明細書
NMRシグナル帰属方法 技術分野
本発明は、 15 NZ 13 C標識ァミノ酸と15 N標識ァミノ酸等を組み合わせた蛋 白質を用いて NMR測定を行うことにより、 低濃度の蛋白質で迅速確実にアミド プロトンと15 Nの相関シグナル (本明細書中では、 これを ΠΗ—15Ν HSQ Cスペクトル」 あるいは —15 Ν相関シグナル」 と称することがある) 等の 蛋白質の主鎖を構成する原子のシグナルのァミノ酸残基番号を帰属する方法、 さ らにそれらを基にした蛋白質の側鎖を含めた全ての原子のシグナルの帰属を決定 する方法に関する。 背景技術
蛋白質中の窒素原子を、 安定同位体で NMR観測可能な15 Νを用いて標識し、 1Η~ 1 "N HSQC (heteronuclear single quantum coherence) スへクトル を観測することにより、 — 15 N HSQCスペクトル等の NMR測定により 得られた各シグナルのアミノ酸の種類と番号まで含めた帰属を行い(例えば Cava nagh, W. J. et al. , Protein NMR Spectroscopy, Principles and Practice, Ac ademic Press Q996)を参照) 、それらのデータを基に、蛋白質立体構造を決定し たり (例えば Montelione, G. T. , et al. , Nature Struct. Biol. , 7 , Suppl, 9 82-985(2000)を参照) 、 蛋白質に結合するリガンドのスタリ一二ングゃ結合部位 の同定(例えば Zerbe 0. et al. , BioNMR in Drug Research, Wiley (2003)を参 照) を行うことができる。
1H—15 N HSQCの測定方法は、 蛋白質の NMR測定法の中でも最も感度 の高い方法の一つであるが、 15N HSQCスペクトルの各シグナルのァ ミノ酸の種類と番号まで含めた帰属を決定する場合には、 高濃度の標的蛋白質試 料 (1 mMで 250 /z L程度) を何らかの手段を用いて調製し、 室温以上の温度で、
数週間に及ぶ複数の 3次元 NMR測定を行い、 さらには複雑な解析を行う必要が あった(例えば Montelione, G. T. , et al. , Nature Struct. Biol. , 7 , Suppl,
982-985 (2000)を参照) 。 特に、 分子量 1万を越えるような蛋白質の1 H— 15N HSQCスぺクトルの帰属は従来法では、 シグナルの重なりを回避するため、 シグナルの分離を良くする 3次元 NM R測定法を複数種類用いないと行えなかつ た。また、帰属の曖昧さを回避するために感度の低い測定法(例えば Sattler, M. , et al. , Prog. NMR Spectroscopy, 34 (1999) 93-158を参照) を併用せざるを 得ず、 そのために、 最も感度のよい多核 2次元 NMR法である1 H—15 N HS QC測定法に必要な蛋白質試料の 10〜20倍程度濃度の高い13 CZ15N二重 標識化蛋白質を調製する必要があり、 溶解度の低い蛋白質については、 解析が行 えなかった。
一般的に、高分子量蛋白質を 1 mM程度の高濃度に溶解させることは困難である ことが多く、 また、 室温以上の温度で数週間安定に存在させることも困難である ことが多い。さらに、この 2つの条件を満たして各種スぺクトルが測定できても、 その後の解析は、 熟練者が行って数週間以上要するものであった。
また、 3次元 NMR法を使わないシグナルの帰属方法としては、 1種類のアミ ノ酸の Cのみを 13 C標識化し、別の 1種類のァミノ酸のみを15 N標識化した標的 蛋白質を用いて、 1つの残基の1 H—15 N HSQCシグナルを同定する方法(例 えば Yabuki, T. et al. , J. Biomol. NMR, 11, 295-306 (1998)を参照) が報告 されている。 この方法は目的蛋白質の濃度の問題と蛋白質の安定性め問題を解決 はしているが、 実際にこの方法を1 H—15 N HSQCの全てのシグナルの帰属 に用いるためには、 数十種類から数百種類のさまざまな標識化を行った目的蛋白 質を調製し、 なおかつ、 サブレッサー tRNAを用いた複雑な铸型の作成を行わ なくてはならない。 よって、 この方法が実際に蛋白質の全ての1 H—15N HS QC等の NMRで得られるシグナルの帰属に使われたことはなかった。 また、 W 02002/33406号公報にも、上記と同様、目的アミノ酸を13 Cで標識し、 隣接アミノ酸を15 Nで標識し、 13Cの隣の1 H—15 N相関シグナルを検出する方
法が記載されている。 し力 し、 この方法においても、 隣接するアミノ酸の全ての 組み合わせをラベルした蛋白質を合成する必要があり、 また隣接するアミノ酸が 同じ並びで 2箇所以上に存在した場合にはシグナルの帰属を行うことができない という問題があった。
そこで、 目的蛋白質を低濃度で少量用いて、 かつ簡便に、 —1 5 N H S Q Cスぺクトル等の NMRにより得られたシグナルのアミノ酸の種類と番号の帰属 を決定する方法が求められていた。 発明の開示
本発明が解決しょうとする課題は、 感度のよい1 H—1 5 N H S Q C測定方法 で観測可能な蛋白質最低濃度の、 数倍から 1 0倍以上の蛋白質濃度が必要であつ た従来のシグナル帰属方法に代わり、 —1 5 N H S Q C測定等で得られたシ グナルを高効率かつ迅速に帰属する方法の提供、 該方法を用いた高効率または迅 速な標的蛋白質の立体構造特定方法あるいは目的蛋白質とリガンドとの結合部位 を特定する方法を提供することにある。 本発明が解決しょうとする別の課題は、 上記した本発明による蛋白質の NMR測定により得られたシグナルの帰属方法に 用いられる試薬キットを提供することにある。
本発明者らは、 上記課題を解決するために鋭意検討した結果、 目的タンパク質 を、 構成するァミノ酸ごとに1 5 NZ1 3 C二重標識化ァミノ酸と1 5 N標識化ァミ ノ酸等、 および標識化されていないアミノ酸を系統的に組み合わせて基質に用い て複数の蛋白質を合成し (最大 2 0種類あるいは 3 9種類) 、 これを隣接する 2 つのァミノ酸残基の相関シグナルを同定し得る測定方法で NMR測定を行って、 得られたシグナルを比較したところ、 NMR測定によって得られたシグナルを帰 属できることを見出した。 本発明は、 これらの知見に基づいて成し遂げられたも のである。
即ち、 本発明によれば、 以下の発明が提供される。
( 1 ) 蛋白質の NMR測定により得られたシグナルの帰属方法であって、
(i)蛋白質のァミノ酸配列上で、同定しょうとするァミノ酸に隣接するどちらか一 方のアミノ酸の 2位および Z又は 1位の炭素原子と 2位の窒素原子が、 それぞれ NMRで測定可能なように二重標識され、 さらに少なくとも同定しょうとするァ ミノ酸の 2位の窒素原子、 炭素原子、 水素原子のいずれかが NMRで測定可能な ように標識された蛋白質を調製し、
(ii) 該蛋白質について、 二重標識されたアミノ酸に隣接する同定しょうとする アミノ酸残基のアミドプロトンと標識された原子との相関シグナルのみを同定可 能な NMR測定を行い、
(iii) 該シグナルを、 同定しょうとするアミノ酸の 2位の窒素原子、 炭素原子、 水素原子のいずれかが標識された蛋白質を NMR測定することにより得られた、 同定しょうとするアミノ酸残基のアミドプロトンと標識された原子との相関シグ ナルと比較して、 同定しようとするアミノ酸のシグナルの帰属を決定することを 特徴とする方法。
( 2 ) 蛋白質の NMR測定により得られたシグナルの帰属方法であって、
(i)蛋白質のアミノ酸配列上で、同定しょうとするアミノ酸に隣接するどちらか 一方のアミノ酸が、 その 2位おょぴ 1位の炭素原子が1 3 Cで、 また 2位の窒素原 子が1 5 Nで二重標識され、 さらに少なくとも同定しようとするアミノ酸の 2位の 窒素原子が1 5 Nで標識された蛋白質を調製し、
(ii) 該蛋白質について、 二重標識されたアミノ酸に隣接する同定しょうとする アミノ酸残基のアミドプロトンと1 5 Nの相関シグナルのみが同定可能な NMR 測定を行い、
(iii) 該シグナルを、 同定しょうとするアミノ酸の 2位の窒素原子のみが1 5 N 標識された蛋白質を NMR測定することにより得られた同定しようとするァミノ 酸残基のアミ ドプロトンと1 5 Nの相関シグナルと比較して、同定しょうとするァ ミノ酸のシグナルの帰属を決定することを特徴とする方法。
( 3 ) 蛋白質の NMR測定により得られたシグナルの帰属方法であって、
(a) 蛋白質のアミノ酸配列上で、 同定しょうとするアミノ酸に隣接するどちら か一方のアミノ酸について上記 (2) に記載の方法で帰属を決定し、
(b) 該アミノ酸の 2位および 1位の炭素原子が13 Cで、 また 2位の窒素原子が 15Nで二重標識され、 さらに少なくとも同定しょうとするアミノ酸の 2位の窒素 原子が 15 Nで標識された蛋白質を調製し、
(c) 該蛋白質について、 二重標識されたアミノ酸残基の13 Cとアミ ドプロトン の相関シグナルと、二重標識したァミノ酸残基の 13 Cと隣接する同定しようとす るアミノ酸残基のアミ ドプロトンの相関シグナルのみを同定可能な NMR測定を 行い、
(d) 同定しょうとするアミノ酸と上記で二重標識したアミノ酸のアミドプロト ンと 15 Nの相関シグナルを取得し、
(e) (d) で得られたシグナル中の帰属が決定されているアミノ酸のアミ ドプ 口トンの化学シフトと同一の化学シフトを有するシグナルを (c) で得られたシ グナル中から選択し、
(f )選択されたシグナルの13 Cの化学シフトと同一の化学シフトを有するシグ ナルを (c) で得られたシグナル中から選択し、
(g) 選択されたシグナルのアミドプロトンの化学シフトと同一の化学シフトを 有するシグナルを (c) で得られたシグナル中から選択し、 該シグナルを、 帰属 が決定されているアミノ酸と隣接するアミノ酸のものであることを利用して帰属 することを特徴とする方法。
(4) 上記 (3) に記載の方法において、 (c) の工程で、 さらに二重標識した アミノ酸残基の13 Cと隣接する同定しょうとするアミノ酸残基のアミドプロト ンの相関シグナルのみを同定可能な NMR測定を行い、 (f ) の工程で選択され るシグナルが、 上記で得られたシグナルと重なることを確認することを特徴とす る上記 (3) に記載の方法。
(5) 蛋白質の NMR測定により得られたシグナルの帰属方法であって、
(i)蛋白質のァミノ酸配列上で、同定しょうとするァミノ酸に隣接するどちらか 一方のアミノ酸が、 その 1位の炭素原子が13 Cで標識され、 さらに同定しようと するアミノ酸を含む複数のアミノ酸の 2位の窒素原子が15 Nで標識された蛋白 質を調製し、
(ii) 該蛋白質について、 13C標識されたアミノ酸に隣接する同定しょうとする アミノ酸残基のアミドプロトンと15 Nの相関シグナルのみを同定可能な NMR 測定を行い、
(iii) 該シグナルを、 同定しょうとするアミノ酸のみの 2位の窒素原子が15 N で標識された蛋白質を NMR測定することにより得られた、 同定しようとするァ ミノ酸残基のアミドプロトンと15 Nの相関シグナルと比較して、同定しようとす るァミノ酸のシグナルの帰属を決定することを特徴とする方法。
(6) 上記 (1) または (5) に記載の方法を繰り返す、 あるいは上記 (3) お ょぴ (4) に記載の方法を組み合わせることを特徴とする、 蛋白質の NMR測定 により得られた全てのシグナルの帰属方法。
(7) 蛋白質の NMR測定により得られたアミドプロトンと13 Cまたはアミド プロトンと2 Hの相関シグナルの帰属方法であって、
(i)蛋白質のアミドプロトンと15 Nの相関シグナルについて上記 (2) 〜 (6) に記載の方法によりその帰属を決定し、
(ii)該蛋白質のアミノ酸配列上で、同定しょうとするアミノ酸の 2位おょぴ Z又 は 1位の炭素原子あるいは水素原子が NMRで測定可能なように二重標識された 蛋白質を調製し、
(iii) 該蛋白質について、 同定しょうとするアミノ酸中のアミドプロトンと、 同 じァミノ酸の NMRで測定可能なように標識された炭素原子あるいは水素原子と の相関シダナノレを取得して、
(iv)上記(i)のアミドプロトンと15 Nの相関シグナルと (iii) のアミ ドプロトン と13 Cまたはアミドプロトンと2 Hの相関シグナルに共通するアミドプロトンの 化学シフトが同じであることを指標として、アミドプロトンと13 Cまたはアミド
プロトンと2 Hの相関シグナルを該アミドプロトンと15 Nの相関シグナルに対応 付けてアミドプロトンと13 Cまたはアミドプロトンと2 Hの相関シグナルの帰属 を決定することを特徴とする方法。
(8) 上記 (6) または (7) に記載の方法により帰属された NMRシグナルの 化学シフト情報を用いることを特徴とする蛋白質の立体構造特定方法。
(9) 蛋白質と特定のリガンドとの複合体の NMR測定により得られたシグナル と、 蛋白質のみの NMR測定により得られたシグナルとを比較し、 化学シフトが 変化したシグナルを、 上記 (1) 〜 (7) のいずれかに記載の方法により帰属し て、 蛋白質とリガンドとの結合部位を特定する方法。
(10) 少なくとも 2位および 1位の炭素原子が13 Cで標識され、 2位の窒素原 子が15 Nで標識されている 1種類以上のアミノ酸と、 2位の窒素原子が15 Nで標 識されて、かつ 2位おょぴ 1位の炭素原子が13 Cで標識されていない複数のァミ ノ酸を含む、 上記 (1) 〜 (7) のいずれかに記載の方法による蛋白質の NMR 測定により得られたシグナルの帰属方法に用いられる試薬キット。
(11) 少なくとも 2位および 1位の炭素原子が13 Cで標識され、 2位の窒素原 子が15 Nで標識されている 1種類以上のァミノ酸、 2位の窒素原子が 15 Nで標識 されて、かつ 2位おょぴ 1位の炭素原子が13 Cで標識されていない複数のァミノ 酸、 無細胞蛋白質合成用小麦胚芽抽出液、 及びアミノ酸代謝酵素阻害剤を含む、 上記 (1) 〜 (7) のいずれかに記載の方法による蛋白質の NMR測定により得 られたシグナルの帰属方法に用いられる試薬キット。 図面の簡単な説明 '
図 1は、 大腸菌チォレドキシン蛋白質のアミノ酸配列おょぴ1 H—15 N HS QCスぺクトルを示す図である。
図 2は、 大腸菌チォレドキシン蛋白質のアミノ酸配列、 H (N) C A測定およ ぴ H (NCO) C A測定を示す図である。
図 3は、主鎖の全てのアミド窒素を15 N標識した大腸菌チォレドキシン蛋白質 の1 H— 15N HSQCスぺク トルを測定した結果を示す図である。
図 4は、 ァラニンだけを13 C/15N二重標識し、 その他のアミノ酸は全て15 N標識した大腸菌チォレドキシン蛋白質の HN (CO) スペク トルを測定した結 果を示す図である。
図 5は、 フエ二ルァラニンだけを15 N標識した大腸菌チォレドキシン蛋白質の 1H— 15N HSQCスぺク トル (a) 、 および、 セリンだけを13 CZ15 N二重 標識し、その他のァミノ酸は全て 15 N標識した大腸菌チォレドキシン蛋白質の H N (CO) スペクトル (b) を測定した図である。
図 6は、 フエ二ルァラユンだけを15 N標識した大腸菌チォレドキシン蛋白質の 1H— 15 N HSQCスペクトル (a) 、 および、 ァスパラギン酸だけを13 C/ 15 N二重標識し、その他のァミノ酸は全て 15 N標識した大腸菌チォレドキシン蛋 白質の HN (CO) スぺクトル (b) を測定した図である。
図 7は、 フエ二ルァラニンだけを15 N標識した大腸菌チォレドキシン蛋白質の — 15 N HSQCスぺク トル (a) 、 および、 ロイシンだけを13 CZ15N二 重標識し、その他のアミノ酸は全て15 N標識した大腸菌チォレドキシン蛋白質の HN (CO) スペクトル (b) を測定した図である。
図 8は、 フエ二ルァラニンだけを15 N標識した大腸菌チォレドキシン蛋白質の 15N HSQCスペクトル (a) 、 および、 グルタミン酸だけを13 C/15 N二重標識し、その他のァミノ酸は全て 15 N標識した大腸菌チォレドキシン蛋白 質の HN (CO) スペクトル (b) を測定した図である。
図 9は、 イソロイシンだけを15 N標識した大腸菌チォレドキシン蛋白質の1 H 一15 N HSQCスペク トル (a) 、 および、 グリシンだけを13 C/15N二重 標識し、その他のアミノ酸は全て15 N標識した大腸菌チォレドキシン蛋白質の H N (CO) スペク トル (b) を測定した図である。
図 10は、 図 9において、 確定できなかった 72番と 75番のイソロイシンの 帰属の方法を示した図である。
図 11は、 本発明により、 主鎖の全てのアミド窒素を15 N標識した大腸菌チォ レドキシン蛋白質の1 H— 15N HSQCスぺクトルのほぼ全てのシグナルを帰 属した結果を示す図である。
図 12は、フエ二ルァラニンだけを13 C/15N二重標識しその他のアミノ酸は 全て15 N標識した大腸菌チォレドキシン蛋白質の HN (CA) スペク トル (a) と HN (CO) スペクトル (b) 、 および、 フエ二ルァラニンだけを15 N標識し た大腸菌チォレドキシン蛋白質の1 H—15 N HSQCスペクトル (c) を示す 図である。
図 13は、主鎖の全てのアミド窒素を15 N標識した大腸菌チォレドキシン蛋白 質の1 H—15 N HSQCスペクトル (a) とフエ二ルァラニンだけを13 C/15 N二重標識しその他のアミノ酸は全て15 N標識した大腸菌チォレドキシン蛋白 質において、 13 Cカルボニル基に隣接していない全ての1 H—15 N相関を測定し たスぺクトル (b) と HN (CO) スぺクトル (c) を示す図である。 発明を実施するための最良の形態
以下、 本発明をさらに詳細に説明する。
(1-1) NMR測定で得られるシグナルの帰属方法 1
本発明の帰属方法は、 目的蛋白質を、構成するアミノ酸ごとに13 CZ15N二重 標識化アミノ酸、 15N、 13C、 2 Hのいずれかで標識化されたアミノ酸、 および 標識化されていないアミノ酸を系統的に組み合わせて合成した後に、 これを隣接 する 2つのアミノ酸残基の相関シグナルを取得し得る測定方法で NMR測定を行 つて、 得られたシグナルを各アミノ酸を標識化した蛋白質から得られたシグナル と比較することによって帰属する方法である。 以下に目的蛋白質の1 H— 15 N相 関シグナルの場合を例に帰属方法の概略を記載する。 用いられる構成成分等やそ の製法、 並びに NMR測定法の詳細は、 以下の (2) 〜 (5) に記載のとおりで ある。
シグナルの帰属を行う目的蛋白質は、 そのアミノ酸配列が同定されていれば如 何なるものでもよいが、 具体的には下記の (2) に記載したものを使用すること ができる。 まず、 相関シグナルの帰属を同定しょうとするアミノ酸 (例えば、 図 1 の27 ) について、 アミノ酸配列上で隣接するどちらか一方のアミノ酸を 特定し (例えば、 図 1 Aの 27 Fの場合は 26 D) 、 該アミノ酸 (例えば、 ァス パラギン酸) についてはその 2位 (α位) および 1位 (カルボ二ル位) の炭素原 子が13 Cで、 また 2位の窒素原子が15 Νで二重標識されているアミノ酸 (以下、 これを 「13C/15N二重標識化アミノ酸」 と称することがある) と、 それ以外の アミノ酸については、 2位の窒素原子のみが15 Nで標識されたアミノ酸を基質と して、 目的蛋白質を合成する。 合成された蛋白質は、 図 1Aに示したアミノ酸配 列を有する蛋白質の 27 Fの相関シグナルを同定しょうとする場合、 ァスパラギ ン酸 (D) が13 C/15N二重標識化されていて、 それ以外のアミノ酸は窒素原子 のみが15 Nで標識された蛋白質として合成する。
次に、得られた蛋白質について、 13C/15N二重標識化アミノ酸に隣接するァ ミノ酸残基のアミドプロトンと15 Nの相関シグナルのみが取得可能な NMR解 析を行う。 具体的には、 図 1 Bの四角で囲った部分の原子間の相関シグナルのみ が同定される解析方法等である。 この NMR測定法としては、例えば HN (CO) 測定等が挙げられるが、 以下、 このように二重標識したアミノ酸に隣接するアミ ノ酸のアミドプロトンと15 Nの相関シグナルのみを測定する方法を「HN (CO) 測定」 と称することがある。 例えば、 上記のように標識した図 1 Aのアミノ酸配 列を有する蛋白質についてこの NMR測定を行った結果は図 6 (b)に示される。 HN (CO) 測定により得られたシグナルは、 二重標識化アミノ酸の C末側に隣 接するアミノ酸残基のものである。 例えば、 図 6 (b) に示されるシグナルは、 二重標識したアミノ酸 Dの C末側に隣接するアミノ酸、 図 1 Aに示されるァミノ 酸配列中の 3 K、 10 D、 1 1 S, 14 T、 16 V、 21 G、 27 Fゝ 44E、 48E、 61 Q、 105Aのものである。
ここでは、 二重標識化したアミノ酸の C端側に隣接するアミノ酸の1 H— 15 N 相関シグナルのみを取得できる HN (CO) 測定を行っているが、 二重標識化し たアミノ酸の N端側に隣接するアミノ酸の1 H—15N相関シグナルのみを取得で きる測定法が有れば、 その測定法を用いてもよい。
これらのシグナルの中から、 目的アミノ酸 (27F) のシグナルを選択する方 法としては、 目的アミノ酸の 2位の窒素原子のみが15 Nで標識されたアミノ酸を 基質として目的蛋白質を合成し、 該蛋白質について NMR測定により —15 N 相関シグナルを取得して、 上記 HN (CO) 測定により得られた1 H—15 N相関 シグナルと比較することにより行うことができる。 具体的には、 例えば、 図 1A に示されるアミノ酸配列を有する蛋白質について、 フエ二ルァラユン (F) の 2 位の窒素原子のみが15 Nで標識されたアミノ酸を基質として目的蛋白質を合成 し、該蛋白質について NMR測定により — 15 N相関シグナルを取得した場合、 得られたシグナルは、 27 Fを含むフエ二ルァラニンに対応するアミノ酸の1 H 一15 N相関シグナルである。 このシグナルは、 例えば図 6 (a) に示されるもの が挙げられる。 このシグナル (図 6 (a) ) と HN (CO) 測定により得られた シグナル (図 6 (b) ) を比較して、 重なるシグナル (図 6 (b) の〇で示した シグナル) が同定しょうとするアミノ酸 (27F) のものであると同定できる。 上記の HN (CO) 測定により得られた1 H—15 N相関シグナルと比較するた めの同定しようとするアミノ酸の1 H—15 N相関シグナルは、 以下の方法で取得 してもよい。まず、同定しようとするアミノ酸を13 C/15N二重標識化アミノ酸、 その他は15 N標識化アミノ酸を基質として目的蛋白質を合成し、該蛋白質につい て二重標識ィ匕されたアミノ酸中のアミドプロトンと15 Nとの相関シグナルと、そ れに隣接するアミノ酸中のアミドプロトンと15 Nとの相関シグナルの両方が検 出される NMR測定 (これを以下、 「HN (CA) 測定」 と称することがある) を行う。また、同じ蛋白質について HN (CO)測定を行ってシグナルを取得し、 HN (CA) 測定で得られたシグナルと比較する。 ここで、 重なっていないシグ ナルが目的アミノ酸を含む同じアミノ酸のシグナルである。
ここで、 「同定しょうとするアミノ酸」 は 1つでもよいし、 複数個でもよレ、。 以下に、 二重標識化したアミノ酸を 2種類用いて 3個のアミノ酸の1 H—15 N相 関シグナルを同定する例を説明する。 例えば、 図 1 Aに示されるアミノ酸配列を 有する蛋白質について、 ヒスチジン残基(H6) とトリブトファン残基(W28、 W31) のみを13 C/15 N二重標識化し、 その他のアミノ酸残基を15 Nのみで 標識化した目的蛋白質を用いた場合、 上記の方法を用いることにより、 それぞれ のアミノ酸残基の一つ後ろのアミノ酸残基 (L 7、 A29、 C 32) を一意的に 決定することが可能である。 この場合には、 帰属の手順が若干複雑にはなるが、 試料の数を 20種類より減らすことが可能である。
また、 1 H—15 N相関シグナルの全てのシグナルを帰属する必要がなレ、場合、 言レ、換えれば、 同定しょうとするアミノ酸と隣接するァミノ酸の組み合わせがそ の目的蛋白質配列中に 1つしか存在しないようなァミノ残残基についてのみ帰属 を行えばよい場合には、同定しょうとするァミノ酸に隣接するァミノ酸の標識は、 必ずしも13 CZ15Nの二重の標識が必要ではなレ、。すなわち、その 1位の炭素原 子が13 C標識されていればよい。 この場合には、 目的蛋白質として、 さらに同定 しょうとするアミノ酸を含む複数のァミノ酸の 2位の窒素原子が 15 Nで標識さ れているものを合成する。 合成された蛋白質を HN (CO) 測定等を行ってシグ ナルを取得し、 これらのシグナルの組み合わせと、 同定しょうとするアミノ酸だ けを 15 Nで標識化した蛋白質の1 H—15 N相関シグナルと比較することによって、 上記と同様にシグナルを帰属することができる。この方法を用いることによれば、 1位の炭素原子が13 C標識されていて、 同定しょうとするアミノ酸の 2位の窒素 原子が15 Nで標識されているものを合成し、 この HN (CO) 測定によるシグナ ルを取得していく従来の方法に比べて、 標識蛋白質の種類が少なくてすむという 効果がある。
上記の方法は、 これを繰り返すことによって、 目的蛋白質の全てのアミノ酸に 対して NMRで得られるシグナルの帰属を行うことができるが、 同定しようとす
るアミノ酸と隣接するアミノ酸の組み合わせ (図 1 Aでは Dと F ) がその目的蛋 白質配列中に 1つしか存在しない場合にのみ用いることができる方法である。
( 1 - 2 ) NMR測定で得られるシグナルの帰属方法 2
目的蛋白質中に同定しようとするアミノ酸と隣接するアミノ酸の組み合わせが 2つ以上が存在する場合 (例えば、 図 2 Aに示すアミノ酸配列を有する蛋白質で は、 7 1 GZ 7 2 Iと 7 4 GZ 7 5 I等が挙げられる) 、 まず、 (i)目的蛋白質の ァミノ酸配列上で同定しょうとするアミノ酸に隣接するどちらか一方のァミノ酸 について、 その特定の原子とアミドプロトンとの相関シグナルを上記の方法で帰 属を決定する。 次に、 (ii)帰属が決定されたアミノ酸残基中の特定の原子とアミ ドプロトンとの相関シグナルと、 (iii) 同定しょうとするアミノ酸中の(i)と同 じ特定の原子とアミ ドプロトンの相関シグナルを、.(iv)それらの間に存在する原 子と各アミドプロトンとの相関シグナルを取得して、 共通する原子の化学シフト が同じであることをもとに対応つけていくことにより、 帰属が決定されたァミノ 酸に隣接するアミノ酸の相関シグナルであることを同定して帰属を決定すること ができる。
例えば、 特定の原子が 2位の炭素原子である場合、 既に取得されている帰属が 決定されたアミノ酸残基中の 2位の炭素原子とアミ ドプロトンとの相関シグナル に対し、 帰属が決定されたァミノ酸残基中の 2位の炭素原子と同定しょうとする
(隣接する) アミノ酸残基中のアミドプロトンとの相関シグナルを、 この 2つの シグナルに共通する帰属が決定されたアミノ酸残基中の 2位の炭素原子の化学シ フトが同一であることから選択する。 さらに、 選択した帰属が決定されたァミノ 酸残基中の 2位の炭素原子と同定しょうとする (隣接する)アミノ酸残基中のアミ ドプロトンとの相関シグナルに対し、同定しようとするアミノ酸残基中の 2位の炭 秦原子と該アミノ酸残基中のアミドプロトンとの相関シグナルを、 この 2つのシ グナルに共通する同定しょうとするアミノ酸残基中のアミドプロトンの化学シフ トが同一であることから選択し、 同定しようとするアミノ酸のシグナルの帰属を
決定することができる。 このような相関シグナルは、 例えば、 上記 H (N) C A 法により取得することができる。
また、 特定の原子が 2位の窒素原子である場合は、 以下に示す方法によりアミ ドプロトンと窒素原子との相関シグナルの帰属を決定することができる。
まず、 (a ) 目的蛋白質のアミノ酸配列上で、 同定しょうとするアミノ酸に隣 接するどちらか一方のアミノ酸について、 上記 (1 ) の方法でその帰属を決定す る。 図 2 Aに記載のアミノ酸配列を有する蛋白質において、 例えば 7 2 1および 7 5 Iのシグナルを同定しょうとする場合 (以下、 この場合を 「例示の蛋白質の 場合」 と称することがある) 、 同定しょうとする 7 2 Iに隣接する 7 1 Gと、 同 じく同定しょうとする 7 5 Iに隣接する 7 4 Gについて、 それぞれ上記 (1 ) の 方法で隣接するアミノ酸 (例示の場合は 7 O Y、 7 3 R) との関係で1 Η—1 5 Ν 相関シグナルの帰属を決定する。
次に、 (b ) 同定しょうとするアミノ酸に隣接するアミノ酸の 2位および 1位 の炭素原子が1 3 Cで、 また 2位の窒素原子が1 5 Nで二重標識され、 さらに少なく とも同定しょうとするアミノ酸の 2位の窒素原子が1 5 Nで標識された蛋白質を 合成する。 例示の蛋白質の場合、 7 2 Iおよび 7 5 Iに隣接するグリシンの 2位 および 1位の炭素原子が1 3 Cで、 また 2位の窒素原子が1 5 Nで二重標識され、 さ らに少なくとも同定しょうとするイソロイシンの 2位の窒素原子が 1 5 Nで標識 された蛋白質を合成する。
( c ) 得られた蛋白質について、 二重標識されたアミノ酸残基 (例示の蛋白質 ではグリシン)の1 3 Cとアミ ドプロトンの相関シグナル(図 2 Bの点線部分)と、 二重標識したアミノ酸残基 (例示の蛋白質ではグリシン) の1 3 Cと隣接する同定 しょうとするアミノ酸残基 (例示の蛋白質ではイソロイシン) のアミドプロトン の相関シグナル (図 2 Bの実線部分) が取得可能な H (N) C A法等の NMR測 定 (以下、 これを 「H (N) C A測定」 と称することがある) を行い、 シグナル を取得する。 例示の蛋白質の場合、 取得されたシグナルは図 1 0 ( b ) に示され る。 さらに、 (d ) 同定しょうとするアミノ酸残基 (例示の蛋白質ではイソロイ
シン) と、 上記で二重標識したアミノ酸残基 (例示の蛋白質ではグリシン) のァ ミドプロトンの相関シグナルを H (NCO) CA法等で取得する (以下、 これを 「H (NCO) CA測定」 と称することがある) 。 例示の蛋白質の場合、 本測定 方法によって得られたシグナルは、 例えば、 図 10 (c) に示すものが挙げられ る。
次に、 (d) で取得したシグナル中の帰属が決定されているアミノ酸 (例示の 蛋白質の場合は、 71G 5 、¾74G) のアミ ドプロトンの化学シフトと同一 の化学シフトを有するシグナルを (c) で得られたシグナルの中から選択する。 例示の蛋白質の場合、 図 10 (a) の 71 Gあるいは 74Gのシグナルのアミド プロトンの化学シフトと同一の化学シフトを図 10 (b) のシグナルの中から選 択する (図 10 (b) では、 矢印で示される) 。
さらに、 (f) 選択されたシグナルの13 Cの化学シフトと同一の化学シフトを 有するシグナルを (c) で得られたシグナルの中から選択し、 (g) 選択された シグナルのアミドプロトンの化学シフトと同一の化学シフトを有するシグナルを (d) で得られたシグナルの中から選択する。 ここで、 選択されたシグナルが、 もとのシグナルに帰属されるアミノ酸と隣接するアミノ酸のシグナルであると決 定される。 例示の蛋白質の場合、 図 10 (b) の矢印で示されるシグナルの13 C の化学シフトと同一の化学シフトを有するシグナルを、 図 10 (c) のシグナル の中から選択する (図 10 (c) で矢印で示されるシグナル) 。 さらに選択され たシグナルのアミドプロトンの化学シフトと同一の化学シフトを有するシグナル を図 10 (d) で得られたシグナルの中から選択する (図 10 (d) で矢印で示 されるシグナル) 。 これらのシグナルが、 それぞれ、 71 Gに隣接する 72 1、 および 74 Gに隣接する 75 Iのシグナルとして帰属することができる。
(1 -3) NMR測定で得られるシグナルの帰属方法 3
上記 (1— 1) および (1— 2) の方法を用いて、 まず目的蛋白質の1 H—15 Nの相関シグナルの帰属を決定した後に、 これをもとに該目的蛋白質のアミノ酸
のアミドプロトンと i3Cの相関シグナル (以下、 これを ΠΗ—13 C相関シグナ ル」 と称することがある) やアミドプロトンと2 Ηの相関シグナルを決定するこ とができる。 具体的には、 (i)蛋白質のアミドプロトンと15 Νの相関シグナルに ついて上記の方法によりその帰属を決定し、 (ii)該蛋白質のアミノ酸配列上で、 同定しょうとするアミノ酸の 2位および/又は 1位の炭素原子あるいは水素原子 が NMRで測定可能なように二重標識された蛋白質を調製し、
(iii)該蛋白質について、 同定しようとするアミノ酸中のアミ ドプロトンと、 同 じアミノ酸の NMRで測定可能なように標識された炭素原子あるいは水素原子と の相関シグナルを取得して、 (iv)上記(i)のアミドプロトンと15 Nの相関シグナ ルと (iii) のアミドプロトンと13 Cまたはアミドプロトンと2 Hの相関シグナルに 共通するアミドプロトンの化学シフトが同じであることを指標として、 アミドプ 口トンと13 Cまたはアミ ドプロトンと2 Hの相関シグナルを該アミドプロトンと 15Nの相関シグナルに対応付けてアミドプロトンと13 Cまたはアミドプロトン と2 Hの相関シグナルの帰属を決定する方法である。
同定しょうとするアミノ酸とは、 1種類でもよく、 複数種類でもよく、 また、 全部のァミノ酸でもよいが、 後述するシグナルの対応付けでシグナルが重ならず に対応付けが可能な範囲であれば何れでもよい。 同定しようとするアミノ酸が二 重標識された目的蛋白質の合成方法および、 該蛋白質の同定しようとするァミノ 酸中のアミドプロトンと、 同じアミノ酸の NMRで測定可能なように標識された 炭素原子あるいは水素原子との相関シグナルの取得方法は、 上記 (1一 1) およ ぴ (1— 2) に記載のとおりである。 具体的には、 上記の二重標識を行った目的 蛋白質に対して、 H (N) CO、 H (NCO) CAの測定を行う方法が用いられ る。 例えば、 H (N) COでは二重標識されているアミノ酸の次のアミノ酸中の アミ ドプロトンと二重標識されているアミノ酸の 1位の炭素 (13C) との相関シ グナルが、 H (NCO) CAでは、 二重標識されているアミノ酸の次のアミノ酸 中のアミドプロトンと二重標識されているアミノ酸の 2位の炭素 (13C) との相 関シグナルが得られる。
次に、上記で取得された相関シグナルのアミ ドプロトンの化学シフトに注目し、 すでに帰属されている1 H—15 N相関シグナルのアミドプロトンのうち同一の化 学シフトをもつシグナルを選択して帰属を参照することにより、 H (N) CO、 H (NCO) CAの測定で得られるシグナルの帰属が容易に行える。 H (N) C 0、 H (NCO) CAの測定だけではなく、 H (NCA) CO、 H (N) CA等 の測定を行っても、 全く同様の方法により、 シグナルの帰属が可能である。
上記の方法は、 —15 N相関シグナルの帰属を行った後に、 1位あるいは 2 位の炭素原子の化学シフトによる帰属を行う方法であるが、 帰属の方法はこれに 限らない。 例えば、 上記と同じ標識を行った目的タンパク質の H (N) CAと H (NCO) CAのスペクトルの組み合わせ、 あるいは H (N) COと H (NCA) COのスぺクトルの組み合わせを順次取得し、 前後のアミノ酸中の 1位または 2 位の炭素原子の化学シフトとアミ ドプロトンの化学シフトの相関関係を上記と同 様の方法によって順次対応つけることによつても、アミ ドプロトンと13 Cの相関 シグナルの帰属を行うことが可能である。
以上、 代表的な標識方法と測定方法、 帰属方法について述べたが、 本発明の方 法は、 上記の方法に限定されるものではない。
例えば標識方法についてであるが、 上記標識法ではアミノ酸 C (任意のァミノ 酸) だけを13 CZ15N二重標識ィヒし、 その他のアミノ酸は15 N標識化した目的 蛋白質を調製したが、 実際に測定シグナルを与えるのはアミノ酸 C及ぴその一つ 後ろにあるアミノ酸残基だけであるから、 目的蛋白質のアミノ酸配列から、 アミ ノ酸残基 Cの後ろにあるアミノ酸の種類のみを15 N標識化しても HN (CO) 、 HN (CA) 、 HN (CO) CAに関して、 残りのアミノ酸全てを15 N標識化し たものと全く同じスペクトルが得られる。 また、 13CZ15N二重標識化するアミ ノ酸の種類は一蛋白質試料に一種類である必要はなく、 適宜数種類のァミノ酸を 13CZ15N二重標識化し、 他のアミノ酸を15 N標識化しても、 シグナルの帰属 は可能である。 この場合は、 必要な標識蛋白質が 20種類より減らすことができ るが、 解析が若干複雑になるので、 必要に応じて標識の仕方を変更すればよい。
( 2 ) 目的蛋白質
本発明の方法に用いられる目的蛋白質は、 後述する方法によりァミノ酸が選択 的に標識される方法で合成され得るのであれば、化学合成、組換体を用いた合成、 無細胞蛋白質合成など如何なる方法で作成されたものでもよい。 具体的には例え ば、 ポリペプチド、 糖蛋白質これらの誘導体、 共有結合体および複合体等が挙げ られる。 ポリぺプチドは 1 0以上 1 0 0 0以下のアミノ酸残基からなるものが好 ましく用いられる。 また、 糖蛋白質としては分子量 1 0 0 0以上 1 0万以下のも のが好ましい。 具体的には、 天然に存在する蛋白質、 またはその一部、 さらに人 ェ的に産生されたポリぺプチド、 およぴ天然に存在する蛋白質の N末端または C 末端に 1以上のアミノ酸残基が付加されている蛋白質等が含まれるが、 これらに 限らず、この場合、これらの蛋白質またはポリペプチドのアミノ酸残基において、
1若しくは数個のァミノ酸が欠失、 置換若しくは付加されていてもよレ、。
( 3 ) 標識化アミノ酸
本発明の方法では、 2位おょぴ 1位の炭素原子が1 3 Cで、 また 2位の窒素原子 が1 5 Nで二重標識されたアミノ酸 (以下、 これを 「1 3 CZ 1 5 N二重標識化アミ ノ酸」 と称することがある) と 2位の窒素原子、 炭素原子、 または水素原子のい ずれかが NMRで測定可能なように標識されたアミノ酸、 さらに標識化されてい ないアミノ酸を基質に、 目的蛋白質を系統的に、 複数個合成し、 NMR測定を行 つて、 得られたシグナルの帰属を上記 (1 ) に記載の通り決定するものである。 1 3 C/ 1 5 N二重標識化ァミノ酸は、 2位および/または 1位の炭素原子が 1 3 C で、 また 2位の窒素原子が1 5 Nで、 さらに主鎖のアミ ド基が1 Hであれば何れの ものでもよく、その他の部位については、 1 3 Cおよび1 5 N標識化されていてもさ れていなくてもよい。 同定しょうとするアミノ酸は、 例えば、 2位の窒素原子が 1 5 N標識化されていて、 1位および 2位の炭素原子が1 3 Cで標識ィ匕されておらず、 さらにアミドプロトンが1 Hのもの (以下、 これを 「1 5 N標識化アミノ酸」 と称
することがある) や、 1位おょぴ Zまたは 2位の炭素原子が13 Cであって、 2位 の窒素原子やアミドプロトンが標識されていないもの (以下、 これを 「13C標識 化アミノ酸」 と称することがある) 、 あるいはアミドプロトンおよび Zまたは 2 位の水素原子が重水素であって、 2位の窒素原子や 1位おょぴ 2位の炭素原子が 標識されていないもの (以下、 これを 「重水素標識化アミノ酸」 と称することが ある) 等であれば何れのものでもよく、 その他の部分については、 標識されてい てもされていなくてもよい。
また、 上記の13 CZ15 N二重標識化アミノ酸、 15N標識化アミノ酸、 13C標 識化アミノ酸における水素原子は、 主鎖のアミド基のみ1 Hであることが必要で あり、 他の部位については、 Dなどの同位体で置換されたものを用いてもよい。 特に、 高分子量の蛋白質においては、 アミ ド基以外の水素原子が重水素化されて いると、 上記 NMRにより得られるシグナル強度が著しく増強されるのでアミ ド 基以外の水素原子の一部または全部を重水素化したァミノ酸を用いることが好ま しい。
標識化されていないアミノ酸とは、 1位と 2位の炭素原子の両方ともが13 Cで 標識化されておらず、かつ 2位の窒素原子が 15 N標識化されていないものであれ ば如何なるものであってもよい。
プロリンについては、 そもそもアミ ドプロトンが存在しないので後述する1 H 一15 N HSQCスペクトルを与えない。 よって、 13CZ15N二重標識アミノ 酸を用いても 13 C標識化ァミノ酸を用いても同じ結果を与えるし、 15N標識化ァ ミノ酸を用いても非標識のプロリンを用いても同じ結果を与えるのでこれらの何 れを用いてもよい。
13 C Z 15 N二重標識化ァミノ酸、 15 N標識化ァミノ酸、 13 C標識化ァミノ酸、 及び重水素標識化ァミノ酸の作製法は、 通常用いられる方法により行うことがで きる。 また、 市販の標識化アミノ酸 (例えば、 Cambridge Isotope Laboratories 社製) を用いることもできる。
(4- 1) 標識化蛋白質の合成方法
上記 (2) に記載された標識化または非標識化アミノ酸を、 系統的に組み合わ せて基質として目的蛋白質を複数個合成する方法について1 H— 15 N相関シグナ ルの帰属決定に用いられる標識化ァミノ酸を例に以下に説明する。
標識化または非標識化アミノ酸の組み合わせは、 上記 (1) で詳述したとおり である。
ここで、 20種類のアミノ酸について NMR測定により得られたシグナルを同 定しょうとする場合に用意する目的蛋白質は、 次のとおりである。 まず、 1種類 のアミノ酸だけが15 N標識化アミノ酸でその他が非標識化アミノ酸である 19 種類 (プロリンを除く) の蛋白質と、 1種類のアミノ酸だけが13 CZ15N二重標 識化アミノ酸で、その他が15 N標識化アミノ酸である 20種類の蛋白質が挙げら れる。 このうち、 1種類のアミノ酸だけが15 N標識化アミノ酸でその他が非標識 化アミノ酸である 19種類 (プロリンを除く) の蛋白質はなくてもよい。
標識化および非標識化アミノ酸を基質として行う蛋白質合成方法は、 目的蛋白 質が、 NMR測定可能な形態で合成され得るものであれば如何なる方法でもよい。 具体的には、 無細胞蛋白質合成系が好ましく用いられ、 特にコムギ胚芽抽出液を 用いる無細胞蛋白質合成系が好ましく用いられる。コムギ胚芽抽出液は、例えば、 Sawasaki, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA., 97, 559 - 564 (2000)、特開 2000- 2368996号公報、 特開 2002-125693号公報、 特開 2002-204689号公報等に従って 調製されたものや、 あるいは PROTE I OSTM (TOYOBO社製) 等の巿販 のものが挙げられる。
目的蛋白質の鎳型としては、 目的蛋白質のアミノ酸配列をコードする DNAが 適当な発現制御領域の制御下となるように結合され、 これを RN Aに転写して用 いることが好ましい。 また、 その下流に転写終了のための配列、 およぴ非翻訳領 域等が連結しているものが好ましく用いられる。 発現制御領域とは、 プロモータ 一、 ェンハンサ一等が含まれる。 具体的には、 Sawasaki, et al. , Proc. Natl. A cad. Sci. USA., 97, 559- 564(2000)に記載のもの等が挙げられる。
目的蛋白質の铸型を R N Aに転写した後、 エタノール沈殿等で精製して、 これ を上記のコムギ胚芽等の細胞抽出液、 基質、 エネルギー源、 各種イオン等を添加 して適当時間反応させることにより蛋白質合成が行われる。
ここで、 コムギ胚芽抽出液を目的蛋白質合成に用いる場合、 該抽出液中に含ま れるアミノ酸代 ¾酵素によって、 ァラニンがァスパラギン酸およびグルタミン酸 に代謝され、 ァスパラギン酸がグルタミン酸に代謝され、 さらにグルタミン酸が ァスパラギン酸またはグルタミンに代謝される特徴があるため、 上記のアミノ酸 として標識化アミノ酸を用いる場合には、該アミノ酸代謝酵素の活性を阻害して、 かつ铸型 R NAの蛋白質への翻訳を阻害しない条件下で目的蛋白質合成を行う必 要がある。
該アミノ酸代謝酵素の活性を阻害して、 かつ铸型 R N Aの蛋白質への翻訳を阻 害しない条件とは、 以下のようにして検討して選択することができる。 まず該ァ ミノ酸代謝酵素阻害剤候捕として選択された物質が該蛋白質合成系における蛋白 質合成能を阻害しない濃度を決定する。 例えば、 適当な蛋白質の铸型 R NAを、 標識されていない基質を用いて翻訳し、 翻訳後取得された蛋白質を、 S D S—ポ リアクリルアミドゲル電気泳動などで分離し、 定量する。 あるいは、 活性測定法 が分かっている酵素蛋白質などや、 蛍光を持つような蛋白質を翻訳して、 該蛋白 質の酵素活性あるいは蛍光量を指標として定量してもよい。 この定量によって、 該蛋白質合成系に存在するアミノ酸代謝酵素阻害剤が、 合成される蛋白質の量を 減少させない濃度範囲を決定する。 さらに、 目的のアミノ酸の代謝を阻害する物 質を、 上記で決定された铸型 R NAの蛋白質への翻訳を阻害しない濃度範囲で加 え、 例えば、 アミノ酸配列がわかっている蛋白質の铸型 R N Aを、 好ましくは目 的のアミノ酸のみが安定同位体で標識されだ基質を用いて該無細胞タンパク質合 成系において翻訳し、 翻訳後取得された蛋白質を後述する NMR測定し、 投入し た基質の標識が他のァミノ酸について観察されないかを確認することにより選択 する。 該合成反応に存在する候補物質の濃度によって目的のアミノ酸の代謝の阻 害度が変化する場合には、 充分にアミノ酸の代謝が阻害される濃度を測定する。
この選択方法は、 アミノ酸代謝酵素の阻害剤としてすでに知られているものを用 いることによって換えることもできる。
本発明で用いることができるアミノ酸代謝酵素阻害剤の具体例としては、 トラ ンスアミナーゼ阻害剤およびグルタミン合成酵素阻害剤などが挙げられる。
かくして選択される具体的な条件としては、 標識化ァラニンを基質として用い て蛋白質を合成する場合、 および標識化ァスパラギン酸を基質として用いる場合 には、 下述の無細胞タンパク質合成方法の翻訳反応液に、 トランスアミナーゼ阻 害剤を、蛋白質合成活性を阻害しない濃度範囲で存在させること等が挙げられる。 ここで、 トランスアミナーゼは、 上記コムギ胚芽抽出液中に残存し、 ァラニンを ァスパラギン酸およびグルタミン酸に代謝する活性、 および/またはァスパラギ ン酸をグルタミン酸に代謝する活性を有するものである。 このようなトランスァ ミナーゼの活性阻害剤としては、 該合成系において、 トランスアミナーゼ活性を 阻害する濃度範囲と目的蛋白質合成を阻害しなレ、濃度範囲が重複するものが好ま しく用いられる。 具体的には、 例えば、 アミノォキシ酢酸等があげられ、 その濃 度としては 0 . 0 1〜1 O mMの範囲が好ましい。
また、 標識化グルタミン酸を基質として用いる場合の条件としては、 下述の無 細胞タンパク質合成方法の翻訳反応液に、 トランスアミナーゼ阻害剤およびダル タミン合成酵素阻害剤を、 蛋白質合成活性を阻害しない濃度範囲で存在させるこ と等が挙げられる。 ここで、 トランスアミナーゼは、 上記コムギ胚芽抽出液中に 残存し、 グルタミン酸をァスパラギン酸に代謝する活性を有するものであり、 グ ルタミン合成酵素とは、 上記小麦胚芽抽出液中に残存し、 グルタミン酸に代謝す る活性を有するものである。 このようなトランスアミナーゼの活性阻害剤として は、 該合成系において、 トランスアミナーゼ活性を阻害する濃度範囲と目的蛋白 質合成を阻害しない濃度範囲が重複するものが好ましく用いられる。具体的には、 トランスアミナーゼ阻害剤としては、 例えば、 アミノォキシ酢酸等があげられ、 その濃度としては 0 . 0 1〜1 O mMの範囲が好ましい。 また、 グルタミン合成
酵素阻害剤としては、 例えば、 L一メチォニンサルフォキシィミンが挙げられ、 その濃度としては 0. 01〜2 OmMの範囲が好ましく用いられる。
このような条件下で行われる無細胞タンパク質合成方法とは、 上記コムギ胚芽 抽出液に錶型 RNAや基質、 エネルギー源等を添加し、 さらに上記の必要なアミ ノ酸代謝活性を阻害する物質を添加して、 目的蛋白質が合成される方法であれば 特に制限はない。 合成反応溶液の組成としては、 上記細胞抽出液、 铸型 RNA、 基質となる標識化、 およぴ非標識化アミノ酸、 エネルギー源、 各種イオン、 緩衝 液、 ATP再生系、核酸分解酵素阻害剤、 tRNA、還元剤、 ポリエチレングリコール、 3' , 5, 一 cAMP、 葉酸塩、 抗菌剤等が含まれる。 これらは目的蛋白質によって 適宜選択して調製される。
基質の濃度としては、 0. 05〜0. 4 mMの範囲が適当である。 またエネル ギ一源としては、 ATP、 または GTPが挙げられ、 ATPは 1. 0〜; . 5 mM、 GTP は 0. 2〜0. 3 mM添加することが好ましい。 各種イオン、 及ぴその適当な反 応溶液中の濃度としては、 60〜 12 OmMの酢酸カリウム、 1〜 10 mMの酢酸 マグネシウム等が挙げられる。緩衝液としては、 15〜35mMの Hepes— K0H、 あ るいは 10〜5 OmMの Tris—酢酸等が用いられる。また ATP再生系としては、ホ スホェノールピルべ一トとピルビン酸キナーゼの組み合わせ、または 12〜2 Om Mのクレアチンリン酸 (クレアチンホスフェート) と 0. 2〜1. 6 μ§Ζμ1の クレアヂンキナーゼの組み合わせが挙げられる。 核酸分解酵素阻害剤としては、 反応溶液 1 μΐあたり 0. 3〜3. 0 Uのリポヌクレアーゼインヒビターや、 0. 3〜3Uのヌクレアーゼインヒビタ一等が挙げられる。
このうち、 リボヌクレアーゼインヒビターの具体例としては、 ヒト胎盤由来の RNase inhibitor (T0Y0B0社製等) 等が用いられる。 tRNAは、 Moniter, R. , et al. , Biochim. Biophys. Acta. , 43, 1 (1960)等に記載の方法により取得するこ とができるし、市販のものを用いることもできる。還元剤としては、 0. 1〜3. 0 mMのジチオスレィトール等が挙げられる。抗菌剤としては、 0. 001〜0.
01 %のアジ化ナトリウム、 又は 0. 1〜0. 2 mg/mlのアンピシリン等が挙げ られる。核酸安定化剤としては、 0. 3〜0. 5mMスペルミジン等が用いられる。 合成温度は 10〜40° (:、 好ましくは 1 5〜30°C、 さらに好ましくは 20〜 26 °Cで行われる。反応時間はタンパク質合成が行われる限り特に制限はなレ、が、 本発明のように、 翻訳反応で消費される物質を供給する系を用いると 24〜75 時間反応が持続する。
蛋白質合成のためのシステムあるいは装置としては、バッチ法(Pratt, J.M. et al. , Transcription and Tranlation, Hames, 179-209, B. D. &Higgins, S. J. , eds, IRL Press, Oxford (1984))のように、該細胞抽出液に無細胞タンパク質合成に必要な エネルギー源やアミノ酸、 あるいは tRNAを添加して行う方法や、 アミノ酸、エネ ルギ一源等を連続的に反応系に供給する連続式無細胞タンパク質合成システム(S pirin, A. S. et al. , Science, 242, 1162-1164(1988) ) 、 透析法 (木川等、 第 21回 日本分子生物学会、 WI D 6) 、 あるいは重層法 (Sawasaki, T., et al. , FEBS Let. ,514, 102-105(2002))等が挙げられる。 また、合成反応系に、铸型の R A、 アミノ酸、 エネルギー源等を必要時に供給し、 合成物や分解物を必要時に排出す る方法 (特開 2000— 333673号公報:以下これを 「不連続ゲルろ過法」 と称することがある) 等を用いることができる。
(4-2) 目的タンパク質の回収おょぴ精製
かくして合成された目的蛋白質は、 これを反応溶液から回収し、 必要であれば 適当な方法により精製することにより取得することができる。 しかし、 目的蛋白 質を NMR測定に用いる場合には、 精製は必ずしも必要なく、 それ自体公知の方 法により適当な濃度に濃縮して、 かつ緩衝液を NMR測定用に交換することで十 分なことが多い。 濃縮方法としては、 例えば、 限外濾過濃縮装置を用いる方法が 挙げられる。 また、 緩衝液の交換は、 市販のスピンカラムを用いる方法等が好ま しく用いられる。
(5) NMR測定
かくして合成された目的蛋白質を (1) に記載の方法で NMR測定を行い、 得 られたシグナルを比較することによりシグナルの帰属を行う。 ここで用いられる NMR測定法としては、 NMRに用いられ得る方法であれば溶液、 固体にかかわ らず如何なる方法も用いることができる。 具体的には、 異種核多次元 NMR測定 法であればいずれでもよく、 例えば、 HSQC、 HMQC、 CH-COS Y, C BCANH、 CBCA (CO) NH、 HNCO、 HN (CA) CO、 HNHA、 H (CACO) NH、 HCACOs 15N- e d i t e d NOE S Y— HSQC、 13C— e d i t e d NOESY— HSQC、 13C/15N- e d i t e d H MQC-NOE S Y-HMQC, 13C Z13C— e d i t e d HMQC-NO ESY— HMQC、 15N/15N- e d i t e d HSQC— NOESY— HSQ C (Cavanagh, W. J. , et al., Protein NMR Spectroscopy. Principles and Pra ctice, Academic Press (1996)) 、 HN (CO) CACB、 HN (CA) CB、 H N (COCA) CB (Yamazaki, T. , et al. , J. Am. Chem. Soc., 116 (1994) 11655-11666) 、 H (CCO) NH、 C (CO) NH (Grzesiek, S., et al. , J.
Magn. Reson., B 101 (1993) 114—119) 、 CR I PT、 CR I NEPT (Riek, R. , et al. , Proc. Natl. Acad. Sci. USA. , 96 (1999) 4918— 4923)、 HMB C、 HBHA (CB CACO) NH (Evans J. N. S. , Biomolecular NMR Spectrosc opy. Oxford University Press (1995) 71) 、 I NEPT (Morris, G. A., et al. , J. Am. Chem. Soc. , 101 (1979) 760- 762)、 HNC AC B (Wittekind, M. , et al., J. Magn. Reson. B 101 (1993) 201) 、 HN (CO) HB (Grzesiek, S., et al., J. Magn. Reson. 96 (1992) 215-222. ) , HNHB (Archer, S. J. , et al. , J. Magn. Reson. , 95 (1991) 636-641)、 HBHA (CBCA) NH (W ang, A. C. , et al. , J. Magn. Reson. , B 105 (1994) 196—198.) 、 HN (CA) HA (Kay, L. E. , et al. , J. Magn. Reson. , 98 (1992) 443-450) 、 HCCH— TOCSY (Bax, A. , et al. , J. Magn. Reson. , 88 (1990) 425—431) 、 TRO
S Y (Pervus in, Κ·, et al. , Proc. Natl. Acad. Sci. , 94 (1997) 12366-123
71) 、 13C /15N- e d i t e d HMQ C -NO E S Y-H S Q C (Jeral a R, et al., J. Magn. Reson., 108 (1995) 294-298) 、 HN (CA) NH (Ike garni, T. , et al. , J. Magn. Reson. , 124 (1997) 214217) 、 およぴ HN (CO CA) NH (Grzesiek, S., et al., J. Biomol. NMR, 3 (1993) 627-638. ) 等の 測定法が含まれるが、 これらに限らない。
これらのうち HSQC、 HMQCの 2次元 NMR法と、 HNCO、 HNCA、 HN (CO) C Aの 3次元 NMR法の 1次元を省略して 2次元 NMR法にしたも のが好ましく用いられる。
また、 測定方法であるが、 上記測定法では、 HN (CO) 、 HN (CA) 、 H
(N) CA、 H (NCO) CAの 4つの測定方法を用いたが、 HN (CO) や H N (C A) の力、わりに、 I s o t o p e f i l t e r法 (Breeze, A. L. , Prog.
NMR Spectroscopy, 36 (2000) 323 - 372) を用いて、 HN (CO) や HN (CA) と同様のスペクトルを得ることが可能である。 また、 H (N) CA、 HN (NC O) CAのかわりに H (N) COと H (NCA) COの組み合わせを使っても、 アミノ酸の前後関係を特定できるが、 H (NCA) COは測定感度が低いので、 目的蛋白質の 2位 (α位) の水素原子を重水素に置き換えることが好ましい (Ga rdner, K. H. and Kay, L. E., Annu. Rev. Biophys. Biomol. Struct., 27 (199 8) 357-406) 。 また分子量 2万を越えるような蛋白質の場合、 上記測定法を TR0S Y効果(PervusMn, K. , et al. , Proc. Natl. Acad. Sci. , 94 (1997) 12366 - 12 371)を用いた同様の測定法に置き換えることにより、感度の減少を抑えることが 可能である。 また、 主鎖のアミド水素原子以外の水素原子を重水素原子に置き換 えることも有効である (Gardner, K. H. and Kay, L. E. , Annu. Rev. Biophys. B ioraol. Struct., 27 (1998) 357 -猫) 。
(6) 立体構造解析方法
本方法を用いると1 H—15N HSQCスぺクトルの全てシグナルの帰属が可 能なだけではなく、 全ての 2位の炭素原子の化学シフトも上述の方法により同時
に決定される。 また、 H (N) COや CBCA (CON) H、 HBHA (CBC ACO) NH等の 2次元測定を追加することにより、 原理的には、 目的蛋白質の 全てのカルボニル炭素の化学シフト、 ]3炭素の化学シフト、 α /3水素の化学シフ トが決定可能である。 これらの情報を用いて Chemical Shift Index法(Wishart, D. and Case, D.A., Methods in Enzymol. 338 (2001) 3 - 34)を用いることによ り、 目的蛋白質の 2次構造が推定できる。 さらに、 HCCH TOCSY等の測 定を追加することによって、 側鎖を含めた炭素原子、 窒素原子、 水素原子の化学 シフトが決定可能になる。 この情報を用いれば、 常法にしたがって目的蛋白質の 立体構造決定が可能である (Cavanagh, W. J., et al. , Protein NMR Spectrosco py. Principles and Practice, Academic Press (1996) ) 0 †こ、 1 H— 15 N H SQCの全シグナルが帰属できることより、 Residual Dipolar Coupling法(Bax et al. , Methods in Enzymol. 339 (2001) 127- 174)の測定を行うことが可能で あり、 目的蛋白質の立体構造情報を得ることができる。
(7) 蛋白質とリガンドの結合部位特定方法
目的蛋白質と、 目的蛋白質とそのリガンドの複合体について、 NMR測定し、 得られたシグナルを比較して、化学シフトが変化したシグナルを上記( 1 )〜( 5) に記載の方法により帰属することによれば、 目的蛋白質とリガンドとの結合部位 を決定することができる。 上記で化学シフトが変化したシグナルが示すアミノ酸 は、 目的蛋白質において少なくともリガンドの結合部位であると決定することが できる。
(8) シグナル帰属方法に用いられる試薬キット
本発明の帰属方法を行うために、少なくとも 2位および 1位の炭素原子が13 C で標識され、 2位の窒素原子が15 Nで標識されている 1種類以上のアミノ酸と、 2位の窒素原子が 15 Nで標識されて、かつ 2位おょぴ 1位の炭素原子が 13 Cで標 識されていない複数のアミノ酸を含む試薬キットが提供される。 本キットの構成
成分は、 上記に限られるものではなく、 その他、 1位および/又は 2位の炭素原 子が1 3 Cで標識された 1種類以上のアミノ酸や、 上記 (4一 1 ) の無細胞タンパ ク質合成用コムギ胚芽抽出液ゃ該合成系に必要な試薬、 NMR測定用緩衝液等を 含んでいてもよい。 特に、 コムギ胚芽抽出液を含む場合、 該無細胞タンパク質合 成系において必要とされるアミノ酸代謝阻害剤を含むことも好ましい。 具体的に は、 (4— 1 ) に記載のトランスアミナーゼ阻害剤、 グルタミン合成阻害剤等が 挙げられる。 実施例
以下、 実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、 本発明の範囲はこれらの実 施例により限定されるものではない。
実施例 1 1種類のアミノ酸のみを1 3 C Z 1 5 N二重標識化し、その他の 1 9種類 のアミノ酸を1 5 Nのみで標識した基質により合成した目的蛋白質の NMR測定 ( 1 ) 铸型 mRNAの調製
大腸菌チォレドキシン蛋白質 (アミノ酸配列は、 配列表の配列番号 3に示され る) の遺伝子 (Genbank accession No. M54881) は、 大腸菌 Escherichia Coli K- 12株より、 MagPrep Bacterial Genomic DNA Kit (Novagen社) により調製した 大腸菌ゲノム D NAを鎳型として、 配列番号 1および 2に記載の塩基配列からな るプライマーを用いて P C R法を用いて増幅し、プラスミド pEU3b (Sawasaki, T. , Proc. Natl. Acad. Sci. USA. , 99 (23) , 14652-14657 (2002) ) の Spe Iと Sal I の部位に導入した。 16 mMのマグネシウムイオン存在下で上記プラスミ ドを铸型 として、 大月昜菌チォレドキシン蛋白質の mRNAを SP6 R A polymerase (Promega 社製) で転写し、 合成した。
( 2 ) すべて 1 5 N標識化したアミノ酸を基質に用いた目的蛋白質合成
上記実施例 1で合成した mRNAを 100 μ g/130 μ 1に成るように濃縮し、コムギ胚 芽抽出液 (Proteios™、 T0Y0B0社製) と混合した (2 ml) 。 その混合液を、 2 0 種類すベてのアミノ酸が1 5 N標識化された (Cambridge Isotope Laboratories
社製) 透析緩衝液に対して、 2日間反応を行い、 透析緩衝液を交換しさらに 2日 間の蛋白質合成反応を行った。 2mlの反応液は、 ミリポア製の Centricon- 3限外 濾過濃縮装置で 250ulまで濃縮した。. この濃縮液中の大腸菌チォレドキシン蛋白 質は 100 μΜとなった。 濃縮液を、 あらかじめ NMR測定用緩衝液 (50 mM リ ン酸ナトリウム pH 6.0、 100 mM NaCl) で平衡化されたアマシャム社製 Micro Spin G-25 ゲノレ濾過カラムを通すことにより、 測定用緩衝液に交換し、 NMR測 定試料とした。
(3) 1種類のァミノ酸のみを15 N標識化した基質を用いた目的蛋白質合成 上記実施例 1で合成した mRNAを 100 μ g/130 μ 1に成るように濃縮し、コムギ胚 芽抽出液 (Proteios™、 T0Y0B0社製) と混合した ( 2 ml) 。 その混合液を、 20 種類のうち 1種類だけ15 N標識され (Cambridge Isotope Laboratories社製) 、 残りの 1 9種類のアミノ酸は通常のアミノ酸である透析緩衝液に対して、 2日間 反応を行い、 透析緩衝液を交換しさらに 2日間の蛋白質合成反応を行った。 この 時に、 アミノ酸代謝酵素によるアミノ酸変換を阻害するために、 アミノォキシ酢 酸と L一メチォニンサルフォキシィミンをそれぞれ lmM、 0. ImMになるよ うに透析外液に加えた。 2mlの反応液は、 ミリポア製の Centricon- 3限外濾過濃 縮装置で 250ulまで濃縮した。 この濃縮液中の大腸菌チォレドキシン蛋白質は 1
Ο Ο μΜとなった。 濃縮液を、 あらかじめ NMR測定用緩衝液 (50 mM リン酸ナ トリウム PH 6.0、 100 mM NaCl) で平衡化されたアマシャム社製 Micro Spin G - 25 ゲル濾過カラムを通すことにより、 測定用緩衝液に交換し、 NMR測定試料 とした。
(4) 1種類のアミノ酸のみを13 CZ15N二重標識化し、その他の 1 9種類のァ ミノ酸を15 Nのみで標識化した基質を用いた蛋白質合成
上記実施例 1で合成した mRNAを 100 g/130 1に成るように濃縮し、コムギ胚 芽抽出液 (Proteios™、 T0Y0B0社製) と混合した ( 2 ml) 。 その混合液を、 20 種類のうち 1種類だけ13 C/15N標識され (Cambridge Isotope Laboratories 社製) 、 残りの 1 9種類のアミノ酸はアミドの窒素原子が15 Nで標識され、 なお
かつ13 Cの標識が入っていないアミノ酸である透析緩衝液に対して、 2日間反応 を行い、透析緩衝液を交換しさらに 2日間の蛋白質合成反応を行った。この時に、 ァミノ酸代謝酵素によるアミノ酸変換を阻害するために、 アミノォキシ酢酸と L —メチォニンサルフォキシィミンをそれぞれ 1 mM、 0. 1 mMになるように透 析外液に加えた。 2 mlの反応液は、 ミリポア製の Centricon- 3限外濾過濃縮装 置で 250ulまで濃縮した。 この濃縮液中の大腸菌チォレドキシン蛋白質は 100 /iMとなった。 濃縮液を、 あらかじめ NMR測定用緩衝液 (50 mM リン酸ナトリ ゥム PH 6.0、 100 mM NaCl) で平衡化されたアマシャム社製 Micro Spin G - 25 ゲル濾過カラムを通すことにより、 測定用緩衝液に交換し、 NMR測定試料とし た。
(5) NMR測定
NMR測定には、 B r u k e r社製 A v a n c e - 500スぺクトロメーター を用い、 測定試料には磁場の安定性を保っための NMRロック用に 5%D2Oを 添加し、 測定を行った。 測定温度は 35 °Cとした。
まず、すべて15 N標識化したアミノ酸を基質に用いて合成した大腸菌チォレド キシン蛋白質の1 H—15 N HSQCスペクトルを測定した (図 3) 。
それぞれのアミノ酸 (プロリン以外の 1 9種類) を 1種類のみ15 N標識し、 そ れ以外のアミノ酸を非標識のもので合成した大腸菌チォレドキシン蛋白質につい ては、 それぞれ1 H—15 N HSQCスペクトルを測定した。 このスペク トルよ り、全15 N標識化した大腸菌チォレドキシン蛋白質の HSQCスぺクトルのそれ ぞれのシグナルが、 どのアミノ酸由来のものかがわかった。
また、 1種類のアミノ酸のみを上記 (4) に記載の方法で13 C/15N二重標識 化し、その他の 1 9種類のアミノ酸を15 Nのみで標識化した大腸菌チォレドキシ ン蛋白質については (計 20種類) 、 HN (CO) (Cavanagh, W. J. , et al. , Protein NMR Spectroscopy. Principles and Practice, Academic Press (1996) に記載の HNC03次元測定法において、 COの展開時間を省略した 2次元測定) 、 H N (CA) (Cavanagh, W. J. , et al. , Protein NMR Spectroscopy. Principles
and Practice, Academic Press (1996)に記載の HNCA 3次元測定法において、 CA の展開時間を省略した 2次元測定) 、 H (N) CA (Cavanag , . J., et al. , Protein NMR Spectroscopy. Principles and Practice, Academic Press (199りノ に記載の HNCA 3次元測定法において、 Nの展開時間を省略した 2次元測定 ) 、 H (NCO) C A (Cavanagh, W. J. , et al. , Protein NMR Spectroscopy. Principles and Practice, Academic Press (1996)に記載の HN (CO) CA 3次元測定 法ににおいて、 Nの展開時間を省略した 2次元測定) の測定を行った。
蛋白質を構成するアミノ酸 20種類のうち 1種類のみ13 C/15N標識し、それ 以外の 19種類のアミノ酸は15 Nで標識された大腸菌チォレドキシン蛋白質(合 計 20種類) の HN (CO) スペク トルそれぞれ測定した。 このうち、 例えばァ ラニンのみ13 CZ15N標識し、 それ以外の 19種類のアミノ酸は15 Nで標識さ れた大腸菌チォレドキシン蛋白質の HN (CO) スペク トル (図 4) には、 ァラ ニンの一つ後ろのアミノ酸残基のアミド HNの相関シグナルのみが観測される。 以下の 1 9種類についても同様に、 二重標識化したアミノ酸残基の一つ後ろのァ ミノ酸残基の HN相関シグナルだけが観測される。
また、上記 20種類の蛋白質に対して、それぞれ HN (CA)の測定を行うと、 二重標識化したアミノ酸残基および、 二重標識化したアミノ酸残基の一つ後ろの ァミノ酸残基の H N相関シグナルだけが観測される。
さらに、 上記 20種類の蛋白質に対して、 それぞれ H (NCO) CAの測定を 行うと、 二重標識化したアミノ酸残基の一つ後ろのアミノ酸残基のアミド水素原 子と二重標識化したアミノ酸残基の α;位の炭素原子との相関シグナルだけが観測 される。 また、 それぞれ H (N) CAの測定を行うと、 二重標識化したアミノ酸 残基の一つ後ろのアミノ酸残基のアミド水素原子と二重標識化したアミノ酸残基 の α位の炭素原子との相関シグナル、 および、 二重標識化したアミノ酸残基のァ ミノ酸残基のアミド水素原子と二重標識化したアミノ酸残基のひ位の炭素原子と の相関シグナルだけが観測される。
(6) —15 N HSQCの各シグナルアミノ酸残基番号の帰属方法 (1)
最初に、例として、大腸菌チォレドキシンに 4つあるフエ二ルァラニン残基(F 12、 F 27、 F81、 F 102) の1 H— 15N H S Q Cシグナルの帰属につ いて述べる。 まず、 フエ二ルァラニン残基だけを15 N標識化した大腸菌チォレド キシン蛋白質の1 H—15 N HSQCスペク トル (図 5 a) より、 フエ二ルァラ ニン残基由来の 4つのシグナルの位置を決定する。 次に、 4つのフエ二ルァラ二 ン残基の手前にある残基 (S l l、 D26、 L80、 E 101) に注目する (図 1A参照) 。
セリン残基のみを13 C/15N二重標識化し、 その他の 19種類のアミノ酸を1 5Nのみで標識化した大腸菌チォレドキシン蛋白質の HN (CO) スぺクトル(図 5 b) には、 セリンの一つ後ろの残基のアミドの1 H—15 N相関シグナルのみが 観測されるので、 図 5 aと図 5 bにおいて位置が一致するシグナルは、 セリンの —つ後ろにあるフエ二ルァラニンの残基であると確定することができる。 その条 件を満たすフエ二ルァラニン残基は、 大腸菌チォレドキシン蛋白質のアミノ酸配 列においては、 F 12だけであることから(図 1 A)、 この一致したシグナルは、 F 12のものであると決定できる。
同様にして、 フエ -ルァラ二ン残基だけを15 N標識化した大腸菌チォレドキシ ン蛋白質の1 H— 15N HSQCスペクトル (図 6 a) とァスパラギン酸残基の みを13 CZ15N二重標識化し、 その他の 19種類のアミノ酸を15 Nのみで標識 化した大腸菌チォレドキシン蛋白質の HN (CO) スペク トル (図 6 b) におい て、 唯——致するシグナルは、 ァスパラギン酸の後ろにあるフエ二ルァラニンの 残基由来のものであるから (図 1A参照) 、 F 27のものであると決定できる。 さらに、 同様に、 フエ二ルァラニン残基だけを15 N標識化した大腸菌チォレドキ シン蛋白質の1 H—15 N HS QCスペク トル(図 7 a) とロイシン残基のみを1 3 C/15 N二重標識化し、 その他の 19種類のアミノ酸を15 Nのみで標識化した 大腸菌チォレドキシン蛋白質の HN (CO) スペクトル (図 7 b) において、 唯 一つ一致するシグナルは、 ロイシンの後ろにあるフエ二ルァラニンの残基 (図 1 A参照) 、 すなわち、 F 81のものであり、 フエ二ルァラニン残基だけを15 N標
識化した大腸菌チォレドキシン蛋白質の1 H—15 N HSQCスペク トル (図 8 a) とグルタミン酸残基のみを13 CZ15 N二重標識化し、その他の 19種類のァ ミノ酸を15 Nのみで標識化した大腸菌チォレドキシン蛋白質の HN (CO) スぺ タトル (図 8 b) において、 唯一つ一致するシグナルは、 グルタミン酸の後ろに あるフエ二ルァラユンの残基由来のものであるから (図 1A参照) 、 F 102の ものであると決定できる。
他のアミノ酸残基についても、 全く同様の方法にして、 —15 N HSQC スぺクトルにおけるシグナルの位置を決定できる。
以上述べた方法は、 2つのアミノ酸残基の並ぴ方が大腸菌チォレドキシン蛋白 質のアミノ酸配列において、 一回だけ現れるようなアミノ酸残基すべてについて 適用できる。
(7) ^-^N HSQCの各シグナルアミノ酸残基番号の帰属方法 (2) 上記の方法を用いることにより、 大腸菌のチォレドキシン蛋白質の1 H—15 N HSQCスペクトルにおいて、 全体の 75%ほどのシグナルについて、 そのァ ミノ残残基番号を特定することができる。 しかし、 残りのアミノ酸については、 上記の方法だけでは、 アミノ酸残基番号を特定することができない。 その場合の 帰属方法について以下に述べる。
大腸菌チォレドキシン蛋白質の1 H— 15N HSQCスぺクトルのイソ口イシ ン残基の帰属について、 上記実施例 (6) の方法を適用した場合、 以下のような 問題点を生ずる。
イソ口イシン残基だけを15 N標識化した大腸菌チォレドキシン蛋白質の1 H— 15N HSQCスペクトル (図 9 (a) ) と、 グリシン酸残基のみを13 Cノ 15 N二重標識ィ匕し、その他の 19種類のアミノ酸を15 Nのみで標識化した大腸菌チ ォレドキシン蛋白質の HN (CO) スペクトル (図 9 (b) ) を比較すると、 一 致するシグナルが 2つ存在する。 なぜならば、 グリシン残基の一つ後ろにあるィ ソロイシン残基は I 72と 1 75の 2つが存在するからである (図 2 A参照) 。 このような場合、 上記実施例 (6) の方法では、 この 2つのシグナルのどちらが
I 72でどちらが I 75であるかを決定することはできない。 この場合は、 上記 実施例 (6) の方法でまず、 I 72の一つ手前の G 71と G 74の位置を決定す る (図 10 (a) ) 。 次に、 グリシン酸残基のみを13 CZ15N二重標識化し、 そ の他の 19種類のアミノ酸を15 Nのみで標識化した大腸菌チォレドキシン蛋白 質の H (N) CAスペクトルと H (NCO) CAスペクトルを用いる。 すでに決 定した G71の1 H—15 Nシグナルがらアミ ド水素原子の化学シフトが決定でき、 H (N) CAスぺクトル上のシグナルのうち、 アミ ド水素原子の位置が一致する シグナルを決定する (図 10 (b) ) 。 このシグナルは G 71のアミド水素原子 と α炭素原子の化学シフト相関を表すので、 G 71の α炭素原子の化学シフトが 決定できる。 次に、 H (NCO) C Αスペクトルから α炭素原子の化学シフトが 同一のシグナルを決定する (図 10 c) 。 H (NCO) CAは、 L 72のアミド 水素原子の化学シフトと G 71の α炭素原子の化学シフト相関を表すので、 L 7 2のアミド水素原子の化学シフトが決定できる。 そこで、 この L 72のアミ ド水 素原子の化学シフトと一致するイソロイシンの1 Η—15 Νシグナルをイソ口イシ ン残基だけを15 Ν標識化した大腸菌チォレドキシン蛋白質の1 H_15N HSQ Cスペクトルから決定すれば、 それが L 72のシグナルであると決定できる (図 10 d) 。 L 75についても全く同様に帰属ができる。
他のアミノ酸残基についても全く同様の方法を適用することにより、 アミノ酸 の並ぴ方が同じであるシグナルについても一意的にシグナル帰属が可能となる。 この方法を、 上記実施例 (6) の方法と組み合わせることにより、 大腸菌チォレ ドキシン蛋白質の1 H_15N HSQCにおけるシグナルのほぼ全て残基番号を 含めて帰属することができた (図 11) 。
(8) 15N HSQCの各シグナルアミノ酸残基番号の帰属方法 (3) 上記実施例 (6) 及ぴ (7) を用いて1 H—15 N HSQCにおけるすべての シグナルを帰属するためは、一種類のアミノ酸残基だけを15 N標識化した大腸菌 チォレドキシン蛋白質が 19種類 (プロリン残基は HSQCシグナルが観測でき ない) と、 一種類のアミノ酸残基のみを13 C/15 N二重標識化し、 その他の 19
種類のアミノ酸を15 Nのみで標識化した大腸菌チォレドキシン蛋白質が 20種 類必要であった。 しかし、 以下に述べる方法を用いれば、 一種類のアミノ酸残基 だけを15 N標識化した大腸菌チォレドキシン蛋白質が 19種類は不要となる。 フェニルァラ二ン残基を例にして、 フエニルァラ二ン残基だけを 15 N標識化し た大腸菌チォレドキシン蛋白質の1 H—15 N HSQCスペク トル (図 12 c) から得られる情報と同じ情報を、フェ -ルァラ二ン残基のみを 13 C 15 N二重標 識化し、その他の 1 9種類のアミノ酸を15 Nのみで標識化した大腸菌チォレドキ シン蛋白質を用いて得る方法について述べる。 フエ二ルァラニン残基のみを13 C /15 N二重標識化し、その他の 19種類のアミノ酸を15 Nのみで標識化した大腸 菌チォレドキシン蛋白質の HN (CA) スペク トル (図 1 2 a) からは、 フエ二 ルァラニン残基とフエ二ルァラニン残基の一つ後ろにあるアミノ酸残基の iH— 15Nシグナルが得られる。 また同じ蛋白質の HN (CO) スペクトルから (図 1 2 b) は、 フエ二ルァラニン残基の一つ後ろにあるアミノ酸残基の1 H—15 Nシ グナルが得られる。 よって、 この HN (CA) スペク トルのシグナルのうち、 H N (CO) スぺクトルにも存在するシグナルを除去したものはすべて、 フエニル ァラニン残基の 1 H—15 Nシグナルであり、 フエニルァラ二ン残基だけを15 N標 識化した大腸菌チォレドキシン蛋白質の1 H—15N HSQCスぺクトルから得 られるシグナルと全く同じとなる。 同様にして、 あるアミノ酸残基について、 そ のァミノ酸残基だけを 15 N標識化した大腸菌チォレドキシン蛋白質の1 H—15 N
HSQCスぺクトルから得られる情報は、 そのアミノ酸残基のみを13 C/15 N二重標識ィ匕し、その他の 1 9種類のアミノ酸を15 Nのみで標識化した大腸菌チ ォレドキシン蛋白質の HN (CA) スペク トルと HN (CO) スペク トルを比較 することにより容易に得られる。
(9) —15 N HSQCの各シグナルアミノ酸残基番号の帰属方法 (4) 上記実施例 (6) (7) (8) において、 iH— N HSQCスペク トルの シグナルの帰属法について述べたが、 実際に全てのシグナルを帰属する手順は以 下のようになる。
( a )一種類のァミノ酸残基だけを15 N標識化した大腸菌チォレドキシン蛋白質 の 19種類の HSQCスぺクトルあるいは、一種類のアミノ酸残基のみを13 CZ 15 N二重標識化し、その他の 19種類のアミノ酸を15 Nのみで標識化した大腸菌 チォレドキシン蛋白質の HN (CO) 及ぴ HN (CA) スペクトルから、 —1 5N HSQCスペクトルにおける各シグナルが、 どのアミノ酸の種類に属する かを決定する。
(b)—種類のアミノ酸残基のみを13 CZ15N二重標識化し、その他の 1 9種類 のアミノ酸を15 Nのみで標識化した大腸菌チォレドキシン蛋白質の HN (CO) スぺクトルカ ら、 それぞれのシグナルがどの種類アミノ酸の後ろにある残基かを 決定する。
(c) アミノ酸配列表 (表 1のように、 それぞれのアミノ酸の後ろにどの種類の アミノ酸があうかを記したものを用意しておくと分かりやすい) から、 アミノ酸 の並びを利用してシグナルの帰属を行う。
(d)連続するアミノ酸の並び方が同一のものが 2ケ所以上あるものについては、 H (N) CAと H (NCO) CAスペク トルを用いて、 さらに手前の帰属済みの 残基から帰属を決定する。 手前の残基が同様の状況により帰属が不確定である場 合は、 さらに手前の残基から順次帰属決定を行う。
A A19 A22 A29 A39 A46 A56 A67 A87 A88 A93 A105 A108
*D20 123 E30 #P40 *D47 K57 P68 A88 T89 L94 NX06 C一 ter
D D2 D9 D10 D13 D15 D20 D26 043 D47 D61 D10
3 D10 Sll 14 V16 G21 F27 *E44 *E48 Q62 A105
E85 E101
V86 F1Q2
F102
L103
G G21 G33 G51 G65 G71 G74 G84 G92 G97
*A22 #P34 K52 T66 *I72 *I75 E85 *A93 Q98
H H6
L7
123 138 141 145 160 ェ 72 175
*L24 *A39 *L42 *A46 Ό61 R73 #P76
3 K18 K36 K52 57 K69 82 90 96 K100
14 A19 M37 *L53 *L58 Y70 N83 V91 G97 E101
L7 L17 L24 L42 L53 L58 L78 L79 L80 L94 L99 L103 L107
*T8 *K18 V25 *D43 *T54 N59 *L79 *L80 F81 S95 * 100 *D104 A108
Q Q50 Q62 Q98
G51 N63 L99
T T8 T14
*D9 *D15
V V16 V25 V55 V86 V91
*A56 *A87 G92
Y Y49 Y70
Q50 G71
(10) XH-15N HSQCの各シグナルアミノ酸残基番号の帰属方法 (5) 上記実施例 (6) (7) (8) (9) においては、 一種類の残基のみを13 CZ 15 N二重標識化し、その他の 19種類のァミノ酸を15 Nのみで標識化した大腸菌 チォレドキシン蛋白質を用いたが、 必ずしも二重標識化したアミノ酸残基以外の アミノ酸全てを15 Nで標識化する必要はない。 まず、 プロリン残基については、
もともと1 H— 15N HSQCシグナルを与えないので15 Nのみで標識化する必 要がない。 また、 例えば、 トリプトファン残基 (W28、 W31) を13 C/15 N二重標識化する場合においては, 大腸菌チォレドキシン蛋白質について, シス ティン残基の後ろにあるアミノ散は、 ァラニン残基 (A29) とシスティン残基
(C 32) だけであるから, この場合は, トリプトファン残基のみを13 CZ15 N二重標識化し、 ァラニン残基とシスティン残基を15 Nのみで標識化し、 他のァ ミノ酸については非標識のアミノ酸を用いても、 上記実施例と同様の結果が得ら れる。 言い換えれば、 二重標識化したアミノ酸の後ろにあるアミノ酸だけを15 N 標識化すれば良いことになる。
上記実施例 (6) および (8) においては、 HN (CO) および HN (CA) のスぺクトルから得られたシグナルを解析に用いたが、 これらの測定法は、 二重 標識化したアミノ酸に隣接したアミノ酸の1 H— 15 N相関シグナルを観測する方 法である。 し力 し、 二重標識化したアミノ酸に隣接したアミノ酸の1 H—15 N相 関シグナルを同定するためには、 以下のような測定法を用いることができる。 1 H—15 N HSQC測定法において、 同位体フィルタ一法 (Breeze, A. L. , Pro g. NMR Spectroscopy, 36 (2000) 323-372) を用いると、 13Cに隣接した15 Nの シグナルを消去することができる。 このようにして測定した結果を図 13 bに示 す。 図 13 bのように、 フエ二ルァラニンだけを13 CZ15N二重標識化しその他 のアミノ酸は全て15 N標識化した大腸菌チォレドキシン蛋白質において、 この同 位体フィルタ一法を用いると、 フエ二ルァラニン残基に隣接していないすベての ァミノ酸残基の 1 H—15 N相関シグナルを得ることができる。 このシグナルと主 鎖の全てのアミ ド窒素を15 N標識化した大腸菌チォレドキシン蛋白質の1 H—15 N HS QCスペク トル (図 13 a) とを比較し、 図 12 bにおいて消失してい るシグナルが、 同試料の HN (CO) スぺクトルで得られるシグナル(図 13 c) と同一となる。 HN (CA)スぺクトルにおいても同様な方法を用いて、 2位(α 位) が13 C標識化されたアミノ酸に隣接するァミノ酸残基の 1 Η— 15 Ν相関シグ
ナルを同定することができる。 この測定法を用いる場合には、 目的の蛋白質を二 重標識化したアミノ酸以外の全てのアミノ酸を15 N標識化することが望ましい。 産業上の利用可能性
本発明の方法によれば、 3次元 NMR測定法より圧倒的に測定時間の短い 2次 元 NMR翱定法のみを用いることにより、 合計測定時間の短縮あるいは、 積算時 間を増大させることによる感度の上昇をさせることができる。 また、 必要な 2次 元 NMR測定法も、 iH—15 N HSQCの感度の半分以上の高感度を持つ、 H N (CO) 、 HN (CA) 、 H (N) CA、 H (NCO) CAの 4つだけを用い ることにより、 iH— Nシグナルの帰属に必要な全ての情報が得られる。 この ことにより、 — 15N HSQC測定法に必要な蛋白質試料の 1〜 2倍程度の 濃度の蛋白質試料で、 必要な帰属情報が得られる。 また、 本発明の方法は、 20 種類程度の蛋白質試料を用意し、 順次測定を行うので、 試料 1つあたりの測定時 間は従来法の 1Z20以下に短縮される。 よって、 室温以上の温度に数週間も耐 えられないような不安定な蛋白質試料に対しても、 15N HSQCスぺク トルのシグナルの帰属を行うことができる。
本発明の方法は、 単純な 2次元 NMRスぺクトルを解析するだけで1 H— 15N HSQCスぺクトルの全てシグナルの帰属を行うことができる。 発明者が実際 に帰属したところでは、 帰属に要する角军析時間は、 従来法の 1/20以下であつ た。 また、 それほど解析のスキルを有していなくても解析が可能であることも本 発明の特徴である。
本発明により得られた帰属情報によれば、 それぞれのアミノ酸残基の主に蛋白 質の主鎖を構成するさまざまな原子の化学シフト情報が得られるので、 目的蛋白 質の 2次構造を推定することも可能となり、 さらには、 他の測定法と組み合わせ ることで、 3次構造の決定においても使用することが可能である。
さらに本発明の方法は、 目的蛋白質とそのリガンドとの結合部位を特定するの に有利である。 本発明の方法により、 簡便な試料作製と低濃度の試料で、 かつ短
い NMR測定時間が実現されたことにより、 低溶解性で不安定な蛋白質に対して もリガンドの結合部位の同定を含むリガンドスクリーニングが可能となった。 本出願は、 2 0 0 4年 2月 2日付の日本特許出願 (特願 2 0 0 4— 2 5 5 9 2 ) に基づく優先権を主張する出願であり、その内容は本明細書中に参照として取り込 まれる。また、本明細書にて引用した文献の内容も本明細書中に参照として取り込 まれる。