WO2007018225A1 - リン酸基を有する物質の染色方法 - Google Patents
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Abstract
生体試料等からリン酸基を有する物質を容易に検出できる方法、リン酸化アミノ酸残基を簡便に識別する方法、及びリン酸基を有する物質に高い配位結合能を有することから、当該方法で使用でき得る化合物を提供する。
一般式(I):
{式中、Mは、2価の陽イオンに成り得る金属原子であり、Rは、相互に同一又は異なっていてもよく、水素原子;炭素数が1~16であるアルキル基;アシル基、アルコキシカルボニル基、アシルアルキル基、アルコキシカルボニルアルキル基、カルボシキアルキル基、カルバモイルアルキル基、シアノアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アミノアルキル基又はハロアルキル基(ここで、これらの基のアルキル部分の炭素数は、1~16である);カルボキシル基;カルバモイル基;シアノ基;ヒドロキシル基;アミノ基或いはハロゲノ基であり、Xは、結合基であり、Yは、標識基である}で示される金属錯体化合物は、リン酸基を有する物質に高い配位結合能を有し且つ標識基を有することから、リン酸基を有する物質を容易に特定することができる。
Description
明 細 書
リン酸基を有する物質の染色方法
技術分野
[0001] 本発明は、リン酸基を有する物質の染色方法に関するものである。
背景技術
[0002] ある種の生体内酵素は、活性中心ゃァロステリック部位を代表とする特定部位にセ リンゃトレオニン、チロシン残基を有し、これらの水酸基が、キナーゼ等と呼ばれる酵 素によりリン酸化されたり或いは脱リン酸化されることによって、酵素活性が調整され ている。また、リシン、アルギニン、ヒスチジンのアミノ基或いはイミノ基や、ァスパラギ ン酸、グルタミン酸のカルボキシル基がリン酸ィ匕 (又は脱リン酸化)されることによって 、活性が調整されている酵素もある。このようなリン酸ィ匕一脱リン酸ィ匕により調整され ている代謝系としては、グリコーゲン合成の抑制とその分解系がよく知られている。こ の代謝系は、主としてリン酸ィ匕一脱リン酸ィ匕によりカスケード制御され、調整されてい る。
[0003] そして近年、このリン酸ィ匕—脱リン酸化が、疾病に関係する代謝系において重要な 役割を有していることが明ら力となってきている。例えば、細胞のガンィ匕は、リン酸ィ匕 —脱リン酸ィ匕の異常が一因であるといわれている。つまり、細胞周期の進行や停止は 様々な酵素 (タンパク質)のリン酸化 (又は脱リン酸化)により制御されており、このリン 酸ィ匕 (又は脱リン酸化)にはサイクリンとサイクリン依存性キナーゼ (CDK)が関与して いるが、斯カるメカニズムが損傷するとリン酸化 (又は脱リン酸化)に乱れが生じ、その 結果、細胞の異常増殖が引発されることになる。その他にも、プロテインキナーゼじが 、アトピー性皮膚炎や花粉症等のアレルギー疾患の原因となるヒスタミンの脱顆粒に 関することや、アルツハイマー病患者の脳で発生する神経原繊維変化は、リン酸化さ れたタウタンパク質によることが明らかにされている。従って、タンパク質のリン酸ィ匕一 脱リン酸化状況を把握することは、生体組織細胞の遺伝子発現を探索したり、酵素 活性評価のみならず、疾病の診断や治療にも役立つ可能性がある。
[0004] ところが、従来より用いられてきたリン酸ィ匕タンパク質 (又は脱リン酸ィ匕タンパク質)の
特定方法には、様々な欠点がある。例えば、酵素免疫法は、対象となるタンパク質試 料が微量であっても分析可能という利点があるが、必要な抗体を充分量得ることが困 難であり、また、対象タンパク質が数 kDa以下である場合には、タンパク質中のリン酸 化部位に結合する抗体を調整することができない。また、放射性同位元素32 Pで標識 されたリン酸を使用することによって、タンパク質への特異的結合を検出する方法も 考えられるが、放射性同位元素の取り扱いには当然に注意が必要であり、廃液の管 理ゃ処理まで要求される。
[0005] ところで、非特許文献 1には亜鉛錯体が記載されており、当該亜鉛錯体は、二つの 亜鉛イオンがジヌクレオチド中のリン酸基 (リン酸ジエステル基)に作用し、切断すると いう機能を有する。しかし、当該文献における当該錯体の機能はあくまで触媒として のものであり、リン酸基との配位結合能に関しては、一切記載されていない。実際、本 発明者らによる実験によれば、当該錯体と 2つのヌクレオチド間のリン酸基 (リン酸ジ エステル基)との解離定数は非常に高い。即ち、リン酸ジエステル基に対する当該錯 体の配位結合能は低い。
[0006] また、同じく非特許文献 2にも、上記亜鉛錯体と類似の構造を有する鉄錯体が記載 されている。しかし、当該鉄錯体は、酸素分子の運搬タンパク質であるヘムエリトリン のモデルとして合成されたものであり、当該鉄錯体とリン酸モノエステル基との配位結 合能に関して全く記載も示唆もされていないことは、上記非特許文献 1と同様である。
[0007] 一方で、特許文献 1及び非特許文献 3には、リン酸基を有する物質を捕捉可能な 亜鉛錯体として、アルコキシドで架橋された二核亜鉛錯体構造を有する亜鉛錯体が 記載されている。また、特許文献 2には、リン酸ィ匕ペプチドの標識方法が記載されて いる。しかし、前者の当該亜鉛錯体については、当該亜鉛錯体のみではリン酸基を 有する物質を捕捉可能であっても標識することはできない。更に後者のリン酸ィ匕ぺプ チドの標識方法には、ゲル染色、電子スピン共鳴 (ESR)及びァフィ二ティースピン力 ラムクロマトグラフィーが挙げられ、リン酸ィ匕ペプチドの標識方法に使用される亜鉛錯 体化合物の標識基には、蛍光発色基、ニトロォキシドラジカル含有基及びピオチン が挙げられており、また、リン酸化ペプチドの標識方法に使用される錯体化合物の金 属原子は、亜鉛原子に限定しているが、それ以外の標識方法及び錯体ィ匕合物につ
いての具体的な記載はない。カ卩えて、特許文献 3及び非特許文献 4にも、ピオチンを 有する亜鉛錯体を用いた表面プラズモン共鳴 (SPR)によるリン酸ィ匕ペプチド又はリ ン酸化タンパク質の検出方法が記載されて 、るが、それ以外の検出方法にっ 、ての 具体的な記載はない。
特許文献 1:国際公開第 03Z053932号パンフレット
特許文献 2:国際公開第 2004Z078724号パンフレット
特許文献 3:国際公開第 2005Z038442号パンフレット
非特許文献 1:モリオ ヤシ口、外 2名, "Preparation and Study of Dinuclear Zinc(II) C omplex for the Efficient Hydrolysis of the Phosphodiester Linkage in a Diribonucleot ide〃,ジャーナノレ ォブ ザ ケミカノレ ソサエティ、ケミカノレ コミュニケーションズ (Jou rnal of the Chemical society, chemical Communications), 1995年, p.1793— 1794 非特許文献 2 :ヒデカズ ァリイ、外 6名,〃A novel diiron complex as a fonctional mod el for hemerythrin",ジャーナノレ ォブ インオーガニック ノ ィオケミストリー (Journal of Inorganic Biochemistry), 2000年, 82卷, p.153— 162
特干文献 3:ェづン ヤノンタ、外 4名 , ecognition of phosphate monoester dianio n by an alkoxide— bridged dinuclear zinc(II) complex ,ダノレトン トフンザクシヨンズ (D alton Transactions), 2004年, p.1189— 1193
非特許文献 4 :カズキ イナモリ、外 7名, "Detection and Quantification of On- Chip P hosphorylated Peptides by Surface Plasmon Resonance Imaging Techniques Using a Phosphate Capture Molecule",アナリティカノレ ケミストリー (Analytical Chemistry), 2 005年, 77卷, p.3979-3985
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
上述した状況の下、本発明が解決すべき課題は、リン酸基を有する物質を容易に 検出すベぐこれを染色する方法及び当該染色方法を利用してリン酸化アミノ酸残基 を識別する方法を提供することにある。これに加えて、本発明では、リン酸基を有する 物質に対して優れた配位結合能を有し、上記方法に使用できる化合物を提供するこ とも目的としている。
課題を解決するための手段
[0009] 本発明者らは、上記課題を解決すベぐリン酸基を有する物質中のリン酸基 (リン酸 モノエステル基)に配位可能な金属錯体について鋭意研究を進めたところ、本発明 の化合物は、リン酸イオン或 、はリン酸モノエステル中の 2つの水酸基に対する配位 結合能が極めて高ぐその結果、リン酸基を有する物質中のリン酸基 (リン酸モノエス テル基)へ強く配位して、多数の物質を含んだ混合試料中でもリン酸基を有する物質 へ特異的に結合して複合体を形成することができ、また、本発明の金属錯体化合物 は標識基を有していることから、当該複合体を容易に特定できることを見出して本発 明を完成した。
[0010] 即ち、本発明は、
(1)一般式 (I) :
[0012] {式中、 Mは、 2価の陽イオンに成り得る金属原子であり、 Rは、相互に同一又は異な つていてもよぐ水素原子;炭素数が 1〜 16であるアルキル基;ァシル基、アルコキシ カルボ-ル基、ァシルアルキル基、アルコキシカルボ-ルアルキル基、カルボシキア ルキル基、力ルバモイルアルキル基、シァノアルキル基、ヒドロキシアルキル基、ァミノ アルキル基又はハロアルキル基(ここで、これらの基のアルキル部分の炭素数は、 1 〜 16である);カルボキシル基;力ルバモイル基;シァノ基;ヒドロキシル基;アミノ基或 いはハロゲノ基であり、 Xは、結合基であり、 Yは、標識基である }で示される金属錯体 化合物を用 ヽることを特徴とする、リン酸基を有する物質の染色方法;
[0013] (2)—般式 (Π) :
[0014]
[0015] {式中、 Rは、相互に同一又は異なっていてもよぐ水素原子;炭素数が 1〜16である アルキル基;ァシル基、アルコキシカルボ-ル基、ァシルアルキル基、アルコキシカル ボ-ルアルキル基、カルボシキアルキル基、力ルバモイルアルキル基、シァノアルキ ル基、ヒドロキシアルキル基、アミノアルキル基又はハロアルキル基(ここで、これらの 基のアルキル部分の炭素数は、 1〜16である);カルボキシル基;力ルバモイル基;シ ァノ基;ヒドロキシル基;アミノ基或いはハロゲノ基であり、 Xは、結合基であり、 Yは、 標識基である }で示される亜鉛錯体ィ匕合物を用いることを特徴とする、リン酸基を有 する物質の染色方法;
[0016] (3)標識基がピオチンであることを特徴とする、上記(1)又は(2)記載のリン酸基を有 する物質の染色方法;
[0017] (4)上記(1)記載のリン酸基を有する物質の染色方法と抗リン酸化アミノ酸抗体を用 いる免疫染色法を組み合わせることを特徴とする、リン酸化アミノ酸残基の識別方法;
[0018] (5)上記(2)記載のリン酸基を有する物質の染色方法と抗リン酸化アミノ酸抗体を用 いる免疫染色法を組み合わせることを特徴とする、リン酸化アミノ酸残基の識別方法;
[0019] (6)上記(3)記載のリン酸基を有する物質の染色方法と抗リン酸化アミノ酸抗体を用 いる免疫染色法を組み合わせることを特徴とする、リン酸化アミノ酸残基の識別方法;
[0020] (7)—般式 (III) :
[0022] {式中、 mは、 2価の陽イオンに成り得る金属原子 (但し、亜鉛原子である場合を除く) であり、 Rは、相互に同一又は異なっていてもよぐ水素原子;炭素数が 1〜16である アルキル基;ァシル基、アルコキシカルボ-ル基、ァシルアルキル基、アルコキシカル ボ-ルアルキル基、カルボシキアルキル基、力ルバモイルアルキル基、シァノアルキ ル基、ヒドロキシアルキル基、アミノアルキル基又はハロアルキル基(ここで、これらの 基のアルキル部分の炭素数は、 1〜16である);カルボキシル基;力ルバモイル基;シ ァノ基;ヒドロキシル基;アミノ基或いはハロゲノ基であり、 Xは、結合基であり、 Yは、
標識基である }で示される金属錯体化合物;
[0023] (8)標識基がピオチンであることを特徴とする、上記 (7)記載の金属錯体化合物; [0024] (9)上記(1)の一般式 (I)で示される金属錯体ィ匕合物を含むことを特徴とする、リン酸 基を有する物質の染色剤又は染色助剤;
[0025] (10)上記(1)の一般式 (I) (式中、 Yは酵素である)で示される金属錯体化合物、該 酵素に対する発色試薬、及び必要により基質を含む、リン酸基を有する物質の染色 用キット;
[0026] (11)上記(1)の一般式 (I) (式中、 Yはピオチンである)で示される金属錯体ィ匕合物、 アビジン若しくはストレプトアビジン又は抗ビォチン抗体が結合した酵素、該酵素に 対する発色試薬、及び必要により基質を含む、リン酸基を有する物質の染色用キット である。
発明の効果
[0027] 上記一般式 (I)で示される金属錯体化合物は、リン酸基を有する物質へ特異的に 結合して複合体を形成することができ、且つ標識基を有していることから当該複合体 を容易に特定できるものとして、特に、生化学的研究や病気の診断治療等において 非常に有用である。
[0028] また、上記一般式 (II)で示される亜鉛錯体化合物は、中性条件下でリン酸基を有 する物質へ特異的に強く結合して複合体を形成することができ、且つ標識基を有し ていることから当該複合体を容易に特定できるものとして、特に、生理条件である中 性条件下で行う生化学的研究や病気の診断治療等において非常に有用である。
[0029] また、上記一般式 (I)又は (II)にお 、て、標識基がピオチンである錯体ィ匕合物は、 取り扱いが容易であり、また、様々な染色方法に応用できることから利便性が高ぐリ ン酸基を有する物質を容易に特定できる。
[0030] また、抗リン酸化アミノ酸抗体を用いる免疫染色法は一般によく利用されている染 色法であるため、上記一般式 (I)で示される金属錯体ィ匕合物を用いるリン酸基を有す る物質の染色方法と組み合わせることで、リン酸ィ匕アミノ酸残基を簡便に識別できる。
[0031] また、上記一般式 (II)で示される亜鉛錯体化合物を用いるリン酸基を有する物質の 染色方法と、抗リン酸化アミノ酸抗体を用いる免疫染色法を組み合わせることで、生
理条件である中性条件下でリン酸ィ匕アミノ酸残基を簡便に識別できる。
[0032] また、上記一般式 (I)又は (Π)にお 、て、標識基がピオチンである錯体ィ匕合物を用 Vヽるリン酸基を有する物質の染色方法と、抗リン酸化アミノ酸抗体を用いる免疫染色 法を組み合わせることで、利便性が高くなり、リン酸化アミノ酸残基を簡便に識別でき る。
[0033] また、上記一般式 (ΠΙ)で示される金属錯体化合物は、リン酸基を有する物質に対 して従来にな 、配位結合能を示すことから、上記方法で使用できる化合物として有 用である。
[0034] また、上記一般式 (III)にお 、て、標識基力 、ォチンである金属錯体ィ匕合物は、取 り扱いが容易であり、また、様々な染色方法に応用できることから利便性が高ぐ更に 、リン酸基を有する物質に対して従来にない配位結合能を示すことから、上記方法で 使用できる化合物として有用である。
図面の簡単な説明
[0035] [図 1]実施例 2における亜鉛錯体ィ匕合物 西洋ヮサビペルォキシダーゼ (HRP)結合 ストレプトアビジン複合体溶液による染色後のポリビ-リデンジフルオリド (PVDF)膜 ( A)と SYPRO (登録商標) Ruby protein gel stainによる染色後のゲル(B)であ る。
[図 2]実施例 3における亜鉛錯体ィ匕合物 西洋ヮサビペルォキシダーゼ (HRP)結合 ストレプトアビジン複合体溶液による染色後のポリビ-リデンジフルオリド (PVDF)膜 ( A)と SYPRO (登録商標) Ruby protein gel stainによる染色後のゲル(B)であ る。
[図 3]実施例 4における亜鉛錯体ィ匕合物 西洋ヮサビペルォキシダーゼ (HRP)結合 ストレプトアビジン複合体溶液による染色後のポリビ-リデンジフルオリド (PVDF)膜 ( A)、西洋ヮサビペルォキシダーゼ (HRP)結合抗リン酸ィ匕チ口シン抗体溶液による染 色後のポリビ-リデンジフルオリド (PVDF)膜 (B)、ゥサギ抗リン酸ィ匕セリン抗体溶液 及び西洋ヮサビペルォキシダーゼ (HRP)結合抗ゥサギ免疫グロブリン G (igG)抗体 溶液による染色後のポリビ-リデンジフルオリド (PVDF)膜 (C)及び SYPRO (登録 商標) Ruby protein gel stainによる染色後のゲル(D)である。
発明を実施するための最良の形態
[0036] 本発明の最大の特徴は、標識基を有する一般式 (I)で示される金属錯体化合物又 は一般式 (II)で示される亜鉛錯体化合物を特異的にリン酸基を有する物質と結合さ せ複合体を形成させることによって、リン酸基を有する物質を容易に特定できることに ある。即ち、従来、リン酸基を有する物質と結合できる金属錯体は種々知られていた ものの、一般式 (I)で示される金属錯体化合物又は一般式 (II)で示される亜鉛錯体 化合物に類似の化合物で且つ標識基を有するものはな力つたところ、本発明者らは 、一般式 (I)で示される金属錯体化合物又は一般式 (II)で示される亜鉛錯体化合物 を用いれば、複数の物質が含まれている試料中でも、極めて容易にリン酸基を有す る物質を検出し特定できることを見出し、本発明を完成したものである。
[0037] 一般式 (I)で示される金属錯体化合物、一般式 (II)で示される亜鉛錯体化合物及 び一般式 (ΠΙ)で示される金属錯体化合物につ ヽて説明する。
[0038] 「2価の陽イオンに成り得る金属原子」とは、 2価の正の電荷をもつイオンに成り得る 典型元素又は遷移元素の金属原子である。このような 2価の陽イオンに成り得る金属 原子としては、例えば、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、チタン、バナジウム、ク ロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ゲルマニウム、ストロンチウム、ジ ルコ-ゥム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、ス ズ、ノ リウム、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、水銀、鉛、ポロ- ゥム、ラジウム等を挙げることができ、当該錯体化合物のリン酸基を有する物質に対 する配位結合能が大きいので、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛が好まし ぐマンガン、鉄、亜鉛がより好ましい。
[0039] 「炭素数が 1〜16であるアルキル基」とは、炭素数が 1〜16である直鎖又は分岐鎖 のアルキル基であり、例えば、メチル基、ェチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル 基、へキシル基、ヘプチル基、ォクチル基、ノニル基、デシル基、ゥンデシル基、ドデ シル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、へキサデシル基、イソプロピ ル基、 t ブチル基等を挙げることができ、炭素数力^〜 4である直鎖又は分岐鎖の アルキル基が好ましぐ炭素数 1〜2であるアルキル基がより好ましい。
[0040] 「ァシル基、アルコキシカルボ-ル基、ァシルアルキル基、アルコキシカルボ-ルァ
ルキル基、カルボシキアルキル基、力ルバモイルアルキル基、シァノアルキル基、ヒド ロキシアルキル基、アミノアルキル基又はハロアルキル基」中のアルキル部分は上記 と同義である。
[0041] 「結合基」とは、当該錯体化合物中、主骨格と標識基とを結合する任意の基であり、 当該錯体化合物の製造を容易にしたり、また、当該錯体化合物とリン酸基を有する物 質中のリン酸基との配位を標識基が阻害しないようにする作用を有する。従って、当 該錯体化合物の製造にぉ 、て、標識基が主骨格に直結した原料化合物の入手が容 易であったり、標識基が比較的小さくリン酸基への配位が阻害されない場合には、結 合基は、主骨格と標識基を直結する単なる共有結合であってもよい。結合基としては 、前述した作用を有するものであれば特に限定されないが、例えば、 C1 C6アルキ レン基、アミノ基( NH )、エーエル基( O )、チォエーテル基( S )、カル ボ-ル基( c ( = O) )、チォ -ル基( C ( = S)—)、エステル基、アミド基、ゥレア 基(一 NHC ( = 0) NH )、チォゥレア基(一 NHC ( = S) NH );ァミノ基、エーェ ル基、チォエーテル基、カルボニル基、チォニル基、エステル基、アミド基、ウレァ基 、チォゥレア基力 なる群より選択される基を一端に有する C1— C6アルキレン基;ァ ミノ基、エーエル基、チォエーテル基、カルボ-ル基、チォ-ル基、エステル基、アミ ド基、ウレァ基、チォゥレア基力 なる群より選択される同一又は異なった基を両端に 有する C1 C6アルキレン基;及びアミノ基、エーエル基、チォエーテル基、カルボ -ル基、チォ-ル基、エステル基、アミド基、ウレァ基、チォゥレア基及び C1— C6ァ ルキレン基力 なる群より選択される 2以上、好ましくは 2〜12、特に好ましくは、 2〜 6の基が直線状に結合された基を挙げることができる。ここで、 CI— C6アルキレン基 とは、炭素数 1〜6の直鎖状又は分枝鎖状の 2価脂肪族炭化水素基をいい、例えば 、メチレン、エチレン、プロピレン、テトラメチレン、へキサメチレン、ェチノレメチレン、メ チルプロピレン、ジメチルプロピレン等を挙げることができ、 C1— C4アルキレン基が 好ましぐ C1 C2アルキレン基がより好ましい。
[0042] 「標識基」とは、免疫染色法及びそれと類似する染色法に使用されるものであれば 特に制限はないが、取り扱い性の面力も放射性同位体元素を含むものは好ましくな い。このような標識基としては、例えば、酵素、蛍光発色基、ピオチン、金コロイド等を
挙げることができる。標識基は、結合基を介して当該錯体化合物中に導入するが、そ の方法は、当業者にとって公知である。
[0043] 酵素は、触媒活性を有するタンパク質であるが、生化学の分野で標識酵素として一 般に使用されているものを特に制限なく用いることができる。このような酵素としては、 例えば、西洋ヮサビペルォキシダーゼ(HRP)等のペルォキシダーゼ、アルカリホス ファターゼ、ルシフェラーゼ等を挙げることができる。そして、各酵素に応じた発色試 薬又は発色試薬と基質を作用させれば、酵素により標識されたリン酸基を有する物 質を染色し、検出することができる。このような酵素に対する発色試薬又は発色試薬 と基質の組合せとしては、例えば、西洋ヮサビペルォキシダーゼ (HRP)には ECL ( 商標)、 Super Signal (登録商標)、ジァミノべンジジン (DAB)と過酸化水素等、ァ ルカリホスファタ一ゼには CDP— Star (商標)、 CSPD (登録商標)、ニトロブルーテト ラゾリウム(NBT)と 5 -ブロモ 4—クロ口 3—インドリルリン酸、 AttoPhos (商標) 等、ルシフェラーゼにはルシフェリン等を挙げることができる。
[0044] 蛍光発色基は、比較的長波長の蛍光を安定的に発色し得る置換基をいい、水溶 性、脂溶性を問わず、生化学分野で一般的に使用されているものを特に制限なく用 いることができる。このような蛍光発色基としては、例えば、アミノメチルクマリン及びそ の誘導体、フルォレセイン及びその誘導体、テトラメチルローダミン及びその誘導体、 アントラ-ロイル及びその誘導体、ニトロべンゾキサジァゾール及びその誘導体、ジメ チルァミノナフタレン及びその誘導体等を挙げることができる。
[0045] ピオチンは、卵白由来のアビジンと放線菌由来のストレプトアビジンに対して、特異 的で且つ強い親和性を有している。従って、標識基としてピオチンを有する当該錯体 化合物に、アビジン若しくはストレプトアビジン又は抗ビォチン抗体を結合させ、更に ピオチンィ匕した酵素を作用させれば、又はアビジン若しくはストレプトアビジン又は抗 ピオチン抗体が結合した酵素を作用させれば、ピオチン及びアビジン若しくはストレ ブトアビジン又は抗ビォチン抗体等を介して、本発明の錯体化合物と酵素を特異的 に結合させることができる。そして、当該酵素としてペルォキシダーゼ、アルカリホスフ ァターゼ、ルシフェラーゼ等を用い、各酵素に応じた発色試薬を作用させれば、リン 酸基を有する物質を特定することができる。例えば、リン酸基を有する物質に標識基
としてピオチンを有する当該錯体ィ匕合物を結合させ、当該錯体化合物にストレブトァ ビジンを介し酵素としてアルカリホスファターゼを結合させ、発色試薬として-トロブル ーテトラゾリゥムと 5—プロモー 4 クロロー 3—インドリルリン酸を用いて数時間反応さ せると、リン酸基を有する物質は紫色に発色するので、これにより特定される。また、 ローダミン等の蛍光発色基で標識されたストレプトアビジンも市販されており、これを 使用すれば、通常の蛍光画像解析法でリン酸基を有する物質を特定できる。
[0046] 金コロイドは、金原子凝集体が液相等に分散したもので、走査型電子顕微鏡又は 透過型電子顕微鏡で直接観察できる。従って、金コロイドで標識されたリン酸基を有 する物質は、電子顕微鏡でその局在を観察することができる。また、銀試薬を用いた 増感法により、転写した膜や光学顕微鏡での免疫組織染色にも利用できる。
[0047] リン酸基を有する物質の染色方法につ!、て説明する。
[0048] 「リン酸基を有する物質」とは、 2価のリン酸モノエステルァ-オン(一 OPO 2_)を有
3 する物質、つまり、リン酸モノエステル基を有する物質である。このようなリン酸基を有 する物質としては、例えば、リン酸化されたアミノ酸、リン酸化されたアミノ酸残基、リン 酸化されたアミノ酸残基を有するタンパク質 (リン酸化タンパク質)、リン酸化されたァ ミノ酸残基を有するポリペプチド(リン酸ィ匕ポリペプチド)、リン酸化されたアミノ酸残基 を有するオリゴペプチド (リン酸化オリゴペプチド)、リン酸化されたアミノ酸残基を有 するペプチド(リン酸ィ匕ペプチド)、デォキシリボ核酸 (DNA)、リボ核酸 (RNA)、リン 脂質、リン酸化された糖類等を挙げることができる。
[0049] 「染色方法」とは、主に免疫染色法及びそれと類似する染色法のことである。免疫 染色法とは、ある特定の分子に対する特異的な抗体を利用して抗原抗体反応を行う ことにより、その特定の分子を検出する方法である。検出方法を大別すると直接法と 間接法に分けられ、更に、間接法には酵素抗体法、蛍光抗体法、 ABC (アビジン ピオチン ペルォキシダーゼ複合体)法、金コロイド法等が挙げられる。また、染色す る試料としては、例えば、細胞又は電気泳動後のセルロースアセテート膜、ポリアタリ ルアミドゲル若しくはァガロースゲル等、或いはウェスタンブロット法、サザンブロット 法若しくはノーザンプロット法等のブロッテイング法により転写した-トロセルロース膜 、ナイロン膜又はポリビ-リデンジフルオリド (PVDF)膜等の膜等を挙げることができ
る。
[0050] 一般式 (I)で示される金属錯体化合物又は一般式 (II)で示される亜鉛錯体化合物 は、溶媒に溶解した溶液としても用いることができる。使用できる溶媒は、リン酸基を 有する物質の検出を阻害しないものであれば特に制限されないが、例えば、水 (緩衝 液やその他の塩溶液を含む);メタノール、エタノール等のアルコール;これらの混合 溶媒を挙げることができ、水 (緩衝液やその他の塩溶液を含む)とメタノール又は水( 緩衝液やその他の塩溶液を含む)とエタノール等の水系混合溶媒が好まし 、。
[0051] 以下に、本発明に係るリン酸基を有する物質の染色方法を例示する。
[0052] まず、リン酸化タンパク質の染色方法を例示する。対象となる細胞組織から、その細 胞を構成する実質的に全てのタンパク質を含む試料を調整する。この調整は、生化 学分野で一般的に用いられている方法により行うことができる。次に、当該試料に含 まれるタンパク質を分離する。この分離方法は特に制限なく一般的なものを使用でき る力 例えば電気泳動を用いればよい。電気泳動を使用する場合、泳動後のゲル又 は泳動後のゲルをウェスタンプロット法により転写した膜等を一般式 (I)で示される金 属錯体化合物又は一般式 (Π)で示される亜鉛錯体ィヒ合物の溶液に浸漬してリン酸 化タンパク質を標識し、標識基の種類に応じた染色方法を用いて、リン酸ィ匕タンパク 質を特定することができる。
[0053] 次に、デォキシリボ核酸 (DNA)又はリボ核酸 (RNA)の染色方法を例示する。サ ザンブロット法又はノーザンプロット法により転写した膜等にぉ 、て、デォキシリボ核 酸 (DNA)又はリボ核酸 (RNA)断片上の特定の塩基配列に相補的なデォキシリボ 核酸 (DNA)又はリボ核酸 (RNA)の末端リン酸基 (リン酸モノエステル基)に一般式( I)で示される金属錯体化合物又は一般式 (II)で示される亜鉛錯体化合物を結合さ せて標識し、それをデォキシリボ核酸 (DNA)プローブ又はリボ核酸 (RNA)プロ一 ブとすることができる。次に、当該デォキシリボ核酸 (DNA)プローブ又はリボ核酸 (R NA)プローブを利用して、サザンハイブリダィゼーシヨン又はノーザンハイブリダィゼ ーシヨンを行い、標識基の種類に応じた染色方法を用いて、デォキシリボ核酸 (DN A)又はリボ核酸 (RNA)を特定することができる。
[0054] リン酸化アミノ酸残基の識別方法につ!ヽて説明する。
[0055] 「識別方法」とは、リン酸ィ匕タンパク質又はリン酸ィ匕ペプチド中のリン酸ィ匕アミノ酸残 基を識別する方法のことであり、本発明に係るリン酸基を有する物質の染色方法と一 般によく利用されている抗リン酸化アミノ酸抗体を用いる免疫染色法を組み合わせる ことで、リン酸ィ匕タンパク質又は非リン酸ィ匕タンパク質の区別のみならず、そのリン酸 化タンパク質のリン酸ィ匕アミノ酸残基までを識別することが可能となる。
[0056] 本発明の識別方法で用いる抗リン酸ィ匕アミノ酸抗体としては、例えば、抗リン酸化セ リン抗体、抗リン酸化トレオニン抗体又は抗リン酸ィ匕チ口シン抗体等を挙げることがで きる。
[0057] 識別方法は、例えば、先ず、本発明に係るリン酸基を有する物質の染色方法により 、試料中の全てのタンパク質の中力もリン酸ィ匕タンパク質のみを標識して検出する。 次!ヽで、ある特定のリン酸化アミノ酸に対する抗リン酸化アミノ酸抗体を用いる免疫染 色法を行い、当該染色方法の検出結果と比較することにより、ある特定のリン酸ィ匕ァ ミノ酸残基を有するリン酸化タンパク質であるか、それ以外のリン酸化アミノ酸残基を 有するリン酸ィ匕タンパク質であるかを識別することができる。
[0058] 本発明における金属錯体化合物は、適当な溶媒に溶解した溶液の形態で、リン酸 基を有する物質の染色剤又は染色助剤として使用することができる。使用できる溶媒 は、リン酸基を有する物質の検出を阻害しないものであれば特に制限されないが、例 えば、水(緩衝液やその他の塩溶液を含む);メタノール、エタノール等のアルコール ;これらの混合溶媒を挙げることができ、水 (緩衝液やその他の塩溶液を含む)とメタノ ール又は水 (緩衝液やその他の塩溶液を含む)とエタノール等の水系混合溶媒が好 ましい。
[0059] 本発明において標識基が酵素である金属錯体化合物は、酵素に応じた発色試薬 との組合せで、又は酵素に応じた発色試薬及び基質との組合せで、リン酸基を有す る物質の染色用キットとして使用できる。このような酵素に対する発色試薬又は発色 試薬と基質の組合せとしては、例えば、西洋ヮサビペルォキシダーゼ (HRP)には E CL (商標)、 Super Signal (登録商標)、ジァミノべンジジン (DAB)と過酸化水素等 、アルカリホスファタ一ゼには CDP— Star (商標)、 CSPD (登録商標)、ニトロブルー テトラゾリゥム(NBT)と 5—ブロモ 4—クロ口一 3—インドリルリン酸、 AttoPhos (商
標)等、ルシフェラーゼにはルシフェリン等を挙げることができる。また、本発明におい て標識基がピオチンである金属錯体ィ匕合物は、アビジン若しくはストレプトアビジン又 は抗ビォチン抗体が結合した酵素及び酵素に応じた発色試薬との組合せで、又は アビジン若しくはストレプトアビジン又は抗ビォチン抗体が結合した酵素、酵素に応じ た発色試薬及び基質との組合せで、リン酸基を有する物質の染色用キットとして使用 できる。
実施例
[0060] 以下に、実施例を示し、本発明を更に詳細に説明するが、本発明の範囲はこれら に限定されるものではない。
[0061] ¾細
(亜鉛錯体化合物 西洋ヮサビペルォキシダーゼ (HRP)結合ストレプトアビジン複 合体溶液の調製)
式 (IV) :
[0062]
[0063] で示される N, N, N,—トリス(2 ピリジルメチル) N, - (2— D—ピオチンアミドエ チル)力ルバモイルー 2 ピリジルメチル]—1, 3 ジァミノ 2 プロパノールを 10 mMと 10mMトリス—塩酸緩衝液(pH7. 5)、 lOOmM塩化ナトリウム及び 0. l% (w Zv)Tween20を 10% (vZv)メタノール水溶液で調整し、配位子溶液とする。 100 mMトリス—塩酸緩衝液(pH7. 5)、 1M塩化ナトリウム及び 1% (wZv)Tween20を 水で調整し、 TBS— T(10 X )とする。 10mMトリス—塩酸緩衝液(pH7. 5)、 100m M塩化ナトリウム及び 0. 1% (wZv)Tween20を水で調整し、 TBS—T(1 X )とする 。配位子溶液 5 L、 TBS—T(10 X ) 50 /z L、 10mM硝酸亜鉛水溶液 5 L、西洋 ヮサビペルォキシダーゼ(HRP)結合ストレプトアビジン 1 μ L及び水 394 μ Lを混ぜ て限外ろ過(30kDa)し、残渣を TBS— T(l X ) 30mLで溶解して、式 (V):
[0064]
[0065] で示される亜鉛錯体化合物 西洋ヮサビペルォキシダーゼ (HRP)結合ストレブトァ ビジン複合体溶液とする。
[0066] 実施例 2
(リン酸ィ匕タンパク質の染色方法 1)
先ず、以下の条件で、 SDS ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS— PAGE)用 ゲル、泳動槽用緩衝液及びサンプル調整液を調整した。
濃縮ゲル溶液
4. 5% (w/v)ポリアクリルアミド(アクリルアミド:ビスアクリルアミド = 30: 1) 125mMトリス—塩酸緩衝液 (pH6. 8)
0. 1% (WZV)ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)
分離ゲル溶液
12. 5% (wZv)ポリアクリルアミド(アクリルアミド:ビスアクリルアミド = 30 : 1) 375mMトリス—塩酸緩衝液 (pH8. 8)
0. 1% (WZV)ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)
泳動槽用緩衝液
25mMトリス
192mMグリシン
0. 1% (w/v)ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)
サンプル調整液
195mMトリス—塩酸緩衝液 (pH6. 8)
9% (w/v)ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)
24% (w/v)グリセローノレ
15% (v/v) 2 メルカプトエタノール
0. 1% (w/v)ブロモフエノールブルー(BPB)。
[0067] 次に、レーン 1:分子量マーカー(トリプシンインヒビター、炭酸デヒドラターゼ、卵白 アルブミン、ゥシ血清アルブミン、ホスホリラーゼ b)、レーン 2 : a—カゼイン、レーン 3 :脱リン酸ィ匕 α—カゼイン、レーン 4 : β カゼイン、レーン 5 :脱リン酸ィ匕 j8—カゼイン をサンプル調整液に溶解して試料とし、これを調整した SDS -ポリアクリルアミドゲル 電気泳動(SDS— PAGE)用ゲルにプロットした後、ブロモフエノールブルー (BPB) がゲル下端に到達するまで 40mAの定電流電気泳動を行った。
[0068] SDS ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS— PAGE)を行ったゲルを固定液に 約 15分間浸漬し、続いて、 SYPRO (登録商標) Ruby protein gel stainに約 3 時間浸漬した後、溶液カゝら取り出して脱色液で 2時間洗浄して、 UVトランスイルミネ 一ターで視覚化した。
[0069] また、 SDS ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS— PAGE)を行ったゲル上のタ ンパク質を、セミドライ式ブロッテイングにより、ポリビ-リデンジフルオリド (PVDF)膜 に転写させた。転写したポリビ-リデンジフルオリド (PVDF)膜を実施例 1で調製した 亜鉛錯体化合物 西洋ヮサビペルォキシダーゼ (HRP)結合ストレプトアビジン複合 体溶液に約 30分間浸漬した後、溶液力も取り出して 10分間洗浄して、発色試薬とし て ECL (商標) Plusを用いて、化学発光画像解析装置で視覚化した。
[0070] 本発明に係る亜鉛錯体化合物 西洋ヮサビペルォキシダーゼ (HRP)結合ストレ ブトアビジン複合体溶液による染色後のポリビ-リデンジフルオリド (PVDF)膜を A、 SYPRO (登録商標) Ruby protein gel stainによる染色後のゲルを Bとして図 1 に示す。
[0071] 図 1の通り、本発明の方法によれば、リン酸基を有する α カゼイン及び β カゼ インのみが特定できる。従って、本発明の方法によれば、生体試料からリン酸化タン ノ ク質のみを特定し得ることが明らかとなった。
[0072] 実施例 3
(リン酸ィ匕タンパク質の染色方法 2)
先ず、上記実験例 2と同様の条件で、 SDS ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS
— PAGE)用ゲル、泳動槽用緩衝液及びサンプル調整液を調整した。
[0073] 次に、レーン 1:分子量マーカー(トリプシンインヒビター、炭酸デヒドラターゼ、卵白
アルブミン、ゥシ血清アルブミン、ホスホリラーゼ b)、レーン 2 :卵白アルブミン、レーン 3 :脱リン酸化卵白アルブミン、レーン 4 :ペプシン、レーン 5 :脱リン酸化ペプシンをサ ンプル調整液に溶解して試料とし、これを調整した SDS ポリアクリルアミドゲル電気 泳動(SDS— PAGE)用ゲルにプロットした後、ブロモフエノールブルー (BPB)がゲ ル下端に到達するまで 40mAの定電流電気泳動を行った。
[0074] SDS ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS— PAGE)を行ったゲルを固定液に 約 15分間浸漬し、続いて、 SYPRO (登録商標) Ruby protein gel stainに約 3 時間浸漬した後、溶液カゝら取り出して脱色液で 2時間洗浄して、 UVトランスイルミネ 一ターで視覚化した。
[0075] また、 SDS ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS— PAGE)を行ったゲル上のタ ンパク質を、セミドライ式ブロッテイングにより、ポリビ-リデンジフルオリド (PVDF)膜 に転写させた。転写したポリビ-リデンジフルオリド (PVDF)膜を実施例 1で調製した 亜鉛錯体化合物 西洋ヮサビペルォキシダーゼ (HRP)結合ストレプトアビジン複合 体溶液に約 30分間浸漬した後、溶液力も取り出して 10分間洗浄して、発色試薬とし て ECL (商標) Plusを用いて、化学発光画像解析装置で視覚化した。
[0076] 本発明に係る亜鉛錯体化合物 西洋ヮサビペルォキシダーゼ (HRP)結合ストレ ブトアビジン複合体溶液による染色後のポリビ-リデンジフルオリド (PVDF)膜を A、 SYPRO (登録商標) Ruby protein gel stainによる染色後のゲルを Bとして図 2 に示す。
[0077] 図 2の通り、本発明の方法によれば、リン酸基を有する卵白アルブミン及びぺプシ ンのみが特定できる。従って、本発明の方法によれば、生体試料からリン酸化タンパ ク質のみを特定し得ることが明らかとなった。
[0078] 実施例 4
(リン酸化アミノ酸残基の識別方法)
先ず、上記実験例 2と同様の条件で、 SDS ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS
— PAGE)用ゲル、泳動槽用緩衝液及びサンプル調整液を調整した。
[0079] 次に、レーン 1 :A— 431全細胞抽出液、レーン 2 :上皮増殖因子 (EGF)刺激 A— 4
31全細胞抽出液、レーン 3 :アルカリホスファターゼで処理した上皮増殖因子 (EGF)
刺激 A— 431全細胞抽出液をサンプル調整液に溶解して試料とし、これを調整した SDS ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS— PAGE)用ゲルにプロットした後、ブ 口モフヱノールブルー (BPB)がゲル下端に到達するまで 40mAの定電流電気泳動 を行った。
[0080] SDS ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS— PAGE)を行ったゲルを固定液に 約 15分間浸漬し、続いて、 SYPRO (登録商標) Ruby protein gel stainに約 3 時間浸漬した後、溶液カゝら取り出して脱色液で 2時間洗浄して、 UVトランスイルミネ 一ターで視覚化した。
[0081] また、 SDS ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS— PAGE)を行ったゲル上のタ ンパク質を、セミドライ式ブロッテイングにより、ポリビ-リデンジフルオリド (PVDF)膜 に転写させた。転写したポリビ-リデンジフルオリド (PVDF)膜を実施例 1で調製した 亜鉛錯体化合物 西洋ヮサビペルォキシダーゼ (HRP)結合ストレプトアビジン複合 体溶液に約 30分間浸漬した後、溶液力も取り出して 10分間洗浄して、発色試薬とし て ECL (商標) Plusを用いて、化学発光画像解析装置で視覚化した。
[0082] また、転写したポリビ-リデンジフルオリド (PVDF)膜を 1%ゥシ血清アルブミン TB S— T(1 X )溶液に約 1時間浸漬した後、溶液力も取り出して 20分間洗浄して、次に 、 0. 1%西洋ヮサビペルォキシダーゼ(HRP)結合抗リン酸化チロシン抗体 TBS— Τ (1 X )溶液に約 1時間浸漬した後、溶液から取り出して 20分間洗浄して、発色試薬と して ECL (商標) Plusを用いて、化学発光画像解析装置で視覚化した。
[0083] また、転写したポリビ-リデンジフルオリド (PVDF)膜を 1%ゥシ血清アルブミン TB S— T(1 X )溶液に約 1時間浸漬した後、溶液力も取り出して 20分間洗浄して、次に 、 0. 1%ゥサギ抗リン酸ィ匕セリン抗体 TBS—T(1 X )溶液に約 1時間浸漬した後、溶 液から取り出して 20分間洗浄して、次に、 0. 008%西洋ヮサビペルォキシダーゼ (H RP)結合抗ゥサギ免疫グロプリン G (igG)抗体 TBS— T ( 1 X )溶液に約 1時間浸漬 した後、溶液力も取り出して 20分間洗浄して、発色試薬として ECL (商標) Plusを 用いて、化学発光画像解析装置で視覚化した。
[0084] 本発明に係る亜鉛錯体化合物 西洋ヮサビペルォキシダーゼ (HRP)結合ストレ ブトアビジン複合体溶液による染色後のポリビ-リデンジフルオリド (PVDF)膜を A、
西洋ヮサビペルォキシダーゼ (HRP)結合抗リン酸ィ匕チ口シン抗体溶液による染色後 のポリビ-リデンジフルオリド (PVDF)膜を B、ゥサギ抗リン酸ィ匕セリン抗体溶液及び 西洋ヮサビペルォキシダーゼ (HRP)結合抗ゥサギ免疫グロブリン G (igG)抗体溶液 による染色後のポリビ-リデンジフルオリド (PVDF)膜を C、 SYPRO (登録商標) R uby protein gel stainによる染色後のゲルを Dとして図 3に示す。
[0085] 図 3の通り、本発明の方法によれば、 A— 431全細胞抽出液、上皮増殖因子 (EGF )刺激 A— 431全細胞抽出液及びアルカリホスファターゼで処理した上皮増殖因子( EGF)刺激 A— 431全細胞抽出液中のリン酸ィ匕タンパク質並びにリン酸ィ匕チ口シン 残基を有するリン酸化タンパク質、リン酸化セリン残基を有するリン酸化タンパク質及 びそれ以外のリン酸化アミノ酸残基を有するリン酸化タンパク質の特定が可能となつ た。従って、本発明の方法によれば、生体試料からリン酸化タンパク質及びリン酸ィ匕 アミノ酸残基を特定し得ることが明らかとなった。
産業上の利用可能性
[0086] 本発明に係るリン酸基を有する物質の染色剤及び染色方法は、リン酸基を有する 物質を容易に検出することができる。従って、生体試料等に本発明を適用することに よって、病気の診断等に応用でき得る点で非常に有用である。また、本発明に係るリ ン酸基を有する物質の染色方法と抗リン酸化アミノ酸抗体を組み合わせることで、リ ン酸ィ匕アミノ酸残基を簡便に識別することができる。また、本発明に係る化合物は、リ ン酸基を有する物質に対して従来にな!ヽ配位結合を示すことから、上記方法で使用 できる化合物として有用である。
Claims
請求の範囲
[1] -般式 (I)
{式中、 Μは、 2価の陽イオンに成り得る金属原子であり、 Rは、相互に同一又は異な つていてもよぐ水素原子;炭素数が 1〜 16であるアルキル基;ァシル基、アルコキシ カルボ-ル基、ァシルアルキル基、アルコキシカルボ-ルアルキル基、カルボシキア ルキル基、力ルバモイルアルキル基、シァノアルキル基、ヒドロキシアルキル基、ァミノ アルキル基又はハロアルキル基(ここで、これらの基のアルキル部分の炭素数は、 1 〜 16である);カルボキシル基;力ルバモイル基;シァノ基;ヒドロキシル基;アミノ基或 いはハロゲノ基であり、 Xは、結合基であり、 Υは、標識基である }で示される金属錯体 化合物を用いることを特徴とする、リン酸基を有する物質の染色方法。
一般式 (Π) :
{式中、 Rは、相互に同一又は異なっていてもよぐ水素原子;炭素数が 1〜16である アルキル基;ァシル基、アルコキシカルボ-ル基、ァシルアルキル基、アルコキシカル ボ-ルアルキル基、カルボシキアルキル基、力ルバモイルアルキル基、シァノアルキ ル基、ヒドロキシアルキル基、アミノアルキル基又はハロアルキル基(ここで、これらの 基のアルキル部分の炭素数は、 1〜16である);カルボキシル基;力ルバモイル基;シ ァノ基;ヒドロキシル基;アミノ基或いはハロゲノ基であり、 Xは、結合基であり、 Υは、 標識基である }で示される亜鉛錯体ィ匕合物を用いることを特徴とする、リン酸基を有 する物質の染色方法。
標識基カ^オチンであることを特徴とする、請求項 1又は 2記載のリン酸基を有する
物質の染色方法。
[4] 請求項 1記載のリン酸基を有する物質の染色方法と抗リン酸化アミノ酸抗体を用い る免疫染色法を組み合わせることを特徴とする、リン酸化アミノ酸残基の識別方法。
[5] 請求項 2記載のリン酸基を有する物質の染色方法と抗リン酸化アミノ酸抗体を用い る免疫染色法を組み合わせることを特徴とする、リン酸化アミノ酸残基の識別方法。
[6] 請求項 3記載のリン酸基を有する物質の染色方法と抗リン酸化アミノ酸抗体を用い る免疫染色法を組み合わせることを特徴とする、リン酸化アミノ酸残基の識別方法。
[7] 一般式 (III) :
{式中、 mは、 2価の陽イオンに成り得る金属原子 (但し、亜鉛原子である場合を除く) であり、 Rは、相互に同一又は異なっていてもよぐ水素原子;炭素数が 1〜16である アルキル基;ァシル基、アルコキシカルボ-ル基、ァシルアルキル基、アルコキシカル ボ-ルアルキル基、カルボシキアルキル基、力ルバモイルアルキル基、シァノアルキ ル基、ヒドロキシアルキル基、アミノアルキル基又はハロアルキル基(ここで、これらの 基のアルキル部分の炭素数は、 1〜16である);カルボキシル基;力ルバモイル基;シ ァノ基;ヒドロキシル基;アミノ基或いはハロゲノ基であり、 Xは、結合基であり、 Yは、 標識基である }で示される金属錯体化合物。
[8] 標識基がピオチンであることを特徴とする、請求項 7記載の金属錯体化合物。
[9] 請求項 1の一般式 (I)で示される金属錯体化合物を含むことを特徴とする、リン酸基 を有する物質の染色剤又は染色助剤。
[10] 請求項 1の一般式 (I) (式中、 Yは酵素である)で示される金属錯体化合物、該酵素 に対する発色試薬、及び必要により基質を含む、リン酸基を有する物質の染色用キ ッ卜。
[11] 請求項 1の一般式 (I) (式中、 Yはピオチンである)で示される金属錯体ィ匕合物、ァ ビジン若しくはストレプトアビジン又は抗ビォチン抗体が結合した酵素、該酵素に対
する発色試薬、及び必要により基質を含む、リン酸基を有する物質の染色用キット。
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