WO2017150698A1 - がん免疫療法に利用可能な抗原性ポリペプチド及び当該ポリペプチドを含む抗腫瘍剤 - Google Patents

がん免疫療法に利用可能な抗原性ポリペプチド及び当該ポリペプチドを含む抗腫瘍剤 Download PDF

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Abstract

【課題】 本発明は、抗腫瘍剤として利用可能な新たな抗原性ポリペプチド及び当該ポリペプチドを含む抗腫瘍剤、特にがん免疫療法用ワクチンを提供することを目的とするものである。 【解決手段】 本発明は、下記のa)、b)又はc)のアミノ酸配列からなり、かつTWIST1タンパク質に特異的なCTL及び/又はヘルパーT細胞の誘導能を有するポリペプチドに関する: a)配列番号1に示されるアミノ酸配列; b)配列番号1に示されるアミノ酸配列のN末端及び/又はC末端に任意のアミノ酸が1~数十個付加されたアミノ酸配列; c)配列番号1に示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換された若しくは欠失した又は1若しくは数個のアミノ酸が挿入されたアミノ酸配列。本発明によればTWIST1タンパク質に特異的な細胞障害性T細胞及び/又はヘルパーT細胞、特にTh1細胞を誘導することができ、したがって本発明のポリペプチドは抗腫瘍剤の有効成分として、特にがんワクチンとして利用することができる。

Description

がん免疫療法に利用可能な抗原性ポリペプチド及び当該ポリペプチドを含む抗腫瘍剤
 本発明は、がん免疫療法に利用可能なTWIST1タンパク質由来の抗原性ポリペプチド及び当該ポリペプチドを含む抗腫瘍剤に関する。
 難治性の疾患であるがんに対する治療法の一つに、患者個体の持つ免疫系を利用してがん細胞を退縮させる、いわゆるがん免疫療法が挙げられる。この方法における重要な点は、如何にして免疫系にがん細胞を異物として認識させ、がん細胞に対して攻撃性を有する免疫細胞を導くかであり、そのようながん細胞に対する免疫応答を誘導することのできる抗腫瘍剤、いわゆるがんワクチンの研究開発が世界的に行われている。
 がんワクチンの典型的な態様は、がん細胞で特異的に又は大量に発現しているタンパク質(がん抗原タンパク質)の部分アミノ酸配列を有する免疫原性ポリペプチドである。これまでに、ウィルムス(Wilms)腫瘍遺伝子WT1にコードされているタンパク質であるWT1タンパク質、悪性黒色腫(メラノーマ)におけるMAGE、乳がんなどにおけるHER2/neu、大腸がんにおけるCEAその他多数のがん抗原タンパク質が報告され、それらに由来する免疫原性ポリペプチドを有効成分とするがんワクチンの開発が進められている。
 従来、がん免疫療法においては、CD8を発現している細胞傷害性T細胞(Cytotoxic T Lymphoma;CTL、Tc細胞又はキラーT細胞とも呼ばれる、以下、CTLと表す)の利用が注目されていた。CTLは、HLAクラスI分子に結合する抗原を提示している細胞を溶解するT細胞であり、標的となる細胞に直接的に作用してこれを排除する能力を有するからである。しかし、近年の研究で、CTLだけでなく、このCTLの誘導及び維持のためのヘルパー機能を有するヘルパーT細胞、特にTh1細胞を利用することが、がん免疫療法の有効性を高めるために重要であることが実験的に明らかにされてきている。
 このような観点に基づいて注目されているのが、がん抗原タンパク質に特異的なCTLを誘導する機能を有するエピトープ(キラーエピトープ)及びヘルパーT細胞を誘導するエピトープ(ヘルパーエピトープ)を含む免疫原性ポリペプチドである。例えば、MAGE-A4、サーバイビン又はWT1などのがん抗原タンパク質において、それぞれに存在する複数のキラーエピトープ及びヘルパーエピトープを含む人工ポリペプチドが設計され、一定の効果を収めている(例えばWT1について特許文献1)。
 TWIST1タンパク質は、ショウジョウバエ(Drosophila)の形態形成に係るtwistのヒトホモログタンパク質である。TWIST1タンパク質の機能として、アポトーシスの阻害、化学療法への抵抗性及びがんの転移に関与することが指摘されており(非特許文献1)、膀胱がん、大腸がん、卵巣がんその他のがんの検出及び予後予測などにおいてTWIST1タンパク質又はこれをコードする遺伝子の発現の検出が利用されている(例えば特許文献2、特許文献3)。
Miller SJ et al.Cancer Res.2006 66(5):2584-91
WO2015/129790号公報 WO2009/036922号公報 WO2012/130478号公報
 本発明は、抗腫瘍剤として利用可能な新たな抗原性ポリペプチド及び当該ポリペプチドを含む抗腫瘍剤、特にがん免疫療法用ワクチンを提供することを目的とする。
 本発明者らは、TWIST1タンパク質に由来する抗原性ポリペプチドのうち、特定のアミノ酸配列からなるポリペプチドを利用することで、がん細胞に対する免疫応答を誘導することができることを見いだし、下記の各発明を完成した。
(1)下記のa)、b)又はc)のアミノ酸配列からなり、かつTWIST1タンパク質に特異的なCTL及び/又はヘルパーT細胞の誘導能を有するポリペプチド。
 a)配列番号1に示されるアミノ酸配列;
 b)配列番号1に示されるアミノ酸配列のN末端及び/又はC末端に任意のアミノ酸が1~数十個付加されたアミノ酸配列;
 c)配列番号1に示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換された若しくは欠失した又は1若しくは数個のアミノ酸が挿入されたアミノ酸配列。
(2)c)のアミノ酸配列が配列番号11に示されるアミノ酸配列である、請求項1に記載のポリペプチド。
(3)下記のd)又はe)のアミノ酸配列からなり、かつTWIST1タンパク質に特異的な細胞障害性T細胞及び/又はヘルパーT細胞の誘導能を有するポリペプチド。
 d)配列番号11に示されるアミノ酸配列のN末端及び/又はC末端に任意のアミノ酸が1~数十個付加されたアミノ酸配列;
 e)配列番号11に示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換された又は1若しくは数個のアミノ酸が挿入されたアミノ酸配列。
(4)(1)~(3)のいずれか一項に記載のポリペプチドをコードする核酸。
(5)(4)に記載の核酸を含む、発現ベクター。
(6)(1)~(3)のいずれか一項に記載のポリペプチドの少なくとも一種以上と抗原提示細胞とCD8陽性ナイーブT細胞及び/又はCD4陽性ナイーブT細胞とをインビトロでインキュベートする工程を含む、TWIST1タンパク質に特異的なCTL及び/又はヘルパーT細胞を誘導する方法。
(7)(1)~(3)のいずれか一項に記載のポリペプチドの少なくとも一種以上、(4)に記載の核酸の少なくとも一種以上又は(5)に記載の発現ベクターを有効成分として含む、抗腫瘍剤。
(8)前記ポリペプチドに特異性なCTL及び/又はヘルパーT細胞をさらに含む、(7)に記載の抗腫瘍剤。
(9)前記ポリペプチドを提示する抗原提示細胞をさらに含む、(7)又は(8)に記載の抗腫瘍剤。
(10)(1)~(3)のいずれか一項に記載のポリペプチドの少なくとも一種以上、(4)に記載の核酸の少なくとも一種以上又は(5)に記載の発現ベクターを有効成分として含む、がんの転移抑制剤。
(11)前記ポリペプチドに特異性なCTL及び/又はヘルパーT細胞をさらに含む、(10)に記載のがん転移抑制剤。
(12)前記ポリペプチドを提示する抗原提示細胞をさらに含む、(10)又は(11)に記載のがん転移抑制剤。
 本発明のペプチドは、これを抗原提示細胞並びにCD8陽性ナイーブ細胞及び/又はCD4陽性ナイーブT細胞とインキュベートすることで、TWIST1タンパク質に特異的なCTL及び/又はヘルパーT細胞、特にTh1細胞を誘導することができ、またTWIST1タンパク質に特異的なヘルパーT細胞に対してサイトカインを産生させる活性を有している。これらCTL及び/又はヘルパーT細胞はTWIST1タンパク質を発現しているがん細胞に対して特異的に免疫応答することができ、したがって本発明のポリペプチドは抗腫瘍剤の有効成分として、特にがんワクチンとして利用することができる。
 また本発明のポリペプチドは、構成アミノ酸残基数が少なく、遺伝子組み換え手法に限らず、有機合成的方法によって大量に製造することができるので、臨床研究あるいは臨床応用において、安定的にかつ安価に供給され得る。
遺伝子型HLA-DR15を持つ末梢血単核球とインキュベートしたTWIST1Aポリペプチド特異的ヘルパーT細胞のTWIST1Aポリペプチドへの反応性を示す図である。 遺伝子型HLA-DR53を持つ末梢血単核球とインキュベートしたTWIST1Aポリペプチド特異的ヘルパーT細胞のTWIST1Aポリペプチドへの反応性を示す図である。 遺伝子型HLA-DR1を持つ末梢血単核球とインキュベートしたTWIST1Aポリペプチド特異的ヘルパーT細胞のTWIST1Aポリペプチドへの反応性を示す図である。 TWIST1Aポリペプチド特異的ヘルパーT細胞のHLA-DR15拘束性を示す図である。 TWIST1Aポリペプチド特異的ヘルパーT細胞のHLA-DR53陽性がん細胞株に対する反応性を示す図である。 TWIST1Aポリペプチド特異的ヘルパーT細胞のHLA-DR1陽性がん細胞株に対する反応性を示す図である。 がん患者由来末梢血単核球のTWIST1Aポリペプチドへの反応性を示す図である。 マウスにおけるTWIST1Aポリペプチド特異的な免疫応答を示す図である。 マウスにおけるTWIST1Aポリペプチドのがん細胞株肺転移抑制作用を示す図である。 TWIST1Aポリペプチドの部分アミノ酸配列からなるオーバーラッピングペプチドT1~T9のアミノ酸配列を表した図である。最小認識配列を下線で示す。 TWIST1Aポリペプチドに特異的に反応するTh細胞に対するオーバーラッピングペプチドT1~T9の反応性を表したグラフである。 がん細胞株が皮内接種されたヌードマウスにおけるTWIST1Aポリペプチド特異的ヘルパーT細胞の腫瘍増殖抑制能を示すグラフである。 がん細胞株が脾臓内接種されたヌードマウスにおけるTWIST1Aポリペプチド特異的ヘルパーT細胞の腫瘍転移抑制能を示すグラフである。
 本発明の第1の態様は、下記のa)、b)又はc)のアミノ酸配列からなり、かつTWIST1に特異的なCTL及び/又はヘルパーT細胞の誘導能を有するポリペプチドである。
 a)配列番号1に示されるアミノ酸配列;
 b)配列番号1に示されるアミノ酸配列のN末端及び/又はC末端に任意のアミノ酸が1~数十個付加されたアミノ酸配列;
 c)配列番号1に示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換された若しくは欠失した又は1若しくは数個のアミノ酸が挿入されたアミノ酸配列。
 Poon(Poon,E.C.C.、2011、Assessment of TWIST1 as an immunotherapeutic target of cancer.Doctoral thesis,University College London)によれば、TWIST1タンパク質の150番目~162番目に相当するアミノ酸配列は、キラーエピトープに相当する。配列番号1に示されるアミノ酸配列の10番目~22番目のアミノ酸配列はTWIST1タンパク質の150番目~162番目までのアミノ酸配列に相当し、したがって配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドは、前記キラーエピトープを含む。
 キラーエピトープを有する免疫原性ポリペプチドは、かかるポリペプチド及び適当なサイトカインの存在下で抗原提示細胞とCD8陽性ナイーブT細胞とをインキュベートすることによって、免疫原性ポリペプチドの由来である抗原タンパク質に特異的なT細胞(エフェクターT細胞)であるCTLを誘導することができる。したがって、配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドは、TWIST1タンパク質に特異的なCTLを誘導する能力を有する。
 また、後の実施例に示すように、配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドは、当該ポリペプチド及び適当なサイトカインの存在下で抗原提示細胞とCD4陽性ナイーブT細胞とをインキュベートすることによって、TWIST1タンパク質に特異的なエフェクターT細胞であるヘルパーT細胞、特にTh1細胞を誘導することができる。すなわち、配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドにはヘルパーT細胞を誘導し得るヘルパーエピトープが存在しており、TWIST1タンパク質に特異的なヘルパーT細胞を誘導する能力を有する。
 なお本発明における誘導とは、ナイーブT細胞を抗原特異的なT細胞であるエフェクターT細胞に分化させる又はナイーブT細胞をエフェクターT細胞として活性化させることと同義である。
 このように、配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドは、適当な条件下でCD8陽性ナイーブT細胞及び/又はCD4陽性ナイーブT細胞からTWIST1タンパク質に特異的なエフェクターT細胞であるCTL及び/又はヘルパーT細胞、特にTh1細胞を誘導することができる。このことは、配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドがTWIST1タンパク質に特異的なエフェクターT細胞によって認識される2種のエピトープを有しており、さらに当該エピトープが、TWIST1タンパク質を取り込んだ抗原提示細胞の表面に発現しているMHCクラスI分子及びクラスII分子によってそれぞれ提示されることを意味する。
 本発明の第1の態様には、b)配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドのN末端及び/又はC末端に任意のアミノ酸が1~数十個付加されたアミノ酸配列からなり、かつTWIST1タンパク質に特異的なCTL及び/又はヘルパーT細胞の誘導能を有するポリペプチドも包含される。付加されるアミノ酸は1~50個が好ましく、5~30個がより好ましく、10~20個が特に好ましい。
 抗原提示細胞は、内因性抗原やエンドサイトーシス等によって取り込んだ免疫原性タンパク質などをプロセッシングによってフラグメント化し、MHCクラスI又はクラスII分子などの抗原提示分子を介して、前記フラグメントを抗原として提示することが知られている。
 前述の通り、配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドに含まれているキラーエピトープ及びヘルパーエピトープは、抗原提示細胞内で当該ポリペプチドがプロセッシングを受けることで、抗原提示される。そのため、配列番号1に示されるアミノ酸配列のN末端及び/又はC末端に付加されたアミノ酸残基を有するポリペプチドも、抗原提示細胞のかかるプロセッシングによってフラグメント化されることで、最終的には配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドに含まれているキラーエピトープ及びヘルパーエピトープが抗原提示されることとなる。このように、配列番号1に示されるアミノ酸配列のN末端及び/又はC末端に付加されたアミノ酸残基を有するポリペプチドは、配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドと同様の誘導能を示し、本発明として利用することが可能である。
 本発明の第1の態様には、c)配列番号1に示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換された若しくは欠失した又は1若しくは数個のアミノ酸が挿入されたアミノ酸配列からなり、かつTWIST1タンパク質に特異的なCTL及び/又はヘルパーT細胞の誘導能を有するポリペプチドも含まれる。その好ましい例は抗原性に対するサイレント置換、欠失及び付加、特に保存性アミノ酸間の置換であり、配列番号1に示されるアミノ酸配列に含まれるキラーエピトープ及び又はヘルパーエピトープの抗原性を変化させないものである。
 1若しくは数個のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列からなるポリペプチドの例としては、配列番号1に示されるアミノ酸配列のN末端から1~3個のアミノ酸及び/又はN末端から1~8個のアミノ酸残基が欠失したアミノ酸配列からなるポリペプチドを挙げることができ、そのアミノ酸配列を配列番号11として示す。
 さらに、本発明の第1の態様には、d)配列番号11に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドのN末端及び/又はC末端に任意のアミノ酸が1~数十個付加されたアミノ酸配列からなり、かつTWIST1タンパク質に特異的なCTL及び/又はヘルパーT細胞の誘導能を有するポリペプチドも包含される。付加されるアミノ酸は1~50個が好ましく、5~30個がより好ましく、10~20個が特に好ましい。
 同様に、本発明の第1の態様には、e)配列番号11に示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換された又は1若しくは数個のアミノ酸が挿入されたアミノ酸配列からなり、かつTWIST1タンパク質に特異的なCTL及び/又はヘルパーT細胞の誘導能を有するポリペプチドも含まれる。その好ましい例は抗原性に対するサイレント置換、欠失及び付加、特に保存性アミノ酸間の置換であり、配列番号11に示されるアミノ酸配列に含まれるキラーエピトープ及び又はヘルパーエピトープの抗原性を変化させないものである。
 以下、配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドをTWIST1Aポリペプチドと、TWIST1Aポリペプチド、配列番号11に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド及び前記b)~e)のポリペプチドを纏めて表すときは本発明のポリペプチドと、それぞれ表記する。
 本発明のポリペプチドの、TWIST1タンパク質に特異的なCTL及び/又はヘルパーT細胞の誘導能は、前述のように、本発明のポリペプチド及び適当なサイトカインの存在下で抗原提示細胞とナイーブT細胞とをインキュベートし、TWIST1タンパク質に特異性を示すエフェクターT細胞が誘導されることを検出することで確認することができる。
 CD8陽性ナイーブT細胞及びCD4陽性ナイーブT細胞は、採取された血液好ましくはがん免疫療法を必要とする患者から採取された血液から一般的な方法、例えばMACS(Miltenyi Biotech社)等を用いた方法で単離することができる。
 抗原提示細胞は、表面にHLAクラスI分子又はII分子を発現している細胞であればよく、樹状細胞の他にB細胞、マクロファージ、単球、非増殖性のトランスフェクタント等を挙げることができるが、特に樹状細胞が好ましい。抗原提示細胞も、採取された血液好ましくはがん免疫療法を必要とする患者から採取された血液から一般的な方法で単離することができる。
 インキュベーションは、抗原提示細胞に所望の抗原をHLAクラスI又はクラスII分子を介して提示させ、ナイーブT細胞から当該抗原に特異的なエフェクターT細胞を誘導するための一般的な方法として行えばよい。例えば、CTLを誘導する場合はChenら(Journal of Immunology、2000;165(2)948-955)に記載の方法にしたがって、またヘルパーT細胞を誘導する場合はTimら(Immunology Today 1996;17(3) 138-146)に記載の方法にしたがって行えばよい。特に、インキュベーションにおいてT細胞の成長因子であるIL-2に加えて、IFN-γ、IL-12、又は抗IL-4抗体の1以上を添加することで、IFN-γを産生し、かつIL-4の産生が低いTh1細胞を誘導することができる。
 また、本発明のポリペプチドと抗原提示細胞とナイーブT細胞は同時にインキュベートしてもよく、あるいは本発明のポリペプチドと抗原提示細胞を先にインキュベートし、その後にナイーブT細胞を共存させてインキュベートしてもよい。
 エフェクターT細胞であるCTL又はヘルパーT細胞が誘導されたことは、細胞の表面抗原の種類、サイトカイン産生能の確認、細胞内染色法、ELISPOT法その他の当業者に周知の方法によって確認することができる。例えば、インターフェロンγ(IFN-γ)の産生は、BD Bioscience製その他の市販のELISAキットを用いて、簡便に測定、確認することができる。
 本発明のポリペプチドは、それらを構成するアミノ酸配列を有する限り、例えばタンパク質の分離精製に有用なタグ配列として汎用されているHis-Tagや、適当なリンカー配列、GFPの様なマーカータンパク質のアミノ酸配列等をさらに付加したり、あるいはビオチン等の標識化合物を付加したりすることも可能であり、そのようなポリペプチドは依然として本発明のポリペプチドに包含される。
 本発明のポリペプチドは、それらをコードする核酸に種々の公知の遺伝子組み換え手法を適用することで、組み換えタンパク質として製造することが可能である。また、本発明のポリペプチドは、種々の保護基で修飾されたアミノ酸を原料とする有機化学的合成法によって製造することもできる。また、一般にペプチドシンセサイザーと称される市販機器を用いて合成することもできる。
 さらに、本発明のポリペプチドをコードする核酸、及びこれを含むベクターも、第1の態様に包含される。本発明の核酸は、本発明のポリペプチドのアミノ酸配列に基づいて、当業者に知られ又は周知である遺伝子組み換え手法又は化学合成手法により合成することができる。また、本発明のベクターは、本発明の核酸を発現可能に含むベクターであり、かかる核酸に加えて、転写発現を調節する任意の機能性塩基配列、例えばプロモーター配列、オペレーター配列、リボソーム結合部位、エンハンサーなどをさらに含んでいてもよい。これらの機能性塩基配列は核酸と機能的に連結され得る。
 本発明の第2の態様は、本発明のポリペプチドの少なくとも一種以上と抗原提示細胞とCD8陽性ナイーブT細胞及び/又はCD4陽性ナイーブT細胞とをインビトロでインキュベートする工程を含む、TWIST1タンパク質に特異的なCTL及び/又はヘルパーT細胞を誘導する方法に関する。本態様における抗原提示細胞、CD8陽性T細胞、CD4陽性T細胞、インキュベーションの条件、TWIST1タンパク質に特異的なCTL及び/又はヘルパーT細胞の誘導及び確認については、第1の態様において説明したとおりである。
 本発明の第2の態様にかかる方法によって、TWIST1タンパク質に特異的なCTL及び/又はヘルパーT細胞をインビトロで調製することが可能となる。かかるTWIST1タンパク質に特異的なCTL及び/又はヘルパーT細胞は、がん細胞特にTWIST1タンパク質陽性がん細胞に対する免疫学的応答を示すことから、抗腫瘍剤又は転移抑制剤として利用することができる。
 本発明の第3の態様は、本発明のポリペプチドの少なくとも一種以上、該ポリペプチドをコードする核酸の少なくとも一種以上又は該核酸を含む発現ベクターを有効成分として含む抗腫瘍剤又はがんの転移抑制剤である。
 本発明の第3の態様には、有効成分であるポリペプチドとこれに特異性を有するCTL及び/又はヘルパーT細胞をさらに含む抗腫瘍剤又はがん転移抑制剤が包含される。さらに、有効成分であるポリペプチドと抗原提示細胞とを含む抗腫瘍剤又はがん転移抑制剤、並びに有効成分であるポリペプチドとこれに特異性を有するCTL及び/又はヘルパーT細胞と抗原提示細胞とを含む抗腫瘍剤又はがん転移抑制剤も、本発明の第3の態様に包含される。
 本発明の第3の態様において、有効成分であるポリペプチドに特異性を有するCTL及び/又はヘルパーT細胞は、その投与を必要とする患者から回収されるCD8陽性ナイーブT細胞及び/又はCD4陽性ナイーブT細胞を元に、有効成分であるポリペプチドを用いた前記第1の態様において説明した方法によって誘導されるエフェクターT細胞であることが好ましい。
 TWIST1Aポリペプチドに対する免疫応答は、HLA-DR、特にHLA-DR1、DR15及びDR53というHLAの遺伝子型に拘束されるという特徴を有している。したがって本発明の抗腫瘍剤又はがん転移抑制剤は、HLAの遺伝子型がDRである患者に対して特に有効であると考えられる。HLA-DR、特にDR53は日本人及び欧米人の約60%に認められるHLAの遺伝子型であり、したがって、本発明はより多くのがん患者に対して適用可能であることが期待される。
 第3の態様にかかる抗腫瘍剤又はがん転移抑制剤は、がん特にTWIST1陽性がんに罹患した患者に投与されることで、患者自身のがんに対する免疫系を活性化させ、腫瘍細胞を退縮させる及び/又はがんの転移を抑制することができるものと期待される。したがって本発明の第3の態様は、本発明のポリペプチドの少なくとも一種以上を、又は本発明のポリペプチドとこれに特異性を有するCTL及び/若しくはヘルパーT細胞とを、又は本発明のポリペプチドと抗原提示細胞とを、又は本発明のポリペプチドとこれに特異性を有するCTL及び/若しくはヘルパーT細胞と抗原提示細胞とを、治療を必要とする患者に対して投与することを含む、がんの治療方法又はがんの転移を抑制する方法として表すこともできる。
 また、本発明のポリペプチドに代えて、本発明の核酸又は発現ベクターを有効成分とする抗腫瘍剤又は転移抑制剤も、第3の態様に包含される。さらに、本発明の第2の態様にかかる方法によって誘導されたTWIST1タンパク質に特異的なCTL及び/又はヘルパーT細胞を有効成分とする細胞製剤も、本発明の抗腫瘍剤又は転移抑制剤として、第3の態様に包含される。第1の態様のポリペプチドは、かかるCTL及び/又はヘルパーT細胞をより効率的に誘導することができる点で、第3の態様の抗腫瘍剤又は転移抑制剤としてのより優れた細胞製剤の提供に資するものである。
 本発明の抗腫瘍剤又はがん転移抑制剤は、上記の構成の他に、これらの作用を阻害しない範囲で、医薬の製剤化のために一般的に利用される種々の賦形剤や他の医薬活性成分等を含む医薬組成物であり得る。特に、本発明の抗腫瘍剤又はがん転移抑制剤は、ポリペプチドとCTL及び/又はヘルパーT細胞とを安定に保持できる緩衝液あるいは液体培地の形態、特に細胞製剤の形態にあることが好ましい。
 緩衝液の非限定的な例としては、中性の緩衝化生理食塩水又はリン酸緩衝化生理食塩水等を挙げることができる。また、例えばグルコース、マンノース、スクロース、デキストラン、マンニトール等の糖質、タンパク質、アミノ酸、抗酸化剤、静菌剤、キレート剤(例えば、EDTA又はグルタチオン)、アジュバント(例えば、水酸化アルミニウム)、浸透圧調節剤、懸濁剤、増粘剤及び/又は保存剤等をさらに含んでいてもよい。
 また本発明の抗腫瘍剤又はがん転移抑制剤は、ポリペプチドとCTL及び/又はヘルパーT細胞とが混合されている形態にあることが好ましいが、ポリペプチドと細胞とが別々に保存され、使用時に混合して投与することのできる、いわゆるキットの形態であってもよい。
 本発明の抗腫瘍剤又はがん転移抑制剤の投与形態としては特に制限はなく、例えば皮下注射、静脈注射、皮内注射、筋肉内注射、腫瘍組織部位への局所注射が挙げられる。また、本発明の抗腫瘍剤又はがん転移抑制剤の投与量は、有効成分の種類に応じて異なるが、例えば、有効成分がポリペプチドである場合には通常0.01~10mg、有効成分が細胞である場合には通常10~1012細胞であって、対象の年齢、体重、症状、健康状態等に応じて、適宜調節される。
 本発明の抗腫瘍剤又はがん転移抑制剤は、好ましくは、TWIST1タンパク質を発現している腫瘍を有する、又はTWIST1タンパク質を発現する腫瘍の罹患若しくは再発のおそれがある対象に対して使用される。対象は、ヒト及びヒト以外の様々な動物、例えばイヌやネコ等の愛玩動物、ウシやブタ等の家畜動物、マウスやラット等の実験動物などであり、好ましくはヒトである。
 以下、実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<細胞の調製>
 健常人の末梢血からファイコール密度勾配分離法を用いて、末梢血単核球(Peripheral Blood Mononuclear Cells;PBMCs)を回収した。
 PBMCsから磁気細胞分離システム(Miltenyi)を用いてCD14陽性細胞を分離し、GM-CSF(終濃度100ng/mL、peprotech)及びIL-4(終濃度50ng/mL、peprotech)を添加したAIM-V培地(gibco)を用いて6穴培養プレートにて7日間培養することによって樹状細胞(Dendritic Cells;DCs)に分化させ、抗原提示細胞として用いた。また、PBMCsから同様にしてCD4陽性T細胞を分離した。
 96穴平底培養プレートに、1×10/wellのCD4陽性T細胞、5×10/wellのDCs、200μLの3%ヒトAB型血清(Innovative Research)含有AIM-V培地、TWIST1Aポリペプチド(終濃度3μg/mL)を加え、CD4陽性ナイーブT細胞とDCsとのインキュベーションを行った。培養開始から7日後、CD4陽性T細胞をペプチド刺激するために、TWIST1Aポリペプチド(終濃度3μg/mL)とガンマ線照射した不活化PBMCs(1×10/well)を培養プレートに加え、その2日後にIL-2(終濃度10U/mL、シオノギ製薬)を添加した。その後、一週間おきにTWIST1Aポリペプチドと不活化PBMCsを加え、エフェクターT細胞である活性化CD4陽性T細胞(以下、TWIST1Aポリペプチド特異的ヘルパーT細胞と表す)を持続的に増殖させた。
<実施例1>
TWIST1Aポリペプチド特異的ヘルパーT細胞のHLA拘束性の確認
1)HLA-DRB1*15:02拘束性T細胞応答
 HLA遺伝子型がHLA-DRB1*15:02(DR15)である健常人の末梢血から調製したTWIST1Aポリペプチド特異的ヘルパーT細胞のHLA拘束性を調べた。96穴平底培養プレートの各ウェルに、同一人から調製したPBMCs(5×10/well)及びコントロールペプチド(irrelevant)又はTWIST1Aポリペプチド(cognate)を終濃度3μg/mLで加えて2時間処理した後、TWIST1Aポリペプチド特異的ヘルパーT細胞(5×10/well)を加え、TWIST1Aポリペプチド処理群の一部にはさらに抗DR抗体(L243、終濃度10μg/mL、ATCC社)、又は対照として抗HLA-class I抗体(W6/32、終濃度10μg/mL、ATCC社)を添加してインキュベーションを行った。24~48時間後の培養上清に含まれるIFN-γの産生量を、ELISAキット(BD Biosciences)を用いて測定した。
 TWIST1AポリペプチドはIFN-γ産生を増加させたが、その作用は抗DR抗体の存在下で阻害された(図1)。このことから、TWIST1AポリペプチドはHLA-DRに拘束されることが確認された。
2)HLA-DR53拘束性及びHLA-DRB1*01:01(DR1)拘束性のT細胞応答
 HLA遺伝子型がHLA-DR53又はHLA-DRB1*01:01(DR1)である健常人の末梢血から調製したTWIST1Aポリペプチド特異的ヘルパーT細胞について、TWIST1Aポリペプチドに対する特異的反応性を調べた。TWIST1Aポリペプチド特異的ヘルパーT細胞(5×10/well)を、同一人から調製したPBMCs(5×10/well)と、TWIST1Aポリペプチド(終濃度0~30μg/mL)の存在下でインキュベートし、培養上清中のIFN-γ産生量を同様に測定した。
 いずれのHLA遺伝子型を有するTWIST1Aポリペプチド特異的ヘルパーT細胞においても、TWIST1Aポリペプチド添加によるIFN-γ産生増加が用量依存的に認められた(図2、図3)。
 さらに、拘束されるHLA型を調べるために、TWIST1Aポリペプチド特異的ヘルパーT細胞(5×10/well)を、TWIST1Aポリペプチド(終濃度10μg/mL)で事前に2時間処理されたHLA-DR1、DR8、DR15又はDR53の遺伝子が導入されたマウス由来線維芽細胞株(L-DR1、L-DR8、L-DR15及びL-DR53、Dr.Sasazuki,Kyusyu University及びDr.R.Karr,Karr Pharmaより入手)とインキュベートし、培養上清中のIFN-γ産生量を同様に測定した。
 L-DR1、L-DR15及びL-DR53を用いた場合にはIFN-γ産生の増加が観察された一方、L-DR8を用いた場合にはIFN-γは検出されなかった。L-DR8及びL-DR15の結果を図4に示す。このことから、TWIST1Aポリペプチドは、HLA-DR1、DR15及びDR53に拘束されることが示された。
<実施例2>
TWIST1Aポリペプチド特異的ヘルパーT細胞のがん細胞株に対する反応性の評価
 TWIST1Aポリペプチド特異的ヘルパーT細胞のがん細胞株に対する反応性を調べるために、TWIST1陽性がん細胞株の中からDR53陽性(Sa3、HSC4、Caki1)、DR1陽性(HSC4、SW839)及びDR53・DR1陰性(Jurkat)の細胞株を選別した。各がん細胞株の細胞表面上にHLA-class IIを強発現させるために、実験に使用する前にIFN-γ(終濃度100U/mL)存在下で2日間培養した。各がん細胞株の培養プレートをリン酸緩衝液(PBS)でよく洗浄し、EDTA(エチレンジアミン四酢酸、5mM)を用いて回収した。これらのがん細胞(3×10/well)を、TWIST1Aポリペプチド特異的ヘルパーT細胞(5×10/well)とインキュベートし、培養上清中のhGM-CSF又はIFN-γの産生量を、ELISAキット(BD Biosciences)を用いて測定した。HLA-DR依存的な反応性であることを調べるため、一部の培養系に抗HLA-DR抗体を添加してインキュベートした。
 DR53陽性がん細胞株の結果を図5に、DR1陽性がん細胞株の結果を図6に示す。DR53陽性がん細胞、DR1陽性がん細胞のいずれにおいてもhGM-CSF又はIFN-γの産生亢進が認められたが、その作用は抗DR抗体の存在下で阻害された。このことから、TWIST1Aポリペプチド特異的ヘルパーT細胞は、がん細胞に対して反応性を有することが確認された。
<実施例3>
がん患者由来PBMCsのTWIST1Aポリペプチド反応性の評価
 がん患者から、前記<細胞の調製>と同様にして、PBMCs及びTWIST1Aポリペプチドによって活性化されたTWIST1Aポリペプチド特異的ヘルパーT細胞とを調製した。このPBMCs(5×10/well)とTWIST1Aポリペプチド特異的ヘルパーT細胞(5×10/well)とを、TWIST1Aポリペプチド(終濃度3μg/mL)の存在下又は非存在下でインキュベートし、培養上清中のIFN-γ産生量を測定した。
 2名のがん患者由来の細胞についての結果を図7に示す。いずれの細胞においてもTWIST1Aポリペプチドの添加によりIFN-γ産生が増加したことから、がん患者においてもTWIST1Aポリペプチド反応性のT細胞応答が起こることが確認された。
<実施例4>
マウスにおけるTWIST1Aポリペプチドの特異的免疫賦活作用の評価
 6-8週齢の雄性HLA-A*02:01/DRB1*01:01遺伝子組み換えマウス(A2.DR1-Tgマウス;フランスパスツール研究所)に、TWIST1Aポリペプチド(100μg/100μL PBS)を試験開始0日目と10日目に皮内投与した。試験開始から15日目にジエチルエーテルを用いてA2.DR1-Tgマウスを安楽死させ、所属リンパ節及び脾臓を回収した。リンパ球及び脾臓細胞を分離した。
 TWIST1Aポリペプチド特異的な反応を検出するため、ELISPOTアッセイを用いてIFN-γ産生細胞を検出した。上記のリンパ球(1×10/well)及び脾臓細胞(5×10/well)は、マウスIFN-γ抗体(AN18、MABTECH)で一晩4℃にて処理して抗体を固相化したMAHAS4510 MultiScreen-HA(ミリポア社)において、10%ウシ胎児血清(Biowest社)含有RPMI1640(ナカライテスク社)培地を用いて、コントロールペプチド又はTWIST1Aポリペプチド(終濃度3μg/mL)存在下で24時間インキュベートした。
 インキュベーション後のプレートを0.05%Tween20含有PBS(PBS-T)にて洗浄し、ビオチンが付加された抗マウスIFN-γ抗体(R4-6A2、MABTECH)にて一晩4℃にて反応させ、PBS-Tにて洗浄後、ストレプトアビジンが付加されたアルカリフォスファターゼ(MABTECH)を室温にて1時間反応させた。PBS-Tにて洗浄後、発色させるためにBCIP/NBT(MABTECH)を室温にて10分間反応させ、蒸留水でプレートを洗浄することによって反応を止めた。発色した細胞の数を顕微鏡下でカウントした。
 結果を図8に示す。TWIST1Aポリペプチドの添加によりIFN-γ産生が増加したことから、TWIST1Aポリペプチドは生体内においても特異的T細胞応答を活性化することが示された。
<実施例5>
マウスにおけるTWIST1Aポリペプチドのがん細胞株肺転移抑制作用の評価
 6-8週齢の雄性A2.DR1-Tgマウスに、TWIST1Aポリペプチド(100μg/100μL PBS)を試験開始0日目と10日目に皮内投与した。対照群として、ペプチドが含まれていない溶媒のみを投与した。試験開始から15日目に、各マウスに5×10個のヒト口腔扁平上皮がん細胞株HSC4(TWIST1陽性、HLA-DRB1*01:01陽性)を尾静脈から接種した。接種後5日目にジエチルエーテルを用いてA2.DR1-Tgマウスを安楽死させ、肺を回収した。RNeasy Mini Kit(QIAGEN)を用いて肺組織からトータルRNAを抽出し、Primerscript 1st strand cDNA synthesis kit(TAKARA)を用いてcDNAを作成した。マウスGapdh及びヒトCXCL10の発現量を、Roche LightCycler 480を使用したリアルタイムRT-PCRにより測定した。プローブとして、TaqMan probe(applied biosystem by life technologies)のMm99999915_g1及びHs01124252を使用した。
 結果を図9に示す。対照群ではマウス肺においてヒトCXCL10の発現が認められ、接種したHSC4がマウス肺に転移したものと推測された。一方、TWIST1Aポリペプチドを皮内投与されたマウス由来の肺においてヒトCXCL10の発現は顕著に低減したことから、TWIST1Aポリペプチドはヒトがん細胞の肺転移を抑制し得ることが示された。
<実施例6>最小認識配列の確認
 表1に示すアミノ酸配列からなるオーバーラッピングペプチドT1~T9を化学合成法により作製した。T1はTWIST1AポリペプチドのN末端1~15番目のアミノ酸配列に相当するポリペプチドであり、T2~T9はT1から1アミノ酸残基ずつC末端側にずらした15アミノ酸残基からなるペプチドである(図10)。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000001
 実施例4に記載の方法に従って、A2.DR1-TgマウスにTWIST1Aポリペプチド(100μg/100μL PBS)をアジュバント(cGAMP:2.5mg)とともに投与した後、所属リンパ節を回収した。リンパ節から分離したリンパ球(TWIST1Aポリペプチドに特異的なヘルパーT細胞を含む)を用いて、TWIST1Aポリペプチド及びT1~T9に対する反応性をELISPOTアッセイを用いて検討した。その結果を図11に示す。
 図11に示されるように、T1、T2及びT3の反応性はTWIST1Aペプチドのそれと同等であること、及びT4~T9の反応性はTWIST1Aペプチドと比較して低いことが、それぞれ確認された。このことから、TWIST1AポリペプチドのC末端から8アミノ酸残基の欠失は反応性を低下させない一方、TWIST1AポリペプチドのN末端から3残基の欠失は反応性を低下させること、及び少なくともKLSKIQTLKLAAR(配列番号11)が、TWIST1Aポリペプチドに特異的に反応するヘルパーT細胞が認識する最小認識配列であることが確認された。
<実施例7>
TWIST1Aポリペプチド特異的ヘルパーT細胞のがん細胞増殖抑制能の評価
 ヒト肺癌細胞株(Lu65、1×10)をヌードマウスに皮内接種し、接種後10日目及び17日目に、前記<細胞の調製>で調製したTWIST1Aポリペプチド特異的ヘルパーT細胞(4×10)を尾静脈投与し、継時的に腫瘍径を測定した(図12)。コントロールとして、TWIST1Aポリペプチド特異的ヘルパーT細胞に代えて抗CD3抗体で非特異的に活性化させたヘルパーT細胞の同数を又は生理食塩水を尾静脈投与したヌードマウスを用意した。
 コントロールマウスではいずれも、皮内移植されたLu65による腫瘍の増殖(腫瘍径の増大)が見られたのに対し、TWIST1Aポリペプチド特異的ヘルパーT細胞を投与したマウスでは腫瘍の退縮が観察された。このことから、TWIST1Aポリペプチド特異的ヘルパーT細胞は生体内において腫瘍増殖抑制能を示すことが確認された。
<実施例8>
TWIST1Aポリペプチド特異的ヘルパーT細胞のがん転移抑制能の評価
 Lu65(1×10)をヌードマウスに脾臓内接種し、接種後3日目にTWIST1Aポリペプチド特異的ヘルパーT細胞(4×10)を尾静脈投与した。コントロールとして、TWIST1Aポリペプチド特異的ヘルパーT細胞に代えて抗CD3抗体で非特異的に活性化させたヘルパーT細胞の同数を尾静脈投与したヌードマウスを用意した。
 Lu65の脾臓内接種後14日目(ヘルパーT細胞投与から11日目)に肝臓を回収し、腫瘤の数を計測した(図13)。その結果、コントロールマウスでは、肝臓の表面に腫瘤が多数観察されたのに対し、TWIST1Aポリペプチド特異的ヘルパーT細胞を投与したマウス由来の肝臓では、腫瘤は1~4つほどしか認められなかった。このことから、TWIST1Aポリペプチド特異的ヘルパーT細胞は生体内において腫瘍の転移抑制能を示すことが確認された。
 本発明のポリペプチド、抗腫瘍剤及びがん転移抑制剤は、医薬品の製造において産業上の利用可能性を有する。

Claims (12)

  1.  下記のa)、b)又はc)のアミノ酸配列からなり、かつTWIST1タンパク質に特異的な細胞障害性T細胞及び/又はヘルパーT細胞の誘導能を有するポリペプチド。
     a)配列番号1に示されるアミノ酸配列;
     b)配列番号1に示されるアミノ酸配列のN末端及び/又はC末端に任意のアミノ酸が1~数十個付加されたアミノ酸配列;
     c)配列番号1に示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換された若しくは欠失した又は1若しくは数個のアミノ酸が挿入されたアミノ酸配列。
  2.  c)のアミノ酸配列が配列番号11に示されるアミノ酸配列である、請求項1に記載のポリペプチド。
  3.  下記のd)又はe)のアミノ酸配列からなり、かつTWIST1タンパク質に特異的な細胞障害性T細胞及び/又はヘルパーT細胞の誘導能を有するポリペプチド。
     d)配列番号11に示されるアミノ酸配列のN末端及び/又はC末端に任意のアミノ酸が1~数十個付加されたアミノ酸配列;
     e)配列番号11に示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換された又は1若しくは数個のアミノ酸が挿入されたアミノ酸配列。
  4.  請求項1~3のいずれか一項に記載のポリペプチドをコードする核酸。
  5.  請求項4に記載の核酸を含む、発現ベクター。
  6.  請求項1~3のいずれか一項に記載のポリペプチドの少なくとも一種以上と抗原提示細胞とCD8陽性ナイーブT細胞及び/又はCD4陽性ナイーブT細胞とをインビトロでインキュベートする工程を含む、TWIST1タンパク質に特異的な細胞障害性T細胞及び/又はヘルパーT細胞を誘導する方法。
  7.  請求項1~3のいずれか一項に記載のポリペプチドの少なくとも一種以上、請求項4に記載の核酸の少なくとも一種以上又は請求項5に記載の発現ベクターを有効成分として含む、抗腫瘍剤。
  8.  前記ポリペプチドに特異性な細胞障害性T細胞及び/又はヘルパーT細胞をさらに含む、請求項7に記載の抗腫瘍剤。
  9.  前記ポリペプチドを提示する抗原提示細胞をさらに含む、請求項7又は8に記載の抗腫瘍剤。
  10.  請求項1~3のいずれか一項に記載のポリペプチドの少なくとも一種以上、請求項4に記載の核酸の少なくとも一種以上又は請求項5に記載の発現ベクターを有効成分として含む、がんの転移抑制剤。
  11.  前記ポリペプチドに特異性な細胞障害性T細胞及び/又はヘルパーT細胞をさらに含む、請求項10に記載のがん転移抑制剤。
  12.  前記ポリペプチドを提示する抗原提示細胞をさらに含む、請求項10又は11に記載のがん転移抑制剤。
     

     
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