WO2020213179A1 - 鋼板及びその製造方法、並びに成形体 - Google Patents
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Abstract
この鋼板は、所定の化学組成を有し、ミクロ組織が、フェライトと炭化物とからなり、前記炭化物が、フェライト粒内及びフェライト粒界に存在し、前記ミクロ組織の、表面から板厚の3/8の位置において、粒径が0.1μm以上2.0μm以下である前記炭化物のうち、前記フェライト粒内に存在する炭化物の個数に対する、前記フェライト粒界に存在する炭化物の個数の比率が1.0を超え、ビッカース硬さが170HV以下であり、{211}<011>のランダム強度比I1が4.0以下であり、前記フェライトの粒径が5~50μmであり、粒径が0.1μm以上2.0μm以下である前記炭化物の球状化率が、65%~100%であり、Nbの固溶量が、0.01質量%以上である。
Description
本発明は、鋼板及びその製造方法、並びに成形体に関する。
本願は、2019年04月17日に、日本に出願された特願2019-078544号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
本願は、2019年04月17日に、日本に出願された特願2019-078544号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
近年、自動車のギヤー、クラッチプレート、ダンパー等の機械構造部品や高強度で複雑な形状を有する骨格部品を製造するにあたり、熱間圧延鋼板や冷間圧延鋼板を素材とし、これらを冷間加工して部材の形状に成形した後に焼入れ焼戻しを行う技術、および予成形後にホットスタンプを行う予成形ホットスタンプ技術の開発が進められている。冷間加工やホットスタンプ前の予成形では、曲げ加工、絞り加工、穴広げ加工等のプレス成形が行われるが、複雑な形状に成形する必要がある場合は、穴広げ加工等の極限変形能が求められる。部品成形は、絞り及び増肉の成形が主である。これらの部品加工における成形性を左右する最も大きな因子は塑性異方性である。そのため、上記部品に適用される鋼板には、塑性異方性が小さい(等方性が高い)ことも求められる。
さらに、冷間加工後の熱処理、または予成形後のホットスタンプにより得られる成形体には、高い強度および靱性が要求される。
特許文献1には、フェライト相とグラファイト相とを主体とする組織を有する、冷間加工性と浸炭焼入れ性とに優れた鋼が開示されている。
また、特許文献2には、球状化焼鈍後、冷間鍛造を行い、浸炭焼入焼戻し工程で製造される部品に対し、優れた加工性を有しながら、その後の浸炭でも結晶粒の粗大化を抑制し、優れた耐衝撃特性、耐衝撃疲労特性を有する浸炭部品用鋼が開示されている。
特許文献3には、プラズマ浸炭用冷間工具鋼が開示されている。
また、特許文献4では、深絞り面内異方性の小さい高炭素冷延鋼帯が開示されている。特許文献4では、冷間圧延率、箱焼鈍条件、熱間圧延の巻取温度の制御による集合組織の制御を通じて面内異方性を改善し、r値及び面内異方性指数Δrを限定している。
特許文献5では、焼入性と靭性とに優れる面内異方性の小さい加工用高炭素鋼板が開示されている。特許文献5では、仕上げ圧延機のスタンド間での熱延材の加熱、焼鈍条件の規定により、面内異方性を改善したことが開示されている。
特許文献6では、面内異方性の小さい加工用高炭素鋼板が開示されている。特許文献6では、熱間圧延においてAr3点以上の温度での仕上げ圧延、500~650℃での巻取を規定することで、面内異方性の小さい鋼板が得られることが開示されている。
これらの発明では、成形性および焼入れ性の改善が提案されているものの、近年、より高い冷間加工性を確保しつつ、さらに過酷な環境下、例えば低温環境等における部品の適用を鑑み、より高強度、かつ優れた低温靭性を有する成形体、及びその素材の冷間加工性に優れた鋼板が要求されている。
本発明は、上記実情に鑑み、冷間加工性に優れ、成形及び熱処理後に高強度かつ優れた靭性が得られる鋼板及びその製造方法、並びにその鋼板に成形及び熱処理を行って得られる成形体であって、高強度かつ低温靭性に優れる成形体を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決する手法について鋭意研究した。
本発明者らは、まず成形及び熱処理を行った後の成形体の強度および靱性を確保するため、粒界の強化に着目して検討を行った。
その結果、以下の(i)~(iii)によって粒界が強化され、成形体において、遷移温度の低温化(靭性の向上)が図れることを見出した。
(i)旧オーステナイト粒径の細粒化(吸収エネルギー増加による靱性への寄与)、
(ii)粒界へのNb偏析(吸収エネルギー増加による靱性への寄与)、
(iii)セメンタイトの個数密度を100個/mm2以下とし、その上でそのセメンタイトにMnを濃化させる(粒界に偏析すると靱性に悪影響を与えるMnの粒界偏析を抑制することへの寄与)
一方で、上述のような成形体の素材として好適であってかつ熱処理前の成形性に優れる鋼板を得るためには、以下の(I)~(IV)が有効であることを見出した。
(I)フェライトの粒径制御(成形性の確保)
(II)フェライト結晶方位のランダム化(成形性の確保)
(III)炭化物の粒界偏析(熱処理後のセメンタイト中のMn濃度の上昇)
(IV)炭化物の球状化(熱処理後のセメンタイトの個数密度の制御)
本発明者らは、まず成形及び熱処理を行った後の成形体の強度および靱性を確保するため、粒界の強化に着目して検討を行った。
その結果、以下の(i)~(iii)によって粒界が強化され、成形体において、遷移温度の低温化(靭性の向上)が図れることを見出した。
(i)旧オーステナイト粒径の細粒化(吸収エネルギー増加による靱性への寄与)、
(ii)粒界へのNb偏析(吸収エネルギー増加による靱性への寄与)、
(iii)セメンタイトの個数密度を100個/mm2以下とし、その上でそのセメンタイトにMnを濃化させる(粒界に偏析すると靱性に悪影響を与えるMnの粒界偏析を抑制することへの寄与)
一方で、上述のような成形体の素材として好適であってかつ熱処理前の成形性に優れる鋼板を得るためには、以下の(I)~(IV)が有効であることを見出した。
(I)フェライトの粒径制御(成形性の確保)
(II)フェライト結晶方位のランダム化(成形性の確保)
(III)炭化物の粒界偏析(熱処理後のセメンタイト中のMn濃度の上昇)
(IV)炭化物の球状化(熱処理後のセメンタイトの個数密度の制御)
しかしながら、例えば、上記(ii)の粒界へのNb偏析の効果を利用する場合、熱間圧延の段階ではNbを固溶させる必要がある。一方、固溶Nbは(II)のようなフェライトの結晶方位のランダム化に対しては、悪影響を与える。すなわち、成形及び熱処理を行う前の加工性(成形性)と、成形及び熱処理を行った後の靭性とを同時に向上させることは容易ではなかった。
本発明者らが、さらに検討を行った結果、熱延時のスラブ加熱温度、冷却速度、巻取温度を制御してNbの固溶状態を維持しつつも、冷却開始時間を制御してオーステナイトの再結晶を促進させてから冷却させると、フェライトの結晶方位のランダム化が図れることを見出した。
本発明者らが、さらに検討を行った結果、熱延時のスラブ加熱温度、冷却速度、巻取温度を制御してNbの固溶状態を維持しつつも、冷却開始時間を制御してオーステナイトの再結晶を促進させてから冷却させると、フェライトの結晶方位のランダム化が図れることを見出した。
本発明は、上記の知見に基づいてなされたもので、その要旨は、次の通りである。
(1)本発明の一態様に係る鋼板は、質量%で、C:0.10~0.70%、Si:0.010~0.300%、Mn:1.00~3.00%、P:0.0200%以下、S:0.0100%以下、Al:0.0010~0.1000%、Nb:0.030~0.200%、Cr:0.010~0.500%、Mo:0.001~0.500%、B:0.0004~0.0100%、Ti:0.0010~0.100%、V:0~0.1000%、Cu:0~0.100%、W:0~0.1000%、Ta:0~0.1000%、Ni:0~0.100%、Sn:0~0.0500%、Sb:0~0.0500%、Co:0~0.0500%、As:0~0.0500%、Mg:0~0.0500%、Ca:0~0.0500%、Y:0~0.0500%、Zr:0~0.0500%、La:0~0.0500%、Ce:0~0.0500%、O:0.0200%以下、N:0.0150%以下、を含有し、残部がFe及び不純物からなる化学組成を有し、ミクロ組織が、フェライトと炭化物とからなり、前記炭化物が、フェライト粒内及びフェライト粒界に存在し、前記ミクロ組織の、表面から板厚の3/8の位置において、粒径が0.1μm以上2.0μm以下である前記炭化物のうち、前記フェライト粒内に存在する炭化物の個数に対する、前記フェライト粒界に存在する炭化物の個数の比率が1.0を超え、ビッカース硬さが170HV以下であり、{211}<011>のランダム強度比I1が4.0以下であり、前記フェライトの粒径が5~50μmであり、粒径が0.1μm以上2.0μm以下である前記炭化物の球状化率が、65%~100%であり、Nbの固溶量が、0.01質量%以上である。
(2)本発明の別の態様に係る鋼板の製造方法は、質量%で、C:0.10~0.70%、Si:0.010~0.300%、Mn:1.00~3.00%、P:0.0200%以下、S:0.0100%以下、Al:0.0010~0.1000%、Nb:0.030~0.200%、Cr:0.010~0.500%、Mo:0.001~0.500%、B:0.0004~0.0100%、Ti:0.0010~0.100%、V:0~0.1000%、Cu:0~0.100%、W:0~0.1000%、Ta:0~0.1000%、Ni:0~0.100%、Sn:0~0.0500%、Sb:0~0.0500%、Co:0~0.0500%、As:0~0.0500%、Mg:0~0.0500%、Ca:0~0.0500%、Y:0~0.0500%、Zr:0~0.0500%、La:0~0.0500%、Ce:0~0.0500%、O:0.0200%以下、N:0.0150%以下を含有し、残部がFe及び不純物からなる化学組成を有するスラブを、1250℃超に加熱し、0.5~3.0時間保持する加熱工程と、仕上げ温度が、860℃以上、950℃以下となるように熱間圧延を行って熱延鋼板を得る熱間圧延工程と、前記熱延鋼板を100℃/秒超、200℃/秒以下の平均冷却速度で、400~550℃まで冷却する冷却工程と、前記冷却工程後の前記熱延鋼板を400~550℃で巻取る巻取り工程と、前記巻取り工程後の前記熱延鋼板に箱焼鈍を行う焼鈍工程と、を備え、前記冷却工程は、前記熱間圧延工程完了から、2~5秒後に開始し、前記焼鈍工程では、30℃/時間以上、150℃/時間以下の平均加熱速度で、650℃以上、720℃以下の第1の温度域に加熱し、前記第1の温度域で3時間以上、60時間以下保持し、1℃/時間以上、80℃/時間以下の平均加熱速度で、725℃以上、790℃以下の第2の温度域に加熱し、前記第2の温度域で3時間以上、10時間未満保持し、1℃/時間以上、100℃/時間以下の平均冷却速度で650℃以下まで冷却した後、室温まで冷却する。
(3)本発明の別の態様に係る成形体は、質量%で、C:0.10~0.70%、Si:0.010~0.300%、Mn:1.00~3.00%、P:0.0200%以下、S:0.0100%以下、Al:0.0010~0.1000%、Nb:0.030~0.200%、Cr:0.010~0.500%、Mo:0.001~0.500%、B:0.0004~0.0100%、Ti:0.0010~0.100%、V:0~0.1000%、Cu:0~0.100%、W:0~0.1000%、Ta:0~0.1000%、Ni:0~0.100%、Sn:0~0.0500%、Sb:0~0.0500%、Co:0~0.0500%、As:0~0.0500%、Mg:0~0.0500%、Ca:0~0.0500%、Y:0~0.0500%、Zr:0~0.0500%、La:0~0.0500%、Ce:0~0.0500%、O:0.0200%以下、N:0.0150%以下を含有し、残部がFe及び不純物からなる化学組成を有し、ミクロ組織がセメンタイトを含み、前記ミクロ組織の、表面から板厚の3/8の位置において、旧オーステナイト粒界のNbの固溶量が、0.20質量%以上であり、旧オーステナイト粒径が、10.0μm以下であり、粒径が0.1μm以上2.0μm以下の前記セメンタイトの個数密度が、10個/mm2以上、100個/mm2以下であり、粒径が0.1μm以上2.0μm以下の前記セメンタイト中のMn含有量が、0.50質量%以上である。
本発明の上記態様によれば、冷間加工性に優れ成形及び熱処理後に高強度かつ優れた靭性が得られる鋼板、及びその製造方法、並びに高強度かつ低温靭性に優れる成形体を提供することができる。
以下、本発明の一実施形態に係る鋼板(本実施形態に係る鋼板)及び、本発明の一実施形態に係る成形体(本実施形態に係る成形体)について説明する。
まず、本実施形態に係る鋼板の化学組成の限定理由について説明する。以下、化学組成に係る%は質量%を意味する。
(C:0.10~0.70%)
Cは、鋼の焼入れ性の向上に寄与し、成形体の強度を確保するために有効な元素である。上記効果を得るために、C含有量を0.10%以上とする。好ましくは0.14%以上であり、より好ましくは0.20%以上であり、さらに好ましくは0.30%以上である。
一方、C含有量が0.70%を超えると、炭化物が過度に生成して、成形体(成形及び熱処理後の鋼板)においてセメンタイトの個数密度を所定量以下とすることができなくなる。この場合、成形体において延性脆性遷移温度が高温化して靱性が劣化する。そのため、C含有量を0.70%以下とする。好ましくはC含有量を0.55%以下とする。より好ましくは0.46%以下、さらに好ましくは0.38%以下である。
Cは、鋼の焼入れ性の向上に寄与し、成形体の強度を確保するために有効な元素である。上記効果を得るために、C含有量を0.10%以上とする。好ましくは0.14%以上であり、より好ましくは0.20%以上であり、さらに好ましくは0.30%以上である。
一方、C含有量が0.70%を超えると、炭化物が過度に生成して、成形体(成形及び熱処理後の鋼板)においてセメンタイトの個数密度を所定量以下とすることができなくなる。この場合、成形体において延性脆性遷移温度が高温化して靱性が劣化する。そのため、C含有量を0.70%以下とする。好ましくはC含有量を0.55%以下とする。より好ましくは0.46%以下、さらに好ましくは0.38%以下である。
(Si:0.010~0.300%)
Siは、炭化物の安定性を高める効果を持つ元素であり、成形体において所定量のセメンタイトを確保し、そのセメンタイトにMnを固溶させて靱性を高める元素である。上記効果を得るために、Si含有量を0.010%以上とする。好ましくは0.150%以上であり、より好ましくは0.200%以上である。
一方、Si含有量が0.300%を超えるとセメンタイトが溶解しにくくなり、セメンタイトの個数密度を所定量以下に制御できなくなる。そのため、Si含有量を0.300%以下とする。好ましくは0.250%以下である。
Siは、炭化物の安定性を高める効果を持つ元素であり、成形体において所定量のセメンタイトを確保し、そのセメンタイトにMnを固溶させて靱性を高める元素である。上記効果を得るために、Si含有量を0.010%以上とする。好ましくは0.150%以上であり、より好ましくは0.200%以上である。
一方、Si含有量が0.300%を超えるとセメンタイトが溶解しにくくなり、セメンタイトの個数密度を所定量以下に制御できなくなる。そのため、Si含有量を0.300%以下とする。好ましくは0.250%以下である。
(Mn:1.00~3.00%)
Mnは、鋼の焼入れ性の向上に寄与し、成形体の強度を確保するために有効な元素である。上記効果を得るために、Mn含有量を1.00%以上とする。好ましくは1.15%以上であり、より好ましくは1.20%以上である。
一方、Mn含有量が3.00%を超えると、粒界が脆化して成形体において延性脆性遷移温度が高温化して靱性が劣化する。そのため、Mn含有量を3.00%以下とする。好ましくは2.20%以下であり、より好ましくは1.80%以下であり、さらに好ましくは1.50%以下である。
Mnは、鋼の焼入れ性の向上に寄与し、成形体の強度を確保するために有効な元素である。上記効果を得るために、Mn含有量を1.00%以上とする。好ましくは1.15%以上であり、より好ましくは1.20%以上である。
一方、Mn含有量が3.00%を超えると、粒界が脆化して成形体において延性脆性遷移温度が高温化して靱性が劣化する。そのため、Mn含有量を3.00%以下とする。好ましくは2.20%以下であり、より好ましくは1.80%以下であり、さらに好ましくは1.50%以下である。
(P:0.0200%以下)
Pは、不純物であり、Pが成形体において旧オーステナイト粒界に偏析すると、延性脆性遷移温度が高温化して靱性が劣化する。P含有量が0.0200%超になると靭性の劣化が著しくなるので、P含有量を0.0200%以下に制限する。P含有量は少ないほど好ましく、0%でもよい。しかしながら、精錬工程においてP含有量を0.0001%未満に低減すると、高純度化に要する時間が長くなり、製造コストが大幅に増加する。そのため、実用鋼板上、P含有量は0.0001%が実質的な下限である。
Pは、不純物であり、Pが成形体において旧オーステナイト粒界に偏析すると、延性脆性遷移温度が高温化して靱性が劣化する。P含有量が0.0200%超になると靭性の劣化が著しくなるので、P含有量を0.0200%以下に制限する。P含有量は少ないほど好ましく、0%でもよい。しかしながら、精錬工程においてP含有量を0.0001%未満に低減すると、高純度化に要する時間が長くなり、製造コストが大幅に増加する。そのため、実用鋼板上、P含有量は0.0001%が実質的な下限である。
(S:0.0100%以下)
Sは、MnSなどの非金属介在物を形成する不純物元素である。非金属介在物は、成形体において亀裂の発生源となるので、非金属介在物が存在すると延性脆性遷移温度が高温化して靱性が劣化する。S含有量が0.0100%を超えると靭性の劣化が著しいので、S含有量を0.0100%以下とする。S含有量は少ないほど好ましいので、下限は0%を含むが、S含有量を0.0001%未満に低減すると、精錬コストが大幅に増加する。そのため、実用鋼板上、S含有量は0.0001%が実質的な下限である。
Sは、MnSなどの非金属介在物を形成する不純物元素である。非金属介在物は、成形体において亀裂の発生源となるので、非金属介在物が存在すると延性脆性遷移温度が高温化して靱性が劣化する。S含有量が0.0100%を超えると靭性の劣化が著しいので、S含有量を0.0100%以下とする。S含有量は少ないほど好ましいので、下限は0%を含むが、S含有量を0.0001%未満に低減すると、精錬コストが大幅に増加する。そのため、実用鋼板上、S含有量は0.0001%が実質的な下限である。
(Al:0.0010~0.1000%)
Alは、炭化物の安定性を高める効果を持つ元素であり、成形体において所定量のセメンタイトを確保し、セメンタイトにMnを固溶させて靱性を高めるために有効な元素である。Al含有量が0.0010%未満であると、フェライトが過度に細粒化され、成形性が十分に得られない。そのため、Al含有量を0.0010%以上とする。好ましくは0.0300%以上である。
一方、Al含有量が0.1000%を超えるとセメンタイトが溶解しにくくなり、セメンタイトの個数密度を所定量以下に制御できなくなる。そのため、Al含有量を0.1000%以下とする。好ましくは0.0500%以下である。
Alは、炭化物の安定性を高める効果を持つ元素であり、成形体において所定量のセメンタイトを確保し、セメンタイトにMnを固溶させて靱性を高めるために有効な元素である。Al含有量が0.0010%未満であると、フェライトが過度に細粒化され、成形性が十分に得られない。そのため、Al含有量を0.0010%以上とする。好ましくは0.0300%以上である。
一方、Al含有量が0.1000%を超えるとセメンタイトが溶解しにくくなり、セメンタイトの個数密度を所定量以下に制御できなくなる。そのため、Al含有量を0.1000%以下とする。好ましくは0.0500%以下である。
(Nb:0.030~0.200%)
Nbは、成形体において、旧オーステナイト粒界を強化し、吸収エネルギーを増加させて靱性の向上に寄与する元素である。Nb含有量が0.030%未満では、旧オーステナイト粒界への偏析が不足して十分な効果が得られない。そのため、Nb含有量を0.030%以上とする。好ましくは0.040%以上であり、より好ましくは0.050%以上であり、さらに好ましくは0.060%以上である。
一方、Nb含有量が0.200%を超えると、熱間圧延工程において旧オーステナイトの再結晶が阻害され、フェライトの集合組織が強くなり過ぎて成形性が劣化する。そのため、Nb含有量を0.200%以下とする。好ましくは0.150%以下であり、より好ましくは0.100%以下であり、さらに好ましくは0.080%以下である。
Nbは、成形体において、旧オーステナイト粒界を強化し、吸収エネルギーを増加させて靱性の向上に寄与する元素である。Nb含有量が0.030%未満では、旧オーステナイト粒界への偏析が不足して十分な効果が得られない。そのため、Nb含有量を0.030%以上とする。好ましくは0.040%以上であり、より好ましくは0.050%以上であり、さらに好ましくは0.060%以上である。
一方、Nb含有量が0.200%を超えると、熱間圧延工程において旧オーステナイトの再結晶が阻害され、フェライトの集合組織が強くなり過ぎて成形性が劣化する。そのため、Nb含有量を0.200%以下とする。好ましくは0.150%以下であり、より好ましくは0.100%以下であり、さらに好ましくは0.080%以下である。
(Cr:0.010~0.500%)
Crは、炭化物の安定性を高める効果を持つ元素である。Cr含有量が0.010%未満では、成形体において所定量のセメンタイトを確保することが困難であり、セメンタイトにMnを固溶させて靱性を高めることが難しい。そのため、Cr含有量を0.010%以上とする。好ましくは0.030%以上であり、より好ましくは0.050%以上であり、さらに好ましくは0.100%以上である。
一方、Cr含有量が0.500%を超えると、セメンタイトが溶解しにくくなり、セメンタイトの個数密度を所定量以下に制御できなくなる。そのため、Cr含有量を0.500%以下とする。好ましくは0.300%以下であり、より好ましくは0.200%以下であり、さらに好ましくは0.180%以下である。
Crは、炭化物の安定性を高める効果を持つ元素である。Cr含有量が0.010%未満では、成形体において所定量のセメンタイトを確保することが困難であり、セメンタイトにMnを固溶させて靱性を高めることが難しい。そのため、Cr含有量を0.010%以上とする。好ましくは0.030%以上であり、より好ましくは0.050%以上であり、さらに好ましくは0.100%以上である。
一方、Cr含有量が0.500%を超えると、セメンタイトが溶解しにくくなり、セメンタイトの個数密度を所定量以下に制御できなくなる。そのため、Cr含有量を0.500%以下とする。好ましくは0.300%以下であり、より好ましくは0.200%以下であり、さらに好ましくは0.180%以下である。
(Mo:0.001~0.500%)
Moは、炭化物の安定性を高める効果を持つ元素である。Mo含有量が0.001%未満では、成形体において所定量のセメンタイトを確保することが困難であり、セメンタイトにMnを固溶させて靱性を高めることが難しい。そのため、Mo含有量を0.001%以上とする。好ましくは0.030%以上である。
一方、Mo含有量が0.500%を超えると、セメンタイトが溶解しにくくなり、セメンタイトの個数密度を所定量以下に制御できなくなる。そのため、Mo含有量を0.500%以下とする。好ましくは0.300%以下であり、より好ましくは0.200%以下であり、さらに好ましくは0.180%以下である。
Moは、炭化物の安定性を高める効果を持つ元素である。Mo含有量が0.001%未満では、成形体において所定量のセメンタイトを確保することが困難であり、セメンタイトにMnを固溶させて靱性を高めることが難しい。そのため、Mo含有量を0.001%以上とする。好ましくは0.030%以上である。
一方、Mo含有量が0.500%を超えると、セメンタイトが溶解しにくくなり、セメンタイトの個数密度を所定量以下に制御できなくなる。そのため、Mo含有量を0.500%以下とする。好ましくは0.300%以下であり、より好ましくは0.200%以下であり、さらに好ましくは0.180%以下である。
(B:0.0004~0.0100%)
Bは、焼入れ性を高めることで鋼の強度の向上に寄与する元素である。B含有量が0.0004%未満では、焼入れ性向上効果が得られない。そのため、B含有量を0.0004%以上とする。好ましくは0.0010%以上であり、より好ましくは0.0015%以上であり、さらに好ましくは0.0020%以上である。
一方、B含有量が0.0100%を超えると、成形体においてBが旧オーステナイト粒界に偏析する。その結果、延性脆性遷移温度が高温化して靱性が劣化する。そのため、B含有量を0.0100%以下とする。好ましくは0.0070%以下であり、より好ましくは0.0050%以下であり、さらに好ましくは0.040%以下である。
Bは、焼入れ性を高めることで鋼の強度の向上に寄与する元素である。B含有量が0.0004%未満では、焼入れ性向上効果が得られない。そのため、B含有量を0.0004%以上とする。好ましくは0.0010%以上であり、より好ましくは0.0015%以上であり、さらに好ましくは0.0020%以上である。
一方、B含有量が0.0100%を超えると、成形体においてBが旧オーステナイト粒界に偏析する。その結果、延性脆性遷移温度が高温化して靱性が劣化する。そのため、B含有量を0.0100%以下とする。好ましくは0.0070%以下であり、より好ましくは0.0050%以下であり、さらに好ましくは0.040%以下である。
(Ti:0.0010~0.100%)
Tiは、Bの焼入れ性向上効果を有効に発揮させるために必要な元素である。Ti含有量が0.0010%未満ではセメンタイトの個数密度が多くなり過ぎて、延性脆性遷移温度における吸収エネルギーが低下する。そのため、Ti含有量を0.0010%以上とする。好ましくは0.0020%以上であり、より好ましくは0.0040%以上であり、さらに好ましくは0.0060%以上である。
一方、Ti含有量が0.100%を超えると、熱間圧延後の鋼板が硬くなりすぎて成形性が低下する。そのため、Ti含有量を0.100%以下とする。好ましくは0.090%以下であり、より好ましくは0.070%以下であり、さらに好ましくは0.050%以下である。
Tiは、Bの焼入れ性向上効果を有効に発揮させるために必要な元素である。Ti含有量が0.0010%未満ではセメンタイトの個数密度が多くなり過ぎて、延性脆性遷移温度における吸収エネルギーが低下する。そのため、Ti含有量を0.0010%以上とする。好ましくは0.0020%以上であり、より好ましくは0.0040%以上であり、さらに好ましくは0.0060%以上である。
一方、Ti含有量が0.100%を超えると、熱間圧延後の鋼板が硬くなりすぎて成形性が低下する。そのため、Ti含有量を0.100%以下とする。好ましくは0.090%以下であり、より好ましくは0.070%以下であり、さらに好ましくは0.050%以下である。
(O:0.0200%以下)
Oは、製鋼過程で溶鋼中に不純物として残留し、酸化物などの非金属介在物を形成する元素である。非金属介在物は、成形体において亀裂の発生源となるので、非金属介在物が存在すると延性脆性遷移温度が高温化して靱性が劣化する。そのため、O含有量は0.0200%以下とする。O含有量は、好ましくは0.0100%以下である。O含有量は少ないほど好ましいので、下限は0%を含むが、O含有量を0.0001%未満に低減すると、精錬コストが大幅に増加する。そのため、実用鋼板上、O含有量は0.0001%が実質的な下限である。
Oは、製鋼過程で溶鋼中に不純物として残留し、酸化物などの非金属介在物を形成する元素である。非金属介在物は、成形体において亀裂の発生源となるので、非金属介在物が存在すると延性脆性遷移温度が高温化して靱性が劣化する。そのため、O含有量は0.0200%以下とする。O含有量は、好ましくは0.0100%以下である。O含有量は少ないほど好ましいので、下限は0%を含むが、O含有量を0.0001%未満に低減すると、精錬コストが大幅に増加する。そのため、実用鋼板上、O含有量は0.0001%が実質的な下限である。
(N:0.0150%以下)
Nは、製鋼過程で溶鋼中に不純物として残留し、窒化物などの非金属介在物を形成する元素である。非金属介在物は、成形体において亀裂の発生源となるので、非金属介在物が存在すると延性脆性遷移温度が高温化して靱性が劣化する。そのため、N含有量は0.0150%以下とする。N含有量は、好ましくは0.0080%以下である。N含有量は少ないほど好ましいので下限は0%を含むが、N含有量を0.0001%未満に低減すると、精錬コストが大幅に増加する。そのため、実用鋼板上、N含有量は0.0001%が実質的な下限である。
Nは、製鋼過程で溶鋼中に不純物として残留し、窒化物などの非金属介在物を形成する元素である。非金属介在物は、成形体において亀裂の発生源となるので、非金属介在物が存在すると延性脆性遷移温度が高温化して靱性が劣化する。そのため、N含有量は0.0150%以下とする。N含有量は、好ましくは0.0080%以下である。N含有量は少ないほど好ましいので下限は0%を含むが、N含有量を0.0001%未満に低減すると、精錬コストが大幅に増加する。そのため、実用鋼板上、N含有量は0.0001%が実質的な下限である。
本実施形態に係る鋼板は、成形性をより高める場合、不純物におけるO及び/又はNの含有量をより制限することが好ましい。
本実施形態に係る鋼板は、上記元素を含み残部がFe及び不純物であることを基本とするが、上記元素の他、鋼板の特性を阻害しない範囲で、質量%で、さらに、V、Cu、W、Ta、Ni、Sn、Sb、Co、As、Mg、Ca、Y、Zr、La、及び、Ceからなる群から選択される1種又は2種以上を含有してもよい。これらの元素は必ずしも含有しなくてもよいので、下限は0%である。
上記元素の1種又は2種以上を含有する場合、各元素の含有量は、質量%で、V:0.001~0.1000%、Cu:0.001~0.100%、W:0.0010~0.1000%、Ta:0.0010~0.1000%、Ni:0.001~0.100%、Sn:0.0010~0.0500%、Sb:0.0010~0.0500%、Co:0.0010~0.0500%、As:0.0010~0.0500%、Mg:0.0001~0.0500%、Ca:0.0010~0.0500%、Y:0.0010~0.0500%、Zr:0.0010~0.0500%、La:0.0010~0.0500%、及び/またはCe:0.0010~0.0500%であることが好ましい。
次に本実施形態に係る鋼板のミクロ組織(金属組織)について説明する。
本実施形態に係る鋼板は、上記の通りの化学組成の制御に加え、最適な条件での熱延、冷却及び焼鈍等を行うことにより、以下のようなミクロ組織を有する。
(a)フェライトと炭化物とからなり、前記炭化物が、フェライト粒内及びフェライト粒界に存在し、
表面から板厚の3/8の位置において、
(b)粒径が0.1μm以上2.0μm以下である炭化物のうち、フェライト粒内に存在する炭化物の個数に対する、フェライト粒界に存在する炭化物の個数の比率が1.0を超え、
(c)ビッカース硬さが170HV以下であり、
(d){211}<011>のランダム強度比I1が4.0以下であり、
(e)フェライトの粒径が5~50μmであり、
(f)粒径が0.1μm以上2.0μm以下である炭化物の球状化率が、65%~100%であり、
(g)Nbの固溶量が、0.01質量%以上である
ことを特徴とする。この特徴により、熱処理前の鋼板の冷間加工での成形性が向上するとともに、成形及び熱処理後に(すなわち成形体において)高強度と高靭性とが得られる。これらは、本発明者らが見いだした新規な知見である。
本実施形態に係る鋼板は、上記の通りの化学組成の制御に加え、最適な条件での熱延、冷却及び焼鈍等を行うことにより、以下のようなミクロ組織を有する。
(a)フェライトと炭化物とからなり、前記炭化物が、フェライト粒内及びフェライト粒界に存在し、
表面から板厚の3/8の位置において、
(b)粒径が0.1μm以上2.0μm以下である炭化物のうち、フェライト粒内に存在する炭化物の個数に対する、フェライト粒界に存在する炭化物の個数の比率が1.0を超え、
(c)ビッカース硬さが170HV以下であり、
(d){211}<011>のランダム強度比I1が4.0以下であり、
(e)フェライトの粒径が5~50μmであり、
(f)粒径が0.1μm以上2.0μm以下である炭化物の球状化率が、65%~100%であり、
(g)Nbの固溶量が、0.01質量%以上である
ことを特徴とする。この特徴により、熱処理前の鋼板の冷間加工での成形性が向上するとともに、成形及び熱処理後に(すなわち成形体において)高強度と高靭性とが得られる。これらは、本発明者らが見いだした新規な知見である。
<ミクロ組織が、フェライトと炭化物とからなり、炭化物が、フェライト粒内及びフェライト粒界に存在し、表面から板厚の3/8の位置において、粒径が0.1μm以上2.0μm以下である炭化物のうち、フェライト粒内に存在する炭化物の個数に対する、フェライト粒界に存在する炭化物の個数の比率が1.0超>
本実施形態に係る鋼板は、実質的に、フェライトと炭化物とで構成され、少なくとも表面から板厚の3/8の位置(板厚をtとした場合の3t/8の位置)において、粒径が0.1μm以上2.0μm以下である炭化物のうち、フェライト粒内の炭化物個数に対するフェライト粒界の炭化物個数の比率(フェライト粒界に存在する炭化物個数/フェライト粒内に存在する炭化物個数)が1.0を超える組織とする。粒径が0.1μm~2.0μmの炭化物を対象とするのは、この程度の大きさの炭化物が、変形中において破壊の起点となりやすく、靱性の低下に対する影響が大きいためである。
本実施形態に係る鋼板は、実質的に、フェライトと炭化物とで構成され、少なくとも表面から板厚の3/8の位置(板厚をtとした場合の3t/8の位置)において、粒径が0.1μm以上2.0μm以下である炭化物のうち、フェライト粒内の炭化物個数に対するフェライト粒界の炭化物個数の比率(フェライト粒界に存在する炭化物個数/フェライト粒内に存在する炭化物個数)が1.0を超える組織とする。粒径が0.1μm~2.0μmの炭化物を対象とするのは、この程度の大きさの炭化物が、変形中において破壊の起点となりやすく、靱性の低下に対する影響が大きいためである。
本実施形態に係る鋼板のミクロ組織は、実質的に、フェライトと炭化物とで構成される。より詳細には、本実施形態に係る鋼板のミクロ組織において、フェライトの面積率は、例えば80~95%の範囲内であり、炭化物の面積率は、例えば5~20%の範囲内であって、かつ、フェライトと炭化物の合計面積率が100%を超えないように構成される。フェライト及び炭化物以外の組織として、パーライトやマルテンサイト、ベイナイト、残留オーステナイトを含まないことが好ましい。ここでいうパーライトとは、フェライト相と炭化物相とが多層(2層以上)析出した共析晶を意味する。また、本実施形態において、炭化物とは、実質的に鉄と炭素との化合物であるセメンタイト(Fe3C)である。
Mnはフェライトの粒界(フェライト粒界)を拡散経路とする。そのため、フェライト粒界に炭化物が存在することにより、炭化物中へのMnの濃化が促進する。フェライトの粒内(フェライト粒内)に存在する炭化物の個数に対する、フェライト粒界に存在する炭化物個数の比率が1.0以下であると、炭化物中へのMnの濃化が促進されず、成形及び熱処理後の成形体においてセメンタイトにMnが十分に濃化されない。上記炭化物個数の存在比率は1.5以上が好ましく、2.0以上がより好ましい。かかる炭化物個数の比率の上限は特に限定されないが、実質的には3.0である。
炭化物の個数は以下の方法で測定する。まず、鋼板の幅方向に垂直な断面を観察面としてサンプルを採取する。次に、サンプルを、エメリー紙による湿式研磨及び1μmの平均粒子サイズをもつダイヤモンド砥粒により研磨し、観察面を鏡面に仕上げた後、3%硝酸-アルコール溶液にて組織をエッチングする。次に、走査型電子顕微鏡を用いて組織観察を行う。表面から板厚の3/8の位置における1000μm2の領域を1視野として、10視野取得する。
個数のカウントに先だって、炭化物の粒径を以下の方法で測定する。得られた各画像に対して、画像解析ソフト(例えば、三谷商事株式会社製Win ROOF)により、その領域中に含まれる各炭化物の面積を詳細に測定する。各炭化物の面積から、円相当直径(=2×√(面積/3.14))を求め、炭化物の粒径とする。
各視野内に存在する、粒径が0.1~2.0μmである炭化物の総数、および粒径が0.1~2.0μmである炭化物のうちフェライト粒界上に存在する炭化物の個数をカウントし、炭化物の総数から粒界上の炭化物個数を引くことにより、フェライト粒内の炭化物個数を求める。上記手順で測定した個数をもとに、フェライト粒内の炭化物に対する粒界の炭化物の個数比率を求める。
<表面から板厚の3/8の位置において、粒径が0.1μm以上2.0μm以下の炭化物の球状化率が、65%~100%>
粒径が0.1μm以上2.0μm以下の炭化物の球状化率は、65%~100%とする。鋼板の炭化物の球状化率をこの範囲に制御することにより、成形及び熱処理を行って得られる成形体において、セメンタイトの個数密度を10個/mm2以上、100個/mm2以下に制御することができる。球状化率が65%未満であると、セメンタイトが溶解しにくくなり、セメンタイトの個数密度が100個/mm2超えとなる。この場合、成形体の延性脆性遷移温度が高温化して靱性が劣化する。炭化物の球状化率は、好ましくは75%以上である。
粒径が0.1μm以上2.0μm以下の炭化物の球状化率は、65%~100%とする。鋼板の炭化物の球状化率をこの範囲に制御することにより、成形及び熱処理を行って得られる成形体において、セメンタイトの個数密度を10個/mm2以上、100個/mm2以下に制御することができる。球状化率が65%未満であると、セメンタイトが溶解しにくくなり、セメンタイトの個数密度が100個/mm2超えとなる。この場合、成形体の延性脆性遷移温度が高温化して靱性が劣化する。炭化物の球状化率は、好ましくは75%以上である。
炭化物の球状化率は、次の方法で測定する。上述したフェライト粒内の炭化物に対する粒界の炭化物の個数比率を求めた画像に含まれる、粒径が0.1μm以上2.0μm以下の全ての炭化物について、長軸と短軸とを測定して、短軸の長さを長軸の長さで除した値を算出し、その平均値を求める。上記観察を全視野で実施し、全視野の平均値を百分率で表した値を、炭化物の球状化率とする。
<表面から板厚の3/8の位置において、ビッカース硬さが170Hv以下>
鋼板のビッカース硬さを170Hv以下とすることで、冷間成形時の成形性を十分に得られる。ビッカース硬さが170Hvを超えると、延性が低下し、増肉などの圧縮変形中に面外への座屈が発生し易くなったりして成形が困難となる。そのため、ビッカース硬さは170Hv以下とする。好ましくは150Hv以下である。ビッカース硬さの下限値は特に限定されないが、成形後の成形品の形状精度を確保するためには、ビッカース硬さを100Hv以上とすることが好ましい。より好ましくは120Hv以上である。
鋼板のビッカース硬さを170Hv以下とすることで、冷間成形時の成形性を十分に得られる。ビッカース硬さが170Hvを超えると、延性が低下し、増肉などの圧縮変形中に面外への座屈が発生し易くなったりして成形が困難となる。そのため、ビッカース硬さは170Hv以下とする。好ましくは150Hv以下である。ビッカース硬さの下限値は特に限定されないが、成形後の成形品の形状精度を確保するためには、ビッカース硬さを100Hv以上とすることが好ましい。より好ましくは120Hv以上である。
ビッカース硬さは、以下の方法で求める。まず、鋼板の幅方向に垂直な断面を観察面としてサンプルを採取する。サンプルの観察面を#600から#1500の炭化珪素ペーパーを使用して研磨した後、粒度1μmから6μmのダイヤモンドパウダーをアルコール等の希釈液や純水に分散させた液体を使用して鏡面に仕上げる。測定面を調製した試料に対し、JIS Z 2244:2009記載の方法に準じてマイクロビッカース硬さ試験機を用いて測定を実施する。鋼板の表面から板厚の3/8の位置において、荷重2.94Nで、圧痕の3倍以上の間隔で10点測定する。10点の平均値を、鋼板のビッカース硬さとする。
<表面から板厚の3/8の位置において、ミクロ組織の{211}<011>のランダム強度比I1が4.0以下>
成形時には、プレス成形、穴広げ成形、曲げ成形、絞り成形、増肉及び減肉成形等が行われる。そのため、成形時には、炭化物の形態を制御することに加えて、絞り成形性を確保する必要がある。成形時の絞り成形性を向上させるためには、塑性異方性を低減する必要がある。そのためには、熱延鋼板での集合組織を制御する必要がある。
成形時には、プレス成形、穴広げ成形、曲げ成形、絞り成形、増肉及び減肉成形等が行われる。そのため、成形時には、炭化物の形態を制御することに加えて、絞り成形性を確保する必要がある。成形時の絞り成形性を向上させるためには、塑性異方性を低減する必要がある。そのためには、熱延鋼板での集合組織を制御する必要がある。
本発明者らは、{211}<011>のランダム強度比をI1として、このI1が4.0以下であることが、塑性異方性の低減に必要であることを見出した。好ましくは3.5以下である。
I1が4.0超であると、塑性異方性が増加して、十分な成形性が得られない。I1の下限を限定する必要はないが、本実施形態に係る鋼板では、実質的に1.0未満となることはないので1.0以上としてもよい。
I1が4.0超であると、塑性異方性が増加して、十分な成形性が得られない。I1の下限を限定する必要はないが、本実施形態に係る鋼板では、実質的に1.0未満となることはないので1.0以上としてもよい。
ランダム強度比I1の測定は、次の方法で行う。
鋼板表面から板厚の3/8の位置(3t/8の位置)における観察面に対して、電子後方散乱回折法(Electron Back Scattering Diffraction:EBSD)を用いて0.1μmの測定間隔(ピッチ)で測定し、結晶方位情報を得る。ここでEBSD解析は、例えば、サーマル電界放射型走査電子顕微鏡(JEOL製JSM-7001F)とEBSD検出器(TSL製DVC5型検出器)で構成された装置を用い、15kV~25kVの電子線加速電圧で、200~300点/秒の解析速度で実施する。EBSD解析装置に付属のソフトウェア「OIM Analysis(登録商標)」に搭載された「TEXTURE」機能を用いて、得られた結晶方位情報から、級数展開法で計算した3次元集合組織を計算する。次に「ODF」機能を用いて、3次元集合組織のうちφ2=45゜断面における(211)[0-11]の強度をそのままフェライト結晶粒のランダム強度比I1として用いればよい。「-1」という方位は、正式には「1」の上にアッパーバーを付して表記するが、本明細書では記載の制約上、「-1」と表記している。
鋼板表面から板厚の3/8の位置(3t/8の位置)における観察面に対して、電子後方散乱回折法(Electron Back Scattering Diffraction:EBSD)を用いて0.1μmの測定間隔(ピッチ)で測定し、結晶方位情報を得る。ここでEBSD解析は、例えば、サーマル電界放射型走査電子顕微鏡(JEOL製JSM-7001F)とEBSD検出器(TSL製DVC5型検出器)で構成された装置を用い、15kV~25kVの電子線加速電圧で、200~300点/秒の解析速度で実施する。EBSD解析装置に付属のソフトウェア「OIM Analysis(登録商標)」に搭載された「TEXTURE」機能を用いて、得られた結晶方位情報から、級数展開法で計算した3次元集合組織を計算する。次に「ODF」機能を用いて、3次元集合組織のうちφ2=45゜断面における(211)[0-11]の強度をそのままフェライト結晶粒のランダム強度比I1として用いればよい。「-1」という方位は、正式には「1」の上にアッパーバーを付して表記するが、本明細書では記載の制約上、「-1」と表記している。
<表面から板厚の3/8の位置において、フェライトの粒径が5~50μm>
フェライトの粒径が5μm未満であると、結晶粒微細化の影響により鋼板の硬さが上昇しすぎて、成形性が確保できなくなる。一方フェライト粒径が50μmを超えると、すべりの伝播を抑制する結晶粒界上の炭化物の個数が減少し、成形性が低下する。そのため、フェライトの粒径を5~50μmとする。
フェライトの粒径が5μm未満であると、結晶粒微細化の影響により鋼板の硬さが上昇しすぎて、成形性が確保できなくなる。一方フェライト粒径が50μmを超えると、すべりの伝播を抑制する結晶粒界上の炭化物の個数が減少し、成形性が低下する。そのため、フェライトの粒径を5~50μmとする。
フェライト粒径の測定は、エッチング後のサンプルの観察面を光学顕微鏡又は走査型電子顕微鏡にて観察し、3t/8の位置において、測定面積を1000μm2として得られた画像に対して、線分法を適用して測定する。線分法での測定の際、線を引く間隔は、2μmとする。
<表面から板厚の3/8の位置において、Nbの固溶量が、0.01質量%以上>
鋼板においてNbの固溶量を0.01質量%以上とすることにより、成形及び熱処理を行って得られる成形体において、旧オーステナイト粒界におけるNbの偏析が促進されて、粒界強化の効果を得ることができる。そのため、鋼板におけるNb固溶量が0.01質量%以上であるようにする必要がある。Nbの固溶量は、実質的に0.50質量%以下である。
鋼板においてNbの固溶量を0.01質量%以上とすることにより、成形及び熱処理を行って得られる成形体において、旧オーステナイト粒界におけるNbの偏析が促進されて、粒界強化の効果を得ることができる。そのため、鋼板におけるNb固溶量が0.01質量%以上であるようにする必要がある。Nbの固溶量は、実質的に0.50質量%以下である。
Nbの固溶量は、以下の方法で求める。
鋼板の幅方向に垂直な断面を観察面としてサンプルを採取する。サンプルの観察面を、#600から#1500の炭化珪素ペーパーを使用して研磨した後、粒度1μmから6μmのダイヤモンドパウダーをアルコール等の希釈液や純水に分散させた液体を使用して鏡面に仕上げる。サンプルの3t/8の位置を、サーマル電界放射型走査電子顕微鏡(JEOL製JSM-7001F)とWDS検出器とで構成された装置を用い、装置内の真空度は9.6×10-5Pa以下、加速電圧は15kv、照射電流レベルは13、電子線の照射時間は0.01秒/点とし、フェライト結晶粒内に電子線を照射して、Nb濃度を測定する。同様の方法でフェライト結晶粒を10個測定し、その平均値をNbの固溶量とする。
鋼板の幅方向に垂直な断面を観察面としてサンプルを採取する。サンプルの観察面を、#600から#1500の炭化珪素ペーパーを使用して研磨した後、粒度1μmから6μmのダイヤモンドパウダーをアルコール等の希釈液や純水に分散させた液体を使用して鏡面に仕上げる。サンプルの3t/8の位置を、サーマル電界放射型走査電子顕微鏡(JEOL製JSM-7001F)とWDS検出器とで構成された装置を用い、装置内の真空度は9.6×10-5Pa以下、加速電圧は15kv、照射電流レベルは13、電子線の照射時間は0.01秒/点とし、フェライト結晶粒内に電子線を照射して、Nb濃度を測定する。同様の方法でフェライト結晶粒を10個測定し、その平均値をNbの固溶量とする。
また、他の組織に関するパラメータについては以下の方法で測定する。
<フェライト及び炭化物の面積率>
フェライト及び炭化物の面積率は、サンプルのエッチング後の各視野の面積におけるフェライト及び炭化物の占める面積の割合を測定することで得られる。フェライトの占める面積の割合の全視野での平均値、及び、炭化物の占める面積の割合の全視野での平均値を、それぞれ、フェライトの面積率、及び、炭化物の面積率とする。
<フェライト及び炭化物の面積率>
フェライト及び炭化物の面積率は、サンプルのエッチング後の各視野の面積におけるフェライト及び炭化物の占める面積の割合を測定することで得られる。フェライトの占める面積の割合の全視野での平均値、及び、炭化物の占める面積の割合の全視野での平均値を、それぞれ、フェライトの面積率、及び、炭化物の面積率とする。
次に、本実施形態に係る成形体について説明する。
<化学組成>
本実施形態に係る成形体は、上記の本実施形態に係る鋼板に熱処理及び成形を行うことによって得られる。熱処理及び成形では化学組成は変化しないので、本実施形態に係る成形体における化学組成の限定理由は、本実施形態に係る鋼板における化学組成の限定理由と同じである。
本実施形態に係る成形体は、上記の本実施形態に係る鋼板に熱処理及び成形を行うことによって得られる。熱処理及び成形では化学組成は変化しないので、本実施形態に係る成形体における化学組成の限定理由は、本実施形態に係る鋼板における化学組成の限定理由と同じである。
<ミクロ組織>
本実施形態に係る成形体では、ミクロ組織がセメンタイトを含む。セメンタイト以外の残部は限定されないが、焼入れ及び焼戻しによって強度を向上させる成形体であれば、例えば残部の組織はマルテンサイト、ベイナイト及び/または焼戻しマルテンサイト等である。
本実施形態に係る成形体では、ミクロ組織がセメンタイトを含む。セメンタイト以外の残部は限定されないが、焼入れ及び焼戻しによって強度を向上させる成形体であれば、例えば残部の組織はマルテンサイト、ベイナイト及び/または焼戻しマルテンサイト等である。
<ミクロ組織の、表面から板厚の3/8の位置において、旧オーステナイト粒径が、10.0μm以下>
旧オーステナイト粒径が10.0μm超であると、粒界の強度が低下し、延性脆性遷移温度における吸収エネルギーが劣化して靭性が低下する。そのため、旧オーステナイト粒径を10.0μm以下とする。下限を限定する必要はないが、旧オーステナイト粒径が実質的に0.1μm以下となることはないので、0.1μm以上としてもよい。
旧オーステナイト粒径が10.0μm超であると、粒界の強度が低下し、延性脆性遷移温度における吸収エネルギーが劣化して靭性が低下する。そのため、旧オーステナイト粒径を10.0μm以下とする。下限を限定する必要はないが、旧オーステナイト粒径が実質的に0.1μm以下となることはないので、0.1μm以上としてもよい。
旧オーステナイト粒径は、以下の方法で求める。
成形体の端面から50mm以上離れた位置から、表面に垂直な断面(板厚断面)が観察できるようにサンプルを切り出す。サンプルは、測定装置にもよるが、圧延方向に10mm程度とする。切り出したサンプルの表面から板厚の3/8の位置を、0.1μmの測定間隔でEBSD解析して結晶方位情報を得る。ここでEBSD解析は、サーマル電界放射型走査電子顕微鏡(JEOL製JSM-7001F)とEBSD検出器(TSL製DVC5型検出器)とで構成された装置を用い、200~300点/秒の解析速度で実施する。得られた結晶方位情報を用いて、一般的な旧オーステナイト粒と変態後の体心立方構造を持つ結晶粒との結晶方位関係から、旧オーステナイト粒の結晶方位を計算し、旧オーステナイト粒の平均結晶粒径を算出する。旧オーステナイト粒の結晶方位を計算する方法としてActa Materialia、58(2010)、6393-6403に記載の方法を用いる。かかる方法を用いて旧オーステナイト粒の結晶方位マップを作成し、作成した結晶方位マップから、切片法により旧オーステナイト粒の平均結晶粒径を算出する。
成形体の端面から50mm以上離れた位置から、表面に垂直な断面(板厚断面)が観察できるようにサンプルを切り出す。サンプルは、測定装置にもよるが、圧延方向に10mm程度とする。切り出したサンプルの表面から板厚の3/8の位置を、0.1μmの測定間隔でEBSD解析して結晶方位情報を得る。ここでEBSD解析は、サーマル電界放射型走査電子顕微鏡(JEOL製JSM-7001F)とEBSD検出器(TSL製DVC5型検出器)とで構成された装置を用い、200~300点/秒の解析速度で実施する。得られた結晶方位情報を用いて、一般的な旧オーステナイト粒と変態後の体心立方構造を持つ結晶粒との結晶方位関係から、旧オーステナイト粒の結晶方位を計算し、旧オーステナイト粒の平均結晶粒径を算出する。旧オーステナイト粒の結晶方位を計算する方法としてActa Materialia、58(2010)、6393-6403に記載の方法を用いる。かかる方法を用いて旧オーステナイト粒の結晶方位マップを作成し、作成した結晶方位マップから、切片法により旧オーステナイト粒の平均結晶粒径を算出する。
<旧オーステナイト粒界におけるNbの固溶量が、0.20質量%以上>
旧オーステナイト粒界におけるNbの固溶量(偏析量)が、0.20質量%未満であると、粒界の強度が低下し、延性脆性遷移温度における吸収エネルギーが劣化して靭性が低下する。そのため、旧オーステナイト粒界におけるNbの固溶量を0.20質量%以上とする。上限は特に限定されないが、実質的な上限は2.00質量である。
旧オーステナイト粒界におけるNbの固溶量(偏析量)が、0.20質量%未満であると、粒界の強度が低下し、延性脆性遷移温度における吸収エネルギーが劣化して靭性が低下する。そのため、旧オーステナイト粒界におけるNbの固溶量を0.20質量%以上とする。上限は特に限定されないが、実質的な上限は2.00質量である。
旧オーステナイト粒界におけるNbの固溶量は、以下の方法で求める。
成形体の端面から50mm以上離れた位置から、図1に示す寸法の試験片を作製する。この際、板厚が1.2mmとなるように、試験片の表裏面を同量ずつ機械研削によって除去する。試験片中央部の切れ込みは、試験片の側面から厚さ1mmのワイヤーカッターにより挿入し、切れ込み底の結合部は100μmから200μmに制御する。次に、試験片を20%-チオシアン酸アンモニウム溶液に72時間以上浸漬させる。浸漬完了後0.5時間以内に試験片の表裏面に亜鉛めっきを施す。めっき後は1.5時間以内にオージェ電子発光分光分析に供する。試験片をオージェ電子発光分光分析装置の内部にセッティングし、9.6×10-5以下の真空において、試験片の切れ込み部分から破壊して、旧オーステナイト粒界を露出させる。露出した旧オーステナイト粒界に、1kV以上の加速電圧で電子線を照射し、当該粒界におけるNbの質量%(濃度)を測定する。表面から板厚の3/8の位置における10ヶ所の旧オーステナイト粒界において測定を実施する。粒界の汚染を防ぐため、破壊後30分以内に測定を完了させる。得られたNbの質量%(濃度)の平均値を算出し、Nbの固溶量とする。
成形体の端面から50mm以上離れた位置から、図1に示す寸法の試験片を作製する。この際、板厚が1.2mmとなるように、試験片の表裏面を同量ずつ機械研削によって除去する。試験片中央部の切れ込みは、試験片の側面から厚さ1mmのワイヤーカッターにより挿入し、切れ込み底の結合部は100μmから200μmに制御する。次に、試験片を20%-チオシアン酸アンモニウム溶液に72時間以上浸漬させる。浸漬完了後0.5時間以内に試験片の表裏面に亜鉛めっきを施す。めっき後は1.5時間以内にオージェ電子発光分光分析に供する。試験片をオージェ電子発光分光分析装置の内部にセッティングし、9.6×10-5以下の真空において、試験片の切れ込み部分から破壊して、旧オーステナイト粒界を露出させる。露出した旧オーステナイト粒界に、1kV以上の加速電圧で電子線を照射し、当該粒界におけるNbの質量%(濃度)を測定する。表面から板厚の3/8の位置における10ヶ所の旧オーステナイト粒界において測定を実施する。粒界の汚染を防ぐため、破壊後30分以内に測定を完了させる。得られたNbの質量%(濃度)の平均値を算出し、Nbの固溶量とする。
<表面から板厚の3/8の位置において、粒径が0.1μm以上2.0μm以下のセメンタイトの個数密度が、10個/mm2以上、100個/mm2以下>
粒径が0.1μm以上2.0μm以下のセメンタイトの個数密度が、10個/mm2以上、100個/mm2以下であれば、成形体において延性脆性遷移温度を低温化することができる。セメンタイトの個数密度が、10個/mm2未満であると、成形体においてセメンタイト中に濃化するMn含有量の総量が少なくなり、延性脆性遷移温度が高温化し、靱性の向上効果を得ることができない。個数密度を10個/mm2以上とする。好ましくは20個/mm2以上である。
一方、セメンタイトの個数密度が100個/mm2超えであると、セメンタイトを起点として亀裂が発生しやくなり、延性脆性遷移温度が高温化し靱性が劣化する。そのため、個数密度を100個/mm2以下とする。好ましくは90個/mm2以下である。
粒径が0.1μm以上2.0μm以下のセメンタイトの個数密度が、10個/mm2以上、100個/mm2以下であれば、成形体において延性脆性遷移温度を低温化することができる。セメンタイトの個数密度が、10個/mm2未満であると、成形体においてセメンタイト中に濃化するMn含有量の総量が少なくなり、延性脆性遷移温度が高温化し、靱性の向上効果を得ることができない。個数密度を10個/mm2以上とする。好ましくは20個/mm2以上である。
一方、セメンタイトの個数密度が100個/mm2超えであると、セメンタイトを起点として亀裂が発生しやくなり、延性脆性遷移温度が高温化し靱性が劣化する。そのため、個数密度を100個/mm2以下とする。好ましくは90個/mm2以下である。
粒径が0.1μm以上2.0μm以下のセメンタイトの個数密度は以下の方法で求める。
成形体の端面から50mm以上離れた位置から、表面に垂直な断面(板厚断面)が観察できるようにサンプルを切り出す。サンプルの観察面を研磨した後、ナイタールエッチングする。ナイタールエッチングした観察面の、3t/8の位置(成形体を構成する鋼板の表面から鋼板の厚さ方向に鋼板の厚さの3/8の位置を意味する。)を、サーマル電界放射型走査電子顕微鏡(例えば、JEOL製JSM-7001F)で観察する。各サンプルの観察対象範囲について、1000μm2の領域を1視野として10視野取得し、各視野において、0.1μm以上2.0μm以下の粒径を有するセメンタイトの個数をカウントし、セメンタイトの個数密度を計測する。10視野の平均値をセメンタイトの個数密度とする。
成形体の端面から50mm以上離れた位置から、表面に垂直な断面(板厚断面)が観察できるようにサンプルを切り出す。サンプルの観察面を研磨した後、ナイタールエッチングする。ナイタールエッチングした観察面の、3t/8の位置(成形体を構成する鋼板の表面から鋼板の厚さ方向に鋼板の厚さの3/8の位置を意味する。)を、サーマル電界放射型走査電子顕微鏡(例えば、JEOL製JSM-7001F)で観察する。各サンプルの観察対象範囲について、1000μm2の領域を1視野として10視野取得し、各視野において、0.1μm以上2.0μm以下の粒径を有するセメンタイトの個数をカウントし、セメンタイトの個数密度を計測する。10視野の平均値をセメンタイトの個数密度とする。
<表面から板厚の3/8の位置において、粒径が0.1μm以上2.0μm以下のセメンタイト中のMn含有量が、0.50質量%以上>
粒径が0.1μm以上2.0μm以下のセメンタイト中のMn含有量は0.50質量%以上とする。セメンタイト中のMn含有量を、質量%で0.50%以上とすることで、母相中のMn含有量を低減することができる。母相中のMn含有量が低くなると、延性脆性遷移温度が低温化して靱性が向上する。セメンタイト中のMn含有量は、好ましくは0.60質量%以上である。セメンタイト中のMn含有量が0.50質量%未満であると、成形体において母相中のMn濃度が高くなりすぎて、延性脆性遷移温度が高温化し靱性の向上効果を得ることができない。上限は特に規定されないが、実質的な上限は5.00質量%である。
粒径が0.1μm以上2.0μm以下のセメンタイト中のMn含有量は0.50質量%以上とする。セメンタイト中のMn含有量を、質量%で0.50%以上とすることで、母相中のMn含有量を低減することができる。母相中のMn含有量が低くなると、延性脆性遷移温度が低温化して靱性が向上する。セメンタイト中のMn含有量は、好ましくは0.60質量%以上である。セメンタイト中のMn含有量が0.50質量%未満であると、成形体において母相中のMn濃度が高くなりすぎて、延性脆性遷移温度が高温化し靱性の向上効果を得ることができない。上限は特に規定されないが、実質的な上限は5.00質量%である。
セメンタイト中のMn含有量は以下の方法で求める。
成形体の端面から50mm以上離れた位置から、表面に垂直な断面(板厚断面)が観察できるようにサンプルを切り出す。サンプルの観察面の調製方法は、#600から#1500の炭化珪素ペーパーを使用して測定面を研磨した後、粒度1μmから6μmのダイヤモンドパウダーをアルコール等の希釈液や純水に分散させた液体を使用して鏡面に仕上げる。サンプルの3t/8の位置を、サーマル電界放射型走査電子顕微鏡(JEOL製JSM-7001F)とWDS検出器とで構成された装置を用い、装置内の真空度は9.6×10-5Pa以下、加速電圧は15kv、照射電流レベルは13、電子線の照射時間は0.01秒/点とし、粒径が0.1μm以上2.0μm以下のセメンタイト粒内に電子線を照射して、Mn含有量を測定する。同様の方法で粒径が0.1μm以上2.0μm以下のセメンタイトを20個特定し、それらのセメンタイトのMn含有量を算出し、それらの平均値をセメンタイト中のMn含有量(固溶量)とする。
成形体の端面から50mm以上離れた位置から、表面に垂直な断面(板厚断面)が観察できるようにサンプルを切り出す。サンプルの観察面の調製方法は、#600から#1500の炭化珪素ペーパーを使用して測定面を研磨した後、粒度1μmから6μmのダイヤモンドパウダーをアルコール等の希釈液や純水に分散させた液体を使用して鏡面に仕上げる。サンプルの3t/8の位置を、サーマル電界放射型走査電子顕微鏡(JEOL製JSM-7001F)とWDS検出器とで構成された装置を用い、装置内の真空度は9.6×10-5Pa以下、加速電圧は15kv、照射電流レベルは13、電子線の照射時間は0.01秒/点とし、粒径が0.1μm以上2.0μm以下のセメンタイト粒内に電子線を照射して、Mn含有量を測定する。同様の方法で粒径が0.1μm以上2.0μm以下のセメンタイトを20個特定し、それらのセメンタイトのMn含有量を算出し、それらの平均値をセメンタイト中のMn含有量(固溶量)とする。
次に、本実施形態に係る鋼板及び本実施形態に係る成形体の製造方法について説明する。
本実施形態に係る鋼板の製造方法は、上記化学組成の鋼片を、熱延条件と焼鈍条件とを一貫して管理する条件で処理することで、所望特性の鋼板を製造することを基本思想とする。
本実施形態に係る鋼板は、下記の(i)~(v)を含む製造方法によって得られる。
(i)上述の化学組成を有するスラブを、1250℃超に加熱し、0.5~3.0時間保持する加熱工程
(ii)仕上げ温度が、860℃以上、950℃以下となるように熱間圧延を行って熱延鋼板を得る熱間圧延工程
(iii)熱延鋼板を100℃/秒超200℃/秒以下の平均冷却速度で、400℃以上、550℃以下まで冷却する冷却工程(熱間圧延工程完了から2~5秒後に開始する)
(iv)冷却工程後の熱延鋼板を400℃以上、550℃以下で巻取る巻取り工程
(v)巻取り工程後の熱延鋼板に箱焼鈍を行う焼鈍工程
また、本実施形態に係る成形体は、(i)~(v)に加えて、さらに以下の(vi)を含む製造方法によって得られる。
(vi)熱延鋼板を成形及び熱処理する成形及び熱処理工程
(i)上述の化学組成を有するスラブを、1250℃超に加熱し、0.5~3.0時間保持する加熱工程
(ii)仕上げ温度が、860℃以上、950℃以下となるように熱間圧延を行って熱延鋼板を得る熱間圧延工程
(iii)熱延鋼板を100℃/秒超200℃/秒以下の平均冷却速度で、400℃以上、550℃以下まで冷却する冷却工程(熱間圧延工程完了から2~5秒後に開始する)
(iv)冷却工程後の熱延鋼板を400℃以上、550℃以下で巻取る巻取り工程
(v)巻取り工程後の熱延鋼板に箱焼鈍を行う焼鈍工程
また、本実施形態に係る成形体は、(i)~(v)に加えて、さらに以下の(vi)を含む製造方法によって得られる。
(vi)熱延鋼板を成形及び熱処理する成形及び熱処理工程
以下、各工程について説明する。
(加熱工程)
加熱工程に先立って、本実施形態に係る鋼板の化学組成と同じ化学組成を有する溶鋼を連続鋳造し、必要に応じて分塊圧延等を行って鋼片を得る。加熱工程では、得られた鋼片を、1250℃超の温度に加熱し、0.5~3.0時間保持する。
加熱温度が1250℃以下であると、鋳造時に析出したNb析出物が固溶せず、固溶Nb量を確保することができない。加熱温度の上限は限定されないが、1400℃以下とすることが好ましい。
保持時間が0.5時間未満であると、鋳造時に析出したNb析出物が固溶せず、固溶Nb量を確保することができない。そのため、保持時間は0.5時間以上とする。保持時間が3.0時間を超えると、鋳造時に析出したNb析出物の固溶が過度に促進してしまい、オーステナイトの再結晶が阻害されて、フェライトの集合組織が強くなりする。この場合、鋼板において、良好な成形性を得ることができなくなる。そのため、保持時間は3.0時間以下とすることが好ましい。
加熱工程に先立って、本実施形態に係る鋼板の化学組成と同じ化学組成を有する溶鋼を連続鋳造し、必要に応じて分塊圧延等を行って鋼片を得る。加熱工程では、得られた鋼片を、1250℃超の温度に加熱し、0.5~3.0時間保持する。
加熱温度が1250℃以下であると、鋳造時に析出したNb析出物が固溶せず、固溶Nb量を確保することができない。加熱温度の上限は限定されないが、1400℃以下とすることが好ましい。
保持時間が0.5時間未満であると、鋳造時に析出したNb析出物が固溶せず、固溶Nb量を確保することができない。そのため、保持時間は0.5時間以上とする。保持時間が3.0時間を超えると、鋳造時に析出したNb析出物の固溶が過度に促進してしまい、オーステナイトの再結晶が阻害されて、フェライトの集合組織が強くなりする。この場合、鋼板において、良好な成形性を得ることができなくなる。そのため、保持時間は3.0時間以下とすることが好ましい。
(熱間圧延工程)
熱間圧延工程では、加熱された鋼片に対し熱間圧延を行う。熱間圧延は、仕上げ温度(仕上げ圧延完了温度)が860℃以上、950℃以下となるように行う。
仕上げ温度が860℃未満であると、オーステナイトの再結晶が阻害されて、フェライトの集合組織が強くなりすぎる。この場合、鋼板において、良好な成形性を得ることができなくなる。そのため、仕上げ温度は860℃以上とする。900℃以上であれば、再結晶が十分に進行するので、仕上げ温度は、900℃以上が好ましい。
一方、仕上げ温度が950℃を超えると、オーステナイトの粒成長が過度に促進されて、それに伴い、変態後のフェライトの結晶粒径が大きくなり過ぎる。この場合、鋼板において、良好な成形性を得ることができなくなる。そのため、仕上げ温度は950℃以下とする。
熱間圧延工程では、加熱された鋼片に対し熱間圧延を行う。熱間圧延は、仕上げ温度(仕上げ圧延完了温度)が860℃以上、950℃以下となるように行う。
仕上げ温度が860℃未満であると、オーステナイトの再結晶が阻害されて、フェライトの集合組織が強くなりすぎる。この場合、鋼板において、良好な成形性を得ることができなくなる。そのため、仕上げ温度は860℃以上とする。900℃以上であれば、再結晶が十分に進行するので、仕上げ温度は、900℃以上が好ましい。
一方、仕上げ温度が950℃を超えると、オーステナイトの粒成長が過度に促進されて、それに伴い、変態後のフェライトの結晶粒径が大きくなり過ぎる。この場合、鋼板において、良好な成形性を得ることができなくなる。そのため、仕上げ温度は950℃以下とする。
(冷却工程)
冷却工程では、熱間圧延後の熱延鋼板を冷却する。冷却工程は、熱間圧延工程完了から、2~5秒後に開始する。その際、100℃/秒超、200℃/秒以下の平均冷却速度で400~550℃の温度域に冷却する。これにより加熱時に固溶したNbの析出を抑制できる。冷却中または冷却後にNbを含む析出物が析出すると固溶Nb量が減少する。
平均冷却速度が100℃/秒以下であるとNbの炭窒化物の析出が促進されてしまい、鋼板中のNbの固溶量を0.01%以上とすることができなくなる。また、平均冷却速度が200℃/秒超であるとフェライトの結晶粒が微細化しすぎて、フェライトの結晶粒径を5μm以上に制御できなくなる。
また、熱間圧延完了後2秒以上経過後に冷却を開始することで、冷却前にオーステナイトが再結晶し、集合組織が低減される。熱間圧延後すぐに(2秒未満)冷却を行うと、{211}<011>のランダム強度比I1が4.0を超える。
平均冷却速度は、(冷却開始温度-冷却停止温度)/冷却時間で求められる。
冷却工程では、熱間圧延後の熱延鋼板を冷却する。冷却工程は、熱間圧延工程完了から、2~5秒後に開始する。その際、100℃/秒超、200℃/秒以下の平均冷却速度で400~550℃の温度域に冷却する。これにより加熱時に固溶したNbの析出を抑制できる。冷却中または冷却後にNbを含む析出物が析出すると固溶Nb量が減少する。
平均冷却速度が100℃/秒以下であるとNbの炭窒化物の析出が促進されてしまい、鋼板中のNbの固溶量を0.01%以上とすることができなくなる。また、平均冷却速度が200℃/秒超であるとフェライトの結晶粒が微細化しすぎて、フェライトの結晶粒径を5μm以上に制御できなくなる。
また、熱間圧延完了後2秒以上経過後に冷却を開始することで、冷却前にオーステナイトが再結晶し、集合組織が低減される。熱間圧延後すぐに(2秒未満)冷却を行うと、{211}<011>のランダム強度比I1が4.0を超える。
平均冷却速度は、(冷却開始温度-冷却停止温度)/冷却時間で求められる。
(巻取り工程)
巻取り工程では、冷却工程後の熱延鋼板を巻取る。巻取り温度は、400~550℃であることが好ましい。
巻取り温度が400℃未満であると、オーステナイトからパーライトへの変態が起こらず、ベイナイトやマルテンサイトが生成してしまい、鋼板のビッカース硬さが170HVを超えて成形性が劣化する。そのため、巻取り温度は400℃以上とする。
一方、巻取り温度が550℃を超えると、オーステナイトからフェライトへの変態が進み過ぎて、フェライトの粒径が大きくなり過ぎて成形性が劣化する。そのため、巻取り温度は550℃以下が好ましい。
巻取り工程では、冷却工程後の熱延鋼板を巻取る。巻取り温度は、400~550℃であることが好ましい。
巻取り温度が400℃未満であると、オーステナイトからパーライトへの変態が起こらず、ベイナイトやマルテンサイトが生成してしまい、鋼板のビッカース硬さが170HVを超えて成形性が劣化する。そのため、巻取り温度は400℃以上とする。
一方、巻取り温度が550℃を超えると、オーステナイトからフェライトへの変態が進み過ぎて、フェライトの粒径が大きくなり過ぎて成形性が劣化する。そのため、巻取り温度は550℃以下が好ましい。
(焼鈍工程)
焼鈍工程では、巻取った熱延鋼板を酸洗した後、2つの温度域で保持する2段ステップ型の箱焼鈍を施す。焼鈍工程の前には、必要に応じて冷間圧延を行ってもよい。冷間圧延上限は限定されず、例えば30~90%の冷間圧延率で冷間圧延を行ってもよい。
その際、
(ii-1)350℃から1段目の焼鈍温度までの温度範囲において、30℃/時間以上、150℃/時間以下の平均加熱速度で加熱して、650℃以上、720℃以下の温度域(第1の温度域)に、3時間以上、60時間以下保持する1段目の焼鈍を行い、さらに、
(ii-2)2段目の焼鈍温度まで、1℃/時間以上、80℃/時間以下の加熱速度で加熱して、725℃以上、790℃以下の温度域(第2の温度域)に、3時間以上、10時間未満保持する2段目の焼鈍を行う、
(ii-3)その後、1℃/時間以上、100℃/時間以下の平均冷却速度で650℃以下まで冷却した後、室温まで冷却する。
焼鈍工程では、巻取った熱延鋼板を酸洗した後、2つの温度域で保持する2段ステップ型の箱焼鈍を施す。焼鈍工程の前には、必要に応じて冷間圧延を行ってもよい。冷間圧延上限は限定されず、例えば30~90%の冷間圧延率で冷間圧延を行ってもよい。
その際、
(ii-1)350℃から1段目の焼鈍温度までの温度範囲において、30℃/時間以上、150℃/時間以下の平均加熱速度で加熱して、650℃以上、720℃以下の温度域(第1の温度域)に、3時間以上、60時間以下保持する1段目の焼鈍を行い、さらに、
(ii-2)2段目の焼鈍温度まで、1℃/時間以上、80℃/時間以下の加熱速度で加熱して、725℃以上、790℃以下の温度域(第2の温度域)に、3時間以上、10時間未満保持する2段目の焼鈍を行う、
(ii-3)その後、1℃/時間以上、100℃/時間以下の平均冷却速度で650℃以下まで冷却した後、室温まで冷却する。
350℃から1段目の焼鈍温度までの温度範囲における加熱速度が30℃/時間未満であると、フェライトの結晶粒界への炭化物の形成が少ない。この場合、熱処理後にセメンタイト中へのMn濃化が促進されず、成形体において、セメンタイト中のMn含有量が小さくなる。一方、当該温度範囲における加熱速度が150℃/時間を超えると、フェライトの粒径が大きくなり過ぎるので、加熱速度は150℃/時間以下とする。
1段目の焼鈍温度は、650℃以上、720℃以下とする。1段目の焼鈍温度が650℃未満であると、フェライトの結晶粒界への炭化物の形成が少ない。この場合、熱処理後にセメンタイト中へのMn濃化が促進されない。
一方、1段目の焼鈍温度が720℃を超えると、フェライトの粒径が大きくなり過ぎる。
一方、1段目の焼鈍温度が720℃を超えると、フェライトの粒径が大きくなり過ぎる。
1段目の焼鈍の保持時間は3時間以上、60時間以下とする。保持時間が3時間未満であると、セメンタイト中へのMn濃化が促進されない。一方、保持時間が60時間を超えるとフェライトの粒径が大きくなり過ぎる。
1段目の焼鈍における保持が完了した後、1段目の焼鈍における焼鈍温度から2段目の焼鈍における焼鈍温度までの加熱速度を1℃/時間以上、80℃/時間以下とする。2段目の加熱時には、フェライト粒界からオーステナイトが生成し成長する。この時の加熱速度を遅く制御することで、オーステナイトの核生成を抑えることができ、徐冷後に得られる組織において、炭化物の粒界に存在する割合を高めることが可能となる。
2段目の加熱速度が1℃/時間未満であると、オーステナイトへの変態が進みすぎて、粒界における炭化物の割合が減少し、炭化物へのMn濃化が促進されない。そのため、加熱速度は1℃/時間以上とする。一方、加熱速度が80℃/時間を超えると、オーステナイトへの変態が不十分となり、炭化物の球状化率が低くなる。そのため、加熱温度を80℃/時間以下とする。
2段目の焼鈍温度は725℃以上、790℃以下とする。2段目の焼鈍温度が725℃未満であると、オーステナイトの生成量が少なく、炭化物の球状化率が低くなる。一方、2段目の焼鈍温度が790℃を超えると、粒界における炭化物の割合が減少し、セメンタイトへのMn濃化が促進されない。
2段目の焼鈍の保持時間は3時間以上、10時間未満とする。2段目の焼鈍の保持時間が3時間未満であると、オーステナイトの生成量が少なく、炭化物の球状化率が低くなる。一方、2段目の焼鈍の保持時間が10時間以上であると、粒界における炭化物の割合が減少し、セメンタイトへのMn濃化が促進されない。
箱焼鈍の雰囲気は特に限定しない。例えば、体積%で、95%以上の窒素を含む雰囲気、95%以上の水素を含む雰囲気、または大気雰囲気等が挙げられる。
2段目の焼鈍における保持が完了した後、2段目の焼鈍温度から650℃まで温度範囲において、1℃/時間以上、100℃/時間以下の冷却速度(平均冷却速度)で冷却する。
2段目の焼鈍で生成したオーステナイトを、徐冷によりフェライトに変態させるとともに、オーステナイト中に残存する炭化物へ炭素を吸着させるために、冷却速度は遅いほうが好ましい。しかしながら、冷却速度が1℃/時間未満であると、フェライトの粒成長が促進されすぎるので、冷却速度は1℃/時間以上とする。
一方、2段目の焼鈍温度から650℃までの温度範囲における冷却速度が100℃/時間を超えると、フェライトの粒内にもセメンタイトが生成するようになり、粒界におけるセメンタイトの割合が低くなる。そのため、冷却速度は100℃/時間以下とする。
2段目の焼鈍で生成したオーステナイトを、徐冷によりフェライトに変態させるとともに、オーステナイト中に残存する炭化物へ炭素を吸着させるために、冷却速度は遅いほうが好ましい。しかしながら、冷却速度が1℃/時間未満であると、フェライトの粒成長が促進されすぎるので、冷却速度は1℃/時間以上とする。
一方、2段目の焼鈍温度から650℃までの温度範囲における冷却速度が100℃/時間を超えると、フェライトの粒内にもセメンタイトが生成するようになり、粒界におけるセメンタイトの割合が低くなる。そのため、冷却速度は100℃/時間以下とする。
以上、本実施形態に係る鋼板の製造方法によれば、実質的にフェライトと炭化物の組織であり、フェライト粒内の炭化物個数に対するフェライト粒界の炭化物個数の比率が1.0を超え、ビッカース硬さが170Hv以下、さらに、{211}<011>のランダム強度比I1が4.0以下であり、フェライトの粒径が5~50μmであり、炭化物の球状化率が65%~100%であり、Nbの固溶量が、0.01質量%以上である鋼板が得られる。この鋼板は、成形性に優れ、さらに、成形及び熱処理後に高強度かつ優れた靭性が得られる。
上記の方法で得られた本実施形態に係る鋼板に、以下のような成形及び熱処理を行うことで、本実施形態に係る成形体を得ることができる。
(成形及び熱処理工程)
成形及び熱処理工程では、冷却後の熱延鋼板に対し、以下の(A)または(B)の成形、熱処理を行って成形体を得る。
(A)必要に応じて予成形を行った後、830℃~1000℃に加熱し、成形を行うと同時に10℃/秒以上の冷却速度で冷却する。
(B)冷間成形を行い、冷間成形後に、830℃~1100℃に加熱し、5℃/秒の冷却速度で冷却する。
上記(A)の工程では、いわゆるホットスタンプであり、冷間による予成形が行われ、その後加熱され、その後成形と焼入れとが同時に行われる。(A)の成形は高強度の骨格部品等の構造部材を得る場合に有効である。また、下記(B)の工程では、鋼板を冷間成形し、その後、熱処理(焼入れ)が行われる。(B)の成形は機械構造部品等を得る場合に有効である。
(成形及び熱処理工程)
成形及び熱処理工程では、冷却後の熱延鋼板に対し、以下の(A)または(B)の成形、熱処理を行って成形体を得る。
(A)必要に応じて予成形を行った後、830℃~1000℃に加熱し、成形を行うと同時に10℃/秒以上の冷却速度で冷却する。
(B)冷間成形を行い、冷間成形後に、830℃~1100℃に加熱し、5℃/秒の冷却速度で冷却する。
上記(A)の工程では、いわゆるホットスタンプであり、冷間による予成形が行われ、その後加熱され、その後成形と焼入れとが同時に行われる。(A)の成形は高強度の骨格部品等の構造部材を得る場合に有効である。また、下記(B)の工程では、鋼板を冷間成形し、その後、熱処理(焼入れ)が行われる。(B)の成形は機械構造部品等を得る場合に有効である。
次に、実施例により、本発明の効果を説明する。
実施例の水準は、本発明の実施可能性ならびに効果を確認するために採用した実行条件の一例であり、本発明はこの一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明要旨を逸脱せず、本発明目的を達する限りにおいては、種々の条件を採用可能とする。
実施例の水準は、本発明の実施可能性ならびに効果を確認するために採用した実行条件の一例であり、本発明はこの一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明要旨を逸脱せず、本発明目的を達する限りにおいては、種々の条件を採用可能とする。
表1-1~1-6に記載の化学組成を有する溶鋼を鋳造し、表2-1~2-10に記載の条件で、加熱し、熱間圧延し、冷却し、巻取りを行い、必要に応じて冷間圧延を行い、その後焼鈍を行って鋼板とした。
<1.鋼板の評価>
得られた鋼板に対し、Nbの固溶量、フェライト粒径、ビッカース硬さ、粒界炭化物個数/粒内炭化物個数、{211}<011>のランダム強度比I1を上述した方法で測定した。
また、成形性の評価として、引張試験で得られるr値の異方性指数であるΔELを測定した。
得られた鋼板に対し、Nbの固溶量、フェライト粒径、ビッカース硬さ、粒界炭化物個数/粒内炭化物個数、{211}<011>のランダム強度比I1を上述した方法で測定した。
また、成形性の評価として、引張試験で得られるr値の異方性指数であるΔELを測定した。
ΔELについては以下の方法で測定した。
成形体の任意の位置から圧延方向と平行な方向を試験片の長手として、JIS Z 2241:2011に記載の5号試験片を作製し、JIS Z 2241:2011に記載の試験方法に従って全伸び(ΔELL)を求めた。次に、成形体の任意の位置から圧延方向と直角な方向を試験片の長手として、JIS Z 2241:2011に記載の5号試験片を作製し、JIS Z 2241:2011に記載の試験方法に従って全伸び(ΔELC)を求めた。ΔELLをΔELCで除した値をΔELとした。
成形体の任意の位置から圧延方向と平行な方向を試験片の長手として、JIS Z 2241:2011に記載の5号試験片を作製し、JIS Z 2241:2011に記載の試験方法に従って全伸び(ΔELL)を求めた。次に、成形体の任意の位置から圧延方向と直角な方向を試験片の長手として、JIS Z 2241:2011に記載の5号試験片を作製し、JIS Z 2241:2011に記載の試験方法に従って全伸び(ΔELC)を求めた。ΔELLをΔELCで除した値をΔELとした。
結果を表3-1~表3-5に示す。
本発明では、ビッカース硬さが170Hv以下であり、かつΔELが0.85以上である鋼板を、成形性に優れると判断した。
本発明では、ビッカース硬さが170Hv以下であり、かつΔELが0.85以上である鋼板を、成形性に優れると判断した。
<2.成形体の評価>
各条件で製造した鋼板について成形及び熱処理を行い、成形体を製造した。成形体への成形においては、同様の鋼板に対し、それぞれ2通りの成形手法を適用した。
一つは、冷間加工により略ハット型形状に予成形を行った後にホットスタンプによる成形を行った。予成形後に、表4-1~表4-5に示すように、830℃~1000℃の温度域に加熱して熱間成形を行い、熱間成形と同時に10℃/s以上の冷却速度で50℃以下まで冷却し、その後室温まで放冷した。
もう一つは、表5-1~表5-5に示すように、略ハット型形状に冷間成形を行ったあとに熱処理を行った。冷間成形後に830℃~1100℃の温度域に加熱して熱処理を行い、5℃/s以上の冷却速度で50℃以下まで冷却し、その後室温まで放冷した。
表4-1~表4-5において、A1は製造No.1の鋼板に成形及び熱処理を行ったことを示す。すなわち、Aの後の数字は対応する製造No.の鋼板に成形及び熱処理を行ったことを示す。同様に、表5-1~表5-5において、Bの後の数字は対応する製造No.の鋼板に成形及び熱処理を行ったことを示す。
ただし、上述した鋼板の評価において成形性が十分ではなかった鋼板については成形を行わなかったので、表中の結果を空欄としている。
各条件で製造した鋼板について成形及び熱処理を行い、成形体を製造した。成形体への成形においては、同様の鋼板に対し、それぞれ2通りの成形手法を適用した。
一つは、冷間加工により略ハット型形状に予成形を行った後にホットスタンプによる成形を行った。予成形後に、表4-1~表4-5に示すように、830℃~1000℃の温度域に加熱して熱間成形を行い、熱間成形と同時に10℃/s以上の冷却速度で50℃以下まで冷却し、その後室温まで放冷した。
もう一つは、表5-1~表5-5に示すように、略ハット型形状に冷間成形を行ったあとに熱処理を行った。冷間成形後に830℃~1100℃の温度域に加熱して熱処理を行い、5℃/s以上の冷却速度で50℃以下まで冷却し、その後室温まで放冷した。
表4-1~表4-5において、A1は製造No.1の鋼板に成形及び熱処理を行ったことを示す。すなわち、Aの後の数字は対応する製造No.の鋼板に成形及び熱処理を行ったことを示す。同様に、表5-1~表5-5において、Bの後の数字は対応する製造No.の鋼板に成形及び熱処理を行ったことを示す。
ただし、上述した鋼板の評価において成形性が十分ではなかった鋼板については成形を行わなかったので、表中の結果を空欄としている。
得られた成形体に対し、引張強度及び靭性を評価した。
成形体の引張強度は、成形体の任意の位置からJIS Z 2241:2011に記載の5号試験片を作製し、JIS Z 2241:2011に記載の試験方法に従って求めた。
また、延性脆性遷移温度と延性脆性遷移温度での吸収エネルギーとは、成形体の任意の位置からサブサイズのシャルピー衝撃試験片を採取し、JIS Z 2242:2005に記載の試験方法に従って求めた。
引張強度が1500MPa以上、かつ延性脆性遷移温度が20℃以下であり、なおかつ延性脆性遷移温度における吸収エネルギーが10J/cm2以上である場合に、高強度かつ靱性に優れると判断した。
成形体の引張強度は、成形体の任意の位置からJIS Z 2241:2011に記載の5号試験片を作製し、JIS Z 2241:2011に記載の試験方法に従って求めた。
また、延性脆性遷移温度と延性脆性遷移温度での吸収エネルギーとは、成形体の任意の位置からサブサイズのシャルピー衝撃試験片を採取し、JIS Z 2242:2005に記載の試験方法に従って求めた。
引張強度が1500MPa以上、かつ延性脆性遷移温度が20℃以下であり、なおかつ延性脆性遷移温度における吸収エネルギーが10J/cm2以上である場合に、高強度かつ靱性に優れると判断した。
試験結果を表4-1~表4-5及び表5-1~表5-5に示す。本発明の製造条件で製造した鋼板は、いずれも、本発明の特性範囲に入っていることがわかる。
前述したように、本発明によれば、冷間加工性に優れ、成形及び熱処理後に高強度かつ優れた靭性が得られる鋼板及びその製造方法、並びに高強度かつ低温靭性に優れる成形体を提供することができる。よって、本発明は、鉄鋼産業において利用可能性が高い。
Claims (3)
- 質量%で、
C :0.10~0.70%、
Si:0.010~0.300%、
Mn:1.00~3.00%、
P :0.0200%以下、
S :0.0100%以下、
Al:0.0010~0.1000%、
Nb:0.030~0.200%、
Cr:0.010~0.500%、
Mo:0.001~0.500%、
B :0.0004~0.0100%、
Ti:0.0010~0.100%、
V:0~0.1000%、
Cu:0~0.100%、
W:0~0.1000%、
Ta:0~0.1000%、
Ni:0~0.100%、
Sn:0~0.0500%、
Sb:0~0.0500%、
Co:0~0.0500%、
As:0~0.0500%、
Mg:0~0.0500%、
Ca:0~0.0500%、
Y:0~0.0500%、
Zr:0~0.0500%、
La:0~0.0500%、
Ce:0~0.0500%、
O:0.0200%以下、
N:0.0150%以下、
を含有し、残部がFe及び不純物からなる化学組成を有し、
ミクロ組織が、フェライトと炭化物とからなり、前記炭化物が、フェライト粒内及びフェライト粒界に存在し、
前記ミクロ組織の、表面から板厚の3/8の位置において、
粒径が0.1μm以上2.0μm以下である前記炭化物のうち、前記フェライト粒内に存在する炭化物の個数に対する、前記フェライト粒界に存在する炭化物の個数の比率が1.0を超え、
ビッカース硬さが170HV以下であり、
{211}<011>のランダム強度比I1が4.0以下であり、
前記フェライトの粒径が5~50μmであり、
粒径が0.1μm以上2.0μm以下である前記炭化物の球状化率が、65%~100%であり、
Nbの固溶量が、0.01質量%以上である、
鋼板。 - 質量%で、
C:0.10~0.70%、Si:0.010~0.300%、Mn:1.00~3.00%、P:0.0200%以下、S:0.0100%以下、Al:0.0010~0.1000%、Nb:0.030~0.200%、Cr:0.010~0.500%、Mo:0.001~0.500%、B:0.0004~0.0100%、Ti:0.0010~0.100%、V:0~0.1000%、Cu:0~0.100%、W:0~0.1000%、Ta:0~0.1000%、Ni:0~0.100%、Sn:0~0.0500%、Sb:0~0.0500%、Co:0~0.0500%、As:0~0.0500%、Mg:0~0.0500%、Ca:0~0.0500%、Y:0~0.0500%、Zr:0~0.0500%、La:0~0.0500%、Ce:0~0.0500%、O:0.0200%以下、N:0.0150%以下を含有し、残部がFe及び不純物からなる化学組成を有するスラブを、1250℃超に加熱し、0.5~3.0時間保持する加熱工程と、
仕上げ温度が、860℃以上、950℃以下となるように熱間圧延を行って熱延鋼板を得る熱間圧延工程と、
前記熱延鋼板を100℃/秒超、200℃/秒以下の平均冷却速度で、400~550℃まで冷却する冷却工程と、
前記冷却工程後の前記熱延鋼板を400~550℃で巻取る巻取り工程と、
前記巻取り工程後の前記熱延鋼板に箱焼鈍を行う焼鈍工程と、
を備え、
前記冷却工程は、前記熱間圧延工程完了から、2~5秒後に開始し、
前記焼鈍工程では、
30℃/時間以上、150℃/時間以下の平均加熱速度で、650℃以上、720℃以下の第1の温度域に加熱し、前記第1の温度域で3時間以上、60時間以下保持し、
1℃/時間以上、80℃/時間以下の平均加熱速度で、725℃以上、790℃以下の第2の温度域に加熱し、前記第2の温度域で3時間以上、10時間未満保持し、
1℃/時間以上、100℃/時間以下の平均冷却速度で650℃以下まで冷却した後、室温まで冷却する
鋼板の製造方法。 - 質量%で、
C :0.10~0.70%、
Si:0.010~0.300%、
Mn:1.00~3.00%、
P :0.0200%以下、
S :0.0100%以下、
Al:0.0010~0.1000%、
Nb:0.030~0.200%、
Cr:0.010~0.500%、
Mo:0.001~0.500%、
B :0.0004~0.0100%、
Ti:0.0010~0.100%、
V:0~0.1000%、
Cu:0~0.100%、
W:0~0.1000%、
Ta:0~0.1000%、
Ni:0~0.100%、
Sn:0~0.0500%、
Sb:0~0.0500%、
Co:0~0.0500%、
As:0~0.0500%、
Mg:0~0.0500%、
Ca:0~0.0500%、
Y:0~0.0500%、
Zr:0~0.0500%、
La:0~0.0500%、
Ce:0~0.0500%、
O:0.0200%以下、
N:0.0150%以下、
を含有し、残部がFe及び不純物からなる化学組成を有し、
ミクロ組織がセメンタイトを含み、
前記ミクロ組織の、表面から板厚の3/8の位置において、
旧オーステナイト粒界のNbの固溶量が、0.20質量%以上であり、
旧オーステナイト粒径が、10.0μm以下であり、
粒径が0.1μm以上2.0μm以下の前記セメンタイトの個数密度が、10個/mm2以上、100個/mm2以下であり、粒径が0.1μm以上2.0μm以下の前記セメンタイト中のMn含有量が、0.50質量%以上である、
成形体。
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Legal Events
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121 | Ep: the epo has been informed by wipo that ep was designated in this application |
Ref document number: 19925335 Country of ref document: EP Kind code of ref document: A1 |
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NENP | Non-entry into the national phase |
Ref country code: DE |
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122 | Ep: pct application non-entry in european phase |
Ref document number: 19925335 Country of ref document: EP Kind code of ref document: A1 |