明 細 書
血管新生作用が強化された移植片
技術分野
[0001] 本発明は、医薬の分野にある。より詳細には、本発明は、血管新生作用が強化され た移植片、ならびに関連する医薬および治療方法に関する。以下に発明の詳細な 説明を記載する。
背景技術
[0002] 臓器 (例えば、心臓、血管など)の移植に外来性組織を使用する際の主な障害は 免疫拒絶反応である。同種異系移植片(または同種移植片、 allograft)および異種 移植片(xenograft)で起こる変化が最初に記述されたのは 90年以上前のことである (非特許文献 1)。動脈移植片の拒絶反応は、病理学的には移植片の拡張 (破裂に 至る)または閉塞のいずれかを招く。前者の場合、細胞外マトリクスの分解により生じ 、他方で、後者は血管内細胞の増殖により起こるといわれている(非特許文献 2)。
[0003] 従来、これらの物質の拒絶反応の軽減を目指して 2つの戦略が採用されてきた。ひ とつは、宿主の免疫反応を低下させたることである(非特許文献 3および非特許文献 4)。もうひとつは主に架橋結合により同種移植片または異種移植片の抗原性の低下 を図ったものである(非特許文献 5および非特許文献 6)。細胞外マトリクスの架橋結 合は移植片の抗原性を低下させるが、生体工学的機能が変化し、無機質化に感受 性を示すようになる。
[0004] 心血管修復用パッチとしては従来力 ダルタルアルデヒド処理した異種心膜や自己 心膜を用 、て 、るが、石灰化 ·血栓形成 ·易感染性 ·耐久性等解決されなければなら ない問題がある.これらの問題を解決するために組織工学を応用して,より生体適合 性の高い心血管修復用人工パッチ(Tissue Engineered Bioprosthetic Patch )が開発されつつある。
[0005] このように、生体適合性のパッチなどとして使用可能な組織片または支持体は、現 在のところ利用可能なものはまだな 、。
[0006] また、特許文献 1は、粒子状の強化媒体を含む生体高分子材料を開示するが、生
体内への移植は意図していない。この材料は、アルブミンをアルデヒドで架橋するこ とにより接着を行う生体用接着剤であり、これに補強剤を挟み込んでいる。しかし、組 織の再生を意図していない。また、残存するアルデヒドによって傷害性があるなどの 障害がある。
[0007] 特許文献 2は、発泡体と補強材とからなる細胞の足場を開示するが、生体内への移 植は意図していない。特に、この構成では、材料により物性が特定されてしまうという 欠点を有する。また、この文献では、細胞を播種して力も移植することを目的としてい るので、インビト口での培養足場としての利用が考えられており、再生のための支持 体としては考えられて!/ヽな ヽ。
[0008] 特許文献 3は、細胞の足場を開示するが、生体内への移植により臓器を補強、再 生することは記載されて 、な 、。
[0009] 種々の支持体を開発されてきているが、血管ネットワーク形成能が亢進された支持 体の開発はまだ課題のままである。
特許文献 1:特開 2002— 543950号
特許文献 2:特開 2001— 78750号
特許文献 3:WO89Z05371号
非特許文献 l:Carrel A. , 1907, J Exp Med 9:226— 8
非特許文献 2:Uretsky BF, Mulari S, Reddy S, et al. , 1987, Circulatio n 76:827-34
非特許文献 3:Schmitz— Rixen T, Megerman J, Colvin RB, Williams AM , Abbot W. , 1988, J Vase Surg 7:82— 92
非特許文献 4:Plissonnier D, et al. , 1993, Arteriosclerosis Thromb 13: 112-9
非特許文献 5: Rosenberg N, et al. , 1956, Surg Forum 6:242-6 非特許文献 6:Dumont C, Pissonnier D, Michel JB. , 1993, J Surg Res
54:61-69
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0010] 従って、本発明は、生体の臓器または糸且織の損傷などの処置において使用するこ とができる、血管ネットワーク形成能が改善された支持体を提供することを課題とする 課題を解決するための手段
[0011] 本発明は、本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、本発明者らが開発した支持体に 血管ネットワーク形成能があるペプチドを含ませることによって、ペプチド自体の活性 が予想外に維持され、移植後も血管新生が亢進されることを見出したことによって完 成され、上記課題を解決した。
[0012] 従って、本発明は、以下を提供する。
(1)生体適合性組織片であって、
A)血管新生分子;および
B)支持体、
を含む、生体適合性組織片。
(2)上記血管新生分子は、アミノ酸配列 X -X -X -X -X -X -X (ここで、 X
1 2 3 4 5 6 7 1 ニセリン(S)、スレオニン (T)またはその改変体であるかあるいは存在しない、 Xニバ
2 リン (V)、了ラニン (A)、グリシン(G)、ロイシン (L)、イソロイシン (I)またはその改変 体であり、 X =バリン (V)、ァラニン (A)、グリシン(G)、ロイシン (L)、イソロイシン (I)
3
またはその改変体であり、 X =側鎖に芳香環を有するアミノ酸またはその改変体で
4
あり、 X =グリシン (G)またはその改変体であり、 X =口イシン (L)、ァラニン (A)、グ
5 6
リシン (G)、ノリン (V)、イソロイシン (I)またはその改変体であり、 X =アルギ-ン (R )、リジン (K)またはその改変体であるかあるいは存在しな 、)で示されるアミノ酸配列 を含むペプチドまたはその改変体である、項目 1に記載の生体適合性組織片。
(3)上記ペプチドまたはその改変体は、配列番号 1で示されるアミノ酸配列か、また は配列番号 1で示されるアミノ酸配列において、 1個〜 3個のアミノ酸が置換し、もしく は一方もしくは両方の端部に位置する 1個もしくは 2個のアミノ酸が欠失し、もしくは上 記アミノ酸配列の一方もしくは両方の端部に他のアミノ酸配列が付加されたアミノ酸 配列を有し、血管ネットワーク形成作用を有する、項目 2に記載の生体適合性組織片
(4)上記ペプチドまたはその改変体は、配列番号 1で示されるアミノ酸配列を有する ペプチド、または上記配列において、 1個もしくは 2個のアミノ酸が置換し (ただし、 4 番目のチロシン残基はチロシン残基または側鎖に芳香環を有するアミノ酸である)、 もしくは一方もしくは両方の端部に位置する 1個のアミノ酸が欠失し、もしくは上記アミ ノ酸配列の一方もしくは両方の端部に他のアミノ酸配列が付加されたアミノ酸配列を 有するペプチドであって血管ネットワーク形成作用を有するペプチドを含む、項目 2 に記載の生体適合性組織片。
(5)上記側鎖に芳香環を有するアミノ酸が、フエ-ルァラニンまたはそのベンゼン環 に 1または複数の置換基を有する化学修飾フエ-ルァラニンである、項目 2に記載の 生体適合性組織片。
(6)上記ペプチドまたはその改変体は、配列番号 9で示されるアミノ酸配列を有する ペプチドであるか、または上記配列において、一方もしくは両方の端部に位置する 1 個のアミノ酸が欠失し、もしくは上記アミノ酸配列もしくは上記アミノ酸配列の一方もし くは両方の端部に位置する 1個のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列の一方もしくは両 方の端部に他のアミノ酸配列が付加されたアミノ酸配列を有するペプチドを含む、項 目 2に記載の生体適合性組織片。
(7)上記ペプチドまたはその改変体は、配列番号 1〜7のいずれかで示されるァミノ 酸配列を有するペプチドである力、またはこれらのアミノ酸配列の 、ずれかの一方も しくは両方の端部に他のアミノ酸配列が付加されたアミノ酸配列を有するペプチドを 含む、項目 2に記載の生体適合性組織片。
(8)上記ペプチドまたはその改変体は、配列表の配列番号 9〜: L 1の 、ずれかで示さ れるアミノ酸配列を有するペプチドまたはこれらのアミノ酸配列のいずれかの一方もし くは両方の端部に他のアミノ酸配列が付加されたアミノ酸配列を有するペプチドを含 む、項目 2に記載の生体適合性組織片。
(9)上記ペプチドまたはその改変体は、配列番号 9で示されるアミノ酸配列を有する ペプチドまたはこれらのアミノ酸配列のいずれかの一方もしくは両方の端部に他のァ ミノ酸配列が付加されたアミノ酸配列を有するペプチドを含む、項目 2に記載の生体 適合性組織片。
(10)上記ペプチドまたはその改変体は、 SWX GLまたは WX GLRで示されるァ
4 4
ミノ酸配列を含み、 Xは上記と同様の定義である、項目 2に記載の生体適合性組織
4
片。
(11)上記生体分子は、さらにキャリアを含む、項目 2に記載の生体適合性組織片。
(12)上記キャリアは、タンパク質を含む、項目 11に記載の生体適合性組織片
(13)上記キャリアは、細胞接着分子を含む、項目 11に記載の生体適合性組織片。
(14)上記支持体は、膜状、管状または弁状である、項目 1に記載の生体適合性組 織片。
(15)上記支持体は、生分解性ポリマーを含む、項目 1に記載の生体適合性組織片
(16)上記支持体は、ポリグリコール酸 (PGA)、ポリ L乳酸 (PLA)およびポリ力プロラ クタム (PCLA)ならびにそれらの共重合体力 なる群より選択される少なくとも 1成分 を含む、項目 1に記載の生体適合性組織片。
(17)上記支持体は、グリコール酸と乳酸との比率が約 90 :約 10〜約 80 :約 20であ る PLGAを含む、項目 1に記載の生体適合性組織片。
(18)上記支持体は、メッシュ状およびスポンジ状である、項目 1に記載の生体適合 性組織片。
(19)上記支持体は、少なくとも約 0. 2mm〜約 1. Omm厚である、項目 1に記載の 生体適合性組織片。
(20)上記支持体は、少なくとも約 20N以上の強度を有する、項目 1に記載の生体適 合性組織片。
(21)上記支持体は、少なくとも約 50N以上の強度を有する、項目 1に記載の生体適 合性組織片。
(22)上記支持体は、上記ペプチドまたは改変体でコーティングされている、項目 1に 記載の生体適合性組織片。
(23)上記支持体は、隙間が上記ペプチドまたは改変体で埋められている、項目 1に 記載の生体適合性組織片。
(24)上記ペプチドまたは改変体および上記支持体は、架橋可能な分子を含み、上
記架橋可能な分子は、上記支持体と上記ペプチドまたは改変体との間で架橋処理さ れて 、る、項目 1に記載の生体適合性組織片。
(25)体内への移植用である、項目 1に記載の生体適合性組織片。
(26)上記体内における移植されるべき部位は、心臓、心臓弁、血管、心膜、心臓隔 壁、心内導管、心外導管、硬膜、皮膚、骨、軟部組織および気管からなる群より選択 される、項目 25に記載の生体適合性組織片。
(27)滅菌されている、項目 1に記載の生体適合性組織片。
(28)免疫抑制剤をさらに含む、項目 1に記載の生体適合性組織片。
(29)さらなる医薬成分をさらに含む、項目 1に記載の生体適合性組織片。
(30)項目 1に記載の生体適合性組織片を含む、医薬。
(31)項目 1に記載の生体適合性組織片および上記組織片の使用法を示した指示 書を含む、医薬キットであって、上記指示書には、所定の部位に上記組織片を投与 することが記載される、医薬キット。
(32)上記所定の部位は、血管内皮、血管平滑筋、弾性線維、骨格筋、心筋、骨芽 細胞、神経細胞および膠原線維からなる群より選択される、項目 31に記載の医薬キ ッ卜。
(33)上記指示書には、上記生体適合性組織片を、移植を目的とする臓器または組 織の少なくとも一部が残存するように移植することが記載される、項目 31に記載の医 薬キット。
(34)体内における損傷部位を処置する方法であって、
A)上記損傷部位の一部または全部に、
A— 1)血管新生分子;および
A— 2)支持体、
を含む、生体適合性組織片を移植する工程、
を包含する、方法。
(35)上記血管新生分子は、アミノ酸配列 X -X -X -X -X -X -X (ここで、
1 2 3 4 5 6 7
X =セリン(S)、スレオニン (T)またはその改変体であるかあるいは存在しない、 X
1 2
=バリン (V)、ァラニン (A)、グリシン (G)、ロイシン (L)、イソロイシン (I)またはその改
変体であり、 X =バリン (V)、ァラニン (A)、グリシン (G)、ロイシン (L)、イソロイシン(
3
I)またはその改変体であり、 X =側鎖に芳香環を有するアミノ酸またはその改変体で
4
あり、 X =グリシン (G)またはその改変体であり、 X =口イシン (L)、ァラニン (A)、グ
5 6
リシン (G)、ノ リン (V)、イソロイシン (I)またはその改変体であり、 X =アルギ-ン (R )、リジン (K)またはその改変体であるかあるいは存在しな 、)で示されるアミノ酸配列 を含むペプチドまたはその改変体である、項目 34に記載の方法。
(36)上記移植工程において、上記生体適合性組織片は、上記損傷部位が属する 臓器または組織の少なくとも一部が残存するように移植される、項目 34に記載の方 法。
(37)細胞生理活性物質を投与する工程をさらに包含する、項目 34に記載の方法。
(38)上記細胞生理活性物質は、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子 (GM— C SF)、マクロファージコロニー刺激因子(M— CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G— CSF)、 multi—CSF (IL— 3)、白血病抑制因子(LIF)、 c—kitリガンド(SCF)、免 疫グロブリンファミリーのメンバー、 CD2、 CD4、 CD8、 CD44、コラーゲン、エラスチ ン、プロテオグリカン、グリコサミノダリカン、フイブロネクチン、ラミニン、シンデカン、ァ ダリカン、インテグリンファミリーのメンバー、インテグリン a鎖、インテグリン j8鎖、フィ ブロネクチン、ラミニン、ビトロネクチン、セレクチン、カドヘリン、 ICM1、 ICAM2、 VC AMI,血小板由来増殖因子 (PDGF)、表皮増殖因子 (EGF)、線維芽細胞増殖因 子 (FGF)、肝細胞増殖因子 (HGF)および血管内皮増殖因子 (VEGF)ならびにそ れらに関連するポリペプチドおよびペプチド力 なる群より選択される、項目 37に記 載の方法。
(39)体内における臓器または糸且織を強化する方法であって、
A)上記臓器または組織の一部または全部に、
A— 1)血管新生分子;および
A— 2)支持体、
を含む、生体適合性組織片を移植する工程、
を包含する、方法。
(40)上記血管新生分子は、アミノ酸配列 X -X -X -X -X -X -X (ここで、
X =セリン(S)、スレオニン (T)またはその改変体であるかあるいは存在しない、 X
1 2
=バリン (V)、ァラニン (Α)、グリシン (G)、ロイシン (L)、イソロイシン (I)またはその改 変体であり、 X =バリン (V)、ァラニン (Α)、グリシン (G)、ロイシン (L)、イソロイシン(
3
I)またはその改変体であり、 X =側鎖に芳香環を有するアミノ酸またはその改変体で
4
あり、 X =グリシン (G)またはその改変体であり、 X =口イシン (L)、ァラニン (Α)、グ
5 6
リシン (G)、 ノ リン (V)、イソロイシン (I)またはその改変体であり、 X =アルギ-ン (R )、リジン (Κ)またはその改変体であるかあるいは存在しな 、)で示されるアミノ酸配列 を含むペプチドまたはその改変体である、項目 39に記載の方法。
(41)臓器または糸且織を生産または再生する方法であって、
Α)目的とする臓器または組織の少なくとも一部を含む生体において、上記臓器ま たは組織に、
Α— 1)血管新生分子;および
A— 2)支持体、
を含む、生体適合性組織片を移植する工程;ならびに
B)上記臓器または組織を上記生体内で培養する工程、
を包含する、方法。
(42)上記血管新生分子は、アミノ酸配列 X -X -X -X -X -X -X (ここで、
1 2 3 4 5 6 7
X =セリン(S)、スレオニン (T)またはその改変体であるかあるいは存在しない、 X
1 2
=バリン (V)、ァラニン (A)、グリシン (G)、ロイシン (L)、イソロイシン (I)またはその改 変体であり、 X =バリン (V)、ァラニン (A)、グリシン (G)、ロイシン (L)、イソロイシン(
3
I)またはその改変体であり、 X =側鎖に芳香環を有するアミノ酸またはその改変体で
4
あり、 X =グリシン (G)またはその改変体であり、 X =口イシン (L)、ァラニン (A)、グ
5 6
リシン (G)、 ノ リン (V)、イソロイシン (I)またはその改変体であり、 X =アルギ-ン (R )、リジン (K)またはその改変体であるかあるいは存在しな 、)で示されるアミノ酸配列 を含むペプチドまたはその改変体である、項目 41に記載の方法。
(43)臓器または組織における血管新生を促進する方法であって、
A)目的とする臓器または組織の少なくとも一部を含む生体において、上記臓器ま たは組織に、
A— 1)血管新生分子;および
A— 2)支持体、
を含む、生体適合性組織片を移植する工程;ならびに
B)上記臓器または組織を上記生体内で培養する工程、
を包含する、方法。
(44)上記血管新生分子は、アミノ酸配列 X -X -X -X -X -X -X (ここで、
1 2 3 4 5 6 7
X =セリン(S)、スレオニン (T)またはその改変体であるかあるいは存在しない、 X
1 2
=バリン (V)、ァラニン (A)、グリシン (G)、ロイシン (L)、イソロイシン (I)またはその改 変体であり、 X =バリン (V)、ァラニン (A)、グリシン (G)、ロイシン (L)、イソロイシン(
3
I)またはその改変体であり、 X =側鎖に芳香環を有するアミノ酸またはその改変体で
4
あり、 X =グリシン (G)またはその改変体であり、 X =口イシン (L)、ァラニン (A)、グ
5 6
リシン (G)、ノリン (V)、イソロイシン (I)またはその改変体であり、 X =アルギ-ン (R )、リジン (K)またはその改変体であるかあるいは存在しな 、)で示されるアミノ酸配列 を含むペプチドまたはその改変体である、項目 43に記載の方法。
(45)上記支持体は、
A)粗面を有する第一層;および
B)生体内衝撃に耐え得る強度を有する第二層、
を含み、上記第一層と上記第二層とが少なくとも 1点で接着されることを特徴とする、 項目 1に記載の生体適合性組織片。
(46)上記第一層は、編物である、項目 45に記載の生体適合性組織片。
(47)上記第二層は、織物である、項目 45に記載の生体適合性組織片。
(48)上記粗面は、細胞が入り込むに充分なスペースを有する、項目 45に記載の生 体適合性組織片。
(49)上記封着は、生体吸収性高分子を融着することにより達成される、項目 45〖こ記 載の生体適合性組織片。
(50)上記第二層は、通気性が実質的に遮断される、項目 45に記載の生体適合性 組織片。
(51)上記支持体の強度は、少なくとも 100Nである、項目 45に記載の生体適合性組
織片。
(52)上記支持体の通気性は、 10mlZcm2Zsec以下である、項目 45に記載の生体 適合性組織片。
(53)上記第一層は、生体分解性材料を含む、項目 45に記載の生体適合性組織片
(54)上記第一層は、ポリグリコール酸 (PGA)、ポリ L乳酸 (PLA)およびポリ力プロラ クタム (PCLA)ならびにそれらの共重合体力 なる群より選択される少なくとも 1成分 を含む、項目 45に記載の生体適合性組織片。
(55)上記第一層は、グリコール酸と乳酸との比率が約 90:約 10〜約 80:約 20であ る PLGAを含む、項目 45に記載の生体適合性組織片。
(56)上記第一層は、ポリグリコール酸を含む、項目 45に記載の生体適合性組織片
(57)上記第二層は、生体分解性材料を含む、項目 45に記載の生体適合性組織片
(58)上記第二層は、ポリグリコール酸 (PGA)、ポリ L乳酸 (PLA)およびポリ力プロラ クタム (PCLA)ならびにそれらの共重合体力 なる群より選択される少なくとも 1成分 を含む、項目 45に記載の生体適合性組織片。
(59)上記第二層は、グリコール酸と乳酸との比率が約 90:約 10〜約 80:約 20であ る PLGAを含む、項目 45に記載の生体適合性組織片。
(60)上記第二層は、ポリ L乳酸を含む、項目 45に記載の生体適合性組織片。
(61)上記第二層は、織物であり、上記第一層は編物である、項目 45に記載の生体 適合性組織片。
(62)上記第二層は、ポリ L乳酸の織物であり、上記第一層は、ポリダリコール酸の編 物である、項目 45に記載の生体適合性組織片。
(63)上記接着は、 C)上記第一層と上記第二層とを封着する中間層による、支持体
(64)上記中間層は、合成生体吸収性ポリマーである、項目 63に記載の生体適合性 組織片。
(65)上記中間層は、乳酸 (ラクチド)、グリコリドおよび ε—力プロラタタム力もなる群 より選択される少なくとも 1つのモノマーのポリマーまたはそれらの 2つ以上を含むコ ポリマーを含む、項目 63に記載の生体適合性組織片。
(66)上記中間層を構成する材料は、上記第二層および上記第一層の両方の融点 よりも低い融点を有する、項目 63に記載の生体適合性組織片。
(67)上記第一層は、複数の編物層を含む、項目 45に記載の生体適合性組織片。
(68)上記第二層は、複数の織物層を含む、項目 45に記載の生体適合性組織片。
(69)上記第一層に、上記ペプチドまたはその改変体が配置される、項目 45に記載 の生体適合性組織片。
(70)項目 1に記載の生体適合性組織片の、体内における損傷部位を処置するため の使用。
(71)項目 1に記載の生体適合性組織片の、体内における臓器または組織を強化す るための使用。
(72)項目 1に記載の生体適合性組織片の、体内における損傷部位を処置するため の医薬を製造するための使用。
(73)項目 1に記載の生体適合性組織片の、体内における臓器または組織を強化す るための医薬を製造するための使用。
[0013] 以下に、本発明の好ましい実施形態を示すが、当業者は本発明の説明および添付 の図面、ならびに当該分野における周知慣用技術力 その実施形態などを適宜実 施することができ、本発明が奏する作用および効果を容易に理解することが認識され るべさである。
発明の効果
[0014] 本発明により、細胞など生体に由来する自己増殖性のものを用いることなぐ血管 ネットワーク形成能が強化された、自己化する組織片が提供された。そのような組織 片を移植することで、臓器または組織の再生とともに血管新生の強化がみられたこと はかってなぐ予想外の効果が達成された。
図面の簡単な説明
[0015] [図 1]心筋梗塞モデルにおいて、本発明の血管新生ペプチド (配列番号 1)を直接 10
Ong注射した場合の、マッソントリクローム染色を示す。左上 (A)は、 200倍にした拡 大図を示し、左下 (B)は 100倍の拡大図を示す。右下 (C)もまた、 100倍の拡大図を 示す。
[図 2]心筋梗塞モデルにぉ ヽて、本発明の血管新生ペプチドを直接 lOOng注射した 場合の、へマトキシリン'ェォジン染色を示す。左上 (A)は、 200倍にした拡大図を示 し、左下 (B)は 100倍の拡大図を示す。右下 (C)もまた、 100倍の拡大図を示す。
[図 3]心筋梗塞モデルにぉ ヽて、本発明の血管新生ペプチドを直接 lOOng注射した 場合の、抗第 VIII因子染色を示す。左上 (A)は、 200倍にした拡大図の心外膜側を 示し、左下 )は 100倍にした拡大図の心外膜側を示す。右上 (C)は、 200倍にし た拡大図の梗塞層側を示す。右下 (D)は、 100倍にした拡大図の梗塞層側を示す。
[図 4]心筋梗塞モデルにおいて、本発明の血管新生ペプチドを支持体に結合させて 注射した場合の、抗第 VIII因子染色を示す。左上 (A)は、 20ngのペプチドを支持体 に結合させて移植して 4週間たつた後の 100倍にした拡大図を示す。左下 )は 10 Ongのペプチドを支持体に結合させて移植して 4週間たつた後の 100倍にした拡大 図を示す。右上 (C)は、 20ngのペプチドを支持体に結合させて移植して 4週間たつ た後の 100倍にした拡大図を示す。
[図 5]心筋梗塞モデルにおいて、何も投与せずに 2ヶ月たったときの抗第 VIII因子染 色の 100倍の拡大図を示す。
配列表の説明
配列番号 1は、ォステオボンチン内の血管ネットワーク形成能を有するペプチド(SV VYGLR)である。
配列番号 2は、配列番号 1の改変例であるペプチド AWYGLRである。
配列番号 3は、配列番号 1の改変例であるペプチド SAVYGLRである。
配列番号 4は、配列番号 1の改変例であるペプチド S VAYGLRである。
配列番号 5は、配列番号 1の改変例であるペプチド SWYALRである。
配列番号 6は、配列番号 1の改変例であるペプチド SWYGARである。
配列番号 7は、配列番号 1の改変例であるペプチド SWYGLAである。
配列番号 8は、配列番号 1の改変例であるペプチド SWAGLRである。
配列番号 9は、配列番号 1の改変例であるペプチド SWFGLRである。
配列番号 10は、配列番号 1の改変例であるペプチド SWYGLである。
配列番号 11は、配列番号 1の改変例であるペプチド VVYGLRである。
配列番号 12は、配列番号 1の改変例であるペプチド SWYGLRCである。
配列番号 13は、配列番号 1の改変例であるペプチド GRGDSWYGLRである。 配列番号 14は、本発明のペプチドの模式的配列である。
配列番号 15は、本発明のペプチドの好まし ヽ模式的配列であるアミノ酸配列 SWX GLである。
4
配列番号 16は、本発明のペプチドの好まし ヽ模式的配列であるアミノ酸配列 WX
4
GLRである。
配列番号 17は、配列番号 1の改変例であるペプチド SWYGである。
配列番号 18は、配列番号 1の改変例であるペプチド SWWGLRである。
配列番号 19は、配列番号 9のフッ素置換体である。
配列番号 20は、配列番号 9のメチル基置換体である。
配列番号 21は、配列番号 9の-トロ基置換体である。
配列番号 22は、 CardiacActinの同定のための 5 'プライマー核酸配列を示す。
配列番号 23は、 CardiacActinの同定のための 3'プライマー核酸配列を示す。
配列番号 24は、 CardiacActinの同定のためのプローブ核酸配列を示す。
配列番号 25は、 α MHCの同定のための 5'プライマー核酸配列を示す。
配列番号 26は、 α MHCの同定のための 3'プライマー核酸配列を示す。
配列番号 27は、 a MHCの同定のためのプローブ核酸配列を示す。
配列番号 28は、 β MHCの同定のための 5'プライマー核酸配列を示す。
配列番号 29は、 β MHCの同定のための 3'プライマー核酸配列を示す。
配列番号 30は、 β MHCの同定のためのプローブ核酸配列を示す。
発明を実施するための最良の形態
以下、本発明を発明の実施の形態とともに説明する。本明細書の全体にわたり、単 数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべ きである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分
野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。
[0018] 以下に本明細書において特に使用される用語の定義を列挙する。
[0019] 本明細書において使用される「再生」(regeneration)とは,個体の組織の一部が 失われたあるいは先天的に欠損している際に残った組織が自発的にまたは他力 の 助けを借りて増殖して復元される現象をいう。本明細書では、再生は、例えば、損傷 した組織または臓器に生体内の細胞などが集合しその細胞などが増殖もしくは増幅 することによつても生じ得る現象も指す。従って、再生という概念は、広ぐ動物種間ま たは同一個体における組織種に応じて、再生のその程度および様式は変動する。ヒ ト糸且織の多くはその再生能が限られており、大きく失われると完全再生は望めない。 大きな傷害では、失われた組織とは異なる増殖力の強い組織が増殖し、不完全に組 織が再生され機能が回復できない状態で終わる不完全再生が起こり得る。この場合 には,生体内吸収性材料力もなる構造物を用いて、組織欠損部への増殖力の強い 組織の侵入を阻止することで本来の組織が増殖できる空間を確保し,さらに細胞増 殖因子を補充することで本来の組織の再生能力を高める再生医療が行われている。 この例として、軟骨、骨および末梢神経の再生医療がある。神経細胞および心筋は 再生能力がないかまたは著しく低いとこれまでは考えられてきた。近年、これらの組 織へ分化し得る能力および自己増殖能を併せ持った組織幹細胞 (体性幹細胞)の存 在が報告され、組織幹細胞を用いる再生医療への期待が高まっている。胚性幹細胞 (ES細胞)はすべての組織に分ィ匕する能力をもった細胞であり、それを用いた腎臓、 肝臓などの複雑な臓器の再生が試みられている。このように、幹細胞自体を注入した 組織などの再生方法は魅力的な方法である。従って、本発明の組織片には、このよう な幹細胞が含まれて 、てもよ 、。
[0020] 本明細書において「自己化」とは、移植において用いられる場合、移植された組織 片カ 宿主の臓器または糸且織の一部として機能するようになることをいう。従って、自 己化とは、例えば、ある組織片が自己増殖する能力を獲得すること、材料やデバイス をつくり上げる際に、人が手を加えなくても、材料やデバイスの構成要素が自ら集ま つてある構造をとつたり、エネルギーや物質が拡散していく動的過程の中で構成要素 が自ら進んであるパターンを形成したりすること (周囲組織との生態適合性を有するこ
と、異物反応を最小限に抑える (炎症反応、内膜増殖、硬化、石灰化)こと成長の可 能性を有すること)などと 、う現象を含むがそれに限定されな 、。本明細書にぉ 、て 移植片または組織片が自己化した力どうかは、例えば、フォンビルブランド因子、 a — SMA、弾性組織についてのエラスチカ 'ファン'ギーソンなどのように、自己細胞の 増殖を確認するマーカーを用いて判定することができる。自己化した場合、組織には 血管が新生されることが好ましい。しかし、移植片を移植しただけでは、十分に血管 が新生されな 、のが欠点である。
具体的には、移植片が自己化したかどうかを判定する方法としては、例えば、細胞 のパターン形成および自己配置の状況として糸且織学的検索、免疫反応の有無、細 胞の集合体の精密合成として電気的結合性の測定、超音波検査による機能測定、ヒ ドロプロリンアツセィ、エラスチンアツセィ、 DNAアツセィ、細胞数定量化、蛋白質定 量化、グリコサミノダリンカンアツセィ、ミオシン重鎖アツセィという方法を用いることが できるが、それらに限定されない。例えば、血管の場合、血管新生が起こっているか どうかで自己化した力どうかを判定することができる。そのような血管新生は、例えば 、第 VIII因子関連抗原等で免疫組織ィ匕学染色した後に血管数を計数することによつ て判定される。この計数方法では、検体を 10%の緩衝ィ匕ホルマリンで固定し、ノラフ イン包埋し、各々の検体から数個の連続切片を調製し、凍結する。次いで、凍結切片 を PBS中の 2%パラホルムアルデヒド溶液で 5分間、室温にて固定し、 3%過酸化水 素を含むメタノール中に 15分間浸漬し、次いで PBSで洗浄する。このサンプルをゥ シ血清アルブミン溶液で約 10分間覆って、非特異的反応をブロックする。検体を、 H RPと結合する、第 VIII因子関連抗原に対する EPOS結合体ィ匕抗体と共に一晩イン キュペートする。サンプルを PBSで洗浄した後、これらを、ジァミノべンジジン溶液 (例 えば、 PBS中、 0. 3mgZmlジァミノべンジジン)中に浸漬して、陽性染色を得る。染 色された血管内皮細胞を、例えば、 200倍の倍率の光学顕微鏡下で計数し、例えば 、計数結果を、 1平方ミリメートルあたりの血管の数としてあらわす。特定のサイトカイ ンおよび増殖因子の処置後、血管数が統計学的に有意に増加している力否かを判 定することにより、血管新生活性を判定することができる。望ましくは、ノ^チクランプ 法などによる細胞の集合体の精密合成として電位の測定、電気密度解析のような電
気生理的な測定により宿主細胞と同じ電気生理的活性を有することによって、糸且織 片が自己化しているかどうかを確認する。そのような電気的結合性を有している場合 、本明細書において、そのような状態を「電気的自己ィ匕」ともいう。
[0022] 自己化した組織に血管が存在するかどうかは、肉眼で確認することの他、顕微鏡な どの光学的手段などを利用する方法、血管特異的なマーカーを使用して染色する方 法などがあるがそれらに限定されな!、。
[0023] 本明細書において使用される用語「生体分子」とは、生体に関連する分子およびそ の集合体をいう。本明細書において「生体」とは、生物学的な有機体をいい、動物、 植物、菌類、ウィルスなどを含むがそれらに限定されない。生体分子は、生体から抽 出される分子およびその集合体を包含するが、それに限定されず、生体に影響を与 え得る分子およびその集合体であれば生体分子の定義に入る。したがって、医薬品 として利用され得る低分子 (たとえば、低分子リガンドなど)もまた生体への効果が意 図され得るかぎり、生体分子の定義に入る。そのような生体分子には、タンパク質、ポ リペプチド、オリゴペプチド、ペプチド、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ヌクレオ チド、核酸(例えば、 cDNA、ゲノム DNAのような DNA、 mRNAのような RNAを含 む)、ポリサッカリド、オリゴサッカリド、脂質、低分子 (例えば、ホルモン、リガンド、情 報伝達物質、有機低分子など)、これらの複合分子、およびその集合体 (例えば、細 胞外マトリクス、線維など)などが包含されるがそれらに限定されない。本発明では、 生体分子は、移植を目的とする宿主に適合性がある力 または適合するように処置さ れ得ることが好ま 、。ある生体分子が宿主に適合性または適合するように処置され 得るかあるかどうかは、その生体分子をその宿主に移植して、必要に応じて免疫拒絶 反応などの副反応を抑制することによりその宿主に定着するかどうかを観察すること によって、判定することができる。本発明において使用される好ましい生体分子として は、血管新生を促進するペプチドが挙げられる。
[0024] 本発明にお 、て「血管新生」とは、血管が新たに形成されることおよびそのように形 成する活性をいう。
[0025] 本明細書において「血管新生分子」とは、血管を新生する能力を有する任意の分 子をいう。代表的には、血管新生分子は、 VEGFなどの血管ネットワーク形成能力を
有するサイト力イン、ォステオポンチン、アミノ酸配列 X—X—X—X—X—X—X
1 2 3 4 5 6
(ここで、 X =セリン(S)、スレオニン (T)またはその改変体であるかあるいは存在し な!、、 X =バリン (V)、ァラニン (A)、グリシン(G)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)また
2
はその改変体であり、 X =バリン (V)、ァラニン (A)、グリシン (G)、ロイシン (L)、イソ
3
ロイシン (I)またはその改変体であり、 X =側鎖に芳香環を有するアミノ酸またはその
4
改変体であり、 X =グリシン (G)またはその改変体であり、 X =口イシン (L)、ァラ二
5 6
ン (A)、グリシン (G)、ノ リン (V)、イソロイシン (I)またはその改変体であり、 X =アル ギニン (R)、リジン (K)またはその改変体であるかあるいは存在しな 、)で示されるァ ミノ酸配列を含むペプチドまたはその改変体であり得る。
[0026] 本明細書にぉ 、て「血管ネットワーク形成」とは、新生された血管または既存の血管 力 網状になることおよびそのように形成する活性を!、う。
[0027] 本明細書において、血管ネットワーク形成能力は、血管ネットワーク形成インデック スで示される。血管ネットワーク形成は、網状が形成されたかどうか (例えば、分岐し た血管がさらに別の血管と結合すること、およびその連接点の数の増カロ)を観察する ことによって判定することができる力 簡便には、血管ネットワーク形成インデックスは 、本明細書において以下のようにして算出される。
[0028] まず、新生血管数を、計数する。計数は、 0. 79cmあたりの血管本数で決める。血
2
管数が、以下の本数のとき、右のスコアであると換算する。
0 : 0
1〜: LO : l
11〜20 : 2
21〜30 : 3
31〜40 :4
41以上: 5。
[0029] 次に、新生した血管の長さを決定する。長さは、以下のようにして測定する。マウス 皮下に埋入したチャンバ一に接触していた組織での血管新生の状態を実体顕微鏡 ( ォリンパス SZX12, Japan)にて観察する。得られた画像を画像処理ソフトウェア(例 えば、 Photoshop (登録商標)(Adobe、 Japan) )にて読み取り、新生血管数をカウ
ントし、スコア化する。画像処理ソフトウェア上にて各ペプチドでの新生血管各 10本 を塗りつぶし、ピクセル数にて平均を出し、血管新生長をもスコア化し、血管新生バラ ンスシートを作製し検討する。
100未満: 1
100〜125未満: 2
125〜150未満: 3
150〜175未満: 4
175〜200未満: 5
200以上: 6。
[0030] これらのうち双方ともスコアがよ!、ものが血管ネットワーク形成能が高 、こととみなす ことができることから、本明細書では、それらを積を血管ネットワーク形成能として評価 することができる。
[0031] ネットワーク形成能にっ 、ては、組織での血管新生の状態を実体顕微鏡 (ォリンパ ス、 SZX12、Japan)にて観察することができる。得られた画像を Photoshop (登録商 標)(Adobe、 Japan)にて読み取りネットワーク能を以下のようにスコア化する。以下 のスコアを本明細書にぉ 、て「血管ネットワーク形成能」または「血管ネットワーク形成 インデックス」あるいは単に「ネットワークインデックス」とも!/、う。
[0032] Nwl:ネットワーク形成前記で血管新生は認められるが、各新生血管は単独の状 fe。
[0033] Nw2 :ネットワーク形成中期であり、各新生血管同士は、はしご上の側枝が係った 状態。
[0034] Nw3 :ネットワーク完成期であり、はしご上側枝がさらに側枝を出した状態。
[0035] Nw4 :ネットワーク成熟期であり、広範囲に新生血管叢を示す状態。
[0036] 本発明にお 、て実証されるように、血管ネットワーク形成能があるとは、通常、その ような血管ネットワーク形成インデックス力 少なくとも 2であり、好ましくは、 2. 5以上 であり、より好ましくは、 3以上であり、さらに好ましくは 3. 5以上であることを意味する ことが理解される。
[0037] 本明細書における「血管」は、当該分野において通常使用される意味で用いられ、
通常の動脈、静脈などのほか、毛細管を含む。
[0038] (生化学)
本明細書において使用される用語「タンパク質」、「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」 および「ペプチド」は、本明細書において同じ意味で使用され、任意の長さのアミノ酸 のポリマーおよびその改変体をいう。このポリマーは、直鎖であっても分岐していても よぐ環状であってもよい。アミノ酸は、天然のものであっても非天然のものであっても よぐ改変されたアミノ酸であってもよい。この用語はまた、複数のポリペプチド鎖の複 合体へとアセンブルされ得るものを包含する。この用語はまた、天然または人工的に 改変されたアミノ酸ポリマーも包含する。そのような改変としては、例えば、ジスルフィ ド結合形成、グリコシル化、脂質化、ァセチル化、リン酸ィ匕または任意の他の操作もし くは改変(例えば、標識成分との結合体化)。この定義にはまた、例えば、アミノ酸の 1 または 2以上のアナログを含むポリペプチド (例えば、非天然のアミノ酸などを含む)、 ペプチド様化合物(例えば、ぺプトイド)および当該分野において公知の他の改変が 包含される。本発明の組織片において使用される場合は、「タンパク質」は、その組 織片が使用されるべき宿主において適合性のあるタンパク質であることが好ましいが 、その宿主において適合するように処置され得る限り、どのようなタンパク質を用いて もよい。あるタンパク質が宿主に適合性があるかどうか、または宿主において適合す るように処置され得るかどうかは、そのタンパク質をその宿主に移植して、必要に応じ て免疫拒絶反応などの副反応を抑制することによりその宿主に定着するかどうかを観 察することによって、判定することができる。代表的には、上述の適合性があるような タンパク質としては、その宿主に由来するタンパク質を挙げることができるがそれに限 定されない。本発明はまた、キャリアとしてタンパク質を用いることができる。
[0039] 本明細書において「ポリサッカリド」、「多糖」、「オリゴサッカリド」、「糖」および「炭水 化物」は、本明細書において互換可能に使用され、単糖がグリコシド結合によって脱 水縮合した高分子化合物をいう。「単糖」または「モノサッカリド」とは、これより簡単な 分子に加水分解されず、一般式 C H Oで表されるものをいう。ここで、 n= 2、 3、 4 n 2n n
、 5、 6、 7、 8、 9および 10であるものを、それぞれジオース、トリオース、テトロース、ぺ ントース、へキソース、ヘプトース、オタトース、ノノースおよびデコースという。一般に
鎖式多価アルコールのアルデヒドまたはケトンに相当するもので、前者をアルドース, 後者をケトースという。このようなポリサッカリドは、単独でまたは複合体もしくは混合物 として本発明にお ヽて支持体として使用され得る。
[0040] 本明細書において「脂質」とは、生体を構成する物質のうち水に溶けにくく,有機溶 媒に溶けやすい物質群をいう。脂質には、多種類の有機化合物が含まれる。通常、 脂質には、長鎖脂肪酸とその誘導体または類似体が含まれるが、本明細書において は、ステロイド,カロテノイド,テルぺノイド,イソプレノイド,脂溶性ビタミンなどの生体 内にある水不溶で有機溶媒に易溶の有機化合物群もまた包含される。脂質としては 、例えば、 1)単純脂質 (脂肪酸と各種アルコールとのエステルで中性脂質ともいう。 例えば、油脂(トリアシルグリセロール),蝌 (ワックス,高級アルコールの脂肪酸エステ ル),ステロールエステル,ビタミンの脂肪酸エステルなど); 2)複合脂質 (脂肪酸とァ ルコールのほかにリン酸,糖,硫酸,ァミンなど極性基をもつ化合物で,グリセ口リン 脂質,スフインゴリン脂質,グリセ口糖脂質,スフインゴ糖脂質, C— P結合をもつ脂質 ,硫脂質などが含まれる);3)誘導脂質 (単純脂質および複合脂質の加水分解によつ て生成する化合物のうち脂溶性のものをさし,脂肪酸,高級アルコール,脂溶性ビタ ミン,ステロイド,炭化水素などが含まれる)が挙げられるがそれに限定されない。本 発明においては、細胞を集合させる機能を阻害しない限り、どのような脂質でも支持 体として用いることができる。
[0041] 本明細書において「複合体」とは、物質について使用されるとき、複数の種類の物 質を含む (好ましくはそれら複数の成分が相互作用して 、る)分子を 、う。そのような 複合体としては、例えば、糖タンパク質、糖脂質などが挙げられるがそれに限定され ない。
[0042] 本明細書において「単離された」生物学的因子 (例えば、核酸またはタンパク質な ど)とは、その生物学的因子が天然に存在する生物体の細胞内の他の生物学的因 子 (例えば、核酸である場合、核酸以外の因子および目的とする核酸以外の核酸配 列を含む核酸;タンパク質である場合、タンパク質以外の因子および目的とするタン パク質以外のアミノ酸配列を含むタンパク質など)から実質的に分離または精製され たものをいう。「単離された」核酸およびタンパク質には、標準的な精製方法によって
精製された核酸およびタンパク質が含まれる。したがって、単離された核酸およびタ ンパク質は、化学的に合成した核酸およびタンパク質を包含する。
[0043] 本明細書において「精製された」生物学的因子 (例えば、核酸またはタンパク質な ど)とは、その生物学的因子に天然に随伴する因子の少なくとも一部が除去されたも のをいう。したがって、通常、精製された生物学的因子におけるその生物学的因子の 純度は、その生物学的因子が通常存在する状態よりも高い (すなわち濃縮されてい る)。
[0044] 本発明において使用される生体分子は、生体力も採取され得るほか、当業者に公 知の方法によつ化学的に合成され得る。例えば、タンパク質であれば、自動固相ぺ プチド合成機を用いた合成方法は、以下により記載される: Stewart, J. M. et al. "984) . Solid Phase Peptide Synthesis, Pierce Chemical Co. ; Grant , G. A. (1992) . Synthetic Peptides : A User' s Guide, W. H. Freeman ; Bodanszky, M. (1993) . Principles of Peptide Synthesis, Springer— V erlag ; Bodanszky, M. et al. "994) . The Practice of Peptide Synthesi s, Springer― Verlag; Fields , G. B. (1997) . Phase Peptide Synthesis, Ac ademic Press; Pennington, M. W. et al. (1 994) . Peptide Synthesis P rotocols, Humana Press ; Fields, G. B. "997) . Solid— Phase Peptide S ynthesis, Academic Press。その他の分子もまた、当該分野において周知の技術 を用いて合成することができる。
[0045] 本明細書において生体分子 (例えば、コラーゲン、ラミニンなどをコードする核酸配 列、アミノ酸配列など)の「相同性」とは、比較可能な配列を有する場合、 2以上の配 列の、互いに対する同一性の程度をいう。従って、ある 2つの配列の相同性が高いほ ど、それらの配列の同一性または類似性は高い。 2種類の配列が相同性を有するか 否かは、配列の直接の比較、または核酸の場合ストリンジェントな条件下でのハイプリ ダイゼーシヨン法によって調べられ得る。 2つの配列を直接比較する場合、その配列 間で配列が、代表的には少なくとも 50%同一である場合、好ましくは少なくとも 70% 同一である場合、より好ましくは少なくとも 80%、 90%、 95%、 96%、 97%、 98%ま たは 99%同一である場合、それらの遺伝子は相同性を有する。本明細書において、
生体分子 (例えば、核酸配列、アミノ酸配列など)の「類似性」とは、上記相同性にお いて、保存的置換をポジティブ(同一)とみなした場合の、 2以上の遺伝子配列の、互 いに対する同一性の程度をいう。従って、保存的置換がある場合は、その保存的置 換の存在に応じて同一性と類似性とは異なる。また、保存的置換がない場合は、同 一性と類似性とは同じ数値を示す。本発明では、このように同一性が高いものまたは 類似性が高いものもまた、有用であり得る。
[0046] 本明細書では、アミノ酸配列および塩基配列の類似性、同一性および相同性の比 較は、配列分析用ツールである BLASTを用いてデフォルトパラメータを用いて算出 される。
[0047] 本明細書にぉ 、て、「アミノ酸」は、天然のものでも非天然のものでもよ 、。「誘導体 アミノ酸」または「アミノ酸アナログ」とは、天然に存在するアミノ酸とは異なるがもとの アミノ酸と同様の機能を有するものをいう。そのような誘導体アミノ酸およびアミノ酸ァ ナログは、当該分野において周知である。
[0048] 用語「天然のアミノ酸」とは、天然のアミノ酸の L 異性体を意味する。天然のァミノ 酸は、グリシン、ァラニン、ノ リン、ロイシン、イソロイシン、セリン、メチォニン、トレオ- ン、フエ二ルァラニン、チロシン、トリプトファン、システィン、プロリン、ヒスチジン、ァス パラギン酸、ァスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、 γ—カルボキシグルタミン酸、ァ ルギニン、オル-チン、およびリジンである。特に示されない限り、本明細書でいう全 てのアミノ酸は L体である力 D体のアミノ酸を用いた形態もまた本発明の範囲内にあ る。
[0049] 本明細書にぉ 、て「アミノ酸改変体」とは、天然のアミノ酸ではな 、が、天然のァミノ 酸の物性および Ζまたは機能に類似する分子をいう。アミノ酸改変体としては、例え ば、フエ-ルァラニンのベンジル側鎖 (パラ位、メタ位、オルト位など)にアルキル基、 ハロ基、ニトロ基などが結合したもの、ェチォニン、カナバニン、 2—メチルグルタミン などが挙げられる。本発明では、アミノ酸改変体は、非天然アミノ酸およびアミノ酸模 倣物を包含することがあることが理解される。
[0050] 本明細書において「非天然アミノ酸」とは、タンパク質中で通常は天然に見出されな いアミノ酸を意味する。非天然アミノ酸の例として、ノルロイシン、パラ—ニトロフエニル
ァラニン、ホモフエ-ルァラニン、パラ一フルオロフェ-ルァラニン、 3—アミノー 2—ベ ンジルプロピオン酸、ホモアルギニンの D体または L体および D—フエ-ルァラニンが 挙げられる。
[0051] アミノ酸は、その一般に公知の 3文字記号力、または IUPAC— IUB Biochemica 1 Nomenclature Commissionにより推奨される 1文字記号のいずれかにより、本 明細書中で言及され得る。ヌクレオチドも同様に、一般に認知された 1文字コードによ り言及され得る。
[0052] その文字コードは以下のとおりである。
アミノ酸
3文字記号 1文字記号 意味
Ala A ァラニン
Cys C システィン
Asp D ァスノ ラギン酸
Glu E グルタミン酸
Phe F フエ-ルァラニン
Gly G グリシン
His H ヒスチジン
He I イソロイシン
Lys K リジン
Leu L ロイシン
Met M メチォニン
Asn N ァスノ ラギン
Pro P プロリン
Gin Q グルタミン
Arg R ァノレギニン
Ser S セリン
Thr T トレオニン
Val V パリン
Trp W トリブトファン
Tyr Y チロシン
Asx ァスパラギン又はァスパラギン酸
Glx グルタミン又はグルタミン酸
Xaa 不明又は他のアミノ酸。
[0053] 塩基
記号 意味
a アデニン
g グァニン
c シトシン
t チミン
U ゥラシル
r グァニン又はアデニンプリン m アデニン又はシトシンアミノ基
k グァニン又はチミン Zゥラシノレケト基
s グァニン又はシトシン
w アデニン又はチミン Zゥラシル
b グァニン又はシトシン又はチミン Zゥラシノレ
d アデニン又はグァニン又はチミン Zゥラシル
h アデニン又はシトシン又はチミン Zゥラシル
V アデニン又はグァニン又はシトシン
n アデニン又はグァニン又はシトシン又はチミン Zゥラシル、不明、または他の塩 基。
[0054] 本明細書において、「対応する」アミノ酸または核酸とは、それぞれあるポリペプチド 分子またはポリヌクレオチド分子にぉ 、て、比較の基準となるポリペプチドまたはポリ ヌクレオチドにおける所定のアミノ酸と同様の作用を有する力、あるいは有することが 予測されるアミノ酸または核酸をいい、特に酵素分子にあっては、活性部位中の同
様の位置に存在し触媒活性に同様の寄与をするアミノ酸をいう。例えば、あるポリヌク レオチドのアンチセンス分子であれば、そのアンチセンス分子の特定の部分に対応 するオルソログにおける同様の部分であり得る。本発明のペプチドの場合、ヒトのォス テオボンチンにおける特定の配列が使用される力 他の種の動物のォステオポンチ ンにおける特定の配列において、本発明のペプチドに対応する部分が「対応するァ ミノ酸」に相当することが理解される。
[0055] 本明細書にぉ 、て、「対応する」遺伝子とは、ある種にぉ 、て、比較の基準となる種 における所定の遺伝子と同様の作用を有するか、または有することが予測される遺伝 子をいい、そのような作用を有する遺伝子が複数存在する場合、進化学的に同じ起 源を有するものをいう。従って、ある遺伝子の対応する遺伝子は、その遺伝子のオル ソログであり得る。例えば、マウスコラーゲンに対応する遺伝子は、ヒトコラーゲンであ る。
[0056] 本明細書にぉ 、て、「フラグメント」とは、全長のポリペプチドまたはポリヌクレオチド( 長さが n)に対して、 l〜n— 1までの配列長さを有するポリペプチドまたはポリヌクレオ チドをいう。フラグメントの長さは、その目的に応じて、適宜変更することができ、例え ば、その長さの下限としては、ポリペプチドの場合、 3、 4、 5、 6、 7、 8、 9、 10、 15, 2 0、 25、 30、 40、 50およびそれ以上のアミノ酸が挙げられ、ここの具体的に列挙して いない整数で表される長さ (例えば、 11など)もまた、下限として適切であり得る。また 、ポリヌクレオチドの場合、 5、 6、 7、 8、 9、 10、 15、 20、 25、 30、 40、 50、 75、 100 およびそれ以上のヌクレオチドが挙げられ、ここの具体的に列挙して!/、な!/、整数で表 される長さ(例えば、 11など)もまた、下限として適切であり得る。本発明では、生体分 子としてポリペプチドまたはポリヌクレオチドなどが使用される場合、所望の目的(例 えば、細胞誘引効果など)が達成される限り、このようなフラグメントもまた、全長のも のと同様に使用され得ることが理解される。
[0057] 本明細書において、ポリペプチドおよびポリヌクレオチドの長さは、上述のようにそ れぞれアミノ酸または核酸の個数で表すことができる力 上述の個数は絶対的なもの ではなぐ同じ機能を有する限り、上限または加減としての上述の個数は、その個数 の上下数個(または例えば上下 10%)のものも含むことが意図される。そのような意
図を表現するために、本明細書では、個数の前に「約」を付けて表現することがある。 しかし、本明細書では、「約」のあるなしはその数値の解釈に影響を与えないことが理 解されるべさである。
[0058] 本明細書において「生物学的活性」とは、ある因子 (例えば、ポリペプチドまたはタ ンパク質)力 生体内において有し得る活性のことをいい、種々の機能を発揮する活 性が包含される。例えば、ある因子がアンチセンス分子である場合、その生物学的活 性は、対象となる核酸分子への結合、それによる発現抑制などを包含する。例えば、 ある因子が酵素である場合、その生物学的活性は、その酵素活性を包含する。別の 例では、ある因子がリガンドである場合、そのリガンドが対応するレセプターへの結合 を包含する。そのような生物学的活性は、当該分野において周知の技術によって測 定することができる。
[0059] 本明細書において使用される用語「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」および「 核酸」は、本明細書において同じ意味で使用され、任意の長さのヌクレオチドのポリ マーをいう。この用語はまた、「誘導体オリゴヌクレオチド」または「誘導体ポリヌクレオ チド」を含む。「誘導体オリゴヌクレオチド」または「誘導体ポリヌクレオチド」とは、ヌク レオチドの誘導体を含む力、またはヌクレオチド間の結合が通常とは異なるオリゴヌク レオチドまたはポリヌクレオチドをいい、互換的に使用される。そのようなオリゴヌタレ ォチドとして具体的には、例えば、 2' O—メチルーリボヌクレオチド、オリゴヌクレオ チド中のリン酸ジエステル結合がホスホロチォエート結合に変換された誘導体オリゴ ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合が N3,一 P5,ホスホロアミ デート結合に変換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のリボースと リン酸ジエステル結合とがペプチド核酸結合に変換された誘導体オリゴヌクレオチド、 オリゴヌクレオチド中のゥラシルが C 5プロピ-ルゥラシルで置換された誘導体オリ ゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のゥラシルが C— 5チアゾールゥラシルで置換さ れた誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のシトシンが C— 5プロピニルシト シンで置換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のシトシンがフエノ キサジン修飾シトシン(phenoxazine— modified cytosine)で置換された誘導体 オリゴヌクレオチド、 DNA中のリボースが 2,—O プロピルリボースで置換された誘
導体オリゴヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチド中のリボースが 2,ーメトキシエトキシリ ボースで置換された誘導体オリゴヌクレオチドなどが例示される。他にそうではな!/、と 示されなければ、特定の核酸配列はまた、明示的に示された配列と同様に、その保 存的に改変された改変体 (例えば、縮重コドン置換体)および相補配列を包含するこ とが企図される。具体的には、縮重コドン置換体は、 1またはそれ以上の選択された( または、すべての)コドンの 3番目の位置が混合塩基および Zまたはデォキシイノシ ン残基で置換された配列を作成することにより達成され得る(Batzerら、 Nucleic A cid Res. 19 : 5081 (1991) ; Ohtsukaら、 Biol. Chem. 260 : 2605— 2608 (1 985); Rossoliniら、 Mol. Cell. Probes 8 : 91— 98 (1994) )。
[0060] あるアミノ酸は、相互作用結合能力の明らかな低下または消失なしに、例えば、力 チオン性領域または基質分子の結合部位のようなタンパク質構造において他のアミ ノ酸に置換され得る。あるタンパク質の生物学的機能を規定するのは、タンパク質の 相互作用能力および性質である。従って、特定のアミノ酸の置換がアミノ酸配列にお いて、またはその DNAコード配列のレベルにおいて行われ得、置換後もなお、もとの 性質を維持するタンパク質が生じ得る。従って、生物学的有用性の明らかな損失なし に、種々の改変が、本明細書において開示されたペプチドまたはこのペプチドをコー ドする対応する DNAにおいて行われ得る。このような改変体もまた、所望の目的を達 成することができる限り、本発明の生体分子として使用することができる。
[0061] 上記のような改変を設計する際に、アミノ酸の疎水性指数が考慮され得る。タンパク 質における相互作用的な生物学的機能を与える際の疎水性アミノ酸指数の重要性 は、一般に当該分野で認められている(Kyte. Jおよび Doolittle, R. F. J. Mol. Bi ol. 157 (1) : 105 - 132, 1982)。アミノ酸の疎水的性質は、生成したタンパク質の 二次構造に寄与し、次いでそのタンパク質と他の分子 (例えば、酵素、基質、レセプ ター、 DNA、抗体、抗原など)との相互作用を規定する。各アミノ酸は、それらの疎水 性および電荷の性質に基づく疎水性指数を割り当てられる。それらは:イソロイシン( +4. 5);バリン(+4. 2);ロイシン( + 3. 8);フエ-ルァラニン( + 2. 8);システィン Zシスチン( + 2. 5);メチォニン( + 1. 9);ァラニン( + 1. 8);グリシン(一0. 4);スレ ォニン(一 0. 7) ;セリン(一0. 8);トリプトファン(一0. 9) ;チロシン(一1. 3) ;プロリン
(- 1. 6) ;ヒスチジン(一3. 2);グノレタミン酸(一 3. 5);グノレタミン(一3. 5) ;ァスパラ ギン酸(一3. 5);ァスパラギン(一3. 5) ;リジン(一3. 9);およびアルギニン(一4. 5)
)である。
[0062] あるアミノ酸を、同様の疎水性指数を有する他のアミノ酸により置換して、そして依 然として同様の生物学的機能を有するタンパク質 (例えば、酵素活性において等価 なタンパク質)を生じさせ得ることが当該分野で周知である。このようなアミノ酸置換に おいて、疎水性指数が ± 2以内であることが好ましぐ ± 1以内であることがより好まし ぐおよび ±0. 5以内であることがさらにより好ましい。疎水性に基づくこのようなァミノ 酸の置換は効率的であることが当該分野において理解される。米国特許第 4, 554, 101号に記載されるように、以下の親水性指数がアミノ酸残基に割り当てられて!/、る: アルギニン( + 3. 0);リジン( + 3. 0);ァスパラギン酸( + 3. 0± 1);グルタミン酸(+ 3. 0± 1);セリン( + 0. 3);ァスパラギン( + 0. 2);グルタミン( + 0. 2);グリシン(0); スレオニン(一0. 4);プロリン(一0. 5± 1);ァラニン(一0. 5);ヒスチジン(一0. 5); システィン(一1. 0);メチォニン(一1. 3);バリン(一 1. 5);ロイシン(一1. 8);ィソロ イシン(一 1. 8) ;チロシン(一2. 3);フエ-ルァラニン(一2. 5);およびトリプトファン( 3. 4)。アミノ酸が同様の親水性指数を有しかつ依然として生物学的等価体を与え 得る別のものに置換され得ることが理解される。このようなアミノ酸置換において、親 水性指数が ± 2以内であることが好ましぐ ± 1以内であることがより好ましぐおよび ±0. 5以内であることがさらにより好ましい。
[0063] 本発明にお 、て、「保存的置換」とは、アミノ酸置換にぉ 、て、元のアミノ酸と置換さ れるアミノ酸との親水性指数または Zおよび疎水性指数が上記のように類似して 、る 置換をいう。保存的置換の例としては、例えば、親水性指数または疎水性指数が、士 2以内のもの同士、好ましくは ± 1以内のもの同士、より好ましくは ±0. 5以内のもの 同士のものが挙げられるがそれらに限定されない。従って、保存的置換の例は、当業 者に周知であり、例えば、次の各グループ内での置換:アルギニンおよびリジン;ダル タミン酸およびァスパラギン酸;セリンおよびスレオニン;グルタミンおよびァスパラギン ;ならびにパリン、ロイシン、およびイソロイシン、などが挙げられるがこれらに限定され ない。このような改変体もまた、所望の目的を達成することができる限り、本発明の生
体分子として使用することができる。
[0064] 本明細書において、「改変体」とは、もとのポリペプチドまたはポリヌクレオチドなどの 物質に対して、一部が変更されているものをいう。そのような改変体としては、置換改 変体、付加改変体、欠失改変体、短縮 (truncated)改変体、対立遺伝子変異体な どが挙げられる。このような改変体もまた、所望の目的を達成することができる限り、 本発明の生体分子として使用することができる。対立遺伝子 (allele)とは、同一遺伝 子座に属し、互いに区別される遺伝的改変体のことをいう。従って、「対立遺伝子変 異体」とは、ある遺伝子に対して、対立遺伝子の関係にある改変体をいう。そのような 対立遺伝子変異体は、通常その対応する対立遺伝子と同一または非常に類似性の 高い配列を有し、通常はほぼ同一の生物学的活性を有するが、まれに異なる生物学 的活性を有することもある。「種相同体またはホモログ (homolog)」とは、ある種の中 で、ある遺伝子とアミノ酸レベルまたはヌクレオチドレベルで、相同性 (好ましくは、 60 %以上の相同性、より好ましくは、 80%以上、 85%以上、 90%以上、 95%以上の相 同性)を有するものをいう。そのような種相同体を取得する方法は、本明細書の記載 から明らかである。「オルソログ(ortholog)」とは、オルソロガス遺伝子(orthologous gene)ともいい、二つの遺伝子がある共通祖先力 の種分ィ匕に由来する遺伝子を いう。例えば、多重遺伝子構造をもつヘモグロビン遺伝子ファミリーを例にとると、ヒト およびマウスの αヘモグロビン遺伝子はオルソログである力 ヒトの αヘモグロビン遺 伝子および j8ヘモグロビン遺伝子はパラログ (遺伝子重複で生じた遺伝子)である。 オルソログは、分子系統樹の推定に有用である。オルソログは、通常別の種において もとの種と同様の機能を果たしていることがあり得ることから、本発明のオルソログもま た、本発明において有用であり得る。
[0065] 「保存的(に改変された)改変体」は、アミノ酸配列および核酸配列の両方に適用さ れる。特定の核酸配列に関して、保存的に改変された改変体とは、同一のまたは本 質的に同一のアミノ酸配列をコードする核酸をいい、核酸がアミノ酸配列をコードしな い場合には、本質的に同一な配列をいう。遺伝コードの縮重のため、多数の機能的 に同一な核酸が任意の所定のタンパク質をコードする。例えば、コドン GCA、 GCC、 GCG、および GCUはすべて、アミノ酸ァラニンをコードする。したがって、ァラニンが
コドンにより特定される全ての位置で、そのコドンは、コードされたポリペプチドを変更 することなぐ記載された対応するコドンの任意のものに変更され得る。
[0066] 本明細書にぉ 、て、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドの「置換、付加または欠失」 とは、もとのポリペプチドまたはポリヌクレオチドに対して、それぞれアミノ酸もしくはそ の代替物、またはヌクレオチドもしくはその代替物力 置き換わること、付け加わること または取り除かれることをいう。このような置換、付加または欠失の技術は、当該分野 において周知であり、そのような技術の例としては、部位特異的変異誘発技術などが 挙げられる。置換、付加または欠失は、 1つ以上であれば任意の数でよぐそのような 数は、その置換、付加または欠失を有する改変体において目的とする機能 (例えば、 ホルモン、サイト力インの情報伝達機能など)が保持される限り、多くすることができる 。例えば、そのような数は、 1または数個であり得、そして好ましくは、全体の長さの 20 %以内、 10%以内、または 100個以下、 50個以下、 25個以下などであり得る。
[0067] 本明細書にぉ 、て「細胞生理活性物質」または「生理活性物質」 (physiologically active substance)とは、細胞または組織に作用する物質をいう。そのような作用 としては、例えば、その細胞または糸且織の制御、変化などが挙げられるがそれに限定 されない。生理活性物質には、サイト力インおよび増殖因子が含まれる。生理活性物 質は、天然に存在するものであっても、合成されたものでもよい。好ましくは、生理活 性物質は、細胞が産生するものまたはそれと同様の作用を有するものであるが改変 された作用を持つものであってもよい。本明細書では、生理活性物質はタンパク質形 態または核酸形態あるいは他の形態であり得るが、実際に作用する時点にぉ 、ては 、サイト力インは通常はタンパク質形態を意味する。
[0068] 本明細書において使用される「サイト力イン」は、当該分野において用いられる最も 広義の意味と同様に定義され、細胞力 産生され同じまたは異なる細胞に作用する 生理活性物質をいう。サイト力インは、一般にタンパク質またはポリペプチドであり、免 疫応答の制禦作用、内分泌系の調節、神経系の調節、抗腫瘍作用、抗ウィルス作用 、細胞増殖の調節作用、細胞分化の調節作用などを有する。本明細書では、サイト 力インはタンパク質形態または核酸形態あるいは他の形態であり得るが、実際に作用 する時点においては、サイト力インは通常はタンパク質形態を意味する。
[0069] 本明細書において用いられる「増殖因子」または「細胞増殖因子」とは、本明細書で は互換的に用いられ、細胞の増殖を促進または制御する物質をいう。増殖因子は、 成長因子または発育因子ともいわれる。増殖因子は、細胞培養または組織培養にお いて、培地に添加されて血清高分子物質の作用を代替し得る。多くの増殖因子は、 細胞の増殖以外に、分ィ匕状態の制御因子としても機能することが判明している。
[0070] サイト力インには、代表的には、インターロイキン類、ケモカイン類、コロニー刺激因 子のような造血因子、腫瘍壊死因子、インターフェロン類、ォステオボンチンなどが含 まれる。増殖因子としては、代表的には、血小板由来増殖因子 (PDGF)、上皮増殖 因子 (EGF)、線維芽細胞増殖因子 (FGF)、肝実質細胞増殖因子 (HGF)、血管内 皮増殖因子 (VEGF)のような増殖活性を有するものが挙げられる。
[0071] サイト力インおよび増殖因子などの生理活性物質は一般に、機能重複現象 (redun dancy)があることから、他の名称および機能 (例えば、細胞接着活性または細胞— 基質間の接着活性など)で知られるサイト力インまたは増殖因子であっても、本発明 に使用される生理活性物質の活性を有する限り、本発明において使用され得る。ま た、サイト力インまたは増殖因子は、本明細書における好ましい活性 (例えば、宿主の 細胞を呼び寄せる活性)を有してさえ 、れば、本発明の組織片または医薬の好まし い実施形態において使用することができる。
[0072] (血管新生ペプチド)
本発明において使用される血管新生分子は、血管新生作用のある任意のペプチド が代表的に挙げられる。
[0073] 例示的な血管新生ペプチドの例として、 X -X -X -X -X -X -Xで示され
1 2 3 4 5 6 7 るアミノ酸配列を含むペプチドまたはその改変体が挙げられる。ここで、 X =セリン (S )、スレオニン (T)またはその改変体であるかあるいは存在しない、 X =バリン (v)、
2
ァラニン (A)、グリシン (G)、ロイシン (L)、イソロイシン (I)またはその改変体であり、 X =バリン (V)、了ラニン (A)、グリシン(G)、ロイシン (L)、イソロイシン (I)またはその
3
改変体であり、 X
4 =側鎖に芳香環を有するアミノ酸またはその改変体であり、 X
5 =グ リシン (G)またはその改変体であり、 X =口イシン (L)、ァラニン (A)、グリシン (G)、
6
ノリン (V)、イソロイシン (I)またはその改変体であり、 X =アルギ-ン (R)、リジン (K
)またはその改変体であるであるか存在しない。このようなペプチドは、インビボで移 植片とともに力または単独で投与されると、種々の箇所において血管新生作用があ ることが示された。従って、本発明は、上記ペプチドまたはその改変体を含む、血管 新生のための移植片を提供する。
[0074] ここで、血管ネットワーク形成能は、生成される血管の本数などを計数することによ つて判定することができる。好ましくは、血管新生分子は、血管ネットワーク形成能を 有することが好ましい。そのような血管ネットワーク形成能は、血管ネットワーク形成ィ ンデッタスによって示すことができる。本発明のペプチドが有する血管ネットワーク形 成能は、少なくとも 2であり、好ましくは、 2. 5以上であり、より好ましくは、 3以上であり 、さらに好ましくは 3. 5以上であることを意味することが理解される。このような数値は 、血管ネットワーク形成能インデックスは、実際に例えば、 2. 5以上、好ましくは 3. 0 以上程度ある場合に、すでに顕著に網状の血管が形成されている様子が常に観察 されることからも明らかであると!ヽえる。
[0075] 1つの実施形態にお!、て、本発明のペプチドは、上記特定の配列を含み、血管ネ ットワーク形成能を有する限り、外来配列を含んでいてもよいことが理解される。
[0076] 1つの好ましい実施形態において、 Xは、セリンまたはその改変体であり、さらに好 ましくは、 Xは、セリンである。
[0077] 別の好ましい実施形態において、 Xは、パリンまたはその改変体であり、さらに好ま
2
しくは、 Xは、ノリンである。
2
[0078] 別の好ましい実施形態において、 Xは、パリンまたはその改変体であり、さらに好ま
3
しくは、 Xは、ノリンである。
3
[0079] 別の好まし 、実施形態にぉ 、て、 Xは、フエ二ルァラニン、チロシンまたはその改
4
変体であり、さらに好ましくは、チロシンまたはその改変体である。
[0080] 別の好まし 、実施形態にぉ 、て、 Xは、フエ二ルァラニンまたはその改変体であり
4
、さらに好ましい実施形態において、 X
4は、フエ二ルァラニンである。
[0081] 別の好ま 、実施形態にぉ 、て、前記 Xは、チロシンまたはその改変体であり、さ
4
らに好ましい実施形態において、 Xは、チロシンである。
4
[0082] 別の好ま 、実施形態にぉ 、て、 Xは、グリシンまたはその改変体であり、さらに好
ましい実施形態では、 Xは、グリシンである。
5
[0083] 別の好ま 、実施形態にぉ 、て、 Xは、ロイシンまたはその改変体であり、さらに好
6
ましい実施形態では、 Xは、ロイシンである。
6
[0084] 別の好ま 、実施形態にぉ 、て、 Xは、アルギニンまたはその改変体であり、さら に好ましい実施形態では、 Xは、アルギニンである。
[0085] 従って、本発明のペプチドは、上記 X〜Xの好ま 、実施形態の組み合わせの配 列を有してもょ ヽことが理解される。
[0086] さらに好ま 、実施形態にぉ 、て、本発明のペプチドまたはその改変体は、配列番 号 1で示されるアミノ酸配列力、または配列番号 1で示されるアミノ酸配列にお!ヽて、 1個〜 3個のアミノ酸が置換し、もしくは一方もしくは両方の端部に位置する 1個もしく は 2個のアミノ酸が欠失し、もしくは前記アミノ酸配列の一方もしくは両方の端部に他 のアミノ酸配列が付加されたアミノ酸配列を有する。好ましくは、この改変体は、血管 新生作用を有することが有利である。
[0087] 更に好ま 、実施形態では、本発明のペプチドまたはその改変体は、配列番号 1 で示されるアミノ酸配列を有するペプチド、または該配列において、 1個もしくは 2個 のアミノ酸が置換し (ただし、 4番目のチロシン残基はチロシン残基または側鎖に芳香 環を有するアミノ酸である)、もしくは一方もしくは両方の端部に位置する 1個のアミノ 酸が欠失し、もしくは前記アミノ酸配列の一方もしくは両方の端部に他のアミノ酸配列 が付加されたアミノ酸配列を有する。このペプチドまたはその改変体は、血管新生作 用を有することが有利である。
[0088] さらに好ま 、実施形態では、本発明のペプチドまたはその改変体にぉ 、て、側鎖 に芳香環を有するアミノ酸は、フエ-ルァラニンまたはそのベンゼン環に 1または複数 の置換基を有する化学修飾フエ-ルァラニンである。
[0089] さらに好ま 、実施形態では、本発明のペプチドまたはその改変体は、配列番号 9 で示されるアミノ酸配列を有するペプチドである力、または該配列において、一方もし くは両方の端部に位置する 1個のアミノ酸が欠失し、もしくは前記アミノ酸配列もしくは 前記アミノ酸配列の一方もしくは両方の端部に位置する 1個のアミノ酸が欠失したアミ ノ酸配列の一方もしくは両方の端部に他のアミノ酸配列が付加されたアミノ酸配列を
有するペプチドを含む。このペプチドまたはその改変体は、血管新生作用を有するこ とが有利である。
[0090] さらに好ま 、実施形態では、本発明のペプチドまたはその改変体は、配列番号 1 〜7の!、ずれかで示されるアミノ酸配列を有するペプチドである力、またはこれらのァ ミノ酸配列のいずれかの一方もしくは両方の端部に他のアミノ酸配列が付加されたァ ミノ酸配列を有するペプチドを含む。このペプチドまたはその改変体は、血管新生作 用を有することが有利である。
[0091] さらに好ま 、実施形態では、本発明のペプチドまたはその改変体は、配列表の 配列番号 9〜: L 1の ヽずれかで示されるアミノ酸配列を有するペプチドまたはこれらの アミノ酸配列のいずれかの一方もしくは両方の端部に他のアミノ酸配列が付加された アミノ酸配列を有するペプチドを含む。このペプチドまたはその改変体は、血管新生 作用を有することが有利である。
[0092] さらに別の好ま 、実施形態では、本発明のペプチドまたはその改変体は、配列 番号 9で示されるアミノ酸配列を有するペプチドまたはこれらのアミノ酸配列のいずれ かの一方もしくは両方の端部に他のアミノ酸配列が付加されたアミノ酸配列を有する ペプチドを含む。このペプチドまたはその改変体は、血管新生作用を有することが有 利である。
[0093] 別の実施形態では、本発明のペプチドは、アミノ酸配列 SVVX GLまたは VVX G
4 4
LR (ここで、 Xは上記と同様の定義)で示されるアミノ酸配列を含んでいてもよい。さ
4
らに好ましくは、本発明のペプチドは、アミノ酸配列 SVVYGLまたは VVYGLRを含 むことが有利であり、さらに好ましくはアミノ酸配列 SWYGLRを含むことが有利であ り得る。
[0094] 本発明者らは、配列番号 1に示されるアミノ酸配列を有するペプチドの血管新生作 用が支持体に結合されると、移植後の活性が予想外に亢進または保持されることを 見出した。これは、このペプチド自体を体内に投与すると数十分で分解され活性がな くなつてしまうことを考えると、驚くべき効果であるといえる。従って、本発明の血管新 生剤の好ま ヽ一例では、配列番号 1に示されるアミノ酸配列を有するペプチドを有 効成分として含む。
一般に、生理活性を有するペプチドにおいて、そのアミノ酸配列のうち、 1もしくは 複数のアミノ酸が置換しもしくは欠失し、もしくは該ァミノ配列に 1もしくは複数のァミノ 酸が挿入されもしくは付加された場合であっても、該生理活性が維持されることがあ ることは周知である。従って、配列番号 1に示されるアミノ酸配列において、 1個〜 3個 のアミノ酸が置換し、もしくは一方もしくは両方の端部に位置する 1個もしくは 2個のァ ミノ酸が欠失し、もしくは前記アミノ酸配列の一方もしくは両方の端部に他のアミノ酸 配列が付加されたアミノ酸配列を有するペプチド (以下、便宜的に「ペプチド改変体」 と呼ぶことがある)であって血管新生作用を有するペプチドも本発明の範囲に含まれ る。本発明のペプチド改変体に含まれるアミノ酸は、天然のタンパク質を構成するアミ ノ酸に限定されるものではなぐ天然のアミノ酸をィ匕学修飾 (例えば、アミノ酸の側鎖 に-トロ基、ハロゲンを導入する等)して得られるアミノ酸も包含される。また、 D型アミ ノ酸であってもよい。下記実施例で具体的に確認されたように、配列番号 1で示され るアミノ酸配列の N末端または C末端の 1アミノ酸を欠失したアミノ酸配列を有するぺ プチドは、配列番号 1で示されるアミノ酸配列を有するペプチドと何ら遜色のな 、血 管新生効果を発揮するものであり、本発明の好ましい形態である。下記実施例で具 体的に記載するように、配列番号 1の 4番目のチロシンをァラニンに置換したペプチド (配列番号 8)では血管新生作用が失われたので、 4番目のチロシン残基は重要であ ると考えられ、その側鎖の化学構造が大幅に変更されるよう参置換はしない方が好ま しい。もっとも、天然の L型の Tyrでなくても D型あるいはチロシンの側鎖のフエノール 環にハロゲンまたは-トロ基を入れたものなどが通常 Tyrの置換体としてメディシナル ケミストリーで分子設計され、より強い効果や同等の効果を発揮する場合がしばしば あることが知られている。また、側鎖に芳香環を有する他のアミノ酸 (例えばフ -ル ァラニンなど)でも同等の効果を発揮するであろうと考えられ、下記実施例に具体的 に記載するように、 4番目のチロシンをフエ二ルァラニンで置換したペプチドは、より優 れた効果を発揮することが確認された。従って、ペプチド改変体のうち、好ましいもの として、配列番号 1に示すアミノ酸配列において、 1個もしくは 2個のアミノ酸が置換し 、もしくは一方もしくは両方の端部に位置する 1個のアミノ酸が欠失し、もしくは前記ァ ミノ酸配列の一方もしくは両方の端部に他のアミノ酸配列が付加されたアミノ酸配列
を有するペプチドであって、 4番目のアミノ酸残基がチロシン残基または側鎖に芳香 環を有するアミノ酸、好ましくはフエ-ルァラニンである血管新生作用を有するぺプチ ドを挙げることができる。なお、ここで、「側鎖に芳香環を有するアミノ酸」は必ずしも天 然のタンパク質を構成するアミノ酸に限定されるものではなぐ上記のようにチロシン またはフエ-ルァラニンの芳香環に-トロ基、ハロゲン、炭素数 1〜5のアルキル基お よび炭素数 1〜5のァシル基力 なる群より選択される少なくとも 1種の置換基を結合 させたチロシンまたはフエ二ルァラニン誘導体も包含される。置換基が存在する場合 、芳香環、好ましくはベンゼン環上に置換する置換基の数は、 1〜5個であり、 1〜3 個が好ましい。本発明のペプチドにおいて、芳香環は好ましくはベンゼン環またはべ ンゼン環を含むナフタレン環のような縮合環(トリブトファン側鎖のような複素環でもよ い)であり、特に好ましくはベンゼン環である。
[0096] 下記実施例に具体的に記載されるように、本発明者らは、配列番号 1の第 4番目の チロシンをフエ-ルァランに置換した、配列番号 9で示されるアミノ酸配列を有するぺ プチドカ 配列番号 1で示されるアミノ酸配列を有するペプチドよりもさらに優れた血 管新生効果を有することを見出した。なお、フエ二ルァラニンは、側鎖に芳香環 (ベン ゼン環)を有するアミノ酸である。したがって、本発明の好ましい形態として、配列表 の配列番号 9で示されるアミノ酸配列を有するペプチドまたは該配列にぉ 、て、一方 もしくは両方の端部に位置する 1個のアミノ酸が欠失し、もしくは前記アミノ酸配列もし くは前記アミノ酸配列の一方若しくは両方の端部に位置する 1個のアミノ酸が欠失し たアミノ酸配列の一方もしくは両方の端部に他のアミノ酸配列が付加されたアミノ酸 配列を有するペプチドであって血管新生作用を有するペプチドを含む血管新生剤を 挙げることができる。
[0097] 従って、本発明に用いられるペプチドのサイズの上限は何ら限定されるものではな いが、あまりに大きいと製造が困難となり、取り扱いが不便であり、また、単位重量当 たりの血管新生活性が減少すると考えられるので、ペプチドの総アミノ酸数は、通常 、 4〜350、好ましくは 4〜50、さらに好ましくは 5〜20、さらに好ましくは 5〜10であり 、さらに好ましくは 6〜10である。また、配列番号 1〜7及び 9〜: L 1のいずれかに示す アミノ酸配列または該アミノ酸配列の一方もしくは両方の端部にそれぞれ 10個以下
のアミノ酸が付加されたペプチドも好ましい。例えば、配列番号 12及び 13に示すアミ ノ酸配列は、配列番号 1に示すアミノ酸配列の!/、ずれか一端に他のアミノ酸配列を付 カロしたペプチドである力 V、ずれも優れた血管新生活性を有することが確認されて!ヽ る。なお、配列番号 1のみならず、配列番号 2〜7及び 9〜: L1に記載したアミノ酸配列 を有するペプチドが血管新生作用を有することは下記実施例において具体的に確 認されて!/、るので、これらは!、ずれも好まし!/、例である。
[0098] なお、ペプチドが血管新生作用を有する力否かは、下記実施例に具体的に示すよ うに、ペプチド溶液を充填したマイクロセルをマウスの背部に埋め込み、埋め込んだ 周囲の組織内の毛細血管の形成状況を観察することにより調べることができる。
[0099] 上記ペプチドは、手動あるいは市販のペプチド合成機を用いる常法により容易に 合成することができる。また、サイズの大きなペプチドは、常法により、遺伝子工学的 に製造することができる。
[0100] 上記ペプチドは、単独で、または生理緩衝液中に溶解した注射液等の形態で、血 管新生が望まれる組織に局所投与することができる。手術や外傷により生じた創傷等 の近傍に本発明の血管新生剤を、注射や塗布、噴霧等の方法により局所投与するこ とにより、血管新生が促進され、創傷の治癒が促進される。ここで、注射または塗布も しくは噴霧等に用いるペプチド溶液中のペプチド濃度は、特に限定されないが、通 常、 Ing lO /z g (マイクログラム) ZmL程度である。また、投与量は、傷などの大きさ や深さにより適宜選択できるが、傷全体がペプチド溶液で被覆される程度でよい。ま た、傷が治癒するまで、 1日〜数日毎に 1回〜数回投与することができる。また、注射 液には、他の消毒剤や消炎鎮痛剤など、通常、傷の治療薬に含まれる種々の成分を 含んでいてもよい。
[0101] また、ペプチドをキャリアに結合し、ペプチドが結合されたキャリアを移植片に結合 させて生体に埋め込むことにより血管新生を促進することもできる。これはキャリアに 固定ィ匕している為に必要な部位に選択的に作用させることができ、新たな DDS (ドラッ グデリバリーシステム)としての可能性に富んでいる。生体材料移植部に本発明の血 管新生剤を、塗布、噴霧等の方法により局所投与することにより、血管新生が促進さ れ、術後の治癒が促進される。ここで、キャリアとしては、特に限定されるものではなく
、代用骨や代用歯、人工臓器等に用いられる榭脂や、タンパク質等の生体高分子を 挙げることができる。榭脂に上記ペプチドを結合することにより、該榭脂を生体に埋め 込んだ際に、榭脂と接する周辺組織中での血管新生が促進され、榭脂の生体との親 和性がより向上する。また、より好ましい態様として、タンパク質をキャリアとして用いる ができる。好ましくは、このようなキャリアは、生体適合性を有することが有利である。 あるいは、好ましくは、このようなキャリアは、生体分解性であることが有利である。
[0102] ここで、キャリアとして用いるタンパク質は、生体適合性を有する 、ずれのタンパク 質であってもよぐとりわけ、生体組織との接合を良好にするために、細胞接着性タン ノ ク質であることが好ましい。細胞接着性タンパク質の好ましい例として、コラーゲン( ゼラチン)、フイブロネクチン、ビトロネクチン及びラミニン等並びにこれらの部分加水 分解物を挙げることができるがこれらに限定されるものではない。なお、これらのタン ノ ク質は、アレルゲンを除去した精製タンパク質であることが、アレルギー反応の防 止の観点力も好ましい。例えば、コラーゲンとしては、動物由来のコラーゲンが種々 市販されているが、これらは純度が低ぐアレルゲンが含まれており、品質の再現性も 劣るので臨床用途に適用することは好ましくない。動物由来のコラーゲンを部分加水 分解し、アレルゲンを除去したゼラチンが臨床用途のために市販されているので、こ のような精製されたコラーゲンまたはその部分加水分解物を用いることが好ましい。
[0103] キャリアに結合されるペプチドの量は、特に限定されず、適宜選択することができる 力 通常、キャリアとペプチドの重量比率 (キャリア:ペプチド)が 100 : 1〜1 : 1程度で あり、好ましくは 20: 1〜5: 1程度である。
[0104] キャリアとペプチドとの結合は、共有結合によることが好ましい。結合は、例えばべ プチドの N末端のァミノ基と、キャリア中の任意のアミノ基をダルタルアルデヒド等の結 合架橋剤を用いて結合することにより容易に行うことができ、下記実施例に詳細な結 合方法の一例が記載されている。また、人工臓器等の樹脂に結合する場合には、こ の榭脂中に、アミノ基等の、ペプチドとの結合に用いることができる基を含むモノマー を共重合させておき、当該アミノ基等とペプチドの N末端のアミノ基を結合することが できる。また、配列番号 1に示されるアミノ酸配列を有するペプチドまたはその一部の アミノ酸が置換もしくは欠失した、血管新生作用を有するペプチド改変体の一端また
は両端に、任意のアミノ酸配列を有する他のペプチドを結合したものを採用し、この 任意のペプチドをキャリアとの結合に供することも好ましい。
[0105] ペプチドを結合したキャリアは、塗布文は噴霧する他にそのままで生体内に埋め込 むことができる。キャリアとして、細胞接着性タンパク質を採用した場合には、ペプチド 結合キャリアは、縫合糸、各種整形手術材料、傷口の癒着促進剤等として単独または 他の薬効成分とともに用いることができる。また、ペプチドを結合したキャリアタンパク 質を、炭酸アパタイトや、本発明のペプチドを結合していない細胞接着性タンパク質 等の他の材料と混合したものを代用骨等として用いることができる。この場合、代用骨 等の最終の生体材料中に含まれるペプチドの量は、特に限定されないが、通常、生 体材料 lOOg当たり、 0.1〜10mg程度である。
[0106] 本発明に用いられるペプチドは、天然のタンパク質を構成するアミノ酸によって構 成されているものであり、生体内ではぺプチダーゼの作用を受けてやがてはアミノ酸 に分解されるものであるので、安全性が高い。実際、下記実施例で行った、マウスを 用いた in vivoの実験において、毒性は全く観察されなかた。このことは、薬効を発揮 する使用量にぉ 、て、毒性が認められな力つたことを示して!/、る。
[0107] (細胞接着因子、細胞外マトリクス)
本明細書において「細胞外マトリクス」(ECM)とは「細胞外基質」とも呼ばれ、上皮 細胞、非上皮細胞を問わず体細胞(somatic cell)の間に存在する物質をいう。細 胞外マトリクスは、組織の支持だけでなぐすべての体細胞の生存に必要な内部環境 の構成に関与する。細胞外マトリクスは一般に、結合組織細胞から産生されるが、一 部は上皮細胞や内皮細胞のような基底膜を保有する細胞自身からも分泌される。線 維成分とその間を満たす基質とに大別され、線維成分としては膠原線維および弾性 線維がある。基質の基本構成成分はグリコサミノダリカン (酸性ムコ多糖)であり、その 大部分は非コラーゲン性タンパクと結合してプロテオダリカン (酸性ムコ多糖—タンパ ク複合体)の高分子を形成する。このほかに、基底膜のラミニン、弾性線維周囲のミク ロフイブリル(microfibril)、線維、細胞表面のフイブロネクチンなどの糖タンパクも基 質に含まれる。特殊に分化した組織でも基本構造は同一で、例えば硝子軟骨では軟 骨芽細胞によって特徴的に大量のプロテオダリカンを含む軟骨基質が産生され、骨
では骨芽細胞によって石灰沈着が起こる骨基質が産生される。本発明において用い られる細胞外マトリクスとしては、例えば、コラーゲン、エラスチン、プロテオダリカン、 グリコサミノダリカン、フイブロネクチン、ラミニン、弾性繊維、膠原繊維などが挙げられ るがそれに限定されない。本発明において用いられる場合、細胞外マトリクスは、好 ましくは、宿主の自己細胞を呼び寄せる活性を持っていることが有利である。
[0108] 本明細書において「細胞接着分子」(Cell adhesion molecule)または「接着分 子」とは、互換可能に使用され、 2つ以上の細胞の互いの接近 (細胞接着)または基 質と細胞との間の接着を媒介する分子をいう。一般には、細胞と細胞の接着 (細胞間 接着)に関する分子(cell— cell adhesion molecule)と,細胞と細胞外マトリックス との接着(細胞一基質接着)に関与する分子(cell— substrate adhesion molec ule)に分けられる。本発明の組織片では、いずれの分子も有用であり、有効に使用 することができる。従って、本明細書において細胞接着分子は、細胞-基質接着の 際の基質側のタンパク質を包含する力 本明細書では、細胞側のタンパク質 (例えば 、インテグリンなど)も包含され、タンパク質以外の分子であっても、細胞接着を媒介 する限り、本明細書における細胞接着分子または細胞接着分子の概念に入る。
[0109] 細胞間接着に関しては、カドヘリン、免疫グロブリンスーパーファミリーに属する多く の分子(NCAM、 Ll、 ICAM、ファシクリン Π、 ΙΠなど)、セレクチンなどが知られてお り、それぞれ独特な分子反応により細胞膜を結合させることも知られている。
[0110] 他方、細胞一基質接着のために働く主要な細胞接着分子はインテグリンで,細胞 外マトリックスに含まれる種々の蛋白質を認識し結合する。これらの細胞接着分子は すべて細胞膜表面にあり,一種のレセプター(細胞接着受容体)とみなすこともできる 。従って、細胞膜にあるこのようなレセプターもまた本発明の組織片において使用す ることができる。そのようなレセプターとしては、例えば、 αインテグリン、 13インテグリ ン、 CD44,シンデカンおよびァグリカンなどが挙げられるがそれに限定されない。
[0111] なお、本明細書では、インテグリンなどの結合の相手となる細胞外マトリックス分子( フイブロネクチン,ラミニンなどの細胞接着性蛋白質)も細胞接着分子の範疇に入る。 それぞれの接着受容体の,細胞間接着,細胞一基質接着における機能分担は厳密 なものではなく,相手となる分子(リガンド)の分布によって変動する。例えば、インテ
ダリンのあるものは血球間の接着など細胞間接着にも関与する。また、増殖因子、サ イト力インなどが細胞膜タンパク質として存在する場合、他の細胞に分布するそれら のレセプターとの反応力 結果として細胞を接着させることが知られて 、ることから、 そのような増殖因子、サイト力インもまた、本発明の組織片に含まれる生体分子として 使用することができる。
[0112] このように多種多様な分子が細胞接着に関与しており、それぞれの機能は異なって いることから、当業者は、目的に応じて、適宜本発明の組織片に含まれるべき分子を 選択することができる。細胞接着に関する技術は、上述のもののほかの知見も周知で あり、例えば、細胞外マトリックス 臨床への応用 メディカルレビュー社に記載さ れている。
[0113] ある分子が細胞接着分子であるかどうかは、生化学的定量 (SDS— PAG法、標識 コラーゲン法)、免疫学的定量 (酵素抗体法、蛍光抗体法、免疫組織学的検討) PD R法、ハイブリダィゼイシヨン法などのようなアツセィにお 、て陽性となることを決定す ることにより判定することができる。このような細胞接着分子としては、コラーゲン、イン テグリン、フイブロネクチン、ラミニン、ビトロネクチン、フイブリノゲン、免疫グロブリンス 一パーファミリー(例えば、 CD2、 CD4、 CD8、 ICM1、 ICAM2、 VCAM1)、セレク チン、カドヘリンなどが挙げられるがそれに限定されない。このような細胞接着分子の 多くは、細胞への接着と同時に細胞間相互作用による細胞活性化の補助シグナルを 細胞内に伝達する。従って、本発明の組織片において用いられる接着因子としては 、そのような細胞活性ィ匕の補助シグナルを細胞内に伝達するものが好ましい。細胞 活性ィ匕により、組織片としてある組織または臓器における損傷部位に適用された後 に、そこに集合した細胞および/または組織もしくは臓器にある細胞の増殖を促すこ とができるからである。そのような補助シグナルを細胞内に伝達することができるかど うかは、生化学的定量 (SDS— PAGE法、標識コラーゲン法)、免疫学的定量 (酵素 抗体法、蛍光抗体法、免疫組織学的検討) PDR法、ハイブリダィゼイシヨン法というァ ッセィにおいて陽性となることを決定することにより判定することができる。
[0114] 細胞接着分子としては、例えば、組織固着性の細胞系に広く知られる細胞接着分 子としてカドヘリンがあり、カドヘリンは、本発明の好ましい実施形態において使用す
ることができる。一方,非固着性の血液'免疫系の細胞では,細胞接着分子としては
、例えば、免疫グロブリンスーパーファミリー分子(CD 2、 LFA—3、 ICAM—1、 C D2、 CD4、 CD8、 ICM1、 ICAM2、 VCAM1など);インテグリンファミリー分子(LF A— 1、 Mac— 1、 gpllbllla, pl50、 95、 VLA1、 VLA2、 VLA3、 VLA4、 VLA5、 VLA6など);セレクチンファミリー分子(L—セレクチン, E—セレクチン, P—セレクチ ンなど)などが挙げられるがそれらに限定されない。従って、そのような分子は、血液- 免疫系の組織または臓器を処置するための特に有用であり得る。
[0115] 細胞接着分子は、非固着性の細胞が特定の組織で働くためにはその組織への接 着が必要となる。その場合,恒常的に発現するセレクチン分子などによる一次接着、 それに続いて活性ィ匕されるインテグリン分子などの二次接着によって細胞間の接着 は段階的に強くなると考えられている。従って、本発明において用いられる細胞接着 分子としては、そのような一次接着を媒介する因子、二次接着を媒介する因子、また はその両方が一緒に使用され得る。
[0116] 本明細書において「細胞接着性タンパク質」とは、上述のような細胞接着を媒介す る機能を有するタンパク質をいう。従って、本明細書において細胞接着性タンパク質 は、細胞-基質接着の際の基質側のタンパク質を包含するが、本明細書では、細胞 側のタンパク質 (例えば、インテグリンなど)をも包含する。例えば、基質側のタンパク 質を吸着した基質 (ガラスやプラスチック)の上に無血清条件下で培養細胞を播種す ると,レセプターであるインテグリンが細胞接着性タンパク質を認識し、細胞はその基 質に接着する。細胞接着性蛋白質の活性部位はアミノ酸レベルで解明されており、 R GD, YIGSRなどが知られている(これらを、総合して RGD配列とも呼ぶ)。従って、 1 つの好ましい実施形態において、本発明の組織片に含まれるタンパク質は、 RGD、 YIGSRなどの RGD配列を含むことが有利であり得る。通常、細胞接着性タンパク質 は、細胞外マトリックス、培養細胞表面、血漿 '血清'各種体液に存在する。その生体 内での機能としては,細胞の細胞外マトリックスへの接着だけでなく,細胞の移動'増 殖'形態調節 ·組織構築などが知られている。細胞作用とは別に,血液凝固 '補体作 用の調節機能を示すタンパク質もあり、本発明では、そのような機能を有するタンパク 質もまた有用であり得る。そのような細胞接着性タンパク質としては、例えば、フイブ口
ネクチン,コラーゲン,ビトロネクチン,ラミニンなどが挙げられるがそれらに限定され ない。
[0117] 本明細書において「RGD分子」とは、アミノ酸配列 RGD (Arg— Gly— Asp)または その機能的に同一な配列を含むタンパク質分子をいう。 RGD分子は、細胞接着性 蛋白質の細胞接着活性部位のアミノ酸配列として有用なアミノ酸配列である RGDま たは機能的に等価な別のアミノ酸配列を含むことを特徴とする。 RGD配列は、フイブ ロネクチンの細胞接着部位として発見され、その後, I型コラーゲン、ラミニン,ビトロネ クチン,フイブリノゲン,フォンヴィルブランド因子,ェンタクチンなど多くの細胞接着性 の活性を示す分子に見出された。化学合成した RGDペプチドを固相化すると細胞 接着活性を示すことから、本発明における生体分子は、化学合成した RGD分子であ つてもよい。そのような RGD分子としては、上述の天然に存在する分子のほかに、例 えば、 GRGDSPペプチドが挙げられるがそれに限定されない。 RGD配列は細胞接 着分子(かつ、レセプターでもある)であるインテグリン (例えば、フイブロネクチンのレ セプター)によって認識されることから、 RGDの機能的に等価な分子は、そのようなィ ンテグリンを用いて相互作用を調べることによって同定することができる。
[0118] 本明細書において、「インテグリン」とは、細胞接着に関与するレセプターである膜 貫通糖タンパク質をいう。インテグリンは、細胞表面に存在し、細胞が細胞外マトリック スに接着するときに機能する。血球系などでは細胞どうしの接着にも関与することが 知られている。そのようなインテグリンとしては、例えば、フイブロネクチン、ビトロネクチ ン、コラーゲンなどのレセプター、血小板の lib/Ilia,マクロファージの Mac— 1,リ ンパ球の LFA—l, VLA—1〜6,ショウジヨウバエの PSAなどが挙げられるがそれ に限定されない。通常、インテグリンは,分子量 130kDa〜210kDaの α鎖と分子量 95kDa〜130kDaの j8鎖と力 非共有結合で 1対 1に会合したヘテロ二量体の構造 をと 。 α鎖とし一しは、 f列? Jよ、 Q; 、 Q; 、 Q; 、 Q; 、 Q; 、 Q; 、 Q; '、 Q; 、 α 、 α 、 α v、 α Εなどがあるがそれに限定されない。 j8鎖としては、例えば j8 、 β 、 β 、 β 、
1 2 3 4 β 、 β 、 β などがあるがそれに限定されない。
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[0119] このようなヘテロ二量体としては、例えば、 GpIIblllaのほかに、 VLA—1、 VLA— 2、 VLA— 3、 VLA— 4、 VLA— 5、 VLA— 6、 CD51/CD29, LFA— 1、 Mac— 1
、pl 50, 90、ビトロネクチンレセプター、 j8 4サブファミリー、 j8 5サブファミリー、 j8 6サ ブファミリー、 LPAM—1、 HML— 1などがあるがそれに限定されない。通常、 α鎖 の細胞外ドメインに二価カチオン結合部位があり、 β鎖の細胞外ドメインにシスティン リッチ領域があり、 β鎖の細胞内ドメインにチロシンリン酸ィ匕部位があることが多い。 結合リガンド中の認識部位は RGD配列であることが多い。従って、インテグリンは、 R GD分子であり得る。
[0120] 本明細書にぉ 、て「コラーゲン」とは、タンパク質の一種で、線維形成コラーゲンで あり 3本のポリペプチド鎖が 3重螺旋を巻いた領域の総称であり、細胞生着、増殖の 足場であり、組織骨格を形成するものをいう。コラーゲンは、動物の細胞外マトリクス の主成分である。コラーゲンもまた、 RGD配列をもち、細胞接着活性を示すことが知 られている。コラーゲンは、動物の全タンパク質中の約 20〜30%も含まれ、皮膚、腱 、軟骨などに多量に含まれることが知られている。コラーゲン分子としては、 I型〜 XIII 型が知られている。通常、分子一つが 3本のポリペプチド鎖力もなる三重らせん構造 を採り、各鎖は α鎖と呼ばれることが多い。コラーゲン分子では、 1分子は 1種類の α 鎖力もなつていてもよぐ別々の遺伝子にコードされた複数種の α鎖力もなつていて もよい。 α鎖は、通常、 a l , a 2, α 3のように αの後に数字をつけてよび,さらにコ ラーゲンの型をつけて, a 1 (I)などと称する。従って、本発明では、例えば、 [ α 1 (I) α 2 (I) ] (I型コラーゲン)のような天然に存在するコラーゲン分子のほか、天然に存
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在しな 、ような組み合わせの三量体もまた使用され得る。コラーゲンの一次構造の大 部分は、 [Gly— X— Pro (またはヒドロキシプロリル) Ί (Xは任意のアミノ酸残基)のァ ミノ酸配列力もなる特徴をもつ。この構造は、 3残基周期の左巻きらせん構造をとる。 コラーゲンは通常、特殊なアミノ酸としてヒドロキシリジンを含む。コラーゲンは、糖タン ノ ク質である力 糖はヒドロキシリジンの水酸基に結合して!/、る。
[0121] コラーゲンには、線維状で存在し集まって膠原線維をなす線維形成コラーゲンまた は間質型コラーゲンという種類がある。そのような線維形成コラーゲンには、 I型、 II型 、 ΙΠ型、 V型、 XI型コラーゲンがあり、本発明の好ましい実施形態において使用され る。コラーゲンとしては、このほかに、短鎖コラーゲン (VIII型、 X型など)、基底膜コラ 一ゲン(IV型など)、 FACITコラーゲン(IX型、 ΧΠ型、 XIV型、 XVI型、 XIX型など)
、 multiplexinsコラーゲン(XV型、 XVIII型など)、ミクロフイブリルコラーゲン(VI型 など)、長鎖コラーゲン (VII型など)、膜結合型コラーゲン (ΧΙΠ型, XVII型など)など が挙げられ、これらはすべて本発明において使用され得る。本明細書において「基 底膜コラーゲン」とは、基底膜を構成する主要なコラーゲンを ヽぅ。
[0122] 本明細書にぉ 、て「I型コラーゲン」とは、 [ α 1 (I) « 2 (I) ] t 、う構造を有するコラ
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一ゲンであり、 a 1 (I)鎖 2本および a 2 (I)鎖のポリペプチド鎖のへテロ 3本鎖からなり 、生体内のあらゆる組織に存在する組織骨格およびその機能的に等価な分子を!ヽ い、そのようなポリペプチドのアミノ酸配列としては、代表的には、 Genbankのァクセ ッシヨン番号では、 p02454、 p02464が挙げられるがそれに限定されない。本明細 書において、 I型コラーゲンの機能的に等価な分子は、例えば、酵素抗体法、 EIA法 t 、う方法により同定することができる。
[0123] 本明細書において「IV型コラーゲン」とは、基底膜コラーゲンであり、その分子は、 7 S、 NC2、 TH2、 NCIの 4つのドメインからなっており、 N末端の 7Sで 4分子が重合し 、 C末端の NC1で 2分子が重合することにより、網目状のネットワークを形成している コラーゲンまたはその機能的に等価な分子をいい、そのようなポリペプチドのアミノ酸 酉己歹 IJとしては、代表的には、 Genbankのァクセッション番号 p02462、 p08572、 UO 2520、 D17391、 P29400、 U04845力 ^挙げ、られる力 ^それに限定されな!/、。本明糸田 書において、 IV型コラーゲンの機能的に等価な分子は、例えば、酵素抗体法、 EIA 法と 、う方法により同定することができる。
[0124] 本明細書において「フイブロネクチン」は、当該分野において使用される意味と同じ 意味で用いられ、従来接着因子の一つとして分類されるタンパク質である。
[0125] 本明細書において「ラミニン」とは、 本明細書において「ラミニン」は、当該分野に おいて使用される意味と同じ意味で用いられ、従来接着因子の一つとして分類され るタンパク質であり、細胞接着機能に注目されて研究が進められている分子である。 ラミニンは基底膜を構成する高分子糖タンパク質で、その生理活性は細胞接着、伸 展、細胞間信号伝達、正常細胞および癌細胞の増殖、細胞分化誘導、癌細胞転移 など、多くの細胞機能に関与している。ラミニンは、 Engelbreth-Holm-Swarmマウス腫 瘍など力も精製することができる。ラミニンを合成する場合は、 α鎖、 |8鎖および γ鎖
からなり、種々の組み合わせにより 20種類以上の組み合わせが知られている。本明 細書では、どのラミニンであっても、支持体に結合する生体分子として使用することが できる。どのラミニンであっても細胞接着に関与することが知られているからである。
[0126] ラミニン、コラーゲン、フイブロネクチンなどは、 BD (Becton and Dickinson and Company)力ら人手することができる。
[0127] 本明細書において「架橋可能な分子」とは、生体適合性材料と生体分子との間、タ ンパク質とタンパク質との間、タンパク質と核酸との間、または DNAの二本鎖の間な どで共有結合が起ることが可能な分子をいう。そのような架橋の形態としては、例えば 、未熟架橋 (シッフ塩基型架橋)、成熟架橋 (ピリジノリン)、老化架橋 (ヒスチジノアラ ニン)などが挙げられるがそれに限定されない。このような架橋は、歯などの強固な構 造が望ましいときに好ましくあり得る。
[0128] (支持体、移植片)
本明細書にぉ ヽて「支持体」とは、本発明の組織片または生体適合性組織片が構 築される材料 (好ましくは固体)をいう。支持体としては、例えば、パッチ、弁状、管状 、膜状などの形態があり得る。支持体の材料としては、共有結合かまたは非共有結合 のいずれかで、本発明において使用される生体分子に結合する特性を有するかまた はそのような特性を有するように誘導体化され得る、任意の固体材料が挙げられる。 従って、そのような支持体の材料としては、例えば、そのような材料としては、固体表 面を形成し得る任意の材料が使用され得るが、例えば、ガラス、シリカ、シリコーン、 セラミック、二酸化珪素、プラスチック、金属 (合金も含まれる)、天然および合成のポ リマー(例えば、生分解性ポリマー(例えば、 PGA、 PLGA、 PLA、 PCLA)、ポリスチ レン、セルロース、キトサン、デキストラン、およびナイロン)、タンパク質などが挙げら れるがそれらに限定されない。支持体は、複数の異なる材料から形成されていてもよ い。そのような材料は、本発明の組織片において用いられる場合、生体適合性である ことが好ましい。生体適合性であるかどうかは、例えば、生化学的定量 (SDS— PAG 法、標識コラーゲン法)、免疫学的定量 (酵素抗体法、蛍光抗体法、免疫組織学的 検討)等の拒絶反応をみることにより確認することができる。より好ましくは、本発明に おいて使用される支持体は、生分解性であることが有利であり得る。本発明の組織片
は、一定期間後はその中の成分が不要となることから、その一定期間後に分解して 消えることが望ましいことがある力もである。そのような生分解性の材料としては、例え ば、生分解性ポリマー(例えば、 PGA、 PLGA、 PCLAなど)が挙げられるがそれらに 限定されない。あるいは、本発明において使用される支持体は、生体の一部となるこ とができる成分であってもよい。そのような成分としては、例えば、シリコーン、セラミツ ク、タンパク質、脂質、核酸、糖 (炭水化物)およびそれらの複合体が挙げられるがそ れに限定されない。
[0129] 本明細書において「第一層」は、本発明の支持体において使用されるときは粗面を 有することから、通常、移植片として使用されるときに内腔側に向けられるように用い られることが企図される。
[0130] 本明細書において「第二層」は、本発明の支持体において使用されるときは強度を 生体内の衝撃に対して耐え得ることから、通常、移植片として使用されるときに、内腔 側の反対側として使用されることが企図される。
[0131] 本明細書において「中間層」とは、支持体中の第二層と第一層との間の層として使 用されることが企図される層をいう。中間層は、必ずしも第二層または第一層と密着 する必要はないが、少なくとも 1点において、第一層および第二層と接着されているこ とが通常必要である。封着が目的とされる場合は、第二層および第一層のいずれか の層と密着されることが好ましく、より好ましくは両方の層と密着されることが有利であ る。
[0132] 本明細書において、本発明の支持体は、第一層、第二層を含み、この両層は少な くとも 1点において接着され、好ましくは、中間層を含み、この中間層によってその接 着が達成され、必要に応じて、更なる層(第三層、第四層など)を含み得ることが理解 される。
[0133] 本明細書において「粗面」とは、表面上に孔を有することをいい、好ましくは、細胞 を収容するに充分なスペースを有する孔が配置される面をいう。このような孔は、細 胞を収容することができることが望ましいことから、通常、少なくとも 1 m程度の直径 を有し、好ましくは少なくとも 10 m程度の直径を有することが好ましい。より好ましく は、粗面に存在する孔は、少なくとも 50 mの直径、さらに好ましくは少なくとも 100
mの直径を有することが有利である。このような粗面を有することによって、本発明 の支持体の第一層は、細胞の足場として機能することになる。粗面を有する層として は、例えば、編物があるがそれに限定されない。
[0134] 本明細書において「生体内衝撃に耐え得る強度」とは、移植された後に移植された 場所での通常の生体内の衝撃に耐え得ることをいい、移植部位によって変動するが 、当業者はその移植部位が決定されると、この強度を即座に理解することができ、決 定することができる。そのような強度は、引っ張り強度 (代表的単位は N (力)、 MPa ( 応力))、弾性率 (ヤング率;代表的単位は N (力)、 MPa (応力))、伸び (代表的単位 は%)などの尺度によって表現することができる。このような強度を有する層としては、 例えば、織物があるがそれに限定されない。
[0135] 本明細書において引っ張り強度、弾性率、伸びなどは、引張り試験によって確認す ることができる。本明細書において使用される例示的な引張り試験は、以下のとおり である。
[0136] 本明細書において組織片の引っ張り強度は、引張試験機 (TENSILLON ORIE NTEC)で強度測定することができる。具体的には、幅 5mm長さ 30mmの短冊状素 材を短軸方向に lOmmZ分の速度で荷重負荷し、破断点負荷および弾性率を測定 することができる。代表的には、移植可能な組織片は、その強度が少なくとも約 10N 以上であり得、通常約 25N以上であり得、好ましくは約 50N以上であり、より好ましく は約 75N以上であり得る。通常の臓器移植に使用する場合には、約 50N以上である ことが好ましい。破壊されないからである。上述のプロトコルにおいて、伸びの測定は 、引張り刺激の前後での各方向の長さを測定し、引張り後の長さを引張り前の長さで 割り 100をかけることによって得ることができる。応力で表示する場合、本発明の支持 体は、通常、少なくとも IMPaの引張り強度を有し、好ましくは少なくとも 5MPaの引 張り強度を有し、より好ましくは少なくとも lOMPaの引張り強度を有する。弾性率でみ ると、本発明の支持体は、通常 IMPaの弾性率を有し、好ましくは少なくとも lOMPa の弾性率を有し、より好ましくは少なくとも 20MPaの弾性率を有する。伸びに関して は、本発明の支持体は、通常少なくとも 105%、好ましくは 110%の伸びを有する。 伸びは、縦方向と横方向とを両方測定する。この両方の伸びにばらつきがないほうが
好ましいがそれに限定されない。強度、弾性率などは、 N (力)で表示してもよぐ MP a (応力)で表示してもよい。そのような場合、 1N/測定 mm2=lMPaという公式によって 換算することができる。
[0137] 本明細書において「封着」とは、本発明の支持体において表面と裏面との間の生体 分子の行き来が実質的に不可能になる程度に接着されていることをいう。このような 封着の度合いは、水漏れ率によって表現することができる。封着することができる層と しては、例えば、合成生体分解性ポリマーが挙げられるがそれらに限定されない。
[0138] 本明細書において水漏れ率は、対象となる支持体を水平に置き、その上に 10mlの 水を垂らし、 60秒間でどのくらい水が漏れるかを測定し、漏れた量自体、または漏れ た量を 10mlで割ることによって得られた値を水漏れ率として表示する。
[0139] 本明細書においてある層と別の層との間の接着強度は、引張り試験によって測定 することができる。具体的には、上述の試験において、以下のようにすることによって 柳』定することができる。
[0140] 引っ張り試験において、接着強度を測るには、具体的には、 20mm長さの第一層と 20mm長さの第二層とを 10mm分好ましくは接着層(中間層)を設けて接着し、長さ 3 Ommの短冊状支持体を製作し、長手軸方向に lOmmZ分の速度で荷重負荷し、破 断点における負荷を接着強度をして採用した。接着強度の測定については、 Otani et al, Biomaterials 17(1996) 1387- 1391を参照のこと。
[0141] 本明細書において「編物」(knit)とは、材料 (通常糸状のものが使用される)を、針 またはワイヤーなどの手段を用いて材料のループを組み合わせる(順次つなげて!/ヽ く)ことによって作製された生地をいう。編物は、生地中にスペースがあることが望まし い場合に用いられる。編物は、このように輪をつなげていくことから、隙間が開き、細 胞を収容するに十分なスペースを作製することができる。しかし、編物だけでは、隙 間が多く液体 (例えば、血液のような体液)が漏れてしまうという欠点がある。
[0142] 本明細書において「織物」(woven)とは、材料 (通常糸状のものが使用される)を、 代表的には縦部分 (縦糸;径部分、径糸ともいう)と横部分 (横糸;緯糸ともいう)とを組 み合わせることによって作製された生地をいう。織物は、隙間がほとんどないことから 、液体 (例えば、血液)の漏れを防止することが望ましい場合に用いられる。しかし、
織物だけでは縫合したときに端がほつれるという問題点がある。
[0143] 本明細書において「細胞が入り込むに充分なスペース」とは、支持体または層につ いて言及されるとき、細胞がその支持体または層に少なくとも付着することができ、好 ましくは細胞が収容されるに充分なスペースをいう。そのようなスペースは、例えば、 少なくとも 10 m、好ましくは少なくとも 50 m、さら〖こ好ましくは少なくとも 100 m の直径であらわすことができる。細胞が入り込むに充分なスペースは、細胞が付着す ることができる限り、上記下限の数値よりも小さな直径のスペースであってもよい。好 ましくは、このようなスペースは、液体が漏れにくい程度の大きさであることが好ましい 。したがって、例えば、上限として直径 200 mなどがあげられるがそれらに限定され ない。
[0144] 本明細書において「生体適合性」とは、毒性、免疫反応、損傷などを生じることなく 生体組織または臓器と適合する性質をいう。本発明において生体適合性とは、ある 物質について用いられる場合、その物質が、そのまま使用される場合に生体適合性 を有する場合を当然に含むが、上述のような毒性、免疫反応または損傷を必要に応 じて防御する手段 (例えば、免疫抑制剤の投与など)を講じることができる(すなわち 、その物質自体を使用する場合には毒性、免疫反応または損傷を生じるとしても、防 御手段とともに用いる場合にそのような毒性、免疫反応、損傷などが顕著に減少また は実質的に消失する)限り、そのような物質もまた、生体適合性であるといえる。単独 で用いる場合にせ ヽた器適合性とは 、えな 、場合は、上述の防御手段を本発明の 組織片に含むことが好ましい。本発明において使用され得る生体適合性材料として は、例えば、 PGA、 PLA、 PCLA、 PLGA、ポリ L乳酸、ポリブチレート、シリコーン、 生分解性リン酸カルシウム、多孔質 4フッ化工チレン榭脂、ポリプロピレン、アミロース 、セルロース、合成 DNA,ポリエステル類等が挙げられるがそれらに限定されない。
[0145] 本明細書にぉ 、て、「生分解性材料」とは、天然に分解する力または生体内での代 謝もしくは微生物によって分解される任意の材料をいう。通常生分解性材料としては 、生分解性ポリマーが使用される。
[0146] 本明細書において「生分解性ポリマー」または「生分解性高分子」とは、互換可能に 使用され、天然に分解するか、または生体内での代謝もしくは微生物の作用により分
解される高分子をいう。このような生分解性ポリマーは、通常、加水分解により,水, 二酸化炭素,メタンなどに分解される。このような生分解性ポリマーには、天然および 合成高分子がある。天然高分子の例としては、例えば、コラーゲン,デンプンなどの タンパク質、多糖類が挙げられ、合成高分子の例としては、ポリダリコール酸,ポリし 乳酸,ポリエチレンスクシナートなどの脂肪族ポリエステルが挙げられるがそれらに限 定されない。このような生分解性ポリマーは、外科手術用の吸収性縫合糸,徐放性 薬剤の基材,骨接合用材料として用いられており、そのような用途で使用されるような ものであれば、どのようなポリマーであっても本発明において使用することができる。 生分解性ポリマーとしては、例えば、ポリペプチド、ポリサッカリド、核酸、 PGA、 PLG A、ポリ L乳酸、ポリプチレート、リンゴ酸共重合体、ラクチドー力プロラタトン共重合体 、ポリ ε—力プロラタトン、ポリ βーヒドロキシカルボン酸、ポリジォキサノーン、ポ リ— 1, 4 ジォキセパン— 7—オン、グリコリド—トリメチレンカーボネート共重合体、 ポリセバシン酸無水物、ポリ ω (カルボキシフエノキシ)アルキルカルボン酸無水 物、ポリ—1, 3 ジォキサン 2 オン、ポリデプシペプチド、ポリ aーシァノアクリ ル酸ェチル、ポリホスファゼン、ヒドロキシアパタイトが挙げられるがそれらに限定され ない。そのような生分解性ポリマーとしては、好ましくは、生体内で一定時間は定着し 、その後分解または吸収される性質をもつことが有利であり得る。そのような分解は、 代謝に用いられる酵素系の作用により進行する特異的分解機構によるものと、酵素 などがなくても体液との接触により自然分解する非特異的分解機構とがあるが、本発 明にお 、ては、 V、ずれかまたは両方の機構により分解されるものであっても使用する ことができる。好ましくは、そのような生分解性ポリマーは、それ自体が無毒および Z または免疫原性がないことに加えて、その分解 (代謝)中間産物、分解 (代謝)産物な どもまた、無毒および Zまたは免疫原性がな 、ことが好まし 、。
本明細書において「PGA」とは、ポリダリコール酸の略称であり、グリコール酸の重 合体である。グリコール酸は、 CH (OH) COOHで表される。 PGAはポリグリコリドと
2
も呼ばれ得る。ポリグリコール酸は、編物を作製するのに適していることから、本発明 では、代表的には、粗面を有する第一層のために使用され得るがそれに限定されな い。
[0148] 本明細書において「PLA」とは、ポリ L乳酸の略称であり、 L乳酸の重合体である。 グリコール酸は、 CH CH (OH) COOHで表される。 PLAはポリラクチドとも呼ばれ得
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る。ポリ L乳酸は、織物を作製するのに適していることから、本発明では、生体内衝撃 に耐え得る強度を有する第二層のために使用され得るがそれに限定されない。
[0149] PGAおよび PLAは、当該分野において周知の方法により合成することができる。そ のような方法としては、例えば、グリコール酸または乳酸の加熱脱水重合、 α—ハロ 酢酸、 α—ハロプロピオン酸の脱ハロゲン化水素などの縮重合などにより合成するこ とができる。好ましくは、重合度を上昇させるために、得られたオリゴマーを、いったん 減圧下に加熱分解して環状二量体であるグリコリドまたはラクチドを得、これらを開環 重合することにより目的の重合度の高分子を合成することができる(例えば、 H. R. Κ richeldorf, et al. Makromol. Chem. Suppl. 12, 25 (1985)を参照のこと)。こ の場合、重合後に残る触媒が生体毒とならないことが好ましい。そのような触媒として は、例えば、ォクチル酸スズなどが挙げられるがそれに限定されず、当該分野におい て用いられる生体毒を生じな 、か低生体毒性であるものであれば、どのようなもので ち用いることがでさる。
[0150] 本明細書において「PLGA」とは、ポリ L乳酸ポリグリコール酸共重合体の略称であ り、グリコール酸と乳酸との共重合体である。乳酸は、 CH CH (OH) COOHで表さ
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れる。 PLGAは、ポリダラクチン (polyglactin)と呼ばれ得る(例えば、グリコリド Zラタ チド =9Zl)。
[0151] そのような PLGAは、当該分野において周知の手法により合成することができる。 P LGAは、含まれるグリコール酸および乳酸の割合によつて、その性質を劇的に変動 させることができる。例えば、生体内の吸収半減期は、 R. A. Miller et al. J. Bio med. Res. 11, 719 (1977)において記載されるような関係式を利用して、数日〜 数ケ月の範囲内で変動させることができる。 2〜3週間以内の生体内半減期が望まし い場合は、通常、?1^\と130八との割合を20 : 80〜80 : 20に採ることが好ましぃ。こ れに対し、 1ヶ月以上の生体内半減期が望ましい場合は、通常、 PLAと PGAとの割 合を 20 : 80〜0 : 100とする力 ある!/ヽは 80 : 20〜: L00 : 0とすること力 子まし!/ヽ。従つ て、長い吸収半減期(例えば、数ケ月)が望ましい場合は、 PLAまたは PGAを使用
することが好ましい。 PLGAは、 PLAと PGAとの割合を変化させることにより繊維強 度の半減期も変動させることができる。繊維強度の半減期は、通常、 PGAおよび PL Aで 2〜3週間であり、 PLAで 3〜6ヶ月であることから、繊維強度の半減期が長いも のが望ましい場合は、 PLGAにおいて PLAの割合を増加させる力、あるいは PLA自 体を使用することが好ましい。
[0152] PLGAの合成は、当該分野において周知であり、上述の PLAおよび PGAの合成 において生成されるグリコリドおよびラクチドを混合物として用いて、開環共重合させ ることによって達成される。このようにして得られた PLGAは、通常グリコリド:ラクチド の割合が 25: 75-75: 20までではガラス状の高分子である力 グリコリド:ラクチドの 割合が 25 : 75〜0 : 100では、ポリ L—乳酸に類似する結晶性の高分子となり、グリコ リド:ラクチドが 75: 25〜: LOO: 0では、ポリダリコール酸に類似する結晶性高分子とな る。従って、当業者は、これらの組成を変動させることによって、加水分解性、材料強 度を変動させることができる。
[0153] 本明細書にお!、て「メッシュ状」とは、組織片などの形状にっ 、て 、う場合、網目状 のものをいう。メッシュ状の糸且織片は、当該分野において周知の方法により生産する ことができる。そのようなメッシュ状の組織片のメッシュの細かい形状もまた、当該分野 にお 、て周知の方法を用いて調製することができる。そのようなメッシュ状組織片とし ては、例えば、市販のもの(VICRYL KNITTED MESH (ETHICON製))を使 用することができる。
[0154] 本明細書にぉ 、て「スポンジ状」とは、組織片などの形状にっ 、て 、う場合、多孔 質のものをいう。そのようなスポンジ状の糸且織片は、当該分野において周知の方法を 用いて調製することができる。そのようなスポンジ状組織片としては、例えば、市販の もの(VICRYL WOVEN MESH (ETHICON製))を使用することができる。
[0155] 本明細書において「コーティング」とは、支持体などにおいて使用される場合、その 支持体がある別の物質によって覆われる状態をいう。従って、コーティングは、コーテ イングがされる支持体と相互作用をすることができる物質を用いて行うことができる。コ 一ティングによって、支持体は、その支持体自体の物質が外界 (例えば、空気)と触 れなくなるように処理されて!、てもよ 、が、支持体とコーティング物質とがある程度相
互作用する状態を保持するのであれば、外界と触れなくなるほどにコーティングされ ていなくてもよい。そのようなコーティングの程度は、任意であり、当業者は、当該分 野において周知の技法を用いて調整することができる。そのようなコーティング技術 は、例えば、高分子機能材料シリーズ医療機能材料 共立出版株式会社に記載され ている。
[0156] 本明細書において使用される「細胞」は、当該分野において用いられる最も広義の 意味と同様に定義され、多細胞生物の組織の構成単位であって、外界を隔離する膜 構造に包まれ、内部に自己再生能を備え、遺伝情報およびその発現機構を有する 生命体をいう。本発明の方法においては、どのような細胞でも対象とされ得る。本明 細書において細胞数は、光学顕微鏡を通じて計数することができる。光学顕微鏡を 通じて計数する場合は、核の数を数えることにより計数を行う。当該組織を組織切片 スライスとし、へマトキシリン—ェォシン (HE)染色を行うことにより細胞外マトリクスお よび細胞に由来する核を色素によって染め分ける。この組織切片を光学顕微鏡にて 検鏡し、特定の面積 (例えば、 200 m X 200 μ m)あたりの核の数を細胞数と見積 つて計数することができる。
[0157] 細胞は、石灰化および免疫反応惹起の原因となる。従って、組織または臓器への 移植のためには、自己由来以外の細胞はできるだけ除去されるべきであり、本発明 においては、含まないことが好ましくあり得る。本発明の組織片において細胞を含む 場合は、自己由来の細胞のような免疫拒絶の問題が通常生じないと考えられる細胞 を用いることが好ましい。
[0158] 本発明で細胞が用いられる場合、そのような細胞はどの生物(例えば、脊椎動物、 無脊椎動物)由来の細胞でもよい。好ましくは、脊椎動物由来の細胞が用いられ、よ り好ましくは、哺乳動物 (例えば、霊長類、齧歯類など)由来の細胞が用いられる。さ らに好ましくは、霊長類由来の細胞が用いられる。ヒトへの移植に用いられる場合、最 も好ましくはヒト (特に、自己または遺伝子系の類似もしくは同一である個体)由来の 細胞が用いられる。
[0159] 本明細書にぉ 、て「細胞の置換」とは、組織内で、もとあった細胞または何もなかつ た場所に代わり、別の細胞が侵入し置き換わることをいい、細胞の浸潤ともいう。本発
明の組織片を用いると、細胞の置換は、移植の宿主内の細胞によって行われる。本 発明の組織片を用いると、自己由来の細胞などは全くないにもかかわらず、移植後 に宿主由来の細胞が浸潤し置換することが認められた。このような事象はこれまで開 発された移植片などのグラフトでは決して起こらな力つたことであり、このこと自体、本 発明の予想外の極めて優れた効果を示すものといえる。細胞の置換は、当該分野に おいて公知の手法を用いて確認することができ、例えば、フォンビルブランド因子、 α — SMA、弾性組織についてのファン'ギーソンなどのように、自己細胞の増殖を確認 するマーカーを用いて判定することができる。そのような細胞の置換を確認する手法 は、例えば、病理組織染色ハンドブック 医学書院に記載されている。
[0160] 本明細書において「組織」(tissue)とは、生物において、同一の機能 ·形態をもつ 細胞集団をいう。多細胞生物では、通常それを構成する細胞が分化し、機能が専能 化し、分業化がおこる。従って細胞の単なる集合体であり得ず,ある機能と構造を備 えた有機的細胞集団,社会的細胞集団としての組織が構成されることになる。組織と しては、外皮組織、結合組織、筋組織、神経組織などが挙げられるがそれらに限定さ れない。本発明が対象とする組織は、生物のどの臓器または器官由来の組織でもよ い。本発明の好ましい実施形態では、本発明の組織片が移植される対象組織として は、血管、血管様組織、心臓弁、心膜、硬膜、心臓、心臓内、皮膚、骨、軟部組織、 気管などの組織が挙げられるがそれらに限定されない。本発明で用いられる支持体 に使用される分子は、好ましくは生体適合性であることから、原理的にはどの器官由 来の組織でも本発明の移植対象とすることができる。従って、本発明が対象とする組 織は、生物のどの臓器または器官由来でもよぐまた、本発明が対象とする組織は、 どのような種類の生物由来であり得る。本発明が対象とする生物としては、脊椎動物 または無脊椎動物が挙げられる。好ましくは、本発明が対象とする生物は、哺乳動物 (例えば、霊長類、齧歯類など)である。より好ましくは、本発明が対象とする生物は、 霊長類である。最も好ましくは、本発明はヒトを対象とする。
[0161] 本明細書にお!、て「組織片」(implantまたは explant)とは、組織または臓器の一 部 (もしくは全部)または組織または臓器の一部 (もしくは全部)となり得る物質を ヽぅ。 組織片は、人工的に合成することもでき、または天然に存在する材料を使用してもよ
ぐあるいは、両者を使用してもよい。組織片は、通常、その形状を維持するための支 持体を含む。本明細書において、本発明の支持体は、それ自体のみで、または生体 分子と組み合わせて組織片として使用することができる。好ましくは、本発明では、組 織片として人工のものが使用される。
[0162] 本明細書において「組織片」は、「移植片」、「グラフト」および「組織グラフト」と交換 可能に用いられ得る。組織片は、通常、身体の特定部位に挿入されるべき同種また は異種の組織または細胞群あるいは人工合成物であって、身体への挿入後その一 部となる。従来の移植片としては、例えば、臓器または臓器の一部、血管、血管様組 織、皮片、心臓弁、心膜、硬膜、角膜骨片、歯などが使用されてきた。従って、移植 片には、ある部分の欠損部に差し込んで欠損を補うために用いられるものすべてが 包含される。移植片としては、そのドナー(donor)の種類によって、自己(自家)移植 片 (autograft) ,同種移植片(同種異系移植片)(allograft)、異種移植片が挙げら れるがそれらに限定されない。
[0163] 本明細書において「膜状組織」とは、「平面状組織」ともいい、膜状の組織をいう。膜 状組織には、心膜、硬膜、角膜などの器官の組織が挙げられる。
[0164] 本明細書において「管状組織」とは、管状の組織をいう。管状組織には、血管など の器官の組織が挙げられる。
[0165] 本明細書において「臓器」または「器官」(organ)とは、互換的に用いられ、生物個 体のある機能が個体内の特定の部分に局在して営まれ,かつその部分が形態的に 独立性をもっている構造体をいう。一般に多細胞生物(例えば、動物、植物)では器 官は特定の空間的配置をもつ 、くつかの組織からなり、組織は多数の細胞力もなる。 そのような臓器または器官としては、血管系に関連する臓器または器官が挙げられる 。 1つの実施形態では、本発明が対象とする器官は、虚血性の器官 (心筋梗塞を起こ した心臓、虚血を起こした骨格筋など)が挙げられる。 1つの好ましい実施形態では、 本発明が対象とする臓器は、心臓、肝臓、腎臓、胃、腸、脳、骨、気管、皮膚、血管、 軟部組織である。より好ましい実施形態では、本発明が対象とする臓器は、心臓 (心 臓弁)、骨、皮膚、血管などである。
[0166] 本明細書において「免疫反応」とは、移植片と宿主との間の免疫寛容の失調による
反応をいい、例えば、超急性拒絶反応 (移植後数分以内)(j8— Galなどの抗体によ る免疫反応)、急性拒絶反応 (移植後約 7〜21日の細胞性免疫による反応)、慢性拒 絶反応(3力月以降の細胞性免疫による拒絶反応)などが挙げられる。
[0167] 本明細書にお!、て免疫反応を惹起するかどうかは、 HE染色などを含む染色、免疫 染色、組織切片の検鏡によって、移植組織中への細胞 (免疫系)浸潤について、そ の種、数などの病理組織学的検討を行うことにより判定することができる。
[0168] 本明細書にぉ 、て「石灰化」とは、生物体で石灰質が沈着することを 、う。生体内 の組織または臓器が石灰化すると、通常その組織または臓器の正常な機能が損な われることから、石灰化は起こらないほうが好ましい。従って、移植治療では、石灰化 を回避する処置をとることが従来より望まれていた。本発明の組織片を用いると、石 灰化の問題は回避される。
[0169] 本明細書において生体内で「石灰化する」かどうかは、カルシウム濃度を測定する ことによって判定することができ、移植組織を取り出し、酸処理などにより組織切片を 溶解させ、その溶液を原子吸光度などの微量元素定量装置により測定し、定量する ことができる。
[0170] 本明細書において「生体内」または「インビボ」(in vivo)とは、生体の内部をいう。
特定の文脈において、「生体内」は、目的とする組織または器官が配置されるべき位 置をいう。
[0171] 本明細書において「インビトロ」(in vitro)とは、種々の研究目的のために生体の 一部分が「生体外に」(例えば、試験管内に)摘出または遊離されている状態をいう。 インビボと対照をなす用語である。
[0172] 本明細書にぉ 、て「ェキソビボ」(ex vivo)とは、遺伝子導入を行うための標的細 胞を被験体より抽出し、インビトロで治療遺伝子を導入した後に、再び同一被験体に 戻す場合、一連の動作をェキソビボという。
[0173] 本明細書において自己移植片または自家移植片とは、ある個体についていうとき、 その個体に由来する移植片をいう。本明細書において自己移植片というときは、広義 には遺伝的に同じ他個体 (例えば一卵性双生児)からの移植片をも含み得る。
[0174] 本明細書において同種移植片(同種異系移植片)とは、同種であっても遺伝的に
は異なる他個体力 移植される移植片をいう。遺伝的に異なることから、同種異系移 植片は、移植された個体 (レシピエント)において免疫反応を惹起し得る。そのような 移植片の例としては、親由来の移植片などが挙げられるがそれらに限定されない。
[0175] 本明細書において異種移植片とは、異種個体力も移植される移植片をいう。従って 、例えば、ヒトがレシピエントである場合、ブタカもの移植片は異種移植片という。
[0176] 本明細書において「レシピエント」(受容者)とは、移植片または移植体を受け取る 個体といい、「宿主」とも呼ばれる。これに対し、移植片または移植体を提供する個体 は、「ドナー」(供与者)という。
[0177] 本明細書において「被験体」とは、本発明の処置が適用される生物をいい、「患者」 ともいわれる。患者または被験体は好ましくは、ヒトであり得る。
[0178] 本明細書において「薬学的に受容可能なキャリア」は、医薬または動物薬を製造す るときに使用される物質であり、有効成分に有害な影響を与えないものをいう。そのよ うな薬学的に受容可能なキャリアとしては、例えば、抗酸化剤、保存剤、着色料、風 味料、および希釈剤、乳化剤、懸濁化剤、溶媒、フィラー、増量剤、緩衝剤、送達ビヒ クル、希釈剤、賦形剤および Zまたは農学的もしくは薬学的アジュバントなどが挙げ られるがそれらに限定されない。
[0179] (好ましい実施形態の説明)
以下に本発明の最良の形態を説明する。以下に提供される実施形態は、本発明の よりよい理解のために提供されるものであり、本発明の範囲は以下の記載に限定され るべきでないことが理解される。従って、当業者は、本明細書中の記載を参酌して、 本発明の範囲内で適宜改変を行うことができることは明らかである。
[0180] (血管新生ペプチド付着組織片)
1つの局面において、本発明は、血管新生分子を含む生体適合性組織片を提供 する。この生体適合性組織片は、 A)血管新生ペプチド (例えば、アミノ酸配列 X— X —X—X—X—X—X (ここで、 X =セリン(S)、スレオニン (T)またはその改変体
2 3 4 5 6 7 1
であるかあるいは存在しない、 X =バリン (V)、ァラニン (A)、グリシン(G)、ロイシン(
2
L)、イソロイシン (I)またはその改変体であり、 X =バリン (V)、ァラニン (A)、グリシン
3
(G)、ロイシン (L)、イソロイシン (I)またはその改変体であり、 X =側鎖に芳香環を有
するアミノ酸またはその改変体であり、 X =グリシン (G)またはその改変体であり、 X
5 6
=ロイシン (L)、了ラニン (A)、グリシン(G)、ノ リン (V)、イソロイシン (I)またはその改 変体であり、 X =アルギ-ン (R)、リジン (K)またはその改変体であるかあるいは存 在しな 、)で示されるアミノ酸配列を含むペプチドまたはその改変体);および B)支持 体を含む。この生体適合性組織片は、ペプチドまたはその改変体と支持体との構成 のみで実際に移植治療に使用され得るだけでなぐ移植後に、自己化を起こすことが 予想外に発見された。従来は、移植片としては、生体由来の自己増殖性を有するも の(例えば、組織の一部、臓器そのもの)を利用する力、あるいは人工物を使用した 場合であっても、その人工物に生体由来の自己増殖性を有するもの(例えば、細胞) を付着させる必要があると考えられていた。
[0181] 本発明において用いられる血管新生分子は、上記 (血管新生ペプチド)において 使用されるような任意のペプチドが代表的に使用されることが理解される。
[0182] 本発明では、実施例などでも示すように、自己増殖性を有するもの(例えば、細胞) を全く含まない組織片を用いて移植処置をしても、その処置の部位において自己化 (すなわち、自己またはそれと等価な細胞が集合し、増殖すること)力起こることが明ら カゝになった。従って、本発明の組織片は、従来不可能とされていた組織または臓器 を治療するのにも使用することができる。なぜなら、本発明の組織片に含まれる支持 体は、どのような形状にも変更することができるからである。
[0183] 理論に束縛されないが、本発明の組織片が宿主内の臓器または組織の一部 (代表 的には損傷部位あるいは強化が望まれる部位)に移植されると、組織片に含まれるぺ プチドまたはその改変体 (例えば、コラーゲンなど)の働きにより、宿主内の細胞 (特 に、その臓器または組織の一部となる(例えば、増殖または分化)ことができるもの)が その組織片の周辺に集合し、場合によって増殖することにより、その臓器または組織 の損傷部位または強化部位が修復または強化される。
[0184] 従って、そのようなペプチドまたはその改変体としては、宿主内の細胞を直接または 間接的に集合させる (例えば、接着あるいは、接着を媒介する分子の誘導など)こと ができる分子であれば、どのようなペプチドまたはその改変体であっても使用すること ができる。従って、このようなペプチドまたはその改変体は、生体に由来するものであ
つてもよいが、上述の機能を有する限り、合成により生産することもでき、天然に存在 するものであっても天然に存在しないものであってもよい。好ましくは、天然に存在す るものであって、その宿主に害を与えないことが判明している物質 (例えば、厚生労 働省から医薬品の成分として使用することが認められている物質、例えば、日本薬局 方収載品など)を用いることが有利であり得る。あるいは、そのようなペプチドまたはそ の改変体は、その宿主に害を与えないことが別途確認されたものであってもよい。代 表的には、そのようなペプチドまたはその改変体は、タンパク質を含む。
[0185] 1つの実施形態において、本発明において使用されるペプチドまたはその改変体 は、細胞生理活性物質を含み得る。そのような細胞生理活性物質としては、例えば、 HGF、血小板由来増殖因子 (PDGF)、表皮増殖因子 (EGF)、線維芽細胞増殖因 子 (FGF)、肝細胞増殖因子 (HGF)、血管内皮増殖因子 (VEGF)白血病抑制因子 (LIF)、 c kitリガンド (SCF)などが挙げられるがそれに限定されない。
[0186] 好ま 、実施形態では、本発明にお 、て用いられるペプチドまたはその改変体は、 細胞接着分子を含み得る。細胞接着分子は、細胞と細胞または基質との接着を媒介 することから、移植されたときに、その場所に宿主内の細胞を呼び寄せる機能を有す ると考えられることから、好ましい実施形態と考えられる。しかし、従来は、このような細 胞接着分子が直接そのような移植片として使用されるかどうかは不明であり、むしろ、 細胞などの自己増殖性のものを含ませることが必須と考えられて 、た (Raf Sodian et al. Ann Throrac Surgery 2000; 70; 140-44; Sodian R, Lemke T, Fritsche C, Hoerstrup SP, Fu P, Potapov EV, Hausmann H, Hetz er R. Tissue Eng 2002 Oct ; 8 (5) : 863- 70 ;Kadner A, Hoerstrup SP , Zund G, Eid K, Maurus C, Melnitchouk S, Grunenf elder J, Turina ML , Eur J Cardiothorac Surg. 2002 Jun; 21 (6) : 1055— 60などを参照) ことから、本発明の移植片カもたらした効果は予想外といえる。
[0187] そのような細胞接着分子としては、例えば、コラーゲン、 ICAM、 NCAM^フイブ口 ネクチン,コラーゲン,ビトロネクチン,ラミニン、インテグリン、ビトロネクチン,フイブリ ノゲン、免疫グロブリンスーパーファミリーなどが挙げられるがそれに限定されない。
[0188] 別の好ましい実施形態において、本発明において用いられるペプチドまたはその
改変体は、細胞外マトリクスを含む。そのような細胞外マトリクスもまた、細胞を集合さ せる活性を有することが知られることから、本発明における好ま U、実施形態と考えら れる。しかし、従来は、このような細胞外マトリクスが直接そのような移植片として使用 されるかどうかは不明であり、むしろ、細胞などの自己増殖性のものを含ませることが 必須と考えられていたことに鑑みると、このような細胞外マトリクスを直接移植片の主 要成分として用いることができると 、う知見は、予想外の効果と 、える。
[0189] そのような細胞外マトリクスとしては、例えば、コラーゲン、エラスチン、プロテオダリ カン、グリコサミノダリカン、フイブロネクチン、ラミニンなどが挙げられるがそれに限定 されない。
[0190] 別の好ましい実施形態において、本発明において用いられるペプチドまたはその 改変体は、細胞接着性タンパク質を含む。そのような細胞接着性タンパク質もまた、 細胞を集合させる活性を有することが知られることから、本発明における好ま ヽ実 施形態と考えられる。しかし、従来は、このような細胞接着性タンパク質が直接そのよ うな移植片として使用されるかどうかは不明であり、むしろ、細胞などの自己増殖性の ものを含ませることが必須と考えられていたことに鑑みると、このような細胞接着性タン ノ^質を直接移植片の主要成分として用いることができるという知見は、予想外の効 果といえる。
[0191] そのような細胞接着性タンパク質としては、例えば、コラーゲン、ラミニン、フイブロネ クチン、 ICAM、 NCAM、フイブロネクチン,コラーゲン,ビトロネクチン,ラミニン、ィ ンテグリン、ビトロネクチン,フイブリノゲン、免疫グロブリンスーパーファミリーなどが挙 げられるがそれに限定されない。
[0192] 1つの好ましい実施形態において、本発明において用いられるペプチドまたはその 改変体は、 RGD分子を含む。そのような RGD分子もまた、細胞を接着させる活性を 有することが知られることから、本発明における好ましい実施形態と考えられる。しか し、従来は、このような RGD分子が直接そのような移植片の主要成分として使用され るかどうかは不明であり、むしろ、細胞などの自己増殖性のものを含ませることが必須 と考えられて ヽたことに鑑みると、このような RGD分子を直接移植片の主要成分とし て用いることができると 、う知見は、予想外の効果と 、える。
[0193] そのような RGD分子としては、例えば、コラーゲン (I型など)、ラミニン、フイブロネク チン、 ICAM、 NCAM、ビトロネクチン、フォンヴィルブランド因子、ェンタクチンなど が挙げられるがそれに限定されない。
[0194] より好まし 、実施形態では、本発明にお 、て用いられるペプチドまたはその改変体 は、コラーゲンまたはラミニンを含む。コラーゲンおよびラミニンもまた、細胞を接着さ せる活性を有することが知られることから、本発明における好ま U、実施形態と考えら れる。しかし、従来は、このようなコラーゲンおよびラミニンは、補助成分として使用さ れており、直接そのような移植片の主要成分として使用されるかどうかは不明であり、 むしろ、細胞などの自己増殖性のものを含ませることが必須と考えられていたことに 鑑みると、このようなコラーゲンおよびラミニンを直接移植片の主要成分として用いる ことができるという知見は、予想外の効果といえる。
[0195] より好ましくは、このコラーゲンは、線維形成コラーゲンまたは基底膜コラーゲンであ り得る。さらに好ましくは、本発明において用いられるペプチドまたはその改変体は、 この線維形成コラーゲンおよび基底膜コラーゲンを含む。線維形成コラーゲンおよび 基底膜コラーゲンの両方を含むことにより、組織片の移植後の自己化が最もよく促進 された。これは、理論に束縛されないが、細胞の集合および接着活性力 Sこの組み合 わせにより最も最適化されるからであると考えられる。
[0196] さらに好ましくは、このコラーゲンは、 I型または IV型のコラーゲンであることが有利 であり得る。 I型および IV型が有利であるのは、血管内皮、平滑筋細胞、心筋細胞、 それらの前駆細胞 (幹細胞)が生着、増殖の足場としてより有効であるという原因が挙 げられるがそれに限定されない。
[0197] もっとも好ましい実施形態において、本発明のペプチドまたはその改変体は、コラ 一ゲン I型および IV型の両方を含む。コラーゲン I型およびコラーゲン IV型の両方を 一緒に含むことにより、組織片の移植後の自己化が最もよく促進された。これは、理 論に束縛されな ヽが、細胞の集合および接着活性力 Sこの組み合わせにより最も最適 化されるからであると考えられる。
[0198] 別の実施形態において、本発明に用いられる支持体は、膜状であり得る。膜状の 支持体を用いた組織片は、膜状の組織または臓器への移植に適切であり得る。その
ような膜状の組織または臓器としては、例えば、皮膚、角膜、硬膜、大型の臓器 (例え ば、肝臓、心臓など)の一部などが挙げられるがそれらに限定されない。
[0199] 別の実施形態において、本発明に用いられる支持体は、管状であり得る。管状の 支持体を用いた組織片は、管状の組織または臓器への移植に適切であり得る。その ような管状の組織または臓器としては、例えば、血管、リンパ管などが挙げられるがそ れらに限定されない。
[0200] 別の実施形態において、本発明に用いられる支持体は、弁状であり得る。管状の 支持体を用いた組織片は、弁状の組織または臓器への移植に適切であり得る。その ような弁状の組織または臓器としては、例えば、心臓弁などが挙げられるがそれらに 限定されない。
[0201] 好ましい実施形態において、本発明の支持体は、生分解性ポリマーを含むことが 有利であり得る。より好ましくは、本発明の支持体は、生分解性ポリマー力も構成され ることがより有利であり得る。支持体が生分解性ポリマーを含む力または生分解性ポ リマーから構成されることにより、一定期間の後には、本発明の組織片は自己の細胞 のみカゝら構成されるようになり、移植の対象となった臓器または組織が自己のものと 区別がほとんどできなくなるからである。本発明にお 、て使用されることが好ま U、生 分解性ポリマーとしては、 PLA、 PGA、 PLGA、ポリ力プロラタタム(PCLA)などが挙 げられるがそれに限定されない。
[0202] 好ま ヽ実施形態では、本発明にお ヽて使用される支持体は、 PGAおよび PLGA 力もなる群より選択される少なくとも 1成分を含む。より好ましくは、本発明において使 用される支持体は、グリコール酸と乳酸との比率が約 90 :約 10〜約 80 :約 20である PLGAを含む。このような比率の PLGAを用いることによって、適度な強度および半 減期(およそ 1ヶ月〜数ケ月)という性質を達成することができる力もである。強度とし ては、例えば、少なくとも約 ION以上であり得、通常約 25N以上であり得、好ましくは 約 50N以上であり得る。より好ましくは約 75N以上であり得る。
[0203] 本発明の別の好ましい実施形態において、本発明において使用される支持体にも 細胞接着分子を用いることができる。そのような細胞接着分子は、上述したものであり 得るが、好ましくは、支持体としての強度を有するものが有利であり得る。そのような
強度としては、例えば、約 ION以上の強度、約 20N以上の強度、約 25N以上の強 度であり得、好ましくは約 50N以上の強度、より好ましくは約 75N以上の強度であり 得る。応力で表示した場合には、例えば、通常約 IMPa以上の強度、約 lOMPa以 上の強度、約 20MPa以上の強度、約 25MPa以上の強度であり得、好ましくは約 50 MPa以上の強度、より好ましくは約 75MPa以上の強度であり得る。そのような支持体 としての強度を保持する細胞接着分子としては、例えば、フイブロネクチン,コラーゲ ン,ビトロネクチン,ラミニン、インテグリン、ビトロネクチン,フイブリノゲン、免疫グロブ リンスーパーファミリーなどが挙げられるがそれに限定されない。通常の細胞接着分 子の一部を改変(例えば、置換基の追加)することによって強度を上げることができる 。そのような物質の強度に関する改変は、当該分野において公知の方法を用いて行 うことができ、そのような方法は、例えば、高分子機能材料シリーズ医療機能材料 共 立出版株式会社、 Guoping Clen etal J Biomed mater Res, 51, 273— 27 9, 2000【こ記載されて!/、る。
[0204] 本発明のある実施形態において、本発明において使用される支持体は、それ自体 力 Sタンパク質を含んでいてもよい。そのようなタンパク質は、上述したもの(例えば、細 胞接着性タンパク質など)であり得るが、好ましくは、支持体としての強度を有するも のが有利であり得る。そのような支持体としての強度を保持するタンパク質としては、 例えば、フイブロネクチン,コラーゲン,ビトロネクチン,ラミニン、インテグリン、ビトロネ クチン,フイブリノゲン、免疫グロブリンスーパーファミリーなどが挙げられるがそれに 限定されない。通常のタンパク質の一部を改変 (例えば、(糖または脂質などとの)複 合体化、置換基の追加)することによって強度を上げることができる。そのような物質 の強度に関する改変は、当該分野において公知の方法を用いて行うことができ、そ のような方法は、例えば、高分子機能材料シリーズ医療機能材料 共立出版株式会 社に記載されている。
[0205] 支持体において上述のタンパク質または細胞接着分子の改変体を用いる場合は、 そのような改変体は、生体適合性であることが好ま 、。
[0206] 好ま 、実施形態にぉ 、て、本発明にお 、て使用される支持体は、メッシュ状であ り得る。別の実施形態において、そのような支持体は、例えば、膜状、織物様、管状、
スポンジ状、ファイバー状のような形状をとつていてもよい。ある実施形態では、メッシ ュ状が好ましい。メッシュ状であると、ペプチドまたはその改変体が容易にコーティン グされ得る力もである。しかし、当業者は、 目的によって、そのような形状は適宜選択 することができ、当業者は選択した形状を当該分野における周知技術に基づき容易 に作製することができる。
[0207] 本発明の支持体は、 目的に応じてその厚みを変動することが必要であり得る。その ような支持体は、通常、約 0. 2mm〜約 1. Omm厚であることが好ましい。血管などで 用いる場合は、そのような支持体は、少なくとも約 0. 6mm厚であることが好ましくあり 得る。
[0208] 好ましくは、本発明の組織片において、支持体は、ペプチドまたはその改変体でコ 一ティングされていることが有利であり得る。コーティングによって、ほぼ均等にぺプ チドまたはその改変体がその組織片にお 、て分布させることができるからである。コ 一ティングの方法は、当該分野において公知であり、例えば、再生医学と生命科学 共立出版; Guoping Clen et al. J Biomed mater Res, 51, 273— 279, 2 000に記載される手法が考えられるがそれに限定されない。
[0209] 好ましい実施形態では、本発明の組織片において、支持体に隙間がある場合 (例 えば、メッシュ状の場合)、その隙間はペプチドまたはその改変体がふさいでいること が有利であり得る。隙間がふさがれているまたは埋められているとの用語は、その隙 間を所望でない流体 (例えば、液体または気体)が通り抜けられない状態を意味する 。隙間がふさがれていることにより、その組織片から液体または気体力 Sもれ出ることを 防止することができるからである。従って、そのような隙間がふさがれている形態は、 例えば、血管、心臓など血液に関する臓器の破損の修復などにおいて有用であり得 る。
[0210] 好ましくは、本発明において使用されるペプチドまたはその改変体は、架橋可能な 分子を含む。この架橋可能な分子は、支持体との間で架橋処理されている。本発明 において使用され得る架橋可能な分子には、例えば、未熟架橋 (シッフ塩基型架橋) 、成熟架橋 (ピリジノリン)、老化架橋 (ヒスチジノアラニン)コラーゲンなどが挙げられる がそれに限定されない。好ましくは、架橋可能な分子は成熟架橋 (ピリジノリン)コラー
ゲンである。
[0211] ある実施形態において、本発明で使用される支持体は、本発明に含まれるぺプチ ドまたはその改変体と同じ物質を含んでいてもよい。そのような場合、本発明の組織 片は、そのペプチドまたはその改変体のみで形成されることがあり得る。したがって、 例えば、本発明の組織片は、 HGFのみで形成されていてもよぐコラーゲンのみで 形成されていてもよい。ただし、そのような場合、ある程度の強度を保持する必要があ り得る。そのような強度を獲得するために、上記ペプチドまたはその改変体は、改変さ れ得る。そのような改変は、当該分野において周知の技法を用いて当業者が適宜行 うことができる。
[0212] 別の実施形態において、本発明の組織片は、さらに細胞が付着したものであっても よい。本発明は、細胞なしでも自己化を達成することができることにひとつの特徴があ るが、細胞がある場合でも、同様な効果(自己ィ匕、修復など)を達成することが本明細 書にお 、て示されて 、ることから、そのように細胞を含む形態も本発明の範囲内にあ ることが理解されるべきである。なぜなら、細胞ありの場合でも、 1ヶ月程度で細胞が 消去し、自己由来の細胞が生着するからである。
[0213] 1つの実施形態において、本発明の移植片は、体内への移植用のものであり得る。
移植用に用いられる場合、その標的となる部位は、例えば、心臓弁、血管、血管様組 織、心臓弁、心臓、心膜、硬膜、皮膚、骨、軟部組織、気管などがあるがそれに限定 されない。好ましくは、標的となる部位は、血管様組織、心臓弁、心臓、心膜、硬膜、 皮膚、骨、軟部組織、気管などであり得る。
[0214] ある実施形態にぉ ヽて、本発明の組織片は、ある臓器または組織の損傷を修復す るために用いられ得る。修復を標的とする臓器または組織もまた、上述に記載のもの 力も選択され得る。好ましくは、標的となる損傷部位は、心臓、肝臓、腎臓、胃、腸、 脳、骨、気管、皮膚、血管、軟部組織などであり得る。修復を目的とする場合、本発 明の組織片は、その損傷部位と同じまたはそれより大きな面積、好ましくはすべてを 覆う程度の広さを有することが好ましいが、それより小さな面積であっても所期の目的 は達成可能である。そのように損傷部位を覆う程度の広さを有することによって、損傷 により有害な影響を伴う事象 (例えば、流血など)を抑えることができ、有利な治療効
果を達成することができる。
[0215] 別の実施形態において、本発明の組織片は、臓器または組織の強化のために使 用され得る。強化を目的とする場合、本発明の組織片は、その強化を目的とする部 位と同じまたはそれより大きな面積、好ましくはすべてを覆う程度の広さを有すること が好ましいが、それより小さな面積であっても所期の目的は達成可能である。そのよう に損傷部位を覆う程度の広さを有することによって、損傷により有害な影響を伴う事 象 (例えば、流血など)を抑えることができ、有利な治療効果を達成することができる。
[0216] 別の実施形態において、本発明の組織片は、滅菌されていることが好ましい。その ような滅菌をする方法としては例えば、オートクレープ、乾熱滅菌、薬剤滅菌(例えば 、アルコール消毒、ホルマリンガス、オゾンガスなどによる滅菌)、放射線滅菌( γ線 照射など)などが挙げられ、そのような滅菌は、例えば、アルコール消毒、 γ線照射、 エチレンオキサイドガス滅菌などで行うことができる。従って、本明細書においてある 材料、支持体などが滅菌可能とは、少なくとも 1つの滅菌方法に対して耐性である性 質をいう。滅菌されることにより、感染などの二次的な有害事象を防ぐことができる。
[0217] 別の好ましい実施形態において、本発明の組織片は、その中にかまたはそれに伴 つて、免疫抑制剤をさらに含んでいてもよい。そのような免疫抑制剤は、当該分野に おいて公知である。免疫抑制の目的では、免疫抑制剤のほか、免疫抑制を達成する 別の方法を用いてもょ 、。上述のような拒絶反応を起こさな 、ようにする免疫抑制法 として、免疫抑制剤によるもの、外科的手術、放射線照射等が挙げられる。まず、免 疫抑制剤として主なものとして副腎皮質ステロイド薬、シクロスポリン、 FK506等があ る。副腎皮質ステロイド薬は循環性 Τ細胞の数を減少させ、リンパ球の核酸代謝、サ イト力イン産生を阻害してその機能を抑え、マクロファージの遊走および代謝を抑制 して免疫反応を抑える。一方、シクロスポリンおよび FK506の作用は類似しており、 ヘルパー Τ細胞の表面にある受容体と結合して細胞内に入り込み、 DNAに直接働 いてインターロイキン 2の生成を阻害する。最終的には、キラー Τ細胞が機能できなく なり免疫抑制作用が起こる。これらの免疫抑制剤の使用においては副作用が問題と なる。ステロイドは特に副作用が多ぐまた、シクロスポリンは肝臓 *腎臓に対する毒性 がある。また、 FK506は腎臓に対する毒性を有する。次に外科的手術としては、例え
ば、リンパ節摘出、脾臓摘出、胸腺摘除が挙げられるが、これらについてはその効果 が十分に証明されてはいない。外科的手術の中でも胸菅ろうとは、循環しているリン パ球を体外に導くものであり効果も確認されている力 大量の血清タンパク質および 脂肪の流出を引き起こし、栄養障害が起こりやすくなるという欠点がある。放射線照 射には全身照射と移植片照射があるが、効果が不確実な面もあり、レシピエントに対 する負担が大きいので、前述の免疫抑制剤との併用により利用されている。上述の いずれの方法も拒絶反応の防止にはあまり好ましくない。
[0218] 本発明の組織片は、さらなる医薬成分を含んでいてもよい。そのような医薬成分は 、好ましくは、細胞の集合および結合を妨害しないようなものが有利であり得る。ある いは、そのような医薬成分は、処置を目的とする損傷部位などの改善に有利な作用 を有するものが選択され得る。そのような医薬成分としては、例えば、へパリン、抗生 剤、血管拡張剤、降圧剤 (ACE阻害剤, ARB (=ACEレセプターブロッカー))など が挙げられるがそれらに限定されな 、。
[0219] 好ましい実施形態において、本発明の組織片において用いられる血管新生分子は 、移植を目的とする生体自体に由来することが有利であり得る。ここで、その生体に 由来するとは、その生体から単離したもののほか、その単離体に基づいて合成また は複製などをしたものを包含する。このようなものを自己由来ともいう。自己由来のぺ プチドまたはその改変体を用いることによって、免疫拒絶をより効率的に防止すること ができる。
[0220] 別の実施形態において、本発明は、本発明の生体適合性組織片を含む医薬に関 する。そのような医薬は、好ましくは、 日本における薬事法などに基づく基準を満たし たものである。したがって、そのような場合、生体適合性組織片に含まれる成分は、そ のような基準を満たしたものであり得る。そのような基準を満たしたものの例としては、 例えば、 I型コラーゲン、 IV型コラーゲンがあるがそれに限定されない。当然、申請す れば基準を満たす状態にあるものは種々存在する。したがって、ここに挙げたものは 、現時点ですでに基準を満たすことが当局によって認められているということのみを 示し、本発明を限定的に解釈する根拠として用いるべきではないことに留意するべき である。
[0221] 別の局面において、本発明は、本発明の生体適合性組織片およびその組織片の 使用法を示した指示書を含む医薬キットまたはシステムに関する。この指示書には、 所定の部位に本発明の組織片を移植する方法が記載される。そのような移植は、当 該分野において周知の方法によって行うことができ、例えば、そのような方法は、新 外科学体系、心臓移植 ·肺移植 技術的,倫理的整備から実施に向けて (改訂第 3 版)、標準外科学第 9版医学書院、心臓の外科 新外科学大系, 19A, 19B, 19C, (中山書店)に記載されている。本発明の組織片の移植に際しては、上述の一般的 な方法にぉ 、て、過大な圧が力からな 、と 、うことに留意することが好ましくあり得る。
[0222] 本発明の組織片が移植される部位としては、例えば、血管内皮、血管平滑筋、弾 性線維、心臓、肝臓、腎臓、胃、腸、脳、骨、気管、皮膚、血管および軟部組織から なる群より選択される部位があるがそれに限定されない。好ましくは、血管内皮、血管 平滑筋 弾性線維、膠原線維などが挙げられる。
[0223] 好ましい実施形態において、本発明において添付される指示書には、本発明の生 体適合性組織片を、移植を目的とする臓器または組織の少なくとも一部が残存する ように移植することが記載され得る。
[0224] 本発明において添付される指示書は、本発明が実施される国の監督官庁 (例えば 、 日本であれば厚生労働省、米国であれば食品医薬品局 (FDA)など)が規定した 様式に従って作成され、その監督官庁により承認を受けた旨が明記される。指示書 は、いわゆる添付文書 (package insert)であり、通常は紙媒体で提供される力 そ れに限定されず、例えば、電子媒体 (例えば、インターネットで提供されるホームべ一 ジ、電子メール)のような形態でも提供され得る。
[0225] 本発明の組織片およびキットは、ヒトにおいて用いる場合、通常は医師の監督のも とで実施されるが、その国の監督官庁および法律が許容する場合は、医師の監督な しに実施することができる。
[0226] 別の局面において、本発明は、体内における損傷部位を処置する方法を提供する 。このような方法は、 A)損傷部位の一部または全部に、 A— 1)血管新生分子;およ び A— 2)支持体、を含む、生体適合性組織片を移植する工程、を包含する。ここで、 組織片は、損傷部位に直接接触されてもよぐ間接的に接触されるような処置を行つ
てもよい。好ましくは、本発明の方法における移植工程において、本発明の生体適合 性組織片は、損傷部位が属する臓器または組織の少なくとも一部が残存するように 移植されることが有利であり得る。一部が残存することにより、残存する組織内に存在 する細胞がペプチドまたはその改変体によって活性化され得、その結果、自己化が 促進され得る力 である。ここで、血管新生分子は、上記 (血管新生ペプチド)の節に 記載される任意の形態を採り得ることが理解される。
[0227] 好ま 、実施形態にぉ 、て、本発明の処置方法では、細胞生理活性物質を投与 する工程をさらに包含してもよい。そのような細胞生理活性物質としては、顆粒球マク 口ファージコロニー刺激因子(GM— CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M— CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G— CSF)、 multi—CSF (IL—3)、白血病抑制 因子(LIF)、 c—kitリガンド(SCF)、免疫グロブリンファミリー(CD2, CD4, CD8)血 小板由来増殖因子 (PDGF)、表皮増殖因子 (EGF)、線維芽細胞増殖因子 (FGF) 、肝細胞増殖因子 (HGF)および血管内皮増殖因子 (VEGF)からなる群より選択さ れ得るがそれらに限定されない。
[0228] 好ま 、実施形態にぉ 、て、本発明の方法では、免疫反応を抑制する処置を行う 工程をさらに包含し得る。そのような免疫反応を抑制する処置は前述したとおりであ る。そのような場合、好ましくは、免疫抑制剤を用いることが有利であり得る。
[0229] 別の局面において、本発明は、体内における臓器または組織を強化する方法を提 供する。このような方法は、 A)該臓器または組織の一部または全部に、 A— 1)血管 新生分子;および A— 2)支持体、を含む、生体適合性組織片を移植する工程、を包 含する。そのような移植の方法は当該分野において周知であり、新外科学体系、心 臓移植'肺移植 技術的,倫理的整備カゝら実施に向けて (改訂第 3版)などに記載の 方法をそのまま用いるか適宜改良して使用することができる。ここで、血管新生分子 は、上記 (血管新生ペプチド)の節に記載される任意の形態を採り得ることが理解さ れる。
[0230] 別の局面において、本発明は、臓器または組織を生産または再生する方法を提供 する。この方法は、 A)目的とする臓器または組織の少なくとも一部を含む生体にお いて、該臓器または組織に、 A—1)血管新生分子;および A— 2)支持体、を含む、
生体適合性組織片を移植する工程;ならびに B)該臓器または組織を該生体内で培 養する工程、を包含する。ここで、血管新生分子は、上記 (血管新生ペプチド)の節 に記載される任意の形態を採り得ることが理解される。
[0231] このように臓器または組織を再生または生産する方法においても、移植工程は上述 のものと同じように行うことができる。培養工程は、生体を通常の条件下で飼育するこ とによって行うことができる。そのような飼育条件は、当該分野において周知であり、 当業者であれば、動物の種、サイズなどに鑑みて適宜行うことができる。
[0232] 別の局面において、本発明は、本発明の生体適合性移植片の、体内における損傷 部位を処置するための使用に関する。この使用において、使用される生体適合性移 植片として好ましい実施形態は、本明細書において記載される任意の形態が使用さ れ得る。
[0233] さらに別の局面において、本発明は、本発明の生体適合性移植片の、体内におけ る臓器または組織を強化するための使用に関する。この使用において、使用される 生体適合性移植片として好まし ヽ実施形態は、本明細書にぉ ヽて記載される任意の 形態が使用され得る。
[0234] さらに別の局面において、本発明は、本発明の生体適合性移植片の、体内におけ る損傷部位を処置するための医薬を製造するための使用に関する。この使用におい て、使用される生体適合性移植片として好ましい実施形態は、本明細書において記 載される任意の形態が使用され得る。
[0235] さらに別の局面において、本発明は、本発明の生体適合性移植片の、体内におけ る臓器または組織を強化するための医薬を製造するための使用に関する。この使用 において、使用される生体適合性移植片として好ましい実施形態は、本明細書にお いて記載される任意の形態が使用され得る。
[0236] 医薬を製造する方法は、当該分野において周知であり、本発明の医薬は、必要に 応じて生理学的に受容可能なキャリア、賦型剤または安定化剤(日本薬局方第 14版 3;た ί¾ての最新版、 Remington s Pharmaceutical sciences, 18th Edition , A. R. Gennaro, ed. , Mack Publishing Company, 1990などを参照)と、所 望の程度の純度を有する細胞組成物とを混合することによって、凍結乾燥された状
態で調製され保存され得るが、適切な保存液中に保存されることが好ま 、。
[0237] 本発明の医薬に含まれる薬学的に受容可能なキャリアとしては、当該分野におい て公知の任意の物質が挙げられる。本発明において使用され得る薬学的に受容可 能なキャリアとしては、抗酸化剤、保存剤、着色料、風味料、および希釈剤、乳化剤、 懸濁化剤、溶媒、フィラー、増量剤、緩衝剤、送達ビヒクル、希釈剤、賦形剤および Z または薬学的アジュバントが挙げられるがそれらに限定されない。代表的には、本発 明の医薬は、支持体およびペプチドまたはその改変体を、 1つ以上の生理的に受容 可能なキャリア、賦形剤または希釈剤とともに含む組成物の形態で投与される。例え ば、適切なビヒクルは、注射用水、生理的溶液、または人工脳脊髄液であり得、これ らには、移植のための組成物に一般的な他の物質を補充することが可能である。
[0238] 例示の適切なキャリアとしては、中性緩衝化生理食塩水、または血清アルブミンと 混合された生理食塩水が挙げられる。好ましくは、その生成物は、適切な賦形剤 (例 えば、スクロース)を用いて凍結乾燥剤として処方される。他の標準的なキャリア、希 釈剤および賦形剤は所望に応じて含まれ得る。他の例示的な組成物は、 pH7. 0— 8. 5の Tris緩衝剤または pH4. 0— 5. 5の酢酸緩衝剤を含み、これらは、さら〖こ、ソ ルビトールまたはその適切な代替物を含み得る。
[0239] 本明細書で使用される受容可能なキャリア、賦形剤または安定化剤は、レシピエン トに対して非毒性であり、そして好ましくは、使用される投薬量および濃度において不 活性であり、そして以下が挙げられる:リン酸塩、クェン酸塩、または他の有機酸;抗 酸化剤(例えば、ァスコルビン酸);低分子量ポリペプチド;タンパク質 (例えば、血清 アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリン);親水性ポリマー(例えば、ポリビニルピロ リドン);アミノ酸 (例えば、グリシン、グルタミン、ァスパラギン、アルギニンまたはリジン );モノサッカリド、ジサッカリドおよび他の炭水化物(グルコース、マンノース、または デキストリンを含む);キレート剤(例えば、 EDTA);糖アルコール (例えば、マン-ト ールまたはソルビトール);塩形成対イオン (例えば、ナトリウム);ならびに Zあるいは 非イオン性表面活性化剤(例えば、 Tween、プル口ニック (pluronic)またはポリェチ レングリコール(PEG) )。
[0240] (複合支持体)
別の局面において、本発明の生体適合性組織片において使用される支持体は、 A )粗面を有する第一層;および B)生体内衝撃に耐え得る強度を有する第二層、を含 み、該第一層と該第二層とが少なくとも 1点で接着される、生体適合性組織支持体を 提供する。この支持体は、生体内に移植され、臓器補填の足場として使用される。こ こで、粗面を有する第一層は、通常生体において適用されるとき内側層として使用さ れる。
[0241] 本発明の 1つの実施形態において、通常、この粗面を有する第一層として、編物が 使用される。編物として使用される材料は、編むことができ、生体適合性である限りど のような材料を使用してもよい。編物は、当該分野において公知の任意の製造方法 を用いて製造することができる。編物は、材料を糸状にし、その糸で輪を作り、その輪 を順々につなげていくことによって作製することができる。編物は、このように輪をつな げていくことから、隙間がひらき、細胞を収容するに十分なスペースを作製することが できる。この場合、同じように織物とする場合よりも厚みが大きな層が提供される。
[0242] 本発明の 1つの実施形態において、本発明の支持体の第二層としては、織物が使 用される。織物として使用される材料は、織ることができ、生体適合性である限りどの ような材料を使用してもよい。織物の製造方法としては、当該分野において公知の任 意の方法を用いることができ、織物は、例えば、縦部分 (縦糸ともいう)と横部分 (横糸 ともいう)とを交互に織り込んでいくことによって製造することができる。織物は、隙間 がほとんどないことから、液体 (例えば、血液のような体液)がもれにくくなる。
[0243] 本発明はまた、生体適合性であり得る編物と織物との組織片層を重ね合わせ、中 間層により接着する構造を提供することによって、編物において見られた漏れの問題 と、織物において見られたほつれの問題を、予想外に両方とも解決した。このように 編物と織物とを複合したことによって、さらに、細胞が入り込むスペースを有しつつ、 漏れを防ぎ、解れが防止されている材料を予想外に提供することができた。さらに、こ のような支持体にペプチドまたはその改変体 (コラーゲンなど)を提供することによつ て、生体内に提供した場合に初期には細胞を呼び込み、その後その支持体自体は 生体により分解され、消失し、実質的に跡形も残らない移植片を提供することができ る。したがって、好ましくは、内側層として使用される第一層の方が、第二層よりも生
分解性が早い方が有利であるが、それに限定されない。また、この複合支持体は、編 物と織物との作製において任意の方法を選択することによって、強度を保ち、一定の 厚みを有することができる。さらに、編みと織りに用いる糸に任意の材料を用いること によって、それぞれの吸収速度を制御することができ、さらには、糸且織の再生速度と 支持体に必要な強度とに適合した支持体を作成することができるというように、種々 の応用が考えられる。
[0244] 1つの実施形態において、本発明の第一層における粗面は、細胞が入り込むに充 分なスペースを有する。細胞が入り込むに充分なスペースを有することによって、組 織片として移植された後に、細胞が生着することが容易になると 、う効果が奏される。 あるいは、このようなスペースは、細胞を予め本発明の支持体に付与する場合にも、 細胞の担持に利用することができる。
[0245] 1つの好ましい実施形態では、本発明の支持体は、中間層を有する。中間層を有 することによって、第一層と第二層とを効率よく密着または封着させることができるか らである。
[0246] 1つの実施形態において、中間層による封着は、生体吸収性高分子を融着するこ とにより達成される。このような封着は任意の手段を用いて実行することができる。封 着としては、例えば、融点の違いを利用して、封着が企図される層よりも融点が低い 材料を中間層として使用し、その中間層材料の融点より高ぐ他の層の材料の融点よ りも低い温度に加熱することによって達成することができる。あるいは、フイブリンのよ うな生体物質をのりとして使用することも可能である。中間層は、フィルムのような形態 をとることが好ま U、がそれに限定されな 、。
[0247] 好ましい実施形態において、本発明の第二層は、通気性が実質的に遮断されるこ とが好ましい。通気性が実質的に遮断されているかどうかは、水漏れ試験を行なうこと によって確認することができる。
[0248] 本発明の支持体が有する強度は、通常、少なくとも約 ION以上、より好ましくは、約 20N以上、さらに好ましくは約 50N以上、なおさらに好ましくは、引張り試験において 、力で表示する場合、少なくとも 100Nであり得る。応力で表示した場合には、例えば 、通常約 IMPa以上の強度、約 lOMPa以上の強度、約 20MPa以上の強度、約 25
MPa以上の強度であり得、好ましくは約 50MPa以上の強度、より好ましくは約 75M Pa以上の強度であり得る。
[0249] 本発明の支持体は、弾性率でみると、本発明の支持体は、通常多くとも lOOMPa の弾性率を有し、好ましくは多くとも約 80MPaの弾性率を有する力 本発明の支持 体は、使用に耐え得る限り、天然物よりも劣る弾性率を有していてもよい。伸びに関し ては、本発明の支持体は、通常少なくとも 105%、好ましくは 110%の伸びを有する 。伸びは、縦方向と横方向とを両方測定する。この両方の伸びにばらつきがないほう が好ましいがそれに限定されない。用途に応じて、伸びに関する特性は、例えば、少 なくとも 120%、好ましくは 150%であることが好ましいが、それに限定されない。伸び に関する特性についても、本発明の支持体は、使用に耐え得る限り、天然物よりも劣 る伸びを有していてもよい。
[0250] 1つの実施形態において、本発明の支持体の通気性は、通常、 25mlZcm2Zsec 以下であり、より通常には、 15mlZcm2Zsec以下であり、好ましくは 10mlZcm2Zs ec以下であり、より好ましくは、約 5mlZcm2Zsec以下であり、さらに好ましくは約 4m lZcm2Zsec以下であり、もっとも好ましくは、約 3mlZcm2Zsec以下である。ここで 、従来の編物および織物のみでは、せいぜい約 5mlZcm2Zsec程度までしか達成 できていなかつたが、本発明の支持体では、予想外にそれよりも優れた通気性を有 する支持体を提供することができたという効果を達成する。本明細書において、支持 体の通気性は、 JIS—L— 1096Aに準じて測定することができる。このような測定方 法では、フラジール型試験機に試験片を取り付けた後、加圧抵抗器によって傾斜形 気圧計が 125Paの圧力を示すように調節し、通過する空気量 (mlZcm2Zsec)を測 定することによって通気性を決定する。通気性はまた、水漏れ率に関連する数値をと ることから、水漏れ率によって、通気性を表現してもよい。このような場合、好ましい水 漏れ率としては、例えば、 60秒、 10mlのうち、 5ml以下、好ましくは 3ml以下、より好 ましくは 2ml以下、さらに好ましくは lml以下であることが有利である。
[0251] 1つの実施形態において、本発明の支持体の第一層および Zまたは第二層は、独 立して選択される生体分解性材料を含む。好ましくは、第一層および第二層の両方 が生体分解性材料を有していることが好ましい。生体分解性材料の分解速度は、細
胞が生着するに充分な期間 (例えば、数ケ月)をとることが好ましい。
[0252] このような生体分解性材料としては、ポリグリコール酸 (PGA)、ポリ L乳酸 (PLA)お よびポリ力プロラタタム (PCLA)ならびにそれらの共重合体力 なる群より選択される 少なくとも 1成分またはそれらの混合物であり得る。あるいは、このような生体分解性 ポリマーは、グリコール酸と乳酸との比率が約 90:約 10〜約 80:約 20である PLGA を含んでいてもよい。
[0253] 好ましい実施形態において、本発明の支持体の第一層は、ポリグリコール酸を含む 。編物として製造することが容易であるからである。また、細胞の生着も良好であるか らである。
[0254] 別の好ましい実施形態において、本発明の支持体の第二層は、ポリ L乳酸を含む。
織物として製造することが容易であるからである。また、細胞の生着も良好であるから である。
[0255] 好ましい実施形態において、本発明の第二層は、織物であり、第一層は編物であ る。このような構造をとることによって、細胞との生着性を高め、かつ、強度を保持する 支持体を提供することができる。このような構造を有する支持体はこれまでに存在し ておらず、従来の支持体では達成できな力つた効果を提供する。このような組み合わ せの支持体はまた、コラーゲン、ラミニンなどのペプチドまたはその改変体との組み 合わせによって、さらに細胞の生着を高め、再生修復のための機能を高めることがで きる。
[0256] 好ましい実施形態において、本発明の支持体では、第二層は、ポリ L乳酸の織物で あり、第一層は、ポリダリコール酸の編物であることが有利である。このような構造を有 することによって、強度を保ち、漏れを防ぎ、ペプチドまたはその改変体 (例えば、コ ラーゲン)のスペースを収容し得、支持体に一定の厚みを付与し、ほつれを防止し、 強度および厚みをコントロールすることができるという従来の支持体では、到底達成し 得なかった効果を達成する。例えば、従来の織構造を有する支持体では、強度を保 つことはできたが、細胞との生着性が担保できなつた。
[0257] 1つの実施形態において、中間層は、合成生体吸収性ポリマーを含む。ここで、こ のポリマーは、ポリ乳酸系フィルムまたは力プロラタタムフィルムであることが好ましい
。このようなフィルムは、融点が低ぐ接着が容易であるので、製造が容易であるから である。従って、好ましい実施形態では、中間層を構成する材料は、第一層および第 二層の少なくとも一方、好ましくはその両方の融点よりも低 、融点を有する。
[0258] 第一層および第二層は、一層のみから構成されていてもよいが、複数の層から構 成されていてもよい。好ましい実施形態では、第一層は、複数の編物層を含む。別の 好ましい実施形態では、第二層は、複数の織物層を含む。第一層は、編物に加えて 別の層(例えば、編物)を含んで 、てもよ 、。
[0259] 他の好ま 、実施形態では、第一層に、ペプチドまたはその改変体が配置されて いてもよい。この実施形態では、上述のペプチドまたはその改変体付着組織片に関 して記載される任意の実施形態を使用してもよい。ここで好ましくは、ペプチドまたは その改変体は、細胞外マトリクスである。特に好ましいペプチドまたはその改変体は、 コラーゲンおよびラミニンカ なる群より選択される細胞外マトリクスを含む。
[0260] ペプチドまたはその改変体は、好ましくは、ペプチドまたはその改変体は、マイクロ スポンジに含ませて配置される。このようなマイクロスポンジは、細胞の足場として適 切な形態であることから、望ましい形態である。
[0261] 好ましくは、ペプチドまたはその改変体は、支持体と架橋処理されていることが有利 である。コラーゲンが使用される場合、この架橋は、コラーゲン架橋処理によって実施 される。
[0262] 別の局面において、本発明は、本発明の支持体が上記複合支持体である生体適 合性組織片を含む医薬を提供する。この医薬において使用される支持体は、上述の 任意の支持体の形態をとりえる。本発明の支持体は、細胞を含まなくても支持体とし て使用することができることが特徴であるが、別の実施形態において、本発明の医薬 は、細胞をさらに含んでいてもよい。
[0263] 1つの実施形態において、本発明の医薬は、体内への移植用途に使用される。移 植された後、細胞がこの支持体に生着するという効果が見出されている。このような 効果は、従来の支持体では考えられな力つた効果であり、数週間から数ケ月すると、 細胞が組織ィ匕して、移植された部分を修復することができる。好ましい実施形態では 、生体分解性の材料が使用されることから、移植部分の修復がなされると前後して材
料自体は消失することになる。このように、本発明の支持体は、完全に天然と同じ状 態に修復することができるという格別の効果を達成する。このような効果は、従来の支 持体、パッチなどでは達成できな力つたものである。
[0264] 特定の実施形態において、本発明の支持体が体内において移植されるべき部位 は、心臓、心臓弁、血管、心膜、心臓隔壁、心内導管、心外導管、硬膜、皮膚、骨、 軟部組織および気管などが挙げられるがそれらに限定されない。好ましくは、液体( 例えば、血液)が流れる部分での適用が好ましい。そのような部分としては、消化管、 血管、心臓、心臓弁などが挙げられるがそれらに限定されない。
[0265] 好ましい実施形態において、本発明の医薬において用いられるペプチドまたはそ の改変体は、移植を目的とする生体に由来することが有利であるが、それに限定され ない。このような宿主と同じ起源のペプチドまたはその改変体は、免疫反応等がほと んどないと考えられることから、有利であると考えられる。ただし、ペプチドまたはその 改変体は、精製されたものであれば、免疫反応は通常起きないと考えられることから 、特に起源を限定する必要はない。
[0266] (支持体製造法)
別の局面において、本発明は、 A)粗面を有する第一層;および B)生体内衝撃に 耐え得る強度を有する第二層、を含み、該第一層と該第二層とが少なくとも 1点で接 着される、生体適合性組織支持体、を含み、血管新生分子を含む生体適合性組織 支持体を製造する方法を提供する。この方法は、該第一層と該第二層とを接着する 工程および血管新生分子を支持体に提供する工程を包含する。接着する工程として は、例えば、超音波ミシン、 UV光などが挙げられるがそれらに限定されない。血管新 生分子は、共有結合または非共有結合が生じるように提供され得る。血管新生分子 がペプチドの場合は、架橋することもできる。架橋は、例えば、ダルタルアルデヒドの ような任意の分子を用いることができるがそれらに限定されない。ここで、血管新生分 子は、任意の工程の前後に、付与することができる。熱工程の後にそのような付与が なされることが好まし 、。ペプチドが熱で変性され得るからである。
[0267] 超音波ミシンは当該分野において公知の手法を用いることができる。そのような手 法としては、例えば、市販の超音波シーラー(例えば、アームタイプ (例えば、ブラザ
一 US— 1150)、 CNCタイプ(US— 7010)、ユニットタイプ(US— 2150) (ブラザ一 社、愛知、日本)から入手可能)を用いる手法が挙げられる。
[0268] 1つの実施形態では、この製造法は、 a)該第一層と該第二層との間に該中間層を 提供する工程; b)該第一層と該第二層とが融解せず、該中間層が融解する条件に 該第一層、該第二層および該中間層を配置する工程;および c)該第一層、該第二 層および該中間層を所望の形状に保持しながら該中間層が固化する条件に配置す る工程、を包含する。ここで、血管新生分子は、任意の工程の前後に、付与すること ができる。熱工程の後にそのような付与がなされることが好ましい。ペプチドが熱で変 性され得るからである。
[0269] ここで、好ま U、実施形態では、融解する条件は、温度による違 、を利用し、前記 第一層および前記第二層のいずれか一方の融点より、好ましくは両方の融点より前 記中間層の融点が低い。
[0270] 好ましい実施形態において、本発明の支持体の第二層は、ポリ L乳酸の織物であり 、第一層は、ポリダリコール酸の編物であり、前記中間層は、ポリ乳酸系フィルムまた は力プロラタタムフィルムであって、ここで、上記融解する条件の温度は、 80°Cを超え 〜 140°C以下であり、好ましくは 100°C〜 140°Cであることが有利である。
[0271] 別の好ましい実施形態において、中間層として力プロラタタムが使用される場合、融 解させる温度は、約 80°C〜約 140°Cであることが有利である。このような温度で接着 させると、接着強度が他の温度に比して格段に(2倍以上)向上した。したがって、好 ましい温度としては、中間層として使用される材料の融点より高ぐ第一層および第二 層として使用されるそれぞれの材料の融点よりも低い温度が使用される。従って、血 管新生分子は、これらの高温処理工程が終わった後に提供されることが好ま 、。
[0272] 他の実施形態において、本発明の支持体の製造法において、本発明の支持体は 、さらにペプチドまたはその改変体を含む。この場合、本発明の方法は、ペプチドま たはその改変体を前記第一層に付着させる工程をさらに包含する。このような付着工 程は、どのような技術を用いても実施することができるが、好ましくは、架橋処理を包 含する。
[0273] 1つの実施形態において、本発明の支持体において使用されるペプチドまたはそ
の改変体はコラーゲンであり、この場合付着は、コラーゲン架橋処理を包含する。
[0274] 1つの実施形態において、本発明の支持体の中間層は、ガラス上にキャストした後 風乾してフィルムを作成することによって製造される。このようなフィルムは、封着に適 していることから、本発明の支持体を製造するために好ましく使用され得る。
[0275] 1つの実施形態において、本発明の付着工程では、少なくとも約 0. lgZcm2の重 りで上力も圧力をかけることが好ましい。このような重りは、より好ましくは、少なくとも 約 0. 5gZcm2の重りであり、さらに好ましくは 0, 75gZcm2であり得る。
[0276] (治療法)
別の局面において、本発明は、体内における損傷部位を処置する方法を提供する 。このような方法は、 A)上記損傷部位の一部または全部に、 A— 1)粗面を有する第 一層;および A— 2)生体内衝撃に耐え得る強度を有する第二層、を含み、上記第一 層と上記第二層とが少なくとも 1点で接着される、生体適合性組織支持体を移植する 工程、を包含する。ここで、組織片は、損傷部位に直接接触されてもよぐ間接的に 接触されるような処置を行ってもよい。好ましくは、本発明の方法における移植工程 において、本発明の生体適合性組織片は、損傷部位が属する臓器または組織の少 なくとも一部が残存するように移植されることが有利であり得る。一部が残存すること により、残存する糸且織内に存在する細胞がペプチドまたはその改変体によって活性 化され得、その結果、自己化が促進され得るからである。本発明の損傷部位の処置 方法にお!ヽて使用される生体適合性組織支持体としては、本明細書にぉ ヽて記載さ れる任意の支持体が使用され得る。
[0277] 好ま 、実施形態にぉ 、て、本発明の処置方法では、細胞生理活性物質を投与 する工程をさらに包含してもよい。そのような細胞生理活性物質としては、顆粒球マク 口ファージコロニー刺激因子(GM— CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M— CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G— CSF)、 multi—CSF (IL—3)、白血病抑制 因子(LIF)、 c—kitリガンド(SCF)、免疫グロブリンファミリー(CD2, CD4, CD8)血 小板由来増殖因子 (PDGF)、表皮増殖因子 (EGF)、線維芽細胞増殖因子 (FGF) 、肝細胞増殖因子 (HGF)および血管内皮増殖因子 (VEGF)からなる群より選択さ れ得るがそれらに限定されない。
[0278] 好ま 、実施形態にぉ 、て、本発明の方法では、免疫反応を抑制する処置を行う 工程をさらに包含し得る。そのような免疫反応を抑制する処置は前述したとおりであ る。そのような場合、好ましくは、免疫抑制剤を用いることが有利であり得る。
[0279] 別の局面において、本発明は、体内における臓器または組織を強化する方法を提 供する。このような方法は、 A)該臓器または組織の一部または全部に、 A— 1)粗面 を有する第一層;および A— 2)生体内衝撃に耐え得る強度を有する第二層、を含み 、上記第一層と上記第二層とが少なくとも 1点で接着される、生体適合性組織支持体 を移植する工程、を包含する。そのような移植の方法は当該分野において周知であ り、新外科学体系、心臓移植 ·肺移植 技術的,倫理的整備カゝら実施に向けて (改訂 第 3版)などに記載の方法をそのまま用いる力適宜改良して使用することができる。本 発明の強化方法において使用される生体適合性組織支持体としては、本明細書に ぉ 、て記載される任意の支持体が使用され得る。
[0280] 別の局面において、本発明は、臓器または組織を生産または再生する方法を提供 する。この方法は、 A)目的とする臓器または組織の少なくとも一部を含む生体にお いて、該臓器または組織に、 A—1)粗面を有する第一層;および A— 2)生体内衝撃 に耐え得る強度を有する第二層、を含み、上記第一層と上記第二層とが少なくとも 1 点で接着される、血管新生分子を含む生体適合性組織支持体を移植する工程;なら びに B)該臓器または組織を該生体内で培養する工程、を包含する。本発明の再生 方法にお!ヽて使用される生体適合性組織支持体としては、本明細書にぉ ヽて記載さ れる任意の支持体が使用され得る。
[0281] このように臓器または組織を再生または生産する方法にぉ 、ても、移植工程は上述 のものと同じように行うことができる。培養工程は、生体を通常の条件下で飼育するこ とによって行うことができる。そのような飼育条件は、当該分野において周知であり、 当業者であれば、動物の種、サイズなどに鑑みて適宜行うことができる。
[0282] 別の局面において、本発明は、 A— 1)粗面を有する第一層;および A— 2)生体内 衝撃に耐え得る強度を有する第二層、を含み、上記第一層と上記第二層とが少なく とも 1点で接着される、血管新生分子を含む生体適合性組織支持体の、体内におけ る損傷部位を処置するための使用に関する。この使用において、使用される生体適
合性組織支持体として好ま ヽ実施形態は、本明細書にぉ ヽて記載される任意の形 態が使用され得る。
[0283] さらに別の局面において、本発明は、 A— 1)粗面を有する第一層;および A— 2) 生体内衝撃に耐え得る強度を有する第二層、を含み、上記第一層と上記第二層とが 少なくとも 1点で接着される、生体適合性組織支持体の、体内における臓器または組 織を強化するための使用に関する。この使用において、使用される生体適合性組織 支持体として好ま 、実施形態は、本明細書にぉ 、て記載される任意の形態が使用 され得る。
[0284] さらに別の局面において、本発明は、 A— 1)粗面を有する第一層;および A— 2) 生体内衝撃に耐え得る強度を有する第二層、を含み、上記第一層と上記第二層とが 少なくとも 1点で接着される、血管新生分子を含む生体適合性組織支持体の、体内 における損傷部位を処置するための医薬を製造するための使用に関する。この使用 において、使用される生体適合性組織支持体として好ましい実施形態は、本明細書 にお 、て記載される任意の形態が使用され得る。
[0285] さらに別の局面において、本発明は、 A— 1)粗面を有する第一層;および A— 2) 生体内衝撃に耐え得る強度を有する第二層、を含み、上記第一層と上記第二層とが 少なくとも 1点で接着される、血管新生分子を含む生体適合性組織支持体の、体内 における臓器または組織を強化するための医薬を製造するための使用に関する。こ の使用において、使用される生体適合性組織支持体として好ましい実施形態は、本 明細書において記載される任意の形態が使用され得る。
[0286] 以下に、実施例に基づいて本発明を説明するが、以下の実施例は、例示の目的の みに提供される。従って、本発明の範囲は、上記発明の詳細な説明にも下記実施例 にも限定されるものではなぐ特許請求の範囲によってのみ限定される。
実施例
[0287] 以下の実施例で用いた試薬、材料は、特に言及しない限り、和光純薬、 Sigma, Beckton Dickinson, PeptoTechから入手した。また、動物の取り扱いは、大阪大学に おいて規定される基準を遵守し、動物愛護精神に則って実験を行った。
[0288] (実施例 1 ペプチドの合成)
Fmocィ匕学による高効率固ネ目法 (K.Nokihara, et al., Innovation and Perspectives in Solid-Phase Synthesis 1992, ed., R. Epton, Intercept Limited, Andover,
UK, 445-448, 1992, Design and Applications of a Novel Simultaneous Multiple Solid-Phase Peptide Synthesizer;軒原清史、有機合成哲学協会誌、 52,347-358, 1994,高効率ペプチド合成:多種品目同時自動合成とペプチドライブラリー)に基づ き、ペプチド自動合成機を用いて配列番号 1に示されるアミノ酸配列を有する血管新 生ペプチド)を合成した。得られたペプチドを、液体クロマトグラフィー結合質量スぺク トル (LCMS)システムで検定し、高純度であることを確認した(単一成分、質量理論値 と一致)。
[0289] このほか、以下のペプチドを作製した。
[0290] コントローノレ
VEGF
ペプチド SWYGLR (配列番号 1) (野生型)
ペプチド AWYGLR (配列番号 2)
ペプチド SAVYGLR (配列番号 3)
ペプチド SVAYGLR (配列番号 4)
ペプチド S WAGLR (配列番号 8)
ペプチド S WYALR (配列番号 5)
ペプチド S WYGAR (配列番号 6)
ペプチド S WYGLA (配列番号 7)
ペプチド SWYGL (配列番号 10)
ペプチド SWYG (配列番号 17)
ペプチド VVYGLR (配列番号 11)
ペプチド SWYGLRC (配列番号 12)
ペプチド GRGDSWYGLR (配列番号 13)
SWWGLR (配列番号 18)
SWFGLR (配列番号 9)
SWFGLRの Fのフッ素置換体(配列番号 19)
SWFGLRの Fのメチル基置換体(配列番号 20)
SWFGLRの Fの-トロ基置換体(配列番号 21)
(実施例 2 合成ペプチドの血管新生作用の確認)
実施例 1で合成したペプチドの存在下でラットの血管内皮細胞を三次元培養した。
[0291] この操作は具体的には次のようにして行った。細胞は transformed rat lung e ndothelial cells (TRLEC細胞)を用いた。 lOngZmlの濃度のペプチド溶液混和 コラーゲン I層中に TRLEC細胞を播種し、 14日間の炭酸ガスインキュベータ一中で 培養した。コントロールは因子(一)と従来より血管新生因子として知られているタンパ ク質 VEGF ( + )で行った。
[0292] 14日後に培養細胞を顕微鏡で観察したところ、コントロールはまったく管腔を形成 しな力つた。ペプチドおよび VEGFは管腔を形成し、この管腔を囲包する細胞同士 が接着されていた。さらに、倍率 7000倍で電子顕微鏡で管腔部分を観察したところ 、管腔の内壁にマイクロピライ (微細細胞突起)が複数個形成されていることが認めら れた。さらに、倍率 15000倍で、管腔を取り囲む血管内皮細胞同士の接合部分を観 察したところ、内皮細胞同士が堅固に結合されている領域、すなわち、タイトジャンク シヨン (密着結合)が認められた。これらの所見は内皮細胞が極性を獲得して、管腔 を形成したことを示す。なお、極性というのは細胞が頭と尻尾のような機能分担する 部分をもつ性質で、内皮細胞を通常培養していても極性はなぐしたがって管腔も作 らないので、このペプチドで誘導されたことを示している。管腔形成長さは有意にぺ プチドの方が VEGFより優れて!/、た。
[0293] これらの結果から、ペプチドには血管内皮培養細胞力 構成される組織中に、細胞 同士を接着させてそれらの間に管腔を形成する作用(生体内では、この管腔が血管 になる)があることが確認された。
[0294] (実施例 3 DASアツセィによる in vivoでの血管ネットワーク形成作用確認)
細胞培養液として用いられる DMEM (ダルベッコ修飾イーグル培地)中に lOngZ mlの濃度のプチドを溶解した溶液を得た。直径 0. 45mmの円筒の上下を Millipore フィルター(商品名)で塞いで構成されるマイクロセルをマウスの背部に埋め込んだ後
、マイクロセル内に上記本発明のペプチド等のペプチド溶液や VEGF溶液をインジ
ェクシヨンした。また、対照として、ペプチドを含まないリン酸緩衝液 (PBS)単独もイン ジヱクシヨンした (比較例 1)。 5日後に、マイクロセル周辺の組織の様子を顕微鏡で観
¾πίした。
[0295] ペプチド SWYGLRを用いた場合の血管新生の様子を観察すると、血管が新生さ れ、新生された血管がネットワーク形成し、網状となり始めている様子が明らかになつ た。
[0296] (実施例 4 : PLG Αを用いた実験)
本実施例では、 PLGAを支持体として用い、実施例 1で製造したペプチド SWYG LRおよびその改変体などのペプチドを生体分子として用いて組織片を調製し、本発 明の効果を実証した。
[0297] (方法'結果)
<足場設計 >
生体分解性合成高分子である Vycrylのボリラクチン 910メッシュ(グリコール酸と乳 酸の比率が 90: 10の共重合体, PLGA)を内腔側にニットメッシュ(nitted mesh) 1 枚、外側にウーブンメッシュ(woven mesh) 2枚の計 3枚重ね(各 0. 2mm,計 0. 6 mm厚)とし、それにコラーゲンを架橋処理した PLGA—コラーゲン複合膜を足場とし た。コラーゲンを架橋剤としてはコラーゲン I型のみを架橋処理した群、コラーゲン I型 にさらにペプチド SWYGLRを架橋した群を作製した。架橋方法は、以下のとおりで ある。肺動脈主幹部に径 20mmのパッチを縫着する。
[0298] <架橋方法 >
コラーゲン溶液に上記支持体を含浸させる。次に、凍結乾燥、 37°Cダルタルアル デヒド飽和蒸気により 4時間程度架橋処理する。最後に、 0. 1Mグリシン水溶液中で 15分間 3回振盪させ、蒸留水で 3回洗浄し、凍結乾燥を行った。これにより、コラーゲ ン含有支持体を作製する。この溶液にペプチド SVVYGLRを浸し、同様に架橋処理 する。
[0299] <機械強度 >
支持体を引張試験機で強度測定した。幅 5mm長さ 30mmの短冊状素材を短軸方 向に lOmmZ分の速度で荷重負荷し、破断点負荷及び弾性率を測定した。 (TENS
ILLON ORIENTEC) 0コントロールとしてグルタルアルデヒド処理ゥマ心膜を用い て比較検討した。引っ張り強度は PLGA—コラーゲン複合膜が 75± 5N、ダルタルァ ルデヒド処理ゥマ心膜が 34± 11Nであった。血管新生ペプチドを結合した膜の場合 もまた、これらに匹敵する引っ張り強度を有した。
[0300] <細胞接着の効率 >
支持体における細胞生着性の確認のため、インビト口にお 、て蛍光抗体 (PKH— 2 6 (SIGMA) )で標識した血管内皮細胞 (VECs)および平滑筋細胞 (VSMCs)をコ ラーゲン I型のみを架橋処理した PLGA—コラーゲン複合膜とコラーゲン I型にさらに I V型架橋処理した PLGA—コラーゲン複合膜で細胞接着効率の比較検討をおこな つた。蛍光顕微鏡にて一視野あたりの蛍光色素の発色領域 (%)を比較すると血管内 皮細胞(VECs)および平滑筋細胞(VSMCs)の!、ずれの細胞にぉ 、てもコラーゲン I型、 IV型架橋処理した本発明の支持体が有意に蛍光色素の発色領域が多ぐ細胞 生着が認められた。
[0301] 以上の結果より、本発明の支持体が細胞接着効率を保持または亢進していること が明らかとなった。
[0302] <第 VIII因子染色 >
血管数の計数は、第 vm因子関連抗原等で免疫組織ィ匕学染色した後に計数するこ とによって判定することができる。この計数方法では、検体を 10%の緩衝化ホルマリ ンで固定し、パラフィン包埋し、各々の検体から数個の連続切片を調製し、凍結する
。次いで、凍結切片を PBS中の 2%パラホルムアルデヒド溶液で 5分間、室温にて固 定し、 3%過酸ィ匕水素を含むメタノール中に 15分間浸漬し、次いで PBSで洗浄する 。このサンプルをゥシ血清アルブミン溶液で約 10分間覆って、非特異的反応をブロッ クする。検体を、 HRPと結合する、第 VIII因子関連抗原に対する EPOS結合体ィ匕抗 体と共にー晚インキュベートする。サンプルを PBSで洗浄した後、これらを、ジァミノ ベンジジン溶液(例えば、 PBS中、 0. 3mgZmlジァミノべンジジン)中に浸漬して、 陽性染色を得る。染色された血管内皮細胞を、例えば、 200倍の倍率の光学顕微鏡 下で計数し、例えば、計数結果を、 1平方ミリメートルあたりの血管の数としてあらわす 。特定の処置後、血管数が統計学的に有意に増カロしている力否かを判定することに
より、第 VIII因子の存在を確認し、これにより例えば、血管内皮細胞の確認および血 管新生活性を判定することができる。
[0303] <エラスチカ 'ファン'ギーソン染色 >
弾性線維を染色するために、エラスチカ 'ファン'ギーソン染色を行った。その手順 は以下のとおりである。必要に応じて脱パラフィン (例えば、純エタノールにて)、水洗 を行 、、武藤化学などから入手可能なレゾルシンフクシン液に 40〜60分間サンプル を浸す。その後 70%アルコールでサンプルを洗浄し、ォムニのへマトキシリンに 15分 間浸す。その後、流水水洗を 5分行い、ファン (ワン) 'ギーソン液に 2分浸す。水洗し すばやく脱水し、透徹し、封入して、染色を確認することができる。
[0304] くへマトキシリン'ェォジン(HE)染色 >
細胞における支持体の定着 ·消長を観察するために、 HE染色を行った。その手順 は以下のとおりである。必要に応じて脱パラフィン (例えば、純エタノールにて)、水洗 を行い、ォムニのへマトキシリンでサンプルを 10分浸した。その後流水水洗し、アン モ-ァ水で色出しを 30秒間行った。その後、流水水洗を 5分行い、塩酸ェォジン 10 倍希釈液で 2分間染色し、脱水し、透徹し、封入して、染色を確認することができる。
[0305] <von Kossa染色 >
細胞における石灰化を観察するために、フォン'コッサ法によって染色した。その手 順は以下のとおりである。必要に応じて脱パラフィン (例えば、純エタノールにて)、水 洗 (蒸留水)を行い、 25%硝酸銀液 (間接光下)に 2時間浸す。その後、蒸留水水洗し 、 42% 2%チォ硫酸ナトリウム (ハイポ) に 5分浸す。その後、流水水洗を 5分行い、次 いでケルンェヒテロートに 5分浸す。その後、流水水洗を 5分行い、脱水し、透徹し、 封入して、染色を確認することができる。
[0306] <移植>
作製した支持体と、この複合膜に自己の血管内皮細胞 (VECs)および平滑筋細胞 (VSMCs)を播種した支持体を作製し、ビーグル成犬(8〜: LOkg)の肺動脈主幹部 に部分遮断 (partial clamp)下に移植した。
[0307] 細胞は同種のビーグル成犬の下肢表在静脈を摘出し、血管内皮細胞、および平 滑筋細胞 (VSMCs)を単離培養. PLGA—コラーゲン複合膜に血管内皮細胞、平
滑筋細胞をそれぞれ 1. 3 X 106cellZcm2の密度で播種した。移植後、 2週、 2力月、 6ヶ月後に摘出し組織学的に検討を行う。
[0308] (インビボ:移植 2週後)
作製した支持体および自己細胞を播種した支持体の両群とも肉眼的に明らかな血 栓形成は認めな力つた。 HE染色では PLGAの残存を認め、その間は結合織が介在 していた。自己の血管内皮細胞および平滑筋細胞を播種した PLGA コラーゲン複 合膜では蛍光抗体標識した播種した血管内皮細胞は内腔側に散在しているのみで あり、多くの細胞は PLGA—コラーゲン複合膜より脱落していることが示唆された。ま た、血管新生については、血管新生分子が含まれる方が、コントロールより有意に血 管が新生されている様子が明らかになった。
[0309] (インビボ:移植 2ヶ月後)
作製した支持体および自己細胞を播種した PLGA コラーゲン複合膜の両群とも 肉眼的に内腔側表面は平滑で、 HE染色で PLGAは完全に吸収されており正常の 血管と比較しても遜色のな 、組織構造であった。
[0310] 血管内皮細胞を第 VIII因子染色にて、平滑筋細胞 ex SMA免疫染色にて検討 した。両群とも第 VIII因子免疫染色で単層の連続する血管内皮細胞を認め、 α— S ΜΑ免疫染色で内腔側に配向性を有した平滑筋細胞を認めた。
さらにエラスチカ 'ファン'ギーソン(elastica - van Gieson)染色にて血管の弹性繊 維を検討した。両群とも血管内層に弾性繊維の発現が認められた。また、血管新生 については、血管新生分子が含まれる方が、コントロールより有意に血管が新生され ている様子が明らかになった。
[0311] (インビボ:移植 6ヶ月後)
両群とも移植後 2ヶ月目に見られたのと同様に第 VIII因子免疫染色で単層の連続 する血管内皮細胞を認めた。平滑筋細胞は移植後 2ヶ月目に見られたよりもさらにそ の形態を明らかにし、 a SMA免疫染色で内腔側に配向性を有し、正常血管とほ ぼ同等であった。エラスチカ 'ファン'ギーソン染色にておける血管弾性繊維も移植後 2ヶ月目に見られたよりも血管内層に弾性繊維の発現が認められた。また、血管新生 については、血管新生分子が含まれる方が、コントロールより有意に血管が新生され
ている様子が明らかになった。
[0312] さらに、血管の石灰化の有無はフォンコッサ (von Kossa)染色において移植した 複合膜および周辺血管に陽性反応を認めず、石灰沈着は認められなカゝつた。
[0313] (まとめ)
生体分解性高分子を足場とした作製した支持体は,ェキソビボでの細胞播種なし でも移植後 2ヶ月で血管壁構造の再構築が見られ, 6力月後も石灰化を認めず、自己 化をめざした心血管修復用人工パッチとして右心系での有用性が期待できた。した がって、このような組織片は、従来の技術では達成することができな力つた格別の効 果を示す。その上、血管新生も顕著に亢進されていた。
[0314] (実施例 5 : PGAを用いた実験)
本実施例では、 PGAを支持体として用い、実施例 1で作製したペプチドを実施例 4 に記載の方法に準じて組織片を調製し、本発明の効果を実証した。
[0315] (結果)
その結果、本発明の支持体は、機械強度、細胞接着の効率、移植生着の点で、遜 色ないことが確認された。
[0316] (インビボ:移植 2週後)
PGA—血管新生ペプチド複合膜および自己細胞を播種した PGA—血管新生べ プチド複合膜の両群とも肉眼的に明らかな血栓形成は認めな力つた。 HE染色では P GAの残存を認め、その間は結合織が介在していた。自己の血管内皮細胞および平 滑筋細胞を播種した PGA—血管新生ペプチド複合膜では蛍光抗体標識した播種し た血管内皮細胞は内腔側に散在しているのみであり、多くの細胞は PGA—血管新 生ペプチド複合膜より脱落していることが示唆された。また、血管新生については、 血管新生分子が含まれる方が、コントロールより有意に血管が新生されて 、る様子が 明らかになった。
[0317] (インビボ:移植 2ヶ月後)
PGA—血管新生ペプチド複合膜および自己細胞を播種した PLGA—血管新生べ プチド複合膜の両群とも肉眼的に内腔側表面は平滑で、 HE染色で PLGAは完全に 吸収されており正常の血管と比較しても遜色のない組織構造であった。
[0318] 血管内皮細胞を第 VIII因子染色にて、平滑筋細胞 ex SMA免疫染色にて検討 した。両群とも第 VIII因子免疫染色で単層の連続する血管内皮細胞を認め、 α— S ΜΑ免疫染色で内腔側に配向性を有した平滑筋細胞を認めた。
さらにエラスチカ 'ファン'ギーソン染色にて血管の弾性繊維を検討した。両群とも血 管内層に弾性繊維の発現が認められた。また、血管新生については、血管新生分子 が含まれる方力 コントロールより有意に血管が新生されている様子が明らかになつ た。
[0319] (インビボ:移植 6ヶ月後)
両群とも移植後 2ヶ月目に見られたのと同様に第 VIII因子免疫染色で単層の連続 する血管内皮細胞を認めた。平滑筋細胞は移植後 2ヶ月目に見られたよりもさらにそ の形態を明らかにし、 a SMA免疫染色で内腔側に配向性を有し、正常血管とほ ぼ同等であった。エラスチカ 'ファン'ギーソン染色にておける血管弾性繊維も移植後 2ヶ月目に見られたよりも血管内層に弾性繊維の発現が認められた。また、血管新生 については、血管新生分子が含まれる方が、コントロールより有意に血管が新生され ている様子が明らかになった。
[0320] さらに、血管の石灰化の有無はフォンコッサ染色において移植した複合膜および周 辺血管に陽性反応を認めず、石灰沈着は認められなかった。
[0321] 従って、別の繊維材料を用いても、血管新生が亢進されることが明らかになった。
[0322] (実施例 6:スポンジ状 PGAを用いた実験)
本実施例では、スポンジ状 PGAを支持体として用いて組織片を調製し、実施例 1 で作製した血管新生ペプチドを付与した組織片を用いて本発明の効果を実証した。
[0323] (結果)
その結果、本発明の支持体は、機械強度、細胞接着の効率、移植生着の点で、遜 色ないことが確認された。また、血管新生については、血管新生分子が含まれる方が 、コントロールより有意に血管が新生されている様子が明らかになった。
[0324] (インビボ:移植 2週後)
PGA 血管新生ペプチド複合膜および自己細胞を播種した PGA 血管新生べ プチド複合膜の両群とも肉眼的に明らかな血栓形成は認めな力つた。 HE染色では P
GAの残存を認め、その間は結合織が介在していた。自己の血管内皮細胞および平 滑筋細胞を播種した PGA 血管新生ペプチド複合膜では蛍光抗体標識した播種し た血管内皮細胞は内腔側に散在しているのみであり、多くの細胞は PGA 血管新 生ペプチド複合膜より脱落していることが示唆された。また、血管新生については、 血管新生分子が含まれる方が、コントロールより有意に血管が新生されて 、る様子が 明らかになった。
[0325] (インビボ:移植 2ヶ月後)
PGA 血管新生ペプチド複合膜および自己細胞を播種した PLGA 血管新生べ プチド複合膜の両群とも肉眼的に内腔側表面は平滑で、 HE染色で PLGAは完全に 吸収されており正常の血管と比較しても遜色のない組織構造であった。
[0326] 血管内皮細胞を第 VIII因子染色にて、平滑筋細胞 ex SMA免疫染色にて検討 した。両群とも第 VIII因子免疫染色で単層の連続する血管内皮細胞を認め、 α— S ΜΑ免疫染色で内腔側に配向性を有した平滑筋細胞を認めた。
さらにエラスチカ 'ファン'ギーソン染色にて血管の弾性繊維を検討した。両群とも血 管内層に弾性繊維の発現が認められた。また、血管新生については、血管新生分子 が含まれる方力 コントロールより有意に血管が新生されている様子が明らかになつ た。
[0327] (インビボ:移植 6ヶ月後)
両群とも移植後 2ヶ月目に見られたのと同様に第 VIII因子免疫染色で単層の連続 する血管内皮細胞を認めた。平滑筋細胞は移植後 2ヶ月目に見られたよりもさらにそ の形態を明らかにし、 a SMA免疫染色で内腔側に配向性を有し、正常血管とほ ぼ同等であった。エラスチカ 'ファン'ギーソン染色にておける血管弾性繊維も移植後 2ヶ月目に見られたよりも血管内層に弾性繊維の発現が認められた。
[0328] さらに、血管の石灰化の有無はフォンコッサ染色において移植した複合膜および周 辺血管に陽性反応を認めず、石灰沈着は認められなかった。また、血管新生につい ては、血管新生分子が含まれる方が、コントロールより有意に血管が新生されている 様子が明らかになった。
[0329] (実施例 7:複合支持体の作製:編物および織物の生産)
まず、織物として、ポリダリコール酸およびポリ L乳酸のメッシュを当該分野において 公知の手法を応用して、作製した。その手順は以下のとおりである。糸として 240d( デニール)の 64f (フィラメント)のマルチフィラメントを用いた。織り方は、平織りを採用 し、径約 64本 Z吋、緯 40〜47.5本 Z吋で織った。
[0330] 次に、編物として、ポリグリコール酸を材料として編物を作製した。この編物もまた、 公知の手法を応用して、作製した。以下にその手順を示す。糸として約 68dの 30fマ ルチフィラメントを用いた。編み方としては、以下の編み方を採用した。
[0331] 組み合わせ
No.1:AL1、 AL2、 AL3
No.2:AL1, AL2, AL3(No. 1より L2の送り力 ^多!ヽ)
No.3:BL1、 AL2、 AL3 (細胞接着実験に用いた)
No.4:BL1、 AL2、 AL3(No.3より L3のふり幅を多くした)
No.5:BL1, AL2, AL3(No.4より L2の送り力 ^多!ヽ)
No.6:BL1、 AL2、 AL3(No.3より L2のふり幅を多くした)
No.7:BL1, AL2, AL3(No.6より L2の送り力 ^多!ヽ)
No.8:BL1、 BL2, AL3
(編み方の例示)
[0332] [表 1]
[0333] 次に、編物と織物とを中間層としてフィルムを用いて接着させた。
[0334] フィルムは、ガラス上に材料(ポリ乳酸系フィルム)または力プロラタタム系の材料を キャストした後に風乾して作製した。
[0335] 次に、織物を下に敷き、その上にこのポリ乳酸系フィルムを敷き、その上に、ポリダリ コール酸を置いた。この後、熱処理(80°C〜140°Cの間)を行い、各々の層を接着さ せた。
[0336] この支持体は、移植片として使用することができる。
[0337] (実施例 8:生体分子の付与)
生体分子として、実施例 1で製造した血管新生ペプチドを用いて、実施例 7におい て作製した支持体に生体分子を付与した。
[0338] その後、付与の際には、直接架橋の他、コラーゲンを介した架橋も行った。
[0339] このようにして、種々の生体分子支持体を作製した。以下に作製した支持体を示す
―. PGA knit No. 9— PLA woven横
2. PGA knit No. 9— PL A woven縦
3. PLA woven 47. 5横(比較例)
4. PLA woven 47. 5縦(比較例)
5. PGA knit No. 9 横
6. PGA knit No. 9 縦
以下の実験では、コントロールとして、へマシールド人工血管(Hamshiled Platin urn™ Woven Vascular Graftsゝ Boston Scientific, MA、 USA)およびバ スクテック人工血管(Gelseal™、テルモ、日本)を使用した。
[0340] (実施例 9:生体分子支持体の機能)
次に、実施例 8で作製した支持体について、引張り強度、弾性率および伸びを、引 張り試験により観察した。その概要を以下に示す。
[0341] 本実施例では、弓 I張試験機 (TENSILLON ORIENTEC)で強度測定した。具 体的には、幅 5mm長さ 30mmの短冊状素材を短軸方向に lOmmZ分の速度で荷 重負荷し、破断点負荷および弾性率を測定した。
[0342] その結果、本発明の支持体は、コントロールとして用いた大動脈血管壁および市販 の人工血管と同程度またはそれ以上の強度および弾性率を有することが明らかにな つた。伸びについても、許容範囲であることがわ力つた。
[0343] 次に、水漏れ率および通気性を調べた。以下にそのプロトコルを記載する。
[0344] 水漏れ率は、支持体を水平にし、その上に水 10mlを垂らし、 60秒間でどれだけの 量力もれるのかを測定することによって決定した。本発明の支持体を用いても、血液 などの漏れはないであろうことが明らかになった。
[0345] 次に本発明の支持体および他の支持体の通気性を確認した。本実施例では、 JIS — H— 1096A法を利用した。ここでは、フラジール型試験機に試験片を取り付けた 後、加圧抵抗器によって傾斜形気圧計が 125Paの圧力を示すように調節し、通過す る空気量 (mlZcm2Zsec)を測定することによって通気性を決定した。これまでの実 験からィヌに移植したときに血液が漏れないことがわかっているビクリル wovenの 2枚 重ねをコントロールとして用いた。今回作製した 2枚重ねのメッシュは、このコントロー ルとほぼ同様の通気性を有しており、 2. 0mlZcm2Zsec以下に抑えられていること
がわかる。従って、本発明の支持体は、血液を漏らさないことが通気性試験でも確認 された。
[0346] (実施例 10:血管新生ペプチド支持体の細胞接着性)
次に、本発明の血管新生ペプチド支持体の細胞接着性を確認した。実施例 9で作 製したものを使用してこの試験を行なった。まず各支持体(1 X lcm2)に血管内皮細 胞 I X 105細胞を播種した。 15時間培養後、 MTTアツセィを行い、 595nmの吸光度 を測定した。 MTTアツセィの手順は、以下のとおりである。支持体を培養液で洗浄後 、 MTT溶液を 1Z10容量カ卩えた培地を用いて、 1時間 37°Cで培養した。この培養後 、支持体を PBSで洗浄し、酸性イソプロパノールに加え、 10分間振盪させた。その溶 液を、マイクロプレートリーダーにより 595nmの吸光度を測定することによって、 MT Tの指標を決定した。
[0347] MTTは、細胞内のミトコンドリアの脱水素酵素によりテトラゾリゥム塩がホルマザンに 還元されることに由来する細胞活性の評価法である。ホルマザンについては、生成 量と細胞数がよく対応し、また特定波長の吸光特性示すため、試料の吸光度を測定 するだけで、容易に生存細胞数の計測が行うことができる。また、細胞内ミトコンドリア の代謝活性を測定するために比較的初期の細胞死を検出することができる。
[0348] その結果、コラーゲンで架橋をした方力 細胞の接着性が向上していることがわか つた。この向上は、他の細胞外マトリクス(例えば、ラミニン、フイブロネクチンなど)でも 見出された。また、織物よりも編物のほうがコラーゲン架橋後の細胞の接着性が高く なることが判明した。
[0349] また、本発明の支持体に対する細胞の接着性に問題がな 、ことがわかった。また、 血管新生については、血管新生分子が含まれる方が、コントロールより有意に血管が 新生されている様子が明らかになった。
[0350] (実施例 11:血管ネットワーク形成能)
次に、血管新生分子 (配列:ペプチド SWYGLR)を含む支持体を移植した場合の ネットワーク能を調べた。以下にそのプロトコールを示す。
[0351] 組織での血管新生の状態を実体顕微鏡 (ォリンパス、 SZX12、 Japan)にて観察し た。得られた画像を Photoshop (登録商標)(Adobe、 Japan)にて読み取りネットヮ
一ク能を以下のようにスコア化した。
[0352] Nwl:ネットワーク形成前記で血管新生は認められるが、各新生血管は単独の状 fe。
[0353] Nw2 :ネットワーク形成中期であり、各新生血管同士は、はしご上の側枝が係った 状態。
[0354] Nw3 :ネットワーク完成期であり、はしご上側枝がさらに側枝を出した状態。
[0355] Nw4 :ネットワーク成熟期であり、広範囲に新生血管叢を示す状態。
[0356] 血管新生分子 (配列:ペプチド SWYGLR)を含む支持体を移植した場合のネット ワーク能は、 1ヶ月では 1. 6と低く、「ネットワーク未完成」であった力 2力月後では 3.
9となりネットワーク形成が完成された。
[0357] (実施例 12:インビボ試験)
実施例 9で作製された本発明の支持体 (コラーゲンなしおよびコラーゲン付与; 15 mm X 10mm)を、ビーグル成犬(8— 12kg)の肺動脈主幹部に部分遮断下に移植 した。移植後、 2週、 2ヶ月、 6力月後に摘出し、組織学的に検討した。
[0358] <インビボ:移植 2週間後 >
移植した支持体には肉眼的に明らかな血栓形成は認められな力つた。 HE染色で は、支持体の残存が認められ、その間には結合織が介在していた。また、血管新生 については、血管新生分子が含まれる方が、コントロールより有意に血管が新生され ている様子が明らかになった。
[0359] <インビボ:移植 2ヶ月後 >
移植した支持体の内腔側表面は肉眼的に平滑であり、 HE染色によって、 PLGA は完全に吸収されており、正常の血管として遜色のない組織構造であることが明らか になった。
[0360] 血管内被細胞を第 VIII因子染色により、平滑筋細胞を α -平滑筋ァクチン(a -SMA )免疫染色にて検討した。 α— SMA免疫染色は、 α— SMAに対する抗体を用いて 染色を行った。第 VIII因子免疫染色で単層の連続する血管内皮細胞が認められ、 a SMA免疫染色で内腔側に配向性を有する平滑筋細胞が認められた。
[0361] さらに、エラスチカ 'ファン'ギーソン染色にて、血管の弾性線維を検討した。血管内
層に弾性線維の発現が認められた。また、血管新生については、血管新生分子が含 まれる方が、コントロールより有意に血管が新生されている様子が明らかになった。
[0362] <インビボ:移植後 6力月後 >
移植後 2ヶ月目に見られたのと同様に、第 VIII因子免疫染色で単層の連続する血 管内皮細胞が認められた。平滑筋細胞は、移植後 2ヶ月目に見られたよりもさらにそ の形態を明らかにし、 a SMA免疫染色で内腔に配向性を有し、正常血管とほぼ 同様であった。エラスチカ 'ファン'ギーソン染色にぉ ヽて血管弾性線維も移植後に 見られたよりも血管内層に弾性線維の発現がより多く認められた。さらに、血管の石 灰化の有無は、フォンコッサ染色により、移植した支持体および周辺血管には陽性 反応が認められな力 たことから、石灰沈着は認められな力 た。また、血管新生に ついては、血管新生分子が含まれる方が、コントロールより有意に血管が新生されて いる様子が明らかになった。
[0363] (実施例 13:心臓への移植)
次に、実施例 9で作製された支持体 (コラーゲンなしおよびコラーゲン付与)をラット 梗塞心に移植した。
[0364] <心筋梗塞ラットモデル >
雄性 Lewis系統ラットモデルを本実施例において用いた。 National Society fo r Medical Researchg作成した「Prmciples of Laboratory Animal Care」 および Institute of Laboratory Animal Resourcez)、作成、 National Instit ute of Health力 S公表した「Guide for the Care and Use of Laboratory AnimalsJ (NIH Publication, No. 86— 23, 1985,改訂)に遵つて、動物 愛護精神に則った世話を動物に対して行った。
[0365] 急性心筋梗塞を、 Weisman HF et al. , (Circulation, 1988 ; 78 : 186— 201)に記載されるように誘導した。簡潔には、ラット(300g、 8週齢)をペントバルビタ ールなトリウムで麻酔し、陽圧式呼吸を行った。ラットの心筋梗塞モデルを作製するた めに、左第四肋間で胸郭を開き、左冠動脈を根元から 3mmの距離で、 8 0ポリプロ ピレン糸で完全に結紮した。
[0366] <支持体の移植 >
心筋梗塞ラットを麻酔し、左第五肋間で胸郭を開いて心臓を露出させた。このラット を心筋梗塞領域に投与した物質に従って 2群に分けた: C群 (無治療群、 n= 5)と、 S 群 (支持体移植群、 n= 5)。さらに支持体のみ、およびペプチドを直接投与した群も n = 5で作製した。支持体は、左前下降枝結紮 2週間後に梗塞部位に直接移植した。
[0367] <ラット心臓の心機能の測定 >
梗塞モデル作製 2週間後、移植後 4週間後、同 8週間後に、心臓超音波 (SONOS 5500、 Agilent Technologies社製)を用いて心機能を測定した。 12MHzのトラ ンス (transducer)を用いて、左側方より左室が最大径を示す位置にて短軸像を描 出した。 Bモード(B— mode)にて、左室収縮末期面積(end systolic area)、 Mモ ード(M— mode)にて左室拡張末期径 (LVDd)、左室収縮末期径 (LVDs)、および 左室前壁厚 (LVAWTh)を測定し、左室駆出分画 (LVEF)および左室内径短縮率 (LVFS)を算出した。
[0368] <組織学的分析 >
本発明の支持体の移植後、 4週間後、 8週間後に心臓を摘出し、短軸にて切断し、 10%ホルムアルデヒド溶液に浸し、パラフィン固定を行った。切片を作製し、へマトキ シリン一ェォジン染色、マッソントリクローム染色を行った。マッソントリクローム染色は 以下のように行った。また、同時期の凍結切片を作製し、第 VIII因子免疫染色を行つ た。
[0369] くマッソントリクローム染色〉
マッソントリクローム染色法は以下のとおりである:マッソントリクローム染色では、鉄へ マトキシリンで核が染められ、その後に拡散速度の大きい小色素分子 (酸フクシン、 ポンソーキシリジン)が細胞の細網孔へ浸透し、次いで拡散速度の小さい大色素分 子 (ァ-リン青)が膠原線維の粗構造に入り込み青色に染め出す。
[0370] マッソントリクローム染色で使用される試薬
媒染剤
10%トリクロル酢酸水溶液 1容
10%重クロム酸カリウム水溶液 1容
B)ワイゲルトの鉄へマトキシリン液 (使用時に 1液と 2液を等量混合)
lg
100%エタノール 100ml
2液
塩化第二鉄 2.0g 塩酸 (25%) lml
蒸留水 95ml
C) 1%塩酸 70%アルコ
D) I液
1%ビーブリッヒス力 90ml
1%酸性フクシン 10ml 酢酸 lml Ε) Π液
リンモリブデン酸 5g
リンタングステン酸 5g
蒸留水 200ml
F) III液
ァニリン青 2.5g
酢酸 2ml
蒸留水 100ml
G) 1%酢酸水
マッソントリクローム染色法の手順
1.脱パラ、水洗、蒸留水
2.媒染(10〜15分)
3.水洗 (5分)
4.ワイゲルトの鉄へマトキシリン液(5分)
5.軽く水洗
6.1%塩酸 70%アルコールで分別
7.色出し、水洗 (10分)
8.蒸留水
9.1液 (2〜5分)
10.軽く水洗
11. II液 (30分以上)
12.軽く水洗
13. ΠΙ液 (5分)
14.軽く水洗
15.1%酢酸水(5分)
16.水洗 (すばやく)
17.脱水、透徹、封入。
[0371] マッソントリクローム染色法では、膠原線維、細網線維、糸球体基底膜は、鮮やかな 青に染まり、核は黒紫色に染まり、細胞質は淡赤色に染まり、赤血球は橙黄色〜深 紅色に染まり、粘液は青色に染まり、細胞分泌顆粒は好塩基性が青に好酸性が赤に 染まり、線維素は赤に染まる。従って、青く染まった面積を線維化した部位として算出 することができる。本明細書において、特定のサイト力インおよび増殖因子の処置後 、線維症化した面積が統計学的に有意に減少しているか否かを判定することにより、 抗線維化作用を判定することができる。
[0372] <結果 >
移植の 4週間後、心エコー検査を行ったところ、 S群における駆出率および左室短 縮率は、 C群に比較して有意な改善を示した。これらの機能改善は、移植後少なくと も 8週間までは維持されていた。また、血管新生については、血管新生分子が含まれ る方力 S、コントロールより有意に血管が新生されている様子が明らかになった。
[0373] <組織学的評価 >
S群は、 C群と比較して、 LV壁の厚みにおける有意な増加および LV断面積の減少 を示した。また、支持体群のみの移植でも、回復効果が見られた。ペプチドのみでも 、驚くべきことに回復効果が見られた。しかし、これらのペプチド単独または支持体単 独と比べた場合、 S群は、顕著に改善していた。
[0374] 顕微鏡検査では、新たに形成された心臓組織が、 LV壁のうちの梗塞を起こした領 域を補うことを見出した。本発明の支持体では、血管の新生および支持体 (パッチ) の消長が見られた。この傾向は、血管申請分子付与支持体においてより顕著であつ た。また、血管新生については、血管新生分子が含まれる方が、コントロールより有 意に血管が新生されている様子が明らかになった。
[0375] ペプチド単独投与については、図 1〜3に結果を示し、ペプチド支持体結合移植に ついては、図 4に結果を示す。コントロールの結果は、図 5に示す。
[0376] 心筋梗塞層において通常では認められない、大小の口径力 なる血管が認められ た。
[0377] これらの血管は、内皮染色 (抗第 VIII因子染色)にて内皮が染色され、その周囲に 平滑筋が観察されたことから、動脈であると考えられる。支持体を使用し血管新生べ プチドを使用した場合、この支持体の存在する直下に血管新生が認められた。
[0378] 従って、本発明の支持体は、細胞など生体に由来する自己増殖性のものを用いる ことなく、自己化する組織片を提供することを実証した。また、血管新生については、 血管新生分子が含まれる方が、コントロールより有意に血管が新生されて 、る様子が 明らかになった。
[0379] (実施例 14:修復素材のラット背部移植モデルでの実証)
本実施例では、本発明の支持体が背部でも作用することを確認することを実証した 。生体吸収性高分子であるポリダリコール酸の knit,ポリグリコール酸またはポリ L乳酸 の wovenによる knit— woven複合支持体を作成した。また、 knit— woven複合支持体に コラーゲンマイクロスポンジを架橋処理し、さらに, I型コラーゲンと実施例 1で作製した 血管新生ペプチドを導入した心血管修復素材を作成した。
[0380] ラット背部移植モデル
雄性 Lewis系統ラットを本実施例において用いた。 National Society for Medical Research力 S作成した「Principles of LaboratoryAnimal Care」、および Institute of Laboratory Animal Resource力 S作成し National Intitute ofHealtii»公表した「Guide for the Care and Use of Laboratory Animals」(NIH Publication
)に遵つて、動物愛護精神に則った世話を動物に対して行った。ラット(300g、 8週齢
)をペントバルビタールナトリウムで麻酔をし、陽圧式呼吸を行った。ラットの背部に移 植した物質に従って 3群に分けた。 C群 (修復素材のみ移植群群、 n=5)と S1群 (修 復素材 + 1型コラーゲン + HGF移植群、 n = 5) S2群 (修復素材 + 1型コラーゲン + IV 型コラーゲン +ラミニン導入移植群、 n=5)。
[0381] 実験は、 ShimizuT, Yamato M, Akutsu T et al., Circ Res. 2002 Feb 22;90(3):e40. に基づいて行った。
[0382] 組織学的分析
移植後 4週、 8週後に心臓を摘出し、短軸にて切断し、 10%ホルムアルデヒド溶液に つけ、ノ ラフィン固定を行った。切片を作成し、へマトキシリンーェォジン染色、マツソ ン—トリクローム染色を行った。また同時期の凍結切片を作成し、 Desmin、 Actinin,
TroponinTの免疫染色を行った。
[0383] 定量 PCR
移植後 4週、 8週後に心臓を摘出し、 cardiacactin、 a - MHC、 j8 - MHCの定量 PCR を施行した。定量 PCRは、プライマーおよび定量のためのプローブとして以下を使用 した:
カルディオアクチン(CardiacActin)
5'プライマー ACC CTG GAA TTG CTG ATC GTA TG (配列番号 22)
3'プライマ TGT CGT CCT GAG TGT AAG GTA GCC (配列番号 23) プローブ AAA TTA CCG CAC TGG CTC CCA GCA (配列番号 24) a MHC
5'プライマ TAG AAT AGC CTC AGA GGC CCA G (配列番号 25) 3'プライマ GCT TCC GAG ACC GCT CTG TC (配列番号 26) プローブ CAG TCC GTG CCA ATG ACG ACC TGA A (配列番号 2
7)
5'プライマ TGC TGA AGG ACA CTC AAA TCC A (配列番号 28) 3'プライマ GTT GAT GAG GCT GGT GTT CTG G (配列番号 29) プローブ ACG CAG TCC GTG CCA ATG ACG ACC (配列番号 30)
[0384] 定量 PCRは、以下のように行った。
1.摘出したサンプルは、 RNAlater (QIAGEN)で保存した。
2. RNeasy Mini Kit (GIAGEN)で RNAを抽出した。
3. RNase— Free DNase Set (QIAGEN)で DNAを処理した。
4. Omniscript RT Kit (QIAGEN)で処理した DNAから逆転写反応を行った。
5. TaqMan Universal PCR Master Mix (Roche)で PCRした。
[0385] 結果
組織学的評価
S2群は、 C群と比較して、 LV壁の厚みにおける有意な増加および LV断面積の減 少を示した。顕微鏡検査では、修復素材にはない細胞の存在が認められ、新たに形 成された心臓組織が、 LV壁のうちの梗塞を起こした領域を補うことを見出した。さら に S2群では再生された部位の免疫組織染色で Desmin、 Actinin, TroponinTの免疫 染色にて陽性細胞が認められた。また、血管新生については、血管新生分子が含ま れる方力 コントロールより有意に血管が新生されている様子が明らかになった。
[0386] 定量 PCR
定量 PCRでは S1群と S2群は C群では認められなかった cardiacactin、 a - MHC、 β
- MHCの発現が認められる。
[0387] 定量 PCRでは S1群と S2群は C群では認められなかった cardiacactin、 a - MHC、 β
-MHCの発現が認められる。
[0388] 発現の傾向は、導入する生体分子の種類が増えるほど増加した。
[0389] 以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきた力 本発 明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求 の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、 本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に 基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引 用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載さ れているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであるこ
とが理解される。
産業上の利用可能性
本発明により、細胞など生体に由来する自己増殖性のものを用いることなぐ自己 化し、かつ、血管新生を促進する組織片が提供された。そのような組織片を移植する ことで、血管新生を促進するように臓器または組織の再生がみられたことはかってな ぐそのような再生医療産業において本発明は特に有用である。