JP6067857B2 - 荷電粒子線発生装置、荷電粒子線装置、試料加工方法および試料観察方法 - Google Patents

荷電粒子線発生装置、荷電粒子線装置、試料加工方法および試料観察方法 Download PDF

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Description

本発明は、荷電粒子線発生装置、荷電粒子線装置、試料加工方法および試料観察方法に関する。
試料に荷電粒子線を照射して試料を透過した荷電粒子線の強度分布、位相分布を用いて試料の物性情報を得る研究が進められている。特に、電子線においては、電子線の強度だけでなく電子波としての位相分布から電磁場など物理情報を取得する電子線ホログラフィーなどが実用化され、応用研究も進められている。
例えば、特許文献1には、荷電粒子ビームを放出するエミッタの先端が、磁束密度分布のピークの下方に配置された荷電粒子ビーム発生装置が開示されている。
特開平2−297852号公報
本発明者は、荷電粒子線装置の研究開発に従事しており、その性能の向上について、検討している。その過程において、照射する荷電粒子線としてらせん波を用いることが、有用であることが判明した。
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
本願において開示される実施の形態のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
本願において開示される一実施の形態に示される荷電粒子線装置においては、ダイポールの磁場の軸と荷電粒子線装置の光軸とを平行とし、ダイポールの片端から発した磁束線と荷電粒子線とが相互作用するように、ダイポールの軸または軸の延長線上(例えば、両極の間の所定の位置)に荷電粒子源を配置する。
そして、荷電粒子源から放出される荷電粒子線の各軌道とダイポールの片端から発する磁束とがらせん波を生成するのに適正な条件を満たすようにダイポールの片端から発する磁束量とその極性を制御する。
本願において開示される以下に示す代表的な実施の形態に示される荷電粒子線装置によれば、荷電粒子源から発生する荷電粒子線の強度を維持しつつ、荷電粒子らせん波を生成することができる。また、荷電粒子らせん波のらせん度や正負(らせんの巻きの向き)などを容易に制御することができる。
らせん波の模式図である。 らせん形状の薄膜かららせん波が生成される様子を示す模式図である。 刃状転位回折格子かららせん波が生成される様子を示す模式図である。 図4(A),(B)および(C)は、3次の刃状転位を含む回折格子と小角電子回折像を示す図である。 電子線の軌道と位相(波面)を説明する模式図である。 図6(A)および(B)は、アハラノフ・ボーム効果を説明する電子線の経路(軌道)と位相(波面)を示す模式図であり、図6(A)は、1点の電子源から1点の観察点に至る2本の電子線の経路の模式図であり、図6(B)は、2点の電子源から2点の観察点に至る2本の電子線の経路の模式図である。 図7(A)は、点状の磁束発生体が電子らせん波を生成する様子を示した模式図であり、図7(B)は、点状の磁束発生体からの磁束線と電子線の投影図である。 図8(A)は、モノポールと電子らせん波との関係を示す模式図であり、図8(B)は、ダイポールとステップ状の電子波(対を成す電子らせん波)との関係を示す模式図である。 図9(A)は、棒状の磁性体の片端を利用した電子らせん波の生成の様子を示す模式図であり、図9(B)は、歪みを伴った電子らせん波の模式図である。 図10(A)は、ソレノイドの片端からの磁束線の分布を示す模式図であり、図10(B)は、棒状の磁性体の片端からの磁束線の分布を示す模式図であり、図10(C)は、超伝導筒の片端からの磁束線の分布を示す模式図である。 図11(A)は、電子銃Tipの電子射出部から発した電子線と磁束線との関係を示す模式図であり、図11(B)は、点状の磁束発生体からの磁束線と電子線の電子射出部を含む光軸に垂直な平面Qに対する投影図である。 図12(A)は、電子銃Tipから発した2本の電子軌道と磁束線との関係を示す模式図であり、図12(B)は、電子線射出領域と磁束線の平面Qに対する投影図である。 電子銃Tipから発した2本の電子軌道と磁束線との関係を示す模式図である。 図14(A)および(B)は、光軸と磁場印加軸とのずれを示す投影図であり、図14(A)は、磁場印加軸が光軸と平行で位置がずれた場合を示す図であり、図14(B)は、磁場印加軸と光軸との角度がずれた場合を示す図である。 図15(A)および(B)は、光軸と磁場印加軸とのずれを示す投影図であり、図15(A)は、磁場印加軸が電子線射出領域内にある場合を示す図であり、図15(B)は、磁場印加軸が電子線射出領域の外にある場合を示す図である。 磁場印加コイルに補正コイルを設置した構成の一例を示す模式図である。 電子銃Tipの下部に電子線偏向器を設置した構成の一例を示す模式図である。 電子らせん波の小角回折像を観察する光学系の一例を示す模式図である。 電子線装置のシステム構成例を示す図である。 電子銃Tipが磁性体からなる電子源部の一例を示す模式図である。 電子銃Tipと磁場印加コイルから成る電子源部の一例を示す模式図である。 電子銃Tipと磁場印加コイルから成る電子源部に引き出し電極を適用した構成の一例を示す模式図である。 電子銃Tipと2段の磁場印加コイルから成る電子源部の一例を示す模式図である。 電子銃Tipと2段の磁場印加コイルから成る電子源部に引き出し電極を適用した構成例を示す模式図である。 電子銃Tipと2段の磁場印加コイルから成る電子源部に引き出し電極を適用した他の構成例を示す模式図である。 電子銃Tipと磁路で囲まれた磁場印加コイルから成る電子源部の一例を示す模式図である。 電子銃Tipと磁性体から成る電子源部の一例を示す模式図である。
(実施の形態)
以下、実施の形態を図面に基づいて詳細に説明するが、その前に、らせん波およびらせん波の生成方法について説明する。なお、以下の本発明の説明では主に電子線について説明を行うが、これは電子線が電子波としての研究が最も進展しているためで、本発明を電子線に限定するものではないことを明記しておく。
<1.らせん波>
コヒーレントな光学系においては、伝播する光波の位相は一意に定まる。その位相が等しい面を波面と呼び、その波面の形状から平面波、球面波など波動の分類が成されている。一方、位相が一意に定まらない特異点を持つ場合も存在する。例えば、等位相面がある軸(一般に光軸に平行)を中心にらせん形状をしたらせん波である。これは波の伝播方向に垂直な平面で切って見た場合に、特異点を中心(らせんの軸)として、方位角を1回転周回させたときに位相が2πの整数倍だけ変化する位相状態を持つ波のことである。図1に平面波に分類されるらせん波21を示す。図1から明らかなように、らせん軸22上は位相の特異点となっており位相を定めることができない。
このらせん波は、光学ではラゲールガウシアンビームや光渦(ひかりうず)と呼ばれ、軌道角運動量を保持したまま伝播する光波であり、等位相面(波面)に垂直方向に力を作用させることができる。そのため、照射対象に対して運動量を与えることが可能となり、例えば細胞程度の大きさの粒子を操作する光ピンセットなどのマニピュレーション技術として、また、レーザー加工や超解像顕微分光法として利用することができる。
さらには、位相特異点であるらせん軸の部分に複数の軌道角運動量を内在できる(トポロジカルチャージ(本実施の形態では単に「らせん度」と呼ぶ)としてらせんの巻きの強さを選べる)ことから量子情報通信の分野での利用が可能である。また、X線を用いた場合には、磁化状態や原子配列の立体像の解析など、物性解析、構造解析などへの適用が可能である。
電子線におけるらせん波(電子らせん波ともいう)は、軌道角運動量を保持したまま電子線が伝播するので、今までにない電子線のプローブ(入射ビーム)としての応用分野を生み出すことが期待される。例えば、磁化測定における高感度化や3次元状態の計測、たんぱく質分子や糖鎖の高コントラスト・高分解能観察などである。とりわけ、磁化観察においては、電子線は伝播方向と平行な磁化に対しては感度を持たない原理的な欠点を持っているが、電子らせん波では電子線の伝播方向の磁化を観察できる可能性がある。また、観測だけでなく、軌道角運動量を利用した加工や磁化制御などにも適用の可能性がある。そのため、スピン偏極電子線と並んで、次世代の電子線装置のプローブとして、その研究開発の重要性が高まっている。
<2.関連技術としてのらせん波の生成方法>
電子線においてらせん波を作り出すには、次の2通りの方法(関連技術1、2)がある。
図2は、らせん形状の薄膜かららせん波が生成される様子を示す模式図である。らせん波を作り出す第1の方法(関連技術1)は、らせん形状の厚さ分布を有する薄膜(らせん位相板33)に平面波23を照射し透過した波の位相分布が膜の厚さを反映してらせん形状となることを利用する方法である。
図3は、刃状転位回折格子かららせん波が生成される様子を示す模式図である。らせん波を作り出す第2の方法(関連技術2)は、フォーク型格子と呼ばれる刃状転位を含む格子による回折波を利用する方法である。
第1の方法(関連技術1)では、電子波のごとく波長が極端に短い場合には、らせん形状をした薄膜の作製が難しい。よって、刃状転位を含む回折格子を用いる第2の方法(関連技術2)がより現実的である。
図3に示すとおり、刃状転位を含む回折格子91から回折波として生成されたらせん波21(等しい位相面がらせん形状を成している波)は、回折像9では通常の点状の回折スポット99に代わり、リング状の回折スポット97を成す。このリング状の回折スポットの1つを回折面で空間的に分離できれば、所望のらせん波21を取り出すことができる。
刃状転位を含む回折格子を用いてらせん波を生成する第2の方法は、刃状転位の次数、および刃状転位のバーガースベクトルの正負によってらせん度の度数とらせん度の正負(らせんの右巻き、左巻き)を制御することができる。図4(A)は、実際に作成した3次の刃状転位格子91の電子顕微鏡像である。収束イオンビーム装置により、厚さ200nm程度の窒化シリコンメンブレンに加工を行なった。図4(A)の図中中央部の上側に格子が3本挿入され、この部分に格子が集中して配置されている。すなわち、この集中部が刃状転位のコアの位置であり、次数は3次である。刃状転位の次数と生成されるらせん度の次数は、基本的に一致する。しかし、回折格子のコントラストが高く、高次の回折スポットが得られる場合には、刃状転位の次数と回折スポットの次数を乗算した値のらせん度を持つらせん波も生成される。図4(B)は、図4(A)の回折格子を加速電圧300kVの電子線で照射した際に得られた小角電子回折像9である。図4(C)は、図4(B)の像を模写したものである。
この小角電子回折像9は、カメラ長150mでの記録である。中央部の0次スポット(点状の回折スポット99)の左右に±1次、±2次、±3次のリング状の回折スポット97が観察されており、回折次数が高くなるほどリング径が大きくなることから、らせん度が±3次、±6次、±9次のらせん波が生成されていることがわかる。すなわち、回折スポットのリング径は、らせん波のらせん度を直接表している。このように、1枚の刃状転位を含む回折格子91から複数の種類のらせん波21を生成させることが可能である。
しかし、回折格子の場合、現状で用いられている格子は振幅格子(波動(振幅)の一部を完全に遮蔽する型の格子)であり、格子を透過した時点で、回折波の強度は半減している。さらに、本実施の形態での利用目的外である0次の回折波(透過波)に回折波の強度の過半が集中し、±1次以上の回折波の強度はそれぞれに分散することによってさらに桁落ちする。よって、±1次以上の回折波の強度は、格子への入射強度と比較すると数十分の1以下に低下する(図4(B)参照)。仮に刃状転位格子が位相格子であっても、格子への入射強度と比較すると、±1次以上の回折波の強度が数分の1以下に低下することは免れ得ない。位相格子とは、波動の一部の位相を変化させる型の格子で、振幅は変化させない格子、つまり透明な格子である。強度が不足した電子線を用いた試料の観察では、十分なSN比が得られず、分解能などに支障が出る。すなわち、電子らせん波の実用には、ビームの強度の確保が重要となる。
<3.電子軌道と位相差>
電子線が伝播する空間中のある点での、電子線の波面(位相)を定めるには、電子波の波動関数の位相部について1つの軌道に沿って経路積分(線積分)し、同じ値をとる軌道上の点を結ぶ。この点を結んだ面が波面となる。図5は、電子軌道27と波面26(等位相面)の関係を描いた模式図である。電子源1から射出した電子線が各々の軌道27を経て観察点10に達するときの軌道とそのときの波面26の様子を描いている。
図5の関係を数式を用いて説明する。軌道上に座標sをとると、時間に依存しない波動方程式より電子線の波面S(s)は式(1)のように表される。ここで、mは電子の質量、Eは加速電圧に相当する電界、eは電子の電荷、Vは電位(スカラーポテンシャル)、Aはベクトルポテンシャルである。

位相φ(s)は式(2)のように表される。ここで、hは、プランク定数である。
位相φ(s)は相対的なものであり、一意には定まらない。しかし、常に他の位相との比較において意味を成すものであり、他の波面との位相差Δφ(s)は、一意に定まるものである。そのため、1点から出た電子線を、経路Iと経路IIを経て伝播させ、重なり合わせて、干渉として位相差Δφ(s)を求めることが可能である。この場合の位相差Δφ(s)を式(3)に示す。
式(3)の位相差Δφ(s)は、軌道上の波数に比べて軌道の変化が小さいとき、すなわち電子線の波長に比べて軌道の曲率が十分に小さい場合には、幾何光学的光路差の寄与、軌道上の電場の寄与、軌道上の磁場の寄与の3つの項に分けて記述できる。この近似はWKB近似と呼ばれ、加速電圧が100kV以上の電子線では十分な精度で成立する。式(4)に、位相差Δφ(s)を上記3つの項に分離して示す。但し、波数ベクトル:k=1/λである。
式(4)右辺の第1項Δφは幾何光学的光路差(波数の経路積分)、第2項Δφは電場からの寄与であり光線の場合の屈折率に相当する。第3項Δφは磁場の寄与で、加速電圧(電子線の波長)に依存しないことを特徴とする。本実施の形態においては、電子源として光軸近傍を伝播する電子線に関して検討するため第1項Δφの幾何光学的位相差、および軌道上に電場は存在しないものとして第2項Δφは無視する。したがって、第3項Δφの軌道上の磁場からの寄与についてのみ検討する。
<4.アハラノフ・ボーム効果>
ストークスの定理により、式(4)の第3項は、2つの軌道の間に存在する磁束密度Bと、2つの軌道が囲む閉曲面の面積Sに依存した位相差Δφである(式(5))。これがアハラノフ・ボーム効果(AB効果)である。ここでSは、軌道Iと軌道IIが囲む面積である。
すなわち、図6(A)に示すように、電子線の2つの軌道27(経路I、II)が閉じているとき、その閉じた経路で定まる平面(曲面)を磁束が透過すれば、それに伴って2つの電子線には位相差が発生するのである。図6(A)では電子源から発した2つの軌道を描く電子線27が観察点10に戻るように描かれている。これは、電子線では可干渉距離の制限があるため、光源のサイズが軌道の長さに比べて無視できるほどに小さく、また、位相差を観測するために2つの電子線を重畳させて干渉を観察しなければならないため、このように描いている。しかし、図6(B)に示すように、2つの電子線の始点と終点が離れていても(但し軌道長に比べて十分に小さい)、2つの電子線の経路が定める曲面を磁束が透過すればその2つの電子線の間に位相差は発生する(図6(B))。
図7(A)に示すように、点状の電子源1があり、その下流側に磁束の発生点Bがある場合を考える。図7(B)は光軸2の方向への投影図で、光軸2を中心として全方位角の方向に均一に電子線27が射出していること、同時に磁束の発生点が光軸2上に存在し、磁束線81も光軸2を中心として全方位角の方向に均一に流れている(放射している)ことを示している。このとき、隣り合った2つの電子軌道ごとに、それぞれの軌道が囲む等しい面積Sの曲面を同じ極性、磁束量Bの磁束が透過する。すなわち、それぞれの電子軌道は同じ位相差を得る(式(6))。そして、動径に沿って時計方向にちょうど一周回ったときに全体の位相差の和が2πとなっていれば、この電子線はらせん波となる。本実施の形態はこのアイデアに基づくものである。
<5.モノポールと位相差>
図7(A)および(B)には、1つの極性(N極あるいはS極だけ)からなる点磁荷から、空間に磁束線が放射状に射出されている、あるいは、点磁荷に放射状の磁束が吸い込まれている様子が描かれている。このような磁束の分布を描くものとしてモノポールがある。モノポールは、理論的にその存在が予言されているもので、磁気単極子のことである。つまり電荷のごとく、1つの極性(N極あるいはS極だけ)からなる点磁荷で、空間に磁束線が放射状に射出される、あるいは、磁束が吸い込まれる点である。しかし、理論的には在ってもいいものとされているが、現在までのところ見つかっていない。実在している全ての磁性はN極とS極のポールが対を成したダイポールである。
もしモノポールが存在し、これを平面波の電子線で照射したら、図8(A)に示すように、モノポール83を透過した後の電子線は、モノポール83の投影位置をコアとするらせん形状の位相分布21を持つ。図8(B)は2つの互いに逆極性のモノポール(83、84)が対となったダイポールの場合の例である。ダイポールではそれぞれのポールの投影位置をコアとして逆極性のらせん形状の位相分布となり、それぞれのコアから離れた位置では、位相分布が結果的に平面波に戻ってしまう。しかし、図8(A)に示すモノポールの場合では、らせん波21の位相分布は、コアから離れた位置でもらせん形状のままである。もちろん、コアから離れるほど変化の度合いは小さくなる。
らせん波が安定に存在するには、コアを中心に周回した時に電子波の位相変化量がちょうど2π、もしくは2πの整数倍でなければならない。その条件は式(6)より導かれる。すなわち、2つの電子線経路が定める曲面の面積をSとしたときに、Sを透過する磁束B×Sがh/eの整数倍(n倍)であれば良い。これを改めて数式で表すと式(7)となる。
このときの磁束量は、超伝導状態で発生する量子化磁束(磁束量子:フラクソン)のちょうど2倍の磁束量(2×h/(2e)=4.14×10−15(Wb))である。この磁束量を持つモノポールが存在すれば、平面波の電子線はモノポールを透過後、らせん度1のらせん波となる。
<6.らせん波生成用位相板として磁場の利用>
モノポールはまだ発見されず利用できないが、ダイポールを延長し片端のみを利用してモノポールに代用することが考えられる。図9(A)にこれを例示する。図7(A)と同様に、点状の電子源1があり、その電子線27の伝搬方向の下流側の光軸上にダイポールの片端として棒状の磁性体88が位置している。棒状の磁性体88の片端から発する磁束量が、先述の磁束量子(h/(2e))の2倍の量であれば、棒状の磁性体から十分下流側では、光軸2の周りのらせん度1のらせん波が生成する。
しかし、図9(A)に示したように、棒状の磁性体では他方のポールの影響があるため、全方位に均一な磁束線81の分布とはならない。そのため、らせん波のらせんの巻き具合が量的には周回したときに2πの位相差を保っていても、単位方位角ごとの位相変化は均一ではない。さらに、棒状の磁性体88においては、ポールの片端だけでなく、棒状の磁性体の途中から戻り磁束線の発生がある。このような単位方位角ごとの位相変化や戻り磁束線は、らせん形状の位相分布に歪みを生じさせる原因となる。歪みを含むらせん波の一例を図9(B)に示す。図9(B)のらせん波21は、図1と比較して位相面が歪んでいる。
また、図9(A)では、ダイポールの例として棒状の磁性体88を想定しているが、この磁性体88は電子線27に対して陰を作るため、らせん波の波面には断裂(陰)24が発生する(図9(A)下部)。光軸2上に磁場を発生させるために磁性体88が必要で、磁性体88を配置した結果として、電子線が遮蔽されらせん波の波面に断裂(陰)24を作り出し、あるいは不要な散乱を発生させる。このため、らせん波21を用いる試料観察に際して、観察像にアーティファクトを生み出してしまう。このような欠点は、らせん位相板を用いる関連技術1と共通の原理的な問題点である。
1次元状に発生させた磁場の片端をモノポールとして代用する方法は、ソレノイド89を用いる場合(図10(A))、棒状の磁性体88を用いる場合(図10(B))、超伝導筒87を用いる場合(図10(C))などが考えられる。ソレノイド89と棒状の磁性体88での効果、問題点は、図9に示す場合とほぼ同様で上述のとおりであるが、磁束量の制御においては、ソレノイド89の方が取り扱いが容易と考えられる。超伝導筒87を用いる場合(図10(C))は、超伝導体が十分に冷却され、十分な厚さを持っている場合には、磁束の量子化効果が得られるので、高精度に所定の磁束量に制御可能である。さらに、磁場の遮蔽効果により、磁束の発生点が超伝導筒の端点に限定されるので、他の場合よりもモノポールに近い位相分布が得られると期待される。それでも、基本的にダイポールであるため、電子波の位相分布の歪みは残存してしまう。
以上詳細に説明したとおり、関連技術1、2に示す方法および上記ダイポール素子の片端を利用する方法で電子らせん波を生成し得るものの、以下にまとめるように、各種の問題点を有する。
(1)関連技術1:らせん状の厚みを持つ位相板の利用(図2参照)
この方法では、発生させた電子線全体をらせん波とできるが、原子サイズよりも小さな波長を持つ電子線に対して、十分な精度を持つらせん位相板の製造が困難である。加えて製造後の調整はほぼ不可能のため、らせんのコア周回につき位相差を2πの整数倍に調整することは極めて困難である。
(2)関連技術2:刃状転位を持つ回折格子の利用(図3参照)
この方法は先述のとおり、1枚の刃状転位格子から、らせん度数、らせん度の正負の異なる複数種類のらせん波を発生させることが可能であるという利点を持つ。しかし、この利点は同時に欠点でもある。生成した複数のらせん波に強度が分散されるため、大きな強度のらせん波ビームを得ることが困難である。したがって、試料観察に用いた場合には、像のSN比が劣化し、また、試料(材料)の加工に用いた場合には、加工効率の劣化を招く。いずれも対応策として、長時間露光が考えられるが、露光時間中に試料のドリフトなどが生じると加工や観察の精度が劣化する。長時間露光を前提とした場合には、装置全体に十分な安定性が備わっていなければ、実用化は困難である。
さらに、この方法を用いる場合には、電子光学系として、小散乱角対応の回折光学系(長カメラ長の光学系)を用い、その回折面においてらせん波を取捨選択しなければならない。このため、電子顕微鏡などに適用した場合、通常用いられる光学系に加え、新たな光学系および絞り機構などの光学素子の追加設置が必要となる。
(3)ダイポール素子の片端の利用(図9参照)
この方法では、上記(1)の関連技術1(らせん位相板)と同様に、ダイポール素子の片端を位相板として使用してらせん波を生成させることが可能である。しかし、先述のとおり、使用しない他端の極が影響を与えるため、らせんのコアの周回に対して等方的ならせん形状の位相分布を持つらせん波の生成は困難である。
このように、上記(1)〜(3)のいずれの方法を用いても、電子らせん波の生成は現段階ではかなりの困難を伴うこととなる。
以上の考察の元、本発明者は、上記(1)〜(3)の方法の問題点を解消すべく、検討の結果、新しいらせん波の生成方法を見出すことに至ったものである。以下に、詳細に説明する。
<らせん波生成の原理>
まず、らせん波生成の原理を説明する。図11に、電子源である電子銃の先端部分(電子銃Tip11)の構成を示す。具体的には、電子銃Tip11と電子銃Tip11の先端部分から発した電子線27、および電子銃(電子銃Tip11)の軸と平行方向に印加された磁場の磁束線81を示す。ここでは、電子光学素子としては、電子銃Tip11のみに注目しているので、電子線装置の光軸2と電子銃(電子銃Tip11)の軸とは一致していると考えてよい。さらに、簡単化のため光軸2と磁場の印加方向の軸(以下、磁場印加軸と呼ぶ:1次元形状のソレノイドで言えばソレノイドの中心軸に相当する軸のことである)が一致しているとする。電子銃Tip11の先端の主に電子を発する部分(電子射出部12)を含む光軸2に垂直な平面Qを想定し(図11(A)参照)、その平面Q上への電子線27と磁束線81の投影を考える(図11(B)参照)。すなわち、平面Qが電子源の存する平面となる。
図11(B)の中央部の黒丸の周囲(電子源の存する平面、ハッチング部)が電子銃Tip11の断面であり、投影図であるため、磁束線81は磁場印加軸から全方位へ広がる。また、電子線27も光軸2から全方位へ広がるビームとなる。但し、図11(B)においては、磁束線81との混同を避けるため、電子線27は、電子銃Tip11(ハッチング部)の周辺部からのみ放出されているように描いている。図11(B)の投影図では、光軸2が1点に描かれるとともに、磁束線81も光軸方向は圧縮される。磁束線81の分布に光軸2と平行な軸を中心とした軸対称性を仮定すると、その軸を中心点として、放射状の磁束線81が描かれる。
図11(B)の投影図は、光軸方向の電子線27の伝播部分のみを記載している。そのため、図11(A)から明らかなように、電子銃Tip11より上部の磁束線81については投影図には反映されず、主に平面Qよりも下側の磁束線81と電子線27が投影描画されている。そのため、図11(B)では磁束線81の描画であるにもかかわらず、戻り磁束の影響がないように描かれている。これは、この投影図においては、電子線27よりも上部の磁束線は、電子線経路が定める平面(曲面)を透過せず、アハラノフ・ボーム効果による電子波の位相変調に寄与しないため、初めから除外して考えているためである。以下に説明するが、この考え方は妥当なものであり、この描画が可能な磁束線と電子線の関係を作り出すことによって、事実上、磁場のモノポール化が可能になるのである。
図12を用いてさらに詳細に説明する。図12は、電子銃Tip11から射出した電子線27が電子光学系(図示を省略)を経由して、検出記録面8で検出されるまでを描いている。簡単化のため、電子は電子銃Tip11上の異なる2点(A点とC点:それぞれ光軸2から距離rだけ離れた点)から発し、それぞれ経路I(AB)と経路II(CD)を通る。この2本の電子線経路(I、II)が定める曲面ABCDを1本の磁束線81が透過している。また、簡単化のため、磁束線81としては、電子線射出領域(電子線射出部12の断面)を含む平面Qに垂直に、かつ磁場印加軸が光軸2と一致するように印加されている場合を考える。磁場は、電子銃Tip11を有する電子銃の近傍にのみ印加されるので、磁場の印加部分と電子線27の軌道長とでは、軌道長の方が十分に長いと考えてよい。すると、光軸2と電子線射出領域を含む平面Qとの交点Oと、同心円上の点Aと点Cが定める円弧(一辺)により規定される扇形(三角形状)の領域(Ss)を透過した磁束線81は、全て2本の電子線経路I、IIが定める曲面ABCDを1回だけ透過する。戻りはない。この関係は、方位角が異なるどの2つの電子線経路を選んでも同じである。したがって、電子線射出領域を含む平面Qから発した電子線27にとって、磁束線81はモノポールと同じ効果を与える。また、この効果はアハラノフ・ボーム効果(式(5))に依存しているので、2本の電子線経路I、IIが定める曲面ABCDのどの部分を透過したかを問わない。磁束線81は曲面ABCDを透過しさえすればよい。そして、その透過磁束量が、適切であれば、電子銃Tip11から発した電子線27は、電子銃(電子銃Tip11)の磁場印加領域を透過後は、そのまま、光軸2上を伝播する電子らせん波となる。
<磁場分布>
電子線の射出領域が有限な大きさを持ち、ダイポール磁束分布の一端が電子線の射出領域を一回だけ透過する状況が作り出せれば、上記のとおり、電子源を射出後の電子線に作用する磁束は実効的にモノポールとなり、結果として電子線を電子らせん波とすることができる。
図12および図13を参照しながら数式を用いてさらに検討を進める。図12(A)は、電子銃Tipから発した2本の電子軌道と磁束線との関係を示す模式図である。図12(B)は、電子線射出領域と磁束線の平面Qへの投影図である。図13は、電子銃Tipから発した2本の電子軌道と磁束線との関係を示す模式図である。
電子源の面積をSoとし、電子源から検出面までの距離をlとすると、電子顕微鏡などの一般の電子線装置では√So<<lが成立する。電子源から検出面までの間に通常の電子光学系のみが存在する場合には、電子源像に歪みが加えられることはなく、光軸からの距離rで、方位角Δθだけ離れた2つの素電子源である点Aと点Cから射出した電子線27は、その方位角Δθを保ったまま電子線経路I、IIを経て検出記録面8まで伝播され、点B、点Dで検出される。点B、点Dでの位相差をψとすると、AB、CDの2つの軌道で囲まれた曲面(面積S12)を透過する磁束によって位相差は式(8)に基づき決定される。これは式(7)と同様である。
簡単化のため、平面Q上に投影された電子線の射出領域は円盤状の形状を成し、光軸と磁場印加軸が電子線の射出領域の中心を通ると仮定する。また、磁束線81は光軸2と平行に電子線の射出領域を透過するが、ダイポールであるために電子線の射出領域を透過後、有限距離の範囲内で必ず戻る方向(図13では上方)に転ずる。そのため、電子線の軌道と交わりを持つ。すなわち、電子線の射出領域を光軸方向に透過する磁束線が、いずれは照射電子軌道が定める曲面を1回だけよぎる磁束線となる。そのよぎる位置に依存せず、よぎる磁束量のみに依存して電子軌道間の位相差が定まる。これが、アハラノフ・ボーム効果であり、数式(6)〜(8)に具体的に示されている。以上のことから、電子線経路I、IIの間の位相差は、素電子源AとCと光軸2とが定める電子線の射出領域上の面積Ss(図11(B)のハッチング部)を透過する磁束量を検討すればよいことになる。電子線の射出領域上を透過する均一な磁束密度をBとして改めて数式(8)を書き直すと、式(9)のようになる。
図13もしくは図12(B)に示すように電子線27の軌道を光軸2からの距離rごとに分けて考え、素電子源AとCを結ぶ線分が光軸2を見込む角度をΔθとすると、位相差ψは式(10)となる。
式(10)は、rが大きくなるほど、多くの磁束線が透過するため、同じ方位角を持っていてもrが大きくなるほど位相差が大きくなることを意味している。らせん波を、らせん度nの光軸2からの位置に依存しないらせん波とするには、周回してΔθが2πとなる時に、位相差ψが2πの整数倍となることが必要である。この条件を式(11)に示す。
これより、磁束密度B(厳密には光軸方向の成分Bz)と光軸2からの距離rとの間に、数式(12)が成立することが条件となる。
すなわち、光軸からの距離(離軸距離とも言う)rの2乗に反比例して磁束密度が低下する磁束分布を形成し、電子線と相互作用する領域内の磁束量の大きさが量子化磁束(h/e=4.14×10−15(Wb))の整数倍であればよい。この整数の正負は磁束線の向き、すなわち、電子らせん波のらせんの巻き方向を意味する。この整数が負値の場合には、正値の場合の磁束線の向きと逆、すなわち、電子らせん波のらせんの巻き方向が正値の場合と逆転していることを意味する。
<光軸と磁場印加軸との不整合に関して>
先述の簡単化を可能とするためには、電子線装置の光軸2あるいは電子銃(電子銃Tip11)の軸と、磁場印加軸とが一致している必要がある。例えば、磁場印加軸29が光軸2と位置ずれしている場合(図14(A))、あるいは、磁場印加軸29と光軸2とが平行でない場合(図14(B))が考えられる。いずれの場合も、電子線27と磁束線81の電子線射出領域(電子線射出部12の断面)を含む平面Qへの投影図を考えると、図15(A)のようになる。光軸2と磁場印加軸29とのずれは、そのずれ方向への偏向と見なすことができる。したがって、水平方向に補正磁場を印加して光軸2と磁場印加軸29を合わせることが可能である。もし、補正しない場合には、光軸を中心としたときの単位方位角あたりの位相変化量が均一でなくなり、図9(B)で示したように、らせん波の位相分布に歪みが発生する。
また、光軸2と磁場印加軸29とのずれ量が大きく、投影像中で磁場印加軸29が、電子線射出領域(電子線射出部12の断面、ハッチング部)の外へ出てしまう場合(図15(B))には、光軸2を中心として放射状の磁束線81を描くことはできず、もはやらせん波を得ることはできない。これは、図15(B)の場合には、磁場に分布はあるものの、全体としては図中右上から右下への偏向磁場Bが印加されている状況と類似の磁場分布となっているからである。このように、本実施の形態においては、電子線射出領域(電子線射出部12の断面)の内側に磁場印加軸29は存在しなければならない。すなわち、光軸2と磁場印加軸29との間にずれが生じる場合、特に、磁場印加軸29が電子線射出領域(電子線射出部12の断面)の内側に位置しない場合には、そのずれを補正する必要がある。機械加工において精度の向上を図り、光軸2と磁場印加軸29とを合わせることは当然として、機械加工精度以上の精度を必要とする場合には、電磁場を用いた軸調整を行えばよい。
磁束線分布の方向、強度を補正する場合、あるいは、電子線の射出方向、射出部位を磁場印加軸に合わせる調整を行う場合には、電磁場を用いた軸調整方法が必要となる。軸調整方法に制限はないが、以下の2つの方法を例示することができる。第1の方法として、水平方向に補正磁場を印加して光軸と磁場印加軸を合わせる方法がある(図16)。また、第2の方法として、電子線の射出方向、射出部位を磁場印加軸に合わせる方法がある(図17)。
磁場印加軸の補正には、図16に示すように、光軸2を挟んで配置された上下2段のミニコイル(磁場補正用コイル)14を、それぞれコイル13の外周に沿って水平方向に配置した補正部として利用することができる。上下2段に配置することにより、磁場の角度と位置の両方を補正することが可能となる。
また、電子線射出部を調整するには、電界を用いる。例えば、図17に示すように、上下2段に光軸2を挟んで対抗するように平行平板電極(補正用電極)15を配置した補正部として利用することができる。図17では簡略化して記載しているが、電界型においても、光軸2の外周に沿って平行平板電極15の対を複数配置する。
上記方法に係る補正部としては、電子線を用いる装置で使用されている手法を適宜採用することができる。ただし、本実施の形態においては、補正部が、電子源近傍に配置され、電子の加速電圧の影響を受けるため、高電圧に耐え得る構成とする必要がある。
<電子らせん波の試料への照射および試料の透過観察>
本実施の形態においては、電子銃Tip11を発した電子線は、磁場印加領域の透過後には電子らせん波となっている。これは空間的にはごく狭い範囲で実現されるため、電子線の流れの下流側にある電子光学系から見れば、電子らせん波が直接放出されたに等しい状況となる。そのため、試料への電子線の照射や、試料の像、試料の回折像の観察などは従来の電子顕微鏡などの電子線装置と同様の取り扱いで十分である。これも、本実施の形態の大きな利点のひとつである。
試料に、例えばレジストなどが塗布されている場合、軌道角運動量を保存した電子線であることから、従来とは異なる精度、コントラストでの露光、描画が可能となる。また、運動量を伝えることが可能であることから、電子線照射により、マイクロ部品類やナノ部品類へ駆動力を伝達し、これらの動力源とすることも可能である。
また、像の観察においても、軌道角運動量を保存した電子線であることから、従来は得られなかった光軸方向の磁化分布の観察や、たんぱく質や糖鎖などのらせん構造の右巻き、あるいは左巻きに対応したコントラストを得ることが期待される。
このように、従来と同様の光学系の部品を採用することが可能であるが、発生している電子線がらせん波か否かを確認するには、小角回折光学系が必要である。これに関しては、次に述べる。
<小角電子回折光学系によるらせん度の調整>
磁場を印加して得られた電子線が電子らせん波になっていることは、小角電子回折によって、電子源の像(従来はスポット状になっている)がリング状になっていることから知ることができる。また、らせん度の次数はリングの大きさから知ることができる。これは、例えば図3に示した回折像観察光学系を組むことを意味している。ただし、回折格子は用いていないので、中央部(図4(B)では、ゼロ次スポットの部分)のみが観察対象となる。
らせん度の調整方法は、例えば、以下のような方法が考えられる。
<1>電子銃部に光軸と同方向に磁場を印加し、磁場強度を変化させると、所定の磁束となったときに、点状のスポットがリング状のスポット(RSP1)に変化する。
<2>そのまま、磁場強度を増加していくとリング状のスポット(RSP1)は点状のスポットにもどる。
<3>さらに、磁場強度を増加していくと点状のスポットは再びリング状のスポット(RSP2)となる。
<4>このとき、リング状のスポット(RSP2)の直径は、直前のリング状のスポット(RSP1)よりも大きくなっている。各々の電子線経路が定める曲面を透過する磁束線が2倍となったために、らせん度も2倍になったためである。
このように磁場を印加しながら観察を継続すると、周期的に点状のスポットとリング状のスポットを繰り返しながらリングの直径が拡大していく。この電子らせん波の確認方法では、らせん波の度数はわかるが、正負は判定できない。印加磁場の方向(極性)は、あらかじめ定義しておかねばならない。
小角電子回折光学系の構成例を図18に示す。図18に示す光学系は、第1中間レンズの物面に、第2コンデンサレンズにより光源の像(クロスオーバー)を結ぶ構成である。このような光学系は、比較的大きなカメラ長(例えば、1000m以上)を有する光学系である。カメラ長とは、回折像における倍率に相当するパラメータで、カメラ長が大きいほど小さな偏向角度を観察可能である。電子らせん波を確認するためには、1次回折スポットに対応するリング状のスポットの強度分布を観察する必要がある。そのため、実績のある値として、80m以上のカメラ長が望ましい(例えば、図4(B)では、カメラ長は150mであった)。
また、照射電子線の開き角は小さい方がのぞましい。開き角とは、試料位置から直上の光源の像(クロスオーバー)を見込む角度のことで、開き角が小さいほど平行度の高い電子線である。これは、照射電子線のもつビームの広がりが回折像では回折スポットの広がりとして反映され、この広がりが重なり合うことでらせん波のリング状のスポットを消してしまう恐れがあるからである。らせん度1の回折像を観察できなければならないことから、実用性を考えると1×10−6rad以下の開き角が望ましい。
なお、小角電子回折光学系の構成は、図18に示すものに限らず、他の構成のものを用いてもよい。いずれの光学系を用いる場合であっても、リング状のスポット形状が分解可能なカメラ長を備えていればよい。
図19は、電子らせん波を発生させる電子源装置を備えた電子線装置のシステム全体の構成例を示す図である。300kV程度の加速電圧を持つ汎用型の電子顕微鏡を想定したレンズ構成で描いているが、この構成を持つ電子顕微鏡に限定するものではない。
図19(図18も参照)に示すように、電子銃Tip11は、光軸2方向に磁場印加が可能なコイル13の近傍に配置されている。電子源1(電子銃Tip11)は、電子源の制御系19に接続され、制御系19によりコントロールされる。コイル13は、制御系(らせん波生成用コイルの制御系)17と接続され、らせん波を生成するための発生磁束量が、制御系17によりコントロールされる。図19においては、観察対象の試料や加工対象の試料3を記載しているが、電子線が電子らせん波となっていることを小角回折像で確認する際には試料3は必要ない。
図19に示す電子軌道27は、小角回折時のものである。すなわち、対物レンズ5がオフの状態で、電子線のクロスオーバーを、第一中間レンズ61の物面に構成し、さらに下段の結像レンズ系(62、63、64)で、クロスオーバーを検出記録面8に拡大投影している。検出記録面8に構成された、例えば回折像35は、検出器79とコントローラ78を経て、例えば画像データモニタ76の画面上で観察され、また、記録装置77に画像データとして格納される。図19では、画像データモニタ76の画面には、らせん波の例としてリング状の回折スポット(回折像35)の画像が表示されている。図19のシステムに示す各種レンズ構成や、観察条件が一例に過ぎないことは言うまでもない。
図19に示すように、電子線装置は、全体としてシステム化されており、オペレータは、モニタ52の画面上で装置の制御状態を確認でき、インターフェース53を用いた入力により、システム制御コンピュータ51を介して、小角電子回折光学系の各構成部を制御することができる。各構成部とは、例えば、電子源1、らせん波生成用のコイル13、加速管40、各レンズ(41、42、5、61、62、63、64)、試料3(試料保持装置)、検出器79などである。39は、試料保持装置の制御系であり、49は、加速管の制御系である。各レンズ(41、42、5、61、62、63、64)のうち、41は、第1コンデンサレンズ、42は、第2コンデンサレンズであり、それぞれ、第1コンデンサレンズの制御系48、第2コンデンサレンズの制御系47により制御される。また、5は、対物レンズであり、対物レンズの制御系59により制御される。また、61は、第1中間レンズ、62は、第2中間レンズ、63は、第1投射レンズ、64は、第2投射レンズであり、それぞれ、第1中間レンズの制御系69、第2中間レンズの制御系68、第1投射レンズの制御系67、第2投射レンズの制御系66により制御される。
なお、電子線装置としては、ビームの偏向系や真空排気系などの他の構成部を有するが、本実施の形態と直接の関係が無い構成部については、図示およびその説明を省略する。
以下、図面を参照しながら、本実施の形態の電子源部(電子線発生装置)の構成例1〜5を説明する。ここでいう電子源部とは、電子源および磁場発生装置を示し、構成例1のように、これらが同じ装置でもよいし、また、構成例2〜5のように、これらが別装置でもよい。また、以下に例示する電子源部は、例えば、先述した電子線装置の電子源部として用いられる。
<構成例1>
図20は、本実施の形態の電子源部の構成例1を示す断面図である。図20においては、電子銃Tip11に磁性体を用い、電子銃Tip11自体がダイポールの一部を構成している。電子銃Tip11の先端がダイポールの片端となるので、この先端から空間に発する磁束線81と電子銃Tip11の先端から射出される電子線27とが、図13を参照しながら説明した磁束線81と電子線27との関係を構成する。言い換えれば、電子線27を浸漬する磁場(磁束線81)が生成する。よって、電子銃Tip11から発する磁束線81が、先述した適正な磁束量となった時に、電子線27は、図20下部に記載のように、らせん波21となる。
電子銃Tip11を流れる磁束量は、以下の方法で制御することができる。例えば、電子銃Tip11に用いられる磁性体として、磁束量が温度に伴って変化する磁性材料を用い、電子銃Tip11の周辺にヒーターなどの加熱部を設ける。この場合、ヒーターにより、電子銃Tip11の温度を変化させることにより、磁束量(磁束分布)を制御することができる。また、電子銃Tip11と接続されるコイルなどの磁場発生装置を設けてもよい。この場合、磁場発生装置により電子銃Tip11を流れる磁束量を制御することができる。
また、次の方法により、磁束線の極性を反転することができる。例えば、電子銃Tip11を構成する磁性体に、当該磁性体の反転磁化以上の強磁場を外部より印加する。また、電子銃Tip11を構成する磁性体を、当該磁性体のキュリー温度以上に加熱した状態で、逆極性の磁場を印加する。この場合、磁場は弱くてもよい。
この構成例1においては、磁束線と電子線の発生源が同じであり、光軸(電子銃Tip11の軸)と磁場印加軸とのずれが少ないという利点がある。
<構成例2>
図21は、本実施の形態の電子源部の構成例2を示す断面図である。図21においては、中空コイル(円筒状のコイル)13の内部に電子銃Tip11が配置されている。この場合、電子源は、電子銃Tip11を含む電子銃を有し、磁場発生装置は、中空コイル13を有する。円筒状の中空コイル13の中心軸を磁場印加軸29とする。この磁場印加軸29と電子銃Tip11の軸、すなわち、電子源装置の光軸2(電子銃(電子銃Tip11)の軸)、あるいは電子源装置が搭載される電子線装置(図18、図19参照)の光軸2とが、一致するように調整される。この調整方法は先述したとおりである。
中空コイル13への通電量、電流の方向を制御することによって、電子銃Tip11の下部に生成される電子らせん波21のらせん度、らせん度の正負を制御可能である。
電子銃Tip11と中空コイル13は、電子射出部領域を含む平面Q(図11または図13参照)を挟んで磁束線の分布が上下非対称となるような位置にそれぞれ配置される。このような配置関係にあれば、電子銃Tip11と中空コイル13とをどのように配置してもよいが、図21に示すように、電子銃Tip11の先端部すなわち(電子射出部領域)がコイルの中央部より下方に位置するように、中空コイル13内に電子銃Tip11を配置することが好ましい。中空コイル13の中央部においては、電子銃Tip11の軸2に平行な磁束線81が生成しやすい。この磁束線81は、電子銃Tip11の先端部から発した電子線27が広がるのに合わせて、広がり、さらに、中空コイル13の底面を越えて図中の上方に広がる。このように、上記位置関係にあれば、電子銃部の狭い空間範囲において、電子線27の軌道が定める曲面を、磁束線81がよぎりやすいと考えられる(図12、図13参照)。言い換えると、上記位置関係にあれば、電子銃Tip11の先端から発した電子線27を、下方に長い距離に渡って伝搬させることなく、らせん波を生成することができる。
図22は、構成例2の電子源部の他の構成を示す断面図である。図22においては、図21に示す電子源部の構成に、さらに、電子線の引き出し電極30が設けられている。この電子銃は、電界放出形電子銃である。図22に示す構成は、一例であり、例えば、引き出し電極30の形状をバトラー型としてもよい。この場合、電子線の輝度を向上させることができる。このように、引き出し電極30の形状を工夫することにより、電子線の特性を向上させることができる。また、他の電極(図示せず)などの構成部のさらなる追加や電極形状に対する工夫など、通常の電界放出形電子銃で実施される構成部の追加やその形状変更を適宜行ってもよい。
また、引き出し電極30の存在が、電子線27の伝搬する空間の磁束の密度、分布へ影響を与えぬよう、磁気的に透明な(透磁率の低い)金属材料で、引き出し電極30を制作することが好ましい。例えば、引き出し電極30の材料として、銅などを採用することで簡単に対応することができる。
<構成例3>
図23は、本実施の形態の電子源部の構成例3を示す断面図である。図23においては、構成例2の欄において、図21を参照しながら説明した電子源部の中空コイル13を、上下2段に分割して配置された中空コイル13とした例である。
このように、2つの中空コイル13をセットとして配置する。例えば、ヘルムホルツ型コイルペアを用いる。このように、上下2段に分割して配置された中空コイル13(コイルペア)を用いた場合であっても、電子銃Tip11の先端部が位置する2つの中空コイル13の中間部分には、中空コイル13の中心軸とほぼ平行な磁束線81が生成する。よって、構成例2の場合と同様に、電子銃部の空間範囲において、電子線27の軌道が定める曲面を、磁束線81がよぎり、らせん波を生成することができる。
このように、中空コイル13を分割して配置した場合には、構成例2(図21)の場合よりも発生する磁束は小さくなるが、らせん度1のらせん波を生成させるには、磁束は磁束量子2個分で足りるため、らせん波の生成に問題はない。このように、十分ならせん度を持つ電子線を生成することができる。
また、本構成例においては、上下2段に分割して中空コイル13を配置しているため、上下の中空コイル13を個別に制御することが可能である。例えば、上下の中空コイル13で発生する磁束線の密度に差をつけて、全体の磁束線分布をコントロールすることが可能となる。また、本構成例においては、上下2段に分割して中空コイル13を配置しているため、中空コイル13間に空間が生じる。このため、構成例2(図21)の場合と比較して、各中空コイル13で発生するジュール熱を外部へ逃がし、電子銃部の昇温を抑制することができる。また、中空コイル13間の空間を利用して、他の構成部材を配置することができる。例えば、磁場印加軸を補正するための補正部や電子線の射出部位等を調整するための調整部などを中空コイル13間に配置することができる。具体的には、上記補正部として、電極、あるいはミニコイルなどを上記空間に配置することができる(図16、17参照)。この磁場印加軸の補正方法や電子線の射出部位等の調整方法は先述したとおりである。
図24は、構成例3の電子源部の他の構成を示す断面図である。図24においては、図23に示す電子源部の構成に、さらに、電子線の引き出し電極30が設けられている。この電子銃は、電界放出形電子銃である。図24に示す構成は、一例であり、例えば、引き出し電極30の形状をバトラー型としてもよい。この場合、電子線の輝度を向上させることができる。このように、引き出し電極30の形状を工夫することにより、電子線の特性を向上させることができる。また、他の電極(図示せず)などの構成部のさらなる追加や電極形状に対する工夫など、通常の電界放出形電子銃で実施される構成部の追加やその形状変更を適宜行ってもよい。
また、引き出し電極30の存在が、電子線27の伝搬する空間の磁束の密度、分布へ影響を与えぬよう、磁気的に透明な(透磁率の低い)金属材料で、引き出し電極30を制作することが好ましい。例えば、引き出し電極30の材料として、銅などを採用することで簡単に対応することができる。
図25は、構成例3の電子源部の他の構成を示す断面図である。図25においては、図24に示す電子線の引き出し電極30を、中空コイル13間に延在させた例である。このように、中空コイル13間の空間を利用して、電子線の引き出し電極30を設けることができる。
また、図25に示す構成においても、先述したように、引き出し電極30の存在が、電子線27の伝搬する空間の磁束の密度、分布へ影響を与えぬよう、磁気的に透明な(透磁率の低い)金属材料で、引き出し電極30を制作することが好ましい。
<構成例4>
図26は、本実施の形態の電子源部の構成例4を示す断面図である。図26においては、中空コイル13の外側に磁路(らせん波生成用磁路)37が設けられている。この中空コイル13は、光軸方向に磁場印加可能に配置され、磁路37は、パーマロイなどの透磁率の高い材料を用いて構成され、中空コイル13の外側に設けられている。
この中空コイル13とその外側の磁路37は、電磁レンズと同様の構成を成している。このため、中空コイル13の内部にある電子銃電子銃Tip11の位置には、構成例2や3の場合と比較して、より高い密度の磁束線81を生成することができる。この構成は、特に、高いらせん度のらせん波を生成させる場合に適した構成である。
また、本構成例によれば、磁路37と電子銃Tip11との位置関係を、機械的に高い精度で位置あわせすることが可能である。このため、らせん度とともに、らせん形状の位相分布の精度を向上させたらせん波を生成することができる。さらに、磁路37を用いているため、外部からの電磁誘導などによる磁束線の分布の揺らぎの影響を受け難い。このため、特性の安定したらせん波を生成する電子源部を実現することが期待される。
<構成例5>
図27は、本実施の形態の電子源部の構成例5を示す断面図である。図27においては、構成例2(図21)の中空コイル13および磁路37の換わりに磁石38が設けられている。例えば、構成例2(図21)の磁路37の上下部分(磁極部)に、磁石38が配置されている。本構成例においては、コイルを用いずに、磁束分布を電子銃Tip11の先端部に作り出すことができる。磁石材としては、強磁場を生成可能な、SmCo磁石やNdFeB磁石などを用いることができる。このような磁石材を用いることにより、コイルを用いない構成でも、強い磁束分布を電子銃Tip11の先端部に作り出すことができる。
また、本構成例によれば、磁石38間の空間を利用して、他の構成部材を配置することができる。例えば、磁場印加軸を補正するための補正部や電子線の射出部位等を調整するための調整部などを中空コイル13間に配置することができる。具体的には、上記補正部として、電極、あるいはミニコイルなどを上記空間に配置することができる(図16、17参照)。この磁場印加軸の補正方法や電子線の射出部位等の調整方法は先述したとおりである。
また、磁束量は、構成例1で説明した方法で制御することができる。例えば、磁石38に用いられる磁性体として、磁束量が温度に伴って変化する磁性材料を用い、磁石38の周辺にヒーターなどの加熱部を設ける。この場合、ヒーターにより、磁石38の温度を変化させることにより、磁束量(磁束分布)を制御することができる。また、磁石38と接続されるコイルなどの磁場発生装置を設けてもよい。この場合、磁場発生装置により磁石38間に流れる磁束量を制御することができる。
また、次の方法により、磁束線の極性を反転することができる。例えば、磁石38を構成する磁性体に、当該磁性体の反転磁化以上の強磁場を外部より印加する。また、磁石38を構成する磁性体を、当該磁性体のキュリー温度以上に加熱した状態で、逆極性の磁場を印加する。この場合、磁場は弱くてもよい。
この構成例5においては、決まったらせん度のらせん波を安定的に生成することが可能となる。よって、決まったらせん度のらせん波を利用する電子線装置用の電子源部(電子線発生装置)として用いて好適である。また、磁束線81の生成に、電力を必要としないため装置の省電力化を図ることができる。
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
例えば、上記実施の形態においては、電子線をらせん波とし、電子顕微鏡などの電子線装置に適用した例を挙げて説明したが、電子の他、イオンなどの荷電粒子などにも本願発明を適用可能である。即ち、荷電粒子線をらせん波とし、荷電粒子線発生装置や荷電粒子線装置に適用することができる。
1…電子源、2…光軸、3…試料、5…対物レンズ、8…検出記録面、9…回折像(小角電子回折像)、10…観察点、11…電子銃Tip、12…電子線射出部、13…コイル(中空コイル)、14…ミニコイル、15…平行平板電極、17…制御系、19…制御系、21…らせん波、22…らせん軸、23…平面波、24…断裂(陰)、26…波面、27…電子線(電子軌道)、29…磁場印加軸、30…引き出し電極、33…らせん位相板、35…回折像、37…磁路、38…磁石、39…制御系、40…加速管、41、42…レンズ(コンデンサレンズ)、47、48…制御系、49…制御系、51…システム制御コンピュータ、52…モニタ、53…インターフェース、59…制御系、61、62…レンズ(中間レンズ)、63、64…レンズ(投射レンズ)、66、67、68、69…制御系、76…画像データモニタ、77…記録装置、78…コントローラ、79…検出器、81…磁束線、83…モノポール、84…逆極性のモノポール、87…超伝導筒、88…磁性体、89…ソレノイド、91…回折格子(刃状転位格子)、97…リング状の回折スポット、99…点状の回折スポット、ABCD…曲面、I…経路(軌道)、II…経路(軌道)、l…電子源から検出面までの距離、Q…平面、r…光軸からの距離、RSP1…リング状のスポット、RSP2…リング状のスポット、Ss…領域(面積)

Claims (20)

  1. 磁場中に設置された荷電粒子源を有する荷電粒子線発生装置であって、
    前記磁場の印加方向が前記荷電粒子源の軸と平行で、
    前記磁場の強度を調整することにより前記荷電粒子源から発した荷電粒子線がらせん形状の位相分布を持つように構成されることを特徴とする荷電粒子線発生装置。
  2. 前記磁場の前記荷電粒子線が透過する領域の磁束量が、量子化磁束の整数倍であることを特徴とする請求項1に記載の荷電粒子線発生装置。
  3. 前記磁場の前記荷電粒子線が透過する領域の磁束量が、4.14×10−15Wbの整数倍であることを特徴とする請求項1に記載の荷電粒子線発生装置。
  4. 前記磁場は、軸対称な磁束分布を有する磁場であって、
    前記磁場の軸は、前記荷電粒子源の軸と一致するように調整されることを特徴とする請求項1に記載の荷電粒子線発生装置。
  5. 前記磁場は、軸対称な磁束分布を有する磁場であって、
    前記荷電粒子源の一部を含み、前記荷電粒子源の軸と垂直な平面上において、前記荷電粒子源の軸からの距離をrとするとき、
    前記磁場の磁束分布が、前記距離rの2乗に反比例することを特徴とする請求項1に記載の荷電粒子線発生装置。
  6. 荷電粒子源を有する荷電粒子線装置であって、
    前記荷電粒子源が磁場中に設置され、
    前記磁場の印加方向が前記荷電粒子線装置の軸と平行で、
    前記磁場の強度を調整することにより前記荷電粒子源から発した荷電粒子線がらせん形状の位相分布を持つように構成されることを特徴とする荷電粒子線装置。
  7. 前記磁場の前記荷電粒子線が透過する領域の磁束量が、量子化磁束の整数倍であることを特徴とする請求項6に記載の荷電粒子線装置。
  8. 前記磁場の前記荷電粒子線が透過する領域の磁束量が、4.14×10−15Wbの整数倍であることを特徴とする請求項6に記載の荷電粒子線装置。
  9. 前記磁場は、軸対称な磁束分布を有する磁場であって、
    前記磁場の軸は、前記荷電粒子線装置の軸と一致するように調整されることを特徴とする請求項6に記載の荷電粒子線装置。
  10. 前記磁場は、軸対称な磁束分布を有する磁場であって、
    前記荷電粒子源の一部を含み、前記荷電粒子源の軸と垂直な平面上において、前記荷電粒子源の軸からの距離をrとするとき、
    前記磁場の磁束分布が、前記距離rの2乗に反比例することを特徴とする請求項6に記載の荷電粒子線装置。
  11. 前記らせん形状の位相分布を持つ荷電粒子線が、開き角1×10−6rad以下で試料を照射することを特徴とする請求項6に記載の荷電粒子線装置。
  12. 前記らせん形状の位相分布を持つ荷電粒子線が試料を照射し、カメラ長80m以上で、前記試料の荷電粒子回折像を得ることを特徴とする請求項6に記載の荷電粒子線装置。
  13. 荷電粒子源と、
    前記荷電粒子源から発する荷電粒子線の射出方向と平行な方向に磁場を生成し、かつ、前記荷電粒子源を浸漬する磁場を生成する磁場発生装置と、
    試料保持装置と、
    前記試料保持装置に装着された試料に前記荷電粒子線を照射する照射光学系と、
    を備える荷電粒子装置を用いた試料加工方法であって、
    前記磁場発生装置により発生する磁場の強度を調整することにより前記荷電粒子線がらせん形状の位相分布を持つ荷電粒子線へ変調され、
    前記らせん形状の位相分布を持つ荷電粒子線が前記照射光学系により前記試料へ照射されることによって、前記試料を加工することを特徴とする試料加工方法。
  14. 前記磁場の前記荷電粒子線が透過する領域の磁束量が、量子化磁束の整数倍であることを特徴とする請求項13に記載の試料加工方法。
  15. 前記磁場は、軸対称な磁束分布を有する磁場であって、
    前記磁場の軸は、前記荷電粒子源の軸と一致するように調整されることを特徴とする請求項13に記載の試料加工方法。
  16. 前記磁場は、軸対称な磁束分布を有する磁場であって、
    前記荷電粒子源の一部を含み、前記荷電粒子源の軸と垂直な平面上において、前記荷電粒子源の軸からの距離をrとするとき、
    前記磁場の磁束分布が、前記距離rの2乗に反比例することを特徴とする請求項13に記載の試料加工方法。
  17. 荷電粒子源と、
    前記荷電粒子源から発する荷電粒子線の射出方向と平行な方向に磁場を生成し、かつ、前記荷電粒子源を浸漬する磁場を生成する磁場発生装置と、
    試料保持装置と、
    前記試料保持装置に装着された試料に前記荷電粒子線を照射する照射光学系と、
    を備える荷電粒子装置を用いた試料観察方法であって、
    前記磁場発生装置により発生する磁場の強度を調整することにより前記荷電粒子線がらせん形状の位相分布を持つ荷電粒子線へ変調され、
    前記らせん形状の位相分布を持つ荷電粒子線が前記照射光学系により前記試料へ照射されることによって、前記試料の像もしくは回折像を観察することを特徴とする試料観察方法。
  18. 前記磁場の前記荷電粒子線が透過する領域の磁束量が、量子化磁束の整数倍であることを特徴とする請求項17に記載の試料観察方法。
  19. 前記磁場は、軸対称な磁束分布を有する磁場であって、
    前記磁場の軸は、前記荷電粒子源の軸と一致するように調整されることを特徴とする請求項17に記載の試料観察方法。
  20. 前記磁場は、軸対称な磁束分布を有する磁場であって、
    前記荷電粒子源の一部を含み、前記荷電粒子源の軸と垂直な平面上において、前記荷電粒子源の軸からの距離をrとするとき、
    前記磁場の磁束分布が、前記距離rの2乗に反比例することを特徴とする請求項17に記載の試料観察方法。
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