明 細 書
I型糖尿病の検査方法 技術分野
本発明は、 塩基配列多型を検出することを特徴とする I型糖尿病の検査方法、 該検査方法に使用されるプライマー及びプローブ、 並びに該プライマー及び Zま たはプローブを含む I型糖尿病の検査試薬または検査キットに関する。
本発明は更に、 二本鎖 DNA多型検出法 (DSCA) を用いることを特徴とするハプ 口タイプの検出方法に関する。
背景技術
I 型糖尿病 (インスリン依存性糖尿病) は腾臓 細胞を標的とする自己免疫疾 患であり、 その発症には遺伝的な要因すなわち何らかの遺伝子変異が関与すると 考えられている。 この遺伝的な要因を同定する目的で以前より HLAの解析が行わ れており、 本疾患への感受性および抵抗性を規定する遺伝子が HLA領域内に存在 することが示され、 特に HLA-DR/DQ領域内の DRB1遺伝子と DQB1遺伝子の関与が 明らかとなっている。 しかしながら、 HLA に連鎖した本疾患への感受性 ·抵抗性 は、 必ずしも DRB1と DQB1遺伝子のみでは説明出来ない。 さらに最近の欧米人に おける詳細な家系解析では、 最も関連の強い領域は DR/DQ領域であるが、 それと は別に TNF領域近傍にも強い関連を示す領域があり、 そこには本疾患への感受性 および抵抗性をコントロールする遺伝子が存在すると推定される(Zavattari P ら, Hum Mol Genet (2000) 20: 2967-2972)。
本発明者らは日本人本症患者を対象とした HLA領域内遺伝子群の解析を行って おり、 本症への感受性 ·抵抗性が DRB1と DQB1の相互作用によってコントロール されること(Yasunaga Sら, Tissue Antigens (1996) 47: 37- 48)、本症への感受 '性に HLA- Bが関与すること(Hamaguchi Kら, Tissue Antigens (2000) 55: 10-1 5)を報告して来た。
発明の開示
本発明者らは HLA領域内の多数のマイクロサテライ トマ一力一の多型解析を行 い、 本症への感受性 ·抵抗性と強く関連する領域として、 DR/DQ領域おょぴ HLA - B領域の 2領域以外に、 もうひとつ TNF近傍領域を発見した。 さらに、 この TNF 近傍領域内に存在する IKBL1遺伝子に着目した解析を行い、 本遺伝子のプロモー ター領域の 4箇所に多型(Allcock RJNら, Imraunogenetics (2001) 52: 289-293) が存在することを確認した。 また、 IKBL1 遺伝子のプロモーター多型は、 それぞ れが異なる転写因子の結合配列に類似した配列部位に認められることから、 これ らのプロモーター多型、 ないしプロモーター多型ハプロタイプは IKBL1遺伝子の 転写制御における個体差と関連することが示唆される。
しかしながら、 これらの多型と I型糖尿病との直接の関連については知られて おらず、 また特定のハプロタイプとの関連については全く報告されていない。 本発明者らは I型糖尿病と IKBL1遺伝子との関連を直接解明することを目的と して、 このプロモーター多型を個別に識別 ·検出する方法に加え、 個々の多型を 一括した多型ハプロタイプとして識別するための実用的なタイビング法を開発し た。 開発したタイピング法は二本鎖 DNA構造多型解析法 (double standard conf ormation analysis, DSCA) (Arguello JR ら, Nature Genet (1998) 18: 192 19 4; Fukuda Yら, Tissue Antigens (1995) 45: 49-56)を基本原理とするが、 タイ ビングに用いるレファレンスに挿入、 欠失または置換変異を人為的に導入するこ とで、 タイビング精度を飛躍的に向上させたものである。
従って、 本発明は IkBLl遺伝子のプロモーター領域の多型を検出することを特 徴とする I型糖尿病の検査方法に関する。 又、 本発明は多型、 特にハプロタイプ の検出方法に関する。 さらに、 本発明は IkBLl阻害物質を有効成分とする I型糖 尿病治療薬に関する。
すなわち、 本発明は、 以下の (1 ) 〜 (1 1 ) を提供する。
( 1 ) 以下の (a ) から (d ) のいずれかの塩基の多型を検出することを特徴 とする、 I型糖尿病の検査方法。
( a ) 配列番号 1 7で表される塩基配列上の第 6 7〜 7 4番目の塩基またはそ の相補鎖上の対応する塩基
( b ) 配列番号 1 7で表される塩基配列上の第 1 7 1番目の塩基またはその相
補鎖上の対応する塩基
(c) 配列番号 1 7で表される塩基配列上の第 2 3 3番目の塩基またはその相 補鎖上の対応する塩基
(d) 配列番号 1 7で表される塩基配列上の第 4 3 3番目の塩基またはその相 補鎖上の対応する塩基
(2) 上記 (a) から (d) の塩基の多型のハプロタイプを検出することを特 徵とする、 上記 (1) に記載の I型糖尿病の検査方法。
(3) I型糖尿病の検査に用いるための、 以下の (a) から (d) のいずれか に記載のプライマー。
(a) 配列番号 1.7で表される塩基配列からなる DNAまたはその相補鎖にハイ ブリダイズし、 かつ配列番号 1 Ίで表される塩基配列上の第 6 7〜 74番目の塩 基またはその相補鎖の対応する塩基を挟み込むように設計された DNAプライマー
(b) 配列番号 1 7で表される塩基配列からなる DNAまたはその相補鎖にハイ ブリダィズし、 かつ配列番号 1 7で表される塩基配列上の第 1 7 1番目の塩基ま たはその相捕鎖の対応する塩基を挟み込むように設計された DNAプライマー
(c) 配列番号 1 7で表される塩基配列からなる DNAまたはその相補鎖にハイ ブリダィズし、 かつ配列番号 1 7で表される塩基配列上の第 2 33番目の塩基ま たはその相捕鎖の対応する塩基を挟み込むように設計された DNAプライマー
(d) 配列番号 1 7で表される塩基配列からなる DNAまたはその相補鎖にハイ ブリダィズし、 かつ配列番号 1 7で表される塩基配列上の第 433番目の塩基ま たはその相補鎖の対応する塩基を挟み込むように設計された DNAプライマー
(4) 以下の (a) から (d) のいずれかの塩基を含む領域にハイブリダィズ するオリゴヌクレオチド。
(a) 配列番号 1 7で表される塩基配列または該塩基配列上の第 6 7〜74番 目の塩基中に 1塩基が揷入された塩基配列からなる DNAの第 6 7〜74番目及ぴ 挿入された 1塩基を含む塩基
(b) 配列番号 1 7で表される塩基配列または該塩基配列上の第 1 7 1番目の 塩基が他の塩基に置換された塩基配列からなる DNAの第 1 Ί 1番目の塩基
(c) 配列番号 1 7で表される塩基配列または該塩基配列上の第 2 3 3番目の 塩基が他の塩基に置換された塩基配列からなる DNAの第 23 3番目の塩基
(d).配列番号 1 7で表される塩基配列または該塩基配列上の第 4 3 3番目の 塩基が他の塩基に置換された塩基配列からなる DNAの第 4 3 3番目の塩基
(5) I型糖尿病の検查のために用いるプローブである、 上記 (4) に記載の オリ ゴヌクレオチド。
(6) 上記 (3) に記載のプライマー及ぴノまたは上記 (5) に記載のプロ一 ブを含む、 I型糖尿病の検査試薬。
(7) 上記 (3) に記載のプライマー及び/または上記 (5) に記載のプロ一 ブを含む、 I型糖尿病の検查キット。
(8) I型糖尿病の検査に用いるための、 以下の(a)から(d)のいずれかに記 載の DNA。
(a) 配列番号 1 7で表される塩基配列または該塩基配列上の第 6 7〜74番 目の塩基中に一塩基が挿入された塩基配列からなる DNAにおいて、 第 67〜74 番目の塩基を含む塩基配列からなる DNA
(b) 配列番号 1 7で表される塩基配列または該塩基配列上の第 1 7 1番目の 塩基が他の塩基に置換された塩基配列からなる DNAにおいて、 第 1 7 1番目の塩 基を含む塩基配列からなる DNA
(c) 配列番号 1 7で表される塩基配列または該塩基配列上の第 233番目の 塩基が他の塩基に置換された塩基配列からなる DNAにおいて、 第 23 3番目の塩 基を含む塩基配列からなる DNA
(d) 配列番号 1 7で表される塩基配列または該塩基配列上の第 433番目の 塩基が他の塩基に置換された塩基配列からなる DNAにおいて、 第 433番目の塩 基を含む塩基配列からなる DNA
(9) 二本鎖 DNA多型検出法 (DSCA) を用いることを特徴とするハプロタイプ の検出方法。
(1 0) DSCAに用いるレファレンスが非天然型のレファレンスであることを特 徵とする上記 (9) に記載の検出方法。
(1 1) 多型部位の近傍領域に 1〜数塩基の欠失、 挿入または置換を行うこと により非天然型のレファレンスを作製することを含む、 上記 (1 0) に記載の検 出方法。
本明細書は本願の優先権の基礎である日本国特許出願 2001-306868号の明細書
および/または図面に記載される内容を包含する。
図面の簡単な説明
図 1は、解析対象とした IKBL1遺伝子の塩基配列を示す。 多型を認める部位 (- 422, -325, -263, -63) と多型配列 (二重下線) を示す。 波線下線は P1Fに対応 する配列、 点線下線は E1Rに対応する配列を示す。 第一ェクソンは一重下線で示 す。 '
図 2は、 IKBL1 遺伝子プロモーターァリルの模式図を示す。 ァリルごとに多型 部位の塩基を示す。
図 3は、 レファレンス一 1及びレファレンス一 2の塩基配列を示す。 レファ レンス一 1及ぴ 2は、 それぞれァリル 03、 0 4に 2箇所ずつの変異 (欠失変異、 挿入変異、 または塩基置換) を人為的に導入したものである。 導入変異部分を二 重下線で示す。
図 4は、 レファレンスの違いによる泳動パターンの相違を示す。 テストした ァリル名を左端に示す。 左から、 ァリル 03、 ァリル 03の - 422位で 1塩基欠失 (T 8→T7) したもの (#17)、 さらに - 262位に 1塩基置換 (A→G) を導入した配列 (レ ファレンスー 1 ) をレファレンスとして用いた。 レファレンスのホモデュプレツ タスの位置を矢頭で、 テストァリルとレファレンスのヘテロデュプレックスの位 置を矢印で示す。ァリル 03をレファレンスにした場合でもへテロデュプレックス の移動度は遅れるが、 人為的に変異を導入したものをレファレンスにすると、 変 異導入が多いほど移動度の遅れは顕著になる。
図 5は、 DSCA法による IKBL1プロモーターァリルの決定法を示す。 左端にテ ストしたァリル名とその多型配列構成を示す。 左はレファレンス一 1を用いた場 合、 右はレファレンス一 2を用いた場合の、 それぞれのァリルの電気泳動パター ンを示す。 レファレンスのホモデュプレックスの位置を矢頭で、 テス トアリルと レファレンスのヘテロデュプレックスの位置を矢印で示す。下 2段は 01/04 と 05 /06 のへテロ接合体の泳動パターンを示すが、 それぞれのヘテロデュプレックス の位置はそれぞれを構成するァリルによるへテロデュプレックスの位置に対応し ている。
図 6は、 DSCA法による IKBL1遺伝子タイピングの実際例を示す。 最上段はレ
ファレンスのみを泳動したもの、 続く 6段は個々のァリルのホモ接合パターン、 その下には種々のァリルのホモおょぴヘテロ接合パターンを示す。 ·左にサンプル 番号と、 IKBL1タイピングの結果を ( ) 内に示す。
発明を実施するための最良の形態
遺伝的多型の一つである一塩基多型 (SNP) とは、 集団内で 1 %以上の頻度で出 現する、 塩基配列上の単一塩基の置換、 挿入、 または欠失による多型をいう。 SN
P は、 ゲノム上に広く高密度に分布し、 疾患の有無、 人種及び個人により異なる ため、 疾患感受性、 人種及び個人差を検出する為の有益なマーカーとなり得る。 本発明において、 IkBLl遺伝子のプロモーター領域に存在する多型 (図 1 に示 す 4箇所の多型) 力 I型糖尿病の発症と相関があることが見出された。 すなわ ち、 遺伝子の転写開始点 (配列番号 1 7で表される、 後述するァリル (allele) 0
1 の塩基配列上の第 4 9 6番目の塩基) を 1 とし、 その上流に向かって一 1から さかのぼって- 422位に相当する塩基の上流に Tが 8個 (T8) (配列番号 1 7の第
6 7〜 7 4番目) または 9個 (T9) (配列番号 1 7の第 6 7〜 7 4番目の塩基に対 して 1塩基挿入) の多型、 -325位 (配列番号 1 7の第1 7 1番目) が Cまたは G の多型、 -263位 (配列番号 1 7の第 2 3 3番目) が Aまたは Gの多型、 および- 6
3 (配列番号 1 7の第 4 3 3番目) が Tまたは Aの多型である (図 1)。 さらに、 ァリル 01 (配列番号 1 7 ) (-422位 (第 6 7〜 7 4番目) が T8、 -325位 (第 1 7
1番目) の塩基が C、 -263位 (第 2 3 3番目) の塩基が A、 -63位 (第 4 3 3番目) の塩基が T) を有している場合には、 I型糖尿病を発症する確率が高いことが判 明した。 又、 ァリル 03 (配列番号 1 9 ) (-422位が T8、 -325位が -263位が G、
-63位が T)を有している場合には I型糖尿病を発症する確率が低いことが判明し た。
従って、 これらの各位置の多型又は相補鎖上の対応する多型を指標として、 I 型糖尿病の検査を行うことができる。 . .
本発明の I型糖尿病の検査は- 422位、 -325番目、 -263番目、 -63番目の塩基の 多型の中から 1又は複数の多型を選択して個々の多型を検出することにより行う ことも可能であるが、 それら 4つの多型のハプロタイプとして検出することによ り行うことが好ましい。 ·
P T/JP02/10270 なお、 本発明における I型糖尿病の検査方法には、 既に I型糖尿病の症状を発 症している患者の検查及び、 未だ症状を発症していない被験者が I型糖尿病にか かりやすいか否かを判断する為に行う検査などが含まれる。 本発明の検査では、 被験者から検出した多型が、 I型糖尿病患者において有意に頻度の高い多型であ る場合、 被験者は I型糖尿病に羅患する危険性が高いと判断され、 そうでない場 合には、 被験者は I型糖尿病に羅患する可能性が低いと判断される。
本発明の I型糖尿病の検査には、 前記遺伝的多型を検出するために、 プライマ 一及び/またはプローブが使用され得る。 本発.明の検査方法に用いられるプライ マーとしては、 配列番号 1 7に表される塩基配列からなる DNAまたはその相補鎖 にハイブリダィズし、 かつ、 標的多型部位 (配列番号 1 7に表される塩基配列に おける第 6 7〜 7 4番、 第 1 7 1番、 第 2 3 3番、 または第 4 3 3番の塩基) を 挟み込むように設計されたプライマーであることが必要である。 ここで, 「挟み込 む」 とは、 フォワードプライマー及びリバースプライマーからなるプライマー対 によって増幅される DNA断片の塩基配列中に(標的多型部位を)含むことをいう。 本発明の検査に用いるプライマーは、通常、 lOmer〜; LOOmerであり、好ましくは 1 5mer〜40nier、 更に好ましくは 18mer〜30merである。 また、 当該プライマーによ つて増幅される DNA領域の長さは、 50bp〜5, OOObp、好ましくは 100bp〜l, 500bp、 更に好ましくは 200bp〜700bpである。 尚、プライマーの鐃型 DNAへのハイ.ブリダ ィゼーシヨンは、 当分野において通常用いられる条件下で行うことができる。 プ ライマーは、 相補的な塩基対結合を形成できること、 そしてその 3'末端において 相補鎖合成の起点となる - 0H基を与えることの 2つの条件を満たしている限り、 プライマーを構成する主鎖はホスホジエステル結合によるもの (例えば DNA) に 限定されない。 例えばリン (P ) ではなく硫黄 (S ) をバックボーンとしたホス ホチォエート体や、 ぺプチド結合に基づくぺプチド核酸からなるものであること もできる。 また、 塩基は、 相補的な塩基対結合を可能とするものであれば良い。 天然においては、 アデニン、 グァニン、 シトシン、 チミン及びゥラシルの 5種類 により構成されるが、 例えばブ口モデォキシゥリジン等の類似体であることもで きる。
本発明はまた、 上記多型部位を含む領域にハイプリダイズするオリ ゴヌクレオ チドを提供する。 このようなオリゴヌクレオチドは、 好ましくは、 上記本発明の
DNAの多型部位を含む領域にハイブリダィズするものである。 ここで、 「特異的」 とは、 上記本発明の DNAの多型部位を含む領域にハイブリダィズし、 他の領域に ハイプリダイズしないことを意味する。 このようなハイブリダイゼーションの条 件は、 当業者であれば適宜選択することができる。 ハイブリダィゼーシヨンの条 件として、 例えば低ストリンジェントな条件が挙げられる。 低ストリンジェント な条件とは、 ハイプリダイゼーシヨン後の洗浄において、 例えば 42°C、 5 X SS 0. 1 SDSの条件であり、 好ましくは 50°C、 2 X SSC、 0. 1%SDSの条件である。 より 好ましいハイブリダィゼーションの条件としては、 高ストリンジ工ントな条件が 挙げられる。 高ストリンジェントな条件とは、 例えば 65°C、 0. 1 X SSC、 0. 1%SDS である。 但し、 ハイブリダィゼーシヨンのストリンジエンシーに影響する要素と しては、 温度や塩濃度等の複数の要素があり、 当業者はこれらの要素を適宜選択 することで、 同様のストリンジエンシーを実現することが可能である。 本発明の オリゴヌクレオチドは、上記多型部位を含む DNA領域にハイブリダイズする限り、 その鎖長に特に制限はないが、 好ましくは 10mer〜200merであり、 より好ましく は 15mer〜100merであり、更に好ましくは 15mer〜30merのオリゴヌクレオチドで ある。 本発明のオリゴヌクレオチドは、 前記多型を検出するためのプローブとし て、 前記多型を含む DNAを精製するための吸着リガンドとして、 さらには I型糖 尿病検査のための DNAチップ用プローブとして利用することができる。
尚、 上記プライマー及びプローブは、 当該技術分野で公知の方法によって製造 することができ、 例えば、 DNAプライマー及び DNAプローブは、 ホスホトリエチ ル法、 ホスホジエステル法またはこれらの自動化された方法等を利用して、 簡便 には DNA自動合成機等を利用して本発明で開示する塩基配列に従って合成するこ とができる。
本発明はまた、 I型糖尿病の検査に用いるための、多型を含む DNAを提供する。 本発明の DMには、
( a > 配列番号 1 7で表される塩基配列または該塩基配列上の第 6 7 〜 7 4番目 の塩基中に一塩基が揷入された塩基配列からなる DNAにおいて、 第 6 7 〜 7 4番 目の塩基を含む塩基配列からなる DNA、
( b ) 配列番号 1 7で表される塩基配列または該塩基配列上の第 1 7 1番目の塩 基が他の塩基に置換された塩基配列からなる DNAにおいて、 第 1 7 1番目の塩基
を含む塩基配列からなる DNA、
( c ) 配列番号 1 7で表される塩基配列または該塩基配列上の第 2 3 3番目の塩 基が他の塩基に置換された塩基配列からなる DNAにおいて、 第 2 3 3番目の塩基 を含む塩基配列からなる DNA、 及ぴ
( d ) 配列番号 1 7で表される塩基配列または該塩基配列上の第 4 3 3番目の塩 基が他の塩基に置換された塩基配列からなる DNAにおいて、 第 4 3 3番目の塩基 を含む塩基配列からなる DNA、
が含まれる。
本発明の DNAは、 上記多型部位を含む限りその鎖長に制限はないが、 好ましく は上記多型部位を含む 10bp〜200bpの DNAであり、 より好ましくは l5bp〜100bp の DNAであり、 更に好ましくは 15bp〜30bpである。
本発明の DNAは、 被験者由来のゲノム DNAの制限酵素処理や、 該ゲノム DNAを 錶型にし、 上記本発明のプライマー DNA を利用したポリメラーゼ連鎖反応により 得ることができ、 I 型糖尿病の検査において上記多型を検出するための試料 (遺 伝子診断のための試料) となる。 また、 I型糖尿病の検査のための DNAチップに 利用することも可能である。
上記のプライマー及び Zまたはプローブは、 I 型糖尿病の検査試薬として使用 することができる。 更に、 これらの試薬をパッケージングし、 キットとして供給 することも可能である。 より具体的には、 例えば以下の構成要素 (A)または (B) を含むものが挙げられる。
(A) 以下の (a ) から (d ) のいずれかに記載のプライマー。
( a ) 配列番号 1 7で表される塩基配列からなる DNAまたはその相補鎖にハイ ブリダィズし、 かつ配列番号 1 7で表される塩基配列上の第 6 7〜7 4番目の塩 基またはその相補鎖の対応する塩基を挟み込むように設計された DNAプライマー
( b ) 配列番号 1 7で表される塩基配列からなる DNAまたはその相補鎖にハイ ブリダィズし、 かつ配列番号 1 7で表される塩基配列上の第 1 7 1番目の塩基ま たはその相補鎖の対応する塩基を挟み込むように設計された DNAプライマー
( c ) 配列番号 1 7で表される塩基配列からなる DNAまたはその相補鎖にハイ ブリダィズし、 かつ配列番号 1 7で表される塩基配列上の第 2 3 3番目の塩基ま たはその相補鎖の対応する塩基を挟み込むように設計された DNAプライマー
( d ) 配列番号 1 7で表される塩基配列からなる DNAまたはその相補鎖にハイ ブリダィズし、 かつ配列番号 1 7で表される塩基配列上の第 4 3 3番目の塩基ま たはその相補鎖の対応する塩基を挟み込むように設計された DNAプライマー
(B) 以下の (a ) から (d ) のいずれかの塩基を含む領域にハイブリダィズす る DNAプローブ。
( a ) 配列番号 1 7で表される塩基配列または該塩基配列上の第 6 7 〜 7 4番 目の 8個の塩基中に 1塩基が挿入された塩基配列からなる DNAの第 6 7 〜 7 4番 目の塩基
( b ) 配列番号 1 7で表される塩基配列または該塩基配列上の第 1 7 1番目の 塩基が他の塩基に置換された塩基配列からなる DNAの第 1 7 1番目の塩基
( c ) 配列番号 1 7で表される塩基配列または該塩基配列上の第 2 3 3番目の 塩基が他の塩基に置換された塩基配列からなる DNAの第 2 3 3番目の塩基
( d ) 配列番号 1 7で表される塩基配列または該塩基配列上の第 4 3 3番目の 塩基が他の塩基に置換された塩基配列からなる DNAの第 4 3 3番目の塩基
上記キットには、 必要に応じて、 更に酵素反応に好適な条件を与える緩衝液、 合成反応生成物の検出のために必要な試薬類等を加えることが可能である。
尚、 本発明において、 ある塩基配列からなる DNAと記載されている場合には、 その塩基配列からなる一本鎖 DNA、該一本鎖 DNAの相補鎖からなる一本鎖 DNA、そ れら 2つの一本鎖 DNAからなる二本鎖 DNAなどを含む。
本発明の I型糖尿病の検查方法においては、 多型の検出は公知の方法により行 うことができる。 多型の検出方法としては、 例えば、 二本鎖 DNA多型検出法 (DS CA: Double Strand Conformation analysi s) (Arguel lo JRら, Nature Genet (1 998) 18: 192-194; Fukuda Yら, Tissue Antigens (1995) 45: 49 - 56)、 PCR - SSC P (single - strand conformation polymorphism^ 一本鎮高次構造多型)法 (Genomic s. (1992) , Jan 1, 12 (1) , 139—146, Oncogene. (1991) , Aug 1, 6 (8) , 1313-131 8, PCR Methods Appl. (1995), Apr 1, 4 (5), 275—282)、 DNA チップを用いた方 法(ポストゲノム時代の実験講座 1 ゲノム機能研究プロトコール, 140 - 143, 羊 土社, Wang, D. G.ら, Sci ence, 280, 1077-1082, (1998) )、質量分析を用いた方 法(Phil ip Ross ら, Nat. Biotechnol . 16, 1347-1351, (1998) )、 塩基配列を直 接決定する方法、 などの方法を用いることができ、 限定されるものではない。
本発明の検査方法の一つの態様は、 被験者の標的多型部位を含む遺伝子領域の 塩基配列を直接決定する方法である。 具体的には、 被験者から DNA試料を調製す る工程、 本発明のプライマー DNAを用いて被験者由来の DNAを増幅する工程、 及 ぴ増幅した DNAの塩基配列を決定する工程、 を含む方法である。 DNAの調製は、 例えば被験者から採取した末梢血白血球から QIAmpDNA blood kit (QIAGEN社) を 用いて行うことが可能である。 次いで、 標的多型部位を増幅し得る本発明のブラ イマ一を設計し、 これを用いて、 調製した DNA試料を鎵型としてポリメラーゼ連 鎖反応 (PCR) を行い、 得られた PCR産物の塩基配列を決定する。 塩基配列の決定 は、 上記 PCRに用いたプライマー対のうちいずれか一方をシークェンシンダプラ イマ一として利用して行うと好適である。 塩基配列の決定の結果検出された多型 が I型糖尿病の患者型であれば、被験者は I型糖尿病の危険があると判定される。 多型部位を含む DNA試料の物理化学的性質の差を利用する検查方法として、 被 験者から DNA試料を調製する工程、 本発明のプライマー DNAを用いて被験者由来 の DNAを増幅する工程、 及び増幅した DNAを一本鎖に解離させる工程、 解離させ た一本鎖 DNAを非変性ゲル上で分離する工程、 分離した一本鎖 DNAのゲル上での 移動度を健常者の対照と比較する工程、を含む PCR - SSCP法が挙げられる。 この方 法は操作が比較的簡便であり、 また試科の量も少なくてすむ等の利点を有してい る。
具体的には、 まず、 標的部位を含む領域を、 本発明のプライマーを用いた PCR 法等によって増幅する。 増幅される範囲としては、 100〜600bp程度の長さが好ま しい。 PCR反応の条件は、 当該分野において通常行われる範囲で行うことができ る。 PCRによる遺伝子断片増幅の際、標識したプライマーを用いるか、 あるいは P CR反応液に標識した基質塩基を加えて反応させることによって、 合成される DNA 断片を標識する。 標識には 32 P等の放射性同位体、 蛍光色素、 ビォチン等を用い ることができる。 こう して得られた標識された DNA断片を、 加熱等によって変性 させ、 尿素等の変性剤を含まないポリアクリルアミ ドゲルによって電気泳動を行 う。この際、ゲルに適量(5から 10%程度)のグリセロールを添加することにより、
DNA断片の分離条件を改善することができる。電気泳動は通常室温(20から 25°C) で行うが、 好ましい分離が得られないときには 4° (〜 30°Cまでの温度で行っても 良い。 電気泳動後、 DNA 断片の移動度を、 X線フィルムを用いたオートラジオグ
ラフィーや、 蛍光を検出するスキャナ一等で検出し、 解析する。 標識した DNAを 用いない場合においても、 電気泳動後のゲルをェチジゥムブ口マイ ドゃ銀等によ つて染色することによって、 バンドを検出することができる。
本発明のプローブを用いた検查方法として、 DNAチップ等の DNAマイクロアレ ィを用いた検査方法が挙げられる。 本方法は、 具体的には、 例えば被験者から DN A試料を調製する工程、 及び得られた DNA試料を DNAチップ上に固定した本発明 のプローブとハイブリダィズさせる工程、 を含む。
この方法においては、 上記と同様にして DNA試料を調製し、 場合によって PCR 反応を行って DNAを増幅する。 その後、 DNA試料または PCR産物を蛍光物質ゃビ ォチン等で標識し、 DNA チップ上に固定したオリゴヌクレオチドプローブとハイ プリダイズさせる。目的の多型を検出する際の DNAチップ上のプローブとしては、 1 SNP (2パターン) について、 SNP部位をプローブの中心にもつ配列、 SNPの前 後 4個目の塩基を中心にもつ配列、 SNP の前後 1個目の塩基を中心にもつ配列、 これらの各プローブに対して中央にミスマッチをもつネガティブコントローノレの プローブ等を用いることができる。 最後に、 非特異的な結合を洗浄によ'り除去し た後、 ハイブリダィズした遺伝子を同定し、 多型を検出することができる。
本発明で使用できる検査方法の他の態様として、 MALDI-T0F (Matrix-assisted laser desorption ionization time- oi- flight mass spectrometry) 質 分析 ·¾Τ 用いた方法である。本方法は、具体的には、被験者から DNA試料を調製する工程、 本発明のプライマー DNAを用いて被験者由来の DNAを増幅する工程、 及び増幅し た DNAを MALDI-TOF質量分析法により測定する工程、 を含む。
まず、上記と同様にして DNA試料を調製し、 PCR反応により DNAを増幅した後、 PCR 産物をマトリックス支援のもとにレーザー脱離イオン化し、 飛行時間型質量 分析計で測定することにより、 多型を検出できる。 更に、 MALDI - T0F 質量分析法 に、 プライマー伸長反応法を組み合わせた方法を用いても良い (ポストゲノム時 代の実験講座 1 ゲノム機能研究プロトコ一ル, 144 - 149, 羊土社, Lawrence A. H off ら, Genome Res. 7, 378-388 (1997) , Tang, K. ら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 96 : 10016-10020 (1990) )。
更に本発明の検査方法の他の態様は、 被験者から DNA試料を調製する工程、 本 発明のプライマー DNAを用いて被験者由来の DNAを増幅する工程、及ぴ増幅した D
10270
NAを、 DNA変性剤の濃度が次第に高ま,るゲル上で分離する工程、 分離した DNAの ゲル上での移動度を対照と比較する工程、 を含む方法である。 このような方法と しては、 変性剤濃度勾配ゲル電気泳動法 (denaturant gradient gel electropho resis :DGGE) 力 S挙げられる (Erl ich編, PGR Technology, Principles and Appl i cations for DNA Amplification, (ff. H. Freeman and Co. , New York, 1992) , C hapter 7)。
本方法は、 上記と同様にして DNA試料を調製し、 PCR反応により DNAを増幅し た後、 これを尿素等の変性剤の濃度が移動するに従って徐々に高くなっているポ リアクリルアミ ドゲル中で電気泳動し、 健常者と比較する。 変異が存在する場合 には、 より低い変性剤濃度位置で DNA断片が一本鎖になり、 極端に移動速度が遅 くなるため、 この移動度の差を検出することにより多型の存在を検出することが できる。
本発明の I型糖尿病の検查方法において用いる多型の検出方法として、 特に好 ましいのは DSCA法である。 特に被験者のハプロタイプ解析の場合には、 DSCA法 が有用である。
DSCA法の原理は、 標識した標準試料 (レファレンス) と測定対象サンプル DNA との間のへテロデュプレックスをアクリルアミ ドゲル中で電気泳動すると、 測定 対象サンプルの塩基配列の違い (へテ口デュプレックス構成時のミスマツチ位置 の違い) に応じて、 その移動度が異なることを利用するものである。 一般に、 へ テロデュプレックスの移動度はホモデュプレックスより遅れるが、 この際にへテ 口デュプレックスを形成する配列間の違いがより大きい程、 移動度の遅れが生じ ると考えられており、 このことを利用した HLAタイピング法が開発されている (A rguello JRら, Nature Genet (1998) 18: 192-194 ; Fukuda Yら, Tissue Antig ens (1995) 45 : 49 - 56 ; Higuchi R, PCR Technology, Principles and applicat ions for DNA ampl ification (Erlich HA編) (1989) Stockton Press, New Yor k, pp61-70 ; Ramon DSら, Hum Immunol (1998) 59 : 734-747)。
DSCA法による多型検出の原法では、健常者集団に本来存在するァリル(allele) をレファレンスとして、 目的とする領域の多型を検出しょうとする。 しかしなが ら、 本来存在するァリルをレファレンスとして用いた場合には、 その移動度に明 確な差がでず、 テストしているサンプルのァリル型を明瞭に区別出来ないことが
ある。
そこで本発明者らは、一般に単塩基置換の場合より、塩基挿入/欠失の場合の方 がへテロデュプレックスの移動度が遅れやすい現象(Fukuda Y ら, Tissue Antig ens (1995) 45: 49-56; Turner DM ら, Tissue Antigens (1999) 54: 400-404) に着目し、 人為的に 1〜数塩基の揷入、 欠失または置換等の変異を導入してレフ ァレンスを作成することにより、 サンプルのァリル型を明瞭に区別できることを 見出した。 つまり、 人為的に欠失、 揷入または置換を行うことにより、 本来、 天 然には存在していない配列を持った人工的なレファレンスを作成したのである。 本発明でいう人工的な (非天然の) レファレンスとは、 本来、 天然には存在し ていない塩基配列を有しているレファレンスをいう。 人工的なレファレンスを作 成する際には、 天然に存在する塩基配列を基にして、 その多型部位の近傍領域に 1〜数塩基の欠失、 挿入または置換を行うことが好ましい。 ここで、 1〜数塩基と は、 特に限定されるものではないが、 好ましくは 1〜1 0塩基、 さらに好ましく は 1〜 5塩基、最も好ましくは 1〜 2塩基である。本発明でいう多型部位の近傍領 域とは、 好ましくは多型部位から 1 0塩基以内、 さらに好ましくは 5塩基以内、 最も好ましくは 3塩基以内を指す。
.又、 塩基配列の中に複数の多型部位が存在する場合には、 その複数の多型部位 の中から 1又は数個の多型部位を選択し、 選択した多型部位の近傍領域に 1〜数 塩基の欠失、 挿'入または置換を行ってもよいが、 塩基配列中に含まれる全ての多 型部位について近傍領域に 1〜数塩基の欠失、 挿入または置換を行ってもよい 本発明のレファレンスを用いたハプロタイプ検出方法は、 ハプロタイプのタイ ピング精度が飛躍的に向上しており、 高精度かつ高効率でハプロタイプの検出が 可能である。
尚、 上記したいずれの検査方法においても、 測定対象である DNA試料はヒ ト由 来のサンプルであり、 これを含むものであれば特に限定なく、 例えば血液、 骨髄 液、 精液、 腹腔液、 尿等の体液、 肝臓等の組織細胞、 毛髪等の体毛等を利用でき る。 ゲノム DNAは、 これらのサンプルより常法に従い抽出、 精製し、 調製するこ とができる。
本発明により見出された I型糖尿病と相関のある多型は IkBLl遺伝子のプロモ 一ター領域に存在しており、 この多型は IkBLl遺伝子の転写に影響を与えること
が見出された。 つまり、 I型糖尿病感受性と関連するァリルでは IkBLl遺伝子の 転写活性が髙く、 IkBLlの発現が多いことが考えられる為、 IkBLl遺伝子は I型 糖尿病の発症に何らかの関与をしている可能性が示唆される。
従って、 この IkBLlを阻害することにより、 I型糖尿病を治療若しくは抑制す ることが可能と考えられ、 IkBLl 抑制物質は I型糖尿病治療薬又は抑制薬になる と考えられる。
IkBLl抑制物質には、 IkBLlに結合して IkBLl の活性を阻害する物質や、 IkBLl 遺伝子の転写を抑制する物質などが含まれる。
IkBLl遺伝子の転写を抑制する物質としては、 IkBLl遺伝子に対するアンチセン スが挙げられる。 アンチセンスオリゴヌクレオチドとしては、. 例えば、 IkBLl を コードする DNAまたは mRNAのいずれかの箇所にハイブリダイズするアンチセンス オリ ゴヌクレオチドが含まれる。 このアンチセンスオリゴヌクレオチドは、 好ま しくは IkBLlの DNAまたは mRNA中の連続する少なくとも 15個以上のヌクレオチ ドに対するアンチセンスオリゴヌクレオチドである。 さらに好ましくは、 連続す る少なくとも 15 個以上のヌクレオチドがプロモーター領域若しくは翻訳開始コ ドンを含むアンチセンスオリ ゴヌクレオチドである。 アンチセンスオリゴヌクレ ォチドとしては、 それらの誘導体や修飾体を使用することができ、 例えば、 メチ ルホスホネート型ゃェチルホスホネート型のような低級アルキルホスホネート修 飾体、ホスホロチォエート修飾体又はホスホロアミデート修飾体等が挙げられる。
IkBLlに結合して IkBLl の活性を阻害する物質としては、 例えば IkBLlに対す る抗体が考えられる。 IkBLlに対する抗体は IkBLlを抗原として公知の方法によ り作成することができる。
本発明の抗体は、 抗原と結合する限り特に制限はなく、 マウス抗体、 ラット抗 体、 ゥサギ抗体、 ヒッジ抗体、 キメラ抗体、 ヒ ト型化抗体、 ヒ ト抗体等を適宜用 いることができる。 抗体は、 ポリクローナル抗体であってもモノクローナル抗体 であってもよいが、 均質な抗体を安定に生産できる点でモノクローナル抗体が好 ましい。 ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体は当業者に周知の方法に より作製することができる。
モノクローナル抗体を産生するハイブリ ドーマは、 基本的には公知技術を使用 し、 以下のようにして作製できる。 すなわち、 所望の抗原や所望の抗原を発現す
る細胞を感作抗原として使用して、 これを通常の免疫方法にしたがって免疫し、 得られる免疫細胞を通常の細胞融合法によって公知の親細胞と融合させ、 通常の スク リ一二ング法により、 モノクローナルな抗体産生細胞 (ハイブリ ドーマ) を スクリーニングすることによって作製できる。 ハイブリ ドーマの作製は、 たとえ ば、 ミルスティンらの方法(Kohler. G.及ぴ Milstein, C. , Methods Enzymol. (1 981) 73: 3-46 )等に準じて行うことができる。抗原の免疫原性が低い場合には、 アルブミン等の免疫原性を有する巨大分子と結合させ、 免疫を行えばよい。
また、 抗体遺伝子をハイプリ ドーマからクローニングし、 適当なベクターに組 み込んで、 これを宿主に導入し、 遺伝子組換え技術を用いて産生させた遺伝子組 換え型抗体を用いることも (例えば、 Carl, A. K. Borrebaeck, James, W. Larr ick, THERAPEUTIC MONOCLONAL ANTIBODIES, Published in the United Kingdom by MACMILLAN PUBLISHERS LTD, 1990参照)。 具体的には、 ハイブリ ドーマの mRN Aから逆転写酵素を用いて抗体の可変領域 (V領域) の cDNAを合成する。 目的と する抗体の V領域をコードする DNAが得られれば、 これを所望の抗体定常領域(C 領域) をコードする DNAと連結し、 これを発現ベクターへ組み込む。 または、 抗 体の V領域をコードする DNAを、 抗体 C領域の DNAを含む発現ベクターへ組み込 んでもよい。 発現制御領域、 例えば、 ェンハンサー、 プロモーターの制御のもと で発現するよう発現ベクターに組み込む。 次に、 この発現ベクターにより宿主細 胞を形質転換し、 抗体を発現させることができる。
本発明では、 ヒ トに対する異種抗原性を低下させること等を目的として人為的 に改変した遺伝子組換え型抗体、 例えば、 キメラ (Chimeric) 抗体、 ヒ ト型化 (H uraanized) 抗体などを使用できる。 これらの改変抗体は、 既知の方法を用いて製 造することができる。 キメラ抗体は、 ヒ ト以外の哺乳動物、 例えば、 マウス抗体 の重鎖、軽鎖の可変領域とヒ ト抗体の重鎖、軽鎖の定常領域からなる抗体であり、 マウス抗体の可変領域をコードする DNAをヒ ト抗体の定常領域をコードする DNA と連結し、 これを発現ベクターに組み込んで宿主に導入し産生させることにより 得ることができる。.
ヒ ト型化抗体は、 再構成 (reshaped) ヒ ト抗体とも称され、 ヒ ト以外の哺乳動 物、 たとえばマウス抗体の相補性決定領域 (CDR; complementarity determining region) をヒ ト抗体の相補性決定領域へ移植したものであり、 その一般的な遺伝
10270 子組換え手法も知られている。 具体的には、 マウス抗体の CDRとヒ ト抗体のフレ ームワーク領域(framework region ; FR)を連結するように設計した DNA配列を、 末端部にオーバーラップする部分を有するように作製した数個のオリゴヌクレオ チドから PCR法により合成する。 得られた DNAをヒ ト抗体定常領域をコードする DNA と連結し、 次いで発現ベクターに組み込んで、 これを宿主に導入し産生させ ることにより得られる (欧州特許出願公開番号 EP 239400 、 国際特許出願公開番 号 W0 96/02576参照)。 CDRを介して連結されるヒ ト抗体の FRは、 相補性決定領 域が良好な抗原結合部位を形成するものが選択される。 必要に応じ、 再構成ヒ ト 抗体の相補性決定領域が適切な抗原結合部位を形成するように抗体の可変領域の フレームワーク領域のアミノ酸を置換してもよレ、 (Sato, K.ら, Cancer Res. (1 993) 53, 851—856)。
また、 ヒ ト抗体の取得方法も知られている。 例えば、 ヒトリンパ球を in vitro で所望の抗原または所望の抗原を発現する細胞で感作し、 感作リンパ球をヒ トミ エローマ細胞、例えば U266と融合させ、抗原への結合活性を有する所望のヒ ト抗 体を得ることもできる (特公平 1-59878参照)。 また、 ヒ ト抗体遺伝子の全てのレ パートリーを有するトランスジヱニック動物を所望の抗原で免疫することで所望 のヒ ト抗体を取得することができる (国際特許出願公開番号 W0 93/12227, W0 92 /03918, W0 94/02602, W0 94/25585, W0 96/34096, W0 96/33735参照)。 さらに、 ヒ ト抗体ライブラリーを用いて、 パンニングによりヒト抗体を取得する技術も知 られている。 例えば、 ヒ ト抗体の可変領域を一本鎖抗体 (scFv) としてファージ ディスプレイ法によりファージの表面に発現させ、 抗原に結合するファージを選 択することができる。 選択されたファージの遺伝子を解析すれば、 抗原に結合す るヒ ト抗体の可変領域をコードする DNA配列を決定することができる。 抗原に結 合する scFvの DNA配列が明らかになれば、当該配列を適当な発現ベクターを作製 し、 ヒ ト抗体を取得することができる。 これらの方法は既に衆知であり、 W0 92/ 01047, W0 92/20791, W0 93/06213, W0 93/11236, W0 93/19172, W0 95/01438, W0 95/15388を参考にすることができる。
抗体遺伝子を一旦単離し、 適当な宿主に導入して抗体を作製する場合には、 適 当な宿主と発現ベクターの組み合わせを使用することができる。 真核細胞を宿主 として使用する場合、 動物細胞、 植物細胞、 真菌細胞を用いることができる。 動
JP02/10270 物細胞としては、 (1) 哺乳類細胞、 例えば、 CHO, COS, ミエローマ、 BHK (baby hamster kidney ) , HeLa, Vero, (2) 両生類細胞、 例えば、 アフリカッメガエル 卵母細胞、あるいは(3) 昆虫細胞、例えば、 sf9, sf21, Tn5などが知られている。 植物細胞としては、 ニコティアナ (Ni cot iana) 属、 例えばニコティアナ ·タバカ ム (Nicot iana tabacum) 由来の細胞が知られており、 これをカルス培養すればよ レヽ。 真菌細胞としては、 酵母、 例えば、 サッカロミセス (Saccharomyces ) 属、 例えばサッカロミセス ·セレビシェ (Saccharomyces serevisiae)、 糸状菌、 例え ば、 ァスペルギノレス (Aspergi llus ) 属、 例えばアスペスギノレス ' 二ガー (Aspe rgi l lus niger ) などが知られている。 原核細胞を使用する場合、 細菌細胞を用 いる産生系がある。 細菌細胞としては、 大腸菌 (E. col i )、 枯草菌が知られてい る。 これらの細胞に、 目的とする抗体遺伝子を形質転換により導入し、 形質転換 された細胞を in vitroで培養することにより抗体が得られる。
また、 抗体は PetTに結合し、 IkBLlの機能を阻害するかぎり、 抗体の断片又は その修飾物であってもよい。 例えば、 抗体の断片としては、 Fab、 F (ab,)2、 Fv、 または H鎖若しくは L鎖の Fvを適当なリンカーで連結させたシングルチェイン F v (scFv)が挙げられる。 具体的には、 抗体を酵素、 例えばパパイン、 ペプシンなど で処理し、これを発現ベクターに導入した後、適当な宿主細胞で発現させる(例え ば、 Co, M. S.ら, J. Immunol. (1994) 152, 2968-2976、 Better, M.及び Horwi tz, A. H. Methods in Enzymology ( 1989) 178, 476-496. Academic Press, In c.、 Plueckthun, A.及び Skerra, A. Methods in Enzymology (1989) 178, 476 - 496, Academic Press, Inc.、 Lamoyi , E., Methods in Enzymology (1989) 121, 663—669、 Bird, R. E.ら, TIBTECH (1991) 9, 132- 137参照)。 scFvは、 抗体の H鎖 V領域と L鎖 V領域とを連結することにより得られる。 この scFvにおいて、 H鎖 V領域と L鎖 V領域は、 リンカ一、 好ましくはペプチドリンカ一を介して連 結される(Huston, J. S.ら, Proc. Natl. Acad. Sci . U. S. A (1988) 85, 5879 - 5 883)。 scFvにおける H鎖 V領域おょぴ L鎖 V領域は、 本明細書に抗体として記载 されたもののいずれの由来であってもよい。 V領域を連結するぺプチドリンカー としては、 例えば 12- 19残基からなる任意の一本鎖ペプチドが用いられる。 scFv をコードする DNAは、 前記抗体の H鎖または H鎖 V領域をコードする DNA、 およ び L鎖または L鎖 V領域をコードする DNAのうち、 それらの配列のうちの全部又
は所望のアミノ酸配列をコードする DNA部分を錶型とし、 その両端を規定するプ ライマー対を用いて PCR法により増幅し、 次いで、 さらにペプチドリンカ一部分 をコードする DNA、 およびその両端が各々 H鎖、 L鎖と連結されるように規定する プライマー対を組み合わせて増幅することにより得られる。 また、一旦 scFvをコ ードする DNAが作製されると、 それらを含有する発現ベクター、 およぴ該発現べ クタ一により形質転換された宿主を常法に従って得ることができ、 また、 その宿 主を用いることにより、常法に従って scFvを得ることができる。 これらの抗体断 片は、 前記と同様にして遺伝子を取得し発現させ、 宿主により産生させることが できる。 抗体の修飾物として、 ポリエチレングリコール (PEG) 等の各種分子と結 合した抗体を使用することもできる。 このような抗体修飾物は、 得られた抗体に 化学的な修飾を施すことによって得ることができる。 なお、 抗体の修飾方法はこ の分野においてすでに確立されている。 本発明における 「抗体」 にはこれらの抗 体も包含される。
前記のように発現、 産生された抗体は、 通常のタンパク質の精製で使用されて いる公知の方法により精製することができる。 例えば、 プロテイン Aカラムなど のァフィ二ティーカラム、 クロマトグラフィーカラム、 フイノレター、 限外濾過、 塩析、 透析等を適宜選択、 組み合わせることにより、 抗体を分離、 精製すること かでさる (Antibodi es A Laooratory Manual. Ed Harlow, David Lane, Cold Spr ing Harbor Laboratory, 1988)。
抗体の抗原結合活性 (Antibodies A Laboratory Manual. Ed Harlow, David La ne, Cold Spring Harbor Laboratory, 1988)の測定には公知の手段を使用するこ とができる。例えば、 ELISA (酵素結合免疫吸着検定法)、 EIA (酵素免疫測定法)、 RIA (放射免疫測定法) あるいは蛍光免疫法などを用いることができる。
本発明の治療薬、 抑制薬は、 I型糖尿病の治療または予防に使われる。
本発明の治療薬は、 経口、 非経口投与のいずれでも可能であるが、 好ましくは 非経口投与であり、 具体的には、 注射剤型、 経鼻投与剤型、 経肺投与剤型、 経皮 投与型などが挙げられる。 注射剤型の例としては、 例えば、 静脈内注射、 筋肉内 注射、 腹腔内注射、 皮下注射などにより全身または局部的に投与することができ る。 また、 患者の年齢、 症状により適宜投与方法を選択することができる。 投与 量としては、 例えば、 一回につき体重 lkgあたり 0. OOOlmgから lOOOmgの範囲で
選ぶことが可能である。 あるいは、 例えば、 患者あたり 0. 001〜100000rag/body の範囲で投与量を選ぶことができる。 しかしながら、 本発明の治療薬はこれらの 投与量に制限されるものではない。 また、 発明の治療薬は、 常法に従って製剤化 すること力 sでき (例えば、 Remington' s Pharmaceut ical Sci ence, latest editi on, Mark Publ i shing Company, Easton, U. S. A)、医薬的に許容される担体や添加 物を供に含むものであってもよい。
以下、 本発明を実施例を挙げて更に説明するが、 本発明はこれら実施例に限定 されるものではない。
[実施例 1 ] IKBL1遺伝子多型の検索
DNA試料としては、 ヒ ト末梢血の白血球より抽出したゲノム DNAを用いた。 ゲ ノム DNA抽出は標準的なプロテアーゼ K/SDS/フヱノール/ク口口ホルム法(Kinrnra A及び Sasazuki T, HLA1991 vol. 1 (Tsuji Kら編) (1992) , Oxford Universi ty Press, Oxford, pp397 - 419)によった。
IKBLl 遺伝子(Shi ina T ら, Genomics (1998) 47: 372 - 382)の全ゲノム構造は 既に明らかになつているため、 データベース配歹リ (GenBank accession no. AP00 0505) を参考にして、 IKBLl遺伝子プロモーター領域及び第 1ェクソンならびに 第 2、第 3、第 4エタソンとその周辺のイントロンを PCR法で増幅するためのプラ イマ一セット (表 1、 配列番号 1〜 1 6 ) を作製した。
% 表 1 tKBLl遣伝子の PCR増幅に用いたプライマーの配列 遺伝子領域 forward pnmer (名前;配列) reverse primer (名前;配列)
ノ口 "- ^― P3F; ITCCAAACTCCTAAGGGAGG P3R; TTGTAAGCCCGCAGCTTTGG
プロモー夕一 P2F; GCCTGGGAGCAGCAGAGACC P2R; AGACAAAAGACGGAAGAAGAC
ノ V- ¾―タ一 P1 F; AAATTTTTGCATCTCACTTGCC PI R; GTTCTTGGCCAGATCTCCC
ェクソン 1 El F; CAGACGGCCCCTTTAATTTAAG EI R; GTCACAGATAATCTCCAATAATG
ェクソン 2 E2F; CAAGGCTGAAGTCCTGACTG E2 ; GTCAGCTGCTTATGACCTTG
ェクソン 3 E3F; TAGCTCTGCCGAGGAGTGG E3R; AGATGGAAAGCAGCCAGTGG
ェクソン 4前半 E4AF; GGGCCCATCAGCTTCTCAC E4AR; AGGGCCAGGGCACATCACC
ェクソン 4後半 E4PF; GGAGCGGGGAGGGGCAGCC E4P ; CCCCGAAGTTTCTTGCTTCT
ついで、 96名の健常日本人由来の白血球 DNAから、 これらのプライマーセッ ト を用いて当該 DNA領域を PCR法で増幅し、 一本鎖 DNA構造多型法 (single stran d conformation polymorphism, SSCP) (Hoshmo S ら, Hum Immunol (1992) ύ3 : 98 - 107)を用いて、 各 PCR産物内の多型を検索した。 個体によって異なる SSCPパ ターン (1本鎖 DNAのポリアクリルアミ ドゲル電気泳動パターン) が認められた 場合には、 当該 PCR産物をクローユングし、 ダイターミネータ一法によって塩基 配列を決定することで、 IKBL1遺伝子プロモーター内の少なく とも 4箇所に多型 を確認した (図 1)。
具体的には、 表 1に示したプライマーセットを用いて PCRで増幅した IKBL1遺 伝子各領域の多型を、 一本鎖構造多型検出法でスクリーニングした。 96名の日本 人集団の解析では、 明らかな多型 SSCPパターンは、 P1F (配列番号 5 ) と P1R (配 列番号 6 ) での PCR産物及び E1F (配列番号 7 ) と E1R (配列番号 8 ) での PCR 産物を用いた場合にのみ認められた。そこで、多型パターンを示す個人について、 各々の DNAから P1Fと P1R、 E1Fと E1R、 または P1Fと E1Rの糸且み合わせで PCRを 行い、 その PCR産物をクローニング後、 塩基配列を決定した。 その結果、 図 1に 示す 4箇所に多型が認められた。 すなわち- 422の上流に Tが 8個 (T8) または 9 個 (T9) の多型、 -325位が Cまたは Gの多型、 -263位が Aまたは Gの多型、 およ び -63が Tまたは Aの多型である。 これらのうち、 特に- 263位は Rel/E2F、 -63 位は bHLH の各々の転写因子結合配列と極めて高い相同性を示す配列内に存在す る多型である。 また SSCPパターンからヘテロ接合と推定される個体を含めて、複 数のサンプルについてクローニングして塩基配列を決定した結果から、 日本人集 団における IKBL1多型の組み合わせ (ハプロタイプ) として、 図 2に示すァリル 01 (配列番号 1 7 )、 02 (配列番号 1 8 )、 03 (配列番号 1 9 )、 04 (配列番号 2 0 )、 05 (配列番号 2 1 ) の少なく とも 5種が存在することが判明した。 なおァリル 06
(配列番号 2 2 ) は、 二本鎖 DNA多型検出法によるハプロタイプ解析の指標とし て人為的に作製したものであり、 日本人集団中には存在しなかった。
[実施例 2 ] IKBL1遺伝子検査領域の増幅
実施例 1で確認した IKBL1遺伝子プロモーター内の 4箇所の多型を検出するた め、 これらの組み合わせ (プロモーター多型ハプロタイプ) を識別 '検出する方 法論を開発した。 まず検査対象とするヒ ト血液 DNAから、 IKBL1 プロモータ"領
P T/JP02/10270 域及び第 1ェク ソン (配列番号 1 7の第 4 9 6 〜 6 2 1番) を含む DNA領域 (図
1) を、 プライマー P1F (配列番号 5 ) と E1R (配列番号 8 ) のセッ トを用いて PC R法で増幅した。 PCR条件は、 95°C5分間の熱変性に続いて、 95°C30秒 /56°C30秒 /72°C30秒のサイクルを 30回く り返した後に、 72°C 10分間の伸長反応を行うもの であり、 ABI社の PCR9700または PCR9600を用いた。 得られた PCR産物の一部を クローニングし、 塩基配列を決定することで、 図 2に示すように、 少なく とも 5 種のァリル(プロモーターハプロタイプ)の存在を日本人集団に確認した。また、 このようにして得られた PCR産物は下記実施例 4でサンプル PCR産物として、 IK BL1ァリルの測定に用いた。
[実施例 3 ] 標識した標準試料 (レファレンス 1及び 2) の作製
DSCA法による多型検出の原法では、健常者集団に本来存在するァリルをレファ レンスとして、 目的とする領域の多型を検出しょうとするものである。 そこで、 本発明者らはまず、 IKBL1プロモーターァリル 01〜05 (配列番号 1 7 〜 2 1 ) (図
2) の各々をレファレンスとして、 個々の IKBL1ァリノレとのヘテロデュプレックス の移動度を検討した。 その結果、 ァリル間の配列がより違う場合ほど移動度がよ り遅れる現象を確認したが、 その移動度の違いは、 テストしているサンプルのァ リル型を明瞭に区別出来るものではなかった。
このため、一般に単塩基置換の場合より、塩基挿入/欠失の場合の方がヘテロデ ュプレックスの移動度力 S遅れやすレヽ現象(Fukuda Y ら, Tissue Antigens (1995) 45: 49-56; Turner DMら, Tissue Antigens (1999) 54: 400— 404)に着目し、人 為的に 1〜2 塩基の挿入または欠失を導入したものをレファレンスとする着想に 至った。 そこで変異プライマー.法を用いてァリル 03 (配列番号 1 9 ) の- 422位に 1塩基欠失 (T8→T7) 及び - 262位に 1塩基置換 (G→A) を導入したレファレンス 1を作製した。 図 3にレファレンス 1 (配列番号 2 3 ) 及びレファレンス 2 (配列 番号 2 4 ) の塩基配列を示す。 これらのレファレンスは、 上記の IKBL1遺伝子プ 口モーターハプロタイプ配列決定の過程で得られたァリル 03 (配列番号 1 9 ) お よびァリル 04 (配列番号 2 0 ) の各々の DNAを基にして、 2箇所ずつに挿入、 欠 失または置換変異を導入したものである。 変異の導入は変異プライマーを用いた PCR法(Hoshino S ら, Hum Immunol (1992) 33 : 98- 107)により行い、 得られた変 異 PCR産物をクローニングし、 塩基配列を確認したものをレファレンス 1および
2 とした。 このクローン化されたレファレンス 1およびレファレンス 2をテンプ レートとして、 Cy - 5で 5'端を標識した E1R (配列番号 8 ) と未標識の P1F (配列 番号 5 ) を用いて、 前記実施例 2の条件下で PCRを行い、 標識レファレンスを作 製した。
[実施例 4 ] 二本鎖 DNA形成と構造多型検出のための電気泳動
上記実施例 3で作製した標識レファレンス (1 z l) と前記実施例 2で作製した サンプル PCR産物 (3 μ 1) を混合し、 95°Cで 4分間の変性後、 55°Cで 1δ分間、 つ いで 15°Cで 5分間のァニーリングを行った。 その後 1. O ^t 1のフィコールローデ ィングバッファー(15%フィコール、0. 25%ブロモフエノーノレブノレ一)を力 Bえ、 6% ポリアクリルアミ ドゲル (21cm長、 0. 5醒厚、 Long Ranger TSI Gel) 中で電気泳動 した。 電気泳動は ALF expressシーケンサー (Pharmacia) を用い、 30W定電圧、 40°Cの条件下で行った。 また、 移動度測定値を補正するための内部標準として、 C y-5 で標識したボトムマーカー (519bp) 及びトップマーカー (870bp) をサンプ ルと同時に泳動した。 螢光標識された 2本鎖 DNAの移動度を Fragment Manager T a ソフトウェア (Pharmacia) で解析し、 IKBL1プロモーター配列の違いを電気泳 動度の違いとして検出した。 これらの泳動条件は、 ニ本鎮 DNA構造解析による変 異検出法(DSCA)に関する論文に示された原法(Arguel lo JRら, Nature Genet (1 998) 18: 192 - 194)に従うものである力 解析する DNAの長さが約 700塩基対であ るため、 泳動時間を 4時間に変更した。 なお、 従来の方法では健常者集団に存在 する配列そのものをレファレンスとしているが、 本発明者らは、 レファレンスに 人為的に変異を導入することで、 多型ないし多型ハプロタイプをより高精度かつ 効率良く検出することを可能とした。
このレファレンス 1を用いると、ァリル 03をレファレンスとした場合(図 4左) に比較して、 特にァリル 02及ぴ 04の移動度の遅れが顕著となった (図 4右)。一 方、 変異プライマー法を用いてァリル 03 の- 422位に一塩基欠失を導入したもの ではァリル 03をレファレンスにした場合に比べてァリル 02の遅れが顕著になる が、 ァリル 03は移動度がほとんど遅れていない (図 4中)。 すなわち、 本来 1塩 基置換でしか区別出来ないァリルをより効率的に区別するためには、 その違いの 存在する部位の直近に 1〜数塩基程度の短い挿入、 欠失または置換変異を 1個ま
たは複数個導入することが有効であることが発見された。
このように、 作製した非天然のレファレンス 1およびレファレンス 2を用いる ことで、 日本人集団に認められた IKBL1ァリル 01〜05 (配列番号 1 7〜2 1 ) の 5種、 および人為的に作製したァリル 06 (図 2、 配列番号 2 2 ) の全てを明瞭に 区別することが可能となった (図 5 )。 ここで特記すべきことは、 ァリル 01 と 04 のへテロ接合体 (01/04) と、 05 と 06 のへテロ接合体 (05/06) は、 個々の位置 の多型についてみると、 いずれの場合とも- 422位が T8/T8、 - 326位が C/G、 -263 位が A/A、 -63位が T/Aである。 このため、 個々の多型部位のみを検討する限りで は 01/04と 05/06のどちらのァリルの組み合わせであるかを区別できないが、 本 発明者らが開発した測定法を用いると、これらは明瞭に区別可能となった(図 5 )。 すなわち、 この測定法は IKBL1プロモーターの多型の組み合わせ(ハプロタイプ) を直接検出することを可能とする。 また、 この測定法を用いて、 種々のハプロタ イブのへテロ接合について、 IKBL1ァリルを決定可能であることが確認された(図 6)。
[実施例 5 ] IKBL1プロモーターハプロタイプと I型糖尿病との関連
日本人健常者 213名を前記実施例 4に従って解析し、 各人の IKBL1プロモータ ーハプロタイプ型を決定した。 また同様に日本人 I型糖尿病患者 138名を対象と した解析を行った。 ついで各プロモーターハプロタイプ (IKBL1 ァリル) の陽性 率 (表 2) 及ぴプロモーター多型陽性率 (表 3) を患者集団と健常者集団で比較し た。 関連の強さは 2 X 2表を用いて相対危険率で示し、その統計学的有意性はカイ 2乗法によって検定した。 また P値に検出したァリルの数を乗じることで補正 P
(Pc) 値を算出し、 Pc値が 0. 05未満の場合を有意な関連と判定した。
DO
表 2 IKBL1遺伝子プロモータ一ァリルの陽性者頻度
ァリル I型糖尿病患者(n-138) —健常者(η=2Ί 3) —相対危険率— Pc (補正 P)
01 81.9% 59.2% 3.12 0.00004
02 21.0% 1 5.5% 1.45 0.92
03 1 3.0% 35.2% 0.28 0.00002
04 5.8% 14.1 % 0.38 0.07
05 41.3% 49.8% 0.71 0.60
IN3
表 3 IKBL1遺伝子プロモータ一多型の陽性者頻度 多型 (部位;配列) I型糖尿病患者(Γ 138) —健常者(η 213)一 相対危険率 Pc (補正 Ρ) #
-422; T8 99.3% 100.0% 0.21 ns -422; T9 10'9% 15.5% 1.45 ns
J,し 100.0% 100.0% 1.00 ns
-325; G 5.8% 7.0% 0.38 ns -263; A 100.0% 98.1% 5.95 ns -263; G 13.0% 35.2% 0.28 0.00003 -63; T 90.6% 85.9% 1.55 ns -63; A 46.4% 60.6% 0.56 ns
#;nsは有意差なし (Pc>0,05)を示す
CO
0 その結果、 表 2に示すように、 IKBL1ァリル 01陽性者は、 患者群 81. 9%、 健常 者群 59. 2%であり、 患者群に有意に多く存在した (相対危険率 3. 12、 Pc値 = 0. 0 0004)。一方、 IKBL1ァリル 03陽性者は、患者群 13. 0%、健常者群 35. 2%であり、 患者群に有意に少ないこと (相対危険率 0. 38、 Pc値 = 0. 00002) が判明した。 こ のことから、 ァリル 01は本症への感受性、 ァリル 03は抵抗性と強く関連する遺 伝マーカーであることが示される。
これに対して、 プロモーターの各多型と I型糖尿病との関連を検討すると、 表 3に示す結果を得た。 すなわち、 各多型を指標とした場合には、 - 263G 陽性者が 患者群に有意に少ない (患者 13. 0%vs健常者 35. 2%、 相対危険率 0. 28、 Pc値 = 0. 000009) ことが観察された。 これは、 検討した日本人集団において - 263G とァ リノレ 03とが完全に 1: 1対応をしていることによるものである。 一方、 ァ リノレ 01 とのみ 1:〗対応する多型は存在しない (図 2に示すように、 ァリル 01を構成す る多型は、 いずれも 01以外の複数のァリルと共通である) ため、 患者群に高い頻 度で認める多型はあるものの、 いずれも相対危険率は比較的低く、 かつその頻度 差は統計学的に有意ではなかった。 すなわち、 IKBL1 プロモーター多型を個々に 判定することでは、 感受性との弱い関連としか診断出来ない。 しかしながら、 IK BL1 プロモーターでみられる多型をハプロタイプとして一括して判定することで、 I 型糖尿病への感受性因子およぴ抵抗性因子を保持しているか否かを的確に診断 可能とするものである。
産業上の利用の可能性
以上詳述したように、 本発明により IkBLl遺伝子プロモーター領域に見られる 多型を検出することによって、 I 型糖尿病の検査方法を提供することができる。 また、 遺伝子の多型ハプロタイプを識別するための実用的なタイビング方法を提 供することができる。 本明細書で引用した全ての刊行物、 特許および特許出願をそのまま参考として 本明細書にとり入れるものとする。