明 細 書
重合性双頭型糖脂質、そのチューブ状凝集体及びその重合体 技術分野
[0001] 本発明は、新規な重合性双頭型糖脂質及びこの脂質により形成される中空のチュ ーブ状凝集体並びにこの凝集体を重合させて得られる中空のチューブ状重合体に 関する。この中空のチューブ状凝集体やチューブ状重合体は、機能性材料として、 医薬 '化粧品分野、電子情報分野、さらには食品工業、農林業、繊維工業などにお いて有用である。
背景技術
[0002] 脂質が水中で自己集積して安定な分子集合体を形成することは古くから知られて いる。このような脂質から形成される分子集合体の製造方法としては、従来、天然由 来のリン脂質力 形成される球状の分子集合体 (リボソームと呼ばれる)を薄膜法、熱 分散法、溶液注入法、コール酸法、逆層蒸発法などにより製造する方法が知られて いる(非特許文献 1)。し力 ながら、これらの方法においては、複雑でかつ熟練した 技術を必要とする上、形成した分子集合体は球状の単一膜リボソーム又は球状の多 重膜リボソームであり、ナノメータースケールの極微細繊維状、あるいは微細なチュー ブ状の凝集体の形成はされなレ、。
[0003] 近年、ナノメータースケールの極微細繊維状、あるいは微細なチューブ状の凝集体 の構築をめざしてジアセチレン基を含むリン脂質、糖脂質系の化合物が数多く報告 された(非特許文献 2、 3)。これらは外径 20nm 数十 x mのチューブ状構造体を与 える。このような構造を与える分子はレ、ずれも親水部(頭部)と疎水部(鎖)がーつず つの"一頭一鎖型"、あるいは親水部一つ疎水部二つの"一頭二鎖型"の脂質がほと んどである。逆に二頭一鎖型の双頭型脂質でこのようなチューブ状凝集体を形成す る例は、世界で数例しか知られておらず (特許文献 1、非特許文献 4、 5)、通常は二 次元シート状の構造を与える。
[0004] これらのチューブ状凝集体は一般的に分散させた溶媒中でのみ安定であり、物理 的振動や衝撃を加えたり、脂質がよく溶ける溶媒を加えたり加熱すると、特異的な構
造は崩壊してしまう。この凝集体の構造を安定化及び不溶化するために、重合性官 能基を含む両親媒性分子を合成し、得られた凝集体をラジカル開始剤や紫外線を 用いて重合することも試みられている (非特許文献 6)。しかし先に述べた双頭型脂質 に重合性の官能基を導入した場合では、微細繊維状凝集体 (特許文献 2, 3、非特 許文献 7)、あるいはテープ状集合体のみが得られ (非特許文献 8)、チューブ状凝集 体は得られていない。
[0005] 特許文献 1 :特開 2002— 322190
特許文献 2:特許第 2876044号
特許文献 3:特許第 2905875号
非特許文献 1 :井上圭三著「生体膜実験法 (下)」第 185ページ、赤松他編、共立出版 (1974年)
非特許文献 2 Journal of The American Chemical Society, vol.107, 509-510, 1985 非特許文献 3 : Chemistry and Physics of Lipids, vol.47, 135-148, 1987
非特許文献 4 : New Journal of Chemistry, vol.24, 1043-1048, 2000
非特許文献 5 : Langmuir, vol. 17, 3162-3167, 2001
非特許文献 6 : Polymer for Advanced Technologies, vol.5, 358-393, 1994
非特許文献 7 : Journal of the American Chemical Society, vol.123, 3205—3213, 2001 非特許文献 8 : Advanced Materials, vol.12, 871-874, 2000
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0006] 本発明者らが既に開発した双頭型脂質から成るチューブ状凝集体 (特許文献 1)は 安定使用に耐えられるものではなかった。一方、本発明者らが既に開発した双頭型 脂質の微細繊維状凝集体 (特許文献 2, 3)は繊維状であり、中空のチューブ状凝集 体は得られていなかった。従って、本発明は、従来得られなかった、安定化が可能な チューブ状凝集体を形成しうる新規な糖脂質、そのチューブ状凝集体及びそのチュ ーブ状重合体を提供することを目的とする。
課題を解決するための手段
[0007] 本発明者らは、鋭意検討した結果、下式 (化 1 )に示すように重合性双頭型糖脂質
を非対称とすることにより上記の課題を解決することが出来ることを見出し、本発明を 完成させるに至った。即ち、本発明者らは、非対称の重合性双頭型糖脂質を合成し 、これを用いて自己凝集体を形成させ、これを重合することにより、長期に安定な中 空のチューブ状繊維を得ることができた。
[0008] 即ち、本発明は、下記一般式 (化 1)又は一般式 (化 2)
[化 1]
G -NHCO- R 2— C≡C一 C≡C一 R1— X
[化 2]
G -NHCO- R 2 - C = C - C = C - R1 - X
(式中、 Gはアルドビラノースの還元末端水酸基を除いた残基を表し、 Xは水素原子、 水酸基、カルボキシル基、アミノ基又は力ルバモイルェチルァミノ基(-CONH-CH
-CH -NH )を表し、 R1及び R2はそれぞれ炭素数が 0— 20の 2価炭化水素基を表す
。)で表わされる重合性双頭型糖脂質である。
本発明は更に、このチューブ状凝集体に放射線を照射することにより生成する中空 のチューブ状重合体である。
[0009] また、本発明は、下記一般式 (化 3)又は一般式 (化 4)
R 2 - CONH - G
(式中、 Gはアルドビラノースの還元末端水酸基を除いた残基を表し、 Xは水素原子、 水酸基、カルボキシル基、アミノ基又は力ルバモイルェチルァミノ基を表し、 R1及び R 2はそれぞれ炭素数が 0— 20の 2価炭化水素基を表し、 nは重合の程度に依存する 整数を表す。)で表わされる双頭型脂質重合体力 成り、平均外径が約 80— 5100η m、平均内径が約 50— 2900nmである中空のチューブ状重合体である。
発明の効果
[0010] 本発明の中空のチューブ状重合体は、長期間にわたって安定であり、例えば、ファ インケミカル工業分野、医薬、化粧品分野などにおいて薬剤や有用生体分子の包接 •分離用材料、ドラッグデリバリ材料として、あるいはナノチューブに導電性物質や金 属をコーティングすることによりマイクロ電子部品として電子 ·情報分野において有用 である。さらには、ガス吸蔵材料としてエネルギー産業分野に、微少なチューブ構造 を利用した人工血管、ナノチューブキヤビラリ、ナノリアクターとして医療、分析、化学 品製造分野などで有用であり、工業的利用価値が高い。
発明を実施するための最良の形態
[0011] 本発明の重合性双頭型糖脂質は、下記一般式 (化 1)又は一般式 (化 2)
[化 1]
G -NHCO- R 2 - C≡C- C≡C - R1— X
[化 2]
G -NHCO- R 2 - C = C - C = C - R1 - X
で表され、好ましくは一般式 (ィヒ 1)で表される。
この一般式 (化 1及び化 2)中の Gは、糖のァノマー炭素原子に結合するへミアセタ
ール水酸基を除いた糖残基であり、この糖としては、例えば、グノレコピラノース、ガラ タトビラノース、ガラクトピラノース、マルトース、ラタトース、セロビオース、及びキトピオ ースが挙げられ、好ましくはダルコビラノースである。この糖は単糖又はオリゴ糖、好 ましくは単糖である。この糖残基は D、 L型、ラセミ体のいずれであってもよレ、が、天然 由来のものは通常 D型である。さらに、アルドピラノシル基においては、ァノマー炭素 原子は不斉炭素原子であるので、 ひ—ァノマー及び /3—ァノマーが存在するが、 ひ— ァノマー及び /3—ァノマー及びそれらの混合物のレ、ずれであってもよレ、。とくに Gが D —ダルコピラノシル基、 D—ガラクトピラノシノレ基、特に D—グノレコピラノシノレ基であるも のが、原料の入手の点で容易で製造しやすいので好適である。
また、 Gとしては、水酸基の一部又は全部が保護基、例えばァセチル基、ベンジル 基、イソプロピリデン基などで保護されていてもよい。
[0012] 上記一般式 (化 1及び化 2)中の R1及び R2は、それぞれ独立して炭素数が 0— 20の 2価炭化水素基を表し (なお炭素数が 0の場合は共有結合を表す。)、二重結合を多 くとも 2つ有してレヽてもよく、 1, 3—ジェン (_CH = CH— CH = CH_)を有していてもよ レ、。また、この 2価炭化水素基は側鎖を有していてもよぐこの側鎖の炭素数は好まし くは 1又は 2である。
この 2価炭化水素基は、好ましくは飽和 2価炭化水素基であり、より好ましくは直鎖 であり、更に好ましくはポリメチレン基であり、より更に好ましくは、 R1は一 (CH ) - (a
2 a は 0— 20、好ましくは 4一 16、より好ましくは 4一 10の整数を表す。)で表され、 R2は— (CH ) _ (bは 0— 20、好ましくは 0— 8、より好ましくは 8の整数を表す。)で表される
2 b このような炭化水素基としては、メチレン基、ジメチレン基、トリメチレン基、テトラメチ レン基、ペンタメチレン基、へキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オタタメチレン基、ノ ナメチレン基、デシル基、ゥンデシノレ基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、 ペンタデシル基、へキサデシル基、ヘプタデシル基、ォクタデシル基、ノナデシル基 、及びエイコシル基などが挙げられる。
[0013] 上記一般式 (化 1及び化 2)で表わされる重合性双頭型糖脂質は、いかなる方法で 合成されたものであってもよいが、例えば次に示す方法により製造することができる。
まず、一般式 (化 5)
ァセチノレ G— N
3
(式中、ァセチル Gはすべての水酸基がァセチル基で保護された D—又は L ダルコ ピラノースや D_又は L一ガラクトピラノースの還元末端水酸基を除レ、た残基を表す。 ) で表わされるアジド糖の一種又は二種を、酸化白金などを用いて接触還元を行い、 すべての水酸基がァセチル基で保護された D—又は L—ダルコピラノシルァミンや D— 又は L一ガラクトピラノシノレアミンとした後、これに一般式 (ィ匕 6)又は一般式 (化 7) [化 6]
H00C - R 2— C≡C一 C≡C一 R1— C〇〇H
[化 7]
H00C - R 2— C =C一 C = C一 R1— C〇〇H
(式中、 R1及び R2は上記のとおりである。)で表わされるジカルボン酸を過剰量添カロ して縮合させる。この縮合反応はォキサリルジクロリドを用いて、ジカルボン酸成分を 相当するジカルボン酸塩ィヒ物に変換し、これをすベての水酸基がァセチル基で保護 された D—又は L ダルコピラノシルァミンや D—又は L—ガラタトピラノシルァミンとカツ プリングし、糖残基のァセチルイヒ保護体を両端にもつ、ジアセチレン基を含む重合性 双頭型糖脂質が得られる。これを単離精製後、ナトリウムメトキシド/メタノール溶液 を作用させて、糖残基のァセチル基を脱保護し、ジアセチレンを含む重合性非対称 双頭型脂質を得る。
一方、一般式 (化 6及び化 7)で表わされるジカルボン酸としては、例えば、 3, 5—ォ クタジインジオン酸、 4, 6—デカジインジオン酸、 5, 7—ドデカジインジオン酸、 6, 8- テトラデカジインジオン酸、 7, 9_へキサデカジインジオン酸、 8, 10—ォクタデカジィ ンジオン酸、 9, 11ーィコサジインジオン酸、 10, 12—ドコサジインジカルボン酸、 11 , 13—テトラコサジインジカルボン酸、 12, 14—へキサコサジインジカルボン酸、 2, 4- テトラデカジエノィルジェン酸、 2, 4, 12, 14—テトラェンへキサデカン酸、 2, 4, 13 —ドコサトリ工ン酸、 14—ソノレビル一 2, 4—テトラデカジエン酸、 2, 4, 10, 12—テトラエ ンドデカンジオン酸、 2, 4, 12, 14—テトラェンテトラデカンジオン酸、 2, 4, 14, 16—
テトラェンへキサデカジオン酸、 2, 4, 16, 18—テトラェンォクタデカンジオン酸など を用いることができる。
次に、本発明に従い前記一般式 (化 1及び化 2、 Xがカルボン酸基の場合)のカルボ ン酸型脂質を製造するための望ましい態様について説明する。まず、前記一般式 (化 5)で表わされるアジド糖の接触還元を、例えば該アジド糖をメタノールに溶解させ、 触媒として酸化白金を用いて水素と接触させることによりァミノ糖への変換を行う。こ の際、パラジウム触媒を用レ、ても同様に反応が進行するが、若干の副反応が生じる ので、酸化白金の方が望ましい。
次に、アジド基が完全に還元されてァミノ基に変換されたことを薄層クロマトグラフィ 一で確認したのち、生成したアミノ糖を単離、精製することなぐこれに前記一般式( 化 6)で表わされるジカルボン酸を縮合させる。この縮合反応は両者を等モル混合、 反応させることで得られる。この際、反応溶媒として例えば N, N—ジメチルホルムアミ ド、クロ口ホルム、メチルアルコール、エチルアルコールなどを用いることが出来るが、 これらの中で、反応性、溶解性などの点からすることで N, N—ジメチルホルムアミドが 好適である。また縮合剤としては通常のペプチド合成において用いられる 1一ェチル
_3_ (3—ジメチルァミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、 1—ヒドロキシベンゾトリァゾー ノレ、ジェチルホスホロシア二デート、 1_エトキシカルボ二ルー 2_エトキシー 1, 2—ジヒド 口キノリン、イソブチルクロロフオルメート、 1—ェチルー 3_ (3—ジメチルァミノプロピル) カルボジイミド塩酸塩、 1—ヒドロキシベンゾトリァゾール、ジェチルホスホロシアニデー ト、 1_エトキシカルボ二ルー 2_エトキシー 1 , 2—ジヒドロキノリン、イソブチルクロロフォ ルメート、ベンゾトリアゾールー 1ーィルーォキシートリス(ジメチルァミノ)—ホスホニゥム へキサフルォロホスフェイト(
benzotnazol-l-yl-oxy-tris(dimethylamino^-phospnonium hexafluorophosphate; ¾ 卜 「B〇P」とレ、う。)、 1_ハイドロキシベンゾトリアゾーノレ(1-hydroxybenzotriazole;以下「 HOBtJとレ、う。 )、ベンゾトリァゾーノレ _1_イノレーォキシ一トリピロリジノホスホニゥム へ サフノレオ口ホスフェイト (benzotnazo卜 1— y卜 oxy— tripyrroliainophosphonmm hexafluorophosphate ;以下「PyBOP」という。 )、〇一(ベンゾトリァゾーノレ一 1—ィノレ) _N , N, Ν,, Ν'—テトラメチルゥロニゥム へキサフルォロホスフェイト(
0-(benzotriazol- 1 _yl)_N , N , N ' , N ' -tetramethyluronium hexafluorophosphate;以下「H BTU」という。)、及びジフエニル(2, 3—ジハイド口— 2—チォキソ _3_ベンゾキサゾリ ノレ)ホスホ不イト (diphenyl(2,3— dihydro— 2— thioxo— 3— benzoxazolyl)phosphonate;以 「 DBP」という。)などを挙げること力 Sできる。この中で酸ハロゲン化物を用いる力、、縮合 剤として 1_ェチル _3_ (3—ジメチルァミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、 1—ヒドロキ シベンゾトリアゾール及び HOBtの組み合わせは高収率で反応するので好ましい。 反応温度としては _30°Cないし 30°Cの範囲が選ばれ、反応時間は通常 30分ない し 10時間である。
[0016] このようにして得られた組成性物は例えばシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開 溶媒:クロ口ホルム/メタノール 20/ 1 )などを用レ、て精製することにより、高純度のも のとすることが出来る。このような方法により得られたカルボン酸型脂質は1 H— NMR スペクトルにより確認できる。
さらにメタノールに溶解し、ナトリウムメトキシド /メタノール溶液を作用させることで、 糖残基部分が脱ァセチル化された目的物をナトリウム塩の形で得る。さらに強酸性ィ オン交換樹脂を添加し、ナトリウム塩を中和し、カルボン酸形の目的物を得ることが出 来る。上記脱ァセチル化反応は定量的に進行するので、特に精製する必要は無い 力 必要に応じて、例えば、シリカゲルカラムクロマトグラフィーなどを用いて精製する ことにより、高純度のものとすることができる。
[0017] 得られたカルボン酸型脂質は糖残基のァノマー炭素が 100% β体のものである。こ のことは、該カルボン酸型脂質の1 H-NMRスペクトル(重ジメチルスルホキシド中、 6 0°C)が δ値で 4. 9ppmに二重線のシグナル (スピン-スピンカップリング定数 8· 8H z)を示すことから確認できる。
この化合物は例えば実測の元素分析値が誤差範囲内で計算値と一致し、また、赤 外線吸収スペクトルでは 1696CHT
1に糖カルボキシル基に由来する特性吸収、 163
にアミドカルボニル基に由来する特性吸収を示す。さらに、ェ!^— NMRスぺクトノレ(重ジメチルスルホキシド中、室温)においては、 δ値が 1. 2—1. 4ρ pm (長鎖アルキレン鎖のメチレン水素)、 1. 5- 1. 7ppm (アミド基に隣接するメチレ ンの隣のメチレン基の水素)、 2. 3-2. 4ppm (アミド基に隣接するメチレン基の水素
)、 1. 5— 1. 7ppm (カルボキシル基に隣接するメチレンの隣のメチレン基の水素)、 2. 3一 2· 4ppm (力ノレボキシノレ基 ίこ隣接するメチレン基の水素)、 2. 0一 2· lppm ( 糖ァセチル基の水素)、 6. 3— 6. 4ppm (ダルコビラノシル基の 1位のメチン水素)の シグナルが観測出来る。このこと力 、該化合物は、 目的のカルボン酸型脂質である と同定できる。
[0018] 次に上記一般式 (化 1及び化 2)で表わされる重合性双頭型糖脂質の別の製法を 示す。
N—グリコシド型糖脂質の製法に特に制限はないが、この N—グリコシド型糖脂質は 、例えば、一般式 G— COOH (式中、 Gは一般式 (化 1及び化 2)の Gと同じ意味をも つ。)で表わされる不飽和型長鎖カルボン酸又は一般式 G— COC1で表わされる不飽 和型長鎖カルボン酸クロライドを、ァノマー位にアミノ基を有する糖ァミンとを反応させ て、 N-グリコシド結合を形成させることによって、製造すること力できる。
[0019] この糖ァミンの製法についても特に制限はないが、この糖ァミンは、例えば、次のよ うにして製造することができる。
水に特定の糖 (アルドビラノース又はそのオリゴ糖)と炭酸水素アンモニゥムを溶解 させる。このとき水溶液の温度は 37°Cが好ましい。その結果、この炭酸水素アンモニ ゥムは糖のァノマー炭素原子に結合するへミアセタール水酸基に選択的に反応し、 糖のァノマー炭素原子(1位)にアミノ基を有するァミノ化物、いわゆるァミノ糖が得ら れる。この反応においては、 体が選択的に得られる。
[0020] ジアセチレンモノカルボン酸として、 10—12 ヘプタデカジイノイツク ァシド(10-12 heptadecadiynoic acia)、 2—4 ヘンタテフ ンィノイツク アント (2—4 pentadecadiynoic acid)、10—12 トリコサジイノイツク ァシド(10-12 tricosadiynoic acid)、 2—4 ヘプタ デカジイノイツク ァシド(2-4 h印 tadecadiynoic acid)、 10—12 ペンタコサジイノイツ ク ァシド(10-12 pentacosadiynoic acid)、 2—4 ノナデカジイノイツク ァシド(2-4 nonadecadiynoic acid)、 10—12 ヘプタコサジイノイツク ァシド(10-12
heptacosadiynoic acid)、 2—4 へ不ィコサンイノイツグ ァシド (2— 4 heneicosadiynoic acid)、及び 10—12 ノナコサジイノイツク ァシド(10-12 nonacosadiynoic acid)などを 挙げること力 Sできる。この中で 10—12 ヘプタデカジイノイツク ァシド(10-12
h印 tadecadiynoic acid)及び 10—12 トリコサジイノイツク ァシド(10-12 tricosadiynoic acid)は得られる糖脂質の両親媒性のバランスや水中における融点な どから望ましい。
また 2, 4—テトラデカジエノィルジェン酸、 2, 4, 12, 14—テトラェンへキサデカン酸 、 2, 4, 13—ドコサトリェン酸、 14—ソノレビル— 2, 4—テトラデカジエン酸、 2, 4, 10, 1 2—テトラエンドデカンジオン酸、 2, 4, 12, 14—テトラェンテトラデカンジオン酸、 2, 4 , 14, 16—テトラェンへキサデカジオン酸、 2, 4, 16, 18—テトラェンォクタデカンジ オン酸なども用いることができる。
[0021] 不飽和型長鎖カルボン酸と糖ァミンとの反応では、縮合剤を反応促進剤として用い てもよレ、。この縮合剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール _1_ィル一ォキシ一トリス( ジメチルァミノ)—ホスホニゥム へキサフルォロホスフェイト(
り enzotnazo卜 l_y卜 oxy_tris(dimethylamino)-phosphonmm hexafluorophosphate;以 ~h 「B〇P」と!/、う。)、 1一ハイドロキシベンゾトリアゾーノレ(1-hydroxybenzotriazole;以下「 HOBtJという。)、ベンゾトリァゾーノレ一 1一イノレーォキシートリピロリジノホスホニゥム へ キサフノレオ口ホスフェイト (benzotriazo卜 1— y卜 oxy— tnpyrroiidinopnosphomum
hexafluorophosphate ;以下「PyBOP」という。)、〇一(ベンゾトリアゾール一1—ィノレ) _N , N, Ν', Νしテトラメチノレゥロニゥム へキサフノレオ口ホスフェイト(
0_(Denzotnazoi_l_yl)_N,N,N , N ' -tetramethyluronium hexafluorophosphate; f「H BTU」という。)、及びジフエニル(2, 3—ジハイド口— 2—チォキソ _3_ベンゾキサゾリ ノレ)ホスホ不イト (diphenyl(2,3— dihydro— 2— thioxo— 3— benzoxazolyl)phosphonate;以 「 DBP」という。)などを挙げること力 Sできる。この中で BOP及び HOBtの組み合わせは 高収率で反応するので好ましい。
[0022] 上記糖ァミンと不飽和型長鎖カルボン酸とから N-グリコシド結合を形成させる反応 は、例えば、以下のようにして行うことができる。
縮合剤として HOBt及び BOPを用いて、ジメチルスルホキシドを溶媒として室温で 5時間以上磁気撹拌させる。収率を高めるために成分比は、糖ァミン:脂肪酸: H〇B t : B〇P= l: 1 100 : 1 100 : 1 100、特に 1: 2以上: 3 : 1のモル比で反応させる ことが好ましい。つまり糖ァミンに対して脂肪酸や縮合剤を過剰に加えることが好まし
レ、。
HOBtと BOPの組み合わせ以外の縮合剤としての範囲は、 DBP単独使用、 HOBt と HBTUとの組み合わせ、 HOBtと PyBOPとの組み合わせ、 DBPとトリエチルァミン (triethylamine ; TEA)との組み合わせ、 HOBt、 HBTU,及び N, N—ジイソプロピノレ ェチルァミン(N, N-diisopropyl ethylamine; DIEA)との組み合わせなどが挙げられ る。
反応前に脂肪酸のカルボン酸を活性化させておくために、先に 10分間くらい脂肪 酸と縮合剤を溶媒中で混ぜておいてから、糖ァミンを加えることが望ましい。反応終 了後、粗生成物をシリカゲルカラム及び再沈澱による分離精製操作によって高純度 のものとすることができる。
[0023] 上記糖ァミンと不飽和型長鎖カルボン酸クロライドとから N-グリコシド結合を形成さ せる反応は、例えば、以下のようにして行うことができる。
塩基性物質の存在下、反応温度 0°Cで 5時間以上磁気撹拌させる。溶媒としてメタ ノール、水、及びテトラヒドロフランなどが挙げられる。反応前に糖ァミンのアミノ基を 活性化させておくために、先に 0°Cで 2時間くらい糖ァミンと塩基性物質を溶媒中で 混ぜてぉレ、てから、不飽和型長鎖カルボン酸クロライドを加えることが望ましレ、。
[0024] このような反応の結果、糖のァノマー炭素原子(1位)にアミド結合を介して不飽和 炭化水素基が結合した本発明の N—グリコシド型糖脂質が生成する。生成した N—グ リコシド型糖脂質は、 H—NMRスペクトルや13 C—NMRスペクトルによりその構造を 確言忍すること力できる。
[0025] 次に、以上のようにして合成した重合性双頭型糖脂質を用いて中空繊維状有機ナ ノチューブを製造する方法にっレ、て述べる。
まず、原料の重合性双頭型糖脂質に対し水等の溶媒をカ卩ぇ加熱することにより、溶 液を調製する。この溶液中の重合性双頭型糖脂質の濃度は高いほど好ましぐ飽和 であることが最も好ましい。
この水溶液を調製する際の溶媒としては、通常、水が単独で用いられるが、水と有 機溶媒との混合溶媒を用いてもよい。この有機溶媒としては、例えば、ジメチルスル ホキシド、アセトン、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコールなど
の親水性溶媒が挙げられる。
この際、溶液中の溶媒の量が少なすぎると不溶部分が残るし、また溶媒の量が多 すぎると飽和濃度に達しなくなるので、加える溶媒の量は重合性双頭型糖脂質の 10 , 000—40, 000重量倍の範囲内で選ばれる。
この際の加熱温度は重合性双頭型糖脂質の溶解量を多くするために、できるだけ 高いほうが好ましぐ溶液の沸点まで上げるのが好ましいが、それよりも低い温度を用 いてもよい。この温度は具体的には 80°C—沸点、好ましくは 90°C—沸点、最も好ま しくは沸点である。
[0026] このようにして調製した重合性双頭型糖脂質の溶液を徐冷して、室温下に静置して 中空繊維状有機ナノチューブを生成させる。この「徐冷」とは、特に加熱や冷却操作 を行わないで温度を下げるという意味と、加熱や冷却操作を行い温度をコントロール しながらゆっくり下げるという 2つの意味がある。従って、徐冷時の温度は、周囲の温 度や装置の熱容量などによって異なる場合と、温度をコントロールする装置の設定に 依存する場合がある。また「室温」とは特に過剰な加熱や冷却を行わない温度という 意味であり、具体的には 0— 40°C、好ましくは 20°C付近の温度をいう。このようにして 、徐冷十数時間一数日間経過後、溶液力 繊維状物質が析出してくる。
[0027] この繊維状物質を捕集し、風乾又は真空乾燥することにより、空気中で安定な中空 のチューブ状凝集体を得ることができる。この中空のチューブ状凝集体のサイズは、 N-グリコシド型糖脂質の構造によっても異なる力 平均外径が約 80— 5100nm、平 均内径(中空の平均径)力 S約 50— 2900nmであり、長さが数百 nm—数百 μ mである 。特に、末端 (X)がアルキル基 (又は水素原子)の場合には、平均外径が約 170— 5 100nm、平均内径(中空の平均径)が約 90 2900nmであり、長さが数百 nm—数 百 z mであり、末端(X)がカルボキシル基の場合には、平均外径約 80 160nm、内 径約 50— 100 長さ約 0. 5 lOO x mである。
得られた中空繊維状有機ナノチューブの形態は、通常の光学顕微鏡を用いて容易 に観察することができる。チューブ構造はレーザースキャン顕微鏡、原子間力顕微鏡 、電子顕微鏡を用いることにより、より詳細に確認することができる。
[0028] このようにして得た中空のチューブ状凝集体に放射線を照射することによって重合
を行わせ、中空のチューブ状重合体を製造することができる。この際に用いる紫外線 としては、紫外線、電子線、 X線、レーザ光線、アルファ線、ベータ線、ガンマ線など の活性線があるが、特に紫外線及びガンマ線が有利である。この紫外線照射の場合 は、 5 300Wの低圧水銀灯を用レヽ、波長 230 300nmの紫外線を 5 40分間程 度照射する。またガンマ線照射の場合は 1. 0 X 105 1. 0 X 106Rの線量で照射す ることによって行われる。このように照射すると、中空のチューブ状凝集体は、その形 状、繊維径、繊維長を保持しながら、最初の白色から、最終的に赤色ないし紫色に 変色する。この変色はジアセチレン基の重合反応に由来することが知られているので 、これによつて中空のチューブ状凝集体が重合体に変換したことが分かる。そのサイ ズは凝集体とほぼ同じである。
以下、実施例にて本発明を例証するが本発明を限定することを意図するものでは ない。
なお、薄層クロマトグラフィーの Rf値としては、クロ口ホルム/メタノール (容積比 20 /1)混合溶媒を展開溶媒としたときの値を Rf 1、クロ口ホルム/メタノール/水 (容積 比 64/31/5)混合溶媒を展開溶媒としたときの値を Rf2とした。
実施例 1
2, 3, 4, 6—テトラ一〇一ァセチル一ひ一 D—ダルコピラノシルブロミド 5. 0g (12. 2ミリ モル)を DMF120mlに溶解しかき混ぜながらアジ化ナトリウム 15. 8g (243ミリモノレ) を加え、室温にて遮光下で一昼夜力 ^混ぜた。反応混合物を力 ^混ぜ下に氷水 100 0ml中に滴下したのち、不溶物を塩化メチレン 900mlで抽出し、有機相を氷水で洗 浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤を炉別した後、減圧下で溶媒を完全に 留去し、得られた淡黄色の固体をジェチルエーテルで洗浄して乾燥後、 2_プロパノ ールから再結晶し、白色の針状結晶として 2, 3, 4, 6—テトラ— 0—ァセチルー j3—グ ルコビラノシルアジド 3. 30g (収率 79%)を得た。このものの物理的性質は次の通り である。
薄層クロマトグラフィーの Rf値 Rfl = 0. 6
融点 131_132°C
元素分析値 (C H O Nとして)
C H N
計算値(%) 45. 04 5. 13 11. 26
実測値(%) 45. 36 5. 10 11. 14
[0030] 得られた 2, 3, 4, 6—テトラ— 0_ァセチルー j3 _D_ダルコビラノシルアジド 2. 24g ( 6. 0ミリモル)を脱水メチルアルコール 60mlに溶解し、窒素雰囲気下で酸化白金 0. 32g (l . 4ミリモル)を加えた。ついで、室温で水素を導入しながら 2時間撹拌した。反 応混合物をシリカゲルを用いて吸引ろ過後、ろ液に脱水 N, N'—ジメチルホルムアミ ド(30ml)をカ卩え、減圧濃縮した。これに脱水ピリジン 3滴を加え、真空下において溶 媒を留去し、 目的の 2, 3, 4, 6—テトラ—〇—ァセチルー /3—D—ダルコピラノシルァミン を得た。 目的物については、単離精製すること無しに薄層クロマトグラフィーにより確 認した(Rf=0. 8)。
[0031] 次に、 10, 12—ドコサジインジカルボン酸 6. 55g (18ミリモノレ)の脱水 N, N,一ジメ チルホルムアミド(30ml)溶液に 1—ヒドロキシベンゾトリアゾール 1 · 63g (12ミリモノレ) を室温で加え、 20分撹拌した後、 1ーェチルー 3_ (3 '?ジメチルァミノプロピル)カルボ ジイミド 3. 45g (18ミリモル)の脱水塩化メチレン(60ml)溶液を 15分で滴下した。こ れに精製していない 2, 3, 4, 6—テトラ— O—ァセチルー J3—D—ダルコピラノシルァミン 2. 08g (6. 0ミリモノレ)をカロ免、室温で 16· 5時間撹禅した。これにクロロホノレム(150 ml)を加え、水(100ml)、タエン酸(100ml)、炭酸ナトリウム水溶液(100ml)、塩化 ナトリウム水溶液(100ml)で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮し た。
得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー [溶出液:クロ口ホルム/メタ ノール =10/0から 95Z5へ変ィ匕]で精製することにより、無色油状の 20_[ (2, 3, 4, 6—テトラ—〇—ァセチル _Ν— β—D—ダルコピラノシル)力ルバモイル] 9, 11_エイコサ ジインカノレボン酸を得た(1. 245g、収率 30%)。
薄層クロマトグラフィーの Rf値 Rfl = 0. 3
元素分析値(C H O Nとして)
36 53 12 1
C H N
計算値(%) 62. 50 7. 72 2. 02
実測値(%) 62. 48 7. 88 2. 11
[0032] 得られた 51 · 2mg (0. 074ミリモノレ)を脱水メチノレアルコーノレ(1. 5ml)に溶解し、 アルゴン雰囲気下で 0· 05Mナトリウムメトキシド 1 · 63ml (0. 082ミリモル)をカロえ室 温で 2時間撹拌後、 0. 05Mナトリウムメトキシド 0. 3ml (0. 015ミリモル)を加えた。こ れを 2. 5時間撹拌し、さらに 0. 05Mナトリウムメトキシド 0. 3ml (0. 015ミリモノレ)を 加え、 1時間撹拌した。これに酸性樹脂をカ卩え、 pHを 6— 7にしたのち、上澄みを取り 出し、減圧濃縮した。これを乾燥させ、 目的の生成物 (以下「重合性双頭型糖脂質 I」 とレヽう。)を得た(36. 8mg、 95%)。この化合物の1 H-NMRスペクトルチャート(重ジ メチルスルホキシド中、 25°C)を図 1に示す。
薄層クロマトグラフィーの Rf値 Rf2 = 0. 3
元素分析値(C H O Nとして)
28 45 8 1
C H N
計算値(%) 64. 22 8. 66 2. 67
実測値(%) 64. 09 8. 79 2. 62
実施例 2
[0033] 実施例 1で得た重合性双頭型糖脂質 1 (2. 5mg、 0. 0048ミリモル)をフラスコにとり 、これに蒸留水 5mlをカ卩え、震蕩により分散後、インキュベーターを用いて 100°Cま で加熱、溶解し、室温まで徐冷(0. 1°C毎分)した。これにより外径 100 140nm、 内径 60— 100nm、長さ 0. 5 100 μ mのチューブ状集合体を得た。その形態は走 查型電子顕微鏡から容易に確認できた。得られた観察像を図 2に示す。
実施例 3
[0034] 実施例 1で得た重合性双頭型糖脂質 1 (2· 47mg、 0. 0047ミリモル)をフラスコにと り、これに蒸留水 5mlを加えた。これに 0· 01M NaOH 28. 2 /i 1 (脂質に対して 0. 06当量)をカ卩ぇ震蕩により分散後、インキュベーターを用いて加熱溶解し、室温(20 °C)まで徐冷(0· 1°C毎分)し、室温で 1日放置した。このとき溶液の pHは 7· 0から 6 . 9に変ィ匕した。これにより外径 70— 130nm、内径 50— 90nm、長さ 0. 5— 50 /i m のチューブ状集合体を得た。その形態は走査型透過電子顕微鏡から容易に確認で きた。得られた観察像を図 3に示す。
実施例 4
[0035] 実施例 1で得た重合性双頭型糖脂質 I (5mg、 0. 0096ミリモル)をフラスコにとり、こ れに pH5. 2のリン酸緩衝水溶液(0. 2M) 5mlを加え震蕩により分散後、インキュべ 一ターを用いて加熱溶解し、室温まで徐冷(0. 1°C毎分)した。これにより外径 110— 170nm、内径 50 90nm、長さ 0. 5 50 μ mのチューブ状集合体を得た。その形 態は走查型透過電子顕微鏡から容易に確認できた。得られた観察像を図 4に示す。 実施例 5
[0036] 実施例 1で得た重合性双頭型糖脂質 I (5mg、 0. 0096ミリモル)をフラスコにとり、こ れに蒸留水 5mlを加えた。これに 0. 01M NaOH、 955 /i 1 (脂質に対して 1当量)を 加え震蕩により分散後、インキュベーターを用いて加熱溶解し、室温(20°C)まで 1日 放置した。この溶液をガラス製サンプル瓶(3ml用)に lmlとり、直径約 lmmの穴を開 けた栓をした。さらにこれを 0. 1 %酢酸水溶液が 3ml入ったガラス製サンプル瓶(50 ml用) ίこレヽれ、 2週 室温で放置した。これ ίこより外径 70一 130nm、内径 50一 90η m、長さ 0. 5— 50 z mのチューブ状集合体を得た。その形態は走查型透過電子顕 微鏡力 容易に確認できた。得られた観察像を図 5に示す。
実施例 6
[0037] 実施例 2で得た中空繊維状チューブの凝集体を含む水溶液 (濃度 ImM)を石英 製ガラスセルに採り、室温でアルゴン雰囲気下において 24時間 UV照射(重水素ラ ンプ、出力 4 W, 254nm)した。その結果、色が透明から、赤紫色に変色し、ジァ セチレンが重合した形のポリジアセチレンに変化することが分かった。得られた中空 繊維状チューブの重合体を、 UVスぺクトノレを用いて観察すると、 UV照射前にはな 力、つたピークが 542nm及び 498nmに観られた。得られた中空繊維状チューブの重 合体を、走查型電子顕微鏡を用いて観察すると、外径 100 140nm、内径 50 1 00nm、長さが 0. 5— 50 z mの中空繊維状チューブ構造が確認できた。この中空繊 維状チューブの重合体の紫外線照射下における吸光度変化を図 6に、電子顕微鏡 写真を図 7に示す。
実施例 7
[0038] 実施例 2で得た中空繊維状チューブの凝集体を含む水溶液 (濃度 ImM)を石英 製ガラスセルに採り、室温でアルゴン雰囲気下においてガンマ線(1. 03 X 106R)を 照射した。その結果、色が透明から、赤紫色に変色し、ジアセチレンが重合した形の ポリジアセチレンに変化することが分かった。得られた中空繊維状チューブの重合体 を、走查型電子顕微鏡を用いて観察すると、外径 100 140nm、内径 50 100η m、長さが 0. 5— 50 x mの中空繊維状チューブ構造が確認できた。この中空繊維状 チューブの重合体の電子顕微鏡写真を図 8に示す。
実施例 8
[0039] フラスコに、 D— ( + )—ダルコビラノース(Fluka社製、 1 · 0g、 5. 55ミリモノレ)を採り、 水 50mLを加えて溶解した。これに炭酸水素アンモニゥム(Wako社製) 10gをフラスコ の底に結晶が析出するまで加えた。これを 3— 5日間、 37°Cの油浴中で磁気撹拌し た。反応中飽和状態を保っために、炭酸水素アンモニゥムをときどき加えた。炭酸水 素アンモニゥムの全体量は 40— 50gであった。反応は薄層クロマトグラフィーにより 追跡した (Rf値 =0. 40、展開溶媒:酢酸ェチル /酢酸/メタノール/水 (容積比 4 /3/3/1) )。後処理として反応系から未反応の炭酸水素アンモニゥムを除くため に、冷却して炭酸水素アンモニゥムを結晶として析出させた。この方法以外にも、反 応系に水を適当量加えて濃縮することで気化させたり、又は脱塩装置を利用して、未 反応の炭酸水素アンモニゥムを除レ、てもよレ、。このようにして β _D—グノレコピラノシノレ アミンを得た。
[0040] アルミホイルで覆い遮光したフラスコに 10, 12—ヘプタデカジイノイツク ァシド(東 京化成工業株式会社製、 200mg、 0. 76ミリモル)をジメチルスルホキシド 3mLに溶 解させたものを入れて、反応系とした。 HOBt (WAKO社製、 117mg、 0. 76ミリモノレ) 及び B〇P (WAKO社製、 1. 01g、 2. 29ミリモノレ)をジメチノレスノレホキシド 1. OmLに 溶解させたものを、反応系に加え 37°Cで 10分間磁気撹拌した。
次に、上記で得た i3 _D_ダルコピラノシルァミン (410mg、 2. 29ミリモル)を反応系 に加え、 37°Cで 18時間磁気撹拌して、反応させた。この反応は薄層クロマトグラフィ 一により追跡した (Rf値 =0. 51、展開溶媒:クロ口ホルム/メタノール (容積比 4/1) )。
得られた粗生成物を酢酸ェチル /メタノール (容積比 4/1 )混合溶媒を溶出液とし てシリカゲルカラムクロマトグラフィーを行い、次に酢酸ェチル /メタノール (容積比 3 /1 )混合溶媒を溶媒として再沈澱を行い、白色固体の N—(10, 12—へプタデカジィ ノィル ) _ /3 _D_ダルコピラノシルァミン(49mg、収率 15%)を得た。
[0041] この生成物の物理的性質は次のとおりである。
融点: 168°C
この生成物の1 H—NMRスペクトル(重ジメチルスルホキシド中、 25°C)を図 9に示す
^H— NMRスペクトル(図 9)においては、 δ値が 0. 87ppm (炭化水素基のメチル基 の水素)、 1. 24-1 . 44ppm (炭化水素基のメチレン基の水素)、 2. 09ppm (炭化水 素基のうち、アミド結合部分力 数えて第 1番目のメチレン基の水素)、 2. 28ppm (炭 化水素基のうち、ジアセチレン基部分から数えて第 1番目のメチレン基の水素)、 3. 0 4-3. 62ppm (糖鎖の C2、 C3、 C4、 C5、及び C6の炭素に連結した水素)、 4. 45- 4. 93ppm (糖鎖の C2、 C3、 C4、及び C6の炭素に連結した水酸基)、 4. 70ppm ( 糖鎖の C 1の炭素に連結した水素, dd, Jl,2 9. 2Hz)、及び 8. 23ppm (アミド基の窒 素に連結した水素, d, J1 ,NH 8. 8Hz)であった。
これら本実施例で得た N—グリコシド型糖脂質についての分析値は誤差範囲内で 構造式 (化 1)と一致した。
実施例 9
[0042] 次に、実施例 8で得た N—(10, 12—ヘプタデカジイノィル) _ j3 _D_ダルコビラノシ ルァミン lmgをフラスコに秤取し、これに水 10mLを加え、油浴を用いて加熱し、 95 °Cにて 30分間還流して分散させ、その後十数時間室温で静置した。
得られた水溶液を、走查型電子顕微鏡を用いて観察すると、内径が 0. 2- 2. 9 μ m、外径が 1. 7- 5. l z mの中空繊維状の有機ナノチューブ材料を確認することが できた。さらに、光学顕微鏡で観察すると長さが数十 μ ΐηの針状構造が確認できた。 この有機ナノチューブの走査型電子顕微鏡写真を図 10及び図 1 1に、光学顕微鏡 写真を図 12及び図 13に示す。
実施例 10
[0043] シャーレに、実施例 9で得た有機ナノチューブを含む水溶液を採り、室温で自然乾 燥させた。 白色の有機ナノチューブは乾燥するとピンク、赤、あるいはダイダイ色など に着色した。これをアルゴン雰囲気下において 5分間 UV照射(254nm)した。得ら れた有機ナノチューブ重合体を、光学顕微鏡を用いて観察すると、長さが数十 x m の針状構造が確認できた。この有機ナノチューブ重合体の光学顕微鏡写真を図 14 及び図 15に示す。
実施例 11
[0044] アルミホイルで覆い遮光したフラスコに 10, 12-トリコサジイノイツク ァシド(東京化 成工業株式会社製、 200mg、 0. 58ミリモル)をジメチルスルホキシド 3mLに溶解さ せたものを入れて、反応系とした。 HOBt (WAKO社製、 89mg、 0. 58ミリモノレ)及び B〇P (WAKO社製、 765mg、 1. 73ミリモル)をジメチルスルホキシド 1 · OmLに溶解 させたものを、反応系に加え 37°Cで 10分間磁気撹拌した。
次に、実施例 8で得た i3 _D_ダルコピラノシルァミン(310mg、 1. 73ミリモノレ)を反 応系に加え、 37°Cで 21時間磁気撹拌して、反応させた。この反応は薄層クロマトグ ラフィーにより追跡した (Rf値 =0. 50、展開溶媒:クロ口ホルム/メタノール (容積比 4 /1) )。
得られた粗生成物を酢酸ェチル /メタノール (容積比 4/1)混合溶媒を溶出液とし てシリカゲルカラムクロマトグラフィーを行レ、、次に酢酸ェチル /メタノール (容積比 3 /1)混合溶媒を溶媒として再沈澱を行い、白色固体の N—(10, 12—トリコサジイノィ ノレ) _ /3 _D_ダルコピラノシルァミン(49mg、収率 17%)を得た。
この生成物の物理的性質は次のとおりである。
融点: 150°C
実施例 12
[0045] 次に、実施例 11で得た N_ ( 10, 12—ヘプタデカジイノィル) _ i3 _D_ダルコピラノ シルァミン lmgをフラスコに秤取し、これに水 15mLを加え、油浴を用いて加熱し、 9 5°Cにて 30分間還流して分散させ、その後十数時間室温で静置した。
得られた水溶液を、走査型電子顕微鏡を用いて観察すると、内径が 90— 550nm、 外径が 170 890nmの中空繊維状の有機ナノチューブ材料を確認することができ
た。さらに、光学顕微鏡で観察すると長さが数一数十/ mの針状構造が確認できた。 実施例 13
[0046] 石英ガラス製セルに、実施例 11で得た有機ナノチューブを含む水溶液を採り、これ をアルゴン雰囲気下において UV照射(254nm)した。 白色の有機ナノチューブはピ ンク、赤、あるいはダイダイ色などに着色した。得られた有機ナノチューブ重合体を、 UVスペクトルを用いて観察すると、 UV照射前にはなかったピークが 542nm及び 49 8nmに観られた。また CDスペクトルでは、 UV照射前にはなかったピークが 529nm 及び 497nmに負のコットン効果として観察された。
図面の簡単な説明
[0047] [図 1]実施例 1で得た化合物の1 H-NMRスペクトル図を示す図である(濃度は 4mg /0. 6ml、重クロロホノレム中、 25。C、 600MHz) 0
[図 2]実施例 2で得たチューブ状凝集体の走査型電子顕微鏡像を示す図である。
[図 3]実施例 3で得たチューブ状凝集体の走査型透過電子顕微鏡像を示す図である
[図 4]実施例 4で得たチューブ状凝集体の走査型透過電子顕微鏡像を示す図である
[図 5]実施例 5で得たチューブ状凝集体の走査型透過電子顕微鏡像を示す図である
[図 6]実施例 6の紫外線照射下での重合による中空繊維状チューブの吸光度変化を 示す図である。
[図 7]実施例 6で得た中空繊維状チューブの凝集体の走査型電子顕微鏡写真を示 す図である。
[図 8]実施例 7で得た中空繊維状チューブの凝集体の走査型電子顕微鏡写真を示 す図である。
[図 9]実施例 8で作製した N—グリコシド型糖脂質 (N—(10, 12—へプタデカジイノィル ) _ β _D_ダルコピラノシルァミン)の1 H—NMRスペクトルを示す図である。
[図 10]実施例 8で得た有機ナノチューブの走査型電子顕微鏡写真を示す図である。 写真のサイズは縦 24. 横 8. 7 μ mである。
園 11]実施例 8で得た有機ナノチューブの光学顕微鏡写真を示す図である。写真の サイズは縦 26 /i mX横 49 μ mである。
園 12]実施例 10で得た有機ナノチューブ重合体の光学顕微鏡写真を示す図である 。写真のサイズは縦 13 xmX横 56 xmである。