WO2018235735A1 - ガス分析に基づく評価システム - Google Patents

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俊司 朝本
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Abstract

真空容器内に注入されたガスをイオン化する手段と、真空容器内の電極に直流電圧と所定値以上の振動数を有する高周波電圧を重畳した電圧を印加し、位相変化が生じる電場を形成する手段と、形成された電場内でイオン化されたガスが安定振動する直流電圧及び高周波電圧の基準点を設定して印加する電圧を調整する手段と、ガスに固有のイオン分子の含有量に関するスペクトルパターンを生成する手段と、分析結果が確定済みのスペクトルパターンの中から相関性があるものを検索する関連パターン抽出手段と、検索されたスペクトルパターンに対応づけられた特定の物質の存在又は疾病若しくは障害が発症した状態があると判定する判定手段とを備えた評価システムを提供する。

Description

ガス分析に基づく評価システム
 本発明は、主に人間を含む動物(特に、哺乳類)から吐き出される呼気ガスの成分分析を行い、通常の活動時における呼気ガスの成分分析からみて正常な範囲又は推移の値を示しているかを判定することに関する。
 アスリートが競技会で達成した記録は時に取り消されることがある。代表的な例は、禁止物質の陽性反応が確認されるケースであって、禁止物質を体内に摂取したことによって競技力向上を図ろうとしたものと推定される。これは一般的にはドーピングと言われている。また、禁止物質が含まれている飲食物又は薬等とは知らずに摂取してしまうケースもある。このような過失によるものであっても、検査結果が陽性であればドーピングという判定がなされる。ドーピングはフェアプレーの精神に反する行為であり、しかもアスリートの健康を損ね且つ社会的にも悪影響を及ぼすことから、WADA(World Anti-Doping Agency)の規定に基づき、全世界で、特にスポーツ界では厳格なルールを決めてその使用を禁止しているのである。
 禁止物質とは、競技力を高める作用のある各種の禁止薬物を指すが、薬物以外の物質を用いたドーピングもある。例えば、血液ドーピングと呼ばれるものは、あらかじめ自分の血液を抜いて冷凍保存しておき、試合の直前に再び体内に戻す自己輸血といった手法である。血液中のヘモグロビンは酸素分子と結合する性質があり、肺から全身へ酸素を運搬する役割を担っているため、輸血をした場合は酸素運搬能力が向上する。これを意図的に利用して、持久力のアップを図ろうというアスリートが出現してきた。
 さらには、近年の科学技術を利用して細胞や遺伝子、遺伝因子などを調整することで競技力向上のために利用する方法も指摘されている。このようなパフォーマンス向上を狙った人為的な処理は勿論のこと、採取した尿や血液を他人のものとすりかえる行為自体も当然に禁止方法としてドーピングの対象となる。
 以下では、禁止薬物を摂取して筋力や持久力などを高めるスポーツドーピングを例に説明する。禁止薬物は、世界アンチ・ドーピング規程の禁止表国際基準(Prohibited List)で定められ、少なくとも毎年1月1日に更新される。非常に多岐にわたって指定されており、少なくとも数百種類あると言われている。これら多数の禁止薬物は、分析する上で、揮発性薬剤、難揮発性薬剤、蛋白同化ステロイド剤、利尿剤、ペプチドホルモン等、幾つかに分類され、各分類に適する分析装置を使用してアスリートからの検体中に禁止薬物が含有されているか否かを判定する。分析装置は、過去にドーピング陽性とされた禁止薬物と同一の分子成分を抽出した場合、直ちにドーピング陽性の判断を下すことができる。
 一方、例えば、筋肉増強作用がある蛋白同化ステロイド剤(薬剤例:テストステロン)は、その分子構造を少し変化させて新規な物質を生成させてから使用されることがある。これはドーピング検査で検出されないようにするための意図的な操作である。新規な薬物が本来であればドーピング陽性であるのにもかかわらず、往々にして検査をすり抜けてしまう問題があった。そのため、WADAでは、尿や血液の検体採取時にドーピング陽性を検知できなくても、将来において分析装置を含む種々の検知技術の進展で確定診断又はスクリーニングできることを期待し、採取した検体を長期間(例えば、10年)保管しておくことが採られている。
 また、例えば、ペプチドホルモン(薬剤例:エリスロポエチン(EPO))は、赤血球の産出を促進する造血因子の一つである。本来は、血液中のEPO濃度を調べて、貧血や赤血球増加症などの鑑別のために使用している。ところが、EPOは赤血球の増加効果を有することから、筋肉への酸素供給量を高めて持久力を向上させる目的で、特に長距離系スポーツのドーピングに使用されてきたのが現状である。EPOは元来体内に存在する物質であるため、分析結果にEPOが含まれていることを理由に、意図的にEPOを摂取したことによるドーピング行為であるかの確定診断を下すことが難しい。
 このため、EPOのドーピング陽性判定では、ヘマトクリット(血液中に占める血球の容積率)、ヘモグロビン、網状赤血球数などを用いてスクリーニングを行うことが多い。追加的に、尿を電気泳動法によって遺伝子組み換えEPOを検出したりもする。
 さらに分析技術に関連してみると、呼気ガス粒子に含まれる化学物質の含有量を分析する特許出願もある(例えば、下記特許文献参照)。
特許第5270788号公報
 これまでドーピング検査、すなわち、尿や血液中の禁止薬物の検査は、厳格な検査機関の下で行われているが、様々な問題を抱えている。
 まず、アスリートから検体として尿や血液を採取する時は、シャペロンと称される通告者から検査通告を受けると、検査室に入るまではシャペロンの目の届く範囲で行動することが義務づけられている。そして検体が尿であれば、同性のドーピングコントロールオフィサー(DCO)がトイレに立会い、DCOが確認できる状態で採尿しなければならない。血液検体であれば、採血のために医療従事者(医師や看護師等)もあわせて立ち会うことが必要となる。アスリートの薬物不使用の潔癖さを担保する代償として、プライバシーを欠くことにもなったり、実際の採取に手間を要していたのである。また、上述したように、仮にドーピング陰性とされた場合でも、採取した検体を長期間保存しておく必要がある。
 次に、大きな問題として、従前のドーピング検査の場合、分析装置にかける前にいわゆる前処理を行わなければばらないことが挙げられる。この前処理は禁止薬物の分類に応じて異なるが、例えば、島津アプリケーションニュース,No.M243(2007年3月初版発行)には、難揮発性薬剤(薬剤例:コカイン代謝物)の前処理フローの場合、「尿5mlに6Mの塩酸を添加し、105℃で30分間加熱することにより加水分解を行い、ジエチルエーテルで洗浄後、水相に2-メチル-2-プロパノールと内部標準物質を添加し、pHを9.6±0.1に調査後、ジエチルエーテルで抽出します。抽出液は、純窒素ガスで乾固し、メチルオレンジ/アセトニトリル/TFA混合溶液を添加後,MSTFAを溶液の色が黄色になるまで添加し、80℃で5分加温します。そこにMBTFAを添加し、80℃で10分加温することによってN-TFA-O-TMS誘導体化を行います。」との記載がある。複数の手間のかかる前処理を経てようやく誘導体化試料を作成した後、分析装置であるGC/MS(Scan)分析装置にかけて禁止薬物の特定が可能になる。
 このように、多くの時間及び費用を要する前処理を行う必要があるので、誘導体化試料を分析装置で結果を出すのに要する時間が仮に短くても、結局のところ分析の所要時間は長くなってしまうのである。また、前処理が禁止薬物の分類に応じて異なるということは、分析前に禁止薬物をある程度特定しておく必要があるが、まったく未知の禁止薬物を分析するのに既存の前処理の妥当性は何ら保証されているわけではないので、ドーピング陽性の確定診断までには、前処理の最適性を含む多くの検討が必要とされることになる。例えば、オリンピックで優勝した直後に採取したアスリートの検体にドーピング陽性反応があったというニュースが、オリンピック終了後6ヶ月も経ってからというのはこのためである。
 また、上記引用文献1は、尿や血液ではない呼気ガスを用いた分析技術を開示するが、分析の対象は呼気ガスに含有される任意の粒子であって、本願発明のような気体状態の検体を対象としていない点で本質的に異なる。
 本発明は、上述した様々な課題を解決するべく、人間を含む動物に特定の物質が摂取された状態であるか、又は動物に疾病若しくは障害が発症した状態であるかをガス(呼気ガス)分析に基づき迅速且つ高分解能で実行できる評価システムを提供することを目的とする。
 前記目的を達成するために、本発明に係る評価システムは、真空容器内に注入されたガスをイオン化する手段と、前記真空容器内の電極に直流電圧と所定値以上の振動数を有する高周波電圧を重畳した電圧を印加し、位相変化が生じる電場を形成する手段と、前記形成された電場内で前記イオン化されたガスが安定振動する直流電圧及び高周波電圧の基準点を設定し、前記基準点を基に前記直流電圧と前記高周波電圧の比を一定に保ちながら前記電場内で印加する前記電圧を調整する手段と、前記電圧の条件下でイオン分子に分離された前記ガスを検出した後、前記ガスに含まれる各イオン分子のうち当該ガスに固有のイオン分子の含有量に関するスペクトルパターンを生成する手段と、分析結果が確定済みのスペクトルパターンの中から、前記生成されたスペクトルパターンと相関性があるものを検索する関連パターン抽出手段と、前記関連パターン抽出手段により相関性があるスペクトルパターンが検索された場合、当該検索されたスペクトルパターンに対応づけられた特定の物質の存在又は疾病若しくは障害が発症した状態があると判定する判定手段と、を備えることを特徴とする。
 また、前記関連パターン抽出手段により、前記生成されたスペクトルパターンと相関性があるものが検索されなかった場合、前記判定手段は、さらに、前記注入されたガスに関する過去のスペクトルパターンの蓄積である時系列データを参照し、前記生成されたスペクトルパターン内の各イオン分子の含有量が、前記時系列データから推定される範囲又は閾値を逸脱している場合に、前記特定の物質の存在又は疾病若しくは障害が発症した状態に相当すると推定してスクリーニングの選定候補にすることを特徴とする。
 本発明の評価システムによれば、ガスが真空環境下でイオン化された後、特定の条件の下、電場内で振動していたイオンのうち特定の質量電荷比をもつイオンのみが安定的な振動状態となり、真空容器内を進んで検出部に到達して検出される。したがって、ガスに含有される成分がエアロゾル等の粒子サイズよりも格段に微小な分子レベル、即ち検出感度がppmオーダーという格段に優れた高感度で分析された分子に関するスペクトルパターンを得ることが可能になる。また、実際の分析にあたり何ら前処理を必要とすることなしにガスを分析機器内の真空容器内に直接投入すればよく、これまで前処理の手間のために要していた多大な工数及び時間が不要となり、分析結果を得るまでの時間を格段に短縮できる。
 また、分析結果が確定済みのスペクトルパターンと比較して相関性のあるものを検索する。検索されたスペクトルパターンはガス中の成分を特定しているため、今回の分析対象であるガスの成分同定が即時に可能となり、特定の物質の存在又は疾病若しくは障害が発症した状態を迅速に確定することができる。
 さらに、確定済みのスペクトルパターンが検索されず、したがってすでに得られている分析結果から今回の分析対象ガスを確定診断できない場合であっても、被測定体の過去の測定時における分析結果とパターン相関性が小さかったり、分析結果の時系列データに基づいた場合に大きく乖離していると判断できたときは、被測定体の身体内にこれまでの推移からみて起こり得ない異常があることを、容易且つ短時間で検出することができる。これは、成分の合致があるか否かを基準にする従来の確定診断手法のように、ガス中に成分分析が未確定の不明な物質(unknown物質)が含まれており、過去の確定結果データに合致しないという理由でこれまでは例えばトーピング陰性と判定していたケースに有効である。含有物質の成分が何であるか具体的且つ正確に特定できなくても、異常状態であると疑われる若しくは正常状態とは推定できない所見があるサンプルケースを確実に拾い上げるというスクリーングを実現できる点において本願発明の意義は非常に大きいものである。
本発明の呼気ガス評価システムの一実施形態の概略を示した図である。 分析手順の一実施形態を示すフローチャートである。 本発明の一実施形態による四重極形質量分析の模式図である。 呼気採取容器の一例を示す図である。 呼気採取容器の他の例を示す図である。 四重極形質量分析計を用いるときの電圧安定領域を説明するための図である。 四重極形質量分析計を用いるときの電圧安定領域を説明するための図である。 スキャンラインを決定するアルゴリズムを説明するための図である。 スキャンラインを決定するアルゴリズムを説明するための図である。 スキャンライン決定アルゴリズムのフローチャートである。 四重極形質量分析計により得られる各分子の検出強度をあらわすマススペクトルの一例を示した図である。 判定手順の概略を示すフローチャートである。 呼気ガスの特徴量の一例を示す図である。 時系列データを利用した判定手順を示すフローチャートである。 図12に示す判定手順を説明するためのマススペクトル例を示した図である。 移動平均線及び乖離の一例を示す図である。 呼気採取容器の呼気吹き込み口の一例を示す図である。
 以下に図面を参照しながら、本発明に係る呼気ガス分析に基づく評価システムについて説明する。
 本願発明は、主に被測定体が吐き出す呼気ガスを分析することによって薬理学的又は医学的な観点からその被測定体の状態を評価するものであるが、被被測定体は必ずしも人間に限定しているわけではなく哺乳動物全般を含む。ただし、以下の実施形態においては、人間の呼気ガスを例に説明する。
 図1は、分析評価システムの一実施形態を示した概略図である。図2は、分析手順の一実施形態を示すフローチャートである。
 分析評価システム100は大別すると、質量分析計10及び情報処理装置6から構成される。市販されている質量分析計の80%程度はガスクロマトグラフィー(GC/MS)質量分析計と言われているが、GC/MS質量分析計は分析対象である化合物の沸点があまり高くなく一般的には300℃以下で気化し且つ分子量が約1000程度で、主に炭素、水素、酸素、窒素が主成分の物質である有機物というように、化合物の特性をある程度把握できている場合に使用される。例えば、1000を大きく越える分子量の化合物であったり、高沸点で気化し難いものであったり、極性の強い化合物は、GC/MS質量分析計の分析対象から外れることになる。また、GC/MSは、吸着剤の吸着力を利用して化合物を大雑把に前もって分別してから分析することになるので、そもそも未知の化合物の分析に適していない。一方で、ドーピング検査の特徴は、これまで知られていない新規の物質が分析対象として含まれる状況にも適応可能なことが求められているので、一般的なGC/MS質量分析計による分析対象の範囲とならないことがある。そこで、本実施形態の質量分析計10は、特殊な構造、すなわち詳細は後述するが、一般的なGC/MSの質量分析計では使用しない超高真空状態内で呼気ガスのイオン検出が行われる構成になっている。
 本実施形態の質量分析計10は、四重極形(QP)を用いる。四重極形質量分析計10は、質量に関する情報を電気的に分析する装置である。主な構成要素として、試料導入部1、イオン化部2、質量分離部3、検出部4を含む。分析にあたって、まず、試料をイオン化して電荷を持った状態にする必要があり、試料導入部1で呼気採取容器の呼気ガスが注入され、四重極形質量分析計10のイオン化部2におけるイオン源に流入させてイオン化する。
 呼気採取容器の一例を図4に示す。被測定体が吐き出した呼気ガスを封入したポリエチレン素材等のサンプルバッグ15に注射針をつけたシリンジ11を刺し、シリンジ内筒16を引き出して呼気ガスをシリンジ11内に吸引し、試料導入部1にこのシリンジ11をセットする。シリンジ11は1以上の栓がついているので、イオン化部2へ向けた栓を開くと、シリンジ11内の呼気ガスを注入することができる。
 また、図15に示すように、サンプルバッグ15の呼気吹き込み口17から呼気ガスが漏れ出さないようにするため、呼気吹き込み口17の端部にキャップ18を被せる。呼気吹き込み口17の筒長さが短いとキャップ18が外れることもあり得るので、呼気吹き込み口17の端部にシリコンやゴム製の封止栓19を差し込んでからキャップ18を被せるようにしてもよい。更に、封止栓19とキャップ18の密着度を高めるため、キャップ18には空気穴20を設ける構造でもよい。
 なお、本実施形態では、呼気ガスが入ったサンプルバッグ15を質量分析計10の場所まで宅配し、上述した方法でシリンジ11に呼気ガスを移し替えてから呼気ガス分析を行うことを基本としているが、輸送途中でサンプルバッグ15から炭酸ガス等が抜け出してしまい、正確な分析ができなくなってしまうことがある。そこで、輸送時間が長くなるような場合は、図5に示すような、ホルダー13及び真空採管14から構成されるシリンジ12を使用する。サンプルバッグ15に注射針をつけたホルダー13を刺した後、ホルダー13に真空採管14を挿入すると、サンプルバッグ15内の呼気ガスが真空採管14に移動する。そこで、ホルダー13から真空採管14を引き抜いた後、サンプルバッグ15の代わりに真空採管14を質量分析計10の場所に宅配すればよい。真空採管14であるため、炭酸ガスが外部に抜け出ることはない。宅配された真空採管14を、図4のシリンジ11と同様に真空採管14を試料導入部1にセットした後、開放弁を介してイオン化部2へ呼気ガスを注入させる。
 なお、試料導入部1に注入するのは、呼気ガスと記載したとおり“気体”であって、分析のために雰囲気ガスが追加されることはあってもあくまで気体成分のみであり、固体及び液体を含まない。例えば息を吐き出す際に唾液や気道内で形成された痰等の粒子が混入された気体は、本願発明の呼気ガスの対象外である。そのため、サンプルバッグ15又は呼気吹き込み口17にフィルター等をつけることによって、息を吐き出す際にフィルターが気体以外の物質を排除し、ガスのみが採取されるようにすることが望ましい。
 ここで留意すべきことは、既存の多くの分析装置が行う前処理を本実施形態の四重極形質量分析計10は必要としていない点である。単に試料導入部1に一定量の呼気ガスを注入するだけで分析処理を開始することができることは手間及び時間の短縮という効果を生み出している。
 次に、イオン源でイオン化されたイオンは、例えば、数10Vの電圧の低い加速電圧で四重極形質量分析計10の質量分離部3へ飛び出すように入射される。また、図1及び図3に示すように、この質量分離部3は、真空にした容器内において、所定の長さ(例えば、20cm程度)の長さの4本のロッド(金属棒の電極)を、中心軸(z軸とする)を挟んで所定の間隔で2本ずつ平行に配置した構造である。また、各ロッドに次の条件の電圧を印加する。
 (1)対向するロッド(a,c)に同じ極性のRF電圧(=Vcos(ωt))及び直流電圧(U)を重畳して印加する。なお、ωは所定の高周波振動数(ω=2πf)、Vは交流電流の最大値とする。
 (2)隣り合うロッド(b,d)には、正負逆の極性にして、上記(1)と同じ強度のRF電圧(=Vcos(ωt))と直流電圧電圧(U)を重畳して印加する。
 つまり、4本のロッドには、極性が正負のいずれかで、直流と高周波交流を重ね合わせた電圧I=U+Vcos(ωt)が印加される。したがって、質量分離部3における4本のロッドより構成される四重極が存在する空間は、高速で位相が変化する電場が生じており、質量分離部3に導かれたイオン(電荷z,質量m)はこの電場によって上下左右(図3中のx方向及びy方向)に振動しながら、四重極電極3の長手方向(図3中のz方向)に沿って進み検出部4へ到達する。このように、四重極電極3の一端にはイオン化部2があり、もう一旦には検出部4が存在する構造である。
 四重極形質量分析計10の特徴は、2つの電圧U及びV(及び高周波振動数ω)の各値に応じた特定の質量電荷比m/z(質量m,電荷z)のみが電場空間内で安定した振動運動をしながらロッドを通過して検出器4に到達することである。一方、他のm/z値をもつイオンは、不安定な振幅運動をし始め、振幅が大きくなったときは発散してロッドや真空容器の壁或いは他の部品に衝突したりして、四重極電極3の外に飛び出してしまい、検出器4に到達することができない(図1参照)。
 また、イオンが検出器4へ到達するまでの途中で、その軌道が曲げられたり、イオン自体が消滅しないようにするには、空気や水などの分子とできるだけ衝突しないことが望ましい。圧力が低いほどイオンが衝突せずに移動できる平均距離である平均自由行程が長くなるので、検出器4へ到達し易くなるからである。そこで、本実施形態の場合、極めて低い圧力状態(例えば、最大10-7Pa)まで減圧した真空容器の中に四重極電極3を配置している。
 なお、本実施形態では呼気ガスの分析であるが、他の実施形態においてハロゲン化物(例えば、爆薬や農薬など)を分析対象とする場合、塩素等のマイナスイオンを含有している。そのため、質量分析計10をアースに繋げない構成にすれば、マイナスイオンも測定可能になる。
 プラスイオン、マイナスイオンにかかわらず、各イオンの振動運動は、以下に示すMathieuの方程式と呼ばれる微分方程式に従うことが知られている。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000001
 イオンの運動がMathieuの方程式に従う場合、この方程式はイオンが安定した軌道で振動する安定解と、時間と共に振幅が増大して不安定になって発散してしまう不安定解に分けられる領域を形成する。Mathieuの方程式のaとqの関係、すなわち、ロッドに加える直流電圧(U)及び高周波電圧(Vcos(ωt))に関し、安定解を与える領域(安定領域)を2次元(X-Y)平面上に示したのが図6Aの斜線部である。斜線部でない領域は、直流電圧(U)又は高周波電圧(Vcos(ωt))の少なくとも一方が不安定な領域であって、この条件下ではイオンの安定軌道とならない。そのため、質量分離部3は上述した安定領域を作成する(ステップS20)。
 なお、イオンが安定した振動運動をするときの安定領域は図6Aに示す領域のみというわけではない。例えば、直流電圧(U)を調整してU/Vの勾配比を大きくして高分解で検出しようとする場合、原点Oからより離れて別の安定領域が存在する。しかし、そのような高い分解能が可能な安定領域は、図6Aに示す安定領域に較べると電圧設定を調整できる幅が極端に狭かったりする。このため、安定した回路の信頼性や温度ドリフトの問題から高度な微調整をその都度行うことが要求されることとなり、実用上は、図6Aに示すような原点O付近の安定領域が利用される。本実施形態においても、図6Aが示す原点O付近の安定領域を使用することにしたが、別の実施形態では高分解能の検出を目的として別の安定領域を使用することもある。
 ところで、ロッドである電極を安定領域内のU/V比による電圧で印加すれば、質量電荷比(m/z)をもつイオンは安定振動をするが、特に安定領域の先端箇所(P)でのU/V比(即ち、UP/VP)で設定した場合は、高い分解能のスペクトルを得ることができる。実際の使用では、主に直流電圧(U)の値を調整することでU/V比の勾配を大きくし、これにより分解能を上げることができるので、直流電圧(U)の値が大きい先端箇所(P)が分解能の観点からは好都合となる。そこで、安定領域の中でも先端箇所(P)の電圧比(UP/VP)を選択し、電圧比(UP/VP)が一定になるよう調整しながら直流電圧(U)及び高周波電圧(Vcos(ωt))を連続的に変化させれば、異なる質量のイオンも安定した振幅運動をして検出器4に到達することになる。
 そこで、原点(O)と先端箇所(P)とを結んだスキャンライン上を通過するように直流電圧(U)及び高周波電圧(Vcos(ωt))を変化させるように制御させることで、異なる質量のイオンそれぞれが四重極電極3による電場を通過して検出器4に到達する。これは、質量電荷比(m/z)の各イオンに対する安定領域を順次設定することとなり、高分解能のマススペクトル(つまり、質量分析の結果得られる、横軸にm/z値の質量、縦軸に検出強度をとったスペクトル)を得ることを意味する。
 しかしながら、分解能向上を図る上では先端箇所(P)の特定が好ましいものの、温度ドリフトの影響が少しでもあれば、同じ呼気ガスであっても測定のたびに先端箇所(P)は変動して安定領域の外に出てしまいかねない。そこで、先端箇所(P)での電圧比(UP/VP)よりも勾配が小さい安定領域内の点(例えば、図6Bの点R)であれば、常に安定領域内に収まる確率が上がることが経験上得られている。ただし、スキャンラインを形成する基準として点Rを用いた場合、上述したように電圧比の勾配が小さくなるので、分解能が低下するという不都合が避けられない。
 したがって、できるだけ電圧比(U/V)の勾配を大きくする一方で、安定領域の外に出る確率が少ないスキャンライン基準点(Q)を設定することが望ましいことになる(ステップS21)。従来は、スキャンライン基準点(Q)の設定にあたっては経験と勘で試行錯誤しながら調整していたが、最適なスキャンライン基準点(Q)を自動的に算出するためのアルゴリズムの一例を以下に挙げておく。
 以下に、そのアルゴリズムについて説明する。
 上述したように同一の呼気ガスであっても温度ドリフトの影響等によって算出される安定領域にはズレが発生する。いま、同じ呼気ガスについて所定の時間間隔でm回測定したときの各安定領域の一例を図7Aに示す。なお、説明の便宜上、図7A及び図7Bはm=5回分として描画し、描画した三角形は自由曲線であらわされる安定領域を直線の三角形領域で近似する。また、関連するフローチャートを図8に示す。
 はじめに、測定のたびに安定領域にズレがあったとしても、どの程度までそのズレを見込んでいるかを指定しておく。これは安定領域の再現性をあらわす指標でもあり、再現性(低)、再現性(中)、再現性(高)から選択する。再現性(低)を設定した場合は、スキャンライン基準点(Q)をできるだけ先端箇所(P)に高くする代わりに、安定領域から逸脱するスキャンライン基準点(Q)も存在する計測を含むことを意味する。逆に、再現性(高)を設定した場合は、スキャンライン基準点(Q)は先端箇所(P)から離れた低い高さにする代わりに、複数回の計測のすべて若しくは殆どで安定領域から逸脱してしまうスキャンライン基準点(Q)を含まないことを意味する。そこで、図8のフローチャートに示すように、あらかじめ、上述した再現性レベル(高・中・低)を指定しておく(ステップS80)。
 次に、各安定領域のうち、最も高い先端箇所を抽出する(ステップS81)。
 図7Aに示す計測の場合、3回目の測定における先端箇所が最も高いので、P3を抽出してスキャンライン基準点(Q)を算出する際のベースにする。なお、P3の代わりに、全計測の先端箇所の高さの平均値又は中央値を用いてもよい。
 次に、抽出したP3からΔh下げた高さ(レベル1とする)を、最終的なスキャンライン基準点(Q)を決定する判定ラインの最初の候補とする(ステップS82)。図7Aに示すように、レベル1の判定ラインを各安定領域に引いてみると、その判定ラインよりも上方にP1~P3があり、下方にP4及びP5がある。判定ラインを境に上方及び下方に存在する最大頂点数の和をそれぞれ算出しておく(ステップS83)。
 次に、例えば再現性レベルが低で指定されていた場合、レベル1の判定ラインよりも上方に位置する先端箇所(P)が所定の割合(例えば、70%)以上であるかを判定する(ステップS84)。図7Aの場合は3/5であり越えていないので、更にΔh下げるステップS82に戻り、下げた高さを次のレベルにする。一方、越えていればレベル1をスキャンライン基準点(Q)の直流電圧(U)として採用する(ステップS85)。レベル1の判定ライン上にスキャンライン基準点(Q)を設定して、原点Oと点Qを結んだスキャンラインを作成した場合、P4及びP5が考慮されていないので、すべてのサンプリング計測にとって最適なスキャンラインとならない可能性が高い。しかし、スキャンラインの勾配を大きくしたい場合は、再現性レベルを低く設定することによりレベル1の判定ラインで示される直流電圧(U)を使用する。
 上述したように、レベル1の判定ライン上にスキャンライン基準点(Q)を設定してしまうと、温度ドリフト等の変動要因で本来は安定領域外に存在するとして除外されるはずのスキャンライン基準点を用いて作成されたことになってしまう可能性が高くなる。これを回避するには、P4及びP5よりも下方になるレベル2まで判定ラインを更に下げていけばよく、4回目及び5回目の計測時により作成される先端箇所も考慮することができる。
 再現性レベルを高く設定していた場合は、レベル1の判定ラインから更にΔh分判定ラインを下げていき、すべてのサンプリング計測におけるPiが含まれたときの判定ラインを、スキャンライン基準点(Q)の直流電圧(U)として採用する。なお、すべてのPiが含まれたとせずに、所定の割合(例えば、90%以上等)以上のPiが含まれたとき条件が満たされたとみなして判定ラインとしてもよい。図7Aに示すサンプリング計測の場合は、レベル2ですべてのサンプリング計測におけるPi(i=1~5)がレベル2よりも上方に位置することからレベル2が直流電圧(U)となるが、例えば、P5がレベル2よりも下方に位置していれば、更にΔh分さげた判定ラインを検討することを繰り返していき、最終的に決定する判定ラインの電圧Uを採用する(ステップS85)。
 次に、横軸の高周波電圧(Vcos(ωt))の決定は以下のように行う。
 図7Bは、正規分布を用いて各計測時の先端箇所(Pi)の電圧Vi(但し、i=1~m、ただしm=5として説明する。)が、各計測にわたる平均電圧Vμからどれくらい乖離しているかを示した図である。平均電圧Vμを基準にした±σ,±2σ,±3σのどの範囲に点Pの電圧Vが含まれるかを判定する(ステップS86)。本実施形態では、ステップS80で指定した再現性レベル(高・中・低)が、この±σ,±2σ,±3σにそれぞれ対応する。
 図7Bに示すように、P1~P4での電圧Vi(但し、i=1~4)は、正規分布関数の±σ内である。これに対し、P5は±2σ内で存在することがわかる。つまり、5回目のサンプリング計測は、平均電圧Vμから±σの範囲を逸脱する電圧V5であり、正規分布上、約30%の割合で起こり得ることになる。このような電圧値をステップS80で指定した再現性レベルとの関係で処理する。具体的には、指定した再現性レベルが高い(即ち、±σ)の指定の場合、計測データのすべてが±σ内であることを要求するため、P5を除外する(ステップS87)。残りのP1~P4の平均電圧値Vave(1-4)を、スキャンライン基準点(Q)の高周波電圧(Vcos(ωt))として採用する(ステップS88)。上述したレベル2の判定ラインによる直流電圧(U)と組み合わせることによって、スキャンライン基準点(Q)のための2つの電圧値が決定される(ステップS89)。
 これに対し、再現性レベルが低(即ち、±3σ)又は中(即ち、±2σ)で指定されていた場合、P5はその範囲内に含まれているので、P5を含んだ平均電圧値Vave(1-5)をスキャンライン基準点(Q)の高周波電圧(Vcos(ωt))として採用する。正規分布関数における±3σは、約99.7%なことから、再現性レベル(低)を指定した場合は、特定のサンプリング計測時の電圧Vを除外することなく、サンプリング計測のほぼすべての電圧値を用いた平均がスキャンライン基準点(Q)のための電圧(V)となることがわかる。
 したがって、その都度の測定環境に微妙な相違があったとしても、常に再現性の高いレベルで作成された安定領域に基づくスキャンライン基準点を用いたスキャンラインを作成したい場合は、スキャンライン基準点(図7Aの右図のQ2又はQ2')を使用する。結果として勾配がやや低いスキャンライン基準点Q2又はQ2'に基づくスキャンラインが生成されることになり、安定領域を確実に確保するという利点がある一方で、やや低い分解能でのイオン分子の抽出となる。逆に、再現性をさほど高く求めず、むしろ高分解能の分析を所望する場合は、上述したように、レベル1の判定ライン上の直流電圧(U)、及びP1~P3の平均電圧値Vave(1-3)を使用することになるため、スキャンライン基準点Q1に基づくスキャンライン勾配を高くすることができる。以上のようにして、スキャンライン(OQ)を生成する(図2のステップS22)。
 なお、上述したスキャンライン基準点(Q)の決定は一例であって、必ずしもこれに限定するものではないし、四重極形質量分析計のユーザが適宜設定するようにしてもよい。
 図2のフローチャートに戻り、四重極形質量分析計の質量分離部3は、主に直流電圧(U)を調整しながらスキャンライン(OQ)に沿った電圧制御をする(ステップS23)。この結果、各電圧下で通過してきた各イオン分子が検出部4に到達する。すなわち、各質量mのイオンに対する安定状態に落ち着く安定領域が存在することから、直流電圧(U)と所定周波数の交流電圧(V)の比を一定に保ちながら各安定領域を通るように電圧を変化させるという調整を行うことにより、呼気ガス中の各成分の分析を一括して行うことが可能になる。
 質量分離部3において質量mと電荷zの比に応じて分離された各m/zのイオンを受け取った検出器4(例えば、二次電子増倍管)は、二次電子放出面に入射したイオンを電気信号に変換すると、さらに増幅回路を用いて信号増幅させてから計測する。例えば、極大を示したときの値を予め作成してある校正曲線に検出強度値をプロットして呼気ガス中の各イオンの含有量を求め(ステップS24)、マススペクトルの生成をする(ステップS25)。複数のマススペクトルを繰り返し生成し、各イオン成分に関する平均をとったり、特定のマススペクトルをベースとして選び、ベースからの各検出強度の大きさで呼気ガス中のイオン含有量を求めてもよい。
 なお、二次電子増倍管5を用いる例を示したが、必ずしもこれに限定されるわけではなく、且つ二次電子増倍管の構造又はタイプ(連続型ダイノード/不連続型ダイノード等)は任意であってよい。
 また、増幅した電気信号は、例えば、オシロスコープ、電磁オシログラフなどに供給されモニター表示されるとともに、情報処理装置6へ送信される。情報処理装置6は、検出された各イオン量に比例した電気信号値を基に、被測定体がドーピング陽性と判定できるか否かを以下の手順で決定する。なお、情報処理装置6の一部の機能は、四重極形質量分析計10において実行されることもあるが、本実施形態は情報処理装置6が後述するデータ解析を実施することにする。
 情報処理装置6による、呼気ガス中の各イオン分子の含有量に基づきマススペクトルを生成する(ステップS25)ための詳細な手順を図10に示す。また、マススペクトルの一例を図9に示す。
 本実施形態の場合、図9に示すように、マススペクトルは実際に吐き出した呼気ガスのマススペクトル以外に、大気成分のマススペクトルも作成する(図10のステップS100)。なお、図9は、両マススペクトルの値を一緒に表示させたグラフであり、縦軸のスケールは途中で変わっていることに注意されたい。
 したがって、複数の呼気採取容器(サンプルバッグ15又は真空採管14)を準備し、呼気ガスを入れた呼気採取容器とは別の異なる呼気採取容器には採取した場所の大気を封入しておき、それぞれを四重極形質量分析計10にかけて分析する。
 次に、大気成分のマススペクトルAと、呼気ガス成分のマススペクトルBを比較し、特徴量を算出する(ステップS101)。ここでの特徴量とは2つのマススペクトルを比較したときの差分であらわされる(図11参照)。具体的には、マススペクトルBの各分子イオンのスペクトル値(含有量)から、マススペクトルAにおける対応する各分子イオンのスペクトル値を差し引くことによって、呼気ガスのみに由来する含有分子イオンの種類とその含有量(すなわち、差分の検出強度)を特定する。例えば、大気及び呼気ガスには、酸素(O2)や水(H2O)が存在し、それらの質量電荷比(m/z)(即ち、分子量)はそれぞれ32、18である。図9のとおり、m/z値が32、18に対応するO2イオンや水イオンは所定のスペクトル値を示す。次に、呼気ガスから、大気中にイオン分子として存在する各質量電荷比(m/z)の含有量を相殺させることにより、測定環境下の影響を極力排除し、被測定体固有のイオン分子(質量電荷比)が同定されることになる。上述したマススペクトルの比較及び特徴量の算出は、分析者の目視及び手動計算で行ってもよいが、任意のパターン比較アルゴリズムを用いて自動判定で行うこともある。
 次に、算出した特徴量を標準データと比較し、顕著な差異を有しているかを判断する(ステップS102、103)。標準データは、一般的な統計データを利用してもよいが、人種・年齢・性別・国・生活又は運動環境などが被測定体に類似する統計データに基づくことが好ましい。標準データとの比較によって被測定体以外の平均値からの乖離程度を得ることができるため、まずは第1段階目のスクリーニングを行うことが可能である。呼気ガスが標準データと大きく乖離しない特徴量の成分しか含んでいない場合、ドーピング陰性の可能性が高いと判断できる(ステップS111)。
 ところで、四重極形質量分析計10の電圧制御において、最適スキャンライン基準点をピンポイントで求めようとすると、その基準点に適合する特定の分子を高感度で抽出することになる一方で、他の分子の抽出は低感度になり、その後の二次電子増倍管で増幅しようとしてもノイズの影響が大きすぎてS/N比が悪くなることがある。そのため、ある程度の範囲に含まれる複数のイオン分子にとって適した電圧制御を行ってイオン分子の抽出を行うことがある。
 これは、検出精度を上げるために感度を緩くしたことに繋がるが、これにより、得られるマススペクトル上の或る分子量のイオンが複数の分子に関係するケースがある。例えば、N2の分子量(m/z値)は28であるが、COの分子量(m/z値)も28である。したがって、マススペクトルにおける横軸のm/z値28がN2なのかCOのいずれを示しているのかは、これだけでは判別できない。
 ただし、分子の結合力の強弱から、例えば、N2はN及びN、COはC及びOというように分解されることが知られていることを考慮すれば、複数の物質の分子量が同じm/z値となる場合でも、関係する質量mの小さな分子量の検出強度が検出されているかをみることで、判別可能である。例えば、(i)イオン化条件が一定であれば、親シグナルとしての質量電荷比(mi/z)と子シグナルとしての質量電荷比(mj/z)の強度比は常に一定であり、(ii)自然界におけるイオンの安定同位体比は常に一定である。(i)及び(ii)はテーブルとなっていることから、(i)及び(ii)を用いた連立方程式を解くと、個々のイオン量を決定することができる。
 上記例のように、ステップS101で得られる特徴量が、より小さなm/z値の分子に分解される場合か否かを判定し(ステップS104)、分解される場合は関係する分子量(m/z値)の検出強度を更に確認することを行う(ステップS105)。これにより、四重極形質量分析計10で分析可能な分子量に制限があり、大きな分子量をダイレクトに抽出することができなくても、上述した2段階処理によるm/z値の特定を行えば高精度にイオン分子の抽出を実現できることになる(ステップS106,図2のステップS26)。
 なお、大きな値の特徴量は影響度が大きいので、複数の特徴量を有する場合は値の大きな特徴量の分子量から分析することが望ましい。
 次の処理として、ステップS106で得られた各イオン分子のマススペクトルを一つのパターンとして考える。図11のマススペクトルがここで言うパターンである。あらかじめ、過去にドーピング陽性に関係するイオン分子のパターンは、その都度データベース(例えば、データベース7又は他のデータベース)に登録しておく。情報処理装置6は今回の呼気ガスのパターンと同じパターンが存在するかをデータベースの中から検索して比較する(ステップS107)。同一又は相関性が高いパターンがある場合(ステップS108のYes)、ドーピング陽性である判定を下すことが可能になる(ステップS110)。
 なお、仮に、データベースに登録されたパターンにおける各分子の絶対含有量と、今回の分析対象のパターンにおける各分子の検出強度が異なっていても、各イオン分子の検出強度比がほぼ同じであれば、同じパターンとみなしてドーピング陽性とすることになろう。
 上述したパターン比較でドーピング陽性と確定診断されるのは、禁止薬物の化学物質を構成する分子のパターンと一致するからである。禁止薬物の成分そのものの分子イオンが呼気ガス中に含まれている場合である。ところが、ドーピング検査は人体から排出された代謝物を検体として分析するものである。したがって、摂取された禁止物質の化学物質が体の中で化学反応を起こし、他の化学物質に変換又は合成された後の代謝物を分析することになる。呼気ガスの成分中にドーピングの化学物質そのものの分子が含まれているとは限らない点において、実際には確定診断が難しいという課題がある。
 本実施形態による評価の場合、データベース内の禁止薬物を示す分子パターンと同一ではないと判断されても(ステップS108のNo)、その被測定体が過去に呼気ガスを測定しマススペクトルとして蓄積してあるデータを用いて、合理的なドーピング判定を出すことができることに特徴がある(ステップS109の詳細判定ルーチン)。
 図12は、ステップS109の詳細判定ルーチンの内容を示したフローチャートである。
 詳細判定ルーチンの特徴は、各選手の呼気ガス分析結果をデータベース(例えば、データベース7)に記憶しておき、これを用いてドーピングの有無を推測することである。
 各選手の呼気ガスは、試合のときに限らず、練習時においても定期的に(例えば、1月おき、1週間おき、1日おき等)に採取して四重極形質量分析計10で分析してデータベース7内に記憶しておく。
 図13に示すように、各選手によって呼気ガス中の成分の種類及びその含有量は異なる(例えば、A選手とB選手で質量m4やm5を比較すると、検出強度値に大きな差がある)。また、同一のアスリートであっても、時系列でみていくと多かれ少なかれ遷移が生じる。つまり、A選手のm4は、1月は低量値を示していたのにもかかわらず、徐々に増加し12月の測定時では高量値となっている等が実際にはある。
 従来の考え方でドーピング判定しようとすれば、呼気ガスに含まれる禁止物質の含有量が所定の閾値を越えた或いは下回った場合にドーピング陽性とすることが一般的である。すなわち、各測定時における特定の成分の検出が単純に画一的な閾値を越えるか否かがドーピング陽性の判断基準であった。しかし、人種、性別、地域、年齢などの要因によって、例えば、特定の人種の或るイオン分子の含有量は他の人種に較べて多いという傾向があったりする。このような場合に、特定のイオン分子の含有量が予め定めた閾値量を超えているか否かという画一的な判断をすると誤った結果を招くこともあるし、個体差を考慮した判定にならない。
 また、練習を重ねることでパフォーマンスが向上してくると、特定のイオン成分が増加又は減少することが知られているが、従来のドーピング判定はこれを考慮していない。例えば、長距離など持久性運動の選手は身体能力が上がるにつれ最大酸素消費量も増加していくと言われているが、これは各選手の心臓の形状や心筋にも大きく影響されている。あらゆる選手の平均値と単純に比較して判断することも正確性に欠ける。選手ごとに、通常生活時を含む過去の任意時点の測定値からどのような遷移があるかを見極めた上でのドーピング判定が求められてきている。
 そこで、本実施形態の場合、従来のような平均データによる判定の他に、マススペクトル中の各イオン分子について、データベース7に記憶しているその選手の過去のマススペクトルを読出し(図12のステップS120)、時系列にみてどのように変遷しているかをチェックする。選手ごとに過去に測定して蓄積されているパターンと比較し(ステップS121)、同一人物の呼気ガスにもかかわらずパターンの相関性(類似性)が極端に低ければ、今回の測定タイミングの前にドーピングをしたのではないかという判断の根拠となり得る(ステップS128)。なお、相関性の判定は、パターン分析者の手動判断と、任意の統計的手法及びアルゴリズムを用いた自動判断の両方を含む。
 さらに、過去のパターンと相関性を有していても、少しずつの変化である漸次変化に対しては適確な判断がされないこともあるため、次に、スペクトルの検出強度の値としてあらわされるイオン分子の含有量の移動平均線(MA)を作成する(ステップS123)。移動平均線は、時系列データを平滑化するので、順次蓄積される分子量の推移を明確にあらわすことが可能である。また、移動平均線として、単純移動平均線、加重移動平均線、指数移動平均線など様々な種類があるので、適宜採用すればよい。例えば、指数移動平均線は指数関数的に重みを減少させるものであり、最新付近のデータを重視するとともに、より古いデータはその重要性を低くする(完全にはゼロにしない)ということができるので、より現実的なデータ解析を可能にすることも期待できる。
 また、移動平均乖離率(RD)を算出する(ステップS124)。移動平均乖離率は、上述した移動平均線からどれだけ離れた値であるかを数値化した指標である。図13は、選手が毎週呼気ガスを採取して、呼気分析したマススペクトルのうち、或るm/z値の分子イオンの検出強度に関する52週移動平均線をプロットした例を示す。1年間という52週の移動平均線からみてどの程度乖離しているかを把握することができる。
 そこで、移動平均乖離率(RD)が±α%の範囲(αは適宜設定、図示するように+の範囲と-の範囲が同一でなくてもよい)であるか否かを判定し(ステップS125)、これをマススペクトル中の各イオン分子について繰り返す(ステップS126)。なお、移動平均線(MA)は、移動平均に使用する期間は適宜決定すればよい。例えば、少なくとも各週に呼気ガスを採取していた場合、52週の移動平均線を用いて過去1年間の平均値からみて所定の範囲(例えば、±10%)におさまっているかを判断する。その他にも、6ヶ月(24週)や3ヶ月(90日)等の長短任意の移動平均線を用いてよい。
 その結果、或るイオン分子の含有量が、他の選手又は選手以外の普通の人の平均データと比較したとき、平均データを根拠にした所定の画一的な閾値を越えていたとしても、その選手にとっての移動平均線を基にした乖離率(RD)は所定の範囲(例えば、±10%)内にあるため、ドーピング陽性をあらわす明らかな異常値の兆候としては不十分と判定することも可能となる(ステップS127)。
 一方、その選手の移動平均線(MA)をベースにしたときの所定の範囲(例えば、±10%)の乖離を越える乖離率を示していたとする。これまでの生活又は練習からすれば所定の範囲を逸脱することは想定外に大きく乖離するものと考えられるとき、ドーピング陽性の疑いが高いと決定すればよい(ステップS128)。
 このようにして、禁止薬物の化学物質を構成する分子のスペクトルパターンと同一と判断されずにドーピング陽性と確定診断できなかった場合でも、各選手が過去に測定したスペクトルパターン及びそのデータ値に基づき、ドーピングの疑いがあるか無いかの第2段階目のスクリーニング診断を行うことができる。本願発明による評価システムの大きな技術的意義は、禁止薬物として未だ確定されていない不明な物質(unknown物質)が摂取された場合、従来であれば確定診断できずにドーピング検査をすり抜けてきたケースを解決できる点にある。真にドーピング対象の禁止薬物であるか、その成分が何であるかを正確に特定できなくても、同一人の過去の呼気ガスから抽出されていない成分が存在することを見つけたり、同一人の過去の呼気データ分析結果を集めた時系列データを参照したときに有意な差を示す値があったり、又は乖離率が所定の範囲や閾値を超えていることがわかれば、擬陽性として推定することに合理性があることに基づいている。他の検査も行いながら最終的なドーピング有無の確定診断がされることになるが、本願発明による評価があることによって、異常状態であると疑われる若しくは正常状態とは推定できないサンプルケースを確実に拾い上げることになるため、アスリートによるドーピング行為に対する抑止力を発揮することになる。
 なお、選手が長期間にわたり禁止薬物を少量ずつ摂取していた場合、移動平均線(MA)の変化は小さく、したがって乖離率(RD)も所定の範囲内におさまってしまうことが考えられる。このような場合、ドーピング陰性と判断されてしまう懸念があるかといえば、図10のステップS102における標準データとの比較を行うため、その可能性は低い。つまり、仮に微量であっても禁止薬物を摂取していれば、摂取していない通常の人の呼気ガスの成分分析とは異なる特徴量が測定を重ねていけばある時点で異常値として顕在化すると考えられるため、移動平均線から乖離しないよう意図的に禁止薬物の摂取量をコントロールすることでドーピング検査を逃れようとすることも困難となる。
 さらに、図1に示すとおり、情報処理装置6はネットワーク8を介して遠隔制御装置9と通信可能に接続される。遠隔制御装置9は、分析評価システム100の稼働状態を遠隔監視しながら、情報処理装置6が出力する分析結果を基にアラート情報を作成したり、分析結果やアラート情報を医師等に送信してドーピング判定を依頼する。
 これまで説明してきたとおり、従来のドーピング検査は、検体として尿や血液をアスリートから採取して検査装置にかけて陽性か否かの判定を行っていたため、多大な手間と時間を要していた。これを解決する一方法として、先に提示したとおり、本願発明の同じように呼気ガスを用いた特許文献1(特許第5258892号)が提案されてはいるが、この方法との相違を示しておく。
 特許文献1は、尿や血液の代わりに呼気中の“粒子”を分析して粒子の化学物質含有量を分析する。例えば、段落[0007]に次のような記載がある。「最近,呼気凝縮液(EBC)の採取という新しい方法が導入されている。これは、蒸気状の呼気水(exhaled water vapour)を低温で凝縮させたもので,揮発性,非揮発性の両化合物が共に同定されてきた。EBC中に見出された非揮発性化合物は,気道内で形成された粒子に起因していると考えられている。これら粒子は息をしたり話や咳をしたりする際に呼吸器系で生成されるものと考えられ,それら粒子が感染性物質を伝搬させる媒体として働くのではないかという主な理由から,今日まで研究されてきた。これら粒子がどのようにして形成されるかについては未だにわかっていないが,考えられるメカニズムとして,気管支の断面積が大幅に減少している気道中央における呼気空気の乱流が挙げられる。第二の仮説は,気道が肺の縁部に開く際にRTLFから粒子が形成される,というものである。」
 つまり、分析対象は、呼気ガスそのものではなく、呼気ガス中の“粒子”である。呼気ガス自体は出口10から排出されてしまうことが記載されている。
 また、大気エアロゾル粒子と言われる固体や液体の粒子が空気中に浮遊しており、人間の一呼吸で数百万個の大気エアロゾル粒子が肺に入り、その一部は体内に取り込まれる。特許文献1は呼気に含まれる大気エアロゾル粒子を、エアロゾルのサイズ分布に基づいて分類を行っている。この呼気エアロゾル粒子の大きさは目で見える数ミリメートルの砂塵から数ナノメートルであるため、どんなに小さいものでも数ナノメートルの大きさのものを分析していることになる。
 また、呼気ガスには多量の水蒸気が含有されているので吸着性ガスとなるが、質量分析計の管壁や電極に吸着しやすく、この影響が検出感度を低下させる一因となる。
 これに対し、本実施形態の質量分析計は、最大10-7Paまで減圧するという大気圧からみて遙かに低い圧力状態の中に配置され、且つ真空容器内を最大で約200℃まで加熱する。このような使用環境であるからこそ、呼気“ガス”がイオン源でイオン化されることによって数ナノメートルよりも遙かに微小な分子レベルのppmオーダーでの検出がされて各成分の量を特定する点に特徴の一つがある。
 特許文献1による方法では、本願発明と同等レベルの検出感度を奏することは不可能である。
 しかも、測定に使用するために質量分析計に投入する呼気ガス量は、図4や図5のシリンジが示すように、わずか0.2ml程度(最大で約0.5~10ml)で済み、特許文献1のように数十分もの間連続して注入させる必要はない。
<本発明の産業上の利用分野について>
 上述した実施形態では、本発明のガス分析評価方法を用いたドーピング陽性反応を調べる内容を説明してきたが、本発明はドーピングのみを対象としたものではない。例えば、ボクシング選手等が打撃を受けて脳震盪を発症したとき、後遺症を残す可能性があるので医師等がその選手の状態を観察し、ドクターストップを下すことがある。この決定は定性的判断であって、選手からの検体を分析した結果に基づく客観的、定量的な判断ではなかったため、何らかの定量的な指標を得た上での客観的な評価が望まれていた。脳震盪を発症した人を血液検査すると、ある種のタウ蛋白が発現すると言われていることから、脳震盪を発症時の呼気ガスを分析すると、平常時とは異なる特異的なイオン分子が抽出されたり、含有量が顕著に変化する可能性がある。このことから、本願発明の呼気ガス分析による評価システムが、脳震盪の客観的評価の一助になる可能性を多大に秘めている。なお、脳震盪にかぎらず任意の医学的疾病又は障害が発症した或いはそのおそれがある時点で、医師等による判断の定量的指標として本願発明が用いられるものである。
 なお、本実施形態で説明した選手以外の者が、呼気ガスの分析の対象者として含まれることは言うまでもない。
 また、空港の手荷物内に麻薬等が隠されていないかを調べる荷物検査のために、訓練を受けたいわゆる麻薬犬が利用されている。麻薬犬は、麻薬独特の臭いを感知することでその存在を知らせるものであるが、これは大気中に特定成分が含まれているからである。例えば、手荷物を所定のゲートに通す狭空間の大気は、上述した実施形態における呼気ガスと本質的に同じと考えられることから、哺乳類などのからの呼気ガスでなくても、本願発明を適用し得る。なお、麻薬犬は麻薬の存在のみを識別するが、本願発明のような定量的な検査結果を知らせるものではないので、緻密な検査結果を得ることができる。また、呼気ガスではないが、人間を含む動物の死体から発生する臭気の成分分析にも適用できる。さらに、本願発明が大気中の成分分析を対象とするという観点からすると、例えば、野菜などの植物に残留農薬がある否かを検査する際にも適用可能である。特に輸入野菜の検査に応用できる。
 本実施形態の情報処理装置6で実行される各処理は、CD-ROM等の光学ディスク、磁気ディスク、半導体メモリなどの各種の記録媒体を通じて、又は通信ネットワークなどを介してダウンロードすることにより、コンピュータにインストール又はロードしたプログラム、及びこれら記憶媒体を発明の範疇として含む。
 1 試料導入部
 2 イオン化部
 3 質量分離部
 4 検出部
 5 二次電子増倍管
 6 情報処理装置
 7 データベース
 8 ネットワーク
 9 遠隔制御装置
 10 質量分析計
 11 シリンジ
 12 ホルダー及び真空採管から構成されたシリンジ
 13 ホルダー
 14 真空採管
 15 サンプルバッグ
 16 シリンジ内筒
 17 呼気吹き込み口
 18 キャップ
 19 封止栓
 20 空気穴

 

Claims (4)

  1.  真空容器内に注入されたガスをイオン化する手段と、
     前記真空容器内の電極に直流電圧と所定値以上の振動数を有する高周波電圧を重畳した電圧を印加し、位相変化が生じる電場を形成する手段と、
     前記形成された電場内で前記イオン化されたガスが安定振動する直流電圧及び高周波電圧の基準点を設定し、前記基準点を基に前記直流電圧と前記高周波電圧の比を一定に保ちながら前記電場内で印加する前記電圧を調整する手段と、
     前記電圧の条件下でイオン分子に分離された前記ガスを検出した後、前記ガスに含まれる各イオン分子のうち当該ガスに固有のイオン分子の含有量に関するスペクトルパターンを生成する手段と、
     分析結果が確定済みのスペクトルパターンの中から、前記生成されたスペクトルパターンと相関性があるものを検索する関連パターン抽出手段と、
     前記関連パターン抽出手段により相関性があるスペクトルパターンが検索された場合、当該検索されたスペクトルパターンに対応づけられた特定の物質の存在又は疾病若しくは障害が発症した状態があると判定する判定手段と、
     を備えた評価システム。
  2.  前記関連パターン抽出手段により、前記生成されたスペクトルパターンと相関性があるものが検索されなかった場合、
     前記判定手段は、さらに、
      前記注入されたガスに関する過去のスペクトルパターンの蓄積である時系列データを参照し、
      前記生成されたスペクトルパターン内の各イオン分子の含有量が、前記時系列データから推定される範囲又は閾値を逸脱している場合に、前記特定の物質の存在又は疾病若しくは障害が発症した状態に相当すると推定してスクリーニングの選定候補にする、請求項1に記載の評価システム。
  3.  前記時系列データから推定される範囲又は閾値を逸脱しているかの決定は、前記時系列データにおけるスペクトルパターンの相関性、又は各イオン分子の移動平均線からの乖離率に基づき決定することを含む、請求項2に記載の評価システム。
  4.  前記ガスは呼気ガスであり、
     前記判定手段は、前記呼気ガスの被測定体がドーピング陽性又は脳震盪状態であるか否かを判定する、請求項1~3の何れか1項に記載の評価システム。

     
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