WO2013080331A1 - パック用シートの製造方法及びパック用シート - Google Patents

Abstract

パック用シート１０の製造方法は、ヒアルロン酸、コラーゲン、ポルフィラン、及び、ポリグルタミン酸から選ばれる少なくとも一種を、水を含む液媒体に溶解または分散させた液体を、非多孔質シート１上にコーティングする工程と、コーティングされた液体から液媒体を蒸発させることによりフィルム化させ、形成されたフィルム２中の水分含有率が一定となる全乾燥状態に至らない半乾燥状態で、フィルム２に多孔質シート３を積層する工程と、非多孔質シート１、フィルム２、及び、多孔質シート３が積層された積層シートを、フィルム２が全乾燥状態となるまで乾燥させる工程とを具備する。

Description

パック用シートの製造方法及びパック用シート

　本発明は、保湿を主な目的として皮膚に貼付するパック用シートの製造方法、及び、該製造方法により製造されるパック用シートに関するものである。

　従前より、液状あるいはソフトジェル状の化粧料組成物が、不織布に含浸されているパック用シートが公知である（例えば、特許文献１，２）。このようなパック用シートは、シート全体がべたつくため、パッケージから取り出して皮膚に貼付する取り扱いがしにくいものであった。

　そこで、本発明は、上記の実情に鑑み、取り扱いが容易なパック用シートの製造方法、及び、該製造方法で製造されるパック用シートの提供を課題とするものである。

　上記の課題を解決するため、本発明にかかるパック用シートの製造方法（以下、単に「製造方法」と称することがある）は、「ヒアルロン酸、コラーゲン、ポルフィラン、及び、ポリグルタミン酸から選ばれる少なくとも一種を、水を含む液媒体に溶解または分散させた液体を、非多孔質シート上にコーティングする工程と、コーティングされた前記液体から液媒体を蒸発させることによりフィルム化させ、形成されたフィルム中の水分含有率が一定となる全乾燥状態に至らない半乾燥状態で、前記フィルムに多孔質シートを積層する工程と、前記非多孔質シート、前記フィルム、及び、前記多孔質シートが積層された積層シートを、前記フィルムが前記全乾燥状態となるまで乾燥させる工程とを具備する」ものである。

　「非多孔質シート」としては、非透水性の樹脂シートを使用することができ、ポリエチレンテレフタレートシート、二軸延伸ポリプロピレンシート、ポリプロピレンシート、ポリエチレンシート、ポリエステルシート、ポリ塩化ビニリデンシート、ポリ塩化ビニルシート、セロファンを例示することができる。

　「多孔質シート」としては、不織布、織布、和紙を例示することができる。

　本発明者らは、ヒアルロン酸、コラーゲン、ポルフィラン、及び、ポリグルタミン酸は、何れも、保水性に優れると共にフィルム形成能を併せ持っていることに着目した。すなわち、保水性に優れる成分自体をフィルム形成剤として使用し、保水性に優れる成分で乾燥したフィルムを形成する。そして、この乾燥したフィルムを皮膚に貼付し、フィルムの上から水分を供給すれば、フィルムを形成している成分の持つ高い保水性により、フィルムには多量の水分が保持されるため、保湿のためのパックをすることができると、本発明者らは考えた。

　ところが、ヒアルロン酸、コラーゲン、ポルフィラン、及び、ポリグルタミン酸は、何れも、水を含む液媒体に溶解または分散させると、高い保水性ゆえに液体の粘度が非常に高くなる。例えば、これら四種の成分は何れも、濃度が数質量％の水溶液の粘度が２００００ｃＰ（２０Ｐａ・ｓ）を超える。このような高粘度の液体は、フィルム化のために流延することが困難である。そのため、非多孔質シート上へのコーティングが可能な程度の粘度となるように液体の濃度を調整すると、液体の濃度は低くなり、得られるフィルムは数μｍ程度の厚さとなってしまう。数μｍ程度の厚さの薄いフィルムは、ハンドリングが非常に困難である。

　この不具合を解消するため、本発明では、薄いフィルムを多孔質シートの片面に支持させるという手段を採った。これにより、本製造方法で製造されるパック用シートは、フィルムの厚さが小さくてもハンドリングが容易である。また、フィルムを多孔質シートの片面に支持させるために、半乾燥状態のフィルムに多孔質シートを積層するという手段を採ったため、パックに寄与しない成分である接着剤を使用することなく、フィルムに多孔質シートを積層することができる。

　パック用シートを使用する際は、フィルムが皮膚と接触するようにフィルムを内側にして、パック用シートを皮膚に貼付し、外側の多孔質シートの上から水分（化粧水、水、湯など）を供給する。水分の供給は、手指、コットン、綿棒、ガーゼ、ティッシュペーパー、ブラシ、スプレーなどを用いて行うことができる。供給された水分は、多孔質シートの空隙を通過してフィルムに至る。すなわち、薄いフィルムを片面で支持する役割を担うシートが多孔質であることにより、使用時に供給される水分を、フィルムまで十分に到達させることができる。フィルムを形成している成分は保水性に優れるため、供給された水分を含んでソフトジェルとなり、多量の水分を保持する。これにより、高含水率のソフトジェル、及び、これを外側から支持する多孔質シートで皮膚を被覆し、皮膚を保湿するためのパックをすることができる。また、ヒアルロン酸、コラーゲン、ポルフィラン、ポリグルタミン酸から形成されるソフトジェルは何れも非常に高粘度であるため、皮膚から垂れ落ちにくい。また、フィルムを支持するシートが多孔質であることから、パックをした後も多孔質シートの上から水分を補給することができる。

　そして、本製造方法で製造されるパック用シートは、使用時に含水させるものであり、使用前は乾燥した状態である。そのため、水分含有率の高い従来のパック用シートとは異なりべたつかないため、パッケージから取り出して皮膚に貼付する取り扱いが容易である。また、不織布に化粧用組成物を含浸させた従来のパック用シートは、シート同士が付着することを避けるため、一枚ずつ分けて包装する必要があった。これに対し、本製造方法で製造されるパック用シートは、使用前は乾燥した状態であるため、複数枚のシートが互いに付着するおそれがなく、複数枚を一緒に包装することが可能である。これにより、包装形態を簡易なものとし、包装にかかるコストを削減することができる。

　なお、本製造方法で製造されるパック用シートは、非多孔質シートを剥離した状態で包装しても良い。フィルムは乾燥した状態であるため、非多孔質シートで保護されていなくてもパッケージの内表面に付着するおそれがない。また、他のパック用シートと付着するおそれもないため、非多孔質シートを剥離した状態で、複数枚を一緒に包装することが可能である。

　加えて、水分の含有率が高い従来のパック用シートでは、雑菌の繁殖を防止するために防腐剤を添加する必要があったのに対し、本製造方法で製造されるパック用シートは使用前は乾燥した状態であるため、防腐剤の添加量を低減することができる。或いは、本製造方法では、防腐剤を添加することなく、パック用シートを製造することが可能である。これにより、パックに寄与しない成分の含有率の低いパック用シートを提供することができる。また、防腐剤がアレルギーなどの皮膚トラブルの原因となることを懸念する需要者に、受け容れられやすいパック用シートを提供することができる。

　なお、ヒアルロン酸、コラーゲン、ポルフィラン、及び、ポリグルタミン酸から選ばれる少なくとも一種を、乾燥した状態で多孔質シートに支持させるという点では、これらの成分を含む液体を多孔質シートに塗布または含浸させ、その後乾燥させるという手段をも想到し得る。しかしながら、多孔質シートの一方の面に液体を塗布した場合、液体は多孔質シートを通過して他面に至るため、液体の塗布に使用する装置に液体が付着してしまう。また、多孔質シートに液体を含浸させた後に乾燥させる場合も同様に、製造に使用する装置に液体が付着する。すなわち、そのような方法では、パック用シートの製造に使用する装置に液体が付着することは避けられず、効率良くパック用シートを製造することができない。これに対し、本発明では、液体をフィルム化してから半乾燥状態で多孔質シートと積層する手段を採っているため、製造するための装置が液体で汚染されるおそれがなく、効率良くパック用シートを製造することができる。

　本発明にかかるパック用シートの製造方法は、上記構成において、「前記液体に防腐剤を含有させない」ものとすることができる。

　フィルムの原液である液体に防腐剤を含有させないことにより、防腐剤を含有しないフィルムを備えるパック用シートが製造される。上述のように、本発明の製造方法で製造されるパック用シートは乾燥しているため、フィルムが防腐剤を含有していなくても、雑菌が繁殖するおそれがない。これにより、防腐剤が皮膚トラブルの要因となることを懸念する必要がなく、パックに寄与しない成分の含有率がより低い、パック用シートを提供することができる。

　ここでいう「防腐剤」は、現行の薬事法において、“すべての化粧品に配合の制限がある成分”及び“化粧品の種類により配合の制限がある成分”として、防腐剤のポジティブリストに列挙されている成分、及び、旧薬事法（２００１年４月以前）下で、“使う人の体質によってまれにアレルギー等の肌トラブルを起こすおそれのある成分”として、表示が義務付けられていた成分を指している。具体的には、以下の成分である。
パラオキシ安息香酸エステル（パラベン）及びそのナトリウム塩、フェノキシエタノール、安息香酸、安息香酸塩類、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、感光素、クロルクレゾール、クロロブタノール、サリチル酸、サリチル酸塩類、ソルビン酸及びその塩類、デヒドロ酢酸及びその塩類、トリクロロヒドロキシジフェニルエーテル（トリクロサン）、フェノール、ラウリルジアミノエチルグリシンナトリウム、レゾルシン、亜鉛・アンモニア・銀複合置換型ゼオライト、安息香酸パントテニルエチルエーテル、イソプロピルメチルフェノール、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩酸クロルヘキシジン、オルトフェニルフェノールナトリウム、銀－ゼオライト、グルコン酸クロルヘキシジン、クレゾール、クロラミンＴ、クロルキシレノール、クロルフェネシン、クロルヘキシジン、１，３－ジメチロール－５，５－ジメチルヒダントイン、臭化アルキルイソキノリニウム、チアントール、チモール、トリクロロカルバニリド、パラクロルフェノール、ハロカルバン、ヒノキチオール、ピリチオン亜鉛、ブチルカルバミン酸ヨウ化プロピニル、ポリアミノプロピルビグアナイド、メチルクロロイソチアゾリノン、Ｎ，Ｎ－メチレンビス［Ｎ’－（３－ヒドロキシメチル－２，５－ジオキソ－４－イミダゾリジニル）ウレア］、ヨウ化パラジメチルアミノスチリルヘプチルメチルチアゾリウム、ウンデシレン酸及びウンデシレン酸塩、ウンデシレン酸モノエタノールアミド、臭化ドミフェン、ブチルヒドロキシアニソール、ヘキサクロロフェン、没食子酸プロピル、メチルイソチアゾリノン、ラウロイルサルコシンナトリウム

　本発明にかかるパック用シートの製造方法は、上記構成において、「前記多孔質シートとして、メッシュ状シートを使用する」ものとすることができる。

　「メッシュ状シート」は、多孔質のマトリクスにおける空隙より大きな空隙（以下、「メッシュ孔」と称する）が、ほぼ規則的に並んでいる不織布、織布、和紙などのシートである。パックをする際の取り扱いに適した強度を有し、且つ、外側から供給される水分を通過させやすいものとするために、厚さ０．２ｍｍ～２ｍｍ、メッシュ孔の目開き０．３ｍｍ～３ｍｍのメッシュ状シートが好適である。

　多孔質シートとしてメッシュ状シートを使用することにより、パック用シートを皮膚に貼付した後で多孔質シートの上から供給される水分が、速やかにフィルムに至る。これにより、本製造方法により製造されたパック用シートは、多くの水分を、短時間に供給してフィルムに保持させることができる。

　また、メッシュ状シートの表面は、メッシュ孔のある部分とない部分とで凹凸を有する。そのため、複数枚のパック用シートを一緒に包装しても、互いの表面が密着することがない。また、多孔質シートが凹凸を有することにより、パック用シートを指先で挟んでパッケージから取り出し皮膚に貼付する取り扱いが、より容易である。

　なお、本製造方法では、液体をフィルム化させてから半乾燥状態で多孔質シートと積層するため、多孔質シートがメッシュ孔を有していても、フィルムまたはその成分がメッシュ孔に浸入して多孔質シートの他面まで至ることはない。

　次に、本発明にかかるパック用シートは、「多孔質シートと、前記多孔質シートの片面のみに積層された、ヒアルロン酸、コラーゲン、ポルフィラン、及び、ポリグルタミン酸から選ばれる少なくとも一種を含有する乾燥したフィルムとを具備する」ものである。

　本構成のパック用シートは、上述の製造方法により製造される。すなわち、ヒアルロン酸、コラーゲン、ポルフィラン、及び、ポリグルタミン酸から選ばれる少なくとも一種を含有する液体をフィルム化させてから半乾燥状態で多孔質シートと積層することにより、液体が多孔質シートの空隙を通過して他面に至ることはなく、フィルムが多孔質シートの片面のみに積層された構成のパック用シートとなる。

　なお、本発明のパック用シートは、多孔質シートと、多孔質の片面のみに積層されたフィルムに加え、更に、多孔質シートが積層された面とは反対側の面でフィルムに積層された非多孔質シートを備える構成とすることができる。

　本発明にかかるパック用シートは、上記構成において、「前記フィルムは防腐剤を含有しない」ものとすることができる。

　本構成のパック用シートは、上述の製造方法において「液体に防腐剤を含有させない」構成を採用した場合に製造されるものであり、上述の優れた作用効果を奏する。

　本発明にかかるパック用シートは、上記構成において、「多孔質シートは、メッシュ状シートである」ものとすることができる。

　本構成のパック用シートは、上述の製造方法において「多孔質シートとして、メッシュ状シートを使用する」構成を採用した場合に製造されるものであり、上述の優れた作用効果を奏する。

　以上のように、本発明の効果として、取り扱いが容易なパック用シートの製造方法、及び、該製造方法で製造されるパック用シートを提供することができる。

本発明の第一実施形態の製造方法により製造されるパック用シートの構成を示す断面図である。 図１のパック用シートの応用例を示す斜視図である。 第二実施形態の製造方法により製造されたパック用シートの断面図である。 第三実施形態の製造方法により製造されたパック用シートの断面図である。 他の実施形態の製造方法により製造されたパック用シートの断面図である。

　以下、本発明の具体的な実施形態について説明する。第一実施形態のパック用シートの製造方法は、ヒアルロン酸、コラーゲン、ポルフィラン、及び、ポリグルタミン酸から選ばれる少なくとも一種を、水を含む液媒体に溶解または分散させた液体を調製する液体調製工程と、調製された液体を非多孔質シート上にコーティングするコーティング工程と、コーティングされた液体から液媒体を蒸発させることによりフィルム化させ、形成されたフィルム中の水分含有率が一定となる全乾燥状態に至らない半乾燥状態まで乾燥させるフィルム化・半乾燥工程と、半乾燥状態のフィルムに多孔質シートを積層する積層工程と、非多孔質シート、フィルム、及び、多孔質シートが積層された積層シートを、フィルムが全乾燥状態となるまで乾燥させる全乾燥工程とを具備している。

　より詳細に説明すると、液体調製工程では、ヒアルロン酸、コラーゲン、ポルフィラン、及び、ポリグルタミン酸から選ばれる少なくとも一種を、水を含む液媒体とを混合し、ダマのない均一な状態となるまで充分撹拌して、溶液または懸濁液とする。ここで、ヒアルロン酸、コラーゲン、ポルフィラン、及び、ポリグルタミン酸は、その内の一種が使用されるものであっても、複数が併用されるものであっても良い。また、本実施形態では、防腐剤を添加することなく液体を調製する、或いは、従来のパック用シートと比べて防腐剤の添加量を大幅に低減して液体を調製する。

　なお、調製される液体には、ヒアルロン酸、コラーゲン、ポルフィラン、及び、ポリグルタミン酸の四種の成分（以下、「選択される四種の成分」と称することがある）、すなわち、優れた保水性とフィルム形成能を併せ持つ成分の他、皮膚に良い効果を与えるとされている他の成分や香料など、パックに寄与する成分を含有させることができる。皮膚に良い効果を与えるとされている他の成分としては、グリセリン、プロピレングリコール、尿素、コンドロイチン硫酸、ヘパリノイド、キチン、キトサンなどの保湿成分、アルブチン、システイン、トラネキサム酸、ルシノール、コメヌカエキス、ハトムギエキス、カンゾウエキス、オウバクエキスなどの美白成分、アスコルビン酸ナトリウム、トコフェロール、パンテノール、レチノールなどのビタミン類、グリチルリチン酸二カリウム、サクシニルグリチルレチン酸ナトリウム、カルボキシメチルグルカンナトリウム、オリザノール、アルニカエキス、アロエエキス、ローズマリーエキス、ルイボスエキス、カンゾウエキス、ウコンエキスなどの抗炎症剤を例示することができる。

　香料としては、ウイキョウ油、オレンジ油、カミツレ油、スペアミント油、ケイヒ油、チョウジ油、ハッカ油、ベルガモット油、ユーカリ油、ラベンダー油、レモン油、ローズ油、ローマカミツレ油を例示することができる。

　調製される液体に含有させるフィルム形成能を有する成分は、選択される四種の成分の少なくとも一種のみとすることもできるが、そのフィルム形成能を補助する成分として、水溶性フィルム形成剤を含有させることができる。水溶性フィルム形成剤としては、プルラン、カラギーナン、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、水溶性ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ペクチン、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、グアーガム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、加工澱粉を例示することができる。

　また、調製される液体には、形成されるフィルムを柔軟なものとするために可塑剤を含有させることができ、液体の均一性を高めるために界面活性剤を含有させることができる。可塑剤としては、マクロゴール、グリセリン、プロピレングリコールを例示することができ、界面活性剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、ラウリル硫酸ナトリウム、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリソルベートを例示することができる。

　液媒体としては、選択される四種の成分及び液体に含有させるその他の成分の種類に応じて、水（温水）、或いは、水に希酸、希アルカリ、アルコール等の有機溶媒を混合した液を使用することができる。調製された液体は、必要に応じて脱泡処理する。

　コーティング工程では、平滑な平面に非多孔質シートを固定し、その上面に調製された液体をコーター機などによりコーティングする。なお、非多孔質シートとしては、厚さ１μｍ～５００μｍの非透水性のプラスチックシートを、好適に使用することができる。

　フィルム化・半乾燥工程では、非多孔質シートにコーティングされた液体から液媒体を蒸発させてフィルム化し、半乾燥状態とする。ここで、液媒体は、例えば、温度・湿度が制御された空間内での空気対流、温風の供給、遠赤外線の照射、マイクロ波の照射により、蒸発させることができる。

　フィルムの水分含有率を測定しながら液媒体を蒸発させていくと、それ以上は水分含有率が低下しない状態に至る。この状態を、「全乾燥状態」と称している。全乾燥状態にあるフィルムの水分含有率は、フィルムを形成する成分の種類にもよるが、５％～１２％程度である。一方、「半乾燥状態」は、コーティングされた液体が流動性を失いフィルム化しているが、その水分含有率は更に低下する余地のある状態である。本実施形態では、フィルムの水分含有率が２０％～４０％の状態を半乾燥状態の目安としている。なお、フィルムの水分含有率は、第十六改正日本薬局方に規定された乾燥減量の測定方法に則り測定することができる。

　積層工程では、半乾燥状態のフィルムの上に多孔質シートを載置する。これにより、半乾燥状態のフィルムの有する粘着性によって、フィルムと多孔質シートとが接着する。この際、フィルム上に載置された多孔質シートは自重によりフィルムに押圧されるが、更に多孔質シートの上からロールで挟むなど外力で軽く押圧しても良い。なお、多孔質シートとしてはメッシュ状シートが好適であり、特にメッシュ状の不織布が好適である。このように、多孔質シートとして不織布を使用した場合、フィルムと多孔質シートとを強い力で圧着すると、不織布の組織がつぶれてフワフワとした良好な感触が損なわれるおそれがある。

　全乾燥工程では、積層工程を経て非多孔質シート、フィルム、及び、多孔質シートが積層された積層シートを、温度・湿度が制御された空間内での空気対流、温風の供給、遠赤外線の照射、マイクロ波の照射等により、フィルムが全乾燥状態に至るまで乾燥させる。なお、全乾燥工程の後に、パック用シートを所望の形状に切断する切断工程を設けることができる。

　上記の製造方法により製造されたパック用シート１０は、図１に示すように、多孔質シート３と、多孔質シートの片面のみに積層された、ヒアルロン酸、コラーゲン、ポルフィラン、及び、ポリグルタミン酸から選ばれる少なくとも一種を含有する乾燥したフィルム２と、多孔質シート３が積層された面とは反対側の面でフィルム２に積層された非多孔質シート１とを具備する。乾燥したフィルム２は、接着剤成分の層などを介することなく、多孔質シート３に積層されている。なお、図１は概略図であり、各層の厚さの比率などを正確に図示したものではない。

　上記構成のパック用シート１０は、次のように使用する。まず、非多孔質シート１を剥離し、フィルム２を皮膚側として皮膚に貼付する。このとき、皮膚を水分で濡らしておくと、フィルム２が少し溶解して皮膚に密着し、パック用シート１０を皮膚に貼付し易い。

　皮膚に貼付されたパック用シート１０では多孔質シート３が外側となるため、多孔質シート３の上から水分を供給する。例えば、手指、コットン、綿棒、ガーゼ、ティッシュペーパー、ブラシ、スプレーなどを用いて、化粧水、水、湯などを多孔質シート３の表面に供給する。供給された水分は多孔質シート３の空隙を通過してフィルム２に至る。フィルム２には保水性の高い成分（選択される四種の成分の少なくとも一種）が含有されているため、フィルム２に到達した水分を含んで、フィルム２は高含水率のソフトジェルとなる。これにより、皮膚は高含水率のソフトジェルと、これを外側から支持する多孔質シート３で被覆され、保湿のためのパックをすることができる。また、ヒアルロン酸、コラーゲン、ポルフィラン、及び、ポリグルタミン酸が含水したソフトジェルは、極めて高粘度であるため、皮膚から垂れ落ちにくい。

　また、フィルム２に、美白成分、しわ取り成分、しみ防止成分、ビタミン類など皮膚に良い効果を与えるとされている成分が含有されている場合は、これらの有効成分は水分と共に皮膚に浸透する。

　以上のように、パック用シート１０は、使用時に含水させるものであり、使用前は乾燥しているため、防腐剤を添加することなく、或いは、防腐剤の添加量を大幅に低減して製造することができる。これにより、防腐剤が皮膚トラブルの原因となることを懸念する需要者に、受け容れられやすいものとなる。

　また、フィルム２は乾燥しており水分をほとんど含有しないため、皮膚に良い効果を与えるとされている有効成分をフィルム２に含有させた場合は、パック用シート１０を皮膚に貼付した際に皮膚に直接に接触するフィルム２における、有効成分の割合を高めることができる。

　更に、製造工程において、半乾燥状態のフィルムの粘着性を利用して多孔質シートを積層しているため、フィルム２と多孔質シート３とが、パックに寄与しない成分である接着剤成分の層を介することなく積層されている。

　そして、パック用シート１０は、使用前は乾燥しておりべたつくことがないため、パッケージから取り出して皮膚に貼付する取り扱いが容易である。特に、多孔質シート３としてメッシュ状の不織布を使用した場合は、多孔質シート３の備える凹凸により、指で挟んで行う作業がより容易である。

　加えて、パック用シート１０は、使用前は乾燥しておりべたつくことがないため、複数枚を一緒に包装することができる。特に、多孔質シート３としてメッシュ状の不織布を使用した場合は、多孔質シート３の備える凹凸により、一緒に包装された複数枚のパック用シート１０が互いに密着することが抑制されるため、包装から一枚だけを取り出し易い。

　そして、パック用シート１０は多孔質シート３を備えるため、外側から供給された水分がフィルム２に速やかに到達する。特に、多孔質シート３としてメッシュ状の不織布を使用した場合は、マトリクスの空隙より大きな空隙を有するため、供給された水分は極めて速やかにフィルム２に至る。

　次に、第一実施形態の製造方法の応用例を説明する。パック用シートにおいては、積層されたフィルム２及び多孔質シート３が皮膚に貼付される部分であるため、この部分を「皮膚貼付部」と称することとする。応用例は、図２に示すように、所定形状の皮膚貼付部２０が非多孔質シート１上に積層されたパック用シート１１を製造する方法である。かかる構成のパック用シート１１は、非多孔質シート１の上にグラビア印刷やシルク印刷等の印刷により、液体を所望の形状にコーティングすることにより（コーティング工程）、所定形状のフィルム２を形成し（フィルム化・半乾燥工程）、そのフィルム２の上に同一形状の多孔質シート３を積層することにより（積層工程）、製造することができる。なお、図２では、同時に使用される二つの皮膚貼付部２０が、一セットとして同一の非多孔質シート１に積層されている場合を図示しており、二つの皮膚貼付部がそれぞれ右の目元及び左の目元に貼付するのに適した形状となっている。

　次に、第二実施形態の製造方法について説明する。第一実施形態の製造方法と相違する点は、全乾燥工程の後に、非多孔質シートを完全に切断することなく、フィルム２及び多孔質シート３を所定の形状に切断する中途切断工程を具備する点である。中途切断工程では、非多孔質シート１の上に広い面積でフィルム２が積層され、その上に広い面積で多孔質シート３が積層されたシートにおいて、多孔質シート３及びフィルム２の積層部分のみを所定形状に切断する。このような製造方法によっても、図２に例示した、所定形状の皮膚貼付部が非多孔質シート上に積層されたパック用シート１１を製造することができる。或いは、中途切断工程は、図３に示すように、多孔質シート３からフィルム２を経て、非多孔質シート１を途中まで切断する工程とすることができる。

　次に、第三実施形態の製造方法、及び、該製造方法により製造されるパック用シート１３について説明する。第三実施形態の製造方法が第一実施形態の製造方法と相違する点は、全乾燥工程の後に、積層シートから非多孔質シートを剥離する工程を具備している点である。この工程は、例えば、回転するローラで非多孔質シートを巻き取ることにより、行うことができる。

　このような製造方法により、図４に示すように、多孔質シート３と、多孔質シート３の片面のみに積層された、ヒアルロン酸、コラーゲン、ポルフィラン、及び、ポリグルタミン酸から選ばれる少なくとも一種を含有する乾燥したフィルム２とから構成されるパック用シート１３が製造される。すなわち、パック用シート１３は全体が皮膚貼付部である。

　このように、使用に先立ち生産者側で非多孔質シート１が剥離されていることにより、使用者が非多孔質シート１を剥離する手間が不要となり、より使用しやすい。なお、フィルム２は乾燥しているため、非多孔質シート１を剥離した状態で包装しても、パッケージにパック用シート１３が付着するおそれや、一緒に包装された複数のパック用シート１３同士が付着するおそれはない。

　下記に示す組成のフィルムを備えるパック用シートを製造した。非多孔質シートとしてポリプロピレンシートを、多孔質シートとしてメッシュ状の不織布（日清紡テキスタイル製、ＯｉＫＯＳ）を使用した。なお、下記の組成は、全乾燥状態のフィルムの組成であり、各成分の単位は質量％である。

＜実施例１＞
コラーゲン：８０．８０
ポリオキシエチレンソルビタンオレイン酸エステル：７．００
ポリソルベート８０：４．２０
水：８．００

＜実施例２＞
ポリグルタミン酸：８６．１４
グリセリン：４．３
アロエエキスパウダー：０．９３
ハトムギエキスパウダー：０．９３
フィッシュコラーゲンペプチド：０．４６
アルニカエキス：０．０３
ローズマリーエキス：０．０３
ヒアルロン酸：０．０１
コエンザイムＱ１０：０．０８
グリチルリチン酸二カリウム：０．０９
水：７．００

＜実施例３＞
ヒアルロン酸：７２．５５
プルラン：１４．００
カラギーナン：１．００
グリセリン：３．１５
中鎖脂肪酸トリグリセリド：１．００
ポリグリセリン脂肪酸エステル：０．３０
水：８．００

　実施例１～３のパック用シートのフィルムは、上記の組成で明らかなように、パックに寄与する成分の含有率が高い。また、何れのパック用シートも多孔質シートの外側から水分を供給することにより、フィルムが速やかに高含水率で高粘度のソフトジェルとなった。また、使用前は乾燥した状態であり、取り扱いが容易であった。

　以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。

　例えば、多孔質シートとして、着色された不織布や図柄が施された不織布を使用することができる。このようにすることにより、形状の異なるパック用シートや、フィルムに含有される成分が相違するパック用シートが一緒に包装されている場合に、識別が容易となる。

　更に、上記構成に加え、図５に示すように、非多孔質シート１とフィルム３との間に、剥離剤層４を備えるパック用シート１４とすることができる。かかる構成のパック用シート１４は、コーティング工程に先立ち、非多孔質シート１の片面にシリコーン系剥離剤などの剥離剤をコーティングして剥離剤層４を形成し、剥離剤層４を介して非多孔質シート１上に、選択される４種の少なくとも何れかを含有する液体をコーティングすることにより製造することができる。このように、非多孔質シート１とフィルム３との間に剥離剤層４を備えることによって、非多孔質シート１の剥離がより容易なものとなる。

　なお、本発明のパック用シートは、皮膚に水分を与える保湿パックを主な目的とするものであるが、美白成分、しわ取り成分、しみ防止成分、ビタミン類などの有効成分を水分と共に皮膚に与える化粧パックとしても好適である。また、本発明のパック用シートは、皮膚に水分を与えながら、香料を皮膚近くから揮発させるアロマテラピ用シートとしても好適である。この場合、揮発した香料は、主に多孔質シートを介して発散するため、発散の速度が制限されて香りが長く持続する。

特開平１０－２７９４２９号公報 特開２００２－１１４６６４号公報

Claims (6)

1. 　ヒアルロン酸、コラーゲン、ポルフィラン、及び、ポリグルタミン酸から選ばれる少なくとも一種を、水を含む液媒体に溶解または分散させた液体を、非多孔質シート上にコーティングする工程と、
   　コーティングされた前記液体から液媒体を蒸発させることによりフィルム化させ、形成されたフィルム中の水分含有率が一定となる全乾燥状態に至らない半乾燥状態で、前記フィルムに多孔質シートを積層する工程と、
   　前記非多孔質シート、前記フィルム、及び、前記多孔質シートが積層された積層シートを、前記フィルムが前記全乾燥状態となるまで乾燥させる工程と
   を具備することを特徴とするパック用シートの製造方法。
2. 　前記液体に防腐剤を含有させない
   ことを特徴とする請求項１に記載のパック用シートの製造方法。
3. 　前記多孔質シートとして、メッシュ状シートを使用する
   ことを特徴とする請求項１または請求項２に記載のパック用シートの製造方法。
4. 　多孔質シートと、
   　前記多孔質シートの片面のみに積層された、ヒアルロン酸、コラーゲン、ポルフィラン、及び、ポリグルタミン酸から選ばれる少なくとも一種を含有する乾燥したフィルムと
   を具備することを特徴とするパック用シート。
5. 　前記フィルムは防腐剤を含有しない
   ことを特徴とする請求項４に記載のパック用シート。
6. 　前記多孔質シートは、メッシュ状シートである
   ことを特徴とする請求項４または請求項５に記載のパック用シート。

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