WO2017217453A1 - セルラーゼ - Google Patents

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真宏 渡邊
星野 保
寛朗 深田
大貴 矢萩
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    • C13K1/02Glucose; Glucose-containing syrups obtained by saccharification of cellulosic materials

Abstract

セルロース系基質への結合能が高いセルラーゼを提供する。キシラナーゼ(xylanase)の糖質結合モジュール(carbohydrate binding module;CBM)を有するセルラーゼ。

Description

セルラーゼ
 本発明は、新規セルラーゼおよびその利用に関する。
 従来、発酵法によるL-アミノ酸等の目的物質の工業生産においては、炭素源として、グルコース、フラクトース、スクロース、廃糖蜜、澱粉加水分解物等の、植物由来の可食資源から得られた成分が使用されてきた。しかしながら、近年の人口増や開発途上国の生活レベル向上により、これらの食糧と競合する成分ではなく、植物由来の非可食バイオマス原料の利用について実用化検討が進められている。
 このような植物由来の非可食バイオマス原料は、セルロース、ヘミセルロース、リグニン等によって構成されているが、これらの内、セルロースおよびヘミセルロースは、熱や酸などを用いる前処理行程、およびセルラーゼやキシラナーゼ等の糖化酵素による糖化処理行程等を経て、5炭糖および6炭糖へと変換され、発酵の原料として用いることができる(特許文献1、2)。
 植物由来の非可食バイオマス原料の酵素糖化を工業レベルで実用化するためには、酵素コストの低減が課題となる。酵素コストの低減は、例えば、糖化酵素の使用量を低減することにより達成できる。糖化酵素の使用量を低減する方法としては、糖化酵素を植物バイオマス等のセルロース系基質に結合させて回収し再利用する方法(特許文献3、4)等が知られている。
 セルラーゼやキシラナーゼ等の糖化酵素は、糖質結合モジュール(carbohydrate binding module;CBM)を利用して植物バイオマス等のセルロース系基質へと結合し得る。セルラーゼのCBMを改変すること(例えば、CBMへの変異導入やCBMの付加)により、セルラーゼの活性や基質特異性を向上させた例が報告されている(非特許文献1~4)。
特表平9-507386号公報 特表平11-506934号公報 特開2010-098951号公報 WO2016/043281
Strobel KL et al., Engineering Cel7A Carbohydrate Binding Module and Linker for Reduced Lignin Inhibition. Biotechnol Bioeng. 2015 Nov 30. doi: 10.1002/bit.25889. Reyes-Ortiz V et al., Addition of a carbohydrate-binding module enhances cellulase penetration into cellulose substrates. Biotechnol Biofuels. 2013 Jul 3;6(1):93. doi: 10.1186/1754-6834-6-93. Walker JA et al., Multifunctional cellulase catalysis targeted by fusion to different carbohydrate-binding modules. Biotechnol Biofuels. 2015 Dec 21;8:220. doi: 10.1186/s13068-015-0402-0. Tang Z et al., Improving endoglucanase activity by adding the carbohydrate-binding module from Corticium rolfsii. J Microbiol Biotechnol. 2014 Apr;24(4):440-6.
 本発明は、セルロース系基質への結合能が高いセルラーゼを提供することを目的とする。
 本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、β-グルコシダーゼのCBMを含む領域をキシラナーゼのCBMを含む領域で置換することにより、β-グルコシダーゼのセルロース系基質に対する結合能を向上させることができることを見出し、本発明を完成させた。
 すなわち、本発明は以下の通り例示できる。
[1]
 キシラナーゼの糖質結合モジュールを有し、且つ、セルラーゼ活性を有するタンパク質。
[2]
 キシラナーゼの糖質結合モジュールとセルラーゼの触媒ドメインを有するタンパク質である、前記タンパク質。
[3]
 前記糖質結合モジュールが、糖質結合モジュールのファミリー1に分類される糖質結合モジュールである、前記タンパク質。
[4]
 前記糖質結合モジュールが、Xyl10Aの糖質結合モジュールである、前記タンパク質。
[5]
 前記糖質結合モジュールが、下記(a)、(b)、または(c)に記載のアミノ酸配列を含む、前記タンパク質:
(a)配列番号16の375位~403位のアミノ酸配列;
(b)配列番号16の375位~403位のアミノ酸配列において、1~5個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、および/または付加を含み、セルロース系基質に対する結合能を有するアミノ酸配列;
(c)配列番号16の375位~403位のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有し、セルロース系基質に対する結合能を有するアミノ酸配列。
[6]
 前記触媒ドメインが、β-グルコシダーゼの触媒ドメインである、前記タンパク質。
[7]
 前記触媒ドメインが、グリコシドハイドロラーゼのファミリー3に分類されるセルラーゼの触媒ドメインである、前記タンパク質。
[8]
 前記触媒ドメインが、Bgl3Aの触媒ドメインである、前記タンパク質。
[9]
 前記触媒ドメインが、下記(a)、(b)、または(c)に記載のアミノ酸配列を含む、前記タンパク質:
(a)配列番号11の25位~601位のアミノ酸配列;
(b)配列番号11の25位~601位のアミノ酸配列において、1~10個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、および/または付加を含み、セルラーゼ活性を有するアミノ酸配列;
(c)配列番号11の25位~601位のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有し、セルラーゼ活性を有するアミノ酸配列。
[10]
 前記糖質結合モジュールと前記触媒ドメインとの間にリンカー領域を有する、前記タンパク質。
[11]
 フィブロネクチンIII型様ドメインを有する、前記タンパク質。
[12]
 前記触媒ドメインが由来するセルラーゼの固有の糖質結合モジュールを有さない、前記タンパク質。
[13]
 下記(a)、(b)、または(c)に記載のタンパク質である、前記タンパク質:
(a)配列番号34または36に示すアミノ酸配列を含むタンパク質;
(b)配列番号34または36に示すアミノ酸配列において、1~10個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、および/または付加を含むアミノ酸配列を含み、且つ、セルラーゼ活性を有するタンパク質;
(c)配列番号34または36に示すアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、且つ、セルラーゼ活性を有するタンパク質。
[14]
 前記タンパク質をコードする遺伝子。
[15]
 前記遺伝子を搭載するベクター。
[16]
 前記遺伝子を有する宿主。
[17]
 細菌または真菌である、前記宿主。
[18]
 前記タンパク質でセルロース系基質を処理することを含む、糖化物の製造方法。
[19]
 前記セルロース系基質が植物バイオマスである、前記方法。
T. cellulolyticus F09ΔcreA株の培養上清を水熱処理バガスと反応させた際の、各糖質分解酵素の反応液上清中での残存率を示す図。 各Bgl3AおよびXyl10Aの構造を示す図。
 以下、本発明を詳細に説明する。
<1>キメラ酵素
 本発明は、キメラ酵素およびそれをコードする遺伝子を提供する。本発明により提供されるキメラ酵素(以下、単に「キメラ酵素」ともいう)は、キシラナーゼ(xylanase)の糖質結合モジュール(carbohydrate binding module;CBM)を有するセルラーゼ(cellulase)である。また、キメラ酵素は、言い換えると、キシラナーゼのCBMを有し、且つ、セルラーゼ活性を有するタンパク質である。キメラ酵素をコードする遺伝子を「キメラ酵素遺伝子」ともいう。
<1-1>セルラーゼ
 「セルラーゼ」とは、セルロースの分解に関与する酵素の総称である。「セルラーゼ」とは、具体的には、β-D-グルカン中のβ-1,4グリコシド結合を加水分解する反応を触媒する活性を有するタンパク質をいう。同活性を「セルラーゼ活性」ともいう。β-D-グルカンとしては、セルロースや、その分解物として生じ得るセロビオース等のセロオリゴ糖類が挙げられる。
 キメラ酵素を特定するために参照できるセルラーゼは、特に制限されない。
 セルラーゼとしては、エンドグルカナーゼ(endoglucanase;EC 3.2.1.4)、セロビオヒドロラーゼ(cellobiohydrolase;EC 3.2.1.91またはEC 3.2.1.176)、β-グルコシダーゼ(beta-glucosidase;EC 3.2.1.21)が挙げられる。
 「エンドグルカナーゼ」とは、エンド型セルラーゼをいい、具体的には、セルロース等のβ-D-グルカン内部のβ-1,4グリコシド結合をランダムに加水分解する反応を触媒する活性を有するタンパク質であってよい。同活性を「エンドグルカナーゼ活性」ともいう。エンドグルカナーゼとしては、例えば、グリコシドハイドロラーゼ(glycoside hydrolase)のファミリー5, 6, 7, 8, 9, 10, 12, 26, 44, 45, 48, 51, 74, または124に分類されるものが挙げられる(http://www.cazy.org/)。
 「セロビオヒドロラーゼ」とは、エキソ型セルラーゼをいい、具体的には、セルロース等のβ-D-グルカンを末端から順に切断してセロビオース単位を生じる反応を触媒する活性を有するタンパク質であってよい。同活性を「セロビオヒドロラーゼ活性」ともいう。セロビオヒドロラーゼは、還元末端側から作用するもの(EC 3.2.1.91)と非還元末端側から作用するもの(EC 3.2.1.176)に大別される。還元末端側から作用するセロビオヒドロラーゼとしては、例えば、グリコシドハイドロラーゼのファミリー5, 6, または9に分類されるものが挙げられる(http://www.cazy.org/)。非還元末端側から作用するセロビオヒドロラーゼとしては、例えば、グリコシドハイドロラーゼのファミリー7, 9, または48に分類されるものが挙げられる(http://www.cazy.org/)。
 「β-グルコシダーゼ」とは、セルロースやセロオリゴ糖等のβ-D-グルカンを非還元末端から順に切断してβ-D-グルコースを生じる反応を触媒する活性を有するタンパク質であってよい。同活性を「β-グルコシダーゼ活性」ともいう。β-グルコシダーゼとしては、例えば、グリコシドハイドロラーゼのファミリー1, 2, 3, 5, 9, 30, または116に分類されるものが挙げられる(http://www.cazy.org/)。
 セルラーゼとしては、特に、β-グルコシダーゼが挙げられる。また、セルラーゼとしては、特に、グリコシドハイドロラーゼのファミリー3に分類されるもの(GH3)が挙げられる。また、セルラーゼとしては、特に、GH3に分類されるβ-グルコシダーゼが挙げられる。
 セルラーゼ活性は、例えば、公知の手法により測定することができる。エンドグルカナーゼ活性やセロビオヒドロラーゼ活性は、例えば、微結晶セルロース(アビセル)やカルボキメチルセルロース(CMC)等のセルロースを基質として酵素反応を行い、生成する還元糖量を指標として、決定することができる。還元糖量は、例えば、ジニトロサリチル酸(DNS)法やソモギーネルソン法等の公知の手法により測定することができる。また、セロビオヒドロラーゼ活性は、例えば、pNP-β-D-Cellobiosideを基質として酵素反応を行い、生成するpNP(p-ニトロフェノール)量を指標として、決定することができる。また、セロビオヒドロラーゼ活性は、例えば、pNP-β-D-Glucoseを基質として酵素反応を行い、生成するpNP量を指標として、決定することができる。
 セルラーゼとしては、例えば、真菌や細菌のセルラーゼが挙げられる。真菌のセルラーゼとしては、例えば、Trichoderma reesei等のTrichoderma属真菌、Talaromyces cellulolyticus(旧名:Acremonium cellulolyticus)等のTalaromyces(Acremonium)属真菌、Phanerochaete chrysosporium等のPhanerochaete属真菌のセルラーゼが挙げられる。細菌のセルラーゼとしては、例えば、Ruminiclostridium thermocellum(旧名:Clostridium thermocellum)等のRuminiclostridium(Clostridium)属細菌のセルラーゼが挙げられる。セルラーゼとして、具体的には、例えば、β-グルコシダーゼであるBgl3A、エンドグルカナーゼであるEg5A、Eg5X1、Eg5X2、およびEg7B、セロビオヒドロラーゼであるCbh1およびCbh2が挙げられる。Bgl3Aは、具体的には、GH3に分類されるβ-グルコシダーゼであり得る。これらのセルラーゼは、例えば、Talaromyces cellulolyticus等の真菌に見出され得る。各種セルラーゼのアミノ酸配列およびそれらをコードする遺伝子の塩基配列は、例えば、NCBI等の公開データベースから取得できる。Talaromyces cellulolyticusのCbh1、Cbh2、Bgl3A、Eg5A、Eg5X1、Eg5X2、Eg7Bのアミノ酸配列を、配列番号9~15にそれぞれ示す。配列番号11に示すBgl3Aのアミノ酸配列中、1位~18位のアミノ酸配列がシグナルペプチド、25位~601位のアミノ酸配列が触媒ドメイン、651位~721位のアミノ酸配列がフィブロネクチンIII型様ドメイン(Fibronectin type III-like domain)、732位~776位のアミノ酸配列がリンカー領域、780位~807位のアミノ酸配列がCBMに相当する。また、Talaromyces cellulolyticusのCbh1、Cbh2、Bgl3A、Eg5A、Eg5X1、Eg5X2、Eg7Bをコードする遺伝子のcDNAの塩基配列を、配列番号25~31にそれぞれ示す。
 すなわち、セルラーゼは、例えば、配列番号9~15に示すアミノ酸配列またはその他上記データベースや文献に開示されたセルラーゼのアミノ酸配列を有するタンパク質であってよい。同様に、セルラーゼをコードする遺伝子(「セルラーゼ遺伝子」ともいう)は、例えば、配列番号25~31に示す塩基配列またはその他上記データベースや文献に開示されたセルラーゼ遺伝子の塩基配列もしくはそのcDNAの塩基配列を有する遺伝子であってよい。なお、「(アミノ酸または塩基)配列を有する」という表現は、当該「(アミノ酸または塩基)配列を含む」場合および当該「(アミノ酸または塩基)配列からなる」場合を包含する。
 セルラーゼは、元の機能が維持されている限り、上記例示したセルラーゼ(例えば、配列番号9~15に示すアミノ酸配列またはその他上記データベースや文献に開示されたセルラーゼのアミノ酸配列を有するタンパク質)のバリアントであってもよい。同様に、セルラーゼ遺伝子は、元の機能が維持されている限り、上記例示したセルラーゼ遺伝子(例えば、配列番号25~31に示す塩基配列またはその他上記データベースや文献に開示されたセルラーゼ遺伝子の塩基配列もしくはそのcDNAの塩基配列を有する遺伝子)のバリアントであってもよい。なお、このような元の機能が維持されたバリアントを「保存的バリアント」という場合がある。本発明において、上記タンパク質名で特定されるタンパク質およびそれをコードする遺伝子には、それぞれ、上記例示したタンパク質およびそれをコードする遺伝子に加えて、その保存的バリアントが含まれるものとする。すなわち、例えば、「Bgl3A」という用語は、上記例示したBgl3A(すなわちTalaromyces cellulolyticusのBgl3A)に加えて、その保存的バリアントを包含するものとする。保存的バリアントとしては、例えば、上記例示したセルラーゼやそれをコードする遺伝子のホモログや人為的な改変体が挙げられる。
 「元の機能が維持されている」とは、遺伝子やタンパク質のバリアントが、元の遺伝子やタンパク質の機能(活性や性質)に対応する機能(活性や性質)を有することをいう。すなわち、「元の機能が維持されている」とは、セルラーゼにあっては、タンパク質のバリアントが、セルラーゼ活性(エンドグルカナーゼ活性、セロビオヒドロラーゼ活性、β-グルコシダーゼ活性、等)を有することをいう。また、「元の機能が維持されている」とは、セルラーゼ遺伝子にあっては、遺伝子のバリアントが、元の機能が維持されたタンパク質(すなわちセルラーゼ活性を有するタンパク質)をコードすることをいう。
 セルラーゼのホモログとしては、例えば、上記セルラーゼのアミノ酸配列を問い合わせ配列として用いたBLAST検索やFASTA検索によって公開データベースから取得されるタンパク質が挙げられる。また、上記セルラーゼ遺伝子のホモログは、例えば、各種生物の染色体を鋳型にして、上記セルラーゼ遺伝子の塩基配列に基づいて作製したオリゴヌクレオチドをプライマーとして用いたPCRにより取得することができる。
 以下、セルラーゼおよびセルラーゼ遺伝子の保存的バリアントについて例示する。
 セルラーゼは、元の機能が維持されている限り、上記セルラーゼのアミノ酸配列において、1若しくは数個の位置での1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列を有するタンパク質であってもよい。なお上記「1若しくは数個」とは、アミノ酸残基のタンパク質の立体構造における位置や種類によっても異なるが、具体的には、例えば、1~50個、1~40個、1~30個、好ましくは1~20個、より好ましくは1~10個、さらに好ましくは1~5個、特に好ましくは1~3個を意味する。
 上記の1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、および/または付加は、タンパク質の機能が正常に維持される保存的変異である。保存的変異の代表的なものは、保存的置換である。保存的置換とは、置換部位が芳香族アミノ酸である場合には、Phe、Trp、Tyr間で、置換部位が疎水性アミノ酸である場合には、Leu、Ile、Val間で、極性アミノ酸である場合には、Gln、Asn間で、塩基性アミノ酸である場合には、Lys、Arg、His間で、酸性アミノ酸である場合には、Asp、Glu間で、ヒドロキシル基を持つアミノ酸である場合には、Ser、Thr間でお互いに置換する変異である。保存的置換とみなされる置換としては、具体的には、AlaからSer又はThrへの置換、ArgからGln、His又はLysへの置換、AsnからGlu、Gln、Lys、His又はAspへの置換、AspからAsn、Glu又はGlnへの置換、CysからSer又はAlaへの置換、GlnからAsn、Glu、Lys、His、Asp又はArgへの置換、GluからGly、Asn、Gln、Lys又はAspへの置換、GlyからProへの置換、HisからAsn、Lys、Gln、Arg又はTyrへの置換、IleからLeu、Met、Val又はPheへの置換、LeuからIle、Met、Val又はPheへの置換、LysからAsn、Glu、Gln、His又はArgへの置換、MetからIle、Leu、Val又はPheへの置換、PheからTrp、Tyr、Met、Ile又はLeuへの置換、SerからThr又はAlaへの置換、ThrからSer又はAlaへの置換、TrpからPhe又はTyrへの置換、TyrからHis、Phe又はTrpへの置換、及び、ValからMet、Ile又はLeuへの置換が挙げられる。また、上記のようなアミノ酸の置換、欠失、挿入、または付加には、タンパク質が由来する生物の個体差、種の違いに基づく場合などの天然に生じる変異(mutant又はvariant)によって生じるものも含まれる。
 また、セルラーゼは、元の機能が維持されている限り、上記セルラーゼのアミノ酸配列全体に対して、例えば、50%以上、65%以上、80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上、特に好ましくは99%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有するタンパク質であってもよい。尚、本明細書において、「相同性」(homology)は、「同一性」(identity)を指す。
 また、セルラーゼは、元の機能が維持されている限り、上記セルラーゼ遺伝子の塩基配列から調製され得るプローブ、例えば同塩基配列の全体または一部に対する相補配列、とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるタンパク質であってもよい。そのようなプローブは、例えば、同塩基配列に基づいて作製したオリゴヌクレオチドをプライマーとし、同塩基配列を含むDNA断片を鋳型とするPCRによって作製することができる。「ストリンジェントな条件」とは、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいう。一例を示せば、相同性が高いDNA同士、例えば、50%以上、65%以上、80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上、特に好ましくは99%以上の相同性を有するDNA同士がハイブリダイズし、それより相同性が低いDNA同士がハイブリダイズしない条件、あるいは通常のサザンハイブリダイゼーションの洗いの条件である60℃、1×SSC、0.1% SDS、好ましくは60℃、0.1×SSC、0.1% SDS、より好ましくは68℃、0.1×SSC、0.1% SDSに相当する塩濃度および温度で、1回、好ましくは2~3回洗浄する条件を挙げることができる。また、例えば、プローブとして、300 bp程度の長さのDNA断片を用いる場合には、ハイブリダイゼーションの洗いの条件としては、50℃、2×SSC、0.1% SDSが挙げられる。
 また、宿主によってコドンの縮重性が異なるので、セルラーゼ遺伝子は、任意のコドンをそれと等価のコドンに置換したものであってもよい。すなわち、セルラーゼ遺伝子は、コドンの縮重による上記例示したセルラーゼ遺伝子のバリアントであってもよい。例えば、セルラーゼ遺伝子は、使用する宿主のコドン使用頻度に応じて最適なコドンを有するように改変されてよい。
 2つの配列間の配列同一性のパーセンテージは、例えば、数学的アルゴリズムを用いて決定できる。このような数学的アルゴリズムの限定されない例としては、Myers and Miller (1988) CABIOS 4:11-17のアルゴリズム、Smith et al (1981) Adv. Appl. Math. 2:482の局所ホモロジーアルゴリズム、Needleman and Wunsch (1970) J. Mol. Biol. 48:443-453のホモロジーアライメントアルゴリズム、Pearson and Lipman (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. 85:2444-2448の類似性を検索する方法、Karlin and Altschul (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873-5877に記載されているような、改良された、Karlin and Altschul (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:2264のアルゴリズムが挙げられる。
 これらの数学的アルゴリズムに基づくプログラムを利用して、配列同一性を決定するための配列比較(アラインメント)を行うことができる。プログラムは、適宜、コンピュータにより実行することができる。このようなプログラムとしては、特に限定されないが、PC/GeneプログラムのCLUSTAL(Intelligenetics, Mountain View, Calif.から入手可能)、ALIGNプログラム(Version 2.0)、並びにWisconsin Genetics Software Package, Version 8(Genetics Computer Group (GCG), 575 Science Drive, Madison, Wis., USAから入手可能)のGAP、BESTFIT、BLAST、FASTA、及びTFASTAが挙げられる。これらのプログラムを用いたアライメントは、例えば、初期パラメーターを用いて行うことができる。CLUSTALプログラムについては、Higgins et al. (1988) Gene 73:237-244、Higgins et al. (1989) CABIOS 5:151-153、Corpet et al. (1988) Nucleic Acids Res. 16:10881-90、Huang et al. (1992) CABIOS 8:155-65、及びPearson et al. (1994) Meth. Mol. Biol. 24:307-331によく記載されている。
 対象のタンパク質をコードするヌクレオチド配列と相同性があるヌクレオチド配列を得るために、具体的には、例えば、BLASTヌクレオチド検索を、BLASTNプログラム、スコア=100、ワード長=12にて行うことができる。対象のタンパク質と相同性があるアミノ酸配列を得るために、具体的には、例えば、BLASTタンパク質検索を、BLASTXプログラム、スコア=50、ワード長=3にて行うことができる。BLASTヌクレオチド検索やBLASTタンパク質検索については、http://www.ncbi.nlm.nih.govを参照されたい。また、比較を目的としてギャップを加えたアライメントを得るために、Gapped BLAST(BLAST 2.0)を利用できる。また、PSI-BLAST(BLAST 2.0)を、配列間の離間した関係を検出する反復検索を行うのに利用できる。Gapped BLASTおよびPSI-BLASTについては、Altschul et al. (1997) Nucleic Acids Res. 25:3389を参照されたい。BLAST、Gapped BLAST、またはPSI-BLASTを利用する場合、例えば、各プログラム(例えば、ヌクレオチド配列に対してBLASTN、アミノ酸配列に対してBLASTX)の初期パラメーターが用いられ得る。アライメントは、手動にて行われてもよい。
 2つの配列間の配列同一性は、2つの配列を最大一致となるように整列したときに2つの配列間で一致する残基の比率として算出される。
<1-2>キシラナーゼ
 「キシラナーゼ」とは、キシランの分解に関与する酵素の総称である。「キシラナーゼ」とは、具体的には、キシラン中のβ-1,4グリコシド結合を加水分解する反応を触媒する活性を有するタンパク質という(EC 3.2.1.8)。同活性を「キシラナーゼ活性」ともいう。キシラナーゼ活性は、例えば、公知の手法により測定することができる。キシラナーゼ活性は、例えば、キシランを基質として酵素反応を行い、生成する還元糖量を指標として、決定することができる。
 キメラ酵素を特定するために参照できるキシラナーゼは、CBMを有する限り、特に制限されない。
 キシラナーゼとしては、例えば、グリコシドハイドロラーゼのファミリー3, 5, 8, 9, 10, 11, 12, 16, 26, 30, 43, 44, 51, 62, または98に分類されるものが挙げられる(http://www.cazy.org/)。
 キシラナーゼとしては、例えば、真菌や細菌のキシラナーゼが挙げられる。真菌のキシラナーゼとしては、例えば、Trichoderma reesei等のTrichoderma属真菌、Talaromyces cellulolyticus(旧名:Acremonium cellulolyticus)等のTalaromyces(Acremonium)属真菌、Phanerochaete chrysosporium等のPhanerochaete属真菌のキシラナーゼが挙げられる。細菌のキシラナーゼとしては、例えば、Ruminiclostridium thermocellum(旧名:Clostridium thermocellum)等のRuminiclostridium(Clostridium)属細菌のキシラナーゼが挙げられる。キシラナーゼとして、具体的には、例えば、Xyl10A(Xyn10Aともいう)が挙げられる。Xyl10Aは、例えば、Talaromyces cellulolyticus等の真菌に見出され得る。各種キシラナーゼのアミノ酸配列およびそれらをコードする遺伝子の塩基配列は、例えば、NCBI等の公開データベースから取得できる。Talaromyces cellulolyticusのXyl10Aのアミノ酸配列を配列番号16に示す。配列番号16に示すアミノ酸配列中、1位~19位のアミノ酸配列がシグナルペプチド、20位~335位のアミノ酸配列が触媒ドメイン、336位~372位のアミノ酸配列がリンカー領域、375位~403位のアミノ酸配列がCBMに相当する。また、Talaromyces cellulolyticusのXyl10Aをコードする遺伝子のcDNAの塩基配列を、配列番号32に示す。
 すなわち、キシラナーゼは、例えば、配列番号16に示すアミノ酸配列またはその他上記データベースや文献に開示されたキシラナーゼのアミノ酸配列を有するタンパク質であってよい。同様に、キシラナーゼをコードする遺伝子(「キシラナーゼ遺伝子」ともいう)は、例えば、配列番号32に示す塩基配列またはその他上記データベースや文献に開示されたキシラナーゼ遺伝子の塩基配列もしくはそのcDNAの塩基配列を有する遺伝子であってよい。キシラナーゼは、上記例示したキシラナーゼ(例えば、配列番号16に示すアミノ酸配列またはその他上記データベースや文献に開示されたキシラナーゼのアミノ酸配列を有するタンパク質)の保存的バリアントであってもよい。同様に、キシラナーゼ遺伝子は、上記例示したキシラナーゼ遺伝子(例えば、配列番号32に示す塩基配列またはその他上記データベースや文献に開示されたキシラナーゼ遺伝子の塩基配列もしくはそのcDNAの塩基配列を有する遺伝子)の保存的バリアントであってもよい。キシラナーゼおよびキシラナーゼ遺伝子の保存的バリアントについては、セルラーゼおよびセルラーゼ遺伝子の保存的バリアントについての記載を準用できる。なお、「元の機能が維持されている」とは、キシラナーゼにあっては、タンパク質のバリアントが、キシラナーゼ活性を有することをいう。
<1-3>キメラ酵素
 キメラ酵素は、キシラナーゼのCBMを有し、且つ、セルラーゼ活性を有するように構成される。キメラ酵素は、キシラナーゼのCBMを有すること以外は、例えば、上記例示したセルラーゼもしくはその保存的バリアントと同一のアミノ酸配列またはその一部を有するタンパク質であってよい。「アミノ酸配列の一部」は、キメラ酵素が所望のセルラーゼ活性を有する限り、特に制限されない。「アミノ酸配列の一部」としては、セルラーゼの触媒ドメイン(catalytic domain)が挙げられる。すなわち、キメラ酵素は、セルラーゼの触媒ドメインを有していてよい。すなわち、キメラ酵素は、具体的には、キシラナーゼのCBMとセルラーゼの触媒ドメインを有するタンパク質であってよい。キメラ酵素は、セルラーゼの触媒ドメインを有することによりセルラーゼ活性を有し得る。
 セルラーゼの触媒ドメインとしては、上記例示したセルラーゼの触媒ドメインが挙げられる。セルラーゼの触媒ドメインとして、具体的には、例えば、配列番号11の25位~601位のアミノ酸配列が挙げられる。すなわち、セルラーゼの触媒ドメインは、例えば、配列番号11の25位~601位のアミノ酸配列を有するものであってよい。また、セルラーゼの触媒ドメインとしては、上記例示したセルラーゼの触媒ドメイン(例えば、配列番号11の25位~601位のアミノ酸配列)の保存的バリアントも挙げられる。すなわち、「セルラーゼの触媒ドメイン」という用語は、天然のセルラーゼが有する触媒ドメインに限られず、それらの保存的バリアントも包含する。セルラーゼの触媒ドメインの保存的バリアントについては、セルラーゼの保存的バリアントについての記載を準用できる。セルラーゼの触媒ドメインは、例えば、上記例示したセルラーゼの触媒ドメインのアミノ酸配列において、1若しくは数個の位置での1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列を有するものであってもよい。また、セルラーゼの触媒ドメインは、例えば、上記例示したセルラーゼの触媒ドメインのアミノ酸配列全体に対して、50%以上、65%以上、80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上、特に好ましくは99%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有するものであってもよい。なお、「元の機能が維持されている」とは、セルラーゼの触媒ドメインにあっては、同ドメインのバリアントがセルラーゼ活性を有することであってよく、具体的には、同ドメインを有するキメラ酵素がセルラーゼ活性を有することであってよい。
 キシラナーゼのCBMとしては、例えば、CBMのファミリー1, 2, 3, 4, 5, 6, 9, 10, 11, 13, 15, 22, 35, 36, 37, 49, 59, 60, 64, または72に分類されるものが挙げられる(http://www.cazy.org/)。キシラナーゼのCBMとしては、特に、CBMのファミリー1に分類されるもの(CBM1)が挙げられる。真菌のキシラナーゼのCBMの多くは、CBM1である。例えば、Xyl10AのCBMは、CBM1であり得る。キシラナーゼのCBMとしては、上記例示したキシラナーゼのCBMが挙げられる。キシラナーゼのCBMとして、具体的には、例えば、配列番号16の375位~403位のアミノ酸配列が挙げられる。すなわち、キシラナーゼのCBMは、例えば、配列番号16の375位~403位のアミノ酸配列を有するものであってよい。また、キシラナーゼのCBMとしては、上記例示したキシラナーゼのCBM(例えば、配列番号16の375位~403位のアミノ酸配列)の保存的バリアントも挙げられる。すなわち、「キシラナーゼのCBM」という用語は、天然のキシラナーゼが有するCBMに限られず、その保存的バリアントも包含する。キシラナーゼのCBMの保存的バリアントについては、セルラーゼの保存的バリアントについての記載を準用できる。キシラナーゼのCBMは、例えば、上記例示したキシラナーゼのCBMのアミノ酸配列において、1若しくは数個の位置での1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列を有するものであってもよい。また、キシラナーゼのCBMは、例えば、上記例示したキシラナーゼのCBMのアミノ酸配列全体に対して、50%以上、65%以上、80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上、特に好ましくは99%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有するものであってもよい。なお、「元の機能が維持されている」とは、キシラナーゼのCBMにあっては、同モジュールのバリアントがセルロース系基質に対する結合能を有することであってよく、具体的には、同モジュールを有するキメラ酵素がセルロース系基質に対する結合能を有することであってよい。また、キシラナーゼのCBMは、元のセルラーゼの固有(native)のCBMと比較して、セルロース系基質に対する高い結合能を有していてよい。「元のセルラーゼ」とは、キメラ酵素が由来するセルラーゼをいい、より具体的には、キメラ酵素に含まれるセルラーゼの触媒ドメインが由来するセルラーゼであってよい。セルロース系基質に対する結合能の有無および程度は、CBMを有するタンパク質をセルロース系基質と反応させ、反応前後での反応液上清中のタンパク質の活性の変化の有無および程度を指標として、決定することができる。セルロース系基質に対する結合能の有無および程度は、具体的には、実施例に記載の手法により決定することができる。セルロース系基質に対する結合能の評価に用いることのできるセルロース系基質としては、非水溶性のセルロース系基質が挙げられ、具体的には、例えば、微結晶セルロース(アビセル)、ろ紙、稲わら、サトウキビバガスが挙げられる。
 キメラ酵素は、キシラナーゼのCBMを、1個のみ有していてもよく、2個またはそれ以上有していてもよい。キメラ酵素に含まれるキシラナーゼのCBMの個数は、例えば、1個以上、2個以上、または3個以上であってもよく、4個以下、3個以下、または2個以下であってもよく、それらの矛盾しない組み合わせであってもよい。キメラ酵素に含まれるキシラナーゼのCBMの個数は、好ましくは1個~2個であってよく、より好ましくは1個であってよい。キメラ酵素がキシラナーゼのCBMを2個またはそれ以上有する場合、それらCBMの構造はそれぞれ独立に設定できる。
 キメラ酵素におけるキシラナーゼのCBMの位置は、キメラ酵素の機能を損なわない限り特に制限されない。キメラ酵素におけるキシラナーゼのCBMの位置は、セルラーゼの触媒ドメインの外側であってもよく、セルラーゼの触媒ドメインの内側であってもよい。すなわち、キメラ酵素において、キシラナーゼのCBMは、例えば、セルラーゼの触媒ドメインよりもN末側に存在していてもよく、具体的には、N末端に存在していてもよい。なお、キメラ酵素がシグナルペプチドを有する場合、キメラ酵素において、キシラナーゼのCBMは、例えば、シグナルペプチドとセルラーゼの触媒ドメインとの間に存在していてもよい。また、キメラ酵素において、キシラナーゼのCBMは、例えば、セルラーゼの触媒ドメインよりもC末側に存在していてもよく、具体的には、C末端に存在していてもよい。また、キメラ酵素において、キシラナーゼのCBMは、例えば、セルラーゼの触媒ドメインの内部に存在していてもよい。言い換えると、本発明のタンパク質が有するセルラーゼの触媒ドメインは、キシラナーゼのCBMが挿入されたセルラーゼの触媒ドメインであってもよい。キメラ酵素がキシラナーゼのCBMを2個またはそれ以上有する場合、キメラ酵素におけるそれらCBMの位置はそれぞれ独立に設定できる。例えば、それらCBMはキメラ酵素においてタンデムに並んでいてもよく、そうでなくてもよい。
 キメラ酵素は、キシラナーゼのCBM以外のCBMを有していてもよく、有していなくてもよい。キシラナーゼのCBM以外のCBMとしては、例えば、元のセルラーゼの固有のCBM等の、キシラナーゼ以外の糖質加水分解酵素のCBMや、それらのバリアントが挙げられる。バリアントについては、セルラーゼの保存的バリアントについての記載を準用できる。すなわち、元のセルラーゼが固有のCBMを有する場合、キメラ酵素は、例えば、元のセルラーゼの固有のCBMに加えて、または代えて、キシラナーゼのCBMを有していてよい。
 キメラ酵素は、キシラナーゼのCBMを有することにより、キシラナーゼのCBMを有さない場合と比較して、セルロース系基質に対する結合能が向上する。「キシラナーゼのCBMを有さない場合」としては、CBMを全く有さない場合や元のセルラーゼの固有のCBMのみを有する場合が挙げられる。すなわち、キメラ酵素は、例えば、元のセルラーゼの固有のCBMに代えてキシラナーゼのCBMを有することにより、セルロース系基質に対する結合能が向上してよい。
 キメラ酵素において、キシラナーゼのCBMとそれ以外の領域(例えばセルラーゼの触媒ドメイン)とは、直接連結されていてもよく、そうでなくてもよい。キメラ酵素において、キシラナーゼのCBMとそれ以外の領域とは、例えば、リンカー領域(単に「リンカー」ともいう)を介して連結されていてもよい。すなわち、キメラ酵素は、リンカー領域を有していてよい。具体的には、キメラ酵素は、キシラナーゼのCBMとそれ以外の領域との間にリンカー領域を有していてよい。より具体的には、キメラ酵素は、キシラナーゼのCBMとセルラーゼの触媒ドメインとの間にリンカー領域を有していてもよい。リンカー領域は、キメラ酵素の機能を損なわない限り、特に制限されない。リンカー領域としては、セルラーゼの触媒ドメインにもCBMにも該当しないアミノ酸配列が挙げられる。また、リンカー領域としては、シグナルペプチドにも、糖質加水分解酵素の触媒ドメインにも、フィブロネクチンIII型様ドメインにも、CBMにも該当しないアミノ酸配列が挙げられる。また、リンカー領域としては、セルラーゼやキシラナーゼ等の糖質加水分解酵素における触媒ドメインとCBMの間のアミノ酸配列、セルラーゼやキシラナーゼ等の糖質加水分解酵素におけるフィブロネクチンIII型様ドメインとCBMの間のアミノ酸配列、それらの部分配列、およびそれらのバリアントが挙げられる。バリアントについては、セルラーゼの保存的バリアントについての記載を準用できる。例えば、元のセルラーゼが固有のリンカー領域を有する場合、当該固有のリンカー領域を、そのまま、あるいは適宜改変して用いてもよい。例えば、元のセルラーゼの固有のリンカー領域の一部を欠損させ、残部をリンカー領域として用いてもよい。また、例えば、元のセルラーゼの固有のリンカー領域の一部または全部を、キシラナーゼ等の他の糖質加水分解酵素のリンカー領域の一部または全部で置換して用いてもよい。糖質加水分解酵素のリンカー領域として、具体的には、例えば、配列番号11の732位~776位のアミノ酸配列や配列番号16の336位~372位のアミノ酸配列が挙げられる。リンカー領域の長さは、特に制限されないが、例えば、10残基以上、20残基以上、30残基以上、40残基以上、または50残基以上であってもよく、200残基以下、150残基以下、100残基以下、80残基以下、60残基以下、または40残基以下であってもよく、それらの矛盾しない組み合わせであってもよい。リンカー領域の長さは、例えば、20~60残基であってもよい。
 キメラ酵素は、キメラ酵素の機能を損なわない限り、その他の任意の領域を有していてよい。その他の領域は、セルラーゼやキシラナーゼ等の糖質加水分解酵素に見出される領域であってもよく、そうでなくてもよい。その他の領域としては、例えば、シグナルペプチド(シグナル配列ともいう)、フィブロネクチンIII型様ドメイン、ペプチドタグ、プロテアーゼの認識配列が挙げられる。
 シグナルペプチドは、キメラ酵素を発現させる宿主で機能するものであれば、特に制限されない。シグナルペプチドとしては、セルラーゼやキシラナーゼ等の糖質加水分解酵素のシグナルペプチドやそれらのバリアントが挙げられる。バリアントについては、セルラーゼの保存的バリアントについての記載を準用できる。例えば、元のセルラーゼが固有のシグナルペプチドを有する場合、当該固有のシグナルペプチドを、そのまま、あるいは適宜改変して用いてもよい。糖質加水分解酵素のシグナルペプチドとして、具体的には、例えば、配列番号11の1位~18位のアミノ酸配列や配列番号16の1位~19位のアミノ酸配列が挙げられる。また、コリネ型細菌等の細菌で機能するシグナルペプチドとしては、Sec系分泌経路で認識されるシグナルペプチドやTat系分泌経路で認識されるシグナルペプチドが挙げられる。Tat系分泌経路で認識されるシグナルペプチドとして、具体的には、E. coliのTorAシグナル配列、E. coliのSufIシグナル配列、Bacillus subtilisのPhoDシグナル配列、Bacillus subtilisのLipAシグナル配列、Arthrobacter globiformisのIMDシグナル配列が挙げられる(WO2013/118544)。キメラ酵素において、シグナルペプチドはN末端に存在していてよい。シグナルペプチドは、例えば、キメラ酵素の分泌生産に利用できる。シグナルペプチドを利用してキメラ酵素を分泌生産する場合、通常、分泌時にシグナルペプチドが切断され、シグナルペプチドを有さないキメラ酵素が菌体外に分泌され得る。すなわち、「キメラ酵素がシグナルペプチドを有する」とは、キメラ酵素がシグナルペプチドを有する形態で発現することを意味し、キメラ酵素の成熟タンパク質がシグナルペプチドを有するかは問わないものとする。
 フィブロネクチンIII型様ドメインとしては、セルラーゼやキシラナーゼ等の糖質加水分解酵素のフィブロネクチンIII型様ドメインやそれらのバリアントが挙げられる。バリアントについては、セルラーゼの保存的バリアントについての記載を準用できる。糖質加水分解酵素のフィブロネクチンIII型様ドメインとして、具体的には、例えば、配列番号11の651位~721位のアミノ酸配列が挙げられる。キメラ酵素におけるフィブロネクチンIII型様ドメインの位置は特に制限されない。キメラ酵素において、フィブロネクチンIII型様ドメインは、例えば、セルラーゼの触媒ドメインよりもN末側に存在していてもよく、C末側に存在していてもよい。また、キメラ酵素において、フィブロネクチンIII型様ドメインは、例えば、セルラーゼの触媒ドメインの内部に存在していてもよい。例えば、セルラーゼの触媒ドメインとそのC末側のフィブロネクチンIII型様ドメインを含むアミノ酸配列として、配列番号11の25位~721位のアミノ酸配列が挙げられる。すなわち、キメラ酵素は、例えば、配列番号11の25位~721位のアミノ酸配列またはそのバリアントを含んでいてもよい。
 ペプチドタグとして、具体的には、Hisタグ、FLAGタグ、GSTタグ、Mycタグ、MBP(maltose binding protein)、CBP(cellulose binding protein)、TRX(Thioredoxin)、GFP(green fluorescent protein)、HRP(horseradish peroxidase)、ALP(Alkaline Phosphatase)、抗体のFc領域が挙げられる。Hisタグとしては、6xHisタグが挙げられる。ペプチドタグは、例えば、発現したキメラ酵素の検出や精製に利用できる。
 プロテアーゼの認識配列として、具体的には、Factor Xaプロテアーゼの認識配列やproTEVプロテアーゼの認識配列が挙げられる。プロテアーゼの認識配列は、例えば、発現したキメラ酵素の切断に利用できる。具体的には、例えば、キメラ酵素をペプチドタグとの融合タンパク質として発現させる場合、キメラ酵素とペプチドタグの連結部にプロテアーゼの認識配列を導入することにより、発現したキメラ酵素からプロテアーゼを利用してペプチドタグを切断し、ペプチドタグを有さないキメラ酵素を得ることができる。
 キメラ酵素の構成要素(例えば、キシラナーゼのCBM、セルラーゼの触媒ドメイン、リンカー領域、およびその他の領域)は、同一の生物に由来するものであってもよく、そうでなくてもよい。例えば、キシラナーゼのCBMとセルラーゼの触媒ドメインは、同一の生物に由来するものであってもよく、異なる生物に由来するものであってもよい。
 キメラ酵素として、具体的には、例えば、実施例で用いたBgl3A-10LCやBgl3A-10C、およびそれらの保存的バリアントが挙げられる。Bgl3A-10LCおよびBgl3A-10Cのアミノ酸配列を、それぞれ、配列番号34および36に示す。また、Bgl3A-10LCおよびBgl3A-10Cをコードする遺伝子の塩基配列の一例を、それぞれ、配列番号33および35に示す。すなわち、キメラ酵素は、例えば、配列番号34もしくは36のアミノ酸配列、またはその保存的バリアントのアミノ酸配列を有していてよい。キメラ酵素の保存的バリアントについては、セルラーゼの保存的バリアントについての記載を準用できる。
 キメラ酵素遺伝子は、キメラ酵素をコードする限り、特に制限されない。なお、本発明において、「遺伝子」という用語は、目的のタンパク質をコードする限り、DNAに限られず、任意のポリヌクレオチドを包含してよい。すなわち、「キメラ酵素遺伝子」とは、キメラ酵素をコードする任意のポリヌクレオチドを意味してよい。キメラ酵素遺伝子は、DNAであってもよく、RNAであってもよく、その組み合わせであってもよい。キメラ酵素遺伝子は、一本鎖であってもよく、二本鎖であってもよい。キメラ酵素遺伝子は、一本鎖DNAであってもよく、一本鎖RNAであってもよい。キメラ酵素遺伝子は、二本鎖DNAであってもよく、二本鎖RNAであってもよく、DNA鎖とRNA鎖からなるハイブリッド鎖であってもよい。キメラ酵素遺伝子は、単一のポリヌクレオチド鎖中に、DNA残基とRNA残基の両方を含んでいてもよい。キメラ酵素遺伝子がRNAを含む場合、上記例示した塩基配列等のDNAに関する記載は、RNAに合わせて適宜読み替えてよい。キメラ酵素遺伝子の態様は、その利用態様等の諸条件に応じて適宜選択できる。
<2>キメラ酵素の製造
 キメラ酵素は、キメラ酵素遺伝子を有する宿主に同遺伝子を発現させることにより製造できる。キメラ酵素遺伝子を有する宿主は、同遺伝子を適当な宿主に導入することにより取得できる。なお、「キメラ酵素遺伝子を宿主に導入する」ことには、同遺伝子の全体を宿主に導入する場合に限られず、宿主の染色体上のセルラーゼ遺伝子やキシラナーゼ遺伝子等の遺伝子をキメラ酵素をコードするように改変することも含まれる。なお、キメラ酵素遺伝子を有する宿主を、「キメラ酵素を有する宿主」ともいう。
 また、キメラ酵素は、キメラ酵素遺伝子を無細胞タンパク質合成系で発現させることによっても製造できる。
 キメラ酵素遺伝子は、例えば、セルラーゼ遺伝子やキシラナーゼ遺伝子等の遺伝子をキメラ酵素をコードするように改変することにより取得できる。改変の内容は、改変元の遺伝子の構成やキメラ酵素の構成等の諸条件に応じて適宜選択できる。例えば、セルラーゼ遺伝子にキシラナーゼのCBMを含む領域をコードする塩基配列を導入(例えば、置換や挿入)することにより、キメラ酵素遺伝子を取得できる。具体的には、例えば、セルラーゼ遺伝子中のCBMを含む領域をコードする塩基配列をキシラナーゼのCBMを含む領域をコードする塩基配列で置換することにより、または、セルラーゼ遺伝子中の所望の位置にキシラナーゼのCBMを含む領域をコードする塩基配列を挿入することにより、キメラ酵素遺伝子を取得できる。改変元の遺伝子は、例えば、同遺伝子を有する生物のゲノムDNAやcDNA等の核酸からのクローニングにより、または、化学合成により、取得できる。遺伝子の改変は、公知の手法により行うことができる。例えば、部位特異的変異法により、DNAの目的部位に目的の変異を導入することができる。すなわち、例えば、部位特異的変異法により、コードされるタンパク質の特定の部位のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入、および/または付加を含むように、遺伝子のコード領域を改変することができる。部位特異的変異法としては、PCRを用いる方法(Higuchi, R., 61, in PCR technology, Erlich, H. A. Eds., Stockton press (1989);Carter, P., Meth. in Enzymol., 154, 382 (1987))や、ファージを用いる方法(Kramer, W. and Frits, H. J., Meth. in Enzymol., 154, 350 (1987);Kunkel, T. A. et al., Meth. in Enzymol., 154, 367 (1987))が挙げられる。また、キメラ酵素遺伝子は、例えば、化学合成によっても取得できる(Gene, 60(1), 115-127 (1987))。
 宿主は、機能するキメラ酵素を発現できるものであれば特に制限されない。宿主としては、例えば、細菌、真菌、植物細胞、昆虫細胞、および動物細胞が挙げられる。好ましい宿主としては、細菌や真菌等の微生物が挙げられる。
 細菌としては、グラム陰性細菌やグラム陽性細菌が挙げられる。グラム陰性細菌としては、例えば、エシェリヒア(Escherichia)属細菌、エンテロバクター(Enterobacter)属細菌、パントエア(Pantoea)属細菌等の腸内細菌科(Enterobacteriaceae)に属する細菌が挙げられる。グラム陽性細菌としては、バチルス(Bacillus)属細菌、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属細菌等のコリネ型細菌、放線菌が挙げられる。エシェリヒア属細菌としては、例えば、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)が挙げられる。コリネ型細菌としては、例えば、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)やコリネバクテリウム・アンモニアゲネス(コリネバクテリウム・スタティオニス)(Corynebacterium ammoniagenes (Corynebacterium stationis))が挙げられる。エシェリヒア・コリとして、具体的には、例えば、W3110株(ATCC 27325)やMG1655株(ATCC 47076)等のエシェリヒア・コリK-12株;エシェリヒア・コリK5株(ATCC 23506);BL21(DE3)株やそのrecA-株であるBLR(DE3)株等のエシェリヒア・コリB株;およびそれらの派生株が挙げられる。
 真菌としては、酵母や糸状菌が挙げられる。真菌として、具体的には、例えば、Talaromyces cellulolyticus(旧名:Acremonium cellulolyticus)等のTalaromyces(Acremonium)属真菌が挙げられる。Talaromyces cellulolyticusとして、具体的には、例えば、Talaromyces cellulolyticus S6-25株(NITE BP-01685;WO2015/093467)、Talaromyces cellulolyticus Y-94株(FERM BP-5826)、およびそれらの派生株が挙げられる。S6-25株は、2013年8月8日に、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(郵便番号292-0818、日本国千葉県木更津かずさ鎌足2-5-8 122号室)に原寄託され、2013年11月15日に、ブダペスト条約に基づく国際寄託に移管され、受託番号NITE BP-01685が付与されている。Y-94株は、1983年1月12日に、通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所(現、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許生物寄託センター、郵便番号:292-0818、住所:日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 120号室)に原寄託され、1997年2月19日に、ブダペスト条約に基づく国際寄託に移管され、受託番号FERM BP-5826が付与されている。
 これらの菌株は、例えば、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(住所12301 Parklawn Drive, Rockville, Maryland 20852 P.O. Box 1549, Manassas, VA 20108, United States of America)より分譲を受けることが出来る。すなわち各菌株に対応する登録番号が付与されており、この登録番号を利用して分譲を受けることが出来る(http://www.atcc.org/参照)。各菌株に対応する登録番号は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションのカタログに記載されている。また、これらの菌株は、例えば、各菌株が寄託された寄託機関から入手することができる。また、BL21(DE3)株は、例えば、ライフテクノロジーズ社より入手可能である(製品番号C6000-03)。また、BLR(DE3)株は、例えば、メルクミリポア社より入手可能である(製品番号 69053)。
 キメラ酵素遺伝子を宿主に導入する手法は特に制限されない。宿主において、キメラ酵素遺伝子は、当該宿主で機能するプロモーターの制御下で発現可能に保持されていればよい。宿主において、キメラ酵素遺伝子は、プラスミドのように染色体外で自律複製するベクター上に存在していてもよく、染色体上に導入されていてもよい。宿主は、キメラ酵素遺伝子を1コピーのみ有していてもよく、2またはそれ以上のコピーで有していてもよい。宿主は、1種類のキメラ酵素遺伝子のみを有していてもよく、2またはそれ以上の種類のキメラ酵素遺伝子を有していてもよい。
 キメラ酵素遺伝子を発現させるためのプロモーターは、宿主において機能するものであれば特に制限されない。「宿主において機能するプロモーター」とは、宿主においてプロモーター活性を有するプロモーターをいう。プロモーターは、宿主由来のプロモーターであってもよく、異種由来のプロモーターであってもよい。プロモーターは、セルラーゼ遺伝子やキシラナーゼ遺伝子等の改変元の遺伝子の固有のプロモーターであってもよく、他の遺伝子のプロモーターであってもよい。プロモーターは、改変元の遺伝子の固有のプロモーターよりも強力なプロモーターであってもよい。エシェリヒア・コリ等の腸内細菌科の細菌において機能する強力なプロモーターとしては、例えば、T7プロモーター、trpプロモーター、trcプロモーター、lacプロモーター、tacプロモーター、tetプロモーター、araBADプロモーター、rpoHプロモーター、msrAプロモーター、Bifidobacterium由来のPm1プロモーター、PRプロモーター、およびPLプロモーターが挙げられる。また、コリネ型細菌において機能する強力なプロモーターとしては、人為的に設計変更されたP54-6プロモーター(Appl.Microbiol.Biotechnolo., 53, 674-679(2000))、コリネ型細菌内で酢酸、エタノール、ピルビン酸等で誘導できるpta、aceA、aceB、adh、amyEプロモーター、コリネ型細菌内で発現量が多い強力なプロモーターであるcspB、SOD、tuf(EF-Tu)プロモーター(Journal of Biotechnology 104 (2003) 311-323, Appl Environ Microbiol. 2005 Dec;71(12):8587-96.)、lacプロモーター、tacプロモーター、trcプロモーターが挙げられる。また、Talaromyces cellulolyticus等の真菌において機能するプロモーターとしては、例えば、glaAプロモーターや、セルラーゼ遺伝子やキシラナーゼ遺伝子等の糖質加水分解酵素をコードする遺伝子のプロモーターが挙げられる。また、プロモーターとしては、各種レポーター遺伝子を用いることにより、在来のプロモーターの高活性型のものを取得し利用してもよい。例えば、プロモーター領域内の-35、-10領域をコンセンサス配列に近づけることにより、プロモーターの活性を高めることができる(国際公開第00/18935号)。高活性型プロモーターとしては、各種tac様プロモーター(Katashkina JI et al. Russian Federation Patent application 2006134574)やpnlp8プロモーター(WO2010/027045)が挙げられる。プロモーターの強度の評価法および強力なプロモーターの例は、Goldsteinらの論文(Prokaryotic promoters in biotechnology. Biotechnol. Annu. Rev., 1, 105-128 (1995))等に記載されている。
 また、キメラ酵素遺伝子の下流には、転写終結用のターミネーターを配置することができる。ターミネーターは、宿主において機能するものであれば特に制限されない。ターミネーターは、宿主由来のターミネーターであってもよく、異種由来のターミネーターであってもよい。ターミネーターは、セルラーゼ遺伝子やキシラナーゼ遺伝子等の改変元の遺伝子の固有のターミネーターであってもよく、他の遺伝子のターミネーターであってもよい。ターミネーターとして、具体的には、例えば、T7ターミネーター、T4ターミネーター、fdファージターミネーター、tetターミネーター、およびtrpAターミネーターが挙げられる。
 キメラ酵素遺伝子は、例えば、同遺伝子を含むベクターを用いて宿主に導入することができる。キメラ酵素遺伝子を含むベクターを、キメラ酵素遺伝子の発現ベクターまたは組み換えベクターともいう。キメラ酵素遺伝子の発現ベクターは、例えば、キメラ酵素遺伝子を含むDNA断片を宿主で機能するベクターと連結することにより、構築することができる。キメラ酵素遺伝子の発現ベクターで宿主を形質転換することにより、同ベクターが導入された形質転換体が得られる、すなわち、同遺伝子を宿主に導入することができる。ベクターとしては、宿主の細胞内において自律複製可能なベクターを用いることができる。ベクターは、マルチコピーベクターであるのが好ましい。また、ベクターは、形質転換体を選択するために、抗生物質耐性遺伝子などのマーカーを有することが好ましい。また、ベクターは、挿入された遺伝子を発現するためのプロモーターやターミネーターを備えていてもよい。ベクターは、例えば、細菌プラスミド由来のベクター、酵母プラスミド由来のベクター、バクテリオファージ由来のベクター、コスミド、またはファージミド等であってよい。エシェリヒア・コリ等の腸内細菌科の細菌において自律複製可能なベクターとして、具体的には、例えば、pUC19、pUC18、pHSG299、pHSG399、pHSG398、pBR322、pSTV29(いずれもタカラバイオ社より入手可)、pACYC184、pMW219(ニッポンジーン社)、pTrc99A(ファルマシア社)、pPROK系ベクター(クロンテック社)、pKK233‐2(クロンテック社)、pET系ベクター(ノバジェン社)、pQE系ベクター(キアゲン社)、pCold TF DNA(TaKaRa)、pACYC系ベクター、広宿主域ベクターRSF1010が挙げられる。コリネ型細菌で自律複製可能なベクターとして、具体的には、例えば、pHM1519(Agric. Biol. Chem., 48, 2901-2903(1984));pAM330(Agric. Biol. Chem., 48, 2901-2903(1984));これらを改良した薬剤耐性遺伝子を有するプラスミド;特開平3-210184号公報に記載のプラスミドpCRY30;特開平2-72876号公報及び米国特許5,185,262号明細書公報に記載のプラスミドpCRY21、pCRY2KE、pCRY2KX、pCRY31、pCRY3KE及びpCRY3KX;特開平1-191686号公報に記載のプラスミドpCRY2およびpCRY3;特開昭58-192900号公報に記載のpAJ655、pAJ611及びpAJ1844;特開昭57-134500号公報に記載のpCG1;特開昭58-35197号公報に記載のpCG2;特開昭57-183799号公報に記載のpCG4およびpCG11;特開平10-215883号公報に記載のpVK7;特開平9-070291号公報に記載のpVC7が挙げられる。発現ベクターの構築の際には、例えば、固有のプロモーター領域を含むキメラ酵素遺伝子をそのままベクターに組み込んでもよく、キメラ酵素のコード領域を上記のようなプロモーターの下流に結合してからベクターに組み込んでもよく、ベクター上にもともと備わっているプロモーターの下流にキメラ酵素のコード領域を組み込んでもよい。
 各種微生物において利用可能なベクター、プロモーター、ターミネーターに関しては、例えば「微生物学基礎講座8 遺伝子工学、共立出版、1987年」に詳細に記載されており、それらを利用することが可能である。
 また、キメラ酵素遺伝子は、例えば、宿主の染色体上へ導入することができる。染色体への遺伝子の導入は、例えば、相同組み換えを利用して行うことができる(Miller, J. H. Experiments in Molecular Genetics, 1972, Cold Spring Harbor Laboratory)。相同組み換えを利用する遺伝子導入法としては、例えば、Redドリブンインテグレーション(Red-driven integration)法(Datsenko, K. A, and Wanner, B. L. Proc. Natl. Acad. Sci. U S A. 97:6640-6645 (2000))等の直鎖状DNAを用いる方法、温度感受性複製起点を含むプラスミドを用いる方法、接合伝達可能なプラスミドを用いる方法、宿主内で機能する複製起点を持たないスイサイドベクターを用いる方法、ファージを用いたtransduction法が挙げられる。遺伝子は、1コピーのみ導入されてもよく、2コピーまたはそれ以上導入されてもよい。例えば、染色体上に多数のコピーが存在する配列を標的として相同組み換えを行うことで、染色体へ遺伝子の多数のコピーを導入することができる。染色体上に多数のコピーが存在する配列としては、反復DNA配列(repetitive DNA)、トランスポゾンの両端に存在するインバーテッド・リピートが挙げられる。また、目的物質の生産に不要な遺伝子等の染色体上の適当な配列を標的として相同組み換えを行ってもよい。また、遺伝子は、トランスポゾンやMini-Muを用いて染色体上にランダムに導入することもできる(特開平2-109985号公報、US5,882,888、EP805867B1)。染色体への遺伝子の導入の際には、例えば、固有のプロモーター領域を含むキメラ酵素遺伝子をそのまま染色体に組み込んでもよく、キメラ酵素のコード領域を上記のようなプロモーターの下流に結合してから染色体に組み込んでもよく、染色体上にもともと存在するプロモーターの下流にキメラ酵素のコード領域を組み込んでもよい。
 染色体上に遺伝子が導入されたことは、例えば、同遺伝子の全部又は一部と相補的な塩基配列を有するプローブを用いたサザンハイブリダイゼーション、または同遺伝子の塩基配列に基づいて作成したプライマーを用いたPCRによって確認できる。
 形質転換法は特に限定されず、従来知られた方法を用いることができる。形質転換法としては、例えば、エシェリヒア・コリ K-12について報告されているような、受容菌細胞を塩化カルシウムで処理してDNAの透過性を増す方法(Mandel, M. and Higa, A.,J. Mol. Biol. 1970, 53, 159-162)、バチルス・ズブチリスについて報告されているような、増殖段階の細胞からコンピテントセルを調製してDNAを導入する方法(Duncan, C. H., Wilson, G. A. and Young, F. E.., 1997. Gene 1: 153-167)などが挙げられる。また、形質転換法としては、バチルス・ズブチリス、放線菌類及び酵母について知られているような、DNA受容菌の細胞を、組換えDNAを容易に取り込むプロトプラストまたはスフェロプラストの状態にして組換えDNAをDNA受容菌に導入する方法(Chang, S.and Choen, S.N., 1979. Mol. Gen. Genet. 168: 111-115; Bibb, M. J., Ward, J. M. and Hopwood, O. A. 1978. Nature 274: 398-400; Hinnen, A., Hicks, J. B. and Fink, G. R. 1978. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 75: 1929-1933)も応用できる。また、形質転換法としては、コリネ型細菌について報告されているような、電気パルス法(特開平2-207791号公報)を利用することもできる。
 キメラ酵素遺伝子を発現するための宿主は、セルラーゼ遺伝子やキシラナーゼ遺伝子等の改変元の遺伝子を有していてもよく、有していなくともよい。
 宿主は、機能するキメラ酵素を発現できる限り、任意の性質を有していてよい。宿主は、例えば、CreAタンパク質の活性が低下するように改変されていてよい(WO2015/093467)。より具体的には、宿主は、例えば、creA遺伝子の発現が低下するように改変されていてもよく、creA遺伝子が破壊されるように改変されていてもよい。creA遺伝子は、カタボライトリプレッションに関与する転写因子をコードする遺伝子である。creA遺伝子は、糸状菌において、セルラーゼの発現に関与していることが知られている(Mol Gen Genet. 1996 Jun 24;251(4):451-60、Biosci Biotechnol Biochem. 1998 Dec;62(12):2364-70)。CreAタンパク質の活性が低下するように宿主を改変することにより、宿主のセルラーゼ生産能を向上させることができ得る。
 creA遺伝子は、例えば、Talaromyces cellulolyticus等の真菌に見出され得る。Talaromyces cellulolyticusのcreA遺伝子の塩基配列を配列番号2に示す。creA遺伝子およびそれにコードされるCreAタンパク質は、上記例示したcreA遺伝子(例えば、配列番号2に示す塩基配列を有する遺伝子)およびそれにコードされるCreAタンパク質の保存的バリアントであってもよい。creA遺伝子およびCreAタンパク質の保存的バリアントについては、セルラーゼの保存的バリアントについての記載を準用できる。なお、「元の機能が維持されている」とは、CreAタンパク質にあっては、タンパク質のバリアントが、カタボライトリプレッションに関与する転写因子としての機能を有することであってよい。
 以下に、CreAタンパク質等のタンパク質の活性を低下させる手法について説明する。
 「タンパク質の活性が低下する」とは、同タンパク質の活性が非改変株と比較して低下することを意味する。「タンパク質の活性が低下する」とは、具体的には、同タンパク質の細胞当たりの活性が非改変株と比較して減少していることを意味してよい。ここでいう「非改変株」とは、標的のタンパク質の活性が低下するように改変されていない対照株を意味する。非改変株としては、野生株や親株が挙げられる。非改変株として、具体的には、宿主の説明において例示した株が挙げられる。なお、「タンパク質の活性が低下する」ことには、同タンパク質の活性が完全に消失している場合も包含される。「タンパク質の活性が低下する」とは、より具体的には、非改変株と比較して、同タンパク質の細胞当たりの分子数が低下していること、および/または、同タンパク質の分子当たりの機能が低下していることを意味してよい。すなわち、「タンパク質の活性が低下する」という場合の「活性」とは、タンパク質の触媒活性に限られず、タンパク質をコードする遺伝子の転写量(mRNA量)または翻訳量(タンパク質の量)を意味してもよい。なお、「タンパク質の細胞当たりの分子数が低下している」ことには、同タンパク質が全く存在していない場合が含まれる。また、「タンパク質の分子当たりの機能が低下している」ことには、同タンパク質の分子当たりの機能が完全に消失している場合が含まれる。タンパク質の活性の低下の程度は、タンパク質の活性が非改変株と比較して低下していれば特に制限されない。タンパク質の活性は、例えば、非改変株の、50%以下、20%以下、10%以下、5%以下、または0%に低下してよい。
 タンパク質の活性が低下するような改変は、例えば、同タンパク質をコードする遺伝子の発現を低下させることにより達成できる。「遺伝子の発現が低下する」とは、同遺伝子の発現が非改変株と比較して低下することを意味する。「遺伝子の発現が低下する」とは、具体的には、同遺伝子の細胞当たりの発現量が非改変株と比較して減少することを意味してよい。「遺伝子の発現が低下する」とは、より具体的には、遺伝子の転写量(mRNA量)が低下すること、および/または、遺伝子の翻訳量(タンパク質の量)が低下することを意味してよい。「遺伝子の発現が低下する」ことには、同遺伝子が全く発現していない場合が含まれる。なお、「遺伝子の発現が低下する」ことを、「遺伝子の発現が弱化される」ともいう。遺伝子の発現は、例えば、非改変株の、50%以下、20%以下、10%以下、5%以下、または0%に低下してよい。
 遺伝子の発現の低下は、例えば、転写効率の低下によるものであってもよく、翻訳効率の低下によるものであってもよく、それらの組み合わせによるものであってもよい。遺伝子の発現の低下は、例えば、遺伝子のプロモーター、シャインダルガノ(SD)配列(リボソーム結合部位(RBS)ともいう)、RBSと開始コドンとの間のスペーサー領域等の発現調節配列を改変することにより達成できる。発現調節配列を改変する場合には、発現調節配列は、好ましくは1塩基以上、より好ましくは2塩基以上、特に好ましくは3塩基以上が改変される。遺伝子の転写効率の低下は、例えば、染色体上の遺伝子のプロモーターをより弱いプロモーターに置換することにより達成できる。「より弱いプロモーター」とは、遺伝子の転写が、もともと存在している野生型のプロモーターよりも弱化するプロモーターを意味する。より弱いプロモーターとしては、例えば、誘導型のプロモーターが挙げられる。すなわち、誘導型のプロモーターは、非誘導条件下(例えば、誘導物質の非存在下)でより弱いプロモーターとして機能し得る。また、発現調節配列の一部または全部を欠失させてもよい。また、遺伝子の発現の低下は、例えば、発現制御に関わる因子を操作することによっても達成できる。発現制御に関わる因子としては、転写や翻訳制御に関わる低分子(誘導物質、阻害物質など)、タンパク質(転写因子など)、核酸(siRNAなど)等が挙げられる。また、遺伝子の発現の低下は、例えば、遺伝子のコード領域に遺伝子の発現が低下するような変異を導入することによっても達成できる。例えば、遺伝子のコード領域のコドンを、宿主においてより低頻度で利用される同義コドンに置き換えることによって、遺伝子の発現を低下させることができる。また、例えば、後述するような遺伝子の破壊により、遺伝子の発現自体が低下し得る。
 また、タンパク質の活性が低下するような改変は、例えば、同タンパク質をコードする遺伝子を破壊することにより達成できる。「遺伝子が破壊される」とは、正常に機能するタンパク質を産生しないように同遺伝子が改変されることを意味する。「正常に機能するタンパク質を産生しない」ことには、同遺伝子からタンパク質が全く産生されない場合や、同遺伝子から分子当たりの機能(活性や性質)が低下又は消失したタンパク質が産生される場合が含まれる。
 遺伝子の破壊は、例えば、染色体上の遺伝子のコード領域の一部又は全部を欠損させることにより達成できる。さらには、染色体上の遺伝子の前後の配列を含めて、遺伝子全体を欠失させてもよい。タンパク質の活性の低下が達成できる限り、欠失させる領域は、N末端領域、内部領域、C末端領域等のいずれの領域であってもよい。通常、欠失させる領域は長い方が確実に遺伝子を不活化することができる。また、欠失させる領域の前後の配列は、リーディングフレームが一致しないことが好ましい。
 また、遺伝子の破壊は、例えば、染色体上の遺伝子のコード領域にアミノ酸置換(ミスセンス変異)を導入すること、終止コドンを導入すること(ナンセンス変異)、あるいは1~2塩基を付加または欠失するフレームシフト変異を導入すること等によっても達成できる(Journal of Biological Chemistry 272:8611-8617(1997), Proceedings of the National Academy of Sciences, USA 95 5511-5515(1998), Journal of Biological Chemistry 26 116, 20833-20839(1991))。
 また、遺伝子の破壊は、例えば、染色体上の遺伝子のコード領域に他の配列を挿入することによっても達成できる。挿入部位は遺伝子のいずれの領域であってもよいが、挿入する配列は長い方が確実に遺伝子を不活化することができる。また、挿入部位の前後の配列は、リーディングフレームが一致しないことが好ましい。他の配列としては、コードされるタンパク質の活性を低下又は消失させるものであれば特に制限されないが、例えば、抗生物質耐性遺伝子等のマーカー遺伝子や目的物質の生産に有用な遺伝子が挙げられる。
 染色体上の遺伝子を上記のように改変することは、例えば、正常に機能するタンパク質を産生しないように改変した欠失型遺伝子を作製し、該欠失型遺伝子を含む組換えDNAで宿主を形質転換して、欠失型遺伝子と染色体上の野生型遺伝子とで相同組換えを起こさせることにより、染色体上の野生型遺伝子を欠失型遺伝子に置換することによって達成できる。その際、組換えDNAには、宿主の栄養要求性等の形質にしたがって、マーカー遺伝子を含ませておくと操作がしやすい。欠失型遺伝子としては、遺伝子の全領域あるいは一部の領域を欠失した遺伝子、ミスセンス変異を導入した遺伝子ナンセンス変異を導入した遺伝子、フレームシフト変異を導入した遺伝子、トランスポゾンやマーカー遺伝子等の挿入配列を導入した遺伝子が挙げられる。欠失型遺伝子によってコードされるタンパク質は、生成したとしても、野生型タンパク質とは異なる立体構造を有し、機能が低下又は消失する。このような相同組換えを利用した遺伝子置換による遺伝子破壊は既に確立しており、「Redドリブンインテグレーション(Red-driven integration)」と呼ばれる方法(Datsenko, K. A, and Wanner, B. L. Proc. Natl. Acad. Sci. U S A. 97:6640-6645 (2000))、Redドリブンインテグレーション法とλファージ由来の切り出しシステム(Cho, E. H., Gumport, R. I., Gardner, J. F. J. Bacteriol. 184: 5200-5203 (2002))とを組み合わせた方法(WO2005/010175号参照)等の直鎖状DNAを用いる方法や、温度感受性複製起点を含むプラスミドを用いる方法、接合伝達可能なプラスミドを用いる方法、宿主内で機能する複製起点を持たないスイサイドベクターを用いる方法などがある(米国特許第6303383号、特開平05-007491号)。
 また、タンパク質の活性が低下するような改変は、例えば、突然変異処理により行ってもよい。突然変異処理としては、X線の照射、紫外線の照射、ならびにN-メチル-N'-ニトロ-N-ニトロソグアニジン(MNNG)、エチルメタンスルフォネート(EMS)、およびメチルメタンスルフォネート(MMS)等の変異剤による処理が挙げられる。
 タンパク質の活性が低下したことは、同タンパク質の活性を測定することで確認できる。CreAタンパク質の活性は、例えば、カタボライトリプレッションの程度を測定することにより、測定できる。カタボライトリプレッションの程度は、例えば、グルコースを炭素源として含む培養条件でのセルラーゼ生産を測定することにより、測定することができる。すなわち、CreAタンパク質の活性が低下したことは、具体的には、例えば、グルコースを炭素源として含む培養条件でのセルラーゼ生産の向上を指標として、確認できる。
 タンパク質の活性が低下したことは、同タンパク質をコードする遺伝子の発現が低下したことを確認することによっても、確認できる。遺伝子の発現が低下したことは、同遺伝子の転写量が低下したことを確認することや、同遺伝子から発現するタンパク質の量が低下したことを確認することにより確認できる。
 遺伝子の転写量が低下したことの確認は、同遺伝子から転写されるmRNAの量を非改変株と比較することによって行うことが出来る。mRNAの量を評価する方法としては、ノーザンハイブリダイゼーション、RT-PCR等が挙げられる(Molecular Cloning(Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor (USA), 2001))。mRNAの量は、例えば、非改変株の、50%以下、20%以下、10%以下、5%以下、または0%に低下してよい。
 タンパク質の量が低下したことの確認は、抗体を用いてウェスタンブロットによって行うことが出来る(Molecular Cloning(Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor (USA), 2001))。タンパク質の量は、例えば、非改変株の、50%以下、20%以下、10%以下、5%以下、または0%に低下してよい。
 遺伝子が破壊されたことは、破壊に用いた手段に応じて、同遺伝子の一部または全部の塩基配列、制限酵素地図、または全長等を決定することで確認できる。
 キメラ酵素遺伝子を有する宿主を培地で培養することにより、キメラ酵素を発現することができる。その際、必要に応じて、キメラ酵素遺伝子の発現誘導を行うことができる。遺伝子の発現誘導の条件は、遺伝子の発現系の構成等の諸条件に応じて適宜選択することができる。
 培地や培養条件は、キメラ酵素遺伝子を有する宿主が増殖でき、キメラ酵素が生産される限り、特に制限されない。培地や培養条件は、宿主の種類等の諸条件に応じて適宜設定することができる。培養は、例えば、細菌や真菌等の微生物を培養に利用される通常の培地を用いて通常の条件で実施することができる。細菌を培養するための具体的な培地組成や培養条件については、例えば、E. coliやコリネ型細菌等の細菌を利用した各種物質生産に利用される培地組成や培養条件を参照することができる。また、真菌を培養するための具体的な培地組成や培養条件については、例えば、Talaromyces cellulolyticusに関する既報(特開2003-135052、特開2008-271826、特開2008-271927等)に記載の培地組成や培養条件、あるいはTrichoderma reesei等のその他各種セルラーゼ生産微生物の培養に利用される培地組成や培養条件を参照することができる。
 培地としては、例えば、炭素源、窒素源、リン酸源、硫黄源、その他の各種有機成分や無機成分から選択される成分を必要に応じて含有する培地を用いることができる。培地成分の種類や濃度は、当業者が適宜設定することができる。
 炭素源は、キメラ酵素遺伝子を有する宿主が利用できるものであれば、特に限定されない。炭素源として、具体的には、例えば、グルコース、フルクトース、スクロース、ラクトース、ガラクトース、キシロース、アラビノース、廃糖蜜、澱粉加水分解物、バイオマスの加水分解物等の糖類、酢酸、フマル酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸等の有機酸類、グリセロール、粗グリセロール、エタノール等のアルコール類、脂肪酸類が挙げられる。また、炭素源としては、セルロース系基質も挙げられる。セルロース系基質として、具体的には、例えば、微結晶セルロース(アビセル)、ろ紙、古紙、パルプ、木材、稲わら、麦わら、籾殻、米ぬか、小麦ふすま、サトウキビバガス、コーヒー粕、茶粕が挙げられる。市販の好適なセルロース系基質としては、ソルカフロック(International Fiber Corp, North Tonawanda, NY, U.S.A)が挙げられる。炭素源としては、1種の炭素源を用いてもよく、2種またはそれ以上の炭素源を組み合わせて用いてもよい。
 窒素源として、具体的には、例えば、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム等のアンモニウム塩、ペプトン、酵母エキス、肉エキス、コーンスティープリカー、大豆タンパク質分解物等の有機窒素源、アンモニア、ウレアが挙げられる。窒素源としては、1種の窒素源を用いてもよく、2種またはそれ以上の窒素源を組み合わせて用いてもよい。
 リン酸源として、具体的には、例えば、リン酸2水素カリウム、リン酸水素2カリウム等のリン酸塩、ピロリン酸等のリン酸ポリマーが挙げられる。リン酸源としては、1種のリン酸源を用いてもよく、2種またはそれ以上のリン酸源を組み合わせて用いてもよい。
 硫黄源として、具体的には、例えば、硫酸塩、チオ硫酸塩、亜硫酸塩等の無機硫黄化合物、システイン、シスチン、グルタチオン等の含硫アミノ酸が挙げられる。硫黄源としては、1種の硫黄源を用いてもよく、2種またはそれ以上の硫黄源を組み合わせて用いてもよい。
 その他の各種有機成分や無機成分として、具体的には、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム等の無機塩類;鉄、マンガン、マグネシウム、カルシウム等の微量金属類;ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、ビタミンB12等のビタミン類;アミノ酸類;核酸類;これらを含有するペプトン、カザミノ酸、酵母エキス、大豆タンパク質分解物等の有機成分が挙げられる。その他の各種有機成分や無機成分としては、1種の成分を用いてもよく、2種またはそれ以上の成分を組み合わせて用いてもよい。
 培養は、例えば、液体培地を用いて、通気培養または振盪培養により、好気的に行うことができる。培養温度は、例えば、15~43℃であってよい。培養中のpHは、例えば、5~9であってよい。培養期間は、例えば、2時間~20日であってよい。培養は、回分培養(batch culture)、流加培養(Fed-batch culture)、連続培養(continuous culture)、またはそれらの組み合わせにより実施することができる。また、培養は、前培養と本培養とに分けて実施してもよい。例えば、前培養を寒天培地等の固体培地上で行い、本培養を液体培地で行ってもよい。
 上記のようにしてキメラ酵素遺伝子を有する宿主を培養することにより、キメラ酵素を含有する培養物が得られる。キメラ酵素は、例えば、宿主の菌体内および/または培地中に蓄積し得る。「菌体」は、宿主の種類に応じて、適宜「細胞」と読み替えてよい。
 キメラ酵素が生産されたことは、例えば、培養上清等の適当な画分のセルラーゼ活性を測定することにより確認できる。
 キメラ酵素は、培養物等に含まれたまま使用してもよく、適宜、培養物等から分離精製し粗酵素画分又は精製酵素として使用してもよい。
 すなわち、例えば、宿主の菌体内にキメラ酵素が蓄積する場合、適宜、菌体を破砕、溶解、または抽出等し、キメラ酵素を回収することができる。菌体は、遠心分離等により培養物から回収することができる。細胞の破砕、溶解、または抽出等は、公知の方法により行うことができる。そのような方法としては、例えば、例えば、超音波破砕法、ダイノミル法、ビーズ破砕、フレンチプレス破砕、リゾチーム処理が挙げられる。これらの方法は、1種を単独で用いてもよく、2種またはそれ以上を適宜組み合わせて用いてもよい。また、例えば、培地にキメラ酵素が蓄積する場合、遠心分離等により培養上清を取得し、培養上清からキメラ酵素を回収することができる。
 キメラ酵素の精製は、酵素の精製に用いられる公知の方法により行うことができる。そのような方法としては、例えば、硫安分画、イオン交換クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、等電点沈殿が挙げられる。これらの方法は、1種を単独で用いてもよく、2種またはそれ以上を適宜組み合わせて用いてもよい。キメラ酵素の精製は、所望の程度に行うことができる。
 精製されたキメラ酵素は、「キメラ酵素」としてセルロースの分解等の用途に利用できる。キメラ酵素は、遊離の状態で利用されてもよいし、樹脂等の固相に固定化された固定化酵素の状態で利用されてもよい。
 また、精製されたキメラ酵素に限られず、キメラ酵素を含有する任意の画分を「キメラ酵素」としてセルロースの分解等の用途に利用してもよい。キメラ酵素を含有する画分は、キメラ酵素がセルロースに作用できるように含有される限り特に制限されない。そのような画分としては、例えば、培養物、培養上清、菌体処理物(破砕物、溶解物、抽出物(無細胞抽出液)、等)、それらの部分精製物(粗精製物)、それらの組み合わせが挙げられる。これらの画分は、いずれも、単独で利用されてもよいし、精製されたキメラ酵素と共に利用されてもよい。
 なお、培養物には、キメラ酵素とともに、他の酵素、例えば、他のセルラーゼや、キシラナーゼ、キシロビアーゼ(β-キシロシダーゼ)、アラビノフラノシダーゼ等のヘミセルラーゼ、も生成蓄積し得る。キメラ酵素は、そのような他の酵素との混合物として回収されてもよく、そのような他の酵素と分離して回収されてもよい。
 回収したキメラ酵素は、適宜、製剤化してもよい。剤形は特に制限されず、キメラ酵素の使用用途等の諸条件に応じて適宜設定することができる。剤形としては、例えば、液剤、懸濁剤、散剤、錠剤、丸剤、カプセル剤が挙げられる。製剤化にあたっては、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定化剤、矯味剤、矯臭剤、香料、希釈剤、界面活性剤等の薬理学的に許容される添加剤を使用することができる。
<3>キメラ酵素の利用
 キメラ酵素は、例えば、セルロースの分解に利用できる。具体的には、例えば、キメラ酵素を利用してセルロース系基質に含まれるセルロース成分を糖化することにより、グルコース等のセルロース分解物を含有する糖化液が得られる。すなわち、本発明は、キメラ酵素でセルロース系基質を処理することを含む、セルロース系基質の糖化方法を提供する。同方法の一態様は、キメラ酵素でセルロース系基質を処理することを含む、糖化物の製造方法である。
 セルロース系基質としては、植物バイオマスが挙げられる。植物バイオマスとしては、木質系バイオマスや草本系バイオマスが挙げられる。植物バイオマスとして、具体的には、例えば、稲わら、麦わら、籾殻、サトウキビバガス、オイルパーム空果房、コーンストーバ、コーンコブ、スイッチグラス、エリアンサス、ネピアグラス、廃木材が挙げられる。また、植物バイオマスとしては、製紙工程廃棄物等の植物バイオマスを原料とする製品の製造工程から排出される廃棄物や、古紙等の植物バイオマスを原料として製造された製品の破棄物も挙げられる。
 植物バイオマス等のセルロース系基質は、そのまま、あるいは適宜、前処理に供してから、糖化処理に供してよい。すなわち、目的物質の製造法は、糖化処理前に、セルロース系基質を前処理に供することを含んでいてもよい。前処理方法としては、例えば、水熱分解処理、酸処理、アルカリ処理、溶媒処理、キャビテーション処理、超臨界水処理、蒸煮、爆砕、粉砕が挙げられる。これらの中では、水熱分解処理が好ましい。これらの前処理は、単独で用いてもよく、組み合わせて用いてもよい。例えば、セルロース系基質は、5mm以下に粉砕して、水熱分解処理に供してもよい。
 水熱分解処理は、例えば、好ましくは175~240℃、より好ましくは200~230℃の加圧熱水を用いて行うことができる。植物バイオマス等のセルロース系基質は、一般的に、セルロース、ヘミセルロース、リグニン等の成分で構成されるが、ヘミセルロース成分は約140℃以上で、セルロースは約230℃以上で、リグニン成分は約140℃以上で溶解する。よって、セルロース成分と他の成分とを十分に分離するためには、上記範囲の温度で水熱分解処理を行うのが好ましい。水熱分解処理の反応圧力は、反応系が加圧熱水の状態となるよう、各温度の水の飽和蒸気圧より更に0.1~0.5MPa高い圧力とするのが好ましい。水熱分解処理の反応時間は、例えば、通常20分以下、好ましくは3~15分であってよい。水熱分解処理は、1回行われてもよく、2回またはそれ以上行われてもよい。水熱分解処理が2回またはそれ以上行われる場合、各回の水熱分解処理の実施条件は、同一であってもよく、同一でなくてもよい。上記のような水熱分解処理は、セルロース系基質を加圧熱水と対向接触させることにより行うことができる。このような処理は、例えば、特許第4436429号公報、特許4524351号公報、又は特許第4427583号公報に記載された装置を用いて行うことができる。セルロース系基質の水熱分解処理によって、リグニン成分及びヘミセルロース成分はセルロース系基質から熱水中に移行し、セルロース成分は固形分として残る。水熱分解処理後、必要により熱水と固形分とを分離し、糖化を行えばよい。
 酸処理は、セルロース系基質と酸を接触させることにより行うことができる。酸処理に用いられる酸としては、無機酸や有機酸が挙げられる。無機酸としては、例えば、硫酸、硝酸、塩酸が挙げられる。中でも、硫酸が好ましい。酸処理における酸の濃度は、例えば、0.1~15重量%、好ましくは0.5~5重量%であってよい。酸処理の反応温度は、例えば、100~300℃、好ましくは120~250℃であってよい。酸処理の反応時間は、例えば、1秒~60分であってよい。酸処理の回数は特に制限されず、酸処理は、1回行われてもよく、2回またはそれ以上行われてもよい。酸処理が2回またはそれ以上行われる場合、各回の酸処理の実施条件は、同一であってもよく、同一でなくてもよい。酸処理においては、一般的に、ヘミセルロース成分が先に加水分解される。よって、酸処理によって、例えば、ヘミセルロース由来のキシロースを多く含む液体画分と、セルロース成分を多く含む固形画分が得られ得る。酸処理後、必要により中和や固液分離等の処理を行い、糖化を行えばよい。中和は、適当なアルカリを用いて実施できる。中和に用いられるアルカリとしては、例えば、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の1価のアルカリや、水酸化カルシウム等の2価以上のアルカリが挙げられる。中でも、例えば塩の析出を防止する観点から、1価のアルカリが好ましい場合があり得る。
 アルカリ処理は、セルロース系基質とアルカリを接触させることにより行うことができる。アルカリ処理に用いられるアルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、アンモニアが挙げられる。アルカリ処理におけるアルカリの濃度は、例えば、0.1~60重量%であってよい。アルカリ処理の反応温度は、例えば、100~200℃、好ましくは110~180℃であってよい。また、アンモニアを用いる場合の処理条件としては、特開2008-161125や特開2008-535664に記載の条件が挙げられる。アルカリ処理の回数は特に制限されず、アルカリ処理は、1回行われてもよく、2回またはそれ以上行われてもよい。アルカリ処理が2回またはそれ以上行われる場合、各回のアルカリ処理の実施条件は、同一であってもよく、同一でなくてもよい。アルカリ処理後、必要により中和や固液分離等の処理を行い、糖化を行えばよい。中和は、適当な酸を用いて実施できる。中和に用いられる酸としては、例えば、硝酸や塩酸等の1価の酸や、硫酸やリン酸等の2価以上の酸が挙げられる。中でも、例えば塩の析出を防止する観点から、1価の酸が好ましい場合があり得る。
 糖化反応は、水や緩衝液等の適当な水性溶媒中で行うことができる。反応条件は、例えば、公知のセルラーゼ等の糖化酵素の反応条件を参照して、または予備実験に基づき、適宜設定することができる。反応温度は、例えば、通常5~95℃であってよい。pHは、例えば、通常1~11であってよい。酵素量は、例えば、基質固形量1 g当り、0.001~10 gであってよい。反応時間は、例えば、通常12~144時間であってよい。酵素反応は、静置で行ってもよく、撹拌しながら行ってもよい。糖化反応には、キメラ酵素を単独で用いてもよく、他の糖化酵素を併用してもよい。
 キメラ酵素やその他の糖化酵素は、回収して再利用してもよい。例えば、糖化酵素を植物バイオマス等のセルロース系基質に結合させて回収し再利用することができる(特開2010-098951号公報、WO2016/043281)。
 具体的には、下記工程(A)~(C)を含む方法により、キメラ酵素やその他の糖化酵素を再利用しながら、セルロース系基質を糖化することができる(WO2016/043281):
(A)第1のセルロース系基質を酵素糖化して得られた、遊離の糖化酵素を含有する第1の糖化液と、第2のセルロース系基質とを接触させる工程、
(B)前記工程(A)の後に、前記第2のセルロース系基質を回収する工程、
(C)前記工程(B)の後に、前記第2のセルロース系基質を酵素糖化し第2の糖化液を得る工程。
 すなわち、第1の糖化液と第2のセルロース系基質とを接触させることにより、第1の糖化液中の遊離の糖化酵素(遊離のキメラ酵素、等)が第2のセルロース系基質に付着する。次いで、糖化酵素(キメラ酵素、等)が付着した第2のセルロース系基質を回収し、糖化酵素の基質および糖化酵素源として利用することにより、糖化酵素(キメラ酵素、等)を効率的に再利用でき、セルロース系基質を効率的に酵素糖化できる。
 このようにして得られた糖化液は、例えば、炭素源として微生物の培養に利用することができる。一態様においては、例えば、L-アミノ酸等の所望の目的物質の生産能を有する微生物をこのようにして得られた糖化液を炭素源として培養することにより、当該目的物質を製造することができる。糖化液は、そのまま、あるいは適宜、濃縮、希釈、乾燥、分画、精製等の処理に供してから、炭素源として微生物の培養に利用することができる。例えば、糖化により生成したグルコース等の成分を所望の程度に分離精製して炭素源として微生物の培養に利用してもよい。
 以下、実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこの実施例により限定されるものではない。
(1)酵素液と水熱処理バガスの調製
(1-1)Talaromyces cellulolyticus F09ΔcreA株の構築
 Talaromyces cellulolyticus S6-25株(NITE BP-01685。以下、S6-25株と記載)を親株として、以下の手順で遺伝子組み換え用の親株T. cellulolyticus F09株を構築した。
 S6-25株を5 g/L ソルカフロック(International Fiber Corp, North Tonawanda, NY, U. S. A)、24 g/L KH2PO4 、5 g/L (NH4)2SO4 、2 g/L Urea、1.2 g/L MgSO4・7H2 O、0.01 g/L ZnSO4・7H2O、0.01 g/L MnSO4・5H2O、0.01 g/L CuSO4・5H2O、20 g/L Bacto agarを含む培地に接種し、30℃で培養を行った。寒天培地上に形成させたコロニーの端付近をストローで打ち抜いたアガーディスク1個を、40 g/L ソルカフロック、10 g/L Bacto peptone、6 g/L KNO3、2 g/L Urea、1.6 g/L KCl、1.2 g/L MgSO4・7H2O、12 g/L KH2PO4を含む培地(pH4.0)に接種し、30℃、220 rpmで10~11日間旋回培養を行なった。次に、培養液5 mLをガラス濾過器(ポアサイズ:40~100μm)で濾過し、残存するソルカフロックおよび長い菌糸を除去した。得られた濾過液を遠心(5000 rpmで3分間)して菌糸を回収し、得られた菌糸を0.1 % Tween80、0.05 % MgSO4・7H2O、0.5 % NaClを含む溶液に懸濁し、懸濁液を遠心(5000 rpmで3分間)する洗浄操作を2回行った。洗浄後の菌体懸濁液の濁度(OD 660 nm)が1.0になるように適宜希釈し、1 mLをペトリディッシュ(底部径約35 mm)に分注し、15 Wの殺菌灯を用いて紫外線を照射した。照射後の菌体懸濁液を適宜希釈し、1.2 g/L 5-fluoroorotic acid、1 g/L Uracil、1 g/L Uridineを含む最少培地(10 g/L グルコース、10 mM NH4Cl、10 mM KH2PO4、7 mM KCl、2 mM MgSO4、0.06 mg/L H3BO3、0.26 mg/L (NH4)6Mo7O24・4H2O、1 mg/L FeCl3・6H2O、0.4 mg/L CuSO4・5H2O、0.08 mg/L MnCl2、2 mg/L ZnCl2、20g/L Bacto Agar)に播種し、30℃で培養を行った。5-fluoroorotic acidはUracil生合成経路の中間体のアナログであり、Uracil生合成経路が正常に機能している株に対して毒性を示す。よって、5-fluoroorotic acidを含む培地で選択することでUracil生合成経路に変異が入り機能しなくなった株を取得することができる。5-fluoroorotic acidを含む培地で生育した変異株を、1 g/L Uracil、1 g/L Uridineを含む最少培地とこれらを含まない最少培地に植え継ぎ、1 g/L Uracil、1 g/L Uridineを含む最少培地でのみ生育した株をF09株とした。5-fluoroorotic acid耐性を示す株ではpyrF遺伝子またはpyrG遺伝子に変異が入り機能しなくなっている可能性が高い。そこで、F09株のゲノムDNA上のこれら遺伝子の領域について塩基配列の決定を行った。その結果、F09株ではpyrF遺伝子(配列番号1)の629番目の塩基がAからGに変化しており、この変異によりpyrF遺伝子産物が機能しなくなっていると推察された。
 次に、T. cellulolyticus F09株を親株として、以下の手順により、creA遺伝子(配列番号2)を破壊し、T. cellulolyticus F09ΔcreA株を構築した。creA遺伝子は、カタボライトリプレッションに関与する転写因子をコードする遺伝子である。creA遺伝子は、糸状菌において、セルラーゼの発現に関与していることが知られている(Mol Gen Genet. 1996 Jun 24;251(4):451-60、Biosci Biotechnol Biochem. 1998 Dec;62(12):2364-70)。creA遺伝子の破壊により、T. cellulolyticusのセルラーゼ生産能を向上させることができる(WO2015/093467)。
 はじめに、T. cellulolyticusのcreA遺伝子上流領域、pyrF遺伝子マーカー、creA遺伝子下流領域の順に連結された塩基配列を有するcreA破壊用DNA断片を以下の手順に従って作成した。T. cellulolyticus Y-94株(FERM BP-5826)のゲノムDNAを鋳型としてプライマー(配列番号3 と4)を用いたPCRによりcreA遺伝子の上流領域を、プライマー(配列番号5と6)を用いたPCRによりcreA遺伝子の下流領域をそれぞれ増幅した。また、T. cellulolyticus Y-94株(FERM BP-5826)のゲノムDNAを鋳型としてプライマー(配列番号7と8)を用いたPCRにより、pyrF遺伝子の全領域(プロモーターとターミネーターを含む)を増幅した。PCR産物はWizard SV Gel and PCR Clean-Up System(Promega)を用いて精製した。精製したPCR産物をIn-Fusion HD Cloning Kit(タカラバイオ)によりキット付属のpUCプラスミドに組み込み連結した。反応物でE. coli JM109を形質転換し、LB寒天培地(100 mg/L アンピシリンを含む)で37℃一晩培養することでコロニーを形成させた。得られた形質転換体からWizard Plus Miniprep System(Promega)を用いcreA破壊用DNA断片が組み込まれたpUC-creA::pyrFプラスミドを得た。pUC-creA::pyrFプラスミドを鋳型としてプライマー(配列番号3と6)を用いたPCRによりcreA破壊用DNA断片を増幅し、エタノール沈殿により濃縮および精製した。
 次に、F09株を12 g/L Potato Dextrose Broth(Difco)、20 g/L Bacto Agar(Difco)を含む培地に接種し、30℃で培養を行った。寒天培地上に形成させたコロニーの端付近をストローで打ち抜いて得たアガーディスク1個を、24 g/L Potato Dextrose Brothを含む培地に接種し、30℃、220 rpmで2日間旋回培養した。菌体を遠心分離(5000 rpm、5分間)で回収し、10g/L Yatalase(タカラバイオ)、10 mM KH2PO4、0.8 M NaClを含む水溶液(pH6.0)を30 mL加え、振とうしながら30℃で2時間反応させ、細胞壁を消化しプロトプラスト化した。ガラスフィルターで残渣を除いた後、遠心分離(2000 rpm、10分間)でプロトプラストを回収し、1.2 M Sorbitol、10 mM CaCl2を含むTris-HCl緩衝液(pH7.5)にて1 mLに懸濁しプロトプラスト溶液を調製した。200 μLのプロトプラスト溶液に、精製したcreA破壊用DNA断片を10μgと、400 g/L PEG4000、10mM CaCl2を含むTris-HCl緩衝液(pH7.5)を50 μL加え、氷上で30分間放置した。その後さらに1 mLの400 g/L PEG4000、10mM CaCl2を含むTris-HCl緩衝液(pH7.5)を加えて混合し、室温で15分間放置し形質転換を行った。遠心分離(2000 rpm、10分間)で回収したプロトプラストを1 M Sucroseを含む最少培地に播種し、30℃で7日間培養することで、Uracil要求性が相補された株を選抜した。出現したコロニーを最少培地に接種し30℃で4日間培養した後、creA遺伝子領域がpyrF遺伝子で置換されていることを確認し、F09ΔcreA株を得た。
(1-2)酵素液の調製
 F09ΔcreA株を、12 g/L Potato Dextrose Broth(Difco)、20 g/L Bacto Agar(Difco)を含む培地に接種し、30℃で培養を行った。寒天培地上に形成させたコロニーの端付近をストローで打ち抜いて得たアガーディスク1個を、20 mL の20 g/L グルコース、24 g/L KH2PO4、5 g/L (NH4)2SO4、2 g/L Urea、1.2 g/L MgSO4・7H2O、0.01 g/L ZnSO4・7H2O、0.01 g/L MnSO4・5H2O、0.01 g/L CuSO4・5H2O、1 g/L Corn steep liquor(C4648, SIGMA)、1 g/L Tween 80を含む液体培地に接種し、30℃、220 rpmで5日間旋回培養にて前培養を行なった。次に、15 mLの前培養液を、ジャーファーメンター中の300 mLの15 g/L グルコース、12 g/L KH2PO4、10 g/L (NH4)2SO4、1.2 g/L MgSO4・7H2O、0.01 g/L ZnSO4・7H2O、0.01 g/L MnSO4・5H2O、0.01 g/L CuSO4・5H2O、5 g/L Corn steep liquor、1 g/L Tween 80、0.5 mL/L ディスホームGD(日油)を含む液体培地に植菌し、培養温度を30℃、通気量を1/2 vvmとし、撹拌により溶存酸素濃度を飽和濃度に対し5%以上に制御し、アンモニアガスを用いて培養pHを5に制御しながら、78時間の流加培養を行った。流加液の組成は360 g/L Glucose、60 g/L Cellobiose、0.5 mL/L ディスホームGDとし、流加液は培養開始22時間後から連続的に流加した。培養開始72時間後に培養液をサンプリングし、遠心分離(15000 rpmで5分間)して上清を得た。得られた上清を酵素液とした。
(1-3)水熱処理バガスの調製
 バガスはカッティングミル(SM100, Retsch、スクリーン0.75 mm)を用いて粉砕した。バガスを水に7%(w/v)で混合して一晩浸漬させた後、バッチ式小型水熱処理装置(070-07013, オーエムラボテック)で水熱処理を行った。水熱処理は、攪拌速度を200 rpmで一定とし、200℃で15分行った。水熱処理後の水熱処理スラリーは、濾紙(5C, Advantec)を用いた吸引ろ過で固液分離し、水で洗浄した。得られた固形分を水熱処理バガスとした。
(2)水熱処理バガスに対する酵素液中の糖質加水分解酵素群の結合能評価
 50 mM クエン酸ナトリウム緩衝液(pH5.1)中に、5%(w/v)相当の水熱処理バガスと、20%(v/v)相当の酵素液(T. cellulolyticus F09ΔcreA株の培養上清)を添加し、50℃で24時間振とうしながら反応させた。次いで、5%(w/v)相当の水熱処理バガスを追加してよく混合してから遠心分離して(15000 rpmで5分間)して上清を得、酵素回収後サンプルとした。また、50 mM クエン酸ナトリウム緩衝液(pH5.1)中に20%(v/v)相当の酵素液(T. cellulolyticus F09ΔcreA株の培養上清)を添加したものを糖化反応前サンプルとした。
 これら2つのサンプルをタンパク質量として40 μg分取し、200 ng/μL Trypsinで37℃18時間の処理を行い、0.01 % TFA / 2% ACNの溶液に溶解させ、0.5 μg/μLの解析サンプルを調製した。これらの解析サンプルをLC-MSによるプロテオーム解析に供し、検出されたペプチドからタンパク質を同定すると同時に、その際に得られたピーク数から各タンパク質の存在量比を評価した。特定のタンパク質について、それぞれ、糖化反応前サンプル中の当該タンパク質の存在量を100 %とした際の、酵素回収後サンプル中の当該タンパク質の存在量の比率を算出した。当該比率が低い程、水熱処理バガスへ結合率が高いことを示す。Cbh1(配列番号9)、Cbh2(配列番号10)、Bgl3A(配列番号11)、Eg5A(配列番号12)、Eg5X1(配列番号13)、Eg5X2(配列番号14)、Eg7B(配列番号15)、Xyl10A(配列番号16)の結果を図1に示す。この結果から、特にCbh2、Eg5X2、Xyl10AのCBMは、Cbh1、Bgl3A、Eg5A、Eg5X1、Eg7BのCBMに比較して、水熱処理バガスに対する結合能が高いことが示された。
(3)T. cellulolyticus由来Bgl3Aのセルロース系基質への結合能の改良
(3-1)キメラ酵素生産株の構築
 図2に示すようにT. cellulolyticusのBgl3AのC末端に存在するCBMを含む領域をT. cellulolyticusのXyl10AのCBMを含む領域で置換した2種類のキメラ酵素(Bgl3A-10LC及びBgl3A-10C)をデザインした。これらのキメラ酵素、野生型のBgl3A(Bgl3Awt)、並びにリンカー領域及びCBMを欠失したBgl3A(Bgl3AΔLC)をそれぞれ分泌発現する株を構築するために、以下の方法で4種の発現プラスミドpANC239、pANC247、pANC248、pANC244を構築した。
 T. cellulolyticus Y-94株(FERM BP-5826)のゲノムDNAを鋳型としてプライマー(配列番号17と18)を用いたPCRによって、bgl3A遺伝子を増幅した。PCR産物はMin Elute PCR Purification Kit(QIAGEN)を用いて精製した。精製したPCR産物と、pANC202プラスミド(J Ind Microbiol Biotechnol. 2013 Aug;40(8):823-30)を制限酵素EcoRVとSbfIによって切断した産物とを、DNA Ligation Kit(Takara)を用いてライゲーションした。ライゲーション産物でE. coli DH5αを形質転換し、LB寒天培地(100 mg/L アンピシリンを含む)で37℃一晩培養することでコロニーを形成させた。得られた形質転換体からQIAprep Spin Miniprep kit(QIAGEN)を用いpANC211プラスミドを得た。pANC211をT. cellulolyticus YP-4株に形質転換(Biosci Biotechnol Biochem. 2012;76(2):245-9)した。YP-4株は、T. cellulolyticus Y-94株(FERM BP-5826)のウラシル要求性株である(AMB Express. 2013; 3: 73.)。得られた形質転換株よりFAST RNA Pro Blue Kit(Qbiogene)及びRNeasy Mini Kit(QIAGEN)を用いてRNAを精製した。得られたRNAからM-MLV逆転写酵素(Takara)を用いてcDNAを調製し、cDNAを鋳型としてプライマー(配列番号17と18)を用いたPCRによって、bgl3A遺伝子のcDNAを増幅した。PCR産物はMin Elute PCR Purification Kit(QIAGEN)を用いて精製した。精製したPCR産物と、pANC202プラスミド(J Ind Microbiol Biotechnol. 2013 Aug;40(8):823-30)を制限酵素EcoRVとSbfIによって切断した産物とを、DNA Ligation Kit(Takara)を用いてライゲーションした。ライゲーション産物でE. coli DH5αを形質転換し、LB寒天培地(100 mg/L アンピシリンを含む)で37℃一晩培養することでコロニーを形成させた。得られた形質転換体からQIAprep Spin Miniprep kit(QIAGEN)を用い、野生型Bgl3A(Bgl3Awt)の発現プラスミドpANC239を得た。同プラスミドに搭載されたbgl3A遺伝子のcDNAの塩基配列および野生型Bgl3Aのアミノ酸配列を、配列番号27および11にそれぞれ示す。
 次に、pANC239を鋳型としてプライマー(配列番号17と20)を用いたPCRによって、リンカー領域とCBM領域をコードする部分を欠失したbgl3A遺伝子を増幅した。PCR産物はHpaIとSbfIによって切断した後、Min Elute PCR Purification Kit(QIAGEN)を用いて精製した。精製したPCR産物と、pANC202プラスミド(J Ind Microbiol Biotechnol. 2013 Aug;40(8):823-30)を制限酵素EcoRVとSbfIによって切断した産物とを、DNA Ligation Kit(Takara)を用いてライゲーションした。ライゲーション産物でE. coli DH5αを形質転換し、LB寒天培地(100 mg/L アンピシリンを含む)で37℃一晩培養することでコロニーを形成させた。得られた形質転換体からQIAprep Spin Miniprep kit(QIAGEN)を用いpANC108プラスミドを得た。別途、pANC208プラスミド(Protein Expr. Purif. 2014;94:40-45)を鋳型としてプライマー(配列番号21と22)を用いたPCRによって、T. cellulolyticusのXyl10A遺伝子のリンカー領域とCBMをコードするDNA断片を増幅した。PCR産物はSbfIによって切断した後、Min Elute PCR Purification Kit(QIAGEN)を用いて精製した。精製したPCR産物と、pANC108プラスミドをSfoIとSbfIで切断した産物とを、DNA Ligation Kit(Takara)を用いてライゲーションした。ライゲーション産物でE. coli DH5αを形質転換し、LB寒天培地(100 mg/L アンピシリンを含む)で37℃一晩培養することでコロニーを形成させた。得られた形質転換体からQIAprep Spin Miniprep kit(QIAGEN)を用い、キメラ酵素Bgl3A-10LCの発現プラスミドpANC247を得た。同プラスミドに搭載されたBgl3A-10LCをコードする遺伝子の塩基配列およびBgl3A-10LCのアミノ酸配列を、配列番号33および34にそれぞれ示す。
 また、pANC239を鋳型としてプライマー(配列番号17と23)を用いたPCRによって、リンカー領域の一部とCBM領域をコードする部分を欠失したbgl3A遺伝子を増幅した。PCR産物はHpaIとSbfIによって切断した後、 Min Elute PCR Purification Kit(QIAGEN)を用いて精製した。精製したPCR産物と、pANC202プラスミド(J Ind Microbiol Biotechnol. 2013 Aug;40(8):823-30)を制限酵素EcoRVとSbfIによって切断した産物とを、DNA Ligation Kit(Takara)を用いてライゲーションした。ライゲーション産物でE. coli DH5αを形質転換し、LB寒天培地(100 mg/L アンピシリンを含む)で37℃一晩培養することでコロニーを形成させた。得られた形質転換体からQIAprep Spin Miniprep kit(QIAGEN)を用いpANC110プラスミドを得た。別途、pANC208プラスミド(Protein Expr. Purif. 2014;94:40-45)を鋳型としてプライマー(配列番号24と22)を用いたPCRによって、T. cellulolyticus CF-2612株のXyl10A遺伝子のCBMをコードするDNA断片を増幅した。PCR産物はSbfIによって切断した後、Min Elute PCR Purification Kit(QIAGEN)を用いて精製した。精製したPCR産物と、pANC110プラスミドをSfoIとSbfIで切断した産物とを、DNA Ligation Kit(Takara)を用いてライゲーションした。ライゲーション産物でE. coli DH5αを形質転換し、LB寒天培地(100 mg/L アンピシリンを含む)で37℃一晩培養することでコロニーを形成させた。得られた形質転換体からQIAprep Spin Miniprep kit(QIAGEN)を用い、Bgl3A-10Cの発現プラスミドpANC248を得た。同プラスミドに搭載されたBgl3A-10Cをコードする遺伝子の塩基配列およびBgl3A-10Cのアミノ酸配列を、配列番号35および36にそれぞれ示す。
 さらに、pANC239を鋳型としてプライマー(配列番号17と19)を用いたPCRによって、リンカー領域とCBM領域をコードする部分を欠失したbgl3A遺伝子を増幅した。PCR産物を、pANC202を制限酵素EcoRVとSbfIによって切断した産物とライゲーションした。ライゲーション産物でE. coli DH5αを形質転換し、LB寒天培地(100 mg/L アンピシリンを含む)で37℃一晩培養することでコロニーを形成させた。得られた形質転換体からQIAprep Spin Miniprep kit(QIAGEN)を用い、Bgl3AΔLCの発現プラスミドpANC244を得た。同プラスミドに搭載されたBgl3AΔLCをコードする遺伝子の塩基配列およびBgl3AΔLCのアミノ酸配列を、配列番号37および38にそれぞれ示す。
 pANC239、pANC247、pANC248、pANC244に搭載された各bgl3A遺伝子は、glaAプロモーターの制御下で発現する。glaAプロモーターからの遺伝子の発現は、デンプンにより誘導することができる。
 pANC239、pANC247、pANC248、pANC244をそれぞれT. cellulolyticus YP-4株に形質転換(Biosci Biotechnol Biochem. 2012;76(2):245-9)し、Y239株、Y247株、Y248株、Y244株を取得した。
(3-2)キメラ酵素の発現
 Y239株、Y247株、Y248株、Y244株を、それぞれ、12 g/L Potato Dextrose Broth(Difco)、20 g/L Bacto Agar(Difco)を含む培地に接種し、30℃で培養を行った。寒天培地上に形成させたコロニーの端付近をストローで打ち抜いて得たアガーディスク1個を、フラスコ中の10 mL の20 g/Lの可溶化デンプン、24 g/L KH2PO4、1 g/L Tween 80, 5 g/L (NH4)2SO4、1.2 g/L MgSO4・7H2O、0.8 g/L ureaを含む培地に接種し、30℃、220 rpmで5日間旋回培養にて培養を行なった。
(3-3)キメラ酵素の精製
 培養後、培養液を遠心分離して上清を得た。得られた培養上清中に各Bgl3Aが含まれていることをSDS-PAGEおよびクロマトグラフィーで確認した。これらの培養上清をHiPrep 26/10脱塩クロマトグラフィー(GE Healthcare)を用いて脱塩後、Resource Q陰イオン交換クロマトグラフィー(GE Healthcare)及びResource ISO疎水カラムクロマトグラフィー(GE Healthcare)に供して各Bgl3AがSDS-PAGEで単一のバンドで検出されるまで精製した。
(3-4)キメラ酵素の活性測定
 各精製酵素(精製した各Bgl3A)の活性を、pNP-β-D-Glucoseを基質として測定した。1 Uの酵素活性は、1分間に1μmolのpNP(p-ニトロフェノール)を生成する酵素活性として定義した。その結果、Bgl3A-10LC、Bgl3A-10C、Bgl3AΔLCは、いずれも、Bgl3Awtとほぼ同等の比活性を示した(表1)。本結果は、CBMやリンカーの置換または欠失がBgl3Aの触媒ドメインの機能にほとんど影響を及ぼさないことを示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000001
(3-5)キメラ酵素のセルロース系基質への結合能の評価
 各精製酵素(精製した各Bgl3A)のセルロース系基質への結合能の評価は、50 mM酢酸Na (pH 5.0)に懸濁した2%アビセル、3%ディスクミル粉砕稲わら、2%水熱処理バガスを基質に用いて行った。各基質懸濁液1 mLに1 mg/mLの各精製酵素を10μL添加し、45℃で2時間保温後、上清中に残存するBgl3A活性をpNP-β-D-Glucoseを用いて測定した。コントロールとして、各基質懸濁液の上清1 mLに1 mg/mLの各精製酵素を10μL添加し、30℃で2時間保温後、溶液中に残存するBgl3A活性をpNP-β-D-Glucoseを用いて測定した。セルロース系基質との反応後上清の活性を、コントロールで得られた活性を100とした場合の相対活性として求めた。当該相対活性が低い程、セルロース系基質に結合した比率が高いことを示す。結果を表2に示す。CBMを保持しているBgl3A(Bgl3Awt, Bgl3A-10LC, Bgl3A-10C)は、バガス>アビセル>稲わらの順に高い比率で結合した。一方、CBMを保持しないBgl3AΔLCはいずれのセルロース系基質にもほとんど結合しなかった。よって、Bgl3Aのセルロース系基質への結合は、CBMに依存していることが分かった。また、キシラナーゼ(Xyl10A)のCBMが導入されたBgl3A-10LC及びBgl3A-10Cは、セルラーゼの固有のCBMを保持するBgl3Awtよりも、アビセルに対して約2.2倍、稲わらに対して約2.5、バガスに対して1.6~2.8倍高い結合能を示した。これらの結果は、Xyl10AのCBMがセルロース系基質への高い結合能に寄与していることを示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000002
(3-6)キメラ酵素のセルロース系基質に対する糖化能の評価
 50 mM クエン酸ナトリウム緩衝液(pH 5.1)中に、5 %(w/v)相当の水熱処理バガスと、T. cellulolyticus F09ΔcreA株の培養上清(実施例(2))および各精製Bgl3Aを添加し、50℃で24時間振とうしながら反応させた。T. cellulolyticus培養上清の添加量は5.92 mg-protein/g-バガスTSとし、各精製Bgl3Aの添加量は0.592 mg-protein/g-バガスTSとした。反応24時間後に上清を回収し、バイオッテクアナライザーAS-310(サクラエスアイ)にてグルコース濃度を測定した。その結果を表3に示す。Bgl3A添加なしの区(T. cellulolyticus培養上清のみを添加した区)と比較して各精製Bgl3A添加区(T. cellulolyticus培養上清と各精製Bgl3Aを添加した区)では生成グルコース濃度が上昇していることが認められたが、各精製Bgl3A添加区間での生成グルコース濃度に差は認められなかった。この結果は、CBMの置換または欠失によってセルロース系基質に対する糖化能が変化していないことを示している。また、この結果は、Bgl3Aのセルロース系基質に対する結合能が向上することによってセルロース系基質に対する糖化能が低下していないことも示している。以上のことから、酵素回収に有利なセルロース系基質に対する結合能の高いキメラ酵素を、セルロース系基質に対する糖化能を落とさずに構築できることが示された。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000003
 本発明により、セルロース系基質への結合能が高いセルラーゼが提供される。同セルラーゼは、例えば、セルロース系基質への結合を利用した酵素回収および再利用に有用である。
<配列表の説明>
配列番号1:Talaromyces cellulolyticusのpyrF遺伝子の塩基配列
配列番号2:Talaromyces cellulolyticusのcreA遺伝子の塩基配列
配列番号3~8:プライマー
配列番号9:Talaromyces cellulolyticusのCbh1タンパク質のアミノ酸配列
配列番号10:Talaromyces cellulolyticusのCbh2タンパク質のアミノ酸配列
配列番号11:Talaromyces cellulolyticusのBgl3Aタンパク質のアミノ酸配列
配列番号12:Talaromyces cellulolyticusのEg5Aタンパク質のアミノ酸配列
配列番号13:Talaromyces cellulolyticusのEg5X1タンパク質のアミノ酸配列
配列番号14:Talaromyces cellulolyticusのEg5X2タンパク質のアミノ酸配列
配列番号15:Talaromyces cellulolyticusのEg7Bタンパク質のアミノ酸配列
配列番号16:Talaromyces cellulolyticusのXyl10Aタンパク質のアミノ酸配列
配列番号17~24:プライマー
配列番号25:Talaromyces cellulolyticusのcbh1遺伝子の塩基配列
配列番号26:Talaromyces cellulolyticusのcbh2遺伝子の塩基配列
配列番号27:Talaromyces cellulolyticusのbgl3A遺伝子の塩基配列
配列番号28:Talaromyces cellulolyticusのeg5A遺伝子の塩基配列
配列番号29:Talaromyces cellulolyticusのeg5X1遺伝子の塩基配列
配列番号30:Talaromyces cellulolyticusのeg5X2遺伝子の塩基配列
配列番号31:Talaromyces cellulolyticusのeg7B遺伝子の塩基配列
配列番号32:Talaromyces cellulolyticusのxyl10A遺伝子の塩基配列
配列番号33:Bgl3A-10LCをコードする遺伝子の塩基配列
配列番号34:Bgl3A-10LCのアミノ酸配列
配列番号35:Bgl3A-10Cをコードする遺伝子の塩基配列
配列番号36:Bgl3A-10Cのアミノ酸配列
配列番号37:Bgl3A-ΔLCをコードする遺伝子の塩基配列
配列番号38:Bgl3A-ΔLCのアミノ酸配列

Claims (19)

  1.  キシラナーゼの糖質結合モジュールを有し、且つ、セルラーゼ活性を有するタンパク質。
  2.  キシラナーゼの糖質結合モジュールとセルラーゼの触媒ドメインを有するタンパク質である、請求項1に記載のタンパク質。
  3.  前記糖質結合モジュールが、糖質結合モジュールのファミリー1に分類される糖質結合モジュールである、請求項1または2に記載のタンパク質。
  4.  前記糖質結合モジュールが、Xyl10Aの糖質結合モジュールである、請求項1~3のいずれか1項に記載のタンパク質。
  5.  前記糖質結合モジュールが、下記(a)、(b)、または(c)に記載のアミノ酸配列を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のタンパク質:
    (a)配列番号16の375位~403位のアミノ酸配列;
    (b)配列番号16の375位~403位のアミノ酸配列において、1~5個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、および/または付加を含み、セルロース系基質に対する結合能を有するアミノ酸配列;
    (c)配列番号16の375位~403位のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有し、セルロース系基質に対する結合能を有するアミノ酸配列。
  6.  前記触媒ドメインが、β-グルコシダーゼの触媒ドメインである、請求項2~5のいずれか1項に記載のタンパク質。
  7.  前記触媒ドメインが、グリコシドハイドロラーゼのファミリー3に分類されるセルラーゼの触媒ドメインである、請求項2~6のいずれか1項に記載のタンパク質。
  8.  前記触媒ドメインが、Bgl3Aの触媒ドメインである、請求項2~7のいずれか1項に記載のタンパク質。
  9.  前記触媒ドメインが、下記(a)、(b)、または(c)に記載のアミノ酸配列を含む、請求項2~8のいずれか1項に記載のタンパク質:
    (a)配列番号11の25位~601位のアミノ酸配列;
    (b)配列番号11の25位~601位のアミノ酸配列において、1~10個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、および/または付加を含み、セルラーゼ活性を有するアミノ酸配列;
    (c)配列番号11の25位~601位のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有し、セルラーゼ活性を有するアミノ酸配列。
  10.  前記糖質結合モジュールと前記触媒ドメインとの間にリンカー領域を有する、請求項2~9のいずれか1項に記載のタンパク質。
  11.  フィブロネクチンIII型様ドメインを有する、請求項2~10のいずれか1項に記載のタンパク質。
  12.  前記触媒ドメインが由来するセルラーゼの固有の糖質結合モジュールを有さない、請求項2~11のいずれか1項に記載のタンパク質。
  13.  下記(a)、(b)、または(c)に記載のタンパク質である、請求項1~12のいずれか1項に記載のタンパク質:
    (a)配列番号34または36に示すアミノ酸配列を含むタンパク質;
    (b)配列番号34または36に示すアミノ酸配列において、1~10個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、および/または付加を含むアミノ酸配列を含み、且つ、セルラーゼ活性を有するタンパク質;
    (c)配列番号34または36に示すアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、且つ、セルラーゼ活性を有するタンパク質。
  14.  請求項1~13のいずれか1項に記載のタンパク質をコードする遺伝子。
  15.  請求項14に記載の遺伝子を搭載するベクター。
  16.  請求項14に記載の遺伝子を有する宿主。
  17.  細菌または真菌である、請求項16に記載の宿主。
  18.  請求項1~13のいずれか1項に記載のタンパク質でセルロース系基質を処理することを含む、糖化物の製造方法。
  19.  前記セルロース系基質が植物バイオマスである、請求項18に記載の方法。
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