WO2020230689A1 - 薬液自己注入システム - Google Patents

Abstract

【課題】　産科の疼痛の予防、治療又は改善、特に無痛分娩のため、患者自身で所定量の薬液を、簡単かつ安全に注入（特にボーラス注入）することができる薬液自己注入システムを提供する。 【解決手段】　この発明の薬液自己注入システム１は、薬液を貯留する薬液保存容器２と、前記薬液保存容器２から前記薬液を送出させる薬液送出手段３と、前記薬液保存容器２から送出された前記薬液の自己注入が可能な薬液注入装置４と、で構成したもので、産科の疼痛の予防、治療又は改善、特に無痛分娩のために利用可能に構成されている。　したがって、所定量の薬液を、患者、すなわち妊婦、特に分娩時の妊婦に対して、胎児に悪影響を及ぼすことなく、大掛かりな装置を使用しないで、自己注入によって、簡単かつ安全に、一度に投与することができる。

Description

薬液自己注入システム

　この発明は、薬液自己注入システムに関するものである。
　より詳しくは、産科の疼痛の予防、治療又は改善のため、患者自身で所定量の薬液を、簡単かつ安全に注入することができる薬液自己注入システムに関するものである。
 

　従来、産科医療においては、疼痛を軽減するため、患者に対してしばらく麻酔剤ないし鎮痛剤を処方することが多い。
　この場合、一般的には、カテーテルを用いて、麻酔剤ないし鎮痛剤を含んだ薬液を患者の体内に持続的に注入している。

　しかしながら、患者の症状や体質は様々であって、当初の処方では、時間の経過とともに、激しい痛みを訴える者も少なくない。

　かかる痛みを緩和するためには、麻酔剤ないし鎮痛剤の一時的な大量投与が必要となる。
　この場合において、医師や看護師を呼ばずとも、患者自身が麻酔剤ないし鎮痛剤を含んだ薬液を一時的に多く体内に注入できれば、患者自身および医師などの負担も軽減される。

　このような一時的に薬液を注入するための注入器として、通常の持続的に注入される薬液を保存する保存器と、カテーテルとの中間部に設けられるものが知られている。

　例えば、特許第６２２２５６２号公報（特許文献１）においては、薬液保存容器から供給される薬液の流量を、流量調節手段によって調節することによって、所定量の薬液の自己注入を行ったのち、次の所定量の薬液の自己注入が可能となるまでの時間（ロックアウトタイム）を調節することができる薬液注入システムが提案されている。

　この薬液注入システムは、特定の薬液注入装置と、薬液を貯留する薬液保存容器、前記薬液の流量を調節するための流量調節手段と、からなるものであって、
　前記流量調節手段は、薬液供給チューブを介して前記薬液保存容器と接続されるとともに、薬液充填チューブを介して前記薬液注入装置に接続され、
　薬液の充填に際し、前記薬液保存容器から供給される薬液の流量を前記流量調節手段で調節することによって、所定量の薬液の自己注入を行った後に次の所定量の薬液の自己注入が可能となるまでの時間を調節するものである。
 

特許第６２２２５６２号公報（特許請求の範囲，図１）

　前記特許文献１に開示されている薬液注入システムは、微量の薬液を持続注入している途中で、患者自身が、自己の体内に、薬液をワンショットで大量に注入できるものである。
　前記薬液として麻酔剤ないし鎮痛剤が選択される場合において、この薬剤は、その投与量が少ないと十分な麻酔ないし鎮痛作用を発揮せず、投与量が多いと、過剰に体内に注入され、長時間に亘って麻酔ないし鎮痛作用が続くなどの患者の身体に悪影響を及ぼすおそれがあるものである。

　したがって、患者の身体への影響、特に妊娠時の胎児への影響を考慮した適当な投与量の麻酔剤ないし鎮痛剤を、自己注入によって投与する場合において、さらなる改善が求められる。

　さらに、無痛分娩を目的として麻酔剤ないし鎮痛剤を患者に投与する際には、その投与を電気機械的に制御する装置が使用されている。
　しかしながら、このような装置は、それ自体が大掛かり且つ高価であり、その操作が複雑で、その操作の熟練者の養成が必要とされるものである。
　さらに、この装置では、誤操作によって流量過多が生じる可能性があるという問題や、これによって重篤な健康被害が発生し、最悪の場合には死に至るおそれがあるという問題もあった。

　この発明はかかる現状に鑑み、産科の疼痛の予防、治療又は改善、特に無痛分娩のため、患者自身で所定量の薬液を、簡単かつ安全に注入（特にボーラス注入）することができる薬液自己注入システムを、提供せんとするものである。
 

　前記目的を達成するため、この発明にかかる請求項１に記載の発明は、
　薬液を貯留する薬液保存容器と、前記薬液保存容器から前記薬液を送出させる薬液送出手段と、前記薬液保存容器から送出された前記薬液の自己注入が可能な薬液注入装置と、で構成される薬液自己注入システムであって、
　産科の疼痛の予防、治療又は改善のために使用されること
を特徴とする薬液自己注入システムである。

　この発明の請求項２に記載の発明は、
　請求項１に記載の薬液自己注入システムにおいて、
　前記薬液は、
　麻酔ないし鎮痛作用を有する薬液であり、
　前記薬液自己注入システムは、
　無痛分娩用であること
を特徴とするものである。

　この発明の請求項３に記載の発明は、
　請求項１又は２に記載の薬液自己注入システムにおいて、
　前記薬液送出手段は、
　非電動の薬液送出手段であること
を特徴とするものである。

　この発明の請求項４に記載の発明は、
　請求項１～３のいずれかに記載の薬液自己注入システムにおいて、
　前記薬液注入装置は、
　前記薬液の１回の注入量が、１～１０ｍＬに設定されたものであること
を特徴とするものである。

　この発明の請求項５に記載の発明は、
　請求項１～４のいずれかに記載の薬液自己注入システムにおいて、
　前記薬液自己注入システムは、さらに、
　前記薬液の流量を調節するための流量調節手段を備えること
を特徴とするものである。

　この発明の請求項６に記載の発明は、
　請求項５のいずれかに記載の薬液自己注入システムにおいて、
　前記流量調節手段は、
　薬液供給チューブを介して前記薬液保存容器と接続されるとともに、薬液充填チューブを介して前記薬液注入装置に接続され、
　薬液の充填に際し、前記薬液保存容器から供給される薬液の流量を前記流量調節手段で調節することによって、所定量の薬液の自己注入を行った後に次の所定量の薬液の自己注入が可能となるまでの時間が５～６０分になるよう調節可能に構成されたものであること
を特徴とするものである。

　この発明の請求項７に記載の発明は、
　患者の自己注入によって、産科の疼痛の予防、治療又は改善のために使用される薬液を投与する薬液投与方法であって、
　請求項１又は５に記載の薬液自己注入システムを用いること
を特徴とする薬液投与方法である。

　この発明の請求項８に記載の発明は、
　請求項７に記載の薬液投与方法において、
　前記薬液注入装置により注入される薬液の注入量は、
　１回で１～１０ｍＬとなるよう設定されていること
を特徴とするものである。

　この発明の請求項９に記載の発明は、
　請求項８に記載の薬液投与方法において、
　前記薬液自己注入システムは、
　請求項５に記載の薬液自己注入システムであり、
　前記薬液の流量は、
　前記自己注入を行った後、次の自己注入が可能となるまでの時間が５～６０分になるよう調節されていること
を特徴とするものである。

　この発明の請求項１０に記載の発明は、
　請求項７～９のいずれかに記載の薬液投与方法において、
　前記薬液は、
　前記患者に常時０～３０ｍＬ／ｈｏｕｒで注入されていること
を特徴とするものである。
 

　この発明の薬液自己注入システムは、薬液、特に麻酔ないし鎮痛作用を有する薬液を貯留する薬液保存容器と、前記薬液保存容器から前記薬液を送出させる薬液送出手段と、前記薬液保存容器から送出された前記薬液の自己注入が可能な薬液注入装置と、で構成したもので、産科の疼痛の予防、治療又は改善、特に無痛分娩のために利用可能に構成したものである。
　したがって、前記薬液自己注入システムは、所定量の薬液を、患者、すなわち妊婦、特に分娩時の妊婦に対して、胎児に悪影響を及ぼすことなく、大掛かりな装置を使用しないで、自己注入によって、簡単かつ安全に、所定量を一度に（特にボーラスで）投与することができる利点を有している。

　さらに、前記薬液自己注入システムにおいて、前記薬液送出手段を、非電動の薬液送出手段で構成することができる。
　このような構成によって、前記薬液送出手段は、複雑な設定をする必要がないため簡便かつ安全に使用可能で、電源を必要としないので、前記薬液自己注入システムは、携行が容易で、災害時にも使用可能で、安価で簡便かつ安全なものとなる。

　さらに、前記薬液自己注入システムにおいて、前記薬液注入装置により注入される薬液の注入量を、１回で１～１０ｍＬとなるよう設定することができる。
　このような構成によって、前記薬液自己注入システムは、無痛分娩用として、より好適なものとなる。

　さらに、前記薬液自己注入システムには、前記薬液の流量を調節するための流量調節手段を備えさせるようにしてもよい。
　このような構成によって、所定量の薬液を、患者の体内に、より確実に、簡単かつ安全に注入することが可能となる他、ロックアウトタイムのコントロールも可能となる。

　さらにまた、前記薬液自己注入システムを用いて、患者の自己注入によって、産科の疼痛の予防、治療又は改善のために使用される薬液を投与する薬液投与方法を提供することができる。
　この薬液投与方法によれば、患者が妊婦、特に分娩時の妊婦であったとしても、母体内の胎児に影響を与えることなく、産科の疼痛の予防、治療又は改善のために使用される薬液（麻酔ないし鎮痛作用を有する薬液など）を、患者の自己注入によって、簡単かつ安全に、所定量を一度に（特にボーラスで）投与することができる。

　前記薬液投与方法においては、前記薬液の１回の注入量を、１～１０ｍＬとなるよう設定することができる。
　このような構成によって、前記薬液投与方法は、無痛分娩用として、より好適である。
 

この発明にかかる薬液自己注入システムの一例を示す概略説明図である。 この発明にかかる薬液自己注入システムの他の例を示す概略説明図である。

　以下、この発明にかかる薬液自己注入システムについて、添付の図面に基づいて具体的に説明する。
　なお、この発明は開示された実施例にのみ限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲内において種々改良することができるものである。

　図１は、この発明にかかる薬液自己注入システムの一例を示す概略説明図である。
　図１において、前記薬液自己注入システム１は、薬液を貯蔵するための薬液保存容器２と、前記薬液保存容器２から前記薬液を送出するための薬液送出手段３と、前記薬液保存容器２から送出された前記薬液を患者が自ら注入することができる薬液注入装置４と、から構成されている。
　なお、この実施例において、前記薬液自己注入システム１は、ディスポーザブル型のものとして用いることができるよう構成されている。

　前記薬液保存容器２は、その内部にバルーン３１が配設されたもので、このバルーン３１の内部に所定の薬液が充填されている。

　なお、この実施例においては、前記薬液として、鎮痛剤を選択しているが、前記薬液については、産科の疼痛の予防、治療又は改善のために使用されるものであれば、特段の制限はなく、母体中の胎児の発育の程度などに応じて、麻酔ないし鎮痛作用を有するものを適宜選択すればよい。

　前記バルーン３１は、図１に示されるように、前記薬液保存容器２の内部に、この薬液保存容器２の開口部を閉止する蓋部材２１に固定されることによって、配設されている。

　前記バルーン３１は、エラストマーなどの可撓性を有する材質のもので構成され、その内部に薬液注入部３１ａから、所定の薬液を充填できるように構成されている。
　したがって、前記バルーン３１は、薬液注入部３１ａから内部に薬液が注入されると拡張し、前記材質の弾性力により収縮しようとするもので、この収縮力によって、前記薬液を外部に送出する。
　すなわち、前記バルーン３１は、所定の薬液を貯留・保存するとともに、前記薬液を外部に非電動で送出するための薬液送出手段として機能するものである。

　なお、前記薬液送出手段３としては、前記薬液が充填・保存されている前記薬液保存容器２から前記薬液を外部に送出する機能を有するものであれば、如何なる構成の手段であってもよく、ポンプなどの公知の又は将来開発され得る薬液送出手段を用いることができる。

　好ましくは、前記薬液送出手段３として、非電動式の薬液送出手段が選択される。
　このような構成によって、前記薬液送出手段３は、複雑な設定をする必要がないため簡便かつ安全に使用可能で、電源を必要としないので、前記薬液自己注入システム１は、携行が容易で、災害時にも使用可能で、安価で簡便かつ安全なものとなる。

　前記バルーン３１には、薬液を供給するための薬液チューブ５の一端が接続されている。
　一方、前記薬液チューブ５の他端はコネクタ９を介して２つの流路に分岐され、一方が薬液充填チューブ６に、他方が薬液持続チューブ７に接続されている。

　前記薬液注入装置４は、図１に示すように、その下部には、前記薬液持続チューブ７の一端と、前記薬液充填チューブ６の一端と、他端が気泡を抜くためのエアベントフィルタ１０を介してコネクタ１１に繋がる薬液注入チューブ８の一端が、それぞれ接続されるとともに、その上部には、押しボタンを兼ねる加圧部材４ａを備えるものである。

　前記薬液注入装置４の内部には、薬液を貯留する薬液収納部（図示せず）と、前記薬液収納部を下方に押圧する、押しボタンを兼ねる頭部を持った加圧部材４ａと、薬液排出チューブ（図示せず）又は薬液充填チューブ６を挟持する挟持手段（図示せず）が配されている。
　さらに、前記薬液収納部と加圧部材４ａの間には、前記薬液収納部を円滑に圧縮できるよう作用する伝達部材（図示せず）が介装されている。

　前記薬液収納部は、圧縮・膨張変形可能に構成されたものであって、内部に所定量の薬液を保持することが可能なもので、その下部には、薬液充填口と薬液排出口が形成されている。
　前記薬液充填口には、前記薬液充填チューブ６の一端が接続され、前記薬液排出口には薬液排出チューブ（図示せず）の一端がそれぞれ接続されている。

　前記薬液注入装置４の内部において、前記薬液持続チューブ７と前記薬液注入チューブ８は、合流部（図示せず）で合流し、この合流部が前記薬液排出チューブの他端に接続されている。

　前記挟持手段は、追加注入時以外の通常時に（前記押しボタン（加圧部材４ａ）を押さない状態で）は、前記薬液排出チューブの断面を閉じる一方、追加注入時には、前記薬液充填チューブ６の断面を閉じるものである。
　したがって、追加注入時以外の通常時には、前記薬液充填チューブ６の断面は、開いたままであるため、薬液が前記薬液充填チューブ６から前記薬液収納部に流入し、追加注入時には、前記薬液排出チューブの断面が開き、前記薬液収納部に充填された薬液が、前記薬液排出チューブを通して排出される。

　なお、前記薬液持続チューブ７からの薬液は、前記薬液収納部に流入することなく、前記薬液注入チューブ８に持続的に流れている。
　その際、前記持続的に注入する際の薬液の流量を、例えば、０～３０ｍＬ／ｈｏｕｒ程度に設定することができる。

　前記薬液注入装置４としては、例えば、特許第６２２２５６２号公報に記載されている薬液注入装置を使用することができる。
　すなわち、前記薬液自己注入装置４を、その装置本体が、上部が開口するとともに、内部に、薬液を貯留する薬液収納部と、薬液の追加注入時に前記薬液収納部を加圧変形させて薬液を押し出す加圧部材と、薬液の供給と遮断を行う挟持部材を内蔵するケース本体と、前記開口以外の開口部を閉止する蓋体とで構成されたもので、前記薬液収納部は、この薬液収納部に薬液を充填させるための薬液充填チューブと、前記追加注入時に前記加圧部材により加圧変形した際、内部の薬液を排出するための薬液排出チューブを備え、前記薬液排出チューブは、基端側が前記薬液収納部に、先端側が分岐部を介して薬液を患者に注入するための薬液注入チューブと、前記薬液注入チューブに薬液を持続的に送るための薬液持続チューブを備え、前記挟持部材は、上部挟持部材とチューブ押圧部材と下部挟持部材とで構成されるとともに、前記チューブ押圧部材を上部挟持部材に向かって付勢する挟持用弾性体を備え、前記薬液収納部には、薬液が前記薬液充填チューブを経由して供給され、薬液の追加注入時以外は、前記薬液排出チューブは、前記挟持部材によって流路が閉塞されて薬液が供給されず、前記追加注入時には、前記加圧部材によって前記チューブ押圧部材が、前記挟持用弾性体の付勢力に抗して押し戻されて前記薬液排出チューブの流路が開き、前記薬液収納部に充填されていた薬液が前記薬液排出チューブを通して排出される一方、追加注入時には、前記薬液充填チューブは、前記加圧部材により押し戻されたチューブ押圧部材と、対向する下部挟持部材とで挟持されて流路が閉塞され、内部の薬液が実質的に流動しないように構成することができる。

　なお、前記薬液注入装置４は、患者が所定の量の薬液を自己注入するためのもので、このような機能を有するものであれば、如何なる構成のものであってもよく、公知の又は将来開発され得る薬液自己注入手段を用いることができる。

　前記薬液注入チューブ８は、コネクタ１１を介して注射針など（図示せず）に接続され、これによって、患者の体内に、常時薬液が注入されている。

　かかる薬液注入装置４によれば、前記押しボタン（加圧部材４ａ）を押さない状態、いわゆる通常時においては、前記薬液送出手段３によって送出された薬液は、前記薬液充填チューブ６を経て、前記薬液注入装置４が備える薬液収納部（図示せず）に流れると同時に、前記薬液収納部に流入することなく、前記薬液持続チューブ７から前記薬液注入チューブ８に持続的に流れる。
　一方、患者が、追加注入を希望する場合には、前記加圧部材４ａを押し込むと、当該加圧部材４ａによって前記薬液収納部が加圧変形し、前記薬液収納部に充填されていた薬液が前記薬液排出チューブを通して排出され、ら前記薬液注入チューブ８を経て、患者の体内に注入される。

　前記薬液注入装置４（特にその薬液収納部）は、好ましくは、薬液の１回の注入量が、１～１０ｍＬ、より好ましくは２～１０ｍＬとなるよう構成される。
　１ｍＬより小さいと、注入される薬液が麻酔ないし鎮痛作用を有する薬液である場合には、その麻酔ないし鎮痛作用が十分に発揮されない傾向にあり、１０ｍＬよりも大きいと、患者が妊婦の場合には、胎児に影響を及ぼす可能性がある。

　この発明において使用される各薬液チューブの材料としては、透明で柔軟性のあるものが好ましく、エラストマーがより好ましい。
　例えば、ポリオレフィン（ＬＤＰＥ，ＬＬＤＰＥ等）系エラストマー、熱可塑性ポリウレタンエラストマー、軟質塩化ビニル樹脂、ＥＶＡなどが好適に使用できる。

　この発明において、前記薬液自己注入システム１には、前記薬液注入装置４に供給する前記薬液の流量を調整するための流量調節手段を備えさせることができる。

　図２は、この発明にかかる薬液自己注入システムの他の例を示す概略説明図である。
　図２において、前記薬液自己注入システム１０１は、前記薬液自己注入システム１と同様の構成を有するものであるが、この薬液自己注入システム１０１においては、流量調節手段１１２が、複数のチューブで構成される薬液供給チューブの束１１３を介してバルーン１３１と接続されるとともに、薬液充填チューブ１０６を介して前記薬液注入装置１０４に接続されている。

　図２において、薬液チューブ１０５の他端はコネクタ１０９を介して複数の流路に分岐され、これらの流路を構成する薬液供給チューブの束１１３のうち、一つが薬液持続チューブ１０７に接続され、残りがコネクタ（図示せず）を介して薬液充填チューブ１０６に接続されている。

　前記流量調節手段１１２は、薬液の充填に際しては、薬液保存容器１０２（図２においてバルーン１３１）から供給される薬液の流量を調節することを可能にするものである。
　前記流量は、例えば、医師などによって所定の値に設定される。
　この発明においては、例えば、前記流量調節手段１１２によって、薬液の流量を１０．０ｍＬ／ｈｏｕｒ以下に設定することができる。

　前記流量調節手段１１２は、さらに所定量の薬液の自己注入を行った後に次の所定量の薬液の自己注入が可能となるまでの時間（ロックアウトタイム）を調節することも可能にするものである。
　例えば、前記ロックアウトタイムを、５～６０分間程度に設定することができる。
　なお、ロックアウトタイム間に途中で自己注入をすることができるが、最大合計注入量は設定量となる。

　前記流量調節手段１１２については、所望の流量の薬液を供給することができるものであれば、他の公知の流量調節手段、又は将来開発され得る流量調節ないし切替え手段を採用することができる。

　なお、この実施例において、前記流量調節手段１１２は、実用新案登録第３１８５４５３号公報に記載されている薬液の注入装置とほぼ同様の構成を有し、スライダ１１２ａを所定の位置までスライドさせることによって、所望の流量で薬液が流れるよう構成されている。

　つぎに、この発明の薬液自己注入システム１０１の動作について説明する。なお、薬液自己注入システム１の動作もほぼ同様である。
　前記押しボタン（加圧部材１０４ａ）を押さない状態、いわゆる通常時における薬液注入装置１０４においては、前記薬液送出手段１０２（図２においてバルーン１３１）から送出された薬液は、前記薬液持続チューブ１０７から合流部を経由して、薬液注入装置１０４内部の薬液収納部に流入することなく、薬液注入チューブ１０９に流れている。

　この薬液注入チューブ１０９は注射針など（図示せず）に接続され、患者の体内には、常時薬液が流れている。

　さらに、前記薬液保存容器１０２から薬液送出手段１０２によって（図２においてバルーン１３１から）供給された薬液は、薬液充填チューブ１０６を経て、薬液収納部にも薬液が流れる。

　薬液収納部と合流部の間に接続されている薬液排出チューブの断面は、挟持部材によって、閉じられている。
　したがって、薬液が前記薬液排出チューブ内を流れることが困難な状態となっている。

　患者が、追加注入を希望する場合には、前記加圧部材１０４ａを押し込むと、挟持部材の作用が封じられるので、前記薬液排出チューブが開口し、薬液収納部内の薬液が排出可能となる。

　一方、薬液充填チューブ１０６の断面は、挟持部材によって、閉じられるので、薬液が、薬液充填チューブ１０６内を流れることが困難な状態となる。

　同時に、前記加圧部材１０４ａが押し込まれたことにより、薬液収納部が圧縮されると、その内部の薬液が、薬液排出口と合流部を経由して薬液注入チューブ１０８内に急速に流入する。
　したがって、患者の体内には、通常時の薬液流入量を上回る量の薬液が、短時間で注入（ボーラス注入）される。

　自己注入後、次の所定量の薬液の自己注入が可能となるよう、再び薬液充填チューブ１０６を経由して薬液収納部内に薬液が充填される。

　なお、この実施例においては、前記薬液注入装置１０４が備える薬液収納部（図示せず）の容量を３ｍＬとしているので、薬液の流量は、流量調節手段１１２によって６．０ｍＬ／ｈｏｕｒに設定されるとともに、次の所定量の薬液の自己注入が可能となるまでの時間（ロックアウトタイム）は、３０分に設定されている。

　かかる構成の薬液自己注入システムは、患者が妊婦であり、胎児への影響が懸念される場合であっても、患者自身が、薬液、特に麻酔ないし鎮痛作用を有する薬液の追加注入が必要な時に、所定量の薬液の自己注入を安全かつ確実に行うことができる。
　前記薬液自己注入システムは、特に無痛分娩を目的とした場合、すなわち患者が分娩時の妊婦である場合において、好適に利用される。
 

　この発明にかかる薬液自己注入システムは、患者の自己注入によって追加注入される薬液を、必要な時に、簡単かつ確実に、この患者に投与することが可能で、前記患者が妊婦であっても、胎児への影響がないか又は極めて少ないものである。
　したがって、医療業界において幅広く利用されるものである。
 

　１，１０１　　　　　　　薬液自己注入システム
　２，１０２　　　　　　　薬液保存容器
　２１，１２１　　　　　　蓋部材
　３，１０３　　　　　　　薬液送出手段
　３１，１３１　　　　　　バルーン
　３１ａ，１３１ａ　　　　薬液注入口
　４，１０４　　　　　　　薬液注入装置
　４ａ，１０４ａ　　　　　加圧部材
　５，１０５　　　　　　　薬液チューブ
　６，１０６　　　　　　　薬液充填チューブ
　７，１０７　　　　　　　薬液持続チューブ
　８，１０８　　　　　　　薬液注入チューブ
　９，１０９　　　　　　　コネクタ
　１０，１１０　　　　　　エアベントフィルタ
　１１，１１１　　　　　　コネクタ
　１１２　　　　　　　　　流量調節手段
　１１２ａ　　　　　　　　スライダ
　１１３　　　　　　　　　薬液供給チューブ束

Claims (10)

1. 　薬液を貯留する薬液保存容器と、前記薬液保存容器から前記薬液を送出させる薬液送出手段と、前記薬液保存容器から送出された前記薬液の自己注入が可能な薬液注入装置と、で構成される薬液自己注入システムであって、
   　産科の疼痛の予防、治療又は改善のために使用されること
   を特徴とする薬液自己注入システム。
2. 　前記薬液は、
   　麻酔ないし鎮痛作用を有する薬液であり、
   　無痛分娩用であること
   を特徴とする請求項１に記載の薬液自己注入システム。
3. 　前記薬液送出手段は、
   　非電動の薬液送出手段であること
   を特徴とする請求項１又は２に記載の薬液自己注入システム。
4. 　前記薬液注入装置は、
   　前記薬液の１回の注入量が、１～１０ｍＬに設定されたものであること
   を特徴とする請求項１～３のいずれかに記載の薬液自己注入システム。
5. 　さらに、前記薬液の流量を調節するための流量調節手段を備えること
   を特徴とする請求項１～４のいずれかに記載の薬液自己注入システム。
6. 　前記流量調節手段は、
   　薬液供給チューブを介して前記薬液保存容器と接続されるとともに、薬液充填チューブを介して前記薬液注入装置に接続され、
   　薬液の充填に際し、前記薬液保存容器から供給される薬液の流量を前記流量調節手段で調節することによって、所定量の薬液の自己注入を行った後に次の所定量の薬液の自己注入が可能となるまでの時間が５～６０分になるよう調節可能に構成されたものであること
   を特徴とする請求項５に記載の薬液自己注入システム。
7. 　患者の自己注入によって、産科の疼痛の予防、治療又は改善のために使用される薬液を投与する薬液投与方法であって、
   　請求項１又は５に記載の薬液自己注入システムを用いること
   を特徴とする薬液投与方法。
8. 　前記薬液注入装置により注入される薬液の注入量は、
   　１回で１～１０ｍＬとなるよう設定されていること
   を特徴とする請求項７に記載の薬液投与方法。
9. 　前記薬液自己注入システムは、
   　請求項５に記載の薬液自己注入システムであり、
   　前記薬液の流量は、
   　前記自己注入を行った後、次の自己注入が可能となるまでの時間が５～６０分になるよう調節されていること
   を特徴とする請求項８に記載の薬液投与方法。
10. 　前記薬液は、
    　前記患者に常時０～３０ｍＬ／ｈｏｕｒで注入されていること
    を特徴とする請求項７～９のいずれかに記載の薬液投与方法。

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