明 細 書
固有導電性高分子の有機溶媒分散液の製造方法
技術分野
[0001] 本発明は、固有導電性高分子の有機溶媒分散液の製造方法に関する。
背景技術
[0002] ポリア-リン、ポリチォフェンおよびポリピロールなどの芳香族系の導電性高分子は 、優れた安定性および導電率を有することから、その活用が期待されているものの、 これらの導電性高分子はどの溶媒にも不溶で成形性に劣ることから、その応用分野 は限られてきた。
近年、導電性高分子を微粒子として水や芳香族溶媒をはじめとする有機溶媒に分 散させることにより、成形性を向上し得ることが報告されている (特許文献 1, 2参照)。 しかし、上記導電性高分子にドーパントが付加された固有導電性高分子の有機溶 媒分散液は、一般的に水性コロイド分散液や、水と親水性溶媒との混合溶媒の分散 液として使用されている。このため、コーティング剤等として使用する場合には、その 溶媒組成が複雑になる等の問題点があり、未だ導電性高分子の応用分野は限られ ている。
[0003] これらの問題点を解決する方法として、溶媒置換法により他の溶媒に置換する手法 が開発されている (特許文献 3, 4参照)。
しかし、特許文献 3の方法では、溶媒置換中に強撹拌が必要であるなどの理由から 、製造方法が非常に煩雑なものであるという問題があった。
また、より簡便な手法としてイオン交換体を用いて脱イオン処理後に溶媒置換を行 う方法が報告されているが、固有導電性高分子粒子表面に強固に吸着したカチオン を除去することができず、有機溶媒中における固有導電性高分子の分散安定性が 乏しいため、水分含量を 1質量%以下にまで下げることは困難であった (特許文献 4 参照)。
したがって、このような従来技術における問題点を解決し、導電性高分子の応用分 野を更に広げることが可能な、固有導電性高分子の有機溶媒分散液の簡便な製造
方法が望まれている。
[0004] 特許文献 1:特開平 7— 90060号公報
特許文献 2:特表平 2— 500918号公報
特許文献 3:特表 2004— 532292号公報
特許文献 4:特表 2004— 532298号公報
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0005] 本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、電極材料や帯電防止剤、 紫外線吸収剤、熱線吸収剤、電磁波吸収剤、センサ、電解コンデンサ用電解質、二 次電池用電極など種々の用途に用いることのできる固有導電性高分子の有機溶媒 分散液の簡便な製造方法を提供することを目的とする。
課題を解決するための手段
[0006] 本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、固有導電性高 分子の水性コロイド分散液を通液法によって脱イオン処理した後、溶媒置換すること により、固有導電性高分子を有機溶媒へ分散させることが可能であることを既に報告 して ヽる(国際出願番号 PCTZJP2006Z302326)。
この方法を基にして、本発明者はさらなる改良研究を行った結果、上記溶媒置換の 後に、所定の添加剤を添加することで、得られた固有導電性高分子の有機溶媒分散 液カゝら作製される薄膜等の導電性が高まることを見出し、本発明を完成した。
[0007] すなわち、本発明は、
1. 固有導電性高分子の水性コロイド分散液を通液法によって脱イオン処理して前 記固有導電性高分子に吸着して 、るカチオンを除去する脱イオン処理工程と、この 脱イオン処理工程後、前記水性コロイド分散液の水を有機溶媒 (ただし、 N—メチル ピロリドンおよびジメチルスルホキシドを除く)で溶媒置換する溶媒置換工程と、この 溶媒置換工程後、 N—メチルピロリドンまたはジメチルスルホキシドをカ卩える添加物処 理工程と、を備えること特徴とする固有導電性高分子の有機溶媒分散液の製造方法
2. 前記 N—メチルピロリドンまたはジメチルスルホキシドの添加量力 有機溶媒分
散液の総体積に対して、 0. 01〜5. 00% (WZV)である 1の固有導電性高分子の 有機溶媒分散液の製造方法、
3. 前記 N—メチルピロリドンまたはジメチルスルホキシドの添加量力 有機溶媒分 散液の総体積に対して、 0. 01〜0. 99% (WZV)である 2の固有導電性高分子の 有機溶媒分散液の製造方法、
4. 前記脱イオン処理工程が、イオン交換法により行われる 1の固有導電性高分子 の有機溶媒分散液の製造方法、
5. 前記脱イオン処理工程の前に、前記固有導電性高分子の水性コロイド分散液を 限外ろ過するろ過工程を備える 1の固有導電性高分子の有機溶媒分散液の製造方 法、
6. 前記溶媒置換工程が、固形分濃度 0. 05〜: L0. 0質量%の範囲で行われる 1の 固有導電性高分子の有機溶媒分散液の製造方法、
7. 前記溶媒置換工程が、水分含量 1%以下になるまで行われる 1の固有導電性高 分子の有機溶媒分散液の製造方法、
8. 前記溶媒置換工程が、前記水性コロイド分散液中に前記有機溶媒を徐々に添 加しながら水を除去することで行われる 1の固有導電性高分子の有機溶媒分散液の 製造方法、
9. 前記有機溶媒が、炭素数 1〜3のアルコールである 1の固有導電性高分子の有 機溶媒分散液の製造方法、
10. 前記有機溶媒が、沸点 80°C以下の有機溶媒である 1の固有導電性高分子の 有機溶媒分散液の製造方法、
11. 前記固有導電性高分子が、少なくともァ-リン単位を含む 1の固有導電性高分 子の有機溶媒分散液の製造方法、
12. 前記固有導電性高分子が、ドーピングされたポリア-リン、ドーピングされたポ リチォフェン、これらの混合物、またはこれらの共重合体である 1の固有導電性高分 子の有機溶媒分散液の製造方法、
13. 1〜12のいずれかの製造方法より得られる固有導電性高分子の有機溶媒分 散液、
14. N—メチルピロリドンまたはジメチルスルホキシドを含有し、水分含量が 1%以 下である固有導電性高分子の有機溶媒 (ただし、 N—メチルピロリドンおよびジメチル スルホキシドを除く)分散液、
15. 前記 N—メチルピロリドンまたはジメチルスルホキシドの含有量力 有機溶媒分 散液の総体積に対して、 0. 01〜5. 00% (WZV)である 14の固有導電性高分子の 有機溶媒分散液、
16. 前記 N—メチルピロリドンまたはジメチルスルホキシドの含有量力 有機溶媒分 散液の総体積に対して、 0. 01〜0. 99% (WZV)である 15の固有導電性高分子の 有機溶媒分散液、
17. 前記有機溶媒が、炭素数 1〜3のアルコールである 14の固有導電性高分子の 有機溶媒分散液、
18. 前記有機溶媒が、沸点 80°C以下の有機溶媒である 14の固有導電性高分子 の有機溶媒分散液、
19. 前記固有導電性高分子が、少なくともァ-リン単位を含む 14の固有導電性高 分子の有機溶媒分散液、
20. 前記固有導電性高分子が、ドーピングされたポリア-リン、ドーピングされたポ リチォフェン、これらの混合物、またはこれらの共重合体である 14の固有導電性高分 子の有機溶媒分散液、
21. 前記固有導電性高分子が、ドーピングされたポリア-リンとドーピングされたポ リチォフェンとの混合物、またはこれらの共重合体である 14の固有導電性高分子の 有機溶媒分散液、
22. 前記固有導電性高分子が、ドーピングされたポリア-リンとドーピングされたポ リチォフェンとの混合物である 14の固有導電性高分子の有機溶媒分散液 を提供する。
発明の効果
本発明の製造方法によれば、固有導電性高分子の有機溶媒分散液を簡便に製造 することが可能であるだけでなぐ場合によっては、その水分含量を 1%以下まで低 減することができる。
また、本発明の固有導電性高分子の有機溶媒分散液には所定の添加剤が含まれ るため、この分散液カゝら作製された薄膜等は導電性に優れる。
本発明の製造方法により得られた固有導電性高分子の有機溶媒分散液は、コーテ イング剤等として使用される場合に、その組成を簡便にすることができ、コーティング 被膜に固有導電性高分子の有する特性、すなわち導電性および Zまたは熱線吸収 能 (赤外線吸収能)を十分に発揮させることができる。このため、本発明の固有導電 性高分子の有機溶媒分散液は、電極材料や帯電防止剤、紫外線吸収剤、熱線吸収 剤、電磁波吸収剤、センサ、電解コンデンサ用電解質、二次電池用電極などに好適 に利用することができ、導電性高分子の応用分野を更に広げることが可能である。 発明を実施するための最良の形態
[0009] 以下、本発明を更に詳しく説明する。
本発明に係る固有導電性高分子の有機溶媒分散液の製造方法は、固有導電性高 分子の水性コロイド分散液を通液法によって脱イオン処理して固有導電性高分子に 吸着しているカチオンを除去する脱イオン処理工程と、この脱イオン処理工程後、水 性コロイド分散液の水を有機溶媒で溶媒置換する溶媒置換工程と、この溶媒置換ェ 程後、 N—メチルピロリドンまたはジメチルスルホキシドをカ卩える添加物処理工程と、 を備えるものである。
ここで、固有導電性高分子とは、当業界において一般的に Intrinsically Conductive Polymers (ICPs)と呼ばれる高分子であり、ドーパントによるドーピングによって、ポリ ラジカルカチォニック塩またはポリラジカルァ-ォニック塩が形成された状態にある、 それ自体導電性を発揮し得る高分子を ヽぅ。
[0010] 本発明で使用可能な固有導電性高分子としては特に限定はなぐ例えば、ァニリン 、ピロール、チォフェン、アセチレン、またはこれらの誘導体のポリマーなど公知の各 種高分子をドーパントによりドーピングしたものが挙げられる。なお、これらの高分子 は、単独で用いることもでき、 2種以上を混合して用いることもできる力 その一部に 少なくともァ-リン単位を含む高分子を用いることが好適である。また、ドーパントとし ては、ポリスチレンスルホン酸やメタンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、しょ うのうスルホン酸などのスルホン酸化合物、酢酸などのカルボン酸化合物、塩酸や臭
化水素酸などのハロゲンィ匕水素等が挙げられる。
[0011] これらの固有導電性高分子のうち、特開平 7— 90060号公報および特表平 2— 50 0918号公報に記載された手法により製造することができ、また市販品として水性コロ イド分散液を容易に入手可能なポリチォフェン (具体的にはポリ(3, 4—エチレン)ジ ォキシチォフェン)、ポリア-リン、これらの混合物またはこれらの共重合体を用いるこ とが好ましい。特に、非常に小さな分散粒子径を有する水性コロイド分散液として入 手可能なポリア-リン、ポリア-リンとポリチォフェンとの混合物およびそれらの共重合 体が最適である。
[0012] これらの固有導電性高分子の水性コロイド分散液中には、製造時に使用される塩 類 (過硫酸アンモ-ゥムゃ過硫酸カリウムなど)の分解生成物(アンモ -ゥムイオンや カリウムイオン、硫酸イオンなど)や、余剰ドーパント(各種スルホン酸など)などのフリ 一な状態で存在するイオンが多量に含まれている。また、分散液中の固有導電性高 分子粒子のドーパント部分にアンモ-ゥムイオンやカリウムイオンなどのカチオンが強 く吸着して存在している。
固有導電性高分子を有機溶媒に分散させる際に、これらのフリーイオンおよび余剰 ドーパントが悪影響を及ぼし、安定な分散液を得ることができないため、これらを除去 することが必要となる。
[0013] [脱イオン処理工程]
本発明においては、脱イオン処理工程により、これらのフリーイオンおよび余剰ドー パント、固有導電性高分子に吸着しているカチオン成分を取り除くことになる。
脱イオン処理としては、固有導電性高分子に吸着しているカチオン成分を除去可 能な方法であれば制限はないが、特に、固有導電性高分子粒子に強く吸着している カチオン成分を効率的に除去し得ることから、イオン交換法を使用して脱イオン処理 することが好ましい。この場合、固有導電性高分子の水性コロイド分散液と、陽イオン 交換榭脂および Zまたは陰イオン交換樹脂とを接触させることによりイオン交換する ことができる。その温度は、一般的に 0〜: LOO°Cで行うことができる力 イオン交換榭 脂の耐熱性や作業性を考慮すると、 5〜50°Cで行うことが好ま 、。
[0014] 陽イオン交換榭脂としては、特に限定されるものではなぐ公知の各種陽イオン交
換榭脂を用いることができるが、水素型強酸性陽イオン交換樹脂が好ましい。その具 体例としては商品名アンバーライト IR—120B (オルガノ製)などが挙げられる。陰ィ オン交換榭脂としても、特に限定されるものではなぐ公知の各種陰イオン交換榭脂 を用いることができるが、水酸基型強塩基性陰イオン交換樹脂が好ましい。その具体 例としては商品名アンバーライト IRA— 410 (オルガノ製)などが挙げられる。
[0015] 固有導電性高分子の水性コロイド分散液と、イオン交換樹脂とを接触させる手法は 、カチオン成分を除去し得る手法であれば特に限定されるものではないが、上述した カチオン成分除去効果を高めるためには、固有導電性高分子の水性コロイド分散液 を、イオン交換榭脂を充填したカラム中を通過させる通液法が最適である。この場合 、固有導電性高分子の水性コロイド分散液を、カラム中を通過させる速度としては、 1 時間当たりの空間速度 1〜: LO程度が好ま 、。
[0016] 固有導電性高分子の水性コロイド分散液と、陽イオン交換榭脂および陰イオン交 換榭脂との接触においては、どちらか一方との接触のみでも良いが、双方と接触させ ることにより、より効果的に脱イオン処理を行うことができる。陽イオン交換榭脂および 陰イオン交換樹脂の双方と接触させる場合、接触させる順序は特に限定されな ヽが 、陰イオン交換により水性コロイド分散液の pHが高くなると、固有導電性高分子の脱 ドーパントが起こり、導電率が著しく劣化する可能性があるため、はじめに陽イオン交 換榭脂と接触させ、次 ヽで陰イオン交換樹脂と接触させることが好まし 、。
[0017] イオン交換法を用いて脱イオン処理を行う際、水性コロイド分散液の固形分濃度は 、 0. 001〜10. 0質量%程度とすることができるが、操作性や生産効率を考慮すると 、固形分濃度 0. 05〜5. 0質量%程度とすることが好ましい。ここで、固有導電性高 分子が、ポリア二リン、ポリア二リンとポリチオフ ンとの混合物、またはそれらの共重 合体の場合、固形分濃度が 1質量%のときに pHが 3以下、電気伝導度が 5mSZcm 以下であることが好ましい。
なお、イオン交換法を用いて脱イオン処理を行った固有導電性高分子の水性コロ イド分散液は、導電性維持に必要なドーパントまでもが除去されてしまう可能性があ るため、脱イオン処理後にドーパントの補充が必要となる場合がある。
[0018] [ろ過工程]
また、前述のフリーイオンおよび余剰ドーパントは、限外ろ過法を用いることによつ て効率的に除去することが可能であるため、限外ろ過法によるろ過工程を行った後 に、上述した脱イオン処理工程を行うと、より不純物の少ない水性コロイド分散液とす ることがでさる。
限外ろ過を行う場合、限外ろ過膜または限外ろ過チューブを使用し、それらの性質 を損なわない温度、例えば、 0〜80°C程度でろ過することが好ましい。また、フリーィ オンや余剰ドーパントを十分に除去するために、連続的または断続的に注水しなが らろ過することが好ましい。
[0019] 使用する限外ろ過膜または限外ろ過チューブの分画分子量については特に限定 されないが、分画分子量が小さすぎる場合には工程に要する時間が著しく長くなり、 反対に大きすぎる場合には原料として使用する固有導電性高分子までもが流出して しまう可能性がある。したがって、分画分子量が 10, 000-200, 000の限外ろ過膜 またはチューブを使用することが好ましい。
限外ろ過の際には、固有導電性高分子の水性コロイド分散液の固形分濃度は、 0. 001-10. 0質量%程度とすることができる力 操作性や生産効率の面から 0. 05〜 5. 0質量%程度とすることが好ましい。ろ過時間については特に限定されないが、通 常 1〜50時間で行われる。
ここで、固有導電性高分子がポリア-リンの場合、固形分濃度が 3質量%のときに p Hが 3以下であることが好ましぐポリ 3, 4—エチレンジォキシチォフェンの場合、 固形分濃度が 1. 3質量%のときに pHが 3以下であることが好ましい。
[0020] 限外ろ過後、さらにイオン交換法などで脱イオン処理工程を行った後の固有導電 性高分子の水性コロイド分散液の pH値は、限外ろ過後のそれよりも小さくなるが、固 有導電性高分子がポリア-リンの場合、固形分濃度が 3質量%のときに 2以下である ことが好ましぐポリ 3, 4 エチレンジォキシチォフェンの場合、固形分濃度が 1質 量%のときに 2. 5以下であることが好ましい。
[0021] [溶媒置換工程]
本発明では、上述の手法により脱イオン処理を行った固有導電性高分子の水性コ ロイド分散液中の水を、有機溶媒で置換して固有導電性高分子の有機溶媒分散液
を得る。
溶媒置換法としては、特に限定されるものではなぐ減圧下または常圧下で水を除 去した後に有機溶媒を添加する方法、水性コロイド分散液に有機溶媒を加えた後に 減圧下または常圧下で水を除去する方法、減圧下または常圧下で、水性コロイド分 散液中に有機溶媒を徐々に添加しながら水を除去する方法などを採用することがで きる。
これらの中でも、得られた固有導電性高分子の有機溶媒分散液中の水分含有量を できる限り少なくするためには、減圧下または常圧下で、水性コロイド分散液中に有 機溶媒を徐々に添加しながら水を除去する方法を用いることが好まし 、。
[0022] 溶媒置換工程に用いられる有機溶媒としては、添加剤として用いられる N—メチル ピロリドンおよびジメチルスルホキシド以外の有機溶媒であれば特に制限されな ヽが 、水分の除去を効率的に行うためには親水性有機溶媒であることが好ましい。親水 性有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、 1 プロパノール、 2—プロパ ノール、 1ーブタノール、 1一へキサノール、 1ーォクタノールなどのアルコール類;ァ セトン、メチルェチルケトン、ジェチルケトンなどのケトン類;ホルムアミド、 N—メチル ァセトアミドなどのアミド類;ジェチルエーテルなどのエーテル類;酢酸メチル、酢酸ェ チルなどのエステル類等が挙げられる。
これらの中でも、メタノール、エタノール、 1—プロパノール、 2—プロパノールなどの 炭素数 1〜3のアルコールがより一層好ましい。
特に、実使用場面での利便性を考慮すると、沸点 80°C以下の有機溶媒が好適で ある。
なお、これらの有機溶媒は単独で使用しても良ぐ 2種類以上混合して使用しても 良い。
[0023] 溶媒置換時の温度は、使用する有機溶媒の沸点により異なるが、置換処理時の固 有導電性高分子の安定性を考慮し、減圧下、かつ、できる限りの低温下で行うことが 好ましい。溶媒置換時の固形分濃度については、操作性や生産性効率の面から 0. 05〜10. 0質量%程度であることが好ましい。有機溶媒を徐々に添加しながら水を 除去する場合、有機溶媒の添加速度は、固形分濃度が上記の範囲内になるように制
御することが好ましい。
[0024] [添加物処理工程]
本発明では、上述の方法により得られた固有導電性高分子の有機溶媒分散液に、 さらに導電性を向上させる化合物を添加する工程を備える。
導電性を向上させる化合物としては、 N—メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、 エチレングリコール、 N, N—ジメチルァセトアミド、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロ フラン、ァセトニトリル等が挙げられる力 導電性向上効果という点から、 N—メチルビ 口リドン、ジメチルスルホキシドが好ましい。
導電性を向上させる化合物の添加量は、有機溶媒分散液の総体積に対して、 0. 0 1〜5. 00% (WZV)が好ましぐ 0. 01〜0. 99% (WZV)がより好ましい。
[0025] 以上のような一連の処理により、水分含量が 2%以下、場合によっては 1%以下とい う、従来の製法では達成し得ない程度まで水分含量が低減された固有導電性高分 子の有機溶媒分散液を得ることができる。
このようにして得られた固有導電性高分子の有機溶媒分散液は、固有導電性高分 子の分散性をさらに向上させるために、サンドグラインダー、ボールミル、デイスパー、 コロイドミル、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザーなどにより湿式粉砕するこ とが好ましい。特に、装置の取扱性、処理に要する時間、処理後の分散性などの点 から、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザーにより湿式粉砕することが好まし い。
本発明の製法で得られる、水分含量の少ない固有導電性高分子の有機溶媒分散 液は、導電性および熱線吸収能 (赤外線吸収能) t ヽぅ固有導電性高分子の特性を 十分に発揮し得、しかも所定の添加剤を含むことにより優れた導電性を有しているた め、電極材料や帯電防止剤、紫外線吸収剤、熱線吸収剤、電磁波吸収剤、センサ、 電解コンデンサ用電解質、二次電池用電極など種々の用途に好適に用いることがで きる。
実施例
[0026] 以下、実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する力 本発明 は、下記の実施例に限定されるものではない。なお、実施例における各物性の測定
法および測定条件は、以下のとおりである。
[l]pH
デジタル pHメーター HM— 50V (東亜電波工業 (株)製)を用い、 25°Cにて測定し た。
[2]電導度
電導度計 CM - 30G (東亜電波工業 (株)製)を用い、 25°Cにて測定した。
[3]表面抵抗値
Loresta IP TCP— T250 (三菱ィ匕学 (株)製)により測定した。
[4]粘度
EL型回転粘度計((株) TOKIMEC製)を用い、 25°Cにて測定した。
[5]粒子径
マイクロトラック UPA250 (マイクロトラック社製)により測定した。
[6]含水量
カールフィッシャー水分計 MKA— 3p (京都電子工業 (株)製)により測定した。
[0027] [実施例 1]
ドーピングされたポリア-リンを含む固有導電性高分子の水性コロイド分散液 6903 — 104— 004 (ORMECON社製、固形分濃度 1. 3質量%、pH = 2. 0、電導度 3. 9mS/cm) lOOOgを、水素型強酸性カチオン交換榭脂(オルガノ製 IR— 120B) 25 OmLを充填したカラム(カラム径 45mm)に 25°Cで通液し(1時間当りの空間速度 7) 、カチオン交換水性コロイド分散液 1506gを得た。得られたカチオン交換水性コロイ ド分散液の pHは 2. 1、電導度は 2. 6mSZcm、固形分濃度は 0. 9質量%であった
[0028] 得られたカチオン交換水性コロイド分散液を、エバポレーター(容器内圧力 60Torr 、外部ヒーター温度 75°C)を使用し、メタノール 22. 5Lを徐々に添加しながら水を除 去する方法で水媒体をメタノールに置換し、固有導電性高分子のメタノール分散液 8 64gを得た (溶媒置換中、固形分濃度は 0. 5〜3質量%に保った)。このメタノール分 散液 860gにメタノール 334g、 N—メチルピロリドン 9. 6g (対メタノール分散液 0. 7w Zv%)を添加して、固形分濃度を 1質量%に調整した後、超音波ホモジナイザー (D
r. Hielscher社製 UIP2000)にて処理することにより、固有導電性高分子のメタノー ル分散液 1114gを得た。得られたメタノール分散液は、固形分濃度 1. 1質量%、粘 度 2. 4mPa' s、水分 0. 9質量%、粒子径 58nmであった。このメタノール分散液をァ プリケーター(ウエット膜厚 25 μ m)によりガラス板上に塗布し、 110°Cにて 10分間乾 燥させて得た膜の表面抵抗値は 1. 8 X 103 Ω Z口であった。
なお、 N—メチルピロリドンを添加しな力つた場合の表面抵抗値は、 3. 5 Χ 103ΩΖ 口であった。
[0029] [実施例 2]
ドーピングされたポリア-リンを含む固有導電性高分子の水性コロイド分散液 6903 — 104— 005 (ORMECON社製、固形分濃度 1. 2質量%、pH= l. 9、電導度 4. 2mS/cm) lOOOgを、水素型強酸性カチオン交換榭脂(オルガノ製 IR— 120B) 25 OmLを充填したカラム(カラム径 45mm)に 25°Cで通液し(1時間当りの空間速度 7) 、カチオン交換水性コロイド分散液 1389gを得た。得られたカチオン交換水性コロイ ド分散液の pHは 2. 1、電導度は 3. lmS/cm,固形分濃度は 0. 9質量%であった
[0030] 得られたカチオン交換水性コロイド分散液を、エバポレーター(容器内圧力 60Torr 、外部ヒーター温度 75°C)を使用し、メタノール 22Lを徐々に添加しながら水を除去 する方法で水媒体をメタノールに置換し、固有導電性高分子のメタノール分散液 86 Ogを得た (溶媒置換中、固形分濃度は 0. 5〜3質量%に保った)。このメタノール分 散液 854gにメタノール 438g、 N—メチルピロリドン 8. lg (対メタノール分散液 0. 6w Zv%)を添加して、固形分濃度を 1質量%に調整した後、超音波ホモジナイザー (D r. Hielscher社製 UIP2000)にて処理することにより、固有導電性高分子のメタノー ル分散液 1236gを得た。得られたメタノール分散液は、固形分濃度 1. 0質量%、粘 度 2. 5mPa' s、水分 0. 8質量%、粒子径 29nmであった。このメタノール分散液をァ プリケーター(ウエット膜厚 25 μ m)によりガラス板上に塗布し、 110°Cにて 10分間乾 燥させて得た膜の表面抵抗値は 2. 3 X 103 Ω Z口であった。
なお、 N—メチルピロリドンを添カ卩しな力つた場合の表面抵抗値は、 6. 6 X 103ΩΖ 口であった。
[0031] [実施例 3]
ドーピングされたポリア-リンを含む固有導電性高分子の水性コロイド分散液 6903 — 109— 003 (ORMECON社製、固形分濃度 1. 6質量%、pH= l. 8、電導度 6. 4mS/cm) 800gを、水素型強酸性カチオン交換榭脂(オルガノ製 IR— 120B) 250 mLを充填したカラム (カラム径 45mm)に 25°Cで通液し(1時間当りの空間速度 7)、 カチオン交換水性コロイド分散液 1137gを得た。得られたカチオン交換水性コロイド 分散液の pHは 1. 9、電導度は 4. 9mSZcm、固形分濃度は 1. 1質量%であった。
[0032] 得られたカチオン交換水性コロイド分散液を、エバポレーター(容器内圧力 60Torr 、外部ヒーター温度 75°C)を使用し、メタノール変性エタノール 11Lを徐々に添加し ながら水を除去する方法で水媒体をメタノール変性エタノールに置換し、固有導電 性高分子のメタノール変性エタノール分散液 713gを得た (溶媒置換中、固形分濃度 は 0. 5〜3質量%に保った)。このメタノール変性エタノール分散液 705gにメタノー ル変性エタノール 529g、ジメチルスルホキシド 9. 9g (対メタノール変性エタノール分 散液 0. 6wZv%)を添加して、固形分濃度を 1質量%に調整した後、超音波ホモジ ナイザー(Dr. Hielscher社製 UIP2000)にて処理することにより、固有導電性高分 子のメタノール変性エタノール分散液 1171gを得た。得られたメタノール変性エタノ ール分散液は、固形分濃度 1. 0質量%、粘度 20mPa,s、水分 0. 9質量%、粒子径 25nmであった。このメタノール変性エタノール分散液をアプリケーター(ウエット膜厚 25 μ m)によりガラス板上に塗布し、 110°Cにて 10分間乾燥させて得た膜の表面抵 抗値は 6. Ο Χ 102 Ω /口であった。
[0033] [比較例 1]
ポリ 3, 4—エチレンジォキシチォフェン(PEDOT)の水性コロイド分散液 Baytro n— P (Bayer社製、固形分濃度 1. 3質量%、pH= l. 7、電導度 7. lmS/cm) 21 5gに水素型強酸性カチオン交換榭脂 (オルガノ製 IR— 120B) 10gと水酸基型強塩 基性ァ-オン交換榭脂 (オルガノ (株)製 IRA— 410) 10gを添加し、 8時間攪拌した 。次いで各イオン交換体をろ過により除去することにより、カチオンーァ-オン交換 P EDOT水性コロイド分散液 206gを得た。得られたカチオン交換 PEDOT水性コロイ ド分散液の ρΗは 2. 0、電導度は 6. OmSZcmであった。
得られたカチオンーァ-オン交換 PEDOT水性コロイド分散液をエバポレーター( 容器内圧力 60Torr、外部ヒーター温度 75°C)を使用して、メタノール 9. 0Lを徐々に 添加しながら水を除去する方法で水媒体をメタノールに置換することを試みた (溶媒 置換中、固形分濃度は 0. 5〜2質量%に保った)。しかし、溶媒置換途中に多量の 凝集物の発生と二層分離が観察され、均一なメタノール分散液を得ることはできなか つ 7こ。