WO2015037145A1 - 画像検出装置、荷電粒子線装置および試料観察方法 - Google Patents

画像検出装置、荷電粒子線装置および試料観察方法 Download PDF

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    • H01J2237/26Electron or ion microscopes
    • H01J2237/2614Holography or phase contrast, phase related imaging in general, e.g. phase plates

Definitions

  • the first term ⁇ 1 on the right side of Equation (4) is a geometric optical path difference (path integral of wave number), and the second term ⁇ 2 is a contribution from the electric field and corresponds to the refractive index in the case of light rays.
  • the third term ⁇ 3 is a magnetic field contribution and does not depend on the acceleration voltage (electron beam wavelength).
  • the geometrical optical phase difference of the first term ⁇ 1 and the second term ⁇ 2 are assumed to have no electric field on the orbit. ignore. Therefore, only the contribution from the magnetic field on the orbit of the third term ⁇ 3 is considered.
  • FIG. 9A in the case of a rod-shaped magnetic body, the distribution of the magnetic flux lines 81 is not uniform in all directions because of the influence of the other pole. For this reason, even if the helical winding of the helical wave circulates quantitatively, even if a phase difference of 2 ⁇ is maintained, the phase change for each unit azimuth is not uniform. Furthermore, in the rod-shaped magnetic body 88, return magnetic flux lines are generated not only from one end of the pole but also from the middle of the rod-shaped magnetic body. Such phase changes and return magnetic flux lines for each unit azimuth cause distortion in the spiral phase distribution.
  • FIG. 9B An example of a helical wave including distortion is shown in FIG. 9B.
  • the spiral wave 21 in FIG. 9B has a distorted phase plane as compared with FIG.
  • a rod-shaped magnetic body 88 is assumed as an example of a dipole. However, since the magnetic body 88 creates a shadow with respect to the electron beam 27, a tear (shade) 24 is formed on the wavefront of the spiral wave. Occurs (bottom of FIG. 9A). In order to generate a magnetic field on the optical axis 2, a magnetic body 88 is necessary. As a result of arranging the magnetic body 88, the electron beam is shielded, creating a tear (shade) 24 in the wavefront of the spiral wave, or unnecessary scattering. generate. For this reason, when the sample is observed using the spiral wave 21, an artifact is generated in the observation image. Such a defect may cause a similar problem even in a technique using a phase plate.
  • the optical axis 2 of the electron microscope and the axis of the image detector 82 coincide with each other.
  • the optical axis 2 and the axis in the direction in which the magnetic field is applied (hereinafter referred to as the magnetic field application axis: a one-dimensional solenoid corresponds to the central axis of the solenoid) coincide.
  • the electron beam obtained by applying a magnetic field is an electron spiral wave
  • the image of the electron source (formally a spot shape) becomes a ring shape by small angle electron diffraction. You can know from that.
  • the degree of spiraling can be determined from the size of the ring. This means that, for example, the diffraction image observation optical system (edge dislocation diffraction grating 91) shown in FIG. 17A is assembled. Since the edge dislocation diffraction grating 91 is not used at the time of sample observation, only the central portion (the zero-order spot portion in FIG. 4B) is the observation target.
  • the image detection device here includes an image detector and a magnetic field generation device.
  • FIG. 29 is a diagram showing another configuration of the image detection apparatus of Configuration Example 5. In the configuration shown in FIG. 29, no opening is provided in the lower magnet.

Abstract

 荷電粒子らせん波を生成する。画像検出装置において、画像検出装置を浸漬する様に荷電粒子線装置の光軸と平行方向に磁場を印加し、印加磁場の磁束線と荷電粒子線とが非対称に相互作用するように、磁場印加の軸方向または当該軸の延長線上に画像検出器を配置する。荷電粒子線と相互作用する磁束量が、らせん波を生成するのに適正な条件を満たすように、発生する磁束量とその極性を制御することによって画像検出器に入射する荷電粒子線を、荷電粒子らせん波とする。

Description

画像検出装置、荷電粒子線装置および試料観察方法
 本発明は、画像検出装置、荷電粒子線装置および試料観察方法に関する。
 試料に荷電粒子線を照射して試料を透過した荷電粒子線の強度分布、位相分布を用いて試料の物性情報を得る研究が進められている。特に、電子線においては、電子線の強度だけでなく電子波としての位相分布から電磁場など物理情報を取得する電子線ホログラフィーなどが実用化され、応用研究も進められている。
 例えば、特許文献1には、試料から発生した反射電子が残留ガスに衝突して拡散しながら上昇する際、反射電子の上昇にともなって対物レンズの磁場強度が増加するため、拡散領域が電子ビームの光軸方向に拘束され、対物レンズ主面(磁場のピーク位置)で拡散領域(径)が最小となる走査電子顕微鏡が開示されている。但し、この対物レンズの磁場は、電子の拡散領域を小さくするための磁場であり、電子線の位相分布をらせん化するものではない。
特開平9-320504号公報
 本発明者は、荷電粒子線装置の研究開発に従事しており、その性能の向上について、検討している。その過程において、投影面に照射される荷電粒子線としてらせん波を用いることが、有用であることが判明した。
 その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
 本願において開示される実施の形態のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
 本願において開示される一実施の形態に示される画像検出装置において、画像検出装置を浸漬する様に荷電粒子線装置の光軸と平行方向に磁場を印加し、印加磁場の磁束線と荷電粒子線とが非対称に相互作用するように、磁場印加の軸方向または当該軸の延長線上に画像検出器を配置する。荷電粒子線と相互作用する磁束量が、らせん波を生成するのに適正な条件を満たすように、発生する磁束量とその極性を制御することによって画像検出器に入射する荷電粒子線を、荷電粒子らせん波とする。
 本願において開示される以下に示す代表的な実施の形態に示される荷電粒子線装置によれば、荷電粒子線の伝播経路の終端に当る画像検出器に到着する荷電粒子線を、減衰させることなく、荷電粒子らせん波とすることが可能となる。また、荷電粒子らせん波のらせん度の度数やらせん度の正負(らせんの巻きの向き)などを容易に制御することができる。
らせん波の模式図である。 らせん形状の薄膜かららせん波が生成される様子を示す模式図である。 刃状転位回折格子かららせん波が生成される様子を示す模式図である。 3次の刃状転位を含む回折格子と小角電子回折像を示す図である。 3次の刃状転位を含む回折格子と小角電子回折像を示す図である。 3次の刃状転位を含む回折格子と小角電子回折像を示す図である。 電子線の軌道と位相(波面)を説明する模式図である。 アハラノフ・ボーム効果を説明する電子線の経路(軌道)と位相(波面)を示す模式図であり、1点の電子源から1点の観察点に至る2本の電子線の経路の模式図である。 アハラノフ・ボーム効果を説明する電子線の経路(軌道)と位相(波面)を示す模式図であり、2点の電子源から2点の観察点に至る2本の電子線の経路の模式図である。 点状の磁束発生体が電子らせん波を生成する様子を示した模式図である。 平面波が点状の磁束発生体を通過して電子らせん波を生成する様子を示した模式図である。 モノポールと電子らせん波との関係を示す模式図である。 ダイポールとステップ状の電子波(対を成す電子らせん波)との関係を示す模式図である。 棒状の磁性体の片端を利用した電子らせん波の生成の様子を示す模式図である。 歪みを伴った電子らせん波の模式図である。 ソレノイドの片端からの磁束線の分布を示す模式図である。 棒状の磁性体の片端からの磁束線の分布を示す模式図である。 超伝導筒の片端からの磁束線の分布を示す模式図である。 電子銃Tipの電子射出部から発した電子線と磁束線との関係を示す模式図である。 磁束発生体からの磁束線と像検出面を含む光軸に垂直な平面Qに対する投影図である。 素電子源から発した2本の電子軌道と磁束線との関係を示す模式図である。 光軸と磁場印加軸とのずれを示す投影図であり、磁場印加軸が光軸と平行で位置がずれた場合を示す図である。 光軸と磁場印加軸とのずれを示す投影図であり、磁場印加軸と光軸との角度がずれた場合を示す図である。 光軸と磁場印加軸とのずれを示す投影図であり、磁場印加軸が像検出面内にある場合を示す図である。 光軸と磁場印加軸とのずれを示す投影図であり、磁場印加軸が像検出面の外にある場合を示す図である。 磁場印加コイルに補正コイルを設置した構成の一例を示す模式図である。 電子線偏向器を設置した構成の一例を示す模式図である。 電子らせん波の小角回折像を観察する光学系の一例を示す模式図である。 らせん波であることを示す小角回折像である。 画像検出器の直上の磁場分布を磁場測定素子の走査によって計測する例を示す模式図である。 画像検出器の直上の磁場分布を2次元の磁場測定素子によって計測する例を示す模式図である。 電子線装置のシステム構成例を示す図である。 実施の形態の画像検出装置の構成例1を示す図である。 構成例1の画像検出装置の他の構成を示す図である。 実施の形態の画像検出装置の構成例2を示す図である。 構成例2の画像検出装置の他の構成を示す図である。 実施の形態の画像検出装置の構成例3を示す図である。 実施の形態の画像検出装置の構成例4を示す図である。 構成例4の画像検出装置の他の構成を示す図である。 実施の形態の画像検出装置の構成例5を示す図である。 構成例5の画像検出装置の他の構成を示す図である。
(実施の形態)
 以下、実施の形態を図面に基づいて詳細に説明するが、その前に、らせん波およびらせん波の生成方法について説明する。なお、以下の本実施の形態の説明では主に電子線について説明を行うが、これは電子線が電子波としての研究が最も進展しているためで、本発明を電子線に限定するものではないことを明記しておく。
 <1.らせん波>
 コヒーレントな光学系においては、伝播する光波の位相は一意に定まる。その位相が等しい面を波面と呼び、その波面の形状から平面波、球面波など波動の分類が成されている。一方、位相が一意に定まらない特異点を持つ場合も存在する。例えば、等位相面がある軸(一般に光軸に平行)を中心にらせん形状をしたらせん波である。これは波の伝播方向に垂直な平面で切って見た場合に、特異点を中心(らせんの軸)として、方位角を1回転周回させたときに位相が2πの整数倍だけ変化する位相状態を持つ波のことである。図1に平面波に分類されるらせん波21を示す。図1から明らかなように、らせん軸22上は位相の特異点となっており位相を定めることができない。
 このらせん波は、光学ではラゲールガウシアンビームや光渦(ひかりうず)と呼ばれ、軌道角運動量を保持したまま伝播する光波であり、等位相面(波面)に垂直方向に力を作用させることができる。そのため、照射対象に対して運動量を与えることが可能となり、例えば細胞程度の大きさの粒子を操作する光ピンセットなどのマニピュレーション技術として、また、レーザー加工や超解像顕微分光法として利用することができる。
 さらには、位相特異点であるらせん軸の部分に複数の軌道角運動量を内在できる(トポロジカルチャージ(本願では単に「らせん度」と呼ぶ)としてらせんの巻きの強さを選べる)ことから量子情報通信の分野での利用が可能である。また、X線を用いた場合には、磁化状態や原子配列の立体像の解析など、物性解析、構造解析などへの適用が可能である。
 電子線におけるらせん波(電子らせん波ともいう)は、軌道角運動量を保持したまま電子線が伝播するので、今までにない電子線のプローブ(入射ビーム)としての応用分野を生み出すことが期待される。例えば、磁化測定における高感度化や3次元状態の計測、たんぱく質分子や糖鎖の高コントラスト・高分解能観察などである。とりわけ、磁化観察においては、電子線は伝播方向と平行な磁化に対しては感度を持たない原理的な欠点を持っているが、電子らせん波では電子線の伝播方向の磁化を観察できる可能性がある。また、観測だけでなく、軌道角運動量を利用した加工や磁化制御などにも適用の可能性がある。そのため、スピン偏極電子線と並んで、次世代の電子線装置のプローブとして、その研究開発の重要性が高まっている。
 <2.関連技術としてのらせん波の生成方法>
 電子線においてらせん波を作り出すには、次の2通りの方法(関連技術1、2)がある。
 図2は、らせん形状の薄膜かららせん波が生成される様子を示す模式図である。らせん波を作り出す第1の方法(関連技術1)は、らせん形状の厚さ分布を有する薄膜(らせん位相板33)に平面波23を照射し透過した波の位相分布が膜の厚さを反映してらせん形状となることを利用する方法である。
 図3は、刃状転位回折格子かららせん波が生成される様子を示す模式図である。らせん波を作り出す第2の方法(関連技術2)は、フォーク型格子と呼ばれる刃状転位を含む回折格子(刃状転位回折格子)による回折波を利用する方法である。
 第1の方法(関連技術1)では、電子波のごとく波長が極端に短い場合には、らせん形状をした薄膜の作製が難しい。よって、刃状転位を含む回折格子を用いる第2の方法(関連技術2)がより現実的である。
 図3に示すとおり、刃状転位回折格子91から回折波として生成されたらせん波21(等しい位相面がらせん形状を成している波)は、回折像9では通常の点状の回折スポット99に代わり、リング状の回折スポット97を成す。このリング状の回折スポットの1つを回折面で空間的に分離できれば、所望のらせん波21を取り出すことができる。
 刃状転位回折格子91を用いてらせん波を生成する第2の方法は、刃状転位の次数、および刃状転位のバーガースベクトルの正負によってらせん度の度数とらせん度の正負(らせんの右巻き、左巻き)を制御することができる。図4Aは、実際に作成した3次の刃状転位回折格子91の電子顕微鏡像である。収束イオンビーム装置により、厚さ200nm程度の窒化シリコンメンブレンに加工を行なった。図4Aの図中中央部の上側に格子が3本挿入され、この部分に格子が集中して配置されている。すなわち、この集中部が刃状転位のコアの位置であり、次数は3次である。刃状転位の次数と生成されるらせん度の度数は、基本的に一致する。しかし、回折格子のコントラストが高く、高次の回折スポットが得られる場合には、刃状転位の次数と回折スポットの次数を乗算した値のらせん度を持つらせん波も生成される。図4Bは、図4Aの回折格子を加速電圧300kVの電子線で照射した際に得られた小角電子回折像9である。図4Cは、図4Bの像を模写したものである。
 この小角電子回折像9は、カメラ長150mでの記録である。中央部の0次スポット(点状の回折スポット99)の左右に±1次、±2次、±3次のリング状の回折スポット97が観察されており、回折次数が高くなるほどリング径が大きくなることから、らせん度が±3次、±6次、±9次のらせん波が生成されていることがわかる。すなわち、回折スポットのリング径は、らせん波のらせん度を直接表している。このように、1枚の刃状転位回折格子91から複数の種類のらせん波21を生成させることが可能である。
 しかし、回折格子の場合、現状で用いられている格子は振幅格子(波動(振幅)の一部を完全に遮蔽する型の格子)であり、格子を透過した時点で、回折波の強度は半減している。さらに、本実施の形態での利用目的外である0次の回折波(透過波)に回折波の強度の過半が集中し、±1次以上の回折波の強度はそれぞれに分散することによってさらに桁落ちする。よって、±1次以上の回折波の強度は、格子への入射強度と比較すると数十分の1以下に低下する(図4B参照)。仮に刃状転位格子が位相格子であっても、格子への入射強度と比較すると、±1次以上の回折波の強度が数分の1以下に低下することは免れ得ない。位相格子とは、波動の一部の位相を変化させる型の格子で、振幅は変化させない格子、つまり透明な格子である。強度が不足した電子線を用いた試料の観察では、十分なSN比が得られず、分解能などに支障が出る。すなわち、電子らせん波の実用には、ビームの強度の確保が重要となる。
 <3.電子軌道と位相差>
 電子線が伝播する空間中のある点での、電子線の波面(位相)を定めるには、電子波の波動関数の位相部について1つの軌道に沿って経路積分(線積分)し、同じ値をとる軌道上の点を結ぶ。この点を結んだ面が波面となる。図5は、電子軌道27と波面26(等位相面)の関係を描いた模式図である。電子源1から射出した電子線が各々の軌道27を経て観察点10に達するときの軌道とそのときの波面26の様子を描いている。
 図5の関係を数式を用いて説明する。軌道上に座標sをとると、時間に依存しない波動方程式より電子線の波面S(s)は数式(1)のように表される。ここで、mは電子の質量、Eは加速電圧に相当する電界、eは電子の電荷、Vは電位(スカラーポテンシャル)、Aはベクトルポテンシャルである。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000001
 位相φ(s)は数式(2)のように表される。ここで、hは、プランク定数である。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000002
 位相φ(s)は相対的なものであり、一意には定まらない。しかし、常に他の位相との比較において意味を成すものであり、他の波面との位相差Δφ(s)は、一意に定まるものである。そのため、1点から出た電子線を、経路Iと経路IIを経て伝播させ、重ね合わせて、干渉縞として位相差Δφ(s)を求めることが可能である。この場合の位相差Δφ(s)を数式(3)に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000003
 数式(3)の位相差Δφ(s)は、軌道上の波数に比べて軌道の変化が小さいとき、すなわち電子線の波長に比べて軌道の曲率が十分に小さい場合には、幾何光学的光路差の寄与、軌道上の電場の寄与、軌道上の磁場の寄与の3つの項に分けて記述できる。この近似はWKB近似と呼ばれ、加速電圧が100kV以上の電子線では十分な精度で成立する。数式(4)に、位相差Δφ(s)を上記3つの項に分離して示す。但し、波数ベクトル:k=1/λである。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000004
 数式(4)右辺の第1項Δφは幾何光学的光路差(波数の経路積分)、第2項Δφは電場からの寄与であり光線の場合の屈折率に相当する。第3項Δφは磁場の寄与で、加速電圧(電子線の波長)に依存しないことを特徴とする。本実施の形態においては、電子源として光軸近傍を伝播する電子線に関して検討するため第1項Δφの幾何光学的位相差、および軌道上に電場は存在しないものとして第2項Δφは無視する。したがって、第3項Δφの軌道上の磁場からの寄与についてのみ検討する。
 <4.アハラノフ・ボーム効果>
 ストークスの定理により、数式(4)の第3項は、2つの軌道の間に存在する磁束密度Bと、2つの軌道が囲む閉曲面の面積Sに依存した位相差Δφである(数式(5))。これがアハラノフ・ボーム効果(AB効果)である。ここでSは、軌道Iと軌道IIが囲む面積である。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000005
 すなわち、図6Aに示すように、電子線の2つの軌道27(経路I、II)が閉じているとき、その閉じた経路で定まる平面(曲面)を磁束が透過すれば、それに伴って2つの電子線には位相差が発生するのである。図6Aでは電子源から発した2つの軌道を描く電子線27が観察点10に戻るように描かれている。これは、電子線では可干渉距離の制限があるため、光源のサイズが軌道の長さに比べて無視できるほどに小さく、また、位相差を観測するために2つの電子線を重畳させて干渉を観察しなければならないため、このように描いている。しかし、図6Bに示すように、2つの電子線の始点と終点が離れていても(但し軌道長に比べて十分に小さい)、2つの電子線の経路が定める曲面を磁束が透過すればその2つの電子線の間に位相差は発生する(図6B)。
 図7Aに示すように、点状の電子源1があり、その下流側に磁束の発生点Bがある場合を考える。電子源から光軸2を中心として全方位角の方向に均一に電子線27が射出していること、同時に磁束の発生点が光軸2上に存在し、磁束線81も光軸2を中心として全方位角の方向に均一に流れている(放射している)ことを示している。このとき、隣り合った2つの電子軌道ごとに、それぞれの軌道が囲む等しい面積Sの曲面を同じ極性、磁束量の磁束が透過する。すなわち、それぞれの電子軌道は同じ位相差を得る(数式(6))。そして、動径に沿って時計方向にちょうど一周回ったときに全体の位相差の和が2πとなっていれば、この電子線はらせん波となる。
 前述した図5および図6との関連から、図7Aでは、点状の電子源1を描いているが、電子源1と磁束の発生点Bが十分に離れている場合には、電子源1には無関係に、磁束の発生点Bを、磁束の発生点Bの上方の電子線(平面波23)が透過し、その際に電子線の位相分布がらせん化すると考えてよい。言い換えれば、平面波23が、らせん形状の位相分布(らせん波21)に変調されると考えてよい(図7B参照)。本願はこのアイデアに基づくものである。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000006
<5.モノポールと位相差>
 図7Aおよび図7Bには、1つの極性(N極あるいはS極だけ)からなる点磁荷から、空間に磁束線が放射状に射出されている、あるいは、点磁荷に放射状の磁束が吸い込まれている様子が描かれている。このような磁束の分布を描くものとしてモノポールがある。モノポールは、理論的にその存在が予言されているもので、磁気単極子のことである。つまり電荷のごとく、1つの極性(N極あるいはS極だけ)からなる点磁荷で、空間に磁束線が放射状に射出される、あるいは、磁束が吸い込まれる点である。しかし、理論的には在ってもいいものとされているが、現在までのところ見つかっていない。実在している全ての磁性はN極とS極のポールが対を成したダイポールである。
 もしモノポールが存在し、これを平面波の電子線で照射したら、図8Aに示すように、モノポール83を透過した後の電子線は、モノポール83の投影位置をコアとするらせん形状の位相分布(21)を持つ。図8Bは2つの互いに逆極性のモノポール(83、84)が対となったダイポールの場合の例である。ダイポールではそれぞれのポールの投影位置をコアとして逆極性のらせん形状の位相分布となり、それぞれのコアから離れた位置では、位相分布が結果的に平面波に戻ってしまう。しかし、図8Aに示すモノポールの場合では、らせん波21の位相分布は、コアから離れた位置でもらせん形状のままである。もちろん、コアから離れるほど変化の度合いは小さくなる。
 らせん波が安定に存在するには、コアを中心に周回した時に電子波の位相変化量がちょうど2π、もしくは2πの整数倍でなければならない。その条件は数式(6)より導かれる。すなわち、2つの電子線経路が定める曲面の面積をSとしたときに、Sを透過する磁束B×Sがh/eの整数倍(n倍)であれば良い。これを改めて数式で表すと数式(7)となる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000007
 このときの磁束量は、超伝導状態で発生する量子化磁束(磁束量子:フラクソン)のちょうど2倍の磁束量(2×h/(2e)=4.14×10-15(Wb))である。この磁束量を持つモノポールが存在すれば、平面波の電子線はモノポールを透過後、らせん度1のらせん波となる。量子化磁束の偶数倍ではらせん波を生成させるが、奇数倍では電子波の位相がちょうど相殺するため、らせんが消滅する。すなわち、位相が混ざり合って、位相分布を定義できなくなる。
 <6.らせん波生成用位相板として磁場の利用>
 モノポールはまだ発見されず利用できないが、ダイポールを延長し片端のみを利用してモノポールに代用することが考えられる。図9Aにこれを例示する。図7Aと同様に、点状の電子源1があり、その電子線27の伝搬方向の下流側の光軸上にダイポールの片端として棒状の磁性体88が位置している。棒状の磁性体88の片端から発する磁束量が、先述の磁束量子(h/(2e))の2倍の量であれば、棒状の磁性体から十分下流側では、光軸2の周りのらせん度1のらせん波が生成する。
 しかし、図9Aに示したように、棒状の磁性体では他方のポールの影響があるため、全方位に均一な磁束線81の分布とはならない。そのため、らせん波のらせんの巻き具合が量的には周回したときに2πの位相差を保っていても、単位方位角ごとの位相変化は均一ではない。さらに、棒状の磁性体88においては、ポールの片端だけでなく、棒状の磁性体の途中から戻り磁束線の発生がある。このような単位方位角ごとの位相変化や戻り磁束線は、らせん形状の位相分布に歪みを生じさせる原因となる。歪みを含むらせん波の一例を図9Bに示す。図9Bのらせん波21は、図1と比較して位相面が歪んでいる。
 また、図9Aでは、ダイポールの例として棒状の磁性体88を想定しているが、この磁性体88は電子線27に対して陰を作るため、らせん波の波面には断裂(陰)24が発生する(図9A下部)。光軸2上に磁場を発生させるために磁性体88が必要で、磁性体88を配置した結果として、電子線が遮蔽されらせん波の波面に断裂(陰)24を作り出し、あるいは不要な散乱を発生させる。このため、らせん波21を用いる試料観察に際して、観察像にアーティファクトを生み出してしまう。このような欠点は、位相板を用いる技術でも同様の問題を生じさせることがある。
 1次元状に発生させた磁場の片端をモノポールとして代用する方法は、ソレノイド89を用いる場合(図10A)、棒状の磁性体88を用いる場合(図10B)、超伝導筒87を用いる場合(図10C)などが考えられる。ソレノイド89と棒状の磁性体88での効果、問題点は、図9に示す場合とほぼ同様で上述のとおりであるが、磁束量の制御においては、ソレノイド89の方が取り扱いが容易と考えられる。超伝導筒87を用いる場合(図10C)は、超伝導体が十分に冷却され、十分な厚さを持っている場合には、磁束の量子化効果が得られるので、高精度に所定の磁束量に制御可能である。さらに、磁場の遮蔽効果により、磁束の発生点が超伝導筒の端点に限定されるので、他の場合よりもモノポールに近い位相分布が得られると期待される。それでも、基本的にダイポールであるため、電子波の位相分布の歪みは残存してしまう。
 以上詳細に説明したとおり、関連技術1、2に示す方法および上記ダイポール素子の片端を利用する方法で電子らせん波を生成し得るものの、以下にまとめるように、各種の問題点を有する。
 (1)関連技術1:らせん状の厚みを持つ位相板の利用(図2参照)
 この方法では、発生させた電子線全体をらせん波とできるが、原子サイズよりも小さな波長を持つ電子線に対して、十分な精度を持つらせん位相板の製造が困難である。加えて製造後の調整はほぼ不可能のため、らせんのコア周回につき位相差を2πの整数倍に調整することは極めて困難である。
 (2)関連技術2:刃状転位を持つ回折格子の利用(図3参照)
 この方法は先述のとおり、1枚の刃状転位格子から、らせん度数、らせん度の正負の異なる複数種類のらせん波を発生させることが可能であるという利点を持つ。しかし、この利点は同時に欠点でもある。生成した複数のらせん波に強度が分散されるため、大きな強度のらせん波ビームを得ることが困難である。したがって、試料観察に用いた場合には、像のSN比が劣化し、また、試料(材料)の加工に用いた場合には、加工効率の劣化を招く。いずれも対応策として、長時間露光が考えられるが、露光時間中に試料のドリフトなどが生じると加工や観察の精度が劣化する。長時間露光を前提とした場合には、装置全体に十分な安定性が備わっていなければ、実用化は困難である。
 さらに、この方法を用いる場合には、電子光学系として、小散乱角対応の回折光学系(長カメラ長の光学系)を用い、その回折面においてらせん波を取捨選択しなければならない。このため、電子顕微鏡などに適用した場合、通常用いられる光学系に加え、新たな光学系および絞り機構などの光学素子の追加設置が必要となる。
 (3)ダイポール素子の片端の利用(図9参照)
 この方法では、上記(1)の関連技術1(らせん位相板)と同様に、ダイポール素子の片端を位相板として使用してらせん波を生成させることが可能である。しかし、先述のとおり、使用しない他端の極が影響を与えるため、らせんのコアの周回に対して等方的ならせん形状の位相分布を持つらせん波の生成は困難である。
 このように、上記(1)~(3)のいずれの方法を用いても、電子らせん波の生成は現段階ではかなりの困難を伴うこととなる。
 以上の考察の元、本発明者は、上記(1)~(3)の方法の問題点を解消すべく、検討の結果、新しいらせん波の生成方法を見出すことに至ったものである。以下に、詳細に説明する。
 <らせん波生成の原理>
 まず、らせん波生成の原理を説明する。図11に、電子銃Tipから像検出面までの電子線の様子を示す。図11に示すように、電子銃Tip11から射出した電子線27は、電子光学系(図示を省略)を経由して、像検出面(投影面、画像検出面)8で検出される。画像検出器82としては、例えば、2次元平面上に撮像素子を配列させたCCDカメラなどを用いることができる。この場合、像検出面8は、CCDカメラの受光面となる。なお、画像検出器82としては、CCDカメラに限定されるものではなく、フィルムカメラやイメージングプレート(X線の二次元分布計測器)などを用いてもよい。
 ここでは、電子光学素子としては、画像検出器82のみに注目しているので、電子顕微鏡の光軸2と画像検出器82の軸とは一致していると考えてよい。さらに、簡単のため光軸2と磁場の印加方向の軸(以下、磁場印加軸と呼ぶ:1次元形状のソレノイドで言えばソレノイドの中心軸に相当する軸のことである)が一致しているとする。
 光軸2に垂直な像検出面8を含む平面Qを想定し(図11A参照)、その平面Q上への電子線27と磁束線81の投影を考える(図11B参照)。図11Bの中央部のチェッカーボード状に描かれている箇所が画像検出器82の像検出面8である。
 図11Bの投影図では、光軸2が1点に描かれるとともに、磁束線81も光軸方向は圧縮される。磁束線81の分布に光軸2と平行な軸を中心とした軸対称性を仮定すると、その軸を中心点として、放射状の磁束線81が描かれる。
 図11Bの投影図は、光軸方向の電子線27の伝播部分のみを記載している。そのため、図11Aから明らかなように、画像検出器82より下部の磁束線81については投影図には反映されず、平面Qよりも上側の磁束線81と画像検出器82へ入射する電子線27が投影描画されている。そのため、図11Bでは磁束線81の描画であるにもかかわらず、戻り磁束の影響がないように描かれている。これは、この投影図においては、画像検出器82よりも下部の磁束線は、電子線経路が定める平面(曲面)を透過せず、アハラノフ・ボーム効果による電子波の位相変調に寄与しないため、初めから除外して考えているためである。以下に説明するが、この考え方は妥当なものであり、この描画が可能な磁束線と電子線の関係を作り出すことによって、事実上、磁場のモノポール化が可能になるのである。
 図12を用いてさらに詳細に説明する。図12は、電子銃から射出した電子線27が、電子光学系(図示を省略)を経由して、像検出面8で検出されるまでを描いている。簡単化のため、電子は電子銃の断面上の異なる2点(A点とC点:それぞれ光軸2から距離rだけ離れた点)から発し、それぞれ経路I(AB)と経路II(CD)を通る。この2本の電子線経路(I、II)が定める曲面ABCDを1本の磁束線81aが透過している。また、簡単化のため、磁場(磁束線81、81a)としては、磁場は画像検出器82上の平面Qに垂直に、かつ磁場印加軸が光軸2と一致するように印加されている場合を考える。磁場は、画像検出器82の近傍にのみ印加されるので、磁場の印加部分と電子線27の軌道長とでは、軌道長の方が十分に長いと考えてよい。すると、光軸2と画像検出器82上の平面Qとの交点Oと、同心円上の点Bと点Dが定める円弧(一辺)により規定される扇形(三角形状)の領域(Ss)を透過した磁束線81aは、全て2本の電子線経路I、IIが定める曲面ABCDを1回だけ透過する。戻りはない。この関係は、方位角が異なるどの2つの電子線経路を選んでも同じである。したがって、画像検出器82上の平面Qへ入射する電子線27にとって、磁束線81、81aはモノポールと同じ効果を与える。また、この効果はアハラノフ・ボーム効果(数式(5))に依存しているので、2本の電子線経路I、IIが定める曲面ABCDのどの部分を透過したかを問わない。磁束線81aは曲面ABCDを透過しさえすればよい。そして、その透過磁束量が、適切であれば、画像検出器82へ入射する電子線27は、画像検出器82の直上の磁場印加領域を透過後は、電子らせん波となって検出される。
 <磁場分布>
 電子線の射出領域が有限な大きさを持ち、ダイポール磁束分布の一端が電子線の射出領域を一回だけ透過する状況が作り出せれば、上記のとおり、電子源を射出後の電子線に作用する磁束は実効的にモノポールとなり、結果として電子線を電子らせん波とすることができる。
 図11Bおよび図12を参照しながら数式を用いてさらに検討を進める。
 画像検出器82の像検出面8の面積をSoとし、電子源(電子線射出領域、電子線射出部の断面)を含む平面から像検出面8までの距離をlとすると、電子顕微鏡などの一般の電子線装置では√So<<lが成立する。電子源から像検出面8までの間に通常の電子光学系のみが存在する場合には、電子源像に歪みが加えられることはなく、光軸2から所定の距離で、方位角Δθだけ離れた2つの素電子源である点Aと点Cから射出した電子線27は、その方位角Δθを保ったまま電子線経路I、IIを経て像検出面8まで伝播され、光軸2からの距離が例えばrである点B、点Dで検出される。点B、点Dでの位相差をψとすると、AB、CDの2つの軌道で囲まれた曲面(面積S12)を透過する磁束によって位相差は数式(8)に基づき決定される。これは数式(7)と同様である。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000008
 簡単化のため、平面Q上に投影された電子線の射出領域は円盤状の形状を成し、光軸と磁場印加軸が電子線の射出領域の中心を通ると仮定する。また、磁束線81aは光軸2と平行に平面Qを透過するが、ダイポールであるために平面Qを透過後、有限距離の範囲内で必ず戻る方向(図11、図12では下方)に転ずる。そのため、電子線の軌道と交わりを持つ。すなわち、平面Qを光軸方向に透過する磁束線が、いずれは照射電子軌道が定める曲面を1回だけよぎる磁束線となる。そのよぎる位置に依存せず、よぎる磁束量のみに依存して電子軌道間の位相差が定まる。これが、アハラノフ・ボーム効果であり、数式(6)~(8)に具体的に示されている。以上のことから、電子線経路I、IIの間の位相差は、素電子源AとCの画像検出器82上の平面Q上への投影点BとDと光軸2とが定める平面Q上の面積Ssを透過する磁束量を検討すればよいことになる。平面Q上を透過する均一な磁束密度をBとして改めて数式(8)を書き直すと、数式(9)のようになる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000009
 図11Bおよび図12に示すように電子線27の軌道を光軸2からの距離rごとに分けて考え、素電子源AとCの画像検出器82上の平面Q上への投影点BとDを結ぶ線分が光軸2を見込む角度をΔθとすると、位相差ψは数式(10)となる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000010
 数式(10)は、rが大きくなるほど、多くの磁束線に透過されるため、同じ方位角を持っていてもrに依存して位相差が大きくなることを意味している。
 この光軸2からの距離rへの依存性が大きいとらせん波は歪みが大きくなり、図9Bに示したごとく、らせん波としての位相分布を保てなくなる。そこで、以下の様な条件を検討する。
 光軸からの距離(離軸距離とも言う)rへの依存が小さいらせん波とするには、周回してΔθが2πとなる時に、位相差ψが2πの整数倍となる条件を考える。この条件を数式(11)に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000011
 これより、磁束密度B(厳密には光軸方向の成分Bz)と光軸からの距離rとの間に、数式(12)が成立する。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000012
 すなわち、離軸距離rの2乗に反比例して磁束密度が低下する磁束分布を形成するときには、数式(12)を数式(10)に代入して、数式(13)を得る。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000013
 数式(13)から明らかなように、位相差は離軸距離rの対数依存性(ln(r))を示す。rの単位としては、例えば電子線の波長などを取ることができるので、ln(r)は十分に大きなrに対しては変化が小さく、十分に歪の小さならせん波として実用できる。
 なお、電子線と相互作用する領域(磁場の電子線が透過する領域)の磁束量の大きさが量子化磁束の2倍の磁束量(h/e=4.14×10-15(Wb))の整数倍であればよい。言い換えれば、装置の光軸に対して垂直な画像検出器の像検出面上で光軸と平行に像検出面を透過する磁場の磁束量が、量子化磁束の2倍の磁束量の整数倍であればよい。
 この整数の正負は磁束線の向き(例えば図12においては、下から上、例えば図16等においては、上から下)、すなわち、電子らせん波のらせんの巻き方向を意味する。この整数が負値の場合には、正値の場合の磁束線の向きと逆、すなわち、電子らせん波のらせんの巻き方向が正値の場合と逆転していることを意味する。
 <光軸と磁場印加軸との不整合に関して>
 先述の簡単化を可能とするためには、電子線装置の光軸2あるいは画像検出器82の軸と、磁場印加軸とが一致している必要がある。しかし、現実には、例えば、磁場印加軸29が光軸2と位置ずれしている場合(図13A)、あるいは、磁場印加軸29と光軸2とが平行でない場合(図13B)が考えられる。いずれの場合も、電子線27と磁束線81の画像検出器82上の平面Qへの投影図を考えると、図14Aのようになる。光軸2と磁場印加軸29とのずれは、そのずれ方向への偏向と見なすことができる。したがって、水平方向に補正磁場ΔBを印加して光軸2と磁場印加軸29を合わせることが可能である。もし、補正しない場合には、光軸を中心としたときの単位方位角あたりの位相変化量が均一でなくなり、図9Bで示したように、らせん波の位相分布に歪みが発生する。
 また、光軸2と磁場印加軸29とのずれ量が大きく、投影像中で磁場印加軸29が、画像検出器82(チェッカーボード状に描かれている領域)の外へ出てしまう場合(図14B)には、光軸2を中心として放射状の磁束線81を描くことはできず、もはやらせん波を得ることはできない。これは、図14Bの場合には、磁場に分布はあるものの、全体としては図中右上から右下への偏向磁場Bが印加されている状況と類似の磁場分布となっているからである。このように、本実施の形態においては、画像検出器82(チェッカーボード状に描かれている領域)の内側に磁場印加軸29は存在しなければならない。すなわち、光軸2と磁場印加軸29との間にずれが生じる場合、特に、磁場印加軸29が画像検出器82(チェッカーボード状に描かれている領域)の内側に位置しない場合には、そのずれを補正する必要がある。機械加工において精度の向上を図り、光軸2と磁場印加軸29とを合わせることが必要である。画像検出器82は、例えば、数十mm角の大きさを有するため、機械加工において、光軸2と磁場印加軸29とを合わせることは容易である。さらに、らせん波の精度を向上し、その制御性を良くよくするためには、機械加工精度以上の精度を必要とする。この場合には、電磁場を用いた軸調整を行えばよい。
 磁束線分布の方向、強度を補正する場合、あるいは、電子線の射出方向、射出部位を磁場印加軸に合わせる調整を行う場合には、電磁場を用いた軸調整方法が必要となる。軸調整方法に制限はないが、以下の2つの方法を例示することができる。第1の方法として、水平方向に補正磁場を印加して磁場印加軸を光軸に合わせる方法がある(図15)。また、第2の方法として、電子線の入射方向、入射部位を磁場印加軸に合わせる方法がある(図16)。
 磁場印加軸の補正には、図15に示すように、光軸2を挟んで配置された上下2段のミニコイル(磁場補正用コイル)14を補正部として利用することができる。上下2段に配置することにより、磁場の角度と位置の両方を補正することが可能となる。
 また、電子線入射部を調整するには、電界を用いる。例えば、図16に示すように、上下2段に光軸2を挟んで対抗するように配置された平行平板電極(補正用電極)15を補正部として利用することができる。図16では簡略化して記載しているが、電界型においても、光軸2の外周に沿って平行平板電極15の対を複数配置する。
 上記方法に係る補正部としては、電子線を用いる装置で使用されている手法を適宜採用することができる。上記いずれの方法であっても、これら偏向系の設置、取り扱いは電子線を用いる装置では、既に実用化されている技術である。ただし、画像検出器82は電子線関係の装置としては空間的に大きい領域を占めるため、電子線の伝播の補正範囲が大きくなった場合、画像の歪などが顕著に表れる可能性がある。このため、像歪に対しては電子光学的な取り扱いだけでなく、画像取得後の数値演算による補正法なども含めた対応を行ってもよい。
 <らせん波の確認>
 本実施の形態においては、電子線は、画像検出器82の直上の磁場印加領域透過後に、電子らせん波となっている。これは電子顕微鏡の鏡体全体からみれば空間的にはごく狭い範囲で実現される。このため、試料への電子線の照射や、試料の像、試料の回折像の観察などは従来の電子顕微鏡などの電子線装置と同様の取り扱いで十分である。これも、本実施の形態の大きな利点のひとつである。
 ただし、電子顕微鏡の鏡体を伝播する電子線を、その終端部でらせん化するため、試料像(回折像を含む)において観察試料による位相変調と、後から加えられるらせん波への位相変調とが、線形結合可能な関係でなければならない。本実施の形態においては、観察試料による位相変調と、後から加えられるらせん波への位相変調とが、線形結合可能な関係であるということを前提としている。電磁場に関しては、この前提は良い近似で成立することが知られており問題とはならない。
 また、技術的には電子線を検出する直前でらせん波に変調するため、らせん波となっているか否かの直接的な確認が困難である。これに関しては、刃状転位回折格子を用いて既知のらせん波を生成し、既知のらせん波のらせん度の変化によって確認を行うことができる。例えば、既知のらせん波を照射し、画像検出器82で既知のらせん波を確認(観察)する。この状態で、磁場を印加し、らせん度の変化を確認(観察)する。これによって印加磁場と生成するらせん波との関係を事前に調査することができる。
 図17は、電子らせん波の小角回折像を観察する光学系の一例を示す模式図である。具体的には、図17Aが、小角回折像観察光学系である。この小角回折像観察光学系は、試料位置に刃状転位回折格子91を配置する。図17Aに示す電子源1から照射された電子線を、刃状転位回折格子91を透過させ、回折波としてらせん波21を生成する(図3参照)。この既知のらせん波をリング状回折スポットとして確認した後、磁場印加によりリング状回折スポットのサイズを変化させる。図17Bは、らせん度の異なるらせん波の回折像の模式図である。例えば、図17Bに示すように、既知の2次のらせん波が、磁場印加により3次のらせん波となれば、印加磁場とらせん波の度数の関係が分かる。このようにして、印加磁場とらせん波の変調との関連を知ることが可能となる。
 他にも、画像検出器82の直上の磁場の空間分布を、ホール素子やSQUID素子などの磁気測定素子44を用いて測定し、その測定結果から印加磁場とらせん波の変調との関連を知ることが可能となる。これら測定に用いられる磁気測定素子44は、図18に示すように、単素子であってもよいし、図19に示すように、単素子を複数2次元配列させたものでもよい。例えば、図18に示すように、画像検出器82の直上の磁場を、単素子を2次元的(図中の矢印方向)に走査することにより、画像検出器82の直上の磁場の空間分布を測定する。また、図19に示すように、単素子を複数2次元配列させた磁気測定素子44により、画像検出器82の直上の磁場を測定してもよい。この測定結果(印加磁場)と、検出されるリング状回折スポットのサイズから印加磁場とらせん波の変調との関連を知ることが可能となる。
 印加磁場とらせん波の変調との関連を調査に必要な装置(刃状転位回折格子91、磁気測定素子44)は、実際の試料を観察する際には、観察の邪魔にならないよう電子線の伝播経路からはずれた位置に配置すればよい。
 <小角電子回折光学系によるらせん度の調整>
 前述したように、磁場を印加して得られた電子線が電子らせん波になっていることは、小角電子回折によって、電子源の像(従来はスポット状になっている)がリング状になっていることから知ることができる。また、らせん度の度数はリングの大きさから知ることができる。これは、例えば、図17Aに示した回折像観察光学系(刃状転位回折格子91)を組むことを意味している。試料観察時には刃状転位回折格子91は用いないので、中央部(図4Bでは、ゼロ次スポットの部分)のみが観察対象となる。
 らせん度の調整方法は、例えば、以下のような方法が考えられる。
 <1>例えば、試料位置など、光源の像(クロスオーバー)から所定の距離離れた位置に刃状転位回折格子91を設置する(図17参照)。
 <2>例えば、対物レンズをオフし、小角電子回折光学系のモードに設定する。
 <3>らせん波を示すリング状回折スポットを観察しながら、画像検出器82の近傍に位置する磁場印加装置13を用いて光軸と同方向に磁場を印加する。所定の磁束となったときに、リング状回折スポットのリングの直径が変化する。このとき、観察するリング状回折スポットは1つでも良いし、複数でもよい。複数の場合は、相対的にカメラ長(回折像の倍率に相当)を小さくしなければならないが、複数スポットを一度に観察する方が変化の様子を捉え易いというメリットがある。
 <4>リング状回折スポットのリング形状の歪み(らせん形状の位相分布の歪み)などらせん状態の修正は、例えば、図15または図16に示すミニコイルや平行平板電極などの補正部を用いて補正する。
 <5>印加磁場の大きさ、あるいは磁場印加装置への通電量に対する、リング状スポットの大きさの変化の様子を記録し、電子らせん波生成のための装置パラメータを確定させる。上記<4>の補正が必要な場合には、その補正値も合わせて記録する。
 <6>刃状転位回折格子91を光軸2からはずし、観察用の試料3を所定の位置に設置し、対物レンズをオンとし、像観察、あるいは回折像観察のための光学系モードに設定する。
 <7>電子らせん波の観察を行う。即ち、<5>により定めたパラメータの値を参考に所定の磁束を発生させ、らせん波の観察を実施する。磁場印加装置を操作し、らせん波の度数を変更しながら観察を継続する。らせん度の正負(らせんの巻きの向き)を逆転する場合には、通電装置では電流の方向を逆転させるなど、磁束の向きを逆転させればよい。
 磁場印加装置が発生させる光軸方向の磁場は、弱レンズと考えられるが、このレンズは、極めて弱いレンズであるため、焦点距離の変化への影響はほとんどないと考えられる。よって、観察像への影響はほとんどないと考えられる。仮に影響があっても、電子顕微鏡のいずれかの電子レンズの調整により修正可能である。
 また、観察像への歪みなどの影響が見られる場合には、電子顕微鏡に備え付けの軸調整装置(偏向装置、非点収差補正器など)により容易に補正することが可能である。
 また、前述した図17に示す光学系は、第1中間レンズの物面に、第2コンデンサレンズにより光源の像(クロスオーバー)を結ぶ構成である。このような光学系は、比較的大きなカメラ長(例えば、1000m以上)を有する光学系である。カメラ長とは、回折像における倍率に相当するパラメータで、カメラ長が大きいほど小さな偏向角度を観察可能である。電子らせん波を確認するためには、1次回折スポットに対応するリング状のスポットの強度分布を観察する必要がある。そのため、実績のある値として、80m以上のカメラ長が望ましい(例えば、図4Bでは、カメラ長は150mであった)。
 また、照射電子線の開き角は小さい方がのぞましい。開き角とは、試料位置から直上の光源の像(クロスオーバー)を見込む角度のことで、開き角が小さいほど平行度の高い電子線である。これは、照射電子線のもつビームの広がりが回折像では回折スポットの広がりとして反映され、この広がりが重なり合うことでらせん波のリング状のスポットを消してしまう恐れがあるからである。らせん度1の回折像を観察できなければならないことから、実用性を考えると1×10-6rad以下の開き角が望ましい。
 なお、小角電子回折光学系の構成は、図17に示すものに限らず、他の構成のものを用いてもよい。いずれの光学系を用いる場合であっても、リング状のスポット形状が分解可能なカメラ長を備えていればよい。
 図20は、電子らせん波を発生させる電子源装置を備えた電子線装置のシステム全体の構成例を示す図である。300kV程度の加速電圧を持つ汎用型の電子顕微鏡を想定したレンズ構成で描いているが、この構成を持つ電子顕微鏡に限定するものではない。
 図20(図17も参照)に示すように、電子銃Tip11は、加速管40の近傍に配置されている。電子源1(電子銃Tip11)は、電子源の制御系19に接続され、制御系19によりコントロールされる。加速管40は、加速管40の制御系49と接続され、コントロールされる。
 一方、画像検出器82の表面を含む像検出面8は、光軸2方向に磁場印加が可能なコイル13の近傍に配置されている。コイル13は、制御系(らせん波生成用コイルの制御系)17と接続され、らせん波を生成するための発生磁束量が、制御系17によりコントロールされる。図20においては、観察対象の試料3を記載しているが、電子線が電子らせん波となっていることを小角回折像で確認する際には試料3として、刃状転位回折格子91を配置してもよい。即ち、前述したように、電子線のらせん化を確認、具体的には、電子線がらせん形状の位相分布を持つことを確認する際には、先述した方法を用いる。すなわち、試料の配置位置に、刃状転位回折格子91を配置し、回折格子により生成された第1電子線が、磁場からの位相変調を受けることによりらせん度の異なる第2電子線となる場合の、パラメータ(磁場強度やらせん度)を確定させる。補正が必要な場合には、その補正値も合わせて記録する。
 図20に示す電子軌道27は、小角回折時のものである。すなわち、対物レンズ5がオフの状態で、電子線のクロスオーバーを、第一中間レンズ61の物面に構成し、さらに下段の結像レンズ系(62、63、64)で、クロスオーバーを検出記録面(像検出面8)に拡大投影している。検出記録面8に構成された、例えば回折像97は、検出器79とコントローラ78を経て、例えば画像データモニタ76の画面上で観察され、また、記録装置77に画像データとして格納される。図20では、画像データモニタ76の画面には、らせん波の例としてリング状の回折スポット97の画像が表示されている。図20のシステムに示す各種レンズ構成や、観察条件が一例に過ぎないことは言うまでもない。
 図20に示すように、電子線装置は、全体としてシステム化されており、オペレータは、モニタ52の画面上で装置の制御状態を確認でき、インターフェース53を用いた入力により、システム制御コンピュータ51を介して、小角電子回折光学系の各構成部を制御することができる。各構成部とは、例えば、電子源1、らせん波生成用のコイル13、加速管40、各レンズ(41、42、5、61、62、63、64)、試料3(試料保持装置)、検出器79などである。39は、試料保持装置の制御系であり、49は、加速管の制御系である。各レンズ(41、42、5、61、62、63、64)のうち、41は、第1コンデンサレンズ、42は、第2コンデンサレンズであり、それぞれ、第1コンデンサレンズの制御系48、第2コンデンサレンズの制御系47により制御される。また、5は、対物レンズであり、対物レンズの制御系59により制御される。また、61は、第1中間レンズ、62は、第2中間レンズ、63は、第1投射レンズ、64は、第2投射レンズであり、それぞれ、第1中間レンズの制御系69、第2中間レンズの制御系68、第1投射レンズの制御系67、第2投射レンズの制御系66により制御される。
 なお、電子線装置としては、ビームの偏向系や真空排気系などの他の構成部を有するが、本実施の形態と直接の関係が無い構成部については、図示およびその説明を省略する。
 以下、図面を参照しながら、本実施の形態の画像検出装置の構成例1~5を説明する。ここでいう画像検出装置とは、画像検出器および磁場発生装置を備えるものである。
 <構成例1>
 図21は、本実施の形態の画像検出装置の構成例1を示す図である。図21においては、画像検出器82の下部に磁性体FERが配置されている。磁性体FERは、例えば、円盤状の磁性体FERであり、例えば、画像検出器82側にS極が配置され、逆側にN極が配置されている。円盤状の磁性体FERの光軸方向の厚さはほぼ同じである。
 このような磁性体FERにより、光軸2方向に磁場を印加することができる。この磁性体FERから空間に発する磁束線81と試料3を透過した電子線とが、図12を参照しながら説明した磁束線81と電子線27との関係を構成する。言い換えれば、電子線27が入射する画像検出器82を浸漬する磁場(磁束線81)が生成する。よって、磁束線81が、先述した適正な磁束量となった時に、電子線は、図21下部に記載のように、らせん波21となる。このように、画像検出器82の上部に生成される電子らせん波21のらせん度、らせん度の正負を制御可能である。
 磁性体FERの発生させる磁束量は、以下の方法で制御することができる。磁性体FERとして、磁束量が温度に伴って変化する磁性材料を用い、磁性体FERの周辺にヒーターなどの加熱部(図示せず)を設ける。この場合、ヒーターにより、磁性体FERの温度を変化させることにより、磁束量(磁束分布)を制御することができる。また、磁性体FERと接続されるコイルなどの磁場発生装置を設けてもよい。この場合、磁場発生装置により磁性体FERを流れる磁束量を制御することができる。
 また、次の方法により、磁束線の極性を反転することができる。例えば、磁性体FERに、当該磁性体の反転磁化以上の強磁場を外部より印加する。また、磁性体FERを、当該磁性体のキュリー温度以上に加熱した状態で、逆極性の磁場を印加する。この場合、磁場は弱くてもよい。
 図22は、構成例1の画像検出装置の他の構成を示す図である。図21に示す磁性体FERは、円盤状の磁性体FERであり、例えば、画像検出器82側にS極が配置され、逆側にN極が配置されている。しかしながら、図22に示す磁性体FERの光軸方向の厚さは、不均一となっており、円盤の中央部(光軸2を含む部分)の厚さが、円盤の周辺部の厚さより大きくなっている。
 このように、磁性体FERの厚さ、例えば、中央部を厚くし、中央部から周辺部に行くにしたがって薄くなるようにその厚さを変化させることによって、画像検出器82の直上の磁束線81の空間分布を制御することができる。具体的には、光軸2からの距離rの2乗に反比例するように、磁束線81の分布が調整されている。この磁束線81の分布が、所定の分布となっているかどうかは、例えば、図18および図19を参照しながら説明した磁気測定素子44(ホール素子、SQUID素子など)を用いて確認することができる。
 <構成例2>
 図23は、本実施の形態の画像検出装置の構成例2を示す図である。図23においては、光軸2方向に磁場印加可能な中空コイル(円筒状のコイル)13の内部に画像検出器82が配置されている。円筒状の中空コイル13の中心軸を磁場印加軸29とする。この磁場印加軸29と画像検出器82の軸、すなわち、画像検出装置の光軸2、あるいは電子源装置が搭載される電子線装置(図17、図20参照)の光軸2とが、一致するように調整される。この調整方法は先述したとおりである。
 中空コイル13への通電量、電流の方向を制御することによって、画像検出器82の上部に生成される電子らせん波21のらせん度、らせん度の正負を制御可能である。
 画像検出器82と中空コイル13の位置関係は、画像検出器82上の平面Q(図11または図12参照)を挟んで磁束線の分布が上下非対称となるような位置にそれぞれ配置される。このような配置関係にあれば、画像検出器82と中空コイル13とをどのように配置してもよいが、例えば、図23においては、画像検出器82の上面(像検出面8)がコイルの中央部より下方に位置するように、中空コイル13内に画像検出器82が配置されている。
 図24は、構成例2の画像検出装置の他の構成を示す図である。図24においては、光軸2方向に磁場印加可能な中空コイル(円筒状のコイル)13の上部に画像検出器82が配置されている。円筒状の中空コイル13の中心軸を磁場印加軸29とする。この磁場印加軸29と画像検出器82の軸、すなわち、画像検出装置の光軸2、あるいは電子源装置が搭載される電子線装置(図17、図20参照)の光軸2とが、一致するように調整される。この調整方法は先述したとおりである。
 この場合も、画像検出器82の平面Q(図11または図12参照)を挟んで磁束線の分布が上下非対称となるが、図23とは異なり、画像検出器82が中空コイル13の上部に配置されている。
 本実施の形態のように、コイルを用いた磁場印加装置では、発生させる磁束量、極性が通電量と電源電圧の正負によって容易にコントロールできる利点を持つ。また、コイル上部に画像検出器を配置すると、電子線の入射領域内で磁束線が広がり図中上方に広がっていく、そのための電子線軌道が定める曲面を鏡体下部の狭い空間範囲でよぎりやすいと考えられる。
 <構成例3>
 図25は、本実施の形態の画像検出装置の構成例3を示す図である。図23においては、構成例2の欄において、図23を参照しながら説明した中空コイル13を、上下2段に分割して配置された中空コイル13とした例である。
 このように、2つの中空コイル13をセットとして配置する。例えば、ヘルムホルツ型コイルペアを用いる。このように、上下2段に分割して配置された中空コイル13(コイルペア)を用いた場合であっても、2つの中空コイル13の中間部分には、中空コイル13の中心軸とほぼ平行な磁束線81が生成する。よって、構成例2の場合と同様に、らせん波21を生成することができる。
 このように、中空コイル13を分割して配置した場合には、構成例2(図23)の場合よりも発生する磁束は小さくなるが、らせん度1のらせん波を生成させるには、磁束は磁束量子2個分で足りるため、らせん波の生成に問題はない。十分ならせん度を持つ電子線を生成することができる。
 また、本構成例においては、上下2段に分割して中空コイル13を配置しているため、上下の中空コイル13を個別に制御することが可能である。例えば、上下の中空コイル13で発生する磁束線の密度に差をつけて、全体の磁束線分布をコントロールすることが可能となる。また、本構成例においては、上下2段に分割して中空コイル13を配置しているため、中空コイル13間に空間が生じる。このため、構成例2(図23)の場合と比較して、各中空コイル13で発生するジュール熱を外部へ逃がし、画像検出器の昇温を抑制することができる。また、中空コイル13間の空間を利用して、他の構成部材を配置することができる。例えば、磁場印加軸を補正するための補正部や電子線の入射部位等を調整するための調整部などを中空コイル13間に配置することができる。具体的には、上記補正部として、電極、あるいはミニコイルなどを上記空間に配置することができる(図15、16参照)。この磁場印加軸の補正方法や電子線の入射部位等の調整方法は先述したとおりである。
 <構成例4>
 図26は、本実施の形態の画像検出装置の構成例4を示す図である。図26においては、中空コイル13の外側に磁路(らせん波生成用磁路)37が設けられている。この中空コイル13は、光軸方向に磁場印加可能に配置され、磁路37は、パーマロイなどの透磁率の高い材料を用いて構成され、中空コイル13の外側に設けられている。
 この中空コイル13とその外側の磁路37は、電磁レンズと同様の構成を成している。このため、中空コイル13の内部にある画像検出器82の位置には、構成例2や3の場合と比較して、より高い密度の磁束線81を生成することができる。この構成は、特に、高いらせん度のらせん波を生成させる場合に適した構成である。
 また、本構成例によれば、磁路37と画像検出器82との位置関係を、機械的に高い精度で位置あわせすることが可能である。このため、らせん度とともに、らせん形状の位相分布の精度を向上させたらせん波を生成することができる。さらに、磁路37を用いているため、外部からの電磁誘導などによる磁束線の分布の揺らぎの影響を受け難い。このため、特性の安定したらせん波を生成する画像検出装置を実現することが期待される。
 前述したように、図26に示す磁路37は、中空コイル13の外側に設けられている。より具体的には、磁路37は、円筒状の中空コイル13の内筒面以外の面を覆うように配置されている。よって、図26に示すように、磁路37の上面と底面には、開口部が設けられ、この開口部内に光軸2が位置する。ここで、図26に示す磁路37においては、上面の開口部の径より、下面の開口部の径が大きくなるように設定されている。このように、上面の開口部の径(孔径)と下面の開口部の径を異なるものとしてもよい。このように、開口部の大きさを調整することにより、画像検出器82の直上の磁束線81の空間分布を制御することができる。
 図27は、構成例4の画像検出装置の他の構成を示す図である。図27に示す構成においては、磁路37の磁路37の上面の開口部がテーパー形状となっている。これは、磁場分布が均一になるような形状として選択されたもので、このように磁場分布の形状に応じて様々な開口径を作ることが可能である。
 このように、磁路37において、光軸2近傍の形状を変化させることにより、画像検出器82の直上の磁束線81の空間分布を制御することができる。
 なお、磁路37において、下面の開口部の形状を変化させてもよい。また、テーパー形状以外の形状としてもよい。
 このように、磁路37の開口部の径や、開口部近傍の形状を変化させることにより、画像検出器82の直上の磁束線81の空間分布を制御することができる。また、磁路37の開口部の径や、開口部近傍の形状を機械的な加工により変化させるだけで、画像検出器82の直上において必要な磁束線81の分布を調整(設計)することができる。
 また、中空コイル13に対し、着脱可能に磁路37を構成してもよい。つまり、ちょうど電子レンズのポールピースのように、必要な磁束密度、分布に合わせて磁路37を交換可能な部品としてもよい。この場合、形状の異なる複数の磁路37を準備し、目的に合わせて磁路37を取り替えることで、画像検出器82の直上の磁束線81の空間分布の制御性を向上させることができる。
 <構成例5>
 図28は、本実施の形態の画像検出装置の構成例5を示す図である。図28においては、構成例4(図26)の中空コイル13および磁路37の換わりに磁石38が設けられている。例えば、構成例4(図26)の磁路37の上下部分(磁極部)に、磁石38が配置されている。本構成例においては、コイルを用いずに、磁束分布を画像検出器82の直上に作り出すことができる。磁石材としては、強磁場を生成可能な、SmCo磁石やNdFeB磁石などを用いることができる。このような磁石材を用いることにより、コイルを用いない構成でも、強い磁束分布を画像検出器82の直上に作り出すことができる。
 また、本構成例によれば、磁石38間の空間を利用して、他の構成部材を配置することができる。例えば、磁場印加軸を補正するための補正部や電子線の入射部位等を調整するための調整部などを中空コイル13間に配置することができる。具体的には、上記補正部として、電極、あるいはミニコイルなどを上記空間に配置することができる(図15、16参照)。この磁場印加軸の補正方法や電子線の入射部位等の調整方法は先述したとおりである。
 また、磁束量は、構成例1で説明した方法で制御することができる。例えば、磁石38に用いられる磁性体として、磁束量が温度に伴って変化する磁性材料を用い、磁石38の周辺にヒーターなどの加熱部を設ける。この場合、ヒーターにより、磁石38の温度を変化させることにより、磁束量(磁束分布)を制御することができる。また、磁石38と接続されるコイルなどの磁場発生装置を設けてもよい。この場合、磁場発生装置により磁石38間に流れる磁束量を制御することができる。
 また、次の方法により、磁束線の極性を反転することができる。例えば、磁石38を構成する磁性体に、当該磁性体の反転磁化以上の強磁場を外部より印加する。また、磁石38を構成する磁性体を、当該磁性体のキュリー温度以上に加熱した状態で、逆極性の磁場を印加する。この場合、磁場は弱くてもよい。
 この構成例5においては、決まったらせん度のらせん波を安定的に生成することが可能となる。よって、決まったらせん度のらせん波を利用する電子線装置用の画像検出装置として用いて好適である。また、磁束線81の生成に、電力を必要としないため装置の省電力化を図ることができる。
 また、磁石38は、画像検出器82の上下に配置されたリング状の磁石である。即ち、上段の磁石38および下段の磁石38にはそれぞれ光軸2が位置する開口部の径(孔径)が設けられている。よって、例えば、構成例4(図26)の磁路37の場合と同様に、光軸2が位置する開口部の径(孔径)を調整してもよい。具体的には、図28に示す磁石38においては、上段の磁石の開口部の径より、下段の磁石の開口部の径が大きくなるように設定されている。このように、上段の開口部の径と下段の開口部の径を異なるものとしてもよい。このように、開口部の大きさを調整することにより、画像検出器82の直上の磁束線81の空間分布を制御することができる。
 図29は、構成例5の画像検出装置の他の構成を示す図である。図29に示す構成においては、下段の磁石に開口部が設けられていない。
 このように、下段の磁石を円盤状としてもよい。この場合も、画像検出器82の直上の磁束線81の空間分布を制御することができる。
 このように、上段の磁石および下段の磁石の形状をそれぞれ変化させることにより、画像検出器82の直上の磁束線81の空間分布を制御することができる。また、上段の磁石および下段の磁石の形状を機械的な加工により変化させるだけで、画像検出器82の直上において必要な磁束線81の分布を調整(設計)することができる。
 また、画像検出装置において、着脱可能に磁石(上段の磁石、下段の磁石)38を構成してもよい。つまり、ちょうど電子レンズのポールピースのように、必要な磁束密度、分布に合わせて磁石(上段の磁石、下段の磁石)38を交換可能な部品としてもよい。この場合、形状の異なる複数の磁石(上段の磁石、下段の磁石)38を準備し、目的に合わせて磁石(上段の磁石、下段の磁石)38を取り替えることで、画像検出器82の直上の磁束線81の空間分布の制御性を向上させることができる。
 以上詳細に説明したように、本実施の形態においては、電子顕微鏡などの電子線装置に用いられる画像検出装置に磁場を印加しその磁場の強度を調整することにより画像検出器に入射する電子線を電子らせん波とすることができる。
 画像検出器は電子線の伝搬の終端部に位置し、通常の場合、他の電子顕微鏡鏡体部と同様に電位的にはグランドレベルに置かれる(電気的には接地される)。そのため、電位分布はない領域であり、電子線に対しては、本願で述べたようにらせん波を発生させるための磁場分布のみを検討すればよい。あるいは図16で述べたように、電場を偏向器として積極的に電子線に作用させることが可能となる。この際も、画像検出器がグランドレベルであれば、新たに与える偏向器の電場のみが電子線への偏向に寄与するため、装置の取り扱いとしては簡単化でき、らせん波の取り扱い精度の向上が望める。
 もちろん、画像検出器がグランドレベルにない場合でも、電磁場の電子線への作用は、空間的にベクトル和で表わされるものであり、その大きさは線形性が確保されているため、本願で述べた電子らせん波の生成、制御は不可能ではない。ただ、その制御が画像検出器周りの電場分布(電位分布)の影響を考慮しなければならず、結果として煩雑になる。
 なお、本実施の形態においては、電子顕微鏡などの電子線装置に用いられる画像検出装置に磁場を印加しその磁場の強度を調整することにより画像検出器に入射する電子線を電子らせん波としているが、磁場発生装置をオフ状態とし、らせん度ゼロとなる条件を選択した場合には、通常の画像検出器として用いることができる。
 以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
 例えば、上記実施の形態においては、電子線をらせん波とし、電子顕微鏡などの電子線装置に適用した例を挙げて説明したが、電子の他、イオンなどの荷電粒子などにも本願発明を適用可能である。即ち、荷電粒子線をらせん波とし、荷電粒子線発生装置や荷電粒子線装置に適用することができる。
1…電子源、2…光軸、3…試料、5…対物レンズ、8…像検出面(検出記録面)、9…回折像(小角電子回折像)、10…観察点、11…電子銃Tip、13…コイル(中空コイル)、14…ミニコイル、15…平行平板電極、17…制御系、19…制御系、21…らせん波、22…らせん軸、23…平面波、24…断裂(陰)、26…波面、27…電子線(電子軌道、軌道)、29…磁場印加軸、33…らせん位相板、37…磁路、38…磁石、39…制御系、40…加速管、41、42…レンズ(コンデンサレンズ)、44…磁気測定素子、47、48…制御系、49…制御系、51…システム制御コンピュータ、52…モニタ、53…インターフェース、59…制御系、61、62…レンズ(中間レンズ)、63、64…レンズ(投射レンズ)、66、67、68、69…制御系、76…画像データモニタ、77…記録装置、78…コントローラ、79…検出器、81、81a…磁束線、82…画像検出器、83…モノポール、84…逆極性のモノポール、87…超伝導筒、88…磁性体、89…ソレノイド、91…回折格子(刃状転位格子)、97…リング状の回折スポット、99…点状の回折スポット、ABCD…曲面、I…経路(軌道)、II…経路(軌道)、FER…磁性体、l…電子源から像検出面までの距離、Q…平面、r…光軸からの距離

Claims (18)

  1.  磁場中に設置された画像検出器を有し、荷電粒子線装置の画像検出装置であって、
     前記磁場の印加方向が前記荷電粒子線装置の光軸と平行で、
     前記磁場の強度を調整することにより前記画像検出器に入射する荷電粒子線がらせん形状の位相分布を持つことを特徴とする画像検出装置。
  2.  請求項1に記載の画像検出装置であって、
     前記磁場の前記荷電粒子線が透過する領域の磁束量が、量子化磁束の2倍の整数倍であることを特徴とする画像検出装置。
  3.  請求項1に記載の画像検出装置であって、
     前記磁場の前記荷電粒子線が透過する領域の磁束量が、4.14×10-15Wbの整数倍であることを特徴とする画像検出装置。
  4.  請求項1に記載の画像検出装置であって、
     前記磁場は、軸対称な磁束分布を有する磁場であって、
     前記磁場の軸は、前記荷電粒子線装置の光軸と一致するように調整されることを特徴とする画像検出装置。
  5.  請求項1に記載の画像検出装置であって、
     前記磁場は、軸対称な磁束分布を有する磁場であって、
     前記画像検出器の像検出面を含み、前記荷電粒子線装置の光軸と垂直な平面上において、前記荷電粒子線装置の光軸からの距離をrとするとき、
     前記磁場の磁束分布が、前記距離rの2乗に反比例することを特徴とする画像検出装置。
  6.  画像検出器を有する荷電粒子線装置であって、
     前記画像検出器が磁場中に設置され、
     前記磁場の印加方向が前記荷電粒子線装置の光軸と平行で、
     前記磁場の強度を調整することにより前記画像検出器から発した荷電粒子線がらせん形状の位相分布を持つことを特徴とする荷電粒子線装置。
  7.  請求項6に記載の荷電粒子線装置であって、
     前記磁場の前記荷電粒子線が透過する領域の磁束量が、量子化磁束の整数倍であることを特徴とする荷電粒子線装置。
  8.  請求項6に記載の荷電粒子線装置であって、
     前記磁場の前記荷電粒子線が透過する領域の磁束量が、4.14×10-15Wbの整数倍であることを特徴とする荷電粒子線装置。
  9.  請求項6に記載の荷電粒子線装置であって、
     前記磁場は、軸対称な磁束分布を有する磁場であって、
     前記磁場の軸は、前記荷電粒子線装置の光軸と一致するように調整されることを特徴とする請求項6に記載の荷電粒子線装置。
  10.  請求項6に記載の荷電粒子線装置であって、
     前記磁場は、軸対称な磁束分布を有する磁場であって、
     前記画像検出器の像検出面を含み、前記荷電粒子線装置の光軸と垂直な平面上において、前記荷電粒子線装置の光軸からの距離をrとするとき、
     前記磁場の磁束分布が、前記距離rの2乗に反比例することを特徴とする荷電粒子線装置。
  11.  請求項6に記載の荷電粒子線装置であって、
     前記らせん形状の位相分布を持つ荷電粒子線が、開き角1×10-6rad以下で試料を照射することを特徴とする荷電粒子線装置。
  12.  請求項6に記載の荷電粒子線装置であって、
     カメラ長80m以上で、前記試料の荷電粒子回折像を得ることを特徴とする荷電粒子線装置。
  13.  荷電粒子線の入射方向と平行な方向に磁場を生成させた磁場発生装置と、
     前記磁場発生装置より生成された磁場中に設置された画像検出器と、
     試料保持装置と、
     前記試料保持装置に装着された試料に前記荷電粒子線を照射する照射光学系と、
    を備える荷電粒子装置を用いた試料観察方法であって、
     前記荷電粒子線が、前記照射光学系により前記試料へ照射され、前記試料を透過し、
     前記磁場発生装置により発生する磁場の強度を調整することにより、前記画像検出器に入射する荷電粒子線が、らせん形状の位相分布を持つ荷電粒子線へ変調され、
     前記画像検出器により、前記試料の像もしくは回折像を観察することを特徴とする試料観察方法。
  14.  請求項13に記載の試料観察方法であって、
     前記荷電粒子線が透過する領域の前記磁場の磁束量が、量子化磁束の整数倍であることを特徴とする試料観察方法。
  15.  請求項13に記載の試料観察方法であって、
     前記磁場は、軸対称な磁束分布を有する磁場であって、
     前記磁場の軸は、前記荷電粒子線装置の光軸と一致するように調整されることを特徴とする試料観察方法。
  16.  請求項13に記載の試料観察方法であって、
     前記磁場は、軸対称な磁束分布を有する磁場であって、
     前記画像検出器の像検出面を含み、前記荷電粒子線装置の光軸と垂直な平面上において、前記荷電粒子線装置の光軸からの距離をrとするとき、
     前記磁場の磁束分布が、前記距離rの2乗に反比例することを特徴とする試料観察方法。
  17.  請求項13に記載の試料観察方法であって、
     前記試料の像もしくは回折像を観察する前に、前記画像検出器に入射する前記荷電粒子線がらせん形状の位相分布を持つことを確認する確認工程を有し、
     前記確認工程は、
     前記試料の配置位置に、刃状転位を含む回折格子を配置し、
     前記回折格子により生成された第1荷電粒子線が、前記磁場からの位相変調を受けることにより前記第1荷電粒子線とらせん度の異なる第2荷電粒子線となる場合において、
     前記磁場の強度と前記らせん度との関係を調べる工程を有することを特徴とする試料観察方法。
  18.  請求項13に記載の試料観察方法であって、
     前記試料の像もしくは回折像を観察する前に、前記画像検出器に入射する前記荷電粒子線がらせん形状の位相分布を持つことを確認する確認工程を有し、
     前記確認工程は、
     前記画像検出器の像検出面の磁場の強度分布を磁気測定素子により調べる工程を有することを特徴とする試料観察方法。
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