WO2018122932A1 - 細胞の選別方法、純化された細胞集団の製造方法、及び発光イメージングシステム - Google Patents
細胞の選別方法、純化された細胞集団の製造方法、及び発光イメージングシステム Download PDFInfo
- Publication number
- WO2018122932A1 WO2018122932A1 PCT/JP2016/088756 JP2016088756W WO2018122932A1 WO 2018122932 A1 WO2018122932 A1 WO 2018122932A1 JP 2016088756 W JP2016088756 W JP 2016088756W WO 2018122932 A1 WO2018122932 A1 WO 2018122932A1
- Authority
- WO
- WIPO (PCT)
- Prior art keywords
- cells
- cell
- luminescence
- luminescent
- nucleic acid
- Prior art date
Links
Images
Classifications
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C12—BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
- C12N—MICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
- C12N5/00—Undifferentiated human, animal or plant cells, e.g. cell lines; Tissues; Cultivation or maintenance thereof; Culture media therefor
Definitions
- GEPS glycosensitizer
- a method of inducing death is described. According to this method, cell death can be induced only in cells in which GEPS is expressed in the cells.
- a photosensitive protein called KillerRed is known as GEPS.
- Irradiating an activating light beam with one or more first nucleic acids each containing a reporter gene encoding a luminescent reporter protein and each configured to change the expression of the luminescent reporter protein according to the state of the cell A culture means for culturing cells into which a second nucleic acid containing a gene encoding a reactive oxygen species-producing protein that produces reactive oxygen species is introduced; Luminescence image acquisition means for acquiring a luminescence image of the cells, which is related to luminescence due to expression of the luminescence reporter protein; Determining means for determining an unnecessary cell from the cells based on the luminescent image; In order to induce cell death of the unnecessary cells, a luminescence imaging system including a light irradiation unit that irradiates the activation light to the unnecessary cells is provided.
- FIG. 1 is a diagram showing a main processing flow of a cell sorting method according to an embodiment of the present invention.
- FIG. 2A is a schematic diagram showing an example of a cell used in the cell sorting method according to one embodiment of the present invention.
- FIG. 2B is a schematic diagram showing another example of cells used in the cell sorting method according to one embodiment of the present invention.
- FIG. 3 is a schematic diagram showing an example of the luminescent state of cultured cells when the cell sorting method according to one embodiment of the present invention is performed.
- FIG. 4 is a schematic diagram illustrating an example of a luminescence imaging system according to an embodiment of the present invention.
- first nucleic acids each including a reporter gene encoding a luminescent reporter protein and each configured to change the expression of the luminescent reporter protein according to the state of the cell
- second nucleic acid (hereinafter also referred to as a second nucleic acid) containing a gene encoding a reactive oxygen species-producing protein that generates reactive oxygen species by irradiation with an activating light beam is cultured ( S1).
- the cultured cells are referred to as “cultured cells”.
- “nucleic acid” is, for example, DNA.
- “Promoter 11” controls the expression of reporter gene 12 according to the state of the cell.
- the “cell state” is, for example, a cell differentiation state.
- the promoter 11 is, for example, a promoter of a differentiation state detection marker gene that controls the expression of the reporter gene 12 according to the differentiation state of the cell.
- differentiation marker genes include, for example, cardiomyocyte early differentiation marker gene, cardiomyocyte late differentiation marker gene, ectoderm marker gene, mesoderm marker gene, endoderm marker gene and neurogenesis differentiation marker gene .
- the difference between the peak wavelength of the activating light beam and the peak wavelength of the light caused by the expression of the luminescent reporter protein is 10 nm or more, the possibility that cell death is induced by the light caused by the expression of the luminescent reporter protein is reduced. be able to. In fact, since it is very unlikely that cell death is induced by luminescence from the luminescent reporter protein, the wavelength range of the activating light beam and the luminescent wavelength range resulting from the expression of the luminescent reporter protein overlap. May be.
Landscapes
- Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
- Engineering & Computer Science (AREA)
- Health & Medical Sciences (AREA)
- Chemical & Material Sciences (AREA)
- Biomedical Technology (AREA)
- Biotechnology (AREA)
- Organic Chemistry (AREA)
- Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
- Genetics & Genomics (AREA)
- Wood Science & Technology (AREA)
- Zoology (AREA)
- Microbiology (AREA)
- Biochemistry (AREA)
- General Engineering & Computer Science (AREA)
- General Health & Medical Sciences (AREA)
- Cell Biology (AREA)
- Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)
- Measuring Or Testing Involving Enzymes Or Micro-Organisms (AREA)
Abstract
本発明の細胞の選別方法は、発光レポータータンパク質をコードするレポーター遺伝子を含み、かつ細胞の状態に応じて前記発光レポータータンパク質の発現に変化を生じるように各々が構成された1種類以上の第1核酸と、活性化光線を照射することによって活性酸素種を産生する活性酸素種産生タンパク質をコードする遺伝子を含む第2核酸とが導入された培養細胞のなかから、前記発光レポータータンパク質の発現に起因する発光に係る前記培養細胞の発光画像に基づいて、不要細胞を決定することと、前記不要細胞に前記活性化光線を照射して前記不要細胞の細胞死を誘導することとを含む。
Description
本発明は、細胞の選別方法、純化された細胞集団の製造方法、及び発光イメージングシステムに関する。
レポーター遺伝子の発現を細胞選別の指標として用いて、培養中の細胞集団のなかから、目的とする細胞の状態を示す細胞(以下、目的細胞ともいう)を選別することが行われている。
例えば、日本国特開2014-176364号公報には、幹細胞の分化状態を検出するためのマーカー遺伝子のプロモーター領域と発光レポーター遺伝子との融合遺伝子を用いて、幹細胞の状態を発光によって評価し、目的細胞を選択することが記載されている。具体的には、この文献には、分化マーカー遺伝子又は未分化マーカー遺伝子を標的としたプロモーターアッセイによって、幹細胞の分化状態を評価し、分化細胞又は未分化細胞を選択し、回収することが記載されている。
一方、目的細胞以外の細胞(以下、不要細胞ともいう)の細胞死を引き起こす方法として、光照射によって活性酸素種を産生する光感受性タンパク質を導入した細胞に光を照射する方法、特定の細胞に毒素遺伝子を発現させる方法、及び薬剤耐性遺伝子を発現しない細胞を薬剤に曝す方法がある。
例えば、日本国特表平9-508020号公報には、分化した細胞のみに毒素遺伝子を発現させて、分化した細胞を選択的に殺すこと、またはES細胞のみに薬剤耐性遺伝子を発現させて、ES細胞を薬剤の作用から保護することで、ES細胞及び分化した細胞の両方を含む培養胚から、ES細胞を単離する方法が記載されている。
国際公開第2006/117694号には、細胞内に、光照射によって活性酸素種を産生するGEPS(genetically encoded photosensitizer)を発現させ、細胞に光を照射して細胞内にROSを発生させて、細胞死を誘導する方法が記載されている。この方法によると、細胞内にGEPSを発現させた細胞のみに細胞死を誘導することができる。この文献にも記載されるとおり、GEPSとして、例えば、KillerRedと呼ばれる光感受性タンパク質が知られている。
本発明は、レポーター遺伝子の発現に起因する発光に基づいて、簡便に不要細胞と目的細胞とを選別することが可能な細胞の選別方法を提供することを目的とする。また、本発明は、前述の細胞の選別方法を用いた、純化された細胞集団の製造方法、及び前述の細胞の選別方法を実施するための発光イメージングシステムを提供することを目的とする。
本発明の一つの側面によれば、
発光レポータータンパク質をコードするレポーター遺伝子を含み、かつ細胞の状態に応じて前記発光レポータータンパク質の発現に変化を生じるように各々が構成された1種類以上の第1核酸と、活性化光線を照射することによって活性酸素種を産生する活性酸素種産生タンパク質をコードする遺伝子を含む第2核酸とが導入された培養細胞のなかから、前記発光レポータータンパク質の発現に起因する発光に係る前記培養細胞の発光画像に基づいて、不要細胞を決定することと、
前記不要細胞に前記活性化光線を照射して前記不要細胞の細胞死を誘導することと
を含む細胞の選別方法が提供される。
発光レポータータンパク質をコードするレポーター遺伝子を含み、かつ細胞の状態に応じて前記発光レポータータンパク質の発現に変化を生じるように各々が構成された1種類以上の第1核酸と、活性化光線を照射することによって活性酸素種を産生する活性酸素種産生タンパク質をコードする遺伝子を含む第2核酸とが導入された培養細胞のなかから、前記発光レポータータンパク質の発現に起因する発光に係る前記培養細胞の発光画像に基づいて、不要細胞を決定することと、
前記不要細胞に前記活性化光線を照射して前記不要細胞の細胞死を誘導することと
を含む細胞の選別方法が提供される。
本発明の別の側面によれば、上記方法を行って細胞を純化させることを含む、純化された細胞集団の製造方法が提供される。
本発明の別の側面によれば、
発光レポータータンパク質をコードするレポーター遺伝子を含み、かつ細胞の状態に応じて前記発光レポータータンパク質の発現に変化を生じるように各々が構成された1種類以上の第1核酸と、活性化光線を照射することによって活性酸素種を産生する活性酸素種産生タンパク質をコードする遺伝子を含む第2核酸とが導入された細胞を培養する培養手段と、
前記発光レポータータンパク質の発現に起因する発光に係る、前記細胞の発光画像を取得する発光画像取得手段と、
前記発光画像に基づいて、前記細胞のなかから不要細胞を決定する決定手段と、
前記不要細胞の細胞死を誘導するために、前記不要細胞に前記活性化光線を照射する光照射部と
を含む発光イメージングシステムが提供される。
発光レポータータンパク質をコードするレポーター遺伝子を含み、かつ細胞の状態に応じて前記発光レポータータンパク質の発現に変化を生じるように各々が構成された1種類以上の第1核酸と、活性化光線を照射することによって活性酸素種を産生する活性酸素種産生タンパク質をコードする遺伝子を含む第2核酸とが導入された細胞を培養する培養手段と、
前記発光レポータータンパク質の発現に起因する発光に係る、前記細胞の発光画像を取得する発光画像取得手段と、
前記発光画像に基づいて、前記細胞のなかから不要細胞を決定する決定手段と、
前記不要細胞の細胞死を誘導するために、前記不要細胞に前記活性化光線を照射する光照射部と
を含む発光イメージングシステムが提供される。
以下、本発明を詳細に説明するが、以下の説明は、本発明を説明することを目的とし、本発明を限定することを意図しない。
<1.細胞の選別方法の説明>
図1は、本発明の一実施形態に係る細胞の選別方法の主な処理の流れを示す。
図1は、本発明の一実施形態に係る細胞の選別方法の主な処理の流れを示す。
本発明の一実施形態に係る細胞の選別方法は、
発光レポータータンパク質をコードするレポーター遺伝子を含み、かつ細胞の状態に応じて前記発光レポータータンパク質の発現に変化を生じるように各々が構成された1種類以上の第1核酸と、活性化光線を照射することによって活性酸素種を産生する活性酸素種産生タンパク質をコードする遺伝子を含む第2核酸とが導入された培養細胞のなかから、前記発光レポータータンパク質の発現に起因する発光に係る前記培養細胞の発光画像に基づいて、不要細胞を決定することと、
前記不要細胞に前記活性化光線を照射して前記不要細胞の細胞死を誘導することと
を含む。
発光レポータータンパク質をコードするレポーター遺伝子を含み、かつ細胞の状態に応じて前記発光レポータータンパク質の発現に変化を生じるように各々が構成された1種類以上の第1核酸と、活性化光線を照射することによって活性酸素種を産生する活性酸素種産生タンパク質をコードする遺伝子を含む第2核酸とが導入された培養細胞のなかから、前記発光レポータータンパク質の発現に起因する発光に係る前記培養細胞の発光画像に基づいて、不要細胞を決定することと、
前記不要細胞に前記活性化光線を照射して前記不要細胞の細胞死を誘導することと
を含む。
より具体的には、本発明の一実施形態に係る細胞の選別方法は、図1に示されるとおり、
発光レポータータンパク質をコードするレポーター遺伝子を含み、かつ細胞の状態に応じて前記発光レポータータンパク質の発現に変化を生じるように各々が構成された1種類以上の第1核酸と、活性化光線を照射することによって活性酸素種を産生する活性酸素種産生タンパク質をコードする遺伝子を含む第2核酸とが導入された細胞を培養することと(S1)、
前記細胞の培養の期間中に、前記発光レポータータンパク質の発現に起因する発光に係る前記細胞の発光画像を取得することと(S2)、
前記発光画像に基づいて、前記細胞のなかから不要細胞を決定することと(S3)、
前記不要細胞に前記活性化光線を照射して前記不要細胞の細胞死を誘導することと(S4)
を含む。
発光レポータータンパク質をコードするレポーター遺伝子を含み、かつ細胞の状態に応じて前記発光レポータータンパク質の発現に変化を生じるように各々が構成された1種類以上の第1核酸と、活性化光線を照射することによって活性酸素種を産生する活性酸素種産生タンパク質をコードする遺伝子を含む第2核酸とが導入された細胞を培養することと(S1)、
前記細胞の培養の期間中に、前記発光レポータータンパク質の発現に起因する発光に係る前記細胞の発光画像を取得することと(S2)、
前記発光画像に基づいて、前記細胞のなかから不要細胞を決定することと(S3)、
前記不要細胞に前記活性化光線を照射して前記不要細胞の細胞死を誘導することと(S4)
を含む。
以下、細胞の培養(S1)、発光画像の取得(S2)、不要細胞の決定(S3)、細胞死の誘導(S4)の順に説明する。
<1-1.細胞の培養>
発光レポータータンパク質をコードするレポーター遺伝子を含み、かつ細胞の状態に応じて前記発光レポータータンパク質の発現に変化を生じるように各々が構成された1種類以上の第1核酸(以下、第1核酸ともいう)と、活性化光線を照射することによって活性酸素種を産生する活性酸素種産生タンパク質をコードする遺伝子を含む第2核酸(以下、第2核酸ともいう)とが導入された細胞を培養する(S1)。本明細書において、培養されている細胞を「培養細胞」と呼ぶ。また、本明細書において「核酸」は、例えばDNAである。
発光レポータータンパク質をコードするレポーター遺伝子を含み、かつ細胞の状態に応じて前記発光レポータータンパク質の発現に変化を生じるように各々が構成された1種類以上の第1核酸(以下、第1核酸ともいう)と、活性化光線を照射することによって活性酸素種を産生する活性酸素種産生タンパク質をコードする遺伝子を含む第2核酸(以下、第2核酸ともいう)とが導入された細胞を培養する(S1)。本明細書において、培養されている細胞を「培養細胞」と呼ぶ。また、本明細書において「核酸」は、例えばDNAである。
図2Aは、本発明の一実施形態に係る細胞の選別方法で使用される細胞の一例を模式的に示す。図2Aでは、細胞1に、
発光レポータータンパク質をコードするレポーター遺伝子12と、細胞の状態に応じてレポーター遺伝子12の発現を制御するプロモーター11とを含む第1核酸と、
活性酸素種産生タンパク質をコードする遺伝子32と、遺伝子32を恒常的に発現させる恒常的プロモーター31とを含む第2核酸と
を含む組換えベクター10が導入されている。
発光レポータータンパク質をコードするレポーター遺伝子12と、細胞の状態に応じてレポーター遺伝子12の発現を制御するプロモーター11とを含む第1核酸と、
活性酸素種産生タンパク質をコードする遺伝子32と、遺伝子32を恒常的に発現させる恒常的プロモーター31とを含む第2核酸と
を含む組換えベクター10が導入されている。
図2Bは、本発明の一実施形態に係る細胞の選別方法で使用される細胞の別の例を模式的に示す。図2Bでは、細胞1に、
レポーター遺伝子12と、レポーター遺伝子12と共に発現するように構成されたマーカー遺伝子22と、細胞の状態に応じてマーカー遺伝子22の発現を制御するプロモーター21とを含む第1核酸と、
活性酸素種産生タンパク質をコードする遺伝子32と、遺伝子32を恒常的に発現させる恒常的プロモーター31とを含む第2核酸と
を含む組換えベクター10が導入されている。
レポーター遺伝子12と、レポーター遺伝子12と共に発現するように構成されたマーカー遺伝子22と、細胞の状態に応じてマーカー遺伝子22の発現を制御するプロモーター21とを含む第1核酸と、
活性酸素種産生タンパク質をコードする遺伝子32と、遺伝子32を恒常的に発現させる恒常的プロモーター31とを含む第2核酸と
を含む組換えベクター10が導入されている。
第1核酸および第2核酸を導入するために使用される「細胞」としては、任意の細胞を用いることができる。細胞は、例えば、生体(例えば臓器)から採取した細胞であってもよいし、市販の細胞であってもよい。細胞は、好ましくは、分化能を有している細胞、例えば、幹細胞、B細胞、T細胞などである。細胞は、より好ましくは幹細胞であり、更に好ましくはiPS細胞又はES細胞である。幹細胞は多分化能を有しているため、幹細胞を培養すると様々な分化細胞を得ることができる。
前述の細胞に、第1核酸及び第2核酸を導入し、得られた細胞を培養に使用する。第1核酸及び第2核酸の導入は、公知のトランスフェクション法により行うことができる。第1核酸及び第2核酸が導入されたiPS細胞は、第1核酸及び第2核酸に加えて、体細胞のリプログラミングに必要な初期化因子をコードする遺伝子を含む第3核酸を体細胞に導入することにより構築された細胞であってもよい。iPS細胞を構築するための体細胞としては、例えば、ヒト末梢血由来細胞を用いることができるが、これに限定されるものではない。「体細胞のリプログラミングに必要な初期化因子」としては、体細胞のリプログラミングを誘導することが知られている初期化因子の組み合わせを使用することができる。「体細胞のリプログラミングに必要な初期化因子」としては、例えば、Oct3/4、Klf4、Sox2、c-myc、Lin28、及びL-mycから適切な組み合わせを選ぶことができ、例えば、Oct3/4、Klf4、Sox2、Lin28及びL-mycの組み合わせを使用することができる。
「第1核酸」は、発光レポータータンパク質をコードするレポーター遺伝子を含み、かつ細胞の状態に応じて発光レポータータンパク質の発現に変化を生じるように構成された核酸である。
本明細書において、「細胞の状態に応じて」という表現における「細胞の状態」は、「一つの細胞が経時的に変化している状態」または「複数の細胞における各細胞の状態」を意味する。
第1核酸は、図2Aに示す一例によると、発光レポータータンパク質をコードするレポーター遺伝子12(以下、単に「レポーター遺伝子」ともいう)と、細胞の状態に応じてレポーター遺伝子12の発現を制御するプロモーター11とを含む。図2Aに示されるとおり、「レポーター遺伝子12」は、プロモーター11の下流に位置している。
本明細書において「発光レポータータンパク質(luminescent reporter protein)」は、緑色蛍光タンパク質(GFP)等の蛍光タンパク質と対比して用いられ、励起光を照射しないで光を発するように機能するタンパク質である。「発光レポータータンパク質」は、好ましくは生物発光タンパク質、たとえばルシフェラーゼである。
発光レポータータンパク質としては、例えば、緑色の発光をもたらすElucルシフェラーゼ、赤色の発光をもたらすCBRルシフェラーゼ、青色の発光をもたらすウミシイタケルシフェラーゼを使用することができる。これらの発光レポータータンパク質をコードするレポーター遺伝子は、市販されるものを使用することができる。特にホタル由来のルシフェラーゼやクリックビートルなどの甲虫由来のルシフェラーゼはATP要求性であり、生物反応が失われた死細胞では光らないので、アポトーシス等で培養期間中に失活した細胞を除いた生きた細胞を選択的に評価できる点で望ましい。
本明細書において「発光レポータータンパク質(luminescent reporter protein)」は、緑色蛍光タンパク質(GFP)等の蛍光タンパク質と対比して用いられ、励起光を照射しないで光を発するように機能するタンパク質である。「発光レポータータンパク質」は、好ましくは生物発光タンパク質、たとえばルシフェラーゼである。
発光レポータータンパク質としては、例えば、緑色の発光をもたらすElucルシフェラーゼ、赤色の発光をもたらすCBRルシフェラーゼ、青色の発光をもたらすウミシイタケルシフェラーゼを使用することができる。これらの発光レポータータンパク質をコードするレポーター遺伝子は、市販されるものを使用することができる。特にホタル由来のルシフェラーゼやクリックビートルなどの甲虫由来のルシフェラーゼはATP要求性であり、生物反応が失われた死細胞では光らないので、アポトーシス等で培養期間中に失活した細胞を除いた生きた細胞を選択的に評価できる点で望ましい。
また、発光レポータータンパク質として使用されるルシフェラーゼは、高い発光強度を有するように改変された改変体ルシフェラーゼであってもよい。改変体ルシフェラーゼとしては、例えば、シブイロヒゲボタルに由来するルシフェラーゼを改変した、改変型赤色変異体A(特開2013-81459)、オキナワマドボタルに由来するルシフェラーゼ(特開2014-18191)などを使用することができる。
「プロモーター11」は、細胞の状態に応じてレポーター遺伝子12の発現を制御する。ここで「細胞の状態」とは、例えば、細胞の分化状態である。プロモーター11は、例えば、細胞の分化状態に応じてレポーター遺伝子12の発現を制御する、分化状態検出マーカー遺伝子のプロモーターである。
本発明において、「分化状態検出マーカー遺伝子」は、例えば、細胞が特定の分化過程で特異的に発現する「分化マーカー遺伝子」及び細胞が未分化な状態で特異的に発現する「未分化マーカー遺伝子」を含む。
分化状態検出マーカー遺伝子のプロモーターの一例としては、公知の分化マーカー遺伝子のプロモーター及び公知の未分化マーカー遺伝子のプロモーターからなる群より選ばれるプロモーターが挙げられる。
分化マーカー遺伝子は、一例によると、例えば、心筋細胞の初期分化マーカー遺伝子、心筋細胞の後期分化マーカー遺伝子、外胚葉マーカー遺伝子、中胚葉マーカー遺伝子、内胚葉マーカー遺伝子及び神経発生分化マーカー遺伝子が挙げられる。
心筋細胞の初期分化マーカー遺伝子は、例えば、Gata-4又はαサルコメアアクチンである。心筋細胞の後期分化マーカー遺伝子は、例えば、αサルコメアアクチニン、Slow myosin heavy chain、トロポニンT-C又はMyl-2である。外胚葉マーカー遺伝子は、例えば、Pax6又はMap2である。中胚葉マーカー遺伝子は、例えば、α-Sma又はBranchyuryである。内胚葉マーカー遺伝子は、例えば、Sox17又はAfpである。神経発生分化マーカー遺伝子は、例えば、L7/Pcp2、Otp、Emx1、Six3、Otx2、Brain factor 1、Rx、Irx3、又はCrxである。
未分化マーカー遺伝子としては、例えば、Nanog、Oct3/4、Sox2、TRA1-60及びTRA1-81が挙げられる。
第1核酸は、エンハンサーなどの転写制御領域を含んでいてもよい。
「第1核酸」は、別の例によると、レポーター遺伝子12と、レポーター遺伝子12と共に発現するように構成され、細胞の状態に応じて発現が変化するマーカータンパク質をコードするマーカー遺伝子22とを含む。この例は、具体的には、図2Bに示されるとおり、レポーター遺伝子12と、レポーター遺伝子12と共に発現するように構成されたマーカー遺伝子22と、細胞の状態に応じてマーカー遺伝子22の発現を制御するプロモーター21とを含む。
図2Bにおいて「レポーター遺伝子12」は、プロモーター21の下流に位置しているマーカー遺伝子22の下流に位置している。なお、レポーター遺伝子12は、プロモーター21の下流及びマーカー遺伝子22の上流に位置していてもよい。レポーター遺伝子12としては、上述したレポーター遺伝子12を使用することができる。
「マーカー遺伝子22」は、レポーター遺伝子12と共に発現するように構成され、細胞の状態に応じて発現が変化するマーカータンパク質をコードする。「細胞の状態」とは、例えば、細胞の分化状態である。この場合、マーカー遺伝子22は、一例によると、細胞の分化状態に応じて発現が変化する分化状態検出マーカータンパク質をコードする分化状態検出マーカー遺伝子である。この場合、「第1核酸」は、
レポーター遺伝子と、
レポーター遺伝子と共に発現するように構成された、分化状態検出マーカータンパク質をコードする分化状態検出マーカー遺伝子と、
細胞の分化状態に応じて分化状態検出マーカー遺伝子の発現を制御するプロモーターと
を含む。
レポーター遺伝子と、
レポーター遺伝子と共に発現するように構成された、分化状態検出マーカータンパク質をコードする分化状態検出マーカー遺伝子と、
細胞の分化状態に応じて分化状態検出マーカー遺伝子の発現を制御するプロモーターと
を含む。
「分化状態検出マーカー遺伝子」としては、上述した分化状態検出マーカー遺伝子を使用することができる。
「マーカー遺伝子22」は、他の例によると、細胞のリプログラミングを誘導する初期化因子をコードする遺伝子、又は細胞の不死化(株化)を誘導する因子をコードする遺伝子である。この場合、「第1核酸」は、
レポーター遺伝子と、
レポーター遺伝子と共に発現するように構成された、細胞のリプログラミングを誘導する初期化因子又は細胞の不死化を誘導する因子をコードするマーカー遺伝子と、
レポーター遺伝子及びマーカー遺伝子の発現を制御する恒常的プロモーターと
を含む。
レポーター遺伝子と、
レポーター遺伝子と共に発現するように構成された、細胞のリプログラミングを誘導する初期化因子又は細胞の不死化を誘導する因子をコードするマーカー遺伝子と、
レポーター遺伝子及びマーカー遺伝子の発現を制御する恒常的プロモーターと
を含む。
細胞のリプログラミングを誘導する初期化因子をコードするマーカー遺伝子は、例えば、Oct3/4、Klf4、Sox2、c-myc、Lin28、又はL-mycをコードする遺伝子である。細胞の不死化(株化)を誘導する因子をコードするマーカー遺伝子は、例えば、テロメラーゼ逆転写酵素をコードする遺伝子である。1種類の「第1核酸」に、「マーカー遺伝子22」として、2種類以上の「体細胞のリプログラミングに必要な初期化因子をコードする遺伝子」又は2種類以上の「細胞の不死化(株化)を誘導する因子をコードする遺伝子」が含まれていてもよい。
「プロモーター21」は、使用されるマーカー遺伝子22の発現を細胞内で制御している既存のプロモーターを使用することができる。この場合、「プロモーター21」は、細胞の状態に応じてマーカー遺伝子22の発現を制御し、これにより、細胞の状態に応じてマーカータンパク質の発現が変化する。マーカー遺伝子22が分化状態検出マーカー遺伝子である場合、プロモーター21としては、使用されるマーカー遺伝子22の発現を細胞内で制御している既存のプロモーターを使用することができる。この場合、マーカー遺伝子22の発現は、細胞の分化状態または未分化状態に応じて経時的に変化する。
あるいは、「プロモーター21」は、恒常的プロモーター、例えばCAGプロモーターを使用することができる。この場合、「プロモーター21」は、多くの細胞においてマーカー遺伝子22を恒常的に発現させることができるが、細胞の状態によっては、マーカー遺伝子22を恒常的に発現させることができない細胞も存在する。マーカー遺伝子22が、細胞のリプログラミングを誘導する初期化因子をコードする遺伝子、又は細胞の不死化(株化)を誘導する因子をコードする遺伝子である場合、プロモーター21としては、恒常的プロモーターを使用することができる。この場合、マーカー遺伝子22の発現は、個々の細胞の状態に依存する。
なお、第1核酸は、一例によると、口蹄疫ウイルスの2A配列やIRES配列などを介してポリシストロニックに、レポーター遺伝子12とマーカー遺伝子22とが連結するようにレポーター遺伝子12とマーカー遺伝子22を含んでいてもよい。あるいは、第1核酸は、レポーター遺伝子12とマーカー遺伝子22とを直接連結させて1つの融合遺伝子として含んでいてもよい。
「第1核酸」は、1種類が細胞に導入されてもよいし、2種類以上が細胞に導入されてもよい。図2Aに示される第1核酸の2種類以上が細胞に導入される場合、
(i)2種類以上の第1核酸に含まれるプロモーター11は互いに異なり、
(ii)2種類以上の第1核酸に含まれるレポーター遺伝子12は互いに異なり、
(iii)レポーター遺伝子12の発現により産生される発光レポータータンパク質のそれぞれに起因する発光は、他の何れの発光レポータータンパク質に起因する発光とも互いに識別可能に検出される発光特性を有する。図2Bに示される第1核酸の2種類以上が細胞に導入される場合、
(i)2種類以上の第1核酸に含まれるマーカー遺伝子22は互いに異なり、
(ii)2種類以上の第1核酸に含まれるレポーター遺伝子12は互いに異なり、
(iii)レポーター遺伝子12の発現により産生される発光レポータータンパク質のそれぞれに起因する発光は、他の何れの発光レポータータンパク質に起因する発光とも互いに識別可能に検出される発光特性を有する。
(i)2種類以上の第1核酸に含まれるプロモーター11は互いに異なり、
(ii)2種類以上の第1核酸に含まれるレポーター遺伝子12は互いに異なり、
(iii)レポーター遺伝子12の発現により産生される発光レポータータンパク質のそれぞれに起因する発光は、他の何れの発光レポータータンパク質に起因する発光とも互いに識別可能に検出される発光特性を有する。図2Bに示される第1核酸の2種類以上が細胞に導入される場合、
(i)2種類以上の第1核酸に含まれるマーカー遺伝子22は互いに異なり、
(ii)2種類以上の第1核酸に含まれるレポーター遺伝子12は互いに異なり、
(iii)レポーター遺伝子12の発現により産生される発光レポータータンパク質のそれぞれに起因する発光は、他の何れの発光レポータータンパク質に起因する発光とも互いに識別可能に検出される発光特性を有する。
すなわち、2種類以上の第1核酸が細胞に導入される場合、2種類以上の発光レポータータンパク質は、互いに識別可能に検出されることを可能にする発光特性を有する。ここで「発光特性」は、例えば発光波長である。このように、2種類以上の発光レポータータンパク質は、互いに識別可能に検出されることを可能にする発光特性を有するため、後の工程で取得される発光画像において、発光レポータータンパク質のそれぞれの発現に起因する発光の情報は、他の何れの発光レポータータンパク質の発現に起因する発光の情報とも分別される。
互いに識別可能に検出されることを可能にする発光特性を有する2種類以上の発光レポータータンパク質としては、例えば、緑色の発光をもたらすElucルシフェラーゼ、赤色の発光をもたらすCBRルシフェラーゼ、青色の発光をもたらすウミシイタケルシフェラーゼといった市販されるものを使用することができる。
2種類以上の第1核酸が細胞に導入される場合、2種類以上の第1核酸は、各々個別のベクターに組み込まれていてもよいし、1つのベクターに組み込まれていてもよい。2種類以上の第1核酸を1つのベクターに組み込む場合、ベクターは、各第1核酸がターミネーターを介して連結するように、各第1核酸を含んでいることが好ましい。
「第1核酸」と共に細胞に導入される「第2核酸」は、活性化光線を照射することによって活性酸素種を産生する活性酸素種産生タンパク質をコードする遺伝子32を含む。
活性酸素種産生タンパク質は、活性化光線を照射すると励起され、基底状態に戻る際に放出するエネルギーを、酸素に渡すことで活性酸素種を産生することができる。このため、活性酸素種産生タンパク質を細胞内に発現させ、細胞に活性化光線を照射すると容易に細胞死を引き起こすことが可能である。
細胞内で活性酸素種が産生されると、活性酸素種は、例えば、DNAの損傷等を引き起こし、細胞死を招く。活性酸素種は、例えば、一重項酸素、スーパーオキサイドアニオンラジカル、過酸化水素及びヒドロキシルラジカルからなる群より選ばれる少なくとも1以上の活性酸素種である。
なお、活性化光線は、発光レポータータンパク質の発現に起因する発光の波長域と異なる波長域を有することが好ましい。ここで、使用される1以上の発光レポータータンパク質の各発光の最大発光波長と、活性酵素種産生タンパク質の活性化光線とが互いに干渉しないように設定するのが好ましい。また、ここで使用される1以上の発光レポータータンパク質の各発光の最大発光波長と、活性酵素種産生タンパク質の最大蛍光波長とが互いに干渉しないように設定するのが好ましい。具体的には、活性化光線のピーク波長と、発光レポータータンパク質の発現に起因する光のピーク波長との差は、10nm以上であることが好ましく、20~30nmであることがより好ましい。活性化光線のピーク波長と、発光レポータータンパク質の発現に起因する光のピーク波長との差が10nm以上であると、発光レポータータンパク質の発現に起因する光によって細胞死が誘導される可能性を減らすことができる。なお、実際には発光レポータータンパク質由来の発光で細胞死が誘導される可能性は極めて低いため、活性化光線の波長域と、発光レポータータンパク質の発現に起因する発光の波長域とは重複していてもよい。
活性酸素種産生タンパク質は、例えば、蛍光タンパク質である。活性酸素種産生タンパク質は、好ましくは、KillerRed(Bulina M. E., et. al., “A genetically encoded photosensitizer” Nat Biotechnol. 24, 95 (2006);WO2006/117694A2)、又はSuperNova(K. Takemoto et al., “SuperNova, a monomeric photosensitizing fluorescent protein for chromophore-assisted light inactivation” Science Reports, 3: 2629 (2013);特開2013―78264号公報)である。KillerRedは、細胞内で二量体として存在する。SuperNovaは、KillerRedの遺伝子改変体であり、細胞内で単量体として存在し、KillerRedと比べて活性酸素種の産生量が多い。KillerRed及びSuperNovaは、細胞内で活性化すると、細胞に高い光毒性を与える。
KillerRedは、緑色光の励起光により赤色の蛍光を発生する。KillerRedの他に、青色光と緑色光の少なくとも一方の励起光でオレンジ色の蛍光を発生する活性酸素種産生タンパク質として、KillerOrangeを使用することができる。KillerRedをコードする遺伝子を、ある種類の細胞に導入し、KillerOrangeをコードする遺伝子を異なる種類の細胞に導入すれば、細胞集団を2種類に分けて識別しながら、緑色光の励起光で両方の種類の細胞を不活性化したり、青色光の励起光で片方の種類の細胞だけを不活性化したりすることが可能になる。
活性酸素種産生タンパク質は、恒常的に活性化しているプロモーター31を用いて恒常的に発現させることができる。プロモーター31としては、例えば、CMVプロモーターを用いることができる。これにより、培養細胞のすべてが、活性酸素種産生タンパク質を発現することができる。
第1核酸及び第2核酸の各々は、宿主の染色体に組み込まれずに持続的に発現可能な形態で導入されることが好ましい。例えば、第1核酸及び第2核酸の各々は、ベクターに組み込まれた形態(組換えベクターの形態)で細胞に導入されることが好ましい。より好ましくは、第1核酸及び第2核酸は、図2A及び図2Bに示されるとおり、同一のベクターに組み込まれた形態で細胞に導入される。あるいは、第1核酸及び第2核酸は、別々のベクターに組み込まれた形態で細胞に導入されてもよい。また、ベクターは、エピソーマルベクターであることが好ましい。エピソーマルベクターは、市販されているもの、例えば、pCE-mp53DD(Addgene)、pCXB-EBNA1(Addgene)を使用することができる。
ベクターは、例えば、市販されているベクターに、第1核酸及び/又は第2核酸を組み込むことにより組換えベクターを調製してこれを使用してもよい。市販されているベクターとしては、例えば、pGL4.17[luc2/Neo]Vector(Promega)を用いることができる。
第1核酸及び第2核酸が導入された細胞は、公知の培養条件に従って培養することができる。好ましくは、培地交換などの操作のための時間を除いて、顕微鏡上で培養を行う。細胞の培養条件は、培養の途中で変化させてもよい。例えば、細胞は、培養の期間中に、前記細胞の分化を誘導する条件下に置かれてもよい。具体的には、細胞は、細胞の分化を抑制する物質(例えば、LIF)の存在下で培養された後に、細胞の分化を抑制する物質の非存在下、または特定の細胞への分化を誘導する物質の存在下で培養されてもよい。また、発光レポータータンパク質としてルシフェラーゼを使用した場合、ルシフェラーゼの発現に起因する発光を生じさせるためには、発光基質であるルシフェリンを培地に添加する必要がある。
<1-2.発光画像の取得>
細胞の培養(S1)の期間中に、発光レポータータンパク質の発現に起因する発光に係る細胞の発光画像を取得する(S2)。
細胞の培養(S1)の期間中に、発光レポータータンパク質の発現に起因する発光に係る細胞の発光画像を取得する(S2)。
発光画像を取得することは、好ましくは経時的に繰り返し実施される。撮像は、任意の間隔で連続的に行なわれる。撮像は、一般的には10~30分の間隔、例えば10分の間隔で実施される。また、1回の撮像の時間は任意に設定される。1回の撮像のカメラ露出時間は、例えば3乃至5分間とするが、十分な発光シグナルを検出できるように適宜調整することができる。撮像する間隔は、発光画像が撮像素子により解析可能な程度の画像を生じるための露光時間より長い任意の時間間隔である。
発光画像の取得期間は、第1核酸及び第2核酸が細胞内に維持される期間である。第1核酸及び第2核酸のうち少なくとも一方をエピソーマルベクターの形態で導入した場合、発光の撮像は、エピソーマルベクターが導入されてから、エピソーマルベクターが細胞外へ放出されるまで継続することができる。言い換えると、エピソーマルベクターのように、所定の期間経過後(例えば、後述の具体例では、分化細胞を選別した後、又はiPS細胞が形成された後)に細胞外へ自然に放出されるベクターを使用することにより、細胞治療への応用における不純物が無くなる点で好ましい。
発光画像を取得することは、遮光環境下において実施されることが好ましい。より具体的には、発光画像を取得することは、生物発光を撮像するための遮光環境下において、外部からの影響が少ない方法で実施されることが好ましい。発光画像は、遮光環境下で適宜フィルターを使用して取得することができる。なお、検出する発光レポータータンパク質が1種類である場合には、発光画像は、遮光環境下でフィルターを使用せずに取得してもよい。検出する発光レポータータンパク質が複数種類である場合には、発光画像は、遮光環境下で、適宜フィルターを使用して分光した後に取得することが好ましい。なお、発光画像は、フィルターで分光せず、複数種類の発光レポータータンパク質の発現に起因する発光が重なり合った画像として取得することも可能である。また、発光画像は、カラーCCDカメラまたはカラーCMOSカメラを用いて、カラー画像として取得することも可能である。また、in・vivoイメージングにより広範囲の領域(50~500個のコロニーを包括する領域)における発光量の分布をマクロ撮影してから、関心ある部位についてのみミクロ撮影することで、細胞ごとまたはコロニーごとの発光画像を得るようにしてもよい。
発光画像は、発光イメージング装置を用いて、例えば、発光に応じた特定の波長を有した光を主に通過させるフィルターと、フィルターを透過した光を電気信号に変換する撮像素子と、電気信号から発光画像を作り出す処理部とを含む発光イメージング装置を用いて、取得することができる。発光イメージング装置としては、後述する発光イメージングシステム、例えば発光イメージングシステムLV200(オリンパス)を使用することができる。培養機能を実行している間に撮像機能を所望のタイミングで実行することで、培養の全ての過程において発光画像を取得することができる。したがって、全過程で時系列的に発光画像を取得した後に、取得した複数の発光画像の中から、不要細胞の決定(S3)に適している画像(具体的には、発光レポータータンパク質の発現に起因する発光が細胞ごとに異なっていることを示す画像)を選択することができる。また、同じ培養チャンバー内で同時に培養を開始した複数のコロニーについて、異なる経過時刻の発光画像を選択することで、成長速度が異なるコロニー間で成長度合いが同等のコロニー同士を評価することが可能である。
好ましくは、発光画像とともに明視野画像を取得する。より好ましくは、発光画像の取得とほぼ同じタイミングで明視野画像を取得する。明視野画像とは、発光に基づくことなく、照明光を用いて取得される画像であり、細胞又はコロニーの位置及び形態等を観察することができる画像である。明視野画像は、位相差観察画像や微分干渉(DIC)観察画像を含む。明視野画像は、発光画像の取得とほぼ同じタイミングで取得してもよいし、発光画像の取得からは独立して任意のタイミングで取得してもよい。上記発光イメージングシステム(LV200)のような自動化されたシステムにおいては、十分な遮光条件下で、発光画像と明視野画像の両方の撮像機能を、予め指定したタイミングで切り替えながら実行することも可能である。
<1-3.不要細胞の決定>
発光画像に基づいて、培養細胞のなかから不要細胞を決定する(S3)。不要細胞の決定は、不要細胞に固有の発光又は不要細胞に固有の発光強度を示す細胞を選択することにより行ってもよいし、目的細胞に固有の発光又は目的細胞に固有の発光強度を示す細胞を選択し、選択されなかった細胞を不要細胞として決定することにより行ってもよい。
発光画像に基づいて、培養細胞のなかから不要細胞を決定する(S3)。不要細胞の決定は、不要細胞に固有の発光又は不要細胞に固有の発光強度を示す細胞を選択することにより行ってもよいし、目的細胞に固有の発光又は目的細胞に固有の発光強度を示す細胞を選択し、選択されなかった細胞を不要細胞として決定することにより行ってもよい。
不要細胞の決定は、取得された発光画像に基づいて、発光レポータータンパク質の発現に起因する発光の有無を観察することにより行ってもよいし、発光レポータータンパク質の発現に起因する発光の発光強度を定量し、定量された発光強度に基づいて行ってもよい。
《発光強度の定量》
発光強度の定量は、以下のとおり行うことができる。
検出する発光レポータータンパク質が1種類である場合、発光レポータータンパク質の発光の波長域で検出される発光強度をそのまま定量することができる。
発光強度の定量は、以下のとおり行うことができる。
検出する発光レポータータンパク質が1種類である場合、発光レポータータンパク質の発光の波長域で検出される発光強度をそのまま定量することができる。
検出する発光レポータータンパク質が2種類以上である場合には、好ましくは、まず、フィルターで分光し、所定の波長域毎に発光画像を取得する。その後、好ましくは、得られた発光画像に対してアンミキシング処理を行い、複数種類の発光レポータータンパク質の発光の波長域が重なり合う部分を排除した上で、複数種類の発光レポータータンパク質の発現に起因する発光の発光強度を各々分別して定量することができる。上記で得られた個々の発光レポータータンパク質の発現に起因する発光強度の定量結果から、発光強度の比を算出することも可能である。
なお、発光強度は、複数種類の発光レポータータンパク質の発現に起因する発光の発光強度の合計値として定量してもよい。この場合、複数種類の発光レポータータンパク質の全体の発現量に関する情報を得ることができる。
また、検出する発光レポータータンパク質が2種類以上である場合には、カラー画像に基づいて複数種類の発光レポータータンパク質の発現に起因する発光を色分離した後に、それぞれの発光の情報を分別して発光強度を定量することも可能である。
発光画像を取得することが、経時的に繰り返し実施された場合、発光強度の定量は、好ましくは経時的に繰り返し行われる。この場合も、発光強度の定量が行われた各時点において発光強度の比を算出することが可能である。発光強度の定量及び発光強度の比の算出は自動化してもよい。
《1種類の発光レポータータンパク質を使用し、発光画像を一時点で取得した場合》
発光画像が、1種類の発光レポータータンパク質に起因する発光に係る画像である場合、不要細胞は、一例によると、細胞の培養(S1)の期間の一時点において取得された発光画像に基づいて決定することができる。
発光画像が、1種類の発光レポータータンパク質に起因する発光に係る画像である場合、不要細胞は、一例によると、細胞の培養(S1)の期間の一時点において取得された発光画像に基づいて決定することができる。
具体的には、選択される不要細胞又は選択される目的細胞は、第1核酸に含まれるプロモーター11又はマーカー遺伝子22の種類や、目的細胞の種類に応じて、発光している細胞、発光していない細胞、発光強度が相対的に小さい細胞、又は発光強度が相対的に大きい細胞などとすることができる。
例えば、第1核酸に含まれるプロモーター11又はマーカー遺伝子22が、分化マーカー遺伝子のプロモーター又は分化マーカー遺伝子であり、かつ目的細胞が分化細胞である場合、不要細胞は、未分化の細胞であり、発光していない細胞又は発光強度が相対的に小さい細胞を不要細胞として選択することができる。あるいは、第1核酸に含まれるプロモーター11又はマーカー遺伝子22が、未分化マーカー遺伝子のプロモーター又は未分化マーカー遺伝子であり、かつ目的細胞が分化細胞である場合、不要細胞は、未分化の細胞であり、発光している細胞又は発光強度が相対的に大きい細胞を不要細胞として選択することができる。
《1種類の発光レポータータンパク質を使用し、発光画像を経時的に取得した場合》
発光画像が、1種類の発光レポータータンパク質に起因する発光に係る画像である場合、不要細胞は、別の例によると、細胞の培養(S1)の期間に、経時的に取得した複数の発光画像に基づいて決定することができる。不要細胞は、例えば、経時的に取得した複数の発光画像から得られる発光強度のプロファイルに応じて決定することができる。
発光画像が、1種類の発光レポータータンパク質に起因する発光に係る画像である場合、不要細胞は、別の例によると、細胞の培養(S1)の期間に、経時的に取得した複数の発光画像に基づいて決定することができる。不要細胞は、例えば、経時的に取得した複数の発光画像から得られる発光強度のプロファイルに応じて決定することができる。
具体的には、選択される不要細胞又は選択される目的細胞は、第1核酸に含まれるプロモーター11又はマーカー遺伝子22の種類や、目的細胞の種類に応じて、継続的に発光している細胞、継続的に発光していない細胞、発光強度が経時的に増加する細胞、又は発光強度が経時的に減少する細胞などとすることができる。
例えば、第1核酸に含まれるマーカー遺伝子22が、細胞のリプログラミングを誘導する初期化因子をコードする遺伝子であり、かつ目的細胞がiPS細胞である場合、継続的に発光している細胞を目的細胞として選択し、それ以外の細胞を不要細胞として決定することができる。あるいは、第1核酸に含まれるプロモーター11又はマーカー遺伝子22が、分化マーカー遺伝子のプロモーター又は分化マーカー遺伝子であり、かつ目的細胞が分化細胞である場合、発光強度が経時的に増加する細胞を目的細胞として選択し、それ以外の細胞を不要細胞として決定することができる。あるいは、第1核酸に含まれるプロモーター11又はマーカー遺伝子22が、未分化マーカー遺伝子のプロモーター又は未分化マーカー遺伝子であり、かつ目的細胞が分化細胞である場合、発光強度が経時的に減少する細胞を目的細胞として選択し、それ以外の細胞を不要細胞として決定することができる。
《複数種類の発光レポータータンパク質を使用し、発光画像を一時点で取得した場合》
発光画像が、複数種類の発光レポータータンパク質に起因する発光に係る画像である場合、不要細胞は、例えば、各発光レポータータンパク質の発現に起因する発光の有無、各発光レポータータンパク質の発現に起因する発光の発光強度、又は各発光レポータータンパク質の発現に起因する発光の発光強度の比に応じて決定することができる。発光画像が、複数種類の発光レポータータンパク質に起因する発光に係る画像である場合も、不要細胞は、一例によると、細胞の培養(S1)の期間の一時点において取得された発光画像に基づいて決定することができる。
発光画像が、複数種類の発光レポータータンパク質に起因する発光に係る画像である場合、不要細胞は、例えば、各発光レポータータンパク質の発現に起因する発光の有無、各発光レポータータンパク質の発現に起因する発光の発光強度、又は各発光レポータータンパク質の発現に起因する発光の発光強度の比に応じて決定することができる。発光画像が、複数種類の発光レポータータンパク質に起因する発光に係る画像である場合も、不要細胞は、一例によると、細胞の培養(S1)の期間の一時点において取得された発光画像に基づいて決定することができる。
具体的には、選択される不要細胞又は選択される目的細胞は、第1核酸に含まれるプロモーター11又はマーカー遺伝子22の種類や、目的細胞の種類に応じて、複数種類の発光レポータータンパク質のなかで特定の発光レポータータンパク質の発現に起因する発光のみが観察される細胞、全ての発光レポータータンパク質の発現に起因する発光が観察される細胞、特定の発光レポータータンパク質の発現に起因する発光の発光強度が、その他の発光レポータータンパク質の発現に起因する発光の発光強度よりも小さい細胞、又は特定の発光レポータータンパク質の発現に起因する発光の発光強度が、その他の発光レポータータンパク質の発現に起因する発光の発光強度よりも大きい細胞などとすることができる。
例えば、2種類の第1核酸に含まれる2種類のプロモーター11が、分化マーカー遺伝子のプロモーターと、未分化マーカー遺伝子のプロモーターであり、かつ目的細胞が分化細胞である場合、分化マーカー遺伝子のプロモーターによって制御されるレポーター遺伝子に対応する発光レポータータンパク質の発現に起因する発光のみが観察される細胞を目的細胞として選択し、その他の細胞を不要細胞として決定することができる。
《複数種類の発光レポータータンパク質を使用し、発光画像を経時的に取得した場合》
発光画像が、複数種類の発光レポータータンパク質に起因する発光に係る画像である場合も、不要細胞は、別の例によると、細胞の培養(S1)の期間に、経時的に取得した複数の発光画像に基づいて決定することができる。不要細胞は、例えば、経時的に取得した複数の発光画像から得られる、発光強度のプロファイル又は発光強度比のプロファイルに応じて決定することができる。
発光画像が、複数種類の発光レポータータンパク質に起因する発光に係る画像である場合も、不要細胞は、別の例によると、細胞の培養(S1)の期間に、経時的に取得した複数の発光画像に基づいて決定することができる。不要細胞は、例えば、経時的に取得した複数の発光画像から得られる、発光強度のプロファイル又は発光強度比のプロファイルに応じて決定することができる。
具体的には、選択される不要細胞又は選択される目的細胞は、第1核酸に含まれるプロモーター11又はマーカー遺伝子22の種類や、目的細胞の種類に応じて、複数種類の発光レポータータンパク質のなかで特定の発光レポータータンパク質の発現に起因する発光のみが継続的に観察される細胞、発光レポータータンパク質の発現に起因する発光が一定の発光強度比で継続的に観察される細胞、全ての発光レポータータンパク質の発現に起因する発光が継続的に観察される細胞、特定の発光レポータータンパク質の発現に起因する発光の発光強度が経時的に増加若しくは減少する細胞、又は発光レポータータンパク質の発現に起因する発光の発光強度比が経時的に増加若しくは減少する細胞などとすることができる。
例えば、2種類の第1核酸に含まれる2種類のプロモーター11が、分化マーカー遺伝子のプロモーターと、未分化マーカー遺伝子のプロモーターであり、かつ目的細胞が分化細胞である場合、分化マーカー遺伝子のプロモーターによって制御されるレポーター遺伝子に対応する発光レポータータンパク質の発現に起因する発光が増加し、未分化マーカー遺伝子のプロモーターによって制御されるレポーター遺伝子に対応する発光レポータータンパク質の発現に起因する発光が減少する細胞を目的細胞として選択し、それ以外の細胞を不要細胞として決定することができる。
図2Aに示すように、第1核酸が、レポーター遺伝子12と、細胞の状態に応じてレポーター遺伝子12の発現を制御するプロモーター11とを含む場合、発光レポータータンパク質の発現に起因する発光の発光強度と、プロモーター11の活性とは相関している。従って、この場合、発光の有無や発光強度はプロモーター活性の指標である。よって、発光の有無や発光強度に基づいて不要細胞を決定することができる。
図2Bに示すように、第1核酸が、レポーター遺伝子12と、レポーター遺伝子12と共に発現するように構成され、細胞の状態に応じて発現が変化するマーカータンパク質をコードするマーカー遺伝子22とを含む場合、発光レポータータンパク質の発現に起因する発光の発光強度と、マーカータンパク質の発現量とは相関している。従って、この場合、発光の有無や発光強度はマーカータンパク質の発現量の指標である。よって、発光の有無や発光強度に応じて不要細胞を決定することができる。
<1-4.細胞死の誘導>
不要細胞に活性化光線を照射して不要細胞の細胞死を誘導する(S4)。
培養細胞のすべてが、活性酸素種産生タンパク質をコードする遺伝子を含み、活性酸素種産生タンパク質を発現しているため、不要細胞も、活性酸素種産生タンパク質を発現している。不要細胞に活性化光線を照射すると、活性化光線は活性酸素種産生タンパク質を励起する。励起した活性酸素種産生タンパク質は、励起状態から基底状態に戻る際にエネルギーを放出する。放出したエネルギーは、例えば、細胞内の酸素に受け渡され、一重項酸素などの活性酸素種が産生される。活性酸素種は、例えば、細胞内のDNAに損傷を引き起こすことで、細胞死を誘導する。
不要細胞に活性化光線を照射して不要細胞の細胞死を誘導する(S4)。
培養細胞のすべてが、活性酸素種産生タンパク質をコードする遺伝子を含み、活性酸素種産生タンパク質を発現しているため、不要細胞も、活性酸素種産生タンパク質を発現している。不要細胞に活性化光線を照射すると、活性化光線は活性酸素種産生タンパク質を励起する。励起した活性酸素種産生タンパク質は、励起状態から基底状態に戻る際にエネルギーを放出する。放出したエネルギーは、例えば、細胞内の酸素に受け渡され、一重項酸素などの活性酸素種が産生される。活性酸素種は、例えば、細胞内のDNAに損傷を引き起こすことで、細胞死を誘導する。
活性化光線は、一例によると可視光である。可視光の波長域は、一般に380nm乃至780nmである。活性化光線の波長域は、活性酸素種産生タンパク質を励起し易い波長域を選択することができる。活性酸素種産生タンパク質がKillerRedである場合、活性化光線の波長域は、515nm乃至560nmの範囲内にあることが好ましい。波長域が515nm乃至560nmの範囲内にある活性化光線を活性酸素種産生タンパク質に照射すると、不要細胞に細胞死を引き起こしやすい。
活性化光線は、例えば、既存の発光装置によって発せられる。発光装置は、例えば、後述する発光イメージングシステムに含まれる光照射部である。活性化光線の照射は、1~7W/cm2の出力で10秒~10分間照射することにより行うことができる。
活性化光線は、一例によると、1回の照射により1つの不要細胞に照射する。例えば、発光イメージングシステムに付随される明視野観察のための光照射部と照射光のスポット径と照射位置を任意に選択するための照射制御部(例えば、光学絞り)とを、光照射部が発する活性化光線を絞るように組み合わせると、活性化光線の照準を1つの細胞に定めることができる。活性化光線を複数の不要細胞に照射したい場合、活性化光線は、不要細胞に順次照射する。かかる照射制御部として利用できるシステムとしてはDigital Illmination MOSAIC(フォトニックインスツルメンツ社製品)が挙げられる。
活性化光線は、別の例によると、1回の照射により複数の不要細胞に照射する。活性化光線を不要細胞に照射する際には、光照射部にマスクを設置し、不要細胞のみに活性化光線が照射するようにしてもよい。
活性化光線は、一部の不要細胞に対して照射してもよいし、比較的温和な照射パワー(たとえば1~3W/cm2の出力で10秒~5分間)で照射することにより全ての不要細胞に対して照射してもよい。
また、活性化光線の照射パワーは、照射しようとする細胞の種類や、発光強度に応じて変更するようにしてもよい。
また、活性化光線の照射を断続的に実施するとともに、照射の合間に発光強度をモニタリングすることにより、不活性化したと考えられる所定の閾値以下に発光強度が下がった場合に活性化光線の照射を中止するように制御してもよい。
また、活性化光線の照射を断続的に実施するとともに、照射の合間に発光強度をモニタリングすることにより、不活性化したと考えられる所定の閾値以下に発光強度が下がった場合に活性化光線の照射を中止するように制御してもよい。
以上のようにして、細胞の選別を行う。この方法によると、細胞から目的細胞を選別することができる。
なお、細胞死を誘導した後に培地を交換して、死んだ細胞を除去してもよい。
<1-5.効果>
以上説明したように、一実施形態に係る細胞の選別方法によると、レポーター遺伝子の発現に起因する発光に基づいて、簡便に不要細胞と目的細胞とを選別することができる。
以上説明したように、一実施形態に係る細胞の選別方法によると、レポーター遺伝子の発現に起因する発光に基づいて、簡便に不要細胞と目的細胞とを選別することができる。
上述した方法によると、発光画像に基づいて不要細胞を決定し、不要細胞に活性化光線を照射するだけで、容易に不要細胞に細胞死を誘導することができる。
また、上述した方法は、励起光を使用しないため、細胞に対して低侵襲な方法で発光画像を取得することができる。仮に、発光レポータータンパク質をコードするレポーター遺伝子の代わりに、蛍光タンパク質をコードする遺伝子を用いると、蛍光を検出するために、細胞に励起光を照射することが必要である。励起光を細胞に照射すると、蛍光タンパク質だけでなく、活性酸素種産生タンパク質も活性化される。即ち、励起光を照射した全ての細胞に細胞死が誘導される可能性が高い。また、励起光の照射は、細胞に光毒性をもたらすことが知られている。例えば、励起光は活性酸素種の生成に関与するため、活性酸素種による酸化的なDNAへの損傷要因となる。また、GFPに代表される蛍光タンパク質の励起波長では、membrane blebs(膜の水泡)や細胞分裂異常が発生する。一方、励起光を使用しない発光による観察は、長期間の観察であっても細胞へのダメージは殆どない。また、発光レポータータンパク質の発現は細胞に対して無害である。
また、上述した細胞の選別方法は、定量性に優れている。発光レポータータンパク質の検出時には、自家蛍光によるバックグラウンドが観察されないため、高い精度で発光強度を定量することができる。
また、上述した細胞の選別方法は、発光強度の変化の追従性にも優れている。これは、発光レポータータンパク質の細胞内半減期は比較的短いため、発光レポータータンパク質が細胞の状態を高い精度で反映できるからである。発光レポータータンパク質の細胞内半減期は、例えば、3時間程度である。
<2.細胞の選別方法の具体例>
上述した「細胞の選別方法」は、例えば、「幹細胞から分化した細胞を選別する方法」や「体細胞からiPS細胞を選別する方法」に用いることができる。以下、これら2つの方法を具体例1および2として説明する。
上述した「細胞の選別方法」は、例えば、「幹細胞から分化した細胞を選別する方法」や「体細胞からiPS細胞を選別する方法」に用いることができる。以下、これら2つの方法を具体例1および2として説明する。
<2-1.具体例1>
「幹細胞から分化した細胞を選別する方法」は、
発光レポータータンパク質をコードするレポーター遺伝子と、細胞の分化状態に応じて前記レポーター遺伝子の発現を制御する分化状態検出マーカー遺伝子のプロモーターとを含む1種類以上の第1核酸と、活性化光線を照射することによって活性酸素種を産生する活性酸素種産生タンパク質をコードする遺伝子を恒常的プロモーターの制御下に含む第2核酸とが導入された幹細胞を培養することと(S1)、
前記細胞が、培養の期間中に、前記細胞の分化を誘導する条件下に置かれることと、
前記細胞の培養の期間中に、前記発光レポータータンパク質の発現に起因する発光に係る前記細胞の発光画像を取得することと(S2)、
前記発光画像に基づいて、前記細胞のなかから分化細胞以外の細胞を不要細胞と決定することと(S3)、
前記不要細胞に前記活性化光線を照射して前記不要細胞の細胞死を誘導することと(S4)
を含む。
「幹細胞から分化した細胞を選別する方法」は、
発光レポータータンパク質をコードするレポーター遺伝子と、細胞の分化状態に応じて前記レポーター遺伝子の発現を制御する分化状態検出マーカー遺伝子のプロモーターとを含む1種類以上の第1核酸と、活性化光線を照射することによって活性酸素種を産生する活性酸素種産生タンパク質をコードする遺伝子を恒常的プロモーターの制御下に含む第2核酸とが導入された幹細胞を培養することと(S1)、
前記細胞が、培養の期間中に、前記細胞の分化を誘導する条件下に置かれることと、
前記細胞の培養の期間中に、前記発光レポータータンパク質の発現に起因する発光に係る前記細胞の発光画像を取得することと(S2)、
前記発光画像に基づいて、前記細胞のなかから分化細胞以外の細胞を不要細胞と決定することと(S3)、
前記不要細胞に前記活性化光線を照射して前記不要細胞の細胞死を誘導することと(S4)
を含む。
<細胞の培養>
細胞の培養は、上述した「1-1.細胞の培養」の欄に記載した方法と同様の方法により行うことができる。
細胞の培養は、上述した「1-1.細胞の培養」の欄に記載した方法と同様の方法により行うことができる。
第1核酸および第2核酸を導入するために使用される「細胞」として幹細胞を用いる。幹細胞は、例えば、iPS細胞又はES細胞である。
iPS細胞は、上述のとおり、第1核酸および第2核酸に加えて、体細胞のリプログラミングに必要な初期化因子をコードする遺伝子を含む第3核酸を体細胞に導入することにより構築された細胞を使用することができる。
「第1核酸」は、図2Aに示されるとおり、発光レポータータンパク質をコードするレポーター遺伝子12と、細胞の分化状態に応じてレポーター遺伝子12の発現を制御する分化状態検出マーカー遺伝子のプロモーター11とを含む。「レポーター遺伝子12」および「分化状態検出マーカー遺伝子のプロモーター11」としては、それぞれ上述した「レポーター遺伝子12」、及び上述した「分化状態検出マーカー遺伝子のプロモーター11」を用いることができる。
上述のとおり、「第1核酸」は、1種類が幹細胞に導入されてもよいし、2種類以上が幹細胞に導入されてもよい。
2種類以上の第1核酸に含まれる「分化状態検出マーカー遺伝子のプロモーター」は、未分化マーカー遺伝子のプロモーターから選ばれる1種類以上と分化マーカー遺伝子のプロモーターから選ばれる1種類以上とから構成される2種類以上のプロモーターであってもよいし、2種類以上の未分化マーカー遺伝子のプロモーターであってもよいし、2種類以上の分化マーカー遺伝子のプロモーターであってもよい。2種類以上の第1核酸に含まれる「分化状態検出マーカー遺伝子のプロモーター」は、例えば、心筋細胞の初期分化マーカー遺伝子のプロモーターから選ばれる1種類以上と心筋細胞の後期分化マーカー遺伝子のプロモーターから選ばれる1種類以上とから構成される2種類以上のプロモーターである。
「第1核酸」と共に細胞に導入される「第2核酸」としては、上述のとおり、「活性酸素種産生タンパク質をコードする遺伝子を含む核酸」を用いることができる。
第1核酸及び第2核酸が導入された幹細胞は、公知の培養条件に従って培養することができる。細胞は、培養の期間中に、細胞の分化を誘導する条件下に置かれる。例えば、細胞は、細胞の分化を抑制する物質(例えば、LIF)の存在下で培養された後に、細胞の分化を抑制する物質の非存在下、または特定の細胞への分化を誘導する物質の存在下で培養される。
<発光画像の取得>
発光レポータータンパク質の発現に起因する発光に係る発光画像を取得する。発光画像の取得は、上述した「1-2.発光画像の取得」の欄に記載した方法と同様の方法により行うことができる。好ましくは、発光画像は経時的に取得される。
発光レポータータンパク質の発現に起因する発光に係る発光画像を取得する。発光画像の取得は、上述した「1-2.発光画像の取得」の欄に記載した方法と同様の方法により行うことができる。好ましくは、発光画像は経時的に取得される。
<不要細胞の決定>
発光画像に基づいて、培養細胞のなかから不要細胞を決定する。不要細胞の決定は、上述した「1-3.不要細胞の決定」の欄に記載した方法と同様の方法により行うことができる。具体的には、不要細胞の決定は、分化細胞に固有の発光又は分化細胞に固有の発光強度を示す細胞を選択し、選択されなかった細胞を不要細胞として決定することにより行うことができる。
発光画像に基づいて、培養細胞のなかから不要細胞を決定する。不要細胞の決定は、上述した「1-3.不要細胞の決定」の欄に記載した方法と同様の方法により行うことができる。具体的には、不要細胞の決定は、分化細胞に固有の発光又は分化細胞に固有の発光強度を示す細胞を選択し、選択されなかった細胞を不要細胞として決定することにより行うことができる。
<細胞死の誘導>
不要細胞に活性化光線を照射して不要細胞の細胞死を誘導する。細胞死の誘導は、上述した「1-4.細胞死の誘導」の欄に記載した方法と同様の方法により行うことができる。
不要細胞に活性化光線を照射して不要細胞の細胞死を誘導する。細胞死の誘導は、上述した「1-4.細胞死の誘導」の欄に記載した方法と同様の方法により行うことができる。
以上のようにして、幹細胞から分化した細胞を選別することができる。
<細胞の発光状態>
図3は、上述の「幹細胞から分化した細胞を選別する方法」を実施した場合の培養細胞の発光状態の一例を模式的に示す。
図3は、上述の「幹細胞から分化した細胞を選別する方法」を実施した場合の培養細胞の発光状態の一例を模式的に示す。
図3において、細胞1は、
2種類の第1核酸、すなわち、レポーター遺伝子Aとレポーター遺伝子Aの発現を制御する心筋細胞の初期分化マーカー遺伝子のプロモーターとを含む第1核酸と、レポーター遺伝子Bとレポーター遺伝子Bの発現を制御する心筋細胞の後期分化マーカー遺伝子のプロモーターとを含む第1核酸と、
活性酸素種産生タンパク質をコードする遺伝子を恒常的プロモーターの制御下に含む第2核酸と
が導入されたiPS細胞である。
2種類の第1核酸、すなわち、レポーター遺伝子Aとレポーター遺伝子Aの発現を制御する心筋細胞の初期分化マーカー遺伝子のプロモーターとを含む第1核酸と、レポーター遺伝子Bとレポーター遺伝子Bの発現を制御する心筋細胞の後期分化マーカー遺伝子のプロモーターとを含む第1核酸と、
活性酸素種産生タンパク質をコードする遺伝子を恒常的プロモーターの制御下に含む第2核酸と
が導入されたiPS細胞である。
図3の左図において、細胞1は、分化を誘導しない条件下で培養されており、細胞1の全てがiPS細胞(未分化な細胞)であり、発光していない。
その後、図3の左図に示される細胞1を、心筋細胞への分化を誘導する条件下で培養を継続するとともに、発光レポータータンパク質の発現に起因する発光に係る発光画像を経時的に取得する。
図3の中央図に示されるとおり、多くの細胞1aは、心筋細胞への分化が誘導され、最初に、心筋細胞の初期分化マーカー遺伝子のプロモーターの活性が増大し、その後、心筋細胞の後期分化マーカー遺伝子のプロモーターの活性が増大する。これにより、細胞1aは、最初に、レポーター遺伝子Aの発現により発光レポータータンパク質Aに起因する発光が生じ、その後、レポーター遺伝子Bの発現により発光レポータータンパク質Bに起因する発光が生じる。
一方、図3の中央図において、細胞1bは、心筋細胞への分化が誘導されずiPS細胞(未分化な細胞)のままであり、心筋細胞の初期分化マーカー遺伝子のプロモーターの活性も心筋細胞の後期分化マーカー遺伝子のプロモーターの活性もなく、継続的に発光していない。
また、図3の中央図において、細胞1cは、最初に、心筋細胞の初期分化マーカー遺伝子のプロモーターの活性が増大するが、その後、心筋細胞の後期分化マーカー遺伝子のプロモーターの活性が増大しない。これにより、細胞1cは、最初に、レポーター遺伝子Aの発現により発光レポータータンパク質Aに起因する発光が生じるが、その後、レポーター遺伝子Bの発現により発光レポータータンパク質Bに起因する発光が生じない。
取得された発光画像に基づいて、「継続的に発光していない細胞1b」及び「最初に発光レポータータンパク質Aに起因する発光が生じるが、その後発光レポータータンパク質Bに起因する発光が生じない細胞1c」を不要細胞として決定する。あるいは、取得された発光画像に基づいて、「最初に発光レポータータンパク質Aに起因する発光が生じ、その後発光レポータータンパク質Bに起因する発光が生じる細胞1a」を目的細胞として選択し、目的細胞以外の細胞を不要細胞と決定する。
図3の中央図に示される細胞のうち不要細胞と決定された細胞1b及び1cに活性化光線を照射すると、不要細胞の細胞死が誘導される。図3の右図は、活性化光線の照射により死滅した不要細胞を培地から除去し、目的細胞である細胞1aが選別されたことを示す。
<2-2.具体例2>
「体細胞からiPS細胞を選別する方法」は、
発光レポータータンパク質をコードするレポーター遺伝子と、前記レポーター遺伝子と共に発現するように構成された、細胞のリプログラミングを誘導する初期化因子をコードするマーカー遺伝子と、前記レポーター遺伝子及び前記マーカー遺伝子の発現を制御する恒常的プロモーターとを含む1種類以上の第1核酸と、活性化光線を照射することによって活性酸素種を産生する活性酸素種産生タンパク質をコードする遺伝子を恒常的プロモーターの制御下に含む第2核酸とが導入され、必要に応じて、前記初期化因子とは異なる初期化因子をコードする遺伝子を含む第3核酸が導入された体細胞を培養することと(S1)、
前記細胞の培養の期間中に、前記発光レポータータンパク質の発現に起因する発光に係る前記細胞の発光画像を取得することと(S2)、
前記発光画像に基づいて、前記細胞のなかからiPS細胞以外の細胞を不要細胞と決定することと(S3)、
前記不要細胞に前記活性化光線を照射して前記不要細胞の細胞死を誘導することと(S4)
を含む。
「体細胞からiPS細胞を選別する方法」は、
発光レポータータンパク質をコードするレポーター遺伝子と、前記レポーター遺伝子と共に発現するように構成された、細胞のリプログラミングを誘導する初期化因子をコードするマーカー遺伝子と、前記レポーター遺伝子及び前記マーカー遺伝子の発現を制御する恒常的プロモーターとを含む1種類以上の第1核酸と、活性化光線を照射することによって活性酸素種を産生する活性酸素種産生タンパク質をコードする遺伝子を恒常的プロモーターの制御下に含む第2核酸とが導入され、必要に応じて、前記初期化因子とは異なる初期化因子をコードする遺伝子を含む第3核酸が導入された体細胞を培養することと(S1)、
前記細胞の培養の期間中に、前記発光レポータータンパク質の発現に起因する発光に係る前記細胞の発光画像を取得することと(S2)、
前記発光画像に基づいて、前記細胞のなかからiPS細胞以外の細胞を不要細胞と決定することと(S3)、
前記不要細胞に前記活性化光線を照射して前記不要細胞の細胞死を誘導することと(S4)
を含む。
<細胞の培養>
細胞の培養は、上述した「1-1.細胞の培養」の欄に記載した方法と同様の方法により行うことができる。
細胞の培養は、上述した「1-1.細胞の培養」の欄に記載した方法と同様の方法により行うことができる。
第1核酸、第2核酸、必要に応じて第3核酸を導入するために使用される「細胞」として体細胞を用いる。体細胞としては、任意の体細胞を使用してもよく、例えば、ヒト末梢血由来細胞を用いることができるが、これに限定されるものではない。
「第1核酸」は、図2Bに示されるとおり、発光レポータータンパク質をコードするレポーター遺伝子12と、レポーター遺伝子12と共に発現するように構成された、細胞のリプログラミングを誘導する初期化因子をコードするマーカー遺伝子22と、レポーター遺伝子12及びマーカー遺伝子22の発現を制御する恒常的プロモーター21とを含む。「レポーター遺伝子12」としては、上述した「レポーター遺伝子12」を用いることができる。「マーカー遺伝子22」としては、上述した「体細胞のリプログラミングに必要な初期化因子をコードする遺伝子」、例えば、Oct3/4、Klf4、Sox2、c-myc、Lin28、及びL-mycから選ばれる初期化因子をコードする遺伝子を用いることができる。「恒常的プロモーター21」としては、上述のとおり、例えばCAGプロモーターを用いることができる。
上述のとおり、「第1核酸」は、1種類が体細胞に導入されてもよいし、2種類以上が体細胞に挿入されてもよい。
また、1種類の「第1核酸」に、「マーカー遺伝子22」として、2種類以上の「体細胞のリプログラミングに必要な初期化因子をコードする遺伝子」が含まれていてもよい。1種類の「第1核酸」に、「マーカー遺伝子22」として、2種類以上の「体細胞のリプログラミングに必要な初期化因子をコードする遺伝子」が含まれる場合、2種類以上の「体細胞のリプログラミングに必要な初期化因子をコードする遺伝子」を、口蹄疫ウイルスの2A配列やIRES配列などを介してポリシストロニックに連結することが好ましい。
例えば、2種類の「第1核酸」として、
(1)恒常的プロモーターと、Oct3/4をコードするマーカー遺伝子と、赤色の発光をもたらすルシフェラーゼをコードするレポーター遺伝子とを含む第1核酸と、
(2)恒常的プロモーターと、Klf4をコードするマーカー遺伝子およびSox2をコードするマーカー遺伝子と、緑色の発光をもたらすルシフェラーゼをコードするレポーター遺伝子とを含む第1核酸
を使用することができる。
(1)恒常的プロモーターと、Oct3/4をコードするマーカー遺伝子と、赤色の発光をもたらすルシフェラーゼをコードするレポーター遺伝子とを含む第1核酸と、
(2)恒常的プロモーターと、Klf4をコードするマーカー遺伝子およびSox2をコードするマーカー遺伝子と、緑色の発光をもたらすルシフェラーゼをコードするレポーター遺伝子とを含む第1核酸
を使用することができる。
この場合、「第3核酸」として、「L-mycをコードする遺伝子およびLin28をコードする遺伝子を含む第3核酸」を使用してもよい。
なお、「第1核酸」が、体細胞のリプログラミングを誘導することが知られている初期化因子のセットに含まれる初期化因子をコードする全ての遺伝子を含む場合、「第3核酸」は省略することができる。言い換えれば、「第1核酸」に含まれる「体細胞のリプログラミングを誘導する初期化因子をコードする遺伝子」により、体細胞のリプログラミングを誘導することができない場合には、「第1核酸」と「第3核酸」の組み合わせにより、体細胞のリプログラミングを誘導することができる初期化因子のセットをつくる。
「第1核酸」と共に細胞に導入される「第2核酸」としては、上述した「活性酸素種産生タンパク質をコードする遺伝子を含む核酸」を用いることができる。
第1核酸と第2核酸と第3核酸とは、各々ベクターの状態で細胞に導入することが好ましい。ベクターは、エピソーマルベクターであることが好ましい。第1核酸と第2核酸とは、同一のベクターの状態で細胞に導入することが好ましく、同一のエピソーマルベクターの状態で導入することがより好ましい。遺伝子導入の操作は、既知の方法によって行うことができる。
なお、第1核酸、第2核酸、必要に応じて第3核酸を体細胞に導入することに加えて、「リプログラミング効率を高める追加の因子をコードする核酸」を体細胞に導入してもよい。「リプログラミング効率を高める追加の因子」として、ドミナントネガティブ変異を導入したマウスp53、EBNA1などが知られている。
第1核酸、第2核酸、必要に応じて第3核酸が導入された幹細胞は、公知の培養条件に従って培養することができる。
<発光画像の取得>
発光レポータータンパク質の発現に起因する発光に係る発光画像を取得する。発光画像の取得は、上述した「1-2.発光画像の取得」に記載した方法と同様の方法により行うことができる。好ましくは、発光画像は経時的に取得される。
発光レポータータンパク質の発現に起因する発光に係る発光画像を取得する。発光画像の取得は、上述した「1-2.発光画像の取得」に記載した方法と同様の方法により行うことができる。好ましくは、発光画像は経時的に取得される。
<不要細胞の決定>
発光画像に基づいて、培養細胞のなかから不要細胞を決定する。不要細胞の決定は、上述した「1-3.不要細胞の決定」の欄に記載した方法と同様の方法により行うことができる。具体的には、不要細胞の決定は、iPS細胞がリプログラミングの初期段階で示す初期化因子の発現プロファイルと同じ発現プロファイルを示す細胞を選択し、選択されなかった細胞を不要細胞として決定することにより行うことができる。
発光画像に基づいて、培養細胞のなかから不要細胞を決定する。不要細胞の決定は、上述した「1-3.不要細胞の決定」の欄に記載した方法と同様の方法により行うことができる。具体的には、不要細胞の決定は、iPS細胞がリプログラミングの初期段階で示す初期化因子の発現プロファイルと同じ発現プロファイルを示す細胞を選択し、選択されなかった細胞を不要細胞として決定することにより行うことができる。
<細胞死の誘導>
不要細胞に活性化光線を照射して不要細胞の細胞死を誘導する。細胞死の誘導は、上述した「1-4.細胞死の誘導」に記載した方法と同様の方法により行うことができる。
不要細胞に活性化光線を照射して不要細胞の細胞死を誘導する。細胞死の誘導は、上述した「1-4.細胞死の誘導」に記載した方法と同様の方法により行うことができる。
以上のようにして、体細胞からiPS細胞を選別することができる。
<3.純化された細胞集団の製造方法>
上述した「細胞の選別方法」において、決定された不要細胞に活性化光線を照射して細胞死を誘導させると、細胞を純化させることができる。好ましくは、上述した「細胞の選別方法」において、決定された不要細胞の全てに対して活性化光線を照射して細胞死を誘導させると、細胞を高純度に純化させることができる。すなわち、別の側面によると、本発明は、上述した「細胞の選別方法」を行って細胞を純化させることを含む、純化された細胞集団の製造方法を提供することができる。
上述した「細胞の選別方法」において、決定された不要細胞に活性化光線を照射して細胞死を誘導させると、細胞を純化させることができる。好ましくは、上述した「細胞の選別方法」において、決定された不要細胞の全てに対して活性化光線を照射して細胞死を誘導させると、細胞を高純度に純化させることができる。すなわち、別の側面によると、本発明は、上述した「細胞の選別方法」を行って細胞を純化させることを含む、純化された細胞集団の製造方法を提供することができる。
<4.発光イメージングシステム>
別の側面によると、本発明は、上述した「細胞の選別方法」を行うための発光イメージングシステムを提供することができる。
別の側面によると、本発明は、上述した「細胞の選別方法」を行うための発光イメージングシステムを提供することができる。
本発明の一実施形態に係る発光イメージングシステム100は、
発光レポータータンパク質をコードするレポーター遺伝子を含み、かつ細胞の状態に応じて前記発光レポータータンパク質の発現に変化を生じるように各々が構成された1種類以上の第1核酸(以下、第1核酸ともいう)と、活性化光線を照射することによって活性酸素種を産生する活性酸素種産生タンパク質をコードする遺伝子を含む第2核酸(以下、第2核酸ともいう)とが導入された細胞を培養する培養手段110と、
前記発光レポータータンパク質の発現に起因する発光に係る、前記細胞の発光画像を取得する発光画像取得手段120と、
前記発光画像に基づいて、前記細胞のなかから不要細胞を決定する決定手段130と、
前記不要細胞の細胞死を誘導するために、前記不要細胞に前記活性化光線を照射する光照射部140と
を含む。
発光レポータータンパク質をコードするレポーター遺伝子を含み、かつ細胞の状態に応じて前記発光レポータータンパク質の発現に変化を生じるように各々が構成された1種類以上の第1核酸(以下、第1核酸ともいう)と、活性化光線を照射することによって活性酸素種を産生する活性酸素種産生タンパク質をコードする遺伝子を含む第2核酸(以下、第2核酸ともいう)とが導入された細胞を培養する培養手段110と、
前記発光レポータータンパク質の発現に起因する発光に係る、前記細胞の発光画像を取得する発光画像取得手段120と、
前記発光画像に基づいて、前記細胞のなかから不要細胞を決定する決定手段130と、
前記不要細胞の細胞死を誘導するために、前記不要細胞に前記活性化光線を照射する光照射部140と
を含む。
図4は、上述の発光イメージングシステムの一例を模式的に示す。以下、図4を参照しながら、発光イメージングシステムを説明する。
<4-1.培養手段>
図4において、培養手段110は、培養器111と観察用ステージ112とを備えている。
図4において、培養手段110は、培養器111と観察用ステージ112とを備えている。
培養器111は、第1核酸と第2核酸とが導入された細胞を培養する装置である。培養器は、例えば、細胞を収容する培養チャンバーと、培養条件(温度、湿度、およびガス濃度など)を調整するための手段とを有し、長期間の細胞培養を可能にする。
観察用ステージ112は、培養器111を載置し、下方からの細胞の観察を可能にするための、開口部又は観察窓を底面に備える。
<4-2.発光画像取得手段>
図4において、発光画像取得手段120は、対物レンズ121と、発光分光フィルター122と、結像レンズ123と、CCDカメラ124とを備えている。発光画像取得手段120は、発光レポータータンパク質の発現に起因する発光に係る、細胞の発光画像を取得する。
図4において、発光画像取得手段120は、対物レンズ121と、発光分光フィルター122と、結像レンズ123と、CCDカメラ124とを備えている。発光画像取得手段120は、発光レポータータンパク質の発現に起因する発光に係る、細胞の発光画像を取得する。
細胞から放出された光は、対物レンズ121を通過し、発光分光フィルター122に至る。発光分光フィルター122は、後述する光照射部140から照射される活性化光線を遮断し、細胞から放出された光のみをCCDカメラ124へ向けて通過させる。発光分光フィルター122を通過した光は、結像レンズ123を通過し、結像レンズ123を透過した光をCCDカメラ124が検出し、発光画像が取得される。CCDカメラ124は、発光画像のデータを後述する決定手段130に送信する。
なお、発光画像取得手段120は、結像レンズ123とCCDカメラ124との間にバンドパスフィルターを更に備えていてもよい。バンドパスフィルターは、特定の波長域の光のみを通過させるため、細胞が2種類以上の第1核酸を含み、2種類以上の発光レポータータンパク質に起因する発光が生じる場合に、2種類以上の発光を識別して検出することを可能にする。あるいは、バンドパスフィルターの代わりに、発光画像取得手段120は、発光分光フィルター122と結像レンズ123との間にダイクロイックミラーを更に備えていてもよい。ダイクロイックミラーは、細胞から放出された光を波長別に分けるため、2種類以上の発光を識別して検出することを可能にする。
<4-3.決定手段>
決定手段は、発光画像に基づきコロニー全体またはコロニー中の個々の細胞における発光量を算出して数値またはグラフなどの表示形式に変換する画像処理部と、発光画像と変換された発光量とを表示する表示手段とを備えている。具体的には、図4において、決定手段130は、パーソナルコンピュータ131とディスプレイ(図示せず)とを備えている。決定手段130は、発光画像に基づいて、細胞のなかから不要細胞を決定する。
決定手段は、発光画像に基づきコロニー全体またはコロニー中の個々の細胞における発光量を算出して数値またはグラフなどの表示形式に変換する画像処理部と、発光画像と変換された発光量とを表示する表示手段とを備えている。具体的には、図4において、決定手段130は、パーソナルコンピュータ131とディスプレイ(図示せず)とを備えている。決定手段130は、発光画像に基づいて、細胞のなかから不要細胞を決定する。
パーソナルコンピュータ131は、ソフトウェアを備えている。パーソナルコンピュータ131は、CCDカメラ124によって撮像された発光画像のデータを受信する。パーソナルコンピュータ131は、例えば、ソフトウェアを用いて、受信した発光画像の解析を行う。解析は、例えば発光強度の定量である。
パーソナルコンピュータ131は、解析の結果及び発光画像に基づいて、不要細胞を決定することができる。パーソナルコンピュータ131は、例えば解析の結果及び発光画像をディスプレイに出力することができる。
<4-4.光照射部>
図4において、光照射部140は、光源141、分光フィルター142、光ファイバー143、コンデンサーレンズ144及びシャッター145を備えている。光照射部140は、決定手段130で決定した不要細胞の細胞死を誘導するために、不要細胞に活性化光線を照射する。
図4において、光照射部140は、光源141、分光フィルター142、光ファイバー143、コンデンサーレンズ144及びシャッター145を備えている。光照射部140は、決定手段130で決定した不要細胞の細胞死を誘導するために、不要細胞に活性化光線を照射する。
光源141から発せられた光は、分光フィルター142により、複数の異なる波長域の光線に分離される。分離された光線のうち活性化光線を、光ファイバー143およびコンデンサーレンズ144を通して不要細胞のみに照射する。シャッター145は、光ファイバー143から照射される活性化光線を透過または遮断する。不要細胞に活性化光線が照射されると、不要細胞内の活性酸素種産生タンパク質が活性化し、不要細胞の細胞死が誘導される。
なお、出力された発光画像及び解析の結果に基づいて不要細胞を決定し、光照射部を指定してもよい。あるいは、発光イメージングシステム100は、発光画像上で不要細胞のコロニーを指定することで、光照射部を、指定したコロニーに照射させるための指定部を更に備えていてもよい。
以上説明したように、一実施形態に係る発光イメージングシステムによると、細胞内の発光レポータータンパク質に起因する発光に基づいて、簡便に不要細胞と目的細胞とを選別することができる。
以下に、本発明の実施例を記載する。
本実施例では、マウスES細胞から分化細胞を誘導し、分化細胞を選別した。本実施例では、未分化マーカーであるNanog遺伝子のプロモーター領域とその下流に位置するルシフェラーゼ遺伝子とを含む第1核酸と、活性酸素種産生タンパク質であるKillerRedをコードする遺伝子を含む第2核酸とが導入されたマウスES細胞を使用した。
<1.方法>
(1-1.細胞の作製)
Nanog遺伝子のプロモーター領域は、既知の文献(T Kuroda et al., Molecular and Cellular Biology 2005 vol.25, No.6, p2475-2485)を参考にクローニングした。具体的には、マウス由来のゲノムDNAを鋳型とし、以下のプライマーを使用した。
forward primer: CTACTCGAGATCGCCAGGGTCTGGA (配列番号1)
reverse primer: CTACTCGAGCGCAGCCTTCCCACAGAAA (配列番号2)。
(1-1.細胞の作製)
Nanog遺伝子のプロモーター領域は、既知の文献(T Kuroda et al., Molecular and Cellular Biology 2005 vol.25, No.6, p2475-2485)を参考にクローニングした。具体的には、マウス由来のゲノムDNAを鋳型とし、以下のプライマーを使用した。
forward primer: CTACTCGAGATCGCCAGGGTCTGGA (配列番号1)
reverse primer: CTACTCGAGCGCAGCCTTCCCACAGAAA (配列番号2)。
一方、ネオマイシン耐性pGL4ベクター(Promega)に含まれるルシフェラーゼ遺伝子に対応する核酸断片を、EmeraldLuc(ELuc)(東洋紡株式会社)のルシフェラーゼ遺伝子の断片に置き換えた。得られたベクターに、上述のようにクローニングしたNanog遺伝子のプロモーター領域に対応する核酸断片を挿入した。このようにして、Nanog遺伝子のプロモーター領域とその下流に位置するルシフェラーゼ遺伝子とを含むベクターを調製した。このベクターを、以下「pNanog-ELuc」と呼ぶ。
pNanog-ELucを、マウスES細胞にトランスフェクションするために、まず、マウスES細胞をフィーダー細胞とともに培養した。具体的には、35mm径のプラスティックディッシュを0.1%ゼラチンでコーティングし、PBSにて3回洗浄した。ゼラチンでコーティングされたディッシュに、フィーダー細胞を播種し、一晩培養を行った。フィーダー細胞として、マイトマイシンC処理で分裂を停止させたMEF細胞(mouse embryonic fibro-blast マウス胎児線維芽細胞)を使用した。培地には、DMEM(フェノールレッド、10%FCS入り)を用いた。翌日、マウスES細胞(BRC6株、理研BRC)を35mmディッシュ内のフィーダー細胞上に撒き、一晩培養した。
その後、pNanog-ELucを、マウスES細胞にトランスフェクションした。トランスフェクションは、Amaxa Nucleofector(和光純薬工業株式会社)を用いて、Nucleofection法により行った。培地にG418を適量添加して、安定的に遺伝子が導入された細胞のみを、後述するシステムで取得した発光画像に基づき選択した。
選択されたNanog-ELucを恒常的に発現するマウスES細胞に対して、pKillerRed Cベクター(Evrogen)を、Amaxa Nucleofectorを用いて、Nucleofection法により導入した。「pKillerRed Cベクター」は、サイトメガロウィルス(CMV)プロモーターの制御下で活性酸素種産生タンパク質を高発現させるためのベクターである。
その結果、Nanog-ELucを恒常的に発現し、pKillerRed Cベクターを一過性に導入されたマウスES細胞が得られた。
(1-2.細胞の培養)
Nanog-ELucを恒常的に発現し、pKillerRed Cベクターを一過性に導入されたマウスES細胞を、以下の培地で一晩培養した。
血清代替液である15%KSR(Knockout Serum Replacement(Gibco))および分化抑制因子であるLIF(leukemia inhibitory factor)が添加されたDMEM培地
その後、細胞を2つのグループに分け、一方のグループを、LIFおよびHEPESが添加されたDMEM培地(15%KSR、フェノールレッド抜き)に移し、他方のグループを、HEPESが添加されたDMEM培地(15%KSR、フェノールレッド抜き、LIF非添加)に移した。LIFとしては、製品名LIF Human, recombinant, Culture Supernatant(和光純薬工業株式会社)を規定濃度で使用した。
Nanog-ELucを恒常的に発現し、pKillerRed Cベクターを一過性に導入されたマウスES細胞を、以下の培地で一晩培養した。
血清代替液である15%KSR(Knockout Serum Replacement(Gibco))および分化抑制因子であるLIF(leukemia inhibitory factor)が添加されたDMEM培地
その後、細胞を2つのグループに分け、一方のグループを、LIFおよびHEPESが添加されたDMEM培地(15%KSR、フェノールレッド抜き)に移し、他方のグループを、HEPESが添加されたDMEM培地(15%KSR、フェノールレッド抜き、LIF非添加)に移した。LIFとしては、製品名LIF Human, recombinant, Culture Supernatant(和光純薬工業株式会社)を規定濃度で使用した。
(1-3.発光画像の取得)
マウスES細胞が培養されている培地に最終濃度1mMのD-ルシフェリン(プロメガ社)を添加した。その後、マウスES細胞と培地を収容する35mmディッシュを発光イメージングシステムLV200(オリンパス株式会社)のインキュベータ内に静置し、12分の露出時間で発光画像の撮像を行った。
マウスES細胞が培養されている培地に最終濃度1mMのD-ルシフェリン(プロメガ社)を添加した。その後、マウスES細胞と培地を収容する35mmディッシュを発光イメージングシステムLV200(オリンパス株式会社)のインキュベータ内に静置し、12分の露出時間で発光画像の撮像を行った。
対物レンズは20倍のものを使用し、binningは1×1とし、CCDカメラはImagEM(浜松ホトニクス株式会社製)を用いた。撮像は、15分間隔で経時的に行った。
LIF存在下で培養した細胞およびLIF非存在下で培養した細胞のそれぞれについて発光画像を取得した。取得された発光画像は、画像解析ソフトウェアAQUACOSMOS(浜松ホトニクス株式会社)を用いて、数値データを解析し、グラフ化した。具体的には、発光画像から、コロニーを含むRegion of interest(興味領域、ROI)を設定し、発光強度の数値化を行った。
(1-4.不要細胞の決定および細胞死の誘導)
以下、LIF存在下(分化抑制条件下)で培養した細胞の発光画像を「発光画像A」と呼び、LIF非存在下(分化誘導条件下)で培養した細胞の発光画像を「発光画像B」と呼ぶ。発光画像Aから7個の興味領域(ROI 1~7)を設定し、発光画像Bから7個の興味領域(ROI 8~14)を設定した。各興味領域の発光強度を数値化した。
以下、LIF存在下(分化抑制条件下)で培養した細胞の発光画像を「発光画像A」と呼び、LIF非存在下(分化誘導条件下)で培養した細胞の発光画像を「発光画像B」と呼ぶ。発光画像Aから7個の興味領域(ROI 1~7)を設定し、発光画像Bから7個の興味領域(ROI 8~14)を設定した。各興味領域の発光強度を数値化した。
発光画像Bにおいて、ROI 8、10、11のコロニーの発光強度(Nanog遺伝子の発現量)が他のコロニー(ROI 7、9、12~14)と比較して優位に高く、発光画像Aのコロニー(ROI 1~7)と同等の発光強度を有していた。この結果より、ROI 8、10、11のコロニーは未分化状態にあると判定し、これらのコロニーに対して活性化光線の照射を行った。具体的には、発光イメージングシステムLV200の透過フィルターホイールにBP515-560HQフィルターを取り付け、515-560nmの緑色光を7W/cm2の出力で10分間照射した。その結果、30分経過後に緑色光を照射したコロニーが選択的に死滅した。
(2.結果および考察)
以上示したように、Nanog遺伝子のプロモーター領域とその下流に位置するルシフェラーゼ遺伝子とを含む第1核酸と、活性酸素種産生タンパク質をコードする遺伝子を含む第2核酸とが導入されたES細胞から分化細胞を誘導し、分化しなかった細胞を発光イメージングにより決定し、その細胞に活性化光線を照射することで、分化細胞と未分化細胞とが混在している細胞群の中から未分化細胞のみを選択的に死滅させることができた。本実施例に係る方法は、未分化細胞に細胞死を引き起こして分化細胞を選別するので腫瘍形成性を有している細胞が残存するのを防ぐことができる。
以上示したように、Nanog遺伝子のプロモーター領域とその下流に位置するルシフェラーゼ遺伝子とを含む第1核酸と、活性酸素種産生タンパク質をコードする遺伝子を含む第2核酸とが導入されたES細胞から分化細胞を誘導し、分化しなかった細胞を発光イメージングにより決定し、その細胞に活性化光線を照射することで、分化細胞と未分化細胞とが混在している細胞群の中から未分化細胞のみを選択的に死滅させることができた。本実施例に係る方法は、未分化細胞に細胞死を引き起こして分化細胞を選別するので腫瘍形成性を有している細胞が残存するのを防ぐことができる。
以上より、本発明に係る細胞の選別方法によると、細胞に低侵襲な方法で、目的細胞を容易に選別できることが明らかになった。
上記では多能性細胞としてES細胞を用いた例を示したが、ES細胞の代わりにiPS細胞を用いることもできる。実際、iPS細胞にNanog遺伝子のプロモーター領域およびルシフェラーゼ遺伝子を導入して発光イメージングによりモニタリングできることは本発明者により実証済みである。また、本実施例では、KillerRedを使用したが、KillerRed以外の市販の活性酸素種産生タンパク質を用いることができる。
上述したように、生物発光画像は、レポーター遺伝子が細胞に導入されたことの確認と、細胞又はコロニーが生存していることの確認と、細胞又はコロニーが多能性を維持していることの確認とに利用することができた。
また、本実施例では、分化細胞を選別したが、分化細胞と未分化細胞(即ち多能性を維持している細胞)との中から、多能性を維持している細胞を選別することもできる。多能性を維持しているコロニーだけを生存させることで、不要なコロニーが増殖し続けることによる培養スペースの無駄を無くすことができ、必要なコロニーのための細胞スペースを効率よく確保できるので、品質の高い多能性細胞からなるコロニーを高い効率で得ることができる。更に、品質の高い多能性細胞からなるコロニーのみを継続して培養すると、多能性細胞の生産効率を向上することもできる。
Claims (26)
- 発光レポータータンパク質をコードするレポーター遺伝子を含み、かつ細胞の状態に応じて前記発光レポータータンパク質の発現に変化を生じるように各々が構成された1種類以上の第1核酸と、活性化光線を照射することによって活性酸素種を産生する活性酸素種産生タンパク質をコードする遺伝子を含む第2核酸とが導入された培養細胞のなかから、前記発光レポータータンパク質の発現に起因する発光に係る前記培養細胞の発光画像に基づいて、不要細胞を決定することと、
前記不要細胞に前記活性化光線を照射して前記不要細胞の細胞死を誘導することと
を含む細胞の選別方法。 - 前記第1核酸は、
前記レポーター遺伝子と、
細胞の状態に応じて前記レポーター遺伝子の発現を制御するプロモーターと
を含む請求項1に記載の方法。 - 前記プロモーターは、細胞の分化状態に応じて前記レポーター遺伝子の発現を制御する、分化状態検出マーカー遺伝子のプロモーターである請求項2に記載の方法。
- 前記第1核酸は、
前記レポーター遺伝子と、
前記レポーター遺伝子と共に発現するように構成され、細胞の状態に応じて発現が変化するマーカータンパク質をコードするマーカー遺伝子と
を含む請求項1に記載の方法。 - 前記第1核酸は、
前記レポーター遺伝子と、
前記レポーター遺伝子と共に発現するように構成された、分化状態検出マーカータンパク質をコードする分化状態検出マーカー遺伝子と、
細胞の分化状態に応じて前記分化状態検出マーカー遺伝子の発現を制御するプロモーターと
を含む請求項4に記載の方法。 - 前記第1核酸は、
前記レポーター遺伝子と、
前記レポーター遺伝子と共に発現するように構成された、細胞のリプログラミングを誘導する初期化因子又は細胞の不死化を誘導する因子をコードするマーカー遺伝子と、
前記レポーター遺伝子及び前記マーカー遺伝子の発現を制御する恒常的プロモーターと
を含む請求項4に記載の方法。 - 前記方法は、前記培養細胞が、培養の期間中に、前記細胞の分化を誘導する条件下に置かれることを含む請求項3又は5に記載の方法。
- 前記不要細胞は未分化の細胞である請求項3、5及び7の何れか1項に記載の方法。
- 前記分化状態検出マーカー遺伝子は、
(1)分化マーカー遺伝子:
Gata-4、αサルコメアアクチン、αサルコメアアクチニン、Slow myosin heavy chain、トロポニンT-C、Myl-2、L7/Pcp2、Otp、Emx1、Six3、Otx2、Brain factor 1、Rx、Irx3及びCrx、並びに
(2)未分化マーカー遺伝子:
Nanog、Oct3/4、Sox2、TRA1-60及びTRA1-81
からなる群より選択される少なくとも1つの遺伝子である請求項3、5、7及び8の何れか1項に記載の方法。 - 前記1種類以上の第1核酸は2種類以上であり、
2種類以上の前記第1核酸に含まれる前記プロモーターまたは前記マーカー遺伝子は互いに異なり、
2種類以上の前記第1核酸に含まれる前記レポーター遺伝子は互いに異なり、
前記レポーター遺伝子の発現により産生される前記発光レポータータンパク質のそれぞれに起因する前記発光は、他の何れの発光レポータータンパク質に起因する発光とも互いに識別可能に検出される発光特性を有する、
請求項2~9の何れか1項に記載の方法。 - 前記培養細胞は、培養の開始時に幹細胞である請求項1~10の何れか1項に記載の方法。
- 前記培養細胞は、培養の開始時にiPS細胞である請求項1~11の何れか1項に記載の方法。
- 前記iPS細胞は、前記第1核酸および前記第2核酸に加えて、体細胞のリプログラミングに必要な初期化因子をコードする遺伝子を含む第3核酸を体細胞に導入することにより構築された細胞である請求項12に記載の方法。
- 前記発光レポータータンパク質は生物発光レポータータンパク質である請求項1~13の何れか1項に記載の方法。
- 前記発光レポータータンパク質はルシフェラーゼである請求項1~14の何れか1項に記載の方法。
- 前記発光画像を取得することは、経時的に繰り返し実施される請求項1~15の何れか1項に記載の方法。
- 前記不要細胞は、経時的に取得された複数の前記発光画像に基づいて決定される請求項16に記載の方法。
- 前記発光画像に基づいて前記発光の発光強度を定量することを更に含み、
前記不要細胞を決定することは、前記発光強度に基づいて行われる
請求項1~17の何れか1項に記載の方法。 - 前記活性化光線は、前記発光レポータータンパク質の発現に起因する発光の波長域と異なる波長域を有する請求項1~18の何れか1項に記載の方法。
- 前記活性化光線は可視光である請求項1~19の何れか1項に記載の方法。
- 前記活性化光線の照射が、不要細胞の全てに対して行われる請求項1~20の何れか1項に記載の方法。
- 前記第1核酸と前記第2核酸とはエピソーマルベクターの形態で前記細胞に導入される請求項1~21の何れか1項に記載の方法。
- 前記第1核酸と前記第2核酸とは同一のベクターの形態で前記細胞に導入される請求項1~22の何れか1項に記載の方法。
- 請求項1~23の何れか1項に記載の方法を行って細胞を純化させることを含む、純化された細胞集団の製造方法。
- 発光レポータータンパク質をコードするレポーター遺伝子を含み、かつ細胞の状態に応じて前記発光レポータータンパク質の発現に変化を生じるように各々が構成された1種類以上の第1核酸と、活性化光線を照射することによって活性酸素種を産生する活性酸素種産生タンパク質をコードする遺伝子を含む第2核酸とが導入された細胞を培養する培養手段と、
前記発光レポータータンパク質の発現に起因する発光に係る、前記細胞の発光画像を取得する発光画像取得手段と、
前記発光画像に基づいて、前記細胞のなかから不要細胞を決定する決定手段と、
前記不要細胞の細胞死を誘導するために、前記不要細胞に前記活性化光線を照射する光照射部と
を含む発光イメージングシステム。 - 前記決定手段は、前記発光画像に基づいて前記発光の発光強度を定量することにより、前記細胞のなかから不要細胞を決定する決定手段である請求項25に記載の発光イメージングシステム。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
PCT/JP2016/088756 WO2018122932A1 (ja) | 2016-12-26 | 2016-12-26 | 細胞の選別方法、純化された細胞集団の製造方法、及び発光イメージングシステム |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
PCT/JP2016/088756 WO2018122932A1 (ja) | 2016-12-26 | 2016-12-26 | 細胞の選別方法、純化された細胞集団の製造方法、及び発光イメージングシステム |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
WO2018122932A1 true WO2018122932A1 (ja) | 2018-07-05 |
Family
ID=62707088
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
PCT/JP2016/088756 WO2018122932A1 (ja) | 2016-12-26 | 2016-12-26 | 細胞の選別方法、純化された細胞集団の製造方法、及び発光イメージングシステム |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
WO (1) | WO2018122932A1 (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN109191434A (zh) * | 2018-08-13 | 2019-01-11 | 阜阳师范学院 | 一种细胞分化中的图像检测系统及检测方法 |
WO2020179071A1 (ja) * | 2019-03-07 | 2020-09-10 | オリンパス株式会社 | iPS細胞の選定方法、及びiPS細胞の作製方法 |
Citations (6)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2013503648A (ja) * | 2009-09-09 | 2013-02-04 | ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ | 幹細胞をイメージングするための組成物及び方法 |
JP2013240308A (ja) * | 2012-05-23 | 2013-12-05 | Kagoshima Univ | ヒトES/iPS細胞における遺伝子発現方法 |
JP2014176364A (ja) * | 2013-03-15 | 2014-09-25 | Olympus Corp | 幹細胞の解析方法 |
WO2015107888A1 (ja) * | 2014-01-14 | 2015-07-23 | 国立大学法人鹿児島大学 | 幹細胞における腫瘍化原因細胞の新たな標識法と治療法 |
WO2016114341A1 (ja) * | 2015-01-14 | 2016-07-21 | 国立大学法人京都大学 | 多能性細胞識別化合物 |
JP2016216387A (ja) * | 2015-05-19 | 2016-12-22 | 公立大学法人名古屋市立大学 | 未分化細胞のアポトーシス誘導剤 |
-
2016
- 2016-12-26 WO PCT/JP2016/088756 patent/WO2018122932A1/ja active Application Filing
Patent Citations (6)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2013503648A (ja) * | 2009-09-09 | 2013-02-04 | ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ | 幹細胞をイメージングするための組成物及び方法 |
JP2013240308A (ja) * | 2012-05-23 | 2013-12-05 | Kagoshima Univ | ヒトES/iPS細胞における遺伝子発現方法 |
JP2014176364A (ja) * | 2013-03-15 | 2014-09-25 | Olympus Corp | 幹細胞の解析方法 |
WO2015107888A1 (ja) * | 2014-01-14 | 2015-07-23 | 国立大学法人鹿児島大学 | 幹細胞における腫瘍化原因細胞の新たな標識法と治療法 |
WO2016114341A1 (ja) * | 2015-01-14 | 2016-07-21 | 国立大学法人京都大学 | 多能性細胞識別化合物 |
JP2016216387A (ja) * | 2015-05-19 | 2016-12-22 | 公立大学法人名古屋市立大学 | 未分化細胞のアポトーシス誘導剤 |
Non-Patent Citations (1)
Title |
---|
CHO, SEUNG-JU ET AL.: "Repair of Ischemic Injury by Pluripotent Stem Cell Based Cell Therapy without Teratoma through Selective Photosensitivity", STEM CELL REPORTS, vol. 5, 12 November 2015 (2015-11-12), pages 1067 - 1080, XP055510569 * |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN109191434A (zh) * | 2018-08-13 | 2019-01-11 | 阜阳师范学院 | 一种细胞分化中的图像检测系统及检测方法 |
WO2020179071A1 (ja) * | 2019-03-07 | 2020-09-10 | オリンパス株式会社 | iPS細胞の選定方法、及びiPS細胞の作製方法 |
US12065675B2 (en) | 2019-03-07 | 2024-08-20 | Olympus Corporation | Selection method of iPS cell, preparation method of iPS cell, and control device |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP7348888B2 (ja) | 化合物の光遺伝学的分析 | |
Shen et al. | Reduced mitochondrial fusion and Huntingtin levels contribute to impaired dendritic maturation and behavioral deficits in Fmr1-mutant mice | |
JP5860805B2 (ja) | 幹細胞の分化状態をモニタリングする方法 | |
US10590492B2 (en) | Method for determining desired cell type using expression of miRNA as indicator | |
WO2018122932A1 (ja) | 細胞の選別方法、純化された細胞集団の製造方法、及び発光イメージングシステム | |
US20190352727A1 (en) | METHOD FOR ANALYZING SOMATIC CELL REPROGRAMMING, AND METHOD FOR SETTING UP QUALITY EVALUATION CRITERIA FOR iPS CELL USING THE METHOD | |
US20200158719A1 (en) | Method of specifying cell, method of producing cell population and cell specifying system | |
Karasev et al. | Nuclear localization signals for optimization of genetically encoded tools in neurons | |
JP2014176364A (ja) | 幹細胞の解析方法 | |
JP2014014352A (ja) | 幹細胞の状態を同定する方法 | |
JP7321247B2 (ja) | iPS細胞の選定方法、iPS細胞の作製方法、及び制御装置 | |
Wiegert et al. | Stimulating neurons with heterologously expressed light-gated ion channels | |
JP5717951B2 (ja) | 発光観察システム | |
Tan | Optimization of HiPSCs Differentiating Into PPs and Mechanism Study of Gene Expression Noise | |
Frazier | Dnaconda’s Recommendation |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
121 | Ep: the epo has been informed by wipo that ep was designated in this application |
Ref document number: 16925705 Country of ref document: EP Kind code of ref document: A1 |
|
NENP | Non-entry into the national phase |
Ref country code: DE |
|
122 | Ep: pct application non-entry in european phase |
Ref document number: 16925705 Country of ref document: EP Kind code of ref document: A1 |
|
NENP | Non-entry into the national phase |
Ref country code: JP |