明 細 書 脱皮ホルモン受容体及び当該受容体に対するリガンドのスクリ一二ング方法 技術分野
本発明は、 エタジステロィド等の昆虫脱皮ホルモンに対して結合能を有する脱 皮ホルモン受容体及び当該受容体に対するリガンドのスクリ一二ング方法に関す る。 背景技術
田畑等の農業生産現場における害虫駆除は、 生産性の向上、 生産品質の向上と いった諸問題を解決することができる。 このため、 害虫駆除に関する諸研究がな されているが、 例えば、 昆虫成長抑制物質を主体とする害虫駆除剤の開発が望ま れている。
一方、 昆虫の脱皮 ·変態は、 昆虫を特徴付ける現象であり、 ホルモンにより制 御されている。 昆虫における脱皮 '変態の制御は、 ステロイ ドホルモンであるェ クジステロィ ドによることが知られている。 先ず、 昆虫体内で合成されたェクジ ステロイ ドは、 細胞膜を通過して、 核内に存在する脱皮ホルモン受容体及ぴ USP (ultraspiracle) のへテロダイマーと結合して複合体を形成する。 次に、 この複 合体は、 初期遺伝子群の上流に存在する応答配列に結合することで、 当該初期遺 伝子群の発現を誘導する。 その後、 初期遺伝子群の発現を契機にして、 昆虫の脱 皮 ·変態に関連する遺伝子群の発現を促進するとともに昆虫の脱皮 ·変態が進行 する。
このように、 脱皮ホルモン受容体は、 昆虫が脱皮 ·変態する際のシグナル伝達 経路において最上流に位置することが知られている。 したがって、 上述したよう な昆虫成長抑制物質として、 エタジステロィドと脱皮ホルモン受容体との結合を 阻害する物質を探索することが、 害虫駆除剤の開発に有効であることが判る。
しかしながら、 エタジステロィドと脱皮ホルモン受容体との結合を阻害する物 質のスクリ一-ング方法としては確立されたものはなく、 害虫駆除剤として有効
な物質を容易にスクリーニングすることができなかった。 また、 従来、 昆虫成長 抑制物質のスクリーニングには、 昆虫全体を用いる系、 表皮等の一部の組織を用 V、る系及ぴ培養細胞を用いる系などのスクリーニング系が知られている (非特許 文献 1乃至 4参照)。しかしながら、昆虫成長抑制物質のスクリ一ユングについて、 分子レベル (タンパク質レベル) での研究は殆ど行われていないの現状である。
非特許文献 1
Kenichi Mikitani Appl. Entomol. Zool. 31 (4): 531-536
A novel ecdysone responsive reportaer plasmid regulated by the 5' -upstreme region of the Drosophi丄 a melanogaster (Diptera ; Drosophi丄 idae) acethylcho丄 inesterase gene
非特許文献 2
Kenichi Mikitani J. Insect Physiol. 42: (10) 937-941 OCT 1996
Ecdysteroid receptor binding activity and ecdysteroid agonist activity at the level of gene expression are correlated with the activity of dibenzoyl hydrazines in larvae of Bombyx mori
非特許文献 3
Kenichi Mikitani BI0CHEM. BI0PHYS. RES. C0MMUN. 227: (2) 427-432 OCT 14 1996 A new nonsteroidal chemica丄 class oi l igand for the ecdysteroid receptor 3, 5 - di— tert— butyl 4— hydroxy— N - isobuty丄ー benzamide shows apparent insect molting hormone activities at molecular and cel lu丄 ar levels
非特許文献 4
Tri syono A, Goodman Cし, Grasela JJ, et al. IN VITRO CELLULAR & DEVELOPMENTAL BIOLOGY-ANIMAL 36: (6) 400-404 JUN 2000
Establi shment and characterization of an Ostrinia nubi lal is cel l l ine, and its response to ecdysone agoni sts
そこで、 本発明は、 上述した実状に鑑み、 害虫駆除剤等に応用可能な物質を効 率的にスクリ一二ングすべく、 全く新規な脱皮ホルモン受容体及び当該受容体に 対するリガンドのスクリーニング方法を提供することを目的としている。
6 発明の開示
上述した目的を達成するため、 本発明者らが鋭意検討した結果、 脱皮ホルモン と、 脱皮ホルモン受容体の各ドメインとの結合について新たな知見を見いだし本 発明を完成するに至った。
本発明は以下を包含する。
( 1 ) 以下の (a) のポリペプチドと、 (b) のポリペプチド若しくは (c) のポ リぺプチドとからなる昆虫脱皮ホルモン受容体。
(a) 配列番号 1 (EcR - DF) のァミノ酸配列からなるポリペプチド、 又は、 配列番 号 1 (EcR - DF) のアミノ酸配列において 1又は複数のァミノ酸が欠失、 置換及ぴ 付加されたアミノ酸配列からなり下記 (b) 又は (c) のポリペプチドと複合体を なし且つ当該複合体をなした状態で脱皮ホルモンと結合できるポリぺプチド
(b) 配列番号 2 (USP-AE) のアミノ酸配列からなるポリペプチド、 又は、 配列番 号 2 (USP-AE) のアミノ酸配列において 1又は複数のアミノ酸が欠失、 置換及ぴ 付加されたァミノ酸配列からなり上記(a) のポリぺプチドと複合体をなしうるポ リぺプチド
(c) 配列番号 3 (USP-DE) のアミノ酸配列からなるポリペプチド、 又は、 配列番 号 3 (USP-DE) のアミノ酸配列において 1又は複数のアミノ酸が欠失、 置換及ぴ 付加されたァミノ酸配列からなり上記(a) のポリぺプチドと複合体をなしうるポ リぺプチド
( 2 ) 上記 (a) のポリペプチド、 上記 (b) のポリペプチド及ぴ上記 (G) のポ リペプチドが大腸菌で発現したものであることを特徴とする (1 ) 記載の昆虫脱 皮ホルモン受容体。
( 3 )上記(a)のポリぺプチドは、大腸菌で発現させた後にゲルろ過によって、 上記 (b) のポリペプチド又は上記 (c) のポリぺプチドに対する結合活性をもつ ようにしたものであることを特徴とする (1 ) 記載の昆虫脱皮ホルモン受容体。
( 4 ) ( 1 ) 乃至 (3 ) いずれか一に記載の昆虫脱皮ホルモン受容体に、 供試物 質を作用させる第 1工程と、 前記複合体と前記供試物質との結合を測定する第 2 工程とを含む脱皮ホルモン受容体に対するリガンドのスク リ一二ング方法。
( 5 ) 上記第 1工程では、 上記昆虫脱皮ホルモン受容体と上記供試物質とを混
6 合した後、 30〜90分反応させることを特徴とする (4 ) 記載の脱皮ホルモン受容 体に対するリガンドのスクリーニング方法。
( 6 ) 上記第 1工程では、 上記昆虫脱皮ホルモン受容体と上記供試物質とを混 合した後、 20〜37°Cの条件下で反応させることを特徴とする (4 ) 記載の脱皮ホ ルモン受容体に対するリガンドのスクリ一ユング方法。
( 7 ) 上記第 1工程では、 上記昆虫脱皮ホルモン受容体と上記供試物質とを混 合した後、 実質的に塩を含まない条件下で反応させることを特徴とする (4 ) 記 載の脱皮ホルモン受容体に対するリガンドのスクリ一ユング方法。
( 8 ) 以下の (a) のポリペプチドと、 (b) のポリペプチド若しくは (c) のポ リペプチドとからなる、 昆虫脱皮ホルモン受容体に対するリガンドのスクリー二 ング剤。
(a) 配列番号 1 (EcR - DF) のァミノ酸配列からなるポリべプチド、 又は、 配列番 号 1 (EcR-DF) のアミノ酸配列において 1又は複数のアミノ酸が欠失、 置換及ぴ 付加されたアミノ酸配列からなり下記 (b) 又は (c) のポリペプチドと複合体を なし且つ当該複合体をなした状態で脱皮ホルモンと結合できるポリべプチド
(b) 配列番号 2 (USP-AE) のアミノ酸配列からなるポリペプチド、 又は、 配列番 号 2 (USP-AE) のアミノ酸配列において 1又は複数のアミノ酸が欠失、 置換及ぴ 付加されたァミノ酸配列からなり上記(a) のポリぺプチドと複合体をなしうるポ リぺプチド
(c) 配列番号 3 (USP-DE) のァミノ酸配列からなるポリぺプチド、 又は、 配列番 号 3 (USP-DE) のアミノ酸配列において 1又は複数のアミノ酸が欠失、 置換及び 付加されたァミノ酸配列からなり上記 (a) のポリぺプチドと複合体をなしうるポ リぺプチド
( 9 ) 上記 (a) のボリペプチド、 上記 (b) のポリペプチド及ぴ上記 (c) のポ リペプチドが大腸菌で発現したものであることを特徴とする (7 ) 記載の昆虫脱 皮ホルモン受容体に対するリガンドのスクリ一二ング剤。
( 1 0 ) 上記 (a) のポリペプチドは、 大腸菌で発現させた後にゲルろ過によつ て、 上記 (b) のポリペプチド又は上記 (c) のポリペプチドに対する結合活性を もつようにしたものであることを特徴とする (8 ) 記載の昆虫脱皮ホルモン受容
体に対するリガンドのスクリーユング剤。
本明細書は本願の優先権の基礎である日本国特許出願 2003- 031606号の明細書 および/または図面に記載される内容を包含する。 図面の簡単な説明
- 図 1は、 (a) は EcRのドメイン構成を模式的に示す構成図であり、 (b) は USP のドメイン構成を模式的に示す構成図である。
図 2は、 EcRの cDNAクローニングにおいて作製したプライマーの位置及ぴ配列 を示す模式図である。
図 3は、 USPの cDNAクローニングにおいて作製したプライマーの位置及び配列 を示す模式図である。
図 4は、 実施例 2で作製した様々な長さの EcR組換え体を示す模式図である。 図 5は、 実施例 2で作製した様々な長さの USP組換え体を示す模式図である。 図 6は、 大腸菌で発現した EcR組換え体の SDS-PAGEの結果を示す写真である。 図 7は、 大腸菌で発現した USP組換え体の SDS-PAGEの結果を示す写真である。 図 8は、 EcR組換え体を確認するために行ったウェスタンブロッテイングの結 果を示す写真である。
図 9 Aは、 MALDI-T0F- MSを用いて EcR組換え体の分子質量を測定した結果を示 す特性図である。
図 9 Bは、 MALDI- T0F- MSを用いて EcR組換え体の分子質量を測定した結果を示 す特性図である。
図 9 Cは、 MALDI-T0F-MSを用いて EcR組換え体の分子質量を測定した結果を示 す特性図である。
図 9 Dは、 MALDI- TOF- MSを用いて EcR組換え体の分子質量を測定した結果を示 す特性図である。
図 9 Eは、 MALDI- TOF- MSを用いて EcR組換え体の分子質量を測定した結果を示 す特性図である。
図 1 0は、 ゲルろ過クロマトグラフィーを用いてすべての EcR組換え体につい てリフォールデイング反応を行い、 すべての EcR組換え体について排除限界の位
置に溶出されたことを確認した SDS - PAGEの結果を示す写真である。
図 1 1は、 精製した EcR組換え体の SDS- PAGEの結果を示す写真である。
図 1 2は、 USP 組換え体をァフィ二ティー精製した後の各フラクションの
SDS-PAGEの結果を示す写真である。
図 1 3は、 実施例 3で作製した発現ベクターを示す模式図である。
図 1 4は、哺乳類細胞を用いて EcR組換え体を発現させた系において、当該 EcR 組換え体を確認するために行ったウェスタンブロッティングの結果を示す写真で ある。
図 1 5は、 実施例 4における実験の工程を示すフローチャートである。
図 1 6は、 大腸菌で発現させた EcR組換え体及ぴ USP組換え体を用いて、 ポナ ステロン A との結合能を測定した結果を示す特性図である。
図 1 7は、 哺乳類細胞で発現させた EcR組換え体及ぴ USP組換え体を用いて、 ボナステロン Aとの結合能を測定した結果を示す特性図である。
図 1 8は、 EcR- DF及び USP-AE の複合体とリガンドとの結合反応に関して、 EcR-DF及び USP- AEの最適なモル比を検討した結果を示す特性図である。
図 1 9は、 EcR- DF及び USP- AEの複合体とリガンドとの結合反応に関して、 最 適な反応時間を検討した結果を示す特性図である。
図 2 0は、 EcR- DF及び USP - AEの複合体とリガンドとの結合反応に関して、 最 適な反応温度を検討した結果を示す特性図である。
図 2 1は、 EcR - DF及び USP-AEの複合体とリガンドとの結合反応に関して、 最 適な塩濃度を検討した結果を示す特性図である。
図 2 2は、 EcR-DF及び USP - AEの複合体とリガンドとの結合反応における、 結 合曲線を示す特性図である。
図 2 3は、 EcR-DF及び USP-AEの複合体とリガンドとの結合反応における、 ス キャッチャード解析を行った結果を示す特性図である。
図 2 4は、 ェクダイソン及びェクダイソンァゴニス トと EcR - DF及ぴ USP- AEの 複合体との結合を解析した結果を示す特性図である。
図 2 5は、 EcR- DF及ぴ USP- AE の複合体と内分泌攪乱物質及ぴ女性ホ, の結合を解析した結果を示す特性図である。
発明を実施するための最良の形態
以下、 本発明を詳細に説明する。
本発明を適用したスクリーニング方法 (以下、 単に 「本スクリーニング法」 と 称する) は、 ハスモンョ トウ由来の脱皮ホルモン受容体 (以下、 EcR と略記する 場合もある) における D領域から F領域までのセグメント (以下、 EcR - DFと略記 する場合もある) と、 ハスモンョトウ由来の Ultraspiracle (以下、 USPと略記す る場合もある) の A領域から E領域までのセグメント (以下、 USP- AEと略記する 場合もある) 若しくは当該 USPにおける D領域から E領域までのセグメント (以 下、 USP - DEと略記する場合もある) との複合体を、供試物質に作用させ、その後、 前記複合体と前記供試物質との結合を測定することで、 供試物質における脱皮ホ ルモン受容体に対する結合能 (リガンド能) を評価するものである。 .
ここで、 脱皮ホルモン受容体とは、 図 l aに示すように、 A/B領域、 C領域、 D 領域、 E領域及ぴ F領域の 6領域から構成された、 脱皮ホルモンに対する受容体 である。 ハスモンョトウ以外の昆虫においても脱皮ホルモン受容体は同定されて おり、このようなハスモンョ トウ以外の昆虫における研究から EcRの C領域は DNA 結合領域であることが示唆されている。 また、 ハスモンョ トウ以外の昆虫におい て、 EcRの E領域はホルモン結合領域であることが示唆されている。
また、 USPとは、 図 l bに示すように、 A/B領域、 C領域、 D領域及ぴ E領域の 5領域から構成され、 脱皮ホルモン受容体とヘテロダイマーを形成するォーファ ン受容体である。
先ず、 本スクリーニング方法において使用する EcR-DF について説明する。
EcR-DFとしては、 例えば、 配列番号 1に表すアミノ酸配列からなるものを挙げる ことができる。 しかしながら、 EcR-DFは、 配列番号 1に表すァミノ酸配列からな るものに限定されず、 例えば、 配列番号 1に表すアミノ酸配列における 1又は複 数のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加されたァミノ酸配列からなるものであつ て、 USP- AE若しくは USP- DE と複合体をなし且つ当該複合体をなした状態でエタ ダイソンと結合できるものであっても良い。ここで、「複数のアミノ酸」としては、 例えば 2〜 5 0個であり、 好ましくは 2〜 2 0個であり、 より好ましくは 2〜 1
0個である。
また、 EcR_DFは、 EcRの D領域及び F領域を含むセグメントであれば良く、 例 えば EcRの D領域の N末端側に C領域の一部を含んでいても良い。 すなわち、 配 列番号 1に表すアミノ酸配列における 1又は複数のアミノ酸が付加されたァミノ 酸配列としては、 EcRの D領域及び F領域を含み、 当該 D領域の N末端側に C領 域の一部が含まれているアミノ酸配列を挙げることができる。 ここで、 C領域の 一部とは、 例えば 1〜2 0個のアミノ酸、 好ましくは 1〜1 0個のアミノ酸、 よ り好ましくは 1〜 5個のアミノ酸である。
次に、 EcR- DF の調製方法について説明する。 本スクリーニング方法において、 EcR-DFの調整方法としては特に限定されないが、例えば以下のように調製するこ とができる。 すなわち、 先ず、 ハスモンョ トウの cDNAライブラリーを作製し、 所 定のプライマーを用いて EcRをコードする cDNAをクローニングする。次に、 この EcRの cDNAを用いて EcR遺伝子のコーディング領域の塩基配列を決定する。塩基 配列に基づいて設計した EcR- DF をコードする領域を増幅するためのプライマー を用い、 EcRの cDNAを铸型とした PCRによって EcR- DFをコードする DNAを増幅 する。 その後、 増幅した DNAを適当なベクターにクローニングし、 適当な宿主に 形質転換した後、得られた形質転換体において発現させた EcR-DFを回収すること で、 EcR - DFを調製することができる。
この EcRの調製方法において、 cDNAライブラリ一を作製するための mRNAは、 ハスモンョ トウの成虫、 幼虫、 蛹の如何なる段階から抽出しても良いし、 ハスモ ンョ トウの如何なる部位から抽出してもよい。 具体的に、 ハスモンョ トウ幼虫に 脂肪体から全量 RNAを抽出し、抽出した全量 RNAに含まれる mRNAを使用すること ができる。
全量 RNAに含まれる mRNAを用いた cDNAライブリ一の作製は、 定法に従って行 うことができる。 すなわち、 全量 RNAを用いて first strand cDNAを合成し、 こ れを铸型として EcRの cDNAをクローニングすることができる。
EcRの cDNAをクローニングする際のプライマーとしては、他の鱗翅目昆虫にお いて保存されている配列を基に設計した縮重プライマーを便用することができる。 具体的に、 縮重プライマーとしては、 図 2に示すように 6組の縮重プライマーを
6 挙げることができる。 これら 6組の縮重プライマーは、 それぞれ EcR - F1 及ぴ
EcR-Rl と、 EcR - F2及び EcR - R2 と、 EcR- F3及び EcR- R3 と、 EcR- F4及び EcR- R4 と、 EcR- F5及び EcR-R5と、 EcR_F6及び EcR - R6と命名された。
また、 縮重プライマーの塩基配列を以下に示す。
EcR-Fl: 5' -CTGGCGGTIGGIATGMGNCC-3' (配列番号 4 )
EcR- F2: 5' - GTCGGGATGMGICCNGARTG - 3' (配列番号 5 )
EcR-Rl: 5-' CCCTTCGCGAAYTCNACDAT-3' (配列番号 6 )
EcR- R2: 5' -TCGACGATIARYTGNACNGT-3' (配列番号 7 )
EcR - F3: 5' - TCGCGTRCTYTTCTCACCTG - 3' (配列番号 8 )
EcR- F4: 5, - CGTRCTYTTCTCACCTGTTG - 3' (配列番号 9 )
EcR-R3: 5' -TTCCTCATCTTCATCCGACTCTGTGAT-3' (配列番号 1 0 )
EcR-R4: 5' - CATCTTCATCCGACTCTGTGATTCTTC - 3' (配列番号 1 1 )
EcR-F5: 5' -CAGTAGATGATCACATGCCT-3' (配列番号 1 2 )
EcR- F6: 5' -ATGATCACATGCCTCCCATT - 3' (配列番号 1 3 )
EcR- R5: 5' - TTYCAYCCAATAGAAACATC- 3' (配列番号 1 4 )
EcR - R6: 5' - GTCTATGAGCGTTCTCTCTCCT- 3' (配列番号 1 5 )
これら縮重プライマーを用いて、 全量 RNAから合成した first strand cDNAを 铸型とした RT- PCRにより cDNA断片を合成することができる。 そして、 合成した cDNA断片の塩基配列を決定し、他の鱗翅目昆虫における EcRとの相同性を検討す る。
そして他の鱗翅目昆虫における EcRとの相同性が高いことから、 EcRの cDNAであ ると判断することができる。
次に、 この塩基配列に基づいて、 EcR の全長 cDNA塩基配列を決定するための
5' RACE 用の特異的プライマー (EcR- 5' R)及ぴ 3' RACE 用の特異的プライマー (EcR - 3' F1) を設計することができる。
EcR- 5' R: 5' -ATCCTCCGGCAAAGGCTTTCACTTCAC-3 ' (配列番号 1 6 )
EcR- 3' F1: 5, -GTTCCTCGAGGAGATCTGGGACGTG-3 ' (配列番号 1 Ί )
これら、 EcR - 5' R及び EcR - 3, F1と、 SMARTTMRACE cDNA Ampl ificat ion Kitのァ ンカー配列に特異的なプライマー(UPM)とを用いて、全量 RNAから合成した first
strand cDNAを鎳型とした PCRにより cDNA断片を合成することができる。 UPMの 塩基配列を以下に示す。
UPM: 5' -CTAATACGACTCACTATAGGGCAAGCAGTGGTAACAACGCAGAGT-3' (配列番号 1 8 ) そして、合成した cDNA断片の塩基配列と、上記縮重プライマーを用いて合成し た cDNA断片の塩基配列と力ゝら、 EcRの全長 cDNAの塩基配列を決定することがで きる。 EcRの全長 cDNAの塩基配列を配列番号 1 9に示し、 EcRの演繹ァミノ酸配 列を配列番号 2 0に示す。
EcR- DFをコードする DNAを有する発現ベクターを構築するには、 先ず、 EcRの 全長 cDNA の塩基配列 (配列番号 1 9 ) に基づいて設計したプライマー EcR-D: 5' - CATATGGCTAGCAGGCCTGAGTGCGTGGTGCC - 3' (配列番号 2 1 ) 及びプライマー
EcR-F: 5' -TTCGCAAGCTTCTAGAGCGCCGCGCTTTCCG-3' (配列番号 4 6 ) を用い、 クロ 一二、ノグした EcRの c讓 Aを铸型として PCRを行うことによって EcR- DFをコード する DNA断片を取得する。
次に、 この DNA断片を宿主に応じて適当なベクターに揷入することによって、 発現べクタ一を構築することができる。また、宿主内で EcR-DFを発現させる場合、
EcR - DFの N末端にヒスチジンタグを付加するように発現ベクターを構築してもよ い。
ここで、宿主としては、比較的に大量の EcR- DFを得る目的で大腸菌を使用する ことが好ましい。 なお、 宿主としては、 大腸菌に限定されず、 COS - 7 細胞、 CH0 細胞等の哺乳類細胞株、 Sf- 9等の昆虫細胞など、 従来より遺伝子発現系で用いら れている各種細胞を用いることができる。
例えば、 宿主として大腸菌を用いる場合、 発現ベクターは、 例えば、 大腸菌発 現用べクタ一 PET - 28b (+)を使用することができる。 大腸菌発現用べクタ一 pET-28b (+)によれば、発現する EcR-DFの N末端にヒスチジンタグを付加すること ができる。
宿主内で発現した EcR- DFは、定法に従って生成することができる。 なお、宿主 として大腸菌 BL21 (DE3)株を、 EcR-DFをコードする DNAを pET - 28b (+)に組み込ん でなる発現ベクターで形質転換し、 IPTGにより発現誘導した場合、 EcR-DFは不溶 性の封入体を形成する。 このため、 この場合には、 封入体を可溶化させた後にリ
フォールディングさせることで、目的とするかたちで EcR - DFを取得することがで きる。
次に、 本スクリーニング方法において使用する USP- AE及ぴ USP-DEについて説 明する。
USP-AEとしては、 例えば、 配列番号 2に表すアミノ酸配列からなるものを挙げ ることができる。 しかしながら、 USP - AEは、 配列番号 2に表すアミノ酸配列から なるものに限定されず、 例えば、 配列番号 2に表すアミノ酸配列における 1又は 複数のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加されたァミノ酸配列からなるものであ つて、 EcR - DF と複合体をなしうるものであっても良い。 ここで、 「複数のァミノ 酸」 としては、 例えば 2〜 2 0 0個であり、 好ましくは 2〜 1 0 0個であり、 よ り好ましくは 2〜 5 0個である。
USP-DEとしては、例えば、 配列番号 3に表すァミノ酸配列からなるものを挙げ ることができる。 し力 しながら、 USP - DEは、 配列番号 3に表すアミノ酸配列から なるものに限定されず、 例えば、 配列番号 3に表すアミノ酸配列における 1又は 複数のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加されたアミノ酸配列からなるものであ つて、 EcR- DF と複合体をなしうるものであっても良い。 ここで、 「複数のァミノ 酸」 としては、 例えば 2〜 2 0個であり、 好ましくは 2〜 1 0個であり、 より好 ましくは 2〜 5個である。
これら USP-AE及び USP-DEの調製方法は、上述した EcR - DFの調製方法に準じて 行うことができる。 特に、 USPの cDNAをクローニングする際の 4組の縮重プライ マー、 5' RACE用の特異的プライマー及び 3' RACE用の特異的プライマーを図 3に 示す。 これら 4組の縮重プライマ一は、 それぞれ USP-F1及ぴ USP-R1と、 USP-F2 及び USP-R2と、 USP-F3及ぴ USP-R3と、 USP-F4及び USP-R4と命名された。
4種類の縮重プライマー、 5' RACE用の特異的プライマー(USP - 5' Rl、 USP- 5' R2)、 3, RACE 用の特異的プライマー (USP- 3' F1、 USP-3' F2 ) 及び SMART™RACE cDNA Ampl ification Kitのアンカー配列に特異的なプライマー(UPM、 NUP、 RTG、 RTG-N) の塩基配列を以下に示す。
USP-F1 : 5' - ATCAGAARTGTCTNGCNTGC - 3' (配列番号 2 3 )
USP-F2 : 5' -ARTGTCTIGCNTGCGGNATG-3' (配列番号 2 4 )
USP-R1 : 5' - CTCGGACAGCACGCGRTCRA- 3' (配列番号 2 5
USP-R2 : 5' -GACAGCACGCGRTCRAADAT-3' (配列番号 2 6
USP-F3 : 5' -CGATCGCITGGMGNTCNATG-3' (配列番号 2 7
USP-F4 : 5' -TCGCITGGMGITCNATGGAG-3' (配列番号 2 8
USP-R3 : 5' -CTACAKGATIYTGGTRTCGA-3' (配列番号 2 9
USP-R4 : 5' -CAKGATIYTGGTRTCGATSG-3' (配列番号 3 0
USP-5' R1 : 5' -TGAGCTGCTTGGATGTGCAT-3' (配列番号 3 1
USP-5' R2 : 5' - GCTGCTTGGATGTGCATCCT - 3, (配列番号 3 2
USP-3' F1 : 5, - CGCTCCATCTCGCTGAAGAGCTTC - 3' (配列番号 3 3 )
USP-3' F2 : 5, - GTCCATCGCGTCCTACATC- 3' (配列番号 3 4 )
UPM : 5' -CTAATACGACTCACTATAGGGCAAGCAGTGGTAACAACGCAGAGT-3' (配列番号 3 5 ) NUP : 5, - AAGCAGTGGTAACAACGCAGAGT- 3, (配列番号 3 6 )
RTG : 5' -AACTGGAAGAATTCGCGGCCG-3' (配列番号 3 7 )
RTG-N : 5' - TGGAAGAATTCGCGGCCGCAG 3, (配列番号 3 8 )
上述した EcR-DFの調製方法に準じてクローニングされた USPの cDNA塩基配列 を配列番号 3 9に示し、 USPの演繹ァミノ酸配列を配列番号 4 0に示す。
EcRの cDNAを铸型とした PCRによって EcR-DFをコードする DNAを増幅する。 その後、 増幅した DNAを適当なベクターにクローニングし、 適当な宿主に形質転 換した後、 得られた形質転換体において発現させた EcR - DF を回収することで、 EcR - DFを調製することができる。
USP-AE をコードする DNA を有する発現ベクターを構築するには、 プライマー USP-A: 5' -TTCTTGCTAGCATGTCCATAGAGTCGCGTTTAG-3' (配列番号 4 1 ) 及びプライ マー USP-Erl: 5' -ATTACAAGCTTACATGACGTTGGCGTCGATG-3' (配列番号 4 2 )を用い、 USP-DE をコードする DNA を有する発現ベクターを構築するには、 プライマー USP-D: 5' -CATATGGCTAGCAAGAGGGAGGCAGTTCAGGAG-3' (配列番号 4 3 ) 及びプライ マー USP- Erl (配列番号 4 2 ) を用いることによって、 上述した EcIHDFの場合と 同様に、 USP-AE及び USP- DEを取得することができる。
本スクリ一ユング法では、 上述のように得られる EcR - DF、 USP-AE及び USP- DE を用いて、 供試物質の脱皮ホルモン受容体に対する結合能 (リガンド能) を評価
する。例えば、供試物質に対して標識することで、 EcR - DFと USP - AE若しくは USP - DE との複合体に対する供試物質の結合能を評価することができる。このとき、 EcR-DF と USP - AE若しくは USP- DEと供試物質とを混合して、 EcR- DFと USP- AE若しくは USP-DE との複合体に対する供試物質の結合能を評価しても良いし、 EcR- DF と USP-AE若しくは USP-DE との複合体を予め調製した後に、 供試物質を作用させ、 その結合能を評価しても良い。
また、 供試物質の標識には、 放射性同位元素を用いる方法を使用することがで きる。
以上のように、本スクリ一二ング法によれば、 EcR- DFと USP - AE若しくは USP - DE との複合体を用いて、 EcRと USP とのへテロダイマーによる脱皮 ·変態に関連す る遺伝子群の発現誘導を抑制するような物質を探求する有力な手段を提供するこ とができる。
以下、 実施例により本発明を更に詳細に説明するが、 本発明の技術的範囲はこ れら実施例に限定されるものではない。
〔実施例 1〕 ハスモンョトウ由来 EcR及び USPの塩基配列決定
材料
本実施例では、 クミアイ化学工業株式会社より供与されたハスモンョ トウ幼虫 (終齢 (6齢) 幼虫 (体長約 4 cm、 重さ約 1. 5 g) ) を使用した。 ハスモンョ トウ 幼虫を実体顕微鏡下で解剖し、 ピンセッ トを用いて脂肪体を摘出し、 エツペンド ルフチューブに回収、 液体窒素で凍結後、 total RNAの抽出に用いるまで- 80°Cで 保存した。
RT-PCR
摘出したハスモンョ トウの脂肪体より total RNAを抽出する際には、 RNA抽出 用試薬 IS0GEN (二ツボンジーン) を、 製品付属のプロ トコールに従って用いた。 抽出した total RNA溶液は、一部を DEPC処理水で希釈して分光光度計を用いその 濃度を定量した。
得られた total RNA溶液から 2 gの total RNAを調製し、これを Ready-To- Go™
T - Primed First - St d Kit (Amershara Biosciences) を用い、 製品付属のプロ卜 コールに従い、 first strand cDNA の合成を行った。 またこれとは別に、 1 μ g
の total RNA より、 SMART™RACE cDNA Amplification Kit (CLONTECH) を用いた first strand cDNAの合成も行った。
合成した first strand cDNAをテンプレートとして、 サーマルサイクラ一を用 いて PCR反応を行った。 縮重プライマーとしては、 図 2及ぴ図 3に示したものを 使用した。 また、 PCR反応液の組成を表 1に示した。
表 1
PCR反応液
10 XPCR Buffer (TAKARA) 2 μ1
dNTP Mix匿 (2.5mM) 2 μΐ
プライマー (forward:、 10 μΜ) 2 μ1
プライマー (reverse^ 10 μΜ) 1 ΐ
テンプレート DNA 0.5 μΐ
TAKARA Taq™ (5 U/μΙ) 0.1 ΐ
滅菌水 13.5 μΐ
合計 20.1 μΐ また、 反応サイクルは、 94°Cで 3分維持した後、 94°Cで 30秒の変性、 55°Cで 30秒のァニール及ぴ 72°Cで 30秒の伸長を 35サイクル行った後、 72°Cで 7分の処 理を行うものとした。
PCR産物は TA Cloning Kit (Invitrogen)を用いてサブクローニングを行った。 キッ トに含まれるベクター (pCR 2. 1) に PCR産物をライゲーションし、 得られた プラスミ ド DNAをコンビテントセル INV a F' (Invitrogen) に形質転換した。 そ して、 PCR産物が挿入されたプラスミ ド DNAを選択して、 PCR産物の塩基配列を決 定した。プラスミ ド DNAを鏡型としたサイクルシーケンス反応は、 Thermo Sequence Cy5. 5 dye terminator cycle sequencing kit (Amersham Biosciences; を用レヽ 7こ。
5' RACE及び 3' RACE
上記 RT- PCRにより増幅した cDNA断片の塩基配列を基にして、 5' RACE用のプラ イマ一及び 3,RACE用のプライマーを作製した。 また、 テンプレートとなる cDNA は、 5,RACEにおいては、 SMART™RACE cDNA Amplification Kitを用いて合成した
ものを使用した。 また 3' RACE においては、 テンプレートとなる cDNA として Ready-To- Go™ T- Primed First-Strand Kitを用いて合成したものを使用した。 これにより、 EcRの全長 cDNA塩基配列及び USPの全長 cDNA塩基配列を決定す ることができた。 EcRの全長 cDNA塩基配列を配列番号 1 9、 EcRの演繹ァミノ酸 配列を配列番号 2 0に示した。 また、 USP の全長 cDNA塩基配列を配列番号 3 9、 USPの演繹ァミノ酸配列を配列番号 4 0に示した。
〔実施例 2〕 EcR組換え体及ぴ USP組換え体の発現 (大腸菌)
DNA断片の調製
まず、 EcRのリガンド結合領域 (E領域) を含む、 様々な長さの組換え体を作製 するために、 実施例 1で得られた塩基配列を基に、 特定の制限酵素サイ トの配列 を付加したプライマーを以下のように設計した。
EcR- A: 5' -TTCTTGCTAGCATGTCCATAGAGTCGCGTTTAG-3' (配列番号 4 4 )
EcR- D: (配列番号 2 1 )
EcR-Ef : 5, - TTTTTGGATCCACAAGAAGGCTATGAACAACC- 3, (配列番号 4 5 )
EcR-Erl : 5, - TTGTTAAGCTTAGTCCCAGATCTCCTCGAGGA- 3' (配列番号 2 2 )
EcR - F: 5,- TTCGCAAGCTTCTAGAGCGCCGCGCTTTCCG- 3, (配列番号 4 6 )
また、 USPのリガンド結合領域 (E領域) を含む、 様々な長さの組換え体を作製 するために、 実施例 1で得られた塩基配列を基に、 特定の制限酵素サイ トの配列 を付加したプライマーを以下のように設計した。
USP-A: 5' -TTCTTGCTAGCATGTCCATAGAGTCGCGTTTAG-3' (配列番号 4 1 )
USP-D: 5' -CATATGGCTAGCAAGAGGGAGGCAGTTCAGGAG-3' . (配列番号 4 3 )
USP-Ef : 5 ' -TTTTTGGATCCTTCAGTGCAGGTACAGGAATT-3 ' (配列番号 4 7 )
USP-Erl: 5, -ATTACAAGCTTACATGACGTTGGCGTCGATG-3' (配列番号 4 2 )
これらプライマーを用いて、 実施例 1でクローニングに用いたプラスミ ドをテ ンプレート DNAとして、 PCR反応を行い、その PCR産物をサブクローニングした。
PCR反応液の組成を表 2に示した。
表 2
PCR反応液
10XEX PCR Buffer (TAKARA) 3 μΐ
dNTP Mixture (2.5 mM) 3 μΐ
プライマ (forward、 10 μΜ) 1.5 μΐ
プライマー (reverse. 10 μΜ ) 1.5 μΐ
テンプレート DNA 0.15 μΐ
TAKARA EX TaqTMHot Start Version (5 U/μΙ) 0.15 μΐ
滅菌水 20.7 μΐ
合計 30 μΐ また、 反応サイクルは、 94°Cで 3分維持した後、 94°Cで 30秒の変性、 60°Cで
30秒のァニール及び 72。Cで 1分の伸長を 15サイクル行った後、 72。Cで 7分の処 理を行うものとした。
PCR産物をァガロースゲルから回収した後、 T0P0 TA Cloning™Kit (Invitrogen) を用い、 製品付属のプロ トコールに従ってサブクローニングを行った。 DNA シー ケンサ一を用い、 目的の PCR産物の塩基配列に間違いがないことを確認した後、 特定の制限酵素 (BamHI- Hindi II、 もしくは Nhel-Hindlllの組み合わせ) でプラ スミ ドを消化した。 これを再び 1%ァガロースゲル電気泳動に供し、 ゲルより 目的 の DNA断片を回収した。
なお、本実施例では、図 4に示すように、プライマー EcR-A及びプライマー EcR - F により全長の EcR (EcR - AF)、 プライマ一 EcR_D及びプライマー EcR - Fにより EcR の D領域から F領域までのセグメント (EcR-DF)、 プライマー EcR - D及ぴプライマ 一 EcR- Erlにより EcRの D領域から E領域までのセグメン卜 (EcR - DE)、 プライマ 一 EcR- Ef及ぴプライマー EcR - Fにより EcRの E領域から F領域までのセグメント
(EcR-EF) 並びに、 プライマー EcR- Ef 及びプライマー EcR - Erlにより EcRの E領 域セグメント (EcR- E) をコードする DNA断片をそれぞれ取得した。 また、 本実施 例では、 図 5に示すように、 プライマー USP- A及ぴプライマー USP- Erlにより USP の A領域から E領域までのセグメント (USP - AE)、 プライマー USP - D及びプライマ
— USP-Erlにより USPの D領域から E領域までのセグメント (USP - DE) 並びにプ ライマー USP- Ef及びプライマー USP— Erlにより USPの E領域セグメント(USP-E) をコードする DNA断片をそれぞれ取得した。
形質転換
先ず、 得られた DNA断片がコードする EcR組換え体及び USP組換え体を、 大腸 -菌内で発現させるため、 形質転換ようの発現ベクターを構築した。 プラスミ ドべ クタ一は pET- 28b (+) (Novagen)を用いた。 このベクターには、 目的タンパク質の N末端にヒスチジン (His) タグが付加されるように構成されている。 このプラス ミ ド DNAは、 25mlの培養液より High Purity Plasmid Midiprep System (MARLINGEN BIOSCIENCE)を用いて調製した。 目的のインサート DNA力 トリプレットコドンの フレームのずれがなく、 正確にベクターに挿入されていることを確認し、 以降の 実験に供する発現ベクターとした。
次に、 上述のように構築した発現ベクター及び大腸菌 DH5 a株のコンビテント セルを用いて、 ヒートショック法及ぴエレク トロポレーション法によって形質転 換した。
質の発現
上述した発現べクタ一を保持する大腸菌 BL21 (DE3)株のシンダルコロニーを、 5 mLの LB培地に植菌し 37°Cで一晚浸盪培養した (前培養)。 その後、 培養容器は
500 mlのバッフル付きの三角フラスコあるいは坂口フラスコを用い、 そこに 100 mlの LB培地、 100 μ 1のカナマイシンを加え、これに 5 mlの前培養液を加えた。 37°Cで浸盪培養し (本培養)、 0D嶋が 0. 6〜0· 8になったところで IPTGを加え、 目 的タンパク質の誘導を開始した。 各コンス トラタ トの誘導条件を表 3に示した。 なお、 EcR-AFヽ EcR-DF、 EcR- DE、 EcR-EF及び EcR- Eについては、 同一の条件で行 つた。
表 3
IPTG終濃度 5 ¾=舰/义 時間
EcR 1 mM 37°C 3 h
USP-AE 0.1 mM 20°C 16 h
USP-DE 0.2 mM 26.5°C 6 h
USP-E 0.5 mM 26.5°C 4 h
誘導後、 培養液を 4°C、 8, OOOrpm, 5分間遠心して集菌した。 EcR組換え体は、 菌体を 15 mlの PBSで、 USP組換え体は、 10 mlの lysis buffer (50 mM NaH2P04/300 mM NaCl/10 mM imidazole (pH 8. 0) ) で良く懸濁し、 それぞれに 10 mgのリゾチ ーム (SIGMA) を加え、 低温室にてローテ一ターを用い、 1時間ゆるやかに懸濁し た後、 - 80°Cで凍結させた。 1時間以上経過した後、 解凍し超音波破碎機を用いて 120Wで 5分間 (USP組換え体)、もしくは 10分間 (EcR組換え体) 菌体を破碎し、 4°C、 10, OOOrpm, で 15分間遠心した。
EcR組換え体については、遠心後の沈殿画分を 4 mlの PBSに懸濁し、これに 25%
Triron X- 100を 1 mlを加えて室温で 4時間 晚、 ローテ一ターでゆるやかに 懸濁した。次に 4°C、 9, OOOrpmで 10分間遠心し、沈殿を 4 mlの PBSで 4°C、 9, OOOrpm で 5分間遠心し、 洗浄した。 この操作は、 Triton X- 100を除くように (沈殿がサ ラサラになるまで) 5〜10 回繰り返した。 最後に沈殿画分は上清を完全に除去し た後、 精製に用いるまで- 20°Cで保存した。 —方、 USP組換え体については菌体破 砕、 遠心後の上淸画分を次の精製に用いた。
次に、 SDS- PAGEにて確認した結果、発現した EcR組換え体(EcR- AF、 - DF、 - DE、 - EF、 -E) は、 不溶性の封入体画分に存在した (図 6 )。 一方、 USP のすベての発 現した組換え体 (USP- AE、 -DE、 - E) は、 その一部が可溶性画分で回収された (図 7 )。
なお、 SDS-PAGEに際しては、 以下のように行った。 サンプルは適量のサンプル
バッファー (0. 2M Tris-HCl (pH6. 8) / 8%SDS I 24% j3 -ME / 40%glycerol / 0. 05%BPB) と混合し、 100°Cで 5 分間処理して調製した。 また、 分子量マーカーは、 LMW Calibration Kit for SDS Electrophoresis (Amersham Biosciences) 用レヽ 7こ。 泳動終了後、ゲルを脱色液(50% メタノール /7% 酢酸) で 15分間固定した後、 CBB 染色液 (0. 25% CBB R- 250/50% メタノール /5% 酢酸) 中で 15分間浸盪した。 最後 -に、 脱色液でパッ.クグラウンドの色が抜けるまで脱色した。
発現した組換え体が目的のものであることを確認するために、 抗 Hi s_tag抗体 を用いたウェスタンブロッテイングを行った。 分子量マーカーは、 プレシジョン プレスティンドスタンダード (BIO- RAD) を用いた。泳動終了後、 プロッティング 装置を用いて、 ゲルを PVDF膜 (ATT0) に 100 mAで 30分間ブロッテイングした。 ブロッテイング終了後、 抗体の非特異的な吸着を防ぐために、 5%スキムミルク入 りの TBST (137 mM NaCl/2. 68 mM KC1/25 mM Tris/0. 05% Tween-20) 中で 2時間 からー晚、 ブロッキングを行った。 ブロッキング終了後、 TBSTで 10分間、 4回、 月莫を洗浄した。 次に TBST で 2, 000 倍希釈した anti - His-antibody (Amersham Biosciences)で室温にてィンキュベートした。 1. 5時間後、 TBSTで 10分間、 4回、 膜を洗浄し TBSTで 5, 000倍希釈した anti - mouse IgG conjugated HRPを加え、 室 温でィンキュベートした。 1時間後、 TBSTで 10分間、 4回、 膜を洗浄し、 HRPの 基貧として SuperSignal West Dura Extended Duration Substrate (Pierce) を 加え、 化学発光させ、 イメージングアナライザーで分析した。 その結果、 図 8に 示すように、 すべての発現産物は目的のものであった。 さらに、 SDS- PAGEに供し たサンプルをゲルより切り出して、 トリプシン消化により得られた消化物を、 MALDI-T0F-MSを用いてその分子質量を測定した。 図 9A、9B、9C、9D及ぴ 9Eに示す ように、 目的産物の消化物が確認されたことからも、 今回の発現産物はすべて目 的のものであった。
目的タンパク質の精製
(EcR組換え体)
EcR の組換え体は、 上述したように、 すべて不溶性の封入体を形成し、 発現産 物は封入体に存在していた。 このままでは、 後述するリガンドとの結合実験に用 いることができないので、 可溶化させリガンドと結合するように、 リフォールデ
イングする必要があった。 リフォールデイング反応には、 封入体を高濃度の尿素 やグァニジン塩酸塩水溶液で可溶化後、 徐々にそれらを除去していくことが必要 である。そのために、透析法や、希釈法などが良く行われている。本実施例では、 まず、 8 Mの尿素で可溶化した EcR組換え体を、 希釈法を用いたリフォールディ ング反応を試みたが、 尿素の終濃度が 1 M以下になると、 可溶化していたタンパ ク質が再び沈殿になり、 不溶化したのが観察された。 そこで、 ゲルろ過クロマト グラフィーを用いたリフォールデイングを試みた。 この方法の狙いは、 排除限界 が小さいゲルを用いることによって、 ゲルの孔隙に入ることのできない EcR組換 え体が排除限界の位置に溶出される。 一方、 尿素は低分子量のために、 ゲルの孔 隙に入り込み、 EcR組換え体より遅れて溶出される。 これにより、 可溶化した EcR 組換え体尿素溶液より、 尿素を除くことができ、 EcR組換え体は可溶化した状態 で回収できるのではないかと考えた。 このゲルろ過クロマトグラフィーを用いた リフォールデイング反応を行った結果、 すべての EcR組換え体は、 排除限界の位 置に溶出されたことを、 SDS - PAGEにより確認した (図 1 0 )。
溶出されたそれぞれの EcR組換え体を、 限外ろ過により濃縮した。 このサンプ ルの濃度を Bradford法により定量した。 その結果、 25 mlの培養液から 186 μ Ε の EcR— AF、 206 gの EcR— DF、 98 gの EcR— DE、 46 μ gの EcR— EF、 182 gの EcR- Eが得られた。 このように精製した EcR組換え体溶液を SDS - PAGEに供した際 の結果を図 1 1に示す。
(USP組換え体)
USP 組換え体は、 上述したように、 その一部が可溶性画分に存在していた (図 7参照)。 この USP組換え体には、 N末端に His-タグが付加していることを利用し て、 二ッケル榭脂を用いたァフィ二ティ一精製を行った (図 1 2 )。 限外ろ過によ り濃縮後、 Bradford法により定量した。 その結果、 100 mlの培養液から、 814 μ gの USP - AE、 417 μ gの USP- DE、 1. 3 mgの USP- Eが得られた。
〔実施例 3〕 EcR組換え体及び USP組換え体の発現 (動物培養細胞)
実施例 3では、 後述する実施例 4 「EcR組換え体及び USP組換え体を用いたリ ガンド結合能解析」におけるポジティブコントロールとして、動物培養細胞で EcR 組換え体及ぴ USP組換え体を発現させ、 細胞からの抽出液を調製した。
動物培養細胞としては COS - 7細胞を用いた。 発現用プラスミ ドとしては、 SR a プロモーターの下流に EcR-AF、 EcR-DF、 USP- AE又は USP- DEを挿入し、 それぞれ の N末端に FLAGタグを付けたものを用いた (図 1 3 )。
この発現用プラスミ ドに組み込まれる EcR - AFは、実施例 1でクローユングに用 いたプラスミ ドを铸型として、 一対のプライマー EcR- Af 及びプライマー EcR- Fr を用いた PCRによって得ることができる。 また、 発現用プラスミ ドに組み込まれ る EcR- DFは、実施例 1でクローニングに用いたプラスミ ドを铸型として、一対の プライマ一 EcR- Df及ぴプラィマー EcR - Frを用いた PCRによって得ることができる。 なお、 プライマー EcR-Af、 プライマー EcR- Df及びプライマー EcR-Frの塩基配列を 以下に示す。
EcR - Af : 5, - CATTAGGATCCATGTCCATAGAGTCGCGTTTAG- 3' (配列番号 4 8 )
EcR- Df : 5' - CATTAGGATCCAGGCCTGAGTGCGTGGTGCCT - 3' (配列番号 4 9 )
EcR-Fr: 5' -GATTTACTAGTCTAGAGCGCCGCGCTTTCCG-3' (配列番号 5 0 )
また、 この発現用プラスミ ドに組み込まれる USP-AEは、実施例 1でクローニン グに用いたプラスミ ドを鎳型として、 一対のプライマー USP- Af 及ぴプライマー USP-Erを用いた PCRによって得ることができる。 また、 発現用プラスミ ドに組み 込まれる USP- DEは、 実施例 1でクローユングに用いたプラスミ ドを铸型として、 一対のプライマ一 USP- Df及ぴプライマー USP - Erを用いた PCRによって得ることが できる。 なお、 プライマー USP- Af、 プライマー USP-Df及びプライマー USP- Erの塩 基配列を以下に示す。
USP-Af : 5' -ATAACGGATCCATGTCAGTGGCGAAGAAAGATAAG-3' (配列番号 5 1 )
USP-Df : 5' -ATTACGGATCCAAGAGGGAGGCAGTTCAAGAG-3' (配列番号 5 2 )
USP-Er: 5' -ATTACACTAGTTACATGACGTTGGCGTCGATG-3' (配列番号 5 3 )
各発現用プラスミ ド DNAを COS- 7細胞に対して単独で形質導入し、 48時間後の 細胞から抽出液をそれぞれ調製した。 また、 EcR_AFを挿入したプラスミ ド DNA及 ぴ USP-AEを挿入したプラスミ ド DNAを COS- 7細胞に対して共に形質導入し、同様 に抽出液を調製した。 さらに EcR - DFを揷入したプラスミ ド DNA及ぴ USP - AEを揷 入したプラスミ ド DNAを COS - 7細胞に対して共に形質導入し、 同様に抽出液を調 製した。 さらに EcR- AFを挿入したプラスミ ド DNA及び USP - DEを揷入したプラス
ミ ド DNAを COS - 7細胞に対して共に形質導入し、 同様に抽出液を調製した。 さら に EcR- DFを揷入したプラスミ ド DNA及び USP- DEを挿入したプラスミ ド DNAを COS- 7細胞に対して共に形質導入し、 同様に抽出液を調製した。 なお、 C0S-7細胞 における目的産物の発現は、抗 FLAG抗体を用いたウェスタンプロッティングによ つて確認した。
—以上のようにして、 EcR- AF、 EcR- DF、 USP- AE及ぴ USP- DEを単独で含む 4種類 の抽出液と、 共発現させた EcR - AF及ぴ USP - AE を含む抽出液と、 共発現させた EcR-DF及ぴ USP- AEを含む抽出液と、 共発現させた EcR- AF及び USP- DEを含む抽 出液と、 共発現させた EcR - DF及び USP-DEを含む抽出液とを準備した。
得られた抽出液に対して抗 FLAG抗体を用いたウェスタンブロッテイングを行 い、目的タンパク質の発現を確認した結果を図 1 4に示す。図 1 4に示すように、 すべての抽出液において、 目的とするタンパク質の単独発現及び共発現を確認す ることができた。
〔実施例 4〕 EcR組換え体及ぴ USP組換え体を用いたリガンド結合能解析 実施例 4では、 実施例 2及び実施例 3で得られた EcR組換え体及び USP組換え 体を用いて、 これら EcR組換え体及び USP組換え体の複合体とリガンドとの結合 能に関して解析した。 本例では、 リガンドとして、 植物由来のェクダイソンァゴ ニストであるボナステロン Aを使用した。
実施例 4において、 結合型と遊離型を分離するために、 チヤコールデキストラ ン法を用いた。 これはステロイ ドホルモンをリガンドとする場合の一般的な方法 で、 反応停止の際に、 デキストランでコーティングされた活性炭溶液を加えるこ とにより、 活性炭が受容体と未結合のリガンドを吸着する。 これを遠心分離する ことによって活性炭画分 (沈殿画分) と、 受容体/リガンドの複合体が存在する上 清画分とに分けることが可能となる。
実施例 4における実験のフローを図 1 5に示した。 すなわち、 まず、 Binding buffer (20 mM HEPES (pH 7. 4) /5 mM DTT/1 mM PMSF) にポナステロン Aの受容体
(EcR組換え体及ぴ USP組換え体の複合体)への非特異的な結合を防ぐため 1% の
BSAを添加した。 これに、 実施例 2で精製した EcR- AF、 EcR-DF, EcR-DE、 EcR-EF 或いは EcR- Eに対し、 それぞれ USP- AE或いは USP-DEを混ぜ、 終濃度 1. 37 nMの
[¾]ポナステロン A ( [24, 25, 26, 27- 3H] Ponasterone A (American Radiolabeled Chemicals Inc. ) ) を加えた。 これを 25 °Cで反応させ、 40分後に 200 μ 1の活性 炭溶液 (0. 5% Charcoal, dextran coated (SIGMA) /20 raM HEPES/50 mM NaCl) 添 加により反応を停止させた。 遠心分離後の上清画分を液体シンチレ一ターと混合 させ、 これを液体シンチレーシヨンカウンタ (AL0KA LSC-5100) を用いて放射活 性 (DPM) を測定した。 この時の測定値を全結合量とした。 また、 [¾]ボナステロ ン Aの 10, 000倍の非放射能標識ボナステロン Aを加えて同様の実験を行い、受容 体に対するリガンドの非特異的結合量を求めた。 受容体に対するリガンドの特異 的結合量は、 全結合量から非特異的結合量を引いた値とした。
結果を図 1 6に示す。 図 1 6により、 EcR- DF及び USP- AEの複合体と、 EcR - DF 及ぴ USP- DEの複合体には、 リガンドとの結合能が認められた。 一方、 の EcRおよ ぴ USPはいずれの長さでも、 単独では特異的な結合は見られなかった。
一方、 実施例 3で調製した抽出液を用いて、 同様に結合実験を行った。 その結 果、 図 1 7に示すように、 EcR_DFと USP_AE、 および EcR- DFと USP - DEを細胞内で 共発現させた場合に、リガンドとの強い結合が見られた(lane 7及び 8)。しかし、 これらの組み合わせを、 それぞれ単独で発現させたものを、 後で混合した場合に は、結合が見られなかった(lane 3及び 4)。また、 EcR- AFと USP- AE、および EcR- AF と USP - DEとの組み合わせにおいては共発現、およびそれぞれ単独発現後に混合し たもののいずれにおいても、 リガンドとの結合は見られなかった。
以上の結果より、 EcR- DFがポナステロン Aと結合することから、 E領域に加え、 少なくとも D領域と F領域の両方がボナステロン Aとの結合に必要であることが 分かった。これまで D領域は USPとの二量体化に関与することが示唆されている。 本実施例でえられた結果では、 二量体化がリガンドとの結合に必須であることを 強く支持する。 F領域に関しては、 そのアミノ酸の長さが非常に短く、 各生物間 の保存性も低くその構造化学的な活性についての役割があいまいなのが現状であ るが、 少なくともリガンドとの結合に重要な役割を担っている領域であることが 判明した。
一方、 大腸菌を用いた発現系及び哺乳類細胞を用いた発現系の両方において、
EcRの全長の組換え体 (EcR-AF) とポナステロン Aとの結合が認められたが、 極
めて弱いものであった。 したがって、 EcR に対するリガンドをスクリーニングす る際には、 全長の EcRを用いるのではなく、 EcR- DF組換え体を用いる必要がある ことが、 本実施例によって初めて明らかとなった。
〔実施例 5〕 結合実験の条件検討
実施例 5では、 上述した EcR - DF及び USP - AEの複合体とリガンドとの結合をよ 一- ^高効率で見られるように、複合体 -リガンド間の相互作用に重要であると考えら れる、モル比、反応時間、反応温度、および塩濃度の条件を検討することにした。 EcR-DF及び USP- AEのモル比の検討 -
EcR-DF及び USP- AEの複合体とリガンドとの結合反応に関して、 最適な反応時 間を以下のようにして検討した。 先ず、 一定量の EcR- DF に対し、 種々の濃度の USP-AEを加え、 ウォーターバス中 25°Cにて 40分間反応させた。 なお、 反応溶液 中のボナステロン Aは 1. 34 nMとした。 そして、 ポナステロン Aの複合体に対す る結合を測定した結果を図 1 8に示す。 図 1 8から判るように、 EcR- DF : USP- AE が約 1: 1でポナステロン Aの EcR- DF/USP- AE複合体に対する結合が飽和状態に達 した。 この結果から、 EcR - DF及ぴ USP - AEの複合体とリガンドとの結合反応に際 して、 EcR- DF : USP- AEを、 モル比で 1 : 1 とすることが好ましいと言える。 なお、 以降の実験では EcRHDF : USP- AEをモル比で 1 : 1で行うことにした。
反応時間の検討
EcR-DF及ぴ USP-AEの複合体とリガンドとの結合反応に関して、 最適な反応時 間を以下のようにして検討した。まず、 EcR-DFと USP- AEをモル比 1 : 1で混合し、 ウォーターバス中 25 °Cにて 1分、 5分、 15分、 30分、 60分、 120分、 240分間 反応させた。 なお、 反応溶液中のボナステロン Aは 1. 34 nMとした。 その結果を 図 1 9に示す。 図 1 9から判るように、 60分間の反応で、 ボナステロン Aの当言亥 複合体に対する結合が、ほぼ飽和状態に達した。この結果から、 EcR- DF及び USP-AE の複合体とリガンドとの結合反応に際して、 30〜90分の反応時間とすることが好 ましいと言える。 なお、 以降の実験では反応時間は 60分で行うことにした。 反応温度の検討
EcR-DF及ぴ USP- AEの複合体とリガンドとの結合反応に関して、 最適な反応温 度を以下のようにして検討した。 まず、 低温室内 4 °Cにて反応させる以外は、 上
記 「反応時間の検討」 と同様に結合反応を行った。 その結果を図 2 0に示す。 図 2 0から判るように、 低温室内 4 °Cにおいては、 結合が飽和に達する時間は 8時 間であった。 これに対して、図 2 0に示したように、反応温度 25 °Cにおいては、 結合が飽和に達する時間は 60分であった。 この結果から、 EcR- DF及ぴ USP-AEの 複合体とリガンドとの結合反応に際して、 20〜37°Cの反応温度とすることが好ま 一しいと言える。 なお、 以降の実験では反応温度は 25 °Cで行うことにした。
塩濃度の検討
EcR-DF及ぴ USP - AEの複合体とリガンドとの結合反応に関して、 最適な塩濃度 を以下のようにして検討した。まず、 EcR-DFと USP- AEとをモル比 1 : 1で混合し、 ウォーターパス中 25°Cで反応させた。 この時の反応溶液中の塩 (NaCl) 濃度を終 濃度 O mM、 50 mM、 100 mM、 300 mM、 500 mMで行った。 その結果を図 2 1に示す。 図 2 1から判るように、 塩濃度の増加と共に、 当該複合体に対するリガンドの特 異的結合が減少した。 この結果から、 EcR- DF及び USP - AEの複合体とリガンドと の結合反応に際して、 0〜100mM の塩濃度とすることが好ましいと言える。 なお、 以降の実験では反応溶液には塩を加えないものを使用した。
〔実施例 6〕 複合体とリガンドとの結合のスキャッチャード解析
実施例 6では、 EcR-DFと USP- AEを用いて、 以下のようにして、 複合体のポナ ステロン Aに対する解離定数を(Kd)を求めた。 まず、 EcR- DFと USP-AEをモル比
1 : 1 で混合し、 これに種々の濃度の [¾]ボナステロン Aを加えた。 この反応液に 遊離のリガンドを除くために活性炭溶液を加えた。 EcR- DF及ぴ USP-AEの複合体 の [¾]ボナステロン Aに対する結合量 (全結合量) は、 遠心分離後の上清画分の 放射活性を測定することにより求めた。 また、 [¾]ボナステロン Aの 10, 000倍の 非放射標識ボナステロン Aを加えて同様の実験を行い、 非特異的結合を求めた。 測定結果より結合曲線をプロットし他結果を図 2 2に示す。 そして、 図 2 2に示 した結合曲線における値をもとにスキャッチヤード解析を行った。 結果を図 2 3 に示す。 なお図 2 3において、 横軸は [¾]ボナステロン Aの特異的結合量(nM)を 示し、 縦軸は特異的結合量 (bound) Z全結合量-特異的結合量(free)を示す。 図 2 3から判るように、 スキャッチヤード解析の結果 1 本の直線が得られ、
Kd=2. 79 nM、 Bmax=0. 17 nMとなった。
〔実施例 7〕 昆虫抑制物質のスクリーニング系の構築
実施例 7では、 実施例 1乃至 6の結果に基づいて、 昆虫抑制物質のスクリー二 ング系を構築した。 実施例 1乃至 6に示したように、 ェクダイソンァゴニス トで あるボナステロン Aを用いた結合解析を行つた結果、 EcR- DF及び USP-AEの複合 体に対するボナステロン Aの結合が示された。 この系がスクリーニング系として -機能するかどうかは、 他のエタダイソンァゴニストとの結合も観察されなければ ならない。 そこで、 昆虫の生体内での活性型のエタダイソンである 20-ヒ ドロキ シェクダイソンと、合成ェクダイソンァゴニス トであるテブフエノジド (RH-5992) とを用いて、 EcR - DF及び USP-AEの複合体との結合実験を試みた。
まず、 実施例 4と同様に、 Binding bufferに EcR- DFに対して USP- AEを混ぜ、
[ 」ボナステロン Aを加えた。 また、 [¾]ボナステロン Aの 10, 000倍の 20-ヒ ド ロキシエタダイソン、 またはテブフエノジドを加えて同様の実験を行い、 非特異 的結合を求めた。その結果、 20-ヒ ドロキシエタダイソン及びテブフエノジド共に
EcR - DF及び USP - AEの複合体との結合活性が認められた。 そこで、 20 -ヒ ドロキシ エタダイソン、 またはテブフエノジドの濃度を変化させて同様の実験を行った。 その結果を図 2 4に示す。 図 2 4から判るように、 20-ヒ ドロキシエタダイソン及 ぴテブフヱノジドは、 共に濃度依存的に [¾]ボナステロン Aの当該複合体への結 合を阻害することが分かった。
以上の結果より、 EcR_DF と USP-AEを用いた結合実験を、 昆虫成育制御物質の スクリーユング系に用いることができることが判明した。
次に、 本実施例では、 EcR-DF及ぴ USP - AEの複合体に対する結合能を指標とし たスクリーニング系を用いて、 4種の化合物について当該結合能を評価した。 化 合物としては、 4一ノニルフエノール、 スチルベス トロール、 フタル酸ジェチル (内 分泌攪乱物質) 及び 17 jS -エス トラジオール (女性ホルモン) を用いた。
結果を図 2 5に示す。 図 2 5から判るように、 4 -ノユルフェノール、 スチルベ ストロール、 17 ]3 -エストラジオールについて、 EcR- DF及ぴ USP- AEの複合体に対 する結合活性が認められた。 特に 4 -ノ-ルフエノール、 スチルべス トロールにつ いては結合活性が強いものであった。 これまで EcRは、 基本的にポナステロン A など、 ステロイ ド骨格を有する化合物と結合することが知られている。 一方、 ス
テロイド骨格を持たないものでは、 テブフヱノジドなど数種に限られていた。 本 実施例において結合活性を示した物質は、 いずれもステロイド骨格は有しておら ず、 また EcRとの結合はこれまで知られていなかった。 また、 この結果から、 大 腸菌において発現した EcR-DFと、 USP- AE若しくは USP - DEとを用いたスクリ一二 ング系を、 昆虫成育制御物質の探索のための新たな系として確立することができ 。 産業上の利用の可能性
以上、 詳細に説明したように、 本発明によれば、 昆虫脱皮ホルモンに対して結 合することができる全く新規な脱皮ホルモン受容体を提供することができる。 ま た、 本発明によれば、 この脱皮ホルモン受容体を用いることで、 害虫駆除剤等に 応用可能な物質を効率的にスクリーニングことができる。
本明細書で引用した全ての刊行物、 特許および特許出願をそのまま参考として 本明細書にとり入れるものとする。