以下、この発明をより詳細に説明するために、この発明を実施するための形態について、添付の図面に従って説明する。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る光軸制御システムの要部を示すブロック図である。図1を参照して、実施の形態1に係る光軸制御システムについて説明する。
図1に示す如く、車両1は、右前照灯2_1及び左前照灯2_2を有している。
車両1は、いわゆる「右ハンドル車」である。この場合、車両1の前端部における運転席側の部位(以下「運転席側部」という。)に右前照灯2_1が設けられており、かつ、車両1の前端部における助手席側の部位(以下「助手席側部」という。)に左前照灯2_2が設けられている。または、車両1は、いわゆる「左ハンドル車」である。この場合、車両1の助手席側部に右前照灯2_1が設けられており、かつ、車両1の運転席側部に左前照灯2_2が設けられている。
以下、右前照灯2_1及び左前照灯2_2のうちの車両1の運転席側部に設けられている前照灯を「運転席側前照灯」ということがある。また、右前照灯2_1及び左前照灯2_2のうちの車両1の助手席側部に設けられている前照灯を「助手席側前照灯」ということがある。通常、運転席側前照灯は、車両1の前端部における対向車線側の部位に設けられている。また、助手席側前照灯は、車両1の前端部における歩道側の部位に設けられている。
図1に示す如く、車両1は、右前照灯2_1用の駆動機構3_1を有している。また、車両1は、左前照灯2_2用の駆動機構3_2を有している。また、車両1は、電子制御ユニット(以下「ECU」と記載する。)4を有している。
駆動機構3_1は、ECU4による制御の下、右前照灯2_1の被駆動部5_1をピッチ方向に回動させるものである。被駆動部5_1が回動することにより、車両1の車体部に対する右前照灯2_1の光軸角度が変化するようになっている。また、駆動機構3_2は、ECU4による制御の下、左前照灯2_2の被駆動部5_2をピッチ方向に回動させるものである。被駆動部5_2が回動することにより、車両1の車体部に対する左前照灯2_2の光軸角度が変化するようになっている。駆動機構3_1,3_2の各々は、例えば、アクチュエータにより構成されている。
以下、右前照灯2_1及び左前照灯2_2を総称して単に「前照灯」ということがある。また、この前照灯を示す符号に「2」を用いることがある。前照灯2、駆動機構3_1,3_2及びECU4により、光軸制御システム200の要部が構成されている。
ここで、右前照灯2_1の被駆動部5_1に第1加速度センサ6_1が設けられている。また、左前照灯2_2の被駆動部5_2に第2加速度センサ6_2が設けられている。
第1加速度センサ6_1及び第2加速度センサ6_2の各々は、1個の検出軸(以下「第1検出軸」という。)を有している。第1加速度センサ6_1の第1検出軸は、被駆動部5_1に対する前後方向に沿うように設けられている。第2加速度センサ6_2の第1検出軸は、被駆動部5_2に対する前後方向に沿うように設けられている。以下、第1加速度センサ6_1の第1検出軸に沿う方向(すなわち被駆動部5_1に対する前後方向)Dx_1及び第2加速度センサ6_2の第1検出軸に沿う方向(すなわち被駆動部5_2に対する前後方向)Dx_2の各々を「X方向」ということがある。
また、第1加速度センサ6_1及び第2加速度センサ6_2の各々は、他の1個の検出軸(以下「第2検出軸」という。)を有している。第1加速度センサ6_1の第2検出軸は、被駆動部5_1に対する上下方向に沿うように設けられている。第2加速度センサ6_2の第2検出軸は、被駆動部5_2に対する上下方向に沿うように設けられている。以下、第1加速度センサ6_1の第2検出軸に沿う方向(すなわち被駆動部5_1に対する上下方向)Dz_1及び第2加速度センサ6_2の第2検出軸に沿う方向(すなわち被駆動部5_2に対する上下方向)Dz_2の各々を「Z方向」ということがある。
第1加速度センサ6_1は、X方向Dx_1に対する加速度Gx_1を検出するとともに、Z方向Dz_1に対する加速度Gz_1を検出するものである。第1加速度センサ6_1は、当該検出された加速度Gx_1,Gz_1を出力するものである。また、第2加速度センサ6_2は、X方向Dx_2に対する加速度Gx_2を検出するとともに、Z方向Dz_2に対する加速度Gz_2を検出するものである。第2加速度センサ6_2は、当該検出された加速度Gx_2,Gz_2を出力するものである。
なお、第1加速度センサ6_1及び第2加速度センサ6_2の各々は、他の1個の検出軸(以下「第3検出軸」という。)を有するものであっても良い。第1加速度センサ6_1の第3検出軸は、被駆動部5_1に対する左右方向に沿うように設けられている。第2加速度センサ6_2の第3検出軸は、被駆動部5_2に対する左右方向に沿うように設けられている。以下、第1加速度センサ6_1の第3検出軸に沿う方向(すなわち被駆動部5_1に対する左右方向)Dy_1及び第2加速度センサ6_2の第3検出軸に沿う方向(すなわち被駆動部5_2に対する左右方向)Dy_2の各々を「Y方向」ということがある。
この場合、第1加速度センサ6_1は、加速度Gx_1,Gz_1を検出するとともに、Y方向Dy_1に対する加速度Gy_1を検出する。第1加速度センサ6_1は、当該検出された加速度Gx_1,Gy_1,Gz_1を出力する。また、第2加速度センサ6_2は、加速度Gx_2,加速度Gz_2を検出するとともに、Y方向Dy_2に対する加速度Gy_2を検出する。第2加速度センサ6_2は、当該検出された加速度Gx_2,Gy_2,Gz_2を出力する。
以下、第1加速度センサ6_1及び第2加速度センサ6_2の各々が第1検出軸及び第2検出軸を有する場合の例を中心に説明する。すなわち、第1加速度センサ6_1及び第2加速度センサ6_2の各々が第3検出軸を有しない場合の例を中心に説明する。
次に、図2A及び図3Aを参照して、右前照灯2_1について説明する。また、図2B及び図3Bを参照して、左前照灯2_2について説明する。
右前照灯2_1及び左前照灯2_2の各々は、光軸を有している。以下、右前照灯2_1の光軸に沿う方向Da_1及び左前照灯2_2の光軸に沿う方向Da_2の各々を「光軸方向」ということがある。
右前照灯2_1は、例えば、いわゆる「ダイレクトプロジェクション方式」の光学系を有している。すなわち、筐体11_1内にLED(Light Emitting Diode)光源、集光レンズ及び投射レンズ12_1が設けられている(図2A参照)。図2Aにおいて、LED光源及び集光レンズは図示を省略している。第1加速度センサ6_1は、投射レンズ12_1に設けられている。被駆動部5_1は、LED光源、集光レンズ、投射レンズ12_1及び第1加速度センサ6_1を含むものである。これに対して、筐体11_1は、車両1の車体部に固定されている。
ここで、X方向Dx_1は、光軸方向Da_1と同一の方向に設定されている。または、X方向Dx_1は、光軸方向Da_1と略同一の方向に設定されている。これにより、図3Aに示す如く、路面Rに対する被駆動部5_1のピッチ角度φ_1(すなわち路面Rに対する第1加速度センサ6_1の第1検出軸のピッチ角度φ_1)は、光軸角度θ_1と同等の角度である。図中、Pr_1及びPr_2の各々は、路面Rに対して平行である仮想的な面(以下「基準面」という。)を示している。
左前照灯2_2は、例えば、ダイレクトプロジェクション方式の光学系を有している。すなわち、筐体11_2内にLED光源、集光レンズ及び投射レンズ12_2が設けられている(図2B参照)。図2Bにおいて、LED光源及び集光レンズは図示を省略している。第2加速度センサ6_2は、投射レンズ12_2に設けられている。被駆動部5_2は、LED光源、集光レンズ、投射レンズ12_2及び第2加速度センサ6_2を含むものである。これに対して、筐体11_2は、車両1の車体部に固定されている。
ここで、X方向Dx_2は、光軸方向Da_2と同一の方向に設定されている。または、X方向Dx_2は、光軸方向Da_2と略同一の方向に設定されている。これにより、図3Bに示す如く、路面Rに対する被駆動部5_2のピッチ角度φ_2(すなわち路面Rに対する第2加速度センサ6_2の第1検出軸のピッチ角度φ_2)は、光軸角度θ_2と同等の角度である。
以下、同一及び略同一を総称して単に「同一」という。
次に、図4を参照して、ECU4について説明する。
ECU4は、車両1における種々の信号を取得する機能を有している。すなわち、ECU4は、車両1の走行速度Vを示す信号(以下「車速信号」という。)を取得する機能を有している。また、ECU4は、車両1がキーオンされたことを示す信号(以下「キーオン信号」という。)を取得する機能を有している。また、ECU4は、車両1がキーオフされたことを示す信号(以下「キーオフ信号」という。)を取得する機能を有している。これらの信号は、例えば、CAN(Controller Area Network)により取得される。
また、ECU4は、車速信号を用いて、車両1が走行中であるか停止中であるかを判定する機能を有している。ECU4は、当該判定の結果に基づき、車両1が走行を開始したことを検出する機能を有している。
また、ECU4は、キーオン信号及びキーオフ信号を用いて、車両1がキーオンされた状態(以下「キーオン状態」とい。)であるか車両1がキーオフされた状態(以下「キーオフ状態」という。)であるかを判定する機能を有している。
そのほか、ECU4は、以下のような機能を有している。すなわち、ECU4は、ピッチ角度算出部21及び第1光軸制御部22の機能を有している。また、ECU4は、車両状態検出部23、差分算出部24、判断部25及び第2光軸制御部26の機能を有している。また、ECU4は、加速度算出部27、偏差算出部28及び第3光軸制御部29の機能を有している。第1光軸制御部22、第2光軸制御部26及び第3光軸制御部29により、光軸制御部30の要部が構成されている。
ピッチ角度算出部21は、第1加速度センサ6_1により出力された加速度Gx_1,Gz_1を取得するとともに、第2加速度センサ6_2により出力された加速度Gx_2,Gz_2を取得するものである。ピッチ角度算出部21は、当該取得された加速度Gx_1,Gz_1を用いて、ピッチ角度φ_1を算出するものである。また、ピッチ角度算出部21は、当該取得された加速度Gx_2,Gz_2を用いて、ピッチ角度φ_2を算出するものである。ピッチ角度算出部21は、当該算出されたピッチ角度φ_1,φ_2を出力するものである。
具体的には、例えば、ピッチ角度算出部21は、加速度Gx_1,Gz_1を取得する処理、及び当該取得された加速度Gx_1,Gz_1を用いて水平面Hに対する被駆動部5_1のピッチ角度φ’_1を算出する処理を所定の時間間隔にて実行する。ピッチ角度算出部21は、当該算出されたピッチ角度φ’_1を用いて、車両1の停止中におけるピッチ角度φ’_1の変化量Δφ’_1を算出する。ピッチ角度算出部21は、当該算出された変化量Δφ’_1がピッチ角度φ_1の変化量であると推定する。ピッチ角度算出部21は、当該推定された変化量の積算によりピッチ角度φ_1を算出する。
また、例えば、ピッチ角度算出部21は、加速度Gx_2,Gz_2を取得する処理、及び当該取得された加速度Gx_2,Gz_2を用いて水平面Hに対する被駆動部5_2のピッチ角度φ’_2を算出する処理を所定の時間間隔にて実行する。ピッチ角度算出部21は、当該算出されたピッチ角度φ’_2を用いて、車両1の停止中におけるピッチ角度φ’_2の変化量Δφ’_2を算出する。ピッチ角度算出部21は、当該算出された変化量Δφ’_2がピッチ角度φ_2の変化量であると推定する。ピッチ角度算出部21は、当該推定された変化量の積算によりピッチ角度φ_2を算出する。
そのほか、加速度Gx_1,Gz_1に基づくピッチ角度φ_1の算出には、公知の種々の技術を用いることができる。また、加速度Gx_2,Gz_2に基づくピッチ角度φ_2の算出には、公知の種々の技術を用いることができる。これらの技術についての詳細な説明は省略する。
第1光軸制御部22は、ピッチ角度算出部21により出力されたピッチ角度φ_1,φ_2を取得するものである。第1光軸制御部22は、当該取得されたピッチ角度φ_1,φ_2を用いて、光軸角度θ_1,θ_2を法定角度(以下「基準光軸角度」という。)θrefと同等の角度に制御するものである。すなわち、第1光軸制御部22は、いわゆる「オートレベリング」を実行するものである。ここで、光軸角度θ_1の制御には、駆動機構3_1が用いられる。また、光軸角度θ_2の制御には、駆動機構3_2が用いられる。
図5は、基準光軸角度θrefの例を示している。また、図5は、基準光軸角度θrefに対応する方向(以下「基準光軸方向」という。)Drefの例を示している。図中、Prは、基準面を示している。
ピッチ角度φ_1,φ_2に基づくオートレベリングには、公知の種々の技術を用いることができる。これらの技術についての詳細な説明は省略する。
以下、ピッチ角度算出部21により実行される処理を総称して「ピッチ角度算出処理」ということがある。また、第1光軸制御部22により実行される制御を総称して「第1光軸制御」ということがある。ECU4は、車両1がキーオン状態であるとき、ピッチ角度算出処理及び第1光軸制御を繰り返し実行するようになっている。
車両状態検出部23は、キーオフ信号を用いて、車両1がキーオフされたことを検出するものである。また、車両状態検出部23は、キーオン信号を用いて、車両1がキーオンされたことを検出するものである。
差分算出部24は、車両状態検出部23による検出結果に基づき、車両1がキーオフされたときのピッチ角度φ_1をピッチ角度算出部21から取得するとともに、車両1がキーオンされたときのピッチ角度φ_1をピッチ角度算出部21から取得するものである。差分算出部24は、車両1がキーオフされたときのピッチ角度φ_1に対する車両1がキーオンされたときのピッチ角度φ_1の差分Δφ_1を算出するものである。差分算出部24は、当該算出された差分Δφ_1を出力するものである。
または、差分算出部24は、車両状態検出部23による検出結果に基づき、車両1がキーオフされたときのピッチ角度φ_2をピッチ角度算出部21から取得するとともに、車両1がキーオンされたときのピッチ角度φ_2をピッチ角度算出部21から取得するものである。差分算出部24は、車両1がキーオフされたときのピッチ角度φ_2に対する車両1がキーオンされたときのピッチ角度φ_2の差分Δφ_2を算出するものである。差分算出部24は、当該算出された差分Δφ_2を出力するものである。
判断部25は、右前照灯2_1及び左前照灯2_2の各々が運転席側前照灯であるか助手席側前照灯であるかを判断するものである。以下、判断部25による判断方法の具体例について、三つ説明する。
〈判断部25による判断方法の第1具体例〉
車両1が右ハンドル車であるか左ハンドル車であるかを示す情報、すなわち右前照灯2_1及び左前照灯2_2のうちのいずれが運転席側前照灯であるのかを示す情報がECU4に予め記憶されている。判断部25は、かかる情報を用いて、右前照灯2_1及び左前照灯2_2の各々が運転席側前照灯であるか助手席側前照灯であるかを判断する。
〈判断部25による判断方法の第2具体例〉
車両1は、ドライバモニタリングシステム(以下「DMS」と記載する。)を有している。ECU4は、DMSにより撮像された画像を示す信号(以下「画像信号」という。)を取得する機能を有している。判断部25は、当該取得された画像信号に対する画像認識処理を実行することにより、右前照灯2_1及び左前照灯2_2の各々が運転席側前照灯であるか助手席側前照灯であるかを判断する。
〈判断部25による判断方法の第3具体例〉
第1加速度センサ6_1が第3検出軸を有している。判断部25は、車両状態検出部23による検出結果に基づき、車両1がキーオンされたとき、第1加速度センサ6_1により出力された加速度Gy_1,Gz_1を取得する。なお、図4において、車両状態検出部23と判断部25間の接続線は図示を省略している。判断部25は、当該取得された加速度Gy_1,Gz_1を用いて、車両1のロール角度を算出する。判断部25は、当該算出されたロール角度に基づき、車両1の右半部の沈み込み量を推定するとともに、車両1の左半部の沈み込み量を推定する。
または、第2加速度センサ6_2が第3検出軸を有している。判断部25は、車両状態検出部23による検出結果に基づき、車両1がキーオンされたとき、第2加速度センサ6_2により出力された加速度Gy_2,Gz_2を取得する。判断部25は、当該取得された加速度Gy_2,Gz_2を用いて、車両1のロール角度を算出する。判断部25は、当該算出されたロール角度に基づき、車両1の右半部の沈み込み量を推定するとともに、車両1の左半部の沈み込み量を推定する。
車両1の右半部の沈み込み量が車両1の左半部の沈み込み量よりも大きい場合、判断部25は、右前照灯2_1が運転席側前照灯であると判断するとともに、左前照灯2_2が助手席側前照灯であると判断する。他方、車両1の左半部の沈み込み量が車両1の右半部の沈み込み量よりも大きい場合、判断部25は、左前照灯2_2が運転席側前照灯であると判断するとともに、右前照灯2_1が助手席側前照灯であると判断する。これにより、例えば、同乗者の搭乗及び荷物の積載に先立ち運転者が搭乗したとき、右前照灯2_1及び左前照灯2_2の各々が運転席側前照灯であるか助手席側前照灯であるかを正確に判断することができる。
第2光軸制御部26は、差分算出部24により出力された差分Δφ_1又は差分Δφ_2を取得するものである。以下、差分Δφ_1又は差分Δφ_2を示す符号に「Δφ」を用いることがある。第2光軸制御部26は、当該取得された差分Δφを所定の閾値φthと比較するものである。閾値φthは、例えば、0.2°に設定されている。
差分Δφが閾値φth以上である場合、第2光軸制御部26は、判断部25による判断結果に基づき、運転席側前照灯の光軸角度(すなわちθ_1及びθ_2のうちのいずれか一方)を差分Δφに応じて調整する制御を実行するものである。すなわち、第2光軸制御部26は、差分Δφに応じた回動量Δθにて運転席側前照灯の被駆動部(すなわち被駆動部5_1及び被駆動部5_2のうちのいずれか一方)を回動させることにより、運転席側前照灯の光軸方向(すなわちDa_1及びDa_2のうちのいずれか一方)をより下向きの方向に変化させる制御を実行する。かかる制御には、運転席側前照灯用の駆動機構(すなわち駆動機構3_1及び駆動機構3_2のうちのいずれか一方)が用いられる。
また、この場合、第2光軸制御部26は、判断部25による判断結果に基づき、助手席側前照灯の光軸角度(すなわちθ_1及びθ_2のうちのいずれか他方)を維持する制御を実行するものである。
以下、車両状態検出部23により実行される処理を総称して「車両状態検出処理」ということがある。また、差分算出部24により実行される処理を総称して「差分算出処理」ということがある。また、判断部25により実行される処理を総称して「判断処理」ということがある。また、差分Δφが閾値φth以上である場合に第2光軸制御部26により実行される制御を総称して「第2光軸制御」ということがある。
図10〜図13を参照して後述するように、車両1がキーオフ状態であるときに人の乗り降り又は荷物の積み降ろしに起因する対路面車体角度の変化が生じた場合、第2光軸制御が実行されることにより、運転席側前照灯の光軸方向が基準光軸方向Drefと同一の方向になる。また、車両1がキーオフ状態であるときに車両1の運搬等に起因する路面傾斜角度の変化が生じた場合、第2光軸制御が実行されることにより、運転席側前照灯の光軸方向が基準光軸方向Drefに比して下向きの方向になる。したがって、いずれの場合であっても、対向車の運転者に対する眩惑が発生するのを抑制することができる。
加速度算出部27は、車両1がキーオンされた後、車両1が走行を開始したとき、車両1の走行による加速度(以下「走行加速度」という。)αを算出するものである。例えば、加速度算出部27は、車速信号を用いて、走行速度Vの微分により走行加速度αを算出する。
また、加速度算出部27は、以下の式(1)により、当該算出された走行加速度αを基準光軸方向Drefに対する加速度(以下「基準加速度」という。)α’に変換するものである。すなわち、加速度算出部27は、当該算出された走行加速度αを用いて、基準加速度α’を算出するものである。加速度算出部27は、当該算出された基準加速度α’を出力するものである。
α’=α×cos(θref) (1)
図6は、走行加速度α、基準加速度α’及び基準光軸角度θrefの対応関係の例を示している。図6に示す如く、上記式(1)が成立する。また、図6は、走行加速度αに対応する方向(以下「加速度方向」という。)Dαの例、及び基準光軸方向Drefの例を示している。図6に示す如く、加速度方向Dαは、路面Rに対して平行である。
偏差算出部28は、第1加速度センサ6_1により出力された加速度Gx_1、第2加速度センサ6_2により出力された加速度Gx_2、及び加速度算出部27により出力された基準加速度α’を取得するものである。偏差算出部28は、当該取得された基準加速度α’に対する当該取得された加速度Gx_1の偏差(以下「第1加速度偏差」という。)δ_1を算出するものである。また、偏差算出部28は、当該取得された基準加速度α’に対する当該取得された加速度Gx_2の偏差(以下「第2加速度偏差」という。)δ_2を算出するものである。偏差算出部28は、当該算出された第1加速度偏差δ_1及び第2加速度偏差δ_2を出力するものである。
ここで、第1加速度偏差δ_1は、基準光軸方向Drefに対するX方向Dx_1の偏差に対応している。すなわち、第1加速度偏差δ_1は、基準光軸方向Drefに対する光軸方向Da_1の偏差(以下「第1光軸方向偏差」という。)に対応している。また、第2加速度偏差δ_2は、基準光軸方向Drefに対するX方向Dx_2の偏差に対応している。すなわち、第2加速度偏差δ_2は、基準光軸方向Drefに対する光軸方向Da_2の偏差(以下「第2光軸方向偏差」という。)に対応している。
第3光軸制御部29は、偏差算出部28により出力された第1加速度偏差δ_1及び第2加速度偏差δ_2を取得するものである。第3光軸制御部29は、当該取得された第1加速度偏差δ_1と当該取得された第2加速度偏差δ_2との大小関係を判断するものである。
第1加速度偏差δ_1が第2加速度偏差δ_2よりも大きいと判断された場合、第3光軸制御部29は、被駆動部5_1を回動させることにより光軸角度θ_1を光軸角度θ_2に近づける制御を実行するものである。より具体的には、第3光軸制御部29は、被駆動部5_1を回動させることにより光軸角度θ_1を光軸角度θ_2と同等の角度にする制御を実行するものである。かかる制御には、駆動機構3_1が用いられる。
他方、第2加速度偏差δ_2が第1加速度偏差δ_1よりも大きいと判断された場合、第3光軸制御部29は、被駆動部5_2を回動させることにより光軸角度θ_2を光軸角度θ_1に近づける制御を実行するものである。より具体的には、第3光軸制御部29は、被駆動部5_2を回動させることにより光軸角度θ_2を光軸角度θ_1と同等の角度にする制御を実行するものである。かかる制御には、駆動機構3_2が用いられる。
以下、加速度算出部27により実行される処理を総称して「加速度算出処理」ということがある。また、偏差算出部28により実行される処理を総称して「偏差算出処理」ということがある。また、第3光軸制御部29により実行される制御を総称して「第3光軸制御」ということがある。
図10〜図13を参照して後述するように、車両1がキーオフ状態であるときに人の乗り降り又は荷物の積み降ろしに起因する対路面車体角度の変化が生じた場合、第2光軸制御が実行されることにより、運転席側前照灯の光軸方向が基準光軸方向Drefと同一の方向になる。このとき、助手席側前照灯の光軸方向は、基準光軸方向Drefに比して上向きの方向である。したがって、第3光軸制御は、助手席側前照灯の光軸角度を運転席側前照灯の光軸角度に近づける制御となる。かかる第3光軸制御が実行されることにより、助手席側前照灯の光軸方向を基準光軸方向Drefと同一の方向にすることができる。
また、図10〜図13を参照して後述するように、車両1がキーオフ状態であるときに車両1の運搬等に起因する路面傾斜角度の変化が生じた場合、第2光軸制御が実行されることにより、運転席側前照灯の光軸方向が基準光軸方向Drefに比して下向きの方向になる。このとき、助手席側前照灯の光軸方向は、基準光軸方向Drefと同一の方向である。したがって、第3光軸制御は、運転席側前照灯の光軸角度を助手席側前照灯の光軸角度に近づける制御となる。かかる第3光軸制御が実行されることにより、運転席側前照灯の光軸方向を基準光軸方向Drefと同一の方向にすることができる。
すなわち、いずれの場合であっても、第3光軸制御が実行されることにより、運転席側前照灯の光軸方向が基準光軸方向Drefと同一の方向であり、かつ、助手席側前照灯の光軸方向が基準光軸方向Drefと同一の方向である状態が実現される。ECU4は、かかる状態にて、ECU4が保持している角度(ピッチ角度φ_1,φ_2及び光軸角度θ_1,θ_2を含む。)の値をリセットする処理(以下「リセット処理」という。)を実行するようになっている。リセット処理が実行されることにより、これらの角度の値は、基準光軸角度θrefと同等の値にリセットされる。
以下、第1加速度センサ6_1及び第2加速度センサ6_2を総称して単に「加速度センサ」ということがある。また、この加速度センサを示す符号に「6」を用いることがある。図4に示す如く、加速度センサ6、車両状態検出部23、差分算出部24、判断部25、加速度算出部27、偏差算出部28及び光軸制御部30により、光軸制御装置100の要部が構成されている。
次に、図7を参照して、ECU4の要部のハードウェア構成について説明する。
図7Aに知す如く、ECU4は、プロセッサ41及びメモリ42を有している。メモリ42には、ピッチ角度算出部21、第1光軸制御部22、車両状態検出部23、差分算出部24、判断部25、第2光軸制御部26、加速度算出部27、偏差算出部28及び第3光軸制御部29などの機能を実現するためのプログラムが記憶されている。かかるプログラムをプロセッサ41が読み出して実行することにより、これらの機能が実現される。
または、図7Bに示す如く、ECU4は、処理回路43を有している。この場合、ピッチ角度算出部21、第1光軸制御部22、車両状態検出部23、差分算出部24、判断部25、第2光軸制御部26、加速度算出部27、偏差算出部28及び第3光軸制御部29などの機能は、専用の処理回路43により実現される。
または、ECU4は、プロセッサ41、メモリ42及び処理回路43を有している(不図示)。この場合、ピッチ角度算出部21、第1光軸制御部22、車両状態検出部23、差分算出部24、判断部25、第2光軸制御部26、加速度算出部27、偏差算出部28及び第3光軸制御部29などの機能のうちの一部の機能がプロセッサ41及びメモリ42により実現されるとともに、残余の機能が専用の処理回路43により実現される。
プロセッサ41は、1個又は複数個のプロセッサにより構成されている。個々のプロセッサは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ又はDSP(Digital Signal Processor)を用いたものである。
メモリ42は、1個又は複数個の不揮発性メモリにより構成されている。または、メモリ42は、1個又は複数個の不揮発性メモリ及び1個又は複数個の揮発性メモリにより構成されている。すなわち、メモリ42は、1個又は複数個のメモリにより構成されている。個々のメモリは、例えば、半導体メモリ又は磁気ディスクを用いたものである。より具体的には、個々の揮発性メモリは、例えば、RAM(Random Access Memory)を用いたものである。また、個々の不揮発性メモリは、例えば、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、ソリッドステートドライブ又はハードディスクドライブを用いたものである。
処理回路43は、1個又は複数個のデジタル回路により構成されている。または、処理回路43は、1個又は複数個のデジタル回路及び1個又は複数個のアナログ回路により構成されている。すなわち、処理回路43は、1個又は複数個の処理回路により構成されている。個々の処理回路は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、PLD(Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、SoC(System on a Chip)又はシステムLSI(Large Scale Integration)を用いたものである。
次に、図8のフローチャートを参照して、ECU4の動作について、車両1がキーオン状態であるときの動作を中心に説明する。
まず、ピッチ角度算出部21がピッチ角度算出処理を実行する(ステップST1)。次いで、第1光軸制御部22が第1光軸制御を実行する(ステップST2)。上記のとおり、車両1がキーオン状態であるとき、ピッチ角度算出処理及び第1光軸制御が繰り返し実行される。すなわち、ステップST1,ST2の処理が繰り返し実行される。
次に、図9のフローチャートを参照して、ECU4の動作について、車両1がキーオンされたときの動作を中心に説明する。すなわち、車両1がキーオフされて、次いで、車両1がキーオンされたとき、ステップST11の処理が開始される。
まず、ピッチ角度算出部21がピッチ角度算出処理を実行する(ステップST11)。これにより、車両1がキーオンされたときのピッチ角度φ_1,φ_2が算出される。なお、車両1がキーオフされたときのピッチ角度φ_1,φ_2は、ステップST11の処理が実行されるよりも先に算出済みである。次いで、差分算出部24が差分算出処理を実行する(ステップST12)。
次いで、差分Δφが閾値φth以上であるか否かが判定される(ステップST13)。差分Δφが閾値φth未満であると判定された場合(ステップST13“NO”)、ECU4の処理は、ステップST1に進む。以下、ステップST1,ST2の処理が繰り返し実行される(図8参照)。他方、差分Δφが閾値φth以上であると判定された場合(ステップST13“YES”)、判断部25が判断処理を実行する(ステップST14)。次いで、第2光軸制御部26が第2光軸制御を実行する(ステップST15)。
次いで、車両1が走行を開始したか否かが判定される(ステップST16)。車両1が走行を開始したとき(ステップST16“YES”)、加速度算出部27が加速度算出処理を実行する(ステップST17)。次いで、偏差算出部28が偏差算出処理を実行する(ステップST18)。次いで、第3光軸制御部29が第3光軸制御を実行する(ステップST19)。次いで、リセット処理が実行される(不図示)。次いで、ECU4の処理は、ステップST1に進む。以下、ステップST1,ST2の処理が繰り返し実行される(図8参照)。
次に、図10〜図13を参照して、第2光軸制御、第3光軸制御及びリセット処理などの具体例について説明する。
以下、車両1が右ハンドル車である場合の例を中心に説明する。すなわち、右前照灯2_1が運転席側前照灯であり、かつ、左前照灯2_2が助手席側前照灯である場合の例を中心に説明する。
図10Aは、車両1がキーオフされたときの車両1の状態の例を示している。図10Bは、その後、車両1がキーオンされたときの車両1の状態の例を示している。
図10に示す例は、車両1の状態がキーオフ状態であるとき、車両1の運搬等に起因する路面傾斜角度の変化が生じない場合の例である。このため、図10に示す例において、車両1がキーオンされたときの路面傾斜角度は、車両1がキーオフされたときの路面傾斜角度と同一である。
また、図10に示す例は、車両1がキーオフ状態であるとき、荷物Bの積み込みに起因する対路面車体角度の変化が生じる場合の例である。このため、図10に示す例においては、車両1がキーオフされたときの対路面車体角度に対して、車両1がキーオンされたときの対路面車体角度が変化している。
図中、Pbは、車両1の車体部に対する前後方向及び左右方向に沿う仮想的な面(以下「車両水平面」という。)を示している。図10に示す例においては、車両1がキーオフされたき、車両水平面Pbが路面Rに対して平行である。これに対して、車両1がキーオンされたとき、車両水平面Pbが路面Rに対して非平行である。
ここで、車両1がキーオフされる前に実行された第1光軸制御により、車両1がキーオフされときの光軸角度θ_1,θ_2は、基準光軸角度θrefと同等の角度になっている。また、車両1がキーオフされたときの光軸方向Da_1,Da_2は、基準光軸方向Drefと同一の方向になっている。図11Aは、車両1がキーオフされたときの光軸角度θ_1,θ_2及び光軸方向Da_1,Da_2の例を示している。
車両1がキーオンされたとき、ピッチ角度算出処理が実行される。ここで、車両1がキーオフ状態であるとき、車両1は停止中である。このため、対路面車体角度の変化による変化量Δφ’_1がピッチ角度φ_1の変化量であると推定される。そして、当該推定された変化量が加算されることにより、車両1がキーオフされたときのピッチ角度φ_1と異なるピッチ角度φ_1が算出される。また、対路面車体角度の変化による変化量Δφ’_2がピッチ角度φ_2の変化量であると推定される。そして、当該推定された変化量が加算されることにより、車両1がキーオフされたときのピッチ角度φ_2と異なるピッチ角度φ_2が算出される。図11Bは、当該算出されたピッチ角度φ_1,φ_2に対応する光軸角度θ_1,θ_2及び光軸方向Da_1,Da_2の例を示している。
すなわち、図11Bに示す如く、車両1がキーオンされたときのピッチ角度算出処理により、車両1がキーオフされたときのピッチ角度φ_1に比して小さいピッチ角度φ_1が算出される。また、車両1がキーオフされたときのピッチ角度φ_2に比して小さいピッチ角度φ_2が算出される。これにより、差分Δφが閾値φth以上になる。この結果、第2光軸制御が実行される。
図11Cは、第2光軸制御が実行されたときの光軸角度θ_1,θ_2及び光軸方向Da_1,Da_2の例を示している。第2光軸制御においては、差分Δφに応じた回動量Δθにて被駆動部5_1が回動することにより、光軸方向Da_1が下向きに変化する。この結果、図11Cに示す如く、光軸方向Da_1が基準光軸方向Drefと同等の方向になる。
図11Cに示す如く、第2光軸制御が実行されることにより、基準光軸方向Drefに対する光軸方向Da_2の偏差(すなわち第2光軸方向偏差)が基準光軸方向Drefに対する光軸方向Da_1の偏差(すなわち第1光軸方向偏差)よりも大きい状態となる。すなわち、第2加速度偏差δ_2が第1加速度偏差δ_1よりも大きい状態となる。このため、第3光軸制御は、光軸角度θ_2を光軸角度θ_1に近づける制御となる。より具体的は、第3光軸制御は、光軸角度θ_2を光軸角度θ_1と同等の角度にする制御となる。
車両1が走行を開始した後、第3光軸制御が実行される。図11Dは、第3光軸制御が実行されたときの光軸角度θ_1,θ_2及び光軸方向Da_1,Da_2の例を示している。図11Dに示す如く、光軸角度θ_2が光軸角度θ_1と同等の角度になっている。この結果、光軸方向Da_2が光軸方向Da_1と同一の方向になっている。
次いで、リセット処理が実行される。図11Eは、リセット処理が実行されたときの光軸角度θ_1,θ_2及び光軸方向Da_1,Da_2の例を示している。リセット処理が実行されることにより、ECU4が保持している光軸角度θ_1,θ_2の値が基準光軸角度θrefと同等の値にリセットされる。図11Eに示す如く、リセットされた各角度の値は、現実の当該各角度に対応した値となる。
なお、図10及び図11に示す例においては、第3光軸制御が実行されたとき、光軸角度θ_1,θ_2が基準光軸角度θrefと同等の角度になっている(図11D参照)。このため、リセット処理の前後に亘り、ECU4が保持している光軸角度θ_1,θ_2の値が変化しないことになる(図11D及び図11E参照)。
図12Aは、車両1がキーオフされたときの車両1の状態の他の例を示している。図12Bは、その後、車両1がキーオンされたときの車両1の状態の他の例を示している。
図12に示す例は、車両1がキーオフ状態であるとき、車両1の運搬等に起因する路面傾斜角度の変化が生ずる場合の例である。このため、図12に示す例においては、車両1がキーオフされたときの路面傾斜角度に対して、車両1がキーオンされたときの路面傾斜角度が変化している。
また、図12に示す例は、車両1がキーオフ状態であるとき、人の乗り降り又は荷物の積み降ろしに起因する対路面車体角度の変化が生じない場合の例を示している。このため、図12に示す例において、車両1がキーオンされたときの対路面車体角度は、車両1がキーオフされたときの対路面車体角度と同一である。
すなわち、図12に示す例においては、車両1がキーオフされたき、車両水平面Pbが路面Rに対して平行である。また、車両1がキーオンされたときも、車両水平面Pbが路面Rに対して平行である。
ここで、車両1がキーオフされる前に実行された第1光軸制御により、車両1がキーオフされときの光軸角度θ_1,θ_2は、基準光軸角度θrefと同等の角度になっている。また、車両1がキーオフされたときの光軸方向Da_1,Da_2は、基準光軸方向Drefと同一の方向になっている。図13Aは、車両1がキーオフされたときの光軸角度θ_1,θ_2及び光軸方向Da_1,Da_2の例を示している。
車両1がキーオンされたとき、ピッチ角度算出処理が実行される。ここで、車両1がキーオフ状態であるとき、車両1は停止中である。このため、路面傾斜角度の変化による変化量Δφ’_1がピッチ角度φ_1の変化量であると推定される。そして、当該推定された変化量が加算されることにより、車両1がキーオフされたときのピッチ角度φ_1と異なるピッチ角度φ_1が算出される。また、路面傾斜角度の変化による変化量Δφ’_2がピッチ角度φ_2の変化量であると推定される。そして、当該推定された変化量が加算されることにより、車両1がキーオフされたときのピッチ角度φ_2と異なるピッチ角度φ_2が算出される。図13Bは、当該算出されたピッチ角度φ_1,φ_2に対応する光軸角度θ_1,θ_2及び光軸方向Da_1,Da_2の例を示している。
すなわち、図13Bに示す如く、車両1がキーオンされたときのピッチ角度算出処理により、車両1がキーオフされたときのピッチ角度φ_1に比して小さいピッチ角度φ_1が算出される。換言すれば、車両1がキーオフされたときの基準面Prに対応する仮想的な面(以下「仮想基準面」という。)Pr’を基準として、図11Bに示す例におけるピッチ角度φ_1と同等のピッチ角度φ_1が算出される。これは、上記推定の誤りによる誤差を含むピッチ角度φ_1である。また、車両1がキーオフされたときのピッチ角度φ_2に比して小さいピッチ角度φ_2が算出される。換言すれば、仮想基準面Pr’を基準として、図11Bに示す例におけるピッチ角度φ_2と同等のピッチ角度φ_2が算出される。これは、上記推定の誤りによる誤差を含むピッチ角度φ_2である。これにより、差分Δφが閾値φth以上になる。この結果、第2光軸制御が実行される。
図13Cは、第2光軸制御が実行されたときの光軸角度θ_1,θ_2及び光軸方向Da_1,Da_2の例を示している。第2光軸制御においては、差分Δφに応じた回動量Δθにて被駆動部5_1が回動することにより、光軸方向Da_1が下向きに変化する。この結果、図13Cに示す如く、光軸方向Da_1が基準光軸方向Drefに比して下向きの方向になる。
図13Cに示す如く、第2光軸制御が実行されることにより、基準光軸方向Drefに対する光軸方向Da_1の偏差(すなわち第1光軸方向偏差)が基準光軸方向Drefに対する光軸方向Da_2の偏差(すなわち第2光軸方向偏差)よりも大きい状態となる。すなわち、第1加速度偏差δ_1が第2加速度偏差δ_2よりも大きい状態となる。このため、第3光軸制御は、光軸角度θ_1を光軸角度θ_2に近づける制御となる。より具体的は、第3光軸制御は、光軸角度θ_1を光軸角度θ_2と同等の角度にする制御となる。
車両1が走行を開始した後、第3光軸制御が実行される。図13Dは、第3光軸制御が実行されたときの光軸角度θ_1,θ_2及び光軸方向Da_1,Da_2の例を示している。図13Dに示す如く、光軸角度θ_1が光軸角度θ_2と同等の角度になっている。この結果、光軸方向Da_1が光軸方向Da_2と同一の方向になっている。
次いで、リセット処理が実行される。図13Eは、リセット処理が実行されたときの光軸角度θ_1,θ_2及び光軸方向Da_1,Da_2の例を示している。リセット処理が実行されることにより、ECU4が保持している光軸角度θ_1,θ_2の値が基準光軸角度θrefと同等の値にリセットされる。図13Eに示す如く、リセットされた各角度の値は、現実の当該各角度に対応した値となる。
次に、第2光軸制御が実行されることによる効果について説明する。
車両1の停止中に人の乗り降り又は荷物の積み降ろしに起因する対路面角度の変化が生じた場合(図10参照)、第2光軸制御が実行されることにより、運転席側前照灯の光軸方向が基準光軸方向Drefと同等の方向になる(図11C参照)。また、車両1の停止中に車両の運搬等に起因する路面傾斜角度の変化が生じた場合(図12参照)、第2光軸制御が実行されることにより、運転席側前照灯の光軸方向が基準光軸方向Drefに比して下向きの方向になる(図13C参照)。したがって、いずれの場合であっても、対向車の運転者に対する眩惑が発生するのを抑制することができる。
次に、第2光軸制御及び第3光軸制御が実行されることによる効果について説明する。
従来のオートレベライザは、第2光軸制御に相当する制御を実行する機能を有しないものであった。また、従来のオートレベライザは、第3光軸制御に相当する制御を実行する機能を有しないものであった。
したがって、従来のオートレベライザにおいては、車両1の停止中に車両の運搬等に起因する路面傾斜角度の変化が生じたとき(図12参照)、上記推定の誤りによる誤差を含むピッチ角度φ_1,φ_2が算出される(図13B参照)。そして、かかる誤差を含むピッチ角度φ_1,φ_2に基づく第1光軸制御が実行される。これにより、光軸の制御の精度が低下する問題があった。
従来のオートレベライザにおいては、かかる問題を解消する観点から、手動によるリセット処理の実行が求められる。すなわち、まず、車両のユーザが車両をカーディーラー等に持ち込む。カーディーラー等において、水平面に対して平行な路面又は台座に車両が設置される。そして、オートレベライザのECUに所定の信号が入力されることにより、リセット処理が実行される。
これに対して、光軸制御システム200においては、第2光軸制御及び第3光軸制御が実行されることにより、リセット処理の自動化を実現することができる。換言すれば、手動によるリセット処理を不要とすることができる。
次に、光軸制御システム200の変形例について説明する。
光軸制御システム200においては、第2光軸制御が実行されてから第3光軸制御が実行されるまでの間、右前照灯2_1の光軸方向Da_1と左前照灯2_2の光軸方向Da_2とが互いに異なる状態となる(図11C又は図13C参照)。このため、図9に示す処理が前照灯2の点灯中に実行された場合、かかる状態における配光により、車両1の運転者が違和感を覚える可能性がある。したがって、図9に示す処理は、前照灯2の消灯中に実行されるのがより好適である。
そこで、ECU4は、現在時刻が昼間に対応する時間帯(以下「昼間時間帯」という。)内の時刻であるか否かを判定する機能を有するものであっても良い。ECU4は、現在時刻が昼間時間帯内の時刻であると判定された場合にのみ、図9に示す処理を実行するものであっても良い。
または、ECU4は、前照灯2の点灯状態を示す信号(以下「点灯信号」という。)を取得する機能を有するものであっても良い。点灯信号は、例えば、右前照灯2_1及び左前照灯2_2の各々に設けられた点灯回路(不図示)から取得される。ECU4は、当該取得された点灯信号を用いて、前照灯2が点灯中であるか否を判定する機能を有するものであっても良い。ECU4は、前照灯2が消灯中であると判定された場合にのみ、図9に示す処理を実行するものであっても良い。
次に、光軸制御システム200の他の変形例について説明する。
ECU4は、加速度算出部27、偏差算出部28及び第3光軸制御部29の機能を有しないものであっても良い。すなわち、図14に示す如く、加速度センサ6、車両状態検出部23、差分算出部24、判断部25及び光軸制御部30により、光軸制御装置100の要部が構成されているものであっても良い。
以上のように、実施の形態1に係る光軸制御装置100は、車両1の右前照灯2_1の被駆動部5_1に設けられる第1加速度センサ6_1と、車両1の左前照灯2_2の被駆動部5_2に設けられる第2加速度センサ6_2と、を含む加速度センサ6と、右前照灯2_1及び左前照灯2_2の各々が運転席側前照灯であるか助手席側前照灯であるかを判断する判断部25と、車両1がキーオフされたことを検出するとともに、車両1がキーオンされたことを検出する車両状態検出部23と、車両1がキーオンされたとき、加速度センサ6を用いたピッチ角度算出処理の結果に基づき、車両1がキーオフされたときのピッチ角度(φ_1又はφ_2)に対する車両1がキーオンされたときのピッチ角度(φ_1又はφ_2)の差分Δφを算出する差分算出部24と、差分Δφが閾値φth以上であるとき、運転席側前照灯の光軸角度(θ_1及びθ_2のうちのいずれか一方)を差分Δφに応じて調整するとともに助手席側前照灯の光軸角度(θ_1及びθ_2のうちのいずれか他方)を維持する制御を実行する光軸制御部30と、を備える。これにより、対向車の運転者に対する眩惑が発生するのを抑制することができる。
また、光軸制御装置100は、車両1の走行加速度αに基づき、基準光軸角度θrefに対応する方向(基準光軸方向Dref)に対する加速度である基準加速度α’を算出する加速度算出部27と、基準加速度α’に対する第1加速度センサ6_1により検出された加速度Gx_1の偏差である第1加速度偏差δ_1を算出するとともに、基準加速度α’に対する第2加速度センサ6_2により検出された加速度Gx_2の偏差である第2加速度偏差δ_2を算出する偏差算出部28と、を備え、光軸制御部30は、第1加速度偏差δ_1が第2加速度偏差δ_2よりも大きいとき、右前照灯2_1の光軸角度θ_1を左前照灯2_2の光軸角度θ_2に近づける制御を実行するものであり、かつ、第2加速度偏差δ_2が第1加速度偏差δ_1よりも大きいとき、左前照灯2_2の光軸角度θ_2を右前照灯2_1の光軸角度θ_1に近づける制御を実行するものである。これにより、リセット処理の自動化を実現することができる。
なお、本願発明はその発明の範囲内において、実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは実施の形態の任意の構成要素の省略が可能である。