WO2010001459A1 - 気体圧制御式鋳造用鋳型 - Google Patents
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Abstract
Description
この気体加圧式ホットトップ鋳造用鋳型は、例えば図10および図11に示すように、耐火断熱材からなるホットトップ20から出るアルミニウム溶湯Mをそのまま鋳型(金型)本体10に形成した通過部30に通し、同時にその鋳型本体10から吹き出される冷却水Wによってその溶湯Mを強制冷却して連続的に凝固させて棒状のビレットBを鋳造するものである。
しかしながら、従来の鋳型は、その冷媒通路60と前記潤滑油吹出孔40や気体通過孔50との間に、潤滑油および気体を供給するための深い環状の溝70が鋳型の溶湯通過部30に沿って環状に形成されている。そのため、これが断熱層の作用をして潤滑油吹出孔40や気体通過孔50部分が充分に冷却されない。
また、この鋳型本体10内の冷媒通路60は、図示するように断面矩形状に形成されているため、この冷媒通路60を流れる冷媒Wの一部がその角部に滞留して凝固のための熱交換を必要とする溶湯通過部30上部を効果的に冷却できない。
また、図11に示すように潤滑油吹出孔40または気体通過孔50から溶湯通過部30に供給された潤滑油と気体は、前記メニスカス部空間Sに達した後、溶湯Mの通過と共にその溶湯通過部30の壁面に沿って溶湯通過部30の下方に抜けることになる。
そして、このようなバブリングが発生すると酸化物の介在物や皮膜が生成し、これがビレットBの表層部に巻き込まれ、ビレット表面欠陥や内部欠陥になる。
また、このようなバブリングが発生すると、瞬間的にメニスカス部空間Sが消失して潤滑油吹出孔40や気体通過孔50まで溶湯Mが差し込んで凝固、固着して孔を塞いでしまうことがある。すると、その後メニスカス部空間Sが形成されないため、大きな鋳肌欠陥を発生させてビレット不良となることがあった。
そこで、本発明はこのような課題を有効に解決するために案出されたものである。その主たる目的は、連続的に鋳造する鋳型全体(特に鋳型上部)を温度や鋳造速度の条件の違いがあっても確実に冷却できる新規な気体圧制御式鋳造用鋳型を提供するものである。
前記課題を解決するために第1の発明は、
アルミニウムまたはアルミニウム合金の溶湯を導入するホットトップと、当該ホットトップから導入されたアルミニウムまたはアルミニウム合金の溶湯を溶湯通過部に通過させながら冷却凝固してアルミニウムまたはアルミニウム合金のビレットを半連続鋳造もしくは連続鋳造する鋳型本体とを有し、
当該鋳型本体の溶湯通過部の壁面に、潤滑油を吹き出す潤滑油吹出孔を複数備えると共に、当該鋳型本体内の少なくとも熱影響部の範囲で、前記各潤滑油吹出孔に連通する潤滑油供給路をそれぞれ独立して形成したことを特徴とする気体圧制御式鋳造用鋳型である。
また、第2の発明は、
アルミニウムまたはアルミニウム合金の溶湯を導入するホットトップと、当該ホットトップから導入されたアルミニウムまたはアルミニウム合金の溶湯を溶湯通過部に通過させながら冷却凝固してアルミニウムまたはアルミニウム合金のビレットを半連続鋳造もしくは連続鋳造する鋳型本体とを有し、
当該鋳型本体の溶湯通過部の壁面に、気体を通過させる気体通過孔を複数備えると共に、当該鋳型本体内の少なくとも熱影響部の範囲で、前記各気体通過孔に連通する気体通過路をそれぞれ独立して形成したことを特徴とする気体圧制御式鋳造用鋳型である。
また、第3の発明は、
アルミニウムまたはアルミニウム合金の溶湯を導入するホットトップと、当該ホットトップから導入されたアルミニウムまたはアルミニウム合金の溶湯を溶湯通過部に通過させながら冷却凝固してアルミニウムまたはアルミニウム合金のビレットを半連続鋳造もしくは連続鋳造する鋳型本体とを有し、
当該鋳型本体の溶湯通過部の壁面に、潤滑油を吹き出す潤滑油吹出孔と、気体を通過させる気体通過孔とをそれぞれ複数備えると共に、前記鋳型本体内の少なくとも熱影響部の範囲で、前記各潤滑油吹出孔と気体通過孔とにそれぞれ連通する潤滑油供給路と気体通過路とをそれぞれ独立して形成したことを特徴とする気体圧制御式鋳造用鋳型である。
これによって、気体通過孔から吹き出される気体の加圧条件が安定してメニスカス空間の変動を小さく抑えることができる。さらに、潤滑油の温度上昇も抑制できるため、潤滑油の揮発量も少なくなり、潤滑油本来の潤滑能力を発揮することができる。
ここで、本発明でいう「鋳型本体内の熱影響部」とは、後の実施の形態で例示するように、鋳型本体のなかで溶湯通過部を通過するアルミニウム溶湯の熱の影響を直接受ける部分をいい、鋳型本体のうち少なくともアルミニウム溶湯が接する溶湯通過部の壁面から当該壁面に近接する冷媒通路に至る領域を含む部分をいう。
また、第4の発明は、
第1~第3の発明において、前記鋳型本体の上面に、前記溶湯通過部とほぼ同心円状となるリングプレートを着脱自在に設けると共に、当該リングプレートに、前記潤滑油吹出孔、または前記気体通過孔、あるいは前記鋳型本体上端と前記ホットトップと溶湯メニスカス部との間に形成されるメニスカス部空間の圧力を測定する圧力測定用連通孔のいずれか1つ以上の孔を形成したことを特徴とする気体圧制御式鋳造用鋳型である。
また、鋳型本体の研磨、打痕などによってホットトップと接する角部が損傷を受けたり、あるいはバブリングなどによって潤滑油吹出孔または気体通過孔のいずれかが変形し、鋳肌欠陥ができやすくなった場合には、そのリングプレートのみを新たなものに交換したり清掃したりすることで容易にその不都合を解消することができる。
また、第5の発明は、
第4の発明において、前記鋳型本体とリングプレートのいずれか一方または両方を銅または銅合金から形成したことを特徴とする気体圧制御式鋳造用鋳型である。
第5の発明によれば、鋳型本体とリングプレートのいずれかー方または両方を熱伝導性に優れた金属である銅または銅合金から形成したことから、冷媒通路を流れる冷媒によって鋳型本体およびリングプレートを効果的に冷却することができる。
また、第6の発明は、
第1~第5の発明において、前記鋳型本体内に冷媒通路を形成し、当該冷媒通路を流れる冷媒を前記鋳型本体の溶湯通過部で連続的に形成されるアルミニウムまたはアルミニウム合金の凝固シェルに向けて吹き出すための吹出孔または吹出スリットを前記溶湯通過部の下端に形成すると共に、当該冷媒の吹出孔または吹出スリットと前記鋳型本体内の冷媒通路間を、前記溶湯通過部の近傍で、かつ、その溶湯通過部の上端側から下方に向かって延びる連通路で接続したことを特徴とする気体圧制御式鋳造用鋳型である。
また、第7の発明は、
アルミニウムまたはアルミニウム合金の溶湯を導入するホットトップと、当該ホットトップから導入されたアルミニウムまたはアルミニウム合金の溶湯を溶湯通過部に通過させながら冷却凝固してアルミニウムまたはアルミニウム合金のビレットを半連続鋳造もしくは連続鋳造する鋳型本体とを有し、当該鋳型本体内に冷媒通路を形成し、当該冷媒通路を流れる冷媒を前記鋳型本体の溶湯通過部で連続的に形成されるアルミニウムまたはアルミニウム合金の凝固シェルに向けて吹き出すための吹出孔または吹出スリットを前記溶湯通過部の下端に形成すると共に、当該冷媒の吹出孔または吹出スリットと前記鋳型本体内の冷媒通路間を、前記溶湯通過部の近傍で、かつ、その溶湯通過部の上端側から下方に向かって延びる連通路で接続したことを特徴とする気体圧制御式鋳造用鋳型である。
また、第8の発明は、
第1~第5の発明において、前記鋳型本体内に冷媒通路を形成し、当該冷媒通路を流れる冷媒を前記鋳型本体の溶湯通過部で連続的に形成されるアルミニウムまたはアルミニウム合金の凝固シェルに向けて吹き出すための吹出孔または吹出スリットを前記溶湯通過部の下端に形成すると共に、当該冷媒の吹出孔または吹出スリットと前記鋳型本体内の冷媒通路間を、前記溶湯通過部の近傍で、かつ、その溶湯通過部の上端側から下方に向かって延びる垂直連通路と、前記気体通過路または潤滑油供給路の直下に略水平方向内部に向けて延びる水平連通路とで接続したことを特徴とする気体圧制御式鋳造用鋳型である。
また、第9の発明は、
アルミニウムまたはアルミニウム合金の溶湯を導入するホットトップと、当該ホットトップから導入されたアルミニウムまたはアルミニウム合金の溶湯を溶湯通過部に通過させながら冷却凝固してアルミニウムまたはアルミニウム合金のビレットを半連続鋳造もしくは連続鋳造する鋳型本体とを有し、当該鋳型本体内に冷媒通路を形成し、当該冷媒通路を流れる冷媒を前記鋳型本体の溶湯通過部で連続的に形成されるアルミニウムまたはアルミニウム合金の凝固シェルに向けて吹き出すための吹出孔または吹出スリットを前記溶湯通過部の下端に形成すると共に、当該冷媒の吹出孔または吹出スリットと前記鋳型本体内の冷媒通路間を、前記溶湯通過部の近傍で、かつ、その溶湯通過部の上端側から下方に向かって延びる垂直連通路と、前記気体通過路または潤滑油供給路の直下に略水平方向内部に向けて延びる水平連通路とで接続したことを特徴とする気体圧制御式鋳造用鋳型である。
また、第10の発明は、
第1~第9の発明において、前記鋳型本体に圧力測定用の連通孔を形成し、当該連通孔に、前記鋳型本体上端と前記ホットトップと溶湯メニスカス部との間に形成されるメニスカス部空間の圧力を測定する圧力測定手段を備えると共に、前記気体通過路または前記潤滑油供給路に、前記圧力測定手段の測定値に基づいて前記メニスカス部空間の圧力を制御する圧力制御手段を備えたことを特徴とする気体圧制御式鋳造用鋳型である。
また、第11の発明は、
第10の発明において、前記圧力制御手段は、前記潤滑油供給路から供給する潤滑油供給量を調整して前記メニスカス部空間の圧力を制御することを特徴とする気体圧制御式鋳造用鋳型である。
第11の発明によれば、鋳造速度を速くしたり、気体が溶湯通過部の壁面に沿って下方に抜けずにメニスカス部空間の維持が難しい合金の鋳造においてもメニスカス部空間を安定して維持できるため、品質の低下や鋳造欠陥をなどを抑制できる。
また、第12の発明は、
第10の発明において、前記圧力制御手段は、前記気体通過路内の気体圧を増圧または減圧して前記メニスカス部空間の圧力を制御することを特徴とする気体圧制御式鋳造用鋳型である。
第12の発明によれば、気体が溶湯通過部の液面に沿って下方に抜けずにメニスカス部空間の維持が難しい合金の鋳造においてもメニスカス部空間を安定して維持できるため、品質の低下や鋳造欠陥などを抑制できる。
また、第13の発明は、
第4~第12の発明において、前記気体通過路内、または前記鋳型本体に形成された圧力測定用の連通孔に、前記メニスカス部空間から逆流する潤滑油を捕捉するトラップ機構を備えたことを特徴とする気体圧制御式鋳造用鋳型である。
第13の発明によれば、メニスカス部空間の気体圧力が高くなって気体通過孔または圧力測定用連通孔を通じて気体が戻るときに、その気体に混じって潤滑油が気体通過路内、または気体圧力測定孔に入った場合には、これをトラップ機能によって捕捉することができる。これによって、気体通過孔または圧力測定用連通孔が潤滑油によって詰まってしまうことを回避できるため、正確な気体加圧条件での圧力制御と圧力の測定が可能となり、安定した鋳造ができる。
図1~図4は本発明に係る気体圧制御式鋳造用鋳型100の第1の実施形態を示したものである。
(構成)
図示するようにこの気体圧制御式鋳造用鋳型100は、アルミニウムまたはアルミニウム合金、あるいは銅または銅合金などの熱伝導性に優れた金属材料からなる鋳型本体10の上方に、耐火断熱材からなるホットトップ20を備えた構成となっている。また、その鋳型本体10の中央部分にはこれを上下に貫通するように断面円形の溶湯通過部30を形成した構造となっている。
また、この鋳型本体10内には、その中央の溶湯通過部30を囲むように環状の冷媒通路60が内蔵されている。そして、この冷媒通路60内に図示しない冷媒供給ポンプから供給される冷媒(冷却水)Wを通過させることで、鋳型本体10全体をその内部から冷却するようになっている。
この冷媒吹出孔61は、その鋳型本体10内に形成された連通路62を介して冷媒通路60と連通している。そして、この冷媒通路60内を流れる冷媒(冷却水)Wをこの冷媒吹出孔61から吹き出し、吹き出した冷媒Wを、鋳型本体10で冷却されて生成した凝固シェルの表面および溶湯Mで形成されるビレットBの表面に吹き付けるようになっている。これによってそのビレットBを強制的に冷却し、凝固シェル内側の残りの溶湯Mが凝固するようになっている。
これら各潤滑油吹出孔40,40,40,40には、潤滑油供給路41,41,41,41がそれぞれ鋳型本体10内をその外側から貫通するように独立して接続されている。そして、各潤滑油吹出孔40,40,40,40に対して各潤滑油供給路41,41,41,41からそれぞれ潤滑油が独立して供給されるようになっている。
なお、これら各潤滑油吹出孔40,40,40,40および各気体通過孔50,50.50,50ならびに各潤滑油供給路41、41、41,41および各気体通過路51,51,51,51は,それぞれ所定径のドリルによって鋳型本体10の内外からそれぞれ穿孔して形成され、外周部で相互に連通されるようになっている。
この圧力制御手段90は、圧力制御弁(逃がし弁)91と、圧カセンサー92(圧力測定手段)と、比較演算機93と、ヘッド圧算出部(図示せず)から構成されている。
ここで、圧力制御弁(逃がし弁)91は、気体を通過させる気体通過ラインLを介して気体通過路51内の気体圧力Pgasを制御する。また、圧カセンサー92(圧力測定手段)は、この気体通過路51と同様にメニスカス部空間Sに連通する圧力測定用連通孔52を介して前記メニスカス部空間Sの気体圧を検出するようになっている。
なお、これらは各単独で使用することも可能である。その場合、Pgasが計算されるメニスカス部空間S上部の概略溶湯圧に等しくなるように圧力制御弁(逃がし弁)91を制御する。溶湯Mのヘッド圧PAlが正確にわからない場合は、圧力を上げてバブリングさせることにより、そのヘッド圧PAlを検出し、その検出した圧力PAlにより、例えばそのバブリング圧より10~30hPa小さな値に制御する。
また、コメットテール、引きつりなどで鋳肌が荒れ始めたときも気体圧力を下げて溶湯メニスカス部mの位置を溶湯通過部30上部に上げ、肌荒れの原因物質を鋳肌に付着させて取り除くように圧力制御する。連続的に鋳造する場合は、定期的にこの操作を行って安定した鋳肌を維持することができる。
次に、このような構成をした本発明の気体圧制御式鋳造用鋳型100の作用および効果を説明する。
先ず、図1~図3に示すように鋳型本体10上部のホットトップ20内のアルミニウムまたはアルミニウム合金の溶湯Mを鋳型本体10の溶湯通過部30内に流し込むと同時に各潤滑油吹出孔40、40、40、40および各気体通過孔50、50、50、50から潤滑油と気体を吹き出す。
すると、潤滑油は、鋳型本体10の内壁面に流れ出し、溶湯メニスカス部m下部にて溶湯Mの表面に接触して一部のガス化によって凝固シェルCの生成を促すと共に、その凝固シェルCと溶湯通過部30の壁面との摩擦を低減する。
さらに、潤滑油の温度上昇も抑制できるため、潤滑油の揮発量も少なくなり、潤滑油本来の潤滑能力を発揮することができる。
また、溶湯通過部30の下端に設けられた冷媒吹出孔61と冷媒通路60間を溶湯通過部30の近傍でかつその溶湯通過部30の上端側から下方に向かって延びる連通路62で接続した。このため、図3の矢印に示すように冷媒通路60内の冷媒Wが滞留することなくスムーズに冷媒吹出孔61側に流れてビレットBに吹き付けられることになる。
従って、本発明の気体圧制御式鋳造用鋳型100を用いれば、従来鋳型では困難であった異径鋳造棒のような難形状の鋳造や5インチ以下の小径棒での高速鋳造のようにビレットB表面に欠陥の出やすい鋳造であっても容易かつ確実に実施することができる。
これによって、溶湯通過部30の上端に形成されるメニスカス部空間Sの大きさを常にー定にコントロールできるため、気体圧Pgasがヘッド圧PAlよりも上回ることによって発生するバブリング現象(PAl≒Pgas)などの鋳造不良の原因となる現象をより確実に防止することができる。
また、さらに図4に示すようにこの鋳型本体10に形成された気体通過路51には、この気体通過路51内に流れ込んできた潤滑油を捕捉するためのトラップ機構56を付設することが望ましい。
これを防ぐため、図4に示すように気体通過路51には、この気体通過路51内に流れ込んできた潤滑油を捕捉するためのトラップ機構56を設けることが望ましい。
このようなトラップ機構56を備えれば、気体通過路51内に流れ込んできた潤滑油をトラップ54内に回収するようにして捕捉・除去できるため、その気体通過路51の閉塞を確実に防止することができる。
また、このような潤滑油の逆流現象は、気体通過路51のみならず圧力測定用の連通孔52でも起こり得る。従って、この圧力測定用の連通孔52にも同様にトラップ機構56を備えれば、圧力測定用の連通孔52内に流れ込んできた潤滑油を確実に回収してその連通孔52の閉塞を防止することができる。これによって、正確な気体加圧条件での圧力測定が可能となる。
次に、図5~図8は、本発明に係る気体圧制御式鋳造用鋳型100の第2の実施形態を示したものである。
図示するように本実施の形態では、鋳型本体10上面にその溶湯通過部30とほぼ同心円状となるリングプレート80を着脱可能に設ける。そして、このリングプレート80に前述した潤滑油吹出孔40および気体通過孔50を形成し、このリングプレート80に形成された潤滑油吹出孔40および気体通過孔50に対してそれぞれ潤滑油供給路41と気体通過路51を独立して接続したものである。
また、鋳型本体10の研磨、打痕などによってホットトップ20と接する角部が損傷を受けた、あるいはバブリングなどによって潤滑油吹出孔および気体孔のいずれかが変形し、肌欠陥ができやすくなった場合や、溶湯Mの差し込みなどによってこれら潤滑油吹出孔40および気体通過孔50のいずれかが詰まったり狭くなったりした場合には、そのリングプレート80のみを新たなものに交換したり清掃したりすることで容易にその不都合を解消することができる。
そして、このリングプレート80を熱伝導性に優れた銅または銅合金から形成すれば、鋳型本体10と同様に冷媒通路60を流れる冷媒によって効果的に冷却することができる。
なお、図5~図8では、リングプレート80に潤滑油供給路41および気体通過路51のみを形成したが、さらにこのリングプレート80に前述した圧力測定手段92を取り付けるための圧力測定用連通孔52もまとめて形成しても良い。
次に、図9は、本発明に係る気体圧制御式鋳造用鋳型100の第3の実施形態を示したものである。
図示するように、本実施の形態は鋳型本体10の内壁付近の熱影響部を避けた部分に環状溝82を形成し、この環状溝82を介してそれぞれの潤滑油や気体を通過させるようにしたものである。
すなわち、前述したように従来の鋳型は、鋳型本体10内の冷媒通路60付近から溶湯通過部30の壁面に亘る領域である熱影響部に、潤滑油および気体を供給するための深い環状の溝70が設けられていた。このため、この溝70が断熱層の作用をして潤滑油吹出孔40や気体通過孔50部分が充分に冷却されないものであった。
特に、鋳型本体10の形状や設置位置などによって潤滑油供給路41や気体通過路51の形成場所に制約がある場合には、このような構造は有利である。
なお、図の例では、潤滑油または空気のいずれか一方の流体用の環状溝82を示したものであるが、その外周側すなわち熱影響部を避けた位置に他方の流体用の環状溝をさらにもう1つ設けるような構造にしても良いことは勿論である。
(実施例1)
図1に示したように潤滑油吹出孔40はそのままで気体通過孔50をなくした鋳型100を用いて、A390アルミニウム合金の溶湯温度800℃、溶湯の高さ10cm、鋳造速度400mm/minの条件でひまし油の潤滑油を用いて鋳造を開始して200mmまでは0.18cc/minの条件とし、その後0.36cc/minの条件でビレットを鋳造した。なお、この鋳型100は、その溶湯通過部30の上部内径が100mmφ、下部内径101mmφであって、その溶湯通過部30の壁面上端に0.3mmφサイズの潤滑油吹出孔40を4つ等間隔に設けたものである。
この状態は、溶湯メニスカスmが安定して、その曲率が大きくなっていることを示し、溶湯メニスカスmの気体圧が適切な状態にある状態が得られた。
鋳造後、ビレットBの表面を観察すると3~5mm幅の縞模様を持った平滑肌のビレットBが得られていた。また、ビレットBについて、表面から5mmを面削して内部欠陥を実体顕微鏡で観察したところ、リップルと介在物と酸化皮膜とブローホールは検出されず良好な内部品質が得られた。
図1に示したような構成をした鋳型100を用い、6061アルミニウム合金の溶湯温度700℃、溶湯の高さ22cm、気体の圧力制御を大気圧+50hPa、ひまし油の潤滑油を0.18cc/minの条件で鋳造速度350mm/min、600mm/min、900mm/minの条件でビレットを鋳造した。なお、この鋳型100は、その溶湯通過部30の上部内径が80mmφ、下部内径81mmφであって、その溶湯通過部30の壁面上端にそれぞれ0.3mmφ,0.2mmφサイズの潤滑油吹出孔と気体通過孔50を4つずつそれぞれ等間隔に設けたものである。
また、これら3つの条件のビレットBについて、表面から2mmを面削して内部欠陥を実体顕微鏡で観察したところ、リップルと介在物と酸化皮膜とブローホールの欠陥はいずれのビレットBからも検出されなかった。
潤滑油孔と気体通過孔の大きさが0.4mm×0.2mmの矩形の図5および図6に示したようにリングプレート80を備えた構成の鋳型100を用いた他は、実施例2と同様な3つの条件で6061アルミニウム合金のビレットBを鋳造した。
その後、各ビレットBの表面状態を目視によって検査したところ、実施例2と同様に、350mm/minでは2~3mmの大きな幅のリップルが観察されたが、600mm/min速度が上がるとリップルが小さく平滑となり、リップル幅も1~2mmと狭くなった。
さらに900mm/min鋳造速度を上げても平滑な肌を維持したが、リップルもわからない良肌のビレットが得られた。また、これら3つの条件のビレットBについて、表面から2mmを面削して内部欠陥を実体顕微鏡で観察したところ、リップルと介在物と酸化皮膜とブローホールの欠陥はいずれのビレットBからも検出されなかった。
潤滑油孔と気体通過孔の大きさが0.4mmx0.2mmの矩形の図5および図6に示したようにリングプレート80を備えた構成の鋳型100を用いた。気体の圧力制御を大気圧+50hPa、ひまし油の潤滑油を0.18cc/minの条件で600mm/minとして、6061アルミニウム合金のビレットBを鋳造し、ビレットの表面状態を目視によって検査し続けた。
鋳造開始後良好な肌を呈していたが、その後、コメットテールと呼ばれる表面欠陥が発生した。このコメットテールの原因物質を取るために、気体の圧力制御を大気圧+10hPaまで低下させメニスカスを上げた後、また圧力を大気圧+50hPaの元の圧力に戻した。この操作により、コメットテールは解消された。鋳型に付いていたコメットテールの原因物質はコメットテールの最後のところに付着していた。以後、定期的にこの操作をすることにより、コメットテールの発生はなくなった。
図10に示したように潤滑油吹出孔はそのままで気体通過孔をなくした構造の鋳型を用い、A390アルミニウム合金の溶湯温度800℃、溶湯の高さ10cm、ひまし油の潤滑油を0.18cc/minの条件で鋳造速度400mm/minの条件でビレットBを鋳造した。なお、この鋳型100は、その溶湯通過部30の上部内径が100mmφ、下部内径101mmφであって、その溶湯通過部30の壁面上端に0.3mmφサイズの潤滑油吹出孔を4つ等間隔に設けたものである。
鋳造はスタート後、浅いリップルが続いたが、潤滑油によるバブリングは何も生じなかったが、その後、ビレットBの表面状態を目視によって観察したところ、時折、鋳型に吊り下がった肌が生じた。さらに、鋳造を続けると吊り下がった部分が引き裂かれた様な引き割れを生じた。さらに鋳造を続けると、ひき割れ部からメタル漏れを生じて鋳造をストップした。
図10に示したような構造の鋳型を用い、6061アルミニウム合金の溶湯温度700℃、溶湯の高さ22cm、気体の圧力制御を大気圧+50hPa、ひまし油の潤滑油を0.18cc/minの条件で鋳造速度350mm/min、600mm/min、900mm/minに変化させて3つのビレットBを鋳造した。
鋳造している間、ビレットBの表面状態を目視によって検査したところ、鋳造速度350mm/minでは小さなリップル肌が見られただけであったが、600mm/minで鋳造したビレットBでは速度に達した後、引きつり肌が続いた後、引き割れを生じて溶湯が漏れて鋳造を中止せざるを得なかった。鋳造速度900mm/minも同じようにではさらに速く引きつり肌から引き割れを生じて溶湯が漏れて鋳造を中止せざるを得なかった。
図10に示したような構造の鋳型を用い、6061アルミニウム合金の溶湯温度700℃、溶湯の高さ22cm、気体の圧力制御を大気圧+50hPa、ひまし油の潤滑油を1.2cc/minの条件で鋳造速度350mm/min、600mm/min、900mm/minに変化させて3つのビレットBを鋳造した。
鋳造速度350 mm/minでは大きな深いリップルとなった。600mm/minで鋳造したビレットBは小さなリップルとなった。鋳造速度900mm/minではバブリングが多発し、バブリングから引き割れを生じて溶湯が漏れて鋳造を中止せざるを得なかった。
Claims (13)
- アルミニウムまたはアルミニウム合金の溶湯Mを導入するホットトップ20と、
当該ホットトップ20から導入されたアルミニウムまたはアルミニウム合金の溶湯Mを溶湯通過部30に通過させながら冷却凝固してアルミニウムまたはアルミニウム合金のビレットBを半連続鋳造もしくは連続鋳造する鋳型本体10とを有し、
当該鋳型本体10の溶湯通過部30の壁面に、潤滑油を吹き出す潤滑油吹出孔40を複数備えると共に、当該鋳型本体10内の少なくとも熱影響部の範囲で、前記各潤滑油吹出孔40に連通する潤滑油供給路41をそれぞれ独立して形成したことを特徴とする気体圧制御式鋳造用鋳型100。 - アルミニウムまたはアルミニウム合金の溶湯Mを導入するホットトップ20と、
当該ホットトップ20から導入されたアルミニウムまたはアルミニウム合金の溶湯Mを溶湯通過部30に通過させながら冷却凝固してアルミニウムまたはアルミニウム合金のビレットBを半連続鋳造もしくは連続鋳造する鋳型本体10とを有し、
当該鋳型本体10の溶湯通過部30の壁面に、気体を通過させる気体通過孔50を複数備えると共に、当該鋳型本体10内の少なくとも熱影響部の範囲で、前記各気体通過孔50に連通する気体通過路51をそれぞれ独立して形成したことを特徴とする気体圧制御式鋳造用鋳型100。 - アルミニウムまたはアルミニウム合金の溶湯Mを導入するホットトップ20と、
当該ホットトップ20から導入されたアルミニウムまたはアルミニウム合金の溶湯Mを溶湯通過部30に通過させながら冷却凝固してアルミニウムまたはアルミニウム合金のビレットBを半連続鋳造もしくは連続鋳造する鋳型本体10とを有し、
当該鋳型本体10の溶湯通過部30の壁面に、潤滑油を吹き出す潤滑油吹出孔40と、気体を通過させる気体通過孔50とをそれぞれ複数備えると共に、
前記鋳型本体10内の少なくとも熱影響部の範囲で、前記各潤滑油吹出孔40と気体通過孔50とにそれぞれ連通する潤滑油供給路41と気体通過路51とをそれぞれ独立して形成したことを特徴とする気体圧制御式鋳造用鋳型100。 - 請求項1~3のいずれか1項に記載の気体圧制御式鋳造用鋳型100において、
前記鋳型本体10の上面に、前記溶湯通過部30とほぼ同心円状となるリングプレート80を着脱自在に設けると共に、当該リングプレート80に、前記潤滑油吹出孔40、または前記気体通過孔50、あるいは前記鋳型本体10上端と前記ホットトップ20と溶湯メニスカス部mとの間に形成されるメニスカス部空間Sの圧力を測定する圧力測定用連通孔52のいずれか1つ以上の孔を形成したことを特徴とする気体圧制御式鋳造用鋳型100。 - 請求項4に記載の気体圧制御式鋳造用鋳型100において、
前記鋳型本体10とリングプレート80のいずれか一方または両方を銅または銅合金から形成したことを特徴とする気体圧制御式鋳造用鋳型100。 - 請求項1~5のいずれか1項に記載の気体圧制御式鋳造用鋳型100において、
前記鋳型本体10内に冷媒通路60を形成し、
当該冷媒通路60を流れる冷媒Wを前記鋳型本体10の溶湯通過部30で連続的に形成されるアルミニウムまたはアルミニウム合金の凝固シェルCに向けて吹き出すための吹出孔61または吹出スリットを前記溶湯通過部30の下端に形成すると共に、当該冷媒Wの吹出孔61または吹出スリットと前記鋳型本体10内の冷媒通路60間を、前記溶湯通過部30の近傍で、かつ、その溶湯通過部30の上端側から下方に向かって延びる連通路62で接続したことを特徴とする気体圧制御式鋳造用鋳型100。 - アルミニウムまたはアルミニウム合金の溶湯Mを導入するホットトップ20と、
当該ホットトップ20から導入されたアルミニウムまたはアルミニウム合金の溶湯Mを溶湯通過部30に通過させながら冷却凝固してアルミニウムまたはアルミニウム合金のビレットBを半連続鋳造もしくは連続鋳造する鋳型本体10とを有し、
前記鋳型本体10内に冷媒通路60を形成し、
当該冷媒通路60を流れる冷媒Wを前記鋳型本体10の溶湯通過部30で連続的に形成されるアルミニウムまたはアルミニウム合金の凝固シェルCに向けて吹き出すための吹出孔61または吹出スリットを前記溶湯通過部30の下端に形成すると共に、当該冷媒Wの吹出孔61または吹出スリットと前記鋳型本体10内の冷媒通路60間を、前記溶湯通過部30の近傍で、かつ、その溶湯通過部30の上端側から下方に向かって延びる連通路62で接続したことを特徴とする気体圧制御式鋳造用鋳型100。 - 請求項1~5のいずれか1項に記載の気体圧制御式鋳造用鋳型100において、
前記鋳型本体10内に冷媒通路60を形成し、
当該冷媒通路60を流れる冷媒Wを前記鋳型本体10の溶湯通過部30で連続的に形成されるアルミニウムまたはアルミニウム合金の凝固シェルCに向けて吹き出すための吹出孔61または吹出スリットを前記溶湯通過部30の下端に形成すると共に、当該冷媒Wの吹出孔61または吹出スリットと前記鋳型本体10内の冷媒通路60間を、前記溶湯通過部30の近傍で、かつ、その溶湯通過部30の上端側から下方に向かって延びる垂直連通路62bと、前記気体通過路または潤滑油供給路の直下に略水平方向内部に向けて延びる水平連通路62aとで接続したことを特徴とする気体圧制御式鋳造用鋳型100。 - アルミニウムまたはアルミニウム合金の溶湯Mを導入するホットトップ20と、
当該ホットトップ20から導入されたアルミニウムまたはアルミニウム合金の溶湯Mを溶湯通過部30に通過させながら冷却凝固してアルミニウムまたはアルミニウム合金のビレットBを半連続鋳造もしくは連続鋳造する鋳型本体10とを有し、
前記鋳型本体10内に冷媒通路60を形成し、
当該冷媒通路60を流れる冷媒Wを前記鋳型本体10の溶湯通過部30で連続的に形成されるアルミニウムまたはアルミニウム合金の凝固シェルCに向けて吹き出すための吹出孔61または吹出スリットを前記溶湯通過部30の下端に形成すると共に、当該冷媒Wの吹出孔61または吹出スリットと前記鋳型本体10内の冷媒通路60間を、前記溶湯通過部30の近傍で、かつ、その溶湯通過部30の上端側から下方に向かって延びる垂直連通路62bと、前記気体通過路または潤滑油供給路の直下に略水平方向内部に向けて延びる水平連通路62aとで接続したことを特徴とする気体圧制御式鋳造用鋳型100。 - 請求項1~9のいずれか1項に記載の気体圧制御式鋳造用鋳型100において、
前記鋳型本体10に圧力測定用の連通孔52を形成し、当該連通孔52に、前記鋳型本体10上端と前記ホットトップ20と溶湯メニスカス部mとの間に形成されるメニスカス部空間Sの圧力を測定する圧力測定手段92を備えると共に、前記気体通過路51または前記潤滑油供給路41に、前記圧力測定手段92の測定値に基づいて前記メニスカス部空間mの圧力を制御する圧力制御手段90を備えたことを特徴とする気体圧制御式鋳造用鋳型100。 - 請求項10に記載の気体加圧式鋳造用鋳型100において、
前記圧力制御手段90は、前記潤滑油供給路41から供給する潤滑油供給量を調整して前記メニスカス部空間mの圧力を制御することを特徴とする気体圧制御式鋳造用鋳型100。 - 請求項10に記載の気体圧制御式鋳造用鋳型100において、
前記圧力制御手段90は、前記気体通過路51内の気体圧を増圧または減圧して前記メニスカス部空間mの圧力を制御することを特徴とする気体圧制御式鋳造用鋳型100。 - 請求項4~12のいずれか1項に記載の気体圧制御式鋳造用鋳型100において、
前記気体通過路51内、または前記鋳型本体10に形成された圧力測定用の連通孔52に、前記メニスカス部空間mから逆流する潤滑油を捕捉するトラップ機構56を備えたことを特徴とする気体圧制御式鋳造用鋳型100。
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