明 細 書
レポータージーンアツセィ、該アツセィ用キット、及び培養培地
技術分野
[0001] 本発明は、内分泌撹乱物質(いわゆる環境ホルモン)が生物体内で引き起こす遺 伝子発現のメカニズムを利用した、試料中の内分泌撹乱物質の含有量を簡易に測 定するレポータージーンアツセィ、該レポータージーンアツセィ用のキット、及び該レ ポータージーンアツセィに適した培養培地に関する。
背景技術
[0002] 環境中のダイォキシン類(ポリクロロジベンゾパラジオキシン、及びポリクロロジベン ゾフラン)や、ダイォキシン関連物質であるコブラナーポリ塩化ビフエ二ル(以下、コプ ラナ一 PCBという。)は、生体内において、図 1に示すように作用すると考えられてい る。
[0003] 詳細には、ダイォキシン類ゃコブラナー PCBは、生体内で細胞内に取り込まれた 後は、先ず芳香族炭化水素レセプター(以下、 AhRという。)と結合して AhR複合体 を形成する。次いで、この AhR複合体に AhR核運搬プロテイン(以下、 Arntという。 ) が結合して AhR複合体一 Arntを形成し、 AhR複合体の核内への移動を促す。そし て、核内に移動した AhR複合体一 Arntは、核内の DNAにおいて Xenobiotic— Responsive Element (以下、 XREとレ、う。 )と呼ばれる特定配列に結合し、 XREの下 流に存在する CYP1A1遺伝子を含む幾つかの遺伝子の発現を促進、若しくは抑制 する。
[0004] すなわち、ダイォキシン類ゃコブラナー PCBは、 CYP1A1タンパク質を含む幾つ 力、のタンパク質を、本来ホルモンで制御される量より多く合成し、また、それ以外の幾 つかのタンパク質の合成を阻害するのである。
[0005] 近年、力かるダイォキシン類ゃコブラナー PCBの遺伝子発現メカニズムを利用した 、試料中のダイォキシン類ゃコブラナー PCBの含有量の測定方法が種々開発され ている。その一つに、ホタルや発光細菌等における生物発光に関与する酵素 (ルシ フェラーゼ)のアミノ酸配列をコードするルシフェラーゼ遺伝子をレポーター遺伝子と
して用いた、レポータージーンアツセィがある。
[0006] 力かるレポータージーンアツセィは、図 2に従って説明すれば、 XREの下流にあつ て、 AhRを介して活性が制御される遺伝子の一部を、ルシフェラーゼ遺伝子で組み 換えた組み換え細胞を用いて行うものであり、力、かる組み換え細胞をダイォキシン類 ゃコブラナー PCBを含む培地で培養することにより、上記と同様のメカニズムで CYP 1A1遺伝子やその他の遺伝子と伴に、ルシフヱラーゼ遺伝子をも活性化しょうとする ものである。そして、ルシフェラーゼ遺伝子の発現によって産生されたルシフェラーゼ の発光量を測定して、試料中のダイォキシン類ゃコブラナー PCBの含有量を定量す るのである。
[0007] かかる測定方法は、測定可能な濃度範囲が高分解能ガスクロマトグラフ質量分析 計 (HRGCMS)に比べて遜色なぐ分析に要する時間も短くて済む等、多くの利点 を有するものであった。
[0008] し力しながら、力かる方法で試料中のダイォキシン類ゃコブラナー PCBの含有量を 求めるには、ルシフェラーゼの発光量、すなわち検出感度が低いと測定値に大きく誤 差が生じるおそれがあった。したがって、精度の高い測定を期すためには、検出感度 をさらに上げることが求められていた。
[0009] ここで、 DIOXIN2002において、上記測定方法の一態様である CALUX (CALU Xは、ゼノバイオテック デテクシヨン システムズ インターナショナノレ インコーポレ 一テッドの商標である。) Assayを用いて血中のダイォキシン類の含有量を測定した 場合には、血中に存在する、副腎皮質ホルモンの一つであるコルチコイドが測定結 果に悪影響を及ぼすこと、及び、かかる要因のため、測定精度を上げるには、血中か らコルチコイドを厳格に取り除く必要があることが発表されている(例えば、非特許文 献 1参照)。
非特許文献 1 :アイ.ウィンダル(LWindal)、外 7名、「オルガノハロゲン コンパウンド( ORGANOHALOGEN COMPOUNDS)」、 58卷 (2002)、 p.389-392
[0010] これに対して、本発明者らは、このコルチコイドを取り除くのではなぐ逆に積極的に 用いることによって、レポータージーンアツセィにおける検出感度を上げ得るのでは ないかと考えた。そして、鋭意研究を重ねた結果、コルチゾール及びその類縁体の
使用が、レポータージーンアツセィの高感度化に有用であることを見出し、本発明に 至ったのである。
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0011] 本発明の目的は、レポータージーンアツセィにおいて、その検出感度の優れた新 規なレポータージーンアツセィ、該レポータージーンアツセィのための測定キット、及 び該レポータージーンアツセィに好適に用い得る培地を提供することにある。
課題を解決するための手段
[0012] 本発明のレポータージーンアツセィの要旨とするところは、基礎培地と、糖質コルチ コイドと、被測定試料力 抽出される芳香族炭化水素レセプター結合物質とを混合し て、細胞培養培地とする工程と、芳香族炭化水素レセプターを介して活性が制御さ れる遺伝子の全部又は一部をレポーター遺伝子に組み換えた組み換え細胞を、前 記細胞培養培地で培養する工程と、を含んで構成され、前記組み換え細胞から産生 されるレポータータンパクの活性から、前記被測定試料中の芳香族炭化水素レセプ ター結合物質の含有量を測定することにある。
[0013] かかる構成により、組み換え細胞中のレポーター遺伝子の発現が活性化されること となる。ここで、かかる作用は、糖質コルチコイドが芳香族炭化水素レセプター結合物 質と共存することにより AhRや Amtの量を増加させることによると考えられる。
[0014] また、本発明のレポータージーンアツセィの要旨とするところは、前記細胞培養培 地とする工程力 さらにプロテアソーム抑制物質を混合してなされることにある。
[0015] かかる構成により、 AhRを分解する酵素であるプロテアソームの働きが抑制される ため、 AhR量が減少することが防がれて、レポーター遺伝子の発現がさらに活性化 されることとなる。
[0016] また、本発明のレポータージーンアツセィの要旨とするところは、前記細胞培養培 地とする工程力 S、さらにコレステロール酸化生成物を混合してなされることにある。
[0017] かかる構成により、レポーター遺伝子の発現がさらに活性化されることとなる。
[0018] また、前記糖質コルチコイドがコルチゾールでありうる。
[0019] また、前記基礎培地を、 RPMI1640培地とゥシ胎児血清とペニシリンとストレプトマ
イシンとを混合して調製し、前記組み換え細胞を HepalclC7から作製しうる。
[0020] また、前記レポーター遺伝子がルシフェラーゼ遺伝子でありうる。
[0021] かかる構成により、組み換え細胞中のレポーター遺伝子の発現がより効果的に活 性化されることとなる。
[0022] また、本発明のレポータージーンアツセィ用キットの要旨とするところは、芳香族炭 化水素レセプターを介して活性が制御される遺伝子の全部又は一部をレポーター遺 伝子に組み換えた組み換え細胞と、前記組み換え細胞の培養に用いられる培地を 調製するための培地セットとを備えるレポータージーンアツセィ用キットであって、前 記培地セットが糖質コルチコイドを備えることにある。
[0023] ここで、前記培地セットがプロテアソーム抑制物質を備えうる。
[0024] また、前記培地セットがコレステロール酸化生成物を備えうる。
[0025] また、前記糖質コルチコイドがコルチゾールでありうる。
[0026] また、前記培地セットが、 RPMI1640培地と、ゥシ胎児血清と、ペニシリンと、ストレ プトマイシンとを備えうる。
[0027] また、前記レポーター遺伝子がルシフェラーゼ遺伝子でありうる。
[0028] また、前記組み換え細胞が、マウス肝がん細胞 H1L6.1でありうる。
[0029] なお、力かるレポータージーンアツセィ用キットから生じる作用は、前記レポーター ジーンアツセィにつレ、ての記載と同様であり、その詳しレ、説明は省略する。
[0030] また、本発明の培養培地の要旨とするところは、基礎培地と糖質コルチコイドとを混 合してなることにある。
[0031] さらにプロテアソーム抑制物質を混合してなる。
[0032] さらにコレステロール酸化生成物を混合してなる。
[0033] また、前記糖質コルチコイドがコルチゾールでありうる。
[0034] また、前記基礎培地が、 RPMI1640培地とゥシ胎児血清とペニシリンとストレプトマ イシンとを混合して構成されうる。
[0035] かかる構成により、本発明の培養培地は、レポータージーンアツセィにおける組み 換え細胞の培養に好適に用い得ることとなる。
発明の効果
[0036] 本発明において、レポーター遺伝子を有してなる組み換え細胞を、糖質コルチコィ ド(及び、プロテアソーム抑制物質及び/又はコレステロール酸化生成物)を含む細 胞培養培地で培養することにより、レポータータンパクの産生能、すなわち検出感度 を上げることが可能となったため、試料中に含まれる内分泌撹乱物質の定量限界を 下げること力 Sできる。また、複数の試料間における内分泌撹乱物質含有量の僅かな 差をも検出すること力 Sできる。
[0037] 本願発明は、 CALUX Assayにおいて特に好ましく用いることができ、その結果、 試料中のダイォキシン類ゃコブラナー PCB含有量の簡易測定における CALUX A ssayの信頼性をより高めることができる。
発明を実施するための最良の形態
[0038] 本発明にかかるレポータージーンアツセィ、該レポータージーンアツセィのための 測定キット、該レポータージーンアツセィに好ましく用い得る培地の態様を、以下に詳 しく説明する。
[0039] 本発明に力かるレポータージーンアツセィ用の測定キットは、レポーター遺伝子とし てルシフェラーゼ遺伝子を有するマウス肝がん細胞 H1L6.1と、かかる細胞を培養す るための 96穴プレートと、 RPMI1640培地とゥシ胎児血清とペニシリン Zストレプトマ イシン混合溶液(体積比 1: 1)と糖質コルチコイドとからなる培地セットと、を備えて構 成される。
[0040] 力、かる測定キットを用いたレポータージーンアツセィは、予め被測定試料中力もダイ ォキシン類ゃコブラナー PCBを単離して、ジメチルスルホキシド(以下、 DMSOとレヽぅ 。)中に溶解 (濃縮)しておく以外に、例えば、以下の工程を経て行う。
[0041] すなわち、先ず、培地セットの RPMI1640培地とゥシ胎児血清とペニシリン Zストレ プトマイシン混合溶液とから、 RPMI1640培地を 89容量部、ゥシ胎児血清を 9容量 部、ペニシリン Zストレプトマイシン混合溶液を 2容量部混合して基礎培地を調製し、 かかる基礎培地を用いて、マウス肝がん細胞 H1L6.1を 96穴プレート上で 14一 24 時間培養する。培養後、プレートから基礎培地を取り除く。
[0042] 次に、培地除去後のプレート上のマウス肝がん細胞 H1L6.1に、上記と同様の態様 で調製した基礎培地と、所定量の糖質コルチコイドと、前述のダイォキシン類ゃコプ
ラナ一 PCBの DMSO溶液と、を混合して調製される細胞培養培地を添加する。
[0043] そして、このプレートを 37°C、 CO 5%の環境下で 20— 24時間培養する。培養後、
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マウス肝がん細胞 H1L6.1から細胞培養培地を取り除き、これを溶解し、産生された ルシフェラーゼの活性をルミノメーターで測定する。最後に、予め作成した検量線に 基づいて、被測定試料中のダイォキシン類ゃコブラナー PCBの含有量を算出する。
[0044] ここで、マウス肝がん細胞 H1L6.1は、従来のレポータージーンアツセィ(すなわち 、基礎培地に糖質コルチコイドを人為的に添加しない態様)において、ルシフェラー ゼ産生能が高いことで知られ、特に CALUX Assayにおいて好ましく用いられてき た。このため、本発明においてレポーター遺伝子をルシフェラーゼ遺伝子とする場合 には、本発明に力かる組み換え細胞はマウス肝がん細胞 H1L6.1であることが好まし レ、。かかる態様により、レポーター遺伝子をルシフェラーゼ遺伝子とする場合におけ る、本発明のレポータージーンアツセィの検出感度を最も効果的に上げることができ る。なお、マウス肝がん細胞 H1L6.1は、米国特許第 5854010号明細書に基づいて 、 Hepalclc7において AhRを介して活性が制御される遺伝子の一部を、ホタノレ由来 のルシフェラーゼ遺伝子で組み換えることによって調製され得る。
[0045] 培地セットから調製される基礎培地は、 RPMI1640培地を 85— 95容量部、ゥシ胎 児血清を 7— 9容量部、ペニシリン/ストレプトマイシン混合溶液を 1一 3容量部含有 して構成されることが好ましい。かかる態様により、マウス肝がん細胞 H1L6.1の培養 を効率よく行うことが可能となる。
[0046] 本発明の重要な点は、従来レポータージーンアツセィにおいて、その測定精度を 上げるためには、被測定試料中に含まれると好ましくないと考えられ、そのため被測 定試料中力 は取り除く必要があるとされてきた物質を、逆に積極的に利用すること により、その検出感度を上げようとすることにある。
[0047] 詳細には、従来被測定試料中の含有量が不明であったために、レポータージーン アツセィの精度にどの程度の影響を及ぼしたのか分からなかった物質について、そ の量を人為的に定めて使用することにより、レポータージーンアツセィの検出感度を 上げるとともに、これらの物質とルシフェラーゼの産生量 (発光量)との関係を表す検 量線を別途作成することにより実測値を補正し、被測定試料中のダイォキシン類ゃコ
ブラナー PCBの含有量を高精度に測定しょうとするものである。
[0048] このため、本発明に力かるレポータージーンアツセィ用の測定キットが備える糖質コ ルチコイドの基礎培地への添加量は、人為的に定められたものであれば、特定の値 に限定されるものではない。
[0049] すなわち、本発明に力かる糖質コルチコイドの基礎培地への混合量の下限は、レポ 一タージーンアツセィの検出感度を上げることができる範囲であればいずれでもよぐ 具体的には、基礎培地 lmlあたり糖質コルチコイドが 0. 以上、さらには 0. 5 β g 以上含有されていることが好ましい。かかる含有量が 0. 未満では、レポーター ジーンアツセィの検出感度を十分に上げることができない一方、 0. 以上であれ ば、微量のダイォキシン類ゃコブラナー PCBを優れた精度で検出することが可能に なる。
[0050] また、基礎培地への糖質コルチコイドの混合量の上限についても、特に制限される ものではないが、検出感度を十分に上げ得る量以上に糖質コルチコイドを添加しても 本発明の測定コストが高くなる。このため、糖質コルチコイドは、基礎培地 lmlあたり 2 0 /i g以下、さらには 10 μ g以下混合すれば十分である。
[0051] 本発明に力かるレポータージーンアツセィ用の測定キットが備える糖質コルチコイド は、本発明のレポータージーンアツセィの検出感度を上げ得るものであれば特に限 定されるものではなぐ具体的には、コルチゾールゃコルチコステロンゃコルチゾン、 あるいはデキサメタゾンゃプレドニソロン等を挙げることができる。なお、これらの物質 は、基礎培地にその一種類のみを添加して用いられる態様に限られず、かかる化合 物群から選択される 2以上の物質を選択して基礎培地に添加して用いられてもよい。
[0052] 以上、本発明のレポータージーンアツセィ、該レポータージーンアツセィのための 測定キット、及び該レポータージーンアツセィに好適に用いる培地についての実施態 様を詳述したが、本発明は上述の実施態様に限られるものではなぐその他の態様 でも実施し得るものである。
[0053] 本発明にかかる細胞培養培地は、基礎培地に糖質コルチコイドのみを添加して構 成することによつても、レポータージーンアツセィの検出感度を上げ得るため、検出感 度を上げるためにさらに他の化合物を添加することは必須の要件ではなレ、が、かかる
細胞培養培地は、基礎培地と糖質コルチコイドとの混合培地に、さらにプロテアソー ム抑制物質を添加して構成されてもよい。かかる態様により、 AhRを分解して XREよ り下流の遺伝子発現を阻害するプロテアソームの働きが抑制されることとなるため、 結果としてレポータージーンアツセィの検出感度をさらに上げることができる。
[0054] また、本発明に力、かる細胞培養培地は、力、かるプロテアソーム抑制物質に代えて、 あるいはプロテアソーム抑制物質と伴に、コレステロール酸化生成物を添加して構成 されてもよレ、。力、かる構成によっても、レポータージーンアツセィの検出感度をさらに 上げ'ること力 Sできる。
[0055] ここで、本発明にかかるプロテアソーム抑制物質の基礎培地への混合量の下限は 、レポータージーンアツセィの検出感度をさらに上げることができる範囲であればい ずれでもよぐ具体的には、基礎培地 lmlあたりプロテアソーム抑制物質が 5 z g以上 、さらには 10 z g以上含有されていることが好ましい。かかる含有量が 5 x g未満では 、レポータージーンアツセィの検出感度をさらに十分に上げることができない一方、プ 口テアソーム抑制物質の含有量が 10 μ g以上であれば、微量のダイォキシン類ゃコ ブラナー PCBをさらに優れた精度で検出することが可能になる。
[0056] また、基礎培地へのプロテアソーム抑制物質の混合量の上限についても、特に制 限されるものではなレ、が、検出感度を十分に上げ得る量以上にプロテアソーム抑制 物質を添加しても本発明の測定コストが高くなる。このため、プロテアソーム抑制物質 は、基礎培地 lmlあたり 70 Ai g以下、さらには 50 μ §以下混合すれば十分である。
[0057] 本発明に力かるコレステロール酸化生成物の基礎培地への混合量の下限は、レポ 一タージーンアツセィの検出感度をさらに上げることができる範囲であればいずれで もよぐ具体的には、基礎培地 lmlあたりコレステロール酸化生成物が 0. 以上、 さらには 0. 5 z g以上含有されていることが好ましい。かかる含有量が 0. 未満で は、レポータージーンアツセィの検出感度をさらに十分に上げることができない一方、 コレステロール酸化生成物の含有量が 0. 5 μ g以上であれば、微量のダイォキシン 類ゃコブラナー PCBをさらに優れた精度で検出することが可能になる。
[0058] また、基礎培地へのコレステロール酸化生成物の混合量の上限についても、特に 制限されるものではないが、検出感度を十分に上げ得る量以上にコレステロール酸
化生成物を添加しても本発明の測定コストが高くなる。このため、コレステロール酸化 生成物は、基礎培地 lmlあたり 50 Ai g以下、さらには 10 μ §以下混合すれば十分で ある。
[0059] 本発明に力かるレポータージーンアツセィ用の測定キットが備えるプロテアソーム抑 制物質としては、具体的に、 E-4031、 Astemizole、 Cisapride, Terfenadine,
Fexofenadine Λ Glycerol^ 4PBA、 Μ 132、 Lidocain、 Disopyramide、 Pisicamide、 Lactacystin, Epoxomicin等を挙げることができる。なお、これらの物質は、基礎培地に その一種類のみを添加して用いられる態様に限られるものではなぐかかる化合物群 力 選択される 2以上の物質を選択して基礎培地に添加して用いられてもよい。
[0060] また、本発明に力、かるレポータージーンアツセィ用の測定キットが備えるコレステロ 一ノレ酸化生成物としては、具体的に、 7-HydroxycholesteroU 20-Hydroxycholesterol 、 25-HydroxycholesteroU し nolestane_Jひ, 5ひ, 6 j3 _triol、 7 -HydroxycholesteroU 7 β -HydroxycholesteroU 7_Ketocholesterol、 5,り—! ipoxycholesterol等を挙げる^ _と力 S できる。なお、これらの物質は、基礎培地にその一種類のみを添加して用いられる態 様に限られるものではなぐ力かる化合物群から選択される 2以上の物質を選択して 基礎培地に添加して用いられてもよレ、。
[0061] 本発明は、糖質コルチコイドに代えてプロテアソーム抑制物質を基礎培地に添加し て調製した細胞培養培地を用いて組み換え細胞を培養する態様や、糖質コルチコィ ドに代えてコレステロール酸化生成物を基礎培地に添加して調製した細胞培養培地 を用いて組み換え細胞を培養する態様、あるいは、糖質コルチコイドに代えてプロテ ァソーム抑制物質とコレステロール酸化生成物とを基礎培地に添加して調製した細 胞培養培地を用いて組み換え細胞を培養するであっても構わない。力、かる態様によ つても、従来のレポータージーンアツセィに比して、プロテアソーム抑制物質の働きに よって AhRの分解による AhR量の減少が低く抑えられ、また、コレステロール酸化生 成物の働きによって、結果としてレポータージーンアツセィの検出感度を上げることが できる。
[0062] 本発明に力かるレポータージーンアツセィ用のキットが備える組み換え細胞は、か 力、る組み換え細胞力 S、ダイォキシン類ゃコブラナー PCB等の AhR結合物質を含む
培地で培養された際に、レポータータンパクを産生し得る態様であればよい。したが つて、本発明に力かる組み換え細胞は、 AhRを介して活性が制御される、 XREよりも 下流の遺伝子の全部又は一部力 S、ルシフェラーゼ遺伝子以外のレポーター遺伝子 で構成されてもよぐかかるレポーター遺伝子として、具体的には、 GFP遺伝子や AP 遺伝子等を挙げることができる。
[0063] 本発明に力かるレポータージーンアツセィ用のキットが備える組み換え細胞力 Ah Rを介して活性が制御される XREよりも下流の遺伝子の全部又は一部に、ルシフェラ ーゼ遺伝子を有してなる態様である場合、力かる組み換え細胞はマウス肝がん細胞 H1L6.1に限定されるものではなぐマウス肝がん細胞 H1L1.1やラット肝ガン細胞 H 411EGudLucl . 1、あるいはヒト肝ガン細胞 101L等であってもよレヽ。
[0064] また、ここで用いられるルシフェラーゼ遺伝子は、マウス肝がん細胞 H1L6.1の作 製に用いられるホタル由来のルシフェラーゼ遺伝子に限られるものではなぐいずれ の生物由来であってもよい。具体的には、かかる生物として、ホタル以外にゥミホタノレ ゃゥミシィタケを挙げることができる。
[0065] 本発明で用いられる組み換え細胞は、マウスゃヒト由来のものに限定されるもので はないが、ダイォキシン類ゃコブラナー PCBの細胞内における遺伝子発現メカニズ ムがヒトと類似するように、哺乳類由来のものであることが好ましい。
[0066] 本発明に力かるレポータージーンアツセィ用の測定キットが備える、組み換え細胞 を培養するためのプレートは、 96穴プレートに限られるものではなぐプレートが 1又 は複数の窪みを有するものであればいずれの態様であってもよいことは当然である。
[0067] 本発明に力かるレポータージーンアツセィ用の測定キットが備える培地セットは、組 み換え細胞を培養するための好適な細胞培養培地を構成し得るものであれば、レ、ず れの態様から構成されてもよレ、。したがって、かかる培地セットは、 RPMI1640培地 とゥシ胎児血清とペニシリン Zストレプトマイシン混合溶液とから構成されるものに限 定されるものではなぐ DMEM培地と仔ゥシ血清とを含んで構成されてもよレ、。また、 これらの培地セットが、ネオマイシン等の他の抗生物質を含んで構成されてもよい。さ らに、力、かる培地セットの混合比も、組み換え細胞を好適に培養することができる態 様であれば、レ、ずれの混合比から構成されてもょレ、。
[0068] 本発明に力かるレポータージーンアツセィ、該アツセィ用キット、及び培養培地は、 被測定試料中のダイォキシン類ゃコブラナー PCBの含有量を測定する用途に限定 されるものではなレ、。すなわち、本発明は、被測定試料中の一般的に AhRに結合し 得る物質 (AhR結合物質)の含有量を測定する用途に用いることができる。かかる Ah R結合物質としては、具体的には、ポリ塩化ナフタレン類やべンゾ aピレン等の PAHs 等を挙げることができる。
[0069] その他、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲内で、当業者の知識に基づき種々な る改良、修正、変形をカ卩えた態様で実施しうるものである。
[0070] 以下に、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に よって限定されるものではない。
[0071] (基礎培地の調製)
RPMI1640 (ナカライテスタ社製)培地 500mlに、ゥシ胎児血清(インビトロジヱン 社製) 50mlとペニシリン/ストレプトマイシン混合 (体積比 1: 1 )溶液(ナカライテスタ 社製) 1 1mlとを混合し、基礎培地を調製した。
[0072] (組み換え細胞の培養)
上記基礎培地を用いて、 96穴プレート上でマウス肝がん細胞 H1L6. 1 (ゼノバイオ ティックディテクシヨンシステム (XDS)社製)を 14一 24時間培養して、約 7· 5 X 105 個/ゥエルとした後、プレートを逆さにして、培養後の細胞から基礎培地を取り除いた
(実施例 1 )
[0073] 2, 3, 7, 8—テトラクロロジベンゾパラジオキシン(以下、 TCDDという。 ) (ケンブリツ ジアイソトープラボラトリーズ(CIL)社製)と、ジメチルスルホキシド(以下、 DMSOとい う。 ) (生化学用、和光純薬工業 (株)製)とから、先ず 250pgZmlの TCDDの DMS O溶液 8 μ 1を調製し、その後、 2倍希釈によって、 TCDD濃度 125 0. lpgZmほ での TCDD—DMSO溶液 4 μ 1を調製した。
[0074] 各濃度の TCDD—DMSO溶液 4 μ 1に、濃度 100 μ g/mlのコルチゾール(和光純 薬工業 (株)製)のエタノール (和光純薬工業 (株)製)溶液 Ι Ο μ Ιを加え、さらに、各溶 液の総量力 S lmlとなるようにへキサン (和光純薬工業 (株)製)をカ卩ぇ撹拌した。その
後、遠心式エバポレーターを用いてコルチゾール添加後の各溶液からエタノール及 びへキサンを留去した。
[0075] 濃縮後の各溶液に、予め調製した基礎培地 400 μ 1をそれぞれ加えて撹拌し、 TC DD濃度の異なる細胞培養培地を調製した。そして、かかる細胞培養培地を、上記培 養後のマウス肝がん細胞 H1L6.1に 190 μ ΐΖゥヱル加え、 37°C、 CO 5。/。環境下で
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、 20— 24時間培養した。
[0076] 培養後、培地を取り除き、マウス肝がん細胞 H1L6.1の細胞膜を溶解し、ノレシフェ ラーゼアツセィキット(Promega社製)とルミノメーター(Anthos社製)とを用いてルシ フェラーゼ活性 (相対発光強度; RLU)を測定した。その結果を表 1に示す。また、か 力、る表 1について、 TCDD濃度に対して RLUをプロットしたものを図 3に示す。
[0077] [表 1]
(比較例 1)
[0078] 各濃度の TCDD— DMSO溶液 4 μ 1に、上記のコルチゾーノレ一エタノール溶液 10 /i lを加える代わりに、エタノール 10 μ ΐをカ卩えた他は実施例 1と同様にしてマウス肝 がん細胞 H1L6.1を培養し、ルシフェラーゼ活性を測定した。その結果を表 1に示す 。また、力、かる表 1について、 TCDD濃度に対して RLUをプロットしたものを図 3に示 す。
(実施例 2)
[0079] TCDDと DMSOとから、先ず 15. 6pgZmlの TCDDの DMSO溶液 12 μ 1を調製 し、その後、 2Ζ3倍希釈によって、 TCDD濃度 15. 6-0. 4pg/mlまでの TCDD— DMSO溶液 4 μ 1を調製した。
[0080] 各濃度の TCDD— DMSO溶液 4 μ 1に、濃度 100 μ g/mlのコルチゾーノレ一エタノー ル溶液 10 μ 1と、濃度 500 μ g/mlのプロテアソーム抑制物質(
Calbiochem-Novabiochem Conjoration製)のエタノール溶液(和光純薬(株)製) 10 /i lとをカロえ、さらに、各溶液の総量力 Slmlとなるようにへキサンをカ卩ぇ撹拌した。その 後、遠心式エバポレーターを用いてコルチゾール及びプロテアソーム抑制物質添カロ 後の各溶液からエタノール及びへキサンを留去した。
[0081] 濃縮後の各溶液に、予め調製した基礎培地 400 μ 1をそれぞれ加えて撹拌し、 TC DD濃度の異なる細胞培養培地を調製した。そして、かかる細胞培養培地を、上記培 養後のマウス肝がん細胞 H1L6.1に 190 /i l/ゥエル加え、 37°C、 CO 5%環境下で
2
、 20— 24時間培養した。
[0082] 培養後、培地を取り除き、マウス肝がん細胞 H1L6.1の細胞膜を溶解し、ノレシフェ ラーゼアツセィキットとルミノメーターとを用いてルシフェラーゼ活性を測定した。その 結果を表 2に示す。また、力、かる表 2について、 TCDD濃度に対して RLUをプロットし たものを図 4に示す。
[0083] [表 2]
TCDD濃度 実施例 2 比較例 2
(pg/ml) RLU RLU
15. 6 25314 23303
10. 4 22568 16643
6. 9 19526 11755
4. 6 16332 8264
3. 1 13186 5843
2. 1 10300 4214
1. 4 7847 3155
0. 9 5918 2491
0. 6 4513 2093
0. 4 3564 1867
TCDD濃度 TCDD濃度
RLU RLU
(pg/ml) (pg/ml)
1969 0. 27 1621 0. 86
1854 0. 26 703 0. 45
0
1600 0. 23 1446 0. 78
1862 0. 26 811 0. 50
SD 0. 02 0. 20
SDX 10 0. 19 2. 04
TCDD- DMSO溶
液定量下限値 0. 19 2. 04
(pg/ml)
(比較例 2)
[0084] 各濃度の TCDD— DMSO溶液 4 μ 1に、上記のコルチゾーノレ エタノール溶液 10
/i l,及びプロテアソーム抑制物質 エタノール溶液 10 /i lをカ卩える代わりに、エタノー ノレ 20 /i lをカ卩えた他は実施例 2と同様にしてマウス肝がん細胞 H1L6.1を培養し、ル シフェラーゼ活性を測定した。その結果を表 2に示す。また、かかる表 2について、 T CDD濃度に対して RLUをプロットしたものを図 4に示す。
(実施例 3)
[0085] TCDDと DMSOとから、先ず 15· 6pg/mlの TCDDの DMSO溶液 12 μ 1を調製 し、その後、 2/3倍希釈によって、 TCDD濃度 15· 6-0. 4pg/mlまでの TCDD— DMSO溶液 4 β 1を調製した。
[0086] 各濃度の TCDD— DMSO溶液 4 μ 1に、濃度 100 μ g/mlのコルチゾーノレ一エタノー ル溶液 10 μ ΐと、コレステロール酸化生成物(SIGMA製) 0. とをカロえ、さらに、各 溶液の総量力 Slmlとなるようにへキサンをカ卩ぇ撹拌した。その後、遠心式エバポレー
ターを用いてコルチゾール及びコレステロール酸化生成物添加後の各溶液からエタ ノール及びへキサンを留去した。
[0087] 濃縮後の各溶液に、予め調製した基礎培地 400 μ 1をそれぞれ加えて撹拌し、 TC DD濃度の異なる細胞培養培地を調製した。そして、かかる細胞培養培地を、上記培 養後のマウス肝がん細胞 H1L6.1に 190 μ ΐΖゥヱル加え、 37°C、 CO 5。/。環境下で
2
、 20— 24時間培養した。
[0088] 培養後、培地を取り除き、マウス肝がん細胞 H1L6.1の細胞膜を溶解し、ノレシフェ ラーゼアツセィキットとルミノメーターとを用いてルシフェラーゼ活性を測定した。その 結果を表 3に示す。また、力、かる表 3について、 TCDD濃度に対して RLUをプロットし たものを図 5に示す。
[0089] [表 3]
TCDD濃度 実施例 3 比較例 3
(pg/ml) RLU RLU
15. 6 20708 12527
10. 4 18268 11295
6. 9 16132 8987
4. 6 11977 6792
3. 1 10393 4506
2. 1 8224 3502
1. 4 6646 2393
0. 9 5211 1244
0. 6 4520 1067
0. 4 3496 368
TCDD濃度 TCDD濃度
RLU RLU
(pg/ml) (pg/ml)
4018 0. 58 2374 1. 27
0 4363 0. 66 3059 1. 69
4496 0. 69 2711 1. 47
SD 0. 05 0. 21
SDX 10 0. 55 2. 14
TCDD-DMS0溶
液定量下限値 0. 55 2. 14
(pg/ml)
(比較例 3)
各濃度の TCDD— DMSO溶液 4 μ 1に、上記のコルチゾーノレ—エタノール溶液 10 μ 1、及びコレステロール酸化生成物 0. 5 x gをカロえる代わりに、エタノール 10 μ ΐを
加えた他は実施例 3と同様にしてマウス肝がん細胞 H1L6.1を培養し、ルシフェラー ゼ活性を測定した。その結果を表 3に示す。また、力かる表 3について、 TCDD濃度 に対して RLUをプロットしたものを図 5に示す。
[0091] 表 1及び図 3より、レポータージーンアツセィにおいて、基礎培地に糖質コルチコィ ドを添加して構成される細胞培養培地で組み換え細胞を培養することにより、従来の 培養培地で組み換え細胞を培養したときよりも RLUが大きくなつたことから、その検 出感度が上がることが分かった。特に、その効果は、 TCDD濃度が上がる程顕著で あった。また、その定量限界(定量下限値)も、従来の方法に比べてさらに 0. 5pg/ ml下げ得ることがわかった。
[0092] また、表 2及び図 4より、レポータージーンアツセィにおいて、基礎培地に糖質コル チコイド及びプロテアソーム抑制物質を添加して構成される細胞培養培地で組み換 え細胞を培養することにより、従来の培養培地で組み換え細胞を培養したときよりも R LUが大きくなつたことから、その検出感度が上がることが分かった。特に、その効果 は、 TCDD濃度 1. 5— 10pg/ml付近で顕著であった。また、その定量限界(定量 下限値)も、従来の方法に比べてさらに 1. 9pg/ml下げ得ることがわかった。
[0093] また、表 3及び図 5より、レポータージーンアツセィにおいて、基礎培地に糖質コル チコイド及びコレステロール酸化生成物を添加して構成される細胞培養培地で組み 換え細胞を培養することにより、従来の培養培地で組み換え細胞を培養したときより も RLUが大きくなつたことから、その検出感度が上がることが分かった。特に、その効 果は、 TCDD濃度 1. 5— 10pg/ml付近で顕著であった。また、その定量限界(定 量下限値)も、従来の方法に比べてさらに 1. 59pg/ml下げ得ることがわかった。
[0094] なお、表 1乃至 3に記載する、実施例 1乃至 3及び比較例 1乃至 3にかかる TCDD— DMSO溶液の定量下限値は、実施例 1乃至 3及び比較例 1乃至 3の操作に先駆け て以下の操作を行うことにより算出した。すなわち、先ず、表 1乃至 3に記載する TCD D— DMSO溶液を用いる代わりに、 DMS〇4 z lを用いた(TCDD濃度を Opg/mlと した)以外は実施例 1乃至 3及び比較例 1乃至 3と同様にしてマウス肝がん細胞 H1L 6.1を培養し、培養後のルシフェラーゼ活性 (RLU)を求めた。かかる操作を、実施例 1及び比較例 1については 6回、実施例 2及び比較例 2については 4回、実施例 3及
び比較例 3については 3回行った後、得られる RLUの数値から図 3乃至 5に基づいて それぞれ TCDD濃度を計算し、その標準偏差 (SD)を算出した。最後に、かかる値 を 10倍した。
図面の簡単な説明
[図 1]ダイォキシン類ゃコブラナー PCBの生物への作用メカニズムを示す。
[図 2]レポータージーンアツセィにおける、ダイォキシン類ゃコブラナー PCBのルシフ エラーゼ遺伝子発現メカニズムを示す。
[図 3]基礎培地に糖質コルチコイドが添加された時の、レポータージーンアツセィのル シフェラーゼ活性に及ぼす影響を示すグラフである。
[図 4]基礎培地に糖質コルチコイドとプロテアソーム抑制物質が添加された時の、レポ 一タージーンアツセィのルシフェラーゼ活性に及ぼす影響を示すグラフである。
[図 5]基礎培地に糖質コルチコイドとコレステロール酸化生成物が添加された時の、 レポータージーンアツセィのルシフェラーゼ活性に及ぼす影響を示すグラフである。