明 細 書
時間依存シュレディンガー方程式の数値シミュレーション装置
技術分野
[0001] 本発明は、ナノスケールによる特性を考慮した電子デバイスや量子コンピュータの 開発を行うにあたり必要となる数値シミュレーション装置に関し、特に、計算量を軽減 して高速'高精度で数値シミュレーションを実行することができる数値シミュレーション 装置に関する。
背景技術
[0002] 近年、ナノスケールの電子デバイスや量子コンピュータなどが活発に研究されてい る。そして、電子デバイスのスケールが電子の平均自由行程である約 10nm程度、ま たは、それよりも小さな構造体になると、電気伝導度などの電気的 ·磁気的特性に、 量子的効果が顕著に現れる。これに伴い、通常のマクロスケールの電気的'磁気的 特性に基づいた方法によって、これらを設計 ·開発することが困難になる。このため、 これらを設計 ·開発するにあたって、電子の散乱、透過、反射、干渉、振動、減衰、励 起などの動的挙動を高速かつ正確に数値シミュレーションすることが可能な数値シミ ユレーシヨン装置が必要とされて!/、る。
[0003] 例えば、ナノスケールの電子デバイスの微細化や高集積化に伴い、伝導電子のパ スが原子サイズになる(例えば、図 1 (a)参照。)。これに伴い、バリスティック伝導など のように、ナノ領域特有の電子輸送特性が現れる。このため、酸化シリコンのリーク電 流の評価、量子ワイヤー(例えば、図 1 (b)参照。)の伝導特性において、時間依存シ ユレディンガー方程式を利用して伝導特性を数値シミュレーションする必要がある。
[0004] 一般的に、伝導特性を数値シミュレーションするにあたり、散乱問題について定常 状態のシュレディンガー方程式を使用する。これに伴い、散乱問題についての定常 状態のシュレディンガー方程式を数値シミュレーションする方法が色々と提案されて いる。その一つとして、実空間差分法を利用した OBM (Overbridging Boundary-Mat ching)法がある(例えば、非特許文献 1参照。)。
[0005] また、一方では、時間に依存するシユレディンガー方程式を直接解くことで、電子の
動的な振る舞いを明らかにする方法もある。この場合において、下記の式(1)で示さ れる時間依存シュレディンガー方程式を使用する。
[0007] ここで、 Ηは Hamiltonianであり、下記の式(2)で示される。△は、 Laplacianであり、下 記の式(3)で示される。 V(r, t)は、電子の受けるポテンシャルである。また、単位系と して原子単位系を使用している。電子の質量 m=l、電気素量 e=l、h/2 =lとしている 。 hは Plank定数である。
(3) △ ニ + +
ox" dy2 dz2
[0010] さらに、上記の式(1)の解を、プロパゲーター K (Feynman Kernel)を使用して経路 積分で表すと、下記の式 (4)で示される。ここで、 Ψ(Γ, t )は、初期時刻 tにおける波
0 0 動関数である。
[0011] [数 4コ
K{r, t- r', tQ)^{r', tQ)d3r'
- o
[0012] 上記の式 (4)は、経路積分を使用して表せることが知られている。例えば、微小時 間 A t後の波動関数は、下記の式(5)で示される(例えば、非特許文献 2参照。)。
[0013] [数 5コ
非特許文献 1 : K.Hirose, T.Ono et.al., First-Principles Calculations in Real-Space F ormalism, Imperial College Press, London (2005)
非特許文献 2 : R. P.ファインマン/ A. R.ヒッブス著/北原和夫訳、「ファインマン経 路積分と量子力学」マグロウヒル出版、 1990年 7月発行
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0014] しかしながら、これまでの計算方法では、その計算負荷の大きさから小規模なモデ ルによる計算と定性的な評価し力、試みられてこな力、つた。例えば、上記の式(5)を利 用した数値シミュレーションでは、積分を逐次実行して時間 t後の正確な解を求める 処理に、膨大な計算量が必要となる。このため、上記の式(5)を使用した数値シミュ レーシヨンでは、小規模なモデルを数値シミュレーションすることができるにすぎな!/ヽ 。すなわち、具体的な原子から成る三次元構造の電子デバイスや量子コンピュータ の設計ツールとしては十分機能してレ、なレ、のが現状である。
[0015] そこで、本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、計算量を軽減して高速' 高精度で数値シミュレーションを実行することができる数値シミュレーション装置を提 供することを目的とする。
課題を解決するための手段
[0016] 上記目的を達成するために、(a)時間依存シュレディンガー方程式の解である波動 関数を使用した数値シミュレーションを実行する数値シミュレーション装置であって、 ( al)プロバゲ一ターを使用して表された第 1種波動関数に対して実空間差分法にお ける中心差分近似を適用して得られ、かつ Bessel関数を使用して表された第 2種波 動関数を、初期時刻から所定の時間ずつ発展させながら演算する時間発展演算手 段と、(a2)前記時間発展演算手段で所定の時間ずつ発展させながら得られた各時 刻における前記第 2種波動関数の演算結果を記憶する演算結果記憶手段とを備え
[0017] これによつて、時間依存シュレディンガー方程式による波動関数の時間発展数値 計算を高速かつ高精度に行うことができる。
[0018] または、(b)前記数値シミュレーション装置は、(bl)初期時刻の前記第 2種波動関 数としてパルス関数を記憶する初期波動関数記憶手段と、 (b2)前記初期波動関数 記憶手段で記憶されている前記ノ^レス関数力 前記時間発展演算手段によって得 られた前記第 2種波動関数の演算結果を使用して、所定のエネルギーに関して前記 第 2種波動関数の周波数解析を行!/、、前記所定のエネルギーに対する散乱問題の 定常解を計算する周波数解析手段とを備えるとしてもよい。
[0019] これによつて、散乱問題の定常解を数値計算により高速かつ高精度に求めることが できる。
[0020] または、(c)前記時間発展演算手段は、時間に虚数を乗算して得られた虚時間を 使用して、前記第 2種波動関数の虚時間発展を演算するとしてもよい。
[0021] これによつて、基底状態および励起状態を求める際に利用される波動関数の虚時 間発展数値計算を高速かつ高精度に行うことができる。
[0022] または、(d)前記数値シミュレーション装置は、数値シミュレーションが実行されるモ デルの境界領域における波動関数によって前記モデルに与えられる影響が吸収さ れるようにして重み付けされた吸収係数を記憶する吸収境界条件記憶手段を備え、 前記吸収境界条件記憶手段で記憶されてレ、る前記吸収係数を使用して、前記第 2 種波動関数の時間発展を演算するとしてもよい。
[0023] これによつて、無限遠の境界条件を設定する際に必要であった大きな計算領域を 大幅に減少させることができる。
[0024] なお、本発明は、数 シミュレーション装置として実現されるだけではなぐ数 シミ ユレーシヨン装置を制御する数値シミュレーション方法、数値シミュレーション方法を 1 以上のコンピュータシステムなどに実行させる数値シミュレーションプログラム、数値 シミュレーションプログラムを記録した記録媒体などとして実現されるとしてもょレ、。ま た、数値シミュレーション装置の機能が組み込まれた LSI (Large Scale Integration) , ての機倉を FPGA (Fieid Programmable Gate Array;、 CPLD (Complex Programmab
le Logic Device)などのプログラマブル ·ロジック ·デバイスに形成する IP (Intellectual Property)コア、その IPコアを記録した記録媒体などとして実現されるとしてもよ!/、。 発明の効果
[0025] 本発明によれば、 Bessel関数を使用して表された波動関数を使用することによって 、時間依存シュレディンガー方程式による波動関数の時間発展数値計算を高速かつ 高精度に行うことができる。散乱問題の定常解を数値計算により高速かつ高精度に 求めること力 Sできる。基底状態および励起状態を求める際に利用される波動関数の 虚時間発展数値計算を高速かつ高精度に行うことができる。無限遠の境界条件を設 定する際に必要であった大きな計算領域を大幅に減少させることができる。
[0026] さらに、現在の電子状態計算手法の主流である密度汎関数理論に適用すれば、 ohn-Sham方程式の数値解を高速に得ることができる。このため、現実のモデルに対 する電子の動的挙動を数値シミュレーションすることができる。これにより、ナノスケ一 ルの電子デバイスや量子コンピュータの設計手法として利用することができる。
図面の簡単な説明
[0027] [図 1]図 1 (a)は、ナノスケールの電子デバイスの概要を示す図である。図 1 (b)は、量 子ワイヤーの概要を示す図である。
[図 2]図 2は、本発明に係わる実施の形態における数 シミュレーション装置の構成 を示す図である。
[図 3]図 3は、本発明に係わる実施の形態における数 シミュレーション装置におい て実行される数値シミュレーション処理を示す図である。
[図 4]図 4は、 Bessel関数の値および被積分関数の実数部を示す図である。
[図 5]図 5は、吸収境界条件における波動関数に掛ける係数の設定例を示す図であ
[図 6]図 6は、ポテンシャル障壁による 1次元散乱問題を示す図である。
[図 7]図 7は、時間発展させた波動関数の周波数を解析した結果と、ポテンシャル障 壁に対する透過率を計算した結果とを示す図である。
[図 8]図 8は、 2次元ワイヤーモデルを示す図である。
[図 9]図 9は、 2次元ワイヤーモデルにおける周波数を解析した結果と、コンダクタンス
を計算した結果を示す図である。
[図 10]図 10は、吸収境界条件を適用して得られた散乱波動関数を示す図である。
[図 11]図 11は、計算コストの評価を示す図である。
符号の説明
100 数^ Iシミュレーション ¾
101 計算条件設定部
102 計算条件記憶部
103 初期値設定部
104 初期値記憶部
105 実時間発展判定部
106 実時間発展演算部
107 虚時間発展演算部
108 演算結果記憶部
109 周波数解析部
110 解析結果記憶部
111 物性値計算部
112 十 ロ^ し fe、 P [5
113 計算結果出力部
発明を実施するための最良の形態
[0029] (実施の形態)
以下、本発明に係わる実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
[0030] 本実施の形態における数 シミュレーション装置は、下記(a)〜(d)に示される特 ί毁を備える。
[0031] (a)時間依存シュレディンガー方程式の解である波動関数を使用した数値シミュレ ーシヨンを実行する数値シミュレーション装置であって、(al )プロパゲーターを使用し て表された第 1種波動関数に対して実空間差分法における中心差分近似を適用し て得られ、かつ Bessel関数を使用して表された第 2種波動関数を、初期時刻から所定 の時間ずつ発展させながら演算する時間発展演算機能と、 (a2)時間発展演算機能
で所定の時間ずつ発展させながら得られた各時刻における前記第 2種波動関数の 演算結果を記憶する演算結果記憶機能とを備える。
[0032] (b)数値シミュレーション装置は、(bl)初期時刻の第 2種波動関数としてノ ルス関 数を記憶する初期波動関数記憶機能と、 (b2)初期波動関数記憶機能で記憶されて いるパルス関数力 時間発展演算機能によって得られた第 2種波動関数の演算結果 を使用して、所定のエネルギーに関して第 2種波動関数の周波数解析を行い、所定 のエネルギーに対する散乱問題の定常解を計算する周波数解析機能とを備える。
[0033] (c)時間発展演算機能は、時間に虚数を乗算して得られた虚時間を使用して、第 2 種波動関数の虚時間発展を演算する。
[0034] (d)数値シミュレーション装置は、数値シミュレーションが実行されるモデルの境界 領域における波動関数によってモデルに与えられる影響が吸収されるようにして重 み付けされた吸収係数を記憶する吸収境界条件記憶機能を備え、吸収境界条件記 憶機能で記憶されている吸収係数を使用して、第 2種波動関数の時間発展を演算す
[0035] 以上の点を踏まえて、本実施の形態における数 シミュレーション装置について説 明する。
[0036] 図 2は、本実施の形態における数値シミュレーション装置の構成を示す図である。
図 2に示されるように、数値シミュレーション装置 100は、計算条件設定部 101、計算 条件記憶部 102、初期値設定部 103、初期値記憶部 104、実時間発展判定部 105 、実時間発展演算部 106、虚時間発展演算部 107、演算結果記憶部 108、周波数 解析部 109、解析結果記憶部 110、物性値計算部 111、計算結果記憶部 112、計 算結果出力部 113などを備える。
[0037] 計算条件設定部 101は、数値シミュレーションが実行されるときに、入力デバイス( 不図示)を介してオペレータ(不図示)力 計算条件データを受け付けたり、計算条 件データが記録されているファイル (不図示)から計算条件データを読み出したりする 。そして、オペレータから受け付けた計算条件データやファイルから読み出した計算 条件データを起算条件記憶部 102に出力する。ここで、計算条件データとして、空間 の大きさ (L, L, L )、空間の刻み幅 (h, h, h )、時間の刻み幅(Δ ΐ)、計算時間 (T)
などがある。
[0038] 計算条件記憶部 102は、計算条件設定部 101から出力された計算条件データを 記 fe、する。
[0039] 初期値設定部 103は、数値シミュレーションが実行されるときに、入力デバイス(不 図示)を介してオペレータ(不図示)から初期値を受け付けたり、初期値が記録されて いるファイル (不図示)から初期値を読み出したりする。そして、オペレータから受け付 けた初期値やファイルから読み出した初期値を初期値記憶部 104に出力する。ここ で、初期値として、初期波動関数(% (r, t ))、初期ポテンシャル (V(r, t))、吸収境界
j 0 j
条件などがある。
[0040] 初期値記憶部 104は、初期値設定部 103から出力された初期値を記憶する。
[0041] 実時間発展判定部 105は、数値シミュレーションが実行されるときに、入力デバイス
(不図示)を介してオペレータ(不図示)から指示データを受け付けたり、指示データ が記録されているファイル (不図示)から指示データを読み出したりする。そして、ォ ペレータから受け付けた指示データやファイルから読み出した指示データから、実時 間発展演算処理を実行するか否力、を判定する。判定した結果、実時間発展演算処 理を実行する場合は、実時間発展演算部 106を呼び出して、実時間発展演算処理 を実行させる。一方、実時間発展演算処理を実行しない場合は、虚時間発展演算部 107を呼び出して、虚時間発展演算処理を実行させる。
[0042] 実時間発展演算部 106は、実時間発展判定部 105から呼び出されると、実時間発 展演算処理を実行する。このとき、計算条件記憶部 102で記憶されている計算条件 と、初期値記憶部 104で記憶されている初期値とを使用して実時間発展演算処理を 実行する。実行して得られた演算結果を、演算結果記憶部 108に出力する。
[0043] 「実時間発展演算処理」とは、所定の時刻 tの波動関数を使用して、所定の時刻 tか ら微小時間 Δ ΐだけ発展させた時刻 t+ Δ ΐの波動関数を演算する。さらに、演算して得 られた波動関数を使用して、この演算処理を繰り返すことによって、波動関数の時間 発展を演算する処理である。
[0044] なお、時間依存シュレディンガー方程式の解である波動関数として、プロパグータ 一 (Feynman Kernel)を使用して経路積分で表された第 1種波動関数(上記の式(5)
)に対して実空間差分法における中心差分近似を適用して得られ、かつ Bessel関数 を使用して表された第 2種波動関数 (下記の式 (6) )を使用する。
[0045] なお、第 2種波動関数は、時間発展 Green関数を使用して表された波動関数に対し て実空間差分法における中心差分近似を適用して得られるとしてもよい。
[0046] さらに、実時間発展演算部 106は、実時間発展演算処理が終了すると、周波数解 析部 109と物性値計算部 111とを呼び出し、周波数解析処理と物性値計算処理とを 実行させる。そして、これらの処理が終了すると、計算結果出力部 113を呼び出し、 一連の処理を終了する。
[0047] 虚時間発展演算部 107は、実時間発展判定部 105から呼び出されると、虚時間発 展演算処理を実行する。このとき、計算条件記憶部 102で記憶されている計算条件 と、初期値記憶部 104で記憶されて!/、る初期値とを使用して虚時間発展演算処理を 実行する。実行して得られた演算結果を、演算結果記憶部 108に出力する。
[0048] 「虚時間発展演算処理」とは、実時間に虚数を乗算して得られた虚時間を使用して 、波動関数の虚時間発展を演算する処理である。
[0049] さらに、虚時間発展演算部 107は、虚時間発展演算処理が終了すると、物性値計 算部 11 1を呼び出し、物性値計算処理を実行させる。そして、物性値計算処理が終 了すると、計算結果出力部 113を呼び出し、一連の処理を終了する。
[0050] 演算結果記憶部 108は、実時間発展演算部 106から出力された演算結果を記憶 する。同様に、虚時間発展演算部 107から出力された演算結果を記憶する。
[0051] 周波数解析部 109は、実時間発展演算部 106から呼び出されると、周波数解析処 理を実行する。このとき、計算条件記憶部 102で記憶されている計算条件データと、 初期値記憶部 104で記憶されて!/、る初期値と、演算結果記憶部 108で記憶されて!/、 る演算結果とを使用して周波数解析処理を実行する。実行して得られた解析結果を 解析結果記憶部 110に出力する。
[0052] 「周波数解析処理」とは、初期時刻の波動関数として記憶されて!/、るパルス関数か ら実時間発展演算処理によって得られた演算結果を使用して、所定のエネルギーに 関して波動関数の周波数解析を行!/ \所定のエネルギーに対する散乱問題の定常 解を計算する処理である。
[0053] 解析結果記憶部 110は、周波数解析部 109から出力された解析結果を記憶する。
[0054] 物性値計算部 111は、実時間発展演算部 106から呼び出されると、物性値計算処 理を実行する。このとき、計算条件記憶部 102で記憶されている計算条件データと、 初期値記憶部 104で記憶されて!/、る初期値と、演算結果記憶部 108で記憶されて!/、 る演算結果とを使用して物性値計算処理を実行する。実行して得られた計算結果を 計算結果記憶部 112に出力する。
[0055] また、物性値計算部 111は、虚時間発展演算部 107から呼び出されると、物性値 計算処理を実行する。このとき、計算条件記憶部 102で記憶されている計算条件デ ータと、初期値記憶部 104で記憶されている初期値と、演算結果記憶部 108で記憶 されている演算結果とを使用して物性値計算処理を実行する。実行して得られた計 算結果を計算結果記憶部 112に出力する。
[0056] 「物性値計算処理」とは、数値計算によって得られた固有関数と固有値を基にして 導電率などの物性値を計算する処理である。なお、計算して得られた固有関数や固 有値などを使用して、さらに、下記(1)〜(8)に示される物性値を計算するとしてもよ い。
[0057] (1)電荷密度の空間分布を計算するとしてもよい。
[0058] (2)電子状態密度のエネルギー依存性を計算するとしてもよ!/、。
[0059] (3)原子に働く力などを計算するとしてもよい。さらに、計算して得られた原子に働く 力を使用して、原子の運動を追跡する分子動力学シミュレーションを実行し、最適原 子構造の探索や化学反応の追跡する処理を実行するとしてもよい。
[0060] (4)系の全エネルギーから断熱ポテンシャル曲線を計算し、計算して得られた断熱 ポテンシャル曲線から弾性係数を計算するとしてもよい。
[0061] (5)原子の振動スペクトルを計算するとしてもよい。さらに、計算して得られた原子 の振動スペクトルを使用して、赤外線の吸収スペクトルを計算するとしてもよい。
[0062] (6)反射率、誘電率などの光学物性を計算するとしてもよ!/、。
[0063] (7)励起エネルギーを計算するとしてもよい。
[0064] (8)電子のスピンの状態から、磁気的物性を計算するとしてもよレ、。
[0065] 計算結果記憶部 112は、物性値計算部 111から出力された計算結果を記憶する。
[0066] 計算結果出力部 113は、実時間発展演算部 106から呼び出されると、演算結果記 憶部 108で記憶されて!/、る演算結果と、解析結果記憶部 110で記憶されて!/、る解析 結果と、計算結果記憶部 112で記憶されている計算結果とを出力する。このとき、こ れらを、出力デバイス(不図示)を介してオペレータに出力したり、ファイルに出力した りする。
[0067] また、計算結果出力部 113は、虚時間発展演算部 107から呼び出されると、演算 結果記憶部 108で記憶されて!/、る演算結果と、計算結果記憶部 112で記憶されて!/、 る計算結果とを出力する。このとき、これらを、出力デバイス(不図示)を介してォペレ ータに出力したり、ファイルに出力したりする。
[0068] 次に、本実施の形態における数値シミュレーション装置 100において実行される数 値シミュレーション処理につ!/、て説明する。
[0069] 図 3は、本実施の形態における数値シミュレーション装置 100において実行される 数値シミュレーション処理を示す図である。図 3に示されるように、数値シミュレーショ ン装置 100は、計算条件を設定する(S101)。このとき、計算条件設定部 101は、入 力デバイスを介してオペレータから計算条件データを受け付けたり、計算条件データ が記録されているファイルから計算条件データを読み出したりする。オペレータから 受け付けた計算条件データや、ファイルから読み出した計算条件データを計算条件 記憶部 102に出力する。計算条件記憶部 102は、計算条件設定部 101から出力さ れた計算条件データを記憶する。
[0070] 次に、数値シミュレーション装置 100は、初期値を設定する(S 102)。このとき、初 期値設定部 103は、入力デバイスを介してオペレータから初期値を受け付けたり、初 期値が記録されているファイルから初期値を読み出したりする。オペレータから受け 付けた初期値やファイルから読み出した初期値を初期値記憶部 104に出力する。初 期値記憶部 104は、初期値設定部 103から出力された初期値を記憶する。
[0071] 次に、数値シミュレーション装置 100は、実時間発展演算処理を実行するか否かを 判定する(S103)。このとき、実時間発展判定部 105は、入力デバイスを介してオペ レータから指示データを受け付けたり、指示データが記録されているファイルから指 示データを読み出したりする。オペレータから受け付けた指示データやファイルから
読み出した指示データに基づいて、実時間発展演算処理を実行するか否かを判定 する。
[0072] 次に、数値シミュレーション装置 100は、判定した結果、実時間発展演算処理を実 行する場合は(S 103 :Yes)、実時間発展演算処理を実行する(S104)。このとき、 実時間発展判定部 105は、実時間発展演算部 106を呼び出し、実時間発展演算処 理を実行させる。
[0073] さらに、数値シミュレーション装置 100は、実時間発展演算処理が終了すると、周波 数解析処理を実行する(S105)。さらに、物性値計算処理を実行する(S 106)。この とき、実時間発展演算部 106は、周波数解析部 109を呼び出し、周波数解析処理を 実行させる。また、物性値計算部 111を呼び出し、物性値計算処理を実行させる。
[0074] そして、数値シミュレーション装置 100は、計算結果を出力する(S107)。このとき、 実時間発展演算部 106は、実時間発展演算処理が終了し、周波数解析処理が終了 し、物性値計算処理が終了すると、計算結果出力部 113を呼び出し、一連の処理に よって得られた演算結果、解析結果、計算結果を出力させる。
[0075] 一方、数値シミュレーション装置 100は、実時間発展演算処理を実行しない場合は
(S 103 : No)、虚時間発展演算処理を実行する(S108)。このとき、実時間発展判定 部 105は、虚時間発展演算部 107を呼び出し、虚時間発展演算処理を実行させる。
[0076] さらに、数値シミュレーション装置 100は、虚時間発展演算処理が終了すると、物性 値計算処理を実行する(S106)。このとき、虚時間発展演算部 107は、物性値計算 部 111を呼び出し、物性値計算処理を実行させる。
[0077] そして、数値シミュレーション装置 100は、計算結果を出力する(S107)。このとき、 虚時間発展演算部 107は、虚時間発展演算処理が終了し、物性値計算処理が終了 すると、計算結果出力部 113を呼び出し、一連の処理によって得られた演算結果、 計算結果を出力させる。
[0078] 次に、本実施の形態における数値シミュレーション装置 100の特徴について説明 する。なお、数値シミュレーション装置 100によれば、下記(1)〜(4)の特徴を備える
[0079] (1)時間依存シュレディンガー方程式による波動関数の時間発展数値計算を高速
かつ高精度に実行することができる。
[0080] 散乱問題の定常解の数値計算を高速かつ高精度に実行することができる。
[0081] (3)基底状態および励起状態を求める際に利用される波動関数の虚時間発展数 値計算を高速かつ高精度に行うことができる。
一一
[0082] (4)無限遠の境界条件を設定する際に必要であった大きな計算領域を大幅に減少
— / \
させること力 Sでさる。
[0083] まず、本実施の形態における数値シミュレーション装置 100によって、時間依存シ ユレディンガー方程式による波動関数の時間発展数値計算を高速かつ高精度に行う ことができる点について説明する。
[0084] 上記の式(5)の積分を実行する際に、実 / 、空間差分法における中心差分近似を適用 する。これに伴い、微小時間 Δ ΐ後の波動関数は、下記の式(6)のように、下記の式( 7)で示される Bessel関数を使用して近似することができる。これに伴い、実時間発展 演算処理ゃ虚時間発展演算処理における計算量を軽減して高速 '高精度で数値シ ミュレーシヨンを実行することができる。
[0085] [数 6]
[0086]
[0087] ここで、 rは、下記の式(8)で示され、 rは、下記の式(9)で示される。 hは、空間の 1(
= x, y, z)方向の刻み幅であり、 j , j,は、整数である,
[0088] [数 8]
[0089] [数 9]
(9) rf
[0091] 図 4に示されるように、 Bessel関数 J (x)は、 |j-j' |の増加とともに、急激に減衰する(グ ラフ 122)。このため、計算結果に y影響を及ぼさないような微小項で積算を打ち切るこ とができる。このため、上記の式(5)を上記の式(6)を使用して近似することで、直接 積分を計算する場合と比べれば、上記の式ヽノ )(6)の j'に関する和を求めることから、計 算量を激減させることができる。結果、数値シミュレーションを高速に実行することが できる。
[0092] これは、上記の式(5)を直接積分する場合は、非常に広い範囲にわたって積分す る必要があるためである。ここで、下記の式(10)に示される上記の式(5)の被積分関 数のうち x'成分を一例とする。この場合において、下記の式(1 1 )に示される x'の積分 に関する被積分関数は、 x'に対する振動関数(三角関数)である。これは、図 4に示さ れるように、 x'の増加とともに減衰しない(グラフ 121)。このため、非常に広い範囲に わたって積分する必要がある。
[0094] [数 11]
(11) exp[¾( - x')2/2At]
[0095] なお、上記の式(6)を使用して正しい結果が得られることについては、後述する。
[0096] 次に、本実施の形態における数値シミュレーション装置 100によって、散乱問題の
定常解の数値計算を、高速かつ高精度に数値シミュレーションすることができる点に ついて説明する。ここでは、ポテンシャル Vが時間に依存しない系を例に説明する。 この場合において、周波数解析部 109は、上記の式(6)を使用して散乱問題におけ る定常状態の解を得ることができる。ここで、下記の式(12)に示されるように、初期時 刻 tの初期波動関数として、平面 z=z上のパルス関数を使用する。
0 0
[0097] [数 12] + Gnyhyjy)] ( = 0)
0 ( + 0)
[0098] ここで、 G ,G は、逆格子ベクトルであり、それぞれ、下記の式(13)、(14)で示さ nx ny
れる。 Nは、 X方向の格子点数であり、 nは整数である。 Nは、 y方向の格子点数であ り、 nは、整数である。
y
[0099] [数 13]
(丄 J) nx = y ~~
[0101] そして、周波数解析部 109は、上記の式(12)で示される初期波動関数と上記の式
(5)とを使用して初期時刻 tから任意の時刻に時間発展させた波動関数 x (r, t)を計
0 j 算すること力 Sできる。さらに、下記の式(15)で示されるように、波動関数 X (r, t)に対 j して、エネルギー Eに関する周波数解析を行うことができる。
[0103] ここで、 C(E)は、下記の式(16)で示される。 V (E)は、 z方向の群速度であり、下記の 式(17)で示される。また、 kは、 z方向の波数であり、下記の式(18)で示される。
[0105] [数 17]
(17、 vz (E)― ― sin kzh2
[0106] [数 18]
(18) fe ^ cos- ^ l - ^E)
[0107] そして、上記の式(15)を使用して、上記の式(12)で示されるパルス関数を初期波 動関数として、時間発展させた波動関数を数値シミュレーションする。これにより、全 てのエネルギー Eでの定常状態の波動関数 Ψ(Γ; Ε)を数値シミュレーションすることが j
できる。
[0108] 次に、本実施の数値シミュレーション装置 100によって、基底状態および励起状態 を求める際に利用される波動関数の虚時間発展数値計算を、高速かつ高精度に数 値シミュレーションすることができる点について説明する。ここでは、ポテンシャル Vが 時間に依存しない系を例に説明する。この場合において、虚時間発展演算部 107は 、上記の式 (6)と虚時間発展計算とを使用することで、離散固有値問題における「時 間に依存しない定常解」を高速に求める計算手法に拡張することができる。プロノ 一ターは、系の固有関数 φ (r)と固有値 Eとを使用して、下記の式(19)で示される c
[0109] [数 19]
(19)
[0110] ここで、 r'=rとおいて、 rについて積分すると、固有関数の規格直交性により、下記の 式(20)で示される。
[0111] [数 20]
[0112] さらに、形式的に虚時間 τ =itを導入し、十分に長い虚時間を発展させると、すなわ ち、 τ→∞とすると、下記の式(21)で示されるように近似することができる。これは、 最低エネルギー Εの項が最もゆっくり減衰するためである。
0
[0113] [数 21]
K(r, -ir;r, -ir0) 3r ^ e~ o(r~To) τ→ ο — οο
[0114] これは、虚時間発展計算により、離散固有状態を求めることができることを示してお り、よく知られた計算手法である(例えば、非特許文献 2参照。)。
[0115] これにより、上記の式(6)における時間を虚時間に置き換えると、下記の式(22)の よつに示される。
[0116] [数 22]
[0117] そして、上記の式(22)を使用することで、虚時間発展を高速に計算することができ
、基底状態の波動関数と直交する初期波動関数を使用することで、励起状態につい てあ計算すること力でさる。
[0118] 次に、本実施の形態における数値シミュレーション装置 100によって、無限遠の境 界条件を設定する際に必要であった大きな計算領域を大幅に減少させることができ る点について説明する。
[0119] 例えば、散乱問題で正しい結果を得るために、散乱ポテンシャルの空間的な大きさ に対して、 100倍程度以上の十分広い空間(計算領域)を計算条件として設定する 必要がある。これに対して、波動関数を滑らかに減衰させるような「吸収境界条件」を 吸収領域に適用することで、計算領域の大きさを縮小することができる。
[0120] 図 5は、吸収境界条件における波動関数に掛ける係数の設定例を示す図である。
図 5に示されるように、例えば、吸収領域 132a, 132bに係数を掛けることにより、波 動関数を滑らかに減衰させるような「吸収境界条件」を適用することで、計算領域の 大きさを散乱体の大きさの数倍〜 10倍程度にまで縮小することができる。これに伴い 、実時間発展演算処理ゃ虚時間発展演算処理における計算量を軽減して高速 ·高 精度で数値シミュレーションを実行することができる。
[0121] 次に、本実施の形態における数値シミュレーション装置を使用して、簡単なモデル に対して数値シミュレーションを実行した結果を説明する。
[0122] 図 6は、ポテンシャル障壁による 1次元散乱問題を示す図である。図 6に示されるよ うに、ここでは、一例として、ポテンシャル障壁 141に対して、左側から入射波 142を 入射したとする。このとき、時間ステップ A t=0.2(a.u.)、グリッド幅 h=0.5(a.u.)、 z方向の 大きさ Lz=1000.0、 z方向のグリッド数 Nz=2000、ポテンシャル V=0.3(a.u.)、壁び大きさ m=21、積分の上限 T=400(a.u.)とする(テーブル 145)。また、 l(a.u.)=0.024(fs)=27.211
[0123] 図 7は、時間発展させた波動関数の周波数を解析した結果と、ポテンシャル障壁に 対する透過率を計算した結果とを示す図である。図 7に示されるように、時間発展さ せた波動関数をエネルギーで周波数解析した結果(グラフ 148a, 148b, 148c)、こ れからの結果から、透過率は厳密解と一致する(グラフ 147)。
[0124] 図 8は、 2次元ワイヤーモデルを示す図である。図 8に示されるように、ここでは、一
例として、左電極 152と右電極 153とを結ぶ幅 Wx、長さ Wzのワイヤー 151に対して、 左電極 152から入射波が入射したとする。このとき、時間ステップ A t=0.2(a.u.)、グリツ ド幅 h=0.5(a.u.)、 X方向の大きさ Lx=4.0、 x方向のグリッド数 Nx=8、 z方向の大きさ Lz=50 0.0、 z方向のグリッド数 Nz=1000、積分の上限 T=200(a.u.)、入射電子のエネルギーを 0·05〜1· 10とする(テーブル 155)。また、 l(a.u.)=0.024(fs)=27.211(eV)=0.52918Aで
[0125] 図 9は、 2次元ワイヤーモデルにおける周波数を解析した結果と、コンダクタンスを 計算した結果を示す図である。図 9に示されるように、時間発展させた波動関数をェ ネルギ一で周波数解析した結果(グラフ 158a〜158e)、これからの結果から、 OBM 法による結果と合致した結果が得られて!/、る(グラフ 157)。
[0126] 図 10は、吸収境界条件を適用して得られた散乱波動関数を示す図である。図 10 に示されるように、計算精度を保ったまま、計算時間を大幅に縮小することができる。
[0127] 図 11は、計算コストの評価を示す図である。図 11に示されるように、本手法は(ダラ フ 171)、任意のエネルギーでの散乱解を計算することができることを考慮すると、 O BM法より(グラフ 172)、高速な数値シミュレーションを実現することができる。すなわ ち、高速な電気伝導特性を数値シミュレーションすることができる。
[0128] 以上、本実施の形態における数値シミュレーション装置 100によれば、 Bessel関数 を使用して表された波動関数を使用することによって、時間依存シュレディンガー方 程式による波動関数の時間発展数値計算を高速かつ高精度に行うことができる。散 乱問題の定常解を数値計算により高速かつ高精度に求めることができる。基底状態 および励起状態を求める際に利用される波動関数の虚時間発展数値計算を高速か つ高精度に行うことができる。無限遠の境界条件を設定する際に必要であった大き な計算領域を大幅に減少させることができる。
[0129] さらに、現在の電子状態計算手法の主流である密度汎関数理論に適用すれば、 ohn-Sham方程式の数値解を高速に得ることができる。このため、現実のモデルに対 する電子の動的挙動を数値シミュレーションすることができる。これにより、ナノスケ一 ルの電子デバイスや量子コンピュータの設計手法として利用することができる。
[0130] ここで、上記の式(6)について補足して説明する。
[0131] 経路積分表示によると、波動関数の微小時間 Δ ΐ後の時間発展は、下記の式 (23) で示される(例えば、非特許文献 2参照。)。
[0132] [数 23]
(23)
[0133] ここでは、一般的にポテンシャル Vも時間に依存するものとしている。なお、座標変 数として、 X, y, zを使用すると、上記の式(23)は、下記の式(24)で示される。
χ e - W , , , t+ψ y, , t dx,dy,dz.
[0135] ここで、一般性を失わないので、 X座標だけについて説明する。すなわち、上記の式
(24)を下記の式(25)に簡略化する。
[0136] [数 25]
[0137] ここで、 χ'に関する積分は、 Xの近傍だけが結果に寄与するので (例えば、非特許文 献 2参照。 )、 X'=X+ 7]のように、積分変数を χ'から ηに変数変換する。これに伴い、上 記の式(25)が下記の式(26)で示される。
[0138] [数 26]
(26) (χ, ί + Αί)
[0139] さらに、 7]の積分は、 7]の小さいところでしか主要に寄与しないことから(例えば、非 特許文献 2参照。)、波動関数 Ψ (χ+ ], t)を Xのまわりで Taylor展開する。また、ポテン
7] /2, ΐ+ Δ ΐ/2)を、 tおよび Xのまわりで Taylor展開する。これに伴い、上記
の式(26)が下記の式(27)で近似することができる c
-i^tW{xtt)+ ^V{x,t)+ { )- ^V{x,t
x e άη
[0141] さらに、下記の式(28)を使用してポテンシャル Vの空間微分を含む項を展開する c これに伴い、上記の式(27)が下記の式(29)で近似することができる。
[0142] [数 28]
(28) ez ^ l + z
[0143] [数 29]
-ίΔΠ ,ί)
χ e
込 ' ' )
[0144] ここで、下記の式(30)で示される偶関数と、下記の式(31)で示される奇関数との 積の成分は、下記の式(32)で示されるように、 0である。
[0145] [数 30]
(30) e
[0146] [数 31]
(31) ?, η3, η5
[0147] [数 32]
[0148] また、下記の式(33)で示されるように、 Δ ΐの 1次の項までを考慮し、 7]は微小量と して、 7 /を含む項を無視すると、下記の式(34)が得られる。
[0151] 次に、空間が周期境界条件を有する離散的な空間であるとして、下記の式 (35)に 示されるように、波動関数を Fourier級数展開する。ここで、 kは、下記の式(36)で示 n
される。 Xは、下記の式(37)で示される。
j
[0152] [数 35]
[0155] ただし、 は、展開係数である。 Lxは、 X方向の大きさであり、 Lx=N hxである。後に、 L →∞をとり、空間の大きさを無限大にもってゆく。また、簡単のため、 Nは、偶数とす
[0156] さらに、 32Ψ(χ, t)/ 3 X2に実空間差分法における中心差分近似を適用すると、下 記の式(38)で示される。これから、離散空間における波動関数の時間発展は下記の 式(39)で示される。
[0157] [数 38]
^(xj - hx,t)一 2 (xj, t)土 {χή土 hx, t)
[0158] [数 39] cos{knhx)]
(39) Φ(χ^ί + Μ) ^ ^ e 2Δ* 1 - ,[1 -
2m t hi
[0159] ここで、上記の式(28)を使用すると、上記の式(39)を下記の式 (40)で近似するこ と力 Sできる。
[0160] [数 40]
∞ e e—
[1—
∞s(fc" '
½ )'
c„
e e ^)
∞ "2卜 [1+2':Δ'· 1— c。 ' ) Cne¾„ e- り
[0161] 下記の式 (41)で示される積分公式を使用して、 7]に関する積分を行うと、上記の 式 (40)を下記の式 (42)に近似すること力 Sできる。
[0163] [数 42]
(42) 1 + 2?;Δί— [1一 cos(/c„/i
x)]
[0164] さらに、 Δΐは、小さいので、もう一度、上記の式(28)を使用すると、上記の式(42) を下記の式 (43)で近似することができる。
[0165] [数 43]
(43) + Δί)
¾ V
e-
ΐΔ [1一 ^))
Cne ( ,
71
[0166] ここで、 Fourier展開係数 cは、下記の式(44)で示されることから、上記の式(43)が
n
下記の式(45)で示される。
[0167] [数 44]
( 4) η = '
= Σ Σ ^^^ ' — ίΔί 11— c。 厶^^ ^ .,,
[0169] さらに、 hを固定し、 N→∞、すなわち、 Lx=h N→∞をとり、離散的な無限空間での 表示に直すと、下記の式 (46)で示される。ここで、下記の式 (47)〜(50)を考慮して いる。
[0170] [数 46]
(46) ., t + At) 广 ') e— 1— ^ 】.,
) ∑
n=-^ —
[0174] [数 50]
(50 丄 = hx 2ir
{ ) Nx 2irNxhxx
[0175] さらに、積分変数変換 Θ =hkを行うと、上記の式 (46)が下記の式(51)で示される,
[0176] [数 51]
(51) ^(.τ,,ί + Δί) = / - ) e— ':Δί (1— c e - iAi .' (; , ί)^
=y- I cos(j― ) 一 iAt 1— cos0) e— iAt
[0177] ここで、下記の式(52)に示されるように、 Bessel関数に対する Hansenの積分表示を 使用すると、上記の式(51)が下記の式(53)で示される。
[0179] [数 53]
(53) Ψ ( ' t + At) = ( ) e- ' ( ., , ί)
[0180] ここで、 Jは Bessel関数であり、上記の式(7)で示される。そして、 yと zとに関する積 分も同様であり、 3次元空間では、上記の式(23)は、下記の式(54)で示される。
Li Π (ノ
x e_iAiV ( ' (r;,i)
[0182] なお、本発明では、上記の式(5)の積分を実行する際に、下記に示すような実空間 差分法における差分近似を適用することも可能である。
[0183] [数 55]
[0184] ここで、 N は近似の次数、 Cは重み係数である。
f n
[0185] 特に、もっとも簡単な中心差分近似の場合には、式(56)に示すものとなる。
[0186] [数 56]
[0187] 微小時間 Δΐ後の波動関数は、次式(57)のように Bessel関数を用いて書くことがで きる(例えば、非特許文献 3 (Chelikowsky J R, Troullier N, Wu and Saad Y, Phys.R ev.B, 50(16), 11335 (1994))参照)。
[0188] [数 57]
.At
— Ά ( , ,+ )
ψ(τ.,ί + Αί) = β 2 2
=x3 7∑ (、') ( ,'
xe
[0189] ここで式(57)中の式(58)は、上述した式(7)と同様の Bessel関数である。また、上 述した式(8)及び式(9)と同様の式(59)の条件を満たして!/、る。
[0190] [数 58]
[0191] [数 59]
=
r 二 ( ノ, ゾノ, - ') ここで hは空間の v方向の刻みであり、 j , j は整数である。
V V V
[0192] また、 N次の差分近似を使用した場合には、次式(60)のようになる。
f
[0193] [数 60]
[0194] 上述したように、 Bessel関数 J '(χ)は、図 4に示すように |j-j'|の増加とともに急激に減 j- J
衰するため、計算結果に影響を及ぼさなレ、ような微小項で積算を打ち切ることが可能 となり、式(5)の積分、すなわち式(57)の J'に関する和を求めるための計算量を激減 させることができ、数値計算を高速に行うことができる。
[0195] これに対して、式 (5)を直接積分する場合を考えてみる。式 (5)の被積分関数の式
[0196] [数 61]
を見ると、例えば χ'の積分に関する被積分関数は式(62)となる。
[0198] この式(62)は χ'に対する振動関数(三角関数)であり、図 4にその実数部を示した ように χ'の増加とともに減衰せず、非常に広い範囲にわたって積分する必要があるこ とがわかる。従って、式(57)を用いて正しい結果が得られることは、上記の説明と同 様である。
[0199] また、本発明においては、式(57)に「虚時間発展」の考え方を適用することにより、 離散固有値問題における「時間に依存しない定常解」を高速に求める計算手法に拡 張することが可能である。時間発展プロパグータ一は、考えている系の固有関数 φ (r )と固有値 Eを用いて上記の式(19)と同様の式(63)のように書ける。
[0200] [数 63]
K( , t , : 」φ φ» - )
-
[0201] ここで、 r'=rとおいて、 rについて積分すると、固有関数の規格直交性により、上記の 式(20)と同様の式(64)となる。
[0203] ここで、形式的に虚時間 τ =itを導入し、十分に長い虚時間発展、すなわち τ→∞ とすると、最低エネルギー Εの項が最もゆっくり減衰するため、上記の式(21)と同様
0
の式(65)となる。
[0205] これは、虚時間発展計算により離散固有状態を求めることができることを示しており 、よく知られた計算手法である。
[0206] 以上の考え方に、式(57)の数値計算手法を適用すると、式(66)が得られる。
ΔΓ„, At .
= e Π — '
jX プノ J= φ x
て、
[0208] さらに、 Bessel関数 J (x)と変形 Bessel関数 I (x)との関係となる式(67)を用いると、式 (
n n
68)が得られる。
[0209] [数 67] (一 =(— W
[0210] [数 68]
△ r,,, Δ, .
[0211] これにより、虚時間発展を高速に計算できることになり、基底状態の波動関数を高 速-高精度に求めることが可能である。また、基底状態の波動関数と直交する初期波 動関数を用いれば、励起状態についても求めることが可能である。
[0212] また、上記の式(55)から(62)で述べた高次差分近似を用いる場合には、次式(6 9)のようになる。
[0213] [数 69]
1 ( + )
ψ τ .,-ΐ τ + Δて)) = ~ -e
[0214] (その他)
なお、数値シミュレーション装置 100は、 CPU (Central Processing Unit)、 RAM (R andom Access Memory;、 ROM (Read Only Memory)、 HDD (Hara Disk Drive)、ィ、 ットワークアダプタなどを備えるとしてもよい。さらに、 HDDなどに、数値シミュレ一ショ ン装置 100を制御するプログラム(以下、数値シミュレーションプログラムと呼称する。
)がインストールされており、数値シミュレーションプログラムが実行されることによって 、数値シミュレーション装置 100の各機能が実現されるとしてもよい。
[0215] また、数値シミュレーション装置 100は、複数のコンピュータシステムによって構成さ れているとしてもよい。この場合において、グリッドコンピューティングのように、複数の コンピュータシステムを 1つの複合したコンピュータシステムとして利用するとしてもよ い。
[0216] また、数値シミュレーション装置 100は、フロントエンドとバックエンドとから構成され ているとしてもよい。この場合において、フロントエンドで、初期値、計算条件、指示デ ータをオペレータから受け付け、受け付けた初期値、計算条件、指示データを使用し てバックエンドで、実時間発展演算処理、虚時間発展演算処理、周波数解析処理、 物性値計算処理などを実行する。
[0217] なお、数値シミュレーションプログラムは、コンピュータシステム、組み込みシステム などのようなハードウェアシステムに読み取り可能な記録媒体に記録されているとして もよい。さらに、記録媒体を介して他のハードウェアシステムに読み出されて実行され るとしてもよい。これによつて、数値シミュレーション装置 100の各機能を他のハードウ エアシステムに実現することができる。ここで、コンピュータシステム読み取り可能な記 録媒体として、光学記録媒体 (例えば、 CD— ROMなど。)、磁気記録媒体 (例えば、 ハードディスクなど。)、光磁気記録媒体 (例えば、 MOなど。)、半導体メモリ(例えば 、メモリカードなど。)などがある。
[0218] また、数値シミュレーションプログラムは、インターネット、ローカルエリアネットワーク などのようなネットワークに接続されているハードウェアシステムに保持されているとし てもよい。さらに、ネットワークを介して他のハードウェアシステムにダウンロードされて 実行されるとしてもよい。これによつて、数値シミュレーション装置 100の各機能を他 のハードウェアシステムに実現することができる。ここで、ネットワークとして、地上放送 網、衛星放送網、 PLC (Power Line Communication)、移動電話網、有線通信網(例 えば、 IEEE802. 3など。)、無線通信網(例えば、 IEEE802. 11など。)がある。
[0219] なお、数値シミュレーション装置 100は、数値シミュレーション装置 100の各機能が 組み込まれた LSIによって実現されるとしてもよ!/、。
[0220] なお、 LSIは、フノレカスタム LSI (Large Scale Integration)、 ASIC (Application Spec ific Integrated Circuit)などのようなセミカスタム LSI、 FPGAや CPLDなどのようなプ ログラマブル ·ロジック ·デバイス、動的に回路構成が書き換え可能なダイナミック ·リコ ンフィギユラブル'デバイスに形成されるとしてもよい。
[0221] さらに、プロセッサの各機能を LSIに形成する設計データは、ハードウェア記述言 語によって記述されたプログラム(以下、 HDLプログラムと呼称する。)としてもよい。 さらに、 HDLプログラムを論理合成して得られるゲート'レベルのネットリストとしてもよ い。また、ゲート'レベルのネットリストに、配置情報、プロセス条件等を付加したマクロ セノレ晴報としてもよい。また、寸法、タイミング等が規定されたマスクデータとしてもよ レヽ。ここで、、ノヽートウエア記述目語どして、 VHDL (Very high speed integrated circuit Hardware Description Language)、 Verilog— HDL、 SystemC力、める。
[0222] さらに、設計データは、コンピュータシステム、組み込みシステムなどのようなハード ウェアシステムに読み取り可能な記録媒体に記録されているとしてもよい。さらに、記 録媒体を介して他のハードウェアシステムに読み出されて実行されるとしてもよい。そ して、これらの記録媒体を介して他のハードウェアシステムに読み取られた設計デー タカ ダウンロードケーブルを介して、プログラマブノレ 'ロジック'デバイスにダウンロー ドされるとしてもよい。ここで、コンピュータシステム読み取り可能な記録媒体として、 光学記録媒体 (例えば、 CD— ROMなど。)、磁気記録媒体 (例えば、ハードディスク など。 )、光磁気記録媒体 (例えば、 MOなど。 )、半導体メモリ(例えば、メモリカード など。)などがある。
[0223] または、設計データは、インターネット、ローカルエリアネットワークなどのようなネット ワークに接続されているハードウェアシステムに保持されているとしてもよい。さらに、 ネットワークを介して他のハードウェアシステムにダウンロードされて実行されるとして もよい。そして、これらのネットワークを介して他のハードウェアシステムに取得された 設計データが、ダウンロードケーブルを介して、プログラマブル'ロジック 'デバイスに ダウンロードされるとしてよい。ここで、ネットワークとして、地上放送網、衛星放送網、 PLC,移動電話網、有線通信網(例えば、 IEEE802. 3など。)、無線通信網(例え ば、 IEEE802. 11など。)がある。
[0224] または、設計データは、通電時に FPGAに転送され得るように、シリアル ROMに記 録しておくとしてもよい。そして、シリアル ROMに記録された設計データは、通電時 に、直接、 FPGAにダウンロードされるとしてもよい。
[0225] または、設計データは、通電時に、マイクロプロセッサによって生成されて、 FPGA にダウンロード、されるとしてもよレヽ。 産業上の利用可能性
[0226] 本発明は、ナノスケールによる特性を考慮した電子デバイスや量子コンピュータの 開発を行うにあたり必要となる数値シミュレーション装置などとして、特に、計算量を 軽減して高速 ·高精度で数値シミュレーションを実行することができる数値シミュレ一 シヨン装置などとして、禾 IJ用すること力 Sできる。