WO2015098781A1

WO2015098781A1 - ディスクブレーキ装置

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Publication number: WO2015098781A1
Application number: PCT/JP2014/083806
Authority: WO
Inventors: 知樹谷地; 禎雄戸塚; 真二郎増子; 哲弥野口; 雄一郎井上
Original assignee: 曙ブレーキ工業株式会社
Priority date: 2013-12-26
Filing date: 2014-12-19
Publication date: 2015-07-02
Also published as: JP2015124812A

Abstract

　フローティング型キャリパ（１０）が、対向ピストン型キャリパ（９）に対し、径方向に重畳する状態で、軸方向に関する変位を可能に支持される。対向ピストン型キャリパ（９）に１対のパッド（１１ａ、１１ｂ）が軸方向に関する変位を可能に支持され、一対のパッド（１１ａ、１１ｂ）がサービスブレーキとパーキングブレーキとで共通化される。サービスブレーキの制動力は、対向ピストン型キャリパ（９）の第一シリンダに圧油を送り込む事により発生し、パーキングブレーキの制動力は、フローティング型キャリパ（１０）の第二シリンダ内に嵌装された第二ピストンが電動押圧装置（３７）により軸方向に変位する事で発生する。

Description

ディスクブレーキ装置

　この発明は、ディスクブレーキ装置に関する。

　放熱性に優れると共に、走行時に於ける制動力の細かな調節が可能である等の理由から、自動車の前輪だけではなく、後輪に関しても、サービスブレーキを行う為のブレーキ装置としてディスクブレーキ装置を採用する場合がある。又、この場合、パーキングブレーキを行う為のブレーキ装置が、サービスブレーキに用いるディスクブレーキ装置とは別に設けられる事も行われている。具体的には、特許文献１、２に記載されている様に、パーキングブレーキ専用のドラムブレーキ装置が、サービスブレーキ専用のディスクブレーキ装置の内側に配置された構造（ドラムインハット式構造）や、パーキングブレーキ専用のディスクブレーキ装置が、サービスブレーキ専用のディスクブレーキ装置とは別に設けられる構造（ツインキャリパ式構造）が採用されている。

　図１２は、サービスブレーキ専用のディスクブレーキ装置と、パーキングブレーキ専用のディスクブレーキ装置とが、それぞれ別に設けられた従来構造の模式図を示している。図示の構造の場合、車輪と共に回転するロータ１の周囲に、サービスブレーキに用いる対向ピストン型ディスクブレーキ装置２と、パーキングブレーキに用いるフローティング型ディスクブレーキ装置３とが、周方向に離隔した状態で設けられている。そして、これら２つのブレーキ装置２、３がそれぞれ、懸架装置を構成するナックル４に支持固定されている。具体的には、前記対向ピストン型ディスクブレーキ装置２を構成するキャリパ５が、前記ナックル４に設けられた取付部（ステー）６ａに対し支持固定されると共に、前記フローティング型ディスクブレーキ装置３を構成するサポート７が、前記ナックル４に設けられた別の取付部６ｂに対し支持固定されている。
　尚、本明細書及び請求の範囲中で「軸方向」、「径方向」、「周方向」とは、それぞれロータに関する「軸方向」、「径方向」、「周方向」を言う。

　上述の様な構成を有する従来構造の場合、サービスブレーキ専用の対向ピストン型ディスクブレーキ装置２と、パーキングブレーキ専用のフローティング型ディスクブレーキ装置３とが、それぞれ別々に設けられている。この為、サービスブレーキとパーキングブレーキとの２つの機能を備える１つのブレーキ装置として見た場合、装置全体が大型化すると共に重量が嵩む事が避けられない。又、前記ナックル４には、前記各ブレーキ装置２、３を支持固定する為の取付部６ａ、６ｂをそれぞれ設ける必要がある為、前記ナックル４の形状に関する自由度が低くなる。ナックルには、ダンパーを固定する為の取付部や、ロアアームを固定する為の取付部等を別途設ける必要があり、このナックルの形状に関する自由度を確保する事は、ナックル周辺の部材の設計の自由度を確保する上で重要になる。

日本国特開平９－６０６６７号公報日本国特開２００２－２１８９２号公報

　本発明の目的は、上述の様な事情に鑑み、サービスブレーキとパーキングブレーキとの２つの機能を備えるブレーキ装置に関して、装置の小型化及び軽量化を図れると共に、ナックルの形状の自由度を向上できる構造を実現するディスクブレーキ装置を提供することである。

　本発明の上記目的は、下記（１）～（６）の構成のディスクブレーキ装置により達成される。
（１）　車輪と共に回転するロータを挟んで設けられるアウタボディ部及びインナボディ部と、前記ロータの外周縁よりも径方向外方位置で、これらアウタボディ部及びインナボディ部の周方向両端部同士を連結する１対の連結部と、これらアウタボディ部及びインナボディ部に、互いに対向して設けられた２組（合計４個）以上の第一シリンダとを有し、前記ロータを跨ぐ状態でナックルに固定される対向ピストン型キャリパと、
　前記各第一シリンダ内にそれぞれ、液密に且つ軸方向に関する変位を可能に嵌装された、これら各第一シリンダと同数の第一ピストンと、
　前記ロータの両側に配置された状態で、前記対向ピストン型キャリパに対し軸方向に関する変位を可能に支持された少なくとも１対のパッドと、
　アウタ側に設けられたアウタ側押圧部と、インナ側に設けられたインナ側押圧部とを有し、これらアウタ側及びインナ側押圧部が前記対向ピストン型キャリパに周方向に隣接して設けられた１対の第一シリンダ同士の周方向間部分にそれぞれ配置されると共に、前記各パッドにおける軸方向に関して前記アウタ側押圧部及びインナ側押圧部と対向する１対のパッドを径方向外方から跨ぐ状態で、前記対向ピストン型キャリパに対し支持されたパーキング制動機構とを備え、
　サービスブレーキによる制動力が、前記各第一シリンダ内に圧油が送り込まれる事のみにより発生し、
　パーキングブレーキによる制動力が、前記パーキング制動機構の作動に基づき、前記アウタ側押圧部及びインナ側押圧部が互いに近づく方向に変位する事のみにより発生する、ディスクブレーキ装置。
　つまり、本発明のディスクブレーキ装置は、サービスブレーキによる制動力が、前記対向ピストン型キャリパと前記各第一ピストンとから構成される対向ピストン型ディスクブレーキ機構により得られるのに対し、パーキングブレーキによる制動力が、パーキング制動機構（上記（２）の構成にあってはフローティング型ディスクブレーキ機構）により得られる。

（２）　上記（１）の構成のディスクブレーキ装置であって、前記パーキング制動機構が、前記アウタ側押圧部である爪部と、インナ側に設けられ、前記爪部のインナ側面に向け開口する１個の第二シリンダとを有し、前記対向ピストン型キャリパに対し軸方向に変位可能に支持されたフローティング型キャリパと、前記第二シリンダ内に軸方向の変位を可能に嵌装された前記インナ側押圧部である第二ピストンとを備えたフローティング型ディスクブレーキ機構である、ディスクブレーキ装置。
　尚、前記第二シリンダ及び前記第二ピストンの数は、必要に応じて２個以上とする事も可能である。

（３）　上記（２）の構成のディスクブレーキ装置であって、電動モータを駆動源として（例えば減速機を介して）、前記第二ピストンを前記第二シリンダ内で軸方向に変位させるための電動式押圧装置が設けられており、前記パーキングブレーキによる制動力が、前記電動式押圧装置を利用して発生する、ディスクブレーキ装置。
（４）　上記（３）の構成のディスクブレーキ装置であって、前記電動式押圧装置が、前記フローティング型キャリパのインナ側部分に支持されている、ディスクブレーキ装置。

（５）　上記（１）～（４）のうちの何れか１つの構成のディスクブレーキ装置であって、前記各パッドが２枚設けられている（軸方向に対向する状態で１組設けられる）、ディスクブレーキ装置。

（６）　上記（１）～（５）のうちの何れか１つの構成のディスクブレーキ装置であって、前記各第一シリンダが、周方向に離隔する状態で２組（合計４個）設けられている、ディスクブレーキ装置。

　上述の様な構成を有する本発明のディスクブレーキ装置によれば、それ単体で、サービスブレーキとパーキングブレーキとの２つの機能を発揮する事ができる。その為、それぞれ専用の装置が設けられる場合に比べて、ディスクブレーキ装置は、装置全体としての小型化及び軽量化を図れると共に、ナックルの形状の自由度を向上できる。
　即ち、本発明の場合には、パーキングブレーキとしての機能を発揮するパーキング制動機構が、サービスブレーキとしての機能を発揮する対向ピストン型キャリパに対して支持される事により、パーキング制動機構と対向ピストン型ディスクブレーキ機構とが一体化されて、１つのディスクブレーキ装置が構成されている。しかも、本発明の場合には、前記パーキング制動機構が、前記対向ピストン型キャリパに対して、径方向に重畳（マウント）される状態で支持されている。
　この為、例えば前記図１２に示した従来構造の場合の様に、サービスブレーキとパーキングブレーキの専用の２つの装置を周方向に離隔した状態で設けられる構造や、単に周方向に連続した構造と比べて、装置全体としての小型化（周方向に連続した構造に対しては特に、周方向に関する全長の短縮化）が図られる。
　又、本発明の場合には、ナックルに必要な取付部が、前記対向ピストン型キャリパを支持固定するだけの１つで済む為、このナックルの形状に関する自由度を向上できる。
　更に、前記パーキング制動機構として、上記（２）の構成の様に、フローティング型ディスクブレーキ機構を採用した場合には、専用のサポートを省略できる為、装置の軽量化及び低コスト化を図れる。
　又、上記（５）の構成によれば、サービスブレーキとパーキングブレーキとで、１対のパッドを共通に使用できる為、パッド数を低減する事ができて、この面からも軽量化及び低コスト化を図れる。

図１は本発明の実施の形態の１例のディスクブレーキ装置を示す正面図である。図２は図１に示したディスクブレーキ装置の背面図である。図３は図１に示したディスクブレーキ装置の左側面図である。図４は図１に示したディスクブレーキ装置の右側面図である。図５は図１に示したディスクブレーキ装置の平面図である。図６は図１に示したディスクブレーキ装置の底面図である。図７は図１に示したディスクブレーキ装置の径方向外方且つアウタ側から見た状態で示す斜視図である。図８は図１に示したディスクブレーキ装置の径方向外方且つインナ側から見た状態で示す斜視図である。図９は図１に示したディスクブレーキ装置の各ピストンを省略して径方向内方且つアウタ側から見た状態で示す斜視図である。図１０は図１に示したディスクブレーキ装置のインナパッドを省略して示す図５のＸ－Ｘ断面図である。図１１は図１に示したディスクブレーキ装置のアウタパッドを省略して示す図５のＸＩ－ＸＩ断面図である。図１２はサービスブレーキとパーキングブレーキとの２つの機能を発揮させる為の従来構造のブレーキ装置を示す模式図である。

　［実施の形態の１例］
　本発明の実施の形態の１例に就いて、図１～１１により説明する。本実施の形態の１例のディスクブレーキ装置８は、サービスブレーキとパーキングブレーキとの２つの機能をあわせ持つハイブリッド型で、対向ピストン型キャリパ９と、フローティング型キャリパ１０と、１対のパッド１１ａ、１１ｂ（アウタパッド１１ａ、インナパッド１１ｂ）と、第一ピストン１２ａ、１２ｂ、１３ａ、１３ｂ（回入側第一アウタピストン１２ａ、回入側第一インナピストン１２ｂ、回出側第一アウタピストン１３ａ、及び回出側第一インナピストン１３ｂ）と、第二ピストン１４とを備える。

　このうちの対向ピストン型キャリパ９は、前記アウタパッド１１ａ及び前記インナパッド１１ｂを、軸方向（図１、２の表裏方向、図３、４の左右方向、図５、６の上下方向）に移動可能に支持する。この様な対向ピストン型キャリパ９は、アルミニウム合金等の軽合金を鋳造（ダイキャスト成形を含む）等により形成したもので、ロータ１（図１２参照）を挟む状態で設けられたアウタボディ部１５及びインナボディ部１６と、これらアウタボディ部１５及びインナボディ部１６の周方向片側（図１、５、６の右側で、車両前進時に於ける回入側）端部と周方向他側（図１、５、６の左側で、車両前進時に於ける回出側）端部とをそれぞれ連結する連結部１７ａ、１７ｂとを備える。又、これら両連結部１７ａ、１７ｂ同士の周方向に関する間部分が、前記フローティング型キャリパ１０を配置する為の開口部１８とされている。

　前記アウタボディ部１５及びインナボディ部１６における周方向片端側部分の内側には、それぞれが請求の範囲に記載した第一シリンダであるところの回入側第一アウタシリンダ１９ａ及び回入側第一インナシリンダ１９ｂが互いに対向する状態で形成されると共に、周方向他端側部分の内側には、回出側第一アウタシリンダ２０ａ及び回出側第一インナシリンダ２０ｂが互いに対向する状態で形成されている。別な言い方をすれば、前記アウタボディ部１５には、周方向に離隔する状態で、前記回入側第一アウタシリンダ１９ａ及び前記回出側第一アウタシリンダ２０ａが形成されると共に、前記インナボディ部１６には、周方向に離隔する状態で、前記回入側第一インナシリンダ１９ｂ及び前記回出側第一インナシリンダ２０ｂが形成されている。そして、これら回入側第一アウタシリンダ１９ａ、回入側第一インナシリンダ１９ｂ、回出側第一アウタシリンダ２０ａ、及び回出側第一インナシリンダ２０ｂ内には、それぞれが請求の範囲に記載した第一ピストンであるところのアルミニウム合金製の前記回入側第一アウタピストン１２ａ、回入側第一インナピストン１２ｂ、回出側第一アウタピストン１３ａ、及び回出側第一インナピストン１３ｂが、油密に且つ軸方向に関する変位を可能に嵌装されている。そして、前記インナボディ部１６に設けた導入口により、前記回入側第一アウタシリンダ１９ａ及び回入側第一インナシリンダ１９ｂ、並びに前記回出側第一アウタシリンダ２０ａ及び回出側第一インナシリンダ２０ｂに、それぞれ圧油が送り込み可能とされている。

　又、前記アウタボディ部１５及び前記インナボディ部１６の互いに対向する側面（アウタボディ部１５のインナ側面、インナボディ部１６のアウタ側面）のうち、周方向両端部には、軸方向に張り出した１対のガイド壁部２１ａ、２１ｂがそれぞれ設けられている。又、これら１対のガイド壁部２１ａ、２１ｂの周方向に互いに対向する側面のうち、径方向中間部には、これら両側面に対してほぼ直交する方向にガイド凹溝２２ａ、２２ｂがそれぞれ形成されている。

　前記アウタボディ部１５のインナ側面における周方向中間部（周方向に関して開口部１８と整合する部分）には、軸方向に凹んだ収納凹溝２３が径方向全幅に亙り形成されている。これに対し、前記インナボディ部１６の周方向中間部における径方向外端部には、前記回入側第一インナシリンダ１９ｂ及び前記回出側第一インナシリンダ２０ｂを避ける様に、径方向内方に凹んだ逃げ凹部２４が形成されている。

　以上の様な構成を有する対向ピストン型キャリパ９は、前記インナボディ部１６に設けた１対の取付座２５ａ、２５ｂにより、ナックル４（図１２参照）を構成する取付部に支持固定される。本実施の形態の１例の場合には、この様な前記対向ピストン型キャリパ９と、前記各第一シリンダ１９ａ、１９ｂ、２０ａ、２０ｂ内に嵌装された前記各第一ピストン１２ａ、１２ｂ、１３ａ、１３ｂとにより、対向ピストン型ディスクブレーキ機構が構成されている。

　前記１対のパッド１１ａ、１１ｂは、ライニング（摩擦材）２６と、このライニング２６の裏面を支持した金属製の裏板（プレッシャプレート）２７とから構成されている。又、この裏板２７の周方向両側の側縁部の径方向中間部には、周方向両側にそれぞれ突出した１対の凸状の耳部２８ａ、２８ｂが設けられている。つまり、これら両耳部２８ａ、２８ｂのうち、回入側の耳部２８ａは、前記裏板２７の回入側側縁部の径方向中間部に、回入側に突出する状態で設けられており、回出側の耳部２８ｂは、前記裏板２７の回出側側縁部の径方向中間部に、回出側に突出する状態で設けられている。そして、これら両耳部２８ａ、２８ｂは、前記各ガイド凹溝２２ａ、２２ｂに、それぞれ緩く係合している。これにより、前記各パッド１１ａ、１１ｂが、前記対向ピストン型キャリパ９に対して、軸方向に関する変位を可能に支持されている。

　又、前記フローティング型キャリパ１０は、アルミニウム系合金又は鉄系合金製であり、アウタ側端部に設けられた二股状の爪部２９と、インナ側端部に設けられたシリンダ部３０と、前記ロータ１及び前記各パッド１１ａ、１１ｂを跨ぐ状態で設けられたブリッジ部３１とを有する。このうちのシリンダ部３０には、前記爪部２９のインナ側面に向け開口する１個の第二シリンダ３２が設けられている。そして、この第二シリンダ３２には、アルミニウム系合金又は鉄系合金製の前記第二ピストン１４が、軸方向の変位を可能に嵌装されている。又、前記フローティング型キャリパ１０のインナ側端部には、それぞれ周方向に突出した１対の腕部３３ａ、３３ｂが形成されている。
　本実施の形態の１例の場合には、前記フローティング型キャリパ１０と、前記第二シリンダ３２内に嵌装された前記第二ピストン１４とにより、フローティング型ディスクブレーキ機構（パーキング制動機構）が構成されている。尚、前記爪部２９が、請求の範囲に記載したアウタ側押圧部に相当し、前記第二ピストン１４が、同じくインナ側押圧部に相当する。

　特に本実施の形態の１例の場合には、上述の様な構成を有するフローティング型キャリパ１０が、前記爪部２９のインナ側面を前記アウタパッド１１ａの周方向中央部のアウタ側面に対向させ、前記第二ピストン１４の先端面を前記インナパッド１１ｂの周方向中央部のインナ側面に対向させた状態で、前記対向ピストン型キャリパ９に対して軸方向の変位を可能に支持されている。

　この為に、本実施の形態の１例の場合には、前記対向ピストン型キャリパ９を構成するインナボディ部１６の周方向両端寄り部分に、１対のガイドピン（リバースピン）３４ａ、３４ｂのアウタ側端部がねじ止め固定されている。そして、これら両ガイドピン３４ａ、３４ｂにおける前記インナボディ部１６よりもインナ側に突出した部分の中間部が摺動部として、前記各腕部３３ａ、３３ｂのそれぞれの先端部に形成したガイド孔内に、軸方向に関する変位を可能に緩く挿通されている。又、前記両ガイドピン３４ａ、３４ｂの周囲が、それぞれ弾性材製の防塵ブーツ３５ａ、３５ｂにより覆われている。

　本実施の形態の１例の場合には、この様な構成により、前記フローティング型キャリパ１０が、前記対向ピストン型キャリパ９に対して、軸方向に関する変位を可能に支持されている。そして、この状態で、前記フローティング型キャリパ１０が、前記対向ピストン型キャリパ９を構成する前記両連結部１７ａ、１７ｂ同士の周方向間部分に配置される。具体的には、前記爪部２９が、前記収納凹溝２３の内側で、且つ、前記回入側第一アウタピストン１２ａ及び前記回出側第一アウタピストン１３ａ同士の周方向間部分に配置されている。この為に、本実施の形態の１例の場合には、図１１に示す様に、前記爪部２９の周方向両側部分に、前記回入側第一アウタピストン１２ａ及び前記回出側第一アウタピストン１３ａに対して当接しない様にする為の切り欠き３６、３６が形成されている。又、前記ブリッジ部３１が、前記１対のパッド１１ａ、１１ｂを径方向外方から跨ぐ状態で、前記開口部１８の内側に配置されると共に、前記シリンダ部３０の径方向内半部が、前記逃げ凹部２４の内側に配置されている。従って、前記フローティング型キャリパ１０が前記対向ピストン型キャリパ９に対して支持された状態で、インナ側に配置された部分をロータ１側から見ると、図１０に示した様に、周方向に隣接して設けられた前記回入側第一インナピストン１２ｂ及び前記回出側第一インナピストン１３ｂ（回入側第一インナシリンダ１９ｂ及び回出側第一インナシリンダ２０ｂ）同士の周方向間部分には、前記フローティング型キャリパ１０の第二シリンダ３２に嵌装された第二ピストン１４が配置された状態となる。これに対し、アウタ側に配置された部分をロータ１側から見ると、図１１に示した様に、周方向に隣接して設けられた前記回入側第一アウタピストン１２ａ及び前記回出側第一アウタピストン１３ａ（回入側第一アウタシリンダ１９ａ及び回出側第一アウタシリンダ２０ａ）同士の周方向間部分には、前記爪部２９が、その周方向両端部を前記各回入側第一アウタピストン１２ａ及び回出側第一アウタピストン１３ａに径方向に重畳させた状態で配置されている。

　又、本実施の形態の１例のディスクブレーキ装置８には、前記フローティング型キャリパ１０に組み付けた状態で、電動式押圧装置３７が設けられている。この電動式押圧装置３７は、前記シリンダ部３０のインナ側面（インナ側部分）に取り付けられたケーシング３８内に収納された電動モータと、このケーシング３８内及び前記シリンダ部３０内に構成部材がそれぞれ収納された歯車式減速機等の減速機構と、このシリンダ部３０内に収納された、前記電動モータの出力軸の回転運動を直線運動に変換する送りねじ機構（ボールねじ機構）とを備えている。そして、前記電動モータへの通電に基づいて、この送りねじ機構を構成する直動部材が軸方向に変位する事により、前記第二シリンダ３２に嵌装された前記第二ピストン１４が、この第二シリンダ３２内で軸方向に変位可能とされている。つまり、本実施の形態の１例の場合には、前記第二ピストン１４が、前記電動式押圧装置３７を利用して機械的に軸方向に変位する事ができる。言い換えれば、フローティング型ディスクブレーキ機構（パーキング制動機構）は、機械的にのみ作動する事ができる（油圧の導入により作動する事はできない）。
　尚、電動式押圧装置としては、例えば日本国特開２０１２－１９３８０５号公報や日本国特開２０１１－２０２６９６号公報に記載された構造を採用する事ができる。この電動式押圧装置の詳しい構造に就いては、これら公開公報に詳しく記載されている為、ここでの詳しい説明は省略する。

　以上の様な構成を有する本実施の形態の１例のディスクブレーキ装置８の場合、サービスブレーキを作動させる際には、対向ピストン型キャリパ９の回入側第一アウタシリンダ１９ａ及び回入側第一インナシリンダ１９ｂ、並びに、回出側第一アウタシリンダ２０ａ及び回出側第一インナシリンダ２０ｂに、それぞれ圧油を送り込む。これにより、回入側第一アウタピストン１２ａ及び回入側第一インナピストン１２ｂ、並びに、回出側第一アウタピストン１３ａ及び回出側第一インナピストン１３ｂにより、１対のパッド１１ａ、１１ｂがロータ１の両側面に押し付けられる。この結果、このロータ１が、軸方向両側から強く押し付けられて、制動が行われる。この様に、本実施の形態の１例の場合には、サービスブレーキによる制動力が、対向ピストン型ディスクブレーキ機構のみにより得られる。

　これに対し、パーキングブレーキを作動させる際には、電動式押圧装置３７を構成する電動モータに通電する。そして、送りねじ機構を構成する直動部材が軸方向に変位する事により、第二ピストン１４が、第二シリンダ３２内で機械的に軸方向に変位する。これにより、インナパッド１１ｂが、ロータ１のインナ側面に押し付けられ、この押し付けの反作用として、フローティング型キャリパ１０が対向ピストン型キャリパ９に対してインナ側に変位し、爪部２９によりアウタパッド１１ａが、ロータ１のアウタ側面に押し付けられる。この結果、このロータ１が、軸方向両側から強く押し付けられて、制動が行われる。この様に、本実施の形態の１例の場合には、パーキングブレーキによる制動力が、フローティング型ディスクブレーキ機構のみにより得られる。

　以上の様な構成を有する本実施の形態の１例のディスクブレーキ装置８によれば、それ単体で、サービスブレーキとパーキングブレーキとの２つの機能を発揮する事ができる為、それぞれ専用の装置を設ける場合に比べて、装置全体としての小型化及び軽量化を図れると共に、ナックルの形状の自由度を向上できる。
　即ち、本実施の形態の１例の場合には、パーキングブレーキとしての機能を発揮するフローティング型キャリパ１０が、専用のサポートに対して支持されるのではなく、サービスブレーキとしての機能を発揮する対向ピストン型キャリパ９に対して支持される事により、フローティング型ディスクブレーキ機構と対向ピストン型ディスクブレーキ機構とが一体化されて、１つのディスクブレーキ装置８が構成されている。しかも、本実施の形態の１例の場合には、フローティング型キャリパ１０が、対向ピストン型キャリパ９に対して径方向に重畳（マウント）される状態で支持されている。

　この為、例えば前記図１２に示した従来構造の場合の様に、サービスブレーキとパーキングブレーキの専用の２つの装置が周方向に離隔した状態で設けられる構造や、単に周方向に連続した構造と比べて、装置全体としての小型化（周方向に連続した構造に対しては特に、周方向に関する全長の短縮化）を図れる。又、フローティング型ディスクブレーキのサポートを省略できる為、装置の軽量化及び低コスト化を図れる。又、本実施の形態の１例の構造によれば、ナックル４に必要な取付部が、対向ピストン型キャリパ９を支持固定する為の１つで済む為、このナックル４の形状に関する自由度を向上できる。更に、対向ピストン型ディスクブレーキ機構（サービスブレーキ）とフローティング型ディスクブレーキ機構（パーキングブレーキ）とで、１対のパッド１１ａ、１１ｂが共通に使用される為、パッド数を低減する（図１２の構造と比較して、２枚のパッドを減らす）事ができて、この面からも軽量化及び低コスト化を図れる。

　ここで、上述した本発明に係るディスクブレーキ装置の実施の形態の特徴をそれぞれ以下に簡潔に纏めて列記する。
　［１］　車輪と共に回転するロータ（１）を挟んで設けられるアウタボディ部（１５）及びインナボディ部（１６）と、前記ロータ（１）の外周縁よりも径方向外方位置で、これらアウタボディ部（１５）及びインナボディ部（１６）の周方向両端部同士を連結する１対の連結部（１７ａ，１７ｂ）と、これらアウタボディ部（１５）及びインナボディ部（１６）に、互いに対向して設けられた２組以上の第一シリンダ（回入側第一アウタシリンダ１９ａ及び回入側第一インナシリンダ１９ｂ、並びに、回出側第一アウタシリンダ２０ａ及び回出側第一インナシリンダ２０ｂ）とを有し、前記ロータ（１）を跨ぐ状態でナックル（４）に固定される対向ピストン型キャリパ（９）と、
　前記各第一シリンダ（回入側第一アウタシリンダ１９ａ及び回入側第一インナシリンダ１９ｂ）内にそれぞれ、液密に且つ軸方向に関する変位を可能に嵌装された、これら各第一シリンダ（回入側第一アウタシリンダ１９ａ及び回入側第一インナシリンダ１９ｂ、並びに、回出側第一アウタシリンダ２０ａ及び回出側第一インナシリンダ２０ｂ）と同数の第一ピストン（回入側第一アウタピストン１２ａ、回入側第一インナピストン１２ｂ、回出側第一アウタピストン１３ａ、及び回出側第一インナピストン１３ｂ）と、
　前記ロータ（１）の両側に配置された状態で、前記対向ピストン型キャリパ（９）に対し軸方向に関する変位を可能に支持された少なくとも１対のパッド（アウタパッド１１ａ、インナパッド１１ｂ）と、
　アウタ側に設けられたアウタ側押圧部（爪部２９）と、インナ側に設けられたインナ側押圧部（第二ピストン１４）とを有し、これらアウタ側押圧部（爪部２９）及びインナ側押圧部（第二ピストン１４）が前記対向ピストン型キャリパ（９）に周方向に隣接して設けられた１対の第一シリンダ（回入側第一アウタシリンダ１９ａ及び回入側第一インナシリンダ１９ｂ、並びに、回出側第一アウタシリンダ２０ａ及び回出側第一インナシリンダ２０ｂ）同士の周方向間部分にそれぞれ配置されると共に、前記各パッド（アウタパッド１１ａ、インナパッド１１ｂ）における軸方向に関して前記アウタ側押圧部（爪部２９）及びインナ側押圧部（第二ピストン１４）と対向する１対のパッド（アウタパッド１１ａ、インナパッド１１ｂ）を径方向外方から跨ぐ状態で、前記対向ピストン型キャリパ（９）に対し支持されたパーキング制動機構とを備え、
　サービスブレーキによる制動力が、前記各第一シリンダ（回入側第一アウタシリンダ１９ａ及び回入側第一インナシリンダ１９ｂ、並びに、回出側第一アウタシリンダ２０ａ及び回出側第一インナシリンダ２０ｂ）内に圧油が送り込まれる事のみにより発生し、
　パーキングブレーキによる制動力が、前記パーキング制動機構の作動に基づき、前記アウタ側押圧部（爪部２９）及びインナ側押圧部（第二ピストン１４）が互いに近づく方向に変位する事のみにより発生する、
　ディスクブレーキ装置（８）。
　［２］　前記パーキング制動機構が、前記アウタ側押圧部である爪部（２９）と、インナ側に設けられ、前記爪部（２９）のインナ側面に向け開口する１個の第二シリンダ（３２）とを有し、前記対向ピストン型キャリパ（９）に対し軸方向に変位可能に支持されたフローティング型キャリパ（１０）と、前記第二シリンダ（３２）内に軸方向の変位を可能に嵌装された前記インナ側押圧部である第二ピストン（１４）とを備えたフローティング型ディスクブレーキ機構である、上記［１］に記載したディスクブレーキ装置（８）。
　［３］　電動モータを駆動源として、前記第二ピストン（１４）を前記第二シリンダ（３２）内で軸方向に変位させるための電動式押圧装置（３７）が設けられており、前記パーキングブレーキによる制動力が、前記電動式押圧装置（３７）を利用して発生する、上記［２］に記載したディスクブレーキ装置（８）。
　［４］　前記電動式押圧装置（３７）が、前記フローティング型キャリパ（１０）のインナ側部分（シリンダ部３０のインナ側面）に支持されている、上記［３］に記載したディスクブレーキ装置（８）。
　［５］　前記各パッド（アウタパッド１１ａ、インナパッド１１ｂ）が２枚設けられている、上記［１］～［４］のうちの何れか１つに記載したディスクブレーキ装置（８）。
　［６］　前記各第一シリンダ（回入側第一アウタシリンダ１９ａ及び回入側第一インナシリンダ１９ｂ、並びに、回出側第一アウタシリンダ２０ａ及び回出側第一インナシリンダ２０ｂ）が、周方向に離隔する状態で２組設けられている、上記［１］～［５］のうちの何れか１つに記載したディスクブレーキ装置（８）。

　なお、本発明のディスクブレーキ装置は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良等が可能である。その他、上述した実施の形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
　また、本出願は、２０１３年１２月２６日出願の日本特許出願（特願２０１３－２６９０３９）に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。

　上述した実施の形態では、パーキングブレーキによる制動力が、電動式押圧装置を利用して得られる構造に就いてのみ説明したが、本発明はこの様な構造に限定されない。即ち、パーキングブレーキによる制動力が、フローティング型ディスクブレーキ機構により発生する事ができれば、例えば日本国特開２００７-１７７９９５号公報に開示された構造の様な、パーキングレバーによる駆動構造を採用する事もできる。即ち、パーキングレバーにより、シリンダ部内に配置したカム機構とアジャスト機構（送りねじ機構）とが順次駆動される事により、第二ピストンがロータに向けて押圧される構造を採用できる。又、使用するパッド数に就いても、２枚に限定されず、例えば４枚や６枚設ける事もできる。

　　１　　ロータ
　　２　　対向ピストン型ディスクブレーキ装置
　　３　　フローティング型ディスクブレーキ装置
　　４　　ナックル
　　５　　キャリパ
　　６ａ、６ｂ　取付部
　　７　　サポート
　　８　　ディスクブレーキ装置
　　９　　対向ピストン型キャリパ
　１０　　フローティング型キャリパ
　１１ａ　　アウタパッド（パッド）
　１１ｂ　　インナパッド（パッド）
　１２ａ　　回入側第一アウタピストン（第一ピストン）
　１２ｂ　　回入側第一インナピストン（第一ピストン）
　１３ａ　　回出側第一アウタピストン（第一ピストン）
　１３ｂ　　回出側第一インナピストン（第一ピストン）
　１４　　　第二ピストン（インナ側押圧部）
　１５　　アウタボディ部
　１６　　インナボディ部
　１７ａ、１７ｂ　連結部
　１８　　開口部
　１９ａ　　回入側第一アウタシリンダ（第一シリンダ）
　１９ｂ　　回入側第一インナシリンダ（第一シリンダ）
　２０ａ　　回出側第一アウタシリンダ（第一シリンダ）
　２０ｂ　　回出側第一インナシリンダ（第一シリンダ）
　２１ａ、２１ｂ　ガイド壁部
　２２ａ、２２ｂ　ガイド凹溝
　２３　　収納凹溝
　２４　　逃げ凹部
　２５ａ、２５ｂ　取付座
　２６　　ライニング
　２７　　裏板
　２８ａ、２８ｂ　耳部
　２９　　爪部（アウタ側押圧部）
　３０　　シリンダ部
　３１　　ブリッジ部
　３２　　第二シリンダ
　３３ａ、３３ｂ　腕部
　３４ａ、３４ｂ　ガイドピン
　３５ａ、３５ｂ　防塵ブーツ
　３６　　切り欠き
　３７　　電動式押圧装置
　３８　　ケーシング

Claims

　車輪と共に回転するロータを挟んで設けられるアウタボディ部及びインナボディ部と、前記ロータの外周縁よりも径方向外方位置で、これらアウタボディ部及びインナボディ部の周方向両端部同士を連結する１対の連結部と、これらアウタボディ部及びインナボディ部に、互いに対向して設けられた２組以上の第一シリンダとを有し、前記ロータを跨ぐ状態でナックルに固定される対向ピストン型キャリパと、
　前記各第一シリンダ内にそれぞれ、液密に且つ軸方向に関する変位を可能に嵌装された、これら各第一シリンダと同数の第一ピストンと、
　前記ロータの両側に配置された状態で、前記対向ピストン型キャリパに対し軸方向に関する変位を可能に支持された少なくとも１対のパッドと、
　アウタ側に設けられたアウタ側押圧部と、インナ側に設けられたインナ側押圧部とを有し、これらアウタ側押圧部及びインナ側押圧部が前記対向ピストン型キャリパに周方向に隣接して設けられた１対の第一シリンダ同士の周方向間部分にそれぞれ配置されると共に、前記各パッドにおける軸方向に関して前記アウタ側押圧部及びインナ側押圧部と対向する１対のパッドを径方向外方から跨ぐ状態で、前記対向ピストン型キャリパに対し支持されたパーキング制動機構とを備え、
　サービスブレーキによる制動力が、前記各第一シリンダ内に圧油が送り込まれる事のみにより発生し、
　パーキングブレーキによる制動力が、前記パーキング制動機構の作動に基づき、前記アウタ側押圧部及びインナ側押圧部が互いに近づく方向に変位する事のみにより発生する、
　ディスクブレーキ装置。
　前記パーキング制動機構が、前記アウタ側押圧部である爪部と、インナ側に設けられ、前記爪部のインナ側面に向け開口する１個の第二シリンダとを有し、前記対向ピストン型キャリパに対し軸方向に変位可能に支持されたフローティング型キャリパと、前記第二シリンダ内に軸方向の変位を可能に嵌装された前記インナ側押圧部である第二ピストンとを備えたフローティング型ディスクブレーキ機構である、請求項１に記載したディスクブレーキ装置。
　電動モータを駆動源として、前記第二ピストンを前記第二シリンダ内で軸方向に変位させるための電動式押圧装置が設けられており、前記パーキングブレーキによる制動力が、前記電動式押圧装置を利用して発生する、請求項２に記載したディスクブレーキ装置。
　前記電動式押圧装置が、前記フローティング型キャリパのインナ側部分に支持されている、請求項３に記載したディスクブレーキ装置。
　前記各パッドが２枚設けられている、請求項１～４のうちの何れか１項に記載したディスクブレーキ装置。
　前記各第一シリンダが、周方向に離隔する状態で２組設けられている、請求項１～５のうちの何れか１項に記載したディスクブレーキ装置。