WO2010053199A1 - 前立腺癌の治療用医薬組成物及び前立腺癌の治療方法 - Google Patents

前立腺癌の治療用医薬組成物及び前立腺癌の治療方法 Download PDF

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Abstract

 局所的に治療効果を発揮させることにより、全身における副作用がなく、患者における物理的あるいは精神的苦痛を大きく低減させ得る、前立腺癌の治療用医薬組成物、及び当該組成物を用いた前立腺癌の治療方法を提供する。本発明の前立腺癌治療用医薬組成物は、内皮細胞遺伝子座-1タンパク質由来の細胞外基質沈着ドメインと、テストステロン分解酵素との融合タンパク質をコードする遺伝子を含むものである。

Description

前立腺癌の治療用医薬組成物及び前立腺癌の治療方法
 本発明は、前立腺癌の治療用医薬組成物、及び前立腺癌の治療方法に関する。
 前立腺癌の治療法としては、従来、外科手術や放射線療法とならんで、内分泌療法が行われている。この治療法は、前立腺癌細胞が男性ホルモン依存性に増殖することを利用した方法である。よって、女性ホルモンの投与、男性ホルモン(テストステロン)受容体拮抗薬の投与に加え、より完全に男性ホルモン作用を阻止するために男性ホルモンの産生部位である精巣の摘出が併用されることも多い。
 しかしながら、内分泌療法治療薬は全身投与であるため、病巣に対して有効である一方、hot flash等の全身での副作用が出現する。また、単独の方法で内分泌療法を継続すると効果が低下し、再燃することも多い。さらに精巣の摘出は、癌とは別の心理的苦痛を患者に与えることになる。
 そこで、本発明が解決しようとする課題は、局所的に治療効果を発揮させることにより、全身における副作用がなく、患者における身体的あるいは精神的苦痛を大きく低減させ得る、前立腺癌の治療用医薬組成物、及び当該医薬組成物を用いた前立腺癌の治療方法を提供することにある。
 本発明者は、上記課題を解決するべく鋭意検討を行った。その結果、内皮細胞遺伝子座-1(以下、Del-1)タンパク質由来の細胞外基質沈着ドメイン(以下、DDD)と、テストステロン分解酵素である3α-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ(3α-hydroxysteroid dehydrogenase; 以下、3αHD)との融合タンパク質をコードする組換えDNA(以下、p3αHD:DDD)を作製し、それを細胞に遺伝子導入することにより、テストステロン分解活性のある細胞外基質(以下、ECM)を産生させることに成功した。そして、当該細胞外基質に包まれた前立腺癌の癌組織やその周囲において、テストステロンを代謝させ、他臓器に影響することなく局所的に男性ホルモン濃度を低下させることにより、前立腺癌の治療効果を高めることができることを見出し、本発明を完成した。
 具体的には、テストステロン依存性の増殖するヒト前立腺癌細胞株LNCap由来の細胞(以下、LNCap細胞)に3αHD遺伝子を導入すると増殖速度は0.6倍に低下し、同細胞に3αHD遺伝子にDDD遺伝子を組み合わせて導入すると(すなわち、3αHDとDDDとの融合タンパク質をコードする遺伝子を導入すると)増殖速度は0.4倍に抑制された。3αHD遺伝子とDDD遺伝子を組合せて導入された細胞が産生した細胞外基質は、培養液交換後にもテストステロン代謝作用を維持しており、LNCap細胞の増殖を抑制することができた。これらの結果から、3αHD遺伝子とDDD遺伝子との組換えDNA、及び当該DNAから産生される3αHDとDDDとの融合タンパク質は、前立腺癌の新たな治療薬及び治療方法に用いることができる点で、極めて有用なものである。
 また、本発明の治療方法と従来の内分泌療法とを併用することで、患者への過度の負担を軽減しつつ、内分泌療法の治療効果を高めることもできる。
 すなわち、本発明は以下の通りである。
 (1)内皮細胞遺伝子座-1タンパク質(Del-1)由来の細胞外基質沈着ドメイン(DDD)と、テストステロン分解酵素との融合タンパク質をコードする遺伝子を含む、前立腺癌治療用医薬組成物。
 上記(1)の医薬組成物において、テストステロン分解酵素としては、例えば、3α-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ(3αHD)が挙げられる。
 上記(1)の医薬組成物において、上記融合タンパク質(具体的には、DDDと3αHDとの融合タンパク質)をコードする遺伝子としては、例えば、以下の(a)又は(b)のDNAを含む遺伝子が挙げられる。
 (a) 配列番号7に示される塩基配列からなるDNA
 (b) 配列番号7に示される塩基配列からなるDNAに対し相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAであって、かつ細胞外基質沈着活性及びテストステロン分解活性をを有するタンパク質をコードするDNA。
 (2)上記(1)記載の医薬組成物を前立腺癌の患者に投与することを含む、前立腺癌の治療方法。
 (3)上記(1)記載の医薬組成物を含む、前立腺癌の治療用キット。
 (4)以下の(a)又は(b)のDNAを含む遺伝子。
 (a) 配列番号7に示される塩基配列からなるDNA
 (b) 配列番号7に示される塩基配列からなるDNAに対し相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAであって、かつ細胞外基質沈着活性及びテストステロン分解活性をを有するタンパク質をコードするDNA。
 (5)以下の(a)又は(b)のタンパク質。
 (a) 配列番号8に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質。
 (b) 配列番号8に示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ細胞外基質沈着活性及びテストステロン分解活性をを有するタンパク質。
 本発明によれば、局所的に治療効果を発揮させることにより、全身における副作用がなく、患者における物理的あるいは精神的苦痛を大きく低減させることができる、前立腺癌の治療用医薬組成物、及び当該医薬組成物を用いた前立腺癌の治療方法等を提供することができる。
本実施例に用いたプラスミドDNA等の概略図である。 a:遺伝子導入のために構築したプラスミドDNAの概略図である。サイトメガロウィルスのプロモーター領域(Pcmv)、シグナルペプチドのcDNA(SP)、3αHDのcDNA(3alphaHD)及びDDDのcDNAを、pcDNA3Dベクター(Invitrogen)に組み込んだ。 b:遺伝子導入実験の概要を示す図である。DDDは長方形で表し、3αHDは楕円で表した。黒塗りの四角は、3αHDの作用を受ける前のDHTを表し、黒塗りの三角は、3αHDの作用を受けたDHTを表す。鋸歯状の線は、細胞外基質(ECM)を表す。 細胞を用いた酵素作用の検出結果を示す図である。 a:LNCap細胞のDHT依存性増殖の結果を示す図である。結果は、平均±標準誤差で表した(実験回数は6回)。 b:ウェスタンブロットによる、培養液(Medi)、細胞(Cell)及びECMに含まれる、組換えタンパク質の検出結果を示す図である。
3αHDによるLNCap細胞の増殖抑制の結果を示す図である。 a:LNCap細胞の増殖をp3αHDかp3αHD:DDDの導入後に評価した結果を示す図である。βガラクトシダーゼのcDNAを遺伝子導入効率の指標(control)として同時に導入した。 b:LNCap細胞の増殖を、導入する遺伝子量を変えて評価した結果を示す図である。白抜きのグラフ(cell number)はLNCap細胞の数を示し、黒塗りのグラフ(β-gal)は導入効率の指標(control)としてのβガラクトシダーゼ活性を示す。結果は、平均±標準誤差で表した(実験回数は6回)。p<0.01をもって有意差がある(**)とした。 DDDによって3αHDをECMに結合させた効果を示す図である。 a:p3αHD:DDDの遺伝子導入により作製したECM上ではLNCap細胞の増殖が抑制されたことを示す図である。 b:p3αHD:DDDの遺伝子導入により作製したECMが血清中のDHTを減少させたことを示す図である。 c:p3αHD:DDDの遺伝子導入により作製したECMの効果がDHTの添加により打ち消されたことを示す図である。結果は、平均±標準誤差で表した(実験回数は6回)。p<0.01をもって有意差がある(**)とした。
 以下、本発明について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更し実施し得る。
 なお、本明細書は、本願優先権主張の基礎となる米国仮出願 61/112,836号明細書(2008年11月10日出願)の全体を包含する。また、本明細書において引用された全ての刊行物、例えば先行技術文献、及び公開公報、特許公報その他の特許文献は、参照として本明細書に組み込まれる。
1. 本発明の概要
 遺伝子治療において治療効果を改善し副作用を下げるためには、DNAから産生されるタンパク質を標的の組織に効率的に分布させるする技術の開発が求められる。本発明者は、細胞外基質沈タンパク質である内皮細胞遺伝子座-1(Del-1)タンパク質が、当該Del-1中の細胞外基質沈着ドメイン(DDD)を介して細胞外基質(ECM)に結合することを報告した。本発明においては、目的のタンパク質とDDDとの融合タンパク質を作製することで、当該目的タンパク質を、その機能を損なうことなく、ECMに固相化できることを示した。ヒト前立腺癌由来の細胞株LNCap細胞は、男性ホルモン依存性に増殖する。このLNCap細胞と、ジヒドロテストステロン(以下、DHT)を異化する3α-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ(3αHD)とを用いて研究した。3αHDとDDDとの融合タンパク質をコードするcDNA(p3αHD:DDD)を作製して細胞に導入した。ECMに結合した3αHDの効果は、LNCap細胞の増殖とDHTの濃度を測定して評価した。その結果、DDDは酵素タンパク質の機能を保った状態でECMに固相化できることが解った。
 マウスのDel-1は、主に胎児の血管内皮細胞と肥大型軟骨細胞が分泌する細胞外基質沈着タンパク質である[Hidai C et al. Cloning and characterization of developmental endothelial locus-1: an embryonic endothelial cell protein that binds the alphavbeta3 integrin receptor. Genes Dev (1998) 12:21.]。Del-1は、3つのEGFドメイン(E1、E2、E3)と2つのジスコイジンタンパク質(C1、C2)から構成される。本発明者は、C1のC末端側がDel-1のECMへの沈着に必須であること、またC1のN末端とE3の存在がC1の機能を増強することを報告した[Hidai C et al. Discoidin domain of Del-1 protein contributes to its deposition in the extracellular matrix. Cell Tissue Res (2007) 330:83.]。本発明者は、C1のC末端側をDel-1 deposition domain (DDD)と呼ぶことにした。DDDとalkaline phosphatase (AP)の融合タンパク質はAPの発色反応を通して、APのECMへの沈着を評価することができる。
 疾病治療においては、治療物質を標的組織に集めることで、組織での濃度を高めることができる。それによって治療効果を高め、他の組織への分布を防ぎ、副作用を抑止することができる。本発明の目的は、目的の酵素タンパク質にDDDを付加(融合)し、酵素活性を損なうことなくECMに固相化することである。理論上、酵素はその活性を保持すると考えられるが、細胞とECMの間の空間は単なる空洞ではないため、その部分で融合タンパク質が実際に細胞に対して機能するかどうかを確認する必要があった。
 本発明者は、LNCap細胞を用いて酵素活性を評価する方法を試みた。LNCap細胞は、ヒト前立腺癌由来の細胞株であり、男性ホルモン依存性に増殖する[Horoszewicz JS et al. LNCaP model of human prostatic carcinoma. Cancer Res (1983) 43:1809.;van Bokhoven A et al. Molecular characterization of human prostate carcinoma cell lines. Prostate (2003) 57:205.]。DHTを5α-androstane-3α, 17β-diolに異化する酵素である3αHDを、ECMに固相化するために、3αHDにDDDを付加(融合)し[Penning TM et al. Human 3alpha-hydroxysteroid dehydrogenase isoforms (AKR1C1-AKR1C4) of the aldo-keto reductase superfamily: functional plasticity and tissue distribution reveals roles in the inactivation and formation of male and female sex hormones. Biochem J (2000) 351:67.]、組み換え3αHDのN末端にシグナルペプチドを付加して、融合タンパク質が細胞外に分泌されるようにした(図1a、図1b)。その結果、DDDを融合した3αHDタンパク質は、ECMに局在し、そのECMはLNCap細胞の増殖を抑制することができた。
 多くの前立腺癌がテストステロン依存性に増殖する。本発明においては、テストステロンを代謝する酵素3α-hydroxysteroid dehydrogenase (3αHD)とDel-1由来の細胞外基質沈着ドメイン(DDD)との融合タンパク質のための組換えDNA (p3αHD:DDD)を作製し、それを細胞に遺伝子導入することにより、テストステロン分解活性のある細胞外基質(ECM)を作製することに成功した。こうして作製されたECMは、培養液中のテストステロンを代謝し、当該ECM上のLNCap細胞の増殖を抑制した。
2. 本発明の医薬組成物及び治療方法
2.1  医薬組成物
 本発明の医薬組成物は、内皮細胞遺伝子座-1(Del-1)タンパク質由来の細胞外基質沈着ドメイン(DDD)と、テストステロン分解酵素との融合タンパク質をコードする遺伝子を含むことを特徴とする、前立腺癌の治療用医薬組成物であり、いわゆる遺伝子治療剤として用いることができるものである。
 ここで、上記細胞外基質沈着ドメイン(DDD)としては、限定はされないが、内皮細胞遺伝子座-1(Del-1)タンパク質の全長アミノ酸配列(配列番号2)中の第122番目~第316番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列(配列番号4)であることが好ましい。なお、DDDのアミノ酸配列をコードするDNAは、Del-1タンパク質の全長アミノ酸配列をコードする塩基配列(配列番号1)中の第982番目~第1566番目の塩基からなる塩基配列(配列番号3)であることが好ましい。
 また、テストステロン分解酵素としては、テストステロンの分解活性(代謝活性)を有する酵素タンパク質であればよく、限定はされないが、例えば、3α-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ(3αHD)であることが好ましい。3αHDのアミノ酸配列及び当該アミノ酸配列をコードするDNAは、それぞれ、配列番号6及び配列番号5に示されるものである(GenBank Accession number: BAD18929, AB178898)。ただし、配列番号5に示される塩基配列中3’末端の3塩基(第970番目~第972番目の塩基)は、終止コドンであるため、DDDとの融合タンパク質をコードする遺伝子においては除かれた状態となる(配列番号7参照)。
 本発明において、DDDとテストステロン分解酵素(具体的には3αHD)との融合タンパク質をコードする遺伝子としては、限定はされないが、例えば、以下の(a)又は(b)のDNAを含む遺伝子が好ましい。
 (a) 配列番号7に示される塩基配列からなるDNA
 (b) 配列番号7に示される塩基配列からなるDNAに対し相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAであって、かつ細胞外基質沈着活性及びテストステロン分解活性をを有するタンパク質をコードするDNA。
 配列番号7に示される塩基配列のうち、第1番目~第75番目の塩基からなる塩基配列は、Del-1タンパク質のシグナルペプチドをコードするDNA(すなわち配列番号1に示される塩基配列中の第619番目~第693番目の塩基からなる塩基配列)であり、第76番目~第1047番目の塩基からなる塩基配列は、3αHDのアミノ酸配列をコードするDNAであり、第1048番目~第1629番目の塩基からなる塩基配列は、DDDのアミノ酸配列をコードするDNAである。
 上記(b)のDNAは、上記(a)のDNAの変異型のDNAに相当するものであるが、このような変異型DNAは、例えば、Molecular Cloning, A Laboratory Manual 2nd ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons (1987-1997) 等に記載の部位特異的変位誘発法に準じて調製することができる。具体的には、Kunkel法や Gapped duplex法等の公知手法により、部位特異的突然変異誘発法を利用した変異導入用キットを用いて調製することができ、当該キットとしては、例えば、QuickChangeTM Site-Directed Mutagenesis Kit(ストラタジーン社製)、GeneTailorTM Site-Directed Mutagenesis System(インビトロジェン社製)、TaKaRa Site-Directed Mutagenesis System(Mutan-K、Mutan-Super Express Km等:タカラバイオ社製)等が好ましく挙げられる。また、変異型DNAは、所望のアミノ酸のコドンを示す塩基となるようにミスセンス変異が導入されるように設計したPCRプライマーを用い、上記(a)のDNA等をテンプレートとして、適当な条件下でPCRを行うことにより調製することもできる。PCRに用いるDNAポリメラーゼは、限定はされないが、正確性の高いDNAポリメラーゼであることが好ましく、例えば、Pwo DNAポリメラーゼ(ロシュ・ダイアグノスティックス)、Pfu DNAポリメラーゼ(プロメガ)、プラチナPfx DNAポリメラーゼ(インビトロジェン)、KOD DNAポリメラーゼ(東洋紡)、KOD-plus-ポリメラーゼ(東洋紡)等が好ましい。PCRの反応条件は、用いるDNAポリメラーゼの最適温度、合成するDNAの長さや種類等により適宜設定すればよい。
 また、上記(b)の変異型DNAは、上記(a)のDNA若しくはそれと相補的な塩基配列からなるDNA、又はこれらを断片化したものをプローブとして用い、コロニーハイブリダイゼーション、プラークハイブリダイゼーション、及びサザンブロット等の公知のハイブリダイゼーション法を実施し、cDNAライブラリーやゲノムライブラリーから得ることができる。ライブラリーは、公知の方法で作製されたものを利用してもよいし、市販のcDNAライブラリーやゲノムライブラリーを利用してもよく、限定はされない。ハイブリダイゼーション法の詳細な手順については、Molecular Cloning, A Laboratory Manual 2nd ed. (Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)等を適宜参照することができる。
 上記(b)の変異型DNAは、前述の通り、上記(a)のDNAに対し相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAであるが、ここで、「ストリンジェントな条件」とは、ハイブリダイゼーション後の洗浄時の条件であって、例えば、バッファーの塩(ナトリウム)濃度が150~900mMであり、温度が55~75℃での条件、好ましくは塩(ナトリウム)濃度が150~200mMであり、温度が60~70℃での条件をいう。また、当該ハイブリダイズするDNAとしては、上記(a)のDNAの塩基配列に対して少なくとも40%以上、好ましくは約80%以上、81%以上、82%以上、83%以上、84%以上、85%以上、86%以上、87%以上、88%以上、89%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、99.1%以上、99.2%以上、99.3%以上、99.4%以上、99.5%以上、99.6%以上、99.7%以上、99.8%以上、99.9%以上の相同性を有する塩基配列であることが好ましい。
 上記(b)の変異型DNAは、細胞外基質沈着活性及びテストステロン分解活性をを有するタンパク質をコードするDNAであるが、ここで、細胞外基質沈着活性とは、細胞外基質に結合する活性を意味する。細胞外基質沈着活性は、DNAにアルカリホスファターゼなどのマーカーをコードするDNAを連結し、これを所定の細胞(例えばcos7細胞、CHO細胞、NIH3T3細胞、LNCap細胞等)に導入して培養する。培養容器からその培養上清及び細胞を除去した後、培養容器に残った細胞外基質にアルカリホスファターゼの基質を加えて発色させ、沈着活性を測定する。細胞外基質に沈着すると、マーカー(アルカリホスファターゼ)を指標として結合活性を測定することができるとともに、結合位置を同定することができる。例えば、可溶性アルカリホスファターゼ基質を用いると、基質が発色(例えば、黄色等に発色)するため、特異的な波長での吸光度を測定することで容易に沈着活性を測定することができる。また、沈着性アルカリホスファターゼを用いると、沈着部位が発色(例えば、紫等)するため、顕微鏡観察等によりその沈着部位を容易に同定することができる。なお、マーカーはアルカリホスファターゼに限定されるものではなく、その他にも、GFPやその変異型、mycやHisなどのtag、GST蛋白、アイソトープ、ビオチン化蛋白などを用いることができる。また、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)遺伝子、ルシフェラーゼ遺伝子、βガラクトシダーゼなどのレポーター遺伝子を用いてアッセイすることも可能である。
 また、テストステロン分解活性とは、テストステロンの生物学的活性を破壊する活性を意味し、当該活性は、例えば、テストステロン依存性に増殖する細胞を用いた増殖能の測定等により測定することができる。
 また本発明において、DDDとテストステロン分解酵素(具体的には3αHD)との融合タンパク質としては、限定はされないが、例えば、以下の(a)、(b)又は(c)のタンパク質が好ましい。
 (a) 配列番号8に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質。
 (b) 配列番号8に示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ細胞外基質沈着活性及びテストステロン分解活性をを有するタンパク質。
 (c) 配列番号8に示されるアミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するアミノ酸配列を含み、かつ細胞外基質沈着活性及びテストステロン分解活性をを有するタンパク質。
 配列番号8に示されるアミノ酸配列のうち、第1番目~第25番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列は、Del-1タンパク質のシグナルペプチド部分(すなわち配列番号2に示されるアミノ酸配列中の第1番目~第25番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列)であり、第26番目~第349番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列は、3αHDのアミノ酸配列部分であり、第350番目~第543番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列は、DDDのアミノ酸配列部分である。
 上記(b)のタンパク質は、において、「1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列」としては、例えば、1個~10個程度、好ましくは1個~5個程度のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列であることが好ましい。上記欠失、置換、付加等の変異の導入は、部位特異的突然変異誘発法を利用した変異導入用キット、例えばGeneTailorTMSite-Directed Mutagenesis System(インビトロジェン社)、TaKaRa Site-Directed Mutagenesis System(Mutan-K、Mutan-Super Express Km等:タカラバイオ社製)を用いて行うことができる。
 上記(c)のタンパク質において、「80%以上の相同性を有するアミノ酸配列」としては、例えば、配列番号8で表されるアミノ酸配列に対して、約80%以上、81%以上、82%以上、83%以上、84%以上、85%以上、86%以上、87%以上、88%以上、89%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、99.1%以上、99.2%以上、99.3%以上、99.4%以上、99.5%以上、99.6%以上、99.7%以上、99.8%以上、99.9%以上の相同性を有するアミノ酸配列であることが好ましい。当該相同性の数値は一般的に大きい程好ましい。
 上記(b)及び(c)のタンパク質において、細胞外基質沈着活性及びテストステロン分解活性に関する説明は、前述した上記(b)の変異型DNAにおける説明が同様に適用できる。
 本発明の医薬組成物は、上記融合タンパク質をコードする遺伝子以外にも他の成分を適宜含むことができる。他の成分としては、当該医薬組成物の用法(使用形態)に応じて必要とされる製薬上の各種成分(薬学的に許容し得る各種担体等)が挙げられる。例えば、薬剤製造上一般に用いられる賦形剤、充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、潤滑剤、界面活性剤、分散剤、緩衝剤、保存剤、溶解補助剤、防腐剤、無痛化剤、安定化剤、等張化剤等が挙げられる。
 遺伝子治療剤として用いられる本発明の医薬組成物は、注射により直接投与する方法のほか、上記融合タンパク質をコードする核酸(DNA等)を含む遺伝子が組込まれたベクターを投与する方法が挙げられる。上記ベクターとしては、発現ベクターとして使用できる公知の各種プラスミドベクターを用いるほか、アデノウイルスベクター、アデノ関連ウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、レトロウイルスベクター及びレンチウイルスベクター等のウイルスベクターを用いることにより効率よく投与することもできる。なお、市販の遺伝子導入キット(例えば、製品名:アデノエクスプレス、クローンテック社製)を用いることもできる。本発明においては、当該融合タンパク質をコードする核酸(DNA等)を含む遺伝子が組込まれたベクター(組換えベクター)も包含される。さらに、本発明においては、当該組換えベクターを目的遺伝子が発現し得るように宿主中に導入して得ることができる形質転換体も包含される。宿主としては、本発明の遺伝子DNAを発現し得るものであれば限定されず、例えば、当該分野において周知の細菌、酵母、動物細胞等を用いることができる。
 本発明の医薬組成物の投与量は、一般には、製剤中の有効成分の配合割合を考慮した上で、投与対象(患者)の年齢、体重、病気の種類、病状のほか、投与経路、投与回数、投与期間等を勘案し、適宜、広範囲に設定することができる。例えば、成人患者に本発明の医薬組成物を投与する場合は、限定はされないが、患者の体重に対し、一日あたり0.1μg/kg~1000mg/kg程度であることが好ましく、より好ましくは1μg/kg~100mg/kg程度である。
2.2  治療方法
 本発明の治療方法は、上記本発明の医薬組成物を前立腺癌の患者に投与することを特徴とする前立腺癌の治療方法である。また本発明は、前立腺癌を治療するための上記医薬組成物の使用、及び、前立腺癌の治療のための薬剤を製造するための上記医薬組成物の使用も含むものである。本発明の医薬組成物の投与量及び投与形態等については、前記2.1項で述べた通りである。
 また、本発明の治療方法は、例えば、従来の内分泌療法と併用してもよい。当該内分泌療法は、患者の病状や副作用の程度、あるいは投与効果などを考慮し、適宜選択することができる。このように併用した場合は、患者への過度の負担を軽減しつつ、内分泌療法の治療効果を高めることも可能である。
2.3  治療用キット
 本発明においては、構成成分として、前述した本発明の遺伝子を含むことを特徴とする、前立腺癌の治療用キットも提供される。本発明のキットは、局所的に治療効果を発揮させることにより、全身における副作用がなく、患者における物理的あるいは精神的苦痛を大きく低減させることができるため、前立腺癌の治療の分野に限らず、各種実験及び研究等の分野においても極めて有用性が高いものである。
 以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれら実施例によって何ら限定されるものではない。
1.材料及び方法
<細胞培養と細胞増殖の評価>
 LNCap細胞 (CRL-1740)とCos-7細胞 (CRL-1651)はATCCから購入し、α-minimum essential medium (Invitrogen, Carlsbad, CA)に10% 牛胎児血清 (Invitrogen)を加えて、5% CO2存在下に37°Cで培養した。LNCap細胞のDHT依存性を調べるため、24穴の培養皿に50%の密度に細胞を播き、300μlの無血清培養液VP-SFM (Invitrogen)で培養した。培養液には種々の濃度のDHT (Wako, Osaka, Japan)を添加した。4日間の培養後に30μlのWST-1 (Takara, Outs, Japan)を添加し、1時間培養して405nmの吸光度を測定した。実験は3回行った。
<プラスミドDNAの構築>
 まず、Del-1のシグナルペプチド(MKHLVAAWLLVGLSLGVPQFGKGDI(配列番号9))をコードするcDNAを適宜作製し、pcDNA3Dベクター(Invitrogen)に組み込んでpcDNA3Sを準備した。次に、ヒトの3αHD遺伝子(GenBank Accession number: AB178898)を、市販のヒトRNAを鋳型とし、下記のプライマーを用いてRT-PCRにより増幅した。
   5’-AAGAATTCATGAACTCCAAATGTCATTGTGTCAT-3’ (配列番号10)
   5’-AAGATATCGTATTCATCCAAAAATGGCCAATTAG-3’ (配列番号11)
 増幅したDNA断片をシグナルペプチドの3’末端に挿入して、p3αHD(図1a)を作製した。さらに、Del-1タンパク質由来の細胞外基質沈着ドメインであるDDD (Del-1のアミノ酸122-316)を、公知の方法[Hidai C et al., Genes Dev (1998) 12:21.]に従い、下記のプライマーを用いて増幅した。
   5’-AAGATATCTGTGAAGCTGAGCCTTGCAGAAAT-3’ (配列番号12)
   5’-AACTCGAGCATGTCCATGTTGAGTGTTCTGAA-3’ (配列番号13)
 増幅したDNA断片を3αHD遺伝子の下流に挿入して、p3αHD:DDD(図1a)を作製した。
 これらのプラスミドによりコードされる組換えタンパク質は、C末端にpcDNA3D由来のV5タグがつくことになる。
<ウェスタンブロット>
 ウェスタンブロットのためのECMのサンプルは、公知の方法[Hidai C et al., Cell Tissue Res (2007) 330:83.]に従い、Cos-7細胞を6穴の培養皿に播き、pcDNA3S、p3αHD、p3αHD:DDDをそれぞれLipofectamine 2000 (Invitrogen)を用いて遺伝子導入することにより作製した。96時間後に培養液を回収し、EDTAを使って細胞を回収した。残ったECMはスクレーパーで回収した。それぞれのサンプルは10% trichloracetic acid (Wako)で固定され、SDS-PAGEによる電気泳動後にPVDF膜(ATTO, Tokyo, Japan)に移された。抗V5抗体(Invitrogen)と反応後にECL Advance Western Blotting Detection Kit (Amersham, Piscataway, NJ)を用いて検出した。
<外因性3αHDの評価>
 LNCap細胞は24穴の培養皿に50%に播き、Lipofectamine2000を使用して1 μgのpcDNA3S、p3αHD、p3αHD:DDDをそれぞれ導入した。導入率を標準化するために0.1 μgのLacZ遺伝子を同時に導入した。細胞数はWST-1(Takara)を用いて計測し、LacZ遺伝子の発現量はβ-galactosidase enzyme activity assay system (Promega, Madison, WI)を用いて計測した。pcDNA3Sを導入して得られた数値を1として表した。実験は3回行った。
<ECMの評価>
 3αHDによって修飾されたECMは、公知の方法[Hidai C et al., Cell Tissue Res (2007) 330:83.]に従い、Cos細胞を24穴の培養皿に50%に播き、Lipofectamine2000を使用して1 μgのpcDNA3S、p3αHD、p3αHD:DDDをそれぞれ導入することにより作製した。導入率を標準化するために、0.1 μgのLacZ遺伝子を同時に導入した。4日後に培養液を10 mM EDTAをprotease inhibitor cocktail (PIERCE, Rockford, IL)を含むPBSで置換して、4℃で12時間待った。ピペットを使って細胞を回収し、100 μlのtris buffered saline (TBS)に再浮遊させた。超音波により細胞を壊し、セルライセートのβ-galactosidase活性を測定した。残されたECMに1 x 104個のLNCap細胞を播き、7日間培養した後、WST-1で細胞数を評価した。外因性のDHTの効果を見る時には、種々の量のDHT (Wako)を培養液中に添加した。pcDNA3Sを用いた実験結果を1として、他の結果を数値化した。実験は3回行った。
<DHTの測定>
 3αHDにより修飾されたECMは上記のように作製した。日本大学医学部の倫理委員会の承認を得て健康な男性ボランティアーから採血し、血清を分離した。得られた血清にprotease inhibitor cocktail (PIERCE)を加え、ECMと37℃で96時間反応させた。血清中のDHT濃度をDihydrotestosterone ELISA kit (IBL, Hamburg, Germany)を用いて測定した。pcDNA3Sを用いた実験結果を1として、他の結果を数値化した。実験は3回行った。
<統計処理>
 結果は平均±標準誤差で表した。Dunn検定あるいはWilcoxon検定を行い、p<0.01をもって有意(**)とした。
2.結果及び考察
 LNCap細胞の男性ホルモン依存性を確認するため、細胞を無血清培地に様々な濃度のDHTを添加して培養した。これまでに報告されているように、LNCap細胞の増殖はDHTの添加に応じて濃度依存性に亢進した[Horoszewicz JS et al. LNCaP model of human prostatic carcinoma. Cancer Res (1983) 43:1809.;van Bokhoven A et al. Molecular characterization of human prostate carcinoma cell lines. Prostate (2003) 57:205.](図2a)。次に、3αHDの組換えタンパク質の分布を調べた。陰性対照となるプラスミドpcDNA3SはシグナルペプチドのcDNAのみ発現するが、サイズが小さいのでゲル上には現れない(図2b)。p3αHDとp3αHD:DDDは予測された通り43 kDaと65 kDaのタンパク質を発現した(図2b)。p3αHDに由来するタンパク質はECMには分布せず、培養液と細胞内で検出された。p3αHD:DDDに由来するタンパク質はDDDを含むことから予測された通りECMで検出された。ウェスタンブロットの結果では、培養液内に含まれる3αHD:DDDタンパク質量はECMより多かったが、培養液とECMの容量を考慮すると濃度についてはECMの方がはるかに高いと考えられた。DDDの存在によってタンパク質がECMに濃縮されたことが認められた。
 3αHDの組み換えタンパク質がLNCap細胞の増殖に何らかの影響を及ぼすか検討するため、LNCap細胞に遺伝子導入を行った。p3αHDあるいはp3αHD:DDDの遺伝子導入は培養6日後の評価で細胞増殖を抑制していることが判った(図3a)。遺伝子導入率は凡そ同じであることを確認するため、同時にLacZ遺伝子の導入を行い、β-galactosidase活性を測定した。p3αHD:DDDの遺伝子導入はp3αHDより有効な傾向を示した(図3a)。
 細胞増殖抑制効果が遺伝子導入に使用するp3αHDのDNA量依存するかどうか実験を行った(図3b)。使用するDNAの量が増えるに従い、増殖抑制効果は増した。従って、p3αHDの導入による増殖抑制は、遺伝子導入手技によるアーチファクトではなく、p3αHDに特異的な効果であると考えられた。
 DHTが減少するのは3αHDを発現する細胞内であって、ECMでは機能していない可能性がある。そこで、細胞を取り除いた後に残るECMだけを用いて実験した(図4a)。遺伝子導入効率を標準化するため、β-galactosidase活性を利用した。p3αHDを導入された細胞が産生したECM上では、対照群と同様に細胞が増殖した。しかし、p3αHD:DDDが導入された細胞の産生したECM上では、LNCap細胞の増殖は抑制された。
 上記の結果から考えられるメカニズムは、ECM内に含まれる3αHDが培養液中のDHTの濃度を下げることにより、細胞の増殖が抑制されるというものである。このことを確認するため、血清中のDHTの濃度を測定した(図4b)。p3αHD:DDDが遺伝子導入された細胞により産生されたECMと血清を96時間反応させることにより、DHT濃度は減少した。
 p3αHD:DDDの導入がDHTの減少を介して細胞増殖を抑制することを証明するため、外因性のDHTによりp3αHD:DDDの効果が打ち消されるかどうかを確認した(図4c)。外因性のDHTの添加したところ、p3αHD:DDDを使用したにも関わらず、LNCap細胞の増殖は維持された。
 本実施例においては、DDDが目的酵素をその活性を維持したままでECMに固相化することができ、DDDとの融合タンパク質に医学生物学的な効果が期待されることが示された。例えば、細胞療法においては、細胞に何らかの目的タンパク質とDDDとの融合タンパク質のcDNAを予め導入しておくことができる。DDDは種々の細胞のECMに沈着できるので、自由に細胞を選び、酵素の供給源として利用することができる。
 また、DDD融合タンパク質のcDNAを組織特異的なプロモーターの支配下に置くことにより、細胞や組織を選んで遺伝子治療を行うことが可能である。この場合、全体のタンパク質発現量が少なくても、タンパク質がECMに沈着することにより十分な局所濃度を得ることができる。さらには、標的となる組織に沈着する酵素によって活性化される薬剤を開発して、局所での効果を期待することもできる。
 酵素だけでなく、FASリガンドのようなリガンドタンパク質もDDDのパートナーとして利用できる[ElOjeimy S et al. FasL gene therapy: a new therapeutic modality for head and neck cancer. Cancer Gene Ther (2006) 13:739.]。通常、FASリガンドのような細胞障害性のあるタンパク質を強制発現させると、その細胞自身が障害を受けてしまい、タンパク質の発現はそれ以上起こらないが、目的タンパク質が細胞外基質に残存していれば、それにより治療効果が持続することも期待できる。
 配列番号7:組換えDNA
 配列番号8:合成コンストラクト(組換えタンパク質)
 配列番号10:合成DNA
 配列番号11:合成DNA
 配列番号12:合成DNA
 配列番号13:合成DNA

Claims (6)

  1.  内皮細胞遺伝子座-1タンパク質由来の細胞外基質沈着ドメインと、テストステロン分解酵素との融合タンパク質をコードする遺伝子を含む、前立腺癌治療用医薬組成物。
  2.  前記テストステロン分解酵素が、3α-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼである、請求項1記載の組成物。
  3.  前記融合タンパク質をコードする遺伝子が、以下の(a)又は(b)のDNAを含む遺伝子である、請求項1又は2記載の組成物。
     (a) 配列番号7に示される塩基配列からなるDNA
     (b) 配列番号7に示される塩基配列からなるDNAに対し相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAであって、かつ細胞外基質沈着活性及びテストステロン分解活性をを有するタンパク質をコードするDNA。
  4.  請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物を前立腺癌の患者に投与することを含む、前立腺癌の治療方法。
  5.  以下の(a)又は(b)のDNAを含む遺伝子。
     (a) 配列番号7に示される塩基配列からなるDNA
     (b) 配列番号7に示される塩基配列からなるDNAに対し相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAであって、かつ細胞外基質沈着活性及びテストステロン分解活性をを有するタンパク質をコードするDNA。
  6.  以下の(a)又は(b)のタンパク質。
     (a) 配列番号8に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質。
     (b) 配列番号8に示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ細胞外基質沈着活性及びテストステロン分解活性をを有するタンパク質。
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