. 明 細 書 細胞周期調節蛋白質およびその使用 技術分野
本発明は、 新規なヒ ト細胞周期調節蛋白質、 それをコードするポリヌ クレオチド、 その製造方法及ぴ用途等に関する。 背景技術
肝細胞癌 (HCC) はヒ トにおいて最も多い癌の一つであり、 その発生が B型又は C型肝炎ウィルスの感染やそれに続く炎症、 肝臓の再生などと 深く関わることが知られており、 HCC発生の分子レベルのメカニズムに は不明な点が多い。 本願発明者らは既に、 ラット HCCと密接に関与し、 肝臓及び腎臓で特異的に発現するラット HP33蛋白質を見出すとともに、 この蛋白質がラッ ト HCC細胞や肝臓の再生過程で過剰に発現しているこ と、 また細胞内で微小管の中心体付近に局在し、 その局在が細胞周期に より変動することなどについて報告している(W099/000495、Tamura et al. Journal of Cell Science 112, 1353-1364 (1999) ) 。 又、 HP33蛋白質 はゥシ N—ァシルトランスフェラーゼと相同性が高く、 哺乳類のァシル トランスフヱラーゼファミリ一は肝再生や肝癌において発現レベルが変 化するとの報告がなされているが、 その分子レベルでのメカニズムは不 明であった。 また、 ラッ ト HP33や、 ゥシ N—ァシルトランスフェラーゼ に対応するヒ トホモログ蛋白質は、 全く知られていなかった。
ヒ ト HCCにおいて特異的に発現または増加している蛋白質やその蛋白 質をコードする遺伝子を同定し、 その蛋白質の機能を解明することがで きれば、 癌発生の機構解明と癌治療用の医薬品の開発に非常に有用であ
ると期待することができる。 一方で、 近年、 c DNAの断片である E S T が数多くデータベースに登録されており、 他の哺乳類等における配列情 報をもとにヒ トホモログ蛋白質をコードする DNA配列が探索されている 力 このように相同性のみに基づいて探索した遺伝子は偽遺伝子である 可能性が高いことも示唆されており、 それが実際にヒ トホモログ蛋白質 をコードするかどうかを確認し、 機能を解明するのはそれだけでは困難 である。 発明の開示
本発明者らは上記事情に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、 ラット HP33 蛋白質のァミノ酸配列を用いた TBLASTNデータベース検索により、 塩基 配列の相同十生が 6 3 %であるヒ トの遺伝子 (GenBank accession no. AB013093) を見出し、 これを 「FRM」 と名付けるとともに、 PCRにより FRM の DNA断片を増幅し、当該断片を使用してヒ ト肝臓の cDNAライブラリ一 をスクリ一-ングすることにより、いくつかのクローンを得るに至った。 そして、 これらのクローンを用いて配列を解析した結果、配列番号: 1に 記載された cDNAの全塩基配列を得た。 これにより、 ラット HP33とヒ ト FRMの cDNAはどちらも 8 8 8 b pのヌクレオチドからなり、 2 9 5のァ ミノ酸をコードすること、 両 DNAが有意に高い相同性を有していること を確認した .(identity 6 3 %、 simi larity 7 4 % ) 。 さらに、 ノーザ ンプロッ ト法によりヒ トの各臓器における FRM mRNAの発現解析を行つた ところ、ヒ ト FRM遺伝子がラット HP33遺伝子と同様に肝臓及び腎臓のみ で転写されていることを確認し、 又、 ヒ ト FRM蛋白質を特異的に認識す る抗体を用いた免疫組織学的手法により、 ヒ ト FRM蛋白質がラッ ト HP33 蛋白質と同様に HCC細胞において過剰発現していることを見出し、 これ らの共通点から、ヒ ト FRM蛋白質がラッ ト HP33蛋白質のヒ トホモログ蛋
白質であることを確認した。 本発明者らは以上の知見に基づいて、 本発 明を完成するに至った。
すなわち、 本発明は、 ( 1 ) 細胞周期調節蛋白質をコードする、 下記 (a ) から (d) のいずれかに記載のポリヌクレオチド: (a) 配列番 号: 2に記載のアミノ酸配列からなる蛋白質をコードするポリヌクレオ チド、 (b ) 配列番号: 2に記載のアミノ酸配列において 1若しくは複 数のアミノ酸が付加、 欠失、 置換及び/又は挿入されたアミノ酸配列か らなる蛋白質をコードするポリヌクレオチド、 (c ) 配列番号: 1に記 載の塩基配列を含む DNA、 (d) 配列番号: 1に記載の塩基配列から なる DNAとストリンジェ トな条件下でハイプリダイズするポリヌク レオチド; (2) 下記 (a ) から (c) のいずれかに記載の細胞周期調 節蛋白質又はその塩: (a) 配列番号: 2で表されるアミノ酸配列から なる蛋白質、 (b) 配列番号: 2で表されるアミノ酸配列において 1若 しくは数個のアミノ酸が欠失、 置換、 挿入及ぴ Z又は付加されたァミノ 酸配列からなる蛋白質、 ( c) 配列番号: 1に記載の塩基配列を含む D N Aによりコードされる蛋白質; (3) 前記 (2) に記載の細胞周期調 節蛋白質の部分ペプチド又はその塩; (4) 前記 (1) に記載のポリヌ クレオチドが揷入された組換えベクター ; (5) 前記 (4) に記載の組 換えベクターで形質転換させた形質転換体。 (6) 前記 (5) に記載の 形質転換体を培養して、 前記 (2)'に記載の蛋白質を生成せしめること を特徴とする、 前記 (2) に記載の細胞周期調節蛋白質又はその塩の製 造方法; (7)前記(2) に記載の細胞周期調節蛋白質若しくは前記(3) に記載の部分ペプチド又はそれらの塩に対する抗体; (8) 前記 (7) に記載の抗体を用いて前記 (2) に記載の細胞周期調節蛋白質またはそ の塩を定量する方法; (9) 前記 (2に記載の細胞周期調節蛋白質また はその塩の生物活性を亢進または阻害することを含む、 細胞周期調節方
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法; ( 1 0) G2〜M期の細胞において、 前記 (2) に記載の細胞周期 調節蛋白質またはその塩の生物活性を亢進または阻害することを特徴と する、 前記 (9) に記載の方法; (1 1 ) 細胞ががん細胞である、 前記 (9) または ( 1 0) に記載の方法; (1 2) 前記 (2) に記載の細胞 周期調節蛋白質またはその塩の細胞内における内在量を増加または減少 させることにより、 該蛋白質またはその塩の生物活性を亢進または阻害 することを特徴とする、 前記 (9 ) から (1 1) のいずれか 1に記載の 方法; (1 3) 抗がん剤の使.用を組み合わせてなることを特徴とする、 前記 (9) から (1 2) のいずれか 1に記載の方法; (14) 前記抗が ん剤の使用が、 前記 (2) に記載の細胞周期調節蛋白質またはその塩の 細胞内における内在量を増加または減少させる手段と同時であるカ あ るいは、 一定時間間隔をおいて該手段の前後である、 前記 (1 3) に記 载の方法; (1 5) 前記抗がん剤がタキソールまたはその塩である、 前 記 ( 1 3) または ( 1 4) に記載の方法; ( 1 6) 前記 (2) に記載の 蛋白質をコードするポリヌクレオチドの発現を亢進または抑制すること を含む、 前記 (9) から (1 1) のいずれか 1に記載の方法; (1 7) 前記 (2) に記載の細胞周期調節蛋白質をコードするポリヌクレオチド を標的とする RN A干渉 (RNA interference) により、 前記蛋白質の生 物活性を抑制することを含む、 前記 (1 2) に記載の方法; (1 8) R NA干渉に用いる RNA分子が、 配列番号: 4および配列番号: 5に記 載の塩基配列からなる二本鎖 RNA— DNAキメラ分子、 または配列番 号: 6および配列番号: 7に記載の塩基配列からなる二本鎖 RN A— D NAキメラ分子に記載の塩基配列を有する二本鎖 RNA— DNAキメラ 分子である、 前記 ( 1 7) に記載の方法; ( 1 9) 前記 (2) に記載の 細胞周期調節蛋白質をコードする mRNAの RNA干渉を媒介する作用 を有する、 1 9〜25塩基長の二本鎖 RNA分子または二本鎖 RNA—
DNAキメラ分子; (20) 配列番号: 4および配列番号: 5に記載の 塩基配列、 または配列番号: 6および配列番号: 7に記載の塩基配列か らなる、 前記 (1 9) に記載の二本鎖 RN A— DN Aキメラ分子; (2 1) 前記 (9) から (1 8) のいずれか 1に記載の方法の使用を含む、 細胞死の誘導方法; (22) 前記 (2) に記載の細胞周期調節蛋白質ま たはその塩の生物活性を亢進または阻害する物質を含んでなる医薬組成 物; (23) 前記物質が、 (a ) 前記 ( 1 ) に記載のポリヌクレオチド、
(b) 前記 (2) に記載の蛋白質若しくはその塩、 (c) 前記 (3) に 記載の部分ペプチド若しくはその塩、 または、 (d) 前記 (7) に記載 の抗体である、 前記 (22) に記載の組成物; (24) 肝疾患または腎 疾患の治療剤または予防剤である前記 (22) に記載の組成物; (25) 肝疾患が肝がんである、 前記 (24) 記載の組成物; (26) 肝疾患ま たは腎疾患の治療 ·予防剤の製造のための、 前記 (2) に記載の細胞周 期調節蛋白質もしくはその塩または前記 (3) 記載の細胞周期調節蛋白 質の部分ペプチドもしくはその塩の使用 ; (27) 前記 (2 2) に記載 の組成物の治療上有効量を患者に投与することを特徴とする、 肝疾患ま たは腎疾患の治療または予防方法; (2 8) 前記 (2) に記載の細胞周 期調節蛋白質もしくは前記 (3) に記載の部分ペプチドまたはそれらの niRNAを検出または定量することを含む、 肝疾患または腎疾患の診断 方法; (29) 細胞周期調節蛋白質をコードする前記 ( 1) に記載のポ リヌクレオチド、 前記 (2) に記載の細胞周期調節蛋白質もしくはその 塩、 または、 請求項 3に記載の部分ペプチドもしくはその塩を用いた、 細胞周期調節活性を有する化合物またはその塩のスクリ一二ング方法; (30) (a) 前記 (2) に記載の細胞周期調節蛋白質を発現する細胞 に被験試料を接触させ、 (b) 前記蛋白質の生物活性の変化を検出し測 定するか、 または、 当該細胞の細胞死を測定することを含む、 細胞周期
調節活性を有する化合物またはその塩のスクリーニング方法; (3 1 ) 細胞周期調節蛋白質をコードする前記( 1 )に記載のポリヌクレオチド、 前記 (2 ) に記載の細胞周期調節蛋白質もしくはその塩、 または、 前記 ( 3 ) に記載の部分ペプチドもしくはその塩を用いた、 細胞周期調節活 性を有する物質のスクリーユング用キッ ト ; (3 2 ) 前記 (2 9 ) もし くは (3 0 ) に記載の方法または前記 (3 1 ) に記載のキッ トにより単 離されうる、 細胞周期調節活性を有する化合物またはその塩、 に関する ものである。
本発明者らは、ヒ ト FRM蛋白質おょぴラット HP33蛋白質を用いて鋭意 研究を重ねた結果、 当該蛋白質について以下の事を見出した。
まず、 臓器特異的な発現及び HCCにおける過剰発現のメカニズムを探 索するため、 FRM蛋白質のゲノム DNA配列を解析したところ、 そのプロ モーター領域にいくつかの転写因子結合領域の候補を見出した。そこで、 それぞれの候補領域を欠損させたレポータープラスミ ドを作成してヒ ト 肝癌細胞 HePG2に導入した結果、 FRM蛋白質の発現には Spl結合領域及 び転写因子として Splが必要であることが朋らかになつた。
続いて、 FISH法による解析の後、 Ensembl Human Genome Serverを用 いて検索した結果、 FRM遺伝子が 1 1番染色体の 11 q 13. 2領域に位置す ることを確認した。
HCC細胞において Splが過剰発現することは既に報告されており(Yang, H. et al. , Faseb J (2001) 15 (9): 1507- 1516、 Xu, X. R. et al. , Proc Natl Acad Sci USA (2001) 98 (26) : 15089- 94) 、 また、 1 1番染色体の l lql3. 2 領域は、 各種癌疾患、 特に HCCと乳癌において増幅されることが知られ る (Gergely, F. , et al. , Proc Natl Acad Sci USA (2000) 97 (26): 14352—7、 Raff, J. W. et al. , Trends Cel l Biol (2002) 12 (5) : 222-5) 。 これらの 事実から、 HCCにおける FRM蛋白質の過剰発現は、 2つの異なる機構、
即ち転写制御と遺伝子増幅に由来することが明らかとなり、 FRM蛋白質 の過剰発現と HCCの相関性が示された。 このような特異的な発現の機構 は、ラット HP33蛋白質ゃゥシ N—ァシルトランスフェラーゼについては 解明されていなかった。
また、正常ラット由来の RL-34細胞株を用いて、 ラット HP33過剰発現 株及ぴ発現抑制株を作成し、 チュープリン、 DNA及ぴ HP33蛋白質を染色 して観察したところ、アンチセンス法により HP33蛋白質の発現を抑制し たものについては FRM蛋白質だけでなく、 チューブリンも消失している ことが確認された。
次に、 HP33アンチセンス発現プラスミ ドの導入により HP33蛋白質の 発現を抑制したラッ ト由来肝臓癌細胞株と、 通常のラッ ト由来肝臓癌細 胞株とをそれぞれラットに移植したところ、 HP33の発現が抑制された個 体においては、 発現抑制されていない個体に比較して、 腫瘍の増殖が有 意に抑制されることを確認した。
続いて、 FACS法によって、 HP33過剰発現株及び RL- 34細胞株における タキソール (Taxol) 感受性を比較したところ、 RL- 34細胞株においては 効果が見られない程度の微量のタキソールを添加しても、 HP33過剰発現 株においては G 1期の細胞が G 2 /M期に移行することが確認された。 こ のことから、 HP33の過剰発現とタキソールの共作用は、 当該細胞の死を 進行させるということができる。
さらに、 FRM蛋白質発現抑制株及ぴ FRM蛋白質過剰発現株での細胞分 裂時の DNAと微小管の様子を蛍光顕微鏡で観察したところ、 FRM蛋白質 発現抑制株の細胞において、 他の細胞における確率よりも有意に高い確 率で微小管の形成異常がおこることを確認した。
ヒ ト肝癌細胞株において、 s i R N A法 (R N A干渉) により該細胞 内のヒ ト FRM蛋白質の発現を抑制したところ、 前記細胞にアポトーシス が誘導されることを示した。 図面の簡単な説明
図 1は、ノーザンプロット法による FRMmRNAの発現解析の結果を示す。 図 2は、抗ラッ ト HP33抗体及ぴヒ ト FRM蛋白質の交差反応の実験結果 を示す。
図 3は、 抗ラット HP33抗体を用いて、 HCC細胞における FRM蛋白質の 発現を解析した免疫組織化学検査の結果を示す。
図 4は、 5 ' 末端を欠損した種々のプロモーター ルシフエラーゼ · レ ポーター系を示す模式図である。
図 5は、 HepG2細胞及び、 Hela細胞におけるルシフェラーゼ活性の比 較を示す。 '
図 6は、 Splを過剰発現させた場合とさせなかった場合の、 HePG2細胞 と Hela細胞におけるルシフェラーゼ活性の比較を示す。
図 7は、 FRM遺伝子の染色体上の局在を確認した FISH法による解析の 結果を示す。
図 8は、 ラッ ト HP33過剰発現株及ぴ発現抑制株において FRM蛋白質、 チュープリン及ぴ DNAを染色した結果を示す。
図 9は、ラッ ト由来肝臓癌細胞,株において HP33遺伝子の発現を抑制し た場合としなかった場合の、 腫瘍重量の変化を示す。
図 1 0は、 FRM過剰発現株におけるタキソール感受性検査の結果を示 す。
図 1 1は、 FRM発現抑制株における細胞分裂時の微小管形成異常の様 子を示す。
発明を実施するための最良の形態
以下、 本願明細書において記載する記号、 用語等の意義、 本発明の実 施の形態等を示して、 本発明を詳細に説明する。
本発明にかかる単離された FRMの cDNAの塩基配列を配列番号: 1に、 FRM蛋白質のァミノ酸配列を配列番号: 2に、 それぞれ示す。
本発明にかかるポリヌクレオチドは、配列番号: 2に記載のアミノ酸配 列からなる蛋白質をコードするポリヌクレオチドを含む。配列番号: 2に 記載のァミノ酸配列からなる蛋白質をコードする塩基配列を含む限りい かなるポリヌクレオチドであってもよく、 例えば DNAであっても、 mRNA 等の RNAであっても、 一本鎖であっても二本鎖であってもよい。 二本鎖 には、 二本鎖 DNA、 二本鎖 RNA及ぴ RNAZDNAハイブリッドが含まれる。 一本鎖の場合はセンス鎖であってもアンチセンス鎖であってもよい。又、 その配列が本発明に含まれる限り、 細胞や組織に由来するものも、 合成 されたものや増幅されたものも本発明に含まれる。
また、本発明にかかるポリヌクレオチドは、配列番号: 2に記載のアミ ノ酸配列において 1若しくは複数のアミノ酸が付加、 欠失、 置換及び Z 又は挿入されたァミノ酸配列からなり、配列番号: 2に記載のアミノ酸配 列からなる蛋白質と機能的に同等な蛋白質をコードするポリヌクレオチ ドも含む。 当該 「蛋白質」 は、 FRM蛋白質と同質の生物学的活性を有す る蛋白質を意味する。 このようなポリヌクレオチドは、 配列番号: 1に記 載の DNAに変異を導入することにより得られる。 かかる 「変異を導入す る方法」としては、例えば部位特異的変異導入法を用いることができる。 この方法によれば、 まず変異させたい遺伝子を M 1 3ファージ等のベタ ターの一部に組み込んで一本鎖環状のファージ DNAを得て、 これに変異 を導入するよう一部の塩基を変更して設計されたオリゴヌクレオチドを
ハイプリダイズさせたのち、 DNAポリメラーゼと DNAリガーゼで修復し て一部ミスマッチの状態になった二本鎖環状 DNAとする。 これを大腸菌 等に感染させて培養すると、 二本鎖の組換え体 M l 3の複製の際、 変異 株と非変異株が分離してそれぞれ一本鎖となって個々のファージ粒子に 入る。 そこで変異が導入された方の鎖のみ選ぶことで、 特定の部位に所 望の変異を有する配列を得ることができる。 この他、 適当な制限酵素を 用いて付着末端を生じさせ、 そのまま DNAリガーゼで連結して数塩基の 欠失を起こさせる方法、 エラーが起こりやすい条件下で P C Rにより増 幅することで一定の領域にランダムな変異を入れる方法、 Kunkel法、 Eckstein法など公知の方法、又はそれに準じた方法を用いて変異を導入 することができる。 また、 人為的に変異を導入したポリヌクレオチドだ けでなく、細胞内で自然に誘発された変異を有するポリヌクレオチドも、 配列番号: 2に記載のァミノ酸配列からなる蛋白質と機能的に同等な蛋 白質をコードする限り、 本発明に含まれる。
また、本発明にかかるポリヌクレオチドは、配列番号: 1に記載の塩基 配列を含む DNAも包含する。 配列番号: 1に記載の塩基配列を含む DNA としては、例えば配列番号: 1に記載の塩基配列がコードする蛋白質を含 む融合蛋白質をコードする DNAが挙げられる。 このような DNAは、 配列 番号: 1に記載の塩基配列を含む DNAと、融合させる蛋白質をコードする DNAとを、 フレームが一致するように連結することで得ることができる。 例えば、 配列番号: 1に記載の塩基配列のいずれかの末端に 7つの Histidineをコードするポリヌクレオチドを連結して発現させれば、 Hi s タグを有する FRM蛋白質を得ることができるので、 NTA
(Nitri lotriacetic acid) カラムに吸着し、 0 〜 4 0 0 mMのイミダゾ ールを含む緩衝液で溶出することができる。
本発明にかかるポリヌクレオチドには、配列番号: 1に記載の塩基配列 からなる DNAとス トリンジヱントな条件下でハイプリダイズするポリヌ クレオチドも含まれる。 前記ストリンジェントな条件は適宜選択するこ とができるが、 好ましくは、 1 X S S C、 0. 1 %S D S、 6 0°Cとい つた条件とすることができる。 ス トリンジヱンシ一は S S Cの濃度及び 温度などでコントロールすることができ、 高ストリンジェントな条件を 選択すれば、 より高い相補性を有するポリヌクレオチドを得ることがで きる。 ハイプリダイズするポリヌクレオチドは DNAであっても RNAであ つてもよい。
本発明にかかる FRM蛋白質は、ラット HP33蛋白質のヒ トホモログ蛋白 質であり、 そのアミノ酸配列が FRM蛋白質に含まれる限り、 生体に由来 する蛋白質も合成された蛋白質も本発明に含まれる。 FRM蛋白質は、 例 えばヒ トの肝細胞ゃ腎細胞のホモジネートから通常の蛋白質精製の方法 によって精製して得ることができ、 後述のように本発明のポリヌクレオ チドを揷入した発現ベクターを適当な宿主に導入することで得ることも できる。 又、 自体公知の無細胞系蛋白質合成方法によっても製造するこ とができる。
本願明細書における蛋白質のァミノ酸配列は通常のぺプチド表記に従 レ、、 左端が N末端、 右端が C末端である。 本発明の蛋白質の C末端は通 常カルボキシル基 (一 COOH) 又はカルボキシレート (一 COO一) であるが、 C末端がアミ ド (_CONH2) 又はエステル (一 COOR) 化されているものも本発明に含まれる。ここで、エステルの Rとしては、 例えば 1〜 1 0個好ましくは 1〜 6個の炭素数のアルキル基であること ができ、 直鎖であっても分岐鎖であってもよく、 飽和していても 1っ以 上の二重結合を含有してもよく、 1つ以上の官能基を有していてもよい。 また、 N末端がホルミル基、 ァセチル基などのァシル基で保護されてい
るものや、 ピログルタミン酸化されているものも本発明に含まれる。 N 末端及ぴ C末端以外のアミノ酸の側鎖上の置換基がアミ ド化、 エステル 化されているもの、ホルミル基ゃァセチル基などで保護されているもの、 又、 糖鎖が結合した糖蛋白質などの複合蛋白質も本発明に含まれる。 本発明にかかる FRM蛋白質は、配列番号: 2で表されるアミノ酸配列か らなる蛋白質に加え、 配列番号: 2に記載されたアミノ酸配列において、 1若しくは複数のアミノ酸が付加、 欠失、 置換及び/又は挿入されたァ ミノ酸配列からなる蛋白質も含む。該蛋白質は、配列番号: 2で表される ァミノ酸配列からなる蛋白質をコードする DNAに変異を導入することに より製造することができる。 具体的には、 例えば上述の部位特異的変異 導入法を用いて配列番号: 1に記載の塩基配列の特定の部位に所望の変 異を導入し、 この DNAを揷入したベクターで形質転換した形質転換体を 培養することにより、 目的の蛋白質を発現させることができる。
本発明にかかる「配列番号: 1に記載の塩基配列を含む DNAによりコー ドされる蛋白質」 とは、 例えば配列番号: 1に記載の塩基配列からなる DNAと別の蛋白質をコードする DNAが連結された DNAがコードする蛋白 質全体を意味する。 このような蛋白質には、 FRM蛋白質を含む融合蛋白 質が含まれ、配列番号: 1に記載の塩基配列を含む DNAが挿入された発現 ベクターで形質転換された形質転換体を培養し、 発現した蛋白質を回収 することにより得られる。 融合させる蛋白質は特に限定されないが、 マ ルトース結合蛋白質 (MBP) 、 ダルタチオン S トランスフェラーゼ (GST) などが精製のために好ましく、 また Hi sタグのようなオリゴぺプチドで あってもよい。 GFP等の蛍光蛋白質との融合蛋白質は検出の際有用であ る。
本発明における 「塩」 は、 薬理学的に許容される塩である限りにおい て特に種類は限定されず、 例えば塩酸塩、 リン酸塩、 臭化水素酸塩、 硫
酸塩などの無機酸との塩、 あるいは酢酸塩、 ギ酸塩、 プロピオン酸塩、 フマル酸塩、 マレイン酸塩、 コハク酸塩、 酒石酸塩、 クェン酸塩、 リン ゴ酸塩、 安息香酸塩、 メタンスルホン酸塩、 ベンゼンスルホン酸などの 有機酸との塩が挙げられる。
本発明はまた、 FRM蛋白質の部分ペプチドを含むが、 該 「部分ぺプチ ド J としては例えば、 FRM蛋白質がその生理的リガンドと結合する部位 に相当するぺプチドが挙げられる。このような部分ぺプチドを用いれば、 FRM蛋白質がそのリガンドと結合するのを拮抗的に阻害することが可能 であり、 また FRM蛋白質の結合部位に結合しうる化合物のスクリ一ニン グにも用いることができる。 FRM蛋白質の部分ペプチドは、 遺伝子工学 的手法で得ることもできるし、 公知の固相または液相ぺプチド合成法に より合成することもでき、 また FRM蛋白質を適当なぺプチダーゼや臭化 シアンなどで切断することによつても得ることができる。
本発明にかかる組換えベクターは、 本発明のポリヌクレオチドが揷入 された組換えべ ターを意味し、 宿主細胞内で本発明のポリヌクレオチ ドを発現させることができるものであれば制限はなく、 プラスミ ド、 フ ァージ、 コスミ ドのいずれであってもよい。 プラスミ ドとしては、 大腸 菌ゃ緑膿菌などのグラム陰性菌由来、 枯草菌などのグラム陽性菌由来、 Staphylococcus由来、 酵母由来のものなどがあり、 宿主に適合するよう 選択される。 また薬剤耐性遺伝子や栄養要求性を有する遺伝子などを選 択マーカーとして適宜挿入しておくことにより、 プラスミ ドの安定性や 有用性を向上させることができる。 ファージとしては、 例えば大腸菌を 宿主とする場合に良く用いられる λ ファージ系ゃ M l 3ファージ系な どが挙げられ、溶菌ファージであるか溶原ファージであるかを問わない。 動物細胞を宿主とする場合は、 ベクターとして S V 4 0、 パピローマウ イノレス、 ワクシニアウイノレス、 レ トロゥイノレス、 ノ キュロ ウイノレスなど
のウィルス DNAを用いたものが使用される。 又、 選択された宿主におい て FRM蛋白質が効率よく発現するよう、宿主に適したプロモーター配列、 ェンハンサー配列、 シャインダルガーノ配列、 シグナル配列、 ポリ Aシ グナルなどを適宜選択し、 ベクターに挿入することができる。
本発明にかかる形質転換体は、 本発明の組換えベクターで形質転換さ せた形質転換体も含む。 本発明の形質転換体は、 本発明の DNAが揷入さ れたベクターに適した宿主を選択し、 この宿主に前記ベクターを導入す ることにより得られる。 宿主としては、 例えば大腸菌や緑膿菌などのグ ラム陰性菌、 枯草菌などのグラム陽性菌、 放線菌、 酵母、 糸状菌、 動植 物培養細胞、 昆虫培養細胞などが挙げられる。 動物細胞の場合は健常動 物由来の細胞 (例えばラット由来 RL - 34) であっても、 疾患を有する動 物由来 (例えば肝臓癌ラッ ト由来 FAA- HTC1) であってもよい。 また、 動 物細胞を宿主とする方法には、 動物の受精卵に遺伝子を導入することに より、 その遺伝子を先天的にもったトランスジエニック動物を得て、 そ の動物が産生する蛋白質を得る方法も含まれる。 その他、 ショウジヨウ バエに Pエレメントという転移因子を用いて遺伝子を導入する方法、 バ キュロウィルスをカイコに感染させ、 カイコが産生した蛋白質を体液か ら得る方法も含まれる。
ベクターの導入方法としては、 宿主が大腸菌である場合には塩化カル シゥム法、 枯草菌を宿主とする場合にはコンビテントセル法や酢酸リチ ゥム法、枯草菌、放線菌、酵母などにはプロ トプラス ト法、動植物細胞、 酵母、 細菌などに広く用いられる方法としてリン酸カルシウム共沈法、 エレク トロポレーション法、 DEAE-デキストランゃポリブレンなどのポリ マーと複合体を形成させる方法などから適宜選択することができる。又、 カチオン性脂質のリボソームと複合体を形成させるリポフエタ トァミン (Invitrogen社) を用いることもできる。
本発明はまた、 本発明の形質転換体を培養して、 FRM蛋白質又はその 塩を生成せしめることを特徴とする、 FRM蛋白質又はその塩の製造方法 も含む。形質転換体の培養は、宿主細胞の特性、発現する蛋白質の特性、 プロモータ一の特性などにより選択することができ、 例えば MEM培地、 DMEM培地、 Williams E培地 (Gibco社) 等の公知の培地を使用すること ができる。 また、 例えば抗生物質耐性を有するプラスミ ドを用いた場合 は、 当該抗生物質を培地に添加することにより目的蛋白質の発現を調節 することができ、又ラク トース依存性プラスミ ドを使用した場合は IPTG を培地に添加して発現を誘導することができる。
このようにして得た形質転換体を培養して発現させた FRM蛋白質は、 通常の蛋白質の精製方法を用いて精製することができ、 使用した発現系 により、 例えば各種クロマトグラフィー、 限外濾過法、 塩析、 浸透圧シ ョック法、 超音波処理などを組み合わせて精製することができる。 クロ マトグラフィ一法としては、 例えば、 水溶液中で行うイオン交換クロマ トグラフィー、 ゲル濾過、 疎水クロマトグラフィー、 ァフィ -ティーク 口マトグラフィー、 有機溶媒を用いる逆相クロマトグラフィーなどが挙 げられる。本発明はこれらの精製方法を用いて精製された蛋白質も含む。 また、 発現させた蛋白質は、 精製前又は精製後に適当な蛋白質修飾酵 素を用いて修飾を加えたり部分的にぺプチドを除去したりすることもで き、 これらの修飾された蛋白質も本発明に含まれる。 蛋白質修飾酵素と しては、 トリプシン、 キモトリプシン、 プロテインキ^ "一ゼゃグルコシ ダーゼなどが挙げられる。 尚、 当業者は、 発現した蛋白質が遊離した状 態であれば塩に、 塩として得られた場合に遊離した状態に容易に変える ことができる。
本発明にかかる抗体は、 FRM蛋白質に特異的に結合するものであれば よく、 ポリクローナル抗体であっても、 モノクローナル抗体であっても
よい。 ヒ ト以外の哺乳動物を本蛋白質で免疫することによって得た抗体 のほか、 ヒ ト抗体や、遺伝子組換えにより得られた抗体も、本発明の FRM 蛋白質に特異的に結合する限り本発明に含まれる。 本発明にかかる抗体 は、 自体公知またはそれに準じた方法により製造することができるが、 以下に代表的方法を例示する。 ポリクローナル抗体は、 FRM蛋白質を用 いて哺乳動物、 好ましくはマウスやラッ ト等のげつ歯目、 ゥサギ目、 サ ルなどの霊長目の動物を免疫し、 血清を得て、 この血清を FRM蛋白質又 は部分ぺプチドを固定したァフィ二ティーカラムに通して精製すること により得ることができる。 またモノクローナル抗体は、 まず同様に哺乳 動物を免疫し、 この動物から得た抗体産生細胞と、 増殖力の強いミエ口 一マ細胞とを融合させ、 個々の融合細胞を分離し、 求める抗体の生産能 を検定することによって抗原の一つのェピトープに特異的に反応する抗 体分子を 1種だけ生産する細胞を選択し、 この細胞を培養することによ つて製造することができる。 またモノクローナル抗体は、 モノクローナ ル抗体のアミノ酸配列をコードする DNAをベクターに挿入し、 このべク ターを宿主に導入して産生させて遺伝子工学的方法で得ることもできる。 ヒ ト抗体遺伝子を導入したトランスジエニック動物を免疫すれば、 ヒ ト 抗体を産生することもでき、 マウスのモノクローナル抗体の抗原結合部 位をコードする c DNAとヒ トの I g G遺伝子の定常部をコードする遺伝 子を連結してこれを Bリンパ球に導入すればキメラ抗体分子を生産させ ることも可能であり、 これらの抗体も本発明に含まれる。 本発明の抗体 は、 FRM蛋白質を特異的に認識して結合する限り、 フラグメントや修飾 された抗体であってもよい。抗体のフラグメントとしては例えば、 F ( a b ) 、 F ( a b ' ) 2、 F cフラグメント、 またはシングルチェイン F vなどが挙げられ、 修飾された抗体としては例えばポリエチレングリコ ールなどの化合物と結合された抗体などが挙げられる。本発明の抗体は、
FRM蛋白質の精製や検出、 定量に用いることができるし、 また FRM蛋白 質の生物学的活性を亢進または抑制する作用を有する場合には、 ァゴニ ス ト又はアンタゴエス トとなり うる。
本発明は、本発明の抗体を用いて、 FRM蛋白質を定量する方法も含む。 具体的には、 本発明の抗体 (フラグメントを含む) を適当な方法で標識 し、 この標識を検出及び 又は定量することにより、 FRM蛋白質を検出 及び Z又は定量することができる。 標識の方法には、 放射性同位体や安 定同位体を用いる同位体による方法と、 抗体分子の末端を蛍光性の基や 紫外部や可視部に吸収を持つ置換基で標識する置換基による方法、 酵素 標識して酵素活性を測定する方法などがある。 標識する抗体は、 本発明 の抗体であってもよいし、 また本発明の抗体を抗原として認識する二次 抗体であってもよい。
本発明にかかる 「細胞周期調節方法」 とは、 細胞内にある FRM蛋白質 の生物活性を変化、 即ち、 亢進または阻害することにより、 前記細胞の 細胞周期を調節して細胞分裂を制御する方法を意味する。 前記 「生物活 性を亢進または阻害する」 とは、 FRM蛋白質に直接または間接的に作用 することにより、 FRMの生物活性を変化させることを意味し、 例えば、 (l) FRM蛋白質をコードする遺伝子の発現を亢進または抑制することに よって FRM蛋白質を過剰発現または発現抑制すること (例えば、 該蛋白 質をコードするポリヌクレオチドの転写制御により蛋白質発現を亢進ま たは抑制する) ; (2) FRM蛋白質を添加する等により内在量を増加または 減少させること;(3) FRM蛋白質と直接または間接的に相互作用すること により FRMの活性を亢進または阻害すること、 等があげられる。 かかる 「亢進または阻害」するために有用な物質の具体例としては、例えば FRM 蛋白質をコードするポリヌクレオチド、 RNA干渉作用を有する二本鎖 RNA、 FRM蛋白質またはその塩、 FRM部分ペプチドまたはその塩、 FRM蛋白質の
抗体、 FRM蛋白質のァゴニス ト 'アンタゴ-ス ト、 その他 FRM蛋白質に 親和性を有する物質等があげられる。 例えば、 前記 「細胞周期調節方法」 を用いることにより、 用いられた細胞に細胞死 (アポトーシス) を誘導 することができる。
本発明にかかる前記 「細胞周期調節方法」 は、 好ましくは増殖中の細 胞、 即ち、 細胞分裂過程にある細胞において有用で、 G 2期から M期の いずれかの段階にある細胞に最も有用である。 対象となる細胞は正常細 胞でもがん細胞 ·腫瘍細胞であってもよく、 がん細胞に用いれば、 抗が ん作用 ·抗腫瘍作用が得られる。
前記 RNAi (または s iRNA) 法に用いる二本鎖 RNAまたは二本鎖 RNA_ MAキメラ分子は、 FRM蛋白質をコードする遺伝子を不活性化、 即ち、 該 遺伝子の発現を抑制する作用を奏する限りにおいて得に限定されないが、 好ましくは 1 9〜2 5塩基長を有する二本鎖 RNA分子または二本鎖 RNA - DNAキメラ分子であり、 より好ましくは 1 9〜2 3塩基長、 最も好ま しくは 2 3塩基長を有する二本鎖 RNA分子または二本鎖 RNA— DNAキメラ 分子である。 例として以下の塩基配列を標的 DNAとする二本鎖 RNA分子 があげられ、 かかる RNA分子は、 二本鎖のうちの一方を以下のいずれか の DNA塩基配列をセンス鎖とし、 他方はその相補鎖、 即ち、 該センス配 列に対するアンチセンス鎖である。
(1) 5' - AACTGTCTTTCACATAAACCATG- 3' (配列番号: 8 )
(2) 5' -AATCTGAAGGCTGTGGTGGACAA-3' (配列番号: 9 )
(3) 5' -AAGGCTGTGGTGGACAAGTGGCC-3' (配列番号: 1 0 )
(4) 5' - AAGTGGCCTGATTTTAATACAGT- 3' (配列番号: 1 1 )
(5) 5' - AATACAGTGGTTGTCTGCCCTCA- 3' (配列番号: 1 2 )
(6) 5' -AATACTTACCAAATCTACTCCAA-3' (配列番号: 1 3 )
(7) 5, - AATTCCTTGGATCACCAGAACTC- 3, (配列番号: 1 4 )
(8) 5 _ AACTCATCAACTGGAAACAGCAT-: 3 (配列番号: 1 5 )
(9) 5' - AACTGGAAACAGCATTTACAGAT-: 3 (配列番号: 1 6 )
(10) 5 -AATGAGGCTATACAAAATCTTGC- -3 (配列番号 1 7 )
( 11) 5 -AAGTCCTTCAAAGTCAAACAAAC- -3 (配列番号 1 8 )
( 12) 5' -AACGCATTCTCTATATGGCAGCT- -3 (配列番号 1 9 )
( 13) 5' -AAGGAACTGACTCCTTTCCTGCT- -3 (配列番号 2 0 )
(14) 5 -AACTGACTCCTTTCCTGCTGAAA- -3 (配列番号 2 1 )
(15) 5' -AAGGCCATCAACCAAGAGATGTT- - 3' (配列番号 2 2 )
(16) 5 -AACCAAGAGATGTTTAAACTCTC- -3 (配列番号 2 3 )
(17) 5' -AAGAGATGTTTAAACTCTCATCC -3 (配列番号 2 4 )
(18) 5 -AATAAATTCTGGCATTTTGGTGG -3 (配列番号 2 5 )
(19) 5 -AATGAGAGGAGCCAGAGATTCAT- - 3 (配列番号 2 6 )
(20) 5 -AATGGACCAGACTGGAGAGATGA -3 (配列番号 2 7 )
(21〕 5 -AATGGCAGGCACCTTGCCGGAAT -3' (配列番号 2 8 )
' (22〕 5 -AATACCGGCTCCATGGCCTTGTG -3 (配列番号 2 9 )
本発明者らは、 ヒ ト F應蛋白質及ぴラッ ト HP33蛋白質は、肝臓および 腎臓において特異的に発現すること、 HCCにおいて過剰発現しているこ と、癌細胞においてその発現を抑制すると腫瘍の増殖が抑制されること.、 細胞内において過剰発現させた上で、 式
【化 1】
で表されるタキソール (Taxol (Pacl i taxel ;
(2R, 5R, 7S, 10R 13S) - 10 20 - Bi s (acetoxy) - 2 - benzoyloxy - 1 7-dihydroxy
— 9一 oxo - 5, 20-epoxytax-l l-en-13-yl
(3S) -3-benzoylaraino-3-phenyl-D-lactate) ) またはその塩を添加する とその細胞の死が誘導されること、 アンチセンス法により細胞内での発 現が抑制されるとその細胞のアポトーシスが誘導されること、 アンチセ ンス法により細胞内での発現が抑制されるとその細胞で微小管形成の異 常が発生する確率が高くなること等を見出した。
本発明にかかる 「細胞周期調節方法」 は、 各種抗癌剤との併用される 方法であってもよい。 前記抗癌剤として好適なのは、 タキソールまたは その塩である。 抗癌剤の使用は、 FRM蛋白質の生物活性を亢進または阻 害する手段を用いるのと同時であってもよいし、 一定時間間隔をおいて 前記手段の前または後の使用であってもよい。 FRM蛋白質の細胞内濃度 を変化させたり、 FRM蛋白質の生物活性を亢進または抑制する物質は、 医薬の有効成分として有用である。 FRM蛋白質の細胞内の濃度が増加ま たは減少するとアポトーシスが誘導されることから、 FRM蛋白質の生理 学的作用を阻害する作用を有する抗体、 化合物又は FRM蛋白質をコード するポリヌクレオチドに対するアンチセンスオリゴヌクレオチドを投与 することにより、 アポトーシス抑制による疾患の予防及び/又は治療等 に寄与することができる。 より具体的には、 FRM蛋白質は肝臓及び腎臓 で特異的に発現していることから、 これらの臓器の細胞内における FRM 蛋白質濃度を減少させることにより、 当該細胞のアポトーシスを誘導す ることができる。 アポトーシス抑制による疾患とは、 例えば各種癌疾患 や自己免疫疾患などが挙げられ、 最も好適には肝細胞癌 (肝がん) に有 効であると期待することができる。 その他、 FRM蛋白質を患者の細胞内 に投与したり、 FRM蛋白質をコードするポリヌクレオチドを患者に投与 して発現させたり、 対象となる細胞に FRM蛋白質をコードするポリヌク レオチドを導入して発現させた後に、 この細胞を患者の体内に移植した
り して、 当該細胞のアポトーシスを抑制することができ、 アポトーシス 亢進による疾患の予防及び/又は治療に有用であると期待することもで きる。 細胞のアポトーシスを抑制するためには、 本発明にかかる FRM蛋 白質の機能を亢進する抗体や化合物を当該細胞に投与することもできる。 アポトーシス亢進による疾患とは、 例えば、 エイズや肝炎などのウィル ス感染症や、 アルツハイマー病などの神経変性疾患などが挙げられる。 本発明にかかる 「医薬組成物」 とは、 細胞周期調節蛋白質 (F應) また はその塩の生物活性を亢進または阻害する物質を含んでなる医薬組成物 である。 該物質は、 FRM蛋白質の生物活性を亢進または阻害する活性を 有するものである限りにおいて得に限定されず、 FRM蛋白質をコードす る遺伝子の発現を亢進または抑制する物質、 FRM内在量を増加させる物 質、 FRM蛋白質の活性を亢進または阻害する作用を有する物質等が含ま . れる。 これらの物質の具体例としては、 例えば FRM蛋白質をコードする ポリヌクレオチド、 FRM蛋白質またはその塩、 FRM部分べプチドまたはそ の塩、 FRM蛋白質の抗体、 FRM蛋白質のァゴニスト 'アンタゴニスト等が あげられる。 即ち、 前記医薬組成物の有効成分物質は、 FRM蛋白質に直 接または間接的に作用して、 FRMの生物活性を変化させるものであれば よい。
本発明にかかる医薬組成物の用途は特に限定されないが、 とりわけ肝 疾患または腎疾患の治療剤または予防剤として有用である。 前記肝疾患 と腎疾患の例は特に限定されず、 医学的にこれらの疾患に分類される全 ての疾患を含む。 肝疾患として特に有効なのは肝がんである。
本発明にかかる医薬靼成物を治療剤又は予防剤として使用する場合は、 通常の手段に従って製剤化することができる。 例えば、 本発明の医薬組 成物は薬理的に許容しうる担体と均一に混合して使用することができる。 前期担体は、 投与に望ましい製剤の形態に応じて、 広い範囲の形態をと
ることができ、 経口的に又は注射により投与しうる単位服用形態にある ことが望ましい。懸濁剤及ぴシロップ剤のような経口液体調整物は、水、 ショ糖、 ソルビトール、 果糖等の糖類、 ポリエチレングリコール等のグ リコール類、 ゴマ油、 ォリーブ油、 大豆油当の油類、 ァキルパラヒ ドロ キシベンゾエート等の防腐剤、 ス トロベリー ' フレーパー、 ペパーミン ト . フレーバーなどのフレーバー類を使用することができる。 散剤、 丸 剤、 カプセル及び錠剤は、 乳糖、 ブドウ糖、 ショ糖、 マンニトール等の 賦形剤、 デンプン、 アルギン酸ソーダ等の崩壌剤、 マグネシウムステア レート、 タルク等の滑沢剤、 ポリ ビュルアルコール、 ヒ ドロキシプロピ ルセルロース、 ゼラチン等の結合剤、 脂肪酸エステル等の表面活性剤、 グリセリン等の可塑剤等を用いて製造できる。 また、 注射用の溶液は、 塩溶液、 グルコース溶液、 又は塩水とグルコース溶液の混合物からなる 担体を用いて調整することができる。
又本発明のポリヌクレオチドを予防剤や治療剤として使用する場合に は、 本発明のポリヌクレオチドを単独で、 またはレトロウイルスベクタ 一、 アデノウイルスベクターなどの適当なベクターに挿入した後、 公知 の手段によって投与することができる。 本発明のポリヌクレオチドは、 単独で、 あるいは摂取促進のための補助剤とともに、 遺伝子銃やハイ ド 口ゲルカテーテルのようなカテーテルによって投与できる。
本発明にかかる「スクリ一二ング方法」とは、細胞周期調節蛋白質(FRM) をコードするポリヌクレオチド、 FRMもしくはその塩、 または、 FRMの部 分ぺプチドもしくはその塩を用いた、 細胞周期調節活性を有する化合物 またはその塩のスクリ一二ング方法を意味する。 該スクリ一ユング方法 としては、 例えば、 (a ) FRM蛋白質を発現する細胞に被験試料を接触 させ; (b )前記蛋白質の生物活性の変化を検出し測定するか、 または、 当該細胞の細胞死を測定することを含む、 細胞周期調節活性を有する化
合物またはその塩のスクリ一ユング方法があげられる。 スクリ一二ング に用いる FRM蛋白質は、 ヒ トの細胞から抽出されたものでもよく、 遺伝 子組換えにより得られたものでもよく、 前記方法で得られた部分ぺプチ ドであってもよい。
他のスクリーニング法の例として、 FRM蛋白質に結合する蛋白質のス クリ一ユング方法として例えばウェスタンプロッティング法が挙げられ る。 被検試料としてある細胞の全蛋白質を S D S (Sodium dodecyl sulfate) を含む緩衝液で溶解抽出したのち、 S D S—アクリルアミ ドゲ ル電気泳動にかけ、 分子量に従って分離展開する。 次にゲル中に展開さ れた蛋白質をュトロセルロース膜に電気転写する。 そして標識した FRM 蛋白質をこの膜に接触させ、 この標識を検出することにより、 FRM蛋白 質に結合する蛋白質のパンドを検出することができる。 標識の方法とし ては、 ラジオアイソトープを利用する方法、 蛍光を利用する方法、 FRM 蛋白質と標識となる蛋白質の融合蛋白質を利用する方法などがある。 ま た、 FRM蛋白質自体を標識せず、 本発明にかかる抗体を標識して、 ニト ロセルロース膜上の蛋白質に結合した FRM蛋白質を検出する方法も可能 である。
本発明にかかる FRM蛋白質に結合する低分子化合物のスクリーニング 方法としては、 例えば FRM蛋白質をビォチンで標識し、 ビォチンとアビ ジンの反応を利用して FRM蛋白質を基質上に固定し、 これに低分子化合 物を含む被検試料を接触させる。 この方法の場合、 FRM蛋白質と低分子 化合物の結合は、 低分子化合物を予め標識しておくことで検出すること も可能であり、 例えば表面プラズモン共鳴を利用したシステムや質量分 析計を利用して標識をせずに結合を検出することも可能である。
また、 FRM蛋白質をァフィユティーカラム内に固定し、 被検試料をこ のカラム内に通し、 カラムに特異的に結合した化合物を精製することに よっても、 FRM蛋白質に結合する化合物を得ることができる。
FRM蛋白質に結合する活性、 又は FRM蛋白質の生物学的活性を変化さ せる活性を有する化合物は、 天然由来であっても、 人工的に合成された 化合物であってもよい。
本発明にかかるスクリ一ユング用キッ トとは、 本発明にかかるスクリ 一ユング方法の実施に用いるためのキッ トであり、 即ち、 細胞周期調節 蛋白質 (FRM) をコードするポリヌクレオチド、 FRM蛋白質もしくはその 塩、 または、 FRM蛋白質の部分ペプチドもしくはその塩を用いた、 細胞 周期調節活性を有する物質のスクリーニング用キットをいう。
本発明にかかるスクリ一二ング方法またはスクリ ユング用キッ トに より単離される化合物またはその塩は、 細胞周期調節活性を有する化合 物またはその塩である。 前記化合物またはその塩は、 FRM蛋白質の生物 活性を亢進または抑制する活性を有する。
本発明はまた、 細胞内における FRM蛋白質の量を調節することを含む 各種癌疾患、 自己免疫疾患、 ウィルス感染症若しくは神経変性疾患の治 療方法または予防方法を提供する。 本発明者らは、 既に述べたように、 ラッ ト肝臓癌細胞株を移植したラットにおいてアンチセンス法により HP33蛋白質の発現を抑制したところ、腫瘍細胞の増殖が抑制されること を確認した。 また、 RNA i法により細胞内における FRM蛋白質の発現を抑 制したところ、 当該細胞のアポトーシスが誘導されることを見出した。 さらに、細胞内で HP33蛋白質を過剰発現させ、 同時に Taxolを添加する と、 当該細胞の死が誘導されることを確認した。 以上より、 細胞内にお ける FRM蛋白質量を調節することにより、 アポトーシス関連疾患、 好ま しくは癌疾患、 さらに好ましくは肝臓癌の治療又は予防をすることがで
きると期待される。 細胞内における FRM蛋白質量の調節は、 本発明にか かる医薬組成物の治療上有効量を患者に投与することによりおこなうこ とができる。
また、 本発明は、 FRM蛋白質若しくは部分ペプチド又はその塩をマー カーとして肝臓癌又は腎臓癌を診断する方法も提供する。上述のように、 FRM蛋白質は HCC細胞において過剰発現しているので、 ある細胞ないお ける FRM蛋白質や、 本発明のポリヌクレオチド、 好ましくは FRM蛋白質 をコードする mRNAを検出及び/又は定量し、 過剰発現しているかどう かを確認することで、 その細胞が HCCに侵されているかどうかの診断を することができる。 ポリヌクレオチドの検出及び定量には公知の方法を 使用することができ、 例えば、 FRM蛋白質をコードする DNAをプローブ とした競合ハイブリダィゼーシヨン法や、 ドッ トブロッ ト法、 ノーザン プロッ ト法、 R Nァーゼプロテクションアツセィ法、 R T (Reverse Transcript ion) 一 P C R法などの発現解析方法を用いることができる。 FRM蛋白質の検出及ぴ定量も公知の方法を使用することができる。 例え ば本発明の抗体 (フラグメントを含む。 ) を使用して、 適当な標識を用 いて検出又は定量する方法のほか、 各種質量分析法を用いて FRM蛋白質 と等しい質量の蛋白質量を計測し、 これを健常者の平均値を比較する方 ¾、 電気泳動により FRM蛋白質を検出する方法などを用いることができ る。
以下、 本発明を実施例により具体的に説明するが、 本発明はこれら実 施例に制限されるものではない。
[実施例 1 ] ヒ ト FRM c DNAの単離、 及ぴ配列解析
T B L A S T Nデータベース検索により、ラット HP33蛋白質のアミノ 酸配列をコードする塩基配列と相同性の高い (6 3 % ) ヒ ト遺伝子
(GenBank accession no. AB013093) を見出した。 この遺伝子配列の断
片を P C Rにより増幅し、 ヒ ト肝臓 c DNAライブラリーのスクリーニン グに用い、 いくつかのクローンを得た。 これらのクローンの配列を解析 した結果、 ヒ ト c DNAが 8 8 8 b pのヌクレオチドからなり、 2 9 5の アミノ酸をコードすることが確認された。 c DNAの塩基配列を配列番号: 1に、アミノ酸配列を配列番号: 2に示す。 ヒ ト FRM蛋白質の分子量は 3 4 k Dと計算された。
[実施例 2 ] ノーザンプロッ ト法による、 FRMmRNAの発現解析
Random Primed DNA Label ing Kit (Roche Diagnostics社) 用いてヒ ト FRM蛋白質の c DNAを放射能ラベルし、プローブとした(1 X 106 cpm/ml) 0 仕様書に従って、 2 ug/lane のポリ(A) +RNAがプロッ トされた Mult iple Ti ssue Northern (MTN) membrane (Clontech社) ίこ前記プローブを/ヽィ ブリダィズさせ、 オートラジオグラフィ一により検出した。 結果を図 1 に示す。
[実施例 3 ] FRM抗体を用いた HCC細胞におけるヒ ト FRM蛋白質の発現 解析
3 - 1 . FRM及び ΗΡ33抗体の交差反応の確認
pET- 3a発現ベクターに、 N末端に Flagタグ及ぴ Hi stidineタグを有 する HP33及び FRMのコード領域を挿入し、 IPTG誘導により、ラッ ト HP33 及びヒ ト FRM蛋白質を E. Col i BL21 (DE3) pLysS 株を用いて過剰発現 させた。 E. Col iの菌体を超音波処理のにより破壌し、 Ni- NTAァガロー ス(Qiagen社)によって上清をァフィ二ティ精製した。得られた組換え蛋 白質 5 O ngを 12, 5% SDS- PAGEで分離後、 PVDF膜 (Mil l ipore社) に転 · した。 HiTrap NHt>— activated Column (Amersham Pharmacia Biotech) にヒ ト FRM蛋白質を固定して抗ラット HP33抗体をァフィ二ティー精製し、 3000倍に希釈した。蛋白質は Alkal ine phosphatase conjugate substrate kit (BioRad) のプロ トコルにしたがって検出した。結果を図 2に示す。
3 - 2 . HCC細胞における FRM蛋白質の過剰発現の検出
ヒ ト FRM蛋白質の免疫組織化学検査は、 H( 組織片を用いて、 Sasaki らによる Avidin- biot in peroxidase complex (ABC) 法に従って、 標準 的な手法により行った。 組織片はァフィ -ティー精製された抗ラッ ト HP33抗体とィンキュベーションした。結果を図 3に示す。上段は健常者、 下段が HCC患者から得た組織片である。
[実施例 4 ] FRMのゲノム DNA配列解析とプロモーターの研究、 F I S H、 及び臓器特異的発現と HCCにおける過剰発現機構
4 — 1 . ヒ ト FRMのゲノム DNAクローンの単離
4 - 2 . プロモーター Zレポーター ' プラスミ ドの構築
FRMゲノム P 1クローンをテンプレートとして、 FRM遺伝子の一2932 の下流、 + 102の上流部分の DNA断片 (pBS- 2932) を P C Rにより作成 し、 pBluescript II SK+ の EcoRV部位にサブクローニングした。 -822 から +102までの配列を配列番号: 3に示す。 そして、 この pBS- 2932を テンプレートとして、 5 ' 末端を欠損した種々のプロモーター/ルシフエ ラーゼ · レポーター系 (p'Luc- 2932から pLuc+1) を構築し、 ルシフェラ ーゼ発現ベクターの pGL3— Basi c (Promega社) の Smal部位にサブクロ 一ユングした。 プロモータの欠損の種類を図 4に示す。 図中、 それぞれ の数字は 5, 末端を表す。 pLuc- 255- Splは Apal部位から EcoRI部位(Spl 様モチーフを含む) を欠損することにより作成した。 全てのプラスミ ド は配列を確認した。
4— 3 . 細胞培養、 遺伝子導入、 ルシフェラーゼ ' アツセィ
HePG2細胞は 10%FCS、 lOOuM NEAA溶液 (Gibco社) 及ぴ抗生物質を含 む MEM培地 (Gibco社) で、 HeLa細胞と RL34細胞は、 10%FCSと抗生物 質を含む DMEM培地 (Gibco社) で、 FAA- HTC1細胞は 10%FCS、 2mM
L-Glutamine及ぴ抗生物質とともに Wi ll iams E培地 (Gibco社) で培養
した。 ノレシフェラーゼ 'アツセィには、 30% confluenceの培養細月包を 2 4穴プレート (Falcon社) に用意し、 350ng/wel l の pGL3— Basic由来 のレポーター遺伝子と、 コントロールとして 5ng/wel lの pRL- TK
(Promega社)を cotransf ect ionさせた。 Splを用いたルシフエラーゼ · アツセィに関しては、 Spl/PcDNA3. 1 (+)を 50ng/wel l、 同様に
cotransf ect ion せ 7こ。 遺伝子の専人【こ fま Lipof ectamine Plus (Gibco 社)を用いた。 4 8力 ら 6 0時間後、 Dual Luciferase Kit (Promega社) と TD20 luminometer (Promega社)を使用してルシフヱラーゼ活性を測定 し、 コントロールの pRL- TK活性を基準として標準化した。結果を図 5及 ぴ図 6に表す。
4— 4 . Fluorescence in s itu hybridization (FISH)
ヒ トの血液からリンパ球を単離して解析した。 Gibco BRL BioNick label ing kitを使用し、 dATP存在下で P 1クローン由来のヒ ト FRM遺伝 子断片をビォチン化してハイプリダイゼーションのプローブとした。 FISH法は、 Hengら (1992) の方法及び Hengと Tsui ( 1993) による方法 に従った。 染色体は DAPIにより染色された。 結果を図 7に示す。
[実施例 5 ] HP33過剰発現株及び発現抑制株におけるチューブリンと FRM蛋白質の挙動
5— 1 . HP33過剰発現株の作成
ラッ ト HP33の cDNAを用いてラタ トース依存性動物細胞発現用 HP33 発現プラスミ ドを作成し、 正常ラット由来の RL- 34細胞株にリボフエタ トアミンを用いて遺伝子導入を行った。遺伝子導入後 2日目に、 400ug/ml のハイグロマイシン、 400ug/mlのジエネテシンが入った培地に取替え、 培養を行った。 その後 HP33を発現させるため 5mM IPTGを添加して HP33 の発現を行った。
5 - 2 . HP33の発現抑制株の作成
テトラサイクリン依存性動物細胞発現用 HP33アンチセンス発現プラ スミ ドを作成し、テトラサイクリン活性化因子ベクターと G418耐性遺伝 子ベクターと共にリボフヱク トァミン (Invitrogen社) を用いて RL34 株に導入した。 導入後 2日目に 400ug/mlのジヱネテシン、 15ug/mlのテ トラサイタリンが入った培地に取替え、 培養を行い、 G418耐性の細胞株 を分離した。 HP33の発現抑制はテトラサイクリンを含まない培地で培養 することにより行った。
5— 3 . チューブリン、 HP33蛋白質、 DNAの染色
RL - 34細胞を力パーグラス上で 4 %パラホルムァルデヒ ド、 5mM EGTA、 2ra gC12入り リン酸ナトリウム緩衝液にて 8分間固定後、 Triton X- 100 にて 5分間膜透過処理を行い、 1 % B S Aにて 1時間プロッキング反応 を行った。 ブロッキング後、 1 % B S Aにて 2000倍希釈した抗 α -チュ 一プリン抗体、 200倍希釈した抗 ΗΡ33抗体を用いて 1時間反応を行い、 その後 100倍希釈した FITC標識ロバ抗ゥサギ IgG、 Texas Red標識ヒッ ジ抗マウス IgGにて 1時間染色を行った。最後に 1 ug/mlの DAPIにて DNA を染色し観察に供した。 結果を図 8に示す。
[実施例 6 ] ラット由来肝臓癌細胞株 FAA- HTC1における HP33遺伝子の 発現抑制と腫瘍増殖抑制効果
Wister Ratにラッ ト由来肝臓ガン細胞株 FAA- HTC1 (FAA) 、 HP33発現 抑制株 (ひ 1、 α 14) を 106個経腹投与を行い、 2力月後の腫瘍増殖の様 子を観察した。 ΗΡ33発現抑制株はテトラサイクリン依存性動物細胞発現 用 ΗΡ33アンチセンス発現プラスミ ド (pTet- ΗΡ33) を作成し、 親株であ る FAA細胞株にリボフヱク トアミンを用い遺伝子導入を行った。 遺伝子 導入後、 2 日目に 400 g/mlのジエネテシン 15ug/mlのテトラサイクリ ンが入った培地に取替え、 培養を行い G418耐性の細胞株を分離した。 HP33の発現抑制はテトラサイタリンを含まない培地で培養することに
より行った。 結果を図 9に示す。 グラフはラット体重における腫瘍重量 の割合である (n=3) 。 FRM蛋白質の発現を抑制したラットでは、 腫瘍重 量の増加がほとんど見られなか.つた。
〔実施例 7 ] FRM過剰発現株における Taxol感受性
培養フラスコ中の RL- 34、 ファーム過剰発現株(それぞれタキソール 0 or 0. luM含む DMEM培地で 2 4時間培養)をトリプシン/ EDTAにて 37°C、 3分処理し、 血清を含む腿 EM培地で反応を停止、 細胞浮遊液を得、 その 後、 冷 PBS (FACS用 PBS) にて 3回洗浄し、 最終的に 3mlの PBSに懸濁 した。この懸濁液に 7mlの - 20°Cエタノールを激しく攪拌しながら滴下し、 細胞を固定した。 固定した細胞は- 20°Cで一晩固定し、 その後、 PBSで 2 回洗浄した後、 0. 5mg/mlの RNAseを含む PBS500ulに懸濁し、 プロビデ ィゥムィォダイ ド (PI) を細胞浮遊液中に加え、 室温にて 10分間反応さ せる。 この溶液を、 FACS解析に用いた。 結果を図 1 0に示す。 図中、 ピ クが二つ見られるものについては、左のピークは G1期にある細胞、右 のピークは G2/M期にある細胞を示す。 過剰発現株に Taxol を添加した ものは G1期の細胞が極端に減少し、 G2/M期の細胞が増大している。
[実施例 8 ] F應発現抑制株における細胞分裂時の微小管形成異常
RL - 34細胞株、 ファーム過剰発現株、 ファーム発現抑制株での細胞分 裂時の DNA、 微小管の様子を蛍光顕微鏡にて観察した。 細胞を力バーグ ラス上で 4%パラホルムアルデヒ ド、 5mM EGTA、 2mM MgC12入り燐酸ナト リゥム緩衝液にて 8分間固定後、 Triton X- 100にて 5分間膜透過処理を 行ない、 1%BSAにて 1時間プロッキング反応を行なった。 ブロッキング 後、 1%BSA にて 200倍希釈した抗微小管抗体を用いて 1時間反応を行い その後 20倍希釈した FITC標識ャギ抗マウス IgG、 1時間染色を行った。 最後に l ^ g/mlの濃度の DAPIにて DNAを染色し観察に供した。結果を図 1 1に示す。 上段のパネルはファーム蛋白発現抑制株の DNA、 微小管を
示す。 パネル内右下には RL- 34細胞の様子を示す。 下段グラフはそれぞ れの細胞をスライ ドグラス上にて培養し、 微小管染色を行った後の微小 管形成異常があった細胞の顕微鏡下にて計数し、 全細胞数に対する異常 細胞の割合を示す。
[実施例 9 ] siRNA法を用いたヒ ト FRMの発現抑制によるアポトーシス の誘導
( 1 ) ヒ ト肝癌細胞株 HePG2における FRM 遺伝子発現抑制の影響 ' ヒ ト肝癌細胞株 HepG2を 1 X 104個の濃度にて 6穴培養皿で培養を行 つた。培養 2日目に 200nMの濃度の FRM遺伝子に相補的な 2本鎖 RNA- DNA キメラを培養中に添加し、 遺伝子発現抑制を行った。 用いた FRM遺伝子 に相補的な 2本鎖 RNA- DNAキメラの配列として、 以下に示す配列番号: 4と配列番号: 5とに記載の塩基配列からなる 2本鎖、または配列番号: 6と配列番号: 7とに記載の塩基配列からなる 2本鎖を用いた。 また、 対照群には、 配列番号: 3 0と配列番号 3 1とに記載のランダムな塩基 配列からなる 2本鎖 RNA - DNAキメラを用いた。
FRM: 5' -UUC CUU GGA UCA CCA GAA C-TT-3' (配列番号 4)
5, -GUU CUG GUG AUC CAA GGA A - TT - 3, (配列番号 5 )
FRM: 5' -GGC CAU CAA CCA AGA GAU G-TT-3' (配列番号 6 )
5' -CAU CUC UUG GUU GAU GGC C-TT-3' (配列番号 7 )
Cont: 5' -UUC UCC GAA CGU GUC ACG A-TT-3' (配列番号: 3 0)
5' - ACG UGA CAC GUU CGG AGA A-TT-3' (配列番号: 3 1 ) 上記オリゴヌクレオチドを培養中に添加後、 24h, 48h, 72hの細胞の 様子を示す。
結果: FRM 遺伝子に相補的な 2本鎖 RNA- DNAキメラ添加群では経日的な 細胞の減少が観察されるが、対象群では細胞の減少は観察されなかった。
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( 2) FRM遺伝子発現抑制したヒ ト肝癌細胞株 HePG2における細胞死の 機序
ヒ ト肝癌細胞株 HepG2を 1 X 104個の濃度にて 6穴培養皿で培養を行 つた。培養 2日目に 200nMの濃度の FRM遺伝子に相補的な 2本鎖 RNA- DNA キメラを培養中に添加し、 遺伝子発現抑制を行った。 用いた FRM遺伝子 に相補的な 2本鎖 RNA- DNAキメラの配列は以下の配列を用いた。 また、 対照群にはランダムな塩基配列の 2本鎖 RNA- DNAキメラを用いた。
FRM: 5, -UUC CUU GGA UCA CCA GAA C- TT- 3, (配列番号: 4)
5' -GUU CUG GUG AUC CAA GGA A- TT- 3, (配列番号: 5 )
FRM: 5' -GGC CAU CAA CCA AGA GAU G-TT- 3' (配列番号: 6 )
5, -CAU CUC UUG GUU GAU GGC C- TT- 3' (配列番号: 7)
Cont: 5' -UUC UCC GAA CGU GUC ACG A- TT- 3, (配列番号: 3 0)
5, -ACG UGA CAC GUU CGG AGA A- TT- 3' (配列番号: 3 1 ) 上記オリゴヌクレオチドを培養中に添加後、 48h, 72hで細胞を回収し、 細胞より核を抽出し、 DNAの断片化をァガロース電気泳動にて観察した。 核の抽出こ ίま Apoptotic DNA— Ladder kit ( RocheDiagnostics社)を用!/ヽ た。
結果: FRM 遺伝子に相補的な 2本鎖 RNA- DNAキメラ添加群では DNAの断 片化が観察されるが、 対象群では DNAの断片化は観察されなかった。 こ の断片化はアポトーシスを起こした細胞に特徴的に見られるが、 FRM遺 伝子の発現を抑制したヒ ト肝癌細胞株 HepG2ではアポトーシスにより細 胞が死んでいくことを示す。 産業上の利用可能性
本発明により新規なヒ ト細胞周期調節蛋白質 (FRM蛋白質) 、 それを コードする遺伝子、 該蛋白質を用いる細胞周期調節方法を提供すること
ができた。 本発明にかかる細胞周期調節方法を用いることにより、 細胞 死を誘導することができ、 細胞死に基づく各種疾患の治療 ·予防を行う ことが可能である。 FRM蛋白質は、 ヒ ト HCCや細胞のアポトーシス等に 密接に関与しており、 FRM蛋白質や FRM蛋白質を特異的に認識する抗体 等を利用して癌発生の機構解明やアポトーシス関連疾患の医薬品の開発 のためのスクリーニング等を容易に行うことができる。