明細書
医薬化合物
技術分野
本発明は医薬、 特にエラスターゼ阻害作用を有する複素環式化合物の結晶多 形、 その製造方法およびそれを有効成分とする医薬に関する。
背景技術
次式で示される構造を有する Λ—[( 1 - tert—ブチル— 5—メチル一 1 H— ピラゾール一4—ィル) カルボニル] — L—バリル [( 1 S) — 3, 3, 3— トリフルォロ一 1—ィソプロピル一 2—ォキソ一プロピル] — L—プロリ ンアミ ド (以下、 「化合物 B」 または 「ケトン体」 とレヽうこともある) は、 エラ スターゼ阻害剤として有用な化合物であり、 WO 0 3 0 6 6 6 7 1の実施例 3 2に記載されている。
医薬品の有効成分となる化合物は、 強い薬理作用を有し、 且つ低毒性である とともに品質が一定であることが条件となる。 そのために、 通常、 結晶状態の 化合物を原薬として用いることが求められている。 しかしながら、 WOO 3ノ 0 6 6 6 7 1においては、 上記化合物 Bのみならずそこに記載の他の化合物群 のすべてが結晶ではなく非晶質であり、 さらに、 該文献には結晶を得るための 製造方法も記載されていない。
発明の開示
本発明は、 エラスターゼ阻害活性を有する化合物の結晶を得ることを目的と する。
本発明者らは、 上記化合物 B、 即ち、 ケトン体の結晶を得る為に、 鋭意検討
を試みた。 しかし、 通常使用される種々の有機溶媒をもってしてもこの化合物 を結晶化させることができなかった。 ところが、 化合物 Bを特定の有機溶媒に 溶解し、 容器を開口状態にして放置したところ、 結晶を得ることに成功した。 分析の結果、 得られた結晶の化合物の分子量は、 化合物 Bと水分子 1個分を合 わせたものであること、 そして水分子 1個分は水和物ではなく、 ケトン体のト リフルォロメチルケトン部位に水 1分子が付加したジオール体の結晶が得られ ていること、 およびこの結晶はエラスターゼ阻害活性を有していることの知見 を得て、 本発明を完成した。
本発明は、 以下の発明を提供する。
〔 1〕 TV— [( 1― tert—プチ;レー 5—メチノレー 1 H—ピラゾーノレ一 4—ィノレ) カルボニル] — L—バリル一 V— (3, 3, 3—トリフルオロー 2, 2—ジヒ ドロキシ一 1—ィソプロピルプロピル) 一L—プロ リンアミ ドの結晶。
〔2〕 V-[( 1一 tert—プチ^— 5—メチル一 1 H—ピラゾール— 4 _ィル) カルボ二ル] — L—バリル一 V— [( 1 S) _ 3, 3, 3—トリフルオロー 2, 2—ジヒ ドロキシ一 1ーィソプロピルプロピル] — L—プロリンアミ ド (以下
「化合物 A」 または 「ジオール体」 ということもある ;構造下記) の結晶。
〔3〕 回折角 20 (C uKa l線) で表したとき、 約 7. 5° 〜9. 0° の位 置に少なくとも 1本のピークを有する X線粉末回折パターンを示す上記 〔2〕
に記載の結晶。
〔4〕 回折角 2 0 (CuKa l線) で表したとき、 約 7. 5° ~9. 0° の位 置に少なくとも 2本のピークを有する X線粉末回折パターンを示す上記 〔3〕 に記載の結晶。
〔5〕 回折角 2 0 (C u Ka l線) で表したとき、 ほぼ 8. 0° および 8. 6° の位置にピークを有する X線粉末回折パターンを示す、 化合物 Αの 1型結晶。 〔6〕 回折角 2 0 (C uKa l線) で表したとき、 ほぼ 8. 0° 、 8. 6° 、 9. 2° 、 1 0. 6° 、 1 1. 9° 、 1 3. 6° 、 14. 5° および 20. 4° の位置にピークを有する X線粉末回折パターンを示す上記 〔5] に記載の 1型 結晶。
〔7〕 昇温速度が 10°C 分の示差走査熱量測定において、 約 1 6 1°Cに脱 水吸熱ピークを有する上記 〔5〕 または 〔6〕 に記載の 1型結晶。
〔8〕 回折角 2 0 (CuKa l線) で表したとき、 ほぼ 7. 6° 、 8. 1° お よび 8. 7° の位置にピークを有する X線粉末回折パターンを示す、 化合物 A の 2型結晶。
〔9〕 回折角 2 0 (C uKa l線) で表したとき、 ほぼ 5. 0° 、 7. 6° 、
8. 1° 、 8. 7° 、 9. 6° 、 10. 2° 、 1 0. 6° 、 1 3. 5° 、 14.
9° および 1 9. 9° の位置にピークを有する X線粉末回折パターンを示す上 記 〔8〕 に記載の 2型結晶。
〔10〕 昇温速度が 1 0°C/分の示差走査熱量測定において、 約 1 26°Cに 脱水吸熱ピークを有する上記 〔8〕 または 〔9〕 に記載の 2型結晶。
〔1 1〕 回折角 2 0 (C uKa l線) で表したとき、 ほぼ 8. 1° および 8.
4° の位置にピークを有する X線粉末回折パターンを示す、 化合物 Aの 3型結 曰 〔1 2〕 回折角 20 (C uKa l線) で表したとき、 ほぼ 4. 8° 、 7. 3° 、 8. 1° 、 8. 4° 、 9. 4° 、 1 2. 5° 、 1 4. 3° 、 1 6. 4° および 1 9. 1° の位置にピークを有する X線粉末回折パターンを示す上記 〔1 1〕
に記載の 3型結晶。
〔1 3〕 昇温速度が 1 0 °CZ分の示差走査熱量測定において、 約 1 1 4でに 脱水吸熱ピークを有する上記 〔 1 1〕 または 〔1 2〕 に記載の 3型結晶。
〔1 4〕 上記 〔1〕 〜 〔1 3〕 のいずれかに記載の結晶を有効成分として含 む医薬。
〔1 5〕 上記 〔1〕 〜 〔: I 3〕 のいずれかに記載の結晶を含む医薬組成物。 〔1 6〕 化合物 Aの 1型結晶の製造方法であって、 以下の 1一 1〜1— 7群 のいずれかから選択される有機溶媒に
( a ) 化合物 Bを溶解させ、 これに水を添加した溶液から化合物 Aの 1型結晶 を晶析させる力 \ または
( b ) 化合物 Aの 2型結晶または 3型結晶を溶解させ、 該溶液から化合物 Aの 1型結晶を晶析させる
ことを特徴とする製造方法:
1— 1群:ギ酸ェチル、 酢酸メチル、 酢酸ェチル、 酢酸 n—プロピル、 酢酸ィ ソプロピル、 酢酸イソブチル、 酢酸 n—ブチルおよび酢酸イソァミルからなる 群から選択される単一溶媒、
1一 2群: メチルイソプチルケトン、 ジィゾプロピルケトンおよび 2—へキサ ノンからなる群から選択される単一溶媒、
1—3群: ジェチノレエーテノレ、 t e r t —ブチノレメチノレエーテノレ、 シクロペン チルメチルエーテルおよびジフエ二ルエーテルからなる群から選択される単一 溶媒、
1—4群: ァセトニトリル、
1— 5群:酢酸 n—プロピル、 酢酸イソプロピル、 酢酸イソブチル、 酢酸イソ ァミル、 メチルイソブチルケトン、 ジイソプロピルケトン、 シクロペンチルメ チルエーテルおよび 2—へキサノンからなる群から選ばれる 1種の有機溶媒と、 ジェチルエーテルまたはシクロへキサンとの混合溶媒;
1一 6群:酢酸イソプロピル、 酢酸イソブチル、 酢酸イソァミル、 メチルイソ
ブチノレケ トン、 ジイソプロピノレケトン、 シクロペンチルメチノレエーテノレおよび
2—へキサノンからなる群から選ばれる 1種の有機溶媒と、 n—へキサン、 ジ メ トキシェタンおよびメチルシクロへキサンからなる群から選ばれる 1種の有 機溶媒との混合溶媒;および
1— 7群:酢酸ェチルとシクロへキサンとの混合溶媒。
〔1 7〕 化合物 Aの 2型結晶の製造方法であって、 以下の 2—:!〜 2— 3群 のいずれかから選択される有機溶媒に
( a ) 化合物 Bを溶解させ、 これに水を添加した溶液から化合物 Aの 2型結晶 を晶析させるか、 または
( b ) 化合物 Aの 1型結晶または 3型結晶を溶解させ、 該溶液から化合物 Aの 2型結晶を晶析させる
ことを特徴とする製造方法:
2— 1群: ジクロロメタン、 クロロホノレム、 クロ口ベンゼン、 トノレェン、 キシ レン、 ァニソ一ノレ、 n—へキサン、 メチルシクロへキサンおよび n—ヘプタン からなる群から選ばれる単一溶媒;
2— 2群: トルエン、 キシレンおよびァニソールからなる群から選ばれる 1種 の有機溶媒とジェチルェ一テル、 シクロへキサン、 n—へキサンおよびメチル シク口へキサンからなる群から選ばれる 1種の有機溶媒との混合溶媒;および 2— 3群: トルエンとジメ トキシェタンとの混合溶媒。
〔 1 8〕 化合物 Aの 3型結晶の製造方法であって、
( a ) 化合物 Bを、 酢酸 n—プロピルとメチルシクロへキサンとの混合溶媒に 溶解させ、 これに水を添加した溶液から化合物 Aの 3型結晶を晶析させるか、 または
( b ) 化合物 Aの 1型結晶または 2型結晶を該混合溶媒に溶解させ、 該溶液か ら化合物 Aの 3型結晶を晶析させる
ことを特徴とする製造方法。
図面の簡単な説明
図 1は、 化合物 Aの 1型結晶の単結晶構造データを示す。
図 2は、 化合物 Aの 1型結晶の単結晶構造パッキングデータを示す。
図 3は、 化合物 Aの 1型結晶の13 C固体 NMRスぺク トルチヤ一トを示す。 図 4は、 化合物 Aの 2型結晶の13 C固体 NMRスぺク トルチヤ一トを示す。 図 5は、 化合物 Aの 3型結晶の13 C固体 NMRスペク トルチャー トを示す。 図 6は、 スぺク トリス (S p e c t r i s ) 社製 X' P e r t A 1 h a 1を用いて得られた化合物 Aの 1型結晶の粉末 X線回折スぺク トルチヤ一 トを示す。
図 7は、 高輝度放射光施設 S P r i n g— 8 B L 24 XU Hu t c h Bを用いて得られた化合物 Aの 1型結晶の粉末 X線回折スぺク トルチャートを 示す。
図 8は、化合物 Aの 1型結晶の示差走査熱量測定(D S C)チャートを示す。 図 9は、 化合物 Aの 1型結晶の熱重量分析測定 (TG) チャートを示す。 図 1 0は、 スぺク トリス (S p e c t r i s ) 社製 X' P e r t A l p h a 1を用いて得られた化合物 Aの 2型結晶の粉末 X線回折スペク トルチヤ ートを示す。
図 1 1は、 高輝度放射光施設 S P r i n g— 8 B L 24 XU Hu t c h Bを用いて得られた化合物 Aの 2型結晶の粉末 X線回折スぺク トルチヤ一トを 示す。
図 1 2は、 化合物 Aの 2型結晶の示差走査熱量測定 (D SC) チャートを示 す。
図 1 3は、 化合物 Aの 2型結晶の熱重量分析測定 (TG) チャートを示す。 図 14は、 スぺク トリス (S p e c t r i s ) 社製 X' P e r t A l p h a 1を用いて得られた化合物 Aの 3型結晶の粉末 X線回折スぺク トルチヤ ートを示す。
図 1 5は、 高輝度放射光施設 S P r i n g— 8 B L 24 XU Hu t c h Bを用いて得られた化合物 Aの 3型結晶の粉末 X線回折スぺク トルチヤ一トを
示す。
図 1 6は、 化合物 Aの 3型結晶の示差走査熱量測定 (D S C) チャートを示 す。
図 1 7は、 化合物 Aの 3型結晶の熱重量分析測定 (TG) チャートを示す。 図 1 8は、 化合物 Aの 1型〜 3型結晶および化合物 Bのラマンスペク トルチ ヤートを示す。
図 1 9は、 化合物 Aの 1型〜 3型結晶および化合物 Bのラマンスぺク トルチ ヤート ( 3 5 5 0〜 3 0 5 0 c m—つ を示す。 ,
図 2 0は、 化合物 Aの 1型〜 3型結晶のラマンスぺク トルチヤ一ト (3 0 5 0〜2 8 5 0 c m_ 1) を示す。
図 2 1は、 化合物 Aの 1型〜 3型結晶のラマンスぺク トルチヤ一ト ( 1 7 5 0〜; 1 3 8 0 c m—1) を示す。
図 2 2は、 化合物 Aの 1型〜 3型結晶および化合物 Bの吸湿性を示すグラフ である。 —♦—は化合物 B、 —國一は 1型結晶、 —▲—は 2型結晶、 — —は 3型結晶の結果を示す。
図 2 3は、 化合物 Aの 1型〜 3型結晶の各 p Hにおける溶解度を示すグラフ である。 ー國—は 1型結晶、 —▲—は 2型結晶、 —き—は 3型結晶の結果を示 す。
発明の詳細な説明
本発明の 一 [( 1 - i ri—ブチル一 5—メチノレ一 1 H—ビラゾール一 4ーィ ノレ) カノレボニノレ] — L—バリノレ一 V_ [ 3, 3 , 3— トリフルオロー 2, 2— ジヒ ドロキシ一 1—イソプロピルプロピル] — L—プロリンアミ ドの結晶、 よ り具体的には化合物 Aの結晶は、 化合物 B、 即ち、 ケトン体を出発物質として 製造することができる。 このケトン体は、 WO 0 3 /0 6 6 6 7 1に記載の方 法によって製造することができる。
本発明者らの研究によって、 化合物 Aの結晶として、 少なくとも 3種類の異 なる結晶形が存在することが判明した。この 3種類の結晶形を、本明細書では、
1型、 2型および 3型と称する。
化合物 Aの結晶は、 X缄粉末回折パターンにおいて、特徴的なピークを示す。 即ち、 該結晶は、 回折角 2 0 (C u Ka l線) で表したとき、 約 7. 5° 〜9. 0° の位置に少なくとも 1本のピーク、 具体的には、 少なくとも 2本のピーク を有する X線粉末回折パターンを示す。
スぺク トリス (S p e c t r i s ) 社製 X' P e r t A l p h a 1の 装置を用いて実施例で示す条件下で測定したときの 1型〜 3型各結晶の特徴的 な主ピークの回折角 (2 Θ (C uKa l線)) は以下のとおりである。 表
化合物 Aの結晶は、回折角 2 Θ ( 1 O K e V) で表したときには、約 6. 0° 〜7. 3° の位置に少なくとも 1本のピーク、 具体的には、 少なくとも 2本の ピークを有する X線粉末回折バタ ンを示す。
高輝度放射光施設 S P r i n g— 8 B L 24 XU Hu t c h B (財団 法人高輝度光科学研究センター(J AS R 1 ))の装置を用いて実施例で示す条 件下で測定したときの 1型〜 3型各結晶の特徴的な主ピークの回折角( 2 Θ ( 1 0 K e V)) は以下のとおりである (図 7、 1 1および 1 5参照)。
表 2
1型〜 3型の各結晶の昇温速度が 1 0°CZ分の示差走査熱量測定 (DS C) における特徴および熱重量分析 (TG) における特徴は以下のとおりである。
表 3
化合物 Aの各結晶と化合物 Bについてラマン分光分析を行うと、 化合物 Aの 各結晶は 3500〜 3 1 70 c m—
1の範囲においてピークを有するが、化合物 Bでは該範囲においてピークを持たないことから、 化合物 Aの結晶と化合物 B とは区別される (図 1 9参照)。 また、 1型〜 3型結晶は、 各々 3500〜 3 1 70 c m—
1の範囲 (図 1 9参照)、 3050〜 2850 cm—
1の範囲 (図 20 参照)、 1 7 50〜 1 380 c m—
1の範囲 (図 2 1参照) においてピークパタ ーンが異なり、 各結晶間で区別できる。
本発明の化合物 Aの 1型結晶、 2型結晶および 3型結晶は、 本明細書に記載 の物理化学的性質によって特定されるものであるが、 上記データは、 測定方法 や測定機器によって多少変わるものであるから、厳密に解されるべきではなレ、。 また、 1型結晶、 2型結晶および 3型結晶は、 純粋な結晶に限られず、 未知の 結晶を含めた他の結晶が混在しているものであってもよい。
1型結晶
化合物 Aの 1型結晶は、 実施例または以下に記載した方法によって製造する ことができる。 即ち、 1型結晶は、 化合物 Bを特定溶媒に溶解し、 水を添加し たのち放置することにより製造できる。 「放匱」 は、 通常、 ゆっく りと攪拌しな がらまたは静置させて数時間ないし数日間(好ましくは、少なくとも約 6時間、 より好ましくは、 少なくとも約 1 8時間)、 通常、 室温 (例えば、 約 20 °C〜約 30°C) において行われる。
ここにおける、 特定溶媒としては、 例えば、 次の (1— 1群) 〜 (1 _ 4群) に示される単一溶媒が挙げられる。
( 1 — 1群) ギ酸ェチル、 酢酸メチル、 酢酸ェチル、 酢酸 n—プロピル、 酢酸 イソプロピル、 酢酸イソプチル、 酢酸 n—ブチルおよび酢酸イソァミルからな る群から選択される単一溶媒
( 1— 2群) メチルイソプチルケトン、 ジイソプロピルケトンおよび 2—へキ サノンからなる群から選択される単一溶媒
( 1— 3群) ジェチルエーテル、 t e r t —ブチルメチルエーテル、 シクロぺ ンチルメチルエーテルおよぴジフヱニルエーテルからなる群から選択される単 一溶媒
( 1 — 4群) ァセ トニトリル
または、 以下の組み合わせの 2種混合溶媒であってもよい。 表 4 ( 1 _ 5群)
ジェチノレエーテノレ シク口へキサン 酢酸ィソプロピル 1型 1型 酢酸 n—プロピル 1型 1型 酢酸ィソブチル 1型 1型 酢酸ィソァミル 1型 1型 メチルイソブチルケトン 1型 1型
2—へキサノン 1型 1型 ジイソプロピルケトン 1型 1型 シク口ペンチノレメチノレエーテノレ 1型 1型
表 5 ( 1— 6群)
上記混合溶媒の他に、 下記実施例に示す酢酸ェチルとシク口へキサンとの混 合溶媒 (1一 7群) も例示できる。
これらの溶媒の使用量は、 使用する溶媒の種類や混合比によって異なるため 一概に規定することは困難であるが、 化合物 Bを溶解するに必要な最小量が好 ましい。 また、 水の添加量は、 ジオール体を形成するに必要な量であり、 収率 を上げるために化合物 Bと当モル〜やや過剰量の範囲から選択するのが好まし く、 化合物 B 1モルに対し約 1モル〜約 1 . 5モル添加するのがより好まし レ、。 なお、 水の添加は、 人為的に行わず、 大気中の水分を吸収させることによ つて行える場合もある。 混合溶媒を用いる場合には、 例えば、 混合溶媒に化合 物 Bを溶解させて放置してもよいし、 一方の有機溶媒に化合物 Bを溶解させて 放置し、 これに他の有機溶媒を添加して放置してもよい。 かく して析出した結 晶は、 通常、 濾取後、 適当な溶媒で洗浄し、 乾燥される。
また、 1型結晶は下記で得られる 2型結晶または 3型結晶を上記特定溶媒に 溶解させ、 同様に晶析させることによって得ることもできる。
2型結晶
化合物 Aの 2型結晶は、 実施例または以下に記載した方法によって製造する ことができる。 即ち、 特定溶媒として次の単一溶媒または混合溶媒を用いるほ
かは、 前記の 1型結晶の場合と同様にして製造することができる。 単一溶媒としては、 以下のものが例示できる (2— 1群)。
ジクロロメタン、 クロロホノレム、 クロ口ベンゼン、 トノレェン、 キシレン、 ァニ ソ一/レ、 n—へキサン、 メチノレシクロへキサン、 n—ヘプタン。
混合溶媒としては以下の組み合わせが例示できる。 表 6 ( 2— 2群)
上記例のほかに、 トルエンとジメ トキシェタンとの混合溶媒も例示できる(2 — 3群)。
また、 2型結晶は、 上記で得られる 1型結晶または下記で得られる 3型結晶 を上記特定溶媒に溶解させ、同様に晶析させることによって得ることもできる。
3型結晶
化合物 Aの 3型結晶は、 実施例または以下に記載した方法によつて製造する ことができる。 即ち、 特定溶媒として酢酸 n—プロピルとメチルシクロへキサ ンとの混合溶媒を用いて、 前記の 1型結晶の場合と同様にして製造することが できる。
また、 3型結晶は、 上記で得られる 1型結晶または 2型結晶を上記の混合溶 媒に溶解させ、 同様に晶析させることによって得ることもできる。
上記製法によって得られる本発明の結晶は、 化合物 Bのトリフルォロメチル ケトン部分のケトン部分がジオールに変換されている。 このことは、 後記に示 す単結晶の X線結晶回折および1 3 C固体核磁気共鳴スぺク トルによって確認 されている。
本発明の結晶は、 エラスターゼ阻害活性を有し、 好中球エラスターゼが病態 発症に関与していると考えられている疾患、 例えば、 慢性閉塞性肺疾患 (肺気 腫および慢性気管支炎を含む)、慢性および急性間質性肺炎、特発性間質性肺炎
(IIP) , びまん性汎細気管支炎、 嚢胞性肺線維症、 急性肺傷害(ALI)Z急性呼吸 促迫症候群 (ARDS)、 気管支拡張症、 喘息、 膝炎、 腎炎、 肝炎 (肝不全)、 慢性関 節リウマチ、 関節硬化症、 変形性関節炎、 乾癬、 歯周病、 ァテローム性動脈硬 化症、 臓器移植における拒絶反応、 虚血 ·再灌流時の組織傷害、 ショック、 敗 血症、播種性血管内凝固症 (DIC)や深部静脈血栓症等を含む血液凝固異常、結膜 炎、 角膜炎、 角膜潰瘍、 クローン病、 全身性エリテマトーデスの予防および または治療剤として有用であると期待される。
本発明の化合物 Aの結晶は、 好ましくは経口投与される。 その投与量は、 投 与経路、 患者の症状、 体重および年齢などにより大いに変動し得る。 例えば、 経口投与の場合、 化合物 Aの投与量は、 通常 1 Sにっき体重 6 0 k g当たり約 0 . 5〜約 5 0 0 O m gの範囲内であり、 好ましくは 1 日につき体重 6 O k g 当たり約 5〜約 2 0 0 O m gの範囲内であり、 最も好ましくは 1 日につき体重 6 0 k g当たり 1 5〜3 0 0 m gの範囲内である。
本発明の化合物 Aの結晶は、 通常の製剤の形で投与される。 かかる通常の製 剤としては、 錠剤、 カプセル剤、 顆粒剤、 細粒剤、 散剤、 水性もしくは油性の 液剤などが挙げられる。 これらの製剤は、 化合物 Aの結晶を 0 . 0 1重量%以 上、 好ましくは 0 . 1〜 7 0重量%の割合で含有することができる。 これらの 製剤はまた、 治療上有効な他の成分を含有していてもよい。
これらの薬学上の製剤は、 通常の薬学的に許容しうる製剤化成分を用い、 通 常の手法にて調合、 製剤され得る。 製剤化成分としては、 製剤分野において常 用され、 かつ有効成分と反応しない物質が用いられる。
実施例
以下、 参考例および実施例を挙げて本発明の新規な結晶形について説明する 力、 本発明はこれに限定されるものではない。
参考例 1 : N— [( 1— プチルー 5—メチルー 1 //—ピラゾール一 4ーィ ル) カルボ二ル] — L—バリルー; V— 「( 1 S) — 3 , 3, 3—トリフノレオ口 一 1—ィソプロピル一 2—ォキソープ口ピル Ί—— L一プロリ ァミ ド (ィ匕合物 B) の製造
化合物 B
工程 1 ) Ν_Λ 1 - tert—ブ千; — 5—メチルー 1 H—ピラゾール— 4 _ィル) カルボ二ル] — L—バリル一 A_ [( 1 S, 25) - 3 , 3, 3—トリフルォロ — 2 -ヒ ドロキシ一 1—ィソプロピルプロピル, 一 L—プロ リンアミ ド (化合 物 2) の製造
工程 1の出発物質である Lーバリル— Λ— [( 1 S, 25) - 3 , 3, 3—ト リフルオロー 2—ヒ ドロキシ一 1—イソプロピルプロピル] —L—プロリンァ ミ ド 4—メチルベンゼンスルホン酸塩 (化合物 1 ) は、 WOO OZ5203 2に記載の方法に準じて製造した。
得られた化合物 1 2 2. 8 g (4 2. 3 mm o l )および J. Heterocycl. Chem. , 24(6) 1669-1675 (1987)に記載の方法に準じて製造した 1 _ ί ί—ブチ ノレ _ 5—メチルピラゾール一 4—カルボン酸 7. 0 g ( 38. 4mmo l )を 含むピリジン溶液( 1 50 m 1 )に、 1—ェチルー 3— (3—ジメチルァミノプロ ピル)カルボジイミ ド塩酸塩を 8. 8 g (46. 1 mm o 1 )加え、 室温にて 1 4 時間攪拌したのち反応液を減圧濃縮した。
残渣に酢酸ェチルを加え、 1 0%クェン酸水溶液で 2回、 飽和炭酸水素ナト
リウム水溶液、 次いで飽和食塩水で洗浄した後、 無水硫酸マグネシウムで乾燥 した。 溶媒を減圧留去し、 標題化合物 (化合物 2) 1 8. 8 g (収率 92%)を 得た。
A P C I -MS : 532 (MH + )
工程 2)Λ— [( 1—tert—プチ) ー 5—メチル一 1 H—ピラゾー/レー 4—ィル) カルボ二ル, — L—バリルー V— [(1 S) — 3, 3, 3—トリフルオロー 1— イソプロピル一 2—ォキソ—プロピル] _L一プロリンアミ ド (化合物 B) の 製造
工程 1で得られた化合物 2 1 8. 7 g (35. 2mmo 1 )を塩化メチレン (14 Om 1 )とジメチルスルホキシド(35m 1 )の混合溶媒に溶解し、 1—ェ チル一 3— (3—ジメチルァミノプロピル)カルボジィミ ド塩酸塩 27.0 g (1 40. 1 mmo 1 )を加え、氷冷下で懸濁した溶液にジクロロ酢酸 2. 9m 1 (3 5. 2mmo 1 )を滴下し、 氷冷下で 1 5分間攪拌した。 反応完了後、 反応液に 氷水を加え酢酸ェチルで抽出し、 飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、 氷水、 次い で飽和食塩水で洗浄した後、 無水硫酸マグネシウムで乾燥した。 溶媒を減圧留 去し、 残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (溶出液:酢酸ェチルー n 一へキサン) で精製した。 目的物を含む画分を減圧濃縮乾固し、 非晶質である 標題化合物 (化合物 B) 1 6. 4 g (収率 88%)を得た。
A P C I -MS : 530 (MH + )
元素分析: C25H38F3N5O4 ' 0. 75H20として
計算値 C 55. 29、 H 7. 33、 F 1 0. 49, N 1 2. 89 実験値 C 55. 4 1、 H 7. 3 1、 F 10. 28、 N 1 2. 80 実施例 1 :化合物 Aの 1型結晶の製造
酢酸ェチル 4 1 m 1に化合物 B 1 0. 4 g ( 1 9. 6 mm o l )を加えて室 温で溶解し、 蒸留水 0. 36m l (1 9. 6 mm o 1 )を加え室温で一晚緩やか に攪拌した。 結晶が析出したが、 シクロへキサン 1 0m 1を追加し、 さらに一 晚攪拌した。 析出した結晶を濾取し、 結晶を少量の酢酸ェチル: シクロへキサ
ン =4 : 1で洗浄した後、 50°Cで一晩送風乾燥して化合物 Aの 1型結晶を得 た。 収量 6. 55 g (収率 6 1 %)
元素分析: C25H40F3N5O5として
計算値 C 54. 83、 H 7. 36、 F 1 0. 4 1、 N 1 2. 7 9 測定値 C 54. 79、 H 7. 36、 F 1 0. 26、 N 1 2. 8 2 実施例 2 :化合物 Aの 2型結晶の製造
トルエン 20m 1に化合物 B 1 2. 1 g (22. 8mmo l )を加えて室温 で溶解し、 攪拌しながらジェチルエーテル 2 Om 1を加えた。 容器口を開口し たまま室温で 2晚攪拌し、 析出した結晶を濾取した。 得られた結晶を少量のジ ェチルェ一テルで洗浄した後、 50°Cでー晚送風乾燥して、 化合物 Aの 2型結 晶を得た。 収量 1 0. 6 g (収率 84%)
元素分析: C25H40F3N5O5として
計算値 C 54. 83, H 7. 36、 F 1 0. 4 1, N 1 2. 79 測定値 C 54. 65, H 7. 33、 F 10. 29、 N 1 2. 8 1 実施例 3 :化合物 Aの 2型結晶の製造
トルエン 5 Om 1に化合物 B 1 3. 0 g ( 24. 5mmo l )を加えて室温 で溶解し、 蒸留水 0. 44 g (24. 5 mm o 1 )を加え室温でー晚攪拌した。 析出した結晶を濾取し、 得られた結晶をジェチルエーテル 2 Om 1で洗浄した 後、 45 °Cで 4日間送風乾燥して、 化合物 Aの 2型結晶を得た。 収量 10. 0 g (収率 77 %)
元素分析: C25H4。F3N505として
計算値 C 54. 83、 H 7. 36、 F 10. 4 1, N 1 2. 7 9 測定値 C 54. 65、 H 7. 30、 F 1 0. 3 3、 N 1 2. 7 5 実施例 4 :化合物 Aの 1型結晶の製造
酢酸ェチル 33. 6m 1に実施例 3で得られた 2型結晶 5. 60 g ( 10. 2 mmo 1 )を加えてホッ トプレート上で溶解し、徐々に室温に戻しながらー晚攪 拌した。 析出した結晶を濾取し、 室温で一晩送風乾燥して化合物 Aの 1型結晶
を得た。 収量 3. 34 g (収率 60%)。
実施例 5 :化合物 Aの 3型結晶の製造
酢酸 n—プロピル 4m 1に上記実施例で得られた 1型結晶 1 g (1. 82m m o 1 ) を加えて 1 30°Cのホットプレート上で溶解し、 メチルシクロへキサ ン 6m lを加え、 4°Cで 1 日攪拌することなく放置した。 析出した結晶を濾取 し、得られた結晶をメチルシク口へキサン 6 m 1で洗浄した後、減圧下、 40°C で乾燥して、 化合物 Aの 3型結晶を得た。 収量 0. 6 3 g (収率 6 3%) 元素分析: C25H40F3N5O5として
計算値 C 54. 83、 H 7. 36、 F 10. 4 1、 N 1 2. 7 9 測定値 C 54. 95、 H 7. 2 1、 F 1 0. 36、 N 1 2. 7 1 実施例 6 :化合物 Aの単結晶 (1型結晶) の製造およびその単結晶 X線回折 実施例 1で得た 1型結晶 5mgを 200 μ 1の 2—へキサノンに溶解させ、 室温下へキサン蒸気中に一日間静置して保存することによつて化合物 Αの単結 晶 (single crystal(0. 4 X 0. 2 X 0. 2mm)) を得た。 得られた単結晶 を用いて、 単結晶 X線結晶回折をおこなった。 条件は以下のとおりである。 装置: ブルカー エイニックスエス (B r u k e r A X S ) 社製 単結晶 X 線回折装置 SMART APEX CCD
ターゲット :モリブデン (波長 0. 7 1 073 A)
電圧: 50 k V
電流: 90mA
測定温度: — 1 73°C
結晶学的データは表 7に示す。 また、 原子座標と等方性温度因子データおよ び結合距離と結合角データを表 8および表 9に示す。 併せて、 特定の原子間の 距離を表 1 0に示す。 そのデータに基づいて得られた単結晶構造データおよび 単結晶パッキングデータを各々図 1および図 2に示す。 尚、 表 8〜1 0に記載 の原子の番号は、 図 1に記載の原子の番号である。
表 7
a 10. 7438Α 格子定数 b 13. ιιοοΑ c 20. 2863 Α α 90° 格子角 β 90°
Ύ 90° 空間群 Ρ212ι2ι
R因子 0. 043
oz
ε) L6Z0 •0 (9) ΐ8ί •0 (8) οε8 ο •ΐ (2ΐ)8 198 •0 £d ε) ZSZO •0 (9) 98C •0 (Τΐ) 9 C86 •0 (fl) 9Z L •0 Zd ε) Ζ Ζ •0 (9) 086 •0 (Οΐ) Ζ6868 •0 (Ζΐ)6Ζ688 •0 \ά ε) ΖΖΖΟ •0 (9) 89S6 •0 (6) C6968 •0 •0 SO ε) 1910 •0 (9) 6ΪΠ0 •I (6) IU •0 (n)96 •0 0 ε) 0910 •0 (9) 11698 •0 (6) C6929 •0 (Π)0ΐ98Ζ •0 εο ε) 6810 •0 (9) L LLS Ό (Οΐ) •0 (2ΐ)Π86Ζ •0 20 ε) LU0 •0 (9) 9ετεδ •0 (Οΐ) ε 86 •0 (CT)9T029 •0 ΐθ ε) 6910 •0 ( ) LZZ0 •ΐ (Π) 8ΐ •ΐ (9 )9\ιη •0 SN ε) Ϊ020 •0 (8) 88896 •0 (Ζ ) 669ΐ •ΐ (9ΐ)ε60ΐε •0
ε) 0910 •0 ( ) LZ9W ■ΐ (01) \Z9LS •0 εΝ ε)
•0 (ετ)9ΐεο9 •0
ε) εετο •0 (Ζ) S9898 •0 (Οΐ) fZ0 L •0 ( ΐ)90 S9 •0 IN
S) L6Z0 •0 (π) 9^131 •ΐ (3ΐ) Ζ9092 •ΐ (Z)£6 Z •0 923 ) Ζ£ΖΟ •0 (Οΐ) ε •ΐ (Η) 9L £ •ΐ (6ΐ)εεζε •0 Z3
9) 8820 •0 (2ΐ) S IO •ΐ (3ΐ〕 sso ε •ΐ '0 ZZD
Ζ8Ϊ0 •0 (6) 69SS0 •ΐ (ετ) •ΐ (L\)\zm •0 ZZO ) 9120 •0 (6) 9εειτ •ΐ (Η) 60^60 •ΐ (61)3969^ '0 \Z0 ε) Ϊ5Ϊ0 '0 (8) 9Η) •ΐ (ετ) •ΐ ( )86ΐ •0 OZO ) Ϊ6Τ0 •0 (6) Z2Z 6 •0 (Η) Z06L •ΐ (S\)ZZ •0 613 ε) 9W0 •0 (8) 96^66 •0 (ζ\) ηζζ •ΐ ΐ) 9 •0 813 ε) OSTO •0 (6) 02Ϊ66 •0 (ετ) 880G6 •0 (9ΐ) 9^ ^ •0 LID s) 9820 •0 (Οΐ) 6SI •ΐ (9ΐ〕 SS008 '0 (Ζ)9929 •0 913 ) 8C20 •0 (6) 8 ΐΐ •ΐ (3D LSZZ9 •0 (2)0ΐΐ9 •0 913 ε) ΐθ •0 (8) Lzm •I (ετ) 8862Z •0 (91)01399 •0 no ε) δετο •0 (8) Z £ 0 •ΐ (εΐ〕 2ί 11 •0 (9\)Z Z •0
ε) ΟΖΐΟ •0 (8) SZZOO •ΐ {ζ\) Π90Ζ •0 (91)Z9S9^ •0 Z\D
Ϊ8Ϊ0 •0 (6) •0 ) 9ZS9S •0 (l\)Z9L\ •0 no 〕 6 Ϊ0 •0 (6) "968 •0 (ει; 2998^ •0 (L\)0Z 0 •0 010 ε) 9910 •0 (6) ιε S6 •0 (ζ\) 0186 •0 UDS29Z9 •0 60 ε) 0210 •0 (8) 099^6 •0 (ζ ) 9εεΐ9 '0 (91)^ΐ 9 •0 83 ε〕 Ζ\ •0 (8〕 26^88 •0 {ζ\) 98^99 •0 (91)9^269 •0 10
9) οε ο •0 (ζι) fUZL •0 (61; 29989 •0 (C)86 S •0 93
9) εο ο •0 (ZD ££OLL •0 (2)^28 •0 (Z)\L •0 93 ) 9\Ζ0 •0 (6) 96 L •0 (31; 99^6Ζ •0 (6ΐ)228Ζ9 •0
£) 6SI0 •0 (8) S9 08 •0 (ετ; 0 08 (Ζΐ)8Ζ Ζ9 •0 εο
Ζ) Ζ \0 '0 (8) \£ Z2 •0 (ετ; Ϊ6Η6 •0 ( ΐ)98 Α •0 ZD
8挲 Sl0/S00Zdf/X3d 0Ζ.9Ϊ0/900Ζ OAV
OAV/voさ sssooifcld
o σ> o o o
e
o z
o o
σι 1
o o o o o σ> 1 eg
u o o a:
e e CM 1
o o o o o o
表 10
原子間の距離 (A)
01 05 2.70
01 N1 2.79
N1 02 2.78 これらデータから、 トリフルォロメチルケトン部分に 2個の酸素原子 (O 1 および 02) が存在し、 これら酸素原子が結合している炭素原子 (C 2) との 距離はそれぞれ 1. 39 7 Aと等しいこと、 2個の酸素原子の温度因子の値は 個々に正常値を示しており、 1個の酸素原子が振動して 2個に観測されるとい つたゆらぎではなかったこと、 およびこれら基が分子内で水素結合を形成し、 結晶構造の安定化に寄与していることが判明した。 この結果、 当該ケトンは 2 本の水酸基、 即ち、 ジオールに変換されていることが確認できた。
13 C固体核磁気共鳴スぺク トル
実施例で得られた化合物 Aの 1型結晶、 2型結晶および 3型結晶を用いて13 C NMR測定を行った。
測定条件は以下のとおりである。
装置:ノくリアン (V a r i a n) 社製 マーキュリ一プラス (me r c u r y p l u s)
磁場: 40 OMH z
図 3〜図 5に各々 1型〜 3型結晶の固体状態の1 3 C核磁気共鳴スぺク トル を示す。 この結果、 1型〜 3型の結晶のいずれも、 トリフルォロメチルケトン のカルボニル炭素に由来するピーク (通常 1 90 p pm付近) は見られず、 ジ オールの 4級炭素に由来するピーク (94. 8 p pm (l型)、 9 5. 4 p p m (2型)、 95. 1 p pm (3型)) が検出され、 トリフルォロメチルケトン部 分が 2本の水酸基、 即ち、 ジオールに変換されていることが確認できた。
粉末 X線結晶回折、 熱分析およびラマン分光分析
実施例で得られた化合物 Aの 1型結晶、 2型結晶および 3型結晶について、
以下の条件により、 粉末 X線回折測定 (2種類)、 示差走査熱量計 (D SC) お よび熱重量分析計 (TG) による熱分析、 ならびにラマン分光分析を行った。 ラマン分光分析を除くそれぞれの結果を 1型結晶については図 6〜図 9に、 2 型結晶については図 10〜図 1 3に、 3型結晶については図 14〜図 1 7に示 す。
尚、 ラマン分光分析は化合物 Bについても行い、 図 1 8にラマンスペク トル のチヤ一トを、 図 1 9〜図 2 1にラマンスぺク トルのチヤ一トを拡大したもの (3 550〜 3050 c m_1、 3050〜 2850 c m— 1 750〜 1 38 0 cm-1) を示す。 尚、 図 18と図 1 9は各結晶と化合物 Bのデータを重ねて 示し、 図 20と図 2 1は各結晶のデータを重ねて示す。
(1) 粉末 X線回折
装置:スぺクトリス (S p e c t r i s )社製 X' P e r t A l p h a 1 線源: C uKa l線
管電圧: 45 k V
管電流: 4 OmA
検出器: X' C e l e r a t o r
ステップ: 0. 0 1 67°
各ステップにおける積算時間: 100秒 Zステップ
ソーラースリ ッ ト : 0. 0 1 r a d i a n
(2)高輝度放射光施設 S P r i n g— 8 B L 24 XU Hu t c h B (財 団法人高輝度光科学研究センター (J AS R I )) を用いた粉末 X線回折: 装置: B L 24XU Hu t c h Bに設置された小型回折計
測定エネルギー: 1 0 K e V
測定試料: lmm φ ガラスキヤビラリ一に封入
第 1スリ ッ ト : 0. 2 mm
第 2スリ ッ ト : 0. 1 mm
測定間隔: 0. 004° (2 Θ)
測定範囲: 3. 2〜24. 1° (20)
スキャン速度: 2〜4秒
(3) 示差走査熱量計 (DSC) による熱分析
装置:パーキンエルマ一 (P e r k i n E l me r) 社製 P y r i s 試料量: 3〜 4 m g
試料セノレ: アルミ二ゥムセノレ
窒素ガス流量: 20m lノ分
昇温温度: 10°CZ分
(4) 熱重量分析計 (TG) による熱分析
装置:パーキンエルマ一 (P e r k i n E l me r) 社製 TG A 7 試料量: 5 ~ 10 m g
試料セル:プラチナパン
窒素ガス流量: 70m lノ分
昇温温度: 10°C/分
(5) ラマン分光分析
装置: 日本分光社製レーザーラマン分光光度計 NR S— 2 1 00
A r +レーザー: 5 14. 5 nm、 1 00 mW
試料照射系:後方散乱照射
マク口対物レンズ
アパーチャ一 : 200 μ m
入出射スリ ッ ト S 1 : 1 00 m
中間スリット S 3 : 200 μ m
中間スリ ット S 5 : 200 μ m
測定範囲: 400 cm―1〜 4000 cm— 1
測定時間: 900秒
積算回数: 3〜6回
試験例 1 : ヒ ト好中球エラスターゼ (HNE) 誘発肺出血に対する抑制活性
ハムスターにヒ ト好中球エラスターゼを気管支内投与すると肺において出血 が誘発される。 このため、 エラスターゼ投与の一定時間後に経気道的に肺を洗 浄して得られる気管支肺胞洗浄液中にはへモグロビンが検出される。本実験は、 このへモグ口ビン濃度を測定することにより、 本発明の結晶によってこの出血 がどの程度抑制するか試験した。
ハムスター (S y r i a n系、 7〜1 0週齢の雄性) を一群あたり 8〜 1 6 匹に分け、 各群について以下の処理を行った。
(A) 結晶の非投与群 (病態対照群) :
25 単位のヒ ト好中球エラスターゼ(エラスチンプロダク ト社 (Elastin Product Co. , Inc. ) )を溶解した生理食塩水 0. 2 m 1をハムスターの気管支 内に投与して肺出血を誘発せしめた。 エラスターゼ投与の 1時間後、 ハムスタ 一を脱血により屠殺し、生理食塩液 2.5 m 1で経気道的に肺胞を 2回洗浄し、 その肺胞洗浄液 5m 1中のヘモグロビン濃度 (4 14 nmの吸光度 (A414)) を測定した。
(B) 結晶投与群:
化合物 Aの 1型結晶、 2型結晶または 3型結晶に、 0. 5%トラガント溶液 を加えて懸濁させ、 これをハムスターに経口投与した (投与量: 1 0mg/k g)。 30分後、 前記 (A) と同様の方法によりヒ ト好中球エラスターゼを投与 した。 そして、 その 1時間後に (A) と同様にして肺胞洗浄液中のへモグロビ ン濃度を測定した。
その結果、 上記各結晶は、 ヒ ト好中球エラスターゼ (HNE) 誘発肺出血に 対する抑制活性を有していることが確認された。
試験例 2 :平衡吸湿性試験
実験室内の雰囲気中に一晩おいた化合物 B、 化合物 Aの 1型結晶、 2型結晶 および 3型結晶各約 5 Omgを、 無機塩の飽和水溶液で調湿したデシケーター (25°C、 0〜9 3%RH ; RHは相対湿度を意味する) に入れ、 ほぼ一定の 重量になるまで経時的に測定を行った(最大 1箇月)。試験結果を図 2 2に示す。
図 22から明らかなように、 化合物 Bは相対湿度に応じて重量が変化し、 高湿 度になるほど重量増加が認められたが、 化合物 Aの 1型結晶、 2型結晶および 3型結晶はほとんど重量変化が認められなかった。
試験例 3 :溶解度試験
(1) 水に対する溶解度
化合物 Aの 1型結晶、 2型結晶および 3型結晶の各々適量と蒸留水をミク口 テス トチューブに入れ、 37°Cで約 5時間振盪し飽和させた。 振盪後、 メンブ ランフィルターで濾過し、水に対する溶解度を HP L Cで定量した。その結果、 1型結晶の溶解度は 290 At g/m 1 s 2型結晶のそれは 4970 ^ g /m K 3型結晶のそれは 4 140 /X g/m 1 といずれの結晶も水に対して良く溶解し た。
(2) 各 pH (2〜9) の緩衝液に対する溶解度
化合物 Aの 1型結晶、 2型結晶および 3型結晶の各々適量と各 p Hの 0. 1 mo 1 1 リン酸緩衝液をミクロテストチューブにいれ、 3 7 °Cで約 5時間振 盪し飽和させた。 振盪後、 メンブランフィルターで濾過し、 各々の溶解度を H P LCで定量した。 試験結果を図 23に示す。 1型結晶、 2型結晶および 3型 結晶は各々 p H 3〜 8の間でほぼ一定に溶解することが判明した。
試験例 4 : 固体安定性試験 (化学的安定性)
化合物 B、 化合物 Aの 1型結晶、 2型結晶および 3型結晶を、 40°Cで保存 し、 一定期間経過後の残存量、 幾何異性体量および分解物等の類縁物質量を H P LCで定量した。 その結果、 40°Cで 2箇月保存すると、 化合物 Bには幾何 異性体量の増加が認められたが、 化合物 Aの 1型結晶、 2型結晶および 3型結 晶はいずれも幾何異性体量や類縁物質量の増加は認められなかった。 さらに 1 型結晶は 9箇月保存しても幾何異性体量や類縁物質量の増加は認められなかつ た。
試験例 5 :固体安定性試験 (物理的安定性)
化合物 Aの 1型結晶を、 40°C密栓、 60°C密栓、 60°じー 75%1 ^1ぉょ
び 80°C密栓で 1 5日間保存し、 性状および結晶について確認した。 なお、 結 晶は、 粉末 X線回折 (スぺクトリス (S p e c t r i s) 社製 X, P e r t A l p h a 1) により確認した。 その結果、 化合物 Aの 1型結晶はいずれの 条件であっても、性状に変化は無く、 1型結晶のままであることが確認できた。
産業上の利用可能性
本発明の結晶化された化合物は、 ェラスターゼ阻害活性を有することにより 好中球エラスターゼが病態発症に関与していると考えられている疾患の予防お よび または治療剤の原薬として有用である。 本出願は、 日本で出願された特願 2004- 234538および特願 200 5- 1 30008を基礎としており、 それらの内容は本出願にすべて包含され るものである。