FRETを利用した蛍光指示薬 技術分野
本発明は、 蛍光共鳴エネルギートランスファー (FRET) を利用した分子間 の相互作用を分析するための蛍光指示薬、 並びにその利用に関する。 より詳細に は、 本発明は、 2分子の蛍光蛋白質が標的配列を介して結合した蛍光指示薬、 並 びに該蛍光指示薬を用いた分子間の相互作用を分析する方法に関する。 背景技術
カメレオン (Cameleon) は、 緑色蛍光蛋白質 (GF P) 変異体及ぴカルモジュ リン (C aM) に基づいた C a 2+用の遺伝子でコードされた蛍光指示薬である (Miyawaki A. , 他、 (1997) Nature 388, 882-887;及び Tsien, R. Υ. (1998) Ann. Rev. Biochem. 67, 509-544)。 カメレオンは、 G F Pの短波長変異体、 カルモジ ュリン (C aM)、 グリシルグリシンリンカ一、 ミオシン軽鎖キナーゼの C a M結 合ペプチド(M 1 3 )、及び G F Pの長波長変異体から構成されるキメラ蛋白質で ある。 C a 2 +が C aMに結合することにより、 C a Mと M 1 3との間の分子間相 互作用が開始し、 これによりキメラ蛋白質は、 伸長した立体構造からより小型の 立体構造へと変化し、 短波長変異体 G F Pから長波長変異体 GF Pへの FRET の効率が増大する。 黄色カメレオン (YC) は、 FRETのドナーとァクセプタ 一としてシアン蛍光蛋白質 (CFP) と黄色蛍光蛋白質 (YFP) をそれぞれ有 している。 黄色カメレオン (YC) は、 C a 2+感知ドメイ の組成に基づいて複 数のグループに分類されている。 例えば、 YC 2は野生型の C aMを有し、 C a 2 +に対して高い親和性を示す。 一方、 YC 3及ぴ YC4は、 C aMドメイン C a 2+結合ループに変異が存在するため、 低親和性の指示薬である。 これちの YC は、元の YF Pを EYFP. 1 (Miyawaki, Α·,他、 (1999) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96, 2135-2140) で置換することによって酸性化に対する抵抗が高くなつてい
る。 改変した YCとしては、 YC 2. 1及ぴ YC 3. 1が挙げられる。 更に、 c i t r i n e ...(Griesbeck, 0. , 他、 (2001) J. Biol. Chem. 276, 29188 - 29194) や Ve n u s (Nagai, T. , 他、 (2002) Nat. Biotechnol. 20, 87—90) のような YFPの特に明るい変異体を用いることによって、 より迅速に成熟するように作 られた YCもある。 上記の通り、 YCは主に YF P成分を最適化することにより 改良されてきた。
上述した改良にも拘わらず、 YCは依然としてダイナミックレンジが低いとい う問題がある。 YC 2. 1 2又は YC 3. 1 2などの現在入手可能な最高の変異 体でも、インビトロでの C a 2+結合の際に示される YF PZCFP比の変化はせ ぃぜレ、 1 20%である。
これらの YCは、 シグナルレベルが低いので、 特に細胞内小器官あるいは微小領 域を標的とする場合は、 シグナル /ノイズ比 (S/N比) が悪化する。 これらの ダイナミックレンジは、 YCの感知ドメインと相互作用すると考えられる内因性 の C aM及び C a M結合蛋白質の存在量に応じて、 インビボで減衰することが示 唆されている。 発明の開示 '
本発明は、 蛍光共鳴エネルギートランスファー (FRET) を利用した分子間 相互作用又は分子内構造変化を分析するための新規な蛍光指示薬を提供すること を解決すべき課題とした。 本発明はさらに、 高いダイナミックレンジを示す蛍光 指示薬を提供することを解決すべき課題とした。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討し、 指 薬のダイナミックレ ンジを増加させるためにァクセプターの修飾を試みた。 CF Pと YF Pの蛍光団 間の相対的方向及び距離を C a 2 +に依存して大きく変化させることを目的とし て、 YCで用いるリンカーの長さと配列を最適化しても改善は僅かに過ぎないだ ろうと推測した。 そこで、 ァミノ末端領域とカルボキシル末端領域とを交換し、 元の末端の間を短いスぺーサ一で再結合した円順列変異 GFP (c p CFP) を
用いるという手法を採用した (Baird, G. S. , 他、 (1999) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96, 11241二 11246;及び Topell, S., 他、 (1999) FEBS Lett. 457, 283-289)。 上記の通り、 本発明者らは、 酸性化に耐性を有し、 かつ効率的に成熟する c pY FPを用いすることによって、 2つの発色団の遷移双極分子の相対的方向を変え ることを試みた結果、 優れたダイナミックレンジを示す蛍光指示薬が得られるこ とを見出した。 本発明はこれらの知見に基づいて完成したものである。
即ち、 本発明によれば、 分析物質の標的配列の両端にドナー蛍光蛋白質とァク セプター蛍光蛋白質が結合している構造を有し、 分析物質が該標的配列に結合又 は作用することにより指示薬の立体構造が変化して蛍光共鳴エネルギー転移 (FRET) が生じる蛍光指示薬において、 上記ドナー蛍光蛋白質及び Z又は上記ァ クセプター蛍光蛋白質が、 野生型蛍光蛋白質又はその変異体蛋白質の N末端側の ァミノ酸配列と C末端側のァミノ酸配列を入れ替えることにより得られる円順列 変異蛍光蛋白質であって、 当該円順列変異を施す前の蛍光蛋白質と実質的に同一 の蛍光ピーク波長を有する蛍光蛋白質であることを特徴とする蛍光指示薬が提供 される。
好ましくは、 蛍光蛋白質は、 GFP、 CF P、 YF P、 REP、 BFP又はそ れらの変異体である。 好ましくは、 ドナー蛍光蛋'白質は CFP又はその変異体で あり、 ァクセプター蛋白質が YFP又はその変異体である。
好ましくは、 ドナー蛍光蛋白質及び/又は上記ァクセプター蛍光蛋白質は、 野 生型蛍光蛋白質又はその変異体蛋白質のァミノ酸配列中の j3ターンに位置するァ ミノ酸残基において N末端側のァミノ酸配列と C末端側のァミノ酸配列を入れ替 えることにより得られる、 円順列変異蛍光蛋白質である。 好ましくは、 前記 タ ーンに位置するアミノ酸残基は、 蛍光蛋白質の蛍光のダイナミックレンジが上昇 するような位置のァミノ酸残基である。
好ましくは、 ァクセプター蛍光蛋白質は、 蛍光蛋白質 Venusの円順列変異体で ある。 好ましくは、 Ve n u sの円順列変異体は、 c p 49Ve n u s、 c 1 5 7V e n u s、 c p l 7 3V e n u s、 c r> 1 9 5Ve n u s、 又は c p 22
9 V e n u sである。
好ましくは、 _蛍光指示薬が.さらに標的ぺプチド成分とリンカ一成分を含み、 分 析物質の標的配列が標的べプチド成分を結合するためのぺプチド結合ドメィンを さらに含み、
リンカー成分が分析物質の標的配列と標的べプチド成分とを共有的に結合し、 標的配列と標的ぺプチド成分がァクセプター蛍光分子成分又はドナー蛍光分子成 分の何れかに共有的に結合し、
標的配列に結合した分析物質が標的ぺプチド成分及びべプチド結合ドメィンの 相対的位置又は方向の変化を誘導し、 次いでドナー分子及びァクセプター分子成 分の相対的位置又は方向に変化が生じ、 これにより蛍光共鳴エネルギー転移 (FRET) の効率に変化が生じる蛍光指示薬が提供される。
好ましくは、 標的配列は、 カルモジュリン、 cGMP依存性蛋白質キナーゼ、 ステ ロイドホルモン受容体、 ステロイドホルモン受容体のリガンド結合ドメイン、 蛋 白質キナーゼ< 、イノシトール- 1, 4, 5-トリホスフエ一ト受容体、又はレコベリン であり、 特に好ましくは、 カルモジュリンである。
好ましくは、標的ペプチド成分は、骨格筋ミオシン軽鎖キナーゼ(skMLCKp)、 平 滑筋ミオシン軽鎮キナーゼ(smMLCK)、 カルモジュリンキナーゼ II (CaMKII)、 力 ルデスモン、 カノレスぺノレミン、 ホスホフレクトキナーゼ、 カノレシネゥリン、 ホス ホリラーゼキナーゼ、 Ca2+ATPァーゼ、 59 Kdaホスホジエステラーゼ(PDE)、 60 Kda ホスホジエステラーゼ(PDE)、 二トリックォキシドシンターゼ、 I型アデ二リルシ クラーゼ、 Bordetella pertussis アデ二リルシクラーゼ、 ニューロモジュリン、 スぺク トリン、 ミ リス トイル化ァラニンリ ツチ C キナ ゼ基質(MARCKS)、 MacMARCKS (F52)、 b - Adducin、 ヒートショック蛋白質 HSP90a、 ヒ ト免疫不全ウイ ノレスエンベロープグリコプロテイン 160 (HIV- 1 gpl60)、 ブラッシュボーダーミ オシン重鎖- I (BBMHBI)、 希ミオシン重鎖 (MHC)、 マストパラン、 メリチン、 グルカ ゴン、セクレチン、血管作動性腸ペプチド (VIP)、ガストリン阻害ペプチド (GIP)、 又はカルモジュリン結合べプチド- 2 (Model ぺプチド CBP2)のカルモジュリン結
合ドメインである。
好ましくは.、 リンカー成分は 1から 30ァミノ酸残基.の.ぺプチド成分である。 本発明の蛍光指示薬は、 好ましくは、 さらに局在化配列を含む。 好ましくは、 局在化配列は核局在化配列、 小胞体局在化配列、 ペルォキシソーム局在化配列、 ミ トコンドリァ局在化配列、ゴルジ体局在化配列、又は細胞膜局在化配列である。 特に好ましくは、 配列番号 42、 配列番号 43、 配列番号 44、 配列番号 45 又は配列番号 46の何れかのァミノ酸配列を有する蛍光指示薬が提供される。 本発明の別の側面によれば、 試料中の分析物質を検出又は測定する方法であつ て、
(1) 試料と本発明の蛍光指示薬とを接触させる工程;
(2) ドナー成分を励起させる工程;及ぴ
( 3 ) 試料中の分析物質の濃度や活性に対応した試料中の蛍光共鳴エネルギー転 移の程度を測定する工程;
を含む方法が提供される。
好ましくは、 試料は生細胞であり、 接触工程は蛍光指示薬を細胞中に取り込ま せることを含む。 好ましくは、 細胞へ蛍光指示薬を取り込ませる工程は、 蛍光指 示薬の発現をコードする核酸配列に作動的に連結した発現調節配列を含む発現べ クターを細胞にトランスフエクシヨンすることを含む。
本発明のさらに別の側面によれば、 本発明の蛍光指示薬をコードする核酸、 当 該核酸を含む発現ベクター、 並びに当該核酸又は発現ベクターを有する形質転換 体が提供される。 図面の簡単な説明
図 1は、 YC3. 12及ぴ新規 YC変異体の構造とスペク トル特性を示す。 図 1の Aは、元の N末端(Me t 1 )及ぴ新規 N末端(Th r 49、 G l n l 57、 As p l 73、 Le u l 95、 及ぴ I 1 e 229 ) を有する G F Pの三次元構造 を示す。 図 1の Bは、 YC3. 12 (配列番号 41)、 YC 3. 20 (配列番号 4
2)、 YC 3. 30 (配列番号 43)、 YC 3. 60 (配列番号 44)、 YC 3. 7 0 (配列番号 5)、 及び YC 3. 90 (配列番号 46). pドメイン構造を示す。 XC a Mは Xenopus calmodulinを示す。 E 1 04 Qは、 三番目の C a 2+結合ル ープの位置 1 2における保存された二座グルタミン酸 (E 1 04) からグルタミ ンへの変異を示す。 図 1の Cは、 C a 2 +がゼロ (点線) 及び飽和 (実線) におけ る YC変異体の発光スペクトル (43 5 nmで励起) を示す。 図 1の Dは、 C a 2 +がゼロ及び飽和における YC変異体 (YC 3. 1 2、 YC 3. 20、 YC 3. 30、 YC 3. 60、 YC 3. 70及び¥。 3. 90 )の蛍光異方性を示す。 図 1 の Eは、 pH7. 4における YC 2. 6 0 (三角)、 YC 3. 60 (丸) 及び YC 4. 60 (四角) の C a 2+滴定曲線を示す。 図 1の Fは、 C a 2 +がゼロ及び飽和 における YC 3. 60の pH滴定曲線を示す。
図 2は、 YC 3. 60及ぴ YC 3. 1 2を発現する He L a細胞中における C a 2+動態の比較測定を示す。図 2の A及ぴ Bは、 Y C 3 · 60 (A)及ぴ Y C 3. 1 2 (B) を用いて得た蛍光画像を示す (励起 4 90 nm、発光 5 3 5 nm)。 目 盛棒は 1 0 μπι。 図 2の C及ぴ Dは、 ' 30 μ Mの AT Pで誘導した H e L a細胞 中の YC 3. 6 0 (C) 及ぴ YC 3. 1 2 (D) を用いて報告された C a 2 +の過 渡応答を示す。 上段: Rmax及び Rnin値 (それぞれ黒矢頭及び白矢頭で表示) につ いての発光比 (53 5/48 0 nm) の変化。 下段: CFP及ぴ c p 1 73 V e n u s (C)、 及ぴ CFP及ぴ V e n u s (D) の蛍光強度の変化。 画像取得間隔 は 5秒。
図 3は、 YC 3、 6 0を用いた H e L a細胞中の [C a 2+] c及ぴ [C a 2+] pm の共焦点画像観察を示す。 図 3の Aは、 [C a 2+] cの伝播を示す一連の共焦点疑 似色比率画像を示す。 これらの画像はビデオレートで取得した。 図 3の Bは、 H e L a細胞の実色画像を示す。 上段の細胞には、 伝播速度を測定するため 6つの RO Iを設置した。 目盛棒: 1 0 μπι。 図 3の Cは、 Βで表示した 6つの RO I 中の [C a 2+] cの変化の時間経過を示す。 Rmax及ぴ Rminはそれぞれ黒矢頭及ぴ白 矢頭で表示する。 左側の縦軸は [C a 2+]„を nMで目盛付けしている。 黒い水平
の棒は、 Aにおいて比率画像が示されている間の時間を表示する。 図 3の Dは、 YC 3. 60PBを発現する H e L a細胞の実色画像を示す。 目盛棒: 5 m。 図 3の Eは、 Dにおいて円で表示した周辺領域中の、 [C a 2+] pmのヒスタミンに 誘導された変化を示す。 Rmax及び Rminは、それぞれ黒矢頭及び白矢頭で表示する。 左の縦軸は [C a 2+]pmを nMで目盛付けしている。 図 3の Fは、 糸状足構造体中 の [C a 2+] p mの変化を示す一連の共焦点疑似色比率画像を示す。 発明を実施するための最良の形態
前記の通り、 カメレオン (Cameleon) 及ぴ黄色カメレオン (YC) は、 生体中 の神経回路の集合活動を調べる際に有用であると期待されている。 元の YC及ぴ 改良した YCは、 インビトロ並びに一過的に遺伝子導入した細胞試料中で明確な C a 2 +応答を示すが、 これらのダイナミックレンジは、 インビボではトランスジ エニック動物の神経系で有意に減少する。 特に、 トランスジエニックマウスの脳 では、 信頼性のある C a 2+測定は成功していない。 最近の YC改良体 (YC 3. 1 2) と比較すると、 YC 3. 60は明るさは同等であるが、 ダイナミックレン ジは 5〜 6倍大きレ、。 このように、 YC 3. 60では、 S/N比が大きく向上し、 従来の YCでは不可能であった C a 2 +の画像化実験が可能になった。以下の実施 例でも示す通り、 例えば、 YC 3. 60を He L a細胞の原形質膜に局在化させ ることにより、糸状足構造体膜下における [C a 2+] cの変化を測定することがで きる。
c p GF Pの構造を最初に報告した Baird, G. S.,他は、 ドナー CF Pとして Ty r 145に新たな N末端を有する c p C F Pを使用することにより、 YCの ダイナミックレンジの改良を試みた (Baird, G. S. ,他、 (1999) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96, 11241-11246.)。 しかし、 この c p CFPでは、 C a 2+依存性の発 光比の変化は 1 5%にまで減少した。 本発明者らは、 複数の c p YFPをァクセ プターとして試験することにより、 この手法を改良した。 c p 49Ve n u s、 c p l 5 7Ve n u s s c p l 73Ve n u s N c p l 95Ve n u s及ぴ c p
22 9V e n u sを、 Y F Pの明るい変異体である V e n u sから作製した。 5 種の c p V e _n u s蛋白質は全て効率的に成熟した。 本発.明で作成した上記の c pV e nu s蛋白質は、 発色団合成の酸化反応を大幅に促進する変異である F 4 6 Lを含み、 N—末端が ]3—バレルの表面露出ループ領域に存在しているためで あると考えられる。 実際、 c p GF Pの蛍光の発生速度は、 新たな N末端及び C 末端の位置に依存する (Topell, S., 他、 (1999) FEBS Lett. 457, 283-289) 0 C PFと YFP間の FRETに基づいて開発された蛍光指示薬の数は増大しており
(Miyawaki, A. (2003) Dev. Cell 4, 295-305)、 C F Pと Y F Pの 2種の発色団 の間の相対的距離が変えられている。 このように、 CFPと組み合わせて用いら れる c p Ve n u sは、 各用途に対して最適化することができる。 また、 これを c p CFPと組み合わせて使用すると、 ドナー及ぴァクセプター間の 2つの遷移 双極子の相対的位置の変化を更に増大させることができる。 C a 2 +に対する c p GF P系指示薬は数年前に開発されたものであり (Nakai, J. ,他、 (2001) Nat. Biotechnol. 19, 137-141;及ぴ Nagai, T, 他、 (2001) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 98, 3197-3202)、 c p G F P自体は、 F R E Tと相補的な非常に有用な道具 になると期待される。以下、本発明の実施の形態についてさらに詳細に説明する。 本発明の蛍光指示薬は、 分析物質の標的配列の両端にドナー蛍光蛋白質とァク セプター蛍光蛋白質が結合している構造を有し、 分析物質が該標的配列に結合又 は作用することにより指示薬の立体構造が変化して蛍光共鳴エネルギー転移
(FRET) が生じる蛍光指示薬であって、 上記ドナー蛍光蛋白質及び/又は上記ァ クセプター蛍光蛋白質が、 野生型蛍光蛋白質又はその変異体蛋白質の N末端側の ァミノ酸配列と C末端側のァミノ酸配列を入れ替えることにより得られる円順列 変異蛍光蛋白質であって、 当該円順列変異を施す前の蛍光蛋白質と実質的に同一 の蛍光ピーク波長を有する蛍光蛋白質であることを特徴とするものである。
本発明では、 FRETにおいてドナー蛋白質及びァクセプター蛋白質として作 用する蛋白質をそれぞれ 1種ずつ使用する。 即ち、 本発明では、 2種類の異なる 蛍光波長を有する蛍光蛋白質を使用し、 これらの蛍光蛋白質の間で起きる蛍光共
鳴エネルギートランスファ一により生じる蛍光を測定する。 本発明で用いる蛍光 蛋白質の種類は特に限定されるものではないが、 例えば、 .シアン蛍光蛋白質 (C FP)、 黄色蛍光蛋白質 (YEP)、 緑色蛋白質 (GFP)、 赤色蛍光蛋白質 (RE P)、 青色蛍光蛋白質 (BFP) 又はそれらの変異体などが挙げられる。
本明細書で言う、 シアン蛍光蛋白質、 黄色蛍光蛋白質、 緑色蛋白質、 赤色蛍光 蛋白質、 青色蛍光蛋白質又はそれらの変異体とは、 各々公知の蛍光蛋白質だけで なく、 それらの変異体 (例えば、 上記蛍光蛋白質の蛍光強度を増強した、 ECF P、 EYFP、 EGFP、 ERFP、 EBFPなど) の全てを包含する意味であ る。例えば、緑色蛍光蛋白質の遺伝子は単離され配列も決定されている(Prasher, D. C. ら (1992), "Primary structure of tne Aequorea victoria green fluorescent protein", Gene 111 : 229— 233)。 その他の蛍光蛋白質又はその変異体のアミノ酸 配列も多数報告されており、 例えば、 Roger Y. Tsien, Annu. Rev. Biochem.1998. 67:509-44、 並びにその引用文献に記載されている。 緑色蛍光蛋白質 (GFP)、 黄色蛍光蛋白質 (YFP) またはそれらの変異体としては、 例えば、 才ワンクラ ゲ (例えば、 ェクオレア ·ビクトリア (Aequorea victoria)) 由来のものを使用 できる。
GFP、 YFPとそれらの変異体の一例を以下に示すが、 これらに限定される ものではない。 なお、 F 99 Sという表示は、 99番目のアミノ酸残基が Fから Sに置換していることを示し、 他のアミノ酸置換についても同様の表示に従って 示す。
野生型 GFP ;
F 99 S, Ml 53 Τ, V 163 Aのアミノ酸変異を有する G F P ;
S 65 Tのアミノ酸変異を有する GF P ;
F 64 L, S 65Tのアミノ酸変異を有する GFP ;
S 65 T, S 72A, N149K, M1 53T, 1 167 Tのアミノ酸変異を有 する GF P ;
S 202 F, T 203 Iのアミノ酸変異を有する GF P ;
T 203 I , S 72 A, Y 145 Fのアミノ酸変異を有する G F P ;
S 65 G, S...72 A, T 20.3 Fのアミノ酸変異を有する G F P (YFP) ; S 65G, S 72 A, T 203 Hのアミノ酸変異を有する G F P (YFP) ; S 65 G, V 68 L, Q 69 K, S 72 A, T 203 Yのアミノ酸変異を有する GFP (EYF P-V 68 L, Q 69 K);
S 65 G, S 72 A, T 203 Yのアミノ酸変異を有する G F P (EYF P) ; S 65G, S 72A, K 79 R, T 203 Yのアミノ酸変異を有する G F P (Y FP) ;
本発明で用いる蛍光蛋白質をコードする遺伝子の塩基配列は公知である。 蛍光 蛋白質をコードする遺伝子は市販のものを使用することもできる。 例えば、 クロ ンテック社から市販されている、 EGFPベクター、 EYFPベクター、 ECF pベクター、 EB F Pベクターなどを用いることができる。
本発明では GFP変異体である CFP、 YFP、 RFP又はそれらの変異体を 使用することが好ましく、 例えば、 YFP変異体である Venusを用いることがで きる。 Venus については、 Nagai, T. 他(2002) Nature Biotecnology 20, 87-90 を参照できる。 Venusは、 YFPの 46番目のフエ二ルァラニンをロイシンに置換 することにより得られる蛍光蛋白質であり、 従来の GFPと比較して、 大腸菌内で 30〜100倍、 ほ乳類の細胞内で 3〜100倍の明るさを達成し、通常の装置でも十分 検出可能な蛍光を提供することができる。
本発明で使用できる他の蛍光分子としては、 Vibrio fischeri株 Y- 1由来の黄 色资光蛋白質、 Peridinin-chlorophyll (dinoflagellate Symbiodinium sp.由来 蛋白質)、 Synechococcusなどの海洋シァノバクテリア由来の phycobili蛋白質(例 えば、フィコエリスリン及ぴフィコシァニンなど)、又はフィコエリス口ピリンで 再構築したオート麦由来のオートフィ トクロムなどが挙げられる。 これらの蛍光 蛋白質は Baldwin, T. 0., 他, Biochemistry 29:5509- 5515 (1990), Morris, B. J., 他, Plant Molecular Biology, 24:673-677 (1994), 及び Wilbanks, S. M. , 他, J. Biol. Chem. 268:1226-1235 (1993), 及ぴ Li 他, Biochemistry
34: 7923-7930 (1995)などに記載されている。
本発明で用いることができるドナー蛋白質/ァクセプタ.一蛋白質の組み合わせ としては、 C F P ZY F P、 又は B F PZG F Pなどが挙げられるが、 これらに 限定されるものではない。蛍光蛋白質が融合蛋白質をコードする遺伝子の構築は、 当業者に公知の通常の遺伝子組み換え技術を用いて行うことができる。
本発明においては、 ドナー蛋白質及び Z又はァクセプター蛋白質として、 野生 型蛍光'蛋白質又はその変異体蛋白質の N末端側のァミノ酸配列と C末端側のアミ ノ酸配列を入れ替えることにより得られる円順列変異蛍光蛋白質であって、 当該 円順列変異を施す前の蛍光蛋白質と実質的に同一の蛍光ピーク波長を有する蛍光 蛋白質を使用することを特徴とする。
即ち、 円順列変異蛍光蛋白質は、 N末端側から C末端側に、 以下のアミノ酸配 列を順番に有するものである :
( 1 ) 元の蛍光蛋白質の N末端から n番目のアミノ酸から C末端までのアミノ酸 配列 (nは 2以上の整数を示す);
( 2 ) 2〜2 0個のアミノ酸配列から成るリンカー配列;及ぴ
( 3 ) 元の蛍光蛋白質の N末端の 1番目から n— 1番目のアミノ酸配列: 元の蛋白質に対して、 上記のように N末端側のァミノ酸配列と C末端側のァミ ノ酸配列を入れ替えることにより蛋白質の構造を変化させることを、 円順列変異 (サーキユラ一パーミュテーシヨン) とも称する。 本発明では、 上記した各種蛍 光蛋白質に円順列変異(サーキユラ一パーミュテーシヨン)を施すことによって、 F R E Tにおいて高いダイナミックレンジを有する新規な蛍光指示薬を作製する ことに成功したものである。 ;
リンカ一配列のァミノ酸配列は、 作製される融合蛍光蛋白質がカルシウムィ才 ン指示薬として所望の効果を発揮する限り、 特に限定されないが、 側鎖が比較的 小さいァミノ酸配列を主として含むことが好ましく、 また親水性の側鎖を有する アミノ酸が好ましい。 アミノ酸の個数は通常 2〜 2 0個程度であり、 好ましくは 3〜1 0個程度であり、 特に好ましくは 5〜1 0個程度である。 リンカ一配列の
具体例としては、 Gly - Gly-Ser- Gly - Gly等が挙げられるが、 これらに限定される ものでもない。.
円順列変異 (サーキユラ一パーミュテーシヨン) を施す位置は、 得られる円順 列変異蛍光蛋白質が、 円順列変異を施す前の蛍光蛋白質と実質的に同一の蛍光ピ ーク波長を有する蛍光蛋白質であれば特に限定されないが、 好ましくは、 元のァ ミノ酸配列中の ]3ターンに位置するァミノ酸残基において N末端側のアミノ酸配 列と σ末端側のアミノ酸配列を入れ替えることが好ましい。 さらに、 前記 ター ンに位置するアミノ酸残基は、 円順列変異蛍光蛋白質の蛍光のダイナミックレン ジが、 円順列変異を施す前の蛍光蛋白質のダイナミックレンジより向上するよう な位置のァミノ酸残基であることが特に好ましい。
本発明で用いる蛍光蛋白質の具体例としては、 蛍光蛋白質 Venusの円順列変異 体である、 本明細書の実施例で作製した c p 49Ve nu s、 c p l 57Ve n u s、 c p l 73Ve nu s、 c p l 95Ve nu s、 又は c p 229Ve nu sなどが挙げられる力 これらに限定されるものではない。 c p 49Ve nu s、 c p l 57Ve nu s、 c p l 73Ve nu s、 c p l 95Ve nu s、 又は c p 229Ve nu sではそれぞれ、 蛍光蛋白質 V e n u sのアミノ酸番号 49の Th r 49、 アミノ酸番号 157の G 1 n、 アミノ酸番号 1 73の 1 73、 アミ ノ酸番号 195の L e u、 及ぴアミノ酸番号 229の I 1 eにおいて、 N末端側 のアミノ酸配列と C末端側のアミノ酸配列を入れ替えられている。
また、 本発明の蛍光指示薬の具体例としては、 本明細書の実施例で作製した Y C 3. 20 (配列番号 42)、 YC 3. 30 (配列番号 43)、 YC 3. 60 (配 列番号 44)、 YC3. 70 (配列番号 45)、 及ぴ YC 3. ,90 (配列番号 46) が挙げられる。
本発明の蛍光指示薬の具体的な構成としては、
蛍光指示薬がさらに標的ぺプチド成分とリンカー成分を含み、 分析物質の標的 配列が標的ぺプチド成分を結合するためのぺプチド結合ドメインをさらに含み、 リンカー成分が分析物質の標的配列と標的べプチド成分とを共有的に結合し、
標的配列と標的べプチド成分がァクセプター蛍光分子成分又はドナー蛍光分子成 分の何れかに共有的に結合し、. . ...
標的配列に結合した分析物質が標的ぺプチド成分及ぴぺプチド結合ドメィンの 相対的位置又は方向の変化を誘導し、 次いでドナー分子及ぴァクセプター分子成 分の相対的位置又は方向に変化が生じ、 これにより蛍光共鳴エネルギー転移
(FRET) の効率に変化が生じるような蛍光指示薬を作製することができる。
本発明では、標的配列として C a 2 +によって構造変化を起こすドメインの N末 端と C末端に蛍光分子を結合させたものを作製し、 蛍光指示薬を作製した。 この ような蛍光指示薬を用いることにより、細胞内 C a 2 +濃度の変化をモニターする ことが可能になる。
「共有的に結合」 とは、 共有結合又は 2分子間の他の共有的連結を意味する。 共有的な連結としては、 2分子を連結する二価成分が挙げられる。
「標的配列」 とは、 分析物質と結合できるアミノ酸配列を意味する。 好ましい 標的配列は、 分析物質と結合すると立体構造が変化する。
「標的べプチド」 は標的配列と結合できるぺプチドを意味する。 標的ぺプチド は、 標的配列と結合するぺプチドの部分配列である。
「分析物質」 は、 標的配列に結合する溶液中の分子又はイオンを意味し、 標的 配列の立体構造を変化させるものである。 分析物質は標的配列に可逆的に結合し ても非可逆的に結合してもよい。
蛍光分子成分は標的配列成分のァミノ末端及びカルボキシ末端に共有的に結合 していることが好ましい。 これにより、 ドナー蛍光分子成分及ぴァクセプター蛍 光分子成分は、 分析物質が結合した際に互いに密接に移動できる。 あるいは、 ド ナー及ぴァクセプター成分は、 分析物質の結合の際に互いに離れるように移動し てもよい。 一例としては、 ァクセプター成分は、 標的配列成分に結合している標 的ぺプチド成分に共有的に結合し、 標的べプチド成分はリンカー成分を介して標 的配列成分に共有的に結合している。 リンカ一成分はフレキシブルなもので、 標 的ペプチド成分が標的配列成分に結合することができる。 ドナー成分は、 ドナー
成分の励起スぺクトル内の適当な強さの光によって励起される。 ドナー成分は吸 収したエネルギーを蛍光とレて放出する。 ァクセプター蛍光分子成分が励起状態 のドナー成分を消光できる位置に存在する場合、 蛍光エネルギーはァクセプター 成分に転移されて、 蛍光が放出される。
ドナー及ぴァクセプター蛍光分子成分間の FRETの効率は、 2つの蛍光分子が相 互作用する能力を調節することによって調節することができる。 標的配列成分、 標的ペプチド成分及びリンカ一成分の性質も FRET及び分析物質に対する指示薬 の応答に影響する。 通常、 大きな立体構造変化が標的配列成分に生じることが望 ましい。
標的配列成分は、 分析物質の結合に際して立体構造が変化する蛋白質又はその 一部である。 そのような蛋白質の例としては、カルモジュリン(CaM)、 cGMP -依存 性蛋白質キナーゼ、ステロイドホルモン受容体 (又はそのリガンド結合ドメイン)、 プロテインキナーゼ イノシトーノレ- 1, 4, 5-トリホスフェート受容体、 又はレコ ベリンなどが挙げられる(例えば、 Katzenellenbogen, J. A. & Katzenellenbogen, B. S. Chemistry & Biology 3 : 529-536 (1996) , 及ぴ Ames, J. B. , 他、 Curr. Op in. Struct. Biol. 6 : 432-438 (1996)を参照)。 標的配列成分は好ましくは、 分析物質 以外に標的べプチドにも結合する。
標的ぺプチド成分は以下の表 1に記載の任意のァミノ酸配列またはその一部を 含むことができる。 但し、 標的ペプチドは標的配列成分に結合できなくてはなら ない。 標的ペプチドは、 カルモジュリン結合ドメインの部分配列でもよい。 表 1 に挙げた標的ペプチド成分は標的配列成分 CaM によって認識される (例えば、 Crivici, A. & Ikura, M, Annu. Rev. Biophys. Biomol. Struct. 24: 84-116 (1995) を参照)。標的ぺプチド成分を改変して、分析物質に対する蛍光指示薬の応答を増 強してもよい。 他の標的配列に対する他の標的ぺプチド成分も当業者には既知で ある。
配列—
Sk LCK (M13) KRRWK FIAVSAANR KKISSSGAL 醇墦号 1) smMLC (smMLCKp) ARRKWQKTGHAVRAIGRLSS (配列番号 2)
CaM II AREKLKGAILTTM TRNFS (配列番号 3)
し aidesmon GVE IKSMWEKG VFSS (配列番号 4)
Calspermin ARKKLKAAVKAWASSRLGS (配列番号 5)
PF (Mil) FM NWEVY LLAHIKPPAPKSGSnV (配列番号 6)
Calcineurin ARKEVIRNKIRAIGKMARVFSVLR (配列番号 7)
PhK (PhK5) LRRLIDAYAFRIYGHWVKKGQQW (配列番号 8)
(PhK13) RGKFKVICLTVLASVRIYYQYi?RVKPG (配列番号 9)
Ca2+ -ATPase (C28W) LRRGQILWFRGIMIQTQIKWNAFSSS (配列番号 10)
59- kDa PDE RR HLQRPIFRLRCLVKQLEK (配列番号 11)
60- kDa PDE TEKMWQRLKGILRCLVKQLEK (配列番号 12)
NOS (N0-30) HMIGF KLAEAVKFSAKLMGQ (E列番号 13)
Type I AC (AC - 28) IKPAKRMKFKTVCYLLVQLMHCRKMFKA (配列番号 14) Borderella periussis AC IDLLWKIARAGARSAVGTEA (配列番号 15)
Neuromodulin KAHKAATKIQASFRGHITR KLKGEKK (K列番号 16) Spectrin TASPWKSARLMVHTVATF SIKE (配列番号 17)
MRCKS KKKK RFSFKKSFKLSGFSFKKSKK 膨蹯号 18)
F52 or MacMARKS KKKKKFSFKKPFKLSGLSFKR RK (配列番号 19) β -Adducin KQQKEKTRWLNTP TYLRVNVADEVQR MGS (配列番号 20) HSP90a DQVANSAFQERLR HGLEVI (配列番号 21)
HIV- 1 gpl60 YHRLRDLLL賺 IVELLGRR (配歹 !J番号 22)
BBMHBI QQLATLIQ TYRGWRCRTHYQLM (剛番号 23)
Dilute MHC RAACIRIQKTIRGWLLR RYLCMQ (配列番号 24)
Mastoparan INLKAALAKKIL (配列番号 25)
Melittin GIGAVL VLTTGLPALISWIKEKRQQ (配列番号 26 )
Glucagon HSQGTFTTSDYSKYIDSRRAQDFVQWLMNT (配列番号 27 ) Secretin HSDGTFTSELSRLRDS凰 QRLLQGLV (配列番号 28) VIP HSDAVFTDNYTRLRKQMAVKKYLNSILN (配列番号 29) GIP YADGTFISDYSAIM KIRQQDFVML QQQKS (酉己列番号 30)
Modelぺプチド CBP2 L1KKLLKLLKKLLKLG (配列番号 31) 一
略号の説明
AC, アデ二リ ^シクラ一 ;
BBMHCI, brush- borderミオシン重鎖- 1;
CaMKII, カルモジュリンキナーゼ Π ;
CBP2, カルモジュリン結合ぺプチド- 2 ;
GIP, ガストリン阻害べプチド;
HIV-1 gpl60, ヒ ト免疫不全ウィルスエンベロープ糖蛋白質 160 ;
HSP, ヒートショック蛋白質;
MARCKS, ミリストイル化ァラニンリッチ Cキナーゼ基質;
MHC, ミオシン重鎖;
N0S, 二トリックォキシドシンターゼ;
PDE, ホスホジエステラーゼ;
PFK, ホスホフノレクトキナーゼ
PhK, ホスホリラーゼキナーゼ;
sk-, sraMLCK, 骨格筋及び平滑筋ミオシン軽鎖キナーゼ;
VIP, 血管作動性腸ペプチド リンカー成分の長さは、 FRET及び、分析物質の結合により立体構造変化の速度 及び特異性を最適化するように選択する。 リンカ一成分は、 標的配列成分と標的 ぺプチド成分とが自由に相互作用して分析物質濃度に応答できるような長さと柔 軟さを有することが好ましレ、。 FRET効果を最適化するために、 ドナー及ぴァクセ プタ一蛍光分子成分の平均距離は、 好ましくは約 1 nm から,約 10 nmであり、 よ り好ましくは約 1 nmから約 6 nmであり、 特に好ましくは 1 nmから約 4 nmであ る。 リンカ一分子が短すぎたり堅固すぎると、 ドナー及びァクセプター分子成分 は容易に位置を変えることができない。 リンカ一成分が長すぎると、 標的べプチ ド成分は効率的に標的配列成分に結合できない。 リンカー成分は好ましくはぺプ チド成分である。 好ましいリンカ一成分は、 1〜3 0アミノ酸残基、 好ましくは
1〜 1 5アミノ酸残基のペプチドである。 リンカ一の一例は、 - Gly- Gly- リンカ 一である。
リンカー成分はフレキシブルなスぺーサーアミノ酸配列を含んでもよい。 リン カー成分については、 例えば、 Huston, J. S. , 他, PNAS 85 : 5879-5883 (1988) , Whitlow, M., 他, Protein Engineering 6 : 989-995 (1993) , 及び Newton, D. L., 他, Biochemistry. 35 : 545-553 (1996)などに記載されている。
標的配列は、 分析物質が結合又は作用して指示薬の立体構造を変化させるもの であればよく、 例えば、 酵素によって認識されて切断される配列でもよい。 例え ば、 標的配列としてプロテア一ゼの基質部位を使用することができる。 プロテア ーゼとしてカスペース 3を用いる場合は、 標的配列のアミノ酸配列として DEVD を使用することができる。
蛍光指示薬には局在化配列が含まれていてもよレ、。 局在化配列により、 指示薬 は、 好適な細胞内小器官標的シグナル又は局在化宿主蛋白質と融合することによ り細胞内の特定の部位に運ばれる。 局在化配列又はシグナル配列をコードするポ リヌクレオチドを蛍光指示薬をコードするポリヌクレオチドの 5 ' 末端に連結又 は融合することができ、 これによりシグナルぺプチドは生じる融合ポリヌクレオ チド又はポリぺプチドのァミノ末端に位置することができる。
真核細胞の場合、 シグナルぺプチドは融合ポリぺプチドを小胞体を経由して輸 送する機能を有すると考えられている。 分泌蛋白質は次いでゴルジ体に運ばれ、 分泌小胞及び細胞外空間、 そして好ましくは外部環境に運ばれる。 本発明で使用 できるシグナルぺプチドは、 蛋白質分解酵素認識部位を含むプレブロぺプチドで もよい。 ,
局在化配列 は核局在化配列、 小胞体局在化配列、 ペルォキソ一ム局在化配列、 ミトコンドリァ局在化配列、又は局在化蛋白質でもよい。局在化配列は、例えば、 Protein Targeting, 35早、 Stryer, L. , Biochemistry (4th ed. ) . W. H. Freeman, 1995に記載されている標的配列でもよレ、。局在化配列は、局在化蛋白質でもよレ、。 局在化配列の具体例としては、 核を標的とする配列 (KKKRK) (配列番号 3 2 )、 ミ
トコンドリアを標的とする配列(ァミノ末端が MLRTSSLFTRRVQPSLFRNILRLQST -) (配列番号 3 3一)、 小胞体を標的とする配列 (KDEL (配列番号.3 4 )、 C-末端に) (シ グナル配列は N末端に存在する)、ペルォキシソームを標的とする配列(SKL (配列 番号 3 5 )、 C-末端に)、 細胞膜へのプレニレーシヨン又は挿入を標的とする配列 ( [CaaX] CAAX (配列番号 3 6 ), CC (配列番号 3 7 ), CXC (配列番号 3 8 ), 又は ∞ (配列番号3 9 ) 、C -末端に)、 細胞膜の細胞質側を標的とする配列(SNAP - 25 への融合)、 又はゴルジ体を標的とする配列(furinへの融合)などが挙げられる。 蛍光指示薬は組み換え DNA技術により融合蛋白質として製造できる。 蛍光蛋白 質の組み換え生産は、 蛋白質をコードする核酸の発現により行う。 蛍光蛋白質を コードする核酸は、 当業者に既知の方法で入手できる。 ^えば、 蛋白質をコード する核酸は、 才ワンクラゲ緑色蛍光蛋白質の DNA配列に基づいたプライマーを用 いてォワンクラゲ由来 cDNAの PCRによって単離することができる。蛍光蛋白質の 各種変異体は、 蛍光蛋白質をコードする核酸の部位特異的変異誘発又はランダム 変異誘発によって作製することができる。 ランダム変異誘発は、 O. l mM MnCl を 用いたりヌクレオチド濃度のバランスを崩して PCRを行うことにより行うことが できる
発現べクターの構築及ぴトランスフエクシヨンした細胞での遺伝子の発現は、 当業者に公知の分子クローユング手法に従って行うことができる。 これらの詳細 fe、 Sambrook他, Molecular Cloning -- A Laboratory Manual, し old Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY, (1989) 、 並ぴに Current Protocols in Molecular Biology, F. M. Ausubel 他, eds. , (Current Protocols, a joint venture between Greene Publishing Associates, Inc. and, John Wiley & Sons, Inc. , most recent Supplement) ίこ gii されてレヽる。
ポリべプチドの発現をコードする配列で細胞をトランスフエクシヨンするため に使用する核酸は一般に、 ポリべプチドの発現をコードするヌクレオチド配列に 作動的に連結した発現調節配列を含む発現べクターである。ここで言う"ポリぺプ チドの発現をコードするヌクレオチド配列"とは、 mR A の転写及ぴ翻訳により、
ポリペプチドを産生する配列を言う。 例えば、 イントロンを含む配列もこれに含 まれる。 ここ.で言う"発現調節配列"とは、 それが作動的に.連結している核酸の発 現を調節する核酸配列を言う。 発現調節配列が核酸配列の転写及び翻訳を調節お よび制御する際に、 発現調節配列は核酸配列に作動的に連結している。 発現調節 配列は、 好適なプロモーター、 ェンハンサー、 転写ターミネータ一、 蛋白質コー ド遺伝子の前の開始コドン (即ち、 ATG)、イントロンのスプライシングシグナル、 及ぴ停止コドンなどを含むことができる。
当業者に周知の方法を使用して、蛍光指示薬のコード配列と、適当な転写'翻訳 調節シグナルを含む発現ベクターを構築することができる。 これらの方法として は、 インビト口組み換え D N A技術、 合成技術、 インビボ組み換え ·遺伝組み換 えなど力 S挙げられる (例えば、 Maniatis, 他, Molecular Cloning A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, N. Y. , 1989に記載の技術を参照)。 組 み換え D NAによる宿主細胞の形質転換は当業者に周知の慣用技術によって行う ことができる。 宿主細胞が大腸菌などの原核細胞である場合、 D NAを取り込む ことができるコンビテント細胞は、 対数増殖期後に回収し、 当業者に周知の C a C 1 2法で処理した細胞を用いて作製することができる。 あるいは、 M g C 1 2又 は R b C 1を使用することもできる。 形質転換は、 宿主細胞のプロトプラストを 作成後、 またはエレクトロポレーシヨンにより行うことができる。
宿主細胞が真核細胞である場合、 リン酸カルシウム共沈殿法、 マイクロインジ ェクシヨン、 エレクト口ポレーシヨン、 リボソーム又はウィルスベクターに封入 したプラスミ ドの揷入などの D NAトランスフエクシヨン法を使用することがで きる。 真核細胞は、 本発明の融合ポリペプチドをコードする D N A配列と、 単純 ヘルぺスチミジンキナーゼ遺伝子などの適当な表現型をコードする外来 D N A分 子とを一緒にトランスフエクシヨンすることができる。 サルウィルス 4 0 ( S V 4 0 ) 又はゥシパピローマウィルスなどの真核ウィルスベクターを使用して、 真 核細胞を一過的に感染または形質転換して蛋白質を発現させることもできる
(Eukaryotic Viral Vectors, Cold Spring Harbor Laboratory, Gluzman ed. , 1982
を参照)。 好ましくは、 真核細胞宿主を宿主細胞として使用する。
微生物又は真核細胞で発現させた本発明のポリぺプチ.ド:の単離及ぴ精製方法は 任意の慣用方法を使用することができ、 例えば、 プレパラティブクロマトグラフ ィ一分離及び免疫学的分離 (モノクローナル又はポリク口ーナル抗体又は抗原を 使用することを含むものなど) などが挙げられる。
. 蛍光指示薬をコードする配列を発現させるために、 各種の宿主/発現ベクター 系を使用することができる。 例えば、 蛍光指示薬をコードする配列を含む組み換 えパクテリオファージ DNA、プラスミド DNA、又はコスミド DNA発現べクターで形 質転換した細菌;蛍光指示薬をコードする配列を含む組み換え酵母発現ベクター で形質転換した酵母;蛍光指示薬をコードする配列を含む組み換えウィルス発現 ベクター(例えば、 カリフラワーモザイクウィルス、 CaMV;タバコモザイクウィル ス、 TMV) を感染させた植物細胞、又は蛍光指示薬をコードする配列を含む組み換 えプラスミド発現ベクター (例えば、 Tiプラスミド) で形質転換した植物細胞; 蛍光指示薬をコードする配列を含む組み換えウィルス発現ベクター (例えば、 バ キュロウィルス) を感染させた昆虫細胞系;あるいは、 蛍光指示薬をコードする 配列を含む組み換えウィルス発現ベクター (例えば、 レトロウイルス、 アデノウ ィルス、 ワクシニアウィルス) を感染させた動物細胞系などが挙げられるが、 こ れらに限定されるものではない。
使用する宿主/ベクタ一系に応じて、 適当な転写及び翻訳要素 (例えば、 構成 的又は誘導性プロモーター、 転写ェンハンサ一要素、 転写ターミネータ一など) を発現ベクター中で使用することができる. (例えば、 Bitter, 他, Methods in
Enzymology 153 : 516-544, 1987 を参照)。 例えば、 細菌系にクローニングする場 合、 パクテリオファージ; L、 plac、 ptrp, ptac (ptrp- lacハイブリ ッドプロモー ター)の pLなどの誘導性プロモーターを使用することができる。 哺乳動物細胞系 にクローユングする場合、 哺乳動物細胞のゲノムに由来するプロモーター (例え ば、 メタ口チォネインプロモーター) 又は哺乳動物ウィルスに由来するプロモー タ一 (例えば、 レトロウイルスロングターミナルリピート ;アデノウイルス後期
プロモーター; ワクシニアウィルス 7. 5 Kプロモーターなど) を使用することが できる。 組み換え DNA又は合成技術で作製したプロモーターを使用して蛍光指示 薬をコードする挿入配列を転写させることもできる。
細菌系では、 発現する蛍光指示薬の意図する用途に応じて多数の発現ベクター を有利に選択することができる。 例えば、 大量の蛍光指示薬を産生させる場合に は、 容易に精製される融合蛋白質産物の高量の発現を指令するベクターが望まし レ、。 蛍光指示薬の回収を助ける切断部位を含むように加工したものが好ましい。 酵母では、 構成的又は誘導性のプロモーターを含む多数のベクターを使用する こと力 Sできる。 例え 、 Current Protocols in Molecular Biology, Vol. 2, Ed. Ausubel, 他, Greene Publish. Assoc. & Wiley Interscience, Ch. 13, 1988; Grant, 他. , Expression and Secretion Vectors for Yeast, in Methods in Enzymology, Eds. Wu & Grossman, 31987, Acad. Press, N. Y. , Vol. 153, pp. 516-544, 1987; Glover, DNA Cloning, Vol. II, IRL Press, Wash. , D. C. , Ch. 3, 1986 ;並びに、 Bitter, Heterologous Gene Expression in Yeast, Methods in Enzymology, Eds. Berger & Ki腿 el, Acad. Press, N. Y., Vol. 152, pp. 673 - 684, 1987 ; 及び The Molecular Biology of the Yeast Saccharomyces, Eds. Strathern 他., Cold Spring Harbor Press, Vols. I and II, 1982などを参照することができる。 ADH 又は LEU2などの構成的酵母プ口モーターあるいは GALなどの誘導性プ口モーター を使用することができる(Cloning in Yeast, Ch. 3, R. Rothstein In: DNA Cloning Vol. 11, A Practical Approach, Ed. DM Glover, IRL Press, Wash. , D. C., 1986)。 あるいは、 酵母の染色体への外来 DNAの組み込みを促進するベクターを使用する こともできる。 ,
植物の発現ベクターを使用する場合、 蛍光指示薬をコードする配列の発現は、 プロモーターにより促進することができる。例えば、 CaMVの 35S RNA及び 19S RNA プロモーターなどの ウイノレスプロモーター(Brisson, 他, Nature 310 : 511—514, 1984)、 又は TMV に対するコート蛋白質プロモーター(Takamatsu, 他, EMBO J. 6: 307-311, 1987)を使用できる。あるレ、は、 RUBISC0の小型サブユニット (Coruzzi,
他, 1984, EMBO J. 3 : 1671-1680 ; Broglie, 他, Science 224: 838-843, 1984)な どの植物プ モーター、-又はヒー トショ ックプロモ.一ター (例えば、 大豆 hspl7. 5-E又は hspl7. 3 - B (Gurley, 他, Mol. Cell. Biol. 6: 559-565, 1986)な ど) を使用してもよい。 これらの構築物は、 Tiプラスミド、 Riプラスミ ド、植物 ウィルスベクター、 直接 DNA形質転換、 マイクロインジェクション、 エレク ト口 ポレーションなどによって植物に導入することができる。 これらの技術について "、 例 ば、 Weissbach & Weissbach, Metnods for Plant Molecular Biology, Academic Press, NY, Section VIII, pp. 421-463, 1988 ;及ぴ Grierson & Corey, Plant Molecular Biology, 2d Ed. , Blackie, London, Ch. 7-9, 1988 などに記 載されている。
昆虫系を使用して蛍光指示薬を発現することも可能である。 例えば、 オートグ ラファカリフォルニァ核多角体病ウィルス(AcNPV) をベクターとして使用して外 来遺伝子を発現することができる。 このウィルスは、 Spodoptera frugiperda細 胞で生育する。 蛍光指示薬をコードする配列をこのウィルスの非本質領域 (例え ば、多角体病遺伝子)中にクローユングし、 AcNPVプロモーターの制御下に置く。 蛍光指示薬をコードする配列を正しく挿入した場合、多角体病遺伝子は不活化し、 未閉塞の組み換えウィルスが産生する。 これらめ組み換えウィルスを使用して Spodoptera frugiperda細胞に感染させ、 その細胞内で挿入した遺伝子を発現さ せることができる (例えば、 Smith, 他, J. Viol. 46:584, 1983 ;及ぴ米国特許第 4, 215, 051号を参照)。
真核細胞系、 好ましくは哺轧動物細胞の発現系を使用することにより、 発現し た哺乳動物の蛋白質の適切な翻訳後修飾を行うことが可能になる。 一次転写物の 適切なプロセシング、 グリコシル化、 リン酸化、 及ぴ遺伝子産物の分泌のための 細胞機構を有する真核細胞を、 蛍光指示薬の発現のための宿主細胞として使用す ることが好ましい。そのような宿主細胞株としては、 CH0、 VER0、 BHK、 HeLa、 COS, MDCK、 Jurkat, HEK - 293、 並びに WI38などが挙げられるが、 これらに限定される ものではない。
組み換えウィルス又はウイルス要素を利用して発現を指令する哺乳動物細胞系 を構築するこ ができる。 _例えば、アデノウイルス発現ベクターを使用する場合、 蛍光指示薬をコードする配列をアデノウィルス転写 Z翻訳調節複合体 (例えば、 後期プロモーター及び 3つのリーダー配列など) に連結することができる。 この キメラ遺伝子をィンビトロ又はインビボ組み換えによりアデノウイルスゲノムに 挿入することができる。 ウィルスゲノムの非本質領域 (例えば、 E1又は E3領域) への挿入により感染宿主で生存可能で蛍光指示薬を発現することができる組み換 えウィルスが得られる(例えば、 Logan & Shenk, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81: 3655-3659, 1984を参照)。 あるいは、 ワクシニアウィルス 7. 5 I ( プロモーターを 使用することができる(例えば、 Mackett, 他, Proc. Natl. Acad. Sci. USA , 79: 7415-7419, 1982; Mackett, 他, J. Virol. 49: 857-864, 1984; Panicali, 他, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 79: 4927 - 4931, 1982 を参照)。 染色体外要素とし て複製する能力を有するゥシパピローマウィルスに基づくベクターを使用するこ とも可能である (Sarver, 他, Mol. Cell. Biol. 1: 86, 1981)。 この DNAをマ ウス細胞に導入した直後に、 プラスミドは細胞当たり約 1 0 0〜 2 0 0コピー複 製する。挿入した cDNAの転写には、プラスミドが宿主の染色体に組み込まれるこ とは必要ではなく、 これにより高レベルの発現力生み出される。 これらのベクタ 一は、 neo遺伝子などの選択マーカーをプラスミド中に含めることによって安定 した発現のために使用することができる。 あるいは、 レトロウイルスゲノムを改 変して、 宿主細胞内での蛍光指示薬遺伝子の発現を誘導及び指令することができ るベクターとして使用することができる(Cone & Mulligan, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81 : 6349-6353, 1984)。 高レベルの発現は、 メタロチすニン IIAプロモータ ー及ぴヒートショックプロモーターなどの誘導性プロモーターを使用することに よって達成することができる。
組み換え蛋白質の長期間の高収量の生産のためには、 安定な発現が好ましい。 ウィルスの複製起点を含む発現ベクターを使用する代わりに、 宿主細胞は、 適当 な発現調節要素 (例えば、 プロモーター、 ェンハンサー、 配列、 転写ターミネ一
ター、 ポリアデュレーシヨン部位など) および選択マーカーで調節された蛍光指 示薬 cDNAで形質転換する-ことができる。組み換えプラス.ミ..ド中の選択マ^"カーは 選択に対する耐性を付与し、 細胞が染色体にプラスミ ドを安定に組み込み、 成長 してコロニーを形成し、 これをクローユングして細胞株として樹立することがで きる。 例えば、 外来 DNAの導入後、 組み換え細胞を富裕培地で 1〜 2日間増殖さ せ、 その後に選択培地に切り替えることができる。 多数の選択系を使用すること ができる力 例えば、単純へルぺスチミジンキナーゼ(Wigler, 他, Cell, 11 : 223, 1977)、ヒポキサンチン ·グァニン ·ホスホリボシルトランスフェラーゼ (Szybalska & Szybalski, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 48 : 2026, 1962)、 及ぴアデニンホス ホリポシルトランスフェラーゼ(Lowy, 他, Cell, 22: 817, 1980) 遺伝子をそれ ぞれ、 tk -, hgprt-又は aprt細胞で使用することができる。 また、 代謝拮抗物質 耐性を、メソトレキセ一トに対する耐性を付与する dhfr (Wigler, 他, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77 : 3567, 1980; 0, Hare, 他, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 8: 1527, 1981)、 ミコフエノール酸に対する耐性を付与する gpt (Mulligan & Berg, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 78: 2072, 1981)、 ァミノダルコシド G - 418 に対 する耐性を付与する neo (Colberre-Garapin, 他, J. Mol. Biol. , 150: 1, 1981)、 及ぴハイグロマイシンに対する而す性を付与する hygro (Santerre, 他, Gene, 30: 147, 1984)遺伝子の選択の基礎として使用することができる。
近年、 さらに別の選択遺伝子が報告されている。 例えば、 細胞がトリブトファ ンの代わりにィンドールを使用することを可能にする trPB、細胞がヒスチジンの 代わりにヒスチノールを使用することを可能にする hisD (Hartman & Mulligan, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85 : 8047, 1988)、 並びに、 オル-チンデカルボキ シラーゼインヒビターである 2— (ジフルォロメチル) 一 D L—オル二チンに対 する而 ί性を付与する 0DC (ornithine decarboxylase) (McConlogue L. , In: Current Communications in Molecular Biology, Cold Spring Harbor Laboratory, ed., 1987)などが挙げられる。
本発明の蛍光指示薬ポリぺプチドをコ一ドする D N A配列は、 適当な宿主細胞
に D NA導入することによりインビトロで発現することができる。 即ち、 本発明 の組み換え蛍光蛋白質は、 .大腸菌などの原核細胞、 又は酵母や哺乳動物細胞など の真核細胞において核酸を発現することによって作製することができる。
構築物は、 蛍光指示薬の単離を簡単にするためのタグを含んでいてもよい。 例 えば、 6個のヒスチジン残基からなるポリヒスチジンタグを蛍光蛋白質のァミノ 末端に付加することができる。 ポリヒスチジンタグにより、 ニッケルキレートク 口マトグラフィ一により一回の操作で蛋白質を簡単に単離することが可能になる。 好ましくは、 本発明の蛍光指示薬は、 組み換え DNA技術で作製した融合蛋白質 である。 ここで、 シングルポリペプチドは、 ドナー成分、ぺプチドリンカー成分 及びァクセプター成分を含む。 ドナー成分は、 ポリペプチド中のァクセプター成 分に対してァミノ末端側に位置することができる。 そのような融合蛋白質は通常 以下のような構造を有する: (ァミノ末端) ドナー蛍光蛋白質一ペプチドリンカ 一成分ーァクセプター蛍光蛋白質 (カルボキシ末端)。 あるいは、 ドナー成分は、 融合蛋白質中のァクセプター成分に対してカルボキシ末端に位置してもよい。 そ のような融合蛋白質は通常以下の構造を有する:(ァミノ末端)ァクセプター蛍光 蛋白質一^ ϊプチドリンカ一成分一ドナー蛍光蛋白質 (カルボキシ末端)。 さらに、 ァミノ末端及び Z又はカルボキシ末端に付加的な Tミノ酸配列 (例えば、 ポリヒ スチジンタグなど) を含む融合蛋白質も本発明に包含される。
組み換え核酸によってコードされる蛍光指示薬は、 ドナー蛍光蛋白質、 ァクセ プター蛍光蛋白質及びべプチドリンカ一成分の発現をコードする配列を含む。 各 構成要素は、 融合蛋白質への発現により、 ドナー成分が励起する際にドナー及び ァクセプター成分が FRETを示すように選択される。組み換え核酸は、組み換え核 酸に作動的に連結した発現調節配列を含む発現ベクター内に組み込むことができ る。 発現ベクターは、 適当なプロモーター、 複製配列、 マーカーなどを含むこと によって原核細胞または真核細胞で機能するように構成することができる。
発現ベクターは、 組み換え核酸の発現のために宿主細胞にトランスフエクショ ンすることができる。 宿主細胞は、 蛍光指示薬融合蛋白質を精製するために高レ
ベルの発現のために選択することができる。 大腸菌 (E. coli) はこの目的に有用 である。 ある Λ、は、 宿主細胞は、 その他の原核細胞でも.真核細胞でもよい。 細胞 は培養細胞でもインビボの細胞でもよレ、。 以下の実施例により本発明を具体的に 説明するが、 本発明は実施例によって限定されるものではない。 実施例
A. 方法
(1) 遺伝子の構築
c p V e n u s変異体の 5, 領域の c DNAを、 a πΗ I部位を含有するセ ンスプライマー及び天然の Ν—及ぴ C一末端の間にリンカ一 (GGSGG) をコ ードする配列を含むリバースプライマーを用いて、 PCRにより増幅した。 PC Rにより、 これらの 3,領域の c DNAは、 リンカ一をコードする配列により 5, 末端を、 £c o R I部位を含む配列により 3, 末端を、 PCRにより伸長した。 c p V e n u s変異体の完全な c D N Aは、 J5 ΐί I及ぴ £ c o R I含有プラ イマ一を有する 2種の PC R産物の混合物を用いて増幅した。 制限処理された産 物を、 p RSETB (Invitrogen) の ^ a I c o R I部位にインフレーム でクローユングし、 c p 49Ve n u s、 c p l 5 7V e n u s , c 1 7 3 V e n u s、 c p l 9 5Ve n u s , 及ぴ c p 2 2 9V e n u sを作製した。 次い で、 c p 49V e n u s、 c p l 5 7V e n u s N c p l 7 3Ve n u s、 c p
1 9 5 V e n u s又は c p 229Ve n u sの c DNAの 5 ' 末端を PCRによ り修飾して、 ·5 a c I部位を導入した。 c I認識部位によりコードされるこ の N—末端 EL (G 1 u— L e u) 配列の後ろには、 5¾ 変異体において、 M e t残基、 次いでそれぞれ T h r 49、 G l n l 5 7、 A s p l 7 3、 L e u 1
9 5及び I 1 e 22 9が続いている。 S & c l/E c o R I断片を YC 3. 1 2 /1> 1 3£1:8中の¥ 6 n u sをコードしている遺伝子と置換して、それぞれ Y C
3. 20、 YC 3. 30、 YC 3. 60、 YC 3. 70、 及ぴ YC 3. 90を作 製した。 YC 2. 60及ぴ 04. 60は、 C aMドメインを交換することによ
り、 YC 3. 6 0から作製した。 哺乳動物での発現のため、 YC 3. 1 2及ぴ Y C 3. 60のぶ DNAを p cJDNA3 (Invitrogen) にサ.ブクローニングした。 YC 3. 60を原形質膜下に局在させるため、 K i—R a sの CAAXボックス を、 リンカ一配列 (GTGGSGGGTGGSGGGT) (配列番号 40) を介し て YC 3. 60のカルボキシル末端に融合させた。
(2) 蛋白質発現、 インビトロ分光法、 。&2+及ぴ!)11滴定
N—末端にポリヒスチジンタグを持つ組み換え YC蛋白質を、 既報の通り
(Miyawaki A., 他、 (1997) Nature 388, 882-887)、 室 Hで Escherichia coli [JM109(DE3)]に発現させ、 精製し、 分光学的に同定した。' BECON(Takara)を 用いて、 440DF20励起フィルター及ぴ 535DF25発光フィルターを使用して、 定常 状態の蛍光分極を測定した。 C a 2+滴定は、 0,09ビス(2-アミノエチル)エチレン グリコール- N, N, N9, N9 四酢酸 (EGTA)、 N- (2-ヒ ドロキシェチル)エチレンジ ァミン- N, N9, N9三酢酸 (EDTA— OH) 又はユトリロ三酢酸 (NTA) を用い て調製した C a 2 +フリー及ぴ C a 2+飽和の緩衝液の相互希釈により実施した。 p H滴定は、 既報の通り (Nagai, T, 他、 (2001) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 98, 3197-3202)、 pH5. 8〜8. 4で調製した一連'の緩衝液を用いて行った。
( 3 ) 細胞培養及ぴトランスフエクシヨン
He L a細胞は、 1 0 %の熱不活化ゥシ胎児血清を含有する Dulbecco の改変 Eagle培地で増殖させた。 細胞に、 Superfect (QIAGEN)を用いて Y C 3. 6 0又は YC 3. 1 2をコードする発現ベクターをトランスフエクシヨンした。
(4) 画像化
トランスフエクシヨン後 2〜4日間、 Ha n kの平衡塩溶液緩衝液 (GIBC0)中の He L a細胞を画像化した。 UApo40x, 1.35NA油浸対物レンズを用いた I X— 7 0倒立顕微鏡(ォリンパス)上で、 広視野蛍光観察を行った。 YCによる二重発光
画像化は、 440DF 20励起フィルター、 455DR LPダイクロイツクミラ 一及ぴ、 2個の発光フィルター (CFPに対して 48 OD..F 30、 YFPに対し て 535DF 25) を、 フィルター交換装置(Lambda 10-2, Sutter instruments) を用いて交互に使用して行なった。 干渉フィルタ一は Omega Opticalから入手し た。 YCからの蛍光発光を、 冷却 CCDカメラ(Cool SNAP fx, Roper Scientific) を用いて画像化した。画像の取得及ぴ解析は Metamorph/Metafluor5.0ソフトウェ ァ(Universal Imaging)を用いて行なった。共焦点 F R E Tビデオ画像は、 PlanApo 60x, 1.4NA油浸対物レンズを備えた IX- 71 (ォリンパス)、 回転円盤型共焦点装置 (CSU21, 横河)、 ダイオードポンプ固体レーザー(430nm、 日立)、 及ぴ 3 CCD力 ラー力メラ(0RCA - 3CCD、浜松ホトニタス)を用いて取得した。画像の取得と解析は Aquacosmos 2.5 ソフトウェア(浜松ホトニクス)を用いて行なった。
B . 糸 pt果
(1) YC3. 12及び新規 YC変異体の構造とスペク トル特性 (図 1) 野生型の N末端及び C末端を結合するための GGSGGぺプタぺプチドリンカ 一を用いて、 Ve n u sに対して円順列変異を行なった。 新末端は、 β—バレル の表面に露出したループ領域に導入した。 c p 49Ve nu s、 c 157 Ve nu s、 c p l.73Ve nu s c p l 95Ve nu s、 及ぴ c p 229Ve n u sは、 それぞれ T h r 49、 G l n l 57、 As p l 73、 L e u 1 95及ぴ I 1 e 229の新たな N末端を有する。細菌及び哺乳類培養細胞で発現した場合、 これらの蛋白質は、 効率的に成熟し、 酸性化に対する耐性は親蛋白質 Ve nu s と同程度であった。 Me t l、 Th r 49、 G l n l 53、 As p l 73、 L e u 195及ぴ I 1 e 229は —バレルの異なる部位に存在するので、 Ve nu sに加えてこれらの c Ve n u s蛋白質を使用することにより、 YC複合体中 で YFPの相対的な空間方向に顕著な変化をもたらすことができる。 特に、 Th r 49及ぴ A s p 1 73は、 他の残基から jS—バレルの他端に移動している (図 1A)。
親 YCとしては、単相性の C a 2+感度のために、 YC 3. 1 2 (Nagai, T. , 他、 (2002) Nat. Biotechnol. 20, .87-90) を初めに使用した。 ..これは、 C a Mの三番 目の C a 2+結合部位中に保存されたグルタミン酸 (E 1 04) の変異を有し、 Y C 3グループに属する。 YC 3. 1 2中の Ve n u sを、 c p 4 9Ve n u s、 c p l 5 7Ve n u s、 c p 1 73V e n u s N c p l 9 5 Ve n u s及び c p 22 9 Ve n u sで置換して、 YC 3. 20、 YC 3. 30、 YC 3. 60、 Y C 3. 70及び¥〇3. 90を作製した (図 1 B)。 これらの新規 YCは全て、 Y C 3. 1 2と同様に、 細菌中で効率的に発現し、 フォールデイングする。 次に、 インビトロ実験でこれらの C a 2+感度を試験した。意外にも、 YC 3. 6 0では、 C a 2 +が 0と飽和濃度の間で CFPに対する YF Pの放射比が数倍増加し、 YC 3. 30、 YC 3. 70及ぴ¥03. 90では 3. 1 2と同様のダイナミツ クレンジを示した。 YC 3. 20は C a 2 +に僅かな応答のみを示した(図 1 C)。 V e n u sの代わりに c p l 7 3Ve n u sに置換すると、 一般的には CFPか らの FRETに好適であつたが、 この効果は、 複合体の C a 2+欠乏型 (Rmin: 0. 8 7 (YC 3. 1 2) 対 1. 4 (YC 3. 60)) の場合よりも複合体の C a 2+飽和型 (Rmax : 1. 8 (YC 3. 1 2) 対 9. 3 (YC 3. 6 0)) の場合の 方が顕著であった(表 2A)。 CFPと YFPの発 fe団の間の相対角度を試験する ために、 CF Pの 440 nmにおける励起と、 Y F Pの 5 3 5 n mにおける発光 により、 定常状態の偏光度 (異方性) を測定した。 C a 2+依存性の異方性の減少 は、 CFPに対する YF Pの発光比の増加と相闋していた (図 1 D)。
YC 3. 60の発光比 (5 3 5/480) は、 見掛けの解離定数 ( ' d) が 0. 25 M、 H i 1 1定数 (n) が 1. 7と共に単相性の C a 2+依存性を示し た (図 1 E、 丸)。 YC 3. 6 0の C a 2+親和性を変化させるために、 変異型 C a Mを野生型 C a M又は一番目の C a 2+結合ループに変異を含有する C a M (E 3 1 Q) の何れかで置換した (MiyawakiA., 他、 (1997) Nature 882- 887)。 得られた YCは、 YC 2及ぴ YC4グループに属し、 それぞれ YC 2. 6 0及び YC 4. 60と称する。 YC 2. 6 0はほぼ単相性の応答を示した (K, d, 4
0 nM; n, 2. 4)。 0. 2〜0. 3 μΜにおいて、 滴定曲線に小さな窪みがあ り (図 1 Ε、 三角)、 元の— C„a.M— Ml 3ハイブリッド蛋白質の二相性の C a 2 + 感度が連想させる (MiyawakiA., 他、 (1997) Nature «^^, 882-887;及ぴ Porumb, T.,他、 (1994) Protein Eng. 7, 109-115)。 既報の通り (MiyawakiA., 他、 (1997) Nature 388, 882— 887;及ぴ Porumb, Τ·,他、 (1994) Protein Eng. 7、 109 - 115)、 YC 4. 60中の E 3 1 Qは、 明白な二相性の応答(K, d, 5 8 nM; n, 1. 7 ; K' d, 14. 4 Μ ; n, 0. 8 7) と共に著しく低い C a 2+親和性を示 した (図 1 E、 四角)。 YC 3. 6 0で達成された高いダイナミックレンジ (5 7 0%) は YC 2. 60で維持されたが、 YC 4. 60 (ダイナミックレンジ、 3 60%) においては若干減衰した。 YC4. 60の高親禾 PI性成分及び低親和性成 分は、 応答の 4 1%及び 5 9%に寄与していた。 c pVe n u s蛋白質は、 EY FP-V68 L/Q 6 9K (EYFP. 1) 又は V e n u sと同様の酸感度 (p Ka = 6. 0) を示したので、 YC 3. 60は、 YC 3, 1及び YC 3. 1 2と 同じ pH耐性であることが期待された。 図 1 Fの pH滴定曲線は、 生理的な pH 範囲 (6. 5〜8. 2) において C a 2 +の存在下及び非存在下において YFP/ CF P比が有意に変化しないことを示している。し力 し、 YC 3. 1及び YC 3. 1 2と比較すると、 YC 3. 6 0は pH変化によってノイズを圧倒する大きな C a 2+依存性応答を示し、 SZN比が著しく向上する。 YCの変異体の特性を表 2 A及ぴ 2 Bに示す。 表 2の Aは、 従来の YC変異体及ぴ新規の YC変異体の C a 2+応答を示す。表 2の Bは、 YC 3. 60及ぴその誘導体の対 C a 2+親和性を示 す。
表 2
Table 2 A
dynamic anisotropy
rfmin range
-Ca2+ +Ca2+
YC3.12 0.9 18 100 0.23 0.17
YC3.20 1.3 1,4 10 0.C 0.10
YC3.30 1.1 2.6 140 0.16 0.07
14 9,3 560 0.12 -0,05
2.4 100 0.15 0,09
YC390 10 1.7 70 0.17 0.10
(fiM) fraction《%) Hill coef
YC2.6Q 40 2.4 vc eo 250 17
60 40' 17
YC 60
14000 60 0J
(2) YC 3. 60及ぴ YC 3. 12を発現している He L a細胞中の C a 2+動 態の比較測定 (図 2)
YC3. 12よりも YC 3. 60が優位であることは、 He L a細胞の細胞質 内の遊離 C a 2 +の濃度 ([C a 2+]cs) を観察した実験において、 明瞭に実証さ れた。 YC3. 60又は YC3. 12をコードする同量の c DNAをトランスフ ェクトした He La細胞は、 細胞質内区画において明るさの等しい蛍光シグナル を産生した (それぞれ図 2 A及び 2 B)。 図 2 C及ぴ 2Dは、 それぞれ YC3. 6 0及び YC 3. 12を発現している He L a細胞由来の空間平均 Y F PZC F P
比の時間経過を示す。 YC 3. 6 0は、 YC 3. 1 2よりも、 超極大量の AT P ( 3 0 μ M)に対する応答が非常に大きく、 Rminに対する Rmaxの比率はほぼ 6 倍大きかった。 この比較は、 2種の YC間での C a 2+親和性の差異も示している (YC 3. 6 0では K' d = 0. 2 5 AiMであるのに対し、 YC 3. 1 2では1:, d = 1. 2 5 μΜ)0 YC 3. 6 0の Rmax値及ぴ Rmin値は共に、 YC 3. 1 2 では対応する値において細胞間でのバラつきが見られるのに対して、 図 3 Aに示 した 3種の細胞及ぴ H e L a細胞においては、 同じ顕微鏡システムで実施した 4 回の他の実験において変化しなかった。 (Rmax, 8. 0 6 ± 0. 1 6, n= 1 2 ; Rmin, 1. 3 7± 0. 1 0, n= 1 2)。
(3) YC 3. 6 0を用いた H e L a細胞中の [C a 2+] cおよび [C a 2+] p mの 共焦点画像化
YC 3. 6 0の大きなダイナミックレンジと明るさは、 [C a 2+] c画像化の時 間的及び空間的な両方の解像度の実質的な改良を可能にする。 YF Pと C F Pの 画像を迅速かつ同時に得るために、 3個の CCDチップ(RGB:赤、緑及び青) 及ぴプリズムで構成されるカラーカメラを用いた。 画像化のために、 YF Pおよ ぴ CF P画像は、 それぞれ G及び Bチップで捕捉'した。 また、 z軸に沿う空間解 像度を改良するために、 カメラの前に回転ディスクユニットを置いた。 YC 3. 6 0を発現する H e L a細胞の共焦点の実色画像を図 3 Bに示す。 蛍光は細胞質 内区画に均一に分布したが、 ミトコンドリア並びに核からは除外されていた。 ビ デォ速度で得た一連の疑似色の比率画像 (図 3A) は、 ヒスタミンによる刺激後 に、 [C a 2+]cの増加が個々の細胞内に出現して増加してレ、く様子を示す。 増殖 速度は、 一個の細胞内の 6列に並んだ関心領域 (RO I ) の [C a 2+] cの時間経 過から 3 Ο μπι/ sであると計算された (図 3 B及び 3 C)。
YC 3. 6 0の利点を実証するために、 K i一 R a sの膜アンカー配列を指示 薬の C一末端に融合させすることにより、 YC 3. 6 0を原形質膜へターゲッテ イングさせた (YC 3. 6 0。„)。 同様の膜ターゲッティング手法を用いた場合、
従来の YCでは原形質膜下の C a 2+動態を観察できなかった。 YC 3. 6 Opm の蛍光は周辺搆造及び糸状足構造まで分布していた(図 3 D)。原形質膜下の遊離 Ca 2+濃度 (〔Ca2+]pm) を定量的に測定した (図 3E)。 ヒスタミンの適用前の [C a 2+]pnは [C a 2+]cの基礎量より僅かに高かった。 これは、 顕微鏡では見え ない環境中に高 [C a 2+]のマイクロドメインが存在することを示唆している可 能性がある (Marsault, R.,他、 (1997) EMBO J. 16, 1575 - 1581)。 [C a 2+]pmに おける伺様の変化が糸状足構造体においても観察された (図 3 F)。 産業上の利用可能性
本発明の蛍光指示薬においては、 円順列突然変異を施した蛍光蛋白質を用いる ことにより、 エネルギー供与体とエネルギー受容体との相対的位置関係について 多様化させることができるようになった。その結果、様々な蛍光指示薬において、 ダイナミックレンジを増大することが可能になった。 さらに本発明の蛍光指示薬 は、 細胞又は生体への遺伝子導入により in situで作製することができるため、 大量の可溶性組み換え蛋白質を発現及び精製し、 それをインビトロで精製及ぴ標 識し、 細胞にマイクロインジェクションで戻す必要がない。 また、 本発明の蛍光 指示薬は、 細胞構造を標的とすることができる。 '