナーにおける、前記ベントラインが設けられている部分の外面に突条部が設けられている、
請求項１又は２に記載のティートカップ用のライナー。
　前記ベントラインの幅よりも、
　前記突条部の幅が広い、
請求項３に記載のティートカップ用のライナー。
　前記ベントラインの、前記ライナーの長手方向と直交する方向の断面積は、前記マウスピース部に設けられた前記ベントの、開口面積よりも大きい、
請求項１から４のいずれか１項に記載のティートカップ用のライナー。
　請求項１から５のいずれか１項に記載のライナーと、
　前記シェルと、を備えるティートカップ。
　請求項６に記載のティートカップと、
　前記ショートミルクチューブ部が連結されるミルククローと、を具備する搾乳装置。