明細書
汚染土壌の浄化方法及び土壌浄化用洗浄剤
[発明の属する技術分野]
本発明は、 有機ハロゲン化物、 ホウ素化合物、 クロム化合物、 ヒ素化合物、 硝 酸 (塩) 及び亜硝酸 (塩) 等の環境汚染物質により汚染された土壌から、 これら の汚染物質を除去する汚染土壌の浄化方法、 及びこの方法に使用される土壌注入 用洗浄剤に関する。
[従来の技術]
土壌、 地下水の汚染物質としては、 有機塩素系化合物等の有機ハロゲン化物、 6価クロム等の重金属、 ヒ素化合物、 硝酸又は亜硝酸性窒素、 ホウ素等種々のも のが知られている。 これらのものは、 水に可溶性のものであっても、 全てが地下 水に流出することはなく、 通常土壌内に種々の化合物の形で留まり、 地下に徐々 に流出している。 或いは汚染物質が土壌に付着してほとんど流出しないこともあ る。 汚染した土壌、 地下水を浄化するには、 汚染の未然防止に比べて遙かに多く の資金と時間が必要となる。 このため、 資金、 時間ともに軽減することができる 効率の良い浄化方法が求められていることは言うまでもない。
例えば、 機械類の油類除去等の工業的な洗浄に大量に使用されてきたトリクロ 口エチレン等の揮発性の有機ハロゲン化物は、 環境汚染の観点から、 最近ではそ の使用が規制されるようになってきているが、 既に多量の有機ハロゲン化物は使 用されており、 このためその土壌汚染あるいは水質汚染も進んでいる。 即ち、 ト リクロロエチレン等の有機ハロゲン化物は、 安定で微生物に分解され難く、 自然 環境に投棄された有機ハロゲン化物は、 土壌を汚染するだけでなく、 最終的には 河川や地下水を汚染し、 これが飲料水の原水となることがあり、 問題となる。 このような有機ハロゲン化物等の揮発性の有機化合物で汚染された土壌を浄化 する方法としては、 土壌ガス吸引法、 地下水揚水法、 土壌掘削法等が知られてい る。 土壌ガス吸引法は、 不飽和帯に存在する対象物質を強制的に吸引するもので あり、 ボーリングにより土壌 (地盤) 中に吸引用井戸を設置し、 真空ポンプによ つて吸引用井戸内を減圧にし、 気化した有機化合物を吸引井戸内に集め、 地下に 導いて土壌ガス中の有機化合物を活性炭に吸着させるなどの方法によって処理す
るものである. 上記有機化合物による汚染が帯水層にまで及んでいる場合には、 吸引用井戸内に水中ホンプを設置し、 土壌ガスと同時に揚水して処理する方法が 採用される。
地下揚水法は、 土壌中に揚水井戸を設置し、 汚染地下水を揚水して処理する方 法である。 さらに、 土壌掘削法は、汚染土壌を掘削し、掘削した土壌を風力乾燥、 加熱処理を施して有機化合物の除去回収を行う方法である。
このような従来の方法の内、 土壌ガス吸引法及び地下水揚水法は、 水や空気を 単に土壌中から吸引除去するのみであるため、土壌内に水や空気の通り道ができ、 浄化効率が低く、 汚染除去に数年から 1 0年の長期間を要するとの問題がある。 また、 土壌掘削法は、 汚染が広範囲の場合、 コストがかかりすぎるとの問題があ る。
土壌、 地下水の汚染は、 上記有機ハロゲン化物に汚染されている場合、 有機ハ ロゲン化物だけでなく種々な物質により汚染されている場合が多く、 前記の 6価 クロム等の重金属、 ヒ素化合物、 硝酸 (塩) 及び亜硝酸 (塩) (硝酸又は亜硝酸 性窒素)、 ホウ素化合物等の汚染物質に対しても有効な浄化方法であることが望 ましい。
[発明が解決しょうとする課題]
本発明の目的は、 有機ハロゲン化物等の環境汚染物質 (特に水可溶性の傾向を 有する物質) で汚染された土壌から、 短期間で、 低コストで効率よくこの汚染物 質を除去する土壌浄化方法、 及びこの方法に有利に利用することができる土壌浄 化用洗浄剤を提供することにある。
従来の有機ハロゲン化物で汚染された土壌を浄化する方法としては、 雨水等の 自然水により地下水にもたらされた有機ハロゲン化物を、 その地下水として除去 するか、 土壌中の有機ハロゲン化物を吸引により除去する方法が主であるが、 土 壌の付着した汚染物質は容易に除去できない。 また揮発性でない汚染物質には、 吸引法を用いることは有効でない。
本発明者等は、 土壌に付着した汚染物質を効率よく除去でき、 且つ環境に対し て二次汚染の発生のない水に代わる洗浄剤を求めて研究を重ねてきた。 その研究 の中から、 炭酸水の鉱物浸食作用 (北野康:京大防災研年報、 第 1 0号 A、 5 5
7 ( 1 9 6 7 ) 参照) に注目しさらに研究を重ねた結果、 炭酸水が汚染物質を水 中に遊離させる効果が絶大である (特に特定の濃度で) ことを見出し本発明に到
[課題を解決するための手段]
上記目的は、 下記の汚染土壌の浄化方法:
環境汚染物質により汚染された土壌中に、 炭酸水を浸透させることにより、 該 土壌中の汚染物質を遊離させ、 除去することを特徴とする汚染土壌の浄化方法; 環境汚染物質により汚染された土壌中に、 間隔を隔てて炭酸供給用井戸及び揚 水用井戸を掘削により形成し、 該炭酸供給用井戸内に炭酸水又は炭酸ガスを注入 することにより該土壌中の汚染物質を遊離させ、 一方該揚水用井戸から揚水する ことにより該遊離汚染物質を除去することを特徴とする汚染土壌の浄化方法;及 び
環境汚染物質により汚染された土壌を包囲する止水壁を土壌中に設置し、 その 止水壁内の土壌に間隔を隔てて炭酸供給用井戸及び揚水用井戸を掘削により形成 し、 該炭酸供給用井戸内に炭酸水又は炭酸ガスを注入して地下水位を上昇させて 土壌表面まで湿潤化させることにより該土壌中の汚染物質を遊離させ、 一方該揚 水用井戸から揚水することにより該遊離汚染物質を除去することを特徴とする汚 染土壌の浄化方法;
により達成することができる。
上記方法において、 前記土壌中の汚染物質を炭酸水中に溶出させることが好ま しい。 また前記土壌中の汚染物質は、 有機ハロゲン化物、 ホウ素化合物、 クロム 化合物、 ヒ素化合物、 硝酸 (塩) 及び亜硝酸 (塩) から選ばれる少なくとも 1種 であることが好ましい。 これらは水可溶性を有する点で共通する性質を有する。 即ち、 有機ハロゲン化物もかなりの程度水可溶であることが本発明者の検討によ り判明した。 さらに、 炭酸水としては、 異なった濃度のものを用いて交互に浸透 又は注入することが好ましい。 炭酸ガスの場合は、 異なった濃度の代わりに異な つた炭酸ガス供給速度で注入することが好ましい。 炭酸水又は炭酸ガスの汚染土 壌への浸透又は注入は、 一般に土壌に浸透又は注入後、 さらに透過させることに より行われる。 炭酸ガス注入前に水を注入することが好ましく、 また注水前に食
塩を投入することが好ましい。 揚水用井戸から揚水する水は、 一般に炭酸水を含 んでいる c
上記目的は、 また環境汚染物質により汚染された土壌に注入される該汚染物質 の除去に用いられる洗浄剤であって、 炭酸イオン濃度 (炭酸水濃度) 1 0 0〜1 0 0 0 0 p p mの炭酸水からなる土壌浄化用洗浄剤によっても達成することがで きる。 洗浄剤は更に無機塩、 或いは親水性有機溶剤を含むことができる。
尚、 本願発明で言う炭酸イオン濃度とは、 J I S K 0 1 0 1 2 5に記载 の塩化ストロンチウム ·一塩基酸滴定法により測定されるものである。
また、本発明における環境汚染物質は、前記のように一般に「水可溶性の物質」 であり、 そしてこの場合の水可溶性の物質とは、 微量でも水に溶解するものを含 み、 好ましくは水 1 L (リツトル) に少なくとも 0 . 0 1 g溶解する (特に好ま しくは 0 . 1 g溶解する) 物質を包含する。
[発明の実施の形態]
本発明の汚染土壌の浄化方法は、 環境汚染物質により汚染された土壌中に、 炭 酸水を浸透させることにより、 土壌中の汚染物質を遊離させ、 除去する工程を基 本的に包含する。
本発明の浄化の対象となる汚染物質は、 例えば有機ハロゲン化物、 ホウ素化合 物、 クロム化合物、 ヒ素化合物、 硝酸 (塩) 及び亜硝酸 (塩) 等を挙げることが できる。 有機ハロゲン化物としては、 例えば塩化ビュル、 1, 1ージクロロェチ レン、 1, 2—ジクロ口エチレン、 トリクロロエチレン、 テ トラクロロエチレン、 ジクロロメタン、 四塩化炭素、 1, 2—ジクロロメタン、 1, 1, 1—トリクロ ロェタン、 1 , 1, 2— トリクロロェタン、 1, 1 , 2, 2—テトラクロ口エタ ン、 ジクロロジフルォロェタン等の揮発性の有機ハロゲン化物が好ましいが、 更 にベンゼン、 キシレン、 トルエン等の通常の有機溶剤等にも有効である。 ホウ素 化合物としては、 通常ホウ酸等の酸化物として存在すると考えられる。 クロム化 合物は一般に 6価のクロム化合物で、 例えば C r O :1、 N a , C r K , C r , 〇7を挙げることができる。 硝酸 (塩) 及び亜硝酸 (塩) は、 一般に窒素肥料に 由来するもので、 アンモニゥム塩、 カリウム塩、 ナトリウム塩の形で存在する。 本発明では、 上記の環境汚染物質により汚染された土壌中の汚染物質を洗浄遊
. 離させるために、 洗浄剤として、 炭酸水 (炭酸ガスを注入した場合も土壌中の水 分に溶解し炭酸を生ずる) を用いる。 即ち、 土壌に付着した汚染物質を強制的に 遊離させるには、 単に自然の雨水や、 水道水等の水の付与に依存しても不可能で あり、 だからといって環境を汚染するような物質で強制遊離することは不適当で ある。 本発明者の広範な研究により、 炭酸水が一般に鉱物で形成されている土壌 の砂や土の表面を僅かに浸食する作用 (いわゆるリンス効果) を示し、 これによ り揮発性の有機ハロゲン化物の遊離が促進されることが見出された。 この炭酸水 を用いることにより、 環境を汚染することなく、 効率よく有機ハロゲン化物等の 水に可溶性の汚染物質を遊離除去することができる。
上記炭酸水の炭酸イオン濃度は 1 00〜] 0000 p pm、 特に 5◦ 0〜 50 O O p pmが好ましい。 このような炭酸水からなる土壌浄化用洗浄剤は、 更に無 機塩、 親水性有機溶剤、 或いは親水性バインダを含むことができる。
無機塩として、 例えば N a C l、 KC 1、 Mg C 1 C a CO., 等を挙げる ことができる。特に Na C 1が好ましレ、。その使用量は、洗浄剤全量に対して 0. 01〜5重量%が一般的である。 親水性有機溶剤としては、 エタノールを挙げる ことができる。 洗浄剤全量に対して 0. 01〜5重量。 /0が一般的である。 親水性 バインダの例としては、 スクロース等の 2糖類、 スクロース誘導体 (例、 スクロ ース高級脂肪酸エステル)、 グルコース等の単糖類、 アルギン酸 ; プルラン、 P V A (ボリ ビュルアルコール)、 CMC (カルボキシルメチルセルロース)、 ポリ ァクリノレアミ ド、 グァガム、 メチノレセノレロース、 ヒ ドロキシェチノレセルロースを 挙げることができる。 プルラン (水溶液にした際の粘度が低く特に好ましい)、 ヒ ドロキシェチノレセノレ口一ス、 スクロース、 グノレコース、 PVAが好ましレ、。 親 水性バインダ一として生分解性ポリマーを用いると二次的な環境汚染に対して特 に有効である。 洗浄剤全量に対して 0. 01〜5重量%が一般的である。
上記の添加材料は、 汚染物質の種類により適宜選択して使用される。
次ぎに、 本発明の汚染土壌の浄化方法について詳細に説明する。 本発明では、 環境汚染物質により汚染された土壌中の汚染物質を炭酸水により遊離させるの で、 遊離した汚染物質を除去する必要があり、 そのため一般に下記のように井戸 を設けてその除去が行われる。 勿論、 汚染物質を除去できれば良く、 例えば土壌
に炭酸水を付与後、 吸引する事により行うこともできる.
第 1図に本発明の浄化方法の好ましい態様を示す。 汚染土壌 (或いは地盤) 1 1に、 地下水 1 6までのボーリングにより炭酸供給用井戸 1 2と揚水用井戸 1 3 とが間隔を隔てて設けられている。 揚水用井戸 1 3により揚水された汚染物質を 含む汚染水は、 さらに曝気処理装置 1 4及び活性炭吸着塔 1 5を通過させること により汚染物質が除去される。 このようなシステムを用いて、 炭酸供給用井戸 1 2にポンプ P 1で炭酸水 1 0を注入し、 揚水用井戸から揚水する。 この操作によ り、 汚染土壌中の汚染物質が炭酸水に溶解され、 汚染物質を含有する炭酸水が地 下水と共に揚水され、 除去される。 炭酸供給用井戸 1 2に炭酸水 1 0を注入した 際、 炭酸水は井戸の下部からだけでなく、 側面からも注入、 浸透する。
上記汚染土壌中の含水率が高く、 炭酸供給井戸 1 2内に高い水位の地下水があ る場合には、 その地下水内に濃度の高い炭酸水或いは炭酸ガスを注入することが 好ましい。 一方、 炭酸供給井戸 2内に地下水があってもその水位が低いか、 或い は地下水が無い場合には、 その地下水内に適当な濃度の炭酸水を注入することが 好ましい。 或いは先に水を注入した後、 炭酸ガスを注入する方法も有効な場合が 多い。 また、 水注入後、 塩化ナトリウム等を先に注入し、 その後炭酸ガスを導入 する方法も、 水溶解性の第三成分を予め除去できるので好ましい。
しかしながら、 汚染物質除去する場合、 炭酸イオン濃度が或る濃度を超えると 気泡が発生し除去効果があがらなくなること、 また、 一般にその濃度はできるだ け低レ、方が環境面から好ましいことから、 汚染物質除去に効率の良い炭酸ィオン 濃度が前記の 1 0 0〜 1 0 0 0 0 p p m、 特に 5 0 0〜5 0 0 0 p p mである。 炭酸供給用井戸 1 2から供給される炭酸水の量或いは濃度又は炭酸ガスの量 を、 例えば日毎に変化させることにより、 土壌中を通過する炭酸水の濃度、 或い は炭酸水を含む通過する水もしくは汚染水の炭酸イオン濃度が変化し、 浸透圧が 発生して土壌細部に入り込んで移動し難い土壌間隙水も移動すること可能とな る。 このため、 汚染土壌全体が比較的均一に洗浄することができ、 効率の良い浄 化処理ができる。
揚水された汚染物質を含む汚染水は、 曝気処理装置 1 4及び活性炭吸着塔 1 5 を通過させることにより汚染物質が除去され、 浄化された水を放流することがで
きる。 汚染水からの汚染物質の除去は、 上記以外にも例えば還元作用を有する鉄 粉の層を通過させることにより有機ハロゲン化物等を分解処理した後、 上記活性 炭処理することにより、 行っても良い
或いは、 本発明の浄化方法は、 第 2図に示す方法で行うことができる: 汚染土 壌 2 1の周囲を、 地下水 3 0 aの下の不透水地盤 2 6に至る止水壁 2 7で囲み、 その囲まれた汚染土壌 2 1の中に間隔を隔てて炭酸供給用井戸 2 2及び揚水用井 戸 2 3を形成し、 第 1図で述べたと同様に炭酸供給用井戸 2 2から炭酸水 2 0を ポンプ P 2を用いて注入し (又は炭酸ガスを注入し)、 揚水用井戸から揚水する。 この際、 揚水用井戸 2 3からの揚水の程度を制御することにより地下水位を上昇 させ、 また必要に応じ、 場合によって地表まで湿潤状態となるように地下水位を 上昇させ、 その状態を維持したまま揚水用井戸 2 3から揚水を行い、 これによつ て炭酸水を汚染土壌に浸透、 透過させながら揚水する。 揚水した汚染物質含有汚 染水の処理は、 第 1図で述べたのと同様に行うことができる。 また使用する炭酸 水 (洗浄剤) 又は炭酸ガスの濃度も、 第 1図で述べたのと同様のことが言える。 土壌の地表面を非通気性シート 2 8で覆い、 揚水用井戸 2 3の上部より減圧ポ ンプ 2 9で間欠的に空気を吸引することにより土壌内を減圧にして、 炭酸水を発 泡させることができる。 このとき土壌間隙内に発泡を生じており、 これにより汚 染物質の遊離、 炭酸水への溶解を促進させることができる。
本発明の汚染土壌の浄化方法についての上記の説明では特に注入及び揚水井戸 を設ける方法のみ説明したが、 揚水井戸のみ設け地表に炭酸水を直接散布又は注 入し、 その後揚水する方法、 或いは地表に炭酸水を直接散布又は注入し、 その後 吸引する方法、 さらには、 注入井戸で炭酸水を供給後吸引する方法等も採用する ことができる。
上述のように、 本発明の汚染土壌の浄化方法によれば、 汚染土壌中に炭酸水を 浸透させることにより、 炭酸水の鉱物浸食作用で土壌粒子に付着した汚染物質を 水中、 或いは炭酸水中に迅速に遊離させ (通常溶解させ)、 従来の土壌間隙水の 揚水や土壌ガスの吸引に比べて、 遙かに短期間で浄化することができる。
また地盤中に透過させる炭酸水の炭酸イオン濃度を変化させる (好ましくは交 互に変化させる) ことにより浸透圧が生じ、 通常では動き難い細部の土壌間水も
o 移動交換させることができるため、 通水によって水路ができたとしても土壌の細 部まで水の移動交換が可能で、 効率よく汚染物質を除去することができる。 続いて、 以下に実施例を用いて本発明を詳細に説明する。
[実施例 1 ]
<炭酸水による揮発性有機ハロゲン化物一汚染土壌の浄化作用 >
1) 実験手順
2本のカラムに成田砂層から採取したシルト 1 0 Om 1を充填し、 水を飽和さ せた後、 トリクロロエチレン飽和水溶液 ( 1 36 1. 14 p pm) でカラム内を 置換し、 1 2時間放置後、 炭酸水を 1 00m l Z時間の速度で通水した。 流水液 1 00m lずつ採取し、 分析した。
上記炭酸水の炭酸イオン濃度は実験開始時が 2000 p pm、 1 0時間後は 5 00 p p mであった。
比較用として、 上記と同様に炭酸水の代わりに水道水を用いて通水し、 同様に 流水液 1 00m lずつ採取し、 分析した。
2) 試験結果
上記の試験結果を第 3図に示す。 本発明の炭酸水を通水したもの水道水に比べ て 1 0時間で約 5倍のトリクロロエチレンの溶出量を示した。
[実施例 2]
<炭酸水による土壌の浄化作用を見るため、 揮発性有機ハ口ゲン化物の土壌の保 持時間測定〉
1) 実験手順
2本のカラムに成田砂層から採取したシルト 25 gを充填し、 水を飽和させた 後、 トリクロロエチレン 0. 1 5 gをクロマト (クロマトグラフィ) のカラム上 部に滴下した。 その後、 炭酸水を 1. Om 1 /分の速度で通過させた。 流水液を 30分毎に採取し、 含まれるトリクロロエチレンの量を測定した。
上記炭酸水の炭酸イオン濃度は実験開始時が 2000 p pm、 240分後は 9 00 p p mで ¾つた。
比較用として、 上記と同様に炭酸水の代わりに水道水を用いて通水し、 同様に トリクロロエチレンの量を測定した。
2) 試験結果
上記の試験結果を第 4図に示す。 本発明の炭酸水を通水したものは天然水に比 ベて 1時間後の頃から遙かに大きいトリクロロエチレンの溶出量を示し、 3時間 その状態が続いた。 従って、 炭酸水を土壌に通すことにより、 卜リクロロェチレ ンは土壌内に保持できないことが分かつた c.
[実施例 3]
く炭酸水へのトリクロ口エチレンの溶解度〉
本発明の方法では、 土壌等に付着したトリクロロエチレンを炭酸水が溶解して 除去する作用も考えられる。 これを証明するために上記溶解度の測定を行った。
1) 試験方法
炭酸イオン濃度 770 Omg/L (即ち 7700 p pm) の炭酸水及び天然水 (商品名 :ェピアン;炭酸イオン濃度 Omg/L) を用いて、 天然水と 4種の炭 酸水 (炭酸ィオン濃度: 340mg/L 92 Omg/L, 1 70 Omg L, 770 Omg/L) を作成した。
上記天然水及びそれぞれの炭酸水 4 Om 1を、 セプタム付きガラスバイアルビ ンに気泡が残らないように封入した。 0. 14 gの過剰のトリクロロエチレンを シリンジを用いて添加し、 各バイアルビンの接合部をテフロンテープにより密閉 した。 マグネットスターラーで 30分間攪拌後、 24時間静置した。 その後速や かに上澄み液を採取し、 トリクロロエチレンを抽出した。 これらの操作は 20. 7 °Cの環境で行った。
1 - 1) 炭酸イオン濃度の測定
上記バイァルビン封入前の天然水及び 4種の炭酸水について、 炭酸ィォン濃度 を中和滴定法により行った。 - この滴定法は、 J I S K 01 0 1 25に記載 の塩化ス トロンチウム ·一塩基酸滴定法によるものである。
1一 2) トリクロロエチレン濃度測定
前記で得た上澄み液を、 それと同量の残留農薬試験用 n キサンを添加して 激しく攪拌し、 得られた n キサン層をガスクロマトグラフィにより下記条件 で行った。
GC分析条件:
^ o 装置: (株) 島津製作所製 GC— 1 7 A型
カラム : AQUATAC 75mX 0. 53 mm φ
カラム温度: 2 1 0°C
キヤリァガス :窒素
検出器: ECD
上記測定により得られた炭酸水のトリクロロエチレン飽和溶解度を下記の表及 び第 5図のグラフに示す。 炭酸イオン濃度 (mg/L) トリクロロエチレン検出量 (mgZL)
0 750
340 780
920 1 000
1 700 1 1 00
7700 1 300 上記結果から、 炭酸水は水に比較してトリクロロエチレンを良く溶かすことが 分かる。 従って、 この性質も汚染物質除去の一助となっていると考えられる。
[実施例 4]
ぐ実際の汚染土壌に対する炭酸水の浄化作用〉
ほぼ 40 m四方と想定されるトリクロロエチレンによる汚染地域に対して浄化 処理を行った。 この汚染地域のほぼ中央に水、 炭酸ガス注入用の井戸 (深さ 5. 5m、 直径 35 cm) を掘削して形成した。 炭酸ガス注入用の井戸から 8 m離れ た位置に観測用井戸 (深さ 1 2m、 直径 35 cm) を掘削、 形成した。 井戸の深 さは地下水に到達した値である。
( I ) 下記の手順で浄化処理を行った (月 Z日)。
1 1/ 1 :炭酸ガス注入用の井戸に食塩 3 k gを投入した。 次いで水道水の注 水を開始した。 注水量: 5 L/分
1 1/2-1 2 : 同様に注水した。
11/13〜1Z10 : 同様に注水すると共に、 炭酸ガスを投入した (2. 5 L/分:即ち 1 000 p p mの炭酸水に相当)。 途中 1 1 24〜1 1/27に 炭酸ガス投入を中段。
1/1 1〜 1 22 :注水のみ行った。
1 / 23〜: Iノ 27 :注水も停止した。
1/28〜2Z12 :再度、 前記と同様に注水すると共に、 炭酸ガスを投入し た (2. 5 LZ分:即ち 1 000 p pmの炭酸水に相当) c この間及びこの後、 観測用井戸でサンプリングを行い、 そのトリクロロェチレ ン (TCE) 濃度を測定した。 その結果を下記の表及び第 6図のグラフに示す。
[サンプリング日時] [処理状況] [TCE濃度 (mgZL)]
1 1 2 注水 0. 037
1 1 5 注水 0. 043
1 1 7 注水 0. 054
1 1 1 3 注水/炭酸ガス 0. 1 2
1 1 20 注水/炭酸ガス 0. 36
1 1 26 注水 0. 39
1 2/2 注水/炭酸ガス 0. 53
1 2/1 1 注水/炭酸ガス 0. 30
1 2/1 9 注水 Z炭酸ガス 0. 22
1/5 注水/炭酸ガス 0. 1 8
1/20 注水 0. 057
2/1 2 注水/炭酸ガス ·終了 0. 035 上記表及び第 6図より明らかなように、 初期の注水のみによる浄化処理では T ECの濃度の上昇は僅かであつたが、 炭酸ガスの投入により TECの濃度が急上 昇し、 一桁の濃度上昇が見られた。 これにより、 効率よく浄化処理が行われてい
ることが分かる £ また 2ヶ月程度という短期間で処理が終了したことも驚くべき ことである.
[図面の簡単な説明]
第 1図は、 本発明の方法の実施形態を示す断面図である。
第 2図は、 本発明の方法の別の実施形態を示す断面図である。
第 3図は、 実施例 1の結果を示すグラフである。
第 4図は、 実施例 2の結果を示すグラフである。
第 5図は、 実施例 3の結果を示すグラフである。
第 6図は、 実施例 4の結果を示すグラフである。