明細書
可塑剤に対する結合能を有する蛋白質
技術分野
本発明は、 抗可塑剤抗体、 該抗体の遺伝子、 該可塑剤に対する結合能を有す る蛋白質の製造法、可塑剤の測定又は定量方法、可塑剤の濃縮方法等に関する。
背景技術
近年、 環境中、 例えば河川水又は下水中に存在する可塑剤等の環境汚染物質 による環境汚染が問題となっている。 可塑剤は、 内分泌攪乱作用を有する化学 物質 (いわゆる環境ホルモン) として、 環境調査やその作用の有無について調 査 ·研究が進められている。 したがって、 環境中に微量に存在する環境汚染物 質やその分解物を測定、 分析して、 その結果を環境保全に役立たせることが必 要となる。このような測定、分析法として、免疫学的測定法が注目されており、 幾つかの優れた方法が知られている (国際公開第 9 9 / 4 3 7 9 9号パンフレ ット、 特開 2 0 0 1— 4 1 9 5 8号公報)。
発明の開示
本発明は、 可塑剤に対する抗体の遺伝子を取得し、 当該遺伝子に対する遺伝 子操作により改変蛋白質を作出し、得られた改変蛋白質は抗原に対する親和性、 抗原結合能、 交叉反応性、 抗原抗体反応妨害物質耐性、 酵素発色反応妨害物質 耐性、溶媒耐性等の元の抗体が持つ種々の性質が改良されることを目的とする。 また、 本発明は、 可塑剤の測定 ·定量や濃縮に際し、 感度の良い、 交叉反応性 の少ない、 妨害物質の影響を受けにくい、 溶媒による影響を受けにくい等の有 用な性質を付加した可塑剤に対する結合能を有する蛋白質を作 し、 利用する ことを目的とする。
ここに、 可塑剤としては、 例えば、
—
R 1
(1)
COOR3
[式中、 R1は o—フエ二レン又はテトラメチレン、 R2及ぴ R3は同一又は異 なって、 各々、 H、 炭素数 1 ~20の直鎖又は分岐鎖 (含 s e c—、 t e r t 一、 i s o -) のアルキル、 置換されていてもよいべンジル又は置換されてい てもよぃシクロへキシルを意味する。] で表される可塑剤 (P P) [例、 BB P (フタル酸プチルペンジル)、 D B P (フタル酸ジブチル)、 DCHP (フタル 酸ジシクロへキシル)、 DEP (フタル酸ジェチル)、 DEHP (フタル酸ジ (
2—ェチルへキシル))、 DEHA (アジピン酸ジェチルへキシル)、 DHP (フ タノレ酸ジへキシノレ)、 DP P (フタノレ酸ジ一 n—ペンチノレ)、 DP r P (フタノレ 酸ジプロピル)、 DMP (フタル酸ジメチル)、 DnO P (フタル酸ジノルマル ォクチル)、 D I NP (フタル酸ジイソノニル)、 DNP (フタル酸ジノニル)、 D I DP (フタル酸ジイソデシル)、 DO A (アジピン酸ジォクチル)、 D I N A (アジピン酸ジイソノエル) など] が挙げられる。
「炭素数 1〜 20の直鎖又は分岐鎖のアルキル」 としては、 例えばメチル、 ェチノレ、 プロピノレ、 イソプロピノレ、 ブチノレ、 イソプチノレ、 sec -プチノレ、 tert- プチノレ、 ペンチノレ、 ィソぺンチノレ、 ネオペンチノレ、 1ーェチノレプロピノレ、 へキ シル、 イソへキシル、 1, 1ージメチルブチル、 2, 2—ジメチルプチル、 3,
3—ジメチルプチル、 2—ェチルブチル、 ヘプチル、 ォクチル、 2—ェチルへ キシル、 ノニル、 イソノエル、 デシル、 イソデシルなどが挙げられる。 上記 「 炭素数 1〜20の直鎖又は分岐鎖のアルキル」 の 「直鎖又は分岐鎖のアルキル 」 としては、 なかでも炭素数 1~ 1 2のアルキルが好ましく、 炭素数 6〜1 0 のアルキルがより好ましい。
別の局面では、 「炭素数 1〜 20の直鎖又は分岐鎖のアルキル」は、炭素数 1 〜20の置換されていてもよいアルキルであり うる。 上記 「炭素数 1〜20の
置換されていてもよいアルキル」 の 「アルキル」 としては、 例えば、 上記 「炭 素数 1 ~ 2 0の直鎖又は分岐鎖のアルキル」 の 「アルキル」 と同様のもの,が挙 げられるが、 なかでも炭素数 1 ~ 1 2のアルキルが好ましく、 炭素数 4〜8の アルキルがより好ましい。
「炭素数 1〜2 0の置換されていてもよいアルキル」、 「置換されていてもよ ぃシクロへキシル j及ぴ「置換されていてもよいベンジル」の置換基としては、 例えば、 炭素数 1〜8のアルキル (例えば、 メチル、 ェチル、 プロピル、 イソ プロピル、 プチル、 イソプチル、 sec -プチル、 tert-プチル、 ペンチル、 イソぺ ンチル、 ネオペンチル、 1 _ェチルプロピル、 へキシル、 イソへキシル、 1 , 1一ジメチノレプチノレ、 2, 2—ジメチノレブチノレ、 3 , 3—ジメチルブチノレ、 2 一ェチルブチルなど)、 炭素数 2〜8のァルケエル (例えば、 ェテエル、 1—プ ロぺニノレ、 2—プロべ-ル、 1—メチノレエテュノレ、 1一プテニノレ、 2—ブテニ ノレ、 3—ブテニノレ、 1—メチル一 1 _プロぺニル、 1—メチル _ 2—プロぺニ ル、 2—メチル一 1—プロぺニルなど)、 炭素数 2〜8のアルキニル (例えば、 ェチニノレ、 1一プロピエノレ、 2—プロピニノレ、 1—プチ二ノレ、 2—プチ二ノレ、 3—ブチュル、 1ーメチルー 2—プロビュルなど) などが挙げられる。
上記 「炭素数 1〜8のアルキル」 としては、 なかでも炭素数 1〜6のアルキ ルが好ましく、 炭素数 1〜4のアルキルがより好ましい。 上記 「炭素数 2〜8 のァルケニル」 としては、 なかでも炭素数 2〜 6のアルケニルが好ましく、 炭 素数 2〜4のアルケニルがより好ましい。 上記 「炭素数 2〜 8のアルキニル J としては、 なかでも炭素数 2〜 6のアルキニルが好ましく、 炭素数 2〜4のァ ルキエルがより好ましい。なお、 「炭素数 1〜2 0の置換されていてもよいアル キル」、 「置換されていてもよいシクロへキシル」、 「置換されていてもよいベン ジル」 の置換基の数は、 特に制限されないが、 例えば 1〜3個、 好ましくは 1 〜2個、 より好ましくは 1個でありうる。
また、 可塑剤の他の例として、 D O Z (ァゼライン酸ジォクチル)、 E S B O (エポキシ化大豆油)、 T O T M (トリメット酸トリオクチル)、 D B S (セバ
4 シン酸ジブチル)、 DOS (セバシン酸ジォクチル)、 TCP (リン酸ト タレ ジル)、 ATBC (ァセチルタエン酸トリブチル) なども挙げることができる。 また、 可塑剤には、 本発明の蛋白質又は複合体が結合する限りにおいて、 上記 した可塑剤の分解物も含まれる。
本発明者らは、 親和性を向上させることにより感度良く測定可能等の有用な 性質を付加した、 抗可塑剤に対する結合能を有する蛋白質の取得につき鋭意検 討したところ、その遺伝子若しくは改変遺伝子を含有する形質転換体を作製し、 可塑剤に対する結合能を有する蛋白質を効率よく産生させることができること を見出し、 さらに研究した結果、 本発明を完成した。
すなわち、 本発明は、
(1) 以下 (a) 又は (b) の蛋白質又はその塩:
(a) ,配列番号 2で表わされるアミノ酸配列、 若しくはこれと実質的に同一の アミノ酸配列を有する蛋白質;
(b) 配列番号 4で表わされるアミノ酸配列、 若しくはこれと実質的に同一の アミノ酸配列を有する蛋白質、
(2) 以下 (a 1) 〜 (a 2)、 (b 1 ) 〜 (b 2) のいずれかの蛋白質又は その塩:
( a 1 ) 配列番号 2で表されるァミノ酸配列において 1若しくは 2個以上のァ ミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたァミノ酸配列を有し、かつ配列番号 4、 28又は 3 2で表されるアミノ酸配列と複合体を形成したときに可塑剤に対し て結合する蛋白質;
(a 2) 配列番号 2で表されるアミノ酸配列において 1若しくは 2個以上のァ ミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたァミノ酸配列を有し、かつ配列番号 4、 28又は 32で表されるアミノ酸配列において 1若しくは 2個以上のアミノ酸 が欠失、 置換若しくは付加されたアミノ酸配列を有する蛋白質と複合体を形成 したときに可塑剤に対して結合する蛋白質;
(b 1) 配列番号 4で表されるァミノ酸配列において 1若しくは 2個以上のァ
ミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたァミノ酸配列を有し、かつ配列番号 2、 26又は 30で表されるァミノ酸配列を有する蛋白質と複合体を形成し とき に可塑剤に対して結合する蛋白質;
(b 2) 配列番号 4で表されるアミノ酸配列において 1若しくは 2個以上のァ ミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたァミノ酸配列を有し、かつ配列番号 2、 26又は 30で表されるアミノ酸配列において 1若しくは 2個以上のアミノ酸 が欠失、 置換若しくは付加されたァミノ酸配列を有する蛋白質と複合体を形成 したときに可塑剤に対して結合する蛋白質、
R1 (1) 瞧 3
[式中、 R1は o—フエ二レン、 R2及び R3は同一又は異なって、 各々、 H、 炭素数 1〜20の直鎖又は分枝鎖アルキル、 置換されていてもよいベンジル又 は置換されていてもよいシクロへキシルを意味する]で表される可塑剤である、 前記 (2) 記載の蛋白質、
(4) 前記 (1) 〜 (3) のいずれか 1項記載の蛋白質を遺伝子組換えする 方法、
(5) 前記 (4) 記載の方法により得られた蛋白質又はその塩、
(6) 前記 (1) 〜 (3) 及び (5) のいずれか 1項記載の蛋白質の部分ぺ プチド又はその塩、
(7) 前記 (1) 〜 (3) 及び (5) のいずれか 1項記載の蛋白質又はその 部分ぺプチドをコードするポリヌクレオチド、
(8) 前記 (7) 記載のポリヌクレオチドを含有する組換えベクター、
(9) 前記 (8) 記載の組換えベクターで形質転換された形質転換体、
(10) 前記 (1) 〜 (3) 及び (5) のいずれか 1項記載の蛋白質又はそ
の部分ぺプチド或いはそれらの塩を産生せしめ、 これを採取することを特徴と する、 前記 (1): 〜 (3) 及び (5) のいずれか 1項記載の蛋白質又はそ'の部 分ぺプチド或いはそれらの塩の製造法、 .
(1 1) 以下 (a) 及び (b) が連結してなる複合体:
(a) 配列番号 2で表わされるアミノ酸配列、 若しくはこれと実質的に同一の アミノ酸配列を有する蛋白質;
(b) 配列番号 4で表わされるアミノ酸配列、 若しくはこれと実質的に同一の アミノ酸配列を有する蛋白質、
(12) 前記,(1 1) 記載の複合体を使用することを特徴とする、 該複合体 に結合する可塑剤を同定する方法、
(13) 前記 (11) 記載の複合体を使用することを特徴とする、 可塑剤の 測定又は定量方法、
(14) 前記(1 1)記載の複合体を含む、可塑剤の測定又は定量用キット、
(15) 前記 (11) 記載の複合体を使用することを特徴とする、 可塑剤の 濃縮方法、
(16) 前記 (1 1) 記載の複合体を含む、 可塑剤の濃縮用キット、 を提供する。
図面の簡単な説明
図 1は、 抗可塑剤抗体 ( 2 F 4 A 4 γ ) 重鎖の塩基配列及ぴァミノ酸配列を 示す。
図 2は、 抗可塑剤抗体 ( 2 F 4 A 4 γ ) 軽鎖の塩基配列及びァミノ酸配列を 示す。
図 3は、 本発明で作製した 4種類の異なる単鎖可変領域抗体を用いて間接競 合 ELISAにより比較した図である。
図 4は、 抗可塑剤抗体 (DH— 150) 重鎖の塩基配列及びアミノ酸配列を 示す。
図 5は、 抗可塑剤抗体 (DH— 150) 軽鎖の塩基配列及びアミノ酸配列を
示す。
図 61ま— Γ抗可塑剤抗体 (D F— 34 ) 重鎖の塩基配列及びァミノ酸配列.,を示 す。
図 7は、 抗可塑剤抗体 (DF— 34) 軽鎖の塩基配列及びアミノ酸配列を示 す。
発明を実施するための最良の形態
本発明は、 配列番号 2で表わされるァミノ酸配列で表されるァミノ酸配列、 配列番号 4で表わされるァミノ酸配列若しくはこれらと実質的に同一のァミノ 酸配列を有する (又は、 からなる) 蛋白質を提供する。
配列番号 2で表わされるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を有す る蛋白質は、 上記 (a 1) 及び (a 2) の蛋白質、 並びに、 (a 3) 配列番号: 2で表されるアミノ酸配列のうち、 1以上の特定領域に相当するアミノ酸配列 力 可塑剤に対する他の抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列 (例えば、 配列番 号 26又は 30で表されるアミノ酸配列) に含まれる同じ種類の 1以上の特定 領域に相当するアミノ酸配列と交換されているアミノ酸配列を有する (又は、 からなる) 蛋白質、 或いはこのアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を 有する (又は、 からなる) 蛋白質でありうる。 (a 3) の蛋白質のアミノ酸配列 と実質的に同一のアミノ酸配列を有する蛋白質としては、例えば、 (a 3)の蛋 白 ¾のァミノ酸配列において 1若しくは 2個以上のァミノ酸が欠失、 置換若し くは付加されたァミノ酸配列を有し、 かつ配列番号 4で表されるァミノ酸配列 を有する蛋白質と複合体を形成したときに可塑剤に対して結合する蛋白質が挙 げられる。
上記 (a 3) における特定領域としては、 相補性決定領域 1、 相補性決定領 域 2、 相補性決定領域 3 (以下、 必要に応じて CDR 1、 CDR2、 CDR 3 と省略)、 フレームワーク領域 1、 フレームワーク領域 2、 フレームワーク領域 3、 フレームワーク領域 4 (以下、 必要に応じて FR 1、 FR 2、 FR 3、 F R4と省略) が挙げられる。 上記 (a 3) では、 交換の対象となるアミノ酸配
列は、 好ましくは、 同じ種類の特定領域のアミノ酸配列である。 また、 交換さ れる特定領域の数は、 1以上であれば特に限定されないが、 例えば 1〜3,個、 好ましくは 1〜2個、 より好ましくは 1個である。 アミノ酸配列の交換は、 自 体公知の方法によって行なうことができる。 具体的には、 各領域の N、 C両末 端に対応するプライマーに対し交換する領域に対応した部分を繋いだようなプ ライマーを設計し、 このプライマーを用いて断片を PCRにて増幅した後、 改 めて交換した組合せで P CRを行なえばよい。
配列番号 2で表されるアミノ酸配列において CDR 1、CDR 2、CDR 3、 FR 1、 FR 2、, FR 3、 FR 4に相当する領域は、 具体的には、 以下の通り である :
( i ) CDR 1 (配列番号 2で表されるアミノ酸配列における 31番目から 3 5番目までのアミノ酸残基) ;
(ii) CDR 2 (配列番号 2で表されるアミノ酸配列における 50番目から 6 8番目までのアミノ酸残基) ;
(iii) CDR 3 (配列番号 2で表されるアミノ酸配列における 10 1番目から 1 1 1番目までのアミノ酸残基) ;
(iv) FR 1 (配列番号 2で表されるアミノ酸配列における 1番目から 30番 目までのアミノ酸残基) ;
(V) FR 2 (配列番号 2で表されるアミノ酸配列における 36番目から 49 番目までのアミノ酸残基) ;
(vi) FR 3 (配列番号 2で表されるアミノ酸配列における 6 9番目から 1 0 0番目までのアミノ酸残基) ;
(vii) FR4 (配列番号 2で表されるアミノ酸配列における 1 1 2番目力 ら 1 22番目までのアミノ酸残基)。
また、 別の実施態様では、 上記 (a) の蛋白質は、 例えば、 配列番号 2で表 されるアミノ酸配列、 又は上記 (a 3) の蛋白質のアミノ酸配列に対して有意 な相同性を有するァミノ酸配列を有し、 かつ配列番号 4で表されるアミノ酸配
列に対して有意な相同性を有するアミノ酸配列を有する蛋白質と複合体を形成 したときに可塑剤に対して結合する蛋白質でありうる。 ., 配列番号 4で表わされるァミノ酸配列と実質的に同一のァミノ酸配列を有す る蛋白質は、 上記 (b 1) 及び (b 2) の蛋白質、 並びに、 (b 3) 配列番号 4 で表されるァミノ酸配列のうち、 1以上の特定領域に相当するァミノ酸配列が、 可塑剤に対する他の抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列 (例えば、 配列番号 2 8又は 32で表されるアミノ酸配列) に含まれる同じ種類の 1以上の特定領域 に相当するアミノ酸配列と交換されているアミノ酸配列を有する (又は、 から なる) 蛋白質、 或いはこのアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を有す る (又は、 からなる) 蛋白質でありうる。 (b 3) の蛋白質のアミノ酸配列と実 質的に同一のアミノ酸配列を有する蛋白質としては、例えば、 (b 3)の蛋白質 のアミノ酸配列において 1若しくは 2個以上のアミノ酸が欠失、 置換若しくは 付加されたァミノ酸配列を有し、 かつ配列番号 2で表されるァミノ酸配列を有 する蛋白質と複合体を形成したときに可塑剤に対して結合する蛋白質が挙げら れる。
上記 (b 3) における特定領域としては、 CDR 1、 CDR 2、 CDR 3、 FR 1、 FR 2、 FR 3、 FR 4が挙げられる。 上記 (b 3) では、 交換の対 象となるアミノ酸配列は、 好ましくは、 同じ種類の特定領域のアミノ酸配列で ある。また、交換される特定領域の数は、 1以上であれば特に限定されないが、 例えば 1〜3個、 好ましくは 1〜2個、 より好ましくは 1個である。 アミノ酸 配列の交換は、 自体公知の方法によって行なうことができる。 具体的には、 各 領域の N、 C両末端に対応するプライマーに対し交換する領域に対応した部分 を繋いだようなプライマーを設計し、 このプライマーを用いて断片を PCRに て増幅した後、 改めて交換した組合せで P CRを行なえばよい。
配列番号 4で表されるアミノ酸配列において CDR 1、CDR 2、CDR 3、 FR 1、 FR 2、 FR 3、 FR 4に相当する領域は、 具体的には、 以下の通り である :
(i) C D R 1 (配列番号 4で表されるアミノ酸配列における 2 4番目か 3 4 番目までのアミノ酸残基) ; -
(ii) C D R 2 (配列番号 4で表されるアミノ酸配列における 5 0番目から 5 6番目までのアミノ酸残基) ;
(iii) C D R 3 (配列番号 4で表されるアミノ酸配列における 8 9番目から 9 7番目までのアミノ酸残基) ;
(iv) F R 1 (配列番号 4で表されるアミノ酸配列における 1番目から 2 3番 目までのアミノ酸残基) ;
(V) F R 2 (配列番号 4で表されるアミノ酸配列における 3 5番目から 4 9番 目までのアミノ酸残基) ;
(vi) F R 3 (配列番号 4で表されるアミノ酸配列における 5 7番目から 8 8 番目までのアミノ酸残基) ;
(vii) F R 4 (配列番号 4で表されるアミノ酸配列における 9 8番目から 1 0 7番目までのアミノ酸残基)。
別の実施態様では、 上記 (b ) の蛋白質は、 例えば、 配列番号 4で表される アミノ酸配列、 又は上記 (b 3 ) の蛋白質のアミノ酸配列に対して有意な相同 性を有するァミノ酸配列を有し、 かつ配列番号 2で表されるァミノ酸配列に対 して有意な相同性を有するアミノ酸配列を有する蛋白質と複合体を形成したと きに可塑剤に対して結合する蛋白質であり うる。
本発明において、 任意の配列番号 Xで表されるアミノ酸配列において欠失、 置換若しくは付加されるアミノ酸の数としては、 1若しくは 2個以上であれば 特に限定されないが、 例えば 1〜 8 0個、 好ましくは 1〜2 0個程度、 より好 ましくは 1〜9個程度、 さらにより好ましくは 1〜5個、 最も好ましく'は数個 ( 1又は 2個) でありうる。
本発明において、 アミノ酸の置換としては、 特定のアミノ酸が他の任意のァ ミノ酸で置換される限り特に限定されないが、 例えば、 保存的アミノ酸置換、 非保存的アミノ酸置換であってもよい。 「保存的アミノ酸置換」 とは、特定のァ
—
11 ミノ酸を、 そのアミノ酸の側鎖と同様の性質の側鎖を有するアミノ酸で置換す ることをいう。 具体的には、 保存的アミノ酸置換では、 特定のアミノ酸は、 そ のアミノ酸と同じグループに属する他のァミノ酸により置換される。一方、 「非 保存的アミノ酸置換」 とは、 特定のアミノ酸を、 そのアミノ酸の側鎖と異なる 性質の側鎖を有するアミノ酸で置換することをいう。 具体的には、 非保存的ァ ミノ酸置換では、 特定のアミノ酸は、 そのアミノ酸と異なるグループに属する 他のアミノ酸により置換される。 同様の性質の側鎖を有するアミノ酸のグルー プは、 当該分野で公知である。 例えば、 このようなアミノ酸のグループとして は、 塩基性 (即ち、 正に荷電している) 側鎖を有するアミノ酸 (例えば、 リジ ン、 アルギニン、 ヒスチジン)、 酸性 (即ち、 負に荷電している) 側鎖を有する アミノ酸 (例えば、 ァスパラギン酸、 グルタミン酸)、 中性 (即ち、 荷電してい ない)側鎖を有するアミノ酸(例えば、 グリシン、ァスパラギン、 グルタミン、 セリン、 スレオニン、 チロシン、 システィン、 ァラニン、 パリン、 ロイシン、 イソロイシン、 プロリン、 フエ二ルァラニン、 メチォニン、 トリプトファン) が挙げられる。 また、 中性側鎖を有するアミノ酸は、 さらに、 極性側鎖を有す るアミノ酸 (例えば、 グリシン、 ァスパラギン、 グルタミン、 セリン、 スレオ ニン、 チロシン、 システィン)、 及び非極性側鎖を有するアミノ酸 (例えば、 ァ ラニン、 パリン、 ロイシン、 イソロイシン、 プロリン、 フエ二ルァラニン、 メ チォニン、 トリブトファン) に分類することもできる。 また、 他のグループと して、 例えば、 芳香族側鎖を有するアミノ酸 (例えば、 フヱニルァラニン、 ト リプトフアン、 チロシン)、水酸基(アルコール性水酸基、 フエノール性水酸基 ) を含む側鎖を有するアミノ酸 (例えば、 セリン、 トレオニン、 チロシン) な ども挙げることができる。
また、 任意の配列番号 Xで表されるアミノ酸配列に対して有意な相同性を有 するアミノ酸配列としては、 任意の配列番号 Xで表されるアミノ酸配列に対し て、 例えば約 4 0 %以上、 好ましくは約 6 0 %以上、 より好ましくは約 8 0 % 以上、 さらにより好ましくは約 9 0 %以上、 最も好ましくは約 9 5 %以上の相
同性を有するアミノ酸配列が挙げられる。
相同性の程度 (%) は、 自体公知の方法によって決定することができる,。 例 えば、 相同性の程度 (%) は、 Smith及び Watermanのアルゴリズム(Adv. Appl. Math. , 1981, 2, 482- 489)を採用している Gapプログラム (Wisconsin Sequence Analysis Package, Version 8 for Unix (¾録商 ) , Genetics Computer Group, University Research Park, Madison WI)を初期設定で使用することによって決 定することができる。また、 Karlin及び Altschulのアルゴリズム (Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1990, 87 : 2264—2268, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1993, 90 : 5873-5877) を採用している BLASTプログラムを用いてもよい。 例えば、 蛋 白質の相同性を比較する場合、 XBLASTプログラムを初期設定で使用することに よって、相同性の程度(°/0)を決定することができる。さらに、 Myers及ぴ Miller (CABI0S, 1988, 4 : 11- 17)のアルゴリズムを採用している ALIGN プログラム (version 2. 0) (GCG sequence al ignment software package の一部) 用いて もよい。 ALIGNプログラムを用いてアミノ酸配列を比較する際の設定としては、 例えは、 PAM120 weight residue table, gap length penalty = 12, gap penalty = 4 が挙げられる。 また、 塩基配列の相同性の程度 (%) を決定する場合にも 同様に、 これらのプログラムを用いることができる。
「複合体を形成したときに可塑剤に対して結合する」 とは、 複合体が可塑剤 に対して反応性を有することを意味する。 可塑剤としては、 例えば、 上述した ものが挙げられる。 複合体が可塑剤に対して結合能を有するか否かは、 自体公 知の方法若しくはそれに準じる方法によって決定することができる。 なお、 本 発明の複合体は、 上記可塑剤のいずれかに対する結合能を有すればよい。
配列番号 2で表されるァミノ酸配列、 配列番号 4で表されるァミノ酸配列を 有する蛋白質、 並びに (a 3 )、 ( b 3 ) の蛋白質に 1以上のアミノ酸の欠失、 置換若しくは付加を導入することにより、 可塑剤に対する結合能や交叉反応性 が変化した蛋白質を得ることができる。 1以上のアミノ酸が欠失、 置換若しく は付加される領域は、 C D R 1、 C D R 2、 C D R 3、 F R 1、 F R 2、 F R
3、 FR 4からなる群より選択される任意の 1以上の領域でありうる。
本発明の部分ペプチドとしては、 上記 (a) 又は (b) の蛋白質の一部を構 成するペプチドであれば特に限定されないが、 例えば、 上記 (a) 又は上記 ( b) の蛋白質のアミノ酸配列において、 少なくとも 6個以上、 好ましくは少な くとも 8個以上、 より好ましくは少なくとも 10個以上、 さらにより好ましく は少なくとも 1 2個以上、 最も好ましくは少なくとも 1 5個以上の連続するァ ミノ酸からなるペプチドが用いられる。 また、 本発明の部分ペプチドとして、 上記 (a) の蛋白質、 又は上記 (b) の蛋白質の CDR 1、 CDR 2、 CDR 3、 FR 1、 FR,2、 FR 3、 F R 4に相当するアミノ酸配列を有する (又は、 からなる) 部分ペプチドを用いることもできる。
本発明の蛋白質又はその部分ペプチドの塩としては、自体公知の塩、例えば、 酸付加塩などを用いることができる。 酸付加塩としては、 例えば、 無機酸 (例 えば、 塩酸、 リン酸、 臭化水素酸、 硫酸) との塩、 あるいは有機酸 (例えば、 酢酸、 ギ酸、 プロピオン酸、 フマル酸、 マレイン酸、 コハク酸、 酒石酸、 タエ ン酸、 リンゴ酸、 蓚酸、 安息香酸、 メタンスルホン酸、 ベンゼンスルホン酸) との塩などが用いられる。
本発明において 「複合体」 としては、 上記 (a) の蛋白質と上記 (b) の蛋 白質とが連結している限り特に限定されないが、 例えば、 上記 (a) の蛋白質 と上記 (b) の蛋白質とがリンカ一を介して又は介さずに共有結合している複 合体が挙げられる。 また、 複合体は、 上記蛋白質、 部分ペプチドと同様に塩の 形態 (好ましくは、 酸付加塩) で用いることもできる。
上記 (a) の蛋白質と上記 (b) の蛋白質とを融合させるために用いられる リンカーとしては、 当該分野で公知のものを用いることができ特に限定されな いが、例えば、 GGGGS (配列番号 5) の繰り返し配列 (例えば、 GGGGSGGGGSGGGGS (配列番号 6 ) )、 GSTSGSGKSSEGKG (配列番号 7 )、 GSTSGSGKSSEGSGSTKG (配列番 号 8)、 GSTSGKPSEGKG (配列番号 9)、 GSTSGSGKPGSGEGSTKG (配列番号 10 ) 等 のペプチドなどをリンカ一として用いることができる (例えば、 Production of
single-chain Fv monomers and multimers, D. Filpula, J. McGuire, a d M. Whitlow. In ""Antibody Engineering" Edited by J. McCafferty, H. R. Hoogenboon, and D. J. Chiswell. p. 253-268, IRL PRESS (1996)参照)。 上記 ( a ) の蛋白質と上記 (b ) の蛋白質とがリンカ一を介して又は介さずに共有 結合している複合体は、 例えば、 上記 (a ) の蛋白質と上記 (b ) の蛋白質を 別々に調製した後、 これら蛋白質をそれぞれリンカ一に共有結合させることに より、 又はリンカーを介さずに直接共有結合させることによって得ることがで きる。 しかし、 この方法では複合体を得るために、 上記 (a ) の蛋白質及び上 記 (b ) の蛋白質の調製後にさらに両者を連結する工程を必要とするため煩雑 である。 また、 共有結合部位が異なるものが複数得られるおそれがあり、 再現 性等の観点から好ましい単一な複合体を調製しにくいという問題もある。 従つ て、 本発明の複合体としては、 例えば、 上記 (a ) の蛋白質及び上記 (b ) の 蛋白質がペプチドリンカ一を介してアミ ド結合することにより又は直接アミ ド 結合することにより融合している単鎖抗体が好ましい。 単鎖抗体は、 上記 (a ) の蛋白質をコードする塩基配列と、 ペプチドリンカ一をコードする塩基配列 と (リンカ一を介してアミド結合している単鎖抗体を得る場合)、 上記 (b ) の 蛋白質をコードする塩基配列とを読み枠を合わせて含む発現ベクターを含有す る形質転換体から容易に調製できるため有用である。 なお、 ペプチドリンカ一 をコードする塩基配列は、 上記 (a ) 及ぴ (b ) の蛋白質をコードする塩基配 列と読み枠を合わせたときに終止コドンを含まないものであれば特に限定され ない。
ペプチドリンカ一は、 当該分野で公知の方法により適宜選択することができ る。 具体的には、 ペプチドリンカ一としては、 1個以上のアミノ酸残基からな る任意の長さのぺプチドを用いることができるが、 例えば 1 0個以上のァミノ 酸残基からなるペプチドが用いられる。
本発明はまた、 本発明の蛋白質のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチ ドを提供する。 本発明のポリヌクレオチドは、 前述した本発明の蛋白質をコー
ドする塩基配列を含有するものであれば如何なるものであってもよい。
具体的には、 本発明のポリヌクレオチドとしては、 上記 (a ) の蛋白質,をコ ードする塩基配列 (例えば、 配列番号 1で表される塩基配列)、 上記 (b ) の蛋 白質をコードする塩基配列(例えば、配列番号 3で表される塩基配列)、 上記単 鎖抗体をコードする塩基配列が挙げられる。 また、 本発明のポリヌクレオチド として、 本発明の蛋白質を遺伝子組換えして得られた蛋白質をコードする塩基 配列を有するポリヌクレオチドを挙げることもできる。
上述した本発明のポリヌクレオチドは、 本明細書の開示に基づき公知の方法 を用いて得ることができる。 例えば、 限定されるわけではないが、 本発明のポ リヌクレオチドは、 抗可塑剤モノクローナル抗体を産生するハイプリ ドーマよ り得ることができる。 抗体蛋白の N末端アミノ酸配列を決定し、 ついで、 この アミノ酸配列より推定した塩基配列を持つプライマーを作成し、 抗体産生ハイ プリ ドーマより公知の方法により m R N Aを調製し、 それを基に逆転写酵素に より一本鎖 c D N Aを合成後、 本明細書に開示された抗可塑剤モノクローナル 抗体の重鎖又は軽鎖の可変領域のアミノ酸配列又は塩基配列に基づき、 P C R 法、 ハイプリダイゼーシヨン法等を用いることによって、 本発明のポリヌクレ ォチドを選択的に得ることが可能である。 このような方法は周知であり、 当業 者は本明細書の開示に基づいて、 本発明のポリヌクレオチドを容易に単離する ことが可能である。 これらの方法の具体的操作方法としては、 例えば、 モレキ ユラ一 - ク ロ一二ンク' (Molecular Cloning) 3rd edition (J. Sarabrook et. al. , Cold Spring Harbor Lab. Press, 2001)に記載の方法などが挙げられる 。 また、 mRNAの抽出はアマシャム社の QuickPrep mRNA精製キットの操作説明 書に記載の方法で、 cDNAの合成や 5,- RACE法はクロンテック社の SMART RACE キットの操作説明書に記載の方法なども挙げられる。
—実施態様では、 本発明の複合体は組換え抗体 (その断片をも含む) であり 得る。 組換え抗体 (Recombinant Antibodies) の作製方法などについては、 RECOMBINANT ANTIBODIES (ed. by F. Breitling, John Wiley & Sons (USA) , 1999
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) の第 2章に、 組換え抗体断片 (Recombinant Antibody Fragments) の作製方 法、 ハイプリ ドーマ細胞 (Hybridoma Cel l Line) からの抗体遺伝子のクロ一二 ング (Cloning) 方法、 抗体遺伝子ライプラ U (Antibody Gene Libraries) の作製方法、 遺伝子ライブラリーからの組換え抗体の選択 (Selection of Recombinant Antibodies From Gene Libraries 方法、 3J体の遺 feナ傑作 (Antibod y Engineering) 方法などが記載されており、 これらの方法により組換え抗体の 作製が可能である。
また、 同書第 4章には、 組換え抗体の製造方法も記載されている。 具体的に は、 in vitroではゥサギ Reticulocyte lysateでの発現力 原核生物(Prokaryote リでは、大腸菌 (E. coli)の Cytoplasra、periplasmの soluble fraction^periplasm の inclusion bodyや、 Baci llusヽ Streptomycesでの発現力 S、真核生物 (Eukaryote ) では、 Pichia、 SaccharomyceSs Schizosaccharomyces等の酵母、 Trichoderma などのカビ、 昆虫細胞では Baculovirus を用いた発現系、 myeloma、 CH0、 COS 等の動物細胞、 タバコなどの transgenic植物、 transgenic動物などでの発現 方法が記載されており、 これらにより形質転換体の作製が可能である。
さらに、 同書第 4章には、 組換え抗体の精製方法も記載されている。 まず、 物理的な方法、 例えば、 組換え生物の遠心分離による集菌、 超音波などによる 細胞破砕、 機械的な磨砕や酵素的な溶菌で目的物を分離する。 次にイオン交換 クロマトクフフィ一、 size exclusion chromatography thiophilic adsorption chromatographys affinity chromatography などを組み合わせて精製する。 特 に affinity chromartographyは効率的な方法であり、抗原認識特異性を活用し T antigen - apecific methodsや、 protein Aや protein Gなどの Fc部 や Fab 部位への結合を利用した antibody-specific methodや、そめような部位を持た ない scFvの場合に tagと言われる小さなぺプチド断片を持つた融合抗体として 発現させ、 この tagに特異的な affinityカラムを使用する方法 (例 His- tag、 c-myc tag, Strep tagなど) などにより精製することにより製造することが可 能である。
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17 まず、 抗可塑剤モノクローナル抗体産生細胞の c DNAライブラリーを構築 し、 保存性の高い免疫グロプリンの重鎖及び軽鎖の定常領域や可変領域 N末 端配列等をコードする c DN Aをプローブに用いて、 当該 c DN Aライブラリ 一をスクリ一ユングして抗可塑剤モノクローナル抗体の軽鎖及ぴ重鎖の c DN Aの単離を行うことができる。 これらの方法の具体的操作方法としては、 例え ば、モレキュラー-クローユング (Molecular Cloning) 3rd edition (J. Sambrook et. al., Cold Spring Harbor Lab. Press, 2001)に記載の方法などが挙げられる 本発明のポリヌクレオチドは、 また、 本明細書の記載の配列に基づき、 周知 の技術を用いて化学的に合成してもよい。
本発明の蛋白質を遺伝子組換えする方法としては、 自体公知の方法が挙げら れ、 例えば、 その蛋白質をコードする塩基配列を変換する方法を用いることが できる。 ポリヌクレオチド (例えば、 DNA) の塩基配列の変換は、 PCRや 公知のキット、 例えば、 Mutan™- Super Express Km (タカラバイオ)、 Mutan™-K (タカラバイオ) 等を用いて、 0DA- LAPCR法や Gapped duplex法や Kunkel法等 の自体公知の方法あるいはそれらに準じる方法に従って行うことができる。 ク ローン化された抗体蛋白質をコードする DNAは目的によりそのまま、 又は所望 により制限酵素で消化したり、 リンカーを付加したりして使用することができ る。該 DNAはその 5,末端側に翻訳開始コドンとしての AT Gを有し、また 3 ,末端側には翻訳終止コドンとしての T A A、TG A又は TAGを有していても よい。 これらの翻訳開始コドンや翻訳終止コドンは、 適当な合成 DNAァダプ ターを用いて付加することもできる。 本発明の抗体蛋白質の発現ベクターは、 例えば、 (ィ)本発明の抗体蛋白質をコードする DNAから目的とする DNA断 片を切り出し、 (口)該 DN A断片を適当な発現ベクター中のプロモーターの下 流に連結することにより製造することができる。
組換え抗体 (Recombinant Antibody) の作製方法
組換え抗体としては、種々の形態のものが作製できるが、 Roland Kontermann
の ANTIBODY ENGINEERING HOME PAGE ^ (http:〃 aximtl. itnt. uni-marburg. de/~rek/AEP. html、 2002年 2月 25日);に記 載のものはその例であり、 例えば、 Fab, fragments, F (ab' ) 2 fragments, Fv fragments (Fv)、 single-chain Fv fragments (scFv)、 bispecific- chimeric scFV ( - scFv)、 tandem scFV (scFv) 2、 bispecinc - (scFv) 2、 disulfide - linked scFv 、 disulfide - stabilized Fv fragments (dsFv)、 diabody single-chain diabody (scDb)、 bivalent diabody^ bispecific diabody kriob - into - hole stabilized diabody disulf ide- stabil ized diabody、 triabody tetrabody^ trispecif ic triabody^ CL-dimerized scFv、 CHl-CL-diraerized scFv、 CH3-dimerized scFv、 knob - into - hole CH3-diraerized scFv、 CH3 - dimerized bivalent diabody N Fc-dimerized scFv、 Fab-scFv fusions^ Ig-scFv fusions^ leucine - zipper stabilized scFv dimers、 helix-stabilized scFv dimers、 4 helix - bunde stabilized scFv tetramerss streptavidin-scFvN intrabodyなど力 S組換え抗 体として作製可能である。 '
また、変異処理を施した抗体遺伝子のシャッフリング(Shuffling)により、 目 的の有用な性質を有する抗体を選択する方法も本発明の範囲内に入る。
組換え抗体の発現系
組換え抗体の発現系としては、 効率よく組換え抗体を発現できる系であれば どのような発現系でもよいが、 Roland Kontermannの ANTIBODY ENGINEERING HOME PAGE (http : //aximtl. irat. uni-marburg. de/"rek/AEP. htm 2002年 2月 25日) に纏められているように、 例えば、 mammalian cells では、 Fv、 scFvや scFv derivatives^ bivalent及び oispecif ic scFv、 scFv又は Fab-fusion proteins 、 intrabodiesなどの発現が、 Insect cellsでは、 scFVや Fabなどの発現が、 Fungal cellsでは、 Fv、 scFvや Fabなどの発現が、 Plants cellsでは、 scFv の発現が知られており、 このように種々の発現系が使用可能である。
c D N Aライブラリ一の作製法
c D N Aライブラリーの作製法としては、 効率よく c D N Aライプラリーを
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19 作製できる方法であればどのような方法でも良いが、 Roland Kontermann』の ANTIBODY ENGINEERING HOME PAGE , (http://axiratl. imt. uni-raarburg. de/ ek/AEP. html, 2002年 2月 25日)に述 ベられているファージディスプレイ法も、 その一つである。
組換え抗体の選択方法
作製したライブラリーから、 目的の組換え抗体を選択する方法としては、 Roland Kontermannの ANTIBODY ENGINEERING HOME PAGE
(http://aximtl. imt. uni-raarburg. de/~rek/AEP. html、 2002年 2月 25曰)に記 載のプロトコール、 「ファージミ ドライブラリーからの組換え抗体の単離法 Jや 、 「fdファージライブラリーからのペプチドの単離法」 などの方法も、 選択方 法として使用可能である。
ポリヌクレオチド (例えば、 DNA) は、 目的によりそのまま、 又は、 所望 により切断、又は他のポリヌクレオチドの付加などして使用することができる。 例えば、 DNAは、 その末端に翻訳開始コドン ATGを有していてもよい。 こ のような改変は、 自体公知の方法により、 例えば、 モレキュラー .クローニン グ (Molecular Cloning) 3rd edition (J. Sambrook et. al., Cold Spring Harbor Lab. Press, 2001)に記載の方法等により行なうことができる。
このようにして得られた DNAを、 プロモーター、 翻訳開始コドン、 適当な シグナル配列等を自体公知の方法でベタターに組込むことにより、 組換えべク ターを製造することができる。該ベクターやプロモーターや宿主菌株としては、 たとえば、 モレキュラー 'クローユング(Molecular Cloning) 第 3版
(J. Sambrook et. al. , Cold Spring Harbor Lab. Press, 2001·)の Appendix3に 記載のベクター、 プロモーターゃェシエリヒア属菌株等が挙げられる。
ベクターとしては、上記以外に、大腸菌由来のプラスミ ド(p ET— 2 76, p CANTAB- 5 E, p UC 1 9 , ρ Τ 7 Β 1 u e Τ·)、枯草菌由来のプラ スミ ド (例、 pUB 1 10、 p TP 5、 p C 1 94)、 酵母由来のプラスミ ド ( 例、 p SH1 9, p SH1 5)、 ファージ, Ml 3Κ07などのパクテリオフ
ァージ、 レ トロゥイノレス、 ワクシニアゥイノレス、 バキュロウイノレスなど 動物 ウィルスなどの他、 p A 1— 1 1、 pXT l、 R c / CMV p R c /R S V、 p c DNA I ZN e oなどが用いられる。
プロモーターとしては、 遺伝子の発現に用いる宿主に対応して適切なプロモ 一ターであればいかなるものでも良い。 例えば、 宿主がェシエリヒア属菌であ る場合は、 t r pプロモーター、 1 a cプロモーター、 r e cAプロモーター、 λ PL プロモーター、 1 p pプロモーターなどが、 宿主がバチルス属菌である 場合は、 S PO lプロモーター、 S P02プロモーター、 p e n Pプロモータ 一など、 宿主が酵母である場合は、 PHO 5プロモーター、 PGKプロモータ 一、 GAPプロモーター、 ADHプロモーターなどが好ましい。 宿主が動物細 胞である場合は、 S R CKプロモーター、 S V 4 0プロモーター、 L TRプロモ 一ター、 CMVプロモーター、 HSV— TKプロモーターなど、 宿主が昆虫細 胞である場合は、 ポリヘドリンプロモーター、 P 1 0プロモーターなどが好ま しい。
発現ベクターには、 以上の他に、 所望によりェンハンサー、 スプライシング シダナル、 ポリ A付加シグナル、 選択マ一力一、 S V 40複製起点などを含有 しているものを用いることができる。 選択マーカーとしては、 例えば、 アンピ シリン耐性遺伝子 (以下 Amp Rと略称する場合がある)、 カナマイシン耐性遺 伝子 (以下 KmRと略称する場合がある)、 クロラムフユ二コール耐性遺伝子 ( 以下 CmRと略称する場合がある) 等が挙げられる。
また、 必要に応じて、 宿主に合ったシグナル配列を、 本発明の抗体蛋白質の N端末側に付加する。 宿主がェシエリヒア属菌である場合は、 p h oA 'シグ ナル配列、 o m p A ·シグナル配列などが、宿主がバチルス属菌である場合は、 —アミラーゼ 'シグナル配列、 サブチリシン ·シグナル配列などが、 宿主が 酵母である場合は、 MF a ■シグナル配列、 SUC 2 ■ シグナル配列など、 宿 主が動物細胞である場合には、 ィンシュリン · シグナル配列、 α—ィンターフ エロン ·シグナル配列、 抗体分子■シグナル配列などがそれぞれ利用できる。
このようにして構築された本発明の抗体蛋白質をコードする DNAを含有する べグターを用いて、 形質転換体を製造することができる。 . 宿主としては、 ェシエリヒア属菌、 バチルス属菌、 酵母、 昆虫細胞、 昆虫、 動物細胞などが用いられる。 ェシエリヒア属菌としては、 例えばェシエリヒア 'コリ (Escherichia coli) K 1 2 · DH 1 〔プロシージングズ ·オズ 'ザ 'ナ ショナノレ.アカデミー,ォプ ·サイェンシィズ'ォブ ·ザ ·ユーエスエー (Proc. Natl. Acad. Sci. USA) 60巻、 160 (1 968)〕、 JM103 〔ヌクレイ ック 'ァシッズ ' リサーチ、 (nucleic Acids Research), 9卷, 309 (1 9 8 1)〕, J A 22, 1 〔ジャーナル'ォブ'モレキュラー■バイオロジー(Journal of Molecular Biology), 1 20卷, 5 1 7 (1 978)〕, HB 1 0 1 〔ジャー ナル 'ォプ 'モレキュラー 'バイオロジー, 41巻、 45 9 ( 1 96 9)3, C 600 〔ジェネティックス(Genetics), 3 9巻, 440 (1 9 54)〕, BL 2 1DE 3 (p Ly s S), TG— 1, J M 109などが用いられる。 バチルス属 菌としては、 例えば、 バチルス ·ズブチリス (Bacillus subtilis) M I 1 14 [ジーン(Gene), 24巻, 255 (1 983)], 207 - 2 1 [ジャーナル ' ォプ -ノ ィオケミス トリー(Journal of Biochemistry), 95卷, 87 (1 98 4)] などが用いられる。 酵母としては、 例えば、 サッカロマイセス 'セレビシ (Saccharomyces cerevisiae) A H 22 , AH 22 R -, NA 8 7 - 1 1 A, D K D - 5 D , 2 0 B - 1 2 , シゾサ ッカ ロ マ イ セ ス ' ボ ンべ (Schizosaccharomyces pombe) NCYC 1 9 1 3, NCYC 2036、 ピキア ' パストリス(Pichia pastoris)などが用いられる。 昆虫細胞としては、 例えば、 ウィルスが A c N P Vの場合は、 夜盗蛾の幼虫由来株化細胞 (Spodoptera frugiperda cell ; S f 細胞)、 Trichoplusia ni の中腸由来の MG 1細胞、 Trichoplusia niの卵由来の High Five™細胞、 Mamestrabrassicae由来の細胞 又は Estigmena acrea由来の細胞などが用いられる。 ウィルスが BmNPVの 場合は、 蚕由来株化細胞 (Bombyx tnori N; BmN細胞) などが用いられる。 該 S f 細胞としては、 例えば、 S f 9細胞 (ATCCCRL1711)、 S f 2 1細胞 (以上
、 Vaughn, J. L.ら、 イン ' ビポ (In Vivo) , 13,213-217, (1977)) などが用いら れる。 昆虫としては、 例えば、 カイコの幼虫などが用いられる [前田ら, ネィ チヤ一 (Nature), 3 1 5卷, 5 92 (1 985)]。 動物細胞としては、 例えば 、 サル細胞 COS— 7, V e r o , チャイニーズハムスター細胞 C H O, マウ ス L細胞、 マウス A t T— 20、 マウスミエローマ細胞、 ラット GH3、 ヒ ト - F L細胞などが用いられる。
ェシエリヒア属菌を形質転換するには、 例えば、 プロシージ ダス ·ォプ■ ザ■ナショナノレ ·アカデミー■ォブ ·サイエンシーズ ·ォブ ·ザ ·ユーエスェ 一 (Proc.Natl.Aead.Sci. USA), 69卷, 2 1 10 (1 9 72) やジーン (Gene ), 1 7卷, 107 (1 982) などに記載の方法に従って行うことができる。 バチルス属菌を形質転換するには、 例えば、 モレキュラー ·アンド ·ジエネラ ノレ -ジェネティックス (Molecular & General Genetics), 1 68卷、 1 1 1 ( 1 979) などに記載の方法に従って行うことができる。 酵母を形質転換する には、 ί列えは メソッズ 'イン 'ェンザィモロジ一 (Methods in Enzymology) , 1 94卷, 1 82— 1 87 ( 1 9 9 1 )、 プロシージングス 'ォプ ·ザ ·ナショ ナル■ アカデミー ■ ォブ · サイエンシーズ · ォプ · ザ · ユーエスエー ( Proc.Natl.Aead.Sci. USA), 75卷, 1 929 (1 978) などに記載の方法に 従って行うことができる。 昆虫細胞又は昆虫を形質転換するには、 例えば、 バ ィォ /"テクノロジー (Bio/Technology), 6卷, 47— 55 (1 988) などに 記載の方法に従って行うことができる。動物細胞を形質転換するには、例えば、 細胞工学別冊 8新細胞工学実験プロトコール, 263— 26 7 (1 9 95) (秀 潤社発行)、 ヴィロロジー (Virology), 5 2巻, 456 (1 973) に記載の 方法に従って行うことができる。 このようにして、 抗体蛋白質をコードするポ リヌクレオチドを含有する発現ベクターで形質転換された形質転換体が得られ る。
さらに、 このようにして得られた形質転換体を培養することにより、 本発明 の蛋白質を生成せしめ、 これを採取することにより本発明の蛋白質を製造する
—
23 ことができる。
培養に用いられる培地としては、 宿主がェシエリヒア属菌、 バチルス属,菌で ある形質転換体を培養する際、 培地に使用される培地としては液体培地が適当 であり、 その中には該形質転換体の生育に必要な炭素源、 窒素源、 無機物その 他が含有せしめられる。炭素源としては、例えば、グルコース、デキストリン、 可溶性澱粉、 ショ糖など、 窒素源としては、 例えば、 アンモニゥム塩類、 硝酸 塩類、 コーンスティープ . リカー、 ペプトン、 カゼイン、 肉エキス、 大豆粕、 バレイショ抽出液などの無機又は有機物質、 無機物としては、 例えば、 塩化力 ルシゥム、 リン酸二水素ナトリウム、 塩化マグネシウムなどが挙げられる。 ま た、 酵母、 ビタミン類、 成長促進因子などを添加してもよい。 培地の pHは約 5〜8が望ましい。
ェシエリヒア属菌を培養する際の培地としては、 例えば、 グルコース、 カザ ミノ酸を含む M 9培地 [ミラー (Miller), ジャーナル■ォブ ·ェクスペリメン ッ ■ イン ■ モレキュラー · ジエネティ ックス (Journal of Experiments in Molecular Genetics) , 43 1—433, Cold Spring Harbor Laboratory, New York (1972)] が好ましい。 ここに必要によりプロモーターを効率よく働かせる ために、 例えば、 3 ]3—インドリルアクリル酸やイソプロピルチオガラクトシ ド (I PTG) のような薬剤を加えることができる。 宿主がェシエリヒア属菌 の場合、 培養は通常約 1 5〜43°Cで約 3〜24時間行い、 必要により、 通気 や撹拌を加えることもできる。 宿主がバチルス属菌の場合、 培養は通常約 30 〜40でで約6~24時間行ぃ、必要により通気や撹拌を加えることもできる。 宿主が酵母である形質転換体を培養する際、 培地としては、 例えば、 バークホ ルダー (Burkholder) 最小培地 [Bostian, K. L.ら、 プロシージングス ·ォブ■ ザ ·ナショナノレ ·アカデミー ·ォブ■サイエンシーズ ·ォブ ·ザ■ユーエスェ 一 (Proc.Natl.Acad. Sci. USA), 77卷, 4505 (1 980)] や、 0. 5% カザミノ酸を含有する SD培地 [Bitter, G.A.ら、 プロシージングス ·ォプ■ザ ■ナショナル ·アカデミー 'ォプ■サイエンシーズ■ォプ ·ザ ·ユーエスエー
(Proc. Natl. Acad. Sci.USA), 8 1卷, 5 3 30 ( 1 9 84 ) ] が挙げられる。 培地の; pHは約 5〜8に調整するのが好ましい。 培養は通常約 20〜 35,°Cで 約 2 :〜 72時間行い、 必要に応じて通気や撹拌を加える。
宿主が昆虫細胞又は昆虫である形質転換体を培養する際、 培地としては、 Grace's Insect Medium(Grace, T. C. C. ,ネイチヤー (Nature) , 1 95, 78 8 (1 962))に非働化した 10%ゥシ血清等の添加物を適宜加えたものなどが 用いられる。 培地の: ρΗは約 6. 2〜6. 4に調整するのが好ましい。 培養は 通常約 27 °Cで約 3〜 5日間行い、 必要に応じて通気や撹拌を加える。 宿主が 動物細胞である形質転換体を培養する際、 培地としては、 例えば、 約 5〜20 %の胎児牛血清を含む MEM培地 [サイエンス (Science),' 1 22卷、 50 1 ( 1 952)], DMEM培地 [ヴイロロジー (Virology), 8卷、 3 96 (1 9 59)], RPMI 1640培地 [ザ 'ジャーナル'ォプ 'ザ .アメリカン -メ ディ力ノレ , アソシエーショ ン (The Journal of the American Medeical Association), 1 99巻, 5 1 9 (1 96 7)], 1 9 9培地 [プロシージング ■ォブ'ザ'ソサイエティ一'フォー■ザ'バイオロジカル 'メディスン(Proceeding of the Society for the Biological Medicine), 73卷, 1 (1 950)] な どが用いられる。 pHは約 6〜8であるのが好ましい。 培養は通常約 30°C〜 40°Cで約 1 5〜60時間行い、 必要に応じて通気や撹拌を加える。 以上のよ うにして、 形質転換体の細胞内、 細胞膜又は細胞外に本発明の抗体蛋白質を生 成せしめることができる。
このようにして得られた培養物から、 目的とする本発明の抗体蛋白質を分離 精製するには、 例えば下記の方法により行うことができる。 本発明の抗体蛋白 質を培養菌体あるいは細胞から抽出するに際しては、 培養後公知の方法で菌体 あるいは細胞を集め、 これを適当な緩衝液に懸濁し、 超音波、 リゾチーム及び /又は凍結融解などによって菌体あるいは細胞を破壌したのち、 遠心分離やろ 過により抗体蛋白質の粗抽出液を得る方法などが適宜用いられる。 緩衝液の中 に尿素や塩酸グァニジンなどの蛋白質変性剤や、 トリ トン X— 1 00™などの
界面活性剤が含まれていてもよい。 培養液中に抗体蛋白質が分泌される場合に は、 培養終了後、 それ自体公知の方法で菌体あるいは細胞と上清とを分離し、 上清を集める。 このようにして得られた培養上清、 あるいは抽出液中に含まれ る抗体蛋白質の精製は、 自体公知の分離 ·精製法を適切に組み合わせて行うこ とができる。 これら公知の分離 .精製法としては、 塩析ゃ溶媒沈澱法などの溶 解度を利用する方法、 透析法、 限外ろ過法、 ゲルろ過法、 及ぴ S D S—ポリア クリルアミ ドゲル電気泳動法などの主として分子量の差を利用する方法、 ィォ ン交換クロマトグラフィーなどの荷電の差を利用する方法、 ァフィ二ティーク 口マトグラフイ などの特異的親和性を利用する方法、 逆相高速液体クロマト グラフィ一などの疎水性の差を利用する方法、 等電点電気泳動法などの等電点 の差を利用する方法などを用いて分離精製できる。
本発明の複合体、 蛋白質、 部分ペプチド及び 又はそれらの塩は、 自体公知 の蛋白質の合成法に従って、 あるいは本発明の蛋白質を適当なプロテアーゼで 切断することによって製造することができる。 蛋白質の合成法としては、 例え ば、 固相合成法、 液相合成法のいずれによっても良い。 即ち、 本発明の蛋白質 を構成する部分ペプチド若しくはアミノ酸と残余部分とを縮合させ、 精製物が 保護基を有する場合は保護基を脱離することにより目的の蛋白質を製造するこ とができる。 公知の縮合方法や保護基の脱離としては、 例えば、 以下に記載さ れた方法が挙げられる。
i) M. Bodanszky及び M. A. Ondetti、ペプチドシンセシス(Peptide Synthesis), Interscience Publishers, New York (1966年)
ii) Schroeder 及ぴ Luebke、 ザぺプテド (The peptide) , Academic Press, New York (1965年)
iii)泉屋信夫他、 ペプチド合成の基礎と実験、 丸善 (株) (1975年)
iv)矢島治明及び榊原俊平、生化学実験講座 1、タンパク質の化学 IV、 2 0 5、 (1977年)
V)矢島治明監修、 続医薬品の開発 第 1 4卷 ペプチド合成 広川書店
また、 反応後は通常の精製法、 例えば、 溶媒抽出 '蒸留 ·カラムクロ トグ ラフィ一'液体ク口マトグラフィー '再結晶などを組み合わせて本発明 蛋白 質を精製単離することができる。 上記方法で得られる蛋白質が遊離体である場 合は、 公知の方法によって適当な塩に変換することができるし、 逆に塩で得ら れた場合は、 公知の方法によって遊離体に変換することができる。
以上のようにして得られた本発明の複合体及び Z又は蛋白質は、 可塑剤を定 量的に測定する際の試薬として使用したり、 種々の担体に固定化することによ り可塑剤を濃縮するためのァフィ二ティーカラムの製造などに利用することが できる。 また、 本発明の複合体及び/又は蛋白質に結合 (即ち、 交叉反応) す る可塑剤を同定することにより、 本発明の複合体及び 又は蛋白質の適用範囲 を拡大することができる。 さらに、 本発明は、 本発明の複合体及び 又は蛋白 質を含む、可塑剤の測定又は定量用キット、可塑剤の濃縮用キットを提供する。 なお、 上記キットでは、 1種類の本発明の複合体及び Z又は蛋白質のみを含 んでいてもよいが、 種類の異なる複数の本発明の複合体及び Z又は蛋白質を含 むことができる。 例えば、 交叉反応性の異なる複数の複合体を含むキットを使 用することによって特定の可塑剤を特異的に測定 ·定量することができる。 本発明の複合体及び/又は蛋白質による可塑剤の測定又は定量方法としては、 放射性同位元素免疫測定法 (R I A法)、 E L I S A法 (Engvall, E ., Method s in Enzymol. , 70, 419 -439 (1980) )、 蛍光抗体法、 プラーク法、 スポッ ト 法、 凝集法、 ォクタロニー (Ouchterlony) 等の一般に抗原の検出に使用されて いる種々の方法 (「ハイプリ ドーマ法とモノクローナル抗体」、 株式会社 R & D ブラユング発行、 第 3 0頁一第 5 3頁、 昭和 5 7年 3月 5日) が挙げられる。 感度、 簡便性等の観点から E L I S A法が汎用される。
また、 本発明の複合体及びノ又は蛋白質の固定化用担体としては、 例えば、 マイクロプレート (例、 9 6ウェルマイク口プレート、 2 4ウエノレマイクロプ レート、 1 9 2ウェルマイク口プレート、 3 8 4ウェルマイク口プレートなど )、 試験管 (例、 ガラス試験管、 プラスチック試験管)、 ガラス粒子、 ポリスチ
—
27 レン粒子、 修飾ポリスチレン粒子、 ポリビュル粒子、 ラテックス (例、 ポリス チレン 'ラテックス)、 ニトロセルロース膜、 臭化シアン活性化濾紙、 DB:,M活 性化濾紙、 粒状固相 (例、 セファロース、 セフアデッタス、 ァガロース、 セル ロース、セファタリルなど)、鉄含有ポリカーボネート膜、 マグネット含有ビー ズなどが挙げられる。
本発明の複合体及び 又は蛋白質を担体に担持させるには、 自体公知の方法 〔例、 上記「ェンザィムィムノアツセィ」 第 268〜296頁、 「ァフィニティ 一クロマトグラフィーハンドブック」 (アマシャム ファノレマシア バイオテ ク株式会社 (1 9 98年 1 2月 20日発行))〕 などで担持できる。
また、 本発明の可塑剤の濃縮方法においては、 大量の検体を、 免疫吸着体力 ラムを通過させたり、 免疫吸着体粒子と混合したりすることにより、 抗原抗体 反応を利用して、 目的の可塑剤、 特に環境ホルモン、 その分解物又はそれらの 混合物を、 免疫吸着体に捕捉させ、 ついで、 pHの変更 (pH2. 5〜3に下 げる、 pH l l. 5に上げるなど)、イオン強度の変更( 1M Na C lなど)、 極性の変更 (10%ジォキサン、 50%エチレングリコール、 3 Mカオトロピ ック塩 (S CN―、 CC l 3COO—、 I— ) など)、 蛋白変性剤 (8M尿素、 6M 塩酸グァニジンなど) の添加や、 電気泳動による解離など公知の方法で溶出さ せることにより、 免疫学的に夾雑物の少ない目的物質を、 数千から数万倍もの 高倍率に濃縮できる。
これにより、 環境中に極く微量しか存在しない環境ホルモン、 その分解物又 はそれらの混合物を、 溶媒抽出法や固層抽出法などの従来の濃縮方法と比較し て、 はるかに高倍率に濃縮することができ、 しかも定量を妨害する夾雑物等の 含量の少ない濃縮液を得ることができる。
また、 本発明は、 可塑剤に対して結合するモノクローナル抗体及び当該モノ クローナル抗体を産生するハイプリ ドーマを提供する。 好ましいハイプリ ドー マ及ぴモノクローナノレ抗体としては、 mouse/mouse— hybridoma 2F4A4 γ (F E R M B P— 0860 1) 及ぴ 2F4A4y抗体があげられる。 ハイプリ ドーマの作
製方法は、 自体公知の方法で行うことができ、 その詳細は後述の実施例^記載 されている。 ハイプリ ドーマによるモノクローナル抗体の産生、 精製も自,体公 知の方法で行うことができる。
本明細書及び図面において、 塩基やアミノ酸などを略号で表示する場合、 I UPAC— I UB Commission on Biochemical Nomenclature による略号ある いは当該分野における慣用略号に基づくものであり、 その例を下記する。 また アミノ酸に関し光学異性体がありうる場合は、 特に明示しなければ L体を示す ものとする。
DNA :デォキシリポ核酸
c DNA :相捕的デォキシリポ核酸
a, A :ァデニン ,
t, T :チミン
g, G : グァニン
c, C : シトシン
i , I : ヒポキサンチン (イノシン)
RNA : リポ核酸
mRNA : メッセンジャーリボ核酸
アミノ酸の略記
3文字 : 1文字 日本名
G 1 y : G グリシン
A 1 a : A ァラニン
V a 1 : V ノ リン
L e u : L ロイシン
I 1 e : I イソロイシン
S e r : S セリン
T h r : T スレ才ニン
C y s : C システィン
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29
Me t : M : メチォニン
G 1 u : E :グノレタミン酸
A s P : D :ァスパラギン酸
L y s : K . "ジン
A r g : R : アルギニン
H i s : H : ヒスチジン
P h e : F : フエ二ルァラニン
T y r : Y :チロシン
T r P : W トリブトファン
P r o : P :プロリン
A s n : N :ァスパラギン
G 1 n : Q :グルタミン
A s x : B : A s n + A s ρ
G 1 x : Z : G 1 n +G 1 u
実施例
以下に実施例を挙げて、 本発明をさらに詳しく説明するが、 本発明はこれら に限定されるものではない。
[材料]
抗 DEHP抗体 (2F4A4y) 産生ハイプリ ドーマ
抗 DEHP抗体 (2F4A4y) (アイソタイプ γ 1, κ) を産生するハイブリ ドーマ株
、 2F4A4yは、 以下に記載の方法により取得した。
[実施例 1 ] D EHP— 7ハプテンの合成
へキサエチレングリコーノレ 2 8. 2 gを DMF 3 0 0 mLに溶解し、氷冷下、
N a H (鉱油中 6 0%希釈) 4. O gを添加し、 氷冷下で 1 5分攪拌した。 さ らにベンジルク口ライド 1 5. 2 gを 1 0°Cにて、 約 5分間で滴下した。 室温 で 1. 5時間攪拌した後、 反応液をろ過し、 ろ液を減圧濃縮した。 濃縮液をさ らにシリカゲルカラム (シリカ 2 0 0 g、 酢酸ェチル) で精製し、 へキサェチ
—
30 レングリコール モノべンジルエーテル 20 gを無色液体として得た。 得られ たへキサエチレングリコール モノべンジルエーテル 1. 86 gとフダ 酸無 水物 0. 74 gとを混合し、 混合物を 1.10°Cで 17時間攪拌した。 精製は行 わず、 得られた反応物全量に、 トルエン 30mL、 1'一プロモ— 2—ェチルへ キサン 0. 9mLおよび DBU0. 77 gを添加した。 混合物を 1 10 °Cで 4 時間攪拌した後、水 3 OmLを加えた。有機層を分液し、飽和食塩水で洗浄し、 無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、 減圧濃縮した。 得られた反応物をへキサン一 酢酸ェチル (1 : 1) に溶解し、 シリカゲルカラムで精製し、 2. 45 gの粗 精製物 1を無色オイルとして得た。
2. 45 gの粗精製物 1を THF 4 OmLに溶解し、 触媒として 10%P d /C (50%含水品) 0. 4 gを添加した。 H
2吹き込み (3 OmL/分、 4 時間) 後、 ろ過にて触媒を除去した。 反応物に精製水 1 OmLと P dブラック 0. l gを添加し、 H
2吹き込み (30mLZ分、 4時間) した後、 TLCに よりほとんどの原料が消費されたことを確認した。 反応物をろ過し、 減圧下で THFを留去し、 酢酸ェチルで抽出した。 抽出液を無水硫酸ナトリウムで乾燥 した後、減圧濃縮して 1. 8 gの粗精製物 2を無色オイルとして得た。 863. 9mgの得られた粗精製物 2に無水コハク酸 166. 6mgを加え、 100°C で 6時間攪拌した。 さらに無水コハク酸 109. 6mgを加えて、 1 10°Cで ー晚攪拌した。 反応物を酢酸ェチル一 2-プロパノール (9 : 1) に溶解し、 シ リカゲルカラムで精製し、 粗精製物 0. 5 1 gを無色オイルとして得た。 同様 の精製を繰り返し、 粗精製物 0. 45 gを無色オイルとして得た後、 ジイソプ 口ピルエーテルに溶解し、 水で 5回洗浄した。 分液が困難なため、 途中で飽和 食塩水を適宜加えることにより有機層を分取し、 無水硫酸ナトリゥムで乾燥し て、 減圧濃縮し、 以下の式 (I V) :
で表されるハプテン (DEHP— 7) 0. 4 1 gを無色オイルとして得た。 実施例 2
1. 抗 DE HPモノクローナル抗体の取得
(1) 免疫原、 アツセィ用抗原、 細胞融合用抗原の調製
実施例 1で合成したハプテン(DEHP- 7) 3 5 mol、水溶性カルポジィミ ド 4 2 Atinol、及ぴ N -ヒドロキシコハク酸ィミド 4 2 μταοΐをジメチルスルホキシド 0 . 5tnL中、 室温でー晚反応させて、 ハプテンの活性化エステルを作製した。 次 に、 牛血清アルブミン(BSA)、 オボアルブミン(OVA)又はストレプトアビジン各 5 mgを 0. 1 3 M重炭酸ナトリウム(NaHC03)水溶液 1 m Lに溶解し、 上記活性 化エステル 1 2 0、 5 0又は 2 X L を添加し、 4 °Cでー晚反応させた。 ダノレべ ッコリン酸緩衝液 (PBS)に対する透析により未反応の試薬を除去し、 ハプテン - BSAは免疫原として、 ハプテン -0VAはアツセィ用抗原として、 ハプテン-スト レブトァビジンは細胞融合用抗原として凍結保存した。
(2) マウス抗血清アツセィ方法
上記 (1 ) で作製したアツセィ用抗原(ハプテン- 0VA)を 0.1M NaHC03水溶液 (pH9.8)で 10/zg/mLに希釈し、 96穴プレートに 50 μ L/wellずつまき、 4。Cで一 昼夜静置することにより、 抗原をプレートに吸着させた。 次に、 前記プレート から抗原を回収し、 PBSで希釈した 1%ゼラチンを 350/zL/well加え、 4°Cで一 昼夜静置してプロッキングを行った。前記プレートをさらに 37°Cで 2時間静置 させた後、 PBST(0.05% T een20 in PBS)で 3回洗浄し、 一次抗体(PBSTで希釈 した血清)を 50 L/well加え、 37°Cで 1時間反応させた。続いて PBSTで 3回洗 浄後、 PBSTで 10,000倍に希釈した二次抗体 [HRP (西洋ヮサビペルォキシダー
—
32 ゼ)でコンジュゲート化したャギ抗マウス IgG (H+L) ]を 50 z L/well加え 37 °C、 1時間反応させた。 最後に、 PBSTで 5回洗浄後'、 発色剤 [0. 1M タエ >:.酸ナ トリゥム緩衝液(PH5. 2)中、 0 -フエ二レンジァミン(lmg/ml)及び 0. 02% H202] を 100 L/well加えて 37°C、 10分間発色させ、 1 M H2S04を 50 μ L/well加えて 反応を停止した。 マイクロプレートリーダーを用いて、 発色反応を 0D49。nmにて 測定した。
( 3 ) 免疫
( 1 ) で調製した免疫原 (ハプテン- BSA) を 500 μ g/raLとなるように PBSに 溶解して抗原溶液とし、 BALBんマウス(SPF仕様、 メス、 4週齢)を免疫した。 初回免疫においては、 マウス一匹あたり、 前記抗原溶液 ΙΟΟ μ ί を等量の RIBI アジュバント (RIBI MPL+TDM EMULSION) (Corixa社より購入) と混合して 200 Lとし、 2〜3分ボルテックスすることにより水中油型ェマルジヨンを調製し た。これをマウス腹腔内に注射した。追加免疫においては、抗原溶液 100 μ L (300 g/raL)と等量の RIBIアジュバントとを混合し、 初回の免疫と同様に水中油型 ェマルジヨンを調製した。 また、 追加免疫は、 すべて 2週間の間隔で行った。
3回目の免疫の 3日後にマウスの眼窩静脈から採血し、 血ぺぃ化した後、 10, 000rpm (8, 200 G)で 10分間遠心分離して血清を得た。得られた血清の抗体価 を上記 1— ( 2 )の方法で測定し、抗体価が十分高ければ 4回目の免疫を行い、 その 3日後にマウス脾臓細胞を摘出し、 細胞融合に用いた。 また、 抗体価が十 分でなかった場合は追加免疫を再度 1ないし 2回繰り返し、 抗体価の十分な上 昇を確認したのち、 最後の追加免疫を行い、 細胞融合を実施した。
( 4 ) 電気パルス法 (P E F法) による細胞融合
( I ) 脾細胞ーハプテン一ストレブトアビジン複合体の調製
( 3 ) で得られた抗体価の上昇したマウスから常法に従い脾臓を摘出し、 硫 酸カナマイシン入り RPMI1640中に脾細胞懸濁液 2. 5mLを調製した。 一方で、 ( 1 ) で調製したハプテン-ストレプトアビジン (lmg/mL) 20 /i Lを硫酸カナマイ シン入り RPMI1640 2. 5mLに添カ卩し、先に調製した脾細胞懸濁液 2. 5mLと混合し
た。 4°Cで 2時間ローテ一ターにより反応させたのち、 遠心分離 (800G > 5分 ) し、 沈殿を硫酸ガナマイシン入り RPMI1640 lOtnLに懸濁した。 再度、 同^ iの 遠心操作ののち、 沈殿を硫酸カナマイシン入り RPMI1640 5mLに懸濁し、 脾細胞 —ハプテン一ストレプトァビジン複合体を調製した。
(II) ビォチン一ミエローマ細胞複合体の調製
RPMI1640完全培地中(T- 150 培養フラスコ 3 本)で培養したミエローマ細胞 (PAI)を回収し、 40mLの PBSで洗浄して遠心分離した後、 5mLの PBSに懸濁した 。 一方で 30 /z Lの N-ヒ ドロキシサクシンイミ ドビォチン(lrag/30 /z L in DMF)を 5mLの PBSに溶解し、先に調製したミエ口一マ細胞懸濁液 5mLと混合し、 37°C、 5°/。C02インキュベーター内で 30分回転させた。 前記細胞を遠心分離し、 50mLの 硫酸カナマイシン入り RPMI1640で洗浄した後、 再度遠心分離し、 5raLの硫酸力 ' ナマイシン入り RPMI 1640に懸濁した。
(III) PEFによる細胞融合
( 4 ) 一 (1 )、 (II) で調製した各懸濁液を脾細胞一 DEHP-7—ストレブトァ ビジンとビォチン一ミエローマ細胞が 1 : 1 となるように混合した。 これを 200 Gで 10分遠心分離した後、 沈殿を lmLの硫酸カナマイシン入り RPMI1640に懸 濁した。 さらに、 50Gで 1 - 2分遠心分離した後、 クリーンベンチ内で 30分放置 した。 その後、 さらに 30分、 5%C02インキュベーター内でゆっくりと回転させ 、 200G、 10分遠心分離し、 2mLの等張ショ糖緩衝液(0. 25Mショ糖 +2raMリン酸ニ 水素ナトリゥムノリン酸水素ニナトリゥム(pH7. 2) +0. ImM 塩化マグネシウム +0. IraM塩化カルシウム)に懸濁した。 これをプラチナ製プレパラート型プレー ト上に 0. 5〜1. OmLずつ加え、 細胞融合装置(electro square porator T820又 は E C M 2 0 0 1, BTX社製)により 2kV/cm ( 1 0 μ secを 4回) と 3kVん m ( 1 0 μ secを 4回) の条件で電気融合(PEF融合)を行った。
PEF融合された細胞を、 予め用意しておいた 20mLの RPMI 1640完全培地に懸 濁し、 30分静置後、 96wel lマイクロプレートに 0. 2mL/well となるように分注 した。 37° (:、 5%C02インキュベーター内で培養し、常法により HAT培地を添加し
、 培地交換を行った。
(5) ハイブリ ドーマのスクリーニング、 クローニング
( I ) アツセィプレートの作製
抗マウス IgAGM抗体 (マウス免疫グロブリン(IgG, IgA, IgM)に対するャギ IgG フラクション、 cappel 製、 品番 55461) を 5 g/mL となるように 0.1M NaHC03(pH9.8)で希釈し、 96wellマイクロプレート(コースター: 2592)に 50μ L/well添加した。 4°Cで一昼夜静置後抗体を回収し、 PBSで希釈した 1 %ゼラチ ンを 350/iL/well加えて 37°Cで 2時間ィンキュベートしてブロッキングを行つ た。 >
(II) 抗原酵素複合体 (DEHP— 7— HRP) の調製
実施例 1で作製したハプテン(DEHP_7)20/imol、 水溶性カルポジイミド 24/z mol、N-ヒ ドロキシコハク酸イミ ド 24//ηιο;ΐをジメチルスルホキシド IraL中、室 温でー晚反応させて、 活性化エステルを作製した。 次に、 西洋ヮサビペルォキ シダーゼ(HRP) 3.3mgを 0.13M重炭酸ナトリウム(NaHC03.)溶液 ImLに溶解し、活 性化エステル 21 /zLを添加後、 4°Cでー晚反応させた。限外ろ過により未反応の 試薬を除去し、 DEHP-7- HRPを得た。 なお、 調製した DEHP-7-HRPは、 防腐剤と ともに HRP - 3.3mg/raLの濃度で冷蔵保存した。
(III) アツセィ方法
(5) ― ( I) で作製したアツセィプレートを PBSTで 3回洗浄した後、 培養 上清を 50 //L/wellずつ加えて 37°Cで 1時間ィンキュベートした。 別途混合用 マイクロプレート(Nunc: 167008)中で、 20%Me0Hに溶解した種々の濃度の DEHP- 7と PBSで 3, 000倍に希釈した抗原酵素複合体 (DEHP- 7 - HRP)とを等量混合し、 混合液を調製した。前記ァッセィプレートを PBSTで 3回洗浄した後、各混合液 を 50 / L/wellずつ加えて 37°Cで 1時間ィンキュベートした。
最後に、 PBSTで 5回洗浄後、 発色剤 [0.1M タエン酸ナトリゥム緩衝液(PH5.2) 中、 0 -フエ二レンジァミン(lmg/ml)及び 0.02% 02]を 100 /z L/wellずつ加え て 37°C、 10分間インキュベートして発色させ、 1M S04を 50/iL/well加えて
反応を停止した。 マイクロプレートリーダーを用いて、 発色反応を 0D4g(Jにて 測定し、 DEHPによる阻害率を求めた。
(IV) ハイブリ ドーマの選択、 クローニング
( 5) — (III) のアツセィにおいて、' DEHP による阻害率が高いハイブリ ド 一マを選択し、常法に従いクローニングを行い、抗 DEHP抗体産生ハイブリ ドー マ 2F4A4yを取得した。
得られたハイブリ ドーマ 2F4A4yは、 ブダペスト条約の下、 日本国茨城県つ. ぐば巿東 1一 1一 1の独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター に、 2 0 0 4年 1月 2 8日に受託番号 F E RM B P— 0 8 6 0 1で寄託され た。
マウスモノクローナル抗体 2F4A4y
ハイプリ ドーマ株 2F4A4yを、 前記ハイプリ ドーマ用培地中、 3 7°C、 5 % C02雰囲気下で培養し、その培養上清をマウスモノクローナル抗体 2F4A4yと した。
抗 DEHP抗体 (DH-150) 産生ハイブリ ドーマ
抗 DEHP抗体 (DH- 150) (アイソタイプ γ 2a, κ ) を産生するハイプリ ドーマ 株、 DH-150は、 Go da Y. et al.; 「Development of the ELISAs for Detection of Endocrine DisruptersJ , Proceedings of the Fifth International Symposium on Environmental Biotechnology ( ISEB 2000 ), 774 - 777 (CD-ROM) (2000) に 発表した手順により作製した。 本細胞は、 10%ゥシ胎児血清を含む RPMI1640培 地 (ハイプリ ドーマ用培地)(N. Kobayashi et al. , J. Steroid Biochera. Mol.
Biol. , 64, 171-177 (1998) 参照) を用いて継代培養した。
抗 DEHP抗体' (DF-34) 産生ハイプリ ドーマ
抗 DEHP抗体 (DF - 34) を産生するハイプリ ドーマ株、 DF-34 (FERM BP- 6635) は 、 国際公開第 99/43799号パンフレットに記載されている。 本細胞は、 10%ゥシ 胎児血清を含む RPMI1640培地 (ハイプリ ドーマ用培地) を用いて継代培養した
プライマー
cDNAの合成及び PCRに用いたプライマーは、クラボウ又はエスペックオリゴ サービスに化学合成とカートリッジ精製を依頼した。 各プライマーの塩基配列 を表 1に示す。
. ] .
実施例及び参考例で用 Vヽたブラィマー プライマー名 塩基配列
G1-CH-1 5' GCTGGCCGGGTGGGCMC 3, (配列番号 1 1 )
K-CH-1 5' GTTGMGCTCTTGACMT 3' (配列番号 1 2)
AAP 5' GGCCACGCGTCGACTAGTACGGGIIGGGIIGGGIIG 3, (配列番号 1 3 )
G2b-CH-2 5' ACACTGCTGGACAGGGAT 3' (配列番号 1 4)
AUAP 5, GGCCACGCGTCGACTAGTAC 3' (配列番号 1 5 )
G2b-CH-3-XmaI 5' GGATCCCGGGAGTACCCCTTGACCAGGC 3' (配列番号 1 6 )
-CH-3-XmaI 5' GGATCCCGGGTGGATGGTGGGAAGATG 3' (配列番号 1 7)
VL-Va 5' GACATCSAGATGACYCAGTCT 3' (配列番号 1 8 )
KS-back 5' GGAAACAGCTATGACCATG 3' (配列番号 1 9 )
KS-for 5' GTAAAACGACGGCCAGT 3, (配列番号 2 0)
2F4A- ¾-5 5' ATTGTTATTACTCGCGGCCCAACCGGCCATGGCCGAAGTGAMmGAGGAG 3 '
(配列番号 2 1 )
2F A-VH-3 5 CCGCCGGATCCACCTCCGCCTGAACCGCCTCCACCTGAGGAGACGGTGACTGAGG 3'
(配列番号 2 2)
2F4A - VL- 5 5: CA(¾}CGGA∞TGGATCCGO:GGTGOTGA'rCGGACATrCAGCTGACCCAGTC 3'
(配列番号 2 3)
2F4A-VL-3 5 ' GCTCAACTTTCTTGTCGACTTTATCATCATCATCTTTATMTCTmATCTCCAGCTTGGTCC 3'
(配列番号 2 4)
G2a-CH-1 5 ' GCHGCCGGGTGGGCCAC 3' ■ (配列番号 3 3 )
MKV-9 5 ' ACTAGTCGACATGGTRTCCWCASCTCAGTTCCTTG 3' (配列番号 3 4)
DH-150-VH-5 5' ATTGTTATTACTCKGGCCCMCCGGCCATGGCCGAGGTGCATCTGGTGGAGTCTGGG 3 ,
(配列番号 3 5)
DH-150-VH-3 5 CCGCCGGATCCACCTCCGCCTGMCCGCCTCCACCTGAGGAGACGATGACTGAGGTTCC 3 '
(配列番号 3 6 )
DH-150-VL-5 5' CAGGCGGAGGTGGATCCGGCGGTGGCGGATCGGATATCCAGATMCACAGAnACA 3 '
(配列番号 3 7)
DH-150-VL-3 5, GCTCMCTTTCTOTCGACmATCATCATCATCTTTATMTCTTTCAGCTCCAGCGTGGTCCCTGC 3
(配列番号 3 8 )
DF-34-VH-5 5' AnGTTATTACTCGCGGCCCAACCGGCCATGGCCGATGTACAACTTCAGGAGTCAGGACC 3
(配列番号 3 9)
DF-34-VH-3 5' CCKCGGATCCACCTCCiKCTGMCaJCCTCCACCTGAGGAGACGGTGACT^^ 3
(配列番号 4 0)
DF-34-VL-5 5, CAGGCGGAGGTGGATCCGGCGGTGGCGGATCGCAGATOTOTCACCCAGTCTCC 3 '
(配列番号 4 1 )
DF-34-VL-3 5, GCTCMCmCTTGTCGACmATCATCATCATCTTTAT TCTTTTATnCCMCTTTGTCCCCG 3
(配列番号 4 2)
MKV-5 5 ' ACTAGTCGACATGGArniCAGGTGCAGATTWrCAGCnC 3, (配列番号 4 3 )
—
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[実施例 3 ] 抗 DEHP抗体 (2F4A4 y ) VH遺伝子のクローニング
ハイブリ ドーマ株 2F4A4 y (1 x 107個) から、 RNeasy miniキット (QL^GEN) を用いて全 RNA を抽出した。 本 RNA (4. 2 μ g) に γ ΐ 鎖特異的プライマー (G1-CH-1) 又は κ鎖特異的プライマー (Κ- CH- 1) 及び Superscript I I reverse transcriptase (Invitrogen) ( 1 L) を添カロし、 添付の緩衝液中 (25 μし)、 42 でで δθ分間ィンキュベートした。 70°Cで 15分間ィンキュベートして酵素を失 活させた後、 粗反応液を GlassMAX spin cartridge (Invitrogen) を用いて精 製し、 VH又は VL遺伝子を含む first strand cDNA (VH- cDNA及び VL- cDNA) をそ れぞれ得た。 ついで VH_cDNAを铸型に用いる 5' -RACE [5' RACE system for rapid ampl ificat ion of cDNA ends, version 2. 0 (Invi trogen; ] により V,,ドメ- ン の遺伝子断片を得た。 すなわち cDNA溶液 (10 にデォキシシトシン三リン 酸 (dCTP) (5 nraol)、 terminal deoxynucleotidyltransf erase (TdT) (1 j L) を 加え、 TdT緩衝液 (25 ju L) 中、 37°Cで 10分間反応させた。 ついで、 ポリ C配 列と γ ΐ鎖定常部に相補的なプライマー (各々 AAP、 G2b-CH-2) (各 20 pmol) 及 び Ex_Taq DM polymerase (宝酒造)(1 U) を用いて Ex- Taq緩衝液 (40 μ L) 中 で PCR [95°C、 1分間; 64°C、 1分間; 72°C、 2分間 (35サイクル)、 次いで 72 °C、 10分間] を行った。 さらに、 本 PCR反応液の 1000倍希釈液 (10 を 铸型として、 プライマー AUAP及び G2b- CH- 3- Xmal (各 50 pmo l) と Ex_Taq DNA polymerase (2. 5 U) を用いる nested PCR (液量 100 μ ΐ) を同上の反応条件で 行った。 得られた粗反応液を低融点ァガロース (SeaPlaque ; BMA) (2%) を用い る電気泳動 (TAE緩衝液; 50 V) に付して、 約 800 b のバンドを QIAquick gel extraction kit (Qiagen) を用いて回収し、 目的の VH遺伝子を含む DNA断片 (V„-DNA) を得た。
[実施例 4 ] 抗 DEHP抗体 (2F4A4 γ ) VL遺伝子のクローニング
上記の VL - cDNA (1000倍希釈液 10 μ L) を铸型として、 既報のマウスカッパ 鎖可変部遺伝子クローニング用のプライマー VL- 1/111, -IV/VI, -I la, -l ib, 一 Va, -Vb (P. J. Nichol ls et al . , J. Immunol. Methods, 165, 81-91 (1993)
参照) のいずれかと K- CH- 3- Xmal (各 50 pmol) を組み合わせる PCRを試みた。 本 PCR [95°C、 1分間; 50°C、 1分間; 72°C、 3分間 (35サイクル)、 次いで 72 °C、 10分間] には Pfu DNA polymerase . (Promega) (3 U) を用い、 Pfu緩衝液 中 (100 i L)で反応を行った。 粗反応液の一部をァガロース電気泳動に付した ところ、 VL-Vaプライマーを用いる時に予想されるサイズ (約 400 bp) のバン ドが明瞭に観察された。 そこで、 残りの反応液を上記の方法で精製し、 目的の VL遺伝子を含む DNA断片 (VL- DNA) を得た。
[実施例 5 ] 抗 DEHP抗体 (2F4A4 y ) VH及び VL遺伝子のサブクローユング 上述の VH- DNA及び VL- DNA (各約 1. 5 μ g) にそれぞれ Xma I (40 U) を加え、 37°Cで一夜インキュベートした。 反応液をフエノール/クロ口ホルム/イソアミ ルアルコール (PCI)抽出したのちエタノール沈殿を行い、 得られた沈殿に Sal I (40 U) を加えて再ぴ 37°Cで一夜インキュベートした。 反応液を PCI抽出/ェ タノール沈殿に付したのち、 上記のように低融点ァガロースを用いる電気泳動 に付して目的の遺伝子断片を精製した。 これら DNA (0. 1 / g) を、 同様に Xma I/Sal I処理した pBluescript IIベクター (0. 25 μ g) と混合し、 T4 DNAリガ ーゼ (New England Biolabs) (1600 U) を加えて 16°Cで一夜インキュベートし た。反応液を PCI抽出/エタノール沈殿に付して精製し、得られる組換えブラス ド ¾r XLl-Blue Subcloning-grade competent ceils (Stratagene) 【こ heat shock 法により トランスフォーメーションした。 トランスフォーメーション液 をアンピシリンを含む 2xYT- agarプレートに塗布して 37°Cで一夜ィンキュベー トした。 得られた形質転換体クローン (VH- DNA、 VL-DNA各々について 4クロー ンずつ) を任意に選択してアンピシリンを含む2 xYT培地 (10 mL) 中で培養し、 15°/。グリセ口ール混合液としたのち- 80°Cで保存した。
[実施例 6 ] 抗 DEHP抗体 (2F4A4 v ) VH及び VL遺伝子の塩基配列の決定 上記の形質転換クローンをアンピシリン(lOO ^ g/mL) を含む 2xYT培地 (10 mL) 中で培養し、 QIAGEN plasmid mini kit (Qiagen) を用いてプラスミドを抽 出した。 その一部 (0. 5 又は 1. 0 /i g) に、 シークェンシング用プライマー
(KS-back又は KS-for;各 1. 8 pmol) をカロえ、 Dual CyDye terminator sequei cing kit (Amersham Biosciences) を用いて PCR反応を行った。 本 PCRでは、 95°C、 20秒間; 55°C、 15秒間; 70°C、 60秒間のサイクルを 35回繰り返した。 反応液 をエタノール沈殿に付して増幅した DNA を回収し、 本キットに添付された formamide loading dye (4 μ L) に溶解し、 Long-Read Tower DNA シークェン サー (Amersham Biosciences) を用いて電気泳動 (6%ポリアクリルアミ ドゲル ; TBE緩衝液; 1500 V; 200分間) を行った。得られた塩基配列データから、 VH- DNA 、 VL- DNA各々について 4クローン間のコンセンサス配列を得た。 このようにし て得られた塩基配列並びに推定されるアミノ酸配列を図 1、 2 (各々 VH及び に示す。この結果から、 VH及び VLのサブグループは、 Kabatの分類 (「Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition] U. S. Department of Health and Human Service, 1991参照) に基づいて、 各々ΙΠ (Β)、 VIと決定し 卞こ。 また、 Kabatのデータべース ( 「Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth EditionJ U. S. Department of Healtn and Human Service, 1991 参照) と の比較か ら 、 VH 及び VL にお け る 相補性決定領域 (complementarity-determining region; CDR) (抗原と直接相互作用し、 親和力 や特異性の発現に重要な役割を果たすアミノ酸配列) を特定した (図 1、 2 )。
[実施例 7 ] 抗 DEHP抗体 (2F4A4 y ) scFv遺伝子の構築
上記の遺伝子塩基配列の結果に基づいて VH、 VL遺伝子それぞれの 5'末端、 3' 末端に特異的なプライマー (2F4A- VH- 5、 2F4A-VH-3, 2F4A- VL- 5、 2F4A-VL-3) ( 表 1 ) を設計し、 実施例 3で得られた first strand cDNAを錄型として PCRを 行った。 なお、 2F4A- VH- 5 プライマーには Nco I認識配列を、 2F4A- VL-3プラ イマ一には Sal I 認識配列及び FLAG 配列を導入した。 また、 2F4A- VH - 3、 2F4A-VL-5 の両プライマーには、 VH と VLを連結するためのリンカ一配列 (Gly4Ser) 3 (配列番号 6 ) をコードする塩基配列を付加した。 先の cDNA溶液の 1: 1000希釈液 (1 μ L) に 2F4A- VH- 5及ぴ 2F4A-VH- 3プライマー (VHの増幅)又 は、 2F4A- VL- 5 及ぴ 2F4A- VL- 3 プライマー (VLの増幅)(各 30 pmol) 並びに
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Ex- Taq DNA polymerase (2. 5 U) を添加し、 Ex - Taq用緩衝液 (100 /z L^中で PCR [95°C, 1分間; 50° ( 、 1分間; 72°C、 3分間 (35サイクル)、 次いで 7?°C、 10分間]を行った。 得られた粗反応液を上記の低融点ァガロースを用いる電気 泳動^:付して、約 400 bpのノ ンドを Wizard PCR preps DNA purification system (Promega) を用いて回収し、 目的の VH遺伝子及び VL遺伝子断片を得た。 引き続 き、 これら (各々 200 ng) を混合して Ex- Taq DNA polymerase (0. 65 U) を加 え、 Ex- Taq用緩衝液 (25 μ ΐ) 中で overlap extension PCR [95°C、 1分間; 55 °C、 1分間; 72°C、 3分間 (10サイクル)、 次いで 72°C、 10分間]を行い、 scFv 遺伝子を構築した。 さらに本反応液の一部 (5 μ ΐ) に 2F4A- VH_5、 2F4A- VL - 3 プライマー (各 100 pmol)、 Ex- Taq DNA polymerase (2. 5 U) を添加し、 同条 件 (ただし反応液 100 μ L) で 25サイクルの PCRを行って scFv遺伝子を増幅 した。得られた粗反応液を低融点ァガロースによる電気泳動に付して、約 800 bp のバンドを回収し、 目的の scFv遺伝子断片を得た。本遺伝子の塩基配列を実施 例 6 に従ってシーク ェ ンシング した と こ ろ、 目 的 とする 5 , -VH- linker - VL - FLAG- 3, の配列を有することが確認された。
[実施例 8 ] ScFv蛋白質の発現
i) ScFv遺伝子の大腸菌への導入
実施例 7で調製した scFv遺伝子 (5 §)、 及び scFv発現ベクター (10 /x g) は、 それぞれ反応用緩衝液中 (200 L)、 Nco l及び Sal I (各 50 U) とともに 37°C、 一夜ィンキュベートした。 反応液を PCI抽出、 EtOH沈殿に付した後、 低 融点ァガロースゲル (1. 5%) を用いる電気泳動を行い、 目的の遺伝子を Wizard PCR preps DNA purification system (Promega) を用いて回収した。 回収した 制限酵素処理済みのベクター (500 ng) と scFv- DNA (250ng又は 125ng:すな わち重量比 1/2又は 1/4) とを混合し、 45°C、 5分間インキュベートした。 直ち に氷冷し、 各々の混合溶液に 10倍濃度のライゲーシヨン用緩衝液 (5 L) と T4 DNAリガーゼ (1600 U) を添加し (全量 50 L)、 16°Cで一夜インキュベート した。 反応液を PCI抽出、 EtOH沈殿 [ただし沈殿キャリア一としてグリコーゲ
ン (40 ) を添加] に付し、 得られた DNAを滅菌水 (10 に溶解し トラ ンスフォーメーション用試料とした。 このものに XL0LRエレク ト口コンビ,テン ト細胞 (100 x L) を混合し、 全量をキュベット電極へ移して氷上で 1時間イン キュペートした。 これを遺伝子導入装置 (BTX社 ECM630型)へ装着し、 印加電 圧 1, 8 kV, 内部抵抗 129 Ωの条件でパルスした後、 直ちに S0C培地 (900 / L ) を添加して 37°C、 1時間振とう培養 (約 230rpm) した。 段階希釈した菌液 ( 100 / L) を、 2xYT_ATGァガープレート [アンピシリン (100 /x g/mL), テ トラサ イクリン (10 // g/mL) 及ぴ D-グルコース (1%) を含む 2xYT ガープレート]上 に塗布し、 37°Cで一夜培養し、 コロニーを形成させた。
ii) 可溶型 scFv (大腸菌ペリブラズム抽出液) の調製
上記ァガープレート上からランダムにコロニーを採取して 2xYT培地 (5 /i L ) に懸濁させ、 その 1 /X Lに 2F4A-VH - 5、 2F4A-VH- 3プライマー (各 2. 5 praol )、 dNTP混合物 (各 2 mM) 及び Ampli Taq DNA polymerase (0. 75 U) を添加し て、 専用緩衝液中 (20 μ ΐ) にて PCRを行った。 増幅条件は、 熱変性 95°C、 1分 間; ァニーリング 50°C、 1 分間; 伸長 72°C、 3分間としてこれを 35サイクル くり返した後、 更に 72°Cで 10分間伸長反応を行った。 反応終了後、 ァガロー スゲル(1. 5%) 電気泳動により VH又は VL遺伝子の在否を調べた。 本 PCRにより 目的 scFv遺伝子の導入が確認された大腸菌クローン 4種 (scFv # 4, 19, 31, 32 ) を 2YT- ATG培地 (5 mL) に懸濁して 37°Cで一夜振とう培養した。 その培養液 (500 を同培地 (20 mL) に接種して、 600 nmにおける吸光度がおよそ 0. 8 に達するまで 37°Cで振とう培養した後、遠心分離(lS00g、 20分、室温) した。 沈殿をアンピシリン (100 μ g/raL) N IPTG (0. 1 mM)、 スクロース (0· 4 M) を含 む 2xYT培地 (20 raL) に懸濁して、 25°Cで一夜振とう培養 (約 120rpm) した。 これを遠心分離 (1800g, 20 分, 室温) し、 沈殿をスクロース (20%) と EDTA (1 mM) を含む 50 mM Tris - HC1緩衝液に氷冷下で懸濁させた。 ときどき転倒混 和しながら氷上で 1時間ィンキュベートした後、 遠心分離 (12000g、 30分、 4 °C) し、 上清をペリブラズム抽出液として一 20°Cで凍結保存した。
[実施例 9 ] 間接競合 ELISAによる scFv蛋白質のフタル酸エステル結合活性 め検討
i) DEHPハプテンの卵白アルブミン (ovalbumin; OVA) 結合体 (DEHP-ァ- OVA) DEHP-7-0VAは、特開 2 0 0 1— 4 1 9 5 8号公報に記載の方法に準じて、調 製した。
ii) 間接競合 ELISA用プレートの作製
リン酸緩衝生理食塩水 (PBS) にて l/i g/mlに調製した DEHP- 7- OVA溶液をマ イクロタイタ一プレート (Costar #3590) に 100 μ 1/wellで添加し、 4°Cで一 晚放置した。 PBSにてプレートを洗浄 (300^ l/well、 3回) 後、 ブロックエー ス (大日本製薬)溶液 (PBSで 4倍希釈) を 300μ 1/^11で添加したのち 4°Cで 一晚放置し、 ブロッキングを行った。 その後、 PBS (0.05%Tween20含有)で洗浄 (300 l/well、 3回)し、 間接競合 ELISA用プレートとした。
iii) ScFvのァッセィ系
DEHP標準液 (10°/。MeOH + 3%DMS0溶液) 60 /z lと抗体 〔実施例 8の iiで得ら れた scFv溶液(scFv#4, 19, 31, 32)又は対照としてマウスモノクローナル抗体 2F4A4 y ] の PBS希釈液 60μ 1を混合用マイクロプレートに添加してよく混合 し、 その 100// 1を、 上記 ii)の間接競合 ELISA用プレートに添加し、 37°Cで 1 時間反応させた。 PBS (0.05%Tween20含有)で洗浄 (300 l/well、 3回)後、 0.1% ゼラチンを含む PBSにて 5000倍に希釈した西洋ヮサビペルォキシダーゼ(HRP) 標識抗マウス IgG抗体 (Jackson Immunoresearch)を添カ卩し (100 1/well)、 37 °Cで 1時間反応させた。同様にプレートを洗浄したのち、 0 -フエ二レンジアミ ン · 2HC1 (0.04%) 及ぴ 02 (0.018%) を含む基質緩衝液 (100 μ L/well) を添 加し、 室温で 30分間インキュベートした。 1 M H2S04 (100 i L) を分注して反 応を停止させた後、 492 nmにおける吸光度をマイクロプレートリーダーで測定 した。 結果を図 3に示す。
図 3から明らかなように、本発明にて作製した抗可塑剤単鎖可変領域抗体は、 EL I S A法での定量に使用することが可能である。 また、 対照として、 ハイ
プリ ドーマ由来のモノクローナル抗体で間接競合 ELISAを行った実験結果から、 抗可塑剤単鎖可変領域抗体は、 元のモノクローナル抗体と同等の反応性を有し ていることが明ちかとなつた。
[参考例 1 ] 抗 DEHP抗体 (DH- ΙδΟ) VHおよび VL遺伝子のクローユング、 サ ブクローニングおよび塩基配列の決定
ハイプリ ドーマ株 DH-150 (1 X 107個) から、 RNeasy miniキット (QIAGEN) を用いて全 RNA を抽出した。 本 RNA (4. 2 μ g) に γ 2 a鎖特異的プライマー (G2a-CH-1) 又は κ鎖特異的プライマー (K- CH- 1) 及び Superscript I I reverse transcriptase (Invitrogen) ( l μ ί)を添カロし、 添付の緩衝液中 (25 μ L) 、 42°Cで 50分間ィンキュベートした。 70°Cで 15 分間ィンキュベートして 酵素を失活させた後、 粗反応液を GlassMAX spin cartridge (Invitrogen)を用 いて精製し、 VH又は VL遺伝子を含む first strand cDNA (VH-cDNA及び VL- cDNA) をそれぞれ得た。 以下、 実施例 3の手順に従って VH-cDNA を錄型に用いる 5' -RACE を行い、 目的の VH遺伝子を含む DNA断片(VH- DNA)を得た。 その一方で 、 上記の VL-cDNAを铸型として、 プライマー 11種 (MKV1〜11) (S. T. Jones et al. , Biotechnology, 9, 88-89 (1991) 参照) のいずれかと K-CH - 3- Xmal (各 50 pmol)を組み合わせる PCRを試みた。粗反応液の一部をァガロース電気泳動に付 したところ、プライマー MKV - 9を用いる時に予想されるサイズ (約 400 bp)のバ ンドが明瞭に観察された。 そこで、 残りの反応液を上記の方法で精製し、 目的 の VL遺伝子を含む DNA断片(VL- DNA)を得た。
これら VH- DNA及ぴ VL- DNA (各 1. 5 μ g) を実施例 5に従って pBluescript I I ベクター にサブクローニングし、形質転換クローンを得た。 これらのクローン をアンピシリンを含む 2xYT培地 (lO mL) 中で培養し、 QIAGEN plasmid mini ki t (Qiagen) を用いてプラスミドを抽出した。 その一部 (0. 5又は 1. 0 μ g) を用 いて、 実施例 6に従って VH- DNA及び VL-DNAの塩基配列 (配列番号 2 5、 2 7 ) を決定し、 アミノ酸配列 (配列番号 2 6、 2 8 ) を推定した。 その結果を図 4及ぴ 5 (各々 VH及び VJ) に示す。 この結果から、 CDRのアミノ酸配列を決定
し、 また VH及び VLのサブグループを各々II I (D)、 Vと決定した。 なお、 Dli- 150 抗体と 2F4A4 y抗体 ©シークェンスデータを比較したところ、 両抗体の根同性 は小さいことが判明した。
[参考例 2 ] 抗 DEHP抗体 (DH- 150) scFv遺伝子の構築
上記の遺伝子塩基配列の結果に基づいて VH、 ^遺伝子それぞれの 5' 末端、 3 , 末端に特異的なプライマー (DH-150- VH- 5、 DH- 150- VH- 3、 DH-150-VL- 5、 DH-150-VL-3) (表 1) を設計し、 参考例 1で得られた first strand cDNAを錄 型として、 実施例 7に準じて PCRを行った。 なお、 DH- 150- VH- 5 プライマーに は Nco I認識配列を、 DH- 150- VL- 3プライマーには Sal I認識配列及ぴ FLAG配 列を導入した。 また、 DH- 150- VH- 3、 DH- 150- VL- 5の両プライマーには、 VHと VL を連結するためのリンカ一配列 (Gly4Ser) 3 (配列番号 6 ) をコードする塩基配 列を付加した。 得られた VHおよび VL遺伝子フラグメント (各々 200 ng) を overlap extension PCR に付し、 粗反応液を低融点ァガロースによる電気泳動 に付して、 約 800 bpのバンドを回収し、 目的の scFv遺伝子断片を得た。
[参考例 3 ] 抗 DEHP抗体 (DF- 34) VHおよび VL遺伝子のクローニング、 サブ クローニングおよぴ塩基配列の決定
ハイプリ ドーマ株 DF - 34 (l x lO7個) から、 RNeasy miniキット (QIAGEN) を 用いて全 RNAを抽出した。 本 RNA (4 /i g) に y l鎖特異的プライマー (Gl- CH - 1) 又は /c鎖特異的プライマー (K- CH- 1) 及び Superscript II reverse transcriptase (Invitrogen) (1 L)を添加し、 添付の緩衝液中 (25 /z L) 、 42 でで 50分間ィンキュベートした。 70°Cで 15分間ィンキュベートして酵素を失 活させた後、 粗反応液を GlassMAX spin cartridge (Invitrogen)を用いて精製 し、 VH又は VL遺伝子を含む first strand cDNA (VH- cDNA及び VL- cDNA) をそれ ぞれ得た。 以下、 実施例 3の手順に従って VH- cDNAを铸型に用いる 5' -RACE を 行い、 目的の VH遺伝子を含む DNA 断片(VH- DNA)を得た。 その一方で、 上記の VL-cDNA を铸型として、 参考例 1に準じてプライマー 11 種 (MKV1〜11) (S. T. Jones et al. , Biotechnology, 9, 88—89 (1991) 参照) のいずれ力 と
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K-CH-3-XmaI (各 50 praol)を組み合わせる PCRを試みた。 粗反応液の一部をケガ ロース電気泳動に付したところ、 プライマー MKV- 5 を用いる時に予想され,るサ ィズ (約 400 bp)のバンドが明瞭に観察された。 そこで、 残りの反応液を上記 の方法で精製し、 目的の 遺伝子を含む DNA断片(VL_DNA)を得た。
これら VH - DNA及ぴ VL-DNA (各 1. 5 μ g) を実施例 5に従って pBluescript II ベクター にサブクローユングし、形質転換クローンを得た。 これらのクローン をアンピシリンを含む 2xYT培地 (lOraL) 中で培養し、 QIAGEN plasmid mini kit (Qiagen) を用いてプラスミ ドを抽出した。 その一部 (0. 5又は 1. 0 μ g) を用 いて実施例 6に従って VH- DNA及び VL- DNAの塩基配列 (配列番号 2 9、 3 1 ) を決定し、 アミノ酸配列 (配列番号 3 0、 3 2 ) を推定した。 その結果を図 6 及び 7 (各々 VH及び VL) に示す。 この結果から、 CDRのアミノ酸配列を決定し、 また VH及び VLのサブグループを各々 I (A)、 IVと同定した。 なお、 DF - 34抗体と 2F4A4 y抗体のシークェンスデータを比較したところ、両抗体の相同性は小さ ヽ ことが判明した。
[参考例 4 ] 抗 DEHP抗体 (DF- 34) scFv遺伝子の構築
上記の遺伝子塩基配列の結果に基づいて VH、 VL遺伝子それぞれの 5' 末端、 3 , 末端に特異的なプライマー (DF- 34- VH- 5、 DF-34-VH-3、 DF- 34- VL-5、 DF-34-VL-3) (表 1) を設計し、 参考例 3で得られた first strand cDNAを鑤型 として、 実施例 7に準じて PCRを行った。
なお、 DF- 34- VH- 5 プライマーには Nco I認識配列を、 DF- 34- VL- 3プライマー には Sal I認識配列及び FLAG配列を導入した。 また、 DF-34- VH- 3、 DF- 34- VL- 5 の両プライマーには、 VHと VLを連結するためのリンカー配列 (Gly4Ser) 3 (配列 番号 6 ) をコードする塩基配列を付加した。得られた VHおよび VL遺伝子フラグ メント (各々 200 ng) を overlap extension PCRに付し、 粗反応液を低融点ァ ガロースによる電気泳動に付して、 約 800 bpのバンドを回収し、 目的の scFv 遺伝子断片を得た。
産業上の利用可能性
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47 本発明により、 抗可塑剤抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域をコー する 遺伝子のァミノ酸配列及び塩基配列が明らかとなった。 本発明によって抗可塑 剤抗体由来の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域をコードする遺伝子を遺伝的に改 変することが可能となる。 例えば、 改変遺伝子を宿主細胞内で発現させること により、 可塑剤の測定 '定量 '濃縮において、 より好ましい性質を持った、 可 塑剤に結合能を有する蛋白質を大量に得ることが可能となった。 また、 この改 変抗体遺伝子を有する組換え微生物等を使用することにより、 組換え蛋白質を 効率よく生産することも可能となった。 さらに、 重鎖可変領域及び軽鎖可変領 域をコードする塩基配列にランダムな変異を導入してミュータント scFv のラ イブラリーを構築し、 このライプラリー中から、 可塑剤に対する親和性が元の 抗体よりも大きい変異体を選択することにより、 可塑剤に対する親和性が向上 した組換え蛋白質を得ることが可能となった。 以上により、 性能の優れた酵素 免疫測定法キットや抗体ァフィユティーカラムをより安価に作製することが可 能となった。 以上、 本発明の具体的な態様のいくつかを詳細に説明したが、 当業者であれ ば示された特定の態様には、 本発明の教示と利点から実質的に逸脱しない範囲 で様々な修正と変更をなすことは可能である。 従って、 そのよ.うな修正及び変 更も、 すべて後記の請求の範囲で請求される本発明の精神と範囲内に含まれる ものである。
本出願は、 日本で出願された特願 2 0 0 4— 3 0 0 7 7 3 (出願日 : 2 0 0 4年 1 0月 1 4日) を基礎としており、 その内容は本明細書に全て包含される ものである。