明細書
核酸分析方法 技術分野
本発明は臨床化学、 薬物化学、 生化学、 食品化学の分野における、 主 として遺伝子変異検出方法に関するものであり、 ゲノム遺伝子、 ウィル ス又は細菌等の遺伝子の検出並びに変異の判定に用いられる。 背景技術
従来の遺伝子配列の変異検出方法と しては以下のような方法がある。 ( 1 ) S S C P (single strand coniormational polymorphism) fe
P C R (polymerase chain reaction)法で増幅された二本鎖 D N Aを熱変 性によって一本鎖とし、 非変性ポリアク リルアミ ドゲルで電気泳動する と、 それぞれの DNA鎖はその一次配列に応じて異なる高次構造を形成 する。 数百塩基にひとつの違いによってもこの高次構造は異なり、 その 結果電気泳動度に差が生じる。 泳動度の差は DN Aの銀染色や 5'端に放 射性標識や蛍光標識を施した P C Rプライマーを用いることによって検 出することができる。 S S C P法では、 変異検出感度の著しい低下のた め 200〜300塩基長以上の D N A断片の解析には適さない。 また、 一本 鎖 D N Aの高次構造の形成は、 ゲルの温度、 ポリアク リルアミ ドゲルの 濃度や架橋度、 グリセロール濃度、 緩衝液組成などの物理的条件の影響 を受けやすく、 条件の最適化に注意を払わねばならない。
( 2 ) D G G E (denaturing gradient gel eiectrophoresis)fe、 T G G E (temperature gradient gel electrophoresis) ¾
二本鎖 D N Aを濃度勾配を設けた尿素やホルムアミ ドなどの変性剤の 存在下 (D G G E)、 または温度勾配の存在下 (TGG E) でゲル電気泳
動を行う と、 変性剤濃度の上昇や温度上昇に応じて一本鎖 DN Aに解離 する。 その解離点は二本鎖 D N Aの T m (melting temperature)に応じて 異なるため、 その配列によって電気泳動度に差異が生じる。 ホモデュプ レックス (homoduplex) 中の一塩基の配列の差異でも T mに十分な差 異を生じ、 その結果電気泳動度の差異による変異の検出が可能である。 変性剤濃度勾配と温度勾配の効果を併用することで、 より感度よく変異 を検出することも可能である。
( 3 ) H E T法(ヘテロデュプレックス分析法(Heteroduplex Analysis)) 由来の異なる二種の二本鎖 D N Aを混合し、 変性後再ァエールさせる ことでヘテロデュプレックスを形成させ、 非変性アクリルアミ ドゲルで 電気泳動を行うと、 ヘテロデュプレックスはホモデュプレックス と異な る泳動度を示すことを利用した変異検出方法。 バンドの分離能を改善す るために特殊なゲルマ ト リ ックスを使用したり(Soto D. et al; PCR Methods Appl 1992;2:96-98)、 1 5 %尿素の存在下で電気泳動を行うな どの工夫が成されている。
( 4 ) R N a s e A C l e a v a g e M e t h o d
至適な条件下では、 RNA/RNA ヘテロデュプレックス X および RNA/D NA ヘテロデュプレックスのミスマツチ部位は R N a s e Aによつて切断され、 切断の有無を変性ゲル電気泳動にて検出できる。 しかし、 プリン塩基の切断効率はピリ ミジン塩基のそれより不良で、 そ のため両鎖の DN Aを解析した際の変異検出率は約 7 0 %と報告されて おり(Myers R. M. et al.;Science 1985;230:1242-1246)、 未知の変異のス ク リーニング法として実用的ではない。
( 5 ) C C M法(Chemical Cleavage Method)
ミスマッチを含む D NA/D NA ヘテロデュプレックスまたは DN A RNA ヘテロデュプレックス中のシトシン残基を hydroxylamine
で、 およびチミ ン残基を osmium tetroxide で処理すると、 処理された 塩基部位を piperidine が切断可能となる。 非特異的な切断は殆どなく、 したがって切断の有無を両鎖に対して電気泳動にて解析することで、 殆 どの変異検出が可能である。 しかし、 電気泳動が必要なことと、 毒性の 強い化学物質の使用が不可欠なことが欠点である。
( 6 ) し F L P法 (Cleavase Fragment length Polymorphism) 二本鎖 DN Aを熱変性の後、 所定の温度まで急速に冷却すると、 それ ぞれの DNA鎖が鎖内でァニールしてステム一ループ構造を形成する。 この二次構造は DN Aの一次配列によって異なるが、 Cleavase と呼ばれ るエンドヌク レアーゼは、 このステム一ループの 5 '側の根本部分を切断 するため、 切断後に変性ゲル電気泳動を行う ことによって DNAの切断 パターンの差異から二次構造の差異、即ち一次配列の差異を検出できる。
( 7 ) Mutation Detection by Mismatch Bmamg Proteins
ミスマッチを含むヘテロデュプレックス D N Aと大腸菌 M u t Sタ ンパクをインキュベー トすると、 ミスマヅチ部位に該タンパクが結合す るので、 ゲルシフ トアツセィによる移動度の差異によって変異の有無を 検出することができる。 電気泳動を実施しない方法と して、 Mu t Sタ ンパクをメンブレン等の固相に固定しておき、 ミスマッチを含むヘテロ デュプレックス DNAとの結合の有無を検出することも可能。 また、 M u t Sタンパクのヒ トホモログである hMS H 2タンパク と GT B P タンパクが共同してミスマッチを含むへテ口デュプレツクス D N Aに結 合するので、 これらも使用される。
上記、 ( 1 ) 〜 (6 ) の方法は、 いずれも電気泳動による検出が不可欠 であり、 操作が煩雑である。 また ( 7) は固相を用いた検出が可能であ る力 ^通常ゲルシフ トァッセィを要し、均一測定系は開示されていない。
発明の開示
本発明の課題は、 均一測定系、 すなわち電気泳動やいわゆる
Bound/Free 分離な,どのような煩雑な手法を必要とせず、 簡便に遺伝子 変異の検出、 制限酵素認識配列の検出、 特定配列の増幅検出する方法を 提供すること、 および該検出方法に使用する測定キッ トを提供すること にある。 ,
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、 シグナル発生物質を含有するプ ローブをハイブリダイゼーショ ンさせ、 ェン ドヌクレアーゼおよび zま たはェキソヌクレアーゼを作用させ、 シグナル発生物質を遊離させるこ とにより、 遺伝子変異を高感度に検出する方法を見出し、 本発明を完成 させるに至った。
すなわち本発明は、
(1) . 標的核酸の変異を検出するための均一測定系であって、 シグナル発 生物質を含むプローブを用い、 変異を認めた場合に該プローブからシグ ナル発生物質が遊離することにより、 シグナルが検出可能となる機構を 用いて変異を検出することを特徴とする遺伝子変異検出方法、
(2) . ①標的核酸とプローブをハイプリダイゼーションさせて二本鎖の 核酸を得る工程、②該ニ本鎖核酸について 5 '陥没末端または 3 '陥没末端 を出現させる工程、 および③プローブからシグナル発生物質が遊離する ことによりシグナルを検出する工程を含んでなる前項(1).に記載の遺伝 子変異検出方法、
(3) . 5 '陥没末端または 3 '陥没末端を出現させる工程が、 ハイブリダィ ゼーションにより得た二本鎖核酸が相補的でない部分を含む場合に、 特 異的に当該核酸を切断する機能を有するェンドヌク レアーゼによること を特徴とする前項 (2).に記載の遺伝子変異検出方法、
(4). エンドヌク レアーゼが、 T 4 ファージ エンドヌク レアーゼ V I Iおよび Zまたは T 7 ファージ エンドヌク レアーゼ I および または制限酵素であることを特徴とする前項(3).に記載の遺伝子変異検 出方法、
(5). プローブからシグナル発生物質が遊離することによりシグナルを 検出する工程が、 ェキソヌクレアーゼを用いることを特徴とする前項(1). 〜(4) .のいずれか 1に記載の遺伝子変異検出方法、
(6) . ェキソヌク レアーゼが、 5 'ェキソヌク レアーゼまたは 3 'ェキソヌ クレアーゼであることを特徴とする前項(5).に記載の遺伝子変異検出方 法、
(7) . 5 'ェキソヌク レアーゼが λ ェキソヌク レアーゼまたは 3 'ェキソヌ クレア一ゼがェキソヌクレアーゼ I I Iであることを特徴とする前項 (6).に記載の遺伝子変異検出方法、
(8) . プローブと標的核酸をハイプリダイゼーシヨ ンさせて得た二本鎖 核酸が相補的でない部分を含む場合に、 該相補的でない部分を認識する タンパク質を作用させ、さらに、そのェキソヌクレアーゼ活性によって、 シグナル発生物質を含むプローブを末端より消化させる工程を含むこと を特徴とする前項(1) .に記載の遺伝子変異検出方法、
(9) . 該相補的でない部分を認識するタンパク質が、 5 'ェキソヌクレア一 ゼまたは 3 'ェキソヌクレアーゼ活性を有することを特徴とする前項(8). に記載の遺伝子変異検出方法、
(10) . 該相補的でない部分を認識するタンパク質が、 ウェルナーシンド ローム遺伝子産物であることを特徴とする前項(8).または(9).に記載の 遺伝子変異検出方法、
(11). 標的核酸と して遺伝子増幅した核酸を用いることを特徴とする前 項(1) .〜(10) .のいずれか 1に記載の遺伝子変異検出方法、
(12) . 標的核酸と相補的な構造を有するシグナル発生物質を含有するプ ロープを用いることを特徴とする均一測定系であって、 ①該標的核酸と 該プローブをハイブリダイゼーションさせ二本鎖の核酸を得る工程、 ② プローブからシグナル発生物質が遊離することによりシグナルを検出す る工程、 ③ェキソヌクレアーゼにより短縮した場合に、 プローブ核酸が ある一定の長さになると標的核酸からプローブが解離する工程、 ④工程 ①から③を繰り返すことを特徴とする核酸の検出方法、
(13) . プローブに含まれるシグナル発生物質が標的核酸と相補的に結合 できる物質であることを特徴とする前項, (1) -〜(12).のいずれか 1に記載 の遺伝子変異または核酸の検出方法、
(14) . シグナル発生物質がフォルマイシン (formycin)、 2—ァミノプリ ン 2 -aminopurme 、 2, り一ンァ ^ノプリ ン ! ^ 2, 6 -diaminopurine) から選択される 1または 2以上の化合物を含むことを特徴とする前項 (1).〜(13).のいずれか 1に記載の遺伝子変異または核酸の検出方法、 (15). シグナルを検出する機構が、 シグナル発生物質がモノヌク レオチ ドと して遊離することを特徴とする前項(1).〜(14).のいずれか 1に記載 の遺伝子変異または核酸の検出方法、
(16) . 変異が標的核酸の末端部分でない箇所に認められた場合の標的核 酸の変異を検出するための均一測定系であって、 プローブ中のシグナル 発生物質がシグナル発生標識物質および当該シグナルの発生を有効に減 弱させるように配置されていることを特徴とする前項(1).〜(12).のいず れか 1に記載の遺伝子変異検出方法、
(17) . 前項(1) -〜(16) .のいずれか 1に記載の方法を用いることを特徴と する制限酵素認識配列の検出方法、
(18). 前項(1) -〜(16).のいずれか 1に記載のプローブを含むことを特徴 とする遺伝子変異検出、 制限酵素認識配列の検出または特定配列を有す
る核酸の定量または検出に使用するキッ ト、 からなる。 図面の簡単な説明
第 1図は、 5 ' 陥没末端を有する hybrid DN Aを示す図である。 (実 施例 1 )
配列 1はシグナル発生物質を含有するプローブである。 配列 2は、 相 補的な配列を含むオリゴマー DNAである。
第 2図は、 5 '陥没末端を有する hybrid DNAに対する λェキソヌク レアーゼの効果を示す図である。 (実施例 1 )
第 3図は、 5 '陥没末端を有する hybrid DNAに対する λェキソヌク レアーゼ量による効果を示す図である。 (実施例 2)
第 4図は、 hybrid DNAを示す図である。 (実施例 3)
配列 3は、 2—ァミノプリンがアデニンに置換され、 かつ 5 'がリン酸 化されていないことを除いては配列 1 と同じ配列を有するォリ ゴヌタ レ ォチドである。
第 5図は、 hybrid D N Aと ss D N Aに対する λェキソヌク レアーゼ を作用させたときの効果を示す図である。 (実施例 3 )
第 6図は、 Τ 4エン ドヌク レアーゼ V I I を用いた変異検出の原理を 示す図である。 (実施例 4)
第 7図は、 ミスマッチを形成しない hybrid DNAとミスマッチを形 成する hybrid D N Aの配列を示す図である。 (実施例 4) 配列 4は 5 ' 端に水酸基を有し、 3'端に F I T C標識が施されているオリゴマー DN Aである。 配列 5は配列 4とミスマツチを形成しない配列を有するオリ ゴマー D N Aである。 配列 6は配列 4 とミスマッチを形成する配列を有 するオリゴマー D N Aである。
第 8図は、 ミスマッチを形成しない hybrid D N Aとミスマッチを形
成する hybrid D N Aの配列に T 4ェンドヌクレアーゼ V I Iを作用さ せた場合の電気泳動を示す図である。 (実施例 4 )
第 9図は、本発明の遺伝子変異検出の原理を示す図である。(実施例 5 ) 第 1 0図は、 ミスマッチを形成しない hybrid DNAとミスマッチを 形成する hybrid D N Aの配列に λェキソヌクレアーゼ無添加の場合と 添加した場合の電気泳動を示す図である。 (実施例 5 )
第 1 1図は、 ミスマツチを形成しない hybrid DNAとミスマッチを 形成する hybrid D N Aの配列を示す図である。 (実施例 6 )
配列 7は配列 4の一部のアデニン残基を蛍光発生物質である、 2—ァ ミノプリンに置換したものである。
第 1 2図は、 ミスマツチを形成しない hybrid DNAとミスマッチを 形成する hybrid DNAの配列に λェキソヌクレアーゼを作用させたと きの効果を示す図である。 (実施例 6 )
第 1 3図は、 相補的な配列のオリ ゴヌク レオチ ドによる hybrid DN Aを示す図である。 (実施例 7)
配列 8はオリゴヌクレオチドであり、 配列 9は配列 8と相補的な配列 を有し、 一部のアデェン残基が 2—ァミノプリンに置換されたものであ る。
第 1 4図は、 制限酵素の種類とシグナル発生の関係を示す図である。 (実施例 7)
第 1 5図は、 相補的な配列のオリゴヌクレオチドによる hybrid DN Aを示す図である。 (実施例 8 )
配列 1 0は 2—ァミノプリンを含むオリ ゴヌクレオチドであり、 配列 1 1は配列 1 0と相補的な配列を有するものである。 配列 1 2は配列 1 0 と 8塩基対のミスマッチを含むォリ ゴヌクレオチドである。
第 1 6図は、 変異 (ミスマッチ) の有無とシグナル発生の関係を示す
図である。 (実施例 8 ) 発明を実施するための最良の形態
本発明の内容を以下に詳細に説明する。
標的となる核酸 (以下 「ターゲッ ト D N A」 という。) とシグナル発生 物質を有するプローブをハイブリダイゼーショ ンさせたとき、 該プロー ブと相補的でない配列をターゲッ ト D N Aが有していれば、 当該部位で ミスマッチ、 バブルまたはループ構造が生じる。
ミスマッチ、 バブルまたはループ構造が生じていると、 ある種のェン ドヌク レア一ゼによりその数ベース 3,側あるいは 5 '側にて両鎖 D N A が切断され、 5 '陥没末端あるいは 3 '陥没末端を有する二本鎖核酸が生ず る。 さ らに 5 '陥没末端あるいは 3 '陥没末端を有する二本鎖核酸に 5 'ェ キソヌク レアーゼまたは 3 'ェキソヌク レアーゼを作用させてシグナル 発生物質を遊離させ、 シグナル発生物質のシグナルを検出することによ りターゲッ ト D N Aが有する変異を検出する。
また、 ェンドヌク レアーゼを用いずに、 5 '陥没末端あるいは 3 '陥没末 端を生じさせずにミスマッチ、 バブルまたはループ構造部を認識するェ キソヌク レア一ゼを作用させてシグナル発生物質を遊離させ、 シグナル 発生物質のシグナルを検出することにより ターゲッ ト D N Aが有する変 異を検出することも可能である。
このとき、 ターゲッ ト D N Aとプローブとのハイブリダィゼーシヨン でミスマッチ、 バブルまたはループを生じない場合は、 該エンドヌク レ ァーゼおよび該ェキソヌク レアーゼが作用せずプローブ中のシグナル発 生物質がモノヌク レオチドと して遊離してこない。 このためシグナルが 発生しないかまたは、 低いシグナルの発生しか起こらない。 または、 上 記酵素が反応してもミスマッチ、 バブルまたはループ構造が存在する場
合よりも低いシグナルの発生であり、 シグナルの発生の度合いを測定す ることにより遺伝子変異の検出が可能である。
具体的には、 ターゲッ ト D N Aの変異検出は、 以下の工程により行わ れる。
A : ターゲッ ト D N Aと相補的に結合しうるシグナル発生物質を用いる 場合
(シグナル発生物質)
本発明に使用されるシグナル発生物質の 1は、 ヌクレオチド中に含ま れる塩基であってプローブ配列中に舍有することができ、 プローブとタ ーゲッ ト D N Aとのハイブリダイゼーションを実質的に妨害しないもの であれば良い。 さらに、 シグナル発生物質は、 モノヌクレオチドと して 遊離した時にシグナルを発生する性質を有し、 該シグナル発生物質が、 一本鎖ポリヌクレオチドに含まれる力 、 またはターゲッ ト D N Aと二本 鎖を形成している場合にはシグナルを発生しないか、 またはモノヌク レ ォチドのとき発生するシグナルよりも低いシグナルしか発生しないもの が望ましい。
具体的には、 例えばアデニンアナログ化合物が例示され、 より具体的 にはフォノレマイシン(formycin)、 2 —ァミ ノプリ ン( 2 - amin op urine)、 2, 6—ジァミノプリン ( 2 , 6 - diaminopurine) が例示される。 (プローブ)
本発明におけるシグナル発生物質を配列中に含むプローブとは、 上記 のシグナル発生物質を含み、 ターゲッ ト D N Aと相補的に結合でき、 さ らに、 ターゲッ ト D N Aに変異があれば、 ミスマッチ、 バブルまたはル ープ構造を生じ、 当該ミスマッチ、 バブルまたはループ構造をエン ドヌ クレアーゼ等が認識し、 シグナルを発生するものであれば良い。
(検出方法)
a.ェン ドヌク レアーゼを用いる場合
1 ) 標的となる核酸とプローブを混合し変性した後、 ハイプリダイゼー シヨ ンさせ、 二本鎖を形成させる。 上記で形成したプローブと相補的で ない部分があると ミスマッチまたは配列の挿入あるいは欠損によってル ープ構造が生ずる。
2 ) 上記で形成したプローブとターゲッ ト D N Aのへテロデュプレック スに、 エン ドヌク レアーゼを作用させ、 ミスマッチまたはループ構造が 生じていると、その数ベース 3 '側または 5 '側で該へテ口デュプレックス が切断され、 5 '陥没末端または 3 '陥没末端を有する二本鎖の核酸が出現 する。
3 ) 次にェキソヌクレアーゼを作用させ、 5 '陥没末端または 3 '陥没末端 からプローブを消化させる。 その際、 プローブ中のシグナル発生物質が モノヌクレオチドと して遊離し、 このとき発生するシグナルを測定する ことにより、 変異の有無を検出する。
b.エン ドヌク レアーゼを用いない場合
1 ) 標的となる核酸とプローブを混合し変性した後、 ハイブリ ダィゼー シヨ ンさせ、 二本鎖を形成させる。 上記で形成したニ本鎮核酸に相補的 でない部分があると ミスマッチまたは配列の挿入あるいは欠損によって ループ構造が生ずる。
2 ) 上記で形成したプローブとターゲッ ト D N Aのへテロデュプレック スに、 ミスマッチ、 バブルまたはループ構造が生じていると、 ある種の ェキソヌク レアーゼ活性を有するタンパク質により、 二本鎖 D N Aの 5 ' 末端または 3 '末端からの消化が起きる。 このよ うな活性を有するタンパ ク質の例と して、 ヒ トのウェルナーシンドローム遺伝子にコー ドされる タンパク質が挙げられる。
3 ) その際、 プロープ中のシグナル発生物質がモノヌク レオチドと して
遊離し、 このとき発生するシグナルを測定することによ り、 変異の有無 を検出する。
B : —対のシグナル発生物質を用いる場合
(シグナル発生物質)
本発明に使用されるシグナル発生物質の他の 1は、 シグナル発生標識 物質および該シグナルの発生を有効に減弱させるように配置した一対の 標識物質を組み合わせて使用する。 このよ うな機能を有する組み合わせ であれば良く、 さらにプローブとターゲッ ト D N Aとのハイブリダィゼ ーショ ンを実質的に妨害しないものであれば特に限定されないが、 好ま しくは光学的に検出されるシグナルに対応するものが取り扱いやすく好 適である。 さ らに、 光学的に検出されるシグナルとは蛍光性であっても 良いし、 蛍光性でなくても良く、 特に限定されない。 具体的には、 例え ば プ ロ ー ブ に 含 ま れ る 標識物 質 は Fluorescein と Tetrame thylrhodamine. FAMと TAMRA、EDANSと DABCYL、: FITCと DABCYL、 Fluorescein と DABCYL、 Fluorescein と Cy3、 FITC と Cy3、 BODIPY FL と Fluorescein と QS Y 7dye等が挙げられるが、 これらに限定される ものではない。
本シグナル発生標識物質(以下これを「レポーター基」 ともいう。)は、 当該シグナルの発生を有効に減弱させる機能を有する標識物質 (以下こ れを「タエンチング基」ともいう。)と一対にして使用されるものである。 すなわち、 レポーター基は、 クェンチング基との距離が十分短いとき、 レポーター基が発生するシグナルを有効に減弱させる機能を有する。 そ のよ うな機能を有するシグナル発生標識物質であれば特に限定されない 力 、 例えば蛍光性物質の場合、 レポーター基の蛍光波長とクェンチング 基の吸収波長が共通のスぺク トラムを有する場合にこのような一対の標 識物質と しての機能を有するといえる。
このような一対の標識物質を用いる手法は、 一般的に蛍光共鳴ェネル ギー転移 (F R E T ) と して公知である (特許公表 2000-509278)。
(プローブ)
本発明におけるシグナル発生物質を配列中に含むプローブとは、 上記 のシグナル発生物質を含み、 ターゲッ ト D N Aと相補的に結合でき、 さ らに、 ターゲッ ト D N Aに変異があれば、 ミスマッチ、 バブルまたはル ープ構造を生じ、 当該ミスマッチ、 バブルまたはループ構造をエンドヌ ク レアーゼ等が認識し、 シグナルを発生するものであれば良い。
上記プローブは、 ェキソヌクレアーゼの消化を受けていない場合には シグナルが検出されないか、 またはェキソヌク レアーゼの作用によって レポーター基またはクェンチング基が遊離した場合に比べて有意に低い シグナルしか発生しないように一対の標識物質が配置されていることを 要する。 そのような例と して、 プローブの 5 '末端または 3 '末端にクェン チング基および鎖内にレポーター基、 5 '末端または 3 '末端にレポーター 基および鎖内にクェンチング基、 鎖内にレポ一ター基およびクェンチン グ基、 プローブのそれぞれの末端にレポーター基およびクェンチング基 を有するものが例示される。 クェンチング基と レポーター基の距離は、 レポーター基のシグナル発生を有効に減弱させることができればよいが、 好ましく は 2 0塩基以内、 より好ましくは 1 0塩基以内が望ましい。
(検出方法)
上記プローブがェキソヌク レアーゼの作用によって消化され、 且つレ ポーター基またはクェンチング基のいずれかが標識されたヌク レオチ ド が遊離した場合にレポーター基からシグナルが得られる機構を用いて遺 伝子変異の検出をすることを特徴とする。 このシグナルが得られる機構 とは、 次のとおりである。
すなわち、 プローブをターゲッ ト D N Aとハイブリダイズ せてへテ
口デュプレックスを形成させ、 ターゲッ ト D N A内に塩基の変異、 挿入 または欠失が存在するために該へテ口デュプレックスに生じたミスマツ チ、 バブルまたはループ構造をェキソヌク レアーゼ活性を有するタンパ クが認識し、 ミスマッチ、 バブルまたはループ構造が存在する場合にの みプローブを末端から消化することによってクェンチング基またはレポ 一ター基が標識されたヌクレオチドが遊離し、 その結果、 レポーター基 とクェンチング基の距離が離れ、 クェンチング基による減弱が弱く なる ことにより シグナルを発生させる機構をいう。 ミスマッチ、 バブルまた はループ構造が存在しない場合には、 ェキソヌク レアーゼによる消化を 受けないか、 または、 消化を受けても最小限であり、 その結果、 シグナ ルの発生が起こらないか、 ミスマッチ、 バブルまたはループ構造が存在 しないときと比べてシグナルの発生は有意に低くなる。
(ターゲッ ト D N Aとプローブのハイプリ ダイゼーショ ン)
本発明におけるターゲッ ト D N Aとシグナル発生物質を有するプロ一 ブのハイブリダィゼーシヨ ンは、 上記 Aまたは Bの方法に共通し、 該タ ーゲッ ト D N Aを変性により一本鎖と したのち行われる。 該ターゲッ ト D N Aがー本鎖であれば変性の必要はなくそのままプローブとハイプリ ダイゼーショ ンさせることも可能であるが、 該一本鎖ターゲッ ト D N A の高次構造の形成によるハイプリダイゼーションの阻害の可能性を排除 するためには変性操作を行うのが好ましい。
本発明における変性の方法は通常行われる方法に従えば良いが、 例え ば熱変性によるものと化学的変性によるものが例示される。 具体的な方 法と して、 熱変性による方法は、 通常 9 0 °C以上に加熱することにより 行われる。 好ま しくは、 9 4 °C〜 9 7 °Cで約 5分間加熱することによ り 変性が行われる。 化学的変性による方法は尿素、 ホルムアルデヒ ド等の 変性剤の作用により、 または p Hを上昇させることにより行われる。 p
Hは 0 . 4〜1 . O m o 1 / L N a O Hを用いることにより上昇させる ことができる。 操作性などから熱変性による方法が好適に用いられる。 また、 ハイブリダイゼーションの方法は通常行われる方法に従えば良 いが、 その条件はプローブ又は変性二本鎖核酸の鎖長、 塩基配列、 T m (融解温度) により異なる。 一般的には ρ Η 6' . 5〜9 . 0で、 5 0〜 1 0 0 0 m m o l / Lのナ ト リ ウムィオン存在下にて室温〜 7 0 °Cの温 度下でハイブリダイゼーションが行われる。
(エン ドヌク レアーゼまたはェキソヌク レアーゼの作用)
本発明における 5 '陥没末端または 3 '陥没末端は、プローブとターゲッ ト D N Aとのハイプリダイゼーシヨンによって生じたミスマッチ、 バブ ルおよびループ構造部が認識され、 二本鎖ヌクレオチド鎖が切断される ことによって生じる力^具体的には以下のよ うな作用によって行われる。 例えば、 ターゲッ ト D N Aに塩基の置換あるいは揷入または欠損があ れば、 プローブと該ターゲッ ト D N Aからなるヘテロデュプレックスに ミ スマッチまたはループ構造を生じることになる。 本発明における 5, 陥没末端または 3 '陥没末端を生じさせる酵素は、 当該ミ スマッチまたは ループ構造の部分を認識して二本鎖のヌク レオチド鎖を切断する機能を 有するものであればと く に限定されないが、 例えばェン ドヌク レアーゼ を例示され、具体的には T 4 ファージ エン ドヌク レアーゼ V I I、 T 7 ファージ エンドヌク レアーゼ I が例示される。
本発明におけるェンドヌク レアーゼの反応条件は、 エンドヌク レア一 ゼが作用し 5 '陥没末端または 3 '陥没末端を生じさせる条件であればよ く、 特に限定されないが、 Eur. J. Biochem 194, 779- 784(1990)、 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92 ,87-91(1995) 、 Nature Genetics 9 , 177- 183(1995)等の文献を参照することができる。
また、 エンドヌク レアーゼが認識し、 切断することのできるループの
塩基数は、 使用するェンドヌクレアーゼの種類や検出しょう とする核酸 の配列によ.り異なる。 例えば Kleff S .ら(The EMBO Journal 7 (5), 1527- 1535 (1988))によると、 T 4 エンドヌク レアーゼ V I I は、 5 1 塩基のループを認識し、 切断できることが報告されている。
本発明においてシグナル発生物質のモノヌク レオチドと しての遊離は、 具体的には以下のように行われる。
上記のェンドヌク レアーゼにより生じた 5 '陥没末端または 3 '陥没末 端を酵素が認識してこれを消化することにより、 シグナル発生物質を含 むモノヌクレオチドが遊離する。 5,陥没末端または 3 '陥没末端を認識す る酵素は特に限定されないが、 ェキ.ソヌク レアーゼが例示され、 具体的 には、 5,ェキソヌク レアーゼおよび 3 'ェキソヌク レア一ゼが例示される c さらに具体的には、 5 'ェキソヌク レアーゼと しては、 λ ェキソヌクレ ァーゼが、 3 'ェキソヌクレアーゼと してはェキソヌク レアーゼ I I I が例示される。
本発明において、エンドヌクレアーゼによって生じた 5,または 3 '陥没 末端からェキソヌク レアーゼによってプローブを消化する際、 エンドヌ ク レアーゼによつて切断されていないプローブが 5 'または 3 '末端から ェキソヌク レアーゼによって消化されることは、 バックグラウンド · シ グナルを著しく上昇させる原因となるので好ましく ない。 例えば、 工 キソヌク レアーゼは 5,末端にリ ン酸基を有する D Ν Αよ り も水酸基を 有する D N Aに対する感受性が低く、 5 '末端に水酸基を有するプローブ を用いることで λ ェキソヌク レアーゼによるプローブの 5 '末端からの 消化を最小限に押さえることができる。 また、 ェキソヌク レアーゼ I I I によってプローブが 3 '末端から消化されるのを防ぐため、 プローブの 3 '末端の 2塩基ないし 3塩基間のホスホジエステル結合をホスホ口チ ォエー ト結合とすることで、 ェキソヌク レアーゼ I I I に対して耐性と
することができる。
本発明における上記ェキソヌク レアーゼの反応条件は、 エン ドヌク レ ァーゼ二より生じた 5 '陥没末端または 3 '陥没末端を認識し、シグナル発 生物質を含むモノヌク レオチドを生成させるものであればよく、 特に限 定されないが、例えば、 λェキソヌク レアーゼの反応条件は Nucleic Acids Research 27(15), 3057-3063 (1999), ェキソヌク レアーゼ I I I の反 応条件は J. Biol. Chem. 251 , 1896 (1976)等の文献を参照するこ とができる。
また、 本発明におけるェンドヌクレアーゼを用いない場合に使用され るェキソヌクレアーゼ活性を有するタンパク質は、 ヘテロデュプレック ス中のミスマッチ、 バブルまたはループ構造を認識し、 そのような構造 が存在する場合にのみプローブを 5 'または 3 '末端から消化する機能を 有すれば良く、 特に限定されないが、 ヒ トのウェルナーシン ドローム遺 伝子にコー ドされ'るタンパク質を (以下 「W R Nタンパク質」 という。) が例示される。
W R Nタンパク質の反応条件は、 A . のプロープ中にシグナル発生物 質を含むモノヌク レオチドが存在する場合には、 ヘテロデュプレックス がミスマッチ、 バブルまたはループを含むときに 3 'から D N Aを消化し、 シグナル発生物質を含むモノヌクレオチドを生成させる条件であれば良 い。 または B . のプローブ中にクェンチング基と レポーター基が標識さ れたヌク レオチドを含む場合には、 同様にへテ口デュプレックスがミス マッチ、 バブルまたはループを含むときに 3 'から D N Aを消化し、 プロ ーブ中のクェンチング基またはレポーター基が標識されたヌク レオチド を遊離することのできる条件であれば良い。 これらの条件は特に限定さ れないが、 例えば Nucleic Acids Research 28(17), 3260-3268 (2000)等 の文献を参照することができる。
(シグナルの検出)
本発明におけるシグナル発生物質によるシグナルの検出は、 以下のよ うに行われる。
シグナル発生物質が Aの場合では、 例えば、 2—ァミノプリ ンを用い たときのシグナルの検出法と しては、 2—ァミノプリンは、 p H 6〜 l 0で最大蛍光を発し、 p H 7. 0では最大励起波長 3 0 3 n m、 最大蛍 光波長 3 7 0 n mで測定される (The Journal of Biological Chemistry 244(5), 1228.1237 (1969))。 フォルマイシンは、 ρ Η 5〜 9のとき最大 蛍光を発し、 ρ Η 7. 0のとき最大励起波長 2 9 5 n m最大蛍光波長 3 4 0 nmで測定される。 2 , 6—ジァミノプリンは、 p H 7〜 l lのと き最大蛍光を発し、 p H 7および p H l 1のとき最大励起波長 2 8 0 η m、 最大蛍光波長 3 5 0 n mで測定される。
また、 Bの F R E Tの場合では、 シグナルの検出条件として、 例えば プローブの 5 '末端に Dabcyl修飾、鎖内に Fluorescein修飾の場合、 3 '→ 5 'ェキソヌクレアーゼの作用により、 3 '末端より分解されるに伴って発 せられる蛍光は最大励起波長 4 9 4 n m、最大蛍光波長 5 1 8 n mの条 件でフルォロメーターを用いて検出される。
ェキソヌクレアーゼによるプローブの分解によって生じるシグナル、 例えば、 F R E Tの場合の蛍光シグナルは、 プローブ DN Aの分解反応 に応じて増加し、 反応の進行中にシグナルをモ-ターすることが可能で あり、 適切な反応時間を選択することにより、 再現性並びに定量性の向 上および測定時間の短縮が図られる。
(試料)
また、 本発明に用いる試料は、 核酸を含有するものであれば特に限定 されないが、 P C R産物、 生物試料を例示することができる。 生物試料 とは生物に由来する試料を意味し、 全血、 血漿、 血清、 骨髄、 バッフィ
一コート、 尿、 体液、 唾液、 鼻汁、 涙液、 糞便由来物、 細胞培養物、 細 胞培養物、 細胞溶解物、 培養培地等のような核酸を含有する可能性のあ る生物試料を例示することができる。
また、 必要に応じて例えば生物試料をあらかじめ溶解し核酸を抽出し てもよい。 生体試料からの核酸の抽出方法と しては、 溶解液を加え、 細 胞を溶解させ、有機溶媒を加えて核酸を抽出させる方法等が例示される。 生体試料からの核酸の抽出に用いられる溶解液は、 プロテア一ゼを用 いることが好ましく、 プロテアーゼと して細胞膜の破壌や生物試料に含 まれるタンパク質を分解するものであれば特に限定されない。 具体的に は、 プロナーゼ、 プロティナーゼ K等が挙げられ、 これらのうち、 プロ ティナーゼ Kが好ましく用いられる。 その使用濃度と しては、 0 . 1〜 1 0 0 O U Z m Lの範囲で使用するのが好ましい。 また緩衝液を含有さ せることも可能で、 p H 6 ~ 1 2の範囲が好適である。 この緩衝液と し ては、一般に使用されているものであれば特に限定されるものでないが、 p H 6〜l 2の範囲のいずれかの p Hにおいて緩衝能を有するものが好 ましく、 例えば 1 , 3 ビス [ト リス (ヒ ドロキシメチル) メチルァミノ ] プロパン、 ト リス [ヒ ドロキシメチル] ァミノメタン等が挙げられ、 そ の使用濃度と しては、 l〜 5 0 0 m M、 p Hは 6〜 1 2の範囲が好まし い。
さらに、 プロティナーゼ K処理後の核酸抽出に用いられる有機溶媒と しては、 水飽和フエノール、 緩衝液飽和フエノール、 クロ口ホルム等が 挙げられる。 これらのうち、 水飽和フエノールまたは緩衝液飽和フエノ ール、 あるレ、はこれらの飽和フエノールとク口口ホルムを適当な割合で 混合したものが好ましい。
このようにして生物試料から抽出された核酸は、 遺伝子構造の解析に 用いるには量が不充分なことが多い。 そのような場合には、 生物試料か
ら抽出された核酸を P C R法等によって増幅することができ、 増幅され た D N A産物を本発明による遺伝子変異解析に用いることができる。
(プローブの作成)
プローブの作製は、 例えば一般の D N A合成装置を用いて化学的な方 法を用いて合成可能である。 また、 P C Rの技術すなわち、 D N Aポリ メラーゼを用いて、 2—ァミノプリンを含むデォキシヌクレオチドをニ 本鎖 D N Aに取り込むことによりプローブを合成することも可能である c (その他)
さらに本法は、 制限酵素認識配列の有無の判定に応用できる。
例えば、 5 'または 3 'ェキソヌク レアーゼを作用させ、 アデニン誘導体 を遊離させて、 その遊離を蛍光強度の有意な上昇によって知る方法は、 5 '陥没末端あるいは 3 '陥没あるいは平滑末端を生じさせる制限酵素認 識配列を消失させるか、 または新たにそのような制限酵素認識配列を生 じさせるような塩基の変化を検出するのに用いることができる。
従来より、 このような目的には R F L P (restriction fragment length polymorphism)法が用いられている。 R F L P法では、 このような制限 酵素認識配列の変化は、 被検 D N Aを制限酵素で消化した後、 多くの場 合はァガロースゲル電気泳動を行い、 出現したバンドの数と移動度の差 異を観察することによって判定される。 具体的には、 例えば、 一部の糖 尿病患者ではミ ト コン ドリ ア D N Aのロイシン転移 R N Aのコー ド領域 に Aから Gの変異 (3243変異) が見られ、 その変異により周辺の塩基 配列が GAGC C Cから GGGC C Cに変化する。後者の配列は制限酵素 Ap al の認識配列であり、従って、この領域の D N Aを P C Rにて増幅し、 Apal 消化した後に、 電気泳動にて切断の有無を観察することによって、 3243 変異の有無を知ることができる。
しかし、 本発明が提供する方法によれば、 增幅 D N Aをアデェン誘導
体を挿入したプローブの存在下で変性および再ァニールを行い、 5 '陥没 末端を生じさせる制限酵素 A p a Iで消化し、 続いて 5,ェキソヌクレア ーゼであるェキソヌクレアーゼによる消化を行って、 蛍光の增大を測定 することによってこのような変異を見知できる。 変異型配列に相補的な プローブを用いた場合、 被検 D N A配列が野生型であれば A p a I によ る切断は起きず、 従って λェキソヌク レアーゼによるプローブの消化も 起きないため、 蛍光は増大しないか、 あるいは増大しても軽微である。 被検 D N Α配列が変異型であれば A p a I による切断が起こり、 その結 果 5 '陥没末端が生じて、 さらに λェキソヌク レア一ゼによってプローブ が消化され、 蛍光は顕著な増大を示す。 このように従来のような煩雑な 電気泳動による検出操作は不要となり、 極めて簡便に制限酵素認識部位 の有無が判定可能である。
さ らに、 本発明によって簡便に検出できる制限酵素認識部位は 5 '陥没 末端に限定されない。 即ち、 3 '陥没末端および平滑末端を生じる制限酵 素認識部位の検出も可能である。 即ち、 被検 D Ν Αと 2ロアミ ノプリ ン を含有するプローブとを混合して熱変性を行い、 再ァニールさせた後、 3 '陥没末端または平滑末端を生じる制限酵素で消化を行い、 次いで 3 ' 陥没末端または平滑末端の 3 '側よ り D N Aを消化する 3 'ェキソヌク レ ァーゼを作用させることによって、 2ロアミ ノプリ ンを含むモノヌク レ ォチドを遊離させ、 均一測定系にて蛍光を測定することが可能である。 そのような 3,ェキソヌクレアーゼと して、 ェキソヌクレアーゼ I I I を 例示することができる。 その際、 標的 D N Aにハイブリダィズしたプロ ープのうち、 制限酵素による切断を受けていないものがェキソヌク レア ーゼ I I I によって消化されるのを防ぐため、 プローブの 3 '末端側の 2 塩基間のホスホジエステル結合をホスホロチォエー ト結合とすることで、 ェキソヌク レアーゼ I I I に対して耐性とすることができる。
さ らに本発明は、 ェキソヌ ク レアーゼサイ ク リ ングア ツセィ (exonuclease cycling assay) ¾ (BioTechniques 13(6) , 888-892 (1992)) による遺伝子検出に応用できる。 例えば、 標的遺伝子に相捕的配列を有 し、 5,にリン酸基を有するオリ ゴヌクレオチドプローブを該標的遺伝子 とハイプリダイズさせ、 λェキソヌクレアーゼを作用させて、 5,末端か らプローブを消化させる。 消化の進行とともにプローブの T m値が下が り、 ターゲッ ト D N Aターゲッ ト D N Aから解離すると、 別のプローブ がハイブリダィズし、 λ ェキソヌクレアーゼによって消化される。 これ を繰り返すことによって、 即ちサイクリング反応を行うことによってプ ローブの切断産物が蓄積するので、 この切断産物を測定することによつ て微量の標的遺伝子を検出できる。 例えば 32 Ρを 3 '末端に標識したプロ ーブを用いて、 切断されたプローブを電気泳動にて分離し、 オートラジ ォグラフィ一で放射活性を検出する方法が示されている。,しかし、 この 方法は.非常に煩雑で 1 日から 2 日もの長時間を要する上、 放射性物質を 扱わねばならないのが欠点である。 しかし、 本発明によって示された 2 ーァミノプリンを含有するプローブを用いれば、 λ ェキソヌクレアーゼ によるプローブの消化に伴って 2—ァミノプリンが遊離するので、 その 蛍光を測定するだけで標的遺伝子の検出が可能である。 蛍光測定はサイ クリング反応の進行中に行うこともでき、 実質的に検出に要する操作の 手間や時間を軽減できるという利点がある。
本発明は、 上記説明したプローブを含む遺伝子変異検出、 制限酵素認 識配列の検出または特定配列を有する核酸の定量または検出に使用する キッ トにも及ぶ。
(実施例)
以下本発明を実施例により具体的に説明するが、 本発明は以下の実施 例に限定されるものではない。
なお、 配列 1〜配列 1 2に示すオリ ゴマー D N Aは、 核酸合成受託業 者に依頼して調製した。
(実施例 1 )
入ェキソヌクレアーゼがニ本鎖 DN Αのリン酸基を有する 5,陥没末端 および平滑末端の 5'端から DN Aを好適に消化することは公知である。 その際に、 消化される DNA鎖に 2—ァミノプリ ンを含有させることに よって、 D N A鎖の分解に応じて蛍光を発せられることも Mitsis P. G. らによって示されている (Nucleic Acids Research 27 (15), 3057-3063 (1999))。 そこで配列の一部に 2—ァミノプリ ンを有し、 5'陥没末端を 有する二本鎖 D N Aに λェキソヌク レアーゼを作用させ、 蛍光を発する か検討を行った。
一部のアデニンを 2—ァミノプリンに置換し、 且つ 5'端をリン酸化し たオリゴマ一 D Ν Α (配列 1 )、 およびこれに相補的な (ここでは 2—ァ ミノプリンに相捕的な塩基をチミンとする) 配列を含み 5'端がリン酸化 されていないォリ ゴマー D N A (配列 2 )をハイプリダイズさせるため、 50mM Tris-HCl(pH8.0)N O.lmM EDTA、 lOOmM NaCl、 各オリ ゴマー DN AlOOpmole を含む 5 OjiLの溶液を 9 0。Cにて 5分インキュベー トし、 次いで 3 0分かけて 3 7 °Cまで温度を徐々に下降させ、 さらに 3 7 °Cにて 3 0分インキュベー ト した (第 1図)。 この hybrid D N A 1 μ L (各オ リ ゴマー D N A 2pmol 相当) を、 2 0 p L の 67mM glycine/NaOH(pH9.0)s 2mM MgCl2、 6.8U λ ェキソヌク レアーゼ • (GibcoBRL) の反応液に含ませ、 3 7 °Cにてィンキュベ一トした。 0.1M EDTA 8 OpLを加え、 6 5°Cにて 1 5分インキュベートすることによ つて反応を停止させ、 酵素の不活化を行った。 T E緩衝液 ( lOmM Tris-HCl(pH8.0)、 ImM EDTA ) 6 0 0 μ L を添カ卩 し 、 Hitachi Fluorescence Spectrometer 650-10Sにてオリゴマー DNAおよび酵素
を含まないこと以外は同じ成分組成を有する緩衝液を盲検として蛍光を 測定した (励起波長 310nm, slit 10nm、 蛍光波長 360nm, slit 10nm)。 その結果、 第 2図に示した通り、 λ ェキソヌクレアーゼを作用させる ことにより蛍光が増大することが示された。
また、 反応時間が 0の時の相対蛍光強度 (R FU) が 0であることよ り、 オリ ゴマー DN Αの状態での 2—ァミノプリンの蛍光は盲検とほぼ 同じ力 または蛍光を発したと してもごく僅かであることが示唆された。 (実施例 2)
λ ェキソヌクレアーゼ量を変化さることにより、 蛍光の強さに変化が あるか否か検討を行った。
実施例 1で述べられた hybrid DNA (第 1図) lpL (各オリ ゴマー D N A 2 pmol相当) を、 20pLの 67mM glycine/NaOH(pH9.0)、 2mM MgCl2、 0、 1.7、 3.4および 6.8U λェキソヌクレアーゼ (GibcoBRL) の反応液に含ませ、 3 7°Cにて 1 5分ィンキュベー トし、 実施例 1 と同 様に蛍光を測定した。
その結果、 第 3図に示した通り、 酵素量に応じて蛍光の増大が観察さ れた。
(実施例 3 )
実施例 1で述べられた hybrid DNA (第 1図) 1 L (各オリゴマー DNA2pmol相当) を、 20 μ Lの 67mM glycine/NaOH(pH9.0)、 2mM MgC 6.8U λェキソヌクレアーゼ (GibcoBRL) の反応液に含ませ、 3 7 °Cにて 1 0分間ィンキュベートし、 実施例 1 と同様に蛍光を測定し た(Hybrid DNA)。
また、 配列 1のオリ ゴマー DNA lOOpmole および、 2—ァミノプリ ンがアデユンに置換され、 且つ 5 '端がリン酸化されていないこと以外は 配列 1 と同じ配列を有するオリ ゴマー DN A (配列 3) lOOpmole とを
実施例 1に示した方法と同様にハイブリダイズ反応を行い (第 4図)、 そ の う ち lpL (各オリ ゴマー D N A2pmol 相当) を、 2 0pLの 67mM glycine/NaOH(pH9.0) , 2mM MgCl2、 6.8U λ ェキ ソ ヌ ク レアーゼ (GibcoBRL) の反応液に含ませ、 3 7 °Cにて 1 0分ィンキュベートし、 実施例 1 と同様に蛍光を測定した (ssDNA)。
第 5図に示したように、 hybrid DNAでは、 λェキソヌクレアーゼと インキュベートすることにより蛍光が顕著に増大した。 一方、 ssDNA (—本鎖 DNAと考えられる) では、 λ ェキソヌクレアーゼとインキュ ベートを行っても蛍光の増大は僅かであった。 このことから、 リン酸化 5 '末端を有する一本鎖 D Ν Αは λ ェキソヌクレアーゼによる消化を受 けないか受けても最小限であり、 そのため 2—ァミノプリンの遊離が著 しく少なく、 蛍光の増大が最小限となると考えられた。
従って、 オリ ゴマー DNAからの 2—ァミノプリ ンの遊離は大部分が 二本鎖 DNAで起こり、 hybrid を形成していない一本鎖 D N Aの除去、 いわゆる Bound/Free分離は必要でないことが示唆された。
(実施例 4 )'
T 4エンドヌクレアーゼ V I I を用いた変異検出のためのキッ トがァ マシャ ム ' フ アルマシア 社から販売されている(PASSPORT(TM) Mutation Scanning Kit)。 本キッ トによる変異検出の原理を第 6図に示 した。 2種の P C R産物 (または 2種の合成オリ ゴマー DNAでも可) を変性■ ハイプリダイゼーションによってヘテロデュプレックスを形成 させた後 T 4エンドヌクレアーゼ V I I を作用させると、該ヘテロデュ プレックスの塩基対にミスマッチの存在する場合、 その部位の近傍で D NAの切断が起こる。 その際、 検出のためにいずれかの DN A鎖あるい は両 D N A鎖に適切な標識を行っておけば、 切断によって生じた新たな DN A断片の出現を変性ゲル電気泳動によって検知でき、 変異の有無を
知ることが可能となる。好適な標識物と しては、放射性元素、蛍光色素、 ピオチンなどがあげられる。
そこでミスマッチ部位を有する場合、ミスマッチ部位近傍にて T 4 ェ ンドヌク レアーゼ V I I がオリ ゴマー D N Aを切断するか検討を行つ た。
配列 4は 5 '端に水酸基を有し、 3 '端には F I T Cにて標識が施されて いる。配列 5は配列 4に相補的な配列を有し、 5 '端および 3 '端に水酸基 を有する。配列 6は配列 4に対して一塩基を除いて相補的な配列を有し、 5 '端および 3 '端に水酸基を有する。 従って、配列 4と配列 5によって全 ての塩基対がマッチした hybrid D N Aが形成され、 配列 4と配列 6に よって一塩基対のミスマッチを含有する hybrid D N Aが形成され得る (第 7図)。 まず、 配列 4と配列 5各々 5pmole、 および配列 4 と配列 6 各々 5pmoleを本キッ トに含まれる緩衝液(hybridisation buffer) 1 5 p L 中に含有させ、 9 5 °Cにて 5分ィンキュベートした後、 室温にて 1 0分 間放置することによってハイブリダィゼーシヨンを実施した。 次いで、 本キッ トに含まれる緩衝液(enzyme dilution buffer)で希釈した本キッ トに含まれる T 4 エンドヌクレアーゼ V I I溶液 5 p Lを上記 hybrid D N Aに添加し、 3 7 °Cにて 3 0分インキュベートした。 等量の 9 5 % ホルムアミ ド、 10mM EDTA(pH8,0)、 0.02%メチルバイオレッ ト溶液を 添加して反応停止させ、 8 0 °Cにて 2分インキュベートして二本鎖 D N Aを変性させた後、 4 p L (各々のオリ ゴマー D N A 0.5pmole相当) を 直ちに 7 M尿素含有 2 0 °/。アタリルァミ ドゲルにて電気泳動を行った。 電気泳動パターンの検出は蛍光ィ メージアナライ ザ一; FMBIO II Multi-View (日立ソフ トウェアエンジニアリ ング) にて 505nm の蛍光 検出用フィルターを使用して F I T Cの蛍光を検出することによって行 つた。
その結果、 第 8図に示した通り、 配列 4および配列 5 とからなる hybrid D N A (ミスマッチ無し) では見られないバンドが、 配列 4お よび配列 6 とからなる hybridD N A (ミスマッチ有り) においては観察 され(第 8図 矢印 B )、 これはミスマッチ部位近傍にて T 4 エンドヌク レアーゼ V I I によって配列 4のオリ ゴマー D N Aが切断された結果 生じた D N A断片であると考えられた。
第 8図のレーン 1から 4は、 配列 4と配列 5を用いて上記操作を行つ たもので、 同一サンプルを 4つのレーンで泳動した。 また矢印 Aは、 T 4エンドヌクレアーゼ V I I によって切断されていないインタク トなプ ローブ (配列 4 ) である。 第 8図のレーン 5から 8は、 配列 4と配列 6を用いて上記操作を行ったもので同一サンプノレを 4つのレーンで泳動 した。
(実施例 5 )
本発明の変異検出法の原理を第 9図に示した。 実施例 4において二種 のオリゴマー D N Aからなる二本鎖 D N Aに含まれる塩基対のミスマツ チが、 T 4 エンドヌクレアーゼ V I I によるミスマッチ部位における 切断、 および変性ゲル電気泳動による切断断片の確認によって検出され 得ることが示された。 本発明は、 T 4 エンドヌクレアーゼ V I Iによ るミスマッチ部位における切断の後、 電気泳動を行うことなく均一系に て検出する方法を提供する。 T 4 エンドヌク レアーゼ V I I によるミ スマッチ部位における切断の結果、 リン酸基を有する 5 '陥没末端を生じ、 さらに λ ェキソヌク レアーゼによってこの 5,端からプローブの消化が 行われ、 それに伴ってプローブに含有させた 2—ァミノプリンの遊離が 起こり、 増大する蛍光を検知することによって変異の有無を検出するも のである。
そこで、 本発明の実施に先立ち、 ミスマッチを有するニ本鎮 D N Αと
ミスマッチを有しない二本鎖 DN Aに T 4 エンドヌク レアーゼ V I I と λェキソヌク レアーゼを併用したときの断片化を電気泳動を用いて確 πί§し,こ。
配列 4と配列 5各々 5pmole、 およぴ配列 4と配列 5各々 5pmole を本 キッ トに含まれる緩衝液(hybridisation buffer) 1 5pL中に含有させ、 9 5 °Cにて 5分ィンキュベートした後、 室温にて 1 0分間放置すること によってハイブリ ダィゼーシヨ ンを実施した (第 7図)。 次いで、 PASSPORT(TM) Mutation Scanning Kit (Amersham Pharmacia)に含 まれる緩衝液 (Enzyme dilution buffer)で希釈した本キッ トに含まれる T 4 エンドヌク レアーゼ V I I溶液 5 μ Lを上記 hybrid D N Aに添 カロし、 3 7 °Cにて 3 0分インキュベートした。 更に、 1 0μ§のグリ コ 一ゲン、 1 0 %容量の 5M 酢酸カリ ウム、 2. 5倍容量のエタノールを 添加し、 一 7 0°Cにて 5分間冷却した後遠心を行って得られた DN Aぺ レッ トを 7 0 %エタノールで 2回洗浄し、 風乾させた。 この D NAペレ ッ トを溶解し、 67mM glycine/NaOH(pH9.0)、 2mM MgCl2、 OU, 3.4U または 6.8U λェキソヌクレアーゼ (GibcoBRL) を含む反応液 2 0pL 中にて、 3 7 で 1 0分間ィンキュベートし、等量の反応停止液( 9 5 % ホルムアミ ド、 10mMEDTA(pH8.0)、 0.02%メチルバイオレッ ト) を添 加して反応停止させ、 8 0°Cにて 2分インキュベートして二本鎖 D N A を変性させた後、 4pL (各々のオリゴマー DNA 0.5pmole相当) を直 ちに 7M尿素含有 2 0 %ァクリルァミ ドゲルにて電気泳動を行った。 電 気泳動パタ ー ンの検出は蛍光ィ メ ージアナライ ザー FMBIO II Multi-View (日立ソフ トウェアエンジニアリ ング) にて 505nm の蛍光 検出用フィルターを使用して実施した。
λ ェキソヌク レアーゼとのインキュベーショ ンにより、 ミスマッチの ある配列 4と配列 6力 らなる hybrid D N Aにおいては、 T 4 エンドヌ
クレアーゼ V I Iの切断によって生じた DNA断片 (矢印 B) がさ らに λ ェキソヌク レアーゼによって消化され、 その消化産物である鎖長のさ らに短い D Ν Α断片が生じた。 しかし、 ミスマッチのない配列 4と配列 5からなる hybrid DNAにおいては、 λ ェキソヌク レアーゼによる消 化は最小限であった。
第 1 0図は、 配列 4と配列 5がハイブリダィゼーシヨ ンしたもの (ミ スマ ッチ無し) に λ ェキソヌク レア一ゼを無添加 (レーン 1 )、 1.7U/reaction (レーン 2)、 3.4U/reaction (レーン 3 ) 添加したものお よぴ、 配列 4と配列 6がハイブリダィゼーシヨ ン (ミスマツチ有り) に λェキソヌク レアーゼを無添加(レーン 4 )、 1.7U/reaction (レーン 5 )、 3.4U/reaction (レーン 6 ) 添加したものを示す。
また、 矢印 Aは、 配列 4と配列 5がハイブリダィゼーシヨンしたバン ド、 矢印 Bは、 配列 4と配列 6がハイブリ ダイゼーショ ンしたものが T 4 エンドヌク レアーゼ V I Iによって切断された結果生じた DNA断 片である。
λ ェキソヌク レアーゼとのインキュベーショ ンにより、 ミスマッチの ある配列 4と配列 6力 らなる hybrid DNAにおいては、 T 4 エンドヌ ク レアーゼ V I Iの切断によって生じた DNA断片 (矢印 B) がさらに λ ェキソヌク レアーゼによって消化され、 その消化産物である鎖長のさ らに短い D Ν Α断片が生じた。 しかし、 ミスマッチのない配列 4と配列 5からなる hybrid D N Aにおいては、 λ ェキソヌク レアーゼによる消 化は最小限であった。
(実施例 6)
実施例 5において使用された配列 4のオリ ゴマー DNAの代わり に 2 ーァミノプリ ンを含むオリ ゴマー DNAを用いれば、 λ ェキソヌク レア ーゼによるオリ ゴマー D Ν Αの消化を電気泳動を行うことなく蛍光の増
大を観察することによって知ることが可能となる。
そこで蛍光物質と して 2—ァミノプリンを用い、 本発明の実施を行つ た。
配列 7は一部のアデェン残基が 2—ァミノプリンに置換されている以 外は配列 4と同じ配列を有する。 配列 7 と配列 5各々 5pmole、 および配 列 7 と配列 6各々 5pmole を本キッ トに含まれる緩衝液(hybridisation buffer) 1 5 p L中に含有させ、 9 5 °Cにて 5分ィンキュベート した後、 ,室温にて 1 ◦分間放置することによってハイプリダイゼーションを実施 した (第 1 1図)。 次いで、 ; PASSPORT(TM) Mutation Scanning Kit (Amersham Pharmacia)に含まれる緩衝液 (Enzyme dilution buffer)で 希釈した本キッ トに含まれる T 4エンドヌク レアーゼ V I I溶液 5 μ Lを上記 hybrid D N A溶液に添加し、 3 7 °Cにて 3 0分ィンキュベー トした。 更に、 1 0 μ gのグリ コーゲン、 , 1 0 %容量の 5M 酢酸力リ ウ ム、 2 . 5倍容量のエタノールを添加し、 _ 7 0 °Cにて 5分間冷却した 後遠心を行って得られた D N Aペレツ トを 7 ◦ %エタノールで 2回洗浄 し、 ぺッレトを風乾させた。 この D N Aペレッ トを溶解し、 2 0 p Lの 67mM glycine/NaOH(pH9.0)、 2mM MgCl2、 6.8U λェキソヌク レアー ゼ (GibcoBRL) の反応液に含ませ、 3 7 °( にて 0分 (λェキソヌク レア ーゼ添加後直ちに反応を停止) および 1 0分間インキュベートし、 8 0 の 0.1M EDTA(pH8.0)を添加して 6 5 °Cにて 1 5分間ィンキュベー トすることによって反応停止および酵素の不活化を行った。 次いで、 T E緩衝液 (10mM Tris-HCl(pH8.0)、 ImM EDTA) 6 0 O p Lを添加し、 Hitachi Fluorescence Spectrometer 650- 10Sにて蛍光を測定した(励起 波長 310nm, slit 10nm、 蛍光波長 360nm、 slit 10nm)。
その結果、 第 1 2図に示した通り 、 配列 7および配列 5からなる hybrid D N Aを λ ェキソヌクレアーゼとインキュベーショ ンを行った
際の蛍光強度の増大と比較して、 配列 7および配列 6からなる hybrid DNAにおける蛍光強度の増大は顕著であり、 本発明によって、 二本鎖 D N A中の塩基対のミスマツ,チの有無を均一測定系にて簡便に検出し得 ることが示された。
(実施例 7)
さらに、 本発明の別の態様である制限酵素認識配列の有無を制限酵素 処理後に電気泳動を行うことなく、 均一測定系にて簡便に検出できるか 確認した。
配列 8および配列 9のオリ ゴマー D N Aは互いに相補的な配列を有し ており、 配列 9は一部のアデェン塩基が 2—ァミノプリ ンに置換されて レヽる。 各オリゴマー D N A1000pmole、 50mM Tris-HCl(pH8.0), O.lmM EDTA、 lOOmM NaClを含む 5 OpLの溶液を 9 0 °Cにて 5分ィンキュ ペートし、 次いで 3 0分かけて 3 7 °Cまで温度を徐々に下降させ、 さら に 3 7 °Cにて 3 0分インキュベート して hybrid DNAを形成させた (第 1 3図)。 この hybrid D NA 2. 5pL (各オリ ゴマー D NA 50pmol相当) を、 2 0pLの 1X H緩衝液 (宝酒造)、 約 10Uの制限酵 素 Ps または EcoRI を含む反応液中にて 3 7 °Cで 3 0分間ィンキュベ 一トした。 6 5°Cにて 1 5分間インキュベーとすることによって酵素を 失活させた後、 lpL (各オリ ゴマー D N A5pmol 相当) を 2 0 Lの 67mM glycine/NaOH(pH9.0), 2mM MgCl2、 6.8U λェキソヌク レアー ゼ (GibcoBRL) の反応液に含ませ、 3 7°〇にて 0, 5 , 1 0, 2 0分 ィンキュベートし、 0.1MEDTA 8 OpLを加え、 速やかに 7 0 °Cにて 1 0分ィンキュベートすることによって反応を停止させ、 酵素の不活化を 行った。 T E緩衝液 (10mM Tris-HCl(pH8.0)s ImM EDTA) 6 0 Ομ Lを添カロし、 Hitachi Fluorescence Spectrometer 650-10Sにて D N Aお よび酵素を含まないこと以外は同じ成分組成を有する緩衝液を盲検と し
て蛍光を測定した (励起波長 310nm, slit 10nm、 蛍光波長 360nm、 slit 10nin) o
その結果、 第 1 4図に示したとおり、 制限酵素 Ps による切断によつ て、 2—ァミノプリ ンを含む D N A鎖に 5 '陥没末端が生じ、 続く λェキ ソヌク レアーゼによって 2—ァミノプリンがモノヌクレオチドと して遊 離し、 その結果有意な蛍光シグナルの上昇が認められた。 一方、 EcoRI で処理された D N Aは 5 '陥没末端が生じないので、 λェキソヌク レア一 ゼに対する感受性が低く、 2—ァミノプリ ンがモノヌク レオチドと して 遊離せず、 その結果蛍光シグナルの増大は最小限となった。 このことか ら、 本発明によって、 制限酵素認識配列の有無を制限酵素処理後に電気 泳動を行うことなく、均一測定系にて簡便に検出できることが示された。
(実施例 8 )
本発明におけるェンドヌク レアーゼを用いない場合に使用されるゥェ ルナ一シンドローム遺伝子産物 (W R Nタンパク質) を用いた変異の検 出について検討した。
(W R Nタンパク質の発現および精製)
C末端側にポリ ヒスチジン配列を付加した W R Nタンパク質を昆虫細 胞にて発現し、 ニッケルを固定した担体を用いたカラムクロマ トグラフ ィ一法にてこれを精製した。 この昆虫細胞での発現方法及びポリ ヒスチ ジンとニッケルの親和性を利用した精製方法は公知であり、 広く一般に 用いられているものであるが、具体的には Nature Genetics 17, 100- 103 (1997)等の文献を参照することができる。
より具体的には、 全長の W R Nタンパク質をコードする cDNAをバキュ 口 ゥイノレス の ト ラ ンス フ ァ ーベク ター pBlueBac4.5/V5-His TOPO (Invitrogen社) に揷入したものを、 昆虫細胞 Sf9に直鎖状バキュロウ ィルス DNAである Bac-N-Blue AcMNPV DNA (Invitrogen社) と とも
に CellFECTIN (Invitrogen社) を用いたリボゾーム法にてコ トランス フエクショ ンして得た組換えウィルスを、 さらに Sf9細胞に感染させる ことによって C末端側にポリ ヒスチジン配列を付加させた W R Nタンパ ク質を発現させた。 W R Nタンパク質を発現した細胞の溶解液より、 Ni-NTAァガロース(Qiagen社)を用いて W R Nタンパク質の精製を行つ た。
SDS -PAGE解析によると、 精製物の純度は 90%以上であった。
(変異検出アツセィ)
W R Nタンパク質および 2—ァミノプリン含有オリ ゴヌクレオチドプ ローブを用いた変異検出アツセィは以下のように実施した。
2—ァ.ミノプリンを含むオリゴヌクレオチド (配列 1 0 ) lOOpmolお よび配列 1 0と完全に相捕的な配列を有するオリ ゴヌクレオチド (配列 1 1 ) lOOpmolまたは配列 1 0 と一部分相補的でない配列を有するオリ ゴヌクレオチド (配列 1 2 ) lOOpmol とを 10pL の 50mM Tris-HCl (pH8.0)、 O. lmM EDTA, l OOmM NaClの溶液中に含ませ、 9 5 °Cにて 2分ィンキュベート後、 室温に 3 0分放置することによってヘテロデュ プレックスを形成させた (第 1 5図)。 ただし、 この場合の相補的とは、 アデニンとチミン、 グァニンとシトシンの組合せに加えて、 2—ァミノ プリンとチミ ンの組合せも含める。 続いて、 このへテロデュプレックス 溶液 1 iiL を 40mM Tris-HCl (pH7.4) , 4mM MgCl2, 5mM DTT, lOO^g/mL BSA, ImM ATP, 5ng W R Nタンパク質を含む 10pLの反応 液に含ませ、 3 7 °Cにて 6 0分までインキュベーショ ンを行った。 3 7 °C による反応終了後、 7 0でにて 1 5分インキュベートすることによって 反応を停止し、 600pL の T E緩衝液を添加して Hitachi Fluorescence Spectrometer 650- 10Sにて蛍光を測定した(励起波長 3 10nm, slit lOnm, 蛍光波長 360nm, slit 10nm)。
その結果、 互いに完全に相補的な配列 1 0および配列 1 1からなるへ テロデュプレックスの蛍光シグナルの上昇はわずかであつたが、 それに 比べて、 8塩基対のミスマッチを含む配列 1 0および配列 1 2から成る ヘテロデュプレックスの蛍光シグナルは 2 0分までの間、 反応時間に応 じて大きく上昇し (第 1 6図)。 二本差 D N Aにミスマッチの存在すると きのみ、 2—ァミノプリンを含むオリ ゴヌク レオチドが分解され、 2— アミノブリンがポリヌクレオチド鎖から遊離されて蛍光シグナルを発す ることが示された。 産業上の利用可能性
本発明によれば、 均一測定系すなわち従来の電気泳動やいわゆる Bound/Free 分離なども必要なく、 簡便に遺伝子変異の検出、 制限酵素 認識配列の検出、 特定配列の増幅検出および定量が可能となる。